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A&W飯(初級編)~棘蜥蜴のから揚げ~

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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●酔っ払いの戯言。はたまた街の救世主。
「ううむ、どうしたものか」
 アックス&ウィザーズのとある宿場町。その大衆食堂。
 夕餉時もとうに過ぎ、客入りもまばらになった食堂の一角で、1人の髭面の男が頭を抱えていた。
「食糧難は留まるところを知らない、か。このまま家畜が魔物の被害を受け続ければ俺のような旅人はおろか、町の者さえまともに食うことが出来なくなってしまう」
 そう呟き酒を煽るこの男はどうやら冒険者のようだ。筋骨隆々な体格、刈り込まれた茶髪と雑に整えられた長い髭、そして動きやすそうな皮製の軽装鎧。
 一見すると、魔物退治を生業としている熟練の冒険者といった印象を与えるその男は、しかし退治に出かけるでもなく、注文した豚肉のフライを酒で流し込む。
「しかし、野生の動物を狩ろうにも、こう魔物がうろついていては一帯には食肉にできそうな獣など碌に残っておるまい。このままでは町から肉がなくなってしまうぞ!」
 そう嘆く間にも次々と注文した料理を平らげていく冒険者風の男。
 ひょっとすると町の食料難はこいつのせいではなかろうかとさえ思わせる食べっぷりである。
 あ、こいつまた追加オーダー出しやがった。
「むぅ……肉が、肉がぁ……いや! いやいやいや! 肉ならあるじゃあないか! あるじゃぁないかぁ!」
 と、何度目かのおかわりを食べきったその時、男の目がカッと見開かれた。
 食堂中に響き渡る程の大声で男はこれぞ名案と立ち上がる。
「お肉が無いなら魔物を食べればいいじゃない!」
 ……おい、誰かこの大喰らいのウワバミを医者に連れていけ。
 だが、店内にいる他の客も、店主すらもこの男と目を合わせようとすらしない。
 絡めば面倒事に巻き込まれると、既に彼らは身をもって学んでいるのだ。
「そうだ、なぜ今まで気が付かなかったのか。今こそ、この冒険料理人ガンギスの古き夢を叶える時! そうと決まれば冒険者ギルドに連絡だ!」
 そう大声でのたまうと、男ーガンギスはおぼつかない足取りで食堂の外へと向かうのであった。

●無表情幼女、かく語りき。
「という訳で、てめーらにはこのカンギスという男を正気に戻してもらう……のではなく、魔物狩りの手伝いをしてもらうのな」
 集まった猟兵達に事の顛末を説明したトリシュ・リグヴェーダ(知恵の刃・f18752)は一同の白い眼を意にも介さず言葉を続ける。
「これは実に面白い検証です。魔物、つまるところオブリビオンの食用は可能であるか否か。そしてその味は。毒性の有無は。興味は尽きることがありません。この実験は知恵の刃を司る『物』として見逃してはおけません、です」
 無表情でありながら語気に熱い物を感じさせるトリシュ。
 猟兵達を置いてけぼりにしている気があるが、それは彼女の知るところではないのだろう。
「おほん、失礼。熱くなり過ぎました……いえ、トリシュに感情はありませんので熱くなることは断じてないのな。兎にも角にも、既に冒険者ギルド経由で依頼を受けて前金も受け取っているのな。特上うな重美味しかったのな」
 さらっととんでもない事を言いのけた気がするが、見た目8歳児が満足げにお腹をさすっているので大人の皆は許してくれるはずだ。
「さあ、トリシュの知識欲を満たすため、もとい町の平和を守るため、猟兵出動なのなー!」
 瞬間、有無を言わさず巻き起こる次元を跳躍する竜巻。
 竜巻に巻き込まれた猟兵達は半ば強制的にアックス&ウィザーズへと飛ばされるのであった。
「お土産待ってるのな~。ご飯が出来たらトリシュを呼んでくれてもいいのな~。飛んでいくのな~」


Naranji
 そうさゲキ! ゲキ! 過激に~!
 ガン! ガン! 食おうぜ~!
 喰らえ~腹に~溜まる飯を~!

 ……はい、ダンジョンには潜りませんがモンスターを飯にしましょう。
 MSのNawanjiと申します。
 初めましての方は初めまして。
 以前も参加して頂いた方は、本当にありがとうございます。

 最初に注意をば。
 今シナリオはいつにも増して執筆がゆっくりになることが予想されます。
 最悪、プレイングが流れてしまう場合がありますが、その際はお手数ですが再提出していただければ、内容に問題がない限り採用したいと考えておりますので、あらかじめご了承くださいませ。

 さて、もうお気づきでしょうが、今回はシリアス一切抜きのお気楽な冒険シナリオになります。
 しっかりと判定ダイスは振りますが、ギャグ補正も大いに入る事でしょう。

 シナリオ構成としては、
 集団戦パート→本ボスパート→日常パートとなっております。
 日常パートでは討伐したモンスターで料理を作って食べていただきますので、戦闘パート内でどんな料理にするかを考えながらプレイングを書くのも楽しいかもしれません。
(タイトルは「唐揚げ」となっていますが、唐揚げ以外の物を作っても全く問題ありません)
 また、料理が苦手な方は今作のNPCガンギスさんにお任せしたり、手伝ってもらうと良いでしょう。
 そして第三章では、お誘い頂いた場合のみ当グリモア猟兵のトリシュを登場させようと考えています、登場した場合は、料理のお手伝いをしたり味の感想を言ったりしますので、興味のある方は御声掛けくださいませ。

 それでは皆様の創意工夫に富んだパフォーマンスや熱い戦闘プレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『棘蜥蜴』

POW   :    集団遊猟
技能名「【追跡】【地形の利用】【トンネル掘り】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
SPD   :    探知器官
技能名「【暗視】【見切り】【失せ物探し】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    鱗色変化
技能名「【目立たない】【忍び足】【迷彩】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。

イラスト:ヤマトイヌル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●食の求道者。はたまた暑苦しい迷惑親父。
 半強制的に転移させられ、猟兵達が辿り着いたのは夕暮れ時の宿場町。その正門前。
 そこでは髭面の冒険者、ガンギスが猟兵達を今か今かと待っていた。
「おお、来たか! 君たちが冒険者ギルドから派遣された協力者だな。うむうむ、皆いい面構えだ! ぬわーっはっはっは!」
 いきなりの暑苦しくも偉そうな態度でガンギスは君達を歓迎すると、さっそくと言わんばかりに大荷物を背負って歩き出した。
「さあ、なにをグズグズしている! 魔物は待ってはくれんぞ。直ぐにでも彼奴等を討伐して街を救わねばなあ!」
 どうやら今回の討伐にはこの暑苦しい男も同行するようだ。しかし、持ち物に武器の類は見受けられない。
 猟兵の1人がそのことを尋ねると、ガンギスは、
「そりゃあ俺は戦士じゃないからな。俺はガンギス! 美食と浪漫を求めて旅する、人呼んでさすらいの料理人だ。今に本も出すぞ! 武器にサインでも書いてやろうか? ぬわーっはっはっは!!」
 そう言って唾をまき散らして豪快に笑った。
 つまるところ、戦いは俺の領分じゃないから猟兵に任せるとのことらしい。
「そうそう、ギルドから伝え聞いているとは思うが、今回君達に討伐してもらいたいのは棘蜥蜴というモンスターだ」
 いえ、まったくの初耳です。グリモア猟兵の怠慢です。と、猟兵のが口を挟む暇なく、ガンギスは速足を休めることなく勝手にしゃべり続ける。
「本来ならこの街道よりもずっと南の沼地で見かけられた魔物だったんだが、どういう訳か最近になってこの宿場町付近まで縄張りを広げたようなのだ。夜行性の臆病だが狡猾な肉食獣で、夜闇や風景に紛れて集団で狩りをするらしい」
 と、不意にガンギスの目が鋭くなる。
「その棘に覆われた皮膚は見た絵のとおり頑強で、高い耐火性と耐水性を備えておるようだ」
 先ほどまでの暑苦しさはどこへやら、熟練の冒険者然としたその的確な敵勢把握能力で、これから討伐する棘蜥蜴たちの情報を淀みなく伝えるガンギス。
 なるほど料理の為だけに各地を旅してきたというのは伊達ではないようだ。
「今回は敢えて奴らが活性化する夜を狙って討伐を行う。その方が奴らを一網打尽に出来るだろうからな。過酷な戦いになるだろうが、ギルドから推薦された諸君ならきっと討伐できるだろう」
 立ち止まり、情熱に滾る瞳で一同を見返すガンギス。
 その姿に猟兵達の中には、彼のことを誤解していたようだ、と考えを改めた者もいたとか、いなかったとか。
「ちなみに伝え聞いた話によると、肉は脂肪分が少なく且つ豊潤な旨味を兼ね備えたているようでなぁ。骨周りにはコラーゲンも豊富に備えてるらしい。いやいや、実に興味深い!」
 台無しであった。
 どうやら彼の瞳に灯る炎は、まだ見ぬ食材への憧れからくるものであったようだ。
「さあ、無事に討伐を終えたら共に祝宴を上げようではないか! その時こそ俺の腕の振るいどころ。手に入れた棘蜥蜴の肉でこの世に二つとない絶品料理を作ってやるからのう! ぬわーっはっはっは! ぬわーっはっはっは!」
幻武・極
へえ、前金はグリモア猟兵が使ってしまったのか。
それじゃあ、しょうがないよね。
魔物狩りに行きますか。

ふーん、気配は感じるけど姿は見えないね。
擬態かな。
幻武百烈拳で攻撃するかな。
無数の突きからくり出される衝撃波によって気絶攻撃を狙ってみるよ。
姿が見えないなら範囲攻撃が一番だね。


黒玻璃・ミコ
※スライム形態

◆心情
ふーむ、あまりにも自然と竜種を美味しく頂いている身としては
そもそも論として魔物が食用に適するのかと言う疑問は目から鱗でしたね

◆行動
【POW】で判定
今回のメニューは唐揚げとの事
それなりの肉を確保する必要がありますよねー

まずは件の棘蜥蜴達が潜む場所に赴き
【毒使い】により体内で【誘惑】フェロモンを精製し
【念動力】で風に乗せ私が居る所へと【おびき寄せ】ましょうか?
いつもの私でしたら溶かしたり丸呑みしてしまいますが
今回は影より九つの愛剣を取り出し【怪力】漲るマイハンドで
【範囲攻撃】の要領で手際よく頭を落として血抜きしていきましょう

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
にゃ!うな重の香り…!(ふらふら)にゃ?うな重は?……お肉?ふんふん。
蜥蜴達を狩れば良いんだね?僕は子猫に変身し、猫の瞳による暗視や微細な動きを感じる髭で動きを見切るよ。
髭感知に獲物を捉えたら【カウンターレギオン】を発動。神々の呪を召喚し更に神々の呪を子猫に変えて、うな重の恨み(?)をぶつける様にレフティと元神々の呪は、呪いのオーラ防御で強化された肉球や爪で刺を折り、盾の如き肉球によるシールドバッシュで意識を刈り取る気絶攻撃。がんがん捕獲していくにゃあ。
…や、恨みは本気にしてないけど。折角だから動機にして皆を鼓舞し、うな重よりも美味しい獲物を狩り尽くしていくにゃよ。




