不思議なマッスル
#アリスラビリンス
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●不思議の国ですよ?
『どうした、そんなもんじゃぁないだろう!』
飛び散る汗!
『まだ筋肉仕上がってないぞ!』
野太い気合と軋む筋肉!
ガシャン、ガシャンッと重量級のトレーニング器具の音も混ざっている。
そこはどこからどう見ても、現代日本的な『トレーニングジム』だった。
ファンタジー要素など、欠片もない。
筋肉要素しかない。
「はひ……はひ……か、会長。ちょっと待――」
そんな空間の中で、息を上げた1人の青年が、ベンチプレスの台から転がり落ちるように床に倒れ込んだ。
年の頃は、17,8歳だろうか。
同じ世代の平均からすれば、かなり鍛えられた身体をしている。
『待たなぁい! 弊ジムは24時間366日いつでもトレーニング! 弊ジムのスタッフとなったからには、全てのトレーニング器具を扱えなければならなぁい!』
とは言え、倒れた彼を傲然と見下ろす3m近い長身にジャージの上からでも判る筋肉を誇る偉丈夫に比べれば、青年の体格は頼りなく見えてしまう。
「せ、せめて水………後なにか食べ物…………」
『食べ物? ならばハンバーガーだ! 肉を食え!』
『大丈夫! 起きろ! 食え! まだまだ君は動ける!』
『そんな仕上がってない筋肉じゃあ、クビになってしまうぞぉ!』
偉丈夫ほどではないがデカい先輩トレーナーっぽいナニカが、ラットプルダウンを使いながら青少年に発破をかける。
『いいか、筋肉だ。筋肉を鍛えろ。限界の先に到達するまで、筋肉を休ませるなぁ!』
偉丈夫の無茶な言葉に押されるように、青年はゆっくりと起き上がった。
●ラビリンス要素どこいった
「という惨状になってる不思議の国があってね。あ、待って帰らないで」
ルシル・フューラー(ノーザンエルフ・f03676)の説明に、グリモアベースは何とも微妙な空気になっていた。
まるで現代日本の様な、ばりばりに現実的な不思議の国。
そこがオウガに支配され、迷い込んだ『アリス』――獅童・スグル(しどう・―)と言うなの青少年がオウガに苦しめられている。
と言うのが、今回の状況を平たく伝えた形になるのだが。
不思議の国はどう見てもトレーニングジムで、スグル青年はそこの新米トレーナーという設定で、会長に扮したオウガと手下にろくに休みもないパワハラなノリでしごかれている、という詳しい状況を言葉にすると、途端に頭が悪くなる。
「行って、オウガを倒しておしまい、とできれば良いんだけど。オウガがジャージを脱いでオウガだと正体を現すから出ないと逃げられてしまうんだ」
そこで、まずはオウガに『自分から正体を現す』ように仕向けなければならない。
「簡単だよ。アリスのスグル君を守ってやるんだ」
オウガがスグル青年をパワハラなトレーニングで潰そうとしているなら、そうならないように支えてあげればいいのだ。
「通りすがりの会員、先輩トレーナー、機材の業者。何でも良いよ。今回のオウガ、いわゆる脳筋だから。トレーニングと筋肉と戦闘のこと以外は、アホになってるから。どんな立場で乗り込んでもバレない。言ったもん勝ち」
このエルフ、アホって言い切っちゃった。
「唯一、気をつけた方が良いのはユーベルコードかな。戦闘前にオウガに見えるように使うと、流石に猟兵だとバレて逃げられるかもしれないからね」
要は見せなければ良いのだが。
「スグル青年を支えていれば、業を煮やしたオウガは配下をけしかけて来る。それを蹴散らせば、ついにオウガもジャージを破る筈だよ」
ジャージを脱いだオウガの正体は『メガトンキング・ネイキッド』。
3m近い長身に、物理学の常識を超えた剛力を誇るオウガである。
「アホでも戦闘力は強いからね。油断はしないようにね」
なおスグル青年以外は、全てオウガかオウガの創り出した幻になるので、周りの被害とかは一切気にしなくて良い。
「状況は以上だ。筋肉に自信がある人も、あまり自信がない人も――頼んだよ」
ルシルは転送の準備に入るのだった。
泰月
泰月(たいげつ)です。
目を通して頂き、ありがとうございます。
アリスラビリンスで、アホシナリオです!
テーマは筋肉です! マッソウ!
舞台は、どう見てもトレーニングジムな不思議の国。
1章ではパワハラ気味なトレーニングを強要されてるアリスの青年「獅童・スグル」氏を、オウガの扮した「会長」から守って下さい。乗り込む身分は何でも!
2章は集団戦です。
3章はボス戦です。
アホシナリオではありますが、3章は割とガチバトルになるような気もします。
ではでは、よろしければご参加下さい。
第1章 冒険
『嫌な現実の国』
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POW : 嫌な奴の嫌がらせに対して、「アリス」を正面から庇う
SPD : 素早く細工や手回しを行い、嫌な奴の嫌がらせをわかりやすく妨害する
WIZ : 親身になって「アリス」の話を聞き、慰めてあげる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
陽向・理玖
すげー…
ココ。アリスラビリンスだよな…?
会員のふりして潜入
休ませたり
差し入れしたり
褒めたりして
スグル兄さん助ける
そこの兄さん!
そうそう、あんた
この器具の使い方教えてくんない?
おおなるほど
そんじゃこっちは?
その間少しでも休めるように
あんたいー身体してんね
筋肉は裏切らないって奴?
分かるよ、トレーニングしてねーと落ち着かねーよな
師匠…っと保護者がうるさくてさー
まだあんま派手に筋トレとか出来ねーの
※言いつつ割と鍛えられてる
それに教え方も上手ぇのな
俺陽向理玖
あんたは?
スグル兄さんまた教えてくれよ
安心させようとへたくそな笑顔で
これ礼代わり
水差出し
すげーな
こんなに器具あるのに覚えてんだ
期待の新人って奴じゃん
アテナ・カナメ
【心情】体を鍛えるのは悪いことじゃないけどさすがにやり過ぎよ…あんなんじゃ壊れちゃうわ!
【作戦】先輩トレーナーとして近づく。(格好は同じジャージ)「ちょっとちょっと!さすがにやり過ぎですよ!休息は必要です!」と会長から青年を庇うわ。「大丈夫?これ飲んで。飲まないと熱中症になるわよ」とスポドリを青年に渡しつつ「鍛えるのは確かに素晴らしい事です。でも、やりすぎで体が壊れたら元も子もないわ!体を丈夫にするためにやるのがトレーニングでしょ!?」と会長達に食ってかかって青年を守るわよ!
メール・ラメール
あつくるしい
あらいけない、心の声が
どうしてこんな面白いことになってしまったの
キラキラときめくメルヒェンな世界はどこへ、今すぐ返しなさい
アタシは通りすがりの体験見学者
こんな派手な見学者がいるかって? いるのよ
スグルちゃんにタオルやドリンクを差し出して応援
がんばれがんばれ♡
こんなにカワイイアタシに応援してもらえるなんて滅多にないんだからね!
スグルちゃんがあんまりにもへろへろだったら
オウガ会長や手下にキレイな身体の作り方でも聞いてスグルちゃんから意識を逸らすわ
その間にしっかり休んで頂戴
………えーっと、あれね
何言ってるかさっぱり分からないわね
話にならないのは分かっていた、期待したメルちゃんがバカだった
七瀬・麗治
「フゥー……講義の前にトレーニング、バイトの後にトレーニング、寝る前にもトレーニングだぜ」
体育会系大学生に扮して潜入。(エージェントになった今も、
任務に備えて日常的にトレーニングを行っている。サッカーで鍛えた
ムキムキボディの持ち主)
「ちょっといいっすか? このマシンを使いたいんだけど」
キリのいいところでスグルと交代し、さっそくトレーニング開始。
「ふっ、はっ」
ユーベルコードに頼ることなく、<力溜め><怪力>を駆使して
黙々とノルマをこなす。UDC寄生体は、オレに常人の何倍もの
筋力とスタミナをもたらした。だがオレは、その能力に甘えるような
真似はしたくないぜ。限界まで、己を苛め抜く!
「フン! ムン!」
九十九・静香
・POW
な、な、なんて事…!
筋肉に必要なのは鍛錬と休息!
同じ筋肉愛でもわたくしとオウガの間にこんなに意識の差が!
…失礼取り乱しました。まずは有栖の方を助けましょう
車椅子令嬢の小柄な姿で見学という形で訪問し有栖の方へのしごきを邪魔します
わたくしの体では一蹴されるでしょうが、ならば物で【釣る】までです
九十九家筋肉技術班手製の超合法パワーフード『ぷ炉手院』!
大型ダンベル!大型バーベル!(どっちも静香の武器のレプリカ)
蒸気機関(と影朧エンジン)を使った高性能ロヲドバイク!
わたくしを参加させて頂けたら、全て寄贈致しますと【言いくるめ】し
寄贈物品の実演や説明で【時間稼ぎ】しスグル様に休息を与えます
穂結・神楽耶
こんにちはーっ!
プロテイン配給のお時間です! いつもご利用ありがとうございます!
……はじめてですけど(ボソッ)
いえいえなんでもありませんよー?
それじゃあいつも通り、会長さんは5リットル。他の皆様は3リットルですよね。
筋肉を作るのにタンパク源は必要不可欠。
無くなったらすぐおかわりを注ぎますので是非飲んでください。
飲 み 切 っ て く だ さ い ね ?
あ、獅童様には水分補給に最適なスポーツドリンクを。
ゆっくり飲んで体力を回復なさってくださいまし。
正しく筋肉をつけるためには休息も必要不可欠ですから。
それが分かってない方々の言に取り合わなくて大丈夫ですよー。
ニコ・ベルクシュタイン
趣味で鍛えるに留まるならばまだしも、トレーナーとなると一大事だな
しかも其れを強要されるとは辛かろう
獅童青年を見つけたらすかさず「指導を請う」体で話し掛ける
多少心得がある会員を装えば、概ね問題なく溶け込めると信じて
マシントレーニングは正しい姿勢で行わねば効果が出ない、
どうか俺を見守り、時におかしな所が有れば指摘をしてはくれまいか
そう、獅童青年を立てていくスタイルだ
例えばラットプルダウンで敢えて首を竦めがちにしてやれば
しっかり胸を張るようにアドバイスをする姿を見せることも出来よう
「おお、的確なご指導有難い」などと礼も忘れずに
此の鍛えた筋肉で何れオウガも何とかしてやる故
もう少しだけ辛抱しておくれ
●不思議の国ったら不思議の国なのだ
『ぬふぅっ!』
『ふんぬぁ!』
野太い声とともに、重そうなバーベルが上下している。
バーベルを上げ下げしているのは、筋肥大の域に達した太い腕。
「すげー……ココ。アリスラビリンスだよな……?」
噂に聞いていたアリスラビリンスのメルヘンな要素が全く感じられない空間に、陽向・理玖(夏疾風・f22773)は呆気に取られ佇んでいた。
「――あつくるしい」
メール・ラメール(砂糖と香辛料・f05874)の口から、思わず本音が飛び出す。
「あらいけない、心の声が」
周りを伺ってみるけれど、誰もメールの一言を気にした様子はなかった。
『もっと! もっといける!』
『はい、OK!』
トレーニングに夢中で、その物音にかき消されていたようだ。
そんなマッスル空間なノリに、飲まれる猟兵ばかりではない。
「フゥー……朝は講義の前にトレーニング。夕方はバイトの後にトレーニング、夜も寝る前にもトレーニングだぜ」
などと言いながら、七瀬・麗治(悪魔騎士・f12192)はトレーニング器具が並ぶ中へとズンズン進んでいく。
その姿はいつものスーツではなく、トレーニングウェアである。
『ヘイ! 今日も精が出るな!』
『仕上げてきたじゃないか』
先の言葉と行動で、麗治は見事に体育会系大学生として溶け込んでいた。
そしてもう1人。
「ふむ。この空気も久しぶりだな」
やはりトレーニングウェア姿のニコ・ベルクシュタイン(時計卿・f00324)は、動的ストレッチをしながら、周囲をぐるりと見回す。
『お、見ない顔だが――久しぶりだな?』
「判ってくれるか」
『おお! その腹筋の数を見れば判る――同士よ!』
(「これは――オウガの幻覚か?」)
声をかけてきたマッチョの手を、ニコは内心訝しみながら、ガシッと握る。
こうしてニコも、久しぶりに来たトレーナー然として溶け込めていた。
仕方がないとは言え、ますますジム感が上がっていく。
「ああ……どうしてこんな面白いことになってしまったの? アリスラビリンスって、キラキラときめくメルヒェンな世界じゃなかったの」
――今すぐ返しなさい。
メールは喉元まで出かかった言葉を、今度は飲み込んだ。
どうせ、言っても聞いてやしないだろうし。
それに、この世界自体をどうにかするより先にやることがある。
『よーし、次は100キロでダンベル行ってみようか!』
『それとも100キロでスクワットするか!』
「ま……ほんと……休ま……せ……」
この世界に迷い込んでしまったが故にパワハラ気味なトレーニング攻めにあっているアリス、スグルの危機を救う事だ。
『休みぃ? そんな暇はないと、何回言わせるのだぁ!』
「な、な、なんて事……!」
休みもなくトレーニングを強要させる状況を目の当たりにして、九十九・静香(怪奇!筋肉令嬢・f22751)は戦慄していた。
確かに筋肉を育てるのに鍛錬は必要だ。だが、休息も必要だ。
「同じ筋肉愛でも、わたくしとオウガの間にこんなに意識の差が!」
車椅子の上で、静香の握った小さな拳がわなわなと小刻みに震える。
『休みたい? なら横にさせてやろう』
『スカルクラッシャーだな!』
「ちょっとちょっと! さすがにやり過ぎですよ!」
スグルに休みを与えるどころか、無理矢理にトレーニング器具へ引っ張っていく様子に、アテナ・カナメ(アテナマスク・f14759)が危機感を覚えて飛び出していた。
●筋肉トーク
(「体を鍛えるのは悪いことじゃないけど、さすがにやり過ぎよ……あんなんじゃ壊れちゃうわ!」)
胸中で怒りながら、アテナはずんずん進んでいく。
「休息は必要です!」
マッチョをかき分け、割って入ったアテナは、一際大きな3m近い巨漢の腕を振り払ってスグルの腕を離させた。
『会長の腕を!?』
『何という腕力!』
割って入ったアテナの行動に驚くマッチョ達。
どうやら、今の巨漢が会長――オウガで間違いないようだ。
「こんなに汗もかいてるじゃない。何か飲まないと熱中症になるわよ!」
とりあえずアテナは判明した事実を棚に上げて、倒れたスグルに向き直る。
「大丈夫? これ飲んで」
「あ、ありがとう……先輩」
周りに合わせたジャージ姿でアテナを先輩トレーナーと思ったスグルは、差し出されたボトルを疑いもせず受け取った。中身は3倍に薄めたスポーツドリンクだ。
『熱中症? そんな心配はなぁい! 弊ジムは、冷房完備!』
「そう? 冷房効いた屋内でも熱中症になる時はなるし、水分補給を怠れば脱水症にだってなりかねないわよ!」
ボトルを奪おうと会長が伸ばしてきた腕を、アテナが再び振り払う。
その後ろで、スグルがヨロヨロと立ち上がろうとしていた。
「まだ寝てなさい」
するりとマッチョの輪を抜けていたメールが、その顔にタオルをかける。
「で、でも、会長は休むなって……」
すでにスグルは、大分毒されているようだ。
「休むのもトレーニングと思って、がんばって休むのよ。がんばれがんばれ♡」
そんなスグルを休ませるべく、メールはノリを合わせて応援してみる。
「い、いいのかな……」
「こんなにカワイイアタシに応援してもらえるなんて、滅多にないんだからね!」
「う、うん」
まだ戸惑っていたスグルだが、休みを強く勧めるメールの圧に、何故かタオルで顔を隠すようにして頷いていた。
(「んー? もしかして応援されるの慣れてない?」)
『へい、カラフルガール。君はトレーニーではないな』
メールがその疑問を確かめる前に、会長がじろりと見下ろして来る。
実際、メールの服はいつものカラフルなドレスだ。
浮いていると言えば、浮いている。
「体験見学者よ。通りすがりの」
『なるほど、見学者かぁ! 存分に見ていってくれ』
だが、メールが堂々と告げた立場に、会長は2秒で納得した。
(「成程、アホね」)
メールは胸中で盛大な溜息を吐いていた。
ガラガラガラ――!
