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死人に支配権なし

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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●既に名も無き或る男
 彼はかつて自分の命惜しさに他者を売った臆病者だったのかもしれない。
 力を求めて自らを邪道に堕とした狂人だったのかもしれない。
 人の悪徳に絶望して寝返った被害者だったのかもしれない。
 それでもなお、人の世を変えるために新たな力を求めた正義の者だったかもしれない。
 彼がオブリビオンと化したのは何かの理由があったのかもしれない。が、最早人だった頃の記憶も自我も失いただただ世界を脅かす存在となってしまった彼にとって、何もかもどうでもいいことであった。

 彼はある城といくつかの村を任されていた。彼は村に叛意を持った愚か者がいないか監視しつつ、不当に高い税金を強要し払えない者の親族を気まぐれにいたぶっては下卑た笑い声を浮かべながら村人に恐怖を植え付けていた。
 そんな彼だが配下を見ている時にあることに気づいた。
 配下の数がかなり減っているのだ。
 思い出すと心当たりはある。彼は自分に害なす動きを見つけるとすぐに配下を送り付けるが、最近はその頻度が高かった。さらにまだオブリビオンに支配されていない村の情報を手にした彼は普段よりも大きな規模で配下を送り付けた。それこそ城の警備が手薄になるくらいに。
 それを見た彼は配下に新しく補充するように村に行けと命じた。村へ向かう配下たちを見て彼は安堵した。まさかその隙を狙って彼の命を奪おうとする輩がやって来るとは思わずに。

●グリモアベース
「聞こえるか同胞よ! 我が故郷ダークセイヴァーにて朗報だ! 反旗の時だ! ……こほん、すまない。熱が入り過ぎてしまった」
 グリモア猟兵のスカーレット・ブラックモア(異邦神狩り受ける執行人・f00474)が顔を赤らめた。仕切り直しと言わんばかりに帽子を深く被り直す。
「さて、私の見た予知の話と行こう。ダークセイヴァーは憎っくきオブリビオンどもに支配されているのだが、その支配領域の一つ。本丸の巣食う居城の警備が薄くなるという、そのような予知だ」
 ダークセイヴァーのオブリビオンは数多の配下を引き連れて村や町を支配しているのが一般的であり、普段は数を活かした厳重な警備によりボスにあたるオブリビオンに近づくことすらままならない。しかしこうして警備が薄くなる時がある。その時こそオブリビオンを倒し支配地を奪い返すチャンスである。
「同胞の役目は簡潔明瞭。城主たるオブリビオンを倒し支配地を解放することだ。その前にやってもらうことはあるがな」
 警備が手薄になったと言っても配下がいなくなったというわけではない。城主の元へ行くには配下の群れを突破する必要がある。
「配下は城の周りを哨戒しているものが真っ先に目に入るが、中にも両手で数えられない数はいる。私が案内できるのは城の周りで警備が手薄なところまでだ。それから先は同胞たちの仕事だ」
 サポートしかできないのが不甲斐ない、と苦虫を噛み潰したような顔をした。
「続いて配下の情報。彼らは篝火を持ち、真っ黒なフードで全身を覆っている、という見た目だ。顔も見えないが辛うじて見える腕まで腐ったような黒になってるから、大方死体でも無理矢理動かしているのではなかろうか」
 素材は領地に行けばたくさんあるからなと小さな声で付け加える。その表情は心底腹立つがと言いたげな顔であった。
「また、この配下は以下の行動が確認されている。篝火から火を放ち敵を燃やす技、篝火が作り出した敵の影から動きを予知して回避に利用する技、死亡または気絶した者を24時間自分のお仲間にする技。と、こんなところだ。配下について話せる情報はこのぐらいか」

 一通り説明を終えた後でスカーレットはところで、と付け加えた。
「オブリビオンを倒した暁には支配された村は解放されるということになる。しかしオブリビオンの圧政の被害に遭っていた村だ。疲弊、荒廃が激しいと予測される」
 義務ではないが、復興に猟兵たちが手を貸せば村人たちはとても助かるだろう。
「まあ最後の一仕事といったところだ。今は気にせず心に留めてくれるだけでいい」

 そして最後に、スカーレットは芝居がかった調子で締めくくりの言葉を述べる。
「城主たるオブリビオンはかつては人であった。騎士であった。しかしながら、今では人だった頃の意思も思想も矜持も何かも失われ人として死んだも同然だ。死者に世界を自由にさせていいか? いや、そんなわけあるか」
 そして敬礼。
「死者の支配を打ち切れるかは同胞の手にかかっている。それではよろしく頼んだ、同胞よ」


樫木間黒
 はじめまして。樫木間黒(カジキマグロ)です。
 これが第六猟兵で出す初シナリオになります。よろしくお願いします。

 第一章は配下との集団戦、第二章は城主であるオブリビオンとのボス戦、第三章は村の復興、という構成になっています。
 戦闘の場所は集団戦は城の周囲(外部)→城の内部~ボス部屋まで、ボス戦はボスのいる部屋となっています。時間帯は夜ですが配下の持っている篝火のため周りが見えないほど暗いというわけではないです。配下が減れば話は変わりますが。

 第三章のみプレイングで指定いただければスカーレットが登場しますので絡みたい人はお気軽にどうぞ。

 それではみなさんのプレイングをお待ちをしています。
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第1章 集団戦 『篝火を持つ亡者』

POW   :    篝火からの炎
【篝火から放たれる炎】が命中した対象を燃やす。放たれた【赤々と燃える】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
SPD   :    篝火の影
【篝火が造る影に触れた】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    新たなる亡者
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自分と同じ姿の篝火を持つ亡者】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●城壁を超えよう
 転移した冒険者たちが目にしたのは石造りの城壁とその周囲を徘徊する亡者たちの姿だった。
 篝火を手に黒い人の姿をしたものがのそりのそりと、時折足を止めては辺りを伺っている。警備が手薄になっているとはいえ、敵との遭遇を完全に回避することはできなさそうだ。

 目に見える範囲に木製の扉がある。小さく端っこに誂えてあるからして、裏口であろう。
 まずはこの扉の中に入るため猟兵たちは動き出した。
ジョルジュ・ドヌール
 篝火って何を燃やしているんだろうね。魂かな?それだったらちょっと困るんだけど……松明か何かだったらまだ実体があるだけに対処のしようもあるね。

 さすがに身体のあちこちを改造されつくした僕とは言えども、炎は熱いし髪だって服だって焦げる。それはちょっと避けたいな。まずはその篝火を封じてみよう。

 泡や液体で酸素を遮断してあげれば篝火も燃え続けることはできないんじゃないかな。ローションをたっぷりと泡立てて、その泡で覆いつくしてあげよう。後に続く猟兵たちの助けにも成れればいいんだけどね。



ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)は亡者の視界から逃れながらローションを泡立てていた。
 もちろん遊んでいるのではない。このローションはれっきとした彼のユーベルコードなのだ。

