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果て無き旅路に汽笛鳴らして

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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●兵どもの夢を乗せて
 ガタン、ゴトン……ガタン、ゴトン……。
 レールの上を疾走する車輪が規則正しい音をたてて、その度に車体を揺らす。
 客車の窓から外を覗けば、広がっているのは鬱蒼とした深い森。
 時折、木々の隙間から覗く月明りが、森の緑をうっすらと照らし出す。
 他には……なにも、見えない。
 まだなにも。
 嗚呼、いつ辿り着くのだろうか。
 そしてこの列車が止まるとき、己の身に待ち受けるのは、一体どんな戦場(イクサバ)であろうか。
 高らかに鳴り響く汽笛の音色が、夜の森に消えて行く。

●魂を運ぶ列車
「だけど、その列車が辿り着くことは、絶対にないんだ」
 グリモアベースで、少女の声が無慈悲に告げる。
 サクラミラージュと呼ばれる世界、辺境へと向かう森の中。そこで発見されたその列車は、夜にのみ現れる『逢魔が辻』。すなわち影朧の巣窟なのだと、少女――ナナ・モーリオン(眠れる森の代理人形・f05812)は言う。
 今でこそあの世界は、不死の帝の元で総ての国家が統一されているが、完全に平和だったかと言われるとそんなことはない。
 統治に反対する者との戦いだってあっただろうし、その後だってオブリビオン……影朧との戦いは、幾度も繰り返されてきているのだ。
 その度に人は、列車に乗って戦場へと旅立ち、そしてそのうちの何人かは、決して戻ってくることは無かった。
「この列車……死霊列車、とでも言っておくね。それは、そんな『戦い抜くことが出来なかった人たち』の魂が集う場所」
 成仏することもできなかった影朧にとって、戦いはまだ終わってはいない。
 夜が来るたびに、戦場へと向かう列車に乗り込み、朝日とともに消え、そして次の夜にまた、列車に乗り込み戦場へと向かう。
 ただ、己の成すべきことを果たそうと、それだけを願いながら。
「死霊列車の中に、特に強い想いを持ってるヒトがいるみたい。そのヒトさえどうにかすれば、この列車も消えてくれるはずだよ」
 積りに積もった兵たちの無念と未練。
 どうか鎮めてあげてほしいと、ナナは告げて。
「でも、列車はすごいスピードで走ってるから、簡単にはいかないの」
 列車と言っても、その本質は数多くの影朧によって変質した異空間。
 レールに障害物を置いたり、死霊列車そのものにダメージを与えると言った物理的な手段でその進行を止めることは不可能だと言う。
 ……そのため、具体的な攻略手段はこうだ。
 一つ。
 まず、帝都桜學府が用意した列車に、空の貨車――屋根も無い、簡単な柵で囲われた程度の物だ――を繋げ、猟兵はそこに乗り込む。
 二つ。
 その列車を走らせ、疾走する死霊列車を追い、追いついたところで、猟兵は貨車から死霊列車へと跳び移る。
「たぶん、一番後ろの車両の横につけるのがギリギリだと思う。一番前まで行こうとすると、こっちの列車の方がもたないよ」
 当然、死霊列車やそこに乗り込む影朧だって、旅路を邪魔するものに容赦などしないだろう。
 相応の反撃は当然想定されるし、致し方ないところではあろう。
 そして三つ。
 死霊列車に飛び移ることに成功したら、車内だろうが屋根の上だろうが、とにかく前方へと進攻し、恐らく先頭車両にいるであろう、この逢魔が辻の主である影朧を撃破する。
 言うのは簡単だけどね、などと、あっけらかんとナナが言った。
「でも、だからこそ、これはみんなにしかできないこと」
 眠らせてほしい。
 彼らの戦いはもう終わったのだと。そう教えてあげてほしい。
 そう告げた少女の手元で紫炎が揺らめき、その奥に、桜舞う都の景色が移り込んだ。


ふねこ
 いつかまた、桜の下で。
 どうも、ふねこです。若干遅ればせながら、新世界をご案内させて頂こうと思います。
 なんだかんだ言ってますが、いつものギミック付戦闘なノリです。
 例によって、更新タイミング等の大雑把な目安はマスター自己紹介にも随時書いていこうと思いますので、そちらもよろしければご確認くださいませ。
 以下、補足情報になります。

 大体OPで言ってますが、第一章では並走する(要は複線の左右で走ってます)貨車から死霊列車の迎撃を掻い潜り、死霊列車に飛び移ってもらいます。
 そして第二章で更なる迎撃の中を前方へ進攻、第三章でボス戦……な感じになります。
 集団戦の敵は理性に乏しいため、思いっきり蹴散らしてしまって構いません。

 死霊列車について。
 12両+機関車1両の蒸気機関車です。機関車は分厚い装甲で覆われていますが、客車はある程度の補強が施されている程度です。
 ただ、壁や窓、屋根等を破壊して中に入ることは出来ますが、一定時間経つと自動的に修復されるためこれで列車を止めることは不可能です。

 スタート地点ついて。
 桜學府の用意した列車の貨車に乗り、死霊列車に追いついたところからスタートです。
 簡素な柵があるだけの長い長方形の空間で、複数の猟兵が十分に立ち回れます。
 ただしうっかり落下すると当然置いてけぼりなのでそこだけは注意してください。

 それでは、皆様のご参加お待ちしております!
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第1章 集団戦 『古塚の呪い』

POW   :    百手潰撃
レベル×1tまでの対象の【死角から胴から生える無数の腕を伸ばし、体】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    百足動輪砲
【両腕の代わりに生えたガトリング砲】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【銃弾の嵐】で攻撃する。
WIZ   :    百足朧縛縄
【呪いに汚染された注連縄】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●追撃
 深い深い森の中、縫うように敷かれた二筋のレール。
 桜の紋が刻まれた軍用列車が、猟兵を乗せてひた走る。
 びゅんびゅんと、高速で視界を横切って行く木々の合間から聞こえる汽笛の音は、もうだいぶ近付いていた。
 しばらくもせずに、蒸気の煙を長く長くたなびかせた『それ』が、列車のライトに照らし出されて姿を見せる。
 黒くくすんだ木と鋼鉄の客車。死霊列車の最後尾。
 その屋根の上に、客車の中に、うぞりと蠢く巨大な影があった。
 それは、戦いによって傷ついた土地の傷痕。
 それは、戦火の中で散って行った者たちの怨恨。
 そんな『淀み』が凝り固まった古塚の呪いが、鎌首をもたげる。
 あるものは輪胴銃を猟兵に向け、またあるものは、開けた貨車へとその身を躍らせて。
 森の中の追撃戦の火蓋が、今ここに切って落とされた。
霧ヶ峰・星嵐
この列車と影朧はこの世界で起きた戦いの残滓。
なればこの一戦、帝都桜學府の一員として、避けるわけには参りません!

【桜幻朧・七変化】でプレートアーマーに早着替えし、オーラを纏った「月ノ輪」が変形した盾でガトリング砲を防ぎます。
この守りは決して砕けません!

その後は自分への攻撃を防ぎつつ他の猟兵が飛び移れるよう【鉄壁跳躍】で敵の攻撃からかばいます。

かばう際は腕による攻撃なら死角からの攻撃を野生の勘で察知して盾で振り払い、注連縄による攻撃なら微力ですが破魔の力をこめた盾で防御を。

味方が飛び移れたなら鉄壁跳躍で敵の列車に私も乗り移り、ガトリング砲でこちらを狙っていた敵を、怪力任せに盾をで叩き潰します!


鈴城・有斗
とにかく向こうに渡らないと始まらないけど、どうしたもんだか。

UCダークハンドをカーテン状にし、その上にオーラを纏わせて防御力を上げて列車に渡してみる
敵の攻撃で壊されない、もしくはある程度保ってくれるなら橋の様に構成して渡っていく
ダメなら複数の影を伸ばしてバリアリアクターでバリアを展開して影の伸縮を利用して強引に突っ込む
見えてる敵には一応突っ込む前に渡した影を地面に這わせて敵の下からガトリング砲をかちあげて突っ込む際のリスクを減らせないか試す

上手く渡れたら他の味方が渡りやすい様に影で通路を構築してその場を守る様に戦闘
影で壁や鞭を形成して打ち据えたり、下に這わせて敵の下から攻撃したり


ベルベナ・ラウンドディー
ユーベルコード使用
猟兵の誰かが目標車両に移動後、瞬間移動で私も乗り移ります
よって誰か1人が乗り移れるよう支援攻撃という形になるでしょうか
牽制攻撃【時間稼ぎ・存在感・おびき寄せ】から敵の意識を引き付けるように展開
爆弾【吹き飛ばし・なぎ払い・範囲攻撃】を投擲し、目標車両から敵群を振り落とすのを狙います

銃弾の嵐とは言え、高速で移動中なら風圧でロクに的を捉えられないはずですが…
【殺気・見切り】による警戒で対策とします、回避行動にもこのユーベルコードは使えますね
…なお味方の傍に瞬間移動するという利点は、有事の際、此方側が車上から脱落しても戦線復帰に活用できます


