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花は散り、悪が咲く頃に

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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 グリモア猟兵、クランフタ・イェルドットは集まった猟兵達を見るや否や、色の無い目玉をぎょろりと見開く。ヒーローズアースでヴィランに関する事件が起こるとのことで招集を掛けた彼だが、少し薄暗い周囲と狂気的な風貌も相まって、このグリモア猟兵自体がヴィランなのではと疑われても仕方がないかもしれない。
 だが彼は怪しくも確かな笑顔を浮かべ、猟兵を歓迎するように一礼した。
「集まって頂き、感謝するよ。それでは話をさせて貰おう」
 クランフタは一冊のスケッチブック、その中の一ページを開いて掲げる。鉛筆か何かで丁寧に描かれたそれはどうやら似顔絵のようだ。
「ヒーローズアースで悪事を働くヴィランが殺される。まァ悪が滅ぼされるだけなら何も問題はないのだろうが、一応ヴィランも生かして捉えるのがあちらの世界の定石、だからねェ……」
 ヒヒ、と不気味に笑いながら、彼はその事件の詳細――グリモア猟兵としての予知について語り始めた。

 クランフタが見せた似顔絵のヴィラン、名は『トーポ』。彼はオブリビオンの集団と共に街を襲撃し、そこから金品を盗み、蓄えるという謎のヴィラン活動を行っている。だが、トーポは”華麗に盗みを行い、必要以上に建物や街を破壊しない”という強い拘りを持っていた。
 オブリビオン達は彼の拘りなど関係無く街を破壊し、寧ろ破壊を目的として街を襲撃し続けていく。そんな彼等と事件を起こし続けるうちに堪忍袋の緒が切れたトーポは、協力者であるはずのオブリビオン達に反抗してしまうのである。

「……まァ、街を壊さないとはいえ、そいつは怪盗をやりたい臆病なヴィランに過ぎない。既に被害は出ているから、同情などせずさっさと刑務所に送ってくれ給え」
 そして、クランフタは似顔絵の描かれたページを勢いよく破る。手掛かりにとそれを手渡しながら、彼は話を続けた。
「今回の任務は『オブリビオン退治』と『トーポの生け捕り』。一度に二つの仕事をしてもらうことになるから、私も少し君たちにオマケをさせて貰おうか」
 白衣のポケットをあちこち探って、クランフタは数枚のチケットを猟兵に手渡す。
「事件現場近くのダーツバーの優待券だ。任務が終わったら行くと良い」
 そして、クランフタは見開いていた目を眩しそうに細めながらグリモアを浮かべた。
「それでは、トーポとオブリビオンが現れる地点へ転送する。健闘を祈るよ」
 その言葉を最後に、猟兵の視界はふっと白く染まった。



 ヒーローズアースの繁華街。娯楽や仕事に人々が行き交う中、ひらりと一枚の花弁が舞い落ちる。
 ――と、同時。
「グォォォォオオーーーーーーッ!!」
 巨大な怪人が轟音と共に地面を突き破り、アスファルトを散らしながら現れた。それを囲むように鎧姿の騎士が飛び出し、彼等は街を破壊せんと刃や爪、拳を振り回す。
 そして、それを見下ろすように立っていた、やけに華やかな衣装に身を包んだ一人の男――クランフタの似顔絵と同じ顔、トーポがわなわなと肩を震わせながら怪人たちに言い放った。
「キミ達……登場する時は花を舞わせろと言っているだろう!?」
 しかし、騎士は仮面に隠れた頭でも分かる程に憤った声で言い返す。
「貴様、そろそろヴァルニール様の怒りを買っても知らんぞ! 早く降りてきて手伝わんか!!」
 トーポは渋々と言われたままにふわりと飛び降りる。だが、彼は街を破壊するのではなく、騎士の一人に殴りかかった。
「――ッ!! 貴様ァ!!」
「……ボクは華麗に盗み、華麗に去る悪なんだ。もうキミ達とは共に行けないよ」
 その瞬間、巨大な怪人が再び大きく吠える。騎士はその意味を理解しているのか、一斉に返事をして武器を構えた。
「トーポ……お前を、ヴァルニール様の為に排除する!!」
「フン。できるならやってみ――ゴフゥ!?」
 騎士のハンマーがトーポの腹を直撃する。トーポは余裕ぶっていた割には呆気なく吹き飛ばされ、壁に激突して情けない声を上げるのだった。


みかろっと
 こんにちは、みかろっとと申します。今回はヒーローズアースにて、方向性の違いで仲間割れを起こしたヴィランとオブリビオンに関する事件となります。
 まず一章、オブリビオンの騎士達を倒し、ヴィランをひとまず守りましょう。ヴィランはすでに瀕死なので、猟兵を見て逃亡したり戦闘に加勢したりしてくることはありません。
 第二章にてボスを撃破し、ヴィランを刑務所に送った後は皆さんでダーツバーへ。
 日常シーンの第三章を経て任務完了となります。プレイング、心よりお待ちしております。
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第1章 集団戦 『デュランダル騎士』

POW   :    デストロイブレイド
単純で重い【量産型魔剣デュランダル】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    ケイオスランサー
【魔槍】が命中した対象に対し、高威力高命中の【仲間のデュランダル騎士との怒濤の連携攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
WIZ   :    不滅の刃
【量産型魔剣から放たれる光】が命中した対象を高速治療するが、自身は疲労する。更に疲労すれば、複数同時の高速治療も可能。

イラスト:弐壱百

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

バーン・マーディ
(大型トライク型バイクに乗って現れるデュランダル騎士と極めてよく似た武装の騎士

……我はバーン・マーディ
ヴィランである

不条理に叛逆する悪を助ける者だ(トーポを庇う位置に立つ騎士の目は何故か静謐で。彼らは覚えているか。それともオブビリオンとして嘗ての総帥を…嘗ての主の記憶を失っているか。彼らと極めて類似した魔剣を抜いて

我を思い出せぬか
良い
我はお前達を躯の海に戻しに来たわけではない
「迎え」に来たのだ

手荒だが元より力での闘争こそヴィランの流儀

来るが良い

【オーラ防御】展開

【武器受け】も加え受け止め続け

ユベコ発動

之がお前達の本来の在り方…「叛逆」である

【カウンター・怪力・二回攻撃・生命力吸収】で反撃!