 ガンギスの先導で訪れたのは、町の南に広がる森林地帯。
「ここは既に棘蜥蜴の縄張りの中だろう。皆、気をつけろ!」
 潜む気があるのかという程の威勢のいい声で猟兵達を叱咤するガンギス。
 一方の猟兵達はというと、それぞれの特技でもって既に行動を始めていた。
「ふーん、気配は感じるけど姿は見えないね。擬態かな」
 滑るような体捌きで自然の障害物をものともせず進むのは、幻武・極(最高の武術?を追い求める羅刹・f00331)
 彼女は武術により培った感覚を研ぎ澄まし、木々の中に潜む気配を探っていた。
「ええ、森に入ってすぐに私のフェロモンを風にのせて振りまき撒きました。そろそろこちらに気付いて近づいて来ている筈です」
 ふと、極の右肩から鈴を転がすような可愛らしい声が聞こえた。
 そこにいた、もとい乗っていたのはスライム形態に変身していた黒玻璃・ミコ(屠竜の魔女・f00148)だ。
 本来ならば不定形の体を人間型に成形することも出来る彼女であったが、今回はより効率的にフェロモンを振りまくために、元来のブラックタールの姿を取っているようだ。
 そしてミコが乗っている肩の反対側、極の左肩の上にはもう一人、いや一匹仲間が同乗していた。
「うにゃ! レフティの髭にも反応ありにゃ」
 極の肩の上でふわふわの白い毛を逆立たせるのは、手の平サイズのキュートな子猫―レフティ・リトルキャット(フェアリーのリトルキャット・f15935)だ。
「まだ囲まれきってはいないけど、それも時間の問題……先制攻撃するにゃ?」
「ああ、先攻はボクに任せて!」
 猫の敏感なお鬚センサーにかかれば、潜んだ棘蜥蜴の群れの位置など一目瞭然。
 レフティの指示を受けた極は近くの茂みに一跳びすると、着地する間もなく両の拳をすさまじい速度で突き出し、連撃を繰り出した。
「幻武百裂拳っ! とりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃあ!!」
「ゲギャアアッ!」
 棘蜥蜴にしてみたら溜まったものではない。なにしろ、潜んでいた所に百を超える拳打の雨あられが唐突に降り注いだのだ。
 衝撃波を伴うそれは、避け切れなかった数匹を飲み込んであっという間に茂みを吹き飛ばし、棘蜥蜴の一団を露わにする。
「どうだ、これがボクの百裂拳だ! と言っても、幻影を交えて水増ししたものだけど、獣への威嚇には持ってこいだよね」
 極の読み通り、見た目にもインパクトのあるこの攻撃で棘蜥蜴の群れは混乱状態に陥ったようだ。
 そんな状態では本来の連携など取れるはずもなく、隠れられる茂みも丸裸同然。
 となると、彼らに残された手段は逃げの一手のみなのだが。
「おっと、逃がしませんよ」
 しかし、突如として棘蜥蜴を囲むように地面から漆黒の壁が出現し、その逃走ルートに立ち塞がった。
 いつの間にか極の肩から降りて先回りしていたミコが、不定形の腕を伸ばしその行く手を遮ったのだ。
「では、いただきます……と、いけない。また癖で丸呑みにしてしまうところでした。ふーむ、あまりにも自然と竜種を美味しく頂いている身としては、そもそも論として魔物が食用に適するのかと言う疑問は目から鱗でしたね」
 普段から数多の世界でドラゴンを捕食(丸呑みして消化)していたミコにとって、オブリビオンを料理して食べるというのは、また別の意味で新鮮なものであるようだ。
「でしたら、これを使いましょう。血抜きも出来て一石二鳥です」
 そう言って、ミコがどこからともなく取り出したのは、異なる形状を持つ9つの刃。
 それらを増殖させた腕で握ると、凄まじい怪力でもって振り回す。
「ギャギャー!」
「ギャーッス!」
 圧倒的な暴力の前に、哀れ瞬く間に頭を落とされ地に伏していく棘蜥蜴たち。
 倒れた端から血抜きの為に足を掴まれて吊るし上げられていく蜥蜴達の末路は涙無くしては語れなかった、というのは後にガンギスが語った言葉である。
「レフティも頑張るにゃ! ここに来る前に嗅いだうな重の残り香のせいで、もう腹ペコにゃ!」
 最早逃げ場無しと察した必死の抵抗に打って出た棘蜥蜴達に対し、跳びだしたのはレフティだ。
 レフティは自身に隷属した知能ある神々の呪いを解き放つと、それらを操って棘蜥蜴の突進や爪を受けとめる。
 壮絶な数と数のぶつかり合い。その様はさながら、
「何あれ可愛い」
「食べちゃいたくなるくらいキュートですー」
 猫カフェの如くであった。
 そう、レフティが生来その身に宿す呪いは子猫化の呪い。それを従わせていた神々の呪いに纏わせれば、総勢60匹の子猫軍団の完成だ。
 棘蜥蜴の特攻を受けとめ、反撃とばかりに繰り出される大量の子猫たちによる肉球パンチ。
 しかし見た目は可愛らしくとも、それを受ける棘蜥蜴達は次々と棘を折られ、脳を揺らし失神していくのだから溜まったものではない。
 モフモフ達の大反撃が収まったころには、茂みに潜んでいた棘蜥蜴の群れは悉く大地に沈んでいた。
「どんなもんにゃ! よーし、この調子でうな重よりも美味しい獲物を狩り尽くしていくにゃよ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します

どうせならこのあと料理するので、脂肪分がどうとかコラーゲンがどうとかよりも、なんのお肉に似ているかで教えてほしいところですね
まあ、どんなお肉でも焼いて火を通せば食べれますか

夜間の戦い……前回の棘蜥蜴さんたちとの戦いは雨のなかでしたが、今回もなかなかのバッドコンディションですね
だけど、私もなにもしてこなかったわけじゃありません
あとで砂抜きしなきゃいけなそうなのは大変そうですが、ここは新技のスコーピオンテイルで一網打尽にします!
範囲内の敵を自動で迎撃する結界です!
この結界の前には、あなたたちの【忍び足】も【迷彩】も役に立ちませんよ!
お姉様たちは危ないので、離れていてください


エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
チーム【獣人同盟】で参加するのじゃ
『棘蜥蜴』か…今日は久しぶりにトカゲの丸焼きにするかの?
まずは近場の動物を狩り、【巨狼マニトゥ】に積み込み【騎乗】して『棘蜥蜴』の縄張りに運び込むか。
(動物使い使用)
【野生の勘】を頼りに居そうな場所を特定して、餌の匂いと【秘伝の篠笛】の音色で『棘蜥蜴』をおびき寄せるのじゃ。
そのまま攻撃を受けない距離を【見切り】つつ『棘蜥蜴』をスピレイルの結界まで誘導し一網打尽にするのがよいじゃろう。
【スコーピオンテイル】の範囲内に入ったら【掌の創造】で自分の周囲のみの土の槍と砂塵を風に変えて掌握、結界に入り込んだ『棘蜥蜴』を風で絡めとり動きを封じるのじゃ。


二條・心春
【獣人同盟】で参加します。
二人はトカゲを食べたことがあるんです?見た目がちょっとあれですが、脂肪が少ないとかコラーゲンが豊富とか、気になりますね……!
私の目では夜の闇に紛れる敵を見つけるのは難しいので、【召喚:蛇竜】で呼んだワームさんに見つけてもらいます。ふふ、蛇は温度で獲物を見つけることができるんですよ。ワームさんの尻尾で吹き飛ばしたり、私が拳銃を撃って、スピレイルさんの結界に追い込みます。エウトティアさん、私もお手伝いしますね!
凄い、トカゲさん達がどんどん倒れていきます。強力な結界ですね。(槍に貫かれのたうち回るトカゲを見て)あ、あれを食べるんですよね。……あんまり見ないようにしようかな。



 先の戦いから僅かに間を置き、月が木々の背を超える高さに差し掛かる頃。
 手分けして棘蜥蜴の群れを退治して回ることにした猟兵一行は、いくつかの班に分かれて森の更に奥地へと足を踏み入れていた。
 そしてそんな班の一つ、旅団【獣人同盟】として行動するスピレイル・ナトゥア(蒼色の螺旋の巫女姫・f06014)と二條・心春(弱さを強さに・f11004)の2人は木陰に寄り添ってひと時の休息をとっていた。
「へ~、スピレイルさんは棘蜥蜴と前にも戦ったことがあるんですね」
「はい、以前は雨の中での戦闘で大変でしたが、今回は夜間の戦い。以前同様、なかなかのバッドコンディションですね。だけど、私も今まで何もしてこなかったわけじゃありません。あの時よりもずっと強くなっていますので、安心してくださいね」
 月光の如き青を湛える目を細めて、柔らかく微笑むスピレイル。
 と、そんな彼女の背後に迫る巨影が一つ。
「あら、おかえりなさいお姉さま。いつもより遅かったですね」
「うむ、待たせたの。この森も街同様随分と荒されておるようでの。鹿一匹探すのにも苦労した」
 スピレイルの背後に現れたのは、痩せこけた小鹿を咥えた巨狼マニトゥ。
 そして、マニトゥに跨っている少女こそスピレイルの双子の姉、エウトティア・ナトゥア(緋色線条の巫女姫・f04161)だ。
「だが、これで準備完了じゃ。あとは血の匂いを察知して寄ってきた棘蜥蜴をちょちょいと一狩りしてやるだけ。ふふ、今日は久しぶりにトカゲの丸焼きにするかの?」
「私としては、せっかくの初めてのお肉なのですから、その味にあった料理も試してみたいですね。事前にどんなお肉の味に似ているかとかを知っておけたら、よかったのですが……まあ、どんなお肉でも焼いて火を通せば食べれますか」
 大自然と共に生きるワイルドテイストたっぷりな遊牧民として生まれ育った二人にとってすれば、魔物を食べる事などなんの抵抗もないようだ。
 一方、UDCアースの普通の学生としてつい最近まで生活していた心春はというと、
「二人はトカゲを食べたことがあるんです? 見た目がちょっとあれですが、脂肪が少ないとかコラーゲンが豊富とか、気になりますね……!」
 案外、乗り気だった。

 それからまた暫し後。
 森の中に無造作に置かれた鹿の死体の元に、注意深く歩み寄る影。言うまでもなく棘蜥蜴である。
 獲物の臭いと、樹上に潜んだエウトティアが風に乗せて奏でる篠笛の調べに引き寄せられるようにして集まってきた棘蜥蜴達は、誰が我先に獲物に齧り付くかと睨み合う。
 と次の瞬間、鹿が置かれた地面が変質し、取り囲んでいた棘蜥蜴達を鋭利な土の槍が次々と串刺しにしていくではないか。
「スコーピオンテイル! 私の新技、範囲内の敵を自動迎撃する大地の結界です。さあお姉さま、心春さん、お願いします!」
 跪き祈るように手を組んだスピレイルが、周囲の地面を砂塵へと変換する。
 これはスピレイルのシャーマンとしての御業。この地を荒す無礼者達を撃滅せんとする森の怒りの体現である。
 次々と土の槍に貫かれていく棘蜥蜴であったが、しかし中には運よく群れの外側にいたため、素早く危険領域から脱することに成功していた者もいた。
 そんな幸運な棘蜥蜴は、しかし直ぐに思い知ることとなる。
 あのまま貫かれて一瞬で葬られていた方が遥かに幸運であったと。
「フシュルルルルルル……!!」
 逃げ出そうとした棘蜥蜴が『それ』を見た時、最初はそれを森に住まうコウモリかと何かだと判断した。しかしその考えは直ぐに覆る。
 弾性のある翼は月を覆い隠すほどに大きく黒く暗く、そして歪んだ頭部にぽっかりと開いた穴から覗く眼はどこまでも冷たい。
 チロチロと見え隠れする炎のような赤色が細長い蛇の舌であると気づいた時には、棘蜥蜴はそれのうねる長躯によって中空に攫われていた。
『蛇龍(ワーム)』。UDCアースの邪神に仕える種族であり、恐怖を駆り立てる者の異名を持つ有翼の蛇は、トカゲの背に生えた棘状の鱗など意にも介さず、絡め捕ったまま締め上げる。
 そして限界まで捻じられた棘は一瞬にして罅割れ、鱗と骨が交じり合った歪な肉塊がその場に投げ捨てられた。
「ギッ、ギギイイイイイイ!!」
「ゲギャギャアアーッ!!」
 仲間の無残な最期を見つけられ狂気に陥った棘蜥蜴達は、自らの生存本能のままに後退する。
 背後にいったい何があったのかなどとうに忘れ。背後の一帯が既に土槍と砂塵の地獄と化している事などとうに忘れ、ただひたすらに死地へと向かう。
 そして、その先に待つものは。
「うっわぁぁ……私達、あれを食べるんですよね。……あんまり見ないようにしようかな」
 土槍に突き上げられても尚、蛇龍から逃げようと中空で脚をジタバタと動かす棘蜥蜴達の末路を見て、樹上でその様子を見守っていた心春は思わず目を逸らす。
 自分で召喚した頼れる仲間の活躍とはいえ、元普通の女子高生の精神には些か刺激が強すぎたようだ。
「やれやれコハル殿、何をしょげておる? 先ほどまでの威勢はどうしたのじゃ?」
 妹が展開した大地の結界の上から突風の結界を重ね掛けして更に棘蜥蜴達の逃亡を阻止しながら、エウトティアは枝にしがみつくコアラになってしまった心春を引っ張り上げる。
「うわぁ! 私は普通の日本人なんですー! スーパーに並んだ加工済みのお肉しか見た事ないんですー!」
「どうせこれから奴らを捌くのじゃから、これくらい見慣れておかんとやっていけんぞ?」
「捌く前に肉にこびりついた砂と土を取らないとですから少し手間ですけどね。ふふ、忙しい夜になりそうです。でも、料理はこの一手間が大事っていいますよね♪」
 狩猟慣れした姉妹の言葉に、心春は青白かった顔を更に真っ白にして絶句する。
 もはや昏く引きつった笑みを浮かべるしかない心春にとって、そんな主人の頬を心配そうに舐める蛇龍だけが救いであった。

 情け無用の弱肉強食。
 喰われる側も必死だが、覚悟がいるのだ喰う側も。
 アックス&ウィザーズ飯。ああ、アックス&ウィザーズ飯。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

ふーん、棘蜥蜴を食材にしようって話か
オブリビオン料理といえば、アルダワで食べたキメラのラムステーキは美味かったなぁ
あんな食事にありつけるなら手伝ってもいいかな

夜間戦闘対策にUCでステルス観測機を周囲に飛ばし、赤外線カメラと音響センサーで敵の位置を探ろう
観測精度は数でカバー、大体の規模とタイミングさえわかれば後は何とかなるでしょ

獲物を効率よく狩れるように、装備してるBVAカノンを金属製の杭を撃ちだすパイルシューター形態にしておく
これで地面に縫い付けてやればもう逃げ隠れ出来ないし、一匹ずつ確実に仕留められるだろ
仮に外してもまだ2本、足に仕込んだ杭打機があるしあの程度の鱗問題無いね


テラ・ウィンディア
おいおい…トリシュといい…カンギスといい…何を馬鹿な事を言っているんだろうな
正直理解に苦しむぞ(心底呆れたという様子で肩を竦め

食えるに決まってるだろーが
何当たり前な事を言ってやがるんだ(嘗てワイバーンも美味しく調理して食べたエルフがほざいた

とは言え…こいつは鱗を剥ぐのがちと大変そうだが…まぁ何とかなるだろ

【戦闘知識】で敵の陣形を把握
更に敵の急所も捕捉
モードグランディア発動
そのまま槍を片手に襲い掛かり
【串刺し】で蜥蜴の急所を速やかに貫き
【残像・空中戦・見切り・第六感】で避け乍ら
【早業】で剣と太刀に切り替え急所を正確に狙って仕留めていく
料理するならあまり傷つけちゃいけないよなぁ??


東山・歩
あー……私こういう漫画読んだことあるなぁ……!
そっかぁ、実際考える人いるかぁ……

うん、よし!そういうことならせめて美味しそうなの狩ろうか、ハムさん!
こう、丸々として……肉付きの良さそうな。

あの蜥蜴なんてどうかなハムさん。え、あれはダメ?筋張ってる?

