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からすがなくからかえりましょう

#UDCアース

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#UDCアース


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●さみしい
 溜息を吐けば、頭の上でカラスの鳴き声が聞こえた。いつも通りにかぁかぁと、まったくのんきなものだ。泣きたいのはこっちも同じだというのに。家の近くの空き地でかくれんぼをしていたはずが、いつの間にか裏手の山の中にいるなんて。いつも夢中になると勝手なんだから。声だけで姿の見えない幼馴染へ、頭の中で愚痴をこぼした。
「トモくん、どこー? もう暗くなるし帰ろうよー……」
「こっち、タクヤ。こっちこっち」
 これだもの、参ってしまう。
 ――ざくり、ざくり。歩き続けて、ふと気付けば、今朝に降った雪の名残を踏む音が、何だか妙に耳に付く気がした。ああも煩わしかったカラスの声が聞こえない。どころかまるで、足音以外の音が全部消えてしまったような。
「えっ、あっ――」
 音に気を取られ散漫になっていたからか、それとも雪が天然の罠となっていたか。とにもかくにも足を踏み外し、ずるりと斜面へ滑り落ちる。傾斜が急で途中に止まれなかったが、幸いにも高さはそれほどでなかったようだ。落ちた先も、どうもなにかクッションのようになってくれたらしく、怪我はない。驚いたが。
「うう、もう、なんだよ……ここ、鳥の巣?」
 クッションはこれかと見回してみれば、かなり大きな巣のようだ。自分が入ってもまだ少し余裕がある。よく見れば靴とか、服とか、カードとか、メダルとか、色んなものが散らばって……イタズラ好きなカラスの巣?
「あれ、これ、トモくんの」
 たまたま目に入った鍵を拾い上げる。鍵っ子だから、なくすと大変だろうに。仕方ないなぁとポケットへ――。
「……え?」
 声が聞こえた、気がした。「なにか」の、声が。
「ともだち。きみも。ともだち」
 ――さみしいよ、さみしい。おいで、おいで。
 確かに聞いてしまった。確かに聞こえてしまった。声。
「あ……あ、あ」
 ぐち、ぐち、ぐち。自分の中から誰かが這い出す音がする。生まれ出る音がする。誰か、自分でない、誰か。
 ――おいで、おいで。
 それを最後に。なにも、聞こえなくなった。

●グリモアベースにて
「面倒事が起こりました。いつものことと言えば、いつものことですけどね」
 呼び掛けに応じてくれた猟兵たちへ、アルコーン・アフェシス(ロトゥンフラット・f00510)は予知した事件について語り始めた。
「UDCアースの、田舎町から近い山中にオブリビオンが出現しました。正体はまだ掴めていないのですが、出現自体は偶発的なものらしく、邪神教団等が関わっているわけではないようです」
 では大元を断てば解決か。そう問われると、アルコーンは少々煮え切らない態度を見せたものの、頷いた。
「そう、ですね。ただ、教団はおらずとも手駒はいるようです。こちらは詳細が判明しておりますので、資料にまとめました。どうぞ」
 資料によると、名称は『嘲笑う翼怪』。人の肉、特に子のものを好んで食す、歪な鳥人間のような怪物。人語は解さぬものの、最後に喰らった子の声をそのまま真似る性質を持つ、とのこと。
「既に幾人か、近場の子供が行方不明となっています。大方は手駒に喰われたのでしょうが、一部は大元のオブリビオンに媒体として使われたのかもしれません。単独で顕現したにしては手駒の数が……どうにも、多いので」
 大元の急な出現も考えると、UDCの蘇りを促進するような、何らかのオブジェクトがあるのだろう。尤も、わざわざ探し回る必要はなさそうだ。というのも。
 アルコーンは件の山周辺の地図を取り出し、一点を指し示した。
「そのオブジェクトを保護するためか、大元は出現位置であるここにそのまま居座り、今のところ動く様子もありません。彼奴を倒した後で適当に周辺の怪しげなものを破壊すれば、それで事足りるでしょうね」
 それはそれとして、問題は他に。と続ける。
「行方不明となった子供たちの友人、数名の少年が密かに集まって、山の中へ捜索に向かおうとしています。放っておけば、手駒の食料か、仲間入りか。……手段は問いませんので、まずは山から引き離してあげてください。夢見も悪くなりそうですし」
 叱ってもいい、妨害してもいい、説得を試みても構わない。
 子らを引き離せば、得物を横取りされたと感じて手駒共も現れるかもしれない。そうなれば、蹴散らすには好都合だ。全て倒せば後顧の憂いもなくなるだろう。
「ブリーフィングは以上です。それでは、現地までお送りしますね。私は何かあった時の為に後方で待機していますので、あちらでのことはよろしくお願いします」


黒蜜
 黒蜜と申します。
 此度はUDCアースでの事件となります、よろしくお願いいたします。
 オブジェクトの捜索・破壊は最終戦後に自動で行われますので、プレイングへの記載は不要です。
 (もちろんあってもOKです)
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第1章 冒険 『少年達は探検する』

POW   :    叱る、脅す、力づくで止める

SPD   :    先回りし障害物を設置する等で妨害する

WIZ   :    説得する、誤情報を与え他の場所に誘導する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ティノ・ミラーリア
不要な犠牲を出す必要はないし、攫われたら敵の戦力が増えるかもしれない
ちょっと怖い思いするかもしれないけど…仕方ないよね

【SPD】追跡1、失せ物探し1、恫喝1、殺気1
自分の影から『眷属』を放って子どもの監視をしてもらう。
万一途中で手駒と遭遇してもいいように、戦闘準備はできているよ。
山の中は怖いと引き返してもらうためまずは眷属コウモリをけしかけよう。
周囲を飛ばせて、それでもダメなら眷属オオカミの番だね…
唸ったり吠えたり、追い回したりとコウモリより随分怖いとは思うけど。

子どもたちが無事山を降りるまでは眷属での監視を続ける。
……ん…こっちの問題は、なさそう…


忠海・雷火
誤情報を与えつつ説得してみましょう
田舎町であれば、恐らく野生の獣の恐ろしさも知っている筈だから、その方向で

具体的には、冬眠し損ねて人を襲った熊が県をまたいで此方に来ているという作り話をするわ
その上で、山に入れば獣に襲われる可能性がある、獣でなくとも猟友会の方が誤射してしまうかも、と
親も含め、そういった人達に迷惑をかけてはいけないでしょう?
だから、探検するなら山以外でお願いね

尚、自分は獣の駆除が済むまでの近隣パトロールをするボランティアという事にしておく
これなら突っ込んで聞かれても体裁は取れるし、情報を知っていてもおかしくない立場であると思われるでしょう

他の参加者と方向性が全く違う場合は合わせる



●ともだちきたぞ
「トモキー! タクヤー! 返事しろー!」
「探しに来たぞー! おーい!」
「おばさんも心配してたよー!」
 捜索に出た少年三人。健気に響く声はどこにも行けず、雪の如く山中へ溶けてゆく。それでも、諦めない。もっと奥にいるんだ、きっと。
「あいつら、寒がってるだろうな」
「うん、早くカイロ渡してあげないと」
 ざくり、ざくり、踏み分け歩く。温かみの感じられない冬の山は、みんなでいてもまだちょっと心細い。なら、行方が知れない友人たちは今頃、もっと。
「……おーい!」
 居ても立っても居られず、もう一度。すると。
 ――チチッ、チッチッ!
「うわっ!? なに、なにか鳴いた!」
「あっ! あそこ、黒いのが飛んでる……コ、コウモリ?」
 望みとは異なる返事は、あれが発したものらしい。薄ら白く染まった景色の中で、ちらりちらりと視界に割り込む黒。どうも異様な何かを感じてしまう。わざわざ自分たちに見える距離を、飛んでいるような。
 気味は悪い。けど、それで退くわけにもいかないのだ。だってまだ見付けていない。見付けるまでは、帰らない。寒気とは違う足の微かな震えへ、ぐっと力を込めて。
「トモキー! タクヤー!」
 ――オオォォォーン!
 再び返った返事に、震え諸共足までピタリと止まった。
 遠吠え? なん、の?
「ねぇ、あなたたち」
「ひっ!?」
 背後からの声にみんなで慌てて振り返れば――人だ。……良かった。
「さっきの野犬か何かの声、聞こえたでしょう? そうでなくても、今この山には熊が来ているって情報もあるの。探検するなら山以外でお願いね」
 ほっとしたのも束の間。まだまだ帰るつもりはない……けれど。目の前の女性、忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)の話も無視できない。顔を見合わせて相談へ。
「く、熊がいるって……危ないのかな」
「でもさ、このお姉さんも山に入ってるじゃん」
 ちらっと窺うように雷火を見れば、聞こえていたようで。
「私はボランティアよ。獣の駆除が済むまで、近隣のパトロールをしているの。あなたたちみたいに奥に立ち入る人を止めるために、ね」
「う……」
 そう言われてしまえば、返す言葉もない。
「獣もそうだけど、猟師さんに誤射されても大変よ。親も含め、そういった人達に迷惑をかけてはいけないでしょう?」
「それは……」
「で、でも……!」
 ――グルルルル。
 どうにか反論しようと開きかけた口は、忍び寄って来た唸り声によって閉じられた。遠吠えよりも小さな声なのに、遠吠えよりも大きく聞こえる。つまり、近い。
「あ、あの、今の……」
「まだ様子を見ているだけみたいだから、大丈夫。けど、これ以上刺激したらどうなるか分からないわ」
 だから早く帰りなさい、と言外に示す雷火。さすがに脅威が近くにいるとなると応えたようで、少年たちも渋々と道を引き返し始める。尤も、諦め切れてはいない雰囲気だ。今は従ってくれたが、果たしてこのまま素直に山から出るかどうか。
「……でも、足取りは確かに重くなった様子。ならもう一押し二押しかしら。その声のおかげで私の話の信憑性も増したみたい。助かったって、伝えてもらえる?」
 ――オォン。
 少年たちが道の先へと消えてから。すぐ側の茂みへと雷火が投げた言葉は、潜んでいたもの――オオカミによって、主へと持ち帰られた。

「……ん、そっか。うまくいったなら、良かった」
 戻って来た『眷属』たちから報告を受け、ティノ・ミラーリア(ダンピールの咎人殺し・f01828)は安堵の息をひとつ。
 不要な犠牲を出す必要もなければ、敵戦力を増やしてやる必要もない。ちょっと怖い思いはさせたかもしれないが、安全のためだ。ある程度は仕方ないと割り切ろう。
「じゃあ、このまま……子どもたちが無事に山を下りるまでは、監視を続けて」
 ティノの命を受け、コウモリは再度山中へ。オオカミは……先に割り切ったとはいえ、あまり怖がらせすぎるのもなんだろうか。
「……おいで」
 声をかければ、それだけで意図を理解したようだ。ずずず、と主の影へと帰ってゆくオオカミを眺めながら、ティノは何とはなしに用意していた拘束具に触れる。敵の手駒、『嘲笑う翼怪』と呼ばれるそいつらへの贈り物。配達希望時刻は分からないが、その時までそう遠くはなさそうで、不在票も不要そうだ。
 ――山の奥へと意識を向ければ。不快な鳴き声で、仄かに騒めく気配がした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

キディ・ナシュ
おねえちゃん(イディ(f00651))と一緒に頑張ります!

