三位一体の悪魔の数字(デビルズナンバーズ)
「『超次元の渦』の鍵を発見しました。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだす。
その手には一体何の素材で出来ているのかも分からない、錆び付いた鍵が握りしめられていた。
「この鍵は、これまでグリモアで予知することのできなかった『完全復活を遂げた邪神』が棲まう超空間へと、皆様を転送するための鍵です」
これまでUDCアースで数多くの邪神復活を阻止してきた猟兵達だが、世界中で起こる全ての事件を察知し解決できたわけではない。実際には既に何体もの邪神が人知れず復活を果たしていたのだ。
「そうした『完全なる邪神』の存在がこれまで表沙汰にならなかったのは、邪神よりも遥かにおぞましき『何か』の仕業のようです」
その「何か」は、星辰揃いしときに始まるという「大いなる戦い」の為に邪神共を己が領域――『超次元の渦』にしまい込んでいたようだが、所在が判明したからには放置する手はない。大いなる脅威が動き出す前に、その戦力を事前に減らすチャンスである。
「今回、『超次元の渦』の中で発見した完全なる邪神を、リムは『666(トリプルシックス)』と仮称します」
完全復活を果たした邪神はもはや人智を超えた存在であり、その姿さえも一定ではない。呼び名すらないのは不便だろうと考えての便宜上の呼称だが、リミティアもまったく由来もなくそう名付けたわけではない。
「この邪神は段階的に変化する3つの形態を持つのですが、その全てはUDCアースで確認された不可思議殺人オブジェクト『デビルズナンバー』の姿を取っています」
デビルズナンバーとはそれぞれが3桁のナンバーと多種多様な特性を持ち、人間に危害を加える危険なUDC怪物群。他の依頼で交戦したことのある猟兵もいるかもしれない。
「この邪神とデビルズナンバーの関連性は不明ですが……少なくとも、通常のデビルズナンバーより遥かに強大な敵であることは確かです」
決して油断しないようにと忠告しながら、『666』の各形態について説明する。
「第一形態は№581『てつごうし』。一般人を体内に閉じ込め監禁する檻型の怪物で、囚われた一般人は最終的に身体が鋼鉄化し、UDCと融合してしまいます」
猟兵達が最初に戦う第一形態では、この『てつごうし』が無数の個体に分裂する。
分裂体だからといって弱体化している訳ではなく、一体一体がこれまで猟兵が戦ってきた「不完全に復活した邪神」と同等の力を有している。
「一度に複数と戦っても勝機は薄いでしょう。同時に相手をしないよう、かつなるべく多くの『てつごうし』を破壊してください」
なお――分裂した『てつごうし』の内部には囚われた一般人がいるが、既に邪神と一体化してしまっている。『てつごうし』の一部のようなもので、残念ながら救出は不可能だ。
「第二形態は№512『よふかし』。睡眠中の人間を無理やり起こし睡眠欲を吸い取るという、はた迷惑なデビルズナンバーです」
第一形態との戦いからしばらくすると、その時点で生存した『てつごうし』はひとつに融合して、一体の『よふかし』となる。その戦闘力とユーベルコードは大幅に強化されており、眠れないどころか騒音で発狂しかねない。
「この形態の『666』は極めて強大ですが、第一形態の段階で多くの『てつごうし』を倒しておけば、その分戦闘力が弱体化します」
あらかじめ十分に戦力を削れていれば、決して打倒できない敵ではない。
しかしこの『よふかし』を倒しても、邪神はまだもう一段階形態を残しているのだ。
「第三形態は№450『わたがし』。見た目はフワフワとした少女のようですが、その甘い香りに誘われて近付けば綿菓子の体内に取り込まれ、一瞬で砂糖漬けにされ体中の水分がなくなってしまうという、恐ろしい怪人です」
打倒された第二形態の中から「脱皮」して現れるこの『わたがし』が、『666』の最終形態。言うまでもなく、その力は絶大である。
「敵のユーベルコードへの対策は入念に行ってください。もし防御を怠れば初手の一撃でそのまま撃破されかねない、それほどの強敵です」
逆に言えば、油断なく防御と対策を練ることができれば、勝機はある。
幾多もの激戦をくぐり抜けてきた猟兵達の実力は、完全なる邪神にも立ち向かえる域に、既に達しているのだ。
「以上、3つの形態全ての攻略によって、完全なる邪神『666』の討伐は完了します。厳しい戦いとなりますが、リムは皆様なら必ず勝利できると信じています」
説明を終えたリミティアは、厚い期待と信頼の眼差しを猟兵達に送りながら、手のひらにグリモアと『超次元の渦』に続く鍵を浮かべる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回の依頼はUDCアースの『超次元の渦』に潜む、完全復活を遂げた邪神を討伐するのが目的となります。
第一章は無数に分裂した『デビルズナンバーてつごうし』との戦闘です。
通常のボスクラスの敵が集団戦のように大量に出現するので、袋叩きにされないようご注意ください。
第二章は分裂した敵が融合した『デビルズナンバーよふかし』との戦闘です。
素のままだと非常に強大ですが、一章で撃破した『てつごうし』の数に応じて弱体化します。
第三章では羽化を果たした『デビルズナンバーわたがし』との戦闘です。
最終形態の邪神は必ず「ユーベルコードによる先制攻撃」を行ってきます。これに対する何らかの対処がプレイングになければ、プレイングは必ず「🔴🔴🔴失敗」になります。
戦闘の舞台となる『超次元の渦』について。
ビジュアル上は「光り輝く銀河の中心」のような、光り輝くエネルギーに満ちた空間で、重力もありませんが生存や戦闘にこれといった支障はありません。
今回の邪神の嗜好なのか、空間には星屑のように無数の「数字」が浮かんでいます。
ボス戦、ボス戦、さらにボス戦という完全な戦闘シナリオになりますが、もし興味を持っていただければ幸いです。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『五八一『デビルズナンバーてつごうし』』
|
POW : 悪魔の収監(デビルインプリズン)
【鋭く尖った鋼鉄の手足による突き刺し攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大な檻による一撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 悪魔の鉄格子(デビルアイアンラティス)
【ボディ】から【高速で組み上げられていく鉄の棒】を放ち、【鉄格子の檻に閉じ込めること】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 悪魔の肉盾(デビルヒューマンシールド)
対象のユーベルコードに対し【体内に閉じ込めている一般人】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「六六六・たかし」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
清川・シャル
完全体邪神…違う空間に居たのなら見つかりにくいですよね
やっと戦えるのならきちっと叩いておきましょうか
中の方には少しだけ申し訳ないと思いつつ、無感情で葬りたい(あとで合掌しておきますから)
近接は得策ではないですね
充分に距離をとり視力で目視
見切りと残像と第六感を駆使して一撃目を意地でも避けます
氷の盾も展開しましょうか
Amanecerを召喚、ぐーちゃん零の全弾と共にランダム発射するUC
毒使い、マヒ攻撃を付与し、吹き飛ばし、範囲攻撃を
念動力で確実に当てます
もし間合いに来られたら、そーちゃんでの捨て身の一撃と鎧砕きで対応します
激痛耐性も使用です
「完全体邪神……違う空間に居たのなら見つかりにくいですよね」
そう呟きながら『超次元の渦』に飛び込んだ清川・シャル(無銘・f01440)。
上下の感覚もあやふやな、エネルギーに満ちたその空間で待ち受けていたのは、膨大な数に及ぶ鉄格子の怪物の群れであった。
「やっと戦えるのならきちっと叩いておきましょうか」
気合十分といった表情で、羅刹の少女はピンク色の愛銃「ぐーちゃん零」を構え。
デビルズナンバー581『てつごうし』――その姿を取った完全なる邪神「666」第一形態との戦いの火蓋が、ここに切って落とされる。
「近接は得策ではないですね」
分裂した敵に包囲されるような窮地に陥らぬよう、充分に距離を取ったまま目視で捉えた『てつごうし』の一体に照準を合わせるシャル。その殺気に気付いたのか、邪神の分裂体は鋼鉄の手足をギチギチと蠢かせる。
「ギギギギ……」
金属が擦れるような耳障りな声。鋭く尖った鋼鉄の手足が銛のように襲い掛かる。
シャルは桜色のメリケンサック「桜花乱舞」に埋め込まれた魔石の力を借りて、自身の前方に氷の盾を展開。おぞましき邪神の一撃を蒼氷が受け止めている刹那に、さっと身を翻して攻撃の軌道から逃れた。
(中の方には少しだけ申し訳ないですけど)
襲ってくる『てつごうし』の中に閉じ込められた、邪神と一体化した一般人の姿。
それを見て抱きかけた感情を心の奥底にしまいこみ、シャルは反撃に転ずる。
「戦場に響きし我が声を聴け!」
召喚される桜色のインカム、そして浮遊するスピーカーとアンプ群。
音響機器型アサルトウェポン「Amanecer」を装備した彼女が放つのは、【爆竜戦華】の一斉射撃。ぐーちゃん零に装填されたグレネードと30mm弾の全弾と、スピーカーより放たれる爆音の音圧と熱光線が、『てつごうし』を襲う。
「確実に当てます!」
「ギィィィィィッ!?」
シャルの念動力によって集中された弾幕は目標に全弾命中すると、仕込まれていた麻痺毒を内部に送り込む。そして動きが鈍ったところに撃ち込まれる音圧と熱量が、邪神の身体をビリビリと震わせ、バラバラに灼き切っていった。
『ギ、ギ、ギ……!』
超次元の渦に轟いた爆竜戦華に、周囲にいた他の分裂体達も此方に気付き始める。
シャルはぐーちゃん零のマガジンを交換しながら、敵に囲まれぬように後退しつつ熱光線を乱れ撃つ。
「やはり手強いですね」
最初の一体はうまく撃破できたものの、邪神の分裂体は一体一体が侮れない力を持つ。熱線でダメージは負ってもそう簡単に倒れることなく距離を詰めてくる。
ならば――と、敵が間合いに入った瞬間、シャルは手にした獲物を銃から金棒「そーちゃん」に持ち替え、捨て身のフルスイングを以って迎え撃つ。
「地獄へWelcome」
「ガァッ?!」
身体に突き刺さる鋼鉄の手足の痛みに耐えながら、渾身の膂力で叩きつけられたピンクの金棒が、『てつごうし』のボディをぐしゃりとひしゃげさせる。
(あとで合掌しておきますから)
吹っ飛んでいく敵の内部で一体となっている名も知らぬ誰かに、心の中で告げて。
再び距離が開いた隙に叩き込まれる爆竜戦華の第二斉射が『超次元の渦』を爆音で満たした。
『ギギギギギィィッ!!?』
降り注ぐ銃弾と熱線の集中豪雨に、悲鳴を上げる『てつごうし』達。
効いている。猟兵達の力と技は、完全復活を遂げた邪神に対しても通用していた。
大成功
🔵🔵🔵
祇条・結月
解ってる。僕は弱い
身の程知らずなことをしようとしてるのかもね
……けど故郷のことは放っておけないし……囚われて、邪神になってしまった誰かを、そのままにしておくのは、嫌だから
戦う、よ
包囲されないように【見切り】で敵の動きを見極めながら【敵を盾にする】ように動き回って、確実に一度に対峙する相手が一体になるように調節しながら戦う
あの形状じゃ苦無は牽制にもならないかな
銀の鍵を咎人の鍵に変形させて
接近戦で仕留める
自分に鍵ノ悪魔を降ろして、邪神の攻撃は透過して躱して
囚われた一般人と邪神を「分ける」風に魔鍵を振るっていく
わかってるよ
意味なんて、ない
でも、邪神と一緒になったまま、なんて嫌だから
せめて、って
「解ってる。僕は弱い。身の程知らずなことをしようとしてるのかもね」
『ギ、ギ、ギ、ギ……』
どこまでも広がる空間に、数え切れないほど満ちた邪神の分裂体を前にして、祇条・結月(キーメイカー・f02067)は静かに呟く。
完全なる邪神が発する、圧倒的なまでの存在感と、突き刺さるような悪意を肌で感じる。コレと比べれば人間など塵芥のようなものだと、否応なくわかる。
「……けど故郷のことは放っておけないし……囚われて、邪神になってしまった誰かを、そのままにしておくのは、嫌だから」
平凡な自分が手にする、ただ一つの特別――銀の鍵を握りしめて、宣言する。
邪神の悪意を押しのけるように。自分自身の心を奮い立たせるように。
「戦う、よ」
『ギギギギギ!』
その意思を脅威と悟ったか、幾体もの『てつごうし』が一斉に攻撃態勢を取った。
「とにかく、包囲されないようにしないと」
敵の動きをじっと見極めながら、超次元の渦を駆ける結月。彼に向かって降り注ぐのは、『てつごうし』のボディから矢のように発射される鉄の棒だ。
コマ送りのようなスピードで組み上がり、敵対するものを収監せんとする【悪魔の鉄格子(デビルアイアンラティス)】をかい潜りながら、鍵持つ少年は分裂体の一体に肉迫する。
「この形状じゃ苦無は牽制にもならないかな」
全身鋼鉄かつスキマの多い『てつごうし』の構造から瞬時にそう判断し、手にした銀の鍵を異形なる「咎人の鍵」へと変化させる。それは肉体ではなく、心を刺す魔鍵だ。
こうして懐に飛び込めば、敵の巨体が盾となって他の分裂体からの攻撃を阻んでくれる。回り込まれさえしなければ、実質的に一対一の対峙だ。
「ギギギギ……」
鋭く尖った鋼鉄の四肢と鉄棒が、至近距離から結月を襲う。だが、彼の身体はまるで幻のように、それら全ての攻撃をするりとすり抜けてしまう。
「……僕を、見るな」
自身に鍵を掛けることで【鍵ノ悪魔】の力を降ろした結月は、あらゆる境界を統べるというその権能を行使できる。敵の攻撃を透過するくらいは朝飯前だ。
さらに権能は結月自身の攻撃にも――剣のように振るわれた「咎人の鍵」は、身を守るように交差された『てつごうし』の四肢を透過し、本体のボディを捉える。
「ギィッ!!」
結月が狙ったのは、邪神の内部に囚われた一般人。『てつごうし』と同化してしまったその肉体を、悪魔の権能を借りて本体から「分ける」。
(わかってるよ。意味なんて、ない)
物理的には傷一つなく、邪神の中から分離されたヒトの身体は――しかし、脈打つことも呼吸をすることもない。結月にも、最初から分かっていた。
もう、ここに囚われた人々を救う手立ては無い。ひとたび邪神と同化してしまった時点で、その肉体からヒトの心と魂は失われてしまっていた。
「でも、邪神と一緒になったまま、なんて嫌だから。せめて、って」
「ギギギギィィ……!」
中身を奪われた『てつごうし』は、怒りに満ちた唸り声を上げて暴れまわる。
その猛攻を透過しながら、結月は駆けていく。解放したひとを戦いの余波から遠ざけるために、そして一人でも多くのひとを解放していくために。
「僕に今できることは、このくらいだけど」
だからこそ、それを全力で、精一杯やる。少年の振るう魔鍵によって『てつごうし』達は次々に解体され、その力を徐々に奪われていった。
大成功
🔵🔵🔵
茜谷・ひびき
アドリブ連携歓迎
完全復活を遂げた邪神か…
できるだけ倒しておかないとマズいよな
常に意識するのは「囲まれない事」と「消耗しすぎない事」
【情報収集】で常に周囲の様子に気を配り、危なくなったら相手と距離を取るように心がける
UCで腕に炎を纏わせたり、炎を飛ばしつつ戦う
相手の手足に当たりそうな時は炎を飛ばす遠距離攻撃を中心に
余裕が出来たら【怪力・鎧砕き・2回攻撃】を乗せた拳でぶん殴る
殴る際に出来れば【生命力吸収】を
囚われた人から力を貰う事になるかもしれねーけど……すまない、許してくれ
相手の手足の動きには常に注意
刺突さえ喰らわなければ檻の攻撃には当たらないからな
【野生の勘】を働かせて相手の攻撃を躱していく
「完全復活を遂げた邪神か……できるだけ倒しておかないとマズいよな」
周囲の様子に気を配りながら、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は『超次元の渦』の中を飛び回る『てつごうし』の群れを見つめて緊張の面持ちで呟く。
この膨大な敵だけを見ても悪夢のような光景だが、これはあくまで邪神の第一形態。予知によればこの先にはまだ強力な形態が幾つも控えている。
その前に1体でも分裂体の数を減らし、敵の力を削ぎ落とさなければならない。
『ギギギ、ギ!』
鋼鉄の手足を振りかざして、侵入者を串刺しにせんと襲ってくる『てつごうし』。
そのリーチに入る前に、ひびきは腕に纏わせた【ブレイズフレイム】を放ち、遠距離からの迎撃を心がける。
常に意識するのは「囲まれない事」と「消耗しすぎない事」。目の前の敵だけでなく広い視野で戦場を見渡し、数が多いからといって力を使いすぎないよう自制する。
「相手の数や体力だって、無限じゃねーはずだ」
焦らずに距離を保ち、囲まれそうになったらすぐさま離れる。
リスクを回避して牽制を続けていれば、いずれ好機は掴めるはずだ。
――そしていざ好機が到来すれば、一気に攻勢に転ずる。
「孤立してるぜ、あんた」
他の分裂体から離れた『てつごうし』を捉えたひびきは、それまでの遠距離攻撃から近接戦闘へとスタイルを切り替え、腕に炎を纏わせたまま懐へと肉迫する。
彼の戦闘スタイルは単純明快――燃やして、喰らう。ただそれだけ。
力任せに振り抜かれた拳が『てつごうし』の檻をぐしゃりと歪ませ、地獄の炎が鉄棒を飴細工のように溶かしていく。
「ギィィィィィッ!!」
金属が擦れ合う金切り声を上げて、じたばたと手足を振り回す『てつごうし』。
