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学食防衛戦線

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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 アルダワ魔法学園。
 災魔――オブリビオンを封じた迷宮の上に建つ、蒸気機関と魔法の園。
 その一角を目指して、地下深くから主なき鎧の群れが進んでいる。
 隊伍を組み、一糸乱れず足並み揃えての行軍は、訓練された生者のそれと変わりない。
 彼らが非戦闘員のいる区域にでも辿り着けば、多くの被害が生じるだろう。

●守れ、大事な学食!
「――ですが、こうして幸いにも襲撃を予知する事が出来ました」
 グリモア猟兵の一人“テュティエティス・イルニスティア”は、一同を見回して言った。
「このままではアルダワ学園内の学食に敵が到達してしまうようですが、これまた都合のいい事に、彼らは進軍途中で迎撃に手頃なフロアを通ります。罠もなく、敵の侵入口が一つであり、大軍を一挙に進めるには足りないけれども、しかし長物やら銃器を用いて立ち回るには十分な広さという、むしろこれ自体が罠ではないかと疑いたくなるほど都合のいい場所です。……ああ、大丈夫ですよ。フロアの安全性は予知で保証します」
 此処を最終防衛線として、敵の侵攻を食い止めましょう。
 そう呼び掛けつつ、テュティエティスはさらに説明を続ける。

 敵群の殆どを構成するのは“兵士の呪鎧”と呼ばれる災魔だ。
 その名の通り、骸の海より染み出した過去が兵士の着用していた鎧の形を成したもので、非常に優れた連携力を武器としている。
 それだけでも厄介なのだが、今回は群れを率いているのが上位個体――“騎士の怨鎧”である為、より統制のとれた軍団となっているようだ。
「兵士の呪鎧による攻勢は熾烈を極めるでしょうが、彼らを打ち破らなければ指揮官たる騎士の怨鎧と刃を交える事もできません。皆さんが持つ様々な技能、そしてユーベルコードを駆使し、まずは兵士の呪鎧を全て討滅しましょう」
 では、早速テレポートを――。
 そう言いかけたところで、テュティエティスは「ああ」と思い出したように呟き、再び猟兵達の方へと向き直る。
「無事に作戦を終えることが出来れば、ちょうどお昼頃になるかと思います。学食、なんてものは当然学生でなければ食べる機会もありませんし、折角ですから寄ってみるのも如何でしょう?」
 私もちょっと気になるところでして……などと言いながら微笑み、テュティエティスは改めて移動の準備に移った。


天枷由良
 蒸気機関で作る幻の焼きそばパン。
 ……なんてものがあるかどうか知る為にも、鎧を処分して下さい。

 プレイングの取り扱いについて、
 特に記述がないものに関しては、複数名を組み合わせるかもしれません。
 お一人の描写をご希望の場合は、プレイング冒頭に【1】と。
 ご友人などで協力なさる場合は、共通したチーム名などをご記入下さい。

 それでは、ご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『兵士の呪鎧』

POW   :    突撃陣形
【密集陣形を組ん】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    防御陣形
【後衛】から【遠距離攻撃】を放ち、【前衛が盾で押し込むこと】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    機動陣形
【鋒矢陣形を組むこと】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【衝撃力の高い突撃】で攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ゾーク・ディナイアル
「ねぇねぇ、学食だってよ!美味しそうだね!楽しみだなぁ!」

☆戦術
SPD勝負
「学食かぁ、軍にいた頃は食事なんて配給だったもんなぁ、しかも食事の度に……あぁぁぁ!そうだ!食事の度に変なもの食わせやがって!ボクをバカにしてぇぇ!」
思い出したら腹が立ってきた、コイツら殺そう、キャハ!
という訳で敵陣に斬り込んで、怪力を発揮しながら強化兵戦技《高速剣》で大暴れ。
「なんかさぁ、そうやって真面目に陣形とか組んでるの見るとさぁ…昔の嫌なこと思い出しちゃうだろぉぉ!?」
見切りで攻撃を回避しながら高速剣で斬りまくる、前衛を崩して後衛まで抜けて。
「後ろからチマチマやってんのがぁ!気にくわないって言ってんだよぉ!」


サラ・ノアール
鎧の兵隊ってだけで威圧感あるわねー
兵隊の連携を崩して各個撃破が定石だけどどうしようかしら

チェーンウィップで【範囲攻撃】【なぎ払い】【ロープワーク】を
駆使して足元を狙いましょうか!
それとクサリメガミを発動して足と足を繋いでいくと面白そう!
転ばせた鎧はアサルトメイスで【鎧砕き】を試してみるわ
まぁ思いきり叩けばなんとかなるでしょう

囲まれそうになったら【逃げ足】【ダッシュ】【衝撃波】で離脱!
掻き回して他の猟兵を援護していくわね!

※【コミュ力】発揮して色々絡んでみたいです。鎖だけに!


九之矢・透
へっへっへ。
学食だの焼きそばパン?だの。楽しみじゃん。
気合い入れて昼飯前に終わらせねえとな!

【SPD】先制攻撃・範囲攻撃・2回攻撃
群れってんなら何体か倒す事で将棋倒しになったり
後列の動きを阻害できねえかな?
足元が邪魔ってだけで連携はしにくくなるからな!

って事で【不羈への枷】を使うぜ
群れなら一体一体はそんなに自由に動けないだろうからな
動く先を予想して足を狙うぜ
サポートは任せてくれ!


犬憑・転助
俺のユーベルコードは超嗅覚、キナ臭さだってかぎ分けるぜ

へぇー、この世界の鎧はずいぶんと固そうじゃねーか……
だが、侍に斬れないもんはねぇんだぜ?
着物姿で進みつつ

敵の奇襲や発見は超嗅覚で感知し、仲間に知らせる

戦闘時は二刀流

敵が一斉に攻めてきた時は<殺気>を解き放って一瞬でも足止めして機を作る

俺はキナ臭い場所が解るのよ、来ると思ったぜ(かばったり避けたり敵の弱点ついたり)

戦いが膠着したら、頭脳派な仲間の指示に従う。またはやろうとしてる作戦をフォローする

自分の世界との違いにはいちいち感心する

仲間に名を聞く
俺は「転んでも助ける」って書いて転助だ
コロ助じゃねー! てん助だ!

アドリブ歓迎、他PCと絡み希望。



●第一波
「ねぇねぇ、学食ってあっちにあるんでしょ!? 楽しみだなぁ!」
「焼きそばパン……だっけ? どんなもんか食ってみるためにも、気合い入れてさっさと終わらせねえとな!」
 ゾーク・ディナイアルと九之矢・透が、早くも期待に胸踊らせて口々に言う。
 その一方で、簡素な着物姿の犬憑・転助は頻りに鼻を動かして。
「……臭うな。ああ、こりゃ臭うぜ」
 異能の力にまで昇華した超嗅覚で以て、嗅ぎつけたのは香ばしいソースの匂い――ではなく、迫る呪いの臭い。
 薄闇の向こうから一つ二つと姿を現し、カチャカチャと音立てて来るそれは、転助に言わせれば間違いなく“キナ臭い”。
「鼻につくったらありゃしねぇ。おまけに随分と固そうじゃねーか。この世界の鎧は出来がいいんだな」
「そう、なのかしら。でも、確かに威圧感はあるわねー」
 まるで称賛めいた事を言いながら嘲笑する転助の傍らで、サラ・ノアールも口を開いた。
「まあ、いくら固くても思いきり叩けばなんとかなるでしょう」
「叩く? ……おいおい姉ちゃん、あんたはこれを何だと思ってんだ?」
 尚も不敵に笑って、転助が見せつけるは二振りの刀。
「侍に斬れないもんはねぇんだぜ?」
「へぇ、そうなの? ちょっと見せて――」
「おおっと」
 行動原理に等しい好奇心でついつい手を伸ばしたサラをひらりと躱してから、転助はそれをゆっくり抜き放つと敵に向ける。
「悪ぃな。気安く触っていいもんじゃねぇんだ。……だが、見てぇってなら」
 ――よく見てろ。
 そう言い捨てるなり、人狼の剣士はその場で刀を振るった。
 瞬間、薄闇から飛んできた矢が二つに折れて落ちる。
 まだ姿も見えない鎧が遠距離攻撃を仕掛けてきたのだ。同時に、最先の一団が大盾を構えて進軍速度を上げた。
 その圧力で全てを押し潰そうというのだろう。ともすれば、猟兵でも雰囲気に飲まれて竦みそうなものだが――。
「来ると思ったぜ」
 臭いで解るのよ。臭いで。
 得意気に語る転助には、恐れも怯えもない。
 矢の破片から敵に目を移したサラにも、まだ学食の話を続けていたゾークと透にも、そんなものはない。
 滲み出るのは、この先に敵を進ませまいとする闘志ばかり。
「学食を守るため、頑張るわよ!」
 持ち前のコミュ力を武器に、サラが音頭を取ってみる。
 それにいの一番で応えたのはゾークだ。どうにも少々危ない陽気さ漂う褐色肌のエルフ――ダークエルフと呼ぶべきか。ともかく、一行の中で最年長に当たる美女は銀の長髪を揺らしながら声を張り上げると、遥か後方の学食に想いを馳せて――。
「学食かぁ、軍にいた頃は食事なんて配給だったもんなぁ。しかも食事の度に……食事の……食事、の……度……に……あああぁぁぁ!!」
 突如、発狂した。
「そうだ! 食事の度に変なもの食わせやがって! ボクをバカにしてぇぇ!」
「え、あの、ちょっと落ち着いて――」
「うるさい! ああ、なんかもう、あれ、腹が立つからアイツら殺そう!!」
「ええ……?」
 突然どうしちゃったのこの人。いやエルフ。ダークエルフ。
 もうコミュ力とかそんなんじゃどうにもならず困惑するサラを余所に、ゾークは長剣を振り上げると一目散に敵群へと向かっていく。
「やるしかねぇな!」
 脳みそ筋肉系男子であるが故に、転助もあっさりと流れに乗って駆け出す。
 参った。もうちょっと知的な軍師風猟兵が欲しかった。
 そう思ったかどうかはさておき、サラの視線は自然と残る一人、透に向く。
「足を狙って将棋倒しにでもすれば、後ろの奴らの邪魔が出来ねぇかな……?」
「……透ちゃん!」
「な、なんだよ」
 いきなりちゃん付けかよ。
 そんな表情も全く意に介さず、少しばかり気の緩んだサラは期待を眼差しに注いで、激しく首肯。
「言う通り足元を狙いましょうか! 前に出た二人は……どうにかなるわよね!」
「お、おお……」
 意外と雑だなあ。
 そう思ったかどうかはさておき、透は浴びせられる視線から目を逸らすと。
(「アタシが、しっかりやるしかねえな……!」)
 虚勢を張り直してから、幾つかの道具を取り出した。

