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【旅団】OX-MEN:クラッシュ・オン・ザ・ナイトメア

#キマイラフューチャー #【Q】 #旅団 #OX-MEN


『これは旅団シナリオです。旅団「OX-MEN:フォース・ポジション」の団員だけが採用される、EXPとWPが貰えない超ショートシナリオです』

 12th Entry OX presents... ミ☆☆☆

 これまでのあらすじ。
 ついに復活した螺旋の使徒、G.I.リューの圧倒的な力の前に戦いは終わりを迎えた。この世を滅ぼす愛を破壊することはできないのか。総勢7億8542万8803人のオックスメンの力をもってしても結末は変わらない。「終わりです」そう告げるG.I.リューの頭上で数多の星が輝いた。

 OX-MEN:Crush on the Nightmare ミ☆☆☆

 オックスマンは深い眠りの中にあった。
 彼はうかつにも巧妙な敵の罠に捕らえられたが、OX-MENの仲間は既に事件の解決に向けて動いている。
 そんな中、オックスマンションの扉は開かれる。
「オックスマンさん……?」
 眠る姿を認めた彼女は遠慮がちに一歩を踏み出し、部屋へと歩を進めた。
 その手にはいくつかの花。屋敷の裏手に自生していた花だ。
 眠りについた人々を目覚めさせられるかもしれない。その直感を信じ、試そうと摘んできたのだ。
「グオオオオォーッ! グオオオオォーッ!」
「まさか、寝てるとは思いもしなかったけれど」
 ひょっとしたら彼にも効果があるかもしれない。そう思い、一本の花を枕元へ。
「目覚めの時が来ますように……」
 と、その瞬間眠っていたはずのオックスマンが突然言葉を発した。
「……遅れてすまない」
「えっ?」
 だが、その目は閉じられたまま。……寝言だろうか? 器用な寝言だ。
「状況は理解した。君の立ち位置は――」


納斗河 蔵人
 遅れてすまない。納斗河蔵人です。
 大分間が空きましたが旅団シナリオ第二弾。参加できるのは【OX-MEN:フォース・ポジション】の旅団員のみとなります。
 例によってよくわからないOPになっていますので詳細は旅団のスレッドと追記部分を確認してください。
 今回はオックスマンがいいところで遅れてすまないしてきます。
 皆さんの立ち位置をこれでもかと見せつけてください。

 頑張っていきますのでよろしくお願いします。
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第1章 冒険 『ライブ!ライブ!ライブ!』

POW   :    肉体美、パワフルさを駆使したパフォーマンス!

SPD   :    器用さ、テクニカルさを駆使したパフォーマンス!

WIZ   :    知的さ、インテリジェンスを駆使したパフォーマンス!

👑1
🔵​🔵​🔵​

Chapter:14 希望の花、悪意の花
 
 ビルの谷間を風が吹き抜けた。金色の髪が揺らされる。
 フィオレッタは数日前からこの事件の調査を進めていた。
 体には異常がないのに目覚めない。
 人間の世界ではそうそうない事であるが、神の世界、あるいは神の行いとしては決して難しい事ではなかった。古き神話の時代よりそういった話は枚挙にいとまがない。神とは理不尽で気紛れなものも多いのだ。
 具体的な手段はともかく、食物に呪術的処理を施す事で人々を眠りにつかせているのだろう。それによって生まれるエネルギーを何かに使う。それが何者で、何のために、かまでは未だはっきりしないが。
「神になろうっていう事なのかな。それとも、何かの神を呼び出したい?」
 だが、こういう事件を起こすモノの目的はそう多くはない。
 フィオレッタは両の手を広げ、語り掛けた。
 辺りには花の香りが漂い、精霊たちは彼女の下へと集う。
「みんな。風に乗って街のうわさを集めてきてね」
 彼女の言葉に花の精霊たちは風に乗り、あたりへと散らばっていく。その姿を見送り、フィオレッタは思う。
「これでよし、と。あとは……寝てる人たちの治療法、かな」
 原因が呪術の類によるものならばそれを解く方法は何かあるはず。
 そう感じた彼女は眠りについた人々を確かめるために歩き出した。

「持ち帰り、探ってみよう。……こういった事柄を得意とする立ち位置の者もいるのだ」
 フィオレッタが医師を訪ねるべく足を踏み入れると、入れ違いに黒衣の男が病院を後にする。
 その姿には見覚えがあった。あれはそう、確か……。
「オックスマンさん?」
 彼も病院に居たという事はこの事件を追っているのだろうか。あの様子ではまだ何かを掴んだ、という訳ではないらしいが。
 なにか分かったら連絡してみようかな、と思いながら本来の目的へと意識を向ける。
 確かに、見た目には何の異常もない。
 身体的にも数値はすべて正常を示しており、何故眠り続けるのかは一切不明。
「この香り……」
 しかし彼女だからこそ気づける『匂い』がこの部屋には存在していた。
 呪いの起点。体に取り込まれたそれは何らかの干渉によってその力を捻じ曲げ、彼らを眠りへと誘う。
「これは……なんでこんな花を?」
 その花言葉は「あどけなさ」「純潔」「親愛の情」「慈愛」といったところ。
 呪いに使うには似つかわしくないように思える。
 しかし、その正体はわかった。この呪いに対抗するならば、その力を正しい方向に向ければいい。
 その為にはこの花を集めなくてはならない。
 群生していたところはどこかあっただろうか、と考えると先ほどすれ違ったオックスマンが頭に浮かぶ。
「そういえば、あのお屋敷の近くにたくさん咲いているのをみたような」
 あれは少し前のことだったが、まだ咲いているだろうか。こことは違う世界だが行ってみるものいいかも知れない。
 これで人々が眠りから覚めるかはなだわからない。試して確証が得られるまでは治療法について告げる事はしない方がいいだろう。
 フィオレッタは立ち上がると医師に礼を言い、病院を後にした。
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Chapter:15 駆ける異邦者
 
 フィオレッタは轟く雷鳴に目を細めた。
 花の精霊たちが告げる。自分の行く先を。
 彼の――いいや、自分自身の仲間たちと共に悪の野望を砕くべく戦う。
「――うん、わかったよ」
 その為にするべきことを、彼女はもう知っていた。
 
 パラドックスマンの叫びと共に雷鳴が鳴り響き、モニターは沈黙した。
 敵の目的……それは街全てを眠らせる事。
「……どうする?」
 明かされた真実に誰ともなしに口を開く。
「奴は「手遅れだ」と言ってはいましたが二度目の鐘は鳴っていません。まだ余裕があるとみるべきでは?」
 カプラの言う通り、次の鐘は鳴らされていない。暗雲立ち込める街は不気味な静寂が包まれていた。
「じゃあ逆になんであんなことをボクたちに教えたの? 居場所まで教えちゃって、止めに来いって言ってるようなものじゃん!」
 セレネの疑問ももっともで、本当に手遅れならば余裕があるはずはない。 
 ただの勝利宣言ならば阻止できるタイミングではおかしい。
「今度こそ罠って事なんじゃねーの?」
 源次が発見された際にも敵は他の仲間をおびき寄せようとしていた。それを考えればグラディスの言葉ももっともである。
「奴の目的は街を眠らせて終わり、という事じゃないって事か」
 新兵もその意見に同意する。パラドックスマンの最後の言葉……『目覚めの時が訪れる』とはそのことをさしているのだろう。
「あ、じゃあさっきの歌のわからなかった部分」
 カデルが気付く。実際ここまではあの歌の通りに進んでいる。ならばその先にあるのは――
「七つの星が集う時、があいつの言っていたエネルギーだとしたら」
「次に必要なのは十三の光……ってことだね」
 マルコの言葉にミルラが続いた。ぐるりと見渡す。ここに集ったOX-MENはオックスマンを除いた十三人。ぴたりと数があってしまうではないか。パラドックスマンはこれを狙っていたのだろうか?
「だからと言って、この街を見捨てるワケにもいかねェだろうが」
 クロウの言う通り、罠だからと言って躊躇すればこの街の人間は間違いなく全員眠りにつく。
「その結果、それ以上の惨事を引き起こす。そういう可能性もあります」
 しかし敵の目的がその先にあるのならば、十三の光がのこのこと出ていくのは思うつぼかも知れない。
 アマータはそれを懸念する。
 だが、こうして話している間にも時間はどんどん過ぎていく。
 進むべきか、退くべきか。どちらが正しいのか。
 しかしそこで、一つの転機が訪れる。
 それに最初に気付いたのは、誰だったか。
「遅くなってごめんなさい」
 全員の視線が一点に集まる。
 何故わかったのかなどわかりはしない。それでも、確信があった。
「なーるほど。……君の、立ち位置は?」
 リーオが問いかける。
「OX-FLOWER……OX-FLOWERです」
 フィオレッタの答えに、欠けていたピースがはまったと誰もが感じた。
「これで、こちらは十四人」
 源次の言葉に全員が頷く。十三の光がなんだ、こっちは十四の光だぞと敵の思惑を上回ってやればいい。
「全員でパラドックス社の頂上まで突っ込めば、奴の目論見を崩せるってことだな!」
 クーガーがわかりやすくていいな、と笑えば
「もうオックスマンさんの出番はありませんね。 突っ込んでいって、倒す。それで解決です!」
 くしながここにいないもう一人の事を思う。
 そうと決まれば、あとは突入するだけだ。
  
「先の潜入で突入ルートのデータは十分に揃っています」
「セキュリティカードもランクが高い奴を拝借してきたからね。これを使えば扉が開かない、なんてことはないよ」
 アマータの収集したデータと、ミルラの持つカード。パラドックス社への潜入がここで活きてきた。
 データをのぞき込めば屋上までのルートは複数で、狭い場所も多い。
 全員で同じルートをたどるより何カ所かに別れた方がいいかも知れない。
「さすがにエレベーターは止まってるよね。そうなると階段で行くしかないなー」
 疲れそうだ、とリーオが肩をすくめると背後の赤頭巾さんが「がんばれ」とプラカードを見せた。
「だが、警備の機械兵。あれが必ず邪魔をしてくるはずだ」
「一つの階段で一番上まで行けりゃいいんだけどな。そういう構造はしてねぇ」
 源次の言葉にグラディスが続く。
 戦闘は避けられない。こちらも力をあわせれば問題なく倒す事はできるだろう。
 だが、数の多さも先の接触で十分に身に染みている。決して油断はできない。
「それだけじゃねェ。寺や工場にも機械兵は配備されていた。突入後に後ろから攻撃されたらたまらねェぞ」
 そこでクロウが追撃の危険性を示唆する。機械兵が存在するのは社内だけではない。外からだってやってくるだろう。
「じゃー、やっぱり何手かに別れて進むしかないんだね。他のルートから挟み撃ちにされちゃったら大変だし」
「私も精霊たちに頼んで、危険が迫っていないか調べてもらいながら進みますね」
 セレネが確認すると、フィオレッタも挟撃の危険性を排除できるようにとそんなことを告げた。
 一方、新兵は全員での突入が必要な事にため息をつく。
「ビル全体がバリアのようなもので包まれていて、外部からの遠距離攻撃で突破は難しい。……人数の事を考えると俺も一緒に突入しなきゃだめかぁ……」
「大丈夫です、近付くものは千切って投げれば問題ないです」
 そんな様子にくしなは敵に近づかれなければいいのだと脳筋な解法を示せしてみせる。
「ボクも頑張るから! 新兵も一緒に頑張ろう!」
 とカデルも続き、気合を入れる。
「そういやぁ、脱出に使ったシャフトを昇るのはどうなんだ? あれなら敵もいないだろーし、空を飛べる奴ならいけるんじゃねーの?」
 ふとクーガーが中央シャフトを思い出せば。
「良い着眼点です。聞いた限りでは可能かと。人数は限られますが、一考の余地はあるでしょう」
 不可能ではない、とカプラがルート図にひとつ、書き加えた。
「フーン、色々な事を考えないとなんだね。いずれにしても、最終的には全員で頂上にたどり着かないと、パラドックスマンの企みは崩せないって事でいいんだよね」
 マルコの言う通り、誰が欠けても今回の戦いに勝利することは難しいだろう。
 
 しかし、君たちならば事件の裏に隠された真の目的を必ずや打ち砕いてくれるに違いない。 
 OX-MENよ! 迫りくる機械兵たちを突破し、パラドックスマンの下へとたどり着くのだ!


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 集団戦『パラドックス社機械兵団』
 
 POW
 『ハイパーアナライズ』
 【アンテナを展開して超分析モード】に変形し、自身の【戦闘行動の停止】を代償に、自身の【同型機たちの射撃命中精度】を強化する。
 SPD
 『レンズ越しのターゲット』
 【社内に設置された監視カメラの映像】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【乱反射する光線】で攻撃する。
 WIZ
 『広域制圧』
 レベル×5本の【命中精度が低い炎熱】属性の【爆発を引き起こすミサイル】を放つ。


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Chapter16: 抗うもの従うもの

 パラドックス社内は混乱に包まれていた。先の襲撃事件に続き、社内を闊歩する無数の機械兵。
 何も知らない社員たちは怯え、逃げ出し、人の気配はだんだんと薄くなっていく。
 もっとも、機械兵が彼らの命を脅かす事はないだろう。眠りのエネルギーを得るには死なれては困る。
 そんな中、一人の男が動じることなく自身に割り当てられた部屋で椅子に腰かけ、机に肘をついていた。
「とうとう計画も最終段階ということか、パラドックスマン」
 そう、ミルラが秘書として潜入した、その男。
 だがその表情は彼女が見たものとは違う、これから起きる事が楽しみでたまらないとでも言わんばかりの笑みであった。
「君がどれだけやって見せるか、楽しみだ。我も、いつまでも寝ているだけではつまらないのでな」
 飲み干されたカップの氷がカランと音を立てた。
 それを片付けるものはいない。
 
「私向きの動きになってきましたね」
 そびえるパラドックスビルを見上げ、くしなは笑う。
 行く手を阻む敵を蹴散らし、最上階で待つ黒幕を倒す。
 ここまでの潜入や調査の難しさを思えば、するべきことはシンプルになった。
「やっぱり小難しい事を考えるのは他の連中に任せたいんだぜ」
 同調するのはクーガーだ。先の展開を思えばやはり彼もそちら向きなのだろう。
「そうそう、やっぱり難しいよね! わかりやすいのが一番!」
 セレネも十字架の杖をぶんぶんと振り回す。
 そんな彼らに対し、一方では憂鬱な表情を浮かべる者もいる。
「階段かぁ……」
 ため息をつくのはリーオ。超高層ビルたるパラドックス社の頂上は遠く、どれほど昇ればたどり着くのか見当もつかない。
「ほら新兵、ボクも一緒に行動するから一人で迷子になったりはしないよ!」
「いや、別に迷子の心配をしてるわけじゃなくて……」
 気乗りしない様子の新兵にカデルの檄が飛ぶ。
 普段の戦闘スタイルを考えればスナイパーに突撃は不向き。ただの依頼ならば断わることもできるが、この状況でそれを言っては敵の思惑を崩せない。わかっているからこそ憂鬱なのだ。
「……愚痴ってても始まらない、か」
 突入の時間は迫っている。社内から脱出してくる人々を目に気持ちを切り替えねば、と帽子をかぶりなおす。
「真相解明してェとこだがそれは突き進めば自ずと解るコト、なんだろ」
 そんな隣でクロウがふう、と煙を吐き出した。落ち着いた表情だが、その眼光は鋭い。
「だったら今は前だけを見据えるのみ」
「そういうことさね。面白くなってきたじゃないかい」
 秘書がすちゃ、と眼鏡を取ると強く風が吹いた。薔薇が舞う。一瞬その姿が薔薇吹雪の向こう側へと消える。
「さ、時間だ。OX-Searcher、派手に壊すよ!!」
 赤い薔薇の嵐を突き抜けて。駆けだしたのは見覚えのある姿をしたミルラだった。

