3
アースクライシス2019⑦~待ち受ける邪剣

#ヒーローズアース #戦争 #アースクライシス2019 #ダストブロンクス

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#ヒーローズアース
🔒
#戦争
🔒
#アースクライシス2019
🔒
#ダストブロンクス


0




●汚液の宮
 街の淀みがすべて凝集したかのような悪臭が、鼻をつく。
 ニューヨーク地下にひろがる巨大迷宮――ダストブロンクスは、巡る汚水によって不衛生極まりない環境となっている。外部の者が足を踏み入れれば、その劣悪な環境に体より先に心が参ってしまうことだろう。
 だが今、その地下世界に、上から攻めこんでくる者がある。
 ダストブロンクスの支配者――『肥溜めの王』スカムキングからそう告げられて、1体のオブリビオンは外敵を待ち構えていた。
「この地を侵すというのなら、受けて立とう」
 流れ落ちて跳ねる廃液を、甲虫のごとく煌めく外殻で弾きながら、オブリビオンはまるで刃を交える瞬間を待ちわびるように呟いた。
 その手には一振りの剣。
 オブリビオンが手慰みにそれを振るうと、刀身から放たれた波動が迷宮の壁を砕き、おぞましい黒飛蝗たちが穿たれた一面からわらわらと溢れ出る。
 あっという間に、周囲は蠢く黒に覆われていた。
「猟兵の血肉、すべてこいつらの餌としてくれよう」
 虫のそれのような歪な指で、オブリビオンは結晶の剣を撫でるのだった。

●グリモアベースにて
「ニューヨークの地下にある汚濁の迷宮、ダストブロンクスに向かってもらいたい」
 要請に応えて集ってくれた猟兵たちへ、プルート・アイスマインドはそう依頼した。
 ニューヨークの動乱を防いだ勢いのまま、逆にジェネシス・エイトのひとり『スカムキング』の本拠地に攻め入る――作戦内容を告げると、プルートは侵入対象であるダストブロンクス上層の情景を空間に映し出す。
 地下にひろがる広大な下水道は言葉どおり、まるで複雑に入り組んだ迷宮だ。絶え間なく流入する汚水がいくつもの水路を作り、空間は悪臭で満ちている。
「そこにスカムキングは配下のオブリビオンを配置して、こちらを迎え撃とうとしている。おまえたちにはこのオブリビオンを倒してもらいたい」
 スカムキングが用意したオブリビオンには、ある特性があるという。
 それは汚染水を浴びると瞬時に傷を回復するというものだ。
「ダストブロンクスは完全に向こうのホーム、汚水はむしろ奴らに力を与える。下水道内にはそこかしこに汚水の排出口があるから、そこにオブリビオンを近づけては不利を強いられることは間違いない」
 易々と回復させてしまっては、敵を倒すことは困難を極める。
 だから、今回の戦いではオブリビオンを汚染水が排出される場所に近づけないことが何より大事なことなのだと、プルートは強調した。
「敵をうまく汚水から引き離して戦うことができれば、おのずと勝利は近づくはずだ。ダストブロンクスを陥落させるための最初の一手、必ず成功させてくれ」
 プルートのグリモアが輝き、猟兵たちを淡い光に取りこむ。
 目指すはニューヨーク地下。
 汚れに満ちた下水迷宮へと、猟兵たちは転移していった。


星垣えん
 下水道って、ロマンですよね。
 というわけで星垣えんでございます。
 今回はニューヨークの地下下水道『ダストブロンクス』の上層に攻め入るシナリオです。
 猟兵たちを待ち構えるスカムキング配下を撃破して下さい。

 本シナリオには、プレイングボーナスを得る特別の方法があります。
 今回は『敵を汚染水から引き離す』ことができれば、戦闘および判定が有利に転びます。
 敵オブリビオンは汚染水を浴びれば回復してしまうので、力業で引き離すなり、策を講じるなり、いろいろアイディアを試してみて下さい。

 それでは、皆様のプレイング、お待ちしております!
95




第1章 ボス戦 『マガツアレス』

POW   :    王邪ノ風
【結晶剣『アレスフィア』から放たれる念動波】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を汚して悍ましい黒色飛蝗の眷属を解き放ち】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
SPD   :    放ツ狂風
【内蔵された変異念動増幅器『賢王の宝石』】から【都合の悪い事象を覆す冒涜的な波動】を放ち、【邪神『第七の飛蝗』の名状し難い恐怖】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    禍ツ竜巻
全身を【触れると意識を乗っ取られる邪神の気配】で覆い、自身の【星すら震わす念動力と卓越した宇宙剣技】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。

イラスト:鋼鉄ヤロウ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠虻須・志郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルエリラ・ルエラ
【アドリブ改変・連携歓迎】
うーん、やっぱり下水は慣れない
とりあえず接敵前に周辺の排出口をチェックして覚えておこう
回復ポイントの場所を抑えておけばこっちが有利だからね
早く帰ってお風呂入って芋煮食べよう

というわけで、周辺の排出口チェックが終わったら敵に仕掛けるよ
ブーツに魔力を込めて『ダッシュ』。壁を蹴って天井を蹴って頭上から『暗殺』者のようにナイフで強襲
そのまま攻撃に周辺の壁や天井を利用しつつ、敵が反撃しようとしたら距離をとって弓で射掛けるよ
ある程度ダメージを負わせて敵に回復しようとする素振りがあれば、排出口に先回りするか、そのまま追撃して【ゼクス】で動きを封じてナイフでグサっと仕留めるよ


