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ギスギス×でお願いします

#キマイラフューチャー #エクセレント・エクスプローラーズ

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#キマイラフューチャー
#エクセレント・エクスプローラーズ


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●ゲームは仲良く
「くそぉ、またワイプだ1」
 キマイラの少年は苛立たしげにコントローラを投げ捨てた。画面にはプレイヤーキャラクターたちの無残な姿。ワイプとはこのゲームの用語であり、全滅を意味する。
『どまです~』
『気を取り直していきましょ^^』
『次はクリア出来ます!』
 互いを励まし合うチームメイトたち。少年もチャット欄に文字を打とうとし……ふと、隣にある別の画面を見た。そこには動画配信サイトが表示されている。
『マッソさんすげえ!』
『またWFじゃね?』
『やっぱマッソさんパねえわ』
 WFとはワールドファーストの略称だ。動画内ではボスが次々と撃破されており、その中には少年が挑戦中の敵キャラもいた。コメントは配信者への称賛で溢れかえっている。
 少年はキッと表情を変え、ゲーム画面に向き直るとすさまじい速度でキーボードを叩いた。
『もう少し真面目にやってくれませんか』
『ヒーラーさん動き理解してます?』
『装備もプレイヤーテクニックも貧弱すぎ』
 おお、なんという剣呑さ! 最初はなだめようとしていたチームメイトたちも、少年の物言いに段々と雰囲気が悪く……ギスギスしていく!
『でも偉そうに指摘してる魔道士さんもミスしましたよね』
「はぁー!? 俺の画面では避けてたし! ふざけんなこのXXXX!!」
 ブチギレた少年は、もはやここに記すも憚れる罵詈雑言を連発する。やがて『チームが解散されました』という文字が大きく表示され、ロード画面に移行した。
「くっそぉお……ヴォシダあああああ!!」
 少年の叫びは虚しくこだました。ちなみに、ヴォシダとはゲーム内のボス名である。

●グリモアベース
「エクエクは遊びじゃないのよ!!」
 グリモア猟兵、白鐘・耀はいきなり叫んだ。目の下にクマが出来ており、可憐とはとても言いがたい。血走った目で猟犬たちを見渡すと、眼鏡をかけ直す。
「……今回の行き先はキマイラフューチャーよ」
 いま、キマイラフューチャーで大流行のロールプレイングゲーム、エクセレント・エクスプローラーズ(通称・エクエク)。これが予知に関係しているのだとか。
「MMORPGってわかる? いわゆるネットゲームってやつよ。エクエクもそのひとつね」
 耀いわく、エクエクには『レイドバトル』と呼ばれるモードがあるらしい。何人かでチームを組み、協力して手強いボスを倒すというものだ。無論、難易度は高い。
「装備はもちろんチームワークも必須。タイムライン……ええと、ボスの攻撃順とか行動を頭に叩き込まないといけないの。一番難しいのは『極式』っていうモードなんだけど、ここまで来るともはや大縄跳びね。ワンミスがワイプに繋がるのよ。遊びじゃないの」
 早口で語る耀の目が据わってきた。はっと我に返り、咳払いする。
「と、とにかく。あちこちのチームが世界最速クリアを目指して攻略中なのよ。で、そのトップチームにオブリビオンがいるってわけ」
 怪人は『マッソさん』という謎めいたハンドルネームを名乗り、動画を配信している。怪人の正体はまったく完璧に不明だが、奴の目的と筋肉は判明している。
「怪人はゲームの雰囲気を悪くしたがってるのよ。ギスギスした空気でこそプレイテクニックが発揮されるとかなんとか、適当こいてるみたい」
 動画配信では絶えず罵詈雑言が飛び交っており、そのくせクリアは最速。おかげでプレイヤーのキマイラ達は影響を受けてしまい、ギスギスが蔓延しているようだ。

「予知は動画配信者の交流会で起きてしまうわ」
 当然、謎のマッスル怪人が仕掛けた罠である。配信者たちはリアルでもギスギスしてしまい、やがて乱闘騒ぎを起こす。そして暴徒と化し、混乱をばらまく。
 正体不明筋肉怪人の野望を打ち砕くには、猟兵たちがその間違いを証明しなければならない。ゆえにあえて騒ぎを起こさせ、それを鎮圧するべきだと語る。
「そうすれば怪人も出て来ざるを得ないわ。そこでゲーム勝負を挑んで、ぶちのめせばいいのよ! ぶち! かませば!! いいのよ!!!」
 大事なので二回言った。
 実態が謎に包まれたアルパカ怪人は、おそらくエクエクを使った対決を要求してくるだろう。たとえば、レイドバトルの攻略スピードを競う、といったふうに。
「あんた達に得意なゲームがあるならそれを使って勝負してもいいと思うわ。ようは、ギスギスしてもゲームは上手くならないって証明すればいいのよ」
 重要なのは、ゲームで怪人を下すこと。間違ってもアツくなりすぎて罵詈雑言を吐いてはいけない。イカサマをするとかそんなことをしてはいけない! 絶対に!!
「まあこいつ多分チートしてるから、少しぐらいルール無用の残虐ファイトしてもいいと思うけどね。ゲーム機に毒針仕込むとか」
 身も蓋もなかった。とはいえ、それでも『ゲームで勝負する』ことは前提である。

 どのような形であれ怪人の間違いを証明すれば、キマイラ達は正しいプレイヤー意識を取り戻すだろう。そうなればあとは猟兵の本分、つまり戦闘でケリをつければいい。
「怪人のことは何もかもわからないけど、とにかくマッチョなのは間違いないわね」
 耀は至極シリアスな顔で言った。
「転送先は交流会場のすぐ近くよ。騒ぎが起こり始めた頃合いに乱入すればいいわ」
 そこから先は猟兵次第。火打ち石を取り出すと、耀の目がどろりと濁る。
「怪人の分際で私より進行度が上とかナメんじゃないわよ……確実にぶちのめしなさい」
 滴るような憎悪がこもっていた。多分彼女も攻略中なのだろう。
 いまいち締まらない雰囲気のなか、カッカッと火打ち石が鳴ると、転送が開始された。


唐揚げ
 第六猟兵シナリオマスター兼プレイヤー兼夕食、唐揚げです。
 オープニング、いかがでしたか。エッ、読んでない?
 そんな方のために、シナリオのまとめです。

●目的
 暴徒化した動画配信者キマイラ達の鎮圧。
 怪人とのゲーム対決に勝利し、相手の主張を打ち崩す。
 オブリビオンの撃破。

●敵戦力
 まったく完璧に謎の正体不明マッスル怪人(ひとり。つよつよ)

●備考
 怪人は『マッソさん』というHNを名乗っているが、本名は別らしい。
 ゲーム対決は『エクエク』を使っても、別のゲームを使用してもよい。
 レイドボス、ヴォシダの正式名称は『暗黒魔人ヴォイド・シーダー』である。

 だいたいこんな感じです。以下はもう一つの注意点。

 『エクエク』で対決する方のプレイングはマッチング……もとい、まとめて採用させていただく予定です。
 担当の役割(ヒーラーやアタッカーなど)とかあるとそれっぽくなると思います。
 (必須ではありません)
 怪人と一対一で勝負をしたい方はその旨をご記入ください。ゲームタイトルを捏造してみてもいいかもしれません。
 (もちろん、なければこちらでそれっぽいのを考えます)

 では前置きはいい加減にして。
 皆さん、ギスギス×でよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『顕示欲の暴走』

POW   :    力づくで暴徒を鎮圧する。逃げ遅れた市民をかばう。

SPD   :    暴徒を挑発しおびき寄せる。市民の避難を先導する。

WIZ   :    暴徒たちを諫めて冷静にさせる。安全な場所を確保する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「情弱プレイヤー乙!」
「リアルにペロらせてやろうかアァン!?」
「はちみつください!」
 本来楽しくあるべき動画配信者たちの交流会場は、いまや罵詈雑言と暴力の坩堝と化していた。彼らは口汚く罵り合い、胸ぐらを掴んだりラップバトルを繰り広げたりなぜかカードゲームを始めたりしている!
 その模様を撮影するカメラの隣にはPCが設置されており、視聴者たちのギスギスコメントが流れている。すべては怪人の罠か!
 ここには、純粋にプレイヤーとの交流目当てでやってきたキマイラ市民もいる。彼らを守ることが、怪人の陰謀を打ち砕く第一歩となるだろう。
『ギスりすぎてて草』
『ちょっと待てよ!』
『なんです?』
『あれは猟兵!!』
 視聴者の誰かが、猟兵の突入に気づいたようだ。コメントの流れが一変し、ヒーローたちの動きを見守っているのだとわかる。
 力づくで抑え込むか。
 あるいはリアルヘイトを稼いで矛先をずらすか。
 はたまた論破……もとい、冷静になだめるか。
 すべては猟兵次第だ!
リリカ・ネムリカ
ゲームは皆で楽しく遊ぶべきツールやのに、それをこんな不和の元にするとは許せんね!うちが性根を叩き直したるで!
まずは夜を統べる闇の王(脳内設定)らしくかっこよく登場!威厳ある態度でエクエク勝負を挑むで!
「くっくっく、貴様の得意な遊戯で雌雄を決してやろう。無論、勝つのは我だがな……」
ジョブはうちの得意なヒーラー!皆で仲良く楽しく友情パワーで勝利や!
……ってあああ今床踏んだん誰なん!?予習してきいや!まさかタイムライン覚えてへんとかちゃうやろな!?
余計なヒールさせんといてなうちの火力が落ちるやろ!何回床転がってんねんその強衰弱デバフ舐めとんのん?
もう知らん!うちのせいやないからな!(ギブアップ投票)


ピリカ・コルテット
皆さん、エクエクは好きですかー!?私も極式大好きでーすっ☆
順番に足を引っ張り合って中々進めず苛々しちゃう気持ち、よーく分かりますっ!
喧嘩もいいですが、もっと早くクリア出来る方法があるんですよ~!

それはミスを許し合う事ですっ!
ゲームなんですから、進んで行く過程を楽しまなきゃっ♪
うっかりミスをしたっていい!その失敗を、次の同じシーンに活かせばいいんです!
エクエク好きな皆さんなら、同じミスを永遠に繰り返す事なんて絶対ない!
苦手でも直に慣れますからっ!
一緒に戦う仲間を信じ、未来に投資するつもりでお互い優しく助言し合って、全員で勝利の美酒を味わいましょうっ!

喧嘩よりも一緒に楽しくエクエクしましょうねっ☆



おお、夜を統べる闇の王よ。ヒトのカタチをした紅き災厄よ!
 高貴なる御身は優美にして強大、魔性なれども輝きは神々しく。
 おお、旧き血の新たな真祖よ。乙女の姿をした皓皓たる禍よ!
 そのかんばせは天上に咲く華のよう。双眸は……双眸は、こう、赤くてきれい。
(アカン、帰ったら表現辞典読み直さんと!)
 リリカ・ネムリカ(ダンピールの死霊術士・f00585)の脳内リハーサルはそんな感じで終わった。
 いける。完全に夜魔の皇女モード入ってる。バリバリ確変してる。さあ突入だ!
「くっくっく……不届きなる怪人よ。我こそは夜を統べる闇の王(自称)!」
 自慢の髪をふぁっさーとたなびかせ、威厳たっぷりにエントリー。真祖の中の真祖(要出典)はナメられたら終わりだ。
「ゲーム……遊戯は不和の種にあらず。みんなで楽しく……ちゃうな、えーっと」
 間。
「……とにかく。その歪んだ性根、我が叩き直してくれよう!」
 決まった……! 改心の笑みを浮かべる闇夜の支配者(独自研究)リリカ。
 あとは勝負に持ち込むだけだ。野良チームで鍛えたヒールワークを見せてやる!
「貴様の得意な遊戯で雌雄を決してやろう。無論、勝つのは我……あ、あれ?」
 想定した反応がない。そこでようやく、リリカは状況を把握した。
「怪人おらんやん!?」
 然り。周りは暴徒ばかりで、怪人はまだ現れていないのだ!
 おまけにえらく独特な登場をしたもんだから、全員きょとんとしている。
『え、なにあれ』
『ロールプレイ?』
『いやガチなやつじゃね?』
「え。あ、や、我……いやうち、ちゃう、ちゃうねんて」
 夜闇の魔姫(誰によって?)などと言っている場合ではない。もはや公開処刑だ。
 ギスギスの矛先が、泣き虫田舎娘に向かいかけた……その時!