 かくして、アルダワ魔法学園の学食を守るべく戦いが始まった。
 なりふり構わず敵陣に斬り込もうとするゾーク目掛けて飛んでくる矢だとか石だとか、そういった遠距離攻撃の類を、転助が自慢の超嗅覚で一つ残らず斬り捨てる。
 が、庇われている方は全くもって配慮を感じ取っていない。
「なんかさぁ! そうやって真面目に陣形とか組んでるの見るとさぁ! ……昔の嫌なこととか思い出しちゃうだろぉぉ!?」
 とかく喚いて正面から大盾の壁にぶち当たり、殺戮欲求のままに長剣を振り回す。
 怪力も発揮しての高速剣技は――転助などから見て、それが“剣技”と呼べるかはともかく――ゾークの感じ取れる範囲にいる鎧全てを殺すべき敵と定めて荒れ狂い、その勢いだけで迷宮の奥へと押し返した。
 しかし、それも一時的なもの。幾ら暴れても密な防御陣形を組む鎧は突破出来ず、次第に攻勢の勢いを弱められてしまうと、遂には力が拮抗して動けなくなったところに遠距離からの集中攻撃を注がれる。
「ああ、もう! そうやって後ろからチマチマやってんのがぁ! 気にくわないって言ってんだよぉ!」
 苛立ちばかりが募るが、打っても打っても状況は変わりなし。
 おまけに敵群がみっちりと詰まったところに突出しすぎたせいで、後ろの二人も援護するに出来ない有様。
「くそっ! 一旦退け!」
「うるさい! 殺す! 殺す殺す殺す!」
「だあっ! これ以上は駄目だっつってんだろうが!」
「ああぁぁぁ!!」
 一緒に脳筋アタックを仕掛けるのかと思いきや、嗅覚を優先した転助はゾークの首根っこを掴んで反転。
 サラと透の居る方にひたすら走る。その間にも殺意の篭ったあれやこれやが飛んでくるが、超嗅覚とは何とも便利なものだ。何だか“キナ臭い”と思った箇所さえ避ければ掠りもしない。
 そうして駆け戻る内に、残された後衛の二人にも援護の機会がやって来た。
「調子に乗るのもそこまでにしとけよっ!」
 手始めに透が虎挟、投げ縄、投網を次々に繰り出す。
 それらが全て、一列に並ぶ鎧の真ん中を捉えた瞬間。
 行進には大きな歪みが生じた。いきなり先頭が倒れた中央列は追突に追突を重ねて見るも無惨な将棋倒しを起こし、その余波で両翼を担う鎧達も足並みが乱れる。
「そこね! ――とくと味わいなさい!」
 すかさず無数の鎖を放つサラ。念力で操作されるそれは三種の罠に捕らわれた鎧の足元に絡みつくと、無理やり進み続けようとする左右の鎧の足に繋がって事故の規模を更に広げていく。
「今よ!」
 敵がつんのめって倒れ、剣も大盾も取り落として無防備な背を曝け出した今こそ攻勢に出る時。
 サラが声を張る。転助が手に掴んでいたものを離す。
「……殺す!」
 狂犬、もとい狂エルフが解き放たれる。
 それはもう“斬る”のでなく“叩き潰す”だ。戦い始めてから僅かな時間で溜めに溜めた鬱憤、そこに過去のあれこれを混ぜて、再び怪力を発揮するチャンスを得たゾークは、水を得た魚の如く鎧の海を泳ぎ渡る。
「ちっ、美味しいとこばっかり持っていきやがる!」
 ボヤきながら転助も攻めに転じて、ゾークが取りこぼした呪鎧を一振りで確実に仕留めていく。
 そして気がつけば、サラまでもが鎖付きメイスを振り回して鎧を鉄板に変え始め。
 透は――何かあればすぐ援護できるようにと構えながら、派手にやらかす者達を暫し見守った。最年少なのに落ち着いているのは、やっぱり境遇のせいだろう。

 やがて見渡す限りの残骸が消滅を始めると、四人は引き上げて一息つく。
「中々やるじゃねぇか。……えーっと……?」
 そういえば、肩を並べて戦ったというのに名前すら聞いていなかった。
 今更だがと尋ねる転助に、サラが答えて片手を差し出す。
 それを握り返しつつ、人狼剣士は名を告げるにあたって、まず字面から述べた。
「俺は“転んでも助ける”って書いて――」
「……ころすけ?」
「コロ助じゃねー! てん助だ! て・ん・す・け!」
 そう間違われるのも慣れたものなのだろう。
 かっと瞬間的に反応した転助は――そのまま薄闇に鼻先を向けると、呟く。
「……本気かよ」
 はしゃいでる場合じゃないらしい。
 まだ、来やがる。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

紅葉・智華
全世界サイボーグ連盟で参加
(いれば)

「学食か……改造される前は高校で食べてたな……。とにかく今は敵戦力を殲滅であります」

敵の数が多いようなので、【戦場覆う四足歩行兵器】で「数を補うでありますよ」。敵の攻撃を分散させ、あるいは肉盾にして後方援護射撃の体勢を整えます。
本命は【支配者の弾丸】による必中の狙撃。隙があればそのまま【連鎖する支配者の弾丸】で連続攻撃。
狙撃ポイントは適宜変え、その際の攻撃は可能なら【虚構の神脳】で回避したいでありますな。

【使用技能:第六感1,見切り1,ダッシュ1,スナイパー2,戦闘知識3.目立たない1,2回攻撃1,援護射撃1】


クネウス・ウィギンシティ
全世界サイボーグ連盟で参加
紅葉・智華(紅眼の射手/サイボーグの戦場傭兵・f07893)さんと参加

「防衛戦であれば、慣れております」

(智華さんに)
「狙撃ですか、私もお付き合いします」

以下内容で攻撃します。
・【POW】
・UC:Claiomh Solais
・技能:一斉発射10/スナイパー29/2回攻撃5/視力10(UC)、時間稼ぎ1/メカニック20(簡易射撃拠点構築)
「私は逆に、数が集まっているポイントを一掃します」

(敵POW UCに対して)
「密集してくれるとはありがたい、まとめて吹き飛ばします。ご注意を」
「土嚢を積んで簡易の射撃拠点を構築します。時間稼ぎぐらいにはなるでしょう」


バスティオン・ヴェクターライン
全世界サイボーグ連盟で参加「よーし、若者の青春を護るため、おじさんも頑張るぞー」【POW】壁役として参戦、味方射線に注意しつつ剣による武器受けと大型右義腕による盾受けで敵の攻撃を防御、同時に右腕に付けた3種のギアで恐怖を与えて敵の進軍を抑制するよ。相手も恐怖に慣れてくるだろうけど、恐怖の元凶である俺に注意を向けられる。壁役に攻撃が集中する程周りの継戦力も向上するよね。しかも敵が俺の居る場所に集まる程、俺のUCや他の猟兵君達の大技も狙いやすくなる筈だ。…まぁ壁役が撃破されたらマズいし、戦闘知識を生かしてヤバいと判断したら、UCや味方の攻撃に頼って少しずつ後退、距離を取って仕切り直そうかな。



●第二波
 学食。
 たった二文字の言葉が、紅葉・智華に在りし日を想わせる。
 学食。
 一介の高校生に過ぎなかった頃の智華には馴染み深く、けれども今では遠い場所。
 何がどうしてそうなったのか。
 メモリだのCPUだのマザーボードだのを弄くり回していたはずの手で、抱えるは一丁のライフル。
 いや、銃器もパソコンと同じで結構拡張性とかあって面白――などと笑ってもいられない。それを抱えて渡り歩く世界には、常に撃つべき相手がいるのだから。
 例えば、呪われた鎧の群れだとか。
「……とにかく、今は敵戦力を殲滅であります」
「了解。防衛戦であれば、慣れております」
 智華の傍らで、土嚢を積み終えたクネウス・ウィギンシティが応える。
 その程度の守りなどオブリビオンには在って無いようなものだろうが、しかし土を詰めただけの袋で稼いだ僅か一秒が勝負の分かれ目になるかもしれないと思えば、無駄とも斬り捨てられない。
「ご苦労さん。よーし、若者の青春を護るため、おじさんも頑張るぞー」
 クネウスを労ってから、バスティオン・ヴェクターラインが緩く意気込んだ。
 それから――今しがた築いたばかりの陣地をひょいと軽く跨いで、腕を回しながらずんずんと前に進んでいく。
 おいおい、そっちからは敵の大軍が来ているんだぞ……と、事情を知らぬ者であれば引き止めただろう。
 だが、智華もクネウスもバスティオンと同じ“全世界サイボーグ連盟”に属する身。先を行く彼が何をするか知っていればこそ焦る素振りはなく、淡々とそれぞれの支度に取り掛かる。
「まずは、これで数を補うでありますよ」
 そう言って智華が電脳空間から搬出するのは、九十機もの小型戦闘用四足歩行兵器。
 それをバスティオンのお供に付けて、自身は土嚢に身を潜めながら銃を構える。
「狙撃ですか。では、私もお付き合いします」
 事務的というか機械的というか、良くも悪くも淡々と安定した口調で返して、クネウスもアームドフォートを始めとする火器全てを同じ方向に向けた。

 程なく、兵士の呪鎧の第二波が続々と姿を現す。
「おう、来た来た」
 此処に至ってまだ緊張感に乏しい中年サイボーグは呟き、周囲の小型兵器と後方の簡易陣地をぐるりと見回した。
 一応射線に気を払っておくつもりだが、しかしまあ、背中に穴を開けなくて済むかどうかは射手の腕次第。
 もっとも、それは要らぬ心配かもしれないが。
「それじゃあ、始めるとするか」
 大剣と、鱗のように大量の盾が寄せ集まった右の大型義腕。それに組み込んだ三種の特殊機構。
 準備万端、抜かりなし。
「――来い!」
 身構えるバスティオンに対し、無数の鎧は密集陣形を組んで迫り来る。
 数に物を言わせて跳ね飛ばすつもりなのだろう。全く面白みのない、予想通りの展開だ。
 すぐさま四足歩行兵器達が盾になるべく前へと出る――が、攻撃面では程々の強さを持つそれも耐久面は一撃に耐えられない脆さ。数体の鎧をどうにか屠ったくらいで、早くも一機残らず全滅の憂き目に遭う。
「だからって素通り出来ると思うなよ……!」
 壁として立ちはだかる本命は、あくまでバスティオン。
 敵があと数歩の距離まで来たところで、全身から恐怖を与える鬼気を解き放つ。それによって己に注意を引きつけ、簡易陣地の二人による狙撃で敵を片付けていくのが今日の基本プラン。
 ――そのはず、だった。
「……な……お、おい!」
 密集陣形のまま来た鎧の群れは、あろうことかバスティオンをスルーして進んでいく。
 正確にはすれ違う最中で剣を振り回してくるから、全く無視されているわけではない。だが、幾ら力を込めて鬼気を放っても、鎧からは恐怖という感情が欠片も見えてこなかった。
 それほどよく訓練された――ともすれば洗脳されたに近いような兵士の鎧だったのか。それとも中身がない故に恐怖の源泉たる心が欠けているのか。
 ともかく、此方が考えていたほどに注意を引けなかったのは確か。
 バスティオンはすぐさま簡易陣地にまで下がろうと動く。だが周囲は鎧、鎧、鎧で満ちている。手当たり次第に剣と義腕を振るって越えようにも、中々思うようには進めない。それどころか、自分が倒されないように堪えるのが精一杯だ。

