●川辺の町の感謝祭
祭りの準備で賑わう喧騒の向こう側。
「ねぇねぇ、もう少し上流の方にも散らしておこうよ。たくさん楽しんでもらえるように」
「ふふ、そうだねぇ」
きゃあきゃあと嬉しそうに川辺の砂利を蹴立てて駆けて行く少女の腕に掛かったバスケットには、澄んだ水晶に煌めく柘榴石、黄玉、紅玉、などなどのルースが入っていた。
原石を磨いたものを裸石、あるいはルースと呼ぶ。
その小さな町は山や川からの貴石の採掘と加工をなりわいとしており、ルースも本来ならば充分に商品としての価値を持つものだ。
それでも、大きな疵入りのもの。あるいは小さ過ぎるもの。そんなルース達を集めておいて、年に一度の感謝祭の日に川へと返す。
その祭りでは、川に返されたルース達を探して拾い出し、もらって帰っても良いのだという。なぜなら、特に小さなルースになると見つけることも簡単ではなく、それでも出逢ったその『縁』に感謝をするためなのだと。
「あれ? おばあちゃん。森が近付いてるー」
「森が近付いてる? ……! アーニャ、」
近付いちゃいけないよ、と。祖母が紡ごうとした言葉が声になるより早く茂みの中からゆるりと姿を現したのは、雄々しい体格の鹿のような、けれど確かに鹿ではない──モンスター。
黒の毛並みに青の模様。流水のような鉱石のような角は二対。その蹄の跡からは、しゅるしゅると信じられないほどの速度で若芽が生え伸びて。
周囲をきゃらきゃらと無邪気に飛び回っていた仔竜達へその『鹿』が太い首を払って見せれば、仔竜達は一斉に少女の元へと飛びかかる。
「アーニャ!」
祖母の悲鳴が渡った。
●澪星さやけし
「今回のおれからの依頼は初心者向け、って感じなんですが、いかがです?」
グリモアベース──今は冒険者の集う酒場に様相を変えたそこでまたミルクティを飲みながら、気安い様子でセロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は左頬のハートのペイントを軽く歪ませて笑う。
「今回倒してもらいてーのはヒューレイオン。本来なら深い森の奥に居るはずの幻獣で、樹海の住民の守護者でもあるようなヤツなんですけどね。その守護の仕方がちょいと過剰でして」
小枝の一本を折ろうとも許さず、執拗に追いかけては復讐を果たす──おそらく、その帰りだったのだろう。
『彼』の足跡からは木々が芽吹き、森は際限なく広がる。だから人里近い場所まで、森が広がってしまったのだろう。
「今回は仔竜がヒューレイオンに従ってましてね。ま、ヤツらは無邪気にじゃれついてるだけの気持ちなんでしょうが、ただの人間からすりゃ堪んねーですよ。まずはこいつらの数をある程度減らす必要があります」
肩を竦め、セロは予知を思い返すように暫時東雲色の瞳を伏せた。
「ただまあ、仔竜は元より、今回についてはヒューレイオンも疲れてるんですかね。そんなに戦闘に苦労はしなさそうですよ」
それにオブリビオンですからね、と相変わらずの軽い調子で口を開く。
「遠慮は要らねーです。しっかり倒して、年に一回の大切な祭り、開催させてあげましょうや」
こくり肯いて彼はただ笑う。
なんということはない、彼には基本的に笑顔しか備わっていないだけだ。
「終りゃ祭りに参加してもいいですよ。おれもその辺うろうろしてるかもしんねーです。祭りは明るくて楽しくて、いいモンですからね」
そう言って彼は湯気の立つミルクティをひと口。「あ、そうだ」はた、と思い付いたように顔をもう一度上げた。
「川。入るなら言っておきます。今回行ってもらうアックス&ウィザーズの町、季節的には冬だそうですよ。あったかい飲み物とか出すお店も出るみたいですから」
ここまで言えば判りますよね、と。
彼はまた笑うのだった。
朱凪
目に留めていただき、ありがとうございます。
鉱石が好き過ぎてしにそう。朱凪です。
※ 注意 ※
このシナリオの1、2章は『まだキャラクタ性が掴めてないのでがっつり好きに動かしていいぜ!』って方向けです。
(なんか取っ掛かりの情報は勿論欲しいです)
▼1、2章の執筆について
3日間のプレ期間で、朱凪が『動かせる!』ってなった方を普通に判定して『ひとりずつ』描写していきます。
先着順ではありません。
👑の数に🔵が到達したら〆切ですが、時間切れで返却になっちゃっても、お気持ちにお変わりがなければ再度投げてもらっても大丈夫です。
▼3章の執筆について
これはどんな方でも参加OKです。
『3章のOPが公開されてから7日間』の間に来たプレで、書けたものから順に公開します。
参加者がいる限りは、👑の数に🔵が到達しても書き続けます。(白紙や『書けない』となったプレ以外)
一度描写された方でも、もしもお気に召しましたら新しくプレ掛けて頂くのも問題ありません。
※具体の〆切等は【https://tw6.jp/club/thread?thread_id=3309&mode=last50】にて載せる予定です。
また、3章のみお声掛けがあればセロも参加が可能ですので、呼ばなくて全然いいけど呼んでもらえたらとても喜びます。
では、自分を探りつつ祭りを守るプレイング、お待ちしてます。
第1章 集団戦
『戯れる仔竜』
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POW : じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ : 可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
岡森・椛
鉱石大好き
石のひとつひとつに物語が閉じ込められてると思う
際限なく広がる森もすごく神秘的なの
でも、そこで悲しい物語が紡がれるのは、これっぽっちも嬉しくない
私はまだまだ初心者だけど、未来を良い方向に変える力があるのだから、勇気を出して駆け出すの
必ず守ってみせるからね
仔竜はちょっと可愛いけど…気は抜かないで行くね
【影の追跡者の召喚】で狙い澄まして攻撃
倒せそうな対象を優先的に攻撃して、数をしっかり減らしていくよ
敵の動きにも注意して、攻撃が直撃しない様に気を付ける
地形の利用を活用して樹々の隙間から攻撃したりできるかな?
素早く動いて上手く距離を取って、じゃれつく攻撃も回避したい
アドリブやアレンジ大歓迎です
●物語の行方
大切な紅葉の髪飾りの目立つ白い髪をふわり泳がせ、少女は走る。
視線の先に捉えた青々とした森。今もなおひとつの生命のように成長を続けるその姿は、神秘的で美しい。
──きっと仔竜や幻獣の他にも唄う小鳥に、精霊だっているのかも。
「……アウラ、あなたのお友達も」
肩口に寄り添う姿に小さく肯いてみせて、けれどそう思えばこそほんのちょっぴり緩んでしまいそうな口許を、きゅ、と岡森・椛(秋望・f08841)は引き締める。
際限なく広がる森も、あるいは物語をひとつひとつに抱いた鉱石を愛する町も。
──そこで悲しい物語が紡がれるのは、これっぽっちも嬉しくないから。
先行させた『影の追跡者』から届く情報を整理して、彼女は「アウラ」寄り添う姿──風の精霊へと伝える。精霊は薄く笑うとつむじ風ひとつ、無邪気に木の葉のブレスを吹き付けようとした仔竜へと暴風を叩きつけた。
ぎゃあ、ぎゃあ、と喚く仔竜達を他所に、椛は素早く涙で顔をくしゃくしゃにした少女の肩に両手を添える。
「もう大丈夫、……こわかったよね」
ひょうと背後から迫った爪も、精霊からの情報に第六感を総動員してすんでのところで躱せば勢い余った仔竜がどてんと間抜けな音を立てて地面に転がる。
──う、
その姿を、ちょっと可愛いなんて思うけれど、気は抜かない。
──私はまだまだ初心者だけど、未来を良い方向に変える力があるのだから。
だから微笑んで、力強く肯いて。
椛は、約束する。
「必ず守ってみせるからね」
椛は敵の攻撃を見極め、握り締めたなぎなたで襲い来る仔竜の身体叩き落とした。
大成功
🔵🔵🔵
ユーン・オルタンシア
【がっつりお好きに動かして頂ければと】アトリエカードでお迎えしたキャラクターな事もあり数度シナリオに参加させて頂いたもののまだ今ひとつキャラクターを掴めていません。
大筋は「中性的な美形で穏やかな性格、物腰や口調も穏やかだが、しっかりと男性の強さを持っている」イメージを感じているのですが、それをエルフという種族や、外見イメージで選んだアーチャー×クレリックというジョブ構成で、具体的にどのように動かせば…という感じで毎回難航しています。
今回、森の民エルフとしてヒューレイオンに共感する所もあるのでは…まだ子供である竜を屠る事に若干胸を痛めるのでは…と感じつつ具体的な動きなど不明…宜しくお願いします!
●深緑の祈り
神よ。母なる大地よ。
あなたの育みし我らが輩(ともがら)、我らが同胞(はらから)を、お救いください。
彷徨える過去が、あなたと共に眠ることをお許しください。
「ひ……っ!」
少女が迫る仔竜の鋭い爪への恐怖に身を竦める──ドッ! と言う、音。物体が吹き飛んだ風だけが少女の髪を揺らした。
太い木の幹にびぃいん……、と揺れるのは強靭な矢。貫かれ打ち付けられた仔竜の姿は、すぐにさらさらと崩れて消えた。
ふう、と小さく息を吐いて。不安げにしていた祖母へ「お任せください」と微笑みを向けてから、ユーン・オルタンシア(森の声を聴く・f09146)は少女達の傍へと駆けた。
少女の傍へ膝をつきその無事を確かめて、彼女を背に守り続ける椛へと彼は双眸を和らげた。
「勇敢なあなた、どうか私にお手伝いをさせてください」
目まぐるしく四方八方から爪やブレスが襲い来る中のこと。相手の返事を待たず彼は藤色の瞳に、きり、と強い光を宿す。
「っ……、」
鋭い爪が、木の葉のブレスが、彼の身を裂いた。けれど、退きはしない。彼が退けば少女達が危険に曝されるなら、ユーンは傷付くことも厭わない。
白い手袋を嵌めたままの掌を祈りに組んで、そっと開く。花開くように向けた指の先の仔竜へ、天からの白い光が稲妻のような迅さで墜ちた。仔竜は目を白黒させて、地に崩れ、そして消えて行く。
仔竜達が飛んでいた場所がぽっかりと空けば、その向こうに黒い鹿が静かに佇むのが見えた。
──森の守護者……共に歩めたなら、どれだけ良かったでしょう。
だけど、それは叶わないから。
森の民の一員として。そして森と人とを繋ぐ架け橋として。ユーンはヒューレイオンに向けて瞼を伏せた。『それ』は一瞬のこと。すぐに仔竜との戦いに身を投じながらも、けれど『それ』は確かに、祈りだった。
大成功
🔵🔵🔵
フィディエル・ジスカール
私が猟兵としての使命を授かってから、初めての戦いとなります
アルコイリス氏、どうか宜しく頼みます
…庶民の村では、このような祭りを催すのですね
宝飾品として成型されていない宝石は、このような形をしているのですか…
なんと、無骨ながらも強い輝き…
勉強になります
あ!いえ、私は戦闘に来ていたのでした!
