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嵐と山賊

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 とある山があった。ほんの少し前までは、多くの人々が通る交通の要所であった。しかし、その山にいつの頃からか山賊達が住み着くようになってから事態が急変する。
 たかが山賊、と冒険者達は山賊を退治しようと山へと踏み入った。しかし、山は常に暗雲に覆われ、山賊達が住む砦へとたどり着く事さえ出来なかったという。
 だというのに、山賊どもはその嵐から自由に出入り出来るのだ。時折山を降りて近くの町や村を襲っては略奪を繰り返す。これには、周囲の人々は恐怖するしかなかった。
 神出鬼没の山賊と、自然の要塞である嵐。これに、この世界の冒険者達もお手上げだった……。


「とはいえ、オブビリオン絡みでは冒険者でどうにかするのは無理というものじゃよ」
 わしらにような猟兵でなくば、対処できぬ、とガングラン・ガーフィールド(ドワーフのパラディン・f00859)は厳しい表情で言った。
「この山賊ども、オブビリオンでの。山を覆っておる嵐も、この山賊の親玉が起こしているものらしくての」
 その山は、決して高い山ではない。しかし、振り続ける雨と風に川は溢れ土砂は崩れ足場は最悪、視界も効かないという悪条件だ。よほど、覚悟と準備を整えて登らなくては目的地にたどり着けないだろう。
「山賊達の砦は、この嵐の中心にあるらしい。台風の目、あるじゃろ? 砦の周囲だけ雨もふらずそうなっておるらしい。まったく、卑怯にも程があるわい」
 自然の要塞とはよく言ったもんじゃ、とガングランはため息をこぼす。そして、表情を引き締めて、キミ達に頭を下げた。
「何にせよ、オブビリオンを放置は出来ぬ。どうか、おぬしらの力を貸してくれ」


波多野志郎
オブビリオンってすごい。どうも、波多野志郎にございます。
今回は嵐渦巻く山の砦に潜む山賊のオブビリオン達と戦っていただきます。

POWで力業で活路を開くなり、SPDで地形の影響を受けにくいルートで移動したり、WIZで魔法やテクノロジーで一時的に地形の影響を沈静化させるなど、手段を色々と考えて挑んでいただければ、と思います。猟兵は、アイデア勝負です。

それでは、山賊の住む山でお待ち致しております。
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第1章 冒険 『変異した地形の調査』

POW   :    力業で活路を開く

SPD   :    地形の影響を受けにくいルートで移動する

WIZ   :    魔法やテクノロジーで一時的に地形の影響を沈静化させる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

水心子・静柄
山ね…クライミングには多少自信があるわ。嵐の中の山登りなんてなかなか体験出来ない事よね、覚悟は十分よ。

私は力業で活路を開いていくわ。地形は利用するもの、川が溢れてたり、土砂が崩れ易いなら、あえて地形を崩す事で安定を図れば良いわ。グラウンドクラッシャーで地形を変えるのは得意よ。ただ土木作業に詳しいわけじゃないから、そこは第六感に頼るしかないわね…巻き込んでしまったならごめんなさい。あとは後続の為にも足場はしっかりと踏みつけて歩きやすいように固めておくわ。

それにしても山を覆う程の嵐を扱える相手なんて厄介ね。その力が個人に向けられない事を祈るわ…


御門・結華
ユウヤ(f01546)と一緒に参加します。

「マスター、一時的ですが嵐を止める方法があります」
「マスターがシルフを、私がサラマンダーを呼び出し、炎と風の複合精霊魔法を撃ちます」
「私は暫く動けなくなると思います。なので、移動をお願いします」

サラマンダーを召喚し、ユウヤのシルフと一緒に協力してもらい【エレメンタルファンタジア】を使用。
右手のフレイムソードと左手のウィンドセイバーから生み出した大規模な火炎旋風の【属性攻撃】を嵐にぶつけ相殺させます。
「サラマンダー、シルフ、私に構わず全力でやって下さい!」

発動後は脱力した状態でユウヤにもたれかかります。
「あとはお願いします。マスター」


ユウヤ・シュバルツ
相棒の結華(f01731)と共に挑む。

結華の案に了承する。
「わかった。嵐を鎮静化させた後のことは任せとけ」
【風霊召喚】を使用し、シルフを呼び出す。
「いくぜ、シルフ!」
風の精霊に結華の補助をお願いする。
「アイツの援護を頼むぜ」

魔法を撃ってもたれかかる結華を受け止め、嵐が戻る前に結華をおんぶした状態で駆け抜けます。
「お疲れ。あとはオレに任せてしっかり掴まってな」

おんぶした状態で厳しい道の場合は【霊獣召喚】で呼び出した巨鳥に二人で乗り込み、急ぎ移動する。
「流石にこれは厳しいな」「よし、力を貸してくれ!」


イルナハ・エイワズ
オブビリオンというのはすごいのですね
天候を自由に操作出来る力は便利そうです

POWで挑みましょう

山賊が空を飛んで移動していない限り
砦からの移動ルートがあるのでしょう

嵐が起こる前のこの辺りの地図があれば用意しておきます

地盤が安定していて、風を遮るものがある場所がいいですね
立派な木々の多い森は木の根によって地盤が強化されていますし
また木々が風を遮ってくれるでしょう
世界知識でこの世界の木がどういう根を張るかを記憶しておき
一番地盤が強固な場所を探りましょう
あとは地形を利用して移動です

視界が確保出来ませんので
危険察知はユルの第六感と野生の感を頼りにします


トネル・トネル
山賊って、人を襲って大事なものを奪ったり、殺しちゃったりするのカ?
悪いやつらだナ!
トネルがバシッとやっつけちゃうゾ!
うーんと、まずは、山賊の砦、ってやつを探せばいいのカ?
トネルはそう言うの得意だから任せておけばいいゾ!
こういう時は……勘に頼ればいいんだゾ! えーっと、あっち、あっちがいい気がするゾ!(技能:野生の勘)
森にいる仲間にも話を聞いてみるゾ!(技能:動物と話す)
普通は進めないところも、すかいすてっぱーを使えば登れたり降りれたりできるからトネルに任せておけば大丈夫だゾ!


アルフェニア・ベルメル
自然の猛威は恐ろしいものですからね…
なので、此方も自然の力をお借りしましょう

『自然と共に在る者』で精霊たちを呼びますね
この子たちに頼んでこの土地に居る精霊、出来れば嵐そのものに宿る精霊、もしくは雨や風の精霊から情報を得て貰います
この嵐が人工的に発生してるものなら、パターンはあると思いますし…
目視ではわからない、風や雨の強さや範囲、周期を教えて貰えれば、最小限の労力で行けるはずです…たぶん

私のエレメンタルロッドとして力を貸してくれている水の精霊である『セリア』にもお願いします
情報収集1を持っていて、とっても頼もしいですから
それに彼女なら雨に干渉して少しだけ移動が楽になるはずです


マハティ・キースリング
私思ったんだけどさ…あの雲消し飛ばせない?
いやー私以外にも同じ結論に至った子もいるんじゃないかなー
いない?そう…

確かに人間は気象には勝てないけど
そんなもん操る以上オブオブのコストも無限ではないんじゃないかなって
やらせて欲しい!
ダメ元でいいから!!
嵐操るオブリビオンの困り顔が見たいんです!!!

