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嘘つきヴァンパイアを打ち倒せ!

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「猟兵のみんな、よく集まってくれた! ダークセイヴァー世界でオブリビオンが事件を起こしているのを予知したぜ!」
 グリモアベースに集まる猟兵達へ『人間のガジェッティア』ロロック・ハーウェイが、事件の発生を告げる。
「オブリビオン、ヴァンパイアの標的にされたのは辺境にある小さな村だ。奴はそこで村人に扮し、殺人ゲームと称して毎晩人を一人ずつ殺してる……しかも正体が暴かれるまで凶行を続ける、とまで宣言してるんだ!」
 人口は400人にも満たない村で、夜ごとに犠牲者が出続ければ、いずれ生きている者のいない、死の廃墟と化してしまう事だろう。
「そうなる前に、みんなには村へ踏み込み、ヴァンパイアの正体を暴いて事件を食い止めて欲しいんだ。多分簡単にはいかないだろう。何せ奴は完璧に村人へ紛れてて、ちょっとやそっとじゃ本性を現さないだろうからな……」
 とはいえ敵の手の内が分からない以上、下手に追い詰めても何をするか分からない。
 ここはあえてルールに則り、犯人に犯行の証拠を叩きつけるか、舌戦で揺さぶり口を割らせるか……ヴァンパイア本人に『負けた』と思わせれば、自ら正体を明かすはずだ。
「でも、しらみつぶしに村を歩き回っても、思ったように調査は進まないかも知れない……そこで先に、俺の方でそれらしい容疑者を絞っておいたぜ」
 ロロックがリストに挙げたのは、毎夜に村を出歩く、数人の村人達である。
 殺人は夜に行われる。村人達もそれを知っているため、日が暮れれば民家や建物の戸を閉ざし、息を潜めて身を隠す。
 しかし裏を返せば、そんな危険な時間帯に外を出歩く人物こそ、犯人の可能性が高いと言えるのだ。
「現状、上がった容疑者は4人だ。夜でも営業を続けている露天商。村を守る門番の青年。墓地の墓守。そして理由は不明だけど、夜はいつも村を散歩している、頑固な老婆……」
 ひとまずこのあたりから当たってみるといいかも知れない。本人に話を聞くのもいいし、他の村人から彼らについての情報を尋ねるのもありだ。
「夜になれば閉じこもる村人から話を聞く事は難しいし、何より犠牲者が出ちまう……日中の内に全てを終わらせるべきだな」
 【POW】怪しい人物を直接尋問し、正体を暴くための対決を仕掛ける。
 【SPD】村の中を探索して事件の痕跡を辿ったり、気になる場所を調べたり、証拠になりそうな手がかりを調査する。
 【WIZ】村人へ聞き込みをしてアリバイを引き出したり、尾行したり、交渉をしたりして証言や情報を集める。
「もちろん、他に思いつく事があれば試していってくれ。村の人達もみんな疑心暗鬼になっているから、話一つ聞き出すだけでも大変かも知れないけどな……そいつは工夫次第、やりよう次第って事だぜ」
 すでに犠牲者は五十人を超えており、連戦連勝のヴァンパイアは油断し、むしろ正体を暴かれたがっているはずだ。
 だからこれぞという確信を得られたら、どんどん容疑者に突きつけていこう。
 タイムリミットは日没までだ。村人達の信用を得るのもいいが、まず犯人を見つけ出す事が重要である。
「この村の狂ったゲームを打ち砕けるかはみんなにかかってる。罪のない村人達を毒牙にかけるヴァンパイア自身を、最後の犠牲者にしてやろうぜ!」


霧柄頼道
 霧柄頼道です、よろしくお願いします。

●周囲の状況
 都市部から離れた平野に佇む村落です。痩せた畑と小川、小さな牧場以外にめぼしい施設や特産品などはありません。

 露天商は村の広場で店を開き、雑貨や古物などを売っています。深夜まで営業は続いているようです。
 墓守は墓地の手前にある小屋に住んでいます。暗いフードを目深にかぶり、素顔は見えません。
 老婆は朝と夜の二回、いつも決まったルートで散歩しています。犬を一匹飼っているようです。
 門番の青年は日がな一日門の前に立っています。仕事柄、人の顔はよく覚えているようです。
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第1章 冒険 『疑心に潜む暗鬼を照らせ』

POW   :    怪しい人物に直接尋問する

SPD   :    村の中を虱潰しに調べる

WIZ   :    村人たちのアリバイ・不審な行動を検証する

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

リーヴァルディ・カーライル
…私が敵なら、どうやって村に忍び込む?
誰に成り済ましたら、この遊戯が長続きすると思う?

…ん。そう、これは遊び…
長く遊びたいなら、村の内情に詳しくないといけないし昼の行動も厳選するはず…

広場にいる露店商はよく人に見られている…
ボロが出る恐れがあるから長く遊びたければ避けたいはず…
自分の飼い主ではないと犬が騒ぐ可能性がある老婆も、潜伏先として相応しくない

…だから、一番怪しいのは墓守のあなただと推理したんだけど、どう思う?
違うと言うなら、そのフードの下の素顔を晒してみて?


…門番はなぜ除外したか?
日がな一日、門の前に立って日光浴するだけの仕事を我慢できる吸血鬼なんて、この世界にいるわけないでしょう?



空には灰色の雲が立ちこめ、日の光は常に遮られているかのようだ。
「……私が敵なら、どうやって村に忍び込む?」
 日が沈んだ状態と大して差異はなさそうにも思えるが、この村の人々にとって、今の時間は襲撃を受ける事のない唯一の安息をもたらしているのである。
「誰に成り済ましたら、この遊戯が長続きすると思う?」
 等間隔に、何段にも渡って並ぶ墓標と、まるで犠牲者をあざ笑うかのように周囲から響くカラスの鳴き声が、その墓場にこの上ない陰鬱な空気を漂わせていた。
「……ん。そう、これは遊び……長く遊びたいなら、村の内情に詳しくないといけないし昼の行動も厳選するはず……」
 墓守の小屋は生え放題伸び放題の雑草を踏みしめ、カーブした小道を進んだ先にある。
 馬小屋よりいくらかマシ程度に思われる、軒先にランタンの吊るされた粗末な掘っ立て小屋だ。
「広場にいる露店商はよく人に見られている……ボロが出る恐れがあるから長く遊びたければ避けたいはず。自分の飼い主ではないと犬が騒ぐ可能性がある老婆も、潜伏先として相応しくない……」
 リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)はそう言って、ドアから顔を出した墓守へ視線を向けた。
「……だから、一番怪しいのは墓守のあなただと推理したんだけど、どう思う?」
「どう、と言われてもですなぁ……それはただの印象の、消去法じゃないですかぃ」
 折れ曲がった猫背の、小男らしき墓守は、しゃがれ声で困ったように応じる。
「大体、あっしを含めた容疑者の4人中、門番の奴はどうしたんですかい」
「……日がな一日、門の前に立って日光浴するだけの仕事を我慢できる吸血鬼なんて、この世界にいるわけないでしょう?」
「ああ、なるほど……」
「違うと言うなら、そのフードの下の素顔を晒してみて?」
 人を食ったような笑い声を発する墓守を、リーヴァルディは細めた目線で射貫く。
「わ、分かりましたよ……ほら、どうです。ただの不細工な顔でしょう」
 ややあって、そろそろとフードを外した男の顔はやぶにらみで、汚い歯を見せて笑い返して来た。
「まあこんな仕事なんだ、怪しまれるのは当然でしょうがねぇ……あっしのどこがこわーい吸血鬼に見えますかぃ?」
「……確かに、普通の人、みたいね」
 リーヴァルディは慎重に墓守の素顔を観察してから、気を抜かずに答える。
 ヴァンパイアは顔や背丈に至るまで、一般人に変装した上で入れ替わっている。
 それに猟兵は入れ替わられる前の人物の事をまだよく知らない……一見した見た目だけから見破るのは無理だろう。
「それにですなぁ、あっしには夜の間のアリバイだってありますよ、へへへっ」
「そうなの……?」
「例えばですよ? 門番をやってるあいつとは呑み仲間で、夜中にゃ人の目を盗んでよく一杯引っかけてるんですぜ。露天商にはたまに冷やかしに行ってまさぁ、昨日だってそうだ。それからあのばあさんは死んだ息子――あれ、娘だっけ――の墓参りに毎日ここへ来てますぜ」
「……お互いに顔見知り、なのね」
「へへっ、小さな村なんでこのくらいの付き合いはありますよ。あっしはこう見えて、わいわい陽気に騒ぐのが趣味なんでしてね……」
 骨張った腕をひらひらさせ、墓守は野卑な笑い声を上げる。
「そういうわけなんで、おかしな言いがかりはやめて下さいよ。それともあっしが夜な夜なこの手で人を切り刻んで墓に埋めてるなんていう、誰が見ても頷けるような決定的な証拠でもあるんですかぃ?」
「証拠は……ないわ」
 まだ、という喉元まで出かかった言葉を、リーヴァルディは一旦呑み込んだ。
「考えすぎでさぁ。この村にはおっかねぇ吸血鬼なんていないんですよ。みーんなシロ。毎晩無事なあっしが言うんだから間違いねぇですって」
 そう言って墓守は小屋の中へ引っ込んだ。
 しばらく待ってみたが、特に気になるような物音や言葉は聞こえて来ない。
(「……吸血鬼はいない。本当にそう……?」)
 聞いてもいないのに自分や他の人物のものまでアリバイを話し始めたのも、どこか白々しく感じられる。彼一人の言葉を、果たして鵜呑みにしていいものだろうか。
 どのみち一応はこちらの要求に応じてもらった。他の容疑者に関しての証言も得られた。
 この調子で同じ事を問い詰めても堂々巡りだろうが……それとも何か別の事を質問してみるのもいいし、他を当たるのもいいだろう。
 さて、どうしたものか――。

成功 🔵​🔵​🔴​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

私は老婆、お婆さんの元へ尋問しにいきましょう。
毎晩人が死んでいる村の中を、毎日出歩く事に疑問に感じます。
彼女はお子さんを既に亡くし、自分と犬一匹の生活。
殺されても失うものがない、構わないという心情なのでしょうか?
毎晩出歩いている目的が墓参りや犬の散歩だと予想し、その際に不審者や奇妙な出来事を目撃していないか?
またはこの村に対しての考えを聞いてみましょう。

いや、そもそも本当にお子さんを亡くしているのでしょうか?。
ヴァンパイアが暗示等で村人を一種の洗脳状態にして偽っている可能性さえあります。
疑えば疑うほど疑問が無限に湧いてきますね。
やはり人を疑う事は私の性には合わないようです。



