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連続殺人事件ときたら、孤島の洋館でしょ!

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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●孤島の洋館への招待
 ようこそのお運びで、と小腰を屈めた來米良亭・ぱん太(魔術落語家・f07970)は、
「皆さん、孤島の洋館とかいう、いかにも連続殺人事件が起きそうな設定、お好きでがしょ?」
 脈絡なく物騒な話を始めた。
 何の話かというと、ぱん太の言うところの孤島の洋館で『影朧による連続殺人』が行われることが予知されたのだ。
「その洋館を別荘にしてる文豪から、何人かの人々に招待状が出されましてね。インスピレヱシヨンを得るべく、市井の人々の話を聞き集めているとかで」
 しかしその文豪は架空の存在であり、招待も影朧がでっちあげたものだということも、予知で判明している。なので、
「その日洋館に行く予定だった人々は、あっしが止めておきましたし、代わりに寄席の切符を差し上げたので、そこんとこは心配しなくてよござんすよ」
 というわけで、孤島の洋館で連続殺人事件が起きる心配は、とりあえずなくなったのだが、
「せっかくの機会ですし、影朧も倒したいでしょ? そこで皆さんに『殺人事件の被害者』になりに、湖東の洋館に行ってもらいたいんです」
『殺人事件の被害者になれ』とは何とも酷い話だが、猟兵なら、普通の人ならば死ぬような暴力にさらされても、残虐なトリックにひっかかってもどうにか生還するだろうから。多分。
「犠牲者が誰であれ、予知通りの『連続殺人』さえ発生すれば影朧はのこのこ出てきますからね、サクッとやっつけちゃいましょうよ、この際」
 と、ぱん太は孤島の洋館への招待状を、サクサクと配り始めた。

●1章
 期日に孤島の洋館に集まったら、その晩にぱん太主催で晩餐会を開く。
「文豪の役はあっしがやりますんで、皆さんは晩餐会の席で、冒険譚等、小説のネタになりそうなお話をしてくださいな。その際、なるべく『一癖も二癖もありそうな人物像』を演じてほしいんっすよ」
 つまり、いかにも殺されそうなキャラクターを演じろということか。
 例えば……。
 突然奇矯な行動を取ったり。
 自慢話に終始したり。
 こんな馬鹿らしい席で披露するような話はないと、席を立ってみたり。
 名探偵ぶってみたり。
 ……等々、被害者属性のキャラは様々考えられるはず。
「実際の殺人が起きるのは、晩餐会の後、深夜になりますんで」
 そこでぱん太はニヤリとし。
「この席ではまず、思う存分、殺されそうな伏線を張りまくってくださいな」


小鳥遊ちどり
 猟兵の皆様、ごきげんよう。
 今回は、孤島の洋館というロマン満ちあふれた舞台で連続殺人事件を起こしましょう、というシナリオです。

●シナリオの構造
1章:孤島の洋館での晩餐会で、小説になりそうな話を披露しつつ、被害者としての伏線を張る(日常)
2章:連続殺人事件が起きる(冒険)
3章:ボス戦

 章が進む毎に挿入文と補足を入れていく予定です。
 孤島の洋館での連続殺人事件、わくわくしますね!
 まずは1章、皆様の披露して下さるお話と、被害者フラグ、楽しみにお待ちしております!
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第1章 日常 『君、ちよつと聞かせてくれたまゑ。』

POW   :    敵を倒して活躍したときの話をする。

SPD   :    類稀なる技量で窮地を脱したときの話をする。

WIZ   :    閃きや機転で困難を突破したときの話をする。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●1章
 窓の一部に填め込まれた赤い色硝子が稲光に光ったと思ったら、大粒の雨がばらばらと窓硝子を叩きはじめた。
「ふむ、嵐になったようですな。今晩はもう、船はこの島に寄りつくことはできぬでしょう」
 長方形のテーブルの短辺に座った、この洋館の主である文豪・大熊猫之助……に扮した來米良亭・ぱん太が、ナイフとフォークを皿に置いた。
 この洋館のある島は絶海の孤島というわけではないが、普段は猟師が漁の基地にしているだけの無人島で、船でしか行き来できない。その唯一の足もこの嵐でもぎ取られてしまった。
 似非文豪は、付け髭の口元を上品にナフキンで拭き、脚付きグラスを取ると葡萄酒ならぬ、ぶどうジュースを一口飲んだ。
 晩餐会のメニューは、ビーフシチューをメインとした洋食のコース料理だ。
「孤島の洋館での嵐の夜……小説のネタ話を語り合うのに絶好の雰囲気になりましたな。そろそろお一人ずつお話を聞かせていただきましょうか?」

●1章補足
 ぱん太扮する文豪が仕切る晩餐会で、小説のネタになりそうな話を披露してください。
 フラグメントでは冒険譚となっておりますが、ネタの内容は何でも結構です。
 その際、いかにも殺される人風なキャラ立ちを見せてくださった方には、プレイングボーナスを差し上げます。
 演出重視で字数が足りなくなり、ネタ話が出来なくなったとしても、それはそれで構いません。
 ぱん太は進行役です。必要な際にはお気軽にお声がけください。
唯式・稀美
「美しき名探偵、唯式稀美さ」
優雅に礼をする
「この話は、絶対に私がしたと言わないでもらえるかい?」
私は小説のネタを話す
「実は、私の過去の推理は、全部真犯人が用意したものなのさ。真犯人が罪を擦り付けたい相手を、私が犯人として指名しているんだ。そうやって、私と真犯人で完全犯罪を行っているのさ。私の、国民的スタアの地位と美しさを利用して、発言に説得力を持たせてね」
もちろん嘘である
「何故こんな話をしたかって? 小説にしてほしいからだよ。小説にして、皆がこの方法を知れば、逆に騙しやすくなるというもの。ワザと注目させて騙す、よくある手法だろう?」
「私は推理を間違ただけだから。国民的スタアは罰せられないよ」



「私は、美しき名探偵、唯式稀美さ」
 似非文豪の台詞を受けて真っ先に立ち上がり、優雅に礼をしたのは唯式・稀美(美探偵・f23190)
「この話は、絶対に私がしたと言わないでもらえるかい?」
 彼女はラヂオで話題の美しき猟奇探偵である。
 そんな彼女が語り出したのは、衝撃の事実であった。
「実は、私の過去の推理は、全部真犯人が用意したものなのさ」
 一同に衝撃が走る。ことに、上席の文豪・大山猫之介は口をポカンと開けてしまっている。
「真犯人が罪を擦り付けたい相手を、私が犯人として指名しているんだ。そうやって、私と真犯人で完全犯罪を行っているのさ。私の、国民的スタアの地位と美しさを利用して、発言に説得力を持たせてね」

 ……もちろん、稀美の話は大嘘であり、客たちの驚きの反応も演技であるわけだが。

 興が乗ってきた文豪役のぱん太が腰を浮かせて稀美に問う。
「き、君、何故こんな話を!? 名探偵の評判が地に落ちるぞ!」 
「何故こんな話をしたかって? 小説にしてほしいからだよ。小説にして、皆がこの方法を知れば、逆に騙しやすくなるというもの。ワザと注目させて騙す、よくある手法だろう?」
 せいぜい名作を書いてくれたまえ、よろしく頼むよ、と稀美は艶然と笑う。
「しかし、これがバレたら君が犯罪者の片棒を担いだことも、公になるのだぞ」
「いいや、私は推理を間違えただけさ。真犯人と結託していたという証拠はどこにもない。国民的スタアは罰せられないよ。それに最初に頼んだだろう、私が話したとは言わないでくれと」
 憎たらしげに嘯いたその表情は、いかにも連続殺人犯を煽るものであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

長峰・モカ
【心情】トークは芸人の基本! 全力で笑いを取りに行くよ!(違う)

【行動】
(アドリブ、絡み、ツッコミ歓迎)
まずはユーベルコードを使用しておくよ。
「この前の舞台前の時のことなんだけど……」
話す内容は、ネタで滑ったことを機転で乗り越えた事、を上手くフリートーク用に着色をした所謂ネタ。
「ネタが終わって、静まりかえる客席、きこえる空調の音、体感温度はマイナス2度!」
ツッコミを入れてもらいつつフリートークに熱が入っていく。
「で、最後はギャグで切り抜けたんですよ!」
……あれ、ウケが悪い。
「もー! なんで笑わないんですかー!」
最後は話がウケないことに怒って離席して〆。まぁ、ここまでネタなんだけどね。



「はいどうもー! 長峰モカですよろしくおねがいしますー」
 長峰・モカ(リアルにvirtualなアイドル芸人?・f16136は、いきなりユーベルコード【私の噺を聞けぇ!】を発動してからトークを始めた。芸人として、全力で笑いを取りにいく気満々だ。
 この技、聴衆が、モカのネタを聞き続けて笑っていたくなるというものなのだが、さて、いつまで保つだろうか……。
「この前の舞台前の時のことなんだけど……」
 語ったのは、ネタで滑ったことを機転で乗り越えた経験談だ。
「……というわけで、ネタが終わって、静まりかえる客席、きこえる空調の音、体感温度はマイナス2度!」
「冷蔵庫だな!」
 観客のナイスツッコミのおかげもあって場が暖まっていき、モカのしゃべりにも熱が入っていく。
「で、最後はギャグで切り抜けたんですよ! あれえ、寒いと思ったら、お客さんがみんな人鳥(ペンギン)になってるう~、そっか、ここ南極だったんだぁ~!」
 しーーーーん。
「……あれ、ウケが悪い」
 モカは一気に冷えきった晩餐会の席を見回した。
 ギャグもアレだったが、ユーベルコードの効き目も切れてきたのかもしれない。
「もー! なんで笑わないんですかー! やってらんないわ!!」
 客の反応に逆ギレしたモカは、怒って離席してしまった。バタンッ、と乱暴に食堂のドアが閉められ、客たちは肩をすくめて顔を見合わせた。
 ウケなかったことに逆ギレして、席まで離れてしまう芸人っってどうなのよ……ってカンジであるが、モカの振る舞いは場の雰囲気を悪くするのに成功したようだ。

 ……まぁもちろん、ここまでネタなんだけどね!