災禍の女選択
いつも通り私に落ちる隕石共を大砲で撃ち返して狙った地点に降らす
座標と精度を上げる為サイバーアイとグリオン起動

猟兵達の進路の頭上、から盗賊団が恐らくいるであろう台風の目付近にかけて集中攻撃
これは援護射撃だ
そうに違いない

一瞬でも晴れたら儲け…いいや夢は大きく完全破壊だ
嵐には隕石をぶつけるんだよォ!!


天通・ジン
地形の影響を最も受けにくいルート……それは、空に違いない。
いかに暗雲が立ち込めていようと、嵐の中心にはアジトがある。
ってことは、……抜けてこの目で見るだけさ。

AIの電脳支援下で、【地上戦闘機】に乗って、嵐を突破する。
【地形の利用】と【空中戦】は得意中の得意なんだぜ。

もし必要なら、何人か乗せることもできる。
今回は高速戦闘をするわけでもないしね。
……ま、運が悪けりゃ抜けられないかもしれないし、少なくとも乗り心地は悪いだろうけどな。

嵐の途中で誰かを下ろすとか、どうしようもない障害を乗り越えるために機銃で空から支援とか、そういうこともできるかもしれないかな。
何事も柔軟に。

アドリブ描写は大歓迎だよ


セロ・アルコイリス
嵐すら起こせるんですか
マジか
オブリビオンってのはすげーですね……
ただまぁ、同じ盗人として目に余るってトコなんで
行きましょうか、嵐ン中

山登り用に滑りにくい靴を用意して
ロープとかもありゃ便利ですかね

オブリビオンが起こしてるなら、
【存在意義】で一部だけでも跳ね返せますかね?
無理?
んじゃあ『学習力』とか使いながら地道に雨風の弱い場所進みましょうかね

濡れたりして動きが悪くなったら【ウィザード・ミサイル】で焚き火とか起こせねーですかね
他の猟兵サン達も良けりゃどーですか
助け合いながら攻略できりゃ1番だと思うんですけどね

※アドリブ歓迎


リンタロウ・ホネハミ
嵐っすかぁ、オレっちあんま好きじゃねぇんすよねぇ
行軍のときの嵐なんて特に嫌っすよ、勝ち戦でも負け戦でも気分が滅入るっすから
ま、そういうわけなんで……いっちょ晴らしに行こうじゃないっすか!

【SPD】で判定っす
嵐の中を神出鬼没、っつーんなら考えられるのは
暴風吹いてようが進むことが出来るルートを山賊が知ってるってのが一つっすよね
そういうルートだって目印や痕跡をどっかに残してる間抜けだったらいいなぁ……と山の周囲を地道に観察するっす
変な模様、誰かの足跡、etc……
風や雨をちょっとでもしのげる場所とその付近を重点的に捜索して、山賊共の尻尾を掴んでやるっすよ!

アドリブ大歓迎



●いざ、嵐の山へ
いつの頃からか、その山は渦巻く暗雲に飲まれるようになった。時折、稲光が雲の中で轟いては、その中の凄まじさを伝えていた。
「嵐すら起こせるんですか、マジか。オブリビオンってのはすげーですね……」
 セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)の言葉に、感心したような響きが交じるのは仕方のない事だ。これが一個人の力によるものだ、そう言われても納得するのは難しい。
「山ね……クライミングには多少自信があるわ。嵐の中の山登りなんてなかなか体験出来ない事よね、覚悟は十分よ」
 水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)の呟きに、リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)はため息をこぼす。
「嵐っすかぁ、オレっちあんま好きじゃねぇんすよねぇ。行軍のときの嵐なんて特に嫌っすよ、勝ち戦でも負け戦でも気分が滅入るっすから」
 フリーランスの傭兵として戦場経験のあるリンタロウにとって、天候とは時として敵となり、味方となるものだった。むしろ、今回ほど明確に立ち塞がる障害となるのは珍しいぐらいだ。
「嵐の中を神出鬼没、っつーんなら考えられるのは暴風吹いてようが進むことが出来るルートを山賊が知ってるってのが一つっすよね。そういうルートだって目印や痕跡をどっかに残してる間抜けだったらよかったんすけど……」
 どうやら、そこまでは間抜けではなかったようっすね、とリンタロウはくわえていた骨をかじる。ならば、正攻法で突っ込むしかあるまい――セロも、覚悟を決めて言った。
「同じ盗人として目に余るってトコなんで、行きましょうか、嵐ン中」」
 何者も拒むような嵐の山へと、猟兵達は踏み入っていった。

●自然の猛威
 最初に出迎えたのは、横殴りの風の雨だ。視界を遮るのは、重く冷たい霧――暗雲だ。
「自然の猛威は恐ろしいものですからね……なので、此方も自然の力をお借りしましょう」
 アルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)がそう呟き、目を閉じる。深呼吸を一つ、囁いた。
「契約と絆の証を此処に……力を貸してね、皆」
 アルフェニアと契約した精霊達が姿を現すと、彼女の周囲を舞うように旋回してから散っていく。待つ事しばし、アルフェニアの元へと帰ってきた精霊達を代表して『サリア』がアルフェニアへと囁いた。
「精霊は何と言ってるんですか?」
 イルナハ・エイワズ(挟界図書館の司書・f02906)の問いかけに、アルフェニアはこくりとうなずく。
「どうやら、精霊達にとって居心地がいいみたいなんです」
「居心地がいい、ですか?」
 要領を得ない、とイルナハがオウム返しで聞き返した。アルフェニアも考え込み、言葉を選ぶように言葉を続ける。
「この嵐自体、ただ居心地がいいから精霊達が集まっているらしくて。こう……騒いでるだけみたいなんです」
「それ、ものすごく嫌な予感がするんだけど……」
 その可能性が脳裏を過ぎり、静柄がこぼす。それに、アルフェニアは肯定した。
「……はい、制御されてないんです。本当に、ただ自然現象と同じなんですよ」
「迷惑な話っすね」
 リンタロウの呟きは、その場にいた全員の総意だった。特に怒っているのは、肩にリスを乗せたトネル・トネル(化け猫モドキ・f10242)だ。
「許せないゾ! 山の動物達、困ってるんダ!」
 動物達と話してみたトネルは、この山の動物達が置かれている状況を聞いたのだ。もちろん、こんな嵐が四六時中吹き荒れる状況で動物達も普通に生きていけるはずがない。大型で力の強い獣は山を降りてもやっていける――しかし、山の恵みがなくてはいけない小動物にとっては、死活問題だ。
「山賊って、人を襲って大事なものを奪ったり、殺しちゃったりするのカ? しかも、それだけじゃないゾ?」
「そうですね、質が悪い盗賊ってヤツです」
 同じシーフとしては、同類に見られたくない相手だと、セロは苦笑する。セロの同意に、トネルは更なる怒りを募らせた。
「悪いやつらダ! トネルがバシッとやっつけちゃうゾ!」
「まったくです」
 イルナハが眉根を寄せる理由は、嵐で薙ぎ倒された木々だ。ユルという植物属性のドラゴンが相棒だけに、イルナハとしても決して見逃せる状況ではなかった。雨が土壌を緩くし、風が木々を倒す。ひどい時には土砂崩れや、山の自然そのものが崩壊する可能性もあるのだ。
 何故、嵐が天候ではなく災害と呼ばれるのか――その理由が、目の前に広がっていた。この暴風雨の前では、生命は保たない。動物や植物、この山の自然が滅びてしまうのは時間の問題に思えた。
「そんなコト、させないゾ!」
「急ぎましょう。お願い、『サリア』」
 威嚇するように吐き捨てるトネルに、アルフェニアもうなずく。アルフェニアの呼びかけに、水の精霊である『サリア』の力によって猟兵達に降り注ぐ雨の勢いがわずかだが弱くなった。
「あそこは、木々がまだしっかりと立っています。風受けに出来るでしょう」
「これ、使ってください。命綱です」
 セロが、ロープを仲間達の腰に結いていく。これで、視界の効かない嵐の中でもはぐれずにすむだろう。
「あそこに行くまでが骨っすけど――」
 まだ、木々の根が地盤を支えているのだろう場所を目ざとく見つけ、イルナハが指差す。そこに至るまでの道のりを頭で計算するリンタロウの前に、静柄が立った。
「シンプルに行きましょう」
「……なら、あの辺りからっすかね」
 そう言ってリンタロウが指示した場所に、静柄は豪快にブローニングアックスを振り下ろした。静柄のグラウンドクラッシャーによって道なき場所に強引に道を築き、一路森へと猟兵達は進んだ。

