#サクラミラージュ
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みぃみぃと愛らしい鳴き声がグリモアベースに響く。グリモア猟兵、詩音・マコトは数匹の子猫を膝に乗せ、ねこじゃらしを振っていた。
呼び出された猟兵が近づくと、彼女ははっとして立ち上がる。そしてぺこりと一礼して小さな猫を一匹抱え、にっこりと笑って話しかけた。
「突然ですが……猫、お好きですか?」
●
帝都の繁華街の一角にて、猫カフェがオープンした。
今回事件が起こる場所はそのカフェであり、猟兵にはそこへ潜入してもらう必要があるのだという。マコト自身も猫嫌いの猟兵に無理やりこの任務を依頼するつもりはないらしく、猫を出したり引っ込めたり、おそるおそるといった様子で猟兵の反応を伺っていた。
しばらくそうしている間もその場に残ってくれた猟兵に胸を撫で下ろしながら、マコトは詳細を語り始める。
「……サクラミラージュに出来た猫カフェに、影朧が潜んでいるようなんです。猫の姿でお店に紛れているのですが、店主さんはそれを分かってて匿っているようでして」
そう話すマコトの手元で、縞模様の猫がニャアと鳴いて体を伸ばす。猫好き、それも店を開く程の愛好家であれば、もし正体が恐ろしい化け物だとしてもその姿を守りたくなるものなのかもしれない。
だが、現実は非情である。可愛いからと影朧を匿い続ければ、そのカフェは勿論のこと、世界まで崩壊させてしまう危険があるのだ。
「店主さんを説得して影朧を出してもらうか、無理やり見つけて退治してしまうか。どちらにしても店主さんはきっと抵抗すると思います」
でも、とマコトは下がった眉をきりっと上げて、真剣な顔で猟兵を見た。
「これは帝都の人々の危機でもあり、帝都の猫さん達の危機でもあります。どうか……お願いします」
マコトは深々と頭を下げ、そしてゆっくりと姿勢を正す。
彼女は任務への参加を表明した猟兵をサクラミラージュへ転送するべく、ふわりと右手にグリモアを浮かべた。周囲にいた猫達が何事かとみぃみぃ鳴くが、彼等はすぐに近くにあったおもちゃにじゃれ始める。
「……猫って本当に気まぐれなんですよね。きっと潜んでいる影朧も、ちょっとした拍子にボロを出すかもしれません」
そう言って苦笑するマコト。最後に再び彼女が一礼すると、猟兵の身体はふっと不思議な浮遊感に襲われた。
●
帝都へと降り立った猟兵が周囲を見渡せば、そこには小さくも可愛らしい看板が掲げられた喫茶店が建っていた。猫の肉球のような模様に彩られた扉を押して中へと入れば、入り口で初老の男性がにっこりと笑って歓迎する。
「いらっしゃいませ。何名様のご利用ですか」
ネームプレートには『店長』の表記と『赤木』の文字。赤木は恐らく彼の名前だろう。店内には彼以外の店員の姿は無く、二名の客と十匹程度の猫が各々自由に遊び回っている。
マコトの話通りであれば、この店内の猫の中に影朧が紛れている筈だ。
赤木は特に疑う様子もなく猟兵を店内の席へ案内し、様々なドリンクが書かれたメニューを差し出した。
「ごゆっくりどうぞ」
みかろっと
こんにちは、みかろっとと申します。今回はサクラミラージュにて、猫カフェに匿われている影朧を退治する依頼となります。まず一章、店内にいる影朧が化けている猫を特定してください。普通にカフェを利用して店主に直接聞いたり、店主にさりげなく近づいて情報を聞き出したりなどなど。
第二章の冒険パートで影朧を追い詰め、、第三章ボス戦で撃破できれば任務完了となります。
皆様のご参加心よりお待ちしております。
第1章 日常
『帝都のカフェーの優雅な日常』
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POW : ミルクやカステラでばっちり栄養補給!
SPD : 臨時のボーイやメイドとしてちゃっかり臨時収入!
WIZ : 最新の雑誌や噂話からきっちり情報収集!
イラスト:ひなや
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
園堂・希沙那
ボクが偵察だ!(どーん)(POW系行動を開始する音)
さて店長君、この中で一番気立てのいい子をボクに紹介してはくれないか。
それから一番のおすすめのメニウを。
店長君の目が試されているのだから、存分に悩み給え。くひひ。
そしてもう一つ。云わないのはフェアではないから云うが――。
――ボクは帝都桜學府の者だ。
美味と娯楽の礼もある。何か困ったことがあれば、いつでも聴くよ。
今すぐにでもね。
(ボクの狙いは、このようにして圧を掛けることで、店長君の挙動に何かしらの変化をもたらすことができないだろうか、という点にある。
この人が嘘を付く人なのか、嘘を隠す人なのか。
リラックスついでに見極めようじゃないか)
席に着いた園堂・希沙那は手渡されたメニューに目を通す前に赤木に話しかける。
「さて店長君、この中で一番気立てのいい子をボクに紹介してはくれないか」
すると赤木は嬉しそうににっこり笑って、『みんないい子ですからね』と頤に指を添える。
「それから一番のおすすめのメニウを。店長君の目が試されているのだから、存分に悩み給え。くひひ。」
希沙那がそう言って赤木にメニュー表を返すと、赤木はかしこまりましたと一礼して周囲の猫達を見回した。希沙那に勧める猫を探しているようだが、その視線はどこか一点をちらちらと気にしているようにも見える。
しばらくして猫を決めたのか、赤木は少し離れたソファーへと歩いていった。彼が一匹の猫に手を伸ばそうとした瞬間、希沙那はふと、静かに声を発する。
「そしてもう一つ。云わないのはフェアではないから云うが――」
その瞬間、赤木の肩が僅かだが確かに揺れた。
「……な、何です?」
抱き上げようとした猫を一旦離し、希沙那に背を向けたまま彼女の言葉を待つ。明らかな動揺を見せた赤木に目を細め、希沙那は冗談でも言うかのようにけらっと笑みを浮かべて続きを述べた。
「――ボクは帝都桜學府の者だ。美味と娯楽の礼もある。何か困ったことがあれば、いつでも聴くよ。今すぐにでもね。」
その言葉にふぅ、と小さく安堵したような息。赤木はすっと別の猫を抱え、何事もなかったような笑顔で振り向く。
「そ、そうですか。それでは、機会があればお世話になりますね」
大人しい真っ白な猫を希沙那に差し出すと、赤木はいそいそと厨房の方へと歩いていった。
しばらくの後、彼は一つのカップを盆に乗せて戻ってくる。
「こちら、茉莉花茶です」
コト、と希沙那の前にカップが置かれるが、やはり猫の安全を考えてかそれにはしっかりと蓋がついており香りや色は感じることができない。希沙那がそれを手に取り蓋に空いた小さな穴に口を付けると、ふわっとジャスミンの落ち着く香りが広がった。
希沙那は猫を撫でながらソファーの方を見る。手元の白猫と一緒にいたもう一匹の猫の姿は、すでにどこかへと消え去っていた。
成功
🔵🔵🔴
白紙・謡
先ずは普通に客として
いきなりあれこれと申し上げたら、
店長様も心を閉ざしてしまわれるでしょうし
ミルクセヱキをおひとつ、頂けますか
そして飲み物片手に、
暫し見様見真似のていで二名の先客の様子を眺めております
猫カフェ初心者の雰囲気を出し……、
というか実際に初心者でございます
物珍しげに見る姿に気付いて頂けたら
こんにちは、と話しかけて
此方のお店には、よくいらっしゃるのですか?