(「……取り乱している場合ではありませんね!」)
車椅子のタイヤをジムの床にこすらせて、静香もスグルを囲む場に割って入る。
『何の用だね? ホイールチェアのリトルガール』
「わたくしも見学させて貰いますわ。このような身体でも構いませんわね?」
じっと見下ろす会長の視線に、静香は乗っている車椅子の手すりを軽く叩いてその存在を示しながら、きっぱりと告げる。
『構わぬ。弊ジムの門は誰にでも開かれている!』
車椅子では門前払いに一蹴されるのではないかと思っていた静香は、会長の反応に意外そうに目を丸くする。
『だが、カラフルガールにリトルガール。見学者は大人しく見学していて貰おうか』
予想とは違ったとは言え、話にならない事に変わりはなかった。
「身体を鍛えるのは確かに素晴らしい事です。でも、やりすぎで身体が壊れたら元も子もないわ! 身体を丈夫にするためにやるのがトレーニングでしょ!?」
『身体ではなぁい! 筋肉だ! 筋肉を鍛えれば身体もついてくるのだ!』
それは平行線なアテナと会長の筋肉論議の様子でも明らかである。
「身体が壊れたら、筋肉だって壊れるじゃない!」
『壊れないように筋肉を鍛えるんだ!』
「あー、もう。ああ言えばこういうんだから!」
アテナの言葉は正論だが、それで説得出来る相手ではなさそうだ。
「ねえ、ねえ。キレイな身体の作り方を教えてくれない?」
ならばとメールが、別の話題を振ってみる。
「スタイル良くするとか、背を伸ばすとか、何処の筋肉を鍛えたら良いのかしら?」
筋肉の話題ならば、会長の気を逸らせるだろうと。
『キレイな身体ならば、やはりキレイな筋肉を作る所からだ。大胸筋、大腿筋、上腕筋、後背筋、腹直筋――全身のあらゆる筋肉を鍛えて、眠れない夜を過ごすのだ!』
確かに気は逸らせた。会長は食いついた。
それで会話になるかと言うのは、また別問題である。
「………えーっと、あれね。何言ってるかさっぱり分からないわね」
(「期待したメルちゃんがバカだった……」)
(「やはり、あの手を使うしかないようですわね」)
今度ははっきりと大きな溜息を吐いたメールの姿に、静香がもう1つのカードを切る事を決意する。
その時、ジムの扉が大きな音を立てて開かれた。
●プロテインは運動後30分に飲むのが良いらしいです
「こんにちはーっ!」
穂結・神楽耶(舞貴刃・f15297)の元気の良い声が、ジムに響き渡る。
扉を開けて現れた神楽耶の首にはバンドが掛かっていた。バンドの先には、大きな籠が付いている。籠の中に並んでいるのは、やや濁った色の飲み物が入ったボトル。
「あ、あれは……もしかしてプロテイン?」
タオルごしにそれを見たスグルは、それが何であるか気づいたようだ。
「そう、プロテイン配給のお時間です! いつもご利用ありがとうございます!」
『いつも?』
『頼んでたっけ?』
笑顔で告げる神楽耶だが、突然のプロテインに会長以下マッチョ達は首を傾げる。
「流石に戸惑いますよね……はじめてですし」
『何か言ったかねぇ?』
「いえいえなんでもありませんよー?」
ボソッと呟いた言葉を会長に聞き返されても、神楽耶は笑顔を崩さずにプロテインの並んだ籠を向ける。
「それよりもプロテインですよ! 筋肉を作るのに、タンパク源は必要不可欠! いつも通り、会長さんは5リットル。他の皆様は3リットルですよね?」
「その量を……一人一人が!?」
神楽耶の言うプロテインの量を聞いたスグルが、驚愕に目を見開く。
さもありなん。
何しろ大きいペットボトル以上の量である。水であっても、一気に飲むのは中々出来るものではない。
「あ、獅童様はそのまま、水分補給に最適なスポーツドリンクをゆっくり飲んで、体力を回復なさってくださいまし」
スグルの呟きを聞いた神楽耶は、笑顔で振り向きそう告げた。
「え、良いんですか?」
「ええ、正しく筋肉をつけるためには休息も必要不可欠ですから。それが分かってない方々の言に取り合わなくて大丈夫ですよー」
ホッとした様子のスグルに安心させるように言って、神楽耶は会長に向き直る。
『ううむ……だめだ、今は飲めない』
何故か、会長以下マッチョ達は腕を組んで唸っていた。
「飲 み 切 っ て く だ さ い ね ?」
その様子を疑問に思いつつも、神楽耶は穏やかな笑みを浮かべたまま、有無を言わさない圧を言葉に込めてゆっくりはっきり告げる。
「飲 み 切 れ な い な ん て 言 わ せ ま せ ん よ ?」
嘗ては御神体であった神楽耶の本領発揮、と言ったところか。
『違うのだ……量は問題ではないのだ!』
だが、会長は神楽耶にそう言い返してきた。
ならば何が問題だというのか。
『今はゴールデンタイムではないのだ!』
ゴールデンタイム。
詳細は省くが、プロテインを飲むのに適していると言われる運動後の時間である。
『余はまだトレーニングをしていない! 今はスグルのトレーニング中。つまり、プロテインを飲みたくても飲めないのだ!』
「だったらトレーニングすればいいだけじゃないですか!」
一見正論と思える会長の言葉を、神楽耶がそれ以上の正論でぶった斬った。
『ぬぅ……だが今はすべての器具をトオルのトレーニングに回して――』
「はい、マッチョの皆々様。注目ですわ」
なおも言い返す会長の声を遮って、静香は軽く手を叩いた音で注目を集めた。
「器具ならありますわ。まずは、大型ダンベルと、大型バーベル」
いつの間にか、静香の横にはどっしりとした重たい器具があった。
どちらも、このジム空間にあるものより大きいではないか。
「更に特別な機構を使った高性能ロヲドバイク!」
特別な機構は、蒸気機関と影朧エンジンの組み合わせ。
猟兵でなければ、まず用意できない代物。
「わたくしに皆様のトレーニングを見せて頂けたら、全て寄贈致しますわ!」
それが静香のもう1つの、令嬢としてのカード。
即ち――財力。
「九十九家筋肉技術班手製の超合法パワーフード『ぷ炉手院』も付けますわよ!」
静香の手には、何かペカーと光ってる謎の飲料。
『よし、トレーニングするぞぉ!』
物で釣ろうと言う静香の策に、会長、2秒で落ちる。
「こちらの高性能ロヲドバイクは、様々なモードが用意されておりまして――」
更に持ち込んだ機材の説明を、静香は細かいところまで示していく。
「どんどん運動して、どんどんプロテインを飲んで下さいね。無くなったらすぐにおかわりを注ぎますので!」
会長を煽るように、神楽耶はにこやかに告げた。
2人の狙いは、スグルが休める時間を稼ぐ事。その目的は、充分に果たされていた。
●身体で語る
『これはいいバーベルだ! 大胸筋にズシッと来る』
『へい、ニュービー! お前もトレーニングを再開しろぉ!』
トレーニングに入った会長とマッチョが、バーベルがしゃがしゃ鳴らしながらスグルにトレーニングに戻れと叫ぶ。
「さて……次はどの器具にするか」
その声を聞きながら、麗治はさもトレーニング器具を探している風に、器具の間を縫って歩いていた。
『まだそこのチェストプレスマシンが――』
「ちょっといいっすか?」
会長が空いている器具を指差すと同時に、麗治がその前に立つ。
「このマシンを使いたいんだけど。今すぐ。空いてるんで」
麗治は会長にも他のマッチョにも何か言わせる暇を与えずに、斜めの背もたれが付いたトレーニング器具に入って、ポジションについた。
『へい。弊ジムのニュービー教育の邪魔を――』
「おいおい、ここのジムは客に筋肉を鍛えさせないのか?」
『……筋肉のためならば仕方ないな』
バーベルを置いて駆けつけた会長だが、すぐにその手を引っ込めた。
筋肉を含めた一言と――麗治の鍛えられ引き締まった筋肉を見て。
『その筋肉を見れば判る。一朝一夕で身につくものではなぁい! 貴様もまた、トレーニングに魅入られた者!』
「始めさせて貰うぞ」
何か盛大に勘違いした会長の言葉を肯定も否定もせず、麗治は器具のバーを掴むと、ぐっと引き始めた。
「ふっ、はっ」
バーを引いて戻す。
言葉にしてしまえばそれだけの動きだが、呼吸を合わせて、リズミカルにとなると、そう簡単に出来るものではない。
「フン! ムン!」
実際、麗治の動きは手慣れたものだった。
それもその筈。
麗治に宿るUDC寄生体は、麗治に常人の何倍もの筋力とスタミナをもたらした
だが、麗治はその能力に甘えるような真似を由としなかった。
UDCエージェントになった今も、日常的にトレーニングを行っているのだ。
「フン! ムン!」
トレーニングする時は、限界まで追い込んで来た。
高校時代、サッカー名門校でレギュラーとして鍛えた麗治の身体は、それから更に鍛えられ、絞られている。
「……………すげぇ」
その背中は、スグルに萎えかけていたトレーニングへの意欲を再び取り戻させる、大きな一助となっていた。
●自信を抱け
「そこの兄さん!」
ぼうっと麗治のトレーニングを眺めていたスグルに、理玖が声をかける。
「僕……ですか?」
「そうそう、あんた。器具の使い方教えてくんない? あの辺の、棒がぶら下がってるのとか」
「棒……ああ、ラットプルダウンっすか」
理玖が説明を求めた器具の名前を、スグルはすぐに口に出していた。
「すげーな。こんなに器具あるのに覚えてんだ。期待の新人って奴じゃん」
「これくらい、トレーナーになるなら当然……」
そうは言いながらも、スグルは理玖に褒められ嬉しそうにしていた。このジム空間に入り込んで以来、まともに褒められる事などなかったのだろう。
「ラットプルダウンなら、俺も見て貰えないだろうか」
そこに、ニコも指導を請う体でスグルに声をかける。
「あ、えと。会員の方ですかね。すごい慣れてる感じが……俺みたいな新米より、ベテラントレーナーの方が」
「君は……獅童、というのだな。確かに多少心得はあるのだが、最近忙しくてブランクがあるのだ。初心に帰ると言う意味で、是非君にお願いしたい」
自信なさそうなスグルに、ニコは名札を確認する慣れた会員を装いながら、自然な流れでトレーニングの指導役に誘う。
「特に見て欲しいのは、姿勢だ」
マシントレーニングは正しい姿勢で行わねば効果が出ない。ジムには鏡もあるが、器具の中からでは自分の姿勢を鏡で見るのも中々難しいものだ。
「どうか俺達を見守り、時におかしな所が有れば指摘をしてはくれまいか」
「そう言う事なら……頑張ります」
「そんじゃ、頼むぜ。俺、陽向理玖ってんだ」
頷いたスグルは、ニコと理玖をラットプルダウンへと連れて行く。
「座る向きは器具の方を向いて。上のバーを掴んで、首の前、胸に触れるくらいまで引き下ろします」
「おお、なるほど」
早速座った理玖が、頭上のバーを掴んで言われた通りに引き下ろす。
隣でバーを掴んだニコは、少し速いペースかつ『わざと首を竦めがち』に崩した姿勢をとって、バーを引き降ろしていた。
「あ、ちょっと首の位置が……違うな、もっと胸を張る感じで」
「おお。そうだったな。こうか?」
ニコの狙い通り、スグルはニコの姿勢のおかしいところにすぐに気づいて、まだ不慣れそうに言葉を探しながらも的確なアドバイスをしてくる。
「あとは……肩甲骨の動きを意識しするのと、上体も――」
「的確なご指導だな。有難い」
「いやいや、そんな事ないですよ」
ニコの称賛に、スグルは照れたように頬をかく。
「そんな事ねぇよ。スグル兄さん教え方、上手ぇって」
スグルを安心させようと、理玖はぎこちなく笑ってみせる。負の感情以外を奪われながらも救われてから、3年。まだへたくそだが、少しは笑えているだろうか。
「……トレーニングは、結構してきたから」
安堵の現れたスグルの顔を見れば、効果はあったと言っていいだろう。
「だと思った。あんた、いー身体してるもん」