●嵐を越えて――
 ジジジジジ……、と霧の中で奇妙な音が響き渡る。それは、雲の中で帯電する雷の音だ。
「地形の影響を最も受けにくいルート……それは、空に違いない――そう思ったのだがな」
 天通・ジン(AtoZ・f09859)が、しみじみと呟く。この嵐の上へは行ける――しかし、台風の目まで確認できなかったのだ。
「やっぱり、ただの自然現象じゃないみたいだ」
 通常なら、台風の目が見えたはずだ。しかし、上から見えない辺り超常の力が何かしら働いているのだろう。
 そんな時だ、ジンが後ろから声をかけられた。
「だよねー。ちょっと、面白い話があるんだけど――乗らない?」
「ん?」

「マスター、一時的ですが嵐を止める方法があります」
 御門・結華(色褪せた精霊人形・f01731)の言葉に、ユウヤ・シュバルツ(人間のシーフ・f01546)は表情一つ変えずにうなずいた。先を促された結華は、その具体案を語る。
「マスターがシルフを、私がサラマンダーを呼び出し、炎と風の複合精霊魔法を撃ちます」
 結華の案はこうだ、結華がエレメンタルファンタジアによって起こす炎をユウヤの風の精霊で火力を上げて嵐にぶつけようというものだ。
 完全に消す事は出来ないにせよ、大きく嵐の勢いを殺せるはずだ――というのが、結華の考えだ。
「私は暫く動けなくなると思います。なので、移動をお願いします」
「わかった。嵐を鎮静化させた後のことは任せとけ」
 ユウヤの返答に、一瞬の逡巡もなかった。自分のパートナーである結華に、絶対の信頼を置いているからだ。
「いやー、私以外にも同じ結論に至った子もいるんだな!」
 そう言って、マハティ・キースリング(はぐれ砲兵・f00682)だ。その隣には、ジンの姿がある。
「同じ結論と言いますと?」
「ようは、確かに人間は気象には勝てないけど、そんなもん操る以上オブオブのコストも無限ではないんじゃないかなって」
 マハティは、心躍るという表情で力強く言ってのけた。
「ダメ元でいいから!! 嵐操るオブリビオンの困り顔が見たいんです!!!」
「……マスター?」
 振り返る結華に、ユウヤは小さく笑った。協力して、可能性が少しでも上がるのなら迷う必要はない。
「一瞬でも嵐が緩めば、俺が運んでやる」
 ジンも、マハティの提案に乗った側だ。だからこそ、いける――その確信があった。

 嵐の外に出た彼らは、慎重に場所を選別した。先行している仲間に迷惑をかけないように、計算したのだ。
「全員、乗ったな?」
 ジンの重力下戦闘機に、結華とユウヤ、マハティは乗り込んでいる。エンジンに火が入る、その一瞬を逃さないためにジンは操縦桿を握った。
「よし、力を貸してくれよ。相棒!」
 ゴォ! と戦闘機――より正確には、ユウヤを中心に風が渦巻く。ユウヤと契約した風の精霊が、そこに現れたのだ。
「いくぜ、シルフ! アイツの援護を頼むぜ」
「サラマンダー、シルフ、私に構わず全力でやって下さい!」
 サラマンダーを召喚、結華は右手のフレイムソードと左手のウィンドセイバーから生み出した大規模な渦巻く炎――火炎旋風を台風へとぶつける!
 ゴォ! と火炎旋風が、嵐の一部を削る。嵐は乱れはするものの、しかし、規模が違う――そこへ、サイバーアイとグリオンを起動したマハティが吼えた。

「嵐には隕石をぶつけるんだよォ!!」

 マハティの災禍の女(ヴィクティムオブオプレッション)――空から舞い落ちる隕石が、火炎旋風とぶつかって解けた嵐の一角を大きくえぐる。その抉られた嵐の穴へと、迷わずジンは飛び込んだ。
「――――ッ!」
 赤い星を刻まれた白い機体が、隕石とすれ違う。機体が揺れる中、ユウヤはしっかりと結華を守るために抱きしめる。炎と風、そして隕石をぶつけられてこじ開けた僅かな隙間を、ジンは強引に――抜けた。

「ハハハ! あれか!」

 ジンが笑い、嵐の目へと到達する。凪いだ、青い空さえ見える嵐の目。眼下に見つけたのは、古ぼけた砦だった。

●そして、嵐を抜ける
 嵐が緩んだのは、数分という短い時間だった。しかし、その短い時間をイルナハは見逃さなかった。
「この先です、急ぎましょう」
 事前に手に入れていた地図があるからこそ、迷わず駆け抜けられた。時折、足場が崩れていた場所もあったが、そこはトネルが第六感で察知して危険を回避していく。
「そっち、崩れやすい気はするゾ!」
 この勘が、馬鹿にならない。時間のロスを最小限度に下げつつ、猟兵達は走っていった。アルフェニアは『サリア』の声に耳を方向け、言う。
「もうすぐ、嵐の勢いが戻るそうです」
「あそこ――倒木が邪魔ですね」
 イルナハが、もう少しのところで邪魔な障害物があると告げると、静柄とリンタロウが同時に先行した。
「私が砕くから――」
「任せるっす!」
 静柄のグラウンドクラッシャーの一撃が、地面ごと倒木を吹き飛ばしリンタロウのBones Circusが邪魔となる破片を切り飛ばした。

 雷鳴が、轟く。その音を背後に聞きながら、猟兵達は嵐の中を駆け抜け切った……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【装備している刃物】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の雄叫び
【下卑た叫び】を聞いて共感した対象全ての戦闘力を増強する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●盗賊達の砦
 その砦は、かつて戦争で使われた後に廃棄された砦だった。維持するのも手ががかかり、かといって破壊するのは手間になる。だから、放置されたものだ。
 古くはあるが、現在でも砦としての機能は残っている。数十人からなる盗賊達が暮らせるほどの広さが、そこにはあるのだ。

 この砦の中を、探索しなくてはならない。どこかに盗賊の親分がいるはずだ――そのためには、邪魔になる盗賊達を排除する必要があるだろう……。
水心子・静柄
山賊如きに私の柔肌(刀身)を見せる訳にはいかないわ、鞘に入ったまま撲殺してあげる!