……食べたの?

ま、まぁいいや。大丈夫、ちゃんと料理すれば食べられるんじゃないかな!
さぁ、そういう訳で……やっちゃえ、ハムさん!




 アックス&ウィザーズの夜空を駆ける機影。
 灰色のパワードスーツを身に纏う少年、名をエルト・ドーントレス(灰色の雷光・f14009)といった。
「オブリビオン料理といえば、アルダワで食べたキメラのラムステーキは美味かったなぁ。あんな食事にありつけるなら手伝ってもいいかな」
 気だるげな物言いだが、森を見下ろし棘蜥蜴を探すその目は真剣そのもの。
 目的が食欲の為というところが締まらないが、それでもエルトはやる時はやる男だ。
「さて、この辺でいいか。コード実行。……データリンク正常。観測エリアは森林全域とその内部、設定完了。ヴァルキリー、展開開始」
 起動コードを口にしてセーフティロックを解除。パワードスーツに収納されていた小型のステルス観測機『ヴァルキリー』達を森中に射出する。
 飛行音を敵に悟られないようスピードを抑えつつ視界を制御画面に移行すれば、パワードスーツ『レッキス』の内部モニターがヴァルキリーから送られてくる膨大なデータで埋め尽くされる。
「動作正常。さあて、何処に隠れてる?」
 ガンギスの話によれば棘蜥蜴は土中に潜んで狩りを行う事もあるとのこと。
 ならば目で補足出来ない可能性も予測し、赤外線センサーによる温度探知での索敵を行うまでだ。
「ほら、怖くないぞぉ。美味しく食べてやるから早く出てこい」


 一方そのころ地上では。
 カンギスが巨大なハムスターの背で激しく揺られていた。
「ぬおおおお!! 揺れるぞお! 俺は乗り物は苦手なんだ!」
「うるさいよー。それにハムさんを乗り物呼ばわりしないでください。失礼しちゃうね、ハムさん?」
「ムキュー!」
 東山・歩(普通of普通・f21515)は相棒の超巨大ハムスター、ハムさんに騎乗して森の中を駆けまわり蜥蜴を探していた。
 その道中で猟兵達に置いていかれてしまっていたカンギスを拾い上げたはいいものの、この男、さっきから五月蠅いわ暴れるわ酒臭いわで碌なことが無い。
「もう、モンスターを狩って食べるーなんてとってもファンタジーで面白そうだったのに、発案者がこれじゃ台無しだよ。あ、そっかぁ、やっぱり変人だから実際にモンスターを食べようなんて考えちゃうのかなぁ……」
 はぁ、と隠す気もない大きなため息をつく歩。すると案の定、歩の背後から大声で反論の声が上がる。
「何を言うか! モンスターとて動物。魔力を備えていようが悪意をもって人を襲おうが、食べようと思えば食べられるのだ。俺はそんなモンスターを使って野性味溢るる未知なる料理を作ることが夢だったのだ!」
「ちょっ、耳元で叫ばないでください! うわ、唾とんだ汚い!」
 ハムさんの背の上でドタバタともみ合う二人。
 さすがにイライラしてきたハムさんであったが、そんな騒がしい2人をハムさんの横を並走する少女が諫めた。
「おいおい、トリシュといい、カンギスといい、歩といい……何を馬鹿な事を言っているんだろうな。正直理解に苦しむぞ」
 空さえ駆ける自慢の健脚で軽やかに地面を蹴って、ハムさんを追い越さんばかりのスピードで疾走しているのはテラ・ウィンディア(炎玉の竜騎士・f04499)。
 彼女は常識を疑うぞ、といった素振りで肩をすくめた。
「テラさんもそう思いますよね! やっぱりおかしいですよね! ……ってあれ、今私のことも引き合いに出した?」
「未知だ検証だと、意味が分からん。モンスターだぞ、食えるに決まってるだろーが。何当たり前な事を言ってやがるんだ!」
 ああ、この人も正常な部類ではなかった。
 がっくしと肩を落とす歩。
「ほほお、その口ぶり! キミは既にモンスターを食したことが」
「あるぞ! 特にワイバーンは美味かったな!」
 正に鼻高々と言った様子で、器用に薄い胸を張りながら走るテラ。
 割と前方不注意だが、そこはエルフの冴え渡る勘で障害物に躓くことなく猛スピードで走り続ける。
 高スペックなんだか残念なんだかよく分からない子であった。
 と、不意にテラとハムさんが同時に立ち止まる。エルフの第六感とハムさんの野生のセンサーに何かが引っかかたようだ。
「ムキュキュゥ……」
「ああ、近いな。気を抜くなよ」
 1人と1匹が背中合わせに戦闘態勢を取れば、確かに彼らが見つめる先―周囲の茂みから何かが騒めく気配を感じる。
 ところでテラさん、もしかしなくても今ハムさんと会話しませんでした?
「もぉぉ……うん、よし! そういうことならせめて美味しそうなの狩ろうか、ハムさん!」
 こうなってしまっては腹を括るしかない。歩はせめてハムさんの戦いの邪魔になら無いようにと、ガンギスを蹴落としてから地に降りる。
 ともすれば自身が狙われかねない状況だが、自分が囮になっている間に頼れる仲間がきっと戦いを優位に進めてくれるはずだと、歩は勇気を振り絞った。
 そして吹き抜ける一陣の風。
 瞬間、歩の背後の土が盛り上がり、彼女を地面に引きずりこもうと凶悪な爪が伸びる。
「遅い!」
 しかし爪が届くより速く、テラが振りおろした槍が爪を叩き折り、そのままその身に纏った超重力フィールドで地面の下に潜んだ棘蜥蜴を叩き潰した。
「おっと、料理するからあまり傷つけちゃいけないよな? 加減に気をつけないと」
 土の下でペシャンコになっているであろうトカゲに御免! と手を合わせ、辺りを見回すテラ。
 見れば周囲の土中や茂みからは、もはや不意打ちは不可能と悟った棘蜥蜴達が姿を現し取り囲み始めている。
 テラは棘を逆立たせて威嚇する蜥蜴の群れを一瞥し、
「とは言え……こいつは鱗を剥ぐのがちと大変そうだが、まぁ何とかなるだろ」
 紫電一閃! 
 予備動作なしの強襲刺突により、寸分違うことなくに棘蜥蜴の喉を貫いた。
「わわ! 始まっちゃった。ハムさんも頑張れ! 折角だからこう、丸々として……肉付きの良さそうな奴を倒しちゃって!」
 声援を送ろうと相棒に目を向ける歩。
 と、その頃にはハムさんは既に一匹の丸々と太った棘蜥蜴に馬乗りになってガジガジガジと噛みついていた。
 トドメの噛みつきからの咀嚼。次いで嚥下。そして幾ばくかの後にプェッ! と頬袋に残っていた肉片を吐き出すと、ハムさんハフルフルと首を横に振る。
「え、太ってるのはダメ? 筋張ってる?……食べたの?」
 せっかく仕留めた食材が大して美味しくなかった事にやる気をなくしたのか、蜥蜴の死体を足蹴にしながら頭をクシクシしだすハムさん。
 そんな彼の様子に歩は若干引きつつ、それでも相棒は私の為に検食してくれたのだと気を取り直す。
「ま、まぁいいや。大丈夫、ちゃんと料理すれば食べられるんじゃないかな! さぁ、そういう訳で……やっちゃえ、ハムさん!」

 一方、ガンギスはというと。
「ぬおおおお! 俺を忘れるでないぞ! 誰か助けんかー!」
 思いっきりトカゲに追い回されていた。
 四方八方からの突撃を寸での所で回避し続けていたガンギスであったが、生憎この男は戦士ではない。
 体力の限界も直ぐに訪れ、遂に不可避の牙が彼の頭に齧り付かんと迫る。
 もはやこれまでと固く目を瞑ったガンギスであったが、
『バシュン!』
 いつまで経っても痛みはやってこなかった。
 そして恐る恐る目を開けば、なんと棘蜥蜴は鉄製の杭で脳天を貫かれ絶命しているではないか。
「やれやれ、せっかく格好良く助けに来たってのに、その相手がおっさんじゃねえ……。まあいいや、怪我ない?」
 鎧越しに話しかけられたような、くぐもった声が聞こえたのは頭上から。
 はっとガンギスが空を見上げると、そこにはパイルシューターを構えて滞空している機械兵士―エルトの姿があった。
「もう他で散々狩ってきたから、パイルの残弾少ないんだよねぇ。でも極力とどめは刺さないように縫い付けて来たから、鮮度良好のはずだよ。後でおっさんには俺の食材集めを手伝ってもらうんだから、ここで死なれちゃ困るよ」
 などと言いながらも、着陸することなく、上空から次々とパイルシューターを発射していくエルト。
 彼に気付いて飛び掛かろうとしたトカゲは、足裏に仕込んだヒールバンカーによる強烈なストンプでもって地面に叩き落とす。
「さて、俺の探知によると森に潜んでいるトカゲはこいつらで最後だ。さっさと終わらせるよ」
「ほう、良い事を聞いた。ならば最後は出し惜しみせずに行こう」
 エルトの情報を聞いたテラはすぐさま槍を投擲し、次いで素早く引き抜いた剣と太刀による斬撃で蜥蜴達を蹴散らしていく。
 残像が残る程の高速移動で棘蜥蜴達の間を駆け抜けつつも、しかし的確に鱗の隙間に切創が刻んでいくその様は神業としか言いようがない。
 そして倒れ伏した最後の一匹にトドメを刺そうとした、その時。

「そこまでえええええええええええええ!!!!!」

 ガンギスのこの日一番の絶叫が木立を震わせた。
「びっっくりしたぁ。なんだよ急に!」
 突然の落雷のような大声は、音感センサーを備えたヴァルキリーがエラーを吐く程。
 それほどまでにガンギスの様子は鬼気迫るものが有った。
「確かに今の彼奴等は街に害をなす魔獣だ。されど絶滅させてはならん! 元々、棘蜥蜴はここより南の沼地に住んでいたと言っただろう」
 ガンギスの言わんとすることを察して刃を収めるテラ。
 一方のエルトと歩は頭上にはてなマークを浮かべていた。
「こやつらも元々は沼地の生態系を担っていた大切な自然の一部だったのだ。ここで全て絶やしてしまえば、沼地の生態系はどうなる? 沼地でこいつらの死骸を喰って生きていた小動物が絶え、小動物を喰っていた中型の野生動物が絶え……負の連鎖が広がれば、結局は我ら人間の食までもが危ぶまれるかもしれん。だから今街が被っている害を無くせる分だけを狩れればそれで充分なのだ」
 二人に向けて淀みなく語るガンギス。
 その静かな熱意に打たれ、エルトと歩も握った拳を解いた。
「あれ? でも、それじゃあまたその内、繁殖した棘蜥蜴が街まで来て家畜を襲うかもしれないんじゃないかな?」
「ああそうだ。だから、そうならない内に手を打たねばならない」
 歩の問いかけを受け、ガンギスは振り返りその先を指さす。
「皆、確かめに行くぞ。南の沼地へ。棘蜥蜴がこの森まで追いやられた原因を探るのだ!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『二つ名持ちの巨蟹』

POW   :    二つ名特性
自身の身体部位ひとつを【常時】自身の二つ名に由来する【特性】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる。
SPD   :    戦闘行動
【常時発動】砂の中を自由に行動できる【潜行】【自身の特性による攻撃】【水鉄砲】【大跳躍】【鋏】のいずれかで攻撃し、負傷による【怒り】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
WIZ   :    狩猟生活
自身が【砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配】を感じると、レベル×1体の【実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」】が召喚される。実体を持つ「分身体(但し死ぬ程不味い)」は砂の中に潜行し、レベルの二乗m半径に気配を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:撒菱.R

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は花巻・里香です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


~只今、間章執筆中~

プレイングの送信はもうしばらくお待ちください。
 ガンギスの号令の元、この地域の生態系を狂わせた犯人を討伐する為、森を抜けて更に南へと向かう猟兵達。
 そうして歩き続け東の空が白み始めた頃になり、彼らはようやくガンギスの言う南の沼地へと辿り着いた。
「うむ、ここが街の者の言う沼地に間違いあるまい。皆、油断するでないぞ。ここは既に棘蜥蜴の群れを追いやる程の強大な魔物の縄張りとなっているはずだ」
 注意深く周囲を見渡すガンギスであったが、しかし辺り一面は低い草木とぬかるんだ地面に覆われた湿地帯。
 存外見晴らしが良いその場所には、獰猛そうな獣の影は見当たらない。
 ……いや、違和感なら確かにあった。
「普通なら水鳥や小型動物の鳴き声くらいは聞こえて然るべき場所なのに、不気味な程に静かすぎる……しまった! 皆、下だ!」
 ガンギスが何かに気付き声を荒げたその瞬間、足元の泥土が『グチャリ』と盛り上がる。
 そして地面の中から巨大な鋏が現れたかと思うと、ガンギス目掛けて振り下ろされたではないか。
「ぬおおおおおお!!」
「危ない!」
 咄嗟に近くにいた猟兵が彼を突き飛ばしたことで事なきを得たが、しかし巨大な鋏はなおも獲物を求めて鎌首をもたげている。
 次いで現れたのは、所々に鋭利な棘を生やした鈍く光る甲殻。その鈍色の棘は、先ほど対峙した棘蜥蜴と同質の物にも見える。
 そう、こいつこそが全ての元凶。
「悪食の巨蟹……そうか、こやつが棘蜥蜴を追いやった犯人であったか!」
 悪食の巨蟹。
 あらゆる獲物をその無骨な鋏で粉砕両断し、強靭な顎で喰らうという底無しのフードチャンピオン。
 また奴の分厚い甲羅は喰らった獲物の力を反映して、脱皮するごとに特性を変化させるという。
 あらゆる環境への適応を可能にするこの体質により、この巨蟹族はこれまでも各地の生態系を蹂躙し、数多の動物たちを絶滅させてきた。正にA級害獣である。
「今のこやつは棘蜥蜴を喰らったことで、甲羅に鋭利かつ迷彩効果のある棘を備えておる。見失えば、再び回避困難な不意打ちを喰らう事は避けられんだろう。だが、今ここで、なんとしても倒さねばならぬ!」
 そう、宿場町を守る為、いやこの土地の全ての命を守る為に、この巨蟹は避けて通れない障害なのだ。
 不気味に輝く蒼い瞳をギョロつかせながら、悪食の巨蟹は猟兵達をねめまわす。
 まるで次なる成長の為の獲物を値踏みするように。
 しかし、ガンギスは怯むことなく正面から巨蟹を睨み返した。
「頼む! 奴を討伐してくれ! 奴に思い知らせてやるぞ……お前は狩人ではない。喰われるのは貴様の方だとなあ!」

