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夕焼け小焼け

#UDCアース

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#UDCアース


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 あーあ、最近つまらないな。パパもママも口を開けば勉強べんきょうって。
 わたし……本当はお受験なんかしたくないんだけどな。
 朝起きて、ご飯を食べたら塾へ行って、夜までずっと勉強漬け。
 帰ってきたらお風呂に入って、夕ご飯を食べたらまた勉強。
 そこまでして、いい学校に行かなきゃいけないのかな。

 パパとママにとって、わたしって何なんだろう?
 ちょっと疲れちゃった。


 ――受験戦争、と言うのでしょうか。
 溜息をひとつ吐いて、グリモア猟兵のジョルジュ・ドヌールは貴方たちに語り掛ける。

「UDCアースは現代日本、東京都。最近そこでオブリビオンの活動が活発になっているようです」
 新聞に織り込まれる色とりどりの学習塾のチラシには、進学実績や合格者数のグラフ、講師陣の写真付き自己紹介が所せましと並べられている。そんなチラシを机の上に広げ、ジョルジュはもう一つ溜息を吐いた。

 彼の説明するところに依れば、勉強に疲れた子供の弱った心に付け込んでオブリビオンが邪教へ子供らを入信させようとしているようだ。夕方……黄昏時の物悲しい雰囲気を利用して家路を急ぐ子供らを勾引かすことで、着々と信者を増やしているらしい。
「邪教への勧誘の切っ掛けとなるのは、「ゆかり」と呼ばれる少女がターゲットに声を掛けるところから始まるようです」
 年の頃が同じぐらいの少女が子供たちに声を掛け、言葉巧みに警戒心を解いていつの間にか邪教の本部へ彼らを連れ去るのだ。

 幸い、「ゆかり」は人通りの多い通学路にも良く現れるらしく遭遇すること自体は容易に思われた。だが、そのような場所で猟兵たちが少女を詰問するわけにもいかない。

 何か、上手い方法を考えなくては。

 ……僕と同じ年ごろの少年少女が邪教の餌食になるのは、心が痛みますね。ぜひ、貴方たちの力で悲劇を止めて欲しい。
 そう――ジョルジュはあなた方へ頭を下げて、UDCアースへのゲートを開く。


かもねぎ
 こんにちは、かもねぎです。年が明けると受験シーズンが始まりますね。
 今回はそんな着想からストーリーを考えてみました。

 疲れた少年少女の隙に付け込むオブリビオンを、ぜひあなた方の力で退治していただけないでしょうか。皆様のご参加、お待ちいたしております。
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第1章 冒険 『ターゲットを誘い出せ』

POW   :    挑発して追いかけさせる

SPD   :    技術を駆使して行動を誘導する

WIZ   :    策を弄して行動を誘導する

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●山のお寺の鐘が鳴る
 ――ゴオォォン……。
 ――ゴオォォン……。

 東京都下とは言えど、郊外はベッドタウンとして高度成長期に発展した多摩市。
 そんな住宅地にあっては、駅からしばらく歩けば野山の梺に田畑が広がる風景も見ることが出来る……その裾野に、余韻をたなびかせて鐘が鳴る。
 夕方も五時ともなれば辺りは暗く、ぽつり、ぽつりと設置された街灯がアスファルトに影を落としていた。

 駅前のロータリー横に建てられた雑居ビル。その低層階を占める学習塾の明かりに視線を遣りながら、ランドセルを背負った少女が一人。
 所在なさげに佇むその姿は、予知に映った「ゆかり」のものに見えた。

 その横を、通学カバンを下げた中学生が、少し早い帰宅の途につくサラリーマンが足早に過ぎる。「ゆかり」はチラ、と視線をそちらに向けるが、そのままぼんやりと彼らが家路に向かう背を見送るのであった。
アルビーナ・ヒルシュフェルト
カラーコーンや規制ロープのような視覚的、物理的な効果や高周波、異臭などを使用したガジェットによってターゲットの行動先を制限する。
「子供を餌に子供をさらう、ああいった連中のやることはいつだって汚い。」



「まったく……子供をダシにして、子供を攫うだなんて」
 邪教集団のやることはいつだって卑劣で、汚い――と、アルビーナ・ヒルシュフェルト(超絶技巧の三重奏・f00958)は憤っていた。
 視線の先にいるのは、「ゆかり」と呼ばれる少女。

 年のころは……小学校低学年ごろだろうか。赤いランドセルを背負い、おかっぱ髪に黄色い通学帽を被ったその姿は夕闇差し迫る町並みを当てもなく徘徊するには幼過ぎるように思えた。
「ターゲットを連れてくるまで帰って来ないようにでも、邪教の信者たちに言い含められているのでしょうか」
 ぶらぶらと特に何をするでもなく駅前を歩き回ったり、ロータリーのベンチに座って時間を潰している体のゆかりを見て、アルビーナは訝しむ。

「いずれにしても、ここでは落ち着いて彼女から話しを聞くこともできませんね」
 しばらく様子を見ていたが、ゆかりはどこへも行く素振りを見せない。「それであれば」とアルビーナは『閃きと創造』を発揮して、灰色の小箱を作り出す。掌に収まるほどのサイズのそれは、上部に赤い押しボタンが備えられていた。
 アルビーナがボタンを押し、それをロータリーの数か所に置くと、しばらくしてその箱からは白い煙と何かが焦げるような異臭が漂い始めた。

 ゆかりはしばらくして煙と匂いに気が付くと、辺りを見回し、ゆっくりと駅前から外れて商店街の方へ歩いて行った。

成功 🔵​🔵​🔴​

真幌・縫
ん…ぬいの方がちょっと年上だけど歳が近いってことにはなるかな?ぬいが声を掛けてみたらあんまり警戒されないかなって。
お勉強のこととか悩んでるみたいだから同意してあげたりしたら気がひけるんじゃないかな。
あと、ほら、この子、サジ太って言うの。可愛いでしょ?
ぬいはねぬいぐるみが大好きなの!子供ぽい?そんなことないよ。ぬいぐるみが好きなことに年齢も性別も関係ないよ。
たまには遊んじゃおう。無理しなくていいよ。



白い煙に追い立てられるようにふらふらと歩いてきた「ゆかり」は、やがて商店街の中ほどにあるモニュメントの横にあるベンチに腰を下ろす。街灯の灯と、今時はめっきり少なくなった緑色の公衆電話ボックスがモニュメントを照らしている。

 真幌・縫(ぬいぐるみシンドローム・f10334)は少女の隣のベンチに自然さを装って座り、自身とゆかりの間に、『サジ太』を座らせる。中学生か高校生と思しき少女とぬいぐるみの組み合わせに気を惹かれたか、ゆかりは腰を下ろした縫へ視線を向ける。