バーン・マーディ
貴様らには貴様らの正義があるのだろう

だが…貴様らが我らを弾圧し
蹂躙し
滅ぼすというのであれば
貴様ら自身が滅ぼされる事をも覚悟せよ

【戦闘知識】で周囲の汚染水の状況の把握

【オーラ防御】展開

闘いながらも常に敵の位置を捕捉し
汚染水から離れた位置で一気に距離を詰めて猛攻

敵の攻撃は【武器受け】で受け止めダメージを減らしながら
【カウンター・怪力・二回攻撃・生命力吸収・吸血】で反撃しながらその場から封じる
当然押し負けてダメージが蓄積していくだろう
ダメージが深まった時点でユベコ発動
何、穢れや黒を纏いて力を成すのは貴様らだけの専売特許ではなかったという話だ
最も…我が身を癒すは…汚染水ではなく…貴様の血だ(怒濤の反撃


黒木・摩那
ニューヨークの下水道と言ったら、巨大ワニが定番だと思ってたけど、
オブリビオンまでいるなんて。
都会の下水道は何でもありですかね。

敵は汚水でダメージを回復するということ。
ならば、敵より早く汚染水の出る場所を予測することで、
回復を防ぎましょう。

スマートグラスのセンサーで水の音や振動を観測することで、汚染水の動きを見ます。
そして、水が来るとわかったら、ヨーヨーで牽制したり、ワイヤーを絡めて、UC【サイキックブラスト】で拘束します【先制攻撃】【なぎ払い】【衝撃波】。

防御はスマートグラスのAIと【第六感】で対応、飛び道具は【念動力】で軌道を逸らします。


雨咲・ケイ
汚濁の迷宮……まさしく大都会の裏の顔のようですね。
この不浄の根源があなた方であるならば断たねばなりません。
お相手願いますよ。

【SPD】で行動します。

初手で【退魔集氣法】を使用し、衝撃波による
【2回攻撃】で攻めていきます。
戦いながら汚水の排出口の位置を確認し、
排出口の少ない地点に移動していきましょう。
敵が排出口に逃げようとする際は、
【スナイパー】でアリエルの盾を【投擲】して阻止。
回避されても盾を輝かせて【目潰し】を狙い、
怯んだら高速移動で接近して【シールドバッシュ】を
仕掛けて排出口から引き離します。