「少々、いいでしょうか。怪しい者ではありませんが……」
 アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)が訪ねたのは、村にひっそりと佇む一軒家である。
「お伺いしたい事があるのです。時間は取らせません」
「……別にいいよ。どうせ日の出ている内は、安全だしねぇ」
 ドアを少しだけ開けた老婆はアリウムの名乗りに不審そうにしたものの、ぶっきらぼうに招き入れてくれた。
 ひどく殺風景なリビングで、アリウムはテーブルを挟んで老婆へと問いかける。
「あなたは毎日、毎夜散歩をされているらしいですが……どうしてそのような事を?」
「犬の散歩のためだよ、何か文句でもあるかい」
 老婆が窓を見やると、庭にある犬小屋から、飼い犬と思われるふさふさした一匹の老犬がこちらを見て、舌を出しながら尻尾を振っている。
「しかし……今のこの村では、毎晩人が死んでいます。だというのに、無理をして出歩く必要性には疑問に感じているのです」
 あるいは犬が身を守ってくれる、と考えているのかも知れないが、ヴァンパイア相手にその見込みは甘すぎるというものだ。
「そんな事は分かってるさ。でもねぇ……もうどうだっていいんだよ、あたしにゃ」
 だが、そうやって返された言葉は、どこか儚くも諦観を覚えるものだった。
「それはもしや……殺されても失うものがない、だから構わない……というお考えなのですか?」
 アリウムがずばり尋ねると、老婆はちらりと横目を寄越す。
「あなたはお子さんを既に亡くし、この肌寒い家の中で犬一匹との生活……だからこそ、そのような無鉄砲な行動を続けてらっしゃる……違いますか?」
「……せがれが一人、いたんだよ……前はね」
 老婆は息をつき、テーブルに目を落とす。
「家業を継ぐ事に反発して、あたしや夫に内緒で勝手に出て行って……しばらくして、遠い街で仕事をしているって便りが来た。だけど……数年前に病気で夫が死んでさ、それでせがれが帰って来たんだよ。あたしを一人にしておけない、って、仕事を放り出してさ……」
「それは……」
「残った家族で、必死に暮らしてた。でもね……ある日突然、畑仕事から家に帰って来なかったんだ。それで次の日、刃物か何かで身体をずたずたにされた、せがれが庭先に……転がっててさ」
 老婆はしゃくり上げるような呼気を漏らして、枯れ木みたいな手で口元を覆う。
「あ、朝に、犬の吠え声で……気がついたんだよ。うるさいから目が覚めて、なんだろうって外に出たら……ああ、もう、なんでこんな事に……なっちゃったんだろうってね……!」
「もう、もう充分です、お婆さん……辛いお話を、させてしまいました……」
 アリウムはたまらず老婆の話を止める。
 彼女の語り口に矛盾はないし、様子を見ていても、到底演技や嘘には思えない……。
(「心ないヴァンパイアに、このような悲しい表情が、悲痛な声が出せるものなのでしょうか……」)
 ――いや、そもそも前提として、彼女は本当に息子を亡くしているのだろうか。
 ヴァンパイアが暗示等で村人を一種の洗脳状態にし、操っている可能性さえあるのだ。
 一度疑えば疑うほど疑問が無限に湧いて来る。
 やはり人を疑う事は自分の性には合わない、とアリウムは頭を振って、疑心を振り払う。
 曇った目や耳では重要な事柄を見逃してしまうかも知れない。悩むのは情報が集まった後でいいはずだ――。
「疑って……いるのかい? まあ、無理もないさね……あたしだって信じたくない。だけど肌身離さず持ってるせがれの形見が、これは現実だって、冷たく言って来るのさ……」
「形見……ですか。見せていただいても、構わないでしょうか?」
 老婆が取り出したのは、一つの懐中時計だった。老婆の話では、息子が成人した時に自分と夫で買い求め、彼へ贈ったものだという。
 血をぬぐい取った時に綺麗になったのだろう、使い古された時計には、偽の証拠として昨日今日で用意できる代物とは感じられない、魂の籠もったきらめきがあった。
「では、毎日の散歩の際に、不審者や奇妙な出来事を目撃してはいないでしょうか。どんな些細な事でもいいのですが」
 老婆が落ち着くのを待ち、アリウムはさらに質問を重ねる事にした。
「さあてね……そんなものを見たら、むしろとっくにあたしなんかお陀仏だろうけどさ……ああ、そういえば」
 と、老婆はふと思い出したように目を上げる。
「夜の事なんだけどねぇ……墓参りのために墓地へ通ってるんだけど、なんだか最近、墓守の奴を見かけなくなっててさ」
「墓守……ですか?」
「あたしが墓地へ通い出したのは、夫が逝っちまってからだから、時たまあいつの小屋に邪魔して下らない世間話をする事もあったんだよ。でもこの騒ぎが起き始めてからは、顔を合わせるのがまれになってる。墓の手入れをほっぽり出してどこで何してるんだか」
 それから細かい事だけど、と老婆は続けた。
「うちの犬が、あいつに対していやに警戒するように……吠えたり、距離を取ったり……今までは、なついてる方だったのにねぇ」
「他には、何か……?」
「……あいつの側を通り過ぎた時、何か……嫌な臭いがしたような。あれは、あの時の……まさか、いやそんなバカな……いいや、なんでもない、忘れとくれ」
 老婆はかぶりを振って、もう思いつく事はない、とアリウムに示す。
 アリウムは礼を述べて、老婆の家を辞した。

 事件に巻き込まれた遺族である老婆の身の上や、毎日の行動については理解ができ、墓守についての証言も得られた。
 まだ謎は残っている。けれども着実に真相へ進んでいる手応えはある。
 もっと色々な人物と対面し、それぞれの視点から証言や証拠を得られれば、犯人の目星がつくのみならず、その嘘や矛盾を論破できるだけの材料が揃っていくだろう。
(「もしくは村内で殺人の手がかりを探すのも有効でしょうか。これだけむごい犯行を繰り返しているのです、どこかに痕跡は残っているはず……」)
 まだ猶予はある。老婆の見せた懐中時計を思い出し、アリウムは歩き出した――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノワール・コルネイユ
態々自身の存在をアピールするとは、中々に大胆不敵な奴らしい
いや、傲岸不遜と呼ぶ方が相応しいか?
まあ何にせよ、まずはその驕りたかぶった化けの皮を剥がさないとな

少々非効率かもしれないが
やはり他の容疑者の証言も揃えておくべきか

門番の元を訪ね、幾つか問いてみよう
墓守の証言が事実であるとして

墓守とは呑み仲間で頻繁に酒の席を一緒している、というのは本当か?
事件が起き始めてからも一緒に飲んでいたのか?
奴の様子が変わったか、言動がおかしかったということもなかったか?

後は他の者や事についても念の為に尋ねておくべきだろう
露天商や老婆に変わったことはなかったか
犬が別の犬になってた、だとかな
下らないことでも構わないさ



「態々自身の存在をアピールするとは、中々に大胆不敵な奴らしい」
 ノワール・コルネイユ(ル・シャスール・f11323)は村を進み、門番の元を目指していた。
「いや、傲岸不遜と呼ぶ方が相応しいか? 見つけられるものなら見つけてみろ……とでも言わんばかりの」
 まったく舐められたものだが、裏を返せばそれは脇が甘いという事。ヴァンパイアへ付け入る隙となるのだ。
「まあ何にせよ、まずはその驕りたかぶった化けの皮を剥がさないとな……話はそれからだ」
 さっさと犯人をあぶり出してしまいたい所だが、ここは少々非効率だとしても、やはり他の容疑者の証言も揃えておくべきだろう。急がば回れだ。
「というわけで、幾つか問いたい事がある」
「いや、どういうわけだよ……今仕事中なんだけど」
 やって来たノワールに、ひょろひょろした門番の青年は苦虫を噛み潰したような顔をする。
「すぐに終わる。――墓守とは呑み仲間で頻繁に酒の席を一緒している、というのは本当か?」
「誰から聞いたんだよ、それ……まぁ本当だけどな。あいつは気のいい奴でさ、俺が暇な時にふらっとやって来ては、二人でこっそり酒場に潜り込んで一杯引っかけてた」
「職務に関しては不真面目だったのか?」
「まぁ、こんな異変が起きるまでは、なんにもない平和な村だったからな……それであいつ酒が好きなくせに弱いから、いつも俺が墓守小屋まで運んでやってたんだ」
「やっていた……過去形だな。今はどうだ、事件が起き始めてからも一緒に飲んでいるのか?」
「いいや、事件が起きてからは俺は酒なんか一滴も呑んでない。職務時間中は門の前を離れた事すらないぜ……さすがに状況が状況なんで、真面目に門番やってるつもりだからな」
「そのようだな。……奴の様子が変わったか、言動がおかしかったということもなかったか?」
「あー……どうだろうな。話すって言っても最近じゃ何回かだけ、言葉を交わした事があるくらいだ。普段と変わらない様子だったけど……やけに外部と人の行き来を気にしてたな」
「外部……村の外か」
「ああ。住人の誰それが引っ越したとか、逆に村のどこそこに旅人や商人がやって来たとか、村に住むつもりの奴が居を構えた場所とか、そんな感じに、何かを品定めするみたいにさ。なんでそんな事聞くんだ、って尋ねても仕事のためだとかではぐらかされるんだ……」
 といっても、こんな事態だからもう人の出入り自体がほとんどないけどな、と青年は自嘲する。
「なるほど……なら他の容疑者――露天商や老婆について何か変わったことはなかったか?」
「あのさ……俺は別に事情通でもなんでもないんだが」
「なんでもいい。犬が別の犬になってた、だとか、店の品物に怪しいものが混ざってるとか、下らないことでも構わないさ」
 青年はしばし、考える素振りをした。
「……露天商の男は、元々は外部の人間なんだ。けど品物の売れ行きが芳しくないのか、そろそろ店を畳もうと愚痴ってるって話だ」
「ほう……」
「でも近頃、よく刃物を買っていくお得意様がいるらしいぜ。ナイフとか包丁とか……それが誰だかは興味ないんで分からないから、詳しく知りたきゃ本人に聞いてみちゃどうだ?」
「覚えておこう。……老婆の方は?」
「よく遠目に見かけるよ、犬連れて散歩しててさ。多分向こうも俺が見てるのに気づいているはずだ……やっこさんの息子が死んでから、冷たい感じになってるんで会話はしないけどな。他は事件前後と変わらない、毎日欠かさず同じ時間、コースで散歩してるみたいだぜ」
 と、青年は肩をすくめ――不意に目を見開いてノワールを見つめた。
「……お、おい、俺……俺はやってないぞ、殺しなんて! そ、そりゃこれといって断言できるようなアリバイはないけどさ……な、なあ、本当だって!」
「落ち着け。別に吊るし上げたいわけじゃない」
「本当か……? ああ、くそ、誰でもいいから犯人をなんとかして欲しいよ……こんな有様なのに、なんで俺は毎晩門の前に立たなきゃいけないんだ……殺してくれって言ってるようなもんだぜ!」
 青年は知る限りの事柄を教えてくれたようだし、この怯えきった態度にも真実味を感じる。
(「門番という立ち位置的に、容疑者達の事情を深く知るわけではなさそうだが……それでも一歩引いた、客観的で広い視点からの情報を集める事はできたな」)
 ノワールは事件解決のため引き続き努力する事を伝えて青年を落ち着かせ、一旦その場を去る事にした。

成功 🔵​🔵​🔴​

藏重・力子
小さな村だ。我の故郷を思い出す
放ってはおけん!
少々気になった露天商へ直接行こう

我には見る物全てが新鮮である!
目を輝かせ、商品を隈なく見たり匂いを嗅いだり、すごい!を連呼
手頃な品を購入し、本題に入ろう

「実はこの辺りで騒ぎがあったと聞いてな。墓守、門番、老婆が怪しいとの噂がある。彼等に関して知っている事があれば教えて欲しい」

それともう1つ
【破魔】の気概で訝しむ様な目を向け問おう
「雑貨や古物の店を深夜まで開ける理由は何だ?ここは小さな農村、夜分遅くに開けても扱う商品の売上に繋がるとは思えんのだ」
お主……本物の商人なのであろ?