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロッシュ・フェローチェス
※アドリブOK
本来の事件そのものは阻止できたし、後は空気づくりか――しかし雰囲気出てきたね。アタシも何か話した方が良いだろうか……うーん……。

ネタになるかは分からないけど。
この格好なんだし、刀を用いて大立ち回りした的な話でも。
十数人はいたけれど、敵の間を駆け抜けては断ち、残像を使って乱しては一太刀で倒して。
幹部との一騎打ちでは先制攻撃し、相手のカウンターを見てからカウンターで返す、早業の妙技を披露した……ってな。

演技もここに重ねよう。
これぐらい速さや剣の腕には自信がある。
どんな奴だろうと、なんだろうとアタシの敵じゃない。
アタシを下せる奴がいるなら、ぜひやってみて欲しいものだね?
……みたいにね。



「本来の事件そのものは阻止できたし、後は空気づくりか――」
 仲間たちの語りと演技により、順調に変な空気になってきた晩餐会の席を見回して、フロッシュ・フェローチェス(疾咬の神速者・f04767)は呟いた。
「しかし雰囲気出てきたね。アタシも何か話した方が良いだろうか……うーん……」
 考えているうちに順番が回ってきて、フロッシュはためらいがちに語り出した。
「ネタになるかは分からないけど。この格好なんだし、刀を用いて大立ち回りした的な話でもしようか……」
 語ったのは、十数人を相手にしての大立ち回りの話だ。
「十数人はいたけれど、敵の間を駆け抜けては断ち、残像を使って乱しては一太刀で倒して」
 話に熱が入るほど、身振り手振りが入ってくる。
「幹部との一騎打ちでは先制攻撃し、相手のカウンターを見てからカウンターで返す、早業の妙技を披露した……ってな」
 話だけでは足りなくなったのか、フロッシュは、晩餐会のテーブルを離れて、食堂後方の空間へと出た。
 スラリ、と抜いたのは短刀・碧穿炉。シャンデリアの光に反射してギラリと光るドスに、悲鳴が上がる……が、この席にいるのは猟兵ばかりなので、悲鳴は演技だろうし、この武器は場面に相応しいように伸び縮みできるので、危険はない。
「アタシは、速さや剣の腕には自信がある」
 フロッシュは、剣舞のようにひらりひらりと舞い踊り、鮮やかな剣の腕と、自慢のスピードを見せつけた。彼女は空間をめいっぱい使い、跳ね回り、武器を振り回しているのだが、激しい音もせず、調度を一切痛めることもない。
「見たかい? どんな奴だろうと、なんだろうとアタシの敵じゃない。アタシを下せる奴がいるなら、ぜひやってみて欲しいものだね?」
 スピードスターの青い瞳が、挑発するようにきらめいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
癖というか難あり性格なのは一応自覚はしているが、被害者属性とは?
(しかし大熊猫之助…パンダの助かぁ。まんまというか。でもそれらしくなるもんだな。と言うか未成年に驚いた。アマチュア噺家・わりかし童顔の成人知ってるだけに)

おっとネタになりそうな話、話な。…あったかなぁ。俺でも語れる話だと他の人も普通に持ってそうだし。

いっそ話さないで席を立つか。とがめられたら、
「俺には話せる自慢話も名ももってないんでね。部屋に戻らせて貰うよ」
実際、暗殺特化だと自慢できる話ではないし名のるのもどうかという意味だが。
雰囲気に水差すように、冷静にしかも嫌味に聞こえれば。がんばれ、俺の【演技】力。
被ってたらどうしようか。



 妙な方向ではあるが、猟兵たちの話や演技で、晩餐会の席はそれなりに盛り上がってきていた。似非文豪も満足げにメモ帳にペンを走らせている……がそこで。
 ガタリ。
 突然立ち上がった者がいた。
「ふっ、どいつもこいつも結局自慢話ばかりじゃないか」
 黒鵺・瑞樹(界渡・f17491)である。
「俺には話せる自慢話も、名ももってないんでね。部屋に戻らせて貰うよ」
 瑞樹は不遜な態度で席を離れた……が、実は内心ドキドキである。仲間たちの話や演技の最中、自分はどうしよう……とずっと悩んでいたのだ。

「(一癖というか、難ありな性格なのは一応自覚はしているが、被害者属性と言われるとな)」
「(俺、暗殺特化だから、自慢できる話はないし、暗殺者だと名のるのもいかがなものだしな)」
「(かといって、公にできるような話って、他の人と被っちゃいそうだしなぁ)」

 等と散々悩んだ末に取った行動が、この雰囲気に水を差す嫌味な行動なのだ。
 似非文豪が不快そうに眉根を寄せて瑞樹を呼び止めた。
「君、君、私は話をしてくれる者という条件で、この館に招待したのだよ? 何も話さずに席を立つというのはあまりに無礼ではないかね」
 瑞樹は不機嫌そうな顔を作りつつも、内心では、それらしい台詞をアドリブで発したぱん太に妙に感心していた。
「(ふうん、それなりに文豪っぽいね。大熊猫之助……パンダの助かぁ。まんまのネーミングだけどね。そういえば彼、未成年なんだよな、驚いた)」
 驚いたのは、アマチュア噺家でわりかし童顔の成人の知り人がいるからもあるのだが。

 瑞樹は感心して突っ立っていたのだが、その様子が、他の客たちにはますます不遜に映ったらしい。
「そうよ、貴方も少しはお話なさったらどう?」
「食い逃げだぜ、これじゃあ」
 そんな声が上がり、
「(うん、いい反応。俺ってば、いかにも殺されそうな人っぽいじゃないか。この路線で行こう)」
 瑞樹は演技力を奮い立たせ、
「何とでも言いな。俺はくだらない話に付き合うつもりはない」
 冷静な笑みを浮かべ、食堂を去った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・ゆず
…クローズド・サークル、ですか
(スマホを出して、確認)
なるほど、圏外ですね

……ふふ、この地に、こんな童謡があるのはご存知ですか?
♪ひとつ、ひとりで水汲んで
ふたつ、ふたたび戻らない
みっつ、見兼ねたあの人が
よっつ、夜に飛び出した
いつつ、いつまで待てども戻らない
むっつ、無残な姿で見つかれば
ななつ、七夜過ぎれども
やっつ、やっぱり犯人分からない
ここのつ、このままではきっと…
とう、とうとう皆居なくなる

やだな、ただの童謡ですよ?
…え?何故知ってるかって?
ふふ、わたし、実は探偵でして
分類では安楽椅子探偵、ですかね?
文学少女探偵でやらせて貰ってます

……すみません、食事の途中ですが
ひどい眠気が…
部屋で休みますね



 ピカリとまた、窓の外で稲光が炸裂し、数秒もたたぬうちに雷鳴がびりびりと洋館を揺らした。嵐はますます近づいているようだ。
「……クローズド・サークル、ですか」
 スマホを出して、確認してから立ち上がったのは御園・ゆず(群像劇・f19168)。
「なるほど、圏外ですね」
 席に残っている人々を見回してから、ゆずは語り出し、
「……ふふ、この地方に、こんな童謡があるのはご存知ですか?」
 そして歌い出した。

「♪ひとつ、ひとりで水汲んで
ふたつ、ふたたび戻らない
みっつ、見兼ねたあの人が
よっつ、夜に飛び出した
いつつ、いつまで待てども戻らない
むっつ、無残な姿で見つかれば
ななつ、七夜過ぎれども
やっつ、やっぱり犯人分からない
ここのつ、このままではきっと……
とう、とうとう皆居なくなる」

 素朴な旋律であったが、歌詞はまるで連続殺人事件を歌っているかのような不気味なものである。。
「やだな、ただの童謡ですよ?」
 シン、としてしまった晩餐会の席を見回し、ゆずは笑った。
 似非文豪がメモを取るのも忘れた様子で尋ねる。
「君、どうしてこんな歌を知っているのだ?」
「ふふ、わたしも実は探偵でして。分類では安楽椅子探偵、ですかね? 文学少女探偵でやらせて貰ってます」
 探偵なので、島や周辺地域の下調べもバッチリしてきたと言いたいのだろう。
 しかし文学少女探偵は、急にふらついてこめかみのあたりを手で抑えた。
「……すみません、食事の途中ですが、ひどい眠気が……」
 テーブルがわずかにざわめく。
 こんなに急に眠気が襲ってくるなんて、まさか食事や飲み物に眠り薬が……?
 誰もの脳裏にそんな疑問が過ぎったが、それを口に出す間もなく、
「部屋で休みますね……」
 ゆずはよろよろと食堂を出ていってしまった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
被害者役かあ。それも孤島、絶好のロケーション。
とは言っても悪ぶるのはボロでそうだしうーん…そうだ、アレで行こう。

