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命の重さは金で贖いを

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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「ま、待ってくれ、次こそ、次こそ勝つ! 負け分取り返して見せる!」
「旦那、そりゃいけませんぜ。借り入れはもう相当な額ですぜ。
 利子もかなりのもんでさ。ひのふのみの……こんなとこですかねぇ」
 必死に頼み込む3人の男は渡世人、あるいはばくち打ち。
 いわゆる賭け事でその日暮らしをするゴロツキだ。
 もう一人は口ぶりから金貸しといったところか。
 弾いたソロバンの額を見た男達は青ざめ、そして怒りに赤くなる。
「ふざけんな! こんな額法外だろ?!」
「くっ、てめえらがグルんなってイカサマしてんだろ!? あんな負け方、ありえねえ!」
 その以前に、『勝たされ方』からしておかしいのだが、と溜息をつく。
 そこは都合良く無視するらしい。
「やれやれ……」
 壁にもたれかかってその様子を見ていた男が今にも暴れんとする無頼の徒へ近づく。
 ごく自然に刀の柄に手を添え。
「ちっ、やろうってのか、ああっ!?」
「いいや、終わったよ」
 ちゃきりと、音を立てて鞘を納める。
「え?」
 その刀は、いつ抜いたのか。
 問おうとする前に、すとんと。あっけなく男の首が落ちる。
「ひ、ひぃっ!?」
「なぁ、旦那。見ての通りウチの先生は気が短い。あとは、分かってくれますかい?」
「わわわ、わかった、わかったから殺さないでくれ……!」
「ええ、ええ、あっしのほうからよくよく言っておきますぜ。まま、悪いようにゃしませんて」
 怯える渡世人達に、優しく言い含めれば、あとは簡単。
 暴力に生きるゴロツキでも、命のやり取りまでは守備範囲外らしい。
「おい。俺を木端相手に呼ぶな。俺の刀は木偶の首を斬る為にあるんじゃねえ」
「へいへい……でもまっ、ウチのもんで手に負えなきゃ遠慮なく呼ばせて貰いますぜ。
 なんだかんだ、楽しんでるでござんしょ」
「まぁな。それに――」
 先生と呼ばれた名も無き侍は一瞬立ち止まり、振り返ってにやりと獰猛に笑む。
「あぁ、予感がするんだ。ようやく人が斬れる予感が、な」


「私はソフィーヤと申します。皆様どうぞよろしくお願いします」
 集まった猟兵達を前に、ソフィーヤ・ユリエヴァ(人間の聖者・f10512)が丁寧にぺこりとお辞儀する。
「今回予知したのは、サムライエンパイアの賭場関連です」
 非合法の賭場を取り仕切るオブリビオンがいる。
 イカサマを吹っかけて借金を背負わせ、あとは借金のカタに……という常套手段だ。
「賭け事で身を崩すのは自己責任だと思います……とはいえ、オブリビオンの仕業となれば別。それに、犠牲になるのが賭け事した本人だけとは限りません」
 オブリビオンが起こす事件は、必ず不幸を招く。阻止せねばならない。
「お金のほうはご心配なく。経費で落ちますので」
 最終的には踏み倒して回収するわけだが、そこは補佐役たるソフィーヤの仕事だ。

「では、纏めましょう」
 ソフィーヤは拳を見せ、一本一本指を立てて数えていく。
「1つ、賭場で目立ち、いわゆる『事務所内』に呼びつけられること」
 いきなり暴れたりすればすぐさまつまみ出されるだけだ。
 派手に金を使って借金を負うか、逆に派手に儲けるか、イカサマの腕を売り込むか。
 探られると痛い懐を探っても呼び出される事だろう。
 基本はおなじみ丁半賭博や、花札など。
 胴元(ディーラー)として売り込むなら、喜びそうなゲームを持ち込んでも良い。
 『向こうから招き入れる』形さえ取れれば、手段は問わない。
「2つ、出て来たオブリビオンの手下達、落ち武者を倒してください」
 一山いくらの弱小オブリビオンだ。
 猟兵にとっては鎧袖一触の敵だろう。
「3つ、ボス級オブリビオンの用心棒を撃破が、最終目標になります」
 賭場経営している『雇い主』であるオブリビオンは、予知で見えなかったのではなく、『絶対に出てこない』と予知したようだ。
 用心棒の侍は快楽殺人者でもあるが、それ以上に強者との戦いを求める戦闘狂である。
 搦め手対策や、一対多にも慣れた紛れもない『達人』だ。
 しかし尋常の立ち合いには好んで乗ってくる。
 真正面から対応するのが効果的かもしれない。
「賭場のほうは、用心棒さえ倒してしまえばあとは『お上』の手が入るでしょう。
 元凶を断つことのできない対症療法ですが……どうか、芽が小さい内にお願い致します」


アマガエル
 4つ目のシナリオとなります。アマガエルと申します。
 1章は賭場で賭け事に興じる『冒険』。
 2章は多数の落ち武者との『集団戦』。
 3章は強者との戦いを好む侍、用心棒の『ボス戦』となります。
 それではお待ちしております。
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第1章 冒険 『重みはいかほど?』

POW   :    金をド派手に使って借金を背負う。

SPD   :    賭場では新しい胴元を募集している。自分のイカサマ技量を見せつけよう。

WIZ   :    ここの賭博ではイカサマをしているのでは?証拠を突き付け取り入ろう。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

星宮・亜希
自腹(とソフィーヤさんのポケットマネー)で参加します!イカサマを探るだけなら楽なんですけどそれは他の人がしてくれるでしょう。
というわけでよっしゃー!とか言って威勢よく参加、負ける事で彼らに『カモ』と思われるのが目的です。正直嫌ですが多少の出費はまあ経費になるでしょう。
とは言えただ負けるのも癪です。ここは『多数派の反対側』にギリギリ合計額を上回る程度の額をかけ他の人たちを儲けさせてあげます。更にオーバーリアクション、これで私が張った場所が更に避けられて他の人が儲かるという線です。可能なら同じ場所へかけ不自然さを出します。
ただじゃ負けませんからね!
※賭けには手を出さない性格ゆえにわざと負けてる節有



「よっしゃー!」
 お金を遊戯用のコマ札、チップに変えた星宮・亜希(双星の守護天使・f00558)が、威勢よく声をあげる。
 賭け金は自腹を切って用意しつつ、半分はソフィーヤに出させたものだ。
 回収意欲が増した気がする。
「(うーん、勝たされてますね、これは)」
 亜希は最初から負けるつもりだったが、ぽんぽんと勝っている。
 1/2の確率勝負だが、ビギナーズラックで片付けるには偏り過ぎている。
 こういう美味しさを味わわせてから絞り取るつもりなのだろう。
 亜希の風体は、見目麗しく明るい笑顔を浮かべる若い娘。
 その時点でいい『カモ』と思われたわけだ。
 正直癪に感じるが、オーバーリアクションで喜んでみせる。