我が光の矢で、悪しき竜どもを蹴散らしてみせましょう
天に在します主の御力をお借りして、光は過たず敵を貫いてゆくことでしょう
猟兵の言葉では、このようなモンスターをオブリビオンと呼称するのでしたね
人々の安寧を守ることこそが私の使命、私の義務であります
いざ、参ります
●翼の陰に
仔竜より放たれた木の葉の刃を巻き上げる暴風を、六枚の翼が遮ったのを見て、少女は目を真ん丸に見開いた。
少女と視線が噛み合うと、フィディエル・ジスカール(宵明けの熾翼・f11146)は胸の内に渦巻く初陣の不安を押し込め、唇に笑みを刷いて見せた。
──私は授かりし者。授かりし者は、人を救わねばならない……!
強く握る拳は心臓の上に。奔る鼓動を抑えつけるように。
ふと、その視界に少女の持つバスケットが飛び込んだ。
「……宝飾品として成型されていない宝石は、このような形をしているのですか……」
顔を覗かせたのは、厳しい戒律の中で育った少年の、年相応の好奇心。
「なんと、無骨ながらも強い輝き……勉強になります。……あ! いえ、私は戦闘に来ていたのでした!」
ぱぱっ、と慌てたように跳び退った彼の様子が、その背の立派な翼とはどこかちぐはぐで、けれど──親しみが持てて。
涙の痕を擦りながら、少女は、ふふ、と小さく笑った。
その笑顔に、フィディエルは喉を絞られる気がした。彼にとってオブリビオンと戦い、人々の安寧を守ることは使命であり、義務だ。
与えられたその責務は誇らしく、強く彼を奮い立たせるものであると同時に、少年のやわらかな心をほんの少しだけ、縛めるものでもあった。
けれど今は、違う。
その使命の意味を、頭で理解するよりも心で識った。助けたいと、そう願った。
「キィイイイ!」
「ッ!」
飛び掛かってきた仔竜の爪を剣で受けて打ち払い、彼は剣を握るのと逆の手を伸ばした。つ、と指す、仔竜の顔。
「……いざ、参ります」
ぱあっ、と。天に在す主の御力である光の矢が仔竜を射抜き、射ち落とした。
大成功
🔵🔵🔵
アビ・ローリイット
※以下取っ掛かり程度に、ガッツリお任せ
川ん中にキラキラって、夜空と逆さになったみたいな?
俺、興味あります
寒さ対策はばっちしっていうか普段からそんな感じ
水遊びも嫌いじゃない。細かいことは気になんない
お嬢ちゃんの代わりに
遊んでやりゃいーんだよな?
武器は使わず無手
竜の遊びってのはどんなだい
似たような感じでじゃれっかなぁ
体力勝負ってのもいっかもね
多分それなりにきゃっきゃする
でも飽きっぽいから
楽しくなってきた頃にUC【格闘】でさよなら
そういや君もキラキラだ
●その狗、無邪気につき
「お嬢ちゃんの代わりに遊んでやりゃいーんだよな?」
巨躯にそぐわぬ俊敏な動きで、数匹目の仔竜の身体を両手で捕らえる。
「ギィイっ!」
突然組みつかれて焦ったように木の葉のブレスを吐く竜へ構わず、に、と口角上げて、アビ・ローリイット(献灯・f11247)その腕が斬り裂かれるのも構わずに思いきり拳を振り下ろす──捨て身の一撃。
竜の遊びに興味があった。同じようにじゃれてみたかった。それは彼に宿る獣の好奇心。あるいはバーバリアンたる抗えぬ性質だろうか。
彼の背に向けて爪が迫るのを、垂れた耳をぴくりと少し持ち上げるが早いか、転がってそれを避け、次の獲物へ向けてアビは飛び掛かった。
「そぉ、れっ」
顎を大きな掌でわし掴み、叩き付ける。短い断末魔を残して仔竜が消えるのが、アビにとってはあっけないくらいだ。ふわふわの尻尾をゆっくりゆっくり揺らすと彼は少女に振り返った。
「なぁ。川ん中にキラキラって、夜空と逆さになったみたいな?」
俺、興味あります。なんて言う彼の琥珀色の瞳には、新しい玩具を探すような光が確かに宿っていて。
「……よ、夜空のお星さまより、色と形がいっぱいだよ」
その切り替えの早さに少女が驚きつつも答えると、「ふぅん」そっけない返事の割に、彼の尻尾は雄弁にその興味を在り処を物語った。水遊びも嫌いじゃない。
ならばアビが選ぶ道は既に一択だ。
再び獣の笑みを口許に刻むと、彼は軸足でしっかりと地を掴み、木の葉を吐こうと大きく口を開いた仔竜の横っ面へ、ブレスごと押し込むような鋭い蹴撃を叩き込む。仔竜の身体は吹き飛び、幹に叩き付けられて消滅した。
「んじゃ、さっさと終らせようか」
仔竜の包囲が、崩れ始めた。
大成功
🔵🔵🔵
ロシュ・トトロッカ
この世界はいつ来ても、不思議でステキなものがいっぱい!
川底にきらきら光る鉱物のルース
想像するだけでドキドキしちゃうなぁ
見つけられたらきっと、とってもきれいなんだろうね
だからこそ、安心してお祭りを楽しめるようにしなくちゃ!
悪気はないのかもしれないけれど
誰かを傷つけちゃうのは放っておけない!
スカイステッパーで駆け上がりながら仔竜に近づいて
思い切って高度からライオンライド!
召喚したライオンの背に乗って体重ごと一撃、いくよー!
着地の後も気をぬかないで反撃に注意!
ブレスが見えたら飛びすさって距離を取ろう
レグルス、引いて!
しっかりタイミングを見きわめて次を狙うよ
(アドリブ歓迎!)
●届ける音色
魚のひれが、鳥の羽根が、空を打つ。
ととととん、と中空を蹴って高高度へ駆け上がり、ロシュ・トトロッカ(マグメルセイレーン・f04943)は手にした簡易な造りの縦笛でワンフレーズ。
「行こう、レグルス!」
なにもない場所から黄金のライオンが彼を掬い上げるように空を裂いて現れ、ロシュがその背に跨ると同時、獅子は仔竜の群れへと躍り掛かった。レグルスの爪が仔竜の翼を引っ掛けて小さな体躯を地に幹に叩き付ける。
──悪気はないのかもしれないけれど、誰かを傷つけちゃうのは放っておけないから!
ごめんね、と謝るのは心の内だけ。2mを越す獣の巨躯は重いながらもしなやかな着地で勢いを殺し、すぐさま跳び退って警戒をする。
アビと少女の話はロシュにも聞こえていた。
だから天青石色の瞳を輝かせ、少年は少女に満面の笑みを向ける。
「川底にきらきら光る鉱物のルース。想像するだけでドキドキしちゃうなぁ。見つけられたらきっと、とってもきれいなんだろうね」
──この世界はいつ来ても、不思議でステキなものがいっぱい!
キマイラフューチャーに生まれた彼にとって、アックス&ウィザーズの世界はいつだって眩いばかりだ。
楽しみだね、とレグルスの首筋を軽く叩く。それだけで彼の意図を読み取り、獅子が鋭い牙で敵の頸へ喰らいついて薄くなった仔竜の包囲をぶち破った。
「さあアーニャ、行って! おばあさんと一緒に町まで戻って! それで、」
そこで言葉を切ったのは仔竜のブレスを獅子が飛んで避けたから。
素早く体勢を整え直すと、改めてロシュは少女へ手を振って見せた。
「それで、お祭りの準備を進めてて。だいじょうぶ、安心してお祭りを楽しめるようにしておくから!」
大成功
🔵🔵🔵
境・花世
じゃれつく竜たちを撫ぜるように、
そよ風の衝撃波で気を惹いて
早業の軽やかなステップで身を躱す
何匹か纏めてお相手しようか
かわいい仔たち、たくさん遊んであげよう
森を、芽吹く緑を愛するのなら
きっときみたちはお花も好きだと思って
憐れみ? ううん、そんなんじゃないよ
ただ、きれいなものを、見せてあげたいだけ
大輪の牡丹は知ってるかな
きれいだよ、きっとね、
――いのちの最期の花にはぴったりなんだ
"花開花落"
ひらひら舞い散る薄紅の中、
円らな瞳と目が合えば笑いかける
きみとおんなじ色の鉱石は流れるだろうか
わたしは上手に掴めるだろうか
いつかわたしもそこに行ったら
教えて、あげるね
※アドリブ、絡み大歓迎
●牡丹、躍り咲く
少女が駆け出すのを追おうとした仔竜達に、ごぅっと突風──否、衝撃波が遮った。
ぎゃあ、ぎゃあ、と喚く小さな姿にさらり、紅い髪を揺らして境・花世(*葬・f11024)は軽く首を傾げて、唇に笑みを刷いた。
「おいで、かわいい仔たち。わたしがたくさん遊んであげよう」
くるくる、トリガーガードで回して掴んだ『緘黙』。照準はぴたりと仔竜の額。ひとつ、ふたつ、みっつ。ほら、ごらん。
弾けた光は記憶を消す──それはすなわち、過去を葬り去る。
隣を飛んでいた存在の突然の消失にまんまるの目を更に見開く仔竜の姿に、そっと花世は右の目にある八重咲の牡丹へ指先を滑らせ、微笑む。
「きみとおんなじ色の鉱石は流れるだろうか。わたしは上手に掴めるだろうか」
それは川のせせらぎの中で、どれだけうつくしく光ることだろう。
森を、芽吹く緑を愛するのなら、きっと仔竜達は花のことも好きだろうから。
──憐れみ? ううん、そんなんじゃない。
苦し紛れのように繰り出された爪も危なげなく躱して、彼女は目を細めた。
「ただきれいなものを、みせてあげたいだけ……ね。大輪の牡丹は知ってるかな。きれいだよ、きっとね、」
いのちの最期の花にはぴったりなんだ。
囁くようなやさしい声音と共に、彼女の『燔祭』が無数の薄紅の牡丹の花弁へ化して周囲の竜達へと襲い掛かった。花開花落──ハナヒラキハナオチル。
怒涛の薄紅の嵐が仔竜達を巻いて吹き上がる。無邪気に笑っていたかのような鳴き声も、風と花弁に紛れて聴こえない。
「どうかな? わたしは、すきだけど」
彼らの行きつく先は何処だろうか。
花と共に送った空を見上げて、花世は今はまだからっぽな掌をそっと握り込んで、うっすらと微笑んだ。
「いつかわたしもそこに行ったら──教えて、あげるね」
きらきらの星達の輝きのいろを。
大成功
🔵🔵🔵
ハロルド・グレナディーン
地上に降りてきた星の欠片のようで
キラキラ輝く鉱石とは良いものだと感じるよ
詩唄いが本業みたいなものだったけれど
護るための仕事も、熟せるように頑張らないとね
先ずはイタズラ好きな仔竜たちのお相手かな?