【悲報】ガンギス、こいつも食べたいらしい。

「ぐっふふふふふふ、これまた聞いた話だが、あの巨蟹は大変美味らしい。噂を聞いた時は食す事など夢のまた夢だと思っていたモンスターが今! 目の前にいる! そしてこちらには奴を倒せる程の猛者もいるぅ! 正にまたとない僥倖!」
 巨蟹に負けず劣らず、いやそれ以上とも思える凄みを以て、ガンギスの血走った眼が猟兵達へと向けられた。
「さあさあさあ! 討伐! 討伐! 討伐じゃあ! 一心不乱の大狩猟じゃあ! 勝利した暁には最高のカニ料理を振る舞ってやるぞい!」


 ~業務連絡~
 大変お待たせ致しました。
 12/10 朝8:30よりプレイングの募集を開始いたします。

 ~追加情報~
 敵の【POW】行動は、『悪食』の能力により喰らった獲物の特性を模倣した攻撃となります。
 また何らかのアプローチが無い限り、ガンギスが説明した「迷彩効果のある棘甲羅を活かした行動」をとると思われます。

 それでは皆様、どうぞ奮ってご参加くださいませ。
黒玻璃・ミコ
※スライム形態

◆心情
ほうほう、ただの蟹であったなら
心優しいミコさんは見逃してあげようかと思いましたが
竜種に連なる者を食した蟹の味とはひじょーに興味深いですよ

◆行動
【黒竜の恩寵】で攻撃力UPしましょう
迷彩効果ってその居場所が判らず
自分の意思で逃走や一撃必殺を狙えるからこそなのですよね

と言う訳で体内で蟹が【誘惑】されるフェロモンを生成し
【念動力】に乗せて私の元へと【おびき寄せ】ましょう
致命的な一撃は【第六感】で避ける様にし
逆に【ドーピング】で【怪力】漲る【カウンター】で
堅い甲羅にも衝撃を与える【鎧無視攻撃】でぎゃふんと言わせましょう
倒したら料理の時間ですよー

◆補足
他の猟兵さんとの連携、アドリブOK


東山・歩
カニ……カニかぁ……かにかまじゃない本物、3年くらい食べてない気がする……!(じゅるり)

んー、でもちょっと大変だよね、このカニ🦀。
トゲトゲだし砂に潜るし……ハムさんものしかかりたくないって言ってるし。

……よし、背中側はトゲトゲ甲羅だけど、お腹は普通のカニさんな訳だ!
じゃあひっくり返しちゃえば良いんじゃないかな!

やっちゃってハムさん!君ならできる!


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
じー…(じゅるり)アレだけデカいとふわふわ羽毛布団ならぬ蟹の身ベッドや蟹の脚から綺麗に身をとれたならハンモックも…!にゃああ蟹の甲羅酒ならぬ蟹の甲羅酒風呂でチョットだけの一杯と煮干し。それに蟹ミソ煮干しも捨てがたいにゃ。
にゃぅ前半食べ物に対するものじゃないとわかってはいるけど夢見るぐらいは…そこ妖精の粉トッピングとかダシになるとか考えてはいけないにゃん。

前回と同様に子猫に変身し【肉体を凌駕する夢】で強化、髭感知による見切りや肉球や爪で攻撃を受け捌くね。
一度だけの復活効果による奇襲や潜行や隠れる等のタイミングに合わせて一瞬でも意識を奪う、強化された咆哮で好機を作るにゃあ。


テラ・ウィンディア
【悲報】この子も食べたいらしい

おれしってるぞ!
蟹ってのはサムライエンパイアでも極上の食材ってな!

所で…あいつらオブビリオンじゃなかったかな?(なら殲滅しなくていいのかな??かな??ってちょっと疑問少女

取りあえずこいつは遠慮なく撃破していいんだな?

【戦闘知識】で動きと癖とパターンの把握
更に強く観察し何処に隠れるかを捕捉

【属性攻撃】
突属性と斬属性を剣と太刀と槍に付与

槍で【串刺し】
【早業】で武器を切り替え剣と太刀で切り刻み
攻撃に対しては
【第六感・残像・見切り・空中戦】で空中を飛び回り常に制空権を掌握

おれを前に隠れられると思うなよ?
メテオブラスト!
地形ごと粉砕して叩き出す!!
【踏み付け】で破壊力増強



 縄張りに踏み入られ猛り狂う巨蟹と対峙する猟兵達。
 その瞳は自然の摂理を踏みにじられた事への怒りで燃え上がる……ことなど一切なく。
「ほうほう、ただの蟹であったなら心優しいミコさんは見逃してあげようかと思いましたが、竜種に連なる者を食した蟹の味とはひじょーに興味深いですよ」
 スライム状の体をうにうにと波打たせながら敵を観察するのは黒玻璃・ミコ。
「カニ……カニかぁ……かにかまじゃない本物、3年くらい食べてない気がする……!」
 東山・歩に至っては、記憶の彼方から旨味が凝縮された蟹肉の豊潤な香りと味を引っ張り出して、ゴクリと喉を鳴らしていた。
「おれしってるぞ! 蟹ってのはサムライエンパイアでも極上の食材ってな!」
 過去に様々な生き物やゲテモノを食したことがあるテラ・ウィンディアはというと、どうやら蟹を食したことは無いらしく大きな漆黒の瞳を興味と期待で爛々と輝かせていた。
 そして一番節操がないのはレフティ・リトルキャットだ。
「じー……アレだけデカいとふわふわ羽毛布団ならぬ蟹の身ベッドや蟹の脚から綺麗に身をとれたならハンモックも……! にゃああ、蟹の甲羅酒ならぬ蟹の甲羅酒風呂でチョットだけの一杯と煮干し。それに蟹ミソ煮干しも捨てがたいにゃ」
 子猫姿の彼はもはや拭う気すらないと言わんばかりに涎を垂れ流し、足元に水溜まりを作っている。
 というか妄想の前半は食欲の範疇を逸脱している気がする。
 まあ、つまるところ、

【悲報】全員ボスを前にして食欲しかない!

 そう、皆の想いは一つ。
 心を通わせた4人はアイコンタクトを交わすと、獲物を逃がすまいと一斉に駆けだした。
 対する巨蟹は向けられる欲に塗れた視線に一瞬怯んだものの、直ぐに持ち直し、泥土の中に潜航する。
 このまま囲まれては分が悪いと判断し、一旦離脱して各個撃破を狙う算段のようだ。
 剣山のような棘々の甲羅を暗い土色に変色させて地面に潜ってしまえば、目視での発見は困難を極める。
「いえいえ、逃がしませんよ」
 だからこそ、ミコは戦いが始まる前から仕掛けていた。
 彼女は森の中で使っていたものと同じ誘惑効果のあるフェロモンを分泌して、密かに泥中に染み込ませていたのだ。
「迷彩効果って言うのは相手に居場所を悟らせず、自分の意思で逃走や一撃必殺を狙えるからこその脅威なのですよね」
 ならば打つべき策は単純。相手のとれる選択の幅を狭めてやればいい。
 そして誘惑フェロモンたっぷりの泥の中を泳いでいる巨蟹がとる行動といえば……。
「釣れましたね!」
 ミコの真下の地面がほんの僅かに揺れる。
 瞬間、先ほどカンギスを襲ったのと同じ巨大な鋏による突き上げが彼女を襲った。
 しかし、真っ先に自分が狙われると分かっていたミコはいち早くその揺れに気付き、難なく跳躍して回避。
「いあいあはすたあ……拘束制御術式解放。黒き混沌より目覚めなさい、第壱の竜よ!」
 そして蠢く体から竜爪を生やし、自由落下の勢いを乗せた重い一撃を甲殻のど真ん中に叩き込んだ。
 しかし、敵も歴戦のオブリビオン。頑丈な甲殻はちょっとやそっとの攻撃では傷つかない。
 だが、禍々しい竜爪から生じた波動は甲羅を突き抜けて内部にまで達し、巨体に踏鞴を踏ませることに成功した。
「休ませないにゃ!」
「こいつは遠慮なく撃破していいんだよな!」
 次いで跳びだしたのはレフティとテラだ。
 テラは炎色の槍『廣利王』による刺突攻撃と、素早く持ち替えた刀と大剣の二刀流でもって繰り出す連続攻撃で、敵に体勢を整えさせる隙を与えない。
 更にレフティはよたよたと不規則に動く6本脚の間を駆け抜けながら、盾のように強靭な肉球で足払いを仕掛けていく。
 しかし、涎と泥水を吸ってビショビショに重くなった毛皮が仇となった。
「うにゃ……っ! 足が抜けない!」
 肉球バッシュからの着地の際に、着地位置を誤って泥のぬかるみに前足を突っ込んでしまったレフティ。
 そして、今がチャンスとばかりに悪食の巨蟹は小回りの利く左の鋏で小さな子猫を摘まみ上げると、パクリ! と大顎に放り込んでしまったではないか。
「ああ、レフティさんが! ハムさん、レフティさんが飲み込まれる前に助けて!」
 大慌てでハムさんに指示を出す歩。
 しかし当のハムさんはというと、『あんなトゲトゲな甲羅に触りたくない。あれじゃあ得意ののしかかりも出来ないじゃないか』と言わんばかりにフルフルと首を横に振る。
「だったら……背中側はトゲトゲ甲羅だけど、お腹は普通のカニさんな訳だ! じゃあひっくり返しちゃえば良いんじゃないかな。よーしハムさん、たたみがえしだー!」
 得意の戦法が取れないのならば、と即座に応用を効かせて指示を出す歩。
 それに対しハムさんは『やったるで!』と言わんばかりにキュピーン! と円らな目を光らせると、低い体勢で巨蟹に対し突進をしかけた。
 そして迎え撃つ巨蟹は大きな鋏を振り上げて威嚇し、迫るハムさんをハンマーのようなソレで叩き潰そうと待ち受ける。
 二匹が交錯しようとした、その瞬間……。
「うにゃがおおおおーー!!」
 巨蟹の顎が内側から爆発した!
 そしてハムさんは急所となった敵の顎下に噛みつくと、後ろ足でぬかるんだ地面を踏みしめ、上体を逸らせるようにして巨蟹を一気にひっくり返す。
 ズブリと泥に突き刺さる蟹。その口から吐き出されたのは、より一層ベチャベチャになったレフティだ。
「フシャーッ! 酷い目にあったにゃあ!」
 レフティがあらかじめ発動させていたユーベルコード、『肉体を凌駕する夢』。
 大好物の煮干しの妄想が捗れば捗るほど生命力と身体能力が増し、死の淵からの生還さえ可能とする掟破りの能力だ。
「涎と体液でベットベトにゃ……こうなったら、意地でも甲羅酒風呂にしてやるにゃ!」
(いや、それだとせっかく毛皮が更に取り返しのつかない臭いになるのでは?)
(そもそも見た目的に猫鍋【出汁的な意味で】になっちゃうんじゃ?)
 そんなことを考えるミコと歩であったが、流石に口に出さなかったのは当の本猫が鬼のような形相を浮かべていたからに他ならない。
 一方、甲羅の棘が地面に刺さり身動きが取れなくなった巨蟹はというと、背中に生えている二本の副脚で泥をかいて泥中に脱しようとしていた。
 しかし、それを許す猟兵ではない。
「おれを前に隠れられると思うなよ?」
 蟹の真上へと跳躍したテラは、更に宙を蹴り流星と見紛うスピードで急降下。
「メテオブラスト! 地形ごと粉砕して叩き出すっ!!」
 加速と回転を加えた踵落としが潜った地面に『着弾』する。
 そして土柱を上げる着弾点からは、全身の甲殻に罅割れを入れた巨蟹が弾き出されるのであった。
「美味いって噂だけど虫っぽい見た目はいただけないな。でも焼きガニに鍋に雑炊……試したい料理は山ほどあるんだ。さあ、フルコースにしてやる!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

エウトティア・ナトゥア
※アドリブ・連携歓迎
チーム【獣人同盟】で参加
なるほどなるほど、美味しいカニなら討伐するしかないのう。 美味しいから仕方ないのじゃ。
まずは【巨狼マニトゥ】に【騎乗】して狼の【野生の勘】でカニの居場所を探り攻撃。
あまり派手にやって食べる所が減ったら大変じゃから、コハル殿を見習って動きを封じるとするかの。
【隕石落とし】であぶり出されたカニ達を、【氷縛の鎖】で雁字搦めにするのじゃ。 あと念の為、沼地にも鎖を張り巡らして地面を凍てつかせ再度潜れないようにしてやろう。
動きを封じたら【ノアの長杖】の力を借りて、雷の精霊を呼び出しカニ共に電撃を馳走してやるわい。 どうじゃ?これで動けぬじゃろう?


