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鏡餅は城主になりたい

#サムライエンパイア

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●支配された城
 森林に囲まれた山の頂にそびえ立つ、和風の城。
 その周囲の森には幾つもの影が潜み、或いは飛び回っている。
 そんな城の最上階――天守閣には。
 真っ白な丸いものが、なんだか安堵した様子で鎮座していた。

「さて、猟兵諸君。今回の敵は『これ』だ」
 そう言ってルシル・フューラー(エルフのマジックナイト・f03676)がグリモアベースに集まった猟兵達に見せたものは――鏡餅だった。
「こいつは『野生の鏡餅』と言う化生――まあ妖怪の類らしい。以前から、年明けのこの時期になると現れるんだとか」
 鏡餅自体が縁起物と言う事もあり、倒すとご利益があるなんて言い伝え付きだ。
「で、そんな『野生の鏡餅』の1体がね。とある山城を乗っ取ったのが判ってね。しかも妖魔忍者共が、続々と集まっていてね」
 鏡餅なりに考えたのだ。
 かち割られない為に、城を乗っ取り辺りを武力支配してしまえばいいと。さらにその計画が、妖魔忍者と利害の一致をみてしまったのだ。
 そんなこんなで、忍者と鏡餅による篭城体勢が構築されてしまったのである。
「と言う事で、お城を取り返して来て欲しいって話になるんだけど、1つ問題がある」
 城に通じる山道が、妖魔忍者によって全て塞がれてしまったのだ。
「木々や大岩を使っているだけだ。君達なら、突破する事は簡単だろう――けれど、そこに『城の周囲の妖魔忍者に気づかれずに』と言う条件が付くと、どうかな?」
 物音1つ立てずに、というのは流石に厳しいだろう。
「何故、忍者に気づかれずに、と言う話になるかと言うとね。元々城にいた人達は、まだ生きているようなんだよ。どうも、いざと言う時の人質みたいだね」
 素直に山を登れば、人質を使われるのは必至。
「ここで朗報だ。山城近くの農村があるんだけど、実は忍者の隠れ里らしくてね。彼らなら『山道以外の城内に通じる秘密の道』と『人質が捕らえられていそうな場所』も知っていると予知出来た。
 その道を使えれば、人質をこっそり逃がす事が可能になるし、大量の妖魔忍者を一度に相手にする必要もなくなる筈だよ。まあ、城内にもいるだろうけど」
 ただ、隠れ里の人々にも事情があるようで、簡単には教えて貰えそうにない。
 彼らは何か密命を帯びているようで、己が忍者であると言う事は秘中の秘。情報を明かすという事は、その秘が漏れる危険を冒すと言う事でもあるのだ。
「転移先は、隠れ里のすぐ近くになっているよ。何とか彼らから、秘密の道の情報を聞き出して欲しい」


泰月
 泰月(たいげつ)です。
 目を通して頂き、ありがとうございます。

 野生の鏡餅は、城主になりました!
 いや、なんかイラスト見てたらね?
 天守閣においてみたくなったんです。なりません?

 状況はOPの通りです。
 人質に付いて補足しますと、捕らわれてるのは大体10人くらいです。
 武器を取り上げられ縄で縛られてるだけなので、状況さえ整えられれば、自分達の足で逃げる事が可能です。
 1章が成功すれば、彼らを助ける条件が揃うものとします。

 ではでは、よろしければご参加下さい。
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第1章 冒険 『忍者の隠れ里』

POW   :    拳で語って分かり合う。または力づくで聞き出す。

SPD   :    尾行や調査で彼らが忍者だと言う証拠を集め、黙秘と交換で情報を得る。

WIZ   :    忍者と言えど人の子。美味い飯と酒の前には口も軽くなるんじゃないかな。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

グロリア・グルッグ
SPD行動

隠れ里の一角、わりと人通りの多そうな場所に腰掛けます
衣服の隙間から天下自在札をちらっと出しつつ【存在感】を放ちます
普通の人なら気づかなくても忍者なら察せるでしょう
あくまでも独り言のテイを保ちながら電脳魔術を展開します

「鍛え込んだ身体の癖って消せないんですよねぇ。骨身に叩き込まれていますから、無意識にそうなっちゃうんですよね。だから逆に癖を消そうと変な動きになったり、まるで『私は普通の人ですよ』みたいになりがちで。変ですよねぇ、普通の人は特別な存在になりたがるのに……ちらっ」

電脳魔術で里の人達の動作を計測しているふりをして駆け引きします
「ただの独り言なので大丈夫ですよ、約束します」


甘夏・寧子
【SPD尾行や調査で彼らが忍者だと言う証拠を集め、黙秘と交換で情報を得る】

流石に専門職を出し抜いて潜入なんてのは出来そうにないからねぇ……。
ここは交渉でどうにかするしかないか。
とは言っても、力づくってのもアタシには向かないし、ここはその足で情報収集といこうか。
忍者っていうからには忍んでなきゃいけないんだろ?
今まで集めた物的証拠で少ぉーしばかり大人しく条件を飲んでもらえるよう交渉しよう。ん? 交渉だよ、交渉。
でも、こんなことをしてまで頼みたいことなんだ、って誠意だけは嘘偽りなく教えないとね。
相手も人の子。……分かってくれる時は分かってくれると思うんだけど。