(あの篝火……あれは魂を燃料にしているのかな? それだとちょっと困るかな……)

 ジョルジュの狙いは粘性のある液体を利用して篝火を消すことだった。
 少年の体は「ご主人様」の手によってあらゆる改造が加えられている。皮膚とて例外ではないが、炎の熱を防げるわけではないしなにより服が焦げてしまう。
 それはよろしくない。
 だからローションの泡と液体で酸素を遮断して消してしまおうというわけだ。

(実体があるならやりようはあるからね)

 さて、準備は整った。
 ジョルジュは癖のある髪の毛をふわりと揺らし泡立てたローションを亡者に投げつける。
 しかし泡が当たるより早く亡者は篝火を掲げ、ジョルジュの影から泡の軌道を読み刹那、体を捻った。そして勢いを生かし炎をジョルジュに向けて撃ち出す。

 一方ジョルジュは反撃に動揺はしたが、まだ手元にあるローションを盾にして服を焦がさずに打ち消した。

「あなたに“は”当たらなかったようですね」

 その言葉と共に場が薄暗くなる。それもそのはず、ローションが篝火を消していたのだ。

「さあ。あなたも、そしてあなたも……楽しんでくださいね?」

 少年はケーキの上の蝋燭を消すように液体を投げつける。続々と闇が広がりだした。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

アララギ・イチイ
うーん、こいつら(篝火を~)喰えるのかしらぁ?
死体でも乾物状態ならワンチャンスかもぉ(後で齧ってみようかと思う子

装備は(武器改造)で砲身+機関部+魔力炉を組み合わせた代物(名称:重魔力砲)を使用よぉ
重魔力砲の砲撃は(属性攻撃)で火属性を付与、炸裂弾を使用して(範囲攻撃)を仕掛けるわぁ
UCは焼死・火葬祭で灯り対策も兼ねて、相手を炎上させるわぁ(後で消化

回避行動は(ダッシュ)で加速しつつ、(フェイント・残像)で敵を撹乱する様に移動、(迷彩)も付与して視認性の低下を狙ってみるわねぇ
近接されたら、サムライブレイドの(早業)で抜いて、バッサリかしらぁ?もしくは砲身で(怪力)任せにぶん殴るのもありかもぉ



「うーん、こいつら喰えるのかしらぁ?」
 ほぼ同時期、アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)は様子を伺いながら小さな声で独白した。
 彼女はちょっと変わった趣味をお持ちであり、オブリビオンの血肉であろうが彼女にとっては嗜好品なのだ。
 悩んでいるのもいつ急襲してやろうかというより、あれは食べられるのかと考えているからだ。

「ま、後で齧ってみましょうかぁ。死体でも乾物状態ならワンチャンスかもぉ」

 ちょっと物騒なことを口に出しながら着物に似合わない重魔力砲をちらつかせ、尻尾をぶんぶん振った。

「火属性付与(エンチャントファイア)ぁ、炸裂弾装填☆」
 底抜けに明るい声でよく燃やしそうなものが重魔力砲に積められていく。

「あはは、いっきまぁ~すっ!」
 その言葉を言い終わるか否か、アララギの体が猛スピートで前方に跳ね上がる。

 相手の攻撃を予測して回避してくると敵と戦うならどうすればいいのか?

 彼女ならこう答える。相手が動きを読むとかちゃちゃなことをしてくる前に潰せばいい、と。
 そう言わんばかりに彼女の動きは亡者が予測のために篝火を掲げるどころか、接敵に気づくことすら許さない。
 加速、フェイント、迷彩。持ちうる道具と機能を駆使し彼女はユーベルコードを放つ。

「よ~く、燃えちゃえー!」

 ――焼死・火葬祭。範囲に巻き込まれた亡者たちは例外なく燃料となり、手にしていた篝火よりも煌々と燃え上がった。

「大火事になる前に消せばいいのだわぁ」
 と、こんがり焼けた枯れ木のような死肉を物色しながら独り言ちた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

宇冠・龍
由(f01211)と共に援護します

私は由や他の方が亡者達を倒しやすくなるよう動きを止め、城内に突入しやすくなるようにします
「画竜点睛」で味方を攻撃しようとする相手、味方が攻撃する相手を優先して、怨霊の腕で順次拘束していきます
ここは亡者と呪詛の集う城、私の技も効果がより発揮される筈です
特に篝火の動きに注意し、炎を放たせないよう封じ込めましょうか

城内に突入する準備が整っていれば、その進軍を邪魔する敵も、余裕があれば地に伏せ拘束させます

異変を知り、周辺に散っていた配下も城に戻ってくるかもしれません
足止め役として、味方が侵入した後は城門周囲に陣取り、残った敵も含めて露払いの殿をしましょう


宇冠・由
お母様(f00173)と連携して露払いをします

相手は炎を放ち、かつ炎の影でこちらの攻撃を回避する様子
「――でしたら、より大きく煌めく炎で影を消してしまえば問題ありませんね」

私は炎の体躯を持つ宙に舞うブレイズキャリバー、戦場から少しだけ離れたところで宙に高く浮き、全身の炎をより輝かせ、太陽の如く光源となりますわ
相手の攻撃をこちらに引き付ければ味方をかばうことにもなりますし、炎につられた敵をおびき寄せられます

そして集まった相手を得意の空中戦で相手取りながら、「熾天使の群れ」で迎撃
燃やし尽くしてしまいましょう

皆様が城内に突入した後も、お母様と城外で敵と戦います
城主と戦いやすくするもの立派な戦いですわ



片や水による鎮火。片や火事による鎮圧。
 裏口を阻む敵のほとんどは行動不能になったが、同時に別の場所で哨戒していた亡者を呼び寄せるほどの騒ぎとなった。
 そこで辛うじて攻撃から逃れた亡者を拘束しながら前に出たのは、宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)と宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)の親子だ。

「ここは私たちが」

 龍は黒い竜玉を手に囁く。それは本来の温和な声に怒気のこもったものだった。

「目覚めなさい。この地に眠る亡者たちよ。彼らはあなたたちを傷つけ、苦しめ、冷たい地の底に追いやりました。悔しくはないのですか? さあ、さあ、お行きなさい」
 龍は死霊術士だ。故にこの亡者と呪詛の集う城を舞台とする戦場は彼女にとって心強い味方になり得る。

 詠唱を続ける龍を倒さんと亡者は篝火を掲げる。しかし亡者の視線は眩い光により揺らぐ。亡者はつい突如現れた光の方を見てしまった。それは太陽を直視するのと同じぐらい無謀なこととは知らずに、つい見てしまった。
 彼らの視線の先にあったのは燃え盛る人、いや炎が人の姿をしていると言った方が正確だろう。
 由は人らしい肉体を持たないヒーローマスクだが、このように自らの能力である地獄の炎で仮の肉体を作り出すことを可能にしている。よって今回は炎の体を囮に使い、母と共に連携して亡者たちを拘束するのが目的だ。