「こんばんは、こんなところで一人でどうしたの?」
 ゆかりと目が合っては縫はにっこりと笑い、改めて隣へ座りなおす。その手にはしっかりとサジ太を抱きなおして。
「何か……悩みごと?良かったら、私に話してみようよ」
 穏やかに笑いかける縫の様子に心を許したのか、最初は少し警戒する素振りを見せた少女は、ぽつりぽつりとひとり言のように零しはじめる。

 ゆかりは、近くに住む小学校に通う小学3年生であるようだった。彼女が語るところに依ると、3年生に上がってから家族が勉強をするようにうるさく言うのだという。目を伏せて話す彼女に相槌を打ちながら、縫は「無理しなくていいよ」とゆかりの悩みに理解を示す。

「好きなことに年齢も性別も関係ないよ。その気持ちに素直になって、たまには、遊んじゃおう?」
 縫の言葉にゆかりもにっこりと笑い返したが、それもつかの間。

「お話、聞いてくれてありがとう。でも、やっぱりパパとママの言うことは聞かなくちゃ。バイバイ、お姉さん」
 そう言って立ち上がると、煙が薄くなった駅前の方へゆかりは戻っていく。

 気が付けば時刻も18時を回り、日は陰っている。いつしか駅ビルに入った居酒屋が、看板のネオンを光らせていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仁上・獅郎
僕も一度、「ゆかり」さんと接触してみましょう。
詰問するのではなく、子供を心配する一人の大人として。

「お嬢さん、こんな時間に一人は危ないですよ」
と声をかけて、屈んで目線を合わせて話します。
大人は一緒じゃないのか、どうしてこんなところにいるのか。
そういった事などを柔らかく問いかけてみます。
誰、と聞かれたら、通りすがりのお医者さんです、と答えましょうかね。

留まる様子でしたら、去り際に、
「そういえば、この辺りに怪談話があるんですよ。夜に出歩く子を連れ去る幽霊がいるとか。……そうでなくても、不審者が出るかもしれないし早めに帰ってくださいね?」
と言い残します。それで何を思うかは彼女次第ですけれど。



「そこを行くお嬢さん。こんな時間に一人で歩いていては、危ないですよ」
 仁上・獅郎(片青眼の小夜啼鳥・f03866)は夜道をふらふらと歩く少女を見かけ、思わず素の表情を見せて話しかける。それは猟兵としてではなく、一人の大人として。
 日は陰り、辺りの家々からは夕餉の空気が漂い始める時分。
 任務という背景を抜きにしても、人通りの多くない暗い通りを──年端も行かぬ少女がぶらついているというのはよろしくない。それも、ランドセルを背負った小学生と思しき年ごろであればなお更だ。
 声音はごくごく優しく、しゃがみ込んで目線を子供の低さに合わせて微笑みかける。それは日頃の診療所勤務で培った子どもを相手にした彼なりのやり方。

「お兄さん……だれ、ですか?」
 ふいに声を掛けられた驚きからか、少し声音を固くして応えるゆかりは、モノクルの奥から覗く穏やかな視線に緊張を解いてゆるゆると話し始める。

「人を──待ってるの。ここで会わなきゃいけないの」

 ゆかりが言葉少なに語るには、彼女はここで人と会うために時間をつぶしているのだという。それは、『パパとママ』に言われたこと。彼女は『いいこ』で居るために、両親に言われたことは守らなければならないのだと……そう彼女は獅郎へ告げる。

「優しいお兄さん。もしまた会えたら……嬉しいな」
「──そうですか。この辺りに、最近子供を攫ってしまう幽霊がいるとかいないとか。単なる怪談話ならいいんですけど、怖いおじさんとかも出るかもしれませんし……なるべく早めに帰ってくださいね?」
 最後まで心配げに語り掛ける獅郎に笑いかけて手を振ると、ゆかりはまたしてもロータリーの片隅にポツンと腰を下ろす。

大成功 🔵​🔵​🔵​


 少女は想う。
(いけないいけない……つい話し過ぎちゃった。まだ早い時間だし、連れて行くわけにはいかないよね。パパ、ママ?)
 
 少女は想う。
 今宵は誰を、連れて──行こう?
月守・咲凛
「囮捜査、というやつですね、私知ってますよ!」
辺りが暗くなって来ててちょっとだけ怖いですが、子供達がさらわれるというのはほっとけません。
武装ユニットを外せば普通の子供に見えるでしょうか……?少し危険なのは承知の上ですが、とても……ちょっとだけ!怖いですけど、人気のない公園あたりを普通の格好で散策して、囮になってみます。


サヴァー・リェス
子供は心から笑顔でいて欲しい
受験戦争という物、なくしたいけど…今は、邪神から救う

辺りの地理に疎い人として…ゆかりに道、尋ね邪教徒との接触、防ぐ
表情変えるの、苦手…そのぶん声で優しく…
「ごめんなさい…図書館、本屋…は、どの辺りに…?…有難う…お名前、は?」
「有難う、ゆかり…顔色が余り、良くない…お家に、帰る所?
大変、ね
ご両親は…あなたが好きすぎて、あなたのことが見えていないかも、知れない…
疲れた、無理と感じること、はっきり…教えてあげて…
ゆかりが無理しすぎた後で気づき、大変悲しむ…その、前に」
道覚える為にと人の多い道を聞き共に行けたら良いけれど
無理なら見つからない様、物陰や人込みに紛れ彼女を追跡



 サヴァー・リェス(揺蕩ウ月梟・f02271)と月守・咲凛(空戦型カラーひよこ・f06652)はふたり、姉妹にも見えるペアルックで駅舎の改札を通り抜ける。先行した猟兵たちからは「目標の少女は誰かを待っているようだ」という情報が入っていた。

「──? よく、わからないですね??」
 咲凛は頭の上に疑問符を浮かべたかのように目線を泳がせ、傍らのリェスを見上げる。『ゆかり』は……誰を待っているのだろうか。彼女の話に出てくる『パパとママ』は何者なのか。どうして、少年少女のみが人さらいの対象となるのか。疑念は尽きない。
「そうね……私も、分からないこと……だらけ」
 でも、きっと一連のゆかりの行動には理由があるのだろうと思う。そう自分を納得させると、リェスは咲凛の肩を抱いて安心させるように、仲の良い姉妹を演じる。
 互いに欠けた記憶を持つ者同士、リェスは咲凛に対してシンパシーに近い感情を抱いていた。それは彼女の微笑みのように曖昧模糊としたものではあったのだが。

(一号ちゃんもシマエナガ先輩もここには居ませんし、私自身がしっかりしないと!──ちょっとだけ、怖いですけど)
 段取りは行きしなに、二人の間で簡単な打ち合わせを済ませてある。普段はその身に数々の武装ユニットを装着している咲凛であるが、今は丸腰に近い。
 正直なところを言えば不安だった。ユニットの補助を受けて絶大な戦闘力を発揮する咲凛は、一方でそれらのユニットが無い状態ではごく普通の少女でしかない。それは……彼女に取ってぽっかりと穴が開いたような心細さを残すものだった。
 だが、罪もない子供たちが攫われるのは猟兵としても見過ごすことはできない。咲凛はゴクリ──とつばを飲み込むと、ぎこちない笑みをリェスに返す。