●駆け引き
 山間にある農村。
 特別栄えている風もないが、食うに困っているという風もない。
 ごくありふれた農村だ。
 一通り村を見て回ったグロリア・グルッグ(電脳ハッカー・f00603)は、人通りがありそうな広場の切り株に腰掛けた。
 一見すると髪の色こそ珍しいものの普通の少女だが、放つ存在感と、わざと衣服の隙間から覗かせた『天下自在符』が人目を引いていた。
「あのぉ……徳川様の使いの方でございますよね。こんな村に何の御用でしょうか? それと……その面妖なものは、何でございましょう?」
 顔色を伺う様に声をかけて来たそこそこ年配の女性が『面妖』と称したのは、グロリアの周囲に浮かぶ電脳空間のウィンドウ。
「ああ、気にしないで下さい。ちょっと計測しているだけです」
「はあ」
 本当は特に何も計測しておらず、計測しているふり、なのだが。
 曖昧に頷いた女性に構わず、グロリアは独り言の様に続ける。
「鍛え込んだ身体の癖って消せないんですよねぇ。骨身に叩き込まれていますから、無意識にそうなっちゃうんですよね」
「……」
「だから逆に癖を消そうとして変な動きになったり、まるで『私は普通の人ですよ』みたいになりがちで。変ですよねぇ? 普通の人は特別な存在になりたがるのに……」
 ちらっとグロリアが露骨に視線を向けてみると、女性は露骨に目を逸らしていた。
「ただの独り言なので大丈夫ですよ、約束します」
 グロリアの言葉に返事はなく、女性も他の村人も、そそくさと距離を取る。
(「あらら。警戒されてしまいましたか。……ですが、私を警戒したなら、新しい動きがありそうですね。どこかでボロが出ているかもしれませんし」)
 そう胸中で呟いて、グロリアはもうしばらく、そのまま電脳魔術を使ったふりを続ける事にした。

 ――そして、それから程なく。
「何なんだ、あの女」
「あの存在感に面妖な術。只者ではあるまい」
「どこかの間者では――」
「だが、徳川様が何故、我らを――」
 村の蔵の陰で、若い男達が顔を突き合せ何かを話していた。
「とにかく、備えはしておいた方が良いだろう」
「ああ、そうだな」
 男達は頷き合い、1人が蔵の中へ入っていく。
「大変だ!」
 ややあって飛び出してきた彼の顔には、はっきりと焦りの色が浮かんでいた
「探し物は、コイツかい?」
 聞こえた甘夏・寧子(錦鈴の女・f01173)の声に、男達が弾かれた様に振り向く。
「さすがだよ。散々歩き回ってやっと見つけたのはこれだけだ。証拠を見つけるのに、こんなに苦労するとは思わなかったよ」
 寧子の手にあったのは、男が探していた吹き矢だ。グロリアが人を集めている間に、物色して探し当てていた。
「……何のつもりだ」
「交渉だよ、交渉」
 声に警戒を滲ませた男に、寧子がさらりと返す。
「コイツは返すし見たモンも忘れる。代わりに、少ぉーしばかりこっちの条件を飲んで貰えんかね? 忍んでなきゃいけないんだろ?」
「……」
 沈黙でやり過ごそうという様子の男達に、寧子は口の端に笑みを浮かべて続ける。
「まあ、警戒するよな。判る。アタシだって逆だったらそうするよ。けど、こんな事してまで頼みたい事なんだってのも、判っちゃ貰えないかね?」
 そう言いながら、寧子は彼らに向かって吹き矢を投げ返し、自分の両手を開いてヒラヒラと振ってみせた。敵意はない事と誠意を、行為を持って伝える。
「……頭に伺う。話はそれからだ」
 そう言って足早に去って行く男達の後を、寧子はゆっくりと着いていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

久篠・リジェリ
まずは隠れ里の人達の協力を得る必要があるのね。
WISで料理とお酒を振る舞うわ。
私料理なら自信があるわ……少しだけ!
まずは仲良くなってからこちらの事情を話して協力を得たいところね。
海鮮系の料理でもてなしてみたいわね。
笑顔を絶やさず私の女性らしい微笑みをぶつけてみるわね。


百鬼・葛葉
折角のお正月!ここはママ(六歳)がおいしいものをたくさん作って、みんなに振る舞いたいと思いますっ!
フォックスファイアを使えばキッチンがなくてもたくさん火が使えるので、こういう時にはちょうほうしますっ
にんじゃさんですし、煮締めとかがメインでいいでしょうか
あとやっぱりお正月には甘酒ですよねっ!
歌唱なんかで鼻歌を歌いつつ、料理の誘惑に誘われた方にお祈りを捧げつつ料理をていきょーします
料理とかが一通りおちついたら、甘酒を持って忍者さんたちを回っていきますっ!
ささ、一献どうぞ?(そそっとすり寄りつつ上目遣い
…そういえば、この辺りにちょっと隠れてしまった道があると窺ったのですが、本当ですか?



●胃袋を掴む
「ん? 何の匂いだ?」
 村人の1人が、何処からか漂ってくる甘い匂いに気づいた。
 忍者は常人より鼻も効くと言うが、それだろうか。
「~♪ ~♪」
 匂いのする方に行くと、なんだか楽しげな鼻歌が聞こえてきた。
「ごめんなさいね。台所、使わせて貰ってるわ」
 村人が中を覗くと、青い髪の少女――久篠・リジェリ(終わりの始まり・f03984)が振り向き微笑みを浮かべた。
「もう少し待っててくださいね? ママがおいしいものをたくさん作って、みんなに振る舞いますっ!」
 鼻歌を止めた百鬼・葛葉(百鬼野狐・f00152)は、尻尾をふわりと揺らし村人達に祈りを捧げるような素振りを見せた。
 それから少しして、葛葉は料理に使っていた狐火の炎を操り、ふっとかき消す。
 それに集まってきた村人達が呆気に取られる中、料理が完成した。
 なお、彼らが呆気に取られたのは炎を操った事。見た目は六歳児の少女に過ぎない葛葉が自らをママと称するのを、気にした様子はなかった。
 まあ、母親の事をママと呼ぶ文化は、少なくともこの村にはなさそうだ。

