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ご城下美食珍騒動~鮭の魔力

#サムライエンパイア #戦後 #ご城下美食珍騒動

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●――極上の馳走を求めて
「秋じゃな」
「秋で御座いますな」
 いつの間にか葉は色付き、夏の盛りも越えて。
 夜は涼しさを増し布団を被って寝たくなる季節。
 食欲の秋を体現するとある藩では、秋の味覚について連日連夜激論が交わされていた。
 やれ栗ご飯だやれ焼き秋刀魚だと熱く語りながら藩主佐合篤胤を始めとしたわんぱく将軍一味は答えの出ない問い掛けを繰り返して、美味しいご飯の探求を続けていた。
 だがその議論に待ったを掛けたのは港から齎された一報。
「鮭とな」
「鮭で御座いますな」
 またいつものが始まったなと筆頭家老石渡実継は、そのごつい手指で顎先を擦った。
 蝦夷地の名産である鮭は季節物として高値で取引されているが、今年は豊漁のようで何時に無い数がこの藩にも運ばれていた。
 お陰で庶民も手を出し易くなったがその調理法はまだまだ完成されておらず、中には生食し腹を下した者も出ていた。
 即座に医者の手配と生食を禁ずる旨を出し混乱は収まったが、これを機に安全に鮭を美味しく食べるには何が良いのかと言う議論が持ち上がった。
 庶民の中で広まったそれは間も無く城にも持ち込まれ、秋の味覚王決定戦は一先ず置いといて先に候補たる鮭の調理法を巡っての激論が交わされる事となったのだ。
 この藩暇か。
「生食が出来ぬのなら火を通すしかあるまい。しかし熱を入れるにもその方法は木の根の如く。網羅するにも中々の難題だ」
「此処はやはり塩焼きが良いかと」
「確かに塩焼きは旨い。だが実継よ。それではこう、勿体無いではないか」
「と、申されますと?」
 石渡は勿体無いとの言葉に首を傾げてみせる。
 対する佐合はしばし言葉を捜していたが、漸く合点が行ったのかゆっくりと口を開く。
「海に出て川へ戻ってくる鮭は元々身に程好い塩加減が付いておる。となれば余計な塩は振らずに鮭そのものの旨味を引き出してみるのが良いと思うのだ」
「ははぁ、言われてみれば確かに。ただ炙っただけの鮭を米に乗せ湯を掛けて解すだけでも堪らぬ旨さでありますからな。特に飲み過ぎた日の翌日等はもう、腹にも舌にも優しい」
「とは言えそのまま焼くのでは芸がない。味噌汁に入れても良いが今度は塩気が強過ぎるし、大根おろしを味噌汁に入れると今度は旨味が薄まってしまう」
「そも大根おろしを使うのであれば、炙った解し身に合わせると言う答えが御座いますからな」
「ううむ、難しいものよな。生食が出来れば刺身や寿司にしても旨いと思うのだが。何せ焼いてあれだけ旨いのだからな」
「侭なりませぬなぁ」
 そうして頭を悩ませながら、今日もこの藩では鮭を美味しく食べる方法について議論が交わされるのであった。

●――奇妙な予知とその行方
「と言う訳で季節は鮭です。私は皮が特に好きなんですよねぇ♪」
 相変わらずの先も敵も読めない予知を披露するのは脇巫女姿の望月・鼎である。
 そろそろこの格好では寒そうな気もするが、当人は涼しい顔だ。
「脇を隠すとかえっちじゃありません?」
 妄言を吐く巫女はからからと笑いつつ話を続ける。
「今回は鮭がメインですねぇ。この中には知っている人もいるかも知れませんが、今回料理を出して頂くのは藩でも有名な寿司処『富永寿司』です。何とルイベを使ったお寿司も出ますよー♪」
 楽しげに語る巫女に、何人かの猟兵もおおと喜びの声を上げる。
 鮭のルイベは余計な脂が抜けており臭みも無いので非常に美味しいのだ。
「美味しい鮭に惹かれてオブリビオンも出て来るっぽいですが、餓えたオブリビオンなんて相手じゃ有りません! たっぷり鮭を食べてばっちり退治しちゃいましょう! ……あ、今回の特別料理は石狩鍋だそうですよー♪」


一ノ瀬崇
 脇は見えててもえっちだと思います。(確信)
 おはようございます、一ノ瀬崇です。
 今回は鮭尽くしの料理ですね。
 ルイベを使った刺身にお寿司、親子丼なんかが出ます。
 他にもちゃんちゃん焼きや石狩鍋、締めの鮭茶漬け辺りも。
 いやぁ堪りませんね。
 存分に英気を養って、オブリビオンを蹴散らしちゃってください。
 皆様のプレイングをお待ちしております。

 ※このシナリオはノリや流れを引き継いだ緩い連続ものとなっております。
 勿論今回が初めてのご参加の方でも楽しみ頂けますが、シリーズ「ご城下美食珍騒動~」をチラ見して頂くとニヤリと出来るかもしれません。
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第1章 日常 『鍋パーティー!』

POW   :    主に食べる

SPD   :    主に食材を用意する

WIZ   :    主に料理をする

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

夢ヶ枝・るこる
■方針
・【POW】使用
・アド/絡◎

■行動
鮭ですかぁ。
とても美味しいですよねぇ。
楽しみですぅ。
それに、有名な寿司処でしたら、お料理の参考にもなりそうですねぇ。

【豊饒現界】で[大食い]と[料理]を強化、メインの「石狩鍋」と「海鮮親子丼」を中心に、色々といただいてみましょう。
鮭はしっかりと煮込むと骨も食べられる、と言いますし、別の料理の際に残った骨が有りましたら、「骨煎餅」にしても良いですねぇ。
また、料理の様子を見て、色々と参考にさせていただきましょう。

許可が得られるなら、片栗粉・塩等を揉みこんで下味をつけて胡麻油で焼き、醤油・酒・砂糖等で煮詰めた「鮭の甘辛煮」をお作りしますねぇ。
如何でしょうかぁ?


雨音・玲
恋人のエイル(f21735)とヘザー(f16748)に誘われて参加

食欲の秋
黒いエプロンを腰に巻き
寿司処『富永寿司』の店主の手腕を勉強させてもらいながら
大根おろしで粗目に削って鬼おろしを作りつつ
俺は仲間内で食べる「野菜たっぷり鮭のみぞれ鍋」の準備を進め
昆布で出汁を取り 立派な野菜やキノコ 秋の味覚を土鍋に放り込み
ぐつぐつと煮立たせます

煮えるまでの時間を使って切り身を分けてもらい
慣れた手つきで鮭のマリネを作ります

みんな喜んでくれるかな?
寒いときは鍋もうまいよ?
とり皿に分けながら皆に配膳しつつ
熱いからやけどすんなよ?
仲間(家族)と食べる食事はうまいよな

お客さんか…さて腹ごなしにやったりますか!!


エイル・ヒルドル
恋人の玲(f16697)と親友のヘザー(f16748)と一緒に行動よ。

焼き鮭、いいわよね…アタシも冒険者時代はよく焼魚を食べたもんよ。
大自然の中で野営して、魚獲って…。
そのルイベっていうのは知らないけど凍ったまま食べるなんて面白いわ、ヘザー!食べてみましょ!

鍋も冒険者時代を思い出すわねぇ、アタシは主にソロ専だったから1人鍋だったけど…今は玲もヘザーもいるから寂しくない!そして美味しい!

食べ終わったらお昼寝するヘザーに膝枕して、アタシもまったり一休み…。
敵が現れたらすぐにヘザーを起こし、玲にアイコンタクトよ!
何が来ようとアタシら3人の敵じゃないっての、やってやろうじゃない!


ヘザー・デストリュクシオン
玲くん(f16697)とエイルちゃん(f21735)と一緒!

焼いた鮭を皮ごと食べるの、わたしも好きなの!
焼き鮭も食べれるかな?
ところで、るいべってなに?
…凍らせたまま食べるの?へー、おもしろーい!

いしかりなべ…初めて食べたけどなつかしい味がするの。
にゃー、おつゆにも鮭の味がしみてておいしー!ほっこりするの。
ね、玲くんエイルちゃん、これ食べた?すごくおいしいの!
わたしも妹がいなくなってからは一人で食べてたから…みんなで食べるのおいしいの!

腹八分目くらいで満足して、日向ぼっこして丸くなってお昼寝するの。
食べてすぐ壊しあったらお腹痛くなるの。
エイルちゃんのひざまくら気持ちいいの!
早く壊しあいたいの!


アマータ・プリムス
さて、鮭ですか
生は寄生虫の問題で食べられませんがそれでもおいしい魚です
存分に腕を振るわせていただきましょうか

富永寿司さんに調理場の一角を借りるとしましょう

そうですね……ムニエルなんていいかもしれません
とはいえバターはなさそうなので当機が持ち込みをさせていただきます

調理器具もなければアルジェントムから取り出して使います

熱したフライパンにバターを溶かし、塩胡椒と小麦粉を塗した鮭を投入
時折溶けたバターをスプーンで鮭の切り身にかけ
身はカリッと皮はパリッと焼き上げます

出来上がれば集まった皆様に振舞いましょう
手軽にできて美味しいんですよ?

当機はこのまま調理場で振舞われる他の料理も摘まませていただきましょう


緋神・美麗
絡み・アドリブ歓迎
【POW】
まさか鮭のルイベ迄用意されてるとは。本当にこの藩は侮れないわね。UDCアースでも結構珍しいのに。というわけでルイベ全制覇を目指すわよ♪勿論特別料理の石狩鍋も外せないわね。〆の鮭茶漬けもしっかり押さえとかないとね。バディペットのシルヴィアも食べたそうなら食べさせてあげるわね。
後、イクラをお土産に買えないか探してみるわね。


パフィン・ネクロニア
やはり秋といえば鮭じゃよね。
わしは塩焼きにして皮ごと食べるのが一番好きなんじゃが、せっかくじゃし普段食べる機会のない料理を。

ふーむ、まずは一押しっぽいルイベを使ったお寿司からじゃな。わしは食べた事ないんじゃが、皆の反応からしてさぞ美味いに違いない。楽しみじゃて。
えーと、鮭の煮汁で炊いたはらこ飯…こんなんもあるんじゃな。これは絶対美味いわ食わねば。
おっと、特別料理の石狩鍋もじゃな。こいつは締めの雑炊までしっかり堪能せねば。
鮭節に鮭とば。保存食もあるんじゃな。
ここらはお持ち帰り用のも確保したいとこじゃ。


いやぁ堪らんのぅ。こりゃ食えるだけ食ってたっぷり英気を養わねば。ほほほー。


織部・樒
アドリブ・連携・ネタOK

【POW】
秋鮭ですか、良いですね
巷では近頃秋刀魚が持て囃されておりますが
脂の乗った秋鮭もまた絶品です(力説)

鮨も悪くありませんが、鮭なら火の通ったものの方が好みです
空気もひんやりしてきましたし、温かい鍋で温まりたいものですね
味噌味の鍋は初めてかもしれませんが、なかなかいいものですね


