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灯火

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 影が来る。残酷な時の鐘のごとくに訪れる。
 耳を覆え。その声を聞くな。
 聞けば、心を苛まれるだろう。
 鎧戸を閉ざせ。音を立てるな。
 居場所を知られたならば、明日は我が身だ。

「そこにいるの? わたしはここよ」
「ここよ、ほら、あかるいでしょう」
「みえるでしょう? わたしはここよ」
「ねえ、おしえてよ」
「どうして、わたし、たち、だけがここにいなくちゃならないの?」
「どうして」

 少年が窓に駆け寄り両手をかけた。父が羽交い締めにし、母が手を引き剥がす。
「離せよ! 姉さんが」
「あれは、姉さんじゃない」
「姉さんだよ。あれは、姉さんだ。僕たちの代わりにやられた姉さんだ!」
「違う。あれはもう姉さんじゃない」
「父さん」
「あの子が……あの子が、人を襲ったりするものか!」

 グリモアベースの明かりが落ちた。いや、落ちたかのように感じられた。猟兵たちを取り巻く光景が、ダークセイヴァーの町の荒涼とした光景へと切り替わったためだ。
「頼みがある。ダークセイヴァーの、ある郊外の町へと向かってくれないか」
 誰かが点灯してくれた液晶の明かりを借りて、辻村・聡(死霊術士・f05187)は目蓋の前に片手を翳す。仄暗さの中の明かりは小さくとも眩い。
「最近、居を構えた領主のせいで、多くの死霊たちがそこかしこをさまよう事態に陥っている。この死霊は元はといえば皆、町の住民だった。が、オブリビオンである領主に殺害された後に意識が混ざり合い、今は一種の集合体と化しているらしい」
 決して大きな町とはいえないのに。そう呟く時、聡の声は無意識に抑揚を欠く。
「元凶である領主は『不服従の賢王』と呼ばれている。夜毎一人ずつ無作為に住民を殺害するというが、闇に覆われたダークセイヴァーにおいて、この暴虐があるからこそ正確に一日を数えられるとは……嫌な冗談だ」
 奇しくも、液晶画面には時を告げる白いデジタル文字が浮いている。それを視界の隅に入れ、強いて抑えた声で聡は続ける。
「その上、このオブリビオンは亡者たちを統率する術にも長けている。とくれば、目をつけられたが最後、町はじわじわと蝕まれ、遠からず全ての住民が賢王の配下へと作り替えられてしまうだろう」
 一人勝ちのオセロのような話。ベース内の空気が静かに揺れた。
「そう。この手合いは、配下を増やすにつれて勢力拡大の速度を増す。だから、居を構えてまだ時を経ていない今が殲滅の好機だ。やってもらえるか?」
 聡は目蓋の上の手を下ろし、明かりの上へと差し出す。束の間、覆い隠して庇うかのように。そうして、猟兵たちの顔へと視線を上げた。
「状況から推すに、まず配下である死霊を一掃し、次いで問題のオブリビオンを叩くこととなるだろう。その上でもう一つ、頼みたいことがある。どうか、聞いてくれ」
 願うと共に指し示すのは、手の中の仄かな明かり。
「夜毎に訪れる死の恐怖と犠牲者への悼みとで、住民の心はひどく疲弊している。そこに蝋燭の明かりを灯し、力づけるところまでを皆にお願いしたい。彼らを虐げているものは件のオブリビオンだけではなく、それがもたらした心の暗がりでもあると考えるからだ」
 液晶の明かりを消すと、聡は背後に展開された光景へと片腕を持ち上げる。
「終末のない死へと蝕まれ行く町のために、皆の力を貸して欲しい。よろしく頼む」
 それは凄惨な戦場への誘いであり、未来への切なる要請だった。集う猟兵たちの姿に刹那、眩しげな眼差しを向けたのは、必ずしも明かりの有無から来るものとは限らなかっただろう。


来野
 こんにちは、来野です。新たな年もどうぞよろしくお願いいたします。皆様、どのような三が日をお過ごしでしたでしょうか。
 さて、本日はダークセイヴァーでの事件をお届けいたします。

 当シナリオは、まず『残影』と呼ばれる死霊の集合体たちの掃討、次いでボスである『不服従の賢王』の撃破、最後にキャンドルナイトの開催、という構成を予定しております。
 現場は石畳の道が縦横に走る小さな町です。領主の館は一番奥に位置しており、時刻はちょうど死霊たちが本日の犠牲者を物色し始める頃合いです。それを阻止してください。
 町の住民は殺されることを恐れて家に引きこもっておりますので、何もなければ巻き込まれることはないと予想されます。
 最終章のキャンドルナイトは、戦闘後の日常のひと時となります。決して明るい日常とはいえませんが、それゆえに猟兵の皆様の手で様々な輝きを灯して頂けましたら、町の人の心も安らぐと思われます。

 皆様のご参加、心よりお待ち申し上げております。
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第1章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ひび割れの目立つ石畳の先、丈の高い煉瓦の塀と枯れた蔦の絡みついた青銅の門扉とが内と外とを隔てている。
 今、外へとさまよい出たのは、幾人かの女たちだった。見た目は女。その肌に血の気はなく、眼差しは虚ろ。揺らめく足どりは静まり返った町の中央へと向かっている。うっすらと漂うものは冷たい霧だ。
「そこにいるの?」
 虚空へと問いかけ、青白い炎を掌の上に掲げる。そうして、どこへと選ぶことすらなく放った。
「わたしはここよ」
 残影と最初に呼んだものは誰だっただろう。
 それは死霊。肉も骨も朽ち果ててなお、旅立つことのできない影の群だった。
天星・暁音
…町の人達の死者への想いが、大切な人の姿をした彼等に対する悲しみが痛いや…
何より、死者たちの想いも…彼等の安息の為に、そしてもう大切な人を傷つけるかもしれないという恐怖から
解き放つ為にも…

【全力魔法・高速詠唱】でもって死霊たちへ砲撃します。
可能なら【範囲攻撃】も混ぜたいですが町中なので建物に被害が出そうなら使わない方向で

哀れには思うも【覚悟】を決めて、また解放してあげたいという【優しさ】で全力で打ち倒します。

武器に寄る【共苦】に心引きずられないよう【勇気】で痛みと悲しみに立ち向かいます。

借りに町の人が見知った顔が攻撃される事に耐えきれず家から出てしまったなら【かばい】ます。


キアロ・マジェスタス
成程、見知った者の死霊が……痛ましい限りであるな
頭では判っていても呑まれる、人の心とはそういうものだ
よかろう!我輩が斯様な悲劇に幕を下ろしてやるのである!

まずは残影を始末するぞ!
敵の数が多いので他の猟兵と協力する機会は積極的に狙う

我輩は速度で翻弄する戦いを得意とするのでな
『ダッシュ』と『スライディング』で敵の群れに斬り込み
悪魔医師人形と蹴りを食らわせヒット&アウェイで数を減らしていくのである
街の『地形の利用』で効率的に動くぞ

囲まれた時こそ好機!
【花の名は無情】で一掃する
「憐れなる死霊ども、貴様らには同情する。だがこの世界は、生者のものである!」
一滴の涙も残さぬよう、徹底的に殲滅するのである!


リリト・オリジシン
死してなお繋がれ、迷い出、天への道は程遠く……か
よかろう。汝らを地へと繋ぐその鎖、妾が打ち砕いてやろうぞ
死して犯した罪も、その嘆きも、全て妾へと捧げるが良い

故に、そこにいるの? と、問うのであれば応えてやろう
ああ、妾はここに居るとも。逃げも隠れもせぬ
堂々と妾が姿を見せてやろうとも
勿論、見せるのは残影たる汝らにのみではない
この地に息づく人々。今は家に籠るしか抵抗の術を知らぬ人々にも、だ
汝らに明けぬ夜はなく、訪れぬ希望の光もまたない
それを示してやろうぞ

ジャッジメント・クルセイドを使用

その悲鳴を、嘆きを止めよ
再び、光の世界へ、天へ至る道へ戻るがよい
汝らが地に繋がれ、その底に潜る必要などないのだから



●ANSWER
 青ざめた炎は宙を漂い、枯れ果てたラズベリーの藪を焼く。降り注ぐ日差しはとうに失せ、手入れをする者は屠られて、枯れるしかなかった藪だった。
「ねえ、そこにいるの?」
 漂い行く死霊は何一つ顧みない。ただ焼け広がるばかりと思われた枝を、しかし、折り取る白い指があった。
「ああ、妾はここに居るとも」
 朗と響いたその声に、死霊の娘はぴたりと足を止める。かつて残影たちの誰一人として与えられたことのなかった応えを、今、得たのだ。
「逃げも隠れもせぬ」
 炎を踏み消し対峙の位置へと歩み出たのは、リリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)。真っ直ぐに断じた声は石造りの町に反響し、怖じることのない姿は消える間際の炎の色を吸って一刹那、闇に咲き誇った。
 死霊の娘は動かない。信じがたいものを見たかのようにリリトの姿を見つめている。やがて唇を綻ばせると、泣き出しそうな目をして仄かに笑った。
「あ……あぁ、かみ、さ……ま」
 唇から微かな悲鳴がこぼれ、まるで激情の表れであるかのように炎が点り始める。一つ二つと増えていく蒼白の炎に照らされて、リリトは片手を闇空へ掲げた。
(「死してなお繋がれ、迷い出、天への道は程遠く……か」)
 放つユーベルコードはジャッジメント・クルセイド。指先を降ろして向けた先、鼓動無き胸へと眩い光が落ちる。
「その悲鳴を、嘆きを止めよ。再び、光の世界へ、天へ至る道へ戻るがよい」
「ああああっ!」
 縋りつくものを探すかのように血の気のない腕が踊った。
「汝らが地に繋がれ、その底に潜る必要などないのだから」
 その一角を白く染め抜いた光の中から虚ろな影と炎が消え失せ、リリトの淡く甘い色の髪だけが明るく輝いて残る。細く立ち上る白煙の行き先は闇の彼方の天。
 戦いの始まりを、息を殺して町が見ていた。

●美しき告別
 町の角から白い光と末期の声が届く。足を止めたのは、天星・暁音(貫く想い・f02508)とキアロ・マジェスタス(浪漫追う翼・f05344)、そして残影の娘、数名。すぐ目の前にいて顔を覆っている。
「……町の人達の死者への想いが、大切な人の姿をした彼等に対する悲しみが痛いや……」
「成程、見知った者の死霊が……痛ましい限りであるな」
 互いに見交わしたその時、ドンッという重たい音が響き渡った。
 すぐ傍らの家の鎧戸が内側から叩かれている。彼らの脳裏をかすめるのは、外に出ようとする息子と必死で止める両親の姿か。
「俺が」
 言うが早いか暁音がその家へと駆ける。固く閉ざされた窓の前でぐるりと向き直ると、押し寄せようという死霊たちの前に立ちはだかった。
「ならば我輩は足にて」
 瞬時の判断で逆方向へと駆けるキアロ。数名の残影がゆらりと踵を返し、群は二つに分かたれた。