では行動開始
…少し大胆に動き回りますか



 死霊列車。そう呼ばれるかの列車の客車の最後尾。
 その屋根の上に無秩序に湧いて出た、古塚の呪いたち。
 猟兵が戦闘態勢を取るのと、それらが両腕の輪胴銃から弾丸を吐き出すのは、ほぼ同時だった。
 一斉に放たれる銃弾の嵐。その矢面に、一人の猟兵が躍り出る。
 重厚なプレートメイルに身を包み、円月を思わせる大盾で銃弾を弾き飛ばすのは、霧ヶ峰・星嵐(桜幻朧・七変化・f22593)。
 帝都桜學府の學徒兵である。
「この列車と影朧はこの世界で起きた戦いの残滓。……なればこの一戦、帝都桜學府の一員として、避けるわけには参りません!」
 猟兵と言う身でこそあれど、それ以前に、學府の徒として、放置されている逢魔が辻を捨ておくなどはあり得ない。
 強い決意と共に、砲火の奥に蠢く影朧を睨みつける。
「高速で移動中なら、風圧でロクに的を捉えられないはずですが……なるほど、その分ばら撒いてきましたか」
 その盾に守られた奥、ベルベナ・ラウンドディー(ドラゴニアンのバイク乗り・f07708)が溜息をつく。
 実際のところ、叩き込まれる砲火の多くは、猟兵とは全く別の場所を叩いている。
 だが、その分単純な数が多い。
 『大体の場所に降ればいい』と言わんばかりに、死霊列車からは絶え間なく破裂音と鉛玉の飛来が続く。
 こうなってしまえば、迂闊に移動もままならない。
「とにかく向こうに渡らないと始まらないけど、どうしたもんだか……!」
「手段があるなら、こちらで援護しますが」
 歯噛みする鈴城・有斗(未来を導く意志は今ここに・f18440)にベルベナが告げる。
 実際のところ、手段は、ある。
 だが、この弾幕の中ではやるにしても強攻策をとらざるを得ないこの状況、有斗としては断る理由もない。
「それでは、敵の攻撃は私がかばいます。大丈夫、この守りは決して砕けません!」
「一瞬で良い。隙間を作ってくれれば、どうにかなる」
「承知しました」
 星嵐が月ノ輪を以て降り注ぐ銃弾を防ぐ中、有斗の言葉を受けたベルベナが懐をまさぐり、取り出したのはひとつの手榴弾。
 ちらと、守りから顔だけ出して位置確認。相対位置、進行速度、だいたいは読めた。
 ピンを咥え、抜く。
 1秒、2秒――投擲。
 星嵐の盾越しに放物線を描いた手榴弾が、弾幕を縫って死霊列車の屋根をこつんと叩き……そして爆ぜた。
「今ですよ」
「あぁ」
 敵の攻勢が一瞬だけ緩む。
 それを確認するよりも早く、有斗が星嵐の影から飛び出した。
 そして、月明りと電車の窓から漏れる光で伸びる有斗自身の影が、ぐにゃりと形を変えて。
 伸びる。
 一直線に、伸びる。もうもうと煙立ち込める、死霊列車を目掛け。
 ダークハンド。具現化した彼の影は、干渉する先さえあれば橋としても扱える。
 そう時間はない。敵が体勢を立て直すまでのその一瞬の間に、有斗は影の上を全速力で駆け抜ける。
 有斗のブーツが、客車の鉄屋根を叩いた次の瞬間、弾幕が影の橋を打ち破り、その先で爆発が起きた。
「!?おい……っ!」
 猟兵全員を影の橋で渡らせるとはもとより思ってはいなかった。攻撃の中、長時間もたせるのは到底無理であったことだろう。
 しかし、流れ弾が何処かまずい場所に着弾したか。
「ご安心を。……少し大胆でしたかね」
 だが、思わずあげた声への返答は、思った以上に近くから。
 涼しげな顔で、有斗の横でベルベナが立っていた。
 ユーベルコード【微塵隠れ】。『味方』の近くへ移動することなど、わけもない。
 だからこそ、ベルベナは誰か一人、実際に渡る者への支援に徹したのである。
「そう言うことです!」
 そんな二人へ腕を伸ばそうとしていた古塚の呪いの一体が、そんな一声と共にぐしゃりと押しつぶされた。
 見れば、星嵐が盾を以て転移ざまに盾で叩き潰した丁度そのタイミング。
「まずは三人……だな」
 安堵のため息一つ。
 自らの元へ戻り、そして沸き立つ影を掴み取り。有斗は改めて古塚の呪いと向き直る。
 ぱしん。振るわれた影が、鞭のようにしなり屋根を叩き音を立てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

アララギ・イチイ
戦い抜く事が出来なかった人達の魂ねぇ………何かに有効利用出来ないかしらぁ(ぼそり マッドサイエンティスト系の人
まぁ、考え事は依頼が終わった後にしましょうかぁ

【選択UC】使用ぉ
飛び移る前に、列車上の敵を上記UCの爆弾の猛爆撃で掃討、敵の数を減らした状態で飛び移るわぁ(【念動力】で姿勢制御
飛び移る時が一番隙が出来るタイミングだから、戦闘人形フギン・ムニンを列車上(飛び移る前の列車)に配置、射撃武器で【援護射撃】してもらいましょうかぁ

ちなみに飛び移った後は両手バトルアックス装備で【なぎ払い】する様に振り回して攻撃するわぁ

汚染された注連縄に捕縛されない様に敵の動きを【見切り】、回避を試みようかしらぁ


フィランサ・ロセウス
ああ、ああ、素敵だわ!あんなにもギラギラしたキモチが、いま私達に向けられてるのね!
私も“好き”でたまらなくてどうにかなってしまいそう……
すぐに行くから待っててね!

所持品の「ニンジャ・フックシューター」を窓や屋根のフックが引っ掛けられそうな箇所に向けて放つ
上手くフックを引っ掛ける事ができたら、ワイヤーを巻き取って向こうにひとっ跳びよ
その時クロックアップ・スピードを発動して反応速度を上げておく事で、少なくとも致命的なダメージは避けられるはず
後はあらかじめ拾っておいた小石か何かを投げて、少しでも気を逸らしたりできないかしら?



 憐憫か、あるいは同情か。
 逝くこともできず、現世をさまよい続ける亡霊列車を前に、そのような感情を抱いた猟兵は少なくないことだろう。
 だが、その一方で。
 あくまでも己の感性に忠実な者たちもまた――少なくともここに二人――存在した。
「……何かに有効利用出来ないかしらぁ」
 新しい世界。今までとは違うオブリビオン。
 影朧に、未練に、転生。
 アララギ・イチイ(ドラゴニアンの少女・f05751)には、目に映るすべてが目新しく、そして興味深いもの。
 頭の中では、今も思考回路で様々な思い付きが湧き出しているに違いない。
 とは言え、考え事は今は後。
 これでも一応、仕事として来ているのだ。逸る興味は一度脇に置いといて、やるべきことは果たさねばとアララギは思考を切り替え、かつんと足元に置いてあったコンテナを蹴る。
 その軽い衝撃をスイッチに、口を開けたコンテナに収まっていたのは、大量のクラスター弾。
 煙を噴きながら舞い上がったそれは空中で炸裂し、死霊列車へと小さな爆弾を雨あられと叩き込む。
 その上に陣取っていた古塚の呪いがどうなるかは、言うまでもないだろう。
 列車自体の特性か、敵は次から次へと湧いて出てくる。
 それでも、こうまで広域にばら撒いて掃討してしまえば、少なくない時間、敵の攻勢を弱めるには十分。
 濛々とたち込める煙にアララギが満足そうに笑みを浮かべるのと同時、その中に突っ込んでいく紅い影があった。
「ああ、ああ、素敵だわ!」
 チリチリと肌に感じる敵意。
 幾星霜も積み重ねられてきた無念と戦意、その邪魔をするなと、渦巻く感情が指向性を持って、今この瞬間、猟兵達へと向けられている。
 それが、たまらなく気持ちいい。
「私も“好き”でたまらなくてどうにかなってしまいそう……!」
 瞳に浮かぶ歓喜……あるいは狂喜の色を隠そうともせず、フィランサ・ロセウス(危険な好意・f16445)は貨車から飛び出しざまに、拳銃型のフックシューターを死霊列車へと叩き込んだ。
 ガチリと金属音が前方から聞こえるや否や、巻き取り機構を作動させる。
 嗚呼、一瞬すら惜しい。早く。待ちきれない。
 焦げ跡と染みの残る列車の屋根に降り立てば、すぐさま踵を返して、前方……一番強い『感情』の元を見やる。
「すぐに行くから待っててね!」
 フィランサの赤いパンプスが、屋根を蹴った。
 目指す先まで一直線。邪魔立てなど許さない。
 ぞわりと再び湧いて出る古塚の呪いの手も遥か後方で空を切らせて、フィランサは前へ前へと進んでいく。
「あらあらぁ、元気だこと」
 その様を眺めていたアララギは笑みを深くする。
 こちらももたもたしてはいられない。
 今も敵はまた増えだしているし、何より美味しいところを全部持っていかれてしまうのは面白くない。
「フギン、ムニン!」
 後方に控えていた二機の自動人形が射撃体勢を取る音を聞き届けたのち、アララギは貨車の柵に身を乗り出し、蹴る。
 後方からの援護射撃を受けながら、着地ざまに振り下ろした二振りの大斧が古塚の呪いの鉄兜を真っ二つに叩き割った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アイシス・リデル
すごい、ね
この世界の人たち、こんな機関車まで用意してくれるんだ

スチームドローンに掴まって飛び移る、ね
壊しても大丈夫、なんだよね?
だったら、遠慮はしないから
バラックスクラップで叩き壊しながら着地する、よ
その時、機関車のスクラップも、武器に組み込んで
中でも思いっきり、振り回しちゃう、から
再生するならまた壊して、また組み込んで
武器をおっきくしながら戦う、よ
ここまでおっきくしたら、他の人が渡る橋代わりにもできる、かな?

注連縄はできるだけ武器で防いで
汚染された部分だけ切り離したり、武器そのものを手放したり
周りにも、わたしたちの中にも、スクラップはいっぱいあるから
また作り直せばいいだけ、だもんね


リア・ファル
アドリブ共闘歓迎
POW

もう、武器を手にせずとも良いんだ。どうか安らかに。
そう伝えてあげられたら。

まずは死霊列車にお邪魔しようか
イルダーナを呼び出す

此方の貨車やや後方にて併走
危うい猟兵がいたら手を貸そう
(操縦、追跡、救助活動)

各センサーで全方警戒し、百手の潰撃に備えよう
(情報収集)

後方に控えるボクの死角を狙って腕を伸ばしたら、
結構伸びきっちゃうと思うよ?
『ライブラリデッキ』から破魔の属性を付与した『ヌァザ』で斬撃!