基本あまり表情は変わりませんが感情は豊かな方です
真顔でボケたりします
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「鮭ですかぁ。とても美味しいですよねぇ。楽しみですぅ」
 夢ヶ枝・るこるは傍目にも解る程の機嫌の良さでサムライエンパイアの城下町を練り歩いていた。
 何なら鼻歌まで飛び出しそうな上機嫌っぷりである。
 元々食べるのは好きな方だが、今回は美味しいと評判の寿司屋と言うのも有って期待度が非常に高い。
 遠足前日の小学生並のワクワク感である。
 そんな彼女の隣で同じ様にわくわくさんと化しているのは緋神・美麗だ。
「まさか鮭のルイベ迄用意されてるとは。本当にこの藩は侮れないわね。UDCアースでも結構珍しいのに」
 この藩には何度か足を運んでいる美麗だが、これから向かう寿司屋はまだ訪れた事が無かった。
 来る度に舌鼓でビートを刻んでいる彼女の勘が叫んでいる。
 絶対美味しいやつだ、と。
 そんな彼女の頭の上ではバディペットの『シルヴィア』も僅かに昂揚した様子を見せている。
 美味しいものの気配でも感じ取ったのかもしれない。
「やはり秋といえば鮭じゃよね」
 期待に胸を膨らませているのはパフィン・ネクロニアも同じだった。
 塩焼きにして皮ごと食べるのが一番好きな彼女だが、今日は折角の機会なので普段食べる機会の無い料理を堪能しようと考えている。
 最早世間話が九割を超えていそうなブリーフィングではルイベやら石狩鍋やらと言った名前が聴こえて来たが、果たして実際に出て来る料理はどんなものが有るのか。
「おっと涎が」
 薔薇色ならぬ鮭色な光景を思い浮かべつつ、ぽてぽて練り歩いて行く。
「秋鮭ですか、良いですね。巷では近頃秋刀魚が持て囃されておりますが、脂の乗った秋鮭もまた絶品です」
 パフィンに力説しているのは織部・樒である。
 表情は殆ど動かないので解り辛いが、僅かに頬に紅が差している所から察するにテンション爆上げ状態らしい。
 彼は茶碗のヤドリガミなので、もしかしたらお茶漬けで馴染み深い鮭にはちょっとした拘りや並々ならぬ愛着が有ったりするのかもしれない。
 胸元で手をぐっと握りつつ、彼は鮭の魅力について語っている。
 次の議題はどんな食べ方が良いか、の様だ。
「鮨も悪くありませんが、鮭なら火の通ったものの方が好みです」
「お、織部君解っておるのぅ。やはりシンプルに炙ったやつが旨いんじゃよなぁ」
「焼いたのも良いけど、私は鮭の旨味が周りの食材に染み入っていく系の料理も好きよ」
「聞いてるだけで待ち切れませんねぇ」
 わいのわいのと楽しげに話す四人。
 その後ろでは雨音・玲が鮭のメニューを研究しつつ頭を悩ませていた。
「んー、此処は旬のキノコや野菜を楽しめる鍋か?」
 料理研究家と言う訳では無いがそれなりに腕前には自信の有る玲。
 これから向かう寿司屋の店主の手腕を見て勉強させてもらいつつ、可能ならば自分でも料理を作ってみたいと考えている。
 聞けばまだ鮭の料理はそれ程浸透していない様子。
 美味しい料理のお礼も兼ねて、自分の料理が店主の興味を刺激出来れば幸いである。
 最も、彼の最大の目標は仲間と言うか家族に美味しいと言って貰えるような料理を作る事だが。
 思考を一旦止めて右隣を見遣る。
 玲の恋人、エイル・ヒルドルが親友ヘザー・デストリュクシオンと楽しげに笑い合っていた。
「焼き鮭、いいわよね……アタシも冒険者時代はよく焼魚を食べたもんよ。大自然の中で野営して、魚獲って……」
「焼いた鮭を皮ごと食べるの、わたしも好きなの! 焼き鮭も食べれるかな?」
 ウサミミを楽しげに揺らしながらじゃれつくヘザーを、いつもの様にまったりと眺めるエイル。
 一度戦闘が始まれば傷付く事さえ厭わず前へ出る程に勇ましいヘザーだが、普段は無邪気で気紛れ自由奔放とまるで野兎の様な可愛らしさを振り撒いている。
 そんな彼女を時にコントロールし、時に振り回されているのがエイルだ。
 自信家でツンデレな気性が相俟って誤解されがちな所が有る彼女だが、ヘザーや玲の前では肩肘張らずに居られる様だ。
 特に恋人である玲とはバカップルと呼ばれそうな程に熱々である。
(さて、喜んでもらえるかな)
 仲睦まじく三人で歩きながら、玲はこの後の食事へ期待を馳せる。
「次は通りを左で御座います。皆様逸れてはおりませんね?」
 そんな風に賑やかな雰囲気で進む猟兵達を先頭で案内しているのはアマータ・プリムス。
 この八人の中で唯一彼女だけは以前に富永寿司を訪れた事が有った。
 事前に伺うと伝え、序に調理の許可も貰ってある。
 本来は自分が料理を作る為にと得た許可だったが、るこるや玲も料理をしたいと考えていた様なので丁度良かった。
 更に調理器具や調味料が足りない時の事を考え事前にフライパンやバターを銀色のトランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』に入れて持って来ている。
 出来るメイドさんである。
「さぁ、着きましたよ」
 案内を終えたアマータが示すのは『富永寿司』の看板が掲げられた店。
 店の前には「本日貸切」と書かれた札が掛かっている。
 今日の為に店主が気を利かせてくれたらしい。
 アマータが引き戸を引いて暖簾を潜ると、柔和な笑みを浮かべた板前姿の老人が出迎えてくれた。
「今日はようこそおいでくださいました。どうぞ、席はご用意しております」
 そう言って招き入れてくれる店主。
 座卓席を横にくっ付け、八人掛けの卓を用意してくれていた様だ。
 思い思いの席に着くと小僧がお絞りとお茶を持ってくる。
「本日は鮭尽くしと言う事で、少し量は多いかもしれませんがどうぞごゆっくりお楽しみください」
「先ずは鮭の”るいべ”のお造りです」
 そう言って小僧が持ってきたのは大根の敷きつまに乗せられた、凍った鮭の刺身。
 若干ルイベの発音が怪しかったが、そこはご愛嬌だろう。
 配られる皿を見ての反応は二種類。
 初めてルイベを目にするエイル、ヘザー、パフィンは目を輝かせて凍った刺身を見ている。
 ルイベがどんなものかを知っている玲、るこる、アマータ、美麗、樒は使われている鮭の見事さに感嘆の息を漏らした。
 鮭を冷凍するのは身に付いている寄生虫を殺す為である。
 川で生まれ海に出てまた川へと戻ってくる生態が影響しているからか、鮭は寄生虫が居るので生食が出来ない魚として有名だ。
 しかし焼いても煮ても美味しい魚が生で不味い訳が無い。
 そんな思いが有ったか如何かは定かでは無いが、鮭の身を味わう為に生み出された調理法と言うのが身を凍らせる手法だった。
「とまぁ、そんな具合で御座います」
「食の知恵、ってやつね。でも凍ったまま食べるなんて」
「おもしろーい!」
 店主のちょっとした小話を聴いて楽しげに笑うエイルとヘザー。
 パフィンは箸を構えて臨戦態勢だ。
「では早速行ってみようかの。いただきます」
 ぱくっと一口。
 最初に感じるのは凍っているが故の冷たさと、しゃくりと切れ行く刺身の食感だ。
 これはまた面白い食感、と楽しんでいるパフィンの口内に、早くも異変が起き始めた。
「むおっ」
 思わず声が漏れ出る。
 表面に付いていた細かな氷は只の水分ではなく、染み出た鮭の脂だったのだ。
 魚の脂は肉の脂と違って、舌の上で溶ける。
 凍っていた事で秘されていた旨さが舌の熱で溶け広がり、口一杯に旨さが伝わったのだ。
 続いて味覚へと襲い掛かってくるのは鮭の身の甘味。
 凍らせた事で余計な塩分は外へ出され、甘ささえ感じさせる濃密な旨味がギュっと詰め込まれてた。
 熱で溶かされ柔らかく解れる刺身から伝わる、例え様の無い独特の美味しさ。
「ただの刺身かと思ったらとんでもない、凄い美味しいわよコレ!」
「おいしー!」
 エイルは目を見開いて即座に二切れ目へ箸を伸ばし、ヘザーはほっぺたが落ちないように両手で押さえている。
 玲はそんな二人を微笑ましげに眺めつつ、どんな角度で包丁を入れたのか、敷いているつまの作り方と盛る量はどれくらいにしてあるのか、と言った情報に興味津々だ。
(ただのつまじゃない、これ大根自体も滅茶苦茶旨いぞ……!)
 予想を超えてきた美味しさと技術の取り合わせに目を輝かす玲。
 この大根を使って何か一品、と料理好きの血が騒ぎ出しているようだ。
 他の皆も舌鼓を打っているが、アマータだけは恐れにも似た感情を抱いていた。
 理由は一つ。
 此処が『富永寿司』だからだ。
「続いては此方、ルイベを使った握り寿司で御座います」
「来ましたか……!」
 若干テンションが上がった声を出すアマータ。
 さもありなん、店主が自ら握ったルイベを使った寿司を寿司桶に入れて持ってきたからである。
 ルイベを食べてみて、確かにこれは美味しかった。
 しかし、もう一つ欲しいと感じてしまう。
「成程、お米の誘惑……!」
 即座に気付いた美麗がお絞りで手を拭きながら臨戦態勢に入る。
 お寿司屋さんで食べるものならお寿司が一番美味しいに決まっている。
 そんな初歩の事を忘れてしまっていたとは不覚、と大袈裟にリアクションする美麗へ、樒が乗っかった。
 動かぬ表情ながら何処か大物然とした雰囲気で口を開く。
「これこそ必勝の構え」
「……えーと、私も何か言った方が……?」
「いえ、先ずは食べましょう」
 危うくツッコミ役が一人も居ないまま進行してしまいそうだったのをアマータが首を振って食い止める。
 少しばかり妙なテンションになっていたらしい。
 早速箸で一貫掴み、ぱくりと口の中へ。
 ルイベの大きさにシャリが合わせられているので女性でも一口で食べ易いサイズだ。
 一噛みした所で、刺身とは違った旨味が広がる。
 シャリの温度で溶けかけていた身は若干の氷っぽさを残しながらも滑らかな食感で舌を楽しませてくる。
 歯で押し潰されたシャリからも酢と米の豊かな風味が溢れ出し、鮭の旨味と一体になって幸福感を生んでいた。
 ともすれば数噛で飲み込んでしまいたくなるような。
 舌で味わっていると喉と胃が『早くこっちにも回せ』と叫んで来るような、そんな美味しさだ。
「んん~っ♪」
 そんな欲求に一足早く負けたるこるが声を上げる。
 嚥下すると喉から鼻へと抜けていく鮭の香りがまた堪らない。
 ほんのちょっぴりの量なのに、まるで丼で掻き込んだ時の様な満足感。
 それでいて食べる前よりもお腹が減っている気さえする、二口目への高まる欲求。
「大いなる豊饒の女神、《楽園の地》の豊かなる恵みと力をお貸しくださいませ」
 ごくりとお寿司を飲み込んだるこるは、気付けばユーベルコード【豊乳女神の加護・豊饒現界】を発動していた。
 大食いの技能値が跳ね上がり、極限まで今日の料理を味わい尽くせるようになったるこる。
 爛々と輝くその瞳が、次の料理を捉えた。
「続いてはルイベとこっこの醤油漬けを乗せた丼で御座います。何も掛けず、蓮華で掬ってお召し上がりください」
 いつの間にか空になっていた寿司桶を小僧が引き取るのと入れ代わりに、店主が小さな茶碗に入った鮭といくらの親子丼を配っていく。
 色鮮やかなルイベの上に宝石の様に輝くいくらが盛られた豪勢な丼だ。
「これも美味しそうですねぇ」
 蓮華を取って一口食べる。
 すると、るこるはそれまでのルイベとはまた違った美味しさが溢れてくるのに気付いた。
 ルイベ自体が少しねっとりとした舌触りに変わり、香ばしさが数段上がっている。
「これは……」
「漬けにしたのね」
 ぱくぱくと食べ進めながら美麗が答えた。
 既に茶碗の中身は半分程になっている。
「漬け特有の旨味の濃さがいくらの醤油漬けと丁度良いバランスになってるわ。その辺の塩梅が適当な所だといくらの味が強過ぎて他の味がぼやけたりするけど、この丼は鮭もいくらも負けず劣らず、それでいて喧嘩せず上手い事調和しているわね。やっぱりこのご飯が決め手なのかしらね、ふっくらとした美味しいお米だから濃い旨味をどっしりと支えて『丼』として成り立たせているんだわ。そのお米の秘訣は恐らく鮭の骨を使って取った出汁を炊き込む時に加えているんだわお代わりください」
 喋っている間に食べ尽くしたらしい。
 店主は美麗の清々しい食べっぷりに笑みを浮かべながら、茶碗に少しの量を盛って鉄瓶と一緒に持ってくる。
「お口に合ったようで何よりに御座います。ですが此処はどうぞ、二口目は此方のお茶を回し掛けてみてください。熱いのでお気を付けて」
「お茶漬け……!」
 ガタッと立ち上がりそうな勢いで姿勢を正す樒。
 元が茶碗で在る為か、お茶は飲むのも淹れるのも淹れられるのも大好きである。
 順番にお茶を淹れていき、愈々樒の番が回ってくる。
 漂ってくる香りだけで良いお茶なのは解っていたが、茶碗に注いでみるとまた凄い。
 初めは熱い茶の香りが立ち上り爽やかさを伴って鼻を抜けて行き。
 次いで鮭といくら、二種の漬けに使われた醤油の香ばしさが混じり出す。
 それらが絡み合いお茶漬けとして出来上がり、食欲を唆る香りとなる。
「いやぁ堪らんのぅ。鮭の煮汁で炊いたはらこ飯とか、絶対美味いに決まっておるわ」
 上機嫌に食べ進めるパフィン。
 ルイベは今日初めて口にしたが、どれも絶品と言って良い美味しさだった。
 いっそ港まで行って一本確保して持ち帰るべきだろうか。
 新しい悩みを抱えつつも食べる手は止まらない。
 気付けば皆、ぺろりと平らげていた。
「鮭尽くしの先陣はこれにて終いで御座います。ご満足頂けましたか」
 お茶のお代わりを持ってきつつ店主が茶碗を下げていく。
 皆、一点を除いて不満は無い。
「もうちょっと量が有っても!」
「おなかいっぱい食べたい!」
 味に関しては大満足、と顔に浮かべながら笑うエイルとヘザー。
 そんな二人に店主はほっほっほ、と嬉しそうに笑い声を上げた。
「そう仰って頂けるとは料理人冥利に尽きます。では後詰の料理は皆様とお作りしますので、少々お待ちください」
「それでは、宜しくお願いします」
 アマータ、るこる、玲の三人が席を立ち店主の後に続いて調理場へと進んでいく。
 残った五人はどんな料理が出て来るのかを想像しながらの雑談タイムだ。
「何が出て来るんじゃろうなぁ。石狩鍋を店主が作ってくれるってのは聞いておるが」
「楽しみでしょうがないわね。今なら鍋一つ飲めそうだわ」
「美麗君、相変わらずわんぱくじゃのぅ……」
 以前他藩の祭りで団子を食べ尽くす勢いで堪能していた事を思い出すパフィン。
 同時に食べた団子の美味しさもフラッシュバックしてくる。
(うむ、今日は鮭じゃがまた今度甘いものでも食べに来てみるかの)
 自身のわんぱく振りを棚に上げつつ今後の予定を考えていると、隣に座っていた樒が鉄瓶からお茶を注いでいるのに気付いた。
「良く飲むのぅ。確かに美味しいお茶じゃが、あんまり飲むと鍋が入らなくならんか?」
「お茶は別腹なのです。お茶淹れますか?」
「初めて聞く別腹じゃ……わしはまだお茶入っているから大丈夫じゃよ」
「では茶々でも入れましょう」
「いや入れんで良いのじゃよ?」
 真顔でボケ始める樒に、もしやこやつ面白い枠の人間ではと思い始めるパフィン。
 わいわい騒いでいる間に料理が出来上がったようで、先ずは玲が小さな皿に鮭のルイベを使ったマリネを盛ってやってくる。
「前菜代わりに鮭のマリネ。フォークは無いから箸で食べてくれ」
「おー、マリネ!」
 早速ヘザーが一口ぱくり。
 爽やかな柑橘の酸味と鮭の自然な旨味が実に美味しい。
 香草代わりに散らされたかいわれ大根のピリリとした辛さと風味が良いアクセントになっている。
「洋風だけどこれも美味しい! やっぱり玲は料理上手よねー」
 美味しそうに、それでいて何処か誇らしげな顔をして食べ進めるエイル。
 一口摘んでみた美麗もその完成度に驚く。
「あら、普通にレストランで出て来るものと遜色無いわね」
「どれどれ……ほう、確かに美味いのぅ」
「簡単な料理なのに単純で終わらない美味しさなのは凄いです」
 他の三人からも高評価を得て、益々エイルは鼻高々である。
 ヘザーも玲の料理が褒められたとあって嬉しそうな様子だ。
「続きましては当機が。こちら、鮭のムニエルです」
 アマータが小さく切った鮭をムニエルにして持ってきた。
 まるでコース料理の様な出来栄えに、思わず全員の喉が鳴る。
「バターの香りが凄まじいわね。すきっ腹には実に暴力的だわ」
「いや美麗君、さっきお代わりもしてたじゃろ?」
 すきっ腹って、と思わずツッコミを入れてしまうパフィンをよそに、樒が箸を入れてみる。
 パリっとした表面とは裏腹に、身は柔らかく解れていく。
 食べるとバターの香りの中から力強い磯の風味が溢れ出し、舌にガツンと旨味のパンチを与えてくる。
「味も焼き加減も絶妙です」
「やりました」
 ぶいっと指を立てつつ空いた皿を片付けていくアマータ。
 メイドだけあって片付けの手際も良い。
「いかん、突っ込んでいたら食いっ逸れそうじゃ……むほっ」
 皮の部分を口にしたパフィンが思わず悶える。
 パリパリの皮にバターが良く染み込んでおり、鮭の皮が好物な人には正しく垂涎の一品に仕上がっている。
 これは米か酒か、と言う二択を脳内で迫られている気分になってくるパフィン。
 米ならば茶碗二膳、酒ならばコップ三杯は行けそうな美味さだ。
「パリパリが美味しいー♪」
「これだけバター利いてるのにしょっぱ過ぎない、くどくないのが凄いわね」
「持っていかれた……!?」
 ヘザーはぺろりと平らげ、エイルはその美味しさに目を見開きながら感嘆している。
 美麗は一瞬の隙を突かれ、バディペットのシルヴィアに皮を攫われていた。
 如何やら皮がお気に召したらしい。
「はい、続いては私ですよぉ」
 小鉢に鮭の入ったものを運んでくるるこる。
 ぱっと見ではどんな料理なのか解らなかったエイルが首を傾げる。
「これは何かしら? あまじょっぱそうな匂いがするけど」
「此方は鮭の甘辛煮ですよぉ。鮭の切り身に片栗粉・塩等を揉みこんで下味をつけて胡麻油で焼き、醤油・酒・砂糖等で煮詰めた料理ですぅ」
 普段は大人しい口振りの彼女だが、この料理には自信が有るのかちょっぴりハキハキとした喋り方になっている。
 これも期待が持てると箸を伸ばしていざ実食。
 少し味が濃く感じられるが、しょっぱさも甘さもくどくない。
 寧ろ塩味と甘さのバランスが丁度良い、いわゆる止まらない美味しさに仕上がっている。
「初めて食べる味だけど美味しいわね」
「照り焼きっぽいかもー?」
 ヘザーの言葉に納得するエイル。
 少しの違いは有るが照り焼きに似た味わいだ。
 此方の方が少し濃厚かつ尖った仕上がり。
 これは恐らく単品よりも、組み合わせる事で真価を発揮するタイプの料理。
「飯の友ね」
「飯の友じゃな」
 異口同音に結論を出したのは美麗とパフィン。
 その声にエイルははたと気付いた。
 そう、これは白米に乗せてガツガツと少しはしたないくらいの勢いで食べる為のおかず。
 栄養的には問題が有るかもしれないが、これとご飯とお茶だけで一食を終えても十分以上の満足が得られるであろう魔性の一品だった。
「これもお見事な美味しさです。シェフを呼んでください」
「は、はい、私ですぅ」
「いやいや、美味しいけどそんなベタな寸劇しなくても」
 パフィンはこの小一時間ですっかりツッコミ役に回ってしまっている。
(おかしい、わしはこないだまで愉快なおとぼけ役だった筈では)
 ボケもツッコミもこなせる人材はボケ一辺倒の人が居るとツッコミ枠に収まってしまう法則、その餌食となっている。
 ツッコミ疲れからか若干の喉の渇きを覚えて湯呑みに手を伸ばす。
 と、中身は既に空だった。
 お代わりを淹れようと湯呑みを置いた所へ、樒が両手に鉄瓶を構えて注ぎに来た。
「茶々を淹れにきました」
「確かに両手に持ってるから茶も二つじゃけど、って溢れるゥー! 両手持ちなんじゃから注がれるスピードも二倍!」
 なみなみと注がれた湯呑みを揺らさぬように迎えてお茶を飲むパフィン。
 若干の気疲れが増した気がする。
「存外にフリーダムじゃな織部君……」
「いぇい」
「いぇいいぇーい♪」
 鉄瓶を置いて無表情ダブルピースをする樒。
 その遣り取りを見てヘザーが真似っこダブルピースをしてみる。
「えっと、何してるんだ?」
 困惑を声色に乗せてやってきた玲。
 その両手には小さな土鍋が抱えられていた。
 その後ろでは店主が同じ様に、もう二回り程大きな土鍋を抱えている。
「気にしなくて良いわ。って、あら?」
「あぁ、こっちはおいらが作ったやつ。店主さんのは今日のメイン、石狩鍋だよ」
 空いた皿をるこるが持っていき、入れ違いにアマータが人数分の取り皿と、もう一つ小さな土鍋を持ってくる。
「こっちは野菜たっぷり鮭のみぞれ鍋。んで、アマータが追加で皆の分も作ってた」
「そちらは家族鍋とお聞きしましたので、団欒をお邪魔しては申し訳無いですし見様見真似で作ってみました」
「見様見真似で鍋を作ると言う謎の言霊じゃな」
「何だって良いわ、お腹を満たすチャンスよ」
「おぬし本当にブレんのう!」
 はらぺこモード全開な美麗に取り皿を渡しつつ突っ込むパフィン。
 そんな二人の遣り取りにまったり癒されているアマータへ、ヘザーは小さく口を動かして感謝を告げた。
 玲の料理が美味しいのはさっきのマリネで皆も解っただろう。
 追加で土鍋を作ってみたとあれば、例え自分が他の人の立場でも一口欲しくなったのは間違いない。
 でも三人で囲む鍋と言うのは、やはり自分達にはちょっぴり特別なもの。
 そうした雰囲気を感じ取ってくれたのだと、ヘザーは考えていた。
 対するアマータは、自分の口の端を両手の人差し指で押し上げ、にっと笑って見せた。
「さて、それでは皆さん改めて鍋を頂きましょう」
「改めて、いただきまーす」
 アマータの声に美麗が続き、皆思い思いに箸を伸ばす。
 店主の作った石狩鍋は生姜・酒・味噌・昆布出汁で味を調えた汁に人参・長葱・大根・豆腐・鮭が入っているものである。
 雑味が無く、どの具を掴んでもそれぞれ違った美味しさに溢れている至高の一品だ。
 汁は野菜の旨味と鮭の出汁が絶妙な深みを生み出し、気付けば取り皿から汁が無くなってしまう程。
「いしかりなべ……初めて食べたけどなつかしい味がするの」
「味噌味の鍋は初めてかもしれませんが、なかなかいいものですね」
「うわ、味の深みが凄いな……隣で見てたけど旨さの引き出し方が解らない」
「まさに絶品ですぅ」
 皆口々に感想を言い合う。
 共通しているのは笑顔だ。
「にゃー、おつゆにも鮭の味がしみてておいしー! ほっこりするの。ね、玲くんエイルちゃん、これ食べた? すごくおいしいの!」
 幸せそうな表情をしながらヘザーが箸で摘んだのは大根。
 鮭の旨味と汁の味、他の野菜の旨味を全て染み込ませたものだ。
「どれどれ……あ、美味しいわこれ」
 エイルが促されるまま大根を食むと、口一杯に旨味が広がる。
 舌で押すだけで解れる程に柔らかくなった大根が此処まで美味しくなるとは。
「石狩鍋も美味しいが、おいらの鍋も食べてみてくれ! 熱いからやけどすんなよ?」
 玲は取り皿によそって二人に差し出す。
 それを笑顔で受け取り食べてみる二人。
 粗めに削った鬼おろしの食感と、石狩鍋とは違ったキノコの出汁が合わさりこれまた究極の一品。
「うん、美味しいわよ玲」
「すっごくおいしー!」
「そっか」
 美味しいと言ってくれる二人を見て、顔が綻ぶ玲。
 自分も一口食べてみると、キノコの出汁と野菜の甘味がとても相性良く纏まっている。
「鍋も冒険者時代を思い出すわねぇ、アタシは主にソロ専だったから1人鍋だったけど……今は玲もヘザーもいるから寂しくない! そして美味しい!」
「わたしも妹がいなくなってからは一人で食べてたから……みんなで食べるのおいしいの!」
「仲間と食べる食事はうまいよな」
 賑やかに、和気藹々とした雰囲気で進む食事。
 気付けば鍋の中身も空になり、皆満足そうにお腹を擦っていた。
「さーて、美味しいご飯も食べたし鬼退治ならぬオブリビオン退治と参りますかね、っと」
 一番食べていた筈の美麗が一番機敏に動き始める。
 美味しいご飯で充電たっぷりのご様子。
 その溢れる活力っぷりに、店主は楽しそうにほっほっほ、と笑い声を上げていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『餓鬼』