 急を察したか窓の向こうは静まり返っている。それを眦にうかがい、暁音は星杖シュテルシアを握り直した。共苦の痛みを秘めて戦う彼にとってこの戦場はリスクが高い。その上、背後を思えば纏めて払うこともならなかった。
「星の光よ集え」
 顔から手を離した死霊を真っ直ぐに見つめ、詠唱を始める。
「ねえ、そこを……のいて……」
 振り絞るような願いに答えてはならない。
「我が意を持ちて流星と成し悪しきを散せ。走れ魔法陣」
 夜明けを知らぬ空に燦然と光が駆け、精緻なる魔法陣が描き出される。
「そこ、を……」
 残影の娘が顔を歪めた。炎を宿しながら踏み込んで来る。
「のけっ!」
「輝け! 裂光流星(シャイニング・エストレア)!」
 暁音は星の名を持つ杖を真っ直ぐに差し出した。憂愁に引き歪んだ顔から目を離すことなく、魔法陣より迸る流星の輝きで死霊を撃つ。
「の……、っぃあああ!」
 ビリッと震える背後の鎧戸。胸に広がる痛み。降り注ぐ星の輝きの中で、暁音は一心にそれを耐えた。
(「彼等の安息の為に、そしてもう大切な人を傷つけるかもしれないという恐怖から
解き放つ為にも……」)
 死霊はその最期に星を見上げて四散する。未練の炎は暁音の髪を幾筋か焼き、頬と耳朶とに痛みを残して、鎧戸を破ることなく静かに消えた。

 町のあちらこちらに悲鳴が反響する。それを振り返る残影の脚を蹴り払うのは、ペストマスクで顔を覆った黒いローブの悪魔医師人形。たたらを踏んだ死霊の娘がドレスの裾を握り締める。
(「頭では判っていても呑まれる、人の心とはそういうものだ」)
 黒焦げとなって転がっている車輪を足場に跳躍し、キアロは挟み撃ちの位置へと降り立つ。自身もまた背を取られたが、臆することなく人形を傍に引き寄せた。
「よかろう! 我輩が斯様な悲劇に幕を下ろしてやるのである!」
 今や彼は死霊の群の中心。承知の上で眼差しを巡らせる。
「憐れなる死霊ども、貴様らには同情する。だがこの世界は、生者のものである!」
 その声を聞いた時、残影たちの唇が酷薄な三日月の形を描いた。割れた石畳の隙間から盛り上がる血の気のない肉塊。ぐねりと撓んだそれが傷だらけの手を放出した瞬間、キアロは双眸を瞬く。その色は紫。
「馨らず、実らず、其の花は偽り。然れど怨敵を切り裂く刃なり!」
 言い終えるや否や嵐と舞った紫陽花の花びらに、偽りと聞いてなお死霊たちは目を奪われる。次の瞬間、次々と切り裂かれた手は花と共に渦を描き、煉瓦塀に打ちつけられて地に落ちた。
「い、っいいいいっ!」
 身を揉みながら輪郭を薄れさせていく娘の形を描き、花びらが滑り落ちる。
 花の名は無情(カルミナ・ハイドランジア)。それがキアロのユーベルコードだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

レイラ・エインズワース
鳴宮・匡サン(f01612)と共闘

死んだ命を弄んデ、生きてる命を脅かすナンテ、
賢王の名前にふさわしくない過去の亡霊ネ
そんな狼藉、ここで止めて見せるカラ
私たちはココにいるヨ

相手が複数いるのだカラ、こちらもユーベルコードを使って数で押していくヨ
なるベク、鳴宮サンの斜線がとりやすい路地か、道を封鎖して
出来るだけ無防備な個体ヤ、孤立した個体を狙って仕留めるヨ
攻撃後の隙は積極的に狙って、増援には警戒しておくネ

本体はその間無防備だケド、守ってくれるんデショ、鳴宮サン
信頼してるカラ、戦況の注視と領主たちの制御に集中

私の灯は、葬送の灯火
私が迷わないように照らすカラ、ゆっくりおやすみなサイ


鳴宮・匡
レイラ(f00284)と共闘


相対した時点でそれは「敵」でしかない
だから同情もしない
ただ、殺すだけだ

……ああ、でも
多分これは俺にとっても、不快なやり方だ

数が多いなら、まずは数を減らすところからだ
連携しながら孤立した敵から落としていく
できれば気付かれる前に出会い頭を叩きたいな
複数を相手にするときは路地など狭くて射線の通りやすい場所で
レイラが足を止めてくれるなら隙を狙っていくよ
動かない的くらい、見なくたって当てられる

ただ零れていくだけの命に祈りを馳せられるのは
俺にはない機微だけど
愚かとは思わない
……強いとさえ思う

ああ、もちろんだ
ちゃんと守ってやるから安心しな
気にせず、レイラの好きな様にやるといい



●それぞれの見送り
 猟兵たちの掃討は着実に効果を上げていく。形勢を悟った残影たちの中には、いち早く伝令の務めを果たそうとする者もいた。
「いけないわ」
「もどりましょう」
 数体が碁盤の目を外側に逸れ、撤退を始める。動きを読まれているとも知らずに。
「死んだ命を弄んデ、生きてる命を脅かすナンテ、賢王の名前にふさわしくない過去の亡霊ネ。そんな狼藉、ここで止めて見せるカラ」
 間に一区画を挟みレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)が町の奥を目指す。
「相対した時点でそれは『敵』でしかない。だから同情もしない。ただ、殺すだけだ」
 傍らを行く鳴宮・匡(凪の海・f01612)はそう応えを返したが、数歩を行ってからふと言葉を継いだ。
「……ああ、でも、多分これは俺にとっても、不快なやり方だ」
 忠誠心から来る行動だろうか。撤退の途上であっても残影たちは住民探しの手を抜かない。その足取りは決して速いとはいえず、戦場慣れした猟兵からすれば経路の予測が立てやすい。死霊たちが入り組んだ裏路地を目指すと知った時、レイラと匡は二手に別れた。
「増援には警戒しておくネ。本体はその間無防備だケド、守ってくれるんデショ、鳴宮サン」
 問いかけながらもレイラは振り返らなかった。残影たちの正面を狙う位置へと急ぐ。
「ああ、もちろんだ。気にせず、レイラの好きな様にやるといい」
 匡は、そこと定めた角で足を止め、今はまだ何者もいない通りを見つめた。
(「見える」)
 靴音は聞こえないが、レイラの軽やかな足が一本脇の通りから正面の通りへと躍り出る瞬間が思い浮かぶ。
「だれか、いな……?」
 曲がり角を曲がった瞬間、数件向こうにレイラの姿を見つけた死霊の娘たちは、さっと身を寄せ合った。
「ココにいるヨ」
 両足をしっかりと石畳に着きレイラが応じる。
「潰えた夢を数えヨウ。繁栄への願い、富への渇望――」
 続く詠唱を聞いた時、残影たちがざわめいた。
「全てを手中に収めんとした領主の見た夢。過去の幻だとしても、今再び夢は舞い戻る」
 召喚に応じてこの世に姿を得たものは、絢爛な武装に身を包んだ領主と近衛兵団。まるで縮図だ。
「けんおうさま! てきが!」
 死霊の娘たちは逃げることを忘れ、近衛兵を焼き払おうと進む。立ち込める白煙ときな臭さに耐えながら、レイラは微動だにしない。できない。
(「私たちはココにいるヨ」)
 全てを黙って見守ることがこのユーベルコードの代償なのだから。他の残影が倒れ行く中、彼女の目の前で悲嘆の叫びを上げようとする一体を見つめる今も。
「ひ……っ……」
 天を仰ぎ両手で頭を抱え、死霊の娘が息を吸い込む。唇を戦慄かせ喉を膨らませた。
 叫ぶ。そう見えた時、その一角の家々の窓が一斉に震えた。
 銃声はただ一発。右から左へと頭蓋を撃ち抜かれた死霊は、かくりと首を傾げたままで膝の力を失い、薄れて消えていく。
「ちゃんと守ってやるから安心しな」
 脇の通りから現れた匡は最後の一体、消え損なって地に転がる別の死霊の額を撃ち抜いた。千篇万禍(ゼロ・ミリオン)の使い手に撃ち漏らしはない。心強い味方が引きつけてくれている。
 動きを取り戻した時、レイラを取り巻くものは静寂だった。
「好きにやったヨ、安心していたカラ」
 眼差しを伏せて霧とも白煙ともつかない足元の靄を見る。
「私の灯は、葬送の灯火。私が迷わないように照らすカラ、ゆっくりおやすみなサイ 」
 その声を聞いて次のポイントへと歩み出していた匡が足を止めた。ゆっくりと振り返る。
「ただ零れていくだけの命に祈りを馳せられるのは俺にはない機微だけど、愚かとは思わない……強いとさえ思う」
 レイラが顔を上げる。
 淡い霧の中に二つの影が並び、再び歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

揺歌語・なびき
残影は、もう戻れないんだよ
そこに居るのは
もはや誰でもない

敵の群れに突っ込んで
十分に他の猟兵と距離を置いたら人狼咆哮
【傷口をえぐる、呪詛、串刺し、恐怖を与える、2回攻撃】活用
数減らし重視でしっかり殲滅

猟兵同士の連携重視
味方の隙を突かれない為に、【援護射撃】で撃ち漏らしをなくすよ

【見切り】で敵の攻撃をよく観察し躱すよう注意
それでも時折、傷だらけの手を受け入れ

痛いよな、苦しいよな
うん、わかってるよ
泣いていいよ、怨んでいいよ
悪いのは君達じゃないんだから

だからおれ達が、殺してやる
大丈夫、もう眠っていいんだ
安心して死に直せ(ふわりと笑み
君達の復讐は、おれが全部持ってくよ
代わりにそいつを、殺してやるからさ


鷲生・嵯泉
喪った者が戻る……再び逢う事が叶う
其れがどれ程に抗い難い誘惑か
ああ、私自身、身に覚えがあるというものだ……

図れるならば他と連携を以って当たる
残像と見切りを併用しての剣刃一閃
攻撃は武器受けにて躱す事に努め
カウンターとなぎ払いにて対処しよう
膂力にものを言わせて叩き斬る
出来るだけ苦しませずに済む様に、な
私には、其れ位しかしてやれん
多少の傷を負おうとも、攻撃優先にて前へ出る
首魁が奥にいるのならば、足を止める理由があるまい

お前達も元は町の住人
嘗ての家族や友人を、其の手にかける罪を負わせる訳にはいくまい
そして……大事な者を2度喪う痛みを味合わせる罪科
我が身に負い、必ずや領主を討って贖わせよう


八田・阿須摩
……あぁ、炎で居場所を教えてくれるのは、有り難いね

腕を斬り落とせば操る炎もどうにかなるかな

炎や飛ばされる腕は霧の中でも意識していれば、なんとか攻撃は避けられるはず
全部を避けられずとも攻撃する場所が判れば此方からの攻撃も届くだろう、きっと

足音を忍ばせながら素早く近付いて斬り伏せよう
霧に紛れて暗躍、と行きたいところだが白い着物が目立つかな
まあ囮になってしまおうとも構わないから気にしないけど
集まってくれるなら探す手間も省けるし
此処に来た猟兵は俺だけじゃないから
他の猟兵達が好機と捉えてくれれば幸い
協力して早めに苦痛を終わらせよう