 瀕死のトーポへ止めを刺そうとする騎士の元へ、唸るようなエンジン音が近づく。
「……ッ!?」
 騎士が跳び退がると、トーポの目の前へ三輪の大型バイクが停まった。そこに跨るのは騎士――怪人に従うデュランダル騎士達によく似た武装をした、猟兵の姿。
「……我はバーン・マーディ。ヴィランである」
「ヴィラン、だと?」
 バーンはバイクから降りながら、騎士を静謐に見つめる。彼はこの顔を見忘れたかと言わんばかりに毅然と立ち沈黙するが、騎士達は誰一人としてその意味を理解することはなかった。
「我を思い出せぬか」
「……貴様が我々を何と思っているかは知らないが、我々は今あの方に仕え、その命令に従っているのだ。邪魔をするなら容赦はしない」
 嘗て、総帥として”デュランダル”を率いていた彼は、そんな言葉を返す騎士達に静かに目を伏せる。オブリビオンとして蘇ったことで信念を忘れたまま、新たな主に仕える騎士達。バーンは口を噤み、魔剣を抜いて彼等に向き直った。
 それは彼等の携える剣に極めて類似しており、デュランダル騎士たちは僅かに動揺を見せる。だが、背後にいた怪人――今の彼等の主ヴァルニールが低く唸った瞬間、騎士達も一斉に剣を抜いた。
「退かぬなら……斬るぞ」
 バーンはその言葉にもなお確かにそこに立つ。
「手荒だが、元より力での闘争こそヴィランの流儀。来るが良い」
 ――その瞬間、騎士の剣が振り上げられた。
 それを弾く様な気を纏い、バーンは一歩踏み出す。一対一で戦うなど彼等の思考には無いようで、確実に仕留めんと騎士達はバーンを囲み全方向からの攻撃を放った。
 無数の刃を打ち返しながら、バーンは背後で蹲るトーポを守るように動き続ける。
 多数の正義に退けられ、多数の悪に圧し潰される『悪』を庇うように、彼はその鎧に斬撃が届こうとも抵抗を止めない。
「この……ッ」
 攻撃を受けようともトーポを庇い続けるバーンに、騎士達は少しずつ苛立ちを見せる。
「貴様、我々を倒すのではないのか!!」
 だが、バーンは静かに首を振った。
「我はお前達を躯の海に戻しに来たわけではない。『迎え』に来たのだ」
 どぷり、と。バーンの周囲を漆黒の粘液が囲む。受け続けた傷を埋めるように、ユーベルコード『ダーク・ヴェンジャンス』を纏い、バーンは魔剣を一気に振り回した。
「之がお前達の本来の在り方……『叛逆』である」
 彼を囲んでいた騎士は瞬時に吹き飛ぶ。その傷はさほど深くなかったが、地に叩き付けられた彼等は脱力し、すぐに立ち上がることが出来ない様子だ。
 そしてバーンは魔剣の切先を向け、騎士の元へと歩み寄る。
 ――鋭い刃が、音もなく兜を宙へ舞わせて。
 静かに見下ろすバーンの足下には、跪くような騎士の身体だけが残っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カタリナ・エスペランサ
信念があるのはアタシも好きだけどさ
罪も無い人に迷惑を掛けるのは格好悪いよ
ヴィランでもオブリビオンでもね
――何より、仮にも騎士様の見た目でそういう事されるのは許せないんだ

敵の攻撃は《戦闘知識》で《見切り、ダンス》の要領で回避しようか
使うUCは【暁と共に歌う者】
《歌唱+精神攻撃+催眠術+誘惑》の歌声で幻惑して連携を封じ、《属性攻撃+鎧無視攻撃+衝撃波+乱れ撃ち》で炎の斬撃を放って蹴散らすよ
実体の無い灼熱は大層な鎧の上からでも効く筈さ

一応攻撃に《生命力吸収》を乗せて奪った力を分け与えてトーポも痛み止め程度に治療しときたいな
ヴィランを逃がす気も無いけど……まぁ、街を壊す連中を止めようとした分くらいはね



 残る騎士は立ち上がり、そして控えていた騎士もゆらりと剣を抜く。カタリナ・エスペランサはその姿に目を細めながら、戦場へと足を踏み入れた。
「信念があるのはアタシも好きだけどさ、罪も無い人に迷惑を掛けるのは格好悪いよ」
 そう言いながらカタリナはオブリビオンの姿を見る。
「――何より、仮にも騎士様の見た目でそういう事されるのは許せないんだ」
 それは彼女が憧れ、武芸を極めるに至った存在。同じ者ではないと分かっていても、その姿で街を破壊し人々を傷つけようとするなど、彼女にとって到底見過ごせるものではなかった。
 だが、騎士達はそんな事を知る由もない。彼等にとって今の主はあの怪人であり、その目的が『破壊』である以上従うしかないのだから。
「貴様も、我々を邪魔すると言うのか……!」
 新たに出てきた騎士達は槍を構えて、カタリナにその切先を向けた。
「喰らえェッ!!」
 猟兵目がけて一直線、その体を貫かんと数多の槍が突撃する。
 しかし、カタリナは踊るようにひらりと刃を躱し、ユーベルコードを発動した。
「我在る限り汝等に滅びは在らず、即ち我等が宿願に果ては無し」
 素早く突き出される槍が空を切る。声に聴く者を惑わす力を籠めながら、カタリナの詠唱は続いていく。
「――来たれ我が眷属、焔の祝福受けし子等よ!」
 歌の終わりと共に、カタリナの周囲へ無数の炎鳥が現れる。槍の嵐を見切り躱しながら、そのままカタリナは腕を振り上げた。
 炎鳥の翼がばさりと羽搏くと同時、槍騎士達を灼熱が襲う。鎧が煌々と赤く燃え、彼等は堪らず槍を引き、カタリナから距離を取った。
「……う、ぐッ!?」
 槍騎士はがくりと膝を付く。はっとしてカタリナの鳥達を見れば、その羽に纏う炎は先程よりも強く燃え盛っていた。