POW   :    共喰い
戦闘中に食べた【弱った仲間の身体の一部】の量と質に応じて【自身の傷が癒え】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
SPD   :    飢餓の極地
【究極の飢餓状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    満たされぬ満腹感
予め【腹を空かせておく】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。

イラスト:猫背

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 鮭尽くしで腹を満たした猟兵達。
 腹ごなしがてらの散歩を兼ねて周辺地域の索敵でもしようかと思った所で、番所の辺りの空気が妙な事に気付いた。
 話を聞きに行ってみれば、何と近くの平野に妖(オブリビオン)が出現したと言うではないか。
 放っておいては周辺の村に被害が出てしまうかもしれない。
 今の所は漫然と集まっているだけらしいので、手早く駆け付け蹴散らしてやろう。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
まだ被害が出ていないのは幸いですねぇ。
早い内に対処しましょう。

移動中に『FSS』の弾頭を『オプション兵装』で『擲弾』に変更しますぅ。
その上で『F●S』の装備3種を全て展開し配置、相手が集まっている場所に[一斉発射]し【指定UC】による[範囲攻撃]を仕掛けますねぇ。
『FBS』も、飛行に必要な「四肢に嵌める4個」を除き射出、[範囲攻撃]で撃ち漏らした相手を中心に狙いますぅ。
接近されたら『刀』で対処ですねぇ。
味方を食べて強化する能力も『擲弾』で焼き払ってしまえば使い辛いでしょう。
後は、相手が全滅するまで繰返し、ですねぇ。

ただ、急に出現したのが気になるところですが、何か原因が?