アストリーゼ・レギンレイヴ
ああ、……なんて、悼ましい
こんなの、……憐れまない、わけないでしょう

もっと生きたかったでしょう
その傷だらけの手のひとつひとつが
焔と揺れる魂のすべて、胸を裂かんばかりの悲鳴のすべてが
帰りたくて叶わなかった願いのなれのはてでしょう

だから、受け止めるわ
いいのよ、痛みには慣れているの
幾らでも、あたしを穿ちなさい

……その代わり
その魂は残らず、還してあげる

【茨の刃影】で群がる全ての残影を穿つ
【捨て身の一撃】よ
残らず全て、撃ち果たしてみせるわ

死霊が相手といえど
【生命力吸収】で幾許でも体力は取り戻せるかしら
どれだけの傷でも、膝は折らない
……ええ、あたしは往くわ
貴方達をこんな風にした奴を、決して、許しはしない


リグレット・フェロウズ
随分と――趣味の悪い話ね
気に食わないわ。そんな下郎が王を名乗ることが。
貴族の在り方というものを、教育してあげる。

まずは、死霊退治ね
来なさい、死霊たち
怨恨の炎を正面から受け止めて……この身の内から出ずる地獄の炎と共に纏って、蹴り倒す

憐憫? 同情? 下らない
民草を傷つける者は、それが同じ民草であろうと即座に切り捨てる
民の盾となり、手を汚すのは、上に立つ者の務めよ
憐憫する権利など、ありはしないわ

だからお前たちは、早々に消えなさい。
――本当に、家族を同じ物に成り果てさせたいわけでは、ないでしょう

※戦闘スタイルは蹴り一筋。優雅に華麗に、えげつなく
※ユーベルコード名は口にはしない
※その他アレンジ、絡み歓迎



残影掃討戦、その最後の激戦区となったのは、領主の館の正面に位置する広場だった。人は憩わず市は立たず、噴水の水などとうに枯れた。そんな荒れ果てた場所に、死霊たちは集った。

●憐れみの泉
「霧が……」
 四隅の石柱の一つに手をつき、八田・阿須摩(放浪八咫烏・f02534)が空を仰ぐ。心持ち程度ではあるが、漂う霧が濃さを増しているようだ。
「しかし……あぁ、炎で居場所を教えてくれるのは、有り難いね」
 こうして見ると青白く揺れる炎は敵の所在を示す立派なマーカーであり、白に身を包む彼は敵から視認されにくい。
 地の利がある。そう悟ると同時に阿須摩は植え込みの裏を進んだ。声が聞こえる。
「ああ、……なんて、悼ましい」
 薄靄の向こうに仄かに浮かび上がるのは、溶け込みそうな銀の髪と白い肌。枯れ果てて石囲いの崩れた噴水跡に、アストリーゼ・レギンレイヴ(Lunatic Silver・f00658)が佇んでいた。
「こんなの、……憐れまない、わけないでしょう」
 ボコリと地が膨らんだ。割れた石くれを弾き飛ばし、脈動する肉塊が生じる。また、ボコリ。その脇にもボコリ。ボコリ、ボコリ、ボコリ。静脈の浮いた肉のよじれから覗くものは、爪の割れた細い指だ。
「もっと生きたかったでしょう。その傷だらけの手のひとつひとつが、焔と揺れる魂のすべて、胸を裂かんばかりの悲鳴のすべてが、帰りたくて叶わなかった願いのなれのはてでしょう」
 アストリーゼの声は滔々とあふれる。誘われて次々と生じた肉塊は憐れみの響きを啜って育ち、彼女の周りを今や囲み尽くそうという勢い。その上に揺れる、あまたの炎。
(「数が、多い」)
 阿須摩と反対側の石柱の影で、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)は静かに鯉口を切った。あまりにも多い。一つ取りこぼせば、全てをひっくり返されかねないほどに。これは危ない均衡だ。
 憐憫の誘いが捨て身の手段であることはわかる。ならば、すべきことは一つ。崩れた石組みに沿って回り込む。
「いきたかったわ」
 死霊の娘が答える。本当に娘だろうか。男かもしれないし老人かもしれない。全て混ざり合った魂が一斉に答えた。
「いきたかったにきまってる!!」

●迅速の情け
 どうっという勢いで手という手がほとばしった。右も左もありはしない。よじれては絡み合いながら、全てはアストリーゼを目掛けて襲いかかる。
「いいのよ、痛みには慣れているの、幾らでも、あたしを穿ちなさい」
 応えて地を割るものは血の色の茨。茨の刃影(ブラッディソーン)。薙ぐ一撃に風が鳴った。
「……その代わり、その魂は残らず、還してあげる」
 ずたずたに裂かれた手が地へと落ちると、その隙間から別の手が伸びる。銀の髪を掴んで引き倒そうとし、しかし手首を輪切りに断たれて虚空へと飛んだ。
「早めに苦痛を終わらせよう 」
 霧の中から初太刀を入れた阿須摩は、首を傾けて他の手を避ける。一歩下がり、肉塊をもぶつりと断った。
「やめて!」
 制止の声を頼りに狙うものは、本命。残影本体の腕だ。
「斬り落とせば操る炎もどうにかなるかな」
 ざっくりとひるがえる剣刃一閃。でたらめな動きをしながら地へと落ちた指先から、青ざめた炎がふっと消えた。
「けさないで!」
 阿須摩の斜め後ろから別の死霊が腕を突き出してくる。掌の上には炎。抱きすくめ、一気に焼き尽くそうとして、急に動きを止めた。首筋にぴたりと刀身が当てられている。
「出来るだけ苦しませずに済ませよう」
 高い位置から聞こえた嵯泉の声に、残影はぽかりと目を見開き唇を震わせた。
「あ、あ、あ」
「私には、其れ位しかしてやれん」
 炎に腕を炙られながらも、振り抜く刃は重さの乗った力強い一閃。躊躇うことなく、抗う隙も与えず、一刀のもとに首を落とした。
「ぁ……、……」
 最後の最後まで嵯泉を見上げ続けた娘の口は声を無くし、頭も胴体も同時に薄れて消える。そこに浮かんだ面影を今一度見たいと願う住民が、この町のどこかに生き残っていたとしても不思議はない。
(「ああ、私自身、身に覚えがあるというものだ……」)
 嵯泉は静かに切っ先を下げた。
「お前達も元は町の住人。嘗ての家族や友人を、其の手にかける罪を負わせる訳にはいくまい。そして……大事な者を二度喪う痛みを味合わせる罪科、我が身に負い、必ずや領主を討って贖わせよう 」
 断じて、踏み出す。さらに、前へ。さらに、奥へ。

●出立に捧ぐ
 いきたかったと死霊は言った。
「残影は、もう戻れないんだよ」
 揺歌語・なびき(春怨・f02050)の言葉は、聞き分けのない子供を静かに諭すようにも響いた。
「そこに居るのは、もはや誰でもない」
 噴水跡にたかる群を脇に見て、少しでも広い側へと回り込もうとする。そうした彼の行く手から肉塊を一つ蹴り退けて、リグレット・フェロウズ(幕開けざる悪役令嬢・f02690)は乱れたドレスの裾を払う。
「随分と――趣味の悪い話ね。気に食わないわ。そんな下郎が王を名乗ることが」
 のた打つ塊から忍び出てきた手を思い切り踏み止めて、見上げる先は青銅の門の向こう。
「貴族の在り方というものを、教育してあげる」
 言うが早いか踏み締めていた手を死霊の顔へと向けて蹴り飛ばし、全身に地獄の黒い炎を纏う。それは自らの胸の奥よりふつふつと生まれる出るもの。
「ひどい……」
 俯きながらも、残影は両手を緩やかに広げた。握って開いた時に生まれるものは、復讐心から来る怨みの炎。
「憐憫? 同情? 下らない」
「ひどいわ、ひどいわ、わたしはわるくないのに!」
 頬に触れようという位置で蒼炎をかわしたリグレットの髪が、チリッと音を立てる。
「民草を傷つける者は、それが同じ民草であろうと即座に切り捨てる。民の盾となり、手を汚すのは、上に立つ者の務めよ」
 追撃してくる腕を肘でブロックし、膝を引き寄せ大きく旋回させた。闇に裳裾の花が咲く。
「憐憫する権利など、ありはしないわ」
「っあああっ!」
 周囲を闇の色に染める炎と突き刺さるかのような蹴りを受けて、死霊の娘は背中から地へと落ちた。
「だからお前たちは、早々に消えなさい」
「わた、っう゛、わたし、っ……っぇあ」
 えずいて悲鳴も上げられない残影の頭を、真横から蹴り倒す。骨があったならばゴキリといっただろう。そんな形で首が曲がると、静かに横倒しとなって影は揺らいで消えた。
「――本当に、家族を同じ物に成り果てさせたいわけでは、ないでしょう」
 トンと音を立てて浮いた踵を靴にはめ込む時、リグレットの眼差しは消えた魂のいた場所を見ていた。

 あと少し。もう少しで他を制圧した猟兵たちがここにたどり着く。
 瀬戸際で戦闘力を保つアストリーゼの真横へと回り、なびきは死霊の群へと突っ込んだ。押し寄せて鳥籠のようになった傷だらけの手を引き毟り、焼こうと忍び寄る残影の喉頸を掴む。爪の先が傷口に引っかかった。
「い、っいい……っ」
「痛いよな、苦しいよな。うん、わかってるよ」
 頷いて、そのまま他の猟兵を巻き込まないところまで駆ける。指の力は緩めない。引きずられる死霊は苦悶の声を上げ、無数の手と異変に気づいた別の一体とが追い縋ってくる。
「泣いていいよ、怨んでいいよ」
「う、ぁう……ひ……っ」
 崩れた石組みを踏み越えた時には、なびきの全身には細かな傷が刻まれていた。
「悪いのは君達じゃないんだから、だから」
 十分な距離を取ったところで、闇に染められた空を仰ぐ。
「おれ達が、殺してやる」
 月もなくば星もない。救いなく黒い空へと向けてなびきは吼えた。
 おうおうと轟々と咆哮は響き渡り、縁石といわず枯れた植え込みといわず彼の周囲のものに細かな亀裂が走る。引きずられ追いすがる死霊の娘たちにも、また。
「う……うく……っ!!」
 ゆらゆらと揺れる死霊の喉を引き裂き、とどめを刺して、滑り落ちるばかりの影を握り締める。
「大丈夫、もう眠っていいんだ。安心して死に直せ」
 なびきがふわりと笑んだ時、全ての猟兵たちの到着を告げる確かな靴音が石畳に響いた。
「君達の復讐は、おれが全部持ってくよ。代わりにそいつを、殺してやるからさ 」
 ゴーンという重たい音が高みで鳴った。