我輩の友人で良ければ共に戯れよう
仔竜の動きをよく見て、からくり人形達を操り
弱点や弱った個体が分かれば
数を減らすためにも狙いを集中させる
指揮者も見ているだけではないさ、と
【ライオンライド】も呼び出し
敵からの攻撃を躱したり防御もする
猫の爪も意外と痛いことは知っていただろうかね
戦闘経験が不慣れなため
アドリブやアレンジ大歓迎
好きなように動かして頂けると幸いです
●妖精のスタッカート
仔竜達が飛び回り木の葉の竜巻が湧き起こる中を、黄金のライオンに跨った小柄な姿が掻い潜る。
ひらりひらりとその背の星空色のマントが躍るのに、竜達の照準が翻弄されるのをハロルド・グレナディーン(ケットシーの人形遣い・f06123)は小さく笑った。
「そら、そら。まだまだ我輩の友達は戯れ足りないようだよ?」
その愛らしい指先からは想像もつかないような繊細な糸繰りによって動くからくり人形が、仔竜の顔を向ける先に飛んで跳ねて、じりじりとその退路を奪う。
鼻歌でも唄い出しそうなハロルドの様子はあくまでいつもどおり。
きらっ。と色の違う双眸が機を逃さず輝いて、ふさふさの尻尾がライオンの背を軽く叩く。
「オオ゙ォオオオ!!」
黄金の獅子が強く地を蹴って「おっ、とと、」危うく振り落とされそうになりながらもその鬣にしがみついてハロルドは前を見据えれば、獅子の鋭い爪が仔竜のかしましい翼を切り裂いた。
「指揮者も見ているだけではないさ」
どうだい、とでも言いたげにひげをそよがせたハロルドの前でさらさらと消えゆく仔竜達は、夜の色で。
左右から繰り出された爪に軽く毛先を持って行かれながらも、彼女はふむと思案する。
まるで地上に降りてきた星の欠片のようで、キラキラ輝く鉱石は良いものだと、そう思う。それはもしかしたら、
「……たくさんの過去の積み重ねがそう思わせるのかもしれないな。ぅん、良い詩になりそうじゃないか?」
なんて、本業である詩唄いの性がひょっこり顔を出すけれど。
「──つまり過去は過去であるべき、……で終える唄はどうだろう?」
きゅい、といかにも造作なく引き絞った細い糸の先。容赦のない人形の腕が、ひとつの過去を過去に返した。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
アドリブ歓迎
内面の見えない微笑を浮かべた美貌
陰陽の狭間に立つ中庸者
趣味(鉱石等の美しい煌き)に纏わる物事にしか
動かない気分屋で、飄々
森の守神である鹿の元へ
人は森を削り樹を切り地を均さねば、
動物、植物、あらゆる自然の恵みを受けて行かねば、
安寧な暮らしを続けて行けぬ存在
感謝を忘れ
荒らし過ぎ
淘汰してしまうこともある愚かさだけれど
過分な枝を掃うことで芽吹く草がある
病に斃れた骸を森から祓うことで地を護ることもある
其の智慧を与えたのもまた森の力
疲弊した姿に黙礼
輝いた森の記憶を抱いて
永い眠りに就く時間
跳ねる竜に微笑んで
さぁ
私と遊びましょうか
誘うように空に描く五芒星
放つ符は
凍れた流星が如くきらきらと
仔竜と舞う
●静謐と悠然と
少女と祖母が遠く戦場を離れたのを見送って、都槻・綾(夜宵の森・f01786)はゆるりとその青磁色の瞳を瞬いた。
「これでいいでしょう」
彼の緊迫感伴わない声音に、傍らの『縫』──真っ直ぐな黒髪を切り揃えた少女人形からほとほと呆れた視線が向けられている気がするが、日常茶飯事だ。
そして未だ敵意を向けて爪を光らせ飛び掛かる仔竜達へも穏やかな笑みを浮かべたまま「さぁ、私と遊びましょうか」するると指先に護符を揃え、放つはいつつ。それは五芒星を描くように。
「ギィイっ?!」
目を覆われ、爪の繰り出す先を見失った仔竜達がてんでばらばらに狂い飛ぶのに、どこか恭しくすらある様子で彼は『縫』へと掌を差し出した。さあどうぞ。
『彼女』はどこか不服気ないろをその瞳に霞ませつつ唐紅の振袖を翼のように泳がせて跳ぶ。
援護するように護符を射ちながらも、綾は笑顔を絶やさない。
彼にとって『人』とは、森を削り樹を切り地を均し、動物、植物、あらゆる自然の恵みを受けて行かねば、安寧な暮らしを続けて行けぬ存在だ。
「……時には感謝を忘れ、荒らし過ぎ、淘汰してしまうこともある愚かさだけれど」
それでも彼が人を想うのは、青磁香炉という繊細な器物である彼の本体が長年その形を保った──つまりそれだけの間、彼が人に愛されたからだ。
『彼女』に叩き付けられて次々に墜ちては消えゆく仔竜達から、視線を上げる。
「過分な枝を掃うことで芽吹く草がある……病に斃れた骸を森から祓うことで地を護ることもある。其の智慧を与えたのもまた森の力」
だから森の守護者であり化身であるあの異形に、綾は敬意を払って黙礼する。
「──けれど次はあなたが、輝いた森の記憶を抱いて、永い眠りに就く時間です」
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『ヒューレイオン』
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POW : ディープフォレスト・アベンジャー
【蹄の一撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自在に伸びる角を突き立てて引き裂く攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : チャイルド・オブ・エコーズ
【木霊を返す半透明の妖精】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
WIZ : サモン・グリーントループ
レベル×1体の、【葉っぱ】に1と刻印された戦闘用【植物人間】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
👑17
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ミレイユ・ダーエ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●怒れる守護者
それは、確かに怒っていた。
なんと愚かで図々しく、浅ましいのだろう。
無邪気な竜の仔らを屠り。
森を傷付け命を喰らい、大地が育んだ鉱石を奪うことを認めよと言うのか。
それが摂理であると?
「……認めぬ」
その瞳に狂気にも似た光が燃える。
身の程知らずの男の背骨をへし折った角は未だ鋭さを失わず、やや重い気のする脚は問題なくまだ走ることができる。
「愚かな『同類』以外のためにはなにひとつ生み育てることもできぬ人間風情が、なんの『感謝』か……!」
その低い地響きのような声に、誰かは眉を寄せた。
きっと、なにを言っても伝わりはしない。それだけは確かだった。
アビ・ローリイット
※お任せアドリブ希望大歓迎
人と獣どちらの味方や誰の為というよりも
自分にとってなんだか面白そうなので、俺が見るまで待ってほしいよなぁくらいの思考回路
ふんふん
難しいことは分かんないが
ぜーんぶ勝った方のものって話でいーわな?
『ハルバード』と格闘で戦う
やっばい一撃だけ[野生の勘]で察知できたらあとはもらっちゃってもいいや
あのツノも水ん中撒いたらキラキラだろうなぁ
UCは【グラウンドクラッシャー】
避けられたら避けられたで、祭りもあるし、お馬さんが広げた森でも破壊しとこうか
わりぃねえ、ここもーらい
ああ、これはひとりごとだけど
そこらへんの人間の分も俺がありがたく楽しんどくよ
多分ね
●知らない、知らない
低く怒りを隠さない声に、けれどアビ・ローリイットは、くぁ、と欠伸をひとつ。
「ふんふん。ま、難しいことは分かんないが」気怠げに琥珀色の瞳を瞬いて鈍色に光を反射する『ハルバード』をくるりと手首で回すと、腰を落として低く構えた。
「ぜーんぶ勝った方のものって話でいーわな?」
知らない。判らない。関係ない。──興味が、ない。
口角上げて告げたアビに、ヒューレイオンは不快さを隠さず眉間に力を籠めて彼を睨む。
「思考を止めると言うのか」
愚かしい。吐き捨てる森の守護者へ、アビはただへらりと笑って地を蹴った。
「へえ。どっちが?」
瞬足。間をひと息に埋めて、ぶん、と振り抜いた三日月の刃は振るわれた『鹿』の角に阻まれるけれど、それを弾き距離を取ると同時、周囲に散らされた、葉と蔓で構成された植物人間を両断した。
崩れ落ちる葉の香りを吸い込めば、自然と尻尾が揺れる。
「そのツノも、水ん中撒いたらキラキラだろうなぁ」
彼の興味はもはや、町の祭りにしかない。祭りは面白そう、キラキラは素敵、水遊びも楽しそうだし、仔竜と遊ぶのは飽きた。
だから、邪魔するヤツは倒す。
純粋で単純な、しかし彼の確かな、思考の末の反応だ。
森を傷付けた者をただそれだけで殺す、それこそが思考の放棄ではないのか。
「痴れ者が……!」
「は。光栄、だっ!」
更なる怒りの燃えた瞳。高く振り上げられた蹄を、勘を頼りにぎりぎりのところで躱しざま、強く握った獲物を勢い乗せて打ち下ろす。
「お、っと」
その一撃は「わりぃねえ、ここもーらい」ヒューレイオンこそ捉えなかったものの、地響き渡らせ大きく地を穿ち、『鹿』の広げた若芽の絨毯の一部を大きく抉り掘り返した。
見目からは想像できないほど軽い足取りで素早く距離を取り、アビは血の湧く感覚に口角を吊り上げる。
「勝負しよう」
どちらが『正しい』のか。
答えのない答えを、互いの『力』で奪い合おう。
大成功
🔵🔵🔵
都槻・綾
※アドリブ大歓迎
相容れぬのもまた摂理なら
共存できる路を見出せぬのなら
貴方にとって大切な想いを曲げてまで
認める必要も
赦す必要も
きっと無いのでしょう
それでも――貴方は「怒り」を口にする
森を虐げる愚かな人間達だと知り乍ら
黙して蔑み一蹴することも出来た筈なのに
私達に言葉で露わにしてくれた
伝わらぬのかもしれぬのに
無駄かもしれぬのに
人へも守護者へ対しても
同情も憐憫も無く
ただ知りたいと思う、貴方の「心」
地響きは、貴方の嘆き
そして地の悲しみでもあるのなら
互いに相容れず
伝わらずとも
応えて呼び掛け問い掛けたい
私なりの貴方への敬意です
縫
行きなさい
遺恨で縺れたまま縫い留められた糸を解き
美しき森の夢へと彼を還しましょう
●知りたい、知りたい
衣の袖泳がせ、木の葉で編まれた植物人間が方々から振り下ろす太い樹の枝を舞いのような足取りでいなして、都槻・綾は木陰の『鹿』を視界に捉える。
皮膚を突き刺すような敵意と殺意が伝わる。
認めぬと、それは言った。
「……貴方にとって大切な想いを曲げてまで、認める必要も、赦す必要も。きっと無いのでしょう」
相容れぬのもまた摂理なら、共存できる路を見出せぬのなら。
──それでも、貴方は『怒り』を口にする。
「黙して蔑み、一蹴することも出来た筈なのに、私達に言葉で露わにしてくれた──そんな貴方の『心』を、私はただ知りたいと思うのです」
そこに、人か獣へ傾く同情も憐憫も無く。
『私はただ』
『知りたいと思うのです』
「、」
くすくすくす。彼の言葉を拾い上げた半透明の妖精達に綾の意識が向くその一瞬に、
ひゅおっ……!
