首なしライダーの憂鬱
●我思う、されど『我』は誰?
ライダースーツに身を包む一団が、深夜のハイウェイを我が物顔で疾走する。
しかし、言葉のあやとは裏腹に、バイクを乗りこなす者達に顔と呼べるものはない。
代わりに頭があるはずの部位から、燃え盛る青い炎が吹き出し、夜風になびくばかり。
そして空いた手に携えるは、ゆがんだ鉄パイプや金属バット、角材と物々しいラインナップ。
愚連隊よろしく、アスファルトを得物でなでれば火花が散る。
怪しく燃える蒼炎と危険な香りを放つ火花は、前方のトラックめがけて急接近。
――車体を力任せに壊し始めた!
ドン! ドン、ドォン! ガッ、バコォン!! ……ドゴォッッ!!
暴力を振るう集団からただ一人、離れた位置から追走するライダーがいた。
その姿は彼らと同じ姿……けれど、彼には解らないのだ。
(「この『行為』になんの意味が?」)
彼は思うのだ――同じ姿をした『自分』はなんなのだろう?
●ミスター・ライド
「はいはい皆さーん、UDCアースで『UDC-P』が紛れ込んだ集団の出現を予知しましたよ」
手をたたいて注目を集めると、李・蘭玲(老巧なる狂拳・f07136)は猟兵達に新たな依頼を伝える。
「『UDC-P』とは、シャーマンズゴーストを筆頭に、人類へ好意的なUDCです。何故このような精神性を持つかは解明されていませんが、オブリビオン化に伴う『破壊の意思』を持っていないことが最大の特徴です」
今回、発見された一体も同様だと、事件現場の地図を広げていく。
「場所は米国ネブラスカ州の『ルート80』と呼ばれるハイウェイ内です。深夜3時頃、輸送トラックが不自然なほど襲われると噂が出ていまして。組織から調査団を向かわせたのですが……肝心の調査団が襲撃されたのですよね」
いやあ困った困った、と肩を落とす老婆だが言うほど困っているようには……。
だが、保護対象がいると判明した以上、組織も本腰を入れる必要がある。
「まずは日中、ルート80周辺で情報を集めてみましょう。サービスエリアで聞き込みは可能ですし、周辺を調べる際も点検業者に扮する協力者が組織から派遣されます」
言葉の壁も「必要なら組織から通訳が来てくれる」とのこと。
深夜3時頃になったら件のUDCを撃破し、UDC-Pの保護が始まる。
「事件を起こしているのは『首なしライダー』という都市伝説です。彼らの目的、というか襲撃理由ですが……一方的に暴力を振るっている状況を楽しんでいるだけです。野犬がじゃれついている、という所でしょうか」
その辺のチンピラやタチの悪い酔っ払いと大差ない、と蘭玲は言い切った。
だからこそ、その中のUDC-Pは危険な状態にある。
「暴力を振るうだけの日々を、UDC-Pは理解できなかったのでしょう。UDC-Pは襲撃の際、後方から仲間を見ているだけですが……もし、仲間が『彼』の行動に気づいたら、仲間もまた『彼』を理解できずに殺してしまうでしょう」
理解しがたい相手とは、えてして不気味に映るものだ。
不気味な存在は、たとえ同じ種族をしていても、仲間の輪に加わることはできない。
新たなコミュニティを求めるしかなくなる……それは人類も同じこと。
「悪さするUDCも人類にとって脅威でしかありません。眠くなる時間ですが、気を引き締めてこなしてくださいね」
組織はこの首なしライダーを『Mr.Ride(ミスターライド)』と仮称。
「このライドさん、集団から数メートル離れて行動し、攻撃性がないため誤って攻撃することはないです」
問題は彼についての情報がない。
組織としては生態や構造を調査し、人類との共同生活を可能にするための、詳細データが欲しいのだ。
「まず猟兵の皆さんを頼りにすると思いますので、彼との信頼関係を築いてデータを集めてくださいね」
木乃
木乃です。
今回はUDCアースでUDC-Pの保護に向かって頂きます。
PはPeacefulのP!
第一章 ルート80の情報集め。
日中の間に、ネブラスカ州のルート80周辺情報を探りましょう。
高速道路やサービスエリア内へ向かう際は、現地組織の協力者がサポートします。
道路の整備業者、通訳、運転手など協力してくださいますので、
単独での行動もご安心ください。
第二章 首なしライダー戦。
首なしライダーの出現する午前3時、ルート80で戦闘します。
どのように敵の注意を引くか、
またUDC-Pを守りながら戦うかの作戦が必要です。
第三章 UDC-Pとの会合。
組織には保護したUDC-Pの生態データが足りていません。
UDC-Pと接触し、信頼関係を築きながら、彼のことを調べていきましょう。
ちなみ組織側は仮称として『Mr.Ride』と呼んでいます。
第一章のリプレイ執筆開始は『4月23日(木) 21:00~適時』を予定しております。
以上です!
それでは皆さんのご参加をお待ちしております。
第1章 冒険
『失踪した補給車』
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POW : 補給車が失踪した現場にて地道に痕跡探し。
SPD : 補給車が通っていたルートを辿りながら痕跡探し。
WIZ : 現場近くやルート上周辺の人たち、当時のUDC関係者たちに聞き込み。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
(断章公開は4月21日(火) 18:00頃(予定)です)
(第一章のリプレイ執筆開始は『4月23日(木) 21:00~適時』を予定しております。
よろしくお願いいたします。)
●ルート80の噂
アメリカ時間、午前10時頃。
合衆国中央部に位置するネブラスカ州に転送された猟兵は、州都リンカーンで協力者と合流した。
「待っていたわよ猟兵のみんな! 今回のUDC-P調査班リーダーでUDC生態研究員のジェシカ・ロビンよ。高速道路に入る車に、変装用の作業服。通訳もばっちり用意してきたから安心してね?」
まぶしい笑顔を見せるジェシカにルート80の基本情報を尋ねた、ジェシカは小脇に抱えていたタブレット端末を指でなぞる。
「ルート80は東のアイオワ州から西のコロラド州へ、ネブラスカ州を横断するように伸びた高速道路なの。国内でも特に農牧業が盛んで、作物を輸送するための生命線でもあるわね」
ジェシカは慣れた手つきで操作して画面をこちらに向ける。
航空写真では現在地のリンカーン市と東の州境にあるオマハ市を除けば、緑に囲まれた街がほとんどだ。
彼女の言う通り、高速道路に沿って街が点在し、全体的にのどかな土地に感じられる。
ところで前回の調査結果はどうだったのだろう?
「前回ね。噂通り、UDCの群れは深夜3時に現れるみたい。怪我人は出なかったけど、調査車両はボッコボコに滅多打ちされて廃車寸前よ……でも、ドライブレコーダーに後方でなにもしないUDCが見えたのは収穫だったわ」
なにもしないUDC――例のUDC-P『Mr. Ride』のことだろう。
しかし、目撃者がどこに居るのか解らないのに、どうやって調査すれば……。
「確かに目撃者は居るかどうか怪しいけど、深夜なら通る人が限られるじゃない?」
例えば、同業者の『トラックの運転手』、噂なら『サービスエリアのスタッフ』も耳にしているだろう。
高速道路の整備に訪れる『点検業者』なら、不審な痕跡を確認しているかもしれない。
それと、『前回の調査員』も同行しているそうなので、聞きたいことがあれば聞いておいたほうがよさそうだ。
「現場を見たい小さい猟兵さんも、大人の私たちが『取材に来た』って言えば現地調査しやすくなるはずよ。安心してちょうだいね!」
すでに架空雑誌の名刺を用意しているあたり、サポートが充実していると言うべきか。
質問の内容は「1個か2個、考えておいてもらえると嬉しい」という。
重複したとしても、裏付けとなるのでドンドン聞いていこう。
さっそく首なしライダーの噂を調べるべく、猟兵はルート80へ乗り込む――。
蛇塚・レモン
<WIZ>
アメリカだーっ!
あたい、海外旅行の経験が殆どないんだよね
仕事とはいえテンション爆アゲ確定的なっ?
基本はあたい自身で情報収集するよ
言葉の壁は、衣服と左目に宿った蛇神様の加護(世界知識+催眠術)を試す
多少の日常英会話くらいは勉強(学習力)してきたからね~っ!
駄目なら通訳さんにおまかせ
あたいは同業者の『トラックの運転手』と『サービスエリアのスタッフ』に聞き込みをするよ
「その暴走集団が出現する日って、何か予兆等の規則性がありませんか?」
曜日や特定の日付とか日数の間隔、あるいは天候などの条件があるのかな?
「あと、襲われたトラックの詳細も!」
特定の積荷に誘われている可能性も?
車体の色も関係あり?
右も横文字。左も横文字。コンビニ、フードコート、果てはトイレまで。
どこもかしこも英語! 英語! ところによりスペイン語と中国語!
「っ~~~~……アメリカだーっ!」
両手をあげて蛇塚・レモン(白き蛇神オロチヒメの黄金に輝く愛娘・f05152)は喜びを全身で表現する。
ヒーローズアースのアメリカはコミックや映画など、フィクションの中にいる印象が強い。
そういう意味では、レモンにとってリアルなアメリカはこちらなのだろう。
「あたい、海外旅行ってほとんど経験ないんだよねっ! 今日も仕事で来てるって解ってるんだけどさ~っ」
頭では解っていても、抑えきれないのが感動というもの!