猫さんのお名前や性格
構われたがる子や逆にあんまり懐いてくれない子
リーダー格のボス猫さん
不思議といつも『変わらない』子とか
……正体をご存知の店長さんの目線では逆に気に留める事が出来ない、
些細な『ボロ』
そういったものが拾えれば良いのですが
にぃ、にぃと興味津々な猫が、店内に入ってきた猟兵の足元をうろつく。白紙・謡は勝手が分からないといった様子で戸惑いながら席に着くと、差し出されたメニューの一点を指して赤木に声を掛けた。
「ミルクセヱキをおひとつ、頂けますか」
「かしこまりました」
赤木は厨房へ行き、蓋つきのカップを持って戻ってくる。謡の前にそれを置いて一礼すると、赤木は再び厨房へと入っていった。バシャバシャと水音がして、どうやら洗い物をしているようだということが伺える。
謡は温いカップを片手に、おそらく一般人であろう先客の女性二人を眺めた。
彼女らは近づいてくる猫を時折撫でながら談笑しており、猫が飽きて去って行っても追いかけようとはしない。猫達もその方がくつろぎやすいのか、頻繁に女性の膝に乗ったり遠くへ走ったりを繰り返していた。
そういうものなのかと謡が目線を動かさずにいると、彼女らもそれに気づいて謡の顔を見る。謡はこんにちは、と話しかけ、カップを持ってそちらへ近づいた。
「こんにちは。猫カフェは初めて?」
「ええ。此方のお店には、よくいらっしゃるのですか?」
女性は照れくさそうに頷いて、膝に乗ってきた猫の耳裏をくしゃくしゃと撫でる。
「ここの子達可愛いんですよ。こっちが無理に追いかけたり嫌がることをしない限りは自分から寄ってきてくれますし」
にゃあ、と謡の元にも猫が擦り寄ってくる。おそるおそる謡がその猫の頭を軽く撫でると、猫は満足げに喉を鳴らして謡の膝の上に乗った。
「あ、気に入られましたね。その子、一回膝に乗ったらなかなか動きませんよ」
「あらあら……」
膝の上の猫は香箱座りで不動の構えを見せる。女性の真似をするように耳の裏をくしゃくしゃと掻くように撫でてやると、謡の膝にごろごろと振動が伝わった。どうやら気持ちいいようで、謡が手を離そうとすると『止めるな』と言わんばかりに謡の顔を見上げる。
「……因みに、この子のお名前は?」
謡が問うと、もう一人の女性が近くに来た猫を撫でてその首元に付けられたネームプレートを指さした。
「その子はミカン、こっちの子がリンゴって名前なんです。皆首輪ついてますから、気になったら見せてもらうといいですよ」
そう言われ謡が膝の猫の首を見ると、確かに『ミカン』と小さな文字の彫られた板がついている。するとミカンは首輪を弄られて気が変わったのか、にゃあと鳴いてどこかへ走って行ってしまった。
周囲の猫も同じように首輪が付いているのが見えるが、謡の視界にふと、首輪の無い猫が映る。
「あの子は?」
「ああ、あの子……そういえば名前が無いですね。店長さんにも聞いたことないです。なかなか近づいてきてくれないので」
謡は不思議に思い、立ち上がってその猫に近づこうとする。
――が、それを防ぐように突如、赤木が謡の前にすっと立ち塞がった。
「……申し訳ありません」
赤木が手を向けた先、壁のポスターには『猫が嫌がるので、追いかけないでください』と書かれている。謡が頷いて足を止めると、赤木の後ろで首輪の無い猫がしゃあと鳴き、部屋の奥へと走り去っていった。
成功
🔵🔵🔴
桜雨・カイ
ショウさん(f23293)と一緒に
猫カフェ…面白そうなカフェですね、行きますっ
飲み物色々ありますね、猫カフェならば猫関連の飲み物などもりそう。肉球…なんでしょう?ではこちらを注文しますね
猫たちをもふもふしたり、一緒に遊びます
ショウさんも猫のおもちゃ使います?
せっかくならこの肉球は堪能しましょう。人なつこそうな猫を抱え軽くショウさんに猫パンチ
リラックスすれば気も緩んで隙をみせてくれるかも、目をくばり猫たちの様子を見ます。
(あくまでこれは依頼ですから(きりっ))
「かわいいでなぁ、このまま一日中遊んでたいです」
※うっかり心の声と口に出してる声が逆
…!?み、見るのは私ではないですよ猫ですよっ
鬼花・ショウ
●新しいカフェに潜入ってことだから偵察半分趣味半分、カイさん(f05712)一緒に行こ❤️
●猫カフェなんて初めてだけど、メニューはどんなのがあるのかな?
コーヒーやソーダ水……オススメはジャスミンティーか。この🐾にくきゅうナントカってなに?
