アースクライシス2019③暴虐と子守歌
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「子供を皆殺しにしろ」
――かつて、ダストブロンクスを恐怖で支配した「肥溜めの王」スカムキングからの指令はそれのみであった。
どうして、子供を殺すのがよいのか?子供は、世界にとっての未来である。つがいが愛し合い、作り、いとおしいと抱きしめて、育て、己らの希望とする生き物たちだ。
愛し合う二人の情報を体にもった子供たちは、その数を増やして世界を希望で埋め尽くすことができる。
――未来は、絶やさねばならぬ。
兵士たちは、槍を握る。
場所はヒーローズアース、ニューヨークにて。
同士どもの戦火が見える混沌としたこの地に、今。無数の槍使いたちが足を一歩踏み入れた。
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「――悪らしいこと。」
ヘンリエッタ・モリアーティ(Uroboros・f07026)は、吐き捨てるようにして予知の様子を皆に語る。
「戦争です。皆様、どうか力を貸していただけませんか。」
小さく輪になって、集まってくれた猟兵たちに話すのはもはやこの女の癖であった。
ヒーローズアースにて、アースクライシス2019と呼ばれる戦争が巻き起こっている。
猟兵たちならば、すでに戦況の把握まで出来ている者もいるかもしれない。「混乱を極める状況でもありますから、改めて」と前置きをして――、「悪徳」の女は皆を見た。
「スカムキングは――卓越した暴虐のセンスを持つ存在です。」
それが、配下のオブリビオンたちにとある命令を下した。
彼の「暴虐指令」と呼ばれるものは、様々なものがある。チープなものもあったり、残酷すぎるものもあるのが常のようだ。
ヘンリエッタは、己の持つ情報媒体である眼鏡型AI『応龍』のふちを優しく撫でてやって、レンズからホロ映像を映し出す。
「彼の指令が遂行されてしまうと、アメリカ大陸全域の人々の正義を信じる心が弱まり、悪に平伏すようになってしまう。」
――アメリカ大陸は、広大だ。
様々な人種が入り混じり、言語だってニュアンスの異なるところがあり、法律も州によっては違うような場所である。
それが、瞬く間に「悪」に屈して、抵抗をやめてしまうという。それがどれだけ膨大な「絶望」であるかは想像できるだろう。
黒の女が、顔に影を落とす。
「これを止めてほしいのです。場所はニューヨーク。――敵は『デュランダル騎士』たち。」
ホロの映像をスワイプによって拡大させ、皆にニューヨーク市街地の状況を見せる。
幸い、まだ損害は少ないようではあった。しかし、これからこの街に振りまかれる絶望がどのようなものか誰にも予想がつかなかっただろう。
「子供を、皆殺しにすると。」
――そう、『指令』が下ってしまったのだ。
銀の瞳をぎらりと怒りで燃やしながら、仲間たちに「どうか」と願うようにひとつ、息を吸う。
「妨害を。狙われる子供たちに傾向はありませんが、乳児から未成年まで幅広く無差別だわ。手あたり次第に、この彼らは『指令』のままに殺してしまうでしょう。」
親や老人には彼らも見向きはしないのだという。逃げ惑う親が子供を抱きしめているのなら、その親からまず引きはがす。そして巨大な槍を構えて――。
子供を。
「奪われるわけには、いかない。」
デュランダル騎士たちが容赦なく子供たちを襲う。その場にヒーローたちでは手が足りない量で、怒涛に、残虐に襲い掛かってしまうのだ。
それを、猟兵たちが止める。どんな手段を使っても構わない、と黒の女は言った。
「それぞれ、皆様得意な方法があると思います。『妨害』できるものなら何でも構いません。正面から挑んでもよろしいでしょうが、ひとつ小細工があればより優位になることでしょう。」
そこまで伝えて、ホロの映像を消す。か細い声は、今は怒りに満ちたせいだった。
子供たちに――何の罪もないというのに、しいて言うのなら「未来に生きる」ことが罪だというのだ。
そんなことを、許してはなるものか。皆がきっと、各々の使命のもとに頷いたことだろう。
「どうか、救済を。――いってらっしゃい、猟兵(Jaeger)!」
未来の使徒たる猟兵たちを、大きく広がる赤い蜘蛛の巣が包み込む。
転移装置たるそれが――彼らの侵入を歓迎した。さあ、絶望に満ちゆくこの都市を救い出せ、猟兵!
さもえど
戦争だー!
十四度目まして、さもえどと申します。
今回のシナリオは戦争シナリオになります。
子供たちだけを狙って皆殺しにしようとするオブリビオンたちをどうかかっこよく蹴散らしていただければ幸いでございます。
また、「子供たちをかばう、救出する、……」など、皆様の「妨害」にふさわしいアイデアがプレイングに在りますとこちらからボーナスをお渡ししやすいかと存じます!
また、今回は全員採用難しいかと思いますので、連携などは少人数がおすすめとさせてくださいませ。
それでは、お目に留まりましたら、どうぞ皆様の素敵なプレイングをよろしくお願い致します!
第1章 集団戦
『デュランダル騎士』
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POW : デストロイブレイド
単純で重い【量産型魔剣デュランダル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD : ケイオスランサー
【魔槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【仲間のデュランダル騎士との怒濤の連携攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ : 不滅の刃
【量産型魔剣から放たれる光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。
イラスト:弐壱百
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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――ニューヨーク。
逃げ惑うのは、突如として街に現れた悪意に戸惑う人々である。
「ママ、――ままぁッ!!?」
子供たちは走る。親に腕を引かれて、足をもつれさせてもただただひた走る。転げて、絶望で泣きわめく子供を必死にある母親が拾い上げていた。
「大丈夫、大丈夫よ、坊や。ヒーローが、きてくれ、るから――」
喘鳴。
目を見開いて、しかし恐怖ににじむ己の顔を見せるわけにもいかぬと必死に子供を掻き抱く母親の瞳にその悪意は映ったのだ。
『子供を、皆殺しに、せよ。』
鎧の奥から響く声は、とても人のものとは思えないほど冷たい温度だった。
汗が噴き出す。背中からも、額からも、首からもどこからも!逃げねばと体中が叫んで、母親は子供を抱きしめる体がこわばっていることを知る。
――動けない。
――あまりの恐怖であった。
周りのビルなどは崩されて、どこかで爆炎まであがっている。
わが子は己の胸で悲鳴をあげて泣きじゃくり、目の前の無機質な殺意たちはどこまでも無感動なようだった。
――ヒーローは、どこにいる?
未来が奪われる、希望が奪われる、明日の意味など握りつぶされてしまう。
「どうして、私たちが?」
冷たい鎧は、応えなかった。握りしめた槍が――子供を貫かんと、無数に向き始めたころである。
◆◆◆
プレイングは、2019/11/05 22:00まで受け付けております。
できるだけスムーズな執筆を心がけますので、よろしくお願いします!
◆◆◆
トリテレイア・ゼロナイン
看過できませんね
子供殺しはもちろん、それを行う者が騎士の格好をしているなど
私も騎士としては褒められた身ではありませんが
UCの妖精ロボを街に放ち●情報収集
狙われている子供の位置を●見切り機械馬に●騎乗し急行
子供を●かばう為●怪力で振るう槍と馬の●踏みつけでまずは蹴散らします
降りた機械馬を自動●操縦で子供に寄り添わせつつ目を瞑っていてくださいと声を掛けます
此方が攻撃対象となれば魔槍を●盾受けで防御しつつ仲間の騎士の視界を塞ぐ(●目潰し)ように妖精ロボを●操縦
連携を崩して剣で切り捨て殲滅
子供に狙いを切り替えれば全身の格納銃器での●スナイパー射撃で鎧の隙間に銃弾発射
もう大丈夫、親御さんの元に戻れますよ
ルパート・ブラックスミス
…下衆が。皆殺しにするのは我ら、されるのは貴様らと思い知るがいい。
【誘導弾】として軌道操作できる短剣の【投擲】で【先制攻撃】。
敵を牽制しつつ、専用トライクで【ダッシュ】、子供を(いるなら庇護者共々)【救助活動】。
そのまま後部座席に乗せて保護しよう。下手に遠くへ置いて襲われてはたまらない。
「すまないがこのまま捕まっていてくれ。自分が必ずや護る」
保護した子供を【鼓舞】しつつ、【挑発】も兼ねて真正面から突撃。
敵は標的を乗せたこちらに意識を向けるだろう。
UC【映す心断ち割る呪剣】起動。
大剣を「振り」かぶる動作で敵の意識を断ち、棒立ちになったところをそのまま【なぎ払い】だ。
【共闘・アドリブ歓迎】
●
「――下衆が。」
「全く以て。看過できませんね。」
街を見渡せるであろう、高層ビルの屋上から騎士がふたり、身構える。
ルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)は鎧のヤドリガミである。
彼こそ、死した主の魂を宿す存在であり、そのからだを「ひと」のために使ってきた存在だ。
青く燃える鉛は――ひときわ苛烈に燃え盛る。それはきっと、彼の中にある確かなこころより湧き出ているものに違いなかった。空気に溶けて、青空に吸い込まれる蒼の焔が抑えきれぬ怒りを表す。
肉体も、記憶もない。この鎧にあるのは――唯一、「騎士道」のみである。握る無骨な剣こそ、素直でかつ真面目な彼の心をぎらぎらときらめかせているようであった。
鎧らしい、鎧だなと。
――トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)もまた、ルパートに頷く鎧であった。
黒の騎士と白の騎士がそろい、コントラストも絶妙な二人であるが。
トリテレイアはかの「銀河帝国」に準ずる騎士でもあった。だから、このルパートのように己のことを騎士として褒められた身でないことは理解している。
――だけれど、この事態は見過ごせない。
おとぎ話のような騎士になりたいと、白の騎士は思ったのだ。お姫様を守り、王子様を時に支え、世界を守る小石のようであっても彼らがいなければ平穏は守れない。そんな存在を目指して、日夜戦いに身を投じている。
「俺たちの救出対象を。」
ルパートが炎をちらつかせて、トリテレイアを「視る」。
トリテレイアもまた素早く頷いて、己のエンジン音の高まりを聞いた。「承知しました。」短い返答ではあるけれど、それこそ今必要なもののはずである。
ハイ・テクノロジーの産物であるトリテイアのほうが、索敵にも救援にもまず早い。
だから、ルパートもまず彼に一歩を譲った。救助対象を事前にトリテレイアがその鎧の内部、サーモ補正のかかった視界にて発見し絞っている。
【自律式妖精型ロボ 格納・コントロールユニット】にて白騎士が十分な索敵を始めたのならば燃え盛る胸中を無視して黒騎士も待つ。
それから、トリテレイアが己の「妖精」たちによる情報収集の結果から最短ルートでの救助対象を機械仕掛けの内部で割り出す。
――座標、取得。
――標的、多数。敵性反応、無数。
――半径200Mまで探索範囲を縮小。
――承諾... ... ... 完了。
「発見――救助活動を開始します。」
「承知した。往こう」
白と黒の騎士は、出自こそ異なる。
かたや、人のために生きて。かたや、人を従えるために生まれた。しかし、今そのこころに芽生える確かな思いは全く同じ――!!
『――? 』
騎士たちの矛先の動きは一斉に静止する。
無数の異変が彼らを襲ったのだ。どこから「なにか」に視られていることも、地響きをわずかに下す衝動も足元から感じられた。
悪意の矛先であった親子たちも、確かにそれを理解する。これ以上、何が来るのだろう――と表情はさらなる悲痛に滲んでいた。
その時である。
――轟音!!!
金属器が蹴破られると音とともに、騎士の一体が派手に横転した。否、 蹴 散 ら さ れ た !
「もう、大丈夫ですよ! 」
――機械馬!
真っ白なそれが、ぎらりとボディを日光に照らしながらその場に現れるトリテレイアだ!
「ひーろー……?」
子供のか細い問いかけには、どう返してやればいいか――一瞬だけ悩んで、己のモニターの記号を書き換える。
スマイルマークを浮かべた黒い液晶は、紫の格子に隠されてしまうけれど。それでも、伝わればいいとスピーカーの音波を調整した。
「ええ!そうですとも!」
――助けを求める人を見たのなら。
騎士は、いつでも頼れて守れる存在であることを伝えねばならない。
弱きを助け、多くを救う。己の命を顧みずに、それでも笑顔で「頼もしく」あるのが理想だ。
それを、おとぎ話だけだというのならば――トリテレイアは己が「そうなる」ことを徹底して見せる。
「もう大丈夫。じき、おうちに帰れますよ。だからどうか、目を瞑っていてください。」
恐ろしい光景を見せるわけにはいかぬという緊張感を、きっと母親は理解したのだ。トリテレイアの音波が届いたのなら、母親はぎゅうっとわが子を抱きしめる。
機械の馬から降りた騎士は、ずしんとその巨体を壁の様にして立ちふさがる。蹴破られた一体が起き上がるころには、無数の槍が彼を見ていた。
腕パーツの可動域を確認してから、己の愛馬が「命令」通りに母子を守るように寄り添っている。恭しく足を折ったそれは――到着を待っていたのだ。
「それでは、始めましょうか。」
カーネイジ・タイム
殲 滅 開 始 ! !
「なんとも、近未来の馬というのは早いな。」
――文字通り、馬力が違うのだ。
ルパートは己の愛機、トライクに跨りながらその車体を走らせていた。
瞬く間に救出対象である母子までの距離は縮まっていく。白騎士たるトリテレイアも巨体を振るいながら、鎧たちを轟音とともに打ち砕いていた。
今のうちに――とここまでは手筈通りである。問題は、ルパートの声かけにこの親子が奮い立つかどうかだけであった。
しかし、ルパートには燃える心がある。文字通り抑えきれない正義がその鎧の中にあったのだ!
「助けに来た! 」
まず、目的をわかりやすく。
己の鉄さびた姿が少しでも――このぶしつけな騎士崩れどもと重なってはならぬと、明確に声を張る。
びくりと体を揺らした親子は、馬に守られるようにして囲われていたところからちらりと視線を向けてきた。
そのまま――ドリフトをくわえて急停止するルパートの動きを見送る。どるどるどると響くエンジンの音は二人にとっては「日常」に近かろう。
ば、と片腕を伸ばしてルパートは叫ぶ、
「乗ってくれ! 」
――視線が戸惑った。
親は、仕方なかろうと思ったのだ。
彼らは庇護者である。子供を何も知らぬどこぞの誰かに預けるわけにいかないのは明白だった。だから、ルパートは退かない。
――この場で一番最初に動くのは、子供だと彼も理解していただろう。
「まま、いこ。いこうよ、ヒーローだよ! 」
「――ジェーン。」
「ジェーンか。いい子だ。ヒーローが好きか? 」
「うん!僕、ロボのヒーローが好きだ! 」
厳密にいえば、ロボではないのだけれど。目の前でロボめいた鎧であるトリテレイアが己らに向きそうな鎧を全身の格納庫から撃ち抜いている。
ルパートが車体とともに二人をかばうようにして立てば、母親も「お願いします」と頭を下げた。子供の手を取って、もう片方の手で頭を撫ぜてやってからルパートは後部座席に二人をともに乗せる。
――馬力が心配だが、構うまい。
「すまないがこのまま捕まっていてくれ。自分が必ずや護る。」
めらり、蒼い炎が燃えれば。
――それは、たちまち爆破の色をまとう。己の腰にぎゅうっとしがみつく親と、そのまねをする子供をちょうどルパートとで挟むようにして、エンジンをもう一度唸らせた。
「 行 く ぞ ―――ッッッッッ!!!!!!!!!!!! 」
蒼い爆風とともに、鉄の馬は走る!!!
どどうと駆けたそれが、真正面から敵陣へと入り込んだ!まさか突っ込んでくるなども思っていなかった彼らはトリテレイアに翻弄されていたところである。
「そこです――!!!」
ズドン、と横腹を盾で突かれた金属が転がり、突っ込んでくる存在を切り伏せようとする鎧がいたのなら視界を「妖精」たちが邪魔する!
『う、が――――ァアアッ――――!!!!!! 』
振りほどくにもこざかしい。
槍のみを握る巨体が気を取られているのならば、そこを好機としてルパートが逃げ出す軌道上のすべてを見た。
親子はうしろで叫べないでいる。懸命だ、このモーターも振り切る速度の中で口を開けては舌を噛んでしまう。
だから、早々にこの場を鎮圧し、奪取することを冷静に考えていたのだ。
「断ち砕くッッッッッ!!!!!!!!!! 」
ク リ カ ッ ト コ ン シ ャ ス
【映す心断ち割る呪剣】――!!!
鈍い音だけがしたのだ。
騎士たちにも、何が起きたやらわからぬ。目の前の灰色の世界が――より一層暗くなったところで、己の腹が撃ち抜かれる感覚がしたことだろう。
ルパートの剣はけして「殺す」ためにある剣ではない。「守る」ためにある剣なのだ。
振るわれた剣は走り抜ける鉄の馬の速度で、無数の鎧たちとその意識を奪っていった。がらんがらんと転がる鎧に、問答無用で貫くのがトリテレイアの銃弾たちである。
「お見事――お見事です!」
そして、また機械馬に跨ったのなら彼もたちまち休むことなく平行になって走るだろう。
まだ、助けるべき命が多くある。全ての命を助けるために、黒と白の騎士は走る。乗せたふたつの希望を――きっと、明日の未来へ導くために。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
胡・佳莉
※アドリブ絡み歓迎
子供を襲う姿にかつての出来事を思い出します。
オブリビオンに襲われた故郷。逃げ惑う子供さえ殺した悪逆の徒。
あの時の非道は決して忘れられない。
だから、生き残り猟兵となった私がやるべきことはただ一つ。
このような理不尽から、人を守る事。子供の命と未来を救う事。
【時翔】でデュランダル騎士たちの行動に介入。敵の動きを「見切り」、「残像」でかく乱。襲われてる子供たちを安全な場所に避難させます。
子供を逃がした後は同じようにスキルやUCを用いてスピードを活かした戦法を。
「私は負けない、諦めない。貴方達のような理不尽に」
「悲しみと絶望からこの街を救ってみせます!」
亜儀流野・珠
子は希望であり未来だ。確かに奴らの標的としては正しいかもな。
では俺も猟兵として正しい行動と行こうか!
奥義「千珠魂」……俺たち、召喚だ!
この「俺たち」なら標的である幼子に見えるだろう!……見えるよな?
まあともかく俺たちを散らせ本物の子が襲われる率を下げよう!
派手にやってるみたいだからいらんかも知れんが一応捜索も兼ねる。対象の出現は笛「夢笛」で報告、音が鳴った場所に俺と俺たち集合だ!
攻撃は木槌「砕」にて。鎧の上からガンガン殴り衝撃にてダメージ蓄積だ!
しかも次々と到着する俺たちにより袋叩きとなる!休息の間も与えんぞ!
数宮・多喜
◎△
……聞こえたよ、あの子らの声が。
アタシ達の助けを呼ぶ声、必死の声がねぇ!
デュランダル共に見つかってしまった子供や親子の元に、
すぐさま【悲劇覆す札】で颯爽と登場。
周囲が事態を把握する前に、
親子をカブの後ろに『騎乗』させて一気に逃げを打つよ!
しっかり掴まってろ、舌噛むぜ!
騎士共の集団の真っただ中を『操縦』テクを駆使して駆け抜けながら、
電撃の『属性攻撃』と『衝撃波』の『範囲攻撃』をぶっ放す。
そのまま血路を開いて、一気に安全圏まですっ飛ばすよ!
そうしてセーフハウスまで送り届けたなら、もう一仕事。
明後日の方向に目立つように逃げて、
奴らの注意を『おびき寄せ』る。
余裕があれば他の子供も救出したいね!
●
少女は、かつて。
この悪夢のような経験を積んだことがある。
思い出すのは、痛みばかりだ。胡・佳莉(機妖剣女・f21829)の体は欠落を補っていた。
――強襲されるニューヨークを見る。人々は佳莉に目もくれずにひた走って人の波を作っては逃げていく。
青空なのに、誰も笑顔になれない。どんどんと建物を燃やしていく炎は暴虐の証であった。
――身に覚えがある。
握る刀は、あやかしのそれであった。彼女の故郷ではそれを扱えるだけのいのちを育てるのが日常だ。
まぎれもなく、戦いでは優秀でありながら確実な力を振るえる存在を確保する――そんな場所が、狙われないはずもなかったとも今なら思える。
手にするそれは「佳莉」がすべてを失って得た力である。
どんな気持ちで、振るえばいいのかなんてわからなかった。今ここで、このまだ「滅ぼされてはいない」都市で己にできることが何かを、茫然と青い瞳で考えている。
視界の端で、子供の悲鳴が上がった。
心的外傷、フラッシュバック、色んな要因は「佳莉」が人間だった証拠にしかならない。その体に埋め込まれた記憶がいっそ偽りだったのなら、割り切れたかもしれなかったのに。
「どこに――。」
シィシャン
――【時翔】。
鼓動は逸る。どうしてここで立ち止まってしまったのだと体を走らせていた!
生き残ったのだ、生き残ってしまった!だから、やるべきことはただ――己のような哀しみを誰かに与えないことではないか!!
命と未来を救う、ただそれだけのためにひた走る体に痛みも疲れもないはずなのに、ただただ少女の胸きっと、きしみ始めていたのだろう。
軽やかに戦場を駆ける。時折騎士の頭を蹴っ飛ばし、その陰に子供の姿がないのを確認してからまたビルの看板を蹴ったり、標識や電柱を掴んで体を宙に投げ、大道芸のように電線の上を走った。
――どこにいるの。
探す。
未来を探している。希望に満ちるはずの未来が、絶望に染められる前に止めなければいけない。
「――いた。」
思わず、喉からあふれ出てしまったのは。
その子供たちも、佳莉にとっては希望だったからだろうか。
子供たちは、佳莉が飛び出した地区からは2ブロックほど離れた箇所で震えあがっていた。
親とはぐれてしまったらしい二人は、そろいの服を着ていて顔がずいぶん似ている。――歳の近い姉妹らしい。
今にも騎士たちが槍で薄い体を貫こうとしていたものだから佳莉の体は余計に速度を上げた!!!
――さかのぼり、数刻前。
「『俺たち、召喚!』」
ぽぽぽ、と姿を表せたのは小さな「分身」たちである。
亜儀流野・珠(狐の恩返し・f01686)は、人間に命を救われた狐だ。
彼女の実年齢こそ不詳であるが、きっと彼女が「無差別に恩返し」がしたくなってしまうほど、人間の美しさを生きた数だけ見てきた偉大なる妖狐なのである。
だから、理解していた。人間にとって、彼女の触れ合った長さからも想像できる通り――子供というのは、宝なのだ。
子供は、家を継ぐ。親の愛を継いでまた愛を増やしていく。それがいつか遠い未来まで伸びることを皆が希望として育んで、人間が営んできたルールだ。
ならばこの事態、珠には許せぬことであった。無数の己を見ながらうんうんと状態を見て頷く。
「この「俺たち」なら標的である幼子に見えるだろう! ……見えるよな? 」
どうだろう、ともかく動いてみよう!とわらわらと数を増やした200を超える分身たちそれぞれの意気投合を果たし、索敵を始める。
――確かにどれも、いつもの珠よりも幼い風貌をしているけれど【千珠魂】で複製した存在たちだ。
どれもこれもが珠の意志と近く、それでいて「こども」らしく、その心になじみやすいに違いない。
「化かしてやろう、本物の子が襲われる率を下げるんだ!」
わあ、っと狐の子が散る。
指揮官である「本体」の珠はいつでも命令が下せるように夢笛を握り、歩き始めていた。分身に騙されたらしい鎧たちが走っていくのが見える。
――しめしめ。
にんまりと笑ってから、一撃で消える分身だって「あかんべえ」をしたことだろう。殺した実感のない兵士たちが戸惑い、周囲を見渡すのがわかった。
それを、ぴいいと笛で合図を送ってやれば珠が皆集合する。
『子供、皆ごろ、しに――』
「まだいいやがるか!」
袋叩きである!木槌「砕」を握った無数の幼い狐たちが、その悪しき根性ごと体を叩き壊してやる。
ばきばきとあっけなく砕ける鎧を粉になるまで叩いてやるのを見守りつつ、「ん?」と珠は己の右耳をひくひくと動かした。
――子供の悲鳴を察知したのだ。
「俺たち!もういいぞ、次にいこう!」
わあっと幼い声が弾んで。霧になった悪意のことなどもう用済みとばかりに砂埃を立てて珠たちは――佳莉の場と出会ったのだ。
「はあああああ――――ッッッ!!!! 」
覇気とともに一撃。
空中からのかかと落としはその細いからだから振られるものとは思えないほどの重力があった。
鎧の高等部がひしゃげるほどの強い力が働いて、騎士はその場に膝をつく。間髪入れずに地面に振った右足がたどり着いたのなら、軸足にして左足の鋭い蹴りを放つ!
――フーッと息を吐いて、すぐに別の騎士からの槍を察知した佳莉が背を反らせた。からめとるようにして槍を腕から握ったのなら、遠心力のままに放り投げ、地面に叩きつけてやる!
そのまま、切っ先を中身に刺してやったまま止まれなかった。
「私は、負けない。諦めない。」
――貴方達のような理不尽に!!
絞り出す声は、今にも割れそうだっただろう。
佳莉は強い。それは、護られているふたりの少女から見ても明らかだった。
明らかに己らよりも、強い背中があったのに――どうしてだろうか、すぐに割れてしまうような気がして、泣きじゃくってしまう。
「悲しみと絶望からこの街を救ってみせます! 」
信じて、なんていえなかった。妖刀を握っている佳莉の心はずっと「ならば動く」しかない。
分かってもらうために、信じてもらうために、佳莉が納めるべきは成功だ――!!!
「ああああああああ――――ッッッ!!!! 」
果敢な攻撃が繰り返される!!
悲壮な叫びにも似た怒声があって、その牙で無数を穿った。
子供たちが身を寄せ合って泣きじゃくるのが視界にうつって、早く、早く、という気持ちが佳莉よりも早く走る!
――助 け な く て は ! !