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Chapter17: 意思なき瞳

 二つ目の鐘がごうんとなった。
 社内に残るのはもはや機械兵と、パラドックスマンのみ。
 これならば戦いに一般の社員を巻き込むこともないだろう。
 OX-MENの面々は一斉にパラドックスビルへと突入を開始する。入り口はシャフトを除けば一つきり。
 一列に並んだ機械兵たちは一斉に手にした機関銃をこちらへと向ける。
「ここは俺に任せるんだぜ!」
「おっと、そうはいきませんよ」
 真っ先に飛び出したのはクーガー。それに負けじと式神符を掲げ口寄せの体勢に入るくしな。
 二人の足元を、耳元を。銃弾がかすめる。
「俺の祈りはそんなもんじゃ止まらねえぜ!」
 ひるむことなく突き進むクーガーの手が祈りを示せば、その身は光に包まれる。
 まさしく『聖者の闘争(セイジャノトウソウ)』の始まりだ。
 輝く光は機関銃の弾丸を弾き飛ばし、彼とそれに続く仲間たちの道を阻むことはない。
 ならば、と機械兵の一部が背部よりミサイルを放つがどうにも狙いは甘く、OX-MENに熱を感じさせこそするものの直撃に至るようなものはない。近づいてくるものも遠距離攻撃の手段を持つメンバーの手によって撃ち落されていく。
「狙いが甘いな……」
「数を撃てば当たる、とでも思っているのかな」
「このまま一気に押し切りましょう」
 彼らの読み通り動き続けていればそうそう当たるようなものではなさそうだ。
 そうして立ち上る爆炎に頬を焦がしながらもクーガーは止まらない。むしろその力は加速していく。
「やりますね。ですが、破壊とブレイクが得意なオックスクルセイダーが負けるわけにはいきません。……参ります!」
 言葉と共に式神符より現れるは決闘馬。串名の姿は既に馬上にあり飛び交う銃弾とミサイルの中を駆け抜ける。
「このルートは私がいただきましょう。皆さん、続いてください!」
「いいや、先頭を行くのは俺なんだぜ!!」
 大連珠を振り回しくしながつき進む。クーガーも負けじと敵の攻撃を突き抜ける。
 そんな光景に源次は苦笑する。
「前を行くのはディフェンダーの役目だと思うのだが」
「ガハハハ! 源次、立ち位置を取られちまったかぁ?」
 ともあれ、二人が先陣を切ったことによって敵の注目は集まった。
 その行動は後に続くメンバーたちの進むべき道を切り開き、パラドックスビルはもはや目前だ。
「おりゃああああ!」
 クーガーの拳が閉ざされた扉を砕く。
 しかしそのタイミングに合わせて機械兵たちは一斉にクーガーに向けてミサイルを放つ。
 砕け散るガラスの中を迫りくるミサイル。上がる爆炎。
「まだだ……まだ終わらせないぜッ!」
 しかし、クーガーは立っている。どれほど傷だらけになろうと聖なる光の輝きは彼に力を与え続けるのだ。
「先を越されてしまいましたか。では、次は私が!」
 ミサイルの雨はまだ止んではいない。
 馬から颯爽と飛び降りたくしなは、迫りくる嵐の前で目を閉じ拳を握り締める。
 その身にミサイルが命中するかと思われた瞬間。
「……【素手】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない」
 一つ、二つ、三つとくしなへと襲い掛かっていたはずのミサイルは爆発を起こす事はなく、くしなの拳によって大きく軌道を変えて発射した主の方へと向けて勢いよく飛んでいくではないか。
 これぞ、『灰燼結界(カイジンケッカイ)』! 
 殴りつけた勢いでミサイルは機械兵たちに直撃し、爆炎をあげる。
「よっしゃぁ! 俺も続くぜぇ!」
 絶え間なく続いていた攻撃もこの攻防で一瞬の切れ目を見せた。
 その隙を突き社内へと突入したグラディスは『昏らき風纏いし堅牢なる爪牙(ファング)』を振るい、機械兵を切り裂き、床を壁を引き裂き黒い影を作り出す。
 影の中にあればグラディスの力は増すばかり。次々と機械兵たちはその身体をがらくたへと変えていく。
 一階部分はひとまず制圧したと言っていいだろう。
 それに続けとメンバーは次々にパラドックス社へと突入し、作戦の第一段階を突破した。
「気は抜けないけれど、これで一息つけますね」
「だがさっきも言った通り追撃の可能性は残ってるぜ。何か対策は必要だなァ」
「それに、ビルに近付くにつれてミサイルの狙いが正確になってたんだよ!」
「……どうやら、司令塔にあたる個体が存在しているらしい」
 戦いの中であっても彼らは敵の動きの変化を見逃さない。遥か高くそびえるビルの頂上まで、どれほどの困難が待ち受けていることか。そのためには状況を理解することが必要なのだ。
「確かにアンテナを展開している奴がいたね」
「そうそう、それが破壊されたらまた命中率が下がってた」
「やっぱり相談した通りに、手分けして進んだ方がよさそうだね」
「よし、ここから先は手はず通りに」
「一人も欠けることなく、頂上で」
 誰ともなしに頷きあい、再開を誓う。
 ここからは長い戦いになる。敵も万全の備えで待ち構えているはずだ。
 しかし歩みを止めればこの街は永遠に眠りに閉ざされる。
 立ち止まるわけにはいかない。


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Chapter18: 大乱の宴

 何処まで登れば頂上にたどり着くのだろう? 登り切ったかと扉を開けば機械兵たちの群れ。突破して次の階段を上ってもその繰り返しだ。
「……ほんっと、このめっちゃ長い階段!」
 列の後方からリーオはたまらず叫びをあげる。屋内戦には慣れているものの、追撃の機械兵を食い止めるべく振り返りながらの行軍は、ただでさえ長い階段の果てしなさをさらに増していた。
「まあまあ、そういわずに! ボクだって頑張って登ってるんだからさ!」
 セレネが前方から迫るミサイルに杖をかざせば、天から『審判の槍(アールビトロ・ランス)』の雷が閃き爆発する。
 どうやらこの先にも司令塔の役目を果たす機械兵が存在しているようだ。
「面倒だなあ! 直接倒したいのに数が多すぎてじゃまされちゃうよ!」
「本当にねぇ」
 そう言いながらも次々と敵を退け、じっくりと歩を進める。
 と、その足元に光が走り、床に焦げ跡が生まれた。
「……っとまたか! えーと、赤頭巾さん。あそこにも監視カメラだ!」
 リーオの言葉と共に背後から赤頭巾さんが飛び出す。社内に入った途端に機械兵たちが使い始めた光線への対策だ。
 乱反射する光はやはり命中精度が低いものの、狭い階段では脅威となる。幸いにも監視カメラの映像を利用した攻撃だという事はすぐに判明したため、見つけ次第破壊する事でその攻撃力を削ぎつつ進行しているという訳だ。
「壊したら壊したで情報が少なくなるから困ることもあるんだけどね、っと」
「うわっ、びっくりした!」
 驚くのも無理はない。『キルロイ参上』の落書と共に新兵は唐突に現れた。これは彼の手札内でやれるだけの『狙撃』。『キルロイ参上(キルロイ・ワズ・ヒア)』によって仲間たちの間を行き交い、位置を変えながら必要なだけの『狙撃』を行い、また次の場所へ。ここまでにも何度かこの光景は目にしてきたがやはり心臓には悪い。
「よし、反射角計算完了」
 先の潜入で掌握した監視カメラの映像は何故かシャットアウトされる事無く、今回の突入でもそれは活用されている。罠の可能性がないわけではないが、今のところはこちらの有利に働いているようだ。
 放たれた弾丸は壁や床を精密に跳ね回り、遥か遠くの機械兵を撃ち抜いた。
「射程内の光線を撃ってくるタイプは撃破したよ。後は宜しく」
「はいよー」
 言葉を残し新兵は再び姿を消した。また時が来ればやってくるだろう。その姿を見送った先では赤頭巾さんが鉈を組み合わせた大鋏を手に「いくよ」のプラカードを掲げていた。
「よし、じゃあ行こうか、赤頭巾さん。セレネさんも準備いい?」
「もちろん! いつでもいいよー!」
 言葉と共に赤頭巾さんは滑るように機械兵たちの群れへと接近した。
 狭い通路を競うようにミサイルが迫る。だが、それが彼女へと届く事はない。
「さあ、まずは邪魔する機械兵共からだ!」
 リーオのACMP-9が火を噴いた。狙いが正確という事は軌道も読みやすい。上がる爆炎の中を赤頭巾さんが駆け抜ける。
 大鋏が二つに分かたれ、一本の鉈が正面の機械兵を二つに断つ。
 一つ、二つ。赤い炎の中に赤い頭巾の少女が舞う。
 その刃が一つの道を切り開く。これこそが『赤■の魔■の加護・「化身のイチ:赤頭巾」(パラサイトアヴァターラ・レッドキャップ)』なのだ。
「よし、見えたよ! いっけー! †天罰†だ!」
 炎と煙の向こうに広がるアンテナ目掛けて、雷が落ちる。
「よし、このフロアはクリアだね」
 駆けあがった先の監視カメラを撃ち抜き、リーオは言った。

Chapter19: 見つけたのは蜘蛛の糸
 ゴゴゴ、と音がする。
 カプラは考慮に入れていなかったルート、エレベーターで頂上を目指していた。
 もちろん、エレベーターそのものは止まっている。
 しかしカプラの座する台座は天上まで続くロープの傍らを浮かび上がり、彼を涅槃まで導かんとしていた。
「私の存在感では、シャフトで進んでも階段で進んでも敵をおびき寄せ過ぎて他の方の行動を妨げてしまいますからね」
 と、言う理由でこのルートを選択したカプラであったが実際の突入の際に明らかになった事実で状況が変わった。
 エレベーターは稼働していないのだから敵がいるはずもない……と最初は思われていたのだが、アンテナを展開する機械兵の存在がこのルートに意味を作り出したのだ。
 すなわち、死角に潜む彼らを発見し、排除する事。カプラの存在が階段を進む仲間たちの侵攻の助けとなっているのだ。
「オックスクラッシャーが眠る立ち位置を示してくれた事で、今回の事件を追う事ができました」
 一切不動に念じ、座して祈りをささげる。後光が差し、命無き機械兵であろうと浄土へ導かんとその身を照らす。
 その光は座へ至らんとする神々しさを以ってカプラの存在感をただひたすらに示し続ける。
「私はそれに応え……私達にしかできない事を成し遂げにいきましょう」
 機械兵はその姿を拝むように崩れ落ちる。
 カプラは静かに、ゆっくりと。誘いの鐘へとその身を浮かび上がらせていくのだ。
 
 ごうん、と三つ目の鐘が鳴った。
 

●●●●●

 
Chapter20: 引き金
 
 とん、とん、と足音が響く。
 シャフトは高くそびえ、眼下を見やれば深い闇の奥まで続く。
 そんな中を『竜飛鳳舞(リュウトビオオトリマウ)』の力で舞う姿があった。
 先の潜入の際に源次とグラディス、クーガーが脱出に使ったこの縦に伸びる空間を今度は登っていく。
 まだまだ先は長いな、とマルコは息をついた。
「何とかと煙は高いところに上るって言うけど……」
 それにしたってこのビルは高すぎる。構造上機械兵の数は少なく、その大半はビル内の支援のためにアンテナを展開しているため攻撃は散発的であることは救いであったが。
「敵が見張ってる場所が少ないって事は休憩できる場所も少ないって事だものね」
 ふわり、とフィオレッタが傍らに降り立つ。吹き抜けた風が疲れた体に心地いい。
 その手の先が風精ファヴォーニオを撫でるように空を切る。
 彼女は精霊が作り出した風の助けを借りて浮かび上がり、ここまでやってきたのだ。
 同じ場所を登るといっても色々なやり方があるものだな、とマルコはシャフトの少し上を見上げる。
 視線の先には黒き翼を広げたグラディスがいた。
「ガッハッハッ!!!」
 と、笑いながら宙を舞い、影に隠れた機械兵を漆黒の爪が切り裂く。
 シャフトルートを飛び交いながら彼らは頂上を目指してきた。そしてこの先も。
 
 ごうん、と次の鐘が鳴った
「……あまりゆっくりはしてられないね」
「そうだね、続きを……いけない、跳んで!」
 フィオレッタが浮かびながら叫ぶと同時、マルコが跳びあがる。その数瞬後、二人がいた場所に光が照射された。ここまで何度も見てきた乱反射する光線だ。
 何条もの光が狭い縦穴を塞ぐように行き交い、彼らの道を阻む。
「ぬおっっと、あぶねぇあぶねぇ」
 グラディスが一瞬にして影の中へと沈みこんだ。その跡を光が弾けた。
「撃ってる奴は……あそこか、大分遠いね。ちょっとボクの銃じゃ届かないかな」
「監視カメラもあいつらのそばだ。狭いから良く見えるもんなあ!」
「光線を避けるのは何とかなるけど、ミサイルと同時に来たらちょっと難しいかも」
 どうやら敵はかなり上方にいるらしく、光と炎の中を切り抜けなければ機械兵の排除は難しい。
 だが、こういう時は。
「フィオレッタ!」
「うん、わかってる。花精よ……」
「タイミングを合わせていこう。ミサイルはボクが」
 誰もがやる事はわかっている。各々が壁を蹴り、高みを目指す。
 フィオレッタが一瞬姿を消し、機械兵たちの狙いを外す。
 狙いを自身に集めて発射された光を潜り抜け、グラディスが進む。
 マルコが銃を手にそれに続いた。
「来るよ、ミサイル!」
「光線の次弾ももうすぐだ!」
「このタイミング! お願い!」
 接近する彼らに敵の次の攻撃の兆候が表れた。それと同時にマルコが加速し駆けあがり、グラディスが叫ぶ。
 そして、フィオレッタの声に応えて壁に『キルロイ参上』の落書きが刻まれた。
「安定しない場所でもスナイパーとしては決めないとね」
 フィオレッタの傍らに現れた新兵は、落下しながらも花精によって伝えられた言葉から状況を判断し、狙いを定める。
 放たれたミサイルの隙間を抜けて、二つの銃弾が監視カメラを貫いた。
 光線の発射体勢に入っていた機械兵は突然の障害に動きを止める。
「皆で頂上に辿り着かなきゃいけないみたいだからね」
 壁を蹴ったマルコは天を見上げる。
 迫るミサイルに狙いをつける。一つ、二つ、三つ。いくつもの爆炎があがる。
「……オックストリガーは、ここぞという時に良い立ち位置に来るものらしいよ」
 勢いのままに壁に手をつきながら漏れたマルコのつぶやきと共に、赤い炎をかき分けて風が突き抜けた。フィオレッタはぐんぐんと加速し、機械兵たちの頭上を取る。
「今度は……お願い、メリアデス!」
 呼びかけるとともに彼女の周りへ、樹精が作り出した樹槍が浮かび上がった。フィオレッタが念じればそれらは勢いよくまっすぐに飛び出し機械兵たちを貫く。
「おっと、俺を忘れてもらっちゃ困るぜぇ!」
 一瞬の攻防。対応できぬままに動きを止めた機械兵たちの間を黒い風が走り抜け、深く刻まれた爪痕に倒れるのであった。
 