ジャガーノート・ジャック(サポート)
◆参加希望傾向:シリアス系

(ザザッ)
支援要請に応じ参加した。
本機はジャガーノート・ジャック。
此より本機の参戦の為のインストラクションを開始する。

(ザザッ)
本機はバーチャルキャラクターのブラスターガンナー。
常々黒豹型の鎧装を身に付け、銃型のレーザーファンネルを有する。武器の特性上、狙撃手・友軍の後方火線支援を担う事が多い。

また重火器・爆弾・光線等、多岐に渡る兵器を電脳空間より呼び寄せ具象化、戦闘に利用するのをオーソドックスな戦闘スタイルとしている。
(ザザッ)

好みに合う支援を命じてくれて構わない。

――それでは、インストラクションは以上。
これより作戦行動を開始する。オーヴァ。(ザザッ)


アマータ・プリムス
……またこのオブリビオンですか
いい匂いに釣られてやってくるのでしょうか
さて、それはさておき仕事をせねば

さくっと片づけてしまいましょうか
「出番ですよ、ネロ」
ネロを呼びだしいつものように自由に動かせます
人手が増えればその分早く済みますからね
大鎌でどうぞ薙ぎ払って来てください
『わかってラァ!』

当機はその援護
アルジェントムを変形させ創り上げた銃口から弾幕を放ち
オブリビオンたちをネロの方へ誘導しましょう
「どんどん行きますよ」
『どんどん来い!』

弾幕を潜り抜けて当機の方へ近づいてくるオブリビオンはスコパェを取り出してこれまたネロの方へ吹き飛ばしてしまいましょう
風と箒のフルスイングのコンボです

さ、お次の方は?



 城下町からそう遠くない平野。
 普段は長閑なこの場所も、今は異様な空気が立ち込めている。
 理由は一つ、あちらこちらで虚ろな目をぎょろりと動かす妖が空腹から来る唸り声を上げているからだ。
 だいぶ広がってうろついているらしく、手分けして戦った方が早そうだ。
「まだ被害が出ていないのは幸いですねぇ。早い内に対処しましょう」
 そう言って周囲に浮かぶ小型の兵装『FSS』に弾を籠めているのは夢ヶ枝・るこるだ。
 砲門を備えた四枚のビームシールドへ『フローティングシステム用オプション兵装』から取り出した擲弾を装填しつつ、近接用装備『FBS』と砲撃用装備『FRS』も同時に展開していく。
 多数の敵を相手取るには打って付けの兵装だ。
 そんな彼女と似た兵装を手に戦場の情報を整理しているのは戦闘支援に駆け付けてくれたジャガーノート・ジャック。
 黒豹型の装甲を身に付けた彼が操るのは宙に浮かぶ三基のブラスター。
 自在に操る事が出来るそれで、主に狙撃や支援と言った後方からの攻撃を得意としている。
 無論接近戦も卒無くこなす事が出来、相手が余程の格上若しくは数滴優位にある場合以外は苦戦する事も無いだろう。
「支援要請に応じ参加した。本機はジャガーノート・ジャック。好みに合う支援を命じてくれて構わない」
「おや、これはご丁寧に。どうぞ宜しくお願い致します」
 彼に礼を返すのはアマータ・プリムスだ。
 彼女もまた、肩に大きなライフルを担いでいる。
 銀色のトランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』を改造したもので、その性能は折り紙付き。
 連射性能は二人に劣るかもしれないが、その分アマータには心強い味方が居る。
「出番ですよ、ネロ」
 声に導かれる様に現れたのは南瓜頭の案山子『ネロ・フラーテル』だ。
 その左手には不釣合いな程大きく鋭い鎌が握られている。
「人手が増えればその分早く済みますからね、大鎌でどうぞ薙ぎ払って来てください」
『わかってラァ!』
 ぶんぶんと大鎌を振るって前へ出るネロ。
 普段はアマータと軽妙な遣り取りを楽しんでいる彼だが、今日は普段より好戦的な様子。
 此方の動きに気付いたのか、数体の妖『餓鬼』が草の間から顔を覗かせる。
 元々思慮深く見える訳では無いが、空腹に苛まれている彼等は正しく食べる事いか頭に無い様子で涎を零した。
 彼等にとっては、猟兵も肉の塊に過ぎないらしい。
 そんな餓鬼の様子を見てアマータはやや呆れた様子で呟いた。
「……またこのオブリビオンですか。いい匂いに釣られてやってくるのでしょうか」
「急に出現したのが気になるところですが、何か原因が?」
「原因が有るなら断っておきたいが、当面は奴等の排除を優先すべきだろう」
「そうですね……では皆さん、一気に攻め掛かってしまいましょうかぁ」
 るこるの号令で三人は動き出す。
 最初に餓鬼を倒したのはるこるだ。
「先ずは炙り出しと行きましょう」
 先程籠めた擲弾を放ち、餓鬼が見えていた辺りへと放つ。
 焼夷弾では無いので周囲一帯の全てを焼き払う事は出来ないが、その分周囲に落ちた時の効果範囲を悟られにくいと言う利点が有る。
 リズムに乗って打ち出された擲弾は僅かな間を置いて、次々に爆発する。
「ギィィィッ!!」
 内二発が潜んでいた餓鬼を吹き飛ばし、一発が餓鬼を草むらから追い出した。
 元々背の高い草以外に隠れる場所の無い平野での戦い。
 無防備に姿を晒した彼が長生き出来る筈も無い。
「行って、戦輪!」
 ビームで出来た刃を回転させながら二つの光る輪が飛び向かう。
 餓鬼が身を屈めてやり過ごそうとしたのに合わせ、横向きに飛んでいた戦輪は縦へと向き直る。
 並び立つ様に飛ぶ戦輪の刃が餓鬼の体を真っ二つに裂き、その身を灰へと変えた。
 戦輪はそのまま草刈りがてら周囲を飛行し潜む餓鬼を狙っていく。
「他のも飛ばしちゃいましょうねぇ」
 四肢に嵌めた飛行用のもの以外を走らせる。
 円を描く様、徐々に内側へと刃を近付けながら飛ぶ戦輪。
 程好く狭まった所でるこるはユーベルコード【フルバースト・マキシマム】を発動した。
 各砲門が刃の入っていない箇所に狙いを定め、一斉に火を噴く。
 数々の着弾音に紛れて、悲鳴の様な音も聴こえて来た。
 追い込まれた餓鬼達は抵抗する間も無く灰と化す。
「うん、良い感じですぅ」
 戦輪を戻して周囲の気配を探ってみるが、オブリビオンの気配は無い。
 とは言え戦場は広い。
「相手が全滅するまで繰返し、ですねぇ」
 リロードを挟みつつ、るこるは平野の奥へと進んで行った。
「対象の脅威度は低い。本機はこれより殲滅シーケンスへ移行」
 ジャガーノートはブラスターを操りながら戦場を駆けていく。
 手榴弾、実弾、光子弾を切り替えながら進む彼の歩みを止めようと果敢に餓鬼が立ち上がるが、何れも草むらを飛び出した瞬間に撃ち抜かれて未遂に終わる。
 驚くべきは彼の射撃精度だろう。
 威力に差は有れど、彼の放つ攻撃は脳天、或いは顔上部を的確に吹き飛ばしている。
 立ち上がっては無防備に頭部を晒すだけと気付いて匍匐移動をする餓鬼も居るが、それらは生成された手榴弾が眼前に転がってくるのを止められない。
 回り込もうにも草が音を立てれば即座に居場所を割り出され、銃弾が飛んでくる。
 只でさえ空腹に押され思考が鈍っている餓鬼が妙案を思い付ける筈も無く。
「良い的だ」
 味方の肉に喰らい付き腹を満たそうと口を開けば、代わりに手榴弾を投げ込まれる始末。
「射撃訓練にもならんな」
 的確な射撃で次々と餓鬼を屠りつつ、ジャガーノートは小さく嘆息するのであった。
 射撃戦メインの二人が進むのとは別エリアで、アマータとネロはまるで舞踏会のダンスの様に戦っていた。
「右、右、左」
『若干単調じゃねぇカァ?』
「なら左に三連符です」
 アマータはアルジェントムの銃口から放つ弾で餓鬼を撃ち抜きつつ全体の動きを誘導、ネロが待つ場所へと押し込んでいく。
 ネロは大鎌を振るって餓鬼の首を刎ねつつ、目立つ事で注視を自分へ集める。
 そうして思い通りに動かされている餓鬼達は次から次へとその身を晒し、灰へと化していく。
 それは宛らワルツのリズム。
 銃声、風切り、首刎ね。
 三つの音が刻むのはオブリビオンの死と言う辺り、中々バイオレンスな舞踏会だ。
「どんどん行きますよ」
『どんどん来い!』
 ノってきた二人はテンポを上げて餓鬼を葬っていく。
 中には会場を抜け出そうとするマナーのなっていない餓鬼も居るが、それらはアマータの持つ仕込み箒『アウラ・スコパェ』の風圧で吹き飛ばされている。
 飛ばされる先は当然、ネロの持つ大鎌の振るわれる場所。
『そんなに焦ってちゃシンデレラの相手は務まらねぇナァ?』
 けけけ、と意地悪く笑い声を上げるネロ。
 ダンスパートナーが死神とあっては王子役を名乗り出る者も居なさそうではあるが。
 そうして餓鬼を斃しながら、二人は徐々に平野の奥へと足を進めていく。
「さ、お次の方は?」
 半ば強制的に誘いを出しつつ、アマータはアルジェントムの銃口を餓鬼へと突き付けるのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

緋神・美麗
さて、美味し料理も十分楽しんだし、本来のお仕事をしないとね。食後の運動にさくっと片付けましょうか。
ん~、これはまた、数だけは多いわねぇ。何処からこんなに湧いてくるのかしら。いつか大元から絶たないといけないかしらね。まぁ、これだけの数ちまちま相手するのも大変だし、まとめて吹き飛ばすとしましょうかね。
【雷天使降臨】を使用して飛翔し、餓鬼の群れの上空に陣取って【拡散極光砲】でまとめて薙ぎ払っていく
数だけは多くてなかなかな面倒だったわね。まぁ前哨戦は終わったし次が本命よね。いったい何が出てくるのかしら。やっぱり熊かしらねぇ。


パフィン・ネクロニア
ふぃー食った食った。いやー最高じゃったね鮭。

って、なんか騒がしいと思ったらオブリビオンが出たとな。
そいじゃ、ここは若いものに任せてわしはお暇……いや、冗談じゃよ
うむ、皆で協力して食後の運動がてらささっと片付けてやろうぞ!



敵は見た目からして遠距離攻撃ができないタイプとみた。つまり近寄らなければどうという事もないという事じゃ。
ダッシュでこちらに有利な間合いを維持しながら剣刃一閃で一体ずつ斬っていけば特に危険もなく殲滅できるじゃろうて。


織部・樒
連携・アドリブOK

お腹を満たした矢先に餓鬼退治とは
何とも言えない気分ですね

獣奏器にて鷹を呼び、仲間に迷惑をかけないよう
攻撃範囲には気を付けて餓鬼を迎撃
此方に攻撃が及ぶ際は錫杖に持ち替え【武器受け】を試み
受けきれない場合は【オーラ防御】にて凌ぎます
なるべく周りの皆さんと連携して手際良く倒していきましょう
 
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!