音もなく迫った蹄を避けることができたのは研ぎ澄ました第六感の成せる業。漆黒の髪が荒々しい風に巻かれて躍り、黒き守護者の巨体がすぐ傍に並ぶのに、綾はそれでも、視線を逸らさない。
「どうして、敢えて言葉を紡いでくれたのでしょうか」
愚かな人間には伝わらないかもしれないのに。無駄かもしれないのに。
──地響きは貴方の嘆き、そして地の悲しみでもあるのなら。
ひたと揺らがぬ綾の双眸に守護者が壮麗な角を振るって返す答えは、簡潔で。
「人間は愚かだからだ」
想定通りの、相容れぬ応答。
伝わらないと知りつつも、それでも言葉にしないと気付くこともないだろうと諦観を奥底に秘めた蔑み。
「……そう、なのかもしれません」
柳眉をほんの僅か寄せ、ひょう、と払う護符は森の守護者を絡め取り「纏、行きなさい」彼の伸ばした指の先、少女人形は紅閃かせてしたたかに『鹿』の太い頸を打ち据えた。
「グゥっ!」
ぐらり体勢を崩した四肢。綾はそのかんばせに薄く笑みを乗せた。
「けれどきっと人も──愚かなだけでは、ありませんよ」
大成功
🔵🔵🔵
岡森・椛
微かに脚が震える
…怖い
深い怒りが伝わってくる
きっと必死に語りかけても決して伝わらない事も
だから怖いだけじゃなくて、悲しい気持ちになる
それに、気持ちも分かるの
私達は沢山の命や自然が生み出した宝物を分けて貰って生きてるから…
でもね、奪うだけじゃないよ
一緒に生きてるの
人は荒れた大地を耕して緑の野にする事も出来る
誰も知らない場所で寂しく眠る宝石を見つけ陽の光に照らす事も出来る
邪魔だからと排除するだけじゃない
敬う気持ちを胸に、共に生きていきたいの
意を決して【科戸の風】で攻撃
アウラ、一緒に頑張ろうね
怯えずにしっかりと前を向いて戦うの
巻き起こる風はいつだって未来に向かって吹いてる
アドリブやアレンジ大歓迎です
●共に
「人間は愚かだからだ」
仲間との戦闘のさ中、森の守護者が低く吐き捨てた言葉は岡森・椛の肩を震わせ、脚を竦ませた。椛はその手にある愛用の杖をきゅ、と胸に握り締める。
ヒューレイオンの深い怒りがひしひしと伝わる。
──……怖い、
けれど、それだけじゃない。
──……悲しい……。
判ってしまうから。どれだけ椛が言葉を尽くして語り掛けても、決して伝わらないだろうことが。
杖に宿る精霊の『アウラ』から、気遣わし気な気配が伝わって来るのに、椛はなんとか小さく肯いて見せる。
「大丈夫。それにね、……彼の気持ちも、分かるの。私達は沢山の命や自然が生み出した宝物を分けて貰って生きてるから……」
もみじ。彼女の名前も、自然から分けてもらった。大好きで、大切な名前。
そうだ。
「でもね」きゅ、と視線を上げると椛は守護者をまっすぐに見つめた。こくん、と喉が鳴る。膝。大丈夫。芽生えた勇気が彼女を奮い立たせた。
綾の言葉に続けるみたいに、声を届ける。
「奪うだけじゃないよ。一緒に生きてるの」
ぴたりと向けた杖の先。アウラ、お願い──彼女の祈りに応じて科戸の風が巻き起こり身動きを封じられた守護者の黒い毛皮を斬り裂いた。
自らもしっかりと地を踏み締めないと吹き飛ばされてしまいそうな風の中、更に彼女は杖を握る掌に力を籠める。
「人は荒れた大地を耕して、緑の野にする事も出来る……誰も知らない場所で寂しく眠る宝石を見つけ出して、陽の光に照らす事も出来るよ……!」
邪魔だからと、排除するだけの関係じゃない。
伝わらないのかもしれない。それでも椛が、伝えたいから。
彼女は叫ぶ。
「っ敬う気持ちを胸に、共に生きていきたいの!」
「戯言を……!」
荒れ狂う暴風に血を散らしながらも、獣も吼えた。
大成功
🔵🔵🔵
雨糸・咲
私も、人の在り様が嫌になってしまうことはあります
少なからず、ね
憤る気持ちは、解らないでも…いいえ
言っても詮無いことです
けれど、貴方の怒りは苛烈に過ぎましょう
美しい石たちも、曇ってしまいそう
これは、摂理などではありません
私の意思
疲弊していようと、手抜きは失礼でしょうから
全力で止めさせて頂きます
毅然と守護者を見つめ、杖を一振り
細く鋭く渦巻く水で攻撃を
※アドリブ歓迎です
所作・言動は落ち着いて穏やかな品良い淑女
けれど芯は強く、甘えや依存は許さない頑固者
樹々や草花、鉱石など
自然から生まれたものを愛し、大切に思っている
●傍に
精霊の喚んだ風が草花を小さく揺らすだけに落ち着く間際。跳んだ『鹿』は蹴爪の先に居る影が『人』でないことに瞠目した。
それは形代。きりりと十の指に繋がる絃を引き、雨糸・咲(希旻・f01982)はその胡桃色の瞳をゆっくりと瞬いた。
「私も、人の在り様が嫌になってしまうことはあります、……少なからず、ね」
『物』としての性を喪い切れない咲にとっては「憤る気持ちは、解らないでも……」、けれど、「いいえ」と彼女は首を振った。それは口にしたところで詮無い話だ。
それは考えたところで正しい答えなどあるはずもなく、そして『過去』たるオブリビオンのヒューレイオンを前に、彼女達猟兵が取る手段も、変わりはしないのだ。
「貴方の怒りは苛烈に過ぎましょう。……それでは美しい石たちの輝きも、曇ってしまいそう」
ぴん、と張りつめた空気を纏い、咲は背筋を伸ばす。遠慮も斟酌も、必要ない。例え相手が疲弊していようとも、手を抜くことは礼を欠くから。
だから咲は、全力で立ち向かう。
「これは、摂理などではありません」
これは──私の意志。
杖を振るい喚んだ細く鋭く渦巻く水が、黒い守護者へと奔る。しかし彼の前に数体の植物の人型が飛び出して弾け飛んだ。守護者は明らかな不快をその眉間に刻んで、目を眇める。
「娘よ。人間を嫌いながら、何故戦う。──人間のために」
低く這う声音は苛立ちを押し殺し、しかし咲は視線を逸らさず首を振った。
「いいえ、ヒューレイオン。森の守護者たる貴方。貴方と私の違いはそこにあります」
咲は静かに、けれど揺るがぬ想いを瞳に燃やす。
「私は決して、人を嫌ってはいないのです」
自然の傍に在って、同時に人の傍に居る。
そんな彼女だからこそ、椛の、人間の少女の言葉にも、肯ける。
「愚かな……!」
心底からの不可解を乗せた呻きと共に、強靭な後ろ足でその身を持ち上げて、ヒューレイオンは鋭く蹄を振り下ろした。
大成功
🔵🔵🔵
ハロルド・グレナディーン
守護する幻獣の怒れる理由も判るが
我輩たちは今を生きる人々の未来を護る側である
敵対は避けられぬし、存分に憤ると良いさ
そんな想いが此の場所に在ったこと
最後まで見届けるとしよう
序盤から【ライオンライド】に騎乗して戦闘を
敵の動きをよく見て冷静な行動を努める
弱点等が分かれば、からくり人形にて狙いを集中させる
本来ならば、躱したり攻撃を受け流すのが
戦いの定石なのかもしれないが
その怒り、敢えて受け止めるように動きたい
黄金の獅子には苦労も掛けてしまうが、ね
此方の想いも存分、其の爪に
乗せさせて貰うのだから帳消しさ
戦闘経験が不慣れなため
アドリブやアレンジも大歓迎です
●その声を聴く
逞しい守護者のその脚は突如飛び出してきた黄金色──のライオンの背に乗っていた猫を情け容赦なく蹴り落とし、その鋭い爪で流れるように突き上げた。
「ッ……!」
猫──ハロルド・グレナディーンの小さな身体は、まるで蹴鞠みたいに吹き飛んだ。
避けて、躱して。
それが戦いの定石なのだと、もちろん彼女だって知っている。それでも今回ばかりは、その攻撃、その怒りを受け留めたいと思った。
すぐ傍にしなやかに着地し、ハロルドの毛並をそっと舐めたライオンへ彼女はゆるゆると腕を上げて、相棒の立派なたてがみに触れ、口許に悪戯っぽい笑みを象った。
「、だいじょう、ぶ。……心配を掛けてしまった、な」
零れる咳。疼くように痛む腹部を押さえながらもハロルドは再び獅子の背に跨り、そしてヒューレイオンを見据えた。幻獣の怒れる理由も、判りはする。それでも。
瞼を閉じて、呼吸をひとつ。
左右から不恰好な腕を振り上げた植物人間達が襲い掛かってくる──のを、ぱち。と目を開くと同時、獅子の背についた手がほんの微かな力で回避を伝え、獅子が跳ぶ。
植物人間達は攻撃目標を見失い、互いにわさわさと音を立てて重なり合った。
きゅう、と絃を繰れば彼女の操るからくり人形がその無防備に折り重なった葉や蔦の身体を引き裂いた。
『鹿』の怒りは受け止める。けれどその配下の意思なき暴力まで受けてやる義理はない。
──敵対は避けられぬし、存分に憤るがいいさ。
「その想いが此の場所に在ったこと。我輩が最後まで見届けるとしよう」
はら、はら。木の葉の舞い散る中で彼女が真摯に告げ、森の守護者はその大きな顎の歯を噛み締め、軋む音を立てた。
「愚かな人間に迎合した妖精め……」
「ああ。我輩たちは、今を生きる人々の未来を護る側である。だが、思い違えてくれるな。我輩は、君の想いも──否定はしないさ」
過去から学ぶことがあるのも、確かな事実だから。
大成功
🔵🔵🔵
深青・祁世
◎アドリブ歓迎!
指を噛み切り【咎力封じ】
皆の攻撃に繋がるように
動きを抑えてみたいわね
私も森の社に住む狐よ
アナタの憎む「人間」に分類される?
不要に自然を傷めつける奴は私だって追い払うわよ
慌てて逃げた先で怪我しちゃっても
知ったことではないわね
森や自然を守りたい気持ちは
本当に『咎』なのかしら?
殺めるべき咎人は
復讐を望むのは
人かしら
アナタかしら
だけど
余計に痛めつけてしまったのなら
私達が森を苛むのも
アナタが人を苛むのも
痛み分けって感じね
アナタは
森を愛する人間や精霊の祈りから生まれたモノでは無いの?