もし『吸血鬼』との言が出たら反応しよう
我は一度もそんな語を口にしておらぬでな



「うむ……小さな村だ、我の故郷を思い出す。吸血鬼が現れる前はさぞのどかで平和だったのであろう……ならばこそ、放ってはおけん!」
 危機に陥ったこの村を救う一助となるべく、藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)は迷いのない足取りで広場へと赴く。
「これはすごい、中々の品揃え……ぜひともじっくり吟味させてもらいたいぞ!」
 そうして店を開いている露天商に声をかけると、最初は訝しそうな顔をされたものの、力子の勢いに押されたのか、まあという風情で頷いた。
「好きにしなよ、けどお嬢ちゃんみたいな娘っ子に、うちの店の良さが分かるのかね」
「ふっ、こう見えても目利きには自信がある。たちどころに値打ちものを見抜いてくれよう!」
「別にいいがな、うっかり壊してくれるなよ……?」
 許可を得て、力子は食器や靴など雑貨類、狐っぽい可愛らしい動物の彫り物といった古物を目につく端から次々と手に取り、その度に瞳を輝かせてははしゃいだ声を上げる。
「こっ、これはなんとも、見る物全てが新鮮である! 見よ、この羽根ペン! どこからどう見ても羽根ペン! インクでものを書ける! 羽根が柔らかい! 筆舌に尽くしがたい味がある……!」
「お、おう……ペンだけにか……」
「こっちの鞄も……くんくん、使い込まれたすごい匂いだ! 多分上質な毛皮を用いて作られているのが分かるぞ……ぺろっ」
「舐めるな!」
「すまんすまん、お詫びに買わせてくれ……こっちの鈴もだ!」
 そんな感じで舐めるように見分しながらとにかくすごいを連発したり、難しい言い回しを適当に並べてみたりと、力子は思う存分ショッピングを堪能した。
「さて、帰るか……ではなかった。店主よ、少しばかり尋ねたい用件がある」
「はぁ……なんだね、改まって」
「実はこの辺りで騒ぎがあったと聞いてな。墓守、門番、老婆が怪しいとの噂がある。彼等に関して知っている事があれば教えて欲しい」
「と言ってもなぁ……まぁ、この広場は村の中心だから、結構色んな奴が行き交うのを見かけるよ」
 例えば、と露天商が指を上げる。
「犬の散歩に出かけてるばあさんとはたまに話したりするし、生活用品を売ったりするね。うちは質より量で勝負してるから、安値で買う方もリピーターがつきやすいんだ。朝と夜に二回、店の前を通るのを見ているけど、特に気になる点なんかはなかったなぁ」
「いつも通り、という具合か?」
「そうなるね。門番やってる若いのも同じ風だ。仕事前や休日なんかはうちへ寄って、雑貨とかを見て行くよ。……ああ、そういえば」
 と、露天商が思い出したみたいに付け加える。
「数日前の夜中に一度だけ、犬連ればあさんと店前で話してる時に、村のどこかから悲鳴が聞こえてきたんだ。俺達もびっくりしちまって……犬も吠えまくってなぁ。それですぐ慌てたように門番の若いのが走って来て、俺達にどこから声が聞こえたか尋ねて、そっちの方へ行っちまった。……いやぁ、あん時は心の底から驚いたし、怖かったね。人が殺されたって、しかも犯人はまだ見つかってないときた」
「では、老婆、お主、門番の三人は、同じタイミングで顔を合わせていた、と……」
「正確には悲鳴の直後だよ。もちろんその後には騒ぎを聞きつけた住人がどんどん顔を出して来て、広場はもうてんやわんやだったね」
「……墓守については?」
「さあなぁ。仕事上、そうそう顔を合わせるような間柄でもないし。……けど、この事件が起き始めてからこっち、よくうちへ立ち寄るようになったんだ」
「ほう、それは何のためにだ……?」
「ナイフとか包丁とか、刃物類を大量に買い求めて来るんだよ。中にはノコギリとか鉈とか、工作に使うような大物まで、それも真夜中に。うちとしては品物がさばけて大助かりだけど、どうにも人目を忍ぶみたいで、妙な按配なもんだ」
 それから、と露天商はごそごそと荷物の中から、一振りの高級そうなナイフを取り出す。
「どうだい、良く切れそうな逸品だろ? こいつはある商人からちょっとした事情で格安で譲り受けた品でね……ほら、ここにナイフを鍛えた職人の印がある」
 見れば、確かにナイフの柄に、稲妻のような刻印が彫られている。
 独特な形と大きさで、そうそう見落としはしないだろう。
「本当は二本あったんだけども、よっぽど気に入ったんだろうな、そのうち一本は墓守が買っていったんだ。大事にしてくれてるかねぇ」
 墓守に関しての話はこれくらいだ、と露天商が切り上げる。
 すると力子は。
「それともう一つ……雑貨や古物の店を深夜まで開ける理由は何だ? ここは小さな農村、夜分遅くに開けても扱う商品の売上に繋がるとは思えんのだ」
 そう、【破魔】の気概を鋭い眼差しとともに向け、低い声音で重ねて問いかける。
「お主……本物の商人なのであろ?」
「い、いや……そりゃそうなんだけども、それでも普通に夜まで粘ってたんだよ。それにさっき言った通り、最近は墓守がお得意様になってくれてるから、それなりに売れ行きも良かった」
 でも、と露天商は肩を落とす。
「それでも限界はあるからねぇ。そろそろ店を畳んで、別口を探そうと思ってるよ。正直墓守の行動も怪訝には思うけども、どうせもう村を離れるから関係ないしね。あーやだやだ、こんないわくつきの村には関わりたくないね」
 あんたもさっさとこの村から出て行った方がいいよ、と露天商に忠告され、力子は店を離れた。
「結局露天商殿の口からは、『吸血鬼』の一言も出はしなかったな……」
 さすが外部の人間らしくドライな反応で、事件そのものにも大して関心は寄せていないようだ。危険な夜まで頑張って店を開いているのも、自分はよそ者だから狙われない……などという考えが根底にあるのかも知れない。

 これで容疑者全員の証言は出揃った。
 このうち、誰かが嘘をついているのか。平然と猟兵達を欺いているのか。
「……これ以上の問答をするならば、他の者から集めた証言をぶつけていけば、行動の裏付けが取れ、それぞれのアリバイもはっきりまとめられるであろうが……それだけに時間を費やしていてもいいものか」
 念を入れるなら、証拠となりそうな物品の一つくらいは手に入れたいところだ。
 力子は購入した鞄に鈴をくっつけ、よっこらしょと抱えて歩きながら、思索を巡らしていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

須藤・莉亜
「さてと、君の出番かな?」

容疑者たちの話を聞く前に眷属の狼くんを召喚して、僕の影の中に潜んでもらっておく。

僕の方は容疑者たちと適当に話をして、狼くんには彼らに血の臭いが付いてないかを調べてもらう。
ヴァンパイアだったらけっこう血の臭いしてると思うし。

血の臭いがしている人がいたら、狼くんにはそいつの影に入ってもらって尾行してもらう。

「何かわかればいいけどね」
僕はその間村を見て回っとこうかな。



「さてと、君の出番かな?」
 須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は物陰で、眷属である血が好きな漆黒の狼を召喚し、自らの影の内側へと潜ませる。
 準備を済ませて歩み出ると、現在挙がっている容疑者を順番に訪ね、聞き込みを始めた。
 また新たな証言が得られる可能性もあるが、本命は影へ潜ませた狼に、彼らの中に血の臭いが付着していないか、探らせるためである。
「なんだい、庭でうちの犬が吠えてると思ったら……また客かい?」
「可愛い犬くんだね」
「そ、そうかい……?」
「ワンワンッ!」
(「おばあさんには、狼くんは反応せず……と」)
「やれやれ、辛気くさい村だ、明日には商品を抱えて出て行くとしようかね」
「その前に、品物を見せてもらっていいかな?」
「あぁ、構わないよ……」
(「露天商さんも、違う……」)
「俺、今夜を無事に生き残ったら、酒場の看板娘のあの子に告白するんだ……」
「頑張ってねぇ」
(「門番の彼からも、臭気は検出されてないかな……代わりに死相が出てる気がするけど」)
「へへへ、こんな陰気な場所に足を運ぶなんざ、物好きもいるもんですねぇ」
「……亡くなった人達に、お祈りをしたくって」
 するとその時――莉亜の影から、身じろぎするような反応があった。
(「これは……」)
 莉亜は適当な世間話をしてから墓守と別れ――去り際に、漆黒の狼が自分の影から、墓守の影へするりと忍び込んで行くのを見届ける。
「何かわかればいいけどね」
 後は村の様子を見て回っていると、ふと物陰から狼が顔を覗かせている所に合流した。
「ありゃ、見失っちゃったんだ……おかしいね、君の尾行を普通の人が撒けてしまうなんて……それもこんなに早く」
 とはいえ、墓守が異様なまでの血臭を纏っている事は、狼の報告から伝わって来る。
 そして狼は、おもむろに莉亜に目配せすると、暗がりの路地へと影伝いに入り込んでいった。
「他にも何か、見つけてくれたのかな……?」
 五感を共有してはいるが、実際にその場へいないと分からない事もあるだろう。莉亜は後について、ひと気のない路地の一つへと差し掛かる。
 そうしてほどなく、発見した。
 道の溝に打ち捨てられている、濃厚な血の臭いを漂わせる、白い袋を。
「墓守を尾行している最中に……横道で見つけたって事? ……調べてみよう」
 中身を探ると、そこに包まれていたのは、刃先がまだらの黒色に染まった一本のナイフだった。
 柄には『稲妻の刻印』がされ、一目見ただけで高価な品だと見当が付く。
「この黒ずんで凝固したものは……血糊だね。付着してから、少なくとも一晩は経っているはず……」
 どうして、ナイフなどがこんな場所に落ちているのか。それも、人目につかないようわざわざ袋に包んで。
 それに、この血は何なのか。動物のものか。
 それとも……犯行に用いられた、凶器なのか。

 ――ついに、犯人を追い詰めるに足り得る、決定的な物証を見つけたのかも知れない。
 そろそろ、犯人が誰かを指名し、対決に向かってもいいだろう。
 今までに収集した証言や証拠を一つずつ結びつければ、おのずと犯人(クロ)は見えてくるはずだ。
 自分を信じて、一番怪しい奴へ、調査の成果を叩きつける……。
 もちろん探索を続行して、手がかりを補強していくのも問題ない。
 太陽はゆっくりとだが傾き、村には不安、恐怖、怒りと悲しみが広がり始めている。
 今夜に犠牲者が出るのか出ないのか。
 それを左右する天秤は、猟兵の手に委ねられている――。

成功 🔵​🔵​🔴​

ノワール・コルネイユ
そろそろこのゲームとやらを終わらせたいところだ

試しに発見された血塗れのナイフの血を【吸血】で舐めとってみよう
吸血鬼にとっての半端者…ダンピールであるこの身なら
これが人の血かどうかぐらい判るかもしれない
もしそうなら、これが凶器であると判断出来るだろう

同業達が集めた情報を集約し、墓守を尋問に向かおう

面白いものが見つかってな
この血濡れのナイフ、人目に付かない様に捨てられていたそうだが
中々の名工の品で本来は高級品らしいぞ

実はこいつな…この村には2本しか存在してないんだ
1本は、真っ新な状態で商人の手元にまだある
…そしてもう1本がこれ

なあ、こいつの買い手が何処の誰か言質は取れている
無関係だとは言わせないぞ



「空も暮れなずみ始めている……そろそろこのゲームとやらを終わらせたいところだ」
 赤みがかる空を仰いだノワール・コルネイユ(ル・シャスール・f11323)は、同業者達によって発見されたナイフの、刃先に凝固した血を口元へ運ぶと、舌先で舐め取る。
 吸血鬼にとっての半端者……ダンピールであるこの身ならば、血の正体の判別もつくだろうと考えての事だった。
 果たしてノワールは、しばし吟味するようにまぶたを閉じ――やがて確信を得た風に、ゆっくりと開く。
「……やはりな」