「そのつもりだったけど、会長と比べるとまだまだだ」
まだ自信を失った様なスグルの顔を見ながら、理玖は話を続けようとする。
「でも結構鍛えてるだろ?」
「まあ、家で出来るトレーニングは良くやってたな」
「いいじゃん。俺もそのくらい筋トレとかしたいんだけど、師匠……っと保護者がうるさくてさー、まだあんま派手に出来ねーの」
「あー。自宅だと難しいよな」
話している内に、理玖の話は少し愚痴っぽくなり始めていたが、同じ経験を思い出し頷くスグルの口調は、いつの間にか砕けたものになっていた。
「自信を持っていいぞ」
そんなスグルに、ニコがラットプルダウンのバーを離して口を開く。
「ご指導のお陰で俺も、身体を痛める事なくトレーニングが出来たのだ」
ニコの称賛に、スグルも小さく笑みを浮かべる。
「ありがとうございます。でも俺もまだ、使ったことがない器具もあって」
「趣味で鍛えるに留まるならばまだしも、トレーナーとなると一大事だな。あらゆる器具を扱えなければならないとは」
すべてのトレーニング器具を扱える。
トレーナーにその水準を求める。ニコも理解出来なくもない。
だが、そんなトレーナーに、一朝一夕でなれるものか。
「しかし其れを強要されるとは辛かろう?」
言っても良いのだと、ニコは言外にスグルに告げる。
「そう……ですね。さっきまでは……すごい辛かったです」
ぽつり、ぽつりとスグルは労苦を口から溢す。
「でも……やっぱ、トレーニング好きです、俺」
ニコと理玖の方を見て告げたスグルの目には、光が戻っていた。
「もう少しの辛抱だ。此の鍛えた筋肉で、何とかしてやる故に」
そんなスグルに、ニコは小声で声をかける。
何をどう、とは言わずに。
あのオウガを、と会長を指して言っても、今はまだスグルには判らないだろうし、事細かに説明するわけにもいかない。
だが――。
『しまった! ついトレーニングに熱中している内に、あのガキの心が立ち直ってしまっているではないか! かくなる上は――』
会長が発する空気が変わる。
あれをオウガと言える時が、少し近づいていそうだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
●グリーンに染まれ
ところで、途中からマッチョな偽トレーナーの数が減ってきていた事に。お気づきだっただろうか。
その影には、1人の猟兵の活動があった。
「お邪魔しまー……わわ、すっげー! 筋肉すげー!」
ジム空間に入るなり緑の瞳を輝かせた、ソレーア・グリーンライト(グリーングリーンペインター・f16539)である。
「あっ、ジムのトレーナーさんなんすか! 他の方達も皆素敵ン肉をお持ちで!」
巨大なハケを抱えたソレーアは、肥大した筋肉を持つマッチョ達に声をかけていく。
「うんうん、こんな逞しい方達の元でビルドできるなんて完璧なジム……」
ソレーアは、偽トレーナー達を褒め殺そうと言うのか。
否である。
「……いや足りない。足りないすよ?」
ソレーアの様子が急変する。
「ここには『緑』が足りない!」
そして、声高にそんな事をソレーアが叫んでいた。
「生命たる緑! 根源たる緑! 酸素たる緑! それがない!」
観葉植物とかそう言う緑かと思えば、色の緑であるようだ。
言っている意味が判らない――そう言いたげな視線をマッチョ達と、一部他の猟兵からも浴びせられるが、ソレーアは気にしない。
「栄養が無きゃ草木が枯れる様に、緑が無きゃ筋肉シナシナのブヨンブヨンっすよ?」
『筋肉シナシナ!?』
『ブヨンブヨン!?』
『マッソウピンチ!?』
言っている意味が判らなくとも、偽トレーナー達はソレーアの言葉を、筋肉の危機だと認識したようだ。
まあ、所詮は大半が会長に扮したオウガによる幻覚。
大した判断力はないのだろう。
「ってことで緑に塗ろうぜ!」
ソレーアが置いたタンクの中身は、緑のペンキ。
その中に、ソレーアは担いでいた大きなハケの先端、筆毛を着ける。
「緑に染まれぇ!」
そして、ハケを振って壁に緑をぶちまけた。
『何をするぅ!?』
流石に慌てた偽トレーナー達が、飲んでいたプロテインを投げ捨てて止めに入る。
「大丈夫、心配ないっすよ! これだけ塗っても、なんと! タダ!」
『問題はそこじゃなぁい!』
いい笑顔で告げるソレーアに群がる偽トレーナー達。
「服と肉体にも緑キメません? 絶対カッコイイと思うんすよグリーンマッソー!」
『緑キメるってナニ!?』
『グリーンマッソーってナニ!?』
ソレーアの緑押しに、偽トレーナー達も思わずツッコむ。
「床も! 器具も! 全部、全部だ! 緑に染まれぇ!」
『器具は塗らせぬ!!!』
こうして、緑に塗りたいソレーアと、トレーニング器具までは塗らせまいとする偽トレーナー達の攻防が、ジムの片隅で行われていた。
ソレーア・グリーンライト
お邪魔しまー……わわ、すっげー!筋肉すげー!
あっ、ジムのトレーナーさんなんすか!
他の方達も皆素敵ン肉をお持ちで!
うんうん、こんな逞しい方達の元でビルドできるなんて完璧なジム……いや足りない。足りないすよ?
ここには「緑」が足りない!
生命たる緑!根源たる緑!酸素たる緑!
栄養が無きゃ草木が枯れるように、緑が無きゃ筋肉シナシナのブヨンブヨンっすよ?
ってことで緑に塗ろうぜ!(緑のペンキタンク、ドン)
巨大なハケであちこち緑で塗ったくる!
床も!器具も!全部、全部だ!緑に染まれぇ!
大丈夫、心配ないっすよ!これだけ塗っても、なんと!タダ!
その服と肉体にも緑キメません?
絶対カッコイイと思うんすよグリーンマッソー!
●グリーンに染まれ
ところで、途中からマッチョな偽トレーナーの数が減ってきていた事に。お気づきだっただろうか。
その影には、1人の猟兵の活動があった。
「お邪魔しまー……わわ、すっげー! 筋肉すげー!」
ジム空間に入るなり緑の瞳を輝かせた、ソレーア・グリーンライト(グリーングリーンペインター・f16539)である。
「あっ、ジムのトレーナーさんなんすか! 他の方達も皆素敵ン肉をお持ちで!」
巨大なハケを抱えたソレーアは、肥大した筋肉を持つマッチョ達に声をかけていく。
「うんうん、こんな逞しい方達の元でビルドできるなんて完璧なジム……」
ソレーアは、偽トレーナー達を褒め殺そうと言うのか。
否である。
「……いや足りない。足りないすよ?」
ソレーアの様子が急変する。
「ここには『緑』が足りない!」
そして、声高にそんな事をソレーアが叫んでいた。
「生命たる緑! 根源たる緑! 酸素たる緑! それがない!」
観葉植物とかそう言う緑かと思えば、色の緑であるようだ。
言っている意味が判らない――そう言いたげな視線をマッチョ達と、一部他の猟兵からも浴びせられるが、ソレーアは気にしない。
「栄養が無きゃ草木が枯れる様に、緑が無きゃ筋肉シナシナのブヨンブヨンっすよ?」
『筋肉シナシナ!?』
『ブヨンブヨン!?』
『マッソウピンチ!?』
言っている意味が判らなくとも、偽トレーナー達はソレーアの言葉を、筋肉の危機だと認識したようだ。
まあ、所詮は大半が会長に扮したオウガによる幻覚。
大した判断力はないのだろう。
「ってことで緑に塗ろうぜ!」
ソレーアが置いたタンクの中身は、緑のペンキ。
その中に、ソレーアは担いでいた大きなハケの先端、筆毛を着ける。
「緑に染まれぇ!」
そして、ハケを振って壁に緑をぶちまけた。
『何をするぅ!?』
流石に慌てた偽トレーナー達が、飲んでいたプロテインを投げ捨てて止めに入る。
「大丈夫、心配ないっすよ! これだけ塗っても、なんと! タダ!」
『問題はそこじゃなぁい!』
いい笑顔で告げるソレーアに群がる偽トレーナー達。
「服と肉体にも緑キメません? 絶対カッコイイと思うんすよグリーンマッソー!」
『緑キメるってナニ!?』
『グリーンマッソーってナニ!?』
ソレーアの緑押しに、偽トレーナー達も思わずツッコむ。
「床も! 器具も! 全部、全部だ! 緑に染まれぇ!」
『器具は塗らせぬ!!!』
こうして、緑に塗りたいソレーアと、トレーニング器具までは塗らせまいとする偽トレーナー達の攻防が、ジムの片隅で行われていた。
成功
🔵🔵🔴
第2章 集団戦
『うさうさトランプ兵』
|
POW : 落雷II
無敵の【空飛ぶイボイノシシ型の対地攻撃機】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
SPD : そう、我々はやればできる!
自身の【ゴーグル】が輝く間、【軽量自動小銃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
WIZ : バーガータイム
【ハンバーガーとフライドチキン】を給仕している間、戦場にいるハンバーガーとフライドチキンを楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
イラスト:しちがつ
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●筋肉と銃器
『しまった! ついトレーニングに熱中している内に、あのガキの心が立ち直ってしまっているではないか!』
猟兵達のケアで、スグルが随分元気になっている。
その事実に気づいたオウガ扮する会長は、頭を抱える。
『かくなる上は――カモン! 上級マッソウスタッフ、うさうさトランプ兵!』
上級マッソウスタッフ!?
その掛け声とともに何処からともなく、ワラワラ湧いてくる新たな人影。
軍用スーツに軍用ゴーグル、軍用ヘルメット。
何故かメットに着いてるピンクのうさ耳っぽいもの。
その手に持っているのは、機関銃。
どこからどう見ても、兵士だった。
現代世界的な兵士だった。
『ふっ……上級マッソウスタッフに、言葉もないようだな』
猟兵たちに向かって、ドヤる会長。
『お前達の疑問は判っている。何故、銃を持っているのか、だろう』
他にもツッコミどころはあるが――。
そんな猟兵達の声を無視して、会長は滔々と語り続けていた。
『銃と筋肉は、実は密接な関係がある! 銃の反動は、決して小さくなぁい! ろくに筋肉もないヒョロヒョロの身体で、鉄の塊をブレずに構えていられるものかぁ! 故に弊ジムでは上級トレーニングに、射撃訓練を取り入れている!』
どういう事なんだろう。
『彼ら上級マッソウスタッフは、射撃訓練を終えた者。更にイノシシの突進にも耐えられる筋肉を得た彼らの想像力は、イボイノシシ型の対地攻撃機を作り出せる』
ジムとは一体。
『さあ、上級マッソウスタッフ、うさうさトランプ兵よ。彼らに上級トレーニングをしてやりなさい。余は、プロテインを消費するためのトレーニングに忙しいのでな!』
『ウサ! ウサ!』
会長の指示で、うさうさトランプ兵達は一糸乱れぬ隊列で進み出した。
=================================================
2章は、うさうさトランプ兵との集団戦です。
難しい条件はありません。蹴散らしましょう。
スグル青年はまだいますが、敵が猟兵より彼を優先はしません。
捕まっても射撃訓練をさせられるくらいで、深刻な危害を加えられる事はないです。
プレイング受付期間は、今回も最初に届いた方の期限に合わせる形になる予定です。
=================================================
アテナ・カナメ
【心情】銃って…もはや筋肉関係ないじゃない!何にしても撃たれる訳には行かないわ!行くわよ宛那(取り付いている人)!(ジャージを脱いでマントを羽織りイェカの姿に)スグルくんを助けるためにもやるわよ!