 閑話休題。

「料理は自信があるわ」
 少しだけ、と言う部分は飲み込んで、リジェリが出したのはお刺身と鰤大根。
 山里の農村として暮らしているのなら、海鮮系の料理を口にする事が少ないのではないかと思ってだ。
「ママが作ったのは煮締めですよっ!」
 葛葉が出したのは、根菜類と芋とこんにゃくや油揚げなどを甘辛く煮詰めたもの。正月の振る舞い料理でもある。
 最初は村人達も警戒していたが、2人が自ら食べてみせる事で毒ではないと証明すると次第に箸が伸びていった。
「あとやっぱりお正月には甘酒ですよねっ!」
 一通り食事が回ったのを見て、葛葉は甘い匂いを漂わせる甘酒を持って村人達の間を回っていく。
「ささ、一献どうぞ?」
 そっと擦り寄り赤い瞳で上目遣いしてみたりしているが、葛葉の六歳児同然の身体で果たして効果はどの程度だったか――まして相手は忍者である。
「セイシュって言うの? 普通のお酒もあるわよ」
 リジェリが徳利を振ってみせる。
「――何が目的だ」
 その酒を受けながら、1人がすっと目を細めてリジェリを問うた。
「敵でないのは判った。だが、ただ飯を振る舞いに来たわけではあるまい」
「協力して欲しいのよ。山の上のお城の情報が欲しいの」
 浮かべた笑顔は絶やさぬまま、リジェリは青い瞳で村人を真っ直ぐ見つめて、来訪の目的を告げる。
「……この辺りに、お城に通じるちょっと隠れてしまった道があると窺ったのですが、本当ですか?」
 葛葉も上目遣いのまま、村人達に問いかける。
「……着いて来い」
 すると、村人達は酔いを感じさせない動きですくっと立ち上がり、そう告げた。
「我らの一存では話せぬ。御頭の元まで案内しよう」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​


●御頭登場
 2つの手段で、村長にして忍びの頭領の下まで辿りついた猟兵達。
「……」
 そこにいたのは、正に巌のような、と呼ぶに相応しそうな2m近い身長でキッチリと正座した偉丈夫だった。あまり忍者らしいという印象ではないかもしれない。
「この通り村人らしからぬ方ですので、こうして表に出ないで貰っています」
 村人の1人が、そう説明する。
 成程確かに、お前のような村人がいるか、である。
「……」
 寡黙なのだろうか。
 ともあれ、彼を説得できれば話が付くと思って間違いないだろう。
ミーファ・ミーファ
ミーちゃんの出番なのら~!本当は闘うよりご飯食べてるほうが良いんらけどね~。
こう見えても(身長23センチ)、ミーちゃんはとっても強いのらよ~。健全な胃袋は、健全な肉体からって言って……あれ?逆らったっけ~?
……と、とにかくゴタクは良いから闘って力を示すのら~。たまにはこうして、拳と拳で語り合うってのも良いのらよね~。もちろん、殺すつもりはないのらよ~?
(一応、能力値的には身体能力(POW)は高い筈です)まぁ、もしどうしても苦戦するようなら、隠し持ったお肉を食べて【フードファイター・ワイルドモード】発動なのら~。
闘って友情が育まれたら、一緒にご飯食べるのら~~……え?情報?なんらったっけ~?


百鬼・葛葉
私、知ってますっ
こういう殿方こそ実はママに飢えているということを…!
ということで、早速行動かいしですっ!
「ママに甘えてもいいのよっ!」
生まれながらの光でママみを演出しながら、両手をゆるりと広げて受け入れ態勢はばんぜんですっ!
あとは背伸びしつつなでなでとか…あ、さっき作った御飯もまだありますよっ
ママの意味がわからずとも、この母性はきっと全宇宙きょうつうですっ!
他に何か作ってほしいものとかありますか?
寡黙な方なので、きっと声も小さいかなって、耳をちかづけつつ甲斐甲斐しくお世話します
何をお話しするにせよ、まずはすきんしっぷですよねっ!
もっと喉も体も温めましょうっ!



●拳で語って母性で落とす
「ミーちゃんの出番なのら~!」
 隠れ里の忍びの頭領の説得に、ミーファ・ミーファ(大食い妖精・f04191)が猟兵達の中から飛び出した。
「こう見えても、ミーちゃんはとっても強いのらよ~!」
 びしっと指差すその身長、なんと23cm。(正確には23.2)
 頭領のおっさんは2m近い偉丈夫だぞ。身長差ってもんじゃねえ。
「本当は闘うよりご飯食べてる方が良いんらけどね~。健全な胃袋は、健全な肉体からって言って……あれ? 逆らったっけ~?」
 当のミーファは、そんなサイズ差を全く気にしていない。
「……逆でもないぞ」
 そして頭領も気にしていなかった。
 むしろ鋭い視線を向けて、冷静にツッコミを入れている。
「ゴタクは良いから闘って力を示すのら~。こうして、拳と拳で語り合うってのも、たまには良いのらよね~」
「良かろう。御主等の力も知っておきたい」
 ぐっと拳を握る2人。
 そして――始まる拳の応酬。
「ぬんっ!」
「おおっ! 結構やるのらー!」
 巨躯に似合わぬ素早さで頭領が繰り出す拳を、ミーファがサイズ差をものともせずに受け流していく。
 何度目かの攻防の末、頭領の拳がピタリと止まった。
「せ~のっ!」
「っ!?」
 そのまま頭領の拳を両手で抱えて、ミーファが投げ飛ばす。
「むう……負けだ」
 背中から投げ飛ばされた頭領が、ミーファを見上げて笑って告げる。
 そんな頭領に、暖かく清らかな光が浴びせられた。
 更に、横から伸びてきた手が、その頭をそっと撫でる。
「?」
 頭領が首だけ動かすと、たおやかで優しげな笑顔を浮かべた葛葉が静かに頷き、光を放ちながら両手をゆるりと広げる。
「ママに甘えてもいいのよっ!」
 そしてすごい発言が飛び出した。
「………………」
 あ、頭領固まった。
「私、知ってますっ! あなたの様な殿方こそ、実はママに飢えているという事を……! この母性はきっと全宇宙きょうつうですっ!」
 更に続く葛葉の発言に、周りの忍者達も目が点になっている。
「何か食べますか? さっき作った御飯もまだありますよっ」
「いいのら~。闘って友情が育まれたら、一緒にご飯食べるのら~」
 御飯と言う部分だけに、ミーファが反応して深まるカオス。
「他に何か作ってほしいものとかありますか?」
 そっと膝を付いて屈みこむと、葛葉は頭領の耳元に囁いた。
 なお葛葉の身長は1mちょい。頭領との身長差、約2倍である。それでも、本人は甲斐甲斐しくお世話しているつもりなのだ。これは母性の為の行動なのだ。
 母性とは。
 さっきの聖なる光も、実は治療の為ではなく『ママみ』なるものの演出の為だったりするのだ。あれ、使った方も疲れる筈なんだけどな。
「もっと喉も体も温めましょうっ!」
 元気そうですね?