 一層影の深まった墓地は、今しも亡者の群れでも這い出して来そうな程に、不気味な静けさと陰鬱さを増している。
 小屋から呼び出された墓守は、訪ねて来たノワールに向けて、やれやれと言わんばかりにため息をついた。
「一体何事です? しばらくすれば恐ろしい吸血鬼の動き出す夜……こんな時間に、一人で出歩いているなんて」
「いや、なに、面白いものが見つかってな……」
 ノワールは夕暮れの日差しへ照らすかのように、『稲妻の刻印』がされた、血濡れのナイフを持ち上げて見せた。
「このナイフ、人目に付かない様に捨てられていたそうだが……見覚えはないか?」
「……いやいやぁ、こんなべっとり血のついた代物、ブランド物でもいりませんよあっしは」
「そうか……偶然だな、なんでもこいつは中々の名工の品で、確かに本来は高級品らしいぞ」
「さ、さようですかい……いやぁ、あっしの目もそこまで捨てたもんじゃないですな」
 視線が左右へ泳ぎ、明らかに動揺している。
 そして尋問も、ここからが本題だ。
 ノワールは声を低めて、半歩、墓守へ詰め寄った。
「実はこいつな……この村には2本しか存在してないんだ。1本は、真っ新な状態で商人の手元にまだある……そしてもう1本がこれ」
「……それが、どうなさったんで?」
「なあ、こいつの買い手が何処の誰か言質は取れている。そしてそいつは――私の目の前にいる。……無関係だとは言わせないぞ」
 墓守は、押し黙った。
「おまけに、この血は人のものだ。どうしてそんなものが捨てられていたのか。……殺人に使われた凶器だからだ」
「いや……しかし、あっしが犯人だっていう、証拠とするには弱いんじゃ……」
 まだしぶとく言い逃れするつもりらしい。ならば、とノワールはさらに問い質す。
「今日は朝から村を歩き回って、色々と証言を集めてきた。犯行が夜に行われる以上、その時間帯に行動している容疑者の4人……この中にアリバイを持たない者が、犯人である可能性が高い……違うか」
「まぁ、そうですが……」
「気になったのは、証言の食い違いだ。お前は門番や老婆と良く顔を合わせているらしいが、2人が話すには事件が始まってから前後、そんな事はほとんどないらしい」
「そ、それは、たまたまじゃあ……」
「もっと言えば、老婆、門番、露天商の3人は夜に一度、広場へ集合しているが……その中に墓守は登場して来なかった。これも1人だけにアリバイがない事を証明している」
 墓守はうつむき、わずかに震えている。
「そして……その総身から醸し出す濃密な血の臭い。それが何より物語っているんだよ――犠牲者達の怨念が、犯人はこいつだ、とな……」
 ノワールがそう言って、墓守を鋭く睨み据えると……――。
「ふふふ……ハハハハハハハハ!」
 うなだれるようにしていた墓守は……否、この事件の犯人は、肩を揺らして笑い始めたのだ……!
「いやいや、見事見事! こんな風に正体を見破られたのは、実に久しぶりだ! いやはや、実際私も飽き始めて、そろそろ村の連中を皆殺しにしてやろうかと考えていたのだが……ゲームというのは根気強く続けてみるものだ!」
「大当たり、か……」
 そこにいたのは、もはやみすぼらしい風貌の墓守ではない。
 周囲に蝙蝠を呼び出し、愉快そうに哄笑する長身痩躯の黒髪の紳士……この狂ったゲームの開催者、ヴァンパイア本人である。
「何にせよ、もうお遊戯は終わりだ。覚悟してもらうぞ」
「終わり……? 何を言っているのかね。緒戦こそ君達に一本取られたが、ゲームはここからが第二ラウンドだ」
 なに、とノワールが身構えたままかすかに目を見開くと、ヴァンパイアは蝙蝠達の群れに身を潜ませ――そのままなだれ込むように、背後にある墓守小屋へと入っていく。
「逃げる気か? ……そうはさせるか……!」
 後を追って小屋へ踏み込むと、なんと部屋の隅にある床が四角くくり抜かれ、地下へ続く入り口が開けられていた……!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『屍血流路』

POW   :    再び動き出さないよう、ひたすら破壊し燃やせばいいだろう。。

SPD   :    最奥にいる元凶を倒せばあるいはすべて解決できるだろう。

WIZ   :    再生の仕組みを解明すれば怪物を生み出せなくできるだろう

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


墓守小屋内の梯子を下りた先には、薄気味悪く寒々しい通路が奥へと伸び、先には鉄製の赤く錆び付いたドアが無機質に佇んでいる。
 そのドアを開けると、むっと鼻をつくような、強烈な臭気が猟兵達を襲う……!
 目前に広がっていたのは、さながら迷路のような曲がりくねった石壁の空間。
 そうしてどこまでも続く赤、赤、赤。大量の屍肉、腐肉。
 バラバラになった人間の四肢が、骨が、臓器が一面に散乱し、膝下まで溜まった鮮血の池の表面に浮いて、時折ぽこぽこと泡を立てている。
「ようこそ、我が秘密の拠点へ! 私の名前はキラージャン! ここは私が殺した人間を使って様々な研究を行う実験場……」
 どこからともなく残響のように、ヴァンパイア、『キラージャン』の笑い声が届いてくる。
「諸君らの頭脳の程は計らせてもらった、では腕の方はどうかな?」
 するとその瞬間、無惨に散らばっていた屍達がうぞうぞと血の池から起き上がり、こちらめがけて迫って来る!
「立ちはだかるあらゆる困難を突破し、最奥まで来られたならゲームセット――私自らが相手をしてやろう! どうだ血湧き肉躍る展開だろう、待っているぞ、ハハハハハ!」
 嘲笑が途絶える代わりに、亡者達の理性なきうめきが地下空間内に満ちる。
 彼らがこの村で犠牲になった者達のなれの果てだとしたなら、数はゆうに数十を超えているだろう。
 足下は血でぬめり、問題なく歩ける足場はわずかだ。血の池の深い部分から来る奇襲にも注意したいところである。
 【POW】とにかく大量の敵を倒す。
 【SPD】奥へ進んでキラージャンの元へ辿り着き、仕掛けを解除させる。
 【WIZ】亡者達を操っている魔法陣を壊していき、仕掛けを解除する。
 実験場内部はさほど広くはなさそうだが、地形は入り組み、足場は悪く、亡者達の妨害もある。
 さらに処理加工用の残虐なギロチン、シュレッダー、プレス機などが行く手を阻むだろう。
 ところどころに点在する魔法陣は妖しく光っていて発見は容易であり、攻撃を加えれば破壊可能だが、その手前には複数の屍が組み合わさった巨大亡者がうごめき、守りを固めている。
 どう攻略していくかは猟兵達次第だ。なんとしてでもキラージャンの元まで到達し、今までの借りをまとめて返してやろう……!
架空・春沙
ヴァンパイアの仕業と聞いては、見過ごせません
必ずや断罪しなければ

私は大量の敵を倒すことに専念しましょう
そうすれば他の方が突破しやすくなるでしょう
無粋かもしれませんが、数には数で対抗です、『殺戮ハウンド』の出番ですね
単純に50体呼べます
2回攻撃込みなら100体ですかね
さぁ、行ってきてください、猟犬達よ
倒れるまで、一体でも多くとにかく沢山排除するのですよ

周囲は警戒し、第六感で奇襲を察知したらその場から猟犬を離れさせます
私自身は殆ど動きませんけど、猟犬の数は長く維持しておいた方がいいですからね
私自身に攻撃が向けられた場合は武器受けで受け止め
断罪の緋鎌で応戦します



そこら中の血だまりから、胸の悪くなりそうな音と死臭を発し、哀れな亡者達が這い出して来る。
 その多くが肉体を欠損し、一歩進むごとにねちゃりぐちゃりと肉片をずり落とさせているが、腐り落ちた眼窩の奥からは猟兵達への粘ついた殺気が放たれている。
「このような有様……なんとむごたらしい。これがヴァンパイアの仕業と聞いては、見過ごせません……必ずや断罪しなければ……!」
 彼らに必要なのは哀れみや同情ではない。
 その苦痛を鎮めるための速やかで冷徹なる終焉と、懺悔すら許さぬヴァンパイアへの鉄槌なのだ。
「さぁ、行ってきてください、猟犬達よ」
 だから架空・春沙(緋の断罪・f03663)は針金細工の猟犬達を周囲に呼び出すと、合図代わりに細い指をぴんと差し向け、亡者の群れへと一斉に飛び出させる。
 その数、50……襲い来る敵の前線を食い止めるには、充分な量ではあったが。
「さらに、増援を……無粋かもしれませんが、数には数で対抗です」
 それに加えて、再び50もの【殺戮ハウンド】を召喚し、後詰めを務めさせる。
 総計にして、100体――もはや所狭しと猟犬達が地下を駆け回り、暴れ回り、目につく端から亡者どもへと食らいつき、叩き伏せていく。
「倒れるまで、一体でも多く……とにかく沢山排除するのですよ」
 とはいえ亡者達は今にも脆く砕けそうな姿をしていながら、さすがにヴァンパイアの用意した手駒と呼ぶべきか、改造されたその強靱な肉体に任せ、反撃を開始していた。
 対峙した猟犬と爪で引き裂き合い、あるいは互いに食いちぎり合い、時には数体まとめて倒れかかり、その重量で猟犬を押し潰したり。
 どちらも血の朱色で全身を染め抜き、赤い塊がもつれ合っているような状態だ。
「……そこ、回避して下さい!」
 しかし、そんな血みどろの大乱戦のただ中においても、春沙は鋭く周囲を見渡し、気配を殺して隙を窺う亡者の奇襲から、猟犬達を的確に退避させる。
 そして逆に手痛い反撃を食らわせ、少しずつ流れをこちら側へと引き寄せていくのだ。
 質で言えば敵がやや上回っている以上、不意打ちを受け続けるような事態となれば長くは保たない。
 ゆえに戦況に応じて猟犬へ素早く指示を飛ばし、常に数で優位を作りながら攻めさせ続ける。
「やはり、こちらにも来ましたか」
 と、そこで春沙は、得物の大鎌をやおら逆手に持ち替えると、背中越しに構え――飛びかかって来た亡者の爪を、その緋色の刃先でしっかりと受け止めてのけた。
 そうしてそのまま振り向きもせず大鎌を横へ薙ぎ、亡者の胴体を泣き別れさせたのである。
「少しでも敵を倒せば……続くみなさんがより突破しやすくなるはず」
 ならばそれまで、春沙に後退はない。
 むしろ敵を全滅させる勢いで、猟犬達とともに、断罪の緋鎌を縦横に振るい血しぶきを舞わせ続ける――!

大成功 🔵​🔵​🔵​

アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

知的な挑戦を好む割には美的センスは壊滅的のようですね。
この赤一色の部屋を早く抜けましょう。
血の臭いも、足の裏に滑りつく血の感触も、死者を弄ぶ醜悪な心理も。
五感を通して私を不快にさせます。

私は魔法陣の破壊を試みましょう。
死者に安寧を、一刻も早く。
魔法陣の前に陣取る敵にホワイトファングを放ちます。
動きを封じている間にホワイトブレスで遠距離から魔法陣の破壊を。
もし上手く破壊できない場合は、仕方ありません。
気が進みませんがホワイトブレスを敵に放ち、もう起きることの無い様に破壊します。
必要であれば『槍投げ』『串刺し』で破壊しましょう。
死者を屠り終わった後には祈りを。
それしかできませんから。


藏重・力子
まるで悪夢、であるな……
安寧を取り戻す。決意で己を奮い立たせ、いざ!