【WIZ】
罪無き子らを食べ、その声まで奪うとは許せませんね
えっ!ご飯になるのはいやですよ!?

捜索に出ている子供たちを見つけたら元気に声をかけますね
大人に隠れてひっそり動こうとするその動き、バレバレですよ!
って、おねえちゃん、子供は怖くないですよっ

友達思いの良い子の皆さん、そんなあなた方に朗報です
あなた方が探しているご友人は
先程ご自身の『お家』に戻られたそうですよ
だからこの場所にはいません
でももし、あなた達がこの山で迷子になったら
彼らが探しに来て今度こそいなくなるかもしれません

…嘘も方便と何かの本で読みました
ぺらぺら捲し立ててみましょう


イディ・ナシュ
義妹のキディ(f00998)と動きます
【WIZ】
前途ある方達が、啄まれてしまうのは。ええ、よろしくありません
きちんと暖かい『お家』にお帰り頂かないと
キディ、貴女が代わりにUDCの活餌になるのはどうでしょう
(舌打ちする内弁慶)

山の周辺にてお子さん達を探し
見つけたならばお声掛けを
お声がけ……
(キディ、声掛けを)(怖い)

その、……お友達を、お探しですか?
とても心配ですよね
待つだけで、いられない気持ちは、私にも経験があります

共感だけは心から
詐術はキディに一任を

他に迷子が居ないか、念の為捜索隊が、組まれました
私達も、そのチームです
協力をお願いします
きちんとお友達がお家にいるか、
確かめてきて頂けませんか?



●ともだちどこだ
「罪無き子らを食べ、その声まで奪うとは許せませんね」
「前途ある方達が、啄まれてしまうのは。ええ、よろしくありません。きちんと暖かい『お家』にお帰り頂かないと」
 義妹であるキディ・ナシュ(未知・f00998)の言葉に、姉イディ・ナシュ(廻宵話・f00651)もまた肯定で返す。監視役によれば、どうも少年たちはルートを変更して再挑戦しているようだ。となると、追加の説得を行うべきか。
 追加の、説得を……。
「キディ」
「はい?」
「貴女が代わりにUDCの活餌になるのはどうでしょう」
「えっ! ご飯になるのはいやですよ!?」
 ついつい漏れ出す舌打ち。説得……説得かぁ……。
 溜息と憂鬱に包まれながら、イディも先に行く義妹に続いて歩き始めた。

「熊とか、犬とか、そりゃ怖いけど……」
「あいつらだって、きっと怖がってるもんな。怪我とかしてるかも」
 今度は誰にも見付からないように、道と呼べるかぎりぎりの場所から、先へ、先へ。
「ふぅ、ふぅ……」
 感じ始めた深い疲れは、悪路だけのせいではない。どうしても、先ほど聞いた話と唸り声を思い出してしまうのだ。このまま進んでいいのだろうか。でも。だって。
「………………あ、うわっ!」
 ぐるぐると考えていたせいか。一人が石に躓き、盛大にこけかけたところで。
「おっと危ない! 大丈夫ですか?」
「あ、うん、ありがと、う?」
 見知らぬ少女――キディが一人、後ろから支えてくれた。
「えっと、誰……?」
「ふふ、大人に隠れてひっそり動こうとするその動き、バレバレでしたよ! わたしたちはですねー…………あれ、おねえちゃん? おねえちゃんどこですか?」
 さて帰るように説得を、と思ったら姉がいない。おかしいな、今の今まで一緒にいたのに。
「あっ」
 少し離れた木の後ろで、ミルキーホワイトが揺れる。自分とおんなじ色の髪。ちょっとだけ待っててくださいね、と断りを入れてから。とりあえずそちらへ。
「おねえちゃん、子供たちはあっちですよ、あっち」
「……そうですね。ではキディ、声掛けを」
 くいくいと袖引かれるイディ。どうしたのだろう、呼ばれど引かれどなかなか向かおうとしてくれない。
「ええと、おねえちゃんは?」
「………………(怖い)」
「子供は怖くないですよっ」
 ほぼ変わらないように見えるイディの表情から心情を推し測るあたり、さすがは姉妹か。
 とはいえそのままにするわけにもいかないので、引き方をくいくいからぐいぐいに変えて連れてゆく。
「一緒に頑張りましょう!」
「………………(怖い)」
 ぐいぐいずるずる。
 律儀に待っていてくれた少年たちへ。まずは、お待たせしましたとキディから。さてさて、それでは改めて説得へ。
「わたしたちは捜索隊の一員です!」
「捜索隊? トモキたちの……?」
「………………(他にも迷子が居ないかと、念の為に組まれました。私達も、そのチームです)」
「おねえちゃん、言葉は口から出さないと伝わりませんよ!」
 引っ張られて来たものの、怖いものは怖いのだ。コミュ障舐めるな。
 ……けれど。
「その、……お友達を、お探しですか?」
「う、うん。この山で、いなくなったって聞いたから……」
「とても心配ですよね。待つだけで、いられない気持ちは、私にも経験があります」
 イディの心の中を占めるは怖さだけ、ではない。少年たちへの共感もまた、ここに。だからこそ今は言いくるめなければならないと。義妹へ視線を送れば、こくり頷いてくれた。
「友達思いの良い子の皆さん、そんなあなた方に朗報です。あなた方が探しているご友人は、先程ご自身の『お家』に戻られたそうですよ」
「え、ほ、本当に!?」
「帰ってきたの……!?」
 縋り付くような目、声。顔を背けることはできない。……嘘も方便、全て承知の上。
「はい! だから、この場所にはいません。でももし、あなた達がこの山で迷子になったら。彼らが探しに来て今度こそいなくなるかもしれません」
「ん、ん。だけど……」
「……協力をお願いします。きちんとお友達がお家にいるか、確かめてきて頂けませんか?」
 キディが告げて、イディが促す。彼らを守るための言葉。詐術であれど、善意で織り成されたそれは。
「……わかった、見てくる」
「ちゃんと帰ったか、おばさんに聞いてみるね」
 確かに今、伝わった。
「教えてくれてありがとう!」
 ちくり。――小さな痛みは、甘んじて受け入れよう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

海月・びいどろ
【WIZ】
ともだちがいなくなったら、心配、だよね。
きっと、自分たちの手で何とかしたかったんだと、思うの。

【コミュ力】による説得と【言いくるめ】により誤情報で
違った場所に引き離せないか試してみるよ

少年達を見つけたら、まずは説得
「キミたちは最近、子供が行方不明になる事件を知ってる?
実はボクの友達もいなくなっちゃったんだ…。
もし探しに行くのなら、ボクも混ぜて欲しいな」

次に誤情報を
「あのね、噂で聞いたんだけれど。
これはさびしがりやの神様の、神隠しなんじゃないかって話。
いなくなった子の声を真似して、ともだちを増やしてるんだって。
神社やお寺を探してみない? 繋がりのある神様や情報を知ってる人がいるかも…」


鵜飼・章
【SPD】
先回りして獣奏器を用い【楽器演奏】
辺りの鴉を集められるだけ集めて【動物と話す】で情報を得る
この子達は何か見ているかもしれない
敵の数や行方不明の子供達の事は分かる?
子供達が来たら怪我しない程度に襲って通せんぼするようにお願い
辺りに散って貰い僕は身を隠す

子供がかかったら出ていき
【コミュ力】【言いくるめ】を使って話しかける
警告したのにまだ帰らないの?
お兄さんはね、鴉の神様なんだ
探している子のことを言い当てたり
獣奏器で鴉を操ってみせ信じさせる

友達のことは心配だよね
でも山は広いし、夜になるととても危ないんだ
それを知らせるために僕らは鳴くんだよ
だから今日は帰ろう?
お父さんとお母さんが心配してるよ


アリア・ヴェルフォード
人の声を真似る怪人ですか…
友の声を使って新たな贄を呼び寄せるなんて、死んでしまった子が浮かばれません
いち早く止めなくては!
とにかくまずはこれ以上被害をださないように、ですね

【WIZ】
かと言って私達が何者か伝えても変人になりかねませんし…
心苦しいですが【情報収集】で別の安全そうな場所を調べ
私の物知り顔で接触して【コミュ力】でそこに誘導しましょうか

彼らの友達を思う気持ちに絶対に答えてみせます!