「ガッハッハ! いいコンビネーションじゃねぇの!」
「ええ、いい感じ!」
 新兵は落下の最中にテレポートで消えたが、残された三人は互いの連携を讃えあう。
「そうだね……OX-MENは変わった人が多いけど、ボクとしても……信頼できる、かな。居心地も悪くない……と、思うし」
「ふふっ、私も早くみんなとたくさんお話ししたいな」
「ガハハ! その為にもオックスマンの奴を早くたたき起こしてやらないとなぁ!」
 そんなふうに語りながら、彼らはふたたび頂上を目指して駆けだした。


●●●●●

Chapter21: 魂に眠るモノ
 
 ずん、と音が響いた。
 機械兵を押しつぶした鉄球の鎖の先でミルラが息をつく。
 ここまでいくつもの会談と通路を経由し、頂上ももはやそう遠くはない。
「あれ、このフロアは……もうここまで登ってきてたのかい」
 そう、先の潜入で彼女が秘書として潜入していたフロアだ。
「私も人形なので疲れないとはいえ……この長さには辟易してきました。ですがここまでくればもう一息、といったところでしょうか」
 見た目には疲れを見せないアマータも、さすがにここまで登り続けてきたことでそんなことを口にする。
 その言葉にクーガーが少しだけほっとした顔を見せる。
「おっ、ようやく終わりが見えてきたって事か」
「ここまで撃ち漏らしが無いようにと、寄り道が多かったですからね」
 くしなも続いたが、彼らは少なくとも疲れた表情を見せない。クーガーは傷だらけだが。
「お付き合いに感謝しますよ。ですが、この先は少しは楽になるかも知れません。先の潜入の際に仕掛けをしておきましたので」
「へぇ、それはいいじゃないか」
 どうやらアマータはデータを回収した際に、この状況を予見していたらしい。
 仕掛けとはすなわち、監視カメラの完全掌握。
 新兵は警戒されないようにそこまではしていなかったが、完全に敵対した状況ではバレるもバレないもない。機械兵たちが放つ光線は監視カメラを経由する事で長い射程を実現していることはわかっているのだ。敵の武器を一つ潰せることは大きい。
「まさかここまで来て直接接続しなければならないとは思いませんでしたが……ともあれ、作業を開始しますのでしばらく警戒をお願いします」
「ま、こればっかりは仕方ないね。ホントこの会社のセキュリティは固いんだか、ザルなんだか……」
 作業に向かうアマータの背を見送りつつ、ミルラは慎重に役員室の扉を開ける。まさかあの男が残っているはずもなかろうが――
 
「やあ、秘書君。こんなところでのんびりしていていいのかな?」
「なっ!?」
 予想外の事態。扉の向こうにはあの男が机に座していたのだ。
 ミルラの判断は早い。手にした投げナイフ、Artiglioは既に男へと向かって投げられている。
 しかし。
「いけないなぁ、上司に手をあげるなんて。君はクビだぞ」
 その刃先は指先に触れると勢いを失い、床へと転がり落ちる。その光景に男は薄く笑った。
「ま、別に危害をくわえようってわけじゃあない。君を驚かせようと思って待っていただけだしね」
 潜入していた時とはまるで違う不気味さ。
「ああ、一応聞いておこう。我のハーレムに入る気は……」
「あぁん?」
「……なさそうだ。ま、期待はしちゃあいなかったけどね」
 まったく隙が見えない。こいつはいったい何者なのか?
「あの無能のは演技だったって事かい」
「無能とはひどいな。それはそうと一つ忠告しておこう。これから君たちはこのビルの屋上に向かうのだと思うが……あの鐘は、壊さない方がいい。壊せばあの鐘の力は君たちを飲み込むだろう」
「ご忠告どうも。でもそれを信じると思うかい」
「ま、そこはご自由に。我としては君たちとまた出会えることを期待しているよ」

 はっ、となった。
 開かれた扉の向こうには誰の姿もなく、静寂があるばかり。
(何だい、今のは……)
「お? どうしたんだぜ、ミルラ?」
 クーガーには特に変化はない。突然の白昼夢か? いいや、そんなはずはない。その証拠に部屋の中にはナイフが一つ、落ちている。
「よくわからないが、気に入らないね」
「むむ、何かありましたか。それよりも敵が集まってきましたよ! これは戦い甲斐がありそうです」
 迫りくる機械兵にクーガーとくしなは気合十分だ。
 しかし、ナイフを拾い上げたミルラはすっきりしない表情で機械兵たちを眺めて言う。
「うさ晴らしをさせてもらうよ!」
 振り返ると同時。鉄球へと変化したSignorina Torturaが振り回され、前に立つ機械兵の頭部がぐしゃりと吹き飛ぶ。
 アマータのシステム掌握にはまだしばらく時間がかかりそうだ。それまでひと暴れしてやろうじゃないか。
 クーガーが機械兵の群れに飛び込み、雄たけびをあげる。くしなも同様に、されど静かに豪快に暴れまわる。
「頭を潰せば動きが止まるって事はわかってるんだよ!」
 放たれた投げナイフは一つも外れることなく頭部に突き刺さり、機械兵が煙をあげる。
 光線が暴れまわり、爆発があがる戦場でOX-MENはこれまでの激戦の疲れも見せずに敵を薙ぎ払っていく。
「お待たせしました。あと10秒ほどでシステムがこちらのものに切り替わります」
 そこに作業を完了したアマータも参戦。手にした箒から目にも止まらぬ速さで刀を抜き放ち機械兵を斬り捨てる。
「……仮にも清掃員でしたので。最後までこのビルをきっちり掃除するといたしましょう」
 10,9,8,7……
「それじゃあ、これで直に合うまでお別れだねパラドックスマン」
 コツコツと靴の音がする。ミルラがカメラの向けられた中心へと躍り出るとウィンクと共に投げキッス。
 それと同時に監視カメラは切り替わり、放たれた光線は自らと同じ姿をした機械兵を焼き尽くす。
「その監視カメラの映像、本物だと思いましたか?」
 自動的に動く機械兵は定められた行動以上のことはできない。アマータはその光景を前につぶやいたのであった。
 

●●●●●

Chapter22: それは光となりて

 機械兵たちの抵抗は続く。しかし、それももはや風前の灯火のはずだ。
 アマータのハッキングによって光線の射程は大幅に短くなった。
 ミサイルの精度は低く、それを補助するアンテナを展開すれば文字通り新兵が飛んできて撃ち抜かれる。
「あともう少しでついに頂上なんだよ! 頑張ろう、アーシェ!」
 カデルは背中の翼を揺らしながらずらりと並んだ機械兵を前に共に戦う人形、アーシェへと声をかけた。
 さすがは最終防衛線、敵の数も多く密度も濃いが終わりは近い。
「そうだぜェ! 俺達OX-MENの前に立ちはだかる敵は、全てぶっ潰す! 悪が栄えた試し無しってなァ!」
 みだれ撃つように飛び交う光線の中で輝くものがある。乱反射する光線が一つとなり、機械兵を貫いた。
 クロウが『錬成カミヤドリ』にて巡らせた六十四の鏡は無軌道にして道を阻む光を道を切り開く光へと変えていく。
「ディフェンダーとして、前を行かねばならんのでな。ここが最後というのならば続くものの為道を切り開かねばなるまい」
 源次が駆け抜けた後に爆炎があがる。一太刀でミサイルを切り伏せ、火が入るよりも早く次のターゲットへ。
 敵の狙いを誘導し、自身へと攻撃を集中させることでクロウが反撃の機会を作り出す。生まれる隙はカデルとアーシェが埋める。
 そうした戦い方でこれまでよりも多くの敵を前にしても決して劣勢にはならず、むしろ圧倒的な力を見せつけていた。
「ボクが頑張れば新兵も迷子にならないもんね!」
「飛び回ってるのは迷子になってるわけじゃないんだけどな」
 落書きが刻まれた床で身を低くしつつ新兵がぼやく。それでも狙いは正確だ。スコープの先で機械兵が崩れ落ちた。
「それにしても……どこからこれだけの量が沸いて出てくるんだ」
 いかに戦力を集中させているとはいえ限界は必ずあるはずだ。広大な広さを誇るこのフロア。その上から降りて来るにしてはいくら何でも多すぎるのではないか。
「召喚系のユーベルコードを使ってるんじゃねェか?」
「だとしたらボスを倒すまで止まない事になるぞ……?」
 消耗戦を仕掛けられたらまずい。鐘は既に五つ鳴っているのだ。七つ目がリミットだとしたら残された時間は少ない。
  
 ――ごうん。
 
「大変、六回目の鐘が鳴ったよ!」
 カデルが焦りを見せた。源次も歯噛みする。街の人々が眠りにつけばその先で起こる出来事は想像もつかない。こんなところで足踏みをしている場合ではないのだ。
 このまま、パラドックスマンの野望は果たされてしまうのか――?
 
「――お待たせいたしました。掃除はここで最後ですね」
 声とともに嵐が吹いた。アマータのまとめられた髪がその身を包むように跳ねまわり、箒から抜かれた刃が迫る敵を薙ぎ払う。
「ようやく頂上も目前ですか。後はまっすぐ進むだけ、わかりやすくていいです」
 細腕からは想像もできないほどの威力をもってくしなの拳が突き出される。吹き飛ばされた機械兵が他の仲間を巻き込んでバラバラになった。
「これだけいたら適当に振り回しても当たるねぇ。まとめて潰させてもらうよ!」
 鎖が大きな音を立て、鉄球の棘に捕らえられた機械兵を叩き潰す。ミルラが先行していた四人にウィンクをして見せた。
「小難しい事を考えるのはお前らに任せた! 俺はこの魂で殴りつけて進むだけってなァ!!」
 機関銃を、光線を、爆炎をその身に受けてもただひたすらに進み続け、拳を振るう。クーガーの光る拳が一直線に機械兵の体を貫いた。
「ガッハッハ! 祭りに乗り遅れちまったかぁ!?」
 物陰に潜みアンテナを展開していた機械兵が崩れ落ちる。その身に刻まれたのは影の刃。グラディスが突き立てた牙だ。
「大丈夫、まだ間に合うよ! あと少しなんだもの!」
 鉄と石で作られたこのビルに花が咲く。フィオレッタの舞わせた花弁が機械兵たちの動きを鈍らせ、止める。
「そう、ボクらを敵に回したことを後悔させてあげよう」
 機械兵たちの頭上から銃弾が降りそそぐ。死角から現れたマルコは反応すらさせずに彼らの機能を停止させた。
「数多の道を辿り今ここに戦士たちは一つとなる……いい行いですね」
 圧倒的な存在感で心を持たぬ機械兵たちの視線さえも集める。黄金の輝きを背にカプラは道を示した。
「あっ、チャンスじゃーん! 視線が向こうに行ってる間に~~天罰ッ!」
 パラドックス社はハイテクビルだ。当然電気、回線は建物中に張り巡らされている。セレネの指し示すままに審判の槍が機械兵たちを光に包む。
「追撃は抑えてきたよ~。その分退路もなくなったけど……でももう前に進むしかないもんねぇ!?」
 爆発音を背にリーオが言う。その背後で紅い頭巾の少女がサムズアップ。もはや後ろを気にする必要もない。前だけを見ればいいのだ。 
「これで全員集合かな」
「オックスマンは寝坊助さんだけどね」
「……だが、オックスマンも必ずやってくるだろう。おそらく」
「違いねェ。いつもみたいに遅れてすまない、ってな」
 ここにOX-MENは集った。
「はっはっは、見事見事。誰一人欠けることなくここまでたどり着くとは!」
 その様子をどこかから見ているのか。パラドックスマンの声がホールに響く。
「しかしこれで終わりではありませんよ!」
 声とともに。屋上へと続く道を塞ぐようにこれまでよりも巨大な機械兵がうなりをあげて立ち塞がる。
「多数の開かれた砲門、収束する光線。しかも自身の戦闘力を落とすことなく周囲の機械兵を強化する! まさしく最終兵器です! これを突破し、見事私の下へとたどり着いてみせてください! できるものならね!」 
 つまり、立ち塞がる最終兵器を破壊する。それで終わりだ。一気に駆け抜け、頂上へと至れ。
 
「先陣は俺が切る。後ろは任せて構わんな」
「援護は俺がやる。気にせず突き進んで」
 源次の言葉と重なるように新兵が続く。
「それじゃあ、クロウ。ボクたちは……」
「あァ、わかってる。お前ら! 俺たちが派手にぶちかましたら続け! それで頂上だ!」
 カデルがアーシェに繋がる糸を高く掲げるとクロウが仲間へと宣言する。
 最終兵器がうなりを上げ、爆炎を巻き起こし、光を放つ。
 その最中へと、突き進め。
「では……いくぞ」
 源次が鞘に納められた刀に手をやり、目を閉じる。
 
>Inferno_cylinder...ignition
>RDY STRATO_SAVBER
 
 瞳の奥に言葉が映し出されると同時。踏み出した足に青白い電流が走る。
 ぶぅん、という音と共に源次の姿は残像だけを残し、後には崩れ落ちた機械兵だけがある。
 神速の踏み込み、『七閃絶刀(ストラト・セイバー)』は行く手を阻むものを斬り捨て、何人にも捉えられることはない。
 すれ違いざまに一太刀。爆炎があがる。もう一太刀。通り過ぎた後には光が残る。
 さらに一太刀。傷は小さなものだが確実に削れている。
「この先は邪魔されたら困るんでね……」
 新兵の弾が源次の攻撃が届かない頭のそばから順番に、ひとつづつミサイルの発射口を潰していく。
 ひとつ、ふたつ。続いて頭部のアンテナを撃ち抜いた。
「へっ、見事なもんじゃねェか! 俺も負けちゃあいられねェ」
 ミサイルの数を減らされ、最終兵器は光線を乱射し続けていた。無数にも思える光はしかしいずれも鏡を照らし、いつしか一点に集い光の弾を作り出し始めていた。
 鏡から鏡へ、鏡から鏡へ。光が溢れ出さんとしたその時、カデルとアーシェは一歩を踏み出した。
「君に一人を、ボクの祈りを……!」
 糸の先の十の指は祈りを捧げるように。アーシェからも光が溢れ出す。
「よし、やれ!」
「君に光を、ボクの……ボク達の祈りを!」
 クロウが集めた光とアーシェの光が一つとなる。それだけではない。
 OX-MEN一人一人の放つ輝きが合わさり、一つとなっていくのだ。これが『君がための光(フィ・リア・アンサンブル)』。
「街のみんなを護ったりオックスマンの目を覚まさせる為にも、こんな所でボク達は立ち止まっちゃいけないもんね! さぁアーシェ……!」
 聖なる光そのものとなったアーシェとカデルが駆けだすと、最終兵器は光の中へと消え去っていく。
「よし、行くぜェ! 全員続け!」
 その道が屋上へと続くと共に、OX-MENは激しく風が吹き付ける空の元へと到達したのであった。