この嵐は本当に嫌だねえ、明けるまでもう暫くはかかりそうだ。
ああ、航海士(の役)だからね、天候を読むのは得意なんだ。
小説のネタ?そうだね…大昔にここの近海で財宝を積んだ船が沈没したって噂、伝承を知ってるかい?
何でも偉ーい人が船上で仲間割れして海の藻屑になって怨念が、とか。
今回ここに来たのはその宝が目的でね。
嵐が過ぎたらその噂を確かめようと思ってるんだ。
真偽不明だけどそういう浪漫を追う過程も楽しみだ、と人良さそうな感じで笑ったり。
…総取り狙いなら多分狙われるよねー。

※アドリブ絡み等お任せ



 語り手として最後に残ったヴィクトル・サリヴァン(星見の術士・f06661)も、皆の話を聞きながら悩んでいた。
「(被害者役かあ。それも孤島の洋館、絶好のロケーション。なんかおもしろい話をしたいところだよね。とは言っても悪ぶるのはボロでそうだし。うーん……そうだ、アレで行こう!)」
 と、思いついたのは。
「この嵐は本当に嫌だねえ、明けるまでもう暫くはかかりそうだ」
 ガタガタと揺れる窓をみやり、ヴィクトルは重たげに口を開いた。
「ああ、僕は航海士だからね、天候を読むのは得意なんだ」
 役柄は、ベテラン航海士という設定にしたようだ。
「小説のネタを求めているのだね、そうだね……話してしまおうか。大昔に、ここの近海で財宝を積んだ船が沈没したって噂、伝承を知ってるかい?」
 似非文豪も、その場に残っている語り手も、驚いた顔で首を振った。
「何でも偉ーい人が船上で仲間割れして海の藻屑になって、その怨念が守っている宝があるとか。今回ここに来たのはその宝が目的でもあってね。嵐が過ぎたらその噂を確かめようと思ってるんだ」
 ヴィクトルは人の良さそうな笑いを、大きな顔に浮かべた。
「真偽不明だけどそういう浪漫を追う過程も楽しみだ。宝探しとはそんなものだろう?」
 晩餐会の席にいるのは、もはや似非文豪と2人の語り手のみであったが、宝と聞いてその誰もの目に、欲望の色が過ぎったような気がした。
 そして、広い館のどこかで、何者かが、カタリ、と静かに立ち上がったような気配もした。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『孤島の邸にて』

POW   :    警察も来ない離島だ。用心棒は必要ないかい?

SPD   :    大きな邸だ。修繕も必要だろう。はて、こんなところに扉が。

WIZ   :    島の地図や伝承を調査する。日記や書き付けは残されていないか。

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●2章
「……皆さん、おもしろいお話をありがとうございました」
 ホスト役の文豪・熊猫之介が立ち上がった。
「晩餐会はここまでに致しましょう。この後は、各自のお部屋に戻り、ゆっくりくつろがれてください。ああ……尚」
 大熊はうっすらと笑いを浮かべ。
「この屋敷には、前の持ち主の趣味で、数々の面白い仕掛けが施されているという言い伝えがあります。買ったばかりの私も、まだ調べきっておりませんのですが」
 客たちは思わず食堂を見回した。色硝子のはまった飾り窓に、重厚な木製のドア。石造りの大きな暖炉に、アールデコ調と見える豪奢なシャンデリア。天井も床も壁も分厚く、古く広い館に灯火は行き届かない。豪華な調度も目眩ましになるだろうし、確かに随所に仕掛けを施してあってもおかしくない。
「ご興味をもたれた方は、館の探索はご自由に……先に部屋に戻られた方々にも、そうお伝えください」

●文豪の書斎にて
 大熊は、屋敷の奥まったところにある書斎へと向かった。確りと鍵をしめたフランス窓を、雨と風が揺らしている。嵐は一向に止みそうにない。むしろ雨脚が強くなったようだ。
 だが、大熊は外の様子を意に介することもなく、大きな書き物机にの前に座り、メモ帳を開いた。晩餐会で客たちに聞いた話を書きとめておいたものだ。
「むふふ、面白い話が集まったぞ。皆の話を合わせれば、海洋冒険推理活劇が書けそうだ」
 大熊はほくほくと構想用の帳面を開いたが、
「おっとその前に」
 机から立ち上がると、サイドテーブルに用意してある水差しから茶色い液体をクラスに注いだ。愛飲している熊笹茶だ。
 大熊は熊笹茶をぐっと呷った……が、その途端。
「ぐっ……!?」
 喉を掻きむしって苦しみ始めた。
「ど……毒……?」
 大熊は部屋から出て助けを求めようとしたが、よほど即効性の毒らしく、扉へ行き着かずにもがき倒れ……すぐに動かなくなった。

 豪華な絨毯の上に倒れ伏した大熊……ぱん太は、苦悶の表情のまま、
「……やっぱ連続殺人ときたら、館の主人から殺されないとっすよね」
 と、ちょっと嬉しそうに呟いた。

●2章補足
 さあいよいよ連続殺人事件です!
 この章では、3章で影朧を誘き出すために、自由に殺されたり、殺されかけたりの演技をしてください。
 こういう風に殺されたいとか、こんな仕掛けにひっかかりたい等アイディアがあれば、ばんばんプレイングに書いてくださいませ。
 フラグメントや、ぱん太の殺され方はほんの一例ですので、どうぞ皆様の発想のままご自由に!
 特に浮かばないという方も、こんな部屋を調べてみたいとか、雰囲気だけでもお伝え下されば、こちらで屋敷の仕掛けなどを使って描写させて頂きます。
唯式・稀美
「思ったよりも奇妙な話が多かったけれど、まああの作家先生が小説を書いてさえくれれば……」
もう少しふざけた話をしても良かったかもしれないなあ。などと少し考えながら、ふと窓が開き雨が入り込んでいることに気がつく
「床が水浸しになってるじゃないか。酷いなあ」
窓を閉めようと近づいて、正面から胸に何かが突き刺さる
それは、氷!
氷でできた矢!
「これは! 溶けたことで凶器が無くなるというあまりにも古典的な方法! 雨で水浸しにして氷が溶けたときに出る水の隠ぺい方法までしっかりしているなんて!」
同時に、UCを発動させる。探偵は狙われるものだ。いざという時の奥の手が、まさかこんな時に役立つとは



「思ったよりも奇妙な話が多かったけれど、まああの作家先生が小説を書いてさえくれれば……」
 唯式・稀美は、そんなことを呟きながら与えられた客室の扉を開けた。
彼女の部屋は2階にある。部屋にある主な家具は、がっちりした大きなベッドとクローゼット、華奢な書き物机、小さな丸いテーブルにそれぞれ揃いの椅子。食堂と同じように、洋風の調度になっている。
「もう少しふざけた話をしても良かったかもしれないなあ……」
 稀実はまだぶつぶつ言いながら、バスルームへ続くドアを開けた。バスルームも洋風で、レトロな猫足のバスタブが置かれている。
「あれ、窓が開いてるじゃないか」
 灯りをつけた稀実は、バスルームの奥の窓が開いていることに気付いた。雨風が容赦なくごうごうと吹きこんでいる。
「床が水浸しになってるじゃないか。酷いなあ。お風呂場だからよかったようなものの」
バスルームとはいえど、嵐の夜に窓を開けておく趣味はない。稀実は閉めようと急いで窓に近づいた――そのとき。
シュッ。
「ぐっ!?」
 外から何かが飛んできて、正面から稀実の胸に突き刺さった。
 猟兵でなければ死んでいたかもしれない狙い済ました一撃であったが、
「そ、そんな……この私がこんなところで死ぬはずが……」
 稀実は咄嗟にユーベルコード【探偵の死んだふり】を発動した。この技は、命に関わるような傷を負った際に、偽装死体をその場に残し、離れた位置に本体を現すことができるのだ。
「ふう、いざという時の奥の手が、まさかこんな時に役立つとは」
 窓際から少し離れたところに姿を現した稀実は、額の冷や汗を手で拭った。探偵は狙われるもの、という心構えでマスターしておいた技が役だった。
「一体何に撃たれたんだろう?」
 危機一髪だったが、ここからが探偵の本領発揮だ。
稀実は窓辺に倒れている自らの擬装死体に近づき、まじまじと観察する。
「これは……氷!」
 擬装死体の胸に刺さっているのは、氷でできた矢であった!
「これは! 溶けたことで凶器が無くなるというあまりにも古典的な方法! 窓を開けておくことや、お風呂場を現場にすることで、雨で水浸しにして氷が溶けたときに出る水の隠ぺい方法までしっかりしているなんて!」
 連続殺人犯のマニアックさに驚嘆する稀実であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

黒鵺・瑞樹
アドリブOK、殺され方お任せ

館の主人が殺されたとなると俺はその現場検証したくなる。
毒の種類の特定とか。……でもこれ芝居だからなぁ。

とりあえず事件発覚してようがしてまいが館の探索しよう。
猟兵の仕事しててもこういう建物の見学ってそうそうできるもんでもないし。
エンパイアではもちろんだけど、他の世界でも普通あんまり見ない作りだしな。
とりあえず(感激の)表情隠しながらあちこち動いてりゃ不審人物っぽく見えるだろうし。その過程で何か見つけたっぽくでもいい。
でもこの仕事のあとちゃんと見学できないようなら、しっかり探索終わってから事件に合いたい。
UDCとかじゃこういう和洋折衷デザインの建築あんまり見ないんだよ。