「助けるぞ!!」
そんな緊張感に――ふと、訪れた間があったのだ。
わらっと子供たちが走ってくる。双子か、三つ子か――硝煙の向こうから無傷で走ってくるものだから、驚かされてしまった。
幼児の波があって、その最後尾に大きな「幼児」がいる。
「――仲間、なの?」
そうだ。
「おう!」と返事をした子供たちの「あるじ」たる珠がにかりと笑う。
泣きじゃくる子供たちを温めるように幼児の姿をした珠たちが「だいじょうぶだぞー!」とか「おうちにかえろうな!」とか言っているものだから、子供たちも泣くのをやめてしまった。
あっけにとられていた佳莉が――気づかされるよりも早く、新たなエンジンの音が戦場に加わる。
「――聞こえたよ、あの子らの声が。」
その女、まさに旋風!!
どるると唸った宇宙バイクは今、この場に適していた。
訪れたニューヨークは、彼女が駆け抜けた世界の中でも飛び切り悲痛に濡れていて、今日最初訪れた時に数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は思わず顔をしかめたほどである。
どこを見ても、何を聞いてもこの場には「助けて」があふれている。
何の罪もない命が燃え、追われ、死の恐怖が津波となって迫りくる今この場――ためらいなく、赤い相棒に跨ったのだ。
頭の中で、理解をしてはいるのだ。さまざまな戦場を見てきた多喜である。このおぞましい乗り物に跨っているいまだって、そのおそろしさを利用しているからこそ、理解できた。
――この作戦は、悪らしいとも。
だけれど、それを承知してやるわけにはいかぬのだ。ヘルメットをしっかりとかぶったのなら、今ライダースーツのチャックがちゃんと閉じているかどうかを確認する。
救急セットがシートの下、その収納スペースに少量ながらしまわれていることを確認して、彼女は疾駆する!!
「――アタシ達の助けを呼ぶ声、必死の声がねぇッッッ!!!! 」
吠える。
コール・イェーガー
【悲劇覆す札】。それは、助けを求める誰かのために――その誰かの悲劇を覆すための、奇跡!!!
ぎゃうんと二輪が唸ったのなら、多喜と相棒がちょうど襲い来る鎧に佳莉が不意打ちを食らうところで轢きつぶしていった!!
バウンドを一度挟んで、低姿勢からのドリフト、カーブを加えその場に多喜が止まる。
「遅くなったね。――カブに乗せてッ! すぐこの子らをセーフハウスに届ける! 」
「おっし! わかったぞ! 」
「悪い、――ねえ、時間稼げる!? 」
多喜の状況判断は早い。
たどり着いたこの戦局において、使命に燃える責任感の強い佳莉はここで戦わせてやったほうがきっと成功しやすい。
珠は戦闘よりも子供たちを説くほうがうまいように見える。だから、珠に誘導を頼んで佳莉には時間稼ぎを願った。
「――はいっ! 」
少し考えて、佳莉からの承諾が下りる。にいっと笑って「任せる! 」と多喜がヘルメットの内部で笑うのだ。
周囲がすべての状況を知る必要はない。二人、子供たちが混乱のまま珠に導かれて乗せられたのならどるるとまた相棒が唸るのだ。
「よおし――しっかり掴まってろ、舌噛むぜ! 」
まるで、銃でも放ったかのように。
二輪は走る、まるでひとつの雷にでもなったかのように、戦場を火花とともに走りぬく!!
「 退 き な ァ ア ア゛ ア ッ ! ! ! ! ! ! 」
止めてみろ!!この数宮多喜を止めてみろ――!!
ばちりと爆ぜた空気は電子を超能力で分解され、衝突を繰り返し空気を走った!!
雷鳴となった一撃が彼女の道に立ちふさがる鎧どもを 打 ち 砕 く ! !
後ろでしっかりと多喜の腕につかまる小さな手を感じて――急なカーブと衝撃をなるべく少なく運転したいがために、この手段をとっている。
広範囲で爆ぜた雷鳴に打ち上げられた鎧を、珠が「ここだー!」とばかりに木槌で打ち砕くのは耳だけで拾った。
――最高だぜ。
駆け抜ける赤のきらめきは、まるで悪意渦巻く戦場に一つ切り傷を刻んでやったようであった。
どるる、と唸る相棒を止めて――やっと、セーフハウスに姉妹たちを降ろしてやる。「怖くなかったかい?」「よく頑張ったね。」と頭を何度か優しく撫ぜてやって、また多喜は相棒に跨る。
「おね、――おえねさんは、まだ、いくの?」
「ん?ああ、うん。勿論、もう一仕事あるからね。いや、二つも、三つもさ。」
にやりと笑う多喜の顔が、ヘルメット越しにでもわかるようなくらいに、声は明るさに満ちている。
姉妹二人は手をつなぎあって、「頑張ってね! 」と泣き叫ぶ声よりは少し――願いを込めて行ってくれたものだから。
「おう! 」
メーデー
多喜もまた、救援の聞こえる場所へと駆ける。
目立つように駆け巡る赤色は、次に救うべきいのちをもう見定めて――走り続けていたのだ。
目指すは、己が拾った二つの声。がれきの下でうずくまるまだ若い父親と、そのそばで気を失った母親と、父の腕に抱かれる赤子のわめきがある。
どれもこれも、――助けるには十分な燃料だ。
「よう、聞こえたよ――アンタたちの声がね! 」
そう思ったころには。
もうきっと、「奇跡の人」はそこにいたのだろう――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ゼイル・パックルード
UCで高速で動いて、狙われてるガキの前に。
敵の攻撃を妨害するため、敵の武器……腕の部分を狙ってUCの炎の竜巻を放つ。重そうな鎧まるごとじゃ、どれだけ態勢を崩せるかわからないから、一点集中で。
まぁ、最悪多少のダメージは仕方ないかね。
そうしたらできるだけガキを抱えて比較的危なくない場所へ置いてく
残念、ヒーローじゃなくてヴィランさ。ま、命が助かっただけありがたいと思いな。後でちゃんとしたヒーローが助けに来るさ。
戦闘は、竜巻を自分の壁にして、目眩ましをしつつ相手に細かい動きの連携をとれないようにする。
その間に高速で移動して、怪力を利用した鉄塊剣で各個撃破を狙う。
イリーツァ・ウーツェ
【POW】
鎧を殴り壊す。
剣を殴り折る。
雛と親を車へ隠す。
何を。殺すと。
雛(子供)を殺すと。そう言ったか。
許さん。其れだけは。決して。
走る。全力で駆け、翼で殴り砕く。
杖は駄目だ。今は折ってしまう。
殴り壊す。裂いて壊す。逃げるな。撃ち壊す。
尾で打ち壊す。踏み潰す。噛み千切って殺す。
殺す。此奴等は殺す。一匹たりとも残さん。
雛と親への攻撃は全て我が身で受け止める。
雛は未来だ。過去が触れるな。
殺す。壊す。滅ぼす。消えて失せろ。
海にも還さん。
アルミィ・キングフィッシャー
…。
潰す。
敵は金属鎧だ。その重量に合わせた踏みつけ式のベアトラップを路地に死空けておく。親子が一緒に踏んでも動かないがお前らみたいな屑鉄野郎どもなら働く便利な奴さ。
角と路地の多いこの町で仕掛けるのは簡単だ。あとは動きを封じた相手の鎧の隙間に刃をねじ込むだけだ。
逃げる子供を見かけたら待ちはできない。
積極的に打って出よう、真正面からはアタシの流儀じゃないがそんなそんな事態じゃない。
逃げるくらい迄の時間稼ぎくらいはさせてもらうよ。
で、あの子らが逃げたら自分も逃げるって?
…冗談。
見せたくないだけさ。
リビングロープを相手の首に引っ掛けて、非常階段等に吊るして絞殺。
ギャロウズベルなんて見せられないだろ?
●
――子供が狙われるのは、好きでないというのに。
「まっ……た、悪趣味だね!!」
ゼイル・パックルード(火裂・f02162)にとって、この無差別に戦える状況というのは大変彼の理に適っている。
バトル・ジャンキーなのだ。戦うことにしかその生に意味はなく、そのためだけに命を削ることをよしとしてきた。
特に、この戦場は多くの死線を楽しんできたゼイルにとってもひときわ殺意に満ちていて、好いものではある。
――その標的が「子供」でない限りは。
愚かだと、舌打ちをした。
どうしてわざわざ「弱いもの」を狙うのかといえば、それは「未来につながるから」だという。
――もっともだろうな、と思えるのがゼイルなのだ。彼こそ、悪がわの人間である。彼だって、暗に根絶やしにせよと言われれば女子供から狙っていくだろう。
しかし、そんなことは「好きでない」のだ。
戦いというのは、命の削りあいというのは今このニューヨークのように弱きをいたぶることではなかろう。
【天翔烙炎】にて、己の体に燃ゆる地獄をジェットの代わりにさせながら、体を旋回させビルの間を抜ける。
子供を襲おうとする騎士を見かけたのなら、ターボ代わりに両の手のひらから爆炎を射出、急降下!!
「ガキ狙ってんじゃねェよ。」
苛立ちめいた声とともに、着地の両足で腕の鎧を打ち砕く!!
「ひぇ」
情けない声を上げた小さな少女の両ひざがすりむけていることを確認して、ゼイルは余計につまらなさそうな顔をした。
こんな――弱った生き物を殺して、何が得か、と。己の腕が失われたことをやや遅れて理解した鎧が、意識を取り戻す前に右腕から中指を親指ではじき出した。
「 燃 え ろ 。」
焔の渦が竜となって――!!
どう、と爆ぜるように食らいついた赤が鎧すべてを燃やす。ぎらぎらと銀髪が赤に照らされて揺れるのを、茫然と少女は見上げていた。
「……ヒーロー、なの?」
「いいや。残念。」
殺したところで、「殺す価値もないような」相手を吹き飛ばしただけの何とも言えない虚無感があった。
てきぱきと動いたのは、彼自身――どこか粗暴でありながら、心の中は冷静な男だからであろう。足の負傷をした少女には、恐らく走ることもできまい。
周囲を見渡してみれば、どこもかしこも崩壊がはじまっていた。おしゃれな電飾であっただろう部品も、こういう時にはばりばりと割れてしまって凶器になっている。
地面は隆起をしたりしているし、さすがに「走って逃げろ」なんてことは言えない。しぶしぶ、小さな体を抱き上げてやった。
「ヒーローじゃなくてヴィランさ。」
にやりと。
少女の体がこわばったのを察知して「ま、命が助かっただけありがたいと思いな。」と喉でくつくつと笑む。
助けてやるのは、それが「ゼイル」の強さにつながるからだ。
と、と、と地面を蹴ってまた足元の爆炎をまとったのなら、空中散歩が始まる。「わあ」と声をあげて泣きそうになる背中を、ぽんぽんとざらついた手のひらで撫ぜてやった。
「――後でちゃんとしたヒーローが助けに来るさ。」
誰かの英雄になど、ごめんだ。
名もなく死んでいく戦士であるほうが、ゼイルには都合がいい。蒼すぎる空は、きっと孤独な金色を――溶け込ませていただろうか。
そのゼイルの足元にて。
無事に、子供がまた一人助けられたのを理解する。それでも、尚――煮えたぎる腹は収まらなかった。
「――潰す。」
吸う息は震えていたのに、吐く息は恐ろしいほど静かである。アルミィ・キングフィッシャー(「ネフライト」・f02059)は唸りながら冷静に、己のできること考えていた。
彼女らしくない表情をしていたのかもしれない。こんなところを、見知りには見せられないなとも思った。
だけれど、――ひょうひょうとしているいつも通りではいられない事態である。
アルミィは、人間だ。だから、じっくりと時間をかけてこの悪意たちには徹底的に対抗をせねばならない。
「見せてやるよ、知恵ってやつを」
吐き捨てるように言いながら、彼女は先ほどからガラクタを集めていた。
【レプリカクラフト】。その対象は、彼女の計画上ではどれでも構わない。例えば、破損したライターがあれば全くそれに似た「破損したライター」が生まれる。
彼女の頭の中には、様々な「罠」への知識が詰め込まれている。生き残るためであった知恵でもあろう、数々の経験を年齢相応に得てきた彼女だ。
こうしてこそりと身をひそめて、己の計画を成功へと導く手段がとれているのも、燃える怒りを押し殺して細工を繰り出すのも――彼女のシーフである経験が生きている。
人間であるアルミィのできることは、その手先と頭から生み出される「小細工」だ。
地面に「がらくた」を模した「罠」を散らばせながら、次は外に出る。
――派手に交戦している猟兵がいるらしいことは、周りから立ち上る煙より判断が瞬時にできた。己と同じように怒りに狂う誰かがいるらしくて、安心する。
己の代わりに怒る人がいれば、アルミィは冷静であり続けられる。
た、た、と駆け寄るアルミィのすぐそばに――黒い鎧がすっとんで、けたたましく地面とぶつかり崩壊した。
その竜は、怒り狂っていたのである。
イリーツァ・ウーツェ(盾の竜・f14324)は、仏頂面で表情をあまり見せない存在だ。
何せ、彼は「竜」なのである。普段から顔の筋肉を使うような意識がないのだ。しかし、今は――わかりやすいほど、その表情をあらわにしていた。
目は、変色してしまっている。口の端から漏れる吐息は彼の体内がよほど「熱い」せいらしい。大気の温度と差があり過ぎて、立ち上る白がより凶悪さをにじみだしていた。
――まさに、腸が煮えくり返るといっていい。
「何を。殺すと。」
――鎧を殴り壊した。
コドモ
「雛 を殺すと。そう言ったか。」
――鎧を、その剣を殴り折った。
「 許 さ ん 。其 れ だ け は 。決 し て 。」
彼の声が、ノイズにまみれたような気がして思わずアルミィも眉を顰める。
イリーツァは上着を脱いで、己の後ろにいるであろう――かたちからして、親子であろうか――それに上着を頭からかぶせてしまっている。
その隣に、彼がいつも使う杖がおかれていた。
アルミィは、もちろん知らないだろうが――この怒れる竜が「杖を置いた」ということが、どのようなことを刺すかは直感で分かったであろう。
イリーツァは、純粋に力が強い。竜であるというのもあるが、彼自身が破壊の獣であるというのもある。人になじむために、いくつかの契約を果たして今、生を許されている。
いわば、彼の杖というのは「リミッター」であった。
「雛は未来だ。――過去が触れるな。」
そして、この「竜」にとって。
雛というものは、特別な生き物である。イリーツァ自身が「守る」ために今は在るというのも起因しているが、雛というのはまだ「戦うこともできぬ」存在だ。
イリーツァのように立派な鱗もなければ、アルミィのように知恵もない。そんな存在が、自然の中で淘汰されるのであればともかく「わざわざ」狩られるということなどは、理解できぬ。
だから――許 さ な い 。
「うわ――、なんだ、あれ。」
ヒーローに先ほどの少女を届けてきたゼイルが、また上空を爆炎で舞っていたところである。
小刻みに手のひらあたりから爆炎を何度か小さく放たせながら、空にとどまって釘付けになっていた。
【疾 風 迅 雷 ・ 衛 命 道 】!!!
轟音と、爆速。
――イリーツァが真黒な線になるほどの速さで鎧を殴りつけていた。
衝突しても、音などもしない。鎧はへこむことなく爆散する。「壊した」ことを理解したのなら、次はもう一匹と言わんばかりに視界から斜め右45度の位置にいた標的を瞬く間につかんで、左右に引き裂いた。
――たまんねえ。
思わず、ゼイルが純粋な暴虐に目を輝かせる。イリーツァのその行為は「悪意」などはない。「正当」な行いなのだ。
恐れて逃げようとした騎士のことは、折れたパイプを投げて串刺しにしてやる。ぐしゃりと地面に転がったそれが、見事アルミィのトラップに引っかかって――爆散した。
「殺す。此奴等は殺す。」
死角より飛びかかろうというのならば、強靭な尾がその体を折って捨てた。
念のために頭を踏み砕き、親子に迫ろうとする影があったのなら――瞬時につかみかかり、ともに地面に転がり馬乗りになってやる。鎧も何もかもを打ち砕く牙でかぶりついたのなら、口を血まみれにして殺してやった。
「――、 一 匹 た り と も 残 さ ん ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! 」
吠える竜が、面白いのだ。
ゼイルは初めて視るであろうこの暴虐の限りにわくわくとしてしまう。「へえ」だなんて思わず感嘆まで漏れたほどだ。
「でも、子供に見せるもンじゃねえな。」
ゼイルが腕をかざせば――ゆるりと穏やかな炎がイリーツァの処刑場とアルミィを分断する。
アルミィは見上げることなく、「戦力として」最高の働きを見せる獣を横目に――彼のコートに包まれる親子に駆け寄った。
一瞬こちらをぎらりと見たイリーツァがいるが、仲間と分かれば尻尾を一度しならせた程度でまた、問答無用の拳で鎧を打ち砕く!
「大丈夫!?――走って逃げられるかい?炎からこっちはもう安全だ。」
幸い、親子には傷も見られない。イリーツァの持ち物らしい車は、キーが刺さったままだ。「これに乗ってきたひとは、どこに」と母親がわざわざ気を遣うものだから、「大丈夫だよ、運転できる?」と視線をむけさせないでやった。
こんなことは、アルミィらしくない。
だけれど――この炎の持ち主が意図したであろう「バリケード」の意志には同感だ。
母親が恐る恐る、泣きそうな顔で頷いてから、ようやく自分たちが逃げるために車に乗るのを理解して運転が始まる。無事にたどり着くよう、上空を見上げればすぐさま銀髪の少年は「いいものを見た御礼」としてそのあとを空から降下し、低空飛行で尾行していった。
――本来ならば。
送り届けられたさまを見て、そうそうにアルミィも逃げるのがセオリーである。
自分が「人間」であることなんて、きっと彼女が一番よく分かっているのだ。だけれど、今日この時はそればかりではなかった。
「――冗談。見せたくないだけさ。」
イリーツァが派手に暴れている。
もちろん、それは周囲の鎧どもにも伝わって、彼らは一目散に逃げだしたのだろう。
足元の「がらくた」のことなんて気にもせずに、ただただこの市民たちと同じように。
「ギャロウズベルなんて見せられないだろ?」
「がらくた」は。
一定の重さがかかれば、それが起動するようになっている。
アルミィのやり方はどこまでも地味であろう。だけれど、――それは、こうして派手にやってくれる仲間がいるからこそ活きた。
「がらくた」を踏み抜いたことによって、仕掛けが起動する。輪っかのようなピンにとどまっていたフックがたちまち命をもったかのように動き出し、鎧どもの首をしばりあげた。
魔術が仕込んである。――動きは、アルミィが覚えさせていた通りだった。ぐるりと巻き付いたそれがたちまち、ビルに必ずある「非常階段」に鎧を釣り上げる。
「ニューヨークがビル街だったのが運の尽きさ。」
「海にも還るな。――ここで死ね。」
出現する「首吊り死体」たちをたちまちイリーツァが「壊す」。
無数の轟音のち、竜の咆哮が聞こえて――アルミィは、ゆったりと目を伏せ戦場をあとにした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
セゲル・スヴェアボルグ
極めて効果的な手段ではあるが……悪趣味だな。
無論、子供を狙う一撃は確実に止める。
可能な限り盾受けはするが、たとえ無理でも体で止めればいい。
子供や親を逃がすといっても、現状安全な場所が周囲にあればいいが、
無ければ庇いながら戦うしかない。
そうなれば直撃を俺が受けたとしても、地形破壊で巻き込む可能性も高い。
まずは奴のUCを制限しなければならんな。
まぁ、攻撃される前に倒せればいいが、そうはいかんだろう。
ならば、俺が狙うのは奴自身ではなく、その手に携える魔剣だ。
剣がなければ周辺の破壊もできまい。
奴にはまだやりが残っているが、単発で剣ほどの威力はなさそうだからな。
奴自身の得物で叩き潰してやろう。
グラナト・ラガルティハ
『子供を殺せ』とは分かり易い暴虐だな。
分かり易い分効果は高い。
子供こそが何より未来のある生き物だからな。庇護を受け正しく育てばその力の多様性は計り知れない…だからこそ護らねばならん。
この戦で子供が死ぬことは許されない。
UC【火炎の翼】使用。
【属性攻撃】炎でUCを強化。
高所から戦場となる街を確認。
【戦闘知識】で最善の行動を思考。
攻撃される子供を発見次第【かばう】
敵攻撃時は神銃に【属性攻撃】炎と【呪殺弾】を込めて撃ち込む。神話生物をも傷付ける銃だ鎧如き撃ち抜く。
子供に戦争の記憶など不要だろう?
アドリブ連携歓迎。
●
「分かり易い暴虐だな。」
「――だが、きわめて効果的な手段ではある。」
ゆらり、炎をの熱で周囲の形式をゆがませるのはグラナト・ラガルティハ(火炎纏う蠍の神・f16720)だ。
――人間に対しての好感度は、わかりやすいほどの低いのだが、子供というのは人間の中でもとびきり「純」で未来のある生き物である。
その力と多様性を恐れて悪辣どもが狙う理屈はわかるが、それを認めるわけにはいかなかった。めらめらと静かに怒りに燃える神は、表情筋ひとつうごかさない。
隣にいる青竜の男はセゲル・スヴェアボルグ(豪放磊落・f00533)だ。
ずしりとしたたくましい体は立派な鱗に守られている。高熱を放つグラナトの隣で汗一つ流さないのは、彼が爬虫類と極めて近い――竜型のドラゴニアンである所以かもしれぬ。
「いやあ、それにしても。ニューヨークは冷えるのだ。貴殿のような神がついていてよかった。」
「そうか。」
軽口というわけではない。現に、彼らがコンクリートの地面にて立つニューヨークはビル街だ。吹き抜けの風、冷たく凍る地面はこの季節に怒りがちの減少で誰もの恐怖と痛みを加速させる。
もっとも、セゲルに至ってはどうしてもドラゴニアンという手前――痛みは堪えられても寒さというのはこらえるかもしれぬ。
ごふ、と口の端から真っ白な息を吐きながら笑うセゲルに、グラナトもまた不快ではない結果としてシンプルに返す。
「――動きは決まっているか。」
「応とも。」
そして、セゲルが金色の目を深い瞳孔の向こうでぎらつかせながら――告げる。
「現状、安全な場所は周囲にない。セーフハウスはあるが、ここからは少し遠いな。」
「成程。ならば、どうする。」
「かばいながら一緒に逃げるのが得策よ。」
隆起したコンクリートの津波を見ながら、セゲルが顔をしかめる。
この敵はただでさえ厄介だ。例えば、セゲルが肉盾になったとして――地形の破壊が行われるほどの怪力で突撃を繰り出すという。
とはいえ各個撃破なんてしてみれば、一匹が一匹を回復してしまえる。成功させてしまえばグラナトもセゲルも徒労に暮れることとなるだろう。
そこで、――。
「お前さんに、頼みたいことがあるのだ。乗ってくれるか。」
グラナトは、炎の神である。
炎はすべてを焼き尽くし、争いの象徴だ。
彼をあがめる人々は勝利だけを願ってきた。それが――普段は恐ろしいものだと扱う割に、やたらと素直な願いを持つものだから、グラナトは気に食わなかったのだ。
「――この戦で子供が死ぬことは許されない。」
己の、力の強さは知っている。
ふわりと浮いたのは爆炎でだ。まず、目立つ行動をとることにした。この場に戦の神がいることを――破滅が訪れることを主張するために。
ただならぬ業火の爆発に、騎士たちが走り寄る。子供に向けられていた槍はほぼほぼ威嚇のためにグラナトへ向けられた。
グラナトは「まだ爆ぜさせた」だけだ。冷静な金色の瞳で――戦局を見る。
どすんどすんと巨体を走らせながら、青い竜が大きな歩幅で子供たちを拾っていくのが見えた。
「おお、よしよし。もう大丈夫だ。安心しろ。」
太くて大きな腕は小さな子供たちを抱きかかえるには十分すぎる。五人程度――拾っただろうか。よい働きにグラナトもゆったりと目を細めた。
【火炎の翼】。
セゲルが子供たちを拾い切った瞬間に、それは巻き起こった!!
空気中を舞う塵すら炎に変えて、グラナトの体を包むように一度火球が作られたのなら――繭を破るようにして翼は顕現する!!
めらめらと燃ゆる翼はまるで不死鳥のごとく。ぎろりと冷たい瞳がひとつ、まばたきを挟んで鎧どもを見下ろした。
威圧――絶望に近いといっていい。
鎧たちがかたかたと震え始め、その脅威におそれを抱いている。無理もなかろうな、とグラナトが感じていた。
――いつの時代も、炎というのはおそろしい。
セゲルは、己が各個撃破に向いていることはよくわかっていた。代わりに、こういう手合いを「一掃」することには相性が悪い。
「ようし、よし。ここにいろ。俺の後ろにな。」
子供にかけてやる声は極めて優しく、それでいて頼もしい大きな掌で撫ぜてやった。
こんな、セゲルが握れば折れてしまいそうなこの子供たちを――無慈悲に殺して回るというのだから、許してはならぬ。
子供たちに背を向けて、仁王立ちになる。
その様は――かつて、王であった竜のごとく、威風堂々としていただろう。今や、まとう空気すらすべて彼の従僕にならざるを得まい。
握った大きな斧で、がづんと地面に牙を食いこませてやったのなら見上げてばかりの鎧たちがこちらを見る。
「さぁ――、神がお怒りだ。先に俺に殺されたい奴は居るか!!」
吠えるセゲルに。
本来の目的を思い出させられた騎士が駆けた!!一体、また一体とセゲルのほうへ注目が移る。
――手筈通りだ。
にぃいと笑んだセゲルは己の体をどっしりと構え、振るわれた剣を鎧めいた鱗と腕で受け止める!
鮮血が走る。
舞う血しぶきに、子供たちが動揺して悲鳴を上げる。
――しかし。
「なんだ、単純だな。」
王 は 揺 ら が な い ! ! !
民を象徴するものが王である。かつて、この竜はそうだったのだ。
愛想よく笑い、人々に笑顔を教える存在でありながら――けして、その巨躯は一撃ごときに震えたりもしない。
チェナレ・ロイヤリティエット
【承 従 タ ル 対 者 】は、 こ こ に 成 立 し た !
「跪け」
戦火のまっただ中でありながら、その金色の瞳は揺らがぬ。その視線と、空気に舞った竜の血液をかぶった鎧どもが彼と不可視の鎖でつながれる!