敵の攻撃は【オーラ防御】とスノーホワイトの薔薇の香気で
凌ぎましょう。

アドリブ歓迎・共闘歓迎です。



 淀んだ水路からは悪臭が匂いたち、足裏からは地面のぬめった感触が伝わってくる。
 ダストブロンクスの劣悪な環境を見回した雨咲・ケイと黒木・摩那は、ある意味で感心していた。
「……まさしく大都会の裏の顔のようですね」
「ニューヨークの下水道と言ったら巨大ワニが定番だと思ってたけど、オブリビオンまでいるなんてね」
 言葉を交わす二人。だがそれ以上、何かを言うことはなかった。
 猟兵たちの前にはもうすでに、このダストブロンクス上層に待ち構えていたオブリビオン『マガツアレス』が立ちはだかっていたからである。
「よくぞ来たな。その命、ここに置いてゆけ」
 携えた刀をゆらりと振るマガツアレス。
 対して、バーン・マーディもまた暗く重々しい闘気を鎧のように纏いながら、マガツアレスの眼前に立つ。
「貴様らには貴様らの正義があるのだろう。だが……貴様らが我らを弾圧し、蹂躙し、滅ぼすというのであれば、貴様ら自身が滅ぼされる事をも覚悟せよ」
「私を滅ぼせる気か、猟兵」
「無論」
 強く地を蹴りだし、猛然と吶喊するバーン。
 禍々しい気を放つ魔剣を振るい、マガツアレスを攻撃の暇も与えず攻め立てた。剣撃を打ち合って防ぐマガツアレスがその勢いのまま後退してゆく。
「くっ、なかなかやる!」
「この不浄の根源があなた方であるならば断たねばなりません。お相手願いますよ」
 加勢する形で突っこんできたのはケイだ。
 全身に破邪の闘氣を纏わせたケイは拳を振りぬく。練り上げられた闘氣は二発の衝撃波となって疾風のように走り、後退するマガツアレスをさらに弾き飛ばした。
 汚染水から遠ざけるためである。
 バーンもケイも、汚染水の出どころにはだいたい見当をつけていた。さらに二人の後方では摩那がスマートグラスのセンサーを駆使して汚染水の動きを観測している。彼女が手振りで示す方向を確認してバーンとケイは猛攻を続ける。
 だがそれはマガツアレスも察している。
「思うままには……させん!」
「ぬうっ!?」
「しまっ……た……!?」
 攻撃と攻撃の間隙を突いたマガツアレスが、バーンの魔剣を弾き返して反撃の一刀を叩きこみ、そうさせじと仕掛けてきていたケイを悪しき波動の力が襲った。
 猛攻の勢いが止まる。
 魔剣でかろうじて受けたとはいえ、バーンの体には鮮血を流す傷が刻まれている。ケイも形容しがたい恐怖に体が言うことを聞かず、追撃をかけられない。
「さすがはここに踏み入るだけはある。だがそう簡単に私を止めることはできんぞ」
「一筋縄ではいきませんか……」
「貴様もやはり手練というわけだな……」
「次はこちらからいかせてもらおう!」
 反攻。マガツアレスがケイたちへ一歩踏み込む。
 ――が、その出足を挫くように、頭上から気の抜けた声が降ってきた。
「じゃーん。かっこよく私、参上」
「!!」
 マガツアレスが直上を見上げると、青い長髪を踊らせる少女――ルエリラ・ルエラが壁面を駆け下りて、高速で接近してきていた。
 迎撃に剣を振るマガツアレス。だがルエリラは壁から壁へまるでピンボールのように移動して狙いを定めさせない。ブーツに魔力をこめて天井を蹴ると、マガツアレスの頭上からハンティングナイフを振りぬき、硬質な皮膚を斬りつけた。
「ぐっ……!」
「パパッと終わらせるよ。早く帰ってお風呂入って芋煮食べたいからね」
 着地したルエリラが、返す刀でマガツアレスの首元へナイフを突き上げる。
 だがマガツアレスは素早くのけ反ってナイフを回避。ルエリラを蹴り飛ばすと、バーンたちが体勢を立て直す前に駆けだした。
「すぐに貴様を斬ってやりたいが……まずは傷の治癒が先決よ!」
 目指す先にあるのは――今まさに汚れた排水を流し落とす排出口だ。
 汚水さえ浴びればまた万全の状態で猟兵たちの相手をすることができる。そうなれば敗北などありはしない。そう信じるからこその全力疾走だった。
 しかし思い通りになど、運ばない。
 マガツアレスの行く手を、一条の軌跡が遮った。
 小さな盾だ。それが物凄い勢いでマガツアレスの前を横切り、床を抉って砕片を舞わせながら止まる。
「……何だこれは」
 飛来物に反射的に足を止めたマガツアレスが、訝しんで盾を見つめる。
 それこそ――盾を投げこんだケイの思う壺であった。
「私の自慢の盾。その輝きをご覧に入れます」
「ぐあっ!?」
 凛然としたケイの言葉に呼応して、盾『アリエル』が眩い輝きを放つ。
 その光度たるや一瞬で観測者の視界を奪うほどであり、直視したマガツアレスは思わず手で眼を覆って後退してしまっていた。
 敵の怯みを見て取ったルエリラが、摩那と視線を交わす。
「今のうちに絡めとっちゃおう」
「そうですね。あちこち動き回られては面倒です」
 視覚を封じられ狼狽している敵へ、ルエリラは無数の矢を撃ちこんだ。魔力で紡がれた強力な糸が繋がった矢はマガツアレスの足元を掠め、幾重にも巻きついて足の自由を奪う。
 さらに、摩那の投じたヨーヨーが胴体の周りで踊る。ぐるぐると周回したヨーヨーのワイヤーは見事にマガツアレスの上体を括りつけ、身じろぎひとつも許さない。
「!? これは……私を捕縛しようというのか!?」
「ええ。シャワーなんて浴びさせません。代わりに電流をプレゼントしますね」
「ぐおおおおおおっ!?」
 摩那の掌からヨーヨーのワイヤーを伝い、高圧電流がマガツアレスの体を奔る。激痛とともに皮膚が焦げ、芯まで突き抜けた衝撃に体の力が入らない。
 痺れたマガツアレスは痙攣しながら、地面に力なく倒れこんだ。
「私を絡め、捕らえるとは……」
「そう驚くことでもあるまい」
 横倒しになったマガツアレスの目の前にゆらりと現れたのは、バーンだ。
 攻めかかったときに受けた反撃の傷は、当然ながら未だ癒えてはいない。その肉体はやはり流れ出る血で痛々しく濡れている。ダメージは大きい。
 だがだからこそ、バーンは立つ。
 その全身を、妖しき光沢を放つ漆黒の粘液で覆いながら。
「貴様……その液体は……!?」
「なに。穢れや黒を纏いて力を成すのは、貴様らだけの専売特許ではないということだ」
 厳かに言を突きつけて、バーンは魔剣を叩き下ろした。大きな刀身はマガツアレスの硬い体を易々と斬りつけて、噴きあがった盛大な血飛沫がバーンの体に降りかかる。
「がッ……ああああッ!!?」
「もっとも……我が身を癒すは汚染水ではなく……貴様の血だがな」
 纏いし黒液を返り血で潤しながら、バーンはやはり重厚に、苦痛に悶える敵へ告げるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
●防具改造で湿気や防水対策を施し侵入
このような劣悪な環境こそ私のような種族が活躍の時
地下の迷宮への道、切り拓かせて頂きます

センサーと●暗視による●情報収集で排出口の位置を●見切り、そこへ格納銃器でのUCを●スナイパー射撃で撃ち込みます
凍結した薬剤により蓋をするというわけです

蓋の破壊はさせません
スラスターでの●スライディングで蓋の前に急行し念動波を●盾受けで●かばいます
自由度の高い頭部と肩部格納銃器で飛蝗の眷属を●武器落とししつつ接近
銃弾を避けつつ後退し波動を放たんと剣を振ろうとしたタイミングでワイヤーアンカーで●だまし討ち
●ロープワークで拘束し引き寄せUCを浴びせた箇所に●怪力で斬りつけます


鈴木・志乃
だあらさ、あたし本当もうこういう敵本当嫌いなんだってよ……
お前か私のバカンスを潰したのはーーーーッッ!!