●●●●●
 
Chapter23: アウェイクニング

「ようこそ、十三の光よ。お待ちしていましたよ」
 拍手と共にパラドックスマンはオックスメンを迎え入れる。
 白いスーツに白い帽子。監視カメラ越しに見たものと同じ姿。
 しかし直に見てみれば豚のような顔と後頭部で蠢く赤黒い触手が邪悪な気配を醸し出していた。
「……しかし、少し数が多すぎませんかね」
「そうだよ! 十四人いるし、アーシェもいれれば十五人だから歌詞にあった光についての問題もこれでばっちりだよ!」
 カデルの声にリーオの後方で赤頭巾さんが「私もいるよ」と板を掲げた。
「まあ、いいでしょう! 大は小を兼ねると言いますからね!」
 そこでパラドックスマンはにやりと笑い、宣言する。
「お気付きの方もいるようですがあなた方は招かれた。私の用意した試練を突破してよくぞたどり着いてくれました」
 巨大な鐘を前に大きく手を広げ余裕の表情。
「何をしようっていうのか知らねぇがお前を倒してしまえば終わりだろ!」
「それは恐ろしい。では、さっさと最後の鐘を鳴らしてしまいましょうか!」
「いいえ、あの鐘を鳴らすのはあなたではありません」
 パラドックスマンの言葉にカプラが告げる。そう、言葉と共に現れたのはあの男。
「遅れてすまない。状況は理解した」
 そう、オックスマンだ!
「なっ!?」
「俺はこの鐘を破壊する!」
「あっ、馬鹿ちょっと待ったオックスマン!」
 驚きの表情を見せるパラドックスマン。
 状況を完全に理解して鐘に向けて剣を掲げるオックスマン。
 急展開にミルラが叫ぶ。先ほど聞いた男の言葉。
『あの鐘は、壊さない方がいい。壊せばあの鐘の力は君たちを飲み込むだろう』
 しかしその声は届かない。オックスマンの剣はまっすぐに振り下ろされ、誘いの鐘を両断した。
 
 …………
 
 ぐらり、とした感覚が全員を包む。上下左右の間隔を失い、自分が何処に立っているのかもわからない。
「なんと面倒なことを……七つ目の鐘とあなた達の光をぶつければそれで済んだものを……」
 その空間の中心で、パラドックスマンは怒りに震えている。
「これでお前の企みも終わりだな! とっとと失せろやオラァ!」
「終わり? そんなことはありません、ただ面倒なことになっただけです」
 少しずつ目が慣れてきた。廊下は無限に螺旋を描き、重力が入り乱れる。前を見れば壁に立つ仲間の姿。向こうからは自分も同じように見えているのだろう。。
「ここは螺旋魔空回廊。この世界では私たちの力は十倍になる……」
「何そのガバガバ計算!」
 終わりのない迷路、出口のない迷路。
「ここであなたたちを討ち果たせば同じこと! 我が主の目覚めの為、贄となっていただきましょう!」
 OX-MENよ、邪悪なる敵を打ち倒し、悪夢に終わりを告げるのだ!

●●●●●
 
 
 ボス戦『パラドックスマン』
 
 POW
 『主よ、滅びと愛に満ちた世界よ』
  【後頭部に生えた無数の触手が醜悪】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
 SPD
 『スカウトノートに刻まれた真実』
 【ありとあらゆる手段によって入手したデータにより】対象の攻撃を予想し、回避する。
 WIZ
 『あなたは我が主の贄にふさわしい』
  【神速で投擲された名刺】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

●●●●●
聖護院・カプラ
鐘を鳴らしてしまえば無条件に”主”を呼び出されていたでしょう。
待ち望んでいました、クラッシャー。
複雑な条件で召喚されるオブリビオン……フォーミュラ級の者が呼び出されてもおかしくはありませんでした。

新たな危機に陥りましたが、問題はありません。
何故ならここにオックスメンが揃っており――
無辜の人々の『生きたい』という願いが届いているのならば、負ける道理はないからです。
今こそ鬨の声を上げる時!
皆さん、名乗りましょう!

”『主よ、滅びと愛に満ちた世界よ』”、動かない物に対しては鈍いと見ました。
宇宙座禅で鍛えた静態でパラドックスマンをスルーし、
浄化の光を視神経に注ぎ込み続ける事で名乗りの時間を稼ぎますので。



Chapter24: ターゲット・イズ・ファー・アウェイ

「どうやらこの空間はねじれのようなものがあるようだな。実際に歪んでいるのか、それともそう見えているだけなのか……」
 高々と声をあげたパラドックスマンの言葉を気にもとめず、オックスマンはふむ、と唸りをあげた。
 この空間を奴は自由にできるのか、十倍の力を持つというのは本当なのか、考えを巡らせる。
 いずれにせよ、油断はできない。ここは敵のフィールドだ。
「と、ところでオックスマン……?」
 と、そこでセレネが冷や汗を垂らしながらオックスマンに問いかけた。
「オックスマンは状況を理解して鐘を破壊したし、きっと何か考えがあるって事だよね!」
「……?」
 表情は見えないがこれは「いつもの」だ。なにを言っているのだ君は、という時の空気だ。
「……あるよね? あるって言って……?」
「ある」
 果たしてそれは真実か。言われたから言っただけという感はぬぐえないが、今はそこは問題ではない。
「人々を眠りから覚ます。そのために奴の計画を破壊する!」
「そ、そうだよね! とりあえずは目の前のパラドックスマンを倒せばいいんだよね!」
 戦場が何処であろうと倒すべき相手がそこにいる。重要なのはそこだけだ。
 
「あぁもう……クラッシャーと言い、パラドックスマンってのと言い……敵も味方も今回好き放題し過ぎだよ、全く」
 用意していたドローンの反応もない。戦いとは事前の準備が重要なのに、と新兵がぼやく。
 この空間に引き込まれたのはパラドックスマンと、オックスメンのメンバーだけ。
 既に稼働していた仕掛けの類は無効化されたと言っていい。
「案ずるな新兵。君ならばどんな距離からでも狙いを外す事はあるまい」
「この状況から距離を取るのも隠れるのも難しいと思うけどね」
 はあ、とため息をつき、しかしだからと言って動きは止めない。ひょい、と携帯食料を放ると複雑な動きで転がり、右へ左へ視線が動く。
「更にこの無茶苦茶な空間……軌道もそう簡単には計算できないよ」
「とはいえ、鐘を鳴らしてしまえば、無条件に”主”を呼び出されていたでしょう。クラッシャーの行動はあの状況では最善でした」
「うむ。俺もそう判断した」
「本当かなぁ……」
 カプラの言葉にオックスマンも同意する。セレネはまだ疑いの眼差しだが、そこは問題ない。
「複雑な条件で召喚されるオブリビオン……フォーミュラ級の者が呼び出されてもおかしくはありませんでした」
「……誰かを生贄に上位存在を呼ぶ、なんて許せないしね」
 リーオもまた、決意を新たに帽子を掴む。
 
「それにね、オックスマンも来て、本当に全員集合!だね!」
 そう、カデルの言う通りだ。今ここにOX-MEN全員が集った。
「ハッ、そうだな。最終決戦らしくなってきたじゃねェか」
「オックスマンさんも加わったし、わたしたちが力を合わせたら、絶対に勝てるんだから!」
 クロウが笑い、フィオレッタも拳に力をこめる。
「そう、その通りです。ここにオックスメンが揃っており――無辜の人々の『生きたい』という願いが届いているのならば、負ける道理はないからです」
 カプラは言う。世界の命運は我らオックスメンに託されたと。
「永き時を、世界を越えた我らの願い……あなたたちに阻ませはしませんよ!」
 パラドックスマンは後頭部から触手を伸ばし、それを支えに足を地から離す。その表情からは強い決意が見て取れた。
 だが、それを許すわけにはいかない。
 カプラもまたその身を宙へ浮かべ、金属で作られた体を組み替える。
 神々しい輝き。『経法(キョウボウ)』。浄化の光。宇宙座禅の姿勢から放たれる言葉、それは。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アマータ・プリムス
ふむ、これが最終決戦ですか
では盛り上げていきましょう

アルジェントムから取り出すのは愛用のイーリス
これで当機はBGMを奏でさせていただきましょう
アルジェントムをそのままアンプへと変形させ接続
戦場全てへ音を届けます
螺旋を描き重力が入り乱れようと音は何処へだって届きますから

「最終決戦らしくアゲてまいりましょう」

そのままUCを発動しここにいるオックスメンの皆様にバフを
飛んでくる名刺はイーリスで撃ち落としながらステップを踏み躱します

「これぐらいのパフォーマンスは朝飯前です」

戦局に合わせ曲調を盛り上げ皆様の鼓舞を続けます
トドメに差し掛かるとこにサビを持ってくるくらいの調整を

さぁ、フィナーレです


グラディス・ドラモンド
ガハハハハハハハ!!!!!!!
随分と余裕ねぇじゃねぇか!あぁ!?
いけねぇ、いけねぇなぁそれじゃあよぉ!テメェも悪党なら最期の最期まで笑え!!!俺様達邪魔者を潰す為に頭を使え!!!演技でもガチでも、這いつくばって噛み付けや!!それが、テメェの下に付いた奴等へのケジメってやつだろうがよ

指定UCで他の奴等を強化、俺様自身は防御に集中し、影から出てパラドックスマンの前へ出るぜ、攻め手は他の奴等に任せ、俺様は奴の攻撃を貰う。強化された攻撃だぁ?いいぜぇ……テメェの攻撃か俺様の耐久か……我慢比べといこうじゃねぇかっ!!!!



Chapter25: キャスト・ユア・ポジション
 
「ぬううっ、この光は……!」
 眩しさにパラドックスマンは目を細めた。
 それは遥か宇宙の彼方より来たる仏の化身。願いの集うもの。
「そう、私こそが【OX-CASTER】――皆さんの言葉を届けるため、役目を果たしましょう」
 カプラの光が強くなる。投げかけられた言葉は、力を――立ち位置を、示す。
「今こそ鬨の声を上げる時! 皆さん、名乗りましょう!」
「……ふふ、いいでしょう。全員が名乗りきるまで立っていられるかは知りませんがね!」
 パラドックスマンは笑うが光はますます強くなる。
「この光は私だけのものではありません。人々の願いと、オックスメン全員の光です」
「そう、貴方の力が十倍になろうとも、我々オックスメンはそれ以上! ……あれ? 今十五人位でしたっけ?」
 十三の光――数はそれよりも多くなったが、歌われた言葉の通りに。人形や背後霊(?)なども含めればそれ以上だ。
 螺旋の先にある空を指さし、くしなは言った。
「天の見える場所、それこそがこの私の真価を発揮する場所! 【OX-CRUSADER】、朝倉くしな、参りますとも!」
 その指先に集った光が、仲間を照らす。
 光に光が重なり、より強い光となる。
 世界に刻まれたその力は、誰にも消せはしない。
 
「そうだ! 何かよくわかんねぇが、舐めんじゃねぇぞッ!」
 拳と拳を打ち付ける。衝撃と共に光があふれる。
 曲がりくねった空間の向こう、パラドックスマンをクーガーは真っ直ぐに見つめていた。
「ほう、いい顔をしている……ですが、気勢をあげるだけでは私を止められはしませんよ!」
 パラドックスマンはその視線を受け止めると、大きく手を振り上げる。
 その手が下ろされると同時。クーガーの頬に赤い線が生まれた。
 鋭い刃物のように通り抜けたのは、名刺だ。ただの紙のように見えるが恐ろしい力を秘めていることは疑いようもない。
 だが、これまでの戦いで傷は何度も受けてきた。今更傷が一つ増えたところで、倒すべき敵を目前に立ち止まるはずがない。
 今、お前の前で突き進もうとしているモノは誰かなのか、答えを教えてやる!
 二枚目の名刺を握りつぶし、クーガーは吼えた。
 気合と共に頬の傷が消え去る。
「俺の立ち位置は癒す者、【OX-MEDIC】だッ!!」
 流れた血は戻らないが、進んだ一歩も戻ることはないのだ。
 
 クーガーが投げ捨てた名刺がくしゃくしゃになって転がる。
 それを視界の端におさめながらマルコが言った。
「フーン、能力が十倍になるんだか何だか知らないけど、それでボクらに勝てると思ったの?」
「無論! 私の力はそれだけではありませんからね!」
 パラドックスマンは余裕の表情だ。
 自信があるんだな、と思いながらマルコは辺りをぐるりと見渡す。
 上下左右、距離感も狂った世界。何よりも知らなければいけないのは、この戦場の事だ。
「この空間って、普通に撃ったらどう飛んでいくんだろ」
 まずは試してみよう、と歪んだ世界の中で敵を正面に捕らえ、ひとつ銃声を響かせる。続けて、二つ。
 真っ直ぐ描くはずの軌道は曲がりくねり、時に空間を飛び越えながら上下左右に弧を描いた。
 パラドックスマンは最初に立っていた位置から一歩も動く事はなく、にやりと笑ってみせる。
「ふ、この程度避けるまでもありません。もっとも、ここが螺旋魔空回廊でなかったとしても、あなたのデータは収集済み。このスカウトノートに刻まれた真実が、その弾丸を私に届かせない!」
「へぇ、動きもせずに避けちゃうんだね。でも、ボクは【OX-TRIGGER】……ボクの行動が、みんなの動きの起点になるんだってさ」
 しかし、マルコは挑発をものともせず言ってのける。
 その言葉通り、OX-MENは後に続く。
「ええ、そうですとも。当機も盛り上げていきましょう」
 ガコン、という音と共にアマータのアルジェントム・エクス・アールカが開かれた。
 複雑な機構が目まぐるしくその姿を変えていく。並行してコードを投擲、接続。
 ギュイン、と大音量が辺りに響いた。
「最終決戦らしくアゲてまいりましょう」
 その指が爪弾くはイーリス・カントゥス。蒸気機関式ギター型マイクである!
 旋律は螺旋を越え、重力にとらわれることなく自由に羽ばたく。
「【OX-DOLL】、戦場全てへ音を届けます。螺旋を描き重力が入り乱れようと、音は何処へだって届きますから」