「ごめん、なさい……ちょっといい……かしら」
 この辺りに図書館はないかしら──? そうリェスに声を掛けられて、ゆかりはぼんやりとつま先を眺めていた視線を上げ、二人の猟兵に気が付く。
「図書館……?ここからは、ちょっと歩きますけど」
 こんな遅い時間に何の用だろう?そんな疑問を飲み込んだのだろうか。土地の者ではないように見える二人連れの女性を、ゆかりは少し警戒する。

(なんだろう、この人たち。この辺りの人じゃ、ないのかな)

「宿題で本を読まなきゃいけないんだけど、本屋さんにも全然見つからなくって!」
 咲凛は同年代に見える少女に向かい、「困ってるんです」と訴えかける。

(ふぅん。この人たちなら居なくなっても……しばらく大丈夫?)

 改めて辺りを見回すと、すでに時間は19時を過ぎ……夜の帳が周囲を包んでいた。

「いいよ。もうすぐ図書館も閉まっちゃうし、急ぎなんでしょ」
 案内、するよ──。

 内心の笑みを深くしつつ、『ゆかり』はベンチからぴょんと飛び降りる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『ゆかりちゃん』

POW   :    「ただいま」「おかあさん、おとうさん」
戦闘用の、自身と同じ強さの【母親の様な物体 】と【父親の様な物体】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
SPD   :    「どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?」
【炎上し始める捜索願いからの飛び火 】が命中した対象を燃やす。放たれた【無慈悲な】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    「ひどいよ、ひどいよ、ひどいよ」
【嗚咽を零した後、劈く様な叫声 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの前に立って、『ゆかり』は道を案内する。
 駅前の雑踏を抜け、コンビニの角を曲がるとまっすぐに住宅地のはずれを通り過ぎて人気のない道を進む。
 いつしか田畑と、灯が落ちてすっかり人気が無くなった工場がまばらにあるばかり。

「ゆかり……ちゃん?」

 訝しむ猟兵の声にくるりと振り返った彼女の貌は、人ではないナニカのもの。

「どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?」

 少女の形をした狂気が、ニタリと──嗤った。そんな気がした。
アルビーナ・ヒルシュフェルト
三魂分立を発動、三人で『ゆかり』を囲みながら
「そういった存在なのだろうとは思っていました。」
とアルビーナが言い、それを合図にしてベルデが仕込み鞭で拘束を行いクリスティンが攻撃をかいくぐりつつ斬撃をくわえ最後にアルビーナが銃拐を思いっ切り顔に叩きつけつつ射撃する。
「もしかしたら私もあなたと近い存在かもしれません。だからこそ消えてください」



「ねぇ」
「おにいさん、おねえさん」
「いっしょに──あそんでよ」

 前を行く『ゆかりちゃん』が振り向いたのをきっかけに、低くなった田んぼのあぜ道から。電灯の切れかけた電信柱のほの暗い陰から。同じ貌、同じ装いをした『ゆかりちゃん』が一人、またひとりと現れる。目の当たりにした怪奇を前に足を留める猟兵たち。
 いつしか、彼らのぐるりを幾人ものゆかりちゃんが取り囲んでいた。

 ──ねぇ。

 あどけなく笑う捜索願の写真が一転して泣き顔になると、擦り切れた紙の端からメラメラと炎が上がり始める。
「どうしてそんなへんなかおでわたしをみるの?」
 再度問いかけたその声と共に、夕闇を赤く染める篝火は火の粉を散らしてアルビーナを襲う。

「どうして、でしょう。観測不可の消失、眼前の結果は増殖」
 クスクスと笑いながらアルビーナは余裕を崩さずに自身を取り囲む篝火をひょいと避けてみせる。
「不思議なことも起こりますね」
 余りにあなた方が『私たち』に近い存在に思えたので、ちょっと興味が湧きました──そう呟いて手にした銃杖刀をくるりと一回転させると、アルビーナの輪郭がぼやけてブレる。蜃気楼のようにその実態がぐにゃりと捻じ曲がると、彼女もまた、三人にその姿を分かれさせる。

「だからこそ、私たちに似た存在は私たち“だけ”で十分です。あなた達はここで消えてください」

 決別の言葉を投げかけると、人格を異にする『アルビーナたち』が手にした鞭で、刀で、銃拐で──ゆかりちゃんの一体を捉える。

「ああぁっ……いたい、いたいよ……!」

 泣き顔の写真からは涙は零れず、哀れを誘う声だけを細く残してゆかりちゃんは自身から出でた炎に身を焼かれ、灰となって消えていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

仁上・獅郎
「ゆかり」さんが、オブリビオン?
なれば滅するが猟兵の役目――ですが、あまりにも、原形を留め過ぎている……!

僕達とは相容れぬモノと理解はしてますが、最後まで言葉を尽くします。
どうか、止まってください。
子供を手にかけねばならないなんて話は残酷に過ぎる。
それでも止まれないならば……容赦は、出来かねます。

相手の攻撃は[第六感]と[見切り]で回避し、避けきれないものは[激痛耐性]と『光』による高速治療で突破。
小石や砂を蹴飛ばして[目潰し]し、背後に回って鋼糸を首に絡めます。
[医術]で頸動脈洞の位置を確認、人の身ならそこを締め上げれば意識は落とせます。
本当に手遅れならば、首を落とす勢いで引き絞りましょう。



 ──まさか。
 信じられない、といった呟きは何とか飲みこんで獅郎は『ゆかりちゃん』の正面に立つ。猟兵としての本能が、彼自身と目の前の存在は相容れないものだと警鐘を五月蠅い程に鳴らしている。その一方で、医師としての理念が、言葉を尽くして彼女もまた救えないかと心に訴えかける。

「ゆかりさん……『パパとママ』は、何て言っていたの?」

 『ゆかりちゃん』の背後にいるであろう『パパとママ』の真意を知ることが出来れば、あるいは、彼女の凶行を止めることが出来るのではないかと。一縷の望みを言葉に託して、獅郎は必死に呼びかける。

(止まるんだ。止まってくれ。そうでないと──僕も)
 いざとなったら容赦が出来ない。それは彼が猟兵であるが故に。
 奥歯をギリと噛んで彼は願う。

 その願いをあざ笑うかのように、少女はコロコロと嗤う。

「パパとママは、みんなが幸せになるために仲良くしなきゃダメって言ってたよ。だから、私、みんなとなかよく遊ぶんだよ。おにいさんも一緒に……“わたし”といっしょに、なろ?」
 ──わたし、“ともだち”たくさん作ったんだぁ。
 そう笑いかける彼女の真意を直観的に汲みとり、獅郎は泣き出しそうな顔をこれでもかと眉根を寄せる。