可能なら敵眼前でUC発動【目潰し】
念動力で周囲の器物を巻き上げ、第六感で予測した汚染水の噴出穴を片っ端から塞いで回る
物が足りないなら鎧砕きも出来る魔改造ピコハンで壁ぶっ叩いて埋める
もしくは割り入り全力魔法衝撃波で敵を吹っ飛ばし回復妨害

常にオーラ防御展開
第六感攻撃見切り
バッタは爆竹か適当な紙に炎付けて念動力で操作し焼き払う
自身の速度で凪ぎ払うのもありかな

少しだけ穴を残しピアノ線で捕縛罠を張る
光の鎖で足払い等で隙が出来たらピコハンで鎧か関節の継ぎ目狙ってぶっ叩く
全力魔法衝撃波でフィニッシュ



「だからさ、あたし本当もうこういう敵嫌いなんだってよ……お前か私のバカンスを潰したのはーーーーッッ!!」
 唐突。
 剥き出しの嫌悪感を掲げて突っこんできたのは、鈴木・志乃だった。
 その手には何もない。武器も何も。まったくの素手。
 だが漲るオーラが怒気に満ちた声と相まって、マガツアレスは本能的な危機感を覚えていた。
「くっ……おおお!!」
 胴や脚に絡みつく拘束具を力尽くで破り去り、立ち上がるマガツアレス。
 猛然と突っ走ってくる志乃を退けるべく、結晶剣が振りぬかれる。
 疾走する念動波。正確な狙いで志乃に迫る。
「そんなものが当たるかーッ!」
 駆ける足を止めないまま、上体を半身にする志乃。
 軌道を完全に見切ったゆえの最小の動きで念動波をかわすと、手元に取り出した紙片に着火。その炎を念動力で拡大して地面から湧き出す黒飛蝗たちを焼き払った。
「私の眷属を……!」
「お前もバッタも見たくないんだ! 早く消えろーッ!!」
「くおッ!?」
 マガツアレスの眼前に迫るや否や、志乃の体が発光する。眩い光の思念体となった志乃の輝きは凄まじく、マガツアレスの視界はまたもや真っ白に染まってしまう。
 敵の視覚を封じると、志乃は念動力を全開で発動。
 辺りにある石やら瓦礫やらを巻き上げて、目につく汚水の排出口に詰めこんで次々と塞いでいった。
「片っ端から潰してやる!」
「き、貴様! もしや汚水を……! させるか!!」
 朧気に霞む視界の中で、マガツアレスはうっすらと志乃の行動を把握する。すべて塞がれてしまう前に回復を果たそうと、敵は志乃の念動力が届いていない排出口へと急行した。
 しかし、あと少しで汚水の噴出する場所へと到達するというところで――どこかから轟然と銃火が閃き、超速の弾が排出口へと撃ちこまれた。
 すると、どうだ。
 マガツアレスの目の前で、流れ出る汚染水がみるみる凍結してゆく!
 汚染水は瞬く間に硬い氷柱のように変質し、とてもではないが浴びることなどできなくなってしまった。
 超低温化薬剤封入弾頭(フローズン・バレット)――弾に仕込んだ凍結薬剤でマガツアレスの希望を絶ったトリテレイア・ゼロナインは、スラスターを噴いて排出口の前に滞空する。
「回復を許すわけにはいきませんので、蓋をさせて頂きましたよ」
「あと少しというところで……貴様ァ!!」
 怒りを露にしたマガツアレスが、結晶剣の念動波を中空のトリテレイアへ飛ばす。
 当たれば良し。当たらずとも凍結した排出口を撃ち、汚水が溢れれば良し。
 敵がそう考えるだろうことは容易に予測できたトリテレイアは、予め構えておいたシールドを前方に突き出した。そのシールドで念動波を防ぎながら、頭部と肩部に格納された銃器を露出させ、雨あられと機銃を撃ちこむ。
 容赦なく迫る弾雨。マガツアレスは後ろへ跳びすさり、回避することを選んだ。
 だがそれも、トリテレイアの掌の上の出来事に過ぎない。
「読み通りです」
「なっ!?」
 地を蹴って中空に浮いたマガツアレスの体を、トリテレイアの体から射出されたワイヤーアンカーが捉える。そのままアンカーを引き戻して敵の体を引き寄せると、白銀の騎士は『義護剣ブリッジェシー』で豪快に斬りつけた。
「ぐが……ッ!?」
「地下の迷宮への道、切り拓かせて頂きます」
「バカンスを……返せーーーッ!!!」
 斬撃をくらい、よろめくマガツアレスへ――ピコピコハンマー持った志乃が駆け寄る。
 振りかぶったピコハンは、ぴこっと愛らしい音を立ててマガツアレスの膝関節を叩いた。
 音だけ聞けば、何てことはない。
 児戯に等しい打撃かもしれない。
 だが――。
「がはッ…………!!?」
 まるで車にでも激突されたかのように、マガツアレスの体は宙に空転していた。
 敵対者には、2tハンマー。
 魔改造された志乃のハンマーの一撃は、オブリビオンの体をはるか彼方へと吹っ飛ばしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイシス・リデル
他の人にはひどいところ、かも知れないけど
わたしは大丈夫、だよ
きたないのも、くさいのも
わたしは慣れてるもん、ね