「すごいすごい! ボク達も負けていられないね、アーシェ!」
 耳に入る音楽に思わず体が動き出す。カデルは小さな羽を揺らし、アーシェに語り掛ける。
 その言葉に応えるように、人形は踊り出した。
 パラドックスマンは正面にいるようでずれた場所にいる……マルコの放った弾丸がその事を指し示している。
 ならば、その道筋を辿ろう。辺りに響く音に乗って目指すは、ただ一つ。
「パラドックスマンを倒す事、それがボク達のやるべきこと! 【OX-MELODICA】はボクとアーシェ、二人の立ち位置だよ!」
 ぐるんと螺旋を描きながらカデルとアーシェは飛ぶ。
 その姿を追いながら、フィオレッタは花精達を喚び起こした。
「咲かせる花はフリージア、巡る蔦はメリアデス……」
 ここがパラドックスマンの力を高めるフィールドだというのならば、こちらも同様に力を増す舞台を整えればいい。
 花精クローリスの力で咲き誇るフリージアは敵の感覚を惑わせる花の香り。メリアデスの樹は仲間の助けにならんと枝を伸ばす。
 生まれた花畑はマルコやカデルの道を辿り、視覚的にこの歪んだ空間のつながりを示していた。
「ほう、これは……やりますね」
 花を踏み荒らしながらパラドックスマンは笑う。
「私は、【OX-FLOWER】! 花たちの力で、この螺旋魔空回廊を切り開いてみせるんだから!」

 ねじれた螺旋の向こう側。リーオはパラドックスマンに狙いを定める。
 アマータの歌声は彼の耳にも響く。ぐっと拳を握るといつも以上のパワーを感じた。
「なんかこっちの力も凄いことになってるけど、敵のパワーは十倍だって言ってるんだよねぇ」
 その力を確かめつつ辺りを見渡すと、さっきまで隣にいたはずの仲間が少し移動しただけで遥か彼方に見えている。
 でも、手を伸ばしたら触れられたりして……『赤頭巾さん』もちょこまかと動き回り、近づいたり遠ざかったり。花畑とそれの届かぬ回廊を行き来してなんだか楽しそうだ。
「なーるほど、そういうことね。後は自分の目と足で確かめるしかない、か」
「そういう事だ、リーオ」
「うわっ、びっくりした」
 見覚えのある黒鎧。オックスマンの登場は予想外だ。
「オックスフラワーの出したあの花……俺が目覚めた時、一輪枕元に置いてあった」
 急な語りだ。赤頭巾さんも「いきなりどうしたの」とプラカードを出す。
「いや、あの花には止まるんじゃないぞ、という意味があると聞いてな……敵の元にたどり着くまで手当たり次第に走り回っているのだ」
「完ッ全にさっきまでの俺の話と無関係じゃん! それにフリージアにそんな花言葉はないと思うなァ」
「……そうなのか?」
 首をかしげる。
「オックスマンさんはこの状況でも変わらないねぇ。……結局、勝利への道は普段通りに行くのが一番って事か」
「そうだ、それを俺も言いたかったのだ」
 満足そうにオックスマンはそれだけを言い残すと、また見当違いの方向へと歩み出す。そっちはさっきお前が来た方だ。
「……ま、俺も【OX-STRANGER】……オックスマンさんと同じくどこから来て何処に行くのか、最後までわからない、ってね」
 それだけ言うとリーオは銃を担ぎ上げ、また違った方向へと歩を進めた。
 
「……どうだ、スナイパー」
「ん、ドールとフラワーのおかげでなんとか道筋は見えてきた」
 源次の問い掛けに、新兵が答える。視覚と、音の反響……既に飛ばしていたドローンは駄目になったが、携帯していた各種センサーはこの空間でも使える。いつもの戦法にはデータが足りないが、時間をかければ十分にパラドックスマンを捉えることは可能だ。
「みんな前に出て動いてくれてるから……狙撃体制はとれる」
「っても、ほっといてくれるほど甘かァねえだろ」
 クロウのいう事ももっともで、名刺の投擲は神速だ。狙撃体制に入ったところを狙われたら回避は難しい。
 だからこそ、ミルラは新兵に問う。
「それでも、スナイパーの一撃が決まれば、あいつがどれだけ強くなってようがイチコロ。そういう事でいいんだよね」
「ああ。ただし、一発限り。それに、仲間に誤射なんてことになったらえらい事だからね」
 十分な計算と狙いを以って放たなければならない。それほどに、この一撃は重い。
 だが、彼らはOX-MENであり、仲間である。勝利への道筋を示すというのならば、その助けになる事に何の迷いがあろうか。
「上等! あたしはサーチャー。【OX-SEARCHER】……一番の攻撃チャンスをサーチするのさ。ジャマー、ディフェンダー、準備はいい?」
「どのような状況になろうとも、討ち果たせば済む事。俺達ならばそれが可能となる――【OX-DEFENDER】の役目、果たして見せよう」
 スナイパーがその弾丸を放つまで戦い抜く。その決意をもって源次は刀に手をかけた。
「ハッ、ビルを登っただけで終わりじゃ余りにも呆気ねェもんな。派手に暴れて引っ掻き回すぜ!」
 ぶん、と巨大な魔剣を振り下ろす。真っ二つになった名刺がはらりと落ちる。
 クロウは新兵に向けていた視線を源次とミルラへ移すとにやりと笑ってみせた。
「【OX-JAMMER】らしく、な」
 これ以上の言葉は要らない。三人は互いの役目を果たすため、戦場を駆ける。
 その背を見送りながら新兵は、自分のすべきことの為にデバイスをのぞき込んだ。
「わかってる。俺も【OX-SNIPER】だ。狙いは……外さない」

「さすがはオックスメン! 情報の通りです! しかし私を倒すことなどできはしません!」
 パラドックスマンはパラパラとノートをめくる。
 視線はノートから外さずともその巨体に似合わぬ軽快な動きで回廊を渡り歩き、ここまで一撃たりとも直撃を受けていない。
「このスカウトノートにあなた方の動きは記されている……何より螺旋魔空回廊は我らの得意とする戦場。もはやあなた方は主の復活の贄となる以外の道はないのだ!」
「そんなのやってみないとわかんないじゃん!」
 セレネは打ち付けられる触手をぴょんと飛び越え、杖を突き付ける。
 近くにいるようで遠くにいるパラドックスマンの方を向いていたかはわからないが……
「理解しなさい、勝ち目はないと!」
「贄になる気はさらさらないし、ボクは状況は理解した!」
 セレネが叫ぶと同時。ピシャンとパラドックスマンの眼前に雷が落ちる。直撃こそ免れたものの、その光に一瞬目を細めた。
「ほう……まぐれとはいえ私の予想を超えるとは……」
「ほらみて! 情報なんかじゃボクたちを理解なんかできないよ! 【OX-HOLY】の光がお前を倒しちゃうんだから!」
「言ってくれますね! しかし私の本領はデータだけでは……むっ」
 その瞬間、パラドックスマンが突如飛び退く。彼の去った後に飛び出してきたのは、黒い影。
「あー、くっそ! 今の完璧に捕まえたと思ったのによぉ!」
「ほう、影に潜んでここまで来ましたか! しかしその能力もこのノートに記録されているのです!」
 このタイミングでかわされるとは。こちらのデータを揃えているというのは伊達ではないようだ。
 が、ここで気付く。この空間は彼の能力を十倍にする。そう言っていたはずだ。
「ガハハハハハハッ!! 十倍とか言ってた割には結構危なかったんじゃねぇのか? そんなんじゃ俺様たちを倒せるとはとても思えねぇな!」
「……ふむ、確かに私は本来戦闘を得意とするタイプではない……ですが、いいでしょう。お望みどおりに少し本気をお見せしましょうか」
 す、と帽子に手をやり胸へと押し付ける。慇懃無礼な態度は確かに自信に満ちている。
「へっ、そうでなくちゃ倒し甲斐がねえよなぁ! 行くぜェ、俺様は【OX-PET】! 大なる公爵にして、誇り高ぁい影の狼だぁ!」
「結構! 私はパラドックスマン……偉大なる龍の僕にして、主の望むがままに人の子を導く者!」
 うなるグラディスを前に、パラドックスマンもまた宣言する。
 ぐん、とその身に纏う気配が変わった。その背に生やした触手は醜悪に変化し、手にしていたノートはいつの間にか宙に浮いて風もないのにパラパラとめくられる。
「あなた方の力は我が主の贄にふさわしい! 是非復活の狼煙として……」
 手にした帽子をかぶりなおし、腕を高く。
「華麗に散っていただきたい!」
 敵対するもの全てにその名を知らしめるように、十五枚の名刺がその手から放たれた。
 
「……む」
 とっさに放った風はその勢いを破壊し、力を失った名刺がひらひらと地に落ちる。
 すさまじい速度だ。これを完全に破壊するのは容易ではない。
 拾い上げ、眺める。
 パラドックスマンの名が刻まれたその紙切れには念のようなものが籠められ、呪いの気配を感じる。
 だが、彼にとっては何であろうと些細な事だ。口にするのは、いつもの言葉。
「……遅れてすまない。状況は理解した」
 どのような目的があろうと、それが人の命を蝕むのならば。
「俺の立ち位置は、【OX-CRUSHER】……俺たちOX-MENが、お前の悪事を、破壊する!」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

リーオ・ヘクスマキナ
うーん、どうやって此処を出るかは後で考えるとして。とりあえず彼を倒させてもらおう
……誰かを生贄に上位存在を呼ぶ。なんて、許せないしね


なんかこっちの力も凄いことになってるけど、それは敵も同じなんだよねぇ。なら、普段通り行こう

後方からライフルでの前衛への●援護射撃を行いつつ、予備マガジン内のUC用弾丸に魔力を充填
充填が完了し次第、ビーコン弾を装填。狙いやすい最大目標に対して撃ち込む

……流れる魔力で体中痛いし気持ち悪いしで、吐きそうな気分……
けど耐えられないほどじゃあない、かな
……それじゃ、こっちからも鐘を1つ鳴らそう。魔法の終わりを告げる、零時の鐘をね
灰すら残さず消え去れェ!


マルコ・トリガー
フーン、螺旋魔空回廊ねえ
十倍になるんだか何だか知らないけど、それでボクらに勝てると思ったの?

この空間って普通に撃ったらどう飛んでいくんだろ
まずは色々試してみるか

へぇ、全弾回避するなんてやるね
データで攻撃予想か、フーン
【錬成カミヤドリ】で銃を増やしても同じ事になるかな
回避する場所を狭めたらどうなるかな
ご自慢のデータとやらを思う存分使わせてあげよう
縦横無尽の攻撃でボクに夢中にさせてあげるよ
ま、ボクの攻撃が当たらなくても、誰かの行動のサポートにはなるよね
ボクの攻撃がトリガー、起点となって他の立ち位置が上手く合わせてくれる
実にOX-MENっぽいよね
パラドックスマン、君にボクらの動きが本当に読めるかな?


セレネ・リノークス
オックスマンは状況を理解して鐘を破壊したし、きっと何か考えがあるって事だよね!…あるよね?あるって言って…?
…えっと、とりあえずは目の前のパラドックスマンを倒せばいいんだよね?
もちろん贄になる気はさらさらないしボクは状況は理解した(つもりだ)から、全力でいくよー!

ボクは周りの状況に応じて動いていきたいかな!
というわけで、まずは弱点が分かった方がボクもやりやすいし【神託の道】でルートを表示してっと…。

後は状況とタイミングに応じて、弱点を【串刺し】するのを狙ってみたりかな。できれば背後が取りたいから取れそうなら取る!
もし前衛が多そうだったらごちゃごちゃしちゃうし【審判の槍】で後衛するのもアリかも。



Chapter26: ジャミング・ア・ビギニング

「おいおいおいおい、大口叩いといて逃げ回ってるんじゃねぇ!」
「これは異なことを。止まったら斬りかかってくるのでしょう?」
 めまぐるしく動き回るパラドックスマンに、グラディスが叫びをあげた。
 漆黒の爪は幻のようにすり抜け、切り裂いた床は影に染まる。
「くそっ、今度はあっちか!」
 頭を振ってその姿を探すが、既に距離は遠い。このねじれた空間で一撃を叩きこむのは相当に困難だ。
 ならば遠距離はどうか、というと……
「ああもう、これだけ撃って当たらないなんて」
「言ったはずです、あなた方のデータはそろっていると! そこに私の知能が合わさればこれくらいは造作もない事!」
 リーオも射撃には自信がある方だが、まともな命中弾はゼロといっていいだろう。それは自分だけではなく他のメンバーも同じ。
「それに、あの名刺も困るなぁ。さっきからオックスマンさんやられまくってるし」
 そう言って視線を移せば、またしても同様の光景。
「隙ありです!」
「なんだと! グオオオオオーッ!」
 名刺がオックスマンの頭に見事に突き刺さり、呪いの力がその身をむしばんでいく。
 そしてパラドックスマンの背から生えた触手は無軌道に暴れまわり、辺りを痛烈に打ち付けている。
 この状況で足を止めるのは致命的だ。触手の追撃がオックスマンを勢いよく吹き飛ばした。
「……無事か、フラワー」
「うん、ありがとう!」
 他方、源次の一閃がフィオレッタへと迫った一撃を斬り飛ばす。びちびちと宙を舞った触手が壁に大穴をあけた。
 フィオレッタの咲かせた花々は空間のつながりを認識するのに役立ってはいたのだが、それだけでは攻めきれない。
「どうしました、私を倒すのではなかったのですか!」
 一人でこの人数を相手取りながらこの余裕。
 いうだけのことはあるな、とリーオはため息をつく。
「嫌になるよね。まともにこっちの攻撃が当たってないんだから」
「ほんとほんと! 絶対当たるー、って思ったら避けるんだもん! 後ろに目がついてるみたい!」
 と、いつの間にかの隣に立っていたマルコとセレネが愚痴をこぼしていた。
 そうだ、まずは一つでいい。どれかを崩さなくては。
「ねね、ちょっと聞いてよ! まずはさ……」
 セレネがちょいちょい、と二人を手招きし、しゃがみ込む。何やら考えがあるようで――
「フーン、なるほどね……」
「そうなるとつまり……」
 ちら、とリーオは自分の背後に目を向けた。赤頭巾さんはやる気満々に刃物をぶんぶんと振り回しているが、彼女ではこれは難しいだろう。
 狙いを果たすならば奥の手を使わなければならない。決して代償は小さくないが――
「……手は、あるよ。命中さえさせられれば、確実にあれは封じられる」
 決意をこめて、リーオは言う。何とか出来る手段があるのならばもはや躊躇っている場合ではない。
「だったら奴の注意はボクが惹きつけるよ。ご自慢のデータとやらを存分に使わせてあげよう」
 すっ、と立ち上がりながらマルコがぽつりと言う。
 それを聞きつけ、セレネも杖を掲げた。
「じゃあ、ボクがあいつまでのルートを作るよ! データを扱えるのが自分だけだとは思わないでほしいもんね!」
 これでも電脳魔術師なんだからね、と胸を張る。実は彼女、OX-MENの中でもデータを用いる能力に於いては上位に位置しているのだ。
「あの触手の動きは自動的っぽいし……あの花の散り方と音の反響……あっちから気をそらせれば……うん、いけるいける!」
 複雑な計算をこともなしに済ませると、セレネがにっこりと笑い、告げる。
「誘導は任せて! 何とかできるんでしょ? 期待しちゃうよ!」
「オーケー、少し時間をちょうだい」
「準備が出来たらすぐにボクも仕掛けるよ」
 前線では今も戦いが続いている。もたもたしては居られない。
 リーオは予備のマガジンを手に取るとぐっ、と力をこめる。グラグラと、頭が揺れる。流れ込んでいく魔力を感じながらリーオは目を閉じた。
「……よし、いつでもいいよ」
「ん、わかった」
 マルコはそれだけを言うと、視線をパラドックスマンへと向けた。
「さっきは避けられたけど……銃を増やしても同じことになるかな」
 かちゃ、と音がした。一丁、二丁と銃が飛ぶ。
 それぞれが意志を持ったかのように縦横無尽に飛び回る銃の姿はどれも同じ。すべてマルコの本体と同一だ。
 放たれた一発の銃弾が足下を貫いた。
「ふむ、これはオックストリガーの『錬成カミヤドリ』……しかし、数が増えただけでは私にあてることはできませんよ!」
 数えきれないほどに数を増やした銃器を前に、パラドックスマンは姿勢を低くする。
 銃弾は頭上をすり抜け、続いて放たれる弾丸の嵐も合間を縫ってかわしていく。
「ま、ボクの攻撃が当たらなくても、これが引き金になれば十分なんだよね」
 しかしマルコは焦りも見せずに言ってのける。
 今、パラドックスマンの意識はマルコの銃に向けられている。その隙をセレネは見逃さない。
「分析……展開……軌道表示……完了っ! よし、いっくよーっ!」
 示されたのは『神託の道(オラクル・ルート)』。杖が指し示すのは、弱点への軌道。
 その道が示すままに雷が走る。幾重にも別れた光は暴れまわる触手の間をすり抜け、パラドックスマンへと迫った。
「むうっ、銃弾に気を向けたところで……しかし、その攻撃も私は知っています!」
 だが、それさえも届かない。巨体が風を切って宙に浮く。その下を雷は通り抜けた。
「避けたと思った? でも、狙いはキミじゃないんだよね!」
「な、なにっ!?」
 雷の後を追って、一発の銃弾が飛ぶ。
「……流れる魔力で体中痛いし気持ち悪いしで、吐きそうな気分……」
 銃を構えながら、リーオはその瞬間を待つ。セレネの示したルートに合わせて放った一発の弾。
「けど、耐えられないほどじゃあない、かな」
 狙いは最初からパラドックスマンではない。彼らの狙いは。
「なんと、狙いはノートでしたか!」
 雷に続いてリーオの弾丸が命中する。
 だが、それだけだ。スカウトノートには小さな焦げ目が残っただけ。
「しかし、この程度の攻撃でどうにかできるほどヤワではありませんよ!」
 ここだ。今こそその時だ。後はあの”ビーコン弾”が導いてくれる。
「……それじゃ、こっちからも鐘をひとつ鳴らそう。魔法の終わりを告げる、零時の鐘をね」
 ぐっと歯を食い縛りながら、流れるような動作で本命を装填。後は引き金を引くだけ。
「灰すら残さず、消え去れェ!」
「むうっ!?」
 それは終わりを告げる鐘、『赤■の魔■の加護・「化身のサン:魔法の終わる時」(パラサイトアヴァターラ・オークロックベル)』。
 命中したビーコン弾に吸い込まれるように、広域殲滅用重魔術弾が空間を切り裂く。
「……まさか、ここまでとは。これはデータにはなかった」
 光が、スカウトノートを飲み込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