【作戦】仲間と協力。銃の攻撃に関しては【見切り】と【第六感】で対処。スグルくんは【怪力】と【救助活動】で弾丸の雨から別の場所に移動させるわ!そして、敵に【二回攻撃】のヒートスタンプを食らわせてやるわ!(蹴りとヒップアタック)
【作戦】
陽向・理玖
うさうさじゃねーし
トランプ兵でもねーし
どっちかってーとうさってよりうざ...?
目細め
...スグル兄さんもう少し待っててな
軽く見やると龍珠弾き握りしめ
ドライバーにセット
変身ッ!
敵へ衝撃波撒き散らし
まずはダッシュで手近な奴と距離詰めグラップル
殴る蹴る最後に吹き飛ばし
別の敵にぶつける
敵さんの数が多くてもどんどん倒しゃいーんだろ
残像纏う速さで接敵
どんどん行くぜ
拳の乱れ撃ち
筋肉すごくても急所は鍛えらんねーだろ
暗殺活用急所を殴る
イボイノシシは攻撃機にはならない
ならないッ!!
攻撃見切り
はっきりと断言
動揺させダッシュで懐に飛び込み
カウンターで灰燼拳
これで終いだ
筋肉もいーけど頭使えっての
●落雷II、或いはウォートホッグ
『ウサ! ウサ!』
『USA! USA!』
掛け声を揃えて、行進してくるうさうさトランプ兵。
『GO! GO!』とでも言っている感じだろうか。妙に発音英語っぽいし。
「うさうさじゃねーし。トランプ兵でもねーし」
唐突な兵士感に、陽向・理玖が思わずツッコミの声を上げていた。
『トランプ兵ウサ』
『ダイア大隊所属ウサ』
『この胸のダイアマークが目に入らぬかウサ!』
「知らねーし。うさうさ、うるせーし。どっちかってーとうさってより……うざ?」
うさうさトランプ兵の反論に、理玖が思わず言い返す。
『誰がウザだぁ!』
『UZAではない! USAウサ!』
ドパパパパパパッ!
先頭のうさうさトランプ兵数体が、自動小銃を撃ち鳴らした。威嚇のつもりか銃口は天井に向けられている。
とはいえ、銃が飾りでないと示すにはそれでも十分。
「撃たれる訳には行かないわ! 行くわよ宛――」
撃ち砕かれた天井の破片が降り注ぐ中、上級マッソウスタッフ――うさうさトランプ兵に向かって駆け出そうと、アテナ・カナメが足に力を込める。
――先にスグルさんの安全を。
その靴底が床を蹴る寸前、アテナに伝わってきた意識は、アテナが借りている身体、要・宛那と言う少女のものだ。
「判ってるわ、宛那!」
宛那の意志に応え、床を蹴ってアテナが飛び出す。うさうさトランプ兵ではなく、スグルに向かって。
「ちょっと失礼!」
そしてスグルの身体を片手で軽々と抱えあげると、他の猟兵達の後ろに飛び退った。
「うぇっ!? 片手!?」
「そこでじっとしてて!」
怪力に驚くスグルにトレーニングマシンの陰から動かないよう告げて、アテナはジャージの襟に手をかける。
「これでいいでしょ、宛那。スグルくんを助けるためにもやるわよ!」
ジャージを脱ぎ捨てると同時に赤いマントを羽織ったアテナは、今度こそ、うさうさトランプ兵に向かって飛び出した。
「……スグル兄さんもう少し待っててな」
理玖もスグルを安心させようと一声かけてから、進み出る。
その指が、虹色を弾いた。
「変身ッ!」
掴んで握り締めた龍珠を、理玖は腰のドラゴンドライバーに嵌め込んだ。龍の横顔が虹を喰らい、全身が虹光に包まれる。
光の中から飛び出した理玖の姿は、さながら龍の戦士のようだった。
『ウサッ!』
『撃ち方よぉーい!』
威嚇射撃をやめたうさうさトランプ兵達が、銃口を2人に向ける。
しかし弾丸が放たれるより早く、その1つをアテナの手が掴んでいた。
「どう見ても本当に銃ね……もはや筋肉関係ないじゃない!」
アテナの両足が炎に包まれる。
「ヒィィトスタンプ!」
炎の尾を軌跡に残し、アテナは目の前のうさうさトランプ兵を蹴り上げた。
『……』
ハイヒールに顎を蹴り砕かれたうさうさトランプ兵が、声もなく崩れ落ちる。その身体を踏み台に、アテナは降ろした蹴り足で飛び越えた。
『っ!?』
「これでもくらいなさい!」
驚くうさうさトランプ兵を、アテナの反対の足が蹴り飛ばす。
タタッ、パパパッ!
銃火が瞬き、放たれた弾丸が――理玖の姿を素通りした。
残像だ。
緩急を付けた動きで敢えて狙える隙を残像で翻弄しながら、理玖は間合いを詰め、うさうさトランプ兵士に拳を何度も叩きつけた。
「筋肉すごくても急所は鍛えらんねーだろ」
首元、水月、脇下。
一見ただの乱打に見えて、理玖は筋肉だけでは鍛えにくい急所を狙っている。
『ぐぅ……っ』
「数が多くてもどんどん倒しゃいーんだろ!」
よろけたうさうさトランプ兵を押し返すように、理玖は掌底を叩き込む。同時に放った衝撃波で、後ろのうさうさトランプ兵を巻き込む様にふっ飛ばした。
「筋肉もいーけど頭使えっての」
『頭を使えか。良いだろう』
『かくなる上は――カモン! ウォートホッグ!』
『イボイノシシ攻撃機、落雷II、出撃ウサ!』
ドドドドドドッ!
蹄の足音のように重たい音が、うさうさトランプ兵の後ろから聞こえてきた。
やがて見えてくる丸みを帯びたシルエット。焦げ茶色のボディ、短い手足。その口からは大きなガトリング砲が、腹からはエンジン付きの鈍色の翼が生えている。
イノシシと兵器の融合としか言いようがないヘンテコが、そこにいた。
なんかこー、空を走ってるよって感じで短い手足をバタバタさせてはいるけれど、その足で走っている訳ではないのは一目瞭然。
「この半端なイノシシ感……あんたら、イボイノシシは攻撃機にはならないって、実はわかってんじゃねーのか?」
『『うっ……!』』
半眼になった理玖のツッコミに、うさうさトランプ兵達が、一瞬言葉に詰まる。
『なるウサ。ウォートホッグは。飛ばないイボイノシシはただのイボイノシシだ』
「ならないッ!! あれ飛んでるの、イノシシ要素じゃねーだろッ!」
『な、何を。イボイノシシの背中を見るウサ! あの翼の様な筋肉を!』
「だからその筋肉、飛んでるのと関係ねーだろうが!」
うさうさトランプ兵の反論を、理玖ははっきりきっぱりツッコミ、切り捨てていく。
ぐらり。
イボイノシシ攻撃機の機体が、揺らいだ。もともとあまり速くもなかった速度が更にゆっくりになる。
「「チャンス!」」
対地攻撃が来る前に、アテナと理玖がほとんど同時に床を蹴っていた。
「ヒィィト――スタンプ!」
空中で赤いマントを翻しながら膝を畳んだアテナは、揃えた両足に炎を纏わせ、一気に突き出した。
「これで終いだ」
握る拳は灰燼拳。
理玖の突き込んだ拳打の衝撃が、うさうさトランプ兵の身体を突き抜ける。
炎を纏ったアテナのドロップキックがイボイノシシ攻撃機を蹴り飛ばし、理玖に殴り飛ばされたうさうさトランプ兵がそれとぶつかり、大きな爆発を引き起こした。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
九十九・静香
※連携アドリブ可
ようやく戦っても良いのですね?
では参ります
筋肉令嬢姿に変異し、【怪力】で本物の断部流と刃亜部流を振り回し攻撃
給仕を受けたら素直に武器を手放し両手でそれぞれ持ち味わう
『初めての味わいですが、肉の旨味と刺激的な炭酸の味。悪くないですわね。しかしこれでは腕は使えませんね……ならば宣言しましょう。この両手で飲み食いし終えるまでに貴方達を筋肉で打ち倒すと』
UCで脚部の筋力を飛躍させ、空中を蹴り駆け抜ける事で相手の上を取り頭上からの蹴りや超速の蹴りからの【衝撃波】で攻撃
更に【ジャンプ】を織り交ぜての三角飛びで相手の銃撃等をかわします
『筋肉を高めれば飛べぬ人間の道理すら超越できるのです』
七瀬・麗治
戦いの気配に反応し、闇の人格「ロード」が降臨。
「ほう……なかなか愉快な兵士たちではないか。
では、この私が直々に調練してやろう!!」
服を脱ぎ、上半身裸に。そして【地獄への扉】を発動。
青い寄生体が体を覆い、魔人形態に変貌する。
悪魔の翼を生やし、<空中戦>でジム内を自在に飛翔。
飛び蹴りで敵兵を<吹き飛ばし>、<グラップル><怪力>で複数人
まとめて担ぎ上げ、投げ飛ばす。
「私の騎士団に加えてやろうかと思ったが、この程度か。鍛錬が足りん!
……なにやらそのリュックサックから美味そうな匂いがするな。
ちょうど腹が空いていたのだ」
なぎ倒した敵からバーガーとチキンを奪い、スポドリで流し込んで
もりもり貪り食う。
●空を飛ぶ筋肉は、埒外の筋肉だ
「ようやく戦っても良いのですね?」
響く銃声。天井を穿つ弾丸。
九十九・静香にとってその音は、戦いを告げる号砲と言えた。
『戦いもトレーニング。かかってくるウサ!』
『車椅子に乗っていようが、我々は容赦しな――』
「よいしょっと」
うさうさトランプ兵が言い終わる前に、静香は車椅子からひょいと立ち上がった。
ただ立ち上がっただけではない。
ほんの少し前までは線の細い少女であった静香の全身は、変化していた。上級マッソウスタッフであるうさうさトランプ兵の誰よりも肥大した筋肉を持つ身体に。
『ナ、ナ――』
その変貌に、うさうさトランプ兵も流石に言葉を――。
『ナイスバルク!』
『肩メロン!』
あ、失ってないですね。
そして、響く銃声に戦いの予感を感じた猟兵がもうひとり。
「ほう……なかなか愉快な兵士たちではないか」
うさうさトランプ兵に向ける七瀬・麗治の眼が、変わっていた。
視線の種類が違う、と言う意味ではない。
白目が黒目に、赤瞳が青瞳に――麗治の瞳の色が反転していた。
「では、この私が直々に調練してやろう!!」
トレーニングウェアの上を脱ぎ捨てながら言い放つ口調も、麗治のものとは違う。
そして何より。
露わになった上半身のその肌の色が、みるみる内に青に変化していった。
『ブルーの腹筋ウサ!?』
『マッチョモンスター!?』
うさうさトランプ兵をも唸らせた、麗治の身体を覆う青。
それは麗治に宿るUDC寄生体の色だ。寄生体が結晶化して、表へ出た証だ。
寄生体の力を隠そうとせずその身に纏う姿は、先の黙々とトレーニングに励んでいた麗治の姿からすると、ある意味真逆。
それもその筈。
今の麗治は、厳密に言えば麗治ではない。
発砲音に戦いの気配を察して表に出てきた、闇の人格『ロード』であった。
「はぁっ!」
静香が両手に持った断部流と刃亜部流を振り回し、うさうさトランプ兵を容赦なくなぎ倒していく。
『上腕グレネード!』
『だがその筋肉、燃費が悪いのではないかな?』
純粋な力比べでは分が悪いと踏んだか、うさうさトランプ兵達は静香に向けていた銃口を下ろす。
『ビーフ100%バーガーをどうぞウサ!』
『フライドチキンもあるウサ!』
故に彼らは、バーガーとフライドチキンを静香に差し出したのである。
「これが、所謂ファーストフードですか。頂きますわ」
断部流と刃亜部流を足元に置いて、静香はバーガーとフライドチキンを素直に受け取ると、その両方を交互に食べ始めた。
「初めての味わいですが、ハンバーガーはパンとチーズと肉の旨味が上手く合わさっていますわね。チキンの刺激的な味は唐辛子でしょうか。悪くないですわね」
この時、静香の両手は初めての味で塞がっていた。
「しかしこれでは腕は使えませんね……」
静香自身、その状態には気づいていた。これでは断部流と刃亜部流を拾えない。
だが――。
「宣言しましょう」
告げた次の瞬間、ダンッと重たい音が響いて静香の姿が消えた。
「この両手で飲み食いし終えるまでに、貴方達を筋肉で打ち倒すと!」
続く声は、トランプ兵達の頭上から。
一瞬でそんな高さまで跳躍した静香の体型は、再び大きく変わっていた。
下半身――特に両脚の筋肉のみが異常なまでに強化されている。
――怪奇! 超脚力空中疾走。
自身の筋肉を自在に操る、怪奇人間ならではの業。
『足がゴリラみたいウサ』
『泣く子も黙る大腿筋!』
『ハムストリングス山脈!』
『下腿筋が歌ってる!』
そんな脚の筋肉に釘付けになっていたうさうさトランプ兵を、静香は空気を蹴って跳んで端から蹴り倒していった。
「幾千の過去を屠り、冥府魔道の果てに目指すは血の玉座」
――ノッキン・オン・ヘルズドア。
地獄への扉が開かれるが如く、麗治の――ロードの背中で青が盛り上がる。
『背中に羽が生えてるウサ!』
『って、あれは――』
麗治の背中に盛り上がった青は、悪魔の翼となって大きく広がった。
その背に悪魔の翼を抱く。
そんな姿、人の枠を超えていると言えよう。
そこにいるのは、青の魔人。
『筋肉が本当に羽になった!?』
「ふん。この翼がそんなものではないと――思い知れ」
二度、三度と悪魔の翼を羽撃かせ、ロードが浮き上がる。うさうさトランプ兵達の頭上を超えるまでに。
「天井が少々邪魔だが――まあいい」
空中に静止したロードは、駆け出す前の様に前傾の体勢を取る。次の瞬間、青の魔人はスポーツカー並みの速度で飛び出した。
『ウサッ!?』
「遅い!」
その飛翔速度に驚くうさうさトランプ兵を、自由自在に飛び回るロードの脚が、次々と蹴り飛ばす。
「私の騎士団に加えてやろうかと思ったが、この程度か」
数体蹴り飛ばした所で、ロードは残るうさうさトランプ兵の背中に回り込むと、そのリュックを両腕で1つずつ抱えた。
そのまま翼を力強く羽撃かせ、うさうさトランプ兵をリュックごと抱えあげる。
「鍛錬が足りん!」
両腕でリュックを抱えたまま、ロードはうさうさトランプ兵ごと回転し始めた。回転は次第に勢いをましていき、うさうさトランプ兵をぶん回す。
リュックを抱えたジャイアントスイングのようなものだ。
やがてリュックのベルトが切れて、うさうさトランプ兵が投げ飛ばされた。
「はい! ずどーんっ!」
投げられた先に待っていた静香が、うさうさトランプ兵を脚で叩き落とす。
「このリュックサックから美味そうな匂いがするな」
一方、ロードはもぎ取ったリュックを容赦なく漁っていた。この程度――そう称した時点で、うさうさトランプ兵から興味を失っていたのだろうか。
「ちょうど腹が空いていたのだ」
見つけたハンバーガーとフライドチキンを、ロードはスポーツドリンクで流し込む勢いでもりもり貪り始めた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ソレーア・グリーンライト
……ふう(落ち着いた)
(バーガーとチキン両手に持って食べつつ)
わかるわかる、反動キツいよなー。
皆さん程の筋肉ありゃ余裕なんだろうなー。
まあ俺も余裕だけど。見てみます?
