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アースクライシス2019③〜お前もサビ残するんだよ!

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 自由の国、アメリカ。
 ビジネスマンや観光客で賑わう此処ニューヨークに、暴虐の限りを尽くすオブリビオン【スカムキング】の魔の手が迫っていた。
 全米を恐怖に陥れる。
 壮大な目的の為に、スカムキングは配下のオブリビオンに命じ様々な作戦を実行させていた。
 この暴虐指令が完遂されてしまえば、ニューヨークの、いやアメリカにいる全ての人々の心から『正義を信じる心』が喪われてしまうだろう。
 そして今正に、悪の魔の手が善良な一般市民へと迫っていた。

「やめろ! 私はこの後家に帰って家族とバーベキューを楽しむんだ!!」
 オブリビオンに目を付けられたのは赤いキャップにボーダーのTシャツと茶色のカーゴパンツと、中々にラフな格好の中年男性。
 ちょっとコンビニにでも行くような格好だが、多種多様なビジネスが生まれた今の時代、こうした姿で働く会社員も少なくない。
 そんな男性に執拗に纏わり付いているのはビシっと決めた上下紺色のスーツ姿の男性が数人。
 如何にもステレオタイプなビジネスマン、もといサラリーマンと言った出で立ちだ。
 しかしこのスーツの男性達、実はスカムキングの指令を受けたオブリビオンである。
「おいおい、まだ他の人が仕事しているのに帰る心算かい?」
「他の奴が抱えてる仕事は他の奴のだろ! 私が担当した仕事は終わったんだ!」
「早く終わったんなら他の人の手伝いをするのが会社員ってもんだろぉ?」
「知るか!! 無茶でない分量の自分の分の仕事を自分で片付けられないで何が会社員だ!」
「君がそんな事言ってるとチームの空気が悪くなるんだよね。大丈夫、僕も残業してるんだからさ」
「何が大丈夫だ! 私は家に帰るぞ!!」
「そんな我侭言わないでよ、こっちも仕事なんだからさぁ。あ、君の分のタイムカードは打電しておいたからどれだけ残業しても行政に文句言われないよ! 何せ君は『自主的に仕事が上手く回るように準備をしているだけ』なんだからさぁ」
「ふざけんな! 給料も払わず仕事させる気か!?」
「皆もやってる事だからさぁ」

「えーと、そんな感じに地獄みたいな攻撃を仕掛けてくるオブリビオンが居ます」
 そうもにょもにょした顔で告げる望月・鼎。
 余りにも鬱陶しいオブリビオンの言動に、何人かの猟兵は顔を背けている。
「推察するにこのオブリビオンがスカムキングから受けた暴虐指令は『働いている人を無給で残業させろ』ですかね。このご時勢にとんでもない悪逆ですねぇ」
 エグ過ぎて笑い話にもならないが、人々の心から光を奪っていくには効果的なのだろう。
 幾人かの猟兵は義憤からか、或いは別の理由でか怒りを覚えているようだ。
「皆さんにはこのオブリビオンの撃破、ひいては暴虐指令の妨害をお願いします。当人同士が同意の上で規定の時間内で相応の給金が支払われるのなら残業も悪では無いとは思いますが、精神的抑圧で従事させるサビ残なんて凶悪犯罪みたいなもんですよ! そんな指令はオブリビオンごとふっ飛ばしちゃってください!」


一ノ瀬崇
 サビ残を強要してくる奴はオブリビオンだった……?
 こんばんは、一ノ瀬崇です。
 酷い指令を引っさげて登場したオブリビオンが相手ですね。
 流石スカムキング汚い。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 集団戦 『サラリーマン』

POW   :    シークレット・ガン
【手に持つアタッシュケースに内蔵された兵器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    エンシェント・マーシャルアーツ・カラテ
【カラテ】による素早い一撃を放つ。また、【武器を捨て、スーツとネクタイを脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    情報解析眼鏡
【スマート・グラスで敵の情報を解析し、】対象の攻撃を予想し、回避する。

イラスト:炭水化物

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アララギ・イチイ
ふむ、指令を妨害するのは敵をぶっ飛ばせばいいから簡単なんだけどぉ
戦場は会社内になるのかしらねぇ
狭い場所での戦闘は苦手なのよねぇ

一応、民間人と敵の判断基準として社員名簿を【ハッキング】で【情報収取】して確認、名簿に名前が無い連中をぶっ飛ばすわぁ(一応、現地で状況観察して最終判断とする

屋内での戦闘になるでしょうから、【選択UC】使用よぉ
影や隙間に潜んで敵に接近、影から飛び出して奇襲攻撃、敵の対応を許さず【早業】のバトルアックスの【なぎ払い】攻撃を仕掛けるわぁ
反撃されて民間人に被害が出そうなら、シールドシステムを飛ばして敵の攻撃を【見切り】、【盾受け】で防御しておこうかしらぁ


トリテレイア・ゼロナイン
そこまでです!(機械馬に跨り登場し、降りて)
先程ネットを●ハッキングし●情報収集、●世界知識で得た知識によりますと、その行為は明らかに就労法違反!
(アメリカは就労法でよかったのでしょうか…?)
もし然るべき所に発覚すれば監査のメスが入り職場その物が崩壊
残業どころか失職の危険があります
(オブリビオンに調査データの書類を投げ渡す)

社員の適正な労働時間を厳守することこそ会社を護ることに繋がるのです
さあ、サービス残業推進は即刻停止して頂きます

そして私が現れてから今までUCで貴方の能力はセンサーで粗方解析できました
つまりトランクの展開などさせず剣で斬り捨てられるということです

…騎士の仕事では無いような…


尾崎・ナオ
残業は恥、規定時間内に終わらないなら能力不足。
仕事内容がレベルに合っていないなら上司のマネジメント不足。
昭和は終わったぜ!令和だよ!?平成じゃんぷしてんだぜ!?

指定UC+技能挑発

「自分が残業しなきゃいけないほど無能だから、他も引きずりたいんだよねぇ? 自分が辛かったから他の人が同じ目に合わないと嫌なんだよねぇ? うんうん、卑屈で新しい考えが理解できないどうしようもない人間性だと仕方ないよ。恥ずかしい事じゃない!うん、ナオちゃんほど有能で美しい心根の生き物なんて、そうそう存在しないから!」

スピードアップ+早業46+クイックドロウ161
残業を押し付ける前に、銃口を押し付けちゃうぞ☆


パリジャード・シャチー
●心情
・シャチと社畜って似てるよねって言う駄洒落禁止ね
・神様は年中無休だよ。仕方ないネ。まあだからと言ってヒトの子に無理はさせられないよね。ってことでやっちゃるよ。
・さてそれじゃ、サラリーマンのオブリビオンを物理的に「首」にしてこようかな。
●戦闘
・アイラーヴァタこと愛羅に乗って着ぐるみで戦場に行くよん。
・うちのことを謎眼鏡で解析しようとしてるみたいだけど、うちのことを解析できるかな。うふふふ。
・まあ解析しようとしている隙に、ちゃっちゃとUCで首落とすんだけどね。
 象や着ぐるみに気を取られているうちに無双風刃は展開済みだよ。
・さーて、どんどん首にしちゃるからねー。あの世でゆっくりしていってね!


宇良潟・伝助
まず【目立たない】様に気を付けてサービス残業を押し付けられている人にこっそり「あなたを助けに来ました。ここはわたくしに任せて家に帰って下さい」と言い、私の操作技術でアイテム【質素な人形】をサビ残被害者と錯覚させる様に操り囮になります。
戦闘になった場合はユーベルコード【存在感の有る戦闘用人形】を使い、【質素な人形】を囮に使いながら私はアイテム【戦闘用舞台装置】の罠を使い敵の撃破、又は敵の数を減らして行きます。


荒谷・ひかる
うわー。
うん、このご時世にこれはひどいよね。
なんとかして止めないといけないんだよ。

【満面笑顔の向日葵少女】を発動させつつ、絡みまくってるオブリビオンさんに笑顔で話しかけ続けて論破するよ

おじさん、いいかな?
チームの空気を悪くしてるのは、サビ残して「君は残らないの?」って雰囲気出してるあなたの方なんだよ?
我儘言って仕事してるのもあなただし、勝手にタイムカード押したの訴えられたらあなたが負けるよ?
未払い給料が会社の知らないうちに溜まってて、あとでバレたら会社の損失だよ?
皆もやってるって言ってるけど、皆にやらせてるの間違いだよね?
皆に迷惑かけてでもやってるの、あなただけだよ?