 カタリナはくるりとトーポの方を振り向く。
「ヴィランを逃がす気も無いけど……まぁ、街を壊す連中を止めようとした分くらいはね」
 そう呟きカタリナは炎鳥に手を翳す。そして騎士から奪った力を変換し、カタリナは瀕死のトーポの傷を癒した。
「あ、あれ……痛くない……」
 動くこともままならなかった彼は、不思議そうに自分の身体を触り目を丸くする。これならとトーポは立ち上がるが、顔を上げればカタリナの瞳はしっかりと彼の方に向いていた。
 トーポは逃げても無駄と判断したのか、大人しくその場に立ち止まるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ファルシェ・ユヴェール
商人の立場としては
華麗だとか破壊活動はしないとか、その辺りの美学は割とどうでも良く
単純に、盗みを働く者は御免被りたいのですが……
まあ、目の前で街を壊す者よりは幾分マシですね

懐より取り出すは『警告』のファイブロライト
此れを触媒にUC使用
あえて目を惹くよう、衣装や帽子の花飾りからふわりと花弁を舞わせ
騎士達の真っ只中に降り立ちましょう

見た目だけはご大層な騎士でも、
ただ暴れ破壊するならば獣以下ですね?

挑発と共に意識を研ぎ澄ませ、全神経でタイミングを見計らう
一斉に襲い来る一瞬に飛翔で回避、騎士の同士討ちを狙います
序でにふわりと衣装を翻し

………。
いえ待って下さい
私はヴィランでは、貴方の同類ではありませんよ



 騎士達をトーポを見ながら、ファルシェ・ユヴェールは小さくため息をつく。
 彼にとって、盗みを働く者の華やかさや拘り、美学や信念などはさして気にするような事ではない。商人の立場としてみれば、泥棒など全て等しく御免被りたい存在なのである。
「……まあ、目の前で街を壊す者よりは幾分マシですね」
 そう言ってファルシェはすっと普段の貼り付けたような笑顔を浮かべ、懐から宝石を取り出した。
 繊維状の結晶の中に、猫の瞳のような細い輝き。『警告』の石言葉を持つ宝石”ファイブロライト”を媒体に、彼はユーベルコードを発動する。
「上質な物が力を持つ――それもひとつの見方に過ぎませんが」
 宝石と同じ色を纏い、ファルシェは騎士の前へと歩み出ていく。彼等の目を惹くように衣装から花弁を舞わせれば、騎士達は何かプチンと苛立ちのトリガーを引かれたかのようにファルシェの方を向いた。
 猟兵は華やかな登場と共に言い放つ。
「見た目だけはご大層な騎士でも、、ただ暴れ破壊するならば獣以下ですね?」
 その言葉に騎士達の肩が揺れる。
「獣、以下……だと? 破壊を……ヴァルニール様をも、侮辱するかッ!!」
「……何か間違ったことを言いましたか?」
 ファルシェの挑発。騎士の槍は一斉に彼へと切先を向けた。
 あらゆる方向から刃が突進してくる。ファルシェは意識を研ぎ澄ませ、集中してその攻撃の隙を見計らう。
 槍が猟兵の身体に触れる一瞬、前。ファルシェは宝石の輝きを纏いながら、ふわりと真上へ飛翔する。
「ん、なッ!?」
 騎士達はファルシェがいた地点を中心として、互いに正面にいた騎士へと衝突する。鋭い刃先は鎧を貫き、騎士の頭や胴を深く突き刺した。
 彼等が慌ててその傷口から武器を引き抜いた直後、見るだけで血の気が引きそうな光景が広がる。
 悲鳴と断末魔、金属の耳障りな音がして、紅い鎧の塊がその場に出来上がった。

 ファルシェは宝石で飾られた衣装を翻し、その隙間からひらりと花弁を舞わせる。
 ――少し離れて立っていた男の、キラキラとした目線を浴びながら。
 そういえば花を舞わせて華麗に盗むだとか言っていたような。ファルシェはふとそんな事を思い出しながら、目を輝かせるトーポへ振り向いて告げる。
「……いえ、待ってください。私はヴィランでは、貴方の同類ではありませんよ」
 トーポはえぇっ、と声を裏返し、分かりやすくがっくり項垂れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力歓迎です!

あれは… 騎士かな?
強そうだし、砕き甲斐のありそうな良い鎧を着ているね。
フフ… 少し楽しみだよ!

なるべく消耗せずに切り抜けたいし、僕は対物狙撃銃【血煙丸】で彼らを狙撃してみよう。
接近戦に持ち込まれると厄介だし〈目立たない/忍び足〉で気配を消しつつ、一度撃ったら場所を変えて見つからない様にしないと。
弾は〈鎧砕き/鎧無視攻撃〉を合わせた特別な物を使用して、命中率を上げる為に《第七感》を発動かな?
他の猟兵やヴィランのトーポを誤射しない様に気を付けないとね!