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『妖魔忍者』

POW   :    忍法瞬断
【忍者刀】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    忍法鎌鼬
自身に【特殊な気流】をまとい、高速移動と【斬撃による衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    忍法鬼火
レベル×1個の【鬼火】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●救出へ
「この井戸だ。枯れ井戸と見せかけているが、最初から井戸ではない」
 山城が佇む山の裾の森の中。
 頭領の案内で猟兵達が訪れたのは、鬱蒼とした雑木林の中にある古井戸だった。中に飛び込み、言われた通りに石を押すと秘密の扉が開く。
「通路に灯りはないが、迷う事はあるまいて」
 猟兵達は暗い一本道の通路を進んでいく。
「掛け軸の裏の扉に出る筈だ。そこは地下の貯蔵庫。そこに捕虜がいなければ、一度上に上がってすぐ隣の階段を下った先の地下の座敷牢だろう」
 頭領の言葉通り、地下牢の中に人質はいた。縄で硬く結ばれ轡を噛まされてはいるが、目立った傷はない。
 猟兵達は『天下自在符』で身分を示すと、牢の鍵を破壊し、人質の拘束を解いた。
 後は、秘密の通路へ案内するだけだ。出口の井戸で引っ張りあげるのは、隠れ里の忍び達が請け負ってくれる手筈になっている。
 だが――地下牢から階上に上がった所で、良くない気配と殺気が近づいてくるのを、猟兵達は感じ取った。
 城内の妖魔忍者に気づかれたか――。
 掛け軸の裏に隠し扉があると伝え、猟兵達は彼らに逃げるように促す。
 数分もあれば、彼らも逃げおおせるだろう。その間、妖魔忍者を1体でも後ろに通すわけには行かない。
久篠・リジェリ
時間を稼ぐわ。

ユーベルコード、ウィザードミサイルで敵と相対する
真の姿を解放とのことで力を増したウィザードミサイルで敵の攻撃に合わせて攻撃を相殺したり、敵を攻撃したりで足止めしてみるわ
自分が盾になってでも、人質の人達の救出を目指す

ここは通さない!


ネレム・クロックワーク
ごきげんよう、妖魔忍者さん方
残念ながら、ここを通すわけにはいかない、わ
片っ端から、片付けて参ります

【SPD】
敵が動くより前に【時の鍵】で動きを止めてみせる、わ
【高速詠唱】を最大限に活用
【全力魔法】と氷属性の【属性攻撃】を【祈り】に乗せて、凍結作用のある数多の追尾型魔法弾を超高速で続けて放ってゆきます
避けられても、それらは追尾していくから、逃げ場はない、わ

間髪入れずに通常攻撃でも追撃を
通常攻撃は【高速詠唱】と【全力魔法】を乗せた魔法弾
これには【マヒ攻撃】と【範囲攻撃】も上乗せしましょう

出来る限り数を減らせるよう、最善を尽くす、わ



●氷と炎の共撃
 板張りの廊下の向こうから、影が飛び出してきた。
「ごきげんよう、妖魔忍者さん方」
 迫り来る妖魔忍者――人間兵器としての本性を露わにした人外の姿に、ネレム・クロックワーク(夢時計・f00966)はまるで客を出迎える様に穏やかに告げた。
「残念ながら、ここを通すわけにはいかない、わ」
 その声のトーンが、僅かに冷たくなる。

 ――冱てる、時の歯車。

 妖魔忍者達が術で起こした気流を纏うのを見もせずに、ネレムは瞳を閉じて祈りながら高速で終えた詠唱の最後を詠った。
『イヤー!』
「時の鍵(クロノステイシス)」
 妖魔忍者達が奇声と共に床を蹴ると同時に、瞳を開いたネレムが掌から冴々とした冷たい魔光が数多に放たれる。
『ッ!?』
「無駄よ。逃げ場はない、わ」
 ネレムの言葉通りだった。
 慌てて回避を試みる妖魔忍者達を、魔光が追いかける。
 ネレムがたっぷり魔力を込めた魔光の速度は、気流を纏った妖魔忍者達を上回った。気流を盾にしようにも、雨霰と降り注ぐ魔光は、その気流すらも凍らせ追い続ける。
 光が消えた時、ネレムの前にいた全ての妖魔忍者はその時ごと凍りついていた。
 だが――。
「もう来たの……しつこい、わ」
 ボウッ、ボボッ!
 凍りついた妖魔忍者の後ろに生まれた、ゆらゆら揺れる炎にネレムが気づく。
 ――鬼火。
 第二陣の妖魔忍者の術で生み出された数十の炎が1つに集い、巨大な火焔を為した。
 凍った忍者ごと、焼き尽くすつもりか。
「無駄よ――ここは通さない!」
 たとえ、己を盾にしてでも。
 その眼差しに静かな決意を込めて。迫る火焔に凛と告げる、久篠・リジェリの姿は彼女の真の姿になっていた。
 リジェリの頭上に生まれた魔法の矢の数は、迫る火焔の元となった鬼火に勝るとも劣らず、そこに宿る炎の色はより高い温度を示す色となる。
「容赦はしないわよ」
 リジェリの指の動きに従い、炎の矢が一斉に放たれる。炎の群れは氷の彫像となっていた妖魔忍者達を撃ち砕き、鬼火の火焔に突き刺さった。
 炎が爆ぜて、黒煙が立ち込める。
 煙が晴れた後には、煤けた廊下しか残っていなかった。リジェリの放った炎は、鬼火の火焔を相殺し、後ろの術者も焼き尽くしたのだ。
「……やりすぎでは、ないわよね?」
 すっかり黒焦げになった壁を見やり、リジェリは少し困ったように呟いた。