「お母様を傷つけることはわたくしが許しません」

 由はで形作った剣を振りかざし空中から亡者を相手どる。そして母の詠唱に合わせて鳥の姿を象った炎を無数に生み出した。
 そして狙うは裏口へ向かう仲間を邪魔する亡者、篝火を振りかざし焼き尽くさんとする亡者。

「咲けよ徒花、一つ二つと首垂らせ――画竜点睛!」
「この技を見切ることができまして? 熾天使の群れ(キラキラボシ)!」

 
 亡者たちは影を生み出し無数の手と不死鳥の軌道を読み解こうとする。しかし――

「――でしたら、より大きく煌めく炎で影を消してしまえば問題ありませんね」

 篝火を遥かに超える光が影をかき消す。
 避けられない一撃が亡者を抑え、焼き、力を削いでいく。

「私たちのことはお気になさらずお行きになってください」
「ここはわたくしとお母様が抑えますから!」

 母娘が呼びかける。城内はすぐそこだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●死者の巣食う城
 そこはかつて栄光に満ち溢れた明美な城だったのかもしれない。しかし城内はロクに手入れもされておらず荒れ果ていた。
 カビ、錆、ヒビ、壊れた調度品の数々、切った痕、焦げた痕、血の染み。かつてあったであろう戦いの跡が修復すらされず生々しく残っている。恐らくここの城主はそのような跡など気にしていないのだろう。

 ――しかし、侵入者に対してはやはり神経質なようだ。
 篝火を持った亡者が立ち塞がる。城の中にも当然配下は配備されているのだ。
 亡者の動きをよく見ると、彼らは城主の部屋への道筋を作るかのような軌道を書いて廊下に集まっている。

 君たちは目指す。亡者の群れの先にある首領の元へと。
リーヴァルディ・カーライル
…ん。ここの領主はヴァンパイアじゃないけど
知った以上は見過ごせない…
行き掛けの駄賃変わりに、狩っていってあげる

「影に触れたら避けられるなら、どうあがいても避けきれない攻撃を行えば良い」

敵の攻撃は第六感を頼りに回避し、
敵の行動と影を見切りギリギリまで接近してから【限定解放・血の波濤】で範囲攻撃を行う
一瞬だけ吸血鬼化した怪力で大鎌をなぎ払い、
生命力を吸収する呪詛の波動を放つ
…生き残った亡者には銃撃による2回攻撃で傷口を抉り確実に止めを刺す

「…この距離なら避けれない」

…彼らも元はこの領主の犠牲者
あまり手荒な真似はしたくないけど…致し方ない
全て終わったら、きちんと埋葬するから、
それまで我慢して、ね?


アノニム・ヴァリアント
「……」
 ざんばらの白髪の下から亡者の群れを見据える。まるで行くべき道を示す様に集っているのは亡者の最後の遺志か知恵がないからか。
 どちらでも構わないと城内に踏み入る。向けられる篝火を恐れる理由はない。焼かれるのならば構わない。
「……刻印、解放。捕食開始」
 胸の中央の刻印を開放、機械化した四肢から伸びたコードが異形の顎を形作し、【捨て身の一撃】そのままに焼かれながら喰らい、喰らった端から【生命力吸収】し、歩みを進めまた喰らう。
 亡者より亡者らしく、怪物らしく。己の痛みを省みすらせずに歩みを進める。



 アノニム・ヴァリアント(名無しの怪物・f03241)はざんばら髪の下から亡者たちを見据えた。
 まるで行くべき道を示す様に集っているのは亡者の最後の遺志か知恵がないからか。
 そのようなことはどうでもいいとばかりに彼は城内に足を踏み入れる。

(……ここの領主はヴァンパイアじゃないのね……)
 だからと言って放っておく気はないけど、と同時に突入したリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は大鎌を持ち直し廊下を埋め尽くさんとする亡者たちの前に立つ。
「……ん。行き掛けの駄賃変わりに、狩っていってあげる」

 城内に侵入した二人に向かって篝火が向けられ炎が放たれた。
 それに対してアノニムは回避行動をとらない。炎の熱にも迫力にも圧されることなくまさに狂気としか言えない勢いで前進を続ける。前進以外で彼の取る行動はただ一言その口から言葉を発するのみ。
「……刻印、解放。捕食開始」
 その言葉と共にアノニムの刻印が解放される。機械化した四肢からコードが伸び顔の前で顎を作り出した。
 彼の体に着弾した灯火が炎上を始めるが敵を掴み、殺すと炎が消えていく。彼の武具は敵の生命を吸収し自らへの生命力へと変換することができるのだ。
 故に回避は不要、寧ろ彼の狂気的な戦いの前には邪魔な行為に過ぎない。

 一方、リーヴァルディは超人的な勘を頼りに炎を躱す。
「影に触れたら避けられるなら……」
 再び炎が飛ぶ。そしてリーヴァルディの影がこれからの行動を予知して動き出す。しかしリーヴァルディはすぐに攻撃行動に入らずにギリギリまで炎を避けながら懐に入り込む。そう、
「どうあがいても避けきれない攻撃を行えば良い」
 ――限定解放・血の波濤(リミテッド・ブラッドウェーブ)、吸血鬼化したリーヴァルディの腕力が大鎌をすさまじい勢いで振るう。蜘蛛の子を散らすように亡者たちが吹き飛んで行く。ただの鎌による斬撃ではない。その一撃は生命力を吸収する呪詛。耐え切れなかった亡者はそのまま動かなくなった。
「この距離なら避けれない……」
 その横でアノニムはまだ動こうとする亡者、運よく鎌を免れた亡者の顔を掴み、めきりと嫌な音を立てて捻り潰した。
「もっと……もっとだ。もっとおれの前に立て。おれを焼け。そして、おれに喰われろ」
 生前の意識を失ったとはいえ亡者には自我が残っているのだろうか、その狂気的な有様に、目の前にいる敵を殺しつくす怪物に恐れをなしてか背を向ける。
 その様子を見たアノニムは何かを感じるわけでもなく、首根っこを掴んで手折り、また機械的に殺した。

 リーヴァルディは亡者の腕がぴくりと動いたのを見て銃弾を頭に撃ち込む。
 彼女の心が痛んだ。元はここにいる亡者たちは城主の犠牲者。その犠牲者に容赦なくとどめを刺し続けるのは本意ではない。しかしこれも城主を倒しこの土地を解放するためである。
「……全て終わったら、きちんと埋葬するから、それまで我慢して、ね? それにしても……」
「数が多い、な」
 ぐしゃりとまた敵を喰いながらアノニムが零した。
 内部であっても外と遜色ないほどに亡者がいるのではないか。しかし二人の猟兵は疲弊を厭わず敵を屠り続ける。
 全てはその先にいる城主を倒さんがため。