●ともだちもどれ
 件の少年たちは、一度山から離れてくれることになった。これでひとまず手駒と大元を倒すまでの時間は稼げるはずだ。
 ただ、それ以降のことは……友人がまだ戻らないと知れば、おそらく彼らはまた捜索を始めるだろう。UDCがいなくなっても、山の奥に子供だけで踏み入るのはやはり、危険を伴う。UDC組織に頼んで封鎖してもらうなり、手はある、が。
「キミたちは最近、子供が行方不明になる事件を知ってる? 実はボクの友達もいなくなっちゃったんだ……」
「お前も? オレたちもさっきまで友達を探しに――」
 海月・びいどろ(ほしづくよ・f11200)は、少年たちの意識そのものを山から他へ移すべく、動くことにした。自分も同じ境遇の身内と感じてもらえたならば。
「探しに行くのなら、ボクも混ぜて欲しかったけど……もう、帰るところかな?」
「うん、トモキとタクヤ、家に戻ったか確かめてきてって言われて」
「もしいなかったら、また探しにくるよ。その時はお前も一緒に行く?」
 良い流れ。これなら他所への誘導にも繋げやすそうだ。協力し合えば尚更に。この場にいる猟兵は自分だけではないと、気付いたから。
「それでしたら、私に提案があります!」
「ひぇっ!? び、びっくりした……だ、誰? なんか今日、知らない人といっぱい会うな……」
 いつの間にやらささっと近くまで寄っていたアリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)が、大変に元気良く登場。気付いていたはずのびいどろも、思わずびくり。
「ふっふっふっ。何を隠そう、私は――(あ、しまった。正直に猟兵のことを伝えても変人になりかねません……ではここは!)――謎の人物Xです!」
「思いきり隠してるじゃん」
「ええい、そんなことよりも耳寄りな情報があるのです!」
 強引に押し切るアリア。ただ、不思議と少年たちに不信感は少ないようだ。距離感を上手く掴みながら話しているからだろうか。
「皆さんはこの山の中を探すつもりのようですが、実は事件のカギは他の場所にあるという噂がですね……」
「あ、ボクもその噂は聞いた、かも」
 ちょうど渡したかった情報と重ねられそうだ。びいどろも話に乗って、広げてゆく。
「これはさびしがりやの神様の、神隠しなんじゃないかって話。いなくなった子の声を真似して、神様がともだちを増やしてるんだって」
「……そういえば、オレのじいちゃんも神隠しがどうとか言ってたな……」
 幸運にも、少年たちの中にも思い当たる節があった。事件の概要を知らない者にとっては神隠しのように見えるのかもしれない。そして、あながち、間違いでもない。
「つまり、神様に関係ある場所がカギというわけですね!」
「それなら、神社やお寺を探してみない? 繋がりのある神様や情報を知ってる人がいるかも……」
「うう、ん……神社やお寺、かぁ。どうなんだろう」
 半信半疑、よりも信へと一歩進めたのは、びいどろとアリアの話術の賜物か。少年たちとしても、もしまた捜索に出るとして、山以外に手掛かりがあるのならそちらへ向かいたく思っていたのだ。熊、犬、いるみたいだし。……それに。
「確かになんか……視線を感じる、よね。この山」
 一人が振り返って見てみれば、ばさり飛び立ち消える黒。コウモリ……いや、今度はカラスだろうか。ちょうど頭上からも羽が一枚――。
「――ッ!? う、上!」
「わ、わ、なんだこいつら! なんでカラスがこんなに!?」
「……警告、かも」
 その呟きに、少年たちははたとびいどろを見やる。
 警告って、なにを? ――誰が?
「ふむふむ。神隠しをする神がいるのなら、それを防ごうとする神もいるのかもしれませんね」
「カラスの神様、かな」
 ばさり、ばさり、ばさり。
 話す間にも黒は集い続け、こちらを見下ろす。何れにしても尋常でない。それだけは分かる。
「でも、でも、カラスの神様なんて」
「――いないと、思うかい?」
 発そうとした言葉が、詰まる。
 急に現れる人は、他にもいた。今いる人で言えば、アリアもそうだった。
 けど、カラスの大群と共に出てくるなんて。そんな、現実離れしている人は、誰も。
「警告、気付いていたよね? お兄さんはね、見ての通り鴉の神様なんだ」
 ばさり、ばさり、ばさり。
 手持ちの楽器を軽く鳴らせば、カラスがくるくる周囲を回ってみせた。明らかに、従えている。これだけの数を。
「探していたのはトモキくんに、タクヤくんか。君たちと同い年くらいの子かな。この山のすぐ近くの空き地で、良く遊んでいた」
「し、知ってるの……?」
「もちろん。鴉たちが、いつも見ていたから」
 もはや疑うべくもない。だって、こんなの、神様じゃなきゃ何だっていうんだ。
「友達のことは心配だよね。でも山は広いし、夜になるととても危ないんだ。それを知らせるために僕らは鳴くんだよ」
「は、はい。その、今日は、帰ります」
「いい子だ。でも、明日も明後日も、そのあとも。山に子供だけで入ったら駄目。お父さんとお母さんが心配してるよ」
 しゅん、と小さくなる少年たち。と、それに合わせているびいどろにアリア。話で作った神への切っ掛けは、会うことでより確かなものへ。半信半疑から一歩、次いで二歩、今や全信無疑に。
「神様的にもやはり、神社あたりを探すのが好ましい感じでしょうか!」
「そうだね、調べるならそちらの方が良い。僕は子供を連れていく神とは近しくないから、これ以上の力にはなれないけれど。君たちが連れていかれないように、見守っているよ」
 鴉の神はそう答えると、再び楽器を手に取り鳴らす。すると、瞬く間に黒が彼を覆い隠して――黒が弾けると同時に、霧散した。
「あっ、消えた……」
 呆然と佇むことしばし。帰ろう、と初めに言ったのはどの口だったか。人だったか、あるいはカラスの鳴き声だったか。歩き始めれば、忘れてしまった。
「オレたちはトモキとタクヤの家に寄るから、このまままっすぐだけど……二人の家は?」
「ボクはそこの角を曲がって、まだずっと先」
「私も同じです!」
「そっか。じゃあ、ここでお別れかな」
 そろそろ夕焼けも落ちる時間。いつも通りより少し遅めの、帰宅時間。
 ばいばい。さようなら。またね。
 彼らはもう、無闇にこの山へは入らないだろう。明日も明後日も、そのあとも。カラスが見ていてくれる限り、きっと。

「これで、被害は出さないで済みますね」
「うん。……でも、きっと、自分たちの手で何とかしたかったんだと、思う」
「けどそれでは、悲しむ人が増えてしまうかもしれないものね」
 少年たちと別れた二人は、鴉の神様――鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)と、合流を果たしていた。
「……友の声を使って新たな贄を呼び寄せるなんて、死んでしまった子が浮かばれません。いち早く止めなくては!」
「僕も同じ気持ち。――そして向こうも、僕らを止めるつもりみたいだよ」
 鴉が章に教えてくれた。消えた子供の数は十に届くか届かぬか、と。
 今山奥からやって来ている羽音の数も、同じだと。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『嘲笑う翼怪』

POW   :    組みつく怪腕
【羽毛に覆われた手足】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    邪神の加護
【邪神の呪い】【喰らった子供の怨念】【夜の闇】を宿し超強化する。強力だが、自身は呪縛、流血、毒のいずれかの代償を受ける。
WIZ   :    断末魔模倣
【不気味に笑う口】から【最後に喰らった子供の悲鳴】を放ち、【恐怖と狂気】により対象の動きを一時的に封じる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ともだちかえせ
 せっかく来てくれた子供たちが、変なやつらに追い払われた。
 許せるものか、許せるものか。
 もうすぐ一緒に同じに仲間にともだちになれたのに。
「トモくん、どこ、トモくん」
「タクヤ、こっち、こっち」
 さぁ行こう、さぁ行こう。
 取り戻すためにさぁ行こう!
「トモくんトモくんトモくんトモくんトモくん」
「こっちこっちこっちタクヤこっちタクヤ」
鵜飼・章
※アドリブ等歓迎

十人近く…そんなにか
山の鴉達もきっと怒ってる
協力してくれる?

共に戦う仲間がいれば連携
一部の鴉は上空に放ち
味方が翼怪に囲まれないよう警戒を
敵が来たら教えてね
他の皆は攻撃だ

獣奏器を奏で、まずは向かってくる敵を迎撃する形で【先制攻撃】
【2回攻撃/早業】を駆使した素早い攻撃で敵の攻撃行動を妨害
味方がUCを打てる隙を作ろう

ある程度数が減るか体力を削れたら
淋しがり屋の小鳥達と遊ぼうかな
鬼ごっこをしよう
ほら、こっちだ
敵を引きつけ味方から引き離し
誰も巻き込まない地点に来たらUC【裏・三千世界】で人喰いの報復を

僕は本物の神様じゃないけど
今はそういう事にして祈るよ
護れなくてごめんね
もうお家にお帰り


アリア・ヴェルフォード
こいつらが声を真似するのオブリビオンですね!
これ以上犠牲者は出させません!
死んでしまった子供たちの無念晴らさせていただきます!

【POW】
光属性の【属性攻撃】による【範囲攻撃】を行い複数にまとめてダメージを与えるように攻撃を行います
或る程度ダメージを与えたところでユーベルコードによる自身の周囲の敵の一掃を行いましょうか
防御に関しては【オーラ防御】と各種耐性(この場合だと【呪詛耐性】でしょうか)で悲鳴を軽減、基本的には【見切り】で避けていきましょう



●ともだちきえた
「……君達も怒っているんだね」
 薄暗がりの山の中。見通しはあまり利かないが、翼怪共はご丁寧にもぎゃあぎゃあと騒ぎながら飛び来るようで、初っ端から不意を衝かれる恐れはなさそうだ。ただ、乱戦となればどうなるか。
 もしもの事態に備えて山の鴉たちへと協力を願えば、じっとこちらを見詰めるいくつもの瞳から、彼らの気持ちが、流れ込んでくるような気がした。
「誰も囲まれないように、上空で警戒をお願いするよ」
 鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)の声に、小柄な数羽が空へと飛び立つ。敵が来れば彼らが教えてくれるはず。となれば、こちらは。
 ――目配せひとつで察したように、残る鴉も羽ばたき始めた。

「おかあさん! おかあさんおかあさん!」
「……こいつらが声を真似するオブリビオンですね!」
 ばさりばさり。呪詛に耐性付けて尚、ただの羽音すらも悍ましく聞こえるのは、その醜悪な姿のせいだろうか。にやにや笑いを浮かべる顔もまた、こちらの神経を逆撫でるようだ。
「これ以上犠牲者は出させません! 死んでしまった子供たちの無念晴らさせていただきます!」
 アリア・ヴェルフォード(謎の剣士X・f10811)が鞘代わりの両手袋から抜き放つは、相反する二条の光。想念より来たる魔を裂く聖光か、魔さえ凌ぐ悪に染まる極光か。散らされるにはどちらが好みかと、翼怪たちへ突き付けて見せれば。
「――ギヒ」
 誘蛾灯だとでも思ったか、一羽がアリアへと飛びかかる。不浄携えた鉤爪で、今日も引き裂き喰らわんと、げらげら、げらげら。
 相も変わらぬ笑いに顔を顰めながらも、上体をやや反らすのみで振り抜かれた不浄を躱す。僅かに刮がれた髪が、はらりはらり。――かぁ。
「食べるのは好きですが食べられるに興味はありません!」
 最低限の動きで回避を終えれば、敵が立て直すまでの隙はこちらのものだ。足腰から腕へと力を回し、揃えた二条で――背後に忍び寄る不届き者と共に薙ぎ払う!
「ギィッ!」
「おかあざッ!」
 まだ事切れてはいないだろうが、アリアに仲良く斬り飛ばされたところで、ようやく少し静かになったか。
 ナイスです! と空へ立てた親指へ、知らせをくれた鴉が嬉しそうに一声上げた。彼(彼女?)も翼怪の声がきっと不快で――。
「――む」
 先の二羽揃っての突貫を察し、再度回避へと動きかけたが。
「ギィィィイイイアアアアアッ!!」
「あああああおかああああさああああッ!!」
 どうも、その必要はなさそうだ。
「そんなに淋しいのなら、僕達も一緒に遊んであげようか」
 降り落ちた声か、響く獣奏器の音色か、己が劈かれる音か。翼怪たちの耳に届いたのはどれだったろうか。殺到した鴉の群れに、地に磔るかのごとく嘴を突き立てられて。あるいは、形だけ笑んだ口から、模倣でない悲鳴でも漏らして聞こえたか。
「割り入るのは無粋だったかな?」
「いえいえ! もう辟易してきたところなので、とりあえずここはサクッと終わらせたい気分です」
「ふふ、なら良かった。……ただ」
 しかし章が翼怪を見やれば、それでもまだ体を起こしつつある様子。まぁずいぶんと元気が良いこと。
「どうも、あちらは遊び足りないみたいだね」
「私はもう十分なので終わりです! はい決まり!」
 嫌だと思うと余計に耳に入ってくるもので、他の猟兵が相手取っている翼怪の声まで聞こえてきた。ああもう、そろそろ本当に限界だ。
「そこらのやつら共々まとめて斬りましょう!!」
 アリアの堪忍袋ははち切れる寸前。いや、いっそ切れてしまった方が掃討するには良いのだろうか? 章もまた、まとめて薙ぐつもりでいるのだから。
「それじゃあ、僕らは鬼ごっこの続きをしようか。ほらおいで、さっきタッチしたから今度は君たちが鬼だよ」
「ィィィイイッ……!」
 言葉投げかけた章をふらつきながらも追い来る二羽。その更に後ろ、ごごごごご……と奔流になり始めた光が届くぎりぎりへと、『逃げ詰める』まではすぐだった。もはや彼奴等には、誘いを訝しむ余裕さえない。だから。
「お゛が あ゛ざ……ッ!?」
 やはり、ここで終わりにしよう。
「聖光と極黒で輪廻に還れ――」
「人類は滅んだ。美しい朝が来る――」
 アリアと章のちょうど真ん中。
 ようやく、挟まれたのだと理解しかけた翼怪たちへ。
「――【聖双剋勝利剣(クロス・カリバー)】!!」
 正邪幾重にも連なりて、光闇遍く照らし呑む斬撃が。
 その身を寸断、悲鳴諸共吹き散らせば。
「――【裏・三千世界(サンゼンセカイリバース)】」
 人喰いを尚喰い千切る鴉、暴威振るう報復の群れが。
 その身を嚥下、影すら残さず完食した。