それにしてもこの砦、見事に悪用されているわね。今ここで山賊達を全滅しても砦がそのままならまた悪用されて近辺に同じような被害が出るでしょうね。これを機に砦として機能しないまで壊してしまった方が良いわよね………もちろんただ単に気持ち良く砦を壊したい訳じゃないわよ?

山賊達とまともに斬り結ぶ必要はないわ、古く廃棄された砦という地形を利用してグラウンドクラッシャーで壊しまくって山賊達に瓦礫の山を浴びせさせるわ。私、複数に攻撃出来る手段がないのよね。複数攻撃出来て、ついでに砦として機能させなくするなんて一石二鳥よね。


イルナハ・エイワズ
砦を機能させるには纏める指揮官のための部屋も用意されていたのでしょうし
砦内部の人間が集まっても十分な広さの部屋もあるのでしょう
盗賊をまとめる中心人物がいるとしたらそのあたりでしょうか?

盗賊達の相手をするなら通路や小さめの部屋の方が楽なのですけどね
狭い場所なら視界内全てを攻撃するのが容易ですから
通路で遭遇した盗賊を排除しつつ、探索を進めましょう


リンタロウ・ホネハミ
やー、皆さんの知恵とオレっちの冴え渡るサポートのおかげで嵐は抜けれたっすけど……
あんだけ派手にやりゃー絶対オレっち達に気付いてるっすよねぇ
かーっ、めんどくせぇ!!
相手が態勢整える前に叩くっすよ、拙速拙速!

つーわけで、カメレオンの骨を食って【〇八七番之隠伏者】で透明化
そんで先行して砦に侵入、敵を撹乱してやるっす!
出来るなら殺せるだけ殺すっすけど
無理そうなら待ち伏せや迎撃が出来ねぇように斬ったりワイヤーで転ばしたり邪魔しまくってやるっす
そうやってグダグダさせてりゃ、優秀な皆さんが良い感じにぶっ倒してくれるはずっすからね!
これを繰り返して敵を全滅させてやろうじゃないっすか!

アドリブ大歓迎


アルフェニア・ベルメル
戦うのは余り得意では無いのですが、私なりに皆さんをお助けします

『自然と共に在る者』は継続中
軽い攻撃なら精霊が守ってくれます

えっと、あの嵐で守られていたのなら、罠などは無いと、思いたいのですが…念のため、調べて貰いますね…お願い、皆

情報収集を持つ『サリア』、目立たない特徴を持つ『リーン』を中心に、精霊たちにお願いして常に周囲を調べて貰います
罠はもちろん、数十人居るという敵の探索も重要です
どのくらいの数がどちらから来るのか、そういう情報を出来る限り伝えます
挟み撃ちや不意打ちとかされたら怖いですから…

あとは、おそらく親分だと思うのですが、精霊を利用していましたし、似た強い力を感じたら要注意ですね


セロ・アルコイリス
いやーひどい目に遭いましたね
だが辿り着きゃこっちのモンだ
とりあえず『鍵開け』とか必要なら積極的に使っていきましょうかね

極力山賊とは戦わねーようにしてーですが
他の猟兵サン達が囲まれてるとかでピンチなら手を貸せたら

基本的には【存在意義】で相殺しつつ『カウンター』狙い
情報収集できたらいいですね
あんたらの親玉はどこに居るんですかね?
ま、簡単に吐きゃしねーでしょうが

攻撃避けつつ道を探ってたら
妙に雑魚が慌てたりするような方向はねーですかね
ありゃそっちが怪しいかなーと

戦いが避けらんねーなら容赦しねーですよ
あんたのココロを頂きます

※アドリブ歓迎


天通・ジン
砦の中を巣食う山賊。待たれるのが一番厄介だよな。
相手に待ち伏せされて、包囲されないように細心の警戒を払って進もう。
【地形の利用】をこちらがしつつ、【情報収集】だ

待っている相手には遠隔攻撃。熱線銃の狙撃で、盗賊を狙い撃つよ。
相手が石を投げたりして攻撃してきたら、きっちりビームで撃ち落としてやる
……もちろん、今回は飛行機は持ち込まない。
というか、持ち込めない。残念。

味方が近接武器で突撃するようなら、銃撃で【援護射撃】するよ
陸にあげられた飛行機乗りは、支援に回るが得策だよな

アドリブとかは大歓迎。MSさんの自由に動かしてもらえたらうれしいよ


ユウヤ・シュバルツ
一緒に手伝ってくれた二人にお礼を言って、結華と一緒に降りる。
「二人とも、ありがとうな!」

結華の調子が戻ったことを確認したら、二本のダガーを逆手持ちに構え戦闘に移る。
「よし、それじゃ盗賊退治と行こうか!」

【先制攻撃】で二本のダガーを使い【2回攻撃】を繰り出す。
「おせぇよ!」
敵が剣を振るったり、石礫を投げてきたら【見切り】【残像】回避し【敵を盾にする】ことで同士討ちさせる。
「おいおい、ちゃんと狙わねぇと危ないぜ?」

敵が囲んで来たら【旋風刃】を使用しまとめて薙ぎ払う。
「へ、かかったな。まとめて吹っ飛びやがれ!」

味方が危ない時はダガーを投擲し敵を牽制する。
「余所見してると危ないぜ?」


御門・結華
手伝っていただいたお二人にお礼を言って、ユウヤと一緒におります。
「ありがとうございました」
「マスター、私は大丈夫です。戦えます」

抜刀したフレイムソードに炎を纏うと、瞳や髪の色が赤く染まり、実に纏うドレスにも炎の意匠が描かれ真紅に染まります。
突撃したユウヤの援護に【火精の息吹】で炎【属性攻撃】を放ち、援護します。
「マスター、援護します」
「火の精霊よ、我が敵を焼き払え」

敵の攻撃は、炎の【オーラ防御】を纏った大剣で【武器受け】します。
「マスター、こちらは大丈夫です。思う存分戦って下さい」

こちらへ接近してきた敵はフレイムソードによる炎を纏った刃で薙ぎ払います。
「その程度の攻撃、私には効きません」


マハティ・キースリング
・POW使用
クローンと機械兵の物量戦を主とする元銀河帝国軍人は保身など考えない
敵をどれだけ効率的に減らすかが主だった役割

まず機械眼と上空からドローンで索敵
敵の位置、数、増援情報を集積
皆様に適宜伝達

内蔵兵器を弾数一極仕様に
数頼みの男は1発入れれば怯んでくれると思うんだよなー
甘いかなー

次に視界の通る上を取る
手薄な見張り塔に乗り込み
砲門の手数と弾幕の厚さで圧倒して占領
違いますー、頭が足りないから登るんじゃないですー

メイン調査班の行く手を遮る敵に
地の利を活かしてありったけの弾を撃ち下ろす

配置に退路等なく寡兵はいつか追い詰められる
最後に外套の下に巻き付けた無数の爆薬で群がった敵兵諸共吹き飛べば任務完了だ


レイラ・ツェレンスカヤ
レイラ(f00284)と一緒に戦うのだわ!

うふふ、うふふふ!
これは血塗れにしてもいい相手かしら!
とっても楽しみなのだわ!

レイラが動きを止めてくれるのだわ
レイラ(自分)は血の槍で止まった脚を打ち抜こうかしら!
動きが鈍くなってからゆっくりと串刺しにしましょ!
きっとその方がすてきな悲鳴を聞かせてくれるのだわ!