汚染水が噴き出るところを探して、進んでく、ね
見つけたら全部、不浄の器の力で、わたしの中に汚れを取り込んで
敵が回復できないように、きれいな水にお【掃除】しちゃうから
わたしには【毒耐性】があるから大丈夫、だよ

そうやって取り込んだ……「食べた」汚染水の毒で
【暴食者】を使って、わたしのからだをおっきく、つよくして戦うね
それにあなたが地形を汚すなら、それもわたしの中に取り込んじゃう、よ
普通の汚れとは、違うのかも知れない、けど
汚れは全部、わたしの中に棄てちゃう、から


弘原海・静寂
へっへっへ、こういう暗くてジメジメしたところは、深海洞穴を思い出して懐かしいな。
ブラックスモーカーとは臭さの種類がちょいと違うけどよ……

んで、あのきったねえ水から奴らを追い出せばいいんだよな?
だったら、俺が【擬態迷彩】で水の中からこっそり近づいて、群がってるところに【鯰雷撃】を盛大にぶちかましてやるよ!
水中じゃあ電気を避けられねえんだから、奴ら慌てて飛び出してくるに違いねえぜ!

あのグソクムシみたいにかわいくて、おいしそうな眷属共でこっちの気を引こうなんて卑怯な奴にゃ、水中からの奇襲がお似合いだ。
眷属さえいなくなりゃあ、マガツアレスの剣と俺のハサミ、どっちが強えか勝負と行こうじゃねえか!



「くっ……ハァ、ハァ……」
 ゆらゆらと乱れた足取りで、マガツアレスは下水道を彷徨していた。
 その体には陥没、裂傷が数え切れぬほど刻まれている。猟兵たちの巧みな攻撃、回復を許さぬ立ち回りによってマガツアレスのダメージは危険水域に達しているのだった。
 ゆえに、動きつづける。
 その身を癒やすことができる汚染水を求めて。
「……あったか」
 下水道の薄暗い一角で、マガツアレスは足を止めた。
 彼が見下ろす先には、大口を覗かせる汚水の排出口がある。黒い孔の向こうからは地鳴りのような重い音が響いてきて、やがて数秒もしないうちに大量の汚水が噴き出した。
「フハハ、これだ。これさえあれば猟兵など――」
 両腕をひろげて汚れたシャワーを浴びるマガツアレス。
 ……だが、おかしかった。
「……なんだこれは!? 汚水ではないぞ!」
 体を濡らす水は、真水のように澄んでいた。自身がいる階層に綺麗な水が流れるところなどないはずなのに、自分が浴びている水は汚れのひとつすらなかった。
「なぜ……」
「へへ。それはね、わたしがきれいな水にお掃除しちゃったから、だよ」
「!?」
 マガツアレスが、排出口から聞こえた声に顔を振り向ける。
 すると排出口の脇に汚泥の塊――否、アイシス・リデルが張りついていた。ブラックタールの体の腕を流れる水に浸して、彼女は聖者としての浄化体質でもって汚染水を浄化していたのだ。
「馬鹿な……汚水を受けて平気でいられるはずが……」
「わたしは大丈夫、だよ。きたないのも、くさいのも、わたしは慣れてるもん、ね」
 アイシスがへらへらと笑う。
 アルダワの下水道を住処とするブラックタールにとっては、ダストブロンクスの環境はまるで苦ではなかった。むしろ少し心が落ち着くぐらいである。
 そして、それはアイシスだけではなかった。
 下水道を流れる水路の中で――チカッ、と光が爆ぜる。
「グソクムシみたいにかわいくて、おいしそうな眷属共でこっちの気を引こうなんて卑怯な奴にゃ、こいつがお似合いだ!」
「ぐあああああああああっ!!!?」
 水流から飛沫をあげて飛び出してきた大きなバイオモンスターが、全身から高圧電流を放射してマガツアレスの体を感電させた。水濡れした体でその電撃を防げるわけもなく、マガツアレスは膝を折って地に手をつく。
 崩れ落ちた敵を悠々と見下ろして――水に潜んで密かに近づいていた弘原海・静寂はぺたぺたと自分の頭を撫でた。
「へっへっへ、こういう暗くてジメジメしたところは、深海洞穴を思い出して懐かしいな」
「静寂さんも、変なところで育ったん、だね」
「まあな。っつってもココの臭さはブラックスモーカーの臭さとは種類がちょいと違うけどよ……」
 下水道の風景を眺めながら、言葉を交わすアイシスと静寂。
 が、呑気してる暇などはなかった。
 体に残る痺れで動きづらそうにしながらも、マガツアレスが立ち上がっていたからだ。
「貴様が水を浄化するというのなら……貴様を殺せば再び汚れるということだ!」
 アイシスへ向け、結晶剣を振り下ろすマガツアレス。
 念動波はアイシスの体にクリーンヒットする――が、当のアイシスは平然としていた。
 平然と、3メートルを超えるほど巨大化した体躯で念動波を受け止めていた。
「貴様……膨れて……!?」
「汚染水の毒を、いっぱい食べたからね。汚れを取りこんだら、取りこんだ分だけ、わたしはおっきくつよくなるよ」
「がッ!?」
 横薙ぎにしたアイシスの腕が、マガツアレスを打ち払う。
 吹っ飛んだ体は壁に激突し、背を痛打したオブリビオンは一瞬、気を失った。
 その隙に、一気に間合いまで詰め寄る静寂。
「さあ、どっちが強えか勝負と行こうじゃねえか!」
「……抜かせ。比べるまでもない!」
 静寂の手である巨大なカニバサミ『バーガシザー』と、マガツアレスが繰り出した結晶剣の斬撃がすれ違う。
 神速の剣技は、眼で捉えることすら難しい早業だった。
 だが、その体を裂かれて地に崩れたのは、マガツアレスのほうだった。
「どうやら俺のほうが、いいオトコだったみたいだな」
「私を……上回るか……!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「発想を少し変えて、汚染水を凍らせるのはどうかしら」
■作戦
弟と連携して汚染水を凍結し、氷壁でマガツアレスを囲って汚染水から隔離する
■行動
「さすがにこれは厳しいわね」
下水道内の臭気に顔しかめながら、マガツアレスの元へ。
「時間をかけるだけ不利になるから、速攻で仕掛けるわよ」
挨拶もそこそこに[先制攻撃]で【フィンブルの冬】を発動
周囲の汚染水を凍らせながら攻撃し、かつマガツアレスの視界を悪くする
「今のうちにお願い」
弟に氷の迷宮を作り出してもらい、自分たちも迷宮内へ。
通路で待ち伏せし、弟と連携して【ロンギヌスの槍】を発動しマガツアレスを仕留める。