「不味いでありますな」
「ええ。少々計算が狂ったようです」
 同胞の姿が飲み込まれた様子は、もちろん簡易陣地からも見て取れた。
 しかし、それに慌てて突撃をかけるなど愚の骨頂。智華とクネウスは至極冷静に狙撃を繰り返して、迫る敵を一体一体確実に退けていく。
 とはいえ、倒した端から新しい鎧が屍を踏み越えてくるのだから、敵群と陣地の距離は徐々に狭まっていく。ジリ貧と言うやつだ。
「やはり、此処は敵が密集しているのを利用するしかないかと」
「……やむを得ないでありますな」
 クネウスの申し出に、僅かな逡巡を挟んでから智華は頷く。
 自身の狙撃も精度威力共に申し分ない。しかしフルパワーの攻撃範囲では、クネウスに一日の長がある。
 不安要素は鎧の向こうにいるバスティオンだが――目標に含めなければ直接被弾することはないし、爆風やら吹き飛ぶ鎧に巻き込まれての被害は……まあ、そこは全世界サイボーグ連盟の一員として、同じサイボーグの耐久力と、彼の盾の性能を信じるとしよう。
「では」
 クネウスが狙撃の手を止めて、エネルギー充填に入る。
 その間、戦線を支えるのは智華の仕事。必中の初弾さえ当ててしまえば、ユーベルコードによって威力も命中力も高めた弾丸を止めどなく浴びせられる。
 一つ。二つ。三つ。四つ。
 倒れた鎧の数が片手を越えようかという辺りで、戦友からの合図。
「まとめて吹き飛ばします。――フルチャージ完了。シュート!」
 アームドフォートが唸りを上げて力を吐き出す。
 瞬間、半径19m。その間に存在するもので、クネウスに敵と認識された全ての存在が動きを止めた。
 やがて凄まじい光と音と、ともすれば上層の学園にまで伝わったのではないかと思うほど激しい揺れが収まって。
「……随分、派手にやったねぇ」
 中年サイボーグはあっけらかんと言って、倒れた鎧を掻き分けながら陣地へと戻ってきた。やっぱりサイボーグ。爆風に巻き込まれてもダイジョーブ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​


●幕間
 しかしサイボーグに感心しているばかりでは居られなかった。
 まだ来る。鎧はまだまだやって来る。
フィン・スターニス
食は大切な事です
ですので、食堂は絶対に守らなくてはいけません。

戦闘開始後、一番密集している所へ、
第四災禍・緑の暴風を打ち込み、
足並みを乱す事を試みます。
以降は弓を使い、狙撃で援護射撃を行います。
その際は、出来るだけ鎧の隙間を狙います。

時折、密集箇所に第四災禍・緑の暴風を何度か放って、
連携の妨害も試みます。


新儀・加奈
非戦闘員のところまで行かせるわけにいきません。そして、大事な学食を守るためにここで食い止めます。…学食に行ったことないので楽しみです。

【戦闘時の思考】集団で一気に攻めてこれない広さということを考慮して戦うなら、
1、大技(ドラゴニック・エンド)で蹴散らしながら敵の数を減らす。
2、「槍衾」のような戦法を取る
3、前衛で敵の攻撃を防いでいる間に、味方が遠距離攻撃
可能なら2か3の戦法を取りたいところです。そうでなくても、連携が可能なら行いたいところです。数で押されれば1人では押し切られますから。


影守・吾聞
『』:技能
【】:ユベコ

わー!よりによって学食とか!
ほんと、テュティエティスが予知してくれて助かった…!
学園のみんなと俺のお昼ご飯タイム、絶対守らなきゃ!

んー、防御陣形を組まれちゃうと、普通に突っ込んでも攻撃通らなそうかな。なら…
『ダッシュ』で勢いを付けて、敵前衛の盾を駆け上がり『ジャンプ』
【某配管工の真似】も駆使して、一気に後衛を狙える位置まで跳ぶよ!
遠距離攻撃が飛んできたら、『武器受け』で出来る限りダメージを抑えるね

着地したら攻めに転じるよ
魔法剣で雷の『属性攻撃』や『2回攻撃』だ!ガンガンいくよ!


コロッサス・ロードス
●戦術
『武器受け』『盾受け』『オーラ防御』等の防御技能を活かす為、また仲間を『かばう』事で被害を抑える為にも、敵群に肉薄して『おびき寄せ』攻撃を誘う
他の猟兵達と連携して隊列維持に重点を置いた戦術で『拠点防衛』

●防御(対コード)
【防御陣形】の押し込みは『怪力』で抵抗して攻勢を緩めず
【突撃陣形】【機動陣形】に対しては、密集or鋒矢陣形変更を素早く『見切り』、適宜【無敵城塞】使用して不動の盾となる

「我が金剛不壊の守り、そう易々とは破れぬぞ」

●攻撃
初撃は『怪力』『鎧砕き』で敵装甲を削り、二の太刀で砕けた装甲部を穿つ『2回攻撃』が基本型

「我は金剛不壊の穂先……我らが猟兵の刃、必ずや首魁の首元に届けん!」



●第三波
 倒せど倒せど、尽きる気配がない鎧の波。
 それに抗うのを止めてしまえば、とても楽になれるのだろうが。
「食は大切な事です。ですので、食堂は絶対に守らなくてはいけません」
「ええ。大事な学食を守るために、ここで食い止めましょう。……一体どんなものが食べられるのか、覗いてみたいですし」
「学園のみんなと俺のお昼ご飯タイム、絶対守らなきゃ!」
 ミレナリィドールのフィン・スターニスに、ドラゴニアンの新儀・加奈、そしてキマイラの影守・吾聞が口々に決意を示した。
 年齢も性別も、種族さえもバラバラな三人であるが、食という行為には等しく価値を見出している。
 ならば――呪鎧も尽く討ち果たせるだろう。
「俺が前に出る。お前達は気にせず、後ろから撃て」
 異種族達の戦意を見極めて、人間離れした偉丈夫が言った。
 さすがに三人共、面食らう。だが男――コロッサス・ロードスは本気であるらしい。
 それも決して無謀さから来るものでなく、十分な勝算あっての発言のようだ。
 ならば――信じて戦うのが同じ猟兵の務めだろう。
「分かりました。では……」
 フィンが頷き、更に幾つか言葉を継ぐ。
 それから敵が射程圏内にまで来る僅かな時間に、四人は作戦を練り上げた。

「――我が金剛不壊の守り、そう易々とは破れぬぞ!」
 コロッサスが宣言通り、最前線に立って吼える。
 その立ち居振る舞いがあまりにも勇ましいものだったから――と断じる事は出来ないのだが、しかし恐怖で揺り動かされなかったはずの鎧達は、突撃陣形を組んで男一人に向かっていく。
 来るなら来い。幾つもの剣と、不撓不屈の覚悟が籠められた大盾を携えて、どっしりと構えるコロッサスは程なく敵群と衝突。振り下ろされる刃を刃で受け、突き出される盾を盾で受け、それでも凌ぎ切れない幾つもの殺意を“闘気”で阻み、侵攻を防ぐ楔となる。
 そうして奮闘する彼の、鎧の群れの中でも目立つ巨体に向けて。
「封印解除。緑色の魔力を糧とし、第四の災い、此処に発現せよ!」
 フィンは淀みなく唱えると、圧縮した空気の塊を撃ち放った。
 それが着弾、解放されれば決して狭くない範囲が吹き飛ぶ。その中には――というか、中心点にいるのがコロッサスなのだから、絶対に彼も巻き添えを食う。
 にも関わらず、フィンが全く躊躇いなく“緑の暴風”を繰り出したのは、コロッサスが正しく金剛不壊であるから。
 炸裂する暴風の中、無敵城塞と化した偉丈夫は身動ぎ一つせず、そこに在り続ける。
 これならば後ろから撃てとも言い放てる。自信の根拠をとうとう己の眼で確かめたフィンは、すかさず弓を取った。
 ともすれば万能にさえ思えるコロッサスの力だが、弱点はある。あらゆる攻撃に対してほぼ無敵となれる代わりに、全く動けなくなってしまうのだ。
 つまりは“身動ぎ一つせず”でなく“出来ない”という方が正しい。そして力の発動と解除を行う、そのごく僅かな時間にも、敵は動き続けている。

「――となれば、私の出番ですね!」
 まさに一瞬の隙を突いて偉丈夫の脇を通り抜けた鎧が、加奈のドラゴンランスに刺し貫かれて崩れた。
 コロッサスが一人城塞なら、此方は一人槍衾。……ああいや、ただ単にそれを行うには頭数がちょぴっと足りなかっただけなのだが。
 しかし名前負けはしていない。数の暴力で強引な突破を図る敵を、加奈は落ち着いて一つずつ確実に仕留めていく。フィンの暴風で殆どが薙ぎ払われた後、コロッサスが動き出すまでの僅かな間に溢れてきた敵を最前線から一歩下がったところで突くという役目を果たす彼女は、敵が縦に長くとも横には広がりきれないという弱点を冷静に見極めた、戦巧者にして縁の下の力持ち。
「はあっ!」
 赤い瞳で敵を見据えて、気合一閃。
 鋭く突き出される穂先が敵を捉えた瞬間、穿った部分から竜が溢れて鎧を喰らい尽くす。
 そうしてぽつぽつと討つべき相手の姿が減るに連れて、加奈は敵の勢いそのものが弱まったように感じ取った。

 ――が、それは戦力や戦意の低下によるものばかりでもないようだ。
 鎧達の密集陣形が俄に変化する。大盾を一斉に構えてのそれは、前衛が力ずくで押し込んだところに遠距離攻撃を浴びせる態勢だ。
「これは……普通に突っ込んでも攻撃通らなそうかな」
 ゲーム的表現をすれば、防御力にバフ盛り盛り状態だろう。
 そんなところに正面から殴りかかったって、ダメージカウンターは0か1か。
 ともかく労力に見合わない事は間違いない。
 なら――もっと効率的に攻めよう。
 どうするかって?
「こうするんだよ!」
 吾聞は敵と真逆の方向に走り出すと、画面スクロール半分くらいの辺りで転回。
 更に猛然と走り続けて――。
「ヒア、ウィ、ゴー!」
 ぴょいーん。
 敵の大盾を踏み台に……なんか、そんな感じの効果音が聞こえそうなジャンプを繰り出した。
 片腕を天井に向けて突き上げ、颯爽と空中を進む様は――あの、うん。もうこりゃ配管工だよ、ぶっちゃけ。
 けれどもまあ、吾聞君はジョブ:バトルゲーマーだからね。仕方ない。うん。
 それに、どうせやるなら全力でやろう。空中を何度も蹴りつけてジャンプを繰り返し、それでも足りない分は足元の鎧をブーツ履いたカメとかの代わりにして、辿り着いたは閃く旗――でなく、第三波の最後衛。
「ここからガンガンいくよ! ……ああ、いや」
 違う違う。全力で攻める時には。
「『ガンガンいこうぜ!』」
 向こう岸の仲間に聞こえるように叫んで、吾聞は剣を構えるとMP消費とか全然考えてないような雷系魔法剣みだれうちを繰り出した。
 こうかはばつぐんだ!