「猟兵の仕事してても、こういう建物の見学ってそうそうできるもんでもないしな」
 黒鵺・瑞樹は、せっかくの機会だからと、館を探索していた。
「エンパイアではもちろんだけど、他の世界でもあんまり見ない作りだしな」
 瑞樹は優雅な三つ折れ階段をじっくり観察しながら上っていく。
「ふうむ、建築技法とか手すりの造り自体は一見洋風だけど、柱に彫り込まれている彫刻は梅か。和風建築の大工さんが作ったんだろうな」
 そういえば、先ほどまでいた食堂も造作や調度は洋風だったが、天井は格天井であった。
「UDCとかじゃ、こういう和洋折衷デザインの建築あんまり見ないんだよ」
 瑞樹は怪しい仕掛けがないか調べているようなキリッとした顔をしているが、実はすっかりレトロモダンな洋館に心奪われてしまっている。
「うん、でも、こうやってうろうろ調べまわってりゃ不審人物らしく見えるだろうし……」
 と、二階に上っていくと、奥まったところにある部屋から、ドサッという音が聞こえてきた。
「あの部屋って、大熊の書斎じゃないか?」
 瑞樹はその扉に駆け寄ってノックした。
「大熊先生、どうかしたのか?」
 返事がない。試しにノブを捻ってみると、鍵はかかっておらず、扉は容易く開き……。
「あっ、大変だ!」
 扉に腕を伸ばした姿勢で、館の主が倒れていた。顔はわざとらしい苦悶の表情だ。傍らにしゃがみこみ脈を取ってみるが、すでに事切れている(ことになっている)。
 大熊の死に様や、床に転がったグラスの様子などから、毒殺らしいと見当はつく。
「館の主人が殺されたとなると現場検証が必要だろうな……毒の種類の特定とか」
 一応真剣な顔で呟いてみるが。
「(……でもこれ芝居だからなぁ。建物の見学を優先したいなあ)」
 なにしろ死んでいるはずの文豪のパンダ鼻が今にも笑い出しそうにひこひこしてるし。
 などど、一瞬ブレてしまった瑞樹の思考を見透かしたように、
 ガッツッ!
「ウッ」
 後頭部にジャストミートで、でっかい信楽焼の狸が落ちてきた!
 瑞樹の頭がクッションになったのか、ごろりん、と狸は割れもせずに床に転がったが、
「(い、痛い……猟兵だから死なないけど……痛いって……)」
 瑞樹は大熊に重なるようにして倒れ伏した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

御園・ゆず
部屋に籠もって、数時間
食事の途中で出てきてしまったし
何より!のどが!乾きました!

日付が変わるか変わらないか
そんな曖昧な時間に部屋を抜け出します
目指すはキッチン
……ひとつ、ひとりで水汲んで、か

丁寧に敷き詰められた廊下の絨毯は
足跡を吸収して
窓を叩く雨風が気配を塗り潰す

瞬間、背中側から鋭い痛みと衝撃
…刺された?
声を上げる間もなく、力は抜けて倒れ込む
血溜まりは絨毯に染み込んで
嗚呼、熱い。痛い。
遠のく意識

という‘演技’
待ってくださいこれめっちゃ痛い
痛い痛い痛い痛い
死なないけど痛い!
これ実はとっても拷問なのでは?!
ほんと痛いんですけど
やり過ごす為に数を数えましょう
モルフォ蝶がいっぴき、モルフォ蝶がにひき…



 ギギィ、と御園・ゆずの客室の扉がゆっくりと開いた。廊下にひょっこりと顔を出したのはゆず本人だ。
 眠り薬を盛られたというテイで、彼女が部屋に籠もって数時間が経った。食事の途中で出てきてしまったので小腹が空いてしまったし……。
「何より! のどが! 乾きました!」
 時刻は、日付が変わるか変わらないか、そんな曖昧な時間だ。
 目指すはキッチン。
「……ひとつ、ひとりで水汲んで、か」
 数え歌を口ずさむが、丁寧に敷き詰められた廊下の絨毯は、歌声も足跡も吸収してしまう。窓を叩く雨風も一層激しさを増しているようで、一切の気配を塗り潰し、他者の気配どころか、自らの実存さえ怪しくなりそう――と、心細さのような思いを抱いた瞬間。
 ゆずは、背中側から鋭い痛みと衝撃を感じた。
「(……刺された?」」
 声を上げる間もなく、全身から力が抜けて、ゆずは床に崩れ落ちた。
 流れ出た血は一瞬血溜まりを作ったが、すぐに絨毯に染み込んでいくのが、霞んでゆく目にも見えた。

――嗚呼、熱い。痛い。

 遠のく意識……という『演技』なのではあるが、
「(待ってください、これめっちゃ痛い! 痛い痛い痛い痛い!!)」
 ゆずは死んだふりをしながら、心の中で悲鳴を上げていた。
「(死なないけど痛い! これ実はとっても拷問なのでは?! ほんと痛いんですけど!!)」
 猟兵でも痛いものは痛いのだ。
「(やり過ごす為に数を数えましょう。モルフォ蝶がいっぴき、モルフォ蝶がにひき……)」
 痛みのあまりか出血のせいか、美しい青い蝶が飛び交う幻覚が見えてきたような気がするゆずであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フロッシュ・フェローチェス
※アドリブ歓迎
相手の凶刃にかかったフリをしろ、だったっけ。
でも何が来るか分からない以上……ここは黙って待っておいた方が良いだろうか?
いや少し歩き回ってみよう。何かしら仕掛けがあるかも――ん、これはスイッチ?
いつの間にか踏んでいたのか……ってこれどいたら不味いんじゃ……!
しまったっ!?こんな古典的な罠に引っかか――うわぁああぁぁ!?

――なんちゃって。なんとか二つばかり、利点を活かせたね。
アタシの体はまぜこぜでさ……早業でずらしたのもあるけど、元より急所はそこじゃない。
あとUCを使ってのダッシュと、超速の反撃も交えさせてもらったよ。
……後は時が来るまで少し様子見だな。



「相手の凶刃にかかったフリをしろ、だったっけ」
 宛がわれた客室を点検し終えたフロッシュ・フェローチェスは、ぽふん、と大きなベッドに腰かけた。ベッドももちろんレトロな造りだが、座り心地は悪くない。
「でも何が来るか分からない以上……ここは黙って待っておいた方が良いだろうか?」
 とりあえずこの部屋は安全なようだから……いやまさか、猟兵たるもの、ここでじっとしてはいるわけにはいかない。
「少し歩き回ってみよう」
 部屋を出たフロッシュは、1階の階段裏に地下室らしき入り口を見つけた。
「地下室……というより、半地下か」
 用心深く急な階段を降り、薄暗い明かりをつけてみると、そこは食糧庫のようだった。とはいえ、主人である大熊がこの館を入手してからまだ間がないので、前の家主が残していったらしき樽や空き箱が転がっているだけで雑然としている。
 部屋の隅っこを、鼠が駆け抜けていった気配がした。
「何かしら仕掛けがあるかも」
 フロッシュが、壁際の棚などを観察しながら倉庫に踏み込むと。
 カチ。
 小さな音と共に、わずかな脚応え。
 違和感に足元を見下ろすと、石造りの床と同化しそうな色の、地味で小さなタイルを踏んづけている。
「ん、これはスイッチ? いつの間にか踏んでいたのか……って、この手のスイッチって、どいたら不味いんじゃ……?」
 フロッシュはどこかにこのスイッチと連動している仕掛けがないかと、壁や天井を見回した、その時。
 シュッ。
 棚の隙間の暗がりから発射されたのは、一本の矢。
「しまったっ!? こんな古典的な罠に引っかか――うわぁああぁぁ!?」
 ザクッ。
 その矢はフロッシュの胸の真中に突き刺さり、
「う……」
 フロッシュは、その矢を両手で握りしめたまま冷たい石の床へと倒れた。

 ――なんちゃって。
 死んだふりをしながら、フロッシュは小さく舌を出した。
「なんとか二つばかり、利点を活かせたね。アタシの体はまぜこぜでさ……早業でずらしたのもあるけど、元より急所はそこじゃない」
 さらにユーベルコード【レイジング・スパーク】を発動していたのだ。スピードスターの彼女が更に加速し、外部からの攻撃を遮断できる技だ。
 矢は胸に深々と刺さっているように見えるが、急所からも外れているし、ほんの浅くしか刺さっていない。フロッシュにとってはほんのかすり傷なのだ。
「……後は時が来るまで少し様子見だな」
 死んだふりをしながらも、フロッシュは五感を研ぎ澄まして周囲の気配を探り続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニコリネ・ユーリカ(サポート)
あらあら、盛り上がってるわねぇ
お忙しい所、お邪魔しまーす!
新しい販路を求めてやってきた花屋です
宜しくお願いしまーす(ぺこりんこ)

~なの、~なのねぇ、~かしら? そっかぁ
時々語尾がユルくなる柔かい口調
花言葉で想いを伝える事も

参考科白
んンッ、あなたって手強いのねぇ
えっあっヤダヤダ圧し潰……ギャー!
私も気合入れて働くわよー!
悪い子にはお仕置きしないとねぇ
さぁお尻出しなさい! 思いっきり叩いてあげる!