「皆さん、エクエクは好きですかー!?」
「ひゃああっ1?」
 突然の大声に、リリカは慌てて振り返る。会場の視線も自然とそちらへ。
「はーい、わたしですよーっ♪ 極式大好きのピリカです!」
 ピリカ・コルテット(Crazy*Sunshine・f04804)は笑顔で両手を掲げてみせる。
 すると彼女から放たれる眩しい光! だが説得目的なのでダメージはない!
「うおお、まぶし!」
「め、目があ~」
 目が眩む暴徒たち。リリカは間近で光に晒され、ぽかんとしていた。
「中々進めず苛々しちゃう気持ち、よーく分かりますっ!」
 ピリカはぐっと両手を握り、力強く頷く。配信者たちも思わずつられる。
「喧嘩もいいですが、実はもーっと早くクリア出来る方法があるんですよ~!」
『な、なあんだってー!?』
『猟兵さん、それは一体!?』
 視聴者からの合いの手に、ピリカはおひさまのような笑顔を見せた。
「それは、ミスを許し合う事ですっ!」
 ……場が静まり返る。リリカもまた、彼女の話に聞き入る。
「ゲームなんですから、進んで行く過程を楽しまなきゃっ♪」
 ピリカは語る。ミスをしてもいい、それを次に活かせばいいのだと。
 ここに集ったエクエク好きなら、同じミスを繰り返すなどありえない。苦手でも慣れていけばいい……仲間を信じるのだと、正面から言葉をぶつける。
「仲間を、信じる……」
 リリカの呟きに、ピリカは微笑む。そこでリリカは気づいた――彼女は、自分を慮ってくれているのだと。あのままだったら一体どうなっていただろうか?
「みんなで助言しあって、勝利の美酒を味わいましょうっ!」
 ピリカは全員に語りかけ、また握り拳を作った。
「喧嘩よりも一緒に楽しくエクエクしましょうねっ☆」
 少なくとも、彼女に罵詈雑言を返すような輩は誰ひとりとしていなかった。

「あ、あの、うち……」
「ありがとうございますっ、闇の王さん♪」
「えっ」
 ピリカはぺかーっと輝かんばかりの笑顔を見せた。
「あ、名前のほうがよかったです? えっと~」
 そこでリリカはペースを取り戻し、おほんと偉そうにしてみせる。
「わ、我は夜を統べる闇の王! リリカ・ネムリカである!」
「じゃあ、リリカちゃんですね! おかげで、皆さんにお話を聞いてもらえました!」
 リリカが一同の注目を集めたからああすることが出来た、とピリカは笑う。
 経緯がどうあれ、それは事実だ。ふたりのインパクトと主張は、その場の雰囲気を大きく変えたのだから。
「そ、そうであるな! うむ、我の思惑通り。ゆえに我が名を呼ぶことも特別に許そう!」
「ふふっ、よかった」
「……それにしてもうちら、名前似てへん? てか、エクエクやってるん?」
「うん、そりゃあもうっ!」
 紆余曲折を経て打ち解けた二人は、きゃぴきゃぴエクエクトークに花を咲かせる。
 そんな二人の楽しげな雰囲気もまた、ギスギスを緩和する一助を担うのだ。

(……勝負してたらめっちゃギスりそうやったんは黙っとこ)
 そんな事実はなかった。時間とか言語を超えるなんかの力が見せた幻である。
 このあとの勝負次第ではまだわからないが! が!!
 さらにいうと、また暴れだす暴徒がそこそこいたので、まだまだ鎮圧は必要だ!
 引っ込みつかなくなることって、誰しもあるよね!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニコ・ベルクシュタイン
対人コンテンツ…罵詈雑言…ウッ頭が。
エクエクではないものの、同じ運営が提供する別の対人ゲーで
現代社会を謳歌しているヤドリガミであるこの俺が、ひとつ騒動を鎮めてみようか。
(…少々不安だが。ギスる気持ちも分かるしな…)

【WIZ】
暴徒と化したキマイラ達に声を掛けて落ち着かせることを図る
皆、何故コンテンツが上手く行かないかの根本的な理由が分かるかな?
ゲームとはいえ勝負事には誰もが真剣になるもの、そこでは誰もが己の最善を尽くしている筈だ。
それを蔑ろにする罵詈雑言こそ、最も味方の、ひいては自分の足を引っ張る最悪の手なのだ。

さておき、時にはゲームそのものから離れるのも一つの手ではあるな。
少し休憩しては?


難駄芭院・ナナコ
ゲームでギスギスだって…?
ゲームは楽しむためじゃねぇのかよ!

WIZ まずは興奮した奴等を落ち着かせるぜ

アタイもエクエクはプレイしているぞ!(今ならレベル35まで完全無料!興味をもったら今すぐ体験しよう!←ステマ)
そこでは広大な世界での冒険!様々な謎解き!読み応えのあるストーリー!そして他のプレイヤーとの交流!色んなプレイスタイルがあるんだ!
決してバトルだけがエクエクじゃねぇぜ!楽しみはプレイヤーの数だけ無限大にあるんだぜ!

バトル以外にも面白さはある事を伝えて落ち着かせよう
それでも話を聞かない奴等は黄金果実の絨毯を使って身動きを取れなくしてやる!
ここに隔離しておくので避難とかはヨロシク頼むぜ!



●俺の画面では避けてた
「対人コンテンツ……」
 ニコ・ベルクシュタイン(虹の未来視・f00324)が何気なくこぼした一言に、みな凍りついた。
 PvP。それは魔境……いかなる人間をもムキムキさせ、友人関係すら破壊するという。
 エクエクとて例外ではない。対人モード『ザ・ビースト』では日夜修羅たちが争い、『じゃいぼ』『おべぼ』などの奇怪な呪文を唱えているとか。
 目が警戒色になった暴徒らに、しかしニコはあくまで冷静に語りかける。
「皆、何故コンテンツが上手く行かないかの根本的な理由が分かるかな?」
「チームメイトのせいだ!」
「ラグが悪い」
「キーボードが反応しなかった」
 暴徒たちの言葉は、反論というよりも言い訳めいていた。だが仕方ないのだ、なにせ勝負である以上、誰もが真剣になるのは当然のこと。ゲームであれ……否、ゲームだからこそ、だ。
「己は最善を尽くしている、と思うのはもっともだ。だが、それは味方もそうだろう?」
 反論しようとし……暴徒たちは言葉を失い、顔を見合わせた。まあ、中には愉快犯がいるのも事実ではあれど、そういうのは例外といえよう。
「あいにくエクエクではないが、俺も対人ゲーの経験はある。だから、気持ちはわかるんだ」
 ランダムマッチングでレート帯に見合わない初心者が混ざった時の悲しみ。
 言語の違い(猟兵はそれを超えられるが)から、意思疎通の出来ない海外プレイヤーを引いた時の苦しみ。
 自分は良いプレイが出来ていたのに、味方のスコアが振るわなかった時の苛立ち。
「けれど一番よくないのは、仲間の努力を蔑ろにして、罵詈雑言を吐いてしまうことだ」
 とあるゲーム会社の調査では、実際に『ゲーム中の暴言はゲームスコアを低下させる』という結果が出たらしい。
 みんなそれはわかっている。だからこそニコの言葉は響いた。
「そんなときは、ゲームから離れてみるのも手だろう。少し、休憩してみたらどうだ?」
 暴徒たちは振り上げかけた拳を下ろした。しかしそこで誰かが言う。
「でも、いまさらバトル以外に何をやればいいのかなんてわかんねえよ」
「それは……」
 ニコは答えに詰まる。せめてここにエクエクプレイ者がいて、しかもバトル以外の要素をアピールしてくれたら! ああ、そんなプレイングがあったら!!

●ありました
「バトルだけがエクエクじゃねぇぜ!!」
 バァーン! いや、バナナァーン!! と乱入してきたのは、難駄芭院・ナナコ(第七斉天バナナチェイサー・f00572)だ! 称号の意味はよくわからない!
「思い出せよ! カンストするまでに楽しんできたメインクエストを!」
 暴徒たちの脳裏に、重厚なメインストーリーが蘇る。そう、エクエクはメインストーリーも面白い。転職可能な各クラスのストーリーもボリューム満点だ。
「はじめてログインした時、アタイは驚いたぜ! 広大なマップ、そして謎解きの数々に……!」
 MMORPGの醍醐味はそこにある。フィールドを歩けば、そこには個性豊かなNPCや恐ろしいモンスター……そして同じプレイヤーたちがいる。
 ちなみに、エクエクのプレイヤーは通称『ピカセン』という。光ってはいない。
 NPCから『ピカピカな戦士』と呼ばれるのが由来だとか。光ってはいない。
「ピカセン同士で交流してるだけでも楽しいじゃねえか。遊び方は無限大なんだぜ!」
 暴徒たちは大人しく話を聞いた。決して、熱く語るナナコが、両手にバナナの皮を構えているからではない。ほんとだってば。キマイラ嘘つかない。
「俺たち、ギスギスしすぎてたのかもな」
「すまない、オフ会は初めてなものだから興奮して暴徒になってしまった……」
「バナナください!」
 初心を思い出し、何人かの暴徒たちがおとなしくなる。決して、敷き詰められたバナナの皮ですっ転び、盛大に頭を打つことを恐れたわけではない。本当ですよ。
「みんな、わかってくれて嬉しいぜ」
 バナナを配りつつ、ナナコはにこやかに笑った。そう、彼らは怪人の影響で、一時的に我を忘れているだけにすぎない。ピカセンはみんないい人なのだ。
『イイハナシダナー』
『バナナが好きすぎる』
『あの猟兵さんなんでバナナを携帯してるんだろう』
 コメントも和気藹々になりつつある。疑問の答えは誰にもわからないが。

●ステルスってなんだ
「ところで!!」
 そこで突然、ナナコが配信カメラのほうを向いた。
「アタイもプレイ中のエクセレント・エクスプローラーズ! いまならレベル35まで完全無料で遊べるぜ!」
 す、ステマだ! いやもはやダイマだ!!
「なんだって、無料で遊べるのか。それはすごいな」
 ニコまで乗ってきた! いや彼の場合は普通に興味があるのかもしれない。
「しかし、無料プレイというと、実際は色々制限がかかってろくに遊べなかったりするのを想像してしまうが……」
「心配いらないぜ! たしかに制限はあるけど、コンテンツは一通り遊べるのさ!」
 バナナをマイク代わりに語るナナコ。ニコは真面目くさった顔でほうほうと頷いた。
「おまけに近日大型アップデート実装予定だぜ! そこではなんと……」
「……なんと?」
 ごくり。つばを飲み込むニコ。決してバナナが美味しそうだからではない。
「ふっ。これ以上はアタイからは言えねえな。公式サイトをチェックしてくれ!」
「なるほど。しかも公式サイトでプレイヤー同士の交流まで出来るのか」
 もはや流れるような掛け合いであったという。そして同時にカメラを見るふたり。
「「集え、ピカピカな戦士たちよ!!」」
 その日、エクエク公式サイトはアクセス過多でパンクしたという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ジョン・ブラウン
楽しいよねエクエク
僕もやってるからみんなで仲良く交流したいね

ちなみに僕のキャラは人間種の男キャラでメインはドラゴンナイトだよ

「え、そのキャラのコーデすっごいかわいいね!染色どうしてるの?」
「あ、ハウス招待するから一緒に写真撮ろうよ」
「新しく実装されたミニゲームやろうよ、ドンジャラ」

ギスギスしてる皆に話しかけて仲良くなろうとするよ

皆思い出して欲しい、砂漠で骨を殴ったあの頃を、目の前で定期便が出発したあの時を、レベル1で首都までマラソンしたあの思い出を

誰かが待っている。誰かを待っている
我が青春のヴァ、げっふんげっふん

皆で一緒に遊びたいんだ
【フレンドになってくれませんか?】


コゼー・カッツェンバッハ
ふむ…クリアの早さだけがエクエクの強さではないでありますよ…
MMORPGでは、キャラの可愛さも超!大事な要素であります。
ということで、ボクはこだわりにこだわりぬいたかわいいキャラクター(やはり猫耳がいいでしょうな!)で参戦するであります。ジョブは…ボクと同じ盾役にしましょう。大きな盾を持った猫耳の可愛い女の子…これで視聴者の視線はボクのキャラに釘付けであります。
ゲームプレイは堅実に、確実に敵のヘイトを稼ぎつつも、