 ……しかしまわりこまれてしまった、という状態はそれほど恐ろしいものなのだ。
 後背からゴリゴリ攻めてくるキマイラの少年にかき乱されて、防御陣形を瞬く間に崩壊させた鎧達は、侵略者から敗残兵に立場を一変させてしまう。
 下がるに下がれず、かと言って前からは淡々とトドメを刺しに来るスナイパーの矢に、怪力で鎧を砕く巨漢、そして抜け目ない槍使い。
 何処にも逃げ道はなく、数を以て攻めかかってきたはずの鎧軍団は、僅か四人の猟兵によって大海に沈む小島の如く消失していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『騎士の怨鎧』

POW   :    戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Wave3を越えた先
 まだ幾つもの同胞が横たわる通路を、それはゆっくりと歩いてくる。
 一騎。たった一騎だ。にも関わらず猟兵達の肌を撫でる空気は、呪鎧の大軍と相対した時より遥かに冷たく、鋭く、そして重い。
 兵士と、騎士。
 僅かしか違わない言葉の中に越えられない壁を感じつつ、猟兵達は首魁に挑む。
クネウス・ウィギンシティ
全世界サイボーグ連盟で参加

「兵士とは自ら戦いを選んだ者、騎士とは主君のために戦う者。負ける道理はありません」

以下で戦闘。
・【SPD】
・準備:ドローン展開
・技能:(全てUC)一斉発射10、スナイパー30、援護射撃5、2回攻撃6、クイックドロウ4、視力10、先制攻撃5

(自UC攻撃&SPD UC対抗)
「CODE:FORTUNA。全射撃兵装、リロード。制圧射撃、開始」
「『自身に刻まれた戦闘経験』に、あの宇宙(ソラ)の戦いは含まれますか」

(POW UC対策)
「当方、50mは離れて射撃中。大丈夫ですよね、たぶん」

(WIZ UC対策)
「ドローン、高速展開。『速く動く』オトリにします」


紅葉・智華
全世界サイボーグ連盟で参加

「――本命は此方でありますよ!」

後方からの援護射撃、及び【UC:カバリングアームズ】での攪乱を継続。手数を優先し、右手一本でアサルトウェポン改を使用。左手にレーザーライフル(初お披露目の新装備、名銃『WH04HL Sirius』の希代のチューナーK氏によるチューンド[K's]ですヨ!)を持ち、右手で【UC:支配者の弾丸】を、左手から本命の【UC:連鎖する支配者の弾丸】を放つであります。
支配者の弾丸は速く直線的故、仮にそれを攻撃したのなら――他の方が攻撃する際の好機にもなるでありますよね?

【使用技能:スナイパー5,2回攻撃3,援護射撃2,鎧無視攻撃7,だまし討ち1】



●第一陣
 こつりこつりと足音が響く。
 同胞の亡骸を越えて、騎士の怨鎧が近づいてくる。
 それは正しく過去から未来への侵略。外套が靡く度に彼方の闇は色濃くなって、そこから滲み出たものが猟兵達を冷ややかになぞる。
 だが、元より血の通わない手足なら些かも揺らぐ事はない。
 まだ遥か遠間から、智華とクネウスは砲口向けて狙い定める。
 標的は一人。此方は二人。
「――!」
 先に放たれていたクネウスのドローンが騎士の一太刀で墜ちた瞬間、智華は呪鎧戦でも用いた四足歩行兵器群を召喚。一斉に突撃させた。
 そう広くない通路一杯に広がって迫り来る機械。たとえ脅威でなくとも無視は出来ない。兜の奥に赤い光が閃き、騎士の長剣が迷宮の重い空気と共に小型の戦闘機械を纏めて薙ぎ払う。
 その太刀筋はサイボーグの義眼でも捉えられないほど。怨鎧の核たる部分を全力で稼働させての剣戟は荒々しくも一切の無駄なく、九十機全てを鎧袖一触にしてしまった。
 しかし、そうなる事は智華も織り込み済み。数に物を言わせて、一瞬でも注意を逸らせたのならあれを喚び出した甲斐はある。
 すかさず右手のトリガーを引き、連射する弾丸の中に必中を期した一粒を混ぜる。
 猟兵が生命体の埒外にあるものなら、その手から飛ぶ力もまた容易く因果を跨ぐ。撃ったから当たるのでなく、当たる運命だからこそ世界に弾き出された小さな塊は、数多の仲間が跳ね返される合間に紙一重で白刃を潜り抜け、鎧を掠めて跡をつけた。
 小さな、本当に小さな傷と呼ぶのもおこがましい程度の僅かな跡。けれども、それは智華と怨鎧を見えず解けぬ鎖で繋ぐ。
「――本命は此方でありますよ!」
 呟きに自信を溢れさせて、左手で構えたのは――智華曰く“あらゆる世界の叡智の結晶”にして、稀代の職人が調整を施した名銃。
 冠する星の名と同じ青白の輝きが、鎧の向こうさえも埋め尽くさんばかりに爆ぜる。
 ――瞬間。
「CODE:FORTUNA。全射撃兵装、リロード。制圧射撃、開始」
 満を持して、クネウスも砲火を浴びせにかかった。
 考えるまでもなく、刻み込まれた最適な手順で身体が動き、騎士の剣閃に劣らぬ速さで大量の弾を撃ち出す。サイボーグである事を存分に活かした超高速射撃は始めれば終わるまで止められないが、しかし鎧の厚みも歯牙にもかけない智華の熱線で穿たれた怨鎧なら、外すも避けるも計算に入れる必要はない。
「撃ち尽くすであります!」
「了解!」
 砲が奏でる大音響に負けじと叫んで、肩を並べた全世界サイボーグ連盟の僚友は全兵装による火力をひたすらに叩き込む。
 ともすれば迷宮そのものすらも崩さんばかりの砲撃だ。幾ら魔核をフル稼働させても、長剣一つで凌ぎ切れるものではない。程なく怨鎧は光と土煙の中に消えて、それでも二人は殆ど全兵装の再装填が必要になるまで引き金を引き続けた。

 やがて言葉通りに撃ち尽くせば、迷宮には静寂が返る。
「……やったでありますか……?」
「分かりません。……ですが」
 少なくとも負ける道理はなく、現に此方は欠片も傷ついていない。
 騎士は主君の命で戦場に出る者。兵士は自ら進んで戦場に立つ者。
 どちらがより強者たるのか問うまでもない。
 クネウスは自らの定義によって不敗を断じながら、じっと彼方を見やる。

 そこには、まだ立ち上がる騎士の姿があった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゾーク・ディナイアル
「キャハ、さっきはいきなり御免ね?いきなりキレてメンゴね?」

☆戦術
SPD勝負
「お前も指揮官なんだろ?
ボクもちょっと前までは指揮官でさぁ、これでも強化兵大隊の大隊長だったんだぞ、えっへん!
あ、あぁぁぁ!なのに!なのに!大隊長なのに!みんなでボクを!ボクを!」
妖剣解放、狂気も解放
高速移動で縦横無尽に動き回りながら、怪力を伴った衝撃波を二回攻撃技能で連発して斬り刻む
「ちょこまか動いてぇ…お前もボクを馬鹿にするのかよぉ!」
回避されてもそれを上回る速さと執拗さで対抗、攻撃の手は緩めない
騎士の反撃は見切りで躱すよ
「これは痛いぞぉ!」
隙を見せたらすかさず苦悩の梨を突っ込んで、グリグリと傷口をえぐっちゃおう


フィン・スターニス
あとは、この災魔を倒すだけですね。
これより先に、進ませはしません。
ここで絶対に止めましょう。

戦闘では、弓での援護射撃を中心に行動します。
相手の行動を見切り、鎧の隙間を狙って矢を射ち込む事で、
行動の阻害を試みます。

また、七彩龍の加護を使って、
負傷した人の回復も行います。


影守・吾聞
『』:技能
【】:ユベコ


出たね、ボスキャラ!
鎧の群れよりずっと強そうだ…
でも、学食での大団円を迎えるために何としても倒さないとね

騎士というからには、剣技は俺よりずっと上だろうな
戦闘経験の高い、強力な敵には…バステ付与、かな

まずは【バトルキャラクターズ】を発動!
召喚したキャラ全員プラス俺で総攻撃だ!
キャラたちには相手を撹乱するように
あっちこっちから仕掛けてもらうね

仲間の行動をサポートできれば尚良しだけれど
俺個人は一撃でも入れられる隙が作れればそれでいいんだ
『野生の勘』も駆使してタイミングを掴んで
『マヒ攻撃』を入れてやるためにね!


サラ・ノアール
明らかに格が違うのが居るわね・・・
しかも恰好良いわ!鎖巻いたらもっと良さそうよ
全力魔法の身喰らう鎖蛇プレゼントしちゃおうかしら!

メイスとチェーンウィップを持って基本的にはヒット&アウェイの立ち回りね。
見切り、カウンター、ダッシュで翻弄。
鎧相手だし攻撃はメイスで鎧砕き+衝撃波を上乗せして叩き込む!
ごつい大剣を振り回されると危ないし、周りの猟兵とコミュ力で連携取れれば少しは安心かな。
後で学食でワイワイする為に沢山声かけるわよー!


九之矢・透
おおー……

……はっ、ちょっと大物感があってカッコいいとか思ってないからな!
ちゃんと仕事はするからな!

【WIZ】
【蜘蛛の絲】を使用するぜ!
あの一撃を受けたらキツそうだし、
そのまま近づくのは危険な気がするからな

【先制攻撃】で先んじて行動し
【スナイパー】【2回攻撃】で確実に
【マヒ攻撃】でより動きを封じる事を狙ってみるぜ

騎士……ううむ、なるほどな
いざ尋常に勝負!ってな所か?
1騎対複数ってのはカンベンしてくれよ?それだけアンタが強そうって事さ。



●第二陣
 こつりこつりと足音が響く。
 無惨に千切れた外套を翻しつつ、騎士は再び、猟兵へと近づいてくる。
「さすがボスキャラ。さっきまでの奴らよりずっと強いな……」
「ええ。明らかに格が違うわね。それに……」
「……それに?」
「……恰好良いわ!」
 大仰な間をとった割にそんな事か! と吾聞はツッコミを入れた。心の中で。心の中だけで。だからサラには伝わらず、彼女は好奇で瞳を輝かせながら「鎖を巻いたらもっと良さそう!」と思うがままをぶち撒ける。
 中々理解の及ばないところだ。いや、鎖が装飾として用いられる事そのものは知識として飲み込めても、サラの「隙あらば鎖!」的な発想は凡人が届かないある種の高みと呼べる。
 そんな情熱は彼女が鎖のヤドリガミであるからこそなのだろうが……そうは言ってもヤドリガミ、仮初めといえど身形は人。つまりは陽気な少女としか映らないわけで。
 鎖、鎖ねぇ、と聞き流しながら、透も暫し、じっと敵を見据える。
「……はっ! あ、いや、アタシは別にカッコいいとか思ってないからな!」
 吾聞の視線を感じて、咄嗟に放った弁解は迷宮の壁へと吸い込まれていった。
 代わって聞こえるのは、規則正しく、徐々に迫る乾いた音。
「あとはあの災魔だけです。絶対に止めましょう」
 矢を番えながら言って、フィンが空気を引き締める。
「そうだね。ここで倒さなきゃ……学食が!」
 吾聞が頷き、剣を構え。
「そうよ、学食を守らないと!」
 サラも応えて、鎖鞭を取り。
「あぁ楽しみだなぁ! ――学食!!」
 ゾークが一際大きな声を上げた途端、猟兵達の間には怨鎧から来るものとは異なる緊張が走った。
 特に、サラの顔は強張る。一番間近で“変貌”を見てしまったのだから致し方ない。
 そんな空気を当の本人も察したのか。
「キャハ、さっきはいきなり御免ね? いきなりキレてメンゴね?」
 ケラケラと笑いながら被害者筆頭の肩をぺしぺしと叩く事で、ぱぱっと禊を済ませた。