と、笑顔で圧力かけるね。



 トンデモ暴虐指令を遂行しようと善良な会社員を狙うサラリーマンのオブリビオン。
 彼はビジネス街のとある会社の一階に現れた。
 広々として開放感の有るロビーには行き交う人も多く、皆足早に歩いて行く。
 そんなロビーの一角で、一人の会社員が三人のサラリーマンに捕まっている。
 最初は警備員も同僚同士の遣り取りだと思い遠巻きに眺めていたが、様子がおかしいと感じてからは周囲の人を遠ざけている。
 徐々に漂ってくる危うい雰囲気。
 街で目にするヴィランとも違う独特の気配に、警備員達は只事では無いと感じながらも手出しした所で犬死にしかねないと言う悪寒に歯噛みしていた。
 そこへ差し伸べられる救いの手。
「そこまでです!」
 異様な雰囲気を消し飛ばすように響いた声。
 誰もが何事かと振り返れば、ロビーに現れたのは機械の馬に跨った全身鎧を着込んだ騎士の姿が有る。
 その隣には象に跨ったシャチの着ぐるみを着た女性の姿も有る。
 インパクト抜群な二人の登場に、周りの人間は思わずハリウッドの撮影か何か、と勘違いをしそうになる。
 続いて現れた四人を加えた計六人。
 一般人ともヒーローとも違う威風堂々たるオーラに、誰かが気付く。
 これはいつものヒーローVSヴィランじゃない、猟兵VSオブリビオンの戦いだ。
「おやぁん? 何用ですかねぇ?」
 彼等に気付いたサラリーマンは見下したような笑いを顔に貼り付けて首を回した。
 割と殴り飛ばしたい表情だ。
「うわー。うん、このご時世にこれはひどいよね。なんとかして止めないといけないんだよ」
「昭和は終わったぜ! 令和だよ!? 平成じゃんぷしてんだぜ!?」
 先ず前に出たのはにこやかに微笑みを浮かべている荒谷・ひかると、人を食ったような笑みを浮かべている尾崎・ナオ。
 浮かべる表情は対照的だが、二人は同じ様にサラリーマンへと言葉を叩き付けて行く。
 先制のジャブを放つのはナオだ。
「残業は恥、規定時間内に終わらないなら能力不足。仕事内容がレベルに合っていないなら上司のマネジメント不足。どっちにしたって自分に関係ない仕事なら付き合う必要は無いよねぇ?」
「そ、そうだよな!」
「一度切りで付き合いも終わる仕事なら良いかもしれないけどね、我々はチームなんだぁ。キミ達みたいに勝手気ままなフリーランスみたいに自分勝手な我侭を振り翳してちゃ、会社としては困るんだよぉ」
「そ、そうなのか?」
 ニヤニヤと馬鹿にした顔え答えるサラリーマン。
 会社員は左右で展開される煽り文句を多分に含んだ意見に右往左往している。
 馬鹿馬鹿しいと切って捨てない辺り、人当たりは良いが優柔不断そうな印象だ。
 このサラリーマンは後で滅するとして、会社員の方は押せ押せで行けばサビ残等と言う悪しき文化に染まらずに済むかもしれない。
 そう感じ取ったナオとひかるは一瞬視線を交わして畳み掛ける。
「自分が残業しなきゃいけないほど無能だから、他も引きずりたいんだよねぇ? 自分が辛かったから他の人が同じ目に合わないと嫌なんだよねぇ? うんうん、卑屈で新しい考えが理解できないどうしようもない人間性だと仕方ないよ。恥ずかしい事じゃない! うん、ナオちゃんほど有能で美しい心根の生き物なんて、そうそう存在しないから!」
「おじさん、いいかな? チームの空気を悪くしてるのは、サビ残して「君は残らないの?」って雰囲気出してるあなたの方なんだよ? 我儘言って仕事してるのもあなただし、勝手にタイムカード押したの訴えられたらあなたが負けるよ? 未払い給料が会社の知らないうちに溜まってて、あとでバレたら会社の損失だよ? 皆もやってるって言ってるけど、皆にやらせてるの間違いだよね? 皆に迷惑かけてでもやってるの、あなただけだよ?」
「おやおや、株式を発行している一流企業で働いた事も無いお子様がネットで聞きかじった言葉を並べているねぇ。新しく知った言葉を使いたくて仕方が無いお年頃なのかな? まぁキミ達みたいに労働と言うものを未経験な若者達には解らない世界の話かもしれないなぁ。会社に属する以上は会社の為に働くべきだし、勤勉な姿勢を会社に見せる事は回り回って自分の益となって返って来る。それはこれまで発展して来た社会が証明しているじゃないかぁ。あっ、もしかして……社会科のお勉強をまだ習っておいででない? プフーッ」
 ナオは【煽りは任せろ】を、ひかるは【満面笑顔の向日葵少女】を発動しながら次々に言葉を紡いでいく。
 対するサラリーマンも小馬鹿にした態度を崩さず煽り返して来る。
 流石はオブリビオン、常人とは違って聴く耳を持たない様だ。
 しかし二人の言葉はサラリーマンの耳には届かずとも、横で聴いていた会社員の心には届いたらしい。
「そうだな……やっぱり仕事は仕事、休みは休み。しっかりメリハリを付けて働いてこその労働なのか」
「その通りです」
「オフッ」
 唐突に聴こえて来た言葉にびくんと小さく跳ねる会社員。
 いつの間に回り込んで来たのか、そこには宇良潟・伝助がひっそりと佇んでいた。
 旅芸人一座の黒子として活躍していた過去を持つ彼はそこに居ながら気配を断ち同化する技能に長けている。
 サラリーマンや他の人達、もしかすると仲間の猟兵達にさえ気付かれずに動けている。
「あなたを助けに来ました。ここはわたくしに任せて家に帰って下さい」
 舞台に上がったばかりの新星を上手に捌けさせる様に、彼は会社員を誘導して騒ぎの中心から離していく。
 囮代わりに自身の持つ『質素な人形』を会社員の居た場所に立たせておくと言うアフターサービスもバッチリである。
 人知れず抜け出す事に成功した会社員は何度も小声で感謝を告げつつ、無事に騒ぎから離れて行った。
 その間にネットへ潜り込んで色々と情報を集めた騎士トリテレイア・ゼロナインはデータ出力した書類の束をサラリーマンへと突き付ける。
「先程調べた所、その行為は明らかに就労法違反! もし然るべき所に発覚すれば監査のメスが入り職場その物が崩壊。残業どころか失職の危険があります。社員の適正な労働時間を厳守することこそ会社を護ることに繋がるのです。さあ、サービス残業推進は即刻停止して頂きます」
「その様な事をすれば会社自体に害が及びますねぇ。キミ達が言う所の無関係な人々の生活にも悪影響が出かねませんし、その後は如何するんですかね? 情報提供者の家族や親しい人々に突然の不幸が襲い掛からないと良いですねぇ、何せ物騒な世の中ですから。ちっぽけな自己陶酔と引き替えに多数の無関係な人間に害を及ぼす気分はどんなものなのでしょうかねぇ?」
 アメリカは就労法でよかったのでしょうか、と翻訳に疑問を持ちつつ指摘するトリテレイア。
 対するサラリーマンは報復の可能性を仄めかしつつ首を横に向ける。
 同調圧力に脅迫。
 断れば自分だけでなく周りにも迷惑を掛ける事になると知れば、とても断れるものではない。
 青白くなった顔を拝もうとサラリーマンが向けた視線の先には確かに白い顔をしたものが立っていた。
 しかし、その顔には目や鼻と言ったパーツが無い。
 伝助が操る質素な人形は、器用にサラリーマンへと小首を傾げて見せた。
「んなっ!?」
 初めてサラリーマンの表情からニヤケが消える。
「あ、話は終わった?」
 年中無休で働く神様、パリジャード・シャチーは乗っていた象『愛羅』を撫でる手を止めてサラリーマン達へと視線を向ける。
 永い時を生きる彼女にしてみれば、ヒトの子は少々無理をし過ぎるように思える。
 人生は短いかもしれないが、だからと言って自分から更に縮めるのは論外。
 他人の人生を縮めようとするのは問題外だ。
「さてそれじゃ、サラリーマンのオブリビオンを物理的に『首』にしようかな」
 あれこれとレスバトルを繰り広げてくれていたお陰で周囲の人達の避難も終えた。
 後はこの不届きモノを成敗するだけである。
 戦いの気配を感じ取ったサラリーマン三体はそれぞれ構えを取るが、その動きは遅きに失した。
「うちのことを謎眼鏡で解析しようとしてるみたいだけど、うちのことを解析できるかな。うふふふ」
 不敵な笑みを浮かべるパリジャード。
 スマート・グラスを使い此方の情報を得ようとするサラリーマンだが、巨象や珍妙なシャチの着ぐるみに気を取られている内に勝敗は決している。
「あの世でゆっくりしていってね!!!」
 展開していたユーベルコード【無双風刃】が音も無く迫る。
 肌を撫でる風にサラリーマンが気付いた時には、首と胴が切り離されていた。
 灰になり崩れ落ちるサラリーマン。
 初手で一人やられた事に驚きを滲ませるが、壁際に居たサラリーマンがメガネをクイクイと押し上げながら高らかに宣言する。
「しかしキミ達五人の情報は解析済み! 幾ら猟兵と言えども私には攻撃を当てる事も出来ませんよ!」
「なるほどー。……じゃあ、詰みだね」
 ウインクを飛ばすパリジャード。
 強がりを、と余裕の笑みを浮かべるサラリーマンだが、その背後に伸びる影が蠢き出す。
 音を立てずに影からぬるりと飛び出したのは狼。
 サラリーマンが気付いた時には狼は姿を崩し、一人の女性へと変わっていた。
 赤を基調とした豪奢なドレスの上に白衣を羽織った、奇妙とも言える組み合わせの格好。
 捻れた二本の角と膝裏まで伸びる長い炎髪が目を引くマッドサイエンティスト、アララギ・イチイだ。
「やっぱり社員名簿に貴方の情報は無いわねぇ。じゃ、ぶっ飛ばすわぁ」
 ユーベルコード【禁忌薬・影狼薬】を使い影の狼と変異した彼女はひっそりと影に潜み隙を窺いつつ、会社のデータをハッキングして社員名簿を閲覧していた。
 対象がオブリビオンに洗脳された一般人である可能性を考慮しての裏取りも兼ねて照会した所、このサラリーマン達の情報は何処にも無かった。
 ならば敵として叩き切るまで。
 イチイは右手に握り締めた大型のバトルアックスを軽々と振り抜く。
 足元から迫る余りにも早い一撃に、サラリーマンは反応する暇も無い。
 一撃必殺の早業で下から上へと振り抜かれたバトルアックスの刃は易々とサラリーマンの肉体を斬り進み、やがて脳天を通って頭上へと至る。
「さよならぁ」
 直蹴りを繰り出し胴体を蹴り飛ばすと、サラリーマンの肉体は左右に分かれながらさらさらと灰になっていった。
 その様子を見送りながら、イチイは小さく溜息を吐く。
「狭い場所での戦闘は苦手なのよねぇ」
 彼女の本領たる火力を発揮するには、この場には壊してはいけないものが多過ぎる。
 見事な奇襲でオブリビオンを屠ってはいるものの、微妙に物足りなさそうだ。
「なるほど……しかし黙ってやられる訳には行きませんねぇ……!」
 残った最後の一人のサラリーマンがアタッシュケースを持ち上げる。
 一見すると何の変哲も無いように見えるが、実は内部には様々な武器が内蔵されている、スパイ映画も真っ青なアタッシュケースだ。
 銃弾をばら撒きながら一般人へ被害を出してしまえば猟兵への評判も下がり今後の活動の支障ともなる。
 加えて人質に取れるようならこの場すら切り抜けられるだろう。
 そう考えるサラリーマンだったが、ふと違和感を覚える。
 右手に掴んだ取っ手が伝える重量がやけに軽い。
 視線を下げると、取っ手の先はいつの間にか切り落とされていた。
「馬鹿な、いつの間に!?」
「私が現れてから今までUCで貴方の能力はセンサーで粗方解析できました。つまりトランクの展開などさせず剣で斬り捨てられるということです」
 その理由を淡々と告げるトリテレイア。
 彼の手に握られているのは『儀礼用長剣・警護用』と言って元々はセレモニーの際に用いる儀礼剣だ。
 切れ味よりも強度や耐久性を重視して造られた一振りなのだが、それで音も無く金属を断ち斬る辺り、彼の凄まじい技量が垣間見える。
 こやつはもしやイアイのタツ=ジン。
 武器を失い気圧されたサラリーマンが一歩後退さる。
 が、その足取りは何かに阻まれる。
「……っ!?」
 勢いは止まらず背後へと倒れ込むサラリーマン。
 受身を取ろうとするが想定の位置に床は無く、それよりも低い位置へと背中が落ちる。
 仕掛けたのは伝助だ。
 自身の持つ『戦闘用舞台装置』の一部を使い舞台の段差で足を引っ掛け、奈落装置で受身を取らせず身体を落とし込む。
「ご自慢のカラテも、その体勢では十全に発揮出来ませぬでしょう」
「油断大敵ってねぇ? ま、ナオちゃんを敵に回した時点でそっちの負けは決まってるんですけどぉ。ぷぷぷー。残業を押し付ける前に、銃口を押し付けちゃうぞ☆」
 顔は挑発する様に小憎たらしく、しかし意識は警戒を保ったまま。
 頭上側へと回り込んだナオは『黒い拳銃』をサラリーマンの額に銃口を突き付ける。
 ひかるも精霊銃『Nine Number』を構えていつでも精霊術を発動出来るようにしながら、変わらぬ笑顔を向けている。
「詰みだねー? これに懲りたら他人に人生詰ませるような事言っちゃダメだよ?」
 倒れ込んだ体勢で反撃が出来る筈も無く、四人に囲まれたサラリーマンはあっさりと斃される。
 巡回に来た自走式小型掃除機に灰を吸われていくのを見送って、ほっと一息。
 サビ残と言う悪しき文化が蔓延る前にオブリビオンを倒し、同時にスカムキングの指令も阻止する事が出来た。
 これで一先ずは任務完了と言った所で、ひかるの脳裏にちょっとした言葉遊びが浮かぶ。
「そう言えばシャチと」
「シャチと社畜って似てるよねって言う駄洒落禁止ね」
「そんなー」
 駄洒落には厳しいパリジャードであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(共闘/アドリブ可)
「なんだかショウワの時代の企業戦士みたいだね」
フィオ姉ちゃんと一緒に悪いサラリーマンをやっつけるよ
【行動】()内は技能
ビジネス街上空をFlying Broom GTSに(騎乗)して旋回。現場に急行するね
「はいはい、ストーップ。労働監督官だよー」
とりあえずレッドカードだーとサラリーマンに赤紙を突き付けながら、会社員の人を逃がしてあげるんだ。
それで、サラリーマンの前に立ち塞がって(先制攻撃)でラビリント・ネプトゥノを唱えるよ
「一生出てこなくていいからね」
まあ、脱出してきたら出口で待ち構えて(全力魔法)でカラミダド・メテオーロだね!


フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(共闘・アドリブ可)
「働き方改革の時代に聞いて呆れるわね」
なんだろう、私じゃない別な誰かの憤りを感じるわ
■作戦
弟と連携しサラリーマンの悪行を阻止する
■行動
Flying Broom GTRに[騎乗]してオフィス街へ
揉めている男性の声を頼りに現場へ急行し、会社員との間に割って入る
「いつの時代の話をしているのよ」
良く通る声で注意を引き付けながら、会社員の人を逃がすように説得する(コミュ力)
「職場にいれば働いていると勘違いしているのよね」
サラリーマンを(挑発)している隙に、弟のUCを発動させる
あとは出口で待ち構えて【バベルの光】を撃ち落として終了
「さあ、定時で帰るよわ」


シズホ・トヒソズマ
※アドリブ連携可

サービス残業とかいけませんねー
特に明日休みの人が遅くまで残るせいで自分も遅くなる系とか本当心底…おぉっと失礼少し闇が漏れ出ました

ぴっちりスーツ姿で出てきて自身をベルト◆ロープワークや拘束具で拘束しその姿を◆パフォーマンス
「あっ、人々に見られて、つい昂ってしまいます♪」

一般サラリーマンの方を指定してUC発動
ぴっちりスーツのそういうお店の名刺をからくり人形に配らせ
◆誘惑して皆様を即退社してお店に直行させます
まあかかりが弱ければ店に着くまでに解除されますから大丈夫でしょう
強かったら? その時は新しい趣味を拓いたという事で

戦闘ではその恰好のまま別UC『発揚・黄金人形』で敵を◆範囲攻撃


スカル・ソロモン
「こういう輩には、体で分からせるしかないねえ」
オブリビオンの背後からその肩に手を置くと同時に、ユーベルコードで段階的に恐怖を与えていく。
サビ残がもたらす恐怖をね。

まず第一の恐怖、疲労困憊。残業で疲れすぎて何もする気が起きない恐怖。そして給料は増えない。

第二の恐怖、孤立無援。残業で自分だけ生活リズムが狂い、家族と疎遠になる恐怖。そして給料は増えない。

第三の恐怖、家庭崩壊。ある日家に帰ると置き手紙だけがあり、家族が消えている恐怖。そして給料は増えない。

第四の恐怖、社畜傀儡。自尊心が摩耗し、言われるがままに働き続ける事に幸せさえ感じる恐怖。そして──。

敵の精神がやられた所で、一撃叩き込んでおこうか。


花開院・月下
んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!心がぁぁぁ!!サービス残業という言葉だけで摩耗していくよぉぉぉぉぉ!!!!ぜぇ……ぜぇ……おのれぇ……ぜってぇ許さないぞオブリビオンッッ!!!!

サラリーマンのぉ!!言葉なんかに耳は貸さずにぃ!!今日は録り溜めたアニメが観たいので定時であがりまぁぁぁす!!と高らかに宣言!!!その場でスマホで録画していたアニメを視聴!!!上司の嫌味もぉ!!口撃もぉ!!あたしには通用しない!!この天声細葉榕ならなぁ!!

