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生贄特急 ~斜陽のニア・デス・レールウェイ~

#UDCアース #生贄特急

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#生贄特急


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●贄は多いほどいい
「ンーーー、ウン、ココから死んで貰いまッしょう!」

 フィンガー・スナップ。
 ぱちん、とそいつが指を鳴らすと、ぼぁん、という音を立てて最前列の四人が燃えた。まるで人の形をした蝋燭のように。
 絶叫はすぐにザラザラとした喘鳴に変わり、途絶えた。炎を吸い込めば声帯が焼け、粘膜が爛れ、まともな声は出せなくなる。シートを焦がしながら転がり暴れる四名をよそに、その異形はアンバランスに長い腕をタクトのように振りながら、一歩踏み出した。
「きゃああああああああああああっ!」
 突如、前触れもなく起きた惨劇に、悲鳴を上げた女性がいた。その悲鳴は次の瞬間にはくぐもる。開いた口を貫くのは鋭利な触手。先端が首の後ろから突き出て、女性は絶命した。
 人型をした化物が招来したおぞましき紫色の触手が、ぞるぞると固まって床を這う。
 蜂の巣を叩いたような騒ぎとなる特急列車一号車。この地獄に於いては、命は羽根のように軽い。
「さああ、たァくさん死んで死んで! お土産をつくりませんとネぇ!」
 身を反らせ笑いながら、手近な人間を燃やしつつアンバランスなシルエットは歩く。
「我らが神への贄は、多い方が素敵でしょうからァ!」
 人が死ぬ。死んでいく。燃え、貫かれ、縊られ。
 そいつが悠然と歩くその後ろで、死体が順に不浄の衣と屍蝋の面を被り、ずるりずるりと立ち上がる。

 惨劇は、たった今始まったばかりだ。

●ヘル・オン・アース
「手の空いてる猟兵はいるか!」

 グリモアベースの一角に、切迫した声が響いた。
 声音は切迫し、緊張感に満ちている。

 振り向いた猟兵らの先にいたのは、壥・灰色(ゴーストノート・f00067)であった。
 彼は既に六面揃った、輝けるルービックキューブ――グリモアを宙に浮かべている。
「端的に説明する。今、ある駅に目掛け特急電車が暴走中だ。先頭車両はオブリビオン――仮称『膨らむ頭の人間』により既に占拠。オブリビオンは先頭車両にいた民間人を鏖殺、『黄昏の信徒』として使役している。車両はコントロール不能の状態。マスコンを開けて最高速で電車を突っ走らせてるのがその……くそ、長いんだよ。『膨らむ頭の人間(ポップヘッド)』だ。奴ら、電車を止める気が無い。このまま終着駅に突っ込ませて、大惨事を引き起こし、――死んだ人間を贄に邪神を呼び出すつもりでいる」
 ざわ、とグリモアベースの一角がざわつく。奇しくもその折、事件の発生を告げるグリモア猟兵は他にもいた。タイミングに歯噛みをしながら、灰色は続ける。
「敵の詳細については資料を配付する。適宜参照してくれ。敵は先頭車両から第二車両へ向け進撃を開始。車内の人間を鏖殺して魔神への土産にするつもりでいる。転送地点は最高速で突っ走る特急電車の真横。全員、全力で着地後、自分の出来る手段で特急列車に追いつき、車両に突入。第一車両で発生した敵オブリビオン『黄昏の信徒』数十体、およびポップヘッドを討伐する。作戦目標は以上」
 決然とした表情で告げた灰色は、常にない大音声で続けた。

「動ける猟兵は今すぐ走ってくれ!! 時間との勝負だ、遅くなればなるだけ人が死ぬ!」

 灰色は、言葉を飾ることなく言った。彼のグリモアが光を放ち、“門”を開く。
 過去、吹いたことのないほど強い風が――その奥から吹き荒れ、猟兵らの髪を嬲った。



 煙です。

 今回はコラボシナリオの運びとなりました。
 三味なずなMSの「生贄特急 ~始発地獄行き~」
 鍼々MSの「生贄特急 ~こちら邪神行き~」
 そして当方の依頼三つ、生贄特急シリーズと言うことで参ります。
 同時参加も大歓迎ですよ!

 すんなり行った場合の流れはザッと以下の通りです。

 ・突入→集団戦→ボス戦の運び。
  ・ものすげーカッコよく突入し、
  ・ウルトラスタイリッシュに雑魚を薙ぎ倒し、
  ・ボスに圧倒的カッコいい啖呵を切って、
   →ブチのめす!!!
 ・考えずに感じて欲しいです。
 ・やりたいことをやって欲しいです。
 ・頑張ります。
 ・皆様の魂のプレイングをお待ちしております。
 ・私も魂を燃やしてお応えします!!!!!
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第1章 冒険 『走行する列車に乗り込め!』

POW   :    気合や卓越した身体能力を使って列車に掴まる。列車を気合や力技で減速させてから乗り込む。

SPD   :    速度で列車に追い付いて飛び乗る。列車の仕掛けに外部から干渉することで乗り込みやすくする。

WIZ   :    列車が減速する通過地点で待ち伏せして飛び乗る。魔術などを使用することで乗り込みやすくする。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●特急地獄行き、奔る
 舞台となる生贄特急は十五両編成。
 限界長となるそのボディをフルに開けたマスコンにより時速一七〇キロメートルで稼働し、唸りを上げて空気を引き裂く。周囲はだだっ広い郊外だが、いずれは町中に差し掛かるだろう。踏切もなにも気にせず、管制すら受け付けないこの電車がそこまで近づけば、二次被害三次被害どころの話ではない。
 空中、開かれた門から猟兵達は飛び出す。

 直走れ。この企てを止めるために!
杜鬼・クロウ
「呼んだか?
関係ねェ一般人巻き込んで生贄だァ?クソだなクソ。人の命を何だと思ってやがる。
一刻を争うンなら俺もその占拠された列車に向かうぜ。ぶっ潰してやらァ!」

外套を翻し【杜の使い魔】使用
八咫烏に【騎乗】し列車を追いかける
他の猟兵と出くわしたら乗せても可
列車が見えてきたら後方車両の上へ華麗に飛び降りる
脳筋ばりの力技で、扉に剣を突き立てて無理矢理こじ開けて乗り込む

飛び降りが難しそうなら、
八咫烏に乗ったまま最後尾の車両の天井を八咫烏の足で強引に取り外す
綺麗に着地しダイナミックお邪魔
役目を終えた八咫烏は消え去る

「助けに来たぜ…って新手の敵じゃねェし!
下がってな。後は俺達が片付けてやンよ」

アドリブ歓迎



●風雲児、飛ぶ
 ――呼んだか? なに、関係ねェ一般人巻き込んで生贄だァ? 
 ――クソだなクソ。人の命を何だと思ってやがる。一刻を争うンなら俺もその占拠された列車に向かうぜ。ぶっ潰してやらァ!

 風雲児はそうして笑い、彼と同じ速度の風の中へ飛び込んだ。

 空中、放り出されると同時に男は――杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)はにっと笑い、外套を翻して指を鳴らす。
「来たれ! 我が命運尽きるまで、汝と共に在り!」
 フィンガースナップと同時に現れるのは、巨大な八咫烏だ。滑空するその背に二足で着地、羽ばたきを邪魔せぬように騎乗すると、身体を八咫烏と密着させ、まさに人鳥一体の様相で飛ぶ。
 電車は既に視界の中にある。スピードが速い。他の猟兵はまだ到着していない。クロウが一番乗りだ。
 状況を分析しつつ彼は八咫烏の背を、進め、とばかりに強く押す。意を酌んだ鴉がその速度を増し、電車の後端へ迫った。一番後ろの車両までは、まだ被害が届いていないのか、車内の様子はこの異様な速度にざわめく程度で済んでいる。
「ちょっとばっかり手荒に行くぜ」
 充分に電車に近づいてから、跳躍! 車両の天井に剣を突き立て、滑落を防ぐ。
 背後を一瞥すると八咫烏はふわりと風に溶けるように消えた。
「行ってくる」
 ドアは車両前方にある。強い風に嬲られながらクロウは天井を車両前方に向け走り、十五号車のドアを剣でこじ開けた。力業である。ひずんで多分二度とは閉まらないドアから身体をねじ込む。
「邪魔するぜ。――」
「――」
 乗り込んだ瞬間にサラリーマンらしき一般人と目があった。
「えっ、アンタ今、この電車……走って……」
「あーあーあー別に怪しいもんじゃねえよ。大丈夫だって。助けに来たんだって」
「助け……?」
 後方車両までは騒ぎが伝わっていないのだ。クロウは頭を掻きながら簡単に経緯を説明する。
「つーワケで、あんた、この辺の車両の乗客と一緒に下がってな。後は俺達が片付けてやんよ」
 にわかには信じられない様子で歪んだドアとクロウを見比べるサラリーマンを背に、クロウは前方車両へ進み出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイクス・ライアー
無茶をする。だが、 問題はない。

【SPD】
帽子は、諦めるしかあるまいな。仕事の時に洒落込むものではないな。
まあいい。神足を活かし列車の横につけながら、指輪に仕込まれたワイヤを列車に引っ掛け飛び乗る。扉を破壊する者が、誰か1人はいるだろう?後に続くぞ。(入る場所がなければ傘型の銃で窓を撃ち壊しスタイリッシュに乗車)
いないとは思うが、乗車の流れに乗れぬものが万が一いれば引っ張り中に放り込む。

Where there is a will, there is a way.
紳士たるもの、走行中の列車ぐらい乗り込めなくてどうする。



●その男、優雅にして洒脱
「無茶をする。だが、問題はない」
 声低く、ジェイクス・ライアー(素晴らしき哉・f00584)は呟く。
 グリモア猟兵の転移により放り出された彼は、地面に踵が着いた瞬間に地を蹴立てて走り出した。土を蹴立て、前方へ走る。肉食獣のダッシュを思わせる疾走。
 彼の頭から、スーツと揃えた仕立ての帽子が、風に嬲られて天高く舞い上がる。
「……仕事の時に洒落込むものではないな」
 惜しみはするが、今の優先事項はそれよりも別にある。
 ジェイクスは速度を上げ、今以て爆走する電車の横に付けると、その車体を観察する。既に先行した味方がいるならば、どこかしらに侵入の痕跡があるはずだ。
 果たして、それはすぐに見つかった。最後尾、一五号車の車両、前方ドアが破壊されて開いている。――先行したクロウが破壊したものだ。
 見るなり、ジェイクスはまるで楽団を指揮するかのように、滑らかな動きで電車に手を差し向けた。狙いは当然、歪んで開いた一五号車のドアだ。その内側の突起、ハンドルに向けてワイヤーを放つ。過たずワイヤーは目標としたハンドルに絡みついた。巻き上げつつ跳躍。
 引っかけたワイヤーを頼りとし、電車の壁面に靴を下ろし、まるで道を往くような気軽さで、一七〇キロの暴走列車の横腹をとん、とんと数歩。歪んだドアから、彼は悠然と車内に滑り込んだ。

 Where there is a will, there is a way.
「意 思 あ ら ば 、 道 は 開 か れ る」
 紳士たるもの、走行中の列車にくらい乗り込めずになんとする。
 ジェイクス・ライアーは歌うように言う。

 ――遥か後方で、主を失った帽子がパサリと落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​

桜庭・英治
あー、バイクの免許とっときゃよかった
とっててもレールの上を走る自信ないんだけど

だからここに用意しましたローラーシューズ!
列車のスピードにホイールが耐えられるか不安だけど
耐えられなかったらたぶん死、…こええな!


事前にフック付きワイヤーとレガリアスシューズを用意だ
列車のすれ違いざまに『念動力』でワイヤーのフックを後部車両に引っ掛け
シューズでレールを滑走しながら追いかけるぜ
徐々にワイヤーを手繰り寄せれば追い付けるはず
風めっちゃ強くて死にそう
追い付いたらワイヤーを握りしめたままスカイステッパーを使用して屋根まで登るぞ
登ったら…
…ここからどうしようか

ターザンみたいな感じで勢い付けて窓ブチ破って入れない?



●その一方
 桜庭・英治(NewAge・f00459)は後悔していた。
 入りからそんな感じで大変後ろ向きなのだが、先に立たないものと絶賛向き合っていた。
「あああああああああああああ風強っ!!!! バイクの免許取っときゃよかったああああああ!!!」
 これならレールの上を走る方がなんぼかマシである。英治は足先のバランスだけで時速一七〇キロメートルでカッ飛んでいる。
 経緯としてはこうだ。フックつきワイヤーを用意した。レガリアスシューズを履いておき、転送と同時、真横を通り抜ける電車の最後尾の車両に念動力と根性でフックつきワイヤーを引っかけ、電車に引っ張って貰いつつ徐々に手繰り寄せよう、という作戦を彼は考えたのである。
 そして実行した。その結果、彼は今時速一七〇キロメートルでレールの上を引きずられている。
 足下でローラーシューズのベアリングがギイギイ喚き、たまに金具とレールが火花を上げる。
「おおおおおおおおおおおい耐えろ! 耐えてくれ! 耐えられなかったら多分死、っこええええええ!!」
 頑張れ英治。君の命は今、まさにローラーシューズの摺動部に託された。
 喚きつつも行う行動は素早い。細心の注意を払い、バランスを保ちながらロープを引っ張る。徐々に手繰り寄せ、射程圏内に入った瞬間に『スカイステッパー』を使用。英治の身体は重力の束縛と摩擦から解放され、宙に浮く。そのまま何度か連続でジャンプを繰り返し、どうにか天井に着地する。
「し、死ぬかと思った……くそ、絶対免許取るぞ俺は」
 反省する内容がそれであった。英治はそのまま車両前方に走り、空中に身を躍らせ、ドア縁を掴み、手近なドアのガラスを蹴りで突き破って車内へエントリーした後で――
「……」
 対面、逆側の扉が誰かに壊されたのか、ぽっかりと穴を開けているのを目にした。
「……」
 見なかったことにした。前の車両に急ごう。大事の前の小事だよ。

成功 🔵​🔵​🔴​

数宮・多喜
暴走特急だぁ?
面白れぇ、スピード勝負に乗ってやろうじゃないのさ!
…や、人命がかかってるのは分かってんよ?

とにかくアタシはまずは列車にバイクで並走。
他の猟兵が乗り込みやすいよう、
走行するバイク自体を足場にできるように
安定させながらスピードを保つ。

ほらほら、ジャンプ台はここだよっ!てな感じかね!

もしも並走しながらちょっかいかけようとする奴がいるなら、
そいつを乗っけたままでもいいかもねぇ。

主だった面子が突入し終わったら、
アタシも突入するよ。
もう一段階ギアを上げ、他の奴が開けた穴か
閉まったドアをぶち破ってバイクごとエントリーさ!

【アドリブ改変大歓迎】


皐月・灯
オレには翼はねー。ずば抜けた足の速さもねー。
それがどうした。
転送が「特急の真横」なら、その刹那だけで十分さ。
「グリモアで転送され、着地すると同時に車両に飛び込む」ぜ。

オレの靴、メテオ・レイダーには身体軽量化の魔術が籠めてある。
それだけで飛び移れるわけじゃねーが、こういう場面じゃ役立つぜ。

【見切る】のは一瞬、狙うのはデカい窓だ。
乗客に影響ねーように体を丸めてぶち破り、立ってる敵を反対側の窓まで蹴っ飛ばす。
オレまで投げ出されねーように窓枠に手をかけて、遠心力で車内に戻る。
こういう【早業】は得意なんだよ。

「よう――てめーらの大事な計画、ぶっ壊しに来てやったぜ」

早く、速く、迅く、オレの拳でブチ砕く!



●エキサイト・ラリー
「暴走特急だぁ? 面白れぇ、スピード勝負に乗ってやろうじゃないのさ!」
 数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)はアクセルを開け、愛車「JD-1725」にスピードを乗せる。空中から飛び出した宇宙バイクは彼女の意思を受け、エンジンを唸らせて特急列車を追いかける。
 まずは併走だ。スピード的には、このバイクをすればついていけない速度ではない。時速一七〇キロメートル程度、彼女のドライビング・テクニックを以てすれば恐るるに足らない速度だ。
 ピタリと電車と同じ速度で車体を安定させ、多喜は周囲を見回す。皆、それぞれの方法で電車へ取り付きだしている。
 助けを求める猟兵がいれば自身の技術で助ける気で走っていた多喜だが、どうやらその必要もないか――そう判断した瞬間、また空に一つ“門”が開き、その中から一人の少年が弾き出された。
 皐月・灯(灯牙煌々・f00069)である。
「ッくそ、こんな速度で飛ばしやがって……!」
 グリモア猟兵に対する恨み言を言いつつ、灯は靴――メテオ・レイダーに内蔵された身体軽量化の魔術を行使。空中で、着地のために姿勢制御。一瞬の時間を要する。その僅かな一瞬だけで、電車との速度に差が出る。地面から即座に跳躍しても掴むとっかかりを見つけられるかどうか――五分、という際どい時差。
「そこのアンタ! こっち見な!」
「!」
 その時差を埋めるため、走ったのは多喜だ。バイクのキャリアを変形・拡張、着地台のようにして、落ちる灯をキャッチする。灯は猫のような身のこなしでキャリアに着地すると、ぶっきらぼうに礼を言った。
「悪い、助かった」
「いいさ、こういうことがあったときのためのアタシだからね。……さあ、どこから乗る?」
 多喜は歯を見せて笑うと、今一度スピードを上げ、徐々に車両を前へ前へと追い越していく。十三、十二、十一……
「ここでいい。……イヤなもんが見えた」
 灯はグッと身を撓め、バチバチと拳に紫電を湛えながら言う。
「跳ぶぜ。そっちも気を付けてな」
「アンタもね。……アンタ、名前は?」
「皐月・灯」
「アタシは数宮・多喜。また後で無事に会おうぜ」
 灯は頷きを返し、跳ね上がるように飛んだ。狙い澄まして大きめの窓の上、拳を打ちこんで取っかかりを作り、掴む。
 そのまま振り子のように身体を上に振ると、彼は両足を揃えて窓を蹴り破り、勢いのままに内部にエントリーした。今まさに乗客に襲いかかろうとしていた黄昏の信者を蹴り飛ばし、着地。紫電を纏う拳打を四連発で叩き込み、ダメ押しの裏拳で吹き飛ばす。電瞬の早業。
「――よう。てめーらの大事な計画、ぶっ壊しに来てやったぜ」
 灯が乗り込んだのは十号車。――既にここまで、敵の手が伸びている。啖呵を切った灯の前、ゆらゆらと身体を揺らしながら立ち塞がる黄昏の信者。灯は低く構え、弾けるように駆けた。

「そんじゃアタシも続くとしますか」
 灯の突入を確認した後、ギアをもう一段上に突っ込み、多喜は十号車の前方ドアを目指す。
「派手に行くよぉ!!」
 アクセル、全開! バックファイアを上げて加速したJD-1725のノーズが、手近な縁石を踏み台として浮き、そのまま車体ごと飛翔。ドアを内側に向けて吹っ飛ばしながら突入した。
バイクから降り、多喜はライダースの襟を少し緩め、にっと笑う。
「――スピード勝負は、アタシの勝ちみたいだね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アウレリア・ウィスタリア
WIZ選択

電線を懸架している鉄塔から飛び降りる
眼下を走る列車に向け手首の傷から滴る血を魔法の血糸、レージングとして起動

レージングで車両を捉え、鞭剣ソード・グレイプニルの射程入れば
より強固な鞭剣で車両を捉え、そして降り立つ

滴る血は武器だけでなくユーベルコード、血の傀儡兵団の起動にも繋がり
乗り込んだ直後であっても不意打ちは喰らわない
いえ、不意打ちで仕留める

ボクの身体は特別丈夫ではないし
ボクの翼は列車に追い付くほど速くは飛べない
でもそれを理解した上で、ボクは自分がどうすれば列車に追い付けるか、
どうすれば辿り着けるか、その判断はできます

さあ、狩りを始めましょう
終着駅につく前にすべてを終わらせます



●ハイランダー・サーカス
 アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)が放り出されたのは高めの空中であった。今回は転送の精度よりも、転送直後の速度を重視しての転送と見える。彼女は即座に態勢を整えると、左手首の包帯を解き去った。
 電線を懸架している鉄塔へ向け、露わになった手首の傷より血糸「レージング」を放つ。捉えたら即座に縮め、鉄塔を蹴り放すことで角度を調整。そのまま、再度レージングを列車へ向けて放った。
 血糸が着弾した瞬間、彼女は自分の翼で羽ばたき、まるで列車から上げられた凧のように空を舞いながら、レージングを徐々に縮めて機会を伺う。
 ――ボクの身体は特別丈夫ではないし、ボクの翼は列車に追い付くほど速くは飛べない。
 アウレリアは自身の特性をよく理解した上で、どうすれば列車に追い付けるか、どうすれば辿り着けるか、その判断をする。レージングが軋む。切れるか切れないかの瀬戸際、際どいところで、アウレリアは鞭剣「ソード・グレイプニル」を引き抜いた。
 それをそのまま伸ばし、列車上部――十号車ほどだろうか――に突き立てる。巻き上がる力を利用し、一気に列車の天井へ自身の身体を引き寄せ、着地した。
 即座に前に駆け、十号車のドアが破損しているのを見るやそこから侵入。飛び込んだそこにいた黄昏の信者と鉢合わせるが、敵が身構える前にアウレリアの攻撃は既に完了している。
「我が血は力。敵を切り裂く無数の兵団」
 アウレリアの手首から迸った血は、いつの間にか血糸「レージング」ではなく戦闘用の血人形に形を変えていた。これぞ彼女のユーベルコード、ブラッドマリオネットである。吶喊した血人形が信者の両足を穿ち、戦闘不能とする。
「さあ、狩りを始めましょう。……終着駅に着く前に、全てを終わらせます」
 倒した敵を一顧だにせず、アウレリアは前方の車両に向け走り出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーゼ・レイトフレーズ
やれやれ、ハリウッド映画のアクションシーンじゃないか
そもそもライフル担いで乗り込むって……ま、なるようになるか
居合わせてしまった以上、私に出来る事をしよう

まずはSphere blazarで火の魔力を宿して少しでも攻撃力を強化
少ない魔力を消耗するのは痛いけど四の五の言ってられないようだしね
飛び移るタイミングは【第六感】任せ
ここだ、と思ったら【全力魔法】で足に魔力を集中させて跳ぶ
着地する際はSTARRY SKYとSHOOTING STARで実弾を窓ガラスに撃ち
突き破って車内へと入り込む

何かヘマをしそうなら他の猟兵に助けてもらおう



●ハイスピード・スナイプ
「やれやれ、まるでハリウッド映画のアクションシーンじゃないか」
 リーゼ・レイトフレーズ(Existenz・f00755)は二メートル近いアンチ・マテリアル・ライフルを片手にぼやく。
 彼女は中空に飛び出すなり、即座にユーベルコード『Sphere blazar』を使用。攻撃力を向上しつつ、状況を確認する。かなり高めの位置から、安定した姿勢で放り出された彼女には、思考の余裕があった。
 現状、リーゼには空中で推進力を出す手段がない。
 また、走って追いつけるほど肉体能力に自信があるわけでもない。
 そしておそらく、着地して次の機を伺う程の余裕はない。
 一度しくじれば電車に置いていかれるだろう。落ちる今この瞬間も、徐々に電車は前に流れていく。転送直後の着地が、最初にして最後のチャンスになる。
「――居合わせてしまった以上、私に出来る事をするとしようか」
 あんなに少ない説明で、こんなスピードで放り出されてもリーゼは己のペースを崩さない。
 脚に全力魔法により魔力を集中させると、彼女は着地と同時に炎の魔力を炸裂させ、爆炎と共に加速、電車の横腹に飛びかかった。八号車のドアガラスをアンチ・マテリアル・ライフル――STARRY SKYによる射撃で粉々に砕き、際どいところで窓枠を引っ掴む。
 ライフルをスリングで肩に引っかけたまま器用に窓枠に脚をかけ、車両への侵入を果たす。
「ギリギリなところまでハリウッドに似なくても良かったんだけどね……」
 一歩間違えればお仕舞いというのは、創作でやるから楽しめるものだ。嘆息しつつ、近接格闘用にも使用できるベイカー銃を抜き、リーゼは七号車に突入した。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユア・アラマート
やれやれ、急を急ぐとは言えとんでもない所に転移させてくれるな
まあ、カイの話を聞く限り急がないといけないのは間違いなさそうだ
行こうかイト。あれが走る棺桶だというのなら、眠るのはどちらなのか、教えてやらないとね

確かにカーブは最高速ではできないし、多少速度は落ちるはずだ
速度が緩んだタイミングを「見切り」で判断して、花鳴で風属性の魔力を「属性攻撃」で纏うことで速度を上昇
あとは列車に追いつけるように「ダッシュ」して、最後の一手はイトに任せようか
彼女の手を握り一緒に飛び、そのまま電車の上に着地
車体横にぶつかりそうになったら、ダガーで窓をぶち破ってしまおう


赫・絲
転送地点真横……真横って! 無茶言うなーかいちゃん。
でも急ぐんだね、わかったよ。ユアさん、準備おっけー?
行こう、この列車を黄泉路になんて向かわせるもんか。

敵も終着駅までは辿り着きたいでしょ
きっと脱線しないようにカーブ地点で多少速度を落とすんじゃないかな

速度が緩む瞬間はしっかり【見切る】
あとはエレメンタル・ファンタジアを使って、
風で出来た指向性の鉄砲水……鉄砲風をユアさんと私の背中側で起こすよ
これで一気に加速して、ユアさんの手を取って一緒に飛び乗る!

飛び過ぎないように、飛ぶのと同時に手元の糸を電車の車体に射出
どこかに絡みつけて、それを頼りに着地するね
ぶつかりそうになったら、ユアさん後はお願い!



●ローゼズ・スカイハイ
 そりゃ、確かに急ぐって話は聞いていたけれども。そして事前に説明されてもいたけれども。
「転送地点、まーよーこー! 真横って! 無茶言うなーかいちゃん!」
 スカートを吹きすさぶ風に翻しつつ、赫・絲(赤い糸・f00433)は『エレメンタル・ファンタジア』で起こした鉄砲水ならぬ鉄砲風に乗って走る。彼女は属性魔術のスペシャリストだ。扱いの難しいエレメンタル・ファンタジアをその高い技量により制御、加速して進む。
「全くだ、急を要するとは言えとんでもないところに転移させてくれる。……まあ、カイの話を聞く限り、急がないといけないのは間違いなさそうだからね。急ごう、イト」
 その隣、絲が起こす風も上手に背に受けながら直走るのはユア・アラマート(セルフケージ・f00261)。彼女らのスピードは電車の最高速にやや及ばぬほどだったが、二人が共に高い見切りの能力を有するが故、速度が落ちたタイミングで距離を詰めることで、致命的に離されることなくここまで電車と併走している。
「――あれが走る棺桶だというのなら、その中で眠るのがどちらなのか、教えてやらないといけない」
「うん。わかってる。この列車を黄泉路になんて向かわせるもんか」
 一見、電車は無茶苦茶な速度でただ暴走しているかに見えるが、グリモア猟兵の予知が正しいのならば、この特急列車は終着駅まで辿り着いて初めてその目的を果たす類のものだ。
 ならば、敵は途中でのクラッシュは望まないはずだ。終着駅でもっと酷い事故を起こし、大量の人を殺めるためにこの電車をジャックしたのだから。
 そう判断した絲とユアは、電車が大きく減速を強いられるカーブのうち一つをピックアップし、そこまで併走してから速度を合わせて飛び乗る道を選んだ。果たして、列車はそのカーブに差し掛かる前に、ブレーキを軋ませスピードを落とす。
 訪れた好機を逃すこの二人ではない。
「ユアさん、強いの行くよ!」
「いつでもどうぞ」
 ユアが囁くように応じるのと同時、絲は目一杯の魔力を注ぎ、突風を起こした。突如巻き起こった凄まじい追い風を、ユアはユーベルコード『花鳴』によって身に纏い、走る。絲が紡いだ風の魔術を纏うことで、ユアは自分のリソースを使わぬまま、自分の全力以上の風の魔術をその身に宿し、直走ることが出来る。
 殆ど示し合わせもせず、ユアと絲は手を伸ばした。強く、繋ぐ。離れないように。
「跳ぶよ」
「わかった!」
 跳躍。
 全く同時のタイミングで、月下美人と赤い糸が空へ舞う。ユアが纏った魔力風が霧散してしまう前に、絲は鋼糸を列車の上部の突起にいくつも絡め、それを巻き上げることで電車の天井目掛け落ちた。
 かくして、二人は無事に電車の上に着地する。
「なーんか二人でこういう仕事するのも慣れてきた感じだね」
「これからもっと慣れていくことになるよ、イト。カイはこういう話ばかり持ってくるだろうから」
「そうかも」
 きゃら、と笑って絲は立ち上がる。強い風が二人の髪を嬲る。結んだ手を解き、二輪の華は前方車両へ向けて走り出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルイーネ・フェアドラク
ハイイロの切迫した声に背を押された
君に説教をした身です
助力を求められたのなら、大人として、猟兵として、そして知人として
応えてみせますよ

【WIZ】
即座に減速地点の特定を
[情報収集]や[世界知識]も有効であれば使いましょう
さあ、機会は一度切りだ
減速のその瞬間を逃さず支配者の弾丸で列車のレール付近を穿つ
脱輪させるようなヘマはしませんよ
同時に背の刻印から放った触手で列車を掴み、乗り込みます

あのまま暴走列車が駅へと突っ込めば、大惨事は確実
ですが冷静に、どんな時も思考を鈍らせてはいけない
大丈夫ですよ、ハイイロの予知は無駄にならない
私たちはまだ十分、間に合う


ユハナ・ハルヴァリ


中空から列車を見下ろす
そういえば乗った事がないな、電車
なんてぼんやり考えて
けれど今は、乗り込む事だけ考える

自由落下の速度を殺さずに
長杖を解いて貴石の花へと
着地するのは大地ではなく花の上
雪の魔法でレールを敷いて、その上を滑りながら列車と並走
他のみんなの邪魔はしないように
貴石の花弁を幾つか撒き、
車輪に挟み込むのを狙って投じて

速度が多少でも落ちたなら
タイミングを図って貴石の花ごと窓に飛び込む
普通の硝子なら割れるだろうし
無理なら割れる迄
生きている人がいるなら、少ないところ
いないなら、敵の近くに
飛び込みざまに、蹴散らしてあげる

だれかの死で呼ぶ神さまなんて
僕は、いやだよ
だから
お祈りは、自分でやって。



●いつか次には優しい車窓を
 空高々と開いた門から弾き出された少年は、見下ろしながらぼんやりと思う。
 ――ああ、そういえば乗った事がないな、電車。
 中はどうなっているんだろう。そんなのんきな事を思いながらも、彼――ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)は長杖を魔術により解き、貴石の花へと紡ぎ変える。
 彼は指揮棒のように手を振った。ユハナ・ハルヴァリは冬の魔法使い。煌めく夜に生まれ落ちた冷たい星。振り下ろした手の先、空中から地面へ向けて氷のレールが出来上がる。ユハナは貴石の花をさながらスノーボードのように使い、レールの上に着地。俯角六十度の氷のレールを滑走、超高速で電車の横を併走する。
 そうしつつもユハナは貴石の花弁をいくつか手に取り、車輪に向けて射出する。一つ二つの車輪が止まれば、スピードが落ちるであろうという算段だ。初動の速度を活かしつつ、俯角を使って加速したとは言え、ユハナ自身に推進力はない。速度が減衰しきる前に機を伺う必要がある。
 一つ、また一つ、車輪を止める。速度を少しだけ鈍らせる。まだ足りない――
「――だれかの死で呼ぶ神さまなんて、僕は、いやだよ」
 祈るならば自分でやれと、ユハナが切に呟く聲は未だ誰にも届かない。

 一方。その少し先の大きなカーブ。
 ルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)は、減速地点の特定から入った猟兵の一人である。端から純粋な速度勝負に持ち込むつもりはない。直ちにUDC機関員のバックアップを受け、スピードが落ちるカーブの内、もっとも近い場所へ移送して貰い、待ち受ける構えを取った。
 ――あの切迫した声に背を押された。
 かつて、ルイーネはグリモア猟兵である壥・灰色に無理はするな、大人を頼れ、と声をかけた事がある。その彼が切迫した声で助力を求めてきたのならば、大人として、猟兵として、知人として応えてみせよう。そう思う。
「――さあ、機会は一度きりだ」
 列車が見える。ルイーネは愛用のハンドガン、GB-10を操作して初弾を装填する。ロードされるのは重力の楔。『支配者の弾丸』。銃口を跳ね上げる。フロント・サイトが電車の車輪に重なる。
 銃声。放たれた『支配者の弾丸』が、電車の車輪の一つを穿った。『支配者の弾丸』の重力干渉により車体のスピードが更に落ちる。その機を逃さず、ルイーネは地面を蹴った。背に刻まれたドライバーより放った触手で、速力の落ちた車体の突起を掴む。跳躍。車体横に取り付く。左右を見れば、すぐ近くのドアが破られている。ルイーネは触手と己の四肢を巧みに使い、列車の中を目指す。
 
「――!」
 急激に電車が減速する。カーブのせい? 放った貴石の花弁が功を奏した?
 それは解らない。けれど、タイミングは今しかない。ユハナはリアルタイムで構築し続けている氷のレールを変形させ、ジャンプ台のようにして跳ねた。プロのスノーボーダーもこんなトリックは出来はしまい。貴石の花を殆ど蹴りつけるようにして扉のガラスを突き破り、その向こう側にいた黄昏の信者二体を薙ぎ倒して――
「ユハナ。……乗車はもう少し丁寧にしなさい」
 丁度、対面の壊れたドアから乗り込んできたルイーネと鉢合わせた。
「ルイーネ」
 ユハナは足下の貴石の花を杖に編み戻すと、小走りにルイーネの元へ。
「ルイーネも、来てたんですね」
「ハイイロがあまりにも必死だったものですから。……無事で良かった」
 ルイーネはユハナの頭に手をやり、軽く撫でると、七号車の方へ向き直る。
「行きましょうか。大丈夫――私たちはまだ十分、間に合う」
「はい」
 話したい事がある。今この目に映る電車の中の何もかもが新鮮だという事。
 ユハナはルイーネに応じて、七号車のドアへ進んだ。――終わったら、色々な事を話せるだろうか。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

草間・半蔵
アドリブ歓迎

突入して倒す
わかりやすくていい

何時もの剣は背に
ダガーを手に
転送と同時に3カウント

電車の高さを覚えながら地面に着地

着地で曲げた膝をバネにして

飛び上がる
そのままダガーをハンマーがわりにガラスを突き破り
腕力で窓枠にしがみつく
そこに誰かいたらわるい…
けど、きっと今ので窓から離れたろうから
電車の側面を蹴ってぐるッと回転
窓を蹴破ってはいる

こういう時何て言うんだ
えっと……おじゃまします

あってるかはわからないけど、とりあえずあとは倒しに行くだけだ
反応は気にせず前方車両へ駆ける



●スリーカウント・ショウ
「突入して、倒す。わかりやすくていい」
 草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)は作戦概要を聞いてそう呟いたものだ。シンプルであればあるだけ、やりやすい。難しい事を考えるのは得手ではない。トレードマークの大刀を背に帯び、その位置を再度確認してからダガーを抜き、彼は助走を付け、グリモアベースに開かれた門を潜った。

 一瞬で世界が切り替わり、旋風吹き荒れる中空に半蔵は放り出される。転送と同時にカウント。一、二、三のスリーカウントで飛び乗る。
 一、
 落下しながら電車の高さを覚える。乗り込みやすそうな窓に目星を付け、次の車両にタイミングを合わせる。
 二、
 着地、膝を曲げて着地の衝撃を殺しながら、身体を撓ませて力を溜め、
 三!
 跳躍!
 端から見ればまるでスーパーボールのように地面から反射したかに見える瞬発力だ。類い稀なその瞬発力を存分に活かし、放たれた矢の如く半蔵は手近な車両の窓にダガーを叩き込んだ。そこを楔とし、もう片手で窓枠を掴む。
「っせぇー、の、」
 電車の横腹を蹴り、半身をぐるりと回して、ダガーを打ち込んだ窓を蹴り破る!
 粉々になった窓ガラスを散らしつつ、華麗にすたりと着地した半蔵が乗り込んだのは九号車であった。既に猟兵が事態を周知しているのか、ざわめき後方車両に避難しようとしている人々の目が丸くなる。一瞬で集中する視線。
「えっと」
 半蔵は頬をポリポリと掻き、しばしの逡巡。
「……おじゃま、します?」
 挨拶をしてみたが人々の反応は驚き固まったところから動かなかった。
 元より返礼が欲しいわけでもない半蔵は嘆息を一つ、避難する人々とは別の経路――座席のヘッドレスの上を身軽に走りながら、前方車両を目指す。
「なんか間違ったかな……まあ、いいか」
 乗り込む事には成功した。あとは、敵と首魁を倒しに行くだけだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリオス・アリス
つまり…早けりゃ早いほど人が助かるってことだろ
なら、全力ダッシュといこうじゃねえか

ただ走ったんじゃ遅い
頭で判断するのとほぼ同時
靴に魔力を送り旋風を生成して『ダッシュ』する
「歌声に応えろ…」
もう一度、また一度と旋風を破裂させ
「力を貸せ…!」
速度を上げながら【望みを叶える呪い歌】を歌い上げる

ただ追い付くだけじゃなく飛び乗れってんならッ…
その辺にある車とかのボンネットを勢いのまま駆け上がり
『ジャンプ』の瞬間に風を帯びた斬撃を地面に飛ばし追い風に
電車の屋根を目指す
「届けぇええ!!」


★アドリブ歓迎



●風と共にあれ
 セリオス・アリス(ダンピールのシンフォニア・f09573)は、比較的低空に放り出された。
 飛び出たときの初動の速度、そして電車の速度から算定。着地後に普通に走ったのでは、到底追いつく事など出来はしない。靴――魔導蒸気機械搭載靴『エールスーリエ』に魔力を注ぎ、脚と地面の間に旋風を巻き起こす。
 地面を削るように蹴り飛ばして、力の限り駆ける。だが、まだそれでも足りない。
「歌声に応えろ……」
 全力で走りながら、セリオスはユーベルコードを発動する。
「力を、貸せ!」
 それは歌声により、己の裡、根源に眠る魔力を呼び覚ますユーベルコード。魔力を纏う事で彼の速度は爆発的に向上し、高速で走る電車にも迫らんかという速度を叩き出す。セリオスは電車の横を全力で駆けながら、きり、と歯を噛みしめる。
 併走は、可能だ。――しかし、飛び乗るにはあと僅かだけ足りない!
「ああ、やれって言うならやってやるさ……ただ追いつくだけじゃなく、飛び乗れってんならッ……!」
 セリオスは駆け、もう少しだけ、あと僅かだけスピードを出す。小高く積まれた、もう走る事もないであろうスクラップ車のボンネットを足場に駆け、剣を思い切り振り上げて足下に叩きつけた。
「届けええぇえぇっ!!」
 炸裂。セリオスが振り下ろした刃は風の魔力を帯び、それによる炸裂と反作用が推力となる。飛び散るスクラップと鉄板の破片と共に、セリオスの身体は高く高く舞い上がり――間一髪、十五号車の中程に無事に落着した。
「ああくそッ、息が、切れる……!」
 それでも辛うじて、ギリギリのところで電車に乗り込む事は出来た。荒れた息をゆっくり整えながら、セリオスは剣を杖に立ち上がる。
 そして今一度、駆け出した。――目指すは前方車両だ。自分が急げば、一人でも多く――助けられるかも知れないのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリン・フェアフィールド
これ以上被害を大きくするなんて絶対、許さない……!!

着地と同時に【ゴッドスピードライド】で列車と並走するよ!
スクラップハンドを大きく伸ばして(【スクラップ・ジャイアントの手】)
電車を掴んで、そっちを支点に引き寄せる力で屋根に飛び移る!
狙いは第一第二車両間の連結部分、幌を破って突入かな。
宇宙バイクは乗り捨てごめん!
乗り捨て場所は巻き込み事故がないように気をつけなきゃ。
あとでちゃんと拾って直してあげるからね、ミーティア(宇宙バイクの名前)!

第二車両側に入って、逃げ遅れてるヒトが居たら助けるよ。
全員避難できたらせめて、第ニ第三車両間の連結切れないかな?
【メカニック】パワー全力で!

※連携アドリブ歓迎



●その手で命をつかみ取れ
「これ以上被害を大きくするなんて絶対、許さない……!」
 息巻きながら、宇宙バイクで空中の“門”を飛び出したのはアリン・フェアフィールド(スクラップ・クエーサー・f06291)。右手でバイクのアクセルを全開にし、電車と併走する。
 高速で走る列車は、数名の猟兵が減速を試みた事で些かながら速度を落としていたが、強引に出力を上げたようだ。
 まだまだ時速一五〇キロメートルはアベレージで維持している。併走しながら、アリンは慎重に車両の状況を確認した。
「……ッ!」
 彼女は当初、一号車と二号車の間、連結部を狙って乗り込むつもりでいた。しかし、その考えを改めざるを得ない事を彼女は知る。
 車内は、既に血まみれの惨状だった。予知時点でほぼ全滅が確定していた一号車はおろか、二号車、三号車も既に同様の有様だ。中には、かつて無辜の人々だったはずの黄昏の信徒がうようよと蠢いている。あんな所へ飛び込めば、左右から攻撃が殺到し戦闘どころではない。
 下がる。もう少し下がる。
 そうするうち、彼女が辿り着いたのは六号車であった。そこでは辿り着いた他の猟兵が戦闘しながら、辛うじて生き残った人々を後ろの車両へ逃がしている真っ最中。残酷な敵の所業に、アリンは怒りと決意を持って『スクラップ・ジャイアントの手』を振り上げた。
「掴めっ!」
 彼女の巨大なスクラップ・ハンドが伸び、指先が細かく組み変わって電車を掴む。バイクを蹴るように乗り捨て、彼女はスクラップ・ハンドを縮めて車両の上に飛び移った。
「後でちゃんと拾いに来るからね、ミーティア!」
 乗り捨てた宇宙バイクは徐々に減速し、柔らかい草地の上で横倒しになって滑る。それを後ろ目に見た後、アリンは前方へ走って幌部分をスクラップ・ハンドで突き破って内部に侵入した。
「そこまでだよ! これ以上はこのわたしが許さない!」
 間近にいた黄昏の信徒を、握り固めたスクラップ・ハンドの拳で薙ぎ倒しながら、彼女は手近な猟兵に声をかける。
「この車両より後ろの安全は!?」
「オレが見た範囲じゃ確保されてる! けど、他の奴らも後ろから走ってきてる、ここより後ろにも猟兵がいる!」
「……わかった!」
 状況を確認。それならば車両の切り離しは不可とみて、アリンは生贄特急の最前線で戦闘を開始する!

成功 🔵​🔵​🔴​

シャルロット・クリスティア
POW?

しかしまぁ、急を要するとは言え、無茶苦茶な作戦ですねコレは……ッ!
しかし、文句ばかりはいっていられません。
グリモア猟兵の算出した適解がこれであれば、我々現地組は応えるのが仕事ですっ!

前準備として、手ごろな投石用の石にしっかりとロープを結び、その端を自分の腕にしっかり結んで固定。
転送後、即座にその石をスリングで『投擲』、真横を走る電車の窓か何か…とりあえず引っかかりそうな『地形を利用』して取り付きます!
あとは腕とつながったロープを『怪力』を頼りに伝って侵入ですね。
脚力で追いつけるわけはないですし、転送後即座に行動に移れるよう身構えておきます。
大丈夫、私の狙い(スナイパー)ならばやれます!



●スナイピング・アズ・ライトニング
「しかしまぁ、急を要するとは言え、無茶苦茶な作戦ですねコレは……ッ!」
 強風が髪を嬲る。シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は、中空に飛び出すと同時に併走する電車を俯瞰。
 グリモア猟兵が出した作戦である。それは多くの場合、その状況に於ける最適解。
 だとするならば、現地へと馳せ駆けた猟兵は、それに応えるのが仕事であるとシャルロットは認識している。
「……ギリギリに準備が整ったけど、きっといける!」
 彼女は事前に、列車に取り付くために先端に岩を結わえ付けたロープを用意していた。しかし、出発寸前に発注していた装備が完成したのだ。彼女はホルスターのフラップを開き、真新しい拳銃型のその道具――『アンカーショット』を引き抜き、筒先を上げる。
 この速度。しかも空中。狙いを付ける時間は殆どなく、この横風を前に弾道など信用できたものではない。
 しかし。しかしである。

(大丈夫。私の狙いなら、やれる)

 シャルロット・クリスティアは、スナイパーである。風と気温、この世の遍く環境を縫い。
 一発必倒の銃弾を、何十発と放って来た狙撃手である。

 シャルロットは落ちながらフロントサイトとリアサイトを一直線に重ね、風に合わせて照準を補正。列車の突起目掛けてトリガーを引いた。火薬の爆圧で射出されたアンカーが、宙を引き裂いて飛び、過たず突起に掛かってロックされる。
 同時に、アンカーショットの巻き上げ機構を作動。内蔵された巻き上げ機構が急速度でシャルロットの身体を列車に引き寄せる。
 列車の天井に過たず着地し、シャルロットはアンカーを突起から外してアンカーショットをホルスターに収めた。
 決然と前を向き、シャルロットは前方の車両へ向けて走り出す。――一人でも多く救うために。

成功 🔵​🔵​🔴​

ポケッティ・パフカニアン
ちょっとカイ、転送するなら、いっそ列車の中に送りなさいよ!か弱いフェアリーに飛び移りなんて重労働させる気!?
女の子を送り出すんだから、それぐらい細かくエスコートしなさいよ、もーっ!

ふふん、あたしの魔法にかかれば、爆走中だろうと列車の時間を止めて乗り移るぐらい余裕ね!
って言いたい所なんだけど…多分、乗客がナントカの力で前に吹っ飛んで、大惨事よね。
減速だけなんて器用な真似、できるわけないでしょ?…いや…今度試してみるかな…

とにかく!今は今ある手で行くわよ!
列車の進行上で待ち伏せ。あとは…
時保つ狭間!
そーよ、激突よ!これで乗り込むのよ!悪かったわね!
高速道路の虫とか思ったやつ、あとで覚悟しなさいよ!



●ハイウェイ・スター
 ポケッティ・パフカニアン(宝石喰い・f00314)には大層不満な事がある。
 なんで最初から電車の中に転送しないのか、という話だ。

 これには諸説理由があるのだが、この事件を担当したグリモア猟兵が説明するところに於いては二つある。
 一つ、転送地点に物体が存在した場合、”門”がその物体を分割してしまったり、或いは転送直後に猟兵が物体に「めり込んで」しまい、仕事どころではなくなってしまう可能性があること。
 そしてもう一つは、――或いはこのグリモア猟兵の未熟からか、転送先の座標の精度が安定しないせいで、前述の問題を起こさぬ為の安全マージンを取る必要があることだ。
「だーーーかーーーらってねえ!! 大雑把すぎるでしょこんなの!! もー!!!」
 ポケッティは前述の説明をされた直後は不服ながら納得顔をしていたのだが、まるで銃身に詰められて射出されるような衝撃と共に“門”から弾き出される段に至って、再び彼女の不満は爆発した。お前あとで覚えてろよ、ぐらいのものである。
 ポケッティが転送――否、射出されたのは生贄特急の前方だ。
「ふふん! あたしの魔法に掛かれば爆走中だろうと電車の時間を止めて――」
 そう、電車の時間を止めて……
 電車の時間を止める、という事は電車自体は停止するが、その中の乗客全てが慣性のままに前の座席に激突する事を意味する。或いは猟兵は平気かも知れないが、おそらく一般人は一人として生き残るまい。
「だめ、だめ。それは駄目。……んんん、減速だけなんて器用な真似は出来ないし……!」
 ぶっつけで試すにはまずい手だ。ポケッティは手持ちの魔法を検分し、むうう、と顔をしかめる。結局方法が一つしか残らなかったのだ。
「あたしの時間、ちょっと待ってなさい!」
 迫る生贄特急にくるりと向き直り、ポケッティはユーベルコード『時保つ狭間』を起動する。
 その瞬間、彼女の時間は停止する。彼女の存在は一時的に空間から隔離され、半歩ずれた次元に固定された。一号車、二号車、三号車――惨状を通り抜け、七号車で彼女はユーベルコードを解除、椅子を壊すほどの勢いで空いた背もたれにめり込んだ。
「――高速道路の虫とか思ったやつ、あとで覚悟しなさいよ……」
 リクライニングがイカれた椅子の上に、ポケッティは這々の体でゆらゆらと立ち上がるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

水沢・北斗
なんか大変そうだから勢いに任せてゲートに飛び込んじゃいましたけど
一人なんですよねー、狭い車内とかあんまり私向きの戦場って感じじゃ……って駅のホーム!?ホントに電車の!真横に出るとか!!