苦戦 🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ナイ・デス
何を思って、守っているのでしょう……
亡者にされての今であろうと、生きていたいと、願っているのでしょうか
それともただ、操られているだけなのか……
……せめて安らかにと、願います

【生まれながらの光】を、仲間へ
……そして、敵へ
複数同時の高速治療をするように【聖なる光】で敵全体を包み込み
外見を生前に戻せるなら、戻しながら

……生命力吸収。聖なる光に触れた敵から、今に生るのに必要な力を吸収
疲労をそれで補いながら、光をひろげ

反撃されても、激痛耐性で無視
仮初の肉体は再生する。生まれながらの光で、高速再生しながら

敵を光で包みこんで

……おやすみなさい、です



 あの人たちは、何を思っているのでしょうか。
 亡者にされての今であろうと、生きていたいと、願っているのでしょうか。

 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)はその生命尽きるまで行進を続ける亡者の群れを見て想う。
(それともただ、操られているだけなのか……)
 そうであればとても残酷なことだ。彼らに痛みがあるかはわからない。戦うことを恐れていないのかもしれない。
 でももし痛みを感じていれば? もし戦いを恐れていれば? その意思を無視して無理矢理城主を守るため戦わされていれば?
 それはとても惨い話だ。
「……せめて安らかに」

 ナイは祈るように両手を合わせ首を垂れる。
 その刹那、彼の体から温かく眩い光が広がった。その光は傷を癒す生まれながらの光。前で戦う味方を包みその傷が瞬く間に塞がっていく。
 さらにその光を今まさに戦っている亡者に向けて。
(この光が……彼らを元の姿に戻せるなら)
 しかし、亡者の姿は変わらない。已む無く彼は癒しの光を敵限定で生命力を吸収する技に変える。
 今に生るのに必要な力を取られた亡者たちは地に崩れ、代わりに疲弊するナイの体を癒していく。そしてさらに肉体を疲労させて範囲を増す。
 後で補填しているとはいえ一時的に体を襲う脱力感は避けられず、亡者たちもただではやられまいと反撃をしてくる。その苦痛を痛覚遮断で乗り切り、自らにも生まれながらの光を当てて修復する。
 バタリ、バタリと敵が崩れていき遂には――城主の部屋への道が開いた。
「……おやすみなさい、です」
 小さな声で倒れた亡者に告げてたどたどしく仲間に道が開いたことを伝える。

 先を進むナイの耳にか細い声が聞こえた。それは聞き逃してしまいそうなほど小さなものであったがナイの耳に確かに聞こえた気がした。
 ありがとう、と。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『異端の騎士』

POW   :    ブラッドサッカー
【自らが他者に流させた血液】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【殺戮喰血態】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD   :    ブラックキャバリア
自身の身長の2倍の【漆黒の軍馬】を召喚し騎乗する。互いの戦闘力を強化し、生命力を共有する。
WIZ   :    フォーリングローゼス
自身の装備武器を無数の【血の色をした薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●玉座を護るもの
 扉の先は広い部屋だった。中は壁に掛けられた燭台の光で明るい。燭台に灯された蝋燭の炎は自然の物とは思えない怪しい雰囲気をまとっている。
 石で出来た豪奢な置物がこちらを見ているような気がする。しかしそのような視線からは目を逸らさず、赤いビロードの先を見据えた。
 赤いビロードは入り口から部屋の奥へ向かって伸びている。ビロードが指し示す部屋の奥、そこには玉座があった。時の流れのせいかくすんだ色をしているがまだ奥底にある金属の光を秘めている。

 そしてその玉座の前、騎士のように佇む黒い甲冑がいた。
 間違いない。彼がここの城主だ。村の人々を苦しめる支配者だ。
「誰ダ」
 彼の声はやたらと響いていた。どうやら中に人がいるというわけではなく、甲冑に音を反射させて喋っているという仕組みらしい。
「ココハ俺ガ護ルヨウニ言ワレタ。故ニ私ハ貴様ラヲ殺ス」
 騎士は剣を構え、鎧の奥にある目のような光で睨みつける。

 亡者たちが援軍にやってくる気配はない。目の前の騎士に集中するべきだと心で理解した。
宇冠・龍
由(f01211)と共に
他の方が切り込み易いようサポートに尽力します

城内外には、虐げられたことによる無数の怨念無念呪詛が彷徨っていました
見過ごすわけにはいきません

「表にいた部下の方は全て片付けました。残るはあなたのみですよ」
【談天雕竜】で百の霊を引き連れ玉座の間へ
剣を携えた霊で合戦といきましょうか

相手はここまでの数は想定していないはず――恐らくフォーリングローゼスで迎撃してくるでしょう。しかしそうすれば、その技を使い武器の形状を変えている間は、ブラットサッカーによる近距離戦闘はできないかと

霊を展開している間無防備となってしまいますが、由が守ってくれると信じていますので、何も怖くなどありません


宇冠・由
お母様(f00173)と一緒に殴り込みですの

「表にいた部下の方は全て片付けました。残るはあなたのみですわ」
【十六夜月】で召喚された大量の狼と共にいざ玉座の間に

お母様の呼び出した霊と連携して戦います
可能なら霊を狼に乗せて騎乗戦といきましょう

「霊と狼による二重の攻撃。城主様には防げまして?」

相手の技がお母様を含め味方に届きそうなら、私の炎のオーラで防御しかばいます

相手に大きな隙ができたのなら【熾天使の群れ】でも同時攻撃と参りましょう
この技は私の一部でもあるので、たとえ迎撃・切り落とされても【七草繁縷】で動きを絡めとりますわ。そのまま喰らっても動きを制限しますけど


リーヴァルディ・カーライル
…あなたの主も、やがて骸の海に還る日が来る
あなたは今、ここで一足先に還るが良い

…私は暗視が得意だし、他より夜目が効く
光源を用意する必要はないけど…事前に頑丈なカンテラを用意してその場に放り投げておく

…【限定解放・血の教義】を発動
吸血鬼化して増幅した生命力を吸収して力を溜め、
第六感を駆使して暴走までの限界点を見切り制御する
“過去を世界の外に排出する闇”を生み出し、大鎌に纏わせる

…これが、私の魔法
オブリビオンなら、無視できない存在感を持つはず
こちらに意識が向けられた隙に仲間が不意を突いてくれれば、
更にその隙を突き、大鎌を怪力任せになぎ払い、刃と魔法の2回攻撃で傷口を抉る
…過去は過去に還りなさい


ジョルジュ・ドヌール
首魁のお出ましか。問答無用で襲ってくるし、その話口から察するに自我らしい自我もないのかな。要するに、強引にでも打ちのめす外はない……と。
幸い、援軍がやってくる様子も無いし味方の猟兵と連携すれば、数の優位は保てそうかな。
剣にしても軍馬にしても、足元が不安定なら十分に力を出すことは出来ないだろう?水薬の小瓶からローションを湧き立たせ、部屋中にまき散らしておこう。僕のローションは特別性だからね……良く滑るよ。
間違えて踏んだり、手についてしまったら大変なことになるかもね?剣がすっぽ抜けたりしないように、気を付けて(クスクスと笑いながら)