チャンスとみたら
UC【天空を舞う星】で一気に突撃しよう

無事に内部に降り立ったら、イルダーナは一旦お留守番かな。
いざとなったら屋根伝いから駆けつけてね!
それじゃあ行ってくる!



 猟兵の攻撃によって、濛々と煙が上がる。
 だがその煙もすぐに風に流され、その中を駆け抜けていく死霊列車は止まるそぶりを微塵も見せない。
 その様を眺めながら、アイシス・リデル(下水の国の・f00300)は「わぁ」と感嘆の声を漏らした。
 こうやって高速で走り抜ける乗り物は数あれど、普段から人が多く乗り込む場所とは縁が薄い身としては、こうして作戦として用意されたとはいえ、自らも乗り込むと言うのは新鮮なのだろう。
 蒸気技術製の飛行ドローンを手に取って、貨車の床を蹴る。
 小さな機体を頑張らせて、ぶら下がって飛び乗る魂胆。
 そうはさせぬと弾幕がアイシスを狙うが、いつまでも黙ってぶら下がっているつもりは毛頭ない。届く程度の距離が稼げたらそれでいいのだ。
 ドローンから手を離し、逆の手に持った巨大なスクラップ塊を盾代わりに。
 迎撃を防ぎながら、その重量をすべて真下へと叩き込む。
 ぐしゃりとけたたましい音と共に、列車の屋根が古塚の呪いごと砕けて散った。
 その破片もさらにスクラップの一部へと変えて、手首を返して振り抜く。
 ふたつ、みっつと、古塚の呪いが重量に負けて吹き飛んだ。
 壊しても再生すると聞いた以上、遠慮は不要。
 力任せに、同士討ちだけ気を付けつつ、力任せにぶん回す。
 再生するなら、その分だけ次々と破片を組みこめば、際限なくバラックスクラップも巨大化し続ける。そう言う魂胆であったのだが。
「あれ……?」
 不意に、自身の持つスクラップの重みが軽くなった感じがした。
 見やれば、原因はすぐに知れた。取り込んだはずの列車のスクラップが消失を始めていたのだ。
 実際のところ、この列車は影朧の未練がカタチを為したものと言い換えて良いものだ。
 それが、列車を離れて欠片となったならば、遠からず具現化の供給元から離れたそれは、力を失い消え失せるのも無理もない話であろう。
「わ、た、たた……っ!?」
 が、理解は出来ても手ごたえを読み違えた身体はすぐには順応することは不可能で。
 ぐらりと上体が傾ぎ、アイシスの黒い小さな身体が屋根から転げ落ちた。
 ぺちょ、などと音を立てて落ちた先はレールの敷かれた地面……ではなく、小奇麗な合金製の装甲版の上。
「っと、ギリギリだったね!大丈夫?」
 レールの上スレスレをホバーで疾走するスペースシップワールドの戦闘機。
 全能の太陽神の名を冠するその機体を操るリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が、コクピットから手を振っているのが見えた。
 万が一に備えて、車両後方で並走していたらしい。
「う、うん……ありがと」
「オッケー。……それじゃ、再突入するからしっかりつかまっててね!」
 救助者が大丈夫そうで、垂直尾翼にしっかり掴まるのを確認し、リアは愛機のスラスターを吹かす。
 つけるのは、機首がぶつかるかというギリギリの位置だ。
 ここまで近づけば、輪胴銃の弾幕は、列車の屋根そのものが遮蔽となって届かない。
 そして、この中途半端な距離は、手を伸ばして掴み取るにはやや遠く。伸ばそうものならセンサーに引っかかる方が、掴むよりもよっぽど早い。
 どこから伸びてくるかがわかってしまえば、アイシスと二人がかりで迎撃しきって見せるのは至極簡単なことである。
「よーし、攻勢途切れた!」
 一時的に反応が途切れるや否や、リアが愛機のコンソール・パネルを叩く。
 重力、空間制御開始。歪曲フィールド生成。
 形容しがたい音を立てて、空間が歪む。
 正確には、力場の『膜』が、乗っている二人ごと機体全体を包み込んでいた。
 同時にスラスターの推力を最大値まで一気に引き上げる。
 噴煙が途切れ、引き離されるのもほんの一瞬。次の瞬間には、爆音と共に急加速をした機体が、死霊列車の客車の尻をぶち抜いていた。
「ふー……無事に降り立てたかな」
 パラパラと散乱した、元は客席だったのだろう木くずの上に軽い動作で降り立つ二人。
 戦闘機は一旦ここでお留守番。改めて進むべき道を見据える。
 目指す先は遥か前方。
 もう武器を取る必要もない、休むべき眠れぬ魂が待つ場所へと、二人は駆けだした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
……列車どうし並走してるとこ跳び移るとかわたしの身体能力じゃむーりーっ!
でもやるしかないんだったら……これしかないかなぁ。

【転身・精霊銃士】発動
大人の姿に変身し、風の精霊さんの力で飛行して乗り込むよ
敵との戦闘は精霊銃「Nine Number」を使用した銃撃戦を挑むね
まず光の精霊さんの閃光弾で目くらましして牽制
飛行中は反動軽めの風弾で注連縄を弾き飛ばしつつ、飛び回って攪乱
上手く列車に着地して撃てそうなら、反動あるけど威力の強い炎弾を撃ち込むんだよ

おねーちゃんに教わったとおり、なんども練習した通りに。
しっかり構えて、よーく狙って……その体のど真ん中を狙い撃つんだよっ!


エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

もうどこにも無い戦場目指して走り続ける幽霊列車
そこに延々縛り付けられてれば正気を失うのも当然だな
それじゃ、サクッと先頭車両を攻略して開放してやりますか

俺はUCで飛べるから、皆が死霊列車に飛び乗るまでの支援をしよう
車両から落っこちそうになってもアンカービットで釣り上げるから安心しなよ

敵の攻撃が一方向に集中した状態じゃさすがに皆動きづらいだろうし、側面か頭上をとってガンブレードで牽制する
狙い撃つならガトリングの回転基部かな
そこを潰されると給弾、発射ができなくなる構造だし

味方が動きやすいように支援に徹するけど、それに集中しすぎてトンネル側面とかに激突しないよう注意しとこう



「もうどこにも無い戦場目指して走り続ける幽霊列車……か」
 もうもうと蒸気を噴き上げて疾走する死霊列車の上、やや後方。
 パワードスーツ背部のスラスターを吹かしながら、エルト・ドーントレス(灰色の雷光・f14009)が列車を追う。
 いったい、この列車はいつから走り続けているのだろう。
 途方もない歳月。その間、ずっと戦場を求め、しかし辿り着くことも無く延々と縛られ続けていれば……その心はいったいどうなってしまうのだろう。
 少なくとも、エルト自身は正気でいられる自信はないと、一人想う。
 同情か、憐憫か。
 脳裏をよぎった感情はひとまず脇に追いやり、エルトはこの位置を保ったまま、両の手に構えたガンブレードの安全装置を外す。
 実のところ、すぐにでも乗り込むことは出来る。
 このように飛行速度も決して列車に負けてなどいない。スーツに蓄えられた電力がどこまで持つかにもよるが、敵の攻撃の合間を縫って肉薄することはそう難しい事でもない。
 ではなぜそれをすぐに行わないのかと言うと、彼とは別方向からの銃声がその理由を示していた。
「おねーちゃんに教わったとおり、なんども練習した通りに……!」
 並走する貨車の上。
 巫女装束を纏ったオウガの女性が、死霊列車の上の古塚の呪いの集団へ拳銃を向けている。
 ……実際のところ、その中身は荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)というまだ幼い少女であり、銃の扱いや列車を跳び移るために不自由のない状態にまでユーベルコードで肉体年齢を引き上げているだけなのだが。
 なにはともあれそうして身体面でのハンデを解消しているのは良いのだが、別問題として、敵の弾幕の中でなかなか跳び移るタイミングを掴めずにいた。
 実際その銃撃は着実に命中し、良く戦えている。だが、手数の差が圧倒的に違うのはひかる一人ではどうしようもない。
 だからこそ、エルトの立ち回りが効いてくる。
 位置取りは古塚の呪いの直上。
 古塚の呪いは、並走する列車と既に乗り込んでいる猟兵達に注意が向いている。
 そして、パワードスーツの駆動音は、他ならぬ自身の輪胴銃の発射音に掻き消されてわからない。
 ――容易い。
 狙い撃つのはその両腕の輪胴銃。給弾と発射の肝となる、回転基部に、ガンブレードの銃弾を叩き落とす。
 乾いた音を立てて、ひとつふたつと発射音が途切れて行く。
 無事だった相手も、突如の上からの襲撃者に思わず注意が向いて、並走する貨車への攻勢が一気に弱まった。
「よし、止まった。いいよ」
「……よし、行くよ、精霊さん!」
 そこをひかるは見逃さなかった。
 即座に手にした精霊銃から光の弾丸を叩き込んで、更なる目くらましをかけるとともに床を蹴る。
 精霊使いの力は大人の身体になっても健在。風の精霊の力を受けた身体は、ふわりと重力を無視して死霊列車の屋根の上へ。
 降り立った先は、古塚の呪いの群れの中心。輪胴銃は同士討ちを恐れて撃てないし、後ろの敵は上方のエルトが引き受ける。
 残るは前だけ。構える余裕は十分ある。
「しっかり構えて、よーく狙って……!」
 銃身を正面に。保持は両手でしっかりと。狙うは敵陣、ど真ん中。
 轟音響かせ、銃火が走る。
 反動こそ大きいが、それに見合った威力を持つ炎属性の精霊弾。
 古塚の呪いを蹴散らし、降り立ったエルトと共に開いた道を見据える。
「それじゃ、サクッと先頭車両を攻略して開放してやりますか」
 ここまではいわば戦場に降り立つための前段階。本格的な戦いは、ここからだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ミザール・クローヴン
戦い抜けなかったから苦しいか
貴様らはまだ敵を欲しているか
なら、未練がましいなどとは言わん
貴様らの未練、おれ様が断つ!