「……ふぅ。ちょっとスッキリしましたね!」
 ざんざんばらばら。斬風に巻き上げられた雪の欠片を手で払い除けつつ、上機嫌なアリア。真ん中以外にも、とりあえず敵っぽいものを選んで巻き込んでおいた。他所へもいい感じに援護できたろう。
「お互い、結構な範囲に放ったものね」
 章の方は無差別攻撃であったが、そこは上空の鴉がチェック済み。こちらも同じく、違わず敵のみ喰らい抜いた。その影響は全くもって軽くないはずだ。もちろん良い方向に。
 もう、そう遠くない内に模倣の声は止むだろうか。喰らわれた子たちの声は、解放されるだろうか。
「……僕は本物の神様じゃないけど」
 例え仮初でも、今だけは。鴉の神様として、祈りを捧ぐ。子供たちのために、無事に帰すために鳴く、鴉の神様として。
 ――護れなくてごめんね。もうお家にお帰り。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

イディ・ナシュ
……ああ、間に合いませんでしたか
残酷な嘘になってしまいました
あの子達がせめて、私達を恨んで下されば良いのですが
悲しむだけでは辛いですから

ならばもう、私達に成せるのは
骸へと還すことのみ
いきますよ、キディ(f00998)

炎の矢で各個撃破と参ります
つまり義妹と同じ敵を目標とします
巻き込むかもしれませんが、虐待ではなくうっかりです、ええ
あの方がお創りになられた最高傑作が貴女ですもの
滅多な事では壊れません
必ず直しますからお気張りなさい
次はあちらですよ(2回攻撃)

鳥からの恐怖も狂気も
この胸には大海の一滴にすら
発声器官さえ動けば問題ありません、好きに啄みなさい

キディは私のうっかりを誘うのが上手ですね、ふふ


キディ・ナシュ
先程の少年たちを助けられたのです
残酷であろうとそれは救いです
恨まれたって構いません
わたしは、わたしの都合で人を助けます

はい、すべて倒します!
タクヤくんとトモくんの声を
あのように使わせ続けることなど許しません

こんな事もあろうかと
事前に本で覚えておいた連撃を披露しますね
呪いだろうと怨念だろうとスクラップで潰してあげますよ!
くらえガラクタ殺法ー、ってぎゃー!
危ないです!虐待です!焦げます!
確かにわたしはマスターの最高傑作ですが
オンリーワンなんですよ!
ちゃんと後で修理してくださいね!?

おねえちゃん(f00651)も
ちょっとはあの鳥たちのように笑…あ、だめです
怖さがいつもよりマシマシになってしまいます!



●ともだちないた
 ――タクヤこっちタクヤ。
 山中に響く声。誰のものか、などと。考えるまでもなく。
「……ああ、間に合いませんでしたか」
 イディ・ナシュ(廻宵話・f00651)の胸中に渦巻くは、なんだろうか。友探す子らへ伝えた言葉が、残酷な嘘になったと悟った、今。
「あの子達がせめて、私達を恨んで下されば良いのですが。悲しむだけでは辛いですから」
 沈んでしまうのならば、悲痛よりも悲憤であれと。その方が、息も楽だろうか。幾許かでも、詰まり難くなるだろうか。
「先程の少年たちを助けられたのです。残酷であろうとそれは救いです」
 助けたいから助けたのだ。恨まれようが構わない。ぽつり零した姉の声へ、次第に近付く模倣の声へ。共に意識を向けながら、キディ・ナシュ(未知・f00998)は言って退けた。
「わたしは、わたしの都合で人を助けます」
「……ならばもう、私達に成せるのは、骸へと還すことのみ」
 抱く想いや紡ぐ言の葉は、すでに仕事を終えたから。
「いきますよ、キディ」
「はい、すべて倒します!」
 ここから先は、より単純なもので訴えるとしよう。

「ああ、あ、タクヤ。ああああ、あ」
 羽に胴にと当たったものの、まだ焼き尽くすには足りない。今しがたイディより撃ち込まれたものの残滓が、草葉に触れてぱちりと爆ぜた。
「……発声練習でもしているつもりですか」
「子供たちの声を、あのように使わせ続けることなど許せません」
 木々の合間より躍り出て以降、翼怪は延々独り言を繰り返している。呪詛かと身構えた二人であったが、その兆候もなさそうだ。
 何が狙いかは知らないが、灰と消えるを望むならばそのようにしてやろうと、【ウィザード・ミサイル】。魔より生じた数十もの炎の矢が、暗がりの翼怪を再び照らし出す。
「これで――ッ!?」
 照らされた顔。目口より染み出し流れ落ちる血。
 イディが身を伏せたは、良くない何かを感じたゆえの、咄嗟であった。
「――こっち。こっち」
 すぐ頭上を通り抜けていったようだ。先までとは比較にならない速度で。
 炎の矢もいくらか散らされてしまったか。苦々しい思いを、しかし顔には出さず、口から漏らす。
「自己強化、それも相当な。……厄介ですね」
「でも、速いだけなら! こんな事もあろうかと、事前に本で覚えておいた連撃が役に立ちそうです!」
 矢が追い付かぬなら直接殴り抜くのみと、キディはスクラップで作り上げた武具を力強く掲げる。これで迫ってやれば、打ち負ける理由などどこにもないのだ。
 なにせ、質量が違う。呪いだろうと怨念だろうと、叩き潰せばそれまでのこと。単純明快にして世の真理である。
「くらえガラクタ殺法ー!!」
 掛け声にはやや気が抜けそうになるものの、その実態は【プログラムド・ジェノサイド】。脳の指令に体は寸分違わず従い、予め思い描いた通りに標的を打ち抜く。殺法とは、伊達ではない。
 懸念としては、思い描いていた以上の動きはできないこと。要は、避けられても止まれないことだ。――この場にいるのが己一人だったなら、だが。
「当たらぬのなら、それはそれで割り切るのみです」
 イディの放つ炎の矢。一本、一条、一束と、熱の帯が次第に翼怪の周囲を覆う。こちらの残弾は尽きた。魔から練るには多少時間がかかる。その隙を逃さぬほど、愚かではないでしょう?
 焦げたくなければ向かって来いと、敢えて残した真正面へ。さぁ。
「タクヤああああああ!!」
「――――そこですっ」
 ごがんッ!!
 びりびりと、身が痺れるほどの衝突音。真っ直ぐ来ると分かっていれば、いかに速かろうと合わせるのは容易いもの。
 キディのクリーンヒットは、そしてまだ、止まらない。殴り飛ばした翼怪へ、追い縋りながらの連打! 連打!!
「ワン! ツー! スリ……ってぎゃー!」
 練り終わった炎の矢が、頬を掠めながら翼怪を焼き貫いた。追撃はいいのだが、先の通りキディは止まれないのだ。だからもうちょっとこう、配慮というか。
「危ないです! 虐待です! 焦げます!」
「虐待ではなくうっかりです、ええ」
 うっかりなら仕方ない……のかな。
 むむむ、と胡乱げな目を向けながら。どの道今は抵抗もできないので、追及するは避けるキディ。
「あの方がお創りになられた最高傑作が貴女ですもの、滅多な事では壊れません。必ず直しますからお気張りなさい」
「確かにわたしはマスターの最高傑作ですが、オンリーワンなんですよ! ちゃんと後で修理してくださいね!?」
 修理前提とする姉に、それを受け入れている妹。なんというか、なかなかだ。
 信頼関係と言うやつだろうか……こちらも、追及は怖いので避けておこう。
「……タ、ク…………」
「せいやぁっ!」
 空飛ぶ鳥から、すでに地に落ち虫の息。どぐしゃあと改めて叩き潰せば、炭化した一部がぱらぱら舞い散った。一息吐こうかと思ったところで。
「休む間もなく、とは……次はあちらですよ、キディ」
 姉の声に振り向けば、今潰したものとおんなじ顔がこんにちは。
 休憩は、もう少しあとになりそうだ。
「ここどこ? ここどこ? どこどこ?」
 嘴鳴らしてけらけら。鉤爪鳴らしてげらげら。
 同類の死骸も見えているだろうに、なにがそこまで可笑しいのか。心騒めかせる嘲笑を、受け取ってやる義理もない。
「恐怖も狂気も、この胸には大海の一滴にすら。発声器官さえ動けば問題ありません、好きに啄みなさい」
 ただし炙られるは覚悟せよ。炎を繰り、放たんと――。
「おねえちゃんもちょっとはあの鳥たちのように笑……あ、だめです。怖さがいつもよりマシマシになってしまいます……!(ぼそぼそ)」
「――キディは私のうっかりを誘うのが上手ですね、ふふ」
 ぎゃーーー!!
 上がった叫びは誰のものだったろうか。追及は、当然、避けておこう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ティノ・ミラーリア
「眷族」で子ども達の下山を確認後、眷族を索敵に向けよう。
子ども達は帰った…次は、コレを還す番だね

【SPD】
鎧砕き5、破魔6、傷口をえぐる2、迷彩5、先制攻撃2、かばう2、呪詛耐性2、鎧無視攻撃5

マントの迷彩で森に溶けながら眷族の索敵で先制攻撃。
攻撃を仕掛けた後も眷族は周囲を飛んで死角のカバー。
銀か鉄か、何が効くかはまだ分からないけど…
破魔の力を込めた「狩猟銃」の弾丸で鎧砕き・鎧無視攻撃。
敵の攻撃には呪詛耐性で対抗しながら眷族がかばうように。
『咎力封じ』と合わせて後方からの援護を主体に。
近接も出来るけど、ここはまだ温存したいしね…

用があるのは大元なんだ。早いとこ処理させてもらうよ


絢辻・幽子
私の知ってる『ともだち』の、カタチとは少しちがうような…
まぁ、私そこまでおともだち、いないのですけど?