ユーザリア・シン
ふうむ、あったまってきておるな。ひとまずこの場をおさめねば妾も遊ぶことが出来ぬ故、WIZで暴徒を冷静にさせよう。
さてどうするかな。
踊るか。
うむ。
交流会規模とはいえイベントに相違はなかろう。であればショーの一つや二つなくては盛り上がらぬ。なにせこれからこの会場で、我ら希望の猟兵たちがWFブンどるのであるからな。ばんばん注目集めておかねばもったいなかろう。
というわけで踊るぞ。
そのへんにおる連中に声をかけて曲を流してもらい、他のものも一緒に踊ることで暴徒を落ち着かせよう。
落ち着かぬか? されど破壊的行為は収まろう。そなたらも踊るが良い。
この一体感がテッペンとるのに必要なのだ、若き希望の廃人どもよ。



●聞いて、感じて……
 猟兵たちの説得が功を奏し、交流会場を包むギスギスは薄まりつつあった。
 それでもなお素直になれないお年頃のキマイラたちもいる。その中のひとりがポツリと言った。
「俺……ぼっちだからさ、交流とか出来ないんだ」
「実は俺も……」
 だったらなんで交流会場に来たんだよ! と言いたいところだが、彼らなりに勇気を振り絞ったのが今回だったのだろう。そんなぼっち勢に語りかける人、いや猫がいた。コゼー・カッツェンバッハ(もふもふの大盾・f06648)だ。
「エクエクの楽しさは他にもたくさんであります!」
 そして自慢げに、ものすごく気合の入ったキャラアバターを見せつける。エクエクは装備の見た目も自由に変えることができるおしゃれなRPGでもあるのだ!
「こだわりにこだわりぬいたボクのキャラクター、いかがでありますか?」
「カ、カワイイ……!」
「猫耳ヤッター!」
「このミライリュすげー!」
 ミライリュとは、装備の見た目を書き換えるエクエク独自のシステムの略称である。
 だが服装だけではない。髪型、キャラの顔立ち、身長や種族……プレイヤーよろしくふわふわの猫耳が生えたキャラクターには、計算され尽くした可愛さがあった。
 ちなみに、こうしたRPGなどにおいて、味方の盾となるキャラクターのことをタンクと呼ぶ。コゼーの猫耳タンクは、無骨な大盾すらカワイイに活用しているのだ。
「え、そのキャラのコーデすっごいかわいいね!」
 と、ここでキマイラたちに割り込んできたのはジョン・ブラウン(ワンダーギーク・f00430)である。無論ただ食いついたわけではない……彼は、遠巻きにちらちら興味がありそうにしていた、内気なキマイラたちの存在を知っていたのだ。
「染色とかどうしてるの? 教えてほしいな」
「よく聞いてくれたであります。実はここにあのコロラントを使っていて……」
 コロラント、とは装備を染色するためのアイテムである。
 楽しいエクエク談義を始めたコゼーとジョンの会話は、いまだギスギスを捨て去れなかったキマイラたちにとっていいきっかけとなった。
「僕もエクエクやってるんだ。男のヒュマドラだよ」
「おお、ドラさんでありますか!」
 ふたりの周りにキマイラが集まってくると、すかさずジョンとコゼーは言った。
「皆も一緒に遊ぼうよ。僕のハウスに招待するから、写真を撮ったりしてさ」
「賛成であります! ドンジャラも新規実装されることでありますし」
 エクエクは個性豊かなゲームなので、ファンタジー世界が舞台なのにドンジャラが遊べるらしい。これがけっこう好評を得ている。
「こうしてオフラインで話していると、エクエクを始めてすぐの頃を思い出すのであります」
 コゼーの言葉に、ジョンは妙に感慨深げに頷いた。
「うん、そうだね。砂漠で骨を殴り、定期便に乗り遅れてリアル待ちぼうけを食らったり……」
「ん? あの、ジョンどの?」
「首都まで着の身着のままマラソンしたり、アライアンスチームを組んでネームドモンスターを狩ったりさ」
 おかしい。コゼーの知っているエクエクと微妙に違う気がする。
「皆も思い出せたんじゃないかな? 僕らの青春、ああ素晴らしきヴァナ」
「それ以上いけないであります!」
 ジョンは我に返った。そして咳払いする。さすがバトルゲーマー、エクエク黎明期にも詳しいということなのだろう。多分。きっと。
「げふんげふん。まあともかくさ、僕は皆と……」

「踊るか」
「「は?」」
 いい感じにジョンが話をまとめようとしたところで、ユーザリア・シン(伽藍の女王・f03153)が言った。その胸は豊満だった。
「うむ。みなまで言うな、妾にはおぬしらの言いたいこともわかっておる」
 鳩が豆鉄砲を食ったような顔をしているコゼーとジョン、いやキマイラたちも全員そうだが、そんな彼らを彼方に置き去る勢いでユーザリアは続ける。その胸は豊満だった。
「怪人の仕組んだ罠とはいえ、ここは交流会として用意された場所。すなわちイベントということだ」
「う、うん」
「つまり、ショーのひとつやふたつがなくばな。であれば、踊るほかあるまい」
「なにか植物系のヤツを吸っているのでありますか……?」
 ジョーとコゼーは完全にドン引きしていた。ユーザリアは至極シリアスな顔で頷いた。会話が成り立っていない感じがあった。その胸は豊満だった。
 しかし実は、彼女の提案もそこまで的はずれなものではない。というのも、視聴者の中には『なんか騒ぎになりそうだから観てみよう』という層が少なからずいたからだ。彼らからすれば、それが乱闘だろうがダンスだろうがあんまり変わらない。
「というわけで、踊るぞ。ミュージックスタート!!」
「「ええ……」」
「俺は交流目当てに参加した動画配信者のキマイラ! こんなこともあろうかと音源を用意しておいてよかったぜ!」
「「ええー!?」」
 EDM! EDM!! E! D!! M!!!
 すさまじくウェイでアゲアゲなBGMが流れ始めると、ユーザリアを中心にグルービーでダンサブルなウェーブが生まれ、キマイラたちも踊り狂う。
「この一体感こそがテッペンとるのに必要なのだ! そなたらも踊れ!!」
「「「ウェーイ!!」」」
 悪い夢のような光景に、唖然とするジョンとコゼー。あと、ぼっち系のキマイラたち。
 もうあの光景はBGM含めて忘れよう。そう決めたジョンは咳払いをし、改めて一同に向き直る。
「皆で一緒に遊ぼうよ。フレンドに、なってくれないかな?」
 その言葉にコゼーも頷いた。
「ぜひとも! 皆さんはいかがでありますかな?」
 いい感じに手を差し伸べるふたり。背景に流れるバリバリのEDMと踊り狂う人々。やっぱり悪い夢のような光景だった。
 極力ダンサブルな方々を見ないようにしつつ……ぼっちキマイラたちは、ふたりの言葉に頷いた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 冒険 『ピコピコ大乱闘! ゲーム対決!』

POW   :    ゴリ押しプレイで勝利をもぎ取る!

SPD   :    巧みなプレイスキルで怪人を翻弄する

WIZ   :    怪人のチートを暴こうと立ち回る

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 紆余曲折を経て、会場のギスギスした空気は払拭された。と、そこで、突如としてゴツゴツと重いブーツ音、そしてジャラジャラというアクセサリーの音が響き渡る。
『この男はまさか!』
『マッソさんだ!』
『トッププレイヤーの登場だ!』
 いかにも、現れたのは……筋肉であった。なぜか10万ぐらいしそうなブーツと水道の蛇口めいたアクセサリーを着けているのだが、映像にフレームインするとあっさり投げ捨てた。なんだったんだ。
「怪人兼トッププレイヤー、アルパカマッスルです」
 見事なフロント・ダブル・バイセップスをキメるマッソさん……いや、怪人アルパカマッスル。視聴者たちのコメントは弾幕状態だ。
「ギスギスはプレイアビリティ向上に必要ない……はたして本当にそうでしょうか?」
 この期に及んで怪人は言う。そしてどこからともなく現れたのは、異形のゲーミングPCであった。ディスプレイも、キーボードも、もちろんマウスも、すべてが八つ並列接続されている。一人のキマイラが驚いた。
「ま、まさかマッソさんは、ひとりで八人分の動きを処理していたのか!?」
「そう、そのとうり!」
 サイド・チェストをキメながら、アルパカマッスルは答える。オブリビオンである怪人の力と、その有り余る筋肉をもってすれば、本来八人一チームで攻略すべきボス戦もひとりでこなせるというのだ。なんたる物理的チート行為か!
「私の偉大なるギスギス作戦を邪魔するとは、これも猟兵のサガか」
 アルパカマッスルの全身から禍々しいオーラが放出される。
「その上等な料理にはちみつをぶちまけた上で生クリームをかけて甘味料をドバドバふりかけるような思想、じきじきに叩き潰してさしあげよう」
 偉大なるバック・ラット・スプレッドをキメながら、怪人は言う。言葉の意味はよくわからないが、とにかくゲームで戦うということらしい。
 ご丁寧に猟兵の人数分用意されたPCには、すべて同じレイドボス……『暗黒魔人ヴォイド・シーダー』が表示されている。
「私とあなた達、どちらが先にヴォシダを倒せるか……タイムアタック勝負で!」
 威圧的アブドミナル・アンド・サイ! だが申し出れば割とそれ以外のゲーム勝負にも応じるらしい。

 ここがまさしく正念場。怪人を公衆の面前で打倒し、歪んだゲーム思想を粉砕する時が来た。
 ちなみに、エクエク勝負に挑む場合、足りないチームメンバーにはその場のキマイラ達が補充される仕様だ。もはや憂いなし!
ユーザリア・シン
妾とカラダで張り合おうというのか? よかろう、聖者パワーに満ちたこの身を――違うか? そうか。エクエクであったな。
ではレイドボスに望む猟兵たちを後ろからユベコ込みで応援しようぞ。
相手にとって不足はなし。王者の冠は、落とす為に掲げられておるのだ。それを視聴者に示してみせよ、若きピカピカの猟兵たちよ。

さて。
マッスルのやつがどのようなチートを使うのやら、WIZで見ておかねばの。【第六感】で気になるところとか気づかんかの。
っていうか腕二本しかないのであるから、マクロなりBOTなりであろうとは思うがの。
いやまさか――ドーピングか? そうであるならなんたるシツレイ! レギュレーション違反の薬物使用など…!



●ダメ、絶対
「妾とカラダで張り合おうというのか?」
 本当にグリモア猟兵の話を聞いていましたか? という顔で一歩を踏み出したのはユーザリア・シン(伽藍の女王・f03153)である。その胸は豊満だった。
「いいや、お前たちと戦うつもりはない。今はまだな」
「そうか。エクエクであったな」
 キレてるマッスルポーズをキメるアルパカマッスル。四丁拳銃で天使とか倒しそうなポーズをキメるユーザリア。悪い夢のような光景だった。
「であれば妾は猟兵達を応援するとしよう。見事王者の冠を奪い取り、そのピカピカな威光を世に知らしめてみせよ」
 尊大に言いつつ、その目線はアルパカマッスルに注がれている。そもそも一人で八人分のプレイとか、二本の腕と足で出来るわけがない。必ず何か秘密が……。
「さて、ではプレイ前に日課のドリンクを飲むとするか」
 あ、悪辣!! 奴が取り出したのは、キフマ連(キマイラフューチャー・マッスル連盟)が禁止しているドーピング剤! その名もズンバラリドリンク(略称・ZMBRドリンク)だ!!
「貴様! なんたるシツレイか!」
 ユーザリアの痛罵をもものともせず、怪人はZMBRドリンクを飲み干す。途端に膨れ上がる筋肉!
「おのれ、レギュレーション違反だぞ! 場をわきまえよ!」
「ここはマッスルを競う場ではない。ゲーム会場ですよ」
「……!!」
 怪人の答えはもっともだった。そもそもよく考えると、筋肉とゲームがどう相関するのかはよくわからない。
 ユーザリアにできることは、ただ彼らを応援することだけだ……!