接続開始、戦術思考展開
両腕の黄金機械爪を構えて敵の動向を視つつ
おれ様が彼方に飛び移るための機を待つ
森の中、走行中、慎重に動かねば落ちて追い付けなくなる
其れは御免だ

相手が縄を飛ばすなり、百足の胴を差し向けたなら
おれ様の方からつかんでやる
これで移動がしやすくなった
ユーベルコヲドが封じられようが、知るか
呪いがなんだ、全部裂いて祓ってくれる
おれ様にはこの腕と、この身体が、この機体がある
技は其れのみに非ず、だ!!

隙ができれば接近、黄金爪での切り裂き
満足したか?……まだなら次も相手してやる



 だん、と。己の足が力強く死霊列車の屋根を叩く音を聞いた。
 一瞬の間隙。
 多くの猟兵が跳び移り、前へ前へと走って行く中、すべての敵が並走する桜學府の列車への攻撃に回ることはあり得ない。
 乗り込んできた相手の方が、差し迫った脅威度としては上なのだ、そちらの対処に回らない筈がないと、ミザール・クローヴン(星踏武曲・f22430)は踏み、事実その通りであった。
 この森の中を疾走する列車、下手を打てば落ちてそのまま戦線離脱だ。そんなドジなど御免である以上は多少なり慎重にならざるを得ないが、冷静にタイミングを見計らえば、何の難しいこともない。
 ここまでは良い。問題はここからだ。
 群れている古塚の呪いが、跳び移ったことでミザールを本格的に攻撃対象と定めたと見える。
「戦い抜けなかったから苦しいか」
 こいつらは、いまだに戦場を……『敵』を欲している。
 それを未練がましいとは、ミザールは思わない。
 兵が敵を求めて何が悪い。
 奴らが求めるのなら、自身が何をすべきかなど一つしかあるまい。
「貴様らの未練、おれ様が断つ!」
 手始めに、手近な奴を黄金爪で力任せに引き裂いてやる。
 さぁ、伸びてきた伸びてきた。
 まわりの古塚の呪いから、腕が、縄が、次々と伸びてくる。
 構うものか。掴んでくれるのなら、少なくともその間は落ちることはないし、そこは懐に飛び込むための『道』だ。
 ユーベルコヲドの封印だって気にすることはない。
 全部、まとめて、己の力で引き千切ってやればいい。
 腕と、身体。機械化されたこの身体があれば、そんなものなくとも渡り合える。
「満足できないなら……次も相手してやる」
 気が済むまで、未練が晴れるまで、何度でも。
 さぁ、これを求めていたのだろうと、爪で古塚の呪いの胴をぶち抜いた。
 さぁ、次はどいつだ。
 獲物を求める黄金色の装甲が、星の光を照り返す。
 夜の中同じ色に煌めくそれは、この者たちにとって導きの星となりうるだろうか。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『朧侍』

POW   :    桜花行進
【霊力を流し込んだ刀を構えながらの】突進によって与えたダメージに応じ、対象を後退させる。【連携を行っている同型機】の協力があれば威力が倍増する。
SPD   :    桜華狂騒
【影朧に取り憑かれ、霊力機関が暴走した状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
WIZ   :    桜香前線
【幻朧桜を介した霊力通信】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【通信を行った同型機との一糸乱れぬ連携】で攻撃する。

イラスト:蛤大漁

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 死霊列車に乗り込んだ猟兵達。
 影朧がひしめくその中、目指す先は遥か前方。
 この先に、この逢魔が辻の中枢となっているものがいると言う。
 立ちはだかるのは、桜色の鎧を纏った絡繰兵。
 朧侍(ろうじ)と呼ばれるその戦闘機械は、幻朧桜の霊力を糧に稼働する対影朧兵器である。
 影朧に憑りつかれる可能性があったせいで今は製造されていないと言うが、こうして過去の記憶となり影朧になるのも皮肉な話だろう。

 不意に、猟兵達の乗る客車が妙な振動を起こした。
 屋根に乗っていた猟兵の一部は、見ることが出来たかもしれない。
 車両が、全体の中ほどで切り離されたのだ。
 すぐに置いて行かれるわけではない。しばらくは慣性でそのまま走ってくれるだろう。
 だが、それも長い時間は続かない。
 いずれ速度は落ち、引き離されるのは自明。
 そして、逢魔が辻から切り離され、力の繋がりを断たれた車両がいつまで存在を維持できるか。
 その予感が現実となる前に、行く手を阻む朧侍たちを蹴散らし、前の車両に辿り着かねばならない。
フィランサ・ロセウス
ああ、まだ先なのね!早く逢いたくてたまらない!
だけど……そう。あなた達も誰かを壊(あい)したくてたまらないのね!
それじゃあちょっとだけ、遊びましょ♥

といっても全員を相手する時間はないから、
ダーク・ヴェンジャンスを纏いながら立ちふさがる相手だけ倒しつつ前へと進んでいくわ
連携攻撃は厄介だけれども、UCのお陰で傷つく程に戦闘力が上がるから
ダメージは気にしない……いえ、むしろ歓迎ね♥

一番前の客車にたどり着くか時間がかかって引き離されはじめた場合、
クロックアップ・スピードで加速して切り離された客車からジャンプ
落ちる前にフックシューターを前の車輛に引っ掛けて飛び移るわ



「ああ、まだ先なのね!早く逢いたくてたまらない!」
 いの一番に先頭車両目掛けて駆け出していたフィランサであったが、その歩みは今この瞬間、一時停止を見せていた。
 嗚呼、もどかしい。早くこの先に進みたくてたまらない。
 この先に待つものを、壊(あい)したくてたまらない。
 だが、その一方で、今まさに自身へと向けられているこの感覚も、心地よいものだと思う自分がいる。
「……そう。あなた達も誰かを壊したくてたまらないのね!」
 流石に全部を相手する時間はない。
 だが、彼らと遊んでいくのもやぶさかではない。
 その相反する二つの希望を叶える、趣味と実益を兼ねた選択肢が、一つだけ。
 そう、強行突破だ。
 邪魔する敵だけ叩き潰して、そのまま前へ。
 とは言え、言うほど簡単なことではない。
 霊力通信を用いた朧侍の連携戦術は、容易に突破を許さない。
 目の前の朧侍に殴りかかれば、それで脚が止まった瞬間にすかさず横合いから別の朧侍の刃の一撃が降ってくる。
 確実に隙を潰してくる合理的な戦術、いくら猟兵の戦闘能力を以てしても捌くのは簡単なことではない。
 限られた時間での強行戦術であれば猶の事だ。
 進むごとに、手傷は増える。そのたびに、ぞくぞくと背中が震える。
 嗚呼、気持ちいい。痛みと共に襲って来る高揚感がたまらなく心地いい。
 でも、今はここまで。
 目の前に開ける不自然な空間。
 それは、切り離された車両の合間。ひとまずのゴールにご到着。
 もう少し遊んでいたかったが、それは我慢。
 この先に、もっと素敵なものが待っているのに違いないからと、フィランサは軽い足取りで屋根を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔴​

霧ヶ峰・星嵐
これは……急がないといけないようですね!

そうなると、影朧に取り憑かれたことによって耐久力まで上がっているのが厄介ですが……これならば!

桜幻朧・七変化! 此の世あらざるものを祓います!
【桜幻朧・七変化】で初期技能:破魔の「巫女装束」に早着替え、大盾状になっていた月ノ輪を弓矢に変形(武器改造)、破魔矢で敵を狙います
弓は剣ほど得意ではありませんが、こっちも桜學府で履修済み(戦闘知識)です!
「破魔」の力で暴走の原因となっている影朧を祓ってしまえば、ユーベルコヲドを打ち消せる……はずです!

影朧さえ祓ってしまえば敵の耐久力は元通り、他の猟兵とも連携し、敵を射抜いていきます。


鈴城・有斗
速く動くものを狙うのか、なら
UCダークハンドで弾力性重視で高速でぐるぐる回る球体を自分から離れた所に伸ばした影の上に構築して回転させて囮に。
そこに近付いた敵をその後ろや下から地面を這わせて伸ばした影から槍を構築して攻撃したり、脚を掴んで味方の攻撃を避けさせない様にしたり。
伸ばした影で自分や味方を守る壁を構築したりも行う。