 ともあれ、時間は充分に稼げた。
 もうこの場に留まる必要はない。
 城の外にいた妖魔忍者達も、今の戦闘に感づいているだろう。戻ってくる者もいるかもしれない。少なくとも、秘密の通路に逃げ込んだ人達に注意が向けられる事はあるまい。
 今度は、こちらが攻め上がる番だ。
 猟兵達は不意の遭遇に注意しながら、煤けた廊下を駆けて抜けて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

甘夏・寧子
【SPD判定】
チッ、嫌なタイミングだね。まぁ、人質を盾に取られずに済んだから十分ってところか。
さぁて、こっから先は一歩たりとも進ませられないね。やりたきゃ、アタシを倒してからにしな!!

あっちは早さで勝負してくるかね。なら、こっちも速さで勝負だ。スピードにはちょいとばかし自信があるからね。
クイックドロウで相手へダメージを稼げれば言うことないよ。
向こうがアタシを出し抜いて人質が逃げた方面へ走らない様に足なんかを早めに撃ち払って行動に制限を掛けておきたいけど……そこら辺は状況を見て余裕があったらやることにするよ。
とにかく、相手の数を減らすのが優先第一業務かね?



カタン――タンッ。
「チッ、嫌なタイミングで追いついて来たもんだね」
 上へ続く階段に足をかけたところで僅かにずれて後ろから聞こえた足音に、甘夏・寧子が小さく舌打ちをした。
「さぁて」
 階段から足を下ろして、ふっと小さく息を吐く。
 次の瞬間、踵を返した寧子の手には熱線銃が現れていた。
「こっから先は一歩たりとも進ませられないね」
 抜く手も見せぬクイックドロウ。銃口から放たれた光が、印を組んでいた妖魔忍者を撃ち抜いた。
『忍法――鎌鼬』
 1人やられても動揺の欠片も見せず、残る妖魔忍者達が気流を纏う。
「やっぱ速さ勝負かい! けど、こっちもスピードにゃちょいとばかし自信あるんだ」
 速度を増して迫る妖魔忍者達に慌てず、銃口を向けて光を放つ。また1人、妖魔忍者が足を撃ち抜かれてその場に蹲った。
「進みたきゃ、アタシを倒してからにしな!! ――やれるもんならね!」
 寧子の熱線銃が光を放つ度に、妖魔忍者が蹲り、或いは倒れていく。
『イヤー!』
 最後の妖魔忍者が放った風の刃の衝撃を、寧子は前に飛び出し避けた。
 ゴロンと前に床を転がった寧子は、膝立ちに起き上がり様に妖魔忍者の腹部に熱線銃の銃口を突きつける。
 零距離から放たれた熱と光に撃ち抜かれ、腹に風穴を空けた妖魔忍者が倒れ伏す。
 動ける妖魔忍者がいなくなったのを確認し、寧子は悠々と階段を上がっていった。

成功 🔵​🔵​🔴​


猟兵達は、山城を駆け上がる。
 鏡餅は、まだ見つからない。あと残るは天守閣くらいだが――。
 そこに通じるであろう階段の前には、妖魔忍者達が立ち塞がっていた。肩車状態でそれぞれに忍者刀を構えて道を塞いでいる。
 槍衾ならぬ忍者刀衾、と言ったところか。滑稽な気もするが、猟兵達の足を止めさせるくらいの効果はあった。
 あれを蹴散らせば、もう野生の鏡餅への道を阻むものもいない筈だ。
百鬼・葛葉
ふふ、どんなに大きくなっても肩車は楽しいものなんですねっ!
なんて衾を見てうんうんと頷きつつ…
さて。久しぶりにハム以外に使うんですが…うまくいくでしょうか?
天狐の見えざる手を手繰ります
室内という地形を利用しつつ、罠作りの応用で色んな支点を作りつつ肩車の下の忍者さんに絡めるようにしておびき寄せますっ
それに成功するようならその忍者さんを盾にしつつ、衾が乱れたところにむかって突撃ですっ!
狐火を私じしんの周りに浮かばせて忍者さんの攻撃を牽制
に、さん列の衾なら多分これで突破できるのですっ!
突破の際、余裕があれば鋼糸を衾忍者さんの周囲にばらまいて動きにくくさせてから狐火アタック!
後続の子たちの支援をしますっ