乱雑に凶器を振るっているに等しいその反撃を、ひびきは研ぎ澄ませた野生の勘をもってして躱す。
「刺突さえ喰らわなければ檻の攻撃には当たらないからな」
【悪魔の収監】は手足を突き刺して動きを止めた獲物に巨大な檻による一撃を放つ、二段階の攻撃。起点となる初撃を避けてしまえば恐ろしくはない。
獣のように姿勢を低くして鋼鉄の刺突をかいくぐったひびきは、身体を起こす動きに合わせてもう一撃、地獄の炎を纏った拳を叩き込む。
「グギィッ!!!」
その一撃でひしゃげた檻は完全に破壊され、『てつごうし』の身体は悲鳴とともに崩壊していく。
「……すまない、許してくれ」
倒れゆく『てつごうし』を炎で包み、ひびきは邪神の生命力を吸い上げる。
赫々と燃え盛る地獄の炎の中には、檻の中に囚われていた人間もいる。
もう、救い出すことは叶わないと知らされていた――ひびきに出来ることはその骸を炎を以って弔うこと、そして喰らった生命を新たな炎に変えて敵を討つこと。
戦闘前よりも一層激しい業火をその身に纏った"火々喰らい"は、次なる獲物を求めて超次元の渦を駆けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
トリテレイア・ゼロナイン
近い将来起こり得る大きな戦闘…この空間での戦いはそれの試金石とも言えます
…ここで砕け散る可能性もあるのは確か
何時ものように油断なく…ですね
●防具改造でUCの発振器を大量に装備
接敵したら発振器を空間に浮かぶ数字(無理ならその場で射出)に撃ち込み自身と一対一となるよう「檻」を形成
檻を破られぬ内に電磁波で動きを鈍らせバリアの壁面を●踏みつけ飛んで回避
ワイヤーアンカーを撃ち込み●ロープワークで巻き取り接近
●怪力●シールドバッシュで手早く粉砕、この工程を繰り返していきます
…もし無数の中の人が「助けられた」なら
騎士の使命とリスクを天秤に掛けて私はどんな選択をしていたのか…
仮定は無意味、戦闘に集中しましょう
「近い将来起こり得る大きな戦闘……この空間での戦いはそれの試金石とも言えます」
この戦いは貴重なデータになり得ると、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)は『超次元の渦』にはびこる『てつごうし』の分裂体と対峙する。
予知により示された、邪神を超える「何か」と「大いなる戦い」の予感。星辰揃いしその時が来る前に、秘匿された敵戦力との戦闘機会を得られたのは僥倖だった。
「……ここで砕け散る可能性もあるのは確か。何時ものように油断なく……ですね」
未知数である"完全なる邪神"の力をその身で確認し、次の戦いに繋ぐために。
機械騎士は気を引き締めると、肩部の【攻勢電磁障壁発振器射出ユニット】から杭状の発振器を射出した。
「ギギギ……?!」
対峙する『てつごうし』とトリテレイアの周囲に浮かんでいた数字に撃ち込まれた発振器は、互いを電磁波の線と線で繋ぎ、球形のエネルギー障壁を形成する。
「いわゆる檻というものです」
この障壁は内外の攻撃を遮断する。他に何十体敵がいようとも、余計な横槍を入れられる恐れはない。一対一の状況を作り出すにはもってこいのユーベルコードだ。
まさか敵も『てつごうし』である自分が逆に檻の中に閉じ込められるとは思ってもみなかった様子で、手足の動きに困惑がにじみ出ている。
「ギィィィ……ッ!」
"閉じ込める"側から"閉じ込められる"側になった『てつごうし』は不快感を訴えるように耳障りな声を上げ、鋭く尖った手足をぶんぶんと振り回す。
だが、その動きは当初と比較するとかなり鈍っている。障壁から発生する指向性の電磁波が、その能力を弱体化させているのだ。
(檻を破られぬ内に仕留めましょう)
トリテレイアはバリアの壁面を蹴って宙空に飛び上がると、敵の攻撃を躱しながら内蔵されたワイヤーアンカーを射出する。
狙い通り目標の本体にアンカーが突き刺されば、巻き取り機構を作動させて急接近。『てつごうし』の巨体に引っ張られるように迫る騎士の手には、彼の身の丈ほどもある重質量大型シールドが構えられている。
「グギ……ッ!!!!!」
檻の中に轟く激突音。自らの重量とパワーと防具の全てを武器としたトリテレイアと、弱体化を受けた『てつごうし』とでは、どちらが砕け散るかは自明の理だった。
大砲の直撃を受けたように吹っ飛んだ『てつごうし』はエネルギーの障壁に勢いよく叩きつけられ、それきりピクリとも動かなくなった。
「…………」
エネルギー障壁を解除しながら、トリテレイアは『てつごうし』の中に囚われていた人間の姿を見つめる。すでに邪神の一部として同化していたそれは、分裂体の死と共に跡形もなく朽ち果てていく。
(……もし無数の中の人が「助けられた」なら、騎士の使命とリスクを天秤に掛けて私はどんな選択をしていたのか……)
声に出さなかったその自問は、仮定としても容易には答えられぬ二律背反だった。
まだ形態を残している"完全なる邪神"との戦いで、リスクを背負うのは非常に危険だと理解したうえで。"だから"見捨てるのか、"それでも"助けるのか――。
「……仮定は無意味、戦闘に集中しましょう」
ループする思考回路を中断して、トリテレイアは次の目標を確認する。
予め改造を施しておいた防具の増設スロットには、障壁展開用の発振器がまだ大量にセットされている。
無数の敵を同時に相手取ることが困難ならば、1対1の工程を無数に繰り返せばいい。機械騎士の戦いはまだ始まったばかりだった。
成功
🔵🔵🔴
ディー・ジェイ
「噂の邪神様とやらを拝みに来たが、まずはその蜘蛛共がお相手か」
・蜘蛛には蛇を
遠距離からの狙撃を一発見舞ってから開戦。
距離を詰められないよう常に移動しながら射撃を行い、鉄格子を跳び魚を用いた不規則な回避で凌ぎたい。邪魔な肉壁はS1-spの自動射撃で。
迫る相手には銃撃音に隠しピンを抜いたPartyCrackersで目と耳を一時的に潰しだ。こいつには多少の麻痺効果もあるからな、その隙にまとめてフルバーストで吹き飛ばしてやろう。
こっちの投擲物は危険だと他個体に判断させ、PartyCrackersに何かしら対策を立てた相手には意識外から既に放っておいた火喰蛇を喰らわせる。
※アドリブ、他猟兵との共闘大歓迎
「噂の邪神様とやらを拝みに来たが、まずはその蜘蛛共がお相手か」
無数の分裂体となった『てつごうし』の姿を取った邪神「666」を前に、ディー・ジェイ(Mr.Silence・f01341)は皮肉混じりにそう呟く。
細く鋭く尖った手足をしゃかしゃかと動かして、『超次元の渦』の中を這い回るその様は、なるほど金属で出来た蜘蛛のようにも見える。
「蜘蛛には蛇を」
開戦の狼煙は一本の葉巻。その先端から大きく燃え上がった炎と煙は、空を這う【火喰蛇】と化して、狙い定めた標的へと鎌首をもたげて襲い掛かった。
「ギギ……!!」
遠距離から飛来する蛇の直撃した『てつごうし』が、炎に包まれて悲鳴を上げる。
攻撃を受けたことで、向こうもディーの存在に気付いたようだ。近くにいた他の分裂体を呼び集め、群れをなして襲ってくる。
「ちょいとひと泳ぎ」
ディーは【跳び魚】で何もない空間を蹴り、距離を詰められないよう不規則な機動と跳躍で押し寄せる敵を翻弄する。追いつけない蜘蛛の群れの先頭に向けて放つのは、アサルトウェポン「AR-MS05」の弾幕だ。
「グギィッ!」
炎に続けて銃弾の雨を浴びた『てつごうし』の動きが鈍りはじめる。
だが、仮にも邪神がこのまま一方的にやられる筈はない。それは自らの内部から閉じ込めていた人間の身体を開放し、弾幕と火炎を防ぐ【悪魔の肉盾】とした。
「そいつはもう、助けられないんだろう」
目の前に晒された一般人を見ても、歴戦の猟兵であるディーは躊躇わなかった。背中に装着した自立型破壊兵器「Silence,S1-sp」の砲身が動き、自動射撃を開始する。
鋼鉄の蜘蛛と同化していた肉体は、肉壁としてはそれなりの強度ではあったが、それでも数発の砲撃を浴びせただけでバラバラに吹き飛んでいく。
――しかしその数発分の猶予で、『てつごうし』はディーを攻撃できる間合いにまで踏み込んで来ていた。
「ギ、ギ、ギ……」
金属を擦り合わせたような耳障りな声。槍のように振りかざされる鋼鉄の手足。
その矛先が自らを貫く前に、ディーは右手で銃撃を続けながら左手でグレネードのピンを抜いた。
「飛んで火に入る何とやら、だ」
【悪魔の収監】よりも一瞬速く投擲され、『てつごうし』の至近距離で炸裂する「PartyCrackers」。凄まじい爆音と閃光が邪神の五感にダメージを与え、身体を痺れさせた。
「ギィィィィィィィィィッ??!!」
ひっくり返ってのたうち回る『てつごうし』へと、ディーは容赦なく追撃する。
AR-MS05とSilence,S1-spによるフルバースト射撃が、無防備な邪神の分裂体を撃ち抜き、破壊し、やがて物言わぬスクラップへと変えた。
『ギギッ』
仲間のそのやられ様を見た他の『てつごうし』達は、迂闊に近づけば二の舞になると踏んで接近を躊躇しはじめる。
特にグレネードの音と光の印象は強烈だったのか、ディーの片手が開くと露骨に警戒している。
だがディーはそんな連中の警戒心も、何かしら対策を打ってくるであろうことも全てお見通しだった。
「ちょいと失礼……」
物を投擲する素振りを見せて『てつごうし』の注意を引きつけた直後。
既に放っておいた火喰蛇が、標的の意識外から奇襲を仕掛ける。
「ギィ……ッ!?」
たちまち火達磨になって悶える『てつごうし』。間髪入れずに撃ち込まれる銃弾。
たとえ邪神が相手であろうとも、戦場で磨き上げられたディーの戦術と技術は、確かな脅威となっていた。
成功
🔵🔵🔴
フレミア・レイブラッド
完全体ね…。まぁ、完全だろうと不完全だろうとやる事は変わらないわ。
全て殲滅してあげる!
【ブラッディ・フォール】で「侵略の氷皇竜」の「氷皇竜メルゼギオス」の力を使用(氷皇竜の翼や尻尾等が付いた姿に変化)。
自身に【念動力】の防御膜と【アイス・リバイブ】の氷の鎧を纏い、【アイシクル・ミサイル】を自身の魔力【属性攻撃、誘導弾、高速詠唱、全力魔法、鎧砕き、鎧無視】で強化。
ミサイルの弾幕で一番手近な相手から集中的に攻撃及び敵の攻撃を迎撃し、攻撃を受けたら自身を強化再生。最後は【アブソリュート・ゼロ】で殲滅を繰り返し、一体ずつ減らしていくわ
中の子は気の毒だけどね…助けられないのでは仕方がないわね…。
「完全体ね……。まぁ、完全だろうと不完全だろうとやる事は変わらないわ」
虫のように溢れかえる『てつごうし』の大群を目にしても慌てることなく、フレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)は優雅に微笑む。
ダンピールであるはずの彼女の背面からは、氷の結晶のような翼と、爬虫類を思わせる尾が生えており、まるで人派のドラゴニアンのようでもある。
それはユーベルコード【ブラッディ・フォール】によって、かつて交戦したオブリビオン『氷皇竜メルゼギオス』の力を宿した証。
「全て殲滅してあげる!」
異界の竜の能力を我が物とした吸血姫は力強く宣言すると、その身に美しい氷の鎧を纏い、凍てつく寒気と共に『超次元の渦』を舞い上がった。
『ギギギギ……』
新たな敵の姿を捉えた『てつごうし』達は、ガチャガチャと耳障りな金属音を立てながら手足を動かし、ボディから鉄棒を矢のように放つ。
フレミアは氷鎧と念動力の防御膜を張って攻撃を防ぎながら、一番手近な相手に狙いをつけて【アイシクル・ミサイル】を発動した。
「まずは貴方からよ!」
氷皇竜の能力を吸血姫自身の魔力で強化した、数百を数える鋭く尖った氷の棘。
それらはまさにミサイルの如く標的を追尾しながら高速で飛翔し、鉄棒の矢を相殺しながら『てつごうし』に降り注いだ。
「ギィィィィィッ?!」
硬い鋼鉄のボディさえも貫く氷の棘を無数に浴びて、さしもの邪神も無事ではいられない。全身棘だらけになった『てつごうし』の悲鳴が戦場に響き渡る。
――だが、分裂体とはいえ相手は邪神。全力の集中攻撃を以ってしても一度では仕留めきれない。
フレミアはすぐに次の【アイシクル・ミサイル】の弾幕を展開しようとするが、それまでの僅かな隙を突いて、棘だらけの『てつごうし』は彼女を間合いに捉えた。
「ギギッ!」
敵は体内に閉じ込めた一般人を【悪魔の肉盾】として扱い、身を守りながら攻撃を仕掛ける。とっさに防御の構えを取ったフレミアの氷鎧を、鋭く尖った鋼鉄の手足が削り取っていく。
だが、破壊された氷の鎧――【アイス・リバイブ】はすぐに修復されて傷を塞ぐ。そればかりか術者の戦闘能力まで負傷する以前より一段と強化再生されている。
「なかなかやるわね。でも、これで終わりよ」
「ギ―――!!!!」
力を増したフレミアが放つのは、万物を凍結させる【アブソリュート・ゼロ】。
発生した冷気の大嵐を至近距離で浴びた『てつごうし』は、悲鳴すらも凍りつく極寒の中で、一瞬のうちに分子レベルまで活動を停止させられた。
「中の子は気の毒だけどね……助けられないのでは仕方がないわね……」
凍結する『てつごうし』の前で最後にフレミアが見せたのは、邪神と完全に一体化されてなお、肉盾として尊厳を弄ばれた一般人への哀れみの表情だった。
せめてこの氷の檻が棺となれば、彼らも安らかに眠れることだろう。
残る敵も殲滅すべく、フレミアは再び氷皇竜の翼を広げると、次の標的に向かって飛び立った。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
せめて、中の人達を助けられれば良かったんだけど…。
間に合わなくて、ごめんなさい…。
せめて、安らかに …。
周囲に【呪詛】で強化した【狐九屠雛】を展開…。
防御用に数発残し、残りで敵を追い込む様に放ち、一気に敵を凍結して接近…。
【呪詛、衝撃波】を纏ったバルムンクの剛剣の一撃【鎧砕き、鎧無視、力溜め、早業】で一気に叩き斬り、敵をバラバラにして倒していくよ…。
複数の敵が一気に来た際は【呪詛、高速詠唱、全力魔法】の呪縛の縛鎖と【狐九屠雛】による凍結で動きを封じ、一体ずつ順番に葬っていくよ…。
囚われた人達には破魔の鈴飾り【破魔】でその魂が解放される事を祈るよ…。
「せめて、中の人達を助けられれば良かったんだけど……」
戦場となった『超次元の渦』を駆けながら、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)が見つめていたのは、『てつごうし』の体内に囚われた人々の姿だった。
虜囚となった彼らは今や邪神の一部となり、肉盾としてその身を弄ばれるのみ。その事実は苦い感情と共に邪神という存在の悪辣さを、彼女にまざまざと実感させた。
「間に合わなくて、ごめんなさい……。せめて、安らかに ……」
一刻も速く彼らを邪神の支配から解き放つために、魔剣の巫女は弔いの言葉を紡ぎながら敵に迫る。
「ギギィッ!」
【悪魔の肉盾】をこれ見よがしに晒しながら、槍のように鋭い手足を振りかざして、猟兵を迎え撃つ構えを取る『てつごうし』の分裂体。
まずはその防御に隙を作るために、璃奈は展開していた地獄の霊火――九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】を放つ。
「あなたは絶対に許さない……」
「ギギッ?!」
術者の呪詛の籠もった獄炎から、慌てて逃れようとする『てつごうし』。だが、それぞれが異なる軌道を描きながら飛来する数十発の獄炎は、確実に敵を追い込んでいく。それは触れるモノ全てを凍てつかせる、絶対零度の炎である。
【狐九屠雛】の炎に包まれ、末端からピシピシと凍結していく『てつごうし』。
敵の動きが止まったのを見た瞬間、璃奈は魔剣「バルムンク」を抜き放つと、大上段の構えを取って一気に間合いへと接近する。
「これで葬る……」
刀身に呪力の衝撃波を纏わせて、静かな気魄と共に放つは剛剣の一撃。
かつて魔竜を屠ったとされるその剣は、逸話に劣らぬ凄まじい切れ味を以って、強固な『てつごうし』の身体をバラバラに叩き斬った。
『ギギギギギッ!!』
分裂体のひとつを見事に仕留めた璃奈だったが、息吐く間もなく数体の『てつごうし』が新手として襲い掛かってくる。
仲間を討たれた仇討ち――という訳でもないだろうが、猟兵達の力は一対一で当たるには脅威に過ぎると、敵も学習し始めた頃合いのようだ。
「警戒するのが遅いよ……」
璃奈は慌てず騒がす、防御用に残しておいていた数発の【狐九屠雛】を舞わせながら呪文を素早く唱える。足止めを狙って放たれた獄炎は『てつごうし』の手足を凍結させ、紡がれた呪縛の縛鎖がその上から敵を縛り上げる。
『ギ、ギ、ギ……!?』
氷と縛鎖の中でいくら彼らが藻掻こうが、その戒めは解けはしない。
複数体に一気に攻撃されるのが危険なら、一対多を複数回の一対一に切り分ければいいだけのこと。璃奈はバルムンクを振るい、動きの止まった敵を一体ずつ順番に葬っていく。
――やがて、周囲にいた分裂体の掃討が完了すると、璃奈はそっと祈りを捧げる。
「どうか、その魂が解放されますように……」
それは邪神に囚われていた人々に対する鎮魂の祈り。巫女の魔剣は『てつごうし』をバラバラにしても、彼らの身には傷一つ付けてはいなかった。
りん、と澄んだ音色を立てる「破魔の鈴飾り」が、無念の魂を慰め――呪詛の気配が消え去ったのを確認すると、璃奈は再び魔剣を手に取り、戦いを続けるのだった。
成功
🔵🔵🔴
レイ・キャスケット
…邪神ってホント悪趣味(怒りではなく拒絶の意の強い表情を浮かべながら)
一体化して助けれないとはいえ被害者にはなるべく苦痛なく逝って欲しいな
どうせ解放できないのなら、檻は檻らしく匿ってればいいんじゃないかな?
