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花精霊と円卓の魔術師

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●精霊達の御茶会
 魔鉱の壁を隠すようにタペストリーが掛けられ、床にはジャカードのラグを敷く。
 幻想仕掛けのオルゴールの螺子を巻けば輪舞曲に精霊達は踊り出す。
 光のかけらをきらきら弾ませ、精霊達は舞いながら御茶会の準備をする。人型に羽を生やした小さな花精霊、炎蜥蜴、疾風鼬、霧雨蛙。皆退屈を持て余していたのだ。
 学生がやってきたら混ぜてあげてもよいかもしれない。そう思いながら用意するのは、木苺と黒スグリが仲良く並び生クリームをふんだんに使った甘い丸ケーキに小さなお姫さまを模した砂糖菓子を飾るバターケーキ。
 クッキーにビスキュイ、チョコレート、カラフルなサワーグミやジェリービーンズ、ハートやクローバーの型に整えられたサンドウィッチにオードブル。
 紅茶はセイロンとダージリンを用意した。
 小さな透明のボトルには蜂蜜やシロップ、ミルク、ジャムがずらり。
 薔薇飾りの花瓶が食卓に更なる華を添え、カンテラの灯は煌々と。
 精霊達が育んだ神秘的な硝子と宝石の木には甘やかな林檎が実っている。

●迷宮アレキサンドライト
「お越し頂き、有難うございます」
 暗い室内だった。窓は厚いカーテンに覆われている。
 床に正座したルベル・ノウフィル(星守の杖・f05873)は深々と頭を下げ、説明を始める。隣には天球儀の形をした魔道具が置いてある。
「僕が予知したのは、アルダワ魔法学園、昏冥たる地下迷宮に鎮座する黄金の災魔――ドラゴンの復活です。
 其の迷宮は、蒸気漏れ吹くパイプに覆われた魔鉱の壁で形成される広い迷宮。精霊が日々の退屈を持て余し、微睡み揺蕩うは硝子と宝石で出来た樹木と果実が織り成す木漏れ日の森。名を『迷宮アレキサンドライト』。
 迷宮最奥にある歯車型の転移装置を起動させれば、黄金竜の待つフロアへと到達できましょう。なお、精霊達が守るフロアは明るいのですが、最奥のフロアは闇に覆われているようです……」
 黄金竜の復活による被害はまだ出ていないが、放置すれば数日中にも学生達に被害が出てしまうだろう。迷宮を突破し黄金竜を倒して欲しい、とルベルは言う。

「迷宮に入ってすぐのフロアでは、暇を持て余した精霊達が御茶会をしています。皆様は、まず最初に暢気な精霊達の守る扉を通過せねばなりません。そのため、現地で精霊とコミュニケーションをはかり、仲良くなって頂きたいのです。仲良くなれば精霊達は扉を開けてくれることでしょう」
 ルベルは顔をあげ、献策する。
「楽器を演奏したり、歌を歌えば効果が期待できましょう。料理や何かしらのパフォーマンスを披露するのも良いと思います。優しい言葉をかけたり、知識を見せるのも、良いかもしれません」

 説明を終えるとルベルは天球儀を作動させた。天球儀は、彼らを取り巻く壁や天井に煌めく星空を薄っすらと投射する。星河一天、夢心地。けれど、囁きは真剣だ。
「暗き闇はひそやかに忍び寄り、光を侵そうとしております。なれど、皆様は選ばれし者、人々の希望。闇を払う力を充分に備えている事を、僕は知っています」
 迷宮の入り口へ転移させる間際、彼は幽かに囁いた。
「竜は強敵。……ご無事を祈っております。どうか、お気をつけて」


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。

 今回はアルダワ魔法学園の世界での冒険です。
 1章はのんきな精霊達が御茶会をしているフロアです。
 精霊達を喜ばせてあげてください。うまくいけば精霊達は友好的に紅茶やお菓子を振舞ってくれたのち、先へと繋がる扉を開けてくれることでしょう。

 【POW】身体を使って挑戦。<楽器演奏>や<歌唱>など、場を和ませて楽しんでもらう。
 【SPD】技術を使って挑戦。<料理>や<パフォーマンス>など、技術を使ってご機嫌を取る。
 【WIZ】知恵を使って挑戦。<世界知識>や<優しさ>など、感性や知恵で満足させる。

 プレイングは自由にのびのびと書いてくださって大丈夫です。
 キャラクター様の個性を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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第1章 冒険 『暇を持て余す精霊達と遊ぼう』

POW   :    身体を使って挑戦。<楽器演奏>や<歌唱>など、場を和ませて楽しんでもらおうか。

SPD   :    技術を使って挑戦。<料理>や<パフォーマンス>など、技術を使ってご機嫌を取ってみようか。

WIZ   :    知恵を使って挑戦。<世界知識>や<優しさ>など、感性や知恵で満足させてみようか。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ベリザリオ・ルナセルウス
精霊のお茶会か。可愛らしいものになりそうだ。
硝子と宝石で出来た樹木と果実の森なら生花は逆に珍しいだろうか?
文字通りお茶会に華を添えてみるかな。
【鈴蘭の嵐】を加減しながら周囲に舞わせてみよう。
攻撃にならないように慎重に、嵐と言うよりそよ風に舞うような感じになるように調整する。

●精霊たちに
土産もなくお茶会に割り込んで申し訳ない。
私達は迷宮で蘇ったドラゴンを倒すために来たのですが、君達のお茶会を邪魔する気はなかったのです。
お詫びにお茶会に華を添えさせてもらえませんか?


ミラ・アルファ
精霊達を満足させればいいんだよね?それなら、まずこちらから話しかけて輪の中に入れてもらいましょう。

「こんにちは、楽しそうですね!僕たちも混ぜてください!」

それで、話が弾んできたら機を見て【歌唱】を使って一気に場を盛り上げて楽しませるよ!

「みんなで歌おう!踊りましょう!」


ラスベルト・ロスローリエン
深き迷宮の底に茂る硝子と宝石の森か……
この世界の精霊も随分と面白い所に住まうものだね。

【WIZ】
『やあ、世界を隔てた御同輩』
三角帽子を脱ぎ森の民の証でもある尖がり耳を晒し精霊達に挨拶。
エルフ秘蔵の果実水“四季の雫”を手土産に【世界知識】【コミュ力】で茶会に参加したい。

燃え盛る火山、海と見紛う大河、陣風の渦巻く渓谷、奇石立ち並ぶ荒野。
そして記憶の中に残る花咲ける森の古都。
僕の世界の精霊達が活き活きと振舞う領域について語ろうか。

『嗚呼、そうだ。僕の友も紹介しよう』
腕に絡み付いた“永久の白緑”に宿る樹霊を喚び起こす。
少々照れ屋だけれど、仲間の前であればその身に花を咲かせ声なき言葉で挨拶してくれるさ。


トリテレイア・ゼロナイン
暇を持て余す精霊達…お茶会には参加できませんので(口がないから)別の手段で彼らと楽しみましょう

大盾の表面に薬剤を塗布して摩擦を減らし、サーフボードよろしく上に乗って「騎乗」技術でしっかり「踏みつけ」てバランスをとる。
脚部スラスターを吹かして推進力を得れば、平地を盾で「スライディング」して滑るサーファーの出来上がりです

これで精霊たちを広い場所での鬼ごっこに誘ってみましょう。活発な子なら反応してくれるはず。勝ち負けにはこだわらず精霊達が楽しめることを重視しましょう。

それにしても精霊に囲まれると、自分が御伽噺の登場人物そのものになったような気がして感慨深いですね


結晶・ザクロ
=思うこと=
 綺麗な場所。こういう迷宮もあるんですね。……良いなぁ。

 ここには、火蜥蜴……サラマンダーみたいな、火を司る精霊もおられるんですよね。
 自身の炎は怖いですけど。そんな精霊と仲良くなれるなら、披露してみてもいいかも。

=だいたいの行動=
 WIZに相当する行動のつもりですが、判断はお任せします。
 ブレイズフレイムを細々出すつもりで、かざした両手から炎を出します。
 あ、弱火で。他の精霊達に迷惑をかけないように。

 興味をもってもらえるなら、ちょっと操ったり動かしたり、火の輪を作ったり、一緒に遊べないかなと。


メリー・アールイー
アレキサンドライト、二面性を持つ魅惑の宝石か
光と闇のダンジョン、楽しんで踏破しようじゃないか

【SPD】
なんっとも美しい光景じゃないかっ!
夢と見紛う光の園に目がキラキラ

さあさ、よってらっしゃいみてらっしゃい
メリーとReの息の合った大道芸をご覧あれい

錬成カミヤドリで
複製した胡桃ボタンを付けたカラフルなお手玉を用意
あたしと相棒のからくり人形「Re」でジャグリングを披露するよ
たまに落とすっ…と見せかけてキャッチしたり、
くるっとターンを入れたりね
妖精のご希望次第でサービスしちゃうよっ