後ろからの攻撃に反応した敵に球体側からウニのように棘を張り出して攻撃したりも出来ないかな。

狙えるなら壁に穴を空けて敵を車両の外に突き飛ばして捨てて数を減らせしたいところ。

戦いながら進めそうなら少しづつでも進む。
間に合いそうになければ最悪囮だけ置いて影を伸ばしながら振り切りたい。



 そう時間はかけてはいられない。
 時間が経つごとに、動力源を失った後方車両が少しずつ減速していくのは言うまでもないが、そうでなくても『逢魔が辻』から切り離された存在が、いつまで形を保っていられるものか。
 それを考えると、一刻も早く前方車両へと移動せねばならないのは明確だ。
 それでも、そう簡単に事は運ばない。
「急がないといけないと言うのに……!」
 星嵐が歯噛みする。
 狭い車内を高速で突っ込んでくる、複数体の朧侍達。
 暴走しているのか、その出力は尋常ではリミッターが駆けられる筈であろう程に上がり、その分戦いも苛烈なものとなる。
 振り下ろされた朧侍の一太刀を盾で弾き返す。
 一撃が重い。どうしても進みが止まる。
「影朧に取り憑かれたことによって耐久力まで上がっているのが厄介ですが……!」
「だったら、そこさえ切り離せばいいって事だね」
 その横で、薙ぎ払われた刀を掻い潜りながら有斗が言う。
「そう言うことです、が……」
「任せて」
 言い方からして、その手段には当てがあるのだろうと有斗は踏んだ。
 ならば、やるべきことはひとつ。隙を作ることだ。
「(――影よ)」
 車内にぶら下がった灯のおかげで、自身の影はあちこちに伸びている。
 そして、少しの隙間さえあれば、群がる敵など物ともせずに、影はそこにある。
 であるのなら、影より生まれ出た『それ』に、敵の背後を取らせることなど、容易い事だ。
 突如として生まれ出た動体反応に、朧侍が思わず後ろを振り返る。
 影を実体化させるユーベルコード。生み出したのは、何のことはない、ただの球体に過ぎない。
 だがそれが、高速で跳ねまわるような挙動を取ったのなら、暴走して思考能力の低下した朧侍にとっては『速い=厄介な敵』という認識になってしまうのだろう。
「読み通り。今だよ」
「はいっ!」
 そして、決定的な隙さえ見出してしまえば。
 瞬間的に巫女装束姿へとその身を変えた星嵐が、弓を構え矢を番え。
「此の世あらざるものを祓います!」
 装束に込められた破魔の力を矢に込めて、朧侍の背中目掛けて放つ。
 剣ほどではないが、弓術もある程度は収めている。
 乱戦で正確に射抜くのは難しくとも、動きを止めて隙を見せた相手に当てるくらいであれば、難しくもない。
 その一撃を以てして、影朧という霊……という名の動力源が打ち祓われた朧侍は、もはや通常以下の出力しか出せない独活の大木。
 見るからに動きが鈍ったそれに有斗が渾身の蹴りを入れ、蹴破られた扉ごと、一機の朧侍が車外へと転げ落ちて行った。
「これならユーベルコヲドも打ち消せます!行きましょう!」
「ああ、急ごう」
 行く手を阻む朧侍はいまだ数多く。
 気は逸れど、急がば回れ。
 一体ずつ、一歩ずつ、着実に二人は歩みを進めて行く。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アララギ・イチイ
うーん、蜥蜴の尻尾切りの様に逃げられるのは面白くないわねぇ
なら、妨害しましょ、そうしましょうぉ♪

別空間に収納していた12.7㎜チェーンガン・203㎜榴弾砲×8を取り出して【念動力】で操作、敵に向けて【一斉発射・乱れ撃ち】の【制圧射撃・範囲攻撃】するわぁ
上記の攻撃で【時間稼ぎ】しつつ、【怪力】で補正した【選択UC】の一撃を自分に足元に叩き込んで巨大な豆の木を作り出し、先頭列車の方に蔦を伸ばして(邪魔な敵は豆の木で【吹き飛ばし・なぎ払い】)蔦を絡めて拘束、引き離されない様に少しでも【時間稼ぎ】するわぁ

敵の突進攻撃はその動きを【見切り】、【早業】でハンドアックスを取り出して【カウンター】を狙うわぁ


エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

あっちとしては先頭車両に行かせたくないんだから、こういう策に出て当然だよね…

これやると動けなくなるけどしょうがない
ヒールバンカーを撃ち込んでレッキスを固定、射出したアンカービットで前の車両にワイヤーを架けてウインチを巻き上げにかかる

戦場で棒立ちになってれば当然敵に狙われるだろうなぁ
UCで複製したガンブレードで弾幕を張って敵の接近を阻止しよう

複製した56丁のうち何割かを弾避けの壁としてそばに待機させとく
これは万が一の時の切り札で、強引に接近してきた敵に刺突からの零距離射撃で内部へ直接弾丸を撃ち込んでやる

どういう仕組みで動いてるのか興味はあるけど、確かめるのはまたの機会かな


ミザール・クローヴン
っははは!機巧か!絡繰か!
おれ様は貴様らのような機械兵士を壊すのは得意だぞ!
阻むなら根刮ぎ壊し尽くすまでだ!

さあ、並べ
先頭に向かう屋根の上、直線上にいるならこれが効くだろう
近距離戦闘が得意なおれ様が唯一気に入って使っている遠距離技だ

天の瞳、敵個体数を確認、登録
星の秤、分析情報転送、標的固定
敢えて走らず、此方に迫る敵に向けて爪を構え

命中率向上、射出!!

手首から先、黄金の掌を撃ち出す!!
例え一撃で仕留め損ねても、おれ様が戻れと命ずるまで追尾するぞ!
おれ様の手は!この世の全てを!握り潰す!
敵が屋根から落ちれば全力で走り前を目指す
掌から先がなくとも武を以て叩きのめす
おれ様は半機械、とにかく強いからな!



 影朧達にとってすれば、突如として乗り込んできた猟兵達は招かれざる客に違いない。
 となれば、先頭車両へと向かうのを阻止しようと動くのは、当然の話。
 車両を切り離す、という手に出るのはよく解る。
「あっちとしては先頭車両に行かせたくないんだから、こういう策に出て当然だよね……」
「とは言え、蜥蜴の尻尾切りの様に逃げられるのは面白くないわねぇ」
 鳴り響く砲火の中で、エルトとアララギが言葉を交わす。
 実のところ、二人は既に、切り離された連結地点に辿り着いていた。
 それでもここに残っているのは、これからここに来るであろう猟兵達が確実に跳び移るために、少しでも時間を稼ぐためだ。
 まぁ、それが仲間を思ってか、ただの敵への嫌がらせかは置いておくとして。
 複数の火砲を自在に操り、二人へと迫る朧侍たちをアララギがなぎ払う横で、エルトは自身の外骨格の踵部に装備された杭を足元に打ち込み、伸ばしたウインチを前方車両に引っ掛けている。
 車両の連結部が機能しないのであれば、自分の身をもってその代わりを為しているのである。
「で、どう?」
「流石に身動きが取れないし、そう長くは持たないかなー……」
 チェーンガンの轟音に掻き消されそうになりながらも聞こえるその声に、あまり余裕はない。
 当然だ。
 何両分もの車両に、数多くの影朧が乗り込んでいる重量を、いくらパワードスーツの力があるとはいえ、人一人で支え切れる筈もない。
 仮にバンカーやワイヤーの強度が耐えたとして、いつどこから限界が来るのかわかったものではないのだ。
 それに、このような姿勢でいる以上、エルトは一切身動きが取れずにいる。
 一応自衛のために遠隔操作したガンブレードを展開してはいるが、次々と襲い掛かってくる朧侍の対応は、殆どをアララギに頼る形になっていた。
「それじゃ、ちょっとお手伝いしましょうかねぇ」
 刀を振りかぶった朧侍の胴にハンドアックスを叩き込む。
 これでほんのひと時余裕が出来たらしいアララギがエルトに振り返ると、足元からユーベルコードで生み出すのは、うねうねと伸びる豆の木だ。
 何をやろうとしているのかは、言うまでもないだろう。
「おい、そんなことして迎撃は……」
「大丈夫、丁度次の子が来たみたいよぉ」
 焦ったように言うエルトを、アララギはいつも通りののんびりした口調で制す。
 二人で振り返った先には、次の朧侍の波が続々と集まって……そしてその奥から、猛進してくる一人の猟兵がいた。
「っははは!機巧か!絡繰か!」
 まだ年若い少年の高笑い。
 黄金爪を振りかぶるミザールが、列車の屋根を突き進む。
 機械相手は得意分野だ。
 阻むなら根刮ぎ壊し尽くすまで。
 決して幅が広いとは言えない、長い長い直線の戦場に、敵は複数。
 まとめてなぎ払うにはあまりにも容易い。
 強いて言うならば、奥に見える二人の味方に当てなければいいだけだ。
「天の瞳、敵個体数を確認、登録。星の秤、分析情報転送、標的固定……!」
 その足が止まる。
 決して臆したわけではない。朧侍がこちらの接近に気付いたところで、何を気にすることがあろうか。
 足を止めた理由はただ一つ。
 単純な話だ。これはただの攻撃の予備動作に過ぎない。
「……射出!!」
 バシン、と乾いた音を立てて。突き出した『拳』が、『飛んだ』。
 半機械であるミザールの爪、手首から先が、勢いよく放たれる。
 巨大な拳は単純な質量攻撃となり、回避の難しい密集陣形では複数を巻き込むのも造作もない。
 一撃で倒せることは叶わずとも、押しだして屋根から叩き落とせば、そいつらはもう終わりなのだ。
 強引に道を開く。切り離された前方車両と、そこへ伸び、繋ぎ止めるワイヤーと豆の木、そしてそれを支える二人の猟兵がよく見える。
「ご苦労!さぁ行くぞ!」
 二人とすれ違いざまに、ミザールが跳ぶ。
 その着地の衝撃で、ワイヤーと豆の木がくらいついていた前方車両の屋根が、音を立てて剥がれ落ちた。
「と、そろそろ限界かしらぁ」
「どういう仕組みで動いてるのか興味はあるけど、確かめるのはまたの機会かな……」
 十分に時間は稼いだ。
 再び切り離されてしまったとは言え、距離を離されるまでにはまだある程度時間はあるだろう。
 これ以上欲をかいて自分たちが渡れなければ本末転倒。
 アララギとエルトも二人頷きあって、同時に後方車両の屋根を蹴った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

リア・ファル
WIZ
アドリブ共闘歓迎

切り離された……!
仕方がない、今は前へ

「サムライエンパイアとも異なる霊力駆動系……でも似た部分もあるね」
勉強になるなあ、などと言いつつ技術解析、演算

『ライブラリデッキ』から、霊力制御ハッキング弾を精製
セブンカラーズで早撃ち

霊力通信および火器制御系に強制介入!
停滞&ジャミング&同士討ちによる連携崩しを敢行

「対影朧兵器なら、この皮肉は無念だろうに。
せめてボクらの手で、次は誰かの為に役立てる事を祈ってる」

車両分断箇所でイルダーナ召喚、
グラビティアンカーを射出して一本道を繋げたら良いな
「長くは保たない!」

(技能:情報収集、ハッキング、破魔、マヒ攻撃、援護射撃、早業、ロープワーク)


荒谷・ひかる
(連携希望)

わ、ロボットさんだ!
うんうん、いいよねえこういうの。
幻朧桜に浪漫の嵐だねっ!
(どこぞのカフェーに置いてあった漫画に似たようなのがあったらしい)
でもやっぱり、無人機だと乗っ取りはお約束なんだねぇ。
うん、敵じゃ仕方無いし蹴散らすんだよっ!