苦戦 🔵​🔴​🔴​

ジョン・ブラウン
マッソさん、キミってサブクエとかやってる?
ああ攻略上必須だったり有利になるやつじゃなくて
ほんと小銭が貰えますって感じのやつ、いっぱいあるよねエクエク

もしやってないんだったらもったいないなぁ
ピカセンってさ、声が聞こえるんだよ
いや、見えるかな?困ってる人が何となく分かるんだこう、頭の上に……

とにかく、使いっぱから世界の危機まで、ピカセンは笑って引き受けるのさ

ウィスパー、<イリーガル・アクセス>起動、スピーカーモードに
別にゲームにハッキングするわけじゃないんだ、見逃してくれよ?

さぁ皆、これが僕たちピカセンに向けられた、あの世界の人々の助けて下さいの声だ

この言葉を聞いたピカセンは、無敵だろ?


籠目・祷夜
ふむ。俺はショシンシャガーだが、玄人より丁寧にぷれいする自信がある

POWで行動
まずは綿密な下調べだ
攻略ほーむぺーじをちぇっくして、敵の出現位置、時間、細かな動きまで記憶していく
動画さいとでたんくの動きを完璧に模倣する
俺はたんくしかないだろう
その二つの予習と復習が合わさり、周囲が失敗しない限りぎすぎすを極限まで減らすことができる…!はずだ
とりあえずぷれい開始だ!たんくは希少だから即シャキするぞ!
目指すは力技の完璧ぷれい!
俺は他人の失敗は気にしないからどんまいだ!どんどん行くぞ!

なお俺はえくえくは知っているが触るのは初めてだ
げーむ?猟兵になってから始めてみた(キリッ


難駄芭院・ナナコ
「ひとりフルパとかぜってぇ大変だろアレ!」
そこまでいくとひくわー

というわけでエクエク勝負だ!
リリカちゃんとピリカちゃんとでPTプレイだ!
リリカちゃんとはエタブラ(エターバルブライドの略)してるもんねー!
連携もバッチシ、今回も勝利だぜ!
ギスギスしすぎて自分のキャラ同士婚しかできねぇの? やべぇ、超ウケるぜ!

POW
アタイはDPS、アタッカーでいくぜぇ!
火力最強!ダメージでガンガンぶっこむぜぇ!
え、ギミック?

うるせ〜〜!
知らね〜〜〜!
    🤴
  👊╋━━━━
  Excellent Explo
         rer's

今回もナイスヒールだったぜ、リリカちゃん!
ピリカちゃんもメイン盾サンキュー!


リリカ・ネムリカ
「そこまでである怪人よ、我は(略)」
まずは夜を統べ(略)らしく名乗るで

エクエクでうちとエタブラ(エターナルブライド。断じてバンドではない)してるナナコちゃんもおるやん!
チームワークバッチリやし、これは勝ったも同然やね!

マッソはギスギスばかりして、誰かとエタブラする機会とかないんやろか
まさか自分のキャラ同士で、とか……うわぁ

いざヴォシダ!うちはヒーラーでバッチリ支援するで!

「頼むであるぞピリカ、回復は任せるのである」
「ナナコ、マッソより火力を出すのだ、抜かるでないぞ」

ピリカちゃんの言う通り、お互い信頼し合えばギスなんておこらんよね!

まぁそれはそれとして、戦闘支援の外部ツールはこっそりDLしとこ


ピリカ・コルテット
リリカちゃん、ナナコちゃんと一緒にエクエクTAに挑みますよっ♪
ジョブは某暗黒タンク。やり込んでるんです!
可能ならスマホでヴォシダTLを確認、仲間と共有して暗記します!

味方に逸れない様ボスの敵視を稼ぎつつ、安全圏を維持して火力コンボ中心へ!
敵の攻撃に味方を巻き込まない様、十分気を付けながら立ち回りますよっ。
避けられる攻撃は動いて回避、敵の大技には防御バフをしっかり合わせる!
必殺技にはHP1で耐える技を使用し、予めヒール準備を要請しておきます!

きっちり耐えれる手は尽くして、後は一心に殴る!タンクでも火力は出せるんです!
防御バフが回らなくなった時は他のタンクにスイッチをお願いしますよっ!
諸々歓迎っ☆



●予習
「それで? 私とエクエク勝負に挑む猟兵は誰ですか?」
「うちらや!」
 ザッ! と歩み出たのはリリカ・ネムリカ(ダンピールの死霊術士・f00585)だ。今回はタイミングも合っている!
「我こそは夜を統べる闇の王(独自研究)。これ以上の狼藉は我らが許さぬぞ、怪人よ」
「ほう?」
 リリカの言葉に応じ、その隣に続くのは難駄芭院・ナナコ(第七斉天バナナチェイサー・f00572)、そしてピリカ・コルテット(Crazy*Sunshine・f04804)。どうやらエクエク仲間らしい。
「甘く見るなよ? アタイとリリカちゃんはエタブラしてるんだぜ!」
 エタブラ。正しくはエターナルブライド……名前の通り、エクエクにおける結婚システムを指す。ちなみに、異性はもちろん同性でも、種族を問わず結婚できるのが売りだ。
「ギスギスしてばかりの、いやそもそも一人でチームを組む貴様にそんな相手は居るまい?」
「ふっ、甘いですね。特典装備のために、持ちキャラ同士でエタブラを済ませてあります」
「「うわあ……」」
 勝ち誇った様子の怪人にドン引きするナナコとリリカ。視聴者たちも割とヒいていた。

 一方、ピリカはというと。
「ふむふむ、なるほど。ここでヴォシダのスペシャルフラッシュが来て……」
 携帯端末を使い、熱心にボスのタイムライン(どういう攻撃が来るか、どこへ移動するか、エクエクではほぼ確定しているのだ)を予習している。
 彼女のクラスはダークナイト。いわゆる盾役、つまりタンクである。彼女がどれだけ耐えられるか、それがチームの生死を分ける。
 加えて、ダークナイトはマジックポイントを消費して防御力を上げるため、どこでどの技を使用するかがとても重要なのだ。
「む。失礼する、俺にもその攻略さいとを見せてくれないだろうか?」
 そこに籠目・祷夜(マツリカ・f11795)が声をかける。彼は続けて言った。
「俺もたんくをやるつもりでな。ぴかせんは予習を徹底するものだと聞いた」
「なるほどっ! じゃあ、私と一緒に予習しましょう♪」
 ピリカは笑顔で応じる。エクエクのボスバトルでは、タンクは二人一組で動くことが多い。敵の強力な攻撃を交互に食らったり、大量の雑魚を分担して相手する……自ら敵の狙いを惹きつけることで、仲間への被弾を最小限に防ぐ、それがタンクの役割である。
「ちなみに、クラスはどれにする予定なんです?」
「うぉりあーだ。クラスクエストのストーリーが気に入った」
 斧を振るうウォリアーは、タンククラスなのになぜか『岩を砕け』だの『蟹をぶっ倒せ』だの、やけにパワフルなクエストを渡される。そのへんが琴線に触れたらしい。
 ともあれ熟練のタンク使いであるピリカの指導のもと、実はエクエク初プレイの祷夜はめきめき知識と技術を学んでいくのであった。

 だがチームに加わるのは彼らだけではない。ジョン・ブラウン(ワンダーギーク・f00430)もその一人だ。彼のメインクラスは、ドラゴンナイト……龍をも屠る槍技の使い手、つまりアタッカーである。
「ところでさあ、マッソさん。キミってサブクエとかやってるの?」
 各々が決戦に備える中、ジョンはふと問いかけた。
「サブクエなどただの寄り道でしょう。そんな時間があるならレベリングをするのが当然ですよ」
 つまり、怪人の答えはNOだ。ギスギス最強を標榜し、仲間と協力し合うゲームの楽しみすら否定するオブリビオンにとって、世界観を楽しむなど言語道断というわけか。
 エクエクには多種多様なNPCたちがいる。そして彼らの数だけ、本筋に関係のないサブクエストが存在する。だがやってみるとこれが中々面白い。普通にメインストーリーをなぞっていただけではわからないような世界設定が明かされたり、物語で途中退場したNPCの意外なその後が明らかになったりと、根強い人気があるのだ。
「もったいないなあ。じゃあ、キミには『声』が聞こえてないんだね」
「……何?」
 怪訝な顔をする怪人。ジョンは意味ありげに笑う。
「いや、『見える』って言うべきかな。まあ、そのうち分かるよ。きっとね」
「何を言っているのかよくわかりませんが、ハッキングやチートをするつもりなら……」
「まさか、そんなことしないよ。ゲームは楽しまなくっちゃね」
 ジョンはそう言って持ち場に戻る。それがゲームの流れを変える大きな一手になろうとは、まだこの時誰にもわからなかった。

●ヴォシダあああああ
 エクエクは、アップデートを重ねるごとにキャラクターのレベルキャップが解放されていく。
 しかしレイドボスやダンジョンには『レベル上限』というものが存在する。これにより、最初期に実装されたボスでも数値のインフレに取り残されることなく、手強い壁として君臨し続けるのだ。
 暗黒魔人ヴォイド・シーダーはその筆頭である。実装当時はあまりの難易度から多くのユーザーを苦しめ、やがて『ヴォシダあああああ』という叫び声が定着した。エクエクユーザー=ピカセンは、サーバーメンテナンスや不具合など、エクエクに何かあるとすぐこのワードを叫ぶ。なんでもかんでも責任を押し付けられるヴォシダもちょっと可哀想だ。
「ルールは簡単。先にヴォシダを撃破したチームの勝利です。ワイプ後の再挑戦は自由とします」
 異形のゲーミングPCに腰掛け、怪人が宣言した。背後では、猟兵達を応援するユーザリアの踊りが頂点に達しつつある。悪い夢のような光景だった。
「ハンデを差し上げましょう。そちらがカウントを始めなさい」
「望むところですっ! 皆、準備はいいですね?」
 ピリカの言葉に、チームメンバーが頷く。敵を最初に攻撃する関係上、エクエクのチームバトルではタンクが指揮を執ることが多い。
「アタイの最強アタッカーぶりを見せてやるぜ! よろしくな、ドラさん!」
「うん、よろしく。シノビがいるならシナジーも十分だね」
 ナナコの言葉に、ジョンが頷いた。ナナコのクラスはシノビ、単独での火力はやや低いが味方をサポートする手管に長けたアタッカーである。
 ジョンが操るドラゴンナイトとはシナジー……つまりゲーム的な相性がいい。エクエクのレイドバトルは、一人が上手いだけではダメなのだ。
「俺も全力を尽くそう。まあ、エクエクは初めて触るのだが」
「えっ、それ大丈夫なん!? ……んんっ。か、回復は我に任せよ。ぬかるでないぞ下僕たちよ!」
 祷夜のさりげない暴露に一瞬素になりながらも、リリカは威厳たっぷりに伝える。彼女のクラスはフェアリーテイマー、妖精と心を通わせ癒やしの魔法を仲間に与えるヒーラーだ。
 なお、背景ではユーザリアがものすごい勢いで戦勝祈願のダンスを踊っている。悪い夢のような光景だった。だが彼女がカカッ! と決めポーズを取った瞬間、エクエク勝負の火蓋が切って落とされた……!