「いやぁ、ツキが回ってますなぁ。どうでしょ、ツイてるうちにここは一つ大賭けしてみるのは?」
 ツボ振り役の男のあからさまな誘いに、亜希は好都合だと笑顔を笑みを深める。
「いいですね、じゃあガツーンと賭けてみましょうかー!」
 調子に乗った振りで、様子を見る。
 亜希が勝っている間、負けている――そしてそれなのに冷静な客達。
 これらはサクラだろう。
「(ただ負けるのも癪ですし、他の人達も儲けさせてあげましょうか)」
 それらを除いて一般客に勝ちを譲る。
 胴元とサクラ以外が儲ければ、つまりは賭場の負けだ。
「ニロクの丁!」
「あぁっ、負けちゃいましたー! これはツキに見放されちゃいましたかね?」
「いやいや、まだまだこれからでさ。ささ、今の分も次で取り返す為にももう一声」
「ですよね! じゃあ同じく半で!」
 連続で大口を賭け、追加でコマ札を借りながらも同じ物に賭けていく。
 最初は一般客がその様子を見て、亜希とは反対に賭けては喜んでいたものの――。
「まだまだ、半!」
 2度、3度ではない。亜希が大きく賭けたのばかり負ける、不自然な偏り。
「(ただじゃ負けませんからね!)」
 自分が負けても、信用を落とす事が出来る。
「ちょいとお嬢さん。派手に借り入れてますが、ちょいと裏でお話いいですかい?」
 一般客も不信を抱き始めた所で、亜希は強面の男に呼び出された。
 お上の手入れの際にも、優位な証言が得られるかもしれない。
「(これで……勝ちですね!)」
 亜希は満足げに笑みを深めた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガルディエ・ワールレイド
【POW】大金を派手に賭けて負けてやるか(わりと普通に負ける)

素行不良のボンボンっていう感じで行くぜ
「よう。遊んでいって良いか?金なら親父からたんまり貰ってるぜ」
実際の親父(ヴァンパイア)はただの敵だがな。まぁ今は関係無ぇ。

とりあえず金を注ぎ込んでいく
……なんか、イカサマ関係無しに負けが込んでねぇか?
いや、気のせいだ。今は流れが悪ぃだけだ。
遊ぶものを変えるぜ!
(幾つかの賭け事を巡る。スッカラカンになっても、後で金は払うと強弁して賭博を続けようとする)

……さ、作戦通り借金を背負えたな!
親父の身元について聞かれるだろうから、周囲に耳が有ると話しにくいとでも言って、事務所へ通されるまでは言い逃れるぜ



「よう。遊んでいって良いか? 金なら親父からたんまり貰ってるぜ」
 ガルディエ・ワールレイド(黒竜の騎士・f11085)が膨らんだ財布を雑に放る。
 受付の男はその膨らみと重さに、揉み手でニコニコ擦り寄ってくる。
「いやぁ、景気良いですな坊ちゃん。最初の同額まで貸付られますがいかがしやす?」
「んじゃ、それで頼むぜ」
 扱いの雑さは、金そのもの扱いの雑さ。
 自分で手に入れていない、与えられるものなら、そのありがたみは知る由もない。
「(実際の親父はただの敵だがな。まぁ今は関係無ぇ)」
 ダンピールであるガルディエはそんな恵まれた環境に生まれてはいない。
 それを敢えて演じる。
 賭け金を丸ごとコマ札に変え、ひとまず丁半賭博に向かう。
 勝つか負けるか、順当に考えれば五分五分の勝負だ。
「んじゃまっ、とりあえず適当に」
 ガルディエは賭け金の半分……即ち元々の所持金全額を一気に賭ける。
 様子見なしの大胆な賭けに、一般客も驚き賭けの手が止まるも、粋の良い賭けに乗ってくる。
 結果は、負け。
「流れが悪ぃな。よし、遊ぶものを変えるぜ!」
 早々に見切りを付けて、別の遊戯を探す。
 サイコロ1つの出目を当てるもの。
 複数人で順番にサイコロを振って出目を比べるもの。
 色々と試してはみたものの――。
「札だ、札もっと寄越せ。金は後で親父が払う!」
「へぇ、まだお貸しできますが……」
 ガルディエはコマ札を追加で借り入れつつ、ガルディエは勝てるものを探し巡るが――。
「……なんか、イカサマ関係なしに負けが込んでねぇか?」
 立て続けに負けたガルディエは我に返る。
 これまでのゲームに、イカサマらしいものは見られなかった。単純に、運が悪かった。
「さ、作戦通り借金を背負えたな!」
 作戦通りなので悔しくない。
 コマ札が尽き、そろそろかと思った所で声を掛けられる。
「坊ちゃん、帰る前に裏でお話しやしょう。なぁに、ご返済の計画の話でさ」
 ガルディエもまた、首尾よく目を付けられたようだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
【誘惑】で胴元含む周囲を然り気無い色っぽい仕種で魅了して油断させ、【見切り】で賭場の胴元のイカサマを見抜く…。
更に、逆に【早業】を使ってイカサマを仕返して、イカサマを仕掛けて絶対勝てると確信してた胴元を逆に狼狽えさせる…。
そこで一旦中座して、場の様子を伺ってる上役にこっそりと話し掛け、胴元が仕掛けてるイカサマを見破ってる事、自分なら(見ての通り)もっと上手くやれる事を告げて売り込むよ…。後はポーカーをこの世界仕様にして売り込んだり…。この世界に元々無いゲームの方が見破られ難いし、カードの方がダイスより扱い楽だしね…。

「このくらいならお手の物…。…まぁ、賭け事に縁があった訳じゃないけど…」



 雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が、天然のポーカーフェイスで静かに座る。
 序盤から手堅く稼ぎ、コマ札を増やしていきながら、さり気無く胸元や崩した脚を晒して魅了していく。
 璃奈が観察した限り、この客の中の何人かは賭場側の仕込みだろう。
 ここ一番を見極め、稼いだコマ札で大賭けに出る。
「半……」
「嬢ちゃん大きく出たねぇ。さぁさ、ツキの向いてる嬢ちゃんの粋な賭けに、コマが揃うか否か!」
 当たりを付けていた者が、璃奈が張ったほうの逆へと乗ってくる。
 壺の開帳の瞬間、緊張した振りをして胸元をアピール。
 悲しいかな男の性。それに釣られた瞬間――早業で衝撃波を飛ばしサイコロを転がす。
「ニロクのちょ……なっ!?」
「ニロク……? それ、イチロクの半……の間違いだよね……」
 出目は璃奈の宣言通り。
 絶対勝利を確信し、鼻の下を伸ばして油断していたツボ振りの驚く顔は、イカサマを仕掛けていた事を如実に語る。
 配当を受け取りつつ、しげしげと観察していた上役の元へ向かう。
「あの人『達』、バレバレ……」
「おや、何のことですかね? 娘さん、イチャモンならよしてくださいよ」
 サクラの存在も指摘されつつも惚ける上役に、構わず続ける。
「わたしなら、もっと上手くやれる……それは見ての通り……」
 上役が璃奈のほうを見ていたのは、誘惑に釣られたわけではない。
 そのイカサマ返しの技も見ていた。その視線を感じたからこそ璃奈は声を掛けた。
「サイコロよりこういうの……カードのほうがやりやすいよ……」
 更に璃奈はトランプを示し、くるくると手繰る。
「このくらいならお手の物……。……まぁ、賭け事に縁があった訳じゃないけど……」
 どちらかといえば――。
「あぁ、遊戯の提案ですか。胴元応募ですね。なら裏で詳しく聞きましょうか」
 招かれたところで、璃奈は思考を切る。
 目的は果たせた。今はそれで十分だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