機械なら、無機物の塊だよね。
なら【本気の闇の精霊さん】発動!
とりあえず刀と、その背負ってるエンジン部分にかかる重力を10倍に引き上げるんだよっ!
効果が薄ければ、さらに10倍ずつ重くしてくよ。
急に背負い物が重くなれば、二足歩行機械ならバランス崩して転倒するはず。
その隙に、仲間のみんなに攻撃して貰うんだよっ!
他に誰も居なかったら、転んでる隙に先に進むよっ!


アイシス・リデル
消えちゃったし、消えちゃうんだ、ね
急いで追いかけなきゃ、だけど
早いのは苦手、だから……また、よろしくね(スチームドローンに)

絡繰……あなた(ガジェット)とはちょっと違う、のかな?
連携なら、わたしたちだって負けない、よ
わたしたちだってみんな、繋がってるもん、ね
追跡体のわたしたちが、見つからないように辺りに散らばって
周りで観察して、動きを教えてくれたり
足元で邪魔して、敵の連携を乱したり
そうやって見つけた隙に、バラックスクラップを叩き込む、よ

終わったら、分裂体のわたしたちをみんな、ちゃんと回収して
みんないる、よね?
その後また、スチームドローンに掴まって飛んでく、よ



 朧『侍』と称される通り、猟兵の行く手を阻むその絡繰たちは、いわゆるサムライ……武士、もののふと称されるような外面をしている。
 歴の長い猟兵にとってすれば、その姿はサムライエンパイアで慣れ親しんだ、と言うものも決して少なくはないだろう。
 それが、別世界であるこのサクラミラージュの存在として目の当たりにするというのも、考えてみれば不思議な話なのかもしれない。
 どこかの世界から『転生』してきたのか、あるいは似たような歴史を歩んできたのか。
 興味は尽きないところだが、生憎とそんな考えに耽っている時間的余裕は無かった。
「対影朧兵器なら、この皮肉は無念だろうに……!」
 客席の合間を駆け抜けながら、リアが歯噛みする。
 本来、影朧を倒すために開発されたはずの朧侍。
 それが、影朧として、猟兵と言う『影朧を倒す存在』を阻むためにこうして刃を向けている。
 それが無念でなくて何だと言うのか。だからこそ、こうして逢魔が辻の一部と成り果ててしまったのやもしれぬが。
「やっぱり、無人機だと乗っ取りはお約束なんだねぇ……」
 幻朧桜に浪漫の嵐、隣のひかるも、漫画的でかっこいいとは思うのだけれど、致し方なし。
 敵であるのなら、蹴散らすのみ。
「それじゃ……行くよ、闇の精霊さんっ!」
 リアの傍らに控え、いつでも援護を受けられる位置を保ちながら、ひかるが手を翳す。
 その瞬間、今まさに斬りかかろうとしていた複数の朧侍が、突如としてつんのめる。
 まるで、見えない何かに上から押さえつけられたか、あるいは突如として重しでも括りつけられたかのように。
 ――闇の精霊。
 その中でも重力を司るその権能が猛威を振るう。
 突然の超重力、原因が理解できようとも、急激な負荷の変化は、いくら機械であろうと即座に対応できるものでもあるまい。
 それでも、霊力という超常の存在で駆動する朧侍にとっては、それをも(時間さえ許せば)対応してみせるものらしい。
 重ければ重いなりに、その中で猟兵に迫ろうともがく。が、それは時間が許さなかった。
「違う部分もあるけど、サムライエンパイアにも似た霊力。だったら、これで対応できる!」
 ダメ押しとばかりに、リアの銃弾が、なおも追いすがろうとする朧侍目掛けて叩き込まれる。
 それはただの銃弾ではない、魔力と科学の粋、そして何よりリアの知識を結集して作り出された、ハッキング用の呪縛弾。
 ただの銃弾で撃ち抜くことは叶わずとも、重力だけでは動きを止めるに至らずとも、内側から回路を蝕む毒を食らわせてやれば、もう重力に逆らうことなどできはしない。
 そうして、完全に身動きを奪われた朧侍を叩き潰すのは、彼女の役目だ。
「連携なら、わたしたちだって負けない、よ」
 死角から、黒い影が躍りかかる。
 ぐしゃり。
 金属同士がぶつかり合い、そして砕ける音。歪な鉄塊が、朧侍を叩き潰した。
 えへへ、と笑みを浮かべ、アイシスが手にしたバラックスクラップを担ぎ直す。
 朧侍はそれぞれが霊力による通信を交わすことで、高い連携能力を誇る。
 だが、それはこの戦いにおいて絶対的なアドバンテージとはなり得ない。
 なぜなら、アイシスもまた、多くとつながっているから。
 視線を移せば、あっちにもこっちにも。
 目立たぬ物陰に、黒い影がひょこりと顔を出して、それぞれがすべて、情報を共有し合うネットワークを構築する。
 そうして得られた情報を他の猟兵と共有してしまえば、情報戦でも五分。
 もともと弱いオブリビオンである影朧の中でも雑兵を相手に、戦術面で分があるならば苦戦する要素は無い。
 だが、今回はただ倒せばいいわけではない。目指すのは倒したその先、前方車両に逃げられる前に追わなければ。
「消えちゃったし、消えちゃうんだ、ね。急いで追いかけなきゃ」
 取り込んで強化することもできない以上、必要以上の戦闘は無駄以外の何物でもない。
 プロペラを忙しなく回転させるスチームドローンを引き連れて、アイシスは車内を走る。
 やがて何度目かの扉を破れば、目の前が開け、前方車両の車体と勢いよく流れて行くレールが視界に入ってくる。
 その距離は少しずつ離れつつある。切り離された後方車両の減速は、確実に進みつつあった。
「……よし、追いついたねイルダーナ!」
 後方からのエンジン音に振り返れば、自律行動していたリアの愛機が真っ直ぐに駆けてくる。
 傍らに停止したそれのコンソールを素早くたたけば、乾いた炸裂音と共に放たれるアンカー。
「少しは時間を稼げるとは思うけど、長くは持たないよ!大丈夫?」
「いち、にぃ、さん……うん。みんな、いる!」
 そのままイルダーナに乗り込むリアが声をかければ、丁度アイシスも分裂した自分自身を回収し終えたところで。
 となれば、後顧の憂いは何もない。後は跳ぶだけ。
「じゃあ、よろしく、ね」
「よし、それじゃ乗って、ひかるちゃん!」
「うん!」
 スチームドローンに掴まって飛んでいくアイシスが無事に渡れそうなのを確認し終え、ひかるがイルダーナの後部に乗り込む。
 後は、エンジンを吹かし、アンカーを巻き取るだけ。
 月夜の下で、猟兵達がまた三人、跳んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『獄卒将校』

POW   :    獄卒刀斬り
【愛用の軍刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    影朧軍刀術
自身に【影朧の妖気】をまとい、高速移動と【影朧エンジンを装着した軍刀からの衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    同志諸君!
【かつて志を同じくした帝都軍人】の霊を召喚する。これは【軍刀】や【軍用拳銃】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●あの日叶わなかったもののために
 後方が切り離された死霊列車は、最前列の機関車を含めて4~5両と言ったところ。
 無事に跳び移った猟兵達は、ゆっくりと夜の闇へと消えて行く後方車両を置き去りに、前へ前へと駆けて行く。
 最前まであと少しと言うところで、突如二両目……つまり、一番前の客車の天井が、弾け飛んだ。
 いや……『斬り飛ばされた』のだ。
 なめらかな切断面を残して離れた天井板が、風に乗って後ろへと消えて行く。
「いつになったら着くのやら。そればかり想っていたが」
 客車を抜けてきた猟兵たち。あるいは天井をかけてきた猟兵達は、視線の先に彼を見た。
 長身痩躯、血の気の抜けた肌をした、刀を握る一人の将校。
「なんのことはない。ここが、我らが命をかける場所だったということか」
 ならば、それもまたよし。
 豪奢なマントを翻し、将校は刀の切っ先を猟兵へと向ける。
「さぁ、往こう同志諸君。かつて我らが果たせなかった夢。武勲をあげ、世界の礎となる夢の為に、剣を執ろう」
 ゆらりとおぼろげな気配が、客席から立ちのぼる。
 長い長い年月、繰り返されてきた戦いの中。あるいは、戦いに臨むまでもなく散って行った数多の魂。
 もはや何のための武勲であったかも忘れ去るほどに待ちわびた戦いという瞬間に、亡霊が将校の下で歓喜の声をあげた。
リア・ファル
WIZ
アドリブ共闘歓迎

戦わずして果てる事を無念とするなら
真っ正面からお相手しよう
ボクも戦えずして沈むのは、戦艦としてイヤだから

……たとえ、キミの想う世界の礎となる事はないとしても

UC【召喚詠唱・楽園の守護者たち】を召喚
ライブラリデッキから破魔の力をロードし自分と彼らに付与する

現れた帝都軍人たちと戦わせる
素早く小回りの効くアニマロイズなら、
拳銃で狙うのは難しいし、格闘距離なら軍刀は振るいにくいはず

獄卒将校へはボクがセブンカラーズとヌァザでお相手しよう

玉砕覚悟、も良いけどね
キミの帰りを待つ誰かの為に、生き抜こうとは思わなかったのかい
決死を抱くのは、戦場に着いてからでも
遅くは無いと思うけど


霧ヶ峰・星嵐
あなたたちは帝都の軍人、戦うべきは……いえ、なんでもありません。

あちらは戦いを望んでいます。それが元の想いとは違ったとしても、今はそのままに相手をしましょう!