瀬名・カデル
オックスマンも来て、本当に全員集合!だね!

なんだか変な空間にきちゃったけど、やるべきことはただ一つ
パラドックスマンを倒すこと!

さぁ、一緒に倒そう、アーシェ
OX-MENのみんなと一緒ならきっと出来ないことなんてないよね!

廊下が無限に螺旋を描こうとも
惑わされずに
ただまっすぐに飛んで立ち向かう

正面からではなくできるだけ死角から魔法やアーシェを使って補助攻撃をするけど
この状況でなかなか力が出ない人もいるかも…
そんな時は相手の攻撃からかばうように動きたいな

UC「鈴蘭の嵐」を使用
パラドックスマンを惑わす、あるいは飛んでくる攻撃を一時的に受け止めたりにも利用したい


ミルラ・フラン
【DJSS】
…ま、全部ブチ殺せば済む話だね
あたしはサーチャー。一番の攻撃チャンスをサーチするのさ
ジャマー、ディフェンダー、準備はいい?

んじゃ、踊るよ!
片手には棘付き鞭に変化させたSignorina Tortura、対の手にArtiglio
【ダンス】のステップを踏みつつ、中衛の位置から触手を斬るようにナイフを【乱れ撃ち】し、鞭で【蹂躙】する
踊るように鞭を振るう動きの中での仕草に【存在感】と【誘惑】をこめて
ふん、それはあたしの【残像】だよ!そんなにハーレムに入れたかったのかい?

目眩ましのAttraente Cremisi、薔薇の花を【全力魔法】を【2回攻撃】し【乱れ撃ち】
やっちまいな、スナイパー!


クーガー・ヴォイテク
パラドックスマンを眼前に捉える。
祈りを捧げ、覚悟を決めることで自らを鼓舞し気合いを入れる。
【神速で投擲された名刺】を怪力によって握りしめた拳で殴りつけ
呪詛耐性・激痛耐性に身を任せ、鼓舞するように吼える

「舐めんじゃねえぞッ」
湧き上がる闘争心
こんなもので誰が止まるか
今お前の前で突き進もうとしているモノは誰かなのか
答えを教えてやる
「立ち位置は癒す者"OX-MEDIC"だッ!!」
傷だらけで着いたが故の、身に込められた聖なる光の力は輝きを失わない
癒すためには傷つかなければならない
そんな後手だけじゃ世界は救えない
だから、これから先、生まれるはずの傷を先に癒す!
「これも俺の仕事ってなぁ!!」
めっちゃ殴る



Chapter27: セイヴ・ザ・ワールド

「ふむ、あなた方のパワーは予想以上だ。ならば私も少し目線を変えましょうか」
 パラドックスマンは名刺を手に取る。
 狙うは一人。ここを損なえばオックスメンの力は一気に削がれるに違いない。
「その耳障りな音楽を止めてもらいましょう! 私はクラシック派なのです!」
 パラドックスマンとアマータ。二人の視線が交差し、神速で名刺はその手を離れた。
 流れるダンスミュージックが止まる。代わりに聞こえるのは腹に響く重低音。
「なるほど、それではハードロックでお応えしましょう」
 指先が激しく動き回ったかと思えば、イーリスがグルンと回る。
 足さばきも苛烈に、回廊を踏みしめる。
「&%$#です!」
 掛け声とともに打ち付けられたギターが大きな音を立てる。
 彼女を狙った名刺はその力を封じることなく地に舞い散った。
「あなたも一筋縄ではいかないようだ。ですが、そのような発言は控えた方が良いかと……」
「これぐらいのパフォーマンスは朝飯前です、$#@%野郎!」
 
「ハハッ、いうじゃねェか! 俺たちも続くぞ!」
 ノートは消滅し、名刺の狙いも乱れ始めている。この好機を逃す訳にはいかない。
 クロウは外套を脱ぎ捨て、ためらいもなく己の親指に牙を立てる。血の味がじわりと広がった。
「我が身に刻まれし年月が超克たらしめ眠る迅を喚び覚ます……」
 言葉と共に自らの剣へと指を押し当て、柄から剣先へと一本の紅を伸ばす。
「獄脈解放(ヘレシュエト・オムニス)――凌駕せよ、邪悪を滅する終焉の灼!」
 祝詞を言い切ると同時、全身に紫電が走る。『沸血の業火(メギドフレイム・ブラッド)』が燃える。
 道筋は既に『神託の道(オラクル・ルート)』が示した。まずは一太刀、浴びせてなやればなるまい。
「ノートが失われたからといって、それだけで勝てるとは思わないでいただきたい!」
 しかしパラドックスマンも加速する疾走の先へと名刺を投擲、その力を封じんと呪いが迫る。
「……そうはさせん」
 が、それは一刀のもとに切り捨てられた。
 源次もまた、踏みしめた床板に雷を走らせながら駆けている。
 言葉は交わさず、触手を切り払いながら左右に分かれて己の立ち位置へと向かう。
「ふむ、流石ですね。……で、私のお相手はあなたという事ですか、サーチャー」
 二人の男の向こうには、一人の女の姿があった。
 雷光の残滓を踏みつけて、ミルラは笑う。
「そういうこと。ダンスの始まりだよ、パラドックスマン!」
 右手の鞭をしならせ、左手のArtiglioの刃に反射した光を見せつけて。
「ほぉう、お相手していただきましょうか……足を踏んでしまうかもしれませんがね!」
 余裕さえ感じさせる笑みに向けて、触手はただ破壊の意思だけを宿してひたすらにその身を打ち付けた。
 一発、二発……しかしそれが彼女に触れることはない。
 いつの間にか耳に入るメロディが変わっていた。アマータはアップテンポでありながら優雅なる流れを作り出す。
 ミルラの足さばきは舞うように――むしろダンスパートナーをリードするように触手の動きを誘い込み、促していた。
「そいつは私の残像だよ! そんなに手を伸ばしちゃってまあ……そこまでハーレムに入れたかったのかい?」
 ビルの中で出会った男。あれはパラドックスマンに関係するもの。そう踏んでミルラは問いかけたのだが――
「……ハーレムだと!? オックスサーチャー、私はあなたを選定した覚えはありませんが……」
 パラドックスマンは驚きの顔だ。どうやら初耳であったらしい。
 ちょっとした軽口のつもりだったが、新たな謎を生んでしまったようだ。
「もしあのお方がそう言ったのであれば、あなたの命だけは救ってあげても構いませんよ?」
「冗談! 誰があんたなんかに媚びるかってんだ!」
 一斉に放ったナイフと名刺がぶつかり合い、地へと落ちた。
 
「いやあ、恐ろしいですね、あの触手!」
 繰り広げられる戦いの光景に印を組んだくしなは思わず声を漏らした。
 しかし傍らの新兵はデバイスの操作に夢中だ。
 ここまでの戦いで得たデータを叩きこみ、狙撃の為の準備を整えていく。
「『神託の道(オラクル・ルート)』のデータは正直助かる……これで計算も一気に進むぞ」
 新兵の声にデバイスを覗き込めば、様々な数字が流れていた。
 うげぇ、と頭を抱え、くしなは言う。
「大変ですね、スナイパーというのも」
「……っていうかなんで俺の近くに? クルセイダーってどっちかというと前に出ていくタイプじゃなかった?」
 そこで新兵は視線を向けずにくしなに問う。突入時の戦いで積極的に前衛として拳を振るっていた姿が脳裏に浮かぶ。
 だが彼女はそこで、意外な言葉を口にした。
「うーん、ちょっと狙いがありまして。それまで力を溜めておこうかなーと」
「……?」
 両の手を合わせ、内よりあふれる光をくしなは留め続ける。
 何かが見えているのだろうか。新兵の顔に疑問符が浮かぶ。だが、必要な事だというのならば口を挟むこともあるまい。
「それに、こうしてお傍にいないとパラドックスマンを倒す前にやられてしまいそうですので」
 いつの間に動いていたのか。
 握りつぶされた名刺を手から放り投げ、くしなは笑みを浮かべた。
 
「クーガー、無茶しないで! それじゃ持たないよ!」
「いいや、ここがチャンスだ! 癒すには傷つかなきゃならねぇ!」
 真正面にパラドックスマンを捉え、クーガーは駆ける。
 カデルはその背を追って飛んでいた。視線の先のクーガーは傷だらけだ。いくら癒しの力があるとはいえ、回復の前に倒れてしまえばどうしようもない。何より、その力を封じられてしまったら――
「アーシェ、クーガーを守るよ! きっとそれがみんなの助けになるから!」
 カデルは指先から光を放ち、もう片方の手で糸を操る。
 アーシェはくるんと宙返りを披露しながら、クーガーへと迫った名刺を叩き落とした。
「おらああああっ! つっかまえたぜ!」
 暴れまわる触手をくぐり抜け、真っ直ぐにその拳は振るわれる。しかし――
「ふっ、私は体術もたしなんでいましてね!」 
 その右手はパラドックスマンに受け止められる。
「関係ねぇっ!」
 今度は左手を繰り出す。また受け止められれば足が出る。
「ふむ、これは面倒な事だ……」
 ちら、と視線を後ろに移す。主に授けられた触手の力は強大だが弱点もある。
 速く動くものを追い続ける……源次とクロウの剣技に翻弄され、クーガーの迎撃には回せない。
「触手も駄目、名刺も駄目と来ましたか……ですが!」
 何度止められようが続く攻撃にパラドックスマンも苛立ち始めた。
「オラオラオラァァァっ!」
「……私を甘く見ないでいただきたいッ!」
 ごうん、という音と共にクーガーの体が地に伏せた。
 パラドックスマンの猛烈な頭突きがクーガーにめり込んだのだ。
「くっ、手間を取らせてくれましたね……」
 白い帽子が宙を舞う。自由になった手には、名刺が握られる。
「しかし今、その癒しの力を封じ、とどめとしましょう! 我が主の贄となれッ!」
「そうはさせないんだよ!」
 その時、大きく振りかぶった手に鈴蘭の花びらがまとわりついた。
 はっとなって辺りを見渡すと、声の主はカデルだ。
 差し出した両の手から鈴蘭が舞い上がる。『鈴蘭の嵐』がカデルの念ずるがままに咲き誇り、その呪いを振り下ろさせない。
「くっ、ならばこのまま踏みつぶして……」
「アーシェっ!」
「何っ!」
 ずん、と衝撃が足にはしった。いつの間にか死角に回り込んでいたアーシェの、予想外の一撃にパラドックスマンもたたらを踏む。
 ついにオックスメンの攻撃がパラドックスマンに届いたのだ。
 
 だが、それで倒れるほどヤワではない。すぐさま体勢を立て直し――
「させるかよぉっ!」
「なっ、何故動ける!」
 が、その足をクーガーが掴んでいた。その身体は光り輝き、振りほどけない。
 いくら何でもこの短時間で立ち直れるはずがないのに!
 クーガーの光の中に、花びらがあった。それはカデルの鈴蘭ではない。
「癒しの力を持つ者がもう一人いたというのか……!」
「私の花の力だよ!」
 フィオレッタの持つ、豊穣の神性が倒れたクーガーをほんの少しだけ早く立ち上がらせた。
 彼女は今回の戦いで新たに現れたOX-MEN……ビル内での戦いのデータはあれど、この能力は知りようがなかったのだ。
「迂闊! 私としたことが!」
「クーガーさん、もう少しだけ頑張って!」
「おう! いくらでもやってやるぜッ!」
 それだけ言うと彼女はその身をふわりと浮かび上がらせ、目を閉じ両の手を組む。広がる花畑が金色に輝き、命の鼓動を響かせる。
「骸の海よりこぼれし雫よ――いのち満ちるとこしえの春に眠れ」
 骸の海の滅びを祓う、絶大な『豊穣の神性』。それこそが彼女の猟兵としての力。『《花神の抱擁》(トゥルビーネ・フィオリトゥーラ)』……金色の花びらがパラドックスマンの背で渦を為す。
「……む」
「こいつァ……!」
 直接対峙していた二人にはすぐに感じ取れる。
 そこで起きた変化は信じられないものだった。
 唯々、敵対する者を破壊するべく暴れまわっていたはずの触手が急速に力を失い始めたのだ。
「!? 我が主の力が一体なぜ!」
「教えてあげる! この花びらは破壊の意思だけを砕くんだよ!」
 破壊の意思は触手のエネルギーそのものといっていい。
 それを奪われては圧倒的超攻撃力も意味を為さない。
「なるほど、じゃあ残ったのはスケベ心だけってわけかい!」
 力尽きた触手はそれでも、ミルラに向かってその手を伸ばす。
 それを見下ろし、ふぅ、と息を吐く背に影が差した。
 フリージアが、鈴蘭が舞う戦場でもう一つの花が咲く。赤い紅い、巨大な薔薇の花。
「あたしに惚れたら怪我するって事を教えてやるよ!!」
 その華の名は『Attraente Cremisi(アットゥラエンテ・クレミージ)』。
 はらりと舞い落ちた花弁が、パラドックスマンの触手を斬り飛ばした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

