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アースクライシス2019⑨~スペースセミ

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ラグランジュポイント

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●巨大化復活はお約束ですよね
 エリア51。
 その名で呼ばれる空軍基地は、プルトン人なる侵略者に一度は占領された。
 だが、猟兵達の手で、運び込まれたUFOを逆に奪うことに成功。
 そして、奪取したUFOを使った逆侵攻作戦が始まる――筈だった。

 エリア51から、宇宙へ向かって光が道のように伸びている。
 アメリカ空軍の皆さんが照射している、ビームハイウェイである。
 光の道を飛んで行った先は、プルトン人の宇宙船がいるラグランジュポイントの筈なのだが。
 こんな目立つもの、敵も黙って見ている筈がない。

「SHIT! UFOの準備が出来たってのに!」
「ラグランジュポイントの方向も判っている……!」
「ビームハイウェイも、安定しているのに…………!」
 エリア51ではアメリカ空軍の皆さんが頭を抱えていた。
 ビームハイウェイを、光の道を遮る敵が現れたのだ。
「判っていた筈だ。オブリビオンは、どういうわけか復活してくる事があると」
「ああ、だが、これは……」
 そう。光の道を遮っているのはただのオブリビオンではない。
 一体どういうことなのか。巨大なオブリビオンなのだ。
「何だありゃ。20m以上あるんじゃねえか?」
「しかもアレは……同じタイプが、ロスの海で猛威を奮ったと聞くぞ」
「俺も聞いた。防衛軍が勝てる気がしなかったと言う」
「俺たちでは勝てないな……」
「ああ。俺たちはせめて、イェーガーに最高のUFOを用意してやろう!」
 空軍の皆さんは、エリア51で猟兵たちを待っている。
 その重たい空気とは裏腹に、ビームハイウェイの遮られた空は――ひどく賑やかだった。

 ズドドドドドドッ! ダラララララララーッ!
 ミーン! ミンミンミンミーンッ!
 ジャーンッ! ジャーンッ!

 ドラムの音とセミの声が大音量で入り混じって降ってきていたのである。
 もうお判りだろう。
 巨大化して空を塞いでいるオブリビオンは。
 セミドラマー!

●騒音アンコール
「…………」
 …………。
 ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)と猟兵達の間に、何とも言えない沈黙が流れていた。

 ま た ア イ ツ か !

「仕方ないじゃないか。オブリビオンなんだもの。骸の海から出て来ちゃうんだもの」
 はぁ、とルシルの口からも溜息が漏れる。
「こうしていても始まらない。倒して貰うしかない以上、前向きに話そう」
 ルシルは真顔に戻って、猟兵達を見やる。
「一番のポイントは、巨大化している事だ。20m以上の巨体のセミ。巨大化は飾りじゃないよ。攻撃力、上がってる」
 だが、付け入る隙はある。
「巨大化の代償として、小回りは効かない。飛行速度も据え置きだよ」
 巨大化は、空を塞ぐ為。
 華麗な空中戦を行う為ではない。
 ならばこちらが、華麗な空中戦を挑んでやればいい。
「皆には、敵から奪取したUFOがある」
 アメリカ空軍が整備してくれた1人乗りのUFO。様々なタイプがあるので、好きなものを使って構わない。
「自力で戦闘飛行が可能なら、UFO使わなくてもいいよ」
 大事なことは、どう空中戦を行うか、という事。
「ああ、そうそう。大事な事を言い忘れていた。巨大化だけど、ドラムセット込だ」
 つまり。
「多分、想像以上に五月蝿い」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 倒した敵の巨大化復活は、ヒーロー物ではお約束ですよね!
 まあ復活みたいになってますが、いつものオブリビオンの再登場です。
 偶々です、偶々。作成ページ開いたらいたんです。

 このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
 1フラグメントで完結し、「アースクライシス2019」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
 ⑨ビームハイウェイの空中戦です。

 今回も有利になれるプレイングボーナス要素があります。
 今回は『華麗な空中戦を展開する』ための行動です。
 猟兵側は1人用UFOに乗って戦うのが基本になります。
 UFOは、プレイングで好きなものを指定して下さい。
 円盤型、ロケット型。何でもOKです。
 敵を一撃で倒す超武装ついてます、とか言われない限り、大体採用できると思います。
 UFOに乗るのは必須ではありません。自前で飛んでもOK。
 ですが、華麗な空中戦、が求められるので、例えば種族特徴の翼など、単に飛べるだけでは有利になるのは難しいです。

●(重要)プレイング期間について
 当方の都合ですぐに開始と出来ず申し訳ないのですが、
 11/13(水)8:30~とさせて頂きます。
 ご協力をお願い致します。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 ボス戦 『セミドラマー』

POW   :    256ビート
【リズムを刻む】事で【256ビートモード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    生ける騒音公害
【けたたましい蝉の鳴き声】【ダミ声のボーカル】【ドラムの爆音】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    セミロックバンド
【蝉のロックバンド】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。

イラスト:天之十市

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

草野・千秋
確かにUFOは僕らの手で奪還しました
UFOなんてSF世界のものだけかと思いきや
実は案外あるものですね
戦争、だからでしょうか
ヒーローズアースなんでもありですね!?
やれるところまではやりますよ

まあ骸の海から出てしまったものは仕方ないですよね……
UFOに飛び乗ります、カッコいいロケット型!
そしてオブリビオンが聞き苦しい音で仕掛けるのなら
僕も音楽で対抗します!
外までも響く拡声器を使って味方を鼓舞
世界のどこかにある雲間の国を目指し
どんな困難があっても
そこに辿り着こうという決意を紡いだ歌
まさかこんな所で使うなんて

スナイパー、2回攻撃、捨て身の一撃、一斉掃射で攻撃を仕掛ける
敵攻撃は第六感、戦闘知識でかわす



●雲上で歌う
「UFOなんてSF世界のものだけかと思いきや、実は案外あるものですね」
 ロケット型UFOの操縦席で、草野・千秋(断罪戦士ダムナーティオー・f01504)は感心したように呟いていた。
 空に伸びる光の道。
 その上を、周りの空を。
 様々な形のUFOが飛んでいく。
 もはやUFOを未確認とは言えない光景である。
「戦争、だからでしょうか。ヒーローズアースなんでもありですね!?」
 千秋はそうは言うが、元々はプルトン人達の飛行物体。別段、この世界が特別に何でもありなわけではないだろう。
 猟兵達が奪ったそれを再利用出来る様にしてしまう辺り、この世界のアメリカ人達も中々のものではあるのだろうが。
 まあ、この際UFOなど些細なものだ。
 巨大なセミに比べたら。

 ダダダダララララララララーッ!
 ミーンミンミンミーン!
「あれ、音楽なんですかね?」
 UFO越しでも聞こえるやかましい音に、千秋が眉をしかめる。
「敵が聞き苦しい音で仕掛けて来るのなら、僕も音楽で対抗します!」
 千秋は白薔薇を飾ったインカムマイク『pulchre, bene, recte』を操作し、UFO船外に取り付けられているスピーカーと無線接続させる。

「――さぁ、君を連れて行こう」

 朗々と歌い出したのは、Cloud cuckoo land――オトギノクニ。
 世界のどこかにある雲間の国を目指し、どんな困難があってもそこに辿り着こうという決意を紡いだ歌である。
(「まさかこんな所で使うなんて」)
 歌いながら、千秋は胸中で呟く。
 此処に来るまでに、幾つの雲を越えてきたか。
 少し乗り出して見下ろせば、眼下には幾つもの雲が見える。
 ここはもう、雲よりも高い空。雲の国を目指した歌を歌うには、これ以上適したロケーションもそうはあるまい。
(「相手がセミじゃなければ……」)
 胸中で溜息を零した千秋の前に、ミンミンだのカナカナだのツクツクだのシャワシャワだのと鳴きながら現れるセミのロックバンド達。
 千秋の歌声は船外にも響いていたけれど、その歌は敵を倒す類のものではなく。故に現れたセミロックバンドに、千秋を乗せたUFOは阻まれてしまう。
「っ! なら――ここから!」
 突破にはしばらくかかりそうだと踏んで、千秋は他の猟兵達の力を高めるために、再び歌い始めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

空咒・羅牙
セ、セミドラマーだって!?
この世界にはそんな熱いセミもいたんだね。
あ、まって枝竜、ふざけてないから!噛まないで、べしべししないで!
華麗に、でしょ?

『空中浮遊』と『空中戦』を用いてセミのもとまでひとっ飛び!
セミ君のUCは増援系みたいだね。
それなら僕だってUCで十二支と猫の霊を呼び出しちゃうよ!
「天に昇った動物とカミサマの宴会騒ぎ、とくとご覧あれ!」
技能の『部位破壊』を用いて、踊るように嘲笑うように
哭蜘蛛の珠糸を張り巡らせて、セミ君のドラムやバチの破壊を狙うよ。
それが無ければ音は出せないハズだよね?
もしそれらの破壊がかなわなくても『時間稼ぎ』にはなるはずだ。
他の猟兵君頑張れ!

アドリブ、連携、大歓迎



●暇神サマ、空で宴会を開く
「セ、セミドラマー……本当にいたんだ!」
 光の道の上に浮かんで生身で此処まで来た空咒・羅牙(創星ノ戯心・f23495)が、セミドラマーを目の当たりにして瞳を輝かせる。
「しかも、セミのロックバンドもこんなに種類がいるなんて!」
 巨大なドラムセットに収まる巨大なセミに、思い思いに楽器を打ったり弾いたり叩いたりして鳴らしている、セミロックバンド。
「この世界には、こんな熱いセミもいたんだね」
 昆虫に分類して良いのかどうかすら疑わしい姿を、熱いセミ、の一言で済ませてしまう辺り、羅牙のカミサマである精神性が伺える。

 べしっ。
「あ痛っ」
 だが、そんなカミサマである羅牙の後頭部を、白い尾が叩いた。
 何事かと振り向いた羅牙を、金色の瞳がじっと見つめて――尾をべしっ。
『がう』
「あ、まって枝竜、ふざけてないから!」
 べしべし、かぷかぷ。
「噛まないで、べしべししないで!」
 『枝竜』と名付けられた尾長竜は、尾と甘噛で羅牙を急き立てる。
「わかってるよ――華麗に、でしょ?」
 とは言え、飛び交うUFOの動きや、その中から飛ぶ他の猟兵の攻撃。或いは、UFOから飛び降りて肉薄する猟兵の行動。
 それらに同等で張り合うには、羅牙の浮遊能力ではやや不足――かもしれない。
 ならば、どうするか
「そう言えば、あのロックバンド……セミドラマーは、増援系の力もあるわけだ」
 数で攻めるのならば、羅牙にも手がある。