泉亭・霧千代
いつの時代も賭場ってのは悲喜交々…それだけに「業」のようなものも出ちまうってなもんですかねぇ

●行動(SPD)
あたしぁ専門はこいつ(紙切り)ですが…なに手先の勝負なら手妻と同じ…細工は流々、仕上げを御覧じろ…ってなもんですかね
ひとまず女博徒を装い胴元として売り込む所から…なぁに、その手の【パフォーマンス】ならお手の物…【早業】でもって手札のすり替えやガン付け――威圧じゃなくて札に自分にだけに分かるよう傷や印を付けて目印にする方でさ――でもって場をコントロールするのはまあ、あたしなら行けるでしょう。
同業者…猟兵が同じ場に居合わせたら多少のアシストも一興…無論、調子に乗ってボロの出ない範囲ですがね


ルビィ・リオネッタ
花札って綺麗な絵のカードなのね
初心者でも学習力でルールはばっちり!
目指せドーモト

・作戦
アタシの視力を使って他の人の札も含めてよく見るわ
この賭場で日頃からイカサマが行われてたなら、特定の札に傷がついてるかも

当たりをつけたら残像をその場に残し『不可視の女王』で透明化
素早さ(早業・空中戦・逃げ足・先制攻撃)を生かして、見つからないように(目立たない・暗殺)、参加者の周りを一巡り♪
札を盗み見て(暗視・視力・見切り)元の席に戻って透明化を解くわ

他の参加者に合図を送ってるっぽい人がいたら胡椒で目潰し♪

煽って効率良く儲けるわ

「くふふ♪運が良かったみたい。小娘相手に負けっ放しは無いわよね、もう一回やりましょ」



「いつの時代も賭場ってのは悲喜交々……それだけに「業」のようなものも出ちまうってなもんですかねぇ」
 胴元として売り込んだ女博徒――鋏のヤドリガミ、泉亭・霧千代(芸と鋏は使いよう・f11834)が賭場の様子を眺める。
 勝って喜ぶもの、負けて悔しがるもの、次負ければ後がないと焦るもの……様々だ。
 それもオブリビオンに仕組まれたイカサマ賭博となれば業が深い。

 霧千代が行うのは花札。一般客とサクラを交えた多人数用の『八八』。
 サクラが誰か教えて貰えなかったのは、テストの意味も兼ねているのだろう。
「あたしぁ専門はこいつですがね……一つよろしく頼みます」
 持ち前の鋏の業を見せて切り絵を一つパフォーマンスで披露しつつ、一礼。
 珍しい女博徒に冷やかし混じりで集まった客から、素直な拍手が送られる。
「切り絵っていうの? 素敵! 花札も綺麗な絵のカードなのね」
 ルビィ・リオネッタ(小さな暗殺蝶・f01944)がその巧みな切り絵と洒落た綺麗な絵柄を見て目を輝かせる。
 花札は初心者だが、その持ち前の学習力でルールを学んでいた。
 札が一巡するまでは様子見。
 使い古された花札。ルビィが学び取るのはお手の物。
 霧千代もまた、『ガン付け』で新しく付けた傷で、更に違いを分かりやすくしてみせる。
「(細工は流々、仕上げを御覧じろ……ってなもんですかね)」
 ルビィが笑みを深め、目ぼしい札の特徴を覚えとったのを見た霧千代は仕掛けるならここからだと判断する。
 ルビィが残像を残して『不可視の女王』で消える。
 注視されれば気付かれてしまう危険はあったが、霧千代が注意を逸らす。
 全員の手札を確認し、不自然な役を作らないよう気を付けつつ様子を観察し――
「ぶぇっくし!? なっ、なんだ? いきなり粉が……!」
 コンビ打ちしているらしい他の参加者に合図を送っていた男に、ルビィは胡椒をお見舞いする。
 そしてその隙に霧千代は次にルビィの引く札を仕込む。
「綺麗な札がいっぱい集まったわ♪ これって役になるのかしら?」
 何事もなかった顔で席に戻ったルビィの持つ札は松、桜、薄、桐、更に柳。
 最も高い出来役、五光。
「くふふ♪ 運が良かったみたい。小娘相手に負けっ放しは無いわよね、もう一回やりましょ」
 派手に勝ったルビィが、楽しげに笑みを深める。
 そこへ険の強い男がやってくる。
「お嬢さん、ちょいとやり過ぎましたな。ちょいと裏でお話しましょうや」
 イカサマの手口はバレていないだろう。
 バレたら問答無用で追い出されているはずだ。
「あら、何かしら? くふふ♪」
 ルビィの手練れのシーフとしての業。
 バレるわけもないという自信と、首尾よく呼びつけられたことに笑みを深める。

「霧の姐さん、邪魔やした」
「構いませんて。あんたはお役目果たせばいいんです」
 男は霧千代に挨拶し、ルビィを連れて行く。
 霧千代の早業もまた、見抜けなかった。ボロが出なかったことにホッとしつつ、後は信頼を買うべく。
 ルビィの協力もあって、サクラはもう全員特定した。
「(あとは場のコントロール……まぁ、あたしならいけるでしょう)」
 サクラに儲けさせ還元し、一般客から搾り取るテスト。
 首尾よくこなした霧千代は、信頼された胴元として呼び出された。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『落武者』

POW   :    無情なる無念
自身に【すでに倒された他の落武者達の怨念】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
SPD   :    欠落の決意
【武器や肉弾戦】による素早い一撃を放つ。また、【首や四肢が欠落する】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    妄執の猛撃
【持っている武器】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 賭場の奥に集められた猟兵。
 借金やイカサマを追及されそうになったところ、一人の侍が惹きつけられるように姿を現す。
「そろそろ来る頃だと思ってたぜ。なぁ、幕府の狗。いや、天下御免の猟兵共」
 侍が猟兵を見定めるように、獰猛な笑みを深める。
「天下に憚る悪を成敗するお前らが、『人に達している』者か」
 その声に応じて、落ち武者達……その霊が現れる。
「お前らが俺が斬るに相応しい『人』か、まずはその腕前。見せて貰おうか」
 高みの見物を決め込んだ侍の代わりに、落ち武者達が猟兵達へと斬りかかってきた。
雛菊・璃奈
「猟兵の事知ってるんだ…」
「あまり手の内晒したくないけど、仕方ない…」

妄執や欠落は接近戦型だし、距離を取って戦闘。
狐九屠雛を周囲に展開。
下手に攻撃して欠損すると強化しかねない欠落や高速移動可能な無情に対し、複数の霊火を操って敵の逃げ場を無くす様に追い込み、凍てつかせて粉砕。

敵が弓とか持ってる様なら狐九屠雛で迎撃か黒桜からの【なぎ払い】【衝撃波】で敵ごと呪力で吹き飛ばし、動けなくしたところを凍てつかせる等、技と武器の力を駆使して片づける。

「怨念や呪詛はわたしやこの子(妖刀・魔剣)達の力の源…。貴方達の呪いはわたしが引き受ける…だから、もう眠ると良い…」



●呪い、鎮める者
「あまり手の内晒したくないけど、仕方ない……」
 相手は江戸幕府お墨付きの猟兵を、敢えて待ち侘びていた用心棒。
 璃奈はその実力を計るように見定める侍を警戒する
 手出ししてくる様子はないとはいえ、見せた手札は確実に対策を取ってくるだろう。
 璃奈は囲まれぬよう距離を取る、一対多の定石。
 狭い室内だが、璃奈が振るう薙刀、呪槍・黒桜を振るうのに支障はない。
 二十の凍てる霊火、狐九屠雛を自分の周囲へ展開する。
 二人の落ち武者が踏み込む。