皆!!!あたしがアニメを見ているうちにこいつらをなんとかして!!録り溜めたアニメは二本!CM抜きしてあるから大体50分が限界よ!!あっあっ……おわっちゃう……


大神・零児
は?抑圧してサビ残だ?
おい、流石にこの光景は頭にくるぞ
UCは前もって発動させておく

潜入・隠密行動し敵が一般人の抑圧に夢中になっている隙に先代達(霊体)とともに包囲
それぞれが気が付かれない様接近又は狙いをつけ
一般人を巻き込まぬように一撃を入れ
法律を持ち出しオブリビオン達に「違法」だと堂々と宣言!
更に他者を脅迫その他もろもろの違反も羅列し反論させん!
俺が暴行罪だ?は?政府や自治体からの許可をもらってますが?
これがそうな!(許可の証拠を提示)
言い合いの隙に一般人は先代達が救出
後は殲滅

技能
戦闘知識
情報収集
第六感
見切り
野生の勘
2回攻撃
世界知識
封印を解く
時間稼ぎ
先制攻撃
学習力
目立たない
言いくるめ
忍び足
挑発



「好い加減にしろ! 私は残業なんてせんぞ!」
「まぁまぁ、そう言わずに」
「まぁまぁ、騙されたと思って」
「まぁまぁ、助けると思って」
「ええい、鬱陶しい!!」
 此処はニューヨークのオフィス街。
 とある交差点の近くでカモを見付けてサビ残を強制している三体のサラリーマンのオブリビオン。
 大声と聴こえて来る内容に、周りの人々は足を止めて少し遠巻きに眺めている。
「あっ、あれだね」
「そうみたいね」
 上空を『Flying Broom GTS』に乗って巡回していたフォルセティ・ソルレスティアと、同じく『Flying Broom GTR』に乗って巡回していたフィオリナ・ソルレスティアの姉弟は他の猟兵達へ合図を送り、一足早く現場へと到着した。
 空から降りてきた二人へ周囲がざわめき、会社員とサラリーマン三人も此方に気付いた。
「働き方改革の時代に聞いて呆れるわね」
「なんだかショウワの時代の企業戦士みたいだね」
「なんです? キミ達は」
 此方を見て、正体等解り切っている癖にサラリーマンが尋ねる。
 それにフォルセティは胸を張って答える。
「はいはい、ストーップ。労働監督官だよー」
 そう言って懐から赤い紙を取り出してレッドカードだーと突き付ける。
 何を馬鹿な事を、と鼻でせせら笑うサラリーマン達だったがその内の一人が気付く。
「ってそれ画用紙に赤い紙を貼り付けただけのオモチャじゃないですか! せめてもう少し体裁を整えたカードなり何なりを持ってきてくださいよ!」
「思わぬ方向からのダメ出しを」
「ノリは良い相手なのかしら」
 まさかのツッコミを貰っている間に、他の猟兵達が駆け付ける。
 一気に数が増えた此方にサラリーマン達は面白くなさそうに鼻を鳴らす。
「わらわらと集まって来ましたか。まるで遺産に群がる相続人本人ではない家族のようですねぇ」
「失礼な事を言うわね。そっちだってサビ残強制とかいつの時代の話をしているのよ」
 フィオリナの言葉に続くように、集まった猟兵達も口を開く。
「サービス残業とかいけませんねー。特に明日休みの人が遅くまで残るせいで自分も遅くなる系とか本当心底……おぉっと失礼少し闇が漏れ出ました」
 ぴっちりスーツにタイトなロープを巻き付けて現れたのはシズホ・トヒソズマ。
 自身も思う所が有るのか、刺激的な格好とは裏腹に底知れぬ仄暗さが言葉から滲み出ている。
「こういう輩には、体で分からせるしかないねえ」
 髑髏を模したヒーローマスク、魔王の仮面として創られたと語るのはスカル・ソロモン。
 そのダークな雰囲気を紳士然とした物腰に幾人かの女性達が俄にざわめき出す。
「は?抑圧してサビ残だ? おい、流石にこの光景は頭にくるぞ」
 サラリーマン達の勝手な言い分に怒りを滲ませるのは大神・零児。
 彼は既にユーベルコード【魂喰完全開放】を発動させていつでも戦闘を開始出来る態勢だ。
「んあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!! 心がぁぁぁ!! サービス残業という言葉だけで摩耗していくよぉぉぉぉぉ!!!! ぜぇ……ぜぇ……おのれぇ……ぜってぇ許さないぞオブリビオンッッ!!!!」
 そして一人、他とは違うテンションで叫んでいるのが花開院・月下だ。
 17歳と言う若さの彼女に一体何が有ったのか。
 想像は出来ずとも言葉だけで頭を掻き毟ってしまう様な勢いで叫ぶ彼女に群集の大半は引き気味だ。
 何人かの人々はそんな彼女を見て「オゥ……マーベラス」とか「何てキュートなんだ……」とか良く解らない属性に目覚め始めている。
 罪な女である。
 そんな独特のワールドを形成しつつ有る月下は突如懐から何かを取り出す。
 彼女が手にしているのは最新モデルのスマートフォン。
 慣れた操作で録画していたアニメを再生し始めた。
「サラリーマンのぉ!! 言葉なんかに耳は貸さずにぃ!! 今日は録り溜めたアニメが観たいので定時であがりまぁぁぁす!!」
 そう高らかに宣言してアニメを視聴する月下。
 余りにもフリーダムな行動だが、そんな自由気侭さはこの自由の国アメリカでは尊ぶものの一つ。
「そうだ、オレも帰ってゲームをやるぞ!」
「残業なんてくだらねぇぜ!」
「オゥ、ジャパニーズ萌え!」
 月下の叫びを聞いた群衆がノリ始めた。
 口々に帰宅してから趣味に打ち込もうとする声を聞いて、会社員もやはりサビ残はカスだなと思い始めている。
「これはいけない」
 そんな流れに待ったを掛けるべく、サラリーマンの一人が動き出す。
 エンシェント・マーシャル・カラテを修めるのはサラリーマンの勤め。
 ジツにマズイ事を口走る少女には少々眠っていて頂く。
 流れるような動きで月下に迫ったサラリーマンは意識を立とうと首筋に怖ろしく早い手刀を叩き込む。
 動体視力に優れた者で無ければ見逃してしまう程の一撃は、するりと空を切って外れた。
「なんですと?」
「上司の嫌味もぉ!! 口撃もぉ!! あたしには通用しない!! この天声細葉榕ならなぁ!!」
 月下の持つユーベルコード【天声細葉榕】は非戦闘行為に没頭している間、外部からの攻撃を遮断し、生命維持も不要になる効果が有る。
 もう一つ、自身の声がかなり大きくなると言う効果も有り、此方は此方で使い手は有る。
 例えば今の様に群集に広く語り掛ける際には重宝するだろう。
「見たかみんなぁぁぁぁぁ!! こいつらはサビ残が正義みたいな言い方をしておきながらぁ!! ちょっとでも不利になると暴力に訴えるぞぉ!! テロリストと一緒だぁ!!! こんな奴の言う事を聞く必要はあるのかぁぁああああ!!!!」
 突如少女に攻撃を仕掛けた事と、続く月下の台詞で一気に流れを持って行かれるサラリーマン達。
 焦った彼等は躍起になって月下を黙らせようと色々仕掛けるが、攻撃は全て外れる。
 スピーカー付きのデコイと化した彼女が作った隙を突いて、フィオリナが畳み掛ける。
「情け無いわね。貴方達みたいなのは、職場にいれば働いていると勘違いしているのよね。その癖実際の作業スピードは他の人よりも遅い事が大半。スカムキングも無能な貴方達を持て余して、如何でも良さそうな指令なんか出したんじゃないの?」
「何この小娘!」
 入れ食い状態で挑発に引っ掛かるサラリーマン。
 予想以上に平静さを失っている彼等を見て、フィオリナは悪戯な笑みを浮かべた。
「違うって言うならその会社員の人を離して、掛かって来なさいよ」
「何ぃ?」
「来なさいよ三下。怖いの?」
「やってやろうじゃねぇかよぉぉぉぉぉ!!」
 月下のノリが伝染でもしたのか、スーツの上着を脱ぎ捨ててネクタイを緩めるサラリーマン。
 完全に意識が会社員から外れたのを見て、透かさず零児がユーベルコードで呼び出していた霊体の先代達に頼んで救出させる。
 同時に群集も遠くに避難させておく。
 此処からは猟兵とオブリビオンの戦いの時間だ。
 零児はそのままビシッと人差し指を突き付ける。
「お前達、随分と威勢良く喋ってはいるが法を守る心算は無いな?」
「おっと、コンプライアンスでも語る心算ですかね」
 唯一冷静さを保っていたサラリーマンが答える。
 一人は月下に当たらぬ攻撃を繰り返し、もう一人はフィオリナの口車に乗ってアタッシュケースを放り投げている。
 中々にカオスな状況だが、それでも一応論破を試みない訳には行かない、と零児は口を開く。
「一番守るべき法を守らずして、納期や品質が守れるものか!」
「話の流れ上仕方ないとは言え煽り耐性ガバガバじゃないか!!!!」
「先ずは仕事を終わらせる事が大事なんですよ。修正は後からでも出来ますが、モノが無いのに修正も何もないでしょう?」
「脅迫や偽計、労働法違反等の罪を重ねれば会社自体が存続出来なくなるぞ!」
「まだ頭の上に美味って出て来て無いから本番は先だなぁ!!!」
「会社の存続なんてのは経営陣が考える事ですよ。実務に当たる人間は素直に目の前の仕事をこなせば良いんです。それさえ出来ないなら会社勤めは出来ませんねぇ」
 しかし相手は常識や良心等無いオブリビオン。
 改心も反省もしない相手の論理はそもそも前提が此方と噛み合っていないので、如何に言葉を重ねても届きはしない。
 のらりくらりと論点をずらしながら言葉遊びを楽しむサラリーマン。
 とは言え零児も本気でオブリビオン相手に舌戦を挑む心算も無い。
 時間を掛けて論争を仕掛けた甲斐有って、先代達はこっそりとサラリーマンを取り囲む事に成功した。
 気付いた時には遅い。
「む、これは……!」
「てめぇみたいな奴は、地獄で閻魔様に裁かれちまいな!」
 先代達が手にした得物がサラリーマンの胴体を貫く。
 四方八方から攻撃され、叫び声を上げる間も無く灰へと代わって行った。
「胸糞悪い相手だ」
 先代達を送り還しつつ呟く零児。
 一方フィルセティとフィオリナの姉弟が相手取っていたサラリーマンは何故か善戦していた。
 挑発に乗って無防備に構えていた所へフィルセティのユーベルコード【ラビリント・ネプトゥノ】で作り上げた氷壁の迷宮へとご招待したのだが、持ち前のカラテと猛りに猛ったハイテンションで迷宮内を疾走している。
 霧で視界を遮り、片手法が使えぬように立体交差まで仕込んだ迷宮なのだが勘が良いのか根性のなせる業か、サラリーマンは迷宮の出口付近まで迫っていた。
「まさか此処まで粘るとはね」
「一生出てこなくていいのに」
 驚異的な動きを見せる相手に困惑と驚嘆の入り混じった息を吐きつつ、二人は手を翳す。
 狙いの先は迷宮の出口。
「まあ、脱出してきたらそこを狙うんだけども」
「残念だけどこれ、ゲームオーバーなのよね」
 程無くしてサラリーマンが出口へと辿り着く。
 肩で息をしているがテンションは高いままだ。
「ははははは! 辿り着いたぞ!!」
「そう、ご苦労様」
「貫け、バベルの光よ!」
 フィルセティからは【カラミダド・メテオーロ】が、フィオリナからは【バベルの光】の一撃が飛ぶ。
 左右に逃げる事も出来ず、あわれサラリーマンはユーベルコードの直撃を受けて灰になった。
 苦も無く斃したフィオリナは頬に掛かった赤い髪を右手でぱらりと払う。
「さあ、定時で帰るわよ」
 斃れたサラリーマンは二体。
 最後に残った一人はと言うと、スカルのユーベルコード【闇に潜み永久に咆哮するもの】の餌食となって恐慌状態に陥っていた。
「疲労困憊。残業で疲れすぎて何もする気が起きない恐怖。そして給料は増えない」
「ぬぅぅ……! つ、疲れたら休めば良いだろう!」
「孤立無援。残業で自分だけ生活リズムが狂い、家族と疎遠になる恐怖。そして給料は増えない」
「家族だと、そ、そんなもの私には……!」
「家庭崩壊。ある日家に帰ると置き手紙だけがあり、家族が消えている恐怖。そして給料は増えない」
「な、ば、馬鹿な! 愛しのジェシーは何処へ!?」
「社畜傀儡。自尊心が摩耗し、言われるがままに働き続ける事に幸せさえ感じる恐怖。そして――」
「給料は、増えない……? う、うわぁぁぁ!?」
 背後から肩ぽんしつつ『恐怖を与える』事を続けるスカル。
 本来オブリビオンにこう言った心理的な揺さ振りは効果が低いのが殆どだ。
 だが彼は、彼自身の持つホラーに特化した語り手としての才能とそれを後押しするユーベルコードの組み合わせで強引に恐怖を感じさせていた。
 感じた事の無い恐怖と言う感情に振り回されるサラリーマン。
「おっと、逃しませんよ」
 飄々と告げるのはシズホ。
 ユーベルコード【発揚・黄金人形】で強化された人形を動かし回り込ませる。
 この場から逃げ出そうとしたサラリーマンは足を止められ、元の位置まで吹き飛ばされる。
 起き上がった所へ、再びスカルが囁き攻撃。
 数度繰り返すと、サラリーマンは当初の覇気は何処へやら、すっかりやつれてしまっていた。
「その恐怖が、君が人々に与えようとしていたものだ。じっくり噛み締めながら逝きたまえよ」
 十分に恐怖を染み込ませた所で、シズホがサラリーマンの体を縛り上げる。
 縄の扱いはお手の物、あっと言う間に身動き出来ないように全身を固定された。
 そこへスカルの持つ背骨を模した杖『タクティカル・スパイン』が迫る。
 心臓を貫かれ、サラリーマンの身体はさらさらと崩れ落ちていった。
「お、丁度良い感じですね!」
 囮役に徹していた月下が顔を上げる。
 丁度エンディング後の次回予告も終わったらしい。
「お疲れ様です。のど飴いります?」
「ありがとう!!!」
 アニメ視聴中も大音量で色々と喋っていたのを心配して飴玉を出すシズホ。
 笑顔でお礼を言う月下に小さく笑いつつ、遠巻きに戦いを見守っていた群衆へを手を振る。
「無事、オブリビオンは斃しましたよ!」
 おおおーっ、と大歓声が沸き起こる。
 お礼や賞賛の言葉を投げ掛けてくる人々に会釈をしつつ、シズホは小さな紙を配り始める。
「サビ残とか言うくだらない事はさて置き、しっかりとリフレッシュしましょう。あ、良ければこういうお店でスッキリしてきても良いんですよ?」
 彼女が配っているのはぴっちりスーツを着た女性がお酌をしてくれるBARの名刺だった。
 当然配られているのは男性方。
 戦いの最中も縄で強調されたシズホのぴっちりスーツに鼻の下を伸ばしていた人々だ。
「あっ、人々に見られて、つい昂ってしまいます♪」
「オォウ……」
 悩ましげに身体をくねらせるサービスをするシズホに幾人かはメロメロだ。
 興味なさげにしている年配の会社員達も、名刺はしっかりと受け取っている。
「入り口でこの名刺を見せたらちょっぴりサービスしてもらえますから、楽しんできてくださいねー」
 仕事も終わった事だし、と妙な牽制を入れつつ男達は足早に店へと向かって行った。
 それを見た女性陣は「男ってやーね」と溜息を吐きつつ家路に着く。
 封鎖されていた交差点も次第に車が流れ始め、普段の落ち着きと活気を取り戻していく。
「ふーっ、ミッションコンプリートですね」
「フィオ姉ちゃん、あの人達お店に行くって言ってたけど、どんなお店なのかな」
「まだ早いわ」
 純心に首を傾げる弟の情操教育に頭を悩ませるフィオリナであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ロジャー・バレット
「こういう残業残業って輩が僕ぁ大嫌いでね。だから思う存分ぶん殴って倒す!」