戦闘開始直後【高速詠唱】によるUCの鍵の嵐を全周に放ち施錠の効果の鍵で肉盾の使用を禁止
停止の鍵と活性の鍵を周囲に展開
自身は【ダッシュ】【第六感】【オーラ防御】を強化し翻弄
敵には順次停止の鍵を打ち込みながら一対一の状況をなるべく維持
凝縮した炎【属性攻撃】の魔力刃で鋼鉄の手足を溶解させれば後に残るはただの檻
達磨にしてもまだ存在を維持するようであれば氷の【全力魔法】で完全凍結フィニッシュ
「……邪神ってホント悪趣味」
怒りではなく拒絶の意の強い表情を浮かべながら、レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)は嫌悪の言葉を吐き出した。
罪なき一般人を囚え、生きたまま同化するデビルズナンバー『てつごうし』。まるで人を玩ぶ為にいるような存在を模すのは、確かに悪趣味としか言いようがない。
『ギ、ギ、ギ……』
雲霞のごとき邪神の分裂体達は、少女の反応を面白がるかのように、囚えたままの人間をこれ見よがしに晒しながら近付いてきた。
「どうせ解放できないのなら、檻は檻らしく匿ってればいいんじゃないかな?」
迫りくる邪神の魔の手よりも速く、レイが展開したのは【可能性の鍵】。
"解錠と施錠"の力をそれぞれに宿した無数の魔法の鍵が、彼女を中心として嵐のように舞い踊り、『てつごうし』達を巻き込んでいく。
『ギギギギギ……?』
邪神共に突き刺さった鍵は、檻そのものである連中のボディをがっちりと"施錠"し、体内に閉じ込めている【悪魔の肉盾】の使用を禁止する。
檻を開けられずに困惑する連中をよそに、レイは新たに"停止"と"活性"の鍵を周囲に展開すると、空間を蹴って駆け出した。
「この鍵で開くのは『可能性』」
"活性"の鍵を自らに差し込んだレイの身体からはオーラがあふれ、脚には力がみなぎり、第六感は研ぎ澄まされる。光を纏いながら『超次元の渦』を縦横無尽に駆けるその姿は、さながら流星の如し。
「この鍵で閉ざすのは『不可能』」
スピードと機動力で分裂体を翻弄しながら、順次打ち込んでいくのは"停止"の鍵。
魔法の鍵の力で『てつごうし』の足を封じて分断し、一対一で戦える状況をなるべく維持すること。それが彼女の目論見だった。
「さあ行くよ!」
"停止"して仲間から孤立した『てつごうし』に狙いを定め、レイは炎の魔力刃を展開した「ブランクソード」を振るう。凝縮された熱量の刃は煌々と燃え盛り、鋼鉄でできた邪神の手足を根本から溶断する。
「ギ、ギィィッ!!?」
『てつごうし』が手足を失えば、後に残るのはその名のとおり、ただの檻だ。
達磨となってもまだガタガタともがく無様なソレの中には、囚われたままの人間がいる。それを確認したレイは、剣を保持したまま呪文を唱えはじめる。
(一体化して助けれないとはいえ被害者にはなるべく苦痛なく逝って欲しいな)
放つのは炎ではなく、氷の魔法。真っ白な雪と冷気が邪神の分裂体を包みこみ、『てつごうし』を犠牲者のための氷の棺へと変えていく。
『ギ……ギ、ギ……』
鉄棒の芯まで完全に凍結し、ぴくりとも動かなくなった『てつごうし』と、眠っているような一般人の姿を確認してから、レイは再び戦場を駆けていく。
一体ずつ、確実に。この悪趣味な邪神の力を削ぎ落としていくために。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『五一二『デビルズナンバーよふかし』』
|
POW : 悪魔の騒音(デビルノイズ)
【時計から鼓膜が破れるほどの大きな音】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 悪魔の音波(デビルソニック)
【体のデジタル目覚まし時計】から【特殊な超音波】を放ち、【極度の睡眠不足に似た症状】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ : 悪魔の蝙蝠(デビルバット)
全身を【実体化した蝙蝠型のオーラ】で覆い、自身の【吸い取った睡眠欲】に比例した戦闘力増強と、最大でレベル×100km/hに達する飛翔能力を得る。
イラスト:雲間陽子
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「六六六・たかし」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『超次元の渦』にて繰り広げられる戦いは、猟兵達の優勢で進んでいた。
各個撃破された分裂体『てつごうし』は、当初と比べて大幅に数を減らしている。過半数とまではいかないが、邪神の力は大きく削がれたことだろう。
『ギ、ギギ、ギギギギ………』
――と、その時ふいに、バラバラに戦っていた『てつごうし』が集結を始める。
銀河のように輝く渦の中心で、一塊になった分裂体は互いに混ざり合い、溶け合い、新しい姿へと変化していく。
ジリリリリリリリリリリリリリリリリリンッ!!!!!
やがてその塊から聞こえてくるのは、耳障りで騒々しい音。
それは、完全なる邪神の"目覚め"を告げる、時計の音だった。
「ケケ、ケ、ケケケケケケッ!!!!」
皮膜に覆われた翼を広げ、顕現したのはデジタル時計を抱えた巨大な蝙蝠の怪異。
デビルズナンバー512『よふかし』――その姿を模った、完全なる邪神「666」の第二形態である。
「ずいぶん早い目覚ましじゃネェか! 『大いなる戦い』の時はまだ先だろう! だがまぁ、『よふかし』なオレっちには寝坊よりも早起きのほうが似合ってるか!」
その異形で、意外なほどに流暢な人の言葉を語る『よふかし』。
だが、それは会話を意図したものではなく、厳密にはただの"鳴き声"に過ぎない。
やけにボリュームが大きくて耳障りな、声思わず耳栓が欲しくなるような声。
このオブリビオンは、騒音を以って人から"眠り"を奪うUDCなのだ。
「目覚めちまったものは仕方がない。星辰揃いしときが来るまで、オマエらと一緒に待つとするか! 勿論、遊び相手になってくれるよナァ? ケケケケケケッ!!」
悪辣な邪神としての本性を剥き出しにして、けたたましく笑う『よふかし』。
生きた騒音公害めいたフザけた化け物だが、このノイズじみた声を聞いているだけで、どんどん気力と正気が削り取られていくのが分かる。
本気を出した完全なる邪神の力はこれほどか――だが、それも第一形態で多くの分裂体を葬ったことで、十全な力は発揮できていない筈である。
次なる敵は眠りを奪い狂気をもたらすデビルズナンバー『よふかし』。
第二ラウンドの開始を告げる、目覚まし時計の音が鳴る。
茜谷・ひびき
アドリブ連携歓迎
なんだよこいつ、死ぬほど五月蝿いな……
さっさと黙らせないと頭がおかしくなりそうだ
さっきと同じくUCで遠くから攻撃する事を意識
流石に音を防ぐような手段は持ってないからな……
こいつを倒した後の事も考えると耳は守っておきたい
【情報収集】で相手の位置を把握しつつ行動しよう
できるだけ時計の音から逃れつつ、それでいて俺の攻撃は当たるような位置を常に探していく
攻撃する時は【傷口をえぐる】ようにして早めに倒せるように
あとは狙うなら時計か?
あれが壊れれば多少は音もマシになる……と信じたい
もし鼓膜が破られたら【激痛耐性】で耐えよう
チャンスを見て接近戦も仕掛けつつ、【生命力吸収】も忘れずに
ディー・ジェイ
「やかましい目覚まし時計は叩き壊すに限る」
・対空戦闘
距離の優位を崩さないよう常に移動し、飛び回る蝙蝠に対して弾をばら撒くように中腰構えで銃を撃ち続ける。蝙蝠の回避運動がある程度把握出来たら、今度は誘導するように射撃を続けてS1-spによる自動砲撃の射線を確保、砲撃を見舞ってやろう。
万が一接近されてしまった場合はlogのワイヤーを放って蝙蝠の羽か身体に巻き付けて行動を阻害。悪魔の騒音が連続で放てないようであれば、それの使用後にワイヤー巻取りで俺自身を蝙蝠の身体へ急接近させ、あのデカい羽に直接ナイフを突き立てて引き裂いてやろう。
その後ワイヤーを外してすぐに離れる。
※アドリブ、他猟兵との共闘大歓迎
「なんだよこいつ、死ぬほど五月蝿いな……」
騒音をばらまきながら飛び回る『よふかし』を見上げ、ひびきは顔をしかめる。
ただ喧しいだけならまだマシだが、これは紛れもない攻撃。耳にした者から"眠気"を奪い、精神を崩壊させる邪神の狂騒だ。
「さっさと黙らせないと頭がおかしくなりそうだ」
「やかましい目覚まし時計は叩き壊すに限る」
再び腕に炎を纏わせた彼と同時に、銃器のリロードを終えたのはディー。
人々の安息を乱す狂った時計など、壊してしまったほうが世のためだろう。
2人の猟兵は互いの呼吸を合わせると、『めざまし』を討つべく攻撃を開始した。
「ケケケッ!! おーおー、やる気じゃねェか!!!」
放たれた獄炎と鉛玉の弾幕を、『よふかし』はその巨体に見合わぬ速度で躱す。
猟兵達を高みから嘲笑う、悪意に満ちたその声音は邪神そのもの。遊んでやろうと言わんばかりの傲慢さで、反撃のユーベルコードを放ってくる。
「ケーッケケケケケケケケケケケッ!!!! 吹っ飛びなァ!!!」
体のデジタル時計から放たれる、耳をつんざかんばかりの【悪魔の騒音】。
それは単なる音の振動に留まらず、物理的な破壊力を伴った衝撃波として猟兵達を襲う。
「流石に音を防ぐような手段は持ってないからな……」
「まだもう一形態残っている。ここで消耗しすぎる訳にもいかんな」
鼓膜を破られるわけにはいかないと、衝撃波の範囲から後退しながら【ブレイズフレイム】を放ち続けるひびき。ディーも同様に、AR-MS05を中腰に構えて銃弾をばらまきながら、距離の優位を崩さないよう超次元の渦を駆けまわる。
何も正面きって殴りあうだけが戦いではない。敵の間合いの外から長射程の武器や能力で攻撃を仕掛ける、それもまた強敵相手には有効な戦術である。
「ケケケッ! ちょこまかとネズミみたいに逃げ回るヤツらだなァ!!」
引き撃ちを続ける2人に苛立ったように、『よふかし』は翼を羽ばたかせる。
しかし既に何発も弾丸や炎を浴びているはずだが、まるで痛痒を感じた様子はない。牽制程度の攻撃では、完全なる邪神に有効打を与えることはできないようだ。
(なら、これよりもっとキツいのを見舞ってやろう)
ディーの傭兵としての経験と勘は、超次元の渦を飛行する『よふかし』の回避運動のパターンをここまでの攻防から把握していた。
そこで彼は行く手を阻むように弾幕を張って、敵を自らが望む方向へと誘導する。
その意図を察したひびきも、敵の未来位置を把握して、そこに攻撃を当てられるような位置へと移動していく。
「だんだん眠くなってきたぞォ? もっと面白いものを見せてくれよ―――!」
そうとは知らずに追い込まれた『よふかし』が見たものは、まっすぐ自分に向けられたディーの「Silence,S1-sp」の砲口だった。
蜘蛛の脚のように背中に装着された自立砲台は、目標との射線が確保された瞬間、自動砲撃を開始する。『てつごうし』との戦いでも威力を奮った砲弾が、邪神のド真ん中に叩き込まれる。
「グゲァッ!!!!?」
『よふかし』の口から悲鳴が上がる。この戦いにおいて初めての有効打。
そこに間髪入れずひびきが放ったブレイズフレイムの火球が追撃を加え、砲弾の穿った傷を――邪神と一体となった目覚まし時計を焼き焦がしていく。
――狙うなら時計を。攻撃を仕掛ける直前、ひびきはディーにそう伝えていた。
それは『よふかし』の攻撃手段である"騒音"の発生源が、あの時計だからだ。
(あれが壊れれば多少は音もマシになる……と信じたい)
そう考えたひびきの提案に合わせて、2人は目覚まし時計に攻撃を集中させたわけだが――果たしてその効果は期待以上のものだった。
「テッ、てめえらッ、よくもやりやがった、なぁッ!!!!」
効いている。ただ炎や銃弾を浴びせるだけでは小揺るぎもしなかった邪神が、明らかに苦痛を示して悶えている。蝙蝠のボディはほとんど傷ついていないのに、目覚まし時計を攻撃されただけで、このダメージ。
「あいつ、もしかして……本体は時計のほうなのか?」
そこからひびきが導き出した推測は、おそらく間違ってはいない。
眠気を奪い不眠をもたらすデビルズナンバー『よふかし』。その存在の本質を表しているものは"目覚まし時計"であり、蝙蝠の体は外付けの手足に過ぎないのだろう。
「クソッ、油断しすぎた……テメエらッ、もう許さねえぞッ!!!」
格下と侮っていた者達から思わぬ痛打を食らった『よふかし』は、逆上して襲い掛かってくる。破損した時計から騒音を、口からは怒声を放ちながら。
明らかに我を忘れているが、なりふり構わない相手は厄介だ。追撃の砲弾と炎を浴びせても勢いは止まらず、猟兵達は【悪魔の騒音】の範囲に巻き込まれてしまう。
「っ……!」
ビリビリと鼓膜が裂けそうになる爆音に、咄嗟に手で耳を塞ぐひびき。
痛みにはなんとか耐えられるが、この凄まじい音波の衝撃にいつまで耐えていられるかと問われれば、自信は無かった。
――だが、悪魔の騒音の只中にあっても、歴戦の戦場傭兵は冷静であった。
「隙だらけだぞ」
放たれたのは手袋に仕込まれた「Silence,S2-log」。蜘蛛の糸のように細く強靭な特殊繊維製のワイヤーが音もなく『よふかし』の身体に巻き付き、行動を阻害する。
「グェッ!!」
首に絡まったワイヤーが怒声を封じ、それに伴って目覚まし時計の音も止む。
邪神が連続してユーベルコードを放てるのか、ある程度のインターバルを要するのかは分からない。だがいずれにせよ、この僅かな好機さえあれば、猟兵達にはそれで十分だった。
「余裕ぶって飛んでいられるのも、これが最後だ」
ディーはワイヤーの巻き取り機構を作動させ、自分自身を標的の方へ引き寄せる。
思わぬ急接近に『よふかし』が反応できない内に、サバイバルナイフ「BAR-G」を引き抜き、その無闇やたらにデカい翼へと突き立てる。
「ゲェェッ!!」
鋸状になった刃に翼膜をズタズタに引き裂かれる激痛は、いくら本体でなくても堪えるだろう。ディーは悲鳴を上げてバランスを崩す『よふかし』の身体を蹴り、ワイヤーを外して離脱する。
「貰うぜ、あんたの命」
入れ替わるように飛び込んだのは、腕に紅蓮の炎を纏った火々喰らいの少年。
叩き込まれた拳は狙い過たずに、墜ちてきた『よふかし』の土手っ腹に突き刺さると、その身を焼き焦がしながら生命力を喰らう。
「ぐげぇぇぇぇぇッ!!! や、野郎ぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!」
苦痛と怒りに満ちた『よふかし』の絶叫が、超次元の渦に響き渡る。
だが、ひびきは全く取り合うことなく、悪魔の騒音で負った肉体と鼓膜のダメージを奪った生命力で回復させながら、すぐさま離脱していくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
水心子・静柄(サポート)
本差の姉に劣等感を持っていてい、表面上は邪険にしているが姉妹仲は良い方、所謂ツンデレ。考え方は知的、でも面倒になってくると脳筋的な解決法に傾く。感が鋭いが如何にも知的に導いたように振舞う。知的にグラウンドクラッシャーを使いこなす。脳筋ぽいけど実は知的。武器は鞘に入ったままの脇差(本体)。高圧的、威圧的な話し方だが、本人は至って普通に話しているつもり。
ヴィヴィ・ジーヴ(サポート)
サポートってお手伝いね。
ビビ手伝うよ。何すればいい?