●わあ、人懐っこいニャンコがいっぱい❤️
アレ? 俺の周辺過疎ってない? シャイな子猫ちゃんが多いのかな?(ポジティブ)
カイさんって猫好きなの? オモチャ使いがプロいよね。俺は慣れてないから見てるだけにするよ。怖がらせちゃいけないしね。
「ほんと可愛いよね。大きいお兄さんが小さい動物にメロメロなのって」
いや、ちゃんと見てるよ猫も。ほんとほんと。
首輪の無い猫は赤木の周りをくるくると回り、離れようとしない。猫も赤木も自分達を探るような客を少し警戒してか、厨房から様子を伺うように店内を眺めていた。
そんな中二人の猟兵、桜雨・カイと鬼花・ショウが喫茶店を訪れる。
「いらっしゃいませ。二名様ですか」
猫を厨房に残し、赤木が出迎えにっこりと話しかける。席に案内された二人は一緒にメニュー受け取り、普通の客を装うように――というよりはほぼ普通の客として、ドリンクの注文に悩んでいた。
「コーヒーやソーダ水……オススメはジャスミンティーか。このにくきゅうナントカってなに?」
「肉球……なんでしょう? ではこちらを注文しますね」
メニュー表の真ん中、可愛らしいポップで書かれたそれは『肉球最中ティー』。添えられたイラストを見る限り、どうやらミルクティーらしき飲料の上に猫の肉球を模した最中菓子が乗っているようだ。
赤木は一礼し厨房へと向かうと、他のメニューを作る時より少しばかり時間をかけてカイとショウの元へ戻る。テーブルに置かれたドリンクは蓋が付いており、メニューのイラストとは違って最中は別の皿に添えられていた。
ショウが不思議そうにその最中を手に取ると、中からころころと小さな何かが揺れる音がする。側面からぱかっと開けば、そこには小さなにぼしが三つほど入っていた。
「そちら、猫用のおやつです。是非猫と楽しんでください」
赤木は笑顔でそう言って、再び厨房へと戻っていった。
カイは早速最中の中身を取り出して近くの猫に差し出す。するとにぼしを食べた猫の他にもわらわらと猫が集まり始め、カイは足下にあった猫じゃらしを手にして遊び始めた。
一方ショウはというと、にぼしを翳しても猫がなかなか寄ってこない。単なる気まぐれか別の理由か、もふもふに囲まれたカイとは対照的に閑古鳥が鳴くようだった。
「……シャイな子猫ちゃんが多いのかな?」
ポジティブにそう言いながらミルクティーを一口飲む。カイはそんなショウを見かねてか、手に持っていた猫じゃらしをすっと差し出した。
「ショウさんも猫のおもちゃ使います?」
「俺は慣れてないから見てるだけにするよ。怖がらせちゃいけないしね。」
しかし、カイはショウのにぼしをとって一匹の猫を呼び寄せ抱き上げる。折角ですからとその大人しい猫をショウに近づけると、猫はぺちっと軽く猫パンチを繰り出した。
微笑ましそうにその猫をショウの膝に置いて、カイは再び猫の群れへと戻っていく。
カイが可愛らしいもふもふを堪能しながらも猫の様子を伺っていると、彼はぽろりと言葉を零した。
「かわいいなぁ、このまま一日中遊んでたいです」
――あくまでこれは依頼ですから。お仕事ですから……。
カイははっとして顔を上げた。心の中で思ったことと自分が発した言葉が真逆になっているのに気づいて固まると、その視線の先でショウが頬杖をついてにこにことこちらを見ているのに気がつく。
「ほんと可愛いよね。大きいお兄さんが小さい動物にメロメロなのって」
「……!? み、見るのは私ではないですよ、猫ですよっ」
「いや、ちゃんと見てるよ猫も。ほんとほんと。」
カイが顔を赤らめるのをショウがからかうように笑って手を振る。周りの猫達はそんな彼らを気にも留めず、にゃあにゃあとカイの膝に乗ったり猫じゃらしを噛んだりしていた。
少し賑やかになった店内。離れた厨房にいた赤木も少し警戒が解けたのか、いつの間にか猫と共に店内に戻ってきていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
栗花落・澪
影朧だとしても…後で消える定めなら
今は可愛がってあげたいよね
店長さん
一応お聞きしたいんですけど、触られるの嫌がる猫ちゃんとかいます?
あんまり猫ちゃんにストレスを与えないようにしてあげたいので
なにか猫ちゃんごとに嫌いな接し方があれば教えてもらえると
あ、飲み物は甘めなものでお任せしてもいいですか?
どれも美味しそうで…決められないので、オススメをください
常備されてる玩具があれば遊んであげたり
近づいて来た子を撫でてあげたり
名札を頼りに名前を呼びながら
その子が1番喜ぶ接し方で
但し、名札の無い子は見かけたら自然を装い注視
…あの子、人見知りですか?