「首魁のお出ましか」
 ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)は城主の姿を見てポツリと呟いた。
「排除スル」
 騎士の持つ剣が不気味に発光し鞘から引き抜かれる。刀身はまた怪しく光ると生物のように形を変えて、刀身からまた刀身が、刀身のような棘が生えた禍々しい物体に変貌する。ジョルジュを一瞥するとそれを、振りかざした。ジョルジュが身を捻って回避し振り返ると先ほどまでジョルジュがいた所がズタズタに切り裂かれている。
(あれがブラッドサッカー……問答無用か……! 自我もないらしいね。これは強引にでも打ちのめす外はない……と)

 まだ侵入者が攻撃行動を取らないのを見ると騎士は動きを止める。そこでカランという音が響いた。
 音の正体はリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)の投げ込んだカンテラだ。
(……私は暗視が得意だし、他より夜目が効くけど)
 周りがそうとは限らない。それに目の前にいる黒い騎士の目も引ける。
 狙い通り騎士はリーヴァルディに向かって剣を構えた。再び剣を振ろうとした、その時――

 轟音。窓枠が砕け、硝子が飛び散る。そして城主へと殺到する狼と百に及ぶ霊。霊たちは各々が手に剣を持ち、中には狼の背に乗っている者もいる。
 集団の中にいるのは霊と狼を呼び出した人物――宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)と宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)である。
 霊は竜が城の内外を彷徨っていた無数の怨念無念呪詛を談天雕竜で呼び出したもの、狼は由の十六夜月で呼び出したものである。
 二人は城外で足止めをしていたが全て片付けてユーベルコードで援軍を引き連れてやってきたのである。

「表にいた部下の方は全て片付けました」
「残るはあなたのみですわ」

 それを見たジョルジュは一人ほくそ笑んだ。
「これは……とても心強いですね」
 城主たる騎士は非常に強力であろう。しかし数の優位の前ではどうだろうか。強力な技で蹴散らそうとしても、ここまで集団を一人で相手取ろうとするとどうしても隙が出るはずだ。
 それを狙い足止めを仲間たちに任せジョルジュは動き出す。

 再び騎士と対峙する龍と由たちに戻す。

「では、剣を携えた霊で合戦といきましょうか」
 その一言を合図に霊と狼たちが動き出した。
「霊と狼による二重の攻撃。城主様には防げまして?」
 由は地獄の炎で出来た音叉を鳴らし指示を出す。狼たちは霊を背に乗せて騎士を取り囲み、四方八方から爪で、牙で、霊の持つ剣で切り裂かんと飛びかかかる。
 それに対して騎士は剣で弾くがその後ろから襲い掛かる攻撃にキリがないと悟った。そして次は剣の形状を無数の花びらに変換させる。
 血のように赤い赤い薔薇の花びら――フォーリングローゼスを以て周囲にまとわりつく霊を、狼を切り裂く。
 それこそが龍の目論見通りとも気づかずに。騎士が過ちに気づいたのは膨大な魔力の反応に気づいた時、光を全て飲み込むほどの“闇”に胸を裂かれたその瞬間だった。

 ――限定解放・血の教義。現象させたのは“過去を世界の外に排出する闇”。暴走の危険もある技であったが宇冠親子による足止めにより限界ギリギリまでの制御を可能とした。
 その闇を過去を刻み未来を閉ざす大鎌に乗せ、渾身の力をこめて力任せに振るう。
 花弁の群れは由の炎で焼き尽くされ道を阻む物は何もない。
「…あなたの主も、やがて骸の海に還る日が来る」

 故に、

「あなたは今、ここで一足先に還るが良い」
 グリムリーパーの一撃が深く深く、騎士の胸を抉る。
「…これが、私の魔法」
「マ、マダ……マダダ。侵入者、排除。俺ハ、私ハ……死ナヌ!」
 黒騎士は花弁を剣に戻しリーヴァルディを切り裂こうとする。しかし、意識が向いた隙を突き由の熾天使の群れが貫いた。
「ガ、ガアアアアア!!!」
 それでもなお伽藍洞の体を動かして騎士は立ち上がり返す刀で熾天使を切り裂く。
「…嘘、まだ動くの……?」
「!? リーヴァルディさん、危険です!」
 龍の叫びを受けて由が庇いに向かうがそれよりもブラッドサッカーにより凶化された剣が裂く方が速い。
 そのはずだった。

 スポンと呆気なく、間抜けなほどに騎士の手から剣がすっ飛ぶ。
「……!?」
 そして踏み込もうとした黒騎士は足を滑らせて転倒した。地面に転がった騎士が見たのは液体が入った小瓶を傾けるジョルジュの姿だった。
「やあ……ようやく気付きましたか? 無視されてとても寂しかったですよ」
 丁寧な言葉遣い、だが煽るように嘲るように彼は言う。
「もしかして触ってしまいましたか? それはいけない……僕のローションは特別性でね、よく滑るんですよ。剣がすっぽ抜けたり…ね?」
「……チッ、馬ヨ!」
 騎士は黒い巨体の軍馬を呼び出し動けない自分の代わりにジョルジュを狙う。しかしその馬もローションに足を取られて転倒してしまった。
「ほら、言ったでしょ……? 滑らないように気を付けてくださいね?」
 クスクスと笑うジョルジュ。そしてリーヴァルディが再び鎌を取る。心の中で密かに感謝の言葉を告げて。
(…きっと私一人ではここまでうまくいけなかった…)

 闇を纏った鎌で更に深く傷口を抉る。ダメ押しとばかりに傷口が燃え上がった。由の仕掛けた熾天使の返り血……もとい、返り火だ。
「…過去は過去に還りなさい」
 固い騎士の鎧が砕ける音がした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アララギ・イチイ
きゃはぁ、敵のボス見つけたわぁ
そう簡単にK・Oしないでねぇ

装備は突撃銃×2かしらぁ
中距離から左右の交互撃ち(2回攻撃)しつつ、味方への(援護射撃)するわぁ
相手の反撃も警戒して(ダッシュ)で加速、(フェイント・見切り)で回避行動を織り交ぜてねぇ

こちらへの注意が逸れたらUCの要石~を使用するわぁ
【3D6】で召喚した巨石を敵に(怪力)でぶん投げるわぁ
ストレート・フォーク・消える魔球など多種多様な球種でぶん投げるわぁ(要石の効果は攻撃力重視
1個だけ残してぶん投げた後、接近に移行よぉ
(可能なら)巨石に紛れて接近、巨石を武器の様にして相手に叩き付けるわ、もちろん(武器受け)とかで防御にも活用よぉ


ナイ・デス
……ただ命じられたからと、護っているだけ、ですか?
命じられたからと、支配して
命じられたからと、恐怖を与えて
命じられたから……死にかけている?