キマイラの力持ち×精霊術士、15歳の女。
名前はヴィヴィ、一人称は自分の名前でビビ。表記はどちらでも。
服の下はフクロウ。
腕はハーピー(鳥の羽)、器用な作業は少しだけ苦手。
「あまりお手手は見ないでね、女の子の秘密よ。」
《力持ち》
素早いの、苦手。お目目くらくらする。一撃ドーン、が得意よ。
《精霊術士》
困った時は精霊さんに聞く!
《好き》
美味しいもの、食べる事、大好き!
あとね、ビビ、空中浮遊でふよふよするの好きよ。
悪い事(公序良俗に反する行動)はしちゃダメってお母さん言ってたよ。
いつかお母さんに話すんだから、言えないような事はしないわ。怒られちゃう。
「グギギ……いけねぇいけねぇ。オレっちとしたことがついカッとしちまったぜ。思ったより楽しませてくれるじゃネェか、オマエら!!!!」
予想外の痛手を負った『よふかし』であったが、すぐに我を取り戻すと、破損した本体の目覚まし時計を庇いながら、破れた翼で宙に舞い上がる。
その動きは幾分と鈍ってはいるが、まだまだ時計から放たれる騒音が止む気配はない。分裂体から一つになった完全なる邪神の生命力は並外れているようだ。
「五月蝿い蝙蝠ねえ。品性の欠片もないわ」
喧しくがなり立てる邪神を眉をひそめながら睨むのは水心子・静柄(剣の舞姫・f05492)。その手には、鞘に納まったままの自らの本体の脇差が握られている。
まるで見下しているような高圧的な振る舞いと口調だが、本人は至って普通に話しているつもりである――とはいえ、支援のために態々『超次元の渦』まで飛び込んでみて、待ち受けていた相手がコレでは、文句のひとつも漏れようというものか。
「サポートってお手伝いね。ビビ手伝うよ。何すればいい? あれをやっつければいいの?」
静柄とともに戦場に駆けつけた猟兵はもう一人。ヴィヴィ・ジーヴ(キマイラの力持ち・f22502)は紫色の無垢な瞳で『よふかし』を見上げながら小首をかしげる。
相手は自由に宙を飛べる翼を持つ相手。本人曰く"一撃ドーン"を得意とする力持ちの彼女としては、あまり相性がいいとは言えない相手だ。
「素早いの、苦手。お目目くらくらする」
そこでどうしたものかと、近くにいた仲間に聞く。問われた静柄は扇子で口元を隠しながらふむ、と考え、すぐにそのクレバーな頭脳で回答を導き出した。
「それじゃあ、こうしましょう……」
「うん、うん。わかった。ビビ頑張る!」
ひそひそと小声で作戦を伝える静柄に、こくこくと力強く頷くヴィヴィ。
2人の意思統一が成されたそのタイミングで、見計らったように『よふかし』が飛んでくる。
「さっきからコソコソ何を話してるんだァ? オレっちも混ぜてくれよ!!!」
近付くにつれて喧しさを増す目覚まし時計の音。その音量はもはや衝撃波。
無差別に全てを巻き込む【悪魔の騒音】が、静柄とヴィヴィに襲い掛かる。
「うるさいのはあんまり好きじゃないの」
むすっとした様子で眉をひそめ、ぱっと騒音の範囲から飛び退くヴィヴィ。
一方で静柄は回避せず、逆に騒音の中心にいる邪神に向かって突っ込んでいく。
「おいおい、作戦会議してたんじゃなかったのかよ!!!!」
「何? 煩すぎて聞こえないんだけど」
ビリビリと全身に叩きつけられる騒音という名の暴力。相手の声が聞こえないのは、ひょっとすれば鼓膜が破れているのかもしれない。
それでも静柄は前に進む。本体であり武器でもある脇差を鞘に納めたまま、ただただ真っすぐに、一直線に、討つべき敵を睨みつけながら。
「脳筋かよコイツ!!!」
傷つきながらも足を止めない静柄を見て、思わず『よふかし』は叫んだ。
だがその認識は誤りである。静柄は冷静に、知的に判断したうえで行動している。
音というのは防御困難な攻撃だ。音源から遠ざかる他に避ける術はほとんど無い。
だから、防げないのであれば、防がない。最短距離を突っ切って捨て身の一撃を叩き込むのが、結果的に被害を最小限に抑える方法だと彼女は考えたのだ。
――決して、考えるのが途中で面倒になって脳筋的な解決法に流れたとか、そういう事は断じてない。たぶん。おそらく。
「食らいなさい」
一見すれば脳筋丸出しな戦法で突撃した静柄は『よふかし』に脇差を叩きつける。
そう、斬るのではなく、叩く。彼女の本体を包む鞘は非常に硬く、重く、納刀したままでも鈍器として機能する。
「いや抜刀しろヨ!!! やっぱり脳筋じゃネェか!!」
がなり立てながら翼を広げ、脇差という名の鈍器から身を躱す『よふかし』。
邪神が回避行動を取ったことで、戦場に響いていた悪魔の騒音が一時的に止む。
――そう、この瞬間にこそ、静柄の考えた本命の"作戦"が発動する。
「つかまえたよ」
ぐわしっ。
脇差を避けるために宙に舞い上がった『よふかし』の足を、ヴィヴィの手が掴む。
「んなッ!? オマエ、なんでそこにいやがるッ!!!」
「ビビ、あなたほど素早くないけど、ふよふよするの好きよ」
彼女は鳥類の特徴を宿したキマイラ。飛行と呼ぶほど自在ではなくとも、空中を浮遊するくらいのことはお手のもの。
最初に邪神の攻撃を避けたあと、彼女は悪魔の騒音も届かない高所に留まって、ずっとタイミングを待っていたのだ。
静柄が敵の気を引いて、こちらに敵を追い込んでくれる、そのタイミングを。
「クソッ、放しやがれこのガキ! ってか何だ、この手の感触は……?」
「あまりお手手は見ないでね、女の子の秘密よ」
伝承に登場するハーピーのような、鳥の翼となった両腕でしっかりと『よふかし』を捕まえたヴィヴィは、そのままぶんぶんと相手を振り回す。
「ペンを持つのは苦手だけど、あなたのことは放さないよ」
巨大な邪神の身体を軽々と掴んで持ち上げる、可憐な姿からは想像もつかない怪力。これが"力持ち"である彼女のユーベルコード。
このまま【びったんびったん】と叩きつけられるようなものは、この空間には存在しない。だからかわりに、十分に勢いがついたところで――
「えい!」
「おぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!?」
可愛らしい掛け声とともに放り投げられた『よふかし』は、ハンマー投げのように勢いよく飛んでいく。その先で待っていたのは、抜刀の構えを取った静柄だった。
――静柄は、滅多なことでは自分の本体を抜かない。
抜き身になるのは恥ずかしいという、乙女心と日本刀的感性によるものである。
だから何かを斬りたいときは、刀身を人目に晒さないよう、一瞬で――。
「ハッ!」
コンマ数秒にも満たないほどの間隙、抜き放たれた超高速の【居合】が、飛んできた『よふかし』の巨体をばっさりと斬り捨て、即座に鞘へと納められる。
苔の一念岩をも真っ二つ。恥じらいが極めた抜刀と納刀の極意が、そこにあった。
「ギギャァァアァァァァァァァッ!!!!!」
悲鳴すらも喧しい『よふかし』は、ドス黒い血飛沫を撒き散らしながらきりきりと宙を舞う。その本体である目覚まし時計には、刀傷が深々と刻まれている。
「やったね!」
「ええ、上手くいったわ」
脳筋かつ知的な作戦を見事に成功させたヴィヴィと静柄は、満足げに頷きあうのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
トリテレイア・ゼロナイン
…………集音センサーの電源を落としましょうか
(自身を●ハッキング)
そのUCは爆風のような音で鼓膜外の気圧を上昇、その気圧差での鼓膜破裂と騒音で動きを制限し衝撃波を食らわせるものと見ました
残念ですが鼓膜が破れる程度の気圧差で壊れる程SSWの戦闘用ウォーマシンの部品は脆くはありませんし、壊れても戦闘にそれ程支障はありません
他の動体センサー等で●情報収集し、周りの状況を●見切り同士討ちにならぬ様に動きますが
●怪力での●盾受けで衝撃波を逸らしつつ接近し、UCで●だまし討ちし捕縛
沈黙後ワイヤーを●ロープワークで巻きとり只管スピーカーや液晶を剣で殴打
…他の手段(SPD)だったらまだ苦慮したのでしょうが…
「グ、ギギギ……オマエら、調子に乗ってんじゃネェぞ!! もう許さねェ!!」
咆哮する手負いの邪神。目覚まし時計をジリジリと鳴らしながら、その騒音にも負けぬ声量で怒号を撒き散らす、デビルズナンバー『よふかし』。
逆ギレにも等しい醜態ではあるが、想定外のダメージと屈辱を負わされたことで、ようやくソレは猟兵達を"玩具"ではなく"敵"として認識したようだ。
「狂い死ぬまで寝かさねえぞ!!! 壊れるまで叩き起こしてやる!!!」
邪神の怒りを乗せた【悪魔の騒音】はいっそう激しく、騒々しく。
常人であれば一瞬のうちに正気を失うであろう、狂気のノイズが響き渡る。
「…………集音センサーの電源を落としましょうか」
余りの騒々しさに耐えかねて、トリテレイアはそっと自らの聴覚をカットする。
ウォーマシンという機械種族の特性上、自分の機体にハッキングをかけて、一時的に身体機能を弄るくらいの事は慣れたものだ。
「―――!! ―――!!!」
敵はまだ何かを喚き立てているようだが、もうトリテレイアには聞こえない。
普通の生物なら聴覚を失えば行動に制限がかかる。戦闘中なら同士討ちの危険性も跳ね上がるだろう。
だが、集音以外にも全身に多種多様なセンサーを搭載した彼には、その一つを止めた程度で大した不具合はなかった。
「光学、熱源、振動センサーの感度良好」
聴覚を除いた全ての感覚を総動員して周囲の状況把握と情報収集に努めながら、機械騎士は儀礼剣と大盾を構えて『よふかし』に接近していく。
感覚的な影響をカットしても、邪神の放つ騒音は衝撃波となって物理的な破壊すらもたらす。だが、しっかりと防御の構えを取った彼ならば耐えられぬ程では無い。
「そのユーベルコードは爆風のような音で鼓膜外の気圧を上昇、その気圧差での鼓膜破裂と騒音で動きを制限し衝撃波を食らわせるものと見ました」
敵の能力の分析結果を言葉にしながら、衝撃波を大盾で逸らす機械騎士。
一歩ずつ力強く前へと進み続けるその足取りに、動きを制限されている様子は微塵もなかった。
「残念ですが鼓膜が破れる程度の気圧差で壊れる程スペースシップワールドの戦闘用ウォーマシンの部品は脆くはありませんし、壊れても戦闘にそれ程支障はありません」
"音"と"聴覚"という、通常の生物には対処の難しいユーベルコードも、機械が相手では効力は半減する。それがトリテレイアが指摘した【悪魔の騒音】の弱点だった。
「――――!!!!」
『よふかし』がまた何か叫んでいる。相変わらず聞こえないが、表情を見れば悔しがっているのは明らかだ。
その動揺の隙を突いてトリテレイアは一気に距離を詰めると、構えていた儀礼剣を振り上げ――腰部装甲に格納されたワイヤ制御隠し腕を伸ばす。
「!?」
剣で攻撃されると思って身構えた『よふかし』は、まんまとだまし討ちを食らう。
胴体と一体化した目覚まし時計に命中した隠し腕は、すかさず標的の能力を制限する特殊電流を流し込んだ。
「!!?!?!」
本体である時計に電流を流され、ビリビリと全身を痙攣させる『よふかし』。
直後、時計から流れていた目覚ましの音が止み、悪魔の騒音が封印される。
「貴方は確かに強大だったのかもしれません。ですが相性が悪かったですね」
トリテレイアは即座にワイヤーを巻き取ると、隠し腕に引きずられてきた『よふかし』に儀礼剣を振り下ろす。斬撃よりも殴打に近いその攻撃は、沈黙した目覚まし時計のスピーカーを破壊し、液晶画面を叩き割っていく。
「ギニャァァァァァァァッ!!!?」
集音センサーの電源を再びオンにすると、醜怪な邪神の悲鳴が聞こえてくる。
まさか完全体であるはずの己が圧倒されるなど思いも寄らなかったのだろう。
それはトリテレイアとの相性もあるが、第一形態の戦闘で力を削がれていた事と、邪神自身が慢心していたのも大きい。
「……他の手段だったらまだ苦慮したのでしょうが……」
ただ騒音を撒き散らすだけの一芸が、デビルズナンバーの能ではないだろう。
【悪魔の騒音】以外のユーベルコードをここまで『よふかし』が使ってこなかったことに安堵しながら、トリテレイアは容赦なく騒音の元凶を打ち砕いていく。
大成功
🔵🔵🔵
清川・シャル
えー!うるさーい!