強すぎる祈りは呪いにしかならない
向けられた呪詛は返さなきゃいけない
そう思うエゴは
やっぱり私も「人間」なのねぇ
●その声に問う
鋭い牙で噛み切った親指から細く赤い糸が空に泳ぎ、拷問具が植物人間の頸や腕を捉える。
深青・祁世(遥かなる青・f13155)が「よい、しょっ」拳を引けば、糸──血液で繋がった手枷に繋がれた敵達が地に叩き付けられて消えた。
蹄で地を掻く敵に、祁世は軽く首を傾げる。
「ねえ。私も森の社に住む狐よ。アナタの憎む『人間』に分類される?」
しなやかな尻尾が揺れる。共に戦う猟兵達の攻撃に傷付いた『鹿』は忌々し気に口許を歪めた。
「……『同類』だろう」
『だろう』
突如耳許で妖精の木霊が返り、祁世は肩を翻しつつ「アナタともね」苦笑する。
「不要に自然を傷めつける奴は、私だって追い払うわよ? ……慌てて逃げた先で怪我しちゃっても、知ったことではないわね」
──森や自然を守りたい気持ちは、本当に『咎』なのかしら?
殺めるべき咎人は『人間』なのか、それとも『森の守護者』なのか──……。
ただ、言えることがある。
人が過分に森を傷付け、森の化身が過ぎた応報を示すならそれは、『痛み分け』なのではないか。
「でも」
ぐるん、と彼の放つ枷が、守護者を縛めた。
「アナタは森を愛する人間や精霊の祈りから生まれたモノではないの?」
「ッ!」
ぴんと張り張り詰めた糸で縫い止め、更に猿轡、ロープで『鹿』の行動を奪っていく。足掻けば足掻くほどに食い込む縛めに、ぶるる、とヒューレイオンが息を漏らす。
「強すぎる祈りは呪いにしかならない。向けられた呪詛は返さなきゃいけない……そう思うエゴは、やっぱり私も『人間』なのねぇ」
掌を頬に添えて柔らかく、けれど困ったように微笑みを浮かべて、背後の仲間へと繋ぐ。
「任せて!」と明るい声が応じ、更に苛烈を極める戦いの中。きりりと赤い糸を引き絞り、敵が抗う力に噛み締めた歯の間から祁世は呟いた。
「『感謝』するわ。この言葉、嫌いだろうけど。アナタに会えた、そのことに」
大成功
🔵🔵🔵
ロシュ・トトロッカ
そうは言うけど、そっちだって奪おうとしてるじゃないか!
……って、聞く気ゼロだよねやっぱり
そういうつもりなら遠慮しないよ!
スカイステッパーで上から距離を詰めて
そのまま加速を乗せてキック!
蹄や爪はもちろんだけど、とりまきも気をつけなきゃだね
囲まれないように立ち位置ちゅーい!
追い込まれそうになったら空中に飛び上がって距離を取ろう
強きは弱きを守ってこそ、なんてよく言うでしょ?
だから、退かないよ!
相手の動きが鈍ってきたら
角に向けて体重を乗せた蹴りを一撃お見舞い!
生きるのにたしかにぼくらは色んなものを奪うけど
でも、ここに生きる人たちはきっと奪ったものを無駄になんかしないよ
だから――おやすみ
アドリブ可
●守護の意思
仲間の縛めに動きを封じられたヒューレイオンの頭上へと空を蹴って駆け上がる。
そして落下の速度にスカイステッパーの跳躍で加速し、乗せた勢いと重さで以てロシュ・トトロッカは『鹿』の横っ面を思い切り蹴りつけた。
あらぬ方向に弾けた首。けれど縛めは未だ解けず、その身はただ立ち尽くす。
ぎょる、と怒りを滾らせた瞳だけが、ロシュを睨めつけた。ぞわっ、と駆け抜けた感覚はきっと、武者震い。
雄々しい鹿のような体躯に、僅か欠けた角。黒い毛皮は血に濡れて柔らかさを失っているものの、傷付いてなお堂々たる佇まい。
立ち位置ちゅーい! 周囲を警戒し、植物人間の居ないところへ跳んだロシェは、背筋を伸ばした。
「奪うばかりの愚かな人間に制裁を……!」
「そうは言うけど、そっちだって奪おうとしてるじゃないか!」
縛めを引き千切り、守護者が唸りと共に踏み込んだのを見た、そのときには零れる土くれがぱらりと眼前にあってロシュは「っ、」咄嗟にバックステップ。彼の纏う民族衣装の端を、素早い蹄が蹴り破った。
「って、聞く気ゼロだよねやっぱり!」
軽く顔をしかめて衣装を引き寄せ、彼は更に跳ぶ。
羽根が風を捕らえ、叩き込む蹴撃は鈍い音を立ててヒューレイオンの角の1本を叩き折った。煌めく鉱石のような欠片が散って、ロシュはまんまるの瞳を細めた。
「ほんと、強いよね。でも強きは弱きを守ってこそ、なんてよく言うでしょ? だから、退かないよ!」
「許さぬ……認めぬ……!」
燃え上がる憎悪を、中空へと舞い上がったロシュは静かに見下ろす。
「たしかに、生きるのにぼくらは色んなものを奪うけど。……でも、ここに生きる人たちはきっと奪ったものを無駄になんかしないよ」
だから──おやすみ。
鮮やかな彩が閃いた。
大成功
🔵🔵🔵
境・花世
あの竜の仔たちを育んだ森は
さぞかし清らかだったろう
きみの姿も――なんて、美しい
“紅葬”
蹄も角も恐れずに近付いてゆく
研ぎ澄まされる感覚で、
攻撃は出来る限り見切って避けながら
けれど例え傷付いても、怖くはない
ひとは愚かかな? 確かにそうかもしれない
だけどいいものもわるいものも
ただ、否応なしに、生きてるだけだよ
真っ直ぐに見据えれば、
呼応するように一斉に芽吹くだろう
気付かれぬ間に植え付けた、
燔祭――この身に宿る王の種
狂った獣の何もかもを啜って、
とびきり鮮やかに咲いておいで
罅割れて尚鉱石のようにかがやく姿に見惚れて
ああ、その光をもう見られないのは
少しばかり惜しいけど
――これがわたしの仕事だから、ね
●守護の義務
ちり、ちり。五感を超えた感覚が、境・花世に伝える。
もはや終りが近いことを。
「寄るな……!」
ヒューレイオンの蹄が彼女を打ち、両手広げて倒され掛けた彼女の身体に欠けた角を振るうのに任せた。その煌めきに彼女の左目が僅か嬉し気に細められる。綺麗。そう思う。
地に打ち付けられた花世は下草の柔らかさにを指先に感じながら、そっとその表面を指でなぞる。小さく咳をひとつ。
「その光をもう見られないのは……少しばかり惜しいけど」
──これがわたしの仕事だから、ね。
ほんの少しの自嘲のような。あるいは、惜別のような。
「ひとは愚かかな? 確かにそうかもしれない。だけど、いいものもわるいものもただ、否応なしに、生きてるだけだよ」
ゆっくりと身を起こし、その右眼に息づく薄紅に触れた。
そして真っ直ぐ見据える視線の先で、守護者は「!」突如、瞠目した。
敵の身体に急速に芽吹いたのは百花の王。絡め取り、締め上げて、そして命を喰らう、彼女のUDC。敵の攻撃の折に見えぬ早業で忍ばせた燔祭。
「狂った獣の何もかもを啜って、とびきり鮮やかに咲いておいで──」
「グ、グゥググググ……ッ!」
苦しみ踠く『鹿』の身体に、八重の牡丹が次々と花開いて黒い身体を鮮やかに彩っていく。軽く草葉を払って立ち上がった花世は、しばしヒューレイオンの背後に広がる森へと視線を遣り、それから、とん、と地を蹴った。
獣が『彼女の姿』を目にしたのは、それが最後だった。
変わりに視線を奪ったのは己が身に咲く花を纏った化生。鮮やかな血色の花弁に風を切らせて放ちながら、その化生は守護者の咢にそっと細い女の手を添えた。
「あの竜の仔たちを育んだ森はさぞかし清らかだったろう」
きみの姿も――なんて、美しい。
囁かれた言葉の通りはけれどあまりにさやけく。ヒューレイオンは静かに、己の身体が生を手放す音を聴いた。
それは彼女の手向けの詩。紅葬──レストインピース。安らかに眠れ。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 日常
『輝石の星掬い』
|
POW : 地道にザルを使って宝石を浚う
SPD : 希望の宝石に狙いを定めて採る
WIZ : 宝石のありそうな場所を予測して採る
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●貴石の町の感謝祭
川べりの町はにわかに賑わい始めた。
「冒険者さん!」
猟兵達が救い出した少女が、町を訪れた彼らを見付けて大きく手を振り飛び跳ねる。その後ろでは顔をくしゃくしゃにした祖母がゆっくりと頭を下げるのが見えた。
路傍に立ち並ぶ出店には、野菜のスープの大鍋が湯気を立て、温かな茶やレモネードも小さなカップに注がれふるまわれる。
貴石を用いたアクセサリーはピアスにブレスレット、アンクレットと種類も豊富だ。
「アーニャを助けてくれたんだってな! ありがとよ! 安くしとくぜ!」
「タダにはしねぇがな!」
普段は鉱石を掘り起こすのだろうと思われる頑健な肉体の男達が、出店で笑う。
「ねぇねぇ、良かったらルースも拾っていって!」
少女が指すのは先程上流へ手繰るように歩いた川。
期待だろうか、それとも本物だろうか。きらり、とりどりの色合いが光ったように見えて、誰かの頬は緩んだ。
川の傍には大きな焚火が用意されていて、冷たい水への対策もばっちりだ。
「助けてくれた冒険者さん達にも、素敵な出逢いがありますように!」
グァーネッツォ・リトゥルスムィス
楽しそうな祭りの気配がするぜ!
お、川の中で宝石、いやルース探しか、オレもやりたいぞ!
万が一濡れてもいい服を着て、さらに念のための着替えも用意していざ川の中へ
水温が寒くてもルース探しへの期待と興奮でへっちゃらだぜ
特に狙いたい種類はないし、ルースがありそうな場所もわからないから
地道に川底をザルで掬って探していくぜ
「こうやって探している時がある意味一番楽しかったりするんだ」
小石ばかりでも諦めず探し続けて、一番最初に見つけたルースをオレの物にするぞ
ルースを1個手に入れた後は川から出て体を冷やす為に温かいお茶を頂くぜ
「苦労して手に入れたルースを見ながら飲むお茶は最高だぜ……」
岡森・椛
アーニャちゃん!
笑顔をに改めてほっとして、大きく手を振り返す
ルース、拾ってくるね
【WIZ】で、まだ探してる人が少なそうな場所で採る
セロさんも一緒に探そう!
私はこの辺りかなって…アウラもそう思う?
ルースも川の底でドキドキと待ってる気がする
どんな人と縁が繋がるのかなってソワソワしながら
あ、やっと見つけた…キラキラ輝く宝物!
柘榴石
私の瞳と同じ色
私の手の中に飛び込んできた気がした
やっと出逢えたねって、あなたも思ってくれたのかな?