両拳の指の間に『五円玉』を挟んで即席のナックルダスターを作り、UC≪我流喧嘩殺法・其之壱≫を発動
敵の攻撃を【見切り】つつ【フェイント】を織り交ぜた接近戦を仕掛ける

「アンタ達のカラテと僕の喧嘩殺法、どっちが強いか勝負だ!」

懐から自家製の煙草『Astronomy Domine』を取り出し火をつけ口に咥え、脱力・リラックスすることでよりスピードを上げる

「サービス残業?せっかく仕事を終えて勝ち取った自由な時間をそんなことに使う必要はない!臆せず主張しよう、『帰ります』ってね!」

戦闘中に周りの市民を【鼓舞】して指令の妨害を試みる


ルカ・ウェンズ
サビ残だと!極楽とんぼと言われた私が謎の🔴力はないけど真の姿になって戦うわ。
【行動】
働いている人達を定時で帰らせないと。仕事が終わっていない?オブリビオンのせいにして帰るのよ。難しい話は知らん!みんな定時で帰りさい!!別の国、別の世界のでもサビ残をさせようとする奴は消さないと。

宇宙昆虫達といっしょに戦おうと思っていたけど、みんな休みで出掛けてるからショボーン(´・ω・`)ぬいぐるみしか来てくれなかったわ…まぁ、いいか!私は【残像】の見えるような速さで動き、【怪力】まかせに暴れたり縁切りで敵を攻撃をするから、ショボーンは善良な一般市民を家に帰りたくなるように【誘惑】…誘惑してね。


フェルト・ユメノアール
お金も払わず、残業を押し付けるのはもはや暴力!