迷惑な音ですね、ほんと。
でも、姿はさっきより攻撃しやすいですね
遠慮なく行きましょう
氷の盾を展開、音を少しでも遮断して攻撃に備えましょうか
通常攻撃にも耐えられますし
UCでそのまま動きを封じる狙いです
音にイライラする気持ちを硫酸弾に込めて、ぐーちゃん零発射です
マヒ攻撃、呪殺弾を範囲攻撃と吹き飛ばし
念動力で確実に当てて、制圧射撃を遠隔攻撃で行います
激痛耐性と第六感で攻撃に備えます
「グギギギギグギ……!! オマエら、よくも、よくも、ヨクモォォォッ!!!!」
「えー! うるさーい!」
喧しい怒りの咆哮を上げる『よふかし』に負けじと、叫び返したのはシャル。
戦いの最中に引っ切り無しに聞こえてくる騒音。桜花乱舞の力で氷の盾を展開し、少しは音を遮断できていたが、それでも募る不快感とイライラは爆発寸前である。
「迷惑な音ですね、ほんと。でも、姿はさっきより攻撃しやすいですね。遠慮なく行きましょう」
盾の向こう側から『よふかし』を睨みつけ、ぐーちゃん零に弾丸を装填。
相手はさっきよりも巨大で、小癪に犠牲者を見せびらかしてくることも無い。
狙って当てるだけに限っていうなら、むしろ良い的だ。
「舐めるなよ!! オレっちの力はまだまだこんなモンじゃねぇ!!」
がなりたてる『よふかし』の身体から、邪悪なオーラが湧き上がる。
その体躯はより大きく、そして禍々しく。広げた翼は夜の帳のように暗い。
【悪魔の蝙蝠】――実体化したオーラで自らを覆い、これまでの犠牲者達から奪ってきた睡眠欲を戦闘力に転化するユーベルコードである。
「……!」
来る。シャルの第六感が警鐘を鳴らした直後、『よふかし』は彼女の目前にいた。
これまでとは比べ物にならないほどの驚異的なスピード。ユーベルコードによって邪神の飛行能力は大幅に強化されている。
「ブッ壊れろォォォォォッ!!!!!」
シャルは音波遮断のために展開していた氷の盾に身を隠しながら身構える。
だが『よふかし』の超高速の突撃は、そんな防御ごと彼女を吹き飛ばす。
大砲の直撃を受けたような衝撃。小柄な羅刹の少女の身体が、超次元の渦に舞う。
「ケケケケケケッ!!! 見たか、これがオレっちの実力――!!!!」
ふっ飛ばされていくシャルを見て、勝ち誇りながら笑い声を上げる『よふかし』。
だが、ソレがそんな態度を取れたのも、つかの間のことでしか無かった。
「何だ……? 身体が、動かね……ッ!!!」
本人すら気が付かないうちに、邪神の身体には冷たい氷の枷がかけられていた。
禍々しき邪神の身をも凍結させる絶対零度の氷。それはシャルの放った【SNOW Apple】の力だった。
「血まで凍る林檎、味わってみますか?」
青い瞳に冷たい怒りを宿して、邪神を睨みつけるシャル。その手には一丁の銃。
あと一瞬反応が遅れていれば、そして痛みへの耐性がなければ、あの一撃でノックアウトされていたかもしれないが――まだまだ平気だ。だから反撃に繋げられた。
彼女が念じれば意識を向けた箇所がたちま凍りついて、邪神の動きを封じていく。
「クソッ、こんなもので、オレっちを止められると思うなよッ!!!!」
氷の中で暴れる『よふかし』。確かにこの拘束は一時的なものに過ぎないだろう。
しかしそれで十分。動けない目標に狙いをつけて、シャルはぐーちゃん零のトリガーを引いた。
「今までのぶん全部お返しします」
音にイライラする気持ちを込められた銃弾が『よふかし』の身体に着弾する。
それはただの鉛玉ではなく、骨をも溶かす硫酸弾であり邪神をも蝕む呪殺弾。
そんなものを雨あられと浴びせられれば、完全なる邪神と言えどたまったものではない。
「ギエェェェェェェェェェェッ!!!?」
のたうち回る『よふかし』の悲鳴も、もうシャルの集中を乱すほどではない。
ふっ飛ばされるついでに十分な射程を確保した彼女は、遠距離から制圧射撃を続ける。どんなに標的が暴れても、念動力で誘導された銃弾は決して的を外さない。
ひとつ銃弾が貫くたびに、完全なる邪神の生命力は、確実に削られていっていた。
成功
🔵🔵🔴
祇条・結月
実態がない音、って言う攻撃手段を取られたら正直ちょっときつい
けど……あるものでなんとかするしかないよね
……音相手じゃあんまり効果はないだろうけど時計がこちらをむかないように軌道を工夫して、走って苦無が届く間合いまで接近するよ
それでも捕らえられるだろうけれど……
油断させるために、食らう
頭がおかしくなりそうな、不快な音。【激痛耐性】で頭痛を堪えて僕自身に《君の時間を》で鍵を掛ける
敵の油断を誘って【スナイパー】で機を逃さずに苦無を翼に【投擲】
機動力を奪えれば……!
この後は敵の不快音波から保護されてるのを活かして、前に立ってダメージを与えてく
他の猟兵と共闘してるなら、その人も解呪していくね
(実態がない音、って言う攻撃手段を取られたら正直ちょっときつい。けど……)
猟兵達と邪神が激しい戦いを繰り広げる中、結月はひっそりと敵の死角へと回り込み、攻撃を仕掛けるチャンスを狙っていた。
音源である時計がこちらを向かないようにすれば、少しはマシかもしれないという判断だ。その甲斐あってかどうかは分からないが、彼の正気はまだ保たれている。
(……あるものでなんとかするしかないよね)
彼の手にあるものは苦無と、あらゆるものを解錠し施錠する銀の鍵。
手持ちのカードが少ないのなら、それを万能のワイルドカードにするまでだ。
(……今だ)
戦いの中で敵が弱りだしたタイミングを見計らって、結月は走り出す。
このまま気付かれないうちに、苦無が届く間合いまで接近しようと――。
「ああッ? 誰だッ!!!」
見つかった。あまりにも呆気なく、まるで後ろに目が付いているような正確さで。
ぐりん、と首を回して結月の姿を捉えた『よふかし』は、悪辣な笑みを浮かべた。
「蝙蝠の耳の良さをナメんなよ!! こんな芸当だってできるぜ!!!」
目覚まし時計から放たれたのは、これまでの騒音とは違う、可聴域外の音。
すなわち超音波による攻撃――【悪魔の音波】が結月を襲う。
「う……」
感じるのは吐き気をもよおすような不快感と、脳を締め付けられるような頭痛。
まるで何日も、あるいは何週間も寝ていない時のような不調が彼の心身に現れる。
寝不足、と言ってしまえば気楽そうにも聞こえるが、極度の睡眠不足は紛れもなく死に至る危険な症状である。
(頭がおかしくなりそうな、不快な音)
正常な思考や意識を保てなくなる瀬戸際で、辛うじて結月は自我を保っていた。
鳴り止まない時計の音と、ひどくなる一方の頭痛を堪えながら、震える手で銀の鍵を掴み――自らの身体に突き立てる。
「おっ? なんだなんだ、おかしくなっちまったか!!!」
それっきりふらっと力を失って倒れ伏す少年を見て、ケタケタと邪神は嘲笑う。
これまで劣勢を強いられてきたが、ようやく一人仕留めたかと、ソレが気を抜くのも無理のないことだっただろう。
――だからこそ、油断しきったその瞬間は、何よりも大きな隙となる。
「機動力を奪えれば……!」
「な、がッ!?」
ぱっと起き上がりざまに投げつけた苦無の刃が、狙い過たずに邪神の翼を貫く。
翼膜を破られる激痛と、倒したはずの相手に不意を突かれた、二重の驚きが『よふかし』を襲った。
「クソッ、音波の効き目が悪かったか? だったらもう一度食らいなぁッ!!」
再び放たれる【悪魔の音波】。しかしその不快音は、もう結月には通じない。
眠気などまったく感じないクリアな思考で、少年はさらに苦無を投擲する。
「何故だッ!? 何故平気なんだッ!!?」
「それはもう効かないよ。僕自身に鍵を掛けたから」
あの時、倒れ際に結月が使ったのは【君の時間を】。それは対象の心身をあらゆる悪影響から保護する錠をかけるユーベルコードだ。
「さっきのお返しだよ」
錠のかかっている間は、悪魔の音波や騒音がもたらす悪影響も通じない。
その優位を活かして結月は苦無を次々と投げつけ、積極的な攻撃を仕掛けていく。
「クソ……ッ!」
一旦距離を取ろうとした『よふかし』だったが、翼に受けたダメージは大きく、その動きは鈍い。むしろ退避のために翼を広げる動作が隙になる。
結月はその機を逃さずに懐に飛び込むと、短剣の形に変化した銀の鍵――「銀の鍵剣」を、邪神の抱える目覚まし時計に突き立てた。
「ギギャァァァッ!!?!?」
いかなる装甲をも無視する呪力を秘めた鍵剣の刃が、目覚まし時計を深々と貫く。
本体である中枢に深刻なダメージを負った『よふかし』の口から、甲高い絶叫がほとばしった。
成功
🔵🔵🔴
レイ・キャスケット
寝起きからテンション高いようで
お呼びじゃないから再びの眠りについてくれればいいからね?
UCとはいえ音は要するに空気の震えで自然現象の一つ
波長を理解し解析すれば無効化できるはず
とはいえ≪付与の羽衣≫はイメージに魔力を練り合わせることで発現可能なもの
再現には時間がかかるけど、【激痛耐性】と【オーラ防御】で大音量を我慢し、【見切り】で物理攻撃を回避
纏う羽衣からの共振で音波を軽減できるようになったらあとはこっちのもん
【高速詠唱】で展開した光【属性攻撃】の魔弾を翼膜目掛けて射出
ほらほら、よく見て、当たっちゃうよ!と【挑発】するのは【フェイント】
注視する光球を閃光炸裂で【目潰し】
怯んだところを畳みかけるよ
「寝起きからテンション高いようで」
追い詰められていく敵に休む暇を与えずに、上方より迫るのは赤い少女。
【付与の羽衣】を身に纏ったレイが、挑発するように邪神の周りを飛び回る。
「お呼びじゃないから再びの眠りについてくれればいいからね?」
「抜かせッ!! オマエらごときにオレっちが寝かしつけられるかよッ!!」
深手を負っていようとも『よふかし』のテンションの高さと喧しさは相変わらず。
壊れかけた目覚まし時計から、再び【悪魔の騒音】が放たれる。
「集めて集めてその身に纏え」
響き渡るノイズの衝撃波の中を飛びながら、レイは歌うように詠唱を紡ぐ。
付与の羽衣には体験した自然現象を魔力で再現する力もある。彼女が狙っているのは、それを利用した敵のユーベルコードの無効化だ。
(ユーベルコードとはいえ音は要するに空気の震えで自然現象の一つ。波長を理解し解析すれば無効化できるはず)
相手が邪神だろうと理論上は可能なはず。とはいえその為にはレイ自身がその身で悪魔の騒音を体験して、再現するイメージを確固たるものにしなければならない。
暴力的なまでの音圧が起こす衝撃波のダメージは尋常ではないが、羽衣に付与した魔力のオーラによって防御力と耐性を高めることで、どうにか耐えていた。
「なんだなんだ、フラフラ飛び回ってるだけかよ!!」
攻撃してこない相手に調子に乗った『よふかし』が、翼を広げて飛び上がる。
その口内に乱杭状に並んだ鋭い牙は、ユーベルコードで無くとも十分な凶器だ。
「おっと!」
レイは咄嗟にひらりと宙で身を翻して、邪神の噛みつき攻撃を回避する。
己の力に驕る邪神の攻撃は単調だ。だから見切るのはそう難しくはない。
何度『よふかし』が飛び掛かってきても、そのたびにレイはひらりひらりと踊るように身を躱す。
「チッ、ちょこまかと……だったらやっぱりコイツでケリを付けてやるよ!!!」
肉弾戦では少女を捉えられないと悟ったか、目覚まし時計の音量がさらに上がる。
どれだけ素早くても、全周囲に無差別に広がる"音速"の攻撃は避けようがない――そう読んでの行動だろうし、それ自体は間違っていない。
だが敵が悠長に構えている間に、レイはもう音波の解析と理解を終わらせていた。
「その音はもう聞き飽きたよ!」
纏う羽衣から放たれるのは、邪神が放つ【悪魔の騒音】とは逆位相の波長の音。
共振するふたつの音は互いを打ち消しあい、後には静寂だけが残る。
それは言うなれば魔術式のノイズ・キャンセリングであった。
「な、なんだ?! オレっちの音がっ!!?」
目覚まし時計は機能しているにも関わらず、音だけがふっと消えてしまった異常事態に『よふかし』はあからさまな狼狽を見せる。その隙を逃さずレイは素早く光の魔弾を展開すると、標的の翼を狙って射ち出した。
「音波を軽減できるようになったらあとはこっちのもんだね」
「ぐげッ!? ちょ、調子に乗るなよ……!!」
翼膜に光弾を受けて悲鳴を上げる『よふかし』。何度も執拗に狙われてきたその翼はもうボロボロで、飛行能力も相当に低下している。
それでも怒りと屈辱を原動力にして、どうにか追いすがろうと羽ばたくのだが、その状態で頭に血が上ってしまえば、なおさらレイを捕まえられるはずもなかった。
「ほらほら、よく見て、当たっちゃうよ!」
「ナメんな!!!!」
あえて相手の正面に立って、ひらひらと羽衣を振って挑発するレイ。
闘牛士のマントを見た猛牛のように『よふかし』は猛然と突っ込んでいく。
「ちょろいね」
まんまとフェイントに乗ってくれた邪神の鼻先で、魔力の光珠が炸裂する。
一瞬の閃光が視界を真っ白に染め上げ、たまらず『よふかし』が怯んだ隙を突き、レイは残った魔弾を使って一気に畳みかける。
「グギャァァァァァァァァッ!?!?!」
翼に、頭部に、時計に、次々と光の弾幕を受けた『よふかし』は、悲鳴を上げながらきりきりと墜落していった。
大成功
🔵🔵🔵
フレミア・レイブラッド
品も無さそうだし、キーキー煩い蝙蝠ね…。貴方に付き合う暇は無いのよ。さっさと黙らせてあげるわ!
【ブラッディ・フォール】で「決行、集団人質解放作戦」の「神鳴りのフランチェスカ」の服装へ変化。
【雷帝の誇り】で戦闘力増強と飛翔能力付与。
高速飛行で敵を追尾しつつ、【エレクトロニック・インフェルノ】で攻撃速度(回数)を増加し、自身の魔力【誘導弾、高速詠唱、全力魔法】と併せて雷撃。
【雷神の見る夢】で無敵の神鳴り(カミナリ)を想像・創造し、邪神に叩き込み、焼き尽くすわ!
敵の攻撃は【念動力】を球状のバリアにして防ぐわ
神には神を…雷神の雷に呑まれて墜ちなさい!