『す、すげえ……!』
 視聴者達は魅入っていた。猟兵と怪人の勝負は、まさに互角の戦いを繰り広げていたからだ。
 まずアルパカマッスル。奴は恐るべきことに、両手と両足(!)を同時に使い、さらに音声認識システムまで駆使してキーボードとマウス併せて16個をフル活用している。もはやその手先はあまりの反復運動に霞んで見えず、飛び散る汗がすこぶる鬱陶しい。筋肉もピクピク震える。
『何がすごいって、あそこまでして一人で攻略しようとしてるのがすごい』
『ギスギスを極めるとああなるのか……』
 怪人の主張は、すなわち協調性の否定。ギスギスした雰囲気の行き着く果ては、誰にも頼ること無いソロプレイなのだ。それを体現するかのようなマッスルぶりはいっそ清々しく……しかし、MMORPGという『仲間とともに遊ぶゲームらしさ』は皆無だった。それでもゲームが上手くなるなら、とキマイラたちの気持ちが傾きかけたのは無理からぬもの。
「でも見ろよ、猟兵チームも頑張ってるぜ!」
 動画配信者キマイラの一人が声をあげた。開始から数分、猟兵達はチームワークを駆使して立ち回っている。
「タンクでも火力は出せるんです! いきますよーっ♪」
 MMORPGには『ヘイト』もしくは『敵視』という数値が存在する。敵モンスターは、このヘイト値が一番高いキャラクターに狙いを定める……つまりタンクは常にヘイト値のトップに位置していなければならない。そのため、タンククラスにはヘイト値を大きく上昇させるための技が多く揃っている。そのかわり火力はアタッカークラスに劣る、というわけだ。だが、一流のタンクはその先を行く。敵の狙いを引きつけながらも、火力重視のコンボでダメージを稼ぐのだ。
 もしも一瞬でもヘイト値調整をミスすれば、ボスの攻撃は味方を襲う。そうなれば、タンク以外のクラスに耐えきれない。常に上下するヘイト値を見極め、かつ防御もおろそかにせず技を叩き込む……このきわめてテクニカルな動きを、ピリカは完璧にこなしていた。熟練プレイヤーの面目躍如である!
「俺も負けていられないな。うおおおおっ!」
 チームバトルのタンクには、メインとサブの概念がある。敵の狙いを引きつけるピリカが前者、いまの祷夜は後者だ。サブタンクは、来たるべき時まではひたすら火力を出すことを求められる。
 力任せの攻略を決めた彼にとって、ウォリアーはまさしく最適のクラスだった。タンククラスでもっとも攻撃的なウォリアーの豪斧が炸裂し、ヴォシダのHPを大きく削っていく。すると彼のキャラクターの足元に、オレンジ色のエリアマーカーが表示された。範囲攻撃の予兆だ!
 祷夜はにやりと笑い、これを回避する。もしも彼が予習を怠っていたなら……あるいは、仲間たちがいなかったら。いまごろ攻撃をまともに喰らい、無様に床を舐めていたことだろう。そう、あそこで被弾しているナナコのように。
「ナナコちゃん何食らっとるん!? ギミック忘れたらあかんて!」
 ヒーラーであるリリカが即座に回復魔法を使用する。ナナコはなぜか剣を構えて流し目してるっぽい感じのポーズを取り、食ってかかった。
「うるせ~~~~! 知らね~~~~~! アタイはアタッカーだぁ!!」
 ……本当にエタブラしているんだろうか。まあさておき、たしかにアタッカーはチームの花形だ。その働きが攻略速度を左右すると言ってもいい。
 だが一度倒れてしまえば、蘇生されるまでの時間だけ攻撃の手が緩まる。加えてエクエクには『デスペナルティ』というものがあり、蘇生直後はすべてのパラメータが低下してしまう。リリカの回復がなければ危ないところだった。
「ほらほら、次の攻撃来るよ! 『戦士の連祷』使うからね!」
 一方のジョンは、的確に攻撃を回避しながら支援スキルを使用する。赤い龍の幻影がキャラクターの間を飛び交い、チームメンバー全員の攻撃力を上昇させた。なお、こうした強化効果を『バフ』と呼ぶ。
 彼らの連携は一流と言えた。時折被弾はあるものの、ヒーラーの回復がそれを補う。バフにあわせて一斉攻撃を行い、目を見張るほどの速度でボスHPを削る。その速度はアルパカマッスルとほぼ同等だ。
「なかなかやりますね。では、そろそろ本領発揮と行きましょうか」
 それを横目に見、アルパカマッスルがにやりと笑う。そして次の瞬間……!

「そろそろ攻撃が来ます! リリカちゃん、回復を……」
「うわそれ喰らうとかないわー! チンパンジーかよ!」
「な、なんや藪から棒に!?」
 怪人の罵声がピリカの指示を遮り、思わずリリカが反応してしまう。ま、まさか、奴は!
「てかもっと火力出してくんね? スキル回しミスりすぎでしょ灰色乙」
「んだとぉ!?」
 ナナコが怒りの声をあげた。そこで注意がそれたことにより、彼女はまたしてもボスの攻撃を被弾してしまう!
「ウォリさん呑気でいいですね、そんなにダメージ出したいならアタッカーやってもらえませんか? 動き難しすぎて無理かな???」
「む……!!」
 祷夜の眼が剣呑を帯びる。結果、彼はピリカと入れ替わるべきタイミングを見逃し、彼女のキャラクターを死なせてしまった。戦線が、崩壊を始める……!
『出たぞ! マッソさんのギスギス攻撃だ!』
『相手チームのチームワーク乱すとかえげつねー!』
 視聴者たちも驚いていた。なんたるアンフェアなプレイだろうか。だがこれこそが、怪人の掲げるギスギスの真価……仲間はおろか、敵のやる気すら奪う罵詈雑言の嵐なのだ。
「ヒラさん回復早くしてくれませんかねえ? 火力も出してくれないとボス倒せないんですけど??」
 怪人はなおも煽りを入れる。平常時ならば、それを鼻で笑って一蹴し、彼ら自身のプレイに集中しただろう。だが……。
「う、うるさい! 回復で手一杯なんだからしょうがないやん!」
「リリカちゃん、落ち着いて? 蘇生してくれれば大丈夫だからっ」
「でもヒーラーにも火力出してもらわねえと、これじゃ追いつけねえよ! どうすんだ!?」
「あたっかーが勝手なことを言うな! 俺たちも全力で戦ってるんだ!」
 おお、おお……。極限の集中を要求されるレイドバトルでは、些細なきっかけが致命的崩壊を招く。猟兵たちのチームワークは大きく乱れ始めてしまった。
 アルパカマッスルは邪悪な笑みを浮かべる。これぞギスギス戦法! 元から一人であるアルパカマッスルに、そうした不確定要素は存在しない。攻略速度に大きな開きが生まれる!
 無論、猟兵たちも頭では状況を理解している。ゆえに落ち着きを取り戻しそうと、互いに呼びかけるが……そこを狙いすましたように、怪人が煽りを入れるのだ。
 チームワークが乱れれば、個々人のゲームプレイも乱れる。避けられるはずの攻撃を喰らい、入れられるはずのスキルを使いそこね、火力が落ちて差は開く。まさに悪循環。
『ダメなのか? やっぱり、ギスギスが一番の攻略方法なのか?』
 視聴者の誰かが、絶望的な気持ちでコメントを打ち込んだ。怪人が勝利すれば、やがてゲームを楽しむという気持ちが失われてしまうだろう。そうすれば、ゲームによって新たな絆が生まれることも、より楽しいゲームを作ろう、遊ぼうという意欲も消えてしまう。たかがゲーム、されどゲーム……待っているのは、娯楽の死。精神性の死であり、未来の喪失! もはや希望はないのか!?
 だが、この状況で不敵に笑う男がいた。ゲームを愛し、ゲームを遊び、ゲームとともに生きるひとりのギークが。

●鬨の声
「ウィスパー、『イリーガル・アクセス』起動。スピーカーモードで繋いでくれ」
 サポートデバイスに呼びかけるジョン。直後バイザーが展開し、ヘッドホンの外側にスピーカーが出現する。そして。
『ホッホーウ! お見事ですぞ冒険者殿。これで一件落着ですな!』
 まず最初に流れたのは、陽気そうな老人の声だ。ギャラリーの一人が反応した。
「これって、無敵の鍛冶師マンダヴェイルの台詞じゃね? ほら、サブクエストの」
 どよめくギャラリー。そして次の声。
『いつも納品、ありがとうございます! おかげで孤児院も無事に運営できそうです!』
「あ、製作クエストのホワイティだ。かわいいよな、あの子」
 快活そうな女性の声もまた、エクエクのサブクエストに登場するNPCのものだった。だが声はそれだけではない。
『うおおおっ、妖精魂ぃいいい!!』
「クラスクエストに出てくるノルカ・ソルカの台詞やん! うち、あのキャラ好きなんよっ」
 リリカは思わず素の声をあげた。
『そなたの働き、まっこと大儀であった。国の皆を代表し、礼を言う』
「お、こいつはホウエン様だな! やっぱよかったよなあ、ワノクニ編!」
 ナナコは深く頷く。人気の高いNPCである。
『私とお前は、これからも盟友であり続けよう。グッドな騎士として!』
「これは……エクエクに触れたことがない俺でも知っているぞ。たしかストーリーで……くっ」
 ピカセンの盟友を名乗るNPCとの感動的なやりとりを思い出し、祷夜は感じ入った。
『僕らはいつでもキミととともにある。だからまたいつか、一緒に旅をしよう』
「……!」
 ピリカは拳を握った。そのNPCの台詞は、ダークナイトをメインクラスとする彼女にとっては、とても大事な意味を持つからだ。

 流れ出す声はそれだけではない。
 感謝の声。いたわりの声。喜びの声。安堵の声……それらは、エクセレント・エクスプローラーズの世界に生きるNPCたちの台詞だ。
「何かと思えばくだらない、たかがNPCだろうに!」
 怪人は鼻で笑う。だがその言葉を、ジョンは笑った。なぜならば彼のユーベルコード『イリーガル・アクセス』が拾うのは、ただの音声ではない。
 あらゆる世界、あらゆる場所で救いを求める人々の声。それはたとえゲームであれ……いや、ゲームだからこそ、例外ではない。なぜならエクエクは、多くのプレイヤーたちが交錯するれっきとした一つの世界なのだから。
「さあ皆、これが僕たちピカセンに向けられた言葉だ。僕らが遊んできたゲームの証だ」
 ギークは語る。声はなおも溢れ、英雄を……世界を救う冒険者(プレイヤー)を求める。そしてみな笑顔で告げるのだ、『ありがとう』と。
「使いっ走りから世界の危機まで、僕らはなんでも引き受けるのさ。だって、この言葉を聞けば……無敵だろ?」
 怪人は嘲笑を浮かべ、その言葉を罵声で遮ろうとした。だが!
 ――――うおおおおおおおっ!!
「な、なんだっ!?」
 怪人は困惑した。無理もあるまい、その場で勝負を見届けんとしていたギャラリーたちが、一斉に雄叫びをあげたのだから。
「「「猟兵、頑張れー!」」」
『『『負けるなー!!』』』
 その場にいる者も、配信越しに見守る者も、全てが同じ言葉を叫んでいた。ユーザリアが笑う。
「これこそまさに鬨の声よな。さあ、決着をつけてやれ、戦士たちよ!」
 怪人は何かを叫ぼうとした。だが無駄だった! いまや猟兵たちは、たかが罵詈雑言に揺れ動かされたりはしないのだから!

「この攻撃は『不死の力』で耐えますっ! リリカちゃん、回復お願いね!」
「任せよ! お前の信頼には応えようぞ!」
 ピリカの言葉にノリノリで答えるリリカ。ダークナイトの奥義、『不死の力』。それはいかなるダメージを受けようとも必ずHPが1残るというものだ。だが素早く回復をしなければ、効果時間が終了するとともに死亡してしまう。
 タンクとヒーラーの連携が重要なこのスキルを、ふたりは見事に成功させる。リリカのキャラクターと妖精が癒やしの魔法を振りまき、敵の攻撃を凌ぎきってみせた!
「ここで俺の出番だな!」
 間髪入れず、祷夜がヘイト値のトップに躍り出る。矢継ぎ早の敵猛攻を強力な防御バフで耐え、反撃スキルを立て続けに叩き込むのだ!
 この動作はスイッチと呼ばれる。敵の攻撃に合わせ、一瞬でタンクが入れ替わるという高等テクニックである。一瞬でもズレればどちらかが倒れる……だが、予習を繰り返し、意気軒昂たるマツリカに隙はない。
「おーし、『不意打ち』入れるぜ! スキルの出し惜しみすんなよ!」
 続けざま、ナナコの操るシノビが死角からの攻撃を繰り出した。ダメージそのものは大したものではないが、『不意打ち』が敵モンスターにきわめて大きな弱体効果、つまりデバフを与える。それによって、味方が与えるダメージが大きく上昇するのだ。シノビが優秀なアタッカークラスとされる所以である。
「待ってたよ! 『龍の魔眼』も入れておかないとね」
 同じアタッカーのジョンが素早く連携し、ダメージ増加バフをナナコに与えた。最大火力の準備を整えた上で、ドラゴンナイトが大きく飛翔する。そして敵めがけ落下!
 間髪入れずにコンボを連発。ドラゴンナイト専用のゲージが溜まった瞬間、龍の幻影を伴う大技『龍牙絶死撃』が火を吹いた!
「な、なぜだ!? 私のギスギス攻撃が通じないだと……!?」
 アルパカマッスルは呻き、たった一人の攻略を継続する。たしかにその速度は脅威的だ、まさにオブリビオンの為せる技だろう。だがそれゆえに、ひとりきりのゲームプレイには限界がある。
 一方で猟兵たちは互いに協力し、信頼しあい、それが計算外の相乗効果を発揮していた。やってみるまでわからない、誰も予期せぬ大どんでん返し……だからこそ、ゲームは面白いのだ!
『ああっ、どっちのチームも敵のHPが残りわずかだぞ!』
 両チーム、暗黒魔人ヴォイド・シーダーのHPはもはやミリ単位まで減っていた。焦った怪人はここで操作をミスし、アタッカー役のキャラクターを死なせてしまう!
「し、しまった!」
 その困惑がさらなるミスを招く。彼が普通にゲームを遊んでいたならば、仲間がそれを支えてくれたことだろう。だが、奴は一人。結果として他のキャラクターも次々に倒れていくのだ。
「ここまでくればあとは押し込むだけだ!」
「最後まで油断しないでくださいね、皆っ♪」
 ピリカと祷夜が油断なく激励し、。緩みかけた意識を引き締めさせる。死に際に激化するボスの攻撃を、猟兵たちは巧みに回避する!
「回復はしっかりするで、うちはヒーラーやからな!」
「了解。限界突破よろしく!」
「うおおおおーっ、行くぜ行くぜ行くぜーっ!!」
 リリカとジョンの言葉に後押しされ、バナナをムシャったナナコがボタンを連打! 『限界突破』、すなわち一度きりの超必殺技を発動し……画面内のシノビが高速で印を結ぶ。
 ボスの周囲に浮かび上がる、無数の魔刃。キャラクターたちが勝鬨をあげた瞬間、それが暗黒魔人の全身を貫き――そして、奴は斃れた。