「はは、助手は必要かい?」
レモンの楽しそうな様子を見ていた運転手に、
「大丈夫っ!」と元気に応えて、レモンはサービスエリアを駆けだした。
(「情報ならサービスエリア内のスタッフさんか同業者が詳しいかな……あ、ここって本場のハンバーガーはあるのかなっ?」)
これも聞き込みのため! と、やってきたのはフードコート。
テーブル席には立ち寄った人々でごった返し、賑やかな空気で包まれた光景は世界共通らしい。
派手な装飾のメニュー看板には、巨大なドリンクやジャンクフードがズラリ。
恐るべきアメリカンサイズに『遠近感が狂っているのではないか?』と己が目を疑ってしまうほど……おかしいところはない、間違いなく実物サイズだ。
「うわっ、ほんとに合成着色料たっぷりな飲み物も売ってるんだっ!?」
隣の写真に載ったブルーとビビッドピンクのマーブルシェイクには、レモンも驚いて目を丸くする。
試してみたい気持ちはあるものの、この後の予定も考えると……なくなく断念してレジカウンターへ。
やってきた少女にカウンター奥で小太りな男が愛想笑いを浮かべる。
「え~っと、これとこれのMサイズっ!」
メニューを指差している途中、左目が琥珀から深紅に変わっていく。
衣服と左目に宿す蛇神様の加護が機能しているか、店員の顔をレモンはチラと一瞥。
「7ドルと50セントだ、ちょいと待ちな」
(「よっし、大丈夫そうだねっ! 英会話も勉強しておいてよかった~っ!」
通じたことに心の中で喜んでいると、店員が注文の品をトレイに集め始めている。
目的を思い出し、レモンは店員を「聞きたいことがあるんですけどっ」と引き留め、
「暴走集団が出るって噂を聞いたんですよね。それで暴走集団が出現する日って、なにか予兆等の規則性がありませんか?」
例えば曜日、特定の日付、日数の間隔、天候など――なにか条件があるのか。
レモンの問いに店員の男はふっくらした顔をしかめ、
「噂は聞いたことあるけど、悪ガキ連中が出てくる『予兆』って……そんなの解るわけないだろ」
一般人は集団の正体が都市伝説だと知らない。暴力沙汰なら不良かギャングの示威行為かと思うだろう。
『現実の問題』と『奇怪な前兆』が繋がっていると考えつく者は早々いない。
「じゃあ襲われたトラックの共通点とかっ」
なおも質問を続けるレモンに男の顔色が少し変わった。
「なんだったかなぁ? 追加の注文があったら思い出すかも」
意地の悪い要求に今度はレモンが顔色を変える。
すでに手元には、日本規格でLサイズ相当のバーガーセット! そして後ろには次の客が凝視している気配がヒシヒシと。
(「次のお客さんも来てるし、意地張ってこの人にこだわらなくってもいいよね!」)
会計を済ませたレモンは早めの昼食を優先するのだった。
――ランチを終えてレモンは駐車場へ。
「今度はトラックの運転手さんに聞き込みっ、行くよっ!」
トラックだけでも大小さまざま、配送用の小型車から建材運搬用の大型車両まで。
片っ端から聞こうと数人で空振ったレモンが、運転席で休憩中の男性を尋ねたときだ。いかつい中年男は「同僚が被害に遭った」という。
「詳しく教えてもらいたいんですけどっ! お仕事とか、積み荷とか……車体の色なんかもっ!」
前のめりになるレモンに気押されながらも、男は無精ひげを撫でつけ記憶を探り始め、
「中身は工事用の土嚢(どのう)だったかな、これと同じ大型トラックに詰め込んでな。色も同じだと思うけど……」
なるほど、とメモにとりつつ、レモンは店員と同じ質問を投げかけた。
男も不思議そうな顔をしてから「前触れが解ってたらルートを変えたんだがね」と困ったように笑う。
(「同じ車なら車体はシルバーかな? 2トントラックより大きいし、運転中に周囲を確かめるのは難しそう……もしかして『それ』が狙い?」)
グリモア猟兵はこう言っていた。
『輸送トラックが不自然なほど襲われる』と――調査団もUDCを出現させるため同じ条件に近づけただろう。
UDCはロングトラックを狙って襲撃し、一方的に暴力を振るえる状況を楽しんでいる……こざかしい手口に頭痛を覚えながら、レモンは情報の正確性を求めて、次のトラックへ聞き込みに向かう。
成功
🔵🔵🔴
水鏡・怜悧
詠唱改変省略可
人格:ロキ
「首なしライダー……デュラハンほど悪質ではないのですね。驚異には違いありませんが」
相手は誘き出せそうですので、数やどちらから来るかを伺いたいです。
深夜3時となると目撃者も少ないでしょうし、昼にも通りかかる方となると……長距離バスを探して、運転手さんに声をかけて聞き込みをしましょう。アメリカならあまり子供だからとも言われないでしょう。UCによる情報収集で集中して必要な情報を聞き出していきます。
「情報のお礼は…マッサージでよろしいでしょうか」
これでも外科医の経験がありますので、人体構造は把握しています。UCで医術を強化し、足や腰を中心に疲れがとれるようマッサージします
頭部をもたぬ都市伝説は海外にも数多く存在する。
スリーピー・ホロウ。デュラハン。イゴールナク……。
彼らは共通して『頭のない』『厄災の運び手』であり、近代の都市伝説、首なしライダーもまた同類の存在だった。
「首なしライダー……デュラハンほど悪質ではないのですね」
水鏡・怜悧(ヒトを目指す者・f21278)の姿を借りた『ロキ』は風に髪をなでられながら呟いた。なんにせよ脅威には違いない。
――聞き込みを始める前にロキはパーキング内を観察する。
青々とした緑が多い駐車区域には、日本と違う文化を感じる……ふと出入口に目を向けた。
(「相手は誘き出せそうですので……どの方面から現れるか、それと数も知りたいですね」)
襲撃現場は深夜3時の高速道路……被害者は出ても、その現場を目撃している人は少ないと思われる。
となると、昼にも通りかかる仕事といえば――。
「長距離バス、か。これだけ広い国なら長時間のバス移動は考えられます」
ロキが大型車両用のパーキングエリアに向かうと、バスも数台が休憩時間をとっていた。
17歳となれば、アメリカでの成人年齢とひとつ違い。子供扱いされることはないはず。
バスに寄りかかって缶コーヒーをあおる運転手を見つけ、ロキは声をかけた。
「――深夜3時に現れるバイカーグループ? そんな噂が出てるらしい、とは聞いた気がするけど」
白肌の青年は顔をしかめ、噂自体も眉唾なものと感じているようだ。
「同僚の方から聞いた話で構いません。現れるのは西からか東からか、集団の人数もご存じでしたら教えてもらえませんか?」
相手の心を見透かすほど精神を集中させる。
視線も呼吸も発汗も鼓動も、全ての挙動。全ての反応はお見通しだというように――。
「噂があるって聞いただけで詳しくは知らないよ……ふあぁ」
大あくびを漏らす青年はコーヒーを飲みきり、チラと腕時計に視線を落とす。
男は顔色が少し悪い……噂に興味がない、というより眠たげな印象が強い。
「目撃した運転手も、ですか?」
「悪いけど俺ね、一昨日ミネソタで客を乗せて、昨夜アイオワで降ろしたの。で、すぐ仮眠をとって今朝また仕事。夜勤の同僚は入れ替わりで休んじゃって、話す時間もなかったんだわ」
バスでの長距離運行は、客席の下に仮眠室を設けた車両を2人体制で運行することもある。
居眠り運転など過労による事故を防ぐためだ。
それだけ体力と集中力を消耗する仕事で、安心して利用する為の安全性が求められる、と言えよう。
もし夜間から日中まで継続勤務している者、寝ずに過ごしている者がいるとしたら、労働環境が劣悪か当人が健康管理を怠っているということ。
(「確かに、運転中に居眠りしたら大惨事になりますよね……」)
ロキは気づいた。
日勤、夜勤で発生する『生活リズムのズレ』によって、バス会社へ噂があまり広まっていないのだ。
ひとまず『長距離バスの運転手から有力情報は聞けない』と解っただけでもよかった。
「ありがとうございます。情報のお礼といってはなんですが」
「お礼?」
「マッサージでよろしいでしょうか?」
ロキとしては医術の心得があり、対する青年も疲労が見てとれる。
貴重な休憩時間を割いてもらったのだから、返礼をしたいという気遣いが――。
「……あー! そろそろ出発する時間だわぁ~、俺もう行かないと! まあこの辺りで悪さしてるなら近くになんか残ってるんじゃない? それじゃ!」
伝わるより早く、大げさな身振り手振りをみせて、男は足早にバス内へ戻っていく。
一方的に話を打ち切られ、ロキは唖然として固まっていた。
……もしも、だ。
道を尋ねられた際の返礼に『マッサージ』を提示されたら……70代男性なら問答無用でしょっ引かれ、最寄りの警察署で一晩お世話になるだろう。
UDCアースが現代の地球であることを忘れてはいけない……他意がなくても誤解が生ずることはある。
――思考が再び動き始めたロキは『出発時間なら仕方ない』と思い直し、次へ向かった。
苦戦
🔵🔴🔴
鏡島・嵐
疑問を持てるってのは実はすげえコトなんだよな。何かを変える糸口になったり、新しいものを見出したり作り出せたりさ。
まあ「自分は何なのか」って疑問は、人によっちゃ持て余しそうな気もすっけど。
まずは現場百回ってヤツで、昼の間にルート80を自分の足で見て回る。
《残されし十二番目の贈り物》も使って、僅かな手がかりも見逃さねえよう〈第六感〉をフルに働かせて探索。
あとは、聞き込み調査。
夜中にトラックが襲われるって噂は広がってるだろうし、遠巻きに現場を目撃した人は居るかもな。
“普通に襲撃している”ライダー連中には、連中自身も自覚してねえ“癖”があるかもしれねえし、それがわかればいろいろ有利に事を運べるかもだ。
自分の常識に対して疑問を持つ。
それは想像もつかないほど難しいことではないか?