ふふ、よく似た性格の友達がいるもので
微笑ましくなっちゃった
猫カフェを訪れた猟兵、栗花落・澪は店内を眺めながら店主の赤木に話しかける。
「一応お聞きしたいんですけど、触られるの嫌がる猫ちゃんとかいます? あんまり猫ちゃんにストレスを与えないようにしてあげたいので、なにか猫ちゃんごとに嫌いな接し方があれば教えてもらえると」
すると赤木は猫を気遣う発言に少し嬉しそうな笑みを零すと、メニュー表を一枚差し出しながら澪の質問に答えた。
「ここの子達は触られたいときに近づいてきて、気が向かなければ離れて一人で遊んでいます。自分から寄ってくるのを気長に待ってもらえれば、基本的に猫達が嫌がることはないですよ。それと……」
そして赤木はメニューの裏を見るように澪に勧める。くるりと裏返せばそこには猫のシルエットと共に『ここを撫でられると喜びます』との文字があり、頭や背中辺りに色が塗られていた。
ふむふむと澪がそれを眺めていると、彼の膝に小さめの白猫がひょいと飛び乗った。
猫は膝の上をくるくると歩き回り、澪はくすぐったいのを我慢してじっと固まる。少しすると猫は落ち着けると判断したのか、ちんまりと丸まって澪の膝に収まった。
澪がメニュー裏の絵を参考にしながら優しく撫でると、白猫は動かずにごろごろと喉を鳴らす。湯たんぽのような温みを感じながらそうしていると、澪ははっとして傍で立っていた赤木を見た。
「あ、飲み物は甘めなものでお任せしてもいいですか? どれも美味しそうで……決められないので、オススメをください」
「かしこまりました」
赤木は一礼して、メニューは澪のテーブルに置いたまま厨房へ戻る。暫くして店主が持ってきたのは、蓋つきのミルクティーだった。
「それではごゆっくり」
澪は赤木に小さく礼を言ってミルクティーを一口飲む。猫が触れても大丈夫なようにか、それは人肌程度の温度になっていた。
ふと膝の上の白猫の首を見ると、赤い首輪に『モモ』と書かれたプレートが付いている。名前を呼べばモモはにぃと小さく鳴いて返事をし、何か別のものに興味を惹かれたのかもぞもぞと動いて澪の膝から降りてどこかへ歩いて行った。
そして空いた膝を奪い合うかのようにすぐさま別の猫が寄ってくる。『イチゴ』や『レモン』など果物で統一された名前を確認しながら、撫でたり近くのおもちゃを使ったりと猫の相手をしていると、澪の目は首輪の無い猫の姿を捉えた。
他の猫と違いなかなかこちらに寄ってこない縞猫を見つめながら、澪は赤木に手を振って声を掛ける。
「……あの子、人見知りですか?」
すると赤木はぴくりと眉を動かして首輪の無い猫を見た。
「……え、ええ。そうなんです。元々捨て猫でして、あまり人に懐かないというか」
あははと苦笑する赤木。澪は再び近くの猫に視線を移し、首輪の無い猫を気にしていない風を装って笑い返した。
「ふふ、よく似た性格の友達がいるもので」
赤木はそうですかと笑いながらも、首輪の無い猫をひょいと抱えて何か焦るようにいそいそと厨房へ向かう。澪がその姿を目で追えば、店内と厨房を仕切る壁の向こう――猟兵の目の届かない場所から、カタン、と何かが開く音がした。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『繁華街の戦い』
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POW : デッキ席の椅子や露店の商品など、その場にある物を何でも武器にして戦う
SPD : 立ち並ぶ建物の屋根を縦横無尽に飛び移り、空中戦を仕掛ける
WIZ : 悪漢に舌戦を挑み、挑発や翻弄を仕掛ける
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
厨房の奥で、こそこそと声がする。
「……おそらく、あの人たちは君を捕まえに来たんだ。でも……逃げてほしい。君が悪い子だって分かっていても、守りたいんだ」
赤木は厨房に取り付けられた裏口の扉を開け放つ。首輪の無い縞模様の猫は礼を言うようにニャァ、と一声鳴いて、外へと飛び出していった。
「どうか……無事で」
音に気が付き猟兵が厨房へと向かうと、既にそこには猫の姿は無かった。赤木ははっとして裏口に立ち塞がり、先へ行かせまいと真剣な顔をする。
「あの子を助けたいんです。どうか、分かってください」
●
猟兵が急いで正面入り口から繁華街へ出ると、街では甲高い悲鳴が響いていた。すぐさまそちらに向かえば、可愛い猫とはなかなかに言い難い姿が猟兵の視界に入る。
「ナァーーーーォ……」
赤木が匿っていた猫と同じ毛色、縞模様の猫獣人。手元には街の人から奪ったのであろう鞄や髪留めが握られており、先程の悲鳴の正体がこれであったことを匂わせる。
獣人は猟兵の姿に気が付くと、フシャアと毛を逆立て一目散に走り去っていった。
あれが悪事を働く影朧であることは一目瞭然である。一刻も早くあの獣人を追い、捕まえなければならない。
栗花落・澪
赤木さんには申し訳ないけど…
“救いたい”のは、こっちも同じなんだよね
猫相手に説得が効くかはわからないけど
出来る事なら…転生させてあげたい
★Venti Alaに風魔法を宿し屋根の上へ
翼での空中移動+下向きの風力による後押しで加速ダッシュ
獣の走力を嘗めちゃいけない
このまま追い続けてもいたちごっこになるだろうから
妨害させてもらうよ
猫の進行ルートを先読みし
氷の【高速詠唱、属性攻撃】で氷の壁を作り妨害
万一突っ込んで壊されても速度軽減にはなる筈
更に指定UCで親衛隊達に手伝ってもらい
フライパンをおたまでカンカンしたり
放水したりと驚かせ
人気の少ない方にルート調整
その方が後の猟兵が自由に動きやすくなるだろうしね
駆けていく獣人を追いかけ、栗花落・澪はふわりと浮き上がる。翼を羽搏かせると同時に足元の『Venti Ala』に風の魔法を宿し、彼は獣人に追いつく程に飛行速度を上げた。
そんな彼の背後、既に遠く離れた喫茶店の入口。猫カフェの店主である赤木が大声で、獣人に向かって逃げてくれと叫んでいるのが澪の耳に微かに届く。
「赤木さんには申し訳ないけど……“救いたい”のは、こっちも同じなんだよね」
言葉を発さず鳴いて逃げるだけのあの影朧に、説得が効くのか否か。澪は出来る事ならば転生をと静かに祈りながら、前方の獣人へと近づいていった。
「このまま追い続けてもいたちごっこになるだろうから、妨害させてもらうよ」
澪は猫獣人の走る方向を見極め、その進路に氷の魔法を放つ。猫は瞬時に現れた氷の壁に体を丸めて突進するが、ゴツン、と鈍い音がしてその身は弾き返された。
「ニャアア!!」
慌てて別の方向へ逃げようとする獣人。逃げ道を探して立ち止まったその隙に、澪はユーベルコードを発動した。
「……また人数増えた?」
現れたのは『澪ちゃん親衛隊』。帝都の若者と思わしき人の群れがどこからともなくわらわらと集まると、彼等は一斉に澪に向かって敬礼する。
そして澪が追っている猫獣人を見て瞬時に何かを察し、親衛隊は一斉におたまやフライパン、水の入ったバケツなどを取り出し獣人を囲んだ。
カンカンカンカン! と頭の痛くなるような金属音が鳴り響く。たまらず獣人が親衛隊の輪を突き破って逃げようとするが、待ち構えていたバケツ隊に水を思いっきり掛けられフシャアと跳び上がる。
猫が力ずくで突破しようとする直前、輪の一点が突如がら空きになる。最早逃げられれば何でもいいと思ったか、獣人はそちらへ一目散に駆け出した。
「よし……皆、ありがとう!」
獣人が走っていったのは、人気のない一本道。帝都の人々を巻き込まず、入り組んだ道に逃げられる心配もないその方向へと誘導した澪は、親衛隊に笑顔で手を振り礼を言う。
そして親衛隊は彼の笑顔にわっと歓声をあげて手を振り返す。それは最早、何かのライブ会場かと見紛うような光景だった。
大成功
🔵🔵🔵
園堂・希沙那
帝都の空はボクの空!