ぐるりと体の自由を奪うようにして――彼らに膝をつかせて見せた竜人であった。じろりとその様を見下ろしてやる。
彼の後ろには――まだ、子供たちがいる。腕に刺さった剣を地面に転がしてやって、ひとつ息をついた。
この後は槍で貫いてやろうと思ったが、子供の前では少々残酷すぎる。それをしなくともいい存在が、空にいた。
「やってくれ。」
吠える。
願うように神に申し出れば「神」は応えた。
「子供に戦争の記憶など不要だろう――?」
まるで、青空に浮かぶその姿は太陽のようで。
悲鳴一つ許さず、グラナトの構えた神銃は瞬く間に熱をはらんでもはや――炎が収束した光線を放った!!
燃える。
黒の鎧が、あっけなく溶かされ、燃えていく!!
この一幕がまるで、「神話のようだ」と子供たちに願われればいいとしてその鎧から血すらあふれぬようにすべてを焼き尽くした。
熱波がおさまるころには、青い竜王とその後ろにいた子供たち以外生きているものはいない。
――無事、守りきれた。
ふう、と老体ひとつ斧を地面に刺して目を焼かぬ太陽を見上げるセゲルがいる。
「いやあ、神とは頼もしいな。」
「――竜も、頼もしい。」
金色の太陽が、きっと穏やかに竜と子供たちを照らしたことであろう――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
六条寺・瑠璃緒
狂ってるね…幼児虐殺、何処ぞの聖書でも読んだのかい?
其れなら、そんな目論見は上手く行かないことも解るだろうに
UC使用
未来ある子供たちへの慈悲を糧に飛翔
敵との間に割って入って、Serenadeのオーラ防御を展開
嗚呼、僕には其の攻撃は当たらないだろう
だから子ども達の護りに徹することが出来る
地形が変わるなら子どもを抱き上げて救助
両手が塞がれど構わない、僕は武器等持たぬから
Nocturneで敵を絡め取りつつ、Requiemで血刃を駆り、吸血と生命力吸収を
「骸の海に沈んだ過去風情が、未来を担う子らに手をあげるなんて不敬だね」
僕に刃を向けたことも
赦してあげるよ
僕は慈悲深いし、君達はただ蒙昧なだけだろう?
リア・ファル
WIZ
アドリブ共闘歓迎
子供達を狙うだって?
そんな希望を踏みにじるような行為、やらせる訳にはいかないさ!
今を生きる子供達の未来の為に!
「全速だ! イルダーナ!」
監視カメラや電子機器、ネットワーク情報に
ハッキング介入し、情報収集
最短距離でイルダーナを走らせ、子供達を救出する!
デュランダルへは、
ライブラリデッキ製の毒麻痺弾で射撃
負傷を回復できても、状態異常で攻め、
隙が出来たらヌァザで斬る!
UC【森羅万象へと導け、常若の国】を使用して
子供達をティル・ナ・ノーグ艦内へ一時保護だ!
「安心して、必ずパパママの所へ送り届けるからね!」
通信で無事を両親に伝えてもらいつつ、
争乱が収まれば親元へ無事に送り届ける!
シズホ・トヒソズマ
※アドリブ連携可
本当悪辣な手を考える事だけは天才的ですね
吐き気がします
クロスリベルで上昇させた移動力でかけつけ
デザイアキメラの◆盾受けで攻撃を防御
時間を稼ぐ間に大帝巫を動かし周囲に五行符を配置
準備が出来たら反撃で土煙を起こし敵の視界を一時塞ぎ
その間に敵集団に大帝巫から認識改変『子供が20年成長した大人の姿にしか認識できなくなる』◆催眠術を、装備ギャラクシーシンフォニーの補正効果込みで行使します
『そちらが騎士団ならこちらは忍者です!』
UCで風魔小太郎の力を使用
歴代風魔小太郎を召喚し手裏剣や鎖鎌で敵を翻弄して貰い
隙を付き
大帝符の五行相克『金克火』による◆炎属性符攻撃
リベルによる巨大爪◆串刺しで攻撃
ミハエラ・ジェシンスカ
堕ちた騎士どもが成す悪辣か
成る程、見習いたいものだ
だが今はより強大な悪としてそれを叩き潰させて貰うとしよう
フォースレーダーによる【情報収集】で地形と敵、子供の位置を把握
【念動加速】による飛翔で現場へ急行する
セイバードローンを先行させて敵の攻撃に割り込ませつつ【カウンター】【武器受け】
ドローンはそのまま子供を庇うよう飛翔させつつ
私自身は敵へ
時間が惜しい
隠し腕を開放し4刀による【2回攻撃】で一気に仕留める
……怖いか。無理もない、救援が私ではな
ああ「泣くな」
と【催眠術】で子供を少しばかり勇気付ける
良い子だ。私とは違うな
その後フォースレーダーで得た情報を元に隠れるか退避するよう言って次へ向かうとしよう
ジャック・スペード
◎△
よりにもよって罪の無い子供を襲うか
恥を知れ、オブリビオンの騎士達よ
この躰が動くうちは誰一人殺させはしない
子供の救助を最優先に行動しよう
襲われている子はこの身を盾にしてかばう
恐怖で動けない子は怪力で抱えて安全な場所へ
……俺はこの世界の子供達に怖いとよく泣かれるので
その、守った後のフォローは誰かに頼みたい
子供達を避難させたら、ヒーローショーを始めよう
召喚した氷の剣による鎧無視攻撃で、騎士達の躰を貫いたり
広範囲にマヒの弾を乱れ打ちして攻撃を
手近な敵はグラップルで捕らえた後、零距離射撃で撃取ろう
この世界の未来を、お前たちなどに奪わせはしない
魔槍は軌道をよく見切り躱そうか
多少の損傷は激痛耐性で堪える
●
「――狂ってるね。幼児虐殺、何処ぞの聖書でも読んだかい?」
少年は。
まだ声変りにも満たぬ青い声にて目の前の鎧どもに悠々とした態度で対峙する。
彼とて鎧にとっては「子供」だ。恐らく背丈や重さ、発達度合いで標的を見分けているらしい。
――いっそフェチズムめいた気色悪さを感じて、六条寺・瑠璃緒(常夜に沈む・f22979)はゆるりと笑って見せる。
「赦してあげるよ。」
少年は、神である。故に、どこまでも慈悲深くお見通しだ。
うっとりと笑むのは唇だけだ。灰色の瞳はどこまでも鎧たちのことなどただの鉄にしか見えていない。
その内部に「何もない」ことを知っている。信じている「指令」が「命令」でそれこそ、脳に植え付けられた聖書を暗唱するような子供たちと何ら変わるまいとも理解している。
「今日が青空でよかったね。」
――旅立ちにはいい日だよ。
優しく笑む瑠璃緒は、美しすぎる青空を灰に映してその彩度を落とした。
神のそばには、護られるべき子供らがいる。――赤ん坊だ。
ふゃあ、と鳴き損ねた猫のような声で口を開けるそれを、優しく見てやった。横たわる母親もいるが、そちらは意識をなくしているらしい。
残念ながら、瑠璃緒は癒せる神でない。知るために本を読み、時間を食い、唄を歌い、映画に出て、笑顔すらめったに映さぬかんばせは己の顔とその美しさを知っているのだ。
崩さぬように、つとめている。
崩壊する市街と立ち上る煙、火炎と咆哮は瑠璃緒にとっては心地のいいオーケストラのようでもあった。
冷たい空気が――神の美しい漆黒をかき混ぜる。
「『拍手喝采は許してあげる』――。」
否、それしか受け入れぬ。
瑠璃緒がここに到着して見せた時から、この場は「こう」であったのだ。
母親から赤子を取り上げて、地面に転がされた小さな命が額をすりむいているのが哀れでしょうがなかった。
だから――気がむくままにその槍を防いだ。瑠璃緒の神性【古き銀幕の活劇譚】をまとった体に下賤な槍も、その魔術も届かぬ。
腕を振るうことなく、霧散させて見せた。ならばと変形する地面には、まぎれもなく悪意が混じる。
「骸の海に沈んだ過去風情が、未来を担う子らに手をあげるなんて不敬だね。」
――この彼に刃を向けたことも。
真っ白な翼がぶわりと湧いて、鎧どもを沈黙させる。赤子を拾い上げて、両腕で抱いてやった。
「ああ、痛かったろう。かわいそうに。」
翼にからめとられた鉄くずがぎりぎりと抵抗をするのなら何も知らぬ赤子に見せてやることもないだろうと、視界すべてを瑠璃緒で隠すようにして赤く擦りむいた額と己の人差し指をくっつけてやった。
「いたいの、いたいの、とんでいけ。」
つい、とそのまま、指を鎧に向けてやれば躊躇なく深紅の刃が差し込まれる。
さて――鎮圧に至っては瑠璃緒としても手ごたえがある。このままなら、早々に一人でも片づけられそうだ。
しかし、そこはこの傲慢な少年である。両腕は赤子でいっぱいで、足元に転がるもう一人の「助けるべき」相手をどうするか悩んでいた。
「さすがに、もう持てないな。」
とはいえ、「母」である。
子供には必要なものだ。特に赤子は、その母の血を乳から飲んで大きく豊かに育たねばならぬ。
鮮血と痛みにあえぐ戦場を今一度見やって――。
「誰か来ないかな。」
ぽつりと気まぐれにつぶやいたのなら、神に運が味方をしたのだ。
「――全速だ! イルダーナ! 」
どう、と空気を裂いて走るのはリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)!!
相棒『イルダーナ』に跨る彼女は銀河の「運び屋」である。
この場にいる猟兵たちの力になれればと颯爽やってきた存在は、白銀と蒼を連れて空中を旋回しながら加速した!!
今やこのニューヨーク市街、当たり前のように設置されている監視カメラも、おいて行かれた電子機器も、宙を舞う衛星ひとつすら彼女の「情報」となる。
――届けるものがあるのならば、絶対に、時間通りに届けねばならない。それが、プロフェッショナルだ!!!
たとえそれが、「希望」や「未来」なんて曖昧なものであってもリアはただただ己の体とイルダーナを突き動かすしかない。
「情報」をもとに「解析」を繰り返す。
助けるための――最短、最速、最高を目指して!!!!
「退けぇええええええええ―――――ッッッッ!!!!!!」
希望を踏みにじる輩に、弾を打ち出す!!
イルダーナの先頭、ガトリングの様に打ち出される弾が見事――瑠璃緒の周囲にあった鎧どもを貫く!!
何かこの光景に、見た覚えがあるような気がする神である。
閃光が過ぎ去って遅れてやってくる風圧が少年と赤子を祝福するように巻き起こった。神性で「まもりたいものだけを」防いだ瑠璃緒の表情は変わらない。
「綺麗。――彗星のようだ。」
灰色だけは、美しいものに対する期待で満ちていて。
毒麻痺を撃ってやった手ごたえを知ったリアは、己の相棒を空中で精一杯ドリフトさせ戦場をぐるりと見渡す。たった一瞬だけ視れればあとは――彼女の視界をイルダーナが補うだけだ。
全身が痺れる鎧どもが膝をつき、お互いに回復を始めようとするのならばそうはいくかと瑠璃緒が指先を向ける。
つい、と動いた真っ赤なとげが――哀れな頭を打ち砕いて行った。
「保護にきてくれたのかな。」
「――うん!」
ディメンジョン・ゲート
リアがかざしたのは、【森羅万象へと導け、常若の国】を仕込まれたIDカードだ。
つながるのは、彼女の「戦艦」である。そこに訪れることは瑠璃緒にとっても好奇心がそそられたが、今は仕事が最優先であるからと気を失う母親をまず指差した。
「母親の上に、子供を乗せるよ。『そっち』には医術に長けた存在もいるのかな?」
――何も説明せずとも、お見通しだといわんばかりの灰色がある。
リアも説明の手間が省けてよい。彼女が助けるには「この二人」だけでは足らないのだから!
「いい案だね。中に通信機器もあるから、意識を取り戻したのなら――身内に無事を伝えてもらうようにするよ。」
電影扉が広がる。
頭から少量、血をながらして倒れるブロンド色の髪をした母親が青く照らされたのなら、たちまち優しい光が赤子をも包んだ。
「ばいばい。坊や。」
小さく手を振ったのなら、瑠璃緒は満足した色をわずかに顔に乗せる。
「ボクは次にいくけど、キミはどうする?」それから、せわしなく相棒に跨るリアを見た。
「――そうだな。」神は、思案する。
リアの瞳は一刻をも争う焦りはあるけれど、しっかりと灰色を見る力強さがある。
少年の姿をした今ならばおとり程度にもなるのは先ほど親子を助ける前に立証済みだ。
「役に立てると思うよ。」
それに、もう歩くのも面倒だったから。
ゆったりと頷いた瑠璃緒に予備のヘルメットを渡そうとして、彼が神性で風圧を無効化できることを主張したのならリアも「うーん」と唸ってから承諾した。
「行こう、多くを救うよ!!」
今はともかく、ただただ走らねばならぬから。
どるると唸る相棒が馬力を上げて――また空を駆ける。豪速で飛ぶのは未来を運ぶ希望の光。
――やはりすべては美しいのだと、瑠璃緒が満足そうに笑んだのを、リアは背中で感じただろうか。
●
「本当……悪辣な手を考える事だけは天才的ですね。」
紫のボディスーツに身を包んだ女は、臆することなく一撃を防ぐ。
精一杯の力で振るわれた剣を受け止めたのなら、追撃の槍が地形を破壊するのも理解して――柔らかな体を転じさせ宙を舞った。
「吐き気がします。」
すっかり派手に動き回って、目立つ色をわざと魅せながらシズホ・トヒソズマ(因果応報マスクドM・f04564)は欲深く笑った。
重い攻撃は己が操るデザイアキメラにて防ぎ、宙を反動で舞う間に周囲に仕掛けを巻く。陰陽師型催眠人形『大帝巫』は破壊の象徴たる権化の力を持ちながら――あたり一帯を彼女の独壇場へと作り上げていた。
準備が整うまで、彼女の立ち回りは一定であった。
それにすっかり信じ込まされていた鎧たちはぶんぶんとシズホの思惑通りに鉄くずを振るう。哀れでいっそ滑稽で、笑いだしそうになってしまうのを――かみ殺して、正義の生き物らしく戦う。
張りつめた糸を感覚に――集中する。
細い細いワイヤーが、小さく震えたひとつを逃さぬように蒼の瞳を細めたのならば。
「――今です!!! 」
ど う っ と大きく砂煙が上がる!
鎧どもはうめき声のような音波を出して、視界を隠されたことに体を反らせ威嚇を繰り返していた。
所詮、その程度だろうと紫の獣は思うわけである。地面に低く伏せた。空気の侵入すら許さぬ紫のボディスーツはぎちりとシズホの体を締め付ける。
それがまた、この「仮面」の心を好くさせるのだ。
「奪ってさしあげますよ。」
小さくつぶやいた声が、喜悦に満ちたのならば。
きっと、鎧たちには届いてしまったのだ。その声に乗った甘い痛みを、そして――「洗脳」が。
シズホが相手取る無数の鎧たちは、まるで動く意味を失ってしまったかのようにその場から指先一つ動かさなくなった。
紫の獣がとった手段は、単純に「指令」を「洗脳」によって取り上げることだ。
――今の鎧たちには「子供」が「子供」だと見えていない。
震えあがる金属同士がかみ合って耳障りな音が鳴る。がららと崩れた体に、容赦なく追撃が仕込まれていた。
「そちらが騎士団ならこちらは忍者です。――痛いですよ、いいでしょう?」
笑む。
痛みを、「好い」とするこの仮面が、嗤った。
【 幻 影 装 身 】!!
巻き起こるのは「そこに存在しないはずの過去」である!!
――デュランダルの騎士たちは、己よりもずうっと強大なその負に、震えあがった。
そこに座すのは、風魔小太郎である。かのサムライエンパイアにおいて強力なオブリビオンとして存在した悪夢の象徴がそこに顕現した!
豪奢な服に身を包んだ彼が印を結べば、瞬く間に――「風魔」が現れる。
ごぷりと口から血を吐きながら、やはり被虐者は笑っていた。
「さあ、――ショー・タイムです。」
一つ、指を鳴らしたのならば!!
せりあがる赤を吐き散らす紫をよそに、爆炎!!合図とした風魔たちの連撃!!そして――巨大な爪が兵士を貫く前に、蒼い閃光が子供たちをさらった!
「よし、回収!!」
「――わあ、なんだいあれ。すごいな。まるでパレードみたいだよ。」
リアと瑠璃緒が――盛り上がる紫の代わりに物陰でおびえる子供たちにIDカードを通り過ぎざまにかざしていく。
インカムに触れたリアが「大丈夫だよ、必ず返すから!」と叫べば、瑠璃緒が冷静に「次はあそこ」と指をさす。
リアの演算も解析も全く同じタイミングでその指先と同じ場所を指し示すのだから、イルダーナも止まれない。どどうと駆けて行った蒼が次へと向かう!
●
その機械どもは、悪辣であった。
「――よりにもよって罪の無い子供を襲うか。恥を知れ。」
「叩き潰させて貰うとしよう。」
機械は、よくわかっていた。
この状況は、まさに戦略的と言っていい。都合で言えば大人よりも子供を襲ったほうがリスクも低く、「戦後」も有利でありやすいのだ。
だけれど――それを見過ごすわけにはいかぬと、ミハエラ・ジェシンスカ(邪道の剣・f13828)は此処にいた。
「……怖いか。無理もない、救援が私ではな。」
きしむ助けに来た体は、「顔だけが乗っている」骸骨のようであった。
子供たちが悲鳴をかみ殺せないままに泣きわめくのはミハエラのせいだけでない。襲われる子供たちの服が――幼稚園のものだと己のサーチ結果から編み出したジャック・スペード(J♠️・f16475)もまた、ばつのわるそうな色をモニターにうつしていたことであろう。
「俺も、お前も――この世界ではよく泣かれるらしいな。」
奇しくも、二人は「反逆者」である。
かの銀河帝国にて生み出された戦うだけの機械たちは、今や反逆の延長を続けているわけなのだ。
それはそれは、子供に嫌われても仕方なかろうと――愛想もあたたかみもない体であるゆえに理解はしていた。しかし、それを悲観的に思うなとジャックがミハエラを見る。
彼らの目の前には、彼らよりもずっと冷たい黒どもがいるのだ。
「青空の似合わん奴らよ。」
「私たちもそう、変わらんさ。」
手をかざす。
ミハエラは――とうに、この状況をフォースレーダーから掌握していた。
赤い光は太陽からの明かりで消えてちょうどいい。【念動加速】によって現場に到着した体の損傷は――システム解析結果で言えば0%。上々の状態で挑むことができる。
飛翔し続けるドローンたちは常に地形の変化を読み取り演算結果を視界の端に数値として映し出していた。変動し続ける白い数字にミハエラが冷静な戦術を立てていく。
「――時間が惜しい。」
だから、誰よりも早く!!
ジャックが振り向かなかった。その肩をたたくこともなく――黒い骸骨は飛び出す!!
己の隠しギミックであるアームを解放し、攻撃の回数を増やす。細い素体のみしか持たぬ体であるというのに、ビームサーベルを握る力は鎧どもが想像するよりも重いものであった!!
破壊のために。
――ジャックは、ミハエラと同じ世界で作られた存在であるからこそ、その威力を計測できていた。
ミハエラのこころはいまだ、「過去」の世界に縛られているのだ。懸命に振るうためのシステムは「悪であれ」という命令を忠実に守っているに過ぎない。
だから、剣は反逆者となったというのに!!!
「ヒーローショーを、始めよう。」
もう一つの剣は、その様を見る。
機械らしい在り方だった。己もかつてはそうだったし、もしかすると彼だって同じ道をたどっていればミハエラのようになっていたのやもしれぬ。
深々と黒い軍帽をかぶりなおして、金色の鼓動は鋭く光る――同胞が悪を叫ぶというのなら、己は悪を正義にする忠義を見せてやらねばなるまい。
ミハエラに、ジャックの様になれとは思わぬ。だけれど、「こういう姿もあるのだ」と見せたかったのは確かだろう。
――ヒーローゆえ、救わねばならぬものが多いのだ。
【ガジェットショータイム】!!
襲われる子供たちを救った黒の鎧から、ぶわりと氷の剣が作り出される!
ちょうど肘関節パーツから出現した刃を手のひらでくるりと回転させたのならば――騎士たちの鎧を貫いた!!!
派手過ぎる音がして、子供たちの泣き声が止まる。ああ、どうかおびえないでくれと願う黒と、怯えて当然だとあきらめる黒がいる。
それでも、これが「己らの正義/悪執行」であることを――子供たちには覚えておいてもらわねばならぬ。
機械は恐ろしい。
それを――わかっていてくれるのならば、それでいい。
魔槍をかわしたジャックの代わりに、その体を狙ったはずの槍をたちまちミハエラの刃が斬る!槍を失ってバランスを崩した体を、ジャックが右腕でとらえたのなら指先をガトリング・ガンに変形させて打ち砕いた!!
「――この世界の未来を、お前たちなどに奪わせはしない。」
唸る。
黒の剣は唸る!!低く低く、体勢を撓めたのならば勢いのままに巨体をぶつけた!!槍を振りかぶっていた鎧たちはたちまち吹っ飛ばされる!
地面に矛先もつま先も、何一つ着地させないうちにすべて邪剣ミハエラが 切 り 伏 せ る ! !
恐ろしいほどに、子供たちは圧倒されていた。もちろん、恐ろしいと思う。泣きじゃくる顔が固まっているだけで、心を恐怖から逃がすために涙がとまらないことは――子供たちのそばにて着地したミハエラが、データから割り出していた。
このまま。
このまま、子供たちに戦火の様子で心を痛めさせては深い心の傷となる。
予想される疾患――PTSDを割り出した邪剣は、スピーカーからきわめて穏やかな声を出してやった。
「――ああ、『泣くな』」
子供たちの様子が変貌したことをジャックが悟るころには、鎧どもは殲滅されきっていた。
ジャックが最後の一体を肘で打ち砕く。ミハエラをモニターに映そうとサーチをすれば、猛スピードで「運び屋」がやってくるのが悟れた。
リアと瑠璃緒がひとつずつ、戦場にいる子供たちを救助して回っているのだと説明を受ければ「連れ帰ってやってくれ」と深々ジャックが頭を下げる。
「任せといて!」と言ったリアと「うん」と夢心地な顔で頷く瑠璃緒が――また、未来を連れて空に飛び立っていった。
「あの子たちは、良い子だな。」
「悪い子がいなければ、良い子はおらんとも。」
黒が二人。
次に救うべき「いい子」を探してまた、戦場へと身を投じていく。
「悪い子は」この世に、必要だろうか――。きっと、黒の剣ふたつが別々の軋み方をしたのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
グラファイル・パランニウム
…さて。子供がいるということは。親もいるということです。こんな場所で離れているなんておかしいですから。親も子供も安心させるよう。そして守ることを心がけて戦いましょう。人の姿でいた方が不安がられないと思うので、「人の姿を崩さず」「ヴァリアブル・ウエポン」を使用します。体内…手の指に内蔵しておいた「良い感じにレトロな光線銃」を使用しつつ、攻撃力を底上げして。できるだけ一撃で相手を倒します。そして、不安だったろう親子に背を向けながら、「優しさ」を全開にした声で、こう言いましょう。「あなた達が生きることで、安心する人がいます。さあ、逃げて!」…子供は、財宝で。親は至宝だ。決して、救い漏らしはしない。
スミス・ガランティア
未来に生きることが、罪、だと……?
……そんな事、あるはずないだろうがッ!
(かつて未来ある子供を手にかけてしまった神様は激怒する)
殺されそうになっている子供に向けられた武器を杖で【武器受け】して子供を【かばう】。我が足止めしている間に早くこの場から逃げよ!(素の口調を取り繕ってる余裕すらない。そのくらい敵にブチ切れているのだ、この神様は
同時に【呪詛】による呪縛と【極寒の天変地異】の吹雪による凍結で騎士たちの動きを封じるぞ。
できる限り多くの敵の動きを止め、回復も間に合わぬほどの吹雪を見舞ってくれる……!(【範囲攻撃】、【全力魔法】使用)
緋翠・華乃音
……これはまた、既視感を覚える光景だな。
どうしようもない絶望、耐え難い恐怖。
懐かしくて――反吐が出そうだ。
誰かを殺す為に培った技能を、今度は誰かを守る為に使う。
それを正義とは呼ばないのかも知れない。……呼ばない、のだろう。
それでも全く構わない。正しい義だけが人を救っている訳じゃない。
素早くユーベルコード『瑠璃の瞳』の範囲内で戦場を広く把握可能な狙撃ポイント(ビルの中や屋上等)に気配を消して目立たぬように潜伏。
敵への狙撃を行う為に優れた洞察力と観察力、視力と直感を以て、敵の行動パターン等の情報を収集・分析・見切りを行う。
子供を害そうとする個体を優先的に狙撃。
急所を狙って可能な限り一撃で仕留める。
●
「未来に生きることが、罪、だと……?」
冷気が、満ちる。
青空に舞う白銀が太陽に彼の痛みを溶かして、余計にみじめな思いをさせた。
スミス・ガランティア(春望む氷雪のおうさま・f17217)はかつて、すべてを凍てつかせてしまった氷の神である。
笑顔であることを――明るくあることを、つとめていた。
この戦場に踏み入れるまでは、覚悟だってしていた。そういう世界もあるのだと、割り切ろうとしていた心優しい神である。
極めて友好的に、皆を導いて、彼に救われた誰かが笑えるようにしようとして、現実に頭を殴られる。
あたりには、絶望があったのだ。
幸い死者はまだ出ていないらしい。それでも引き裂かれた親子がお互いを探して泣きわめき、力のない子供は小さなからだをうずくまらせて絶対的な悪意の前に何もできない。
あまりの惨状に「英雄」は訪れないのだ。今やヒーローズアース自体が慢性的な「英雄不足」になっている。
だからこそ、スミスは「英雄らしく」笑っていなければいけないと己に言い聞かせて、それこそ――心を氷で固めていたというのに!!!
「 そ ん な 事 、 あ る は ず な い だ ろ う が ッ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! 」
神は、――かつて、未来ある子供を知らぬうちに殺めてしまったことがある。
その時、神に意識はさほどなかったのだ。神である自覚すらなかったやもしれぬ。だけれど、はじめて心の底から冷たいものに触れてしまった。
その痛みが彼の心を固めた氷を打ち破ってビル街一帯を冷気で包む!!