車の後部座席で流れる景色を見つめながら、鏡島・嵐(星読みの渡り鳥・f03812)は、UDC-Pに対して素直に感心していた。
(「疑問を持てるってのは、実はすげえコトなんだよな……何かを変える糸口になったり、新しいものを見出したり作り出せたり」)
自分が何者なのか? ――それは人によっては持て余してしまうような、哲学的な疑問ではあるが。
「なにか気になるものはあった?」
ハンドルを握る赤髪の運転手が嵐に尋ねる。
州都リンカーンを発ち、中央寄りに位置する都市カーニーを越えたが、嵐の直感にピンとくるモノはいまだに見えていない。
ユーベルコードを使った上で、この状態だ。ここまでは本当に手がかりは出ていないのだろう。
「ルート80の終点ってどの辺り?」
「ビッグスプリングスっていう街の西よ、リンカーンから400kmくらいだったかしら」
400km……日本国内なら『東京から大阪の直線距離』に相当する。
嵐は改めてアメリカという国の広大さに驚かされつつ、窓越しに目下を見下ろす。
――そんな雑談を断続しながら十数分。
道路に妙な黒い跡がいくつも見えるようになった。
(「なんだあれ? なにか擦ったような跡にも見えっけど……」)
「なあ! この辺で少し停めて欲しいんだけどできっか?」
要請を受けて車を路肩に寄せる。
車を降りると、運転手は「車をメンテナンスするフリをしているから」と車のボンネットを開いて、整備しはじめた。
今のうちに確認してこようと、嵐は痕跡を注視してしゃがみ込む。
(「焦げた跡? しかも線状に何本もついてやがるし……あんまし、砂も被ってねえような」)
タイヤのスリップ跡ではないし、最近つけられた痕跡に違いない。
急いで嵐は車に戻ると、
「この近くに降りられる場所あっか? 遠巻きに現場を目撃した人を探したいんだ」
噂が広がっているなら、この付近にいる者が見ていてもおかしくはない。
運転手も嵐の着眼点に合点がいったように、何度も大きく頷いた。
「一般人に解らないよう対処しなきゃ、って考えていたけれど……被害を受けないところにいた人は避ける必要ないものね」
ボンネットを閉じると、最寄りのインターチェンジから近くの街へと進路を変える。
辿り着いた先は、数ヘクタールに渡る畑に囲まれた小さな街だった。
「夜中の3時に出るって言う連中かぁ? ほんっとイイ迷惑してるぜ、こっちはよぉ」
憎々しげにこぼす頑固そうな老人は嵐達の問いかけにぼやきだす。
「迷惑って?」
「『騒音』だよ、そ・う・お・ん! 連中ときたらギャリギャリギャリひっかくような音を立てたと思えば、今度はドンガンドンガンと……聞けばトラックをボコボコに叩き壊してるって話じゃないか!? こっちは寝てるってのに」
「えーと、銃声とかは――」
「ないない、銃の音は! そんなことよりだ――」
やれ「仕事中の大人の邪魔をしてからに」やれ「これだから若いモンには困ったもんだ」と。ひとしきり鬱憤を吐き出して老父は満足したらしい。
老父は「あんたらも気をつけて帰んな!」と言い残して、立ち去っていく後ろ姿を見送り二人してこっそり溜め息をこぼす。
「アメリカで『銃を使わない』のは逆に目立つよな、それに地面を擦るっつうかひっかく音? の後にトラックを叩く音……鈍器でも持ってんのか」
『相手に飛び道具がない』という情報は、戦闘の際にアドバンテージとなり得る。
細かい部分がまだ気になるところだが、
「後はカーニーからどこまで痕が残ってるか確かめて、他の猟兵にも伝えてもらうよう連絡しないと……だな」
相手の活動範囲がどこまでか、まだ確認し終わっていない。
十分な手応えを感じながら、嵐は残りの痕跡を探して再び高速道路へ向かった。
大成功
🔵🔵🔵
エスタシュ・ロックドア
これは仕事
決してアメリカの大地を楽しみに来たわけじゃなく、
シンディーちゃんを【メカニック】技能で完璧にメンテしたのも仕事のためなんだ
【騎乗】
よっしゃ走るぜぇ!
あ、ジェシカちゃん国際免許の手配よろしく
英語は【世界知識】で喋るわ
前回の調査員からできるだけ正確な襲撃地点を聞き出しておきたい
あとドラレコも自分で見ておきてぇ
んで実際自分で走ってその時点で気づくことがねぇか調査
ライダーの【第六感】が冴えてくれりゃ良いんだが
そのあと一旦サービスエリアによって休憩しつつ、
こっそり『金剛嘴烏』発動
子分のカラスどもに上からじっくり精査させるぜ
報告は【動物と話す】で聞いちゃる
ちゃんとフツーのカラスらしく行動しろよ
ティアドロップ型のサングラスをかけ、ご機嫌な様子の羅刹が一人。
いわく。これは仕事――決して、俺は決して、アメリカの大地を楽しみに来たわけじゃない。
愛車のシンディーちゃんを完璧にメンテナンスしてきたのも、全て仕事のため!
遊び気分ではいけないと、己に言い聞かせるエスタシュ・ロックドア(碧眼の大鴉・f01818)
国際免許証を受け取る際、ジェシカが「必要なら警察官の記憶も消すよ?」と笑顔で言っていた辺り、銃社会がまかり通る国は半端ない。
英語力は世界知識で補っていく。活動は気を引き締めていかなければ……!
「――前回の調査員ってお前か?」
エスタシュは自身と同じくらい大柄な男に声をかけると、男は小さく頷いた。
前回の調査で解っていることもいくつかあるはず。エスタシュは調査員の話を伺った。
「どの辺で襲撃されたかまだ覚えてるよな、自分で見ておきてぇんだ」
「では地図を見ながら説明を」
寡黙な男は紙の州地図を広げ、シャーペンの先を押し当てる。
「カーニーを越えた辺りで、複数のエンジン音と何かを擦る音が聞こえ始めた。あれは軽金属を引きずる音に似ていて、それで」
ペン先で地図を小突くと、黒い線が『レキシントン』という街に伸びていく。
「30kmほどか。この近くで振り切れた……正確には、向こうが後退していった」
抵抗もままならない状況を思い出してか「生きた心地がしなかった」と男は溜め息まじりにこぼす。
証言はこれでいいとして、UDC-P発見の決定打となったドライブレコーダー。エスタシュはその映像が気になっていた。
ドライブレコーダーについて確認すると「……では、こちらに。映像自体が極秘情報でもあるので」と傍にあるミニバンの後部座席へ促された。
車内で厳重に封されていたメモリーカードをノートパソコンへ挿入し、ほどなくして映像がディスプレイに映され、当時の様子が見え始めた。
――撮影位置は車の後部下のようだ。音声はなく、モノクロ映像だけが流れた。
断続的に屋外灯が離れていくシーンが続き……不意に、遠くでポツポツと一つ目らしきものが現れる。
(「これは、バイクのライトか」)
ライトの並びはバラバラで、ゆらゆらと動く姿は火の玉のよう。威嚇するように火花を散らしながら一定の距離を保つ……獲物を前に舌なめずりする獣じみた動きだ。
また無音のシーンが続くかと思った――直後。 画面が白く塗り潰される!!
「接近された際、カメラにライトが当たったようで……襲撃したUDCの姿は、ここに薄く」
一時停止して数秒前に戻すと、青い炎が頭を包んだライダーがうっすら映っていた。
映像を再生し……復帰した映像は激しく揺れ動いていた。 攻撃を回避している最中か。
激しい蛇行に合わせて動くせいで、状況は非常に解りにくい……間隔を保ったまま、ライトとひとつの蒼炎が燃え続けている以外は。
「これを解析した結果、この個体を同種の『UDC-P』と判断した次第だ」
情報量は期待外れだったと思うが、と男は眉をハの字にさせるが、
「行ってみりゃ解る、てめぇで痕跡は残してってるみたいだしよ」
バシッと景気づけに背中を叩いてやると、エスタシュは外で待たせる愛しのジェシーちゃんとルート80を目指す。
仕事と解ってはいても、思いっきり風を切る爽快感に、疼くバイク乗りのソウルは抑えきれなかった――!