冷えた手足は焚火で温め、レモネードでお腹も心も温かに
とても楽しくて心が躍る
ね、セロさん
こうやって皆で楽しい気持ちを分け合うのって、すごく幸せだよね
※アドリブやアレンジ大歓迎です
雨糸・咲
楽しげな人々の姿に、自然と口元が綻んでしまいます
不条理な脅威に晒された彼等は力ある者ではないかも知れない
けれどその営みには
命の強さが確かに感じられて
だから私は人に惹かれ
添いたいと思うのかも知れません
仕事柄、スープやお茶の香りにも
ついつい気が行ってしまうのだけれど
折角なので、川で石を探したいですね
冷たい水の中に潜む煌めき達
拾い上げたのは、大好きなラブラドライト
遠目には華やかと言い難い色の中に
虹の耀きを抱いた石
陽に透かせば見える一筋の傷も、一層愛しく
一緒に帰りましょうね
今日の日を忘れないように
※アドリブ、他の方との絡み大歓迎です
境・花世
さあ石を探そうか
失くし物を探すのは得意だし
わたしの勘がぴーんと働いてくれる筈
けれど指先が掴むのは
川面に映る煌きばかり
きらりと融けて、消えて、
わたしのものにはならなくて
……でも、ひとつくらい、
ちょっぴり唇尖らせながら、
戦場で見知った顔が居れば
コツでも聞いてみようかな
成程、OK、把握した!
一際鮮やかな光を湛える場所へ
真剣な表情で挑もうとして
つるりと滑っ、あっ、
びしょ濡れで目を丸くしたのも束の間
おかしくなってくすくす笑い
格好悪いところ見られちゃったかな
おまけに寒いし、だけど存外悪くない
だってきみの笑顔が見られたし、それにね――
広げる掌にはきらきらと、
今度こそ消えない光
※行動お任せ、アドリブ&絡み歓迎
都槻・綾
素敵な祭りですね
屈んで少女と視線を合わせ
祖母殿や皆と
無事の開催を祝しましょう
祭の賑わいを漣のように楽しみ
煌く川縁を逍遥
方々で上がる歓声は
きっと幸運を掴めた証
…私も香炉に一つ
星粒を掬えたら良いな、
けれど
さて何を求めるかと問われても
返す確かな答えは無く
空いた胸の虚を覆うように
笑んで首を傾げるのみ
めぐらせた視線の先で水飛沫の音
子供が燥いで川へ入ったのか
滑って転んだひとが居るのか
冷たいでしょう
笑って手を差し出し
助け起こす
柔かな布を渡せば
ころり零れる、雫の如き欠片
小さいけれど暖かな、ひかり
あぁ
私は此れを、頂きましょう
※
セロさんや戦闘時参加の皆々との絡み、アドリブ大歓迎
縁を紡げたら幸い
掴んだ星の詳細お任せ
海月・びいどろ
WIZ
たたかいに出ていた猟兵さん、おつかれさま
…女の子、助かってよかった
きらきらひかるご縁を探しに
ボクも川の中にお邪魔してみようかな
つめたいは、よく解からないけれど
水の流れがくすぐっていくのは、なんだか不思議な心地
岩の影や、砂利の底を覗いてみよう
ときどき光って、星が流れているみたい
ほっぺにハート、ついてる人を見かけたら
どんな子を探してるのか、聞いてみたいな
…セロ、セロ。お祭り、たのしい?
どんなご縁に惹かれたのかな
今日という日にキミにつながったもの
むすばれたもの、気になるよ
ボクは今、探してる途中なの
どんな疵の、色の、形でも、その子の軌跡
いちばんに見初めた子が、もしもいたなら
そのご縁を、たいせつに
深青・祁世
他の方との絡み・アドリブ大歓迎
祭って大好きよ
皆の楽しい気分が伝播してきちゃう
雰囲気に酔うって奴かしらね?
悪戯っぽく掲げる祝杯
本当に酔っている?
まさか~
陽気な笑声が祭に溶け込む
闇雲に水へ突っ込んでも零れていくだけね
それはそれで流星みたいで綺麗だけど
折角だから掬ってみたいじゃない?
今、光った!
水流を笊で堰き止めるように
ゆっくり差し入れて引き上げるの
さらさらと揺らしてみれば――ほら、掴まえた
淡い黄玉
煌きは金にも見える小さな星
金狐の血筋に生まれた、たった一人の銀狐
憧憬も孤独も
明るい笑顔の奥に仕舞って
太陽みたいな石を空に翳してみる
うん、綺麗
やっぱり『感謝』しちゃうのよ
素敵な森を
星を
育んでくれてありがとう
アビ・ローリイット
※アドリブはじめ色々大歓迎
セロくんいるー?
祭りのたのしみ方を教えてよ、物知りさん
まぁぴょいんって川に飛び込むんだけど。一応あんま人いないはずれの方でね
セロくんてさ、こういうの好きーって思うわけ?
ばっしゃばしゃと水を跳ね上げながらつまみあげたルースを互いの中間くらいでかざしてみる
えーずっと同じ顔じゃねぇの
こうやって集めたりする癖もあるけど実はぜーんぜん詳しくない
あとよくどこやったか分かんなくなる。だからただの石のままでいい
石……青や透明な感じの色のがいーな。水底に沈むと見え辛い難易度の高さが、飽き辛くもあり好み
あの馬? 鹿? のツノ、ほんと綺麗だったんだって
君にも見せてやりたかったなぁ
オルハ・オランシュ
さすがに川の水は冷たかったなぁ……!
でも綺麗なルースを拾えたし、とっても満足
花の種ほどの小さなルースを空に翳せば星みたいに煌めいて、その淡い黄色につい顔が綻んじゃう
それなりに暖もとれたけど、もっとこう……身体の芯まであったまりたいな
さっき野菜のスープが売ってたよね
買いに行こう!
あれ、セロだ
お祭り楽しんでる?
見て見て、綺麗なルースを見付けたの
セロも拾ったのなら見せてほしいし、まだなら是非行っておいでよ
本当に綺麗だったんだから
あ、セロ
迷宮での戦いでは共闘ありがとうね
嵐に愛された男の話、もっとじっくり聞かせてほしいな
そうだ!
労いも兼ねて君にもスープをご馳走していい?
ユーン・オルタンシア
素敵な1章感謝です
がっつりお好きに動かして頂ければと
未記載人物との絡みも歓迎
以下キャラ口調で心情
リンセ(f01331)サヴァー(f02271)がいらして下さいました
ヒューレイオンの怒りを真っ直ぐ受けた戦い
僅か私の心を摩耗させた様です
負の感情にそれなり幾多と晒され慣れた心算でも道はまだ長い
慣れたいというものでもありません
リンセとサヴァーと出会いひと月程ですが
この優しい友の心遣いが身近で温かく嬉しいのは
心が瑞々しく震えるからで
鉱石達と同じく時経ても
琴線を奏でられる様にと願います
冬に川とは興味深い祭で体験する甲斐がありますね
厳寒を通じ石や火に感謝する面もあるのでしょうか
自然とはそういったものですから
リンセ・ノーチェ
がっつりお好きに動かして頂ければ
未記載人物との絡みも歓迎
以下キャラ口調で心情
ユーン(f09146)さんに
サヴァー(f02271)さんと一緒に呼んでもらったんだ
寒いけど、きらきらの石とほかほかのお店が並ぶのは楽しい
お祭りの前の戦いの話は知ってる
ユーンさん、辛かっただろうな
出会ってひと月程だけど賢くてそんな風に優しい人だと思う
僕は何ができるかな
温かい飲物で僕は悲しい時も少しほっとするし
獣奏器のパンフルート(装備参照)は少し悲しく優しい歌を奏でられる
あと僕の手はユーンさんより多分少しあったかい
傷ついても小さくても、きらきらのルース
皆は何色が好きかなって思うけど
出会えた石はどんな色形でも大好きになるね
クレム・クラウベル
出店も見応えあるものが並ぶが
此処らしいものも楽しみたい
終(f00289)を誘いルースを探しに上流へと
……寒さには慣れてるが、流石に後で暖を取りたいな
後で出店も見て回るか。スープの一つでも飲めば温まるだろう
終こそ言った傍からすっ転ばないでくれよ
冷えた水を蹴って暫く
水底に一瞬きらりと光った赤色
見つけた、と摘み上げて掲げ光に透かす
ガーネットだろうか
一筋目立つ傷はあるものの、綺麗だ
セロを見掛けたら彼にも声を掛ける
どうも。何か良いものは見つけられたか?
縁への感謝か
こうした世界だからこその催しだろうかな、面白いものだ
巡り逢わせに肖って今後も良い縁があることを祈りたいな
静海・終
祭りの雰囲気に誘われて
クレム/f03413とルースを探しに
ふむ、面白い文化でございますねえ
川辺に座り川の中のただの石を突き転がし
あまりはしゃいで足を滑らせないようにしてくださいねえ
流石にそこまで私、はしゃぎませんよお
冷めたのならあちらに暖かいものもありますからあとでもらいに行きましょう
気まぐれに手に転がり込んでくるルースでもあれば私もいただいていきましょう
クレムは何か見つけましたか?
おや、綺麗な赤ですね
セロ少年もこんにちわ
暖かいものいただいてます?
レモネードが特に美味しゅうございますよ
縁に感謝する…出会うこと、別れることもまた縁でございますね
尊き時間を共有し良きものにできるとよいですね
サヴァー・リェス
がっつりお好きに動かして頂ければ
未記載人物との絡み歓迎
以下キャラ口調で心情
ユーン(f09146)に呼ばれ、リンセ(f01331)と共に
かなしい事件を幾つも一緒に…戦い、料理や遊び…教えて、貰って
私、気づけば…誰かと、一緒にいる
それは、不思議で、…優しく、あたたかな
だから…返せたら、良い
ユーンの心、きっと、少し、痛んでる
私ひとりでは、気に留めない、露店の食物や飲物は
大切なひとたちへの、温もりと思うと…ひとつひとつ、気になって
…どんな味か、どれも、私には…予想がつかない
でも、ユーンの心もリンセの体も、きっと温めてくれそうで
賢いユーン
真実を知らず言い表すリンセ
…素敵な、友達
…だから、風邪を引かないで
ロシュ・トトロッカ
アーニャやおばあちゃんにケガがなくてよかった!
あ、セロもお疲れさまー!
君もお祭り、楽しんでる? 良いものは見つかった?
ぼくは今からルース探しにいくとこ!
よかったら一緒にどう?とおさそい
わ、つめたーい!
ふふ、でも自然に触れてるみたいで楽しいかも!
素足にふれる水の冷たさに川底のじゃりの感触
作りものの再現とはやっぱりちょっと違うかも
空の色も、水の色もずっと透明に見えちゃう!
水ごしだとどの石もなんだかキラキラして見えて
むー、やっぱり簡単には見つからないね
一度からだをあっためようかなと思った先
…あ! これ、そうかな?
つまみあげたラリマーを光に透かして
見て、きれい!