って感じで靴の爪先部から緑のネバネバ塗料発射!「グリーンライム」だ!
ほら撃ってもブレない!ぶっとい手足じゃなくても飯食いながらでも全然平気!
てことでその自慢の脚でウサ兵を攪乱しつつ、時には頭上を飛び越えながらネバネバで足や銃を狙うぜ!
余裕あったら銃蹴り落としてネバらせる。危ないからな。
あ、そこのあんた(スグル青年)、塗料付かないよう離れてなよ。付いたら落ちないぞ!こうなるぞ!(自分の服指さす)
(反動平気な理由は脚が改造済みだから)
ニコ・ベルクシュタイン
ピンクの…うさ耳…?
此れはどういう事だ、俺への挑戦か!?(被害妄想です)
彼奴を思わせる其の姿に俺が…流石に惑わされる訳が無かろうが!
俺も一応銃器を扱う事は出来るが、折角ジムに来ているのだ
此処は一つ己の身体で勝負をしようではないか
スクワット各種やレッグエクステンションなどで鍛え上げた
脚力を…む?何故突然ハンバーガーとフライドチキンが?
肉は筋トレのお供であるがバンズはいかんな、糖質の塊だ
フライドチキンは論外、貴様ら本当にトレーニングを積んでいるのか?
…だが其れは其れとして折角出されたものは有難く頂戴しよう
食べてしまったら其の分運動をして相殺すれば良いだけの事
(UCで振り上げた踵の行き先はお任せ)
穂結・神楽耶
ジムのトレーニングとは一体。ブートキャンプとお間違えでは?
まあ、しかし。
お尋ねしますが、上級マッソウスタッフ様方。
あなた達、トレーニング機材を壊していいんですか?
銃というのは容易く流れ弾を生みます。敵も味方も人数がいるのですから、尚更ですね。
するとどうなるか…あなた達の筋肉を育んだこのトレーニング機材たちが可哀想な鉄屑になってしまうのです!
まあ、トレーニング機材を盾にしているのはわたくしの方なのですけど。
悪く思わないでくださいね。わたくし銃より刀贔屓ですから。
切り払え、【神遊銀朱】。
●バーガータイムと銃トレは釣り合うか
「…………」
天井を穿つ威嚇射撃の音を聞きながら、ニコ・ベルクシュタインはかけていた眼鏡を無言で取っていた。
クリーナーでレンズをふきふき、かけ直す。
それでも――眼の前の現実は変わらなかった。
「ピンクの……うさ耳……?」
うさうさトランプ兵の頭上で、それは存在を主張していた。
「此れはどういう事だ、俺への挑戦か!?」
『なに言ってるウサ?』
『わからんウサ』
ちょっと被害妄想で取り乱したニコに、うさみみトランプ兵が揃って首を傾げる。
ピンクのうさみみ。
それはニコにとって、かなり特別な意味合いを持っているのだ。うん。判る人だけ判ってあげてくれ。
「……ふぅ」
ソレーア・グリーンライトの口から、吐息が溢れる。
その背後にはうさうさトランプ兵がいるのだが、ソレーアの視線が向いていたのは、うさうさトランプ兵ではなかった。
ほぼ一面、緑の壁。
マッチョ達の妨害もあって多少の塗り残しはあるが、ソレーアが1人で塗ったのだ。
それだけ塗れた事で、ソレーアは何か落ち着いていた。
「もっと塗りたいと言えば塗りたいけど、撃たれそうだし?」
振り向いたソレーアの鼻腔をくすぐる、ジャンクな匂い。
『ヘイ、そこのボーイ』
『ハングリーじゃないかウサ!』
「いただくー」
差し出されたハンバーガーとフライドチキンを、ソレーアは素直に受け取った。
「彼奴を思わせる其の姿に、俺が……流石に惑わされる訳が無かろうが! あれは確かにピンクのうさ耳ではあるが、たれ耳ではない……む?」
色々と葛藤していたニコの背後にも、うさうさトランプ兵がにじり寄っていた。
「何故突然ハンバーガーとフライドチキンが?」
そして当然の様に差し出されるジャンクフード。
『腹が減っては戦は出来ぬと言うウサ』
『弊ジムには、バーガータイムと言う、チートタイムがあるウサ!』
「チートデイならともかく、タイムなど聞いたことないが……折角出されたものを捨てるのも忍びない。有難く頂戴しよう」
とんでもルールにツッコミながらも、ニコも2つを受け取った。
辺りに漂う、ジャンクフードの匂い。
(「いつかの年末を思い出しますねー」)
『バーガータイムを味わえウサー!』
『食わずには帰さないウサ!』
あの時はピザだった、などと思い出している穂結・神楽耶の前にも、うさうさトランプ兵達がハンバーガーとフライドチキンを差し出していた。
「……お尋ねしますが、上級マッソウスタッフ様方」
『何ウサ?』
『おかわりならあるウサよ』
「そうではなく……あなた達、トレーニング機材を壊していいんですか?」
神楽耶の掌が、つい今しがたまで身を潜めていたチェストプレスマシンを叩く。そこには天井から跳弾した弾丸の跡がくっきりと残っていた。
「銃というのは容易く流れ弾を生みます。このまま撃ち合いになれば、敵も味方も人数がいるのですから、尚更ですね」
ましてや、うさうさトランプ兵達が持っている銃は自動小銃の類。
連射性に優れる分、流れ弾のリスクも拳銃より高いと言えよう。
「するとどうなるか……あなた達の筋肉を育んだこのトレーニング機器たちが、可哀想な鉄屑になってしまうのです!」
その弾痕は神楽耶がチェストプレスマシンを盾にしたから。
というのも多分にありそうなのはおくびにも出さず、神楽耶はうさうさトランプ兵をビシッと指差し言い放つ。
だが――。
『はー、これだから素人さんはウサ』
『トレーニング機器が壊れたくらいで、トレーニング出来なくなる事などないウサ』
うさうさトランプ兵達は、溜息を吐いたり肩を竦めたりしていた。
「へ、へぇ……どういう事でしょう?」
その仕草に若干苛立ちを感じはしたものの、神楽耶はそれを抑えて聞き返す。
『例えば自重トレーニングがあるウサ!』
『腕立て伏せなら、いつでもどこでも出来るウサ!』
『スクワットの重りも、銃で代用できるウサ!』
『それに何より!』
『撃ち合いは最高のトレーニング、ウサ!』
(「んん?」)
途中までまともな事を言っていた気がするが、後半明らかにおかしい事を言い出したのに気づいて神楽耶が内心で首を傾げる。
『最高に鍛え抜いた筋肉は、弾丸を耐えるウサ!』
『撃たれるのもトレーニング、ウサ!』
「ジムのトレーニングとは一体。ブートキャンプとお間違えでは?」
とてもトレーニングと思えない事をトレーニングとのたまううさうさトランプ兵に、神楽耶が流石にツッコんでいた。
『弊ジムのブートキャンプは、もっとハードな銃で撃ち合いウサ!』
「あるんですか!? しかもハードになるの銃ですか!?」
サラリと返された答えに、神楽耶は更にツッコミ返す。
「……つかぬ事をお聞きしますが。その装備、防弾仕様じゃないですよね?」
『『――……』』
神楽耶が間髪入れずに続けたツッコミに、うさうさトランプ兵達が押し黙った。
「そも、貴様ら本当にトレーニングを積んでいるのか?」
そこに、眼鏡をくいと押し上げながらニコが口を挟む。
どうやら、ピンクうさみみの葛藤からは抜け出したらしい。
「この食事だ。肉は筋トレのお供であるがバンズはいかんだろう。糖質の塊だ。揚げているフライドチキンに至っては論外。鳥なら茹でたササミにしておけ」
食べてしまった後では説得力に欠ける気がしないでもなかったが、ニコは構わず続けて押し切って見ることにした。
「食べてしまったら其の分運動をして相殺すれば良いだけの事ではある。だが、自重トレーニングはまだしも、そんな訳の判らんトレーニングで相殺出来るものか!」
『こ、これだから素人さんはー』
『さ、さては銃の反動を知らんウサ』
うさうさトランプ兵達は、若干どもりながらもニコに言い返す。
「ふむ。俺も一応銃器を扱う事は出来るのだがな」
『『――……』』
ニコが構えてみせた赤い精霊銃に、うさうさトランプ兵が再び押し黙る。
『と、兎に角、銃はトレーニング器具になるウサ!』
『反動はとっても大きいウサ』
「わかるわかる、反動キツいよなー」
苦し紛れに銃は器具だと力説するうさみみトランプ兵に、ソレーアが頷く。
「皆さん程の筋肉ありゃ、反動も余裕なんだろうなー」
言って、最後に残っていたハンバーガーの一欠をソレーアは口に放り込み――。
「まあ俺も余裕だけど」
もう1つハンバーガーを手に取ると、ふっと鼻で笑ってみせた。
『なんだと?』
『ならやってみるウサ!』
「おー、見てみます?」
ソレーアの挑発に、うさうさトランプ兵達はまんまと乗っていた。
「えーと……」
うさうさトランプ兵に向かって、ソレーアがゆっくりと片足を上げる。
「緑に塗れろ!」
ソレーアが伸ばした脚の、爪先から飛び出す緑色。
勢い良く放たれた緑の塗料が、うさみみトランプ兵の顔と頭にべったりと落ちる。
『ぬぉっ!?』
『な、何だこれは!?』
頭から塗料を被ったうさうさトランプ兵が銃を手放し腕でこするが、ネバネバした緑の塗料はこすった腕にも移って、緑がより広がるばかり。
「グリーンライム――この通り、足で撃ってもブレない!」
片足を上げたまま、ソレーアはハンバーガーにかぶりついてみせる。
「ぶっとい手足じゃなくても、飯食いながらでも、全然平気!」
事実、ソレーアが軸足にしている方の足は全くブレなかった。
『何という体幹ウサ!』
『一体何処の筋肉を鍛えたら……』
『腸腰筋か?』
ざわつくうさみみトランプ兵達だが、ソレーアがここまで余裕なのは、筋肉を鍛えたからではない。ソレーアは、サイボーグである。
脚部には、塗料射出の反動を抑える機構も組み込まれているというわけだ。
「さーて、銃も危ないからな。どんどん、グリーンでネバネバにしてやるぜ!」
ソレーアが振り回す足から飛び出す緑色が、うさみみトランプ兵達に降り注ぎ、そのネバネバで動きを封じていった。
ピンクのうさ耳が、緑に染まっていく。
(「これはこれで、何と言うか……」)
その光景を複雑な思いで見つめながら、ニコもうさうさトランプ兵に向き直る。
「折角ジムに来ているのだ。此処は一つ己の身体で勝負をしようではないか」
『面白いウサ!』
『射撃がトレーニングになると、証明するウサ!』
『一撃で倒せなければ、またハンバーガーを食って貰うウサ!』
ニコの申し出に、うさうさトランプ兵が銃を背中に回して身構える。
「各種スクワット、レッグエクステンションなどで鍛え上げた脚力を見せてやろう」
そんなうさうさトランプ兵達に、ニコは余裕の表情で近づいていく。
駆けるでもなくゆっくりと、一歩ずつ間合いを詰めて――。
トンッとニコが床を蹴った。
空中で前方にグルンっと一回転。ニコの右手側から見れば、伸ばしたニコの脚が描いた軌道は時計の針のそれと同じ。
時計と違うのは、回転から振り下ろされたブーツの踵がうさうさトランプ兵の頭に叩き込まれるまでが、秒を超えていた速さ。
「秒をも超えた此の一撃、皆には内緒だぞ」
理を超える秒針――クロックアップ・ストライク。
『……』
地形すら砕く一撃に砕け散ったメットとともに、ぴんくのうさ耳も、声もなく崩れるうさうさトランプ兵の頭から落ちていた。
『見えないウサ!』
『こうなったら撃てるだけ撃つウサ!』
緑に視界を奪われたうさうさトランプ兵が、苦し紛れに銃を撃ちはじめる。
とは言え、粘性のグリーンライムに動きを封じられた状態で、満足に狙いをつけられる筈もない。
結果、跳弾がますます増えている。
「早々に片付けた方が良さそうですね」
再びトレーニング機器の陰に隠れながら、神楽耶は刀に手を伸ばした。
黒塗りの鞘から、白銀の刃がスラリと現れる。
磨き抜かれた刀身に映った姿を頼りに、神楽耶はその切っ先を、うさうさトランプ兵の集団に向ける。
「偽りなれど、彼の色は真となりて」
それは音もなく現れていた。
うさうさトランプ兵に向けられた、無数の白銀の刃。
複製された刃の元は、結ノ太刀。かつての御神体――神楽耶自身。