卑怯だと思われても仕方ない様な戦法だけど、これも世界を守る為なのさ。
悪いけど…骸の海に帰ってもらうぞ!



 弱りながらも剣を手にしていた騎士達は、数を減らしていく同胞に焦りを見せる。一刻も早く裏切り者を葬り、街を破壊して主の命を果たさなければならないというのに。
 そして彼等は剣を槍に持ち替え、一撃で猟兵を仕留めようと集中し始めた。
 そんな中、更に一人の猟兵、ニトロ・トリニィが駆けつける。
「あれは… 騎士かな?」
 彼は少し離れた地点から敵の様子を伺う。深い光沢を放つ丈夫そうな鎧に心を躍らせながら、彼は狙撃銃『血煙丸』を取り出した。
「フフ…… 少し楽しみだよ!」

 槍騎士が突撃に一歩踏み出そうと体を動かした瞬間。
「――何だ!?」
 ズゴン、と突然の衝撃が騎士の足下を抉る。それが銃弾であることに気づけば、騎士は素早く攻撃の元――ニトロの方に視線を移す。
 しかし既にそこには猟兵の姿は無かった。
「全員動け……敵は狙撃手だ!!」
 彼等にはもう、槍の一撃を構える余裕などない。銃による狙い撃ちを避けようと騎士達はバラバラに動き出し、警戒して忙しく視線を動かす。
 だがその程度の対策では、猟兵の照準から逃れられない。
「捉えたッ!」
 ――金属が圧し潰され、砕ける音。
 ゴン、ゴンと降り注ぐ重い弾丸の雨は、一つ一つが鎧を砕く力を纏って騎士へと襲い掛かる。それらが騎士達の動きを予測しているかのように確実に命中していくのは、ニトロのユーベルコード『第七感』によるものであった。
 先の戦闘により減った兵数では、手分けしてニトロを探すことすらままならない。
「くそッ、卑怯者め!!」
 騎士の一人がそう叫び、弾丸の一撃を喰らって爆ぜる。
「……これも世界を守る為なのさ」
 ニトロはスコープ越しに反論し呟いた。
 騎士達は反撃のひとつも出来ないまま、ニトロの狙撃によってその戦力を散らしていく。一人また一人と鎧が砕け、そして猟兵は最後の一人へと狙いを定めた。
「悪いけど……骸の海に帰ってもらうぞ!」
 ニトロの黒い指先が動く。
 最後の騎士は見事に頭を貫かれ、崩れ落ちるように消えていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『壊人ヴァルニール』

POW   :    塵拳
【瘴気を纏った拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    壊世
【破滅願望】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    冥連
自身が【壊したい感情】を感じると、レベル×1体の【瘴気で作られた小型の分体】が召喚される。瘴気で作られた小型の分体は壊したい感情を与えた対象を追跡し、攻撃する。

イラスト:純志

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ナイツ・ディンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 気が付けば、デュランダル騎士達の姿はもう無い。物言わぬ骸となった同胞を見下ろしながら、巨大な怪人――『壊人ヴァルニール』は不満そうに唸った。
 ヴァルニールはぎろりとトーポを睨み、そして大きく息を吸い上げる。
「グルルルォォォッ!!」
 猛獣のように吠えた怪人は、トーポへの怒りと共に抑えきれない破壊衝動を爆発させる。拳を振り上げ、ズドン、ズドンとアスファルトを砕きながら歩くその様は、ヒーロー映画の怪獣にも見えるようだった。
 このままヴァルニールを自由に暴れさせれば、トーポの命だけでなく街自体の存亡すら危うい状況となってしまうだろう。
 幸い、トーポは完全に足が竦んだようで逃げられる様子ではないようだ。
 一刻も早く怪人を倒し、街に平和を取り戻さなければ。
カタリナ・エスペランサ
さてと、大詰めだね
まずはダガーに魔力を通して《武器改造》、屠龍用の大太刀に再錬成。
自慢の翼を活かし、サイズの不利を補うように《空中戦》を展開するよ

《第六感+戦闘知識+見切り》をフル活用して敵の動きを先読み、意識の間隙を突いて《目立たない+ものを隠す+迷彩+忍び足》で死角を取り《暗殺》の要領でUC【閃紅散華】を発動。《2回攻撃》も重ねて18倍速で行こう
敵の巨体を足場代わりに絶えず位置取りを調整しながら、急所狙いで舞うように《早業+怪力+鎧砕き》の連撃を叩き込むよ
刃に纏わせた紅雷を通じた《ハッキング+破魔+生命力吸収》で敵UCの強化を剥がしたり大太刀の威力を活かした《部位破壊》が出来れば御の字かな



「さてと、大詰めだね」
 カタリナ・エスペランサは真っ先にヴァルニールの前へと進み出た。猟兵はその手に持ったダガーへ魔力を通し、短剣は龍をも屠る大太刀へと姿を変えていく。
 そして、カタリナは背に生やす自慢の翼を強く羽搏かせた。
「――さあ、付いてこれるかな」
 三、四メートルは裕に超す体躯を見下ろし、カタリナは空を舞う。だがヴァルニールは飛び回る猟兵に苛立つような唸り声を上げ、その体を更に膨張させた。
 最早、それは『怪獣』。拳を振り上げれば、上空を飛行するカタリナに影が落ちる。
「グルォオッ!」
 虫でも叩くかのような、真下への打撃。
 しかし、そんな鈍い攻撃は当たらない。
 ヴァルニールは手ごたえのなさに更に苛立ち巨大な拳を振り回す。一撃一撃が空気を震わせ足元のアスファルトを舞わせるが、闇雲なその攻撃がカタリナを捕らえることはない。彼女は空中を自在に飛び回りながら攻撃を見切り、躱していく。