「天に昇った動物とカミサマの宴会騒ぎ、とくとご覧あれ!」

 羅牙の周囲に、幾つもの影が浮かび上がる。
 影は幾つかの塊に別れると、それぞれに形を持ち始めた。
 ネズミ、ウシ、トラ、ウサギ、龍、蛇、馬、ヒツジ、サル、トリ、イヌ、猪。
 即ち、子丑寅卯辰巳午未申酉戌亥の十二支。
 そこに加えて、猫。
 十三の動物の霊を喚び出した羅牙のその業は――十三節将の御神楽。
「動物達。セミも仲間に加えてやれ!」
 羅牙の声で、動物の霊達は踊るように、嘲笑うように。
 セミロックバンドを宴の輪に引きずり込んでいく。
 或いは、セミの方が獣達が楽しそうな宴に引き込まれたのか。
 その間に、羅牙は哭蜘蛛の珠糸を伸ばして、ハイハットシンバルに絡み使せる。
 真珠の如く美しくしなやかな糸はとても強靭だが、セミドラマーのドラムセットも相当に強靭で、容易く壊せる程ではない。
 だから、羅牙はハイハットシンバルを狙った。
 2枚合わせのシンバルをくっつける様にしてしまえば、音はほとんど出なくなる。
「これで少しは時間稼ぎになるかな」
 後は他の猟兵の為にロックバンドを引き受けてやろうと、羅牙は十三の獣達の宴の輪の中に加わっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

日隠・オク
サクラコさんf09974と

UFOに乗り込みます
羽はあるんですが……(うまく飛べる自信はなかった)
UFOに、乗ってみたかったので……!
サクラコさんと一緒に行動、セミ撃破頑張ります

サクラコさんの動きに合わせるように
また挟み込むような動きで敵に攻撃を仕掛けます

これが、UFO
自分で乗っておきながら動きに戸惑い
なんだか、みんなUFOに乗って攻撃していると、なんだか不思議……な光景です…

UFOアタックです!
左右前後などから、攻撃していきますね!


鏡彌・サクラコ
【オクちゃんf10977と】

これは困難なミッションでいす
だって敵がセミ?
もっと悪そうな相手なら華麗に戦えたかもですが!
とにかくがんばります

ふつうのアダムスキー型UFOに乗り込みます
ふつうって何だ
未確認でなくなった時点でUFOってよんではいけない気がしますが
気にしないで参りましょう!
オクちゃんもUFO?
羽根はあっても乗ってみたいですねい!

ああそれにしてもうるさいでいす
ノイズキャンセリングUFOにしておけばよかった

ではここからは華麗な戦闘を
UC展開
銅鏡をUFOっぽく飛ばして編隊にします
UFOっぽい不自然な飛び方から
セミにアタックでいす
ふふふこの華麗な連続UFOチック攻撃に耐えられますかねい?



●揺らぐUFOの定義
 そこはエリア51の格納庫。
「ふわ……UFOって、こんなに種類があるんですね」
 ずらりと並んでよりどりみどりなUFOに、日隠・オク(カラカラと音が鳴る・f10977)は目を丸くしていた。
「あれ? オクちゃんもUFO?」
 どれにしようかとUFOを物色するオクに、背中から声がかかる。振り向けば、円盤型のUFOの下に鏡彌・サクラコ(鏡界に咲く花・f09974)が立っていた。
 キマイラであるオクの背中には、大きな翼がある。サクラコが背中を見ていたのも、翼があるからだ。
「うん。羽はあるんですが……その、UFOに、乗ってみたかったので……!」
「ああ、羽はあっても乗ってみたいですよねい!」
 うまく飛べる自信がない――その一言を飲み込んでオクが口にした言葉に、サクラコは深く追求せずに笑顔で頷く。
「でも、これだけあると迷って……しまいません?」
「サクラコは、これに決めたでいす」
 オクの問いに、サクラコは頭上の機体をぺしぺし叩いて示した。
「ふつうのアダムスキー型UFOでいす!」
 サクラコが選んだのは、所謂、空飛ぶ円盤なUFOである。
 この格納庫内でも多いタイプで、同系統を選んだ猟兵も多い機種だ。
 だが――。
「ふつう……なんですか」
 サクラコの言葉を聞いたオクは、また首を傾げていた。
「ううん。確かに。ふつうって何だ」
 何を持って普通とするか。サクラコも思わず考え込んでしまう。
 そもそも、UFOとは『Unidentified Flying Object』の略語だ。こうしてずらりと並んでいると、何一つ『Unidentified』ではなくなっているわけで。
「HEY! イェーガーガールズ! Don't Think. Feelだぜ!」
 すっかり悩みこみそうな二人に、通りすがりの空軍兵士がそんな一言を残していく。
「そうですねい。未確認でなくなった時点でUFOって呼んではいけない気もしますが、気にしないで参りましょう!」
 その一言に、サクラコがまず頷いた。現地の人間が、気にしていないのだ。猟兵が気にした所で、仕方のないことである。
「オクちゃんも、同じタイプどうです? 同じ方が編隊とか組みやすいですよ」
「そうですね。同じのにします!」
 サクラコの提案にオクが頷き、数分後には、同じ円盤型UFOが2基、エリア51を飛び立っていった。

●空飛ぶ円盤には違いない
 そして遥か空の彼方。
「うるさいでいす」
「生身で飛んでこなくて良かったです……」
 サクラコとオクが、別々の機体の中でほとんど同時に溜息を吐いていた。
 ドンドンジャーンとかズンドンジャーンとか言うドラムの低音に、ミンミンジージーシャワシャワと大音量のセミの声が、UFOの中にいても聞こえていたからだ。
「ノイズキャンセリングUFOにしておけば、よかったでいす」
 サクラコが再び溜息をこぼすが、残念ながら、他の猟兵が防音を意識したUFOに乗り込んでも音に苦しんでいたりするんだ。
「でも――これでやりやすくなったでいす」
 サクラコが少し声のトーンを変えて呟いた言葉を、オクが聞き返す。
「オクちゃん。サクラコは、これは困難なミッションだと思っていたんでいす」
 だって、敵はセミだ。
 どれだけ巨大化していても、見た目はどう見てもセミだ。そしてやっていることは、ミンミン鳴いてドラム叩きまくっているだけだ。
「もっと悪そうな相手なら――そう思っている部分が、サクラコにはあったのでいす。でも、実際に音を聞いて判りました。あれは、凶悪な敵でいす」
「そうです、ね」
 サクラコの声に決意を見て、オクも操縦桿を握る手に力が籠もる。
「それじゃあ手筈通りに!」
「挟み撃ち、ですね」
 一度並走して窓越しに顔を見合わせると、サクラコとオクはセミドラマーの手前で二手に別れて飛んでいった。

「さて、それじゃ――やってやるですねい!」
 セミドラマーの正面に回ったサクラコが、自身の本体である銅鏡をUFOの操縦席の中で掲げれば、UFOの外にやや大きく複製した55枚の銅鏡がずらりと現れた。
 横に倒して並んだ銅鏡は、UFOに良く似ている。
 サクラコがUFOを右に動かせば、銅鏡も右に。UFOが左に動けば、左に。
 念力で操作する銅鏡を、UFOの編隊のようにするのは難しいことではない。
「ふふふ! この華麗な連続UFOチック攻撃に耐えられますかねい?」
『ミ゛ミ゛ミ゛!?』
 UFOの中でサクラコがほくそ笑むのと同時に、セミドラマーが驚いたような鳴き声を上げた。まあ、急に50体以上のUFO(に見える)編隊が向かってきたら、そりゃセミドラマーだって驚くだろう。

「サクラコさん、すごいです」
 銅鏡の群体をUFOの様に操りセミドラマーにぶつける様子を、オクがセミドラマーの背後から眺めていた。
 そうは言うが、オクも難なく敵の背後に回り込めるくらいには、UFOに慣れている。
 最初の内は、UFOの動きに戸惑いもしたけれど。
「他の皆もUFOで、なんだか不思議……な光景です……」
 飛び交う銅鏡とUFO。その中心にいるのは、セミ。
「私も、がんばらないと」
 サモニング・ガイスト。
 召喚した古代の霊を、オクは自身が乗ったUFOに憑依させる。
「UFOアタックです!」
 正面に気を取られていたセミドラマーの背中に、オクのUFOから放たれた炎を纏った槍がぶすりと突き刺さった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ニコ・ベルクシュタイン
UFOに乗って…セミを倒せ…?
何を言われているのか未だに分からないが…善処はしよう…
ウッ、頭が痛い…悪寒がする…風邪でも引いたか…?

米空軍から借り受けたのは由緒正しい円盤形の一人乗りUFO
伝聞ではあるが、此の形状であれば所謂ジグザグ飛行が出来るとな
透明な半円状のハッチを閉めれば防音も万全だろう、いざ!

…冗談だろう、此れでもまだ聴こえるとはどんな爆音だ…!?
何処に位置取れば逃れられるか試行錯誤をするうちに
自然とUFOの操縦にも慣れてきて、セミ共を翻弄出来るだろうか

攻撃時には意を決してハッチを少しだけ開いて
【疾走する炎の精霊】を「スナイパー」で狙い撃つ
一撃離脱だ!あんなものをまともに相手出来るか!


榎・うさみっち
俺は羽根で飛べるけど敢えてUFOを借りるぜ!
理由は乗ってみたかったからだ!
円盤型で、操縦席周りはスケルトンになってるやつ!

俺の目の前でセミが暴れるたぁイイ度胸だ
目には目を、セミにはセミを
いでよ【きょうふときょうきのせみっちファイナル】!
こっちは数で勝負だぜ!
せみっちは自前で飛ばせつつ俺はUFO内から指示

セミの周りを縦横無尽に飛び回り
【残像】まで発生させて物凄い数に見せて惑わす!
更に楽器の隙間という隙間にせみっちを侵入させて
音を乱したり内部から破壊してやるぜ!
例え一撃死しても代わりはいくらでもいる!