 そして程なく、サラに向けられていた視線は本来注ぐべき相手へと移る。
 騎士の怨鎧。その力量は既に示された。白刃の間合いに入れば、時すらも斬り伏せるような凄まじい剣閃が猟兵を襲うだろう。
 どう立ち向かうべきか。それを膝突き合わせて話し合う猶予はないが――彼らは皆等しく生命体の埒外にある猟兵。人の理で縛りきれない者達には無用な心配。
「……!」
 フィンの弓がしなり、弾ける。
 放つは鏑矢でないが、しかし嚆矢である。愚直に鎧へと突き進む矢を追って、四人の猟兵が一斉に動く。
 それは単なるダッシュであったり、妖剣の力を解き放って得る素早さであったり、或いは機先を制するという意識を技能にまで高めたものだったりと様々だが、皆一様に迷宮を駆けるという結果は同じ。
「勢い余って飛び込んじゃだめよ!」
「わかってるよ。そんな危ねえことする奴は――」
 ちらり。サラの言を受けた透が、またゾークを見やる。
 ちょっと怪しいが、まだ理性はあるように映る。なら大丈夫だろう。多分。
 それに彼女ばかりを気にしてもいられない。先行く矢をひらりと躱した怨鎧の、剣の間合いに間もなく入る。
「強力なボス相手には――やっぱり、まずバステ付与からだよね!」
 そう言い放った瞬間、吾聞の傍らから現れた戦闘用のゲームキャラクター達が一団に先んじて仕掛けていく。
 右に左に後ろに。迷宮の壁を蹴りつけて回り込む十八の影は、攻めかかる瞬間を合わせたり微妙にずらしたりと撹乱を試みた――が、額に刻印された『1』という数字が示すように、それらは言わばレベル1の状態。剣を振るうまでもなく避け続ける騎士の赤い眼は、じっと猟兵達を見据えたまま。
 ならばとサラが鎖鞭を加えてみるが、打つ段階から退く事を意識した牽制は同じ様にいなされる。
「さすが指揮官!」
 そうでなくっちゃと手を打って、ゾークが言葉を継ぐ。
「でも、ボクもちょっと前までは指揮官でさぁ!」
 敵を前にして「えっへん!」と胸を張る様は頼もしくも見える。
 ――ふと、嫌な予感がした。
 もう遅かった。
「これでも強化兵大隊の大隊長! 大隊長だったんだ……ぞ……? ……あ、あぁぁぁ! なのに! なのに! 大隊長なのに!! みんなでボクを! ボクを! わああああああぁぁぁ!!」
「ああああ……」
 やっぱり。僅かに歩調を緩めたサラの前で、それは再び獣と化してしまった。
 妖剣から滲むものと、自身の過去に拠る捻じくれた念。両者を糧に正気では得られない速度を絞り出し、ゾークは一振りで万物を薙ぎ倒しかねない剛腕から連続して衝撃波を繰り出す。
 しかし、数多の戦場を渡ったであろう騎士には、狂気に身を委ねて来る者も珍しくなかったのだろう。刃こそ振るわざるを得なかったが、怨鎧は必要最小限の動きで猛攻を受け流す。
 その余裕が、余計に狂えるダークエルフを刺激する。
「ちょこまか動いてぇ……お前もボクを馬鹿にするのかよぉ!!」
 避けるなら当たるまで続けるだけと、ゾークは理性を投げ捨てたからこその純粋さで尚も喰らいつく。
 それを中途半端に制しては、却ってやりづらくなるだけだろう。
「やっぱりアタシが面倒みなきゃなんないのかよ――!」
 生来の虚勢と責任感じみたものからボヤきつつも、自分にしかやれないのならと透が両掌を開く。
 何を仕掛けてくるものかと赤い眼が動いた。
 ――だが、その視線が捉えたのは透の微かな笑みだけ。
「悪いな。これもアンタの強さを認めての事さ」
 呟き、透はもう一度掌を向け直す。
 そこから放たれた蜘蛛が吐く糸は不可視の縛め。猟兵仲間にさえも見えないが、しかし現状で大事なのは“何が”でなく“何をしたか”の部分。
 野生の勘にていち早く事態を理解した吾聞が魔法剣で斬りつける。
 その一太刀に与えられた力は更に騎士から自由を奪い取り、狂エルフが飛びかかるに十分な隙を生み出した。
「これは痛いぞぉ!」
 叫び、ゾークが剣で開けられた僅かな隙間に“苦悩の梨”を突っ込んで抉る。
 開く事で真価を発揮する拷問具はどうにも頼りない手応えを返してくるが、それは相手が鎧であって人ではないからだろうし、中を満たしているのが肉でも呪いでも怨念でも、今のゾークにとって大きな違いはない。
 ただ衝動に突き動かされるがまま、抉って抉って抉り取って――。
「一発叩き込むわよ!!」
 ふと響いた声に身体が反応したのは、恐らく声掛けた方のコミュニケーション能力の賜物だろう。
 ゾークが鎧を蹴りつけて離れた瞬間。
 サラの鎖付きメイスが、鎧の胸当て部分を捉えた。
「まだまだーっ!」
 本当に一発で済ませる気などさらさらない。
 鎖を手繰り寄せ、衝撃波すら起こす勢いでもう一撃。
 続けて己の全力を注ぎ込み、作り上げた鎖の蛇で一噛み。
 ぐしゃりと潰れる音がして、鎧の形が明らかに変わった。

 しかし。
 渦巻く怨念は未だ消え去らず、縦横無尽の剣閃で以て猟兵達を吹き飛ばす。
「っ……雨月様、お力をお貸し下さい……!」
 龍神に祈るフィンから放たれた七色の光によって、すぐさま傷は癒えた。
 だが、胸と背が一枚の鋼板になるほど圧し潰されても動く騎士を葬るには、もうひと踏ん張りする必要があるらしい。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

フィン・スターニス
かなり大きな怨念ですね。
この状態で、まだ動くのですか。

ですが、私達も退く事はできません。
ここで終わらせます。

フェイントで正面から向かうと見せ掛け、
第三災禍・黄の拒絶で近付き、
破魔の祈りを込めた薙刀で、
鎧の隙間を狙い、串刺します。


バスティオン・ヴェクターライン
「さっきは役に立てなかったし、今度こそ頑張らなきゃね…!」【POW】敵の至近距離に立ち牽制。敵が攻撃態勢に入りそうなのを戦闘知識で察知しつつ武器受けと盾受けで腕や脚の動きを制止して大技を阻止、攻撃だと敵に動きを予測されてしまうので防御で対応。超過駆動状態になったら一旦守りに専念し、隙を見てグラップル+怪力+時間稼ぎで敵が武器を握っている拳を武器ごと掴んで抑える。そこでUCをゼロ距離で発動する。


新儀・加奈
これはかなりの手練れですね。私でも肌で感じるぐらい強そうです。
基本的には、味方をカバーしつつ立ち回りたいです。もし可能であるなら、相手の死角から攻撃し、味方が攻撃する隙を少しでも作りたいところです。「ドラゴニック・エンド」で相手に防御させて隙を作ろうかなと考えています。さあ、学食のために頑張りましょう!



●第三陣
「まだ、動くのですか」
 騎士の無惨な姿を見やって、フィンは思わず呟く。
 鎧の形で現世に蘇ったあれは、余程大きな怨念を身の内に秘めているらしい。
 気にかからない事もない。だが所詮はオブリビオン。過去の化身。
 あの鎧は、葬り去るべき災魔の一つでしかない。
「今度こそ――」
 終わらせる。必殺を期して、弓でなく薙刀を手に一歩踏み出す。
 鎧は動かない。二歩、三歩。距離を詰めていくものの、まるで反応がない。
(「それなら……」)
 このまま正面から斬り伏せる――そう、見せかけて。
「此処に発現せよ!」
 第三の災い。黄色の魔力による空間の接続。或いは断截。
 他の猟兵が見据える先でフィンは一時消えて、鎧の真後ろから現れる。
 元より口数は少ない方。首魁を討ち取る確信を得ても、目隠しを付けた顔は新たな言葉を紡がず、そして緩まず。
 ただ破魔の祈りが込められた刃だけが、風切りながら鎧に伸びる。

 ――が、歪んだ鋼板の隙間を狙った一撃に返る手応えは微か。
 騎士は此方を見ていない。けれど、その身を貫くはずだった薙刀の先は宙空に佇んでいる。
 窮境に陥って尚、冴え渡る戦場での勘。もはや秘技とさえ呼べる予測回避で躱されたのだと、悟るフィンの思考回路には続けて過る。まだ渾身の突きを繰り出した体勢のままでいる自分に、この後すぐ何が起こるのか――。
「せぇい!」
 閃く銀色に重なる影。つれて、細かな金属音が耳を幾度も撫で擦る。
 何かに庇われた。無限に引き伸ばされているような一瞬に、フィンはその事実だけは理解した。
 ただ――それは、何だ?
 一時で断じられなかったのは目隠しが理由ではない。その眼帯は視界を遮らない。
 見て、飲み込むまでに一拍を要する形状だったのだ。大きな義腕に寄せ集められた盾は、まるで鱗のように映っていた。
「さっきは大したこと出来なかったからねぇ」
 今度こそ。再起を図って、バスティオンは敵の長剣を押さえ込む。
 戦を識るが故に飛び込めた絶好機。騎士の先読みすら制する守りの一手。逃すつもりはさらさらない。
 全力で組み付き、縦横無尽の斬撃を繰り出す間際だった騎士の得物を封じ続ける。鮮血の代わりに油が巡る右腕で掴まえていられる限り、騎士の白刃は二度と閃かないだろう。
 さあ、今のうちに――!

「隙あり!」
 加奈が側方から槍を突き出す。
 鎧から溢れる禍々しい気迫に肌も粟立つが、どれほどの手練れが相手だろうと退くわけにはいかない。全ては学食を守るため。そう、学食のため――!
 愚直な想いはそのまま槍さばきにも表れて、穂先が勢いよく鎧を打つ。
 ただ、打つだけで騎士の中にまでは沈まない。
 兜の中の光が、ぼうっと揺らぐ。
 その程度の突きで穿たれるものかと、嘲笑うように揺らぐ。
「――――」
 怪しげな視線と対峙しつつ、加奈は槍に囁きかけた。
 途端、鎧と触れたままの切っ先から噴出するのは――竜。
 先に攻めかけてきた兵士の群れを、数多飲み込んだ召喚竜。過去を喰らい尽くす破壊の化身。
 槍の一突きよりも強く鋭く飛び出したそれは、騎士が己を庇うべく上げた片腕を奪って消える。
 義腕との押し合いも続ける敵の体勢が、大きく崩れた。
 瞬間、フィンの薙刀が今度こそ鎧を穿つ。
 竜を放った反動を用いて、加奈も返し刀、もとい竜槍で挟み込むように刺す。
 一対の長柄に貫かれた騎士の身体が、幾度も小刻みに震える。
 ……程なく。終局を察したバスティオンは義腕から力を抜く。
 長剣が滑り落ちて、迷宮の床を叩いた。
 それでも恨みがましく縋り付くような騎士をバスティオンが右腕一本で放り投げれば、怨念の塊は薄闇へと溶けるように消え去っていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『学園名物 学食風景』

POW   :    学食を作る側、もしくは売る側にまわる

SPD   :    誰よりも早く売り切れ必死の一品を買いに行く

WIZ   :    仲良く誰かと一緒にお昼

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●待ちに待った
 鎧の軍勢を退けるやいなや、猟兵達は踵を返して走り出す。
 行く先は無論、守り通した学食。
 腹が、減った――!

「……!」

 期待に胸踊らせて迷宮を飛び出せば、そこにはアルダワ魔法学園で学ぶ生徒の群れ、群れ、群れ。倒した鎧より遥かに多い人、人、人の山。
 はっと近場の時計を見やると同時に、猟兵達は思い出す。
 戦い終われば、ちょうどお昼頃。
 即ち、学園の生徒達も学食に殺到する時間。
 お腹ペコペコなのは猟兵だけではないのだ!