 リン、ゴーンと音が響き渡る。残影の胸を切り裂き、頭を撃ち抜き、焼き払う猟兵たちの頭上で領主の館の時計塔の鐘が鳴る。告げる刻は何刻だっただろう。
 町の住人はもう久しく聞いていないというその荘厳の音が鳴り止んだ時、全ての影たちはあるべきところへと旅立っていた。
 道を戻ることなく先へと行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『不服従の賢王』

POW   :    贄の叫び
自身が戦闘で瀕死になると【墓場の亡者 】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
SPD   :    闇の嘆き
自身の装備武器を無数の【黒百合 】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    葬られる孤独
【死の恐怖 】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【有象無象の蛇のかたまり】から、高命中力の【恐れを喰らう蛇】を飛ばす。
👑17
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠揺歌語・なびきです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 新たな領主が町を訪れて以来、時計塔の鐘が鳴ったことはなかったという。
 必要がなかったのだ。
 一日に一人。多くもなく少なくもなく、休むこともなくば弛むこともなく、領主は人を殺し続けたのだから。
 今、鐘の音の失せた尖塔から飛来する影がある。霧を縫う大きく力強い羽ばたきは、閉ざされた門の上で鳴り止んだ。
 青銅の門扉を掴んでぐるりと首を捻ったのは、王冠を頭に戴いた翼あるオブリビオン。彼こそが『不服従の賢王』。闇の支配者は、その嘴を一つ打ち鳴らした。
「ほぉう……度し難し。全くもって度し難し。我が領民を奪ったものは、汝らか」
 もの思うかのように低く吟じるかのように滑らかに、王たる者はそう言った。
リグレット・フェロウズ
「ええ。その通りよ、愚かな王」
あえて、その言葉を否定しない
あの死霊こそが領民だと言うのなら、確かにお前は王なのでしょう
けれど
「愚王を愚王と言って何が悪いのかしら。証を立てるまでもないでしょう。成す術もなく民を失い。今ここで、首を落とされるのだから」

変わらず蹴りで攻撃
ただ、飛び回られるのは厄介ね

「ねえ、愚かな王。こんな物語を知っている?」
悪事を暴かれた貴族の令嬢は、ヒロイン、ヒーロー、善意の輩に囲まれて
悪行を並べ立てられ、全ての味方を失い――断罪を受け破滅する

まるで、今のお前のようね
ああ、哀れね。とても哀れ
可哀想だから――抱き締めて、地に落としてあげる

真の姿はありのまま
ただ地獄の黒炎が勢いを増し



●ある令嬢の物語
「ええ。その通りよ、愚かな王」
 静寂に響き渡るものは、リグレット・フェロウズ(幕開けざる悪役令嬢・f02690)の声だった。
(「あの死霊こそが領民だと言うのなら、確かにお前は王なのでしょうけれど」)
 霧に濡らされて赤い髪の色が闇に滲む。多くの死霊が旅立った広場で、残された空漠を彼女が見る時、領主もまたそちらを見ていた。マスクに覆われた表情は伺いにくいが、確かに見ている。
「愚王を愚王と言って何が悪いのかしら。証を立てるまでもないでしょう。成す術もなく民を失い。今ここで、首を落とされるのだから」
 毅然としたリグレットの言葉を、王冠を戴いたものは黙って聞き続けた。ただ霧が漂い行くばかり。そう思えるほどの無言をはさみ、王はリグレットを見た。
「左様。余はみすみす民を失った。その責は認めねばなるまいな」
 身を低め、翼を広げる。闇に闇を重ねて門を蹴った。
「自らの恥は、自らの力で雪ごうか」
 迎え撃つリグレットの身を地獄の黒い炎が包み込む。常よりも勢いを増して立ち上るそれは、彼女の真の姿を象る激しさを見せた。
「ねえ、愚かな王。こんな物語を知っている?」
「いかな、話か」
 虚空を裂く爪先を翼が避け、ひるがえる裾と旋回の軌跡とが交錯する。上空から届く羽ばたきの音を見上げ、リグレットの語る一幕とは、こうだ。

 悪事を暴かれた貴族の令嬢は、ヒロイン、ヒーロー、善意の輩に囲まれて悪行を並べ立てられ、全ての味方を失い――断罪を受け破滅する。

「まるで、今のお前のようね。ああ、哀れね。とても哀れ」
 一度、二度、蹴りと旋回の応酬を繰り返し、リグレットは平らな敷石の上へと降り立った。その隙を狙い、王は急降下で挑む。
「可哀想だから――」
 黒炎に包まれた猟兵は、大きく身を開いた。受け止めるのは巨大な翼の付け根。
「抱き締めて、地に落としてあげる」
 宣告した時にはもう、その背で綺麗な弧を描き、抱き留めたオブリビオンを脳天から地へと叩きつけている。
「グ……ッ、ア!」
 王冠がガランと音を立て、いくつもの羽毛が宙を舞っては黒い炎に炙られて焦げた。賢王は、ぜ、と短い息を吐く。
「っ、訊ね、よう。……ありのままに直面した時、令嬢は、哀しかったのかね」
 揺らめきながら立ち上がり、眩む頭を持ち上げて王はリグレットを見た。
 塵と化した羽毛が落ちる。

成功 🔵​🔵​🔴​

生浦・栴
初見であれど他に猟兵が在れば連携は吝かではない
生の蹂躙者を前にしては些細な事だ

賢き者は耳順うもの
王とは民を生かすもの
何れにも能わぬならば賢王の名は返上するが良い

WIZ
死を身近に置き従える死霊術士にそんな業が通じるものか
万一届いたとしても俺が召喚した死霊共の紡ぐ呪詛の糧にしてみせよう
在りし日の感情を久々に味わって常以上に騒めいてくれるわ

高速詠唱で2回攻撃を実現させる
呪詛含みの属性範囲攻撃で蛇の塊を散らしながら灯すUCを2つに収束
一つは飛び出す蛇があれば其方へ
そも必要無ければ諸共時差であの自慢らしい嘴へ叩き込む

正しき道へ先に戻った者達に詫びさせる為にも早々に送って遣らねばな


天星・暁音
いよいよ大詰めだね。
ふん、何が領民だ…唯の下僕の材料くらいにしか思ってないだろうに…死者を無理矢理配下にして縛り付ける。
その行為こそが度し難いよ。
住民たちの痛みを少しでも減らすため。
死者たちの心残りを少しでも軽くするために…君相手に退く訳にはいかなの。
君を永遠の闇へと放逐する為に…

【覚悟・勇気】で立ち向かい【誘惑・誘き寄せ】で敵の行動を誘導し【優しさ・鼓舞】で仲間を元気付け癒します。
必要なら当然攻撃もします。

まあこの状況で住民が出てくることはないでしょうがOPの子みたいに家族想いの人が仇をみたいなことをするようなら【かばい】ます。



●熱き闇と清けき光
 一度地に降り立ったオブリビオンが再び虚空へと舞い上がった時、揺らいで漂う霧の中に別の影が浮かび上がった。
「賢き者は耳順うもの。王とは民を生かすもの。何れにも能わぬならば賢王の名は返上するが良い」
 それは、生浦・栴(calling・f00276)の声。
 頭上で一度大きく円を描いた領主は、立ち枯れて半ばから折れた広葉樹の幹に片足を着く。逆の足に握っているものは誰のものとも知れない頭蓋骨だ。
「賢きか否かは他者の評に譲ろう。汝は日差し注ぐ豊穣のもとに生きる者か」
 その言葉が終わると同時、爪につかまれた頭蓋骨が自ずから黒く染まり始め、細かな亀裂を縦横に、無数に走らせる。
「死を身近に置き従える死霊術士にそんな業が通じるものか」
 栴の周りに次々と点るものは闇に沈み込む闇色の炎。薄く漂う霧の中で、それは仄かな輪郭を見せて揺れる。
「疾うに失せし胸を未だ焦がすその呪詛、その怨念。我が声に応え現世にて晴らして見せよ」
 栴の詠唱は滑らかにして速く、Flame of grudge(エンサノホノオ)の闇色の劫火は一度寄り集まり、二手に分かれた。ご、と燃え上がって襲いかかる闇の炎。その一方を避け得ても、もう一方までは避けられるものではない。真正面から喰らった領主は、大きく身じろぎをして羽毛を散らす。
「オ……ッ、グォ!」
 きな臭い匂いが広場の一角を占めた。打ち鳴らされる嘴には煤の色。苦痛の声を上げるオブリビオンの足指の間でバキリという音が立つと、つかまれていた頭蓋骨は粉々となり、霧を黒く染める勢いの黒百合の花びらと化して吹き荒れる。
 渦、そしてまた渦。襲い来る黒い嵐を見て、天星・暁音(貫く想い・f02508)が神聖なる祈りの抱擁(ディヴァイン・プリエール・エンブレイス)の眩い光を生じさせる。この地では滅多に見られない光明だ。
「ふん、何が領民だ……唯の下僕の材料くらいにしか思ってないだろうに……死者を無理矢理配下にして縛り付ける。その行為こそが度し難いよ」
「王にはしもべ。それは認めよう。どちらが欠けることもあってはならぬ」
 そこにある者たちをただ黒く染め上げ、闇の国の底に沈めようというかのような花びらの嵐だったが、そうして与えた損傷は清く輝く光によって静かに打ち払われていく。
「死者たちの心残りを少しでも軽くするために……君相手に退く訳にはいかない」
 眩い光が霧の中で収束すると、黒い花びらを払い除ける栴の身に痛みはなかった。
「正しき道へ先に戻った者達に詫びさせる為にも早々に送って遣らねばな 」
 右と左、二手に分かれて得物を構え直す猟兵たちを見て、王はその翼を広げた。風切り羽の何列かが欠け、焼けた羽毛の立てる嫌な臭いがする。焦げた木の幹を蹴り自らを追いつめる者たちに注ぐものは、マスクの奥の闇を意に介さぬ眼差し。
「左様か。あれらも、生きて餓え続けるよりはまだ良いのかもしれぬな」
 二人の言葉を噛み分けるようにして呟かれた応えは、しかし、根本的に相容れない。暁音は短く息を吐き、優しさと励ましの響きを口にする。
「攻撃は俺が引き付ける。大丈夫だよ、傷なら癒すから」
 光と闇の術、そして黒い花の嵐が再び激突した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レイラ・エインズワース
鳴宮・匡サン(f01612)と共闘

度し難いのハどっちカナ
滅んだはずの過去の夢が、今の命を奪っていくナンテ
これ以上はさせないカラ
エ、さっきのを忘れろって?
ヤだヨ、せっかく素敵なのが聞けたんだカラ!