あら! レイラが聞きたいのはそんな下品な雄叫びではないのだわ!
ちゃんと悲鳴を聞かせてくれるかしら!

痛いのだわ、苦しいのだわ!
うふふ、レイラも血塗れ、とっても楽しいのだわ!

あなたは燃えているのかしら!
心を燃やしているかしら!


レイラ・エインズワース
レイラ(f00758)サンと共闘

過去の残滓が今を生きる命カラ奪っていくのは許せないカラ
せっかく会ったのも何かの縁
存分に使いこなしテネ

ユーベルコードを使って狂気の魔術師を召喚
これが私の創造主
こういうの呼ぶノって珍しいカナ

出来るダケ、多くと戦わず孤立してるヤツから狙うヨ
角や部屋の前を通るときには遭遇戦に警戒
できるだけ先手を取って仕留めていくヨ

レイラさんの攻撃の時間が稼げるヨウニ
魔術師に指示を出して、死霊で足止めしたり雷撃でしびれさせたりするヨ
私は道具として【高速】で呪文を唱えたり、怨霊に【呪詛】を籠めて効果を増やしたいナ

心に火を灯して行くヨ
そっちはどうカナ?

アドリブ・台詞追加も歓迎ダヨ



●廃棄された砦
 廃棄された砦を見上げ、リンタロウ・ホネハミ(Bones Circus・f00854)はしみじみと呟いた。
「やー、皆さんの知恵とオレっちの冴え渡るサポートのおかげで嵐は抜けれたっすけど……」
 砦の中で、叫び声がする。内容は聞き取れないが、様子を見に来た山賊の声だろう。
「あんだけ派手にやりゃー絶対オレっち達に気付いてるっすよねぇ。かーっ、めんどくせぇ!! 相手が態勢整える前に叩くっすよ、拙速拙速!」
 砦の中は臨戦態勢になっているのは、間違いない。御門・結華(色褪せた精霊人形・f01731)と彼女を支えていたユウヤ・シュバルツ(人間のシーフ・f01546)は、共に到着した天通・ジン(AtoZ・f09859)とマハティ・キースリング(はぐれ砲兵・f00682)を振り返った。
「二人とも、ありがとうな!」
「ありがとうございました」
 礼を言う二人に、ジンとマハティは笑って答える。
「ははっ、同じ猟兵同士固いこといいっこなしだぜ。なぁ」
「そうそう」
 ジンに同意を求められ、マハティはうなずいた。そして、砦を見上げてマハティが言う。
「それに、本番はこれからだから」
「はい」
 マハティの言葉に首肯した結華は、ユウヤの手の中から離れる。
「マスター、私は大丈夫です。戦えます」
「ああ」
 フレイムソードの柄を手にした結華に、ユウヤは二本のダガーを逆手持ちに構えて告げた。

「よし、それじゃ盗賊退治と行こうか!」

●守る者、助ける者
 砦は戦時に人が行き交う事を念頭に、建築されている。そのため、普通の建物に比べれば広く造られていた。
「真正面から来やがったぞ!」
「命知らずどもが! 叩き返せ!」
 山賊達が、猟兵に気付いて通路を駆けてくる。水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)が、小さく呟いた。
「山賊如きに私の柔肌を見せる訳にはいかないわ」
 静柄が、こちらに向かって走ってくる山賊達に、鞘に納めたままの脇差を振り上げた。山賊は、鼻を鳴らして嘲笑う。
「ハッ! 抜いてねぇ刃物で何をするつも――」
「鞘に入ったまま撲殺してあげる!」
「――はい?」
 ゴォ! と破壊音と共に静柄のグラウンドクラッシャーが、石畳の床ごと山賊達を吹き飛ばした。風に巻き上がられた木の葉のように宙に舞った山賊達が、湿った音と共に落下するのを見て、アルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)が息を呑む。
 戦うのは余り得意では無いアルフェニアだが、首を左右に振って表情を引き締めると深呼吸を一つしてから言った。
「えっと、あの嵐で守られていたのなら、罠などは無いと、思いたいのですが……念のため、調べて貰いますね……お願い、皆」
 アルフェニアの自然と共に在る者(エレメンタル・フレンズ)の呼びかけに応え、『サリア』と『リーン』を中心に砦の中に精霊達が散っていく。罠はもちろん、数十人居るという山賊の探索。そして――。

「……え?」

 アルフェニアが小さく目を丸くする。それに、静柄が問いかけた。
「どうしたの?」
「……いえ、私の勘違いかもしれないので。罠はないですが、山賊はたくさんいるみたいです」
 確証を得られていない事を口にしていいかわからず、アルフェニアが入手した情報だけを口にする。それに、静柄は微笑んで言った。
「なら、行きましょう。安心して、私が一緒にいるわ」
「はい、お願いします」

●二人のレイラ
 山賊達は、二人組の少女達を見て下卑た笑みを浮かべた。
「おいおい、ピクニックにでも来たのかよ」
「お嬢ちゃん達、ここはすごーく怖いところなんだぞォ、ギャハハハ!!」
 普通の少女であるのなら、そんな言葉をぶつけられれば萎縮したかもしれない。しかし、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)とレイラ・ツェレンスカヤ(スラートキーカンタレラ・f00758)の二人のレイラは表情一つ変えない。
 むしろ、レイラ・ツェレンスカヤは花が綻ぶような笑顔を見せた。
「うふふ、うふふふ! これは血塗れにしてもいい相手かしら! とっても楽しみなのだわ!」
「はい?」
 山賊達の勘が、その時告げた。これはヤバい――逃げるべきだ、そう頭の片隅で本能が警鐘を鳴らすが……もう、遅い。
「過去の残滓が今を生きる命カラ奪っていくのは許せないカラ――せっかく会ったのも何かの縁、存分に使いこなしテネ」
 レイラ・エインズワースは、傍らの同じ名の少女にそう囁き、詠唱した。
「潰えた夢を数えヨウ。届かなかった手、再会の願い。どこまでも無垢だった魔術師の見た夢。過去の幻だとしても、今再び夢は舞い戻る」
 無垢なる創造主の夢(リアニメイト・ファナティックウィザード)――レイラ・エインズワースの創造主である、狂気の魔術師が召喚された。
「これが私の創造主、こういうの呼ぶノって珍しいカナ」
「――ッ!?」
 ドン! と狂気の魔術師が放った電光の雨が、山賊達を撃ち抜く。電撃を受けて動きを止めた山賊達に、レイラ・ツェレンスカヤは右手をかざした。
「レイラが串刺しにしてあげるわ! きっとたくさん血が出るわね! 楽しいわ!」
 ガシュ! と鮮血の槍が山賊達の足を貫いていく。レイラ・ツェレンスカヤのволшебство・гром(イカズチノマホウ)に串刺しにされて、山賊達が苦痛の悲鳴を上げた。
「あら! レイラが聞きたいのはそんな下品な雄叫びではないのだわ! ちゃんと悲鳴を聞かせてくれるかしら!」
 クルリクルリ、とゴスロリ服のスカートを風になびかせるようにレイラ・ツェレンスカヤが踊る。一本、また一本と鮮血の杭が増えていき――やがて、そこには静寂の中で笑い続ける彼女の声だけとなった。
「痛いのだわ、苦しいのだわ! うふふ、レイラも血塗れ、とっても楽しいのだわ!」
「心に火を灯して行くヨ。そっちはどうカナ? レイラサン」
「もちろん! あなたも燃えているのかしら! 心を燃やしているかしら! レイラ!」
 二人のレイラは互いの名を呼び合い、再び歩き始めた。彼女達の楽しい楽しい『ピクニック』は始まったばかりだ。