「下手に攻撃すれば強化させるだけ……なら……」
 それを待ち構えていた璃奈は巧みに霊火を操り迎撃する。
 高速機動にて回避されるのも織り込み済み、その逃げ道に霊火を置くように直撃させる。
 四肢を凍てつかせ、一体を粉砕。もう一体の片脚を凍てつかせて封じる。
 しかし――。氷から黒い霧が、溢れ出てくる。
 それを吸い取った落ち武者は凍った脚を自ら斬り落とし、片足で踏み込んできた。
 狙いは璃奈の首。
「……っ!」
 霊火で迎撃するも、その勢いは止まらない。
 後ろに飛びのき、呪槍・黒桜を薙ぎ払い胴を断ち切るも、斬撃の衝撃波が璃奈の頬を掠める。
 紅い筋から血が零れ頬を伝う。
「そいつらは俺が昔斬り殺した怨霊共。所詮木端だが……倒せば倒すほど同胞の怨念も喰らい、死に物狂いで首を取りに行くぞ女狐」
 璃奈は着地するも、背後に壁が当たる。
 退路を断たれた璃奈へ、三方から落ち武者が襲い掛かる。
「あの黒い霧が、怨霊の無念、怨念……それなら……」
 落ち武者の足が止まる。自衛の為残していた霊火、狐九屠雛。
 璃奈が渾身の力で三人の落ち武者を纏めて薙ぎ払い、その名の由来、黒い桜の花びらが襲う。
 胴を断たれた落ち武者から、赤い血の代わりに黒い霧が溢れ出る。
 他の落ち武者の元へ吸い寄せられ、強化され――
「ほう……?」
 ――ることなく。璃奈の黒桜が、その怨念を吸い取っていく。
「怨念や呪詛はわたしやこの子達の力の源……。貴方達の呪いはわたしが引き受ける……だから、もう眠ると良い……」
 璃奈は祈る様に、薙刀の刀身を撫でて小さく呟く。
 怨嗟の声をあげるようにカタカタと震える呪槍が、静かに手に収まる。
「怨霊共を、鎮めるだけならず力に変えるか。これは厄介……否、天敵か?」
 侍はくつくつと笑い、璃奈の薙刀が怨念を喰らい魂を鎮めていく様を眺めていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勅使河原・源蔵
やれ、賭場での揉め事は何処でも同じじゃのう。
それだけならば放ってもおく所じゃが……おぶりびおんが一枚噛んでおるとなれば話は別じゃ。
――久々に、斬り甲斐のある相手よのう(ニヤリ)

先に上手くやった者達のお陰で入り込むは容易い事。
此処からは儂の出番じゃな。
『降魔化身法』にて己を強化し、『残像』『2回攻撃』も駆使して落ち武者共を片端から斬り倒して行くぞい。
身を削り命を奪い合う――カカッ、昂るのう。
戦場とはこうでなくては。
奴等も速さには長ける様じゃが、カッカッ、遅いのう遅いのう。
その程度ならば容易く『見切り』、返す刀で首が飛ぶぞい。
さあさあ、悪鬼羅刹が此処にも居るぞ。
動ける者から掛かって参れ。



●悪鬼宿せし羅刹
「やれ、賭場での揉め事は何処でも同じじゃのう。それだけならば放ってもおく所じゃが……」
 猟兵が首尾よくこなして起こした一騒動に乗じ、老いた羅刹が現れる。
 外への眼が内へ向いた今、入り込むのは容易い。
「『おぶりびおん』が一枚噛んでおるとなれば話は別じゃ。此処からは儂の出番じゃな」
 老兵、勅使河原・源蔵(枯れ枝一葉・f00611)は老いてなお衰えぬ鋭い眼光を放つ。
「――久々に、斬り甲斐のある相手よのう」
 源蔵がにやりと微笑み向けた視線は、高みの見物を決め込んでいる用心棒の侍。
 殺気を乗せた視線を送ってやれば、笑みを返す。
 年老いた剣豪たる源蔵、骸の海より帰った侍。
 互いに戦場に生きる武士――似た者同士らしい。
 源蔵が抜刀と共にその身に宿したのは妖怪、悪鬼、幽鬼の類い。
 羅刹の古強者が身に纏うは、悪鬼の鎧。
「ほう、化生忍者の業か。雑兵相手に大層な業を使う」
 強大なる力の対価にその命を喰らわせる、外法の一つ。
 対象たる毒が自らの身を苛むが、源蔵はより一層笑みを強める。
「如何にも。身を削り命を奪い合う――カカッ、昂るのう。戦場とはこうでなくては」
「ああ、違いねえ」
 源蔵は落ち武者の群れへ、踏み込む。一足の元に彼我の間合いを詰め、即座に二閃。
 牡丹がその花弁を落とすが如く、二つの首を落とす。
 しかし落ち武者は首を刎ねようと動く。
 否、ただの重しでしかない肉体が削ぎ落された分、速度を上げた源蔵へと迫る。
 源蔵の身体を捉えたかに思った瞬間、霧のように掻き消える……残像だ。
「カッカッ、遅いのう遅いのう。首を飛ばしてなお動くならば――四肢ならどうかの?」
 見切った高速で回り込んだ源蔵は返す刀で二連撃。
 残った片腕と両脚を斬り落とされた落ち武者は黒い霧となる。
 落ち武者が怨霊であれば、悪鬼を宿した羅刹、源蔵はさながら文字通り――。
「さあさあ、悪鬼羅刹が此処にも居るぞ。動ける者から掛かって参れ」
 羅刹の太刀が、有象無象を首を刈り取った。

成功 🔵​🔵​🔴​

泉亭・霧千代
強くなければ『人』にあらず…いやはやいけずな基準ですねぇ、あの侍のセンセ。

ともあれ集団戦ならはてさて…紙の雪でも一つ、吹雪かせてやりましょうか。
…そちらでご覧のセンセも、あたしの十八番(【アート】)、とくと見ておくんなさいな。

取り出したるこの鋏、1枚の紙が2枚、2枚の紙が4枚、4枚の紙が8枚、8枚の紙が16枚、16枚が30と2枚、32枚が64枚、64枚が一束と28枚…フウッと散らせば…雪降りの姿…

【早業】で紙を切刻み周囲を吹荒れじわじわと【傷口を抉る】ような【破魔】の紙吹雪――直接体をちょん切れば奴さん早くなっちまうらしいですし――有象無象が群がった所を一掃してあげましょうか…いやはやお粗末



「強くなければ『人』にあらず……いやはやいけずな基準ですねぇ、侍のセンセ」
「それが武士の業よ。して、お前はどうだ? よもやただの芸者ではあるまい」
 問われた霧千代は細めた目で笑みを崩さず。
「ええ、ええ。そちらでご覧のセンセも、あたしの十八番、とくと見ておくんなさいな」
 どこからともなく鋏と、一見何の変哲もない一枚の紙を取り出す。
「芸も鋏も切れ味が大事……なんて申しましてね。しかし切れ過ぎて手足や首までバッサリ斬り落としてしまうのも困りもの」
 霧千代の耳通りの良い声色とペース、噺家の如く語り出す。

「そこで取り出したるこの鋏。一枚の紙が二枚、二枚の紙が四枚、、四枚の紙が八枚……」
 どこからともなく取り出した霧千代の鋏が、何の変哲もない紙を断ち切る。
「八枚の紙が十六枚、十六枚が三十と二枚、三十二枚が六十四枚――」
 倍、倍、そのまた倍と、小さく小さく切り刻まれながら紙片が数を増やしていく。
 怨霊すら見惚れるような鋏捌きは、正に芸術的な早業。
「――六十四枚が一束と二十八枚……フウッと散らせば……雪降りの姿……」
 幾重に刻まれた紙を掌に乗せ、霧千代がそっと息を吹きかけると花びらのように、雪のように美しく舞う。
 怨霊すら見惚れる、芸妓の一芸。
 それは美しいだけの花でも、融けて消える儚き雪ではない。