「……そう、ですか」
 昏い絶望の淵に立たされながら、彼は一つの覚悟を決める。
 ならば、せめて目の前の彼女は自分の手で。

 なおもあどけなく笑うゆかりちゃんの細首にそっと鋼糸を輪にして掛けると、背負うようにして体重をかける。

「ひどいよ、ひどいよ、ひどいよ……」
 ぐぇっとカエルが潰れるような声を漏らし、少女は嗚咽する。
 首に手を回して血が出る程にガリガリと掻き毟れども大人と子供の体重差で締められた鋼糸は緩むことなく、叫声の代わりにひぃと最期の吐息が漏れて、ゴトリと重いものが地に落ちる音がする。

 直接的にオブリビオンの攻撃に晒されたわけでもないのに、獅郎の顏は青ざめ、額には脂汗さえうっすらと滲んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月守・咲凛
SPDで行動します。
うう、こんなに歩いたのたぶん初めてです、足いたいです……。周り暗いのちょっとだけ怖いです……。それはともかく、駅のロッカーまで、急いで武装ユニットを取りに行かなきゃ! 慌てて走り出します。
逃げ出したように見えるでしょうから追いかけられるかな?。ホラーな見た目の相手に追われてもはや半ベソですが。
後ろから攻撃して来る炎をUCで避けながらロッカーに辿り着いたら先ずはチェーンソーを引き抜いてなぎ払い一閃、そのままガチャンガチャンと装着される武装ユニットに能力と勇気を貰いながら、零距離射撃でガトリングとビームキャノンを一斉発射、さあ、戦闘開始です!
あとは飛び回りながら射撃戦です。


アルフレッド・モトロ
(【ワンダレイ】のメンバーがいる場合一緒に行動)

「咲凛(f06652)!無事か!?」

団員の咲凛がピンチと聞いてすっ飛んできた俺だ。
暗い工場を【ブレイズフレイム】で明るくしてやる!

飛び火にはブレイズキャリバーの地獄の炎で対抗。

「クソっ、なにが…なにがひどいよひどいよだ…わかった、わかったから…」
『ゆかり』を見ると…故郷に残してきた妹の幼い頃を思い出して結構つらい。締め付けられるような思いを【吹き飛ばし】てしまうように【覚悟】を決めて【ワンダレイ・アンカー】を振るう。
なるべく咲凛を護るよう、【かばう】ように立ち回るぞ。

「…ええい、やかましいわ! 『ゆかり』とか言ったな、もう泣くな!!」


星群・ヒカル
行動:SPD
【ワンダレイ】メンバーと一緒に行動

この超宇宙番長が咲凛を助けに来たぞ!
なんだかホラーじみた奴だが…… 超宇宙望遠鏡「ガントバス」と神経融合し、「暗視」「第六感」で感じたことを周りのみんなに共有しよう
あれが女の子の姿を取っているのは見せかけのはずだ、おれの「星の目」があればきっと真の姿が「視える」! そうすればみんなも戦いやすくなるはずだッ
(推理:正体はむしろ捜索願の方が本体なのでは?)

咲凛を同乗させ 宇宙バイク「銀翼号」で駅までGO!
咲凛のUCと、「銀翼号」のゴッドスピードライドの連携なら 敵の炎上攻撃をかわしていけるはずッ!
その後は咲凛と急いで元の場所まで戻るぜ!


メンカル・プルモーサ
【ワンダレイ】で参加……手伝いに…来たよ…
子供をさらおうとするのも…みすごせない……
【現実を侵せし狩猟団】を引き連れて現場に到着…… 先行しているアルフレッド達が囲まれているようなら…
ガジェットでの牽制射撃とウィザードミサイルの一斉射で囲みを破る…… 特に、ゆかりちゃんに攻撃を当てればお父さん(仮)お母さん(仮)は消えるから……集中して狙う…(援護射撃・属性攻撃・高速詠唱)
……以前のゆかりちゃんとは…雰囲気が違う。やりやすいかな…… 害意は感じるし。
……(アルフレッドに向けて、発破かけるように)だから、辛いなら私がやる……



●翼を忘れてきたカラーひよこ
 咲凛は時おり後ろを振り返りながら、一心不乱に走っていた。

 クスクス、クスクス、クスクス──。
 耳元で、背後で、もしくは行く手で。少女の笑い声が聞こえる。その声はか細く、蚊の鳴くような声であるにも関わらず不思議と咲凛の耳に入り、彼女の神経を逆なでする。

(やっぱりユニットを置いてきたのは間違いだったのです……早くロッカーまで戻らなきゃ!)
 焦る気持ちは空回りして、昼から歩き回って疲れた足はもつれて言うことを聞かない。
(足も痛いし、周りは薄暗くてホラーな感じだし……)
 来た道を必死に駆けながら、心の中でそっと悪態をつく。その頬を、『ゆかりちゃん』が放った鬼火がチリチリと焦がす。長く垂れた空色の髪を尾のように振りながら、なおも咲凛は脇目も振らずに、人気のなくなった商店街をぽてぽてと走り抜けていく。

●世界を渡る海鷂魚
 一方、その頃──。
 グリモアベースに停泊した『飛空戦艦ワンダレイ』では一人の青年が伝声管に向かって叫んでいた。
「誰か、今すぐ動ける奴、いるかっ?いたら緊急招集!UDCアースで咲凛がピンチだ!!」
 血相を変えて伝声管を握りしめる彼はアルフレッド・モトロ(蒼炎のスティング・レイ・f03702)、この戦艦の艦長だ。団員が赴いた任務の様子を見ていたアルフレッドは、『ゆかりちゃん』に追われる咲凛の姿に驚いて仲間へと呼びかける。

 その呼びかけに応える声が2つ。

「この超宇宙番長に任せなっ」
 そう啖呵を切ったのは星群・ヒカル(超宇宙番長・f01648)である。
 不良中学をシめる番長としてその名を馳せた存在である彼には、同朋(とも)の危機を見過ごす事など出来なかった。愛用のバイク『銀翼号』に跨り、ブオン!とエンジンを蒸かすと──アルフレッドの説明も右から左。そのままの勢いでグリモア猟兵が開いたままのゲートへと突入していく。

「……行っちゃった」
 グリモアベース職員の制止も何のその。排気ガスの匂いを残して走り去ったヒカルの後から、メンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)がケホケホと軽く咳き込みながら現れる。
「アルフレッド……行くよ。咲凛……助けないと」
 パタパタと白衣の袖で纏わりつく煙を追いやると、その袖からポロポロと『現実を侵せし狩猟団』の軍団が現れる。正に百鬼夜行の名に相応しい小さなガジェットを引き連れて、彼女もまたゲートを潜る。