「く、クソッ、このクソ野郎共め!! 絶対に許さねえからな!! 絶対にッ!!」
全身に数え切れないほどの傷を負い、もはや邪神としての威厳など微塵もなくなった『よふかし』は、猟兵達への恨み節をあらん限りの声量で喚き散らす。
下等だと見下していた儚い生命体に、完全なる邪神である己が追い詰められている。その信じがたい事実と屈辱が、ソレを激昂させていた。
「品も無さそうだし、キーキー煩い蝙蝠ね……」
醜態を晒しながら騒ぎ立てる邪神に、冷めた眼差しを送りながらフレミアは呟く。
もうこれ以上、こんな輩に時間を使うのは一刻たりとも惜しいという表情だ。
「貴方に付き合う暇は無いのよ。さっさと黙らせてあげるわ!」
ユーベルコード【ブラッディ・フォール】。氷皇竜に続いて此度の彼女が骸の海から顕現させたのは、雷神『神鳴りのフランチェスカ』の力。
雷光の輝きと神の装束をその身に纏った吸血姫の姿は、目の前の邪神よりもよほど神々しさに満ちていた。
「黙らせる、だと? このオレっちが、オマエらに? フザケんなッ!!!」
滾る怒りを禍々しいオーラに変えて『よふかし』は【悪魔の蝙蝠】を発動。一瞬にして雲をつくほどの巨躯へと変じると、巨大な翼を広げて超次元の渦を飛翔する。
そのスピードはまるで流星の如し。ほとばしる邪気は満身創痍とは思えないほどに力強く、その瞳は猟兵に対する殺意で爛々と輝いている。
――だが、フレミアは臆さない。その姿はしょせん実体化したオーラで本体を覆って取り繕ったもの。傷が癒えたわけでも力を取り戻したわけでもないのだから。
「ふざけてなんかいないわ。貴方はここで終わりよ」
【雷帝の誇り】によって得た飛翔能力を活かして、フレミアは『よふかし』を追尾する。『よふかし』が流星ならば、彼女の飛翔はまさに雷だ。悪しきものへと裁きを下す、天よりの鉄槌。
「雷神の力、その身に受けなさい!」
相手にも劣らぬほどの殺意を宿した瞳を煌々と輝かせながら、放つのは【エレクトロニック・インフェルノ】。雷神の力にフレミア自身の魔力を併せた雷撃が、飛び回る『よふかし』に襲いかかる。
「こんなもの……ッ、ギィッ!!!!?」
それが一撃きりであれば『よふかし』も避けられたかもしれない。だが轟いた雷鳴の数は同時に9つ。その全てを躱しきることは【悪魔の蝙蝠】にも不可能だった。
雷の槍に貫かれ、オーラで作り上げられたボディが崩れていく。これまで人々の畏怖と恐怖によって作り上げてきた、邪神としてのメッキが剥がれ落ちるように。
「よくも、やりやがったなぁッ!!!!!」
逆上した『よふかし』は宙空でぐるりと急旋回すると、剥き出しにした牙をガチガチと鳴らしながら、正面からフレミア目掛けて突っ込んでいく。
「芸のない攻撃ね。いよいよ打つ手がなくなってきたってことかしら」
念動力による球状のバリアを展開して、フレミアは『よふかし』の突撃を受ける。
腐っても完全なる邪神を名乗るだけのことはあってその威力と衝撃は予想以上のもので、彼女の身体はバリアごと大きく弾き飛ばされる。
「どうだッ!!!!」
勝ち誇りの雄叫びを上げる『よふかし』。だが雷神の力をその身に宿したフレミアは、これしきの一撃きりで倒されるほど軟ではない。
すぐに宙で体制を立て直すと、お返しとばかりに魔力を練り上げ――己の想像力から【雷神の見る夢】を具現化する。
「な……なんだッ!!!!」
凄まじい電力がフレミアを中心として膨れ上がっていく。邪神さえも思わず畏怖させるそれは、紛れもなく邪神と同格の――神鳴り(カミナリ)の力。吸血姫の想像から創造された無敵の雷撃は、光り輝く一本の槍となって、その手の中に収束される。
「神には神を……雷神の雷に呑まれて墜ちなさい!」
回避も防御も許さない、雷速の一撃。投げ放たれた雷の槍は『よふかし』の巨体に吸いこまれるように叩き込まれた。
「ギィィィィィエェェェェェェッ!!?!?」
想像を絶する雷撃の力によって、『よふかし』の身体が焼き尽くされていく。
やがて、オーラによって形作られた【悪魔の蝙蝠】は完全に崩壊し、その中から黒焦げになった一匹のコウモリが、目覚まし時計をかばいながら墜ちていった。
成功
🔵🔵🔴
雛菊・璃奈
煩いよ…。神だろうと関係ない…。人に仇なすだけの神なんてわたし達は認めない…。
音波による全方位攻撃…回避できないなら、回避しなければ良い…アンサラーの力【呪詛、オーラ防御、武器受け、カウンター】による反射で敵の攻撃を逆に利用…。
敵が怯んだ隙を突いて凶太刀の高速化で一気に接近して二刀で斬撃して追い込んでいき、【呪詛、高速詠唱】による呪力の縛鎖を隙を見て発動…。【呪詛】で強化した【unlimitedΩ】を一斉斉射で叩き込んで仕留めるよ…。
人に仇なすだけの神なんていらない…。人を傷つけるしかできないなら…神を騙るな…!
「ち、くしょう、よくも、よくもぉぉぉぉぉ……ッ!!!!」
もはや見る影もない有様となって、超次元の渦を漂う『よふかし』。
黒焦げで満身創痍の蝙蝠体は言うにおよばず、本体である目覚まし時計も今にも壊れそうなくらいボロボロだ。
「オマエら、オレっちを何だと思ってやがる……定命の者共が、神に逆らってタダで済むと思ってるんじゃネェだろうなァ……!!!!!」
それでも口だけは達者なのが、『よふかし』という存在の本質なのか。
最期の一瞬まで、おそらくソレは人々の安眠を脅かし続けるのだろう。
「煩いよ……」
そんな邪神の騒音を静かに、そして怒りを込めて遮ったのは璃奈。
右手には魔剣「アンサラー」、左手には妖刀「九尾乃凶太刀」。
自らが祀る武具を構えた彼女は、冷たい眼差しで『よふかし』を射抜く。
「神だろうと関係ない……。人に仇なすだけの神なんてわたし達は認めない……」
それが如何なるものであろうとも、人の世を脅かすものであれば、斬る。
決意に満たされたその眼光は、邪神さえも思わずたじろがせるものだった。
「認めない、だぁ?! 神ってのは人に仇なしてナンボだろうがァッ!!!!」
璃奈の決意をあざ笑うように『よふかし』は叫び、【悪魔の騒音】を解き放つ。
壊れかけの目覚まし時計から鳴り響くノイズは、超次元の渦に音圧の嵐を巻き起こし、周囲にある全てを巻き込んでいく。
「仇なし、祟り、命を奪い、運命を弄ぶ! それこそが神ってもんだァ!!!!」
邪悪そのものの形相で『よふかし』自身が放つ咆哮とも合わさって、悪魔の騒音はより激しさを増していく。このまま超次元の渦全てを騒音で埋め尽くさんばかりに。
だが――璃奈はその場から一歩も退かずに、真っ向から騒音の渦を受け止める。
「音波による全方位攻撃……回避できないなら、回避しなければ良い……」
頼みとするのは魔剣アンサラーの力。"報復"の魔力を宿すかの剣は、悪魔の騒音を受けるとまるで音叉のように刀身を震わせて、まったく同じ音を跳ね返した。
此方にとって不可避の攻撃を利用すれば、当然それは敵にも不可避の反撃となる。
「なンだとォッ?!!?」
自らが放った音の衝撃波を浴びた『よふかし』の体がのけぞり、バランスを崩す。
その隙を見逃さずに、璃奈は続けて凶太刀に秘められた呪力を解放。音速すらも超える超加速を得て、一気に邪神の懐へと肉迫した。
「確かに……神は人に祟ることも、ある……」
「何を……ぎぃっ?!」
魔剣と妖刀の二刀による斬撃を次々と邪神に浴びせながら、璃奈は語る。
古今東西、人に仇なす祟り神の逸話は枚挙に暇がない。魔剣の巫女である彼女が祀る魔剣達もまた、ともすれば人を傷つけかねない危険な呪いを宿したものばかりだ。
「だからこそ……それを祀り、鎮めるのが、わたしの役目……」
荒ぶる御霊や呪いを鎮めることで、祟り神は善き神ともなる。神の善性と悪性は本来ならば表裏一体のもの。だが、目の前にいるコレからは、悪性しか感じない。
「人に仇なすだけの神なんていらない……。人を傷つけるしかできないなら……神を騙るな……!」
神を嘯くバケモノに、研ぎ澄まされた気魄と共に刻みつけられる斬撃の嵐。
たまらず『よふかし』が上方に逃れようと翼を広げた瞬間、璃奈は呪文を唱える。
「逃さない……」
「ぎえッ!? 放せッ!!!」
一瞬のうちに放たれた呪詛の縛鎖が、蝙蝠の翼に絡みつき、身動きを封じる。
じたばたともがく『よふかし』の前で、魔剣の巫女の呪力がさらに高まっていく。
「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……立ち塞がる全ての敵に終焉を齎せ……!」
巫女の呼びかけに応えて顕現するのは、"終焉"の力を宿した魔剣・妖刀の現身達。
極限まで強化された凄まじい呪力を帯びたこの剣達が、璃奈の祀るものたち。
神を騙るバケモノに引導を渡すために、今、その全てが一斉に解き放たれる。
「『unlimited curse blades 』……!!」
それは、満身創痍だった『よふかし』の全身に突き刺さり――本体である目覚まし時計を、跡形もなく破壊し尽くした。
「ギィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!!」
耳をつんざくような断末魔の絶叫。
本体を喪った蝙蝠の口から放たれたそれは、超次元の渦に響き渡り――それっきり、『よふかし』はぴくりとも動かなくなった。
――完全なる邪神「666」第二形態、撃破完了。
そして遂に、猟兵達は最後の戦いに――邪神の最終形態へと挑むことになる。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『四五零『デビルズナンバーわたがし』』
|
POW : 悪魔の綿飴(デビルコットンキャンディ)
【体が溶けるほどの甘さの超巨大綿菓子】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
SPD : 悪魔の飴雨(デビルキャンディレイン)
【巨大な綿菓子を空高く投げること】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【綿菓子から降り注ぐ超高温の飴の雨】で攻撃する。
WIZ : 悪魔の硬飴(デビルハードキャンディ)
【カチコチわたあめモード】に変形し、自身の【フワフワ感】を代償に、自身の【攻撃力、防御力、移動速度】を強化する。
イラスト:ケーダ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「六六六・たかし」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
デビルズナンバー512『よふかし』との戦いを終えた後、残っていたのはボロボロになった大蝙蝠の死骸だけだった。
本体であった目覚まし時計は完全に破壊され、そこにあるのはただの抜け殻に過ぎない――そのはずなのに、猟兵達はそれから目を放せないでいた。
―――ドクン。
ふいに、事切れたはずの『よふかし』の骸が、脈打つように動く。
いや、よく見ればそれは脈動と言うよりも、何かが内側で暴れているような――。
―――めざめ の とき ね
開かれたままの口や、全身に刻まれた傷口から、何かが溢れ出してくる。
それは血の赤ではなく、綿の白。もこもこで、ふわふわで、もふもふな。
同時に猟兵達の鼻をくすぐったのは、むせ返るような甘ったるい香りだった。
―――わたし は わたがし よ
『よふかし』から出てきた大量の綿は、その死骸を呑み込んで人の形を取る。
綿菓子できた少女のようなその姿こそ、デビルズナンバー450『わたがし』。
完全なる邪神「666」の最終形態である。
―――わたし は みんな を あまく つつみこむ
―――わたし は あなた と ひとつ に なる
脳内に直接響くその声は、姿形にふさわしい甘ったるい少女のもの。
しかし、それを聞いていると心がざわつく。『よふかし』の騒音とも違う感覚。
人智を超えたモノと接触した本能が警鐘を上げているかのようだ。
―――おおいなる たたかい の とき が くれば
―――この せかい は かこ に しずむ
―――わたし は そのとき を まっている
―――あなたたち も いっしょに まちましょう ?
彼女が言うことの殆どは理解不能だが、猟兵達を逃がす気が無いことは分かる。
そして猟兵達も、逃げるつもりなど微塵も無い。「大いなる戦い」とやらが起こる前に、一体でも多くの完全なる邪神を討つために、彼らはここに来たのだから。
これが正真正銘「666」の最終形態。
彼女を――『わたがし』を倒せば、完全なる邪神は真の死を迎える。
残された力を振り絞り、猟兵達は最終ラウンドに挑むのだった。
※マスターより補足
最終形態の邪神は必ず「ユーベルコードによる先制攻撃」を行ってきます。
これに対する何らかの対処がプレイングになければ、プレイングは必ず「🔴🔴🔴失敗」になります。ご注意ください。
トリテレイア・ゼロナイン
これが完全復活を遂げた邪神…
ですがここで打倒せねば来るべき戦いを乗り越えることなど夢物語
座して滅びは待ちません
超巨大な「面」の攻撃への対処は…
重力がなく数字が浮かぶ特異なこの戦場、利用させて頂きます
手近な「数字」にワイヤーアンカーを撃ち込み●ロープワークで巻き取り移動。最初は大盾を放棄し浮かべて●踏みつけ加速、数字に辿り着いたら踏みつけ蹴りつつ次の数字に撃ち込みを繰り返し綿菓子を回避
その間、センサーでの●情報収集で綿菓子の範囲とスピード、数字の分布を●見切り回避完了と同時にUCを発動
綿菓子を回避しつつ接近し●怪力での剣を繰り出す最適ルートを割り出し
盾を使い捨てた分は返して頂きますよ
「これが完全復活を遂げた邪神……」
相手の異様な存在感と邪気に、トリテレイアは思わず拳を握りしめる。
ウォーマシンである彼にすら本能的な危機感とおぞましさを感じさせる。これまで戦ってきた不完全な邪神とは決定的に違う"何か"なのだと、直感的に分かる。
「ですがここで打倒せねば来るべき戦いを乗り越えることなど夢物語。座して滅びは待ちません」
鋼鉄の魂を奮い立たせ、機械騎士は剣と盾を手に『わたがし』と対峙する。
この先にある未来の希望を、己が実力と戦果を以って証明するために。
―――ふわふわ に つつみこんで あげる
脳内に響く甘ったるい声と共に『わたがし』が動きだす。
緩慢に見えて隙のない動きで放つのは【悪魔の綿飴】。人間をゆうにすっぽりと呑み込めるサイズの超巨大な綿菓子が幾つも生成され、戦場を埋め尽くしていく。
見ためだけならファンシーな光景だろう。しかしトリテレイアの搭載する全てのセンサーは、あれに触れるのは危険だと警告を発していた。
「超巨大な『面』の攻撃への対処は……」
怒涛の勢いで押し寄せる超巨大綿菓子を回避するために、ワイヤーアンカーを射出する機械騎士。超次元の渦を漂う3桁の"数字"の羅列に、アンカーが撃ち込まれる。
即座にワイヤーを巻き上げての急速離脱。綿菓子から逃れるには足りない初速を補うために、彼は手にしていた重質量大型シールドを放棄する。
「重力がなく数字が浮かぶ特異なこの戦場、利用させて頂きます」
その場にふわりと浮かんだ大盾を足場にして、全力で踏みつける。
作用と反作用の法則に従って、踏み台にされた盾は綿菓子のほうに吹き飛んでいくが、トリテレイアの機体はその逆方向へ勢いよく飛んでいく。
―――にがさない
超巨大綿菓子の塊はなおも執拗に追いすがる。だが、抵抗のない無重力下で一度加速した物体は慣性の法則に従い、減速することなくどこまでも飛んでいく。
追撃との差を広げながらアンカーの起点にした数字に辿り着いたトリテレイアは、すぐに手近にある次の数字にアンカーを発射し、足場の数字を蹴って再加速する。
次第にスピードを増していく機械騎士の機動に、【悪魔の綿飴】は追いつけない。
その間にもトリテレイアは演算機能をフル回転させ、反撃の糸口を探っていた。
「全て見通す……とまではいきませんが、目星は付きました」
『わたがし』の攻撃の範囲とスピード、周辺に浮かぶ足場となる数字の配置。
それら諸々の情報と解析結果からシミュレートを行い、綿菓子を回避しつつ接近し、白兵戦に持ち込むための最適ルートを割り出す。
【鋼の擬似天眼】による全ての演算を完了させたトリテレイアは、即座に反撃に打って出る。
―――つかまえ た あれ ?
反転したトリテレイアを呑み込まんと、さらに【悪魔の綿飴】を放つ『わたがし』
だが機械騎士は雲霞のごとき綿菓子の隙間を、糸を通すように潜り抜けていく。
彼の人ならざる演算能力は未来予測にも近しい結果を導き出し、完全なる邪神の行動パターンさえも限定的に見切ってみせた。
「盾を使い捨てた分は返して頂きますよ」
ついに『わたがし』と肉迫したトリテレイアは、渾身の膂力で剣を振り下ろす。
綿菓子に呑みこまれた大盾のお返しとばかりに叩きつけられたその刃は、完全なる邪神の肉体をばっさりと斬り捨てる。
―――いた い
飛び散ったのは赤い血ではなく、白い綿菓子。
笑みを浮かべていた『わたがし』の表情が苦痛に歪む。
たとえ完全なる邪神といえど、無敵でもなければ不滅でもない――トリテレイアの一撃は、確かにそれを証明していた。
大成功
🔵🔵🔵
レイ・キャスケット
本能がコイツはヤバイって警鐘を鳴らしてる
でも不思議と不安や恐怖がないのは今、相対するのが一人じゃないからだろうね
カチコチわたあめモードって完全に近接ガチバトルモードじゃん?