※アドリブ歓迎

我は魔法陣を破壊し、仕掛けを解除して進もう
近付いてくる敵の亡者には【破魔】の気を込めた薙刀で【なぎ払い】
奇襲にも警戒し、慎重に歩みを進めるぞ

魔法陣を発見したら、自ら巨大亡者の囮になる
十分に注意を引いたら『司鬼番来・元』!
「盟友よ、腕の見せ所であるぞ!」
召喚した巨腕の「ぐどう」殿で、魔法陣めがけて攻撃だ!

処理加工用の物に突き当りそうであれば、
召喚した「ぐどう」殿を使い、撃ち出して壊すか、動かして除けたりできないか試そう
無理であれば作動した後の隙を狙って素早く通るしかないか

命を奪い、愚弄する者よ
首を洗って待っておれ!



飛び散る鮮血。へばりつく臓物。鼻の曲がりそうな異臭。乱反響する、亡者達のおぞましいうめき声。
「まるで悪夢、であるな……」
 酸鼻を極めるその光景に、藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)は一時言葉を失う。
「知的な挑戦を好む割には……美的センスは壊滅的のようですね」
 アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)も眉をひそめるが、目を逸らすような真似はしない。
 どれだけ悲惨でも、直視しなければ――立ち向かわなければ、この悪夢は終わらせられないのだから。
「キラージャンとやらを討ち果たし、必ずや安寧を取り戻す……村も、命を辱められた彼の者達の魂にも。そうであろう……!?」
「その通りです」
 血の臭いも、足の裏に滑りつく血の感触も、死者を弄ぶ醜悪な心理も。
 五感を通してアリウムをこの上なく不快にさせ――そして同じくらいに、悲しい。
「そのためにもまずは、この赤一色の部屋を迅速に抜けましょう」
 静かに、けれど力強く頷いて見せたアリウムに、力子も胸に抱いた決意一つに気合を込め直し、己を奮い立たせる。
「……いざ!」
「死者に安寧を、一刻も早く……!」
 2人は同時に踏み出し、ためらう事なく血溜まりを突き進む。
 狙うは亡者達を操作する魔法陣。数は多いものの、それさえ壊せば魔力の流れは途絶え、この胸くそ悪い仕掛けも解除されるはずだ。
 たちまちの内に、数体の亡者達が2人へ寄り集い、千々に引き裂こうと殺到してくる。
「退けい、邪魔をしてくれるな……!」
 対して、力子は【破魔】の気を込めた薙刀を腰溜めにしっかりと構え、勢いよく大振りの薙ぎ払いを放つ。
 鋭利に、そして充分なスピードを乗せた一撃は亡者達に反応させる暇もなく、3体を豆腐のように両断し、上半身を叩き落とさせる。
 本来であれば、魔法陣が存在し続ける限り、亡者達は何度でも蘇るのだが――破魔の気をまともに浴びたためか、しゅううと煙のようなものを発し、起き上がる気配はない。
 そして力子の隙を塞ぐように、アリウムが氷華の刺突をすかさず繰り出せば、氷の魔力を流し込まれた亡者達はみるみる凍り付き、これまた氷像の如く行動不能に陥っていく。
「奇襲にも警戒し、慎重に歩みを進めるとしようぞ……!」
「はい。特に水深の深い場所は、避けていきましょう」
 やがて魔法陣の一つがある、通路の奥へと辿り着く。
 妖しく輝く魔法陣の手前には、複数の死体が団子みたいに組み合わさって四方から手足の突き出た、一際巨大な亡者が立ちはだかっていた……!
 しかもご丁寧に、巨大亡者の奥にはさらに巨大プレス機が上下しており、侵入者を阻む壁とトラップの役割をいやらしく果たしている。
「良し……ここは我が囮となり、奴の注意を引こう」
「分かりました。では私はその間に、死角から敵の動きを止めてみます」
「頼んだぞ……ではゆくか!」
 短く互いの役目を確認し、まずは力子が駆け出して、巨大亡者の眼前へと近づいて行く。
 すると巨大亡者は無数の腕を振り回し、血の池を波打たせながら、力子をひねり潰そうと迫って来るではないか。
「来るか……っ!」
 力子は敵の動きに合わせて斜め左奥へと一足飛びに避け、すんでのところで攻撃を躱しながら距離を取る。
「今です……!」
 そこを逃さず、アリウムは体勢を崩してよろめいている巨大亡者へ狙い澄まし、氷の弾丸を射出する!
 一発の氷塊は巨大亡者の背面へ一直線に飛来し、そうして砕けるような音とともに着弾。
 ちょうど身体の中心部を凝結させられた巨大亡者は、まるで身体の軸を見失ったみたいに、意味なく腕をぶん回してぐるぐる回り始めたのである。
 一方で力子は先ほど回避した時、したたかに血溜まりへ顔から突っ込み、身体の前面が真っ赤に染まってしまったものの。
 すぐさま身を起こすとここぞとばかりに魔法陣へ向き直り、掲げた指で素早く印を描いた……!
「盟友よ、腕の見せ所であるぞ!」
 印から呼び出されたのは、碧色の巨腕『ぐどう』。
「一気に片付けましょう……!」
 アリウムもタイミングを合わせ、ホワイトブレスで通路の血溜まりと、そしてプレス機ごと極低温で白い世界へ変えていく。
 続けざまに『ぐどう』が殴りかかり、凍ったプレス機を猛烈な打撃で砕き飛ばすと、勢いそのままに最奥の魔法陣を両の拳でブチ抜いた!
 どぐしゃあ、と派手な壊音を上げて魔法陣が四散し、2人を追い詰めようと迫っていた亡者達のグループが、物言わぬ屍へと還っていく。
「や、やったぞ……ぬおぉ!?」
 見事仕事を果たしたのも束の間――動きを停止した巨大亡者の残骸が、ぐらりと傾いで力子へ倒れかかって来たではないか。
 だがその矢先、アリウムが投げつけた白い短槍が巨大亡者をやすやすと貫き、通路の壁へと縫い付けてのけたのである。
「なんとか間に合いましたね」
「おお、アリウム殿、感謝するぞ!」
 アリウムは活動を止めて地に伏せる亡者達を前に、瞑目して短く黙祷を捧げる。
 彼らにはこうして、祈りを捧げる事しかできない……それに今は、他にも苦しむ死者達が、そしてやるべき事が残っている。
「さあ、続けましょう……魔法陣はこの一つで終わりではありませんから」
「うむ! おのれ吸血鬼……命を奪い、愚弄する者よ――首を洗って待っておれ!」
 2人は通路を駆け出す。一刻も早く、この悲劇を終わらせるために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ノワール・コルネイユ
冗談が過ぎるな…この光景は

…この、ヒトと死者の血が混ざった匂い
私には刺激が強過ぎる

数はそこそこ減って来た様だ
血路は開きつつある

それなら、私はもう一押しに出るとしようか
【第六感】で罠や奇襲を警戒しつつ、より奥に飛び込んで
奴の近くに居る亡者達を相手しに行くぞ

一匹一匹は大したことないが、数はまだ居そうだ
『魔を祓う銀の剣』を攻撃力重視で使い【2回攻撃】を交えながら
一体に掛かる時間を減らし、着実に数を減らしていこう
亡者を一体でも多く倒すか、気を惹くかが出来れば重畳
その隙に仲間がキラージャンへ肉薄出来るなら尚のこと善しだ

お前の血を以って、この地獄を終わらせてやる
ゲームだなどと笑っていられるのも今の内だけだ



「冗談が過ぎるな……この光景は」
 半分気化した血がどろついた空気を纏って赤い霧のように漂い、血液のプールを亡者がもがき、溺れるように這い回る。
 常人ならばとうに気を失っているであろう阿鼻叫喚の地獄絵図を前に、ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)もまた、踏み込んで行く。
「……この、ヒトと死者の血が混ざった匂い。……私には刺激が強過ぎる」
 言葉とは裏腹に双眸は素早く敵の位置を確認し、懐から一対の【魔を祓う銀の剣】を取り出すと、慣れた構えを取ってざわつく心を鎮めていく。
 仲間の猟兵達が戦闘を重ねてくれているおかげで、亡者の数は減退して来ている。
 当初と比べて残りは約半分、といった具合だ。
「文字通り、血路は開きつつある……それなら、私はもう一押しに出るとしようか」
 直感を研ぎ澄まし、一つの刃となりて、ノワールは黒い影のように疾駆する。
 血溜まりを蹴散らし、通り過ぎざまに亡者を撫で切りにし、いまだルートの確保されていない、キラージャンの元まで続くと思われる通路へと斬り込んでいく。
「思いのほか、足が重い……血液の沼とは、やってくれるな」
 先へ進めば進むほどに血の嵩は増し、狭い通路には亡者達がまだまだひしめき合っている。
 だがその状況は、ノワールにとっても好都合。
 付近の敵を一掃し、最深部への路を開くべく、片っ端から斬って斬って斬りまくる!
 それに機動が鈍いのは亡者とて同じ事だ。
 その腐った肉体に剣先が取られぬよう、攻撃重視とした銀の剣閃を数多と放ち、迫る死者の群れを刻み散らして寄せ付けない。
「一匹一匹は大したことないが……罠の数も増えて来たな。ある意味それも目印か」
 血液プールを隠れ蓑とするが如く、突然上や下からギロチンや巨大な針が突き出して来る。
 ノワールは壁や別の足場へアクロバティックに跳躍しながら難を逃れるも、いずれも血糊のせいで足下がぬめり、あまり頼りにはできそうにない。
「ちっ、死体の中に死体とは……本当にいい趣味だ……!」
 時にはただの死体の山も積み上がっており、ならば安全かと近づけば、そこから無数の亡者の腕が飛び出して来るのだ。
 とっさに双剣を十字に叩き込んだ衝撃で跳ね上がり、これまたしなやかに宙へ躱しつつ、ノワールは敵を引きつけながらその数を減らしていく。
「こんな状況下で、転倒でもしようものなら命取りか……だがな」
 屍山血河を踏み越えて、その隙に仲間が奴へと肉薄出来るなら、この程度の修羅場、いくらでもかいくぐって見せよう。
「キラージャン……お前の血を以って、この地獄を終わらせてやる。ゲームだなどと笑っていられるのも、今の内だけだ……!」
 弧を描く美しい銀の光。その度に飛散する鮮血。崩れ落ちる死者達。
 果てのないかと思われる通路の先から、終わりなき悪意の哄笑が、聞こえて来るかのようだった――。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。真面目に仕事をしているはずが無いと思っていたけど…
想像以上の下劣さ、ね。キラージャン。
今はまだ、そうして馬鹿みたいに笑っていると良い
…この報いは、その生命で償ってもらうから

…私は【見えざる鏡像】を発動して不可視化して行動
他の猟兵が派手に暴れて敵の目を引き付けてくれている隙に、
存在感を消しながら亡者の行動を見切り、
脇を通りぬけ魔法陣の破壊を目指す
罠や奇襲は第六感を頼りに回避し可能な限り目立たないよう動く

もしも戦闘になったら大鎌の刃を突き刺して生命力を吸収し、
怪力任せに力を溜めた大鎌を薙ぎ払い、傷口を抉る2回攻撃で仕留める
彼らも吸血鬼の犠牲者。これ以上、傷付けたくはないけれど…ごめんなさい