「ふふ、どんなに大きくなっても肩車は楽しいものなんですねっ!」
 目の前の光景を見ても、うんうんと笑顔で頷きそう言える百鬼・葛葉は、ここでもママだった。
「うーん……これをハム以外に使うのは久し振りですね」
 そう呟いた葛葉が、両手の指をばっと広げる。
「さて。うまくいくでしょうか?」
 少し心配そうに言いながら、葛葉は縦に横にと忙しなく手を動かしていく。まるで何かを手繰るように。
 実際、手繰っているのだ。極限の細さにまで織り込んだ曲弦の糸を。ほとんど見えないそれは正に、天狐の見えざる手。日常ではハムも縛れて便利です。
 仕草と糸が空を切る僅かな音で、妖魔忍者達が糸に気づいた時にはもう遅い。
「よいしょーっ!」
『グワッ!?』
 ぐんっと葛葉が引っ張ると、絡め捕られていた肩車の下の忍者の一体が引っ張られて、おびき寄せられる。更に罠作りの応用で糸を通された他の忍者達も体勢を崩し、ドタドタと肩車が崩れていった。
「突撃ですっ!」
 おびき寄せた妖魔忍者を盾にし、更に十数個の狐火を己を囲うように浮かばせ、葛葉は崩れた忍者衾に突っ込んでいった。
 忍者を忍者に叩きつけ、周りを狐火で牽制する。
「ママのじゃまをしちゃ、めっ、ですよっ」
 まだ動けそうな妖魔忍者を、葛葉が糸で縫い止める。
 そして開けた空間を、猟兵達は(妖魔忍者を踏んづけて)駆け抜けて行った。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『野生の鏡餅』

POW   :    お年玉(餅)
【投げた紅白餅】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大鏡餅落下攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    もち肌
自身の肉体を【柔らかいお餅】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    今年の運勢
対象の攻撃を軽減する【おみくじ体】に変身しつつ、【今年の運勢が書かれたみくじ紙】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエミリィ・ジゼルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●天守閣にて
 スパーンッ!
 小気味良い音を立てて、勢い良く襖が開かれる。
 その向こうに広がっていたのは、今までのような板張りではなく、畳が敷き詰められた部屋だった。
 その中央奥で、野生の鏡餅が猟兵達を静かに待ち受けていた。
 鏡餅にあるまじきサイズだが、三方も裏白も、よくある鏡餅のそれだ。
 だが、その大きさよりも何よりも。
 ただの鏡餅には決してない、風格のようなものがあった。
 天辺の橙からは、まるで後光が射しているかの様に輝きをも放っているではないか。

 あれは、妖魔忍者を従え、城を奪った野生の鏡餅だ。
 そんじょそこらのご家庭の鏡餅とは、わけが違う。
 こんななりでもオブリビオン。
 油断は禁物である。多分。
久篠・リジェリ
来たわね鏡餅……!
その存在感、気になってたわ。
大きくて、そう、美味しそうで……!
なんて危険な鏡餅、鏡開きして美味しくいただきたい!
いえ危険だから倒すわ

ウィザードミサイルで攻撃するわね
素敵な焼き餅にしてあげる!

そうね、きなこや醤油、おしるこにするのもいいわね

くらいなさい!


ミーファ・ミーファ
野生の、お餅…つまり、持ち主はいないって事らね~?食べちゃっても、誰にも文句を言われないのらよね~?
ってわけで、鏡餅はミーちゃんが倒して美味しくいただくのら~。しかも大きくて…食べごたえがありそうなのら~。
とりあえず、攻撃ついでに齧るのら~。ユーベルコードでも、食べられそうなら食べるのら~(紅白餅、自分から当たりに…というか、食べに行きそうですが…)


甘夏・寧子
【SPD判定】
……いやぁ、話を聞いて想像してた餅よりも随分立派だった。けど、アタシらが倒すことには変わりがないね。悪いけど消えてもらうよ。

どんな攻撃が効くかは分からないけど、まずはクイックドロウで先手を打つよ。相手のダメージを稼ぐなら手数を揃えないとね。
動いたりするのかねぇ?
そういう予想外の動きとかに備えて、なるだけ距離をあけながら戦うよ。



