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恐れを踏み越えた先に

#アルダワ魔法学園

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#アルダワ魔法学園


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●悲鳴は迷宮の奥に
 まるで洋館の一室のような空間。そしてそこを飾る調度品の数々。しかしそれらを照らす陽は無く、差し込む窓も無い。
 アルダワ魔法学園は地下深く、ここは迷宮の中。蝋燭の火が鈍く照らす室内を、パーティを組んだ生徒たちが探索している。
「……なあ、ここさっきも通らなかったか?」
「こんな時に冗談言わないでよ、森の中じゃないんだから」
「気のせいだろ気のせい、さっさと奥まで行っちまおうぜ」
「あ、あの、今向こうから音……、音がしませんでしたか……?」
「ほらー、アンタが適当な事言うから」
「いや、オレも聞こえたかもしれねぇ」
「一旦引き返さないか? 他の扉の方も調べにさ」
「しょうがないわねぇ、まったく意気地なしなんだから。……え、あれ?」
「悪ふざけしてんなよ、戻るんだろ」
「違う、違うの! 向うから鍵がかかってるみたいで!」
「と、閉じ込められてしまったんですか……?」
 予期せぬ事態に慌てふためく生徒たち。そんな彼らをあざ笑うように、先程までの進行方向に位置していた扉が重い音を立てて開いていく。
 鎧姿の災魔、この洋館の主がそこに居た。

●探索に何をかける
「迷宮を、探索、したいかー」
 握った右こぶしを高々と掲げ、妖狐の陰陽師、徒梅木・とわ(流るるは梅蕾・f00573)が集った猟兵たちに投げかける。
「……したいかー」
 にやにやと笑いながら尚も続けるとわ。彼女の姿からは全員が乗らなければいつまでも終わらないぞ、という主張がじわりじわりと伝わってくるかもしれない。
「くふふ、よろしい。キミたちに朗報だ、是非とも挑戦して貰いたいん場所があるんだよ」
 ノリノリの者も居たかもしれない、或は渋々の者も居たかもしれない。猟兵たちの顔色には構わず、全員が腕を挙げたことを確認するととわは満足げに白い尻尾を揺らし、話をし始めた。
 彼女が言うにはアルダワ魔法学園の学園迷宮で新たな区画が発見されたのだそうだ。
「この区画の最深部、居るっぽいんだよね、大物が。オブリビオン……ああ、向こうだと災魔って呼称しているんだっけ? とにかく、近辺やこの区画で探索中の学生がそいつに襲われるところを予知してしまってさ」
 厳めしい鎧姿の災魔によって襲われる学生たち。予知で見た光景を説明するとわは瞼を下ろし、深々と溜息をつく。それで気持ちを切り替えたのか、再びぼんやりと瞼を開けた彼女は強かな笑顔を浮かべた。
「キミたちの力で以ってこれを未然に防いでほしい。まだ誰にも攻略されていない区画、今回はその踏破の栄誉も付いてくるわけだ。どうだ燃えてきたろう?」

●恐怖に立ち向かえ
「で、肝心のこの区画、新しく見つかったと言うだけあってまだ情報が少ないんだけれどね、どうにもおどろおどろしいというか、怪談に出てきそうというか。探索した生徒たちは口を揃えてもう行きたくないと言っているそうでさ」
 曰くその区画、薄暗い洋館の一室から始まるのだそうだ。次へ進む為にと扉を開けても部屋、また部屋。しまいにはその部屋、どこからか笑い声や金属音が聞こえて来たり、いつの間にか部屋同士の配置が変わっているのか延々とぐるぐるとさせられたり。恐ろしくなって引き返そうと思ったら、今くぐって来たはずの扉が何故か施錠されていたりするのだとと言う。
「あーやだやだ。こういうのは夏だけで十分だよ。……いや、決してとわが今回の件を嫌だからキミたちに託しているわけじゃあないよ、ないんだけどね? とにかくそんな様子だそうだから、怖いのが駄目な猟兵は、あー……、……いつも以上に頑張ってくれ」
 放っておけば被害が出てしまう。参加を見送るようにとは口に出せず、何か激励の言葉をかけようとするが、しかしどうにも浮かばなかったようで。
「流石にこれじゃあ芸がないな。ちょいとまっておくれよ。……そうだな、キミたち自身が一番、何よりも怖いと思うもの、それが何かをちゃーんと考えておくというのはどうだろう。そいつより怖いものが出てこないのなら何とかなりそうだって、そういう気持ちで臨んでみるのさ。勿論、そいつさえも乗り越えてみせるって気持ちが湧いて来ればより良いだろうけどね」
 激励にはならないかもしれないが彼女なりの応急対処を口にして、とわは猟兵たちを導くのだった。


芹沢
 さて、猟兵の皆様。皆様がこの世で一番怖いと思うものは何でしょうか?