「……ん。真面目に仕事をしているはずが無いと思っていたけど……」
 初めにリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が訪れた、村の墓地。
 あれだけ林立していた幾多の墓には、何の事はない、遺体など一つも入ってはいなかった。
 もっと恐ろしく、冷たく、残酷な場所へと、残らず持ち去られていたのだ――。
 彼女の眼前には、死者の尊厳が奪い去られ、遺族の悲しみをも踏みにじられた、犠牲者のなれの果て達が苦悶しながらうごめいている。
「……想像以上の下劣さ、ね。キラージャン」
 リーヴァルディは【見えざる鏡像】を発動し、その身を溶け込ませるように透明なものへと変じさせていく。
 自身が完全に不可視化した事を確認し、血液の池へと足を踏み入れた。
 姿こそ敵から見えなくなっているものの、粘性の液体を進む足音や、かき分ける臓腑の動きなど、細かな気配までは殺しきれない。
 かといって慎重になればなるほど移動に時間がかかり、その分疲労は蓄積していくだろう――。
 だが、この場にいるのはリーヴァルディだけではない。仲間を援護するため、他の猟兵達もまた、あちこちで激しい戦いを繰り広げている。
 それだけ敵の注意が引きつけられている今ならば、多少の違和感など些細なもの。
 加えてリーヴァルディの存在感を消す技能をもってすれば、戦闘そのものを回避しつつ、目的の魔法陣へと接近する事が可能だった。
「でも、罠だけには気をつけないと……」
 たとえ身を躱しても、周囲の敵に物音で気取られる危険性もある。
 そもそも作動自体をさせないよう迂回もしつつ、リーヴァルディは不気味に発光する魔法陣の前に辿り着いていた。
 とはいえ、隠密に進めるのはここが限度。魔法陣までの細い通路には、団子状になった巨大亡者が壁のように立ちふさがっているのだから。
 時間をかけてはいられない。リーヴァルディは【見えざる鏡像】を解除し、大鎌『グリムリーパー』を両腕で構えると、血の飛沫を跳ね上げて駆け出した。
 巨大亡者がてんでばらばらに振りかぶる腕を身を低めて避け、下方から打ち上げる勢いで一息に何本もの腕を斬り散らし――痛みのあまりに魂切るような悲鳴を張り上げる亡者の塊へと駆け上がると、体重をかけて大鎌を振り下ろす。
 密集した亡者の顔面を大鎌の刃が引き裂きながら深々と入り込み、出がらしのような生命力をなおも吸い上げ、動きを鈍くさせていく。
 奇怪な姿へと作り変えられた、彼らもまた吸血鬼の犠牲者。
 できるものなら、これ以上傷付けたくなどない。
「……ごめんなさい」
 だがそれでもやらねば。血の涙を流し続ける亡者の顔を見下ろし、詫びにもならないとは思いつつも、リーヴァルディはそのまま、突き立てた大鎌を力任せに薙ぎ払った!
 通路中に、鮮血が噴水のように吹き上がってまき散らされ、返す刀のもう一振りが、一撃目と寸分違わぬ箇所を叩き斬って、巨大亡者を崩落させた。
「これで、最後……!」
 さらに半身をひねり、回転を加えた大鎌を魔法陣に叩き込むと、爆ぜるような火花を上げて、魔法陣は砕け散る。
 その直後には、地下室内のそこかしこで亡者達が物言わぬ肉塊へと戻っていき、脳を削るような惨憺たるうめき声もなくなった。

「どうやら魔法陣を全て破壊したらしいな。うんうん、ここまでやるとは驚きだとも」
 すると、またしてもどこからともなく、キラージャンの冷笑含みの声が響いてくる。
 リーヴァルディはすぐさま身を翻すと、飽きもせずたわごとをほざき続ける声の聞こえてくる方へ、猛然と走り出した。
「今はまだ、そうして馬鹿みたいに笑っていると良い……この報いは、その生命で償ってもらうから……!」
 そうして、とうとう――猟兵達は、諸悪の根源の元へと、辿り着いた……!

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『ヴァンパイア』

POW   :    クルーエルオーダー
【血で書いた誓約書】が命中した対象にルールを宣告し、破ったらダメージを与える。簡単に守れるルールほど威力が高い。
SPD   :    マサクゥルブレイド
自身が装備する【豪奢な刀剣】をレベル×1個複製し、念力で全てばらばらに操作する。
WIZ   :    サモンシャドウバット
【影の蝙蝠】を召喚する。それは極めて発見され難く、自身と五感を共有し、指定した対象を追跡する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「どうかね、この催しは楽しんでもらえたかな」
 ヴァンパイア『キラージャン』が待ち受けていたのは、地下室の最深部となっている、吹き抜けのようにくり抜かれた円形の広間だった。
 外周部の床は切り取られ、その下には太く白い針が山のように連なっている。
「優秀なプレイヤー達だが……そろそろゲームオーバーになってもらおう。私もまた新天地へ赴き、新しい遊びを考えなくてはならんのでね」
 どこまでもゲーム気分、といった風情でキラージャンがぱちんと指を鳴らすと、周囲の壁面に柔らかな明かりが灯る。
 そこに等間隔に並んでいたのは、ナイフで頭部を串刺しにされた、生皮のない死体達だった。
 生きたまま皮を剥いで腹を切り開き、その中にランタンを入れて、魔力で明かりをつける事で、鮮やかな赤い光を作り出すという、キラージャン渾身のロマンチックな仕掛けである。
「さあ、デスマッチの開幕だ! ベットするコインはお互いの命! 私は逃げも隠れもしない。生きるか死ぬか、ラストゲームとしゃれ込もう!」
 懐から禍々しい形状のナイフを一本取り出し、両腕を広げて開催を告げるキラージャン。
 今こそ奴を打ち倒し、この狂気に終止符を打て……!
リーヴァルディ・カーライル
…私は他の猟兵と連携を取り
常に挟み撃ちできる位置取りを心掛け
背後や側面から攻撃するよう心掛ける
…これは遊びじゃない。吸血鬼の狩り方を教えてあげる

事前に【常夜の鍵】を装備に刻んでおく
敵の行動を見切り、2回攻撃を主軸に攻める
力を溜めた怪力で大鎌をなぎ払い、即座に呪詛を込めた銃撃を行う
傷口を抉る弾丸が命中した敵に血の魔法陣を刻む

第六感が危険を察知したら回避行動をとる
騎士鎧の炎で自分自身を形作れるように改造しておく
回避しきれない攻撃やUCは武器で受け
外周まで吹き飛ばされた振りをして鎧を残して異空間に退避
死んだ風に変装し追跡を振り切った後、
敵の魔法陣から奇襲を行い生命力を吸収する
…ん。戯言は聞き飽きた


アリウム・ウォーグレイヴ
アドリブ歓迎

50の命。50の人生。50の家族。50の……。
考えるとキリがない。あの敵に狂わされたものが多すぎますね。
ちらりとあのお婆さんの懐中時計が頭を過る。
あの敵はこれをゲームといった。しかし、あの顔に刻まれた悲哀をそんな言葉で片付ける事はできません。
この敵に報いを、奪われていった者達のためにも。


敵へホワイトファングの『属性攻撃』で動きを牽制、封じつつ、接近を試みましょう。
接近戦へ持ち込めたらホワイトパスで攻撃を読みつつ、他の猟兵へ攻撃が及ばないように注意を引きつけます。
私でなくてもいい。誰かこの敵に報いを!


死者を元ある場所、墓所へ埋葬したいですが、ここまで損壊しているとできるのでしょうか?


藏重・力子
なんと悪辣な。つくづく、はらわたが煮えくり返る
「お主の行く末は生でも死でもない、無であるぞ!」

我は露払いに努めようぞ
影の蝙蝠が召喚されたら『フォックスファイア』
狐火を全てバラバラに、なるべく広げて出現させ操作
蝙蝠を照らし出しては、発見次第撃ち出して倒そう
「飛んで火にいる何とやら!」
接近されたら薙刀で【なぎ払い】である

敵の他の攻撃は、針山に落ちぬよう注意しながら回避
小賢しく動いて立ち回る
また、キラージャンに隙が生じれば機を逃さずに『巫覡載霊の舞』を発動
【破魔】の衝撃波で攻撃!

魂や体は誰の玩具でもない
死者と生者の嘆きと悲しみをこれ以上増やして堪るものか!