「切り払え――神遊銀朱」
まさに雨の如く放たれる、白銀の刃。
「悪く思わないでくださいね。わたくし銃より刀贔屓ですから」
刃の雨がうさうさトランプ兵が構えた銃を容易く斬り裂いて、うさうさトランプ兵も次々と斬り倒していった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『メガトンキング・ネイキッド』
|
POW : メガトンキングドロップ
【天高く弾き飛ばすかちあげボディアッパー】が命中した対象に対し、高威力高命中の【上空でパワーボムの体勢に捕え落下叩きつけ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : メガトンパンチ
【常軌を逸した筋力・体重を乗せた拳】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
WIZ : 大王爆裂キック
【視線】を向けた対象に、【えげつないスピード・破壊力のミドルキック】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:すねいる
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「ファイール・ティンプレート」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●裸の王様
「……このジム……俺に合ってない気がします。無理」
若干瞳からハイライトが薄れている気もするが、スグルの口からこの世界を否定する言葉が出始めたのは、良い兆候であろう。
「銃撃ったり、飛んだり出来ない。無理」
銃はともかく、確かに飛ぶのは一般人には無理だろう。ハードルが高いとか、そう言うレベルの話ではない。
「もうちょっと、身の丈にあったジムでトレーナーを目指そうかなって」
ブラックな環境から抜け出す意志が、スグルの中に目覚め始めていた。
『なぁぁぁぁに甘い事を言っているぅ!』
だが、それを許さぬ声が響く。
『ぶはぁ! 飲みきったぞ、プロテイン!』
会長の足元には、空になったカップが転がっていた。本当に飲みやがった。
『辛いから環境を変えるだと? そんな甘い事で、真の筋肉が育つものかぁ!』
ブラック理論を堂々と口にして、会長が一歩進み出る。
『その根性、余が叩き直してやろう。余の筋肉でなぁ――集え、不思議なマッスル!』
やや前傾姿勢になった会長が、腹の前で両拳を握りしめる。
所謂、モストマスキュラーと呼ばれるポーズを決めた会長の筋肉が一瞬で肥大し、トレーニングウェアを内側から引き裂いた。
それと同時に、周りのマッチョなスタッフの形が崩れ出し、会長の身体へと吸い込まれるように消えていく。
それに比例して、更に強靭になっていく会長の筋肉。
『マイマッスルを全て余の身体に戻した。これぞパーフェクトマッスルフォーム』
この世界の大半は幻。
確かにそう聞いてはいたが。
もしかしなくても、うさうさトランプ兵以外のマッチョって、会長の筋肉で作られていた幻だったのだろうか。
『良く言うであろう。筋肉を褒める時に『大腿筋が歩いてる』とか』
怪訝な目だったり呆気に取られたりしている猟兵達に、会長が告げる。
『つまり! 筋肉とは概念! 筋肉とは独り歩きするものなのだぁ!』
何を言っているか判らないかも知れないが、1つだけ確かな事がある。
豪奢な赤いマントを羽織り、頭に王冠を頂いたアレは――もう、会長ではない。
『今こそ名乗ろう。余はメガトンキング・ネイキッド! 筋肉の王である』
オウガだ。
猟兵達は、オウガに自ら名乗らせる事に成功したのだ。
『さあ、戦おうぞ強者達よ。余の100万トンの拳の前に、ひれ伏すが良い』
今度はフロント・ダブルバイセップスと呼ばれるポーズを取って、メガトンキング・ネイキッドは戦いの始まりを告げた。
====================================
3章です。今回も難しい条件はありません。
ついに正体を現したメガトンキング・ネイキッドをぶっ飛ばしましょう。
見ての通りのパワーファイターですが、相変わらずアホです。
アホさを突くも良し、正面から殴り合うも良し。お好きにどうぞ。
なお、スグル青年は戦闘には巻き込まれないものとします。
心のケア的なものは余裕があったらしてあげてもOKです。
プレイングは、今回も最初に届いた方の期限で決まる予定です。
10/24までは確実。25も多分送信可能だと思われます。
=================================================
アテナ・カナメ
ふふふ…ついに本性を現しましたわね会長…。いや、もう変装もしてないし敬語なんて使う必要はないわね。問答無用!このアテナマスクが相手よ!勝負しなさいオウガ!!!
【作戦】敵とガチンコの殴り合いよ!ドロップとパンチは【見切り】と【第六感】で対処よ!キックは【見切り】が無理なら【怪力】で受け止めるわ!
そして隙を見て【2回攻撃】のバーニングパンチをくらわしてあげる!炎の鉄拳を受けなさい!!!その際の1回目で【目潰し】も狙うわ!
【スグル君への心のケア】あなたのトレーナーとしての技能はさっきの器具とか紹介する所を見てればよくわかるわ。あなたなら良いトレーナーになれる!頑張って!
(アドリブ・絡みOK)
メール・ラメール
会長うるさい!ステイ!
アタシは程よい筋肉がスキなのよ
何事も過ぎたるは猶及ばざるが如しって言葉知ってる?
知らないわよねアホだものね。よしおっけー、殴って殴る!
って、いったぁーい。……うへぇ、口のなか血の味がするわ
オンナノコに対して随分な扱いですこと!
「でもメルちゃん倒れてないわ。ふふ、大したことない筋肉ね?」
煽りながらにんまり笑顔
ふらふらしつつ、左手の手袋を外せば刻印
会長を引き付けての【捨て身の一撃】
ブラッド・ガイスト
襲うのは左手から伸びる触手の群れ
やせ我慢だと思ったの? バカね
「メルちゃんが、美味しく食べてあげる!」
カワイイメルちゃんの一部になれるだなんて、ほら!
そんなシアワセないでしょう?
七瀬・麗治
スグルが、このジム(世界)を抜けたがっている。
ここまでくればあと少し……あとはあのオウガを倒すだけだ!
UDC寄生体が拳を覆い、グローブ状の装甲を形成。
ジムらしく、格闘術で戦ってやる。
「いくぞ!」
ダッキングによる〈見切り〉で会長の打撃をかわしつつ、
ローキックで膝を〈なぎ払い〉。
更に〈グラップル〉で組み付き関節を決めてやる!
「くっ、丸太を蹴ってるみてえだ!」
相手が決め技を仕掛けてきたら、
〈武器受け〉でガード。狙うは【模倣と解析】による
敵ユーベルコードのコピーだ!
「筋肉は独り歩きすると言ったな。ならばそのマッスル、
オレが貰い受ける!」
コピーした技を駆使し、〈鎧砕き〉の一撃で肉の鎧を
ぶち抜いてやるぜ。
九十九・静香
※連携アドリブ可
(素晴らしいマッスルポーズを見せて貰った事への返礼のマッスルポージングをしながら)なんて美しく猛々しい素晴らしい筋肉
食人の性を抱く種であろうと、尊敬を抱き、出会えた事に感謝致します
ですが我らの道は並ぶ腹筋のように平行線
後は筋肉で語るのみ
UCで今までの筋肉体勢時間で後の対処策の成功率を上げ
◆怪力での断部流振り回し、
◆グラップルの体術を駆使しての拳や蹴りでの◆衝撃波で肉弾戦
アッパーが来たなら筋肉腕で◆盾受け◆オーラ防御で、意識を失わないようにし、捕まれ叩きつけられる前に変異を解除、元々の小柄体躯になり拘束を抜け、上空で筋肉姿に戻り◆踏みつけ蹴撃
『貴方の筋肉を越えていきます!』
●それぞれのマッスル感
「サイド・チェスト!」
『プロポーションおばけ! サイド・トライセップス!』
「肩メロン! アブドミナル・アンド・サイ!」
『グレートハムストリングス! モスト・マスキュラー!』
可憐な声と野太い声が、交互に響いている。
何が起きているのかと言うと、筋肉令嬢モードの九十九・静香と、正体を現したメガトンキング・ネイキッドが、互いに筋肉を褒めながらポージングしているのだ。
なんでそうなったんだろう。
「……」
そんなタイミングでロードから表の人格が入れ替わった七瀬・麗治は、流石に言葉を失っていた。さもありなん。
「会長うるさい! ステイ!」
『ふぬんっ!』
メール・ラメールの冷たくあしらう一言に、メガトンキングは、何故か拳を握った両腕を弧を描く様に広げて、全身に力を入れて筋肉を軽く隆起させたまま固まった。
「……何……してるの?」
『リラックスポーズだ。ステイ、とはその事では?』
そのポージングの意図が理解できずに目を丸くするメールに、メガトンキングはさも当然だろうと返す。
ボディビルにおけるリラックスポーズとは、基本姿勢ではあるが、リラックスと言いつつも全身に力を入れた姿勢である。
「いや、訳わかんないし」
「本性を現しても、やってる事はほとんど変わってませんわね会長……」
思わず視線を逸らすメールの横で、アテナ・カナメが思わずツッコんでいた。
口走ってから、アテナは気づく。
もうオウガの本性を露わにしているのに、つい敬語を使ってしまった事に。宛那であれば、その事に疑問を持たなかったかも知れないが――。
「もう変装もしてないし、敬語なんて使う必要はないわね」
『余の正体がメガトンキング――王と知って、敬う必要はないと言うか!』
意識して口調を変えて、向ける視線に敵意を込めるアテナを、メガトンキングは悠然と見下ろしポージングを変える。
「わたくしは、尊敬の念を抱いておりますわ」
そんなメガトンキングに、やはり別のポージングを取りながら静香が返した。
「例え食人の性を抱く種であろうと、筋肉に貴賤は有りません。その美しく猛々しい素晴らしい筋肉に出会えた事に感謝致します」
『話が判るのもいるな!』
静香の言い回しって筋肉が全てで、王であるかどうかには一切触れていないのだが、メガトンキングはそれでも良いようだ。
「アタシは筋肉も褒めないわよ? アタシは程よい筋肉がスキなのよ」
出来れば直視したくない程よくない筋肉を見せつけるメガトンキングを見上げ、メールは言葉を続ける。
「何事も過ぎたるは猶及ばざるが如し、って言葉、知ってる?」
『筋肉には鍛え過ぎなどなぁい!』
「あ、うん。知らないわよねアホだものね」
ムキィッと更に力を込めてポージングを変えるメガトンキングを知らない方だと結論づけて、メールはにこやかな笑顔を向ける。
「よしおっけー、殴って殴る!」
「そうだな。あとはオウガ、お前を倒すだけだ!」
メールの出した単純明快な結論に、戻ってきた麗治が頷き同意を示す。
まだ麗治が表に戻る前であったが、スグルの言葉は麗治にも届いていた。
「スグルが、このジム――この世界を抜けたがっている」
ここまでくればあと少し。
麗治がメガトンキングに向ける視線に、敵意を込める。
「お、俺……ここ抜けられるのか? 抜けていいのか?」
「ええ、今すぐとは行かないけれど」
麗治の言葉が聞こえて、また少し希望を取り戻したスグルに、アテナが声をかける。
「それに、あなたなら良いトレーナーになれる!」
自信を与えようというのか、アテナは強い調子でスグルに告げた。
「器具を紹介する所を見てたら、よく分かるわ。あなたのトレーナーとしての技量。良いジムに行けば、きっと大丈夫。頑張って!」
――ありがとう。
スグルが小さく告げた言葉を背中に聞いて、アテナはメガトンキングに向き直る。
「そう言うわけで問答無用! いくわよ、オウガ!!!」
『王のマッスルを思い知らせてやろう!』