乗り物を召喚して切り抜けるサポート派
技能は「運転、操縦、運搬」を駆使します

広域では営業車『Floral Fallal』に乗り込みドリフト系UCを使用
近接では『シャッター棒』を杖術っぽく使います

公共良俗遵守



「あらあら、盛り上がってるわねぇ」
 あちこちに死体(の演技中)が転がっている館を見て回りながらニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は、うふふと、楽しそうに笑った。
「お忙しい所、お邪魔しまーす! 新しい販路を求めてやってきた花屋です。宜しくお願いしまーす。さあっ、私も気合入れて探索するわよー!」
 愛想良くぺこりんこ、と頭を下げたニコリネが張り切って向かったのは、花屋なだけに、温室。とはいえ、大熊が購入するまで何年も人が住んでいなかった館の温室であるから、かさかさに枯れた草と枯れた花、空っぽの花器や植木鉢が少々転がっているだけなのだが。
「んんー、立派な温室なのに勿体ないわねえ」
 硝子張りの温室は3畳ほどの大きさがあり、微妙に歪みの入った大正硝子も、燦々と日光が降り注ぐような日には良い雰囲気だろうと想像できる。ただし、今となっては、何カ所も割れているし、今夜はそこから雨風が容赦なく降り注いでおり、温室全体もガタガタと揺らいでいるので、むしろお化け屋敷風であるが。
「この館に相応しいお花はなにかしら……」
 ニコリネは少し考えて、トリカブトを思いついた。
「何しろ日本三大毒草だし、花言葉も怖いし、連続殺人事件の起きる館にはピッタリじゃないかしら。トリカブトの館っていうのはどうかしらね、うふふ」
トリカブトの花言葉は『騎士道』『栄光』『人嫌い』『厭世家』『復讐』などである。
「お花自体は上品な青紫で綺麗だし、いいと思うのよねぇ」
 と、自分の思いつきに悦に入っていると。
 ギギィ……。
 嵐による軋みとは違う音が背後から聞こえてきた。微かな音だが猟兵の耳は聞き逃さない。
 ニコリネがサッと振り向くと、温室と母屋を仕切っている重たそうな扉が彼女めがけて倒れてきているではないか!
「えっ、あっ、ヤダヤダ圧し潰……」
 ニコリネは咄嗟に、いつもの戦闘のように営業車『Floral Fallal』に乗り込んで難を逃れようと考えた。しかし、今夜は難から逃れてはいけない。連続殺人の被害者になりきらねばらないのだから……!
「ギャー!」
 ニコリネは、甘んじてドアに圧し潰された。

成功 🔵​🔵​🔴​

長峰・モカ
※アドリブ、絡み、歓迎。死に方など詳細はお任せ。

「とりあえずこの辺は気になるよねぇ」
 話がウケず、怒って部屋に戻ってきて。お風呂でゆっくりした後、改めて部屋を見回すと、この屋敷の見取り図を発見。
 この見取り図を見て、違和感がありそうな場所を探索に行こう。仕掛けがたくさんある館みたいだから、見取り図には書かれてない部屋とかもあるかも。
 扉を開くと、何かしらの仕掛けが発動したようで頭部に鈍痛。ツッコミで叩かれる部分ではあるけど、それとは違う鈍痛、血が頭からどろりと垂れ、その身は床に倒れる……という演技。
 最後、死んだ演技をしたら、UCで召喚しておいた追っかけファン達が見つけてくれるんじゃ無いかな。



 話がウケず、怒って早々に部屋に戻った……という演技中の長峰・モカは、早めに下がれてこれ幸いとばかり、ゆっくりとレトロなお風呂を楽しんだ。
「ふー、いいお湯だったわ」
 ほかほかと湯気を立てながら、改めて部屋を見回すと。
「あ、あれ何?」
 ライティングディスクの下という、微妙に見つけにくく、且つ微妙にわざとらしい場所に紙切れが落ちているのを発見した。
 拾って広げてみると、屋敷の見取り図である。
「ふむ……」
 あんなわざとらしい場所に落ちていたってことは、これも連続殺人事件の仕掛けのうちなのだろうが、敢えてそれに引っかかってやるのが今夜の任務である。
「こことか……ここ。違和感があるよね」
 見取り図上で違和感のある場所を、探索してみることにした。
「仕掛けがたくさんある館みたいだから、見取り図には書かれてない部屋とかもあるかも」
 モカがやってきたのは、食堂の近くにある図書室である。
「とりあえずこの辺は気になるよねぇ。図面と図書室の広さが合ってないような気がするのよ」
 図面上より、実際の図書室の方が狭いのだ。
「この本棚の向こうの壁がおかしいわ」
 洋書がぎっしり詰まった本棚の向こう、隣室に接している壁が異様に厚いように思える。本棚に仕掛けがあるのは館ミステリの定番だ。モカは片っ端から本を棚から出していく。
 すると。
「あっ、謎のレバー発見!」
 いかにも『引いて、引いて』と言っているような、金属製のレバーが壁から突き出しているではないか!
「よし、引いちゃうよ!」
 ぐいとレバーを引くと、大きな書棚が、ガギガギガギガギ……と大きな歯車が噛み合うような音を立てて手前に開いた。
「おお……」
 現れたのは、秘密の部屋。但し、真っ暗でどんな部屋かも、広さもわからない。
「照明あるのかしら」
 モカは秘密の部屋の入り口に手を突っ込んで、周囲の壁際を手探りした。
「あ、スイッチがある」
 指先にスイッチが触り、躊躇なくそれをカチっと押すと。
 ガッツーーーーン!
「うあっ」
 モカの頭部に重たいものが落ちてきた。部屋の入り口でモノが落ちてくる罠は、古典的コントの定番ではあるが、これは痛い。
「ってか……血が……」
 頭から血がどろりと流れてきた。よろりと跪きながら見れば、落ちてきたのは金盥などではなく、金属製の壺であった。
「ひどい……これは痛いはずだわ……」
 猟兵なのでこのくらいのダメージならば痛いだけで大したことはないのだが、今は演技力を発揮すべき時。
「さぁ……今日もネタやるよ……」
 モカはそっとユーベルコード【きっと来てくれる追っかけファン達】を発動しながら、床へと倒れ込んで死んだふり。
「おっかけファン達、私の死体、見つけてくれるかなぁ……」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクトル・サリヴァン
いやあ中々楽しそうな空気になってきたねえ。
さて俺も寝室に戻って休むとするかな。
和室なら有り難いんだけども…というかベッドじゃなければいいというか。
寝相が何分悪いものでね、転げ落ちて起こされるのは御免被りたい。
そして寝室へ向かい、灯りを落としたら窓から見える海に奇妙な灯りを発見。
この嵐の中誰が?と疑問を抱いた瞬間、やたら重そうな箪笥が倒れ込んでくる。
とりあえずそれはシャチ尾でガード!
いきなり仕掛けて来るなんて、と気を抜いてたら時間差で吊り天井が落ちてきてぐえー。
…箪笥の奥行分隙間できてたから一応死亡回避はできたけど、
中々重いから脱出には時間かかるなーとUCで回復しつつ思案。

※アドリブ絡み等お任せ



「いやあ、中々楽しそうな空気になってきたねえ」
 ヴィクトル・サリヴァンは自らに宛がわれた客室で、館のあちこちから聞こえてくる物音や悲鳴、そして物騒な気配を感じていた。
 彼の部屋は、事前にリクエストしていた通り、和室にお布団である。ベッドは苦手なのだ。なにせ大きいし、丸いし、寝相も悪いので。
「お布団、ありがたいね。転げ落ちて起こされるのは御免被りたい。さて、何が起きるかわからないけど、少しは寝ておこうかな」
 ……というのももちろん演技。この館のことである、寝込みを襲ってくるような仕掛けもあるに違いない。
 ヴィクトルは、ぽち、と和風の灯りを消し、開いていた雪見障子を閉めようと窓際に近づいた……すると。
「おや?」
 窓から見える海に、奇妙な灯りを発見したのだ。ぽつんとひとつ、オレンジ色の弱い光が波間を漂っているように見える。
「この嵐の中、誰が?」
 と、首を傾げた途端。
「わ!?」
 ドーーーーン。
 いきなり倒れてきたのは、部屋に備え付けの古そうな和箪笥であった。咄嗟にシャチ尾でガードしたので頭直撃は避けられたが、やたら重たい。
「地震があったわけでもないのに箪笥が倒れるなんて……ということは、これも人殺しの仕掛け?」
 と、尾っぽで支えている箪笥をそろそろと退かそうとした時。
 ズモモモモモ……と不気味な震動が部屋を襲った。
「え。え、今度こそ地震!?」
 と思ったら。
 ドーン!
「ぐえー、今度は吊り天井!?」
 和室の天井が一気に落ちてきた。
 これも箪笥を支えていたおかげで隙間ができ、ヴィクトルのダメージは少なく済んだのは不幸中の幸いか。
 でも。
「お……重い」
 四つん這いになった背中と尾っぽで箪笥と天井を支えているわけだから、そりゃあ重いだろう。
「中々重いから、脱出には時間かかるだろうなー」
 とりあえずユーベルコード【活力の雷】でビリビリ回復を施し、ヴィクトルは、さていかにしてこの惨状から脱出するか……と、大変そうな姿勢のまま思案する。


 ――と。
 ヴィクトルは感じた。
 猟兵とは違う気配が、館の奥で動き始めたことを。
「……出たか、影朧」
 おそらく館のあちこちで死んだふりをしている仲間たちも、同じ気配を察したことであろう。
「いよいよ本番だね」
 ヴィクトルは怪しげな気配を慎重に探りながら、箪笥と天井から脱出するタイミングを計りはじめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ダークプルティア『ダーク・グロル』』