「よっしゃ走るぜぇ!」
上機嫌にマフラーを吹かして疾駆する姿は、さながらさすらいのバイク乗り。
目的地までの2時間ちょっとの疾走ぐらいでは、エスタシュのライダー魂が鎮まるわけがない。
横文字で『カーニー』と書かれたルート標識を一瞥し、僅かに速度を緩めた。
(「カーニーを越えて、レキシントンだったか?」)
意識を集中させておかしなものがないか、目の前に広がる道々にエスタシュは意識を集中させ、
「以て開くは獄ノ門。――出番だぜ野郎ども、仕事に掛かれ」
37羽の烏を空へ放つ――それから十数分後。
サービスエリア内に設置された、人気のない自動販売機の傍ら。エスタシュが現地の甘ったるい炭酸ジュースを飲み下していると、数羽の烏が足元に集まる。
「カァ、カァカァ」
「……あの妙な黒い線、やっぱ焦げ跡か。なら金属バットで擦った跡で違いねぇな」
目を向けずに烏の鳴き声だけ耳にすると、エスタシュは独りごちた。
勝手に突っかかって粋がり始める――確かにタチの悪い酔っ払いと同類だ。
「カァー?」
律儀に正面へ回りこむ烏達に「ちゃんとフツーのカラスらしく行動しろ」と忠告しつつ、新たな情報を探すよう次なる指示を受け、烏は再び飛び立っていく。
(「どこで仮眠するか、そろそろ考えたほうがいいか?」)
カラになった缶をゴミ箱に突っ込み、もう少し働いてくるかとエスタシュも休憩を切り上げた。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変・絡み大歓迎】
いよっしゃぁ初アメリカ!
ヒーローズアースじゃおなじみだけど、
UDCアースだと初めてなんだよなー。
こんだけ広いハイウェイを走れるなんて、サイコーだぜ!
英語力にゃ自信はないけど、
持ち前の『コミュ力』と【超感覚探知】のテレパスで
なんとかドライバーのオッちゃん達と打ち解けようじゃないのさ。
その上で噂話から不気味なライダー共について
きっちりと『情報収集』する。
アタシも見てくれこそしょぼいバイクだろうけど、
ライダーの端くれさ。
そんな狼藉を働く奴らは放っておけやしないんでね!
「いよっしゃぁ初アメリカ!」
数宮・多喜(撃走サイキックライダー・f03004)は原動機付自転車によく似た、レトロな宇宙バイクで長大な高速道を駆けていく。
ヒーローズアースではお馴染みの舞台だが、出身であるUDCアースでは初上陸。追い越していくワンボックスカーも、砂煙で薄汚れた車体がどことなくオシャレに感じるのは見慣れないせいか。
「こんだけ広いハイウェイを走れるなんて、サイコーだぜ! もうちょいスピード出してもいいか? いいよな?」
スカルペイントのヘルメットとタイトなライダースーツで、今日も彼女は走り抜ける――さて、トラックが何台か追い越していったことは確認した。
(「えーと、次のサービスエリアで降りてみるかな」)
英語力に自信はないが、そこはコミュ力と超能力でどうにかする! 覚悟を決めると「女も度胸だぜ!」と、自身に喝を入れた多喜はサービスエリアへ――。
空白の目立つ駐車場に愛車を止め、人がいないかと多岐は視線を巡らせた。
……ベンチで一服する二つの背中に、鳩が食餌のお恵みを分けてもらえないかと集っている。それを面倒そうにおじさんは時折、手で追い払っては鳩もしつこく近寄る。
(「物は試しさね……ちょいと繋がらせてもらうよ、オッちゃん達」)
本来は戦闘向けの精神感応――テレパス能力――だが、相手の機微を察するには向いている。試しにテレパスを向けると、目的地らしき地図のイメージや『ひと眠りしたい……』という文字が二人の頭上に浮かぶ。
バラバラのイメージが出ているのは、二人の興味が別々に向いているからか。
(「感度良好、これくらいならいけそうか」)
バイクのサイドバッバッグから昼食を取り出すと、休憩しに来たライダーを装って接触を図る。
「オッちゃん達、この辺の人?」
多岐の声にひげ面の男は頭上に『?』と疑問符が絵で、もう一人の面長の男は『誰だ?』と単語が多岐には浮かんで見えた。
一人飯も退屈だから、と適当な理由をつけて同席してもいいかと尋ねると、多岐の求めを二人は受け入れた。
ひげ面の男はケイン、面長の男はライリーという名らしい。
多岐は二人の話やイメージから感じた印象は、ケインは口は軽いが、噂話に敏感な耳年増。ライリーは物事に慎重だが、興味のない話には我関せずな態度をとるタイプ。
交友関係ならライリーのほうが好感をもてるが、今回はケイン主体で話を進めようと、多岐は二人に件の話題を振る。
「ところでさ、この辺で不気味なライダーが出るって聞いたんだよ。なんでも首のないライダーだって」
多岐の話題に乗ったのは案の定、ケインのほう。ライリーは好ましくない話題の気配を感じて、黙って二個目のホットドッグをかじる。
「夜中にトラックを狙うっていうあれだろ。現代の首なし騎士はカスタムバイクがお好きらしい!」
本当に頭がないかどうか怪しいのに、想像力豊かで軽佻浮薄(けいちょうふはく)なケインは信じているらしい……こういう人間が『都市伝説』を広めていくのか、と多岐は実感しながら詳細を促す。「真夜中の3時、月が暗い空から降り始めたとき――トラックを狙って首なしのライダー達が群がるのさ。……自分を轢き潰したトラックから、無くなった自分の首を奪い取るためっ!」
大げさな身振りをつけてケインは多弁に語り聞かせ、イメージが頭上に浮かびあがる。
――真っ暗闇を運搬用トラックが走る中、頭のないバイク乗りが囲んで殴り倒す。べこべこにへこまされたトラックまで精密に想像できる辺り、大層な想像力だ。
「ケイン、紳士ならむやみに女性を脅かすな」
我慢できずたしなめるライリーに「でも被害を受けた奴はいるぜ?」とケインが反論し、二人の口論が始まる前に多岐は「け、怪我人は出てないのかい!?」と慌てて割って入る。
多岐の言葉に今度はライリーが応じた。
「今のところは。だが、同じバイク乗りでも危険だ。真夜中のツーリングは控えることをオススメするよ」
頭上に浮かぶ文字は、ケインの無礼な態度にぼやくものばかり……言葉数はケインのほうが多いのに、好感度はライリーのほうが上がっている気がする。
――だが、早期解決を求められることはよく解った。
(「ケインさんは怖いもの見たさで突っ込みそうだし、ライリーさんは警戒してても他人事みたいな感じだし……早く解決しないとマズいぜこりゃ」)
見てくれはしょぼいバイクだろうと、多岐はライダーの端くれを自負している。
ドライバー達の安全運転を脅かし、ハイウェイを荒らし回る悪徳ライダーは見過ごせない!
安心してドライブできる高速道路を取り戻すべく、狼藉を働くUDC打倒を誓う。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『首無しライダー』
|
POW : 金属バット攻撃
【すれ違いざまに、手に持った金属バット】による素早い一撃を放つ。また、【バットを投げ捨てて運転に専念する】等で身軽になれば、更に加速する。
SPD : 轢き潰し攻撃
【バイクによる轢き潰し攻撃】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【が道路上である限り、更に加速する事で】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ : 仲間を呼ぶ
自身が戦闘で瀕死になると【増援の首無しライダー軍団】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
イラスト:そらみみ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●ミッドナイト・ウェイ
深夜2時過ぎ。カーニー市外に設けられたモーテル……に、偽装した組織の拠点にて。
丑三つ時までの長い待機時間を休憩に当てて、目を覚ました猟兵達が動きだす。
「グッドモーニング、猟兵のみんな。今夜はきれいな三日月に浮かんでいるわよ」
挨拶代わりに小粋なジョークを挟みつつ、ラウンジに待っていたジェシカは猟兵の集めた情報の確認をこめて口頭で解説する。
「UDCは深夜三時、カーニーからレキシントンまでのおよそ30kmで活動しているようね。特に配送や土木用の大型トラックが狙われやすい、と。条件付けなのか知らないけど、一方的に攻撃するやり口はかなり悪質だわ」
近隣のライダー達もイメージダウンを受けている、とジェシカは顔をしかめ、
「ただ相手の得物は金属バットなど鈍器中心。銃なんかの飛び道具はなし! 対処する方法はいくらでもあるはず。まあ騒音に関しては……今夜で終わりだし、近くにお住まいの方には大目に見てもらいましょ」
ジェシカは「事後処理は組織でなんとかするから」と、猟兵には気にせず対応してほしいと両手を組む。
……事故かなにかに見せかけたほうが、周辺住民も納得するだろう。
問題はどうやって誘き出すか――は、すでにジェシカが一計を案じていた。
「ウイングボディタイプっていうの? コンテナ部分の両側が上に動くライブ用の大型トラック、40トンの一番デッカいやつ借りてきたから。バイク乗りたい子も一緒に乗せちゃうから安心してね!」
――ルート80の一部は一時的に封鎖し、数時間前にトラックや一般車両は追い払われた。
トラックの荷台という乗り慣れない場所で揺らされ、どれだけ時間が経ったか……車の外が騒がしくなりはじめた。
運転する調査員が合図代わりにクラクションを鳴らし、両側のバンボディが上昇していく。
――……追走する蒼い炎を猟兵達は捉える。
最後尾から帯同するUDC-P『ミスター・ライド』の姿も。
補足:断章ではカーニーからの描写としていますが、レキシントン側も組織が封鎖しているため、逆走して合流したことにしてもオッケーです。
実際の交通ルール上ではアウトなので、現実ではやらないでくださいね!