啖呵を切ったアテナが床を蹴って飛び出すのと同時に、メガトンキングもその丸太の様な脚を、一歩前へと進ませた。
●マッスルバトル
『メガトンボディアッパー!』
「くっ!」
咄嗟に飛び退いたアテナの眼の前を、メガトンキングの巨拳が通り過ぎる。
巨拳の衝撃は、それだけでジムの天井を打ち砕いていた。
うさうさトランプ兵達の射撃で脆くなっていた箇所もあっただろうが、それを差し引いても凄まじい威力。
(「間合いが、遠い――っ」)
巨拳の風圧が赤マントを揺らすのを感じながら、アテナは内心臍を噛んでいた。
体躯の差は、そのまま間合いの差になる。
ただ攻撃を当てるだけならまだしも、アテナの狙いはそうではない。
故に――攻めあぐねていただろう。
1人で攻めていたなら。
『ヌゥァアアア!!』
「フゥウウウウ!!」
メガトンキングの拳の一撃を、飛び込んだ静香が断部流で迎え打つ。
巨拳と車輪がぶつかり、互いに弾かれる。
『それほどの筋肉、余のジムで活かせぬのが惜しいな!』
「我らの道は並ぶ腹筋のように平行線。後は筋肉で語るのみ」
すぐに次の拳を構えるメガトンキングに、静香も怪力を込めた腕で拳を放つ。
『ふははは! その通り! 言葉など不要であった!』
何度目かの激突の後、静香の車輪はメガトンキングの巨拳を――受け止めた。
『余の拳を止めるか! ナイスマッスル!』
「わたくしの筋肉は準備の儀を終えていますから!」
メガトンキングの称賛に、静香が優雅な笑みを浮かべて返す。
静香の言う準備の儀とは、ポージングの事だ。
――筋肉礼拝・祈りの型。
「魅せて溜める、これこそマッスルポージングなのです!」
静香は何も、ただノリでメガトンキングとポージング合戦をしていたわけではない。静香のポージングは、戦闘の為に、自身の力を高めるためのものだった。
『成程。上腕筋も僧帽筋も歌っているな! だがあぁぁぁぁ!』
確かに拮抗はしていた。
だが、メガトンキングが静香との拮抗に使っているのは片腕のみ。反対の腕は、次の拳を構えている。
「いくぞ!」
『次はお前か!』
静香と入れ替わりに飛び出した麗治に、メガトンキングがその拳を放った。
「っ!」
その拳は、上体を前に倒した麗治の頭上を通り抜けた。
拳の風圧に合わせて頭を振って、身体が流されるのを防ぎながら更に前に出る。
『ほう。その動き。貴様はボクサーか!』
メガトンキングが気づいた通り、麗治が見せた動きは『ダッキング』と呼ばれる、ボクシングにおける基本的な防御技術である。
「ジムらしく、格闘術で戦ってやろうと思って――な!」
答えて踏み込んだ麗治が、青で覆われた拳を振るう。
その青は、UDC寄生体。
ロードが魔人形態のために纏った結晶を、拳に集中させてグローブの様にしたのだ。
だが――寄生体のグローブを叩き込んでも、メガトンキングの身体は動かない。麗治の腕に伝わったのは、まるで大木でも殴った様な感触だった。
「……」
何だか筋肉率の高そうなガチバトル。
拳と拳、力と力。ぶつかり合う筋肉。
そんな戦いを、メールが「え。無理☆」とでも言いたげな表情で眺めていた。
『メガトンボディアッパァァァアアア!!』
気合とともに、メガトンキングが腰溜めに構えていた拳を打ち上げる。
「フゥウウウウ!!」
その拳を、静香が前に出した両手で受け止めようとする。もう、ポージングによる強化効果は、先程まで程は残っていない。
「昂れ肉、弾けよ筋!」
それでも静香はオーラを双掌に込めてメガトンキングの拳を受け止め――足が浮いて、全身が押し上げられた。
『高さはちと足りんが――まあいい! くらえ、メガトン――』
メガトンキングが、両腕を伸ばす。
だが静香を捕まえるつもりだったその腕は、空を切った。
静香が筋肉令嬢と姿を解いて、元の小柄な少女の体躯に戻ったのだ。
『ナニィッ!?』
「隙ありだ」
両腕を頭上に伸ばしたまま驚いたメガトンキングの隙を逃さず、麗治が足元に飛び込んで、その膝下に蹴りを叩き込んだ。
「くっ、大木を蹴ってるみてえだ!」
ダッキングから拳を叩き込んだ時と同じかそれ以上の重たい感触に呻く麗治に、メガトンキングの視線が注がれる。
「なら関節を――」
『大王爆裂キィィィッック!』
「っ!?」
次の瞬間。
麗治が組み付こうとしたよりも後に動いたにも関わらず、メガトンキングの振り上げた脚はその動きを追い越していた。
異常な速度のミドルキックが、咄嗟に拳でガードを固めた麗治を蹴り飛ばす。
とんっ。
「炎の鉄拳を受けなさい!!!」
その蹴りで伸びたメガトンキングの脚。その上に、アテナが飛び乗る。
『っ!』
驚いたメガトンキングが脚を戻そうとするが、静香が抱えて離さない。
「バーニング――」
拳に灯し続けていた炎が、激しく燃え上がる。
「パァンチ!!」
アテナが放った炎拳の軌跡が、真っ直ぐな軌跡を描く。
アテナの渾身のストレートを、しかしメガトンキングは咄嗟に首を傾けて直撃だけは避けてみせる。
『ヌゥァァァ!』
それでもメガトンキングの右目の周りを、アテナの拳から燃え移った炎が焼いた。
「目は筋肉じゃ鍛えられないでしょ!」
『ぐぉっ!?』
そこに、空中でくるっと回ったアテナが叩き込んだ炎を纏った裏拳の二撃目は、メガトンキングの頬を叩いてよろけさせた。
●続マッスルバトル
「チャンス!」
メガトンキングの体勢が崩れた。
その機を逃さず、メールがメガトンキングに飛び掛かる。
だが――。
『メガトンボディアッパー!』
メガトンキングがほとんどノーモーションで振り上げた拳が、メールの身体を高々と打ち上げた。
もう、そこにぶつかる天井はない。
「いったぁーい。……うへぇ、口のなか血の味がするわ」
空中で、メールの声が上がる。
「オンナノコに対して随分な扱いですこと!」
『女子供だろうが、筋肉をぶつける相手に貴賎なし!』
馬鹿げた跳躍で追いついてきたメガトンキングに、メールは口の中に広がった血を飲み込みながら告げる。
「ふぅん? でもメルちゃん倒れてないわ。ふふ、大したことない筋肉ね?」
まだ視界がフラフラするのを隠して、メールはにんまりとした笑みを浮かべて煽るように告げた。
『この技はアッパーの後こそ本番! くらえ、メガトンパワー』
そんなメールに、メガトンキングが両手を伸ばし――。
―――嗚呼、お腹がすいた。
炎に目元を焼かれたメガトンキングは、メールがこっそり左手の手袋を外していたのに気づいていなかった。
そして、露わになったメールの左の手の甲から伸びた『触手の群れ』が、先にメガトンキングの腕に絡みついて、食らいつく。
『ぬぉぉぉぉっ!?』
「やせ我慢だと思ったの?」
触手に驚くメガトンキングを、バカね、とメールが嘲笑う。
「肩メロンだっけ? メルちゃんが、美味しく食べてあげる!」
触手はブラッド・ガイストの殺戮捕食体態――代償の血は、口の中に流れている。
代償の為に敢えて一撃を受けた、メールの捨て身の一撃。
『僧帽筋が危ない!?』
「嫌なの? カワイイメルちゃんの一部になれるだなんて、ほら! そんなシアワセないでしょう?」
堪らず触手を振り払って距離を取ったメガトンキングの手から解放されながら、メールは最後の言葉を胸中に飲み込んだ。
メールを捕まえる事を諦めたメガトンキングが、先に地上へ降りていく。
『ん? んん?』
その眼が、見開かれた。
地上で待ち受ける、自分と同じくらいの青い脚に。
「筋肉は独り歩きすると言ったな。そのマッスル、オレが貰い受けたぞ!」
模倣と解析――パラサイトアナライザー。
待ち構えている麗治の片脚は、寄生体がコピーしたメガトンキングと遜色ない脚になっていた。
「それともう1つ言っておく――オレは蹴りも得意だ!」
床を蹴って跳び上がった麗治が、青い脚を思い切り振り抜いた。生身で膝を蹴った時とは違う、ミシリとした手応え。
「大王爆裂キックだったか? ならばオレのは、爆裂シュート、とでもしておこうか」
自由落下中のメガトンキングに、自身のえげつない速度までコピーした麗治の蹴りを避ける術がある筈もない。
「わたくし達は、貴方の筋肉を越えていきます!」
筋肉を固めて蹴り飛ばされたメガトンキングを、筋肉令嬢に戻った静香が踏みつけ、蹴り落とす。
巨体が床に激突し、衝撃で噴煙が舞い上がった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽向・理玖
うん、まぁ…
今までに比べたら見た目だけは王様風だし
ちょっとは近づいたんじゃね?
裸の王様だけどな
変身状態維持
ダッシュで間合い詰め
残像フェイントに用い死角からグラップル
筋肉分厚かろーが
急所狙えばいけんだろ
暗殺用い
喉元にハイキック
一発で効かなきゃ何発でも当ててやるッ!
拳の乱れ撃ち
筋肉重くてついてこれねーんじゃねーの?
動きよく見て攻撃見切り
そんな見え見えのアッパー誰が喰らうか!!
がら空きのボディに飛び込み
カウンターで灰燼拳
脳みそ入ってんの?
むしろ脳みそも筋肉?
鍛え直した方がいいぜ
残像纏いジャンプキック
倒せたら
スグル兄さんの扉探して見送る
兄さんの教え方上手かったぜ
いやマジで!
夢叶えろよな
へたくそな笑顔で
ニコ・ベルクシュタイン
獅童青年はあくまでトレーナーの道を選ぶのか
ならば俺は其れを全力で応援するものである
そして其の道にオウガが立ちはだかるというのなら
祝福の代わりに俺達猟兵が打ちのめしてくれよう
拳には拳を、と思ったが
貴様のような筋肉を悪行に用いる者に払う敬意は無いと知れ
メガトンパンチの間合いの外から
【傲慢なる時の支配者】を発動、複製した多数の双剣を
「一斉発射」でメガトンキング目掛けて突き刺そう
さて、俺の奥の手は其の分厚い筋肉を何処まで抉れるかな?
一本で駄目なら二本と「傷口をえぐる」ように深手を与えたい
其れでも間合いに踏み込んで拳を振るってくるなら
交差させた両腕に「オーラ防御」の力を通して受けよう
…受け切れるだろうか
ソレーア・グリーンライト
吸収した……うわー怖。
まあでかくなった分、塗り出があるな!グリーンでマッソーなヒーローとかヒーロー世界で人気出るって絶対!
いやあんたはヴィランか?まあいいとにかく塗られとけ!
自慢の脚力で空高く跳躍!はい俺の勝ち!
なぜって?高い所に居る奴のが強いんだぜ?位置エネルギーって奴だ!
地面のお前はノーエネルギーアンドノーグリーンだはい残念!
適当言って意識惹き付けたら攻撃だ!
タンクから管を伸ばし巨大ハケに接続、染料供給!
振り回し緑を撒き散らす!
目潰しどころか全身緑に塗ってやるぜ!オールグリーンだ!
そして靴から染料噴射で軌道変え、背後に着地。
ハケで思い切り殴る!グリーン・クラッシュ!(ただの掛け声)
穂結・神楽耶
……そこまで幻だったんですか……
えっ、つまり最初からここまで一人芝居?
スグル様を呼び寄せたのも寂しかったせいなんですか……?
……そうですよね、せっかくの筋肉も見て貰えなければ意味がありませんものね……かわいそう……。
うん、でもまあ。
その筋肉と真っ向からかち合ったら折れてしまいますから。
舞っていってね、【焦羽挵蝶】。
触れれば焦がす炎蝶の逐次飽和攻撃にて、筋肉の接近を阻みながら削り倒します。
二百七十五体にも及ぶ胡蝶乱舞、その巨体で捌けるものなら捌いてみなさい。
だって言うでしょう。
筋肉は、当たらなけば意味がないと――!
●不思議にも程がある
『ぬぅ……余が先に膝をつかされるとは』
噴煙の中から、メガトンキングの声が響く。
驚嘆を口にするその声は、まだ確りと張りがあった。
(「休ませる暇は与えねぇ!」)
龍の戦士のような姿の変身を保ったまま飛び出した陽向・理玖が、煙の中に見えるシルエットを目掛けて拳を放つ。
ぱんっ!