 静寂がフロアを支配する。踊り終えたユーザリアは、呆然とするキマイラの一人を小突いた。
「ギャラリーが宣言するべきであろう、こういうのは。勝ったのはどちらだ?」
 一同の視線が両チームの画面に注がれる。
 アルパカマッスル側には、無残に倒れ伏すキャラクターたちの姿。すなわちワイプ画面。
 猟兵チーム側には、勝利を喜ぶキャラクターたちの姿。そして『暗黒魔人ヴォイド・シーダー 討滅』の文字。……すなわち。
「し、勝者……猟兵チーム!!」
 ステージクリアのファンファーレとともに、猟兵たちは……否、それを見届けていたギャラリー全員が、快哉をあげた!

 エクセレント・エクスプローラーズ早期攻略対決、ここに決着。
 怪人の目論みは、もはや完全に打ち砕かれたのだ……!!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『怪人アルパカマッスル』

POW   :    ポージング
自身の【肉体美の誇示】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
SPD   :    鋼の筋肉
全身を【力ませて筋肉を鋼の如き硬度】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
WIZ   :    つぶらな瞳
【つぶらな瞳で見つめること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【瞳から放たれるビーム】で攻撃する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はニィ・ハンブルビーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●それはそれとして
「……認めぬ」
 白く燃え尽きていたアルパカマッスルは、煮えたぎるような声で呟いた。
 全身に縄のような筋肉が浮かび上がる。激烈な憤怒の形相で!
「断じて認めないぞ。そんな甘っちょろい理屈などッ!!」
 すさまじいモスト・マスキュラー。もはや禍々しいオーラはキマイラたちにすら可視化されるほどの質量を伴っていた。
「所詮ゲームはゲーム。かくなる上は、私が自ら叩き潰してやろう!」
 ただし瞳はつぶらなままなので、あんまり怖くない。
 だが、状況は予断を許さない。もしもここで奴を取り逃す、あるいは敗北することがあれば、奴は再び歪んだゲーム理論を広めようとすることだろう。
 フェアプレイを自ら捨て去った怪人に付き合う道理はない。奴が来るというのならば、言葉通り正面から叩き潰してやればいいのだ。
 これはゲームではない。命を賭けた真剣勝負である――!!
籠目・祷夜
…残念だあるぱかさん
結局は力に頼るか
あるぱかさん、貴様のげーむ愛も所詮そんなものだったということだ

これからは、俺がマツリカと共に相手をしよう
ユーベルコード、剣刃一閃で戦おう
つぶらな瞳には即座に目線逸らしを
二回攻撃で更なる攻撃を重ねて、敵の攻撃は武器受けで防御していく

ちなみに俺は今回のことでエクエクに目覚めてプレイ権諸々を購入したぞ!
あるぱかさん…もう一度、澄んだ心でエクエクをぷれいしてみないか…?

心届かず
剣刃一閃
残念だ。良きふれんどとなるかと思ったのだが


ジョン・ブラウン
まーったく往生際が悪いねぇ……

ま、危険物処理が甘くて他の勢力に何度もリサイクルされるなんて懲り懲りだしね
崖に突き落としたりしないできっちり倒さなきゃ

とは言えゲームする気で来たからろくな武器が……ん
ねぇそこのキミ、ちょっと適当な長い棒探してきてくれない?
モップとかでいいからさ

サーンキュ!

さて、じゃあついでにもう少し力を借りようか!

Unknown error起動、ここに皆を呼んでくれ、ウィスパー!

エクエクには装備自体にレベルがあってね
キャラのレベルが同じでも、装備で天と地の差がでるのさ
さぁ、何処まで上がればお前を倒せるかな!

ウィスパー!今のレベルは?

オッケー!今だ、パワーをスピアに!
ぶん投げるよ!



●オブリビオンであるということ
「まーったく往生際が悪いねぇ……」
 ジョン・ブラウン(ワンダーギーク・f00430)は怒りを通り越して呆れていた。
 予知されていたとはいえ、あちらからゲーム勝負を挑んできたくせにこのざまだ。奴の捨て台詞もなんと滑稽なことか。
 だが、その思想はやはり危険だ。禍根を断つに越したことはない。そういえばエクエクのメインストーリーでも、そんな展開があったな、と、彼は思い返した。
「崖に落としたけど実は生きてました、なんてのも嫌だし? とどめはきっちり……お?」
 そこで彼の横を通り過ぎ、籠目・祷夜(マツリカ・f11795)が一歩踏み出す。剣を佩けど柄は握らぬまま、アルパカマッスルに呼びかける。
「あるぱかさん、もう一度、澄んだ心でエクエクをぷれいしてみないか……?」
 意外な言葉であった。驚くジョンや猟兵だが、彼の目を見て納得する。
 刀めいて鋭い紅眼には、今やゲームに対する愛が満ち満ちていたからだ。
「実は俺も、エクエクを本格的にやってみようと思ってな。ついさっき、必要なものを購入したのだ」
「いつの間に!? いや、まあ仲間が増えるのは嬉しいけどさ!」
 思わずツッコミを入れるジョン。祷夜はなぜかクールな流し目を返しつつ、アルパカマッスルに視線を戻す。
「おぶりびおんでも、げーむの世界ならば友達に……ふれんどに、なれるのではないか?」
 世俗に慣れぬヤドリガミにして、守り刀を依り代とする祷夜だからこそ出た言葉。だが……返ってきたのは、嗤笑だった。
「何をくだらぬことを。なぜ猟兵とフレンドにならなければいけないのだ? そもそも私に、フレンドなど必要ないッ!!」
 それは拘りか? ……否。
 人と人との繋がりは、どんな形であれ未来を生み出すものだ。
 なにも恋愛や友情だとかの大それたことでなくとも、ちょっとしたことで何かが変わる。だからこそ、どんな世界であれ人と人は手を取り合うのだ。
 オブリビオンとは過去の化身、未来を喰らうもの。ゆえに、その断絶は決定的だった。慈悲ある者なら、そこに哀切を見出すやもしれぬほどに、奴は孤独なのだ。
「話は終わりかね? ではお前から死――」
「残念だ」
 祷夜は、刃を振り抜いた姿勢のまま呟いた。
 ……然り! すでに抜刀は終わっている。遅れて剣閃が走り、敵の分厚い胸部に逆袈裟を刻んだ!
「ぐおおおおっ!?」
 苦悶する怪人。そして残る人々は、誰もが息を呑んだ。
 速い。あまりにも鋭く、神速の一太刀。目視できた者はどれほど居よう?
「"貴様"のげーむ愛もその程度だったか。であれば、俺が相手をしよう。マツリカと、そして……」
 祷夜の視線が、猟兵たちを見やる。ジョンは最初に頷き、言葉を次ぐ。
「俺たちと、一緒にね!」
 かくして、死闘が幕を開けた!

●計算外の一手
 初撃を受けながらもアルパカマッスルは健在だった。
 いかにふざけたような見た目でも、奴とてひとかどのオブリビオンである。
 そんな中、ジョンはまるで呑気に頭をかきつつ呟いた。
「ゲームする気で来たからなあ、ろくな武器持ってきてなかったよ」
 なんということか! 普通ならば気の緩みを叱責されるべき発言だ。
 ……そう、彼が普通の人間ならば。
「おっ、ねえねえそこのキミ!」
「えっ!?」
 キマイラの少年は驚いた。安全圏から戦いの趨勢を見守っていたら、当のヒーローがこちらに近づいて声をかけてきたのだ。そりゃ驚く。
「悪いんだけどさ、ちょっと長い棒とか探してきてくれない?」
「はあ!?」
 どうして、と問い返そうとしたところへ、敵の強烈な余波が届き、少年は慌てて下がる。
 一方のジョンはというと、『よろしくね!』と軽く言い、戦線に戻ってしまったではないか。
 周囲の視線が少年に集まる。少年は困惑して……そして、駆け出した。

「なんなんだよ、もう!」
 何かないかと会場を駆けずり回りつつ、少年は叫んだ。正直頭の中が無茶苦茶だ。
 自分のギスギス発言のせいでチームが解散した数日後、ふと覗いた配信。そこへ現れた猟兵たちの姿に何故か居ても立ってもいられず、この会場にやってきた。
 そしてあのエクエク勝負に大立ち回り。普段なら大興奮間違いなしの展開も、今の彼にはどうにも乗り切れない。猟兵たちの言葉は、あの日仲間に当たり散らした自分を責めるように思えたからだ。
 するとどうだ、その猟兵が自分を頼ってきた? わけがわからない!
「なんなんだよ、もう……!」
 見つけた"それ"を掴むなり、彼は駆け戻った。そして叫んだ。
 ちょうど攻撃を回避したジョンが振り返り、"それ"を見て驚いたあと――笑った。
「サーンキュ! 助かったよ!」
 少年が持ってきたのは、ただのモップだ。だのにあちらは、まるで伝説の聖剣を手に入れたかのように笑い、投げ渡されれば感謝を述べた。
「……なんなんだよ、もう」
 彼の狙いはまったくわからない。あのモップで何をどうしようというのだ?
 わからないことだらけなのに、少年はつられて笑っていた。そして思った。
 チームの皆に謝ろう。そして今日見たことを、体験したことを話すんだ。きっと、楽しんでくれるに違いない――と。