「……」

 唖然としながらも、さてどうするべきかと暫し眺めていれば、猟兵達の頭にはこれから採るべき行動がざっくりと浮かぶ。

 ゆるりと案内板でも見てから進み、バラエティに富んだ学食から好きなものを選んで何処かに腰を落ち着け、戦友やら学園の生徒達やらと親睦を深めつつお昼を過ごすか。
 それとも、ふと目に入った『本日、焼きそばパンあります』の立て看板と、その向こうのパン買うってレベルじゃない人だかりに挑み、売り切れ必至の逸品を手に入れるべく戦うか。
 いっそ、学食の厨房側に入って調理やら販売やらを手伝ってみるべきか。

 猟兵の選択や、いかに。
影守・吾聞
友達のテル(f04598)と学食で待ち合わせ!

※WIZ

戦闘が終わったらダッシュで学食へ!
テルの姿を見つけたら手を振るよ
お待たせ!うん、何とかなったよ。怪我も大丈夫
(お腹が鳴る)
じゃあ…カツカレー、お願いできるかな?
ご飯ものをがっつり食べたいんだ

テルが戻ってきたら、二人でゆっくりご飯タイム!
手を合わせて一緒にいただきますしてからね
純喫茶ネフシュタンーー俺ん家でも、テルはよくオムライス食べてるよね。好きなの?

(人参だけ器用に残しつつ、カレーもぐもぐ)
うん、カレー大好きだよ。牛のも豚のも鳥のも!
え、人参、いいの?テル、ありがと!

仲良しの友達と一緒だと、ご飯がすごくおいしく感じるなぁ


アステル・サダルスウド
友達の吾聞君(f00374)と学食で待合わせ

※WIZ

吾聞君の姿を見つけたら手を振り駆け寄る
やぁやぁ我が友よ!
戦闘お疲れさまだったね、怪我はないかい?
お昼のオーダー、僕が代わりに行ってくるよ
了解、カツカレーだね!

パン争奪戦から離れた席でゆっくり食べようか
吾聞君には頑張った分、しっかり休憩して欲しいからね

では、まず手を合わせて…頂きます!
僕はオムライス、サイドメニューはサラダとスープ
純喫茶ネフシュタンで頂くマスターのオムライスも絶品だけど、ここもなかなか…
うん、オムライスは大好きだよ!
何より友と一緒に食べるのだから美味しさ倍増さ!
吾聞君はカレーが好きかい?…そしてニンジンは苦手みたいだね
僕食べる?



●待ち人来りて
 膳は急げ。迷宮を走り抜けた吾聞は、人だかりを前に唖然呆然。
 だが、それも束の間。
「やぁやぁ我が友よ!」
「――テル!」
「そうとも、僕だよ!」
 手を振りながら駆け寄ってくる友を見つけて、すぐさま顔を綻ばせる。
 アステル・サダルスウド。吾聞と同じアルダワ魔法学園の生徒であるミレナリィドール。銀のウェーブヘアを揺らしながら近づく、男の娘。
 そうだ男だ。服は女性ものだし、それ以外も尽く女性にしか見えないが、男だ。
 けれど、その辺りは今日此処において重要事項でないから脇に置くとして。
「お疲れ様だったね。怪我はないかい?」
「うん、何とかなったよ。大丈――」
 ぐうー。
 台詞の最後が唸るような音で潰される。身体は正直。
「確かに無事のようだね。では、気兼ねなくお昼にしようか」
 バツが悪そうな表情の友に笑いかけると、アステルはずらりと並ぶテーブルを指差しながら言葉を継ぐ。
「オーダーは僕が行ってくるよ。何が食べたい?」
「いいの?」
「いいとも!」
「じゃあ……がっつり食べたい気分だし、カツカレー、お願いできるかな?」
「了解、カツカレーだね!」
 膳は急げ。注文を聞き届けたアステルは人だかりを華麗に避けて売場へと向かう。
 友の背中を見送りつつ、吾聞は騒々しさから離れた席に腰を下ろす。
 その間にもお腹はぎゅーぎゅーぐるぐる鳴り続ける。ちょっと恥ずかしい。

 しかし友の窮地を察してくれたのか、カツカレーは存外早く手元に届いた。
 対面には黄色の薄衣と、付け合せのサラダにスープ。
「テルはオムライスにしたんだ?」
「うん、大好きだからね! ……では、頂きます!」
「いただきます!」
 手と言葉を合わせて、一緒にスプーンを取る。
 いよいよランチタイムだ。二人はそのまま同時に料理を掬って、同時に口へと運ぶ。
 片やサクサクのカツとコクがあってスパイシーなルー。
 片やふんわり卵としっとりチキンライスのハーモニー。
「「おいしい!!」」
 至極単純だが、それしか言いようがない。
 感想さえも同じ言葉を選び、吾聞とアステルは笑いつつもひたすらに手を動かす。

「……そういえば、テルは俺ん家でもよくオムライス食べてるよね」
 お皿の半分ほどが空き始めた頃、吾聞はふとそんな事を言った。
 俺ん家。キマイラフューチャーの片隅にある、純喫茶ネフシュタン。路地裏にひっそりと建つ、ポップなサイバーパンクからは離れたレトロな外観の店。そこでは熊の姿をしたキマイラがホットケーキを焼いてくれたり、オムライスとミルクティーを出してくれたりするらしい。羨ましい。
「さっきも言ったけれど、大好きだから! 大好きだからね!」
 余程好きなのかスプーンを握り締めながら力説して、アステルはネフシュタンのオムライスを思い返す。
 それだけで心が安らぎ、表情が緩んでしまいそうだ。
「マスターのオムライスは絶品だからなぁ……ああでも、ここもなかなか……」
「……おじさんに『テルが他所のオムライス褒めちぎってた』って言っちゃおうかな」
「それだけは止めてくれたまえ! というか発言を捻じ曲げないでくれたまえ吾聞君! もしあのオムライスが食べれなくなったら……!」
「えー、どうしよっかなー」
「くっ……」
 ちゃんとカツカレー持ってきてあげたのにこの仕打ち!
 緩やかに尻尾を揺らしながら食事を続ける吾聞に対して、アステルはぐぬぬと歯噛みしながら皿に目を落とす。
 そして、ふと気づく。
 ルーの海から器用に弾き出されていく、赤い流木の存在に。
「……吾聞君はカレーが好きかい?」
「うん、カレー大好きだよ。牛のも豚のも鳥のも!」
「けど、ニンジンは苦手みたいだね」
「うっ……」
「マスターに『吾聞君がホットケーキよりキャロットケーキを食べたがってる』って、教えとこうか」
「それは止めて! もしおじさんのホットケーキが食べられなくなったら……」
「さて、どうしようかな?」
「くうっ……!」
 攻守交代。今度は不敵に笑うアステルの前で、吾聞が唸った。

 しかしまあ、争いは何も生まない。
「食べる?」
「……え?」
「人参。僕、食べようか?」
「いいの?」
「いいとも!」
「ありがと! じゃあ……」
 お言葉に甘えて、と赤い欠片が吾聞の皿からアステルの皿に流れていく。
 程なく全部を移しきってから、二人は互いを見やってまた笑い声を上げた。
 こうしてふざけられるのが友というもの。
 そして、そんな気が置けない友と食べるご飯は、また格別に美味しいものなのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ゾーク・ディナイアル
「うわぁぁ!これが学食なんだ!楽しそう!美味しそう!」

☆学食堪能
「沢山あり過ぎてよく分かんないや…オススメお願いしまーす!」
オススメ定食を注文したら、トレーを持って学生達に混ざっちゃおう。
「ねぇねぇ、ボクもいーれて!」
ニコニコ笑って学生達と席についたらパクパク食べて。
「美味しーい!ボクが軍で配給されてたマズ飯とは大違いだよー!」
大満足で皆と仲良くお食事、話に華が咲いたら腰のホルスターから魔導銃を出してテーブルに置いて、学生達に見せてあげちゃおう。
「ここの学生さんにはコレが面白いかなーって、魔法の弾を撃ち出す銃なんだよ!
一応ボクの昔いた軍での身分証代わりなんだけど、好きに弄っていいからねー!」


サラ・ノアール
【WIZ】
防衛線お疲れ様ー!学食だー!
お喋りしたーい!色んなの食べてみたーい!
生徒さんや他の戦友に少しずつ別のメニュー頂けないかな?!
私はコミュ力の獣になるのよ・・・!

私の「本日のおすすめ」を分けてあげてもよくってよ?
なんちゃって!


九之矢・透
あーハラ減った減った!!
さあて、仕事した後はお楽しみだな!

【SPD】
速やかに「ダッシュ」し、
人だかりのどの辺りに突撃するかを「野生の勘」で選別
「先制攻撃」「スナイパー」で確実に獲物を掴む

「コミュ力」を駆使して売店のおばちゃんの気を惹き
しかる後に『焼きそばパン』なるものをゲットだぜ!


え、本気すぎる?
いやいやコレは高難易度ミッションだ
此れだけ技能を駆使しても足りない位だな

伊達に普段から弱肉強食のガキ社会で生きてないんだって所をみせてやるぜ…!!!


ジャスパー・ジャンブルジョルト
おまえさんたち、呪鎧どもと戦ってきたんだって?
じゃあ、労いの意味を込めて、二十年近く学食に通ってきた俺のお勧めメニューを教えてやるぜ(教えるだけで奢らない)。
焼きそばパンも悪くはないが、本当に美味いのはこのカレーパンとクリームパンとジャムパンのコンボさ。
食べる時はこうやって一口ずつ順番に齧るんだ。カレーパン、クリームパン、ジャムパン、カレーパン、クリームパン、ジャムパン……うーん、美味い! 辛さと甘さと甘酸っぱさがローテーションで味わえるから、飽きが来ないぜ! (白眼視されても気にしないというか気付かない)

他の猟兵の引き立て役や調子に乗って痛い目を見る役など、お好きなように扱ってください。



●こみゅにけいしょん
「うわぁぁ! これが学食なんだ! 楽しそう! 美味しそう!」
 歓喜の叫びを上げつつ、ゾークは視線をあちらへこちらへと忙しなく動かす。
 さすが最高レベルの蒸気・魔法文明が導入された学園。生徒の衣食住に不安はないとの触れ込み通り、食事もありとあらゆる需要を完全網羅しているらしい。そこかしこに張り出されたり立て掛けられたり据え付けられたり書き殴られたりしたメニューはあまりにも多すぎて、一つに纏めれば塔と見紛う高さになりそうだ。
「目移りしちゃうわね!」
 舞台が変わってもなお、サラが鎖の如く絡んで声掛ける。
「ほんとに――沢山あり過ぎてよく分かんないや!」
 危なげなく、只々興奮のままにゾークもはしゃぐ。
 そうしていれば二人共、災魔と激戦を繰り広げたようには見えないものだが。
「おまえさんたち、呪鎧どもと戦ってきたんだって?」
 何処から聞きつけたのか。タフでクールでダンディな放浪剣士――を自称する灰色の髭猫様“ジャスパー・ジャンブルジョルト”が、ひょっこりと現れてそう言った。
「ええ。一つ残らず叩きのめしてきたわよ!」
 新顔だ! 絡め! とばかりに、すかさず得意気な顔でサラが応えれば、JJことジャスパーも何故だか誇らしげな態度で腰のサーベル(ゴム製)をちょいと突きながら。
「そうかそうか。いや、俺も間に合えば剣さばきを披露してやったんだがなあ」
 惜しい事をしたと呟き、それから何ともわざとらしく両手をぽんと叩く。
「俺の剣術はまたの機会として。一仕事終えたお前さん達に報酬……とまでは言わないが、此処に二十年近く通ってきた俺がお勧めメニューを教えてやるぜ!」
「オススメ!?」
 ゾークの両目が一段と煌めいた。
 そして――その横で、もう二つばかり眼光が閃く。