POW   :    心を蝕みます。ダークネスファウルハイト
【恨みや憎しみの怨念】を籠めた【ギザギザとした形状の闇魔刀】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神の正常さ】のみを攻撃する。
SPD   :    果す為なら全力を。ダークネスノインシュナイデン
自身の【恨みや憎しみを籠めた闇魔刀の刀身】が輝く間、【闇魔刀】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    貴方は必ず殺します。ダークネスラッヘゾルダート
自身が【恨みや憎しみ】を感じると、レベル×1体の【刀や銃、マントを装備した仮面女学生兵士】が召喚される。刀や銃、マントを装備した仮面女学生兵士は恨みや憎しみを与えた対象を追跡し、攻撃する。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はシズホ・トヒソズマです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●3章
「ふふ……ふふふふ。たくさん死んだわね」
 嵐の夜。孤島の洋館の最奥、誰も知らない暗がりから含み笑いで現れたのは、ギザギザの刀を手にした女学生兵士であった。
「わたしたちはこの館で殺された」
 彼女はこの館の何代か前の持ち主の快楽殺人の犠牲になった女学生のうちのひとりである。殺されたのは彼女ひとりではなかったが、孤島での殺人ゆえ表に出ることはなかった。
「今夜の連続殺人はきっと世間の知るところとなる……そうすれば、わたしたちの事件も明るみに出るでしょう」
 恨みと憎しみに歪んだ笑みを浮かべながら、女学生兵士は館へと足を踏み出した。

●3章補足
 この章では、皆様の名演により現れた影朧を撃破してください。
 哀れな魂を救うことも可ですが、肉体と魂を鎮めることが必要ですので、戦闘は必須です。
フローリア・ヤマト(サポート)
『大丈夫よ、私達に任せて』
『うるさいわね……ちょっと黙らせるわ!』
呪いにより余命1年と少しの、クールな美少女です。
口調は上記のように少しツンとした感じですが、人間が嫌いなわけではなく、仲間や人々のことを心の底では大切に思っており、戦闘でもうまくサポートしようと立ち回ります。
また、敵に対しても怯むことはなく、時には挑発めいたセリフも交えながら、死角や弱点を突いて確実に仕留めることを狙って戦います。
フローリアのユーベルコードは、嵌めている「呪いの指輪」から黒い糸や影を放つ……みたいなビジュアルイメージなので、そのように描写していただけると嬉しいです。



 闇に閉ざされた館の奥から、圧倒的な負のオーラを抱いた影朧が現れた。それは恨みと憎しみによりこの世につなぎ止められた少女の姿をしている。
「……可哀想に」
 フローリア・ヤマト(呪いと共に戦う少女・f09692)は、近しさを感じる黒いオーラを纏った美少女……影朧『ダーク・グロル』に哀しげな視線を向けた。
「でも、大丈夫よ、私達に任せて。じきに、つらい時間は終わらせてあげるわ」
 すらり、とフローリアは【倭刀】を抜いた。それを青眼に構えてユーベルコード【深黒化】を発動する。念を籠めた呪いの指輪から、ぶわりと女人の髪のように黒い糸が吹きだした。糸は見る間に貴婦人が弔いの際に被るヴェールのように、繊細に編まれてゆく。その黒のヴェールはフローリアの愛刀にふわりと巻き付き、一体化した。
「ナマクラ刀が名刀に早変わりね」
 刀身に黒い模様が浮き出た刀は、破壊力を増している。
『あなたも、憎しみと恨みを背負っているようね』
 ダーク・クロルもギザギザの刃をもつ刀を構えた。仮面から覗く視線は、フローリアの中身を見透かすように鋭い。
『随分と頑張っているようだけど……あなたこそ、楽におなりなさいな!』
 ダーク・クロルはガッ、と床を蹴った。
『心を蝕みます……ダークネスファウルハイト!』
 クロルの刃には、精神の正常さを奪う技がかけられている。
「余計なお世話よ……ちょっと黙りなさい!」
 ギンッ、と黒い刃がギザギザの刃を弾き返し、
「たあっ!」
 その反動のまま振り下ろした刀は、クロルの左腕を大きく削いだ。
『くっ……!』
 クロルは飛び退き、左腕の傷を抑えながら屋敷の奥の暗がりへと退いていく。
 フローリアは追いかけようとして……思いとどまる。無理に追わずとも、仲間が仕留めてくれるだろう。

 気付くと、頬に浅い傷が出来ていて、血が流れていた。先ほど刃を交えた際、敵のギザ刃が掠めたのだろう。
 ――影朧の技で、心を蝕まれているかしら。
 その傷が自らの精神を犯しているかどうか、フローリアはしばし自らの内面に目を向け、大丈夫だと判断する。
「……ここまで来て、今更正気を失ったりしないわ」

成功 🔵​🔵​🔴​

栗花落・澪(サポート)
『僕は澪。よろしくね!』

日常は基本全力で楽しむよ
趣味は読書、音楽
特に自然と戯れる事が好き
星の瞬きも、雨音も…全てが美しい音楽だよ

よ、よく女子に間違われるけど…僕一応男だからね!

無邪気
いつでも笑顔でしっかり者
照れるとツンデレ

敵にも味方にも好意的に寄り添う
悲しい境遇の敵には
【優しい祈り】と共に攻撃を捨て
【オーラ防御、激痛耐性】で致命傷は避けつつ
敵の攻撃も叫びも全てを受け止める覚悟

戦意のない敵にも
飴をあげたりと友好的

いずれも最後は【催眠歌唱】で眠らせ
優しく攻撃、浄化

同情の余地も無いような敵には厳しい

基本戦術
【空中戦】を駆使しての【高速詠唱、属性攻撃、範囲攻撃】(属性種問わず)
トドメの場合【全力魔法】



「こんな素敵な洋館への招待、仕事じゃなければよかったのに」
 ため息を吐いたのは栗花落・澪(泡沫の花・f03165)。彼の趣味は読書と音楽。それから自然とふれ合い、そこから音楽を聞き取ること。そんな彼からすれば、この洋館への招待は、感性を磨く絶好の機会だったはずだ。
「でも……あなたはもっと可愛そう」
 それでも澪は、暗がりから出現した、既に腕に負傷しているダーク・クロルに、同情と好意の籠もったまなざしを注ぐ。
 しかし、クロルは。
『そんな風に思うのなら……わたしたちの事件を明るみに出すため、あなたも死んでちょうだい!』
 クロルは憎しみも露わな表情で、手下を召還した。
『貴方は必ず殺します……ダークネスラッヘゾルダート!』
 召還されたのは、仮面女学生兵士の一団。彼女らも一様に憎しみや恨みの漲った険しい表情をしている。彼女らも、そもそもの要因である過去の女学生連続殺人の被害者なのだろうか。
『撃て!』
 クロルの号令に、女学生兵士たちは一斉に発砲した。
 澪はひらりと跳んで銃弾を避け……同時に彼女らの悲しい魂に祈る。
「悲しい魂が救われますように……」
 避けきれなかった弾が澪をかすめたが、それを耐え、澪は範囲攻撃のユーベルコードを発動する。
「Clarus Virus……決して逃がさない」
 陰鬱な館の風景が、美しい森に一変した。木々から虹色に輝く花粉が舞い散り、さしものクロルも一瞬その美しい光景に見とれた。だが、この花粉は辛い花粉アレルギーをもたらすもの。
『う……ッ』
 クロルはじめ女学生兵士たちは、途端にせき込んで苦しみはじめた。
 攻撃どころではない敵の一団に、澪は【催眠歌唱】の技を使って子守歌を歌う。
 ひとり、ふたりと、女学生兵士たちが倒れていく。
『くっ……ここにいてはいけない』
 クロルは手下を残して再び暗がりに逃げていったが、澪は歌い続ける。せめてここに召還された女学生兵士たちに、安らかな眠りを――。

成功 🔵​🔵​🔴​

黒鵺・瑞樹
自分らの事件を表に出すための行動だったのか。
しかしそういう理由とは言え、正直はた迷惑としか言いようがないんだが。
それに何代か前っていったら結構前じゃないのか?
証拠とか残ってるのかなぁ。
どっちにしろ影朧は一旦倒さないと。説得は他の猟兵に任せる。痛かったし。

右手に胡、左手に黒鵺の二刀流。
【存在感】を消し【目立たない】様に死角に回り、可能な限り奇襲をかけ【マヒ攻撃】【暗殺】を乗せたUC菊花で攻撃する。代償は寿命。
敵の攻撃は【第六感】で感知、【見切り】で回避。回避しきれないものは黒鵺で【武器受け】して受け流し、【カウンター】を叩き込む。
それでも喰らうものは【激痛耐性】【オーラ防御】で耐える。



「自分らの事件を表に出すための行動だったのか」
 黒鵺・瑞樹は、暗がりから現れた、手負いの影朧を見据えている。
「しかしそういう理由とは言え、正直はた迷惑としか言いようがないんだが。それに何代か前っていったら結構前じゃないのか?」
 そうね、とダーク・グロルも視線を逸らすことなく応じた。
『でも、私たちにとっては、ほんのつかの間』
 生者と死者では時間の感覚も違うだろう。
「死者にとってはそうなのだろうね。影朧となるまでにも時間がかかったのだろうし……でも、証拠とか残ってるのかなぁ」
『残ってるわ。ハッキリとした証拠が。法の手が本格的に入れば、この館でどれだけおぞましい所業が繰り広げられていたか自ずとわかるでしょう』
「そうなんだ」
 瑞樹は傷ましそうに頷いた。
「わかった、その証拠は俺らが必ず見つけて通報してやるよ……でも、どっちにしろ君らを一旦倒さないことにはね」
 説得は瑞樹の得意とするところではない。これ以上女学生兵士から話を引き出すのは、他の猟兵に任せることにしよう。
「とりあえず、いかせてもらうよ……痛かったし」
 スッと瑞樹の存在感が薄れた。しっかりと視線で捉えていたはずなのに、まるでその場から消えたかのように気配が辿れなくなる。暗殺者の本領発揮だ。
『くっ……』
 それでも長刃の刀を振り回せば、掠めるくらいはするだろうと、クロルは、精神を蝕むユーベルコードを発動する。
『心を蝕みます……ダークネスファウルハイト!』
 しかしその時には、右手に胡、左手に黒鵺、二刀流の構えを取った瑞樹は彼女の背後へと回っていた。
『後ろか……ッ』
 反応が遅れたのは、ここまで猟兵仲間たちが与えてきたダメージのせいもあっただろう。
「はっ!」
 弾けるような気合い一発、ユーベルコード【菊花】を発動した瑞樹のふたつの刃は、クロルの小さな背中をそれぞれ九度、斬り裂いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(サポート)
クリスタリアンの聖者 × フォースナイト
10歳 女
122.9cm ピンクの瞳 銀髪(半ばからピンクにグラデーション) 赤茶色の肌
特徴 体の各所からダイヤモンドが生えている、
一人称
マリア
二人称
年上(名前)+お兄さん、お姉さん
同年代、年下(名前)+くん、ちゃん