「ふぃー食った食った。いやー最高じゃったね鮭。って、なんか騒がしいと思ったらオブリビオンが出たとな」
「さて、美味し料理も十分楽しんだし、本来のお仕事をしないとね。食後の運動にさくっと片付けましょうか」
「お腹を満たした矢先に餓鬼退治とは、何とも言えない気分ですね」
 お腹を擦りながら食後の散歩を楽しむ様なテンションで会敵するパフィン・ネクロニア、緋神・美麗、そして織部・樒の三人。
 対する餓鬼達は僅かに残る鮭の香りを嗅ぎ当てたのか、目をぎらぎらと醜悪に光らせている。
 一番近くに居た一体が、歯を剥き出しにして飛び掛る。
「よっと」
 それを見咎めた美麗は右手を返す様にくるりと回す。
 握られていた『ライトニングセイバー』の軌跡が餓鬼を逆袈裟に切り裂く。
 両断された餓鬼は勢いのままに地面へと突っ込み、生える草を噛み締めながら灰へと変わった。
「うん? 随分と弱い個体ね」
「餓鬼のオブリビオンと言えば、飢餓に晒された時間や共食いした仲間の量に応じて戦闘力を増していく筈ですが……」
 首を傾げる美麗に樒が補足する。
 本来なら、此処まで歯応えの無い状態で向かい合う事は殆ど無い。
 どれ程の飢餓に苛まれていたとしても餓死する事が無い為、時間が経てば経つ程厄介になっていくタイプのオブリビオン、それが餓鬼だ。
 にも関わらずこうも容易く斃せると言うのには何かしらの理由が有る筈。
「一番考えたくは無いのは誰かが食われてしまった事かのぅ」
 草裏に隠れ飛び掛ろうと隙を窺っていた餓鬼へ迫り、手にした『曇天』で斬り伏せまた元の位置へと戻りながらパフィンは考察を口にする。
「或いはまだ生まれたてで然程時間が経っていないか……一番有りそうなのはその辺で鹿か猪でも捕まえて食べていたとかじゃな」
「成程、私達の鮭に対抗してきましたか……侮れませんね」
「いや、対抗した訳では無いと思うんじゃが」
「そう言えば前に食べた牡丹鍋も美味しかったわねぇ」
 オブリビオンとの戦闘に入ったが、三人はマイペースを崩さない。
 逆に言えばそれだけの力量さが存在していると言う事でもある。
「弱くても別に困る事は無いし、サクっと片付けちゃいましょ。取り敢えず上から見てどのくらい居るか見てみるわね」
 美麗はユーベルコード【雷天使降臨】を発動、雷で生成された光り輝く衣装と翼を纏って空高く飛び上がっていく。
 吹き抜ける風は少し冷たい。
 夏が過ぎ秋を向かえて、もう少し経てばやってくるであろう冬を感じさせる肌寒さだ。
「そろそろ鍋の季節よね」
 来月にはどんなテーマで旨いもの市が開催されるのか、そんな事をちらりと考えつつ飛び上がった美麗の目に映るのは草むらのあちらこちらで這い回っている餓鬼の姿。
 予想していたより数は多い様だ。
「ん~、これはまた、数だけは多いわねぇ。何処からこんなに湧いてくるのかしら。いつか大元から絶たないといけないかしらね」
 幾ら相手にならぬとは言え一般人には紛れも無い脅威。
 戦争で多くのオブリビオンを葬ったが、やはり全滅させて置かないと真の平穏は訪れないだろう。
「まぁ、これだけの数ちまちま相手するのも大変だし、まとめて吹き飛ばすとしましょうかね」
 地上に手を振って大まかに餓鬼の位置を伝えつつ美麗は進む。
 目指すは敵陣の中央だ。
 空を飛ぶ彼女を見て何体かはわらわらと集まってくる。
 好都合ね、と小さく笑いながら美麗は広げた両手に意識を集中する。
「全部まとめて薙ぎ払うわよ」
 両手に収束していく光。
 バレーボール程の大きさにまで膨れ上がったそれは、地面へ向けて幾つもの光線を放ち始めた。
 ユーベルコード【拡散極光砲】による掃射。
 無防備な頭上からの攻撃を受け、次々に灰と化していく餓鬼。
「おぉ、見事なもんじゃな。そいじゃ、ここは若いものに任せてわしはお暇……いや、冗談じゃよ」
「では私も此処は応援に回って……ええ、冗談ですよ」
 小さな呟きを聴き逃さずイイ笑顔で掌を向けてくる美麗に手を振りつつパフィンと樒も動き出す。
 パフィンの戦い方は至ってシンプルだ。
「敵は見た目からして遠距離攻撃ができないタイプとみた。つまり近寄らなければどうという事もないという事じゃ」
 彼女が選択したのは一撃離脱。
 ダッシュで餓鬼の間合いを離し、付かず離れずの距離を保つ。
 飛び掛るには遠いが無視するには危険な位置取りとあって、餓鬼は忌々しそうに歯を打ち鳴らす。
「ふふん、わしの敵ではないのう」
 弄ぶ様に曇天の刃で光を餓鬼の目に反射させる。
 挑発を感じ取った餓鬼が飛び出してくるのを見てパフィンは大きく距離を取る。
 それを見て、餓鬼は苛立ちながら足を止める。
「ほいっと」
 その一瞬を狙ってパフィンは鋭く踏み込んだ。
 間隙を突いた動作に餓鬼は反応出来ない。
「必殺!」
 裂帛の気合と共に放たれる剣閃。
 ユーベルコード【剣刃一閃】による攻撃は餓鬼の首をいとも容易く斬り飛ばした。
 痩せ細り腹部に水が堪った軽い胴体を蹴り飛ばし、周囲への警戒も行う。
 如何やら連携して飛び掛る程の機転も利かないらしく、他の餓鬼は斃れた餓鬼を喰らおうと蹴飛ばした胴体の方へと群がっていく。
 が、直ぐに灰と消えて行った為集まった餓鬼は地団駄を踏んだ。
「うわぁ、醜いのう。ああはなりたくないもんじゃ」
「後は私が引き受けましょう」
 醜悪な遣り取りをする餓鬼に顔を顰めるパフィン。
 ともあれ一箇所に集まって来た餓鬼を打倒するのには丁度良いと、樒は獣奏器『舞い昇る龍の声』を取り出した。
 流れ出すのは澄んだ笛の音。
 紡がれる旋律でユーベルコード【蒼鷹鳥狩】を発動させれば、空に浮かぶ影が一つ増える。
「わ、大きい」
 近くでそれを見た美麗が驚きの声を上げる。
 召喚されたのは自分達よりも更に大きい蒼き羽を纏った鷹だった。
 悠々と空を飛びながら羽ばたく姿は蒼穹の狩人の名に相応しい。
「頼みましたよ……!」
 獣奏器の音色を聞き、蒼き鷹は舞い降りる。
 新たな肉が来たとでも思っているのか、餓鬼は舌なめずりしている。
 もう少しで手が届く高さまで降りてきた蒼き鷹は、羽ばたきながら大きく口を開いた。
「ピイィィーーーーー!」
 耳を劈く威嚇の声。
 離れていたパフィンと美麗が驚く程の声量が衝撃波を伴って餓鬼達を襲う。
 吹き飛ばされて行ったのはまだ幸運な方で、近くに居た餓鬼は鼓膜は勿論脳や肺を音波で破られ一瞬で灰と化していた。
 転がっていく餓鬼は追撃の爪で喉や腹を斬り裂かれ絶命していく。
 圧倒的な強さで戦場を飛び回る姿は正に狩人。
「やはりこれ、わしは見学してても良いのでは……いや、やるって。冗談じゃって」
 美麗や樒だけでなく鷹からも目を向けられたパフィンは手を振って誤魔化す。
 そのままくるりと反転しつつ曇天を滑らせる。
 気配を殺して背後から迫っていた餓鬼の首が地べたを転がる。
「うむ、皆で協力して食後の運動がてらささっと片付けてやろうぞ!」
「もう、調子良いんだから」
 ふわりと降りてきた美麗がライトニングセイバーを振るいながら苦笑する。
 結構な数を斃した気もするが、餓鬼はまだまだ多い。
 寄って来た餓鬼の腕を斬り飛ばし心臓目掛けて一突きにしつつ、のんびりと口を開く。
「こいつらの後はいったい何が出てくるのかしら。やっぱり熊かしらねぇ」
「鮭だからですか?」
「羆のオブリビオンはちと勘弁願いたいのう」
 指示を出し終えた樒も武器を錫杖『師匠のお下がり』に持ち替えて近接戦に備える。
 蒼き鷹が暴れ回り、弾に突っ込んで来る餓鬼を蹴散らすだけ。
 数は多いが、意外と早く決着は付きそうだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヘザー・デストリュクシオン
玲くん(f16697)とエイルちゃん(f21735)と一緒!

敵きた!
おいしい鮭が食べられてしかも壊しあいまでできるなんて、今日はとってもいい日なの!

あなたたち何してるの?おなかすいたの?
ざんねんね、あんなにおいしい鮭を食べられないなんて!
わたしが壊しあってあげるから、鮭はあきらめてね!

リボンを解いて、ついでにおなかいっぱいでちょっと苦しいからショートパンツも脱いで速さを上げるの。下着はいてるからだいじょうぶなの!
ジャンプやダッシュ、スライディングで素早く立ち回って攻撃。
ケガしても気にせず壊しあうの。
二人がいるから好き放題できるの!

数は多いけどあんまり強くないの。
もっと強い人と壊しあいたいの!


エイル・ヒルドル
恋人の玲(f16697)と親友のヘザー(f16748)と一緒に行動よ。

来たわね、雑魚がわんさか!
アタシもヘザーに負けてらんないわ、桜織コートもスカートまで脱ぎ去って【超集中】!
身軽なタンクトップとショーツ姿で敵に特攻!
恥ずかしくなんて無いわよ、むしろアタシに見惚れちゃいなさい?
玲もヤる気出るでしょ?

残像で翻弄しながら第六感と野生の勘で敵と仲間の位置を直感的に把握し、光線銃の二丁拳銃で誘導弾の曲がるビームを乱れ撃ち!
ホラホラ、おっそいのよ!アタシにはついてこれないでしょ!
地形を利用したり敵を盾にしたり、縦横無尽に暴れまわって敵をギッタギタにしちゃうんだから!

フフーンっ、アタシ達に敵は無しよ!


雨音・玲
エイル(f21735)とヘザー(f16748)と一緒に行動

おいおい二人とも周りの目を気にしろよ
「戦闘知識」で冷静に周りを観察しながら
脱いで疾風のように走る二人を苦笑いで眺めます
ヤる気ってさ…そういう事はまた後でな

二人の行動を見たからになりますが
『飢餓の極致』に対して「スキルマスター「クイック」」で対応
速く動く物を無差別攻撃し続けるの特性を利用
二人より素早く動き攻撃をこちらに引き付け
「野生の勘」で避けながら
スピードの乗った「属性攻撃」を載せた燃える拳で「吹き飛ばし」ます

俺の大事女に手を出そうってんなら!
覚悟はできてんだろうな!!!