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(連携・アドリブ可)
「それだったら、氷の迷宮で覆っちゃうのはどうかな?」
フィオ姉ちゃんとマガツアレスを汚染水に触れさせないようしてやっつけるんだ
【行動】()内は技能
「うぎゃー、臭くて鼻が曲がっちゃうよー」
ちょっと泣きたい気分だけど、涙目で頑張るよ
フィオ姉ちゃんの吹雪の攻撃の隙に、(高速詠唱)でラビリント・ネプトゥノを発動。
地下下水道の中だと迷宮効果は薄いけど、汚染水から隔離する作戦だよ。
「ボクの氷の壁は簡単に壊せないよ。これなら五分と五分だよ」
氷の通路でマガツアレスと対峙したら、フィオ姉ちゃんとタイミングばっちりのロンギヌスの槍を
(高速詠唱)で叩き込むんだ



 暗く、湿り、冷たい。
 そして何より信じられぬ悪臭に満ち満ちたダストブロンクスを、フォルセティ・ソルレスティアとフィオリナ・ソルレスティアの姉弟は駆け抜ける。
「うぎゃー、臭くて鼻が曲がっちゃうよー」
「さすがにこれは厳しいわね」
 涙目になるフォルセティの横で、鼻と口元を押さえて顔をしかめるフィオリナ。
 下水道の腐った臭気は二人には堪えるものだった。というか平気にしているほうがおかしいわけであり、こうして文句を言うほうが当然だけど普通なわけである。
 ウィザードの姉弟は全力で駆けた。
 早く仕事を済ませて、この場を脱したい。そう欲するからこその全力で。
「フィオ姉ちゃん、あそこ!」
「いたわね。時間をかけるだけ不利になるから、速攻で仕掛けるわよ」
「新手、か……!」
 フォルセティが、声をあげて指を差す。そこに今にも倒れんばかりに疲弊したマガツアレスの姿を認めたフィオリナはユーベルコードを発動した。
 息をのむような――白銀のドレス。
 光り輝くそれを身に纏った姿に変身したフィオリナは、極限まで魔力を高め、周辺を覆い尽くすほどの氷嵐を生み出す。雪の竜巻はすべての水路を凍らせ、水を伝って排出口まで凍結させてしまう。
「氷……また汚水を固め、封じようというのか!」
「あら、もう経験済み? なら遠慮しなくていいわね」
「戯言を……私に手加減するつもりだったとでも言うか!」
 氷嵐を強め、白雪を巻き上げて攻撃を仕掛けるフィオリナ。対するマガツアレスは巨大な念動力で風を弱め、フィオリナへと飛びこんで剣の連撃を繰り出す。
 氷で剣技を受け止める音。
 それを白い視界の向こうに聞きながら――フォルセティは詠唱を行う。
「フィオ姉ちゃんが時間を稼いでくれてる隙に!」
 瞑目したフォルセティの舌が、回る、回る。
「凍結を抱きし冷雪の英霊よ。彼の者に封縛の柩を捧げよ」
 発する言葉から、魔力が迸る。
 爆発するように拡大した魔力はみるみるその場を覆い尽くし――気づけば白い霧に満ちた氷壁の迷宮が創造されていた。
「これ、は……!?」
 一瞬で氷の迷路に閉ざされたマガツアレスが、氷壁を触って狼狽する。
 ただでさえ汚染水を凍らされ、回復が難しい状況だった。だというのにさらに出口も見えぬ迷路に放り込まれたとあっては、動じぬほうが無理な話だろう。
「どうあっても私を汚水に近づけぬ、か……だが、ならば私もどうあっても汚水に触れさせてもらうぞ!!」
 迷路の道に沿って、マガツアレスが走りだす。
 氷壁は硬く、破壊は難しい。それなら足を使って迷路を抜けるしかないと、オブリビオンは消耗しきった体に鞭打って走りつづけた。
 しかし、罠にはめた側からすれば、それほど予測しやすい行動はない。
「……あれは!」
 氷壁に挟まれた路を疾走していたマガツアレスが、自身の行く先に立つ二つの影を捉えて驚愕した。
 その身に雷の魔力を高めて並び立つフォルセティ姉弟の姿を、捉えて。
「やるわよ。準備はいい?」
「もちろん、フィオ姉ちゃん!」
 二人がともに手をかざせば、その前方に巨大な光槍が創造される。
 ロンギヌスの槍――フィオリナとフォルセティの魔力が合わさり、生み出された槍はただまっすぐに氷壁の路を突き進む。
「ぐが……アアアアアアアアッ!!?」
 逃げ場なき迷路の中ではかわすことも叶わず、マガツアレスの体は一閃。光槍によって見事に貫かれるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