主な戦術
サイコキネシスを基本とした超能力
魔術とも超能力ともつかない『奇跡』
クリスタライズで姿を消しフォースセイバーでの不意打ち

善良でお人好し
生まれながらの聖者であることに誇りを持ち、猟兵の仕事に強い義務感と責任感を持つが極々普通の子供の感性なので思慮深いとは言い難い

本気で世界全てを救う気でいるのが長所で
本気で世界全てを救える気でいるのが短所


唯式・稀美
「君は今夜二つの幸運に恵まれた」
「一つは、君は結局今日誰も殺すことができなかったということ」
「そしてもう一つは、この島に来たのが美探偵・唯式稀美だということさ!」
国民的スタアのオーラ防御を張り、情報収集と第六感、世界知識で過去にこの孤島で何があったかという全体像を推理する
「約束しよう。この島で真に起こった事件の、その真相を、探偵としての私がなんとしても明らかにすると。国民的スタアとしての私が世界に君たちの無念を届けると」
私に肉弾戦の心得は無く、私の戦い方は推理しかない
「君にこそ、私の推理を特等席で聞く権利があるとも」
ユーベルコヲドを発動させる。私の推理は、彼女に届くであろうか



『今夜の客たちは随分殺したはずなのに……どうしてこんなに次々と出会うのかしらね?』
 手負いの影朧は、唯式・稀美と対峙していた。
「それは私たちが猟兵であるからと、この私が名探偵であるからさ」
 稀美はすらりとした美脚で仁王立ちし、ダーク・グロルを見下ろした。
「君は今夜二つの幸運に恵まれた」
『幸運?』
「一つは、君は結局今日誰も殺すことができなかったということ」
『くっ……それのどこが幸運なの』
 グロルは悔しそうに呻いたが、稀美は頓着せずに時代がかった態度で台詞を続ける。
「そしてもう一つは、この島に来たのが美探偵・唯式稀美だということさ!」
 稀美を覆ったオーラが、スポットライトのようにキラキラと光る。
「君にこそ、私の推理を特等席で聞く権利がある。君も……いや、君たちも、この館に言葉巧みに誘き寄せられたのだろうね」
 グロルはギザ刃の刀を構えて稀美をにらみ据えている。隙あらば打ちかかろうとしているのだろう。だが、そこで稀美はさりげなくユーベルコヲド【美探偵の事件簿・解決編】を発動した。
「さて、今回の事件、私には一つ大きな謎がありました――聡明そうな君が、どうしてこんな怪しげな館に誘き寄せられてしまったかだ」
 このユーベルコヲドは、披露する美しき推理によって、その場で話者の推理を聞き続けなければならないという気分にさせてしまうものだ。さあ、稀美の推理はグロルに届くであろうか――?
「君のその服装、それから訓練を受けたとしか思えない強さ……君たちは、この館で戦闘訓練を受けるために集まったのではないかね?」
 びくり、とグロルの傷ついた肩が震えた。
「おそらく君たちは女学生として……女性として、社会において性差による嫌な思いをしていたのではないか? せくはらとか言うヤツだな。それが悔しくてならなかったところに、この館の主だった男に『自分の館で訓練を施して強くしてやる』とでも囁かれた……違うかい?」
 グロルは頷かない。けれど否定もしない。

 そこへ。
「光あれ!」
 ピンクの瞳に銀髪、赤茶色の肌の各所からダイヤモンドを生やした、クリスタリアンの美しい少女が現れた。アヴァロマリア・イーシュヴァリエ(救世の極光・f13378)だ。
 肉弾戦が苦手な稀美を補助するため、隠れ潜んでいたのだ。
 アヴァロマリアは、自らを光のエネルギー体に変え、グロルを追尾する無数の光線を発射している。寿命をを削る、命がけの技だ。
『……ウッ』
 聖なる光に撃ち抜かれ、グロルはうめき声を上げる。
『あなたたちは……私に同情するようなことばかり言うのに、私を殺そうとするのね』
 猟兵ふたりを見据える目には、恨みと憎しみが溢れんばかりに滲んでいる。
「違うの!」
 目映いばかりの光の中、アヴァロマリアが悲痛な声を上げる。
「貴女を……世界を、救いたいからなの。マリアたちに任せて、貴女は楽になって!」
 そうとも、と稀美も言葉をつなげる。
「約束しよう。この島で真に起こった事件の、その真相を、探偵としての私がなんとしても明らかにすると。国民的スタアとしての私が世界に君たちの無念を届けると――」
 猟兵たちの真摯な言葉を遮るように、グロルは叫んだ。
『果す為なら全力を。ダークネスノインシュナイデン!』
 ギザ刃の刀……恨みや憎しみを籠めた闇魔刀の刀身が、黒く輝いた。
『私と一緒に死ねえええっ!』
 捨て身の勢いでグロルはアヴァロマリアに斬り込んだ。九度、刃が翻る。
 だが、アヴァロマリアのユーベルコードには被ダメージを軽減する効果もある。
「ごめんなさい。マリアは、貴女を救わない!」
 聖なる光が一層強くなり、幾本もの光線がグロルに浴びせかけられ……その光から逃げるように、影朧はまた暗がりへと消えていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

響納・リズ
お話は聞かせていただきましたわ。
あなたは、この地で辛い想いをしたのですね。
良ければ、その全てを聞かせていただけませんか?
たとえ、長くなってもかまいませんわ。徹夜は得意ですもの。
最後まで聞かせていただきますわね。
私はそれを手帳にしたためて、あなたの大事な方にお渡ししましょう。
それが誰でも私は必ず、届けると誓いますわ。

あなたの気持ちは晴れましたか?
後は、あなたを想う皆様が、あなたの転生を願っております。
私はあなたを薔薇の花びらで、転生を促すことしか出来ませんが、それでよろしければ、あなたを導きましょう。
最後に手を握り、そして。
「転生したあなたに、またお会いしたいですわ」

※アドリブ・絡み、大歓迎。


フロッシュ・フェローチェス
※アドリブOK
……そういう経緯があったわけか。
どんな奴が企てたかと思えば――これは、少し切り替えないとダメか。
アタシが出来るのは、敵の攻撃に付き合い、またこちらもとことん攻める事だけ。事件の件には確り向き合う、けど……その前に戦わないとね。

短刀の刃を伸ばして横薙ぎ、受け止められたらすぐさま更に伸ばして突く二回攻撃だ。
長さを戻したら短刀を投げつけるフェイント、早業で回り込み蹴るよ。
自動回収でキャッチしたら複数の残像で惑わせ、距離を取って再び刀身を伸ばす刺突だ。

ここでわざと近寄らせ、ダメージは承知でUC発動を優先。
そのまま連続攻撃をはじく形で回避しつつ、切りつけよう。
無念は、晴らすよ……必ず――!


ベアトリス・アールエル
アドリブ連携歓迎

SPD

「そんな事件があったなんて、
さぞやあんたも殺された皆も浮かばれなかっただろう。
せめて今回集まった猟兵達で終わらせてあげるよ」


●攻撃
クイックドロウ、2回攻撃を活用した2丁拳銃での攻撃で様子を見ながら

フック付きワイヤーと飛行で空中戦でフェイント、咄嗟の一撃

UC「ヒルキ・ガース」による
早業、全力魔法を活用した電撃で刀の連斬に対抗だ
「刀で雷は斬れないよ!」


●防御
敵の挙動を学習力と戦闘知識で把握に努め
野生の勘、見切りで避けカウンター攻撃に繋げていく

かわし切れない攻撃は
力の方向を変えて怪力、武器受けで受け急所への直撃を回避

ピンチの仲間がいれば援護射撃、かばうで時間稼ぎ


ヴィクトル・サリヴァン
ああ、そんな事があったんだ。
となると今回俺達を襲ってきた仕掛けの幾つかはそのヤバイ誰かが作ったものなのか。
だってこんな大掛かりな仕掛け、後付けでやる難しいだろうし。
かつての犠牲者は今の加害者に、けれどそれは少々忍びない。
何とか止めないとね。

重いあれこれを押しのけつつ登場。
基本はなるたけ近づけさせず水の魔法で足をとったり水の鞭にして拘束、
隙を作り銛を投擲してUCの一撃を喰らわせよう。
怨念を否定はしないさ。けれど抱えたままここにいても何も変わらない。
俺達という目撃者、過去に何があったかを知る者もここにこれだけいる。
もう楽になっていいんじゃないかな?と成仏というか転生促したり。