「直接体をちょん切れば奴さん早くなっちまうらしいですし――有象無象、一掃してあげましょうか」
 式紙に込められた破魔の力が、怨霊を小さく切り刻む。
 四肢や首を斬り落とすには至らない……否、至らせない。
 僅かな傷口を紙片が抉りながら、その身を深く深く斬り刻む。
 それは読んで字の如く――。
「骨身に染み入る『紙吹雪』、ご披露させて頂きました。いやはやお粗末」
 霧千代の紙吹雪が吹き荒れた後、落ち武者達は跡形もなく消えさった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ガルディエ・ワールレイド
高みの見物とは良い御身分だな
まぁ今は見とくが良いさ
見物料はこの後すぐに支払ってもらうがな

基本の攻撃は【竜神の裁き】を主軸とする。

武器での戦闘は【武器受け】での防御、
【串刺し】を活かす刺突での牽制、
あと少しで潰せそうな敵を両断(捨て身の一撃やなぎ払い)して止めをさす、という戦い方をするぜ。
これらは無駄に部位を欠落させて敵を強化させない為の対策だが、刺突が牽制にならない等、上手く行かない部分が有れば普通に攻める。敵強化は覚悟の上だ。

武装は【怪力】【2回攻撃】を活かす長剣とハルバードの二刀流が基本だが、場が狭く戦いにくいと判断すれば長剣一本での戦闘に移行するぜ

また被弾しそうな時は【オーラ防御】



「高みの見物とは良い御身分だな」
「観の一手というやつよ。手の内一つ、晒して困る小兵でもあるまい?」
 ガルディエが殺気を込め睨むも、侍はひらりと受け流す。
「まぁ今は見とくが良いさ。見物料はこの後すぐに支払ってもらうがな」
 ガルディエがその身体から赤い雷を身に纏う。
「異端の神の力……この雷は半端じゃねぇぜ――『竜神の裁き』!」
 敵集団の真っただ中に飛び込み、その力を解放する。
 迸る赤雷に耐えた落ち武者は、囲い込むように飛び付いてくる。
 しかしそれこそを待っていたガルディエは複合魔槍斧ジレイザの斧頭で薙ぎ払う。

「で、りゃぁあああっ!」
 気勢の雄叫びを挙げながら、その怪力で纏めて吹き飛ばす。
 しかし三体の落ち武者の胴を断つ間に勢いを殺されたか。
 四番目の落ち武者が、魔槍斧を半ばまで断たれた己の身体を使って押さえこむ。
 だがガルディエの武器はハルバードのみならず。
 逆の手に持つ長剣、複合魔剣レギア。
「まだ食い足りねぇってんなら、その腹に直接食らわせてやるぜ。赤雷よ!」
 腹を串刺しにし、その刀身と赤い魔力フィールドから赤雷を流し込み、赤い閃光が一面を染める。
 力尽き黒い霧へと還る落ち武者の身体から引き抜き、魔槍斧を肩に乗せて長剣の切っ先を向ける。
「魔槍斧と長剣の二刀流……とくとその身に味わわせてやるぜ」
 薙ぎ払われるガルディエの魔槍斧と赤雷が、暴風のように吹き荒れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルビィ・リオネッタ
相棒の紫音と共闘するわ
「ええ、達人がいるみたいなの。シオン、そういうの好きでしょ?」

・戦法
斬られるたびに動きが早くなってる…首が落ちても!?気色悪いわ…!(鳥肌)
シオンの服の中に避難
隠れつつも相棒の死角を埋めるようにするわ

「グロいのは平気だけど変態は嫌よ!」

『精霊の抱擁』で応戦
属性魔法の手には『草花の属性攻撃』効果を
死者は植物の栄養に還って頂戴…!

相棒が動きやすいようにサポートするわ
マヒ攻撃と毒使いの効果で相手の行動阻害を
武器落としで敵の武器を奪う

狙いは『見切り・早業・視力』でつけて『早業・先制攻撃・フェイント・暗殺・鎧無視攻撃』でどんどん当てていくわね

「大きいドラゴンや怪物の方がマシよ…!」


六道・紫音
相棒ルビィの助太刀に参上
「手練れの人斬りとやらがいると聞いたが…フン、まずは雑兵で小手調べという訳か」

・連携
相棒ルビィと連携
死角を埋めて貰い、動きをサポートしてもらう。
「変態か、ふむ…ルビィにも意外な弱点があったな?」

・移
『残像』を伴いながら『ダッシュ』で一足飛びに駆ける《縮地》にて、素早く距離を詰める。

・攻
「お前達のような不死の化け物を殺すには、相応しい作法と術理がある」
『捨て身の一撃』により全神経を攻撃に集中して『鎧無視効果』と『怪力』を発揮し着込んだ鎧すら無効化する【伍之太刀《氷牙》】を叩き込み『属性攻撃』の力で地形ごと凍らせながら跡形も無く粉砕。
反撃は『第六感』と『見切り』で躱す。



「手練れの人斬りとやらがいると聞いたが……」
「ええ、達人がいるみたいなの。シオン、そういうの好きでしょ?」
 相棒のルビィの助太刀に駆けつけた黒衣の侍、六道・紫音(剣聖・f01807)の前に落ち武者が立ち塞がる。
「フン、まずは雑兵で小手調べという訳か」
「応とも。人斬りの刀も、木偶ばかり斬れば鈍らとなろう。其れ故の問いだ。
 ――お前は『人』か?」
 紫音はそれには言葉での返さず、行動で示す。
 残像を置き去りにし一足で距離を詰める《縮地》。
 一刀の元に、落ち武者の右腕を断ち切る。
 しかし斬られたはずの腕が刀を左手へと放り渡し、斬り返す。
 その人間ならあり得ざる人外の技を見切った紫音は刀で受け止める。
 片腕の落ち武者は力で競り合わず即座に刀を引き、瞬時に高速の突き。
 一歩引いて横に避け、落ち武者の刀の刀身を滑らせながら、反撃の一刀が首を刎ねる。
 紫音の第六感が危険を知らせる。
 即座に《縮地》で距離を取ると、首を落とした落ち武者の一刀によって残した影が斬られていた。

「斬られるたびに動きが早くなってる……首が落ちても!? 気色悪いわ……!」
 その刹那の攻防を見ていたルビィが、ぷるぷると震え鳥肌を立てる。
 落ちた首がじろりとルビィに向けられる。
 びくっと怯えたように、一旦退いた紫音の服の中にすっぽりと収まり隠れる。
「ふむ……ルビィにも意外な弱点があったな?」
「グロいのは平気だけど変態は嫌よ!」
 片腕と首を失くしながらもがくがくと、操り人形のように不気味に蠢く落ち武者。
 その姿はグロいというよりも、ルビィには変態に見えた。
「こんなのなんて可愛がりたくはないけど――『精霊の抱擁』!」
 紫音の服からひょこっと顔を覗かせながら、見えざる精霊の手を伸ばす。
 紫音に切り裂かれ残った片腕の落ち武者を、精霊の手が包み込む。
 その身体から草花が生い茂り、本来あるべき骸へと還り朽ち果てる。
「死者は植物の栄養に還って頂戴……!」
 込めた属性は草花。
 落ち武者の身体の呪力を糧に、美しく咲き誇った。