海の底を見てるみたい
(アドリブ・絡み可)
●祭りの喧噪で
「アーニャちゃん!」
手を振って飛び跳ねる少女を見付けて、胸いっぱいに広がった安堵のままに岡森・椛も同じように大きく手を振り返した。
「お姉ちゃん!」
ぱっ、と更に表情を明るくして椛に少女が抱き付く傍で、アーニャに視線を合わせて腰を折り、都槻・綾も淡く微笑んだ。
「素敵な祭りですね」
皆が無事で、そして祭りを開くことができて良かったと。そう静かに告げる。
ロシュ・トトロッカも後ろに手を組み祖母の表情を覗き込んで、にっこり無邪気な笑顔を向けた。
「ほんと、アーニャやおばあちゃんにケガがなくてよかった!」
祖母が丁寧に礼を述べるのを見て、そして小さな町の祭りの賑わいへと視線を巡らせ、雨糸・咲も自らの口許が自然と緩むのを感じる。
不条理な脅威に晒された町人達等は、猟兵のようにそれを退ける『力』ある者ではないかも知れない。けれど咲には、その営みに息づく命の強さが確かに感じられるから。
──だから私は人に惹かれ、添いたいと思うのかも知れません。
どこか晴れやかな気持ちで祭りの気配を胸に吸い込めば、漂うスープの塩っぽい香りに惹かれつつも、彼女は喧噪の中を泳いでいく。
同じように賑わう町の中へゆっくりと歩を進め、ユーン・オルタンシアは我知らず右の手を胸に添えた。
きゃら、きゃら、きゃら、と無邪気に笑う仔竜達。そしてその向こうで人間への怒りに瞳を燃やしていたヒューレイオン。
こうして人々の営みを守ることができたことへの安心感は確かにあるのに、どうしてだろう、不思議とまだ、その瞳の幻影が彼の心を苛む。
──初めてのことでも、ないのに。
怒り、悲しみ、憎しみ。これまでとて幾多の負の感情に曝されてなお、今回まっすぐにぶつけられたその感情達は、僅か心を疲弊させたようだと、どこか冷静に見つめる自分に彼は小さく苦笑した。
──慣れたいと言うものでもありませんが。
そんな彼を見上げて、サヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)は銀の瞳を瞬く。彼女の表情は変わらないけれど、僅か曇った銀が雄弁に気遣いを滲ませる。
──ユーンの心、きっと、少し、痛んでる……。
察することができるのは、彼女自身もいくつもの悲しい事件を乗り越えてきたからだ。
羽音を立てない梟の翼は彼女を世界に融かした。それでも、戦いだけではなく、料理や遊びも教えてもらった。振り返ってみれば判る。
──私、気づけば……誰かと、一緒にいる。
それは不思議で、優しくて、あたたかで。
だから返したいと、そう思うのに、彼女にはその方法が判らない。
きょろり、祭りの町を見遣る。温かな湯気を立てるスープに、他にも焼いた野菜や肉の串。それはサヴァーにとって、普段ならただの景色だ。遠い世界の出来事で、触れることを望むことすらない場所。
けれど、ユーンと、共に駆けつけたリンセ・ノーチェ(野原と詩と・f01331)……大切なひと達のためにと思えば、ひとつひとつの味も気になってくる。あれはすき? ねえ、これはどう? 想像もつかない未知への興味が、彼女を浮き立たせる。
そわり視線を彷徨わせるサヴァーの向こう側で、リンセも浮かない顔のユーンを見上げた。付き合いは決して長くはない。それでも優しい彼がつらかっただろうと慮ることはできる。
──僕はなにができるかな。
首に下げたパンフルートは、少し悲しく優しい歌を奏でられる。温かい飲み物は悲しいときも少しほっとさせてくれる。あとは。
「、」
左手に感じたぬくもり。驚いたように振り返ったユーンに、ぱちぱちとリンセは丸い瞳を瞬かせて笑った。
──うん。僕の手は、ユーンさんより少しあったかいから。
逆側の手をサヴァーにも差し出して、リンセはふんわりと笑った。
「ね、ユーンさん、サヴァーさん。お祭り、楽しもう?」
楽しみだったんだ、と告げる彼に、サヴァーと顔を見合わせ、それからユーンも相好を崩し、そのあたたかな掌を握り返した。
「……はい。そうですね」
●川底の星々
「うー、やっぱり冷たいなぁ……!」
ふるるるっ、と大きな耳を震わせるオルハ・オランシュ(アトリア・f00497)の傍で、グァーネッツォ・リトゥルスムィス(超極の肉弾戦竜・f05124)は「そうか?」と金色の瞳をきらきら。
出逢うルースへの期待と興奮が、彼女に寒さを感じさせない。
「ここか? ……うーん、これ、……は違うか。へへっ、こうやって探している時がある意味一番楽しかったりするんだよな」
ぱしゃぱしゃと川底を笊で浚っては、空振りでも嬉しそうにする彼女の姿を、咲も微笑ましく眺める。
「ええ、本当に……あ、」
ほんのちょっぴり胡桃色の瞳を見開き、袖を軽く捲って流れに腕を差し入れて、グァーネッツォの足許に見付けたのは、
「ん? それ、普通の石だろ?」
興味津々、咲の手許を覗き込むグァーネッツォとオルハに咲は小さく口許を綻ばせて、そっと掌にそれを転がす。灰がかった石に「あっ、」蒼、黄……虹の輝きがきらり。
「とある場所では、ラブラドライト……というんです」
彼女の大好きな、揚羽蝶の翅のような石。陽に透かせばはっきりと見えてしまう傷も愛おしく感じる。
「一緒に帰りましょうね。今日の日を忘れないように」
長い睫毛を伏せて語りかける彼女の姿に、グァーネッツォとオルハもまだ見ぬ出逢いへと瞳輝かせ、せせらぎの煌めきに指先をくぐらせた。
川辺の砂利の上に座って、手遊びのように浅瀬の石を転がして。
色んなところで人々が川の底を覗く姿に赤い瞳を細め、静海・終(剥れた鱗・f00289)は唄うように告げる。
「ふむ、面白い文化でございますねえ。……ねえクレム。あまりはしゃいで足を滑らせないようにしてくださいねえ」
「終こそ言った傍からすっ転ばないでくれよ」
「流石にそこまで私、はしゃぎませんよお」
くすくす、指先をすり抜けていく水の冷たさを楽しむ彼の視線の向こう側で、ばしゃ、ばしゃ、と水面を蹴ってクレム・クラウベル(paidir・f03413)が川の中を歩く。
巡らせる視界には、人々の笑顔。青い空に、澄んだ水。
祭り。
──不思議な感覚だ。
かじかむ指先、脚を這い上がる冷たさ。普段の自分なら、いくら寒さに慣れているからと言ってもきっとこんなふうに自ら冬の川に入るなんてことを選びはしなかっただろう。
──……縁への感謝、か。
だけど、この冷たさもこの空気も、嫌いじゃない。面白いと感じるのは、こうした世界だからこその催しだから、なのだろうか。
「……ん、」
佇んだ彼の足許。さざ波の向こう側、きらり光った赤。
惹かれるように手を伸ばして、ぱちゃり。抓んだ指先に光るのは、深い紅を湛えた小さな柘榴石。
「なにか見つけましたかあ?」
終が口許に片手添えてのんびりと声を張り上げるのに、クレムは黙したまま川べりへと歩みを進め、その縁を見せてやる。
「おや、綺麗な赤ですね。見てください、私も見付けたんですよ。ふふ。こんな川の端っこにまで来てくれるなんて、縁を感じますねえ」
抓んだ指先には霞む白に虹色抱いた、月長石。
それを似合いだと感じたかどうかは判らないが、クレムは小さくひとつ肯くと川から上がった。
「……出店も見て回るか」
「そうですね。あちらに暖かいものがありますから、もらいに行きましょうか」
あったあ! ねえ見て見て! 方々で上がる歓声と、弾ける水音。
川沿いの道をゆるり歩く綾は我知らず笑みを零す。懐に携える香炉に触れて、
「……私も香炉にひとつ、星粒を掬えたら良いな、」
ぽつり告げたその声に傍らの『縫』がなにを探すの、と言いたげな視線を寄越すから、彼は小さく首を傾げていなす。
『うつくしきいろ』の傍に寄り添う。ただそれだけを求める彼に、選り好みはない。
どこから川へ向かおうかと改めて視線を遣ったそこに、綾は見知った顔を見付けた。
失せもの探しは得意だよ、と腕を捲って。
ぱしゃん、ぱしゃん。楽し気に水を跳ねさせるのは境・花世。けれど彼女が掴むのは、眩むような水面の煌めきばかりだ。
きらりと融けて、消えて、彼女のものにはならなくて。
──……でも、ひとつくらい、
それも綺麗だけどと唇を尖らせる花世に、深青・祁世はくすくすと笑ってしまう。
「あら、ごめんなさい。それはそれで流星みたいで綺麗だけど、折角だから掬ってみたいじゃない?」
「そうなんだよね。コツとかあるのかな」
「そうねぇ。あ! 今、光ったでしょ?」
ぱ、と指さして、祁世は花世へ任せてとウィンクひとつ。
「水流を笊で堰き止めるようにゆっくり差し入れて引き上げるの。それで、さらさらって揺らしてみれば──……ほら、掴まえた」
無理のない流れるような動きで祁世の掌に転がったのは、小粒の淡い黄玉。煌めきは金の輝きを帯びる星。その色合いを陽に翳して、ふ、と祁世は青い目を細める。
それは一族の、堂々たる金の毛並を彷彿とさせた。たったひとり、己だけが持つことができなかった色。
けれど。
「……うん。綺麗」
胸に湧き上がる憧憬も孤独も、笑顔の奥に仕舞いこんで。祁世はほらっ、と花世へと石を見せる。
「成程、OK、把握した!」
励ますようなその仕種に、花世も奮い立ち、視線を巡らせてひと際鮮やかな光を湛える場所へ真剣な面持ちで向かって、
「──あっ、」
「花世ちゃん!」
滑った、と感じたと同時に、くるん、と世界が回った。祁世の悲鳴。
一層に高い水柱、きらきらと散る水滴。
「……ふ、ふふっ」
頭にも水をかぶって一瞬呆気に取られた花世だったけれど、徐々におかしさが込み上げてきて笑いが零れ落ちた。
「冷たいでしょう」
「格好悪いところ見られちゃったかな。寒いし冷たいし、だけど存外悪くないよ」
そんな彼女に川べりの綾が柔らかな布を差し出し、彼女はありがたく受け取りながら、傍に来た祁世にもだいじょうぶと笑顔を見せる。
「だってきみの笑顔が見られたし、それにね──」
ほら、と開いて見せた掌には、やっと捕まえた、消えない光。その紫水晶は、先程まみえた仔竜のことを想起させる。
「……きみ色の鉱石。……確かにあったね」
「良い出逢いでしたね」
満足気に笑う花世に手を貸して助け起こし、ぽたぽたと滴る雫達の中「おや、」ころりと転がり落ちたそれを咄嗟に受け止めて、綾も眦を和らげた。
「あぁ、私は此れを、頂きましょう」
花世と祁世に見せたのはあたたかで柔らかな橙色の光を閉じ込めた、蛍石。