セミがせみっちに翻弄されている隙に
俺はUFOに内蔵したうさみっちばずーかで撃つべし撃つべし



●1秒差故の悲劇と連撃
 エリア51上空。
 光の道の上を進む、由緒正しい所謂円盤型のUFOの操縦席では、ニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)が操縦桿を握っていた。
「本当にUFOに乗って……セミを倒せというのか……?」
 こうしてUFOに乗り込んで飛び立ってみても、ニコは未だにその言葉を飲み込めたと言う実感がなかった。
「まあ……善処はしよう……」
 飛び立った以上やるしか無い。腹を括って、ニコは操縦桿を横に倒す。
 すると、UFOは同じ方向に、すいっと滑るように横に移動した。
「おお。このタイプはジグザグ飛行が出来ると聞いたが、本当のようだな」
 ニコが円盤型の機体を選んだのは、いぶし銀のようなややくすんだ色合いのメタリックボディが自身の本体を想起させたのと、円盤型機体の機動性。
 推進力自体が、違うのだろう。
 操縦桿をぐっと倒せば、カクンと直角カーブも何のその。
「これならば、もう少し時間をかければ、セミ共を翻弄する事も出来るかもしれん」
 少し自信が付いたのか、ニコが操縦桿から片手を離して眼鏡をクイッと直す。
 だが、それは甘かったとすぐに思い知る事になった。

 ドーンドドドドーンジャーン!
 ミーンミンミーン。

「……冗談だろう?」
 UFOの中にいても聞こえてくるドラムの音とセミの声に、ニコが思わず両手を操縦桿から離して耳にやっていた。それでも、音は聞こえてくる。。
 ハッチは防音素材になっている、と基地で聞いたのだが。
「普通ならこれで万全だろう。此れでもまだ聴こえるとはどんな爆音だ……!?」
 しかも微かに聞こえるとかではない。
 はっきりと聞こえているのだ。
「このまま近づいて、機体は大丈夫か……?」
 操縦桿を握り直したものの、ニコはそのまま考え込む。
 不慣れな状況だからか、悪寒のようなものすら感じていた。
 ドーンッ、ドーンッ!
「むぅ。頭も痛いような……風邪でも引いたか? この音のせいか?」
 ミーンミンミン! みーっち!
「何故かセミの声に混ざって、せみっちの声が聞こえた気が……幻聴か」
 ――みーっちみっちみっちみーっち!
 眉間を抑えるニコだが、その声だけは妙に近くから聞こえる気がした。
 具体的には、背後から。
「……?」
 悪寒がますます強くなるのを感じながら、ニコは恐る恐る振り向いた。

 時は少し遡る。
 ニコの発進から遅れること、僅か1秒。
 同じ円盤型だが随分と小さくてピンクなUFOが、基地から発進していた。
「うおお! 本当に飛んでる! UFOすげー!」
 中で操縦桿を握っているのは、榎・うさみっち(うさみっちゆたんぽは世界を救う・f01902)である。
 良く一緒にいる2人だが、この時は、偶々別口からエリア51を訪れて、偶々違う発進口から、飛び立っていたのだ。
「自分で飛ぶよりはえーな! 流石UFO!」
 普段から、ぶんぶんと飛んでいるからだろうか。飛ぶという行動に慣れていたうさみっちはUFOの扱いにもすぐ慣れて、機体サイズからくる出力差を埋めて、ニコUFOとの距離を徐々に縮めていく。
 そして――うさみっちは目にしたのだ。
 巨大な、セミドラマーを。
「俺の目の前でセミが暴れるたぁイイ度胸だ」
 うさみっちの目が、キラーンと輝く。
 目には目を、セミにはセミを。
「そっちが巨大化ならこっちは数で勝負だぜ! いでよ! きょうふときょうきのせみっちファイナル!」
 そして、うさみっちUFOの周りに、280体にも及ぶせみっち軍団が現れた。

「くぁせせせせみっち!?」
 UFOの中で、ニコの声がひっくり返る。
 なにしろ、気がついたら『前門の巨大セミ、後門のせみっち軍団』って状況に陥っていたのだ。心の準備もする暇もなくである。
 ニコでなくても、動揺するなという方が難しいのではなかろうか。
 ダララララララララララーーッ!!!!
 更に、前方から響くドラムロール。
 せみっち軍団を見たセミドラマーが、セミロックバンドを召喚する為の音だ。
 ダダダダッダンッ!
 ドラムロールの終わりとともに、楽器を持った色んなセミ達が、ミンミンだのカナカナだのツクツクだのシャワシャワだのと鳴きながら現れる。
「くそっ! あっちもセミを増やしてきたか。いけ、せみっち軍団! バンドのセミ達は無視して、ドラム狙いだ!」
 うさみっちの指示が飛び、せみっち軍団がみっちみっちと鳴きながら、セミロックバンドを残像で翻弄してすり抜けて。
 1割くらいはやられたかも知れないが、大半のせみっちが無事にセミドラマーへ群がっていった。
「……セミしかいないのか、ここは……ん?」
 その光景を呆然と呟くニコだが、ふと気づいた。
『み―っちみっちみっち』
 セミ、というかせみっちの声しかしなくなったという事に。
 群がったせみっち達が、セミドラマーのスネアドラムやタムタムの僅かな隙間から潜り込んで、音を出にくくしていたのだ。
「今が好機だな」
 幸か不幸か、せみっちの事をニコはよく知っている。
 あれ、1体1体はとても弱い。すぐ死ぬ。
『み―っちみっちみっち』
 ドーンッ!
 たまにドラムの音が響くと、せみっちの声が止まる。
『み―っちみっちみっち』
 そして、また鳴き出すせみっちの声は、少しずつ減っている。
 たまに止まるのは死んだふり。ドラムの中で重なりあって誤魔化しつつ、全滅を防いでいるのだろう。それでも、ドラムの音を止めていられる時間は、長くはない。
 ニコは意を決して操縦桿を倒し、銀色の円盤をセミドラマーに向かわせる。
「ん? あれニコじゃねーか!」
 飛び出した機体の中に見えた見慣れた銀髪の後ろ頭で、それがニコだと気づいたうさみっちは、操縦席で発射ボタンをぺしぺしと連打した。
 機体に付けたうさみっちバズーカから、まほみっちが次々飛び出す。
 それを横目に眺めながら、ニコはハッチを少しだけ開いて、その隙間から赤い精霊銃の銃口をねじ込んだ。
「契約の下に疾く来たれ、我が炎の愛し子よ」
 疾走する炎の精霊――クイックドロー・サラマンドラ。
 『エレメンタル・ワン』に込められたニコの魔力が、炎の弾丸となって放たれる。
 炎の弾丸はまほみっちの炎も吸収し、その火勢を増しながらセミドラマーに着弾。爆炎を空に咲かせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

亜儀流野・珠
セミお前ほんともうお前。
……色々言いた過ぎてもう何も言えん。
ともかく俺の繊細な耳が壊れる前に黙って貰おう!

円盤型UFOで出撃だ!
まずは攻撃とあのうるさいプレイを止めるために正面からUFOの機能により一撃入れる!
良く分からんが何かは撃てるだろう!プルトン人の奴らも撃ってたしな!適当操作だ!

少しでも怯んだらその隙に頭上に移動、「千珠魂」で呼んだ分身を投下だ!
俺たちよ、薙刀「狐の爪」を奴の節々に差し込み動きを止めてやれ!
ついでに節を斬ったり目を殴ったり羽をザクザクやったりしてやれ!ドラムセットは俺たちでは壊せんから放っておけ!
俺は援護射撃を続行だ!俺たちも皆も頑張れ!



●数の力
「セミお前……ほんともう、お前」
 白い円盤型UFOの操縦席で、亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)が呻いている。
 巨大化してまた出てきたセミドラマーに言いたいことが色々ありすぎて、逆にもう何も言えんって状態になっていた。
 やっぱりあの時、ロスの海でライオンに食わせておけばよかったか。
 なんて言っていても始まらない。
「俺の繊細な耳が壊れる前に、黙って貰おう!」
 操縦桿に付いた赤いスイッチを、珠がぽちっと押すと、UFOに内蔵されていたおそらくプルトン人製のレーザーが発射された。
 ばしゅっ!
 そして、セミドラマーに当たって弾けた。
「……ええ」
 ピンピンしてるセミドラマーに、珠が操縦席で呻く。
「んーと、他にないのか? これはどうだ?」
 珠が適当にボタンを押してみると、今度は雷みたいにバチバチ爆ぜるビームが発射されるが、やっぱりセミドラマーに当たって弾け飛んだ。
「うーむ。怯ませるくらいにはなるかと思ったが」
 UFO標準兵装で何とかなるなら、基地の兵士達だって頑張っている。
 それで倒せないから、猟兵の出番なのだ。
 だが、ダメージにならないから使えない、という事でもない。
「要は使いようってな!」
 珠は再び操縦桿を握ると、最初のレーザーを撃ち続けながらUFOを動かしはじめた。
 例えろくなダメージにならなくとも、当たって弾けたレーザーの光は、機体を頭上に移動させる為の目眩まし程度にはなる。

「俺たち、召喚!」

 セミドラマーの頭上に飛び込んだ珠は、そこで千珠魂を発動させた。
「俺たちよ、狐の爪を奴の節々に差し込み、動きを止めてやれ!」
 300体近い小さな珠の分身が、小さな薙刀を手にセミドラマーに降下していく。。
 ダララララララララララーーッ!!!!
 気配を察したセミドラマーが、セミロックバンド召喚のドラムロールを始めた。
 ダダダダッダンッ!
 ドラムロールの終わりとともに、楽器を持った色んなセミ達が、ミンミンだのカナカナだのツクツクだのシャワシャワだのと鳴きながら現れる。
「もしかして、こっちのセミなら――!」
 セミドラマーと比べると小さい(と言ってもロスの海で見た時と変わっていないというだけだが)セミロックバンドを見て、珠は再びレーザー発射ぽちっとな。
 放たれた光は、セミロックバンドの1匹をふっ飛ばした。巨大化したセミドラマー本体には火力不足でも、ロックバンド相手の援護射撃には使えそうだ。
「今だ、俺たち! 節を斬ったり目を殴ったり羽をザクザクやったりしてやれ!」
 珠の援護で道が開けた小さな珠達が、セミドラマーの身体に取り付き、チクチクと薙刀で突き始めた。
 セミドラマーの巨体からすれば、微々たるダメージ。だが、こう言うものはあとになって効いてくるものである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

石守・舞花
う る さ い
いしがみさん、セミはうるさくて嫌いなんです

セミの視界を邪魔するように頭~胸のあたりを飛び回り、ペースを乱します
昆虫はだいたい自分の胸には手が届きにくいものです
堂々と攪乱してやりましょう

UCの衝撃波でシンバルを狙って【部位破壊】
ビートの要かつ一番でかくうるさい音を出すシンバルを壊してしまえば、敵の演奏のキレは大きく落ちることでしょう
敢えて不規則な間隔で狙うことで出鱈目なリズムを刻み、召喚されたロックバンドの足並みも乱してやります

敵が油断したところで直接胸に飛び移り、関節部分にかじりついて行動阻害しながら体液を吸い【生命力吸収】
「確か、ライブハウスの入場料はドリンク込みなのですよね」



●それはドリンクだろうか
 石守・舞花(神石の巫女・f17791)は巫女である。
 宇宙にあって、古代シャーマニズムを心の拠り所とする神官一族の生まれだ。巫女と言っても、大人しく祀られるような類ではない。
 敵を狩り、それを贄とする『人間祭壇』としての役目を担ってきた。
 故に――舞花は慣れた様子でUFOを操ると、最短距離を最速で突っ切って、何の躊躇いもなくセミドラマーの胸部付近にピタリと寄せた。
「こうしてしまえば、いしがみさんのものです」
 セミドラマーも気づいていないわけではないのだが、舞花が乗ったUFOには届かない。
 昆虫の脚というものは、大体において自分の胸には届きにくいものだ。そこまで計算して、舞花はUFOを寄せたのだ。
 近接戦闘でも、長い得物ほど懐に死角が生じやすいのと同じ理屈だ。
 とはいえ、舞花もただ、懐に入るだけで終わる気はない。
「さて。ここからペースを乱して、攪乱してやりましょう」
 UFOのハッチを開けた舞花の姿は、巫覡載霊の舞による神霊体となっていた。
「てい」
 舞花は薙刀を振るい、衝撃波をドラムセットの中のシンバルへと放った。
 ジャーンッと音を鳴らして、シンバルが大きく揺れた。
「む。丈夫ですね」
 壊れる気配もないシンバルに、舞花はもう一度衝撃波を放ち――。
『オーシツクツクゥッ!!』
 突然飛び出してきたセミロックバンドのツクツクボウシが、それを遮った。
 舞花がシンバルを狙ったのは、それがビートの要であるから。
 少しでもシンバルを壊して音を出にくくしたり音を狂わせられれば、セミドラマーの演奏のキレは落ちる筈である。
 あとまあ、一番うるさい音を出すって言うのもあるのだが。
 セミドラマーも、要だと判っているのだろう。故に一撃で舞花の狙いをさっして、セミロックバンドをガード役に回したのだ。
 ジャジャジャジャジャジャジャジャジャーンッ!
 更にセミドラマー自身が、シンバルを叩きまくる。叩けばシンバルが揺れる。舞花に狙いを定めさせにくくさせようというのだろう。