「お前達のような不死の化け物を殺すには、相応しい作法と術理がある」
 紫音は神経を研ぎ澄ませる。氷の力が紫音の元へ集い、足元に霜が降る。
 一の太刀で一切を決める覚悟の、捨て身の一撃。
「……――『伍之太刀《氷牙》』」
 裂帛の気合と共に放たれた、敢えてその技巧を捨てた単純にして重い、力任せの一刀。
 それは兜割りの域を越え鎧を砕き、落ち武者と周囲を凍てつかせながら土間ごと破壊する。
 しかしそれは二の太刀を捨て身の技。
 一撃で敵を叩き伏せようと、周りには他の敵が存在する。
 残された怨念を纏い高速で迫る落ち武者の刃に、紫音は静かに眼を閉じ――。

「シオンにはアタシが手出しさせないわ!」
 ルビィが見えざる精霊の手で迫る落ち武者を締め上げ、抑え込む。
 更にもう一刀。紫音が瞳を見開く。
 埋めようのない隙を相棒に託して研ぎ澄ませた刃が落ち武者を貫き、凍て付き粉砕する。
「造作もない。これでは百や二百、用立てたところで相手にもならんな」
「それは願い下げ! 大きいドラゴンや怪物の方がマシよ……!」
 妖精と剣士の阿吽の呼吸。
 二人の連携の前に、落ち武者達は駆逐されていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『用心棒』

POW   :    剛なる居合い
【居合い 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    飛刃縮地の構え
自身に【修羅の気 】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    死者の誘い
【用心棒が殺した死者 】の霊を召喚する。これは【悲痛な叫び声】や【生前持っていた武器になりそうな物】で攻撃する能力を持つ。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠犬憑・転助です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「はっはっはっ、いやはや見事! 実に見事っ!」
 猟兵達に落ち武者が倒されたのを見て取った侍は、心底愉快そうに笑う。
「正に……正にお主達こそ、俺の求めていた『達人』共よなッ!」
 ぎらりと獲物を見定める獰猛な獣の如く、笑みを浮かべる。
「かつては人斬りの鬼とも、血に飢えた獣とも呼ばれたこの身……如何にも馬鹿げていよう?」
 全く持って心外だと、投げかける。
 真なる鬼はただ強き者。殺しを愉しみなどしない。
 真なる獣はただ生きる者。殺しを愉しみなどしない。
「俺は人だ。人故に人を斬る。『殺し合い』に愉悦を感じるのは、人なればこそ!」
 殺し殺される事が当然の乱世に生きた人斬りの侍は、高らかに吼える。
「理解できないか? ならば俺を鬼と、妖と、獣と思え。其れを斬るのもまた人よ」
 『敵』は自らを殺せる者ではなくば、意味はない。
 死を感じさせぬ戦いなど、幼子の戯れに過ぎない。
「我が求むるは『殺し合い』。――構えよ猟兵。是より先は、死線ぞ」
 侍は刀の柄に手を添える、居合の構え。
 それ以上に溢れ出る殺気が、僅かでも気を緩めれば首が刎ねると物語っていた。
雛菊・璃奈
「殺し合いに愉しさなんて感じない…愉しさの為に他人を殺す貴方は既に人ですらない…ただの化物だよ…」

【unlimited】を【呪詛】を込めて展開…。
右手に凶太刀、左手にアンサラーの二刀流…。
二刀からの【呪詛】込め【衝撃波】【2回攻撃】で敵を攻撃しつつ、【unlimited】を連続掃射…。高速移動等で回避される事を前提で連続掃射し、敵周辺の地面を呪詛で侵食…。逃げ場を奪い、最後に特別呪力を送り込んだ一撃を放って敵を圧倒するよ…!

敵の攻撃は【見切り】を活用しての受けか回避、【オーラ防御】【呪詛】【カウンター】のアンサラーで反射を狙う…。接近戦も至近から【unlimited】を放ちつつ、二刀で応戦…。


ガルディエ・ワールレイド
殺しを楽しむ趣味なんざ無ぇが、テメェの望みは叶えてやるよ。
確かに此処は死線だし、俺はテメェを斬らなきゃならねぇ。守るべき民と世界のために!

武装は【怪力】【2回攻撃】を活かす長剣とハルバードの二刀流
守りに【武器受け】【オーラ防御】を使いつつ立ち回る
あと【殺気】を読んで、敵に攻撃に対応だ
特に武器で受けた時体勢に余裕があれば他方の手で反撃
それでも防御や回避が出来そうにねぇ時は相打ち上等の【捨て身の一撃】だ

勝負所で【血統覚醒】
悪ぃな。さっき見せたのは全力じゃねぇんだ

敵への遠距離攻撃全般への対策として、【ダッシュ】で間合いを潰す事を心がける。一方的に攻められる事態は避けてぇ
死者は敵本体諸共に【なぎ払い】


六道・紫音
相棒ルビィと共闘
「殺し合い、愉悦、人か鬼か…そんなモノに価値も意味もない。
俺はただ己が剣を極める為にお前を斬る…それだけだ」
相手が剣の達人である、ただそれだけで斬る理由になる。

・行
「ルビィ…細かいのは任せる」
援護を相棒に任せ『残像』を伴いながら『ダッシュ』で一足飛びに駆ける《縮地》にて、衝撃波を躱しながら己が刀の間合いへ距離を詰める。

・攻
互いの間合いを『見切り』、『怪力』を以って一太刀に全てを懸けて『捨て身の一撃』でヤツの首か刀を持つ腕を『鎧無視効果』で狙い【一之太刀《斬鋼》】を放ち、両断する。
ヤツの居合は速い、しかしその間合いは間一髪で俺の斬鋼が勝る。
「速いな…だが、修羅の剣では俺に届かん」


ルビィ・リオネッタ
相棒の紫音と共闘

うふふ…そうね、この方が好きよ
ゾクゾクするもの

「生きてるって思えるわ。死を背中に感じた時ほどね」

・戦法
『操りの盾』で19個の妖精の盾を浮遊
守ると思った?

「これはアタシの舞台、一曲頼むわよ♪」

敵の攻撃はよく視て残像を残し回避(視力・見切り・残像)
時にはいなして(武器受け・盾受け)
浮遊する盾を蹴って方向転換(空中戦・ダッシュ・逃げ足)
相手の攻撃リズムを崩し(楽器演奏・学習力)
ダガーとレイピアで命中重視の速攻を入れるわ(早業・フェイント・暗殺・先制攻撃)
実はこんな効果を乗せてね(マヒ攻撃・毒使い・鎧無視攻撃)

アタシの武器は素早さ
今の限界に挑みたいの!