今の会話はすでに録音完了、それ以上はパワハラだよ
それでもまだ残業をさせるって言うならボクが相手になる!

まずは『トリックスターを投擲』
そして、投擲物の中に『ワンダースモーク』を混ぜる事で周囲を煙で包み込み
敵の視界を閉ざした隙にUCを発動!

混沌を纏いし勝利の化身よ!数多の想いを胸に、煌めく舞台へ駆け上がれ!
カモン!【SPクラウンジョーカー】!
そして、クラウンジョーカーの効果発動!
このカードは攻撃時、虐げられた人たちの怒りを戦闘力に変換し、自分の戦闘力に加える事ができる!
これが、サビ残で苦しんできたみんなの怒りだ!
必殺の一撃をジョーカーと一緒に叩き込む!


ヴィサラ・ヴァイン
サービス残業とはいったい…?(無知)
よく分からないけど、社員さんを残業させずにサボらせればいいのかな
私、そういうのアプリゲームでやった事あるからイケるはずっ
【ハデスの隠れ兜】を発動してブラック企業に潜入
サラリーマン(オブリビオン)に見つからないように[目立たない]ところで社員さん達に話しかけるよ
「私は猟兵です。あなた達を助けに来ました」
社員さんに帽子をかぶせて一緒に透明になって会社を脱出
[忍び足]でなるべく物音を立てないように…
情報解析眼鏡で見つめられたら、逆に《魔眼『コラリオ』》で見つめ返して石化させるよ
[恐怖を与える]事で威力UP!
みなさん、子供心を思い出して思いっきりサボろう!!


クロウ・アクアディンゲン
サービス残業をさせる? ヤレヤレ、コレが有名なサービス残業と言うヤツか

戦闘能力などあって無いような物…なので戦闘では無く、話し合いを行う予定だ
最初に新人か監査官のどちらかの身分を、猟兵の権力を利用して入手してから向かう
その上で、現場を目撃したならば「労働基準法37条」に触れている事を説明の上で、戦闘を行おうとしたら「刑法261条」に触れる事を説明するとしよう
後は、上司にそのような指示を受けているのか? 上司の計画を破綻させているのでは無いか?と問答を行う

それでも戦闘になったなら、仲間が居れば支援に回るが、居なければ逃げる

さて、戦闘にならない事を祈るとしようか

連携やアドリブはお任せします


アレク・アドレーヌ
サービス残業お疲れ様って言いたいところだがな
そういう文句は労働組合に言うべきものであってテロ起こしてまでするもんじゃねぇ

って言うか労働には対価が必要なんであって無償の労働は強要するもんじゃねえって…これは鉄拳正妻もとい制裁の時間だな!

どう制裁しようかと考えたが…手っ取り早く【暗殺】【マヒ攻撃】【殺気】の三段構えで行くことにしよう
【マヒ攻撃】【殺気】の二つはサビ残させられている人に対して使用(マヒはそこそこ威力は蚊に刺された程度に極小)。要するに物理的に動けなくなれば残業どころじゃないと思う

まぁオブリビオンに対しては麻痺も暗殺も最大レベルでいいだろ、慈悲は無い


ヘスティア・イクテュス
こ れ は ひ ど い ! !
なんていうか一部猟兵達にクリティカルヒットしそうなのが…

とりあえず、こういう場合は…
今の貴方達の発言は録音させて頂いたわ!
労働基準監督署の方に訴えさせて頂きます!

ボイスレコーダー現代に必須装備よね


そしてあのアタッシュケースなにあれ欲しい!
攻撃はタロスのバリア【オーラ防御】で防いで
ミスティルテインで撃ち返すわ!


終わったら男性に一言
(宇宙の)海は良いわよ
労働時間なんてなし自分の好きな時間に好きなように働けて
(お宝を見つけて)稼げるし
(宇宙)船の入手や維持でそれなりにはかかるけど
リターンは大きいわよ貴方もどう?



「こういう残業残業って輩が僕ぁ大嫌いでね。だから思う存分ぶん殴って倒す!」
 左掌へ拳をぱしっと打ち付け戦意を高めているロジャー・バレット。
 口許には自家製の煙草『Astronomy Domine』を咥えて紫煙を燻らせている。
 勿論ポケットには携帯灰皿も常備だ。
「サビ残だと! 極楽とんぼと言われた私が謎の●力はないけど真の姿になって戦うわ」
 普段の淑女然とした姿から真の姿へと変貌を遂げるルカ・ウェンズ。
 甲冑を纏った昆虫の様なフォルムは威圧的な雰囲気を醸し出しており、その細部は虫特有の追求された機能美と妖しさに満ち溢れている。
 テンションも意気揚々ぷんすかぽん、やる気十分だ。
「お金も払わず、残業を押し付けるのはもはや暴力!」
 フェルト・ユメノアールは腕を組みふんすふんすと鼻息荒く腕を組む。
 道化師の格好をした彼女は人を笑わせるは好きだが、人から笑顔を奪う事は大嫌いだ。
 サビ残等と言う悪逆を見逃す理由は無い。
「サービス残業とはいったい……?」
 ヘビで出来た髪を持つ少女ヴィサラ・ヴァインは聞き慣れない言葉に首を傾げる。
 まだ14歳の彼女は、そう言ったビジネス関係の言葉に触れる機会は少ない。
 叶う事ならサビ残等と言うものに晒されないで居て欲しいものだ。
「サービス残業をさせる? ヤレヤレ、コレが有名なサービス残業と言うヤツか」
 その隣で首を振っているのはクロウ・アクアディンゲン。
 昨今ニュースになっているサビ残だが、実際に見るのは初めてらしい。
 最も進んで見たいものでもないので今回の様に潰せる機会が有ればどんどん潰して行きたい所。
「労働には対価が必要なんであって無償の労働は強要するもんじゃねえって……これは鉄拳正妻もとい制裁の時間だな!」
 ちょっぴりの言葉遊びを挟みつつ戦意を漲らせるアレク・アドレーヌ。
 昆虫型の『生体外骨格』を纏った彼は拳をぽきぽきと鳴らしている。
 気合十分、いつでもオブリビオンをぶっ飛ばしに行ける態勢だ。
「これはひどい!! なんていうか一部猟兵達にクリティカルヒットしそうなのが……」
 オブリビオンの仕掛ける卑劣な作戦にドン引きしているのはヘスティア・イクテュス。
 まだ年若い彼女だが、サビ残と言う悪意に晒されている知り合いに心当たりが有るのかもしれない。
 猟兵はアットホームで笑顔溢れる楽しい職なのでサビ残は無い筈である。
 以上七人の猟兵がニューヨークに集結した。
 対するサラリーマンのオブリビオンは此方も七体。
 一人一殺で行ける。
 今回の戦いの場は大きなイベントホール。
 同じ職種の社員達の意見交換と交友を深める為のイベントが開催されている。
 大半は歓談に勤しんでいるが、此処に紛れ込んだオブリビオンはイベントに参加した新入社員を中心にサビ残を広めようとしていた。
 スカムキングの指令を阻止するべく、猟兵達は動き出す。

「ちょっと良いかしら?」
 ヘスティアが声を掛けると、気弱そうな小太りの男性がサラリーマンから視線を外し此方を見る。
 如何やら会社での暗黙の了解等と適当言ってサビ残をさせようと企んでいたらしい。
 邪魔されたサラリーマンは眉を顰めながら口を開く。
「失礼ですが、何方様ですか?」
「わたしは猟兵よ、オブリビオンさん」
「え、猟兵だって!? ワォ、サイン貰っちゃおうかな……って、え、オブリビオン?」
 彼女が猟兵と聞いて一気にテンションを上げる男性。
 しかし続く言葉に視線を彷徨わせる。
 やはり相手がオブリビオンとは気付いて居なかったらしい。
 ヘスティアは懐から小さな集音機を取り出して見せる。
「先程までの貴方達の発言は録音させて頂いたわ! これを証拠として労働基準監督署の方に訴えさせて頂きます!」
「えっと……労働安全衛生庁(OSHA)の事かな?」
「あっ、アメリカではそう言うのね」
 一つトリビアを得たヘスティアはこほんと小さく咳払いして仕切り直す。
「つまり、そこへ通報されてしまう様な事なのよ!」
「な、なんだってー!?」
 そこまでの巨悪とは思わなかったらしくオーバーなリアクションをする男性。
 流石アメリカだ。
「ふぅ、やはり計画の遂行には貴女方猟兵が邪魔になりますか」
 眼鏡を押し上げつつ睨み付けてくるサラリーマン。
 状況を察知して、男性は足早に距離を取った。
 直後、サラリーマンがアタッシュケースを持ち上げる。
 やたらメカメカしい効果音と共にケースの側面が開き、中から銃口が現れる。
「変形した!? あのアタッシュケースなにあれ欲しい!」
「変わりに銃弾なら差し上げますよ!」
 突然の変形に目を輝かせているヘスティアへ銃弾を撃ち出すサラリーマン。
 周囲に展開させていた球体状ドローン『防御衛星ガーディアン:タロス』で攻撃を防いで、背中のアタッチメントから引き抜いたビームライフル『ミスティルティン』を向ける。
「減衰率を上げて一発!」
 紅掛かった粒子がサラリーマンの額を撃ち抜き、ビームはそのまま空気中に溶ける。
 背後に有ったブースの仕切りには焦げ跡も付いていない。
 調整はバッチリである。
 撃ち抜かれたオブリビオンは後ろ向きに倒れ、そのまま灰へと変わった。
「おぉう、そんなに強くは無いタイプで助かったわ」
 離れていてもらったとは言え周囲には多くの一般人が居る。
 被害を出さずに済んでほっと一安心だ。
「凄い! 有難う御座いました!」
 拍手と感謝を贈る男性に、ヘスティアはキメ顔を向ける。
「(宇宙の)海は良いわよ。労働時間なんてなし自分の好きな時間に好きなように働けて(お宝を見つけて)稼げるし、(宇宙)船の入手や維持でそれなりにはかかるけどリターンは大きいわよ貴方もどう?」
「(地球の)海ですか。良いかもしれませんね……」
 宇宙へのロマンを伝えつつ、グッとサムズアップするヘスティア。
 微妙な勘違いにはお互い気付いていない。