店に置いてきた赤木君は後ほど取り計らうとして、今はあの猫に専念しようじゃあないか!
ボクはユーベルコヲド『ドレスアップ・プリンセス』で、猫を空から追跡するよ。
一本道なら、最高速度が物を云う!
猫の前に出て、後続の諸君と挟み撃ちにしよう。
万が一その爪牙を剥いてくるというのなら……!
ボクのこのプリンセスハートで!
柔らかくブッ飛ばすッ!
獣人は赤木の想いを受けてか、それとも単なる生存本能か。縞模様の猫獣人はとてつもない速度で人気のない道を必死に駆けていった。
――しかし、猟兵がそれを逃すわけがない。
園堂・希沙那は店の前で叫ぶ赤木から一旦意識を切り離し、あの猫獣人を追うべくユーベルコード『ドレスアップ・プリンセス』を発動した。
彼女の身体はふわりと花弁に包まれ、メイド服が瞬時に華やかなドレスへと姿を変える。小さな戦姫と化した希沙那は花びらを纏いながら上空へと飛び上がり、道を駆ける獣人の姿を目で捉えた。
「帝都の空はボクの空! この帝都でボクから逃げられると思って貰っては困る!」
にっと口元を緩め、希沙那は駿馬の如き速度で帝都の空を飛翔する。
追い込まれ一本道を逃げるしかない獣人に、上空の希沙那が追い付くまでそう時間はかからなかった。
猫獣人の真上へと到達した希沙那は、彼を少し追い抜いて一気に降下する。
ズン、と衝撃音を響かせ地に降り立った希沙那は、ぱんぱんと土埃を払いながら猫獣人の進路を塞いだ。
「ニャァァッ!?」
猫獣人は驚き足を止める。前方には希沙那、だが後方に戻れば猟兵と鉢合わせる。獣人はたった一人で道を塞ぐ小柄な彼女の方に少しでも勝機を感じたか、フウフウと息を上げながら希沙那にじりじりと詰め寄る。
そして、獣人はこの場を無理やりにでも突破しようと毛を逆立て飛び掛かった。
「舐められたものだね……ッ!」
希沙那は花びらと共に近くに浮かせていた『プリンセスハート』に手を翳す。彼女の鼓動に合わせて震えるそれは、希沙那の腕が向かう方向へ豪速球のように跳んだ。
「ンニャァァァ!!」
猫獣人は顔面にハートの打撃を喰らって後方へと跳ぶ。
そして、猟兵がいるのが分かっているにも関わらず、彼は錯乱したまま来た道を戻ろうとするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
白紙・謡
先に行かれた猟兵仲間の方々
その空舞う姿を、むしろゆるりと見上げて
わたくしは然程慌てなくとも良さそうでございますね
其処で追うところに引き返してくる猫に目を瞬き
あらあら、と呟いて
万年筆が宙に書く
『桜散らす
冷たき長雨に身を震わせた ちいさな猫
その姿に足を惑わせた彼は傘の下
あたたかなてのひらを、そっと差し伸べたのでございます――』
創作の彼に何処か、赤木様の面影があるのは多分
彼が猫さんに見せた想い、
猫さんの態度に、長年の恩のようなものを感じたから
筆が引き摺られたのでございましょう
彼と共に、猫さんの行手に立ちながら
責めず、荒げず、話しかけましょう
ねえ猫さん
わたくしに、貴方の抱える傷を教えてはくれませんか
「わたくしは然程慌てなくとも良さそうでございますね」
上空を見上げながら、白紙・謡は人気のない一本道へと足を踏み入れる。遠くを見れば、先程飛んで先回りしていった猟兵が獣人を足止めしている姿が映った。
「ンニャァァァ!!」
謡が道を進もうとした瞬間、猫獣人は突然何か攻撃を受けたのかニャアと一際大きく鳴いて飛び上がる。そして慌てて踵を返し、謡のいる方向へと全速力で駆けてくるのだった。
「あらあら……」
戻れば追手がいる事は分かっているだろうに、ただ逃げたい、逃げたいと必死な瞳で足を動かす獣人。謡は小さく呟きながら目を瞬き、そっと万年筆を取り出した。
『桜散らす
冷たき長雨に身を震わせた ちいさな猫
その姿に足を惑わせた彼は傘の下
あたたかなてのひらを、そっと差し伸べたのでございます――』
すらり、すらり。椿の描かれた万年筆は虚空を文字で彩り、彼女のユーベルコードを発動させる。
「おいで、おいで」
突進する勢いで向かってきた猫獣人の顔を、ざぁっと追い風が撫でる。
「ねえ猫さん。わたくしに、貴方の抱える傷を教えてはくれませんか」
謡の声と重なるように、風が吹き抜けていく。彼の目の前に現れたのは、柔和な笑顔を浮かべる初老の男性の姿だった。
「ニャ、ニャァ……!?」
見覚えのない顔。しかしその雰囲気はどこかあの猫カフェの店主、赤木の姿を思わせるようだった。獣人は混乱したように固まり、その足を前へ後ろへと彷徨わせる。
よく晴れた桜吹雪の舞う道で、男はすっと傘を開いた。
ビクッと体を震わせる獣人。堰を切ったように鋭い爪が煌めくと同時――しかし男は怖気づくこともなく、そっと猫に傘を差し出した。
「もう大丈夫です。一緒に行きましょう」
その言葉に、三角の大きな耳がぴくりと動く。
――影朧として生まれてしまった以上、もう人に愛でられ与えてもらうことはできない。食べ物も、暖かい寝床も、雨を凌ぐ傘さえも。
なのに、こんな生を恨む醜い猫に、あの人間は手を差し伸べてくれた。
――ああ、叶うなら。いつか普通の猫として、あの人間の元に――
獣人は、影朧はその傘の中で息を詰まらせる。
――が。
思い出す。赤木の為にも、そして自分が生きるためにも、目の前の猟兵達から逃げなければならないことを。
「ニャァ……ニャァァァアア!」
大きな鳴き声が響くとともに、獣人が男の傘の中から飛び出した。
猫獣人は猟兵に逃げ道を封じられ、きょろきょろと辺りを見回す。周囲を囲む高い塀の一点、少し窪んだ箇所を見つけた彼は、最後の力を振り絞って跳躍の構えを見せた。
大成功
🔵🔵🔵
鬼花・ショウ
「助けたいたって、どうするのさ。何があの子の救いになるんだい?」
猟兵は影朧を転生させることができる。それはひとつの救済方法だ。
他に何かあるっていうならさ、考えてよ。逃してお終いじゃなくて、あなたができることを。
●カイさん(f05712)と影朧の後を追う。
先に行った猟兵は随分、手厳しかったようだね?