●砦の中の戦闘
「マスター、援護します」
 結華の抜刀したフレイムソードに、炎が点る。瞳や髪の色が赤く、まとうドレスに炎の意匠が描かれ、真紅に染まいく――まるで、暗闇に鮮やかに燃える火炎のような美しさがそこにはあった。
「火の精霊よ、我が敵を焼き払え」
 ゴォ! と通路を炎が埋め尽くしていく。三人の山賊が強引に炎を突破するも、その前には既にユウヤが踏み込んでいた。
「おせぇよ!」
 二本の逆手に構えたダガーが閃き、山賊の一人を切り裂く。その山賊が、急にユウヤに飛びついた――正確には、後ろから仲間に蹴り飛ばされたのだ。
 だが、蹴り飛ばされた山賊は結華の大剣に受け止められた。
「マスター、こちらは大丈夫です。思う存分戦って下さい」
「おう!」
 ユウヤは結華の横を駆け抜け、振り返らない。それは絶対の信頼の証であり、結華もその信頼に応える覚悟があった。
「その程度の攻撃、私には効きません」
 結華はフレイムソードを薙ぎ払い、山賊達はショートソードを弾く。そして、ユウヤがニヤリと笑った。
「へ、かかったな。まとめて吹っ飛びやがれ!」」
 ヒュガ! と竜巻を生み出す程の魔力を込めた回転斬りを放ち、ユウヤは山賊達を吹き飛ばした。壁に、天井に、床に、山賊達が転がっていく。
 物陰から、三人の山賊が駆けてきた。即座に石を投擲するも、ジンの熱線銃が撃ち落としていく。
「飛行機が持ち込めないのが残念だが、陸にあげられた飛行機乗りは、支援に回るが得策だよな」
 ヒュンヒュン! とジンの熱線銃による支援射撃が、山賊達の動きを止め――マハティが外套の下に巻き付けた無数の爆薬に点火した。
「数頼みの男は1発入れれば怯んでくれると思うんだよなー。甘いかなー」
 ドドドドドドドドドドドドドド! とヴァリアブル・ウェポンを展開したマハティの砲門の手数と弾幕の厚さに山賊達が薙ぎ払われていく。
「ずいぶんとにぎやかになってきたな」
 マハティは、爆発の音を聞いて集まってくる山賊達に、満足げにうなずく。
「こっちに集まれば、『向こう』は手薄になる」
「なら、派手にやろうか!」
 マハティの意図を正しく理解して、ジンは襲い来る山賊達を真正面から迎え撃った。

●そして、たどり着く
 遠くで、激しい戦いの音がする。アルフェニアとマハティが集めた情報を元に、イルナハ・エイワズ(挟界図書館の司書・f02906)は情報を整理していた。
「砦を機能させるには纏める指揮官のための部屋も用意されていたのでしょうし、砦内部の人間が集まっても十分な広さの部屋もあるのでしょう。盗賊をまとめる中心人物がいるとしたらそのあたりでしょうか?」
 イルナハはいくつもの情報と、自分が目にした状況から『目的地』を割り出していく。大体のあたりをつけてそこへ向かおうと歩いていたイルナハを、背後から山賊が襲いかかった。
「――!」
 無言で、無音のままに殺す――殺しにかけては、さすがの手際だ。ただ、間違いがあったとすれば、山賊を超える腕前を持つ者がそこにいた事だ。

「させないっすよ」

 山賊の足にワイヤーが絡みつき、天井へと突き上げられる。〇八七番之隠伏者(ナンバーエイティセブン・カメレオンボーン)――カメレオンの骨を咥えたリンタロウが、ワイヤーを手に姿を現した。
「お、ま――!?」
「おっと、大声は出さないでくださいよ?」
 そう告げたのは、セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)だ。セロは大振りな刃の無骨なダガーを腰の鞘から一動作で抜くと、逆さ吊りにされた山賊の首元にピタリと押し当てる。
「あんたらの親玉はどこに居るんですかね? ま、簡単に吐きゃしねーでしょうが」
「は、はん! 脅されたぐらいで、吐くもんかよ!」
 明らかに強がりで言い返してくる山賊に、イルナハがぽつりと呟いた。
「四階の、奥の部屋でしょう?」
「――ッ!?」
 山賊が、イルナハの言葉に目を見張る。その反応で十分だった、イルナハがうなずくとリンタロウがワイヤーを手放した。
「が!?」
 頭から落下して、山賊が気を失う。それをワイヤーで簀巻きにすると、リンタロウが言った。
「予想通りっすかね」
「だとしたら、この先は――」
 セロは、言葉の途中で振り返る。数は少ないが、動かずにいる山賊の気配を感じたからだ。
「戦いが避けらんねーなら容赦しねーですよ――あんたのココロを頂きます」

 山賊の親分がいる場所が判明した、そう猟兵達に伝わったのはそれからしばらくしてである。その場所を聞いて、アルフェニアがやっぱり……とこぼした。
「やっぱりってどういう意味?」
「実は、さっき調べた時も感じたのですが……」
 アルフェニアは、さきほど自分で確信を得られなかったその事実を、ようやく口にした。

「山賊の親分さんから、精霊の力はまったく感じなかったんです」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『山賊親分』

POW   :    強欲の叫び
【酒!】【金!!】【女!!!欲望に任せた叫び声をあげる事】で自身を強化する。攻撃力、防御力、状態異常力のどれを重視するか選べる。
SPD   :    剛斧一閃
【大斧】による素早い一撃を放つ。また、【服を脱ぐ】等で身軽になれば、更に加速する。
WIZ   :    手下を呼ぶ
レベル×5体の、小型の戦闘用【山賊子分】を召喚し戦わせる。程々の強さを持つが、一撃で消滅する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●嵐男のザグ
 嵐男のザグ、その山賊の親分はかつてそう呼ばれていた。とにかく何かある度に悪天候に見舞われることで有名な男だった。
 雨男ならぬ、嵐男。それが、ザグの二つ名となった。ただ、この嵐は、いつでもザグの味方だった。時に追っ手の目をかいくぐるのに使われ、時に盗みを働く時のめくらましに利用された――そう、まさに今のように。

 ザグにとって、嵐はいつも傍らにあった者だった。呪われている、そう言い換えてもいいほどだ。普通に生きるのならば、こんな環境は悪運でしかない。しかし、山賊であるザグにとっては幸運だった。

 だから、ザグ自身は何もしていない。ただそこにるだけで、嵐が起きるのだ。何故なら彼は、オブビリオンなのだから……。
霑国・永一
嵐の中で輝いてそうだね、彼。いいなぁ、俺もシーフの端くれだからそういう加護とか欲しいもんだよ

SPDでオルタナティブ・ダブル主軸に戦うとしようかな。
実にパワフルな攻撃が多いけど範囲攻撃ってわけじゃないからね、適宜別方向から分身と共にタイミングずらしてダガーで斬っていかないとね。
斧を持つ手を狙ってみたり、足を狙って鈍らせたり、数を重ねて少しずつ力を削いでいかないと。
手下が出てきたらザグとは一旦距離取って、分身か本体か、どっちでもいいからザグを警戒しつつも手下へ向けてダガーや礫飛ばして近付かれる前に対処したいところ。沢山投げて威力よりも範囲重視でやろう
もっと接近戦に向いてる猟兵仲間来てるなら援護かな