【SPD】
出来る範囲で助走をつけつつ投げナイフ『アストラ』を車体側面に打ち込み
それを足場に屋根の上に飛び乗る。タイミングさえ【見切】ればいけます。
『人前じゃあんまりやりたくなかったんですけどね』
錬成ヤドリガミ――本体であるマスケット銃がライフル銃へと変わった時代のボルトアクションライフル――18丁の一斉射撃で屋根をブチ抜いて舎内に飛び込む!
『こないだ仕入れた貫通術式【鎧無視攻撃】結構便利じゃないですか……』



●ボルトアクション・オーケストラ
 ――なんか大変そうだから、勢いに任せて“門”潜っちゃったんですよね。狭い車内とか私向きの戦場じゃなかったんですけど。前衛いないし一人だし。でも、助けてあげないとかな、って。
 水沢・北斗(ヤドリガミのアーチャー・f05072)は、後にそう語る。
 ――まさかホントに電車の真横に飛ばされるとか思わないじゃないですか。びっくりしましたよ。

「ちょっと、聞いて、ないっ!」
 正確にはグリモア猟兵が言葉足らずだった。電車の真横に射出もとい転送する、なんてあんまりにもサラッと言うものだから失念していたけど、ここまでホントにド真横だとは思いも寄らない。
 北斗は思い切り地面を蹴って加速、ナイフホルスターから投げナイフ『アストラ』を数本引き抜き、抜いたその勢いのまま一挙動で投擲した。籠めた魔力により速度を補う、言うなればナイフのクイック・ドロウ。果たして、ナイフは次々と列車の横腹に突き刺さる。
 引っかかるポイントを狙うといった行動自体が、北斗には存在しない。故にその行動は電瞬の如く早い。ナイフを突き刺し、それを階にする狙いの為だ。力の限り地面を蹴り離し、外壁に突き刺さったナイフのグリップを掴み、そこを足がかりに階段のように駆け上って、列車の天井に至る。
 足を止めず、連結部――デッキあたりに移動。
「――今ならいいですかね」
 周囲には、猟兵も一般人の影もない。人前では見せたくない、彼女の本性。それを解き放つ。
 北斗はその場で腕を一閃する。ずらり、と彼女を取り巻くように一八挺の古びたボルトアクションライフルが現れる! 北斗の足下に、彼女を中心とした円を描くように斉射! 立て続けに放たれる銃弾のオーケストラが、北斗の足下――列車の天井を円状に切り抜く!
 切り抜かれた鉄板と共に彼女の身体は車内に落ちる。があん、と音を立ててかつて天井だった鉄板が地面に設置。他の誰にも見られぬうちに、北斗は自らの分体を全て消す。
「こないだ仕入れた貫通術式、結構便利じゃないですか」
 突入に成功した少女は微かに笑った。さあ、前進だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リネット・ルゥセーブル
よほど緊急だったんだな。悪態をつく暇もない。

……ともあれ、転送直後、最も接近しやすいこの一瞬を捨てる訳にはいかない。

転送前に、呪いの糸を長く生成。一端は自身に結びつけ、もう一端はぐるぐると丸く固める。

転送され、空中に躍り出た瞬間に、暴走特急に向けて糸の塊を投げつける。
この糸は触れたモノに纏わり付き、拘束する。拘束対象は業ある限り有機物無機物を問わず、業の深さに応じてその強度を増す。

糸が切れない限り、私は列車に引きづられる程度は出来る筈だ。
そこから『焔』で加速してなるべく引きづられないようにしつつ、【ロープワーク】で手繰り寄せ、少しずつ登っていく。

……もう少し先に転送してくれても良かったと思うが



●呪いの魔女は空を飛ぶ
 転送直後の一瞬を捨てる訳にはいかない。
 リネット・ルゥセーブル(黒ずきん・f10055)は悪態もそこそこに、飛び出した先の状況を確認する。既に多数の猟兵が電車に思い思いの方法で飛び乗っている所だ。彼女が放り出されたのは地上十二メートルの空中。電車との相対速度はおおよそ同等。しかし自身には推進力がない。このままでは置いていかれるだけだ。
「行け」
 彼女はそれを理解している。故に予め準備はしてきた。長い長い「呪いの糸」を生成し、その一端を自身に結びつけ。もう片側は分銅の如くぐるぐると丸く固めておいたのだ。こんもりと固まった糸塊を投げ放つと、それはぶわりと解け、眼下の生贄特急に纏わり付いた。
『自縄自縛の杓子定規』。リネットが扱うユーベルコードである。
 ひとつ。その糸は触れたものに纏わり付き、拘束する。
 ふたつ。拘束対象は業ある限り有機物無機物の一切を問わない。
 みっつ。その糸は、触れたモノの業の深さに応じて、強度を増す。
 最早、幾人が死んだかも解らないこの生贄特急。業の深さで言うならば十二分である。列車と自身の距離がこれ以上離れないように策を施し、リネットは続けざまにユーベルコード『焔』を開帳。絡みついた呪いの糸を全速で手繰りつつ、蹴った空に呪詛の炎を撒き散らし、その反作用で空を泳ぎながら――最後尾の車両――十五号車の天井に、靴跡を付けるのではないかと言うほどに音高く着地する。
「――~~~……」
 無表情がちな彼女も、その時ばかりは顔をしかめた。脚がビリビリと痺れる。
 痺れと痛みが収まるまで暫くを要した。やれやれ、と頭巾の内側の髪を払い、リネットは前方車両へ向けて歩き出す。
「……もう少し先の方に転送してくれれば、ここまでする事はなかったんだが」
 珍しく不満を漏らす程度に、脚の痛みは彼女を苛んだという。

成功 🔵​🔵​🔴​

柊・明日真
あれこれ考えてる余裕もねえ、最短距離で行くぞ!

POW:力技で突入
転送後、【ダッシュ】で外壁に飛びつく。手さえ引っ掛かりゃどうにでもなるだろ。
あとは適当に窓でも蹴破って突入だ。
一応周りに乗客が居ないかだけ確認しておくか。

突入出来たら、後続の連中が来やすいように列車の速度を落としに行く。
【トリニティ・エンハンス】で攻撃強化、車外の地面に剣を突き立て【気合い、怪力】を駆使して強引に減速を狙う。
粗方乗り込んだようなら先頭車両に向けて移動だ。



●最短距離、最適解、そして脳筋
 この列車に多くの猟兵が乗り込むためには、全体の速度を落とす事が重要になってくる。
 無論、猟兵らは優秀だ。そうした速度減少のための策を練った猟兵は数多くいる。が、彼らは列車がそもそも大きく減速するタイミング――例えばカーブなどだ――を狙っていたり、他者と足並みを揃えようとしていたり、或いは自身が乗り込むタイミングのみ減速させる、といった手立てを取っている。
 ――が、そこに来てこの男である。
「あれこれ考えてる余裕もねえ、最短距離で行くぞ!」
 空に開いた“門”から、猟兵がまた一人。柊・明日真(刻印の剣・f01361)だ。真っ赤に燃えるような赤髪を風に嬲らせるままに、彼は真っ向、言葉の通りの単なるダッシュで駆け抜ける。
 弄する策。結構。
 状況を考えた行動。大変結構。
 けれどもそれらに費やす思考の時間の間に、一歩でも前へ進もうとする愚直なる意思。これもまた是である。
「オラァアアアッ!」
 ダッシュからの跳躍。外壁の突起に手をかけ、片手だけでぶらりとぶら下がってから、明日真は驚異的な膂力で身体を引き上げて窓を突き破った。一九〇センチの巨体をかがめながら窓をぬう、と潜る。車両内に人はいない。おそらく、既に避難済みの車両なのだろう。好都合である。
「っし。やるか」
 明日真は背に釣った巨大な――或いは鉄板そのもののような剛剣を引き抜く。
「ッらあああああ!!!」
 身体強化の魔術、金属の合成強化の魔術。そしてユーベルコード、『トリニティ・エンハンス』。赤く燃え上がる剛剣を力の限り振り上げ、彼は電車の地面に突き刺した。剣は車体の床を容易に貫通し、地面に楔のように打ちこまれる。
 耳を聾する轟音が、その車両――十二号車に響き渡る。列車の速度が、確かにその瞬間……体感できるほどに減衰する!

成功 🔵​🔵​🔴​

レイブル・クライツァ
終活しようとしてる敵を、就活で慌てて電車に乗り込みましたみたいなノリよね、これ。
見切りと目視で動体視力テストからかしら?
飛んでくからヴェールは手~腕の保護に巻いて、拷問具の鎖部分でも、大鎌でも良いから電車の隙間に噛み込ませて固定出来たら次。
多少打ち付けられようが電車と繋がってれば許容範囲よ。
手繰り寄せて足場なり手で掴めそうな所なりで、なるべく電車にしがみつく形で風抵抗を避けれそうな位置に移動。筋力テストじゃないこんなの。
無かったら弁償大変そうね、とか思いつつ巫覡載霊の舞でガラスを割ってダイナミックにお邪魔するわ。相手の手段が手段だし、考えさせてくれる時間が無さ過ぎていけないわよ。



●傍迷惑な終活を砕け
「終活しようとしてる敵を、就活で慌てて電車に乗り込みましたみたいなノリよね、これ」
 日頃から被っている黒いヴェールを飛ばされぬよう腕に巻き付け、レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)はぼやくように呟き、“門”を潜った。
 身勝手な敵の終活――自殺への道行きに巻き込まれた一般人と猟兵、その構図そのものを皮肉る。
「……はあ、まったく。動体視力テストでもやらせるつもりなのかしら」
 “門”からの射出直後。空中に投げ出されながら、状況を把握したレイブルは大鎌を力の限り投げ放つ。列車の、確実に引っかけられるポイント目掛けてである。
 鎖で繋がった大鎌は八号車の車両連結部に命中。撓んでいた鎖は列車の進行速度に従ってびん、と張り、レイブルの身体を前方へ思い切り引っ張る。
「――……く、」
 彼女の身体はそのまま、九号車の天井に打ち据えられた。しかして列車から滑落する事はない。何故ならば、打ち込んだ鎌と鎖が、彼女の身体を電車と結びつけているからだ。
「視力テストの、次は……筋力テストかしらね。全く……冗談じゃ、ないわ」
 打撲のあとは、打ち付けられた衝撃が後を引く。途切れる呼吸を何とか平素のそれに戻しながら、レイブルは風に逆らい、鎖を手繰る。なるべく身体を低めて、風の抵抗を避けながら前進する。
 最悪、窓ガラスを破ってでも侵入しなければならない。いつまでも天井で突っ立っている訳にはいかない――
 そう決意していたレイブルが八号車の前方まで至ると、電車の天井に開いた大穴が目に入った。
 まるで銃弾で切り抜かれたような――歪な切り口を残した穴だ。
「……弁償大変そうね、これ」
 レイブルは穴から車内を見下ろす。当然ながら床や壁にも、貫通した銃弾による銃創が残っている。
 まあ、それは彼女の仕事ではない。そう知っているかのように、レイブルは通り易いその穴に身を躍らせた。

成功 🔵​🔵​🔴​

六波・サリカ
なるほど、暴走する列車の真横に転移とは中々に面白い試みですね。
お任せください。この私が誰よりもスタイリッシュに突入をしてみましょう。
…と、悪を見過ごすわけにはいきませんので敵の殲滅に関してもご期待ください。

転移する前から、群れ為す鴉の式神こと急襲式たちにロープを結んでおきます。
転移したらアクション・スタート。
空飛ぶ急襲式のロープにぶら下がります。
彼らには暴走列車の横を同じ速度で飛んでもらい、ヴァリアブル・ウェポンを起動
「侵攻式、Burst!!」
銃形態に変化した侵攻式で列車の窓をぶち破ります。
その後はロープから列車の窓目掛けて飛び移り、スタイリッシュ乗車。

「さて、悪を裁きにゆきましょう。」



●アサルト・シックス
「なるほど、暴走する列車の真横に転移とは中々に面白い試みですね。お任せください。この私が誰よりもスタイリッシュに突入をしてみましょう」
 グリモアベースでそう宣ったのは六波・サリカ(六道使い・f01259)。小柄な銀髪の少女だ。
「……と、悪を見過ごすわけにはいきませんので敵の殲滅に関してもご期待ください」
 付け足された言動に周りの猟兵がちょっと不安そうな顔をしたのは余談であるが。

“門”から飛び出したサリカは、しかして言葉通りに精密に動いた。
 彼女の出現位置は電車の左前方、八号車付近。
 群れを成す鴉の式神――急襲式にロープを付け、それらを飛行させる事で滑空する。吹き荒れる風に銀髪が靡く。大の男でも怖じ気づくようなハードアクションを、サリカは涼しい顔でやってのけた。
 列車と並び飛ぶが、鴉が群れを成した程度では人一人を長く支える事は出来ない。スピードもすぐに落ち始め、徐々に列車に置いていかれる。そうなる事は百も承知だ。
 サリカは右腕――『侵攻式』をやや後方、七号車のドアに向ける。掌が中指、薬指の間から二つに割れ、その隙間から三連銃身が顔を出す。中指と薬指の間にホロ照準器が投影され、『LOCK ON』の表示。
「侵攻式、Burst!!」
 三連銃身が高速回転し、秒間五〇発の銃弾が七号車前方左ドアを蜂の巣にして吹き飛ばした。
 間髪入れず侵攻式を平素の手の形態に戻し、追い上げてくる列車にタイミングを合わせて身を寄せ、身体を振って勢いを付けて飛び移る。
 吹き飛んだ列車のドアをかつりと踏み、サリカは風に乱れた銀髪を指で払った。
「さて、悪を裁きに往きましょう」

成功 🔵​🔵​🔴​

法月・志蓮
「なんともまあ、ダイナミックな儀式なことで……」

なんて軽く呆れながら、真横を通過する車両の連結部を動体視力と身体能力に任せて掴んで飛び乗り、そのまま電車の上へと登る。アンカーワイヤーを車体に突き刺して支えにして――

「それじゃあこっちも、ダイナミックにエントリーさせてもらうかね」

体を振り子のようにしての、全体重と勢いを載せた両かかとで窓をブチ破っての突入。由緒正しい軍隊仕込みの強襲である。

「さて。……行くか」

電車の中なんて狭い上に一般人やら仲間やらがいて普段のように銃器を使うのは危なっかしい。だから今回は、久々に白兵戦だ。
ガラス片を踏みしめて、ナイフを握って、目指すは先頭車両。



●クローズ・クオーター・コンバット
「なんともまあ、ダイナミックな儀式なことで……」
 呆れ声を上げるのは法月・志蓮(スナイプ・シューター・f02407)。大量の人を乗せた電車を大量に人がいるところに突っ込ませ、邪神誕生、である。ダイナミックというか大雑把というか、志蓮が呆れるのも無理はない。
 現場に飛ばされた直後には、真横を電車が走っている。志蓮は躊躇う事なくそれに数歩併走、連結部を強引に掴んでそこを取っかかりに電車に取り付いた。車体に接触し上ってしまえばこちらのものだ。彼はそのまま車体を上まで登る。
 登攀時に、内部の様子を観察。どうやら六号車のようだ。猟兵と敵、黄昏の信者が入り乱れて戦っている。おそらくここが前線だろう。
「加勢するとするか。――それじゃあこっちも、ダイナミックにエントリーさせてもらうかね」
 志蓮はそのまま上まで登攀。『アンカーワイヤー』を車体に突き刺し、もう片端は自身に固定。数度引っ張って固定を確認すると、志蓮は迷わず電車の天井を蹴り、空中に身体を踊らせる。アンカーを支点に、志蓮の身体は建物破壊用の鉄球クレーンめいて弧を描く。コンバットブーツの踵を揃え、そのまま志蓮は窓を蹴り破った。ワイヤーを自分の身体から切り離し、車内に転がり込む。軍隊仕込みのアサルト・エントリーだ。
 地面に踵が着くと同時、ナイフホルスターからコンバットナイフを引き抜き、手近な敵を一閃。武器を持つ手首を切り、ナイフの平を上に向けて、地面と水平にバイタルの集中した胸を突く。確かな手応え。抉り、内臓を破壊して引き抜く。ナイフを平にして突けば肋骨に掛からず、確実に敵の内臓を破壊できる。
 CQCだ。誤射の危険がある。銃器を使うのは得策ではないだろうとの考えからのナイフによる格闘戦。常は射撃戦を種にしている志蓮だが、その技は鋭く、冴えている。
「さて。……行くか」
 志蓮はじゃり、と破った窓ガラスを踏みながら、次の敵に襲いかかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

カル・フラック
なるほど、タイムアタックってやつっすね!
ワンミスが命取りっすから、油断せず行くっすよ。

現場着いたら即共闘モード発動、
2Pは銃を構えて待機。俺は電車に四足ダッシュ。
2Pには電車に飛び込むタイミングで早撃ち、
弾丸で窓をブチ抜いてもらうっす。

んでもって俺がパズルブロックをクッション代わりに車内突入、
巧みなコンビネーションで第一ミッションクリアっすよ!
ところでこのクッションの角めっちゃ痛いんすけど……。

っと、中間リザルトなんて気にしてる場合じゃないっすね。
ブロックを抜け出して戦闘車両の方に走ってくっす。



●ステージⅠ「ぼうそうする れっしゃに のりこめ!」
 カル・フラック(ゲーマー猫・f05913)は“門”を潜り、現場空中に放り出される同時に、ユーベルコード『共闘』を開始。
 デュアル・プレイ・モードだ。カルとまったく同様の――カラーリングのみが異なるカルが現れる。
「タイムアタックっすよ! ワンミスが命取りっす、油断せず行くっす! 俺が乗り込むから、援護頼むっすよ!」
『オッケーっす!』
 2Pは即座にエレクトリックガンを構え、空中から連射。弾丸は六号車の窓を射貫き、カルが突入するきっかけを作る。カルは着地と同時に四足で全力ダッシュ! 転送されたときの勢いを殺さぬまま、カルは思い切り走って、2Pが作った突入口目掛け――跳ぶ!
「っだぁああ!」
 カルの小さな身体は放たれたボールのように飛ぶ。飛び込む瞬間、カルはゲームデバイスにより、パズルゲームのブロックをクッションとして召喚、身体に纏いつつ――見事に車内に突っ込んだ。
 車内の壁にぼふん、とぶち当たり、カルの小さな身体は座席の上にぽふりと落ちる。激突による衝撃を纏ったブロックにより緩和する狙い通り、負傷もなくカルは突入に成功する。ちょっと頭がクラクラするけど。
 電脳ゴーグルの片隅に、Nice Combination!の表示。最早遥か後方で消えた後であろう2Pにグッと親指を立ててから、カルは立ち上がった。……それから頭を押さえた。
「このクッションの角めっちゃ痛いんすけど……」
 もうちょっと呼び出すゲームを選ぶべきだったかも知れない、柔らかそうなやつ。ほら、ぷよ○よとか。
「ま、中間リザルトなんて気にしてる場合じゃないっすね。加勢するっすよ!」
 ここは既に戦闘が発生している六号車。乱戦を繰り広げる猟兵らの援護に向かうべく、カルはエレクトリックガンをホルスターから抜いた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノノ・スメラギ
地上を走る列車を見るのは『久しぶり』だね!
これに乗った人達をまとめて邪神の生贄にしてしまおうとは不埒なやつらだ!
思う存分成敗してやらなくてはいけないね!

さて、列車に移る方法だけど、ここはシンプルに行こう。
トリニティエンハンスの強化を全部VMリフターの飛行能力に回そうと思う。
それで最大速度で飛んで、空からアプローチするよ!(技能:空中戦)

列車に乗り移れた、状況を確認して、敵の信者がいたらガンナーズとスライサーでさっさと容赦なく撃退して、他の猟兵が乗り込むのを助けるよ!
……生憎と、ボクは大量虐殺をもくろむような害獣共に情けをかけてやるほど寛容な人間じゃないんだ。



●トップスピード・フロム・マギアテックス
「地上を走る列車を見るのは『久しぶり』だね!」
 UDCアースの空に、飛翔する一つの影あり。
 それは“門”から飛び出した一人のスペースノイド。身体の各所に近未来的な装いの装甲を纏い、複合魔導デバイス「VMAXランチャー」を携えた少女。
「これに乗った人達をまとめて邪神の生贄にしてしまおうとは不埒なやつらだ! 思う存分成敗してやらなくてはいけないね!」
 ノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)は、飛翔装置「VMリフター」を用いて自身の身体を浮遊させ、更にそこに『トリニティ・エンハンス』によるエンチャントを付与。スラスターめいてリフターから陽炎が上がる。
「行くよ!」
 リフターの飛行能力に加え、トリニティ・エンハンスによるバックファイアで推進力を増幅し、ノノはまさに火砲から放たれた砲弾の如く列車に向けて急降下する。六号車前方の幌に人が通れるほどの穴が開いているのを確認し、ノノはそこに吸い込まれるように飛び込んだ。
「遅れたね、加勢するよ!」
 六号車の乱戦状態は猟兵優位に進んでいる。しかして制圧が進まないのは、五号車から次から次へと増援が押し寄せるからだ。ノノから見える範囲だけでも数え切れないほどの信者がひしめいており、それだけ多くの人々が犠牲になった事を意識せざるを得ない。
「……ガンナーズ!」
 ノノは怒りに震えかける自分を抑え、『VMガンナーズデバイス』を起動。身に纏う機械鎧『VMギア』の各所にテクスチャが発生し、組み合わさり、何も無かったはずのそこに魔力砲台が形成される。
「ファイアッ!」
 複数の砲身が精密に制御され、射出される魔力弾が次々と信者を薙ぎ倒していく。
「生憎と、ボクは大量虐殺をもくろむような害獣共に情けをかけてやるほど寛容な人間じゃないんだ」
 この惨状を生んだオブリビオンに強い敵意を燃やしながら、ノノは次の敵目掛け『VMスライサー』を構えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナハト・ダァト
【異形の花畑】で同行

WIZ重視

[世界知識][地形の利用][早業]
頭を使っタ、華麗な侵入を見せよウ
勿論、潜入が目立ってはいけなイ
「七ノ叡智・永遠」で姿を透明にして乗り込むヨ

「バウンドボディ」[武器改造]で身体の伸縮性を上昇
車両のどこかへひっかけて乗車サ

侵入先の敵へ見つかったら[目潰し]聖者の光を放って牽制ダ
状況が優位であれバ[ブラッドガイスト]
触腕を強化しテ[2回攻撃][早業]にて即座に沈黙させよウ
不利であれば隠れル。機はしっかり待っておかなければネ。

味方に不安なものがいれば追加で一緒に透明化させておくヨ

※アドリブ、連携歓迎



●聖者の行進
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)はおそらく、この生贄特急に集う猟兵ら全員の内、もっとも隠密性について気を遣った猟兵である。彼は自身のユーベルコードを用いて、自身の身体を透明化したうえで乗り込む事を選んだ。
 現場に転送された直後に、伸縮性に富むその身体を繰り出す。『バウンドボディ』。車両連結部に手をかけ、「そこに向けて身体を縮める」。びゅるり、とナハトの身体は流れるように縮み、生贄特急の連結部に再構成される。
「造作もなイ」
 ナハトはそのまま、おそらくは銃撃で破壊されたのであろう、弾痕の目立つ破損したドアから中へと雪崩れ込む。表示を見れば七号車の前方だ。
 透明化したまま彼は脚を進め、――敵とかち合った。
「……!」
 状況を分析する。この先前方六号車に於いて多数の猟兵が戦闘中。その中のはぐれた敵が後方、七号車に向けて進もうとしているものとみられる。敵は一体。後方からは戦闘音が聞こえない。ならば後方は安全地帯となっているものと見る。
 隠密に、透明になっての侵入を選んだナハトである。状況の確認、類推など造作もない。一瞬で状況を把握すると即座に透明化を解除。聖者の光を放ち、敵の視界を一瞬だけ奪う。
「悪いネ。行かせる訳にはいかなイ」
 ナハトの周囲、虚空から這い出る蝕腕が赤く染まる。ヴォッ、と空を裂く音。
 黄昏の信者の屍蝋の面が、蝕腕に打ち据えられヒビ割れる。
『ブラッド・ガイスト』によって強化されたナハトの蝕腕が鞭のように撓り、信者の顔面に、胴に、胸に、フリッカー・ジャブの如く連続で叩き込まれた。ダメ押しの一発が蝋面を砕き、信者を六号車の車内に叩き戻す。
「これは隠れてやり過ごす局面ではないネ」
 六号車でこれだけの乱戦となっているのであれば、おそらく五号車以降にはもっと大量の敵がいるだろう。
 その殲滅に加勢すべく、ナハトは触腕を撓らせながら六号車に進み入った。

成功 🔵​🔵​🔴​

ミコトメモリ・メイクメモリア
【MM】で行動 ボクの役目は、皆を列車の中に送るまで。
列車の速度を遅らせてくれる仲間を信じて――窓の中を視認したら、UC《君を送る記憶の欠片》でジン・エラーを列車の中に転移させる。その時受けるダメージはなんとか気合で乗り切って欲しい。

中に移動してもらえれば、後はジンに持たせた《境界を渡る記憶の欠片》のポータルの欠片から、事前に中に入れておいた皆が続々でれるってわけさ。ついでに、危なくなったら、ボクのところに戻ってこれるしね。

危険な依頼だ、けど……ボク達が力を合わせれば、きっと立ち向かえると思う。
お願い、平和に暮らしている人々を……助けてあげて!


ジン・エラー
【MM】
まァ~~~かせとけよ【ミコトメモリ】の姫サン
オレを誰だと思ってンだ?
ぱっぱと行くぞ野郎ども

姫サンの【欠片】を持って、電車にゴーだ

痛ェにゃ痛ェがこの程度
【ヒカリ】で守って【光】で治せばこの程度
余裕なンだよな~~~~ァ

着いたぞお前らさっさと出てこい
感謝しろよお前らなァ
あァ、運賃は取るぜ?
対価はこの列車の全てを救うことだ
安いモンだろ?余裕だなァ!!!
イェハハハハハハ!!!!

あァ、他の連中が後から来るンだったな
万一の怪我だろォーが疲れだろォーが
オレが全部【光】で救ってやるよ


マグダレナ・ドゥリング
【SPD】使用
あまり無理に止めてもこの速度だと怖いかな、上品に行こう。

【時間稼ぎ】に電車を【ハッキング】をするよ。非常ブレーキを稼働させれば、中にいる相手が対応するまで速度は落とせるはずだ。
一時的でも速度を落とせば後はミコトメモリ君達に任せよう。

「緊急ブレーキ作動まであと……3、2、1、今!」ってタイミングを合わせたいね。
可能なら、ミコトメモリ君のユーベルコードで僕も突入できると良いけど……
これは余裕があったら、かな。


鳴宮・匡
【MM】


周辺地理と路線名、時間帯から通過ルートを検索
経路上で最も作戦遂行に適した地形を割り出して
姫さん(ミコトメモリ/f00040)他
同道する猟兵たちに伝達
電車を減速させる組には
その地点を通過するタイミングでと予め頼んでおく

じゃ、レイラ(f00284)、頼むぜ
姫さんとこまでは連れて行くからさ
(※詠唱が終わった彼女をお姫様抱っこしながら走ります)
え、こういうのは何だって?
別に落としたりしないぜ
それに多分俺の方が足速いし
……おかしい、なんで怒られたんだろう
(レイラはものじゃないだろ、と言いかけたのは噤む)

列車内への移動は姫さんのユーベルコードで
内部潜入時点で敵が既にいれば
抜き打ちの射撃で仕留める


レイラ・エインズワース
【MM】
列車を棺桶代わりに立てこもるナンテ
これからの未来を刈り取らせはしないヨ
これ以上の犠牲は出したくないカラ
ミコトメモリサン(f00040)の転移を確実にするタメニ
列車の速度を落とすヨ
鳴宮サン(f01612)のサポートで
適切な場所を割り出して

時期を逃さないように【高速詠唱】で【全力】の魔力をつぎ込んでユーベルコードを使用
列車の進行を遅らせるヨ
かけた【呪詛】は生を恨むものではなく、略奪者にぶつけるモノ

と、慌てて戻ろうとすれば鳴宮サンに抱えられてて
ちょっと!?
こういうのはソノ……もう、いいケド!!
私がモノでよかったネ、他の子にやったら怒られちゃうヨ
その後は、ミコトさんのユーベルコードで乗り込むネ


祷・敬夢
【MM】ミコトメモリが主導となる列車送り込み作戦を確実に成功させるために、列車の勢いを緩める

フッ、この最高にカッコよくてクールな俺様に不可能はない
それが例え列車を止めることだろうと!
だが、まず止めるために減速だ。我らが王の策のためにもな

しかし、こんな最高のシチュエーションはなかなかないな
どう最高か、だと?
それは俺様の魅力を伝えるのに最高だということだ!
暴走する止めねばならぬ列車、そいつに俺は真っ向から力比べを挑む
一番不得手とする力比べだ!衝撃のぶつけ合いだ!
すると、俺様の最高の魅力が伝わるだろう?
それが良い!俺の魅力を理解する者がいれば俺は更に強くなる!

あとは時間稼ぎ術を活用できれば上出来だな



●メイクメモリア・レギオン Ⅰ
 ――危険な依頼だ、けど……ボク達が力を合わせれば、きっと立ち向かえると思う。
 ――お願い、平和に暮らしている人々を……助けてあげて!

「任せとけ」
 言葉に応え、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は迅速に動いた。
 彼が行った事はまず、この生贄特急が走る周辺の地理情報と路線名を割り出し、時間帯から通過ルートを検索する事だ。経路上で最も作戦遂行に適した地形を割り出し、決行ポイントを決定、各人に伝達する。
 MM Kingdomの面々は自然、減速担当チームと、侵入担当チームに分かれ行動を開始した。匡は減速担当チームを現地へ護送し、作戦を説明する。
「このポイントで作戦を遂行する。全員全力で、列車のスピードを下げてくれ。そうすれば、あとは姫さんがジンたちを送り込んでくれる」
 祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)とマグダレナ・ドゥリング(罪科の子・f00183)、そしてレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)が列車減速担当のチームだ。各人が頷くのを確認してから、まずはレイラに向き直る。
「じゃ、まずは頼むぜ、レイラ」
「任せテ」
 列車を棺桶代わりに立て籠もり、あまつさえそれを駅に突っ込ませて大勢を殺そうなどと。
 もう、犠牲になってしまった人々が戻る事はないけれど、これ以上の犠牲を出させはしない。未来を刈り取らせはしない。レイラは強い決意を湛えた目で、長杖『ウィスタリア』を構える。
「この呪詛は生を憎むモノにあらず。ただ汝の略奪を呪うモノ」
 レイラ・エインズワースは死霊術師である。彼女の詠唱は徐々に早く、多重化する。高速詠唱と全力魔法は彼女の得手の一つである。そうして成立するユーベルコードは、『再演・許さじの腕』。
 ウィスタリアに提げられたカンテラから、怨念纏う紫焔が溢れ出し、走ってくる電車に向け飛ぶ。先頭車両が焔に包まれる。紫の焔は亡者の腕へと姿を変え、ごあう、ごあう、と噎ぶように呻いて電車を地面に縛り付ける。電車の速度が少しだけ鈍る。
「マグダレナ!」
 匡から掛かる声に、マグダレナは拡張現実グラスの内側で目を細める。
「出番だね、了解。もう準備してる、遠隔ハッキング開始、中にいる猟兵のスマートフォン経由で車内Wi-Fiに侵入。そこからレイヤ・シフトして電車の操作系にアクセスする。あまり無理に止めるのも厳しい、中で乗客が生きているとするならね」
 マグダレナは圧倒的な速度でハンドヘルドコンピュータを打鍵する。彼女がかけた拡張現実グラスに、凄まじい勢いでゼロと一の羅列が流れていく。電脳魔術師の世界は、ただの人間が生きる世界ではない。
 電脳魔術師にしてみればこの世の全てはゼロと一で説明でき、ローレベルの機械仕掛けも、複雑怪奇な電子機械も、現実化されたモデルに過ぎない。その全てをハッキングし、介入してみせる。マグダレナの口端に笑みが浮く。
「非常ブレーキを稼働させる。ただ、向こうが気付いて運転席側で解除されればそれまでだ。長くは保たない」
「一瞬でもいい、合図のあとに止めてくれ。フッ――この最高にカッコよくてクールな俺様が、これから不可能を可能にしてみせる!」
 白衣を翻して駆け出すのは減速班最後の一人、敬夢だ。
「アイツ、どうするつもりだ?」
「素手で止めるつもりだとか言ってたけど」
「えっ」
 目を丸くする匡をよそに、マグダレナの打鍵は止まらない。

 線路上、突き進んでくる列車がどんどん存在感を増してくる。レールの上で敬夢はそれを真っ向から見据えた。
「こんな最高のシチュエーションはなかなかないぞ」
 敬夢は風にはためく白衣の裾をもう一度力強く払い、ばさあ、と翻した。カッコいいポーズその一。
「どう最高か、だと? それは俺様の魅力を伝えるのに最高だということだ!」
 電車が迫り来る。額に揃えた二指を当て、傾き立ちながら電車を指さす。カッコいいポーズその二。
「暴走する止めねばならぬ列車、そいつに俺は真っ向から力比べを挑む! コントローラー越しではない戦い、俺が一番不得手とする力比べだ! 衝撃と衝撃の、力と力のぶつけ合いだ! 出来る事ならばゲームバトルで決着を付けたい、しかし敵はそれを許さない! それでも止めたい心が燃える、この手で止めろと心が叫ぶ!!」
 右手の拳を左手で受け止め、仁王立ち!! カッコいいポーズその三!!
「俺様の最高の魅力が伝わるだろう? 諦めない心、そしてこのウルトラカッコいい心意気が! それで良い!俺の魅力を理解する者がいれば俺は更に強くなる!」
 電車が迫る!
「緊急ブレーキ作動まで三秒! 三、二、一、」
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!!!」
「今!!」
 緊急ブレーキが作動すると同時に、敬夢は列車と真正面から衝突! その両手を先頭車両のバンパーにめり込ませながら、踵で枕木をいくつもいくつも砕き蹴り散らし! なおも止まらぬ電車を、僅かでいい、押し留めようと!
 誰が見ても明らかだ、長く保つはずがない! しかし数秒だけでもいい、電車の速度を遅延させる事が出来ればいい! 緊急ブレーキが軋む、紫の焔が燃え、列車を繋ぎ止めようとする、敬夢の叫びが響き渡る! 電車の速度はその一瞬、目に見えて落ち――

「――ありがとう、みんな。これなら、届くよ」
 ミコトメモリ・メイクメモリア(メメントメモリ・f00040)は、閉じた目を開いた。
 急減速した電車の中を視認する。彼女のユーベルコードは、『記憶の欠片』を軸とし、空間干渉、時間干渉を行うものだ。彼女は傍らに侍るジン・エラーに一瞬、視線を送る。
「少し痛いと思うけど、耐えてね」
「まァ~~~かせとけよ、ミコトメモリの姫サン。オレを誰だと思ってンだ?」
「心配ご無用って顔だね。欠片は持ってる?」
「あったりめェよ。いつでもイケるぜ」
 軽く、気負わない調子での返しに、ミコトメモリはにこりと笑った。そして、ユーベルコード『君を送る記憶の欠片』を発動する。指に挟んだ「記憶の欠片」越しに、ジンの目を覗き込み――
「ボクの視線の先に――――キミは必ず居てくれるよね?」
 減速した列車の五号車、戦線が膠着し敵がひしめくその場所へ目を向けた。
 記憶の欠片越しに、ジンの身体が淡く光に滲み――あとは、一瞬。
 ミコトメモリのユーベルコードにより、ジンの身体はこの長距離を転移する。

 転移直後の激突の衝撃で椅子が吹き飛び、ついでに巻き込まれた黄昏の信徒数名が薙ぎ倒され窓から吹き飛ぶ。
「っかァ~……、いってェ……」
 よろよろと立ち上がるジン。周囲には敵だらけ。周囲を取り囲む黄昏の信徒らをよそに、ジンは外に目を向ける。服と靴がぼろぼろになった敬夢が、親指を上げるのが見えた。それに返すように親指を上げつつ、ジンは激突の衝撃で流れ出た血や、折れた骨を『生まれながらの光』で治療。
 武器を振り上げ今まさに襲いかかろうとする信徒の前にジンはミコトメモリの『記憶の欠片』を突きつける。
「ッジャ~~~ン。これがなンだか解るかァ? 解らねェよなァ! 着いたぞお前ら、さっさと出てこい!」
 記憶の欠片が輝きを増し、その内側から複数の猟兵が飛び出して黄昏の信徒らを薙ぎ倒す!
「ああ全くよォ、痛ぇ重いしながら連れてきてやったんだ、感謝しろよお前らなァ。あァ、運賃は取るぜ? 対価はこの列車の全てを救うことだ。安いモンだろ?余裕だなァ!!! イェハハハハハハ!!!!」
 ジン・エラーは笑い、転送された仲間達と共に信徒らへと襲いかかる!

「ちょっと!? 鳴宮サン!?」
「なんだ? こうした方が早いだろ。レイラより俺の方が走るのが速いんだから、合理的だろ」
 外では一仕事終えた減速班もまた、ミコトメモリの元に走り戻っている。ミコトメモリの持つ記憶の欠片を通じ、ジンが持つ記憶の欠片へ転移する事で、中の加勢に行く狙い、なのだが……
 レイラを抱きかかえる匡。その横を併走するマグダレナと敬夢。
「こういうのはソノ……もう、いいケド!!」
 私がモノでよかったネ、とむくれながらむくれながらそっぽを向くレイラ。
 何故怒られたのだろう、という顔をする匡。
「朴念仁……」
 マグダレナが額に指を当てながら呟く。
「レイラももっと魅力を伝えていかなければならんと俺は思うぞ。この俺のように!」
 マグダレナの頭痛は深まるばかりであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティオレンシア・シーディア
※アドリブ掛け合い絡み大歓迎
【MM】の皆と参戦するわぁ。

あらぁ、このままじゃとんでもない大惨事みたいねぇ?
…ホント、随分とまあ派手にやらかしてくれるじゃないの。
(口元には常の微笑み、口調もさほど変わりはない。しかして声は底冷えし、瞑られた眼からは威圧感すら感じる)

ミコト姫様のUCで突入するわぁ。
突入と同時に〈クイックドロウ〉からの〈先制攻撃〉で●封殺を〈一斉発射〉。乗客の退避のために〈援護射撃〉をバラ撒くわねぇ。

ジン、先駆けありがとぉ。

はいはぁい、ここから先は通行止めよぉ。
進むっていうのなら…アタシとオブシディアンが、鉄風雷火で歓迎してあげるわよ?
(半ばマジギレモードのため若干口調が荒い)


ギルバート・グレイウルフ
暴走列車とはぞっとしねぇ。万が一にでもゴールさせるわけにはいかねぇな。

【POW】
下手な小細工してる暇はなさそうだ。
さっさと列車に飛び乗って、オブリビオンを始末しねぇと。
窓を拳銃でぶち抜いて飛び込むか?もういっそ壁に刀突き立てて無理やり張り付くのもありだな……ん?
どうやら姫さん(f00040)がユーベルコードを使って送り込んでくれるみたいだな。
ひゅー、こりゃラッキー。無茶しないですみそうだぜ。

姫さんのユーベルコードで列車内に侵入したら、すぐに周りの状況を確認。一般客がいたら安全の確保、いなけりゃスペースの確保のために座席とかをばっさりと斬っちまうか。

さぁってと、飢えた猟犬ども……狩りの時間だぜ!


リゥ・ズゥ
【MM】ミコトメモリと、ジンの力を、借りる。
途中、異常があるなら、外に出て、対処、しよう。
リゥ・ズゥも、仲間の助け、できる筈、だ。
(ミコトメモリのUCで亜空間に入り、ジンが出口となる欠片を持って列車内に転移する作戦です。
移動中のトラブルがあった際に対処する為「野生の勘」を研ぎ澄ませておきます。
何かあれば即外に出て「バウンドボディ」で己を縄状にした「ロープワーク」「早業」を併用し列車に取り付き、「ダッシュ」で仲間の援護に入ります。
変幻自在の身体はどんな場でも安定して行動できるでしょう。
何事もなく転移できた場合は敵の襲撃を警戒し即座に仲間を「かばう」よう身構えます)
※アドリブ大歓迎です


ヴィクティム・ウィンターミュート
【MM】ミコトメモリ姫のUCで電車内に侵入だ!

イカれたフリークスどもは毎度毎度、碌でもないことしか考えねえな。
このデータシーフのArseneに、列車を持ち出すとはいい度胸だ。ハッカーのやり方って奴を見せてやるよ

姫様とジンのおかげで列車に乗れたなら、周囲の仲間と後続の飛び乗り支援をしよう。【ハッキング】で列車のシステムを掌握して、停止を狙う。無理なら【時間稼ぎ】も併用して減速させる。
さらにユーベルコードで的確な指示を出して、仲間の動きを支援して強化する

「スロット・アンド・ラン!とにかく走れよ野郎ども!駆け込み乗車上等だ!終点はフリークスどもの墓場行き!お乗りの際は存分にお暴れくださいってなぁ!」



●メイクメモリア・レギオン Ⅱ
 六号車の混戦は、五号車に突如現れたジン・エラーと、ミコトメモリ・メイクメモリアの増援転送により完全決着した。増援が五号車から送り込まれなければ、六号車の混戦は止まる。
 戦いの舞台は五号車に移った。
「Yo-ho,イカれたフリークスどもは毎度毎度、碌でもねぇことしか考えねえな。このデータシーフのArseneに、列車を持ち出すとはいい度胸だ。ハッカーのやり方って奴を見せてやるよ」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)はジンが掲げた記憶の欠片から飛び出した、MM Kingdomの一員である。開口一番に名乗りを上げた通り、彼はストリート生まれのデータシーフ、ハンドルはArsene。スラングを挟んだ軽快な語り口調とは裏腹、彼が持つ技量は非常に高い。
 電脳デバイス『ウィンターミュート』を起動。電脳接続型拡張プロセッシングゴーグル『ICE Breaker』とコアクロックを同期し、彼はハッキングを開始する。高い能力を有する電脳魔術師であるヴィクティムは、この電車を減速させ、戦闘時間を稼ぐと共にあわよくば停止させる目論見を持っていた。列車の内部から直接行う電脳ハッキングは、取っかかりになるモノが電波しかない遠隔地からのハッキングとは効率が違う。
 その横に、守るように進み出るのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。薄く柔らかい笑みを口元に湛えた妙齢の女性だ。
「ジン、先駆けありがとぉ」
 労うような言葉をジンにかけつつ、嫋やかな手を頬に添える。
「このままじゃとんでもない大惨事みたいねぇ? ……ホント、随分とまあ派手にやらかしてくれるじゃないの」
 声の、質が変わった。言葉は信徒らに向けてだ。シュガーシロップのように甘い声音なのに、底知れぬ威圧感を覚えるほど、怜悧に重く響く。
 左手から襲いかかる黄昏の信徒。ティオレンシアはそれに見向きもせず、ガンベルトからリボルバーを引き抜く。
 達人めいた、雷光のクイックドロウ。
 手のスナップで跳ね上げた銃口、トリガーを引いたままハンマーを掌で叩く。激発。腰撓めに構えたリボルバーから射出された銃弾が襲いかかってきた信徒の顔面、屍蝋の面のど真ん中を撃ち抜いて倒す。ティオレンシアの指先で、まるで生きているかのようにリボルバーが踊る。ガンプレイ向けにウェイトバランスを調整された、シングル・アクションの六連装リボルバー、『オブシディアン』。スピンさせた銃を再び腰撓めに構えつつ、ティオレンシアは狙いを定める。
「はいはぁい、ここから先は通行止めよぉ。進むっていうのなら…アタシとオブシディアンが、鉄風雷火で歓迎してあげるわよ?」
 甘く冷たく、重い声。そして彼女の言葉の通り、鉄風雷火、疾風迅雷の勢いで放たれるリボルバーの銃弾! オブシディアンをファニングする事で敵を制圧する弾幕と化す。リロードさえも圧倒的に早い。矢継ぎ早に連射されるリボルバーの弾丸を縫い、二つの影が前進する。
 リゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)、そしてギルバート・グレイウルフ(臆病者の傭兵・f04152)だ。
「外に、問題は、ないな」
 リゥ・ズゥは呟く。彼は外の様子を気にしつつも、他の猟兵らに心配などいらないと肌で感じつつあった。
 猟兵らは元より独力独歩で列車へ駆け込むものばかり。ならば今は己の技の全てを、この戦況の打破にぶつけるのみ。リゥ・ズゥはその身を撓ませ、敵の攻撃を掻い潜りながら、自身に攻撃を集中させる事で後ろのジン、ヴィクティム、ティオレンシアの身を攻撃から庇う。たとえ信徒のモーニングスターが振るわれても、『バウンドボディ』による肉体塑性変形により回避し、鋼の如く握り固めた拳で信徒らを薙ぎ倒す。悪魔の姿を取り、悪魔を自称するリゥ・ズゥは、まさにその通り悪鬼の如く敵を蹴散らしていく。
 ひゅう、と口笛を吹き、リゥ・ズゥの豪腕を讃えるギルバート。当初は暴走列車と聞いて侵入方法に悩んだものだが――ミコトメモリの支援のおかげで、無茶を押し通さずに済んだ。ならばその分の労力は戦働きに注ぐのみだ。
「やれやれ、全く、ぞっとしねぇ話さ。万が一にもゴールさせるわけにはいかねぇな――止めるぜ、この列車!」
 ギルバートはリゥの傍らで刀を振るい、信徒を斬り捨てる。返す刀でもう一人。格闘戦を演じる二人を縫うように、ティオレンシアの銃弾が空を裂く。
「銃口を二センチ右だ!」
「奇遇ねぇ、そうしようと思ってた所よぉ」
 ヴィクティムのナビゲートとティオレンシアの的確な照準が冴える。銃声、また一人敵が倒れる。
「リゥ、このまんまじゃ動きづらくてかなわねえ。スペースを作るぜ!」
「了解、した。前に、敵を、寄せる」
 以心伝心の勢いだ。リゥ・ズゥはギルバートに応じ、両腕に質量を集中。パンプ・アップした両腕を振りかざし、ラリアットめいて周囲の信徒らを薙ぎ倒しながら車両前方に吹き飛ばした。
「ナイスアシストだ、リゥ。――行くぜ」
 ギルバート・グレイウルフは臆病者の戦場傭兵。命が第一、危険を冒した稼ぎは御免。才能なんてありゃしない、そんな事は自分が一番よく解っている。生き残れてきたのは、今までの努力と、積んできた経験あっての事だと。
 ――だが、傭兵の才覚とは生き延びる事、そのものだ。死んでしまっては何も出来ない。
 重ねた努力、経験。それしか能がないとギルバートは自分を評価するが――
 だからこそ、積み重ねたそれらは、決して彼を裏切りはしない。
「ッらあああああああああァ!」
 刀を一閃! ギルバートが振るった剣閃が、座席を一挙に斬り払う! 浮いた座席をリゥが弾き、車両後方へ飛ばす。五号車中腹に、集団戦闘を行うスペースの余裕が生まれる。
「さぁ――飢えた猟犬ども、狩りの時間だぜ!」
 ギルバートが鮫のように笑う後ろ。五号車から、混戦を制圧した猟兵らが続々とその姿を現す!
「ッへ――いい流れだ。ギルバートが張り切ってんだ、俺も負けてらんねぇな!」
 ヴィクティムのハッキングは佳境に差し掛かりつつあった。

 猟兵らの思いは一つ――この電車を止め、災禍を断つ!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●日はやがて沈む
 かくして生贄特急のスピードは、確実に緩みつつあった。
 柊・明日真が今以てなお剣を突き立て続けるその物理的な影響と、ヴィクティム・ウィンターミュートによるハッキングが奏功し、駆動系から動力が奪われる。敵オブリビオンはそれに対処するため操作盤で動いているが、ヴィクティムが行う電子的・魔術的ハッキングを前に、後手に回り続けている。

 戦局の天秤は、確実に猟兵らの側に傾きつつある。
ティアー・ロード
手はないが、顔なら空いているとも!

ヒーロー(マスク)たる、この私ティアー・ロードは、
数多の女性の被害が出ると聴いては黙っていられないのさ!