二人に背中を預け死角を無くしつつ
サポートしながら立ち回ります



「敵きた!」
「来たわね、雑魚がわんさか!」
 楽しげに笑い合いながら戦場を駆ける花が二輪。
 尻尾穴が開いている独特なキマイラファッション『猫兎の衣装』を身に纏ったヘザー・デストリュクシオンと、着崩して肩を出した上着にタンクトップ、パンチラ上等の超ミニスカとニーソと言う『お気に入りコーデ』で固めたエイル・ヒルドルだ。
 両名共に戦いの空気に当てられ昂揚しているらしく、実に楽しげな声を上げている。
 対する餓鬼は食いでの有る相手が来たと策も何も無く只管真っ直ぐに飛び向かっていく。
 正面から迫り来る餓鬼へ、ヘザーは両手の爪を振るう。
 鋭利な爪はまるで積もったばかりの雪原を踏み荒らす様に、餓鬼の体を切り裂いていく。
 返り血が顔に掛かるのも気にせず、後ろ回し蹴りで追撃。
 脹れた腹部に衝撃を与えられ、餓鬼はもがき苦しみながら吹き飛んでいく。
 何匹かはそちらへ向かい仲間の肉を食い漁り始めた。
 一匹の餓鬼が左腕を食い千切り咀嚼しようとした所で、顳顬を蹴り抜く。
 ヘザーの『ロングブーツ』は表面に餓鬼の皮膚の欠片をくっ付けながら、大地に餓鬼の脳漿を飛び散らせた。
「おいしい鮭が食べられてしかも壊しあいまでできるなんて、今日はとってもいい日なの!」
 心底楽しそうに笑いながら次の獲物へと爪を見舞うヘザー。
「あなたたち何してるの?おなかすいたの? ざんねんね、あんなにおいしい鮭を食べられないなんて! わたしが壊しあってあげるから、鮭はあきらめてね!」
 共食いをしている餓鬼に踵落としを見舞い頚椎をへし折り、その体を踏み抜いて正面に居た餓鬼の首を爪で切り裂く。
 血と肉が零れ舞う。
 その中心でヘザーは笑う。
「アタシもヘザーに負けてらんないわ!」
 過激と言う言葉さえ控え目に映る戦場を横目に、エイルも自分のギアを上げていく。
 羽織っていた『桜織コヲト』ばかりかスカートまで脱ぎ捨て、感覚を研ぎ澄ませて行く。
「アタシの本気を見せてやるわよ!」
 ユーベルコード【超集中】を発動しながら左脚を前へ送り出す。
 流れる景色がひどくゆっくりと感じられる中、エイルはニヤリと口の端を吊り上げる。
 強化された感覚で捉える戦場。
 踏み抜いた左脚の裏に返る土の感覚が脳に届く頃には、既に右脚が前に出ている。
 常人では見失ってしまう速度で駆け抜ける彼女の後ろに残像が出来上がる。
 餓鬼はそれを本体と認識して迫り行くが、勿論そこにエイルは居ない。
「ホラホラ、おっそいのよ!」
 とっくに過ぎ去っていたエイルが両手の光線銃『六花』と『散桜』を背中へ向ける。
 置き去りにされた残像に群がる餓鬼の脳天を襲う、背後からの一撃。
 為す術無く斃れた餓鬼が灰に変わる頃には、彼女は更に先を疾っている。
「アタシにはついてこれないでしょ!」
 強気な彼女の言葉を追うように、幾つもの光弾が銃口から放たれる。
 乱れ撃ちされたビームは中空でくいと曲がり、餓鬼の体を貫いて行く。
 上空から見下ろせば、綺麗な花火が強風で煽られその形を崩していくようにも見えただろう。
「エイルちゃん素敵! よーしっ、わたしも!」
 雅に戦場を駆け抜けていく紅き流星を真似て、ヘザーも胸元のリボンを解く。
 序とばかりにショートパンツも脱ぎ捨てて下着姿に。
「かるくなったの! それーっ!」
 着ていたのが普通の重さの服とは思えない程の身軽さを発揮して動き出すヘザー。
 軽く爪先を鳴らしたかと思えば、その身体は空へと投げ出されている。
 その柔肌に喰らい付かんと注視していた餓鬼もその姿を見失い、周囲を見回す。
「ざんねん、こっちなの!」
 餓鬼の背後へと着地していたヘザーが両手を伸ばす。
 皮と骨で出来ている背中へ深々と爪が突き立てられ、餓鬼は吐血しつつ倒れ伏した。
「楽しいね!」
「楽しいわね!」
 にこやかに笑いながら戦場を血に染めていく二人を見ながら、雨音・玲は呆れた様に小さく笑う。
「おいおい二人とも周りの目を気にしろよ」
 他の猟兵と戦場が離れている為如何にかなっているが、この光景は余りに刺激的だった。
 魅惑的な肢体を惜しげもなく晒す下着姿の美少女が二人。
 あられもない姿で飛んだり跳ねたりするものだから視覚的な暴力度は凄まじい事になっている。
 しかしその事を指摘してもヘザーは涼しい顔、エイルに至っては胸を寄せて挑発してくる始末である。
「恥ずかしくなんて無いわよ、むしろアタシに見惚れちゃいなさい? 玲もヤる気出るでしょ?」
「ヤる気ってさ……そういう事はまた後でな」
「二人とも仲良しなのー!」
 ひゅーひゅー、と鳴らない口笛を吹いて祝福しながら寄って来た餓鬼の首を太腿で挟み込み、大きく捻って骨を折るヘザー。
 それを投げ付け群がってきた餓鬼を撃ち抜いて行くエイル。
 セクシーとバイオレンスを併せ持った二人の快進撃を苦笑しながら見守りつつ、玲は周囲への警戒と観察を続けていく。
 苦戦する相手では無いが油断は禁物。
 二人の意識の狭間に居る餓鬼を見極め、自身を囮としながら排除へ向かう。
 涎を滴らせながら飛び掛ってくる餓鬼を見据えながらユーベルコード【スキルマスター「クイック」】を発動。
「瞬きしてたら見逃すぜ!!」
 素早い動きで衆目を集めつつ餓鬼の顎先を蹴り上げる。
 上体を起こされた衝撃を足を止めた餓鬼の胸元へ、属性を纏わせた燃える拳を打ち込む。
「俺の大事な女に手を出そうってんなら! 覚悟はできてんだろうな!!!」
 吹き飛ばされながら灰へと変わっていく餓鬼。
 周囲の餓鬼へ威嚇するように鋭い眼光を向けていると背中に黄色い声が飛んできた。
「玲カッコイイわよー!」
「かっこいいのー!」
 ストレートな褒め言葉にちょっと照れる。
 照れ隠しに向かって来た餓鬼を殴り飛ばしつつ二人へ声を掛ける。
「サポートは任せろ! 代わりに存分に暴れてやれ!」
「やつらに目に物見せてやりましょ!」
「二人がいるから好き放題できるの!」
 そこからは三人の連携が織り成す蹂躙の宴。
 数を頼みに攻め掛かろうとする餓鬼達を尻目にエイルが駆け抜けざまに銃弾をばら撒き、ヘザーの狂戦士にも似た豪快且つ俊敏な攻撃に翻弄され、僅かな隙は玲がカバーし返り討ちとしていく。
 戦場から餓鬼の姿が見えなくなるのに、そう時間は掛からなかった。
「数は多いけどあんまり強くないの。もっと強い人と壊しあいたいの!」
「フフーンっ、アタシ達に敵は無しよ!」
 いえーい、とハイタッチを交わして喜ぶ二人へ、構えを解いた玲は穏やかに告げる。
「喜ぶのは良いけど、他の人達に見られる前に服は着ておけよ?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『真柄直隆』

POW   :    陥陣営
単純で重い【太郎太刀】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    真柄の大太刀
自身の【瞳】が輝く間、【太郎太刀】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ   :    武士とは勝つことが本にて候
【悪鬼】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:よつロ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は孫六・兼元です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 無事に餓鬼の群れを退けた猟兵達。
 束の間の休息を得た彼等の前に姿を見せたのは面当てを付けた武士のオブリビオン。
 だが、何やら様子がおかしい。
「…………の…………る」
 僅かに漏れ出た声は空気と雑じり合い此方には届かない。
 警戒しつつも何を喋ったのかと耳を済ませる猟兵達に、武士は声を張り上げた。
「鮭の匂いがするぞおおおおおお!!!!」
 何人かの頭の上にハテナが浮かんだ。
 どゆこと、と困惑する彼等に武士のオブリビオンは妙に説明掛かった口調で問い掛ける。
「俺は鮭が三度の飯より好きなのだ! 寧ろ鮭が三度の飯と言っても良い、最早米の一粒一粒が鮭の解し身でも俺は一向に構わん! そんな俺を差し置いて貴様等、鮭を、鮭を食ったなぁあああああああ!!! 許せんっ!!!!!」
 佩いた太刀を抜き放ち、切っ先を此方に向けてくる。
 陰謀や策略等存在しない。
 ただ鮭の魔力に執り憑かれた哀れな男が一人、眼前に立ちはだかっている。
 鮭は――――鮭は、人を狂わせる。
「許さんぞ猟兵ども!! じわじわと鮭とばにしてくれる!!!!」
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
まあ、鮭は美味しいですし、気持ちは解らなくもないですが。

相手は接近戦主体の様ですし、沢山いただいた品のカロリーを用いて【白翼衣】を使用、飛行して上に距離を取り、『F●S』三種の[一斉発射]で対応させていただきますねぇ。
その際、相手の逃げ場を無くす様、味方を巻き込まない範囲で[範囲攻撃]を仕掛けましょうかぁ。

「遠距離攻撃」をお持ちでも、来る方向が解った上で【白翼衣】の速度が有れば躱せるでしょう。
場合により、此方に意識を引く為に「とても美味しかった鮭の感想」を述べても良いですぅ。

話していたらお腹が空いてきましたし、「鮭とば」か「鮭の塩辛」等をお土産に買って帰りましょうかぁ。


アマータ・プリムス
……そんなに鮭が好きなら勝手に食べればよいものを
どちらにせよ敵は敵ですしお相手いたしましょうか

もう既に理性が無くなっているような気もしますが
UCを発動すると理性を失うようですね

それなら好都合
アルジェントムより取り出すのは残った鮭の切り身
これならいい囮になりそうです

切り身を右手の指先から伸ばしたフィールムで括り
敵の目前で動かしましょうか

早く動く鮭なら気もとられるでしょう
そのまま操作を続け注意を引き続けます

その間に左手のフィールムとアルジェントムを接続して機銃で相手ロックオン
味方の攻撃に合わせて一斉掃射を行います


切り身の鮭は攻撃の余波でダメそうですね
もったいないことをしました……


緋神・美麗
はぁ、ボスは熊かと思ってたのに蓋を開けてみたら頭のおかしい人だったかぁ…。生前はもう少しまともだったのかすごく気になる所ねぇ…。
まぁ、頭おかしくてもオブリビオンなのは違いないし気を抜かずに倒さないとね。

見たところ遠距離攻撃はなさそうなので戦術は餓鬼と変わらず雷天使降臨で上空に飛翔し出力可変式極光砲で空爆攻撃を行う
出力可変式極光砲は攻撃回数重視で使用し誘導弾・範囲攻撃・衝撃波・援護射撃を付与して弾幕を張り、敵の体勢を崩したり味方の攻撃に有利な位置への誘導も心掛ける

敵を撃破したら旨いもの市に戻ってお土産でも物色するわ。
「厄介事も片付いたし市を楽しまないとね。イクラとかお土産に手に入らないかしら」


エイル・ヒルドル
恋人の玲(f16697)と親友のヘザー(f16748)と一緒よ!

そんなに鮭が好きなら普通に食べれば良いじゃない、バカなの?死ぬの?
まぁいいわ、食後の運動代わりにぶっ倒してあげるっ

任せて、ヘザー!
ここは波状攻撃よ、アタシはヘザーに続いて攻勢をかけるっ
まずはヘザーが戦ってる間に【レプリカクラフト】で作った【焼き鮭と鮭おにぎり】をブン投げる騙し討ちで気を逸らし、グラップルで懐に飛び込むわ
その長い太刀じゃゼロ距離戦は難しいでしょ!
第六感と野生の勘を発揮して危機回避、残像で翻弄し、蹴りと斬撃の二回攻撃やフェイント混じりの早業で攻めまくるわよ

締めはワイヤーで太刀を絡めて武器落とし!
後は玲、任せたわよ!


ヘザー・デストリュクシオン
仲間の玲くん(f16697)と親友のエイルちゃん(f21735)と一緒!

…大きな声出さないでよ。こわいから。
そんなに鮭が好きなの?あんなにおいしい鮭を食べてないなんてかわいそうなの。
キスしたら今なら鮭の味するかもよ?わたしは好きな人いるからしてあげられないの、ごめんね。
鮭のこと忘れるくらい楽しく壊しあおう?

ショートパンツはもちろん脱いだまま素早く近づいて爪で攻撃するの。
わあ、そんなに攻撃できるなんてあなたも早いのね!
じゃあ上の服も脱いでさらに速さを上げるの!
ぜんぶ脱いでハダカになったら怒られるだろうからがまん。
ケガも気にせず突っ込んで、捨て身の一撃で攻撃。
エイルちゃん、玲くん!あとおねがい!


織部・樒
連携・アドリブ・ネタOK

羆じゃありませんでしたよ……(心なしか残念そう)
取り敢えずどうせなら鮭とばよりも鮭茶漬けにして頂きたいものです

符を持ち、敵が悪鬼に変化する前に【高速詠唱】併用して
七星七縛符を使用します
符を剥がされたらその度に封じ直しましょう
(ヤドリガミの為寿命はあまり気にしていません)
もし悪鬼になった際は封じるまでの間錫杖にて【武器受け】、
受けきれなかった場合は【オーラ防御】して凌ぎます

確かに鮭は美味ですが、何故彼はあんな風になって
しまったのでしょうね


パフィン・ネクロニア
まさか本当に予知通りに鮭に惹かれてオブリビオンが出てくるとはのぅ。
冗談だと思ってたんじゃが出てきたものはしかたない。猟兵の皆と協力してちゃちゃっと退治してくれよう。


相手の獲物も刀みたいじゃしここは真っ向勝負で!とフェイントをかけダッシュで距離をとり、間合いを詰められぬように残像で撹乱しつつ相手の攻撃の範囲外から剣刃一閃で攻撃していくぞぃ。
わざわざ相手の得意そうな近距離での斬り合いなんかする義理ないしのぅ。
安全なところからじわじわと鮭とばにし返してくれるわ。


雨音・玲
エイル(f21735)とヘザー(f16748)と参加、アドリブ歓迎

たく二人とも無茶するなぁ
OK、後は任せとけ!!

上着を脱ぎ捨て拳に激しい炎を宿し
「勇気」を奮い立たせ「野生の勘」で避けつつ一足で肉薄
「早業」「属性攻撃」を載せた拳を突き入れます

同じ死線で付き合ってやるよ…へばんじゃねぇぞ!!

【真柄の大太刀】に対して【不知火】で対応
9撃すべて攻撃に回し「武器受け」で
大太刀の剣撃を火花を散らせながら捌き
「グラップル」で攻撃を受け止め
突き上げたアッパーで上空へ「吹き飛ばし」
追撃で飛び上がり「空中戦」の応用で
一際激しい炎を纏った一撃で地面へ叩きつけます

情けねぇ姿見せるわけねぇだろ!!
コレで終わりだ!!!