 何度もそれを繰り返す内、怪人は突如猟兵の姿を見失う。気づかぬうちに潰したかと口元を緩めた――瞬間。
「その目を以て焼き付けよ、その身を以て刻みつけよ。此処に披露仕るは無双の演武」
 響く声にヴァルニールは辺りを見回す。
「――要するに。後悔しても遅いってコト!」
 怪人の背後。死角から飛び出したのは、紅く輝く刃を携えたカタリナの姿。
 彼女が大太刀を一度振るったかと思えば、辺りには無数の斬撃音が響く。彼女はユーベルコード『閃紅散華』を発動し、その速度を格段に上げていた。

 怪人が体を捻ろうとすると同時、カタリナの腕がふっ、と振り抜かれる。
 紅雷を纏う大太刀がその硬い皮膚を裂く。空を舞う石粒が地に付くよりも早く、ヴァルニールの長い尾が根元から切り離された。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニトロ・トリニィ
アドリブ・協力歓迎です!

まさか怪獣が出て来るとは…
流石ヒーローズアースだね!
…おっと!感心している場合じゃなかった。

壊人ヴァルニールだっけ?
あいつを狩るにはかなりの火力が必要になるはず…
僕が出来るのは、メルカバMk.Ⅴ-FXに乗り込んで砲撃するくらいだね。
まぁ、戦車を使ったとしても討伐まではいかないだろう。
《第七感》で攻撃を回避しつつ足や目を狙って戦闘力を削ぐくらいが限界かな?
街に被害を出さない様に、考えながら動かないと!

戦車で怪獣と戦うなんて… まるで映画みたいだ!
まぁ、戦車の中からじゃ分かんないけどね。
誰か僕の活躍を記録しててくれたりしないかな?
そうすれば後で観れるんだけど…


ファルシェ・ユヴェール
怪人と言うより
此処までくると本当に獣のようです
其れにしても
今回に限ってはこのヴィラン、お手柄なのでは
何しろ、これだけ巨大な怪人が破壊衝動のみで暴れ回ったら
被害は今の比では無いでしょう
それが、彼への怒りでこの場に留まっていてくれるのですから……

取り出すはコーラル、血赤珊瑚をひと粒
群れを成す分体を前に『メドゥーサ』を召喚

ああ、念の為……彼女を見ないようお気をつけ下さい、と
猟兵仲間とトーポさんだけに聞こえる声で

その一瞥で分体の群れに石化の魔力を
居並ぶ様子は、何といいましたか……そう、兵馬俑のようですね

流石に巨大な怪人までは簡単に石には成らぬかもしれませんが
鈍れば己の技でも凌ぎ切れましょう


・連携歓迎


バーン・マーディ
(静かにデュランダル騎士達の亡骸に祈りを捧げる騎士

オブビリオンはその存在さえ歪めるか(立ち上がり

破壊の使者よ
その衝動は苦しいだろう
壊さずにいられない本能は何れ己自身も破壊しつくすだろう

故に…此処にて終わらせよう

【オーラ防御】展開

更に…デュランダル騎士招来

【戦闘知識】により敵の動きと攻撃方法から陣形を組む

先陣を切り敵の攻撃を【武器受け】で受け止め

【カウンター・怪力・二回攻撃・吸血・生命力吸収】で反撃と共に抑え込み

周辺にてデュランダル騎士達による猛攻を仕掛ける

攻撃のタイミングは他の猟兵とも合わせ

断末
……お前はもう終わる
だが…もう全てを壊したいという衝動とも別れられる

静かに眠るがいい



 怪人の声が轟く。ダイナマイトを起爆したかのような大音量はビリビリと辺りを震わせて強く響いた。
 トーポが内股で泡を吹きそうになっている一方で、ニトロ・トリニィがなんとも暖気な笑顔でヴァルニールを見上げていた。
「まさか怪獣が出て来るとは……流石ヒーローズアースだね!」
「怪人と言うより、此処までくると本当に獣のようです」
 同じく怪人を見上げるファルシェ・ユヴェール。尾を失い、形としては人に近づいたようにも見えるが、痛みに吠え暴れようとする姿は知性とは程遠い。
「其れにしても……今回に限ってはこのヴィラン、お手柄なのでは」
 ファルシェはトーポの顔を見やった。オブリビオン達の怒りを買った彼がまだ生き残っている事で幸いヴァルニールもこの場に留まっているのだ。
 ――もっともトーポ自身は最早逃げるどころか、恐怖で動けなくなっているようだが。

 情けないヴィランからファルシェが顔を背けると、ヴァルニールの周囲にぽつぽつと黒い何かが生まれているのが見えた。
「……分身?」
 毒々しいオーラを纏う、小さな怪獣。あれが一斉に向かって来れば、トーポを巻き込む事態にもなりかねない。苛立ちの元である彼を殺し、怪人の目的が達成されてしまえば、次は衝動のまま街を破壊しに暴れ出してしまうことは容易に想像がつくだろう。
 ファルシェは笑顔を少し硬くして、懐から一粒の宝石を取り出しユーベルコードを発動した。
「貴方の物語を聴かせて下さい」
 彼の手元に輝くのは血赤珊瑚。傷口から滴る血のような石は、敵の群れの前へ怪物の姿を呼び起こした。
 巨大なヴァルニールに対し、現れたのは一人の女性。
 だが、蛇の蠢く悍ましいその頭部は、怪獣とは別の恐怖を感じさせるものだった。
「……彼女を見ないようお気をつけ下さい」
 ファルシェは周囲の猟兵とトーポに聞こえる程度の声量で警告する。召喚された怪物は、迫り来るヴァルニールの分体を――ただ、『見た』。
 ぴしっ、と静かに。
 ファルシェが呼び出した神話の怪物”メデューサ”はその瞳から石化の魔力を放ち、小さな分体達を無力な石像へと変えてしまった。
「これは……何といいましたか……そう、兵馬俑のようですね」
 見事に並ぶ分体達を眺めて、笑顔を戻したファルシェが呟く。
 直後、彼の耳に何かエンジン音らしきものが響いた。