店長さんを無駄に傷付けたくないし、穏便な方法は賛成。あのお店、また行きたいもんね。
影朧の捕縛を狙うカイさんのサポートするね。
想撚糸を躱してこちら側を突破しようと考えさせないように、そのへんにある物を武器代りに手に取り殺気を見せて威嚇。
説得時は刺激しないように控えるけど警戒だけはするよ。
桜雨・カイ
ショウさん(f23293)と後をおいかける
ショウさんの言葉に続けて赤木さんへ
私達もあの子(影朧)を助けたいのは同じなんです。
あの子と絆を結んだ あなただから伝わる事はきっとあります。
影朧を見つけたら、ショウさんと連携して【想撚糸】で網の結界を作り、影朧に投げつけて捕まえます。
これは普通の糸ではないので、そう簡単に切り裂けないはず
動きを止めたら話しかけます。
街の人からものを奪うのはいけない事ですよ
あなたが悪い事をすると、かばった赤木さんも悪く言われてしまいます、せめて街の人から奪ったものはかえしてくれませんか?
喫茶店の前で膝をつく赤木へ、鬼花・ショウは問う。
「助けたいたって、どうするのさ。何があの子の救いになるんだい?」
「そ、それは……」
赤木は答えることが出来ない。あれが『影朧』であるならば、救いとして一番確実であるのは猟兵による『転生』だということは明らかなはずだ。しかし赤木は、猫が痛がり、嫌がり、悲鳴を上げる姿を見たくなかったのだ。
ただただ小さく謝罪する赤木。その場にいたもう一人の猟兵、桜雨・カイは赤木を諭すように、ショウに続いて言葉を紡いだ。
「私達もあの子……影朧を助けたいのは同じなんです。あの子と絆を結んだ、あなただから伝わる事はきっとあります」
「私だから……伝わる事……」
胸に手を当て、店主は静かに涙ぐむ。
――そうだ。痛がる姿を見たくないなんて、私の勝手だ。あの子が立ち向かわなければいけない壁を、私が勝手に遠ざけてしまった。
「……本当に、申し訳ないことをしました」
赤木は立ち上がり、猟兵に追いつかなくともあの猫の元へ行く意思を見せた。
ショウとカイは揃って頷き、視線を合わせる。二人は先に向かった猟兵達を追って、帝都の街道を駆け抜けていくのだった。
●
足跡を追い人気のない通りへ進めば、そこには猟兵に囲まれ今にも跳ぼうと体を縮める獣人の姿があった。
カイはすぐさま、逃がすまいとユーベルコードを発動する。
「この糸は想いが紡ぐ糸。――痛みも記憶も、過去を全て抱えてその先へ進みます!」
幾本もの線が寄り集まり、それは線から糸へ、そして大きな網へと編まれていく。
カイが『想撚糸』の結界網を構えると、獣人はフシャァと一声鳴いて彼を睨みつけた。
警戒を強める獣人。網が動けばすぐにでも飛び掛かろうとする猫の背後、ショウは近くにあったのぼり旗を手に取って高く翳す。
「ほら――こっちだ!」
ショウが殺気を放ちながら旗を振り下ろす。バタ、と空気を叩くような音に獣人の注意が揺らいだ瞬間、カイは獣人目がけて網を放った。
「シャアアッ!」
獣人は暴れるが、強靭な糸はなかなか切り裂くことが出来ない。爪を振り回し体を捩り、複雑に編まれた網を更に絡ませていく。
しばらくして力が尽きたのか、獣人はスンと動きを止めて爪を収めた。
大人しくなった獣人に、カイはゆっくりと近づく。
「街の人からものを奪うのはいけない事ですよ。あなたが悪い事をすると、かばった赤木さんも悪く言われてしまいます」
獣人はその言葉にはっとして、カイの顔をじっと見た。
「せめて街の人から奪ったものはかえしてくれませんか?」
すると猫は素直にバラバラと簪や鞄をその場に撒き散らし、耳を伏せて少し反省した様子でカイを見つめながらニャンと鳴いた。
そして、猫の大きな瞳がぴくりと動く。
視線の動きに気が付いたカイが振り向くと、そこには遅れて到着した赤木の姿があった。赤木は猫に近づき、声を掛ける。
「もう、終わりにしよう。少し痛いかもしれないけれど……この人たちなら、大丈夫」
返事をするように、猫は再び小さく鳴いた。
――突然。
「……カイさん、赤木さん、離れて!」
警戒を続けていたショウが、獣人の異変に気付く。彼の掛け声にカイが赤木の手を引き距離を取ると、想撚糸の網の中――人間ほどの大きさだった獣人の姿が、ミチ、ミチと更に膨れていくのが見えた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『拾われた野良猫』
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POW : 引っかきラッシュ
【両手の爪】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD : 仲間の猫を呼ぶ
戦闘力のない、レベル×1体の【猫仲間】を召喚する。応援や助言、技能「【動物と話す】」を使った支援をしてくれる。
WIZ : 怪奇・巨大猫
肉体の一部もしくは全部を【巨大な猫】に変異させ、巨大な猫の持つ特性と、狭い隙間に入り込む能力を得る。
イラスト:ひゃく
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠ロスティスラーフ・ブーニン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「フシャァ……」
一回り、大きくなっただろうか。毛を逆立て、息を荒げ、その獣人は戦闘の構えを見せる。もう逃げる様子はなく、その目は真っ直ぐに猟兵の姿を捉えていた。
猫はもう理解しているのだ。もう逃げ場がないことも、逃げてもどうにもならないことも。そして、自分が既に『次の生』を望んでいることを。
猟兵達の説得によって心に”何か”が芽生えた猫獣人。だが、彼は影朧であるが故に、この世界を壊すために動き、猟兵と戦い、散らなければならないのだ。
赤木は自らの無力を悔しみながらも、猟兵に願う。
「……あの子を、どうか救ってください」
栗花落・澪
赤木さん…ありがとね
辛いだろうから、出来ればでいいけど
見届けてあげてくれる?