お茶会ではダージリンと桜のジャムをリクエスト
硝子と宝石の木?…この林檎も食べられるのかい?
神秘的な光景に何でも興味深々だ


ヘルメス・トリスメギストス
「お茶会と聞きましたら、このヘルメス、執事として馳せ参じないわけにはまいりません」

私は精霊の皆様や学生(猟兵)の皆様に喜んでいただけるよう、自作の和菓子を持参しましょう。
どら焼きに、餡団子、草餅に御干菓子。
そうなると、お茶もグリーンティーがいいですかね。
あ、ご興味がありましたら、少々アルダワの方の舌には合わないかもしれませんが、抹茶もお点てしましょう。

「さあ、御主人様、お嬢様、そして精霊の皆様。
お茶やお菓子のご用意は私がいたしますので、
どうぞごゆっくりとお楽しみください」

執事として、皆様が存分に楽しめるようにお仕えさせていただきましょう。



●迷宮に仲間は集りて
 迷宮の1層入り口でミラ・アルファ(ミレナリィドールのシンフォニア・f05223)が呟いた。
「一番乗りかな? 誰か来るまで待つとしますか」
 月めいた銀の髪が雪白の肌に映える白花の如きミラはしばし迷宮の攻略方法に考えを巡らせる。そこに、後続の猟兵たちが続々と加わる。
「アレキサンドライト、二面性を持つ魅惑の宝石か。光と闇のダンジョン、楽しんで踏破しようじゃないか」
 ひとりごちながらも周囲にわくわくと目を配るのはメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)。継ぎ接ぎだらけの肌に角砂糖のように繊細で白い髪、彩豊かな和装束。小さくも万華鏡のように愛らしい女児は瞳をキラキラと輝かせていた。
「なんっとも美しい光景じゃないかっ!」

「綺麗な場所。こういう迷宮もあるんですね。……良いなぁ」
 結晶・ザクロ(真実のガーネット・f03773)も雪白の長髪を靡かせ同意する。
 端麗なる聖騎士のベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)は紫水晶の瞳で辺りを見渡した。
「精霊のお茶会か。可愛らしいものになりそうだ」
「ここには、火蜥蜴……サラマンダーみたいな、火を司る精霊もおられるんですよね」
 集まった者たちは軽く挨拶を交わす。
「硝子と宝石で出来た樹木と果実の森なら生花は逆に珍しいだろうか?
 文字通りお茶会に華を添えてみるかな」
 ベリザリオが顎に手をやると、ザクロも同様に思案顔。
(精霊と仲良くなれるなら、炎を披露してみてもいいかも)
 多重人格者のザクロは今、気弱な人格が表に出ている。気弱な彼は常日頃自らの炎を恐れる気持ちを抱いているのだ。

 其処へ、穏やかな声が加わった。
「深き迷宮の底に茂る硝子と宝石の森か……
 この世界の精霊も随分と面白い所に住まうものだね」
 ラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が其処にいた。三角帽子の尖がりの下で癖のある灰銀の髪と細長い耳の端が覗いている。
「ラスベルト様にヘルメス様、奇遇ですね」
 更に後方から追いつき声を掛けるのは、巨躯清霜たる白騎士トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。
「お茶会と聞きましたら、このヘルメス、執事として馳せ参じないわけにはまいりませんからね」
 片眼鏡に長耳のヘルメス・トリスメギストス(最強魔術師にして天才軍師な万能執事(自称)・f09488)もにこやかに応える。彼らは皆、世界を巡り人々を救い続ける勇士たちである。
 トリテレイアが常に戦場を共にしてきた大盾の表面に薬剤を塗布するのを不思議そうに見つめながら、ミラは笑顔を向けた。
「賑やかになりましたね。みんなで作戦を成功させましょう!」
 一行は軽く打ち合わせをする。
「精霊達を満足させればいいんだよね? それなら、まずこちらから話しかけて輪の中に入れてもらいましょう」
 ミラが提案する。気弱なザクロは少し不安そうでもあった。
「最奥のフロアは闇に覆われているらしいですね」
「嗚呼。しかし恐れることはない。闇を照らす為にこそ、叡智の光はあるのだから」
 ラスベルトが微笑む。浮酔草に仄かに火を灯し燻ぶらせ、灰の魔法使いが一行を導く。

●其の円卓へ
『最近、下の層に何かが棲みついたみたい』
『真っ暗な層は怖いわ』
 雑談をしながら御茶会の準備を進める精霊たちを、そよりと微風が撫でた。釣られて目を遣れば、視界一杯にふわり静かに舞う愛らしい白花。鈴蘭の清らかな香りが鼻腔を擽る。

「土産もなくお茶会に割り込んで申し訳ない。
 私達は迷宮で蘇ったドラゴンを倒すために来たのですが、君達のお茶会を邪魔する気はなかったのです」
 幻想的な光景に気を惹かれていた精霊たちがハッとする。
 彼らの前に神々の加護を受けた聖なる騎士ベリザリオが端然と佇んでいた。甘く目元を和ませ、騎士は柔らかに一礼する。流麗な金細工のような髪が揺れて光を描いた。清廉にして端麗な英姿に精霊たちも相好を崩す。
『いらっしゃい、丁度御茶会の支度をしていたところなの』
『蘇ったドラゴン? 最近棲みついたのは、其れかしら』

「やあ、世界を隔てた御同輩」
 ラスベルトは好調な出だしに安堵しつつ、三角帽子を脱ぎ挨拶をした。顕わになったのは先端の尖った長い耳。森の民の証である。エルフ秘蔵の果実酒を高杯に充たして捧げれば、精霊たちは我先にと杯に集まった。
『まあ、妖精種のお仲間さんね』
『素敵なお土産をありがとう』
 精霊たちが喜んだ。
「こんにちは、楽しそうですね! 僕たちも混ぜてください!」
 ミラもニコニコと挨拶をした。ザクロが緊張しながら頭を下げる。メリーは相棒のからくり人形『Re』と仲良くお辞儀をした。トリテレイアが堂々たる騎士の礼を取る。ヘルメスは優美に一礼してみせた。
『お客様なんて久しぶり! どうぞ、ご一緒に』
 花精霊が蜂蜜色に煌めきながら全員に勧めるのは、華やかに飾られた円卓の席だ。

●円卓の御茶会
 椅子を勧められた猟兵たちはぐるりと丸いテーブルを囲み、精霊たちに此処に来た目的を話して協力を仰ぐと同時に穏やかなひとときを楽しんだ。
「大きな椅子が用意されていてよかったです」
 トリテレイアが椅子に座ると精霊たちはよじ登り、膝や肩、頭の上でおおはしゃぎ。どうも居心地が良いらしい。
 ヘルメスが出番とばかりに張り切り、優雅に一礼する。
「さあ、御主人様、お嬢様、そして精霊の皆様。
 お茶やお菓子のご用意は私がいたしますので、どうぞごゆっくりとお楽しみください」
 精霊たちの用意していたお菓子と紅茶の隙間を縫うようにヘルメスは持参したお菓子を並べていく。どら焼き、餡団子、草餅に御干菓子。グリーンティーも用意した。
 感謝の言葉を口にのぼらせ、ベリザリオは紅茶のカップを端然と持ち上げた。其の紫水晶の花を花精霊たちが愛でている。騒ぐ花精霊たちを気にせず、ベリザリオは紅茶の香りを楽しんでいる。マイペースなのかもしれない。

「ご興味がありましたら、少々アルダワの方の舌には合わないかもしれませんが、抹茶もお点てしましょう」
 秀麗な執事がニコリと笑む。精霊たちは抹茶の味を楽しんだ。
 甘いものを好むミラは目を輝かせてお菓子に手を伸ばし、メリーも嬉しそうにダージリンと桜のジャムをリクエスト。炎蜥蜴がヨイショ、ヨイショとジャムの瓶を押して、プレゼントしてくれる。ヘルメスは目を細めながら紅茶を注ぐ。
「硝子と宝石の木? ……この林檎も食べられるのかい?」
 興味津々の幼姿に精霊たちは林檎を人数分捥いで渡す。
『この林檎は、暗いところで光るのよ』
『食べるととっても甘くておいしい!』

 絢爛なる茶席、平穏なひととき。
 ラスベルトは茶会の席で話を披露する。其の帽子や肩には色とりどりの光を帯びた花精霊たちが集まっていた。
 世界知識豊富な彼が温かな声でありありと語るのは、燃え盛る火山、海と紛う大河、陣風の渦巻く渓谷、奇石立ち並ぶ荒野。そして記憶の中に残る花咲く森の古都ロスローリエン。失われた故郷を語る時、エルフの大きな碧の瞳は愁傷の波に揺れていた。
 メリーはダージリンティーの香り高き湯気を楽しみながら、話に耳を傾ける。小さな外見に似合わぬ大人びた光がその瞳を彩っていた。

「嗚呼、そうだ。僕の友も紹介しよう」
 ラスベルトは腕に絡み付く若木“永久の白緑”を指先で優しくなぞる。焼け落ちた森の都から救い出した樹霊が友に応え、白花を控えめに綻ばせると声なき言葉で挨拶をする。
「照れ屋なんだ」
 ラスベルトがくすりと笑った。
「可愛いですね」
 ザクロが頬を緩ませる。
 手元にある紅茶のカップを風鼬がふんふんと覗き込んでいた。