セロ・アルコイリス
精霊の力を感じねーってのは、おれにゃよく判んねーんですが……
ヒトに害なすなら人形は踊りましょうか
おっと、あんたはヒトじゃねーでしょうが
よく判んねーけど、ヒトじゃねーから精霊サンの加護がねーんじゃねーですか

嵐男のココロをおれにも教えてくださいよ
砦ン中でも天気は荒れ模様なんですかね?
いいなァ、それ
楽しそうだ

『カウンター』『学習力』を使って【存在意義】で他に猟兵サンが居れば仲間を護りつつ学んで
傷付いたっていい、ヒトが護れるなら
攻撃にゃダガーでも鍵でもなんでも使う
ザグの技は完成しないまでも真似は試してみたい
相殺だけじゃなくてさ

※アドリブ歓迎


イルナハ・エイワズ
精霊の力を感じず、精霊は居心地がよくて騒いでいるだけ
嵐は制御されているのではないので自然がほとんど破壊されていたわけですね

ユルも怒っていますので、今回もきっちりと敵を消滅させましょう
いつもよりヤル気に溢れるユル(槍)で戦闘を行います

私は基本的にヒット&アウェイが得意ですので
戦闘知識、見切り、視力を活かして敵の隙を狙います
相手のスピードと私のダッシュでのスピードを考慮し
間合いを一気に詰めて、ユルで串刺しにします

この異常といえる嵐さえ止めば、自然はまた力強く再生していくのでしょう
そのためにもオブビリオンは排除します


天通・ジン
ずっと嵐の中にいて、寂しくないものなのかね。
俺なら嫌だな。色んな世界(ふね)を旅して、色んな人と出会って。
そういうのが楽しいんじゃないか。
……理解に苦しむな。

さて、嵐男さんと戦う上で、まずは相手を観察しないとな。
相手は何ができるのか、俺は何ができるのか。
明らかに厄介なのがあの大斧。接近して斬られたら、俺じゃ勝ち目ないだろう。
いや、近接武器での戦闘苦手だし、俺。

だから距離を取って、熱線銃で相手の動きを牽制だ。
豆鉄砲じゃないんだぜ。
相手の急所を狙ったエネルギー・ビームをそうそう耐えられるものかよ!

あとは近づかれないように警戒。
一応、念のため、近接が得意そうな味方の近くで銃を撃とう

アドリブは歓迎だよ


レイラ・ツェレンスカヤ
レイラ(f00284)と一緒に戦うかしら!

まあ! 見つけたのだわ、山賊の親分!
あなたも手下の山賊たちと同じように、血塗れにしてあげるかしら!

でもでも、レイラが自分でやらなくても、レイラがやってくれるのだわ!
だからレイラは貴方の身体じゃなくて、心を折ることにするかしら!
レイラが恐怖を教えてあげるのだわ!
うふふ、うふふふ!
レイラから、レイラたちからは、逃げられないのだわ!

まあ! まだ手下が出てくるのね!
小さな小さなレイラはたくさんの山賊に囲まれて!
きっと武器で斬られて刺されて殴られて!
自信満々で挑んで傷だらけになるレイラ(自分)も、無様で惨めで、なんて可愛いのかしら!


アルフェニア・ベルメル
嵐を起していたのは精霊…でも、親分さんから精霊の力は感じない…
精霊と争わずにすむのはありがたいのですが、不思議ですね

戦闘では後方から『癒やしの光花』で皆さんの治療を最優先です
此処に辿り着くまでに皆さんの強さを見ていますし、心配無いのかもしれませんが…
自分の疲労は気にしません
怪我の痛みに比べたら、たいしたことではありませんから…

回復の必要が無い場合は弓で支援
弱くても手下を減らすぐらいなら、なんとかなると思います

無事終わったなら、外の様子を確認
嵐が収まっているのなら良いのですが、まだの場合、精霊を通じてお願いしてみます
活躍してくれた精霊たちを労いながほっと一息
これで近くの町や村の皆さんも安心ですね


レイラ・エインズワース
レイラ(f00758)サンと共闘

ようやく見つけタヨ
止まない嵐はナイんだカラ、過去の幻は過去に還さなキャ
狼藉はここまで、討ち取って見せるヨ

ユーベルコードを使って攻撃していくヨ
レイラサンの援護に合わせて、確実なタイミングで
【全力】の魔力を槍の1本1本に込めて
朗々と謡うように、響くように【高速詠唱】で連打していこうカナ
乗せるのは、助からなかったヒトや奪われたヒトの【呪詛】
私にできるノハ、このくらいだケド、必ず届かせるヨ

手下が表れた場合は槍を拡散して貫くように打ってできるだけ多く消すヨ
居なければ、親分に集中

痛くて苦しい、でも前を向く
とっても『生きて』るネ、レイラサン

アドリブ・台詞追加も歓迎ダヨ



●嵐男のザグ
 猟兵達が踏み込んだのは、砦の四階奥――かつては、砦の司令官が使っていた部屋だった。
 そこにいたのは、豪奢な机に足を投げ出して座っていた大男だ。レイラ・ツェレンスカヤ(スラートキーカンタレラ・f00758)は、目を輝かせて言った。
「まあ! 見つけたのだわ、山賊の親分! あなたも手下の山賊たちと同じように、血塗れにしてあげるかしら!」
「……何だ? お前ら」
 不機嫌を隠しもせずに問いかける大男に、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は告げる。
「ようやく見つけタヨ。止まない嵐はナイんだカラ、過去の幻は過去に還さなキャ。狼藉はここまで、討ち取って見せるヨ」
「止まない嵐はないか……そいつぁ、違うね」
 大男は、立ち上がる。その動きは、巨躯から想像もできないほど滑らかで見事な盗賊のものだった。
「止まないね、俺がいる限り。何でかな」
 そう、それはアルフェニア・ベルメル(森の泉に揺蕩う小花・f07056)は疑問に思っていた。
(「嵐を起していたのは精霊……でも、親分さんから精霊の力は感じない……精霊と争わずにすむのはありがたいのですが、不思議ですね」)
 アルフェニアの疑問に答えるでもなく、大男はコキリと首を鳴らして斧を手に取った。
「昔から、嵐に好かれちまってね。盗みにゃ便利だから、気にしたこともなかったが……嵐男のザグなんて呼ばれるようになっちまった」
「ずっと嵐の中にいて、寂しくないものなのかね?」
 あっけらかんと言うザグに、天通・ジン(AtoZ・f09859)は問いかける。
「俺なら嫌だな。色んな世界(ふね)を旅して、色んな人と出会って。そういうのが楽しいんじゃないか」
「俺はそうは思わんね。どうせ、目に見えるのはいつだって嵐だけだからよ」
 肩をすくめるザグに、ジグは小さく首を左右に振った。
「……理解に苦しむな」
「いらねぇよ、んなもん。腹の足しにもならねぇ」
 ザグの表情に、偽りはない。霑国・永一(盗みの名SAN値・f01542)はしみじみと心の中で呟いた。
(「いいなぁ、俺もシーフの端くれだからそういう加護とか欲しいもんだよ」)
 同じシーフという立場から永一が見たザグの腕前は、かなりのものだった。身のこなし、視線の動かし方、足音を殺す技術――山賊としても、一線級なのだろう。
「精霊の力を感じず、精霊は居心地がよくて騒いでいるだけ――嵐は制御されているのではないので自然がほとんど破壊されていたわけですね」
「あ?」
 イルナハ・エイワズ(挟界図書館の司書・f02906)の声に感じた憤りに、ザグは顔をしかめる。意味がわからない、そういう表情だ――だから、イルナハはあえて言葉にした。
「ユルも怒っていますので、今回もきっちりとあなたを消滅させましょう」
 イルナハは、いつもよりヤル気に溢れるユルを構える。そして、セロ・アルコイリス(花盗人・f06061)が大振りな刃のダガーを手に駆け込んだ。
「精霊の力を感じねーってのは、おれにゃよく判んねーんですが……。ヒトに害なすなら人形は踊りましょうか」
 セロのダガーを、ザグはひゅるりと流れるような動作で斧によって弾いた。ズサァ、と靴底を鳴らして、セロは言う。
「おっと、あんたはヒトじゃねーでしょうが。よく判んねーけど、ヒトじゃねーから精霊サンの加護がねーんじゃねーですか」
「訳のわかんねぇ事、言ってんじゃねぇ!」
 ザグは床を蹴った瞬間、斧を横一文字に振り払った。