終わりにしましょう。貴方は今、ここに生るけれど
……もう、死んだ人、です

亡者達にしたように【生まれながらの光】で
聖なる光で敵を包み込んで、生命力吸収します

仲間を、自身を光で包んで癒し、包み続けて
抵抗されても痛みは激痛耐性で無視して
損傷しても自身を包む光の力で仮初の肉体を高速再生して
生命力吸収で

貴方という今生る過去を、今生る私の、一部にします



 砕けた鎧から黒い煙のようなものがもうもうと漂う。よろよろと立ち上がりながらごぽっと空洞からこれまた黒い液体が噴き出す。
 まるで彼の騎士の魂のように。
 暫く咳き込むように煙と液体を噴き出すと騎士の鎧は蠢き、隙間をどろどろとした黒い液体で塞ぐ。
 どうやらこれが騎士の応急処置のようだ。
「ガァ……ゼエ……」
 よろよろと再び剣を掴んだ騎士は怒気を含んだ声で叫ぶ。
「許サヌ……許サン!!! 侵入者ハ排除! コノ地ニ支配ヲ!!」

「……ただ命じられたからと、護っているだけ、ですか?」
「ウン……?」
 ナイ・デス(本体不明のヤドリガミ・f05727)は尚も禍々しさを失わない騎士に向かって口を開く。
「命じられたからと、支配して…命じられたからと、恐怖を与えて……命じられたから……死にかけている?」
「ナンダ、貴様ハ。命乞イカ? ヨロシイ。前ニ出ロ。楽ニシテヤロウ。首ヲ刎ネテヤロウ」
 ナイの言葉は城主には届いていないようだった。聞こえているのかもしれないがその返答が致命的に噛み合っていない。言葉の意味を理解していない。
 それなら、彼は。まだ動いて殺意を向けている彼は、ここに来る前に聞いたように、恐らく。
(もう、死んだ人……)
 あの騎士は同じだ。力は強くても本質は外にいた亡者たちと変わらない。自分の意思とは無関係に動かされ続けるただの骸。
「もう、終わりにしましょう」
 両手を合わせ聖なる光を放つ。それに合わせて銃弾が騎士を襲った。
「きゃはぁ、ボスはっけ~ん!」
 現れたのは両手に銃剣付きアサルトライフルを装備したアララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)だ。彼女はクルクルと器用に宙を舞い上段、中段へと銃撃を叩きこんだ。
 しかし騎士は刀で銃弾を弾く。
「あらぁ? 残念だわぁ」
 攻撃を塞がれても狂ったように笑みを浮かべるアララギを一瞥すると剣の形状を変える。肥大化した剣は霧散し、霧は剣と同じ赤黒い花弁へと姿を変えアララギを襲う。
 アララギは高速軌道で紙一重で回避する。時には攻撃を織り交ぜて花弁を撃ち落とし、隙を見て騎士本体を狙う。掠った花弁が彼女の頬を裂くが、それを聖なる光が癒す。許容範囲だ。

「さぁて、そろそろ…ねぇ」
 花弁の弾幕が薄れる、その瞬間を狙いアララギは自らの周囲に石を召喚した。
 その数、14個。

 見るからに重量のありそうな石をよいしょとかわいらしいかけ声と共に持ち上げて――投げた。
「――!?」
 咄嗟に騎士はブラッドサッカーにより剣を凶化させて受け止めようとする。
 だが、轟音と共に騎士の体は後ろに退いた。そこを逃さずまた次の投石を続ける。
 攻撃力を重視して強化された膂力によって投擲される巨石に圧倒されている。命中した石がベコリ、ベコリと剣を軋ませ鎧に跡を残す。
 負けじと力を振り絞り剣をさらに、さらに禍々しく肥大化させて遂には石を両断する。が、力を使い過ぎたのかゴポリと鎧の隙間から黒い液体を垂れ流した。

 倒れそうになりながら彼は視界を光の中心に向けた。
 あれだ。あれが自分の力を吸い取っている。潰さねば。消さねば。
 騎士は咄嗟にキャバリアを差し向けた。

「―――――!」
 ナイに向かって異様な速さで黒い軍馬が襲い掛かる。あれは流石に痛覚を遮断して受け止めようにも身体が持たないのではないのか。光の展開を止めずに回避を図る。しかし軍馬の方が速い。ぶつかる、と直感的に目を瞑る。
 どしんと重い音。そしてぐちゃりと潰れる音。
 ナイは目を開いた。いや、開けた。潰れていたのはアララギの投げた巨石の下敷きになった軍馬の方だからだ。
 横ではきゃはははと笑いながら巨石を投げてライフルを打ち鳴らす少女が舞っている。それを見てはっとなったナイはまた光の制御に集中する。

 ――今生る過去を、今生るナイの一部にするために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ナイ・デス
光の制御に集中する。集中して、集中して……
やめた

彼は亡者と変わらない
望んでそうなったのか、望まずしてかは、まだわからない、ですが
……教えて、くれますか?

地形の利用、ローションとか巨石とか?しながら
忍び足ダッシュ、スライディング、ジャンプに空中戦にフェイント技能駆使して
戦闘知識、見切り、第六感で、動けなくなる攻撃だけは回避して
あとは勇気と激痛耐性、ヤドリガミ故の不死性、握りしめた生まれながらの光による高速再生で突破し接近する捨て身突撃
先制かカウンターで
聖なる光と一緒に暗殺剣を鎧無視攻撃で突き立て
傷をえぐり、刺した光で、生命力吸収

私は貴方を覚えます
私が今に生るのに大事な、一部にします

おやすみなさい



 光が収まる。ナイは騎士を見た。
 泥のような黒い液体を吐き出しながらも尚、泥を剣に纏わせている。
 見るからに瀕死であるがそれでも戦いをやめようとはしない。そんな彼に向かってナイは口を開いた。

「どうして…ですか?」

 聞こえたのだろうか、黒騎士の動きが一瞬止まったように見えた。

「望んでか……望んでないかは……わからない、です。でもその姿になった理由は、あると、思い、ます。……教えてくれま、せんか?」

 彼は分からなかった。何故わざわざ手を止めてまで敵に問いかけようとするのか。
 何故ここで立ち会ったに過ぎない敵にそのような質問をするのか。
 困惑する脳裏に浮かんだ笑う子供の姿、平和な街の一角、頭を下げて感謝する大人たち、全てが不可解で、理解できない。