「……いやぁ、話を聞いて想像してた餅よりも、随分立派だね」
 鏡餅から伝わる妖魔忍者を上回る圧に、甘夏・寧子は熱線銃を握りながら思わず息を呑んでいた。
「ええ。存在感、凄まじいわ。大きくて、美味しそうで……なんて危険な鏡餅かしら」
 続く久篠・リジェリの言葉に、寧子は『ん?』とそちらを見やる。
「大きいのら~。食べごたえがありそうなのら~」
 ミーファ・ミーファも頬が緩んでいた。
「ええと。……食べる気なのかい?」
「いえ危険だから倒すわ」
 思わずつっこむ寧子に、リジェリは目を逸らしながら一応そう返したのが。
「野生の、お餅……つまり、持ち主はいないって事らね~?」
 ミーファはオレンジの瞳を爛々と輝かせて、鏡餅を見ていた。
「食べちゃっても、誰にも文句を言われないのらよね~? だから鏡餅はミーちゃんが倒して美味しくいただくのら~」
 そう言い放ち、銀のフォークとナイフを手にミーファが鏡餅に吶喊する。
 ガキンッ!
 突き立てたフォークから伝わってきたのは、そんな硬い手応えだった。
 鏡餅って、割るくらいだからね。最初は硬いよね。
「あんまりおいしくなさそうなのら~……ん?」
 しょんぼり顔で距離を取るミーファの前で、鏡餅が震えて――ぽんっ!
「もひはのら!(餅なのら)」
 鏡餅からぽんぽんと飛び出てくる、ほんのり紅色と白の丸い何かを、ミーファが思わず口で受け止めていた。
 鏡餅本体と違って、食べられる柔らかさのようだ。
「食べて大丈夫なのかね?」
「どうかしら。毒ではなさそうだけれど」
 自分達に降って来る紅白餅を光と炎で焼き落としながら、寧子とリジェリが危惧した通り、紅白餅は次の攻撃への布石だ。
 2人の目の前で――鏡餅がふわりと浮かんで、ミーファにズドンッと落ちていった。
「お、重いのら~!」
 身長23センチのミーファにとって、降って来た鏡餅は10倍以上だ。
「ちっ。素っ頓狂な攻撃だね!」
 容赦なく圧し掛かる鏡餅へ、寧子が熱線銃を向けて2連射。撃たれた箇所を赤くした鏡餅は、ふわふわと三方の上に戻っていく。
「う~! お餅食べても力が出なかったのら~!」
 押し潰されずに済んだミーファは、口の周りを餅塗れにしていた。
 どうやら食べてたみたいだが、フードファイト・ワイルドモードは、肉を食べる事で全身の細胞を活性化させるユーベルコードだ。残念ながら、餅は肉じゃない。
 そして、野生の鏡餅は――ぷくーっと膨れていた。
 餅の膜は猟兵達の目の前でどんどん膨らんで、鏡餅の全身を覆い――ぱぁんっ。
 弾けたそこには、やっぱり野生の鏡餅がいた。
「そうは見えないけど……何か変わったのかな?」
「あそこ。何か書いてあるわよ」
 寧子とリジェリの視線の先で、鏡餅の頂点の扇がぱっと開かれる。そこには、こう書かれていた。
 ――柔らかいお餅に成り候。
「アンタ最初っから餅だよね!?」
 寧子のツッコみと共に熱線銃を抜き放つ。
 だが瞬間、鏡餅の姿が掻き消えた。
「見えてるよ」
 寧子の琥珀の瞳が上を向く。向けた銃口から放たれた光が、鏡餅を撃ち抜いた。
 鏡餅はもち肌を伸ばして天井に貼り付け、そのまま縮む勢いを利用して、消えたと見紛う程の速度で天井へ向けて動いたのだ。
 柔らかくなったと言うことは、弾力も得たと言う事であった。
 そして――。
「……鏡開きするまでもなく、食べ頃になった、とも言えるわよね」
 青い瞳を鏡餅に真っ直ぐ向けて、リジェリの頭上に炎が生まれる。
「醤油をつけてから焼きたいところだけど……きなこをつけたり、おしるこにするのも良いわね」
 どう美味しくいただこうか考えながら、リジェリが生み出している魔法の矢の数は、階下で見せた時よりも僅かだが増えていた。
 ここに至るまでの中で、成長を遂げた証と言えよう。
「素敵な焼き餅にしてあげる!」
 リジェリが炎の矢を放つ直前、鏡餅はもち肌を部屋中の畳へ伸ばした。
「くらいなさい!」
 ズドドドドッ!
 炎の矢を浴びながら、鏡餅は畳を自らの周りへと引き寄せる。
 爆ぜた炎が上げる煙の向こうから、縦長のシルエットが現れた。
 組み合わさった畳が、六角の筒を象っている。
 これぞ、野生の鏡餅のアナザーフォームとでも言うべきモノ――おみくじ体だ。
「そう簡単には、いただけなさそうね」
 見上げるリジェリの目の前で、おみくじ体の天辺から大量の紙が飛び出す。
 『吉』や『凶』の字が書かれているみくじ紙の紙吹雪が、嵐の様に渦巻き広間を駆け巡っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●一方、おみくじ体の中
 野生の鏡餅は、結構頑張ってこのおみくじ体を維持していたりする。
ネレム・クロックワーク
やせいのかがみもち
……一瞬、脳が理解することを拒絶して漢字変換を忘れてしまった、わ
何かしら、この圧倒的な存在感
そして、じわじわ込み上げてくる、叩き割りたくなる衝動
これが『ぱわーわーど』というもの、なのね

そのまま何時までおみくじ体でいられるのか観察するのも楽しそうだけれど……
ガジェットくん、いらっしゃい
わたしと同じ攻撃を同時に仕掛ける自動攻撃ユニットを召喚
自身の魔導銃に【全力魔法】と風属性の【属性攻撃】を【高速詠唱】で装填
風の刃と化した鋭利な魔法弾をガジェットくんと同時にお見舞いする、わ
伸びているから、狙いが定めやすいわね
大きなお餅は、喉に詰まるから危険、よ
だから、カットしてしまいましょうね


百鬼・葛葉
頑張っている子はおうえんしたくなるのがママのさがですが…しかしこの世は焼肉定食もとい弱肉強食、こんやは皆で焼き餅パーティですっ!
ハレルヤと歌って皆を支援しますっ
誘惑とおびき寄せ、それと支援で稼いだヘイトで、天狐の見えざる手を張り巡らせた場所まで誘導をこころみます
おみくじ体中は鋼糸でもって絡めて時間を稼げればな、と
元のお餅にもどって…もしもち肌状態なら、予め狐火で炙って表面を超高温にしておいた料理も出来ちゃう便利な盾を押し付けてじゅって焼きますっ!
普通の状態なら盾をがんがん叩き付けてトンカチ替わりで割ってみましょう
やっぱり鏡餅に刃物はげんきんですもんねっ!
盾も金属ですが気にしちゃいけませんっ!←