 今回は洋館風の迷宮を、そして己が最大に恐怖するものを制し、最奥で待ち構える災魔を打倒することが目的となります。

 度合いはそれぞれでしょうが、『その猟兵にとって一番怖いと思うもの』をご用意して頂けますとどこかで出番がある筈です。
 無くとも差し障りはありません。それもまた、勇ましき猟兵の姿が輝く瞬間となるでしょう。

 以上、芹沢でした。
 ご参加下さる皆さまの、個性やらしさ漲るプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『洋館アンダーグラウンド』

POW   :    各部屋の仕掛けを力技で突破する

SPD   :    各部屋を足を使って隅々まで調査する

WIZ   :    各部屋に仕掛けられた魔術的な仕掛けや謎を解く

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第一階層
 下る、下る、下る。猟兵たちの足が石材の階段を叩く。奏でられた靴音が剥き出しの岩の壁を跳ねて響いていく。
 仄かな明かり、階段の終わり。辿り着いたのは事前に聞いていた通りの洋館のような一室。部屋の角へと繋がっていた石材や岩は脈絡なく木材へと移り替わり、調度品や敷かれた絨毯が瞳に映る。明確に区画が変わった事実を受け入れた猟兵たちが冷静に視野を広げれば、次いで瞳に映るのは四方の壁それぞれに配された扉。
「分担して探索していこう」
 一人が口にした提案に異論を挟むことなく、頷きを以って答える猟兵たち。即席で四つの班に分かれ、それぞれの扉へと手をかけるのだった。
コーディリア・アレキサンダ
呪いや魔法の類ならボクの出番――
いや、これはボクの出番なのかな?
大丈夫? 霊的現象は特に興味ないのだけれど
何せ、オバケの親玉みたいなものを自分の体に飼っているわけだからね……


――さて、なんにしてもこの先にオブリビオンがいることは確かなんだろう?
それじゃあ、進むとしようか

物理的なものは任せるとして、ボクは魔術的な仕掛けのほうに当たってみよう
魔法による擬態や、施錠の類なら《封印を解く》で解除できるしね


……しかし、夏はそういう季節なのかい?
こう、怖いものが出る……みたいな

おおよその怖いもの――悪魔は自分に取り込んでしまったし……
こういう時ボクの目の前には何が出るんだろうね


詩蒲・リクロウ
怖いのは嫌ですよ!行きたくない!行きたくなーい、あ"ーーー!
うぅ、こうなれば、早く終わらせてしまいますよ!

自分、「おばけ」がとても苦手なんですよ…。ひぃ、物音!?

おばけなんていないさーおばけなんていないさー。……え、だ、誰か自分の肩触りました…?


(とても怖がりなシャーマンズゴーストの少年です。おっかなびっくりしながら、進んでいきます。早く帰りたいと思いつつも、オブリビオンの事件である為に口には出さずに早く解決するべく頑張ります。でも、限界を超えるとグラウンドクラッシャーで仕掛けをぶち抜いて強引に突破してしまうかもしれません。かなり情けない男の子です。)


久賀・灯夜
「肝試しとか苦手なんだけど、そうも言ってられないよな……」
光源や、無駄かもしれないけど、入り口からロープを引いたり壁に塗料で目印を塗ってみたり、迷わないような工夫をしてみる
でも基本は少し進む度、物音一つ立つ度にめっちゃ驚きながら進む

一番怖いと思うものは『自分自身』
もし自分の姿の敵が出てきたら驚いて、苦戦するかも
「――でも! 俺が本当に怖いのは、ビビッて何もできない『臆病な俺』だ! そんな俺が敵だって言うんなら……負ける訳にはいかないだろ!」

ガジェットショータイムで呼び出すのは刀身が鍵の形になった剣
これで閉ざされた目の前の扉(障害)をこじ開ける
上手くいけば魔術的な解錠とかもできるかな?


玄崎・供露
【WIS】

洋館、洋式、薄暗い……嫌だ嫌だ、思いだしちまうな。さっさとクリアーするぞ

魔術は魔術だが俺のは電脳的らしいンで。それっぽく使う
「暗視」「視力」技能、あとはサーチドローンなんかを使って部屋の構造を探査し、記録しておく。それと一応目印として俺の「刻印」と反応する血も、残して行くか

俺の本当に恐いもの? はァん、こんなとこには居ねェよ、居るとしたら作り物だけだ。……まァ、居たら居たで――

ぶっころしていくだけだ

※恐いものは血に染まった和装の童女……と、それを害そうとする何者かの影。偽物とわかっていても硬直して震える位に恐れている


※アドリブや連携など大歓迎です。ご自由にお願いします


ミーユイ・ロッソカステル
……目に見えないものを恐れるだなんて、馬鹿馬鹿しい
そういえば、ついこの間ホラーの映像を見たけれど。……あっちの方がまだセンスがあったわね
洋物ホラーか和製ホラーか、という違いはあるけれど

と、すっかり現代の文化に染まりきった思考でずんずん迷宮を進んでいくダークセイヴァー出身の貴族令嬢


……仮に、死者の霊魂がこの現象の原因だとするならば
死者そのものと「お友達」になってしまえばいいのでしょう?