二條・心春
【獣人同盟】で参加します。
大きな蟹ですか……何かまた嫌な予感がするんですが……。いえ、今は戦いに集中しましょう。
沼地の中に潜られては、攻撃ができませんね……まずは出てきてもらいましょう。「第六感」で気配を察知して、ジャンプしてからの【隕石落とし】で地面を思いっきり揺らせば、びっくりして出てくるはずです。衝撃が伝わるように、なるべく地盤が固いところを探して叩きつけましょう。
後は私は二人の援護に回りますね。拳銃から雷の銃弾を撃って動きを鈍らせます。硬い殻でも、雷の属性攻撃なら通るはずです。(雷の集中攻撃を受けてひっくり返りのたうち回る蟹を見て)あ、脚が……これもあんまり見たくないなぁ。


スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します
沼のなかのカニさんが相手では、先ほどの砂塵の結界は通用しそうにありませんね
お姉様、心春さん、どうしましょう……? なるほど 地面から勢い良く叩き出すのですね
だったら、私は【バーニングナックル】のユーベルコードで、叩き出されたあとのカニさんたちを甲羅の内側から爆破してみようと思います
お姉様と心春さんは雷ですか?
爆破しちゃったらカニさんの食べれるところが減っちゃいそうですし、確かに雷のほうが良さそうですね
「雷の精霊さん。お願いします!」
ユーベルコードと精霊印のスタンライフルで甲羅の隙間から雷を通して、カニさんたちを感電死させます
沼そのものに電気を通してみるのも面白そうですね



 猟兵達の連携により痛烈な攻撃を受けた巨蟹がとったのは逃げの一手だった。
 なんとか体勢を立て直した蟹は、一目散に泥を掻き分けて潜航し、その場を離脱する。
 しかし、猟兵達がそう易々と逃がしてくれるはずもなく。
「なるほどなるほど、美味しいカニなら討伐するしかないのう。 美味しいから仕方ないのじゃ」
 獣人同盟の双子姉妹の姉の方、エウトティア・ナトゥアは使役する巨狼マニトゥに跨り、意気揚々と出陣した。
 完全に討伐任務ではなく狩猟を楽しみにしてきているノリである。
「大きな蟹ですか……何かまた嫌な予感がするんですが……。いえ、今は戦いに集中しましょう」
 くんくんと泥の中から微かに感じる蟹の臭いを辿って追跡するマニトゥ。
 獣人同盟の一般人担当、二條・心春もその後を追って、湿地帯に足を取られないよう慎重に進む。
「沼のなかのカニさんが相手では、先ほどの砂塵の結界は通用しそうにありませんね。どういたしましょう?」
 一方、先ほどの棘蜥蜴包囲戦でメイン火力を担っていた双子姉妹の妹の方、スピレイル・ナトゥアは少々不安気だ。
「うーむ、ザリガニ釣りよろしく枝に餌を括りつけておびき寄せるのが効果的なんじゃが、この沼地はさっきの森よりも生き物の気配がとぼしいからのう」
「それなら今度は私が頑張ります。思いっきり地面を揺らせばきっと驚いて出てきてくれるはずです」
 そう言うと心春はドラゴンランスを手に気合を入れなおし、再び注意深く辺りを警戒する。
 先の戦いでも十分に活躍をしていたような気もするが、平凡な女子学生を自称する彼女は謙虚であった。
と、不意にマニトゥが唸り声を上げて立ち止まる
「む、近いぞ。場所は……コハル殿。あそこに突き出している岩は見えるかの? あの岩の根元付近に奴がおる。それと、この子も手伝いたいそうじゃぞ」
 神通力によりマニトゥと心を通わせ、彼の探った情報と心の内をを代弁するエウトティア。
 それならば、と心春は槍を手にマニトゥの上に立って狙いを定めると、
「すぅ……はぁ……行きます!」
 息を整えマニトゥの鼻先での突き上げの補助も受けて一気に跳躍!
 そのまま巨蟹が潜んでいる岩に向けて落下し、全体重を乗せたドラゴンランスを叩きつけた。
「てやあああああっ!!」
 ズドンッ! と、細腕から繰り出されたとは思えないほどの轟音が鳴り響き沼地が波打つ。
 そして程なくして泥の水面が泡立ち……『大小さまざまの蟹達』が次々と地面からせり出してきた。
「ええっ! 多い多い、それは聞いてないよ!」
「心春さん!」
 仲間のピンチにスピレイルは拳を燃え上がらせ跳びだそうとする、がしかし。
「待つのじゃスピレイル!」
 姉の一喝を受けて立ち止まった。
「お姉さま、一体どうしたんです? このままじゃ心春さんが!」
「考えても見るのじゃ。あまり派手にやったら食す部分が減ってしまうであろう。だから動きを封じつつ丁寧に倒すのじゃ」
 仲間の危機よりも食材の確保を優先したよこのお姉ちゃん。
 これには妹も怒り心頭……かと思いきや。
「なるほど。倒した先まで考えての行動とは、さすがはお姉さま」
 姉が姉なら、妹も妹であった。さすが遊牧民族と言うべきか、明日以降も食うに困らないための生存知識が体にこびりついている。
「なんでもいいから早く助けてくださーい!」
 一方の心春はというと、着地した岩の上で携行していた拳銃を抜き、涙目になりながら群がる蟹達を電撃弾で牽制していた。
 しかし、彼女は本来ならば召喚士。近接戦は不得手であり、動揺も相まってその手元は危なっかしい。
「今助けるのじゃー。水の精霊よ。咎人を搦め捕るのじゃ」
 一方のエウトティアは掌の中で精霊を編み上げ、氷雪の力を持つ鎖を生み出す。
 そして鎖を地面に這わせるようにして伸ばせば、沼地はたちどころに凍り付き、今まさに泥から頭を出そうとしていた蟹達を氷の檻へと封じ込めた。
 更に背負っていた古い木製の杖を両手で構えれば、
「かーらーのーっ……じゃ!」
 杖の先から迸った電撃が動けなくなった蟹達を絡め捕り、感電死させていく。
「なるほど、爆破しちゃったらカニさんの食べれるところが減っちゃいそうですし、確かに雷のほうが良さそうですね」
 スピレイルは電撃を用いた戦法に切り替えた2人の様子を見て拳に宿した炎の精霊を解除すると、次に彼女が取り出したのは民族衣装とはあまりにも釣り合わない無骨なアサルトライフル。
 元から装填されていた炎属性のカートリッジを引き抜き、新しく金色の意匠が彫り込まれた物を装填すれば。
「雷の精霊さん。お願いします!」
 カートリッジに込められた雷の精霊たちがアサルトライフルの機構を活性化させ、稲妻の弾丸をすさまじい速度で連射する。
 3人がかりの電撃攻撃は水分を多分に含んだ泥の中を駆け巡り、辺りに潜んでいた蟹達を悉く葬っていった。
 感電しのたうち回り、最後には足をきゅっとすぼめて動かなくなる蟹達。
「うへえ……あ、脚が……これもあんまり見たくないなぁ」
 その凄惨な様子を見て、岩にしがみつくようにして拳銃を撃つ心春の目から再び光が消えたのは言うまでもない。
 とその時、凍り付いた泥に巨大な亀裂が走り、中から悪食の巨蟹が姿を現した。地面の下から放った分身体の殆どがやられたことを悟り、再び脱走を試みたようだ。
 泥中にまで伝わった電撃によるダメージと行動阻害を受けつつも、多脚を必死にばたつかせて逃げまどう巨蟹。
「ああ! 待つのじゃ!」
 しかし慌てて追撃をしようにも、辛うじて生き残っていた蟹達が身を呈して本体を庇い、あと一歩の所でとどめを刺しそびれてしまう。
「むう、悔しいのじゃ……でもこれだけ仕留めたのだし、良しとするかの」
 耳をしゅんとさせるエウトティア。だが辺りに立ち込める蟹が焼けるいい匂いに気を取り直した彼女はマニトゥを駆って、意気揚々と分身たちの収集に取り掛かるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

日埜・晴翔
【KH】アドリブ、連携歓迎
自作ゲームの開発に勤しんでたら、暫く食事を忘れてた。
…ま、美味いモンにありつけるだろ(主に恭介の力で)

迷彩効果かー、確かに見失ったら面倒くさそうな…いや、見えないからこそ楽しいゲームあるよな?(貰った携帯食料食べつつ)
【空中浮遊】で一応沼へ振動を与えることに配慮しつつ、かくれんぼがいいかじゃんけんがとうんうん唸り、だるまさんが転んだの開催決定。(UC)

振り返った時に視界にいたら蟹アウト→蟹を捌く時に狙う褌へ攻撃
視界にいなかったら→【逃げ足】でとにかく間合いだけ取る
というマイルール。

そんな【時間稼ぎ】をしながらも、蟹料理にありつけることだけは確信しながらゲームを楽しむ。


仁科・恭介
【KH】
※アドリブ、連携歓迎
「二つ名持ちか。しかも景色と同化か…まずいな」

【目立たない】ように蟹を【学習力】で観察しながら対策を検討
見えなくとも匂いはあると判断し【蟻達】を増殖
少しでも傷がついたら蟻達が潜りこめるだろう
そうしたら痛みに反応して鋏も上手くつかえなくなるはず

見える場合は【ダッシュ】を多用しながら【狩猟刀】で関節を狙う
消えた時は【蟻達】を放ち追跡する
一つ一つ確実に丁寧に

「注意散漫だけどお腹空いているの?ならこれを」と【携帯食料】をハルト君へ
一人ならもっと気を楽にやれるが、腹ペコのハルト君が何をやり出すか
それを心配していつも以上に慎重に行く
「こいつを倒したら、蟹クリームを作りたいね」



 全身の甲殻を焦げ付かせ、息も絶え絶えといった様子で沼地を渡る悪食の巨蟹。
 周囲に敵影が見受けられないことを確認した巨蟹は、傷を癒すために再度泥の中に潜り始めた。
 その身体にゴマ粒のような黒点がいくつも這いまわっていることなど露とも知らずに。
 そして、巨蟹が休眠を始めたちょうどその頃、沼地の入り口をのろのろと歩く影が二つ。 
「景色と同化か……まずいな、どこに潜んでいるか見当もつかない。早い段階で蟻を撒いておいて正解だった」
 全身をマントで覆い、東の空から照り付ける陽光から病的に白い肌を守りつつ進むのは仁科・恭介(観察する人・f14065)。
 いつ奇襲を受けるとも知れない状況に、慎重な性格の彼はどうしても警戒を解くことが出来ないようだ。
 先んじて発動していたユーベルコードによって軍隊蟻を召喚し広範囲を探らせてはいるが、その結果が芳しくないことも彼の焦りを加速させていた。
 一方、そんな彼の後に続く相方―日埜・晴翔(嘘つき×快楽主義の軟弱メンタル・f19194)はというと、恭介とはまた別の意味で重い足取りで。
「ただでさえ寝不足、腹減り、眼精疲労に運動不足の数え役満だってのに、その上今度は泥だらけピクニックのお誘いだなんて、随分と人使いが荒いんじゃないでしょうか恭介さん?」
 目の下に濃い隈を刻んだ晴翔は、つい先程まで寝食も忘れて日課の自作ゲーム開発に没頭していた。
 そんなところを恭介に引っ張り出されたものだから、心中穏やかではない。
「そんな、俺はただハルト君にもっと健康的な食生活を送ってもらいたいだけだよ」
「それで選んだのがモンスター狩りツアーですかー?」
 おぼつかない足取りにも関わらず、悪態つく舌だけは淀みなく回る。
「さっすが、ダンピールのフードファイター様はなかなかにエキセントリックなセンスをしていらっしゃるぉわあっ!」
 などと言っている内に再び泥の塊に脚を捕られ、大きく体勢を崩す晴翔。
 そんな彼を支えつつ、恭介はマントの内から常に携行している干し肉を差し出した。
「注意散漫だけどお腹空いているの? ならこれを」
 散々邪険を振りまいているというのに、こちらに向けられるのは純粋な心配の眼差し。
 完全に毒気を抜かれた晴翔は、口撃はもはや意味なしと諦め、素直に食料を受け取った。
「ま、ここまで着いてきちまったし、この際いいよ。……美味いモンにありつけるんだろ」
 言外に、主に恭介の力で、という趣旨を含めつつモサモサと干し肉を食む。
「ところで、さっきから恭介は敵の迷彩効果を随分と警戒してるみたいだけど、正直考えすぎじゃねえの? 敵が見えないからこそ楽しいゲームってのもあるんだぜ?」
 久々の食事をとったためか少しずつ血糖値が上がり思考が回り始めた様子の晴翔は、そのままブツブツと敵への対処法を考察する。
 とその時、一匹の蟻が二人の元に飛来する。恭介が哨戒に放っていた蟻が巨蟹を発見した合図であった。
「見つけた。対策はできそうか?」
「そうだな……かくれんぼがいいか? それともじゃんけん? 目隠し鬼? ……よし、だるまさんがころんだで決定!」
「うん、意味は分からないけど万端だな。行くぞ」
 噛み合わない会話を交わしつつ、2人は蟻の先導の元、巨蟹が潜む場所へと導かれる。
 そうしてたどり着いたのは、一見何の変哲もない沼地の一角。しかし、時折ポコポコと泥が泡立っているのが、その下に巨蟹が潜んでいる証だ。
「よし、悪食の巨蟹を引っ張り出す。構えて、ハルト君」
「あいよ」
 言葉を返しながらも何故か蟹が潜む地点に背を向ける晴翔であったが、それも何か考えがあってのこと事だろうと判断した恭介は、構わず軍隊蟻たちに指令を飛ばす。
「さあ、慈悲はいらない。この地を荒す暴君を食い破れ!」
 瞬間、土中の不発弾が爆発したかのような勢いで泥が跳ねあがる。その爆心地にいたのは、鋏を振り上げてのたうち回る悪食の巨蟹。
 甲殻の隙間から体内に潜り込んでいた蟻たちが一斉にその肉に噛みついたのだ。
「だーるーまーさーんーがーこーろーんー」
 続いて聞こえたのは晴翔の緊張感のない声。
「……だっ!」
 しかし隈が浮かんだ両眼で巨蟹の姿を捕えた瞬間、晴翔の顔つきが変わった。
 身体を屈め、全身のバネをフル活用して真横に跳躍。さながら猫のような俊敏な動きで接敵すると、晴翔は電脳魔術による空中浮遊で地面すれすれを滑空して巨蟹の脚の間を潜り抜ける。
 巨蟹からしてみれば、敵の姿が掻き消えたように見えた事だろう。
「見つけた動いた捕まえた! さあ、罰ゲームだぜ」
 瞬く間に巨蟹の背後を取った晴翔は、そのまま蟹を捌くときに最初に切り込みを入れる部位―褌と呼ばれる箇所を、脚力アップ用の改造シューズでもって蹴り上げる。
 内蔵を破壊され泡を吹きだす巨蟹。だが負けてはいられないと振り返りざまに背後を大鋏で薙ぎ払おうとするが、それを恭介が許さない。
「その鋏は邪魔だね。爪付きのフライにでもしようか」
 短いながらも分厚い狩猟刀を的確に関節の隙間に叩き込み、一刀両断。
「脚にも身が詰まってそうだ。蟹クリームを作りたいね」
 そして続け様に刀を振るい、最小限の力で次々と脚を切り落としていく。
「だーるーまーさーんーがーこーろーんー」
 そして再度聞こえる緊張感に欠けたあの声色。知能はさほどでもない巨蟹であったが、一度体験してしまえば、その言葉が意味するものは嫌でも分かる。
 それ即ち、回避不能の一撃。
「……だぁっ!」
 もはや身動きも儘なら無い巨蟹の脳天に晴翔の爪先が突き刺さる。
 こうして遂に沼地の暴君、悪食の巨蟹は討伐されたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『モンスターを平らげろ!』

POW   :    素材の味を楽しむシンプルな調理!