「ヴァルニールだっけ? あの巨体を狩るには……このくらいしないと!」
 ファルシェが振り向くと、なんと一台の戦車がアスファルトを巻き上げながら進み出てきていた。轟音に紛れてその内から響く声は、先程共にいたニトロのものだろう。
「戦車で怪獣と戦うなんて、まるで映画みたいだ! ……まぁ、戦車の中からじゃ分かんないけどね」
 街の危機にもかかわらず楽し気にそう言って、ニトロは戦車『メルカバMk.Ⅴ-FX』を進ませていく。分体が役に立たなくなったヴァルニールは巨大な拳や足で戦車を潰そうと攻撃するが、ニトロはユーベルコードを発動してその動きを的確に読んでいく。
「攻撃は……当たらなければ良いのさ!」
 『第七感』を駆使して距離を詰めていくニトロ。映像か何かに記録して貰えれば後から活躍を見られるのに、と心の中でぼやいていると、何だか遠くから誰かの視線を感じた気がした。
 そして、ズドン! と戦車の大砲が火を噴く。
 致命傷とはならずとも、近距離から砲撃を受けたヴァルニールは堪らずその体を傾けた。
「グォォォオオッ!!」
 怪人の拳が振り下ろされる。ニトロがレバーを思いっきり傾けてそれを避けると、戦車の中にも伝わる程の地響きと衝撃音がその場を包んだ。

 ヴァルニールの周囲に土煙が濃く舞い上がる。
 視界を奪われたことによる苛立ちと、更なる破壊衝動。再びヴァルニールの周りに黒い瘴気が生まれ始め、石化した同胞を踏み潰しながら次々に分体が現れていった。
「ギャァァーーース!!」
 小さな壊人達が産声を上げる、その先で。
 バーン・マーディは骸と化した嘗ての仲間達――オブリビオン、デュランダル騎士へ祈りを捧げていた。
「オブビリオンはその存在さえ歪めるか」
 記憶も信念も失った彼等を弔い、バーンは立ち上がる。
「破壊の使者よ、その衝動は苦しいだろう。壊さずにいられない本能は何れ己自身も破壊しつくすだろう」
 そして、彼の瞳が静かにヴァルニールを捉えた。
「故に……此処にて終わらせよう」

 バーンは魔剣を振り上げ、ユーベルコードを発動した。
「死して尚共に在りし忠臣たる騎士達よ。我が声に呼応せよ」
 散った騎士達の骸の間――彼等と同じ鎧と剣、槍を携えた騎士が、虚ろにも確かにそこへ現れていた。
「――今が戦いの時だ」
 バーンの声に反応し、騎士の霊は瞬時に隊列を組む。
 そして、バーンは真っ先にヴァルニールの方へと駆けだした。
 分体達は魔力を放ち続けるメデューサによって石化していく。その間を縫いながら怪人の元へバーンが進めば、まだ魔力の掛かっていない分体が一斉に彼を囲んだ。
「……ッ!」
 魔剣で分体の攻撃を受け止め、弾き返して進む。デュランダル騎士達もそれに続き、剣や槍を振るい突き進んで行く。

 分体を捌きながら進撃するバーンへ、ヴァルニール容赦なく拳を振り下ろした。
 ――が、その拳は瞬時に爆炎を上げて後方へと返されていく。
 放たれたのは、ニトロの戦車の砲撃。
 そして大きくよろめいたヴァルニールがもう片腕を振ろうとした瞬間、その体は金縛りにあったかのように一瞬動きを鈍らせる。
 少し離れたファルシェの手元。ユーベルコードの媒体であるコーラルが強く輝き、彼の手が真っ直ぐヴァルニールに向けられていた。
 巨体の石化とまではならずとも、メデューサの魔力は怪人に大きな隙を作る。

 そして、目前に迫っていたバーンが大きく魔剣を振りかぶった。
「……お前はもう終わる。だが……もう全てを壊したいという衝動とも別れられる」
 ――刃は怪人の脳天を真っ二つに切り裂いて。
「静かに眠るがいい」
 ヴァルニールは雷鳴のような断末魔を上げ、遂にその巨躯を崩壊させていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『ダーツバーでのひと時』

POW   :    酒、つまみ、酒、つまみ。お酒が飲めない人はソフトドリンク、トマトジュース、ノンアルカクテルなどで。

SPD   :    ダーツに挑戦。そもそも的に当たるかな?腕前を披露しよう♪

WIZ   :    聞き耳を立てる。バーの雰囲気を楽しむのもまた一興。

イラスト:玉英

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵達の活躍により街には平和が戻っていった。
 そして、コソ泥を働いていたトーポの元へ警官が到着する。
「やっぱりボクと同じ感性……花の美しさが分かる同志はいたんだよ……あ、待って! 映画みたいな大迫力の光景が録れたんだ、せめてそれは取り上げないでくれ!」
 だがそんな叫びも虚しくあっさりとトーポは連行されていった。花もカメラも没収されたようである。
 とはいえ、あの巨大なオブリビオンを引き付けていたというのも事実。それを踏まえれば、彼の罪はある程度軽くなったのかもしれない。