「頂いてばかりで申し訳ないです……、あ。そうだ! みんなで歌おう! 踊りましょう!」」
 ミラがあたたかな陽光のような笑顔と共に軽快な歌を紡ぐ。咲き零れる花びらめいた明るい歌声に精霊たちは手舞足踏の大喝采。
「あの。じゃあ……、こういうのはどうでしょう」
 ザクロが勇気を出し、遠慮がちに両手を翳す。弱火に調整されたあたたかな炎が踊り出す。微細な火の粉は煌めき瞬き宴を彩る。精霊たちは口々に美しさを讃えた。
「ふふ。こういうのも、できます」
 ザクロが鮮やかな瞳を和ませて火の輪を形成する。精霊たちはきゃあきゃあとはしゃぎ、輪潜りを楽しんだ。
「さあさ、よってらっしゃいみてらっしゃい!
 メリーとReの息の合った大道芸をご覧あれい」
 メリーも一緒になって芸を見せる。胡桃ボタンを付けたカラフルなお手玉をユーべルコードで複製すると、相棒のからくり人形『Re』とジャグリングを披露。軽やかに捌いていたかと思えば、手元が狂ったふりをして。
『あっ、失敗しちゃう!』
 精霊たちが思わずハラハラ。しかし、次の瞬間見事にキャッチ!
「ふふっ、落とすと思ったかい?」
 メリーは春花も思わず釣られて芽吹いてしまうような笑顔でくるっとターン、仕上げとばかりに宙がえり! 袖がふわり、夢のように広がる。
『ワア! すごい!』
 精霊たちが歓声をあげる。

「では、わたしも」
 トリテレイアは纏わり付く精霊たちを落とさぬよう気を付けながら優しく立ち上がると、自身の大盾の上に『騎乗』した。確りとバランスを取り熟達の技能を活かしてポーズを取ってみせれば、精霊たちも大喜び。汎用性の高い新技だ。
「元気な子たちは鬼ごっこをしましょうか」
 脚部スラスターを吹かして推進力を得れば盾でサーフィンが出来るという。炎蜥蜴たち、疾風鼬たち、霧雨蛙たちは元気に頷いた。そして、意気揚々と次のフロアへとつながる扉に向かっていき、扉を開いてくれる。

『鬼ごっこをしよう』
『ボクたち、逃げる』
 なんと彼らは次のフロアで鬼ごっこをしようと言い出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『精霊の遊戯と魔法の通路』

POW   :    『炎蜥蜴』を捕まえる。<災魔を倒せるほどの力>を示すと近づいてくる。力を見せてる間はそれを見続ける。

SPD   :    『疾風鼬』を追いかける。<疾風さえもとまる存在>を示すと興味を持って留まる。存在が薄いと通り過ぎる。

WIZ   :    『霧雨蛙』を探す。<巧妙に隠れたモノ探し出せる知識>を示すと姿を現す。見当違いな行動をすると逃げる。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●精霊の遊戯
 彼らの見守る前で2層へと繋がる扉が開かれる。
 扉の向こうには広大なドウム型の空間が彼らの前に広がっていた。高き天井付近で太陽や星や月を模った金銀のモビールが揺れている。精霊たちが飾ったのだろう。
 1層とは異なり、此処では灰を固めたような木肌の樹木が立ち並んでいた。茂る葉の色は金色だ。木々の隙間には仄かな光を放つ不思議な湖もある。壁一面を覆うのは赤紫色の冷たい魔鉱鉄と、ぐるり巡らされたパイプ群。稀に白く熱い蒸気が零れ、ぽたぽたと蛍光色の液体が滴る箇所も視えた。 
『歯車は、魔法陣を作動させたら出て来る』
 精霊が示す先には3つの魔法陣があった。赤い魔法陣、青い魔法陣、そして緑の魔法陣だ。

『ボクたちが乗ったら魔法陣は動く』
 言うと、炎蜥蜴たち、疾風鼬たち、霧雨蛙たちは楽しそうにフロア中に散っていく。
『鬼ごっこをしよう』
『ボクたち、逃げるから』

 色彩ゆたかな花精霊たちが口々に猟兵たちに謝罪する。
『悪戯っ子たちがごめんなさい。でも、あの子たちのお話は、真実。
 あの子たちを捕まえて魔法陣に乗せれば、歯車が顕現するのです』

 彼らは先へ進むため、精霊を捕まえて魔法陣を作動させなければならない。
「捕まえた精霊が偏った時のためにフォローする者が必要かもしれない」
 誰かが呟いた。
ミラ・アルファ
次は鬼ごっこですか。せっかくだし、楽しませてもらおう!

『炎蜥蜴』を追いかけて【先制攻撃】を使って前に踊りでます

「力を示せば僕に捕まってくれる?」

攻撃を直接当てる事はしませんが、<災魔を倒せるほどの力>ということなので遠慮なくドラゴニック・エンドを使い、隙を見て捕まえます。



●炎蜥蜴はゆらゆらと
「次は鬼ごっこですか。せっかくだし、楽しませてもらおう!」
 ミラ・アルファ(ミレナリィドールのシンフォニア・f05223)の小柄な体躯が弾むように炎蜥蜴たちを追いかける。
 視線の先、炎蜥蜴たちはひょこりひょこりと木々の間をすり抜けていった。

 駆けるミラの耳元で花精霊が囁く。
『炎蜥蜴は、破魔の力を愛すもの』
 災魔を倒せるほどの力を示せば魅了できるだろう、と。
 ミラは白銀の髪を揺らして頷いた。脚に力を入れ炎蜥蜴を数匹追い越すと、道を塞いでみせた。数匹の炎蜥蜴は左右に散ろうと首を巡らせ――、
「力を示せば僕に捕まってくれる?」
 ミラが問いかけた。
 炎蜥蜴たちは気を取り直した様子でミラへ視線を向ける。
 距離を詰めれば一気に散る気配を残しながらも、炎蜥蜴たちが一斉に尾を振る。
 示してごらん、と。
「よーし!」
 ミラは意気揚々と竜槍ルインを天穹に繰り出した。その勢いや、槍から放たれた衝撃が清涼な波となり天井付近で垂れているモビール群を揺らすほど。
 鮮やかな槍捌きに炎蜥蜴は足を止めた。

 其処へミラの愛竜も姿をあらわし主を助けんと高き天井を悠々と旋回、モビールを弄ぶ。
『ドラゴンだ』
『とっても強そう』
『お友達なの?』
 炎蜥蜴たちは驚いた。
「ユランという名前です」
 そんな彼らへと、ミラは優し気な瞳に微笑みの色を湛えて答えた。頭上で戯れる竜へと手を振れば、竜は主への親しみの篭った鳴き声で応えてくれる。
 晴れやかなる歌い手ミラは竜騎士でもあるのだった。

 すっかり逃げる気を失くしている炎蜥蜴の1匹をミラはそっと抱き上げた。
 炎がゆらりと揺れる。不思議と熱さは感じなかった。只、温い。
 炎蜥蜴が細い尾を左右に振り、オニキスのような瞳でミラを見る。
「僕に捕まってくれる?」
 ミラがやさしく尋ねれば、炎蜥蜴は彼の手に頬をすりすりと寄せ、目を細めて頷いた。そして、言葉を紡ぐ。
『炎蜥蜴は円卓の竜騎士と共にあり』

 赤の魔法陣に炎蜥蜴がひょこり飛び込めば、魔法陣は淡い赤色に輝いた。

 他の猟兵たちはまだ戻ってこない。
(みんな、大丈夫かな)
 ミラは揺らめく赤色のもと、仲間たちを案じた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ラスベルト・ロスローリエン
『ふふ。世界が違えど精霊の気儘さは変わらないな』
……しかし鬼ごっこなんて一体いつ以来だろうか?

【WIZ】
僕も精霊との付き合いは長いからね。
霧雨蛙の纏う水気は交流中に覚えたから目を閉じ魔力の痕跡を辿ろう。
蛙は景色に溶け込むのが得意だけれど精霊の身体を編む魔力の色や感覚までは早々隠せないさ。
すぐ近くまで来たと感じたら“界境の銀糸”を掌から芽吹かせる。
【情報収集】と【地形の利用】で魔力を感じた場所に銀の蔦を這わせ蛙を探す。
蔦に絡み取られても少しくすぐったい位だから安心していいよ。

見事捕まえたら丁寧に抱きかかえて魔法陣の元に戻ろう。
『さあ、楽しい時間は此処まで……ここからは僕達の務めを果たさないと』



●霧雨蛙はしっとりと
「ふふ。世界が違えど精霊の気儘さは変わらないな」
 鬼ごっこなんて一体いつ以来だろうか。
 思いながらラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)が逃げていく精霊たちへと視線を巡らせる。頭上を覆う金葉の天蓋は風もないのに微かな葉擦れの音をたてていた。まるで父祖の血に語りかけてくるように感じられて、ラスベルトは神秘の木々へと柔らかに目礼した。
 その肩にふわりと身を寄せ囁くは、淡光を振りまく花精霊。
『霧雨蛙は叡智を尊ぶ』
 魔法使いの細長い耳の端は微かに揺れて理解を示した。