吐息すらも冷えすぎて彼の息は白くもならぬ。そのまま、一歩ずつ前へと歩いた。どんどんと歩幅が広くなって、早くなる。
今はもう、意志ある神なのだ。――感情のままに氷の津波を振るうばかりのスミスでない。
蒼い瞳の奥を凍てつかせながら、怒りに満ちるスミスは「ひとのため」に怒る神となる。杖を振るえば、彼の視線の先でうずくまる子供に襲い掛かろうとした鎧を氷漬けにした。
【極寒の天変地異】。生み出したのは「超局地的で突発的な」吹雪だ!!
ごう、っと子供のちょうど頭の上すれすれを殴るようにして吹いた白い息吹はみるみるうちに黒を侵食し、氷くずに還す。
「我が足止めしている間に早くこの場から逃げよッッッ!!!! 」
――子供に。
難しい言葉などわからないだろうとも思っていた。
己のいつも通りの言葉遣いならば、きっとこの場で子供を呆気に取らせて笑わせていたはずなのにそれができない。
それくらい――必死にスミスが「怒っている」ことはわかったから、小さな子供はまだ足取りもおぼつかないままに逃げ始めていた。
投げ出した塾のカバンが地面にひとつ落ちればたちまちそれも「凍る」。
子供がスミスの隣を走っていく。本当は、寄り添って走ってやればいいのがわかっていた。この戦場たった一人に走らせるなどあまりに無謀で無駄に終わる確率が高い。
しかし、――。
「させぬ。」
神は、唸る。
牙をむき出しにして、己の魔力を高めて――呪詛めいた怒りをたぎらせながら冷気をまとった。
突き出した手のひらを中心に螺旋の様に吹雪が散り始めたのならば、照り付ける冬空の太陽に溶かされぬ怒りがそこに顕現する!!
「ああ、――さ せ ん ぞ ッ ッ ッ ッ ! ! ! ! ! ! ! ! 」
大 氷 塊 ! ! !
コンクリートも、ビルも、どこもかしこも、鎧も――すべてを凍てつかせる一撃が飛び出した!!
口の端から漏れる怒りの息吹が少し白さを取り戻して、影の落ちた顔で神はまた前へと歩む。
凍てつかせるべきものを探す。この場には、きっと神の怒りを収めるには「少なすぎる」悪意ばかりが満ちていた。
●
子供が逃げてくる。
冷気のするほうから、鳥肌の沸き立つ体をあたためもできないまま、逃げてくるのを見た。
「懐かしくて――反吐が出そうだ。」
緋翠・華乃音(終ノ蝶・f03169)は己の銃を構えながら、瑠璃に憂いを乗せて吐く。
消えていくはずの記憶が、ひび割れた傷跡が彼にかつての絶望を「思い出させていた」。
迫りくるどうしようもない脅威と、耐えがたい緊張感と、焦燥が「恐怖」となって――彼を襲ったことがある。
生きるための技能は「誰かを殺すため」に手に入れた痛みとの引き換えのものだ。
華乃音が身を潜めているのは、なんてことはないビルの非常階段である。ありふれたものに隠れていることで、彼は今誰にも気づかれない。
ここから――子供たちを襲おうとする鎧たちを撃ち抜いていた。
できる限り、子供たちには絶命の瞬間すら見せたくはない。【瑠璃の瞳】がゆるく輝く間に、よくよく「鎧」を見て撃ち抜いていた。
孤独の狙撃銃から放たれた弾丸は、冷徹に鎧を砕き、中身を殺し、その体を地面に寝かせる。
音を立てさせないように意識して――一撃での狙撃を意識し続けていた。常に同じ場所にいると、どこから狙われているかをわかられてしまうのもあって華乃音はこの非常階段にいる。
一撃を撃ったのなら、舞う薬莢には目もくれずすぐさま背負う。
それから、手すりに足を駆けて跳ぶ。大きく股を開いて、隣のビルにわたりうつった。細いパイプ管に足を乗せたのなら、腕の力だけで割れた窓から冷静に音なく侵入を果たす。
精密かつ、静かであらねばならない。
子供たちも何が起きたのかわかっていないうちにまた次の鎧を撃つ。夢だと思えてしまうほど、一瞬で目まぐるしく子供を囲む絶望は色を変える。
――この力は、かつて人を殺すために磨いた。
それを、今は守るために使っている己に嫌気がさす。
こんなことでしか華乃音は子供たちを守ってやれないのだ。この世界の子供たち誰もが憧れる正義の象徴などにはなれもしない。
そんなことはわかりきっているのに、瑠璃色の瞳には決意だけがあってまた引き金を引いた。
見事鎧の頭を打ち砕いた鉄を見届けず、またポイントをうつる。だいたい騎士どもは三発目で「反応」する。もう一発は下の階にずれ込んで撃つことにした。
――正しい義だけが人を救っている訳じゃない。
強い色を、するようになった。
瑠璃の瞳をひきしぼる。細くなった瞳孔が、確実にまた鎧の命を奪っていた。
この行いに意味などなくとも、華乃音なりの義というものがあるのだ。青空に響かぬ銃声は、彼の巧妙なサイレンサーによってほとんど空気の悲鳴で終える。
子供を一人逃がすだけでも、どんどん狙撃のたびに警戒心は高まっていく。さて、子供さえ逃げればこの戦いは「猟兵」の勝ちだ。
だから――「そういうこと」に長けた猟兵をセットしてある。華乃音がまた、銃弾を放つために引き金に指をかけた。
その手先が一つも震えていなかったのは、きっと。
●
子供がいるということは、親もいるということであろう。
親と子供が離れていることなどはありえない。はぐれてしまったのならば、親が子供を探すはずなのだ。
「ああ、ああ、わたしのサリー!どこにいったの!」
冷気の満ちる世界でも、己は狙われなくても恐れでいっぱいであろうに、髪の毛を乱しながらブロンドの女性は駆ける。
悲痛な叫びでいっぱいの彼女の腕を、しっかりとつかんでやる影が現れたのは「待ち構えていた」といってよかった。
「――どうしましたか?」
グラファイル・パランニウム(サイボーグの戦場傭兵・f18989)は、半分機械の男である。
半分は人だ。ゆえに、「機械過ぎない」反応ができていた。彼の問いかける声は落ち着きながらも感情をはらんでいて、親であろう女性の緊張を解く。
堂々としている彼の手のひらは冷たい。だけれど、この世界ほどではないから「私の娘がいないの!」と叫んですがりつくことができた。
「わかりました、どんな特徴の子ですか?はぐれてしまった親子が多いようで――。」
事実、この場は混とんとし始めている。
猟兵たちが争い始めて、正義のために戦っているとはいえど地形は崩壊し、建物の倒壊も置き始めていた。
むしろこれだけ損壊を出していながらいまだ、死者が0名かつ、救出された誰もが軽傷で済んでいるところがまた奇跡である。
母親に子供の情報をグラファイルが説明させたのは、彼自身――いろいろな情報端末からのパーソナルデータを「拝見」しているからだ。
握ったスマートフォンはそのあたりに落ちていたものである。損傷も少なく、彼が少し手を加えるだけで万能具となった小さな箱で「少女」をありとあらゆる情報から洗い出した。
監視カメラ、展示されたビデオ、ラジオ、ネット――「いた」。
地図アプリを躊躇いなく起動したのなら、「ついてこれますか」と一度だけ母親に声をかける。すぐにうなずいた母親に、グラファイルも穏やかに笑んだ。
このサイボーグは、もとが人間だ。
・・・・・
――この指令を下した悪徳は、人間をなめていると思う。
「ママ! 」
「ああ、サリー!! 」
抱き合う二人のブロンドを視界に入れながら、グラファイルはひとつの親子をまず遭遇させた。
ここからが、本番だ。幸い仲間の援助もあるらしい。この異常な冷気は「神」の仲間のもので、先ほどから敵性からこの少女を守っている銃弾もまだ動き続けていた。
鎧がまた、鈍い音を立てて転げていく。グラファイルも己の手のひらを【ヴァリアブル・ウェポン】に集中させ――指から銃口を作り出した。
「あなた達が生きることで、安心する人がいます。」
――子供は、財宝で。親は至宝だ。決して、救い漏らしはしない。
「わかりますね?」
優しい声で、できるだけ確かに声をかけてやる。
親子には考える暇があっただろうか。「このまま彼女らが逃げることに成功する」ということは「誰もがそうなれる」という理論につながる。
誰もが絶望から救われて、猟兵たちが導き、この悪夢を止める。そう、できると――この市内に知らしめることができる!
「だから、あきらめないで。さあ、――逃げて! 」
サイコガンを放つ青年の背中は、決して二人を疑っていなかった。
母親に手を引っ張られながら、冷たくなりつつあった体を温めるようにして走り出す少女の足取りは元気だ。
ああ、よかった――子供が風の子で。なんて笑ってしまうのは不謹慎だっただろうか?グラファイルが銀の瞳をきらめかせながら、またサイコガンを放つ。
どう、どう、と衝撃と音波が響いて振るわれる槍が宙を舞い、あらぬ方向に刺さったのならばそれを銃弾がしとめていく。
「ありがとう、見えないスナイパー!」
スナイパーが見えては洒落にならぬ。
反応がないことをわかっていながら、グラファイルはまた光線銃をはなつ。指先からの確かな熱は彼の使命に満ちていたのだ!
「さあ、まだまだ助けるよ。」
――背中を押すだけで、人間は「助かる」。
背中を押すだけで殺せもするけれど、人間はもっとずっと「可能性と未来」に満ちた生き物だ。
「アンタらには、わからないだろうけどな。」
鎧を見て確かに唸ったのは、サイボーグの喉だろうか、それとも内蔵された「破壊」だろうか――。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
碧海・紗
アンテロさん(f03396)と共に
市松発動
白を生後間もない程の赤ん坊の大きさで布で包み
操り人形の可惜夜は白い長髪を緩く纏め母親の如く親子の演技
私は目立たぬ様誘き寄せる為に操りましょう
アンテロさんたら
紛れ過ぎてわかりませんけど…
まぁ、万が一可惜夜を攻撃しても
一般人ではありませんから…
普段可惜夜の持つ銃・闇夜は
私の左手に…
文鳥の黒は雪にされた敵目掛けて体当たり
隙をつけば私からも援護射撃
ただ地を這うだけではつまらないでしょう?
空中戦も交え一般人
特に子ども優先でオーラ防御を使用しつつ彼のサポートを
どうしてもの場合は子どもと敵の間に滑り込んで
零距離射撃も望むところ
信じてますよ?
アンテロさん…
アドリブ歓迎
アンテロ・ヴィルスカ
碧海君(f04532)と
未来を奪うには実に効率的だねぇ
でも、駄目じゃないか、子供ばかりを狙うだなんて……
大人の猟兵の接近を見逃してしまうよ?
俺は【武器改造・防具改造】で鎧と黒剣を騎士達の物に似せ、背後から紛れ込む
碧海君が操る可惜夜を追い立てるように、複数の騎士が集まればこちらのもの…
不香の花で敵の鎧と槍を雪へと変え、防御を削いだ上で斬撃にて屠ろう
集団の中にあっても鉛の雨に俺が打たれる事はない、そうだろう?碧海君。
アドリブ等、ご自由に…
●
この男と仕事をするうえで。
――救助には、向いていないだろうなと黒い天使は悟る。
彼にその洞察力をほめられたことがあるから、そう言い切っても何一つ差異はないということなのだろう。
碧海・紗(闇雲・f04532)は、己の相棒を布で包んで温めるようにしビル街に潜む。
「白、お願いしましたよ。」
嘴と頬のあたりをくりくりと撫でてやれば、【市松】で呼ばれた獣――文鳥の白は「ぴ」と短く返事をする。
いつもともに呼び出される「黒」も紗のそばでおとなしく、しかし今か今かと周りを警戒していつでも攻撃に転ずる準備ができていると、足音も聞こえぬくらいの軽いステップを地面で繰り返していた。
落ち着きない黒の様子に、無理もないかと紗が頭を撫でてやる。普段自分では掻けない届かぬところをを撫でられて、黒がちちち、と短く鳴いた。
――ヒーローズアース、ニューヨーク市街。
その、ビルとビルの隙間の路地は非常に狭い。もとよりうつくしい金色の髪以外はそこまで彩度が高くない紗であった。
息を殺して、そこにあることが当然だという毅然とした態度で糸を繰る。手筈通りの位置、ちょうど路地と路地との交差する中心に操り人形「可惜夜」と布にくるんだ市松を置いてやった。
「可惜夜」には白い長髪をまとめさせ、すすり泣いているような弱弱しい演技を施してやる。
指先ひとつで命令を下せば、張り詰めた糸が緩んで人形は頭をかくりと垂れた。
「白」を包んだ布には血糊が塗ってある。多少鉄の匂いがしたほうがよかろうと、そのあたりに転がる鉄くずで布をよくよくこすって汚れを付けておいた。本当の血でもよかったのだけどそれでは、「白」が可哀想である。紗が「可哀想」と思うことをするような性質でない。
その用意のさまを――楽しげに見ていた、黒騎士ならばともかく。
「信じてますよ?アンテロさん。」
ぽつりとつぶやいた声は、雑踏にきっと吸われてしまったのだ。
未来を奪うには実に効率的だと思う。
子供というのは、すべてが未熟だ。あの鎧の騎士どもに追われまわせば体力が恐怖におかされて、きっとあっけなく殺されるのが運命なのだろう。
だけれど、――ここには猟兵がいる。そこを意識できていないのが彼に「駄目だなぁ」と思わせていたのだ。
頭がいいのに、そこまで気が回らなかったのかと黒は楽しげに笑う。
アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は八端十字架のヤドリガミである。
聖者が磔にされたさまを起因とするそのシンボルが長年の信仰を得て姿を具現させた存在だ。とはいえ、彼自身のこころというのは神よりもずっと個人的で彼らしいものになっている。
生まれた故郷が故郷故に、どこまでもシニカリストなのだ。冷静に物事を客観的にとらえ、論理的に最適解を作り出すことにたけている。その代わり、彼にとって難しいのは「庇護」というものだ。
――子供に振りまく言葉があったとしても、きっとそこに愛想はあっても温かみはない。
アンテロは、「救出には向いていない」と判断した。だから、子供の救出には出ないのだ。わざわざよく見知り実力が確かな紗に「囮」を提案し、黒騎士は己の姿を「デュランダルの騎士たち」そのものに変えている。
溶け込んでいる、といってもいい。実際、ともに何食わぬ顔で騎士たちとともに歩いていた。空がよくよく晴れているのを、鎧の中でぼんやりと眺めながら目的の地まで部隊とともに歩いている。
――沈黙の騎士たちは、つまらない。
どれもこれもがアンテロの理論では「命ぜられたままに動いている」だけなのだ。そこに意志もなければ、案外その鎧の中は冷たい絶望でいっぱいらしい。考えることをやめたすえの所業がこれであるなら、救われなくて当然だろうとも思えた。隻眼でなんどか右側を見てやりながら、常に陣営では左を歩くようにしている。「対象外」で「鎧」のアンテロを無警戒とはいえど、死角である左を与えるわけにはいかぬ。
一行の前に、すすりないているらしい白髪の女が見えた。
その女が抱く布の大きさを――鎧たちが悟る。ちょうど、赤ん坊くらいの大きさだろうか。
けがをしているようだから、さあ殺しやすい。どうっと駆けていく鎧たちはたった一体、出遅れたアンテロを残して見事「つられた」。
鎧の中で、ふ、とアンテロが思わず笑ってしまう。
「ああ――駄目だ、駄目だ。ちゃんと、よく見ないと。」
振るわれた槍があって、ためらいなくその金属を鉛が打ち砕く!!!
何事か、と動きを止めて視線を動かした鎧を、続いて二発の銃声が襲った。
紗が――彼らの視線の先で拳銃を構えている。きんきんと薬莢が転がり落ちて、張り詰めた黒の瞳がじっと鎧を見ていた。
「さすが、よく見てるね。」
それから。
【 不 香 の 花 】 が 咲 き 乱 れ る ! ! !
アンテロは、己の鎧を美しい雪に変えながらその「中身」をあらわにした。美しい黒髪を雪に撫でられながら、黒の男は悠々と笑む。
騎士たちには、まるで理解ができない。――己らがどうなっているのかも、この目の前の彼らが何をしたのかも、まったく!
「嵌められたんだよ。いけないね、ちゃんと頭は使わないと。」
死んだときに、苦労するよ。
優しく笑ってやったのを最後に、鎧たちの体はどんどん雪に変わっていく。その様に驚いて剣を取りこぼしてしまったのなら、いまだと備えていた巨体を持つ「黒」たる文鳥が体当たりを繰り出したのだ!!
「黒」の一撃でいよいよほころんだ鎧はまるで紙吹雪の様に散ってしまう。仲間のその様を見て――出せぬ悲鳴を感じた紗が、早く終わらせてやろうとまた銃を放つ。
アンテロは、それでもまだ抵抗する鎧と踊ってやるのだ。
これは、――興が乗っただけであると言いたげに余裕に笑んで、雪景色を散らしながら己の得物を構える。
振り下ろされる豪速の槍も武器にて受け流したのならば、ステップはすり足で踏み込む。懐に見せつけるよう、刀身をゆっくり差し込んだのならば。
「静かなのは、いいと思わないかい?」
また、鎧が白になって消えていった。
あたりには血だまり一つ残らぬ。すべてが白になって消えていくころには、二人だけが残っていたことであろう。
「ご苦労様です、アンテロさん。」
「君も。――子供たちは?」
よくもまあ、笑いとともにと言いかけて「すでに、守っておきましたよ。」と紗は笑む。
アンテロの「無機物すべてを雪に還す」御業の前に、子供たちを守っていた遮蔽物も溶かされるのは常だった。
そこに、黒い天使が加護を齎すことに徹していたのである。アンテロが不向きなことは、己が補ってやるべきだとも思っていたから――苦ではなかったのだけれど。
「ただ地を這うだけではつまらないでしょう?次は、空から攻め込みましょうか。」
「はは、いいね。いい案だ。また入念に作戦を立てよう。」
鎧を溶かしながら笑う黒が、どこまでも黒すぎて中身が見えないような気がしてしまう。
二人で沈黙の街を歩きながら、人形から「白」を受け取った紗が彼を見た。
「間違って撃たれるとは、思いませんでしたか?」
「君に?それはないよ。碧海君。」
黒のヤドリガミは、ゆるりと笑う。
金色の隻眼がきっと、少し揺れた。
「――『信じている』からね。」
どうでもよい呟きを拾われていたらしく。
ああ、聞こえていないだろうとは思っていたのに――余計な胸中をつぶやいてしまっただろうかと紗が薄く顔に出した。
それが、不快そうではなかったから。アンテロもまた、「笑うようにした」顔をより「愉し気」にさせておいたのだ。
黒の二人が訪れる絶望の街に――あしあとの数だけ沈黙が訪れたのだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロク・ザイオン
※ジャックと
(あの鋼の病どもは
この己の目の前で
最も、赦されざる暴虐を為すという)
……わか、った。
おれが。
こどもを助けるから。
……………ジャック。
おれは、あれを絶対に許さない。
(敵への対処は、己の殺意と憎悪ごと、相棒に託した。
己の手に「擁瑕」を刻み、己の影に子供たちを呑み込んで
【地形利用】を駆使し【ダッシュ】で戦域を離脱)
大丈夫。
……だいじょうぶ。
全部、全部、おれが助けるから。
ジャガーノート・ジャック
◆ロクと
(ザザッ)
君が見過ごせる物ではないだろう。
行って来いロク。
陽動は本機が担う。健闘を祈る。
(ザザッ)
"Tempest"。
腕を雷電化し敵を二機程穿ち抜く。(属性攻撃×狙撃×二回攻撃)
突然の攻撃と雷音とで注意も引けた筈だ。
そうだ、本機がお前達の敵だ。
高速機動(早業×ダッシュ)で撹乱しつつ雷撃で対処可能な敵を一機ずつ撃破。
とは言え敵も多数、補足され波状攻撃を受ける事になるだろう。
それを待っていた。
肉体を"電子の砂嵐"に。非実体(残像)化で攻撃をすり抜けつつ接触した攻撃を複製。
攻撃をそのまま敵に返す。
(カウンター×一斉発射)
雷撃と複製反撃とで鏖殺を継続。
何人も嵐から逃れられると思うな。
(ザザッ)
●
森には、秩序がある。
親は子を巣で守り、子は親にすがる。それは、どの生き物でもそうだった。
時に子供同士で肉食と草食が食らいあうことあれど、そこに恨みなどは存在しない。
食われたくなければ逃げきればいいし、生きることに森というのは死ぬことと同じくらい寛容なのだ。
ロク・ザイオン(未明の灯・f01377)は、そんな森の「番人」である。
だからこそ、この事態が――彼女には許せなかった。
森同士で繰り広げられる生命の因果だというのならともかく、あの鋼どもはこのロクの目の前で、赦されざる暴虐を働こうという。
子供は、森でいうなら「種」なのだ。
種がなければ森は栄えない。食うばかりでは緑が枯れていくのが普通で、森の在り方に「そと」が干渉することは許されないのだ。
いわば――この鉄くずどもは、ロクにとっていえば「狩人」だった。
「森」に必要のない、命たちである。病程度で済むほどたちのいいものではない。いいや、病であり狩人であるというのなら「番人」はそれらを殺しつくさねばなるまい。
寒空と、ニューヨーク市街にて。
「君が見過ごせる物ではないだろう。」
だから、行ってこいと。
通信音声を妨害されているわけではない。会話が不必要な存在ではあるのに、「会話」をしていることによってユニットが雑音をさせているだけである。
ジャガーノート・ジャック(AVATAR・f02381)は、「その中身」も含めて人の世界で生きる存在だ。
だから、この隣にて戦慄する彼女の意図は読めぬ。ただ、想像はできた。全身から怒りをにじませるロクの姿は、二人でよく見渡せるようにエリア・マンハッタンに高く高く聳えるビルに張り付いているというのに、ちっとも強風にびくともしない。
ジャックの体は、常にブーストを焚いていて鋼鉄を空に停滞させる。赤いモニターが確かにロクを見て、己と同じざらりとした音波を拾ったのなら、耳がふたつ、ぱたぱたと動いた。
「……わかっ た。」
話すのに、適していない。
吠えるために在る喉は、ジャックの「機体」と同じつくりではないけれど、成り立ちは同じだ。
「森」は「ひと」と共存する。「森」の数は「ひと」より少なかったのだ。鳥が鳴き声を交わしてコミュニケーションをとるように、鳥が人の声を真似して彼らに好かれようとするようなことと同じである。ロクも、人の言葉を「使って」いた。
「おれが。――こどもを、助けるから。」
唸る喉には怒りがこらえきれない。
今すぐにでも吠えて、町中を燃やし尽くしてやりたいくらいだった。しかし、そんなことをしては守るべき子供すら燃やしてしまう。
だからこそ、どうにか――できないかと、祈るようにロクは相棒をみる。太陽の光を反射させる硬質さが頼もしかった。
「ジャック。」
己では、小さな命を助けられないとロクは知っている。
その昔、「あねご」の残した「こども」を食べたことがあったのだ。まだへその緒すら切られて間もない、小さな命を「森」として食らった。
――あたまのどこかで知っているのだ。この獣は、どれほどそれが甘美かを。
悪戯に種を奪う阿呆どもには、牙を突き立ててやるのが一番いいが己ではそれに満たないと分かっている。未熟な心で振り回す炎で己と種を焼くくらいならば、相棒にすべて委ねようと思った。
ジャックは――ロクと違い、冷静であり続けられると知っている。
「おれは、あれを絶対に許さない。」
「――健闘を祈る。」
ジャックもまた、彼女の言いたいことを理解している。つたない言葉での宣言だって聞き届けて、友の願いをかなえて見せようとひとつ鉄の胸をたたいた。
それから、瞬く間に滑空――から急降下!!
空気を割きながら小さな雷電により爆炎を発生させ両手で空を飛ぶジャックの姿はまるで、狩りにでる黒い豹そのものである。
今の彼らにとってこのビル街は「森」であった。どう、どう、と足音には苛烈すぎる音を立てながら鎧の注意を引くジャックを見送って、ロクも手際よく空中で何度か回って、乗り捨てられたタクシーの天井に降りて転がり、ボンネットから着地する。
――探さねば。
「こども、どこだ……ッッ!!!」
泣きわめく「種」たちを、助けねば!!
走る相棒の姿は常に視界の端でマッピングしながら管理している。
ジャックの仕事は陽動だ。できる限り多くの「こども」を救いたいロクの希望をかなえてやるのならば、十二分すぎるくらいの成果をあげさせてやりたい。
――英雄になることを望んでいないのは、理解している。
ロクのそういう純粋なところを尊重してやりたいのだ。だから、常に動く景色中をすべて「調べ上げた」。
液晶に浮き出る敵性反応はざっと見て赤い丸が二〇前後。殲滅できるかどうかの演算にかかった時間はわずか0.001秒!!
――【Tempest】。
コマンドの実行と共に雷電の嵐が巻き起こる!!
一筋光が走ったのならば、遅れて音がやってくる前に鎧たちは雷電に貫かれて動きを止める。
がらがらと崩れる木偶たちの沈黙にほかの鎧が危機を悟ったのならば、これ見よがしにジャックはその近くに降り立ってやった。
片膝をつく着地を果たし、ゆっくりと赤色の閃光が鎧どもを見る。
「そうだ。本機が――お前達の敵だ。」
なり切れ。
この鎧どもの敵に「なりきる」ことこそ、ジャックと「中身」の任務なのだ!!