あの子の覚悟を
そして…覚えていて
あの子の存在を
貴方と過ごした時間を
さぁ猫さん、準備はいい?
加減はしないよ
その覚悟に、敬意を示すためにも
★Venti Alaに風魔法を宿し
猫さんの動きを観察
獣の素早さ、跳躍力…決して侮ってはいけない
確実に見極め、空へ大地へと臨機応変に移動しながら
足元に【破魔】の★どこにでもある花園を複数展開
更に顔面狙いの水魔法の【高速詠唱、属性攻撃】で足止め後
【優しい祈り】で与える痛みを抑えた【指定UC】
【催眠歌唱】で優しい微睡に誘いながら
風で巻き上げる花弁とのコンボで浄化と斬撃を
癒しは…後の仲間に託すよ
「赤木さん……ありがとね」
祈る赤木に微笑みながら、栗花落・澪は猫獣人の前へと進んで行く。
「辛いだろうから、出来ればでいいけど……見届けてあげてくれる? あの子の覚悟を」
赤木は辛そうに眉を下げながらも確かに頷いた。それは彼に出来る唯一の事であり、彼が決して避けてはならない事だから。
「そして……覚えていて。あの子の存在を、貴方と過ごした時間を」
澪は背を向けたまま、赤木に静かに告げる。一歩一歩と歩みながら、澪はふわりと足下の『Venti Ala』に風を纏わせた。
「さぁ猫さん、準備はいい?」
猫の瞳は、明るい空に細まりながらもしっかりと猟兵の姿を捉える。強い覚悟を宿す影朧へ、澪は全力で立ち向かう意志を見せた。
「加減はしないよ」
――ばさり、と純白の翼が空気を震わす。
上空の澪を見上げ、獣人はむくりと、大きく膨れた体を更に一回り――三メートル程の巨大な躯へと変化させた。
「ォァアアアアッ!!」
空中へ向かって振り下ろされる爪を、澪は自在に空を舞いながら躱す。それは猫の引っ掻きと言うよりは、剣の斬撃に近い一撃だった。
時に地から、時に跳び上がりながら放たれる攻撃に気を配りつつ、澪は自身の聖痕を足下へ翳す。するとそこへ『どこにでもある花園』が次々に広がり、辺りは鮮やかに彩られていった。
周囲の光景に猫が気づき一瞬の隙が生まれる。
素早く澪の声は水の魔法を紡ぎ、放たれた水塊が猫の顔面を直撃した。
「幸せのままに眠れ」
間髪入れず発動するのはユーベルコード『誘幻の楽園』。
澪は痛みを与えぬように祈り、歌う。旋律が猫を惑わせ、微睡に誘って行く。
地に広がる花々が風に乗って空へ巻き上がると、その花弁は刃となって一斉に”影朧”を包み襲った。
猫の悲鳴は聞こえない。
代わりにざぁっ、と花の散る音が帝都の空に響き、人程の大きさへと縮んだ獣人が地に落ちていった。
大成功
🔵🔵🔵
鬼花・ショウ
●引き続きカイさん(f05712)と協力体制。
●赤木さんには一応、納得してもらえたみたいでよかったけど。参っちゃうな、こういうのは。どうしたって笑って終われないんだから。せめて気の済むまで暴れてくかい?
●こちらに意識を向けさせるよう距離を詰めつつ、怪奇ヘビ人間の能力を使って攻撃を回避。付かず離れず影朧を引き付けておく。一気に方を付けるなんて無理そうだし、かといって苦しむ声は俺だって聞きたくない。攻撃を受けても耐えられるだけ耐える。
桜雨・カイ
ショウさん(f23293)と連携
…どうしても転生が避けられないなら、せめて次につなげてあげたいですね
この大きさだと猫パンチなんていってられないですね、ショウさん気をつけてくださいね
暴れ疲れたところで【援の腕】発動して苦しまないように浄化
『転生してもまた赤木さんと一緒にいたいですか?』
赤木さん、あの子の名前を呼んであげてください、再び出会った時にわかるように
赤木さんはあなたを待っていてくれます
だから…今は眠っていいんですよ
猫獣人はふらふらとよろめきながらも立ち上がった。
鬼花・ショウは赤木の顔を見やる。桜雨・カイと共に影朧から距離を取りながらも、赤木の瞳は真っ直ぐに猫獣人へと向けられていた。
「参っちゃうな、こういうのは。どうしたって笑って終われないんだから」
小さくため息を付きながら、ショウは仕方なさそうに笑って猫へ言う。
「せめて気の済むまで暴れてくかい?」
「ナァオ」
猫獣人は頷くように一声鳴いて、ふわふわの手から鋭い爪を覗かせた。人よりも大きく膨れ上がったあの身体と爪には、最早猫パンチなどという可愛らしい言葉は似つかわしくない。
「……ショウさん、気をつけてくださいね」
カイが警戒を促す中、張り詰めた空気を切り裂くようにショウが一歩踏み出した。
同時に猫獣人も両手を振り上げる。
「シャァァッ!!!」
爪は空を切った。一瞬にして至近距離へ迫ったショウの身体はぬるりと細長く――蛇のように変化し、猫の足下を這う。ショウは猫を直接攻撃せず、その目を惹き付けるように激しく体を動かした。
「苦しむ声は、俺だって聞きたくないしね」
手ごたえの無さに目を丸くしながら獣人が顔を下に向ければ、突如まるで天敵を見た獣のように飛び上がる。
「ニャァァアーーーッ!?」
猫獣人は慌てて爪を振り抜く。ショウはその細い体に爪が当たろうともその足下を這い回り、獣人の気を惹き続けた。
一方、暴れる獣人とショウを見つめながら、カイは小さく呟く。
「……どうしても転生が避けられないなら、せめて次につなげてあげたいですね」
カイの隣にいた赤木は、それを聞いて目を潤ませた。
――ああ、また泣いてしまう。分かっていても、止めたくなってしまう。
だが、赤木はカイの手の中に渦巻き出す光を見てその気持ちを仕舞い込んだ。暖かく優しい温もりを纏う光、カイのユーベルコード『援の腕』。カイは先の猟兵との戦闘、そしてショウとの戦闘を経て疲弊し始めた猫獣人に狙いを定める。
「あなた達を照らしますね。真っ直ぐに。迷わず、あなた達が向かうべき先の、道しるべになるように」
完全にショウに気が向いている猫獣人へ、カイは両腕を向けた。
光が駆け抜け、獣人を包む。一瞬驚き毛を逆立てるが、その力が”傷つける為の物”ではないことに気づいたか、獣人はその場で固まり立ち尽くした。
「転生してもまた赤木さんと一緒にいたいですか?」
カイの問いかけに、ぴくりと耳を立てる。そしてゆっくりと赤木の方を見て、獣人は小さく小さく、か細い声で一度だけ鳴いた。
「赤木さん、あの子の名前を呼んであげてください。再び出会った時にわかるように」
浄化を続けるカイがそう告げると、赤木は息を吸い込み――ふと、見慣れた花弁を瞳に映す。
「……サクラ。いつか、君と帝都の桜の下で」
その声が響いた瞬間、カイの光がふっと獣人の周りから消えた。
そして猟兵は静かに腕を下ろし、告げる。
「赤木さんはあなたを待っていてくれます。だから……今は眠っていいんですよ」
獣人は未だ消えないその体を震わせながら、しっかりと二本の足で立ち上がる。影朧としての衝動と葛藤するように首を振りながら、その猫は最後の力を振り絞って猟兵へと襲い掛かるのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
白紙・謡
猫さん
お友達もお呼びになったら如何でしょう
心配をかけるかもしれませんけれども
お見送りして頂いたら?