 ゆるり追跡していけば、霧雨蛙たちは巧みに風景に溶け込み隠れてしまう。パイプを蒸かしながらラスベルトは瞳を細めた。
「僕も精霊との付き合いは長いからね」
 瞑想めいて睫を伏せる。視覚では捉えられぬ魔力の流れがより強く感じられるように。霧雨蛙の纏う水気は瑞々しい雨垂れの如く点々と先に続いていた。
 ラスベルトは濃灰色のローブを靡かせ、木々を歩んでいく。其の足取りは危なげなく只管に静謐なものである。

 やがて足をとめ、ラスベルトは瞼を開けた。
「君は休憩中かい?」
 真昼の草原の如き瞳が捉えているのは、灰の木肌に溶け込むようにして座っている艶やかな霧雨蛙。
 瞳に星の輝きを宿すエルダールはそんな精霊の姿に親しい友に向けるが如くあたたかに微笑む。同時に掌から芽吹かせるは界境の銀糸。天と地を伝うが如く縦横に茂る銀はしゅるりしゅるりと魔跡を這い、葉隠れの霧雨蛙を絡めとった。
 霧雨蛙は擽ったそうにしているが、不快ではなさそうだ。術士の繊細な指がしっとりと背を撫でれば目を閉じ、大人しく身を委ねてくれる。
 ラスベルトは霧雨蛙を丁寧に抱きかかえた。
 朝露に湿る若葉めいた香りと共に来た道を戻る。仲間が1人、待っていた。

 青い魔法陣に霧雨蛙がゆったりと落ち着けば、魔法陣は淡い青色に輝いた。
 理の樹冠の下、英明たる長耳は其の言葉を聴く。

『霧雨蛙は円卓の精霊術士と共にあり』

「さあ、楽しい時間は此処まで……。
 最奥に進んで僕達の務めを果たさないと」
 そのために、他の仲間を待たなければ。ラスベルトは呟いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
【POW】
(盾に乗ったまま)

力を示せ…と。
その試練受けて立ちましょう
私は炎蜥蜴達を捕まえましょう

「怪力」「鎧砕き」で壁面の魔鋼鉄をボール状に抉りとり、お手玉をします
炎蜥蜴が興味を引かれて集まったら高く放り投げ、「スナイパー」技能を活かし格納銃器で射撃、細かく粉砕
落ちてくる破片は盾から降りて、そのまま扇よろしく「怪力」で扇いで安全な場所へ吹き飛ばします。

災魔を退ける力と技、両方を示すパフォーマンスをすれば炎蜥蜴達も近寄って動きを止めるはず
そこを優しく捕まえてあげましょう
ですがいざとなればヘッド「スライディング」も辞しません

疾風鼬の数が足りないときは盾のサーフボードでの全開速度で対応します



●炎蜥蜴はよじ登る
 盾に騎乗したままのトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は散り散りになる精霊たちの背に呟いた。
「力を示せ…と。その試練受けて立ちましょう」
 トリテレイアは怪力を発揮し、壁面の魔鉱鉄に拳を叩き付け砕くと壁を円状に抉り取る。砕かれた瞬間、赤紫色の魔鉱が極光めいた光を放ち輝き、数秒間、周囲に眩さを足した。
(この鉱石は強い衝撃を与えると発光するのでしょうか)
 特性に目を惹かれつつ、トリテレイアは砕いた魔鉱でお手玉を始める。
 炎蜥蜴たちは興味を惹かれ、木陰から顔を覗かせた。
(集まってきましたね)
 トリテレイアはすかさず魔鉱を天へと放る。高く放物線を描く赤紫。炎蜥蜴たちが首をもたげて視線を奪われる。

 タタタタタッ、

 軽やかに銃音をたてて格納銃器が火の花を咲かせた。集中した火力により砕かれた欠片が火の粉のようにパラパラと舞い降りる。そのすべてを重量感のある大盾で受け止め、扇の如き扇ぎでパラリと払って『魅せた』。

 力強くも美しい技に見惚れる炎蜥蜴たちに機械人形は膝をつく。
 静寂を友としそっと白い腕を差し出せば、炎蜥蜴の1匹が自らするりと肩へとよじ登った。
 花精霊が反対側の肩に寄り、囁く。
『気に入られたようですね』
「それにしても精霊に囲まれると、自分が御伽噺の登場人物そのものになったような気がして感慨深いですね」
 トリテレイアがしみじみと呟くと、花精霊は呟きを返した。
『あなたたちを見ていると、過去に迷宮を訪れた何人もの英雄の方々を思い出します。彼らは常命ゆえ、もう生きてはいないのでしょうけれど』
 遥か昔、最奥に災魔が湧いた時に都度英雄たちが現れ、戦ったのだという。
『何時の時代にも英雄はいるのですね』
 数百年後にはあなたたちも御伽話の英雄として語り継がれているかもしれません……、花精霊はそう言うと微笑むのであった。

 トリテレイアが仲間のもとへ戻ると、赤い魔法陣には既に炎蜥蜴が座っていた。連れて来た炎蜥蜴がひょこり、魔法陣に加わると赤の光が強まる。

『炎蜥蜴は円卓の機械騎士と共にあり』

 トリテレイアは未だ光の燈らぬ魔法陣を見る。
「あとは、疾風鼬ですね。今から追いかけて捕まえられるでしょうか」
 何処に逃げたか見当もつかない疾風鼬を盾のサーフボードで探しに走ろうかと決意した丁度その時、仲間は戻ってきたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

メリー・アールイー
いいよいいよ、あたし達と遊ぼうじゃないか

ReとRepeatモードでパワーアップ
疾風鼬の方向へ駆ける
Reをぶん投げては自分を操って引き寄せさせる
そしてまた駆ける…を繰り返して追いかけるよ
興味を持たれたら、Reと繋がる糸でグルグル巻き
つーかまーえたーっと

疾風鼬をもっと上手く捕まえられそうな人がいたら
自分は他の人の補助に動こうかね
彩縫狩縫の属性攻撃で
炎蜥蜴と霧雨蛙と捕まえる手伝いをしよう

力に魅せられている炎蜥蜴は、水属性の青い糸で縫い付ける
霧雨蛙探しは、
痺れさせる雷属性の黄色い糸を罠のように張り巡らせて
何処にいるか見当をつけるのはどうだろう
湖の周りや、その近くの金色の葉っぱが怪しいね(第六感)



●疾風鼬は降参する
「いいよいいよ、あたし達と遊ぼうじゃないか」
 林檎の花がほんのひととき咲いたような声であった。
 ちいさなメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)はからくり人形『Re』とダブルドールダンスで元気に地を蹴る。
 
 追いかけっこだ。
 
 そんな風に目で誘い、疾風鼬が先を往く。速い。疾い。遠くなる。
 継ぎ接ぎだらけのメリーは諦めない。赤いリボンを揺らし走りながら頷いた。
 呼ぶ。
「あーる、いー」
 それは、大切な相棒の名。
「モード、Repeat!」
 まるで、他愛のない遊びのように。
 ちいさなメリーが、もっとちいさなReを空へと舞わせる。
 煌めく瞳には世界が映る。金と灰と赤紫の世界を真白のReが奔放に飛んでいく。

 遠く、遠くに、ひとっ飛び。

 Reがぽーんと木々の隙間を飛びぬけていく。
 走っていたメリーがその勢いのままに軽く跳ぶ。Reは空中で細糸を手繰り寄せる。くいっとメリーが引き寄せられ、Reのもとへ飛んでいく。

 木々の隙間を、軽やかに。

 メリーは一瞬でReのもとへ飛んだ。ぎゅっとReを掴み、子猫のように着地する。道の先を見れば、さっきよりも疾風鼬に近づいた、気がする。
 頷きひとつ、継ぎ接ぎだらけのちいさな手は再びReを道の先へと放った。
 そして、自身も飛ぶ。

 ぽーん、

 目前に佇んでいた灰の木々はあっという間に後ろへと流れていく。上を見れば金色の葉っぱたちが流星のような軌跡になって。鼻腔を擽るのは不思議と甘い金葉の香りと灰の香り。

「ふふふ、」

 木々の間を風の如く抜ければ涼やかで心地良い。風がなくても空気がある。
 Reが飛び、メリーが跳べば風になる。

 ――ほら、もう目の前だ。
 
 継ぎ接ぎだらけの肌は林檎めいて色付き、楽しそうに繰り返し交互に空を舞い追えば遊戯めいた光景。振り返った疾風鼬もびっくりだ。
 其処に、糸がふわりと絡みつく。
「つーかまーえたーっと」
 ぎゅっと抱きしめれば疾風鼬は降参、降参と尾を振った。


 緑の魔法陣の上を疾風鼬が跳ね回ると、魔法陣は淡い緑色に輝いた。疾風鼬がすこし悔しそうに呟いた。
『疾風鼬は人形遣いと共にあり』

 メリーはニコニコと仲間に手を振った。
 と、其処へ時を同じくして他の仲間も戻ってきた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベリザリオ・ルナセルウス
今度は鬼ごっこか。これは困った。私はあまり足が速くない。
向こうに止まってもらうしかないな
やはりと言うかなんと言うか強いオブリビオンの気配を感じたのか噂を聞いたのかわからないが、織久もここに向かっていたらしい
彼に協力してもらって『疾風鼬』を捕まえてみよう
【鈴蘭の風】を今度は勢いよく舞わせる。
ただし攻撃にならないように、威力ではなく花弁の数と舞う速度にだけ全力を注ぐ。
『疾風鼬』の気を少しでも引けたら織久のユーベルコードで捕まえられるだろうか?