SPD   :    味付けや下ごしらえに工夫を凝らして食べやすく!

WIZ   :    他の食材と組み合わせればもっと美味しくできるかも!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「でかしたぞ皆の衆!! ぬわーっはっはっはっは!!」
 討伐したばかりの巨蟹を引きずって沼地の入り口まで戻ってきた猟兵達。
 彼らを出迎えたのは、喉が張り裂けんばかりの大音量で叫ぶガンギスであった。
「やったぞ! これで遂に念願の魔物料理を作ることが出来る! さあ、戻り掛けに森で棘蜥蜴の肉も回収しさっそく調理だ!」
 そう、猟兵達の依頼はまだ終わってはいない。
 ガンギスの悲願、魔物料理の作成と実食に付き合わなければならないのだ。
 そういえばグリモア猟兵からお土産もお願いされていたっけ、と思い出し一人の猟兵が深い溜息を吐く。
 しかし意外にも、ガンギスの他にも喜々として魔物肉を収集して回る猟兵も多数いるようで、自分だけこっそり帰るわけにはいかないらしい。
「よーし、今日は宴じゃー! 棘蜥蜴と悪食の巨蟹のフルコースをおみまいするぞー! ……うん? なんだか蟹の肉が多いような? まあいいか、命を粗末にするのはあまりに勿体無いでの。持って帰るぞ!」
 などと言いながら巨蟹の生み出した分身体の残骸もしっかりと回収するガンギス。
 ここ、この話のオチです。(ネタバレ)
 詳しくは第二章の敵の説明文を見よう。(酷いメタ)
「さあさあさあ、本当なら俺一人で作りたいところだが、今回の立役者は他ならぬ皆だ。寛大な心でもって諸君らにも食材を分けてやろう。さあ思う存分、魔物料理を楽しもうではないか! ぬわーっはっはっはっは!! ぬわーっはっはっはっは!!」

◇ざっくりルール説明
 宴会場は宿場町の屋外に設けられた特設料理スペースです。
 会場には興味と疑念の色を湛えた眼をした町の人々も多く訪れている事でしょう。

 料理をする場合、どの食材を使って何を作るのかを明記してください。
 尚、料理の成否判定は今シナリオでもっともシビアに行わせていただきます。
 もちろん、プレイング内容が面白ければリロールしますが、それでも失敗の結果だった場合ちょっとばかし可哀そうな目に遭っていただく事もございますのでご容赦ください。
 皆様の持ちうる技能、アイデア、パッションをフル活用して臨んでくださると幸いです。
 尚、ガンギスや仲間の作った料理を食べる事に専念していただいても構いません。

 また冒頭でもお伝えしましたが、第三章ではお誘い頂いた場合のみ当グリモア猟兵のトリシュを登場させようと考えています。
 登場した場合は、料理のお手伝いをしたり味の感想を言ったりしますので、興味のある方は御声掛けくださいませ。
黒玻璃・ミコ
※美少女(コックスーツ姿)形態

◆心情
冒険料理人を名乗る割に肝心な魔物知識がないのでしょうかね
巨蟹を一緒くたにしてしまうとは(目を逸らし)

◆行動
美味しい料理とは準備の段階で半ば決まっています
私が屠った棘蜥蜴は血抜きの際に内臓も処理していたのです

……と言う訳で【黒竜の美食】を発動させたら
トリシュ(f18752)さんを呼びましょう
作るのはオーダー通りの『棘蜥蜴の唐揚げ』です

臭みや毒がある危険な部位は【毒耐性】がある私が処理しましょう
下味も付けているので普通に食べても美味しいですが
森の中で見つけたユズっぽい柑橘類で香りづけした岩塩を振ったり
炭酸飲料と一緒に食べると更に美味しいですよ?

◆補足
アドリブOK



 猟兵達が総出で食材の魔物肉を運びだし、宿場町に着いたのは陽も高く上った頃。
 今から急いで料理に取り掛かれば昼飯時に間に合うかといった時刻であった。
「この街は宿場町であり貿易の中継地点でな。積み荷の積降場には野外食堂や調理場も設けられておるのだ。調理上は自由に開放されておるし、ここを使わせてもらおう」
 よもやここで魔物が捌かれ調理される日が来ようとは町民たちも思ってもみなかっただろう。
 だが、そんなことは知ったことではないとばかりに、ガンギスはさっそく調理に取り掛かる。
「うーむ、迷うのう。棘蜥蜴からにするか、巨蟹にするか……」
 積み上げられた肉を前にうんうんと唸るガンギスを横目に、白いコックスーツに背高のコック帽を被った美少女―ブラックタールの姿から人間形態に変化した黒玻璃・ミコが調理台へと向かっていく。
(冒険料理人を名乗る割に肝心な魔物知識がないのでしょうかね。巨蟹を一緒くたにしてしまうとは)
 積み上げられた肉の中に不味と思われる巨蟹の分身体の肉が混じっている事にミコは気付いていた。
 しかし、あの鼻息の荒いオッサンはまともに取り合ってくれないんでしょうね、と目を逸らし自らの料理に集中する。
「さて、美味しい料理とは準備の段階で半ば決まっています。私が屠った棘蜥蜴は血抜きの際に内臓も処理していたのです」
 倒す際に丁寧に吊るし上げていたことで、血抜きも臭み抜きもばっちりの蜥蜴肉は、陽光に照らされ鮮やかなピンク色だ。
 と、そんな蜥蜴肉を至近距離から食い入るように見つめる水色の小柄な少女が1人。
「やー……綺麗なー」
「おや、トリシュさん。こちらにいらしていたのですか?」
 美しい肉色に瞳を輝かせていたのはトリシュ・リグヴェーダ(知恵の刃・f18752)。
 猟兵達をこの世界に派遣し、魔物料理を手伝うように命じた元凶その2である。
「やー、お土産お願いしたけど待ちきれなくなったのな。それでは先生、今日はどんなお料理でしょうか、なのな?」
 気付けばトリシュはエプロン姿。どうやらアシスタントする気まんまんのようだ。
「あ、そういう感じで行くんですね。承知です。はい、それでは当初のオーダー通り棘蜥蜴の唐揚げを作っていきたいと思います」
 ミコは手ずから運んできた肉を前に腕まくりをして気合を入れつつ、ユーベルコードを発動。
 美食と暴食を司る龍のオーラを纏いながら、てきぱきと肉を切り分けていく。
「やー、トリシュは、トリシュは何をすればいいです?」
「では、トリシュさんにはこのフォークで切り分けたお肉に穴をあけてください。堅い筋があっても食べやすくなりますし、下味も染み込みやすくなります」
「刺すのは得意な!」
 何でもいいから母親のお手伝いをしたがる子供のように、トリシュはミコから食い気味にフォークを受け取ると、ザスザスと力任せに肉をめった刺しにしていく。
 そんな様子を微笑ましく眺めながら、ミコは次の調理に取り掛かった。
「さて、お次に取り出しますは森の中で見つけたユズっぽい柑橘。これを絞って香りづけに使います」
 ミコはその手を龍鱗のように尖らせると、柑橘を挟み込んで手早く絞り、トリシュが穴をあけた肉に下味用の調味料と共に擦り込んでいく。
「これで下準備は完了です。それでは衣をつけて、180℃に熱した油に……ドボーン!」
「どぼーんなー!」
 景気のいい掛け声と共に蜥蜴肉が油にくぐれば、ジュワジュワ~っと食欲を掻き立てる音が辺りに響き渡った。
 これには遠目からおっかなびっくりに眺めていた町民たちも思わずゴクリと喉を鳴らす。
「そして衣の色目を見て……今です! 最後に削った岩塩と擦りおろした柚子の皮を添えれば……はい、棘蜥蜴の唐揚げの完成です♪」
「やー! 実食タイムなー!」
 エプロンを放り投げ、風より速くテーブルにつくトリシュ。自身には感情がないと言い張ることすら忘れ、両手にフォークを持って今か今かと待ちきれない様子だ。
「そう焦らないでください。唐揚げに無くてはならないアイテムがもう一つ、炭酸飲料~」
 ダミ声の青狸よろしくポケットから取り出したのは、わざわざUDCアースから持ってきていたペットボトル入りの黒くて甘い炭酸飲料。
 それをジョッキに注いで唐揚げと共にテーブルに並べると、ミコもようやく椅子に腰を下ろした。
「では、いただきます」
「いただきますなのなー!」
 揚げたてのまだ湯気を発する衣にザクっとフォークを突き立てれば、輝かしい肉汁が溢れ出す。
 そして満を持して頬張れば予想以上のジューシーさ。
 なるほど、蜥蜴肉は鶏ささみに味が似ていると聞いた事があったが、沼地に暮らし土中に潜んで獲物を狩っていた棘蜥蜴は、運動量が少ないせいか肉質は柔らかく油も豊富。
 例えるなら少し風味に癖のある鶏もも肉といたところか。
 しかし、香りの癖も丁寧な下処理のお蔭でワイルドな風味へと昇華しており、柑橘の風味も相まって、肉を噛みしめるたびに口の中を勇壮な野生の風が吹き受けていく。
 そして、脂っこくなった口中に炭酸飲料を流し込めば。
「美味しいです~♪」
「このために生きてるのなー!」
 ジョッキをドンっとテーブルに叩きつけ、ミコとトリシュは満足げな笑顔で空を仰ぐのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仁科・恭介
【KH】
※アドリブ、連携歓迎
ハルト君曰く…早く調理する方がよいのか
じゃ、蟹クリームはその後だね

巨蟹の調理法を【学習力】で考えて一つの答えをだす
調理方法:バルバコア
大きな穴を掘り石を敷き詰め火を焚く
火が消える頃に蟹を甲羅ごと入れて干し草などをかぶせて砂で覆い、2時間ほど蒸し焼きにする
被せた砂の上で焚火をすれば上からも熱が通るだろう

蟹を蒸し焼きにしている間、つけダレを用意するか
蟹は食べ過ぎると体を冷やしたっけ
なら、体を温める調味料を合わせた方がよいかな
この地方の事はわからないから周りに集まってきた町の人に聞いてみるか

時間になったら砂を退けて蟹をだす
一気に甲羅を外したら…どんな味かな
これは楽しみだね


日埜・晴翔
【KH】アドリブ、連携歓迎

自分で仕留めた蟹を足で押さえつけながら、蟹料理についてスマートグラスで検索。

すると…
足の本数:鋏を含めて足が8本ならヤドカリ属。蟹味噌には手を出すな!すぐに取り除け!
鮮度優先:水揚げからゆで時間迄が短いほどよい

…やべぇ、急いで捌いて調理場へ向かうぞ!