「う る さ い」

 だが、セミドラマーのその抵抗は、舞花を更に怒らせた。
 元々機嫌はよくなかったのだ。
「いしがみさん、セミはうるさくて嫌いなんです。だからもう容赦しません」
 シンバルを守ろうとしているという事は、セミドラマー本体ががら空きという事。
 舞花はUFOから飛び出すと、セミドラマーの身体に取り付いた。ぶっ刺した薙刀を支えにその身体をよじ登り、真ん中の脚の関節近くに移動する。
 そして――。
「確か、ライブハウスの入場料はドリンク込みなのですよね」
 そして舞花は、セミドラマーの脚の関節付近に、がぶっと齧りついた。そのまま体液とともに、セミドラマーの生命力を吸い上げはじめた。

 舞花は巫女であり、祭壇である。
 その身体に埋め込まれた神石の欠片が、今も贄を求め続けている。
 故に舞花は『人間祭壇』として、他の猟兵の攻撃がセミドラマーに届きだし、取り付いているのが危なくなるまで、その生命力を吸い取り続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御堂・茜
退場早々に巨大化復活とはなんたる邪悪!!
何がセミをドラマーにさせるのでございましょう
しかしこの御堂、例え敵であれ
その熱意には熱意で応えねばなりませぬ!
『対バン』あるのみですッッ!!

UC【百万一心】にて和太鼓・三味線・琴・尺八の達人を召喚!
ボーカルは御堂が務めさせていただきますッ!

幟を背負い【鼓舞】の一声で御堂の【気合い】をメンバーに分け与え【団体行動】!
気合いを放出する事により【空中浮遊/オーラ防御】を可能に!!
【残像】が見える程の高速移動でセミ様の周囲を回転しながら
敵に敗けないソウルフルな和楽器演奏で
四方より音の【衝撃波】を放ちます!!

しかとお聴きなさいませ!
日暮バンドで『文字数が足りない』



●正義の和音
 パカラッ、パカラッと空に蹄の音が響く。
 御堂・茜(ジャスティスモンスター・f05315)を乗せて光の道を駆け上がる、サンセットジャスティスの足音である。
「退場早々に巨大化復活とはなんたる邪悪!!」
 その鞍上で、茜は今日も正義に燃えていた。
「一体何が、セミをこうもドラマーにさせるのでございましょう」
 茜は首を捻りはしたものの、深く追求する気もなかった。
 虫の類、苦手だし。
 そして何より――それが何であれ、茜の取る行動は変わらないのだから。
「この御堂、例え敵であれ、その熱意には熱意で応えねばなりませぬ!」
 茜は手綱から片手を離し、ぐっと握り締めた拳を鞍上で掲げる。
「即ち、『対バン』あるのみですッッ!! 想いを一つに! 御堂家五人囃子よ、いざ正義のために立ち上がるのです!!!」
『応!』
 茜の声に答えて、エリア51の上空に現れる音楽に秀でた御堂家家臣達。
 和太鼓を抱えた大男。
 三味線を持つ浪人風。
 琴を携えた妙齢の女性に、尺八の虚無僧。
「以上、御堂家が誇る和楽器の達人たちでございます!」
『ゴニン、バヤシ、デハ……?』
 その数をみたセミドラマーが、思わずそんなツッコミを入れていた。
 そう。出張(お疲れ様です)してきた家臣は4人。茜は五人囃子と言ったが、それには1人足りないようだが――?
「ボーカルは御堂が務めさせていただきますッ! これで5人ッ!!」
『ア、ハイ』
 『正義』と赤く大きく書かれた幟を背中に背負った茜の力強い一言が、セミドラマーにツッコミを諦めさせる。
「納得したなら、しかとお聴きなさいませ!」
 セミドラマーに茜が言い放つと同時に、サンセットジャスティスが光の道を蹴って空に飛び出した。
「いざ、開演でございます! アンコールは不要。この一曲に全てをかけるのです!」
 茜は後ろを振り向き、4人の家臣を気合で鼓舞する。
 ちなみに家臣はどこにいるのかというと、腰につけた縄でサンセットジャスティスと結ばれている。
 空中を浮いていると言うか、引っ張られている状態である。
 此処が地上ではなく空中だからこそ出来る事だ。これが地上だったら、引きずられて凄いことになっている筈である。
 まあ、空は空で、サンセットジャスティスの動きに合わせてガクンガクンと、残像が見える勢いで上下に振られているので、結局凄いことになっているのだけど。
 そこは御堂家の家臣。慣れてる。
「それでは奏でましょう! 日暮バンドで――正義音頭!」
 ドーンッと和太鼓が低く大きな音を響かせる。
 三味線と琴が主旋律を奏で、尺八が副旋律に回る。
 和の旋律と、ニチアサ感の融合したソウルフルなメロディである。
「~ッ! ~ッ♪」
 茜はノリノリでこぶしを利かせ歌いながら、そのリズムに合わせてサンセットジャスティスを駆り、セミドラマーの周囲をぐるぐる回り出していた。
『ミ゛ッ――ガナガナガナッ!』
 四方から襲いくる和と正義の音の衝撃を巨体に浴びせられ、セミドラマーも慌ててドラムを叩いて対抗し始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

天道・あや
ヒーローズアースの蝉って夏過ぎたのにまだ居るんだ!?…でも長生きしてる所悪いけどそこは通行の邪魔なんだよね!だからどかせて貰うね!あたしの歌とyouのロック!どっちの想いが強いか…勝負!

自動操縦の円盤型のUFOに乗って接近!そしたらUFOから飛び出してレガリアスを稼働させそしてスカイステッパーで跳びながら相手を挑発する!(存在感、挑発、ジャンプ)
そして【サウンドウェポン】を構えていざUCを発動させてライブバトル!あたしの歌を!そして空中での華麗な踊りを魅せる!(楽器演奏、歌唱、ダンス、パフォーマンス)

スペース!それは未知の世界!スペース!それは人類の憧れ!スペース!それは…皆の夢と未来!!



●未来を歌う
「うわ、本当に蝉だ!」
 円盤型のUFOの操縦席で、天道・あや(未来照らす一番星!・f12190)がそれを目にして驚いた声を上げる。
 セミドラマーと言うだけあって、とっても、その。蝉でした。

「ヒーローズアースの蝉って、夏過ぎたのにまだ居るんだ!?」
『いえ、あのセミが特別おかしいだけです』
 地上の基地でUFOを選んでいる中、あやが思わず上げた疑問の声に、基地のオペレーターが思わず返した答えが脳裏に蘇る。

「まあ、オブリビオンだもんね……」
 あやは己を納得させると、UFOの外部スピーカーをオンに入れた。
「もしかしたら頑張って長生きしてるのかも知れないけどね。悪いけど、そこは通行の邪魔なんだよね! だからどかせて貰うね!」
 スピーカーごしのあやの声に返ってきたのは、ドンッダンッジャンッと大きく打ち鳴らすドラムの音。
「あくまでドラムで語ろうってつもりかな?」
 返答の音に何かを感じたあやが、UFOのハッチを開いて――。
「あたしの歌とyouのロック! どっちの想いが強いか……勝負!」
 そして、あやが空に躍り出た。
 レガリアスの靴底から圧縮された空気が放たれ、空をあやの足場と変える。黒と赤のツートンの衣装を翻し、あやは何度も空を蹴って飛んでみせた。
 たんっと足音が聞こえてきそうに、軽やかに舞うあやをセミドラマーが見やる。
「あたしが飛んでるの、そんなに不思議?」
 セミドラマーの視線を感じたあやは、セミドラマーを更に挑発する様に縦横無尽に激しく空を飛び回り――。
 乗り捨てた筈のUFOが戻ってきて、その上に着地した。
「空中での華麗な踊りは十分魅せたよね! 次はあたしの歌を魅せてあげる!」
 そのままUFOの上で、あやがマイクを手にとる。

「Nicefuture! Sweetdream!」

 そして、空にあやの歌声が響きだした。メロディに合わせて、UFOも右に左にとまるで舞うように飛び回る。
 あやが選んだUFOは、自動操縦機能付き。
 攻撃行動の代わりに、歌に合わせた運動パターンを基地でプログラムして貰った。
 あやはUFOを、ただの乗機ではなくステージにしようというのだ。
「スペース! それは未知の世界! スペース! それは人類の憧れ! スペース! それは――皆の夢と未来!!」
 ドンドンドーンッ、ジャンッ!
 あやの歌にピタリとあったリズムを、セミドラマーのドラムの音が刻む。
「夢は素晴らしい! 未来には無限の可能性が! だから一緒に行こう!! 手を繋いで! 一緒に一歩、二歩、三歩! 夢と未来が私達を待っている!」
 さらには現れていたセミロックバンドのギターやベース、トランペットの音も、いつの間にやら、あやの歌声に合わせたリズムを叩いていた。
 あやの歌が、セミ共の心を震わせたのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​

栗花落・澪
いや、う、うるさいだけじゃんこれ…!
もぉー、音楽っていうのはこういうもの、だよ!