●織久に
君がこっちに渡ったと聞いて来たんだが、今回は私の方が先だったな。
けど正直助かったよ。私は足が速くないから精霊たちの鬼ごっこの相手は務まらなかったんだ。


西院鬼・織久
【SPD】
【心情】
敵がいると聞いて来たのですが、ベリザリオがいるとは
俺も早く敵を狩に行きたいのです。協力しましょう
我等が狩るべきはオブリビオン
その道行を邪魔するのであれば容赦はできかねます
が、そのような事は出来る限り避けたいので

【行動】
対象:『疾風鼬』
ベリザリオの行動を手助けする
「視力」「暗視」で樹木やパイプ群の配置を確認
逃げ込まれそうな場所にはあらかじめ注意をしておく
「先制攻撃」の立ち回りと「ダッシュ」を利用して追跡
『疾風鼬』が射程範囲内に入ったら「咎力封じ」での捕獲を試みる
遮蔽物が多く命中させるのが難しいなら乱暴と承知で「範囲攻撃」「なぎ払い」で切断
それで驚き足が止まるならその隙を突く



●疾風鼬は光の中に
 ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)は散り散りになって逃げていく精霊たちを見て眉を寄せた。
「今度は鬼ごっこか。これは困った。私はあまり足が速くない。
 向こうに止まってもらうしかないな」
 神妙な面持ちで呟く。

 其処へ聞きなれた声が掛けられた。
「敵がいると聞いて来たのですが、ベリザリオがいるとは」
 ベリザリオが振り返ると、オブリビオン狩りを至上目的とする西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)の姿があった。たった今2層へと駆けつけたのだ。
 ベリザリオは淡く眦を緩ませ歩み寄る。
「君がこっちに渡ったと聞いて来たんだが、今回は私の方が先だったな。
 けど正直助かったよ。私は足が速くないから精霊たちの鬼ごっこの相手は務まらないかと思っていたところだ」
 事情を話し協力を仰ぐと、織久はコクリと頷いた。
「俺も早く敵を狩りに行きたいのです。協力しましょう」
 赤い瞳は道の先にいるであろう敵を想い爛々と輝く。
「我等が狩るべきはオブリビオン。
 その道行を邪魔するのであれば容赦はできかねます」
 言葉は淡々と紡がれたが、心の内では殺意と狂気が渦巻き焦がれている。敵を狩り怨念の糧とせん、と。
 そんな彼の様子を見て密やかに紫水晶の瞳の翳る。
 気付いてか、それとも気付かないでか、織久は付け足した。
「……が、そのような事は出来る限り避けたいですね」
 織久は軽く肩を竦めると、ベリザリオを促した。

 疾風鼬が数匹、木陰から顔を出して誘っている。
「律義ですね。待っていてくれるんですか」
 織久は言いながらベリザリオの行動を手助けする方策を立てるため、周囲に視線を走らせた。優れた視力は必要な情報を逃さない。逃げ込まれたら厄介な場所や追い込みやすそうな場所を確認し、相方へと伝える。
 一方でベリザリオもまた、織久のサポートとして動く事を考えていた。
 やがて大体の方針が定まると、2人はどちらからともなく視線を合わせ、頷いた。
 捕縛に動き出す気配を察し、疾風鼬たちは楽し気に駆けだした。数匹が三方向へと別れる。壁際のパイプ群に向かうもの、湖に向かうもの、そして木々を只管駆けるもの。
「ベリザリオ、」
「あれを追おうか」
 肩を並べて疾駆する2人は視線を交差し獲物を決める。

 織久は先んじて加速する。
 狙うは木々駆ける1匹だ。地を蹴る脚に力を籠めダッシュで距離を詰めると、目当ての疾風鼬は其の速度に驚いたようだった。地を走るのを止め、手近な木を直角に駆けのぼる。疾い。疾風鼬は瞬きする間に遥か高みまで登っていった。

 高所にまでは追ってこれまい、と得意顔の疾風鼬。
 だが、其処へ手を伸ばす者がいた。四枚羽を柔らかに広げたベリザリオである。凛然と伸ばした指先からは精霊たちに先刻披露したのと同じ愛らしい白花が舞う。
 地上では上空を舞う白花を織久が見守っている。
(傷つけることのないように)
 祈りと共にベリザリオは花弁を繊細に操った。素早く舞わせた小さな花の白は決して対象に触れることなく疾く追い立てるのみの花吹雪となり、疾風鼬を上から攻める。疾風鼬は慌てて隣の木へと飛び移るが、其処にもやはり真白の群れが追いかけていく。同時に、地上の織久も木の下へと移動していた。
 疾風鼬は花の群れを厭い、地へ駆け降りた。地表の茂みに身を滑り込ませ隠れようとする。
(射程に入った!)
 地上で待機していた織久は降りて来た疾風鼬目掛けてすかさず拘束ロープを放つ。同時に闇器で茂みを薙ぎ払う。傷を付けるためではない。動きを制限するためだ。高精度で放たれた技は狙い通りに働き、疾風鼬は慄然と急停止した。
 そして、拘束ロープに捕らわれる。

「捕まえたのか?」
「此処に」
 ベリザリオがひらりと降りてくる。
 織久はロープを手繰り寄せ、淡々と疾風鼬を見せた。
 身を捩る疾風鼬を捕まえ宥めつつ、織久は此の先に待つオブリビオンへの闘志を燻ぶらせていた。赤い瞳が熱を燈し炯々とする。
 そして、視線をふとあげると疾風鼬の捕獲を喜ぶ相方が目に入る。
 捕り物を見学しに来たのか、いつの間にか集まっていた花精霊たちの淡い光が互いの髪に跳ね、周囲は光に包まれていた。

 2人は肩を並べて仲間たちのもとへと戻った。
 魔法陣には他の仲間たちが捕まえた精霊たちが居座っている。
(どうやら先へ進めそうだ)
 2人は安堵した。

 魔法陣へ疾風鼬が勢いよく飛び込むと、魔法陣は緑色の輝きを増した。
 疾風鼬は元気に言う。

『疾風鼬は2人の騎士と共にあり』

 言葉と共に3つの魔法陣が煌びやかな光を放つ。
 すると、3つの魔法陣の真ん中に歯車を模った転移装置が現れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『錬金術ドラゴン』

POW   :    無敵の黄金
全身を【黄金に輝く石像】に変える。あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になるが、自身は全く動けない。
SPD   :    ドラゴンブレス
【炎・氷・雷・毒などのブレス】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    アルケミックスラッシュ
【爪による斬撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【に錬金術の魔法陣を刻み】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●歯車は作動する
 3つの魔法陣の真ん中に歯車を模った転移装置が現れた。
「これを使えば3層に行けるんだね」
 仲間たちは頷いた。歯車を作動させると足元に転移の魔法陣が浮かび上がる。
 視界が揺らめく。空間移動をしようとしているのだ。

『炎蜥蜴は共に』
『疾風鼬は共に』
『霧雨蛙は共に』

 声とともに精霊たちが魔法陣へと潜り込む。そして。

『花精霊は共に』

 4種の精霊たちが彼らにお供した。
「さあ、ここからは僕達の務めを果たさないと」
 ――彼らは3層に辿り着いた。

●アルダワの英雄たち
 分岐のひとつもない狭い通路だった。
 天井も低く、背の高い仲間はかがんで通らなければならなかった。
 足元は岩のように固い地面だった。壁からは、時折蒸気が噴き出していた。

 其処は漆黒の闇に覆われていた。光を放つものはない――否、精霊たちが淡く光を纏い、ささやかな光をもたらした。

「扉だ」
 通路を抜けると大きな扉があった。
 扉には多種の宝石が埋め込まれ、魔導文字が発光している。
 知識のある者はその文字を読みあげた。

 液体を蒸発させると動力を得る。これは魔法に非ず。
 発見は文明を発展させた。
 歯車は動力を伝える装置である。
 単品では役目を果たせぬ其れは全体を構成するひとつにして要である。
 我々には魔法の力と機械の力がある。
 そして、我々はひとりひとりが社会を動かす歯車であった。

 円卓の同志よ、アルダワの友よ。
 英雄は災魔を地下迷宮アルダワに封じ、戦ってきた。
 英雄とはすなわち、アルダワの誇り高き歯車である。
 
●闇
 扉を開けると一層深い闇が満ちていた。精霊の光すら掻き消されたような重く圧し掛かるような暗闇。隣に立つ仲間の顔も視えない。
 しかし、圧倒的な敵意は前方にあった。蠢く気配。
「敵は前だ」
 誰かが呟いた。
●8人
 暗視の技能を所有する者は其の姿を見た。猛々しい牙。長い尾。重厚なる四肢。全て黄金に固められた竜が身を起こす。
 黄金が軋んでバキ、バキと音が漏れる。
「扉が!」
 仲間が叫ぶ。
「扉が消えた!」

 同時に、咆哮が轟く。

 オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!