桜幻朧・七変化! 霧ヶ峰が裔、星嵐! お相手させていただきます!
【桜幻朧・七変化】で初期技能:戦闘知識の桜學府制服に早着替え、月ノ輪も軍刀の形状に。
高速移動も衝撃波も厄介ですが、この狭い列車内では遠距離を維持することは難しいでしょう、放たれる衝撃波を見切り、桜學府で学んだ剣術(戦闘知識)による接近戦を挑みます。

影朧エンジンによる強化が加わったとはいえ、あちらの剣術の基本は私もよく知る帝都の剣、隙を見切り、破魔の力を乗せた一閃を切り込みます



 戦わずして果てる。
 それは、いかほどの無念だったことだろう。
 元来が戦艦の制御AIであるリアにとって、その心は決して理解の及ばないところにあるものではなかった。
 もし自分が戦うことなく沈む運命をたどることになったら。
 それが、どれほど悔しいものかは想像に難くない。
 ……だからこそ。
「……おいで、みんな!」
 真正面から。
 兵たちと、リアが呼んだ獣型兵器が、狭い車内でぶつかり合う。
 車両としては大型の部類にあるこの列車ではあるが、それでも戦場と言う括りを考えると決して広いとは言えないロケーション。
 その中での複数対複数の乱戦であれば、『小ささ』と言うものはデメリットとはなり得ず、逆に少なくないアドバンテージとなる。
 同士討ちの可能性も少ないし、わずかな間隙も移動経路として、小型の獣型兵器は兵士たちの懐へ飛び込み、痛手を与えて行くのだ。
 その中で、将校へと斬りかかる猟兵の姿が一人。
「霧ヶ峰が裔、星嵐!お相手させていただきます!」
 桜學府の制服に身を包んだ星嵐が、肉薄する。
 二振りの軍刀がぶつかり合い、甲高い音を立てた。
 影朧と化した帝都の軍人。
 その姿に思うところは、もちろんある。
 いつの時代の者であったかはもはや知る由もないが、時代は違えど、同じ志を持っていたのであろう者と、こうして刃を交えているのだ。何も感じぬはずがない。
 だが、向こうが戦いを望むのだ。ならばと星嵐は軍刀を握る手に力を込める。

 ……それでも。
 リアも、星嵐も、解ってはいるのだ。
 この戦いが、彼の……彼らの望んだ結末を迎えることは、決してない。
 彼らが望んだ世界の礎となることは、もはやあり得ない。
 何故なら、彼らは、もう。
「……キミの帰りを待つ誰かの為に、生き抜こうとは思わなかったのかい?」
 乱戦の間隙から将校へと銃弾を放りながら、リアが問う。
「玉砕を望んでいたわけではない。ただ、何も為せずに逝くのが無念でならなかっただけの事」
 その銃弾を、将校の軍刀が叩く。
 その一瞬、横合いから星嵐が躍り出た。
 将校の剣術は、帝都で培われてきた軍人の剣だ。
 年月を経た上で少しずつ形が変わって行ったところもあるであろうが、その根幹は、星嵐が振るう剣術とさして変わることはない。
 故に、その隙は決定的なものだと確信していた。
 それでも、辛うじてではあるが将校が刃を割り込ませてみせたのは、単純な地力の差か、あるいは。
 ……だが、その中で。自身の一撃が弾かれ、距離を取らされた星嵐は、その瞬間、彼の目が驚愕に見開かれるのを、確かに見た。
「その剣術は……いや、しかし君たちは、我らの敵なのだ……」
 彼らは知っている。
 オブリビオンは、猟兵と言う存在を本能的に『敵』として理解する。
 目の前に相対しているのは、自分たちにとって紛れもなく『敵』であると、知っている。
 そして、救国の志に燃える彼らの敵とは、この世界にとっての敵である、そう信じている。
 だが、悲しいかな。
 もはや、彼らが守りたかった世界は過去へと消えて、今や『この世界』を蝕む病毒に成り果てていることを、彼らは知らない。知らなかったのだ。
 追いすがる二人を、周囲に控える軍人の霊が阻む。
 体勢を立て直す腹積もりなのだろう。将校は跳躍し、屋根の上へと消えて行く。
 その姿は、認めたくない事実から目を背けるような仕草にも似ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎

あんたがこの列車のボス?
悪いけどその夢を叶える場所はとっくに無くなってるんだけど…って言って聞くわけないか
なら、いつも通り力尽くで分からせるとしますか

ガンブレードにホローポイント弾を装填し、UCで加速して撃ちだす
敵味方入り乱れての接近戦になるかもだし、誤射だけは気を付けないと

取り巻きは強化した銃撃で問題ないとして、ボス対策はどうするか
答えは電磁場で弾道を捻じ曲げて、敵の予想外の角度から攻撃する事
腕のいい剣士は命中弾だけ切り払おうとするから、これは嵌るでしょ

堂々巡りの旅も今日でデッドエンドってところかな
もう抱えてた無念を手放して楽になりなよ


フィランサ・ロセウス
ああ、ああ、やっと逢えた……この時をずっと待ち焦がれていたわ!
さあ、さあ、早く戦いましょう?
血と臓腑を撒き散らす程に激しく殺(あい)し合いましょう!

クロックアップ・スピードを発動して雑兵の攻撃を避けながら、敵の大将と真っ向勝負よ
あら、貴方も速さには自信があるのね?
それじゃあ速さ比べといきましょうか❤
厄介な衝撃波は、UCの効果で強化された反応速度で見切れない事はないはず
攻防に積極的に【地形を利用】し、【だまし討ち】に手足の【部位破壊】まで何でもありの全力でやらせてもらうわ❤



 乾いた靴音を立てて、屋根の上に将校が降り立った。
 胸中に去来した『何か』を振り払うように頭を振る。
 嗚呼そうだ、何を迷うことがあろうか。
 待ち焦がれた戦いの時、かつて果たせなかった武勇を示す絶好の機会、何を迷うことがあろうか。
 このためにずっと、長い時をこの列車で待ち続けた。
 その果てにある戦いが、間違いである筈など――。
「ああ、ああ、やっと逢えた……この時をずっと待ち焦がれていたわ!」
 ――無い。
 悦びの色を隠そうとすらしない少女の声に顔を上げれば、次の瞬間には将校の軍刀とフィランサのサバイバルナイフの刃がぶつかり合い、甲高い金属音を立てている。
 大義、正義、世界のため。彼が戦いを願ったその根本に、それらが無かったわけではないのだろう。
 だが今は、目の前の少女と同じように、ただ待ち望んだ死合いを悦び、享受するのみだ。
 そしてそれは、彼に付き従う兵たちも……。……否。
 この空間そのものも、同じなのだろう。
 どこからか湧き出した亡霊が、中心に斬り込んできたフィランサ目掛けて殺到する。
 将校目掛けて突撃するだけであれば躱せる雑兵の妨害であれど、こうして切り結びながら捌くことが出来るかと言うと、それは難しい。
 だが、兵たちの一撃はフィランサの身に届くことは無い。
 銃声。
 雷鳴を思わせる音を轟かせながら、弾丸が兵の脳天を一発、二発と貫いていく。
「……言って聞く相手じゃないか」
 銃剣のついた拳銃から空の弾倉を吐き出させながら、鎧装の下でエルトが溜息をついた。
 ……何のために戦いを望んでいたのか。
 忘れてしまったのか。思い出せないのか。……あるいは、思い出すことを放棄したのか。
 いずれにせよ、彼らの夢を叶える場所はもう存在しないのだと、ただ言葉を投げかけるだけでは、彼らは止まらないのだろう。
「(なら、いつも通り力尽くで分からせるとしますか)」
 結局のところ、やれることはそれくらい。
 次弾を愛銃に叩き込む。構え、撃つ。
 電磁力による加速が施された弾体は、火薬以上の速度と威力を以て、雑兵をいとも簡単に貫いていく。
 問題は無い。取り巻き程度であれば、これで十分事足りる。
 問題があるとすれば、もう片方の側か。
「ああ、もっと、もっと!もっと激しく殺(あい)し合いましょう!」
 血と臓腑を撒き散らす程に!
 フィランサの声が、歓喜に震えていた。
 お互いに遠慮なしの斬り合い。
 服を裂き、肉を浅く抉り、血飛沫が跳ねた次の瞬間には、また撃ち合う音が響く。
 肉体への負担などお構いなし。目にもとまらぬ応酬が、フィランサと将校の間で繰り広げられている。
 元々広いとは言えない列車の上での高速戦闘。
 照準を向けるのも一苦労、下手すれば誤射の可能性もある。
 故に、雑魚の対処をこなしつつも、その瞬間をじっと待つ。
 そんなエルトをよそに、フィランサはフィランサでその応酬を存分に『楽しんで』いた。
 苛烈なまでの太刀筋。一瞬でも目を離せば獲られる緊張感に、空を切っただけでも文字通り『空間を裂く』斬撃。
 それらがすべて自分へと向けられていると思うと、心地よくてたまらない。
 斬撃が屋根を抉り、鉄板が風に巻き上げられた。
 薄板一枚隔てての、一瞬の対峙。次の一撃は、将校が先。
 浮いた鉄板が横一文字に真っ二つとなる。だが、その先にフィランサの姿は無い。
 ――ここまで狙わ(あいさ)れているのだからこそ、自らも全力で殺し(あいし)に行く。
 地形破壊をも利用した目くらまし。その一瞬の間隙に、フィランサのナイフが将校の腿を裂く。
 そしてエルトにとっても、その瞬間は待ちに待ったもの。
 ――狙える。
 即座に狙いを雑兵から将校へと切り替えて撃ち放たれた弾道は、しかし僅かに将校から逸れている。
 それでいい。
 あれほどの手練れ、命中弾とそうでない弾の判別くらいはやりかねない。
 だから、逸れる弾は狙われない。
 だからこそ――当てられる。
「もう抱えてた無念を手放して楽になりなよ」
 堂々巡りの旅も今日で終着点(デッドエンド)。
 電磁場によって軌道を捻じ曲げられた弾丸は、過たず将校の肩口を穿って行った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

荒谷・ひかる
はわわ、列車の中でたくさんの軍人さんと戦うなんてっ。
下手に範囲攻撃ぶっぱしたら車輛自体があぶないし、こういう時は……
た、助けておじいちゃーん!