私ができるのは召喚だけじゃないんダヨ
鳴宮サン、また援護をお願いネ
謡うように、響くように、朗々と【高速】で詠唱して
ユーベルコードの魔法を連打するヨ
一本一本に助からなかった人たちの【呪詛】を籠めて
貴方たちの無念は、私が晴らすンだカラ……
敵が消耗してきたら、さっきまでの槍に【全力】の魔力を載せて叩きこむヨ

私の灯は、葬送の灯火
過去の亡霊はまっすぐ夢に還らせるヨ
だからちょっと手伝ってネ


鳴宮・匡
レイラ(f00284)と共闘


さて、本命のお出ましだぜ、レイラ
思うところがあるんだろ、しっかりぶつけてやりな
……ところでさっきの話、よかったら綺麗さっぱり忘れてくれると嬉しいんだけど?

こちらは【援護射撃】主体
詠唱中のレイラを狙ってくるだろうから
その攻撃をうまく妨害するタイミングで狙おう
必要なら敢えて姿を見せて、こちらに気を引いてもいいか

翼か、あるいは眼、爪など
当てれば動きを一時的になり止められるような箇所を狙い
【抑止の楔】を撃ち込む

「守ってやるって言ったろ」
気にせず、全力でやれ

俺にできるのはただ殺すだけで
それはきっと、救いにはならない
過去を正しく還すというのなら
多分それは、レイラの手であるべきだ



●明けずの国の永久の夢
「さて、本命のお出ましだぜ、レイラ。思うところがあるんだろ、しっかりぶつけてやりな」
 巨大な羽ばたきの接近を知って、鳴宮・匡(凪の海・f01612)は視線の通りやすい位置へと身を退けた。昼も夜もない闇、薄く立ち込め始めた霧。狙撃手にとって楽な戦場とは言い難いが、彼には同行者がいる。
「……ところでさっきの話、よかったら綺麗さっぱり忘れてくれると嬉しいんだけど?」
 付け足す匡を見て、ランタンを手に踏み出しかけたレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)は赤い瞳をくるりと瞬いた。
「エ、さっきのを忘れろって? ヤだヨ、せっかく素敵なのが聞けたんだカラ!」
 首を左右に振った上に手の灯りまでを一度揺らして、砕けた石組みの欠片を踏み越える。
「私ができるのは召喚だけじゃないんダヨ。鳴宮サン、また援護をお願いネ」
 ランタンを高く掲げてレイラは前へと歩み出た。逆光となる背に向けて、匡は片手を持ち上げる。石柱の陰に下がった姿は見えないだろうが、届ける声は常と変わらない。
「守ってやるって言ったろ」
 言い終えるのとレイラの頬にかかる髪が舞い上がるのとでは、どちらが早かっただろう。
「度し難いのハどっちカナ」
 レイラの言葉に応えが返る。
「余に言わせれば汝らよ」
 一日一殺の領主は弛まない律儀さを見せ、同時に翼を休めようともしなかった。
「滅んだはずの過去の夢が、今の命を奪っていくナンテ、これ以上はさせないカラ」
 そこから始まる詠唱はクライマックスを一気に歌い上げる歌姫の滑らかさを誇り、大概の詠唱者であれば敵うはずのないものであっただろう。
 しかし、ここまでほんの一瞬も羽ばたきが止んでいないことに気づき、匡は敷石を蹴った。
「オ……ォ」
 低い喉声で一つ唸ったオブリビオンは、レイラの手にあるランタンを蹴り飛ばそうと飛来する。賢者と呼ばれるものの知によらない行動は驚くほど速い。なし得るように見えたところで、地に身を投げ出して威嚇の一発を放った匡に目測を狂わされる。
「もう一人、おったか」
 倒壊した彫像を盾に使って起き上がり、匡は照準を上へと向けた。散らばった石くれで体のいたるところを打っていたが、それを構う様子もない。
(「俺にできるのはただ殺すだけで、それはきっと、救いにはならない。過去を正しく還すというのなら、多分それは、レイラの手であるべきだ 」)
 決して怯えることなく朗々と術を織りなすレイラの唇。最後の一音を閉じた時、その身の周囲に浮き上がるものは鬼火を纏う五本の槍だった。エインズワースの魔術が成った。込められるものは、助からなかった者たちの呪詛。
「貴方たちの無念は、私が晴らすンだカラ……」
 次々と飛来する槍に翼を穿たれ、オブリビオンは中空に揺らいだ。
「おっ……の、れ」
 石柱を蹴り、身を立て直そうとするも、そこに撃ち込まれるものは抑止の楔(ブレイクダウン)の確実な一撃。蹴り足の指を飛ばされた不服従の賢王は、血にまみれた羽毛を撒き散らして地へと叩きつけられた。
「グ……ゥッ、……お、のれ、侵入者」
 煤で黒ずんだ嘴からは鮮血が滴り、低く地を這う声は暗く濁り始めていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鷲生・嵯泉
度し難い、か
そもそも、お前こそが奪ったものだろう
総て、返してもらうぞ

図れるならば他と連携を以って当たる
多少の傷など構わず攻撃優先の姿勢は変えず
怯む隙があれば前へ出る
烈戒怒涛を使用しての見切りとフェイント
カウンターでの剣刃一閃を狙うとしよう
攻撃は出来るだけなぎ払いと武器受けで躱す様努める
しかしウロウロと飛び回られるのは鬱陶しい
第六感で予測し、範囲攻撃での衝撃波で叩き落としを図る

不服従の銘を冠している様だが……
不服従である側ではなく、される側だった様だな
民を玩び苦しめる事しか出来ん愚かな王
せめて最後位は其の名乗りに相応しく
咎の責を負うがいい



●王権
「度し難い、か。そもそも、お前こそが奪ったものだろう。総て、返してもらうぞ」
 鷲生・嵯泉(烈志・f05845)が噴水跡の外枠を踏み越えた時、王は片翼を引きずりながら身を起こしたところだった。逆境に慣れ奇妙によじれて葉を失った植え込みの元へと行くと、億劫げに跳び上がる。
「できぬな」
 その答えには、否や応とはまた別の響きがあった。
「ここは余の領土である。汝から奪いしものではない」
 不可能だと言っている。その姿を目の当たりにして、嵯泉は携えた刀を抜いた。相手に構える隙を与えず斬り込んだが、王は枝を断たせて身をかわす。
「不服従の銘を冠している様だが……不服従である側ではなく、される側だった様だな」
「お互い様と言うのであれば然り」
 踏み込もうとすれば、まず植え込みの枝に突き刺されて前進を阻まれる。そこに上がった敵の意図を知り、嵯泉は足を止めた。
 風に吹かれて霧が流れる。無言と無言。本来はこれが正しいのかもしれない。どちらにも服従の意志がないのだから。
「一つだけ訊ねよう」
 だが、賢王の名を持つオブリビオンは言った。
「この領土を手に入れたとして、汝はどのような統治を為すつもりか」
 訊ねておきながら答えを待つでもなく、一番太い枝を蹴った。
 本来はこれが正しいのかもしれない。
 一瞬の隙を見逃すことなく、嵯泉は刀を返した。何もない虚空を真横に斬る。そう見えた一太刀が衝撃波を生み、舞い上がった細かな小枝に視界を奪われた賢王は飛翔の手順を過つ。
「――縛を解く。是を以って約を成せ」
 是。身に纏うものは、封印を解かれて本領を顕わとする剣精。烈戒怒涛(レッカイドトウ)の一撃は、斬にて敵の足場を奪い、打にて真正面からの衝撃を叩き込む。瞬きのごとに、自らの命を削ることになろうとも。
「民を玩び苦しめる事しか出来ん愚かな王。せめて最後位は其の名乗りに相応しく、咎の責を負うがいい 」
「ガ……ッ、ア!」
 太刀風が鳴り、羽毛が散った。手応えはあった。嵯泉の拳に残る長く深い鉤爪の痕が、その証左だった。
 命あるものの血は闇に赤い。

成功 🔵​🔵​🔴​

リリト・オリジシン
汝はこの地の澱みであるな
人の心を蝕み、腐らせる者だ
嘆きを地に満たす者だ
犯してきた罪の数々、汝は知るや知らずや
……いや、問答に意味はないな
妾に出来ることなど1つしかない
その罪ごと妾に喰われよ

しかし、喰われろと言って素直に喰われはしまいよ
故に、まずは機を計ろう
一撃、二撃とユーベルコードを載せず、血染めの流星を用いて隙を作るための攻撃を
妾が宿す怪力による一撃、当たってなお気を保てるか?(気絶攻撃込み)
気を失えば、隙を見せれば、本命の一撃を手ずからに馳走してやろう
――放つは罪喰
その代わり、その断末魔ごと、その叫びに呼ばれた者ごと、喰らわせてもらうがな


八田・阿須摩
領民、領民、ねえ……
君にとってその言葉はどちらへ傾いた言葉なのか
ああ、別に答えは求めてないよ
俺達は助けを求める人達を救う為に此処に居るだけだから
そして彼らを君の配下にはさせないよ、絶対に、ね

広げた羽根を重点的に攻める
空からの攻撃は厄介だからね
根本から斬り落とせなくても、風切羽根を落とせば飛ぶには不自由だろう?

叫びで墓場の亡者が呼ばれるのは面倒なので他の猟兵に合わせるように、
邪魔はしないように、出来る限り早めの殲滅を目指す

黒百合の花びらは薙ぎ払うのが効果的かな
指定された範囲へ素早く移動出来るようであれば避けるけれど



●天地の血涙
 血に汚れた領主が体勢を立て直したのは、青銅の門の前だった。距離を詰め、リリト・オリジシン(夜陰の娘・f11035)が敷石を踏む。
「汝はこの地の澱みであるな」
 小気味良く言い切ったその一言へ、館の主は低く満足げに喉を鳴らす。
「人の心を蝕み、腐らせる者だ。嘆きを地に満たす者だ」
「褒められたのだと思っておこう」
 命ある者が生きるにはあまりにも過酷な地に立ち、その統治者は新たな髑髏を一つ出して指の欠けている足を乗せた。正面に対峙するリリトのすっきりと甘やかな姿とは好対照を描く。
「犯してきた罪の数々、汝は知るや知らずや」
 罪。その言葉を象るかのように王は嘴を動かし、首を回した。そう、罪である。リリトは攻撃の隙を探して口を閉ざした。
「罪とは人の子らの犯し売る権利ではないのか」
 代わって王が答えた時、もの思うかのような声が別の方角から聞こえてきた。
「領民、領民、ねえ……君にとってその言葉はどちらへ傾いた言葉なのか」
 煉瓦の塀に沿って歩を運ぶ八田・阿須摩(放浪八咫烏・f02534)の声だった。形を持たずに漂いながら確実に肌を冷やす白い霧が、彼の影に従う。
「ああ、別に答えは求めてないよ。俺達は助けを求める人達を救う為に此処に居るだけだから」
 阿須摩は首を横に振り、太刀、卯ノ花を抜いた。
「そして彼らを君の配下にはさせないよ、絶対に、ね」
 号の通りの刀身を見た時、王はついに隙を作った。遅れて自覚し、ぶるっと身を震わせる。
 明けない天蓋の闇から赤い色が滲んでいた。ぽつりぽつりと滲むそれらは、逃れる暇を与えることもなく地へと流れ落ちる。
「妾に出来ることなど1つしかない」
 リリトの声に応じたかのように、血染めの流星がオブリビオンを激しく打った。
「オ……ッ」
 自他どちらの流した血かもわからない。おびただしい朱にまみれて賢王は門に叩きつけられた。しかし、リリトの攻撃はそれでは終わらない。
「その罪ごと妾に喰われよ」
 追撃をかけるものは、血と呪いからなる竜。身を揉んで生まれた緋の色は呪詛を孕んだ牙を剥き、敵の胴へと襲いかかる。
「グ……ッウ!」
 竜と共に門扉に叩きつけられ、開いたその向こうへと王が倒れ込んだ。次の瞬間に巻き起こったものは、黒い花びらの嵐。
「薙ぎ払うのが効果的かな」
 黒に仄白い花の名の刀身を当てて、切り開いた隙を阿須摩がかいくぐる。残った一方の門扉を蹴り開け、翼の付け根へと切っ先を落とした。
 ざぁっと上がる血煙。白いはずの裾が赤黒い飛沫を受けてひるがえる。
 舞い落ちた黒百合の花びらを踏み越えてリリトと阿須摩とが一歩踏み込んだ時、不服従の名を持つものは揺らめきながらも立ち上がっていた。
「……我が領土に、住まう、全てのものは……我が……領民、である」
 塵と化して土に吸われる花びらが、二人の猟兵の足元を黒く染め上げる。
 良く見ればそれは、敵の流した血の染みでもあった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

揺歌語・なびき
【団地】

随分と身勝手な王様だなぁ
お前に深い想いは特にないけど
お前みたいな奴は大嫌いだよ(ひくりと笑い

一応猟兵仲間に声をかけ
暫く延々うるさくなる、ごめんね

だってこいつには、拘束なんか生温いじゃないか

誰のことも気にせずあいつに吠え猛る、血を吐くように
ああいや、吐いてるか
【傷口をえぐる、呪詛、恐怖を与える、2回攻撃、催眠術】でダメージ増

巻き込まれた猟兵が多少傷つこうが構わない、トドメもさす
この咆哮と拷問具がその羽を全てむしりとる

これは彼女の叫びだ、彼の痛みだ
皆お前を殺したかったんだ
皆がそうしたかったなら、おれが引き受けるべきだよ

なあ、道をまちがった王様は
処刑されるべきだろう?


松本・るり遥
【団地】

俺、ただのなびきのご近所さんで
正直俺が作ったシチュー食べに来てくれた顔しか知らない
けど

戦闘の、痺れる空気に。『優しくない』人格が顔を出し、喉をさする
さあて、重ねて、音圧を分厚くしよう。嫌なら耳でも塞いでおけ。
俺も、奴のことは不愉快だ。

『ーーーああ、死ねよ、死ねよ、死ねよ死ねよ死んでしまえ!!!!!これがお前が受けるべき反抗!!!無力な誰もが食いしばった憎悪!!!人間を遊戯の駒にしか見ない貴様に、死した者達がか弱く手を取り合うその誇りの価値を見誤った事、死して尚後悔し続けろ!!!!!』

咆哮を代弁せんとするような絶叫。共感するならば、戦う痛みは全て癒してやろうとも。
暴れろ。爆音上映だ。


アルトリウス・セレスタイト
囀るのも結構だが
鳥風情が王を僭称するとは世も末だ
世紀末まで80年ほどあの世とやらで待って、来世から出直せ

他の味方と交戦している間に真理で攻撃力を強化の後、破天で攻撃に移行
高速詠唱、全力魔法、二回攻撃、範囲攻撃等を駆使して絶え間なく弾幕を叩き付ける面制圧飽和攻撃
目標のあらゆる行動を攻撃の密度で圧殺に掛かる
それでも抜けて攻撃を仕掛けてくるなら預言で回避
第六感なども無視せず

万一危険な味方がいれば回廊で退避させる


三岐・未夜
【団地】
ふたりの声に、ぺたんと耳を伏せて、驚いて膨らんだ尻尾を丸める。
怒号は苦手。こわいのも、かなしいのも、痛いのも、好きじゃない。

やること、やらなきゃ。
死者は死者だし、もう生き返らないし、僕はそのひとたちのことなんか知らないし。団地のみんなの方が、大事だし。
……でも、胸糞は悪いよ。
だから、愚王は処刑される。物語みたいに。ああ違うよね、王ですらないんだ、お前。
ただのおままごと。
心から従う臣下も居なきゃ、望まれる王位もない。
破魔と祈りを込めて、火の矢を。これ以上死者は使わせらんないよ。それに。ねえ、蛇も花も亡者も、尽く燃やしちゃえば一緒でしょ。

……るり遥もなびきも喉大丈夫かな。のど飴いる?


アストリーゼ・レギンレイヴ
度し難い、とはよく言ったものね
意に染まぬ形で命を囚われた者たちの痛みも苦しみも知らず
ただ奪うだけのお前に「王」を名乗る資格などない

あたしの身体はまだ動く
ならば止まる道理はないわね

誰ぞ同じ目的の猟兵があれば連携しましょう
一人では成しえぬことなんて、とっくに知っているの

【黒風鎧装】を纏って前へ
回復手や、有効な攻撃を持つ味方を【かばう】ことを第一に
戦線を維持させるための盾の役割に徹するわ
いいのよ、痛みには慣れている
死だって決して恐れはしない
あたしが恐れるのは、この胸に抱いた復讐の炎が潰えることだけよ

攻撃を受けたら返す刃で反撃を
有効打でなくてもいい
「次」へ繋げる為に、少しでもダメージを重ねていくわ


キアロ・マジェスタス
成程貴様が賢王を称するオブリビオンか!
結構!その傲慢、その慢心こそ怨敵に相応しい!
いや我輩は貴様と問答をする気はないぞ?
同じく翼を備えていても貴様は過去の残滓、ただの幻影ゆえな
幻と会話するなど虚しいではないか

既に仲間達がだいぶダメージを与えたようだ
終わりが近いのであろう
それ故に隠し玉が出てもおかしくない頃合いか

飛び回る敵に追随しながら敵味方の状況を観察
味方の攻撃に乗じる機会を探すのである
側背から悪魔医師人形と蹴りによる攻撃を加えヒット&アウェイでダメージの蓄積を狙う

敵が大技を出してきたときこそ我輩の出番!
真の姿を顕し【悪魔医師の領分】で返してやるのである!
「さあ、骸の海へ叩き返されるがよい!」



●包囲網
 門扉の蝶番が、きぃっと鳴いた。
 暗い石造りの庭を背に、闇の中のオブリビオンはだらりと翼を垂らしている。だが、立っていた。立って猟兵たちの姿を見ていた。
「度し難い、とはよく言ったものね。意に染まぬ形で命を囚われた者たちの痛みも苦しみも知らず、ただ奪うだけのお前に『王』を名乗る資格などない」
 アストリーゼ・レギンレイヴ(Lunatic Silver・f00658)は庭へと踏み込み、他の猟兵の姿を探す。
「余も殺されるのは意に染まぬ」
 乱れた羽音を立てて王は羽ばたき、館の戸口の前でアプローチの屋根に足を降ろした。
「囀るのも結構だが、鳥風情が王を僭称するとは世も末だ。世紀末まで80年ほどあの世とやらで待って、来世から出直せ」
 アルトリウス・セレスタイト(原理の刻印・f01410)が門の内にいた。淡く霞む霧の間に長身の影が浮かぶ。
「成程貴様が賢王を称するオブリビオンか! 結構! その傲慢、その慢心こそ怨敵に相応しい!」
 門の側から聞こえた声はキアロ・マジェスタス(浪漫追う翼・f05344)のもの。白い翼のオラトリオはラティスや彫像といった障害物もものともせず、霧の中へと身軽に降り立つ。傍らに寄り添うのは黒いローブ姿の悪魔医師人形。
 敵に向かう猟兵たちがいることを知って、アストリーゼは剣を抜く。身に黒風鎧装の漆黒の旋風を纏い、前へと出た。
(「あたしの身体はまだ動く。ならば止まる道理はないわね」)
 自身のあり方を考えて、他の猟兵たちを庇う位置へと立つ。周囲の霧が黒い風に散らされ、その姿は闇の中のさらなる黒として沈み、あたかも目に映らぬ盾。
 王が庇の端を蹴った。アストリーゼの肩先を抜けて翻弄しようとしているのを悟り、アルトリウスが青く輝く魔弾の弾幕を展開する。翼の向かう先、そこは。
「行き止まりだ」
 その名は破天、死の原理をもってして存在根源を直に砕く魔の連打である。つかの間、闇に青い星雲が生まれたがごとくに。
 急旋回するしかなかった王の行く手を塞ぐのは、キアロ。
「我輩は貴様と問答をする気はないぞ? 同じく翼を備えていても貴様は過去の残滓、ただの幻影ゆえな。幻と会話するなど虚しいではないか」
 脇から蹴り払ったオブリビオンを、後ろで待ち構えた悪魔医師人形によってさらに背から蹴り飛ばす。
「グッ……ゥ、か……っえ、せ」
 傷ついた翼を穿たれ蹴りにより軌道を見失った賢王は、再び地へと叩きつけられる。ここまでの猟兵たちの攻撃が功を奏して、今、これだけ動いていることの方が奇跡とも言える状態だ。
(「終わりが近いのであろう。それ故に隠し玉が出てもおかしくない頃合いか」)
 キアロの判断は明晰だった。その隠し玉こそが問題であり、最悪の迷路にはまり込まないためには手段を講じる必要がある。そこを考えて対策を携えている猟兵たちは多くあり、皆、少しずつ包囲の輪を狭めつつあった。
「か、えせ……我が、領民……」
 呻きを噛んだ王は、それでも膝を着こうとはしない。アストリーゼの目許を狙って羽ばたいたが、頬を裂かせた黒騎士は返す刃を翼の根元へと叩き込む。
「いいのよ、痛みには慣れている。死だって決して恐れはしない。あたしが恐れるのは、この胸に抱いた復讐の炎が潰えることだけよ」
 再び叩きつけられてもなお返せと呻くオブリビオンへと、アルトリウスが魔弾の追撃をかける。休む間はない。館の窓がビリビリと鳴った。
「我が子、を……か、……っ」
 折れた翼で地を打ち、それでもまだ王が立ち上がろうとした時、門扉の蝶番が短く軋む。
 いくつもの靴音が響いた。

●SKRIK
「随分と身勝手な王様だなぁ」
 最初に現れた揺歌語・なびき(春怨・f02050)の口振りはいつもと変わらない。広場から館の敷地内へと入ると真っ直ぐに賢王のいる場を目指す。
「お前に深い想いは特にないけど、お前みたいな奴は大嫌いだよ」
 血まみれの賢者へとひくりという笑いを見せ、一度、周囲の猟兵たちを振り返る。
「暫く延々うるさくなる、ごめんね」
 そう言い置いてまた正面へと向き直った。意味するところを受け入れた者たちは、あるいは退路を確保し、あるいは仲間を背に庇おうとするだろう。なびきは他から距離を取ろうとしない。
 それを知っていながら松本・るり遥(不正解問答・f00727)が門の内へと姿を見せる。
「俺、ただのなびきのご近所さんで、正直俺が作ったシチュー食べに来てくれた顔しか知らないけど」
 そう言いながらも、足は危険な距離まで踏み込んだ。場を支配する空気がそうさせるのか、表を向いているものは彼が言うところの『優しくない』人格。
 そしてもう一人、最後に門をくぐったのは三岐・未夜(かさぶた・f00134)。しかし、先の二人とは少し様子が違う。一歩後ろにいた。
 正面で荒い息を吐いているオブリビオンを見つめ、なびきは、すっと息を吸い込んだ。
(「だってこいつには、拘束なんか生温いじゃないか」)
 直後、周囲の霧が踊るかのように揺れ、小刻みに震え始める。血を吐くかのようななびきの咆哮が、そうさせていた。そこに重なるものはるり遥の絶叫。
「ーーーああ、死ねよ、死ねよ、死ねよ死ねよ死んでしまえ!!!!! これがお前が受けるべき反抗!!! 無力な誰もが食いしばった憎悪!!! 人間を遊戯の駒にしか見ない貴様に、死した者達がか弱く手を取り合うその誇りの価値を見誤った事、死して尚後悔し続けろ!!!!!」
 韻をもって叩きつけられるそれは、罵声の形を取りながら、受け入れる気のあるものであれば波及する苦痛を癒そうというものだった。
(「怒号は苦手。こわいのも、かなしいのも、痛いのも、好きじゃない」)
 妖狐の特徴である耳をぺたんと伏せ、驚きのあまりに膨らんだ尻尾を丸める未夜だったが、それでも横に首を振った。
(「やること、やらなきゃ。死者は死者だし、もう生き返らないし、僕はそのひとたちのことなんか知らないし。団地のみんなの方が、大事だし」)
 地を天を揺るがす勢いの叫び合いの中で自身へと一心に言い聞かせ、ふと呟く。
「……でも、胸糞は悪いよ」
 ぽつりと落ちたその声に応じたか、虚空へと浮かび上がるものは火の灼熱を帯びた幾本もの破魔矢。
「だから、愚王は処刑される。物語みたいに。ああ違うよね、王ですらないんだ、お前。ただのおままごと。心から従う臣下も居なきゃ、望まれる王位もない。これ以上死者は使わせらんないよ」
 畳みかける言葉と共にどっと撃ち込まれる矢の連打。燃え盛る炎。
「それに。ねえ、蛇も花も亡者も、尽く燃やしちゃえば一緒でしょ」
 爆ぜる音も苦痛の声も全ては咆哮と絶叫とに塗りつぶされたが、鼻腔を炙るきな臭さが充満し、冷たい霧は目に沁みる白煙へと変わる。
 王の嘴がカツリと鳴った。何かを言おうとしたのだろうが、その時にはもうなびきの棘鞭、花霞が全ての羽毛を引き毟り、赤黒くべったりと濡れながら不服従の名を持つものの輪郭を奪おうとしていた。振るうなびきの全身は灰褐色の羽毛を張り付かせ、吹き抜ける風へと一斉にそよがせている。
「これは彼女の叫びだ、彼の痛みだ。皆お前を殺したかったんだ。皆がそうしたかったなら、おれが引き受けるべきだよ」
「オ……、ォ、オオオ」
 地の底から染み出す血の泉のように低くこもった唸り声が湧き上がり、朽ち果てたマントに身を包み錆びた王冠を頭に戴いた亡者が立ち上がる。きな臭さを圧するほどの生臭い風が吹き抜け、なびきの髪を舞い上がらせた。
「なあ、道をまちがった王様は処刑されるべきだろう? 」
 その問いに返る答えはない。
 振り抜かれた棘の鞭に首の骨を折られた亡者の王は、肩に耳を付けて頭を傾け、二つの虚で猟兵を凝視したまま、とろとろと溶け始めた。
 とろとろと、とろとろと溶けて黒い染みとなり、荒れ果てて命を育まぬ地へと染みて、世界の闇をさらに深めた。

 気がつけば、耳を圧するほどの静けさが場を包み込んでいる。鼓膜はもう震えないというのに、無音という泥を詰め込まれて、静寂はひどく重くどこまでも底がない。
 未夜が掌を差し出す。そこからるり遥がつまみ上げたものは、細長いのど飴のスティック。毟って開いて各々に一つずつ爪で弾く。
 溶けるのを待たずにガリリと噛めば、頭蓋の中で聞くその音ばかりはきっと鮮明だろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 日常 『キャンドルナイトで慰労会』

POW   :    会場の設営などの力仕事、周辺の不安要素の排除、大規模なパフォーマンスなど。

SPD   :    食事の用意、会場の飾りつけ、人々が集まれるよう呼びかけるなど、場を和ませる工夫を。

WIZ   :    悩み相談を受けたり、安心できる言葉をかけたり、唄や踊りの披露をしたり。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 一つのパイならばまだましだ。
 一切れのパイを奪い合って人々は生きている。
 大人しく眠っておいでと大人は言う。
 今夜誰かが召されたら、そのパイは必ず盗ってきてやるからね。
 そうして眠った子供を、あるいは年寄りを、鍵のない納屋に運んで家に閉じこもる。
 ああ、明日はパイをもう一口だけ多く食べられる。

 そういう町だった。この世界では実にありふれた町だった。
 死者は命ある者を恨んで呪い、生き残った者は罪悪感に正気を蝕まれて荒む。
 そういう町に、つかの間の平穏がもたらされた。
 人々は身も魂も痩せ細らせて座り込んでいる。
 猟兵が両手で持てるほどのものならば、きっと持ち込めていることだろう。
 蝋燭ならば木箱に一杯。探せばこの土地なりのものも見つかるかもしれない。
 その手、その力をもってして、闇に光を。心に灯火を。
 いつか日差しを得るための最初の火種を、今。
天星・暁音
よかった。ここまでくれば一段落だね。
今俺がここでしてあげられることは後はこのくらいだけど…
死者たちに、町の人たちに…ほんの少しでも安らぎがありますように…
この舞に全ての力を込めて…祈りを…捧げましょう。

本会場からは少し離れた場所で巫女装束で神楽鈴を鳴らし【歌唱・祈り】で歌い舞い。
死者への冥福と安息を祈ります。
見に来る人を拒んだりはしないので好きに見に来て大丈夫です。
同時に怪我をしている人が居るならこっそりと治します。



●波紋
「よかった。ここまでくれば一段落だね」
 天星・暁音(貫く想い・f02508)は表情を和らげて息をつき、町の一角へと向かった。大きな泉へと張り出したそこは、石造りの手すりに囲まれた見晴らし台のようである。
(「今俺がここでしてあげられることは、後はこのくらいだけど……」)
 巫女装束に霧をはらんで、暁音は静かに礼をとる。片手を掲げ、天地へと振った。
 シャン。
 涼やかな鈴の音が闇と静けさとを震わせる。
 シャン。
 暁音の手にあるものは稲穂を象った神楽鈴。大きく円を描いて舞い始めると、清らかな音が水面を撫でる。
(「死者たちに、町の人たちに……ほんの少しでも安らぎがありますように……」)
 胸中の祈りを歌に乗せ、暁音は装束の裾をひるがえす。
 乳白色の霧の中にぼうっと影が浮かび上がった。最初は一つ二つ、やがてそれが舞の周囲を取り囲む形に増え、次第に近づいて人の形を現す。拒まれることはないと知って町の人々が集まってきたのだったが、子供はことごとく痩せ細り、大人はおしなべて顔色が悪かった。奪い合いや死霊への抵抗で痣や傷を作っている者も多い。
 暁音は歌うことを、鈴を振ることをやめず、舞のさなかにそっと治癒の力を織り交ぜた。自身の疲れを悟らせることなく、ひっそりと。
 シャン。
 鈴が鳴る。
 そしてそこに小さく手を鳴らす音が重なる。
 気づけば集まった人々が皆、神楽鈴の音に重ねて手で拍子を打っていた。それは、痛みを洗い落とされた者たちの内から生まれる、確かな感謝と生命の響きだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

八田・阿須摩
WIZ

怖い夜は終わりを告げた
これからは君達自身が、前を恐れず歩きださなければいけない日々が始まる
居なくなってしまった者達は還って来ないけど……立ち止まる事は許されないよ
だって君達は、生きているからね

町を歩き回って蝋燭の火を灯しながら、横笛で夜明けを告げる音を奏でる

温かい灯火は身も心も暖めてくれるだろう?
さて、家から出る準備が出来たら……(慰労会が開始されているだろう場所をなんとなく指差し)
あちらで腹も満たしてくれるものがあるから行ってみるといいよ

知っている曲で横笛で良いなら、リクエストも受け付けようか
音に合わせて身体を動かしてごらん
ほら、身体がぽかぽかしてきただろう?
その気持を忘れずに、ね



●夜明けを運ぶ鳥
 蝋燭の芯に火を点すと、乳白色の霧に深い金色の環が広がる。それは八田・阿須摩(放浪八咫烏・f02534)の髪の色に同化して、朝、地平線に覗く最初の光の色に良く似ていた。
「怖い夜は終わりを告げた。これからは君達自身が、前を恐れず歩きださなければいけない日々が始まる」
 横笛を構える阿須摩の傍らには膝を抱えてうずくまる女がいて、背けた顔を上げようともしない。亡くした子供のものだろう。小さすぎるブランコに腰を下ろして、尖った膝に俯いている。
「居なくなってしまった者達は還って来ないけど……立ち止まる事は許されないよ」
 こんな家は何件目だろう。阿須摩は辛抱強く声を投げかけ、最初の一音を奏でる。
 女の痩せた肩がピクリと揺れた。
 不思議だった。長身の猟兵の口調は角が丸いのに、どこかに叱咤と激励の響きがあって、変な甘ったるさに堕すことがない。笛の音は背を押すかのように暖かく耳へと届く。
「許されないのかい?」
 泣き腫らした目を上げると、女は荒んだかすれ声で問う。
「だって君達は、生きているからね」
 阿須摩の応えを聞いて、泣きそうな顔でぐしゃりと笑った。彼の奏でる旋律に熱心に耳を傾け、腕で乱暴に目許を擦る。
「温かい灯火は身も心も暖めてくれるだろう? さて、ここから出る準備が出来たら……」
 痩せた女から眼差しを外すことなく、阿須摩は食事の準備が進められている会場を指し示す。
「あちらで腹も満たしてくれるものがあるから行ってみるといいよ」
 リクエストも受け付けると彼が付け加えた時、女はふっと口許を緩めた。鎖の錆びたブランコから立ち上がり、一歩行って振り返る。
「みんなで踊れる曲を頼むよ。だから……」
 あんたも来てよと微笑む顔は、今目覚めたかのように飾りがない。揺れる灯りが奏者の訪れを待っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レイラ・エインズワース
鳴宮・匡サン(f01612)

終わったネ
デモ、まだまだ街は暗いママ
この世界はきっとこんな街ばっかりなんだろうケド
少しずつデモ、希望の灯が広がるとイイナ

闇に灯を今度はきっと迷わぬヨウニ
私にできるのは死者を送るコトだけダカラ
街をろうそくで飾って、火を灯していくヨ
こんなコトしても、死者は喜ばないカモしれない
デモ、今を生きるヒトが前を向くきっかけになったらいいなって思うんダ
命の危険におびえるコトがなくなって、少しずつ余裕ができタラ
ヒトに与えるコトも、できるようになるハズだから

ソウソウ、どうか精一杯生きてヨネ
いなくなったヒトのためにも
かけられたといかけは取り消され
いいかけたらいいなヨ!?
気になっちゃうヨ!


鳴宮・匡
レイラ(f00284)と

……ああ、終わったな

レイラを手伝って、火を灯していこう
俺には殺すことしかできないし
祈りで何かが変わるとも思えないけど
それを糧に生きている人間がいることだって、知っている

しょぼくれてる子供がいたら少し声を掛けるよ
生きたい、なんて誰もが願うことだ
罪悪感を感じる必要なんてない
それでももし、それを申し訳なく思うなら
死んだ奴に恥じないように前を見て
自分にできるあらゆることをやればいい
……簡単だろ?

灯す火は、いつか希望を迎え入れるための火、か
「なあ、レイラ」
葬送の灯、を称する彼女は
どんな想いでこの光景を見ているんだろう
「……なんでもない」
問い掛けて、やめる
多分、困らせてしまいそうだ


松本・るり遥
【団地】
【WIZ】
話すの苦手だし。……のうのうと現代で暮らしてる俺が言えることなんか何もない、
けど、多分、音楽が人に響くのはどこだってそうだから。
スピーカーを持ち込んで、音楽を流す。
つっても結局は俺の好きな曲に限られるけど、バンドとかに慣れてなくても聴いてて疲れない……落ち着いた……アコースティックとか、ピアノとか、前向きなバラードとか。ーー星が降るような。
スピーカーの隣で座り込みながら、炎に癒えるのは、俺も。

あー。うん、俺も、のど飴助かった。ありがと、未夜。(後ろに隠れられている。)(なびきを見て、ちょっと苦笑)ほら未夜、怖くねえって。平気だって。ーーもうあんな怒号、吠えねえって。


揺歌語・なびき
【団地】
会場の準備を手伝ってから悩み相談を受けるね

【コミュ力、聞き耳】でそれとなく住民に話しかけ
話し辛そうにしていれば暖かい飲み物と一緒に笑顔で寄り添い

大丈夫、話したいことだけでいいよ
おれはあなたの話をなんでも聞きたいから

音楽機器を持ち込むるり遥くんに手を振り
この曲いいですよね
これ、あの子が流してるんですよ

未夜くんの優しさも感じつつそっと耳打ち
さっき、飴、ありがとね
甘くて幸せな味がした(へにゃりと笑い

うれしいこと、悲しいこと、泣きたいこと
住民達が言いたいこと、吐き出したいこと
全て受け入れて、キャンドルの光と一緒に心を溶かせるよう

ひとつずつ灯していけば
少しは彼らの痛みがやわらぐよ、きっと


三岐・未夜
【団地】
……僕、あんまり知らないひとと話すの、得意じゃない……。
でも、なんかはしたい、し……設営準備手伝う、よ。
えっと、儚火、重い物運ぶの手伝って。

……もふもふだし、大人しくて賢い子だから。興味持ってる小さい子とかいたら、触ったり、乗ったりさせてあげてもいい。子供が少しでも楽しそうに笑ってたら、その子の親兄弟もちょっと安心するでしょ。

なびきにのど飴へのお礼を言われて、なんかちょっと照れ臭くて尻尾がぱたぱたぱたと忙しい。るり遥を引っ張って、背中に隠れた。だって恥ずかしい。やめて追い出さないで待って待ってまだ背中にいるやだ。

(……ふたりの怒声、ちょっとこわかったから。ふたりが笑ってて、よかった)



●火の道
「終わったネ」
「……ああ、終わったな」
 レイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)の前に広がるものは、散らばる瓦礫と霧をはらむ闇。荒涼とした有りさまだが、依然としてという言葉こそが似つかわしい。
「この世界はきっとこんな街ばっかりなんだろうケド」
 そう言いながらレイラが掲げた蝋燭に匡が火を灯す。柔らかく暖かな光が町と二人の姿とを照らし出し、奥深い陰影を投げかける。この瞬間が、闇に統治された世界の非日常だった。
「こんなコトしても、死者は喜ばないカモしれない」
 レイラの唇が小さく動いた。
「デモ、今を生きるヒトが前を向くきっかけになったらいいなって思うんダ。命の危険におびえるコトがなくなって少しずつ余裕ができタラ、ヒトに与えるコトも、できるようになるハズだから」
 訥々とした響きは揺れる小さな灯りに似て、その身に押し寄せる闇へと抗い、確かに世界を照らしている。新しい蝋燭に火を移し、風よけに翳していた手を引いて、匡は顔を上げる。
「俺には殺すことしかできないし、祈りで何かが変わるとも思えないけど、それを糧に生きている人間がいることだって、知っている」
 その時、カチャリという小さな音が鳴った。二人が灯してきた光の列の奥、薄暗がりの瓦礫の端に少年が腰を降ろしている。近隣の人々は食糧を貰いに行っているというのに、頑として動こうとしない子供だった。
「生きたい、なんて誰もが願うことだ。罪悪感を感じる必要なんてない」
 固く口を結んだ少年へと匡が声を投げかける。
「それでももし、それを申し訳なく思うなら、死んだ奴に恥じないように前を見て自分にできるあらゆることをやればいい」
 また、同じ音が聞こえた。狙撃手の目が見逃すはずもない。少年が腰の後ろで握りしめているものはピッキングツール。小さな金属音はそれらが擦れ合う音だ。
「……簡単だろ?」
 匡のその言葉を聞いて、少年はついに口を開いた。噛み締めていた下唇が切れて血を滲ませている。浅い呼吸を繰り返し、匡を見上げてこう言った。
「いつか、あんたみたいになってみせる。……きっと、簡単じゃないけど」
 食べ物の方へと駆けて行く後ろ姿には、もう躊躇いがない。二人の灯した火が道標だった。
「ソウソウ、どうか精一杯生きてヨネ。いなくなったヒトのためにも」
 レイラが口許を緩める。
 彼らの来た道で揺れる炎、それがいつか希望を受け入れるための迎え火だというのなら。道の果てを見て匡が呼びかける。
「なあ、レイラ」
 葬送の灯を称するヤドリガミの少女は、続きを待って首を傾ける。赤い瞳の中で揺れる金色の灯り。彼女はどのような想いを胸に、それを見るのだろう。
「……なんでもない」
 緩やかな風に蝋燭の炎が一斉に揺れた。レイラの瞳の中でもまた、ゆらりと。
「いいかけたらいいなヨ!? 気になっちゃうヨ!」
 ゆらりゆらりと炎が揺れる。
 不思議なことに、もう風は凪いでいるのだった。

●ほのか
 キャンドルナイトの会場に選ばれたのは、町の一角に古い佇まいを残す公園だった。花壇に花は無く木々に緑の葉はないが、今は静けさと安寧とがある。猟兵たちの促しを受けた人々は、最初は警戒して渋ったものの、やがてそれら久々の贈り物を手にするために集まってきた。
「これ、ここでいいのかな?」
「もう少し奥」
「えっと、儚火、重い物運ぶの手伝って」
 三岐・未夜(かさぶた・f00134)と彼の連れる大きな黒狐・儚火とが、松本・るり遥(不正解問答・f00727)を手伝って音響装置を運び込む。全てが所定の位置に収まると、心の底を静かに満たすかのような自然で落ち着いた調べが流れ始めた。
(「話すの苦手だし。……のうのうと現代で暮らしてる俺が言えることなんか何もない、けど」)
 この町では耳に新しい和音進行のはずだが、気持ちを和らげるようにと選んだるり遥の気持ちは、生きるものの心に言葉を要することなく流れ込む。
「この曲いいですよね。これ、あの子が流してるんですよ」
 スピーカーの脇のるり遥へと手を振り、揺歌語・なびき(春怨・f02050)が向き合うのは一人の男だった。娘を亡くし聞き分けのない息子を殴った男は、その拳を逆の手で擦りながらぽつりと言った。
「……君たちの好きな曲か?」
 電子音ではない。弦とハンマーとで奏でられた音は、一つずつ落ちてくる星の速度で人の胸に降り積もる。
 それっきり黙った男の前へ、なびきは湯気の上がるカップを置いた。
「大丈夫、話したいことだけでいいよ。おれはあなたの話をなんでも聞きたいから」
 許されたい相手が誰であるのかを彼は聞かない。ただ真っ直ぐにここに来た以上、恐らくは何か感じるものがあるのだろう。そんな様子へと根気良く付き合い、折に触れては仲間の猟兵に向き直る。
「さっき、飴、ありがとね」
 なびきの礼を受けて、未夜が眼差しを上げる。
「甘くて幸せな味がした」
 へにゃりと笑むなびきの顔を見て、尻尾をぱたぱたぱたと動かす。ぱたぱたぱた。忙しく動かしたものの照れくささには勝てず、るり遥の肘を引っ張り背へと隠れた。
「あー。うん、俺も、のど飴助かった。ありがと、未夜」
 スピーカーにもたれて揺れる炎を見ていたるり遥は、なびきへと視線を投げて少しばかり苦笑する。
「ほら未夜、怖くねえって」
「だって恥ずかしい」
 右に左に体をずらしてみるが、未夜もまた同じ方向に回って背から出ようとはしない。
「平気だって。ーーもうあんな怒号、吠えねえって」
「やめて追い出さないで、待って待ってまだ背中にいるやだ」
 傍らで小さな子供たちにしがみ付かれている儚火が、先だけ少し白い尾をゆったり大きく揺らす。豊かな毛並みが心地好いものだから、幼い子たちの憩いの場となっているようだ。未夜はるり遥の背から離れようとしない。
(「……ふたりの怒声、ちょっとこわかったから。ふたりが笑ってて、よかった」)
 その思いもまた、るり遥の背にそっと隠れる。暖かな炎の色と滑らかな旋律が、誰もが抱える闇を静かに撫でていた。命あるもの全てが抱えるものを。
 小さくなった蝋燭の火を新たなものに移す時、古い傷の刻まれたなびきの横顔が仄かに浮かび上がる。黙って見ていた男が、拳を緩めて口を開いた。
「それ、痛かっただろう。なあ、この曲を覚えたら、いつか、君たちのように笑ってくれるだろうか」
 なびきの差し出す灯火が、男の瞳に薄く巡る涙を温めて霧へと返す。
 応えは、穏やかな笑顔だった。


 触れればいたむ。
 無ければよどむ。
 火をひとつずつ内に抱き、終わるまでをただひたすらに灯す。
 それを、いきものという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年01月17日
宿敵 『不服従の賢王』 を撃破!


挿絵イラスト