火霧・塔子
UCの【一斉発射】で周囲を炎で囲んで、敵を汚水に近づけないようにします!
この炎は延焼性が高いので狂風で多少消されても炎上は止まりません!
なんなら汚水を蒸発させちゃいます!
燃え盛る炎があればバッタさんも容易には飛び回れないハズです!
それでも群がるバッタさんはレヴォリューションハートで【なぎ払い】ましょう!

私達こそ悪しき王からダストブロンクスを解放する叛逆者だと【鼓舞】して恐怖に立ち向かいます!

敵に隙が出来たら【覚悟】を決めた【捨て身の一撃】でゲバ・ロッドを叩き込みますよ!

さあ、次は肥溜めの王に反ぎゃ……アレ? 科学製品のゴミを燃やしたら変なガスが……
うっ……きゅう)パタリ
(絡み・アドリブ歓迎)


リヴェンティア・モーヴェマーレ
アドリブ、他の方との絡みOKです
ニューヨークって響カッコいいですネ!
何が起こるかわからない地下下水道とかも素敵ですシ!(のんき)
迷子にならないように道しるべなる曲がり角では蛍光塗料を使って歩きましょう

んー…汚染水を浴びると回復してしまうのは少々厄介ですネ…
炎で水を蒸発…は更に悪臭が酷くなって、もし綺麗な水に変わった場合迷惑かかるかもなので…
UCを使用して一旦凍らせてみましょうカ!
すこーし寒くなるかもですガ、悪臭よりはマシかもしれないですし!
流石に凍った汚染水では回復出来ないハズですが、溶けたら回復とされたら厄介なのでそこは気を付けながら攻撃をしかけていきたい気持ち!


ヒルデガルト・アオスライセン
治水機能が活きている分、まだ取り返しがつく場所ですね
汚れの元を断ちましょう

サイバーアイ代わりのイーコアで
周囲の汚染水排水口、敵の速度、潜む黒い蟲の存在の情報収集

敵を狙っているように見せかけて
その実、排水口を目掛けトンネル掘り&怪力で地殻、天井、岩壁を砕いて投擲し、移動と回復先を制限

敵の念動波は決して躱さず、不可視のオーラ防御で耐え
意識外から近寄る黒い蟲は属性攻撃の炎を身体に纏う事で、無力化します
念動波では倒れないと認識させて接近を誘い、またこちらからも接近し

結晶剣『アレスフィア』を先祖帰りで掴み取ってへし折り
そのまま相手へ突き刺して移動を封じます
※諸々ご自由に



「猟兵、猟兵め……私をここまで追い詰めるとは……!」
 胸に大穴を開けたマガツアレスが、下水路を覚束ない足取りで歩く。
 死力を尽くして氷迷宮からの脱出には成功していたが、その体からはぼろぼろと硬皮が零れ落ち、命はほぼ消えかかっていると言ってよかった。
「このままではまずい……どうにか傷を……」
「残念ですが! 回復は許しませんよ!!」
 汚水の排出口を探し求めるマガツアレスへ、火霧・塔子は颯爽と突進する。
 結びあげた白い長髪を躍らせながら、ユーベルコードを発動し、その両手に大量の火炎瓶を生成する。その数はゆうに百を超えた。
 それを塔子は、マガツアレスの周囲へ躊躇いなく投げこんだ!
「どうです! 火で囲んでしまえば、簡単には動けませんね!」
「炎が、どんどんひろがって……!?」
 塔子が自信満々に言うとおり、燃え立つ炎に囲われたマガツアレスはその場に釘付けにされてしまう。おまけに炎はみるみる延焼して地面や壁の水気を蒸発させてゆく。
「おのれ……汚水を消すつもりか!」
 好きにさせてなるものかと、マガツアレスは炎へと結晶剣を振るう。だが念動波で吹き消そうとも消えたそばから再燃し、黒飛蝗の眷属たちも湧き出たそばから炎に巻かれて儚く焼失していった。
「この炎は簡単には消えませんよ!」
「くっ! 厄介なことを……!!」