なぁんて、
別に悲しくはないですよ。えぇ、ほんとうに。

強化されては面倒ですから
行動をある程度、封じてしまいましょう
盗んだ声で喋られるのはとても、不快ですし
その口を塞いでしまいましょう。
からくり人形のヒトノコも操りつつ
封じましょう、封じてしまいましょう。

……それにしても、あなたの口は大きいですね
あなたはその口でどれだけの子を食らったのでしょう。

考えたくは、ありませんけど。


子殺しとかが嫌いな狐です
何もしていない子どもとかなら尚更に

アドリブなどはおまかせです。



●ともだちとんだ
「だーれっ? ぼくだーれっ?」
「ともだちっ! ともだちっ!」
 周囲飛び交う翼怪たちの、耳障りな声の中。絢辻・幽子(幽々・f04449)は、何とはなしに考える。
(私の知ってる『ともだち』の、カタチとは少しちがうような……)
 単に模倣しているだけならば、そもそもが誰に伝えるものでもない、ただの音。
 鳥はもちろん、動物の鳴き声にも意図は籠るというのに。意味のない雑音ばかりを、よくもまぁぼろぼろと。
(まぁ、私そこまでおともだち、いないのですけど?)
 だから自分も知っているような、そんなに知らないような。ふわりふわり。
 別に悲しくはない。いなければならないわけでもないのだから。悲しくはないのだ。本当に。
「……ふぅ」
 そんな弁明――いや、純然たる事実ではあるが――を、頭の中で終える。口に出すのはなんだか負けな気がしたし。それに。
「ともだちぃぃぃっ!」
 どうせこいつらも聞いちゃいない。
 好き勝手に喚いて騒いで――それだけでなく、なるほど。目を凝らせば、じわりと夜闇が纏わり付きつつあるようだ。
「強化されては面倒ですから。行動をある程度、封じて……」
 ――?
 なにやら、凄まじいものが迫り来るような。それでいて、動かずとも問題ないような。
「ともだっ――」
 ごごごごごごうッッ!!
 様子見に回った幽子の目の前で。光の斬撃と報復の鴉が、業風もかくやと翼怪たちへ喰らい付き、盛大に吹き荒れながら過ぎ去っていった。
「…………あらまぁ」

「どういうことなんだろう……」
 迷彩マントを軽く翻し、降り来た雪を落とす。困惑するティノ・ミラーリア(ダンピールの咎人殺し・f01828)の周囲で、『眷属』たちもどうするべきかと指示を待っている。
 子らの下山を確認し終わり、次は索敵にと思った傍から。急に傷だらけの翼怪が二羽ほど吹き飛んで来て、眼前を通り、茂みの中へと転がっていったのだ。轟音が聞こえていたし、他の戦闘の余波にでも巻き込まれたのだろうか。……まぁ、しかし、何にしても好都合。
「子ども達は帰った……次は、コレを還す番だね」
 かちゃり。『狩猟銃』に破魔の弾丸を込め、ティノは素早く思考を困惑から切り替える。傷を負っているならば、本来よりも与し易いはず。それなら、力を温存しつつでも十二分に。
「手負いは危険、とも言うけど。そも、用があるのは大元なんだ。早いとこ処理させてもらうよ」
 どうあれ、撃ち狙うに油断は持たない。先に見た翼怪へ向け、『眷属』たちは予定通り索敵に。ティノもまた、マントを以て木々の中へと溶け込み慎重に進む。
 鳴き声のひとつでも上げてくれれば、こちらとしても楽になるのだが。動かないのか、動けないのか。しばし進んでも気配は未だ――。
「……ん」
 ぴくり、白耳が音を拾う。
 追うように空へ目を向ければ、己が『眷属』、コウモリが数匹集まっていた。――あの下か。
「場所さえ、分かれば」
 どうも他にも音があるが、翼怪のものとは明らかに別。となれば尚更に、どう料理するも自由だ。
 煮ても焼いても。食えるかどうかは、別として。

 幽子もまた、翼怪が吹き飛んだ先へとぐるり迂回し到着していた。木々の合間を縫っても進めたが、それだと尻尾に草葉がくっついてしまいそうで……。
 と、それは良いとして。
「おや、思ったよりはまだ元気ですね」
 不快な声が止まっていたから、てっきり半死半生かと思いきや。下卑た笑みもそのままに、ちょうどこちらへ口を開いた。
「ともだちっ! たすけてっ! たすけてっ!」
「……それにしても、見れば見るほどあなたの口は大きいですね」
 その口で、子を。
 これは人語を解さぬとのこと。つまりその言葉は、食らった時にでも聞いたものか。
「止めましょうか。考えたくもありません」
 しかし、もはや、姿が不快だ。存在が不快だ。特に、聞くに堪えない声が不快だ。
 ――だから、封じてしまおう。口を塞いで、命を縛って、骸の海へと沈めてしまおう。
「だーれっ? きみだー……れッ!?」
 一羽が飛びかからんと羽ばたきかけた、その時に。茂みより跳び出たオオカミ――『眷属』がその体躯にて、穢れた羽を地へ押し付ける。
「だーれっ! だーれっ!!」
「強いて言うなら、敵かな」
 がさり。『眷属』に続いて顔を出したティノの手には、力刮ぐための拘束具。ただただ惨めにもがく君へ、ようやく渡せる贈り物。返品は受け付けていない、ご了承願おう。
「ともだちッ!!」
 驚いたことに仲間意識はあったのか。あるいは、助けなければ自分の身も危ないとでも思ったか。とにもかくにも、もう一羽は鉤爪を突き立てんと『眷属』へ。
 けれど。そんなもの、届くわけも。
「ともだ――」
「そんなに人恋しいのなら、さぁどうぞ」
 ぎゅう。後ろからしっかと抱きしめたのは、幽子のからくり人形、『壱の子』。優しく優しく縊り殺してくれる、お人形。
 無事にもがくが二羽となったところで、そろそろ最後の時間としよう。二人から放たれた拘束具、【咎力封じ】。その全てをきちんと身に着けさせれば、残りは仕上げの一手間のみ。
「ども゛ッ……だッ……」
 ぎゅう、ぎゅうう。こちらは体温のない抱擁を、心行くまで、命逝くまで味わって。
 ごきん、と。楽し気な音が終わりの合図。
「だれッ! だれッ! だれッ!! だれッ!!」
「……さっき、言ったよ」
 どう発声しているのか、猿轡越しでも聞こえる声。うんざりしながら『狩猟銃』を構え、指は引き金に。かちり、かちり。こちらは狙いを付けて、あとは簡単。
 ガァン! と。耳衝く音が終わりの合図。
 ――罪無きを食む、不浄の輩。海へと還す、その合図。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

忠海・雷火
居なくなった子供の数と同じ、か
ともあれ私は、いや、私達は敵を斬り捨てるのみよ

基本的には刀での接近戦、一体ずつ確実に倒していく
ある程度数が減る頃には此方の動きも見切られるだろうから、その時は別人格に交代し不意を突く

接近戦を挑む以上、間違いなく手足の爪での一撃を狙われるし、断末魔も浴びせてくるでしょう
ある程度見ていれば見切りを試み、それが出来ずともガードの準備はしておく。恐怖も狂気は怒りで抑え込む
そして、近付く事を選んだ段階で、此方も捨て身の覚悟。ただ受けるだけでもない
傷から流れる血で即座にユーベルコードを発動
「もう、黙れ」
刀を無数の刃からなる異形の武器へ変え、無念も怨念も何もかも喰い斬ってくれる



●ともだちしんだ
「トモくん」
 組み付こうと、引き裂こうと、幾度となく繰り出される鉤爪。まずは連撃で軽くでも消耗を、という心算なのだろうが。皮を掠りはしても、まだ血肉を渡すことはない。
 上より振り下ろされた手の爪は、軽く身を引きやり過ごす。ならばと突き出された足の爪は――より身を引くは厳しいか。刀を打ち当て、衝撃を利用し体を捻りつつ、左へと受け流す。
「トモくん、トモくん」
 ちらり無銘の刀身へ視線を走らせる。上手く受ける力を逸らせたようで、刃毀れはない。そう簡単に毀れる心配はしていないが、念入れて損することもないだろう。
 今の動きには、慣れてきた。随分慎重な個体のようで、堅実に立ち回ってきているが、そろそろ別の戦い方にでも切り替えてくるだろうか。まぁ、替えなければ、それまでとなるだけ。
「トモくんトモくん――どこッ!!」
 幸か不幸か、いい加減焦れたのは向こうも同じだったらしい。
 ぐぐっと縮まった状態から、一気に上空へ。そして、急降下。両手足を揃え、四つの凶器で握り裂こうという腹か。
「……ああ。つい、動きを見送り過ぎたかしら」
 前方へ跳び退けば、まだ避けられなくもない、が。それは、あの鳥頭も察しているかもしれない。追撃まで予定に織り込み済みだと、やや危うい。
 ならば、『私』はもう、いいか。先の通り、焦れていたのはこちらもだ。
「トモくんッ!!」
 ……翼怪と、いなくなった子の数が同じ。それは、そういうことなのだろう。それでも。
「私は、いや、『私達』は」
 ――敵を斬り捨てるのみ。
「どこ……ッ!?」
 まったく。こちらも切り替え、真っ向から受けてみれば。鳴り響くそれは、刃物が立てて良い音かどうか。
 相当な勢いだ、足が地に少し沈んでしまった。腕の腱も無事ではない。加えて、肩の肉まで見事に抉られて。
 けれど、やはり回避されるが予定だったか。翼怪にも僅かな硬直が見て取れた。では。
「……あああああああああッッ!!!」
 そうだ。そうするだろうな。
 鍔迫り合いを解くよりは、そのまま呪詛を放った方が合理的。ゆえに。
「あああああああああッッ!! ……あッ?」
 抑え込む。
 呪詛を恐怖を狂気を苦痛を、全て、全て。
 全て、全て、全て、全て、怒りの下へ。怒りの底へ。怒りの糧へ。
 どろり。流れ滴る血は、されど損失にあらず。身捨てる覚悟も、無謀にあらず。なれば。
「もう、黙れ」
 空ゆく羽も。肉裂く爪も。囀る口も。もはや不要。
 穢身に押し込まれた無念想念怨念共々、喰い斬ってしまえ。
「ああ、あッ」
 鍔迫り合いから一方的な暴食へ。何処からか来たる無数の刃は、【ブラッド・ガイスト】。忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)の――そして、別人格たるカイラの。邪神共を喰い散らすための力。
「あッ――」
 ――ィィィィイイン。
 刃へ消えゆく体に取り残された悲鳴も、また。刃鳴りの咢の奥へと落ちた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『鑼犠御・螺愚喇』