 頼もしい仲間の助けを得て、「待ってろ……俺が、俺たちが今行くからなっ!」とアルフレッドも続いてゲートへ飛び込んでいった。

●Circusは躍る
 駅前もまた、不思議と人の姿は誰一人として見えなかった。

(あぁもうっ……鍵が開かないのですっ)
 そんな静寂に包まれた駅前ロータリーの片隅で、焦りからかおぼつか無い手でガチャガチャと音を立てながら、咲凛はロッカーを開けようと試みていた。

 その背後に。

「クスクス……どうして、にげるの?」
「いっしょにあそぼうよ──」
 うり二つに同じ貌をした『ゆかりちゃん』が追い付いてきては、無防備な咲凛の背後に無慈悲な炎を放つ。ぼうぼうと燃え盛る青い鬼火は左右から挟み込むように必死に鍵を回す咲凛の背中に襲い掛かる。
 あわや二つの火球が小さな背中を丸焦げにしようとしたその時。

「咲凛!無事か!?」
 叫ぶなりにアルフレッドが放った【ブレイズフレイム】が、鬼火の一つを横薙ぎに吹き飛ばす。

 もう一方の鬼火もまた、「ふぅっ、どうやら間に合ったようだな!」とウィリーターンでアスファルトを切りつけながら銀翼号のボディをねじ込ませたヒカルが、超宇宙学生服の裾を翻して叩き消す。

「咲凛……手伝いに、来たよ……」
 二個小隊に届かんばかりの狩猟団の牽制射撃をバックコーラスに、メンカルは【ウィザード・ミサイル】を一斉射する。爆音と共に襲い掛かる数と火力の暴力に、オブリビオンは為す術もなく一体が黒く炭になって転がっていく。

 『ワンダレイ』の一行が作り出したその刹那。
 カチャリ、と音がしてロッカーの扉が開く。

「みんな!助かったのです」
 うっすらと二つの瞳に涙を滲ませながらも、気丈に微笑みを浮かべ、咲凛はチェーンソーを抜きがけにもう一体のゆかりちゃんへ叩きつける。

 ギャリギャリギャリ──!
 暖気もそこそこに肉を噛んだチェーンソ―の刃は、少女の貌をした異形の胴をそのまま食い散らかす。勢いのままにチェーンソーを振り抜くと、悲鳴すら上げさせぬままに骨を砕き、肉を裂いてオブリビオンの上半身と下半身は決別した。
 眼前の脅威が去ってふうっと息を吐く咲凛の四肢には、吸い込まれるかのように武装ユニットが装着されていく。

●曝け出された真実
「ありがとうございます。もうオブリビオンに遅れは取らないのです」
 武装ユニットを身に着け、勇気づけられたのか咲凛は胸を張る。
「良かったぜ。ちょっと心配したじゃん?」
「無理は……禁物。油断大敵」
「よしっ!それじゃ反撃といこうじゃねぇの?」
 そんな彼女の様子を見て、口々に無事を喜び、元気づける仲間たち。
 いつの間にか時刻は終電を過ぎ、駅舎の灯も落ちて周囲はいよいよ暗くなる。

「『ゆかりちゃん』……とか言ったな。一体、なんなんだ。アレ」
 小学生の姿をしたオブリビオンに故郷に残してきた妹のかつての面影を重ねてか、アルフレッドは渋面を隠そうともせず腕を組む。
「……前にみたゆかりちゃんとは、また……雰囲気が違う」
 メンカルも、自身の経験を振り返って首をひねる。
「ゆかりちゃんは、どこかに私たちを連れて行こうとしていたのです。それが何処か、結局わかりませんでしたけど」
 咲凛が改めてこれまでの任務で得た情報を猟兵たちに共有すると、それを聞いたヒカルが指を鳴らして提案する。
「よっしゃ、それなら……おれがひとつ、『ガントバス』で視てみるとするか!」

 超宇宙望遠鏡『ガントバス』と神経を接続したヒカルの脳裏には、やがて一つのビジョンが形作られる。それは、篝火が煌々と燃え盛るだだっ広い祭壇の中央で、一心不乱に祈りを捧げる白装束の人物の姿。そして、それを幾重にも取り囲む『ゆかりちゃん』たち。
 さらに意識を集中していくと、人型に見えたゆかりちゃんの輪郭がぼやけ、その顔に位置した捜索願の裏側に朱の墨で描かれた梵字が浮かび上がる。

「こいつは……式神、か?」
 ヒカルがそう呟いた、その時──振り向いた白装束と、目が合った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『『黄昏色の啓蒙』祈谷・希』

POW   :    苦痛を受けよ、精神を死へと返せ。救済の日は近い
自身が装備する【『黄昏の救済』への信仰を喚起させる肉輪 】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
SPD   :    黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ
【紡ぐ言葉全てが、聴衆に狂気を齎す状態 】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    痛みと苦しみが、やがて来る救済の贄となる
【瞳から物体を切断する夕日色の怪光線 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は火奈本・火花です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「私のかわいい『ゆかり』たちを、随分と苛めていただいたみたいですね」
 突如投げかけられた声に、はっと猟兵たちが身構えると、一行の前には紙でできた人形(ヒトガタ)がひらひらと風に吹かれて漂っている。
 声はその人形を介して何処からか届けられているようだった。

「フフフ……そんなに私たちの事が、気になりますか?それなら私の下へいらっしゃい。みんなあなた方をお待ちしておりますよ」
 そう不敵に呼びかけると、つい──と人形は意思を持ったかのようにどこかへと進んでいく。猟兵たちが警戒しながらも人形の後をつけると、かつては神社だったのだろう社に白木の舞台が組まれた祭壇へとたどり着く。
 それは確かにヒカルが視た祭壇に違いなかった。

「ようこそ、お待ちしていましたよ」
 猟兵たちの姿を認めて、『黄昏色の啓蒙』祈谷・希は呼びかける。手にしたされこうべを手のひらで撫でさすりながら、白装束に身を纏った女性は一行へ微笑みかけた。

「せっかく私たちが大切に、たいせつに『ゆかり』を育てて来たのに、あなた達はそれを台無しにしてしまうのですもの。困りましたわ──ねぇ、貴方」
 どこか自分だけの世界に入ったように上の空に虚空を見つめながら言の葉を紡ぐ祈谷の声に応えてか、彼女の手の中のされこうべがカタカタと音を立てる。

「えぇ、えぇ。そうですわね。この方たちを新しい『ゆかり』にすれば好いでしょう」
 内なる狂気と会話してか、独りでにそう結論を下すと、祈谷はその身を邪神と化して猟兵たちに襲い掛かる。
仁上・獅郎
成程、子供を拐かし「ゆかり」さんにしていたと。
ええ、容赦などしません。未来ある彼らを身勝手な狂気に巻き込んだ報いは受けていただきましょう。
詫びろとも、贖えとも申しません――己が為した醜い所業を、自ら悔いさせるまで。