「こっちは人が多いな……」
 アレクが担当する箇所ではシャンパンやワインが用意されているテーブルに程近い為か、サラリーマンの周囲にそれなりの人が集まっている。
「……と言う風にそれぞれが仕事に取り組む時間を少し増やすだけで、会社全体の作業効率は格段に跳ね上がるんです。統計も必要の無い、ジュニアスクールで習う算数の領分ですね」 
 サラリーマンは適当な事を喋ってそれっぽい事を言い繕っている。
 聞いている男性は半信半疑のようだが、話が長引いてその気になられても困る。
「ちょいと荒っぽいが……手っ取り早く行かせてもらおう」
 ユーベルコード【アビリティシフト・モデル:ホーネット】を発動。
 先ずは周囲の人へ小さく『殺気』を放つ。
 暗殺の技能を駆使して人の視界からは外れているのでアレク自身が殺気の出所だとは気付かないが、何となく居心地の悪い感じがするだろう。
 そうして周囲の人払いを行い、次は話し込んでいるサラリーマンを狙う。
 先程は相手が一般人なので手加減したが、オブリビオンに慈悲は要らない。
 背後へ回り込んだアレクは外骨格の一部を針の様に鋭く伸ばし、肩口から身体の中心へ向かって突き刺す。
「んおっ?」
 違和感に気付いた頃にはもう遅い。
 体内へ送られた麻痺毒がオブリビオンの神経を破壊していき、一度大きく身体をびくりと跳ね上げさせた。
 次の瞬間にはさらさらと体が崩れ落ち、椅子の上に僅かな灰が積もっていた。
「わぁっ!?」
「あぁ、落ち着いてくれ。俺は猟兵で、こいつは此処へ忍び込んでいたオブリビオンだ」
 慌てる男性に事情を説明していく。
 初めは怯えていたが、経緯を知ると納得してくれた。
「成程、怪しい語り口だとは思っていたが……やはりサビ残等せず、ゆっくり家族と過ごす時間を作る事にするよ」
 試しにとサビ残を続けてしまった時の身体の重さを麻痺で再現して体験させた事も相俟ってか、男性はサビ残には今後も手を出さないと言ってくれた。

「ちょっと良いかね、ハワード・マディソン」
「良いですかね!」
 二人のサラリーマンから代わる代わるにサビ残の素晴らしさを説かれていた男性の下へとやってくる謎の二人組。
 クロウとヴィサラである。
 突然名前を呼ばれたナード風の男性はキョドりながらも椅子から立ち上がる。
「な、なんでしょう」
「労働基準監督官のクロウだ」
「わたしはヴィサラです」
「君の此処数ヶ月の労働について労働安全衛生法並びに公正労働基準法に違反する点が見られるとの通報が有った。詳しい話を聞きたいので同行願えるかね?」
「あ、え、えっ……?」
 勿論これは真っ赤な嘘。
 彼を会場から、もっと言えばサラリーマンのオブリビオン二体から引き離す為に二人が打った即興の芝居である。
 受付で猟兵の身分を明かして彼の名前を聞き出し、序に受付の人と一緒にそれっぽい文言を考えてきた。
 本場仕込の言い回しは抜群だった様で、彼は特に疑う様子も無く付いてくる。
 流石に緊張させっ放しは可哀想なのでヴィサラは小声で彼に伝える。
「わたし達は猟兵です。あなたを助けに来ました」
「おっと、振り返らずにそのまま真っ直ぐ前を向いているんだ」
 その声にハッとする男性。
「じゃ、じゃあさっきの二人はもしかしてオブリビオン……?」
「理解が早くて助かる」
 実は彼が居た場所は近くに多数のブースが密集している区画であり、その場で交戦を始めると予期せぬ被害が広がってしまう恐れがあった。
 なので一芝居打って移動させたと言う訳だ。
 無論二人が猟兵である事をオブリビオンは見抜いている。
 が、その場で指摘し交戦してもスカムキングから受けた指令を遂行するのが難しくなる。
 オブリビオンと言う立場を隠して物事を運ぶ為にも、あの場は黙っているしかなかったのだ。
「でもまぁ、当然尾けてくるよね」
 近過ぎず遠過ぎずの距離を保ちながら後を付いてくるサラリーマン達。
 ホールを通り抜けた辺りでヴィサラは自身の被るものと同じデザインの帽子を男性に被せる。
「わわっと」
「それを被って暫くそこの階段の下に立っていてください。わたしの力で少しの間透明化します。じきにさっきのサラリーマンが此処を通っていくので、それまではじっとしているように」
「わかりました」
 男性を移動させてユーベルコード【ハデスの隠れ兜】を発動させる。
 自身と自身の装備、おそろいの帽子を被っている対象一体が透明化する。
 姿の消えたヴィサラを連れてクロウは正面玄関から外へ。
 外は噴水広場となっている。
 中々にオシャレな場所だ。
 そこへ現れるオシャレとは言い難いサラリーマンが二人。
「おや、貴方だけですか。まぁ良いでしょう、後程彼にもまたサビ残の素晴らしさを伝えてあげねば」
 ニヤリと笑うサラリーマンだったが、能力を解除したヴィサラが突然現れた事でその笑みを崩す。
「残念、誘い込まれたのはそっちだよっ」
「正面切っての殴り合いは苦手だが、支援は任せろ!」
 直ぐ様クロウがユーベルコード【桜の癒やし】を発動させた。
 周囲に舞う桜吹雪。
 その軽やかな舞は見るものを眠りへと誘う。
「うっ、搦め手を!」
「ぐっ……!?」
 片方は襲い来る眠気に耐え切れずに肩膝を付いた。
 もう一体は眠気に負けるかと目を大きく見開いて気合を入れる。
 が、この場ではそれは悪手だった。
「見ぃちゃった」
 ヴィサラの持つ『魔眼コラリオ』が妖しく光る。
 普段はユーベルコードを用いた魔眼で相手を石化し動きを封じるが、発動せずとも一定の効果は有る。
 此方の心の奥底まで覗き込んでくる様な、爬虫類型の赤い双眸。
 ぞくりと背筋を駆け上がる悪寒に襲われて、サラリーマンは一瞬動きを止めた。
 その隙を突いて、彼女の髪の毛となっていた蛇が身体を伸ばす。
 硬直した身体に鋭い牙が突き刺さり、即座に毒が送られていく。
 毒の影響で末端から灰となり崩れ落ちていくサラリーマン。
 もう一体も眠気で動けない所を噛まれ、灰となった。
「ふー、意外と何とかなりましたね」
「お疲れ様。やはり私には荒事は向かないな。舌戦で斃せるオブリビオンでも居れば良いのだが」
「その内出て来そうな気もします」