●交錯
「おい、武器はどうした!」
「ようやく手に入ったよ、これこれ」
 嬉しそうなジョンに対し、祷夜は呆れた顔になった。
「ただのもっぷではないか。まさかそれで戦うと?」
「どうかな? 案外勝てるかもしれないよ。ウィスパー、どう思う?」
 軽口めいた指示に応じ、高度人工知能"ウィスパー"が高速で演算を行う。そして端的に述べた。
『計測完了。敵戦力差は圧倒的、撤退を推奨します』
「うむ、当たり前だな」
 祷夜は真顔で頷いた。そして弾かれたように敵の方を振り返り、刃をかざす。直後、閃光が爆ぜた!
「ほう、油断しているかと思ったが……なかなか目ざとい」
 つぶらな瞳をぱちくりさせるアルパカマッスル。だが見た目に騙されることなかれ、今しがたの閃光は奴がその瞳から放ったビームなのだから!
 剣豪たる祷夜の反射神経をもってすれば、刃で光線を逸らすことは十分に可能だ。とはいえ、そう何度も繰り返せる芸当でないことも事実。
「もう一度聞くぞ。一体それでどうするというのだ?」
 祷夜がジョンを見やる。当人は肩をすくめ、バイザーを展開しながら答えた。
「エクエクにはさ、装備にもレベルがあるんだ。キャラレベルが同じでも、装備が違えばステータスに天と地ほどの差が出るんだよ」
「この期に及んでゲーム気分か? 愚かな!」
 アルパカマッスルがせせら笑う。ジョンはそれを睨み返す。不敵に!
「ウィスパー。"皆"をここに呼んでくれ。そしてもう一度計算してみるんだ」
 何を言っている、と口にしかけ……祷夜は、気付いた。先の勝負において、趨勢を変えた彼のユーベルコード。まさか、『声以外も感知出来る』のか? いや、そうとしか思えない。でなければ、今現れたこの幻影は、説明がつかない!
「そういうことか!」
「そういうことさ」
 二人の男が笑った。すると祷夜はついさっきまでの険を捨て去り、敵めがけ突撃する。再びつぶらな瞳が閃光を――いや、祷夜の方が速い!
「行くぞ、マツリカよ!」
 ひょう、と剣が啼いた。先の一撃と対になる袈裟懸けの太刀、アルパカマッスルの胸部が再び大きく裂ける!
「がはっ!!」
「どうした、力に頼った割にその程度か? では貴様はもう終わりだな」
 防御態勢を取ろうとするアルパカマッスルに連撃を加えながら、剣豪は鋭く言った。彼の背後、ジョンの周囲にはまた一人、新たな幻影が集っている。
「なん、だ、あれは……!?」
「余所見はいかんな、おぶりびおん!」
 祷夜の攻撃を凌ぎながら、アルパカマッスルはその正体を確かめようとした。だがわからなかった。
 無理もあるまい、肝心のユーベルコードもまた、『Unknown error』と呼ばれていたのだから。
『未知の要素を確認。計測完了――勝てます』
「だろうね!」
 ジョンの周囲には無数の幻影。それはどれも、エクエク世界に住まうNPCたちの姿!
 バイザー上に表示された、ただのモップのアイテムレベルがすさまじい勢いで上昇していく。一体何が原因だと?
 問うまでもなし。英雄を立ち上がらせる力など、愛と勇気以外に何がある!
「さあ、今だ! パワーをスピアに!」
「いいだろうともッ!」
 この一撃のために、祷夜は前衛を買って出たのだ。彼が射線を拓いた瞬間、ジョンは勢いよくモップを――否、光を纏う輝く槍を、擲った!
「うおおおおおおっ!?」
 防御しようとしたアルパカマッスルに、祷夜の剣戟が叩き込まれる。そして守りが崩れたところに、突き刺さる光槍!
 筋肉の鎧を貫いてなおあふれるエネルギーは、ヤツの五体を大きく吹き飛ばす!
「……まだ立つか。しぶとい怪人だな」
「いいさ、だったらもっともっとレベルを上げてやるよ。さあ、どれだけ上げればお前を倒せるかな? アルパカマッスル!」
 並び立つ両雄が吼える。敵は健在、されど味方は世界を超えて無数。
 趨勢は、猟兵らに大きく傾いた!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ユーザリア・シン
ははは、潮目が変わったな。うむ、曲目を変えよ!
今や我ら猟兵は――否。この場にいる誰もが、この光景を見る誰もが、ピカピカの戦士なのだ。
名も知らぬ幾億の戦士たち、きらめく星屑の如きそなたらよ。
今宵の空に、我らを想うが良い。
左様、今は笑顔ではなくとも。
今は信じられなくとも。
その想いに嘘は無いのだからな。



●たとえ惑星の裏側まででも
「ははは、ははははは!」
 鉄火場の只中で高らかに笑う女がいた。その名をユーザリア・シン(伽藍の女王・f03153)と云う。
 ここに来てからというもの、舞っては舞っての繰り返しで独特のペースを貫いてきた彼女だが、この期に及んでまだ踊る。
 それは彼女が乱痴気騒ぎを好む酔狂な手合だからか? ……否。いやまあ酔狂であることは違いないが。
 人ならざるもの、呪われし血の継承者、ダンピール。
 紅き邪悪を宿しながらも、されどその身は聖なる光に輝く。それがユーザリアという伽藍の女王の有り様だった。
 国無くして、民亡くしても、未だ女は王を任ずる。それはどこまでも孤独であり、しかしあの敵とは異なる孤影と言えた。
「ええい、さっきから視界の端でうろちょろと! 目障りだ!」
 猟兵たちの猛攻を耐えきったアルパカマッスルが、笑い踊る女に怒鳴り散らす。己の筋肉を誇示しながら猛進し――。
「何を無粋なことを言う。さあ、踊れ」
「なっ、ぬう!?」
 振り上げた豪腕は降ろされず、代わりにぎくしゃくと踊りらしきものを舞った。
「なんだこれは!?」
「踊っているのだろう? 違うのか。であれば、踊らされているのであろうよ」
 謎めいて言い、幻影と共に舞う聖者。念動剣がそれに追従し、意識の外からの攻撃を見舞う!
「すっかり潮目が変わったな。いいぞ、曲目を変えよ!」
 見ているばかりだったキマイラたちすら、その正体不明の傲岸さにステップを踏まずにいられなかった。まったく意味不明、不可解極まりない女。
 ……だがそれゆえに、ユーザリアはこの場に来てから、一度も誰にも呑まれていない。
 アルパカマッスルの標榜するギスギスにも、当然猟兵たちの連帯にも。
 そもそもオブリビオンの目的が『自分が標榜する潮流を世に知らしめる』というものであったならば、ユーザリアの独孤はその対極。彼女はここにただ居てマイペースに過ごすだけで、奴の企みを阻み続けていたのだ。
 ……多分、きっと、おそらく。本当にただ踊りたいだけなのかもしれない、やっぱり。

 だがそれでもいいのではないだろうか。
 この死闘のなか、それを見守るキマイラたちには笑顔が浮かび。戦士たちを応援する。
 まさに素晴らしき探索者たち。ピカピカな戦士とは、ゲームも実に味な名を付ける、と彼女は想った。
「宴はいずれ終わろう。だがそなたらがまた悪意に呑まれかけたとき、此度の煌めきを思うがよい!」
 女王は叫んだ。
「たかがゲームのことでは信じられぬか? あるいは悪意の爪痕痛々しく、笑顔を浮かべられぬものもいような」
 少なからぬ者が呻いた。アルパカマッスルの策に載せられ、かけがえのない仲間たちを自らの言動で失ってしまった者たちが。
「だがよい。そなたらはそれを正しいと信じて為したのであろう。たとえ間違っていたとしても、その想いに嘘はないのだ」
 オブリビオンは、その根源を絶たぬかぎり無限に現れる。世界に住まう人々こそが、迫り来る過去に抗う心を持たねばならない。
 それを説く彼女の言葉は、そして心に刻まれる舞は、なるほど猟兵ならではのものと言えよう。
「なぜだ、なぜこんなわけのわからん女ひとりに、私が抗えないのだ……!?」
 オブリビオンは困惑する。その理由は永遠にわからないことだろう。
「さあ踊れ、勝利の舞を! 剣の舞を、戦の舞を! 演目は終わっておらぬぞ!」
 死の舞踏はなおも続く。だがそのエンドロールは近づき始めていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ピリカ・コルテット
最後はリアルファイトですねっ☆
ゲームであっても、エクエクは只の遊びじゃないんです!
ヴォシダ討伐と同じ様に、猟兵みんなで力を合わせて敵を倒しますよーっ♪

全力魔法を使って【WIZ】の『わたしですよ』を放ちますっ!
なんちゃってフラッシュによるヘイト稼ぎです!
(SPDの硬化は厄介そうですし)
回避し切れない敵の攻撃は、技能で刀受けして軽減しましょう~!

何だか大変な事になった場合には先程のボス戦を思い出して、
みんなで上手い事連携を決めてやり過ごしましょうねっ!
ゲームでもリアルでも、協力プレイの重要さや結束による強さ、
その尊さをマッスルさんの身体に教え込んであげましょうっ☆

アドリブ・絡み大歓迎ですよう♪


難駄芭院・ナナコ
えっ、エクエクもう終わり?
新実装されたブルーウィザードやろうと思ってたのに!

真の姿を使って迅速に片付けるぜ!
ある時は猟兵、ある時はピカピカな戦士、その真の姿は…!
「シノビ使いの悟空、推して参りますわ!」

黄金果実活性法を使ってパワーアップしましょう、とっておきの高級バナナですわ♪

さぁ力が漲って参りました、このデリシャスバナナブレイカーはナイフフォークの二刀流も出来るのですよ!
そして必殺の一撃には連結しての一刀両断!
フッ、決まったぜぇ!

真の姿:怪盗として活動する姿
仮面を被り素顔を隠し背丈も伸び体型も成長した17歳のお姉さん姿
バナナレディ口調でお嬢様風に振る舞うが、油断すると素の口調に戻ってしまう


バルディート・ラーガ
ゲームバトルじゃあお役に立てそうもねえもんで観戦してたンですが、いやー見入っちまった。あっしはそのう、ピコピコしてた時代のエクエクしか知らねえもんでして。最近のゲームにゃとんと縁がありやせんが、すごいモンですねえ…
エッ。なに?麻雀?そ、その話ちょいと詳しく…

や、しかし。ゲームの結果で癇癪を起こしちゃあいけねえや、なあアルパカの旦那ア!荒事となりゃあコッチの出番、台バンじゃあねえけどまるっと叩きつけで攻撃してやりやしょう。ご自慢のポージングも、もっとこんがり地獄の炎であぶってやりゃあ形無しじゃあないですかねえ?


リリカ・ネムリカ
くくく、余興は終わりであるか
よかろう、ならば夜(略)の真なる力、とく目に焼き付けるが良い!

数の暴力で囲んで叩くってのもちょっと意地が悪いけど
まぁええかな、ソロを選んだのは自分やし
これも自業自得ってやつやね

それともお得意の多重プレイでも魅せてくれるんやろか
分身でもしてみる?できるんなら見といたるで
もっとも、できたところで負ける気はせぇへんけど
チームワークの力をもう一度、みせたろうやないか!



●かしまし娘、いざ参る
 アルパカマッスルの全身におびただしい傷跡。だがその筋肉はハリを失わない。
「私をここまで追い詰めるとは……だがまだだ、まだ終わってなぁい!」
 暑苦しい筋肉をはちきれんばかりに誇示する怪人。本当に暑苦しい。
 それを見て、リリカ・ネムリカはくすりと嘲笑った。
「余興は終わりか? ならば夜を統べし闇……」
「リリカちゃん、他の称号とかないんです?」
「ちょ、台詞の途中に茶々入れんといて!?」
 ピリカ・コルテットの横槍に一瞬素に戻りつつ、咳払いして仕切り直し。
「……や、闇の皇女の真なる力、とく目に焼き付けるが良い!」
 在庫はまだあった。
「うんうん、私たちもジョンくんや祷夜さんに負けていられないですっ!」
 ぐっと握り拳をし、ピリカも最後の攻勢のため力を溜める。
「ゲームであっても、エクエクは遊びじゃないんです。みんなで紡ぐ大事な思い出ですから☆」
「えっ、ていうかもうエクエク終わり? アタイまだまだ遊ぶつもりだったのに!」
「「ええ~!?」」
 難駄芭院・ナナコのマイペースすぎる発言に思わずハモる二人。
「いやだってさあ、ブルーウィザードとかやりてえし……」
「それは終わってからやればええやん! うちもレベリング付き合うからっ」
「そうそう、私もお手伝いしますよ♪」
「そっかあ。んじゃ、さっさと片付けねえとな!」
 三人娘が並び立ち、構える。そして戦いが……ん? ちょっと待った。
 なんだか頭身が高くなった上、妙な仮面を被っているのがひとりいるぞ?