「オススメなんて聞くまでもねえぜ。今、ここで食うべきなのは――!」
 あれしかない!
 ジャスパーが調子に乗って勿体ぶっている隙に、透は最も多くの人が集まる一角へと駆け出した。
 狙うは勿論、幻の焼きそばパン! 空腹からか一層鋭くなった鼻と、緑色の大きな目と、生い立ちによる食への執念を武器に“野生の勘”としか言いようのない感覚で人混みの何処に飛び込むべきか狙い定めて、赤茶の御髪を収めた帽子が落ちないようにぐっと押さえながら飛び込む。
「……っ、こ……んの……!」
 突入は小さな身体が幸いして楽勝。しかし突破は小さな身体が災いして苦戦。
 ぐいぐいと四方からかかる圧力が透の行く手を阻む。――だが!
「舐めんじゃ……ねえ、よっ……!」
 こちとら路上生まれ貧困育ち、痩せ細ったガキは大体ファミリー。
 遠慮や躊躇いじゃ腹は膨らまない。勝ち抜き、奪えというなら全力を尽くすまで。
 数多の学生にもめげず挫けず、透はひたすらに隙間へと己を捩じ込んでいく。
 やがて――。
「……見えたっ!」
 概ね茶色い円筒形。机の上に積み上げられて、みるみるうちに崩れていくそれこそ求めし焼きそばパン。
 退け、下がれ! それはアタシんだ! 殺気揺らめく片腕で競り合う学生らの手を払い除け、勢いのままにおばちゃんと連呼する。ただ呼ぶだけではない。その時だけは世を渡る力――つまりコミュ力を駆使した年相応の振る舞いで。
「おばちゃん、パン! おばちゃん!」
「はいよ。……あら、転校生ちゃんね。それじゃあちょっと大きいのにしましょうか」
 鬼気迫る学生達とは正反対の緩い返事だが、しかしその時ばかりは学食のおばちゃんも聖母に見えた。
 一体どうして透を転校生=猟兵と断じたのかとか、そんな細かい事は気にしちゃいけない。重要なのは、皺の多い手から渡された簡素な包装の逸品。あとおまけでつけてくれたお茶。その存在だけ。
 勝った――!
「あー、ハラ減った減った!!」
 学生達の恨みがましい視線を浴びながら、透はこれ見よがしに空腹を訴える。
 そして民草を率いる女神の如く、片腕を突き上げて戦場を後にする。

 ――とまあ、激しい争いではあったが。
 過ぎた時間はごく僅かでしかない。どのくらいかと言えば……まだジャスパーがおすすめメニューについて語り出せてもいないくらいだ。
「よく買えたわね!」
「へへっ、これくらい楽勝だぜ」
 驚嘆するサラに戦利品を見せつけて、透は早速包装を引っ剥がす。
 途端、ソースの匂いが立ち上る蒸気のようにぶわぁっと広がった。その芳醇かつ香ばしい匂いに猟兵達が思わず喉を鳴らす中、いよいよ透は一口目に齧りつく。
「……!」
 しっとりと柔らかいパンに歯が触れた瞬間、衝撃が全身を駆け抜けた。
 けれども口は止まってくれない。ぐぐっと吸い寄せられるがまま、もっちりとした中太の麺に細かい青海苔と紅生姜までの全てを収めては、透が思うよりも早く咀嚼を開始する。
 もぐ、もぐ、もぐ。噛む度に甘辛ソースのたっぷり染み込んだ麺が舌を弄び、何の変哲もなさそうなコッペパンが柔らかな感触で透を内側から包み込む。時折攻めてくる紅生姜の辛味や酸味。それからソースの匂いに混じって鼻を抜けていく青海苔の芳しさも堪らない。
 恐らく蒸気機関的調理機材による何らかの特殊な工程やら、魔術的創意工夫による何らかの特殊な加工やらを施しているのだろうが――正確なところは分からないし、分かる必要もない。
「……うまい」
 戦いと空腹でささくれだった心もすっかり解れて、その場に座り込んだ透は黙々と焼きそばパンを頬張る。
 その姿はもう、ただ子供だ。

「確かに、焼きそばパンも悪くはないが……」
 微笑ましい目を向けながら頷きつつ、ジャスパーは改めてサラやゾークと向き合った。
 二人の視線が「いい加減話を進めろ」と訴えている。うん。そうしよう。
「俺が勧める、本当に美味いものは――これさ!」
 でーん。人の膝くらいまでしかない身体の何処に隠していたのか、取り出したるは三種のパン。
「……カレーパン、クリームパン。あと、ジャムパン?」
「その通り! これを……こうやってだな」
 疑問符を浮かべるサラの前で包みを破ると、まずはカレーパンに齧りつく。
 続いてクリームパン。さらにジャムパン。そしてカレーパン。後にクリームパン。それからジャムパン。
「うーん、美味い! これぞ連パンの計!」
「……ええと、おすすめメニューっていうのは、それ?」
「そうだ! こうやって一口ずつ順番に齧るとな……んぐ。辛さと甘さと甘酸っぱさがローテーションで味わえるから、飽きが来ないんだぜ!」
 どやぁ。琥珀色の目を細めた灰猫は、秘伝を授け終えた達人くらいのやりきった雰囲気を醸し出しながら透の隣に腰を下ろして、なおも菓子パンを貪る。
 マジでこれだけらしい。
 とりあえずコミュ力を引きずり出して相槌は打ったが――まるで為にならない!
 ついでにおすそ分けしてもらう気にもなれない。菓子パンだし。
「ええと、とりあえず――」
 メニューに書いてある『本日のおすすめ』でも食べる事にしよう。
 サラはそう心に決めて、此方の視線を全く気にしなくなった灰猫様から一時の戦友へと目を向け――。
「……いない!」
 随分静かだと思えば、なんとゾークの姿は消え失せていた。

 さて、何処に行ったのかと思えば。
「ねぇねぇ、ボクもいーれて!」
「……あ、転校生か! いいよ、どうぞ!」
「やったー!」
 ゾークが喜びながら腰を落ち着けた先は、学園の生徒達で溢れる一角。
 そこにご飯と汁物とサラダと、揚げ物でおかずが二品、みたいなごく標準的Aランチ風を載せたトレイを持って混ざり、ニコニコと笑いながら早速齧り付く。
「……美味しーい! ボクが軍で配給されてたマズ飯とは大違いだよー!」
「軍?」
「あ、そう! ボクねぇ、軍隊に居たの!」
 これでも大隊長だったんだぞ! と胸を張るゾークだが、今回は発作なし。
 むしろ未知の世界に瞳を輝かせて来る生徒たちを見て、気を良くしたのか腰のホルスターから一丁の銃を出してみせる。
「ここの学生さんにはコレが面白いかなーって、魔法の弾を撃ち出す銃なんだよ!」
「危なくないの?」
「へーきへーき! 一応ボクの昔いた軍での身分証代わりなんだけど、好きに弄っていいからねー!」
 あっけらかんと語るものだから、興味に駆られて手が伸びる。そうしてざわめく生徒達が、また別の生徒達を呼ぶ。
 気がつけばゾークの周囲には人だかりが出来て、魔導銃鑑賞の駄賃に食べた事のない料理が一口ずつ分け与えられていく。
「おーいしー!」
「じゃあ、次は私の『本日のおすすめ』を分けてあげてもよくってよ?」
「何な……あ、えっと、誰だっけ」
「サラ! サラ・ノアール! さっきまで一緒だったでしょ!」
 置いてけぼりの上に忘れるだなんて酷いものだ。
 それでもめげずにやって来たサラへと、しかしゾークは現実を突きつける。
「あ、ボクのと同じやつ食べるんだね」
「えっ……」
「美味しいかったけど、もう食べたからいらないや! あ、それでね――」
 その銃は――と、学生を前に雄弁なゾークの隣でサラはそっと箸を掴む。
 一体、コミュ力ってなんだろう。コミュ力とは――。

「あ、あの……!」
 悩みながらも美味しいご飯に舌鼓を打っていれば、一人の生徒がサラに声掛けた。
「転校生の人、ですよね? よかったら一緒に食べても……?」
「……え、ええ! どうぞ! どうぞどうぞ!」
 これくらいでしょげていてはダメだ。自分はコミュ力の獣になるのだ!
 そうして決意新たに、サラはまず一人目の生徒を絡め取るべく動き始めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フィン・スターニス
折角学食に来たのですし、
きちんと制服を着ておきましょう。

・・・・・・学食に来たのは初めてですが、
戦場ですか、ここは?
皆、鬼気迫ると言いますか、
スタッフの方々も大変そうです。
微力だとは思いますが、
販売のお手伝いをしましょう。

接客には、覚えいる礼儀作法や、
注文の受付に、学習力が役に立ちそうです。

いらっしゃいませ
ありがとうございました
申し訳ございません
こちらでしょうか?

とりあえず、これだけ言えれば、問題無いですよね?
頑張って販売のミッションに挑みましょう。


・・・・・・あれ?
雨月様!?それは供物ではありません!
食べてはダメです。
あ、遅かったですか。
うぅ、購入でお願いします。


ルエリラ・ルエラ
なにか大変だったらしい?
まぁそんな事はおいておくよ。
芋煮売るよ。

厨房に許可取って芋煮を皆に振舞うね。
『本日芋煮艇より臨時出張。学生の懐に優しい美味しい芋煮販売中』
と書いた看板をこそこそ張り出して芋煮を販売するよ。
味噌ベースや醤油ベースか選べる安心販売。
いらっしゃーい