●嵐の戦い
 ジンは、素早い斧の一撃を受けて後退した。
「速ぇ!」
 即座に、ジンはブラスターで反撃。しかし、ザグは止まらない。風に乗ったかのごとく、ブラスターの射線からことごとく姿を消した。
「大丈夫ですか……?」
「ああ、だが手強いぜ、あいつ」
 すかさずアルフェニアの癒やしの光花(ヒーリング・フラワー)の光の花びらが、ジンの傷を癒やす。ジンは、ザグの動きからその実力がこちらを大きく上回っていると読んでいた。
「レイラが自分でやらなくても、レイラがやってくれるのだわ! だからレイラは貴方の身体じゃなくて、心を折ることにするかしら! レイラが恐怖を教えてあげるのだわ!」
「化け物が!」
 レイラ・ツェレンスカヤの黄金の瞳が、妖しく輝く。волшебство・подчиненность(ジュウゾクノマホウ)――本能的恐怖を感じる威圧を放ち、心をへし折るユーベルコードだ。しかし、ザグはその恐怖を歯を食いしばって堪えた。
 だが、恐怖がザグの動きを鈍らせる。その刹那を、レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は見逃さなかった。
「継ぐモノが残り続ける限り、見果てぬ夢はないんダヨ。エインズワースの魔術、その身で試してミル?」
 朗々と謡うように、響くように――再演・冥府の槍(リプロデュース・ファントムスピア)の無数の槍が、ザグの足を貫いた。
「ここです」
 そして、横へと回り込んでいたイルナハが繰り出したユルがザグに迫った。ザグは強引にのけぞり、片腕で斧を振るう。ギィン! と紙一重でユルを弾く事に成功した。
「ったく、腕も立つじゃないか」
「でなければ、山賊の頭は務まらねぇんだよ!」
 止まる事なくザグの手足を狙い、永一が駆ける。永一が腕を狙って繰り出したダガーの刺突をザグはかわし――目を見張る。
「ぐ!? テメェ!」
 永一と同じ姿の分身が、同時に片足の脛を切り裂いたのだ。オルタナティブ・ダブルによる同時攻撃に、ザグは吼えた。
「ブっ殺す!」
「嵐男のココロをおれにも教えてくださいよ。砦ン中でも天気は荒れ模様なんですかね?」
 ザグの強欲の叫びに、セロが挑発するように言う。セロの挑発に、ザグは吐き捨てた。
「殺した後に教えてやらぁ!」
「いいなァ、それ。楽しそうだ」
 セロは笑い、そしてザグへと襲いかかった。

●嵐の後に
「やっちまえ! 野郎ども!」
 ザグの声に、山賊達が現れてレイラ・ツェレンスカヤへと襲いかかった。振り下ろされる刃に、レイラ・ツェレンスカヤは花のように綻ぶ笑顔を見せる。
「まあ! まだ手下が出てくるのね! 小さな小さなレイラはたくさんの山賊に囲まれて! きっと武器で斬られて刺されて殴られて! 自信満々で挑んで傷だらけになるレイラも、無様で惨めで、なんて可愛いのかしら!」
 無数の斬撃音と、飛び散る鮮血――それでも、レイラ・ツェレンスカヤの笑いは止まらない。構わず攻撃を加えようとする山賊達は、無数の槍に串刺しにされ掻き消えていった――レイラ・エインズワースだ。
「痛くて苦しい、でも前を向く。とっても『生きて』るネ、レイラサン」
「ふふ、ありがとう、レイラ」
「イカれてんのか、お前ら!」
 傍で見れば微笑ましいレイラ達のやり取りに、おぞましいとザグは吐き捨てる。そのザグに向けられたレイラ・ツェレンスカヤの黄金の瞳とレイラ・エインズワースの槍が、同時に襲いかかる!
「俺なんかより、よっぽどヤバいだろ、アレ!」
 ザッ! とたまらずザグは後方へ跳ぶ。しかし、そこに待ち構えていたのはセロだ。
「チィ!」
 ザグは、振り返りざまの斧を薙ぎ払う。その動きに合わせ、セロはダガーを振るった。
 武器こそ違えど、同じ軌道――セロの頭上を斧がかすり、ダガーがゼグの脇腹を切り裂いた。

「こ、の……俺の技を盗みやがったなぁ!?」

 初めて見せた激怒の表情で、ゼグはセロに再び斧を振るおうとする。それを防いだのは、手首を斬った永一と分身のダガーだ。
「させるかよ」
 粗暴に吐き捨て、永一が歯を剥いて笑う。そして、アルフェニアのエレメンタルボウの矢がザグの腕に突き刺さった。
「『リーン』、お願い」
 矢に込められた悪戯好きな木の精霊の力が、アルフェニアの呼びかけと同時蔦となって絡みついていく。素手で引きちぎるのは力が足りず、余裕がない。ザグは自分が落した斧に手を伸ばそうともがくが――ヴィン! とジンのブラスターの熱光線がザグの手を撃ち抜いた。
「豆鉄砲じゃないんだぜ」
 正確無比な射撃を見せ、ジンがニヤリと笑う。既に決着がついた事を、革新したからだ。
「終わりです」
 イルナハが繰り出すユルの一閃――ドラゴニック・エンドの一撃に貫かれ、ザグが膝から崩れ落ちた。
「ああ、ち、くしょう……」
 ザグは、砦の窓から外を見る。ほぐれるように消えていく暗雲に、忌々しげに呟いた。
「俺が死んだら……やみ、やがって、よ……ぉ」

 手を伸ばし、ザグは悔しげにそう事切れた……。
「これで近くの町や村の皆さんも安心ですね」
 力を貸してくれた精霊達を労い、アルフェニアが微笑む。嵐に集まっていたあれだけの精霊達が、嘘のように散っていく。ただ、彼らの一部――情報をくれた精霊は、アルフェニアに別れを告げてから消えていった。
「自然はまた力強く再生していくのでしょう」
 イルナハは竜へと戻り身を寄せてくるユルを撫でて、そう言った。自然は強い、決して癒えぬ傷などない――オブビリオンから世界を守る猟兵がいるように、新たに芽吹く生命が、嵐の痕を癒やしていくだろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月14日


挿絵イラスト