乾いた音を立てて、理玖の拳が大きな腕に止められた。
「なんだ……?」
拳を受け止められた理玖は、何かの違和感を感じて大きく飛び退く。
違和感の正体は、なんだろうか。
瓦礫の欠片を払いながら出てきたメガトンキングの身体には、他の猟兵が残した片目の周りの火傷や、腹部に残る蹴られた痣が残っているが――。
「む? ……肩はどうした? それに何だか萎んでいないか?」
同じ違和感に気づいたニコ・ベルクシュタインが、メガトンキングを問い詰める。
そう。肩メロン――僧帽筋が食われた筈のメガトンキングの肩は変わらずに筋肉が隆々としていて、何故か全身が幾らか細くなっているように見える。
『なぁに。持っていかれてしまった肩メロンを、他の筋肉を代償に戻したまでの事』
「吸収だけじゃなくて、そんなことも出来るんかい……」
非常識なことをさらりと言ってくるメガトンキングに、ソレーア・グリーンライトが半眼で呻く。
『うむ。余も筋肉を食われるなど初めての事であったが、やってみたら出来た! さすが余の不思議なマッスル!』
「不思議って言えば良いと思ってねぇか」
「初めての筋トレ出来た、みたいなノリで言うな」
「うわー怖」
ドヤるメガトンキングに、理玖とニコとソレーアはちょっと引いている。
「こんな芸当が出来るという事は、最初のスタッフは本当に幻だったんですね」
そんな中、穂結・神楽耶だけが感心したように告げていた。
『うむ、そうであ――』
「つまりうさうさトランプ兵以外、最初から全部、一人芝居?」
ピシッ。
鷹揚に頷きかけたメガトンキングが、神楽耶が続けた言葉に固まる。
「スグル様を呼び寄せたのも、寂しかったせいなんですか……?」
固まったままのメガトンキングに、神楽耶は容赦なく言葉を続ける。
『いや、待て、別に寂しくなど――』
「……そうですよね。せっかくの筋肉も、誰にも見て貰えなければ意味がありませんものね……鏡の前で1人でポージングしてるだけなんて、寂しいですよね……」
メガトンキングを意図的に無視した神楽耶は、一瞬、悪戯な笑みを浮かべ――。
「かわいそう……」
直接向けない哀れみの視線とともに、神楽耶がトドメの一言を放った。
精神攻撃は基本です。
『ちーがーうー! 余はメガトンキング。王である。王とは孤高なものである!』
ダンッダンッと、メガトンキングの地団駄が床を踏み砕く。
「うん、まぁ……会長の時に比べたら見た目だけは王様風だし、ちょっとは近づいたんじゃね? 裸の王様だけどな」
『近づいたとか言うなぁ! 余! 王!』
理玖が併せて嘲る様に告げれば、次第に失われるメガトンキングの語彙力。
『さては貴様ら、やはり余と余の筋肉を敬ってないな』
「ハッ、笑わせるな」
握った拳をワナワナ震わせるメガトンキングに、ニコが冷たい視線を向ける。
「貴様のような筋肉を悪行に用いる者に払う敬意は無いと知れ!」
視線以上に冷たい声を、ニコは敢えて張り上げた。スグルにも聞こえる様に。
(「獅童青年があくまでトレーナーの道を選ぶのなら、俺は其れを全力で応援する」)
スグルの中に少なからずあったであろう、会長に対する畏敬の類の念。
それを打ち消す為に、ニコは声を大に告げたのだ。
あれは、尊敬に値するものではないと。
『ならば身を持って味わうがいい! 余の筋肉を! 多分90万トンのパンチを!』
筋肉が減ったとは言え、それでも常人の域を遥かに越える腕を振り上げ、メガトンキングは猟兵達へと踏み込んだ。
●続々マッスルバトル
ブォンッ!
「っと」
砲弾のような巨拳の一撃を、理玖がサイドステップで避ける。
「うらぁっ!」
メガトンキングの伸び切った腕を掻い潜った理玖は跳躍し、その喉元に鋭い蹴りを叩き込んだ。
「筋肉分厚かろーが、急所狙えばいけんだろ……と思ったんだけどな」
身体を叩いたとは思えない硬い手応えに、理玖は眉をしかめつつ、メガトンキングが放つ次の拳を避ける。
さっき蹴った首元は急所の1つ――人間ならば。
他の急所も狙って打ち込んでみたが、メガトンキングには効いてはないようだ。うさうさトランプ兵には効いた所をみるに、やはり筋肉か。
(「狙うなら――やっぱどれか、か」)
胸中で呟いて、理玖が視線を巡らせる。
顔に残る火傷。肩や背中や腹に残る痣の痕。
メガトンキングの身体に残る、他の猟兵の攻撃を受けた傷の上であれば、確実に急所となる筈だ。
『他の者は掛かってこんのか? 余は構わんぞ? 纏めて来れば、すれば余の筋肉を崩せるかもしれんなぁ!』
理玖の動きと視線で狙いを察したメガトンキングは、猟兵達を挑発してきた。狙いを絞らせておいて、迎撃しようというのだろうが――浅知恵だ。
「殴り合いは遠慮しよう。その拳は、流石に受け切れるか判らん」
「わたくしなど、その筋肉と真っ向からかち合ったら折れてしまいますから」
ニコは少し申し訳なさそうに、神楽耶は乾いた笑みを浮かべて告げる。
「俺はやるよ。でかくなった分、塗り出があるしな! グリーンでマッソーなヒーローとかヒーロー世界で人気出るって絶対! いやあんたはヴィランか?」
ソレーアは大きなハケを肩に担いで、メガトンキングの方に進み出た。
「まあどっちでもいいか。とにかく塗られとけ!」
グリーンに染まったハケを突きつけ、ソレーアが言い放つ。
『まずは2人か。4人纏めての方が手間が省け――』
「いいや」
「いいえ」
メガトンキングの声を、ニコと神楽耶が同時に遮った。
そして、景色が一変する。
メガトンキング自身が拳の衝撃でぶち抜いた天井。
遮るものがなくなった上空に、ずらりと並んだ大小の違う刃。時計の針を模した剣の間を、その数以上の炎の翅が飛び交っていた。
「殴り合いは遠慮する。そう言った過ぎん」
傲慢なる時の支配者――ニコラウス・ベルクシュタイン。
己が真名を冠した、ニコの奥の手。大小二振りの『時刻みの双剣』を複製し、その全てを同時に操る業。
「舞っていってね、焦羽挵蝶」
舞い上がる焦色の翅は、神楽耶の掌から飛び立っていた。
それは炎の蝶――コガレバセセリ。
時計の針は百十四振り。炎の蝶は二百七十五体。
合わせれば四百に迫る矛先が向けられるのは――勿論、メガトンキング。
●終焉マッスルバトル
雨と降り注ぐ、大小の時計の針。
『メガトンパァンチ!』
メガトンキングが振り上げた、体重を乗せた拳の一撃。その衝撃が雨と降り注ぐ大小の時計の針の一角を、弾き飛ばした。
だが――如何に巨拳の衝撃でも、弾けたのは一角に過ぎない。ニコが一斉に射出した時刻みの双剣の大半は、メガトンキングの身体へ殺到した。
『ぬっ!? くっ!?』
メガトンキングの身体に、時計の剣が次々と突き刺さる。
だが――メガトンキングの筋肉の前には、切っ先が幾らか刺さった程度の浅い傷しか付けられてはいなかった。
『驚きはしたが、その程度か!』
傷の浅さに、余裕の笑みを浮かべたメガトンキング。
その眼前に焦色が舞い込んだ。
「胡蝶乱舞、その巨体で捌けるものなら捌いてみなさい」
神楽耶が離れて腕を振るえば、炎の蝶がメガトンキングに殺到する。ボンッと小さな爆発が何度も起きて、炎がメガトンキングを覆っていく。
『捌く必要などない――やはり余の筋肉は素晴らしい!』
炎の中から、メガトンキングが声を張り上げる。
神楽耶の炎蝶が効いていないわけではない。それは、褐色の肌に残る赤い火傷の跡を見ても明らかだ。
『この程度で、余の筋肉をどうにか出来ると――ぬっ!?』
勝ち誇るメガトンキングに、再び突き刺さる時計の剣。
メガトンキングが見せた余裕に動じる事なく、ニコは再び『時刻みの双剣』を一斉に放っていた。
「我が刻みし時は正確無比にて、汝、逃れること能わず」
『この! 程度! 無駄だと! ……っ! ……ぐぅっ!?』
次第にメガトンキングの顔から余裕が消えて、苦悶の呻きが漏れ出していた。
ニコはただ闇雲に剣を放っているのではない。
二射目から狙ったのは、全て一度目で付けた傷だ。
メガトンキングの分厚い筋肉を一撃で貫けるなどとは、ニコも思っていない。だからこそ、奥の手を切ったのだ。
「羽根を休める、涯はいらない」
神楽耶も、炎蝶を間を置かずに次々とメガトンキングに向かわせていた。
物量と炎の燃え移る特性を活かした、逐次飽和攻撃。
メガトンキングの小麦色の肌を焼く、暗く渋い赤。かつて神楽耶が御神体として愛した都市を焼いたのも、同じ色だったのだろうか。
『くっ、この――!』
ダンッ。
じわじわと蓄積される痛みに耐えかねたメガトンキングが、真横へ跳んで、時計の剣と炎蝶から逃れる。
そこに理玖が飛び込んでいた。
「っ!」
短い呼気を吐いて、理玖の拳がニコが付けたばかりの傷の1つを叩く。
「一発で効かなきゃ何発でも――まぁ、そうなるよなぁ!」
続けて狙うのは、刺し傷の上に神楽耶の炎蝶が爆ぜた箇所。
「筋肉重くてついてこれねーんじゃねーの?」
拳の乱れ撃ち。全てが傷に当たらなくても、構わない。
一撃の威力では敵に分があるのは、明らかだ。
体格差を埋める術がないのなら、一撃の威力で張り合うのではなく、手数で攻める。
手段こそ違えど、同じ様な事を考えていたからこそ、理玖は2人が付けた傷という新たな急所をすぐに狙えていた。
『ぐ、この……ええい、メガトンボディアッパー!』
「そんな見え見えのアッパー誰が喰らうか! 脳みそ入ってんの?」
メガトンキングが強引に振り上げた拳は、察した理玖が先に退がって間合いを広げた事であっさりと空を切っていた。
空いた空間に時計の剣と炎蝶が降り注いだ。
「はい、俺達の勝ち!」
聞こえた声は、メガトンキングの頭上から。
爆風に乗って高く跳躍したソレーアが、そこで巨大ハケを構えていた。
『上を取った程度で、余に勝てると――』
「知らんのか? 高い所に居る奴のが強いんだぜ? 位置エネルギーって奴だ!」
ハケにグリーンの塗料を溜めながら、ソレーアは続ける。
「地面のお前はノーエネルギー&ノーグリーンだ! はい残念!」
『ノーエネルギーだと? エネルギーなら、余の筋肉で充分!』
メガトンキングの脚に力が籠もるのを見ながら、ソレーアは充分に染料を溜め込んだハケを振り下ろした。
ソレーアも、本気で上を取っただけで勝てるとは思っていない。
これまで不発に終わっているとは言え、かち上げからの投げ技を持つメガトンキングとまともな空中戦で勝てるとも思っていない。
位置エネルギーなど何だのは、染料を溜める時間を稼ぐ為。
「グリーングリーンオールグリーン!」
ソレーアが振り回したハケから、緑色の塗料が大量に撒き散らされる。
「目潰しどころか全身緑に塗ってやるぜ!」
『小癪な! 地に叩きつけてくれるっ!』
緑の塗料は、メガトンキングの全身を流れて――その足元に溜まっていた。ソレーアを捕まえんと跳ぼうとしたメガトンキングの足が、ズルッと塗料で滑る。
『くっ!』
転ぶのは踏みとどまったメガトンキングだが、その隙にソレーアが背後に降り立つ。
正面では理玖が拳を構え、神楽耶の炎蝶が周りをぐるりと囲み、頭上にはニコの剣がずらりと切っ先を向けている。
「敢えて言いましょう。筋肉は、当たらなけば意味がないと――!」
神楽耶の声とともに、炎蝶がメガトンキングに群がる。
飽和した炎が華開くように燃え広がるそこに、降り注ぐニコの時刻みの双剣。
「彼への祝福として、打ちのめさせて貰おう」
炎の力を宿した長針を先に、後から氷の力を宿した短針で貫く。
貫くと同時に与える温度差が、筋肉を壊してく。
遠距離攻撃が止まった所に、理玖とソレーアが同時に飛び出した。
「グリーン・クラッシュ!」
掛け声とともにソレーアが緑に染まったハケを背中に叩き込む。
「終いだ」
理玖は灰燼拳を拳ではなく五指を揃えて放った。超高速の貫手が、メガトンキングの腹筋シックスパックに突き刺さる。
『アブドミナルクランチも……入れておけば……』
壊れたのは筋肉と、筋肉に対するプライドと、どちらが先だっただろうか。
メガトンキングの頭から落ちた王冠が、カランと乾いた音を立てた。
●さらばマッスルワールド
もはやジムの様相もなくなりかけていた世界が、音もなく崩れはじめた。
トレーニング器具もソレーアが緑に塗った壁も崩れていく。
「あ。なんか……向こうに行けば帰れそうな気がする」
そんな中、スグルが唐突にある方向を指差した。
「その感覚はきっと正しい。迷わず、進むが良い」
ニコが告げて背中を押せば、スグルはゆっくり歩いていく。
「兄さんの教え方上手かったぜ。いやマジで! 夢叶えろよな」
「プロテイン5リットルとかは、忘れて良いですよ! 飲みすぎ、ダメ!」
理玖がまだ下手くそな笑みを向け、神楽耶は背中に声をかける。
そして――スグルの姿は、光の扉の向こうへ消えていった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