窓だけ開けたUFOで素早く移動、旋回の【空中戦】
ボーカル狙いで光線発射
隙を作り渾身の【催眠歌唱】
何か欠ければ敵のUCは成立しない

乗っ取らせてもらうよ

★Venti Alaに宿した風魔法と【指定UC】で準備
【破魔】の【歌唱】を響かせながら一時的にUFOから離脱
ドラムを足場に利用し【ダンス】の要領で攻撃を華麗に回避する【パフォーマンス】
ジャンプ+風魔法の飛び蹴りでせめて横転を狙い
ライブの熱気を演出するように炎の【全力魔法、範囲攻撃】
倒す、追い払う等で一時的にでも僕の音だけで乗っ取り
他の猟兵が畳みかけやすいようフォロー



●宙に風と舞う
 ドラムの音とセミの濁声が響き渡る空を、青を基調としたイルカを思わせる流線型のボディを持つUFOが飛び回る。
「もぉー、少し静かにしてよ!」
 セミドラマーの周りを旋回しながら、栗花落・澪(泡沫の花・f03165)は攻撃ボタンだと聞いたものをポチッと押した。
 機体から放たれた青い光線が、セミドラマーに当たって弾ける。
 ドダダッドダダッドダダダラララッ!
 ミ゛ミ゛ミ゛ミ゛ミ゛! ジジヂヂヂヂ!
 されど他の猟兵も試みた時と同じく、UFOの通常兵装では、セミドラマーにはろくな牽制にすらならないようで、音は響き続けていた。
「だ、だめだ……」
 操縦席の中で、澪が項垂れる。
「聞くに堪えない! うるさいだけじゃんこれ……!!」
 澪が項垂れたのは、セミドラマーがうるさすぎてだった。
 UFOの光線が効かなかった事はあんまり気にしてない。もとより、火力として当てにしていたわけではないのだから。
「こうなったら、飛び込むしかないか」
 そのうるささの中に飛び出す決意を固めて、澪は再びUFOを旋回させて、セミのドラムセットに近づけると、その窓から飛び出した。

 ――♪ ~~♪

 高き空を落下しながら、澪の口から歌声が響き出す。
 その旋律に合わせる様に、風の靴『Venti Ala』から翼が生えた。
 ふわりと、澪が空に浮かぶ。背中の白い翼も共に風の翼と羽撃かせ、澪は歌いながらセミドラマーのスネアドラムの上に舞い降りた。
『ミ゛ンッ!?』
「おっと!」
 気づいたセミドラマーが振り下ろしたスティックを、澪は滑るように動いて避ける。
「乗っ取らせてもらうよ」
 ドーンッとスティックに叩かれた余韻に震えるドラムの上に確りと立って、澪は再び振り下ろされたスティックを、『Venti Ala』から放つ風で蹴り上げる。
 スティックだけを見ても、体格差は歴然。
 スティックを蹴り飛ばす――と言うわけには行かない。澪に出来るのは、せいぜい、スティックの軌道を逸らす事くらい。
 だけど、それで十分だった。
『ミ゛!? ミ゛ッ! ミ゛ミ゛ッ!』
「っ!」
 澪はドラムの上を舞うように飛び回り、セミドラマーが左右から次々と振り下ろすスティックの何割かをドラムから逸らしていた。
「ドラムの爆音が欠ければ、騒音公害にはならないでしょ」
 騒音でしかなかったドラムの音を、澪が多少でも音楽へ近づけていく。
「僕の舞台へようこそ! 音楽っていうのはこういうもの、だよ!」
 【scena】の力で演奏やダンスと言った音楽に関する技能を高めた澪であれば、セミドラマーの音楽をある程度コントロールすることも可能であった。
(「流石にずっとは無理だけど! 一時的にでも、僕の音だけで乗っ取る!」)
 体力の限界まで、此処で踊ってやろう。
 そうすれば、他の猟兵が攻撃する隙を作りやすくもなろう。
 汗の珠を空に飛ばし、澪は巨大なドラムを舞台に踊り続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

深鳥・そと
◆UFO:小型・見た目お任せ
飛行の跡が光のラインで残る
コーラが放出できる(UC用)

UFOに振動を遮るバリアを張って念のため耳栓詰めてれっつごー!
音は振動って知ってるもんね!(ふふん

うわ、これでもうるさっ。
宇宙なのにこれだけの音出すなんて……真空じゃないの?
うん……きっと音を出すためにすごく頑張ってるんだね。ロック!
でもやっぱりうるさいから、こう!

周りのロックバンドたちにめがけて飛んでUC発動
小回り効かせてジグザグ、急にUターンなど

無許可の路上ライブはおまわりさんが来ることがありますー!
猟兵がくることもありますー!
ライブ演出もしたので満足してくださーい!(UFOの光とUC)



●毒の演出家
「わたしね。放水機能があってバリアが強いUFOがいいな。振動に強いやつ」
 くりくりとした赤い瞳を兵士達に向けてそう告げた深鳥・そと(わたし界の王様・f03279)に勧められたのは、エメラルドとパープルのツートンカラーが鮮やかなカラフルな球体というUFOだった。
 なんでも、この形状故に全方位にバリア展開可能らしい。
「あとは念の為に、耳栓詰めて、と」
 操縦席に座ったそらは、耳にぎゅむぎゅむ栓をして。
 れっつごー、と意気揚々、光の道が伸びる空と発進していった。
「これならうるさくない筈。音は振動って知ってるもんね!」
 発進したその時は、そとは操縦席でふふん、と余裕だったのである。

 そして、現在。
 ダーンッドンッドドドダンッ!
 ミン゛ミーンミミジジジー!
「うわ、これでもうるさっ」
 そとも他の猟兵同様、セミの声とドラムの音が、防音対策なんぞ知らぬという勢いで聞こえるという理不尽な現実を思い知らされていた。
「宇宙なのにこれだけの音出すなんて……ここ、真空じゃないの?」
 UFOの中で首を傾げるそとの目の前で、何人かの猟兵がUFOから飛び降りたり、UFOの上に立って歌ったりしている。
 馬で走ってる猟兵だっていた。
 猟兵が外に出ても平気なのだ。まあ、音も聞こえるだろう。多分。
 だとしても、それだけで、防音対策のバリアをしてても聞こえるものだろうか?
「うん……きっとセミも、これだけの音を出すためにすごく頑張ってるんだね」
 だからそとは、その理由をセミドラマーの努力という事にした。
 実際、巨体の割りに細い脚でスティックを掴んで叩きまくっている姿は、なんかスゴい頑張ってる感がある。
「ロックだね! でもやっぱりうるさいから、こう!」
 努力を買っても、うるさいものはうるさい。
 先のドラムロールに喚ばれて、またまたセミロックバンドも出てきているし。
 だからそとは操縦桿を握り、再び発進させた。妨害されないよう、何度も操縦桿を左右に切ってジグザグの軌道を描きながら、セミロックバンドの頭上へ移動する。
「それじゃー、演出、いくよ!」
 そしてそとは、オックスコーラとオックスコーラゼロの瓶の栓を抜いて、UFO内部の給水口に取り付けた。
 しゅわしゅわ弾ける黒炭酸が、UFO下部から勢いよく噴出し――。
「自然界の派手なものには大体毒がある! ……はず!」
 操縦席の中でそとが【きらきらポイズン】の力を振るえば、噴出したコーラが濃い紫の輝きに包まれた。
 きらきら。きらきら。
 輝きの中、黒い液体は如何にも毒々しい色合いの花弁へと変わっていた。
「無許可の路上ライブはいけませんよー! おまわりさんが来ることがありますー! 猟兵がくることもありますー!」
 コーラを変える光で軌跡を描き、そとを乗せたUFOが飛び回る。
「ライブ演出もしたので満足してくださーい!」
 演出と言い張りながら、容赦なく毒を降らせるそとの眼下では。
 カナカナカナ――カ……ナ……。
 ツクツク……オーシ……ツク……。
 毒の前に無残に力尽きる、セミロックバンドの姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
セミドラマー? セミとドラムに、何の関係が……?
まあいいか、すぐにあいつを倒さなければ。
うるさい音楽は苦手だからな……。

UFOに乗り込んで戦闘。<メカニック>で機体のスペックと装備を
確認し、味方を<援護射撃>。また、<空中戦><操縦>技術でアクロバットに
飛行して敵の周りを旋回して牽制、敵に的を絞らせないように工夫するぞ。
うまい具合敵の懐に飛び込んだら、UFOを飛び降りて宇宙カラテ【烈紅閃】でセミの頭に飛び蹴りを一撃。
「ヘビメタだかなんだか知らんが、うるさいだけでスキルもセンスも
まるで感じないぞ! このド下手くそがぁっ!!(怒)」



●真紅の蹴撃
「なるほど、確かにセミで、ドラマーだが……」
 その実物を目にしても、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)はどうしても判らない事があった。
「セミとドラムに、何の関係が……?」
 多分、同じ疑問を抱いた猟兵は他にもいただろう。
 ガーネットをここに送り込んだどこぞのエルフも、以前は思ってはいたのだ。判らないままだったから、もう気にしなかったけれど。
「まあいいか」
 判らないものをいつまでも考えていても、仕方がない。
 ガーネットも同じところに思い至り、気持ちを切り替えて、UFOの速度を上げる。
「ふむ。悪くない機体だ」
 ガーネットは、ここではない宇宙の世界では宇宙船の所有者であり、新たな宇宙船開発の為の会社を立ち上げている。
 UFOの様に宇宙空間での運用を目的とした機体の扱いは、慣れたものだ。
「武装は――あの巨体相手には、火力が足りないか。だが、運動性能は充分だな」
 別の猟兵が乗っているのであろうUFOから放たれたレーザー光が、大したダメージもなさそうに弾けたのを見て、ガーネットは思案する。
 攻撃には不十分。
 されど、機動性は十分。
 問題があるとすれば――音。
 UFO内でも、ドーンッ、ドーンッだのダダダダッだのと聞こえてくるドラムの音。
 ミ゛ミ゛ミ゛ミ゛ミ゛ッと聞こえるセミドラマーのダミ声。
 それらの音が、ガーネットの表情を曇らせる。
「宇宙空間を目的とした機体なら、気密性は高い筈なのだが、な」
 UFOの気密性が今ひとつなのか、セミドラマーの音が異常なのか。前者の可能性が低い事が判ってしまうが故に、ガーネットの口から溜息が溢れる。
「あまり時間もかけたくない。うるさい音楽は苦手だからな……」
 思案するガーネットの前に、チャンスが訪れる。他の猟兵がドラムの上で踊り、セミドラマーの音源を減らしたのだ。
「好機!」
 それでも響く音の衝撃を、ガーネットはUFOを巧みに操り、時に上下反転でのアクロバティックな飛行も取り入れ躱して行く。
 そして――セミドラマーまで近づいた所で、ガーネットはUFOのハッチを開いた。

「ここまで接近すれば、十分。多少手荒にいかせてもらうぞ」

 UFOの中で立ち上がったガーネットの身体を、鮮血のような紅の輝きが包み込む。紅光は次第に収束し、ガーネットの脚に集中した。
(「なに。当たらなければどうという事はない!」)
 その脚で、ガーネットは機体を蹴って飛び上がる。
 紅い光の尾を引いて、ガーネットはセミドラマーの巨大な頭部に肉薄し――。
「ヘビメタだかなんだか知らんが、うるさいだけで音楽的なスキルもセンスもまるで感じないぞ! このド下手くそがぁっ!!」
 烈紅閃。
 怒号とともに、一閃した紅の蹴撃が、セミドラマーの頭を叩く。
 その衝撃は、セミドラマーの巨体をぐらりと揺るがせ、その演奏をしばし止めさせる衝撃を与えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
ま た お ま え か
――え?なんでこの空間でそんなにうるさいのお前
ちょっと待って、理屈がよくわからない
だって音っていうのは空気の振動で耳に伝わるものでしょう?え?まって?宇宙よね?もしくは宇宙に限りなく近いそれよね?