(リプレイ執筆開始は『5月2日(土) 21:00~適時』を予定しております)
鏡島・嵐
いよいよ怖い怖い戦いの時間ってわけだな。
……なまじ月が綺麗な夜ってのが皮肉だよなぁ。どうせなら依頼と関係無ぇところでゆっくり眺めたかったのにさ。
まあ愚痴ってもしょうがねえ。危ねえUDCの奴らを蹴散らさねえとな。
飛び道具を持ってねえってなると、攻撃手段は高速で近付いてきて轢くか殴るかってとこだろうな。
こっちもクゥに乗って、なんとか間合いを保ちながら〈スナイパー〉で〈目潰し〉や〈武器落とし〉を仕掛けて牽制しつつ、弱っている奴を優先的に叩いて数を減らすことに注力。
他の味方が近くにいるんなら、適宜〈援護射撃〉を飛ばして、不利な展開にならねえように気をつける。
焦ってもしょうがねえから、じっくりと、だ。
蛇塚・レモン
増えるワカメならぬ増える首無しライダー?
だったら、増やさなければいいだけの話、だよねっ!
コンテナの中で待機して、いざ戦闘開始っ!
あたいはコンテナの中から蛇腹剣クサナギとオーラガンの霊弾を駆使
念動力によるなぎ払い衝撃波の範囲攻撃を乱れ撃ちっ!
敵の先頭のバイクを転倒させて、後続と玉突き事故を起こさせるよっ!
でも召喚で徐々に増えてくるはず
ここで蛇神様の出番だよっ!
ユーベルコード発動して、蛇神様の邪眼から破壊念動波を発射っ!
召喚された増援ライダーを掻き消しながら、本体のライダーを吹っ飛ばす
そして捕縛効果とユーベルコード封印で再起不能にしちゃうよっ!
トドメはライムの魂魄を宿した蛇腹剣での衝撃波+大斬撃!
三日月は静かに大地を見下ろしていた。
頭上に輝く月は夜目に慣らされた猟兵の視界を充分に確保する。
(「いよいよ怖い怖い戦いの時間ってわけだな……なまじ月が綺麗な夜ってのが皮肉だよなぁ」)
「どうせなら依頼と関係ねえところでゆっくり眺めたかったのにさ、まあ愚痴ってもしょうがねえ」
ぼやく嵐の心情をUDCは理解するはずもなく。
変形し始めたトラックめがけ、首なしライダー達は一斉にアクセルをきる!
「嵐さんいくよ、いざ戦闘開始っ!」
排気パイプの奏でる騒音が響き渡り、敵のしかけてくる気配にレモンが蛇腹剣クサナギを引き抜いた。
急接近するUDC達はトラックの側面までぐんぐんと詰めて、
「こんにゃろっ」
蛇腹剣が念動力で蛇のようにうねる。レモンの手から伸びる刀身を先頭車がはじき返すが、
「なら、こっちで!」
すかさず次の一手、ふくらませた霊弾を指鉄砲から乱れ撃つ!
姿勢制御の隙をついた追撃に一台が転倒し、数体が巻き込まれていく……封鎖された道路だからこその荒技である。
「……――!?」
UDC-Pも驚いたように車線を変えて巻き添えを避けて、転倒組は引き離されていく……状況が見えないミスターは、前方集団に追従することを選んだようだ。
転倒車両を軽々飛び越えた後続も少なくない。今度は反対側面に回りこみをかけた。
「飛び道具を持ってねえってなれば、近づいてきて轢くか殴るかしかないよな……クゥ、行けるか?」
嵐の問いかけに仔ライオンが「ガゥ」頷いてみせる。
トラックの側面、急流のように勢いよく流れる地べたを一瞥し。
「我ら光と影。共に歩み、共に生き、共に戦うもの。その証を此処に、その連理を此処に。……力を貸してくれ、クゥ!」
焔をまとう黄金の獅子とともに飛び込む!
一体のUDCをクッション代わりに圧殺し、駆け抜けていくライダー達の追走を開始。
燃えさかるたてがみは夜の世界ではひどく目立つ。当然、首なしライダー達もトラックから現れたなにかにすぐ気づいた。
成獣化したクゥと騎乗する嵐にUDCは肉薄する。
「クゥ、近づき過ぎるなよ!」
地面を削る不快な音を鳴らすライダー達と並走し、嵐はスリングショットを引き絞って、
「まずはその武器を落とす!」
ギリ、と軋むほど溜めてから……射出!
弾はバイクの機関部分に当たり、黒煙が上がり始める……走行中はタイミングさえ計れれば、側面からの攻撃は回避しにくい。
問題は高速道路が首なしライダーのフィールドでもあることか……牽制をしかける隙に、別の個体が急加速から車体をぶちかます。
生命力を共有する以上、衝撃がそのまま騎手の嵐まで伝わる――さらに後方から地鳴りじみた爆音が。
「レモン、まだ居るのか!?」
「さっき転ばせたライダーだと思うっ! あたいに任せてっ!」
傷だらけのバイクでもお構いなしにUDCはアクセルを入れる。召喚されたライダー軍団も得物を振り回し徐々に近づいてくる。
「蛇神様、出番だよっ!」
レモンが念じ始めると、背後に顕われた影が頭上へと伸び――巨大な白蛇が首をもたげる。
チロと唇を舐めあげる威容に、嵐を囲もうとしていたライダーも速度を落として間隔を空けようとする……レモンとしては好都合だ。
「迷惑運転は絶対禁止~っ! 蛇神様っ! お仕置きしちゃって!!」
空間の波打つ気配――直後、道路内に不可視の念波が奔る!
蛇に睨まれた蛙のように身動きを止めた増援はグシャリと締め潰され、召喚者のUDCも不自然な体勢で引きずられ始めた。
「トドメはこれでいくよっ!」
指先を滑らせ、蛇腹剣に炎のように燃ゆる魂魄がともる。
燃え上がるそれを大きく振りかぶって、蛇神の捕まえる首なしライダーへ振り下ろした。
こすれる金属音は放物線をえがくように伸びていき、瀕死のUDCを一刀にて両断せしめる。
「向こうの隊列が乱れたか!」
レモンの攻撃で隊形が乱れるライダー達めがけ、嵐は車輪を狙って援護射撃をしかける。タイヤを支えるスポークを数本撃ち抜き、支えを失い自壊するバイクに巻き込まれ消えていく姿も。
夜明け前だと忘れてしまいそうなほど、大立ち回りを見せ合う猟兵とUDCの戦いは始まったばかり。
アクション映画の世界かと思わされる過激な戦場を、ミスター・ライドは唖然としながら追従していた……。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エスタシュ・ロックドア
【白岩】
いやいや、俺ぁ真面目に仕事しに来たんだぜ?
そんじゃ行くか多喜
援護よろしく
デケェ獲物に挑みかかる姿勢は嫌いじゃねぇ
だがこいつぁちょいとおイタが過ぎるぜ、兄弟
血の気が余ってんなら俺が相手してやるよ
シンディーちゃんに【騎乗】【運転】
荷台から派手に下りて【存在感】を敵にアピール
業火で焼いてもいいが、
今回は相手の土俵に乗ってやるか
『羅刹旋風』発動
避けられねぇように、
こっちに殴りにきたとこを【カウンター】すっか
OK、ナイスだ多喜
寄ってきたやつに【ダッシュ】で突っ込み、
【怪力】でフリントをぶん回して【なぎ払い】【吹き飛ばし】
乗り手狙いでな
バイクは狙わないでおいてやる
コケたら一緒だがまぁ気分の問題よ
数宮・多喜
【白岩】
ありゃオーナー(f01818)、来てたんだねぇ……
まぁライダーだったら、
アメリカのハイウェイ走れるなら来るよな。
んじゃアタシはバックアップに回るよ!
トレーラーからの出撃前にあらかじめ
【超感覚網】でオーナーや同行者にテレパスを繋ぎ、
連携が取りやすくしておくよ。
そしたらガルウィングの荷台から、
いつものようにカブに『騎乗』した状態で
ダイナミックにハイウェイへ『ジャンプ』してエントリー!
猟兵ライダーズの『操縦』テク、舐めるんじゃないよ!
首なしライダー共から敵意や害意はビンビン感じるだろうね。
その害意に向けて『マヒ攻撃』の電撃を飛ばし、
動きを鈍らせてやるよ。
後はオーナー、存分にやっちまっとくれ!