「これからは村の皆が安心して眠れると良いな」


ノワール・コルネイユ
この期に及んで大した余裕なことだな
こっちは散々手間を掛けさせられたんだ
手緩い仕置きで済むと思うなよ

…とは言え、実力に不足は無さそうだ
苛立ちに目を曇らせるべきではないな

一気に仕留める必要はない
まずは咎力封じを使って奴の拘束を狙い
その勢いを削いでやろう
【2回攻撃】を利用して拘束の機会を増やそう

一度動きを鈍らせたら根競べだ
少しでも長く拘束を維持して
仲間が強力な攻撃を見舞う時間を稼いでやる
簡単にくたばってくれるなよ、外道

針の筵に落とされることが無い様に【第六感】を常に働かせ
奴の一挙手一投足を警戒する

死人の血を啜ってまで辿り着いたんだ
みすみす逃しはしないさ
お望み通り、ここでラストゲームにしてやる



「50の命。50の人生。50の家族。50の……考えるとキリがない。狂わされたものが多すぎますね」
 荒廃した村の様子が、そして寂しげな老婆の手にあった懐中時計がちらりとアリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)の脳裏をよぎり、いたたまれぬようにかぶりを振る。
「あの敵はこれをゲームといった。しかし、あのお婆さんの顔に刻まれた悲哀をそんな言葉で片付ける事はできません……」
「ゲームだとも。私と諸君らの……ああ、他はどうでもいい、替えの利く駒に過ぎんよ」
「黙って聞いておればなんと悪辣な。つくづく、はらわたが煮えくり返るわ!」
 へらへらとしたキラージャンから吐き出されるセリフに、藏重・力子(里の箱入りお狐さん・f05257)が目を吊り上げ、アリウムの蒼氷色の瞳にも闘志が灯る。
「かの邪悪に報いを、奪われていった者達のためにも……!」
 毅然と引き抜いた氷華の切っ先をかざし、敵めがけて氷弾を撃ち放つ!
 だが、それはひらりと半身をひねったキラージャンに、いともたやすく避けられてしまう。
「ふん……単純な攻撃だ。それでは面白くない」
「お前を楽しませるためにここにいるわけではない……!」
 静かな怒りを燃やすアリウムは続けざまにホワイトファングを射出しながら、キラージャンの懐へと飛び込んでいく。
「そう簡単に私の間合いへ入ってしまっていいものかね? こう見えて私は強い、あっさりと勝負が決まってしまうぞ?」
 アリウムは敵の挑発にそれ以上耳を貸さず、踏み込みながらの鋭い一撃を繰り出した。
 矢継ぎ早に打ち込まれる氷を纏った刺突を、キラージャンはおもしろがるような笑みを唇に張り付け、余裕の表情で回避にかかる。
「それ、こっちからも行くぞ」
 お返しとばかり、ナイフがアリウムの首筋へ振り下ろされる。
 赤い光を照り返して不吉に輝くその刃は、敵の片手間といった態度とは裏腹に目にも留まらぬ速度を備え、明らかにアリウムの回避能力を上回っていたが――。
「全て、読んでみせる……!」
「なにっ……?」
 アリウムは皮一枚の寸前で身を逸らし、ナイフの一撃を鼻先で空振りさせたのである。
 自身へ強大にして全力の魔力を巡らせ、五感を強化するホワイトパス。
 ――今のアリウムは反射神経、動体視力、身の軽やかさ……全ての運動能力が、飛躍的に底上げされていた。
「小癪な……私のナイフからは逃げられんぞ!」
 苛立ちに牙を剥きだしつつも、キラージャンもさらに速い連続攻撃でアリウムを寸刻みにしようとする。
 多くの犠牲者を生み、より洗練されていったナイフの技術は着実にこちらを追い込み、一つの動作を間違えれば致命傷を呼び込む程の綱渡りを強いられ、アリウムは焦りに目元を歪める。
 だが、それは自分が倒されてしまうかも、といった保身や不安から来る焦燥ではない。
(「私でなくてもいい。誰かこの敵に報いを!」)
 この悪が、許せない邪悪が裁かれず、万が一にも取り逃す……そんな最悪の事態を思い、必死になって食い止めようとしているのだ。
 幾度目か、突き立てられれば死の見えるナイフを伏せるようにして避け、けれど反撃もかなわず後退を余儀なくされる、捨て身の奮戦。
 でもおかげで、キラージャンの注意は完璧に逸れ、その背中はがら空きである。
「ふっ、そんなマジな形相になって、みっともないとは思わないかね? これは所詮ゲーム、楽しまなくては損だと思うが?」
「……これは遊びじゃない」
「――な……がはっ!」
 その背へ容赦なく大鎌の一振りを叩き込んだリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、驚愕に顔を歪めて身体を折り曲げるキラージャンを、冷ややかな視線で射貫いた。
「吸血鬼の狩り方を教えてあげる」
「き、貴様……!」
 怒号とともに突き出されるナイフを落ち着いて見切り、軽く身を傾けて躱しながら大鎌を見舞う。
 キラージャンを足場の端へ追い詰める形で得物のリーチを充分活かし、体勢を立て直したアリウムとも呼吸を合わせながら、敵の対応を許さず攻め立てるのだ。
「……私は何も楽しくない。早く終わらせるわ」
「な、舐めるな……!」
 リーヴァルディは側面や逆側へ身軽なステップで回り込み、時には併走しながら鎌の刃を絡みつかせるように振り回し、常に有利な位置取りを心がける。
 中々端から逃げられないキラージャンは次第に焦りを募らせているのか、半ば無我夢中、といった様相で跳躍し、回転しながら中央部へと逃れようとする。
 間髪入れず、リーヴァルディは呪壊弾の込められた銃を抜き出し、片手で照準を構えて引き金を引く。
 発砲された弾丸は見事にキラージャンの肩甲骨の狭間を撃ち抜き、受け身も取らせず床の上へと叩きつけていた。
「ぐぁ……! なんだこれは、呪詛が……!」
 弾丸が抉ったのはリーヴァルディが鎌で切り開いた傷口。呪いに蝕まれ、どくどくと血で黒いスーツを染めながら、キラージャンはすかさず身を翻す。
「――まずは君から死んでもらった方が良さそうだなッ!」
 今度はリーヴァルディが端へと押し込まれる形で、自らの周囲に無数のナイフを浮遊させたキラージャンの、苛烈なナイフ捌きが襲いかかる。
 次から次へと持ち替えては打ち込まれる攻撃が空間に残像を刻み込み、緩急をつけて放たれる斬撃はもはや到底受け切れるものではない……!
 ついにリーヴァルディは鎌のガードをこじ開けられ、キラージャンの強烈な蹴りを受けて、その華奢な身は空中へと放り出される。
 足場へ向けて手を伸ばすも、掴めるのは無情なまでの虚空。
 リーヴァルディはそのまま、下に連なる針山へと無慈悲にも落下し、姿を消してしまった――!
「ふふ……フフフ……ハハハハハ……ハーッハハハハハッ! まずは一人! いやはや、このゲームのホストであるはずの私が、ほんの少しとは言え押されたのだ、とことん楽しませてくれるではないか! ハハハハハ!」
 しっかり下方で何かが突き刺さる音を確認し、キラージャンは大口を開けて笑いながら振り返る。
「ゲームの敗者は無惨な結末を迎える……子供でも知っている事だとも。ああ、安心したまえ。次は君達の番だ。さて、誰が先に死ぬのかね? さっきの君か? それともそっちの――」
「お主の行く末は生でも死でもない、無であるぞ!」
 喋りながらも蝙蝠を召喚し始めたキラージャンに、力子が力強く宣言する。
「ほう、お仲間が串刺しになったというのに、随分と自信があるではないかね?」
「我には分かる。先ほどの死はきっと偽装。今この瞬間にも、お主に一太刀食らわせる機を窺っているのだ!」
「……だとしても力子さん、それを相手に教えてしまっては、奇襲の意味がないのでは」
「あっ! い、今のなし!」
 苦笑しながら突っ込むアリウムに、力子は慌ててばたばたと両手を振る。
「ハハハ、そんなはずはない、手応えはあった……あったよな?」
 妙に緊張感のないやりとりと、実際一度は不意打ちを受けた事を思い出したのか、キラージャンもちょっと不安になったみたいに、身をひねって後ろを確認し――。
「隙あり、フォックスファイア!」
 刹那、力子はこれでもかと呼び出した大量の狐火を、扇状に拡散させながらキラージャンへ突っ込ませる!
 時間差も伴って濁流の如く殺到する狐火に、敵も数瞬遅れて蝙蝠どもを盾のように広げた。
「この程度の炎で、我が蝙蝠達を突破できると思ったのかね」
「なんの、まだまだ! 我がいる以上、一つたりとも逃しはせん!」
 飛散する蝙蝠を狐火達が追いかけて囲み、燃やし、時には叩き落とす。さながら激しい空中戦だ。
「飛んで火にいる何とやら! そしてこの怒りも燃え上がる一方であるぞ!」
 これまでに出会った人々の嘆き、苦しみを思い出す度に狐火の火力は一層勢いを増し、悪夢ごと焼き尽くさんと暴れ回る。
「面倒だ……元を断たせてもらおうか!」
「そうやすやすと我を攻略できると思わぬ事だ!」
 業を煮やしたキラージャンがナイフを逆手に握り込み、飛びかかって来た。
 対して力子も薙刀を構え、狐火を忙しく操りながらも迎撃する。
 元より敵の攻撃はまともに相手してはいられない。
 スピードとテクニックを重視して薙刀を払い、突き、あるいは風車のように回転させて牽制しつつ、積極的に動き回ってキラージャンと中距離を保つよう専念する。
 その時、ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)が、動いた。
 右へ左へ逃げ回る力子に翻弄され、一際大きく上体が泳ぐキラージャン――その腕に重厚な【手枷】、そして腰回りに【拘束ロープ】を続けざまに投げ放ち、縛り付けてのけたのだ。
「そうやって目の前の相手に気を取られ、また油断か? この期に及んで大した余裕なことだな」
「こ、これは……! おのれ、貴様ごとき、下賤がッ……!」
「……とは言え、実力に不足は無さそうだからな。まずはその勢いを削いでやろう」
 何も一気に仕留める必要はない。そしてどんな敵でも、獲物を前に頭に血が昇れば、隙が生じるもの。
 ゆえに、ノワールは息を殺してチャンスを待っていたのだ……奴が焦りに揺さぶられ、なおかつ決定的な間隙をさらす、ごく一瞬を。
 さて、とノワールは一呼吸間を置いて。
「こっちは散々手間を掛けさせられたんだ……手緩い仕置きで済むと思うなよ」
 村中を歩き回った。死人の血を啜りながら戦わされた。目の前で仲間が傷つけられんとする光景を、じっと耐えさせられた。
「お望み通り、ここでラストゲームにしてやる」
 今までに溜め込んだ憤りを晴らすように、とどめとばかりにキラージャンへ【猿轡】を投げつける。
「んんー! んぐぐぐッ……!」
「気分はどうだ、楽しいか?」
 当然、キラージャンも拘束を解かんと身をよじらせる。
 ここからは根競べだ。ノワールは拘束具をしっかり握って足を踏ん張り、体力と集中力、ともに全霊を注いでキラージャンを捕らえ続ける。
「よし……今だ、存分にやれ!」
「良かろう……いざここに在れ、『巫覡載霊の舞』!」
 全身からまばゆい光輝を放ち、神霊体へと姿を変えた力子が、薙刀を構え直して突貫する。
 そしてあふれんばかりの【破魔】の気を込めた薙刀を斜めに振り抜き、刃から発生する特大の衝撃波を、キラージャンにぶち込んだ!
「魂や体は誰の玩具でもない――死者と生者の嘆きと悲しみをこれ以上増やして堪るものか!」
 キラージャンはかろうじて動く腕を持ち上げ、衝撃波が身体に届く直前で防御し、押し返そうとする。
「ここで援護を……!」
 だがその矢先、アリウムが撃ち込んだホワイトファングがその腕を凍らせ、ついに力子の大技が、奴の元へと到達した……!
「奴を貫け、我が破魔の衝撃よ――!」
「ぐおおぉぉぉがあぁぁぁっ……ぎッ……がはァ!」
 受け流す事も弾く事もできない直撃ダメージに目を剥き、咆哮するキラージャン。
 狂ったように身もだえながら力ずくで猿轡を外し、強制的に緩ませたロープを掴むと、今度は逆に引っ張り始めた。
 相手も死にもの狂いなのか、じりじりと敵の近くへ引き寄せられるノワール。
「何人がかりで、卑怯じゃあないか諸君ッ! ……この鬱陶しい拘束を、さっさと解けぇッ!」
 ふと視線を上げれば、もう眼前にはナイフの毒々しい切っ先が迫っていて。
「……ん。戯言は聞き飽きた」
 同時。
 ――死んだはずの、リーヴァルディのひそやかな声が、キラージャンの鼓膜に響いた。
 直後、敵の背中に描かれていた血の魔法陣がうっすら色を濃くしたかと思うと。
 なんとその内側から飛び出したリーヴァルディが、手元で大鎌を回転させてキラージャンの胴体へ食い込ませたのである。
「なっ、ばっ、バカな、貴様はさっき……!」
「……嘘はあなただけの専売特許じゃないわ」
 彼女の血で作製された魔法陣は、異空間【常夜の世界にある古城】へ通じている。
 リーヴァルディはこの一つを事前に自らの装備に刻んでおいたのだ。
 先ほど針山へ転落したのは、これまた騎士鎧の炎で自身そっくりに作られた人形。
 リーヴァルディ本人は異空間へ退避し、キラージャンの探知範囲から逃れていたのである。
「だ、だがなぜ、私の後ろから……はっ!」
 そこでキラージャンは思い出す。リーヴァルディとの交戦時、背中の傷を撃たれていた事に。
「じゅ、呪詛だけではなかったのか……あの時に、もう一つの出口となる魔法陣を……二重の……っ、二段構えの罠……!」
 全てを理解したキラージャンは、身体に食い込んでいく大鎌の刃を掴んで引きはがそうとするが、ここまで肉薄でき、体勢も優位なリーヴァルディがそれを許すはずもなく。
「これが私の戦い方。……観念しなさい」
 敵の肩口を足場代わりに踏みしめながら、より凄まじい膂力で大鎌を振り抜き、盛大にキラージャンの身体を叩き斬って見せた。
「ごあぁぁぁぁぁっ……!」
「おっと、まだ終わらんぞ」
 主導権を取り戻したノワールが間断なく腰を落とし、ロープを思い切り引っ張り上げ、キラージャンを魚のように中空へ吊り上げる。
「簡単にくたばってくれるなよ、外道……!」
 そのまま外周めがけ、ノワールはキラージャンを叩き込んだ!
「ぐあぁぁおぁぁぁぁぁッ!」
 床に身体を打ち付けられ、何度か跳ねながら針の筵へ落下しかけるキラージャン。
 しかしその瀬戸際で足場の端を掴むと、ナイフを壁面に突き刺してすがりつき、血を流しながらもよじ登って来たではないか。
「ごはっ……はぁ、はぁ……! に、二度は、通じんぞ……!」
 とはいえよろめき、ナイフの握りも弱く、足下もおぼつかない様子だ。
 怒れる猟兵達の怒濤の猛攻が大打撃を与えているのは間違いなく、勝利までもう一押し――もう一息である。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