じゃぁ逆に攻め立てて特殊攻撃の隙を与えないよう『第六感』『見切り』を駆使したり『高速詠唱』の弱魔法(地で足場を隆起・氷で足止め)を中心に避け『カウンター』
頃合いを見て『オーラ防御』と≪法則の私物化≫で拝借した防御一点特化のUC
【べっこう飴をまとったような状態】に変形し、自身の【機動力】を代償に、自身の【防御力】を大幅に強化する
で回避戦法から防御戦法にチェンジ
最初の一撃を受け止めて零距離の爆破の『全力魔法』で仕返しだよ
(本能がコイツはヤバイって警鐘を鳴らしてる)
自然と額をつたう冷たい汗を感じながら、レイは緊張の面持ちで敵を見る。
ついに最終形態となった完全なる邪神――ただ対峙しているだけでも凄まじいプレッシャーを感じる。ほんの少しの油断が即座に命取りになるのは確実だ。
「でも不思議と不安や恐怖がないのは今、相対するのが一人じゃないからだろうね」
自分だけでは敵わないかもしれない。しかしここには沢山の仲間がいる。
邪神も決して不滅ではない。傷つけることができるなら、斃すこともできるはず。
それを証明した仲間の後に続くため、少女は軽快な足運びで駆け出した。
―――あらがう つもり ?
―――なら ようしゃ は しない
傷を負わされたことで猟兵達を"敵"と認識した『わたがし』は、フワフワした綿菓子の身体から、カチコチな【悪魔の硬飴】に我が身を変化させ、戦闘力を強化する。
弱き者どもを包みこむためではない、戦いのためのユーベルコードの使用。それは彼女が本気で猟兵達を殺戮するつもりになったということだ。
「カチコチわたあめモードって完全に近接ガチバトルモードじゃん?」
激しさを増した敵の殺気に怯むことなく、レイは指先から氷の魔法を放つ。
相手が殴り合いを所望するのならこちらも望むところ。厄介な範囲攻撃や特殊攻撃を使わせないためにも、寧ろ果敢に攻め立てて敵の選択肢を削ぐべきだ。
「さあ邪神、ボクが相手だ!」
命中した魔法は硬化した『わたがし』のボディにはほとんどダメージを与えていないが、注意を引きつけながら凍結で少しでも動きを鈍らせられれば十分。
―――たたきつぶして あげる
直後、直感的に危険を察知したレイは、凄まじい速度で繰り出される『わたがし』の拳を紙一重で躱しながら、交差するようにブランクソードを一閃する。
魔力の刃が邪神の身体に傷をつける。だがそれも有効打と呼ぶには浅い。
攻撃力、防御力、速度。どれを取っても最終形態の邪神の能力は、これまで戦った『てつごうし』や『よふかし』を遥かに上回っている。
―――ていこう は むだ よ
「凄いね、その技。でもボクならもっとここをこうして……」
次々と放たれる硬飴の拳を躱し続けながら、相手の能力を分析するレイ。
やがて頃合いと見た彼女は、ふいに足を止めて自らもユーベルコードを発動。
その身体からは甘い香りが漂いはじめ、表面は黄褐色の何かに覆われていく。
―――? あなた も あめ なの?
その能力は『わたがし』と同じ【悪魔の硬飴】――ではない。
【法則の私物化】によってレイ自身が扱いやすいようアレンジを加えられたそれは、全身にべっこう飴を纏うという新たなユーベルコードである。
この状態では機動力は犠牲になるが、引き換えに防御力は大幅に向上。その飴の鎧によってレイは『わたがし』の拳を真っ向から受け止める。
「驚いたかな?」
これまでの回避戦法から防御戦法への大胆なスタイルのチェンジ。
動きの変化の大きさに即応できず、『わたがし』の動きが一瞬止まる。
レイはその隙を逃さず、受け止めた拳を両手でがしっと掴まえながら魔力を練り上げ、全力の爆破魔法を行使した。
―――!!
「仕返しだよ」
零距離で炸裂する魔力の大爆発。ありったけの魔力を込めた熱量と衝撃を一手にその身に受けた『わたがし』は、驚愕の表情で吹き飛ばされる。
硬化していたボディがピシピシと罅割れ、元のフワフワの綿菓子に戻っていく。
悪魔の硬飴を攻略したレイは満足げに笑みを浮かべ、べっこう飴の鎧を解除するのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ディー・ジェイ
「そんなデートに付き合ってる暇はねぇ、消えな」
・先手回避
敵の攻撃は放射状や真っ直ぐに飛んでくることを前提に、跳び魚の連続使用で一気に真横へ移動し範囲逃れと狙いのブレを起こさせる。
その移動途中、ワイヤーをくくりつけたPartyCrackersを放り投げておく。それに反応も出来ず敵が光と高音を喰らうなら好都合、さっきまでの戦いで既に認識され対処しようとするならワイヤーを引いて何らかの行動を避けさせる。
"halo"に装填した上で制圧射撃を敢行。綿野郎に実弾と精神ダメージを与えながらワイヤーを綿の一部に食い込ませて引き千切り、再生する前に火喰蛇で溶かし殺す。
※アドリブ、他猟兵との共闘大歓迎
―――どうして あらがう の ?
―――ひとつ に なれば ずっと ここで いっしょ に いられる のに
「そんなデートに付き合ってる暇はねぇ、消えな」
脳内に響く甘ったるい『わたがし』の声を、ディーはにべもなく拒絶する。
邪神の言葉に耳を傾けるような危険な真似はしない。目の前にいるアレは、どんな姿をしていようと、傭兵として己が撃ち抜くべき敵だ。
―――わからずや ね だったら しねばいい
『わたがし』の全身から放たれる邪気が、悪夢のように膨れ上がる。
その瞬間、ディーは虚空を蹴って、彼女から距離を離すように跳んだ。
―――あめ あめ ふれ ふれ
ぽんっと鞠を投げるように投げ上げられたのは、身の丈程もある巨大な綿菓子。
それは瞬く間に頭上を覆う雨雲となって、超高温の【悪魔の飴雨】を降らせる。
飴の雨、というと子供の語呂合わせのようだが、その実態は鉄をも溶かす灼熱の豪雨だ。もしこれに打たれてしまえば、猟兵の身体もただでは済むまい。
「もうひと泳ぎといくか」
降り注ぐ土砂降りの飴から逃れるために【跳び魚】を連続使用するディー。
相手の攻撃は頭上から真下へとまっすぐに降ってくる。ならばと彼はすっ飛ぶように真横へ移動し、飴雲に覆われた範囲から一気に離脱を試みる。
逃すまいとするようにその後から動きだす飴雲。煮えたぎる雫が鼻先をかすめるのを感じながら、狙いをブレさせるように可能な限りジグザグに跳ぶ。
どうにか間一髪、躱すことはできている。しかしこのままでは遠からず捕まってしまうだろう。この超次元の渦にいる限り『わたがし』から逃れる術はないのだから。
――状況を好転させるべく、ディーが取り出したのは一発のグレネードだった。
「こいつを覚えてるか?」
『わたがし』目掛けて放たれたそれは『てつごうし』との戦いでも使用された「PartyCrackers」。殺傷ではなく音と光による妨害を目的としたスタングレネードだ。
―――それは きらい
第一、第二、第三と形態が変わっても、彼女らはすべて同一の邪神である。
『てつごうし』の受けた仕打ちを記憶に留めていた『わたがし』は、すぐさま大きな綿菓子を作って放り投げる。フワフワの綿の中に包みこんでしまえば、爆音も閃光も封じられると考えてのことか。
しかしディーも、相手がPartyCrackersの事を覚えていたケースは想定済みだった。
くい、と彼が手元にあったワイヤーを引くと、繋がっていたグレネードが空中で引き寄せられ、手元に戻っていく。
突然目標の軌道が変わったことで『わたがし』の投げた綿菓子は命中せずに、超次元の渦の彼方へと飛んでいった。
―――あれ ?
狙いが外れてきょとんとする『わたがし』。ほんの一瞬彼女の気が抜けた隙を突いて、ディーは装填済みのAR-MS05のトリガーを引いた。
「本命はこいつだよ、綿野郎」
ばら撒かれるのは対霊体精神裂傷弾"halo"。実弾の効かない目標に対するためにある魔鍵を素材に作り出した、彼の切り札のひとつ。
『わたがし』のフワフワな身体に突き刺さった銃弾は、彼女の精神に直接傷を負わせ、物理と精神の両面から同時にダメージを与えていく。
―――いた い !
脳内に響く邪神の悲鳴。穴だらけになってたたらを踏む『わたがし』。
敵が怯んだ好機を逃さず、ディーは制圧射撃を続けながら手袋のワイヤーを射出。
音もなく標的に食い込んだワイヤーを力の限り引き絞れば、弾幕を浴びて柔くなっていた『わたがし』の腕がぶちり、と千切れ飛んだ。
―――!!
「ちょいと失礼……イグニッション」
目を丸くして驚愕する『わたがし』の前で、ディーは新しい葉巻に火を灯す。
再び現れた【火喰蛇】。避ける間もなく飛来したその牙は、引き千切られた腕の断面に食らいつき、二度と再生することができないよう、芯まで溶かし焦がしていく。
―――あつい あつい あつい !?
じゅうじゅうと砂糖の焦げる音が上がり、甘ったるい匂いが戦場に充満する。
それは『わたがし』の血肉が焼け焦げる音と匂いであった。
大成功
🔵🔵🔵
茜谷・ひびき
相手の先制攻撃に対しては、まず範囲外に逃げられないか【ダッシュ】してみる
走って逃れられる範囲ならそれでいいが、難しいなら鉄塊剣を盾にするぜ
仮に綿菓子が体に触れるもしても大事な臓器は守り、それ以外は【激痛耐性】で耐えるぜ
溶けた部分は地獄の炎で補いつつ戦うか
相手の攻撃を凌げたら再び接近
UCを発動して両腕を殺戮捕食態に変形させる
相手を殴れる距離まできたら【怪力・2回攻撃・鎧砕き】を乗せてぶん殴る!
なるべく腕以外の部分で触れないように気を付けたいが、どうしても近付きすぎたり危険な時は【捨て身の一撃】も厭わずに
ここが最後だ、気合い入れていくぜ
余裕があれば【生命力吸収】も
めちゃくちゃ甘いな、胸焼けしそうだ
「完全な邪神と言っても基本は同じか。燃やせるし喰える、ならいつも通りだ」
無骨な鉄塊剣を担ぎ上げて『わたがし』の前で静かに闘志を燃やすのは、ひびき。
仲間達の攻撃によって傷を負い、ついには片腕を奪われた邪神の姿は、それが決して無敵の存在ではないことを物語っていた。
―――ゆるさない おまえたち
怒りに歪んだ形相で、手負いの『わたがし』は【悪魔の綿飴】を放つ。
膨れ上がる巨大な綿菓子の塊が、怒涛の勢いで彼女を中心として全てを呑み込まんと広がっていく。そこにあるのは慈悲ではなく、純然なる殺意だ。
「逃げられるか……?」
広がる超巨大綿菓子とは逆方向へと踵を返し、全速力で疾走するひびき。
しかし彼が【悪魔の綿飴】の範囲外に出るよりも、綿菓子が追いつくほうが速い。
逃げ切れないならばと、即座に担いでいた鉄塊剣を盾にして綿菓子を受け止める。
「っ!!」
胴体や頭部を含め、重要な臓器は鉄塊の刀身に隠すようにして守る。
だが完全に防ぎ切ることはできない。飛び散った綿菓子の一部が触れただけで、常軌を逸した甘さに肌が泡立ち、じわじわと溶け落ちていく。
生きながら体を溶かされるという、筆舌に尽くしがたい激痛がひびきを襲った。
「……まだだ」
それでもひびきの闘志は尽きていない。傷つけば流血を力に変えて、欠損すれば炎で身体を補い戦い続ける。それがブレイズキャリバーの戦闘術だ。
燃え上がった地獄の炎で傷口を塞いだ彼は、さらに自らの血を代償として、グールドライバーの証――体内の「朱殷の刻印」を活性化させる。
「反撃行くぜ」
腕に巻かれた包帯が解け、少年の両腕が異形の殺戮捕食態と化す。
彼はその黒い瞳の奥に、鋭い紅の眼光を宿し――獲物目掛けて猛然と駆け出した。
―――こないで !!
『わたがし』は新たな【悪魔の綿飴】を作り出し、捕食者の進撃を阻もうとする。
しかし捕食態と化したひびきの両腕は、行く手を塞ぐ綿菓子に溶かされるどころか逆に喰らい、本体の生命力に還元する。
「めちゃくちゃ甘いな、胸焼けしそうだ」
甘味とは本来人に必要な栄養素だが、ここまで"甘すぎる"と不快感しか感じない。
それでも邪神の力を喰らった彼は、さらなる力を漲らせながら超次元の渦を駆け抜ける。慌てる『わたがし』のもとへ一直線に。
―――くるな っ !!!
必死さを増す邪神の叫び。近付くにつれて激しさを増す綿菓子の妨害。
だが、ここまで来て退くつもりなど無い。危険を承知の上で前に踏み込む。
「ここが最後だ、気合い入れていくぜ」
綿菓子に身体の端々を溶かされながらも、捨て身の覚悟で『わたがし』に肉迫したひびきは、残されたありったけの力を込めて拳を振るう。
咄嗟に身体を硬化させようとする『わたがし』。だがそんなものは関係ない。彼の腕は全てを喰らい滅ぼす、殺戮の拳なのだから。
―――!!!!!
初撃の左拳が硬化した『わたがし』の表面を叩き割り。
間髪入れず放たれた追撃の右拳が、柔らかな本体の綿菓子に突き刺さる。
ひびきの拳が貫いた部位は、まるで猛獣に齧り取られたかのようにごっそりと抉り取られ――言葉にすらならぬ邪神の苦悶が、超次元の渦に響き渡った。
大成功
🔵🔵🔵
祇条・結月
こわい、って思う
経験は積んだつもりだけど、それで慣れた、とは今も思ってない
……でも。戦わないと、ね
【覚悟】を決めて、前を向くよ
敵の挙動を見逃さないように。なにをされても動けるように
綿菓子……飴? ダメだ、速い……!
触ったら危ないって【第六感】を信じて、【見切り】で飴の軌道を躱す様に走る
全部避けきれなくても【オーラ防御】と【激痛耐性】で堪えて、走る
足を止めたら、追撃が来るでしょ
無理のしどころだよね
雨が途切れたら反撃に
苦無で牽制しながら飛び込んで
銀の鍵の力で加速
敵の反撃は光の刃を掻き消して、返す刀で反撃して削りとる
負けて、帰るつもりはないから
お前たちが犠牲にした人の分も。ここで、叩き返しとく
(こわい、って思う)
戦いの中でざわつく胸の感覚。その奥で疼く感情の名を、結月は理解していた。
恐怖。強大なる敵を前にして、生死を賭けた戦いに臨む時、それは自然に生じるもの。
(経験は積んだつもりだけど、それで慣れた、とは今も思ってない……)
鍵を握りしめる手が微かに震えている。気を抜けば、膝も震えそうになる。
何度直面しても、この重圧を感じずにいられるようには、まだ、なれない。
「……でも。戦わないと、ね」
ぽつりと呟いたのは、自らの心を奮い立たせるため。
覚悟を決めて、前を向く。そこには猟兵達の攻撃で傷ついた『わたがし』がいる。
どんなに恐ろしくとも、敵わない相手では無いのだと、その姿が教えてくれる。
だから結月は恐怖から目をそらさない。敵の挙動を見逃さないように。なにをされても動けるように。
―――うとましいわ その めつき
苛立ったように顔をしかめた『わたがし』が放つのは【悪魔の飴雨】。
宙高く放り投げられた綿菓子が雨雲となって、仇なす者の頭上を覆っていく。
「綿菓子……飴? ダメだ、速い……!」
触ったら危ない、と第六感が鳴らす警鐘を信じて、ぽつりぽつりと降りだした雨の軌道を見切り、身を躱すことに専念する結月。しかし、瞬く間に土砂降りの豪雨と化した飴の雫すべてを避けることはできない。
「熱……っ!」
一滴の雨粒が服の上から当たった瞬間、感じたのは肌が泡立つような灼熱感。
見れば衣服には焦げ跡が。こんなものを直に浴びるのは釜茹でになるのと同じだ。
少年はオーラで身を包み、煮えたぎる飴に焼かれる痛みを堪えながら、走る。
(足を止めたら、追撃が来るでしょ。無理のしどころだよね)
ここで怯めば相手の思うツボだ。苦しくても耐えて、反撃の機会を待つ。
止まない雨がないのは、どんな物事においても同じはずだから。
―――なまいき
悪魔の飴雨を降らせていた綿菓子雲が徐々に小さくなっていき、そして消える。
『わたがし』はすぐにまた新しい雲を作ろうとするが、その隙を結月は与えない。
「ここからは僕の番だよ」
雨が途切れた瞬間、発動したのは【是、呪わしき銀の鍵】。鍵から放たれる力を閃光として己の身に纏い、獲得した加速力で流星のように超次元の渦を駆ける。
同時に牽制として投げ放った苦無が『わたがし』の注意をそらし――僅かに生じた隙を突いて、彼は敵の懐に飛び込んだ。
―――!!