 ビリビリ、と大気が震える。ある者は耳を抑え、ある者は仲間を守る意思を強め、またある者は闘志を燃やす。
 フロアに辿り着いた者は、8人。これより後の援軍は見込めない。
 行動した者のみが災厄を防げる。そして、其れが許されたのは今、この場に揃いし8人のみなのだ。
トリテレイア・ゼロナイン
ルベル様の予知通り暗所での戦闘ですね

衝撃を与えると発光する特性を鑑みて、先程大量に魔鉱鉄を採取しました
これを辺りにばらまき「暗視」「スナイパー」で砕かぬよう撃ち、必要に応じて光源といたしましょう

「武器受け」「盾受け」「かばう」で仲間や精霊達を守ります
ブレスにはUCで対抗

石像に変化したら無敵…ですが動けない弱点を精霊達に手伝ってもらい突いていきましょう
四肢の地面を「怪力」で砕き、霧雨蛙に泥濘にしてもらいます
四肢が泥に沈んだら炎蜥蜴、疾風鼬の炎と風で急速乾燥し拘束
花精霊には草花や根で拘束の補助を

一瞬しか拘束効果は望めませんが、その一瞬の無防備をついて大盾で「鎧砕き」等の最大の一撃を叩き込みましょう


アドニード・プラネタリア
攻撃は最大の防御だ♪

ユーベルは技能の(全力魔法)を込めて。

通常攻撃も防御も回復も、技能の能力アップ頼みだよ。

(破魔,衝撃波,2回攻撃,生命力吸収)が攻撃のメイン。

(残像,盾受け,見切り)が防御のメイン。

(祈り)が回復。
対象は僕だけじゃなく、他の猟兵もだよ。
(目立たない)は使えるかな?

他の猟兵との連携を取りたい。
ソロは苦手だ。


ミラ・アルファ
認めてくれた精霊達の想いに報いなきゃ、格好つかないよね。

暗闇でも精霊達の光とか、貰った林檎のおかげで少しは見えるのかな?それなら、【先制攻撃】でドラゴンが反応するより先に動きます。【串刺し】と【鎧無視攻撃】を併用してドラゴニック・エンドをぶつけます。


ラスベルト・ロスローリエン
『円卓の末席、アルダワの友に連なる栄誉に懸けて』
夜明け告げる明星の光を杖に宿し闇に隠れし竜の姿を露わにしよう。

【WIZ】
光り輝く“翠緑の追想”を突き出し【高速詠唱】で《万色の箭》を詠唱。
常の呪文に加え傍らの精霊達に呼び掛ける。
『親愛なるともがら達。どうか僕の魔法に力を貸しておくれ』
「炎熱」「疾風」「霧水」「百花」の四矢を編み心で弦を引き絞り撃ち放つ。
ブレスが放たれる瞬間を狙い【属性魔法】【全力魔法】で顔面に叩き込む。
竜が力を増す錬成陣を生み出したら矢を降り注がせ陣を壊し退けよう。

見事竜を仕留めたら精霊達に感謝を告げるよ。
『助力に感謝を……また君達の育んだ幻想の世界に遊びに来ても良いかい?』


西院鬼・織久
【POW】
【心情】
漸く見える事ができました
例え暗闇に居ようとも分かる
我等が敵、オブリビオン
我等が怨念の糧となるがいい

【行動】
「第六感」「暗視」を使用
敵ごと「殺意の炎」で周辺を燃やし暗闇が変化するか試す

【戦闘】
炎が効かなければ「ダッシュ」をして「先制攻撃」を仕掛ける
有効打にならなくとも続けて「鎧無視攻撃」を行う
ほぼ無敵の守りを崩すべく少しでも傷がつけば「傷口をえぐる」と「二回攻撃」で更に損傷を与える
敵の攻撃が激しく近寄れないなら傷口に「範囲攻撃」「殺意の炎」を集中させて攻撃

敵からの攻撃は「見切り」
避けられず致命傷になるものだけ「武器受け」
「残像」「フェイント」で敵の隙を誘い攻撃の機会を作る


ベリザリオ・ルナセルウス
この暗闇……あちらは暗視能力でもあるのだろうか?
私が光を生成してみよう
おそらく目立って狙われるだろうが構わない。その分皆が無事でいられる
それに織久も……彼の戦いは自分すら傷付け呪うものだ
私が囮になる事で少しでも彼を苦しめないようにしたい


【生まれながらの光】で周囲を照らす
目立って狙われるだろうからいつでも防御できるように気を引き締めよう
敵の攻撃がきたら【武器受け】で受け止める
そのまま敵を自分に引き付けられたらいいんだが
仲間が傷付いた時も【生まれながらの光】で治療しよう
誰一人として倒れる事なく終わらせて見せる


ベガ・メッザノッテ
母校のピンチと聞いテ、遅れ馳せながら参戦するヨ〜!(UCの死霊蛇竜に乗って参上)

竜の鱗がキャラメルみたいでオイシそうだネ〜、剥ぎ取って食べられたりしないかナー?(じゅるり)

死霊騎士に猟兵と精霊たちの護衛を任せるヨ。ドラゴンブレスとか危ないからネ!

暗いなら【暗視】が有効かナ?赤い目を爛々とさせて敵を目で捉えたラ、蛇竜に乗って天から緋椿(装備品)で【なぎ払い】しちゃうワ〜!
その飴色の装甲も【鎧無視攻撃】で砕いちゃうヨ〜! 今日のアタシのおやつになってネ!…【吸血】【生命力吸収】ン?…オイシくないじゃないノ!(ぺぺっ)

●口調プレイングに合わせて下さい。改変アドリブ連携、歓迎です。


メリー・アールイー
誰か灯りを!炎の糸を張り巡らせるくらいしか
あたしには出来んもんで
ありがとねぇ助かったよ!

基本はモード「Repeat」で仲間を援護するよ
ちっぽけなあたしでも、皆と噛み合う歯車になれるように

【フェイント】も交えて敵を翻弄しつつ
チャンスが来たら、彩縫狩縫で動きを封じよう
いつもより疾く縫える気がする…
鼬が力を貸してくれているんかね、ありがと!
【属性攻撃】で強化した風雷の千鳥かけを素早く放つ
錬金術師のマントのように翻す、
その翼を後ろで縫い合わせてしまおう

爪の斬撃は追いかけっこと同じ要領で
Reと共に遠くに飛んで避けよう
巨大化させた針山クッションに攻撃を受けさせれば、
魔法陣も回避出来んかね

おやすみドラゴン。




 8人がいた。

 玲瓏なるベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)。
 毅然たる西院鬼・織久(西院鬼一門・f10350)。
 爽涼たるベガ・メッザノッテ(残夢紅華・f00439)。
 凛然なるメリー・アールイー(リメイクドール・f00481)。
 奔放なるアドニード・プラネタリア(天文得業生・f03082)。
 勇壮なるミラ・アルファ(ミレナリィドールのシンフォニア・f05223)。
 英明たるラスベルト・ロスローリエン(灰の魔法使い・f02822)。
 清霜たるトリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)。

 オオォォォ……、

 黄金の竜が蠢いていた。むき出しの牙は敵意に満ちている。

 精霊たちは、其処にいた。


「母校のピンチと聞いテ、遅れ馳せながら参戦するヨ〜!」
 死霊蛇竜に乗って駆けつけたベガは『暗視』により竜を鑑賞していた。赤い目は爛々としている。
「竜の鱗がキャラメルみたいでオイシそうだネ〜、剥ぎ取って食べられたりしないかナー?」
 じゅるり、と擬音が聞こえそうな口ぶりであった。


 漸く。
 織久は暗闇を睨みつける。その瞳は猛ける戦意に煌々としていた。

 漸く。
 例え暗闇に居ようとも分かる 我等が敵、オブリビオン
 我等が怨念の糧となるがいい。

 闇を見通す赤い瞳が爛々とする。

「この暗闇……あちらは暗視能力でもあるのだろうか?」
 傍らでベリザリオが懸念する。一方的な不利を強いられる事態は避けたい。
「私が光を生成してみよう」
 提案する。初動の時間は限られていた。己の言葉に対し、傍らでもの言いたげな気配を感じる。視えなくても其れが誰なのか、ベリザリオには判っていた。
 言葉を待つ必要はない。思うがままにベリザリオは飛び出した。味方から離れ、高く舞う。同時に光を身に纏う。

 泥濘のように重く広く揺蕩う暗闇の中、最初、掻き消されそうな其れは小さな光だった。だが、高度を上げるにつれて光は段々と強さを増していく。
 其の光は集中して狙われる格好の的となるだろう。ベリザリオは暗視を備えていない。そのため、彼は眼下で己を捉えて狙っているであろう敵の姿を目視できない。
「構わない」
 呟いた。
(その分、皆が無事でいられる)
 皆が――大切な仲間が。