●受難?
 戦場を抜けると、そこは戦場であった。
「……ええと、あの……」
 フィンは大きな眼帯越しに困惑を滲ませる。
 生まれこそアルダワの彼女だが、学食に立ち寄るのは初めて。折角だから学園の生徒らしく制服姿でと、わざわざ着替えてから訪れてみれば――そこはおよそ食事を摂る場所と思えない空間。飢えた獣の巣窟。
 これが、これが学食……? 鬼神の如き表情で雄叫び上げて、人波を掻き分けながら進まねば、この学園では昼食すら満足に摂れないと。それほどの修羅場に日々揉まれなければ、災魔蔓延る迷宮の上では生活できないとでも言うのだろうか。
 ああ雨月様。どうしましょう。戦時は七彩纏う槍と化す小さな龍神を伴って、フィンは立ち尽くす。
 そうして暫く眺めているうちに――ふと、思う。
「……雨月様。もしやこの学食、人手が足りていないのでは……?」
 龍は答えなかったが、しかし需要に供給が追いついていないのは間違いない。
 人だかりを避けながらそろりと厨房の側に回ってみれば、中年の女性らが凄まじい速度で野菜を刻み魚を捌き肉を切り、お玉やら鍋やら振っているのが見えた。
 およそ人間の限界を超えたような動きだ。
「大変そう、ですね……」
 これだけ全力で働いても改善されない混雑具合。蒸気機関や魔法の研究をする前に労働関係の規約をテコ入れすべきなのではとさえ感じてしまうが、もしそれが実現したとしても今日の激務に変わりはない。
 そんな事態を目の当たりにした時、フィンの思考回路はごく自然に一つの結論へと行き着いた。
「お手伝い、しましょう」
 龍に語りかけるやいなや、厨房を離れてカウンターへ。
「あの――」
「あ! あんたが新入りかい! なにやってんのよもう初日から遅れてくるなんて!」
「あ、いや、ええと」
 何やら勘違いされたらしいが、下手に反論すると首元を食い千切られそうな気がした。
 それに却って好都合かもしれない。災魔より恐ろしい雰囲気を醸す女性に指示されるがまま、フィンはマニュアルから必要最低限の部分を読み取って頭に叩き込む。
 忙しさこそ尋常なものではないが、仕事の中身はそれほど難解ではなさそうだ。此処では学生の注文を受けて、カウンターにあるものは渡す。ないものは厨房に流す。あとは挨拶と応対をしっかりはっきりくっきりするだけ。
「早く入って!」
「は、はい……!」
 いざ本番。お次、お待ちの方どうぞ。
 言うが早いか学生が雪崩込み、次々と注文を浴びせてきた。
 素人ならテンパっても仕方のない状況だが、フィンは一つずつ丁寧に処理していく。学びの素質がマニュアルから要点を上手く摘んだ事も幸いしたのだろう。新人職員としては間違いなく優秀な働きぶりで、滞りなく販売ミッションを――遂行できるかと思いきや。
「お次の――!?」
 それが突然、視界に入って。
 しかし「食べてはダメです! それは供物ではありません!」と叫んだ時にはもう遅く。
 フィンと幾人かの職員と大量の学生の前で、雨月様は何の遠慮もなしに大きなおむすびの山へと齧りついた。
「あ、ああ……」
 遅かった。
 瞬く間に消えていくお米。呆然と眺めるばかりのフィン。その肩を、おばちゃんが優しく叩いて一言。
「バイト代で足りない分は分かってるね?」
「……うぅ、はい……購入で、お願いします……」
 手伝いに来て金を取られるとは、
 不測の事態とはいえ戦場よりも酷い。
 だというのに。雨月様は米だけで飽き足らず、何やら汁物まで。
「ああ……」
 それ以上はどうか、どうかご勘弁を。路銀が。手持ちの路銀が。
 祈るフィン。その肩に、またしても伸びる手――。

「大変だね。でもあの芋煮はサービスだから、そのまま飲ませておいてほしい」
 おばちゃんじゃなかった。
 誰だ。……胸元には、明らかに即席の名札で『芋煮艇臨時派遣員るえりら』と書いてある。
「あの……」
「いい。何も言わなくていい。迷宮でも大変だったんだよね。でも大丈夫。芋煮があるから」
「はあ……?」
 わけがわからない。
 しかし混乱するフィンを余所に、ルエリラ・ルエラは根拠不明な自信を滲ませながら芋煮を掬う。
「さっきのは味噌ベース。今度は醤油ベース。さあ、お食べ」
 差し出されたなら遠慮なく。
 雨月様はおかわりタイムに突入した。それを満足気に見やったルエリラの視線は、再びフィンへ。
「さあ、芋煮を売ろう」
「え、あの」
「芋煮を売ろう。芋煮を、売ろう」
「ええ……」

 かくして。
 フィンは流されるまま購買臨時職員から臨時芋煮店員へとジョブチェンジを果たし、いつの間にやら立てられた『本日芋煮艇より臨時出張。学生の懐に優しい美味しい芋煮販売中』なる看板の傍で、ルエリラと共に暫く芋煮を売り捌いた。
 そこからアルダワの一部界隈で巻き起こった芋煮ブームが熱狂的すぎるあまりに禁止令で制されたり、それでもなお芋煮を食べようとする者による闇の芋煮トレードやら始まったりしたりしなかったらしいというのは、また別の話。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クネウス・ウィギンシティ
全世界サイボーグ連盟で参加
アドリブ&絡み歓迎

「パン争奪戦ですか。面白い、勝負である以上全力で挑ませて頂きます」

【SPD】
UC説明:空中ジャンプ
行動方針:サイボーグである肉体と防具(【防具改造】)を飛行用に調整(【メカニック】)し、空中ジャンプで滞空しながら先行→購入→列からの離脱を行い「焼きそばパン」の複数購入狙います(【先制攻撃】)。

(UC使用)
「ブースト機構、展開。空中から攻めます」

(やきそばパン敗北者がいれば)
「このやきそばパンは貴方に食べられたがっている様です。さあ、どうぞ」

目的は「やきそばパン争奪戦」よりも、「食堂戦争を楽しむ」ために全力を尽くすことです。ただ、勝ちは譲りません。


紅葉・智華
全世界サイボーグ連盟で参加

指針:SPD

「折角だからそのパンとやらを大人気なく頂くよ!」(語尾崩しながら)

のんびりと普通の学食メニューでの昼食でも良いのですが、行列を見たらそこに挑みたくなる。それがUDCアースの日本人というもの。
きっと、バスティオンさんなら周囲の学生たちに恐怖を与えて、列を乱す事ができる筈だから、その裂が崩れる様を予測(【UC:虚構の神脳】)し、そこに向かって一直線に疾走。焼きそばパン、頂いた――!

成功したら祝勝会と称して皆と学食メニュー+焼きそばパン、失敗したら反省会と称して皆と学食メニューを食べるよ。

【使用技能:見切り2,第六感4,ダッシュ5,覚悟5,ジャンプ1】


バスティオン・ヴェクターライン
全世界サイボーグ連盟で参加「若人が元気なのは結構だけど…俺の聞いてた青春とはずいぶん違う気がするなぁ…」【SPD】人混みの向こうで売ってるヤキソバパンとやらを貰いに行こうかな。手段は単純明快、ちょっとドスを効かせて「ちょっとどいてくれ…」とでも声をかけて、技能の恐怖を与えるで発した鬼気で道を作らせてもらうよ。…いや分かってるよ大人げないのは。力ずくで押しのけるより自主的にどいてもらった方が、怪我もさせないし良いと思ったんだよねぇ。若干の罪悪感はあるけどね…。何ていうか…ほんとゴメンね若人たち。全力で謝らせてもらうよ。紅葉君が成功したら祝勝会、失敗したら反省会を兼ねて昼食にしようかな。



●学食戦争
 呪鎧との戦いが終わっても、全サ連の戦いは終わらない。
「パン争奪戦ですか、面白い」
 縁なし眼鏡をくいっと上げて、クネウスは人だかりを見やる。
 真面目に並んでいれば敗北必至。だが正面から突撃を掛けても簡単には抜けられまい。
 ならば――と目線を上げる。視界に表示された戦場の分析結果は、其処を守る戦力を限りなくゼロに近いと示していた。
 ともすればグレーゾーンかもしれない。そんなところを攻めるとは大人げないのかもしれない。
 だが、しかし。
「勝負である以上、全力で挑ませて頂きます」
 誰に向けるでもなく呟いて、クネウスは僅かに腰を落とす。
 同時に動力甲冑の一部が変形。推進装置や姿勢制御機構が露出すると共に、補助翼なども構成されていく。
 ――飛ぶ気だ。
「ブースト機構、展開。空中から攻めます」
 律儀に宣言したかと思えば、その姿は一気に高みへ。
 急拵えの飛行用調整だからか挙動は不安定だが、空中を幾度か蹴りつける事で墜落は免れつつ人波を超える。眼下からの悲鳴や怒号など何のその。あれよあれよと言う間に先団まで辿り着いて、生徒とカウンターの間に出来た狭小な隙間に身を捩じ込む。
 さすがに予想外だったのか、おばちゃんが目を丸くしていた。
 けれどもクネウスは顔色一つ変えず、片手を差し出して淡々と告げる。
「すみません。焼きそばパン、三つ」
「……あ、これ一人一つなんですけど……」
「なん……ですって……」
 最後の最後に立ちはだかったのは人でなく、ローカルルール。
 致し方なし。注文を改めれば掌には簡素な包みが一つだけ載せられて、ミッションの暫定的成功を確認したクネウスは再び風となった。

 そうして先陣を切り、見事に戦果を上げた仲間の姿を見やる者が二人。
「若人が元気なのは結構だけど……俺の聞いてた青春とはずいぶん違う気がするなぁ……」
 喧騒に目を移して呟き、バスティオンは気怠げに右肩辺りを揉む。
 その表情はあからさまにやる気の無さを訴えていた。学生と聞いて想像できる年齢の倍は過ごしてきたバスティオンであるから、単に賑やかだと言うだけで混ざり込んで「うぇーい!」とか騒げる元気はないようだ。
 これで一人だったら踵を返しているところだろうが、しかし枯れおじさんの隣にはそわそわと落ち着かない全サ連のお仲間がいる。
「行列……!」
 日本人を意味もなく引きつける魔性の単語、そして光景。
 UDCアースの日本を故郷とする智華も例に漏れず、ふらふらとそちらに吸い寄せられていく。そこに山があるから、なんて言葉も流布されて久しいが、けれど真理には違いない。日本人は、そこに列があれば挑むのだ。
「折角だから、そのパンとやらを大人気なく頂くよ!」
 興奮のあまり軍人口調も彼方へと投げ捨て、智華はスタンディングスタートの体勢を取る。
 無謀極まりない。だが、その瞳には確信めいたものが充ちている。
「……はあ」
 背中からも伝わってくる全サ連への期待か信頼か、ともかくそれを目の当たりにして知らん顔では帰れまい。
 バスティオンは大きな溜息をついてから、ゆっくりと一歩踏み出す。
 途端、焼きそばパンに群がっていた生徒の塊に異変が生じた。行列の外周から少しずつざわめきが起きて、視線が売場から此方へと移される。
「ちょっとどいてくれ……」
 もう一歩進みながらドスを利かせれば、列の中頃が葦の海の如く割れていく。
 右頬に傷のある口髭蓄えた中年が少しとはいえ脅しをかける様は反社会的に映らなくもないが、しかし非暴力的とも言え……言えるか? その鬼気は暴力では?
「いや、何ていうかゴメンね、ほんと……」
 サイボーグだって心は痛む。己の所業に耐えかねたのか、注目を浴びたバスティオンは早々に白旗を上げた。
 けれど、その頃には概ね目的は達せられている。
「バスティオンさんならやってくれると思いましたよ――!」
 “虚構の神脳”が弾き出した通りの未来に歓喜しつつ、智華は行列の裂け目をひた走り、一気にカウンターへ。
「焼きそばパン! 二つ貰うわ!」
「……あ、これ一人一つなんですけど……」
「なん……ですって……」
 デジャブ。
 さしもの神脳もそこまでは予期していなかったらしい。
「バスティオンさーん! これ一人一個なんだってー!」
「……え、俺も買いに行かなきゃダメってことかい?」
 呟きは届いていないはずだが、しかし智華は首を縦に振る。
「……はぁ……」
 面倒だ。あと若人たち、すまん。
 バスティオンは酷く怯えた子羊の群れからの居心地悪い視線に終始謝罪を投げかけつつ、自らも焼きそばパンを手にするべく割れたままの海を渡る。

 かくして、手法の是非はともかく全サ連は学食戦争に勝利を収めた。
 戦利品を手に向き合った三人は芳しいソースの香りに浸り、出陣間際の騎士のように高々と焼きそばパンを掲げると、それを勢いよく叩きつけ――るような事はせず、しっかりと最後まで味わいながら食べ尽くした。

 ……そして、パン一つだけでは満足できず。
「クネウスさん、次はあっちよ!」
「了解。ブースト機構、再展開」
「あー、うん。ほどほどにねぇ。ほどほどに」
 陸空二方面から次なる目標の確保に向かった智華とクネウスを、バスティオンは制止とは呼べない緩い言葉で見送るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月22日


挿絵イラスト