多喜が車上で超感覚網(テレパシー・ブロードリンク)を運転手や他の猟兵に接続する最中、
「……オーナー?」
見知った気配を感じて、もう一人のバイカーに手を振ってみる。
首だけ向けた人は想像通りエスタシュ・ロックドアその人。
「来てたんだねぇ……まぁライダーだったら、アメリカのハイウェイ走れるなら来るよな」
「いやいや、俺ぁ真面目に仕事しに来たんだぜ? 不純な動機は欠片ほども混じっちゃいな――」
本場のツーリングコースに来られるのなら……納得している多喜にエスタシュは全力否定の構え。
先手を打った猟兵の迎撃で数度の爆発が起きると、二人の意識は前方へ戻る。
「じゃ、アタシはバックアップで」
「行くか多喜、援護よろしく!」
マフラーを数度吹かし内燃機関に熱を入れる――排気煙をあげた2台のバイクは、両側より同時に跳び込んだ!
「デケェ獲物に挑みかかる姿勢は……嫌いじゃねぇ、ぞッ!」
テンション最高潮で突撃するエスタシュは燧石(フリント)を引き抜きがてらUDCを両断。そのままアクセルターンを決めてバイク集団に乱入!
夜のハイウェイは昼間と違い、ルート外は切り離されたように暗く静かな世界だった。それがエスタシュの興奮を掻き立て、鉄塊のごとき大剣を怪力のみで振り回す。
「ちょいとおイタが過ぎるぜ、兄弟? 血の気が余ってんなら俺が相手してやるよ!!」
荒武者と化したエスタシュはユーベルコード・羅刹旋風を発動し、加速度的に闘気が膨れ上がる。
接近する首なしライダーをたたき落とし、派手に転倒させると返す刀で次の相手に……エスタシュの死角を狙いにUDCが同時に仕掛ければ、
「おっと、アタシを無視しようってのかい?」
回りこんだ多喜がPSY・コントローラーでバッテリー周りへ過剰放電を促す。
急激な発電量に『バッテリー上がり』を引き起こし、急停止したバイクが前のめりに跳びあがる。
車体に潰されたUDCも脱落し、多喜自身は飛び越えて難なく突破。
「猟兵ライダーズの操縦テク、舐めるんじゃないよ!」
「OK、ナイスだ多喜!」
アクションスター驚愕の大立ち回りは、存在感をアピールするには充分すぎるほど。
多喜とエスタシュは完全にマークされ、一気に攻撃が集中していく。
「ライダーのよしみだ、バイクは狙わないでおいてやらぁ!」
不敵に笑うエスタシュの荒々しい薙ぎ払いに、運転手が横真っ二つに……残されたバイクはガードレールめがけて衝突。
倒れればバイクに傷がつくのは同じだが、これは彼の気分の問題である。
(「ひぇー、すっごい敵意……身体中が撫で切りされてるみたいだ」)
ナックルで受け止め直撃を避けていたる多喜だが、全身を媒介にテレパス・ネットワークを張り続けている。
友軍に向けられている、高純度な殺意、敵意をダイレクトに感じとっていたが、そろそろ頃合いかと精神感応に集中し……
「その動き、鈍らせてやるよッ!」
……鋭いナイフのような敵意に、雷撃を落とすイメージをこめる!
UDC達は電気ショックを受けたようにガクンと挙動が鈍り、時速80キロを超す車体がぐらぐらと蛇行を始めた。
「煽り運転なんて無粋の極みだぜ。さあオーナー、存分にやっちまっとくれ!」
「おうよ多喜。それじゃあ兄弟、地獄で講習会からやり直してもらうぜ!?」
ライダーとしての力量差を見せつけ、荒くれ者のUDC達を確実に蹴散らす。
猟兵ライダーズの戦ぶりが戦況を急速に傾けた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
三条・姿見(サポート)
招集を受けた援軍だ。…俺も力を貸そう。
指示があるならば、そのように。猟兵として務めは果たす。
**
『ある刀を探している。取り戻さなければならないものだ』
ヤドリガミの剣豪 × 化身忍者
年齢 27歳 男
外見 178cm 黒い瞳 黒髪 普通の肌
特徴 短髪 口数が少ない ストイック 天涯孤独の身 実は読書好き
口調 生真面目に淡々と(俺、お前、だ、だな、だろう、なのか?)
偉い人には 作法に倣って(俺、あなた、~さん、です、ます、でしょう、ですか?)
**
主武装は刀と手裏剣。…相手の数に応じて使い分ける。
薬液が効く相手なら、毒や麻痺薬も使用する。
賑やかな場所はどうにもな…だが鍛錬となれば話は別だ。
励むとしよう
あと一押し――決着が差し迫る中、一人の男が援軍として転送されてきた。
「ここは、ヒーローズ……いや、UDCアースか?」
暗がりからチラつくアルファベットを三条・姿見(鏡面仕上げ・f07852)は注視するが、オブリビオンをみるや現在地を把握する。
まだお天道様が目を覚ます前だというのに、焔の獅子に騎乗する者、愛車とともに駆ける者、巨大な白蛇がやいのやいのと賑やかしいことだ。
「……『あれ』を殺ればいいのか」
「そうっ! あ、でも、右の端っこにいるUDCは避けてねっ! UDC-Pなのっ!」
車上に残っていたレモンに聞き、姿見は言われたほうに顔を向ける。
……もはや他のUDCも気に留めていないのか、UDC-Pはオロオロした様子で戦場を伺っていた。
(「人命救助、と思えばいい鍛錬か」)
こういった戦場もなかなかお目にかかれないだろう、と騒々しさを意識的に遮断する。
さあ懐より取り出したるは漆黒の手投げ手裏剣、撃剣。
朝焼けがうっすらと空に滲み始めようと、ツヤを飛ばした刃はまさに影のごとし。
「鏡像展開!」
面頬の奥で詠唱すれば、あら不思議。
撃剣は扇状に広げられ、52枚の複製が姿を現す。
「援護する。相手の動きが鈍った隙に討て」
そう言って軽く振りかぶると手裏剣を一斉に投げ飛ばし、刃が意志を持ったように軌道を変える!
『――……!?』
ジャケットに刃がかすめた直後、首なしライダーがハンドルにしがみつくような体勢になる。
――だが実際は逆だ。
前のめりになる体を起こそうとしても腕に力が入らないのだ。
「動き回る奴は俺が相手しよう、トドメは頼む」
「ああ、このまま終わらせる! 行くぜ、クゥ!」
嵐に呼応して燃ゆるたてがみをまとう焔獅子は一鳴きすると、大きく跳躍して頭上からけしかける。
レモンを庇護するようにとぐろを巻く蛇神も蛇眼から最後の念動波を浴びせ、多喜の援護を受けるエスタシュが豪快に薙ぎ払う。
最後の一体も塵芥と化し姿を消すと、残るはUDC-Pのみ。
仮称、Mr.ライド――群れからはぐれた子鹿のように震える彼を連れて、猟兵は仮眠に使っていたカーニーのモーテルへ帰還する。
成功
🔵🔵🔴
第3章 日常
『UDC-P対処マニュアル』
|
POW : UDC-Pの危険な難点に体力や気合、ユーベルコードで耐えながら対処法のヒントを探す
SPD : 超高速演算や鋭い観察眼によって、UDC-Pへの特性を導き出す
WIZ : UDC-Pと出来得る限りのコミュニケーションを図り、情報を集積する
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●首なしライダーとの交流
時刻は午前8時。
モーテルは現在も『満室』という名の関係者以外立ち入り禁止となっている。
猟兵達がブレックファーストと温かいコーヒーに舌鼓を打つ中、朝のテレビニュースが始まった。
『今朝のニュースです。早朝4時頃、ネブラスカ州を横断するルート80にて大型トラックが横転し、爆発する大規模な事故が発生。場所はカーニー、レキシントン間で――』
画面には立ちのぼる黒煙の根元に真っ赤な炎が覗いてみえる。
ぼんやりニュースを聞き流していると、フロントデスクで電話が鳴りだした。
スピーカーモードで着信を受けると、通話口の向こうから慌ただしい声が。
『もしもしジェシカなんだけど、あ、UDC掃討お疲れ様! 無事にMr.ライドを保護できたのよね? 私のほうはちょ~っと派手にやり過ぎてね、うん。支部長ともう少しお話ししないとでぇ……まだ戻れそうにないんだよね』
傷が数カ所あったとはいえ、あれだけの特殊大型車両を爆破させれば……数時間前を思い返していると、
『悪いんだけど、戻るまでミスターを監視してもらえない? みんなの誘導に大人しく従ってくれたようだから、危険性は低いと判断できるけど……規則上、ね』
形式上は『保護監査対象』になるから、とジェシカも不本意そうな言葉を漏らす。
ひとまずジェシカの要請に従い、地下で待機してもらっていたミスターの元へ向かうことに。
地下にいたミスターはバイクに騎乗したまま、室内をうろうろしていた。
猟兵達が戻ってくると、ない頭の代わりなのか、ヘッドライトごと猟兵のほうに向き直る。
彼には通常の人間にあるものが存在しない。
目。耳。鼻。口。舌。声。表情。言語。感情。
対人関係において必須の『感情表現やコミュニケーション行為がほとんど出来ない』のだ。
UDC-Pが戻る共同体を喪失した以上、人間との共同生活を送るために【対話するための手法】が必要。
円滑なコミュニケーションを行うためにも、ジェシカが戻ってくるまで『UDC-P対処マニュアル』を作ろう!