「何故、コンナモノ。私ハ、ココヲ任セラレタ。恐怖ト暴力デ支配セヨト」

 わからない、わからない、わからない、わからない。

「俺ハ    様の――」
 この力を貸した者の名前だろうか、それとも彼がこの姿になる前の主君だろうか。それすらも最早摩耗して消え去った過去の遺物となった。

「もう、終わらせま、しょう……」
 傍に落ちていた石を蹴り飛ばす。ローションで濡れた床に向かって。カーリングのストーンのように吹き飛んだ巨石が騎士に激突する。
 ぐわんと鎧が音を鳴らし、騎士は朦朧とする意識を繋ぎ止めて剣を構える。巨石の影に隠れ高速で接近するナイを迎え撃つために。
 騎士の持つ剣は今や騎士の身長を超える大きさになっていた。下手な装備で命中しただけで圧殺されてしまいそうなほどに。その剣の軌道をナイは予測、一旦足を止めて半歩下がり回避。そして力の限り跳躍して騎士の懐へと飛びかかった。手に黒い短剣を握り締めて。
 衝撃波が皮膚を裂くがそこは気合と根性で耐える。そうでなければ捨て身の一撃なんてできやしない。勢いはそのままに短剣を穿つ。
「う、あああーーーーー!!!!」
 ガン! 
 一撃は鍔に阻められる。しかしまだナイは止まらない。生まれながらの光で剣に纏わりつくエネルギーを吸い取る。小さくなる剣、そしてその隙間から見える胸の大きく裂けた傷跡。そこに抉り込むように刃を突き立てた。
「私は……貴方を覚えます! 私が今に生るのに大事な、一部に……します!」
 彼の騎士の生命力を奪いナイの体の中に。ガラガラと騎士の体を作る鎧が崩れ落ちていく音を聞きながら、ナイは腹の底から叫んだ。

 そして、兜から見えていた赤い光が消え、隙間から煙を上げながらバラバラになった鎧だけがその場に残る。

「おやすみなさい」
 何も言葉を発さなくなった兜に向かって一言だけ呟いた。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『救われた者の明日の為に』

POW   :    体の鍛え方や力仕事のコツを教える

SPD   :    生活に必要な技術を教える

WIZ   :    心を豊かにしてくれる芸術や知識を教える

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●死者が去って
 夜が明けた。
 騎士も亡者ももうここにはいない。
 残ったのはあの城主に虐げられていた人々のみと、死者の残骸のみ。

 ――さて、生者たちはこの場に何を残す?
宇冠・龍
由(f01211)と共に参加します

私は周囲の村々を訪問します

「もう重い税を払わなくてすむんですもの、誰に虐げられることもありません。きっとこれからの生活は良くなりますよ」
きっと皆さん暗い気持ちで一杯だと思います、その気持ちは私も痛いほど分かりますから(夫と子を亡くした過去から)

だからこそ、これからの展望を望むだけの活力が必要なのです
口だけでは誰も報われません、
旅人だった経験から、周囲の野草や山菜を調達し料理を皆さんに振舞います

どのような土地でもそれを利用できるだけの食材や道具はあるものです
新しい発見や生きるための気付きを、お腹を膨らませることで教えてあげられたらと思います


宇冠・由
お母様(f00173)と一緒ですわ ※別行動なので、別に描写して頂いて構いません

お母様は、皆さんに料理を振舞う様子
大事なのは衣食住、でしたら私は「住」に挑戦してみましょう

お城の掃除や修理を行います
重い木材や修理道具は【七草仏ノ座】で変身して運びます。高いところの修理もこれでラクチンですの


亡者や城主と戦った城跡、今は戦い跡でボロボロですが、元々お城はたくさんの人が住むべき場所ですもの。困っている人が移り住んでも大丈夫でしょう
兵どもは夢の跡、ならばその夢を引き継ぐのもこれから生きていく者の役目ですから


ジョルジュ・ドヌール
……さすがに随分と衰弱しているようだね。まずは身体を快復させることだよ。僕の特製の薬を──100倍ぐらいかな、薄めて朝晩に飲むといいよ。刺激が強いからいきなり原液で飲んじゃいけないよ。
体力が戻ってきたら、少しずつ濃くしていけば身体を強くしてくれる。体力筋力が十全ならきっと復興も捗るはずさ。

薬も劇薬の一種だから、毒使いは薬の扱いにも長けているんだよ。救助活動の知識と併せて、領民たちが以前の生活を取り戻せるように支援しようかな。


リーヴァルディ・カーライル
…ん。今を生きる人たちの魂の安息を得る為には、
敵を倒しただけでは駄目、死体を葬るだけでも片手落ち
せめて彼ら自身の手で、家族を弔わないと…ね

【常夜の鍵】の魔法陣を2枚の紙に刻み、死体を回収していく
死体の損壊状況で分類分けを行い、見分けがつく方は後程、遺族に引き渡す
見分けがつかない死体は、城に近い適当な土地を見切り、共同墓地を造り埋葬する

…村々を回る時は領主を討ち取った事を喧伝し存在感を放つ
その際は魔法陣にある大量の保存食を配り信頼を得る
希望者を魔法陣の中に招き、遺体の確認を行う
遺族との面会の時は礼儀作法に則り、失礼が無いように…

…もうあなた達の眠りを脅かすものはいない。どうか安らかに…



 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は魔法陣に書かれた紙を手に、主がいなくなり解放されて動かなくなった亡者を回収していった。紙はリーヴァルディの血で作られた常夜の鍵となり、かつて亡者だった死体を別の空間へと吸い込んでいく。
 黙々と続け死体を全て回収したのを確認するとリーヴァルディは城を後にした。

 死体がなくなってから、城内に残った宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は城の修復作業に取り掛かった。
 今の彼女は母親である宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)とは別行動だ。
(お母様は、皆さんに料理を振舞う様子です。大事なのは衣食住、でしたら私は「住」に挑戦してみましょう)
 心の中で意気込みながらまずは城内の掃き掃除から始める。長い間掃除されていない城内はひどく埃が溜まっていたし、城内を周りながら壁のヒビ、割れた硝子も確認できた。次は外からの見栄えもよくしていく。
 七草仏ノ座で大きな炎の鬼を生み出す。戦うためではなく自分の体を力仕事に相応しい体に切り替えるためだ。
 外壁の修復を済ましてから汚れを丹念に落としていく。城は当然高いが鬼の義体なら屋根まで手が届く。
「今は戦い跡でボロボロですが、元々お城はたくさんの人が住むべき場所ですもの」
 城主がいなくてもこれだけ広い場所なら家を失くして困っている人が移り住むことができる。

 ――きっとここにいたオブリビオンの仕業で多くを失った人がいる。

 そう思って由は城の修復に手を付けた。補修のために持ち出した重い木材を手にし、戦闘の傷痕が残っている部分を参照にしながら取り換えていく。
 かつて激しい戦があったはずの跡地を、その時は何事も無かったかのように草の生い茂る地を見て「兵どもは夢の跡」などと詠った者がいる。
 この城もかつてあった戦いがまるで夢幻と化すように修復されていく。このような戦いがずっと夢となるように、そう祈るように。
「ならばその夢を引き継ぐのもこれから生きていく者の役目です」
 見違える様になった城を見て炎の体が満足そうな笑みを浮かべた。