 光が昇っていく。

 『暗視』を持つ織久は地を駆けた。其の狙うは先制。
 走るうち気付く。ぴたりと後ろに付いてくる仲間の存在に。
 竜騎士ミラが味方と敵の気配を追い、頼りない視界の中を竜槍と淡光の林檎を手に敵を狙っていた。其の姿は知らず味方を『鼓舞』する。
 そんな光を頼りによく走れるものだ、と感心する味方の内心も知らず、ミラは弾丸めいて走る。生死を懸けた戦場には稀にある――其の意気は技巧を越え、不可能をも可能とする勢いであったのだ。会心の先駆。
 
 先制攻撃。2人の頭にあるのは其れだった。

 『暗視』を備える織久の瞳は闇を見通す。高く舞い昇る光を狙い、今まさにブレスを撃たんと黄金を軋ませる竜の姿。隙があった。その隙はすなわち、頭上で敵を引き付ける『聖騎士』の作った隙である。
「――オブリビオン!」
 殺意の炎が滾る。許さない、許してはいけない。炎は黄金を包む。暗闇が押し寄せるように炎を掻き消さんとしていた。同時にその足元へと織久は闇器を叩きこむ。黄金の鱗に刃が届く。硬い。だが、3レベルもの『怪力』と『鎧砕き』、そして『鎧無視攻撃』。熟達の技能は堅陣な黄金の防護を破る。
 ほぼ同時にミラが鋭く竜槍を突き出す。『串刺し』『鎧無視攻撃』黄金の鱗を熟練の技能が打ち破る。

 ――敵の防御は破れる。

「いける――ユラン!」
 ミラが高揚のままに呼べば自身のドラゴンが応えてくれる。竜槍が白銀の竜の姿となり、黄金竜へと牙を立てた。
 織久も黄金竜の傷へと二刃を叩く。黄金の鱗が落ち、中の肉へと刃が到達。竜は悲鳴をあげ――ブレスも放たれていた。悲鳴に中断されたブレスは本来放つ予定だった其れよりも薄い威力であったが、間違いなく高宙へと放たれた。


 聖騎士ベリザリオは端然と羽を広げ、高宙に停止していた。
 清廉な気で防御を高める。
 淡く刀身が煌めく誓いの剣を構えた。覚悟は出来ていた。

 ――来た!

 轟、と音がして妖気が渦を巻く。闇に溶け込み、視えない其れは紛れもなく下から放たれた。圧倒的な質量。範囲も広く避け切れるものではない。
「此れは、毒の渦か!」
 ベリザリオは押し寄せる渦へとオーラを集中させ、誓いの剣を全霊で振る。爽涼たる風が毒の波と衝突する。
「ッ……!」
 オーラで軽減し、剣の衝撃で相殺しても尚残る毒の波が純白の鎧を襲う。鎧は毒の波をさらに軽減した。が、ダメージは皆無ではなかった。毒の残滓が花堕とす風となる。
「……!」
 遠く自分を呼ぶ声が聴こえた気がした。認識もおぼろげに、光は落ちていく。


「神秘なる創造の焔を今ひとたび授け給え。
 天と地に、光と闇に、太陽と月に」

 ――我が言の葉の届く世界の全てに懸けて。

 闇の中、ひどく落ち着いた声が響いた。

 ふわり、落ちる聖騎士の身体が風に抱き留められる。其れは若木の如きエルダール、ラスベルトが操る風であった。

「治癒のできる方! お願いします!」
 地表にふわふわとゆっくり降りて来た聖騎士の身体をトリテレイアが確りと受け止めた。竜は織久とミラが足止めをしている。
 メリーが駆け寄る。『医術』は3レベル、『毒使い』も3レベルあった。知識は充分だ。メリーは炎の糸を張り巡らせる。だが、糸の光は空間を照らし充たすには足りない。
「誰か灯りを!」
 声にハッとして、トリテレイアは2層で採取した魔鉱鉄を周囲に撒いた。
 砕かぬよう力を調整しつつ、魔鉱鉄に衝撃を加える。魔鉱鉄は極光めいた光を放ち輝き、数秒間、周囲に眩さを足した。夜の漆黒に星々が眩く。休まずにもう一撃、衝撃を与えんとした時、何処からか衝撃の波が走り魔鉱鉄を煌めかせた。
(この技は)
 トリテレイアは知っていた。
(アドニード様)
 何度か戦場を共にした術者の存在は頼もしい。
「ありがとねぇ助かったよ!」
 傷自体は酷くない。メリーは声をあげる。その声は明るく、竜の足止めをする味方にも届き安堵させる。
 メリーは煌めく光の中を適切に傷の処置をしていく。

 一方、ベガは地へとその手を振る。
 其処に侍るのは呼び出された死霊騎士だ。従順に膝を付き、主人の命を待っている。
「護衛を任せるヨ。ドラゴンブレスとか危ないからネ!」
 ベガは治療中の仲間へと視線を遣る。
 治療中の仲間たちを守っていたトリテレイアは死霊騎士に目礼すると、黄金竜の足止めをしている仲間へ視線を移した。


 黄金竜は怒りに瞳を燃やしていた。
「くっ」
 宙に気を取られていた時と違い、今や猛攻が黄金竜の前にいる2人を襲っていた。
 だが、初撃の効果は間違いなくあった。敵にはダメージが蓄積されており、少なからず動きは鈍っていた。無傷の状態で囮がいなければ、武器の射程へと近接の初撃を届けることすら難しかったであろう。

 強靭な尾の一撃が身を襲う。織久は第六感の囁くまま後ろへと跳ねた。鼻の先を尾が通り過ぎていく。一瞬遅ければ頭を痛打し、首の骨が折れていたかもしれない。冷や汗が背をつたう。
 尾が再び襲う。すでに一度見ていた軌道を彼は『見切った』。続く追撃の爪は闇器で勢いを殺す。それでも、暴力の如き竜の力は侮れない。
 跳躍。後退。痛覚と湿った感触に手を遣ればいつの間にか掠ったらしく肩に軽い裂傷を負っている。血が流れていた。
「!」
 と、小柄な竜騎士ミラの身体が前方で爪に引っ掛けられ、吹き飛ばされてきた。ミラは地面を転がり、しかし竜槍を手に立ち上がる。其の姿は、白花めいた外見に見合わぬしたたかさを見せていた。
「認めてくれた精霊達の想いに報いなきゃ、格好つかないよね」
 声に視線を遣ると、頭からぽた、ぽたと血が滴らせ、けれど笑顔を浮かべ、ミラが竜槍を構えていた。全身に無数の傷がある。
(やっぱり、視界がこころもとない)
 それでも、と瞳に闘志を燃やし、再度突撃をしようとしたミラの視界が光を感知した。

「待たせてしまったね」

 黄金竜の周囲を照らすほどの大きな魔法の光。
 もたらしたものは、
「ラスベルトさん!」
 灰の魔法使いが掲げるのは夜明け告げる明星の光。

 ラスベルトの光は闇に隠れし黄金竜の姿を露わにする。怒りに震える巨躯を。
 黄金の鋭爪が振りかざされる。
「お任せを!」
 割り込んだトリテレイアが危なげなく長剣で受け止めた。
 同時に、彼は想う。思う。
  
 弱者を護り、仲間を守り、名誉を重んじる……、
 其れは、彼のデータに組み込まれていた。

 其れゆえに彼は騎士を模した行動を取ってきたのだ。
 今、彼の周囲には其の身を囮として勇猛に初撃の隙を作り出した騎士と、傷を負いながらも戦意を高ぶらせる騎士たちがいた。

 本物の騎士と自分は異なる――彼は、そう思う。
 其の考えは今のような時、ふと湧き出ては機械人形の『心』に翳を落とすのであった。


 黄金竜は前方に集まる猟兵たちへと憎々し気にブレスを吐いた。パリパリと硬質の音をたて迸る其れは、
「――氷!」

 迫りくるのは圧倒的な質量。逃げる猶予もなく。見るものは死を覚悟する。
 だが、
「わたしの後ろに!」
 大盾を突き出し立ち塞がるは数いる猟兵の中でも最高峰の経験と技能を誇る堅牢なるトリテレイア。
「ッ……!」
 堂々たる機械騎士は大盾と半身を氷付けにされつつも、すべての攻撃を防ぎ切る。後ろに通す氷撃はなかった。
 氷と無敵城塞は彼の自由を阻害していたが、大盾と其の堂々たる身体ごと無敵の城塞となりて仲間を護る意志は傷ついた味方の心をおおいに奮い立たせた。
 其れは、守護騎士の名の相応しい大立ち回りであった。


 そして、其の間に後方では仲間の治療が完了していた。
 蛇竜が『もう護衛は終わり? ご褒美くれる?』と嬉しそうに尾を振るのをベガがねぎらっている。

「モード『Repeat』!」
 ベリザリオの治療を終えたメリーが高らかに声をあげ、ちいさなちいさなReをぽーん、と投げた。

 ――ちっぽけなあたしでも、皆と噛み合う歯車になれるように。

 光源の作成作業から解放されたアドニードも祈りを織り交ぜ九字を切る。
「禍物禍事、引き受ける……癒しの戸!」
 癒しの力は爪撃で傷ついた仲間たちを大きく癒していく。そして、トリテレイアの氷へと近づいた。
「これは少し時間がかかるかな」
 氷へと破魔の呪文を唱える。徐々に氷が溶け始めた。