猟兵として、少なくとも表面上は冷徹に、戦端を開きましょう。
魔導書を開き、【白熱縛鎖】を使用。
灼けつく鎖でその身を捕らえ、動きを封じます。
後は仕込んだ拳銃で[クイックドロウ][2回攻撃]による[目潰し]を。
必要ないでしょう?
血に塗れた悍ましい救済しか見えていない、そんな目など。
こんなことを言うべきではないのでしょうが……存分に、魂ごと焼けつく痛みを味わっていくといい。


メンカル・プルモーサ
【ワンダレイ】で参加……
……ん、話は通じ……ないか……なら、やる……
…あれになるのは…遠慮する。そんなに小さくない……(※小さいです)

肉の輪は……アルフレッドと尾守が対処してるから…その間に情報を分析……(情報収集)
●黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよや●痛みと苦しみが、やがて来る救済の贄となるを【崩壊せし邪悪なる符号】で相殺する……
…優先順位は●黄昏~の方が上……強化はさせない……

後は体勢が整ったら…ウィザードミサイルで攻撃……
……変身前に手に持ってたされこうべがどこかに残っていればそれを狙ってみる……


月守・咲凛
【飛空戦艦ワンダレイ】のみんなと共に行動。
「私、そんな個性的な顔になるのは流石にちょっと遠慮します!」
離れた位置からブレードガーディアンユニットを飛ばして攻撃、味方が攻撃されそうになったら2丁の火線砲で援護射撃します。
「尾守さん、だいじょうぶ、1人じゃありませんからね」
尾守さんや月影さんの回復のタイミングに合わせてブレードガーディアンをそちらに回して盾受け、回復の時間を稼ぎます。
敵が黄昏のユーベルコードを使用して来たらこちらはガトリングとミサイルとキャノン砲と飛行チェーンソーの斉射音で対抗、一旦話を聞き取れなくして、夜暮さんの音楽が流れたらそちらに引き継ぎます。


夜暮・白
【ワンダレイ】の皆さんと合流して連携します。子どもがいなくなるとか、タチが悪いよ。(個人的な事情でムッとしている)

最初は忍び足で敵と場の情報収集。音が入るように戸があればこっそり開けておきます。喋ってパワーアップするならこっちだって。咲凛さんの攻撃に続いて呼び寄せたワンダレイから音楽を流すよ!

速く動いて狙われるなら舞の真似事をしてみよう。地形の利用もしてなるべくゆったり動きながら、ダガーを煌めくように振るいます。尼僧頭巾を盗み攻撃で顔に巻き付けて邪魔したり、首や口を狙って話すのを妨害しよう。

味方の攻撃も遮らないように、位置取りには細心の注意を。攻撃回数重視でチャンスがあれば目も潰しにいきます。


月影・左京
【ワンダレイ】の仲間と合流するわ。
「助太刀に来たわ!みんな、無事ね?」

皆さんの後方に位置取り、【生まれながらの光】で負傷を癒していくわ。
回復が足りているようなら、メイスでの【気絶攻撃】を息もつかずに【2回攻撃】!
敵の隙を作るわ。
「救済というのは力ずくで行うものじゃないわ!」

敵の肉片(肉輪?)を拾えたら、夜野さんへ即刻パスするわ。
「はわーっ!?やだー!何これー!夜野さん、早くどうぞ!」

敵の攻撃には【聞き耳】を立てておき、自分に向かってくるのを察知したら【見切り】で回避!
「はわっ!?やったわね!」
黙ってやられてるなんて性にあわないから、避けた動きのままメイスの【気絶攻撃】を【2回攻撃】で繰り出すわ


星群・ヒカル
やっぱり行方不明の子供達はもう……!
オブリビオンってのはどいつもこいつもヒトをスペアのある部品としか思ってねぇのな
そうやすやすと人を「上書き」させてたまるかよ、イカレ女ッ!

【ワンダレイ】で協力戦闘
離れたところから超宇宙・強襲流星撃でみんなの援護射撃
敵のユーベルコードの兆候を「視力」「第六感」で観察、皆に伝えるぞ

さっき目が合ったのもあって、気を抜くと奴の狂気に当てられそうになっちまうな……ッ
白の呼んだワンダレイから流れる音楽で調子を戻そう!
いくら高速で動いたって、おれの目からは逃れられねぇぞ!
真の姿の片鱗である青い炎を纏って撃ちまくるッ!
これが唯一無二、絶対不変の番長魂だーッ!

※アドリブ歓迎です


尾守・夜野
【ワンダレイ】の皆に合流

俺はUDCアースというか
邪神にトラウマがあるからな
まともには動けんぞ
仲間がいる状況下では特に

だからサポートに回る
攻撃は全部俺で止める
傷つけさせやしねぇ
誘惑でこちらに攻撃の軌道を寄せ
盾(時計から力場が出る)で受け流し
強化されるなら呪詛で対抗する
仲間が危険ならかばう

傷を負うなら皆から渡された肉輪を素材としてUC発動
絵面、グロいから使う際は見えねぇようにはする

ちなみに…他の人に対してはよっぽどがなければ使わん

隙があれば呪詛を込めた銃でいっぱい血がでそうな所を狙い打つ

スタミナがきれる?
肉輪も相手の一部だよな?
それ経由の吸血、生命力吸収をする事で持たせる

アドリブは歓迎だ


アルフレッド・モトロ
【ワンダレイ】のメンバーと連係。
ワケの分からんことをボソボソ言ってる邪神に腹が立つんで ブレイズフレイムで一気に噴火する。
ワンダレイ・アンカーを鎖鎌の要領で投げて、出現した肉輪たちを破壊、もしくは収集。
集めた肉輪は夜野にパス!
どうやら使い道があるらしい。

そして本体に向けてワンダレイ・チェインを使って【敵を盾にする】。
さらにアンカーで【串刺し】にして、敵を地面に縫い付けてやる。
そんな感じで拘束することで、咲凛の攻撃が当たりやすくなるよう支援するぜ!