 ところ変わって、通路。
「ニューヨークって響き、カッコいいですネ! 何が起こるかわからない地下下水道とかも素敵ですシ!」
「治水機能が活きている分、まだ取り返しがつく場所ですね」
 少し遅れてダストブロンクスに踏みこんだリヴェンティア・モーヴェマーレとヒルデガルト・アオスライセンは、敵を探しつつも地下都市の光景を興味深く眺めていた。
 もっとも、リヴェンティアは単なる好奇心というか呑気。
 ヒルデガルトは後の復興を見据えてのものなので、随分と毛色は違うのだが。
「それにシテも、敵はどこにいるんでショウ……?」
「それなら、突き当たりを曲がった先ですよ。間違いありません」
 首を傾げるリヴェンティアに、その瞳を金に輝かせているヒルデガルトが答えた。
 その言葉を信じたリヴェンティアが道を曲がると――。
「私たちこそが、このダストブロンクスを悪しき王から解放する叛逆者! 覚えておいてください!!」
「くおッ!?」
 ちょうど、塔子が御神木から成る神聖武器もとい角材の『ゲバ・ロッド』をマガツアレスの頭に叩きこんでいた。かなり鈍い音だった。
「本当にいたデス!」
「では私たちも加勢しましょうか」
「あ! 猟兵の皆さんですね! お疲れ様……あ、アレレ……?」
 リヴェンティアとヒルデガルトに気づいた塔子だが、振り返った直後に意識を失いかけてふらふらと倒れこむ。
「あっ!」
 と慌てて駆け寄ったリヴェンティアに抱えあげるが、塔子の視界はやはりぐるぐる。
「科学製品のゴミを燃やしたら変なガスが……うっ、きゅう……」
「もしもし! 大ジョブでス!?」
「辺りは燃えていますし、変なものを燃やしたようですね」
 周囲にひろがる炎を見たヒルデガルトが呟く。今は薄れているようだが、一帯には確かに何らかのガスっぽさが感じ取れる。それを塔子はがっつり吸って御覧の有様らしい。
 気づけば気絶している塔子を抱えたまま、リヴェンティアはまごまごした。
「ど、どこかニ寝かせてあげなきゃデス……」
「それはそのとおりだと思いますが、今は優先すべきことがあるようです」
「優先デスか?」
「はい」
 リヴェンティアが不思議そうに見上げてくる中、ヒルデガルトは無言で正拳を突きおろし、地面を割砕して無数の瓦礫を巻き上げる。
 そしてそのひとつを怪力で掴み上げると、前方に思いっきり投擲した。
 標的は――上方に見える汚水の排出口だ。
 瓦礫弾がぶち当たると、大きくもない排出口は容易く崩壊して潰れる。そしてその衝撃が新たな瓦礫を生み出して下に落ちると、近くの暗がりから不穏な影が明るみへ転がり出た。
「私を見ていたか。目ざとい奴め……」
「この眼から逃れられると思わないで下さい」
 口惜しげに拳を握るマガツアレスを、ヒルデガルトは霊液によって変質した金眼でもって見据える。密やかに排出口に忍び寄っていた敵の動きをその瞳は見逃さなかった。
「コッソリ色々……抜け目のない人デスね! でもこれ以上はやらせたくない気持ち!」
 塔子を可愛い小動物たち『ハムちゃんズ』に預けて遠くへやって、リヴェンティアが立ち上がる。
 彼女が片手をかざすと、超自然的な氷の竜巻が下水道内を駆け巡った。極低温の風は触れた汚染水を見る間に凍結させ、燃え残っていた炎さえかき消して辺りを氷点下の世界に変える。
 水が凍ってしまえばそもそも浴びることもできない。
 そう判断して凍気を振りまいたリヴェンティアは、実にドヤ顔だった。
「炎はなんだか危ないみたいナノデ……凍らせてみました! すこーし寒くなるかもですガ、悪臭や気絶ガスよりはマシかもしれないデス!」
「また氷の世界だと……? そいつは二度と御免だ!」
 回復を完全に阻まれ、怒るマガツアレスの体に、おぞましき気配が満ちる。
「貴様から殺してくれる!」
 結晶剣を抜いたマガツアレスが、一足でリヴェンティアに接近する。わずか一瞬で間合い内に踏みこんだマガツアレスの剣がリヴェンティアの首と胴を離さんと奔る。
 そこへ、体ごと割りこむヒルデガルト。
 振り下ろされた斬撃を最大まで高めたオーラで受け止めると、敵が第二撃を打ち下ろすべく剣を振り上げる前に両腕でその結晶剣を掴んだ。
「貴様……素手で私の剣を……!」
「これ以上、物騒な物を振り回すのはやめてもらいます」
 そう告げたか告げないかというところで、ヒルデガルトの手は結晶剣をねじりきってへし折っていた。
 そして折れた切っ先をマガツアレスの腹に突き刺すと、そのまま壁まで押しこんで磔状態に追いこんで、リヴェンティアに振り返る。
「さあ。追撃を」
「わかりマシタ! ひびちゃん、来てクダサイ!」
 リヴェンティアが手をひらくと、その上にハムスターの『響』がぴょこっと乗っかる。
 愛らしき姿は――瞬時に一振りの剣に変わる。
「これで終わりにシタイ気持ち!!」
「ぐがッ……これが猟兵……私が敵う相手では、なかったのか…………?」
 リヴェンティアが刺突した剣が、深々と胴体を貫き、マガツアレスの命が終わる。

 ダストブロンクスでの戦いは、猟兵たちの勝利で幕を閉じるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月22日
宿敵 『マガツアレス』 を撃破!


挿絵イラスト