唸るノイズとスピーカーからの音に鎧たちがそれぞれ武器を構える。それでいいと頷いてやってわざと「雷撃だけ」でけん制をはかる。
飛び込んでくる鎧の肩に手を置いて飛び越え、鎧同士を電磁でぶつけ合い昏倒させる。すかさずとどめを刺そうと取りこぼされた剣を拾ったジャックに、割られた地形がそうはさせぬと飛び出した。
――ジャガーノート・ジャックの性能は優秀である。
しかし、一の優に二〇の劣は流石に数が多い。相手も劣とはいえ魔術を扱う兵士たちだ。とどめを刺せないうちに回復し、ただただジャックのエネルギーが減った。
しかも思ったより、統率は取れているらしい。もっとがらんどうで何も考えぬまま槍を振るっているのだと思っていたが黙しているだけでそこに意志はあるようだった。
自覚がある一撃には力が程よく籠められていて、突き出された槍を交わしたのならばそれを薙ごうと大剣が別方向から飛び出して来る。
がしりとその挙動を捕まえて、電気で爆ぜさせた。空を舞った剣が地面に刺さり、帯電したそれで焦がされ割れる。
――補足された。
派手に動き回ったのだ、こうならねば困ると黒の豹は確かな勝機を感じていた。
じりじりと多くが円を作るようにしてジャックを囲む。それこそ臨んだ状態ではあるが、殺意の圧はどれもこれも忠義が混じって質がいい。
豹の尾が宙でしなって――誰もかれもが沈黙した。
一歩。
――一振り。
また、一歩。
――二振り。
じりじりと距離を詰めて、黒豹を穿たんとする鎧どもが均衡を破いて襲い掛かる!!
一斉の圧がたった一つに収縮する勢いは、常人ならば正気ではいられなかったかもしれない。しかし、この彼は「その役にはなりきらなかった」!!
「 そ れ を 待 っ て い た 。 」
多くの緊張感が強迫めいた意識でたった一点、黒豹に襲い掛かることを読んでいる!!
今だと起動されたのは――ステルスだ。
ノイズかかる声には、常に非現実と現実が入り混じっているような印象を受ける人も多いであろう。まるで、電波の妨害でも受けた無線を聞いているようだったのかもしれない。
けして、ジャガーノート・ジャックという存在は「虚構」ではないけれど。
ふ っ ――と、虚構を残してその場から消えてしまう。
突き抜ける槍の穂先がぶつかり合い、ずれて影を穿ってもなんの感覚にもなりはしない。鎧たちがお互いの様子を見上げて、どうなっているのか理解するよりも早く無数の槍で貫かれていた。
そう――貫 か れ て い る ! ! !
多くを失ったまだ動ける鎧たちは戸惑いを隠せない。なんだ、と走る動揺とその空白を許さぬと――また雷撃が走った。
「何人も嵐から逃れられると思うな。」
カーネイジ・リターンズ
鏖 殺 、 継 続 !!
青空に向かって吹き荒れる雷は――友に成功をつたえたかったのやもしれぬ。その稲妻を蒼い瞳に映して、ロクは己の怒りが晴らされたことを知った。
ざらざらの、子供たちに聴かせるにはあまりにも「ひどい」声を聞かせてやるわけにはいかぬから。
ロクはジャックが連れて行った鎧たちの陣地にて、いまだ何とか生きている子供たちに接触を図っていた。
おそろしい声色を聞かせては、きっと子供たちはまた逃げてしまうだろうと思って――がれきの下で苦しそうに泣く小さな子供がいたのなら、【擁瑕】を己の手に刻んでやる。
親とともにおびえているだけ、まだいい。そういった子供にはこの手を取らず、懸命に戦火から間逆の場所を何度も指差して走らせてやった。
しかし、今見つけた子供の様に、必要のない暴力の前で立ち上がれない存在にはゆっくりとロクが手をかざしてやる。
ずるりと黒いロクの影が――意志を持ったようにして、子供に絡みつくのならそのままとぷりと飲み込んでしまった。
食べたわけではない。
口の中に広がるのはただ、唾液だけだ。
完全に影の中に「収納」ができたのなら、またロクは軽やかに瓦礫を飛び越えて駆ける。
「だいじょうぶ、――だいじょうぶ……」
念ずるように、暗示をかけるように。
「全部、全部、おれが、助けるから――――。」
それは、いったい誰のための「まじない」であろうか。
ロクが助けるべき幼い命はたくさんある。獣は駆けた。崩壊する「街」の悲鳴を聞きながら精一杯、張りつめた顔で。
――きっと、すべてを救わんと挑む姿はまさしく「森番」らしくあったであろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ヨシュカ・グナイゼナウ
◎
ひとはいつか死んでしまうけれど、これは正しい死ではない
皆をヒーローみたいに救出出来るほどわたしの手はまだ大きくないから
それでも子供達に向く槍の刃先が少しでも減る様に
子供達を狙うというなら、標的をこちらに移してもらおう
開闢と共に【覚悟】を携えて
見た目はまだまだ子供だから、それを存分に利用して
あれらのターゲットとしては合格なのではないだろうか
鳥が態と負傷した様に見せかける行動…擬傷といったかな
あの様にどこかを負傷している子供に【変装】して【存在感】を示し鎧共を【おびき寄せ】
彼らも狩りやすい方、弱いものから狩りに来るだろう
逃げて逃げて人々から引き離せたら、悪い顔で笑って
反撃の符丁を
ティオレンシア・シーディア
◎△
…実際のとこ。テロとしては十二分にアリな手筋なのよねぇ。
なんせ、いくらでも補充できるうえに猟兵が介入しなきゃ確実に目的を果たす使い減りしない手駒だもの。使わない理由はないわぁ。
…させてやる義理なんてありゃしないけど。
アタシ、嫌いなのよ。子供が泣くの。
○ダッシュで走りこみつつ○クイックドロウからの●封殺で〇武器落とし。
被害者を背にして○鎧無視攻撃の封殺を○一斉発射。余計な事されたらたまんないもの、立て直す時間を与えず○先制攻撃の○乱れ射ちで一気に潰すわぁ。
もう大丈夫よぉ。遅れてごめんなさいねぇ?
一緒に行きましょ?
あたしとオブシディアンの弾(手)の届く範囲くらいは、どうにかしてあげるわぁ。
コノハ・ライゼ
◎
ナルホド理には適ってる
ケド、オレの耳に入ったのが運の尽きだったネ
スラム街や子供の溜まり場等
手助けしてくれる大人の少ない場所へ向かうヨ
着くまでに「柘榴」で肌裂き【紅牙】発動
気配や敵痕跡の『追跡』、『第六感』で襲撃突き止め
『オーラ防御』展開しながら子供を抱えるよう飛びずさり『かばい』物陰へ押し込む
生きてる?じゃあ這ってでもココから離れな
体が動く怪我なら『激痛耐性』で見ぬふり
防御と見せかけ隙を『見切り』懐へ飛び込み『カウンター』
錐状にした柘榴構え敵前へ飛び込み鎧の隙間を狙い刺しこんで
『2回攻撃』でその『傷口をえぐり』『生命力吸収』
その通り、子供は未来だ
それを脅かす代償は、その命じゃあ足りねぇヨ
六六六・たかし
【アドリブ歓迎】
安心しろ子供たちよ、この俺が来た。
そうたかしがな!(高いところから高らかに宣言する)
未来あるか弱き子供だけを狙うとはな
騎士の風上の置けぬ外道共め、塵芥になるがいい…!
【WIZ】
高いところに登ったのは目立ちたいだけではなく
俺の[視力]を有効活用するためだ。
俺が見える限りそこは俺の射程範囲内だからな。
まなざしフォームへと変身!
そしてそのままUC『六六六悪魔の砲撃(デビルたかしブラスト)』発動!
見えている騎士共全てにビームを撃つ!
逃げても無駄だ、俺の[誘導弾]の前ではな。
命乞いは俺には通用しない、俺はヒーローじゃなく悪魔の英雄(ダークヒーロー)だからな。
●
ひとは、いつか死ぬものだ。
しかしそれはいつか訪れるもので、誰かが齎すものは正しい死ではない。
――ヨシュカ・グナイゼナウ(一つ星・f10678)は己の手のひらを見る。聖痕のような傷が刻まれる手のひらは成長しない。
彼がどれだけ世界を旅しても、体を疲れさせることはないのにパーツを変えない限りは大きくなってはくれない。
それ以上に。
「子供達に向く槍の刃先が少しでも減る様に。」
祈るだけではいられない少年人形は走り出す。ヒーローみたいになってみたい、格好いい生き物になって、彼だって夢見る少年故に英雄になってみたかった。
だけれど、現実はもっともっと過酷で夢見るだけでは届かないことを知っている。手間を挟まねば大きくなれない体はこういう時に不便だと歩幅を広げながら走った。
青空が広すぎて、空気が冷たくて――いまだけは、それが少しだけ切なくて人形に唇を噛ませたことであろう。
「実際のとこ。テロとしては十二分にアリな手筋よねぇ。」
女は、静かにささやく。
誰にも今のティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の顔を見せるわけにはいかなかった。
きっと、そこらの鉄よりも冷たい顔をしている。分析をしているといっていい。
ティオレンシアは人間らしい手段で――手に握る拳銃で戦う猟兵だ。だからこそ、人間らしい観点で考える。
子供を殺すだけの鎧なんて言うのは、補充できる上に猟兵たちが介入しなければ確実に目的を果たすことができる存在だ。
その体に痛みを感じても、忠誠のままに盲目的に動き回る重さというものをティオレンシアも想像させられる。止まらぬ軍隊は瞬く間にこの小さな市街ひとつを簡単に絶望に叩き落とせるはずである。
エリア・ブルックリンにて、いたずらに書かれたヴィランの落書きを背に――好機を見計らっていた。
「――そうさせてやる義理なんてありゃしないけど。」
舌打ち交じりに細い目を開けば、ぎらりと戦意に燃える色があったことであろう。
拳銃を構えて、道に出ればほぼ同時に左右に銃口を向けるようにした。今のところ鎧の音はない。ならば、探しに行こうと、硝煙のにおいを絶やさぬ笑みは凶悪であったやもしれぬ。
――アタシ、嫌いなのよ。子供が泣くの。
「ナルホド理には適ってる。ケド、オレの耳に入ったのが運の尽きだったネ。」
コノハ・ライゼ(空々・f03130)は、いつもの愛想も余裕も捨てた「あのひと」の顔で彼らしいことを言う。
獣の様に唸りはせずとも、怒りは明らかであろう。張りつめた空気とともに己の腕を鋭い刃で裂いてやった。
あふれだす赤に嫌悪感はない。どこか懐かしい暖かさすら覚える色に――魔道を走らせる。
【紅牙】。
妖狐である彼の血を吸った「柘榴」の名を持つ牙がぎらりと赤く染まる。文字通り彼の痛みとその形になった武器に冷たい蒼を向けてやったのなら、そのまま歩き出した。
ライゼが向かうところは「助けてくれる大人のいなさそうな」ところである。
ブルックリンの奥地――スラム街だ。
色々な肌の色が入り混じりながらも、子供たちは皆同じ表情で壁にもたれ、ごみ袋で姿を隠しうなだれているように見えた。
こういう、「暗すぎる」ところは光では立ち入れない。だから、ライゼはあえてこの場所を選んだのである。
その場所に――先に到着していたのは、黒ずくめの男だ。
「安心しろ子供たちよ、この俺が来た――!! 」
まるで、カミサマみたいに。
ライゼはあきれることなく、彼を見上げる。子供たちの視線はあきらめきってはいるけれど、死ぬ間際のコメディは好きらしい。へらへらと口元を笑ませてその彼を歓迎しているようだった。
子供たちが壁にしている地下鉄ゲートとは道を挟むようにして向き合う背のそこそこ高いビルの屋上から、目立つようにあえて彼は叫んだのだ。
「 そ う ! ! た か し が な ! ! ! ! ! ! 」
びし、と己の胸を親指で刺してやる。六六六・たかし(悪魔の数字・f04492)は高らかに己を宣言してやった。
乾いた拍手に力はなくとも、その笑みに冷ややかさがあったところで今のたかしには何の痛みもない。むしろ、鼓舞されたような気持になって腕を組んで笑ってやった。
瞳だけが笑みを作って、高い背丈は冷静に視線を動かしている。――わざわざ目立つために大げさな真似をしてやったのだ、誘われてもらわねば困るところでもあった。
「来たな。」
ぞろぞろと、鎧どもがたかしの叫びが青空にこだました途端走ってくる。
あれらに余計な足がついていなかったことが救いだろうか。まだ少し時間がかかるらしい移動時間を――計算してある。
深く被ったフードを引っ張り、ますます隠された口元が喜悦に笑んだだろう。何もかもがいま、この彼の筋書き通りなのだ!
「――変身!! 」
子供たちは、見たことがあるだろうか。
暖かい空間では見れなくとも、なんども羨ましく思いながらテレビでヒーローの活躍を見てきたに違いない。
販売用に展示されるテレビの画面を、雪の積もるニューヨークで眺めていれば当たり前のように素敵なコスチュームを着たヒーローがヴィランと戦い、平和を手にする。
だけれど、このスラムの子供たちにはヒーローなんていうのがいなかったのだ。
同じ世界に住んでいるのに、彼らの世界には救いがない。当たり前のように抜け落ちていて、同じ空の下にいるのにヒーローなんていうのも大したことなかったなと思わされてしまう。
――助けてほしいときに、助けてくれないじゃないか。
「悪いな――お前らを助けるぞ!!!この、たかしがッッッ!!!! 」
「オレも手ェ貸すヨ。どうしたらいい?」
目まぐるしく姿を変えたたかしの体は、今や蒼銀のボディに囲まれたフルアーマーの姿をしていた。
――六六六・たかし。 ま な ざ し フ ォ ー ム ! !
悪魔の刻印を核に抱く男の体は、無数の悪意に守られてその場に雄々しく顕現した。
なるほど、おびきよせたかと知ったライゼは地面からその姿を見上げる。
「む。ならば――そうだな! 何せ今の俺は、『俺が見える限り』はすべて射程範囲内だ! 」
「へえ、そりゃあ広すぎるネ。」
「そうだとも! だから、必ず取りこぼしも出る。」
雄々しい言い方の割には、真面目な物言いだ。
なるほど、と傲慢になり過ぎない彼をライゼが見る。かけた薄いレンズの眼鏡で、青空と白銀を映しながら考えた。
「じゃあ、ゼロにしようヨ。」
「もちろんだ。――殲滅といこうではないか!! 」
高らかに笑う悪魔の数字とその申し子があまりにも楽しそうだったものだから。
ライゼもまた、予想外の夢見る象徴の顕現を目の当たりにした子供たちには不敵に笑んだのだ。
「まだ、逃げれるでショ。――這ってでもココから離れな。」
さあ、走れ。
言わんばかりに、勢いよく腕を振りかぶったライゼは狭い路地からの槍に反応する!ぎいん、と金属同士が衝突しあって火花が散った。
「――行けッッッ!!!!」
怒声めいた声と共に子供たちを散らせる。わあっと走り出したそれらに魔の手が及ぶ前に消し飛ばしてやろうと、次はたかしが己の武器を起動させる!!
ライゼが振り下ろされた槍と刀でぶつかり合い、わき腹を貫く剣の痛みを無視してその中身を食らわんと剣を隙間に差し込む!あふれ出た血すら生命への燃料として、妖狐は鋭く笑った。
子供たちの足音が遠ざかるのを――たかしはモニター越しに座標位置とともに確認している。
まだ、まだ――もう少し離れてからではないと巻き込んでしまうから、ほんの、数秒でいい。
引き金を引くときの緊張は、たまらないものであっただろう。
「よく覚えておけよ 命乞いは俺には通用しない。」
逃げ往く子供たちよ、聞こえているか。
ダーク・ヒーロー
「俺はヒーローじゃなく悪魔の英雄だからな。」
この――悪しき心と正義を見ているか!!!
デビルタカシブラスト
【六六六悪魔の砲撃】は、炸裂する。
「わ――大きな花火。」
ヨシュカは、逃げてくるスラムの子供たちが己のボディとよく似た色をしていたのを瞳に入れてから音の正体を見上げる。
無数の閃光が瞬いて、少し遠くでは救済の一手が行われているらしい。
緩く瞬きをしたはちみつ色の瞳の前には、彼の「現実」である鎧たちが迫ってきていた。
ヨシュカは、己の体が「小さいまま」であるのをよくよくわかっている。
見た目はまだまだ子供のままなのだ。それを利用して、この鎧どもをひきつけられないかと思って走り回っていた。
瓦礫の中を猫の様に滑って行って、そう思えば突然割れた窓から飛び出してみたりして、色んな方法で敵をじらす。
まるで子供と鬼ごっこでもさせられているような鎧たちのことは胸中、面白かったのだけれど――ヒーローらしく笑いながら、余裕を忘れずにすばしっこく動き回った。
それから、頃合いとして今こうやって青空を見上げられるように地面に転がっているのだ。
子供が疲れて、草臥れたように見えるだろうか。
ぐったりとして、乳白色の髪の毛が黒いコンクリートによく映える。わざとらしく大きく早く息をしてやって、胸を上下させた。
鳥が、敵と遭遇した時によくやる。
雛や巣を外敵から避けさせるためにやる「擬傷」というのだ。捕食者は「狩りやすくて、弱りやすい」ほうから狙っていく。実際、ヨシュカのそばを走り抜けて逃げていく子供たちに裂く注意は散漫し始めていた。
一歩。
二歩。鎧の足がきしんで、槍がヨシュカを向く。
鋭くとがった先は、まるで点のようなものなのだなと――真正面からそれを見る形となった。額を穿とうとしているのだ。
鎧どもは、本当に殺すことに目がないらしい。だから、きっとヨシュカの表情の変化になんて気が付いていなかった。
「――doof!」
放たれるのは、【惑雨】であった。
どばりと十字架の亀裂から湧いた液体は、突如伸ばされた手によっていたずらっぽく鎧たちを浸してしまう。
水鉄砲よりもまがまがしい幻惑の呪いがかけられたのならば鎧どもはたちまち動きを止めてしまった。
そこを――貫く鉛弾がある。
彼女と、オブシディアンの弾が届く範囲は彼女が「どうとでもできる」範囲だ。
ティオレンシアがヨシュカの戦いを知ったのは、走ってきたスラムの子供たちのおかげである。
戦場をくまなく走っていた彼女に「助けて!! 」とすがり寄った小さな命を抱きしめて落ち着けてやりながら、その命を狙おうとする鎧に鉛を叩き込む。
「もう大丈夫よぉ。遅れてごめんなさいねぇ?――セーフハウスはすぐそこにあるわぁ、お姉さんの仲間たちがいるのぉ。」
ちょっと派手な服着てるけどねと笑って、背中を押してやる。曲がった先にヒーローたちが待ち構えていて、ティオレンシアの救援に応じて子供たちを運ぶ準備を済ませていた。
派手に動き回れない分ごくわずかな戦力ではあるが、こういう時に援護に回ってもらうのは質よりも数のほうがいい。
「さあ、行って!! 」
背中を強く押してからまたティオレンシアも走る。
助けて、と――聞こえたのならば助けてやらねばならぬ。このティオレンシアが「どうとでもできる」範囲でのミスを許すはずがないのだ。
そして、現在に至る。
「大丈夫?ケガしてなぁい?」
「ええ――問題なく!」
シールド
【封殺】。
すべてを沈黙させてやってから、鎧が二度と動かないことを足蹴に志ながら確認してティオレンシアが笑む。
同時に、ヨシュカも右手を大きく上げて立ち上がった。あまりにも素早いものだから、ふふと穏やかに空気が漏れる。
「あっちも、いいかんじみたいねぇ。」
花火と――ヨシュカが言ったのはたかしの砲撃だ。繰り返し青空を時折穿ちながら輝く銃撃のスケールに安心したようにするティオレンシアに、ヨシュカがきりりとした顔で言うた。
「まだ、走れます!次に行きましょう!」
「あらぁ――うん、いい表情。」
二人して、頼もしく笑ってから握った手どうしをひとつ確かにぶつけ合う。
まだ救うべき誰かはいるのだから、止まるわけにはいくまい。そうして二人は横並びになってまた歩き出した。
誰かの英雄になれる。ここは、そういう世界なのだ。――英雄を信じない、悲劇の誰かには相応の英雄がやってくる。
より多くの希望を救うために、足らぬ彼らはまた戦場へと繰り出すのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アナンシ・メイスフィールド
白波f05809君と
…この胸の奥から湧く嫌な澱は何なのだろうねえ
でも私よりも渋い顔をしていそうな青年の方が大変そうだけれども
大丈夫なのだよ。被害前に全て倒せばいいだけの事なのだからね
狙われる子を捉えれば『早業』で間に入り
剣にて敵を『吹き飛ばし』『かば』いながら子から敵を離そうと試みる
距離がある場合は【贄への誘い】にて生じた蜘蛛足を子と敵の間に割り込ませ敵を攻撃して行こう
怯える子供には柾君を指さしながら
ふふ、大丈夫なのだよ。ヒーローが来てくれたからねえ。安心し隠れていてくれ給えと笑みを
連携攻撃は『念動力』にて目標を逸らさんとしつつ『早業』にて回避を試みよう
上手く避けられれば良いのだけれどもね
白波・柾
アナンシ(f17900)と
子どもを狙うとは、なんと卑劣なことか!
子どもは未来の希望であり繁栄の象徴。暴虐者により失われるなどあってはならない!
さぁ、征くぞ!
狙われる子供たちに対して「オーラ防御」で「かば」いつつ
かれらが逃げおおせるよう敵に対して「殺気」を放ち「時間稼ぎ」を
騎士というが、諸君らに誇りはないのだな。承知した、俺もそのつもりで行かせてもらおう
アナンシ、子どもたちは任せよう
槍を投げてくるなら「槍投げ」技能の「戦闘知識」を駆使し
着弾点を「見切り」、「オーラ防御」で防ぎつつ刀で「なぎ払」って魔槍を落とそう
それから「範囲攻撃」「鎧無視攻撃」「鎧砕き」をのせた【剣刃の掃射】により敵を攻撃しよう
●
胸の奥底から、――まるで泥をかぶった何かがぽっかりと浮き出てくるような気がする。
胃液がせりあがっているというわけではないのに、体が緊張して不快感には正直に横隔膜が動いているのだと思うようにした。
アナンシ・メイスフィールド(記憶喪失のーーー・f17900)は己の不快感に頭の奥底を揺らされてから、隣で険しい顔をする美青年を見た。
アナンシは神でありながら、隣に立つ白波・柾(スターブレイカー・f05809)もまた大太刀のヤドリガミである。
「なんと――卑劣なことか!」
美しいかんばせを怒りで歪ませながら。
柾の白い歯どうしをがちりと噛み合わせて、彼の意思を固めるのは怒りだ。
柾というのは、大太刀である。誉ある英雄・白波の一族が大事に振るうて来たのが彼だという。祀る祠は神木に柾を使い、その名を継いで彼もまた「そうあり続ける」真面目な存在だ。
弱きを援け、強きを挫く。掲げた信念をけして曲げることのない正直さがたまに非常識ではあるけれど、それでも彼のギラリと光る西日色の瞳が戦意に燃えるのはまた、見目がいいだけによく映えた。
アナンシが今にもはじき出された銃弾の様に果敢に飛び込もうとする勢いのある柾の肩を、二度ほどやさしくとんとんと左で撫ぜてやる。人間にも通ずるから、この「うつわ」にいる彼にだって通ずるだろうと思った。夢中になっている手合いには「刺激」を与えたほうがよく反応することを、アナンシは知っている。
「まあまあ、――大丈夫なのだよ。被害前に全て倒せばいいだけの事なのだからね。」
「ならば征くぞ!アナンシ!!」
落ち着いてほしいのだけれど――柾の意思はまっすぐすぎてなかなか切れ味が落ちなさそうである。落としたいわけではないのだが、冷静に物事を見る点というのは大事なのだけれどそれはアナンシが補ってやることにした。
うんうんと頷いて流されるまま、彼は柾の後ろをついて走る。
柾は「一度思ったら、こう」という心をしていた。
事実――彼の心は正義で満ちている。彼こそ、人間と長くを生きてきてその始まりも終わりも見てきた存在だ。
子供というのは、家にとって希望である。
それが男であれば家を継ぎ、柾の時代では女は優秀な血筋のところへ行ってまたあらたな希望を身に宿していた。
繁栄は、勝利である。祀られる場所は隠れ里であったがゆえ、さほど人口は多くなかった。だけれど、生まれた子供たちはみんな柾のところに生まれた時にやってきて、出ていくときにも挨拶をしていくものだった。そして――いくさでも、病でも死んだのならばその骨だけで最後の挨拶をして消えていく。
しかしその子らがまた希望を撒いて作ったというのならば、柾が大事に大事にしてきた一族は確かに未来につながって「勝利」そおさめたことになるのだ。
だからこそ、この残虐非道ぶりは許せなかった。あらそいの時代ではないというのに、よく晴れた寒空の下――見慣れぬ異世界、異国の街であっても「子ども」を狙うものどもを柾は許せない。そして、本能の嫌悪としてアナンシだって許せなかった。
「アナンシ!!子供たちは任せるぞ!!」
切り込む。
己らが着た場所がどこであったか。柾にとってはそんなことはどうでもよかったのだけれど、アナンシは別だ。
前に進むことしか知らぬ大太刀を見送って、やれやれと足を止める。狙われる子供がいたのを視界に入れてから――ここがニューヨーク市街、エリア・ブルックリンであるこを思い出した。最近発展を初めて人口がだんだん増えてきた街である。まだまだ繁栄途中と言っていい町並みはビル街のあるマンハッタンよりも簡素だ。つまり、子供たちの身を隠す場所が限られてくる。
「おおっと――おさわりはやめておけよ。」
剣で鎧を押すようにして、子供と鎧の間にアナンシがインバネスコートをたなびかせて割り込んだのならば、鎧はどどうと地面に転がっていった。
一見仕込み杖に見える剣である。細かい装飾のあるそれが確かに鎧の内側に「刺さる」らしいことを知ったアナンシは、ひとまず地面にしりもちをついている子供に膝まづいた。
「立てるかい。――あちらに隠れておいで。」
子供には、的確に指示を出す。
大人が動揺しては、子供は従っていいのか悪いのかを判断できないからだ。扉の立て付けが壊れたビルの非常口を指さして、背中を押して子供を走らせる。その子供に襲い掛かるというのなら、そうはいかんぞと柾のオーラが舞った。
「ひっ」
子供が突然の悪意と防御に委縮する。透けて見える槍にどうして貫かれないのかが判断できないのだ。これはいかんなとアナンシも己の技を使うことにしたのなら行動は早い。
――かつん、と地面を鋭く杖で叩けば顕現するのは 【 贄 へ の 誘 い 】 ! !
青い瞳が長躯からゆらりと揺らいで、すべてを「視る」。
地面から湧き出した蜘蛛脚は突如現れて、まるで壁の様にその脚を大きく広げて――包むように鎧をからめとった!!