「時間を稼ぐよ!」
 2層を駆け抜けたのと同様にReとメリーが宙を飛ぶ。攪乱の動き。其の独特の動きに竜は戸惑いながらも鋭い爪を揮う。圧倒的な暴力をもって薙ぎ払わんと。
(! 魔法陣が!)
 メリーは気付いた。爪は同時に地を刻み、魔法陣を作っている。
(いけない)
 完成させてはいけない。メリーは針山クッションを巨大化させ、竜に投げた。竜は忌々し気にクッションを睨み、ズタズタに引き裂く。
 針山クッションにより魔法陣の完成は確実に一手遅延させ、
「……!」
 ひやりと感じるものがあった。咄嗟にメリーはReと共に遠くへと飛ぶ。爪が追いかけてくる。
(間に合わない!?)
 ぎりぎりの回避。メリーは着地と同時に息を吐く。危ないところだった、と。そして、ハッとした。
「Re!」
 見ると、Reの衣装が破れていた。赤いリボンもほどけている。
 まるで、代わりにダメージを受けてくれたかのような。
 メリーはぎゅっとReを抱きしめた。

 其のメリーの前にアドニードの治癒により傷の癒えたミラと織久が立つ。そして、光がメリーとReを包んだ。癒しの光だ。
 見れば、回復したベリザリオが戦線に復帰していた。清絶たる光は意思を何よりも強く伝える。

 誰一人として倒れる事なく終わらせて見せる、……と。


「真似させてもらうヨ!」
 そのベリザリオへと声をかけ、ベガは蛇竜に乗り舞い上がる。
 空中と地上とでの2方面攻策は有効であった。前線では他の仲間たちがすでに交戦中だ。その隙を狙い、

「その飴色の装甲も砕いちゃうヨ〜! 今日のアタシのおやつになってネ!」

 空から『緋椿』の名を冠する鎌で敵を薙ぐ。技能『鎧無視攻撃』は2レベルある。

 ザクり。

 手応えと共に数枚の黄金の鱗を剥ぎ、その下の皮膚をも――、
「――カタいじゃないノ!」
 硬質な音を響かせて鎌は弾かれる。
 強敵に脅威を覚えた竜が自らを黄金の石像へと変質させ、防御を固めたのだ。

 だが、無敵の石像と化した竜にも弱点はある。
 アドニードの破魔により氷から解放されたトリテレイアは黄金竜へと突進した。
 四肢の地面へと拳を叩き付ける。怪力は地面を破砕した。

「霧雨蛙様! この地面を泥に変えてください!」
 声に応え、霧雨蛙は黄金竜の四肢の地面を泥濘へと変えた。

 其れを確認するとトリテレイアは次に炎蜥蜴と疾風鼬を呼ぶ。
「炎蜥蜴様は炎を周囲に! 疾風鼬様は風を!」

 炎蜥蜴と疾風鼬が応える。土が固まり、四肢を固定する。
 花精霊が仕上げとばかりに周囲に蔓を生やし、黄金竜の四肢を拘束する。

 黄金竜は不快気に防護形態を解除し、拘束を破壊しようとした。
 一瞬の隙。

「さ、ちょっくらお仕置きが必要かい?」
 好機を逃さず、メリーがユーベルコード『彩縫狩縫』を発動する。しつけ針から属性縫いを放ち、縫い合わせることで竜の動きを封じようとしているのだ。

「いつもより疾く縫える気がする……」
 メリーは気付いた。
 周囲にはいつの間にか疾風鼬が集まっている。
 風がふわりとメリーを包み、守るように展開されていた。

「力を貸してくれているんかね、ありがと!」
 疾風鼬たちは一斉に尾を振った。
 メリーは継ぎ接ぎの頬を林檎の花のようにほころばせた。そして強化した『風雷の千鳥かけ』を風のように放つ。


 錬金術師のマントのように翻す、
 その翼を後ろで縫い合わせてしまおう。


 竜が悲鳴をあげた。更に、隙が生まれた。


「攻撃は最大の防御だ♪」
 アドニードは破魔の衝撃波を連続で放つ。苦し紛れの爪撃が奔ればアドニードは判断する。盾で受けるには威力が勝ちすぎる。目を煌めかせ、ダンピールが身を沈めた。戦い慣れた動き。
 アドニードを引き裂かんとした凶爪が虚空を薙ぐ。
「それは、残像だ!」
 からかうように声をあげながら子猫のように跳ねるアドニードは、追撃を厭い軽やかに距離を取る。味方との連携を得意とする少年の真髄が此処にある――、少年に気を取られている黄金竜を、ミラの竜槍が深く貫いた。其の突きは戦闘を始めた時よりも適格に鱗を貫く。『学習』しているのだ。

 ベガも味方の攻撃にあわせ、竜の鱗へとぺたりと手を付いた。鮮烈な光。竜が苦しそうに身を捩る。ベガが生命力を直に吸収しているのだ。
 単純な傷によるダメージのみならず、純粋な生命力を消耗し、竜は徐々に弱っていく……。
「ン?」
 ベガは眉を寄せた。
「……オイシくないじゃないノ!」
 舌を出し、ぺっぺっと唾棄する仕草をする。お口に合わなかったらしい。
 蛇竜が主を案ずるように首をもたげた。ベガはやさしくその首を撫でた。

 織久もまた、身を沈め、黄金竜の足元へとひた駆ける。
 その背を守るようにベリザリオが走っていた。
(彼の戦いは自分すら傷付け呪うものだ)
 すぐ前を走る姿を案じるように。
(少しでも彼を苦しめないように援護したい)
 聖騎士はそう思うのだった。
 生まれながらの光は明るく周囲を照らす。其の光は敵にとってはこの上なく目障りな光であり、味方にとっては希望を象徴するような、そんな美しい光であった。

 竜が周囲に集まる猟兵たちを纏めて薙ぎ払わんと尾を振り、吠える。織久は脚に力を入れた。跳ぶ。同時にベリザリオがカバーに動いていた。尾をがっしりと剣で受け止める。『武器受け』技能は判定を引き上げた。

 竜の戸惑う気配を嘲笑うように織久は跳んでいた。
 手には黒い大鎌があった。怨念が血色の炎となり燃えている。
 敵を喰らえ、滅ぼせと燃えている。

 赤い瞳は爛々と光る。殺意と狂気、
 そして仲間を傷つけた事への怒り。

「さあ、終わらせようか」
 同時に、ラスベルトの『翠緑の追想』が光り輝く。
 其れはかつて森の都に聳えた大樹の枝、失われた故郷の形見。

「この手に構えるは森羅の大弓」
  番えたるは万象織り成す四大の矢。
「言の葉の弦をいざ引き絞り」
 常闇穿つ黎明の嚆矢とせん。

 高速の詠唱は乱れない。光が眩く収束する。放つ間際、ラスベルトは友へと呼びかけた。
「親愛なるともがら達。どうか僕の魔法に力を貸しておくれ」
 周囲を飛び交う精霊たちは友の呼びかけに応え、一斉に力を集める。
 
 炎熱。赤い光が。
 疾風。緑の光が。
 霧水。青い光が。
 百花。白い光が。

 フロア全体をも照らし出す一層大きな光へと為る。ラスベルトは属性の四矢を編み弦を引く。同時にトリテレイアが大盾を突き出し、黄金竜へと突進した。

「円卓の末席、アルダワの友に連なる栄誉に懸けて」

 

 闇を打ち消さん。



 上空からの織久、地上からのトリテレイア、そしてラスベルトと精霊たちの光が黄金竜を打ち砕く。

 オオオオオオオオオオオオォォッ!!

 悲鳴と共に黄金竜は悶え、やがてパラパラと其の黄金の身体が崩れ始めた。
「骸の海にカエるんだネ~!」
 ベガが赤い目をいっそう華やかに輝かせた。蛇竜と騎士がその傍らに侍っている。
「おやすみ、ドラゴン」
 メリーがReを抱きしめながらつぶやいた。

 仲間たちは顔をあわせ、歓声をあげる。
 戦いは、終わったのだった。


 黄金竜を倒したのち、フロアに再び扉が現れた。
「迷宮って不思議だなあ」
 ミラが呟く。その表情はおだやかな春の陽光めいていた。
 仲間たちは1層まで戻り、其処で再び精霊たちと御茶会を楽しんだ。そして、再び自分たちの世界へと戻っていく。
 戦場に身を置く者どうし、再び別の戦場で会うこともあるだろう……、そんな予感と共に。

 ラスベルトは去り際、初めて挨拶をした時同様に帽子を取り精霊たちへと言葉を手向けた。
「助力に感謝を……また君達の育んだ幻想の世界に遊びに来ても良いかい?」
 精霊たちは喜び、ひときわ明るい光を放つのであった。

●『四精霊と円卓の英雄譚』
 迷宮アレキサンドライト。
 倒すべき敵のいなくなった其処で、精霊たちはこれからも悠久の時を過ごす。猟兵たちが1層に立ち寄れば、彼らはいつでも喜びと共に迎え、もてなしてくれるだろう。
 また、彼らは今後1層に立ち入る学生や教師、すべての者に退屈しのぎに話すだろう。

 黄金竜と戦いし8人の話を。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月13日


挿絵イラスト