 突如現れた武士のオブリビオン。
 彼の発した言葉に猟兵達が見せた反応は三種類。
「……そんなに鮭が好きなら勝手に食べればよいものを。どちらにせよ敵は敵ですしお相手いたしましょうか」
「まさか本当に予知通りに鮭に惹かれてオブリビオンが出てくるとはのぅ。冗談だと思ってたんじゃが出てきたものはしかたない。猟兵の皆と協力してちゃちゃっと退治してくれよう」
「まあ、鮭は美味しいですし、気持ちは解らなくもないですが」
 アマータ・プリムス、パフィン・ネクロニア、夢ヶ枝・るこるの三人は武士の行動理念に呆れに似た気疲れを。
「そんなに鮭が好きなら普通に食べれば良いじゃない、バカなの? 死ぬの? まぁいいわ、食後の運動代わりにぶっ倒してあげるっ」
「……大きな声出さないでよ。こわいから。そんなに鮭が好きなの?あんなにおいしい鮭を食べてないなんてかわいそうなの。キスしたら今なら鮭の味するかもよ?わたしは好きな人いるからしてあげられないの、ごめんね。鮭のこと忘れるくらい楽しく壊しあおう?」
「いくらアホくさい奴が相手だからって、二人とも油断はするなよ?」
 エイル・ヒルドル、ヘザー・デストリュクシオン、雨音・玲の三人は血気盛んに武士へと闘志を燃やしつつ。
「はぁ、ボスは熊かと思ってたのに蓋を開けてみたら頭のおかしい人だったかぁ……。生前はもう少しまともだったのかすごく気になる所ねぇ……」
「羆じゃありませんでしたよ……。確かに鮭は美味ですが、何故彼はあんな風になって
しまったのでしょうね」
 緋神・美麗、織部・樒の二人は何故か相手が熊のオブリビオンでは無かった事に残念そうな溜息を吐き出して。
 共通するのは相手の鮭への執着に対する驚きに似た衝撃だ。
 如何してこんなになるまで放っておいたのか。
「まぁ、頭おかしくてもオブリビオンなのは違いないし気を抜かずに倒さないとね」
「ええい、揃いも揃って勝手をぬかしおる! 貴様等鮭を食っておいて何の感慨も無いのか! それでもこの世に命を授かった存在か!!」
「めっちゃスケールがでかい話になっておる」
 鞘に収めたままの『太郎太刀』をずずいと突き付けながら大げさに問い掛けてくる武士へ、思わず呆れ顔で突っ込むパフィン。
 確かに美味しい鮭料理が目白押しで感動もしたが、かと言って陶酔する程かと聞かれても困る。
 寧ろ食べ物でそこまで感動出来る事は一生に一度有るか無いかくらいではなかろうか。
「鮭の魅力は一先ず置いといて、この場はこやつを倒してしまおうかの」
 愛刀『曇天』を抜いて正眼に構える。
 パフィンの構えを見てそれなりに刀を扱える相手と判断した武士は、口を閉じて太刀を構え直す。
 彼我の距離は凡そ二十歩。
 踏み込もうとすれば互いに十分な余裕を持って反応出来る距離だ。
 だからこそ、パフィンは真っ直ぐに突っ込んだ。
「向かい来るか、その意気や良し!」
 武士もこれを受けて立とうと鯉口を切りいつでも抜き放てる構えを取る。
 が、彼女がそんな愚直な行動をする筈も無い。
「真っ向勝負で! ……と思ったかのう?」
「むっ?」
 真っ直ぐ駆け出したパフィンの姿がぶれていく。
 初手から残像を生み出してフェイントを掛けつつ、左右に回り込む様に追加で残像を撒いていたのだ。
「ええい風情の無い!」
 謀られたと耳を赤くして構え直す武士。
 左右に分かれて見えるが、この何方かも残像だろう。
 果たして本体は右か、左か。
 ちらと視線を這わせた武士の間隙を突く様に、パフィンは更に一歩踏み込んだ。
 場所は正面、ぶれた残像のその奥から。
「必殺!」
「何!?」
 意識を正面から逸らしていた武士の不意を突く様に放たれたユーベルコード【剣刃一閃】の斬撃。
 触れれば断ち斬る必殺の刃が飛来する。
 武士は一瞬切り払う素振りを見せたが、直ぐに身を反らせて斬撃を躱した。
 斬撃が通り過ぎた先で背の高い草が千切れ飛ぶのが視界に映る。
「げ、避けおった」
「小細工を弄したのが裏目よ。真っ直ぐ放っていたなら疑念等抱く余地無く切り払っておっただろうからな」
 残像を用いてのフェイントが、武士の思考に僅かな澱みを生み出したらしい。
 勘の良い奴め、とパフィンは口を尖らせた。
「まぁ避けられても別に良いのじゃ。わしに感けていた分、皆が動き出す猶予が生まれたのじゃからな」
 尖らせた口を今度はニイッと歪めて飛び退さる。
 入れ代わる様に攻撃を繰り出したのはアマータだ。
「開演ですね。硝煙と弾丸が織り成す序曲をお楽しみくださいませ」
 銀色のトランク型ガジェット『アルジェントム・エクス・アールカ』は機関銃へと改造されており、その銃口を武士へと向けていた。
「どうぞ、ステップはお好きなように」
 アマータの人差し指がトリガーを引く。
 連続した重低音が響き、銃口から幾つもの弾丸が雨霰と武士へ飛来する。
「ぬう、面妖な! まるで鮭の卵の如し!!」
 珍妙な喩えをする武士だが、その行動は凄まじい。
 初弾を抜き放った太刀で両断せしめると、両手を素早く振るって太刀と鞘で襲い来る銃弾を次々に叩き落していく。
 その上で非常にゆっくりではあるが此方へと足を進めてくるではないか。
「やるじゃない。でも上空からの射撃には耐えられるかしら!」
「行きますよぉ! 各砲門照準合わせ!」
 その動きを止めようとするのは美麗とるこる。
 互いにユーベルコード【雷天使降臨】と【豊乳女神の加護・白翼衣】を発動させて飛翔能力を得る。
 上空へと舞い上がった二人は左右に分かれ、武士の頭上を取っていた。
「電球の弾幕を食らえーーっ!」
 美麗は更にユーベルコード【出力可変式極光砲】を使う。
 集められたサイキックエナジーが幾つもの電球となって彼女の周囲に浮かび、一直線に武士へと降り注いでいく。
 ただ愚直に狙うのではなく、照準を外したものも一緒に発射する事で牽制と足止めも行い武士の動きを制限する。
「一斉発射、撃てぇーっ!」
 るこるは『FRS・FBS・FSS』の各兵装を操り、実弾とビームによる攻撃を繰り出す。
 無数の光線に続いて、FBSの光輪が手足首を狙って飛来していく。
 ビームで貫ければ良し、砲弾が当たっても良し、弾を避けられても光輪が武士を切り裂けば良し、与撃叶わずとも相手の攻撃を阻害出来れば良し。
 火力とはロマンであり正義なのである。
「おまけじゃ、こいつも持って行けい!」
 そこへパフィンが【剣刃一閃】の斬撃を飛ばして行く。
 駄目押しとばかりに加えられたそれを加えて計四種の遠距離攻撃。
 流石に武士もこれを無傷で防ぎ切る事は出来ない様だ。
「ちぃぃぃ!」
 鬱陶しさを滲ませた声を漏らしながら両手を振るい銃弾や電球を叩き落していく。
 斬撃と光線は引き付けてからの回避で如何にか躱すが体勢を整える間も無く次の攻撃が襲い掛かってくる。
 左後方から足首を狙い迫る光輪。
「させるものか!」
 突如、武士の瞳が金色に瞬く。
 次の瞬間右手に持った太郎太刀が逆手に振るわれ、光輪を弾き飛ばしていく。
 直ぐ様飛び退くと、直前まで居た場所に電球が着弾し地面を大きく抉っていった。
 土埃が周囲に漂う中、武士は太刀を振るい続ける。
 八つ目の光輪を叩き落した所で正面から風切り音を鳴らして飛来する弾丸。
「せぁぁっ!!」
 気合一閃で振り抜かれた太刀が銃弾を捉え真っ二つに斬り捨てる。
 確実に届いたと思われた銃撃を凌がれ、僅かに目を見開くアマータ。
「お見事です。ですが」
 斬り捨てた銃弾の後ろから姿を見せる、もう一発の銃弾。
「当機はアフターサービスも万全ですので」
「ぐううっ!?」
 甲高い衝突音が鳴る。
 面当ての中央に銃弾が当たり、衝突の勢いで弾き飛ばされた。
 武士も着弾の瞬間後方へと自分から吹き飛んで威力を減衰させる。
 だが逃し切れなかった衝撃は面当てへと伝わり、決して小さくは無い罅を走らせた。
「皆さん流石ですね。此処は畳み掛けましょう」
「よっし、波状攻撃といくわよ! ヘザー、玲!」
「まっかせてー!」
「行くぜ!」
 符を構えた樒が合図の様にそれを投げ付け、続く様にエイル、ヘザー、玲の三人が飛び出していく。
 先ず仕掛けたのは最も身軽なヘザー。
 衣服を脱ぎ捨て速度を上げ、ユーベルコード【シーブズ・ギャンビット】を発動させる。
 踏み抜いた地面が土煙を上げるよりも早く前へを踏み出した彼女は、真っ直ぐに左手を突き出す。
 鋭利な爪が心臓に向かってくるのを、武士は身体を逸らして躱す。
 追撃の右爪による切り上げに対してはそのまま両手で地面を叩く様にして勢いを付け後方転回を行い、振り上げた左脚で右腕を叩き払う。
「まだまだぁ!」
 だがヘザーも諦めない。
 両手が外側を向いた状態では爪での追撃は間に合わない。
 それならと、彼女は前方宙返りを行う。
 狙いは着地して上体を起こす武士の後頭部。
 一瞬の滞空を経て、右の脚で踵落としを見舞った。
「うおおぉぉぉぉっ!?」
 着撃の直前、武士は猛烈に嫌な予感を得る。
 それに従い肘を曲げたまま勢いのままに身体を滑らせた。
 僅かに位置がずれ、ヘザーの踵は武士の頭頂部を削る様に撫でて行く。
 危うく直撃を貰う所だった、と冷や汗を流す間も無く次の攻撃が延びてきた。
「良い勘してるぅ!」
「任せて、ヘザー!」
 入れ替わる様に仕掛けて行ったのはエイルだ。
 前へと踏み込む直前に彼女は何かを地面に這わせる様に転がした。
 それは顔を伏せていた武士の視界に転がり込んで来る。
「な、鮭と握り飯だと!?」
 戦場に似つかわしくないものが突然現れた事で意識を持って行かれる武士。
 無論それは偽物、エイルの【レプリカクラフト】で作られたものだ。
 作りは粗いが、真剣勝負の場に於いては場違いであればある程目晦ましとしての効果が期待出来る。
 そして多分に漏れず、武士は僅かな時間とは言え気を取られた。
 当然、隙を晒した代償は大きい。
「その長い太刀じゃゼロ距離戦は難しいでしょ!」
「しまった!」
 気付けばエイルが一瞬で距離を詰めて来ている。
 伏した体勢のまま行える攻撃手段は少ない。
 武士は身体を起こしながら右手を前へと振った。
 相手の足首を刈る軌道。
「読めてんのよ!」
 しかしその攻撃はあっさりと躱される。
 大きく飛び上がって武士の後方へと着地したエイルは振り向き様にショートソード『マローダー』を引き抜く。
 逆手で引き抜かれたその斬撃を、武士は左手の鞘で如何にか受け流す。
「防いだ!?」
「疾い!?」
 互いに驚愕を瞳に映す。
 エイルが使ったのは我流の『逆手抜刀術』だ。
 剣豪である彼女の姉から伝授された剣術を自分なりに練り上げ、速さを極限まで追求した我流の抜刀術。
 その速さに自信を持っていたエイルは、間一髪とは言え無傷で防がれた事に驚きを隠せない。
 一方の武士もまた、受けた攻撃が想定の遥か上を行っていた事に衝撃を受けた。
 無理な体勢とは言え後方への捻りを加えた動きで受けられるのでれば、小娘程度の斬撃は容易く打ち返せる筈だった。
 しかし、実際に鞘を出してみれば手を走り抜ける衝撃は途轍もなく大きい。
 本来なら弾き飛ばした勢いで空いた胸元へ斬撃と叩き込もうと思っていたがとんでもない、後ほんの僅かでも初動が遅ければ裂傷を帯びていたのは自分の方だ。
「やるじゃないの!」
 先に立ち直ったのはエイル。
 蹴りを斬撃を交えながら攻撃を仕掛けていく。
 武士も攻撃を防ぎながら反撃の機会を窺うが、そこへヘザーが追い着いた。
 前後から挟まれる形となった武士は立ち位置を変える為に大きく飛び退さる。
「逃がさないよ!」
「待ちなさい!」
 当然追い縋っていく二人。
 攻撃を受ける方向を前方一箇所に集めた武士は両足を踏み固め腰を落とす。
 輝く双眸に嫌な予感がするが、二人の足は止まらない。
「獲った!」
 迎え撃つ武士の太刀が体躯を両断せんと延びる。
 しかし、それを止める者が居た。
「獲らせねぇよ」
 飛び込んで来たのは玲だ。
 斬撃の余波を受けない様に二人の首根っこを捕まえて後方へと引き倒しつつ前に出た彼は向かい来る太刀の腹を拳で殴って弾いていた。
 その拳には蒼く燃え上がる炎が宿っている。
「たく二人とも無茶するなぁ」
 続けて放たれる八つの斬撃を、同じ様に八つの拳撃で打ち払う。