(長らくお待たせして申し訳ございません。
リプレイ執筆開始は『5月15日(金) 21:00~開始』予定です。よろしくお願いします)
火奈本・火花
「さて、実際の捕獲任務には参加出来ませんでしたが……保護監査対象へのマニュアル作成にでも、力添え出来るでしょうか」
■行動(WIZ)
私達がやってきた時に反応できたという事ですし、何らかの方法で外部を知覚しているのは確実ですね
視覚に近いものを何らかの器官で得ているのかも分かりませんし
聴覚、触角もどの程度か判別したいです
話しかけながら手に軽く触れ、紙やペンも渡しましょう
英語の使えるDクラスに私の言葉を後ろで筆記させて見せながらも、コミュニケーションを測るつもりです
手話が通じる可能性も試しましょう
警戒があるようなら、ミスターライドから私に触れるまでは接触しないようにもした方が良いですかね
■
アドリブ歓迎
蛇塚・レモン
う~ん、喋ること以前に感情がないっぽい?
そもそも人間の言語は理解できるのかな……?
●検証
いくつか簡単な英単語をクイズ形式で用意
例えば、朝食の林檎を持って、ミスターに質問。
これは何か分かる?
次の中から選んでねっ!
『Apple』『Banana』『Lemon』
正しい単語が理解できれば、たどたどしくも会話は成立するはず
駄目だったら……一緒に勉強しないとかな?
●対策
頭部は人間に似た精巧なダミーを作ってもらうとして、
会話は今の時代、タブレット端末での文字入力でイケるんじゃないかなっ?
あとは手話を覚えてもらえると、いざという時に怪しまれないはず
『声が出せない』点を逆手に取れば、周りが気遣ってくれるかも?
(「さて、掃討任務には参加出来ませんでしたが……保護監査対象へのマニュアル作成にでも、力添え出来るでしょうか?」)
保護対象の特性を把握し切れていないことが、火奈本・火花(エージェント・f00795)に一抹の不安を与える。
ひとまず入室した時点では警戒した様子はない。強いて気になる点は、バイクから降りようとしないことか。
「う~ん、反応がないね? 喋ること以前に感情がないっぽい?」
隣からひょっこり覗き込むレモンは大げさに首を傾げるが、火花は首を横に振る。
「私達が来たことに反応していますから、こちらに興味をもっていると言えます。……視覚や聴覚に相当する器官があるのでしょうか」
一言、断りを入れてから火花達は地下室内に踏み込んだ。
その少し後ろを火花の属する組織で『Dクラス』と呼ばれる構成員が随伴し、ミスターの前に並び立つ。
「初めまして、ミスター」
Dクラス職員に英語の同時通訳を任せ、火花はそっと手を差し出した……わずかに肩を揺らしたミスターは排気パイプを吹かすのみ。
(「聞こえていない? いえ、『自分以外の誰かがいる』ことは認識しているはず……でなければ入室時に反応できませんから」)
ミスターは相手に見せられる表情がなければ、肉声を出す口も出せない。
顔がない以上、感情面は火花のほうで推察する他なかった。
「やっぱり人間の言語が理解できないのかな~」
皆目見当がつかないのはレモンも同じだった……だが、助け船はもう一方からやってきた。
「ミズ火奈本、もしや知らないのでは」
火花の呼び寄せたDクラス職員だ。
「と、言いますと?」
「挨拶という『敬意を示す意味』を、です」
初対面の相手から手を差し出される意味は、常用言語が異なっていても察しはつく――ただし高度な社会環境で育った『人間』ならば、の話だ。
空想や概念が異形化した都市伝説に『敬意』や『礼儀・作法』という複雑なルールが生じるほどの社会性はない。
いかに人間と似た姿形であっても――UDCは人類と異なる存在なのだ。
「なるほど……ミスター、これは初めて会う者同士で行う人間の作法で『挨拶』という行為です。こう、手を握り合って」
Dクラス職員と一緒に火花は握手をしている姿を見せてみる。
――ようやく意図が伝わったらしい。
クラクションを二度鳴らし、ミスターはハンドルに置いていた手を火花に差し出す。ミスターの手は少し冷たいが、自分より細い火花の手を壊れ物のように扱っていた。
一連の様子を見ていたレモンは驚きの声をあげる。
「伝わったっ!? ていうか、今のクラクションって……もしかして?」
「『肯定』した意思表示でしょう、こちらに興味をもっているのは幸運です。ただ、彼自身は音声言語が使えませんし、身体言語(ボディ・ランゲージ)を覚えてもらう必要がありますね」
火花の手で対処マニュアルに最初の文が記載されていく。
・聴覚や触覚は人並み程度、視覚に相当する器官を有する可能性アリ。
・肉声が使用できないため、手話など身体言語の指導が必須である。
・人間社会のルールやマナーなど、一般教養に関する学習も必要。
・理解力が高く、攻撃性は非常に低いため、教育難度を高めに設定したプランニングでもよい。
今度は紙とペンを手渡し、紙の束をもつレモンが前に出る。
「じゃあ次は英単語のクイズだよっ! これがなにか分かる?」
レモンが取り出したものは朝食で出されたリンゴ。真っ赤に熟した果実からはほんのり甘い香りが漂う。
……ミスターは思考中なのだろう。無反応でも気にせず、レモンは話を進めた。
「次の中から選んでねっ!『Apple』『Banana』『Lemon』さあどれかな~?」
英単語のフリップを出して三択にするが、ミスターはグリップ部分を左右に数度揺らしたり廃棄パイプを鳴らしたり……最終的に選んだのは『Banana』
「ありゃ、これは『Apple』なんだよねっ! あんまり馴染みがなかったかな?」
「経口摂取しようにも『口』がありませんからね、身近なものとは言い難いでしょう」
知識量は想定以上に低い可能性を感じ、先行きの不安を感じつつレモンは指先をミスターの足元に向けた。
「次の問題ね、『それ』がなにか分かる?」
指差したのは文字通りに肌身離さずにいるミスターの愛車、バイク。
渡されていた紙面にミスターは手を這わせると、ペン先を這わせ。
『blKF』
ミミズがのたくったような文字を書いて見せた。バイクの正しい綴りは『BIKE/bike』である。
「びー、える、けー、えふ……うーん、書きたいことは伝わるけど、スペルミスしてるねっ!」
その後も英単語クイズを出すものの、スペルミスや不正解が続く。
なんとも言えない顔でレモンは対処マニュアルの続きを書き留める。
・知識問題は小学生低学年レベルでも誤答が多く、人間社会への適合には時間を要する。
・識字能力は有するが、筆記でのスペルミスが目立つ。筆記も要練習。
・思考中は挙動が止まる。根気強く出方を待つべし。
知れば知るほど、訳がわからない。
「私達の存在は間違いなく知覚していますし、意図を理解する思考力が充分にあり」
「知識は子供より無くて、字を書くのも得意じゃない……んだよね?」
そこから導き出される答えは――熟考したのち、火花が口を開いた。
「組織の保護下にいることが前提ですが、ミスターは人類との共存も可能でしょう」
暴徒同然だった群れでは学習機会があまりに乏しかった。
識字や知識の学習など必要ない、ただイタズラに暴力を振るうだけで満足していた、野生の獣と変わらない環境なのだから。
だからこそ『暴力へ疑問を抱いたこと』こそ、ミスターの有するUDCとしての異質さであり、知性の高さに対する裏付けでもあったのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
エスタシュ・ロックドア
【白岩】
よっす多喜、オールオーケーだぜ
コーヒーでも飲みながら……ミスター、飲めねぇな
多喜、なんか手はねぇか
マジかすげぇな
そんならそれでコイツにモールス信号でも教えてやってくれや
俺も簡単な奴なら【世界知識】で分かる
したらクラクションでもヘッドライトでも意思疎通できるはずだ
道を走れるんなら、首がなくとも何かしら外界を感知できるんだろ
ミスターのやりやすい手段でオハナシしようじゃねぇか
その過程をちょいちょいメモっておこうかぁね
役割なぁ
そいつぁUDC組織がなんかするだろーと思うが
何をすればいいか分からねぇ、か
いいね、自由で
それこそ好きなとこ気が向くまま走っていきゃ、
やりてぇこととか見つかるんじゃねぇの?
数宮・多喜
【白岩】
オーナー(f01818)、お疲れさん。
ケインとライリーの二人も無事だったろうね?
それなら良いんだ、うん。
さぁてMr.ライドだったか。
どうやって交流したもんか……
アタシだけなら何とかできるんだよな、
【超感覚探知】のテレパスである程度の意思は汲み取れるし。
ただ、他のヒトも交流できるようにしないといけないのがねぇ……
ってオーナー、そのアイディア良いな!
それじゃアタシが『コミュ力』も生かして通訳になるよ、
早速教え込んでおくれ!
あと、おどおどしているのは何をすればいいか分からないからだろうし、
何か役割みたいなのを斡旋できればいいかもねぇ。
そっちもオーナー、何かないかねぇ?
鏡島・嵐
……うーん、なんか気まずいなぁ。
どういう風にコミュニケートすればいいのかわかんねーし、所謂言葉ってのが通じるんかどうかも怪しいし……。
ああもう、うだうだ考えても仕方ねえ。当たって砕けろだ!