※アドリブ絡み等お任せ



 満身創痍の姿で灯りの落ちた食堂に現れたダーク・グロルは、床に膝をついて呟いた。
『ここで猟兵たちに殺られたとしても……』
 まだいずれ、影朧としてこの世界に現れることになるのだろう。
 ただ存在を消されただけでは、彼女の怨念は消えはしない。それほどに、彼女がこの世に残した思いは強い。
「……!」
 部屋の入り口に気配が生じ、グロルは傷ついた体にむち打って立ち上がった。
「……お話は聞かせていただきましたわ。あなたは、この地で辛い想いをしたのですね」
 慈愛に満ちた声音で話しかけたのは響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)であった。
「良ければ、その全てを聞かせていただけませんか? たとえ、長くなってもかまいませんわ。徹夜は得意ですもの。必ず最後まで聞かせていただきますわ」
『……聞くだけきいて、結局私を殺すのでしょう? そうしてまた私たちの事件は闇に葬られる』
 いいえ、とリズはきっぱり首を振った。
「私はそれを手帳にしたためて、あなたの大事な方にお渡ししましょう。それが誰でも、私は必ず届けると誓いますわ」
『――事件を必ず明るみに出すと誓える?』
「もちろんです。私たち猟兵は、警察にも顔が効きますのよ」
 グロルはまだ不信感に満ちた目つきながら、自分の事件について語った。

 女性兵士となるための訓練を受けさせてやると誘われ、生ある頃のグロルたちは、秘密裏にこの孤島の洋館に集められた。女学生や、学生でなくとも同じ年頃の女性たちばかり十数名ほど。
 この館の主は、初老の退役軍人であった。
 集められてしばらくは、館の主は約束通り彼女らに兵士としての基礎訓練を行った。
 ――そして皆が戦闘の基本を身につけ、体力もついてきた頃。
 島全体を使って模擬戦をする、と主は言った。彼女たちに渡されたのは、模擬銃に模擬刀。
 模擬戦は、女性たちを紅白2組に分けて行われた。彼女たちは初めての模擬戦に心弾ませ、島のあちらこちらへと散っていった。

『……あの男は、私たちを狩った』
「え?」
『動物のように、狩ったの』
 館の主は、模擬の武器しか持たぬ女性たちを、本物の武器を用いて狩ったのだ――嬉々として。
『あの男は、はじめから私たちを狩りの獲物とするために集め、訓練を施したのよ……』
 グロルの全身から怒りが迸った。
『本物の武器に、模擬の武器で適うわけがない。ここは無人島だから逃げることもできない。あの男は私達に戦い方は教えたけれど、逃げ方や隠れ方は教えてくれなかった……だから、私たちは次々と……』
 グロルは怒りに耐えかねえたように叫んだ。怒りの発露がユーベルコードを発動するエネルギーとなる。
『貴方は必ず殺します!! ダークネ……!』
 しかし女学生兵士を呼び寄せる前に、グロルの胸元にどこからともなくシュッと刃が延びた。
『!?』
 グロルは飛び退いたが、
「……そういう経緯があったわけか」
 フロッシュ・フェローチェスが暖炉の暗がりから飛び出して、更に刃を伸ばす。パッ、とグロルの胸から血が飛沫いた。
「アタシが出来るのは、アンタの攻撃に付き合い、またこちらもとことん攻める事だけ。事件の件には確り向き合う、けど……その前に戦わないとね」
 グロルは閻魔刀で刃を振り払おうとしたが、その時には短刀・碧穿炉の長さはすでに通常に戻っている。
 そして唐突に。
 ザバァ。
 足下を大量の水が覆い、それにバランスを崩してグロルは転倒した。口に入った水は塩っ辛い。海の水だ。
「となると今回俺達を襲ってきた仕掛けの幾つかはそのヤバイ誰かが作ったものなのか。だってこんな大掛かりな仕掛け、後付けで設置するのは難しいだろうし」
 大きな食卓の下からのっそりと登場したのは、ヴィクトル・サリヴァン。自らの魔法で呼んだ海水に咳き込むグロルを大きな体で見下ろす。
 よく見れば、ヴィクトルの丸い体のあちこちは擦り傷や痣だらけだ。箪笥や天井の罠からやっと抜け出してきたのだろう。
 風も無いのにふわりと窓辺のカーテンが翻り、ベアトリス・アールエル(ツーヘッドドラゴン・f18089)も現れた。
「そんな事件があったなんて、さぞやあんたも殺された皆も浮かばれなかっただろう。せめて今回集まった猟兵達で終わらせてあげるよ」
 人情に篤いベアトリスは本気で傷ましげに語りかけるが、その優しい心を今のグロルは受け止めることができない。
『終わらない……終わるもんですか! 事件が明るみに出ない限り、私たちの恨みと憎しみが消えることはない。消えなければ、何度でも影朧として甦ることになる……』
 よろり、とグロルは水浸しの床の上に立ちあがった。
『心を蝕みます。ダークネスファウルハイト!』
 閻魔刀がベアトリスに振り下ろされた。まるで彼女の温かな心を蝕もうかとするように。
「つぅっ……」
 ベアトリスは飛び退いたが、豊満な胸をギザギザの刃が掠めた。この技によって肉体は傷つくことはないが、精神は削られる――。

 流れ込む。
 グロルたち、この島で殺された女性たちの恐怖が。
 痛みが。
 苦しみが。
 憎しみが。
 恨みが――ベアトリスを圧倒する。

 だが。
「さあ、追いかけて、齧り付いて――喰い千切れ!」
 ユーベルコード【大海より来たれり】を唱えるヴィクトルの野太い声に、ベアトリスは我を取り戻した。
 ガツン!
 猛烈な音がした。見れば、力強く投げられた銛がグロルの細い胴を壁に縫い止めた音であった。それでも喘ぎながら力尽くで銛を引き抜いたグロルに、嵐の海からそのままやってきたような勢いで、シャチが襲いかかる。
 波飛沫の中、ヴィクトルは語りかける。この影朧を、幸せな転生へと向かわせてやりたいという思いで。
「怨念を否定はしないさ。けれど抱えたままここにいても何も変わらない。俺達という目撃者、過去に何があったかを知る者もここにこれだけいる。もう楽になっていいんじゃないかな?」
 かつての犠牲者が今の加害者になってしまっているなんて、哀しすぎる。
 ベアトリスも精神を蝕む傷を乗り越え、ユーベルコード【ヒルキ・ガース】を発動した。
「刀で雷は斬れないよ!」
あらんかぎりの哀しみと魔力を籠めて空中に描いた魔法陣から、電魔法の大放電が起き、食堂を満たす。直撃したグロルの体が、青白く光る。
 同時に、白薔薇の花弁がグロルの周囲に舞い散った。
「この薔薇のように綺麗に滅して差し上げますわ!」
 リズのユーベルコード【白薔薇の嵐】だ。
 白い花弁と雷電とが相まって恐ろしいほどに美しい光景だが、それに紛れるようにフロッシュは短刀を投げた。
 グロルはぎりぎりでそれをかわしたが、そもそここれはフェイント。雷電と短刀と花びらに紛れて、フロッシュはもうグロルの背後にいる。
 ガッ、と脚を蹴りつけられ、そうでなくとも瀕死の状態であったグロルはたやすく床に伏した。
「お前にとっての刹那の間は、アタシにとっては酷く遅いから」
 あっ、と思った時には、抑え込まれ、喉元に短剣が突きつけられている。
 ユーベルコード【廻砲『P・X』】を使用したフロッシュの速さに適うわけもない。

 動きを封じたグロルに、猟兵たちはねばり強く語りかける。少しでも事件のことを教えて欲しい。グロルの気持ちが晴れるように、穏やかな転生へと導けるように。
 ベアトリスは優しい声で尋ねる。
「証拠があると言ってたね。それは何なんだい?」
『……わたしたちの死体よ。名札も一緒に埋められているから、身元もわかるはず』
 女学生兵士たちの死体は、殺された場所の近くにそれぞれ埋められている。骨を検分すれば、殺戮の痕も見つかるだろう。
「わかった、必ず見つけてあげるからね」
『島中に散らばっているのよ? 見つけられる?』
「必ず見つけます。私たちにはその力があります」
 リズは力強くそう言い、フロッシュも頷いて。
「貴女だけでも……自分がどこに居るか、分からないの?」
『私は……ここよ』
「ここ?」
『この食堂の、床下に埋まってる』
 さすがの猟兵たちも息を飲んだ。
 ゲホッ、とグロルはせき込み、その口から血が滴った。
『もういい……信じてみるわ……貴女たちを』
 観念したかのようにグロルは全身から力を抜いた。
 リズはグロルの冷たい手を握った。降り注ぐ花びらが一層白い。
「転生したあなたに、またお会いしたいですわ」
「絶対に全員分のご遺体を見つけてみせるからね」
「嵐が止んだら、すぐに本土から警察も呼んでくるよ。きっと君達の事件を明るみに出してみせる」
「無念は、晴らすよ……必ず――!」
 フロッシュは短剣の刃を細い喉に食い込ませ、一気に引いた。
 色を失った唇が、一瞬微笑んだように見え……哀しい影朧は、白い花びらにとけ込むように消えていった。

 朝には嵐が晴れ、猟兵たちは早速食堂の床下にもぐり込み、地面を掘り返してみた。
 グロルの言った通り、古い女性の骨が発見された。
骨は、ぼろぼろの軍服を着て、錆び付いたなまくら軍刀と共にあった――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月07日


挿絵イラスト