「今の会話はすでに録音完了、それ以上はパワハラだよ。それでもまだ残業をさせるって言うならボクが相手になる!」
「働いている人達を定時で帰らせないと。仕事が終わっていない? オブリビオンのせいにして帰るのよ。難しい話は知らん! みんな定時で帰りさい!!」
 一方イベント会場に設けられた特設ステージでは、何故か三体のサラリーマンと向かい合うフェルト、ルカ、ロジャーの姿が有った。
「如何してこうなった……」
 ノリノリで構える少女二人とは対照的に、ロジャーは頭をぽりぽりと掻きながら遠い目をしている。
 初めは普通にサラリーマン達の勧めるサビ残は決して尊ぶようなものではないと伝えていた筈なのだが、互いにオーバー且つノリノリなリアクションをしている内にステージ上に移動していた。
 イベントと勘違いしたのかオーディエンスもノリノリでステージへ声援を送っており、司会者は長テーブルを引っ張り出して実況する構えだ。
 色々と解せない事は多いが、サラリーマン達の意識も此方へ向かっている。
 どうせ斃す事には変わり無いから良いか、と吹っ切る事にした。
「まぁ経緯は良い。アンタ達のカラテと僕の喧嘩殺法、どっちが強いか勝負だ!」
 咥え煙草のまま両手の拳、その指の隙間に喧嘩用の『五円玉』を挟んで行く。
 見た目は少々地味だが、ナックルダスダーの完成だ。
 拳闘士の構えを取るロジャーへ、一体のサラリーマンが前に出る。
「お相手仕りましょうぞ」
「サラリーマンなのに珍妙な言い回しを……!」
 向こうも良く解らないテンションになっているらしい。
 上着をばさりと脱いで椅子に畳んで置き、ネクタイを外して上着のポケットに仕込み、首元のボタンを二つ外してYシャツの袖を捲る。
「いざ、尋常に! アチョー!!」
 今時映画でも中々耳にしない掛け声と共にサラリーマンが飛び蹴りを放つ。
 エンシェント・マーシャル・カラテを修めたサラリーマンの動きは堂に入っていて確かに武術を修めた者特有のキレが有る。
 飛び蹴りを交わしたロジャーへ、次々と蹴撃や拳撃が襲い掛かる。
 紙一重で躱しつつ、フェイントも交えて牽制していく。
「アタッ、ホワターッ!! アッー!!」
 どうやって発音しているのか解らない奇声を上げつつ仕掛けてくるサラリーマン。
 防戦一方かと思われたロジャーだが、そんな周囲の予想を裏切る出来事が。
「ホグワーッ!!」
 勢い良く飛び込んで来たサラリーマンの顎を打ち上げるカウンターの一撃。
 これまで防戦に徹していたのは相手の癖を見切る為。
 確かにカラテは脅威だったが……少しばかりお上品に過ぎる。
「喧嘩ってのは何でも有りでね」
 反撃しようと姿勢を戻したサラリーマンの顔へ、短くなった煙草を吹き付ける。
 紫煙と燃え殻に視界を覆われた所へ、鳩尾を抉る一撃。
『あぁーっと、隙を突いた一撃で堪らずノックアウトだぁーッ!!』
 実況席のマイクがキンキンと煩いが、これも声援には変わりないかとロジャーは笑う。
 倒れたサラリーマンは仰向けのまま灰になり、空調の風に運ばれていった。
「次は私よ!」
 勝利したロジャーに代わって前に出たのはルカ。
 その姿に観客達は大喜びだ。
 アメコミ風な姿な事、中身が可愛らしい少女の姿、と言う事も相俟って会場内では早くも彼女ファンクラブが出来上がっているらしい。
 そんな彼女には一つの哀しいお知らせが。
「来てくれたのはショボーンだけね……」
 本当は彼女の友である『宇宙昆虫』達と共に戦う心算だったのだが、この日は何と皆休暇で出掛けていた。
 サビ残を潰すお題目を掲げているのに休日出勤を強要する訳にも行かず、彼女の元に集った仲間は(´・ω・`)な顔をした『ショボーン(´・ω・`)ぬいぐるみ』だけだったのである。
「戦いは私が行くから、ショボーンは善良な一般市民を家に帰りたくなるように誘惑してね」
 声を掛けられたぬいぐるみはどういう理屈か、そのまま実況席へと歩いて行った。
「大丈夫かしらね……」
「ンッフフハァーン!! 次は小生が相手ですぞ!!」
「うわキツ」
 一抹の不安を覚えていた所に出て来た相手のサラリーマンは妙な口調と笑い方をしている。
 その右手には変形したアタッシュケースが提げられており、側面から突き出たアームに回転ノコギリが装着されていた。
「んー、休日に解体して遊んだ虫けらの様に、貴女も解体して差し上げますぞブフフッ」
「……へぇ。気に入ったわ」
 聴こえて来た台詞に笑顔を向けるルカ。
 元の姿であれば耳の下付近まで吊り上がった、歯剥き出しの笑みが見られた事だろう。
 対するサラリーマンはノコギリの刃を回転させながら高々と掲げて観客にアピールしている。
「ンヌッフフフ!! 今日この日、一人の猟兵が哀れにも倒れ伏し我々がこの世界を」
「遺言は短く纏めるものよ」
 残像を生み出す程の疾さで背後へと回り込んだルカは全力で両手の手刀を振り抜く。
 ユーベルコード【縁切り】によってサラリーマンの両手首が割断される。
「ホ?」
 支えを失い回転するノコギリが眼前へと落ちて来るのを眺めるサラリーマン。
「ホッオオォオォオオオボボボボオ」
 珍妙な声を漏らしながら顔をノコギリで削られていく。
 びくんびくんと痙攣しながらステージに沈む姿に、観客達も「オーゥ」と声を上げる。
 中々にスプラッタな光景の筈だが、流石はソンビパニックの本場と言うべきか。
 直ぐにアタッシュケースごと灰になって消えていったのを見送り、ルカが戻ってくる。
『またも猟兵の勝利だぁー!!』
 観客達の声援を受けて、最後にフェルトが前へ出る。
 会場のボルテージも最高潮だ。
「ふっ、此処で私が勝てばこの会場は絶望に包まれる。それこそ私達の目的と言うものです」
 最後のサラリーマンが眼鏡をくいくい押し上げながら出て来る。
 しかし押し上げ過ぎて眼鏡がずれていたり、押し上げる場所が悪くレンズに指紋がベタベタ付いていたりと、余り余裕は無さそうに見える。
「此処で勝つのはボク! キミには引導を渡してあげるよ!」
 フェルトは腰のアタッチメントに装着していたダガー『トリックスター』を投擲する。
 飛び向かうダガーに対し、サラリーマンはアタッシュケースを掲げる事で対処する。
 表面に当たり弾かれるダガー。
 しかし息を付く間も無く、彼女は次々にダガーを投げていく。
 ナイフ投げとジャグリングは道化師の十八番。
 隙を窺おうにも膝や移動先にもダガーが飛んで来る為身動きが取れない。
 そんな中彼女が仕掛けた罠。
 ダガーに混じって投擲されたのは『ワンダースモーク』と言うステージ演出用のボール。
 サラリーマンが足元に転がってきたそれに気付いた瞬間、周囲に白い煙が立ち込める。
 一瞬にしてステージ上は白い煙に包まれてしまった。
『ケムリダマだ! 若しや彼女はNINJAなのでは!?』
『会場の皆様の為に、こんな事も有ろうかと当会場ではサーマルモニターもご用意しております』
 盛り上がる実況席と、設備の豊富さをアピールする会場の広報担当。
 モニターには煙で周囲を覆われ狼狽えるサラリーマンの姿が映っている。
 しかしフェルトの姿は無い。
 一体何処へとざわめく観客達へ届く、澄んだ声。
「混沌を纏いし勝利の化身よ! 数多の想いを胸に、煌めく舞台へ駆け上がれ! カモン! SPクラウンジョーカー!」
 フェルトの掛け声と共に、ステージの上へ人影が舞い降りる。
 何処にそんな仕掛けが有ったのか、スポットライトがその人影を照らした。
 そこに佇むのは黒衣を纏い大鎌を持った道化師と、背中合わせにダガーを構えるフェルトの姿。
「クラウンジョーカーの効果発動! このカードは攻撃時、虐げられた人たちの怒りを戦闘力に変換し、自分の戦闘力に加える事ができる!」
 その言葉に観客達はざわめきを止め、黒衣の道化師を見る。
 離れていても伝わってくる憤怒と悲しみの感覚は、虐げられてきた人々の心の叫び。
 それらが今、力となってオブリビオンへ牙を剥く。
「これが、サビ残で苦しんできたみんなの怒りだ!」
「ぬ、ぬわーーーー!!!!」
 投擲されたダガーと振り抜かれた大鎌。
 魂の一撃を喰らい、モニターからサラリーマンの姿が溶ける様に消える。
 ステージ降り立ったフェルトは煙が晴れると同時に、深々と一礼をした。
 パフォーマンスの終了に、観客は大歓声で応える。
 実況席からマイクを渡されたロジャーとルカも集まり、観客達へメッセージを贈る。
「サービス残業? せっかく仕事を終えて勝ち取った自由な時間をそんなことに使う必要はない! 臆せず主張しよう、『帰ります』ってね!」
 右手を突き上げたロジャーの言葉に一層大きな歓声を上げるオーディエンス。
 良く解らないまま始まった戦いはこうして終わった。
「そう言えばショボーンは」
 ふとルカが辺りを見回してみると、会場の出口付近に看板を掲げたぬいぐるみが立っていた。
 看板にはこう書かれている。
『帰ってシャワーでも浴びてのんびりしよう』

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月08日


挿絵イラスト