わかった、考えるのをやめます。

【雷王竜凱旋】で竜になりましょう
ロックの時間だオラァ!! ぶち殺すぞ節足動物ッッッ!!
いちいちいちいちうるさくしなきゃ気がすまないっていうなら
いいわよ そのふざけた 演奏会を ぶち壊す
私の狙いは最初からお前じゃなくてそのドラム
バキバキに貫いて割ってやるわ アーーーーッうるさい!!
このカメムシ目!!さっさと死ね!!絶えて死ね!!!ア゛ーーッ!!(雷撃)


チトセ・シロガネ
お、シケイダのユーじゃん!
こんなにビッグになったんだネ!

よーし、ボクもビッグなユーに負けないくらいビートを刻んでいくネ!
UFOでユーの頭上を越えて、そのまま飛び降りるヨ。
そしてUC【光輝幻影】を発動。
空中浮遊でドラムセットに接近してドラムの上で残像を使ってタップダンスを踊るネ。
聞こえるかい?これがエイトビートのリズムだヨ!

飛んでくるスティックを電気に変異した両腕と念動力を使って弾き飛ばしつつ空中戦を展開。
縦横無尽に飛び回ってドラムを叩いていくネ。

ユー、なんだか息が荒くない?
やっぱり巨大化しても寿命はショートなのかい?
相手の寿命が尽きるまで付き合うヨ♡


備傘・剱
とりあえず、言わせてもらおうか…
くそうるせぇぇぇ!

途中まではUFOに乗って移動するが、まどろっこしいからな
雷獣駆発動、敵に接近するぞ

その時、誘導弾、衝撃波、呪殺弾を全力放出して、攻撃してやる
防御もオーラ防御を主に耳に厚くめぐらして音を遮断してやる

そうやって加速がついた状態で最接近したら、鎧無視と、鎧砕きを重ねて、下から思いっきり蹴り上げてやろう
騒音被害の腹いせもあるが、痛みを与えれば、ドラムをたたく暇もないだろうぜ

大体、夏も終わったこの季節にでてきてんじゃねぇよ!
夏の生き物なら、せめて季節を読んで出てきやがれってんだ、この似非カメムシ目が!

アドリブ、絡み、好きにしてくれ



●三雷、響く
『…………ハッ!?』
 ぐらぐら揺れてたセミドラマーが、はっと意識を取り戻す。
 ドドンッドーンッドーンッ! ミーンミンミーンッ!
 ズンチャカジャーンッ!
 落ちていた何秒かを取り戻す勢いで、また五月蝿くなった。

 そこに、3基のUFOが飛来する。
「ま た お ま え か」
 その1基の中では、ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)が思わず振り下ろした拳が、操縦席のコンソールを叩ていた。
「しかも、またうるさすぎる」
 ロスの海でヘンリエッタがその拳で砕いてやったドラムセットまで、新品同様になって巨大化している。
「――え?」
 そこまで考えて、ヘンリエッタは大きな違和感を覚えた。
「なんでそんなにうるさいのお前? ちょっと待って、理屈がよくわからない」
 待てと言った所でセミドラマーには聞こえる筈もないし、聞こえたとしても止まる筈もないのだが、ヘンリエッタは思わずそう口走っていた。
 音は波である。空気の振動として、人の耳に伝わるものである。
「え? まって? この空間、この高度って、宇宙に限りなく近いそれよね?」
 青い空が眼下に見える。
 音を伝える空気など、もうほとんどない筈。
 なのに聞こえる音。
 教授と呼ばれるヘンリエッタだからこそ、その違和感を激しく感じてしまい、どうしてなのかと思考して――。

「くそうるせぇぇぇぇぇぇっっ!」
 別のUFOの中では、備傘・剱(絶路・f01759)も声を大に叫んでいた。
 どうせ聞こえないだろう。
 剱だって、そうは思っていたけれど、あの大音量に、叫ばずにはいられない衝動にかられていたのだ。それもこれも、巨大なセミと、その騒音のせいである。
 ついつい、UFOに搭載されてた誘導ミサイルなんかぶっ放しちゃったけど、やっぱり通常兵装では効果は薄いようだ。
 そしてやっぱり声も聞こえていないようで、或いは聞こえても聞く気がないか。
 ダッダダダダララララダダダドドドッ、ジャーンッッ!
 どちらにせよセミドラマーは止まらない。

「お。ホントにシケイダのユーじゃん!」
 一方、チトセ・シロガネ(チトセ・ザ・スターライト・f01698)だけは、セミドラマーの巨大な姿にどこか弾んだ声をあげていた。
 チトセも、別のセミドラマーと地上で戦った事がある。モニュメント・バレーで、鎧を着込んだセミドラマーだった。
「またエアギター担当じゃないみたいだけど、こんなにビッグになったんだネ!」
 文字通り、見違える程に大きくなっているセミドラマー。その頭上を飛び越えるコースを取るように、チトセはUFOを操り飛ばしていった。

「わかった、考えるのをやめます。竜になりましょう」
 本来、思考停止はヘンリエッタの好まざる所の筈である。
 だが、それが最善となる時もあるのだ。
 余計な思考を捨ててしまえば、目的はシンプルになるのだから。
 ――勝利しか要らない。
 ヘンリエッタの全身から漆黒の雷が迸った。

「こんなのじゃまどろっこしいな」
 眉間を寄せて、剱が乗っていたUFOのハッチを開ける。
 性能は決して悪くないのだが――どうせ兵装は効かないのだ。後は、自分の中に溜め込んだ力でやってやる。
 操縦席からUFOの外側に足をかけ、剱の額にズヌリと角が生えた。

 チトセを乗せたUFOは、セミドラマーのドラムセットの真上にピタリと止まる。
 そこで、反転した。
 そのままハッチが開いていく。
「よーし、ボクもビッグなユーに負けないくらいビートを刻んでいくネ!」
 そして逆さまになったUFOから、チトセが飛び出した。

 これは、偶然である。
 雷の業を使う3人が、同じ空に集ったのは。

 竜を象った漆黒の稲妻で全身を覆ったヘンリエッタが、その黒雷のショックで機能不全に陥ったUFOをあっさりと乗り捨てて空に飛び出す。
 雷王竜凱旋――クワエ・エラント・デーモーンストランダ。
 絶対に勝利するという強い自我で、雷王竜の姿を取る業。
「ロックの時間だオラァ!!」
 乱暴な言葉を吐き捨てて、ヘンリエッタの姿が消える。
 次の瞬間、ヘンリエッタは自分よりも巨大なスネアドラムに拳を叩き込んでいた。
『ハヤッ! ミ゛ミミーッ ミ゛ンッ!!!!!』
 驚いた鳴き声を上げながら、セミドラマーがスティックを振り上げる。

「駆けよ雷獣! 森羅万象、万里一空、全ては汝が望むがままに! 理外が己の理であるがの如く!」
 額の角より生じた黒い雷が、剱の全身を覆っていく。
 やはりこちらもその電力で沈黙したUFOを捨てて、剱は空に身を躍らせた。
 剱の背中で、特殊推進ユニットを強制起動。
 靴底でバチリと黒雷が爆ぜる。
 雷獣駆――ブレイジングビート。
 黒い迅雷と化した剱が、セミドラマーがスティックを振り下ろす前に、ヘンリエッタが叩いたの同じスネアドラムに脚から突っ込んだ。

『ミ゛ィィンッ!?』
 無残にへこんだドラムセットに何処か悲痛な鳴き声を上げて、セミドラマーがならばと別のドラムを叩こうとする。
「ボクの躯は100万ボルトヨ……!」
 その時、空を落ちるチトセの身体が強い光を放った。
 光輝幻影――レディアントミラージュ。
 全身を電気に変えたチトセは、一条の雷となって、やはりセミドラマーのスティックよりも早く、別のスネアドラムの上に降り注ぐ。
『ミミミッ!?』
 驚きながらもセミドラマーが振り下ろしたスティックは、あっさりと空を切る。
 雷人間と言った状態のチトセは、その姿のまま、靴底でドラムを打ち鳴らしてタップダンスを踊り始めた。
「聞こえるかい? これがエイトビートのリズムだヨ!」
 タタンッドンッ。
 軽やかに、時に力強く。
 チトセの足が、ドラムを鳴らし続けた。

 ドダダダダダッジャジャジャダダダドジャダンッジャジャン――!
 バスドラムとタムタム、サイドシンバルを激しく叩きまくって、セミドラマーが256ビートモードに突入する。
 そのままセミドラマーは、256ビートの速度で距離を取――。
「逃げるな! ぶち殺すぞ節足動物ッッッ!!」
『ミッ!?』
 ヘンリエッタの二撃目が、再びスネアドラムを叩いた。
 黒い稲妻を従える雷王竜の姿となったヘンリエッタの飛行速度は、音速などゆうに越えている。
「少しは静かにしやがれ!」
 それは、角より生じる黒雷を纏い己を雷獣と変える剱の業も同じ事。
 体内に埋め込まれたバッテリーに蓄えられた電力を使い、額の麒麟の角から黒雷と変えてその身に纏うもの。
 根源やプロセスの違いはあれど。セミドラマーの速度を上回るという結果は同じ。
「痛みを与えりゃ、ドラムを叩く暇もねぇだろ」
 音速を越えた飛行の勢いを乗せた蹴りを、剱が容赦なくセミドラマーに叩き込む。
「飛ぶくらい、ドラム叩かず飛べ! いちいちいちいちうるさくしなきゃ気がすまないっていうなら――いいわよ。バキバキに貫いて割ってやるわ」
 ヘンリエッタが黒い稲妻が集めた拳を、ドラムに三度叩き込む。
「そのふざけた 演奏会を ぶち壊す」
 一度戦ったヘンリエッタは、あのドラムセットが容易に壊せるものではないと知っている。されど、猟兵ならば壊せないものではないとも知っている。
『ミンミンミーンッ!』
「割り込み禁止ネ!」
 セミドラマーも負けじとスティックを振り下ろすが、チトセは変異したままの両腕から放つ電撃と念動力で、その軌道を弾いて逸らす。
「ところで、ユー。巨大化しても寿命はショートなのかい?」
 何度目かのスティックを弾いて逸らしながら、チトセはセミドラマーに問いかける。
 かつて戦った時は、スタミナ切れの様子があったようだが。
『確カメテミロ』
「いいだろう。寿命が尽きるまで付き合うヨ」
 セミドラマーがしつこく振り下ろしたスティックに、チトセが雷の腕を振り上げ――ポキンッ。
 セミドラマーの寿命より先に、スティックが寿命を迎えた。
『ミ゛……………ミ゛ーンジージーミミミミミーン!』
 スティックが折れたショックでか、狂った様に鳴き出すセミドラマー。
「アーーーーッ! うるさい!! このカメムシ目!!」
「夏の生き物なら、せめて季節を読んで出てきやがれ! この似非カメムシ目が!」
 ヘンリエッタも剱も、セミをカメムシ目と呼びながら黒い雷撃を纏った拳の一撃を叩き込む。
 ズダドダダダドッドーンッ! ミンミーンッ!
「夏も終わったこの季節にでてきてんじゃねぇよ!」
「さっさと死ね!! 絶えて死ね!!! ア゛ーーッ!!」
 もはやリズムもなしに、セミの手足がドラムを叩く音。
 それに剱とヘンリエッタの怒号と、雷光と雷撃の音が混ざりあい、スネアドラムとタムタムが1つずつ砕け散るまで響き続けた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ネグル・ギュネス
【人機一体】

せ…み…?
いや、なんと言うか──世の中、色々だな、しかしセミて…ドラムて…

呆気に取られてる場合じゃない、行こうか
【幻影疾走・速型】起動、乗り込んで空を飛ぼう

鎧坂さんの援護を受け、音から身を守りながら突っ込もう!