POW   :    友、死にたまふことなかれ
【友を想う詩 】を聞いて共感した対象全てを治療する。
SPD   :    怪物失格
自身の【友の帰る場所を守る 】の為に敢えて不利な行動をすると、身体能力が増大する。
WIZ   :    永遠の怪
【皮膚 】から【酸の霧】を放ち、【欠損】により対象の動きを一時的に封じる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ともだちおいで
 山中に静寂が満ちた。模倣の声は消え去った。
 手駒の次は大元へ。深く深くへと踏み分け行けば、やや開けた空間に、大きな鳥の巣がひとつ。それに引っかかるように、服やら何やらが、ひとつ、ふたつ――。
「ともだち。いない? なんで」
 ずるずる。
 ずるずるずるずる。ぼとり。
 巣から落ちて、ともだちを探す。なにか。
「ともだち――」
 ――ああ、いた。あんなに。なにをしているの。
「おいで。おいで」
 かえるばしょは、ここだよ。
絢辻・幽子
……ずいぶんと、さみしがり、なんですね
ひとりも楽しいですよ、気楽で

……ただ『ともだち』が欲しいという
その想いだけで、動いているのか
わかりません、私はあなたではないですし
私ができるのはあなたを燃やしてしまう事だけです。
ともだちイコールご飯だとしたらまぁ、思い切り燃やすまでなのですが。

酸の霧は、まともに受けたくはありませんから
私の可愛いお人形さんを盾にしますけどね
洋服とか尻尾の毛が溶けるとか、そういう度合じゃないですし
骨までもってかれそうね。

(多分友を想う詩を聞いても
お人形さんの壱の子と二人暮らしが長い狐にはぴんとこない)


忠海・雷火
※人格はカイラ

もしかして、友達が欲しいだけだった? 子供を翼怪に変えたのも、わざとではない?
……仮にそうだとしても、駄目だ。貴方は死を呼び過ぎた

さて、敵はあまり動かないと聞いている
ユーベルコードで死霊達を呼び、私はずっと後方へと下がり身を隠そう
命令は単純、「なるべく足を狙え」「敵を殺せ」の二つだけ
死霊が倒されれば再び呼び出し、嗾ける間に少し潜伏場所を変える
いずれにせよ敵の動きは見ておきたいので、戦闘の見える位置には居る
此方に向かってくるなら、これまでの観察を活かして見切り回避を試みる

此方に酸の霧が漂ってきたなら即座に移動
一度風上に行き、それでも霧の速度が変わらないなら、風は気にしない事とする



●ともだちだから
 ぺったぺった。のそのそ。
 ゆっくりゆっくり動く「なにか」からは、害意はおろか敵意さえも感じられない。響く声も綺麗に透き通り、不快な模倣とは程遠い。
 姿は見るからに異形。揺れる度にぐじゅり染み出す酸の霧。これが大元にして元凶であるのは、間違いない、のだが。
「もしかして、友達が欲しいだけだった? 子供を翼怪に変えたのも、わざとではない?」
「……ずいぶんと、さみしがり、なんですね」
 先の翼怪共はどこまでも下劣であった。だからこそ、どうにも異様さが際立つ。UDC、オブリビオン。にもかかわらず、邪悪な存在ではないというのか。
「……仮にそうだとしても、駄目だ。貴方は死を呼び過ぎた」
 カイラ。忠海・雷火(襲の氷炎・f03441)の肉体に宿る別人格が、僅かに眉を顰めたは、何の想いからか。……ただ、何れにしても、それは仕舞い込む。ここで終わらせることには変わりないのだから。
「そうですねぇ。私にできるのも、燃やしてしまう事だけです」
 同様に、「なにか」を眺めていた絢辻・幽子(幽々・f04449)もまた。推し測るはできないと、結論を零す。さみしいだけなのか、友愛と食欲がない交ぜになっているのか。後者であれば何の躊躇もなく燃やして終わりなのだが。
 幽子は幽子で、「なにか」は「なにか」。考えたところで分かりはしない。
「ここだよ。おいで」
「……あの霧、まともに受けると大変なことになりそうですね。洋服とか尻尾の毛が溶けるとか、そういう度合じゃないですし」
 骨までもっていかれそう。意識を討伐へと向けた幽子の視線の先で、今も滴り落ち続ける酸が地を穿ち――落ち続ける?
「なんでしょう……なにか、奇妙なような」
「……霧が、広がっていない?」
 距離的にも速度的にも、元より敵はそう動くこともないはずだが……にしても、霧まで全くこちらへ漂ってこないのはどういうわけか。まだ近付かれるまで余裕はあると、改めてカイラが観察してみれば、理由はすぐに判明した。
(あれは、空気よりも重いのか。だから風に乗ることもなく、地に吸われてしまうと)
 唯一警戒すべきかと思われた酸の霧。その実態も、見掛け倒し――いや。そもそも、攻撃のためのものでもなく、単にそういう生態なだけかもしれない。今までの言動を見るに。
「………………」
 ならば、倒すには易い。僥倖だ。だと言うのに。
 カイラの喉元へ込み上げかけたもやもやとしたものは、無理矢理に飲み下された。

「あついよ。どうして?」
「……どうしてでしょうねぇ」
 幽子より投げ放たれた【フォックスファイア】に身を焦がされて。されど未だに敵意は見えず。むしろこれは困惑、だろうか。
「どうして? かえろう。さみしくないよ」
「ひとりも楽しいですよ、気楽で。……ああ、いえ。ふたりでしょうか」
 からくり人形の『壱の子』と、合わせて。
 ともだちともだちと言われても、どうしても幽子にはぴんとこないが。まぁ、どの道翼怪と化してまで知ろうとも思えない。だから結局、燃やすのだ。
 残る狐火を束ね、まだ燻る「なにか」へと放る。火の手が、今度は全身を包み込んだ。酸の臭いと肉の焼ける臭いが重なり、胸の悪くなりそうな中心点から。やはり、綺麗な声が響き渡る。
「あつい。あついよ。あつい」
 後ろの巣への引火を恐れたか、のたうち回って揉み消そうとはしなかったものの。そのまま棒立ちで燃え続けるかと思いきや。
「――やめて」
「っ……先までより、ずいぶんとお速いことで」
 直後にこちらへ突っ込んできた。これは、尾が少々汚れるだろうが、強引に跳び退くしかないか。そう身構えた幽子の左右から――。
「あついの。やめて。…………あ」
 飛び出した死霊騎士が「なにか」の片足を剣で斬り払い、死霊蛇竜がもう片足へ尾を巻き付けて振り払えば。当然のようにバランスを崩してよろめき、勢いのまま盛大に地面へと激突した。
(基本的には鈍重。ただし巣を守る時は能力が向上する……か)
 脅威には遠く思えども、万一を考慮し離れて動きを見ておく。【リザレクト・オブリビオン】――死霊を呼び出す力を以て、嗾ける戦力も確保。命令は単純ながら、「なるべく足を狙え」で何かあっても対処へ。「敵を殺せ」で何もなければ討伐へ。カイラの行動に無駄はなく、それゆえ得た利も機も上々。以降の苦戦は、あるまい。
 接近したことで、酸に焼かれつつある死霊たちを一度戻す。少し待って再召喚すれば、また元通り嗾けられるだろう。
「……う」
 ずるずる。
 体を起こし、ふるり震えた。ようやっと「なにか」の火も消えたようで――ああ、もう。
「貴方、名前は」
 わざわざ「なにか」と言い換えるもそろそろ面倒だ。ないならないで構わないと、さして期待も込めずに問いかける。
「なまえ。なまえ? らぐお・らぐら」
「そう」
 ラグオ・ラグラ。それが、死を招いたこの怪物の名前か。
 知ったところで何がどうなるというわけでもないが――。
「きみは」
 どうなるという、わけでも――。
「ぼくのなまえ。よんで、くれる?」
「――――」
 ただの戯言だ。一顧だにする価値はない。分かっている。
 だから、続けよう。
「ほんとうに、さみしがり」
 カイラが死霊を呼び出すに合わせて。話を見守っていた幽子も、狐火を空へひとつ、ふたつと浮かべて照らす。
 ――死より来たる騎士の斬撃、蛇竜の咀嚼。追って燃え立つ狐の怪火。
 集う内より上がる悲鳴は。ああ、それでも。
 綺麗な、ままだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティノ・ミラーリア
いくら呼ばれても、そこは僕の帰る場所じゃないんだ

SPD【咎力封じ】
眷属は索敵で敵の様子やオブジェクトの捜索をさせ、
「先制攻撃」と敵の攻撃から僕や味方を「かばう」。
狩猟銃「スナイパー」と、処刑人の剣「力溜め」で「破魔、鎧砕き、鎧無視攻撃」の攻撃。
攻撃の合間に『咎力封じ』での無力化を試す。
何かは知らないけど、ここで最期だ…
「傷口をえぐる」で傷を深くしながら攻撃で動きの止まった所へ、
処刑人の剣での切断か銀の剣や杭の「串刺し」で致命傷を狙う。

無事に戦闘が終わったら誰でもいいからオブジェクトの破壊を確認。


キディ・ナシュ
お友達は奪うものでも、殺すものでもありません
分からないならばそれでいいのです
私たちも、見逃せないだけですから

ええ、おねえちゃん(f00651)は人見知りがすごいのです
だから向こうで会ったら仲良くしてあげてくださいね
その時は私も背を押しますから

受け取った杭を、巣に当たらないように回り込んで敵へと投げます
動きを取れぬように地面へと縫い付けられれば良いですね
そうすれば、きっと他の方の攻撃が当たりやすい筈です
あっ、やめてくださいおねえちゃんごめんなさい刺さないで痛ァ!