 猟兵達はヒーローズアースへ転送される前に受け取ったチケットを思い出し、そこに書かれていた店へと赴いた。
「いらっしゃいませ……」
 落ち着いた雰囲気の店内。猟兵がチケットを見せれば、飲食の代金は要らないと伝えられる。ここで戦いの疲れを癒すもよし、壁に備えられたダーツを楽しむもよし。
 店主は静かにグラスを磨きながら、猟兵達に微笑みかけていた。
「ごゆっくりどうぞ」
カタリナ・エスペランサ
ん、一件落着だねー☆
良いお店だ、アタシも羽休めとしようか

ダーツは勿論《投擲+スナイパー》技術を活かして9ダート・フィニッシュを狙っていくよ♪
もしギャラリーが居ればお店の雰囲気を壊さない程度に《パフォーマンス》も交えてサービスだね

でも旅芸人としては本業も披露したいな
UC【天下無敵の八方美人】で《コミュ力+礼儀作法》を駆使して少し歌わせてもらえないか店主さんに頼んでみるよ
勿論無理にとは言わないけどね!
許可が貰えたら店の雰囲気に合わせて《目立たない+ブームの仕掛け人+誘惑+歌唱》をBGM代わりに響かせていよう

さて、トーポはこれからどうするんだろうね
美学への熱意がもっと良い形に昇華されたらいいんだけど



「ん、一件落着だねー!」
 カタリナ・エスペランサは店内を見回す。薄ぼんやりとした灯りに目を凝らすと、壁には三枚のダーツ的が掛けられていた。
「良いお店だ、アタシも羽休めとしようか」
 肩の力を抜きながら、カタリナは店の奥へと歩いていく。彼女は早速壁際に置かれた貸出のダーツ矢を手に取ると、床に記されたスローラインの後ろに立って的を見た。
 静かな店内には数人の一般客と思わしき人々の姿。カタリナが矢を構えると同時、彼等は談笑するのを止め彼女へ視線を向ける。
「それじゃ、ちょっとサービスしようかな」
 カタリナは敵の急所を狙い撃つが如く、その視線と矢を一直線に的へ向けた。
 ――ひゅんっ、と小さな鏃が弧を描く。
 見事な放物線の先、ダーツは微かな音を立てて的の内側の円に突き刺さる。得点は『20』のトリプル、最も高い点数だ。
「おお……」
 周囲の客が思わず感嘆のため息を漏らす。だが、カタリナの傍のテーブルに残るダーツに気づくと、途端に店内はざわつき始めた。
 彼女が用意している残りのダーツ。その数は――八本。
 ダーツをたった九本で終わらせる、つまり一投も外さないということ。彼女はパーフェクトゲーム、ナインダーツを狙っているのだ。
 視線が集まる中、カタリナは再び矢を手に取る。
 ひゅん、ひゅんと矢が彼女の手から放たれ、的に刺さっていく。見れば、三本すべてが間違いなく最高得点の枠に刺さっていた。
 その瞬間、わっと拍手が巻き起こる。
 そしてカタリナは少し体を回し、掛けられていた別のダーツ的へと視線を向けた。
「それっ」
 今度はたたたん、とリズミカルに。これまた最高得点をたたき出し、カタリナは最後の的へと体を向けた。
 一本目の矢が再び20のトリプルへ。
 二本目が19のトリプルへ。
 そして、三本目が――12の、ダブルへ。
「て、手品か……!?」
 見事達成されたパーフェクトゲームに、店内は一瞬無音となる。カウンターにいた店主さえも目を丸くして、グラスを磨く手を止めていた。

 そしてカタリナはぽかんとする店主へ駆け寄ると、ユーベルコード『天下無敵の八方美人』を発動して声を掛ける。
「店主さん、少し歌わせてもらってもいいかな?」
 整った姿勢と耳馴染みの良い声で一礼するカタリナに、店主ははっとしながら頷いた。
「……見事な腕前で御座いました。是非、更に盛り上げて下さいませ」

 カタリナはすうっと息を吸い込む。店内の雰囲気に合わせて静かに、そして話の弾む客達をぼんやりと照らすように、歌を歌う。
 旅芸人としての本領を発揮しながら、カタリナは繁華街での戦闘を頭に過ぎらせていた。あのヴィランはこれから先、罪を償い終えた後どうするのだろうか。オブリビオン達には冷ややかな目で見られていたあの熱意も、良い形に昇華されれば――あるいは。
 そんな事を思いながら、猟兵はダーツバーのひとときを楽しむのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニトロ・トリニィ
SPDを選択

雰囲気が良い店だね。
ここでトーポが撮ってくれた僕達の活躍を観れれば良かったんだけど…
没収されてしまっては仕方が無いね…
ここは気分転換にダーツに挑戦かな?
やった事が無いけれど、面白そうだしやってみよう!
何事もチャレンジあるのみさ!

僕もこう見えて狙撃手の端くれだからね。
的を狙うのは得意なんだ。
投擲は余り得意じゃ無いんだけど… そこは狙撃手としての感覚で補って投げよう!
まぁ、もし外れたとしても楽しめれば十分だね!