乗り込む際は列車が減速するまで並走するよ!
(浮遊する仮面が猛スピードでデットヒート)

「く、くくく……ふふふ……ハーハッハッハ!」
「いやはや失礼、こんな時だというのに気分が昂ぶってね!
にっくきヴィランを倒すためとは、これ程の英雄や美少女が集うのはテンションが上がるものだ!」
「私こそ涙の支配者、ロード・ティアー!悲しみを拭う者!」
「さぁ!ヒーロータイムだ!」

使用ユーベルコードは【刻印「大義名分」】
同じように列車へ飛び込む猟兵を支援する為に
飛び込む瞬間に使用するよ


新堂・ゆき
中々ハードスタイリッシュな電車さんですね。でも、オブリビオンは
全部綺麗に掃除して差し上げます!
確実性を少しでも上げたいのですよね。減速する通過地点で待ち伏せて
飛び乗りましょうか。
もっと確実なのは、他の飛び乗りする方々に便乗する形が理想的
なのですが。
この辺は賭けですね。
不謹慎ですけど、何体いけるかしら。
舞を使って攻撃の手数も2倍ならどうでしょうか。
他の退治に来てる方々とも協力して戦闘したいです。
もうオブリビオンはここが終着点ですよ。
とても優しい笑顔で
ご乗車ありがとうございました。



●仮面の鼓舞
 その機を逃さず、後ろから加速して飛ぶ影が一つ――。
「――手はないが、顔なら空いているとも!」
 マスクだった。
 数多の女性の被害、断固許さぬ。出ると聞いてはいても立ってもいられない。強めに燃える正義心。男性も助けてあげて欲しい。
 白と黒とのスタイリッシュな文様が印象的なマスケラが……何故か喋っている。
 それもそのはず、それ――否、彼女は猟兵。その名はティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)。いざ列車が減速するその段になるまで、ひたすらここまで車両の後ろをペースを保ち、スリップストリーム効果やらなんやらを使って追走、そして遂に今乗り込む機会を得たのだ。
 無論ただ追走していたわけではない。乗り込み損ねそうになる猟兵らの支援をユーベルコードで行い、作戦に対して大きく貢献もしている。彼女の行動は実に合理的であった。浮遊する仮面が猛スピードで列車とデッドヒートしている、と言う光景はかなりシュールだったのだが。
「く、くくく……ふふふ……ハーハッハッハ!」
「……」
 ――なんでしょう。あれ。
 列車がカーブして減速する地点より合流し、その隙に飛び乗ろうと併走してきた新堂・ゆき(洗朱・f06077)は横で一部始終を眺めて、どうしたものか判断しあぐねる。その視線を感じ取ったかティアーはぐりん、と角度を変え、ゆきの方を見た。
「いやはや失礼、こんな時だというのに気分が昂ぶってね! にっくきヴィランを倒すため、これ程の英雄や美少女が集うのはテンションが上がるものだ!」
 オブリビオンのことをヴィランと呼ぶからには猟兵側の存在なのだろう、と当て込むと、ゆきは言葉を選びながら返す。
「はい――中々ハードスタイリッシュな電車さんですけれど、オブリビオンは全部綺麗に掃除して差し上げます!」
「素晴らしい心意気だ!」
 手があったなら喝采していたであろうティアーの声音。感情豊かなヒーローマスクである。
「ならば今すぐ飛び込むがいい! 私こそ涙の支配者、ロード・ティアー!悲しみを拭う者! さぁ! ヒーロータイムだ!」
 ティアーが口上を述べ、その瞳部分に赤く、強い光を宿す。
「コードセレクト、ザ・ジャスティス!」
「!」
『刻印「大義名分」』。ティアーが扱うユーベルコードだ。悲しみ拭う者の正義の名乗りが、周囲の猟兵を――ゆきを鼓舞する。身体に満ち満ちる力に、ゆきはこくりと頷いた。
「ありがとうございます!」
 期せずして思わぬ協力者を得たゆきは、薙刀「月牙刀」を構え直し、『神霊体』に変身する。ティアーからの支援のために、その負担は平素よりも格段に軽い! 彼女はスピードを上げ、地面に薙刀から衝撃波を放ち、炸裂。その反作用を以てして弾丸のように七号車前方左ドアへ突っ込む。
「いい気勢だ――私も続こう!」
 ティアーもその後ろに続き、一気にスピードを上げ生贄特急内に突っ込む。

 六号車を一瞬で駆け抜け、ゆきは戦場と化した五号車に躍り込んだ。
「はああっ!」
 繰り出した薙刀が信徒の持つ鉄球を打ち払い、薙ぎ払いが脚を、腕を刈り取る。圧倒的な速度で。
「――ここが終着点ですよ。あなたたちの」
 意味すら取れぬ奇声を上げながら襲い来る信徒を、回転させた薙刀の石突きで薙ぎ倒し、窓から吹き飛ばす。ゆきの笑みは酷く優しい。――或いはそれは、酷薄に映ったかも知れないが。
「ご乗車ありがとうございました」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●街が、見える
 ヴィクティムの指先が、掠めるようにエンターキーを打鍵する。
 暴走する生贄特急の速度が、明確に緩む。
 それでも、まだ止まらない。あと一押し、あとたった一押し。

 列車内の敵の侵攻を食い止める猟兵がいた。
 列車内の人々を励まし、負傷者を治療する猟兵がいた。
 そして、列車の速度を落とそうとする猟兵達がいた。

 彼らの行動はパズルのピースのように噛み合い、ただ一つ、
 救う意思となって結実する。
キャリウォルト・グローバー
【団地】【アドリブ歓迎】 列車を暴走させ沢山の人々の命を奪おうなどとは…許されざる悪だな。 某の正義の刃で切り捨ててくれようぞ。 【POW】 しかし、暴走する列車に乗り込めとは中々に無茶な注文をするものだな。 まぁ、某一人では難しかっただろうが… 今回は仲間がおるからな、協力すれば難なく突破できるだろう。 団地の仲間が何かしらの方法で減速をしたところで某が真横から更に『仙人掌(センニンノテ)』の巨大腕と「怪力」で電車を掴み速度を落とす。 他の仲間達が列車に飛び乗ったのを確認してから某も突入するとしよう。 電車内は某には狭いだろうし、まだ乗客がいるからな。 雑魚は某の弓にて狙い撃ちさせてもらう。


ユキ・パンザマスト
【団地/SPD】
不謹慎だけどアクション映画みたいな状況ですねぇこれ。
ええそらもう、一般乗客ド派手に巻き込んだ連中を仲間達とぶっ飛ばす流れを含めて! 

戦闘用の酷く頑丈なバトルキャラクターズを使役して、実体ホロの椿の樹を出せるだけ動員、根を枝を車体に絡ませて減速を狙います! 
一緒に勢いを弱めてくれる仲間がいるから、あとはもう駆け込みダッシュで乗れますかね! 
突入したら他のお客を巻き込まないように早業で仕留めつつ、恐怖を与える捕食の威圧で仲間の攻撃が当たりやすいように敵の動きを鈍らせながら戦いましょう。

無法乗車の罰ですね! 棚上げ? 知ったこっちゃねえっすわ!


鎹・たから
【団地】
罪のない人々を贄になどさせません
たから達が、必ず止めます
ピンチに駆けつけるのは、ヒーローの務めでしょう

たからは終雪で電車の車輪や駆動部を攻撃
少しでも速度を落としましょう
突っ込めるだけの速度まで落ちれば灰雪で飛びつき
列車内へ飛び込みます
【空中戦、ダッシュ】を活用します

更に仲間が突入しやすいよう連珠を握った拳で窓やドアを破壊
【グラップル、鎧砕き】で上手くいくかと

雑魚を蹴散らしつつ
乗車する一般人は【優しさ、勇気】で励まします

あなた達に危害を加える者は
全てたから達がほろぼします
大丈夫、どうか怖がらないで



●最後の掌
 “門”が開く。
 空中から射ち出されるように飛び出す影は、三つ。
 
 まず先駆けは地を揺るがすような質量の着地。轟音を立てて地を蹴立てる大柄な影は、キャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)だ。
「列車を暴走させ沢山の人々の命を奪おうなどとは…許されざる悪だな。 某の正義の刃で切り捨ててくれようぞ」
 それに続くのは二つの軽い着地音。風に吹かれた羽根のようにもう一度飛び駆ける影。
「不謹慎だけどアクション映画みたいな状況ですねぇこれ。ええそらもう、一般乗客ド派手に巻き込んだ連中を仲間達とぶっ飛ばす流れを含めて! 景気よく行くっすよ!」
 斜陽が異形を地に映す。ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)だ。瞳に猫、頭に狼、腰に蝙蝠、骨蜥蜴。呪いそのもののような異形は、しかし溌剌とした口調で言う。
「さあ、絡め、縺れて、暮れ間に惑え!」
 ユキは放映端末を翳すなり、『バトルキャラクターズ』を行使。投影された実体ホログラムの椿がその枝を伸ばし、列車の車輪に絡み、或いは幹でその進路を妨害する。一定以上のダメージを受けた椿の樹枝は耐えきれず自壊するが、その度に実体ホログラムを再生成、動きを縛り続ける。最初のような高速で走られてはそれも追いつかなかったが、今ならそうするだけの余裕があった。
「罪のない人々を贄になどさせません。たから達が、必ず止めます。ピンチに駆けつけるのは、ヒーローの務めでしょう」
 小柄な影のもう一つは鎹・たから(雪氣硝・f01148)。ユキと共に駆けながら掌を列車の車輪に向ける。同時に発動するのはユーベルコード『終雪』。唐突に、全くなんの前触れもなく、白い風が吹く。――否、それは天から降り注ぐ雪と霰の奔流だ。明らかに自然現象ではない角度で、氷雪は電車の車輪、駆動部を凍結させ、更に速度を削っていく。最早、乗り込むになんの支障もない。
「この場は某が預かる。車内は某には少々、狭い」
 元より終盤までは車内に入るつもりもなかったが――今ならば、この三人以外にも電車を止める事を考えていたものがいた、今ならば。もう一つ先を果たせるやも知れぬ。
「了解っすよ!」
「ご武運を」
 ユキとたからは言葉を返すなり、疾駆。ユキは脚力にて駆け抜け、たからは空を幾度も蹴り飛ばし、跳ねながら車内へと飛び込んでいく。
 それを見ながら、キャリウォルトは両の掌を開き、駆ける。
 ――彼女の後ろ。その大柄な体躯よりを二つ並べたほどの――巨大な機械の手が、現れる。

 七号車の大破したドアから飛び込んだ二人は、その脚で前方車両へ駆け抜ける。
 乗客は既に後方に避難しているのか、見当たらない。たからはそれにひとまず安堵しながらユキと共に五号車へ躍り込んだ。五号車内は座席が斬り捨てられており、中央付近に開けたスペースがある。そこでなおも戦う猟兵の助力に参じた。
「無辜の人々に達に危害を加える者は――全てたから達がほろぼします」
 たからはじゃらら、と連珠を拳に巻き付け、拳打によって黄昏の信徒らに打ち掛かる。細腕に見合わぬ威力に、信徒の面がぐしゃりと拉げる。続く胴への一打で敵は座席をまた一つ薙ぎ倒しながら後方へ飛び、動かなくなった。
「やるっすねぇ……じゃあ、こっちも!」
 ユキは己の右腕を異形の獣の頭骨に変形し、血塗られたその顎で手近な信徒の右肩を“喰い千切る”。恐怖を与える目的、見せしめとしてだ。続けざまに蹴りを叩きつけ、信徒を窓から叩き出す。
「無法乗車の罰ですね! 棚上げ? 知ったこっちゃねえっすわ!」
 からり、と笑うユキ、背中合わせになり他の敵へ向け構えるたから。
 五号車の敵も、もう僅かばかり。前方四号車で敵が踏鞴を踏む――
 その刹那だ。
 列車が激震したのは。

 召喚された『仙人掌』――その巨大な掌を、まず、キャリウォルトはカタパルトとして使った。
 掌に乗り、投げ飛ばすように列車の前まで自身の身体を飛ばし、即座に解除、再召喚。彼女はすぐに迫る生贄特急と真正面から相対する。
「暴走する列車に乗り込めとはなかなかに無茶な注文をするものだが――」
 今これから、しようとしている事も十二分の無茶だ。キャリウォルトは、感情の読めないマシン・ヘッドで、それでもその瞬間確かに笑うように瞳の光を強めた。
「志を共にする仲間があれば、無茶も通せるだろうとも」
 キャリウォルトは掌を開く。『仙人掌』がそれを追う。電車が迫る。二足で大地を掴み、
「止」
 掌を正面に突き出し、
「ま」
 開いた『仙人掌』で、まるでボールをそうするように――
「れーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!!!!」
 列車が軋みを上げる。その瞬間、車内でユキが実体ホロを再生成し、明日真が一際熱く剣を燃やして地に突き立て、ヴィクティムが脳に過負荷をかけるほどの速度で列車のシステムをクラックした。
 キャリウォルトは最後の引き金であった。しかし、それは彼女でなくば為し得なかっただろう。その恵まれた体躯と、巨大な『仙人掌』。レールを火花を散らして踏みしめる頑健な脚。
 彼女の脚と、列車の軋みが、金属質な不協和音となって鳴り響く。或いはそれは、生贄特急の今際の叫びだったのか――

 今、ここに。生贄特急は停止した。――作戦は次のフェーズに移行する!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『黄昏の信徒』

POW   :    堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●生贄特急・途中停車駅『叫喚地獄』
「ンンンンンンンンン、ガアアアアアアアアアアアッデム!!!」
 膨らむ頭の男――ポップヘッドは、電車の先頭車両で、制御盤を何度も叩きながら歯軋りをする。
「ンまァさか、ここまで!! これほどまでにィ!! 蠅どもを呼び寄せるとはァ!!」
 これが我が神が与えた試練なのか――
 と、天を仰いで、ポップヘッドは数度瞬きをした。かれはあたまがおおきいのであたまのかいてんがはやい。
 ――そう、これは試練! カルマをより高め、いと高き位階に至るための試練!
「ンフーーーーフッフフ!! なるほど我が神! これらを殲滅するのが我が天命! 天命だというのですね! お任せあれ! いと高き貴方様に! 捧げてご覧に入れる!」
 ケタケタケタと笑いながら、ポップヘッドは衣服をバサリと開く。その裾から無数にこぼれ落ちる、なにか。
 ――ああ。それを見たなら、猟兵達の怒りは頂点に達する事だろう。
 知るも憚られる悍ましい邪法で、人差し指ほどに圧縮された人間の死体。
 がらがらがら、と音を立てて地面で転がる。黄昏の信徒が静々と進み出て、愛でるように手で包むと、圧縮された死体は水を注がれたフリーズドライの野菜めいて膨らみ、ぐしゃぐしゃに崩れた顔を白面で覆い、新たな信徒として再誕する。
 既に殺された無辜の民と合わせ、その数、およそ五〇〇。
 先頭車両の窓を突き破り、無数の信徒がまろび出る。
 それはこの世の終わりのような光景だった。沈みかけの日に、緋色に染まる黄昏の信徒。

 彼らは贄を求めている。
 ――おまえらもしんで、われわれとおなじになれ。

 無数に響く奇声は、告死鳥のそれに似ていた。


【!!!!!!!!!!!!!MISSION UPDATED!!!!!!!!!!!!!】

・生贄特急は停止した
 度重なる妨害行動により、暫く走行は不可能であろう

・敵勢力の増大を確認。フェーズⅡ、『敵の殲滅』を開始する

・敵オブリビオン『黄昏の信徒』を撃滅し、識別名『ポップヘッド』に至れ

・『黄昏の信徒』は一~四号車の車窓より同時に、大量に発生する
 車内を駆け抜け、後方車両へ向かう者もいるだろう
  ・その多くは猟兵ではなく、十五~十一号車に避難した一般人を狙っている
  ・仲間を増やすため、あるいは、『贄』を増やすために

・一般人の生死は任務の成功に含まれない。救うも救わないも個人の行動次第
 ・ただし、一般人が一人死ねば敵が一体増える。それを忘れてはならない

・全ては猟兵に託された
 各員の全力の先頭を祈念する

【!!!!!!!!!!!!!MISSION START!!!!!!!!!!!!!】
●幕開け
 周囲は、まだ街に至る前のだだっ広い平野だ。
 壊れるようなものはない。存分に力が発揮できる環境である。

 最初に気付いたのはどの猟兵だったか。
 電車の内側から、噴き出すように無数の信徒が溢れ出る。彼らは一様に高速移動を用い、後方車両へと飛び向かう。猟兵らからすれば対応できない速度ではあるまい。しかし、問題は速度だ。
 敵は、後方の一般人が密集した車両を、狙い撃ちにしようとしている……!
 まるで包囲網を作るように、大量の信徒が後方車両を取り囲みつつある。

 それを黙って見つめている猟兵らではない。
 ――さあ、理不尽を砕け!
 
ティアー・ロード
「こちらに来ない?
……狙いは乗客か!」

信徒が後方へ行くのを確認したら
ダッシュで追撃し一般人の護衛に行くよ
時間がない
更に加速する為に真の姿(人間態)に戻ろう


「人々を護る事こそ我が使命!」
黒幕への先駆けは他の英傑に任せるね!


使用UCは【ジャスティスペイン】
常に一般人をかばうようにし
信徒に肉弾戦を仕掛けるよ


●堕ちる星の一撃
直撃は周囲を破壊する
一般人も乗る列車をこれ以上破壊する訳にもいかない
被害が出ぬように全身全霊で完全に受け止めるです!

「人々の血と涙を無駄にする事など、この私が許さん!」
一般人を安心させる為
それと挑発も兼ねて大声で改めて名乗ろうか
「私は涙の支配者、ロード・ティアー!乙女の味方です!」



●ヒーロータイム・ナウ
 信徒らのその様子を車内から見たティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)が、感づいたように叫んだ。
「こちらに来ない? ……狙いは乗客か!」
 一も二もなく、彼女は割れた窓より車内を飛び出した。
「人々を護る事こそ我が使命! ――黒幕への先駆けは他の英傑に任せよう!」
 駆け行く敵の群れを素早く追走するティアー。彼女の瞳は爛々と赤く光り、この危機的状況に於いてなおも輝きを増す。
 より、速度を。より、早く。
 願いのままにティアーは真の姿を現す。パンプスが、足下の土を蹴り散らした。長い銀髪が翻る。手の可動を確かめるようにティアーはネクタイの位置を正し、不敵に笑う。
「人々の血と涙を無駄にする事など、この私が許さん!」
 ティアーは土を蹴り立てて疾駆、進路にいた黄昏の信徒を拳に嵌めたグローブ『マイティアーム』で殴り倒す。速力と膂力のみで、背後を顧みず走る信徒へ後ろから襲いかかり、拳を叩き込んだ。立て続けに三体が、地面に向けて顔面から叩きつけられ、奇妙にねじれてクラッシュする。
(敵のあの鉄球の一撃は、周囲の地形を破壊する)
 それはつまり、あの鉄球を振り回して電車を攻撃されれば、横合いからでも容易に侵入経路を作られてしまうことに他ならない。
 ざぁっ、と土埃を立てながらティアーは後方車両、十二号車中程の横合いで停止。後方を襲撃しようとした敵の先頭に追いつく。
 逆サイドは――見えない。だが、きっと誰かがそこを守ってくれているはずだ。これだけの猟兵がいるならば、その行動も千差万別。きっと、誰かが向かっているはずだ。――少なくとも、今はそう信じるしかない!
「もう大丈夫! 誰も傷つけさせはしない! 私は涙の支配者、ロード・ティアー! 乙女の味方です!」
 朗々と歌い上げるように言うと同時に、ティアーはユーベルコード『ジャスティス・ペイン』を発動。周囲の敵の注意を引きつけ、敢えて自らに狙いを集中させることで、身体能力を増幅する。
「さぁ、ヒーロータイムだ!」
 ティアーは駆け来る信徒らに向け、グローブで固めた拳を構える!

成功 🔵​🔵​🔴​

ノノ・スメラギ
フム、一般人のみんなを狙おうっていうのかい?
……まったく、このボクが、そんなことを許すと思っているのかい!? なめられたものだね!!
車両を出て空に上がるよ!
それで、VMガンナーズを最大展開! 浮遊誘導刃VMスライサー射出! VMAXランチャーは連射モード! 全力火力で空から迎え撃たせてもらおうじゃないか!(技能:2回攻撃、一斉射撃)
相手の動きを見て、集団の出鼻を挫いて立ち往生させるように敵を狙うよ。(技能:戦闘知識)

……犠牲になった挙句に、手先された人たちには申し訳けないけれど、一切合切躊躇なく、一人残らず打ち抜かせれ貰うよ! 彼らの手で新しい犠牲者を生まないこと、それがせめてもの手向けさ!



●メタル・ガーディアン
「フム、一般人のみんなを狙おうっていうのかい?」
 ティアーが列車右後方を守りに駆け出るのと時を同じくして、制圧した車窓から外を見たノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)は尖った八重歯を見せるように剥いた。軽やかにして、鋭い笑みだ。
「……まったく、このボクが、そんなことを許すと思っているのかい!? なめられたものだね!!」
 二歩の助走、直後に跳躍! ノノはVMリフターを急展開、電車の天井に誰かが開けた穴から、迫撃砲の砲弾の如く飛び出した。中空から戦場を俯瞰、既に車両右後方をティアーが守っているのを見た瞬間、的を左後方に絞る。
「VMガンナーズ、フル・エクステンション! VMスライサー、レディ! VMAXランチャー、ラピッド・モード!」
 彼女が身に纏うVMギアに、すぐさま最大数の『VMガンナーズデバイス』が具現化。
 起動と同時にノノの周囲を衛星軌道で周り飛ぶビームエッジ・ブーメラン、『VMスライサー』。
 そして手にするは、全ての源泉。複合魔導デバイスたる『VMAXランチャー』。
 その瞬間のノノは、最大火力を最大範囲に撒き散らすことを目的とした、言うなれば一斉発射モードだ。空から、敵集団の進路を確認。VMAXランチャーの銃口の向きを制御する。
「君たちの暴挙を許すわけにはいかない。戦闘開始だ!」
 ノノはVMAXランチャーの引き金を引いた。まるでビーム・マシンガンの如く光弾が放たれ、降り注ぐ光が信徒らを迫撃する。VMガンナーズデバイスが自律的に筒先を制御し、列車に取り付こうとする敵に光弾を叩き込む。
 回避する敵もいれば、直撃し塵となる敵もいる。その合間を、VMスライサーが唸り飛び、一体、また一体と敵を裂く。
 相手の動きを見て、集団の出鼻を挫き、行く方向を惑わせる。戦闘知識に基づく、敵集団との遅滞戦闘の基本だ。
「……犠牲になった挙句に、手先された人たちには申し訳ないけれど……一切合切躊躇なく、一人残らず撃ち抜かせて貰うよ! 彼らの手で新しい犠牲者を生まないこと、それがせめてもの手向けさ!」
 空に舞う彼女は、さながら列車を守る鋼鉄の守護天使であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ジェイクス・ライアー
一般人の命はもちろん優先される。彼らに危害が及ばぬよう、猟兵としての最善を尽くそう。
手の届く範囲で、だが。

【SPD】
我々がいるのは最後方車両。前方から迫ってくる騒ぎに気づき、対処するには多少の時間があるだろう。
包囲する敵への対処は他に任せ、車内から迫る敵を食い止めることを第一とする。

Be our guest.
[暗殺]で磨いたこの技術をご覧に入れよう。
傘型の散弾銃を構え、[零距離射撃]で出迎えの祝砲。敵の攻撃を軽い身のこなしで回避しながら、[早業]でワイヤーを蜘蛛の巣のように張り巡らせ獲物がかかる瞬間を待つ。
この狭い車内では…壁、天井、座席すら私の領域だ。



●紳士の流儀
「一般人の命はもちろん優先される。彼らに危害が及ばぬよう、猟兵としての最善を尽くそう。――手の届く範囲で、だが」
 男は言った。範囲を限定した割に――その言葉は、救えぬ者などないというほど、揺れず確固と響いたものだ。

 ひとつ。
 紳士たるもの、いかなる状況にも狼狽えざるべし。
 ひとつ。
 いついかなる時に於いても、優雅たるべし。
 ――これは或いは彼に於いてのみ、ひとつ。
 不調法者には、死を以て購わせるべし。

 車両後方に取り付き、鉄球を振り上げた黄昏の信徒。
 あと一拍で、車両後方が破壊される――まさにその瞬間、敵の喉を、傘が――否。傘型の散弾銃の銃口ががつん、と衝く。ガラスを破って突き出た散弾銃の切っ先が、めき、と音を立てて信徒の首を軋ませ、

 Be our guest.
「此でも喰らえ」

 轟音!
 首と胴が泣き別れになり、血の薔薇が空中に咲いた。
 撒き散らされた、汚濁した血液と腐肉が、地面にびしゃびしゃと散る。もう空っぽの肉体がデッキから落ち、呆気ないほど軽い音を立て地面に転がる。
 ――一体が、完膚なきまでに死んだ。
 奇妙な間が一瞬。列車の中からの追撃はない。ならばと、突っ込もうとしたもう一体がまたも散弾銃の餌食になる。
 静寂、そして威圧。不意打ち、早業による暗殺。静かなるプレッシャーが場を包む。こんなにも騒然としているのに――
 意を決したが如く、五体が後方より殺到する。二体がまたも散弾銃で撃たれ死ぬが、三体は無事にモーニングスターを振り上げた。車体を軋ます音を立て、車両後方が破壊される。ドアが吹き飛び、黄昏の使徒らが侵入するスペースが生まれる。信徒らは、耳障りな声で喚きながら、その入口に目掛け殺到する。

 ――しかし。しかしだ。
 それは黄泉路の入口だ。
 どうして疑いもしなかったのだ?

 乗り込んだ先にいるのは、一人の紳士。或いは静かなる牙であった。

「進路に気を付け給え。死にたくないのなら」
 ジェイクス・ライアー(素晴らしき哉・f00584)は、さり、と微かな音を立てて顎髭を親指でなぞった。
 その瞬間には、首に脚に、ジェイクスが張ったワイヤーが掛かり、転倒する黄昏の信徒ら。ロービジブルなワイヤーを車内に張り巡らせ、そこをジェイクス自身が守ることに依る、「壁よりも遥かに固い防御線」。
 ジェイクスは容易くワイヤーをすり抜けるように歩き、敵一体一体をその仕込み靴と散弾銃で始末する。敵が振るったモーニングスターをバックフリップで避け、張ったワイヤーの上に着地、危ういバランスで静止する。男は傲然と言った。

「教育してやろう。この狭い車内では――壁、天井、座席すら私の領域だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア


なんて数……!
これだけ猟兵が集まっているのであれば、と思いましたが……そう楽観はできないみたいですね!

ですが、外に出てきたのならばこっちにとっては好都合です。射線が通りますからね!

中を進攻する敵は他の猟兵にお任せして、私はこちらを対応しましょう。
後方車両のどこか、窓よりは入りやすいであろうドアの前に布陣。
塞ぎつつ、攻めてくる敵を炎爆弾でまとめて処理します。
狙いは他の味方のマークが薄い場所。誤射防止とこっち攻めてきてるぞという注意喚起ですね。
もっとも、誤射する気など毛頭ありませんが。
数が減ったら通常弾に切り替えて、着実に撃ち抜いていきましょう。
(スナイパー、援護射撃、属性攻撃、時間稼ぎ)



●シャープ・シューター
「なんて数……!」
 シャルロット・クリスティア(マージガンナー・f00330)は車外の状況を見ながら息を呑む。
 片面だけで百では効くまい。無数の『黄昏の信徒』が駆けてくる。おそらくは――今、シャルロットがいる、大量の一般人がいる車両を襲うために。これだけ猟兵が集まっているのであれば、と彼女自身も思ったが……事態は決して、楽観を許す状態ではない!
「こわいよお……やだよぉ……」
「大丈夫よ、大丈夫だから……ね、泣かないで、ねっ」
 あああん、うああああん、
 車内の各所で泣き声が響く。幼子らが耐えきれず泣き喚く。
 ――ともすれば、それは苛立ちを招くような高音だったかも知れないが、それで却ってシャルロットの腹は据わった。
 この世に生まれて僅か数年の、まだ何もわからない幼子を断とうとする敵がいるのなら。
 それを全霊を以て、排除するだけだ。
 シャルロットは壊れた十五号車の右ドアの前より、後方車両への侵入を防ぐべく狙撃を開始した。
 
 引き金を引く。耳を聾する音と共に銃口から焔そのもののような弾丸が飛び出す。『術式刻印弾・炎爆』。弾丸は敵に着弾すると同時に、爆炎を撒き散らし周囲の敵を焼き祓う。数体単位のグループで行動する敵に、それは殊の外うまく奏功した。
 シャルロットはボルトハンドルを操作、薬莢を排出する。エキストラクターに弾かれて空薬莢がクルクルと空中を回るその間に次弾を装填、再び発砲。またも、ノーマークの黄昏の信徒らのグループが炎上する。
 ――絶対にここには届かせない!
 放たれる炎爆弾と、その派手な効果。シャルロットが連射すればするほど、そこは猟兵らが手薄であることがはっきりと解る。シャルロットは既に六発を放った『エンハンスドライフル』を再装填しながら、再び彼方へ狙いを付ける。
 狙撃手の戦いは常に孤独だ。しかし、今この場には大量の猟兵がいる。
 ――大丈夫。絶対に!
 シャルロットは信じながらトリガーを引き、すぐさま廃莢。指に挟んだ次弾を装填する。
 ……皆だって、これ以上誰一人死んで欲しくなんてないはずだから!

 シャルロットは、他の猟兵を信じて、見える限りの敵をそのライフルで猛撃し続ける!

成功 🔵​🔵​🔴​

トルメンタ・アンゲルス
なるほど、敵は速いですねぇ。
だが、俺の方が速い!
速くなければならない!
誰かが死ぬより早く、俺が奴らを仕留める!

相棒の宇宙バイクに跨り、マキシマムグッドスピードを始動、
最大速度で、外を走る信徒を跳ね飛ばさんと突っ切ります。

突っ切った所でマシンベルトを起動。
『MaximumEngine――HotHatch』(ベルトの音声)
乗っていたバイクを、防御力重視の装甲として変身合体。
背部のブースターを最大まで吹かし、最大速度で疾駆。
追撃のブリッツランツェで、電撃が次々と走っていくかの様に、次から次へと蹴り穿たんとします。


敵よりも!
鼓動よりも!
声よりも!
誰かが死ぬよりも!
俺が!何よりも!絶対に!速く!駈ける!



●アンゲルス・ザ・トップスピード
 怒濤のようにとはまさにこのこと、先頭車両から押し寄せる敵の大群を前に、トルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)はスポーツサングラスの位置を直した。
「なるほど、敵は速いですねぇ。――だが、俺の方が速い! 速くなければならない!」
 トルメンタは跨がった宇宙バイク『NoChaser』を始動。追いつける者なし、と銘打たれたバイクが唸りを上げる。エンジンを噴かし、ユーベルコード『マキシマムグッドスピード』によりその外殻を変形。
「誰かが死ぬより早く、俺が奴らを仕留める!」
 トルクピークとタイヤのグリップを完全に掌握したロケットスタート。トルメンタは一瞬で風になり、走る信徒らの渦中に突っ込んだ。真横から、敵の群と直交する形での突撃。数体が撥ね飛ばされ動かなくなるが、大多数は後方車両へ向け引き続き走る。土を抉り飛ばしながらトルメンタは方向転換しつつ、マシンベルトを操作した。
『MaximumEngine――HotHatch』
 マシンベルトが機械音声を発し、NoChaserのコンソールに『Accepted』の表示。次の瞬間、NoChaserはパーツ単位で分解され変形、トルメンタの身体を覆う機動装甲と化す!
「行きますよ――相棒!」
 背でブースターの光が灯る。プラズマジェットの奔流が、彼女の身体を加速する!
 トルメンタはまさに射出された弾丸のように、地表すれすれを駆けながら高速で敵を追走!
「――逃がさない!!」
 敵に蹴りを叩き込み、その反動を生かしながらブースターを再度稼働、ブースターの推力と己の蹴りの威力を相乗させ、物理法則を全く無視した鋭角的な方向転換を可能とする。彼女は敵と敵の間を反射するかのように、次々と軌道上の敵を蹴り穿つ!
 ――敵よりも! 鼓動よりも! 声よりも! 誰かが死ぬよりも!
「俺が! 何よりも! 絶対に! 速く! 駈ける!」
 トルメンタは決して止まらない。彼女が、一瞬前よりも速く走ることで、きっと誰かが救われる。
 トップスピードを更新し続けながら、彼女は敵を蹴散らしていく!

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
【MM】
雲霞の如くと言うか
相応しく潰れて果てるが良かろう

車外で群れに対処
破天で掃討
高速詠唱・全力魔法・2回攻撃・範囲攻撃など駆使し、破裂する魔弾で爆撃する面制圧飽和攻撃
討ち漏らしは匡あたりが撃ち抜くだろうと集団の頭を抑え数を叩くことに専念
細かく狙わず見える敵性個体全てを潰すつもりで
此方への攻撃も物量で潰して押し切る心算
味方と車体に当てない程度には気を使い、必要なら魔弾を爆ぜさせるのは控える
その場合爆撃が掃射になる程度

圧に抗しきれないと見たら一時的に味方に戦線維持を任せ真理で攻撃力強化
魔弾の密度を増して抵抗諸共圧殺する




レイラ・エインズワース
【MM】車外戦闘
鳴宮・匡サン(f01612)と一緒に

ネ、私が前衛なんてちょっと珍しいカモ
でもきっと大丈夫
私は一人じゃないカラ

呼び覚ますのは兵団
数が多いのならばこちらも数で
「サァ、ここから先へは進ませないヨ」
盾兵を前衛に陣形を組んで、敵の進撃を阻害するヨ
被弾した個体は下げて、代わりのモノを前に
刃に込めるのはカンテラの放つ【全力】の魔力
それで切り付けて【生命力】を奪って、少しでも長くもちこたえるヨ
数で負けても烏合の衆相手に、軍隊が後れを取るわけないデショウ
こちらは積極的にはうってでない
だって、味方たちの攻撃がきっと残さず仕留めてくれるカラ
だから信じて耐え抜くヨ

アドリブ・絡み歓迎ダヨ
好きに動かしてネ


鳴宮・匡
【MM】車外戦闘担当
レイラ(f00284)と共に
他、協働する猟兵がいれば連携

今回はこっちが後詰めだな
「いつもと逆だけど、頼りにしてるぜ」

後方車両の車上に陣取って
アルトリウスの爆撃、レイラの兵団を掻い潜ってきた敵を狙撃
位置を悟られないよう、数発ごとに狙撃ポイントを変える

狙いは一撃で無力化できる部位なら何処でもいいか
殺せれば一番手間がないからできればそうしたいが
無理でも動きの要となる部位は頂くぜ
動きさえ止めれば味方が追い付くだろうしな

他に外で応戦する奴らの動きもしっかり見て
必要に応じて連携・援護
特に術者本人を狙う敵なんかは見逃さず処理するよ
「……守ってやるって言ったしな」
あんまり、柄じゃないけどさ


祷・敬夢
◎ 【MM】
フンッ、スピードは認めてやろう!しかし、動き方に優雅さがないな!
いついかなるときも魅せる動きができる天才的な俺様のスピードを見て、精々学ぶがいい!

俺は外側に出てきたやつらを対処するぞ!
車内でも俺のパフォーマンスを魅せられるが、外のほうがより素晴らしいものになるからな!

意思を持たない連中がいくら群れを成そうと関係ないな!
最強にカッコイイ俺様の意思に溺れろ!
俺の必殺技マイティ・ピュイサ・シュテルクスで敵を薙ぎ払おうか!

撃ち漏らしや広範囲を攻撃する仲間がいることだ、好きにさせてもらおうか!
ハーッハッハッハ!見ろ!俺様のカッコイイ技を!!



●バラージ・カルネージ
「雲霞の如くとはこのことか。――亡者なら亡者らしく、潰れて果てるが良かろう」
 アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)は無感情に、敵戦力の評価を行う。
 敵は無秩序に押し寄せるわけではなく、数体ごとに小班を組み進んでくるようだ。先頭の個体が弾除けを兼ねているのだろう。いずれにせよ、アルトリウスの攻撃に影響はない。
「行き止まりだ。死出の道に坐せ」
 蒼く輝く魔弾の群を発生させ、アルトリウスは手を払うように振るった。放たれる魔弾の嵐は名を『破天』。狙いは細かくせず、面的制圧により数を減らし、群ごと潰す――と言った狙いだ。着弾と同時に『死』そのものが炸裂、破裂し、赤黒い血液や信徒の身体だったものが飛び散り、外れた魔弾が土柱を上げる。まさに爆撃である。
 アルトリウスの攻撃は凄まじい勢いで敵の群を削るが、しかしそれでもその弾幕を突破する者は出る。
「ふん……数だけは多い、か」
 すぐさま高速詠唱を行い、再度魔弾を撒く。再びの炸裂、上がる土埃の向こう、それでも突破してくるものが残る。後ろから、常に供給されているかのような勢いで敵の軍勢が注ぎ足されるのだ。
 まるでどこかで群勢が作られているかのように――
「アルトリウスサン、爆発ちょっと控えてネ。群、抑えるヨ」
 レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)がアルトリウスの傍らで言う。ゆらゆらとカンテラを揺らし、発動させるは『強欲なる領主の夢』。
「潰えた夢を数えヨウ。繁栄への願い、富への渇望。全てを手中に収めんとした領主の見た夢。過去の幻だとしても、今再び夢は舞い戻る」
 レイラが揺らす幻燈から、ふわふわりと蛍のような光が無数に浮かび上がる。光はすぐに膨らみ、人型を取った。かつて、いつかどこかに確かにいた――近衛兵団とそれを率いる領主がレイラの力を借り再演される。
 レイラはなんとなく、後方を見た。くれた言葉を思い出して。
 今回はこっちが後詰めだな――いつもと逆だけど、頼りにしてるぜ。
「フフ、私が前衛なんテたしかにちょっと珍しいかもネ。――でもきっと大丈夫、私は一人じゃないカラ」
 ネ、鳴宮サン。
 心の中で青年を呼びながら、レイラは近衛兵団と領主に命を下す。
「サァ、ここから先へは進ませないヨ!」
 近衛兵団は盾兵を前に、槍兵を後ろに、スタンダードな陣形を組んで敵の群と真正面から当たる。兵団とて無限ではないが、防御ラインを展開する意味はある。突破する者をピンポイントに狙う作戦展開が可能になるからだ。傷ついた兵がいれば、代わりの兵を前に出し、防御ラインの堅牢性を維持する。
 敵を積極的に攻撃はせず、後ろに通さず守りを固める戦い方。攻撃は他の者に任せる。彼女は仲間の攻撃力を信頼していた。
 レイラの言葉に従い、アルトリウスは破天の出力を調整、爆破せず貫くだけの魔弾として、今度はある程度は範囲を絞り、兵団が守り切れないあたりを掃射する。先程のような派手さはないが、堅実に敵の数を削っていく。
 レイラとアルトリウスが敵を抑え続け、作った戦線に突っ込む男がいる。
「――フンッ、スピードは認めてやろう! しかし、動き方に優雅さがないな!」
 祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)である。
「いついかなるときも魅せる動きができる天才的な俺様のスピードを見て、精々学ぶがいい!」
 敬夢は走り、そして華麗に跳んだ。近衛兵団の一体の肩を踏み台に、更に跳躍! 沈む夕日を背に、まるで腕を翼のように広げ胸を突き出し、カッコいいポーズをキメる。
「意思を持たない連中がいくら群れを成そうとも関係ない! 最強にカッコイイ俺様の意思に溺れろ! 必殺! マイティ・ピュイサ・シュテルクス!!」
 空中の敬夢から、極彩色の光が投射される。彼のカッコよさから繰り出される極太電子レーザー、『マイティ・ピュイサ・シュテルクス』である。その当たり判定はまさに初見殺し、地を這うばかりの信徒に向け降ったレーザーが、瞬く間に数体の信徒を灼き尽くし、破壊する!
「後ろにアルトリウスとレイラがいるのならなんの憂いもないな! 俺様は好きにさせてもらおうか!」
 間近で振るわれたモーニングスターをパリィ! 顎に手を添えカッコイイポーズレーザー発射爆殺!
 高速移動で突っ込んでくる敵を連続側転回避、目元を手で隠しカッコイイポーズレーザー発射爆殺!!
 奇声を上げ迫る敵数体から逃れ連続バック転〆にバックフリップ伸脚着地レーザー発射複数体爆殺!!!
「ハーッハッハッハ! 見ろ! 俺様のカッコイイ技を!! そして酔いしれろ! このカッコよさになぁ!!」
 高らかに笑う敬夢を、止められる黄昏の信徒はいない……!

「いやあいつやりたい放題だなホント」
 鳴宮・匡(凪の海・f01612)は真っ当な突っ込みを入れた。距離は百六十メートルほど離れ、十三号車上である。匡はユーベルコード『千篇万禍』を発動。敬夢、レイラ、アルトリウスらが戦う前線を見る。あれだけやっても討ち漏らしが出る。敵の物量が生半ではない。匡は電車のうちで伏せ射ちの姿勢を取り、リアサイトを覗き込む。
 防御ライン外から突破してくるかけた信徒を狙撃し、頭を一射で撃ち抜く。狙いはバイタルの集中する胸周辺から頭だ。脚は狙えればいいが、信徒の身体を覆う布がシルエットを大きくしている。無理に狙うことはないだろう。一射で動きを止められるなら、どこでもいいはずだ。彼の狙撃は正確だ。まるで機械のように照準しては撃ち、その度に数をカウントする。
 レイラの兵団もよく粘るが、しかし敵の軍勢の供給が止まらない。匡は冷静に数射ごとに狙撃ポイントを選び変え、徐々に前進しながら援護する。チェンバーに弾を残したまま新しいマガジンを装填、射撃を継続。
 ふと、レイラが踏鞴を踏むのが見える。防御ラインの一角が緩み、突破した信徒が襲いかかったのだ。
 防御ラインの向こう側にいる敬夢は対応できない。アルトリウスは他方を制圧中、そこを緩めれば後ろに漏れる敵が増える。匡は即座に銃口を動かした。息を止めたままの二連射。
 胸と、頭。のけぞり、倒れた信徒が動かなくなる。光学照準機器を用いることなく神業めいた狙撃を決め、匡は小さく安堵の息を吐く。
 レイラはすぐに態勢を整えた。振り返る事はない。そうする余裕もないだろう。けれど、心なしか彼女の動きは浮き立って弾んでいるように見えた。それがなぜだかは、匡には解らなかったが。
 ――全く、柄でもないが、
「……守ってやるって言ったしな」
 匡は小さく笑い、次の狙撃ポイントに移動する。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

杜鬼・クロウ


「オイ、そこで大人しくしてろ!絶対動くンじゃねェぞ。
その命、俺達が預かる。誰も死なせねェよ…ッ!」

11~15号車に避難した乗客へ安全確認が済むまで絶対に外に出るなと念押しし前方へ走る
一つに固めた方が守りやすい

「ち、心底胸糞悪ィ。これ以上犠牲出せっかよ!
束でこようと何人たりともここは通さねェ。
その為の力が、俺を猟兵たらしめる所以だァ!」

列車が停止し次の戦いのゴングが鳴る
大損害の7、8号車付近で外に出る
仲間が討ち損じた敵を討つ
【煉獄の魂呼び】使用
禍鬼は棍棒で攻撃
霆で援護

敵の攻撃は【武器受け・カウンター】で剣ぶん回し切り裂く
【属性攻撃・2回攻撃】で風宿し竜巻の如く荒い攻撃
血で濡れても意地でも倒れず



●黒風、一刃
「オイ、そこで大人しくしてろ!絶対動くンじゃねェぞ。その命、俺達が預かる。誰も死なせねェよ……ッ!」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)は十一号車以降に避難した乗客らに強く命じると共に、車両を駆け抜ける。一箇所に固めておけば守りやすい。迂闊に外に出られてはその目論見も外れてしまう。
 自分が残り、ドア前を守るべきかとも考えたが、それよりも今は襲ってくる敵の数を減らすことが肝要と考えたクロウは、脚を惑わせず真っ直ぐに前方車両に向けて走った。
 破損した七号車・八号車の連結部左ドアより、クロウはその大柄な体躯を外へ躍らせる。丁度前方に展開された戦線を迂回した敵が、後方車両へ驀地に走っていくところだ。
 クロウは黒の大剣『玄夜叉』を引き抜き、恐れることなく突っ込んでいく。
「ち、心底胸糞悪ィ。これ以上犠牲出させっかよ! 束でこようと何人たりともここは通さねェ。その為の力が、俺を猟兵たらしめる所以だァ!」
 クロウは進路に割り込み、剣を正眼に構えた。そして吼える。
『杜鬼クロウの名を以て命ずる。拓かれし黄泉の門から顕現せよ! 贖罪の呪器……混淆解放(リベルタ・オムニス)──血肉となりて我に応えろ!』
 呼び出されるは禍鬼――マガツミ。赤錆色の金棒を持った鬼の御霊が、クロウの隣に侍る。
「行くぜ!!」
 クロウは旋風の如く剣を振り回しながら吶喊した。唸りを上げて空を裂く一刀が先頭の一体の首を撥ね飛ばす。クロウに構わず抜けようとする数体を、禍鬼が手から発する雷霆にて打ち据え、それを以て牽制。
「言っただろ、こっから先は通さねぇってよ!」
 打ち掛かるモーニングスターの一撃に真っ向から剣を叩きつけ、鉄球を支える鎖を断ち、返す刀で信徒の身体を上下に二分する。その大剣は焔の魔力を帯び、徐々にゆらゆらと陽炎を上げだし――最後には、朱き焔を纏うに至る。
「おおおおおおおおおおらァッ!」
 旋風、そう称してもまだ余る。それは最早竜巻だ。焔の竜巻だ。瞬く間に、振り回す大剣で三体を真っ二つにして灼き尽くす。
「さあ――どんどん来やがれ! この俺が相手だ!」
 血で塗れようとも、息が上がろうとも。魔力がつき、いずれこの剣が冷たくなっても。
 決して斃れることだけはすまい。それが、杜鬼・クロウという男の矜持であった。

成功 🔵​🔵​🔴​

明神・竜聖


速いですねぇ。そう焦ることも無いでしょうに。
ですが、向こうからせっせと来てくれるのは……まあ、楽ですねぇ。

中を走ってくる信徒のお相手をしましょうか。
十号車か九号車辺りで……出来れば、お仲間を巻き込まないようにしたいですが、まあ、流れにお任せしましょう。

車内で、酒飲み瓢箪からお酒を飲みながらお待ちしましょう。
飲めば飲むだけ強くなれる、酔わずの蟒蛇を以って、ね。

酒の匂いや色香を広げ、本能を誘惑しておびき寄せましょう。
狭い空間なら、十全。
我が八極拳、お披露目致しましょう。
残像や第六感を駆使して見切り、掴んでは盾にし、オーラで攻撃を反らし、その身を粉砕してあげましょう。
囲まれたら、震脚で処理します。



●撃拳繚乱
 一方、車内でも各所で戦闘が発生している。
 各所から取り付いた黄昏の信徒らが車内に侵入してくる。猟兵達が開けた車内への進入口は、今は敵が入ってくる場所と化していた。
 後方車両で水際を守る者もいれば、途中車両からの進入敵を遊撃する者もいる。
 明神・竜聖(戦場の天女・f12539)もまたその一人。彼は九号車で、前方車両から駆け込む信徒と会敵する。
「速いですねぇ。そう焦ることも無いでしょうに。ですが、向こうからせっせと来てくれるのは……まあ、楽ですねぇ」
 ぐい、と手にした瓢箪から酒を呷る。ふうわりと吐いた息から広がる酒気。女性と見紛う細面を、しかして上気させることもない。それもそのはず、竜聖は既にユーベルコード『酔わずの蟒蛇』を発露している。
『酔えば酔うほど強くなる』ならぬ『飲めば飲むだけ強くなる』状況。酒気に誘われるが如く、耳を聾する奇声を上げながら敵が走る。振り下ろされるモーニングスターをひらりと避け、座席の手すりを蹴り、くるりとバック宙。ヘッドレストを二つ、三つと蹴りながら飛び下がり、通路に着地。
「我が八極拳、お披露目致しましょう」
 すう、と重心を落とす。追いすがる敵が振り下ろすモーニングスターを残像を残しながら紙一重で回避。最早拳すら充分な加速距離が取れないほどの超々至近距離まで寄せ、震脚と同時に靠撃。
 肩から背中にかけてを使った体当たりは、その華奢な身体からは想像できない程の破壊力を生む。
 トラックに撥ねられたように一体の信徒が後ろに飛ぶ。それを目で追った次の信徒の懐に、竜聖はするりと潜り込んだ。疾きこと風の如く、狡猾なこと蛇の如し。
 信徒の胸の中央を穿つ頂肘。加速と同時に叩き込まれる肘は、殆ど身体同士が密着するような位置関係で炸裂する。胸骨から背骨にかけてが粉砕し、だらりと頽れる信徒の胸ぐらを掴み、続けざま打ち掛かってくる敵への盾とする。
 ぐしゃりと鉄球がめり込み拉げる死骸を横に捨てながら竜聖は地を踏み切り、右の蹴り上げ。信徒の顎がカチ上がり、爪先が地面から浮いた刹那に左の蹴りが水月を抉る。芸術的なまでの二連蹴り、連環腿。
 吹き飛び、ピクリとも動かなくなる敵を後目に、竜聖は構えを新たにする。
「さあ、次の技を見たいのはどなたです?」
 竜聖は細面に笑みを作り、次なる信徒らに向き直るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ポケッティ・パフカニアン
もー、派手にやったわねぇ。
こうなるって知ってたら、あたし外で止まるの待ってたんだけど。
まぁ、後処理は考えない。お仕事、お仕事。

それにしても、こっちをシカトしてダッシュだなんて、いい度胸してんじゃないの。
自分単体は、やられても構わないって事?それとも、もう恐怖なんて感情も無いのかしら。
ふん、いいわよ。そっちがその気なら、やってやろうじゃないの。

目には目を、数には数!時削る魔弾!
知らない誰かが殺そうと、殺し合おうと、あたしとしては知ったこっちゃないんだけど。
あんたたちのやり方は、見ててムカつくのよ!
あたしがあんたたちを倒す理由なんて、それで十分!
動く死体に手加減なんてしないわ!蜂の巣になりなさい!



●時の魔弾
「もー、派手にやったわねぇ。こうなるって知ってたら、あたし外で止まるの待ってたんだけど」
 わざわざ座席にめり込んだ甲斐がない。とでも言いたげに肩を竦めると、ポケッティ・パフカニアン(宝石喰い・f00314)は七号車内部の敵を殲滅し終え、外に目を向けた。
 大量の信徒が列車の右側面を侵攻する。左は――まばらだ。おそらく先の車両で他の猟兵が食い止めているのだろう。
「さぁ、お仕事、お仕事」
 自分がリクライニング機能を破壊したと言ってもいい椅子をスルーして、ポケッティは車両後方、デッキドアから外に飛び出した。
「こっちをシカトしてダッシュだなんて、いい度胸してんじゃないの。自分単体は、やられても構わないって事?それとも、もう恐怖なんて感情も無いのかしら」
 ポケッティは飛翔。高速で駆ける信徒らのグループと並び飛びながら、詠唱一つ。
「ふん、いいわよ。そっちがその気なら、やってやろうじゃないの――目には目を、数には数を! 時削る魔弾!」
 羽ばたくポケッティを中心に、複数の魔力弾が生成される。それは正確に言えば、弾丸ではない。空間の歪みだ。時空異相を半歩ずらし、着弾位置を別の時空に送り込む――結果として、着弾箇所に存在する事物はその存在を削られる。これぞパラドックス・バレット――『時削る魔弾』である!
 魔弾が連続で放たれ、黄昏の信徒らの脚を、腕を、防御などお構いなしに削り倒す。幾体もがその第一射のみで倒れた。数グループが足を止め、反撃に転じてくる。
「知らない誰かが殺そうと、殺し合おうと、あたしとしては知ったこっちゃないんだけどね――あんたたちのやり方は、見ててムカつくのよ!」
 人を殺し、死骸を兵隊として使い、更に殺す。あまつさえ、動く棺桶と化した電車を暴走させ駅に突っ込ませるなどと。ポケッティは決して正義の妖精ではないが、その悪行を許さないほどには義憤を持ち合わせている。
「あたしがあんたたちを倒す理由なんて、それで十分! 動く死体に手加減なんてしないわ!蜂の巣になりなさい!」
 打ち掛かろうとする信徒を連射により片付けつつ、ポケッティは即座に再詠唱。羽ばたいて距離を取りつつ、十数体の信徒を単独で相手取る!