「フィナーレは任せるわ、シオン!」


泉亭・霧千代
ここにきて小細工は不要…いやま、あたしぁ小細工して何ぼですが…
殺し合いなんて長々楽しむもんじゃござぁせん…あたし(芸妓)の台詞じゃないですが、楽しむ間与えず【暗殺】といきましょうか

あたしの芸―『紙吹雪』を見てる筈なんで、そちら警戒し突っかける公算高い筈。
相手の高速機動や斬撃を【第六感】で【見切り】いなしつつあたかも「紙を刻もうにも速さや斬撃に翻弄されままならない」体で『雪の華』になりきれない中途半端な紙片をばらまき…機を見てふぅっ…なんて更に突っかける奴さんの視界目がけ【目潰し】気味に吹き付けてやり更に長羽織さっと脱ぎ捨て加速…すれ違いざま『椿の花』一輪、ぽとり落ちる…といけば御の字なんですが


勅使河原・源蔵
カッカッカッ、実に好いのう。
お主も儂と同じじゃな。
剣にしか生きられぬ武士ならば、命尽きる迄斬り合うが定めよ。
「名を聞いておくかの。儂の名は勅使河原源蔵じゃ」
人の儘其の域に達した業、見事なり。
じゃが、儂も一つだけ心外じゃな。
――鬼でも、殺し合うは愉しい物よ。(ニヤリ)
齢六十を越えた今なお、死合いの末に好敵手に勝利した時以上の愉悦を儂は知らぬ。
しかし此処がまだ人の域ならば、儂もまだまだよのう。
さあ、愉しむとしようか、のう。

さて、心躍る死合いじゃが、雑兵相手に興が乗り過ぎたわい。
儂も長くは持たぬ、勝負は一太刀交えれば十分じゃ。
お主の剣と儂の剣、何方が上か。
『剣刃一閃』、見事死線を越えて見せようぞ。




「殺し合いに愉しさなんて感じない……
 愉しさの為に他人を殺す貴方は既に人ですらない……ただの化物だよ……」
「なれば人斬りの化け物を、お前は如何とする?」
「――『unlimited curse blades』」
 侍の問いに答えるまでもない。
 璃奈は返答代わりに、百にも届く呪われし刀剣を喚び出す。
「ほう? 妖刀の現身か。面白い」
 璃奈は右手に凶太刀、左手にアンサラーを構える二刀流。
 二刀から放たれる衝撃波と、無限にも思える呪刃を合わせ、侍へと斬りかかる。
 躱した妖刀が地面を呪詛で浸食したのを見て取った侍は、魔剣を躱さずに衝撃波と共に切り払う。
 一度侵された場所に巧みに弾き飛ばされる。

「その物量、成る程大した物だ。されど時雨の如く惜しみ撃てば、小雨も同じよ」
「っ……!」
 絶え間なく放たれる呪剣を悉く弾き飛ばしながら、璃奈の眼前に侍が迫る。
 その手には振り回していたはずの刀を鞘に納めている。
「……――『剛なる居合い』」
「アンサラー……!」
 侍から放たれる、神速の居合い。
 オーラの防御ごと璃奈の身体が断ち切られ、その身が赤く染まる。
「この距離なら……外さない……!」
 しかし、璃奈が手にするのは、報復の魔剣。
 更に呪力を特別に送り込んだ妖刀での反撃。
「ふ、む。本命は後の先であったか。いやさ、それでこそ!」
 紙一重で掠めただけの侍の身を、呪いが苛んでいく。

「殺しを楽しむ趣味なんざ無ぇが、テメェの望みは叶えてやるよ。確かに此処は死線だし、俺はテメェを斬らなきゃならねぇ」
「斬らねばならぬか。何の為に?」
 呪剣の雨が止んだ後、ガルディエは侍の衝撃波を嫌って、間合いを詰める。
 侍はそれに真っ向から受けて立ち、一足一刀の間合いすら捨てて懐に飛び込む。
 逆にハルバードの間合いが潰されてしまうが、柄を短く持ちインファイトで応戦する。
「守るべき民と世界のためにだ!」
「……つまらんな、実につまらん答えだ。斬り合いに、斯様な雑念を持ち込むなど」
 ガルディエは刀を長剣を受け、ハルバードの斧を叩き込むが、柄の部分を押さえつけるように受け止められる。
 ガルディエの二刀流が往なされ、迫る刃によってオーラの守りが削ぎ取られる。
 いつの間にか納められた刀は、居合いの構え。
 姿勢を崩されたガルディエは、防ぎ切れない。
 だが。
「悪ぃな。さっき見せたのは全力じゃねぇんだ……ここが、勝負どころだ!」
 真紅の瞳に覚醒する。其れは真なるヴァンパイアの力。
 強引にでも、攻める。
「先刻承知よ。しかし防御を捨てるか。――愚かなり」
「が、は……っ!?」
 剛なる居合いが、それより速く鎧ごとガルディエの腹を裂く。
「戦場に在るは、己が身一つ。『誰かの為に』など、自分の脚だけで立てぬ弱者の戯言に過ぎぬわ」
 そう吐き捨てて去ろうとした侍の足が止まる。

「そいつは、聞き捨てならねぇな……」
「ほう……確かに斬ったと思ったが」
 ガルディエは腹を切り裂かれ、鮮血を流しながらも立ち上がる。
「『誰かの為に』が弱さでしかないだと? ……違ぇな。『誰かの為』だからこそ、何度でも立ち上がれんだよッ!」
 ガルディエが目指し、追うのは理想の騎士像。
 斬られようと物ともせず、食らいつく。
「……やれやれ。お前のような者を相手にすると、この身はやはり人でしかないと実感するな」
 ガルディエが相打ち覚悟で放った長剣の突きが、侍の腹を串刺しにする。
「それの何処が人だ、畜生が……ぐっ、ぁ……!」
 しかし侍の刀がガルディエの身をも貫き、倒れ伏した。
 侍も二人を斬り深手を負いつつも、まだまだこれからだと獰猛な笑みを浮かべた。


「ここにきて小細工は不要……」
「ほう。お前はその手の『イカサマ』を弄す類いと思ったが?」
 侍は『好きにやってみせろ』と、にやりと笑う。
「いやま、あたしぁ小細工して何ぼですが……殺し合いなんて長々楽しむもんじゃござぁせん……」
 霧千代が取り出した紙を鋏で切ろうとした所、衝撃波が放たれる。
 見切って避けつつも、その手が止まる。
「(あたしの台詞じゃないですが、楽しむ間与えず『暗殺』といきましょうか)」
 更に高速で踏み込み、迫る刃に霧千代は翻弄されるように、その手が遅々として進まない。

「どうした? よもや馬鹿の一つ覚えでもあるまい?」
「はて、さて、これは、困りましたな……」
 霧千代は侍の斬撃に翻弄されていく。
 事実直感を持ってしても避けきれないその身を掠め、肌を切り裂かれる。
 霧千代は苦し紛れ――という体で、雪の華になるには紙片が大きすぎる紙吹雪をふぅっと侍の視界に目潰し代わりにばら撒く。
 長羽織を脱ぎ捨て、高速の速度の一撃。

「……――『一輪・散椿』。椿の花、ぽとりと落ちる……といけば御の字なんですが。
 やっぱりセンセ相手じゃそう上手くはいきませんねぇ」
「いやはや、上出来よ。目潰しだけであれば見切ったものを……一手読み違えたわ」
 ぽとりと、ぽたぽたと、侍が落としたの『竜牙』と『赤い花』。
 首を断たんとする鋏を防ぐには、刀では間に合わぬ。籠手では腕ごと断たれる。
 侍はそれを、左手の指を犠牲に受け止めた。
「くくく、是よ。俺が求めたのはこの刹那の攻防よ!」
 火で焼き流れ出る血を止めた侍は、高らかに笑う。