あれ?よく考えたみたら、僕は戦車を動かす為に中に入っていた…
つまり、トーポの記録映像が観れたとしてもそこに写っているのは戦車だけ…
せめて顔だけでも出しておけば良かったかな…


ファルシェ・ユヴェール
先に入った猟兵の神技が披露される間、
カウンターでのんびりカクテルでも傾けつつ見物
それにしても凄い腕前ですね
ナインダーツ成功は初めて見ました

…ちなみに
私は投擲系スキルは一切ありませんし
戦場での立ち回りも接近戦、或いは召喚術
飛び道具は一切持っていません

これがどういう事かと言えば

ああ、いえ
私は見ているだけで充分ですよ
今日は派手に立ち回った後なのでゆっくりしたいのです

しかしまあ折角初めて訪れたダーツバーですし
ゲームはせず記念に一投だけ戯れを

(狙っているつもりのボードではなく後ろのボードのブルに飛ぶ)


最初から狙ってたんですと言わんばかりににっこりと誤魔化しつつ
(トーポさんに見られなくてよかったなどと)



「ここでトーポが撮ってくれた僕達の活躍を観れれば良かったんだけど、没収されてしまっては仕方が無いね……」
 静かで落ち着いた雰囲気の店内で、あの騎士や怪獣と戦った映像を流せたならきっと、映画のような大迫力が味わえたことだろう。
 ヴィランが録っていた映像が没収されてしまったことを心の中で惜しみながら、ニトロ・トリニィは先の猟兵に続いてダーツ矢を手に取る。
 彼にダーツの経験はないが、興味と意欲はあるようだ。
「何事もチャレンジあるのみさ!」

 オブリビオンとの戦闘でも見事な狙撃を披露していたニトロ。見様見真似でスローラインへ立ち的の一つに狙いを定めると、彼は一直線に矢を放った。
 ――トンッ。
 狙撃手の感覚を生かし弾丸のように的の中央へ命中させたニトロは、当たったと一瞬目を輝かせる。しかし、カウンターの店主はこくこくと頷きながらもニトロに語りかけた。
「お見事……ですが、中心はブル。50点でございます。もし狙えるのであれば――最高得点、如何です?」
 店主は手元から予備の的を取り出し、的の柄の内側の枠を指さす。よく見れば、先の猟兵が狙っていたのもその位置だ。
「僕もこう見えて狙撃手の端くれだからね。それじゃ……」
 ニトロの手が矢を摘まむ。狙うは、最高得点。
 店主が手を止め見つめる中、ニトロはひゅんと腕を振る。

 その矢は、20のトリプルのど真ん中へと突き刺さった。

「おお……」
 店主はニトロに向かってぱち、ぱちとゆっくり手を叩く。すると周りの客も口笛を吹いたり祝ったり、店内を少し賑わせていた。
「これも、ダーツバーの楽しみで御座います。興味が持てましたら、是非今後もご贔屓に」

 静かな拍手と歓声に包まれニトロが微笑むと、店内にいた客の一人がふと携帯を弄り始める。
「お、これ昼の怪獣事件じゃね?」
「どれどれ?」
 途端にがやがやと集まる客。ニトロもそっと覗き込むと、そこには大きな怪獣――壊人ヴァルニールの姿が映っていた。
 どうやらトーポの没収された映像の他にも撮影者がいたらしく、別視点からの映像が公開されていたのだった。
「すっ、すげー……この戦車とか実際に見たかったなぁ」
 ――そう、視点が変わっても、ニトロは戦車の中。
「せめて顔だけでも出しておけば良かったかな……」
 ちょっぴり後悔しながらニトロがぼそっと呟き、映像の続きを眺める。ニトロの言葉に気づいた客が一瞬彼を二度見したが、その真相に気づくのはまだまだ先の話かもしれない。



 見事な神業で猟兵達が店内を盛り上げる一方、ファルシェ・ユヴェールは店主のいるカウンターにてゆっくりとダーツを観戦していた。
「それにしても凄い腕前ですね。ナインダーツ成功は初めて見ました」
「そうですね、プロでも中々見られません」
 店主は頷き、店内で歌う猟兵や客と共に映像を眺める猟兵に視線を移し、そしてファルシェの顔を見て問う。
「……貴方も投げてみませんか?」
「ああ、いえ。私は見ているだけで充分ですよ」
 カクテルを傾けながらいつもの笑顔で返すファルシェ。だが、それでも店主の瞳は微かに期待の光を帯びている。
 ファルシェもチケットを持ってきた猟兵――つまり、先の二人と同じような腕前を持っているのでは、と。
 だが、ファルシェに狙撃や投擲の心得はない。物理的な接近戦や召喚術を使っての戦闘を主とする彼は、飛び道具の類を扱う機会がないのだ。
 ファルシェは慇懃な笑顔で断りながら、手に持った翡翠色のカクテルを揺らす。
「今日は派手に立ち回った後なのでゆっくりしたいのです」
「そうですか……」
 店主は少し残念そうに目を伏せる。ここがダーツバーだからといって、利用客にダーツを強制する理由はない。だが、バーを経営しているからには店主はかなりの愛好家であり、良いプレイを見たいのは当然だろう。

 ファルシェは店主の期待をなんとなく感じながら、近くにあったダーツ矢に視線を移した。
「まあ折角初めて訪れたダーツバーですし……記念に、一投だけ」
 そんな呟きの瞬間、店主の顔は少しばかり明るくなる。
 ファルシェはカウンターに座ったまま一番近くの的に狙いを定めると、軽くふっと矢を放った。

 ――が、その矢はあらぬ方向へと飛んでいく。

「えっ?」
 店主はぽかんとして、ファルシェの正面――ではなく、どういうわけか彼の背後にある的のど真ん中を見る。ある意味見事に中心に突き刺さった矢とファルシェを交互に見て、店主はおそるおそる口を開いた。
「あ、えーと……手品、ですか?」
 ファルシェはにっこりと、誤魔化すような笑顔を浮かべて店主の顔を見る。
 さも最初からこれを狙っていたんですよ、と言わんばかりのファルシェだが、そんな笑顔に反して彼は内心冷や汗をかいていた。
 あのヴィランのきらきらとした眼差しを思い出しながら、ファルシェは彼にこの光景を見られなくて良かった、などと心の中で呟くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月02日


挿絵イラスト