UCで召喚したキャラに、半数は蟹や自身たちを運ばせ、残りは森で香草など使えそうな物の回収指示。

大鍋に入る程度に足を切り分けつつ、恭介の調理補助に。
手伝えば、美味いものにありつける確率もあがるってもんだ。

ゆで上がった蟹をそのままかぶり付こうと思ったが、つまみ食いはぐっと堪え――誘ってくれたことに感謝を(取り皿を差し出しつつ)


レフティ・リトルキャット
※詠唱省略やアドリブOK
(綺麗綺麗にして貰って参上)
僕はMy首輪を霊視の首輪に変えて【霊査士】を発動。
食材や調理道具に宿る精霊とお話して美味しく調理出来る様に情報収集。料理人にその声を届けるよ。所謂、素材の声を聴くってヤツにゃあ。
…って何にゃ、あの恐ろしい精霊(マズ蟹)は……(ふるふる)出来るだけ除けて無事なヤツだけでも町の人に。混入したのは…ゲン担ぎに蜥蜴と蟹肉のカツレツレシピのリザ・カニカツをお願いするね。コレで復活の蟹に勝ってみせるにゃ…!(勝敗お任せ)
くっ、せめて甲羅酒風呂だけでも…(「お酒はダメ」)…ぇ…そ、そんなにゃあ(【キャット・ドール】が強制発動し乙女サキュバスに連れ去られる)



 時間はわずかに巻き戻り、悪食の巨蟹を討伐した直後。
 とどめの飛び蹴りの姿勢のまま巨蟹を押さえつけ敵の万が一の復活を警戒しながら、日埜・晴翔はスマートグラスで蟹の調理方法について検索していた。
道中では魔物食に文句を言っていた彼であったが、調理そのものには協力的であるようだ。
「んーなになに、鋏を含めて足が8本ならヤドカリ属。蟹味噌には手を出すな! すぐに取り除け! だってよ。こいつは何本脚だ?」
「鋏を含めて8本……いや、甲羅の後ろ側に逆向きにもう2本生えているな。大丈夫、10本脚だからちゃんと蟹だよ」
 狩猟刀で切り落とした脚を回収しながら、その本数を数える仁科・恭介。どうやら問題なく蟹味噌まで食することが出来るようだ。
 しかし、蟹は蟹でも異世界の巨大蟹。どこまで自身の知識が通じるのだろうか、とフードファイターでもある恭介の目が挑戦的に光る。
「そりゃよかった。ん、ちょっと待てよ。鮮度優先:水揚げからゆで時間迄が短いほどよい……やべぇ、急いで捌いて調理場へ向かうぞ!」
 やはり折角食べるなら少しでもいい状態で食べたい、というのが晴翔の本音のようだ。
 彼はデータベースから色とりどりの小型キャラクターユニットを複数召喚すると、蟹の胴体や沼に落ちた巨大鋏の運搬を支持するのであった。
 そして時は戻り、昼飯時の宿場町。
 焚火を横に恭介は見事な包丁さばきで蟹を切り分けていた。
「よい……しょっ! ふう、やっぱり甲殻を一息に斬るのは骨が折れるね。でも少しずつ慣れてきたよ」
 自慢の学習能力で蟹の身を極力傷つけずに甲羅のみを切断する力加減を見つけ、手際よく巨大な脚を食べやすい大きさに切っていく。
 そうしている内にお使いを頼んでいた仲間が戻ってきたようだ。
「よう、順調? 香草はいい具合に集まったぜ」
「うにゃ! 僕もお手伝いしたにゃ。精霊とお話しして食べられる葉っぱや木の実を見分けてもらったから全部料理に使えるにゃ」
 籠いっぱいに森の味覚を採集してきた晴翔。
そして彼の足元にまとわりついて誇らしげに尻尾を振るのはレフティ・リトルキャットだ。
「きちんとお手伝いしたし、約束通り僕のリクエスト料理も作って欲しいのにゃ!」
そう、レフティが材料集めの交換条件に恭介に料理をリクエストしていたのだ。
「ああ、ちゃんと準備していたよ。棘蜥蜴と巨蟹のフライだっけ? でも、材料は本当に君が集めてきた蟹で良かったのか? 体が一回り小さかったし、なんだか肉質にも違和感があったんだが」
「にゃー! リザカニカツにゃ!」
 しかし、そのためにレフティが差し出したのは、彼が採取した巨蟹の分身体。
 見た目には分かりづらいが、いわゆるハズレ食材であった。
「なんかヤバそうな蟹なのは僕も気づいているのにゃ。このチビ蟹に憑いている精霊はいかにもヤバヤバにゃ。ぶっちゃけ恐ろしいにゃ。でも、今の僕は質より量の気分なのにゃ!」
 レフティはせっかく綺麗に洗ってもらったフワフワの毛皮をまたもや涎で濡らしながら飛び跳ねる。
「覚悟の上ならいいんだけどね……。晴翔もご苦労様。俺の方の料理ももう直ぐ出来るし、そろそろ蟹も茹で始めようか」
「やれやれ、一食喰うために随分と手間がかかるな。ま、いーけどよ」
 そうして恭介は沸かした大鍋に蟹を投入し、晴翔とレフティの二人は野草類を使って茹で蟹用の付けダレの作成に取り掛かる。
 甲羅から引き抜いた透明な蟹脚の肉をさっと湯にくぐらせると、鍋の中には美しい純白の花が咲き乱れた。新鮮な蟹でしか見ることが出来ない自然界の芸術作品だ。
「ぉぉ……これは」
「きれいにゃー! 美味そうだにゃー!」
 これには晴翔も思わず手を止めて見入ってしまい、レフティに至っては何度目かの涎たまりを地面に広げていた。
 続いてはレフティオーダーの蜥蜴肉と蟹(分身体)のカツレツ。
 恭介が先ほど唐揚げをしていた猟兵の元に赴き揚げ物鍋を貸してもらうと、そこに卵黄とパン粉でコーティングした肉を投入していく。
 そしてバチバチバチっとこれまた景気のいい音が辺りに響き渡り、神々しい金色のカツが油の中から姿を現した。
「最後に俺が最初に用意していたとっておきの料理、バルバコアでじっくり蒸し焼きにした甲羅焼きだ」
 そう言うと、恭介は地面におこしていた焚火にスコップを突き刺し、その下の砂を掘り出していく。
 バルバコア―地面に穴を掘り簡易的な石窯を作って焼き上げる、大自然をそのまま味わうことが出来る料理法だ。
 そうして砂の中から掘り出された巨蟹の胴体部分からは、甲羅に閉じ込められた豊潤な香りが宿場町中を満たさんばかりに溢れ出している。
「もう辛抱たまらんにゃ! 残った甲羅は甲羅酒風呂にするにゃ~~ウゲッ!」
 これにはもう我慢の限界とばかりに飛びつこうとしたレフティの首根っこが、突如何者かによって掴まれ、空中に制止した。
 見ると、レフティに取り憑く猫狂いのサキュバスの霊がそのフワフワの首根っこを鷲掴みしにているではないか。
 静かな笑みを浮かべる少女霊。だがその目は一切笑っておらず、言外に「子猫が酒を浴びるのは絵的アウトよ」と刺すようなプレッシャーを放っている。
「え、せっかく頑張ったんだからご褒美くらい、え、ダメ? そ、そんにゃぁ……」
「ったく、火傷するぞ? 猫舌だろおたく」
 自らの従者とコントじみたやり取りを交わすレフティを横目に見ながら、晴翔がつけダレを添えた皿を恭介に差し出す。
「ん……まあ、お前が誘ってくれたおかげで久しぶりにまともな飯を食えそうだ。その……サンキューな」
 視線を逸らし、珍しく薄ら笑いをひっこめた晴翔。
「ああ、たくさん食べて体力をつけて、また明日から頑張ろう」
 そして皿を受け取り生き生きとした笑顔で答えた恭介は、取り分けた料理を皿の上に山盛りにしていく。
「ちょっ、こんなに食えるかよ!」
「ははは、頑張ってたくさん作ったんだからいっぱい食べていってよ? 俺もハルト君も体が資本なんだからさ」
 長らく忘れていた、いやもしかしたら人生で初めてかもしれない、こんなにも暖かな食卓。
 料理を噛みしめるたびに溢れ出すこの胸の温かさはきっと……。
「ま、こんなこと、こっ恥ずかしくて言えやしないけどな」
「ん? なんか言った?」
「んでもねーよ! 美味いって言ったんだ」
 自分のことを想ってくれる誰かと一緒にテーブルを囲んでいるからなのだろうか。
 格別の料理に舌鼓を打ちながら、そう思う晴翔であった。

 一方……。
「美味いにゃ! 美味いにゃ! こんなに美味しい蟹は初めてにゃ! 生きていて良かったのにゃ!」
 ガツガツと凄まじい勢いで、濃厚な旨味あふれる茹で蟹と蒸し焼きを平らげていくレフティ。
 そして最後の楽しみにととっておいた山盛りのリザカニカツを前に、四つの脚に力を入れて大地を踏みしめ、
「今、万感の思いを込めて……いっただっきまーーす!」
 満を持して飛び込んだ。比喩表現でなく頭から飛び込んだ。
「ガツガツガツガツ! 蜥蜴肉美味しい~! 溢れ出す肉汁がたまらんのにゃ~♪」
 無作法の極みともいえる体勢で念願のご馳走をむさぼるレフティ。
 自身の顔ほどもあるトカゲのカツを口いっぱいに頬張って咀嚼し、飲み込む間もなく今度はカニフライに齧り付く。
「うまうまうま~……う? ぅぇ……」
 しかし次の瞬間、千切れんばかりに振られていた尻尾の毛先がボサっと逆立った。
「ヴェエエェェェ~~~! 蟹の食べられないとこみたいな味がする~~!」
 スポンジのような食感が口の中に広がり、臭み、苦み、渋み……この世の全ての悪を凝縮したかのような不快感が舌を抉る。
 せめてお酒で流し込もうと酒瓶に飛びつけば、しかしそれは再び現れたサキュバスにより瞬く間に没収された。
「う、う、うわ~~ん! もう蟹なんてこりごりだにゃー!!」
こうして質より量を求めた哀れな白猫は、この日自らの身に、自らの手で忘れられないトラウマを刻んだのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

エウトティア・ナトゥア
チーム【獣人同盟】で参加じゃ。
うむうむ、大漁じゃったのう。運ぶのが大変じゃわい。
(狼の群れを召喚してトカゲやカニを運搬する)
さて、早速料理するのじゃ。
新鮮な素材は手を加えるまでもなくおいしいのじゃ。ここはシンプルにわしの得意な丸焼きでいただくとするかの。
(炎の精霊を呼び出し、獲れたトカゲとカニ(分身体)を焼く)
精霊による絶妙な焼き加減、これぞ我が部族に伝わる伝統料理『精霊焼き』じゃ!(適当)
良い匂いじゃ焼けたようじゃな、コハル殿にスピレイル、運搬を手伝ってくれた狼達にトカゲとカニを振舞うとするか。
トカゲを前菜にカニはメインディッシュじゃ。
平原ではカニは中々食べれないからのう。楽しみなのじゃ!


東山・歩
そうだなぁ……カニチャーハンとかどうかな。こっちだと珍しいんじゃない?

折角だし、あんかけも作っちゃお!
片栗粉みたいなのあるかなー?
こんなこともあろーかと!鶏ガラスープの素は用意済みなのだ!

あんかけはこれでよし……あとはチャーハンだね!
このくらいなら簡単簡単!

プロのパラパラチャーハンとは行かないけど、私が作るならちょっと塊があるくらいが愛嬌だよね!

へいおまち!あんかけカニチャーハン!
……ささ、トリシュちゃん!冷めないうちに食べて食べて!

カニ入りスープもあるよ!おかわりも……なくはないからね!


スピレイル・ナトゥア
【獣人同盟】で参加します
グリモア猟兵のトリッシュさんをお誘いします

『精霊焼き』って、そんな適当な……
ここは、サムライエンパイア被れの私が真の料理というものを見せるしかありませんね
まずは、UDCアースで買った市販のタレを使ったトカゲ肉のソテーを作るとします
どんなものでもドンブリにすれば美味しく食べられると言いますし、ソテーをご飯に乗せたら渾身のトカゲ丼の完成です!
心春さんのカラアゲをドンブリにするのも面白そうです
カニのほうは適当にエドマエ海鮮鍋(材料は水とカニのみ)にしておきましょう

猟兵のみんながみんな、料理が大得意だとは思わないことです!
【料理】スキルがなくったって自炊くらいはできるんですよ!


二條・心春
【獣人同盟】で参加します。
私はやっぱり、未知のトカゲ肉を使いたいと思います。トカゲ肉は鶏肉に近い味がすると聞いたことがありますので、唐揚げにしてみようかな。ガンギスさんはともかく、二人にはちゃんと美味しい料理を食べさせてあげたいですね。
脂肪分が少ないお肉なら、油少な目でヘルシーな唐揚げにしましょうか。「料理」技能と「第六感」をフル活用して、衣はサクサク、中はジューシーな唐揚げを作りますよ。
得意料理なのに、火加減は精霊任せなんですか!?とか、色々思うところはありますが、どちらの料理も美味しそうですね。私は蟹をいただきますか。そういえば、二人の手料理を食べるのは初めてです。はい、私も楽しみです!