叢雲・源次
【DJSS】
どのような状況になろうとも、討ち果たせば済む事
俺達ならばそれが可能となる

「…ジャマー、スナイパー、サーチャー。」

立ち位置の名を呼び、視線を向ける
彼らならそれだけで各々の仕事を即座に理解してくれる

対神打刀の柄に手をかけ、踏み込むとそれに呼応して触手が襲い掛かる
抜刀で切払いつつ更に前に出る
速度に応じて襲い掛かってくるか…確かに凄まじい攻撃と速度だが

「所詮、それだけだ」
俺が前に出て対応すれば、決定打を撃てる者が十全に狙いを定める事が出来る

インターセプター起動、パラドックスマンの座標をスナイパーに送信
「最悪俺ごとでも構わん、撃て」

見事撃ち果たしたのならスナイパーへ
「それでこそ、支倉新兵だ」


支倉・新兵
【DJSS】
あぁもう…クラッシャーと言いパラドックスマンってのと言い敵も味方も今回好き放題し過ぎだよ全く

突然引込まれたせいでドローンも殆ど反応なし…更にこの無茶苦茶な空間…この状況から距離を取るのも隠れるのも難しい

…愚痴ってても仕方ないな
幸い敵は早い動き優先の様子…(動く気満々の味方見て)こちらにタゲが移る事はほぼ無いだろうし狙撃体勢は取れるか

迷彩マントで情報吸上げつつ隠密、更に各種デバイスや僅かなドローンで空間内を分析…必要なら何発か味方に誤爆しない様撃ち射弾観測し歪んだ空間下での弾道計算を

「悪いね待たせた…でもお蔭で射線は通った」

UC発動、銃を犠牲に一発きりのワンショットワンキルと行こうか


杜鬼・クロウ
【DJSS】
アレで終わりじゃ余りにも呆気ねェもんな(メタ
最終決戦らしくなってきたじゃねェか(指鳴らし
後ろに控えてる奴等が頼もしいンでなァ(玄夜叉降り下ろし
派手に暴れて引っ掻き回すぜ!
ジャマーらしく、な(三人へ視線送り頷く

外套脱ぎ身軽に
犬歯で親指齧り剣に紅一線引く【沸血の業火】使用
体に紫電走る
源次と違う方向に前へ飛び出て撹乱、陽動
ミルラの魅惑に笑み一つ
女って怖…と内心
醜悪な触手を魔炎で焼いて灼いて焔の海に

そうだ、こっちだぜ
ちィッ…固ェ、が相手が悪かったなァ

限界突破し焔の威力上げ赤熱の熔岩の如く重い連撃を
仲間と連係し戦力削る

時は満ちた
決定打は誰よりも確実なお前に譲るぜ
ヤれ、新兵

戦闘後は軽く情報収集


朝倉・くしな
貴方の力が十倍になろうとも、我々オックスメンはそれ以上!……あれ?今15人位でしたっけ?
ガバ計算でもはっきり分かる程に差をつけて知らしめて差し上げましょう!

あ、超攻撃力と超耐性とか得るらしいので前衛はお任せします
私は後ろで力溜めとかしとくので…
では頑張ってくださーい(仲間を羅刹パワーで投げにいく

螺旋の世界であろうとも、天が見える場所であれば、私、オックスクルセイダーの真価を発揮する事が出来るという事。
ただの『ジャッジメント・クルセイド』ですが、受けて頂きましょう!
(だが真なる狙いは、地形破壊。この空間そのものを揺るがしブレイクする事にある!)



Chapter28: クラッシュ・オン・ザ・ナイトメア
 
「ハッ、女って怖……」
 クロウがミルラの所業に苦笑する。
 手から浮かび上がる魔炎が、すっかりおとなしくなった触手を焼き尽くした。
 その持ち主たるパラドックスマンは驚きの表情と共に手を叩く。
「どうやら、あなた方は私の想像をはるかに超える力を持っていたようだ」
 しかし、その声はわずかに震え、それまでとは違った色を見せる。
「ガハハハハハハハ!!!!!!! 随分と余裕ねぇじゃねぇか、パラドックスマン! あぁ!?」
 陰から飛び出し、グラディスが笑った。
 その言葉にパラドックスマンは答えを返さない。
 ただ、何かに許しを請うように。
「主よ、あなたの目覚めを私も目にしたかった……しかしそれは叶わぬようです」
 落ちた帽子を拾い上げ、かぶりなおす。
「いけねぇ、いけねぇなぁそれじゃあよぉ! テメェも悪党なら最期の最期まで笑え!!!」
「……そうですね。貴方の言う通りだ」
 パラドックスマンはぐるりとあたりを見渡しOX-MENの顔を確かめた。
 そうしてしばらく目を閉じた後、これまでの余裕とはまた違った何か吹っ切れたかのような表情で告げた。
「これで最後だ。私の全霊を以ってお前たちを倒し……そして私自身も贄として我が主に捧げる!」
 めき、とパラドックスマンの背から音がする。そこから生まれたのは龍の翼。そして。
「滅びよ、その魂だけを残して!」
 その口から赤い炎が噴き出し、翼から弾ける光が辺りを薙ぎ払った。
 赤く燃える体。はじけ飛び、めくれ上がる回廊。
「なんだありゃあ。ビーム?」
「あっぶねぇ、避けろ!」
 それはあらゆるもの貫き、滅びへと向かう光。
「わが命と引き換えに主の力の一端をお借りした……お前たちに悪夢を見せてやる!」

「……ふむ、つまりここからは……クライマックスという事ですね」
 めらめらと燃える回廊の向こうでアマータは一度曲を止めた。
 辺りに走る光を踊るようにかわしながら考える。
 今、ここにふさわしい音楽があるはずだ。
 ジャン、という音と共にマイクを引き寄せ、指を天に向かって突き立てた。
「では、参りましょう。『Facta, non verba(ファクタ・ノーン・ウェルバ)』――この歌を聴いた皆様に力と祝福を」
 壮大にして荘厳。
 これは勝利へと向かう歌。そして、世界を救うために戦う猟兵たちの歌。
 力持つ歌声はこの戦いの終わりへと向けて彼らの心を震わせる。
「ガハハハハハハッ!! よぉし、お前ら! これで終わりにしてやろうぜぇ!」
 歌に合わせてグラディスは大きく吠え、その力の真価を解き放つ。
 『往こう、昏らき道、その覇道の彼方へ(シンギムソウノダイゴウレイ)』!!
「立てっっ!!! 進めぇぇっ!!! 吼えろぉぉっ!!」
 この叫びは、戦うものに今必要なものを引き出す神の誇り。心を震わす大号令。
 歌声と、声援が回廊中に広がっていく。
「わかります。勝利のために、私も言葉を伝えましょう」
 その響きにカプラも呼応した。
 両の手を合わせ、浄化の光をより強くする。
「合力招来、承りました」
 『経法』の光はあふれ、回廊を渡る。
 距離も時間さえも超えて。アマータの歌を、グラディスの言葉を届けるのだ。
 
「どれほど力を増そうが無力! 龍の力で全て焼き尽くしてくれる!」
 パラドックスマンは口から炎を噴き出し、辺りを燃え上がらせる。
 頬に熱を感じながら、マルコはそれとは違う暖かさを胸に感じた。
「力が湧いてくる……フーン、なるほどね。カプラの力で全員にアマータとグラディスのパワーを伝えてるってことか」
 辺りを見渡せば膝をついていたものも立ち上がり、戦いの意思を見せていた。
 この力は個の力であると同時に全員の力。たった一人で戦っているパラドックスマンとは違う力。
 マルコは表情を変えずに、しかししっかりとパラドックスマンを見据えて引き金を引いた。
「ボクも、トリガーとしての役割を果たそう」
 右から、左から、上から。パラドックスマンに向けて弾丸が放たれる。
「ふん、この程度! 龍の力を得た私には止まって見える!」
 無数の弾丸を両の手でつかみ取り、パラドックスマンは笑う。
 背中の翼から光が放たれる。マルコの銃はその隙間をくぐり抜け、撃つことをやめない。
「無駄だ、豆鉄砲では私には通じん!」
「それでもいいんだよ。ボクの役目は起点となることなんだから」
 たとえ一発一発は通じずとも、後に続く者がいるのならばこの攻撃は無駄ではない!
「マルコくんに続くよ! メリアデス、樹精の槍を! 炎が来ても、止めないで!」
「そんなもので! もはや抵抗は無意味と知れ!」
 咲き誇っていた花畑は炎に包まれていた。それでもフィオレッタは力を振るい続ける。
 突き出す樹槍が突き刺さる端から燃え上がった。
「すごい熱……でも、花はまた咲くの、めぐる季節のように! 精霊たちよ、今こそ力を示す時です!」
 吹き上がる火の粉に髪をはためかせ、精霊たちに呼びかける。
 花よ、森よ、風よ――咲き誇れ!
「ちっ、鬱陶しい……!」
 言葉と共に舞い上がる花弁は炎に屈することなくパラドックスマンへとまとわりつき、その勢いをほんの少しだけ鈍らせる。
「ゴー!ゴー!ゴー! 止まっちゃダメだよ! あいつだって苦しいんだ!」
 リーオは叫びライフルの引き金を引き続けた。弾倉も残り少ない。すべて打ち尽くす覚悟で叩きこむ。
「効かないと言っている!」
 だが、並の相手ならば一撃で吹き飛ばせるような弾丸も、龍の力を得たその肉体には大したダメージにはならない。
「アーシェ、もう少しだけ頑張って!」
 それほどの力を前にカデルとアーシェもまた一歩も引かず、真正面から戦いを繰り広げていた。
 魔法の光が炎を阻み、光の一閃をギリギリでかわす。
 息が乱れるが、ここで止まる訳にも倒れるわけにはいかない。
「次はこいつだっ!」
 リーオはライフル銃を放り投げ、今度は機関銃を手に取る。銃弾をばらまき続けてとにかく奴の足を止めるのだ。
「こんなもの避けるまでもないっ!」
「だったら、こいつも、もってけぇっ!」
 ガン、とギターケースを蹴り飛ばすと轟音と共に何かが飛び出す。
 『無法者』を意味するその榴弾は銃弾の嵐に紛れパラドックスマンののど元へと迫った。
「甘いッ!」
 吐き出した炎が爆発を引き起こす。膨れ上がる炎に、煙が立ち込める。
「クッソ、止められた! でも奴の視界は塞げた! 皆、いけぇっ!!」
 
「みんなの力が合わされば、パラドックスマンなんかに負けはしないんだから!」
 このチャンスを活かし、カデルが飛ぶ。爆炎の陰から一気に間合いを詰めていく。
「吹けば飛ぶような体でよくやる! だが、これでしまいだ!」
 炎が激しさを増し、炎の壁が吹き上がる。
 喉が焼けるような熱さが流れた汗をも蒸発させた。
「絶対に……届かせてみせるよ!」
 あふれる火の粉が雪崩のように降りかかろうとした、その時――
「舐めるなぁぁあァ!」
 飛び込んで来たクーガーが光に包まれながら両の手を広げ、壁を抑え込み始めた。
 食いしばる歯から血がにじむ。
「クーガー!」
「なんだと! この炎を受けてただで済むわけが……」
「知るかっ! 俺は癒す者だ! 俺の事はいいからやれっ!」
「うん……! アーシェ!」
 炎の壁を回り込んでアーシェとカデルはなおもパラドックスマンに立ち向かう。
「ええい、目障りな……直接焼き払ってやる!」
「その前に、終わりにしちゃうよ!」
「ぬうっ!?」
 刹那、十字の槍がパラドックスマンの腰を貫いた。
 背後から隙を伺っていたセレネは『神託の道(オラクル・ルート)』の指し示した弱点を狙っていたのだ。
 だが。
「なるほど、だが少しばかり力が足りなかったようだな……!」
「えっ! ちょっとタンマ!」
 槍はそれ以上奥へと進まず、肉に包まれ刃が止まる。これでは進むことも退く事もできない。
 引き抜こうと槍をひねるがびくともしない。
「いけない、セレネ!」
「ひぇぇぇぇっ!」
「畜生ッ!」
「ハハハハハハっ! 散々てこずらせてくれたが、お前が贄の第一号だ!」
 カデルとクーガーが叫びをあげる。
 パラドックスマンの拳が振りぬかれると同時、赤い血が舞った。

「……その間合い……戴くぞ」
「なっ……」
「へっ?」
 足下に、手に、鞘に青白い電流が走る。
 雷光よりも早く。抜き放たれた刀がその腕を斬り飛ばす。
 喪失の衝撃に、全身にこめられた力が緩んだ。
「……仲間を傷つけさせるわけにはいかんのでな」
 ぶん、と刀を振り再び刃を鞘へと納め 事もなしに源次は言う。
 青い稲妻とともに、『電磁抜刀(リニア・ブレード)』の踏み込みがセレネを救った。
「ああ、よかった……」
 カデルはほっと一息。
「おいセレネ、こっちだ!」
「危なかったー! ありがと、源次君!」
 陰から飛び出したグラディスの牙に引っ張られ、転がった槍を拾い上げたセレネが距離を取っていく。
 彼女の槍が示した一点には、光だけが残った。
 パラドックスマンは片腕の喪失に怒りを震わせ、咆哮をあげる。
「おのれおのれおのれぇぇぇぇっ! 纏めて焼き尽くしてくれる!!」
 残された腕と翼が風を巻き起こした。
「させるかよ! そら、パラドックスマン、こっちだぜ!」
 声と同時、強烈な衝撃が走る。
 大上段から翼へと、巨大な大剣が紫電と共に叩きつけられたのだ。
「ちィッ……固ェ」
 しかしやはり、刃は少しだけ食い込むだけで切り落とすには至らない。
 翼からあふれる光は止まらず地を焦がし、クロウへ向けて収束していく。
「ハハハァッ! 口先だけだったようだな! そのまま消し飛べぇぇぇっ!!!」
「が、相手が悪かったなァ。限界を超えた力ってのを見せてやるぜェ!」
 クロウは笑った。
 じわじわと、玄夜叉が赤に染まっていく。彼の血潮は限界を超えて、強引にその刃を押し込んでいく。
「ぐっ、ぐお……ぐおおおおおっ!!!!?」
 パラドックスマンが暴れまわる。
 噴き出す炎がクロウの肌を焦がした。翼が放つ光が出鱈目に辺りに走る。
「確かに凄まじい威力。だが、所詮、それだけだ」
 源次もまた炎に巻かれながらパラドックスマンの間合いに入る。
 翼からの光もここにだけは届かない。
「ぐぬううっ! ならば確かめてみろぉっ!」
 その言葉の通り、片腕ながらその鋭さは増し続けている。
 手刀は刀と競り合い、弾かれる。
 吹けば飛ぶような、薄氷の上を渡るような戦い。
 じりじりと精神力を削り合いながら刀を滑らせる。
 鋼の肉体がきしみ、小さな音を立て始めた。