「負けて、帰るつもりはないから」
その瞳は、恐怖に濁ってなどいない。決意と覚悟の宿った"戦う者"の瞳だ。
結月のまっすぐな視線に、そして銀の鍵が発する時空を裂く光に臆したかのように、完全なる邪神はまだ生成途中だった綿菓子を苦し紛れに投げつけてくる。
少年は手元から鍵の力を収束した光の刃を作りあげ、邪神の綿菓子を切り払う。
その光は触れたあらゆるものを削り取る。消えたものがどこへ行くのかは、彼自身ですら知りはしない。
「お前たちが犠牲にした人の分も。ここで、叩き返しとく」
一振りで綿菓子をかき消した結月は、すぐさま返す刀で邪神に斬りつける。
鍵の力による加速と、想いと、罪なき人々の無念を背負った一撃。それは眩い光の軌跡を描き、時空間もろとも『わたがし』の身体を真っ二つに断ち斬った。
―――あ あ あ あ っ !!!!
脳内に、そして超次元の渦に響き渡る、完全なる邪神の絶叫。
半身を失ってさえ、まだ生きているのは流石にしぶといが――結月の一撃が与えたダメージの深さは、誰の目にも明らかだった。
大成功
🔵🔵🔵
雛菊・璃奈
貴女はここで終わり…世界は過去に沈ませないし、一つになるつもりもないよ…。
敵の先制に対して、凶太刀の高速化とアンサラーの力で対抗…。
【見切り、第六感】と高速化で可能な限り攻撃を回避し、飴の雨等の回避しきれない広範囲攻撃に対してアンサラーで反射【呪詛、オーラ防御、カウンター、武器受け】…。
敵の攻撃を防ぎ切った隙を突いて【魔剣の巫女姫】の封印解放…。
敵がフワフワの時は【呪詛】を込めた凶太刀と神太刀の二刀による連撃、カチコチの時は【呪詛、衝撃波】を纏ったバルムンクによる剛剣の一撃で砕き斬り、無限の魔剣による追撃を叩き込んで仕留めにかかるよ…。
貴女達に世界を好きにさせない…邪悪な神はわたし達が討つ…!
フレミア・レイブラッド
【念動力】で自身の周囲に球状の障壁を張り、魔力【高速詠唱】で障壁を補強して敵の攻撃を防ぎつつ、内部でUCを発動。
【ブラッディ・フォール】で「終焉を呼ぶ黒皇竜」の「黒皇竜ディオバルス」の力を使用(黒皇竜の翼や尻尾等が付いた姿に変化)。
【インフェルノ】で敵の綿菓子を瞬時に蒸発させて迎撃し、そのまま本体も攻撃。カチコチになった身体も溶かしてしまえばUCの効果も失われるでしょう?
そして【残像】が残る程の速さで一気に接近し、【鎧砕き】【黒皇竜の一撃】で敵の体を貫き、防御ごと粉砕。
最後は飴も綿菓子も全て【カタストロフィ・ノヴァ】で消し飛ばすわ!
簡単に世界を沈められると思わない事ね。世の中飴程甘くはないのよ
清川・シャル
過去に沈む、かぁ。骸の海は真っ平御免こうむりますね
他力本願ではなくて自力で生きられないだけでしょうに。
真の姿は鬼神也
さぁラスト行きましょう
敵さんの射程範囲外に居れば問題ないかと思うんですけどどうでしょうね
距離を取って氷の盾を展開、隙間からぐーちゃんのアサルトライフル部で狙撃
アサルトの方が飛距離あると思いますし
念動力でランダムに打ちながら翻弄して30発終わったらUC発動
櫻鬼のジェットで風魔法のダッシュです
激痛耐性を備えつつ捨て身の一撃をSoulVANISHで打ち込みます
間合い内では修羅櫻で見切り、カウンターを行います
骸の海に還るのです
―――なぜ どうして うけいれないの あなたたち は
―――この せかい は かこ に しずむ
―――それは さけられない さだめ なのに
超次元の渦を漂いながら、悲嘆と、憎悪と、狂気を込めて呟く『わたがし』。
完全なる邪神の最終形態であったそれも、猟兵達の度重なる攻撃で今や満身創痍。
されど、片腕を半身を失おうとも、ソレはまだ生きている。冒涜的なまでに。
―――みらい には ぜつぼう しか ない
―――それなら ここ で ひとつ に なれば
―――もう くるしむ こと も ない のに
その声は人の心を蝕む。ただ存在しているだけで理性と正気を破壊する。
だが、この場に集った猟兵達の中に、そんな言葉に惑わされる者などいない。
「貴女はここで終わり……世界は過去に沈ませないし、一つになるつもりもないよ……」
妖刀・九尾乃凶太刀の刃を突きつけて、静かにはっきりと宣言したのは璃奈。
その切っ先よりも鋭い眼光は、対峙する邪神の終焉の刻を見据えている。
神を騙る禍つものを断つために、魔剣の巫女の呪力はいっそう高まっていた。
「簡単に世界を沈められると思わない事ね。世の中飴程甘くはないのよ」
その身からほとばしる魔力に包まれながら、あえて挑戦的に告げたのはフレミア。
口元に浮かぶ優雅な微笑みは、何者が相手だろうと決して怯まぬ自信と誇りの証。
この世界には猟兵という守護者がいることを、邪神は思い知ることになるだろう。
「過去に沈む、かぁ。骸の海は真っ平御免こうむりますね。他力本願ではなくて自力で生きられないだけでしょうに」
そして最後に、邪神の誘いをぴしゃりと拒み、シャルが好戦的な笑みを浮かべる。
その頭部の角は長く伸び、蒼かった瞳は紅に染まり、爛々と輝く。
これぞ彼女の真の姿。戦場において呵呵と笑う、その様はまさしく鬼神なり。
「さぁラスト行きましょう」
その一言が、完全なる邪神に終止符を打つ、最後の交戦の合図となった。
―――おわらない おわらせない !
―――わたし は えいえん なる もの !
絶叫と共に『わたがし』の身体の断面や傷口から、大量の綿菓子があふれ出す。
全てを呑み込み溶かし尽くす【悪魔の綿飴】。雲霞のごときふわふわの悪意。
彼女ももはやなりふり構わずに、全身全霊で猟兵達を滅ぼすつもりだ。
「最後の悪あがきと言ったところね」
押し寄せる大量の綿菓子を前にして、仲間の先頭に立ったのはフレミアだった。
展開するのは念動力による障壁。術者を中心として球状に広がるそれが、綿菓子の津波から術者と仲間達を守る。
怒涛の勢いで襲ってくる綿菓子に押し切られないよう、フレミアは吸血姫の魔力によってさらに障壁を強化することで、邪神の猛攻との拮抗を保っていた。
―――そんな うすっぺらい かべ なんて !
綿飴が通じないなら直接叩き割ってやろうと、邪神は【悪魔の硬飴】を発動。
戦闘に適したカチコチわたあめモードに変形し、俊敏な挙動で猟兵達に接近する。
フワフワ感を捨てたその硬質な拳の威力であれば、フレミアの障壁も危うい。
「やらせない……」
すかさず前に飛び出して、『わたがし』本体の押さえにかかったのは璃奈。
凶太刀の呪力を身に纏った彼女は音速を超える速度で戦場を駆けまわり、敵の注意を自分のほうに引きつける。
―――じゃま する なら あなた から !
繰り出される『わたがし』の拳は、おぞましい邪気と殺意を帯びている。
しかし速度においては高速化した璃奈のほうが僅かに勝る。無理に踏み込まず、研ぎ澄ませた第六感と冷静な観察力で攻撃の軌道を見切り、紙一重で躱す。
剣舞のような彼女の動きを捉えきれない『わたがし』は、業を煮やしたように空中へと綿菓子を放り投げ、【悪魔の飴雨】を降り注がせる。
―――どろどろ に とけて しまえ !
綿菓子の雨雲が影を落とした範囲へと襲いかかる、超高温の飴の雨。
回避しきれない"面"の攻撃に対して、璃奈はすぐさま得物を凶太刀から魔剣アンサラーに持ち替え、その刀身に宿る"報復"の魔力を解放する。
「避けられないのなら、その攻撃を利用する……」
璃奈のもとに降り注いだ雨はアンサラーの力で反射され、今度は逆に術者である『わたがし』のもとへと降り注ぐ。
―――こいつ !
思わぬ反撃に驚く『わたがし』だが、彼女の身体と悪魔の飴雨は本来同質のもの。
飴の怪物に飴を跳ね返しても、大きなダメージは与えられない。あくまで璃奈の反射は防御と時間稼ぎが目的のものだった。
――そして、二人が攻撃を引きつけている内に、シャルは後方に距離を取る。
「ここまで離れれば問題ないかと思うんですけどどうでしょうね」
念のために氷の盾を展開し、その隙間から構えるのはぐーちゃん零。
綿菓子も飴雨も届かない範囲外から、スコープを覗き込み、狙い撃つ。
―――なに !?
放たれた銃弾は硬質化した『わたがし』の表面でカンッと乾いた音を立てる。
驚かせることは出来たが、ダメージは軽微。しかし構わずトリガーを引き続ける。
シャルの念じるままランダムな弾道を描く銃弾は、右に左にと敵の注意を振り回して翻弄する。敵からすれば非常に鬱陶しいことこの上ない。
―――とおく から ちまちま と !
こちらの攻撃は射程範囲外、近づきたくとも他の猟兵の牽制がそれを許さない。
やむを得ず『わたがし』は防御を固めるが、そうなれば当然攻撃の手は緩む。
それが猟兵達が反撃へと転じる潮目となった。
「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
これまで攻撃に耐えてきたフレミアが、敵が"固まった"のを見て障壁を解除する。
障壁の向こうから現れたのは、漆黒の翼や尾を生やした竜人のごとき姿の吸血姫。
それは【ブラッディ・フォール】によって宿したオブリビオン――「黒皇竜ディオバルス」の力を具現化した姿だった。
「今度はこっちが貴女を溶かし尽くす番よ」
終焉を呼ぶ黒皇竜の力にて放つは【インフェルノ】。地獄より顕現した紅蓮の業火が、邪神の生成した綿菓子を一瞬のうちに蒸発させる。
火の手はそれだけに留まらず、綿菓子の中心にいた『わたがし』本体にまで襲い掛かり、その身体をじりじりと灼熱で炙りつくす。
―――あつい あつい あつい !?!?
「カチコチになった身体も溶かしてしまえば、ユーベルコードの効果も失われるでしょう?」
フワフワだろうとカチコチだろうと、飴はしょせん飴である。地獄の炎に炙られた『わたがし』の体表はどろどろと溶けはじめ、次第に強度を失っていく。
攻撃力も、防御力も、移動速度も大幅に低下。フワフワ感すら失って極度に弱体化したこの隙を、猟兵達が見逃すはずがない。
「行くのですよ」
ぐーちゃん零に装填した30発の弾丸を撃ち終え、シャルが氷盾の陰から飛び出す。
揺れる着物の袖下から覗くのは、魔弾カートリッジ式パイルバンカー「Soul VANISH」。その杭の先端に呪詛を込め、ライフルの間合いを1秒で詰め、放つは【宵闇】。
「身体と精神を蝕むこの呪詛に耐えられますか?」
目にも止まらぬ早業で至近距離から叩き込まれたパイルの一撃は、溶けて柔らかくなった『わたがし』の部位を貫き、鬼神の呪詛を体内へと流し込む。
―――!!!!
杭を受けた箇所から黒ずみ淀んでいく『わたがし』の身体。
恐るべきは邪神さえも蝕むその呪詛か。会心の一発を叩き込んだシャルは、八重歯を剥き出しにして獰猛に笑った。
「我らに仇成す全ての敵に悉く滅びと終焉を……封印解放……!」
猟兵達の攻勢は止まらない。間髪入れずに【九尾化・魔剣の巫女媛】を発動した璃奈が、九尾乃凶太刀と九尾乃神太刀、二振りの妖刀を構えて邪神の懐に斬り込んだ。
巫女としての力の封印を解いた璃奈の莫大な呪力により、切れ味と鋭さを増した妖刀の連撃は、呪詛を纏った斬撃の嵐となって『わたがし』を斬り刻む。
さらなる呪詛にその身を侵され、邪神はもはや肉体の再生すらままならない。
―――ちょうし に のるな !
なんとか地獄の炎を振り払い、再び身体を固めようとする『わたがし』だが――。
「貴女達に世界を好きにさせない……邪悪な神はわたし達が討つ……!」
普段より語調を強め、裂帛の気合で璃奈が振り下ろしたのは魔剣「バルムンク」。
竜をも断つ大剣に、呪力と衝撃波を纏わせた剛剣の一撃が、硬化した部位ごと『わたがし』の身体を砕き斬る。
―――が あ !?
「調子に乗っていたのは貴女のほうよ」
よろめいた『わたがし』の元へ、残像が生じるほどの速度でフレミアが突貫する。
放つは小細工なしのシンプルな殴打。その身に宿したディオバルスの力の全てを正面から叩きつける、単純ゆえに強烈な【黒皇竜の一撃】が邪神を襲う。
―――いたい いたい いたい ?!!?
硬質化した箇所ごと、完全に粉砕される『わたがし』の身体。
飛び散ったその破片はひとつひとつが悲鳴を上げ、超次元の渦を漂う。
原型を失ってもなお尽きぬ邪神の生命力。だが、それももはや風前の灯火だ。
―――よくも よくも よくも っ !!
「うるさいですね」
バラバラになった綿菓子の身体を撒き散らして、猟兵達に反撃する『わたがし』。
そんな無駄な足掻きを、冷たい一瞥と共に斬って捨てたのはシャル。
本差と脇差からなる父と母の形見「修羅櫻」をさっと抜き放ちながら、直感で綿菓子の攻撃を見切り、返しの太刀を振るう。
「骸の海に還るのです」
斬撃の軌跡にそって舞い散る桜吹雪が、切り刻まれた綿菓子を吹き飛ばしていく。
「これで仕留める……」
追撃として璃奈が放つは無限の魔剣。巫女の呪力によって顕現した終焉の力。
超次元の渦を飛翔しながら降り注がせる彼女の魔剣の豪雨は、空間に散らばった邪神の一片たりとも残すまいと、そのことごとくを貫いては滅ぼし尽くしていく。
刃に貫かれるたびに上がる『わたがし』の悲鳴も、次第に弱々しくなっていく。
「さあ、全て消し飛ばしてあげる!」
そして最後にフレミアが放つのは、黒皇竜の【カタストロフィ・ノヴァ】。
それは万物を焼き払う極大規模の爆発。太陽とも見紛うほどの閃光が戦場を眩く照らしだし、それに匹敵する熱量と衝撃波が超次元の渦に吹き荒れる。
『わたがし』が放った綿菓子や飴雨の残滓も、『わたがし』自身の肉体も、すべて余さず、終末の爆炎の中で蒸発していく。
―――そんな ばかな こと が
それが、完全なる邪神「666」の最後の言葉。
『わたがし』の消滅と同時に、かの邪神は完全なる滅びを迎えたのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