成功 🔵​🔵​🔴​

リゥ・ズゥ

敵の数、多い。
つまり、リゥ・ズゥの餌、大量、だ。
邪魔するやつ、全て、喰らう。
イノチと血を、蓄え、群れのボスを、潰す。
行くぞ。お前達の、カミは、悪魔より、恐ろしい、か?
(先頭車両を目指し、立ちはだかる信徒を倒して進みます。
「衝撃波」で自身を発射する「ダッシュ」や「ジャンプ」で縦横無尽に駆け抜け高速移動へ対応、
障害物や攻撃を「見切り」「早業」で状況に応じ身体を変形させ
躱しながら敵に接近、「捨て身の一撃」「2回攻撃」「カタチの無い怪物」で捕食します。
攻撃を受けても「カウンター」で反撃しつつ生命力を奪い回復して突き進み、生きてる乗客が信徒化していた場合は、可能な限り車外へ放り投げ外の仲間へ任せます)


ティオレンシア・シーディア

成程、雑兵で圧殺ねぇ。
定石通りで読みやすくて有難いわね、ホント。
…数だけ揃えても無駄だってこと、教えてあげる。

車内組で参戦よ。
〇先制攻撃の●鏖殺を〇鎧無視攻撃で撃ち込むわね。
もう電車は止まったし、床が抜けても壁が吹っ飛んでも問題ないもの。〇スナイパーで誤射にだけ気をつけて撃ちまくるわ。
余裕があれば〇援護射撃も飛ばすわね。
この電車のスペックなんて知らないけど、横幅40m以上なんてある訳ないし。中央ラインにいれば十分全域射程範囲よね。
手近なのを潰したら〇ダッシュで先頭車両に向かって同じ作業を繰り返すわね。

アンタ達は先に寝てなさい。…ちゃんと落とし前はつけたげるから。
(半マジギレモード継続中)



●デビルズ・アサルト
 五号車を制圧した猟兵らの内、先駆けた者が二名。
 デッキを抜け、鉢合わせた敵をリゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)が繰り出した拳が粉砕する。死体を掴み、それを盾に前進。そのまま四号車に突っ込む。
「邪魔するやつ、全て、喰らう」
 自身の足下に衝撃波を発し、反作用に依りリゥ・ズゥは加速しながら四号車に突入した。
 信徒を更に数名薙ぎ倒したのち、リゥ・ズゥは頭部を変形。誰も見たことのないような怪物の顎を形作り、既に事切れている死骸を、頭から喰らう。リゥの刻印に血液が満ちる。
 同時にブラッド・ガイストを発動。鮮血が棘のようにしゅるる、とリゥ・ズゥの両拳を巻く。
「行くぞ。お前達の、カミは、悪魔より、恐ろしい、か?」
 豪腕は、しかしてしなやかでもある。リゥ・ズゥの拳は鞭のように撓り黄昏の信徒に叩きつけられる。上から当たれば首が潰れ、頭が胴体に沈む。横から当たれば首が二回転、ねじ切れる手前だ。暴力を形にしたかのようなリゥ・ズゥの戦いぶりを前に、しかしてティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は穏やかな物腰を崩さない。
「成程、雑兵で圧殺ねぇ。定石通りで読みやすくて有難いわね、ホント。……数だけ揃えても無駄だってこと、教えてあげる」
 ティオレンシアは柔和な笑みを浮かべる。しかしてその瞳には鋭い殺意の光が宿る。彼女は座席と座席の間で、左右に目を走らせる。生贄特急の車体内幅はおよそ二.五メートル。一両当たりの車両全長は二〇メートルほどだ。案内板によればそれが十五両。室内で援護及びガンファイトをする分には、射程がネックになることはあり得ないだろう。
 列車は止まった。最早、床が抜けようが壁が吹っ飛ぼうがなんの問題もない。
 リゥ・ズゥに当たらないコースを常に脳裏に描きながら、ティオレンシアはリボルバー――『オブシディアン』を抜く。息を吸うなり、一息に六連射。
 煽り撃ち――ファニングと呼ばれる連射法だ。トリガーを引いたままハンマーを掌で叩くことでシリンダーを回転、次弾を激発する、シングルアクションリボルバーに特有の連射法。
 ティオレンシアのそれはズバ抜けて速い。瞬き一つの間に六発が激発、即座に再装填、更に六発――
 そのリロードは殆ど魔法だ。六発撃てば再装填に時間を要するのがリボルバーの常であるはずなのに、ティオレンシアの連射は間断なく続く。しかも一発一発が精密に放たれている。一弾一殺の鮮やかさだ。
 敵もそれを理解したのか、リゥ・ズゥの巨体の影に隠れつつ戦闘する動きが出始める。いくつもリゥ・ズゥ目掛けモーニングスターが叩きつけられる。ガードを固めたリゥ・ズゥの身体が幾度も打たれ、仰け反る。
「小賢しいのよ!」
 ティオレンシアは即座に狙いを改めた。左右の壁、張り棚。金属部品。その角度、傾斜、堅牢性。一瞬で計算すると、彼女はオブシディアンを見当違いに見える方向に乱射する。――電車のそこかしこで火花が咲く!
 直後、リゥ・ズゥの影に隠れていた数名が頭や胸から噴血し、もんどり打って倒れ込む。
「射線が通ってないとでも思ったの? アンタ達は先に寝てなさい。……ちゃんと落とし前はつけたげるから」
 底冷えのする声でティオレンシアが言う。同時に、リゥ・ズゥは仰け反った勢いをそのままバネに換え、頭突きで最も近い敵を粉砕した。死骸をまたも捕食し、自身の傷を癒す。
「お前達の血と、イノチを、よこせ。リゥ・ズゥはお前達を、お前達の群れのボスを、潰す」
 最早、この場に生きた人間などいはしまい。初めから五号車までに生存者はいなかった。であるならば、なんの遠慮もいらない。全てを喰らい、全てを撃ち、屍山血河を踏み越えて、ただ進むのみだ。
 ガンスピン。ティオレンシアがオブシディアンを構え直す。リゥ・ズゥが拳をガツンとぶつけ合わせる。
 二者は、更に車内奥より寄せる敵目掛け前進する!

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイブル・クライツァ

止まったわね、列車。でもまだ終わりじゃない。これからよ
最悪の次の『悪』を振り払わないといけないわね

獲物はあくまでも無力な一般人とは、本当に卑劣極まりないわ。
鬼ごっこの鬼になってあげるから、此処で散りなさいな
…羨ましくて道連れにしようとしているようにも見えて、歯痒い思いが募るのだけれども
その身に罪を重ねさせたくないから、止めるわ。
巫覡載霊の舞を少しでも速く沢山を葬れるようにと、祓う。
――行かせない。貴方達を救えなかったからこそ、負の連鎖を起こさせる訳にはいかないのよ。
敵と他猟兵との間で、通り抜け出来そうなスペースが発生する様なら
埋める立ち位置になるよう移動
間に合わない際、邪魔な位置へ武器で阻害



●迷える死者に手向けの刃を
「……止まったわね」
 レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)は車内、七号車で嘆息する。停止の瞬間の衝撃はなかなか強かったが、その前から減速する兆候はあったし、備えることは難しくなかった。
 レイブルは車体の左右を見る。右ではトルメンタがブースターを噴かして駆けながら高速での格闘戦を繰り広げている。左は今も数体が疎らに侵攻しており、何者かが後方から銃を撃ってそれを迎撃するという構図だ。
 そして――車両前方。自動ドアが開き、またもぞろぞろと数名の信徒が現れる。
「……乗り込むためとはいえ、そこかしこに穴を開けたのはよくなかったかも知れないわね」
 外を制圧する射手がいる場合、弾丸を避けるためにこうして次から次へと、車内を通る敵が増える。
 レイブルは肩を竦めてから、薙刀『白黒』を八相に構えた。
 ――しかし、猟兵を無視し後方車両に固まっている一般人を狙うとは。おそらくは敵の指揮者の案であろうが、卑劣極まりない。透徹とした美貌に、あからさまな嫌悪の色が浮く。
「鬼ごっこの鬼になってあげるから、此処で散りなさいな。――生者が羨ましくて道連れにしようとしているようにも見えて、歯痒い思いもあるけれど――ごめんなさいね。その身に罪を重ねさせたくないから、止めるわ」
 もう、そこで動いているのは、邪悪なる意思が腐肉を纏っているだけのもの。生きていた頃にはあったはずの善性も、なにも、残っていはしない。
 ならばこそ。ここで止めなくてはならない。
 レイブルは『巫覡載霊の舞』を使用。『神霊体』へと化し、狭い車内で薙刀を振るう。
 電瞬の早業。彼女の周囲の席が、旋回一閃! 切り払われて吹き飛ぶ。自身の周りはそうしてスペースを作り、前進してくる敵の動きは制限したままで、レイブルは遠距離より突きを放つ。突き出された薙刀の切っ先から衝撃波が放たれた。その様は、まるで突きが伸びたようですらある。
 先頭の信徒が顔を砕かれもんどり打って倒れ込む。数体が座席を越えながら襲い来るのを、今度は斬撃二連、上下に分かち一蹴。
「――行かせない。貴方達を救えなかったからこそ、負の連鎖を起こさせる訳にはいかないのよ」
 レイブルは金の眼光を煌めかせ、次の敵に向け薙刀の切っ先を構え直した。

成功 🔵​🔵​🔴​

リネット・ルゥセーブル

車内に居る敵への対応に集中しよう。車外は任せた。
猟兵の戦線に合わせて、1車両ずつ、【罠使い】【ロープワーク】で呪いの糸を張り、ワイヤートラップ地帯を展開。
最優先で窓ガラスをカバーすることで、車外脱出を図る敵の行動を抑止。
また、ジョイント部は特に密度を濃くすることで、捕縛済みの敵で詰まる事を期待する。

罠を張る手が落ち着いたら、戦線維持の【支援射撃】として、『謂れなき呪詛返し』の【呪詛】弾で攻撃を仕掛ける。
戦線崩壊が近い場合は、周囲の猟兵と声掛けをしつつ、一両単位で戦線下げとワイヤートラップ地帯の展開を進める。

これを止められなければ、この世界に呪いが溢れる。
何をしようと、止めてみせる。


水沢・北斗

於、八号舎
外は多数相手に暴れるのが得意そうな人に任せて一般の人を守りにいきましょう。
後方車両まで一般人がいるようなら保護しつつ遅滞戦闘に努める方向で!

SPD!
<残弾37>
大振りな弓と銃は車内だと使いにくいしアストラを射ち込んでいきましょう。
侵入で3本使い捨てたままだから残り37、無駄には出来ません。
スナイパー、誘導弾、属性攻撃(火)、投擲、零距離射撃で出来るだけ少ない本数で信徒の頭を射ち抜いていく方向。
他の猟兵と合流できるようであれば援護射撃に切り替えて弾を節約

*最悪弾切れになったらその辺にある尖った物とか矢筒から出した矢を直接打ち出します。
『何でもいいんですよ、飛ばせるモノなら』



●トラップ・アンド・スティンガー
 リネット・ルゥセーブル(黒ずきん・f10055)は状況を俯瞰する。
 状況をおさらいしよう。現状、生贄特急は停車状態。先頭車両から敵オブリビオン『黄昏の信徒』が大量発生。
 彼らは車内外を問わず後方車両に向け侵攻、その進路にいる猟兵との先頭もそこそこに、後方十一~十五号車に避難した乗客の命を狙っている。
 車内外を問わず侵攻はしてくるものの、猟兵達もまた技を尽くして車外の敵を迎撃する。両サイドを、ノノや匡、ポケッティやトルメンタが遊撃している。彼らの攻撃力はやはり、敵にとっても脅威だろう。攻撃を受けた者は皆、列車の中に逃げ込み、そこからの侵攻をする傾向があるとリネットは分析する。
 ……つまり。
 車内を、奴らが通れない状態にすればいい。そうすることで敵の侵攻スピードは明確に下がるはずだ。
 車両の天井から戦闘中の猟兵らの位置を一通り確認したリネットは、八号車に於いて行動を開始する。
 
「で、その結果がこれですか」
 居合わせた猟兵――水沢・北斗(ヤドリガミのアーチャー・f05072)は車内の様子を見る。一瞬では何が起きているか解るまい。目を凝らせばわかる。北斗はキュッと目を細めて、目に情景を焼き付けているかのようだ。
「ああ。後ろ九号車では別の猟兵が格闘戦中だった。前方七号車も同じさ。八号車前方連結部は天井にまるで銃弾で切り取られたような大穴がある上に、両ドアが破壊されていた。ここがこの近辺で一番、敵が入り込みやすい環境になっている……どうした?」
「なんでもないです」
 北斗が目を逸らして口笛を吹き出したので訝しげに問うリネット。それよりも、と混ぜ返す北斗。
「私達はここで遅滞戦闘を展開、敵の侵入を継続的に防ぐって感じで問題ありませんよね」
「それでいい。私も戦えないわけではないけど、もう一人いてくれるのは正直なところ、助かる。この環境を維持しなければならないから」
「任せて下さい。少なくとも三十七体までは保証しますよ」
 残弾数が一瞬でわかるナイフホルダーを持ち上げて見せながら、北斗は軽く笑う。
「頼らせてもらう。……さて、早速来たか」
 リネットは八号車前方に黄昏の信徒の姿を認めた。彼らは高速移動で外から突っ込んできたようだ。猟兵らの攻撃を浴びた者もいるのだろう。ボロボロになっていたが、それでもまだ動く。今までと同様車両に突っ込もうとして、ギシ、と何かに引っかかって止まった。
「まず一体」
 リネットが冷静にカウント。その隣でホルダーから投げナイフ『アストラ』を引き抜く北斗。魔力を叩き込み、加速。それは投擲と言うより最早発射といった方がよほど似つかわしい。屍蝋の面の中心に、柄まで埋まるほど深く突き刺さる。
「ワイヤー地帯なんて、ホントにやる人がいるとは思いませんでしたよ」
 北斗は感心したように言う。リネットは肩を竦めた。八号車には無数にワイヤー――リネットのユーベルコードである、『自縄自縛の杓子定規』が張り巡らされているのだ。それは一見しただけでは見えないほど細く、強靱であり、触れた対象を呪いと共に縛り、動きを封じる。
 信徒は先頭の一体が絡め取られたまま死んだのを皮切りに、座席の上を、通路を、闇雲に武器を振り回しながら進もうとする。呪いの糸は効率よく敵を絡め取る。そこに、北斗のナイフが鋭利な軌道を描く。
 ユーベルコード『紫電光』。放つ気になれば、彼女はゼロコンマゼロ五秒に一度、投げナイフ『アストラ』を連続投擲できる。フルスピードで連射すれば瞬く間に弾が尽きるので、控えてはいるが。
「一端打ち止め、でしょうかね」
 北斗はナイフを手で弄びながら、ワイヤー地帯で果てた八体の黄昏の信徒を眺める。その肉体がザラザラと端から風化し、消えていく。蜘蛛の巣に捕まった虫がやがて朽ちるのを、早回しで見るかのようだ。
「すぐにまた来るよ。そういう場所を選んだ」
「ナイフ足りるかなあ……ま、最悪矢でもいいか」
「……矢?」
 リネットの怪訝顔に、北斗は笑って、背負った矢筒を見せた。
「何でもいいんですよ、飛ばせるモノなら」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

マグダレナ・ドゥリング

五月蝿いなあ。これが増えるのは気に入らない。
それにまあ、姫様にも頼まれたしね。守ってあげようか。できる限りは。

車内でギリギリの迎撃の方が僕に向いてるかな。一般人に紛れていよう。
これだけ壊れてると生きてるか不安だけどもう一回車内に【ハッキング】するよ。
車内の防犯カメラの映像と同期、これで戦場を俯瞰できれば対応の速度も奇襲への対処も楽になる。
後はエレクトロレギオンの数で車内に侵入した相手に一斉掃射、間に合わなくても諸共狙える。



●クラック・トゥ・システム
 外から響く、けたたましい叫び声。
 最早人間の言語ではない。猿叫と言うにも憚られる、生理的な嫌悪に爪を立てるような声。
「五月蝿いなあ。これが増えるのは気に入らない。それにまあ、姫様にも頼まれたしね。守ってあげようか。できる限りは」
 マグダレナ・ドゥリング(罪科の子・f00183)が講じた策は電脳魔術士らしいものだった。一般人ですし詰めの十三号車、比較的混雑がましな連結部のデッキで、彼女はハッキングを継続する。先程は遠距離からのハッキングだったが、今ならばより近くから、より強くハッキングをかけることが出来る。
「接続は……まだ生きてる。ん、セキュリティがガタガタだ。先客がいたのかな……」
 既に車内のセキュリティ・ロックはその殆どが解除されており、後続が続きやすいように細工されているように見えた。或いはこの車内にもう一人、優秀なハッカーが――データシーフがいたのやも知れぬ。
「助かるね。踏み台に使わせて貰おう」
 その痕跡からは悪意を感じない。マグダレナはハンドヘルドコンピュータを連続打鍵、まだ解除されていないロックがあればそれをスマートに解除し、そのコントロールを捉える。
「……簡単だね。呆気ないくらいだ」
 斯くして、彼女の拡張現実グラスには車内の状況が映し出された。各車の監視カメラをハッキングしたのだ。続けざまに彼女はエレクトロレギオンを起動。小型戦闘マシンが召喚される。ドローンめいて浮くそれに周囲の人間が驚きの声を上げるが、マグダレナは冷静に言葉を発した。
「大丈夫。最善は尽くすから、皆、じっとしてて」
 マグダレナは手近なドアを開け放ち、付近の車両に計七十五体のエレクトロレギオンを配備。その多くはドアのある連結部に向かわせる。万一討ち漏らしがそこに侵入してくれば、即座にエレクトロレギオンによる銃火を浴びせ、撃退する狙いだ。
 状況を俯瞰し、最小の労力で最大の効果を得る事の出来る良策である。
(そうだね……折角の情報だ、共有するのも悪くないかも知れない)
 彼女が見た限り、十四~十五号車の連結部にシャルロットが詰めている他には、民間人のいる車両の連結部を守る猟兵がいない。可能な限り均等にエレクトロレギオンを送ったが、この状況を周りに伝えればより有用なはずだ。
(そうと決まれば――)
 マグダレナはキーを打鍵し、素早く端末を操作。車内スピーカーのコントロールを奪おうとして――
「――これは」
 そこに、先客の姿を見た。
 マグダレナの目に入った文字の羅列。既にスピーカーのコントロールを奪取したデータシーフ。
 ――ハンドルは、Arsene。

成功 🔵​🔵​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【MM】

さーてさて、愉快で素敵なフリークスハントの時間だ。パンピーどもの夢見が悪くなるといけないんでな。騒音の元は駆除させてもらうぜ。
なぁーに、楽な仕事さ。派手に殲滅すんのは主役がやってくれんだろ?
俺ぁ端役だからな、地味な仕事をするまでさ。

十五~十一号車の一般人を守る。仲間の攻撃で漏れて侵入してきたクソ野郎を、透明化するユーベルコードで【暗殺】して回る。【ダッシュ】【早業】【忍び足】も併用する。複数来ても俺のスピードなら…やれるだろ。
蘇生されるといけねーから、死体は手死を潰す。

シーッ。静かに…車内ではマナーモードにしとけよ?
なーに、安心しろよ。世界は決して公平じゃねえが…
――俺の裁きは公平だ


ジン・エラー
【MM】
よォ~~~~~~するに
こっから先、一匹も通すなって話だろォ??
敵も救って隠れてる連中も救う
聖者様は大忙しだぜェ~~~~~~

はいはいはいはァ~~~い
こっから先は通行止めだ
進める道は救いの道だァけだ

泣くなよガキども
【オレの救い】を目に焼き付けな

な?死ぬ気なンざさらさらしねェーだろ



●救いの光と裁きの刃
 ザーッ、ザザッ、ザッ!
『Check, check check... Hey, ya! ゴキゲンかい、猟兵共! さーてさて、愉快なフリークスハントの時間だぜ!』
 五号車から十五号車までの各車両のスピーカーが、一斉に声を紡ぐ。その声はヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)のものだ。彼は直接、その高精度な演算能力によって車両のハッキングを継続していた。その過程で、既に他の猟兵――マグダレナが奪った車内カメラのコントロールに相乗りし、それに加えてスピーカーの操作権すらも掌握。カメラを通じて得た情報を、一挙に車内の猟兵に共有する。
『状況は悪くねぇ、だが油断も出来ねぇ。パンピー共の夢見を悪くさせちゃ二流だぜ、やかましいasshole共は地獄に送り返してやらねぇとな。派手な仕事は主役のお前らに任せる。頼むぜ、bro。俺は端役だからな、影の地味な仕事を請け負った』
 生きてまた会おうぜ。
 ヴィクティムの声は最後にそう響き、スピーカーは今一度沈黙する。

 ぱちん、ぱち、ぱち、ぱちぱち。
 疎らな拍手が、誰もいない十号車に響き渡る。
「ヴィクティム、大~~~~演説じゃねェのォ。ま、状況は大体解ったなァ、よォ~~~~~~するにこっから先、一匹も通すなって話だろォ??」
 ジン・エラー(救いあり・f08098)は十号車の最後方、巨大な棺桶に似た何か――本人はそれを『救済箱』と銘打っている――に凭れ、最後の障害として陣取っている。
「敵も救って隠れてる連中も救う、聖者様は大忙しだぜェ~~~~~~、っと」
 車両前方から、数体の侵入。加えて、左右窓が割られ、敵が入り込んでくる。
 数は多くない。流石に後方に来るまでに、かなりの数が削られている。それでも数体は来るか。
「はいはいはいはァ~~~い、こっから先は通行止めだ。進める道は救いの道だァけだ」
 後方車両でどよめきが起き、押し合いへし合いが始まる。怒号と恐怖と、すすり泣く声と、どうしてこんなと嘆く声と。
 後方車両は避難した人間でもう、埋まっているといっていい。生き残った乗客を、まとめて詰め込んでいる状態だ。
 ああ、子供の泣き声がどこかから聞こえてくる。
 ジンは、耳敏くそれを聞き取ると、救済箱を軽々と持ち上げた。
「泣くなよガキども。【オレの救い】を目に焼き付けな」
 ジン・エラーはその投げっぱなしな言動と、突っ慳貪な態度とは裏腹に、彼は――信じられないことに、全てを救わんとする『聖者』である。後光とすら見える光を放ち、最後のドアを守り立つその姿は、後ろの車両から見れば――
「な? 死ぬ気なンざさらさらしねェーだろ?」
 救いの形、そのものに見えた事だろう。
 襲いかかる敵を、ジンは箱を振り回して殴打。吹き飛んだ敵に構わず、座席と箱の間にもう一体を挟んでそのまま轢殺。救済箱を開き、内側からチェーンつきの拘束具を抜いて、敵一体の首にかけ投げ飛ばす。
 彼の全身を覆う光が、彼から発される光が、その戦闘能力を増大しているかのようだ。
「さァ、次に救われてェヤツは前に出ろォ!」
 マスクの内側で歯を剥いて見せながら傲然と言い放つジンの前に、またも数体の信徒が進み出て――
 首からばしゅ、ぱしゅ、と音を立て、噴血して倒れ伏す。前触れもなく。
「あン……?」
 思わず身構えるジンの前で、空気が揺らぐ。
「シーッ。静かに……車内じゃマナーモードが常識だぜ、asshole共」
 電磁クロークによるステルス状態を解除。ヴン、と空気の揺れる音と共に、揺らぐ空気の中にヴィクティムの姿が現れる。ステルス迷彩により姿を消しての暗殺だ。高いスキルを持つヴィクティムならではのサイレント・キリング。
「なァんだ、お前かよ」
「なんだたァご挨拶だぜ、ジン。全車放送帰りの名DJによ。状況はさっきの通りだ。俺はもう暫くここいらで、隠れながら敵を潰すぜ。ヤバくなったらいつでも呼べよ」
「ッハハァ、いらねェよ! お前こそ、救いが欲しくなったら早めに呼んだ方がいいぜ、オレをよ」
 ヴィクティムとジンは軽く拳を合わせ、また再び己が戦いに戻る。ここが最後の防衛戦であることを、二人とも解っていた。
 データシーフ、Arseneは十号車を駆け抜け、再び姿を消す。
 消える間際に一言だけ。爪先の奏でるリズムに乗せ歌った。

「なーに、安心しろよ。世界は決して公平じゃねえが……――俺の裁きは公平だ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

草間・半蔵
九号車から前に進んで五号車~七号車辺り
関門のように車両に陣取る

たくさん戦って少しだけ自分に気づいた
オレは人より強い
人はオレより弱い
だからオレは人を守る
…閉じ込められたりしたけど
時々優しい人もいるから
だから…

剣を一閃
車体に線を引く
ここから先は、通さない

力をためて、車両いっぱい斬りつけるように大きくなぐ
外から行く敵はきっと他の猟兵が倒すから
オレはこの狭い通路を通さないことだけ考えよう
一回、二回と凪ぎ払い小さなダメージでも確実にダメージを与える
今回は余り避けることは考えない
血が流れるならそれはオレの力だ
数を重ねる毎に【ブレイズフレイム】を激しく燃やして斬って
…倒れるまで相手してやる!

アドリブ歓迎



●ブレイズ・ハート
 五号車前方。ギルバートとリゥ・ズゥが座席を切り離し後方に飛ばしたおかげで、そこだけが小広くなっている。
 外では間断なく爆音が続く。前方車両にリゥ・ズゥとティオレンシアが消えていって暫くが経つ。
 先の車両で響く戦闘音は依然収まらない。だが、どの車両の連結部も敵が通り抜ける可能性があるのであれば、車両の中を守る猟兵は必須だろう。
 そう判断した草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)は、大刀を手に提げただ待っている。
 半蔵は自分の掌に目を落とす。
(たくさん、たくさん戦って、少しだけ自分に気づいた。――オレは人より強い。人は、オレより弱い)
 驕りでも何でもない事実の認識。そして、強い力を持つが故に――それには、責任がつきまとう。
(だからオレは人を守る。……閉じ込められたり、自由を奪われたり……いいように使われたりもした。でも)
 半蔵は目を閉じる。サムライエンパイアで村を救ったとき、気のいい村人に囲まれて、食べた団子のあの甘さを。
 温かい食事と、人々の笑顔を。
(――時々は、優しい人だっている。だから……)
 
 がん! がん、がん、がつんッ!!
 鉄扉の倒れる音がする。同時に、ひたりひたりと足音。
 数体の信徒が、連結部のドアをこじ開けて入ってきたのだ。対処できるのは半蔵しかいない。
 ――半蔵は経験を積み、村を救ったあの頃よりもずっと強くなった。震えも、怯えもしない。
 半蔵は大刀を振るい、足下に一本の線を刻む。ぎゃりいいっ、と音を立てて刻まれるライン。
(だから)
 それは、半蔵の決意の証だ。

「ここから先は、通さない」

 半蔵は小柄な体躯をその強靱な体幹と撥条で加速して接近。刀を遠心力を付けて振るい、武器を持つ手を断つ。薙ぎ払うような蹴り、身体を折った先頭の一体、その顔面に膝を叩き込んで沈める。ぶん、と刀を取り回して今度は小刻みに一刀、二刀!
 連続で攻撃を放ち、敵に反撃の糸口を掴ませない。瞬く間に二体が刀の錆となり、床に倒れて塵と化す。
「ギイイイイイイイイッ!」
「!」
 心を掻き毟るような絶叫を間近で発され、半蔵は一瞬踏鞴を踏む。叩きつけられるモーニングスターを刀で受けるが、左右から更に二体が半蔵を打ち据える。棘が半蔵の身体を裂き、激痛が彼を苛む。
 しかし。その瞳から熱が、光が失せることはない。
「……見せてやる。オレの炎!」
 流れ出る血液が熾炎に燃える! 煉獄の魔人が如く炎を纏い、半蔵は刀を更に一転、一挙に三体を切り払い、燃やし尽くす!

「倒れるまで相手してやる。さあ、来い……!」

 車両前方に新手。半蔵は炎を熱く燃やし、次なる敵を迎え撃つ!

成功 🔵​🔵​🔴​

ユハナ・ハルヴァリ


窓の外を流れるように、緋色が蠢く
それは、だめ
だめだよ
やらせない。

なるべく多くの信徒を範囲に定め、貴石の花弁で貫く
足止めでも何でもいい
それから状況の把握を
車外に出る猟兵が多ければ車内で信徒を止め
逆ならば手近な穴や窓から外へ
やる事はどちらでも同じ
倒して、倒して、たおして
守るだけ

長杖も、貴石の花も、短刀も
使えるものは全部使うよ
此方に目を向けてくれると、いいんだけど
周りの人を巻き込まないようにだけ注意して
敵の真ん中へ切り込んで崩す

声がする。
歌が聞こえる。
ほんとうは、わかる。
知らないけど、わかる。
これが、生きて『いた』人間だってこと。
ごめんね。
もういちど、殺します。


ルイーネ・フェアドラク

既にこれほどの被害が出ていたということですか
随分と胸糞の悪い手を使ってくれる
本当に、邪神を奉ずる奴らはどうしようもない

とはいえ、ちょっと数が多すぎやしませんか!?

一般人の護衛に向かいます
狭い車内での混戦、守り切るのがどれほど困難か考えずともわかる
命を懸ける気はないし、捨てる気もない
ただ、見過ごすことも、できないんですよね
困った性分ですよ

混み合う車内での戦いには不向きなので、まずは車両の上か外へ
おいでなさい、醜悪なる我が臓腑の子
斃すことも無論重要ですが
斃しきるより、まず薙ぎ払い蹴散らすことを念頭に

今日は少々、過剰労働ですね
手当てでも出るといいんですが……無理でしょうねえ



●雪花に狐、添い
 生贄特急、六号車。
 窓の外を、次々と――斜陽を浴びて緋色の影が走る。後ろの車両へ向けて。それを見てか、割れた窓からまた二人の猟兵が車両を飛び出した。
 的確な状況判断だ。前方五号車では既に半蔵が戦闘中。ヴィクティムのアナウンスに依れば、今足りないのは後方車両の連結部の防御。後方を目指すには、あまりに遠い。
 現在地で取れる最善の行動は、敵をここで一体でも多く仕留めること。群れが後方に至ればまた多くの人が死ぬ。
 少年――ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)は、絶対にそれを許せない。
「それは、だめ。だめだよ――やらせない」
 手にした長杖を一撫で。彼の手が触れた部分から、杖は無数の貴石の花弁へと分解される。ユハナを中心とした衛星軌道に舞い上がる、風切り音を立て吹き荒れた。ユーベルコード、『星花弁』である。
 ユハナらが飛び出した六号車前部右側は、丁度トルメンタが敵の遊撃を行うやや前方。トルメンタが如何に神速を誇ろうと、一人では到底敵の群を止めきれない。増援に向かったのは合理的な判断だ。
 ユハナは唇を結ぶと、走り抜けていく敵に向け貴石の花弁の嵐を叩きつける。鋭い切っ先が範囲内の信徒をズタズタに引き裂き、塵へ変えた。一グループを葬った。
 しかし――それがあと何グループ来る?
 ユハナの射程距離は、彼を中心とした十九メートル。それはこの広大な戦場からすれば、あまりに小さな円だった。しかし、それでもユハナは動くことをやめようとはしない。
 足止めでも、何でもいい。やることはたった一つのシンプルなオーダー。倒して、倒して、たおして、護るだけ。
 その横を固めるのはルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)。彼は、平素からこれと思うと無茶をするユハナを守り助ける保護者だ。
「ユハナ、突っ込みすぎないで下さい。――少しばかり数が多すぎる!」
 逸る気のままに走るユハナを窘めるように言う。極めて困難な闘いだ。これ以上の損害を防ぐのも、分の悪い賭け。この戦い一つに命を懸ける気も捨てる気もない。しかし、
「でも、後ろに向かわせるわけにはいかない。真ん中に切り込んで、崩す」
 真っ直ぐに視線を返してくるこの少年には、結局かなわない。
 ――それに、ルイーネとて解らないことはないのだ。ユハナがいなかったとて――きっと自分は、何らかの形で危険を冒し、一般人を助けるために動いたことだろう。
(困った性分だ)
 それにしたって、敵のど真ん中に突っ込むまではしなかっただろうが。
「無茶を言いますね、君は……まぁ、今日ばかりは大目に見ましょう」
 今日は隣に自分がいる。それならば傷ついた身体を、一人で引きずって歩かせたりはしない。
「既にこれほどの犠牲者を出しながら、列車を襲い、なおも殺そうとするか。随分と胸糞の悪い手を使ってくれる。邪神を奉ずるやつらは、これだから本当にどうしようもない」
 悪態を零す。ルイーネは、ユハナが纏う星花弁の嵐のその内側で、ユハナと併走。
 ユハナの攻撃範囲は敵の規模からすれば僅少だが、それを自分が援護すればより多くの敵を倒せるだろう。
「おいでなさい、醜悪なる我が臓腑の子――ユハナ。私が動きを止めます」
 頷きを返すユハナの横で、ルイーネはユーベルコード『醜悪なる漆黒の契約者』を起動。刻印に満たされた血液を食い、ぞるり、と蠢く触手を召喚する。
 触手を同時に複数操り伸ばし、敵の脚を払い、絡め取り、喰らい、転倒させることで動きを封じた。
 ああ――倒れた敵がぎいぎいと喚く。邪神の寵愛による耳障りな歌声、そしてそれを狂気と共に彩る甲高い悲鳴。
 歌が聞こえる。
 ユハナは、心の温度を零下に下げる。――わかっている。これが、生きて『いた』人間だということを。
「ごめんね。もういちど、殺します」
 放たれた石花の暴風が、倒れた信徒を再殺する。死骸はすぐに塵と化し、風に乗り、空へ舞った。
 敵が避けて通るならば位置を変え、同様の迎撃を。全てを迎え撃つことは出来ないが、一体でも多くと。二人は走り続ける。

「……今日は少々過剰労働ですね。手当てでも出るといいんですが……無理でしょうねえ」
「手当て?」
「心を癒す糧のことですよ」
 不思議そうに問い返すユハナに、余談ですよ、とルイーネは答えたものだ。
 ああ、この戦闘が終わったらきっとこの電車の後始末も待っている。きっと現場職から相談されるのだ。
 考えると憂鬱になるので、ルイーネはすぐに思考を放棄した。ユハナと共に敵へ、駆ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎹・たから
◎【団地】
使徒にさせられた人々の痛ましい姿
けれどたからは泣きません
これ以上、誰も死なせません
たから達はその為に来たのですから

キャリウォルトが人々を守護する間に
ユキと共に迫る敵を蹴散らします

【ダッシュ】で敵影に突撃
【2回攻撃、先制攻撃、念動力、範囲攻撃】で範囲を広げた終雪で攻撃
【衝撃波、気絶攻撃】で車体に群がる数を減らします

ユキや人々に攻撃が及べば【オーラ防御、かばう】で支え
常に状況をよく観察
猟兵の守りが薄い場所があれば意識して其方に向かう敵を優先的に排除

猟兵同士の連携重視
互いに補い合うことで確実に敵を減らしていきます


ユキ・パンザマスト
◎【団地】【SPD】
一旦、彼岸に渡っちまった物は此岸にゃ戻れねえ。
思うところはそりゃ有りますし、はらわたも煮えますが、今は奴らを屠って喰らって在るべき亡骸に還してやるだけですね。
キャリさん、頼んます! たから、行きましょう!

早業と先制攻撃による百舌の射出、刻印から伸びた枝や葉で早贄のように手足を串刺して縫い止めだ! 
上手く行きゃあ、マヒしたかの如く動きも鈍くなるでしょう!
続いて、庇ってくれる仲間がいる事を織り込んだ捨て身の一撃、骨異形と化した右手の刻印で、動きの鈍った連中に生命力吸収となぎ払いを! 
あとは後部へ向かおうとする敵を野生の勘で可能な限り察知、枝や根の追跡で追尾の一撃を放ちますかね。


キャリウォルト・グローバー
◎【団地】

死体を化物にするとはこの外道めが…
…いかんな、某がここで暴れた所で何の解決にもならぬ。
打破すべき相手がいるのならば、某はここで冷静にならねばいかんのだ。
怒りで濁った目では誰も救けられないからな。

【POW】
攻撃は他の二人に任せる!
某は後方車両にいる者たちを救助させてもらう!!!
『桜花不散、我不動也(オウカハチラズワレハフドウナリ)』!!
さぁ!早く某の中へ!!!
案ずるな…!この中にいる者たちは某の命をかけて守り抜いてみせるぞ…!
それに、お主らを守ろうとしているのは某だけではないからな…!



●不落の要塞
 ――信徒らは、最早奇声しか発さぬ。
 人としての言葉など、発せるわけもない。彼らは最早邪神の悍ましき呪力により動く腐肉の塊に過ぎない。
 その姿は痛ましい。呪うような、喉を引き裂くような叫び。それを嘲笑うように彼らに纏わり付く、邪神礼賛の歌。
 三人の猟兵が、全力で後方車両へ走る。ユハナ、ルイーネ、トルメンタが敵の脚を一部だけでも送らせている間に後方に行き、車両の防御を盤石にしようという策だ。
「死体を化物にするとはこの外道どもめが……!」
 義憤に震えるはキャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)。今にも襲いかからんばかりの怒気が言葉には溢れている。しかし――ここで暴れたところで、敵を多少減らせるのみ。彼女は自身の活かし方を心得ているからこそ、冷静を保ち後方車両へ駆け続ける。怒りで濁った目では、誰を助けることも出来はしない。
 彼女と併走する鎹・たから(雪氣硝・f01148)もまた、その顔を苦しげに歪めている。こんな、こんな惨い話があろうものか。人としての生を奪われ、信徒へと変えられた人々の痛ましい姿を見つめる彼女は、今この瞬間も痛みに苛まれるような顔をしている。
「――泣きません。たからは、泣きません。これ以上、誰も死なせません。たから達は、その為に来たのですから」
「ええ。一旦、彼岸に渡っちまった物は此岸にゃ戻れねえ」
 動く骸へ何かを手向ければ、また人として黄泉路から戻れるか。悲しみ悼めば人は蘇るのか。
 否だ。ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)はそれを知っている。
「思うところはそりゃ有りますし、はらわたも煮えますが、今は奴らを屠って喰らって在るべき亡骸に還してやるだけですね。――キャリさん、守りは頼んます! たから、行きましょう!」
「はい」
「承知!」
 キャリウォルトは更に後方車両へ向けてスピードを上げる。たからとユキは九号車横を駆けながら、横を走る敵数体に目掛け一気呵成と襲いかかった。

 まず踏み込んだのはたからだ。手近な敵は連珠を巻いた拳により殴り飛ばし、同時に『終雪』を発動。
「凍えなさい、ほろびなさい!」
 手を差し向けると同時に天より無数の氷雪が怒濤と降り注ぐ。空から落ちる雪塊と霰はたからの念動力により軌道を制御され、まるで氷の神がその御手を地上に伸ばしたが如く、数グループの敵を打ち据えて倒し、或いは動きを止める。
 たからは攻撃範囲を調整し、より効率よく敵の数を減らせるように狙いを付けた。分散する分、終雪の威力は落ちるが、それを発動回数と的確なコントロールで補い、敵を行動不能にする程度の殺傷力を保つ。
 氷嵐が吹き荒れたあとを稲妻の如く駆け抜け、討ち漏らしを狩るのがユキの役目である。
「誰ソ彼に迷いましたか。――残念、もうあんたらには選べない」
 なればこそ、迷わず逝かせるが唯一出来ること。
 ユキは刻印から伸ばした『百舌』の切っ先を鞭めいて撓らせ、未だ動く凍えた信徒らの首を払い、突き刺し、早贄として葬る。未だ凍えず襲いかかってくる者は手足を狙って串刺しにし、即座に距離を詰める。
 骨異形と化した右の腕で食い千切り、己の生気へと転換。百舌による広範囲攻撃、近づけば異形の右腕が牙を剥く。捨て身に等しいユキの無鉄砲なまでの攻勢。しかし、それは単なる無茶ではない。
「ユキ!」
「――っと!」
 ユキの死角から二体の信徒が迫り、勢いのままに鉄球を振り下ろす。
 手に氣を籠め、たからがすんでの所でカバーリング。淡く燐光を発する手が、あろうことか棘鉄球の棘の一本を掴み、辛うじて受け止める。それも、二個同時に。それも備えがあってのことである。たからの視点は俯瞰的だ。
 敵一体一体を連続的に処理するユキと、彼女の隙を補い、次の相手の膳立てをしつつ、同時に盾役を担うたから。極めて良好なコンビネーションと言える。
「はあっ!」
 たからは鉄球同士を叩き合わせ砕く。その破片が地面に注ぐ前に、ユキが二体の信徒の顔面を右手により「食い千切っ」た。
「助かりました!」
「構いません。――また、『降らせ』ます。いいですか?」
「合点!」
 列車の中の再現。ただ今度は敵の規模が違う。
 数十体の敵に囲まれながら、たからとユキは背中合わせで共闘を再演する!

 後方車両に走るキャリウォルトは、大刀を鞘から払い、進路上のティアーの戦闘を駆けながら助力し、駆け抜ける。 僅か一拍。敵の数にして二体ほど。
「某は後方車両を護る! 今暫く辛抱を!」
 涙の支配者は応じて構えを改める。それを横目に、頷きを返してキャリウォルトは走る。
 目指すはもっとも手薄となっている十三~十四号車の連結部。そこに今まさに取り付きつつあった信徒を、彼女は一刀両断。振り上げた刀はまるで絹を裂くかのように敵を真っ二つに斬る。
「このドアを開けて貰えぬか!」
 車内のコントロールが既に猟兵に依って掌握されていることは知っている。キャリウォルトがかけた声に、応答するようにドアが開いた。中にいたエレクトロギオン――マグダレナが放ったものだ――が、キャリウォルトの姿を認め道を空ける。
「忝い!」
 キャリウォルトはそのまま車内に滑り込む。十三号車に車内に響く大音声で言った。
「皆、案ずるな! 某が護る、車両を出て某の中に来るがよい!」
 声をかけると同時に、キャリウォルトは連結部右ドアから降車。即座に、
「――『桜花不散、我不動也』!」
 桜花は散らず、我は不動なり――唱える言葉と同時に、キャリウォルトの身体はシェルターと化す。形状を組み替え、仲間を大量に迎え入れることの出来るシェルターモード。この形態となった彼女は、鉄壁の防御力を誇る。
 シェルターとなったキャリウォルトは十三~十四号車連結部の右側をぴったりと塞ぎ、列車の脆弱性を補強する砦になると同時に、一部の一般人を収容、その安全を確保する役割を負う。
(これが今の某に出来る最大の策……二人とも、どうか無事で)
 車内アナウンス。軽妙な男の声が、一般人の避難を促す。徐々に自分の中に避難してくる人々の呼吸を感じながら、キャリウォルトはより堅固にあれと、その身に力を込めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セリオス・アリス
アドリブ歓迎
助けられなくて悪かったな
同じになってはやれねえけど
代わりに救い(終わり)はくれてやるよ―…!

【青星の盟約】を歌い攻撃力をあげながら
風の魔力を靴に集め勢いをつけて敵のど真ん中に飛び込む
着地と同時に剣を斜めに跳ねあげ炎の属性攻撃で一回
勢いを利用して回転するように捻りを加えてもう一回斬りつけもう一回
身を屈め敵の攻撃を見切り
続けざまにバク転の要領で魔力を込めた蹴りをぶっぱなしカウンターを狙う
敵の攻撃は第六感をフルで働かせながらなるべくギリギリで見切り避けてえな
敵だらけの中で戦えば
何発かは敵同士で打ち合いしてくれるだろ
その隙を逃さず斬撃を叩き込む!!

安らかに…とはいかねえだろうが
静かに眠れ



●黒歌鳥と願い星
 見渡す限り、敵、敵、敵。
 奮戦する猟兵らの姿はそこら中に見受けられる。セリオス・アリス(ダンピールのシンフォニア・f09573)もまた、そうして一体でも多く信徒を倒そうと遊撃を行う猟兵の一人だ。
 十数体からなる敵が駆け来るのを前に、彼は小さく独り言ちる。
「助けられなくて悪かったな。同じになってはやれねえけど……代わりに救いはくれてやるよ――!」
 救いという名の、終わりだ。あのとき、誰ソ彼ビルで目にした信徒らと、目の前の彼らは同じ。救うには終わらせるしかない。
 痛ましい。悲しい。この凶行に走った敵を許せない。
 嘆きと憤懣を、けれども今は心に押し込めて――黒歌鳥は謳う。
「星に願い、鳥は囀ずる。いと輝ける星よ、その輝きを我が元に――さあ歌声に応えろ、力を貸せ!」
『根源』の魔力を身に宿し、セリオスは純白の西洋剣――『青星』を抜剣。風の魔力を靴に集め、自身の身体の撥条と合わせて敵のど真ん中に飛び込んだ。
 着地と同時に、彼の剣は紅蓮の炎に覆われる。炎の魔術を剣に宿したのだ。真っ赤に燃える剣を斜めに跳ねあげる。袈裟切り上げにより一体を切り払う。致命傷。踊るようにターン、斬撃の勢いを殺すまま次の一体を袈裟斬り下ろしで両断する。
 左右から振るわれる反撃のモーニングスターを、ブリッジめいて身体を反らして回避。そのまま空いた左手で地面を突き放しバック転――その流れで、変則サマーソルトめいて、蹴り上げを敵手の顎に叩き込む。
 まるで、敵の攻撃を完全に見切り、その動きも含めて意のままに操っているかのような――ともすれば、初めから仕組まれた演舞にさえ思える。セリオスの全ての回避行動は次の攻撃に直結し、決して打撃を受けることはない。
 敵の間に隙を晒しながら信徒二体の間に踏み込んだかと思えば、次の瞬間には足下で風を爆ぜさせ振るわれる鉄球を躱す。結果、敵は己が武器で傷つけ合いよろめく。その隙を食い破る青星の一閃。紅蓮を纏う剣閃が不浄の衣を、腐肉を裂き、二体の信徒をまた塵へと帰す。
「――安らかに……とはいかねえだろうが、静かに眠れ」
 セリオスは舞うように優雅なその戦いを、静かな言葉で閉じる。気がつけば彼の周りにいた敵は、残らず塵となっていた。
 感傷に浸りそうになるのを抑え、セリオスは決然と周囲を見渡す。次の敵を断ちに行かねば。
 今この瞬間は――一体でも、より多く!