思い掛けない出逢いに花世は笑みを咲かせ、祁世はそんな花世に驚かせないでよね、と苦笑を浮かべて。
それから、そっと川の上流へと視線を遣る。正式には、そこへ『拡がった』森へ。
──……やっぱり、『感謝』しちゃうのよ。
素敵な森を、星を。
育んでくれて、ありがとう。
「わ、つめたーい! ふふ、でも自然に触れてるみたいで楽しいかも!」
素足を浚う流れる水。足底に触れる砂利のでこぼことした感触。
「作りものの再現とはやっぱりちょっと違うかも。空の色も、水の色もずっと透明に見えちゃうね!」
データで見た世界。それにこうして触れられることが嬉しくて満面の笑みを浮かべるロシュの声に呼ばれたみたいに顔を上げ、きらきら光るご縁を探しに川へと足を浸した海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)はぽやぽやと瞬いた。
「あれ、……セロ、セロだ。お祭り、楽しんでる?」
「楽しんでますよぉぉ」
椛とロシュにいざなわれた川の真ん中で、セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)は身体を震わせながら応じる。
そこは、ひとの少ない上流側の場所。
「セロくんてさ、こういうの好きーって思うわけ?」
「ひにゃあああちょ、ワンさんワンさん、尻尾!」
ばっしゃばっしゃと大きな身体で川を進むアビ・ローリイットのふさふさの尻尾もばっしゃばっしゃと嬉しげに水面を叩いて、その飛沫が散るのにセロが悲鳴を上げた。
「……セロさん寒いのダメなんだね」
ね、アウラ。ちょっぴり悪いことをしただろうかと眉を寄せて告げる椛の肩に頬杖をついた風の精霊が、情けないものを見る眼をする。
賑やかな様子を見つめて、びいどろはそっと自分の足許を見下ろす。
──つめたいは、……よく解からないけれど。
水の流れがくすぐっていくのは、なんだか不思議な心地だ。
「……ね、セロ。どんな子探してるの?」
「んんー……おれは、誰でもいいんですけどねぇ。そういうあんたはどうなんです?」
ぱしゃり、ちっとも川底を浚う気もない様子で水面を撫でる彼に、びいどろはくてりと首を傾げる。
「ボクも今、探してる途中なの。どんな疵の、色の、形でも、その子の軌跡だし」
びいどろの言葉に、椛もこっそり肯く。そう。どんな石にでも、どんな子にでも、物語がある。
「この辺かな……アウラもそう思う?」
水の底に目を凝らす彼女の肩で、『アウラ』も身を乗り出して一緒に探す仕種。微笑んで椛はきっとこのどきどきする気持ちを、川底で同じように抱いて待っているルースに想いを馳せる。
繋がる縁は、わくわくする。
そのわくわくも、伝播する。
「えーずっと同じ顔じゃねぇの」
「ほんと。水ごしだとどの石もなんだかキラキラして見えるね」
アビが抓み上げた石は水から上がって陽の下で見ると彩りが違っていて。ロシュの言葉にふしぎ、ふしぎとアビは首を傾げつつ、放り出してまたぱしゃんと水を叩く。
「なーセロくん。あの馬? 鹿? のツノ、ほんと綺麗だったんだって。君にも見せてやりたかったなぁ」
「おれも予知で視ちゃいますが、……実際に見るとやっぱり違うんでしょうね」
青や透明の石がいい。水底に沈むと見えにくくて、飽きづらいから。
そんな言い訳の裏に、まみえた敵の面影を追って腕を沈めるアビの顔の傍の水面を「おりゃ」セロが叩いた。
「わっぷ」
「お返しー」
「へぇー。てことはやり返されてもいいってこと?」
「……なにしてるの」
どこか呆れたような、それとも純粋な疑問のようなびいどろの声の向こうで水飛沫が上がるのをくすくす見遣った椛が、はた、と向けた視線の先。水にくぐらせた掌の上に、飛び込んできたような気がした、それ。
「あ、やっと見つけた……キラキラ輝く宝物!」
それは、小さな小さな柘榴石。彼女の瞳と同じ色のそれ。
「やっと出逢えたねって、あなたも思ってくれたのかな?」
嬉しさにふやりと表情が緩むのは、仕方がない。
そんな椛を見上げ、しゃがみ込んでいたびいどろも、もう一度岩の影を覗き込む。
「……あ」
見初めたのは、丸い月長石。
やわらかそうな、でも指先に触れるのは確かな石の硬さ。
──……ようこそ。
初めまして。
ちらほらと出逢いを見付けるひとが増えてきた中で、ロシュは小さく肩を落とした。
「むー、やっぱり簡単には見つからないね」
「中心の場所からちょいと離れてますからねぇ」
おれもまだですよ、と告げるセロに、セロは遊んでたからでしょ、とロシュも返す。
一度身体を温めてから再挑戦しようかと、少年が小さく蹴り出した一歩の、その先。
「……あ! これ、そうかな?」
ぱしゃん。飛びつくようにロシュが捕まえたのは、ペクトライト。淡水色に水面模様。ある場所ではラリマーと呼ばれるそれ。
「見て、きれい! 海の底を見てるみたい!」
ぱあっと笑顔の咲いた顔に、その場にいた誰もが彼を祝福した。
縁を紡いだ、澄んだ中に紫の筋を持つ蛍石の水を払うユーンの傍で「わっ」同じように水に手を差し入れていたリンセがきらきらとした瞳で歓声を上げた。
「あ、ユーンさんも見付けた? 僕も出逢ったよ」
サヴァーさんは? 振り返ると、少女は両手の中に包んだ小さな黄玉を見せて、こくこくと肯いて見せる。
「わ、みんな綺麗だね!」
そんなリンセが見付けたのは、鮮やかな緑色の蛍石。
「えへへ。出逢えた石はどんな色形でも大好きになるね」
「……ええ。……でも、みんなが風邪を引かないように……あたたかいもの、……もらいに行きましょう」
──……あのスープは、ユーンの心もリンセの体も、きっと温めてくれる。
あたたかな彼の言葉と彼女の心遣いにユーンは微笑んで──そして気付く。引きずられていた重たい気持ちも、いつの間にかすっかり溶けて消えてしまっていた。
冬の川に入るという祭りは、厳寒を通じ石や火に感謝する面もあるかと、そう思っていた。自然とはそういうものだから。
だけどそれだけではないのだろうと、彼は誰にも知られないように首を振る。
石や火だけではなくて、太陽の光も、傍に居てくれる人の優しさも、土の柔らかさも、すべてがあたたかいことを知ったから。
●祭りの終りに
ぱちぱちと、焚火の揺れる傍。同じく火を囲む仲間と祁世が杯を合わせる。
「乾杯! え、本当に酔ってるって? まさか~」
「苦労して手に入れたルースを見ながら飲むお茶は最高だぜ……」
じんわりと血流が戻っていく指先にグァーネッツォが抓むのは、疵はあるもののそれなりに大きな黄玉だ。まるで彼女の大きな瞳にそっくりで、火に透かせば橙帯びる。
「ん。……どうも。何か良いものは見つけられたか?」
セロを見付けたクレムが軽く会釈をすれば、彼はあぁ、と視線を和らげ、終も「温かいものいただいてます?」と首を傾げた。
「レモネードが特に美味しゅうございますよ」
「へぇ、それはいいことを聴きました。あとでもらってきますよ。あんた達はどうでした? 良い出逢いはありましたか?」
「セロくん、俺のこれなんて石だっけ」
「あんたじゃねーですよ。あと蛍石ですよ、綺麗でしょ。……おれはご覧の通り、黄玉です」
お陽さまみたいでしょ、と隣に座るアビのさほど強い興味もなさそうな声に応じつつ告げるセロに、そうかとクレムは肯いて、手の中の柘榴石を握った。
「巡り逢わせに肖って、今後も良い縁があることを祈りたいな」
ほんの微か、口許を緩めたように見えたその顔を振り仰いで、セロはに、と笑う。
「ありますよ」
なんの根拠もなかったけれど、彼はそう言い切った。
火の傍を離れ、終が月長石を掌に転がす。
「……出会うこと、別れることもまた縁でございますね」
そこで一旦言葉を切って、彼はクレムの横顔を見るともなしに見遣った。
「尊き時間を共有し、良きものにできるとよいですね」
「……そうだな」
焚火に当たりながら、オルハは澄んだ淡い黄玉のルースを空に翳す。花の種ほどの小さなルース。けれど星みたいな輝きを秘めたそれに、自然と表情が綻ぶ。
とっても満足、だけど。
やはり冬の寒さは相当に厳しくて。
──それなりに暖もとれたけど、もっとこう……身体の芯まであったまりたいな。
ちらり、町の様子に野菜のスープの香りを思い出し、
──買いに行こう!
すっくと立ち上がったところで頬のハートのペイントを見付け、「あれ、セロだ」オルハはその傍へ寄った。
「お祭り楽しんでる? 見て見て、綺麗なルースを見付けたの」
「楽しんでますよ」
やーあったかいのがいちばんですよね、なんて零しながらオルハの掌の可愛らしいルールに、ぱちりと彼は東雲色の瞳を瞬いた。
「お。一緒ですね」
「ほんと? あ、ほんとだ。多く採れるのかな」
同じ黄玉でも、色味と形が違えばまったく別のものの輝きを持つ。
見付けたときの話を交わす中、ふと「あ。迷宮での戦いでは共闘ありがとうね」と思い出したようにオルハが告げた。
「嵐に愛された男の話、もっとじっくり聞かせてほしいな」
「美しくもねー話ですが、いいんですか?」
それは彼がかつて出会ったひとりの盗賊の話だ。思い掛けない申し出に瞬く彼へ、いいよと肯いたオルハは「そうだ!」と元気よく両手を合わせた。
「労いも兼ねて君にもスープをご馳走していい?」
「や、やー……ちょいとお嬢さんに奢らせるのは、なんつーか。ダメな気が」
だからと、彼も立ち上がる。
「あんたの分はおれが出しますよ、それでアイコでしょ?」
陽も傾き始めて風が冷たくなり始めるのを、手にしたレモネードと焚火に暖をとりしのぎながら、椛は改めて祭りの様子を眺める。
そこここで、新しい出逢いにみんなが笑い、過ごす。
それはなんてあたたかい物語なんだろう。
「さっき」
不意に掛けられた声に椛が顔を上げると、ハートのペイントを左頬に持つ少年が苦笑ともつかないような笑みを向ける。
「誘ってくれて、ありがとうですよ」
「でも、寒かったんじゃない?」
「まじで嫌だったら行かねーですよ」
肩を竦める彼に、良かったと小さくひとつ安堵して「ね、セロさん」椛は甘くてあたたかいレモネードをひと口。
あの守護者には、伝わらなかったけれど。
それだけがやっぱり少し、悲しいけれど。
椛は瞼を伏せて零した。
「こうやって皆で楽しい気持ちを分け合うのって、すごく幸せだよね」
大成功
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