 ――やせいのかがみもち。
 ネレム・クロックワークの脳裏に、そんなひらがなが浮かんでいた。
(「……一瞬、脳が理解することを拒絶して漢字を忘れてしまった、わ。これが『ぱわーわーど』というもの、なのね」)
 胸中で呟いて、ネレムは視線を前に戻した。
 組み上げた畳に隠れているが、そこに鏡餅がいる。
「このまま何時までおみくじ体でいられるのか、観察するのも楽しそうだけれど……」
 あの圧倒的な存在感の中の餅を叩き割りたい――そんな衝動がじわじわ込み上げて来るのを感じながら、ネレムは掌中で歯車を弄ぶ。
「頑張っている子は、おうえんしたくなるのがママのさがですが……」
 例え忍の頭領相手でも百鬼・葛葉は母性、もといママみを向けてきた。
 だが相手が鏡餅――食材となれば話は別だ。
 いやオブリビオンですけどね?
「この世は焼肉定食っ! もとい弱肉強食っ! この戦いが終わったら、こんやは皆で焼き餅パーティですっ!」
 いつもの焼肉パーティを、今日は焼き餅と言い換えて。
 葛葉はすぅと息を吸い込み、ハレルヤと歌い出した。
 たおやかで優しい歌声が、高らかに天守閣に響く。それは、他の猟兵の心に響いて鼓舞しその戦闘力を増強する一方で、畳で隠れた鏡餅にも響いていた。
(「もう少し――もう少しこっちに来るのですっ」)
 歌声に誘われるように、ふらふらと鏡餅は葛葉に寄っていく。
 そして、かかった。葛葉がぴんと張り巡らせておいた、天狐の見えざる手に。
「冱ゆる、夜の星標――ガジェットくん、いらっしゃい」
 この好機に、ネレムは自動攻撃ユニットを召喚した。
 更に高速詠唱で紡いだ風の属性の魔力を、魔導銃『romantica*』へと込める。
 それと同時に、ガジェットくんも同じく風の魔力を溜め込んでいた。
「伸びているから、狙いが定めやすいわね」
 絡みつき、隙間から入り込んだ極細の曲弦の糸が畳に引っかかっていた。崩れた畳に引っ張られて伸びたもち肌に、ネレムは狙いを定める。
「大きなお餅は、喉に詰まるから危険、よ。カットしてしまいましょうね」
 ネレムが込められる全力を込めた風の魔法弾は、鋭利な風の刃と化し――ガジェットくんから放たれた風の刃と畳の内側でぶつかった。
 1つとなった風の刃が、渦を巻く。
 嵐の如き颶風の刃が、鍵をこじ開けるようにもち肌を切り裂き畳を吹き飛ばして。
 後には、丸裸になり二回りは小さくなった鏡餅が残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

久篠・リジェリ
そろそろとどめ!

もう変形もしないわね?しないわよね?

鏡開きをしないとよね。

ユーベルコード
ウィザードミサイルを撃ち込むわ

お正月気分も終わりね
おとなしく焼かれなさーい!


ネレム・クロックワーク
『野生の鏡餅』とは、存外に頑張る子だったり、優しい歌声に惹かれたり、脱皮したりする生き物
……なるほど、理解した、わ

さあ、これで幕を引きましょう
城の奪還の為に、城に住まう人々の為に、わたしはこの銃の引鉄を引くことを躊躇わない

【全力魔法】と氷属性の【属性攻撃】を【高速詠唱】で魔導銃に装填
【時の鍵】に、ありったけの魔力を乗せて発動する、わ
永久に、貴方の時に鍵をかける

さようなら、野生の鏡餅さん
貴方の存在感は、そうそう忘れられそうにない、わ
無事に逃げられた人々にも、城の奪還を果たしたことを伝えなくてはいけないわ、ね



●氷と炎の終撃
「存外に頑張る子、ね……なるほど、理解した、わ」
 おみくじ体を破られ、もち肌も大半を切り刻まれて。小さくなってなお、野生の鏡餅は消えずに、ネレム・クロックワークの視線の先にいた。
(「優しい歌声に惹かれたり、脱皮したりもする生き物……なるほど、理解した、わ」
 胸中で呟き、ネレムがゆるりと笑みを向けた。
 百年の時を刻んだ懐中時計が本体である少女は、その生き様に何を思ったのか。
「もう変形もしないわね? しないわよね?」
 久篠・リジェリが向ける視線は警戒の色が残っている。
 あれだけ手を変え品を変えて来られては、まだ何かあるのでは――と彼女が思ってしまうのも無理はない。
 だからこそ、手を抜く事など考えていなかった。
「そろそろとどめ! 鏡開きをしないと、よね」
 掲げた繊手から昇るリジェリの魔力が集まり、炎の力を宿した燃ゆる矢を成す。
「……まあ、何かあっても驚かない、わ。だから、もう幕を引きましょう」
 言い放ち、ネレムが紡ぐ詠唱は時を封するが如き氷の魔力。
 2人の魔力に気づいたか。
 野生の鏡餅は、僅かなもち肌を伸ばそうとぷるぷる動き出した。
「ここに現れた貴方の時に、永久に鍵をかけてあげる、わ――冱てる、時の歯車」
 だが、ネレムの詠唱の方が早く完了した。『romantica*』の銃口から、敵を時ごと凍らせる光が放たれる。
「お正月気分も終わり。おとなしく焼かれなさーい!」
 やや遅れて、リジェリの術も完成した。掲げていた腕を下ろす動きに従って、炎の矢が群れを成し、鏡餅へと向かっていく。
 鏡餅が凍る傍から炎の矢が突き刺さり、砕け散っていく。
 それを見ながら、ネレムは躊躇わず引鉄を引き続けた。
 城の奪還の為。
 城に住まう人々の為。
 ネレムが込めた魔力が尽きるまで、冷たい光は幾つも幾つも止む事無く続く。
 そしてリジェリが放った炎の矢の数は、七十に上っている。
 もう鏡餅になす術などある筈もない。少しずつ少しずつ、凍り、炎に砕かれていく。程なくして、野生の鏡餅は猟兵達の前から姿を消した。
「さようなら、野生の鏡餅さん。貴方の存在感は、そうそう忘れられそうにない、わ」
 呟くネレムの視線の先で、天守閣に差し込む光に照らされ、僅かに輝いていた鏡餅の破片も溶けて消えて行った。

 その後――。
「お城は奪還した、わ」
 忍者の隠れ里にて保護されていた城主御一行は、その報告に滂沱の涙だったそうだ。城は幾らか荒れてしまった事は、命には代えられないと水に流していた。
 忍者達も、再建を直接手伝う事は出来ないが人手を手配するくらいはと言う。
 収まるところに収まったと言えよう。
 ――この世界風に言うならば、これにて一件落着、だろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月19日


挿絵イラスト