暫く、猫仲間さん達にも会えなくなりますでしょう?
わたくしの質問はこうです
「お名前、気に入りましたか?」
……ああ、待って
その答えを聞く前に
情念の獣は大きな大きな猫の影の形を取って
影朧猫の姿を隠し
猫って飼い主さんに最期を見せたがらないものですもの
牙を立てずに影の中にそっとしまってしまいましょう
――猫さんが、次は普通の猫さんとして
あったかい飼い主さんと
仲良しの猫さん達と楽しく暮らせますよう
……できたら、赤木さんのところに戻ってこられますよう
赤木さんと一緒に、わたくしもお祈り致しますね
ねぇ、『サクラ』――
向かってくる獣人に、白紙・謡の声が響いた。
「猫さん、お友達もお呼びになったら如何でしょう……心配をかけるかもしれませんけれども。暫く、猫仲間さん達にも会えなくなりますでしょう?」
それが通じたのか否か、獣人の周囲にどこからともなく沢山の猫が現れる。よく見れば彼等の首にはしっかりと首輪が付いており、謡はそこに下がる名札に目を瞬いた。
――赤木の喫茶店、猫カフェの猫達だ。
名札を揺らしながら猫達は鳴く。だが、それは猟兵に向かって威嚇する声ではない。彼等は語りかけるように、獣人を鼓舞するように優しい声をしていた。
「ナァーオ……」
獣人は戸惑うように鳴く。そして二、三度その声を交わした後、猫達は猟兵に襲い掛かることもなく静かにその場に座り込んだ。
赤木に、猫達に、そして猟兵達に見守られながら、獣人は深く息を吸った。
獣人は力強く地を蹴り、謡へと突進する。全身を武器とした弾丸のような一撃は、受けても避けても彼の最後の攻撃となるのだろう。
謡はその場を動かぬまま、問う。
「お名前、気に入りましたか?」
だが、彼女はその答えを聞く前にすっと手を上げた。謡の問いかけ、ユーベルコードによって生み出された『情念の獣』が、大きな猫を模りながらその影を広げて獣人を覆う。牙を立て襲い掛かるのではなく、そっと身の内に仕舞うように。
影は彼の突進を受け止め、そのまま獣人の姿を隠すように包み込んだ。
「――猫さんが、次は普通の猫さんとして。あったかい飼い主さんと、仲良しの猫さん達と楽しく暮らせますよう」
そして、一思いに。
「……できたら、赤木さんのところに戻ってこられますよう」
謡の手がきゅっと握られると同時、巨大な影が小さく縮む。
ころり。小さな小さな塊が、道の真ん中に静かに落ちた。
「赤木さんと一緒に、わたくしもお祈り致しますね。ねぇ、『サクラ』――」
見守っていた猫達が、リン、リンと首輪を鳴らしながら駆け寄る。彼等が囲む中心で、謡は小さな影の塊――影朧の残骸を拾い上げた。
謡の手の中で崩れ落ちるように、乾いた砂のように消えていく影朧。
振り向けば、赤木が今にも涙の零れそうな瞳で笑っていた。
「……ありがとうございました――」
礼を言うと同時、赤木の声が震える。
謡はそっと、消えかけの塊を赤木の手に握らせた。
赤木は手の平を見る。ほろり、ほろり、”それ”は桜の花弁のように散っていく。
猟兵達の想いが、転生の救いが届くことを祈りながら、赤木はその場に膝をつき静かに咽び泣くのだった。
●
あの日から数か月。変わらず猫カフェを営む赤木は、ずっと『サクラ』の事が頭から離れずにいる。あの猫の存在を、過ごした時間を、彼は一時たりとも忘れたことはなかった。
「みゃーお」
「ああ、ごめんね」
僕達がいるでしょ、と言わんばかりに店主に群がる猫達。彼等は慰めるようにもふもふとうろつきながら、赤木の手に握られたおやつのにぼしを貪る。
赤木は今日も、サクラと出会った路地裏へ赴く。捨て猫などいない方が良いのだが、どうしても彼はひとりぼっちの猫の姿を期待してしまっていた。
「今日もいない、か……」
店に戻った赤木は、諦めたように開店の準備を始める。ふと窓を見れば、見慣れた桜吹雪が外を舞っていた。
――ふと、そちらから聞こえる声。
「にゃん」
赤木は小さな鳴き声に、思わず窓から身を乗り出す。
そこに居たのは、真っ赤な目をした白猫。だが赤木と目が合った直後、猫はとたたとどこかへ駆けていく。
はっとして肩を落とす赤木。だが彼の頭を、いつかの約束が過ぎった。
『……サクラ。いつか、君と帝都の桜の下で』
既に白猫の姿は無い。単なる偶然か、本当に彼が『サクラ』だったのか。
赤木はそっと目を閉じて、店の中へと戻っていくのだった。
大成功
🔵🔵🔵