●解放された村にて
 村の民も哨戒していた亡者が動かなくなったのを見て城主に何かが起きたことを察知していたようだ。所々に壊された跡のある家から村人は顔を出し、固唾を飲んで見守っていた。
 村人たちの予想は訪れた猟兵たちの姿を見て確信に変わる。
「城主を……討ち取った。……あなたたちは、自由、よ」
 リーヴァルディが声を上げる。高らかとまではいかないが村人たちには伝わったようだ。
「もう重い税を払わなくてすむんですもの、誰に虐げられることもありません。きっとこれからの生活は良くなりますよ」
 フォローするように龍も村人に話しかける。
 それを聞いた村人たちは各々安堵の表情を浮かべた。しかし、その様子を見て感じることもある。解放された喜びが薄い。城主の圧政はひどいものであり、ならば解放されたと聞けばその反応も大きなものであるはずだ。
 しかし村人たちの様子は大人しいものだ。傍にいる人と固い笑みでたどたどしく話し合っている。朗らかに談笑することも久しくなってしまったのだろうと容易に想像できた。

(皆さんは暗い気持ちで疲れてるようですね……)
 龍にはその気持ちがわかる。彼女はかつて夫と子供をオブリビオンの手により失くした。忘れるわけがない。あの時の虚脱感を。怒りや憎悪が出る前に何もできなくなるほどの強い疲労に襲われた日のことを。
 言葉だけの励ましでは人々の元気は戻ってこない。だから――
「皆さんきっとお腹も空いてることでしょう。ご飯にしませんか?」
 それに合わせてリーヴァルディが魔法陣の書かれた紙から保存食を引き出す。
 ご飯と聞いて何人かの村人がお腹を鳴らした。話は決まったようだ。

「このスープに使っている野菜はあの森から採った山菜ですの。炒め物に使っているのは野草ですわ。ソースも木の実を磨り潰したもので……」
 龍はかつて旅人だった時の経験を生かし野草と山菜を使った料理の作り方を教えていた。生えていた場所や下処理の仕方、間違いやすい毒草も教えることも忘れずに。
 主に女性たちが集まって話を真剣に聞いている。その周りで子供たちは先に料理をいただいている。どの子もお腹いっぱい食べられて幸せそうな顔をしている。
「重税のせいで食料がかなり取られてしまったでしょうが、保存食と野草を使えばひもじい思いをしなくて済みますわ」
 まずは食べること。お腹が空いては何をしようにも体力が足りなくなる上に活力も湧いてこないこと。
 どのような土地でもそれを利用できるだけの食材や道具があること。
 生きるための生活の知恵は長くこの土地の人々に残り続けるだろう。

「……さすがに随分と衰弱しているようだね」
 ジョルジュ・ドヌール(咎人が来たりて咎を討つ・f05225)は食事を食べに行けないほど弱っている人々の家に訪れていた。
 一思いに殺さずにわざと苦しみ続けてもらうため、足や腕だけを折ったり、死なない程度に皮膚を焼かれて寝込んでいる村人が何人もいる。中には傷が悪化してひどく膿んだり、熱病を拗らせている者もいる。
 怪我をしていなくても満足にご飯を食べられない状態が長く続き伏せっている者もいる。
 だが今この時死んでいないのは幸運なことだった。
 ジョルジュには毒薬――これを応用した薬学の知識に応急手当の知識もある。まずは簡単な安静措置、症状に応じて効果のある薬についての説明から入る。
「これを飲ませてください」
 看病している村人に向かって薬瓶を見せる。中身はジョルジュの持っているある薬を液体にしたものだ。その薬は一口で言うと滋養強壮剤。漢方エキス、ヘビエキス、ビタミンミネラルを配合したものであり、本来は戦闘用に体を強化するためのものだ。しかし一般人向けに薄めて使えば自然治癒力を高める万能の栄養剤になる。
「これを……100倍くらいに水で薄めて飲ませてください。いきなり原液で使うと刺激が強すぎるから気を付けて」
「は、はい」
「体力が戻ってきたら、少しずつ濃くしてください。そうすれば身体が強化されるので」
 ジョルジュはちらと比較的健康な村人を見た。悪魔でも比較的健康なのであり、脂肪も筋肉も少ない。
 村の復興作業まで全部自分たちの手でやるわけにはいかないが、それにしても彼らの身体の調子は心許ない。
「それと……病人じゃなくてもこれを飲んでください。もちろん、最初は薄めて少しずつ。復興も捗るはずですよ」
 そしてジョルジュは患者を使った実演に入る。
 医者のいない村だからこそこの知識はとても役に立つだろう。

 一方、リーヴァルディは常世の門の先にある城へ村人を案内していた。
 彼らは城主の仕業により家族を殺され亡者に変えられた者の遺族だ。

 ――あなたたちの安息のためにも……亡くなった人たちのためにも、せめて……故人をよく知る人の手で弔ってほしい……。

 このリーヴァルディの申し出に承諾し遺体の引き取りに向かっている最中だった。
 彼らが案内された先には布にくるまれて丁寧に安置されている死体の数々。だがここにあるのはまだ判別のつく死体、遺品が残っている死体でありもう一つの魔法陣にはそうではない――無縁仏となってしまった者たちが安置されている。
「……確認を。気はしっかりもって……」
 口数は多くないこそ、リーヴァルディの口調は死体と遺族両方を気遣ったものだ。
 恐る恐る死体の顔、遺品を鑑別する村人の姿をじっと見ている。
 その内ぽつりぽつりと見つけた、この人だ、などの声が上がる。中には死体に縋り付いて啜り泣いている者も少なくない。
 それを見てリーヴァルディは落ち着くまで傍に寄り添っていた。

●死者の解放
 支配されていた村々を周り猟兵たちは遺体の引き渡しと復興の手伝いを進めた。
 そして今全ての村を周り終わってから城に戻り、開けた日の当たる土地を見つけ共同墓地に使うために穴を掘っている。

「……これで全部、ですかね」
 成り行きで墓穴作りまで手伝うことになったジョルジュは、シャベルを置いて一息を吐く。
「……ん、終わり」
 リーヴァルディは確認すると常世の門から丁重に布に包んだ遺体を一人一人運び出す。使う紙は二枚。鑑別できる状態であっても、鑑別して引き取ってくれる人がもうこの世にいない遺体もあったからだ。
 次に運び出した遺体に土をかけていく。最後に墓碑代わりに木の枝を十字架に組んだ物を差し込む。これがこの土地での埋葬法とのことだ。
「由、お疲れ様です。力仕事の後で大変だったでしょうに」
「お気になさらないで。わたくしは平気ですし……何より、わたくしも彼らを弔いたいですから」
 全ての無縁仏を埋葬してから各々が黙祷を捧げる。

「……もうあなた達の眠りを脅かすものはいない。どうか安らかに……」
 そっとリーヴァルディが呟く。


 もうこの場に囚われている死者はいない。
 代わりに訪れるのは生きとし生ける者たちが謳歌する時間。


〈了〉

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月20日


挿絵イラスト