巨体の目の横や脚の合間、ドラムの邪魔になるように跳びながら、【残像】を用いて、敵を欺いて集中を乱させる

そして虫の弱点と言えば、寒さ
氷の【属性攻撃】の射撃を、脚や翅部分に放ち、凍らせて体温を奪っていく

動きが鈍れば、後は御覧あれ
バイクの上に立ち、刀を引き抜きながら跳躍

その煩い音を掻き鳴らす脚を、一本ずつぶった斬ってやる!

鳴らすなら、せめて決められた場所と音量でやる事だな、セミ野郎


鎧坂・灯理
【人機一体】味方には敬語、敵には居丈高

セミです セミでドラマーです
これより殺虫作業に入ります
ミスタ・ギュネス、しっかり 目がうつろですよ

私は『白虎』に乗って飛ぶ
【千視卍甲】を発動し、私とミスタ・ギュネスをバイクごとガード
攻撃を遮断、つまり完全防音の結界となる

これをすると「私は」戦闘行動が出来ないのでね
カルラ、行け ドラムセットを破壊しろ
具体的にはデカいドラムに穴開けたりしろ
虫本体には触るなよ せっかく冷やしているのだから

では、どうぞ騎士殿
あの生ける騒音災害を根絶してください

最後にUCを解除して念力で殴る
夏に網戸にくっついてミンミンジワジワ鳴きやがって
セミファイナルでは終わらせんからな虫野郎!!



●人機一体――ファントム&白虎
 人機一体の2人がセミドラマーの前にたどり着いたのは、3つの雷が荒れ狂い、セミドラマーのドラムセットが幾らか壊された後だった。
(「はて。あの怒号、すごく聞き覚えのある声のような」)
 少し前まで聞こえていた声に、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)が内心で首を傾げる。
「せ……み……?」
 灯理の耳に、ネグル・ギュネス(Phantom exist・f00099)の呆然とした声が届く。
「セミです。より正確には、セミでドラマーです」
「セミて……ドラムて……」
 灯理が淡々と並べた2つの単語が、ネグルは耳からすんなり入ってこないような、そんな気がして仕方がなかった。
「いや、なんと言うか──世の中、色々だな」
「ミスタ・ギュネス、しっかり。目がうつろですよ」
 何とか受け入れようとするネグルを、灯理が淡々と右目を向ける。
「深く気にしなければ良いのです。これより入るのは、殺虫作業なのですから」
「ああ。そうだな。呆気に取られてる場合じゃない」
 左隣を並走する灯理に頷いて、ネグルはハンドルを握り直した。
「アクセス、ユーベルコード起動」
 ――速型起動、確認。
 ネグルが告げると、宇宙バイク『SR・ファントム』のA.Iが人工音声を返した。
 次の瞬間、黒い機体が形を変え始める。
 幻影疾走・速型――コール・ファントム・フルドライブ。
「それでこそ。では――こちらは任せろ」
 速度特化の形態に変わる黒い機体を横目に、灯理は思念力と魔力を解放した。
 千視卍甲の二重防壁の保護領域に指定したのは、灯理自身が跨る白い宇宙バイク『白虎』と、変形を終えたネグルの『SR・ファントム』の2点。
「では、行こうか」
「いつでもどうぞ」
 疾走と結界、それぞれの準備を終えて、チーム【人機一体】の2人は、黒と白の機体の速度を同時に上げた。

 黒い軌跡が、セミドラマーの周囲を飛び回る。
 ネグルの乗った黒い宇宙バイクが、文字通りの目の前に飛び出したかと思えば、急降下してセミドラマーの脚の間を走り抜ける。
「我らが疾走、誰にも止められぬさ」
 黒い残像だけを残し、セミドラマーの周りを飛び交うさまは、まさにファントム。
『ミーンミンミンミーッ!』
 トトトトタタッターンッ!
 セミドラマーも負けじとスティックを振り回してスネアドラムを打ち鳴らし、脚もペダルを踏んでバスドラムを叩きまくる。
 その音は他の猟兵達の行動で軽くなっていたが、未だうるさかった。
 だが、その音はネグルにも、少し離れて様子を見守る灯理にも届いてはいない。
「カルラ、行け」
 千視卍甲の二重結界が功を奏しているのを確かめると、灯理は炎のような羽毛を持つ金翅竜『カルラ』をけしかける。
「狙うのは、ドラムセットだ。虫本体には触るなよ。せっかく冷やしているのだから」
 灯理の言う通り、ネグルはただ飛び回っているばかりではない。氷の魔石を装填した『ソリッドブラスターα』より、氷の魔力を浴びせ続けている。
「ちっ。思ったより動きが鈍らないな。虫の弱点は寒さだと思ったが――」
 砕けた魔石を再装填しながら、ネグルがポツリとこぼす。
 狙った関節からは外れる事もあるとは言え、それでも流れ弾はセミドラマーの巨体そのものに当たるようにしている。完全に外したのは、一発もないのだが。
 ――……ン!
「うん?」
 微かに聞こえたその音に、ネグルは首を傾げつつ氷の魔力を放つ。
 同じ違和感は、灯理も感じていた。
 そしてそれが、けしかけた『カルラ』が、ドラムセットに一撃を加えるのを離れて瞬間に感じたたことにも気づいていた。
 千視卍甲は非戦闘行為に『没頭』することで、思念力と魔力の二重防壁を作る業。
 確かに『カルラ』による攻撃は、灯理自身が何かをしたわけではない。だが『カルラ』が何も言われずに勝手に行った事でもない。
 ――ドラムセットを破壊しろ。
 そう命じた時点で『没頭』から、灯理の意識は離れ出していたのだ。カルラが加えた攻撃を認識したことで、その乖離が結界の綻びと現れた。
「騎士殿。あまり時間がないようです。あの生ける騒音災害を根絶してください」
 綻びに気づいた灯理の判断は、修復よりも速攻。
「良いだろう。凍らせるのも、そろそろ飽きて来たところだ」
 その意図を察し、ネグルは『ファントム』の黒い機体を駆ってセミドラマーの頭上まで一気に上昇する。
「鳴らすなら、せめて決められた場所と音量でやる事だな、セミ野郎!」
 シートの上に立って、黒刀『咲雷』の柄を掴み――ネグルが跳んだ。
「その煩い音を掻き鳴らす脚を、ぶった斬ってやる!」
 黒刃一閃。
 桜の花びらに似た雷光の斬撃が、セミドラマーの脚を斬り落とす。
「一太刀で終わると思うな!」
 更にネグルは返す刃を一閃。
 再び閃いた黒刃から放たれた雷光の斬撃が、セミドラマーの脚をもう一本、今度は真ん中の一本を根本から斬り飛ばした。
 脚の3分の1を失い、セミドラマーがバランスを崩す。
「夏に網戸にくっついてミンミンジワジワ鳴きやがって」
 そこに突っ込んでくる『白虎』の白い機体の上で、灯理が声を上げる。
「セミファイナルでは終わらせんからな虫野郎!!」
 解除した防壁に回していた思念の力を、灯理は単純な衝撃に変えてセミドラマーの腹に叩き込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

紗我楽・万鬼
【エイリアンツアーズ】で!

えっ未確認飛行物体に乗るんです?面白いですね!
御犬様と一匹一人乗って飛び立ちますね!
速さ重視でお願いしますね!

いやでもね在れ喧しくないです?
五月蠅いですね蠅じゃなくて蝉なんですね嗚呼あゝもう!
良い度胸ですよ上等じゃあないですか!
あっしの語りとお前さんの騒音何方が勝るか勝負しやしょうね!

姿見の旦那が蝉の腕縛ってますね
でしたらあっしは回り込んで蝉の影に千破夜憑かせますね!
御犬様巨大化だろうが動き止めて下さいよ!
んであっしは業火で蝉の羽中心に焼きつくしてやりますよ!
派手にやりましょうね!あっしの焔は蝉しか燃やしませんから!

さぁこの隙ですよパウルの旦那!
やっちまって下さいね!


パウル・ブラフマン
【エイリアンツアーズ】で参戦!
オレはUFOは使わず
愛機Glanzを【運転】しながら闘うよ☆
深冬ちゃんは後部座席へご案内~♪

慣れたハンドル捌きで
【パフォーマンス】を兼ねて敵前へ【スライディング】。
アンタが超話題のセミドラマー?
噂以上にビッグじゃん!
Herzを拡声器代わりに
【コミュ力】全開で話しかけて隙を作りたいな。

対バン勝負と行こうぜ。―Bring the beat!
ライムを刻むと見せかけて【ジャンプ】&急旋回。
UC発動―お前の生(ビート)、オレ達に寄越せ!
Krakeの四砲を
スティックを握る四腕に向け【一斉発射】!