ともかく、簡単なことから確認だな。
もしかしたら役に立つかもしれねえので、一応クゥを連れて。
気になるんはどうやって周りを知覚してるんか、だな。
手を振ったり、音を立てたりするところから初めて、どういう反応するんかを確かめながら詰めていく。
あとは……子供の悪戯みたいであんま気は進まねえけど、ミスターの手を握って、掌に文字を書いて理解できるかとか。
根気良くやるしかねーよな。
他の奴がやることにも、可能な限り協力する。
嵐は顔のないライダーを前に唸り続けていた。
(「……うーん、なんか気まずいなぁ」)
他の猟兵が接触している様子を見るに、こちらの言葉は理解していることは確実だ。
でなければホテルまでの誘導だって従わなかったはず。だが、ミスターはここまでついてきている。
それが彼の知性や考える能力を示す、なによりの証拠だった。
「さぁて、Mr.ライドだったか……どうやって交流したもんかね?」
「まあ堅苦しいのもなんだ! コーヒーでも飲みながら……って、ミスター飲めねぇか」
多喜とエスタシュも「どうしたものか」とまじまじ見つめてみるが、『表情や感情が見えない』という、たったそれだけで対話が難しく感じるとは。
「なんか手はねぇか?」思わずエスタシュは多喜に意見を求める。
「アタシだけならテレパシーである程度は読み取れるだろうけど……他のヒトも交流できるようにしないといけないからねぇ」
精神感応で思念を読み取るくらいなら、と言ってのける多喜に「マジか」とエスタシュは感心するばかり。
だが、しびれを切らした叫びが脇から聞こえてきた。
「……ああもう、うだうだ考えても仕方ねえ! 当たって砕けろだ!」
悩んでも仕方ないと行動を起こしたのは嵐。
なにかの役に立てばと思って連れてきた仔ライオン、クゥを伴って嵐はミスターにじりじりと歩み寄っていく。
手を振ってみたり、わざと足音を立ててみたり……どうやって周りを知覚しているか解らないものか。
怪しい挙動で近づく嵐に、ミスターは前輪を軸にして向き直る。
鞠のように軽い足取りでクゥが左右に跳ねまわると、ミスターもそれを追って車体を対面になるようハンドルを切る。
「わざわざ体ごと向かなくっても…………ん?」
止めようと思った嵐はなにかがひっかかった。
入室したときもミスターは『バイクごと』猟兵のほうに向いたのだ。
さらに、今はわざと足音を立てていた嵐より、クゥに注意を払っている……ライオン、ネコ科ヒョウ亜科であり消音効果がある『肉球』を有するクゥのほうに、だ。
聴覚が異常発達している可能性も捨てきれないが、嵐は湧き上がる疑問を投げかけずにはいられなかった。
「……もしかして、俺達のこと『視えてる』のか?」
嵐の問いにミスターは先ほど習ったのか、親指と人差し指をくっつけてみせた――指で『○』を作ったのだ。
「「ええぇぇぇぇぇぇぇっっ!?」」
今度は多喜とエスタシュが声が地下中に響く。
ミスターには首から上にあるべきものがないが、それは『通常の人間ならば』の話である。
頭部を失った姿で元気にバイクを乗り回している時点で、通常の人間とは言いがたい。
「いや待てよ、襲撃のときはいつも離れて行動してるって……それって視えてたからか?」
エスタシュの問いも、○
「そういえば戦闘中も転倒したバイクを飛び越えてたようだけど、それも視えてたってこと!?」
多喜の問いも、○
「じゃあ、俺らがなにかしてるのも視えてる……のか?」
再確認する嵐にも、○
これでひとつ謎は解けた――ミスターは眼とは異なる、『視覚』を有するのだ。
さて、ひとつの謎が解けると次の謎がやってくる。
「見えてんなら先に言ってくれれば……あー、それを言う口がないもんな。でも、目の代わりになってる部分って。それらしいとこなんてあったか?」
多喜がじっくり観察しても人体部分に露出は少ない。
「虫でも擬態してる種類があるし……なんか、俺らの常識で考えちゃいけない気がしてきたぜ」
嵐が確かめてみたが、手のひらに目があるとか、奇形と感じる特徴もない。
顔は相変わらず人魂じみた火の玉が揺らめいているが、そこを頼っている様子はない。
じっくり車体を観察していたエスタシュがパチンと指を鳴らした。
「多喜、テレパシー出来るんだよな。それでモールス信号でも教えてやってくれや。したらクラクションなり、ヘッドライトなり使って意思疎通できるんだろ?」
感覚器官である目や耳に相当する機構ないし器官があるなら、次に必要なものは思考の発信手段。
符号化された文字コードでのやりとりとなる上に、打鍵での信号が主となるため言葉の壁に困ることが少ない。
情報伝達も格段にスムーズなものとなる。
「それ良いな! んじゃオーナー、通訳は任せてコーチングよろしく」
お手を拝借と多喜がミスターの手をとり、思念を繋げようと意識を集中する。
――な……Siて……に▽テ……――。
(「なんだ? 妙に聞き取りづらいような」)
暗闇を凝視するように、多喜はミスターの思念を深く読み取ろうとする。暗い洞穴の奥底を、文字通りに、手探りする行為だ。
――才マエ 八 なニ ㋾ sI 〒いLu ?――。
「お、まえ、は……なに、を、して……いる。えーと、お前さん、言いたいこと、このヒト、伝える、アタシ、やる」
流れ込んでくるイメージに対して、なるべく解りやすいように噛み砕きながら、多喜はモールス符号を通訳し、エスタシュは音や光で信号を実際にみせてみた。
二人の教え方がよかったのか、単純な規則性が覚えやすかったのか。
エスタシュの覚えている範囲はおおよそ記憶し、スポンジの如き吸収力には脱帽させられるばかりだった。
「それじゃあ、解った範囲でマニュアルに追記してくか!」
まず嵐が作りかけの対処マニュアルへ筆を走らせる。
・ミスターは人間とは異なる感覚器官を有しており、車体も含めて『一個体』である。
・視覚は車体のヘッドライト、聴覚はサイドライトが受容器として機能している模様。 ・人体は昆虫のような擬態で、車体部分が本体である可能性アリ。要検証されたし。 ・車体部分も含めて収容する必要があるため、収容スペースは車体基準を推奨。
ここまで書き留めると、嵐はエスタシュ達に回し、
「じゃ、オーナーまとめといくか」
・かんたんなハンドサイン、モールス信号は習得可能。さらに教育すれば複雑な暗号も使用できる可能性大。
・知能年齢は小学生相当だが、知識が乏しいのみで、学習能力は非常に高い。
・思考能力は人間とほぼ同等であり、社会性を身につける能力は充分にある模様。
・結論。ミスターは寡黙で感情表現が乏しいのみの『子供』であり、就学前教育からの教育プランを設計し、成績内容から上下方修正されたし。
「……っと。こんなもんか」
巻末にそれぞれの名前を記載し、完成した対処マニュアルはそれなりの厚さとなっていた。
猟兵がマニュアルを編集している最中、ミスターは地下室をうろうろしたり、嵐とクゥと文字を教わって過ごし……再び地下室の扉が開かれる。
騒々しい足音とともにジェシカが飛び込んできた。
「ごめーん!!任せっきりにしちゃって困ったよね! あ、この子がミスターライド? ホントに首がないのね、もしかしてバイクが本体だったり? 食事とか好きなものある? さすがに人肉はちょっと難しいんだけど」
質問攻めを始めたジェシカを引き剝がし「まずこちらの確認を」と火花が対処マニュアルを押しつける。
手作りの冊子を流し読み、ジェシカは感心したように数度うなずいた。
「独立するなら頭は精巧なダミーを作れば良いと思うし、会話はタブレット端末とか手話とかイケるよねっ?」
「組織のことも怪異のことも民間人には秘匿だからね。どれだけ人畜無害な性質でも、単独行動はさせてあげられないかな……でも、モールス信号と併せて覚えてもらえれば、誰でも会話が出来るわね」
レモンの提案に眉を垂れるジェシカは「お手柄よ!」と握りこぶしを返し、ミスターの前に屈みこむ。
「なあ、そいつに役割みたいなのを斡旋できないもんかね。オーナーも、何かないかねぇ?」
狭い施設に収容してしまうだけで良いのか?
多喜の言葉にジェシカは困ったように笑顔を浮かべる。
「例えばね、私が8本足の宇宙人に捕まって『この子は安全だから外に出そう!』って宇宙人の星で解放されても、困っちゃうと思うの。 だって知らない人達から見たら、2本足で動き回ってる奇妙な生物が徘徊し始めたら、大騒動になっちゃうもの!」
――理解しがたい相手とは、えてして不気味に映るものなのよ。
いつかどこかで聞いた言葉をジェシカは口にする。それは自分達も例外ではない――と。
「どっか好きなとこで気が向くまま走るためにも、ちっとばかし社会勉強が必要だな。 またデッカいハイウェイで走ろうぜ、兄弟?」
エスタシュの言葉にミスターは覚えたてのモールス符号をヘッドライトから打ち返す。
『OK』 『MA・TTE・RU・NE』
大成功
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