ちゃあんと沢山練習しましたからね
大丈夫、なるべく苦しまないようには善処いたしますよ

例え遺された物達だけでも
ただいまが言えますように


イディ・ナシュ
残念、ですが
こちらでは貴方のお友達になれないのです

ですから、先に戻っておいてください
かの海へ、貴方の友も還る場所へ
そうお待たせせずに、私も往くところです
イディの名をできれば覚えておいて下さいな
あちらで恨み言でもお喋りでも何でも、聞かせて頂きますから
寂しいのは、嫌ですよね

先の尖った、硬い杭を作れるだけ作りましょう
単純な構造であれば
造形が荒くとも用は足りるでしょうか
作った端からキディ(f00998)へと投げ渡します
頼みましたよ、痛む時間が少なくて済むように
先の余計な一言ぶん、渡す時にうっかりしますけどね

お子さん達の遺品もあるようですし巣は温存を
後で回収が叶いましたら、組織の方にでもお預けしましょう


鵜飼・章
ラグオ・ラグラ…話には聞いていたよ
醜い躰にヒトの心を持つ可哀想な子
嫌いになれないな

僕の本当の渾名は『死神』
きみの友達にぴったりだ
独りで淋しかったね。僕と遊ぼう

使用UCは【相対性理論】
黒い隼と鴉の群れを操って
一羽の巨大な鴉になろうか
鳴きながら上空を飛び回り注意をひこう

仲間や鴉達を酸の霧に巻き込ませないよう注意
攻撃する時は魔導書を用い
【早業/スナイパー】で幻の動物をけしかける
この子達と遊んでね

楽しかった?
きみもそろそろお帰り
骸の海へ

※戦闘後
UC【閉じた時間的曲線の存在可能性】で
死んだ少年達の一時蘇生を試みる

僕の術は24時間で終わる
友達にお別れしたら帰っておいで
是非は本物の神様(MSさん)に預けるね


忠海・雷火
戦闘は一方的、酸も落ちるだけとはいえ、其処へ近付くのは流石に危険と見た
此処まで嫌という程に動きは見た。突進されても見切れる筈、何なら避け様に斬りつける事すら出来そうだ
変わらず距離は取っておき、ユーベルコードで呼ぶ死霊を嗾ける
死霊への命令にも変更は無い

私は友達にはなれない。貴方が齎した死を許す事も出来ない
「友達」が居る、或いは居たのだとしたら。恐らくそれは遠い過去、骸の海の内
だからもう、帰ると良い
その道行きには、せめて死霊達を付き合わせよう
名前は……覚えておく

無事に死へと送り返せたら、人格は雷火に戻す
オブジェクトは巣にあるとは思うのだけれど
物が何であれ、迷子の邪神がもう来ないようにしなければね


絢辻・幽子
ラグオ・ラグラ、あなたが巣に何を隠しているのか
私は知らないし……
巣にさえ近づかなければ、それほどの脅威
ではないとは思うけれど、そうもいかないのよね
鳥が、あなたを育てていたのかどうなのか
私は知らないけど。

もうしわけないけれど、私はこうして
あなたと遊ぶ事しか出来ません
こうして、戦う事があなたと遊ぶ、事です。

そうそう、火遊びはよくないそうよ、子どもには
なぁんて。

燃えなさい、燃えてしまいなさいな
そうして生まれ変わったらともだちと遊べるような
そんな子どもとして生まれ変わるといいです。

あぁ、嫌ですね
子どもの声に少し戸惑う自分が嫌

攻撃が飛んで来るようなら
壱の子を盾にしましょう、ごめんなさいね
私の可愛い子。



●ともだち
 戦局は――これを戦いと呼ぶなら、だが――もはや、猟兵たちの優勢に揺らぎはないだろう。直接触れに向かわなければ、酸に焼かれることもなく。さりとて突進も、巣へ手出しさえしなければ、にじり寄る程度の速度とくれば。動きそのものも嫌というほどに見た。来たところで、何なら避け様に斬りつけることすらできそうだ。
 こうなれば敗北はない。苦戦もない。あとは、ぶすぶすと余煙を纏う異形に止めを刺すのみ。
 それだけだ。それだけ、だが。
(私は友達にはなれない。貴方が齎した死を許す事も出来ない)
 理由がどうあれ、背景がどうあれ、過去がどうあれ。行ったことが、行ってしまった事実が、消えることはない。ゆえに討つ。邪神は討たなければならないと、身を以て知っているから。
 カイラは再び酸に塗れた死霊たちを送還すると、先と同じく距離を取ることにした。避けるも易いとはいえ、今のところ敢えて近付く理由もない。また再召喚を待ってから嗾けてやれば良いだろう。命令にも、変更は必要ない。
 必要は、ないのだ。

「残念、ですが。こちらでは貴方のお友達になれないのです」
「なれない。どうして?」
「分からないならばそれでいいのです。わたしたちも、見逃せないだけですから」
 切り出すイディ・ナシュ(廻宵話・f00651)、続くキディ・ナシュ(未知・f00998)。姉妹はまず、言葉交わすを選択した。いくら友を欲せども、それは奪うものでなければ、殺すものでもない。異形がその在り方である限り、自分たちは友にはなれない。――だから。
「先に戻っておいてください。かの海へ、貴方の友も還る場所へ。そうお待たせせずに、私も往くところです」
 友としての談笑は、こちらではなく、あちらで。染み出した今の中ではなく、過去としてゆらり漂いながら行おうと。
「イディの名を、できれば覚えておいて下さいな」
「……なまえ。いでぃ」
「あちらで恨み言でもお喋りでも何でも、聞かせて頂きますから。寂しいのは、嫌ですよね」
 ふるり、ふるり。考え込むように揺れ動く。晴れた煙の次は霧が流れて、誰にも届かず地へと沈んだ。元より、触れ合うこともできない体。
 でも。それでも。誰もいないのは。
「うん。さみしいの、いや」
「おねえちゃんは人見知りがすごいのです。だから向こうで会ったら仲良くしてあげてくださいね」
 今度は縦に体をふるり。あれは、姉の言葉に頷いたのだろう。
 であれば。
「その時はわたしも背を押しますから」
「うん。うん」
 キディもまた、共にそこへ向かうと笑う。
 触れられない指の代わりに、言葉を切って紡ぎ上げた。優しい約束。

「光より速く。【相対性理論(ソウタイセイリロン)】」
 夜に紛れるように広がりゆく響きの中。姿現すは、様子見するように空を旋回する巨鳥。体躯は優に三メートルを超え、羽ばたきひとつで木々が軋むのではと思うほど。闇に溶ける黒、濡羽色をよくよく見れば、それは。
(ラグオ・ラグラ……話には聞いていたよ。醜い躰にヒトの心を持つ可哀想な子。嫌いになれないな)
 サーディン・ランならぬレイブン・ラン、と呼ぶべきか。巨鳥を成した鴉の群れの内側から、鵜飼・章(シュレディンガーの鵺・f03255)は、静かに異形を見下ろしていた。
 他の猟兵も、そろそろ幕引きへと動く頃合いだろうか。仕掛け時がくれば、自分も相手をしてあげよう。そう、戦いというよりも――。
(うん?)
 気付けば章の近くを飛んでいた、鴉でない、黒。
「君達は……そうか。僕と同じ、機を窺っていた人がいるんだね」
 なら、合わせる手もあるか。独りぼっちよりも、誰かと一緒に。誰かと一緒よりも、皆と一緒に。きっとそれが、あの子にとっても。
 ぽんぽんと、巨鳥の核――【相対性理論】にて呼び出された、巨大な黒きハヤブサの背を叩けば。返るは短くも鋭い、了承の声。

 予想は正しく、その時はすぐに訪れた。イディ、キディとの約束を経て。異形は猟兵たちをぐるり見回しながらなにやら考え込むばかりで、今は足をほぼ止めかけている。
 ――始めよう、終わらせるために。
 初めに聞こえたのは、銃声。『狩猟銃』より撃ち出された弾丸が、肉を抉じ開け抜ける音。
「う、う」
 どうにか逃れようと全身を捩るも、次々と襲い来る破魔込めた銃撃は、何れも違わず身を穿つ。異形が鈍いのもあるが、射手たるティノ・ミラーリア(ダンピールの咎人殺し・f01828)の狙いが迷いなく的確であるがゆえか。
「ともだち、に――」
「いくら呼ばれても、そこは僕の帰る場所じゃないんだ」
 行動は見ていた。話も聞いていた。けれど、それで知ったものはこの存在のほんの一端のみだ。
 それだけで、躊躇するわけにはいかない。何より、巣としては大きいと言ったって。
「そんな、狭いところには。……戻りたくないから」
 安住安寧の地を定めるには、まだ早すぎる。ティノには見聞きしたいものが、感じたいものが、まだまだ多すぎる。閉じた世界なんて――もう、十分。
「そうだね、ここに留まり続けることはできないんだ。僕達も、きみも」
「……からす」
 降って来た、人と鳥の声。逆さまになぞり、見上げてみれば。黒。
「うん、大きな鴉だよ」
 ハヤブサもいるけれど。そんな呟きは、当のハヤブサの声によって遮られた。今宵ばかりは鴉で良いと、そういうことだろうか。
(しかし、接してみれば尚更に……)
 嫌いには、なれそうにない。
 幸いにもと言うべきか、章の本当の渾名は『死神』。死を呼び込んだ異形と並べば。
「……きみの友達にぴったりだ。独りで淋しかったね。僕と遊ぼう」
 ぱらり、携えた本の頁を捲る。提供は生物図鑑『自然数の集合』より、呼び出されるは多種多様な動物たち。の、幻。
「なに、なに? これ。知らない」
 見たことのない生物へ。抱く想いは人も異形もそう変わらないのだろうか。すなわち、興味と、警戒。
 今は身動き取れずにいるようだが、状況に慣れればまた動き出すかもしれない。なら、その前に。
「造形は少々荒くなるものの、数は作れそうです。受け取ってください、キディ」
「はい、こちらへ!」
 イディの技巧。偽の物品を作り出す、【レプリカクラフト】。偽とは言えど、元が単純な構造であれば実用に耐え得るものだ。例えば、先ほどより作った端から義妹へ投げ渡し続けている杭とか。
「あっ、早いですいったん置くので待ってください持ち切れな……あっ、あっ、おねえちゃんやめてくださいごめんなさい刺さないで痛ァ!」
「ああ。人見知りがどうだのと、先の余計な一言を思い出したら、またついうっかりと。ふふ」
 お姉さんは根に持つタイプ。
 されど、なにも義妹を刺すためだけに大量に用意したわけではない。……本当に。
「これだけあれば、地面へ縫い付けるには十分、です!」
「ええ、頼みましたよ。……痛む時間が少なくて済むように」
 その場であたふたしている異形の背後。巣を害さないようしっかり位置調整してから、キディは託された杭を構え、呼吸を整えた。
「ちゃあんと沢山練習しましたからね。大丈夫、なるべく苦しまないようには善処いたしますよ」
 脳からの指令は、【プログラムド・ジェノサイド】。手足は意でなく起動されたプログラムに従い、地を踏みしめ、杭を掲げる。
 痛みと苦しみに引き摺られた末に、なんて。キディも望んでいないから。やるならば速やかに、スムーズに。幾度も練習を重ねて、そういう風に調整したのだ。だから、大丈夫。
「せー……のっ!」
 力の限り、投げる。
 投げる、投げる、投げる、投げる。
「あ――」
 異形が気付けど、もう遅い。
 足を縫い付け、腕を縫い付け、歩みも震えも封じてしまえば。回避はおろか、抵抗さえも。
 加えてさらに、もう一押し。
「ここで最期だ……」
 だけど。いや、だから。せめて。
 ティノの放った拘束具が、地にへばりつく異形を捕らえた。【咎力封じ】。力を奪い去る、本来敵にとっての脅威であろうそれも、今だけは。
「む、ぐ。……ん。からだ。へん」
 酸の霧を押し留め、誰かと触れ合うを可能としてみせた。
 救いを与えるわけではない。慈悲をかけるわけでもない。直に切り裂くには、酸がどうしても邪魔だっただけのこと。
 ……ただ。後味が良くなるに、越したこともない。殊更に悲劇を好むでもないのだから、どうせ目にするならば、だ。
 処断のための『処刑人の剣』、邪悪を祓う『銀の剣』、あるいは。何れを以て終わりとするか、ティノが選ぶまでの数瞬に。幽子もまた、遣り遂げようと【フォックスファイア】。きっとこれが、今日最後の狐火となる。
(ラグオ・ラグラ、あなたが巣に何を隠しているのか、私は知らないし……)
 かえるばしょ。そう言ったからには、何かしら意味はある場所なのだろう。事実異形がそこから離れることはなかった。近付きさえしなければ、この異形自体はさほど害もないのかもしれない。それでも。
「もうしわけないけれど、私はこうしてあなたと遊ぶ事しか出来ません」
 翼怪も異形もここから生じたという。ともだちなのか、育ての親か。良く分からないが、やるべきは同じこと。
「こうして、戦う事があなたと遊ぶ、事です」
 身じろぎもせず――できず――じっと幽子を見詰める異形。
「そうそう、火遊びはよくないそうよ、子どもには。なぁんて」
 どこか気持ちを振り払うように声を流し続けていた幽子へと。
「あついの。いや、だよ」
 やめて、でも。どうして、でもなく。
 たぶん、きっと、仕方ないと受け入れて。けど、嫌なものは嫌だと。それは。
「……あぁ、嫌ですね」
 駄々を捏ねる子のようで。それに少し戸惑う幽子自身が、嫌になるから。――火の中に、この想いも焼べてしまおう。
「燃えなさい、燃えてしまいなさいな」
 あなたは鳥ではないけれど。跡を濁さず、何も遺さず、ゆくといい。
 異形をくるくる囲む狐火が、次には真ん中へと集まり、爆ぜ上がった。
「あつい、な」
 炎の下で、くたり。
 焼き焦げた皮が、肉が、剥がれ落ちて。その先を徐々に曝け出せば。幽子は軽く意識を向けて、そこらだけ綺麗に炎を消した。
「――ばいばい」
 ティノは、異形を縫い付けるとは別の『杭』を選び。曝されたその奥深くへと、突き立てる。
 もう酸にも炎にも焼かれることはない。ただ、この出来事と命に終止符を。
「『友達』が居る、或いは居たのだとしたら。恐らくそれは遠い過去、骸の海の内」
 ここに、時は満ちた。
 カイラの声に呼応するかのように、【リザレクト・オブリビオン】。癒えた死霊たちの役割も。
「だからもう、帰ると良い」
 ぞぶ、と。反対側より肉を裂き貫く剣は、騎士のもの。蛇竜もまた、拘束具の上より更に異形を締め上げる。
 ――それは、まるで。
「あ。みんな、いっしょ」
 こんな、『抱擁』なんて。いつ振りだろうか。それとも、初めてだろうか。
「きみもそろそろお帰り。骸の海へ」
「生まれ変わったら、ともだちと遊べるような。そんな子どもとして生を受けるといいです」
「うん。あそぶっていってくれて。ありがとう」
 章へ。幽子へ。
「あちらで待っていてくださっても、良いですからね」
「おねえちゃん、仲良くしてくれる人がいないと独りになっちゃいますからね!」
「うん。やくそく。わすれてないよ」
 イディへ。キディへ。
「……ん。知り合えたわけじゃないけど、帰るなら見送る」
「道行きには、せめて死霊達を付き合わせよう。名前は……覚えておく」
「うん。さわってくれたの。うれしかった」
 ティノへ。カイラへ。
「おやすみなさい」
 あついけど。いたいけど。なんでだろう。
 こわく、ないなぁ――――。