仲間のUFOが制御不能時は
【かばう】&Glanzで牽引しフォローを。

※アドリブ歓迎


三条・姿見
POW/【エイリアンツアーズ】にて。アドリブ可

なんだあの大きさは。いや、倒してしまえば同じことか…
UFOを一機借り、仲間と共に戦闘に臨む。
射出機構を備えた戦闘機型が良いとみた。
操縦技能は【情報収集】【運転】知識、【早業】による反射神経で補おう。

敵の動きを少しでも妨げ、味方の攻撃に繋げたい。
【罠使い】の技術にて【フック付きワイヤー】【鋼糸】を撃ち込み張り巡らせ
【地形の利用】も駆使した上で、敵の腕をドラムセットに縛り付けたい。
上手くいかずとも、大事なドラムに支障があれば敵の気を削げることだろう。

無論、罠を張る以外にも用意はある。
仕込んでおいた【大爆炎符】、有事の際には起爆する

※二人称:名前呼び捨て


榛名・深冬
【エイリアンツアーズ】
アドリブ可

UFOではなくブラフマン先輩のGlanzに乗せてもらいます
電子キーボードを叩き電脳眼鏡型ゴーグルを【早業】で操作
機械鳥を飛ばし戦場や敵の【情報収集】し情報は仲間に逐一伝達
UCのドローンを敵の周りに展開
敵の協力者だろうが騒音公害だろうが数と操縦技術で敵の行動を妨害
これで皆さんが行動し易くなればいいのですが

三条さんと紗我楽さんのお陰で敵の動きも鈍った様ですし
ブラフマン先輩の邪魔にならない様攻撃の隙間を縫い
小竜の燈を槍にして敵に向かって【ジャンプ】
【空中戦】を仕掛けます
炎を纏った槍での【属性攻撃】で【串刺し】
燈の炎の味はどうですか?
Glanzに着地或いは回収してもらう



●エイリアンツアーズ
 セミドラマーに向かって、3基の機体が飛んでいく。
「いやぁ。未確認飛行物体に乗るのも面白いですね、御犬様」
 1つは紗我楽・万鬼(楽園乃鬼・f18596)が乗った、赤い流線型のUFO。速度重視。
「ふむ。操縦のコツは掴めた――と思う」
 1つは三条・姿見(鏡面仕上げ・f07852)が乗る、戦闘機型UFO。射出機構付。
「UFOに負けんなよ、相棒!」
 最後に、パウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)が駆る宇宙バイク『Glanz』。戦闘機エンジン搭載した無骨な白銀の機体の速度は、UFOにも引けを取らない。
「…………っ! ……っ!」
 そしてもう1人。
 『Glanz』の後部座席に座った榛名・深冬(冬眠る隠者・f14238)の表情は、目を見開いて口をギュッと結んでいた。要するに、ちょっと強張っている。
「あの! ブラフマン、先輩!」
 前の運転席にはっきり聞こえるよう、深冬は頑張って大きめに声を上げた。
「どした? 深冬ちゃん」
「安全! 運転、を。お願い、した、筈ですが!」
 振り向かず声だけで続きを促したパウルに、深冬は舌を噛まない様、途切れ途切れに言葉を紡ぐ。

 ――深冬ちゃんは後部座席へご案内~♪
 ――安全運転でお願いします。
 ――シートベルトしてね?

 基地でのそんなやり取りから、まだそれほど経っていない筈だが。
「うん。だからノーブレーキ」
 深冬の内心を知ってか知らずか、パウルは事もなげにそう返した。
 確かにブレーキを踏まなければ、急ブレーキにもならない。
「え? もっと速度あげろ? 判りました、御犬様!」
 そして赤いUFOを駆る万鬼も、常にフライハイ、ノーブレーキなテンションの持ち主なわけで。
「万鬼くん、やるぅ! 負けてられねぇな!」
 抜かれれば、パウルも黙ってはいられずに蒼き光線を放ちながら、『Glanz』を加速させるわけで。
「……あれは……深冬は、大丈夫なのだろうか」
 残る赤と蒼の軌跡が気にはなっても、別々の機体を操縦している今の状況では姿見にもどうしようもないわけで。
「まあ、大丈夫だろう。速さ比べも、直に終わる」
 そう。ただUFOで飛ぶ空を楽しみに来たのではない。
 目的は戦いだ。

「――なんだ、あの大きさは」
 見えた20mを超えるセミに、姿見が驚いた様に呟き機体を減速させる。
「いや大きさよりももね。在れ喧しくないです?」
 同じくUFOを減速しながら、万鬼が思わず声を漏らしていた。
 スンチャカジャンジャカトトトタタラララーッチャンッ!
 ミーンミンミーミミミミーン!
「五月蠅いって感じだと蠅の字が入るんですけど、あれ蠅じゃなくて蝉なんですね。嗚呼あゝもう!」
 風情もへったくれもないドラムの音と蝉の声が、万鬼を苛立たせる。
 これでもドラムセットは半壊していて、セミドラマーも脚を2本失っていて、随分マシになったのだが。
 そんな2人のUFOの間を、白銀の機体が走り抜けた。
 操縦席のパウルは慣れたハンドル捌きで『Glanz』の機体を傾け、スライディングする様に斜めに滑り込んで止まってセミドラマーの注意を引く。
「よっと。アンタが超話題のセミドラマー?」
 これまた慣れた様子で体重をかけて『Glanz』の向きを戻すと、パウルはハンドマイク『Herz』を手にセミドラマーに話しかけた。
「…………」
 その後部座席では、深冬が乱れまくった髪もそのままに、凄まじい勢いで電子キーボードを叩いていた。
 眼鏡型ゴーグルの電脳世界を展開。
 小鳥型ドローン機械鳥、起動。
「噂以上にビッグじゃん!」
『……。ドウモ』
 何故か成立してるっぽいパウルとセミドラマーの会話を聞きながら、深冬はエレクトロレギオンで、機械鳥を増やして周囲の空へと放っていく。
 空間情報掌握――完了。
「いつでもいけます」
「よし! 対バン勝負と行こうぜ。――Bring the beat!」
 前の背中を突いて深冬が小声で伝えれば、ビートを流せ、とパウルがセミドラマーに言い放つ。
「まずは俺から――なぁんてな?」
 ライムを刻むと見せかけて、パウルは『Glanz』のギアをバックに入れた。
 急発進でセミドラマーから離れる白銀の機体と入れ替わりに、2基のUFOが飛び込んでくる。

「初見では驚かされたが――倒してしまえば同じ事だな」
『三条さん』
 操縦桿を倒す姿見の耳に、機械越しの深冬の声が届く。
『スタンドのフレームの中の強い部分に、機械鳥を止まらせてあります』
「了解した。後は俺がやる」
 深冬の声にそう返して、姿見はUFOの向きを変えた。機首を向けたのは、セミドラマーのやや横手。
 未だ残っている腕が、無事なシンバルに届いて叩くその瞬間、姿見の乗ったUFOからフック付きワイヤーが撃ち出された。
 射出と同時に機体を急上昇させて、姿見はフックをシンバルにかけ、セミの腕をワイヤーでシンバルにをまとめる様に絡め取った。
「あれか」
 更に続けて、姿見が鋼糸も撃ち出す。スタンドの中で深冬の機械鳥が止まっているポイントに引っ掛かりつつ、セミの残る脚にも絡みつく様に。
『ミッ!? ミミッ!?』
 セミドラマーが気づいた時にはもう遅い。
 姿見は半壊したドラムセットを地形に見立てて利用して、セミを罠に絡め取った。
 既に2本の脚を失っているセミドラマーでは、これではドラムをほとんど叩けない。

『ミ――ミーンミンッミンッミーンミミミンッ!』
 だが、セミであることは健在だ。
 ドラムの分をカバーしようと言うのか、狂った様にセミドラマーが鳴き始める。
「姿見の旦那が腕縛ったってのに、まだこんなに五月蝿く出来るとは。大した往生際の悪さじゃあないですか!」
 赤い機体を回り込ませる万鬼の口元には、小さな笑みが浮かんでいた。
 上等だ。
 言葉は、声。即ち音。語りの勝負は、万鬼の土俵。
「あっしの語りとお前さんの騒音、何方が勝るか勝負しやしょうね!」
『紗我楽さん。その角度なら、影が見える筈です』
 機械越しの深冬の声を聞きながら、万鬼の腕がハッチを押し開ける。
 黒い犬のような何かが、万鬼の足元から飛び出した。
「此れより語るは、鬼と共存する地獄を宿した番犬の御噺――千破夜」
 その話は、今しがた飛び出した獣と同じ。
 犬に見えたそれは、万鬼の語りで本性を現す。
「御犬様、巨大化だろうが動き止めて下さいよ!」
 獄炎纏いし冥府の獣は万鬼の声に促され、ドラムセットに映ったセミドラマーの影の中へと飛び込んだ。
 通常、空に影は出来ない。映すものが何もないからだ。
 ましてや宇宙に近い空。影を映す雲すらほとんどない。
 だから――姿見が先に動いたのだ。セミドラマーがドラムセットから離れないよう、位置を固定するために。
 千破夜が影に潜り込んだ直後、セミドラマーの鳴き声がピタリと止まる。
「おやおや、もう鳴けませんかい? けど、あっしは派手にやらせてもらいまさぁ!」
 万鬼が灰園を振るい、今はセミのみを焼き尽くす豪炎を放つ。
「さぁこの隙ですよパウルの旦那!」
 万鬼が呼びかけた時には、パウルは既に『Glanz』のギアを上げていた。何もない空中で、白銀の機体が跳ね上がる。
 セミドラマーの頭上を取ったパウルの前に、ずらりと並ぶ最後のセミロックバンド。
「深冬ちゃん!」
「ではまた後ほど」
 『Glanz』の後部座席を蹴って、深冬が小竜を抱えて空に跳び上がる。
「遠慮はいらねぇ。お前の生(ビート)、オレ達に寄越せ!」
 1人残ったパウルに、セミロックバンド達が飛びかかった。トランペットやギターは音を衝撃として、マラカスは直接ぶっ叩いて。
「テメェらの悪意、絶望、罪、その総て――頂いたぜ」
 それらを避けようともせずに受け止めたパウルの身体から、ぬるりと伸びる蒼いタコの触手。その先端にあるのは、固定砲台『Krake』。
 Sympathy for the Devil――アクマヲアワレムウタ。
 セミロックバンド達の攻撃の威力を自身の砲撃の火力と変える業。
 四砲から放たれた光は、セミロックバンドを蹴散らし、縛られていないセミドラマーの脚を吹っ飛ばし、豪炎が燃え広がる胴を撃ち抜いた。
 セミドラマーの巨体が、ぐらりと倒れ込む。
 そこに、小さな影が生まれた。
「あっしの焔は蝉しか燃やしませんから!」
 空に向かって、万鬼が声を上げる。
 影は徐々に大きさを増し――トスッ。
 そんな軽い音を立てて、上空から飛び降りてきた深冬が、小竜の燈が姿を変えた槍に炎を纏わせ、セミドラマーの眉間に突き立ていた。
「燈の炎の味はどうですか?」
 深冬の問いに、セミドラマーは答えない。
 そして深冬も答えを待たず、セミドラマーの上から飛び降りて――。
「おかえりー」
 パウルが滑り込ませた『Glanz』の後部座席に、深冬がふわりと舞い降りる。
「姿見くん、いいぜぇ!」
 『Glanz』を旋回させ、セミドラマーから離れたパウルの声に、姿見がUFOの中で無言で親指を立てる。
「爆ぜろ劫火!」
 セミドラマーに絡みついた、鋼糸とワイヤー。そこに姿見が予め巻きつけて置いた大爆炎符が、爆炎起動の号で一斉に爆炎を上げた。
 万鬼の豪炎。
 深冬の燈炎。
 姿見の爆炎。
 巨大なセミドラマーの身体を、三種の炎が焼いていく。
 何度も己の寿命を削りながら多くの猟兵の攻撃を受け続け、パウルによって腹に風穴を開けられたセミドラマーに、これ以上耐える力は残っていなかった。
 万鬼の千破夜が影から離れても、もうその翅が動くことはなく。
 やがて炎が全身に回り。
 巨大化セミドラマーは――此処に燃え尽きた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月17日


挿絵イラスト