架空・春沙
あなたのゲームはそろそろお終いです
速やかに、その命刈り取って差し上げましょう

まずは「人狼咆哮」を仕掛け
大鎌で接近戦を挑みます
敵の行動は第六感で感知し、フェイントによる回避や武器受けで防御
攻撃の際はなぎ払いや2回攻撃で傷口を抉っていきます

最後まで油断せず、着実に敵の体力を削っていき
時には大鎌で攻撃する、とフェイントしてバスタードソードを抜き放ち、切り払い、なども行います

断罪、完了です


リーヴァルディ・カーライル
ナイフに蝙蝠…条件は後一つ…
今度は奴に見えるよう【常夜の鍵】の魔法陣を生み出し、
転移すると装って誓約書を使わせる…これで条件は全て揃った
誓約は移動を封じる系統なら素直に従おう…もう、必要ない

…【超過駆動・魔弾装填】を発動
大鎌を弾丸に変化させて銃に装填。敵の行動を見切り銃撃
この弾丸は、村人達を刻んで弄んだあなたを滅ぼすのに相応しい魔弾
…着弾した対象の血と生命力を吸収して力を溜め
無数の大鎌の刃が傷口を抉りながら飛び出るの

…そう。大仰に振舞えば、必死になって回避する事は分かっていた
でも、もう遅い。その弾丸は呪詛を追跡する誘導弾
あなたの背中に刻んだ、呪詛を…ね
…吸血鬼狩りの業を知りなさい、キラージャン


ノワール・コルネイユ
ふん…期待通りの頑丈さで何よりだ
心から楽しめている様で嬉しいよ

奴も直に限界、決着は目前か…
だが、手負いの獣ほど凶暴なものはない
気は抜くなよ

ふらつく足では回避も防御も精度は落ちる筈
悪いがその隙を突かせて貰うぞ

銀の剣を攻撃回数重視で発動
倒れないなら、倒れるまで切り刻むだけだ
【2回攻撃】も駆使して連続で攻撃を叩き込み【恐怖をあたえる】
貴様には後悔する隙すら与えるものか

ここまで追い込んだなら
手傷を負うのも厭わない
二刀で攻めて攻めまくる
根競べはまだ続いてたという訳だ

相手が崩れる素振りを見せたなら
仲間と連携し強力な一撃を入れる間を作るか、針山へ叩き込んでやろう

自分で誂えた舞台で派手に死ぬんだ
本望だろう?



「ふん……期待通りの頑丈さで何よりだ。心から楽しめている様で嬉しいよ」
 ノワール・コルネイユ(Le Chasseur・f11323)は息も絶え絶えといった様相のキラージャンを見据え、銀の二剣を引き抜いて身構える。
「あなたのゲームはそろそろお終いです」
 架空・春沙(緋の断罪・f03663)もまた、鮮やかな緋の刃を備える大鎌をかざし、姿勢をやや低く取っていつでも飛び出せる状態だ。
「おしまい? ゲームが終わりだと? 何を言う……これからだ、これからじゃあないか……ククッ……ゴホッ、ゴホッ……!」
 なおも不敵に笑うキラージャンは口元を抑え、大量の吐血をする。
 負傷、疲労ともにかなりキているようで、もはや決着は目前といった按配だが。
「手負いの獣ほど凶暴なものはない……気は抜くなよ」
「ええ……」
 ノワールと春沙はちらりと目を交わし合い、最後まで気を逸らせる事なく、じわじわと左右から間合いを詰めていく。
「ナイフに蝙蝠……条件は後一つ……」
 と、ぽつりと呟いたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)が、自らの指から垂らした血を糸のように振って、キラージャンに見えるよう【常夜の鍵】の魔法陣を描き出していく。
「ほう……今度はどんなマジックを披露するつもりかね……?」
「さあ……何かしらね」
 無機質な口調でうそぶいてみせるリーヴァルディへ、キラージャンがやおら、重傷とは思えぬ速度で血の誓約書を投げつけた。
「『そこを動くな』……何を策しているのだとしても、動けなくては何もできまい? 言ったろう、先ほどのような奇襲は二度と受けんよ」
 肩口に貼り付けられた誓約書を横目に、リーヴァルディは沈黙し。
 ――瞬刻後、狼を想起させる凄まじいまでの咆哮が春沙から発せられた。
「ぬ……っ、なんだ……っ?」
 壁面に放射状のヒビを走らせ、充満した重い空気を揺るがす雄叫びは、キラージャンがたまらずたたらを踏む程で、その音波は狭い空間でびりびりと猛烈に反響し合い威力を倍加させていく。
「さあ、行きますよ……速やかに、その命刈り取って差し上げましょう……!」
 そして春沙は作り出された間隙を見計らい、大鎌を担ぎ上げながら一足飛びに肉薄したのだ!
「はぁっ……!」
 臆する事なく深く踏み込み、咆哮にも負けぬ程の気勢を込めて大鎌を振り下ろす。
 断頭台のギロチンを彷彿とさせる容赦のない一撃に、キラージャンは一歩飛びすさって回避するも、足捌きそのものは明らかに鈍くなっていた。
「ふらつく足では回避も防御も精度は落ちる……悪いがその隙を突かせて貰うぞ!」
 直後、側面へと回り込んだノワールが死角から銀の剣を交互に打ち込み、キラージャンを攻め立てる。
「この程度……!」
 手数は多いが春沙の大鎌より単発の威力は劣ると見て、キラージャンは自身のナイフで応戦。
 ノワールが次々と繰り出す連撃を跳ね返し、打ち返し、動きにはかろうじて精彩が残っているようだ。
「私を忘れてもらっては困りますよ」
「お、おのれ……ッ」
 すると今度は春沙が、大鎌を杖代わりに高々と跳躍し、ノワールの頭上を飛び越すと。
 空中で抜き放ったバスタードソードを両手で握り込んで身体ごと縦に一回転し、重量と重力、遠心力を味方につけた渾身の兜割りを、キラージャンめがけて叩き込む!
 ガァン、と剣身は強烈に床を叩いて砕き、頬を薄皮一枚切り取られたキラージャンはとっさに前方へ倒れ込むようにして躱していた。
「安心するにはまだ早いぞキラージャン……!」
 息もつかせぬ勢いで剣の横から飛び出したノワールが、さらに剣閃を絶え間なく叩きつけていく。
 キラージャンはすでに大粒の汗をかき、次から次へと叩き込まれる攻撃に精神も追い込まれているのか、見開かれた目はせわしなく血走っていた。
「なんだこれは……攻撃が途切れん……!」
「そうとも。倒れないなら、倒れるまで切り刻むだけだ」
「あなたが断罪されるまで、いつまでも続きますよ……!」
「な……舐めるな!」
 キラージャンがその場で水平転回し、両手に握ったナイフを二人へ突き入れる。
 寸前でノワールは軽やかに側転して飛び退き、春沙も大鎌を足場へ打ち付けた反動で後退して、同時に二人ともナイフの射程から逃れると、またすぐさま突撃して一心不乱に波状攻撃を仕掛けていく。
「こ、こいつら……このまま死ぬ気で押し切るつもりか!? 命は惜しくないのか……!?」
「ここまで来たなら少々の手傷など問題にもならん……何より貴様には、後悔する隙すら与えるものか」
「あなたの罪が裁かれるまで、一時の安息さえも与えません」
 こうなればどちらかが折れるまで続く、文字通りのデスマッチ。
 迂闊に退けば針山へ墜落し、心が怯めばそのまま押し切られる。
 瀬戸際の根競べだが、キラージャンがあくまで一人で戦っているのに対し、猟兵達は仲間同士で力を合わせている。
 共に敵を倒すという志は気力を奮わせ、攻撃はより鋭さを増していくのだ。
 敵は一人、こちらは二人。
 ――否。
「……【超過駆動・魔弾装填】」
 三人。
 高速で乱舞する戦いを目で追いながら、リーヴァルディは『グリムリーパー』を弾丸に変化させ、手早く銃へ装填する。
「貴様……何をする気だ!」
「この弾丸は、村人達を刻んで弄んだあなたを滅ぼすのに相応しい魔弾」
 ちらりと視線を寄越したキラージャンがようやく気づいて顔色を変えるが、一手早くリーヴァルディは弾丸を発射していた。
「……着弾した対象の血と生命力を吸収して力を溜め、無数の大鎌の刃が傷口を抉りながら飛び出るの」
「そんな代物を、私がみすみす食らうはずがないじゃないか……少しばかり隙を見いだした程度で、図に乗るなよ!」
 キラージャンは刃物のように鋭利な蹴りをノワールと春沙へ浴びせて強引に距離を取ると、足場を大回りにダッシュして避けようとする。
「……そう。大仰に振舞えば、必死になって回避する事は分かっていた。でも、もう遅い」
 けれどリーヴァルディは騒がない。命令通り、その場を動く事もない。
 ――もうそんな必要も、ないのだから。
「その弾丸は、呪詛を追跡する誘導弾」
(「……あなたの背中に刻んだ、呪詛を……ね」)
 刹那、回避されたかに思われた銃弾が、鎌首をもたげるようにぐるりと軌跡を曲げて。
「な……が、はぁっ……!」
 すでに意識の外に置き、油断していたキラージャンの無防備な背中を、貫いていた。
「ぐぉ……があぁぁぁぁッ!」
「……吸血鬼狩りの業を知りなさい、キラージャン」
「ギギギギググググゥッ、おぉ……ォォォオオオオッ……ぐッ……!」
 喉奥からうなるようなうめきを漏らしながらも、致命傷を受けたキラージャンは己の運命を悟ったはずだ。
 なのに奴の執念は、ここに至っても勝利を求めようとする……!
 敵は瀕死の状態で無数のナイフを召喚すると、それらを移動できないリーヴァルディへ一斉に撃ち出した!
「そうは……」
 駆け出したノワールが銀の剣を素早く交錯させ、弾丸の如く迫り来るナイフをそれ以上のスピードで撃ち落とす。
「させません……!」
 同様に春沙も軌道上へ割り込みながら、大鎌を大きく回転させてナイフを巻き込み、まとめて叩き落としてのけたのだ!
 そうして二人は瞬時にキラージャンの懐へと飛び込み、それぞれの一閃を放つ。
「……がはっ、ァ……!」
「――自分で誂えた舞台で派手に死ぬんだ。本望だろう?」
 駆け抜けながらキラージャンの胸に大小二つの斬撃を刻み込んだノワールが、静かに告げて。
「断罪、完了です」
 逆側から、ちょうどクロスするように得物をぶち込んだ春沙も着地し、大鎌に付着した血糊を一振りで振り落としてから、その柄でかん、と床を叩いた。
「……数多の布石……華麗な連携……その奥に隠れた本命……み、見事という他、ないな……」
 キラージャンは鮮血を迸らせ、肉体を朽ちさせながらゆっくりと、足場の下へ倒れ込んでいく。
「ゲームは追い詰められれば追い詰められるほどに熱くなれる……楽しかったかね……?」
 そんな言葉を残し、キラージャンは姿を消した。針山へ突き刺さる頃には、その身体は消え去っていたのである。

「……ん。あなた達がいたから、ここまでうまくいった……ありがとう」
「死に直面しようとあくまで遊びを捨てない。これが奴なりの歪んだ哲学なのかも知れんな……」
「これで人々も、狂ったゲームに巻き込まれる事はなくなります。全てが終わった事を、伝えに戻りましょう」
 無秩序で、残虐な遊戯は今夜限りに終わりを告げる。
 すぐに何もかも元通り、というわけにはいかないだろうが、村には元のような、平穏な夜の眠りがもたらされるはずだ。
 それはヴァンパイアに弄ばれた犠牲者達にも、言える事だろう。
 彼らの魂がヴァンパイアの死によって少しでも浮かばれる事を、今は祈るとしよう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月11日


挿絵イラスト