 ユーベルコード【不知火】の発動。
 その効果は武士の扱う【真柄の大太刀】と同じく、攻撃回数を伸ばすもの。
「全て合わせて来ただと……!」
 自身の太刀筋と点対称の軌道で放たれた拳に驚きを滲ませる武士。
 そんな彼に、玲は啖呵を切った。
「同じ死線で付き合ってやるよ……へばんじゃねぇぞ!!」
 面当ての中心へ叩き込む様に拳を放つ。
 透かさず鞘が割り込み拳を払うと、今度は下から突き上げる様に太刀の切っ先が延びてくる。
 左の裏拳で外へ打ち払うと鞘が右目を狙って突いて来る。
 鞘を掴みながら左へと逸らしつつ、顎先を狙って左のショートアッパー。
 すると武士は顔を引かずに頭突きの要領で額を合わせて来た。
 延び切る前に当てられ大した威力を発揮せずに止められる拳。
 今度はその止まった肘を狙って膝蹴りが放たれた。
 身体を引きながら左脚の裏に力を込め飛び退く。
 その遺した左脚を切ろうと太刀が迫るが、玲は強引に脚を引き戻して後方宙返りをする。
 先程攻撃を躱すのに武士が見せた動きを真似して見せたのだ。
 宙を返る一瞬、玲と武士の視線が交錯する。
「鮭狂いの癖に良い動きしやがる……!」
 余りに早い遣り取りに汗が吹き出てくる。
 一瞬たりとも気の抜けない応酬に集中力を削られていくが、不思議と負ける気はしない。
 全力を出して猶追い縋ってくる強敵との戦いに、玲は多少なりとも昂揚を覚えていた。
 一方の武士は体力も消耗してきたのか、肩で息をし始めていた。
 多勢に無勢、全ての攻撃をいなしては居るがやはり戦力差は如何ともし難い。
 それならと武士は全身に闘気を漲らせる。
 隠し玉と言って良い悪鬼への変身。
 理性を失い本能のままに攻撃してしまうのが欠点だが、この場を凌ぐには致し方ない。
 そう思い変身を意識する武士。
 しかし、その身に変化は訪れない。
「馬鹿な……!?」
 玲への追撃を諦めてまでやろうとした悪鬼への変身が行われない。
 何故、と逸る思考を抑え付けている武士へ得意気に胸を張ったのは樒だ。
「残念、その変化は封じました」
 手にした霊符をひらひらと振りながら武士を見遣る。
 突撃前に放っていた符はただの攻撃用ではなく、相手の行動を縛る【七星七縛符】を内包したものだったのだ。
 それを悟らせない為に高速詠唱の技術も使い普通の攻撃に見せ掛けていた。
 猶、符が武士に張り付いたのは後方転回をして視線が下を向いた一瞬である。
「おのれ、いつの間に!」
「悟らせぬ内に陥れてこそ策ですよ。では皆さん、どうぞー」
 武士の思考を鈍らせる為にわざと気の抜けた様な号令を掛ける樒。
 覇気の無い声に惑わされた武士が意図を察した頃には、ヘザーが突っ込んで来ていた。
「ゆだんたいてきぃー!」
 大きく右腕を振り被るヘザー。
 声とその動作に誘導され、武士は上段へのカウンターを狙って太刀を動かす。
 無論、頭の回る相手を前に攻撃前の掛け声を不用意に上げる程、ヘザーは愚直ではない。
 直ぐ様体躯を沈ませ、左手を前に突き出す。
 脚を狙って来た動きに武士は太刀を下げる事も出来ず、咄嗟に鞘を回して受けようとする。
 だが、それこそ彼女の誘い。
 左手で押し付ける様に地面を叩き、反動で起き上がった身体を投げ出す様に前へ。
 三度体勢を変えたヘザーに、武士は付いて来れない。
「その腕、もーらい!」
「抜かった!?」
 振り被られたままだった右腕を振り下ろす。
 鋭い爪が捉えたのは太刀を構える右腕。
 胸元や首筋には残念ながら太刀の身が伸びていたので必殺とはならなかったが、次善として厄介な太刀を封じる事が出来た。
 一歩間違えれば自分が叩き切られていたかもしれない捨て身の一撃。
 その爪の一撃が右腕の動きを鈍らせ握力を奪っていく。
「エイルちゃん、玲くん! あとおねがい!」
「頂くわよ!」
 飛び退いたヘザーの下から延びてくる一本の線。
 特殊な鋼で作られた『スパイダーワイヤー』が鞘へと巻き付く。
「させるか!」
 即座に、武士は左腕に力を込める。
 逆に手繰り寄せて斬り捨ててしまおうと考え、両足の踵を強く地面へと押し付ける。
 それを感じ取り、エイルは口の端を歪めた。
 狙いは鞘を奪う事では無い。
 鞘を使わせない体勢へと誘導する事だ。
「後は玲、任せたわよ!」
「OK、後は任せとけ!!」
 もう一度、玲が懐へ飛び込んで行く。
 鞘を押さえる事に意識が行っていた武士は迎撃する事が出来ない。
 両足を踏ん張り左腕も固めており、右腕はヘザーの攻撃で動きが鈍い。
「ええい!」
 苦し紛れに太刀を向け牽制するも、玲の動きを捉える事は出来ない。
「甘いぜ、二人の前で情けねぇ姿見せるわけねぇだろ!!」
 一歩前へ詰める。
 先程ショートアッパーを放った距離よりも、僅かに遠い間合い。
 この距離であれば身を大きく逸らす以外に回避する術は無い。
 そしてエイルの誘導で踵を付けた体勢となっている事が武士の動きを縛っていた。
 今、武士の重心は前へ傾いている。
 踵を付け前傾姿勢になっている状態では身体を逸らす事は不可能だ。
「吹っ飛べ!」
 燃え上がる拳に闘気を乗せて、玲が右腕を振り抜く。
 顎を捉えた一撃。
 その余りある威力を一身に受けた武士は首を、胸を、膝を持ち上げていく。
 遂には地に着けていた踵までもが離れ、その体躯が宙へと浮かび上がる。
「コレで終わりだ!!!」
 それを追って飛び上がった玲は空中で身体を捻る。
 足場が無い空中で威力を出すには身体のバネを使うのが最も効率が良い。
 捻る力を加えた左拳を武士の腹部へと振り下ろす。
 肉が潰れ、骨が拉げる感覚が返る。
 一拍遅れて、武士の身体は地面へと勢い良く叩き付けられて行った。
「あっ」
 一連の動きを見て、樒が小さく声を漏らす。
 追撃の威力の高さに耐え切れず、羽織に付いていた霊符が剥がれて行ったのだ。
(……まぁ、これで斃れてくれれば杞憂で済みますね)
「やったか!」
「あっあっ、これダメなやつでは」
 武士の身体が地面と激突し、周囲を揺らしながら土埃を巻き上げていく。
 凄まじい衝撃音が鳴り響く中、警戒は切らずに様子を窺う一同。
 少しばかり土埃が落ち着いてきて着撃した場所の様子が窺えるくらいになってきた時。
「ガァァァァ!!!」
 獣染みた咆哮と共に土埃から影が飛び出してきた。
 赤く脈打つ肌と黄金に光る双眸、筋肉が膨れ上がった体躯。
 悪鬼へと変化した武士が太刀を片手に突っ込んできていた。
「しまっ……!?」
 声を上げたのはパフィン。
 土埃の中の様子を窺おうと遠巻きに眺めながら場所を移動した所を狙われた。
「おっと」
 しかし、その太刀は彼女へと届く前に止められる。
 その手に『師匠のお下がり』である錫杖を構えた樒が、悪鬼の攻撃を受け止めていた。
 符が剥がれるのを見ていた彼は、悪鬼への変身の可能性を認め備えていた。
 それが功を奏した。
「とても重い一撃です。これは符を付け直す暇は無さそうですね」
 怒りに身を任せ乱暴な太刀筋で殴り付けてくる攻撃をいなしながら、樒はちらりと横目で窺う。
「素敵なメイドさん、何か策は有りますか?」
「お任せください。――当機に、良い考えがあります」
「あっあっ、それもダメなやつでは」
 軽い遣り取りをしながら攻撃を弾いていく樒。
 だが平静を装っているが錫杖にオーラを纏わせ防御力を底上げしているので、実際の所そこまで余裕は無さそうだ。
 とは言えそれは百も承知。
 アマータはささっとアルジェントムからあるものを取り出した。
「ってアマータ君、それ」
「鮭の切り身です」
 思わずマジかと目を見張ったパフィンが見詰める先、アマータの掌の上には鮭の切り身が乗っていた。
 手早く右手の指先から鋼糸『マギア・フィールム』を取り出して切り身に括り付け、悪鬼の目の前へと動かす。
「ガァ?」
 突如眼前に現れた鮭の切り身。
 悪鬼となる前に執着していた物が、眼前で素早く動いた事で悪鬼の本能も鮭を追えと命じてくる。
「ガァァァァ!!!」
 成るべくして、悪鬼は鮭の切り身を追った。
 圧が離れて行った事に胸を撫で下ろしながら息を吐く樒。
 その額にはぷつりと汗の玉が噴出していた。
「お見事ですね。フラグにならなくて良かったです」
「時には裏切ってみるのも効果的ですので」
「なんだって良い、攻撃するチャンスじゃ!」
 離れて行った悪鬼へ、再度【剣刃一閃】を放つパフィン。
「安全なところからじわじわと鮭とばにし返してくれるわ」
 先程の奇襲で肝が冷えたらしく、少しばかりの苛立ちを込めて斬撃を見舞う。
 鮭に夢中な悪鬼は無防備に此方へ背を向けたまま。
 次の瞬間、小気味良い音と共に悪鬼の右腕は切断され宙を舞った。
「ガァァァ!?」
「おっほ、良い声で鳴きよる。左腕も斬り飛ばしてやるわい」
「グガァァァァ!?」
 瞬く間に両腕を斬り飛ばされた悪鬼。
 流石に怒りを覚えて此方に向き直るが、それを出迎えたのは銃弾の雨。
「ロックオンは済みました。脚を撃ち抜かせて頂きましょう」
 左手のフィールムと接続されたアルジェントムの銃口が悪鬼の両膝を捉える。
 撃ち抜かれた脚に次々と空洞が増え、自身を支え切れなくなった悪鬼が前のめりに倒れ伏した。
「止めはお任せします」
「よぉし、いっちょやっちゃいますか!」
「撃ち抜きますよぉ」
 上空で待機していた美麗とるこるが前後に構え、照準を悪鬼に合わせる。
 美麗は後ろで電球を圧縮し磁気を発生させ、それをバレル状に圧し固めて行く。
 るこるはFRSを組み合わせて即席の四連装砲と成し、ゆっくりとバレルに合わせて行く。
「即席レールガンとか、間違い無く学校の教科書には載ってないわよね」
「むしろ学校で教えちゃ駄目なやつなのですぅ」
 聴こえて来た声に直ぐ様離れ距離を取る猟兵達。
 如何に悪鬼の耐久力が高いからと言っても、四連レールガンと言うのは流石にオーバーキルが過ぎるのではなかろうか。
 そんな疑問を挟む間も無く、二人の作業は完了する。
「準備おっけい! いつでも良いわよ!」
「三、二、一、発射!」
 実体弾が超加速を得て飛来する。
 発射音と着弾音よりも早く衝撃が通り抜け、周囲を衝撃波が襲う。
「のわあっ!?」
「きゃあっ!?」
 当然、二人は衝撃波に煽られて吹き飛んでいく。
 他の皆と違い対ショック姿勢を取れなかった事が要因だ。
 とは言え破壊力は文句無く、直撃を受けた悪鬼はその防御力の上から叩き潰され塵も残らず消滅していた。
 序に言えば、周囲の地形もごっそり消し飛んでいた。
 明らかにオーバーキルである。
「うひゃー、凄い威力ね」
「ちょっと癖になっちゃいそうですねぇ」
 当の本人達はその威力を見て楽しげである。
 まぁ、周囲に動物の気配は無いし元の地形も雑草が適当に生い茂っていたくらいなので然程実害は無いと言っても良い。
 オブリビオンを斃し見事平和を取り戻した猟兵達だったが、戻ってきた二人に掛けるのは労いの言葉では無い。
 代表して、パフィンが一歩前へ出る。
「合体技禁止じゃ」
「「えー」」
 表面上だけ脹れてみせる美麗とるこる。
 とは言え流石にちょっぴり過激な攻撃だったのは間違いないので、大人しく受け入れる。
「さて、厄介事も片付いたし市を楽しまないとね。イクラとかお土産に手に入らないかしら」
「話していたらお腹が空いてきましたし、鮭とばか鮭の塩辛等をお土産に買って帰りましょうかぁ」
「あ、わたしもお土産買いたい! エイルちゃん、玲くん、後で一緒にお店回ろう!」
「良いわね、何か良い物が無いか探してみましょ」
 賑やかにわいのわいのと話し出す四人。
 玲とパフィンはそんな四人に疲れた様な笑みを零し、樒は「これが若さか」と何処かで聞いた様な台詞を呟いていた。
 そしてアマータはと言うと。
「切り身の鮭は攻撃の余波でダメそうですね。もったいないことをしました……」
 影も形も無くなった切り身に両手を合わせて成仏するよう祈ってみる。
 勿体無いオバケが出ない事を願うばかりだ。

 こうして、鮭を巡る事件は幕を閉じた。
 次に鮭の魔力に魅せられるのは――――貴方かもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月30日
宿敵 『真柄直隆』 を撃破!


挿絵イラスト