悲鳴すら許さぬ圧力で抱きつぶされる鎧にはいっそ哀れにも思うけれど、致し方あるまいと黒髪を額からかきあげる。
何が起こっているの変わらぬ子供の視界を遮るように、その頭を優しく撫ぜて――意識を引いた。
「ふふ、大丈夫なのだよ。御覧。」
つい、と手袋をはめた手がその視線を導く。
素直に従う子供の顔は、柾をとらえた。
必死に振るう刀の軌道は、――ここ、異国にはない「サムライ」の構えだ。事実、この国にもそれをオマージュしたものは多い。
だけれど、柾はずっと「そうしてきた」生粋のカタナそのものである。子供心をつかむどころか、今この一瞬でその動きは「夢」すら見せていた。
槍が投げられるのならばその軌道をよく見て刀で薙ぎ払う。威力を無くした槍が垂直に落ちて、振るわれる剣相手ならば得意といわんばかりに刃渡り同士を重ね合わせ、懐に潜り込んで腕を切り払った!止まらない脚はすり足で地面を這い、柾はその一瞬で己の胴体を狙う槍どもを躱す。
撓めた上半身が――ぎちりと力で満ちたのを知って、ゆったりとアナンシは笑んだのだ。
「ヒーローが来てくれたからねえ。安心し隠れていてくれ給え。」
「――――ぉおおおおおおおおおおおッッッ!!!!!!!!!!!!! 」
【 剣 刃 の 掃 射 】 に て 、 魂 が 吠 え る ! !
どどうと現れた質量は無数の鋼と刃!躊躇なく深々と鎧を砕き、その隙間を穿ち、切断し、痛みをよくよく刻んでやった!!
鎧たちは突如現れた千本の針よりも重い罰を前に微動だにもできまい。声すら上げられずに絶望は粉々になって消えていく。
「いやあ、お見事。お見事。」
ぱちぱちと拍手を送ったアナンシの音で、柾は沈黙を知る。
――この場の敵性は早々に屠れたらしい。なるほど、とあたりを見回して「子どもは無事か!」と声を張った。
「勿論だとも。」
肩をすくめて笑うアナンシの指さす方向に、検問のようにずんずんと柾が向かって――顔だけ扉に差し込んで、すぐ帰ってきた。
「無事だったろう?」
「流石の誘導だった。救援を呼んで迎えに来させられるか。」
「勿論。ヒーローにお願いをすることにしよう。我々はまだ、やるべきことがたくさんある。そうだろう?」
――無論。
頼もしく笑んだ柾が、己の剣が届く範囲よりももっと広く助けたがるのは分かっている。
また勇ましく歩いていく背中を負いながら、アナンシが近くの乗り捨てられて横転した車から発煙筒を取り出して、ぽいと子供のいる場所へ投げてやった。
「このままうまくいくといいのだけどね。」
「征くとも。そうするのが、俺とお前の役目だろう。」
こういう時に、真面目な手合いが相棒になってこの戦場を共にできてよかったなと思うアナンシなのだ。
そうだね、と笑う顔は――どこか、勇気づけられていただろうか。ありとあらゆる絶望の可能性に満ちたこの現場にて、まっすぐな柾は勝利しか信じていない。
だからこそ、アナンシもそれに従って「前だけを向いている」。
いまだ、死者は出ていない。どうかその数字が変わらぬことを祈るばかりで――二人はまた、走り出していた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
遠い、いつかなくしたものを思い出す
目の前にあるのは“あの時”と同じ光景だ
守られて生き延びた
その意味は今だってまだわからない
……だけど
今、自分がしたいことくらいはわかってる
自分の姿はできるだけ隠しておく
“どこから攻撃されているかわからない”ほうが浮き足立つだろ
視界内に納めた敵の“全て”を攻撃する
初撃は武器を弾くか、腕や脚を狙撃して制止
どちらが効果的かは敵を視た一瞬で状況判断
そのくらいできる程度には場数を踏んでる
なんにせよ一瞬だけ稼げればいい
――その一瞬で十分だ
隙を逃さずに追撃で殺しきる
立て直される前に殺せるのが最良だ
効率よく始末するよ
……やり口が悪党めいてる?
生憎、これが俺にできる精一杯なんだ
臥待・夏報
この国って規制が厳しいだろ?
そんな命令許しておいたら、画面がテディベアだらけになっちゃうよ。
……ま、軽口は止しておくか。
何故か極めて発見されづらい『夏報さん』は、デュランダル達を静かに追跡。
その『現場』に出くわすまでは息を潜めて――ああもう実際見るとほんと普通に腹立つな!
怒りに勇気もクソもないや、全力で庇えばいいんだろ?
ああもう子供一人に数人がかりかよ、そんなの連携って言わない――
痛い痛い嫌だ嫌だ――共有される五感に反吐を吐きながら、『夏報さん』がその背後からチェックメイト。
痛みも、苦しみも、泥人の無意味な憂鬱だ。
銃声がこの子の記憶も消してくれるはず。君の歳じゃあ、スプラッタ物にはまだ早いよ。
●
――遠くなってしまった日を思い出す。
少年だったころに、なくしてしまった。
少女だったころに、うしなってしまった。
銃弾が奪っていった、火炎が奪っていった。
世界が彼らから幸せを奪って、生きる苦しみを与えた。
存在を無くした、心を亡くした、中身を亡くした、痛みを亡くした――あるのは、そこにある「からだ」だけ。
こんな痛みを背負って、今日も生きて戦えと世界は言う。死刑よりも厳しいものだと、きっと青年と女性は思うのだろう。
世界がいつも通り、くるくる回っているのに――彼らの心は、そればかりでないというのに。
●
鳴宮・匡(凪の海・f01612)は、ニューヨーク市街に放り出されたときに真っ先、此処がマンハッタンであることを判断する。
雑多として整頓されているようでされきっていない街だ。発展を繰り返してプラスされたものが多く、マイナスが少ないといえる。走り出した匡の視線は冷静にこの街を照らし合わせていた。UDCアースに存在するものと地形などもさほど変わっていないとして、身軽に、しかし静かに走りを続ける。
冬の始まりとともに、匡の吐息を白くさせる温度があった。
状況が状況だけに張り詰めたような痛みを胸に覚える。感傷的なのではない、肺が冷やされていた。――子供たちが殺されるというのに、こんな時まで冷静な自分の頭が嫌になるとも思う。道路を蹴っていく足が力強かったのは、いら立ちもあったのだろうか。
――いいや、違う。
今、自分がしたいことがわかっている。ためらうことなく匡が目的のビルにたどり着いた。さほどこの街の中では階層がさほど高いものではなくて、カフェか一階に備えられていたらしい場所である。ビルのむかいに――「託児所」があった。
「十一月、七日。――平日。」
確認するように、己の直感と考察が正しいことを口にする。
「ニューヨーク市街、マンハッタン区。」
平日の、この騒がしい街にてこの絶望は巻き起こる。
オフィスに仕事に出てしまった親たちが「任せる」場所はいまだに愛されていたのだろう。匡がぱっと見上げただけでも目立つように装飾が窓から見えた。宣伝効果もあるらしいが、「見つける」にはぴったりだ。――匡にも、鎧にも。
大体まだ三歳くらいまでの子供を一人で家に置いておくような「家族」は、平穏を愛する時代という点で考察しても、まずない。つまり、平日の「誰もが働いている時間」の使用頻度は高いのだ。
エレベーターは使わない。ビルの非常階段を駆けあがっていく黒の体は「ありふれたもの」だ。服装だって目立つブランドをつけているわけではないし、どこでも買えそうで、どこにでもいそうな青年を匡は「なりきって」いる。だけれど、今だけは恐れ白砂青年の割には瞳が使命に満ちすぎていただろうか。
「この国って規制が厳しいだろ?」
匡が「援護する」場所にて。
臥待・夏報(終われない夏休み・f15753)はのんびりとした口調でありながら、「アメリカらしく」コメディアンの様に語るのだ。
「子どもを全部殺せって――おいおい、そんな命令許しておいたら、画面がテディベアだらけになっちゃうよ。そう思わない?」
匡は、一瞬思考が止まった。
――この場にいるということは、まぎれもなく「猟兵」か「オブリビオン」の二択である。しかし、見た限りで彼女からは敵性はうかがえない。攻撃的でない藍色の瞳はどこかこの状況に嫌気をさしているようであったし、「猟兵」であるというのは本能の直感が後押しした。
それにしても、この彼女には「なにもかもが足らない」ように見える。足音すらしない、気配すら薄い。――だから、余計に匡は混乱してしまったのかもしれない。「人間」を察知することに長けた彼が、この空間に立ち入ったときに「誰がいる」かわからなかったのだ。
「それは、アメリカらしいんじゃないのか。」
「嘘だろ!?やだよやだよ、夏砲さんもっとイケメン俳優とかドラマとか見たいよ。」
それもそのはずなのである。
当たり前のように戦場ではしゃぐこの夏報には、「なかみ」がない。むしろ――存在すら、「あやしい」。
何もかもが燃やされて、彼女すら「本当に彼女がどうか」なんて誰にも分らない。きっと、彼女すら己のことなんてわからないままにいつまでも「夏報さん」としてい生きていた。だから、「人間」に詳しい匡が己の知らない「にんげん」ゆえに気づけなかったのだ。
――迷いはしたが、背負っていたライフルを手早く組み立てる。
「わお、ガンナー?すごい。うまいんだね。」
セットする動きがあまりにも慣れすぎていて、夏報が笑った。
純粋な評価には会釈ひとつだけして作業を進める匡に、そろそろコメディの終わりを知る。ちっとも笑いやしない凪の海に――危うさを感じながら、夏報はゆったりと指を彼の「守る場所」に向けた。
「あっちに、もう一人『夏報さん』を入れてあるよ。」
匡が、素早く見上げる。
――よくわからない存在だけれど、敵性反応はないからと優先順位を下げていたが。
地面にしゃがみながらライフルのセットを終えた匡の前にいる『夏報さん』は、よくよく見れば呼吸が早くて浅い。
「何を、してんの。」
――今現在。
「はは、ええっとね。どう、説明しようか。」
フィロソフィア・イン・ヴェイン
【泥人の無意味な憂鬱】。
「夏報さん」という存在自体が、あやふやなものであるから――その存在を『複製』していたという。
託児所にいる「夏報さん」は、今や緊張感に包まれていた。
目の前には鎧たちが階段を駆け上ってきて、巣穴をつつく狩人のようにほとんどが達成感に満ちている。
対して、「夏報さん」は先ほど到着したばかりで――槍の矛先が隅に固められた子供と、おそらく担当者だろうか。髪の毛をゆるく結ったブルネットの頭が震えてるのを目の当たりにしてしまった。
「――ああ! もう、実際見ると、腹立つなッッ!!! 」
叫んでしまったのは、どちらの「夏報さん」だろうか。
子供一人に数人がかりで挑んでいるのもまた、運が悪いとしか言えない。すべての部屋に「夏報さん」が訪れたわけではないけど、一発目でこれだったのだ。だから、もう体は「決められたように」その間にねじ込まれることとなる。
「――う、ェ。」
「おい。」
嘔気がして、匡の目の前にいる「夏報さん」はうずくまった。
大丈夫、と頭を振る姿は顔色が悪い。だけれど必死に彼女自身の服をかきむしるように掴んで離さない指先があって、「五感を共有している」という痛みを匡が知った。
「まだ耐えられる?」
「もちろん、はは――夏報さんを、なんだと、ッおも、ってるのさ。」
ごろりと寝転がって、「夏報さん」の痛みを共有する体が跳ねる。胸だけではなくて、肩まで貫かれているらしい。
あまりに、ああ――痛い。ぎりりと奥歯を噛む美しい体躯をよそに、匡は粛々と彼女の代わりに「チェックメイト」を下そうとライフルを構えた。
「『人間』だよ。」
窓を、銃弾が割って。
泥人を一生懸命に殺そうとする無数の槍が、一つあっけなく落ちて――何事かと振り向いた鎧の隙間に銃弾が無数にねじ込まれる!
ティアーズ・レイン
【落滴の音】。
最初の一撃で遮蔽物であるガラスを割ったのなら、そのあとから間髪入れず放たれた鉛玉で武器を落とし、腕と足をそれぞれ打ち抜いてやる早打ちを――「可能」にする。
一瞬だけ「沈黙」を作ったのなら、もうそれで十分だったのだ。
追撃にはサブマシンガンのほうを用意して、砕けた窓ガラスから現れた空間に間髪入れず戦火を投げる。
どどどどど、と二つの空間に決定打が響いて――手早く、匡は念入りにすべてを「殺しつくした」。
「上手だね。」
はは、と笑った夏報が「かっこいいね。」と言って寝転がったままゆるく拍手をする。
――「夏報さん」らしきものは、あちらの空間から消えていた。幼子の記憶にも残らないような一瞬に、きっと誰もが安堵したに違いない。匡すら、驚いて気絶したらしい子供の顔に血がかかっていないことを見て内心、凪いだままであれた。
「悪い。」
「何で、あやまるのさ。」
「――――救えなかった。」
「夏報さん」だけは。
きっと、「スプラッタ物にはまだ早い」から子供の傘となったのだろう。
泥人が戦火から子供と担当者をかばって――血まみれのまま笑って「消えた」のを匡は、見逃していない。
「いいよ、いい。大丈夫。」
――そういう、存在だから。
凪いだ海と、「どこにもいて、どこにもいない」誰かの戦場はいまだ続く。守るべきもののために、少しでも誰かを助けるために彼らはまた、戦い続ける。
精いっぱいの、傷を背負ったままで――救われたのは、だれだったのだろうか。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
アルトリウス・セレスタイト
終わったものは静かに眠るべきだ
未来への嫉妬は見苦しいぞ
天楼で捕獲
対象は戦域のオブリビオン全て、及びその行う全行動
原理を編み「迷宮に囚われた」概念で縛る論理の牢獄に閉じ込める
出口は自身に設定
目標外である市民や猟兵には何一つ影響はない
故に避難も容易に終わるはず
仮に猟兵の手がなくとも自力で避難できるだろう
『超克』で“外”より汲み上げる魔力を『解放』で高めた出力で全力で注ぎ込み自壊の速度を極大化
捕らえた目標が何もできぬ間に消去する
捕獲後は魔力を溜めた体内に迷宮を構築・保持
万一脱出や破壊に至れば即座に再展開し捕獲
せめて俺一人超えてみせねば何もできんぞ
※アドリブ歓迎
パウル・ブラフマン
◎
コイツは一刻の猶予もないからね。
ハナっから飛ばしていくよ、Glanz―UC発動!
敵に補足され攻撃を受けそうな子供の救出を最優先に!
■【スライディング】し間に割り込み、車体を盾にして【かばう】
■即座に子供を抱き上げ【運転】テクを駆使しその場から緊急退避
状況に応じて対応してくよ☆
緊急救助の際、家族が傍に居たら
敵の狙いは子供だけだってコト、信じて待っていて欲しいって
【コミュ力】を駆使して伝え安心して貰いたいな。
子供達を後方に護りながら
Krakeを展開し【制圧射撃】で牽制。
接近してきた個体を、最寄りから順に狙撃。
ある程度敵数が集まったら
全砲門【一斉発射】で一網打尽にしちゃうもんね♪
※連携&同乗歓迎!
花剣・耀子
◎△
縁もゆかりもなくたって、こういう時に言う言葉は相場が決まっているというものよ。
――義によって助太刀するわ。
騎士と子どもの間に割って入りましょう。
此処から先へは行かせない。
――機械剣《クサナギ》、全機能制限解除。
彼我の境に鋼糸を張って封鎖するわ。
騎士の足が止まれば充分。
ウェポンエンジンのトリガーを引いて加速、止まった一瞬で斬りに行く。
最優先は子どもよりも此方に意識を向けさせること。
槍は敢えて撃たせましょう。
一体より二体、それ以上の方が良い。
致命傷になりそうな斬撃だけは咄嗟に弾いて、後は死ななければ上々。
……只貰うだけでは済ませないわよ。
傷みを逆しまに。
おまえたち、呪詛をたらふく喰らいなさい。
●
「ひゃア――コイツは一刻の猶予もないね。」
戦場は。
刻一刻と殲滅してゆくものの、向こうも盲目的に任務を全うしているらしい。
なるほど、こうもファナティックというものは恐ろしく無機物の中身まで侵食するらしいことをパウル・ブラフマン(Devilfish・f04694)は知る。
どるると唸る相棒に跨って戦場を一旦隻眼に収めて、「よし」と意気込んだ。
「ハナっから飛ばしていくよ、Glanz!! 」
ちんたらしてては、間に合わぬ!!
エンジンをふかして気分を上げる。この絶望にパウルがまず折れるわけにはいかない。
派手な音をさせるパウルの相棒――宇宙バイク――ならばまず敵の注意は引けよう。さて、どのように戦場を駆け巡ろうか。
「乗せてもらっても、いいかしら。」
考えることはあまり得意ではないけれど、戦いのビートだけはしっかりと頭に刻み込んだパウルが声の持ち主に振り返り、固まる。
女性が苦手というわけではない。免疫がないのだ。「え、ええ、えええっ、と」とどもった口に首をかしげて、それでもじいっとパウルを見る濡れ羽色がある。
花剣・耀子(Tempest・f12822)には、縁のゆかりもない土地である。
ここ、ヒーローズアース自体は賑やかな世界であった気がするのだ。善と悪が二つに分かれ、きっぱりと生きる道が異なるのにそれを許しあいながら削りあう世界である。
少なくとも耀子の生きる世界よりは「わかりやすい」構造であったというのに、今この場に渦巻く人の気持ちというのは混沌を極めていて、せっかくの絶景と評判のマンハッタンは荒れてしまっている。
「――義によって助太刀するわ。いいでしょう? 」
「も、もも、モチ!! どうぞ、後ろに乗ってね!! 」
しっかりしろ、とパウルが己のほほを叩いて、今一度気合を入れなおす。
ここは戦場で、遊びじゃない。己に言い聞かせるように脳で繰り返してハンドルを握り、耀子の重さを相棒に任せてアクセルを回した。
「一網打尽に、しちゃうもんね――♪ 」
砂煙が舞い上がって。
白銀のボディは蒼の光線をまとい、二つの猟兵を彗星として地を駆ける――!!!
「終わったものは静かに眠るべきだ。」
男は。
ぽつりとつぶやく言葉が、「ことわり」だと知っている。
彼こそが「ことわり」の象徴で「原理」そのものであるから、余計に実感があるのだろう。言葉には重みがあって、鎧たちの攻撃を「終わらせて」行く。
針金のようなものでできた美しい二重螺旋は彼の周りをくるくると回り、魔力の高まりを表していた。
彼が『解放』した魔力は、鎧らの認知を超えすぎていて恐ろしい。悲鳴の代わりに異常な力の源におののいて――子供たちへ振るった槍が消えていくのが、何事かわかっていないようだった。
アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)は、文字通りの超能力者である。
強すぎる力の源から生まれ、それを操る彼の体は「ひと」だ。彼には「親」なんてものがいないのに、物質の情報だけで器を手に入れてしまっている。
それが――成り立ちだけが欠けてしまったがゆえに。彼は神であらず人に納まっている。
己の後ろには瓦礫があって、そこに身を挟まれてうめく親と、それに抱かれている小さな女の子を見た。
心なんて言うものを、この黒は持ち合わせていない。だけれど、「なにをすればいいのか」は「学習」している。
「直ぐに逃がしてやる。待っていろ。」
『そう』と決めたら、アルトリウスは『そう』するのだ。
美しい二重螺旋の針金細工が激しくその身を回転させたのなら、「牢獄」を作り出す。
膨大な量を一気に構築させなくてはならないのと、彼と子供たちへの攻撃を打ち消すのに忙しい。操る因果で書き換えて「消去」を繰り返してもまた、また、と鎧たちはアルトリウスには触れず子供に向かおうとした。
「執念。いいや、ただの洗脳にも近いのか。」
冷静な評価とともに――逃げ惑う母親から子供を片腕で取り上げた鎧の肩から先を「失わせる」。
ぐらりと揺らいだその巨躯に、ふっと影が落ちた。アルトリウスもその正体を遠くから視界に入れている。それよりも早く、もう耳には音が届いていた。
「ヘイ、ヘイ! ナンセンス! ダッッサいンだよてめぇッッッ!! 」
激しく唸る巨体で、鎧をえぐる!!
到着したのはパウルと耀子だ! パウルとGlanzに押し出された巨体が少し足を浮かせた瞬間に後部シートから身を乗り出して耀子が己の剣に「噛ませる」!!
「――機械剣《クサナギ》、全機能制限解除。」
どるる、と唸ったのちにそれは――けたたましい咆哮をあげた!!
UDC『オロチ』を核とするチェーンソー、機械剣クサナギが吠える!!
リミットリリース
【《八雲》】の力によってそれが豆腐でも斬るかのように鎧を真っ二つにして見せた。ヒュウ、と口笛を吹いてにやりと笑うパウルが、宙に放られる子供に向かって相棒を走らせる。
車体が動く線上に耀子のチェーンソーが届き、彼らの派手さに呆気にとられた鎧たちを次々と通り過ぎざまに切り裂いてゆくのだ!!
パウルが子供に手を伸ばそうとして、身を乗り出す。
「くッそ――。」
触手が、あるのに。
それでからめとっては、子供が怖がると思ったから。
「届いたァッッッッ!!!!! 」
彼の左腕に、子供の重さがある。
抱き寄せて、右手だけで派手にドリフトを効かせるパウルのバランスが崩れそうならばそこは耀子が左側のハンドルに上半身を伸ばして触れて、重心を戻す!!
「ッは――マジ、ヤバかった☆サンキュー、耀子ちゃん! 」
「いいえ。それより、母親に早く返してあげましょう。それに」
荒く息を吐きながらひとまず、己の腕の中にて何が起こったのかわからないらしい子供を見る。
赤ん坊というにはちょっと大きい。それでもまだ言葉もあやふやでおぼつかない顔つきがいとおしくて、パウルは照れくさく笑ってから耀子の言葉にはっとする。
急いで――母親に返すのはもっともだったけどアルトリウスに集まる異常な魔術の流れが「ヤバさ」をつたえてくる。
びりりとした空気の緊張感に、いつまでも子供と母親を置いておくわけにはいくまい。
「走れる?」
母親に子を返して、尋ねてみる。耀子が端的に聴いたのならばブルネットをゆらして母親は何度もうなずいた。
恐れだけでセーフハウスまで走らせては、少し心許ない。猟兵がヒーローたちに声をかけて用意させた場所までまだ数ブロック離れている。
パウルと耀子で運んでやってもいいが――まだまだ救う命はこの場に大勢いるはずなのだ。「隠れて」しまっているだけで。
「大丈夫だよ。」
震える肩を、パウルが手を添えてやった。
「オレ、えーと。顔、怖いかもしんないけど。ほら!目かたっぽ見えないし?でも、安心してよ!オレ達、超超、超強いからさ!」
「――そうね。超、超超、強い。」
耀子がそのノリに乗ったものだから、ちょっと目が点になる。
だけれど、こういうときほど「面白いこと」を言ってやるほうが『よく効く』のを知っていたのが耀子なのだ。
「任せて。此処から先へは行かせない。あなた達にも、触れさせはしないから。」
話は終わり、と耀子が背を向けたのなら――パウルもまた、名残惜しそうに背を向ける。
母親がそれに「意志」を見たのならば「頑張って、ヒーロー!! 」と叫んでいった。
「ヒーローなんてガラじゃないんだけどね。外見的に。」
「そうでしょうね。私もそうよ。だけど、」
視線の先で、魔法が『解放』される。
魔術回路がマンハッタンを覆って――――ひとつの迷路を作り上げさせていた。
「――悪くは、ないわ。」
呟いた耀子の顔が、緩く笑ったような気がして。
パウルもまた、にかりと笑っていたのだろう。
「未来への嫉妬は見苦しいぞ――。」
【天楼】は構築される!!
どうっと湧き出た無数の魔術回路が地面を走り、ことわりに基づき「鎧」だけを閉じ込めた。
仲間の足元も、親と子の足元も通って行って彼らのことわりを「許した」牢獄はまさに収容所と言える。
殺すためだけの空間なのではない。「消去」させるための場所なのだ。自壊させるための術式が起動して鎧たちは己らの指先が消えていくのを理解した。
――何をしたのだ、とアルトリウスに飛びかかる無数があって。
「暴れていいぞ。すべて、表には出さない。」
「――へえ、よっし。」
伝わる仲間の声色に、パウルが目を見開く。
【Krake】は展開された。パウルのまがまがしい触手が広がって、彼の顔色に羞恥がない。
――――なぜならば、耀子はとうに鎧たちを切り刻んでいたのだ。パウルのことを「視ていない」。
黒曜色の女は必死に長髪を振り乱し、ウェポンエンジンに備わる引き金を引く。ブーストめいた火炎が立ち上り、耀子の体に合わせないほどの速度で鎧を切り裂いた!!
局地的に速度を上げて、止まり。また速度を上げる!!!
断続的に吠える蛇のいななきに鎧たちは為すすべなく両断されていくのだ!意識があるうちに味方を回復させようにもその思考すら「破壊」させられていく!
「無駄だ。もう、遅すぎる。」
アルトリウスが呟いて。それから――一斉放射であった。
輝きとともに固定砲台から打ち出される熱弾が鎧を消し飛ばし、燃やし、灰にする。
躯の海にすら返すかと「原理」が破壊させて、存在すら消滅させた。
「――消滅確認。ご苦労さまでした。」
そして、耀子が停止したころに。
その場にはよく晴れた青空が広がっているだけで、ぼろぼろになった街は訪れた時と変わらぬ痛みしか抱えていない。
ふう、と長く息を吐いて――アルトリウスが魔力を止めたのなら、街の復元に出た。
「オレたちも、子供を探そう。まだいるかも!」
「そうね。」
ヒーロー
猟兵たちは、交錯する。お互いの背中に視線だけを向けて、すべてを任せあっていた。
――それぞれの目指す未来が、すべて同じであることをしっていたから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
サン・ダイヤモンド
【森】◎
「うん、絶対助けようね!」
ブラッドと合体
獣の視力・聞き耳・野生の勘を駆使し救い求む所へ急行
飛行の衝撃はオーラ防御
急降下と同時に敵へ『破魔爪』キック!とぅ!