(絡み、アドリブ大歓迎だ)


アルビーナ・ヒルシュフェルト
クリスティンが全速力で斬りこみ、速度を活かした縦横無尽に駆け回り連撃を叩き込む。
「演説は結構、聞いてもわからねぇからな…。んじゃ、とっととおっちね!」
敵の攻撃など意に介さず血みどろのまま斬りあう



「なるほど。貴女が、子供を拐かして『ゆかりちゃん』にしていた、と──」
 獅郎は努めて冷静に、内心の激昂を押し殺して邪神へ相対する。

「黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ……」
(うるさい)

「救済は汝のすぐ傍にある……」
(うるさい)

「全て等しく黄昏に包まれ……」
「──るさいと、言っているでしょう」

 もう十分だとばかりに彼が腕を振ると、まるで奇術のように前腕の陰から手の平に一丁の拳銃が滑り出る。そのまま、タン──タンと乾いた銃声が二つ鳴り響けば、それはあらかじめ決まっていた結果のように当然の顔をして祈谷のその巨大な赤い瞳に吸い込まれる。

「ぅあ──!?」
 声にもならない悲鳴を上げ、オブリビオンは眼前の床に飛び散った飛沫を視る。
 銃弾は──貫通せずに残ったのだろうか。どこか熱に浮かされたような、ぼんやりとした精神の片隅に、苛立たしい痛痒が走る。それは、じくじくと脳内を赤く朱く染めていき祈谷の思考を掻き乱す。

「どうやら、あなたとは言葉が通じない様ですから」
 詫びろとも、償えとも申しません。ただ、自らの所業の醜さをその骨身に刻んで差し上げます──獅郎は穏やかな笑みを絶やさぬまま、オブリビオンとは分かりあえぬときっぱり決別する。


「確かに演説はもう結構、どうせ聞いてもわからねぇからな……!」

 視界の端に、ちら、と金色の輝きが映る。
 そう、祈谷が痛みにまとまらぬ頭で意識したその瞬間。傷と血飛沫で出来た死角を縫って懐まで駆け抜けてきたアルビーナが、蒸気をその杖から吹き上げながら無数の斬撃を放つ。

「何をするか、なんてのはハナっから決めてあんだよ──要するに、テメェは死ねって事だ!」
 普段の落ち着いた物腰とは裏腹に、粗暴にもにた物言いをする彼女の第三の人格──クリスティンがその身体を支配すると、手にした『シュティレラヴィーネ』が三度煌めく。


「うぐあぁぁぁっ!」
 今、何をされたのだろうか。痛い、イタイ、いたい──救いが、赦しが、救済が欲しい──!
 苦しみのままに身をよじり、残された片目から夕日色の奇蹟を放つ。これは、神の使途たる私に救世主様が授けて下さった力。あの子を奪われた私に出来る、数少ないこと。
 気が付けばずいぶんと囲まれているみたい。なぜ、どうして、みんなして私たち家族を追い詰めるの──?


 手ごたえはあった。だが、異形と化した祈谷にとってはアルビーナの斬撃はその動きを止めきるには十分では無かったようだ。苦悶の声と共にオブリビオンが放った怪光線は、尚も追撃を畳みかけようとする彼女の胴を横薙ぎに払う。咄嗟に身をよじって致命傷こそ回避したものの、鼻を衝く匂いと共に、黒く煙がその身から上がる。

「……ゴホッ」
 咳き込むと、どろりとした紅い塊が喉の奥からこみ上げる。鼻腔の奥には鉄釘が打ち込まれたかのよう。がっくりと膝を衝くアルビーナ。

 ……無防備となったその身に、再度、オブリビオンの攻撃が襲い掛かる。

「それはさせないのです!」
「みんな、無事かしら?助太刀に来たわ!」

 祭壇の周囲を取り囲む無数の『ゆかりちゃん』らを押しのけ、咲凛と月影・左京(夫婦ゲーマーのはわっ担当・f06388)がアルビーナを庇って立塞がったのはその時だった。
 スラスターを全力で蒸かして飛来した咲凛は、『シュンリン』のビームを広く拡散させてオブリビオンの動きを牽制する。それと同時に『アジサイ』を展開すると祈谷が放ったユーベルコードの橙色の光は盾に弾かれて霧散する。

「あら、ずいぶんと無茶をしたのね……めっ、ですよ?」
 凛と張り詰めた祭壇の上にあって、どこかその一角だけ空気が弛緩したような。そう錯覚させるような柔らかな微笑みと共に、左京はアルビーナの傷口に手を当てると【生まれながらの光】でその傷を癒していく。手を当てられた箇所が白い光に包まれ、失った熱を補うかのようにじんわりと温かさが感じられると、そこには最初から傷など無かったかのよう。

「……遅かったのです。来ないかと思ってました」
 メンカルが遅れて現れた『飛空戦艦ワンダレイ』の団員たちを横目で見ながら軽口を叩くと、「いやぁ、左京さんに先頭をお願いしたのが良くなかったんですかね」と夜暮・白(燈導師見習・f05471)が続ける。
「はわっ!?白さんひどいのですよ?」
 むくれた様子の左京を、まぁまぁと宥めるのは尾守・夜野(群れる死鬼・f05352)。
「悪かったな、遅れて。俺らもサポートするぜ──敵は、アレ、か?」
 顎をしゃくって祈谷を示すそんな姿を見て、猟兵たちは頼もしさを覚える。

「夜野のアニキッ!」
「アニキはやめろ、アニキは。こそばゆい」
「左京、白、夜野!助かったぜ。これだけ『ワンダレイ』の団員が揃えば無敵じゃねえの?」
「……頼もしい」
「その通りなのです。わたし達は一人じゃないのですよ!」
「タチの悪いオブリビオンに、猟兵の力を思い知らせましょう」
「ヒトのことを替えの効く部品としか思ってねぇオブリビオンなんざ、おれがブチのめしてやるよ……!」

「あなた……方、は?」
 加勢と思しき猟兵の一団を見て、獅郎は、アルビーナはいずれも驚きを隠せない。出発前にグリモアベースで見た顔もいるようだが、見たことも無い顔も少なくない。いずれにしても、狂気に冒されたオブリビオンを前に新たな味方を得たことは、彼らをもまた力づける。

「俺は『飛空戦艦ワンダレイ』の団長、アルフレッド・モトロだ!そしてこれは俺の頼もしい団員(クルー)達だぜ。訳の分からないことを言ってる邪神は許せなかったからな、俺たちも討伐に協力するぜ!」
 そういってコートをはためかせると、アルフレッドは『黄昏色の啓蒙』祈谷・希を眼光鋭く睨みつける。


「あぁ、嗚呼。神をも恐れぬ不埒者共がまた私に試練を与えるのですね。分かりました……ならば私は信仰を以って全ての試しに応えましょう。苦痛を受けよ、精神を死へと返せ。救済の日は近い──」
 新たに現れた猟兵たちに臆した様子も見せず、邪神はまた歌うように祈りを捧げるとその身に纏った肉輪を無数に分裂させ、眼前の敵へ放つ。その肉輪は唸りながら血糊をまき散らし、猟兵たちを締め付けようとする。

「うっ……血の匂いはどうも苦手だぜ。理性を保てなくなる」
 そう言って顔をしかめると、アルフレッドは【ブレイズフレイム】を解き放ち、一気にいくつかの肉輪を焼き切っていく。その身を灼いて噴出する地獄の炎は、渦となって神殿の空気をパチパチと爆ぜさせる。
「コイツはおまけだ、とっときな!」
 炎に被せるようアルフレッドが放ったワンダレイ・チェインは、ぐるぐるとオブリビオンに巻き付き、その身体を祭壇の床に縫い留める。