【助けておじいちゃん!】発動
筋骨隆々、身長2.5m超えの巨漢の老爺の霊を召喚
おじいちゃんは荒谷流戦闘術の使い手、7年前に亡くなる時まで村で最強の戦士だったひと
軍刀を指で挟んで止めたり、撃たれた拳銃弾を掴み取るくらいは簡単にやってのけるすごいおじいちゃんなんだよ

というわけで、前に出て戦うのはおじいちゃんにお願いして、わたしは後ろから応援(鼓舞)するんだよっ!
もちろん、状況見て精霊銃での援護射撃(閃光弾や氷結弾での妨害や牽制)もするからねっ!


鈴城・有斗
ここがあなた達の戦場だってのは、まぁ間違いじゃないよ。
だけど、それはかつてあなた達が抱いていた、世界のためだとか、そんな、誰かのためのものじゃない。
どんな理由かは知らないけれど影朧になったあなた達に、転生を受け入れてもらうための、そのための戦場なんだ。

UC迅牙をガンブレードの刀身に纏わせて接近戦
斬撃を飛ばすのは味方の邪魔にならない時だけ
ガンブレードの刀身は砕けてもトリガーを引くことで再構成出来る

相手の攻撃は武器やバリアリアクターで手の先に展開したバリアで受けるか受け流す

戦いの先に栄光なんて無い。
あんた達の終着点はここなんだ。
転生を受け入れて、新しい命を生きてくれ!



 断続的に響き渡る金属音が、風に流されて夜の森へと消えて行く。
 一撃、二撃、三撃四撃五撃。
 矢継ぎ早であるにも拘らず、一撃ごとに空気が震える。その振動が、剣戟のすさまじさを物語る。
 腕に伝わる重みを身体全体へと逃がしながら、有斗は歯噛みした。
「ちぃ……っ!」
 六撃。
 何度となく繰り返された打ち合いによって亀裂の走っていたガンブレードの刀身が、音を立てて砕け散った。
 支えがなくなり体勢を崩す有斗に、将校の刃が翳される。
 その瞬間、横合いから影が差した。
 その刃を振り下ろすことなく飛び退いた将校が、今の今までいた場所を、空気を裂く音と共に巨大な拳が通り過ぎる。
 巨漢の亡霊だ。
 だがそれは、この列車の乗員ではない。それどころか、この世界の霊ですらない。
 鬼の如き形相の巨躯の老爺は、小さな猟兵……孫であるひかるを守るように立ち、構えを取り直す。
 助かった、と荒い息で礼を告げ、有斗は砕けたガンブレードのトリガーを引いた。
「見事だ。それでこそ、我らが武勇も振るい甲斐があると言うもの。我らの戦場に相応しい」
 ガンブレードの刃が再び姿を取り戻していくのを見やりながら、将校は嘆息を漏らした。
 かつて、これまで壮絶な戦いを経験したことなどあっただろうか。
 その表情は、隠し切れぬ興奮を浮かべている。
 待ちに待った戦場で、これほど心震える戦いがあったとは。これを喜ばずにいられるだろうか。そう言わんばかりに。
「……ここがあなた達の戦場だってのは、まぁ間違いじゃないよ」
 呼吸を整え、有斗が言う。
 確かに、これは彼らが望んでいた戦いだ。そこに間違いはありはしない。
 ……だが、この戦いには、かつて彼らが望んでいたのであろう大義があるようには見えなかった。
 そう、この戦場は、世界の為でも、彼らが守ろうとしていた誰かの為でもない。
 あえて言うのならば。
「どんな理由かは知らないけれど影朧になったあなた達に、転生を受け入れてもらうための、そのための戦場なんだ」
 あえて言うのならば『彼らのため』なのかもしれない。
 かつての未練を晴らし、淀んでしまった残留思念を洗い流すための。
 いずれにせよ、猟兵にとっても、彼らにとっても、この場でやるべきことはただ一つ。
「ならばこそ、存分に死合うとしようぞ!」
 ……戦い抜く。それだけのこと。
「おじいちゃんっ!!」
 将校が脚に力を込めるのを見て取るのと同時、ひかるが叫ぶ。
 応と言わんばかりに、老爺の霊が踏み込んだ。
 決して広いとは言えない死霊列車の屋根の上。
 精霊の力を行使(正確には善意で力を借りているだけだが)するのを主とするひかるにとってすれば、こんな環境での集団戦は敵味方諸共に吹き飛ばしかねない。
 故に、肉弾戦を得意とする祖霊に戦闘を任せ、ひかるは後方で雑兵を近付かせないように牽制に徹していた。
 老爺の回し蹴りを身を沈めて捌いた将校が刀を振り上げれば、斬り込んだ有斗がガンブレードを薙ぎ払って軌道を逸らし、
 その隙を潰そうと周囲の兵が躍りかかれば、後方からひかるの射撃が飛ぶ。
 目まぐるしく動く戦況。
 だが、その先に待っているのはいったい何なのだろうか。
 有斗は思う。
 少なくとも、彼らの望んだ栄光は、どちらが勝者になったとしても待ってなどいないのだろうと。
 だからこそ。
「あんた達の終着点はここなんだ……!」
 どうか終わりを受け入れて、新しい命を生きられますように。
 幾度目かの交錯の後、遂に老爺の拳が将校の頬を強かに叩き、有斗の刃が胴を薙いだ。
 ゆらりと将校の身体が傾ぐ。切れ飛んだ屋根から落ちて行く彼の向こうに、ほんのわずかに白み始めた空が見えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アイシス・リデル
あなたたちは、戦いたかったんだね
だけど……
それは、だれかを傷つけたかったの?
それとも、だれかを守りたかったの?
もうわからない、のかな

だったらわたしは
そんなあなたたちとは、戦わない
戦ってあげない、よ
わたしはただ、きれいにお【掃除】する、だけだから
桜の精の人ほど、うまくはできないかも知れないけど

攻撃を受け止めて
わたしの中で、この人たちのいやな気持ち
ただ戦いだけを求める気持ちをきれいにしてみる、ね
何人もいる、なら、何回だって試してみる、から
きっと、あなたたちはこうやって誰かを傷つけたかったわけじゃない、よね
きれいなもの、輝かしいものに憧れて
それが叶わなかったのが悔しいんだよ、ね



 どさり、将校の身体が木目の床に落ちる。
 その身に受けた傷が深手であることは、誰の目にも明らかだ。
 傷から流れ出る血と共に、その道に通じる者には、存在そのものである霊気が零れ落ちているのが見えたことだろう。
 震える手を、滑り落ちた刀に伸ばす。嗚呼、そこに在ると言うのに、あと少しだけ、指が届かない。
 もう少し、もう少しともがく指が空を切る。
 その向こうで、一人の黒い少女が立っているのを、将校は見た。
「……止めを刺す気か?」
 声が掠れているのが、将校自身にも理解できた。
 我ながら酷くやられたものだと思った。ここまで戦い抜いて、そして死ぬのであれば悪くないとも思った。
 しかし、少女……アイシスは、ううんと緩く首を振る。
「わたしは、あなたたちとは、戦わない」
 戦ってあげないと、アイシスはただ、倒れふしたこの身を見下ろしていた。
「……ねぇ。あなたたちは、だれかを傷つけたかったの?それとも、だれかを守りたかったの?」
 いったい、何のための戦いだったのか。
 その為の『手段』を願うあまり、その先の『目的』を見失ってしまった。
 ……いや、もしかすれば、目を逸らし続けていただけなのかもしれない。
 いずれにせよ、いつの間にか、『手段』が『目的』にすげ変わってしまっていた。
 だから、ただ少女は願う。
「いやな気持ち……ただ戦いだけを求める気持ちを、置いていくといいよ」
 あなたたちは、ただ憧れていただけ。
 輝かしい栄光も、それは守るべきもののために戦ったからこそ手に入るもの。
 それを手にすることが叶わなかったのが、ただ悔しかっただけ。
 ただ傷つくだけの戦いを望んでいたわけでは無かった筈なのだから。
 ――だから、棄てて行って。
 落ちた刀を掴み取ろうと足掻いていた将校の腕が、音も無く床についた。
 心震える戦いだったのは、否定はすまい。『敵』であった猟兵への感謝の気持ちもある。
 もしかすると、この戦いは……もう『終わり』だと、気づくために必要なもので。
 だからこそ、我らは戦いを欲していたのかもしれない。

 ふわりと、どこからか桜の花びらが飛んできた。
 近くのどこかに幻朧桜でも咲いていたか。
 あちこち破られた死霊列車の隙間から一つ二つと淡い花弁が入り込む。
 列車の速度は、少しずつ緩み始めていた。
 夜明けはもう、すぐそこに。
 戦いが続く限り、淀みは溜まり、また死霊列車が走りゆく夜も来るやも知れぬ。
 だけれど。
 この便は、これで終着。
 乗客が降りてしまえば、後はもう、消えゆくだけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月12日


挿絵イラスト