「殺し合い、愉悦、人か鬼か……そんなモノに価値も意味もない」
「なればお前は、何としてその刀を振るう?」
「俺はただ己が剣を極める為にお前を斬る……それだけだ」
 紫音にとっては相手が剣の達人である。
 ただそれだけで斬る理由になる。
「くく、同じ事よ。生き死に問わぬのであれば、木刀のチャンバラでよかろう?
 ――それでもなお刃を持つのは、貴様も命のやり取りにこそ、剣の道の極みがあると考えてるこそよ」
 紫音と侍の刀が鍔迫り合う。
 紫音の怪力を持ってしても、押し返すには至らない。力の差……否、人外の怪力を往なす『人』の技巧だ。
「強者を斬り伏せ制してこそ、己が力を証明……いやさ、実感できる!
 我らが『活きる』はそういう修羅の道よ!」
 逆に押し返され、浅く肩を斬られる。
 紫音もただでは斬られず、反撃に掠め斬る。

「うふふ……そうね、この方が好きよ。ゾクゾクするもの」
「ふん、女子の方が心得てるとは時代は変わった物よな。して、その小さな盾で男を守るか?」
 ルビィは19もの小さな妖精の盾を浮かべる。
「ふふっ、どうかしら? これはアタシの舞台、一曲頼むわよ♪」
 ルビィの小さな身体を、刃が断つ。否、斬られたのは残像。
 更に断たんと迫る斬撃を、妖精の盾が受け止める。
「物の怪の類いか、面妖な妖術よな。しかし面白い!」
 衝撃波が盾ごと斬り捨て、続けざまに鋭い斬撃が迫る。

「あら失礼ね、アタシは妖精よ♪」
 盾を踏み台にして、跳躍する。足場を使ったそれは、ただ飛ぶより素早く躱せる。
 ルビィの小さな身体が盾の後ろに隠れる。
「ルビィ……細かいのは任せる」
 紫音が《縮地》で踏み込み、見極める隙など与えない。
「剣の道を歩むに、女子の手を借りるか」
「ああ。ルビィは共に歩む――相棒だ」
 紫音が鍔迫り合った一瞬を突き、盾の影からダガーとレイピアが迫り、侍の身を掠める。
 深手を追わせる必要はない。浅くでもその身を傷つければ――毒が回る。

「ほう……毒を使うか。……ならば毒が回る前に――片付けるまでよ」
 居合いは、鞘に納まった状態からの抜刀だけではない。
 その姿勢のまま、瞬時に『斬り』に入る技。
 紫音と鍔迫り合ったまま、刀を引き斬撃が放たれる
 ルビィは咄嗟に盾で防ぐも、その盾ごと斬り裂かれる。
 滴り落ちる血が残像ではないことを示す。
「うふふ……生きてるって思えるわ。死を背中に感じた時ほどね」
 だがルビィは、傷を抑えながらも不敵に笑う。
 傷口を抑えるその手に持っていたはずのダガーは――。
「む、ぅ……!」
「フィナーレは任せるわ、シオン!」
 強かな一撃を受ける代わりに、侍の身に突き立てていた。
 それには麻痺毒をたっぷり染み込ませている。
 強靭な肉体を持ち、埒外のオブリビオンと言えど、ひと時鈍くするのには十分。

「確かにお前の剣は速い……だが、修羅の剣では俺には届かん」
「ほう。では、試すか」
「本当に麻痺しているのかしら、あれ……?」
 よろめきながらも、紫音の《縮地》にも反応する侍の胆力に、ルビィは驚きを通り越して呆れる。
「……『壱之太刀《斬鋼》』」
「――『剛なる居合い』」
 二つの剣閃が交差する。切り裂かれたのは――。

「……ぐっ」
 膝を付いたのは紫音だった。
 胸を裂かれ、大量の血が零れ落ちる。
「全く、当代の武士……いや猟兵とは、恐ろしいな。あと数年違えば、一対一でも俺が負けたか」
 だが、対する侍は左腕を失くしていた。
 片腕を斬られながらも自らの間合いに入り、死線を踏み越えて断ち切った。
 元より死者である落ち武者と違い、あくまで人の身で蘇った侍が腕を落とせば、致命的だろう。
「娘、男を見てやれ。何、死にはすまい。その男は俺より頑丈だ」
 傷口を篝火で焼き、肉が焦げる臭いを立ち昇らせながら、まだ斬らねばならぬ者がいると踵を返す。


「さて、老体。待たせたな」
「カッカッカッ、実に好いのう。お主も儂と同じじゃな。剣にしか生きられぬ武士ならば、命尽きる迄斬り合うが定めよ」
 老いた二人の侍が向き合う。
 命を削り、刀を振るった源蔵。
 斬り伏せながらも、その身に数多の手傷を負った侍。どちらも万全とは言い難い。

「名を聞いておくかの。儂の名は勅使河原・源蔵」
「……俺に名を問うか。だがすまんな、もはや名など思い出せぬ。
 ――この身は只の人斬りよ」
「ほほう、それは残念じゃな。是より斬る相手の名を知れぬとは」
「嗚呼、残念だ。是より斬る相手に、名を教えてやれんとは」
 二人は挑発し合うようににやりと笑みを交わす。
 言葉の応酬は、互いに打ち合えば刹那の間に終わってしまうと知っているからだ。
 長年の友との別れを惜しむかのように、言葉を交わす。

「儂も長くは持たぬ、勝負は一太刀交えれば十分じゃ」
「応とも。俺も年甲斐もなく若いのとはしゃぎ過ぎたわ」
「カッカッカ、全く年寄りの冷や水はするものではないのぉ」
 古強者同士、笑いながら、刀を手にゆっくりと歩み間合いを詰める。
「お主の剣と儂の剣、どちらが上か」
「俺の剣とお前の剣、死線を越えるのは何方か」
 歩んでいた二人は、同時に止まる。
 一足一刀。一歩踏み込めば斬り伏せられる、刀の間合い。
 常人であれば、それだけで命を落としかねない殺気の応酬。
 刹那でも気を緩めれば、一瞬で斬り伏せられる。
『いざ尋常に――』
 その緊張が弾けたのは、何の前触れもなく。羅刹と剣鬼の剣閃が交わる。
 半ばから折れた刀の切っ先が、くるくると回って床に突き刺さる。

「人の儘其の域に達した業、見事なり」
 その一瞬の邂逅に打ち勝ったのは、源蔵だった。
「じゃが、儂も一つだけ心外じゃな。――鬼でも、殺し合うは愉しい物よ。
 齢六十を越えた今なお、死合いの末に好敵手に勝利した時以上の愉悦を儂は知らぬ」
「――そうか。この死合い、愉しめたか。ならば……好い」
 にやりと笑う翁に、侍は笑みを深める。
「さらばじゃ、名も無き人斬りよ。しかし此処がまだ人の域ならば、儂もまだまだよのう」
 侍は満足げに笑い、消え去るのを見届けながら、源蔵は噛み締める。


「常々……疑問に思っていた。俺が斬り殺した相手が、俺との死合いを愉しんだか……それだけが、如何にも心残りでな。
 ――嗚呼、何だ……やはり負けても……愉しいではないか――」
 消滅していく間際、誰にともなく、名も無き侍は小さく呟いた。
 何の為に戦うか知らぬが、この戦いを愉しめぬなど――全く、勿体ないと猟兵達を想った。

 璃奈の呪詛に苛まれ。ガルディエに腹を貫かれ。霧千代に指を断たれ。
 ルビィに麻痺を苛まれ。紫音に片腕を落とされ。ようやく源蔵と互角。
 猟兵達は過去の亡霊オブリビオン。完成された……既に終わった者の武の極みを味わった。
 オブリビオンが消滅したことで、起こりえた歪みは消える。
 賭場には正しくお上の手が入り、摘発されることだろう。
 天下泰平のサムライエンパイアにまた一つ、平和が取り戻された。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月20日


挿絵イラスト