「「「えっ、誰!?」」」
 その場にいる誰もが口を揃えた。当たり前だ。
「ある時は猟兵、ある時はピカピカな戦士。しかしてその真の姿は……」
 謎の仮面淑女が高らかに謳う。そして決めポーズ!
「シノビ使いの悟空、推して参りますわ!」
 バナナァーン!!
 き、決まった。完璧に決まった、と仮面の下でドヤ顔をするバナナレディ。
 場が静寂に包まれる。アルパカマッスルもつぶらな瞳をぱちくりさせていた。
「……いやナナコちゃんやよね?」
「リリカちゃんなんてことをっ!?」
 あまりにも素朴で無慈悲なツッコミであった。
「い、いいえ違いますわ! アタ……わたくしは悟空、怪盗でしたよ!」
「へー、そっかー。ナナコよ、そなたもう我を茶化せぬからな???」
「う、うぐぐ……」
「と、とにかくテイク3ですよ! さあ行きましょうっ☆」
 緩みかけた、というか実際緩んだ空気をピリカが慌てて締め直す。
「さあ来い猟兵、私はあと何回かユーベルコードを喰らえば倒れるぞおおお!!」
 アルパカマッスルも気を取り直して筋肉を誇示した。さあ戦いだ!

●決戦
 三人娘を加え、猟兵陣営の攻撃はさらに苛烈さを増した。
 アルパカマッスルは時に筋肉を硬質化させ、時にビームを放って対抗するが、やはり圧されていく。
「数の利には抗えぬか怪人よ。だが悪いな、我が配下は無限なのだ!」
 リリカの周囲に現れる騎士と蛇龍。決して中二病が見せる幻ではない。
 彼女が用いたリザレクト・オブリビオンによる、死霊の軍勢である。
「それとも分身でもしてみせるか? 出来ぬであろうな、自業自得である!」
「おのれ、生意気な口を叩きおって!!」
 激高したアルパカマッスルは、迫り来る死霊の群れに対し威圧的ラットスプレッドで対抗した。
 騎士の剣が、蛇龍の牙が筋肉をえぐる。マッスルポーズは解かぬ!
「ぬうううううう……ッ!!」
 縄めいた筋肉が全身に浮かび上がる。満ち満ちる膂力を込め、片腕を掲げた。
「まとめて吹き飛ばしてくれるわァーッ!!」
 増大した身体能力による拳撃は、大地の怒りじみて戦場を揺らし軍勢を……いや、それを突き抜けリリカにすら届くだろう。
 その時!

「はーい、わたしですよーっ♪」
「えっ、何? グワーッ!?」
 思わず声のほうを見た怪人は苦悶した。両手を掲げたピリカから溢れる眩しい光!
 これでは、つぶらな瞳からビームを放つことすら出来ない……!
「わかりましたか? これがエクエクで学んだ連携プレイですっ!」
 ダークナイト使いのピリカだからこそ出来る、リアルヘイト値稼ぎだ。
「「『『ピリカのスペシャルフラッシュが決まったぁー!!』』」」
 視聴者も、戦いを見守るキマイラたちも声を合わせて盛り上がる!
「そ、それはちょっと恥ずかしいかな? でもまだまだ行きますよー☆」
 桜竜刀【プリム】を鞘走らせれば、その剣閃を追って桜吹雪が舞う!
「お、おぉのれぇっ!!」
 視力が回復したアルパカマッスルは、怒りとともに両手を……床に突き刺した!?
「ぬうんっ!!」
「きゃあっ!?」
 ポージングによる身体強化はここまで来ていたか。
 奴の有り余る膂力により床がちゃぶ台めいて引っ剥がされ、瓦礫の雨がピリカに迫る!
 被弾は覚悟の上。ピリカは真紅の妖刀で武器受けを試みる――が。
「あ、あれ……痛くない?」
 いつまで待っても衝撃が来ない。恐る恐る顔を上げると、彼女と瓦礫の間に割って入った幻影がひとつ。
『……行けますね? 我が主』
 フルフェイスの甲冑から覗く両目がそう語りかける。
「! ……ええ、うんっ、大丈夫っ!!」
 素顔知れぬ騎士は……ジョンの喚び出した幻影たち、エクエクのNPCの一体に過ぎぬはずのそれは、しかし頷き返し、黒い闇となって消え去る。
「協力プレイの楽しさ、結束による強さ、尊さ……あなたに教えてあげますっ!!」
 ピリカは脇を締め、半身をずらし腰を落とす。
 剣術における霞構えと呼ばれるものによく似た体勢だ。妖刀が、赤く輝く!

「もぐもぐもぐ……ごっくん」
 一方ナナコ……もといバナナレディ悟空は、仮面を少しずらしてバナナを食べていた。
 呑気と謗る者は性急に過ぎるだろう。なにせこのバナナ、ただのバナナではない。
「栄養補給は終わったかい?」
 ピリカのもとへ幻影を遣わせたジョンは、モップを手に問いかけた。
「ええ十分ですわ! 最高級のバナナですもの!」
 黄金果実活性法(ドーピングバナナバイキング)! 悟空の全身から立ち上るバナナ色のオーラ!
 愛用のデリシャスバナナブレイカーを逆手二刀流に握りしめ、腰を落とす。
「力が……漲る、漲る! オラァ、百人力ですわぁ!!」
 そして一気に間合いを詰め斬撃を繰り出す。さらに双刃が旋風を描く、四! 八! 十六!
「な、なんという疾さだっ!?」
「負ける気がしないぜぇ!」
 悟空の攻勢に乗り、戦い続ける猟兵たちも一気に攻め立てた。
「マツリカの刃、受けてみるがいい!」
「妾も忘れてくれるなよ? そこだ!」
 祷夜の、そしてユーザリアの刃が加わり、いよいよ筋肉の守りを打ち砕く!
「我が配下よ、遅れをとるな! 闇の眷属の力を見せよ!」
「うおおおおおっ!?」
 女王然としたリリカの号令のもと、さらに進軍する死霊の群れ。
 今の彼女は泣き虫田舎娘などではないのだ。たとえ本人に戦う力がなかったとしても、死霊たちは夜の王の命令に従う。
 高貴なる血の継承者、忌まわしき術理の使い手。名乗る二つ名に不足なし!

 何故だ。どこで間違えた。どうすればいい。
 アルパカマッスルは高速思考する。どうすればこの状況を打開できる。
 ……そして奴の追い詰められた判断力は、悪魔的結論に達した。
「猟兵ども、貴様らの弱点を教えてやるッ!!」
 全身を朱に染め、怪人が叫ぶ。そして向いた先には……おお、安全圏に避難したキマイラたち!
「それは貴様らが、どうしようもなく甘ちゃんだということだァ! ハハハハハッ!!」
「彼奴め、民間人を襲うつもりか! あ、あかん!」
「させませんっ!」
「当然だぁ!」
 リリカの悲鳴に、ピリカと悟空が駆け出す。だが死に物狂いのアルパカマッスルは、それよりもわずかに速い!
 キマイラたちはパニックに陥りかける。だがそこで、一歩前に出た少年が居た。
「お、お前なんか怖くないぞ! かかってこいっ!」
「ならば死ねぇええええ!!」
 少年は……ジョンにモップを投げ渡した一人のピカセンは、それでも臆さずに立つ。
 少しでもあのヒーローたちのように戦いたいと。その気持ちが、怪人の悪意をくすぐった。
 民間人を範囲攻撃で叩き潰すのではなく、まずこのガキを殺す。
 嗜虐的な笑みを浮かべ、怪人がハンマーパンチを掲げ――。

「ああ、駄目駄目。旦那ァ、そんなポーズじゃ筋肉はアピール出来ないでやしょう?」
「ぬう……ううっ!?」
 枯れた声が狂乱のなかでいやによく届いた。かと思えば、奴の巨体に絡みつく黒炎の蛇!
「なん、だ……この、蛇はぁ!?」
「咎めの一手でございやすよ、旦那」
 キマイラの集団から歩み出る男あり。ドラゴニアンだ!
「いやあ、思わず見入ってしまいやした。だから観戦側に回っていたんでございやすがね?」
 小首をかしげ、バルディート・ラーガ(影を這いずる蛇・f06338)が言う。その眼がきゅうと細まった。
「癇癪を起こした上に、無抵抗の連中に手ぇ出すってえのはいただけねえや」
「こ、この状況で、潜んでいたというのか!? 私の動きを先読みして……!?」
 くくっ、と老獪な龍が笑う。その真意は何処にありや。
「ともあれ、旦那のやり口にゃあ穴が出来ちまったわけだ。いやあ、残念残念」
 黒炎蛇はぎちぎちと怪人を締め付け離さない。攻撃も、防御も、何も出来ぬ!
 怪人は背後を振り仰いだ。ピリカが、リリカの配下が迫る。そして、そして……。
「デリシャスバナナブレイカー、連結モードだァ!」
 自慢の武器を両手に構え、悟空が! 迫る!!
「決めちゃってください、ナナコちゃん!」
「かましてやれ、悟空よ!」
「あたぼうよぉ! 一刀両断だぜぇえええええっ!!」
 怪人は何かを叫ぼうとした。
 だが出来なかった。
「――――がぼっ」
 その筋肉が、巨体が、真っ二つに断ち割られていたからだ。
「おやまあ、残念残念。ま、地獄の炎をゆっくり楽しんでくださいや。ヒヒ」
 見下ろす龍……否、蛇が言う。その視界も、昏い炎に包まれやがて無に還った。

●勝利のファンファーレ!
『『『「「「やったぁああああああああ!!」」」』』』

 その場に居た、いや目の当たりにしていた誰もが勝鬨をあげた。
 猟兵たちもまた傷と疲弊を忘れ、互いに肩を叩き、手を握りあって勝利を喜ぶ。
「そなたらよ、見事な戦いぶりであったぞ。妾は満足である」
「ふ、ふん。そちらもなかなかだったな。……くっ、あかん、ほんまもんの女王様には勝てへん……!」
 悔しがるリリカに、ほんのりと微笑むユーザリア。
「リリカちゃんも乙! エクエクでもナイスヒールだったぜ!」
「ええ、本当に! ごく……じゃなくて、ナナコちゃんもお疲れ様ですっ☆」
 さっきまでいませんでしたよ、みたいな顔で元の姿に戻ったナナコと、それを労るピリカ。一同の顔には満面の笑みがあった。
「ところでそこなドラゴニアンよ、さきほどは見事な不意打ちだった」
「いやあ、とんでもねえでさ。あっしはしがねえ蛇でござんして、へへ」
 腰を低くしてゴマをするバルディートと、それを見て肩をすくめる祷夜。
「さっぱり気付かなかったしねえ。バルディートさんはエクエクやってるの?」
 ジョンが何気なく問えば、バルディートは目の色を変えて言った。
「それでごぜえやすよ! ほら、さっき言ってやしたでしょ? ドンジャラとか麻雀とか。それ、詳しく教えてくれやせん?」
「ならば、俺とお前はビギナー仲間、ということだな」
「フレンドがまた一人増えるや、やったね!」
 男たちもまた、笑う。そしてふと、振り向いた。

『我が……いや、我らの盟友たちよ。私たちの世界を守ってくれて、ありがとう』
 エクエクのNPCたち……その姿をした幻影たちの姿が薄らいでいく。
 先頭に立つ銀髪の騎士が代表して礼を言い、盾を掲げた。
「当然である。我らはピカセンゆえな!」
「そうそう、当たり前だぜ! ゲームは皆で楽しく、だろ?」
「そうですよ☆ ……おかげで、とっても大切な人にもまた会えましたし」
 ピリカは瞼を閉じる。
 彼女を守った幻影は、ダークナイトのNPCだった。多くのプレイヤーが思い入れを持つキャラクターだ。
 あれは、そして今目の前で礼を述べる幻影たちは、本当にゲームの世界から飛び出したNPCたちなのだろうか?
 はたまた、ジョンがユーベルコードを使い、そういうロールプレイをさせているのか?
 ……答えはわからない。隣に立つジョンを見ても、彼は意味ありげに笑うのみ。
 それでいいと思った。ピリカだけではない全員が、それでいいと。
 ゆえに彼ら彼女らの返す言葉は、こうだ。
「「「こちらこそありがとう。これからもよろしくね!」」」
 幻影たちはその言葉ににっこりと微笑み……そして、消えていく。

 ゲームのプレイヤー全員がギスギスを忘れられるわけではあるまい。
 オブリビオンの主張は、あくまでそういう派閥の言葉を借りただけだからだ。
 もしかすると、今日この時を聞いて感じた者の中にも、ゲームの楽しさを見失ってしまう誰かがいるかもしれない。
 それでも彼らはそのたびに言葉を掛け合い、そして互いに考えて、絆を取り戻すだろう。
 全てのピカセンに……いや、ゲームを楽しむ人々に幸あれかし。

 未来は、たしかに守られたのだから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月18日


挿絵イラスト