 その時、大きく回廊が揺れた。
「【指先】を向けた対象に、【天からの光】でダメージを与える。命中率が高い」
 合わせた手。立ち上る光のオーラ。奇怪な文句。声の主は、くしなだ。
「ぬうっ!? 何事だ……!?」
 見れば天井には大きく穴が開き、回廊には月の光が差し込んでいた。
「ただの『ジャッジメント・クルセイド』ですが、この回廊があなたの力を高めているというのならば」
 その指先が指し示す先には光があふれ、大穴が開く。
「この空間そのものをブレイクしてしまえばいいのです!」
 曰く、『ただの『ジャッジメント・クルセイド』ですよ。(ジャッジメント・クルセイド)』というこの力は、唯々破壊の限りを尽くし、物理的な存在だけでなく、この空間の定義そのものを少しずつ崩壊させていく。
「さあ、もう一発行きますよ!」
 念仏のように唱え続ける例の言葉と共に、再びその指が天を指し示す。この時まで溜め続けた力を、今こそ解き放つ!
 本来この空間にあるべきはずのない月の光。次元をブレイクし降りそそぐ神秘の光があふれる。
 螺旋魔空回廊がパラドックスマンにもたらす力が、わずかに弱まった。
「こ、このような方法で……」
「オラァァァァァッ!」
 そのほんの少しの差が、決定的な瞬間をもたらした。
 叫びとともに、紫の光が床を叩く。
 パラドックスマンの片翼はだらりと垂れ下がり、光を失った。
「ぐうううっ! やらせるかっ……私の命の灯はまだ尽きていない……!」
 それでもパラドックスマンは諦めない。炎の中で叫びがあがる。
「スナイパー」
 通信を繋げ、データを送信。答えを聞く必要はない。
「俺たちごとで構わん、撃て」
「時は満ちた! ヤれ、新兵!」
 対神打刀と玄夜叉の刃が、同時にパラドックスマンの肉を抉り、離さない。
 これで終わりにする。強い決意とともに、その手を強く握りしめた。
「螺旋魔空回廊のエネルギーはまだ残っている! 空間ごと貴様らを消滅させてくれるわ!」
 燃え上がる炎が天まで届かんとうなりをあげる。
 螺旋魔空回廊全域にぼんやりとした光が浮かび上がり、崩壊へのカウントダウンが始まった。
「クッソ、パラドックスマンめ! 全部かなぐり捨ててきやがった!」

 息を吸い込み、新兵はスコープを覗き込む。
「悪いね待たせた……でもお蔭で射線は通った」
 撃ち抜くべきポイントはセレネが示し、源次が伝えてくれた。そして、今そこを撃ち抜けば源次もクロウもただではすまないという事もわかっている。
 だが、引き金から指を離す事はしない。
「これが、スナイパーの仕事だ」
 軌道計算。弾道予測。音響による空間把握。源次の座標データ。託されたもの。
 決して外しはしない。
 銃の感触と重みを感じながら、新兵はつぶやいた。
「こいつが最後から二番目の手段にして……『最後の「狙撃」(ラストスナイプ)』だ」

 炎の向こうの姿へ向けて声が飛ぶ。
 あのままでは巻き込まれる。それは誰の目にも明らかだ。
「ふっざけんなよお前ら! 俺の前でんなこたぁさせねぇぞ!」
 クーガーの両の拳が炎の壁を殴りつける。
 しかし、パラドックスマンの最後の灯火は熱く、厚くそれをはじき返す。
「おいお前ら! 来るぞ!」
「駄目! 離れて!」
「待って! 新兵さん待って!」
 彼らが何をしようとしているのか。わかっているからこそ制止の声は止まない。
 しかしミルラはふう、と息をつきぽつりと言った。
「……いいや、いいのさ。これで」
 赤い薔薇が炎に巻き上げられて舞った。
 すでに彼らの覚悟は決まっている。知っているのだ。
「さあ、やっちまいな、スナイパー!」
 遠くで、狙撃銃が耐えきれずにはじけ飛ぶ音が聞こえた。

「馬鹿がっ! 私を倒したところでいずれ主の復活は果たされるぞ!」
「そうだとしてもお前はここで倒す……」
「ああ! 離すんじゃねェぞ、源次ィ!」
 二つの刃がパラドックスマンを縫い留める。
 パラドックスマンを包む炎は刃を伝い、二人の体をも灼熱で包んでいく。
 焼けこげる臭いが鼻につく。
 それでも耐えていられるのは舞い上がる花びらのおかげだろうか?
 炎の中でも消えない癒しの力を借りて二人は立ち続ける。
 新兵の一撃が届くまで、逃がす訳にはいかないのだ。
「……すまんな、クロウ。俺一人でやるつもりだったのだが……」
「どうせそんなことだろうと思ってたぜェ。お前だけにいいカッコさせるかよ」
 吐き捨てるように言うと同時。
 源次の手首から警告音が鳴り響く。新兵が放った弾丸の接近警報だ。
「――それでこそ、支倉新兵だ」
「さァ、あと残り何秒だ? 最後まで付き合ってもらうぜ、パラドックスマン!」
「ガァァァァァッ!」
 後はただ、終わりを待つだけ――
「遅れてすまない。状況は理解した。俺の立ち位置は破壊者だ」
 しかしその時唐突に、炎の中から破壊の風を纏った黒い鎧の男が現れた。
「な……!?」
「パラドックスマン、身の程をわきまえろ」
「うおっ!?」
「……むっ……!」
 高く掲げられた漆黒の剣。
 激しく吹き付ける風は源次とクロウを吹き飛ばし、パラドックスマンの全身へと呪いが如く纏わりつく。
 それは滅びへと誘う破壊の風。
 何人にも説明できない、終わりへ、破壊だけに向かう感情。
「こ、こんな……この私が……! 恐怖しているというのか? 絶望しているというのか?」
 もはやパラドックスマンは指ひとつ動かすことはできない。
 『唐突な破壊者(オックスハウス)』が、仲間を失うという悪夢の未来を、破壊した。
「俺には破壊する事しかできない……」
 それだけを言い残し、オックスマンは踵を返して仲間の元へと歩み出していく。
「こういうのって、実にOX-MENっぽいよね」
 現れたオックスマンの姿に、マルコは薄く笑った。
 
「さぁ、フィナーレです」
 銃弾が風を切る音が聞こえる。
 長かった戦いもこれで終わりだ。アマータの歌声は響き渡り、曲は最後のクライマックスを迎えた。
 バッドエンドやビターエンドではない、完全なる勝利の歌を歌いあげる。
「これも……我が運命か……」
 放たれた銃弾は一直線にパラドックスマンを貫いた。
 その野望は潰えたのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィオレッタ・アネリ
螺旋魔空回廊……ちょっと足場が不安定だけど、関係ないよね
オックスマンさんも加わったし、わたしたちが力を合わせたら、絶対に勝てるんだから!

無差別攻撃は精霊魔術で切り抜けるね
クローリスで周囲をフリージアの花園にして、花の香りで感覚を惑わせ、メリアデスで動きを制限する蔦を張り巡らせ、地面から生える樹精の槍で行動を邪魔し、敵を翻弄してみんなを支援するよ

みんなの傷は豊穣の神性を乗せた花吹雪で癒やし、自分への攻撃は花園に溶け込んで存在感を消して避けるね

第六感が好機を捉えたらふわりとステップを踏み、全力魔法と祈りを込めた《花神の抱擁》
パラドックスマンの破壊の意志を砕いて、一斉攻撃のチャンスを作るよ!



Final Chapter: フォース・ポジション

 回廊は崩れ去り、辺りに光が広がった。
 目を開けば、もくもくと上がる煙。
 強い風が彼らに吹き付けた。 
「ここは……」
「パラドックスビルの屋上、ですね」
 オックスメンの目の前には真っ二つに割れた鐘。
 辺りからはサイレンの音が鳴り響き、赤い光が点滅する。
「……どうやら、警察や消防もようやく動き出したようだな」
「パラドックスマンが動くのを抑えてたのかねぇ」
 誰もがボロボロで、煤だらけ。
 それでも、彼らは勝利の満足感に包まれていた。
 
 
 ――数日後。
 彼らは街を見渡す小高い丘に集っていた。
 ここに来る前に街を訪れたのだが、その光景に彼らは違和感を覚える。
『インデックス社の謎の爆発炎上事故の原因は未だ解明されておらず……』
『今ブームのドリンク! トゥーゴーパーソナルリストレットベンティメルバックフリートアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラギルボークエクストラヘーゼルナッツゴッドクラシックエクストラクッコロエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラクラントエクストラチョコレートチップエクストラシレンエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノ!』
『つよいぞぼくらのきゅうせいしゅー』
 聞こえてくる言葉は聞き覚えの無い言葉ばかり。
 パラドック社の名前は跡形もなく消え去り、似ているようでどこか違う何かが街にあふれていた。
「……俺がタピオカドリンクを買った店もクレープを売る店になっていた」
 オックスマンが包みをマルコに渡しつつ言った。どうやら買ってきたらしい。
「フーン、不思議だね……あ、これ結構おいしいよ」
「あ、ボクも食べる! ちょうだい!」
 早速口にすると甘い食感が広がる。セレネも口いっぱいにクレープを頬張った。
 あれは、夢だったのだろうか? いいや、そんなはずはない。
 あの激戦の傷跡は未だ消えずに残っている。
 眠りについた人々も未だ目覚めていない。
「でも、オックスマンが起きたのと同じ方法を使えば皆も目を覚ますかもしれないんだよね?」
 カデルがアーシェを膝に乗せ、確認する。
「そういう事。たぶん間違いないんじゃないかなぁ」
 その疑問にはリーオが答えた。
 今のところ目覚めたのはオックスマンだけだが実証済みだ。問題はないだろう。
「癒すのは俺の役目だが……今日はお前に譲ってやるんだぜ!」
 クーガーが腕を組み、促す。
「うん、まかせて!」
 フィオレッタは目を閉じ、精霊に語り掛ける。みるみるうちに丘には無数の花が開き、世界を彩った。
 手を広げ、花びらを風に乗せていく。
 それは、フリージア。純潔、信頼、友情を意味する花。
「うわぁ、なんだあれ」
「花びら? あんなにたくさん、風に乗ってきたのかな」
 空高く舞い上がり、街を包み込んだ突然の花吹雪に街の人々は一時戸惑いを見せたが――
 やがてその光景の美しさと香りを楽しみ、笑いあった。
 
 眠りについた人々が目覚めた、と彼らが知るのはそれから少ししてからの事だった。
 
 
 
「……あの時はこんなんじゃなかったんだがなァ」
 他方、別行動をとっていたメンバーは先にクロウが訪れたテンプル・スパイラスを目の前にしていた。
 だが、古臭い雰囲気を放ってはいたもののこの寺はこんなにボロボロではなかったはずだ。
 倒れた墓石の風化の跡が不気味さを際立たせる。
「うーん、私がブレイクするまでもなく崩れちゃってますねぇ」
「信仰の象徴というべき寺がこの有り様……悲しい事です」
 くしなはがらがらと音を立てながら瓦礫をかき分け、カプラがそれに続く。
「他はぜーんぶ別物になっちまったけど、ここだけは名前も変わってなかったんだよねぇ」
 ミルラが数日の間に調べてきた結果だ。
 何らかの手掛かりが残されているとしたらここしかなかった。
「……どうやら本殿らしき建物は無事みたいだね」
 新兵が指をさす。
 それはやはり崩れかけていたが、建物としての体裁をかろうじて守っていた。
 鍵の壊れた扉を押し開け、中へと侵入する。
 敵の姿はない。慎重に進むと何かが足にぶつかった。
「……あぁん? この絵、なんだか見覚えがあんぞ……」
 グラディスが首をひねる。
 煤にまみれ黒ずんでいるがそこに描かれていたのは螺旋を描く回廊。
 間違いない。螺旋魔空回廊だ。
「ふむ……焼け焦げている、というのが気になりますね」
 アマータが携帯秘書装置を取り出し、ぴこん、と音を立てた。
 なにが手掛かりとなるかわからない。記録を取ることは重要だ。
「……どうやら、それだけではないようだ。見ろ」
 何かに気付いた源次が、左目の瞳を細めて促す。
 辺りを見渡せばそこには、三枚の絵。
 底知れぬ広さを誇る渓谷。
 二つの星が頂上に輝く山。
 風だけが吹き付ける荒野。
「行こうぜ。ここにはもうこれ以上何もなさそうだ」
 何という事もない絵。しかし、彼らは次なる戦いの予感を、感じずにはいられなかった。
 
 
 ――OX-MEN:Crush On The Nightmare――
 
         E N D
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 深い、深い闇の中で。
 目深にフードをかぶったローブの男と、袈裟を纏った僧と思しき影が言葉を交わす。
「……タピオカは、売れたのですか?」
「私はああいうのには向かん。呼び込みに引っかかったのはあの破壊者一人だ」
 ローブの男は不機嫌そうに言うと深くため息をつく。
「パラドックスマン・BF……奴は我らの中で力こそ最弱だったが」
「ええ……あの経営手腕と部下を扱う能力を失ったのは惜しい」
 ですが、と僧は続ける。
「彼の寄こしたデータは我々にとって大きな助けとなるでしょう。……既に次の布石は打っています」
「奴らの力を利用し、我らの主を目覚めさせる……いや、主の力を目覚めさせる、というのが正しいか」
 そこでローブの男は頭を抱える。僧も何やら困り顔だ。
「あの方は……やはり?」
「ああ、どうやら勝手に動き回っていたらしい。我らが主ながら……」
 二人の会話はいつしか愚痴のようになり、しばらく尽きることなく不満が漏れるのであった。
 
「トゥーゴーパーソナルリストレットベンティメルバックフリートアドエクストラソイエクストラチョコレートエクストラホワイトモカエクストラバニラエクストラギルボークエクストラヘーゼルナッツゴッドクラシックエクストラクッコロエクストラチョコレートソースエクストラキャラメルソースエクストラクラントエクストラチョコレートチップエクストラシレンエクストラアイスエクストラホイップエクストラトッピングダークモカチップクリームフラペチーノください!」
 少年は一息に言い切るとカップを受け取り、歩き出した。
「ソウルドリンクとか言ってたのに、タピオカどこ行っちゃったの?」
「それもあいつらの仕業だったんだろ……なんでタピオカだったんだろうなァ」
 他所でたまたま流行ってたからだよ、と思いながら少年はすれ違う。
 その瞳は金色。蛇のような瞳孔を開き、彼らを見送る。
 口元にわずかな笑みを浮かべながら。
 
 ――楽しませてもらった。次は『双子星の山』で会おう――
 
 and to be continued
 OX-MEN: Geministar's Mountain

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年03月14日


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 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#キマイラフューチャー
🔒
#【Q】
🔒
#旅団
#OX-MEN


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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト