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泥湯とメイドと魔法使い

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●お入浴り下さいませ、ご主人様
 小綺麗な雰囲気の小さな洋室。
 そこのソファの上で、紫髪の少女がぐったりと寝そべっている。
 周囲に幼いメイドさん……正確にはその姿を模した人形をたくさん侍らせ、膝枕までさせている。
「お風呂の時間です。ご主人様」
「やだ……」
 メイドさんの一人に、億劫そうに答える少女。
「例の温泉、取って来て下さいませ。ご主人様」
「今疲れてるから……フロア制圧で魔力も残ってないし」
「ダメです」
 ぐ、と声を詰まらせる少女。
「ご主人様? 私も温泉行きたいです」
「私も」
 周囲のメイドさんが温泉という単語に沸き立つ。
 おかしい。私が異界から仕入れたオタク知識によれば、メイドさんハーレムはそこまで御し難い使役対象でもなかった筈……。
「ほ、ほら……あそこ、地上近いよ? 下手に学園を刺激しても……」
「文句を仰いますと、砂や泥で汚したお洋服、もう洗って差し上げませんよ」
 氷のような一言。
「うう……」
 泣く泣く伸ばされた手が、小麦色の魔法陣を宙に描いた。

●アルダワ浅層・温泉エリア
「すごい立地だよね、ここ」
「災魔の事? 大丈夫だよ。みんなで定期的に……」
 どぼどぼどぼどぼ。
「「ぎゃーーー!!!!」」

●温泉キーパー
「やっぱり綺麗好きなんでしょうか?」
 グリモアベースの片隅で、集まった猟兵たちを前にそんなことを呟くクララ・リンドヴァル(白魔女・f17817)。
「アルダワ魔法学園のとある迷宮の奥で、災魔『リコ・ワンダーソイル』が、フロアボスの座に就いたことを確認しました。
 近くに居たメイド人形部隊を使役する事に成功。瞬く間に迷宮を制圧したものの、その後の統率に失敗したみたいですね」

 その迷宮には、熱水が湧き出すエリアがある。
「地上が近く、周囲の災魔も弱いことから、休憩施設として一部の生徒さんたちに使われていました」
 そこへ想定を超える数の災魔が押し寄せてきた……というか、流し込まれた。
 定期的に災魔を狩ることでエリア内への侵入を抑止出来ていただけに、不意を打たれた形だ。
 生徒たちは無事帰還。だが、地上近くのエリアが災魔に制圧されているのは事実だ。
「皆さんには温泉エリアの災魔駆除……そして可能なら、後続のメイド人形部隊の討伐も、合わせてお願いしたいのです」

 温泉エリアを埋め尽くすのは、泥の災魔。力は弱く、動きも遅い。
 猟兵ならば難なく駆除出来るだろう。
「ただし数はとても多いです。追い詰められないよう気を付けて下さいね」
 擦り付かれたら泥だらけになるかも。そんなことを呟く。
 災魔は温泉から絶えず湧いてくる。殲滅するか、無視して駆け抜けるか、あるいは――そのあたりは現場の猟兵に一任される。
 フロアの破損は自動的に修復される。清掃も事件解決後に学園生徒がやってくれるので、気にしなくて良いとか。
「あとは……生徒さんが撤退時に扉を閉めました」
 内部に湯気が充満しており、しばらくは視界が悪いのだとか。

 エリア解放後、道なりに進んでいけばメイド人形たちと交戦するだろう。全員が小柄な体格をしており、機敏な戦いぶりを見せる。
 また、温泉エリアに泥の災魔を召喚したリコ・ワンダーソイルは、強力な土魔術の使い手だ。
「時間をかけて魔術の研鑽をされると厄介な相手でした。早期に察知出来たのは僥倖と言えるでしょう」

 どうか速やかな討伐を、よろしくお願い致します。そう言ってクララが魔導書をぱらりと捲れば、グリモアが光り輝き、猟兵達の視界を優しく包んだ。


白妙
 白妙と申します。宜しくお願い致します。
 今回の舞台はアルダワ魔法学園。迷宮を突破し、フロアボスを倒すのが目的です。

●第1章【冒険】
 ダンジョン内の浴場エリアに潜む泥の災魔を退治します。
 災魔はスライム。小さく弱いですが、とにかくたくさんいます。

 浴場エリアは25mプールがそのまま温泉になったような空間。
 泥湯と化した浅い温泉を幅1メートルのプールサイドが囲んでいます。
 高さはウォーマシンがギリギリ歩いて通れる位です。
 湯気で視界が悪いです。

●第2章【集団戦】
 フロアボスに従う『メイド人形』との対決です。

●第3章【ボス戦】
 フロアボス『リコ・ワンダーソイル』と決着を付けます。

 プレイング募集開始はお手数ですが章ごとにマスターページをご参照くださいませ。
 拙いですが、もしプレイングをかけて頂けるのであれば幸いです。
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第1章 冒険 『温泉を守れ!』

POW   :    力押しでガンガン倒していく

SPD   :    罠を作り一気に駆除

WIZ   :    策を講じてうまく殲滅

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●足下ご注意
 迷宮内に降り立った猟兵たちの目の前には、固く閉められた木製の両扉。
 ひとりが扉を押し開けば、室内を充満していた湯気が肌を撫でる。

 中には、桃色の花崗岩を思わせる素材に囲まれた、明るく広い空間があった。
 27m先には目指す出口がある筈だが……湯気でよく見えない。
 あちこちに風呂桶と椅子が散乱し、湯船のお湯が泥色に濁り切っている。

 ちゃぽ。

 水面が動き、丸い何かがせりあがった。
 すーっ、と湯船の縁まで移動して、べちゃ、と床に転がる。
 膝くらいの高さの、ほこほこと湯気を上げる水気を含んだ泥塊。
 マッドスライムだ。
 半球状の身体を透かして、直径3センチほどの橙色の丸いコアが、体内で鈍い輝きを見せている。
 あれが弱点らしい。

 ちゃぽ、ちゃぽ。
 二つ、三つ……たくさんのマッドスライムたちが水面に浮かび上がる。

 部屋に踏み込めば、短時間で道が埋め尽されてしまう仕掛けだ。
 扉を閉めれば、スライムはお湯の中に戻っていく。
 この状態のまま、どう突破するかを考えるのも良いだろう。
十文字・武
<アドリブ連携詠唱省略OK>

温泉を占拠するスライム?……よく茹っちまわねえな、こいつら。
水属性的に相性でも良いのかね。
……と言うか、だ。
こいつらを利用して、新たな名所スライム温泉とか誰か考えそうだな。
ほっこり茹ったスライム温泉に泥パックで美肌効果とか……。

まぁ、冗談言ってる場合じゃねぇな。
さて、水場に巣食った足の遅い雑魚ども相手なら……。
こんなんどうだ?
部屋に踏み込むと同時、湯船際まで【ダッシュ】スライムどもが出て来る前に、左の義手を湯船に突き込み、指定UC発動。
雷を発生させて感電させちまえ。あとは【アラクネブーツ】天井歩いて泥を避けてこう

……あ、肩こりに電気マッサージとかも良いかもな




 丸い体を波打たせながらどろんこスライムが浴場を往く。
 やっとこさ温泉の縁に辿り着き、その体を傾けたかと思えば……ぽちゃん、と温泉に沈んで行く。
 そんな災魔たちの様子を、十文字・武(カラバ侯爵領第一騎士【悪喰魔狼】・f23333)が、扉の隙間からバッチリ見ていた。
「よく茹っちまわねえな、こいつら」
 長時間の入浴を経た今もなお、彼らは温泉に居座っている。形崩れしている様子すらなかった。
「水属性的に相性が良いのかね」
 今はもう一匹残らず温泉の中に身を潜めている。熱い湯の中は、彼らにとって暮らしやすい環境なのかも知れない。
「……と言うか、だ。こいつらを利用して、新たな名所スライム温泉とか誰か考えそうだな」
 なるほど。言われてみれば新たな名所かも知れませんね。
「ほっこり茹ったスライム温泉に泥パックで美肌効果とか……」
 そのためには災魔にもみくちゃにされなければならないが、きめ細かな泥で出来た彼らの体には、もしかしたら美容効果があるのかも知れない。
「……まぁ、冗談言ってる場合じゃねぇな」
 意を決し、勢い良く扉を開ける。
 その勢いを殺さずに床を蹴り抜き、猛スピードで湯船に迫る武。
 災魔たちの反応は、緩慢だった。
 彼らが再び水面に姿を現した時、すでに武は湯船際に辿り着いていた。
 武はすぐさま自身の左腕――鋼鉄製の義手をざばりと温泉に突き入れる。
「……喰らいやがれっ!」
 電光が奔った。
 本来、ごく限られた範囲内にしか届かないはずの武の雷撃が、水を通して広がったのだ。
 雷数発分の衝撃に水中の災魔達は容赦なく打ち据えられ、一瞬の硬直の後、ぶくぶくと沈んでいく。
 同時に何かがショートしたかのような灰色の煙が温泉全体から起こり、そしてすぐに消えていった。
 どうやら殆どの災魔を感電させることに成功したらしい。
「……ま、こんなとこだろ」
 無骨な義手を水面から引き抜く。
「さて、あとは……」
 周囲を見回し、武は壁の方へと歩いて行った。

 しばしの静けさを取り戻した温泉。水面から立ち上る湯気が行きつく先は、天井。
 そこに武が立っていた。
 彼のブーツの靴底はまるで蜘蛛のように天井に吸いついている。
 ポタポタと滴り落ちる水滴を避けていくその足取りは軽い。
 八割ほど進んだところで。
 ばしゃり。
 頭上……下方向から、水音。
「お、ようやくお目覚めか」
 災魔たちが再起動したらしい。
 あるものは水面を泳ぎ、またあるものは湯船から上がり、様々な方向から武を追い詰めようとする――が、天井にいる武を追う手段までは持ち合わせていない。
「~♪」
 なおも悠々と歩む武に向けて体を伸び上がらせるような動作をしている個体もいるが、当然ながら天井には届かない。
 やがて武の逆さまの視界に、入口と同じ形の扉がその姿を見せた。
 出口だ。
 天井を軽く蹴り、半回転。扉の前に着地する。
「……あ、肩こりに電気マッサージとかも良いかもな」
 懸命に追って来る災魔たちを尻目にそんなことを呟く。
 余裕綽々といった様子で扉を押し開き、武はその向こう側へと姿を消すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません

「折角の温泉なのに、影朧が……あれ、こっちの世界では、災魔っていうんだっけ?

温泉と聞いて、特に考えなしに参加
扉を開けた瞬間、蒸気で視界が覆われて大パニック!
慌てて扉を閉めたことで、なんとかスライム達は湯の中に戻せましたが

「うぅ……なんか、気持ち悪い敵だなぁ。とりあえず、お湯の中にいる内に、遠くから狙い撃てば
運悪く足を滑らせ湯船へ落下
結果としてスライムに襲われる羽目に!?

全身、泥まみれのネバネバにされて涙目でUC発動!
女子スク水、バニー服など恥ずかしい恰好の自分が大量召喚され、スライムのコアを潰して行きます
「うわぁぁん!み、見ないでよぉ!!




「折角の温泉なのに、影朧が……あれ、こっちの世界では、災魔っていうんだっけ?」
 そう言いつつ、何気なく、といった様子で色白の手を扉にかけるのは、帝都で修行中のパーラーメイドさん、日紫樹・蒼(呪われた受難体質・f22709)。
 男の娘である。
 彼は――その気弱な性格で殊勝ではあるのだが――温泉という言葉に惹きつけられて参戦したのだ
 転送された時も、特に考えらしい考えは持っていなかった。
 つまり当然ながら、心の準備もまた、出来ていなかった。
 蒼がエリア内に侵入した途端、彼の目に飛び込んで来たのは、視界を覆い尽くす湯気と、温泉から続々と湧き出し始めるスライムの群れ。
「うわぁぁぁぁぁんっ! 何これぇぇぇっ!?」
 案の定大パニックに陥る蒼。
 慌てて入口に撤退して扉を閉めれば、スライムたちは湯船へと退いていく。
「うぅ……なんか、気持ち悪い敵だなぁ……」
 必死で動悸を抑え込み、蒼は目の前のエリアを突破すべく考えを巡らせ始める。
「よ、よし……」
 とりあえず、スライムがお湯の中にいるうちに、遠距離から狙い撃つことに決めた。
 僅かに扉を開け、その隙間から三味線小銃の銃口を突き出す。だが、湯気で少々狙いがつけにくい。
 仕方なくエリア内に両足を踏み入れた瞬間……盛大に滑った。
 バランスを崩し、転倒する蒼。
「うひゃぁぁぁぁぁぁぁぁっ」
 そのまま、つるーっと床を滑っていく。
 その先には湯船。
 どぼーん。
 派手な水飛沫を上げて、蒼は泥湯に落下した。
 ばしゃばしゃと暴れる蒼に向けて、温泉内に潜んでいたスライムたちが一斉に寄って来る。
「うわぁぁぁん! もう嫌だぁぁぁっ!!」
 結局、襲われる羽目になってしまった。受難体質ここに極まれりである。
 全身を泥まみれにされ、スライムに纏わりつかれる。
 泥の感触が生み出す精神的嫌悪感と、抑え難い羞恥心。
 それらの感情が蒼の心を満たし切った時、不思議な事が起こった。
 パリンッ! パリンッ!
 浴場のあちこちでコアが破壊される音が響き始める。
 蒼が顔を上げると、湯船を囲んでいたのは、たくさんのちびキャラ体型の蒼。
 彼の羞恥心に触発される形で大量召喚されたのだ。その全員が女子スクール水着やバニー服、体操服などを着ている。
「うわぁぁん! み、見ないでよぉ!!」
 所謂コスプレと言う奴だろうか。ちびキャラ体型とはいえ、それはどこか恥ずかしさを喚起する光景には違いなかった。
 絶叫する蒼を他所に、ちび蒼たちが反撃に出る。乾いた音と共に災魔たちのコアを片っ端から潰していく。
 災魔たちの注意がちび蒼たちに向き、ようやく湯船から引っ張り出される蒼。
 泥だらけで酷い有様だ。なおも続く嫌悪感。
 それでも進むべき方向だけは見定めていたのか、蒼は迷わず出口の方へ駆け出した。災魔たちを避けるように通路の端に華奢な肩を擦りつけながら。
「うわぁぁぁぁぁぁん! なんでこんな目に!!」
 なおも追いすがるスライムたちのコアが潰される音を後方に残し、泣きながら湯気の中を突き進んでいくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御形・菘
う~む、温泉に泥を流し込むなど、動画にしたら即炎上確定であろうな
なんたる悪行! 素晴らしいぞ!

まずはウォーミングアップも兼ねて、妾無双といこうかのう
視界が悪いし、映りが残念気味となりそうなのは仕方あるまい
そしてこんなビジュアルの相手と延々バトるとなると、構成が単調になりかねん!
そこは妾のパフォーマンス力でカバーよ!

はっはっは、皆が妾に臨むのは爽快な力押しよ
弱点を狙うとか、そんな戦略は一切不要!
さあ、左腕と尻尾の薙ぎ払いでガンガンブッ潰していこうかのう!
妾は止まらん! どれだけ数で押そうがどうにもならん世界を、見せつけてやろう!

しかし、泥だらけになるのは構わんのが…後で合間にメイクは直そうかのう




「う~む」
 制圧された温泉エリアを扉の隙間から眺め、唸り声を上げるのは御形・菘(邪神様のお通りだ・f12350)。
「温泉に泥を流し込むなど、動画にしたら即炎上確定であろうな」
 単なる温泉施設として見るならば、このエリアは他の世界のそれと比較しても整った部類と言える。広大な長方形の空間。艶のあるピンクの建材。煌々と灯る照明……思わずカメラを回したくなる光景だ。
 そんな中にあって肝心の湯だけが……川底の泥を思わせる色をしていた。
 加えて湯の中をちゃぷちゃぷと蠢く謎生物。クレームどころの話ではない。
 湯気越しに伝わって来る惨状を前にして、既に視聴者の間からは阿鼻叫喚の渦が巻き起こっていた。
「なんたる悪行! 素晴らしいぞ!」
 迷惑行為の実行犯であるリコ・ワンダーソイルの悪辣さに対し、どこか感銘にも似た反応を示す菘。だが……所詮は己に従わぬ者。邪神として直々に叩きのめさなければならない。そんな決意を菘は固めていた。
 菘は浴場の扉を押し開け、爬虫類にも似た体をエリア内に滑り込ませる。
「ふーむ」
 追跡するドローンのカメラを意識した大きな動きで辺りを見回せば。
「まずはウォーミングアップも兼ねて、妾無双といこうかのう」
 二つある通路のうち何となくカメラ映えしそうな方を選び、そちらへ向かいつつも方針を語る菘。
 とはいえ問題は幾つかある。まずは辺り一面に立ち込める湯気。
(「視界が悪いし、映りが残念気味となりそうなのは仕方あるまい」)
 そして、湯船際から這い上がって来る、小さな泥色スライムたち。
(「こんなビジュアルの相手と延々バトるとなると、構成が単調になりかねん!」)
「……」
 菘の懸念を他所に黙々と這い寄って来るスライムたち。リアクションは期待出来ない相手だろう。たぶん。
 これでは見る者に退屈さを催させてしまう。
(「そこは妾のパフォーマンス力でカバーよ!」)
 菘は己の左腕を大きく横に振りかぶる。
 続いて、かち上げ気味の薙ぎ払いを繰り出す。
 4体ものスライムが、同時に斬り飛ばされた。
 彼らは高く放物線を描き、音を立てて温泉に着水した。
 続いて迫って来るスライムの一群を、今度は巨大な尻尾が、逆方向に打ち据える。
 勢い良く壁に叩き付けられ、べちゃ、と潰されるスライムたち。
「はっはっは、戦略は一切不要! ガンガンブッ潰していこうかのう!」
 効率を度外視した力押し。
 左腕と尻尾で敵を次々に薙ぎ払う様は、爽快の一言だ。
「妾は止まらん! どれだけ数で押そうがどうにもならん世界を、見せつけてやろう!」
 なおもひた押しに押してくる災魔たちを前に、菘は啖呵を切る。
 湯気を切り裂く風と化し、浴場通路を荒れ狂うのだった。

 菘が通路を渡り終え、泥だらけで出口の前に辿り着いた頃、爽快なアクションに魅せられた視聴席はなかなかの盛り上がりを見せていた。
 菘のパフォーマンス力は、悪条件を見事に跳ね返したと言えるだろう。
(「泥だらけになるのは構わんのだが……後で合間にメイクは直そうかのう」)
 ふと顔に跳ねている泥に気付き、それを無事な右腕で拭い取る菘だった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

わー、泥んこがいっぱいだ!
服汚して帰ったらすっごく怒られるよね!
ボクも空飛んで進もうっと♪

背中の翅で羽ばたいて「空中浮遊」、スライム達の届かない天井付近を進んでいくね♪
湯気で視界が悪いから左手を壁につけて壁沿いに反対側を目指すね♪

湯気でべとべとして気持ち悪い―って思ってたら湯気の中からスライムさんがこんにちは☆
天井まで届くように積み重なって登ってきたんだね!すごーい!
でも、そんな不安定に一直前にならんだらボクのビームの餌食だねと【お姫様ビーム】でまとめてどかーんだよ♪

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です




「わー、泥んこがいっぱいだ!」
 温泉エリアに踏み込んだティエル・ティエリエル(おてんば妖精姫・f01244)は、さっそく集まって来た泥の災魔たちの頭上を飛び回っていた。
「服汚して帰ったらすっごく怒られるよね!」
 ティエルはお姫様である、着ている服も特別だ。泥んこにして帰ったが最後。大目玉を食うことは避けられない。
 このエリアだけは何としても無傷で突破したいところだ。
「ボクも空飛んで進もうっと♪」
 彼女が進路に選んだのは左の通路。天井付近へと高く飛べば、すぐ傍を滴り落ちて来た滴がティエルの背中の透明な翅を掠める。
 この翅を使ってまっすぐ出口を目指しても良いのだが、湯気で視界が悪い以上、何かにぶつかる可能性はある。
 念には念を入れ、ティエルは左手を濡れた壁にひたとつけた。これで視界が悪くとも、着実に前に進む事が出来るのだ。
 右手には得物のレイピア。
 下を見れば、ティエルにロックオンした無数の災魔たちが、壁をよじ登ってこようとする光景が見えた。
 壁を支えに3、4体が積み重なったところで、べちょ、と倒れる。その繰り返し。
 天井近くにいるティエルには遠い。
「へへーん、そんなんじゃ捕まらないよーだ☆」
 べー、と残して翅を羽ばたかせ、壁沿いに進み始めるのだった。

 濁った温泉は黙々と激しい湯気を上げ続けている。
 纏わり付く湯気は細かな水滴となり、ティエルの全身に違和感を生む。泥だらけになるよりはずっとマシだが、それでも気になるものは気になる。
「うー、べとべとして気持ち悪いー」
 ついそんな心情を吐露してしまうティエルだったが、探索そのものは順調だ。
 やがて通路が終わりに差し掛かった時、ティエルは一旦進むのを止めた。
 湯気で遠くからはよくわからないが、何かが前方に高くそびえているようだ。
 ティエルが警戒しつつ寄ってみれば……その正体ははっきりした。
 たくさんのスライムが温泉から天井に向けてタワーのように積み重なり、ティエルを通せんぼしようとしていたのだ。
「みんなで積み重なって登ってきたんだね!すごーい!」
 左手を壁から思わず離し、目を輝かせるティエル。
 少しばかり不安定な泥のタワー。
 ぶっちゃけティエルの歩みを止めるには高さも幅も足りていないのだが、一応、彼らにも学習能力は備わっているらしい。
 その周りをティエルは螺旋状に飛び、上を目指す。
 頂上のスライムが体内のコアをぎょろりとティエルに向けたのと、タワーの真上に来たティエルがレイピアを向けたのとが同時。
「うーー、どっかーん☆」
 お姫様の気合一閃。
 謎のビームがスライムタワーを縦に貫通した。
 重ねられた破砕音が甲高くエリアに響く。一直線に並んでいたスライムのほとんどがコアを撃ち抜かれ、骸の海に還された証拠だ。
 ただの泥塊と化したタワー。なおも聳え立っていたが、やがて右側にゆっくりと傾き、派手な音を立てて着水した。
「きゃっ♪」
 すい、と大きく飛んで泥湯の飛沫を回避したティエル。
 今度は壁に手をつくこともなく、一目散に出口の方向へと飛び去るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と共闘
アドリブ・他者連携等OK

温泉に浸ってられるなんざ羨ましいスライムもいたもんだ
全部駆逐と言いたい所だが、湯のように湧いてくるんじゃ強行突破だな

湯気による視界不良は【視力】を頼りにし、敵の存在は
【第六感】で察知してユーベルコード(UC)を発動する
【部位破壊】が可能ならコアと思われる部分をUCで狙う
また、【オーラ防御】と【武器受け】で防ぎながら
スライムを【吹き飛ばし】て室内を押し進む
足元も注意しねぇとな。コケたら一気に餌食になりそうだ

全部片づけてここの温泉が使えるようになったら
一っ風呂浴びてぇもんだな


織部・樒
【ザフェルさん(f10233)と行動】
アドリブ・連携OK

随分と広い温泉ですね
私の故郷には泥温泉という、肌に良い温泉があると聞きますが
これは…(スライムの数にちょっと引き気味)

一気に突破すべく、大神さまを呼んで、ザフェルさんと乗ります
スライムの動きを常に確認しつつ出来るだけ最短距離で突破
スライムに襲われる際はザフェルさんのフォロー
主に彼の死角を補うように錫杖にて【見切り】【武器受け】
念の為【オーラ防御】も使用しておきます




 温泉エリア入口前。
 扉の隙間から中を覗き込み、そっと静かに閉めるのは、織部・樒(九鼎大呂・f10234)。
「私の故郷には泥温泉という肌に良い温泉があると聞きますが、これは……」
 樒の見た光景は、自身の想像していた泥温泉とはだいぶ違っていた。
 それもそのはず。内部を得体の知れない大量のスライムが蠢いているのだから。
 加えて、先行した猟兵たちが暴れたことで、壁や床のあちこちに泥が付着している状態だ。
 ここを今からを踏破しなければならない。樒、既に引き気味である。
 そんな相棒の様子を、ザフェル・エジェデルハ(流離う竜・f10233)が眺めていた。
 傍らに長柄の両刃斧を立て、長身を扉近くの壁に凭れかけている。
「温泉に浸ってられるなんざ、羨ましいスライムも居たもんだ」
 口ではそんな呑気な事を言いつつも、ザフェルはエリアを突破すべく考えを巡らせていた。
「全部駆逐と言いたいところだが……」
 ザフェルが案じるのは、敵の数だ。
「湯のように湧いて来るんじゃ、俺達だけで相手してもキリがねぇ。ならば……」
「一点突破、ですね」
 ザフェルの思考を裏打ちするように、樒の声が重なる。
 互いに頷き、方針を確認し合う。そのための手段を持ち合わせているのは、樒の方だ。
 ダンジョンを優しい風が吹き渡る。
 やがて彼の元に忽然と現れたのは――身の丈を越す白金色の狼。
「宜しくお願いしますね」
 狼に寄り添い、軽く撫でる樒。その毛並みは神の使いに相応しい艶やかさだ。
「よろしくな」
 ザフェルもそう言って狼の前に乗り戦斧を担えば、樒はその後ろに身を預け、錫杖をその手に持つ。
 扉を押し開け、エリアに踏み込むザフェルと樒。
 狼は巨体の重みを全く感じさせない軽い足取りで、たた、と、湯船の縁を駆けていく。
 その間、ザフェルと樒は周囲の災魔の存在に気を配る。
 湯気に埋め尽くされ、良好とは言えない視界。
 その一歩先の足元をザフェルが警戒し、その間、樒が温泉側を警戒する。
「足元も注意しねぇとな。コケたら一気に餌食になりそうだ」
「はい。気を付けましょう」
 静けさを保つ温泉エリア。
 やがて、右側の側面通路の前に辿り着く。
 狼がその身体を出口側に向け終わり、一気に駆け抜ける体勢を作ろうとした、その時。
 べちゃ。
 温泉の角から、一匹のスライムが転がり出た。
「来たな」
 こちらに向けられた数多の敵意を感じ取りつつ、ザフェルがそう言う。
 ザフェルの鋭い目は、後続のスライムたちが水面を盛り上がらせているのを捉えていた。
 彼らはじきに通路を埋めつくすだろう。
「私が死角をカバーします――追い付かれないよう、一気に走り抜けましょう」
 冷静に最短の距離とタイミングを見計らう樒。
 スライムがその緩慢な動きで通路を封鎖する寸前。
 二人は疾風と化した。

 白金の風が側面通路を駆け抜ける。
 その後ろを埋め尽くしていく、泥の災魔。
 だが、あらかじめ一点突破の方針を決めていた二人は、足元に集中していた。
「おらっ!」
 前方を先回りしていたと思しき災魔たちに斧が食い込む。
 泥の身体を四散させた災魔たちは壁に叩き付けられ、骸の海へと還る。
 視界を埋め尽くす湯気の中、急に目前に現れる彼らを視力のみで察知していくのはザフェルだ。
 だが災魔は横からも迫る。狼の足を取ろうと、泥の飛沫と共に数体が温泉から急襲を仕掛けて来た。
 その瞬間、急降下して来た何かが、彼らのコアを纏めて攫っていった。
 湯船の上を見れば、旋回する幾つもの黒い影。
 ザフェルの召喚した幻影の黒い竜。彼らがコアを的確に狙い、数の利を潰す。
「横から来ます」
 スライムの動きを確認しつつ、ザフェルの死角を守るのは樒だ。
 錫杖をぐるりと回し、横と後ろから迫る災魔たちの肉薄を往なす。
 樒に動きを見切られた災魔達は次々と温泉に撃ち落とされていく。
 護りの力が効いた樒と、その錫杖には泥一つ付かない。
「それにしても、随分と広い温泉ですね……と言うより、そもそもこの場所は温泉として造られたのでしょうか」
 金の瞳を見開いて、改めて不思議そうにそう言う樒。
「いいじゃねえか。細かい事は」
 広い温泉なんて、最高じゃねえか。長柄の戦斧を豪快に振るい、湯船際の災魔をまとめて斬り飛ばしつつザフェルはそう答える。
 いつしか狼は後方のスライムを大きく引き離し、二人は散発的な急襲への対応に集中出来るようになっていた。

 二人を乗せたまま、勢い良く出口に突進する狼。
 次の瞬間、ばん! と扉が開き、反動で閉じる。
 周囲の空気は熱と湿っぽさを一気に失い、ダンジョン特有の乾いたものへと変わった。
 ゆっくりと狼から降りる二人。
「――ありがとうございました」
 少し湿気を含んだ体毛を樒が再び撫でて労えば、狼は嬉しそうに喉を鳴らす。
「全部片づけてここの温泉が使えるようになったら、一っ風呂浴びてぇもんだな」
 新たに湧き出した綺麗なお湯に満たされた温泉と、生徒たちの歓声。
 そんな光景を思い浮かべながら、ザフェルは今来たばかりの道を振り返る。
「ええ。生徒さんが無事に過ごせるよう、私達も尽力しましょう」
 乳白色の髪を揺らし、穏やかな声でそれに答える樒。
 やがて二人は視線を奥へと向け、ダンジョンの先を目指すのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルネ・プロスト
すっごくめんどくさい
ルネ一人なら兎も角、駒盤遊戯達も連れてくとなると本当に面倒
小さく弱いといっても不定形、それも泥が相手だと思うと余計にね
泥汚れは後始末も面倒だしさっさと通り抜けてしまおう

人形達は死霊憑依&自律行動

ビショップ2体のオーラで進行方向に障壁張って、災魔を押し退けながら進むよ
雪を掻き分けて進む除雪車的なイメージ
オーラに高圧電流纏わせておけば多少は数減らしもできるかな?

側面に回ってきた子にはコア目掛けてルーク2体の盾殴り、キングの斧槍振り下ろしで迎撃
手数不足ならポーン8体の銃剣による乱れ撃ち&制圧射撃で面攻撃
それでも手に負えなければUC使用
散弾掃射まで使えばさすがに一掃できる……よね?




(「すっごくめんどくさい」)
 扉の隙間から温泉エリアの内部の様子を窺うルネ・プロスト(人形王国・f21741)は、内心そう呟いた。
(「小さく弱いと言っても不定形。それも泥が相手だと思うと余計にね」)
 目の前の仕掛けはただ災魔を流し込んだだけの単純極まりないものだが、それはこのエリアの突破が容易である事を必ずしも意味しない。
(「泥汚れは後始末も面倒だし、さっさと通り抜けてしまおう」)
 色々と気が滅入る相手だ。早く終わらせるに越したことはないだろう。
 人形の腕を扉に押し当て力を籠めると、扉は、きぃ、と音を立てて前方に開く。
 湯気で視界の悪い温泉。その湯船の縁から距離を取りつつ、ルネは汚れの比較的少ない右側の通路を目指す。
 と、その後ろに何かが続く。
 ひとつ、ふたつ……その数は多い。
「ルネ一人なら兎も角、駒盤遊戯達も連れてくとなると本当に面倒」
 自らの使役する人形たちと共に前進するつもりらしい。
 全員が温泉エリアの角に到達した時。
 ちゃぽ。
 災魔たちがその姿を見せ始めた。
 既に温泉の角から、でろりとその体を覗かせている。
「……」
 それを確認したルネはエリアの角を固めるような形で、陣を形成させ始めた。

 数の力で襲い掛かろうとした災魔達だったが、総勢13体の人形によって組まれた戦陣の前にその動きを止められた。
 側面通路の壁際近くを歩むルネ。彼女を守るように2体のビショップが、道幅いっぱいに障壁を展開していた。
 障壁に張られているのは、高圧電流。
 バチィッ!
 激しい電光が絶え間なく前方で迸り、同時に何かが焦げるような匂いが辺りに漂う。
 道を塞ごうとした災魔たちが逃げる間もなく轢かれているのだ。
 まるで除雪車だ。
 彼らに歩調を合わせて歩むルネは、時折側面と後方を確認する。災魔たちが耐えず温泉から湧き出て来るなら、危険なのは前方よりもこちらだ。
 そちらは大盾を構えたルークががっちりと守りを固めている。
 時折巨大な大盾が持ち上げられ、迫る災魔を潰せば、コアがまとめて砕かれる音が辺りに響く。
 ルークの堅固な守りを掻い潜ろうと後方に回り込んだ災魔には、キングによるハルバードの振り下ろしが容赦なく叩き込まれる。
 さらに8体のポーンが絶え間なく射撃を繰り返している。
 数で勝る災魔たちだが、重装備の兵に狭い範囲を固められれば、数の利を活かしようもない。
 充実した火力と防御力により、災魔を通路から押し退けていくルネと人形達だった。

 順調に進軍するルネたちだったが、通路も終わり際になったところで、後方の災魔による圧力が無視出来ないものになりつつあった。
 ルークは温泉から湧き続ける災魔を相手取っている。後方を主に固めていたのは、キングとポーン。
 ビショップが通路の終わりに踏み込んだ瞬間、ルネは一斉に人形達を出口側に退避させる。
 ルークに守られつつ、迫る災魔をキングに一度だけ薙ぎ払わせる。
 生じた隙。ルネは素早くポーンを正面に出す。
「銃弾換装、散弾装填。――マスケット、構え」
 緩慢に迫るスライムたちを前に、膝をついて低く構え、命令を忠実に実行する兵士たち。
 タイミングを見計らい、ルネは号令を下す。
「――撃てぇ!」
 反響する、轟音。
 間断なく撃ち込まれる、面制圧射撃。
 やがて硝煙が晴れた時、辺りには焼けた泥の破片が辺りに飛び散っていた。
 至近距離のスライムたちは跡形も無く吹き飛ばされていた。
「……」
 制圧射撃の威力に恐れを為したのか、後続のスライムたちは温泉の中へと戻っていった。
 とはいえ、じきに仲間を連れて押し寄せて来るだろう。
 少しの間静けさを取り戻した温泉エリア。なおも人形達に守られつつ、その出口へとルネは歩いていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『メイド人形』

POW   :    居合い抜き
【仕込み箒から抜き放った刃】が命中した対象を切断する。
SPD   :    暗殺
レベル分の1秒で【衣装内に仕込まれた暗器】を発射できる。
WIZ   :    人形の囁き
対象のユーベルコードに対し【対象の精神に直接響く囁き声】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。

イラスト:唯々

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●ホーム・ガード
 エリアを突破した猟兵たちを待ち受けていたのは、直線通路だった。
 足を踏み出せば……柔らかな感触。
 見れば、赤いものがダンジョンの奥に向かってどこまでも敷かれている。
 レッドカーペットだ。

 無機質な壁と床、天井で構成された直線通路を、猟兵たちは警戒しながら進んでいく。
 不気味なまでに静けさを保つダンジョン。災魔はおろか、罠の気配すら感じられない。
 通路の幅は少しずつ広くなり、いつしか5メートルほどになっていた。
 周囲には太い円柱が規則正しく立ち並び始めた。
 頭上にはシャンデリア。
 
 通路の終わりには豪奢な扉。
 そして、頭のてっぺんから爪先まで鏡写しの容姿を持った、メイド人形たち。
 カーペットを挟んで左右に二人、一定間隔を空けてさらに二人。
 扉から目の前まで、整然と並んでいる。
 その手にはデッキブラシや水切りワイパー。

『いらっしゃいませ、お客様』
 先頭のメイド長の言葉と共に、一斉にお辞儀をする。
『ご主人様は体調が優れず、ベッドに臥せっておられます』
 子供に近い背丈と容姿。それに不釣り合いな、優雅な挙措。
『申し訳ございませんが、今日のところはお引き取り下さいませ』
 だがここで諦めて帰る訳にはいかない。フロアボスは目前なのだ。
 広く秩序立った空間の中で、猟兵が動きを見せる――。
日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません

「うぅ……さっきは酷い目に遭った……
「あれ? こんなところにメイドさん……って、これも災魔なの!?
見た目的に戦い難い相手なので、どうにも及び腰

「近づくと斬られる!? あ、あまり見せたくなかったけど……もう、この姿になるしかないのかなぁ……
UCを発動して、全身液体状の女の子になります
液体人間なので、物理攻撃は無効だから斬られても平気
問題は、身体の見た目が本当に女の子のようになってしまうので、恐ろしく恥ずかしいことですが

「うわぁぁぁん! こっちに来ないでよぉ!
全身から高水圧の水を刃のように放出して攻撃
泣きながら大暴れします




 どこまでも敷かれたレッドカーペットを踏み踏み、蒼はフロアボスへと続く道を辿っていた。
「うぅ……さっきは酷い目に遭った……」
 先程の温泉エリアでは泥湯に転落してしまった蒼。既に着替えている。
 再び酷い目に遭わない事を願うばかりだ。
「あれ? こんなところにメイドさん……?」
 目の前を整列しているメイドさんを見て、蒼は思わず意外そうな声を上げた。
 猟兵としての勘は目の前の相手をオブリビオンと直覚している。そうは言っても、見た目は小さなメイドさんを象った人形に過ぎない。
 内気で優しい少年である蒼にとって、戦い難い相手には違いない。
「はい。我々はご主人様に仕えるメイドです。宜しくお願いします」
 同じメイド仲間である蒼に対して、メイド人形達は楚々とお辞儀をした。
「よ、よろくしっΣ!? ……いえ、宜しくお願いします」
 内心戦いたくないという思いもあってか、及び腰だった蒼。慌ててお辞儀を返す。
 だが蒼がおずおずと顔を上げた時、そこには思いっきり居合の構えを取り、戦闘態勢のメイドさんがいた。
「あ、あの……」
「ご主人様を守るのが我々の使命。退かなければ斬ります」
「……近づくと斬られる!?」
「はい。斬ります。容赦はしません」
 未だ心の準備が出来ていなかった蒼、硬直。
 次の瞬間、鞘鳴りの音。
 メイドさんの水切りワイパーから凄まじい勢いで剣閃が迸る。
 仕込み杖だった。
「ぴっ!?」
 ビクッと体を跳ねさせる蒼。
 回避は間に合わない。
 それがわかる程に蒼の中で意識だけが鮮明に冴えていく。
 ゆっくりと流れる時間。
 そんな中、蒼は逆転の手段を掴んでいた。
(「あ、あまり見せたくなかったけど……もう、この姿になるしかないのかなぁ……」)
 とろり。
 一瞬、蒼の身体が揺れた。
 ザンッ!!
 白刃が蒼の身体に到達――そして、あっけなく通り抜けた。
「!」
 裂帛の気合と共に放たれたメイドさんの一刀は、液状と化した蒼の肉体に無力化され、ついでに蒼のメイド服――その胸元あたり――を切り裂いた。
 布が斬り飛ばされ、蒼の胸元が露出する。
 その胸元は……僅かながら膨らみを見せていた。
 蒼のユーベルコードは代償を伴う呪いの類が多い。これは蒼の外見を女の子そっくりに変えてしまう。
 メイドさんが刀を振り切った時、蒼は棒立ちのまま、ぽかんとした表情を浮かべていた。
 少し間を置いて、自らの置かれている状況を認識した蒼。かああっ、と、顔を赤面させる。
 とても、恥ずかしい。
「わああっ!?」
 狼狽しながら胸元を抑え、うずくまる蒼。
「うわぁぁぁぁぁん! こっちに来ないでよぉぉぉ!」
 よほど恥ずかしかったのか、それとも完全に逆鱗に触れたのか。蒼は自分でもわけもわからないことを叫びながら、全身から高圧で水を噴射し始めた。
 咄嗟に防御の姿勢を取るメイドさん。だが、その身体が刀ごと水圧で断たれ、ダンジョンの壁に叩き付けられる。
 湧き上がる衝動の赴くまま放たれる蒼の水圧攻撃は、そのまま後方のメイドさんにまで波及し、柱や壁にまで所構わず傷を刻んだ。
 後退するメイドさんを、なおも水を放射しながら追いかける蒼。
「うわぁぁぁぁぁぁん! なんでまたこんな目に!!」
 この雨は、しばらく止みそうもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

火土金水・明
「相手はメイド人形ですか。」「オブリビオン化したとなると、余程のことがあったのでしょうか?。」「気にはなりますけど、ここは倒すしかないですね。」
【WIZ】で攻撃です。
攻撃は、【先制攻撃】で【高速詠唱】し【破魔】を付けた【全力魔法】の【フレイムランス】を【範囲攻撃】にして、『メイド人形』達を纏めて巻き込めるようにして【2回攻撃】します。相手の攻撃に関しては【見切り】【残像】【オーラ防御】で、ダメージの軽減を試みます。
「(攻撃を回避したら)残念、それは残像です。」「オブリビオン達は『骸の海』へ帰りなさい。」
アドリブや他の方との絡み等は、お任せします。




 赤い絨毯の上を、夜色の衣装に身を包んだ魔法使いが歩む。
「相手はメイド人形ですか」
 やがて立ち止まり、遥か前方の騒ぎを眺めながらそう呟く。
 視線の先には、機敏に動き回る、メイド人形。
 どこか人好きのする表情を浮かべた火土金水・明(夜闇のウィザード・f01561)は、一人考えを巡らせていた。
「オブリビオン化したとなると、余程のことがあったのでしょうか?」
 過去、今と同じ姿形で世界に存在していたオブリビオン。あのメイド人形もまた、過去にはメイド人形として存在していた。
 おそらく当時も何者かに仕えていたのだろう。その間の出来事について様々な可能性に思いを馳せるのは、真理の探究者である明にとって、至極当然のことだ。
「気にはなりますけど、ここは倒すしかないですね」
 同時に明は猟兵でもある。今や明確な世界の敵と化した彼女達を倒すのは、世界に選ばれた者の使命なのだ。

 その敵――メイド人形たちは、まだこちらに気づいていない。
 先制攻撃のチャンスだ。
 明は魔法を唱え始めた。七色に輝く杖の先端に全霊を集中する。
 その間も密やかに淀みなく、紡がれ続ける晶の詠唱。
 キィンッ!
 時折、鋭い音と共に詠唱が短縮される。高速詠唱の技術だ。
 その術の内容に比して驚くほど速く呪文を唱え終わり、明は仕上げの一言を添える。
『――我、炎により敵を焼き尽くす』
 明がおもむろに帽子の鍔を引き下げた、その時。

 ――ドゴゴォォォォ!!!

 二度に亘る衝撃。
 降り注いたのは、炎の槍襖。
 瞬く間に戦場が朱の色に染められた。
 広範囲を巻き込む炎に攫われ、灰と化すメイド人形たち。
 遠目からも判る程に戦場が混乱の度合いを増す。
「来ましたね」
 帽子の鍔を上げ、前を見据える晶。その瞳に映るのは一面の炎と……反撃に出る、一体のメイド人形。
 メイド人形が地面を蹴り、可憐な衣装を翻して距離を詰める。
 その動きは明の対処が間に合わない程に、迅い。
 明の首筋目がけ、構えたデッキブラシから、白い光が迸る。
 一閃。
 ――無表情のまま踏鞴を踏むメイド人形。
 確かに斬った筈の明は――いない。
 手応えすら残さず、掻き消えた。
 つまり。
「残念、それは残像です」
 メイド人形が声のする方に振り向いた時、明は既に杖を向けていた。
「オブリビオン達は『骸の海』へ帰りなさい」
 呵責無き炎が、再び戦場に降り注いだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

ティエル・ティエリエル
SPDで判定

温泉を泥んこで汚したのはお前達だなー!
部下の不始末はご主人様の責任だよ♪文句言いに行くから通らせてもらうね♪

メイド達の手の届かない頭上を飛び越えて先に進もうと思ったら衣装の中から暗器を飛ばしてきたよ!?
直前で「第六感」で気づいて「見切り」で回避!
むむむー、通せんぼするならボクだって容赦しないぞ☆
空中で「フェイント」を掛けながらヒット&アウェイで攻撃!
隙を見せた相手には【妖精の一刺し】で貫いちゃうぞ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です




 持ち前の機転で温泉エリアを突破したティエルだったが、今はずらりと整列するメイド人形に食ってかかっている。
「温泉を泥んこで汚したのはお前達だなー!」
 温泉エリアの惨状をその目で見て来たティエル。ぷんすこ顔で肩を怒らせている。ただ怒っていても可愛いものは可愛い。
「申し訳ございません」
 メイドさんの方もなんとなくティエルの育ちの良さを察知しているのか、大人しく叱られている。その様子は、大事な来客の応対に出たメイドそのものだ。
「部下の不始末はご主人様の責任だよ♪」
 幾ら相手が災魔とはいえ、ノブリス・オブリージュを体現するティエルである。だらしないご主人様に対しては、一言言ってやらなければ気が済まないのだった。
 ひととおり言いたい事をメイドさんにぶつけたティエルだったが、このままは埒が空かない。
「文句言いに行くから通らせてもらうね♪」
 先に進むため、すい、とティエルが高度を上げる。
 ティエルは彼女達の頭上を飛んで行く事に決めた。
 見上げるメイドさんの居並ぶフロア。その半分くらいまで進んだ辺りだろうか。
「……!」
 突然、ティエルの頭の中で警鐘が鳴る。
 反射的に下を向けば。
 そこには、飛来する無数の暗器。
「わわっ!?」
 それら全ての軌道を瞬時に見切り、紙一重で躱すティエル。
 ティエルとしては通してくれるかも知れないという期待もあったのだが、やはりオブリビオン。普通のメイドさんとは根本的に違うのだろう。
「むむむー、通せんぼするならボクだって容赦しないぞ☆」
 来客を撃ち落とそうとするようなメイドさんには、お仕置きが必要だ。
 戦闘態勢に入るティエル。
「……」
 懐に手を入れるメイドさん。
 次の瞬間、再び飛来した暗器を、ティエルは余裕を持って回避する。
 飛来する暗器に目が慣れたのを確かめ、ティエルは時折、自分からメイドさんの間合いに飛び込むような挙動を見せ始めた。
 フェイントだ。
 投擲のタイミングを崩され、戦列に隙が生じ始めた。
 その隙を、ティエルは見逃さなかった。
 ティエルは急に大きく後退した。
 メイドさんの大半が、一瞬だけティエルを見失う。
 そのうちの一体にティエルは狙いを定め、レイピアを向ける。
「いっくぞーーー!!」
 刹那、ダンジョンに響く風鳴り音。
 衝突。
 ティエルの全速力の体当たりに貫かれたメイドさんは、突進の勢いで派手に地面に叩き付けられ、そのまま動かなくなる。
 数人のメイドさんが仕込み杖に手を掛けるが、既にティエルは上空高くに逃れ去っている。
「よそ見してると貫いちゃうぞー☆」
 頭上から再び風鳴り音が響き、今度は大きく離れた場所に居るメイドさんが貫かれる。
 浮き足立つメイドさんたち。
 ひとまずご主人様を守るべく、彼女達全員が扉付近に後退するまで、ティエルのお仕置きは続くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

十文字・武
<アドリブ連携詠唱省略ok>

メイドさんハーレム……。
こいつは確かにある種の男の浪漫だが、どうにも画竜点睛を欠くって奴だ。
お前らには一つ足りないものがある。
そう……ネコミミだ。
語尾に『にゃ』を付けるのも忘れるな。
ネコミミメイドさんではないお前らに、このオレが負けてやる気はない。

【団体行動・戦闘知識】にて戦場盤面を把握。
敵集団の直中へと斬り込み乱戦を誘え。集団での遠距離攻撃で封殺されるのが一番まずい。集団だろうと一度に打ちかかれるのは所詮2~4だ
戦闘に特化されたオブリビオンなら兎も角、この程度の相手なら乱戦に持ち込んだ方がやりやすい。UC発動。二刀をもって斬り裂き踊れ【なぎ払い・串刺し・二回攻撃】


御形・菘
いや~、実に分かっておる!
メイドで暗器の仕込み刀なんて、浪漫ポイントを押さえておるではないか!
妾とバトるに相応しい!
忠義を以て、妾の進攻を止めてみせるがよい!

安全に遠距離から叩くとか、先の先を取るとか、そんな作戦を妾が選ぶわけなかろう?
このビジュアルで何もさせずに勝負を決めるとか、動画的に面白くない!
お主らの刀の射程は、おおよそ妾の左腕と同じ程度であろう
捻らず突っ込み真っ向勝負よ、そして先手で仕掛けてこい!

急所のガードは最低限行っておくぞ
確かに速かろう、そして切られるであろうが、即死しなければ十分!
一撃凌げば…言ったはずであるぞ、ここは妾の射程でもあると!
左腕の一撃にボコられ、砕け散るがよい!




「いや~、実に分かっておる! メイドで暗器の仕込み刀なんて、浪漫ポイントを押さえておるではないか!」
 無駄なものを徹底的に削ぎ落したデザイン。残ったのは浪漫の塊。
 敵ながら天晴。分野は大きく違えど、製作者の技量を称賛せずにはいられない菘だった。
 優雅に一礼して賞賛を受けるメイドさんたち。視聴席に居るキマイラフューチャーの住民からは『清楚なメイドさんの一斉お辞儀キター!』『かわいい』『所作優雅過ぎでしょ』などといったコメントが乱れ飛ぶ。
「……なるほど。だがどうにも画竜点睛を欠くって奴だ」
「むっ」
 菘が振り返ると、そこには……真剣そのもののオーラを放つ武の姿があった。菘と同じく猟兵の中でも精鋭と呼べる実力を持つ彼である。オブリビオンである彼女らには決定的に欠けているであろうものを、ビシッと指摘してくれるのだろう。
「こいつは確かにある種の男の浪漫だが、お前らには一つ足りないものがある。それは……ネコミミだ」
 あ、そういうことらしい。
「語尾に『にゃ』を付けるのも忘れるな」
 武は妥協を許さない。なんだろう。何故かはわからないが圧倒的な説得力を感じる。
「むう……」
 この場にいるメイドさんが全て猫耳メイドになる絵面を思い浮かべる菘。今やオプションの定番と化した感のあるネコミミだが、どうなのだろう。少なくとも動画の印象は様変わりしそうだ。
 二択アンケートを始めた視聴席を他所に、メイドさん達は武の話を神妙な顔で聞いていた。
 やがてメイドさんの一人が口を開く。
「猫耳に関してはよくわかりませんでしたが、もしご主人様が望むのであれば、私達は一人残らずそう致します」
「ご主人様に喜んで頂く事こそ、私達の最大の喜びです」
 どうやら主従の結束は強固らしい。
「よくぞ言った! それでこそ妾とバトるに相応しい! 忠義を以て、妾の進攻を止めてみせるがよい!」
「ネコミミメイドさんではないお前らに、このオレが負けてやる気はない」
 双方、戦闘態勢に入る。
 残ったのは信念のぶつかり合いだ。

 メイド人形達の戦列は、ともすれば攻めあぐねるであろう程の、高い柔軟性を持つ。そこへ向けて菘と武は。
「撮れ高のために身体を張るのは当然であろう!!」
「――斬る!」
 迷い無く突っ込んでいった。
 先陣を切るのは武だ。腰に差した二本の刀、鬼喰らいと死神殺しに手を掛け、メイドさんの只中に飛び込む。
 すでに武に向けて3人のメイドさんが居合の構えを取っていたが、いきなり乱戦に持ち込まれ、動き回る味方に遮蔽される。
 刹那、二刀による薙ぎ払い。
 水切りワイパーに手を掛けたメイドさんの二の腕が、あっさりと斬り払われた。
 その勢いを殺さず、さらに踏み込む。
 一呼吸遅れて残り2体から放たれた居合を、抜いた二刀で受け止める。
 激しく鉄のぶつかる音が響き、衝撃に耐える武。
「カラバ二刀流・壱ノ太刀……【爪削ぎ】」
 ひゅん。
 武の剣筋が変わった。
 対応力を重視したものから速度を上げ、ただひたすら敵を斬り倒す為のものへと。
 敵陣の真っ只中。延々続く高速の乱舞が始まった。

 奥へ奥へと斬り進む武。
 彼に取り残された形のメイドさんたちに、掛けられる声。
「安全に遠距離から叩くとか、先の先を取るとか、そんな作戦を妾が選ぶわけなかろう?」
 メイドさん達が振り向けば、そこには菘の姿が。
「このビジュアルで何もさせずに勝負を決めるとか、動画的に面白くない!」
 菘は自身の腕を示して見せる。纏わりついているのは儀礼祭壇【五行玻璃殿】。
「お主らの刀の射程は、おおよそ妾の左腕と同じ程度であろう。先手で仕掛けてこい!」
 巨大。
 されど射程はせいぜいが直刀と同程度。加えて防御側には圧倒的な数の利。
 フリルを揺らしてぱらぱらと駆け寄り、菘を囲むメイド人形たち。
 彼女らに一斉に抜刀をさせたのは、それらであったか。
 斬。
 菘を襲う、無数の横薙ぎ。
 踏み止まり、正面から受ける。
 左腕で急所をガードするも、全て防ぎ切る事は叶わない。
 菘の体には傷が刻まれ、鮮血が迸る。
 窮地。だが。
「――言ったはずであるぞ、ここは妾の射程でもあると!」
 ぐきり。
 菘の左腕に纏わりつく『儀礼祭壇』が禍々しく蠢いた。
 あたかも、そこに封じられた数知れぬ悪共の怨嗟が感応するかの如く。
「――!」
 抜刀の態勢から身を引こうとするメイド人形たち。だが。
「砕け散るがよい!」
 次の瞬間、菘の大薙ぎの一撃が彼女らを残らず捉え、まとめて横に吹き飛ばした。
 ぐんぐんと迫る壁。刹那。
 ドゴォ!!!
 ダンジョン中に響き渡るかのような衝突音。
 体を著しく変形させたメイドさんは壁から崩れ落ち、光の粒と化して消え去った。
 ――小賢しい利を凌駕するのは、常に圧倒的な信念に他ならぬ。

 いつ果てるとも知れぬ紫電の如き高速連舞は、戦列を攪乱し続けていた。
 武の思惑通り、特化しない兵の集団には彼を正面から抑えられる者が存在しないのだ。
 ヒュン。
 そんな武に向けて、風鳴りに似た音が響き渡り始めた。
 戦場の中心から逃れ出たメイドさん。集団を形成するには至らないものの、それぞれが散発的に遠くから反撃を試みる。
 その手から放たれるのは、銀色に輝く無数の暗器。
 武に向けて一直線に飛ぶ。
 ガキィッ!
 だが、その大半が石の円柱に跳ね返され、乾いた音を立てて地に落ちる。
 武は規則的な戦場を把握し、数と飛び道具の利を最低限に抑えていた。
 再び狙いを定めるメイドさん。そこへ横合いから――正確には扉に向けて真正面に向けて進撃していた――菘が出くわし、左腕を叩き付けていった。

「ふぅ……」
 終始戦場を暴れ回っていた武は、ようやく二刀を腰に戻す。
 ひとまず後退したメイドさんだが、まだまだ数は多い。これ以上の深追いは危険だろう。
 そこへ傷の手当てを済ませた菘が現れる。菘のスリリングな戦いぶりは、再び視聴席を沸かせるには十分だった。
「集計が終わったようであるぞ」
「ネコミミに決まってる!」
 覗き込む菘と武。結果は――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ザフェル・エジェデルハ
樒(f10234)と共闘
アドリブ・連携等OK

こりゃまた、ずらっと並んでんな。奥にいるのはお貴族様か?

樒のユーベルコードの動きに合わせ、『槍嵐』を発動
【範囲攻撃】で複数対象を狙う
数に物を言わすのはてめぇらだけじゃねぇぜ!!
また【投擲】技能を活かし、敵の関節部分の【部位破壊】を狙い、
動きを封じることも試みる

敵の攻撃は【武器受け】【オーラ防御】で回避し、
近づいた敵は【怪力】から武器で発生させた【衝撃波】で
【吹き飛ばし】、ユーベルコードを【カウンター】発動する

お嬢様とやらの眠りを邪魔して悪いが、こちらも急ぎなんでな
道を開けて貰う!!


織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と行動
アドリブ・連携OK

あれは……人形ですか
随分と精巧な絡繰なのですね

ザフェルさんのやや後方に位置取り
行動指針は彼の攻撃のフォローと防御を優先

護法を呼び出し、何体かは敵の攻撃からの防御をお願いします
それ以外はザフェルさんと連携して攻撃を
護法が防ぎ切れない攻撃やザフェルさんへの攻撃は
【オーラ防御】し錫杖にて【見切り】【武器受け】
人形へ攻撃が叶うなら【呪詛】、効果があるかは不明ですが
念の為【毒使い】も狙います

ご主人が伏せっているそうですね
一体どういった人物でしょうか




 赤い絨毯の上を、大股で歩く足音。
 足音の主、ザフェルは、直線通路の終わりに人影を認めた。
「こりゃまた、ずらっと並んでんな。奥にいるのはお貴族様か?」
 着飾ったメイドさん。
 彼女達が整列する様は、壮観の一言だ。
 その奥には豪華な扉――フロアボスはそこで待っている。
「あれは……人形ですか」
 ザフェルの隣で響く、もう一つの小さな足音。
 近付くにつれて、関節が生身の人のそれとは違う事に気付いたのは樒だ。
 迷宮の最奥へと辿り着いた二人は、メイドさんたちと相対する。
「いらっしゃいませ、お客様」
 メイドさん達は深々とお辞儀をした。
「通してもらおうか」
 ひとまず先頭のメイドさんに取り次ぐザフェル。
「ご主人様はベッドに臥せっておられます。今日の所はお引き取り下さい」
「だろうな」
 ザフェルは肩を竦める。
 予想通り、といった様子だ。
(「随分と精巧な絡繰なのですね」)
 その技術は実用的な人形としては屈指の水準にあるだろう。
 彼女達の一連の動きは、百年の時を経た逸品である樒をして、精巧と思わしめるものであった。
「悪いが、こちらも急ぎなんでな」
 ザフェルについてきた紅の小型竜が、槍へと変じる。
 その途端、ざわ、と双方の間を流れる空気が変わる。
 戦いの始まりだ。

 3人同時の抜き打ち。
 ギィンッ!!
 槍を通してびりびりと伝わる衝撃。
「うらっ!!」
 ザフェルが渾身の力で槍を回せば、辺りを凄まじい衝撃波が奔る。
 巻き上がる埃と一緒に、メイドさん達の小さな体が纏めて吹き飛ばされる。
 長物相手に表情一つ変ないメイドさんの肉薄を、ザフェルは前線で受け切っていた。
 そんなザフェルを後ろからバックアップするのは樒。
「頼みましたよ」
 優しく言い聞かせるように樒が言えば、小さな童の姿をした神霊は、髪飾りをちり、と揺らして頷き、戦線へと加わっていった。
 数体がザフェルの傍に残り、残りは前線へ。
 戦線を押し上げる彼らに合わせるように、ザフェルは槍を地面に突き立てる。
「――道を開けて貰う!!」
 次の瞬間、戦場全体に降り注いだのは、魔力で造られた槍。
 たった吹き飛ばされたメイドさんは立ち上がる前に刺し貫かれ、部品や歯車を飛び散らせる。
 そのまま骸の海に還る者も少なくない。
 メイドさん、ぱらぱらと散開する
 一瞬の静寂。
 柱の陰に隠れたのか、姿を見せない。
 次の瞬間。
 ひゅん。
 ひゅんひゅん。
 魂を底冷えさせるような音を立て、あちこちから放たれるのは、銀色の暗器。
 二人に向けて、まっすぐに飛ぶ。
「ご主人が伏せっているそうですね」
 その暗器を、やや後方に位置取っていた樒はザフェルの後方をカバーするように、錫杖で叩き落としながら呟く。
「一体どういった人物でしょうか」
 未だ扉の奥で沈黙を保っているリコ・ワンダーソイル。
 樒からすれば、断片的な情報のみを頼りに、彼女の姿を思い浮かべる事は難しい。
「よっぽど慕われてるようだが、ここまで追い込まれて出て来ない辺り、甲斐性無しなのかもな」
 まぁ、本当に寝込んでるのかも知れねぇが。長槍をぐるりと回し、前方の暗器を纏めて弾き飛ばすザフェル。
 だが、このままでは埒が空かない。
 ザフェルの横で、ぱしっ、と音がする。
 見れば、樒の呼び出した神霊が、残りの暗器を腕輪を嵌めた手で掴み止めていた。
「……」
 なおも散発的に暗器が降り注ぐ戦場の中を、ザフェルは、顔の横に担ぐように長槍を構え直した。
 それに気づいた樒は神霊を数体ザフェルの元に向かわせ、護りを厚くする。
 集中力を研ぎ澄ますザフェルの視界には、槍の穂先と、時折柱の陰で動く――人形の姿。
 一歩。
 地面を蹴る。
「おらぁっ!」
 槍投げの要領で放られたザフェルの長槍は、見事にメイドさんの膝関節を打ち貫いた。
「!」
 がしゃ、と転倒し、その姿を晒す。
 立ち上がろうとするメイドさんが、動きを止めた。
 傷口から広がるのは――黒い呪詛。
 樒の練り上げた呪いだ。
 黒はみるみるうちに全身を覆い尽し、メイドさんを黒い泡と化して、骸の海へと掻き消した。
「神霊を横から回り込ませます。この調子で数を減らしていきましょう」
「おう!」
 前線に出る樒の神霊。彼らを軸に、樒とザフェルは優勢に戦いを進めて行くのだった

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルネ・プロスト
……泥の災魔が近くにいるとお掃除大変じゃない?
侵入者来るたび泥でべったべたになりそうなものだけど

人形達は死霊憑依&自律行動
森の友達は敵の動きを注視、警戒

ポーン8体は前線構築、乱れ撃ち&制圧射撃で敵の接近を牽制兼攻撃
ルーク2体は森の友達と連携して敵の攻撃を見切り、盾受け&かばうで防御
クイーンは後方から敵の密集してる場所を範囲魔法で攻撃
前衛を抜けてきた敵はキングの斧槍で迎撃
多少の傷はUCを使用して補完

ある意味この子達はルネの本命
今回ここに来たのは人形の災魔がいるって話聞いたからだし
君達にとっては余計なお世話でしかないだろうけど

――君達を壊し(弔い)に来たよ




 猟兵達の度重なる攻勢を受け、損傷の進んだメイドさん達はその数を大きく減らしていた。
 しかしそれでもなお大扉の前に直立し、二列陣を崩そうとしない。
「……泥の災魔が近くにいるとお掃除大変じゃない? 侵入者来るたび泥でべったべたになりそうなものだけど」
 たった今突破して来た、長い長い道。
 ルネがそこを振り返れば……カーペットの上にうっすらとだが、泥の足跡が続いていた。先行した猟兵達の歩んで来た跡だ。
 ルネの言う通り、綺麗にするための労力は想像以上だろう。
「構いません。ご主人様が気持ち良く温泉に浸かって頂くまでと思えば、それはむしろ喜びです」
「ご主人様の取られた手段に、間違いはありません」
 相変わらず表情に乏しいが、メイドさん達は淡々と答えた。どうやら、自らの使命に殉ずる意志は揺るがないようだ。
 視線を前方に戻し、改めてメイドさん達を見据えるルネ。
 眼球がひび割れた者も居れば、美しい金髪が焦げてしまった者も居る。
「今回ここに来たのは人形の災魔がいるって話聞いたからだし、君達にとっては余計なお世話でしかないだろうけど」
 本来。彼女達とルネはすれ違いにも等しい関係と言って良い。
 にも拘らず、ここまで来た。
 彼女達に抱いた、たった一つの強い思いを実行するために。
 それは。
「――君達を壊し(弔い)に来たよ」

 ひゅん。
 ひゅんひゅん。
 風切り音が辺りに響く。
 散開したメイド人形達の手から銀色に輝く暗器が四方八方から降り注ぐ。
 その射線の中央に居るルネの小さな体をすっぽりと隠すのは、2体の重装歩兵が構えた、大盾。
 飛来する暗器を金属音と共に跳ね返す。
 前方では柱を影にして、8体の歩兵が銃撃で戦線を構築していた。
 時折、暗器により歩兵に傷が刻まれるが、そのたびに周囲の歩兵が駆けつけ、それ以上の数の銃弾がメイド人形側に撃ち込まれる。
 この二つの兵科が基軸となり、戦場に散らばったメイド人形を柱に釘付けにしていた。
 一方のメイド人形側には打開策を探る動きもあった。
 数体が柱を伝うように物陰を移動し、後衛に回り込もうとしていたのだ。
 だが、そんな彼女達を物陰から見つめる影に気付く事は、遂に無かった。
 弾丸と化したメイドさんが戦陣の横合いから迫る、
 ルネに向けて、渾身の抜刀。
 その直前、まるで予測していたかのように、翳される盾。
 激しい金属音と共に直刀が跳ね返される。
 続いて。
 ぶん。
 ハルバードによる、迎撃の横薙ぎ。
 上半身と下半身を断たれたメイドさんはごろごろと音を立てて地面を転げまわり、やがて音も無く土塊と化した。
 逆転の機会を潰され、それでも応戦を続けるメイド人形達だが、如何せん数が足りない。
 クイーンの放つ魔法と歩兵の圧迫により、徐々に部屋の角に追い詰められていった。
 それに対して傷一つないルネは、最後の指示を出す。
 クイーンの掲げた宝杖に雷の魔力が収束する。
 広範囲を巻き込む、稲妻の前兆。
「……安らかに」
 次の瞬間、フロアの片隅で閃光が瞬いた。
 ルネの想いは、彼女達に届いただろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『リコ・ワンダーソイル』

POW   :    ロイヤルコード『ワンダーソイル』
自身からレベルm半径内の無機物を【どろどろぐちゃぐちゃの半固体の土】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。
SPD   :    マジカルコード『アースソウルブラザーズ』
戦闘用の、自身と同じ強さの【土塊ゾンビ】と【土塊ゴーレム】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。
WIZ   :    エクストラコード『クラクリ』
レベル×5本の【土】属性の【当たると弾けるクリスタル】を放つ。

イラスト:しらゆき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はロザリア・ムーンドロップです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●何としても
 メイド人形が全て倒された時、大扉が音を立てて開いた。
 出て来たのは、紫髪の少女。
 魔法使い『リコ・ワンダーソイル』だ。
「うう、私のメイドさんハーレムが……これも情に流された私の判断ミスだね」
 周囲を眺め渡せば、そこには破壊の跡。
 メイド人形達の姿は見えないが、彼女達の身に何があったかは明らかだ。

「でも、なんとか戦えるだけの魔力は補充出来たし……」
 ……どうやら泥の災魔を召喚した後は、魔力不足で寝込んでいたらしい。
 言われてみれば少し顔色が悪い気もする。
「今度は同じ轍は踏まない……この場を切り抜けて、またメイドさんを集めるんだ」
 少しふらつきながらもリコが杖を構えて詠唱を始めれば、微かな地鳴りがフロアを揺らし始めた。
 メイドさんの扱いを学んだ彼女は学園の脅威となるだろう。
 あらゆる手段を使って、打ち倒さなければならない。
十文字・武
アド連携詠唱略OK

おぅ、出やがったなオブリビオン
メイドさんハーレムを集めるたぁ、ガキながら中々豪気な心意気だが、今回はそこまでだ
斬り捨てるぜ、リコ・ワンダーソイル!
今度メイドさんを集める時は、ネコミミメイドさんにするんだな!

壁代わりに次々と召喚される土塊ゾンビやゴーレムを斬り捨てながら敵に向かうが、流石に土魔術特化の使い手。召喚が早い
ならば、此処は一つ……
土塊群に押される様に壁際まで押し込まれよう【おびき寄せ】
ゾンビやゴーレムに囲まれ、敵ボスの視界を切ったその瞬間、UC【悪喰魔狼と狼少年】発動
高速移動状態から背にした壁を【ダッシュ・クライミング】で駆け上がり、そのまま空中から斬撃による真空刃だ




 遠くから、地鳴り。
 腹の底まで震わせるその音は、術者の実力を如実に示すものだ。
 泥の災魔。そしてメイド人形によるフロア制圧事件の黒幕。
『リコ・ワンダーソイル』が、ついにその姿を現した。
「おぅ、出やがったな」
 大胆不敵。
 そう呼べる態度で彼女の前に身を晒すのは、旅人風の装束に身を包む男性。
 武だ。
 その腰には、二振りの刀。
「メイドさんハーレムを集めるたぁ、ガキながら中々豪気な心意気だな」
 短期間でフロアの制圧まで漕ぎつけたリコ・ワンダーソイルの行動力は、なかなかのものだった。
 ……そのために集めた人員は、彼女の特殊さを色濃く反映したものであったが。
「……ありがと。さっきも言ったけど、同じ轍は踏まないよ」
 リコが杖を下ろせば、地鳴りはしんと止む。
「ただし今回はそこまでだ」
 今回のケースだけでも、地上に程近いエリアが制圧されてしまった。
 再びメイド人形部隊を編成したリコ・ワンダーソイルは、より慎重に立ち回るだろう。
 次があってはならないのだ。
「どうかな……試してみると良いよ」
 詠唱を始めたリコの足元に、巨大な小麦色の魔法陣が展開される。
 ずるり。
 そこから、何かが這い出し始めた。
 ゾンビと見えたそれらは……人型の土くれ。
 それが本能であるかの如く、リコの前に壁を作る動きを見せる。
 実におぞましい光景だ。
「はっ、上等だ……斬り捨てるぜ、リコ・ワンダーソイル!」
 宣言と共に二刀に手を掛ける武。
 戦いの火蓋が切って落とされた。

「――」
 蠢く土塊の群れ。
「おらっ!」
 彼らが伸ばす腕を、剣閃が幾度と無く断つ。
 ゾンビの群れとゴーレムを真正面から斬り倒し、リコ・ワンダーソイルに迫ろうとしていた武だったが、その意外なまでのしぶとさに足を止められた。
 加えて、その展開速度。
「――悠久の壁を此処に喚起せしめん」
 後方のリコが詠唱を紡ぐ度に新たな下僕が戦列に加わる。
 重みを増した土の壁が徐々に武を押し返し始めたのは、戦闘開始からそう時間が経っての事ではない。
 それも後方の通路に向けてではなく……側面の壁に向けて。
 即ち、武に待ち受けている運命は、文字通りの圧殺。
 傍目からすれば危機的とも取れる状況。だが当の武は、既に方針を切り替えていた。
 目の前で蠢く土の壁は今や明らかに厚みを増している。
 その隙間から時折覗くリコの紫色の装束が完全に見えなくなるのを、武は待つ。
 なおも後退し、壁際に追い込まれた時……遂にそのタイミングは訪れた。
 ぎしり。
 武の身体を包む、影。
 際限なく膨れ上がるかと思われた影を、身に着けていた拘束服が軋みを上げつつも、無理矢理人の形に押し留める。
 悪喰魔狼――武がその身に宿す強大な魔獣――が、その姿を顕したのだ。
 緩慢な動きでゴーレムが武に腕を伸ばそうとした時。
 武は壁に向かって地面を蹴っていた。

 圧倒的優勢と思われたリコだったが、視界を断たれた彼女には、前方で何が起こっているのかを知る術は無かった。
 自らの安全圏を保障するはずの土の下僕達を飛び越え、開けた頭上に突如姿を現した武を見るまでは。
「――!」
 武は既に刀を振りかぶっている。明らかに先程までとは間合いが違う。
 危険を察知したリコがゴーレムにその巨大な腕を宙に伸ばさせるが、間に合わない。
 形勢逆転。
 次の瞬間、叩き付けられる、真空刃。
 咄嗟に屈むリコの帽子に。服に。ローブに。斬撃が幾重にも刻まれる。
 鋭利な痛みに集中力を断たれ、術を中断させられるリコ。
 途端に土塊の軍勢がどろりと融け、斬られたゴーレムの腕だったものがボトボトと降り注ぎ、その下に居たリコの身体に降り注ぐ。
「よっと」
 すたっ、と地面に着地した武。
 いつもの姿に戻っている。
 後ろを振り返れば、軍勢は残らず物言わぬ泥と化していた。
 リコの姿は……掻き消えていた。だが、手傷を負ったのは確かだ。
「今度メイドさんを集める時は、ネコミミメイドさんにするんだな!」
 彼は最後まで己の矜持を曲げないのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

日紫樹・蒼
性格:弱気
性質:ヘタレ
※どんな酷い目に遭っても構いません

「うぅ……服のスペアを持って来て良かった
なんとか着替えて元の姿に戻りますが、パーラーメイド服なことから誤解され、リコの新たなメイド候補に!?

「え、いや、その……事情があってこんな格好だけど、僕は男で……
説明するも問答無用で襲い掛かられるため、仕方なくUC発動
身体を強化して物理で殴る作戦に出ますが……黄金鎧も「無機物」なので、泥にされたらUC解除!?
代償で受難に遭う確率も大幅アップ!

慌てて泥を水の【属性攻撃】の【全力魔法】で流そうとしますが、結果として泥になった自分の鎧も流れてしまい、素っ裸に!?
「うわぁぁぁん! こっち見ないでぇぇぇ!


御形・菘
メイドの浪漫を理解しているのに、温泉を汚すような狼藉を働くとはのう
粋を解する一流にはまだ遠い! 出直してこい!

右手で眼前の空間をコンコンコンっと
はーっはっはっは! 妾の統べる世界へようこそ!
お主には理解できるかのう、泥中に咲く花々の美しさを!
さあ、怠惰なお主の本気を見せてくれ
このままでは根を張ってしまい、泥の操作が覚束なくなるぞ?

いや、実際にそうなるのかは知らんがな? あくまで挑発トークよ
如何なる相手でも渾身を引き出させて、真っ向バトることこそ妾の望み!
そして! 圧倒的な物量質量の一撃であろうが、妾の左腕の前には砕け散るのみ!
妾を圧し潰す気であれば、巨竜の突進にすら比する威力をぶつけてこい!




 扉から少し離れた柱の陰から、リコ・ワンダーソイルが姿を現した。
「私の人海戦術が破られるなんて……」
 急いで反撃の準備を整えなくては。リコが視線を廊下の先に向けた、その時。
「!!」
 カシャ!
 リコのメイドセンサーが向こうから歩いてやってくる誰かをロックオンした。
「うぅ……服のスペアを持って来て良かった」
 蒼だ。先程の呪いは既に収まっているらしい。元通りになった身体の上から、用意していたであろうスペアのパーラーメイド服を纏っている。そんな蒼の姿にリコの視線は釘付けにされていた。
「!! え、えと、あの……?」
 蒼は突如目の前の現れたリコと、彼女の興味の眼差しに気付き、思わず立ち止まる。そんな蒼をリコは近寄って観察し始めた。
「……なるほど……君自身は猟兵だけど、こういう部下は魅力的だね」
「あ。あの……?」
 ふんふん、と頷くリコ。蒼、困惑。
「決めた。君、一旦連れて帰るね」
「ええええええええっ!?」
 リコの衝撃の一言に動転する蒼。
「え、いや、その……事情があってこんな格好だけど、僕は男で……」
「つべこべ言わないの。私のオタク知識を深める為、研究の礎になってもらうから」
「いやぁぁぁぁぁっ!?」
 さっそく襲い掛かって来る気勢を見せるリコに対し、蒼は反射的に右腕に嵌めた腕輪を翳す。輝きを増した腕輪は形を変えて蒼の身体全体を包み込み、煌びやかな黄金の鎧と化し……すぐさま半固体の泥と化した。
「な、なんでぇっ!?」
「ロイヤルコード『ワンダーソイル』……私の前ではあらゆる無機物は泥土と化し、意のままに従う」
(「どうしよう、ひとまず泥を洗い流さないと……!」)
 蒼が魔法を頭上に展開すると、そこから滝の如く大量の水が叩き付けられ、泥塊と化した鎧を残らず洗い落とした。
 足元に泥交じりの水が広がり。立っていた蒼は……何も身に着けていなかった。
 ……どうやらメイド服は消費してしまったらしい。
「うそぉ!?」
 思えば、蒼の歩んで来た道は苦難の連続だった。温泉エリアでは派手に泥湯に転落し、メイドさんには大事な服を切り裂かれてしまった。まさか三度目があるとは思わなかっただろう。
「うわぁぁぁん! こっち見ないでぇぇぇ!」
 絶望と恥ずかしさの余り泥溜まりに崩れ落ちる蒼に向けて、リコがつかつかと歩み寄る。
「無駄な抵抗はやめた方が良いよ?」
「あわわ……」
 その時、物陰でコンコン音が響いた、気がした。


 蒼の足元から流れ出た泥混じりの水溜まりから……花の蕾が頭をもたげた。
 色も大きさも様々。みるみるうちに成長を続ける蕾。
 それらは花となって咲き乱れ、地面を覆い尽し、たちまちダンジョンを広大な花の楽園へと変貌させた。
「……なに、これ」
 突然の事態に理解が追い付かないリコ。
 眼前に広がるのは夢かと見紛う光景。されど漂い始めた芳香はそれが現実である事を紛れも無く告げていた。
「はーっはっはっは! 妾の統べる世界へようこそ!」
 辺りを舞い散る花弁の中に立っていたのは……菘。
「お主には理解できるかのう、泥中に咲く花々の美しさを!」
 土魔術に長けたリコである。豊かな土壌が花々を育む事は知識として持っているだろうが、これほどまでに鮮烈な体験として叩き付けられた事は、今まであったかどうか。
「さあ、怠惰なお主の本気を見せてくれ。……このままでは根を張ってしまい、泥の操作が覚束なくなるぞ?」
「ぐ……私の研究対象が」
 咲き誇る花々を無残に踏み潰しながら、蒼から飛び退くリコ。
 それを追うように菘がゆらりと体をのたうたせ、リコに迫る。
 対するリコが花混じりの泥水を操作すればたちまち渦を巻き、形作られたのは……巨大な掌。
 花咲く泥の掌が、菘を迎え撃つべくその指を、ぐわりと開く。
 今や完全に戦場のテンションを掌握した菘は、真正面からリコの作り出した掌に立ち向かい、その左腕を振るう。
 殴り合いだ。
 ザバァッ!
 振るわれる剛腕が幾度となくぶつかる度に水音が響く。
「ひいぃぃぃ」
 柱の陰からは蒼が三味線小銃で援護射撃を繰り返していた。防具を失っている上に受難を受ける確率も爆上がりしているため迂闊に前には出られないが……上昇した反応速度でリコの行動を阻害していく。
「……」
 正面から菘。横からは蒼の牽制。
 やや分が悪いと判断したか、リコが動きを見せる。
 杖を構え直し、深呼吸。
 響く地鳴り。
 ざぁぁぁぁ、と、足元の泥水が全て吸い上げられていく。
 無数の花を巻き込み、大きく。より大きく。
 やがてそれは、菘の頭上に影を落とす程になっていた。
 内側に握り込まれる、圧倒的質量。
 狙うのは、先程とは比べ物にならない、巨竜の踏みつけにも匹敵する重撃。
 対する菘も大きく左腕を引く。ぎりり、と禍々しい音。
 ファンもこの瞬間を待っていた。『きたあああああああ』『でるぞおおおおおおお』などの期待を込めたコメント群が動画を埋め尽くし、その興奮を最高潮に高めていく。
「……」
 菘は温泉エリアでの惨状を思い起こしていた。
(「メイドの浪漫を理解しているのに、温泉を汚すような狼藉を働くとはのう」)
 己の興味の範囲内では高い審美眼すら見せる一方で、他の事に対しては無頓着極まりない。そのアンバランスさは、リコの視野の狭さ……否、未熟さを示すものだった。
「粋を解する一流にはまだ遠い! 出直してこい!」
 ごお。
 上方から迫る、水圧。
 それが、割れた。
 下からかち上げられた菘の渾身の左掌は、花の鉄槌を真一文字に切り裂いた。
 その様を驚きの表情で見ていた蒼へと、花弁混じりの泥水が大量の飛沫となって降り注ぐのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ティエル・ティエリエル
WIZで判定

あっ、温泉を泥んこで汚した犯人発見だよ!
お掃除、すごく大変そうなんだから汚したらダメなんだぞ☆

背中の翅で羽ばたいて空を飛んでリコに接近するよ!ふふーん、魔法使いには接近戦だよ!
飛んでくるクリスタルなんて全部「見切り」で避けちゃうね♪
クリスタルを避けながら懐まで飛び込んだら、そのまま【妖精姫のいたずら】を発動して服の中に潜り込んじゃえ!
服の中をあっちにこっちにもぞもぞ動きながらこちょこちょ攻撃だ♪
こちょこちょしている間は魔法になんて集中できないでしょ!
まいったっていうまでやめてあげないよ☆

※アドリブや他の方との連携も大歓迎です


ザフェル・エジェデルハ
今回も樒(f10234)と共闘
アドリブ・他者連携等OK

やっとご主人様のお出ましか
メイドを集めるなんざ、妙な趣味をお持ちだな

樒が敵の攻撃を誘い、敵が動けなくなった隙を狙う
【力溜め】からユーベルコードを【投擲】し、【鎧砕き】を行う
長丁場になると樒の負担がデカくなるからな
確実に狙い、仕留める

なお、ゾンビやゴーレムの攻撃がこちらにも向くようであれば
【怪力】で【武器受け】し、【吹き飛ばし】て距離を取り
敵に攻撃の狙いを定める

半固体の土による攻撃は【第六感】で察知して【オーラ防御】し、
【衝撃波】による【カウンター】で跳ね返す

泥遊びするような年でもねぇからな
そういうのは骸の海でメイドさんたちとやってくれや


織部・樒
引き続きザフェルさん(f10233)と行動
アドリブ・連携OK

彼女が扉の前の絡繰たちの主ですか
確かにあれ程の絡繰たちを使役するのは驚異ですね

行動指針はザフェルさんのフォローと敵の足止め
ザフェルさんの前に立ち、獣奏器にて鷹を呼びます
【おびき寄せ】にてザフェルさんから離れゴーレムたちを
此方に引きつけ囮になりましょう
此方への攻撃には【オーラ防御】し、錫杖に持ち替え
【見切り】【武器受け】使用
効果が期待できれば【呪詛】併用
私も本体は土から造られたもの
同じ属性ですから然程脅威とは思いません




「あっ、温泉を泥んこで汚した犯人発見だよ!」
「う、ヤバい」
 幾度かの交戦の後、再び姿を消したリコ・ワンダーソイルだったが……後続のティエルにあっさり見つかった。
「お掃除、すごく大変そうなんだから汚したらダメなんだぞ☆」
 柱の陰のあちこちで目立つ衣装を翻しながら逃走するリコを、叱りつけながらも追うティエル。
 そんな彼女達の様子を、やれやれといった調子で眺めているのはザフェルだ。
「やっとご主人様のお出ましか。メイドを集めるなんざ、妙な趣味をお持ちだな」
 メイドさんを沢山集め、傍に侍らせる。人によっては心地良いものなのかも知れないが、少なくともザフェルには、あまり実感の湧かないものだった。あるいは、束縛を嫌う彼の性に合うものでは無かったのかも知れない。
「彼女が扉の前の絡繰たちの主ですか」
 ザフェルの隣では、今回の事件の主犯を目で追う樒の姿があった。
「あれ程の絡繰たちを使役するのは脅威ですね」
 リコ・ワンダーソイル。
 単体戦力としては勿論、使役主としてもその実力は折り紙付きだ。
 そして、彼女の使役する手駒は尽きた訳ではない。
「うわあ~☆」
 ティエルがこちらに戻って来た。
 見れば、ティエルの後ろからこちらに向けて、何かが迫って来る。
 それは……土塊で出来たゾンビとゴーレムの軍勢だった。
 ティエルはリコへ接近戦を挑んだものの、彼らに阻まれ、一旦後退する事を決めたのだった。
 ティエルと共に後衛に下がるザフェルは樒と目配せする。
 ひとり前衛に残った樒は懐から何かを取り出した。
 それは竜笛……の形をした獣奏器。
 樒が構えて口をつければ、鋭い音色が一つ響く。
 それと同時に彼の前へと羽ばたき現れたのは、大型の蒼鷹だ。
「頼みましたよ……!」
 蒼鷹が上げたのは、威嚇の声。
 それは骨まで伝わる衝撃となり、周囲の存在全てを誰彼となく襲った。
「……」
 不格好な泥塊達の体表にヒビが刻まれ、少なからぬ数が方向を変えて樒の方へ殺到し始めた。
 素早く竜笛を懐に仕舞い、他の二人から距離を取る樒。
 囮になるつもりだ。
 いささかの怯みも無く、迫る腕の幾本かを錫杖で下方向に叩いて往なせば、腕は容易く崩れ、砂と化す。
 帰す刀で振り上げた錫杖の先はゾンビの頭をまともに捉え、微塵に砕く。
 彼らと樒の本体は同じもので出来ている。そう言われて俄かに信じる者は少ないだろうが、それは紛れも無い事実だ。その事実が、樒に幾らかの精神的余裕を与えていた。
「私の『アースソウルブラザーズ』をたった一人で相手取るなんて良い度胸だね。良いよ。そのまま圧し潰しちゃえ」
「いや、一人じゃねぇぜ」
 ザフェルの肩を紅い小型の竜がぴょんと飛び越え、同時に槍へと変じた。
「やってやろうぜ、イルディリム」
 槍を手に取ったザフェル。決して軽くは無いであろうそれをビュンビュンと音を立てて回した後、肩に担ぐように構え、ある一点に向けて、ぴたりと狙いを定めた。
 静かに意気を高めるザフェル。
 彼の周りでは風鳴りにも似た音が絶えず響いている。こちらに向かって来たゾンビを、ティエルが上空からレイピアで刺し貫く音だ。
 樒は巧みに錫杖を操り、ゾンビの群れを引き付けている。頭上を旋回する蒼鷹に向けて、ゴーレムが悔しそうに腕を伸ばすのも見える。
 二人の援護を受けている間、ザフェルは地面を踏みしめ、歯を食い縛り、渾身の力を槍に向けて注ぎ込んでいた。
「――っしゃあ!!」
 次の瞬間、ザフェルは砲台と化した。
 身体を弓なりに反らせて放たれた一投は、無数のゾンビを貫いてなお止まらぬ豪速の鉄塊と化し、最後にゴーレムの膝に深々と突き立った。
 膝の関節に大きくヒビを入れられ、崩れ落ちるゴーレム。その頭上に翼を広げたのは……召喚されたドラゴン。
 倒れたゴーレムにドラゴンが上空から突っ込み、巻き上がる瓦礫と粉塵の中で止めを刺す。その攻撃の余波は、傍に居たリコにまで及んでいた。
「うわっ!」
 瓦礫が頬を掠め、集中を妨げられたリコ。
 軍勢の統率が、僅かに綻びを見せる。
 その綻びを突き、いつの間にかリコの近くにまで接近していたのはティエルだ。
「ふふーん、やっぱり魔法使いには接近戦だよね!」
「させない……!」
 ぽつ、ぽつ、と。黄土色に輝く無数の石がリコの周囲に浮かび上がる。
 リコ・ワンダーソイル第三の奥義。「エクストラコード『クラクリ』」。当たると弾けるクリスタルを大量に放つ技だ。
 ……逆に言えば、当たらなければどうということはない。
「いっくよー♪」
 ティエルに向けて猛スピードで飛来するクリスタル。
 それら全てを飛び回りながらすいすいと躱し、あっという間に距離を詰めるティエル。
 後方では虚しく破砕音。スピードに乗ったティエルはそのままリコの懐に飛び込み……ほんの僅かな隙間から服の中に潜り込んでしまった。
「!?」
 ティエルがリコの服の中をもぞもぞと動き回る。ぱしぱしと自分の体を叩き抵抗を見せるリコだったが。
「ようし、服の中からこちょこちょしちゃうぞー☆」
「ちょ、やめ……あははっ!」
 ティエルの擽り攻撃をまともに受け、さっそく身をよじり始めた。これでは魔法どころではない。
「まいったっていうまでやめてあげないよ☆」
「だ、誰が……はっ!」
 リコが気付いた時には、土のゾンビもゴーレムも、完全に風化した粘土と化していた。その地形の上を、解放された樒と、槍を持ったザフェルが踏み越えて来る。
 ぼ、と猛スピードでリコの服から脱出するティエル。
 急いで近くの瓦礫を泥に変えて操作しようとしたリコに向けて……ザフェルの放った衝撃波と樒が紡いだ呪詛が叩き込まれたのがほぼ同時。
「ぐ……!」
「泥遊びするような年でもねぇからな。そういうのは骸の海でメイドさんたちとやってくれや」
 ばしゃあ、と跳ねた泥が盛大にリコにかかり、その装束を濡らした……かと思えば、リコの姿は溶けるように消えていた。
「あれ? 消えちゃった」
 不思議そうに辺りを見回すティエル。
「逃げられてしまいましたね」
 リコの姿を探すようにひらひらと飛ぶティエルを眺めつつ樒が穏やかに言えば。
「難儀な奴だわな……」
 元に戻った小型竜を労いつつ、そう零すザフェルだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ルネ・プロスト
配下のご機嫌取りも時には必要、というのは理解できるけど
軽率な一手が致命傷となることも間々あること
……ルネも気をつけないと、ね

人形達は死霊憑依&自律行動

ルネとキングは其々ナイトに騎乗、一気に接近して至近戦に持ち込む
術士相手に射撃戦は仕掛けないよ
ナイトのダッシュ&ジャンプで敵を挟撃するよう立ち回り敵の注意を散らしつつ『悪意』と斧槍の連撃で削っていく
敵UCはビショップ2体のオーラ防御とルーク2体のUCの同時展開、4重の障壁で防ぎきる

人形系の災魔が優先というだけであって、それ以外を弔う気がないわけでもなく
故にルネにとって、君も等しく討ち果たし弔うべき対象だ
故にここで朽ちた彼女達と共に
どうか、良き眠りを




「はぁ……はぁ……」
 息せき切って、影が走る。
 フロアボス・リコワンダーソイル。
 猟兵達の猛攻の前に敗戦を重ねた彼女は、最後の抵抗をすべく、メイドさん達の設えてくれた小部屋に逃げ帰ろうとしていた。
 ボロボロの装束を纏ったその姿に、人形達と共にフロアを制圧した際の余裕は、もはや見出せない。
 レッドカーペットの上を駆けていくリコは、やがて遠くに大扉を認めた。
「間に合った……!」
 もっとも自室に逃げ帰った所で彼女の不利は覆らないのだが、逆方向に逃げたところで他の猟兵に遭遇する可能性が高まるだけ。さりとて他に名案も思い浮かばなかったが故の行動、だったのかも知れない。
 ともかくも大扉まであと少し。それだけを考え、リコは夢中でひた走る。
 だが、大扉前の柱の陰には……伏兵。
 それも量質共に、割と本気の。
 リコの行動を予測していたかのように、ルネが待ち構えていた。
「……」
 人形達は皆静かにルネの合図を待っている。
 ルネは思い起こしていた。
 今回の事件の発端は、そもそも何だっただろうか、と。
(「配下のご機嫌取りも時には必要、というのは理解できるけど、軽率な一手が致命傷となることも間々あること」)
 情にほだされて打った致命的な一手。
 とはいえ自らの意志で打った手には違いない。良い結果も悪い結果も、全て主人である自身が引き受けるのだ。
 ならば……今回のリコがレアケースではありえない。
 まかり間違えばそれは、ルネの運命であるかも知れない。人形、使役……ルネもまた危険な橋を渡っているのだ。
(「……気をつけないと、ね」)
 馬上で『悪意』を弄びながら、そう自戒するルネだった。
 足音が近付く。
 やがて、リコが完全に包囲される瞬間を狙って。
 ルネ達は一斉に奇襲を仕掛けた。

 土の魔力を秘めた、無数のクリスタル。
 雷のオーラと防護障壁を重ねた四重の防御へ向けて、正面からぶつけられる。
 それらは破砕音と共に容易く弾け、予想外の重みで戦線を後退させた。
 キラキラとフロア一帯に撒き散らされる破片はよく見れば、見た目以上の威力でもって辺りの壁に傷を刻んでもいた。
 リコ・ワンダーソイルの最後の抵抗は凄まじかったが……苦し紛れの感は否めない。
 術師には接近戦。
 常に挟撃を狙うルネとキングに対し、対抗する術を用意できなかったのだ。
 壁や柱を背にして立ち回ろうとするリコに対し、振るわれるハルバードと大鎌の連撃。
「……!」
 傷を刻まれたリコが詠唱を始めるたびに、馬上の二人はクリスタルとその破片を避ける為、戦列の後ろへ大きく後退する。
 重装歩兵達は次第に防御のタイミングを掴み、破片による損害を最小限に減らしていった。
 次第に追い詰められるリコ。
 そして。
「――」
 遂に、ハルバードの重い一閃がリコの胴を捉え、地面へと叩き付けた。
「ぐ……」
 場所はフロアボス大扉前。配下のメイド人形達が最期を迎えたその場所で、自らも力無く横たわったリコ・ワンダーソイル。
 地上に降り立ったルネは、彼女にもまた、弔いの言葉を向けた。
「ここで朽ちた彼女達と共に、どうか、良き眠りを」
「……」
 それを聞いたリコの服と体がみるみる灰色へと変じていき……完全に物言わぬ砂の塊と化した。
 やがてその体をぼろりと崩したかと思うと、さらさらと風に吹き散らされ、輝く粉と化してレッドカーペットの上を転がっていくのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年02月16日


挿絵イラスト