●からすがなくからかえりましょう
「どこにも遺体はない、か」
 翼怪が声を模倣していた以上、全て啄まれてしまったのだろうか。
 疑似的な蘇生を行う【閉じた時間的曲線の存在可能性(タイムマシーン)】発動のために、せめて多少でも肉片や残留思念があれば――いや、まて。
「確か、子供たちは翼怪を生む媒体として使われたとか。なら、もしかして」
 山中へと視線を送る。おおよそ平らげてしまった個体もいるが、それでも一部程度はどこかに落ちているかもしれない。
 ――章の呟きを聞いて、もう一度鴉たちが羽ばたき散った。

「これは……ただの遺品、かな」
「(でしたら、こちらで回収しておきましょうか)」
「おねえちゃん、言葉は口から出さないとダメですってば!」
 いつも通りのコミュ障を発揮する姉に代わって、キディはティノより物品を受け取った。これは、家の鍵だろうか。
(……例え遺された物達だけでも)
 ただいまが言えますように。そう願いを込めて、ぎゅっと掌に包み込む。
 ――ここは件の巣の内部。ティノの眷属、コウモリたちが予め周辺の捜索を行っていたことで、オブジェクトはやはり巣内にあると結論付けられていた。なので、遺品回収も兼ねて皆でがさがさと探っているわけなのだが……。
「こっちにはありませんねぇ」
「同じく。あったのは、何の変哲もない衣服くらいね」
 からくり人形『壱の子』と共に一角をひっくり返していた幽子、終わりを見届けてカイラから切り替わった雷火の目にも、それらしきものは見当たらない。
 服に、鍵に、カードに。……犠牲者を思い浮かべてしまい、どうにもいたたまれなくなりそうだ。
「どこかにあるとは思うのだけれど。物が何であれ、迷子の邪神がもう来ないようにしなければね」
「……いっそのこと、この巣ごと燃やしてしまうとかどうでしょう」
「最悪そうするのも悪くはないかもしれない……ただ、それ、探すのが面倒だから言っているだけじゃない?」
 いえいえそんなまさかまさか。そっと目を逸らす幽子に、雷火は思わず息を吐いた。
 いや、まぁ、雷火としても。正直ちょっと、かなり、作業自体は面倒になってきてはいるが。そう思っても手は休めないのは、雷火生来の真面目さゆえか。
「んんー、これも違うあれも違う……おねえちゃんの方はどうですか?」
「遺品の整理は概ね終えましたが、特別変わった品はなにも。……強いて言えば、この巣自体が変わっていますね」
 そもそもこんなもの、誰が作ったのだろうか。見た目だけは普通の巣だが、それが余計に良く分からない。まさか、本当に鳥が作ったわけでもないと思うが。
「大きいですものねぇ。燃やすのがやっぱり手っ取り早いのでは」
「(そうですね。そうかもしれません)」
「おねえちゃん……」
 検証を進めようかと思ったが、いい加減に帰りたくなった幽子がさらっと自案を持ち込んできたことで、またもや姉は置物になってしまった。キディの目に諦めが浮かぶ。道はまだまだ険しそうだが、頑張ってほしい。お姉さんの対人関係は全て君に掛かっている!
「なにか、見落としてる……?」
 しかしこうも見付からないとは、さすがにおかしい。
 首を傾げながら、ティノがもう一歩深くへ足を踏み入れた、その時。
 ――さみしいよ、さみしい。
「……ッ!?」
 脳に直接語りかけてくるような、声。
 あの異形……では、ない。これはなにか、違う。
 ――おいで、おいで。
 頭が痛む、が、ティノには呪詛への耐性がある。今すぐどうということは、ない。ならば。
(どこ、から?)
 振り払うのでなく、逆に耳を澄ませる。声の先を辿り、辿り――。
「……そうか、そういうこと。つまり、『これ』そのものが」
 当初あの異形がしきりにこちらを呼んでいたのは、『これ』の真似をしていたのか。ここに人が来ればさみしさを埋めることができると、たまたまそれを見てしまったから。
 似たような気持ちを抱えた異形を呼び寄せてしまうほど、誰もいないさみしさで、初めにないていたのは――。





●空巣が哭くから孵りましょう

 オブジェクト-1631(仮ナンバー)報告書
 作成者:UDC職員■■・■■

 オブジェクト-1631は直径五メートルほどの鳥の巣です。小枝や木片、藁などで作られており、大きさを除けば近辺のハシブトガラスの巣に酷似しています。素材に異常性はありません。作成者は不明です。
 オブジェクト-1631は内部に入った対象へ、「自身は卵でもあり、この巣を満たすために孵らなければならない」という強力な暗示をかけます。暗示をかけられた対象は罅割れて弾け、その中より『嘲笑う翼怪』と呼称される生物が現れると考えられています。(『嘲笑う翼怪』については別紙参照)
 オブジェクト-1631は■■県内の■■山にて外部協力者(以下猟兵)によって発見・処理されました。その際オブジェクト-1631内部へも踏み込まれましたが、猟兵の方々に不調はありません。

 オブジェクト-1631、及び『嘲笑う翼怪』によって■■山周辺の児童数名が行方不明となりました。猟兵の方々に倣い、カバーストーリー「熊の徘徊」を周辺住民へ。カバーストーリー「神隠し」を周辺小学校へ。それぞれ適応すると共に、前者を理由として一時的に■■山への立ち入りを禁じています。併せて、猟兵の方々が回収された被害者の遺品は、それぞれの家族の元へと送られました。
 現時点での対応は以上です。





●カラスが鳴くから帰りましょう
 あの日から三人とも、帰る前に山の入口に寄るのが日課となった。今日はたまたま自分だけだけど。
 中には入らない、きっとまた怒られちゃう。
「トモキとタクヤ、やっぱり今はそっちにいるのかな」
 そっち――神様たちがいるところに。
 あの日の夜、いなくなったみんなの声がしたって騒ぎになった。
 夢だとか、妄想だとか、そんな風に言われもしたけど。そうじゃないんだ。だって、自分も確かに聞いたから。
「『もう会えないけど、ずっと見守ってるよ』、かぁ」
 そんなことを言わず、帰ってきてほしい。また一緒に遊びたい。
 でも、本当にもう会えないんだろうな。なんとなく分かってしまう。
「オレたちもそうならないように、止めてくれたんだよね」
 山で出会った人だったり、神様だったり、もしかしたら動物だって。それも、今になればなんとなく分かっていた。捜索隊とか、あとで大人に聞いてみても、知らないって言われたし。あの日以降、誰一人同じ人とは会えないし――。
「――あ、やばっ」
 そのまま思いを巡らせていると、いつの間にか時間が過ぎ去っていた。うちの母さんもすっかり心配性になっちゃったから、早く帰らなきゃ。鳴き声のおかげで気付けたよ、と木に留まっていたカラスへ軽く手を振った。
 ばいばい。ありがとう。またね。
 そろそろ夕焼けが綺麗な時間。いつも通りの、帰宅時間。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月21日


挿絵イラスト