「私も、『ゆかりちゃん』になるのはちょっと遠慮します!」
 アルフレッドがオブリビオンを拘束するのを見て、咲凛は素早く盾として展開していた武装ユニットを回収してチェーンソーへとその形態を変化させる。同時に……その身に装備した無数の兵装ユニットもまた、全ての砲身を邪神へと向ける。
「──このタイミングなら外しません。武装ユニット全開放、撃ちます!」
 爆音と共に放たれた、ビームが、連発砲が、迫撃砲が。光と煙、圧倒的なエネルギーを純粋な暴力としてオブリビオンに叩きつける。

「UGAAAaaa!」
 もはや単なる音として、空気を振るわせて邪神は吼える。その身は満身創痍に近く、白き装いは煤に塗れ、無数に出来た傷からはどろりと黒いモノが零れている。
「黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ……」
「黄昏を讃えよ、救済を待ち侘びよ……」
 倣いとして染みついた祝詞をうわごとのように繰り返しながら、オブリビオンは自身を強化・修復しようと試みる。

 ──それは、させない。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消」
 祝詞に被せて詠唱するメンカルの魔力は、邪神の呪詛に絡みつき、徐々にその理を解きほぐしていく。
 尚も詠唱の一節を繰り返すオブリビオン。二人の力はほぼ拮抗しており、一進一退であるかのように見えた。メンカルも必死で魔力を練ってオブリビオンに対抗するが、その額にはうっすらと脂汗すら滲む。
「黄昏を讃え……」
 幾度めの攻防だろうか。その、詠唱が途切れる。

「時空の外神よ。その憤激を、深淵よりの光と鋼鉄の束縛と化し、我に貸し与え給え」
 魔導書を手にした獅郎が放った【白熱縛鎖】が、灼けた鎖を邪神の口に猿轡として噛ませる。激痛と共にその動きを封じる彼のユーベルコ―ドから支援を受けて、一気にメンカルは力を籠めて詠唱を完成させる。

「魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」

 ──パキイィィン!

 まるでガラスが砕けるような、透明な音がした。


「……ぐ。さすがに、キツいなッ」
 ヒカルは自身の視神経を『超宇宙望遠鏡ガントバス』と接続し、邪神の動きを観察していた。先だって、オブリビオンと波長が“合って”しまったからだろうか。邪神の白い姿を見ていると、ひどく心が乱れる。耳の奥に僅かに残る邪教の祝詞が狂気を呼び起こす。

「大丈夫、ヒカルさんには僕たちがいるじゃないですか」
 白はそんなヒカルを安心させるかの様に、そっとその肩に手を置く。
 ここは社の外れ、神殿の舞台からはやや離れた場所で、彼らは乾坤一擲の一撃を放つための機を窺っていた。邪神から距離を取った此処であれば、その狂気の影響もいくらか和らぎ、戦況全体を俯瞰するにも具合が良い。前線を味方に任せ、白とヒカルは後方に布陣した。
 白が時空を超えて呼び寄せたワンダレイの機外音響装置から流れるマーチは、ヒカルを鼓舞し、精神を清澄に保たせる。
「助かる……すまねぇな」
 そう呟くと、ヒカルはまた意識を遥か離れた祭壇へと向ける。

「ヒカル、お前は攻撃の機を伺うことに集中しろ」
 夜野は一人、後方のヒカルと白を護るために孤軍奮闘していた。この地には、邪神には全くいい思い出が無い。裏切られ、虐げられ、踏みにじられた。その事が、敵を討ち果たした今もなお彼の心を苛んでいる。
 だが、夜野の足は惑うことはあれど止まりはしない。
 今の己が出来ること、それを見据えて彼はまた、戦っていた。
 祈谷の放つ攻撃は、無差別に、広範囲に辺りを薙ぎ払っていく。それは後方に位置する白とヒカルをも巻き込む。無防備な状態で敵の分析に集中するヒカルらを護るのは、夜野の役目であった。手にしたアンティーク銃で応射を繰り返し、その身と力場を盾として攻撃の余波から味方を庇う。
「……まだまだ。仲間はこの俺が傷つけさせやしねぇ」
 【imitation mimesis】を発動させ、自身の傷を小まめに癒しながら、尚も彼は戦い続ける。

「そんなヒカルさんをお手伝いするのは、この私のお仕事なのよ」
 アルビーナの治癒を終えた左京もまた、戦線へ復帰していた。味方の火砲の射線を通すように、手にしたメイスでオブリビオンの肉輪を打ち払っていく。中衛の要として攻防一体の働きを果たす彼女は、普段のおっとりした様子からは想像も出来ぬほどに機敏に立ち回る……ように、見えた。
「はわーっ!?やだー!何これーっ!」
 べちゃりとメイスにへばりついた肉輪に悲鳴を上げると、即座に引きはがして、ぽいと大きく放り投げる。
「私、これいりません!夜野さん、早くどうぞ!」
 ──いや、いつも通りの彼女だったのかもしれないが。いずれにしても頼れるヒーラーで有った事は間違いが無いだろう。


 ──荒い息を吐きながら、ヒカルは精神を更に研ぎ澄ませていた。祭壇では敵味方が入り乱れて混戦が続いている。その隙間を縫って長距離射撃を叩きこむ。それは想像以上に彼の神経をすり減らしていた。

「大丈夫、お前ならやれる」
 疲弊した様子のヒカルを見た夜野は、取って返して仲間へ声を掛けると共に癒しの力を分け与えていく。戦艦から流れるマーチもまたクライマックスへ差し掛かり、トランペットが一際大きく鳴り響いた。

「ようやく『視えた』ぜ、イカレ女!おれの目からは逃れられねぇぞ……絶対不変の番長魂を受けて、蜂の巣になりやがれッ──!」
 その身に青き焔を纏い、瞳に流星を宿して真の姿となったヒカルはガトリングガンのトリガーを引く。『銀翼号』に備えられた砲門が火を噴き、地面を抉りながらオブリビオンの身体に億千万の星影を散らした。


「嗚呼……私の祈りは、届かないのですか……」
 無数に空いた風穴から闇をドロドロと漏らしながら、邪教の使徒は風船のようにしぼんでいく。その身に宿した狂気は霧のように掻き消えて、そこにはただ呪詛の言葉を吐きながら消えゆく存在があった。

 ──ぷすん。

 まぬけにも思える音を断末魔として、オブリビオンは消え去った。あとには二つのしゃれこうべと、ボロボロになった古い新聞記事の切り抜きが残されていた。

『行方不明の少女、遺体で発見さる』
『民家に男女の死体。無理心中か?』

                          「夕焼け小焼け」──了。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月23日


挿絵イラスト