成功 🔵​🔵​🔴​

花剣・耀子
随分と派手にやらかしてくれたじゃない。
元の素材がなんであっても。
ヒトの範疇を外れたなら、お前たちはあたしの敵よ。

一般人の守護を優先。
あたしは後方車両に向かうわ。
守るなんて柄ではないけれど、――要は全部斬り果たせば終わるのよ。
鏖殺するわ。

視認できる限り、刃が届く限りの敵を対象に【《花剣》】を使用。
薙ぎ払いながら先に進みましょう。

後方車両に辿り着いたら防衛戦ね。
殺した敵を再度動かされては溜まらないので、ちゃんと砕いていくわ。
あたしも首を落とされない限り動くわよ。お生憎様。

この後にUDCから回ってくる隠蔽工作作業を思うとあたまがいたい。考えないようにするわね。
精々先行的な憂さ晴らしに斬られて頂戴。


水衛・巽


車内は突入済の猟兵に任せ
後方車両を包囲する信徒を迎撃

要は遠距離を撃たれさえしなければいいわけだ
モーニングスター振ろうとする奴と
歌い出しそうな奴を片っ端から七星七縛符で足止め
足止め成功のたびに周りの猟兵に知らせ
各個撃破で確実に遠距離撃ってくる信徒を減らす

車両に近付いてきた奴は
身体張って突入を妨害するか朱雀凶焔で燃やそう

死んだ人間はもう鬼(き)だから何をどうしたって戻らない
だから信徒を倒すことに心は全然痛まない けど
新しく連れて行くってんなら話は別だ
この中には寿命全うして家族に見守られて逝く命が大勢いる
その命を今刈り取る権利なんて誰にもない



●水際に舞う
 後方車両。十~十一号車連結部右横。ドア前。

 現代に生きる陰陽師、水衛家の嫡子たる水衛・巽(鬼祓・f01428)は、知っている。
 ――死んだ人間はもう鬼(き)だ。何をどうしたって戻らない。
 だから信徒を倒すことに心はまったく痛まない。けれど、新しく連れて行くというのなら、それは話が別だ。
「私が邪魔で仕方ないって顔だね。――仮面越しでもよく解るよ」
 巽は常の女性めいた口調を潜め、怜悧な声で言う。
 彼の前には猟兵らの猛攻を掻い潜り、後方車両に取り付こうとやってきた敵の群れ。その数は数えるのも億劫だ。貧乏籤を引いたかも知れない――しかし、それでも引くつもりはない。
「おいで。私が立っている限り、ここは通さない」
 ばさり、と音。扇を開くが如く、彼は両手で無数の護符を広げ、腕を回す。両腕で一つの円を描くが如く、彼は空中に大量の護符を『並べ』る。
「急急如律令!」
 空中に並べられた札は巽の声一つで、まるで多弾頭ミサイルのように散り、それぞれが敵を追尾して舞う。
 巽が使うユーベルコード、『七星七縛符』である。一度札が貼り付けば、亡者らはその身に宿す邪悪な力を奪われ、その場でよろめくか、膝を突く。動きを止めてしまえば、突っ込んでくることも、歌声により車内に被害が出ることもあるまいとの考えである。
 同時に巽は身体に掛かる負荷を感じる。このユーベルコードは術者の命を削って放たれるものだ。――乱用は出来ない。しかし、それだけに強力でもある。
 今は、これを使ってでも敵を水際で止めたい。巽は疼くように痛む胸を押さえつつ、他の猟兵を呼ぶ。
「――動きを止めた、誰か近くにいないか!」
「なら、乗らせて貰おうかしら」
 トッ――と、軽い着地音。車両の上から飛び降り、少女が舞い降りた。
 黒髪に、眼鏡の内側で青く光る怜悧な瞳。手にするは、その可憐な容貌に似つかわしくない――西日に煌めく武骨な機械剣。彼女がその剣を構えるなり、空気を震わせるは耳を聾するエンジン音! 機械剣『クサナギ』が、敵の腐肉を血華と散らそうと始動する!
「随分と派手にやらかしてくれたじゃない。元の素材がなんであっても、ヒトの範疇を外れたなら、お前たちはあたしの敵よ」
 花剣・耀子(Tempest・f12822)である。後方車両で、一般人の守護を担うべく駆け回っていた猟兵の一人だ。
「守るなんて柄ではないけれど、――要は全部斬り果たせば終わるのよ」
 この乱痴気騒ぎも、誰かの命の危機も。何もかもがだ。
「鏖殺するわ」
 決意に満ちた声を発するなり、耀子は地を縮め、駆けた。巽が七星七縛符で封じた敵の群れを、爆音を上げるクサナギにより斬り潰し、薙ぎ払う。まさに電瞬の早業である。
 ああ、その様ときたら、音が駆け回っているかのようだ。チェーンソーの爆音が、四方八方から響くかのように巽の耳に届く。巽が縛っていた敵が、凄まじい速度で斬り倒されていく。
 見える範囲の敵を薙ぎ倒すと、耀子はクサナギから血を払うように振り飛ばした。地に倒れ伏した亡者らが、思い出したように塵に還り、吹き荒ぶ風に散らされて舞う。
 暴れ回るは花嵐。彼女こそは、識別名称“Tempest”。UDC組織においてその名の知れた、花を散らす嵐の具現である。
「お美事」
 ぱちりぱちりと手を叩く巽の言葉に、耀子は左右に首を振る。
「いいわよ、お世辞なんて。訊くのも野暮かもだけど、まだ戦える?」
 目敏く七星七縛符の反動を見抜いていたか、耀子が問う。
「こう見えてそこまでヤワじゃない。もう暫くは保たせてみせるさ」
 巽は涼やかに応じ、頼もしい味方の登場に目を細める。彼は一度電車を振り向き、窓から戦場を恐れを含んだ目で見下ろす人々を見仰いだ。
 ――この中には寿命を全うして家族に見守られて逝く命が大勢いる。その命を、今刈り取る権利なんて誰にもない。
「さあ、やろうか」
 巽は前に向き直る。次なる敵の群れが間近に迫る。今一度、その両の手に護符を広げた。
「……ぞろぞろと来たものね。いいわ。精々先行的な憂さ晴らしに斬られて頂戴。――お前たちには、あたしの苦労なんて解らないでしょうけど」
 耀子は右手のクサナギに加え、左手に残骸剣『フツノミタマ』を構え、二刀を敵に向け、刃にすら似た声を吐いた。

 ――彼女はUDCメカニック。このあと、この列車の隠蔽工作作業を担当する部門に所属している。
 憂さの一つも晴らさせろとは、全く妥当な要求なのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●落ちる日は落命と共にか、或いは
 どの車両も戦闘中である。
 四号車をリゥ・ズゥとティオレンシアが、五号車を半蔵が、七号車ではレイブルが。
 八号車にリネットが詰め、ワイヤーを張り、北斗がそれを補佐。九号車に竜聖、十号車にジン。車内を縦横無尽と、姿を消して駆けるヴィクティム。
 最後尾、十五号車の後ろを固めるのはジェイクス。

 長期戦である。
 戦況は混迷を極めた。
 レイラ、アルトリウス、匡、敬夢らが築いた左前方の前線は、レイラの近衛兵団の損耗により少しずつ後退・縮小を余儀なくされる。元より、たった四名で支えていたことが驚異的だ。敵から生命力を吸い、前線を維持したレイラの粘り強さを讃えるべきであろう。
 ――後ろに流れる敵が増えつつある。
 しかし、猟兵らは戦うことをやめはしない。
 車内も、車外も。自分に出来ることは何か。考え、走り、武器を抜く。
 
 ――ああ、もう、日が沈む。
 戦いは佳境へ差し掛かっていた。
赫・絲
殺して信徒を作って、その信徒に殺させて信徒を増やして
確かに効率いいんだろうね、ほんっと胸糞悪いけど
早く眠らせてあげよう、ユアさん
こっちは任せて、私の背中はユアさんに任せるね!

5~10号車辺りの入れそうな穴から車両内へ
手近になければ窓とか割って入る

後方車両へ向かいながら、そっちに向かう信者へ【先制攻撃】
【全力魔法】で増幅させた雷を使った【属性攻撃】だよ
1体ずつなんてきりがないから、前方に見える敵を糸で一気にまとめて、雷で痺れさせ焼き焦がす
糸に捕えた敵は討ちもらさない、一撃で屠れるだけの雷の出力を常に維持
焦がせば糸から解き放って、次の敵をまたありったけ

1体たりとも、後ろに向かわせはしない!


ユア・アラマート
ただでさえ理不尽に死んだ人間に、理不尽に人を殺めることまで強要するか
いいだろう。こんな地獄を生み出した下衆には楽に死んでもらう気はないが…その前に寝かしつけてやらないとね
イト、数は任せたよ。そのかわり、お前には誰も触れさせない

4号車から後ろの車両へ、入れそうな穴を見つけて侵入
なかったら作る
後方車両へと向かいつつ信者を相手取り、イトの打ち漏らしを片付けながら前に
「全力魔法」「属性攻撃」で風の魔力を高めて移動速度を強化した状態で「ダッシュ」「先制攻撃」を用いて先手必勝
「暗殺」で首筋など信者の急所に当たる部分を的確に裂いては捨て、数を減らしていく

人相手は慣れているんだ
まあ。だからといって気分は悪いが



●救いの手を伸べよ
「どこもかしこも、まるで祭りだな……!」
 ユア・アラマート(セルフケージ・f00261)は唸る。敵の前進に合わせて後方車両に向け転進した彼女であったが、六号車への侵入を果たすなり、上述の言葉を発するに至った。彼女の足下で、たった今屠った信徒が塵へと変わる。
「ユアさん、外、人が足りてない!」
 六号車左後方、破れた窓から外を見て叫ぶのは赫・絲(赤い糸・f00433)。ユアと共にこの車両に乗り込み、生贄特急を止めるために参じた猟兵だ。その言葉を聞くなり、ユアは七号車を伺い、レイブルの安定した戦いぶりを見たあと、逡巡なく決める。
「外に出て後方車両を目指そう。イトの力もその方が活きるはずだ」 
「はーい! それじゃあ、お先にっ」
 絲は頷きを返すなりひょいと破れた窓から外へ身を躍らせ、そのまま走り出す。ユアもすぐにそのあとを追った。
 日が沈みかけの広い野を、鉄球を携えた信徒の葬列が走る。地獄の釜が開いたような光景だ。ユアは絲と併走しつつ、吐き捨てる。
 絲とユアは、そのただ中を駆け抜ける。
「ただでさえ理不尽に死んだ人間に、理不尽に人を殺めることまで強要するか」
 こんな地獄を生み出した下衆に楽に死んでもらう気はさらさらなかったが、その前に。
 歩く死体は、もう一度眠らせてやらねばならない。安寧と静寂の中で。眠りは、静寂と共にあるべきだ。
 ユアはダガー『咲姫』を引き抜く。それは命脈を絶つが為、耐えず磨り上げてきた鮮やかなる牙。
「イト、数は任せたよ。そのかわり、お前には誰も触れさせない」
「了解! うん、私の背中はユアさんに任せるね!」
 快活な声とは裏腹、絲の内心は煮えるようだ。殺して信徒を作って、その信徒に殺させて信徒を増やして――高効率の倍々ゲーム。胸糞が悪いという一言だけでは、とても足りない。
 早く眠らせてやらなければ。その思いが、絲の手を衝き動かす。
「そこっ、こっち向けっ……!」
 絲の手が雷霆の煌めきを帯び、籠目を描くように展開された彼女の鋼糸が敵に襲いかかる。巻き付き、それと同時に致命の電圧で感電させ、そのままに焼灼する。殆ど爆発するように塵と化す信徒を後目に、足を止めることなく進み、絲は今一度鋼糸を巻き上げ、次なる敵にまた再びありったけ、雷を帯びた糸を展開して絡め取る。
 藍に染まりだした空の下、煌めくばかりの鋼糸のスパークが彼女の大きな瞳を煌めかせた。
「――気分はどうあれ。人を相手にするのは慣れているんだ」
 ユアは胸元に、血の色の如く朱く刻まれた月下美人をなぞる。起動した魔術回路が彼女の身体を風で包んだ。包まれた風に巻かれ、爆ぜるかのような前進。移動と攻撃はほぼ一挙動。武器はただ一本のダガーだというのに、その殺戮はあまりにも鮮やか。彼女が風となって駆け抜ける。一体目が倒れる前に二体目の延髄に刃先が食い込む。
 ユアはまるで、銀の刃風であった。吹き抜けたあとには、命を失った死骸だけが残る。
 先行するユアを追う絲。エレメンタル・ファンタジアにより風を起こしつつ、爆発的な勢いでユアを追走する。一際強く風を爆ぜさせ、空に舞い上がると同時に眼下に向けてあるだけの鋼糸を放ち、全力で雷を糸へ伝わらせた。
 空から放たれた百十本の鋼糸に伝う雷は、本物の雷光さながら。熱で空気が爆ぜ割れる音はまさに雷鳴のそれだ。絲が作り出した雷に打たれて即死する十数体、生き残りを今度は地を駆ける雷光の如きユアのダガーが断つ。ユアの狙いは頸筋、延髄、心臓に代表される致傷部位。死んだことに気付いたように、また数体の信徒が塵芥となって舞い散る。「――許せない」
 着地。絲は、ユアのダガーも斯くやというほどに声を尖らせた。彼女は以前にも、黄昏の信徒らと相対したことがある。そして、その引き起こした惨劇をその目に焼き付けたことがある。
 捧げた花のその色を、今だって覚えている。
 ……許せない。赦せるものか。
「イト。今は走ろう。その怒りは、この騒動の原因に叩きつけるべきだ。私も、これを起こした下衆には言いたいことが山ほどあるが。――今は」
「……うん」
 ユアに促され、再び絲は彼女と共に走り出す。風を纏い、風を爆ぜさせ。まるで飄風の如く、戦場を駆けゆく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●決壊、そして
 ――がん、がん、がん、がぁンッ!!
 どこかで、車両を叩く音。絶え間なく続く戦闘音。
 車両にダメージが入るたび、猟兵らは全力でその部分をカバーリングし、ここまで戦ってきた。その全員が十全の技量を持ち、信徒らと良く拮抗していたと言える。しかし――しかしだ。
 人の恐怖とは、それだけで拭えるものではない。
「いやぁっ! もういやよ!」
「こんな所にいられるか! このままじゃ皆殺されちまうぞ!」
 誰かの怒声、罵声。騒ぎが起きたのは十五号車前、連結部だ。ドアは両側共に破損しており、出入りが可能となっている。
「あっ……!? 外に出ないでください、ここは私達が必ず守りますから!」
「うるさい! 言葉だけなら何とでも言えるだろ!」
「そうだ、走って逃げた方がいい、ここにいてもこのまま殺されるだけだ!」
 車両右側を狙撃によってカバーしていたシャルロットが止める間にも、反論と罵声がいくつも返る。シャルロットは歯噛みをするも、次の敵が迫るのを見れば弾丸の再装填をやめるわけにはいかない。装填、一射。廃莢――また敵が迫る。装填、
「駄目です……! 行かないで!」
 声は、逃げ出す人々の耳には届かない。
ナハト・ダァト
ふム…狙いは一般人カ。
でハ、ひとまず彼らには安全なところまで避難してもらおうカ

【七ノ叡智・永遠】君たちの手の届かないところダ
追うのは諦めるんだネ

【バウンドボディ】【一ノ叡智・王冠】で身体強化、武器改造
伸縮性と俊敏性をあげテ、人々が逃げ込んだ車両ごと安全圏に逃がすヨ

追ってくる敵、先回りされた車両ハ
[かばう][激痛耐性]で対応ダ
敵の散らしは他の味方に任セ、私はこちらに集中しなければネ

◆真の姿
真の姿イェーガーカード参照
[バウンドボディ]と同じ射程距離にどこからでも光のゲートを作り、触手を伸ばせるようになっている

【◎】



「くそっ、前の方は……駄目だ、あのわけの解らない連中が戦ってる!」
「あっちも、こっちもだ!」
 猜疑と恐怖に耐えきれず、車体左側に出た数人の男女は、とにかく信徒と猟兵のいない方向を探した。
 電車の左後方に辛うじての空隙を見つけ、一様に走り出す。人間とは集団意識に縛られた生き物だ。そうして逃げ出し始める者が出れば、後に続く者が一定数出る。
「はぁッ、はぁッ……っあっ!」
 一人の女性が躓き、転倒した。先を走る男達はそれを意にも介さず――正確には一瞥だけはしたが――走り続ける。
「待って! 嫌ッ! 置いていかないで、置いていかないでよぉっ!!!」
 暮れなずむ日の中に、ゆらりと、冥府から来たかのような影が落ちる。
「っひ」
 血錆びた鉄球を提げ、屍蝋の白面で顔を覆った黄昏の信徒が、三体。最早命運尽きた女を取り囲む。
 ゆっくりと鉄球が持ち上がる。ああ、それが振り下ろされた時に自分は死ぬのだ。女は涙と怯懦に顔を濡らしながら、あらん限りの声で叫んだ。
「嫌ああぁぁぁあぁああぁっ!!!」
 その瞬間。
 まさに、その瞬間である。振り下ろされる棘つき鉄球よりも早く、その場に参じた影がある。
「こちらに目もくれず追っていくとハ。もう少し嗜みというものを弁えた方がいいネ」
 しゅるり、と長く撓る腕で女を横抱きに掻っ攫ったのは、ナハト・ダァト(聖泥・f01760)。そのまま横抱きにした女性を自分の元まで引き寄せる。
「え……えっ?」
「怖がらなくてもいイ。ひとまず、安全なところまで避難して貰おウ」
 ナハトはすぐさま『七ノ叡智・永遠』を発動。小さな光のゲートが開き、腕の中にいた女を吸い込む。
「これは――」
「大丈夫。その中は安全だヨ。すぐに終わル、待っていてくれるかナ」
 言葉をかけ終わるか終わらないかの当たりで女の姿は白い光のゲートの中へ消えた。
 すぐさま、黄昏の信徒らは狙いをナハトに変えたように向き直る。
「どこにやったかっテ? 君たちの手の届かないところダ。追うのは諦めるんだネ」
 戯けたように言うと、ナハトはすぐさま戦場に視線を走らせた。
(よくないネ。逃げ出す者の数が多イ)
 戦闘をしている場合ではないと判断したナハトは、即座に地上五メートルの空中に光のゲートを数個開く。そこから触手を召喚。自身に向け伸ばし、それを掴んで収縮。縮む力で空に自分を引き寄せ、それを繰り返すことで高速移動を開始。
「敵の散らしは他の味方に任せよウ。私はこちらに集中するヨ」
 たとえその危機が、彼ら自身の浅慮が招いた事であろうとも。
 ナハトは、それを見捨てることをしなかった。最初の女をそうしたように、彼は空を駆け、散り散りに逃げる一般人を光のゲートで保護し始める!

成功 🔵​🔵​🔴​

柊・明日真
【アドリブ歓迎】
俺達は眼中に無いって訳か。好き勝手やらせるか、乗客には指一本触れさせねえ!

まず可能な限り安全は確保したい。乗客を後ろへ避難するよう誘導。
【破砕の刻印】で武器強化し、敵を通さないよう片っ端からぶった斬って先頭車両を目指すぞ。
乗客に被害が出そうなら自分を盾に【激痛耐性・武器受け・カウンター】で守る。

…何か歌ってやがるな。耳障りだ。【呪詛耐性】で無視できりゃ良いが。

乗客の避難さえ済んじまえばこっちのもんだ、一気に攻めて戦線を押し上げる!



●悲劇を砕く、破砕の刻印
「俺達は眼中に無いって訳か。これ以上好き勝手やらせるか、乗客には指一本触れさせねえ!」
 柊・明日真(刻印の剣・f01361)は先程、列車を止める一助を担った大剣『緋焔の剛剣』を一振り。車内アナウンスから情報を得て、車外を十五号車へ駆ける。到着するなりまさに車外に逃げ出そうとする男を見つけ、明日真は語気も強く制止する。
「中にいろ! 外は危ねえんだよ!」
「中よりはマシだろ! 外から音が聞こえてるんだぞ、このまま中にいて死んだらどうしてくれ」
「そうならねえように!! 俺達が戦ってんだ!! 信じろ!!」
 ガン、と剛剣を突き立てながら一喝。鉄塊と言っていい大振りな剣を片手で地面に突き立て、十五号車左出口を塞ぐ明日真の圧力。身長百九十センチメートルあまりの偉丈夫から放たれる威圧感を撥ね除けて外に出て行けるような一般人などいるわけがない。二の句を告げず戸口に立ち尽くす男に、
「解ったら、下がってろ。……来やがったぜ」
 声を投げながら明日真は剣を引き抜き、正眼に構える。
 敵影、三体。はぐれ信徒が流れてきたのだろう。明日真は一つ息を吸い、刀身を揃えた左の指先で一撫で。表面に複雑な光の軌跡が走り、『破砕の刻印』が成される。
 敵三体は一斉に飛びかかってくる。内二体が、殆ど同時に左右から明日真目掛け鉄球を振り下ろした。明日真からすればそれは避けてしまえば済む攻撃だったが、ここで回避を選べば車内への突入を許すことになる。
 ――明日真は破砕の刻印を成した緋焔の剛剣を、唸る二つの鉄球に真っ向から叩きつけた。鉄と鉄がぶつかり合い、拉げ砕ける音――
 ああ。砕けた。
 鉄球が。
 破砕の刻印が成された武器は、その破壊力を飛躍的に増大する。相手が鉄球だろうが、魔法の武器だろうが、明日真の膂力と合わせれば、砕けぬものなどそうそうない。
 武器を失った信徒らはそのまま身体を反らし、間近から魂を削るような絶叫を上げるが、
「うるッせえんだよ、耳障りだ!」
 呪詛に対する耐性のある明日真は、それを意にも介さず返す刀で剛剣を振るい、二体を瞬く間に叩き潰した。大剣を振り切ったその隙を盗むように、最後の一体が鉄球を翳して飛びかかる――刹那、緋焔の剛剣が変形し、彼の両拳に纏い付いた。
「オラァァ!!」
 刻印魔術による武装形態変化。『青嵐の鉄甲』。前腕から拳までを一挙に覆うガントレットだ。ウェイトバランスが変化、明日真はそのまま閃光の如くステップイン。刹那にして猛撃、五発の拳を叩き込んで信徒を粉砕する!
「……やれやれ、先頭に向かうのはもうちょっと後だな」
 背にした一般人車両、このドア前を守るのは自分のみ。視界の隅に新手が五体。
 明日真は両拳を持ち上げ、油断なく構えを改める!

成功 🔵​🔵​🔴​


●ツェレンスカヤ・カルナバル
 猟兵らの戦いは、遂に終盤を迎える。敵の切れ目が見えたのだ。
 前方にいる猟兵が、声を上げた。――あと少しだ! だが、最後にデカいのが来るぞ!

 耐えられるか。この数に。
 越えられるのか。奴らを。
 そんな疑念を振り払うように、『彼女』たちは足を踏み出す。
レイラ・ツェレンスカヤ
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
うふふ、レイラとレイラの狗があなた達を駆逐するのだわ!
止まった電車に従者と共に乗り込むかしら!

レイラの槍は、一切合切、全ての信徒を串刺しにするのだわ!
信徒も、信徒に変えられた子も!

レイラは敵の攻撃を避けないのだわ!
従者がなんとしてくれるかしら!
それに生命力吸収があるもの、レイラの歩みを止めるには、それくらい上回ってもらわないと!

ホントはね、レイラはこのまま素敵な血と絶叫の宴を見るのも、素敵だと思うのだわ!
でも、これだけの戦力を投入して、目的を果たせずに倒れる無様な敵の首魁を見る方が、とっても楽しそうかしら!
◎◎


月輪・美月
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】の一員として行動しますレイラお嬢様の命とあれば、雑用係の僕も全力でゴミ掃除させて頂きますとも。

数だけは多いようですから、皆さん気をつけて屋敷の同僚を見回すと、攻撃は問題無さそうですので、僕は後ろからサポートに回りましょう。特にか弱い……か弱いかは疑問が出ますが、女性をメインに守りにはいるつもりです。

あとは幼馴染の杏花さんと一緒に行動しましょう。心配はいらないと思いますが、無茶する人なので、危ないと判断したら庇いに入ります。影の狼……白影はお嬢様を守るように

【影で作った大きな狼で敵を殲滅。屋敷のメンバー、特に女性陣を庇いに入ります。他の人との協力、描写の追加歓迎


クロコ・メランコリ
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

ヒヒ。お嬢(レイラ)の命令だからナー。クロコも遊びにきたゾ! クロコはナー、他にもニンゲンがいるところで沢山倒すのはあんまり得意じゃないからナー。【お嬢の側にくっついて、攻撃を庇ったりするゾ! 】 ヒヒ。お嬢は防御とか全然しないからナー、クロコが守ってあげるんだゾ!
《バウンドボディ》を使って、うにょーんって伸びて、お嬢に向かう敵の攻撃を妨害したり、ボインって弾いたりして、攻撃を受け止めるお仕事をしようと思ってるゾ。
【他のお屋敷の人との協力、描写の追加歓迎】 だゾ!


九十九曲・継宗
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
以前は罪の無い人たちだったのかもしれませんが、こうなってはどうしようもありませんね……
せめて手を汚す前に介錯するのが、情けかもしれません。

脚部に仕込まれた車輪を使い、加速しながら敵の斬り裂いて行きます。
その手に持った鈍器が振り下ろされるよりも早く、歌声や悲鳴が耳に届くよりも早く、その首を落としていきます。
早業には少し自信がありますので。

敵を倒しつつも視界にお嬢様の姿は入れておき、もし敵に狙われ危なそうなら、その敵を優先して倒します。
なんだか楽しそうにしていますし、守らなくても大丈夫な気もしますが、仕える相手ですしね。

【参加者との連携、台詞アドリブ歓迎】


街風・杏花
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

うふ、うふふ、ピクニックですね!
楽しく遊びましょう?
少々歯応え不足ですけれど、たまには質より量も良いものです!

狼に跨がり、刀を振るい、幼馴染の美月さんにちょっかいも
うふ、うふふ、こういう時はもっと思い切りよく、前に出て楽しむものですよ!
そういう所が細かいのです、貴方!

ええ、とはいえ、お嬢様が危ない時は、狼にはそちらのカバーを
これでも職務熱心なメイドなので、愉しみに我を忘れたりはしないのです

口では煽るようなことも言いますけれど、美月さんも他の使用人の方も、頼れる腕をお持ちですから
安心して背中を任せて――
うふふ、うっかり斬りかからないよう我慢しませんと!

※アレンジ歓迎


マスクド・キマイラ
◎【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

気に食わんな、まったく持って気に食わんっ。
力を競い、命を奪い合うならまだしも、力無き人々を一方的にただ殺す?ふざけた話だっ。
俺がやるのは、プロレスだっ!……だがしかし。お前等には、プロレスの「恐さ」を教えてやろう。


「アピールタイム」【コミュ力】で敵の注意を引きつつ、準備万端。
後方車両への道を塞ぎ待ち構える。
技はプロレス、見かけはエンタメ。
だが実際は、打撃は急所、極めは秒でへし折り、投げは受け身を取らせぬ実戦仕様。

今はボス(レイラ)に雇われた身だが、オーダーは殲滅なのでのびのびと。
市民へ向かう敵を優先し、その目も意識。
彼等の不安を払拭するのも、レスラーの仕事だなっ


ウィリアム・ウォルコット
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
囲まれた電車、中には一般人、迫る敵の包囲網
そこにさっそうと現れるヒーロー
セイギのミカタ志望のお兄さんとしてはすっごくそそられる状況だね
さあ、悪者退治にいこうか

突っ込んでいく味方に同行
お兄さんは周囲の信徒にユーベルコードで攻撃だ
頭部、腕、足、喉
戦力を削げる部位をレーザーガトリングで薙ぎ払おうかな

接近されたら応戦
ガトリングの砲身で薙ぎ払ったり、突いたりして距離を取ったら
大きく振りかぶったガトリングの基部でぶん殴るよ
ねえ、頭を砕けば止まるかな? それとも胸? それとも突き出したままレーザーを浴びせればいい?
まぁいいか、全部試せば一緒だよね
だって、セイギは勝つんだから


ラメール・ウルラート
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

微力ながら、レイラお嬢様の招集とあっちゃ協力しないわけにいかないネ
とはいえボクは荒事向きじゃないんだよナ
基本的にはレイラお嬢様の傍について、サポートする感じで立ち回るヨ

ボクのユーベルコードは毒を撒くから、敵の戦力を削ぐ程度のお手伝いはできるカモ
信徒は自分に負担をかけるユーベルコードを使うみたいだし、さっさとバテてもらったら儲けモンだ
仲間にかからないように気を付けて、毒絵具の筆でぱぱーっと盛大に塗りつぶしちゃおうネ

アー、でも気絶中の人もいるんだっけ
あんまり強力な毒で死なせちゃっても寝覚めがわるいよネ、痺れさせる程度に加減しないと
地獄絵図が描きたいわけじゃないからネ!


時計塔・ケイト
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

レイラお嬢様の道楽にも困り物でございます。
ですが、一度やると言った以上は私達も巻き込まれるのはいつもの事。であれば、勝目から立ち向かうのが結果的には最善かと。

私は物でございますれば、人間個体の生死に特別頓着があるわけではごさいません。
しかしこの手の輩を放置しておくのは不快故、後方支援を努めましょう。

お嬢様や従者の皆様、負傷した一般人の方も。
我が本体は世界樹の枝より作られし柱時計。
鐘の音を聞きますれば、時計の針を巻き戻し、負傷する前に戻しましょう。
……お嬢様、お戯れは、ほどほどに。


満島・ショコラ
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
ショコラ、お仕事頑張るね!なんだか可哀想だけど、可哀想でも手が止まらないところがいいところってショコラよく褒められるの。
お嬢様の近くに陣取ってウェディングドレスをひらひらさせて目立っちゃおう。沢山引き付けないといけないもんね。
ある程度敵が近づいてきたら、UC【幸せの音】で攻撃するよ。
避けられるかもしれないけど、沢山いたらある程度は当たるよね?攻撃が当たって体から鐘が生えた信徒を花柄にデコった釘バットで殴っていくよ。
血しぶきが舞い鐘が鳴り響く光景に本能的な【恐怖を与える】ことが出来たらいいなぁ。足止め出来たりスキをつくれたら嬉しいもんね。 
※アレンジ歓迎


アルベール・ユヌモンド
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
悪いが先にいくぜ
お嬢を守るのも仕事かもしれねぇが、ここにはできる奴らがいるのは分かってる
俺は猟兵としてできねぇ奴らを守る、爺ちゃんの遺言なんでな
そう簡単に一般人どもはやらせねぇよ、信徒のクズ共にも、お嬢たちにもな
……最も結果としてどれだけ早く敵をぶち殺すかって話になるわけだが
ユーべルコード【模倣魔剣(テキヲキリサケ)】を使って敵は皆殺しにする
千里眼――まぁサイキックの応用なんだが
遠方もよく見えるし、透視も出来る
――ついでにてめえらの未来もな
敵を殲滅終えたら、一息ついて、指折りスコアを数える
……大分やったが、さて。数を競うやつじゃねぇが、だがスコア負けは癪だからな



「うふふ、レイラとレイラの狗があなた達を駆逐するのだわ!」
 その呼び声は致死の蜜毒(カンタレラ)。
 天真爛漫にして極悪非道。レイラ・ツェレンスカヤ(スラートキーカンタレラ・f00758)が号令を下す。
「うふふ、うふふふ! 一切合切、一人残らずぶち撒けて、阿鼻叫喚の宴にするかしら!」

 車両右側、迫る敵の大群。
 その前に踏み出す新手の猟兵たち。その数、レイラを含め十一名。
 彼らはレイラの屋敷に住まうレイラの従者にして、彼女の剣にして『狗』。信の置ける配下なのであろう。彼らはレイラの求めに応じてここに参じたのだから。

「レイラお嬢様の命とあれば、雑用係の僕も全力でゴミ掃除させて頂きますとも」
 月輪・美月(月を覆う黒影・f01229)はレイラの言葉に応じて進み出る。
「敵の数がかなり多いです。皆さん、気を付けて」
 口々に了解を叫びながら、散るツェレンスカヤ家の従者ら。その中、一人が美月の横に残る。
「うふ、うふふ、ピクニックですね! 楽しく遊びましょう? 斬り合うには歯応え不足ですけれど、たまには質より量もいいものです!」
「杏花さん。……あまり無茶はされないようにして下さいね」
 美月の苦言に、街風・杏花(月下狂瀾・f06212)は楽しげに笑った。彼の心配性を笑い飛ばす。
「うふ、うふふ、こういう時はもっと思い切りよく、前に出て楽しむものですよ! そういう所が細かいのです、貴方!」
 桃色のメイド服のスカートを揺らしながら、杏花は傍らに立つ焦げ茶色の体毛の巨狼を撫でる。頭をゆるりと下げた狼に跨がり、意思を共有。
「とりあえず杏花さんを制止しておいてやり過ぎることはないですから。小言を言いますが、もう少し無茶は無茶と自覚して下さい」
「けれど、そういうときこそ美月さんが守って下さるのでしょう? 私、知っていますもの!」
 まるで堪えていない調子の杏花に、美月は嘆息しながら己のユーベルコードを発動。彼の足下に伸びた黄昏時の影より、杏花が跨がる狼と双璧を成せるほどのサイズの『影の狼』――『“影狼”白影』が立ち上がる。
「白影、お嬢様を頼む」
 影の狼は音もなく、悠然と歩くレイラに従い、その影に潜った。
「では、お嬢様。行って参ります」
「許すのだわ! 蹂躙なさい!」
 主がその細腕を眼前の大群へ向ける。それと同時に、美月と杏花は敵へ向け、その夕闇を吹き荒れる疾風となった。 杏花がやはり早い。巨狼が身体を波打たせ走るその背で、彼女は艶然と笑って無銘の打刀を抜く。無茶しいと言われても、死合いが楽しみなのばかりは変えられない。
「獲物は選り取り見取り……斬り放題ですねえ」
 彼女の刀はごくごく普通の、魔剣でも何でもない刀だ。しかし、狼を駆る街風・杏花がそれを扱うとするなら、或いはその瞬間だけ、無銘の刃は妖刀と化すのやも知れぬ。
 大群を焦げ茶の風が抜けた。ぱぱぱん、とまるで芝刈り機に刈られた草のように、首がいくつも飛んだ。首が地面につく前に死骸は昇華したかのように塵となる。
「ああ、全く、無茶をするなと言っているのに!」
 速力を上げて美月は追走。彼が追いつく前に、群れの中で杏花は暴れ出している。
 四方から寄せる敵を、狼の脚力と跳躍力を合わせ、二次元のみならず三次元的に翻弄する杏花。振り下ろされる鉄球を避け、或いは刀で払い、狼と息を合わせ跳躍。狼が一体を踏み潰せば、杏花はその隣の信徒を真っ二つに斬り裂く。 まさに剣鬼と巨狼の合身、鬼狼一体とでも言うべきか。
 着地の僅かな隙を目掛け、杏花の後方から殺到する敵の前に美月が割り込む。
 ずず、とルーンソードを握る彼の手に、影が這い上る。巨大な影の狼は主に預けてしまったが、月輪・美月が扱う武器は、なにもあの影狼だけではない。
 振り下ろされる鉄球の一撃を軽々と手で止める。影を纏って硬質化し、鎧、或いは攻撃用の武器と成す。『影狼礼装』。受け止めた鉄球をそのまま敵の顔面に叩きつけ返し、左手に持ったルーンソードで続けざまに一体の首を刎ねる。「大丈夫ですか、杏花さん!」
「うふふふ、ほおら」
 無事を問う美月の声に返るのは、剣鬼の艶やかな笑い声である。
「私の言ったとおりになったでしょう?」
「……はあ」
 ……ああ、そう、その通り、確かに守ったけれども。
 美月は、説得を早々に諦め敵に向き直るのだった。少なくともこの戦いの間は。
「あっ、でもでも、私の前には出ないで下さいね、美月さん? うっかり斬りかからないように我慢しないといけませんから!」
「無茶振りが過ぎる!」

 美月と杏花を後方に措き、さらなる前線で戦斧を振り回すのはアルベール・ユヌモンド(無月の輝きは・f05654)。 レイラを守るのもまた従者の務めであろう。しかし、それは別の誰か――ここに共に来た八人の従者のいずれでも成しうることだ。
「俺は猟兵としてできねぇ奴らを守る、爺ちゃんの遺言なんでな。そう簡単に一般人どもはやらせねぇよ。信徒のクズ共にも、お嬢たちにもな」
 天真爛漫・悪逆非道のレイラ・ツェレンスカヤのことである。ここで一般人の殺戮が起きても「それはそれで素敵なのだわ!」などと言いかねない。ともなれば、それより早く敵を全滅させるべき、という話になる。
「結局どれだけ早く敵をぶち殺すかって話になるわけだな。――『模倣魔剣』、起動」
 アルベールはユーベルコードを起動し、その目を敵の群れに向ける。近づく者は鉄塊めいたバトルアックスで打ち払い、薙ぎ払いつつ、離れた敵をユーベルコードで狙う二段構え。
 射程外と見て車両の方に走ろうとする敵らに向け、空いた左手をひゅっと一閃。
 不可視の刃が、彼の目が届く百メートル先の信徒の首を飛ばす。それも、一時に複数だ。
「俺の目はよく見えるんだよ。遠くも、壁の向こうも、――ついでにテメエらの未来もな。首が飛んで、地獄行きだ。当たってるだろ?」
 アルベールが言い終わると同時に、首を失った死体が数歩歩いてからどしゃりと倒れ、ほどけるように塵と化す。これで一、二、三、飛びかかってきた敵から身を躱し、遠心力を乗せたバトルアックスを胴に叩き込んで両断する。四。 密集を避け出す敵の陣形変化を感じ取り、アルベールは反射的に敵が集中している部分を探す。七体が集中している一角に向け再度その魔眼を開いた。千里眼の応用。或いはその眼こそが彼の魔剣か。腕を一閃。不可視の刃が虚空を薙いで、起きた断層が敵の首をまとめて撥ね飛ばす。
 これで十。
「……大分やったが、さて。数を競うやつじゃねぇが、だがスコア負けは癪だからな」
 最早スコア・アタックの様相を呈し出す戦場を、アルベールは駆け抜ける。

「――気に食わん」
 岩塊の如き拳が一体の顔面を叩き潰し、
「気に食わんな」
 逆水平チョップがもう一体の首を吹っ飛ばす。
「全く以て、気に食わんっ!!」
 二体の顔面を掴み、二度、叩きつけ合わせる。白面が粉々に砕け散り、信徒はそのまま地面に伏して塵となった。
 天呼ぶ、地呼ぶ、人が呼ぶ。怒れる男を呼び覚ます!
 ここが国技館ならば万雷の歓声が響くところだ。
「力を競い、その果てに命を奪い合うならまだしも、力無き人々を一方的にただ殺す? ふざけた話だ!!」
 指を天を指すように上げ、マスクの男は――マスクド・キマイラ(千の貌と千の技・f06313)は、その鋼の肉体を武器に群勢へと立ち塞がる。
「俺がやるのは、プロレスだっ! ……だがしかし。お前等には、プロレスの『恐さ』を教えてやろう。かかってこい!!」
 プロレスとは、肉体と肉体のぶつかり合い!
 興行として行われる格闘技にして、今日も熱狂的なファンを沸かせる競技だ。彼らの戦いはよく、エンターテイメントであると喩えられる。タイミングを合わせて技をかけ、それを受ける、それに熟達したもの達で行われるある種の『演武』――そう言われている。
 だが。多くの人は知らない。プロレスの技は、「そうしなければ死ぬから」「そのように合わせて受ける」のだということを。
 少なくとも、マスクド・キマイラの技は、その破壊力を秘めていた。
 自分の横を駆け抜けようとした敵二体を、二本の腕によりラリアット、頸骨粉砕! 首が折れ曲がった死体は二回転して頭から着地、砂塵を上げ転がる。
 それらが塵に変わる前に敵の一体に低空からのタックル。脚を掴むなり身体を捻ってねじる。脚を粉砕、着地と同時に宙返り、敵一体の頭を脚に挟み、首をへし折りながらぶん投げる。着地をするなり敵の後ろを取ってスープレックス。カウントなど必要ない。頭を地面に叩きつけたときには、既に敵は再殺されている。
 仮面のプロレス・ヒーロー、マスクド・キマイラは立ち上がり、挑発する如く、誇るが如く両拳を突き上げる。
 見ているか、車両の人々。もう心配ない。
 ――俺のプロレスが、今からこいつらを粉砕する!

「あはは、派手だなあ」
 マスクド・キマイラがハリケーンの如く荒れ狂う姿を見ながら、ウィリアム・ウォルコット(がとりんぐのおにいさん・f01303)は自身の武器を構えた。
「張り合う訳じゃあないけど、こっちも派手にいこうか」
 その武器は、巨大な回転式機関銃――ガトリングガンに見える。しかし一般的なそれと異なり、伸びる弾帯が見当たらない。通常ガトリングガンは、そもそも人の手で保持するように設計されていないはずだ。しかしウィリアムはいとも容易くそのガトリングガンを取り回し、敵に向ける。
「――囲まれた電車、中には一般人、迫る敵の包囲網。そこにさっそうと現れるヒーロー。セイギのミカタ志望のお兄さんとしてはすっごくそそられる状況だね。さあ、悪者退治といこうか」
 穏やかな笑みを崩さぬまま、ウィリアムは味方の位置を瞬時に把握。ガトリングガンを腰撓めに構え、トリガーを引いた。
 凄まじいモーターの駆動音が響き、銃身が回転。繰り出されるは実弾ではなく――レーザーであった。言うなれば、彼のその火器はレーザー・ガトリングガン! 
 夕闇の中で火線は鮮やかに輝き、前方扇状の範囲にいる敵の大群をその高火力で薙ぎ払う! 狙いは足先をメインに、倒れた者から頭を粉砕、次々と戦力を削いでいく。
 味方の行動範囲に差し掛かればトリガーを緩め、レーザーの射出をやめるが、直後に数体の敵が襲いかかる。近接戦闘なら有利と見たか。
 襲いかかった信徒が鉄球を振り回すのを、ウィリアムはガトリングの砲身で払い除ける。よろめき踏鞴を踏んだ敵に踏み込んで基部を頭に叩きつけ、再殺。
 襲いかかる次の敵はそもそも鉄球が届く前に、ズン、と己の胴に突き立てられたガトリングガンの砲身を見下ろすことになった。
 ウィリアムは膂力を使って軽く砲身を上に煽り、信徒を浮かせ、そのままトリガーを引いた。――一般的なガトリングガンの連射密度は、秒間百発を数えるという。信徒は粉々になり、地面につく前に塵になった。
「――未だ試してないことがいくつかあるなあ。まぁいいか、全部試しちゃえばさ」
 ウィリアムは僅かに笑みを深め、ガトリングガンを構え直した。決まり切ったことを言う口調で呟く。
「だって、セイギは勝つんだから」

 満島・ショコラ(ネバーエンディングハッピーエンド・f05988)は本人によるところ、間もなく挙式を控えた幸福な猟兵である。果たしてそんなハッピーガールがキュートなピンクの釘バットを振り回していいのか、という問題に関しては、この際横に置こう。
「ショコラ、お仕事頑張るね! 信徒の人たちはなんだか可哀想だけど、可哀想でも手が止まらないところがいいところってショコラよく褒められるの!」
 彼女は愛くるしい、大きな瞳を宝石のように輝かせてウェディングドレスを靡かせる。そのはためきに幸せを――壊すべきものを見出した敵が駆け寄ってくる。
 敵を射程内に充分に引き寄せると、ショコラはその身体を翻し、手に持ったバットをステッキのように振るった。
 桜色のバットがピンクの花弁に分解され、桜吹雪のように舞う。思いも寄らぬ攻撃の展開に、信徒らは足を止めようとするがもう遅い。
 花弁が命中した信徒は、急激に速度を落とした。傷そのものは微少。だが、何故か、その花弁が命中した部分に――鐘が。ウェディング・チャペルの鐘が張り出し生える。重量バランスが崩れ、転倒するものも出る。
 それを見ながら、ショコラは手を上に上げた。花弁は彼女の手の中に集い、再びバットとして凝り固まる。花柄に染め抜かれた可愛い可愛い釘バット。SNS映えしそうな『女子力』。
「そぉれっ」
 ごおぉぉぉおん……ごおおぉぉん……
 チャペルならぬ平野に、場に似つかわしくない鐘の音が響き渡る。一打ごとに血飛沫が舞い散り、肉を打つ鈍い音ではなく祝福の鐘の音が連ね鳴り渡る。信徒らも、思わず踏鞴を踏む異様。最初に彼女自身が言ったとおり、その攻撃には一切の情も容赦もない。鐘を生やした信徒が、藻掻きながら逃れようと地面を這いずるのを、振り下ろした釘バットで無慈悲に粉砕。また血飛沫。地面で塵に変わる信徒。
 幸せの象徴に見えたウェディングドレスは、裾が既に朱く掠れ……
「さぁ、次は誰?」
 まるで、笑顔は死神のそれとすら見えた。
 彼女は前進する。歩く道には飛び散った血のレッドカーペット。
 白いウェディングドレスを靡かせて、満島・ショコラは鮮紅のヴァージンロードを往く。

「以前は罪の無い人たちだったのかもしれませんが、こうなってはどうしようもありませんね……せめて手を汚す前に介錯するのが、情けかもしれません」
 惨状を見渡す九十九曲・継宗(機巧童子・f07883)は苦々しく口にする。もとより死体が再動したものと聞く。改めて斬ろうとも、これ以上誰が死ぬわけでもない。彼は地を這う如く低く構えると、足に仕込まれた車輪を最大出力で回転。その前進トルクを踏みしめた足に余さず受け、まるでレースカーのロケットスタートめいて踏み込んだ。
 すかさず抜刀。小柄な継宗の身体は、低姿勢に駆けることで敵の攻撃しやすい高さを外れる。彼本人の脚力に加えて車輪による加速だ。敵が当たると思って振り下ろしても、鉄球が落ちる前に継宗はその下を駆け抜けてしまう。足に斬撃、敵の動きを封じる。左右の車輪の回転速度を調節、芸術的なターンと同時に倒れた敵の首を過たず撥ねて落とす。
「早業には、少し自信がありますので」
 少年らしくも凜とした声。不快げに呻く信徒達。
 モーニングスターによる攻撃はほぼ無効と見たか、信徒らは継宗に向け距離を詰めるのをやめ、邪神の歌声をその身に纏う。不協和音が空気を揺らし、ともすれば揺れた空気のあまり夕日が歪んで見えるほどだ。
 数体の敵が一斉に身体を反らし、絶叫を発そうとする。しかして、継宗はその前に踏み込んだ。縮地めいた踏み込みと伸び上がるような一閃。夕日をバックに首が舞い、噴血が地面に影を落とす。一体斬ればもう一体。それが倒れる前にもう一体。縦しんばその後に数体が叫んだところで……音がもっとも効率よく伝うその直線上に、継宗の姿はない。叫びを上げた信徒の胸から、『風魚』の切っ先が突き出て西日に光る。回り込んでの一衝き。影すら落とさぬ韋駄天の技。
「御免」
 抜いた刀を血振りする継宗。倒れ伏した敵はそのまま塵と化す。
 穢れた血の一滴すら浴びぬまま、継宗は駆け抜けた。その技の冴え、早業、まさしく剣豪のそれである。
「お嬢様は――」
 もう一つ、彼の驚嘆すべき部分は、そうして戦いながらもレイラから目を離していないことだろう。
 いざとなれば駆け抜け、援護をするつもりでいた為だ。しかして、すぐにその必要もないことを知る。
「楽しそうにしていますね」
 心配するまでもない。
 レイラ・ツェレンスカヤの行進は、盤石に、残酷に、全てを潰しながら行われていた。


「うふふふふ、うふふ! レイラの槍は、一切合切、全ての信徒を串刺しにするのだわ! 信徒も、信徒に変えられた子も! 何もかも、誰も彼も、一切合切を貫いて晒してあげるのだわ!」
 レイラ・ツェレンスカヤは魔王。
 歴史に於いて、数百の敵兵を串刺しにし、晒したかの王を想起させる。
 金の瞳は相手の命が燃え落ちるところだけを見ている。
「レイラに逆らうことは許されないのだわ!」
 十数体の敵がレイラに向けて飛びかかる。嬌笑を上げながら、魔王は地に血の槍『チェルノボグ』――を突き立てた。ぼこり、と地面が隆起し、四方八方に槍の穂先が飛び出す。飛びかかった信徒はそれにまとめて貫かれ、オスマン帝国兵めいて宙でだらりと骸を晒す。骸から、血の槍を通じて血液――生命力が吸い上げられ、瞬く間に干からびる。レイラは使った己の血を、――或いは傷を負えば流した血をそのように補填する。
 むろん、槍を掻い潜り彼女に至ろうとする敵もいる。しかし、振り下ろされた鉄球をレイラが回避することはない。何故か。
 そんなことをせずとも、彼女に攻撃が届くことなどあり得ないからだ。
「ヒヒ。お嬢の命令だからナー。クロコも遊びにきたゾ! 遊び相手にしちゃちょっと退屈かもだけどナー、お前」
 一体の――一人のブラックタールが『バウンドボディ』により身体を変形し、即座に割り込み攻撃をガードする。クロコ・メランコリ(ブラックスライム・f04482)だ。傷を恐れず、血を美しいものと捉えるレイラは防御に全く気を払わないということを、クロコはよくよく知っている。
「お嬢は防御とか全然しないからナー、クロコが守ってあげるんだゾ!」
 彼女は常にレイラの近くを侍り、彼女に届きそうな攻撃を受けるブロック役。そして、
「――!」
 声無き咆哮が轟き、レイラの影から巨大な狼の顎が這いずり出て信徒を噛み砕いた。美月が彼女の影に潜ませた『白影』なる名を持つ狼である。鉄壁にして、まさに無敵のコンビネーション。
「ホントはね、レイラはこのまま素敵な血と絶叫の宴を見るのも、素敵だと思うのだわ! でも、これだけの戦力を投入して、目的を果たせずに倒れる無様な敵の首魁を見る方が、とっても楽しそうかしら!」
「ウワー、お嬢、言ってることがクロコの身体より真っ黒だゾ」
 誰かさんが危惧していた通りである。天秤はどちらに傾いてもおかしくない。
「……お嬢様、お戯れは、ほどほどに」
 車両からの視線を敏感に感じ取りつつ、金髪金眼の女性が窘めるように言う。時計塔・ケイト(大きなのっぽの・f00592)だ。別段、人間の個体ごとの生死に興味があるわけではない。しかし、殺戮を旨とし、鏖殺を尽くして邪神を呼び出すのを本懐とするような輩をのさばらせるのは、彼女の主義に反する。
 生真面目な彼女は、ツェレンスカヤ家に座す大きな柱時計のヤドリガミにして、彼女に使える優秀なメイドでもある。こうした荒事、面倒事、レイラが思いついて行動をする全ての道楽に関して巻き込まれ続けてきた苦労人だ。
「一度やると仰ったら決しておやめにならないのは存じ上げておりますが……それでも傷を受けるようなことは避けて頂きませんと」
「噴き出す血と飛び散る肉は綺麗なのだわ。レイラのものだって、例外じゃないかしら!」
 レイラは踊るように敵の前に身を晒す。モーニングスターを回避、浴びせられる心を削る絶叫に瞳を蕩けさせながら、手に持った槍を振るう。敵が幾体も飛び散り、レイラ自身も、或いはそれを望んでのことか、鉄球で傷つき、耳から血を流す。
「あーッすぐ勝手にそうやっテ! しっかり守りたいんだから、言ってから動いてほしいんだゾ!」
 突出した敵に対応するようにクロコは身体を二つに分けた。片方が今まで通りレイラの傍で機敏に動き、鉄球をその柔らかな身体で撥ね除けてレイラをガードしつつ、もう片方が小さな身体で器用にロングボウを構える。地面に水平に近く構えた長弓より、嵐の如く矢を連射、迫る信徒らを射貫いていく。車内のように人が密集した環境であればともかく、野外であればその辣腕を振るうことになんの支障もない。
「お戯れは程々に……と、申し上げましたよ。お嬢様」
 ケイトは少しだけ叱る風に声を落とした。――鐘の音が響く。それはショコラが鳴らした敵の断末魔ではない。
 その場のツェレンスカヤ・ファミリーが、皆幾度も聴いたことのある――柱時計の鐘の音だ。
 時計塔・ケイトは謳うが如く朗々と言う。彼女はツェレンスカヤ家に買われた柱時計。彼女の本性がその鐘の音を謡う。
「我が身は世界樹の枝より作られし柱時計。さあ、佳くお聞き下さいね、お嬢様。鐘の音を聞きますれば、時計の針を巻き戻し、負傷する前に戻しましょう」
 鐘の音は響く。レイラの傷ついた鼓膜が音を拾い、鉄球によって負った傷も、損壊した鼓膜も、巻き戻るが如く癒える。
 ぱちぱち、と目を瞬いたあと、振り向いたレイラとケイトの目が合う。ケイトの眦がやや尖っているのを見て、レイラは小言を厭うかのように耳を塞いだ。なんなら武器から手を離してまで。
「お嬢ー! 前見てほしいんだゾー!」
 クロコは訴え上げながら攻撃を弾き矢を射る。遠距離を弓でカバーするクロコの半身、そして打撃をパリィしてレイラを守護するもう半身。近接した敵を白狼が食い千切る。クロコの悲鳴をよそに、レイラは頬を膨らませたままだ。
「……お嬢様」
 嘆息と共に窘めるような声をケイトが上げると同時に、明るい声が割り込んだ。
「まぁまぁまぁまぁ、レイラお嬢様が自由なのはいつものことじゃない、許してあげなヨ」
 あっけらかんとした調子でケイトの肩に手を置くのはラメール・ウルラート(ハートフルカラフルワンダフル・f05821)。レイラの招集に応じてやってきた猟兵の一人だ。彼女もまたヤドリガミ――かつて世界を股にかけ、あらゆるものをキャンバスに描き染め上げた画家が振るった筆の――である。かつて自らが塗りたくり、染めた世界と同じほど明るい声でラメールは言う。
「お嬢様が無茶しなければいいんだよネ。ボクが請け負うヨ」
 軽い口調で言うと、ラメールは迫る次なる敵の群れに向け進み出た。邪神礼賛の歌を纏い、高速で迫り来る敵に向け、彼女は大きな筆を構える。
 自認するとおり、彼女は荒事向きではなかったが――敵の威力を削ぐことに関しては優れている。
「そんじゃア、芸術ってのを一つご覧にいれようカ!」
 ステップ。敵の群れに向けて駆け、彼女は筆を振るった。その筆先に絵具が勝手に滲み出し、穂先が紫に染まる。
 その紫は、かつて彼女が塗った宵闇の色。誘い、蝕み、侵し、惑わす、魔性の甘き毒の色。筆から滲む絵具を飛沫の弾丸として敵陣に撒き散らし、染まった地を踏んだものも、或いは絵具に直接に触れた者も、一切合切を盛大に、猛毒に染め上げ、敵陣そのものを前衛的なアートに作り替えてしまう。仕舞いに響くは喰らった毒に苦しみ呻く信徒らの声。
 これぞ『極彩式壱号画法・乗算』。猛毒の紫は、敵の全てを染め上げてその身を冒す。
「生きてる人もまだいるかも知れないシ、一応痺れさせる程度に加減はしたけド――」
 それはラメールがした最低限の配慮だったが――おそらくは不要だろう。鏖殺された肉から作られた死者の葬列が、歩いているだけだ。他の猟兵らから漏れ聞こえた情報を統合する限りは。
 そして、それが真だったにせよそうでなかったにせよ。彼女らの主が、群れが喰ろうた毒に悲痛に呻くところを、楽しまぬ訳がない。
 目を輝かせたレイラは、『白狼』を影から呼び出すと、その背に跨がって槍を地から引き抜いた。
「うふふ――さあ、もっと泣いて、這いずり回るのだわ!」
 白狼が跳ね、その上でレイラの小さな身体が躍る。弾丸の如く敵陣に駆けるレイラ達と、慌ててそれを追いかけるクロコを見てラメールはたはは、と笑った。
「ありゃー。焚きつけちゃったかナ」
「……」
 ケイトは額に人差し指を当て、瞑目した。
 苦労人の苦悩をよそに、レイラが振るう槍は血風を起こす。――巻き起こるは鏖殺。蹂躙。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●打ちてし止まぬ、我楽多の声
 停止した生贄特急の周りで発生した戦闘は、大勢を決しつつあった。
 日は最早落ちかけ、宵闇が空を染め出す。黄昏は終わり、やがて夜が来る。
 
 猟兵ら全員の活躍により、残り少なくなった黄昏の信徒。
 後方にて防戦していた猟兵らが、余裕が出るにつれて前進し出す。最早その勢いを止めることは出来はしない。
 
 ――理不尽を砕くために走り続けた猟兵ら。
 かれらが生贄特急に辿り着き、それからの死者は――ゼロだ。
 誰一人が欠けても、後方で死者が出たことだろう。
 これは奇跡に似た逆転劇だ。絶望的な状況を、彼らの力がひっくり返した。
 
 最後に、一人の猟兵にカメラを絞り、この逆転の嚆矢の結びとしよう。
アリン・フェアフィールド


電車を止めてくれた人達、ありがとう……!!
街に突っ込むことにならなくてよかった。
でももうこんなに…こんなにたくさんの人が連れて行かれちゃったんだ。
……ごめん。わたし達は一緒には行けないよ。

わたしはこのまま六号車付近で、抜けてくる信徒達を後ろの車両に進ませないように食い止める!
スクラップを広げて通せんぼするだけじゃ外に出られちゃうから……殴って止めるしかないよね。
【スクラップ・ジャイアントの手】センジュ・ガトリングモード!
降ってくるモーニングスターごと、無数の拳で砕いて跳ね返す!
こっちが砕かれたって、何度でも!

大丈夫、わたしだけじゃなくて皆がいるから。
わたしはわたしの眼の前のことを全力で!



 停止した生贄特急の横、走り抜ける多数の猟兵と共に、アリン・フェアフィールド(Glow Girl・f06291)は駆ける。
(――みんな、ありがとう)
 アリンは、未だ名も知らない、この戦場で見えた全ての猟兵に感謝する。
 この場にいた全ての猟兵の行動が奇跡的に噛み合い、生贄特急は停止した。猟兵らが己が最善を尽くした結果である。もう、街にこの列車が突っ込むことはない。
 これ以上の犠牲はない。それに胸をなで下ろすと同時に、アリンは胸に鈍い痛みを覚える。
(――ああ、でももうこんなに……こんなにたくさんの人が連れて行かれちゃったんだ)
 黄昏の信徒は、人間の死体から生み出される。今まで、何体を倒しただろう。自分一人で倒した数すら最早曖昧なのに、それがこの人数の猟兵ぶん顛末があるとすれば、最早合計で何体なのか、想像も付かない。
 数十体が前方から迫り来る。アリンの耳には、彼らが発する奇声が、呪いの声のように聞こえる。
 ――何故私達だけが。私達が何をした。お前達も死んで、私達と同じになれ。そうでなければ不公平だ。何故私達だけが死ぬのだ。望まぬ黄泉路を往かされるのだ。こんな理不尽があるものか!
 呪いの声が聞こえる気がする。アリンは、悲しげに目を伏せた。理不尽を許せぬ思いも、死者の呪いも理解出来る。けれども彼女は猟兵として、この場を預かると決めたのだ。
「……ごめん。わたし達は一緒には行けないよ」
 胸を穿たれる思いで、アリンは絞り出す。彼女の左腕――スクラップ・ジャイアントの手が、オイルの切れたギアのような音を立てて組み変わる。
「センジュ・ガトリングモード!」
 スクラップ・ハンドが、センジュの名の通り、無数の拳を実装する。アリンは六体からなる敵の信徒グループに目掛け疾走。
 苦しまぬよう、せめて迷わぬように葬送ることしか出来ないけれど。
 アリンは、己に出来ることをただ、全力を以て実行する。
 敵が振りかぶったモーニングスターを、アリンは渾身のスクラップハンドによる連打で砕く。
 打ち払い、砕くうちにスクラップハンドも崩壊していくが、その度にスクラップハンドは有機的に部品を組み替え、同等の性能を保ち続ける。
 文字通り回転式機関砲めいて放たれる拳の弾幕が、武器が砕けて踏鞴を踏む信徒らを猛撃し、その身体を打ち砕いた。アリンはスピードを落とさぬまま、前方へ疾駆。次なる敵も砕きながら、決然と前方車両を睨む。

 ――もう、こんな悲劇はお仕舞いにしよう。
 暮れ落ちる黄昏は終わり。最後の戦いへ、アリンは駆け抜けていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『膨らむ頭の人間』

POW   :    異形なる影の降臨
自身が戦闘で瀕死になると【おぞましい輪郭の影】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    慈悲深き邪神の御使い
いま戦っている対象に有効な【邪神の落とし子】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
WIZ   :    侵食する狂気の炎
対象の攻撃を軽減する【邪なる炎をまとった異形】に変身しつつ、【教典から放つ炎】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●生贄特急、終点
「ギイィーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!! よくもよくもよくもよくもよくもォーーーーーーーーーッ!!! 我が積み上げた功徳が!!!! 我が神より賜りし軍勢が!!! 貴様ら如きに!!!! 薄汚い畜生風情に!!!! 許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せんーーーーーーーッ!!!!!!!!!!!!!!!!」

 生贄特急の先頭車両から、邪悪なる触手が溢れた。
 異形の頭を掻き毟りながら、天を仰ぎ、識別名『ポップヘッド』は絶叫する。

 絶叫と共に、一号車は内側の触手の圧力によりべぎぎぎ、と音を立て崩壊。屋根が、壁面が、まるで牛乳パック工作めいて吹き飛び、轟音を立てて地に落ちる。床面しか残らなかった先頭車両の、その最先端でポップヘッドは猟兵らを待ち構えている。
 大量の悍ましき触手は、ポップヘッドが呼び出したもの。その威圧、異様、共に生半ではない。

「殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺す殺すゥーーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!! 只で死ねると思うな腕を落とし足を落とし死なぬ程度に括り耳を穿り目玉を啜り上げ!!!!!!!!!! 我が神の供物としてくれるゥ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 辺獄の炎を纏い、ポップヘッドは自らが召喚した触手に乗って、ゆらりと浮いた。
 ――それは、恐ろしいものだった。
 一車両を埋め尽くし、破裂させるほどの物量を持つ触手。それを自在と操る怪人。
 おそらくは、押し寄せたあの五百体の信徒らを合わせたよりも、遥かに強い力を持つだろう。
 しかし。

 猟兵らの目に絶望はない。彼らの思いはただ一つ。
 ――生贄特急をここで終点とする! 死ぬのは、お前だ!!
マグダレナ・ドゥリング

怒ってる怒ってる、折角だし、ちょっと利用してみようか?
伏兵の警戒も兼ねて、僕は乗客の傍で端末の操作をしていよう

まずは【エレクトロレギオン】を回収、再展開、態勢を立て直す
大勢での戦いの基本は広い視野だ。【ハッキング】を継続、防犯カメラの視界で味方の攻撃のタイミングを把握する
【エレクトロレギオン】は左右に分けて電車の外へ、外を回って待機させる
防犯カメラで把握した他の猟兵の攻撃のタイミングに合せ別の方向からの攻撃で集中力を削ぐ
破壊された【地形の利用】をして、瓦礫の影に隠して奇襲することもしよう
とにかく、相手への嫌がらせに徹する。
冷静にさえさせなければ、後は心配する要素は無い。彼らは勝つだろう。


ヴィクティム・ウィンターミュート
◎【MM】

おーおー、怒りで頭も膨らんじまうってか?ま、安心しろよ。すぐ萎ませてやる。列車の次は――テメェをハックしてやるよ。

俺はサポートをメインで行う。戦闘に参加しながら、ポップヘッドが使うユーベルコードを【見切り】でよく観察して、【情報収集】しよう。得られたデータを解析し、ユーベルコードの成功率を可能な限り上げる。
奴のユーベルコードの悉くを相殺して【時間稼ぎ】するぜ。
「異形なる影の降臨」で出てきた奴ぁ、本体と同じ攻撃方法を使うんなら…解析したデータが活きる。影の攻撃を【見切り】、【早業】で相殺し続け、本体を殺しきる【時間稼ぎ】にシフト。

頼むぜ主役ども。影と踊るのは――同じ影の役目だ。だろ?



●ジャミング・ウィズ・ウィンターミュート
「ふふ――怒ってる怒ってる。見えてるよ。全部ね」
 マグダレナ・ドゥリング(罪科の子・f00183)は、多くの乗客を乗せたままの十二~十三号車連結部で、万一に備え待機を続けていた。
 彼女は列車に搭載されたカメラを通じて怒り狂うポップヘッドの様子を観察している。戦いは、アツくなったら負けだ。優秀なクラッカーとして慣らしたマグダレナは、それをよく知っている。
「怒りと慢心は敗北の元だ。――さあ、おいで。もう敵の生き残りもいないだろう」
 彼女は自分の『エレクトロレギオン』を回収。制御された精密な軍隊のようにエレクトロレギオンは各車両連結部から抜け、彼女の元に馳せ参じる。
「念のために言うけど、今度は動かないでね。今、先頭車両で敵のボスを片付けるところだよ。すぐに終わる」
 乗客らに軽く声をかける。先程は独自に逃げる者もいたと言うが、今度はその様子もない。ひとまず安心しながら、彼女は自分のエレクトロレギオンを全て、先頭車両に飛ばした。八十体の戦闘機械が群れを成し、前方車両へ飛ぶ。
 カメラを通して得た情報を元に、エレクトロレギオンを遠隔操作して他の猟兵の攻撃の隙を作る事を、彼女は選んだ。
「じゃあ、始めようか」
 マグダレナはコマンドをハンドヘルドコンピュータに叩き込み、エレクトロレギオンを展開した。
 四方八方に散り、小型の戦闘機械はポップヘッドの死角に回り込んで小型機銃で攻撃する。五.五六ミリメートルの小口径弾がポップヘッドの身体に刺さる。それはそこまで大きなダメージとはならなかったが、しかしイラつくのには間違いないだろう。
 ポップヘッドが暴れ、触手を振り回せばそれをやり過ごすように車両の破損した設備の影に隠れ、またすぐに飛び立たせ、攻撃させる。
 冴え渡るマグダレナの手腕。――その視界の隅にメッセージがポップアップ。
『お嬢さん。ガーゴイルは要らねぇかい?』
 マグダレナは、送信者のハンドルを見て、今度は口元を歪めて笑った。

「おーおー、怒りで頭も膨らんじまうってか? ま、安心しろよ。すぐ萎ませてやる。列車の次は――テメェをハックしてやるよ」
 先頭車両。
 そこでは、既に激戦が始まっていた。
 幾人もの猟兵達が自らの技を叩きつけ、触手を削り、或いはポップヘッド本体を狙う中、ヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)はサポートメインの戦闘を行う。
 まずは敵が使うユーベルコードが何かを特定する。
 今発露しているのは、あの触手そのものを召喚するユーベルコード。そして、自身の身体を辺獄の炎で覆い、或いはその炎を投射して対象を焼き払うユーベルコード。攻撃手段とそのパターンを、己と同じ名を持つ大脳埋込型超認識拡張電脳電算機『ウィンターミュート』に叩き込む。
 網膜加工型電脳ゴーグル『ヒラドリウス』から入力された情報は大脳を通り、ウィンターミュートでゼロと一に分解され、情報の海に流れ込む。送信先は、『OK』とだけ返してきたクール・アンド・チルなハッカー――マグダレナだ。
 その瞬間、飛び回るエレクトロレギオンの動きが更に鋭くなる。ヴィクティムが送信したデータを元に、マグダレナが攻撃パターンを改善したのだ。振り回す触手を巧みに回避しながら、マグダレナのエレクトロレギオンが死角から微細なダメージをポップヘッドに与え続ける。
「いい仕事だぜ、チューマ」
 ヴィクティムはデータ蓄積を継続しつつ、ある程度エレクトロレギオンの動きが完成されてきたら、ヴィクティムはより接近。触手を『エクス・マキナ・カリバーン』で切り裂きつつ、
「C'mon! クソッタレ野郎の親玉さんよ、こんなもんかよ! こんなんじゃあいつまで経ってもイケやしねえぜ!」
 挑発の一声!
「ッッギイイイイ!! 貴様ら、どうしても地獄を見たいと見える!! 我が神より賜りし加護を思い知れェい!!!」
 ぶぁん、と音がして、関節がでたらめな方向にねじ曲がった、人間に似た何かが異界より招来される。あれが『異形なる影』だろう。その数三体。
「ッハハ、大盛りってヤツだな」
 この三体で全部かは解らない。だが、
『フィジカル・エンハンサー』を起動。繰り出された攻撃をヴィクティムは素早く回避。
 攻撃パターンを照合。本体と攻撃パターンが合致する。繰り出される炎を続けざまに避け、接近。腕の一本を貰う。
 ――攻撃パターンを蓄積すれば、一人でより多くこの影の相手が出来る。影と踊るのは――同じ影の役目だ。
 ヴィクティムは生体機械ナイフを構え直す。
「――頼むぜ、主役ども。ハッピーエンドはすぐそこだ」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携共闘歓迎】

おーおー、こりゃまたいっぱい呼び出したもんだねぇ。
しかし…ここまで質が悪いんじゃ意味もないさね!
ここは切り札の切り時、だね。
【人機一体】、アタシの相棒と合体するよ!
そのまま変形、メーザーをばら撒いて触手を焼き切りながら
ポップヘッドへそのまま突撃!
もし一緒に突撃する奴がいるんだったら、
アタシに乗ってもらって駆け抜けようじゃないか!

ポップヘッドに肉薄したら高速で機動したままアーマー状態に。
乗ってる奴がいたらそのまま空中に跳び上がらせる感じではね上げる。
サイキックブラストの電撃とメーザーで翻弄してやろうじゃないのさ!


皐月・灯
「はっ、喚くんじゃねーよ風船頭。てめーの神サマもお里が知れるぜ!」

列車を内側からぶち壊すパワー、あの触手の数、どっちも厄介だ。
――当たれば、な!
正面切ってヤツに向かうぞ。
襲い来る攻撃は全て【見切り】で回避だ。

それでもオレを捉えてーなら、痺れるヤツをくれてやる。
《轟ク雷眼》をな!

「どうせ数えちゃいねーだろ、てめーが何人殺したかなんて」

「なら――ありったけでブチ砕くのが、てめーに似合いの作法だぜ!」

両手の魔力回路を全開。【全力魔法】だ。
オレに向かう触手は全て叩き落し、そのままポップヘッドの頭をブッ飛ばす。

――オレのアザレア・プロトコルはな。
てめーみてーな理不尽をブチ砕く、そのための魔術なんだよ!



●猛る翼
「おーおー、こりゃまたいっぱい呼び出したもんだねぇ。しかし……ここまで質が悪いんじゃ意味もないさね!」
 数宮・多喜(疾走サイキックライダー・f03004)は宇宙カブ『JD-1725』のエンジンを唸らせ、アクセル全開。地面に落ちた車体の残骸を使って車体ごとハイジャンプ。まるでモトクロスのように宙に跳ね、
「ここは切り札の切り時、だね。行くよ相棒――『人機一体』!!!」
“O.K. Charge up buddy, Junction DRIVE!”
 その瞬間、JD-1725はパーツ単位で変形、機動装甲――パワード・アーマーとなり、多喜の身体を包み込む!
 空中でアーマーを纏った多喜は、そのまま高出力のメーザー砲で手近な触手を薙ぎ払い着地!
「さあ、行くよ! アタシなら触手を焼きながら、ポップヘッドまで届かせられるっ!」
「なら、乗せてもらうぜ」
 多喜に横から襲いかかった触手が、ば、ば、ばぁんっ!!! 破裂音と共に弾ける!
 スパークを上げる拳。幻釈顕理『アザレア・プロトコル』の三番。『轟ク雷眼』である。触手が、接触するなり流し込まれる高圧の電流によって破裂、ボタボタと地面に汚泥となって落ちる!
「無事だったみてーだな。アンタも」
 皐月・灯(灯牙煌々・f00069)だ。
「皐月!」
 生贄特急に飛び乗るときに邂逅した二人は、この決戦に於いて再び相見えた。多喜はニヤリと笑い、パワード・アーマーのパワーゲインを最大まで上げる。メーザー最大出力、脚部アクチュエータ出力全開!
「派手なドライブになるよ。覚悟はいいかい?」
「覚悟が出来てなきゃ、最初から列車に飛び乗ろうなんて思わねーだろ!」
「あははっ! そりゃ確かに――乗りな、皐月!」
 パワードアーマーの背に展開されるキャリアに灯が飛び乗ると同時に、多喜は全力で地面を蹴った。
「小癪に地面を這いずる虫めェ!! 見仰ぐしか能のない貴様らにィーーーー、一体何が出来るか見てやろうではないかァ!!」
「はっ、喚くんじゃねーよ風船頭。てめーの神サマもお里が知れるぜ!」
 背での買い言葉に、多喜は思わず楽しげに笑った。
「そうだ。アタシ達は虫なんかじゃない。アンタを倒しにきたんだよ」
 ポップヘッドが空中から炎弾を撒き散らす。周囲の猟兵も一斉に回避行動を取るが、多喜は回避しながらそれでもポップヘッドに接近するように前進した。
 触手を避け、踏み潰し、メーザーで焼き払う。それで足りなきゃあ、
「これでも食らいな……!」
 両掌を上げ、『サイキックブラスト』で触手を焼き払う。
「数宮! 右から来てるぞ!」
 高い行動予測能力、即ち見切りの力を備えた灯からの警告に、すぐさま多喜は右へ掌を向け、襲い来る触手を高圧電流で焼き払った。それでも、後から後から沸いてくる。信徒の時の比ではない、文字通り倒せば倒すだけ湧いてくるのだ。
「っく、数が多いね!」
「左はオレに任せろ! アザレア・プロトコルはただぶん殴るだけが能じゃねえ! 《凍尽ク氷囁》ッ!」
 灯が掌を差し向けるなり、彼の周囲に凍気が渦巻く。空中に凝結する氷の楔、その数一瞬にして百を超える。左から迫る触手目掛け、連射、連射、連射! 凍り付いた触手が動きを鈍らせ、侵攻速度を鈍化させる。
 その一瞬の隙を衝いて、多喜は力を振り絞って前進、再充填したメーザーで目の前に迫った触手を焼きながら、地面を踏み切る!
「くうぅうぅうううっ!!」
 強烈なGが多喜と灯を襲う。
「――行きな、皐月!!」
「……ッオオオオオオォォオ!!!」
 ポップヘッドが間近で繰り出してきた炎を、多喜は腕をクロスしてガード。直撃を避けながら落下軌道に入る彼女の背を蹴り、灯が跳ぶ。
 ――こいつは、どうせ何人殺したかも、一切覚えていないだろう。だとするなら。
 ――オレのありったけを叩き込んで、粉々にしてブッ飛ばしてやる!
 魔力、全開。この後に及んで細い触手が飛び来るのを、神速の拳のラッシュで叩き潰し、今一度拳に宿すはアザレア・プロトコル・ナンバースリー。轟ク雷眼――
「オレのアザレア・プロトコルはな、テメーみたいな理不尽をブチ砕く、そのための魔術なんだよ!! 喰らいやがれ、トラロック――ドラアアアアアアアアァァァァイブッ!!!」
 稲妻の螺旋を拳に纏い、弾丸めいたストレートパンチがポップヘッドの頭を捉え、地面に向けて叩き落とすッ!!
「グアアアァアァァァアァッ?! 貴っ……様ァッ!!!」
「虫だなんてナメてるからそうなんのさ。さぁ、続けようじゃない」
 多喜は着地し、触手から距離を取ってにっと笑った。
「何度だって、届かせてやるよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

石動・劒
なんだよ。こんな楽しそうなことやってたのか。
俺も呼んでくれりゃ、ってのは言いっこナシか。こうして傾いたヤツと戦う機会が巡って来たんだしな。

俺は異形に変身した状態を狙うぜ。スナイパーでよく狙って、まとった炎で焼き尽くされねえように水属性攻撃で一矢胴芯を2回攻撃で援護射撃する。

悪いな、頭の。俺も未知ってのは大好きだが、その変身は看過できねえわ
仲間が傷付くところってのは、どうにも見たくない性分なんでな!

後は仲間に襲いかかったり、仲間の妨害しようとしてくる触手を援護射撃で撃ち落としていくぜ。
攻撃されそうになったら第六感、見切り、残像で躱すか。誰かが守ってくれりゃあ楽なんだがね。




セリオス・アリス
◎◎

功徳?
アレ《黄昏の信徒》が?
笑えねえ冗談はその頭だけにしろよ

欲しいのは一撃でも強く斬る為の力だ
さあ歌声に応えろ、もっと深くだ―…!

勢いをつけ走り込み腰を屈めたタイミングに合わせ足元で旋風を炸裂
電車に乗り込んだ時の要領で跳び上がり
叩きつけるような一撃を
右手で押し込み左手でもう一本の剣を抜き
普段はあんましねえんだけど…光栄に思え
横なぎに一閃
首か腕かを狙って水の属性攻撃で斬りつける
敵を踏みつけ一度距離をあけ

そんなに死にたくねえってか?
お前に殺されてったヤツらも、そう思っただだろうよ
人の話を聞かねえヤツの話なんざ誰が聞くかよ
最大限に魔力を剣に集中
多少の傷は構わねえ全力の攻撃を連続で叩き込んでやる!



●矢嵐の調べ
「ギキイィィイイィ……!! 小癪な真似をするゥ、この程度で我が業、我が功徳、砕けると思うなァ……!!!」
 触手がのたうち回り、地面に墜落しかけたポップヘッドを受け止める。数の減った触手をすぐさま再度異界より招来。それは文字通り無尽蔵だ。猟兵らの顔に再度の緊張が走る。しかし、
「なんだよ。こんな楽しそうなことやってたのか」
 ザッと草履が土を蹴り、紋付きの陣羽織をはためかせ、意気軒昂と楽しげな声を上げる猟兵がいる。
「俺も呼んでくれりゃ、ってのは言いっこナシか。こうして傾いたヤツと戦う機会が巡って来たんだしな」
 立てば弓射、座れば居合、殺め続ける剣の鬼。
 石動・劒(剣華上刀・f06408)が立っている。今日は刀ではなく、短弓を構えて顎を手で摩る。
「斬り込んでみたいのは山々だが――もっと行きたがってるヤツがいそうだし、一つ弓をご披露といくかい」
 劒はちらりと横合いに目をやる。そちらから痛烈な殺気が伝わってきたのだ。劒の視線の先にいたのは、セリオス・アリス(黒歌鳥・f09573)。彼はその秀麗な眉目を怒りに歪め、刃にすら似た声を吐く。
「功徳? あの信徒たちが? 笑えねえ冗談はその頭だけにしろよ、テメェ」
 セリオスは己の怒りを全て、その剣に籠める。歌い上げるは『青星の盟約』。
「星に願い、鳥は囀ずる。いと輝ける星よ、その煌めきを我が元に――さあ歌声に応えろ、力を貸せ。深く……深く、深く、もっと深くだ!!」
『根源』の魔力を纏うセリオス。その力は、ともすれば己の寿命を縮めかねない諸刃の剣だ。しかし、それでもこいつは許せない。葬った全ての信徒が、あの下衆野郎の「功徳」とやらのために死んだとするなら。奴を両断して、手向けとせねば嘘だろう。――この敵を、断つ。そのためだけに、セリオスは魔力を練り上げる。
「そこの! その剣、相当に使うと見た! 俺が矢を射掛ける、一つ博打に乗らねえか!」
 劒が投げかけた声に、セリオスは一も二もなく頷いた。可能性が少しでも伸びるのなら、協力でも何でもするさ。
「いいだろう。タイミングは任せる」
「よしきた!」
 劒は矢筒から矢を抜き、番えて引き絞る。紅白に染め上げられたその矢は、一目で破魔矢とわかるものだ。
「畜生共が這いずって馴れ合いおってからにいいぃぃい、潰れろ!! 潰れて死ねぇいィ!!!」
 ばららら、と教典がひとりでに捲れ、空に暗黒の門が開く。他の猟兵が対応に当たっている、悍ましい輪郭の影――それがまた一つ、召喚されかかる。しかし、
「悪いな、頭の。俺も未知ってのは大好きだが、そいつは看過できねえわ。――そいつが降りればまた面倒が起きるんだろう。仲間が傷付くところってのは、どうにも見たくない性分なんでな!」
 産み落とされようとしている異形のその中央、まさにど真ん中を、劒が一瞬で放った七本の破魔矢が射貫く。どぱあん、と汚泥を散らすが如く空中で飛び散る異形の影。動き出す前に最大火力を叩き込み、殺してしまえば、面倒は起こらない。実にシンプルな解を見せ、劒は強い声でセリオスの背を押した。
「征けっ! 走れ、剣の!」
「セリオスだ!」
 セリオスは、名乗りながら駆けた。彼に横から襲いかかる触手を、劒が放つ破魔矢が次々と射貫く。その矢の腕はまさに一級、一呼吸で二度放っているかのような速射である。助走は充分、セリオスは剣から風の魔力を放出し、地面に叩きつけ、その反動でロケットのように跳躍する。高度は充分。ポップヘッドへと肉薄し、セリオスは剣を振りかぶった。
「喰らえぇッ!!」
 放つは水の属性を帯びさせた剣の一撃。しかし、
「その程度ォ!!」
 敵が合わせるように招来した触手が、斬撃を阻む。全てが筋繊維で構築された、高密度の肉の塊だ。それが一時に数本、防御に回る。いかな切れ味の刃物とて、全ての鋭断は容易ではない。
 判断は、一瞬。
 セリオスは剣の表面に露を流し、触手の肉に食い込んで止まった剣を引き抜きにかかりながら、何も無い中空で足の裏で風を炸裂。触手を蹴り飛ばしながら剣を引き抜き、旋風のように一転、
「特別に見せてやる。光栄に思え」
 空いた左手でもう一本の剣を鞘から払い、そのままの勢いでポップヘッドの首を薙ぎ払った。――その一閃、まさに、『星の瞬き』。右手の『青星』と合わせ、更に四合の斬撃を叩き込む。落ちるまでの、ほぼ一瞬で、である。
 落下機動に入る前に触手を蹴り放し、セリオスは襲い来る触手を蹴って、風を足下で炸裂させながら後退。着地するなり、剣の切っ先を遠き敵に向ける。喉を押さえ苦悶する敵に、侮蔑の色を籠めて言った。

「そんなに死にたくねえってか? お前に殺されてったヤツらも、そう思っただだろうよ。――今度はお前の番だぜ、精々、無様に泣き喚け」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティアー・ロード


「おーおー、醜いヴィランだ」

遠目で確認できそうだね
怪人の様子を見つつ信徒の駆逐を完全に確認して
乗客の安全を確保してから先頭列車へ向かうよ

使用UCはブラッドガイストです
装備品のブーツやグローブ、それからマントを
鋭利な形状へと変化させて強化するね

「ブラッディ!捨て身キィィック!」
開幕はダッシュで戦場へと駆けつけ
ジャンプして全力のヒーローキックを叩きこむ!

「遅れてすまない!私は涙の支配者、ロード・ティアー!
乙女の皆はぜひ覚えておいてくれたまえ!
おっと、ポジションはヒーローです。」


「多くの乙女を信徒に変えたその罪は重いぞ!」
戦闘は常に捨て身の肉弾戦を仕掛け
殺戮捕食形態の装備品の力でヴィランを屠ります



●ブラッディ・ティアーズ
「おーおー、醜いヴィランだ」
 ティアー・ロード(ヒーローマスクのグールドライバー・f00536)は遠目に敵を見て、やれやれと肩を竦める。
 彼女は車両に残存する信徒がいないことを確認しながら前進してきた。その彼女の耳にさえ届く大音声で、敵が喚き散らすのが聞こえる。
「おっと、失礼」
 はぐれた信徒を一体発見。翻したマントが、端に血液を帯び――鋭利な刃物と化す。『ブラッド・ガイスト』による血液硬化・武装化だ。信徒の首が跳ね飛び、おそらくは正真正銘、最後の一体が塵と化す。
「このヒーローの目は誤魔化せないよ。さて――遅参だが、ヒーロータイムといこうじゃないか!」
 速力を上げ、ティアーは走る。三号車の横を駆け抜け、二号車を抜き、跳躍! 触手を蹴って三段ジャンプ、空中で一転、ひねりを加えながら流星のように落ち、右脚を突き出す!
「ブラッディ! 捨て身キィィック!」
 宣言通り、まさに単身捨て身の流星脚!
「次からァ次へとぉ……!! 糞にも劣る劣等種がァッ!!」
 ポップヘッドは首回りを赤黒い血で濡らしながら吼えた。おそらくは誰かが有効打を加えたのだろう、とティアーは推察する。いい流れだ。彼女は左の口端に、皮肉っぽい笑みを引っかけた。
 ポップヘッドをすぐさま守る触手。まともに蹴れば脚が埋もれる。右脚を引き、その勢いで身体を振って、左脚を斧のように振り下ろす。運動エネルギーにより触手を鋭断。そのままの勢いで、ポップヘッドの腕を鋭利な踵で抉る!
「ギヒィイィィイッ!?」
「浅いか。――しかし、一太刀!」
 ティアーはクレバーな戦闘展開を見せつつ、耳障りなポップヘッドの言葉には応じぬまま、襲い来る触手を蹴り放して二号車の上まで後退。天井に着地するなり腕を組む。
「遅れてすまない!私は涙の支配者、ロード・ティアー! 乙女の皆はぜひ覚えておいてくれたまえ! おっと、ポジションはヒーローです」
 抉られた左腕の苦痛に悶えるポップヘッドに、指を真っ直ぐに向けながら、
「多くの乙女を信徒に変えたその罪は重いぞ! ここで果てるがいい!!」
 ティアーは己の四肢にブラッド・ガイストを巻き付ける。今一度電車の天井を蹴り、吶喊!

成功 🔵​🔵​🔴​

ノノ・スメラギ
全く、実に、実にくだらないなキミは!
最後に残った仕掛け人ならばせめてもう少しでも鷹揚に構えて見せたらどうだい?
まったく、信奉する信者がその体たらくでは信奉される自称カミサマのお里が知れるというものさ!

さて、それじゃあ、戦いの時間だ。瀕死になるとどうやらより強力なものを降ろしてくるようだから、適切なタイミングまでVMリアクターの力を溜めて、他の猟兵と協力して一気に畳みかけてやろうじゃないか。(技能:力溜め、戦闘知識)
ここぞというタイミングがつかめたら、VMAXランチャーを連射しながら突撃して、アックスフォームの一撃をその膨れた脳天に叩き込んでやるさ!(技能:怪力、捨て身の一撃、2回攻撃)


アウレリア・ウィスタリア
【空想音盤:追憶】を起動
ネモフィラの花と共に一陣の嵐となって突貫する

「只で死ねると思うな」ですか
それはこちらのセリフです
ボクは復讐者、これまでお前が害した人々のため
ボクの「敵」としてお前に復讐しましょう

空に舞い上がり
花びらの嵐と共に急降下
触手を引き裂く

狂気の炎も異形の邪神もボクの復讐の前には障害になり得ない
例え花びらが炎に焼かれようとも
その焼けつく嵐の中から拷問具たる鞭剣を振るい
一筋の風となってその無駄に大きな頭をのせた首を切り裂いてみせる

アドリブ歓迎◎



●空より、斬撃二閃
「全く、実に、実にくだらないなキミは! 最後に残った仕掛け人ならばせめてもう少しでも鷹揚に構えて見せたらどうだい?」
『VMリフター』により宙に浮き、高速での機動戦を仕掛けるのはノノ・スメラギ(銃斧の騎士・f07170)である。
「まったく、信奉する信者がその体たらくでは信奉される自称カミサマのお里が知れるというものさ!」
「我が神を愚弄するかァ、貴ッ様ァアァアァアァ!!」
「人を殺せば喜ぶそのお前の『神』とやらは、畜生以下だと言っているんですよ」
 ノノの隣に舞い上がりながら、アウレリア・ウィスタリア(瑠璃蝶々・f00068)が言葉を継ぐ。
「言いましたね、『只で死ねると思うな』と。それはこちらのセリフです。今この時より、ボクは復讐者。これまでお前が害した人々のため――彼ら全てに成り代わり、お前の『敵』として応報します」
「畜生??!?!? 畜生以下??!? 溝鼠にも劣る下等種が、信心も持たぬ凡愚共が?!! 言うに事欠いて――!!!!」
 元より紅い頭を更に真っ赤にして、ポップヘッドは己の傷を癒すと同時に周囲の触手を更に増やす。メキメキと音がし、その足下の、かつて一号車だった床が重量のあまり潰れて崩壊する。
 それにも構わず、ノノは隣に舞い上がったアウレリアを賞賛するように快活に笑った。
「いい口上だね! それじゃあ、共闘と行こうじゃないか!」
「はい。それじゃあ、先手を貰います」
 薄く笑い、アウレリアは急降下。彼女の周囲を覆うのは、ネモフィラの花弁の渦。花嵐が如く吹き荒れる、鋭利な花弁の刃風を纏い、彼女は敵に向けて一直線に急降下する。
「死ね!! 今すぐ死んで我が神への供物となれェッ!!」
「お断りです」
 プロレスラーの腕ほどの太さを持つ触手が繰り出される。それを紙一重で避けながら、身に纏う花弁の嵐でズタズタに引き裂き、アウレリアは羽撃く。落下の勢いも合わせ、真っ直ぐに敵に突っ込む。
 放たれる狂気の炎を花嵐で掻き消し、焼けたネモフィラの花弁が悲痛に焦げる香りを散らすのを追い越して、まっしぐらに。
「悍ましい触手も、狂気の炎も、異形の邪神も、ボクの復讐の前には障害になり得ない」
 繰り出される数本目の触手の側面を蹴り飛ばし、アウレリアは空中で身を翻す。繰り出すは鞭剣『ソード・グレイプニル』。神話に於いてフェンリルの脚に嵌められた、その足枷の名を持つ鞭剣が伸び、ポップヘッドの身体に巻き付く!
「グッ?!」
「……引き裂け!」
 アウレリアは落下の勢いを緩めずに、鞭剣を引きながら落ちた。巻き付いた鞭剣がポップヘッドの身体を裂き、その身体から血を飛沫かせる!
「ガアアアァァアァァッ!!」
「VMリアクター、チャージ・コンプリート!」
 その機を逃すノノではない。触手による防御が緩んだ瞬間、ノノは『VAMXランチャー』にエネルギーをフル装填。VMリフターをフル稼働、空中から弾丸になったかのような勢いで、錐揉み回転を加えながらVMランチャーを連射する。放たれる弾雨はまさしくビームの渦だ。巻き込まれたポップヘッドの身体はビームによって削られる。苦鳴すら、射撃音と着弾音に巻き込まれ埋もれていく!
「VMAXランチャー! アックスフォーム!!」
“Ready”
 ノノが吼えると同時に、VMAXランチャーのビーム発振装置が起動。文字通り両刃斧が如きビーム刃が展開される。
「これでも……喰らえっ!!!」
「グアアアァアァッ?!」
 身を捩るポップヘッドの頭を半ば削り落とすように、VMAXランチャー・アックスフォームの斬撃が決まる。勢いを殺さず、ビーム刃で触手を数本斬り飛ばしながら飛び抜けるノノ。削れた頭を押さえながら、ポップヘッドは一際大きい触手の上で踏鞴を踏み、ぐう、うう、と呻いた。
「この程度……この程度で……この程度でえええええ!!!」
 肉の焼けるような臭い。思わずアウレリアは顔をしかめる。肉体が異常代謝し、発熱しているのだろう。断たれ削れた頭が元通りとは言わぬにしろ隆起し、全身に刻まれた傷がジュウジュウと音を立てて埋まる。
「まったく、往生際が悪すぎるな、キミは」
 ノノはターンし、アウレリアと再び並び飛ぶ。ランチャーの筒先をポップヘッドへ向けて、不敵に笑った。
「それなら死ぬまで叩き込むだけだから、関係ないけどね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●乗車位置を調整します
 ポップヘッドは度重なる猟兵の攻撃に苛立ちを覚えたかのように、聞き取れぬ言語で吼えた。
 彼が乗る触手がぞるぞると蠢き、ゆっくりと移動を開始する。車両一台分を遥かに超え、列車の基部を圧壊させるだけの大質量の触手の群れ。猟兵らの攻撃を浴びながら、ポップヘッドはその悍ましき軍勢と共に進軍を開始する。
 ――後方車両。
 すぐに、猟兵達は狙いを看破した。攻撃を加え、その進軍を妨害する。
 
「行かせないわ」

 二号車右。這いずる触手の群れの前、踏み出す銀髪の影、一つ。
レイブル・クライツァ

「察知された時点で、貴方の敗北は確定していたのよ。残念だったわね?」
今から絶叫を貴方の悲鳴で塗り替える時間。
この理不尽な終着点は、滅ぶ事でしか解決しないのだから

沢山の人を恐怖に陥れ、取り返しがつかなくなった人も居る。今生きている事すら許されない事よ。
とは言え、簡単にはいかないことも承知の上。
巫覡載霊の舞で切って、祓って
触手が邪魔なら落とせば良い
教典が邪魔なら切り刻んでしまえば良い
私に出来る事で、他の猟兵の方へ繋げれれば良いのよ。
眼中に無いなら好都合。死角が有るなら容赦なく切り刻み続けるし
逆に気をとられてくれるなら、囮として激痛耐性で乗り切るわ。犠牲になった人達の絶望は、こんな程度じゃないから



●銀閃、暮れに煌めいて
「察知された時点で、貴方の敗北は確定していたのよ。残念だったわね?」
 レイブル・クライツァ(白と黒の螺旋・f04529)は、歌うように言う。
 聞いているのかいないのか、もうポップヘッドは純粋なる怒りと憎悪の塊と化していた。
 聞いていようがいまいが、関係ない。この事件を予知したグリモア猟兵がいた。そして、自分たちがここに馳せ参じた。――ならば奴の敗北は必定だ。
「今から絶叫を貴方の悲鳴で塗り替える時間。この理不尽な終着点は、滅ぶ事でしか解決しないのだから」
 薙刀を構え、レイブルは『巫覡載霊の舞』により『神霊体』と化す。迫る触手は戦車のキャタピラーの如く、目の前にあるもの全てを巻き込み、踏み潰しながら前進してくる。
 レイブルは踏み込んだ。まともに正面から当たれば、あの触手に取り込まれ、潰れて死んで終わりだ。ならばと彼女は薙刀を振るい、衝撃波を投射。地面を噛み踏み出している触手から順に切り崩していく。
「邪魔立てするか、女ァ!!」
「邪魔立て? ――ええそうね。貴方からすればそうでしょうね。貴方、自分がしたことを解っていて?」
 レイブルはギリギリまで衝撃波を連射した後、横に飛んでサイドにも衝撃波を撃ち放つ。連射、連射、連射。防御するように上がった触手を斬り払い、レイブルは眦を刃の如く尖らせる。
「沢山の人を恐怖に陥れてくれた。傷つき――或いは亡くなって取り返しがつかなくなった人も、沢山居るわ。こんな非道を重ねて、未だ罪を上塗ろうとしている。貴方は、今生きている事すら許されない。――私が許さない」
「知ったことかァ!! 貴様には解らんのだ、理解出来るものだけが高みに至れる! 所詮溝を這いずる劣等種よ、せめて我が道を阻まず死ねェい!!!」
 触手が数本、レーザーめいて放たれるのをレイブルは回避。地面に突き立ったその触手の上を稲妻の如く駆ける。
 衝撃波を薙刀から放ち、その炸裂に乗って跳ぶ。
「聞こうとしないなら、聞こえるまで教えてあげるわ」
 レイブルは全力を籠め、振りかぶった薙刀から特大の斬撃波を放つ!!
「ヌグアア、ッアアアアア!!」
 唸るような声と共に、ポップヘッドを守る触手がまた吹き飛び、肉片が吹き荒れる。
 敵の侵攻のスピードが明確に落ちる。触手を防御に回した分のためだ。レイブルは軽やかに着地しながら、薙刀を構え直す。
「貴方は、今生きている事すら許されない」

大成功 🔵​🔵​🔵​

霑国・永一

いやぁ、UDCの狂気が詰まったような奴だなぁ。邪教はロクでもないね

【SPD】
さて、オルタナティブ・ダブル主体で攻めるとしようか。
別方向からタイミング合わせたり、時にずらしたりしてダガーで刺していこうか。【だまし討ち】も併用する感じでね。
落とし子はどうやら戦ってる対象に有効らしいけど、分身と本体の俺は別扱いされるなら有効とされてない方の俺が叩いて潰せばいいか。他の猟兵が居るなら協力するのも惜しまないよ。その場合は分身共々援護をしよう。俺はメインアタッカーというよりは援護向きだしね。
「さてさて、お宝ではないけどシーフらしく命を盗ることにしよう。それじゃ、覚悟して貰うよ」


ティオレンシア・シーディア

ああ、よかった。ちゃんと出てきたわね。
もしこのまま逃げ出すようなら面倒だったもの。
…アンタはここで殺す。アタシが殺す。アタシたちが殺す。
この上に何一つ成す事無く、藁のように死ね!!

●鏖殺で侵攻に邪魔なものを撃ち落としながら攻撃の軌道を〇見切って〇ダッシュで接近。
●滅殺を〇鎧無視攻撃で叩き込むわ。
クロスレンジは正直あんまり得意じゃないんだけど…一発叩き込まないとアタシの気が収まんないのよ。感傷的な感情論だけど。
そう何度もは通じないだろうし、一回ブチこんだら大人しく〇援護射撃に回るわ。

全て終わったら空に向け弔銃を3回。
気休めだけど…やらないよりはいいわよねぇ?
(…口調、ちゃんと戻ってるわよね?)



●ガンヘッド・アンド・ソウルスティーラー
「いやぁ、UDCの狂気が詰まったような奴だなぁ。邪教はロクでもないね」
 霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)はくわばらくわばら、と肩を竦める。
 暴れ回るポップヘッドと彼が喚んだ触手は、地団駄を踏むように周囲を破壊する。二号車が八つ当たりのように潰され、結合部でねじ切れて横倒しになる。
「やれやれ、優雅さも何もあったものじゃないな。ま――冷静さを失ってくれる分には、却ってやりやすいけどね」
 永一は中指で眼鏡のブリッジを押し上げる。その姿が、ぶん、と音を立ててぶれた。『オルタナティブ・ダブル』である。二人となった永一は、周囲で戦う猟兵らに軽く声をかけた。
「「隙を作る。誤射しないようによろしくね」」
 言うなり、二人の永一は左右に、鏡に映したような動きで跳んだ。一瞬前まで彼がいた位置を、巨木のような触手が打ち据え、土を捲れ上がらせる。シーフならではの俊敏さで、襲い来る触手をステップで避けながら、永一はパラコードで自身の身体に繋いだナイフを抜き放つ。巨大な触手は回避一択、人の腕ほどのものであれば斬り払いながら走る。
「誤射? ――しないわよ。だって、直接叩き込むからね」
 応じたのはティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。シリンダーには六発の〇・四五ロングコルト弾。シングルアクション・カスタムリボルバー『オブシディアン』が彼女の指先で踊る。永一が攻撃を引きつけながら走るその後ろを、ティオレンシアもまた駆け出した。
「ああ、よかったわ。ちゃんと出てきてくれて。もしこのまま逃げ出すようなら面倒だったもの、アンタみたいなクズ野郎は、生き汚いって相場が決まっているからね」
 数本の触手が襲う。先行した永一に戦力が割かれ、その攻撃は疎らだ。ティオレンシアの左手がブレて、銃声が響いた。
 ――それは雷轟が如き鉄の慟哭。
 一瞬で六発の銃弾が激発し、空中で触手が弾け飛ぶ。
 シリンダーをスイングアウト。クイックローダーによる再装填。振り戻すと同時にまたも六連射。狙いは精密極まりなく、その全ての銃弾がうようよと揺らめく触手、いずれかに着弾して断ち切る。
「アンタはここで殺す。アタシが殺す。アタシたちが殺す。この上に何一つ成す事無く、藁のように死ね!!」
 ティオレンシアは鷹を思わせる眼光でポップヘッドを睨み据え、吼えた。永一はその怒号を聞きながらも、彼女の銃の技前に口笛を吹く。
「怖い怖い、女の子は怒らせないに限るね、本当。さてさて、じゃあお膳立てをしようか」
「――お宝ではないけどシーフらしく命を盗ることにしよう。それじゃ、覚悟して貰うよ」
 異音同口に二人の永一が言う。彼らは抜いたナイフを投擲し、触手を切り裂く。かと思えば、ナイフから伸びたパラコードをつかみ、ナイフを分銅として振り回した。飛燕の如く空中で永一のナイフが翻り、触手を切り裂いて行く。持ち前の素早さで動き回り、狙いを絞らせない。そうしながらも確実に、二人の永一は落とせる触手から順に落としていく。
「このッ、糞虫がぁああぁあ! 我が神より賜りし落とし子に重ね重ねの狼藉をォ!!」
「そりゃ失礼」
「ただ、心配するなら自分の命の方が先だよ?」
 揶揄するように二人の永一が肩を竦める。ポップヘッドが視線をティオレンシアに戻したときには、彼女は既にそこにいない。ガンナーは脚が遅いと誰が決めたのか。ティオレンシアは跳躍とショートダッシュを繰り返し、まるで忍の如く触手を足場にポップヘッドの元へ駆け参じる。
「貴様ッ」
「遅い」
 今一度のファニング! 六連射された銃弾がポップヘッドの頭に叩き込まれる!
 脳、或いは思考中枢を破壊。異形の指揮をしているのがポップヘッドならば、触手を防御に使う指示もこいつがしているはず。
 果たして、ポップヘッドは頭部の再生を優先。触手による防御が後手に回ったその間隙に、ティオレンシアは蛇のように滑り込む。
 それは、ガンスリンガーとしては無茶の部類だったかも知れない。しかし、この惨劇を招いた、手前勝手な邪教野郎に、とびきり目が覚めるような一発をくれてやらなければ気が済まなかったのだ。
 ティオレンシアは最早言葉すらなく、敵の顔面にオブシディアンの銃口を捻り込み、ハンマーを殴りつけるようにして激発。銃口がねじ込まれるその威力と、激発した弾丸の破壊力が相乗し、ポップヘッドの頭が大きく爆ぜる!
「はがあ、あがが、かッ……かあああ!!!」
 腕を振り回し振り払う動きに、ティオレンシアは後退。落ちながら手近な触手を蹴り飛ばし、土を蹴散らして着地する。
 ぱしり、と飛刀を受け止めた二人の永一が、その両脇を固めた。
「「だから言ったのに。俺の盗みはもう『終わってた』。見えなかっただろ?」」
 ティオレンシアの一撃のきっかけを作った男は、左右対称の笑顔で嗤った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リネット・ルゥセーブル

……成程、狂信もまた呪いだな。
伝播する前に元から断つとしよう。

フィーネを【盾受け】としつつ、【フェイント】をかけて攻撃を回避し、隙を狙う。
ある程度傾向を【学習】し、隙となるタイミングを【見切った】タイミングで仕掛けよう。

一度フィーネを引き、敵の攻撃にクロス【カウンター】めいてぶつける。
そのまま拝借し、炎を纏ったフィーネから攻撃を仕掛ければ、がら空きの所に攻撃を仕掛けられる筈だ。
無理なら無理で構わない、そのまま丈夫な盾として使い潰す。

その功徳<のろい>は、此処で棄却させて貰う。



●業には業を
「ガアアアアアググ、グッグガアアゥッギイアアイぃぃい!!」
 爆ぜ割れたポップヘッドの後頭部がぶくぶくと泡立ち、肉が盛り上がって塞がる。彼の頭は最初よりも大きくなり、ますますと朱く染まる。徐々に、声の明瞭さが失われていく。
「……成程、狂信もまた呪いだな。伝播する前に元から断たねば」
 リネット・ルゥセーブル(黒ずきん・f10055)は嘆息し、その異様を見た。彼女の声に怖気の色は含まれない。単純に――この呪いを世に放ってはならない、と、再度納得しただけのような声音だ。
「燃えろッ、燃えッ、燃えろあうああァあウあ、ゥ燃えろアアアアアアアアア!!!」
 頭を掻き毟りながらポップヘッドは己ばかりか、無数の触手――邪神の落とし子にさえ邪悪なる炎を這わせる。それは自身や触手まで苛むのか、表面は次々と焼け爛れ、異臭がそこかしこに漂う。毎秒ごとに繰り返す再生が、燃えたままでの活動を可能とするのか。振り回される触手から、次々と炎の弾丸が放たれる。
「――まるで生ける炎だな。憎しみを炉にくべたような」
 触手の一本一本が、周囲で戦う猟兵各々を狙っているかのようだ。リネットもまたその対象から漏れない。
 投射される炎弾を、ステップフェイントで躱し、直撃する軌道のものは全て手に持ったクマのぬいぐるみ『フィーネ』で受ける。古ぼけたくまの人形は、まるで砂が水を吸うように炎を吸い込む。リネットを守るが如く。
 攻撃の傾向。
 振り下ろし、薙ぎ払い、それに伴う炎の投射。今まで伺っていた攻撃パターンとはまた変化がある。今までは単純な打撃、刺突が主だったが、今度はそれに炎が加わった。見切るのは容易ではない。
「――直撃は難しいだろうが、試す価値はあるか」
 リネットは触手の動きを観察し、自分を狙うものが高々と振り上げられた瞬間に踏み込んだ。燃えさかる触手の振り下ろしを、真正面からフィーネで受ける。高い破裂音。ユーベルコードの吸収……『歪む想定』である。
 一本の触手から炎が失せた瞬間、彼女は『自縄自縛の杓子定規』を発動。放った糸を高く上がった一本の触手に絡め縮め、ワイヤー・アクションの如く飛び上がる!
   のろい
「その功 徳 は、ここで棄却させて貰う!」
 同時に、リネットが突き出したフィーネから、辺獄の炎が溢れ出た。全てを灼き尽くす炎を逆流させ、ポップヘッドを炎獄にくべる――!
 絶叫が、響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​

赫・絲


この状況でもまだそんなコトほざけるの。
思ったより余裕たっぷりじゃん、いいよ、やってご覧よ。
そんなお粗末なモノでなんか、ユアさんと私のコト殺せやしないから。

聞き飽きたとばかりに【先制攻撃】を仕掛ける
炎で出来た小さな旋風を大鋏に纏わせて【属性攻撃】
焔風に巻き込むように触手を引き千切っては捨て一直線にポップヘッドへ接近
その際も攻撃はしっかり【見切り】自分へのダメージは最小限に

少し大袈裟な程に振り上げた大鋏は見切られても構わない
本命は――お前の後ろだよ、お馬鹿さん。

敵が少しでもユアさんに気を取られたなら、旋風で速度を上げ【全力魔法】で炎の出力を最大にした刃を、下段から上段へと叩き込む!


ユア・アラマート


なんだ、見た目通り壊滅的な頭の持ち主かと思ったが、本当に馬鹿だな
行こうイト。死者の苦しみを、あれに万倍で返してやろう
――只で死ねると思うなよ?

イトが正面から立ち向かっている間に、自分は敵の背後に回り込む
慎重にしすぎても感知されてしまう可能性が高いので
「忍び足」「暗殺」「ダッシュ」を駆使してとにかく静かに、素早くを心がける

敵の背後、ダガーが届く間合に入った所で術式を発動
「属性攻撃」で斬るための力を極限まで高めた刃で、敵の首筋を。触手が邪魔をするならそれごと
「先制攻撃」「だまし討ち」も利用して、前方のイトに気を取られている敵の注意を一気に自分のいる背後へ向けさせ
イトが接近、攻撃を行う隙を作り出す



●糸紡ぎ、風縫い
「ぎいぃいイイィイいいいいィああアアアあぁぁぁあぁああっ!!! 殺す、殺す殺す殺す! 脳髄に我が神の御手を差し入れ!! 掻き混ぜて弄くり回して生まれてきたことを後悔させる!! 貴様ら全員、全員だあアあァァ!!!」 寒気のするような発言。ポップヘッドが異界より招来した生物、そして彼自身は、未だ辺獄の炎に包まれ、火傷を刻一刻と再生しながら前進する。たっぷり二車両分はあろうかという異界生物の体積と物量。猟兵達は、遠隔攻撃または跳躍の手立てなくして、ポップヘッドに攻撃を加えることが出来ない。
「この状況でもまだそんなコトほざけるの。思ったより余裕たっぷりじゃん、いいよ、やってご覧よ。そんなお粗末なモノでなんか、ユアさんと私のコト殺せやしないから」
 赫・絲(赤い糸・f00433)は秀麗な眉目を嫌悪と侮蔑に歪め、吐き捨てるように言った。汚物を見る目とはまさにこのこと。縁断之葬具が一つ『鈍』――大鋏の片割れを思わせる大剣をまるでバトンのように回し、構える。
「なんだ、見た目通り壊滅的な頭の持ち主かと思ったら、本当に馬鹿だな――只で死ねると思うなよ、だと? こっちの台詞だ、脳足らずめ。膨らんだ分は全部頭蓋骨で出来てるらしいな」
 絲の言葉を継ぐように挑発するのはユア・アラマート(セルフケージ・f00261)。詠唱一つ、月下美人の刺青が光り、撫でたダガーの刃が怪しい幾何学模様に煌めく。
「行こうイト。死者の苦しみを、あれに万倍で返してやろう」
「うん。――お出で、お出で、風の子よ。ほむらを撫ぜて、あやしておくれ」
 絲とユアは、弾けるように駆け出した。一丸となって突っ込むのではなく、ユアは正面を絲に任せ、ポップヘッドの視界の外に消える。
 ユアは複数の触手をダガー『咲姫』によって斬り払いながら、蛇のように呼吸。神象術式回路、二乃片、三乃片を連結作動。身体強化・加速魔術を詠唱を破棄して発露。最早地平で欠片となりつつある夕日を髪に映し、一瞬にしてユアは銀色の風と化す。翠の瞳が曳光し、地上を走る流星が如く疾った。その光の進んだあと、斬られたことに遅れて気付いたかのように触手がバラバラになり幾本も落ちる。
「我が神の寵愛を粗末だとォ!? 悔い改めろォ!! 今!! この場でェ!!!!」
「煩いね。その黒だか紫だかわかんない、汚いモノが粗末じゃなきゃ、何が粗末だっていうのよ」
 絲は怒声に取り合わず、『エレメンタル・ファンタジア』による風と炎の魔力を練り合わせた。ただの風ならば敵を押し或いは切り裂き、足を止めるのみ。ただの炎ならば焼き、精々が表面を炙るだけ。しかしてその二つを絡めたならば、風が炎を膨らませ、豪熱孕む焔風となる。
 炎で出来た旋風を『鈍』に纏い付かせ、絲は真正面から触手の群れと相対した。彼女の動きは圧倒的に鋭く、速い。切り裂くと同時に焼き払い、足場に使える鈍重で大きな触手を蹴り渡りながら、清冽な焔風を纏い絲は跳ぶ。
「小癪ゥ! 燃えろ!!」
 複数の触手が空中を跳ぶ絲にまっしぐらと進む。不浄の炎を孕んだ触手を身を廻し、辛うじて回避。服が焼け爛れ、スカートの布地が焦げる。絲は舌打ちしながら、空中で焔風を炸裂。敵の炎を相殺し、襲いきた触手の上を走り渡ってポップヘッドへと迫る!
「真っ二つに――なれ!」
 ――しかし、絲が振り下ろす剣を、空中より招来した邪神の触手が絡め取る。
「!」
「小生意気な口はそこまでだァ、小娘ェ!!」
 大上段に振り上げた剣を留められ、動きを止めた絲に向け、ポップヘッドが自らに繋がった触手を繰り出す、その刹那。絶体絶命の危機に、しかし絲は唇で形よく弧を描く。
「本命は――お前の後ろだよ、お馬鹿さん」
「何……?!」

 ――きん、
 刃鳴り、風割れる。

「待たせたね。遅刻したかな、イト」
「んーん。今来たトコだよ、ユアさん」
 全く突然に、突き出されたダガーが、深々と背中からポップヘッドの身体を貫き通していた。
 ユア・アラマートの暗殺刀法。まるで、その瞬間、その場に発生したかのような唐突の刺突。
「カッ……」
「これがおまけよ。持っていけ!!」
 絲は、再度熱く熱く焔を燃やす。
 鞴の如く風を送り、過熱した炎が『鈍』を朱く染める!
 その業熱を前には触手も抗うことを許されない。焼断された触手を顧みることもなく、今度こそ絲は大上段からの一撃を振り下ろす。
 焼けた刃がポップヘッドの半身を深々と裂き、またも響き渡るは地獄めいた絶叫。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルイーネ・フェアドラク

…私が見えたUDCの中で、最大質量ですね、これは
いや、組織の資料にも早々ないか
いかな猟兵といえど、半端な数では制しきれなかったでしょうが
これだけの人数を集めた、ハイイロの慧眼というべきかな

あの触手、削り取りますよ
少々残りの血液は心もとないですが…
絞りだしてでも、あれをここで倒し切ります
攻撃は可能な限り[見切り]、自らの触手で敵の触手を食いちぎる勢いで
決定打には欠けようと、それで構わない
ここには、数多の猟兵がいるのですからね
手前から動きを止めていきます
血路は、私が拓きましょう

…こどもが突っ込んでいくなら、舌打ち連れて追いかけますがね
私の目の届く範囲で、傷つけさせはしません
絶対に


ユハナ・ハルヴァリ
……そう。君が、そうなの
腕も、足も、耳も、あげてもいいよ
でも
それでも、君を、殺すよ

最後のひとりは、とても見やすい。狙いやすい。
あんなに大きいんじゃ、切りにくいけど
短刀に氷の刃を纏わせて大剣と化し
触手を切り刻みながら本体に迫る
その頭も大きくて、当てやすそうだね
長杖を貴石の花弁に変じながら、その頭に向け翔けさせて
氷の大剣を突き刺して支点にし、一際大きな花弁ごと回し蹴りで顔面に突き刺す
……うん。なんだろう
なんだか、やりたくなったの

胸の中がもやもや、むずむず
その感情の名はまだ知らない

攻撃が炎ならば氷で打ち消し
影ならば花弁で貫き
邪神の落とし子には警戒しながら、けれど素早く、潰してしまおう
終点、君の命。



●化かす狐と舞う雪花
 全く以て、割に合わない仕事があったものだ。こんな巨大な触手を山と呼び出し。ああして猟兵に幾度も胸やら頭やらを貫かれ、あげく二枚下ろしに下ろされてまで、なおも再生を続け憎悪の炎を燃やすUDCがいるとは。
 少なくともルイーネ・フェアドラク(糺の獣・f01038)は、ここまでの規模のモノをそうそう見たことがない。
(これだけの猟兵を集めたのは、彼の慧眼でしたね)
 グリモア猟兵の切迫した顔を思い出しつつ、ルイーネは慎重に彼我の距離を測り――
「……そう」
 横合いから響く静かな声を聴いて、額に指を当てた。
「君が、そうなの」
 ――これは、その、なんだろう――多分怒っている。ものすごく、だ。
「腕も、足も、耳も、あげてもいいよ。でも、それでも、君を、殺すよ」
 愛らしい、あどけない顔立ちのエルフ――ユハナ・ハルヴァリ(冱霞・f00855)は、常と変わらないどこかぼんやりとした顔で、いつもと同じ抑揚の薄い声で、殺意を口にした。しゅら、と抜き放った短刀に魔術により凍気を纏い付かせ、見る見るうちに氷の刃として伸長。凍てつく敵意が形を成す。
「ユハナ、無茶は――」
「だめです、ルイーネ。――あれは、だめ。許せない」
 ルイーネはいつも無茶ばかりするこどもを窘める側だった。今日とてそうだ。けれど、ユハナは常よりもいつになく、強情に見えた。
(止めて意思疎通に支障を来すよりは、共に走るべきか)
 親というのは、いつだって子に甘いものだ。それが喩えかりそめの関係であっても、変わらない。
「まったく、言いだしたら聴きませんね。……貧血になったら、あとのことは頼みますよ」
 あの触手を削り倒し、ユハナの血路を開く。ルイーネは刻印へ自らの血を回す。くらり、と視界が揺れ、遅れてこみ上げるような吐き気が来るが、未だ意思で押さえ込める範囲だ。
「行きますよ」
「うん」
 頷くユハナと共に、ルイーネは軽やかに駆け出す。

「毒牙よ刻め、甘き死を。さあ、――喰らえ!」
 再びルイーネは触手を伸ばす。信徒の血液を喰らうことで補充はしていたが、あまりの敵の多さの前には徐々に消耗していく一方だった。しかしそれでも、自身の血液を叩き込むことで彼は触手を駆動する。
 刻印から牙持つ触手が召喚され、まるで追尾ミサイルのように敵の触手目掛け放たれた。触手同士の食い合いという壮絶な光景が描かれる。ルイーネの触手は敵のそれに比べ小さく、炎を纏ってもいないが、彼の触手には高濃度の毒がある。
「お眠りなさい」
 ――確かに決定打には欠けるかも知れない。しかし、それは他者を活かすための能力だ。敵の動きを止めるのは、集団戦に於いては、短期的に見れば敵を殺すのと殆ど同義である。
 防御に使われる大きい触手をいくつか黙らせる。次は腕ほどの、迎撃を担う触手に狙いを定める。周囲は、触手とポップヘッドの纏う瘴気の炎で意識が眩むほどに熱くなっていた。肺腑を焼くような空気に、切れる息を整えながらルイーネは叫ぶ。
「ユハナ!」
「ありがとうございます、ルイーネ」
 ユハナは声を受け、氷の大剣を振るい、自分に迫る触手を次々と切り裂きながら走る。
 異界の言葉を喚き散らしながら、今なお触手を呼び出し続け、猟兵に抗い続ける魔人、ポップヘッド。
 身体を燃やしながら邪神を礼賛するかつて人間だったモノ目掛け、ユハナはルイーネの力によって停止した触手を飛び渡る。
「その頭、大きくて、当てやすそうだね」
 相対距離、目測で二〇メートルを切る。走りながらユハナは長杖を解き、貴石の花弁として再構成。炎を放とうとするポップヘッドの顔面目掛け、貴石の花弁を嵐と殺到させる。
「ヌウゥウゥッ小癪!! 猪口才なァ!!」
 炎の狙いがそれ、明後日の方向に放たれる間にもユハナは真っ直ぐに距離を詰める。
 殺到させた貴石の花弁は、まるで石面の如くポップヘッドの顔面を覆い――美しくもとげとげしい石花を紡ぎ上げる。
「ここが終点だよ。終わるの。君の命」
 敵まで二メートル。ユハナは地面に氷の大剣を突き立て、身体を跳ね上げた。変則高飛びのような形から、エネルギーの全てを集中させてポップヘッドの顔面に蹴りを叩き込む。突き刺さった美麗にして鋭利な貴石の花が、ポップヘッドの顔面をメチャクチャに破壊する。
「――――!!!」
 歯と唇が一挙に破壊され、聞き苦しい悲鳴を上げるポップヘッド。
 ――ユハナは見逃さない。
 少しずつ、敵の再生速度が落ちてきていることを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

水沢・北斗

ようやく戦い安い状況になったじゃないですか。
では遠慮なくいきましょっか!

なるほど、流石というかあの触手、対集団戦闘に向いてそうな雰囲気ですね?
どのみち本体は血の気の多い人達が叩いてくれるでしょうし彼らが動きやすいように援護させてもらいますよ!
そちらのやりたい事は全部潰してあげますよ
まずは後方から落とし子の数を減らす方向で。
余裕があるなら本体の攻撃の妨害を狙う。

技能:スナイパー、援護射撃、誘導弾、鎧無視攻撃、属性攻撃、2回攻撃

――メルエユライドの接続を確認、バイパス(魔力伝達経路)開放
『誘導、貫通、炎の三術式添付……さ、なんだって撃ち落としてあげますよ……』



●フル・ファイア
「はぁ全く、狭い車内に押し込められて長いこと戦ってたら、肩が凝っていけないですね。――ようやく戦い易い状況になったことですし、遠慮なく行きましょっか!」
 水沢・北斗(ヤドリガミのアーチャー・f05072)は弓を構え、三号車後方で矢を番える。オープンスペースでの狙撃こそ彼女の得手だ。ここから見てなお、数々の猟兵が敵を屠らんと動いていることがわかる。必ずしも攻撃が全て奏功するとは限らなかったが、猟兵らの一気呵成の攻勢は敵に確かなダメージを蓄積しているように見える。
「なるほど、流石にあの触手、対集団戦闘に向いてそうな雰囲気ですね?」
 全方位に伸びる大小様々な触手の群れ。一際太い、切り落とすには難儀しそうなサイズの触手が絡み合い、ポップヘッドの足場を作っている。触手一本一本は今や辺獄の炎に覆われ、近づくだけならまだしも、打ち据えられたり放たれる炎に襲われれば、並の人間であれば骨すら残るまいと思わされる異様だ。
「それでも血気盛んな皆さんは果敢に飛びかかります……と。なら私は私に出来ることで援護させて貰いましょうか!」
 北斗は銃のヤドリガミにして、アーチャーである。
 こと、狙うと言うことに関して、その資質はこれ以上のないものだ。
「メルエ・ユライド、接続確認」
 夢想弓の名を持つ弓に番えた矢の先端、消える事なき強い炎が灯る。
 バ イ パ ス
「魔力伝達経路、開放」
「誘導術式、貫通術式を継続して付与。炎徹誘導術式、成立。――落とせないものなんてありはしない。なんだって撃ち落としてあげますよ」
 北斗は機を伺い、構え――そして、幾本かの触手がまた誰かを打とうと振り上げられた瞬間、弦から手を離した。びゅごう、と風を引き裂き、空気を食って肥大、炎弾そのものとなって飛ぶ炎の矢。振り上げられ触手が半ばから断たれ、どうと音を立て地に落ちる。
 それはまるで流星群めいていた。一発二発の話ではない。北斗は一射ごとに三本の矢を番え、それを一斉に放つ。誘導術式が照準を補正。貫通術式が着弾後、触手を貫き、誘導術式がまた次の的を探す。そして。着弾時に炸裂する炎が、不浄の炎による防備を貫通する……!
「そちらのやりたい事は全部潰してあげますよ。少なくとも――この矢が尽きるまではね!」
 北斗は笑い、再び三本の矢を番える。炎の絶矢が、魔弾の如く触手を猛撃する!

大成功 🔵​🔵​🔵​

草間・半蔵


剣を思いっきり振り回す
腹のそこから燃え上がるような激しい怒り
傷口からはきでる炎が剣が横を通る度
それを表すように揺れる

ブンと一閃

誰が畜生だ

また一閃

誰が供物だ

怒りを力に変えるように振り回す

オレたちはただ必死に生きてるだけの、人間だ

既に大分血を流した
上まで刃は届かないかもしれない
なら、オレにできることはなんだ―…?
あの腹のたつ触手を斬って斬って斬りまくって
地面に引きずり下ろすことだ

振り回し終えた剣を構え
吠えるように声をあげながら
敵に向かってかける
ただ捕まらないようにだけ
それだけを気をつけて
野生の勘を最大限に敵の攻撃を見切る
あとはもう単純だ
でかい図体の触手を削るように
最大限の力で
一回二回となぎ払う!



●ブレイズ・ハート ~オーヴァードライブ・リミックス~

 草間・半蔵(羅刹のブレイズキャリバー・f07711)は、怒っていた。

 彼は、遮二無二剣を振り回す。時折襲う触手を、その大刀の一閃で払いながら。
 思い切り、力の限り振り回す。
 あんなにもたくさんの人が死に。こんなにも大きな被害を出して。その挙げ句、未だ被害を広げようとする。その傲慢さ、吐き気のするほどの悪性に、半蔵は純粋に怒っていた。
 一閃。空を裂く。
「誰が、畜生だ」
 怒り、死したる者への悼み。全てを籠め、もう一閃。
「誰が供物だ」
 振る。只管に振り回す。無意味に見えるその行動は、彼が羅刹であると知っていればただの空振りではないことが容易に知れるだろう。傷口から溢れる焔が、半蔵が刀を振るうたびに煽られ、音を立て揺れる。彼の怒りを示すが如くに。
「オレたちは、ただ必死に生きてるだけの人間だ。それを、虫扱いして畜生と呼んで。――オレは、お前を許さない!!」
 怒りを回転力に換え、半蔵は最早嵐めいて刀を振り回す――その羅刹の舞いをして、人はこう呼ぶ。
 ……『羅刹旋風』!
 半蔵は、限界まで自らの速力と威力を増幅し続ける。
 ――その失血は、既に常人なら倒れて余りある。今振り回している間にも流れ続けた焔、彼の血液。いつ倒れてもおかしくない失血状態。しかし、半蔵はそれでも、敵に一矢報いたかった。
(オレにできることは、なんだ)
 或いは、駆け上がるまではこの速力と威力は保たぬかも知れない。ならば地表で戦うべきだ。――あの触手を、断つ。ヤツを引きずり下ろすまで、斬り続ける!
 半蔵が思い至ったその時、号砲のように後方から炎の矢が飛んだ。それは誘導弾が如く敵の触手を狙撃し、弾けさせ、打破していく。次々と、次々と。
 半蔵は、その瞬間に最後の一閃を振るう。
「――ッおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 ギリギリまで溜め、半蔵はそれにより得たその回転力と速力を殺さぬまま、飄風が如く駆け出した。
 燃える彼の身体は、空を流星雨のごとく趨るあの矢にすら劣らぬ速度で――或いは矢になったかの如くに、地を駆けた。
 次々と襲う触手。ましらの如き動きでそれを回避、型に囚われぬ天衣無縫の刀法で襲い来る触手を切り裂き、地獄の焔で灼き尽くす! 辺獄など、恐るるものか。草間・半蔵の焔は、不浄の焔すら焼灼する!
 半蔵は、吼え、駆けた。
 その勢い、怒濤が如く。彼の通る道にある触手が、草刈鎌に駆けられたが如く断たれ、燃え落ちていく――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナハト・ダァト
【◎】
成程、触手使いカ
では私モ、数を増やそう
【八ノ叡智】の本数ニ武器改造ト2回攻撃を重ねて
200を超える数ダ

君よりも少ないガ…ナニ、扱いでは負けないヨ

本命ハ【五ノ叡智】だからネ
情報収集
接敵しながら常に【三ノ叡智】を発動
予測を正確にしながラ【ニノ叡智】で相殺ダ

残像、目潰しも使っテ
じらす戦闘を行いつつ、敵が大技を繰り出そうとしたタイミングで
ダッシュ、早業を駆使して懐に飛び込むヨ

後はだまし討ちに傷口をえぐる
触手のガードは鎧無視攻撃だネ

これが、君に与える叡智
厳正ダ
重く受け止め給エ

◆真の姿使用
外見はICの通り
戦闘スタイルも2章と同じです



●叡智とは、己の無知を知ることを言う
「成程、触手使いカ。では私モ、数を増やそう」
 ナハト・ダァト(聖泥・f01760)は既に横転した二号車を見下ろしつつ、三号車の上に立った。ケープの下で両手を合わせ、印を組む。
 それは聖泥が成す八つ目の奇跡、セフィラ・ホド。
 ず、ず、ず……ずずず、
 神聖な気配さえ漂う光のゲートが空中に開き、そこより這い出るは七色に輝く、あらゆる属性を備えた触手。
 一瞬にしてその数は二〇〇を超える。
「君よりも少ないガ……ナニ、扱いでは負けないヨ」
 確かに出力、数共に、一人では拮抗しかねるだろう。しかしてその技は一級、あの敵オブリビオンにとて決して劣るまい。
 ポップヘッドは再三再生した歯と舌で、邪神への祝詞を幾度も謳う。
「ギイイイイイイッ!!! 神よ! 神よ、我がいと高き神よ!! 神よ!! 我に力を!! このものどもを屠る力を!!!!」
「妄執だネ。求めて救いを与う神なド、ロクなものではないというの二」
 ナハトは車両を蹴って駆け出した。接敵する。展開した光のゲートより、無数の触手を放つ。一本一本の規模は敵のそれとは比べものにならぬほど僅少だ。しかし、それが二本、三本と連なり、敵の触手を覆った不浄の炎を打ち消す清き水の属性を帯びるとなれば、話は異なる。
 闇雲に暴れる敵の触手に絡みついては根本よりねじ切り、敵の攻撃・防御手段を一つずつ断っていく。加えて、ゲートから伸びる触手を掴み、その伸縮を利用しての立体三次元機動。空を舞いながら、ナハトは敵の攻撃手段とそのタイミングを俯瞰する。
「ぎ、ぎぃっ、ぎいぃいっっ!!! おお――おお、見える!! 見える、我が神! そのお姿が!」
 それは果たして、幻覚か。或いはポップヘッドには本当に見えていたのかも知れない。触手とその身体が、なおも強く燃え上がる。啓示を受けた聖者が如くにポップヘッドは落涙する。じゅう、じゅうと音を立てて涙はすぐに蒸発していく。
 空中のナハト目掛け、小ぶりな触手が筋肉の収縮を使い、弾丸のように撃ち出された。やけくそに暴れるだけの攻撃ではない、狙い澄ました一撃。ナハトは辛うじて身を反らし、それを回避。縮む動きから一瞬速く予見しなければ、身体を穿たれていただろう。
 続けざまに放たれるそのスリングの如き触手を、自らも同様の動きで触手を放つことで次々と相殺。
 ナハトは下から自分に向け触手を放ち、それを掴んで縮めることで急加速。己が右腕を触腕に変形し、そこに剛力を通わせる。
「それは幻覚だヨ。妄想の果てにあるモノ。――これが、君に与える叡智、『厳正』ダ。重く受け止め給エ」
 振り下ろすハンマーめいた一撃が、ポップヘッドの頭に直撃し、そのインパクトで彼の身体を足下の触手へとめり込ませた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ポケッティ・パフカニアン


うっわ、見っ苦しい発狂ー!
ふん、凄んだって叫んだって無駄よ!
あんたの敗因は、あたし達をここに呼び寄せちゃった事だからね!
もっと細々とこっそり、天井裏のネズミみたいに生きてりゃ良かったのよ。きっとね!

さぁて、お待ちかねでもなんでもないお料理タイム!
光れ、宝石剣(ミニチュアレリック)!
そのマズそうな触手、全部切り落として、活きの良い素材にしてやるわ!
こっちにきた触手を、避ける!ぶっ刺す!そのまま周りをぐるっと一周!一丁上がり!

うわ、こっち来る数が増えてきた!
ふふん、あたしが危険だって認識したのかしら?
そうね、たしかに危険かもね。
奥の手は、時刻む怪盗。
あたしを捕まえでもしたら。どうなるか、わかる?



●時盗人は可憐に笑う
「未だだ……未だ終わらぬ……!」
 ごおおっ、とまたも、全ての触手を覆う炎が強く燃える。めり込んだ頭を、身体を、足場代わりの触手から引き剥がすようにしてポップヘッドは立ち上がる。
「これが幻であるものか!! 我が神は私のことを見つめている! ああ! 空からあの様な眼で! 寵愛を! この燃ゆる炎がその証だ!! 神よ! この力! 今しばしお借り致します!! 殺してご覧に入れます! この糞虫共を、」
「てゆーか」
 ポケッティは一人で大演説をぶるポップヘッドの言葉に割り込み、軽く空を見上げた。
 眼などどこにも見えないし、それより何より。
「あんたの神様の力って、そんなもんなわけ? まだ誰も倒れてないわよ、あたし達」
 可愛らしく小首を傾げながらのポケッティの声。ブチッ、と何かが切れる音がした。
「こおおのおぉぉ羽虫がぁアァァアァ!!」
「うっわ、見っ苦しい発狂ー! ふん、凄んだって叫んだって無駄よ! あんたの敗因は、あたし達をここに呼び寄せちゃった事だからね! ――それと!」
 ポケッティは腰の鞘から片手剣を払う。宝石剣、『ミニチュアクレリック』だ。
「今からあんたは後悔することになるわ。あたしを羽虫と呼んだことをね!」
「ほざけェ!! 火中の虫としてくれるゥううぅゥゥ!!!」
 燃えさかる触手が放たれる。狙いは先程よりも精密だが、ポケッティは余裕を持って回避する。二十二センチ大の、高速で飛び回る妖精を射落とすには、その狙いは雑すぎる。
「光れ、宝石剣!」
 ポケッティは宝石の輝跡を曳き、空を駆けた。宝石に籠められた魔力が刀身の切れ味を増す。彼女の身体以上の直径をもつ触手さえ、突き刺したままぐるりと周囲を飛び回り、パイプカッターめいて切断。
「羽虫風情が、ちょろちょろとォ!」
 十数本の触手がぞろりと立ち上がり、全方位から一斉に襲いかかる。完全にポケッティを狙った集中攻撃だ。
「あたしが危険だって解ったみたいね。――ま、それが狙いなんだけど」
 ポケッティは宝石剣を鞘に収め、その小さな掌でぴたりと燃える触手の群れに触れていく。炎がポケッティの手を焦がす前に、触れられたものから順に触手の動きが停止していく。
 ――『時刻む怪盗』。彼女の掌が触手の時間を掠め取り、その動きを停止する! 表面を覆う、辺獄の炎の揺らめきすらも凍え、一切の行動を許されない!
「あたしを捕まえたいんなら、もっとスマートにやってもらわないとね?」
 ポケッティは片目を閉じ、愕然とするポップヘッドを見下ろして胸を張って見せた。
「あんたみたいなのはもっと細々とこっそり、天井裏のネズミみたいに生きてりゃ良かったのよ。きっとね!」

大成功 🔵​🔵​🔵​

水衛・巽
◎×10
【f12822:花剣さんと共闘】

醜いね。
醜悪とはこのことだ。

引き続き花剣さんを支援する形で邪神を拘束。
炎で目隠しすることも考えたけど、
この邪神がいいように振る舞うのも気に入らないし
指先一本動かせないまま敗北してもらおうか。

できれば花剣さんだけじゃなく、
他の猟兵からも意識そらせる事ができればいいけど…
…まあ、胸糞な発想はできても頭良さそうじゃないし
煽ってやればこっち向くかな?

後方からの視野も生かして、
触手の動きも監視できればいいかな。
何かやらかしそうならすぐに警告しよう。

後方車両での戦いで花剣さんの動きは見ていたから、
スムーズな連携を目指したい。


花剣・耀子

【f01428:巽くんと共闘】
そのちからは、先ほど見せて頂いたもの。
背を預けるのにこれほど頼もしいことはないわね。
どうぞご存分に。
――あたしは、アレの首を獲りにゆくわ。

数が多くて邪魔ね。
物量で圧そうとするなら、付き合ってあげる。

【《花剣》】を使用。
見える限りを斬り果たして、ポップヘッド本体までの道を付けましょう。
炎だろうと邪神だろうと、そこに在るなら斬れるのよ。
自分の負傷は捨て置くわ。これでも呪詛には慣れているの。
それよりも、アレを終着させる事の方が重要よ。

ああ――、腕を落とし足を落とし耳を穿り目玉を啜り上げると言ったかしら。
馬鹿ね。
あたしの首を残しておいたら、お前の喉を噛み千切るわよ。



●バウンダリ・フォー・テンペスト
 空中で、燃えさかる十数本の触手が、一斉に停止した。
 それがいつまで続くのかは解らなかったが、一つ確かなことがある。地上にいた二人の猟兵が、それを好機として走り出したことだ。
「醜いね。醜悪とはこのことだ」
「そうね。――斬って晒して消えるのならば、今すぐそうしたいくらいには」
 水衛・巽(鬼祓・f01428)、そして花剣・耀子(Tempest・f12822)だ。彼らは黄昏の信徒らに対する防衛戦を共にし、互いの能力を知悉している。
 巽は札による陰陽術、敵を封じ、或いは式神を扱うことを。
 耀子は対UDC組織仕込みの機械剣を用いた近接格闘を、それぞれ得手としている。
 二人が足を止めたのは、十数本の触手が停止した事により発生する敵の死角だ。――攻撃は知られぬうちに発生し、敵のパニックを誘うのがよい。それを両者とも知っている。
「私が先回りして、動きを止める。花剣さんはもう一度、さっきみたいに暴れてくれるかな」
「いいわ。どうぞご存分に。ご期待通りに私は――アレの首を獲りに行くわ」
 耀子はつい先刻、巽の符技により棒立ちになった敵を大量に斬った。
 動きを封ぜられた敵は微動だにできぬまま、藁束の如く耀子の剣に果てたものだ。巽の技量に疑いはない。背を預けられるならば、これ以上はない。
 巽は両手に抜いた護符揃えを、紙吹雪の如く周囲に撒く。夕闇迫る空の下、緋色に照らされ舞う大量の護符が、巽の力により空中に静止する。
「終わったら甘味でも如何だい?」
「――後始末が済んだ後でもいいのなら、ね」
 眼鏡の下で耀子の青い瞳が弧を描く。――それも一瞬。
 エンジン音。今一度、耀子の手の内で、機械剣《クサナギ》が目を覚ます。刃が高速回転を開始。細身の、チェーンソーに似た機構を持つそれは、対UDC組織仕込みのオプションパーツを満載した近接兵器である。
「斬り果たすわ」
 それは暗示にも似た彼女の定型句だ。そうなれば全て終わる。花嵐が吹き荒べば、その後には何も残らない。
 巽は薄い笑みを崩さず、頷く。
 動いたのは彼が先。最大展開した護符による『七星七縛符』。巨大すぎる敵の触手の群れは、おそらく自分だけでは止められない。しかし、区画ごとであれば――走り抜ける耀子の前を先回りして止めるのであれば、可能なはずだ。
「どうぞ裂いて咲いて。私が彩を添えるよ――さあ走れ、我が式!」
 燐光を帯びた護符が、巽が切る刀印に従い、夕闇に白く光棚引く弾幕となる。
「《ヤクモ》、展開」
 同時に耀子がクサナギの補助トリガーを引く。――その瞬間、クサナギの背面に噴出口が張り出し、展開。
 赤い光が灯り――爆音、爆炎。耀子の身体は、《ヤクモ》起動の反動により超加速。その速度はともすれば、高速で飛ぶ巽の札すら追い越さんばかりだ。
「急急如律令!」
 印を組み替え、巽が下した令に護符はすぐさま反応。更に加速し、耀子の進路にある触手に殺到する。その一符一符が触手の群に貼り付くたび、その動きが凍り付いたが如く止まる。黄昏の信徒らを停止したときとは訳の違う負荷が巽を襲うが――
 彼の表情には、恐怖も怯懦もない。あるのは駆け抜ける花嵐に託す信のみだ。
 停止する触手、そこを目掛け耀子は補助機構≪ヤエガキ≫よりワイヤーアンカーを放つ。絡みつけるなり、その触手を軸として急旋回。
 ――まさに一瞬の出来事だ。動きを封ぜられ、炎の失せた触手の群を、彗星の如く疾る耀子が一閃。
 旋風が如く回転しながら繰り出される《クサナギ》の剣閃が、巽が止めた触手の群れを、斬、斬、斬斬、斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬斬ッ!! 毒々しい紫の液が飛沫き飛び散るが、それすら嵐を濡らすに能わない。肉が汚液が乱れ飛び、或いは魅入るものすらいたかも知れぬ。
 ユーベルコード≪花剣≫と対UDC組織のテクノロジーが演ずる、一切鏖殺の刃殺空域。
 口笛一つを挟む間もなく、巽は次陣の符を繰り出す。光る符は、巽が広い視野で選んだ効果的な領域を示すマーカー、或いは耀子を守る結界の如くに機能する。
 ワイヤーを切り離すと同時に、≪ヤクモ≫、再点火。
 耀子の身体は滅茶苦茶に回転しながらに飛ぶ。しかして振るわれる機械剣の起動は正確無比。彼女の二つ名を思わせる斬撃の渦が、触手の群れを片っ端から斬り果たしていく!
「――腕を落とし足を落とし耳を穿り目玉を啜り上げると言ったかしら。馬鹿ね。あたしの首を残しておいたら、お前の喉を噛み千切るわよ」
 花嵐がたどる路を、鬼祓の灯が照らす。
 花剣・耀子は低く嘯く。応えるように、クサナギが吼えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トルメンタ・アンゲルス


醜いですねぇ。
あれは内面が外面にまで出てきてるタイプですねぇ。
これだけ陰湿で姑息な作戦も、頷けますねぇ。

とはいえ、一体に複数人で向かうと込み合いますからねぇ。
ちょっと離れて、大きい花火の準備と行きましょうか。

第一リミッター解除。装甲展開。
隙間から薄緑色の光が漏れだす。

マシンベルトを再度起動。
『ModeShift――Formula』
攻撃力重視の装甲に変更。

クラウチングスタートの体勢を取り、OverDrive始動。
『OverDrive――Thunderbolt』
右足にエネルギーを収束。
最大まで溜め、放電しだしたら左足とブーストで跳躍。

最高速度まで加速し、右足で追撃のブリッツランツェを見舞います。



●ザ・ソニック
 触手が次々と斬り払われる光景を、トルメンタ・アンゲルス(流星ライダー・f02253)は遠方より確認。
 一気呵成と攻め上げる猟兵ら。それに合わせるように、トルメンタもまた奥の手の一つを開帳する。
「醜いですねぇ。あれは内面が外面にまで出てきてるタイプですねぇ。これだけ陰湿で姑息な作戦も、頷けますねぇ――」
 ああいったタイプの人間――と言っていいのか既に微妙だが――は、自分が死ぬまで反省しない。若年にして、鎧装騎兵団で修羅場を潜ってきたトルメンタは知っている。あれは聖戦を部下に求め、それに殉じる手合いだ。
 一斉攻勢に出た猟兵らのその狭間を縫うコースに進路を設定。トルメンタのスポーツサングラスに、燃え上がる触手の群れ、そしてたじろぐように周囲を見回すポップヘッドの姿が映り込む。
「第一リミッター解除。装甲展開」
 装甲として纏ったアーマード・バイク『NoChaser』の装甲が蒸気音を立てて動作。生まれた空隙からエメラルドグリーンの光が漏れる。それは攻撃力を重視しエネルギー出力を向上した、NoChaserの一形態だ。
 トルメンタはクラウチング・スタートの態勢を取り、大地に爪を立てる。土の匂い。冬の風。枯れた草の香り。西日。感覚が加速する。これから走るルートの状態全てが、彼女の頭の中で弾ける。
 速さとは力。
 力とは速さ。
 何よりも速く駆けるとするならば、そうある内に彼女の速度はあらゆる物の認識野の外に至り――
 極論。誰も彼女を殺せなくなるだろう。
「行きますよ、相棒。俺“たち”に追いつける奴なんざ、どこにもいやしない!」
 ジェットエンジンめいた音。大気を吸ってNoChaserのジェネレーターが甲高く嘶く。空気が帯電し、彼女の両足装甲がスパークを上げる。
“ModeShift――Formula, ready. OverDrive... Code Thunderbolt.”
 電子音声が変形完了を告げた瞬間、トルメンタはスタートを切るランナーのように地面を蹴った。Thunderboltの名の通りの轟音。雷鳴じみた音を上げながら彼女は音速を超える。
 向かう先は、真っ向正面。触手の群れのそのど真ん中。
 充分な加速距離を取り、方向転換も何もかも無視して最高速を出したトルメンタ・アンゲルスは、ただ一発の銀の弾丸となる。
 吼えながら彼女が突き出した右脚が、触手の群れを削り倒すように弾けさせ、プラズマで地面を一直線に焼き焦がす……!

大成功 🔵​🔵​🔵​

シャルロット・クリスティア
……言葉は、もはや不要ですね。
慈悲はありません。同情もしません。ただ、葬るのみです。
冷静に、着実にやらせていただきますよ、えぇ。

あの物量……単体とは言えど、手数が厄介ですね……。
後方車両の屋根の上、見通しがよく射線の通りやすいポジションにつきます。
使用するのは、停滞のルーンを刻み込んだ麻痺弾。状態異常力重視です。
『地形を利用』し、触手などの攻撃部位を『スナイプ』、『マヒ攻撃』にて『時間稼ぎ』を行い、皆さんへの『援護射撃』とします。

姑息と笑うなら構いませんが、その暴虐と妄執は、確実に止めさせていただきますからね……!



●“ウィザード”
 最早、言葉は不要であった。

 シャルロットの脳内に、無数の情報が巡る。
 相対距離約二〇〇メートル。ターゲットは三号車横を進行中。自身は十三号車上にて伏射姿勢により照準中。
 敵。悍ましい触手の群れと頭の膨れた奇人。右後方より猟兵の全力突撃、触手が一気に殺げ落ちる。不規則に跳ね回りながら触手を断つ猟兵、弾丸のように移動しては援護を受けながら自身の攻撃範囲を断ち果たす猟兵。
 その移動速度、攻撃範囲、攻撃頻度。全てがシャルロットの頭に叩き込まれていく。
 敵の物量。操るポップヘッドが単体とは言え、触手の集合体の量は、猟兵らが同時攻撃に出た今この瞬間でも健在だ。しかし、確実に――ある猟兵がまとめて触手の動きを停止したその瞬間から、流れが出来ている。
 ……今この瞬間に押し、血路を開けと、己の中の何かが言う。

 スナイパーとは、孤独なものだ。
 観測手を除けば彼らに味方はいない。優秀なスナイパーは観測手すら要さず、単身で動くことも間々ある。シャルロットもまたそうだ。
 かける慈悲も、同情もない。敵の思想に揺さぶられることもない。
 常に沈着冷静に、情を差し挟まずに動く。それが狙撃手の鉄の掟。

「――」

 彼女の持つ『エンハンスドライフル』は単発式のボルトアクションライフル。
 連射は効かない。光学照準機器すらない。しかし、機構が単純であり、ある程度無茶な弾薬でも発射できるその銃を彼女は信頼していた。
 アイアン・サイトを覗き込む。シャルロットは肺を膨らますことなく、ぴったりの容量を見極めて息を吸い、止めた瞬間にトリガーを絞った。
 激発。魔術強化を施されたバレルを、ルーンが刻まれた弾頭が駆け抜ける。触媒が混ぜ込まれた装薬がバレルと反応し、弾頭に『停滞』の概念を付与する。右手が殆ど自動的にボルトハンドルを引いた。指の股に挟んでいた次弾を弾くように装填しハンドルを叩き戻す。トリガー。激発、
 ――まるで、それはフルオート射撃めいた狙撃。単発式のその銃が五発目を激発したその瞬間、やっと初弾の薬莢が地で鈴なりの音を奏でる。
 着弾と同時に触手の動きが鈍る。トリガーを絞った瞬間には、中ることは解っていた。
 姑息と笑わば笑うがいい。この弾雨を受けてそうできるのならば。

 魔術めいた連続狙撃が、音よりも速く異形なる触手の群れを捉えた。
 或いはそのライフルこそが、彼女のマジック・ワンドか。
 ウィザードは太股の弾帯から、次なる弾丸を掴み取る。

 ――ここで全て出し切る。全弾、あの群れに叩き込む!

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイラ・エインズワース
【MM】◎
鳴宮・匡サン(f01612)と

楽だと思って未来を躙って
返り討ちに遭って逆上している憐れな過去の亡霊
アレだけの命を弄んでおいて、何を怒っているノ?
鳴宮サン、ソレあんまほいほいやらない方がいいヨ
マ、落ち着いたケド
ありがとネ

鳴宮サンが時間は稼いでくれてるカラ
朗々と、天に響くように【高速】で詠唱するノハ鎮魂の調べ

味方が触手を抑える隙をついて本体を狙うネ
残った触手と本体の動きはユーベルコードで封じるヨ
ツケを払うトキダヨ
今度の【呪詛】は貴方に奪われたモノたちの悲鳴
彼らを送るためにも、【全力】の魔力を籠めた葬送の炎を放つヨ
被弾してもその【生命を吸収】シテ決して膝は折らナイ
憐れな使徒が焼け落ちるマデ


鳴宮・匡
【MM】◎
レイラ(f00284)と同行

軽くレイラの頬を抓んで
気負いすぎるなよ、と一言
……え、これもダメ?
まあいいや、落ち着いたなら
心配せず、集中していいぜ

俺だって、思うことがないわけじゃない
でも、引き金を引く指にそれを乗せちゃいけない

――さあ、詰めだ
残った触手も影も味方が対処してくれる
なら、本体のほうを抑えよう
派手に弾をばら撒いてこちらに意識を引き付ける
瀕死とはいえ何もしてこないとは限らない
ユーベルコードで応戦されれば【抑止の楔】で威を削ぐ
レイラの邪魔はさせない
そちらに気を向けさせもしない

ここまで好き勝手に奪ってきたんだ
そのツケは支払わないとな、ポップヘッド
ほら、足元を見てみなよ――お迎えだぜ


ジェイクス・ライアー
ようやく視界に捉えたぞ。
貴様が首謀か。

【SPD】
触手の上を駆け、ポップヘッドのもとへ向かう。攻撃への対処としては[炎耐性]を持つ外套でで魔法攻撃をいなし、触手からの攻撃はバク宙などで身軽に回避する。
……ベラベラとよく回る舌だ。[忍び足]でポップヘッドの背後に回り[暗殺]で耳障りな言葉を発する舌をナイフで切り落とし、傘型の銃で追撃。
〝ただで死ねると思うなよ〟
貴様の言葉、そのまま返してやろう。

最後方から先頭車両へ向かう以上、到着は他より遅くなるかもしれない。すでに多くの猟兵がいれば、連携なども視野に入れよう。


祷・敬夢
◎【MM】
ジンや匡たちが本体を叩く者がいる……ならやるべきことは一つ!
邪魔な触手の撃破だ!
勝利をしてこそのカッコよさ、本体は譲るさ!ラスボスハントいくぞ!

供物としても俺様は至高の一級品に決まっているッ!
フハハハハ!さあ、俺を供物にしてみよ!
だが、俺は最高級すぎて、粗末な供物を喰ってきた貴様では胃もたれを起こすだろうな!

俺は技能:存在感や挑発を使ったりしてできる限り、触手を引き付けて、味方から離れた位置で「天才の証明」を使い、俺様の才能を喰らわせてやろう!

貴様は強かった。強大な存在だったのかもしれん。
しかし、俺の、いや俺たちの前に立ちはだかったからにはゲームオーバーの未来しかありえなかったのだ!


杜鬼・クロウ


「随分イキってンなァ、ピーピー喚くなウゼェ。
空っぽの頭に血ィのぼってるみてェだが、ムカついてンのは俺も同じなンだよ。
その不ッ細工な面ァ拝むのも最期だと思うと最高な気分だが。
…イくぜ」

風の抵抗を極力受けない様に低姿勢で走る
7号車から1号車へ
流れる血を乱暴に拭う

軽く挑発し呼吸整え玄夜叉構える
【トリニティ・エンハンス】使用。攻撃力重視
敵の攻撃は剣で【武器受け・カウンター】
体捩じって回し蹴りからの剣乱舞

触手を伝って駆け上がり【属性攻撃・2回攻撃】で炎宿し業火の如く重い一撃

「殺すって言葉はなァ”弱ェ”ヤツが使う言葉だ。
俺はこの力でただひたすらに示す。揮う。
結果は見えてンだよ!俺達猟兵が来た時点で既に」


アルトリウス・セレスタイト
【MM】

邪魔だな。引っ込んでいろ

魔眼・掃滅で触手に対処
視界に映る触手全て異界へ放逐し脅威を排除
触手が残っている間は続ける
見えず聞こえない行動への対処はオブリビオンにも難しかろう
自身への攻撃も魔眼で消し飛ばす

触手を排除したら破天でポップヘッドを爆撃
高速詠唱・全力魔法・2回攻撃・範囲攻撃・鎧無視攻撃など駆使しての面制圧飽和攻撃
呼び出される落とし子も纏めて爆ぜる魔弾で爆撃
味方に当てない程度には狙いを絞る
呼び出された影にも当てられそうなら巻き込むが無理しない

落とし子が多すぎるなら魔眼・掃滅で対処
味方が崩れそうな場合など

危険な状態の味方がいるなら魔眼・円環で回復


鎹・たから
◎【団地】
耳をつんざく叫びに顔を顰める
駄々をこねるこどものような愛らしさは微塵もないのですね

殺されるつもりはありません
生贄など必要ありません
あなたはたから達がほろぼします

ユキに先行を託し、たからは悪鬼を宿します
どのような代償を払おうと構いません

キャリウォルトの後ろに続き全ての武器を使い全力攻撃
影に隠れた状態から【ダッシュ】
突然姿を見せれば【暗殺、2回攻撃、先制攻撃】が有効でしょう

手裏剣とフォースセイバーで【気絶攻撃、鎧砕き】で敵の触手を切り結び
フォースオーラを纏い連珠を握った拳で【グラップル、衝撃波】による殴打

あなたは終着駅に着いたのです
次の電車はありません


ユキ・パンザマスト
◎【団地】
あーあー、聞き苦しい絶叫キメてくれちゃってまあ。
ユキの鳴らす放送と、どっちがうるせえんだか。
あんたの身で比べさせてやりましょうか?

足の数がうじゃうじゃ多いですね。
たから、キャリさん、ちょっとユキが道を開いてきます。
二人を巻き込まないように、ダッシュと先制攻撃で、先んじて位置を取りましょう! 
そこから捨て身の一撃、守りも無視する衝撃波、マヒする騒音、それらを乗せた逢魔ヶ報を叩き込んで、なぎ払いを試みます。

さぁさ、鳴らせサイレン! 終点伝える放送だ! 
遊びもお前も終わってんだよ、とっとと還れっつってんだ!!


キャリウォルト・グローバー
◎【団地】

ふん、耳障りな声で喚くな外道が。
図体ばかり大きくした所でお前の矮小な性格は隠しきれておらん。
楽には殺さんだと、上等だ。お前の方こそ簡単に死ねると思うなよ。
無残に殺された乗客たちの恨みを思い知って苦しんで死ね。

先行は“ゆき”に任せる。
某はそれに続き異形頭に急接近し、相手へ隙を作るため「覚悟」「恐怖を与える」「殺気」で牽制を仕掛けておこう。
異形頭の攻撃は「激痛耐性」「火炎耐性」でどうとでもなるだろう。
その後「範囲攻撃」「怪力」「鎧砕き」「捨て身の一撃」による
『瞬斬華(シュンザンカ)』で上半身と下半身を真っ二つにしてくれようぞ。

これより某の正義を執行する…!


ジン・エラー

触手は他の連中に任せたぜ
あァ?あンなの救ってどォーすンだよ
本体のクソ頭をやりたくてたまンねェーのさオレァよ

おォおォうるせェ声だなオイ
聞こえた聞こえた
「オレらを殺す」ってな

そンならオレのやるこたァ一つ
お前も救ってやるよ
【オレの救い】を殺してみろよクソ頭野郎

さっきまでのでけェ声もでねェかよ


リゥ・ズゥ
◎【MM】
見つけた、ぞ。お前が、ボス、か。
リゥ・ズゥは、お前を、逃さない。
何を呼んでも、喰らい尽くす。
邪神の血肉は、良い栄養に、なりそう、だ。
(「視力」「見切り」「野生の勘」で触手や召喚された邪神の動きを捉え、「ダッシュ」「衝撃波」を併用し味方の道も拓きつつ一気に突破、ロープ状に変形した「ロープワーク」「怪力」で本体の拘束を試みます。
成功したら自分ごと攻撃して貰い各種耐性で耐え、「カウンター」「捨て身の一撃」「カタチのないカイブツ」で己へのダメージを利用し本体への追撃とし、生命力吸収で更に拘束を強めていきます。
拘束に失敗しても上記技能・UCを活かし本体に徹底的に喰らいつき攻め立てます。)



●フル・アタック
 数人の猟兵が己の全力を尽くし、触手を打破、撃滅、或いは無効化したその瞬間を、彼らは見逃さなかった。

「レイラ」
「ン?」
「気負いすぎるなよ」
 黒髪の男が、少女の頬を軽く摘まむ。少女はむむむ、と唇を引き結んでから、返事。
「鳴宮サン、ソレあんまほいほいやらない方がいいヨ」
「え、これもダメ……?」
 不可解、みたいな顔をして男は首を捻る。それをよそに少女は進み出る。
 彼から見えないように、少しだけ笑って。
「マ、落ち着いたケド。ありがとネ」
「落ち着いたならまあいいけどさ。――出番だ。何の心配も要らない。集中していいぜ。お前の背中は俺が守るからな」
「……ホンット、そういうとこダヨ!」

 金髪の紳士が走る。アンブレラ・ショットガンと仕込み靴、洒脱な装いが彼の武器。
 先頭車両までを韋駄天が如く駆け抜け、
「ようやく視界に捉えたぞ。――貴様が首謀だな」
 音低く唸る。それは、まるで鈍色の刃に似た声。
「この不快な仮面舞踏会もようやく終わりだ。落ちる命は、貴様の物で最後としよう」

「ケッ、ここまで聞こえてきやがる」
 七号車より、風雲児が駆ける。先頭車両に近づくにつれ、大音声で喚く敵の金切り声がより鮮明になる。
「随分イキってンなァ、空っぽの頭に血ィのぼってるみてェだが、ムカついてンのは俺も同じなンだよ。その不ッ細工な面ァ拝むのも最期だと思うと最高な気分だが。こいつをつまみに酒でも飲めたら溜飲が下がりそうなもんだが――」 風になぶられ、流れ落ちる血。彼は手負いの獣に似ていた。体中に刻まれた傷は、決して浅くはない。しかし、それを指で拭い去りながら走る。黒の大剣、玄夜叉を今一度抜き放ち、脇構えのまま疾駆。
「そいつは今夜のお楽しみって所だな。……イくぜ」
 速力を上げる。前進。

 先頭車両付近、触手と戦っていた少女二人と要塞が如きウォーマシン。
 一人の金髪の少女が、耳をつんざく叫びに顔を顰める。黒曜石の二本の角が、夕日の残滓にキラリと光る。
「駄々をこねるこどものような愛らしさは微塵もないのですね。――殺されるつもりはありません。生贄など必要ありません。あなたはたから達がほろぼします」
 少女はその身体に悪鬼を降ろし、全身を強化。血管が弾け、噴血するが、その程度の代償など織り込み済みだ。文字通りの羅刹が如く、彼女は流れる血を指先で拭う。戦化粧が如く、頬に紅。
「ふん、耳障りな声で喚くな外道が。図体ばかり大きくした所でお前の矮小な性格は隠しきれておらん。楽には殺さんと言ったな。同意見だ。お前の方こそ簡単に死ねると思うなよ――」
 ウォーマシンが怒りを隠さず、唸るように吼えた。そう。もう、怒りを押し込める必要もない。救う為の戦いは終わり、ここよりはほろぼすための戦いだ。大刀を両手に構え、一喝。
「無残に殺された乗客たちの恨みを思い知れ。苦しんで苦しんで、塵が如く死ね。某らが最後の裁きをくれてやる」
 ポップヘッドが、次々と滅ぼされ、無効化される触手に耳障りな声を上げる。
 まったくまったく、とでも言いたげに頷いていた黒髪のキマイラも、その段になって口を開いた。
「あーあー、聞き苦しい絶叫キメてくれちゃってまあ。ユキの鳴らす放送と、どっちがうるせえんだか。あんたの身で比べさせてやりましょうか? そうすりゃきっともうちょっと声を絞るようになるでしょうよ」
 おどけた風に言い、彼女は一歩進み出る。
「うじゃうじゃいますけど、押し時と見ました。たから、キャリさん、ちょっとユキが道を開いてきます」
「うむ。先行きは任せたぞ、ゆき」
「お願いします」
 黒髪の少女は、笑って、実体ホロの一部を指先に浮かべて見せた。

「フハッハハハハハハ! 滾ってきた! ジンや匡が本体を狙うならば俺はその脇を固めよう! 俺は触手を狙う――奴を引きずり下ろす! 勝利をしてこそのカッコよさだからな、本体は譲るさ! さぁ――ラスボスハントいくぞ!」 青年が白衣を翻し、カッコいいポーズを極める。心なしか輝いているようにすら見える。
「いいだろう。付き合ってやる」
 銀髪の男が魔眼を開く。藍色の瞳の虹彩が、歪んでサイケな虹のように光る。
「リゥ・ズゥは、お前を、逃さない。何を呼んでも、喰らい尽くす。邪神の血肉は、良い栄養に、なりそう、だ」
 黒い悪魔が如きブラックタールが、途切れ途切れに言葉を発し、その両手に血液を装填。『ブラッド・ガイスト』、拳をぶつけ合わせ姿勢を低く取る。突撃の予備姿勢。その状態となった悪魔は、最早装填された迫撃砲に等しい。
「おォおォうるせェ声だなオイ。聞こえた聞こえた――『オレらを殺す』ってなァ」
 特徴的なジッパーつきの黒いマスクを付けた、泥めいた色の肌の男が身体を揺らしながら言う。棺桶めいた巨大な箱を墓標が如く地に突き立てて、光を纏う。この世全てを遍く救うという、傲慢にして驕傲、傲岸にして不遜の意思。
 彼は聖者。絶対に出来ないであろうことを、絶対に行うと決意した、茨の道を往くもの。存在自体がエラーに似た、救いの形。
「そンならオレのやるこたァ一つ。――お前も救ってやるよ」
 男は光る御手を差し向け、ピンと伸ばした人差し指で、ポップヘッドを射貫くように指す。

 ――それを皮切りに、一斉攻撃が始まった。

 まず、いの一番に響くのは立て続けの銃声だ。
 アサルトライフルの銃声、発射位置は戦場より三十メートル後方、即応性重視の膝立ち――ニーリングでの射撃。車種は鳴宮・匡(凪の海・f01612)。脳裏に、声が蘇る。
 ――感情で引き金を引かないことよ、匡。それが出来ないものから死んでいくの、ここでは。
「解ってるよ」
 男は呟いた。霧の街では守れなかった約束。
 霧の向こうに見たあのひとの顔に心揺さぶられたあのときとは違う。今ならばただ機械のように、銃弾を叩き込める。照準してトリガーを絞るだけのマシーンになれる。
 匡は凪いだ無表情で銃爪を引いた。一射一射、研ぎ澄まされた照準。立て続けに叩き込んでも奴は一斉に癒してしまう。ならば、断続的に撃ち込んで意識を散らし、常に治癒の必要性を発生させるべきだ。
 ボルトストップが掛かる前にタクティカル・リロード。覗くアイアンサイト越しに、ポップヘッドの白く変色した眼と視線が交わる。
 遠距離を越えて放たれる辺獄の焔を転がり避け、匡は再び銃を連射。立て続けにヘッドショットが決まり、仰け反るのが見える。
「ここまで散々、好き勝手に奪ってきたんだ。そのツケは支払わないとな、ポップヘッド。――世の中、ずれた帳尻はいつかどこかで合うようになってるもんだ」
 或いは自分も、帳尻を合わせるときが来るのかも知れない。だが少なくともそれは今ではない。
 匡は静かな声で言った。
「ほら、足元を見てみなよ――お迎えだぜ」

 駆けて抜けるは異形の少女。ひとつひとつと触手を躱し、骨の獣のあぎとを翳し、襲う打撃を食い千切る。
 血風潜って走り抜け、陣深くまで躍り込み、高く掲げた左の手。誇るが如く指鳴らす。
「さぁさ、鳴らせサイレン! 終点伝える放送だ! 戻れる者は此方に帰り、戻れぬ者は彼方へ去れ! 此度の時報は禍時告げる! さぁさぁ、ほうら、けものが来ますよ!」
 今これよりは獣の時間。
 戻り損ねりゃ堕ちるは黄泉路。
 猫の瞳をきゅるりと絞り、羽を揺らして彼女は歌う。
 ユキ・パンザマスト(暮れ泥む・f02035)だ。畳みかける口上も威勢よく、ユーベルコードを展開する。黄昏れを過ぎて夕闇を迎える日暮れに、音奏でるは放映端末。映し出すのは彼女の心象、枯れず潰えぬ雪椿。
 ジジジジィッ、と幻灯機が鳴り、椿の実体ホログラムが顕現。瞬く間に伸長し、枝葉を伸ばして周囲へとサイレンと衝撃波を放つ。その音量は彼女が言ったとおり、敵の金切り声を掻き消すほどに大きい。
 撒き散らされる騒音と衝撃波が、周囲の触手の動きを封じ、或いはその衝撃の威力のみで薙ぎ倒して滅却する……!
「遊びもお前も終わってんだよ、とっとと還れっつってんだ!!」
 そのあとを継いで、サイレンの音波によりその動きを止めた触手を、アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)の魔眼が睨む。彼の虹色に揺らめく虹彩に、触手が映り込むその度、その周囲の空間が『裏返』り、存在自体を異次元に放逐する。
「次から次へと湧き出るな。要は、呼び出される速度を上回ればいいのだろう。――邪魔だ。引っ込んでいろ」
 ユキとアルトリウス自身に襲いかかる触手もまた、彼が視線を定めて座標を決めた瞬間、裏返った空間に呑み込まれて掃滅される。
 高い攻撃力を誇るアルトリウスを癌と見たか、周囲から目にも留まらぬ速度で、細い触手がまるでミサイルのように迫った。
「チッ」
 舌打ち。掃滅の魔眼は対象を視認せねばその効果を発揮しない。つまりは、裏を返せば動体視力を越える規模、範囲の敵にはその弱みが目立つこととなる。しかして――そこに割り込む影があった。
「大丈夫、だ。この程度では、リゥ・ズゥは、貫けない」
 自身の身体を塑性変形させ盾とし、リゥ・ズゥ(カイブツ・f00303)がアルトリウスに迫る細い触手の群れを阻む。
 同じ旅団に属するが故にか、彼らは互いの呼吸を知っているかのようだった。アルトリウスを襲う全ての触手が停止した瞬間、再び掃滅の魔眼が牙を剥く。裏返った空間に放逐される触手の群れ。形を取り戻すリゥ・ズゥに謝意を示した後、ふん、とアルトリウスは鼻を鳴らす。
「――意表を突かれたが、細くすればリゥ・ズゥが防ぎ、太くすれば俺が消し去る。幾らでも呼び出してみせるがいい――見えず聞こえぬ攻撃には、貴様程度の頭では対処も出来まいよ」
 嘯くアルトリウス。
 ユキと彼の攻撃で大幅に削れた触手、その空隙に走り込むのは祷・敬夢(プレイ・ゲーム・f03234)。
「供物としても俺様は至高の一級品に決まっているッ! フハハハハ!さあ、俺を供物にしてみよ! だが、俺は最高級すぎて、粗末な供物を喰ってきた貴様では胃もたれを起こすだろうな!」
 最早夕日も陰るというのに、触手の森を駆け抜ける彼の身体は、全身から光を放っているかのような存在感を持つ。それだけ目立てば、声が届かなかろうがその行動自体が挑発のようなもの。前進し敵の攻撃範囲に入った敬夢の身体を目掛け、四方八方から触手が殺到する!
 しかし、――おお、見よ! 転がり、避け、羽撃くが如く跳躍し!
 腕を広げたまま、比喩ではなく――その身体が輝く!
「これが――『天才の証明』だ!!!」
 敬夢の全身から眩く煌めく電子のオーラが溢れ出て、周囲の触手をまたも薙ぎ倒す!
「貴様は強かった。強大な存在だったのかもしれん。しかし、俺の、――いや、俺たちの前に立ちはだかったからには!! ゲームオーバーの未来しかありえなかったのだ!!」
 輝かしいばかりの見得を切り、敬夢は宙返りを打って着地。ポーズを極める彼の横をまるで風のように駆け抜け、次なる触手を薙ぎ倒して回るリゥ・ズゥ。猟兵らは、一瞬たりとて止まらない。
「ゲームオーバー、か。そうだな、終わりに、すべきだ」
 悍ましき触手を、腕にそれ以上におそろしい――奉ろわぬカイブツの顎を作り上げ、リゥ・ズゥは次々と食い千切る。
「負けテらんないネ」
 その眩さは、或いは勝利への光明か。眼を細めたレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は、敬夢を援護すべく詠唱を行う。
「楽だと思って未来を躙っテ、返り討ちに遭って逆上している憐れな過去の亡霊ヨ、貴方は。アレだけの命を弄んでおいて、アレだけ好き勝手に暴れた後デ、いったい何を怒っているノ?」
 詠唱に気付いたか、ポップヘッドが新たな触手を召喚する。ぐん、と振り上がる触手。的確にレイラを狙ったそれは、しかしポップヘッドが肩と腕、頭から立て続けに噴血した瞬間に止まった。まるで、声が聞こえるかのようだ。
 ――レイラの邪魔はさせない。そちらに気を向けさせもしない。守るって言ったからな。
 アサルトライフルによるセミオート狙撃。射手は解りきっている。
「ありがとネ、鳴宮サン」
 高らかに謳うは鎮魂の調べ。高速で詠唱し、魔力の限りを尽くして、やがて術式は完遂する。
 未だ数の多い触手を目掛け放たれるのは、業を背負いし者を掴んで離さぬ亡者の腕。『再演・許さじの腕』である。レイラが持つ杖先のカンテラより、怨念纏う紫焔が放射された。それは触手に命中するなり延焼する如く広がり、腕の形を取って触手を縛り出す。焔が広がれば広がるほどに、まるで重石を付けられたように全ての触手の動きが鈍っていく。
「ツケを払うトキダヨ。この呪詛は貴方に未来を奪われたモノたちの悲鳴。貴方の業の形を表す錘。――噛みしめテ、逝きなさイ。彼らのとこまデ葬送ってあげル」
 レイラがカンテラに更に魔力を籠める。紫焔はますます強く燃え上がり、触手の動きを止め、拘束する!
「機と見た。――いたちごっこはお仕舞いだ」
 アルトリウスが掃滅の魔眼を煌めかせ、鈍り、停止した触手から順に片っ端から異次元に叩き落とす。最早、召喚が完全に追いついていない。アルトリウスは魔眼を切り、短縮詠唱。藍色の瞳に戻った彼の周囲に浮くは死という概念、その数二百超。
「穿て。『破天』」
 漆黒の弾丸が少なくなった触手を猛撃した。破天は着弾と同時に死の概念を撒き散らし、周囲を毀損・殺傷せしめるアルトリウス得意の範囲攻撃術式だ。その威力は折り紙付きである。
 面的飽和攻撃により、最早触手は、地上高く屹立し終端でとぐろを巻き、リングが如くポップヘッドの足下を支える大型のものと、他の猟兵の攻撃により停止したもの、動きの鈍ったものが十数本を残すのみとなる。
 大詰めだ。
 ばひゅ、と音を立て黒い腕が伸び、ポップヘッドが立つ直径十メートルの触手製の足場を掴む。『バウンドボディ』。飛び上がり、ずしゃりと足場に着地。迎撃用の触手は尽き、最早彼を止めるものはいなかった。リゥ・ズゥである。
「諦め、ろ。もう、お前に、勝ち目は、ない」
 ポップヘッドにしてみれば、その猟兵の攻撃は一連、合わせて一分にも満たぬ間に行われたものだ。先程まで、圧倒する側だったはず。だと言うのに、この僅か数十秒の間に武器を失い、追い詰められつつある。
「ほざけえぇえぇえッ!!」
「こちらの台詞だ。――ようやく会えたな」
 ひらりとリゥ・ズゥの横に舞い降りる金髪の紳士。名を、ジェイクス・ライアー(素晴らしき哉・f00584)。
 彼はポーチから取りだしたショットシェルをチャキ、チャキ、と音を立てて装填。レピーターを往復させる音がまるで断頭台の刃音めいて響く。薬室に弾が送り込まれた。
 彼は他の猟兵が停止した触手の上を駆け跳ね飛び、その最後の舞台へ至ったのだ。
「よくもよくもよくもよくもよくも、よくもォ!! 斯くなる上は貴様らから殺し、屍蝋の面を被せてくれる! どうせ貴様らは互いに刃を向け合えまい!! 手始めに貴様らを手勢として次々殺し、最後には面を被せたまま互いに潰し合わせてやる!」
「遠大な夢だな。寝てから吼えろ」
 悍ましき奇人の言をジェイクスは一言で斬り捨て、リゥ・ズゥにちらり、視線を送ったのち踏み込んだ。
「キィイイェエアッ!!!」
 既に治癒した右手から炎が投射されるのを、ジェイクスは外套を翻して払い除ける。炎への備えは十全に済ませてあった。ジェイクスは次なる攻撃に眼を絞る。ポップヘッド自身に備わった触手、その数六。ノーモーションから突き出される触手を見切り、バックフリップで回避。地を這うほどに低く着地、駆ける飛燕の如く腕を広げ再度踏み込む。
「貴様は言ったな。『ただで死ねると思うなよ』と」
 ジェイクスはそのままポップヘッドの後ろにまで駆け抜ける。手を振り向けようとしたポップヘッドの身体に、黒いロープが――否、リゥ・ズゥの紐状となった腕が巻き付き、その動きを縛る。
 あの一瞬でのアイコンタクト。リゥ・ズゥとジェイクスの間には、高度に洗練された猟兵としてのコミュニケーションが成立していた。
 ジェイクスは触手で出来た地面を踏みしめ、反射するが如くポップヘッドに向けて跳ぶ。
 ――キンッ! 音を立てて爪先に刃が飛び出し、
「そのまま返してやろう。よく味わえ」
 繰り出される暗殺靴での蹴撃一閃。顎下から入り舌を切除する一撃。噴き出す血を浴びることなくジェイクスはそのまま滞空、宙で翻ってショットガンを構えれば、リゥ・ズゥが腕を解き、引く。
 ――銃声、銃声銃声銃声!!
 傘に内蔵された散弾銃が火を噴き、ダブル・オー・バック――牡鹿を撃つために作られた九粒弾がポップヘッドの右肩を殴り飛ばす。立て続けに右肩、腹、脚。顔面までも。容赦の無い銃撃に、奇人の身体が出来の悪いブギを踊る。
「――!! ――……!!!!」
 舌がなければ発する声が詰まる。再生するまでの苦痛はいかほどか。
 それを慮ってやるほど悪魔は優しくない。
 リゥ・ズゥは即座に前進し、握り固めた拳をポップヘッドの顔面に叩き込んだ。ショットガンの着弾でメチャクチャに裂けた傷口を、彼の拳がなおも破壊する。一発。二発。三発。止まらない。リゥ・ズゥは容赦も呵責もなく、その両の拳で力の限りポップヘッドを打ちのめす。
「お前は、リゥ・ズゥの敵だ。リゥ・ズゥはお前を喰らう。血肉となって、死ね」
 瀑布が如き拳の嵐を叩き込み、リゥ・ズゥは右脚を鞭の如く振るった。まるでポップコーンが弾けるように膨張した彼の右脚が、異形なるカイブツの顎を作り上げる。涎を散らして口を開いたカイブツの口が、触手二本諸共ポップヘッドの右半身を食い千切った。振るった部位をそのまま地に下ろすことなく、リゥ・ズゥは左脚で踏み切って回転。槍の如きローリング・ソバットがポップヘッドの顔面を打ち抜き、吹き飛ばす。
 舌がなければ声もない。ポップヘッドの身体は、遂に彼の用意したリングより放逐された。
 落ちる、落ちる。ポップヘッドは残った触手を地面に伸ばし、突き立て、衝撃を緩和しながら着地。招来した触手を練り合わせ、失われた自分の腕に宛がい癒着、代替の腕として成立させる。次いで舌の再生が完了。喘鳴に似た呼吸を零す怪人の前に、息継ぎを許さず駆け来るのは、風雲児。
「どォしたどォしたァ!! 息上がってンぞ、クソ野郎!!」
 杜鬼・クロウ(風雲児・f04599)が、大剣『玄夜叉』による連続斬撃を繰り出す。触手で代替した腕でそれを受け弾くポップヘッド。
 ――ポップヘッドにとっては、巨大なリングが如き最大の触手から、愉悦を以て見渡す光景が全てであった。神より授かった――と彼は思っている――あの最大の触手の上より、ありとあらゆる命を蹂躙し、供物として捧ぐ、それだけが全てであった。
 ――今やその触手を、黒い悪魔が。金髪の伊達男が。踵で踏み躙り、こちらを見下ろしている。
「ゆうううううううううるるううううぅぅうううぅうううさあァアァァアああァあァあああぬうううウウウウううっッ!!!」
「ピーピー喚くな、ウザッてェ」
 クロウにとってはそんなポップヘッドの内心など知ったことではない。いかに崇拝していようが、いかに尊かろうが、他人を侵す信仰など、唾棄し斬り捨てて然るべきものだ。
 振るわれる鞭のような触手の一撃を、身体を一転、踊るように避けてからの回し蹴り。胴薙ぎに一撃決まった蹴りに、不気味なうめきがポップヘッドの口からまろび出る。それと同時に玄夜叉の黒き刀身が、今ひとたび朱き焔を帯びて燃え上がる! 嵐の如き連続斬撃! 劫火を帯びたその剣閃は、罪人の楔が如く重い!
「殺すって言葉はなァ、“弱ェ”ヤツが使う言葉だ。俺はこの力でただひたすらに示す。揮う。――ハナッから結果は見えてンだよ! 俺達猟兵が来た時点で既になァ!!」
 クロウが大剣を振るうたびポップヘッドの身体が裂け、汚液が舞い散り、それすらも玄夜叉が放つ熱に煽られて蒸気と化す。一際強く振るわれた横薙ぎの一撃。触手を数本束ねて防御したポップヘッドの身体が、優に二十メートルほど吹き飛ぶ。
「オレぁー殺すなんて言わねェぜ。なんせ救いに来たもんでよ」
 空中に、光放つ影。
 ぶおう、と空気を裂く音を立てて振り下ろされるは『救済箱』。巨大なる救いの具現。棺桶めいたその筺が、吹き飛ぶポップヘッドを地面に叩きつける。その重量を以て轢殺せんばかりだ。轟音が響く。
 ジン・エラー(救いあり・f08098)が放った、まさに神の鉄槌めいた一撃がポップヘッドの全身を拉げさせる。
 ぶん、と救済箱を取り回しながらジンは無造作にポップヘッドの顎を蹴り上げ、その顔面に拳をねじ込んだ。彼が背負うは全ての救済。狂気にも似た『救い』と言う名の驕慢で自らを縛り、己の力を増幅したジンを覆うのは、彼のヒカリ。『全てを救う』、理想のカタチ。
「殺すッつったよなァ。オレの救いを殺してみろよ、クソ頭野郎――どうした? さっきまでのでけェ声もでねェかよ」
 マスクの内側で歯を剥き、ジン・エラーは凶暴に笑う。
 ポップヘッドは吹き飛びながら、ぐりん、と身体を捻って地面に脚を突き立て、着地。土を蹴立てながら制動する。吼える。最早意味のある言葉を発する余裕もないのか――或いは、猟兵らがその言語を理解出来ないのか。かれが意味を解し得ぬ叫びを上げると、宙に黒い“門”が開き、今一度異形なる影が招来される。
 先程まで他の猟兵が対処していた、影。一つきりしか現れないが、敵が二倍に増えたようなものだ。
 身構えるジン。……一瞬置いて、その眉が、近づく地鳴りに気付いたように跳ね上がる。
 ああ、確かに難敵かも知れぬ。――しかして駆けるその鋼の肉体の前に、難敵、なにするものぞ。
「言ったはずだぞ。裁きをくれてやると。――これより某の正義を執行する!」
 鋼が手にする劒。機動する二メートル半の巨体、そしてその速度は、ただそれだけであらゆる物を震撼させる暴力だ。
 キャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)は、その二つ名通りの正義の刃と化す。
「その間合い――殺った!!」
 放たれるは『瞬斬華』。射程はない、ただ一閃の斬撃に過ぎぬ。しかして、その威力は全てを断って見せるだろう。
 速力と身の捌きの全てを籠めた天地両断の一撃が、呼び出され身構えた異形なる影を、一切の躊躇なく、その有り余る破壊力で消し飛ばした。その圧倒的破壊力の前に為す術などあるはずがない。
 奇声を上げながらポップヘッドが放つ業炎すらも、彼女の鋼の肌は受け流す。ゆらりゆらりと陽炎を上げる装甲のその奥で、キャリウォルトのモノアイが警戒色に煌めく。
「天誅」
「ええ、ほろぼします」
 鎹・たから(雪氣硝・f01148)が、キャリウォルトの影より飛び出した。キャリウォルトの巨体が小柄なたからの身体を完全に覆い隠していたのだ。意表を突く登場に踏鞴を踏むポップヘッドに、たからは手を一閃。
 雪の結晶めいた手裏剣がぶうんとい唸り、残るポップヘッドの触手を斬斬、斬と断ち落とす。閃光めいたステップイン、肉薄。
「ギィッ!!!」
「未だ解らないのですね。それとも、認められないのか、迷うたか」
 たからは鋭く突き出される触手の一撃を顎を逸らして回避。オーラと連珠纏う左拳が触手を撥ね飛ばす。じゃっ、と伸ばした右手先、袖より飛び出す飾り気のない、マグライトめいた銀の短杖。
「迷うことなどありません」
 たからは美しい瞳を瞬いた。それをきざはしとしたかのように、銀の短杖より形容しがたい音を立て、光が迸る。彼女が手にしたのは心の力で成される剣――フォースセイバーだ!
 飛燕が如く切っ先が踊り、光の剣が宙に美しく軌跡を残す。断ち切られたポップヘッドの触手、残三本が青黒い液を散らして宙を舞う。
「あなたは終着駅に着いたのです。――次の電車はありません」

 たからは歌う。
 ここが、貴様の終着だと。

 何事かを叫ぼうとしたポップヘッドの顔面に、集束したオーラを纏ったたからの拳が叩き込まれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●お降りの際は、お忘れ物のないようお気をつけください
 殴られ、吹き飛んだポップヘッドの顔面がひび割れる。赤い石めいた角質がビキビキとひび割れて、剥がれ落ち、その肉体の崩壊が始まる。
「神よ……我が神よ……申し訳ござい、ません……申、し訳ございません……」
 死ぬ。
 たからが口にしたとおり、その肉体は朽ち落ち、ほろびかけている。
 終わっていく。
「しかし、しかし、今暫く……我が天命……尽きれども……せめてせめて……一人でも多く贄を連れましょうぞ……賜り物を最後に昇華するご無礼を……お許しをォ……」
 何かが軋む音。猟兵らの左方で、リングの如くそびえていた最も大きい触手が枯れるようにしおれ、乾き、崩壊する。同時に、ポップヘッドの顔面を強固な触手が巻いた。
 呪物に詳しいものがいれば、巨大な触手の維持を手放すことで、使える呪力のリソースを増やしたと看破したやも知れぬ。――ポップヘッドを巻いた触手は、傷口を繋ぎ止め、みちみちと音を立て肉体を締め上げ、固定する。身体から複数の触腕が展開。ボロボロの経典を掲げ、狂人は吠え立てる。
「藁のように死ねとそう言ったな……蛆虫どもォ……! 私はァ……最早ここで果てるがさだめェ……しかしィ! ただの藁束の如くには燃えぬ……!! 贄を!! 一人でも多くゥ!! 連れて行くゥ!!」
 どこにそのような力が残っていたというのか。
 ポップヘッドは今までとは別次元の速さで地面を蹴り、後方車両へと走った。全くの急展開に、その場にいた猟兵らの反応が一拍遅れた。
 狂人は疾風が如く駆ける。触手を伸ばし、それを突起に掛けての高速移動。跳躍のたび、暮れの空に浮く染みの如く宙を舞う。

 一人でも。
 一人でも多く殺してやる。
 貴様らの顔を曇らせ、濁らせ、その命を捧げ物に冥府へ堕そうではないか。

「おかしいのだわ! ダンスホールに背を向けて、ホストがどこに行くのかしら!」

 甘い少女の声が、ポップヘッドを現実に揺り戻す。
 焦げ付くような斜陽のニア・デス・レールウェイに、死神が立っていた。
レイラ・ツェレンスカヤ
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
あの信徒たちもね、とっても素敵な催しモノだったのだわ!
うっとりとしてしまいそうな血と肉の宴!
でもね、全部壊して来たかしら!
今のアナタの怒った姿!
うっふふふうふふふふあはあははははは!
無様! とっても無様なのだわ!
それが見たかったかしら!
憎いでしょう?悔しいでしょう?
さあ、今度はアナタがレイラを無様に殺してみるといいのだわ!

レイラはひたすら槍を放つのだわ
足を止めて、狙って撃って!
一撃一撃が、レイラの捨て身の一撃かしら!

敵の攻撃は避けないのだわ
必要ならば従者が防いでくれるかしら
◎◎


満島・ショコラ
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

うぅん、これは失敗したかなぁ。
だってめちゃくちゃ強そうだもん!死んじゃうかも!
でもね、でもでもでも、ショコラは死なないよ。
旦那様と結ばれて幸せになるんだから!だから死ぬのは……お前だ。

UC【死逢わせな結末】を使って理想の花嫁姿に変身、高まった戦闘力でレイラお嬢様の捨て身の攻撃が通るように敵の攻撃を防ぎ続けるよ。
たとえ血反吐を吐こうと膝だけはつかないよ。
だって、今のショコラは理想の花嫁なんだもん!
最高に幸せな花嫁が膝をつくだなんて無様、他の誰よりこのショコラ自身が許さないんだから!


ウィリアム・ウォルコット

【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
いよいよ親玉のお出ましか
ああ、いいねいいね
とても醜悪で、とても異様で、最高に悪いやつだよ、キミ
セイギの味方に倒されるのにふさわしい相手だ

長射程攻撃を上限より近くで撃つことで精密射撃に生かすよ
味方を狙う触手を優先的にレーザーガトリングの斉射で処理
みんな無茶ばっかり
でも、でもね、ボロボロでも諦めないで進むのは最高にヒーローらしいじゃないか
多数の触手が出てきたら薙ぎ払うように焼き切るよ
仲間が防いだ隙を無駄にするのはヒーローの名折れだから

さぁ、さぁ、さぁ!
触手を焼き払って、腕を抜いて、抵抗する手段を徐々に削ってあげよう
だってキミは悪いやつで、報いを受けるべきなんだから


九十九曲・継宗
【ツェレンスカヤ・スィミヤー】
聞くに堪えない罵詈雑言ですね。
まぁ外道にいちいち言葉を返す義理もないですし、言いたいだけ言わせておきましょうか。

お嬢様の身も心配ですが、他の方が守ってくれると信じて私は露払いに専念します。
脚に仕込まれた車輪や、腕のワイヤーの絡繰を駆使して、
触手を斬り払ったり、残像やフェイントも織り交ぜ、
攪乱しながら敵の元へと向かいます。

私の刀がその首に届いたならそれで良し。
届かなかったとしても、こちらに十分気を引き付けられましたかね。
いいんですか? 私にばかり気を取られて?

もちろん、隙を見せたら私もばっさりと斬らせてもらいますよ。
その首か腕か足……いただいていきましょうか。


マスクド・キマイラ
◎【ツェレンスカヤ・スィミヤー】

俺は、ここだ!
俺は、ここだぞ!
マスクドキマイラを、殺してみろっ!!

ボスも無茶をする、がっ……無茶と無謀でプロレスラーに勝てるとは、思わないで貰おうかっ!
ボスに向かう攻撃に立ち塞がり
見せてやろう、プロレスの『受け』をっ!

避けず、防がず、ただ受ける
観客に悟らせぬ、或いは見せつける軽減技術は確かにある、だがそれだけだ
ダメージはある、苦痛も残る、それが日常だ
それでも。鍛えた肉体、高めた技術、なにより意地と誇りで立ち続ける


無敵ではない人間が、俺は無敵だと笑って挑む!
それが人の可能性、それがプロレスラーの生き様よっ!
お前がただ人であったならば、あるいは俺を倒せたかもなっ!!



「あの信徒たちもね、とっても素敵な催しモノだったのだわ! うっとりとしてしまいそうな血と肉の宴! でもね、全部全部ぜぇんぶ、壊して来たかしら!」
 蜜のように甘く笑い、レイラ・ツェレンスカヤ(スラートキーカンタレラ・f00758)は言う。立ち塞がる猟兵五名が、ポップヘッドの行く手を阻むように扇状に広がった。中央に陣取ったレイラは、にっこりと笑いながら続ける。
「壊してしまったモノより、今のアナタの怒った姿! 焦った姿! 周到に計画して自信満々に実行して、石に躓いて顔から転んだような、可哀相で可愛そうな姿!」
 レイラは人形のように整った顔で、大きな瞳をこぼれんばかりに開き、歯を剥いて笑う。まるで抱き受け入れるように手を広げて見せ、哄笑。
「うっふふふうふふふふあはあははははは! 無様! とっても無様なのだわ! それが見たかったかしら! 憎いでしょう? 悔しいでしょう? さあ、さあさあさあ、今度はアナタがレイラを無様に殺してみるといいのだわ!」
 ポップヘッドは、その狂気に触れた。
 彼は狂っていたが、自分より狂った何かに触れたことがなかった。
「――この、狂人めがアあぁあ!!」
 狂人は、その触手をフルに展開。
 今一度全身に邪悪なる炎を纏い、燃えさかる触手を振り回す。
 繰り出される触手の数は一瞬にして十を下らない。レイラは一切の防御を取らない。攻撃を防ぐのは、従者の仕事であるからして。
 大柄な影がレイラの前に飛び出し、仁王立ちになってポップヘッドを睨む。
「ボス、俺の影に! 無茶と無謀は俺の――プロレスラーの専売特許だっ!! 見せてやろう、プロレスの『受け』をっ!」
 マスクド・キマイラ(千の貌と千の技・f06313)だ。プロレスラーには、頑健に鍛え上げた肉体で攻撃を受け、耐え忍ぶことが必須であるとされる。一発二発で沈むようでは、「受けて魅せる」事が出来ない。
 避けず、防がず、ただ受ける。観客に悟らせぬ、或いは見せつける軽減技術は確かにある、だがそれだけだ。ダメージはある、苦痛も残る、それが日常だ。
 技を受けねばならないことがプロレスにはあるのだ。攻撃と被弾は、いつも糾える縄の如く展開される。
 それでも。鍛えた肉体、高めた技術、なにより意地と誇りで立ち続ける。
 いかなる攻撃を受けようとも、倒れず二本の脚で立ち、不敵な笑いと豪快な技で応酬する――それでこそ、観客は沸き、歓喜するのだ!
「俺は、ここだ」
 静かに一つ、
「――俺は、ここだぞ!!」
 睨んで二つ、
「マスクドキマイラを、殺してみろっ!!」
 止めに叫べば彼の身体は鋼と化す。ユーベルコードを発動したマスクド・キマイラは、仁王立ちに立ったまま殺到する触手を全て受け止める! 炎が鋼の肌を焦がすが、それすら痛痒に感じていないかのようにマスクド・キマイラは立ち続ける!
「馬鹿なァ……!! 貴様、本当に人間かァッ……!?」
「当たり前だ! 人間でなければプロレスはできんだろうっ!」
 そう。マスクド・キマイラは只の人間だ。だからこそ、――だからこそ煌めく可能性を持っている!
「無敵ではない人間が、俺は無敵だと笑って挑む! それが人の可能性、それがプロレスラーの生き様よっ! お前がただ人であったならば、あるいは俺を倒せたかもなっ!!」
 マスクド・キマイラが攻撃を受け、意識を引きつけた直後。横合いから甲高いモーター音が鳴り響く。
「いいね、いいねいいね。ああ――キミみたいなのが親玉でよかった、最高だ、最高に最低な悪い奴だ、キミは。あれだけ殺しておいて、この期に及んで未だ人を殺しにいこうだなんて」
 ウィリアム・ウォルコット(がとりんぐのおにいさん・f01303)が手の凶器を敵に振り向けていた。レーザー・ガトリングガンの銃身が高速で予備回転し、その銃口が鎌首をもたげる。
「ああ――まさに、セイギの味方に倒されるのにふさわしい相手だ」
「ギイィッ!!」
 マスクド・キマイラに向けた攻撃が無効となるのであれば周りから片付けようという腹か。
 ポップヘッドは触手を一点集中してのレイラ狙いから改め、分散させて多方面を狙い繰り出す。無論ウィリアムにも数発が迫る。速く、鋭い触手での攻撃。ギリギリで回避するが、腕に瘴気ともなう炎が這い、シャツの布地が焦げ、腐り落ちる。
 マスクド・キマイラは心配ないとして、他の二人もそこそこの無茶をしながら機動し、己の身を守っている。
「無茶するなあ。でも、好きだよ、僕は。誰かのピンチの前に膝を折らずに、強敵に諦めないで立ち向かう。最高にヒーローらしいじゃないか」
 正義の味方になりたかった少年は、緑の瞳を細めて笑う。
「――さぁ、さぁ、さぁ、始めよう! 触手を焼き払って、腕を抜いて、抵抗する手段を徐々に削ってあげよう! だってキミは悪いやつで、報いを受けるべきなんだから!」
 予備回転を続けるレーザーガトリングガンの砲身で次なる触手を打ち払うと、ウィリアムは膝立ちとなり筒先をポップヘッドと仲間の間に向ける。彼の狙いはまず、敵の武器を断つことだ。
「喰らえ!」
 レーザーガトリングの弾雨が、殆ど繋がって見えるほどの火線を描く。秒間百発を越えようかという速度で連射される光学弾がウィリアムの狙い通りに触手を焼き切る!
「ギッ……ッ、貴様ァ!!」
 ウィリアムは攻撃に集中し、前衛として立ち回る二人に対して向かう触手を断ち切った。しかし、己へ向かうものには十分な対処が出来ていない。
「く……っ!」
 先程避けた触手が再度撓り、鞭の如くにウィリアムを横合いから凪ぐ。吹っ飛ばされるウィリアムに前衛二人の視線が這う瞬間、彼は叫んだ。
「僕のことはいい! 今は、あいつに報いを与えるときだろう!」
 吼えた言葉は届いたか。地面に落ちて滑り転がり、苦痛に堪えながらウィリアムが顔を上げたときには、前衛二人は既に格闘戦に入っていた。
 満島・ショコラ(ネバーエンディングハッピーエンド・f05988)はファンシーカラーの釘バットで、九十九曲・継宗(機巧童子・f07883)は日本刀『風魚』を振るい、肉薄する。
 ショコラの釘バットが、燃え上がるポップヘッドの腕と軋り合う。まるで岩の塊と打ち合うかのような感触が彼女の手に返る。伝わってくる威圧感、攻撃の威力、共に黄昏の信徒などとは比べものにもならない。
(うぅん、これは失敗したかなぁ。だってめちゃくちゃ強そう……っていうか、強いし! 死んじゃうかも!)
 視界の外からの薙ぎ払いを動物的な勘で察知、回避。
「怖ぁいっ! でもね、でもでもでも、――ショコラはここじゃ死なないよ。旦那様と結ばれて幸せになるんだから! 死ぬのはいつか、旦那様の腕の中でって決めているの!」
 花咲くような笑顔でショコラは言い――

「だから死ぬのは お前だ」

 表情を凍らせ、言った。発動するはユーベルコード『死逢わせな結末』。祝福を受けるが如く花弁をその身に纏い、彼女は理想かつ究極の花嫁姿に装いを改める。踏み込み、はためくドレス。明らかなる速度の向上。間近から釘バットによる打撃を三連打。
「ぐゥ……ッ!?」
 ポップヘッドは腕で受けるが、明らかにパワー負けして踏鞴を踏む。すぐに態勢を立て直すように辺獄の炎を強め、間近から炎弾を連射するが、ショコラは三連続のバク転を打ちそれを回避。
「当たらないよ。これはショコラの理想のカタチ! 最高に幸せな花嫁が膝をつくだなんて無様――他の誰よりこのショコラ自身が許さないんだから!」
 お色直しを挟んだショコラの戦闘能力は爆発的に増大するのだ。舞い踊る花弁がそれを証明している。今この瞬間も彼女は体力を消費しながらその状態を維持しているが、それを決して表に出すことなく向日葵の如くに笑った。
 ――ああ。
 陰った日の下での向日葵は、かくも禍々しく見えるものか。
 ぞくり、と背が粟立つのを感じてポップヘッドは吼えた。吠え立てながらに触手を繰り出そうとし――
「……聴くに堪えませんね。こうもやかましく吼えられたのでは、落ち着いて刀を振れもしない」
 静かな声。継宗は返事を期待していない風に、言い捨てるだけ言った、と言う風に呟いた。元より外道と交わす言葉などない。
 彼が『風魚』の刀身を鞘に納めた瞬間、ウィリアムが断ったのとは逆側の触手がばらばらと輪切りになって落ちる。ショコラが格闘戦で気を引く間に、彼がその早業にて敵手の攻撃能力を削いでいたのだ。
 殆ど反射的な動きで、ポップヘッドは身を翻し、炎に燃える左拳を突き出す。継宗は身を沈めて顔面への直撃を回避、脚部に内蔵されたローラー『廻転脚』を軌道。まさに旋風めいたターン。回転のエネルギーと、抜刀の向きを同期する。
「その腕、いただいていきます」
 ――雷が落ちるが速いか。かの刀が天を指すが速いか。何れなりや。
 余人が見れば答えを迷う、風魚一閃の斬り上げ。
 クルクルと回ってポップヘッドの腕が飛び、ドサリと落ちた。
「ぎいいいいいいいいいいあああああああああっ?!!?」
 ポップヘッドは醜く喚き、継宗の身体を払うように、残った右腕――それすら触手で代替している有様だったが――を振るって薙ぎ払おうとするが、振るった腕が貫けるのはその残像が精々だ。継宗は全くノーモーションのまま、状態を揺らさずに後ろへ下がる。ポップヘッドの右腕が空を打つ。
 廻転脚は継宗の踏み込みを邪魔せず、かつ彼が思ったタイミングで急激に始動し、方向転換、加速、直立したままの踏み込みを可能とする。回避に、攻撃に、その用途は選り取り見取り。一度回れば継宗は、天地を駆ける絶剣となる。「おオッ、あ、ああぁ、アッ……」
 断面から飛沫を上げる血を焼き止め、ポップヘッドは歯を砕けんばかりに噛みしめる。
「き、きさッ、貴、様ッ、きさ、貴様だ、け、だけでもおおぉぉ、ォォ!!」
 ポップヘッドは右腕に炎を集め、力の限り継宗に向け繰り出そうとした。それに涼しげな声が返る。
「――単純ですね。いいんですか? 私にばかり気を取られて?」
 問う継宗の言葉。地に落ちる影。
 ポップヘッドは空を仰いだ。
 藍色の空を、死神が落ちてきた。

「今の声、もう一回聴かせて欲しいのだわ! レイラの狗にばかり近くで聴かせるのは不公平かしら!」

 レイラ・ツェレンスカヤはマスクド・キマイラの豪腕を借り、空へ跳んだ。
 天から落ち、ポップヘッドの視界を埋める。
 ポップヘッドが最後に見たものは、彼が信じた神の目ではなく。
 視界いっぱいのレイラの顔。そして、赤き槍であった。

 血槍『チェルノボグ』がポップヘッドの頭を貫き通し、地面へ縫い止める。
 突き刺さった穂先が地中で無数に分かたれ、地上へ噴出。
 まるでアイアン・メイデンに抱かれたように、ポップヘッドの身体は無数の槍で穿たれて――
 絶叫。
 
 身の毛のよだつような叫びが、地の果てで落ちる日と共に消えていく。
 狂人は半ば爆ぜるように、瘴気と汚泥の、億の砕片となって散り果てた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


 斯くして戦いは終わり――
 燃えるような夕焼けも潜まる。
 猟兵らは、各々の手段で現場を後にする。
 道すがら、一人の猟兵が言った。
「誰かにとっての神様を否定するのは、あんまりしたくない。けど、こんなことを望む神様がいるのなら……わたしは許せないよ」
 賛同の声があった。興味を示さない猟兵もいた。
 
 けれどいずれにせよ、一つ確かなことがある。

 邪神との戦いは、その信奉者との戦いは、これが最後では決してないという事だ。
 猟兵達は歩く。

 もう、風は静まり。
 荒れ果てた生贄特急の残骸を、落ち来た夜が包んでいく。

最終結果:成功

完成日:2019年02月06日


挿絵イラスト