 場面を移し、ここは調理場広場の中央。
 そこにいたのは横並びになってそれぞれ調理台と向き合う獣人同盟の3人、スピレイル、エウトティアのナトゥア姉妹と二條・心春、そしてそれを囲む大勢の町民達。
 本来は3人がそれぞれ異なる料理を作り披露し合おうという試みだったのだが、どうやらこれが街の人々からは3人の美少女が料理対決をしようとしていると捉えられてしまったようだ。
「はっはっは、ずいぶんと賑やかになってしまったのう」
 尚も集まり続けるギャラリー達を前に苦笑いを浮かべるエウトティア。
 明け透けな性格をしている彼女は、この状況も既に受け入れ楽しみ始めていた。
「3人で料理をするの? それなら私も混ぜて欲しいんだよ!」
 と、そんな台詞と共に調理場に飛び出す少女がまた一人。
 ここでまさかの町娘の飛び入り参加か? と思いきや、それは観客達の中に完全に紛れてしまっていた東山・歩であった。
「せっかくのお料理対決なんだから1人で作るは寂しいし一緒にいいかな?」
 歩はどこから持ち込んだのか、分厚い中華鍋を手に3人の元に駆け寄る。
「料理対決ではないのですが……一緒に作った方が楽しいのは確かですね」
「はい、作るのも食べるのも大人数の方がもっと楽しいですよね。同じUDCアース出身のよしみというわけではないですが、一緒にお食事会しましょう」
 スピレイルと心春も歩を快く受け入れ、4人がそれぞれの調理にとりかかる。
 しかし、スピレイルはどうにも周囲の目が気になるようで……。
「でも、町の皆さんには料理対決だと思われているんですよね。それなら誰か審査員がいたほうが良いのでしょうか? あ、それなら」
「やー……まだ呼ばれないけど飛び出るトリシュなのな。実況と試食は任せるのな」
「そしてこのガンギスが解説は俺が任されよう! ぬわーっはっはっはっは!!」
 と、唐突に湧いて出た水色の幼女とむさくるしいオッサン。
 元からトリシュには声をかけるつもりでいた彼女達であったが、まさか自分からやってくるとは思ってもみなかった。
 というか、ガンギスに至っては本当に呼んでいないし、そもそもあなた料理人を自称しているくせにまだ自分で料理していなくないですか?
「俺は気にするな! 展開の都合上のやむを得ないカットである! さあ余所見をするでないぞ。既に少女たちが動き出しておる」
 ガンギスが指さす先、それは最初に食材選びを終えたのはエウトティアであった。
 相次ぐ乱入にも一切動じず食材と向き合っていた彼女が選んだのは、最低限の血抜きをしただけの棘蜥蜴と蟹(分身体!)だ。
「新鮮な素材は手を加えるまでもなくおいしいのじゃ。ここはシンプルにわしの得意な丸焼きでいただくとするかの。ここまで食材を運んでくれた狼達にもたらふく食わせてやりたいでの。細かい段取りは飛ばして一気に焼いていくぞ」
 いきなり不安になる発言をしながら、エウトティアはその手に炎の精霊を集めていく。
 そして全ての力の源たる輝き燃える紅き炎を顕現させると、彼女は串に突き刺して吊るしただけの蜥蜴と蟹に向けて灼熱を解き放った。
「精霊による絶妙な焼き加減、これぞ我が部族に伝わる伝統料理『精霊焼き』じゃ! さあいい具合に焼いていくのじゃ炎の精霊たちよ!」
 両手から炎を放ち続けるエウトティア。絶妙な焼き加減などと言っているが、その様はどう見ても火力全開だ。
 そして見る見るうちに鱗と甲羅が真っ黒に焦げ付いていき、辺りに肉と海鮮が焼ける香ばしい香りが漂い始める。
「精霊焼きって、そんな適当な……」
「得意料理なのに、火加減は精霊任せなんですか!?」
 性格通りの豪快な調理法に思わず料理の手を止めてツッコミを入れるスピレイルと心春。
 しかし対するエウトティアはふんすふんすと鼻息荒げに見事などや顔を浮かべていた。
「いやー! いい香りがして来たのう。やはり、初めて食べる肉は丸焼きに限るのじゃ」
 2重3重に状況を悪くしつつあることなど知る由もない彼女に言葉を失う実況解説。
 あ、狼達がこっそり逃げ始めた。
 しかし、中にはそんな破天荒なエウトティアの料理に奮起する者もいた。
 中華鍋を強火で熱していた歩である。
「なるほど、料理は火力が命といいますもんね! それなら私はカニチャーハン作るよ! こっちだと珍しいんじゃない?」
 先程、恭介がぶつ切りにしていた茹で蟹の極太足を貰ってきていた歩は、それを丁寧に解していく。
 そして熱せられた中華鍋から湯気が立ち上ったのを見計らい油を投入。
 あらかじめ炊いておいたご飯と溶き卵、ほぐした蟹肉を入れ、これまた巨大なお玉でガンガンと音を立てながらかき混ぜていく。
「あ、歩さん。ご飯が余っていたら私も使いたいので分けてくださいませんか?」
「いいよー。そこの御櫃に入ってるから好きに使ってね」
 スピレイルとそんな会話を交わしつつ、中華鍋を軽快に踊らせる歩。が、しかし。
「よっ! ほっ! うっ、うぅ中華鍋って思ったより重いんだね……見え張っちゃったかも」
 片手で中華鍋を掴み揺すっていた歩であったが、その細腕には直ぐに限界が来る。
 自他ともに認める普通オブ普通な女子高生の細腕なのだから当然と言えば当然だが、このままでは具材とご飯が上手く混ざらずダマになってしまうだろう。
「まあいっか! プロのパラパラチャーハンとは行かないけど、私が作るならちょっと塊があるくらいが愛嬌だよね!」
 しかし、歩はその危機をポジティブシンキングで無事回避(?)。
 塩コショウで味を調えて一旦カニ炒飯はおいて置いて、次の作業に取り掛かる。
「塊ができちゃうならそれを誤魔化せばいいんだよね。それなら餡かけチャーハンにしよう! こんなこともあろーかと、鶏ガラスープの素は用意済みなのだ! うん、これならきっと美味しい!」
 別の鍋に水とガンギスから貰った片栗粉、そして市販の鶏がらスープ顆粒を入れて餡を作る歩。
 料理のスキルはまだまだだが、その機転と手際の良さからは、彼女の隠れたポテンシャルの高さが伺い知れた。
 一方、獣人同盟チームのスピレイルはというと、彼女もまたUDCアースの市販品のパッケージを手に持っていた。
「お姉さまがあれな以上、ここはサムライエンパイア被れの私が真の料理というものを見せるしかありませんね」
 真の料理を語る人がクッ〇ドゥを使うのだろうか? という疑問はおいて置いて、スピレイルは食べやすい大きさに切った棘蜥蜴のもも肉を手早くソテーしていく。
 そして、仕上げに歩から分けてもらったホカホカご飯の上に濃い味付けのトカゲソテーを乗せれば。
「渾身のトカゲ丼の完成です!」
「え! もう終わりなのか!?」
「あやー……まさかの主婦が喜ぶお役立ち時短料理だったのな」
 思わず口を挟んでしまったガンギスとトリシュ。
「ど、どんなものでもドンブリにすれば美味しく食べられると言いますし」
「スピレイルさん、サムライエンパイア被れを自称してましたけど、もしかしてそれご飯を使うってところですか?」
 心春の控えめなツッコミにスピレイルは一瞬、言葉を詰まらせる。
 どう見ても図星のリアクションであったが、しかし彼女もまた熟練猟兵。動揺を表には出さず次の食材に手を伸ばす。
「そ、そんなわけないじゃないですか。次は蟹です。こちらは適当にエドマエ海鮮鍋にしておきましょう」
 といって鍋に水と蟹だけを放り込んでいくスピレイル。
 ここで心春は全てを悟った。
(あ、これ最後の希望は私だけだ……今思いっきり適当にって言ってましたし)
 これまでずっとアンニュイながらも笑顔を保っていたものの、ここに来て遂に真顔になった心春。
 そんなどこか覚悟を決めた表情を浮かべた彼女は、深呼吸の後、再び調理台に向き直る。
 心春が作ろうとしていたのは棘蜥蜴の唐揚げだ。
「トカゲ肉は鶏肉に近い味がすると聞いたことがありますのでこの料理で間違いないはずです。でも脂肪分が少ないから旨味と食感に不安がある。だから、重要になるのは下ごしらえです」
 そう、なにも彼女は今まで何もせずツッコミ役に甘んじていたわけではない。
 バットに敷き詰めた肉に生姜やニンニク、醤油などで下味をつけ、そこに細かく刻んだ舞茸をまぶし、味がなじむまで寝かせていたのだ。
 舞茸には肉の繊維を柔らかくして食感を良くし、更に茸のうまみ成分を染みわたらせる効果がある。
 料理に秀でた彼女はその知識をフル動員して、この未知の食材と戦っていたのだ。
 そして満を持して揚げ物鍋に油を注ぐ。それも波々とではなく、肉が浸る程度の量で。
「せっかく脂肪分が少ないお肉なら、油少な目でヘルシーな唐揚げにしたいですもんね」
 衣を油に落として温度を確かめ、肉を少量ずつ油に滑りこませていく。
 パチパチパチッと油が跳ねる様を真剣なまなざしで見つめる心春。
 抜刀した達人の居振る舞いの如きその立ち姿は、集まった観客達も息を飲むほどであった。
「……ここ」
 小さく呟き、絶妙な火加減と揚げ時間を見定めて揚げ物鍋に菜箸を伸ばせば、鍋の中からはこんがり狐色の唐揚げが顔を覗かせる。
 瞬間、誰ともなく観客席からパチパチパチパチ! と油が爆ぜる音をかき消すほどの拍手が沸き起こった。
「ふぅ……なんとか出来ました。さあ、それでは皆でいただきましょう!」
 引き結んでいた頬を緩め、心春は料理をテーブルに運ぶ。
 エウトティア、スピレイル、歩もそれに倣って料理を盛りつけてテーブルに運べば、ここからは大宴会の始まりだ。
「もちろん、見ていてくれた皆の分もあるでのう。たーんと食べて行ってくれなのじゃ!」
 蜥蜴と蟹の丸焼きを豪快にナイフで切り分け、エウトティアがカッカッカと笑う。
 料理風景は殆ど恐怖映像じみていた丸焼きであったが、いざ出来上がってみると、なるほど目の前で切り分けられて皿に盛りつけられるその様は食欲をそそられる。
「やー、いい焼き具合なのな。ワイルド……臭みはあるけど悪くないのな」
「ほう! ほうほう! これが棘蜥蜴の味!」
 素材の味をシンプルに堪能できる料理は、ある意味この世界の食文化にマッチしていたようで、観客達も一様に棘蜥蜴の丸焼きを頬張り、笑顔を浮かべている。
 もちろん、エウトティアの呼び出した狼達も戻ってきて、我先にと蜥蜴肉に齧り付いていた。
「うん、スピレイルさんの丼物も美味しい! 濃い口の味付けがご飯にあってるね」
「うむうむ、腕を上げたのうスピレイル」
 歩とエウトティアが食べているのはスピレイルのトカゲソテー丼だ。
 市販品を用いた失敗しずらい料理であったとはいえ、ご飯と合うという見込みは間違いなかったようだ。
「うーむ、しかしこのスープは少々味付けが弱すぎるかもしれんな。沼で生息していた蟹故、泥の臭みがあり出汁もあまり出ていない、か。やはり鍋にするなら海で暮らす巨蟹の方が美味いのかもしれんな!」
 しかし超薄味のエドマエ海鮮鍋(という名のすまし汁)はガンギスには少々不評であったようだ。
「いいですか? 猟兵のみんながみんな、料理が大得意だとは思わないことです! 料理スキルがなくったって自炊くらいはできるんですよ!」
「はっはっは! いやいやこれも食材研究の一環、1つの発見だ。感謝するぞ! ぬわーっはっはっはっは!!」
 これには流石のスピレイルも軽く涙目になって反論するが、ガンギスはそんな彼女の抗議を笑い飛ばし、碗に残った鍋を全て飲み干した。
「ねえねえ! 私の餡かけ蟹チャーハンはどう? ささ、トリシュちゃんも! 冷めないうちに食べて食べて!」
「やー! これ、トリシュの好きな味なのな。……いえ、言い間違いました。トリシュに感情はありませんので好きという感情もありません。大変興味深い味です、なのな」
 などと言いつつも、レンゲをいっさい止めず口の周りを餡とご飯粒まみれにしながらチャーハンをかっこむトリシュ。
 正に目は口程に物を言うを体現。その目は今にもビームを撃ちそうなほどに輝いていた。
「はっ! いつの間にかお皿の上が空っぽ……トリシュのカニチャーハン何処に行ったですか! カニチャーハンです! どこです!」
「もう、そんなに急がなくても誰も盗らないよ。はいカニ入りスープもあるよ! おかわりも……なくはないからね!」
 当初の『知識を広げる為』という名目はどこへやら。
 無心でおかわりに食らいつくトリシュを眺め、歩は満面の笑みを浮かべるのであった。
「ううおおお!! なんだこの唐揚げ! 滅茶苦茶うまいぞ!」
「あんた、うちの食堂で働かないか?」
「いや、あたしの息子の嫁に来とくれよ!」
 一方、心春の唐揚げを口にしたギャラリーたちからは口々に歓声が上がる。
 今回の食事会での一番人気は間違いなく、心春の作った唐揚げであった。
「うむ! 美味いのう!」
「優勝は心春さんで決まりですね」
「もう、もともとは勝負じゃなかったじゃないですか。そんなに褒めても何も出ないですよ」
 エウトティアとスピレイルも絶賛するその唐揚げは、衣はサクサク中はジューシーと、専門店に引けを取らない絶品であった。
「勝ち負けとかじゃないんですよ。二人の手料理を食べるのは今日が初めてで、なんだかんだ言って私もずっと楽しみだったんです! だから無事に任務も達成できて、こうして皆でお料理して一緒にご飯が食べられて、私とっても幸せです!」
 仲間と一緒に平和にご飯が食べられる。自分の料理を美味しいと言って食べてくれる人がいる。
 きっと、そんな人たちの笑顔こそが何よりのご馳走なのかもしれない。
 大変なこともたくさんあったけど、一緒に乗り越えられることが出来てよかった。
 そんな事を想いながら、心春は咲き誇るような笑みを浮かべ、そして、

 エウトティアが作った蟹(分身体)の丸焼きを頬張った。

「~~~~~~~~~~っっっ!!!」
「どうしたのじゃコハル殿!」
「きゃああ! 心春さん!」
「なになに!? 食あたり? 毒があったの!」
 笑顔のまま、白目をむいて真後ろにぶっ倒れる心春。
 突然の出来事に仲間達が駆けより声をかけるが、余りの不味さに既に意識を手放していた心春の耳には、大切な仲間達の声が届く事はついぞ無かったのであった。
「あやー……魔物食はまだまだ奥が深いのなぁ~」
「うむ! それ故、俺は俄然興味が沸いたぞ! ぬわーっはっはっはっは!! ぬわーっはっはっはっはっはっはっは!!」

 こうして猟兵達の活躍により一つの街が救われ、生態系もとり戻された。
 しかし、その代償として一人の飽くなき食の求道者を世に解き放ってしまったことが、今後この世界にどんな影響を及ぼすのか。
 それを知る物はまだ誰もいない。

 ~ A&W飯 中級編に続く……?? ~

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年12月25日


挿絵イラスト