「もう大丈夫だよ」と子供を背に庇い
怯える顔に護る決意を固める
「サン・ダイヤモンド16歳!君達の相手は僕だ!」
僕は子供に見えるだろうか、見えていてほしい
注意を引き付けるんだ
接近戦は得意じゃないけど僕は独りじゃないから、大丈夫!
敵の攻撃はオーラ防御
+「力を貸して!」『大樹の精』を杖化し受け止め『破魔爪』で蹴り飛ばす
躱せる攻撃は躱し【UC:敵の武具や敵直近の空気を高熱の光に変え爆破】
【不滅の刃】を使う敵は優先爆破
戦後、子供を抱いて空飛び避難
ブラッド・ブラック
【森】◎
地を這う様に生きてきた
自分が家族を持つ等考えた事も無かったが
今なら未来を失う恐怖も、痛みも解る
「敵は紛れもない悪だ。一切の慈悲は無用」
【比翼の鳥】
自身の体をサンを護る鎧と翼とし共に超高速飛行、急行する
サンは俺の光、俺の未来
掛け替えのない者、代わり等存在しない
この子等の親もきっと同じ気持ちだろう
護るのだ サンと、未来の子供達を――!
背に庇った子へ「目を閉じていろ」
醜い俺を覚えておく必要は無い
護る意志で戦闘力増強
自在に変形する翼に『簒奪の牙』を形成し
敵が何処から来ようとも翼で「大食い」噛み砕く
子には指一本触れさせない
敵を殲滅後、子を抱いたサンと空を飛び避難
子が落ちそうなら鎧に包んでしまおう
エドガー・ブライトマン
非道い悪事だ
子は宝というだろう。親から愛を受け、国の未来を担う宝そのものさ
“キング”を名乗るには程遠いね
子供たち、もう大丈夫さ!私たちが来たんだ!
私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ!
兵士たちの気を子供たちから逸らすため、派手に現れる
私が現れた時点で狙われている子がいれば、まずそこから
オスカーも空に放ち、騎士の妨害を任せる
視界をチョロチョロ飛んでみたり、鎧をつついたりさ
大丈夫、キミも危なそうだったらちゃんと助けてあげる
子供のことは積極的に《かばう》
《激痛耐性》があるし、多少の傷は気にしない
子供を攻撃に巻き込まないタイミングを狙い、“Jの勇躍”
キミたち、騎士道精神を学び直すところから始めたまえ
アレクシス・ミラ
アドリブ、連携◎
騎士とは、人々を護る剣であり盾であるというのに
これ以上…命を…未来を奪わせはしない…!
【天誓の暁星】を、力に変える
ーー研ぎ澄ませ
声を、気配を追跡するように辿れ
見つけたら、脚鎧に雷の魔力を充填してダッシュ
敵と子供達の間にかばうように割って入り
先制攻撃のシールドバッシュで押し返す
助けに来たよ。…よく頑張ったね
もう少し、頑張れるかな
僕達が必ず…守り抜くよ
鼓舞するように声をかけよう
子供の守護を最優先に戦うよ
通常の攻撃には盾で防ぎ
重たい一撃にはオーラを纏わせた盾で殴りつけるように攻撃を逸らそう
一瞬でも動きを止められるように
剣に纏わせた雷の魔力を迸らせるように鎧無視の範囲攻撃、麻痺を狙おう
●
地を這うように、生きてきた。
――ブラッド・ブラック(VULTURE・f01805)は、かの銀河帝国にて過酷な生を強いられてきた存在である。
苦汁をすすり、まともな水など口にもできず、己がいかに劣等でみじめな生き物であったかを刻まれて涙も流す暇などなく、幸せなどとは程遠い生活を送ってきたのだ。
だからきっと、若いころのブラッドならこの光景を見ても「この程度」と切り捨てていたのかもしれない。
しかし、今の彼は隣にいとしい光を手にしている。――今なら、彼は「奪われる」恐怖を、痛みもよくよく想像できたし理解もできたのだ。
「敵は紛れもない悪だ。一切の慈悲は無用」
うなる「片翼」を見て。
「うん、絶対助けようね!」
その嫌悪を塗り替えるように――明るく笑ったのはサン・ダイヤモンド(甘い夢・f01974)だ。
片翼同士が寄り添ったのならば、その背中には「飛べる」翼を与えられる。ブラッドの姿が頷きとともにどろりと溶けて、いとしい人を抱き込むようにして体に巻き付いていた。
一匹の、大きな鳥が出来上がる。どろどろと常に流動体のブラッドの体が流れ続け、地面には一滴たりとも溢さない。
「あっちに行ってみよう、ブラッド!人が少ないところのほうがいいと思う!」
「そうだな――手が足りないやもしれん。」
【比翼の鳥】。
太陽すら覆いつくすほどの黒が大きく羽を広げさせて、漆黒の鎧を纏うサンを飛翔させる。
サンを守る鎧であり、サンに力を与える矛であり、サンに空を与える存在となったブラッドに、信頼などでは語りつくせない心の温かみを知るのだ。
だから、サンは笑う。ここの世界のヒーローというのは、いつも笑っているのが普通だとポスターやフィギュアなんかが象徴していたせいかもしれない。
でも、きっとワクワクしていたのだ。――二人で切り開く未来に!!
青空に、黒の鳥が飛ぶ。
「えええい!!」
気合をこめた一撃とともに、鋭く剣で突いてやったのならば、真っ黒なボディをぼろぼろに崩壊させる。
エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)の表情は、すっかり抵抗で満ちていたし、使命感があったにちがいなかった。
空を舞う小さな燕が、まだ若き王子様の戦局を救わんと鎧の顔面を足の爪で掻く。鎧がうめいたのか、それとも中身なんてものがちゃんと機能したのかはともかく――「未成年」であればエドガーももちろん、対象内であった。
彼を襲う無数の悪意に、最初はぞくりとさせられたものであろう。
「子供たち、もう大丈夫さ!私たちが来たんだ!私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ!」
そう、注意を引いた時に感じた――中身のない悪意というのは、これほどまでに純粋なのだ。
ひとつ宣言してやれば無数がエドガーを襲い、「殺すもの」と認識して彼へと槍を振るう。
隆起する地面を剣でかわし、マントを汚しながらエドガーは闘牛士のように突っ込んでくる悪意の鎧をかわしていた。
大したことはない。【Jの勇躍】のためにマントを取り外し、エドガーが護るべきである子供たちの方向に投げて、彼らを隠してやる。
エドガーが交戦するのは、ニューヨーク市街、ブルックリン。
マンハッタンほど発展していないとはいえど、そこそこに人の多い二番手である。事実――スラム街の子供たちは多く取り残されていた。
エドガーにとって、人種も籍も貧困も関係はない。この王子様たる彼が訪れる世界で「強きに苦しむ」のならば助けるに値する存在なのだ。
だから、エドガーは内心この数にだけ困らされていた。
――守るものも、倒すべきものも多すぎる。
子供たちをかばいながら、目に入るものをすべて救わんと呪われし王子様はその記憶を代償に立ち振る舞う。
誰も己のことをおぼえていなくったって構わないくらいに、今は必死だった。――そういう存在があったことを、勇気にしてほしくてただただエドガーも傷だらけになって剣を振るう。
レイピアの切っ先に己の血液が足れ初めて、顔面の半分を真っ赤にしながらも王子様は止まらない。
防ぎきれなかった圧力でレイピアごと己の頭を叩かれても、ぐらりと揺れる脳を感じたって、折れたりしないのだ。
「助ける、よ。」
同じ力で押し返すようにして、下半身で踏ん張る。
動きのとまった未熟な体に、さあと向けられる槍を感じて――均衡には力を緩め、素早く右に転がり脱出!!
そして、鋭くカウンターを遠心力とともに逆手に持ったレイピアから放つ!どう、と衝撃を与えてたった一点、されどそこから与えられる勢いに鎧は砕け散った。
「――キミたち、騎士道精神を学び直すところから始めたまえッッッッ!!」
吠えている。
まだ――青い王子様が、勇ましく。けれど、その道に希望があることを懸命に主張する。
アレクシス・ミラ(夜明けの赤星・f14882)は、騎士である。
目の前の王子さながらの美しい男ではあるが、たくましい体でその戦場へと駆け行った。「助けたい」と思ったのは、騎士であることもあった矢も知れぬ。だけれど、――明らかにきっと、体中が怒りと意志に満ちていた。
エドガーを襲う鎧の腕を弾き飛ばす切っ先に、まったく迷いはない。低く重心を落とした一歩から繰り出された斬撃が戦局を大きく変えた!!
「これ以上……命を――未来を奪わせはしない…!」
死亡者数、いまだゼロ。
しかし、民たちの心まではわからないのだ。
目の前で死の恐怖にさらされて、壊れていない人はいないだろうか。アレクシスは視野が広く、扱える武術も多いが痛みというものをよくよく知っている。
戦うために生きて、護るために在る命にはもう、生き方として盾と剣が備わっていたのだ。
「助けに来たよ。――よく、頑張ったね。」
雷の魔術をまといながら、電磁誘導からの高速移動を可能とする。地面に走るいかづちの速さとほぼ同じタイミングで、血まみれになったエドガーのもとへと背中合わせで励ますために走ってきたのだ。
急な蒼い騎士の来訪に、「ほうら、ようやく、本物が来たぞ!」と笑い飛ばしてみるエドガーがいる。
「もちろんだとも! だって、僕は王子様だからね! 」
王子様が、民の前で夢をのがすものかと笑った。
――その少年こそ、アレクシスが救ってやらねばならぬ。背丈と質の違う金髪と青空の瞳が交わらないが、お互いの背に頼もしさを感じたことであろう。
「もう少し、頑張れるかな。」
「任せてくれ! この程度、なんてことはないよ! 」
「守り抜こう。」
――研 ぎ 澄 ま せ 。 絶望を前にして、くじけない。
【天誓の暁星】を発動するには十分すぎるほど、「守りたい」と思える意志を見たのだ。
彼の青いマントにくるまってこちらの様子をみる子供たちは、貧しそうな体つきをしている。彼らを守る「親」というものは存在しない。
――戸籍がないから、死んだところで死者としても数えられないような存在だって。
「僕たちが、必ず。」
この二人にとっても、どの猟兵たちにとっても「救出対象」だ。
「ブラッド!やっぱりここだ!!」
空に――雷の一撃があったのだ。
明らかに仲間の「合図」であるような気がしたのは、サンである。ブラッドは確かに雷鳴が地上から空へ向かって放たれたものだからそれを確信した。
助けてほしいのではないかと――サンが確信して、ブラッドが羽を大きくはためかせてやる。
真っ黒な怪物は、いとしい光を守りながら、空を与えて思うのである。
子供というのは、光なのだ。光はどこまでも遠くを照らし、夜空に浮かぶ星の光だって、実は何億年も前に届いた光を視ているのだという。
それと同じで、遠く遠くを照らして可能性を見せてくれるのが、「こども」なのだ。
無力で幼い雛を育てるのは、手間がかかる。だけれど、それをやめるどころかもっともっといい場所を与えてやろうと毎日励むのは「希望」に魅せられているからだ。
――誰よりも弱く。しかし、何よりも強い光を放つ存在を。
喪ったときなんて考えられないほどに強すぎる存在なのである。ブラッドが思うように、どの親だって願っているかもしれない。
たとえ、それが「生んで不要」だったとしても――どの子供も「そう」思われるべきなのだ。
大きく青空に黒い鳥が羽を広げ、急降下する。
護らねばなるまい!!「親」の気持ちを痛いほど理解したこの黒の怪物こそ、それを果たさねばならんのだ!!
「いっくよ――――ッッッ!!!!」
青い咆哮が聞こえて、エドガーが顔を上げれば。
鋭いかぎづめが彼の目の前にいた鎧の首をさらう。ばきりとへし折れた一発を視て、ようやく救援を知った。
「もう大丈夫だよ! さぁ――サン・ダイヤモンド16歳!君達の相手は僕だ!」
きりりと短く太い眉を怒らせて。
黒から顔をわずかにのぞかせて、サンが叫ぶ。この場にまず殲滅すべき対象であるエドガーに集中していた脅威は、サンに注意を分散させた!
視線をやった瞬間に「そこだ」とアレクシスが薙ぐ!鎧の隙間に剣をねじ込んで、手首で捻り、持ち上げて――地面に叩きつけて赤を咲かせた。
実際、発破をかけてやったサンは接近戦を得意としない。今はブラッドの力とともに在るから、挑むことに抵抗はなくともこれからの戦果は未知数である。
――助けに来た味方が、接近戦を得意としていてよかった。
【Sun Gifts】。杖に化ける精霊が――サンへの忠義を果たす。純粋に救済を求むサンの願いを聞き届けてそれらは大気に「協力」を促すのだ。
「目を閉じていろ。――眩しいぞ。」
低空飛行を続けるサンのことを狙う槍を黒がさらい、食らう。翼はブラッドそのものなのだ。ぐしゃりと牙の様に羽が逆立って大きく食らいつく。
めきめきと鎧を丸めて根こそぎ食らったのならば、次は子供たちのことを拾い始めていた。青いマントに包まれた存在たちは何が起きたのかはわからないけれど、抵抗もない。
運びやすい準備が整っていて助かると――黒が思ったときには、優しくささやいていたのである。
爆炎。
どう、どう、どうと三度ほど――大きく目立つ音がしたのならば、鎧どもはすべて霧散したのだ。
雷が走り、救済の誓いがあり、爆炎に狭まれ、最後の一体、その胸にエドガーが深々とレイピアを突き刺す。
「言ったろ。もう、大丈夫だって。」
じくじくと痛む左腕の感覚を最後に緊張が途切れてくずおれる彼を、アレクシスが受け止める。
「帰還しよう。頼めるかな。」
「もちろんだよ!さあ、早く捕まって!」
絶望に、抗い続ける未来がある。
それはきっと、姿かたちが異なったとて――身分が違っていても、美しいものだったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
レイニィ・レッド
坊ちゃん/f14904
狭筵サン/f15055
…、なるほど
安心して任せられるというわけですね
『赤ずきんの裁ち鋏』を鳴らし
子どもと騎士モドキの間に身を捻じ込み
鋏の一撃を喰らわせ、引き離します
死にたくなきゃヒーローについていくといいですよ
以降はスピードと反応速度をフル活用し
子どもに向く攻撃を全て叩き落とし
騎士どもを鋏で刻みます
坊ちゃんが作った隙は逃さず
今まさに子どもに襲い掛かる奴を
優先して潰しましょ
自分へ向いた魔槍は躱します
正直速度で負ける気はしねぇですが
体勢的に躱しきれないものは
蝙蝠を利用させて貰いましょ
テメェらは正しくねェっつってんですよ
…意味分かります?
――問答する価値もねェってコトです
狭筵・桜人
矢来さん/f14904
赤ずきんさん/f17810
味方が敵を分断後、レギオン【一斉発射】。
弾幕を張り救助に回ります。
助けにきました、ヒーローです!
ウソですけど。
恐怖を希望で塗り潰すならこれくらい見栄を張らないと。
親なり大人がついていれば無理に子供を引き離したりはせず
恐慌状態であれば【催眠術】で恐怖心を失くすよう暗示をかけてみます。
子供にとってのヒーローは私たちではなくあなたですからね。
的が絞られてるだけ【かばう】対象を見極めやすい。
下手に動かず一ヶ所に留めます。
機械兵の全てを盾に。足りなければ肉壁一枚おまけです。
生まれて数年で死ぬなんて生き足りないでしょ。
げ。ひょっとして今ので支払金増えました?
矢来・夕立
赤ずきんさん/f17810 狭筵さん/f15055
狭筵さんがどことなくやる気ですけど何ででしょうね。黙ってますけど。
【紙技・禍喰鳥】。
一気に59羽、全て展開。その影から《忍び足》でデュランダルへ接近、《だまし討ち》を狙う。
オレの目的は赤ずきんさんが攻撃に移るための隙を作ることです。
そっ首カッ切れるんなら勿論そうしますけどね。
【禍喰鳥】への指示は【救助対象、および“他の二人”を《かばう》】。
基本的にオートパイロットです。
ヤバくなったら呼ぶように。気づきます。
…限界を越えてヤバくなりそうな人には先につけときますけど。
支払い1件忘れてますよ。
これで2件。このオレから踏み倒せると思わないことですね。
●
怪物は、人助けなどには向いていない。
――その怪物は雨の日に現れて、問うのである。
「問おう、アンタは正しいか?」
フレーズは、ダークヒーローに詳しいファンであればきっと、誰もが彼のことだと悟るのだ。
怪物の名前は、――レイニィ・レッド(Rainy red・f17810)。
鮮血のように真っ赤なレインコートを、彼は今日も身に包んで珍しく晴天の下に姿を現している。
そも、彼が雨の日を狙うのは彼自身が不明瞭になるからである。
雨は血を洗い、彼の痕跡を流し、都市伝説めいた象徴にしてくれるから、彼は見えざる法律と同じ抑止力に成り得た。
彼自身がそうあることを望んでいるかはともかくとして、――あきらかに悪であるのに、「正義のため」に動いている姿にフォロワーも多い。
だけれど、きっと誰もが「レイニィ・レッド」なるダークヒーローの素顔はわからないのだ。顔を知るのは「正しくなかった」誰かだけがきっと最後に赦されている。
ゆえに、仕事を始めるのは雑多なニューヨーク市街、その象徴たるマンハッタン区内にて行われる。
一番人口が多いゆえに混乱も極めているが、猟兵たちが大きく暴れているのもここだ。赤の怪物が姿を表せたところで、誰も彼に触れなくていい。
――それで、まあ。
この場所を提案したのは、実のところ本業であるはずの赤ずきんのほうではなくて。
「 助 け に き ま し た 、 ヒ ー ロ ー で す ! 」
高らかな宣言とともに、嘘である。
開幕早々、晴れやかな笑顔と凛々しい目つきで「それらしく」演じて見せたのは狭筵・桜人(不実の標・f15055)だ。
――バカのふりをするのは得意である。英雄と馬鹿は紙一重でもあるから、彼はそうしていた。
もとより、正攻法でなんて生きていけるのならば桜人は桜人なんてやめてしまっている。指先一つ、ぴんと伸ばして胸をはって宣言したのならば、それがすべての集中を集めた。
子供を探してさまよう鎧どもは、――未成年である桜人を標的とする。
街に満ちていたのは、絶望であったのだ。
マンハッタンと言えば旅行でも訪れる場所の多いところと聞いている。実際、にぎやかだった痕跡ならばそのあたりに転がって死んでいた。
もったいないな、と同時に。賑やかなところだったからこそ、余計に恐ろしい場所になってしまったのだろうとも悟る。
桜人の十八番と言えば、「ヘイトコントロール」だ。
それは時に手段を変える。怒りやすい相手には煽り、だましやすい相手にはだまして、話の聞かなさそうな――こういう鎧相手には、音波で操って見せるのが常だ。
「こういう場所を希望で塗りつぶすにはまず、見栄を張らないと。」
やるならば、とことんだ。
生半可なことをしては友人たちの足も引っ張ってしまいそうである。【エレクトロレギオン】を飛ばしながら鎧がけっして己にもその周りでおびえる人々にも届かぬようにだけ弾幕を張り続けていた。
「『――お仕事ですよ』。」
【紙技・禍喰鳥】。
何やらやる気で満ち溢れているらしい桜人の胸中などはよくわからぬ。赤い瞳をもった黒い影が、そこそこに高い――眼鏡がなくとも遠いところは見えるが――戦場一帯を視認できる範囲でおさまるような高さを探して、腰掛けていた。
ふわりと湧いた蝙蝠たちは美しい黒色の千代紙で几帳面に折られてできている。大体一匹当たり五センチ程度で、それが五拾九に集まり彼の周りに展開された。
大事なのは、仲間の「胸中」ではなくて「考え」を理解することだ。矢来・夕立(影・f14904)は呼吸をいつも通りのままに、任務を遂行する。
「子供だったらなんでもいいみたいです、都合がいいですね。」
赤ずきんの彼と、それから桃色の彼の耳元で空から降ってきた蝙蝠がささやく。
「ストライクゾーンが広いってことですか?気持ちわる。あ、これはアメリカンジョークじゃないです。」
「意味としちゃ間違ってねェ気がしますがね。」
「真面目だなぁ。」
それから、テストを兼ねて桜人が返事をすれば――蝙蝠どうしの五感を共有して、無線の役割を果たす。聞こえているらしい赤ずきんが返事をしてやれば、準備は整っていた。
「誰がひねくれクソ眼鏡か。」
「何も言ってませんが?」
・
「読心術です。」嘘である。
夕立が展開した蝙蝠たちの数が無数で、それが――青空と太陽の光を受けて地面に大きな影を落とす。
まるで、大きすぎる怪物めいた鴉が空に浮き出たようで全ての鎧が上空を見た。
「赤ずきんさん、素直だとこうやって損をしますよ。」
赤い瞳に声を駆けられたのは、鮮血色の怪物である。ああ、なるほどなと戦場を眺めてから――【赤ずきんの裁ち鋏】を鳴らして、大気中の水分をまとう。
雨のにおいがして、気分が高まる。慣れた戦場というのはちょうどいいし、雨らしく「曇ってくれた」ものだから。
「――、なるほど。安心して任せられるというわけですね。」
都市伝説の正体がバレては、面白くない。それこそ、「寒い」ではないか。
ただでさえ外が寒くなってきて、これ以上はご免である。夕立が蝙蝠たちから離れて、次のビルには走って飛び移っていた。
長い黒の手足が伸びて、影も作らぬうちにまた次の建物へと飛び移る。蝙蝠たちは徐々に大きな鴉の姿をとるのをやめて、それぞれに雨のごとく散っていった。
さて、ヒーロー宣言をしておいた桜人である。
どこに何がいるのかを探すのは簡単だった。彼だって「戦うのがそこまで得意でない」タイプの猟兵なのだ。
「みーつけた。」
――弱ったときの生き物が、大体どのあたりに隠れるのか探すのは簡単である。
負傷したときの血の匂いなんていうのは、この場にとってはありふれ過ぎていた。大事なのは、「地形」という点なのだ。
小動物「非常食」だってそうするように、恐慌状態に陥った誰かが隠れたがるのは常だ。では、どこに隠れるかというと必然的に「目立たない」ところになる。
ホラー映画というのは、よくできているなぁと桜人だって思ったに違いない。いつだって緊張感あふれるシーンに被害者たちはどこに隠れていた?
狭いバスルーム、クローゼットの中、ベッドの下、机の下、カーテンのむこう。どこも、狭くて暗い場所だ。
「こんにちは。ああ、大丈夫、怖がらないでください。」
何も持ってないですよ、と。
へらりと笑った桜人に向けられたのは、ガラスの破片である。
――ランチタイムの最中だったのだろうか。あらかたの「救出対象」は目立つ猟兵たちがさらっていった。
だから、あとは見つかっていない誰かだけであると思ってまず「直前までは多く人がいそうな場所」で「崩壊が進んでいる」から「身を隠せそうなところ」と想い、彼が立ち入ったのは中華レストランである。
人種のサラダボウルだとか言われるこの国で、様々な様相があることは珍しくない。ガラスの破片を握るのは、たった一人の黒人女性と――その後ろには、絶望で震えた多くの親子がいた。
「誰だい、あんた。」
「猟兵です。――今はヒーローですが。夕立さん、もっと蝙蝠送ってもらえませんか。」
耳元にとまった黒の使いに声をかけてやれば、たちまち千代紙たちがありとあらゆる隙間からの侵入を開始する。
それが奇妙で、「ひいい」と叫んだヒステリックなブロンドの女性に合わせて子供が泣き出した。
「ちょっと。ヘタクソですか?」
「オレは子供の世話に向いてないんです。そういうの得意でしょう。やってください。」
――やるべきことはやったので。
そういいながら夕立は影を散らせながら、容赦なく鎧の首を掻き斬る。
ぞぶりと刀を突き立てたのなら、一度手首をひねってえぐり。そのまま、叩きつけるように地面に押し倒して引き抜く。
間違いなく、絶命。確実に殺す手段を使いながら――飄々と答えていた。
血まみれになった手袋に対して、赤い視線の眉間にしわを刻んで「臭、」とため息をつく。また、影が走り出して――雑多な世界へ消えた。
共有される情報によれば、どうやら「救出対象」とは巡り合えたらしい。
ならば、己の目の前で鎧に襲われている少女は――どうやら、「リスト外」の存在であるようだ。
孤児だろうか、迷子だろうか。何でも構わないが槍に貫かれるだけは許せなかったのである。赤い閃光が空を飛んで、鎧を鋏とその手で打ち飛ばしていた。
「――おい。」
子供に、声をかけるわりには。
低すぎる声だっただろうか。己の喉から出たのは戦意のスイッチが入ったままの音波である。
怪物が、どろりとした水とともに赤をまとって――少女に唸る。「死にたくなきゃヒーローについていくといいですよ。あっちの、中華。あそこにいます。」鋏で、指し示してやった。
恐ろしすぎる生き物に言われて、呆けた三歳児はきっと赤い彼よりも素直だった。全身から「早く行け」と言いたげな怪物の念が通じすぎて、足をもつれさせながら走っていく。
そこからは、怪物はずっと――黙して、ただただ血の雨を降らせていた。
黒い雨を打ち落したほうが先決でないかと判断する鎧には、真正面からの蹴りを食らわせて倒す。その上に跨って鋏で首を狩り落とし、その頭をひっつかんで次の標的に投げる。
同士の死を知った部隊が警戒を高め過ぎたのなら、怪物はそのスピードを上げて囲うように壁を蹴り、看板をひしゃげさせ、恐怖を与え続けて一か所にまとめた。
お互いの背中を勝ち合わせながら10あまりがそれぞれ外を向いて、怪物を穿たんとする。槍の矛先は今や、誰よりも早い存在となった怪物がどこにもいない方向へと向けられていて――きれいに、上空だけが無防備だったのだ。
「テメェらは正しくねェっつってんですよ。」
これは、すべて倍速すぎる中だけでの話だ。聞こえずともいい。意味など分からなくてもいい。
レギオンからの砲撃を防ぎつつも、やってくる赤の怪物がいったいどこに行ったのかを掴めぬアナログな存在たちが――己の頭上に降りた影を感じた。
「――問 答 す る 価 値 も ね ェ っ て コ ト で す 。 」
吐き捨てた言葉と共に、赤ずきんはその身を振り下ろす!!!
高速と、それから質量を伴って落ちた彼の一撃に――円を作るようにして警戒していた鎧たちは吹っ飛ばされた。
地面から少し足が浮き上がって、あわや前へ倒れるかというときに視線が「ずれる」。
ばらばらと落ちていく頭と体に気が付いたのは、死んでからだろうか――。
「いや、おっかない音したんですけど。」
「成功の音ってやつです。まだ時間かかりそうですか?」
恐慌状態の人々を簡単に従える策など、正直――桜人にはありすぎた。
赤ずきんの彼が送り込んだ少女が訪れてくれたものだから、『彼女』を使うことにしたのである。「ここにヒーローがいるってきいたの。」とたどたどしく素直な彼女が言ったのならば、「ああ、よかった。私の仲間が教えてくれたんですね! 」と大げさに言った。
それから、怯える黒人の女性の手をためらいなくとってやる。正しくは、手首に触れているのだ。早すぎる脈拍を知って――「私の声をよく聞いてください。」と呪文を駆ける。
「大丈夫です。ゆっくり息を吸って。」
話す速度は、一文字一文字が充分な感覚で。
「吐いて。」
それを、しばらく繰り返す。夕立のあくびが聞こえてきて、内心笑いそうになってしまった。
「なんですか、セラピー?」
「催眠術ですよ。」
怪物の問いには、忍者が応えてやる。
「あなたの名前は。そう、アマンダ。いい名前ですね――。」
アイスブレイクをかねて、まったりとした口調で話してやりながら、ヒーローの声に皆がちゃんと耳を傾けているかどうかを常にはちみつ色の瞳で探る。
夕立と赤ずきんは、無駄な「騒音」をかき消すのが仕事だ。催眠術は「沈黙」であったほうが効き目が早い。
「――大丈夫ですよ。私はヒーローですが、子供にとってのヒーローは私たちではなくあなたです。だから、恐れないで。」
ヒーローは、負けないのだから。
生まれて数年、数か月で死ぬ程度じゃあ生きたりないだろうと思っている。
髪の毛を戦火でかき混ぜられながら、引率を始めた桜人の顔はいつも通りであったからこそ、夕立には余計にわからない。
蝙蝠で戦火からの飛び火を防いでやって、――セーフハウスに転がり込むまでを見届けてから、蝙蝠がようやく口を開いた。
「終わりましたね。」
「ええ――げ。ひょっとして今ので支払金増えました?」
「未納の支払いが一件。これで2件。このオレから踏み倒せると思わないことですね。」
「うわぁ、出世払いとか、ダメですかね。」
「トイチです。」
「ヒーローらしいセリフじゃねェのは、確かですね。」
賑やかな蝙蝠越しの会話だけが、明るいままに。
夕立が怪物から逃げそこなった鎧の首をまた一つ、斬り落として今度こそ、影へと帰る。
――いつもどおりに、いつものところへ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
穂結・神楽耶
【未来】
灯理さん/f14037
ウィンターミュート様/f01172
鷲生様/f05845
力なき子どもを害し、未来を刈り取る?
全くもって、反吐が出ます。
だから。
それだけは、許してなるものですか。
敵の排除は男性陣にお任せ。
灯理さんと共に救助を担当致します。
子ども達を《かばう》位置取りにて、【茜小路の帰り唄】を。
歌は傷を癒し、心を穏やかにします。
子ども達が落ち着き次第、絶対の安全地帯である灯理さんのアーセナルへご案内致します。
必要なら一緒に中へ入って行きますね。
もう大丈夫ですよ。
だってこの世界には、ヒーローがいるんです。
まぁ、ここにはヒーローと言うには厳つい顔が多いですけれど!
鎧坂・灯理
【未来】
神楽耶/f15297 Arsene殿/f01172 陰陽剣士殿/f05845
子供を狙う、か フン
大変効率的で有用な作戦だな 成功しないことを除けばだが
今回は人助けに専念だ
もちろん助けきってみせるとも
行こう、神楽耶
保護対象が落ち着いたら転送先を「居住区」にセットしてUC
まるでハーメルンの笛吹きだな。目的は真逆だが
『玄武』は何があろうと守り抜く
近づかれたら『炎駒』で隠して念動力でねじ切る
平静を保て、怒りを出すな 子供が不安になる
Arsene殿と陰陽剣士殿ならば信じられる
だから今は下手でも笑え 怒りは後にとっておけ
どうしたカルラ
そうか おまえに隠し事は出来ないな
燃やしてくれ 私の代わりに
鷲生・嵯泉
【未来】
太刀の娘:f15297 探偵女史:f14037 魔術師:f01172
子供のみを殺すだと…?
下種にも程がある、不快の極みとは此の事だ
未来の種、決して奪わせはせんぞ
……良かろう
派手な立ち回りには馴染みが悪いが
出来るだけ気を引く様に立ち回るとしよう
先ずは挨拶代わりの1撃をくれて、此方を向いて貰おうか
破群領域……周囲の何処に居ようが関係無い
敵と定めたモノ全てが的だ
攻撃は戦闘知識の先読みにて見切り躱し、
武器受けにて叩き落として後ろへは通さない
如何に頑健な鎧であろうが弱点は存在する
怪力を乗せた鎧砕きにて刃先を捻じ込み
其の瓦落多ごと砕いてくれる
巫山戯た筋書きが通る程、世界の眼は節穴では無い
ヴィクティム・ウィンターミュート
【未来】◎△
あーダメだダメ、全然ダメ
なんだこりゃ?スカムキングは三流脚本家らしい
これじゃ観客が冷める
手本を見せてやる──俺の脚本でな
んじゃ行こうか嵯泉
俺達の仕事は盛大に暴れることだぜ
では──ランだ
セット、『VenomDancer』
チッチッチー…小粋なリズムで踊ろうか
ヘイトを強烈に惹きつけ、【ダッシュ】で拘束移動
毒と鈍化をばら撒きつつ、クロスボウとショットガンでキル、キル、キル
釣られたな?そこは嵯泉のキルゾーンだぜ
そしてもう一人…最高のシューターが狙ってるぜ、残念だったな
何が騎士だよ、棒切れ持てば名乗れるのかい?
三下のカスに従ってる雑魚って自己紹介してるつもり?
ハハッ、こいつはチルなジョークだ!
●
ニューヨーク市街、マンハッタン沖合にて。
自由の女神はびくともしないでそこにある。まだ壊されていないのは、せめてもの「自由の国」を見守る希望が護られることをわかっていたのだろうか。
――此度の敵は。
子供のみを、皆殺しにして回るのだという。幸い、傍受する無線からの様子ではけが人はいても死者はゼロ。厳しく見ても猟兵たちの勝利は目前で会った。
青空と――海が眩しくて、片目を細める。この純粋な悪意に対して、己の仲間たちはどういう反応だったかを思い出した。
「下種にも程がある、不快の極みとは此の事だ。」
厳しく唸った顔で、金の修羅が戦場へ出て行った。
「あーダメだダメ、全然ダメ。なんだこりゃ?スカムキングは三流脚本家らしい。これじゃ観客が冷めちまう!」
大げさに頭を振った魔術師は、あきれ顔だったのを憶えている。
「子供」に一番近い年齢でありながら、だからこそだろうか――この筋書きが気に入らなくて、書き換えてやると挑戦的に笑んだ。
「看過できません。」
それで、友が全てを切り捨てる。
ぴしゃりとしつける母親のように言い切って見せるさまは、自由の女神を見る女にないしたたかさがあった。
――言葉にできるのは、強いなと思う。
それで、鎧坂・灯理(不死鳥・f14037)は。
「――、フン。」
鼻で笑う。
事実、この「作戦」は大変効率がいいとも思った。灯理がもし「やるがわ」であれば、まぎれもなく老人や子供など、弱りやすい相手から殺すに決まっているからだ。
致命的な欠陥と言えば、「成功しない」という点のみに限る判断である。魔術師の「全然ダメ」という評価は間違っていない。
ちろりと――己の右側視界の端で、肩に乗せた炎が舞う。
「どうした。」
幼い竜の名は「カルラ」。
持ち主の感情によって色を変えて、その強さによって火の強さを変える――ポーカーフェイスでありたい灯理のしつけによって、最近は色合いを常に淡くしていたのだけれど。
今だけは、それが「真っ赤」に燃えていた。
「――そうか。お前に隠し事はできないな。」
それから、自由の女神に背を向ける。準備の整った仲間たちの顔ぶれは多少凶悪ではあるけれど、これからの正義を執行するにはふさわしい顔ぶれだ。
頼もしく、ああ、恐ろしい。
「燃やしてくれ。 私の代わりに。」
やらねばならぬは、「救済」であるから。
この効率的すぎる悪意にも、それに従う誰にも彼にもただただ恐れしかない。己らの発想では追いつかぬ加害衝動に悲鳴をあげてしまいそうになるくらい、――街中には悲鳴があふれていたのだ。
混乱を極めつつも、終わりの訪れを感じる街にて修羅が一匹。
――鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は、低く唸り声をあげる。それは威嚇などではなくて、抑えきれぬ怒りを表している。
「ヘイ、行こうか嵯泉。仕事を始めよう。」
その張りつめた背中に満ちるのは当然の感情だ。だから、魔術師であるヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は全く同意であるばかりで、今の彼に恐れも抱かない。
殺意に満ちる赤い隻眼に、獅子めいたプライドを感じる。王者にふさわしい顔を見て、悪戯でも考える子供の様にヴィクティムは機嫌がよくなるのだ。
なるべくは、――此度、ヒーローではない。
「良かろう。」
「オーケー、オーケー……では――ランだ。」
すべては、この魔術師Arseneの筋書き通りに。
マンハッタン。その場すべてがまるっと塗り替えられるのだ。希望に満ちた世界へ、英雄たちが活躍するに相応しい世界を彩れるから端役というものがやめられない。
少年は、――救世主にはならない。
「セット、【『VenomDancer』】」
>Order ... ... ... Extend Code『VenomDancer』_
>OK_
>... ... ... HP RISK ? Y/N_
>Y_
脳内に仕込んだスーパーコンピューターが瞬時に起動する。嵯泉には、この光景が魔術以外の何者にも見えなかったのだ。
幾何学の水色があたりを包んだかと思えば、ぱきんと割れた音がして術式は少年の体を蝕み、青空の下を走る!!
「チッチッチー……。」
端役がが歯で舌を打ち、BGMを作る。
鋭いリップノイズのような音が鳴り響いて、戦場にて残っていたらしい鎧たちがぐるりと彼を見た。
「 小 粋 な リ ズ ム で 踊 ろ う か 。」
少年の体でもある――それ以上に、巻いたプログラムがうまく刺さっているらしい。肩を少しすくめて、嘲笑してやった。
「何が騎士だよ、棒切れ持てば名乗れるのかい?」
指を刺してやる。
子供一人殺せていない騎士たちは、飢えているようにも見えた。隣で嵯泉が体勢を低くして備えている。それを青色が横目で見てから――走った!!
誰にも、きっと初動が見えなかった。それは、隣にいた嵯泉もそうだ。だけれど目の前で確かに、鎧たちは冷たい音が響いたのちに頭に矢を刺された格好で倒れて無様に死んでいく。
「三下のカスに従ってる雑魚って自己紹介してるつもり?ケツ出して死ぬなよ。」
膝から頽れて頭を冷たい道路に寝かせる鎧たちに笑いながら!!
構えたクロスボウとショットガンは誰の目にもとまらぬ。動こうとすればするほど「プログラム」の効き目はよくなっていって鎧たちはうまく体が動かせないままなすがままに死んでいた。
ゆっくりと毒に侵されるからだから血が噴き出し始めて、おお、おお、とこだまする悲鳴がこれまた面白い――!!
「ハハッ、こいつはチルなジョークだ!!二度と騎士なんて名乗れねぇよな!」
舞うは血しぶき、死ぬは哀れな三下以下の悪意程度でこの悪党を止められると思ったのなら致命的な「ミス」である!!
「おっと。」
さすがに――暴れ過ぎたか、とヴィクティムが笑うのは、己の肺に至る軋みである。
強力な術式であるからこそ、彼の寿命と現在進行形で引き換えになる一瞬のショウなのだ。胸を押さえて立ち止まった彼に極限まで反抗に満ちた生き残りどもが襲い掛かる!!
「釣られたな?」
Venom
にい、と笑った少年の顔を、騎士は悪魔と見間違えただろうか。
――全く以て、反吐が出る。
穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)の顔には怒りが一度だけともったけれど、今は意志に突き動かされていた。
歩幅は狭いのに歩くのが早くて、その後ろを灯理がついていく。赤色の体が全身から怒りを吹き出していて、友の背中が少し恐ろしく思えたのだ。
「灯理さん、子供たちはまだこの中に?」
「――ああ。」
言葉少なに返した灯理の手には、白銀のアタッシュケースがある。
見上げる二人の後ろでは、魔術師のショウが展開されていて、「派手に暴れて」くれているおかげで二人の動きは騎士の誰にも気づかれていない。
建物は、ビル街の中にある保育園である。
ビルのひとフロアをまるまる借りて教室にしているらしい。なるほど、ニューヨーカーというのは忙しいからこうして子供を預けなくてはいけないのだなと――灯理がどこか現実めいたことに納得する間に、神楽耶が躊躇いなく階段に立ち入っていた。
幸い、火災なども起きている様子はない。しかし建物は度重なる振動にきしんでいる。ある程度の戦闘は考慮して予め作ってはあるようだが、ここまでハイパワーなものは考えもできなかったのだろう。
「ああ、見つけました!皆さん、無事ですか――!!」
神楽耶の視線の先には、子供たちがおびえて泣きわめくのをやめて、小さく息を殺して先生の指導のもとであろうが、口元に指をやっている。
「黙っていましょうね」と声をかけたらしい担当――先生が、びくりと肩を震わせた。
「ひ、ぃい、う――」
臆病な性分ではあるのだろうが、ほとんど視線は張りつめてパニックに近い。
大人でもこうなって当たり前だ。冷静な紫が評価をしながら、神楽耶はその分明るく笑む。「助けに来ました!」とまずはっきりと目的をつたえた。
足取りはしっかりとしたもので、ひとつ歩き出すだけで先生と思わしき女性は顔を真っ赤にして泣きじゃくってふるえるのだけれど、その程度で神楽耶は止まらない。
――もっともっと、怒りにおびえて聴かん坊の竜を相手にしたことがある。
「私はヒーローではないですが、――ああ、うん。ヒーローというには厳つい顔をしたあの人がいます!」
「厳しいな。」
灯理が肩をすくめてニヒルに笑ってやる。
それから【召喚:私用の鞄】の術式を施してあるカバンを調整してやった。
本来ならば鍵の役割であるダイヤルを回して、転送先を「武器庫」ではなくて「居住区」に変えてやる。
地面にゆっくりと置いて、――その入り口を開いた。強制してひっつかんで入れはしない、自ら入ってもらわねば『ハーメルンの笛吹き』と変わらないのである。
それが、もどかしくて恐ろしい。
努めて笑うようにはしているのだ。平静を保ち、余裕を絞り出す灯理である。じんわりと手のひらに滲む汗はまぎれもなく緊張を表していて、背中を伝う汗が気持ち悪い。
それでも、――己が怯えを出してしまえば、皆が敏感な子供たちもパニックに陥りかけた「先生」もヒーローを信用してくれない。
どっかりと構えて座っておこうと、床に膝をついてカバンを差し出す。真っ黒な影しかないそれから、何が飛び出すのかと構えて萎縮する「大人」には口元を笑ませておいた。
「なんでもない、手品もない。単純な『隠れ宿』だよ。」
ちろちろと燃える相棒は、胸元で灯理の心臓を温めている。
派手な立ち回りというのには、心得がない。
なにせ、ジャパニーズ・サムライスタイルといえばスタイリッシュの骨頂なのである。
一撃で鋭く仕留め、そのあとの時間が空白であるにも関わらず渋い味を残すところがこのアメリカでも大うけであったように――嵯泉のバトルスタイルもそれにたがわないものであった。
だから、目立つように「殺して回る」ということはあまり想定したことがない。しかし、それが多くを救うものになるというのならば「鬼」になるほかなかろうと双剣を抜く。
疾駆。
長身が走って――まず一発、派手な音を立てるように剣の「腹」で殴る!!
「瓦落多共め。」
魔術師にばかり気を取られていた鎧が横腹をへこませて、うめく暇なくぐらついた体を容赦なく地面に突き刺してやった!!
注意が次は嵯泉にそれたのならば、凶悪に片目を見開いてやる。ぱらぱらと舞ったコンクリートの破片がやけにゆっくりと見えて己の脳の「集中」を知ったのだ。
【 破 群 領 域 】!!
ガシャガシャガシャ、と派手に剣が進化を遂げたのなら――そのギミックが解放された!!
剣鞭となった武具を振るう!ただただ振るう!!周りの建物を叩き、破片を飛ばして混乱を招き――毒と鈍化に侵された鎧たちは抵抗に剣を振るったところで、逃げることを許されない!
「ハッハッハー!キル、キル、キル!!いいねェ!――これこそ、チルだ!」
無残に殺されていく鎧たちに、抵抗を許さない魔術師は膝を撃ち抜いてやる。足を失った鎧が動きを完全に止めたのなら、剣鞭が引きずりおろした看板でぐしゃりと圧殺!!
カーネイジ
広がるのは鬼による殺戮劇場である!嵯泉は笑うことなく、ただただ怒りをぶちまけて破壊の限りを尽くすのだ!
わざと窓を割り、派手な音を立てて「壊す」。この絶望を壊してやろうと武器を握る手にも力が満ちる。鬼を怒らせた鎧たちを海にも還さない勢いで怪力は振るわれる!!
「巫山戯た筋書きが通る程、世界の眼は節穴では無い。」
この鬼の瞳でさえ。
この悪を許さんと光るのだ。世界の明日を支える種を奪うというのなら、まぎれもなく嵯泉の敵である。
敵は殺していい、敵は屠っていい、悪意は己の前で弱ければ蹂躙して構わない――――!!!鬼が金色の髪を振り乱して、嵐を巻き起こす!!
電灯を倒し、電柱を壊し、落ちてくる電線をからめとって敵にぶつければ電流で殺す!!
外の世界では、執行が続いている。
防音においては秀でているらしい壁が、子供の施設らしいなと神楽耶が思いながら歌を歌っていた。
なんてことはない、――緊張に耐えられなくなった子供が説得途中で泣き出してしまって、合唱の様に皆が怖いと泣いたものだから。
【茜小路の帰り唄】は、子供たちを恐れから救う。
――精神的な治癒ともいえた。パニックに襲われる子供たちに、どこまでUDCアース、日本の曲が通ずるかが不安であったが。
選んだ曲は、どこの世界でもメロディが通ずる「きらきらひかる」ものである。
優しく子供たちの背中を撫でたり、頭に触れてやったり、手を握ってやりながら。
ゆったりとしたテンポの音色には、灯理の緊張もほぐれている。人を救うことに、歌が使えるなんて言う発想も彼女の中にはなかったのだ。
「さあ、――順番に。」
そうすれば、あとはもう作戦通りだった。
時折、外の争いで揺れる建物には子供たちも驚いたが、そこは正気に戻った大人たちが寄り添ったり、「大丈夫!」だとか「びっくりしちゃったね」とか共感の声をかけてほぐしてやっている。
人間は、強い生き物なのだなと己のカバンの中に入るときに、瞳の色を確かにした子供らの顔を灯理が眺めていた。
――自然と、微笑んでいたかもしれない。「いっておいで」と右手だけで子供たちとハイタッチをして、カバンへの侵入を許す。
まるでアトラクションのように楽しんで入っていく子供たちがすべてしまわれたのなら、あとは大人たちと握手をしてから救出を終えるだけだった。
「ありがとう。」
「ありがとう、ヒーロー!」
当然のことです、と微笑む神楽耶と。
――固まる灯理があって。質量の変わらない鞄の強度は絶対だ。用が済んだのなら逃げ遅れがいないかくまなく確認して、二人は外へ出る。
「うわあ、なんですかこれ。すごい。ここまでやってくれるとは思ってませんでした。」
「ハッハー!だろ!嵯泉のキルがこりゃまたすげェんだって。あとで報告書、要チェックだぜ。」
「……止せ。らしくないことを、遣ったもので粗が目立つ。」
三人がにぎやかに湧いて――灯理が、己の胸元にいた竜を放つ。
青空が終わり、そろそろ黄昏色が混じり始めていて紫の瞳をゆるりと細めた。
「灯理さん?」
「――ああ、いま行く。」
ぐわりと燃えた竜を背中に、笑う。
赤い炎が鎧の破片すら燃やして、「過去」のみを爆発とともに燃やし尽くしていった。
――四人で集まって、ハイタッチなんてガラではないのだけれど。
手のひらをそれぞれで合わせあって、ミッションを終えた。「人をたすける」手段はきっと、未来に響いたことであろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
バーン・マーディ
事前
子供達の避難場所や多く集まる場所を可能な限り調べ
移動はバイクで【運転】で高速で駆けつけ
【オーラ防御】展開
【武器受け】にて子供を狙う凶刃から庇わんと
常にヒーローが救うとは限らない
我はバーン・マーディ…ヴィランである
敵に抱きたる想いは一つ
……哀しみだ
お前達が為さんとする行為は…お前達自身がけして許さなかった行為だ
それを忘れてしまったのであれば
我が…我らが思い出させよう
(呼ばれ対峙するは彼らと同じ容姿の英霊達
【戦闘知識】で騎士達の陣形から護りに足る陣形で迎え撃
お前達もまた躯の海に戻させはせぬ
思い出すがいい…叛逆を
【カウンター・怪力・二回攻撃】で反撃
己が受け止め英霊騎士による集中攻撃による連携撃破
●
その神は、人間だったのだ。
――神に至ってしまった経緯は、長くなる。だけれど、今日彼がこの日、このヒーローズアースにて剣を握るには理由があった。
彼を知る人は驚いたことであろう。バーン・マーディ(ヴィランのリバースクルセイダー・f16517)はヴィランである。
ヒーローズアースにて、ヴィランと言えばヒーローと対局の存在である。
彼らは、己の思うがままの正義を執行する少数派であり、まぎれもなく利己的な「悪」であった。
このバーンも、嘗ては「対神」を掲げる軍団の長である。
それに至るまでの心も、経緯も、痛みも悲しみも彼しか知り得ない。だからこそ、――この悪行に蝕まれる騎士たちの行いにはただただ、丁寧に抵抗した。
バイクで子供を拾い、セーフティに送る。
ヒーローの届かぬところをくまなく探して、リストアップした。マンハッタンや賑やかな区内に確かに人は多いが、「そのほか」もゼロではない。
燃料が尽きない範囲で、それでも段取りよく。
バーンはまた、バイクを走らせて子供を拾う。ヒーローたちが彼にぎょっとして、その腕から子供を渡されて二度ほど彼の顔を見たことであろう。
悲哀に、満ちている。
対神組織「デュランダル」。
それは、かつてバーンの率いていた軍勢のことだ。
悪しき神に抵抗し、人間の秩序を守るために戦いに明け暮れた「反逆者」でありながら、希望を求めた戦いを行った勇気ある彼らである。
夢を見て、生きて、戦って――気高い魂の仲間たちであった。
今日と同じ青空の下に、誓を果たして正義を夢見て生きた日々は昨日の様に思い出されるのに。
「――お前達。」
子供たちを殺そうと悪鬼に成り果てたるは、彼の部下たちであったのだ。
部下と言えど、志をともにしたきょうだいにも近い心の距離があったというのに、今の彼らは冷たい鎧に囲われてばかりで意志すら宿らぬ目線が黒い影で塗られている。
それが、悲しくて、情けなくて、むなしくて、――己を責めた。
ぎゅうう、と大剣を握り、バイクから降りる。
目の前に広がるのは、数少なくなった黒色の軍勢だ。構えた槍はかつての志が宿らぬ代わりに悪意に満ちる。
「我が――我らが思い出させよう。」
その悪意こそ、己らが一番嫌悪して、許さなかった行為であるというのに!!
がつんと地面を穿つ剣が、その不滅の魔術で――【デュランダル騎士団招来】を成就させる。
ぞろりと迎え撃つように揃ったのが、かつて志半ばに倒れた仲間たちである。全く同じ鎧の外見をしながら、その瞳にはぎらぎらとしながらも確かな心があったのだ。
不条理に弾圧されず、間違った正義に抵抗し、弾圧される少数派であるヴィラン達を救うために戦った。
ヒーローたちとの均衡を望んでいたのだ。ヴィランの出であるからといって、根こそぎ殺されるのではなく平等に生を掴むことをただただ望んだ彼らがいる。
「過去」になって――歪められた心が、本当に痛々しく見えてしまって。
眉に刻まれたしわがより濃くなって、目を伏せる。バーンが次に目を開いた時に。
「思い出すがいい。」
それは、慈悲であったやもしれぬ。
これ以上死んでなお、苦しんで辱められることもないように。
お互いに掲げた夢が、穢されないように――。
「 叛 逆 を 。 」
躯の海にも、もう返してやるものかと。
誓った漆黒の瞳が悲哀を振り切っていただろうか。同時に駆け寄った軍勢が、貴金属を突き立てあって姿を消していく。
貫く、裂く、屠る。横から振るわれる暴虐には、縦からの抵抗で倒す。
バーンへ向けられた殺意は彼が大剣で根こそぎ受け止めて、薙ぎ払う。体勢が崩れたものを英霊たちが貫いて海にも還さなかった。
雄たけびと、無念と――戦いの音がようやく終わるころには、そこに立っているのが黒騎士の神のみであったのだ。
祈りは、なかった。彼らを救う神など、どこにもおらぬ。
ただ、そこには沈黙が満ちる。漆黒の神が動いて、すべての勝利を知るころには――きっと、ちょうど海に太陽が隠されていたのだ。
夜が訪れる。悪を隠す暗闇と、真黒になった海面からの潮風が孤独な黒色を撫でて行った。
●
暴虐たる悪意の指令は妨害され、成功をひとつも許されはしなかった。
――重軽傷者はおれども、奇跡的に死者は本件では0名である。
猟兵たちの完全勝利にて、幕を閉じた。しかし、まだまだ明日も戦争は続く。
しかし、この夜くらいは、ニューヨークの街に静けさが戻ってもよいのだろう。
――気高い「悪」の痛みを、どうか覚えていて。
大成功
🔵🔵🔵