そう言って、死者を操る歌「眷属のための葬送曲 第1番」を歌いましょう


【苦手なもの】
真紅の髪の女性(母の面影を感じるから)
ヴァンパイアであった母親、いつかは対峙しなければならない相手
今はまだその覚悟は持てない


キャリウォルト・グローバー
某は機械である。機械である某に恐怖などという感情は存在し得ない。
だが、もし某が恐怖するものがあるとしたら「某の正義を見失うこと」…であろうな。

【POW】
ふん、常に薄暗いらしいが某の瞳を持ってすれば昼間同然。
お構い無しにどんどんと進ませてもらおう。
家具の配置が変わると言うのならそもそもの家具を破壊させてもらおう。
そうすればわかりやすいであろう。
扉に鍵…?【桜花一閃(オウカイッセン)】切り開くのみよ。

さて、それでは正義を成しに行くとしよう。


浅葱・シアラ
ひぅっ!?怖い……絶対怖い奴だよこれ……!
ひうぅ……苦手な人はいつも以上に頑張ってって、無茶苦茶だよ……
……でも、ちょっと見て見たい、かも……怖いもの見たさ、ってあるよね……?


【WIZ】で判定
魔術は得意だもん、魔術的な仕掛けを見かけたら、地形の利用で地形を利用して罠を回避しながら、シアの魔力で仕掛けを解いて回るよ

どんな仕掛けか見ないと分からないから、罠が命中しないように一回罠を作動させてしまってもごめんね……?
好奇心でスイッチ押しちゃうかも……!


一番怖いものって、何かな……
シアは、やっぱり「お父さんとお母さん」が敵になっちゃったら嫌だな……


作図・未来
一番怖いもの、か。考えたこともなかったな。

死霊術士として戦っている以上、死者の霊を扱っているわけで。
彼らにも生前の記憶があり、未練や恨みをこちらに向けられたとしたら、それは恐怖かもしれないな。

例えばそう、僕を模倣した存在。呼び出そうとした霊が奪われ、その霊の怨念がこちらに牙をむいてきたとしたら。
その時、僕はどうやってそれに対峙すればいいのだろうか。

いや、その時はまた別の霊を呼び出すだけだ。
僕のやることに何も変わりはない。

ただ、そうだね。
その時は、心強い味方がいてくれたら……なんて考えるのはちょっと弱気かな?

探索は暗闇の舞踏を使って行うよ。
安全第一、こういった仕事は僕の出番だ。偵察は任せてくれ。


宮前・紅
各部屋を調査しよっかな!
俺は『孤独』が好きじゃあ無いからね…誰かと共に調査できればなんだけど、糸繰り人形を使って広範囲を調べようかな♪手がかりがあったら共有しつつかな~。俺はある程度恐怖耐性は強いから、苦手な人の前に位置取って居よっと♪


ヴィクティム・ウィンターミュート
【方針】
UCで偵察ドローンを動員して、隅から隅まで先行偵察させる
なーに、俺は【情報収集】が得意なんだ
蒸気機械のようなものがありゃ、【ハッキング】で掌握を試みよう。
内部に有用なデータがあって謎解きに使えるかもしれねーし、危険なものは無力化させりゃいい。
痕跡を辿るには【追跡】使えばいいし、物理的な手段が必要なら【破壊工作】だってある。やりようはあるさ

怖いもの、ねえ。そうだな…「誰にも顧みられない死」だな。
…ストリートで散々見てきた。何もない、何もできない弱者が強者の玩具になり、企業の実験台になり。ゴミのように死んでいく。
そして社会にも、誰からも顧みられない。
無意味に生きて無意味に死ぬのはごめんだ。


天命座・アリカ
おーーーー!(投げかけにノリノリの成人女性)

未踏区画とは面白い!未知はいつでも心が躍る!
音が鳴る?グルグル回る?
そいつは中々のアトラクションだ!
怪談だってどんとこい!幽霊がいるなら話を聞こう!妖怪ならば捕まえてやる!
閉じ込められた?手当たり次第に探すのさ!出口スイッチ隠しドア!諦めなければ希望はあるよ!
怖いものなどありゃしない!天才にして無敵だからね!

それでも、強いて言うならさ。
世界が面白くないことだ。無味乾燥は絶望さ。
それが私の死とすら言える!
後は、そうだね人に、生命に、親しい者に拒絶されることだろうか。
煩い、変人と言われるのは慣れているけど、真に拒絶は経験がない。
狼狽えるかもしれないね。


虜・ジョンドゥ
ふぅん、恐怖を煽る学園迷宮かぁ
ボクは逆にワクワクしてくるよ
だって、『自分の怖いもの』を見せてくれるのだろう?
ボクには『それ』が分からないものでね

部屋同士を延々とぐるぐるする謎を解きたいな
床や壁に『グラフィティスプラッシュ』をぶち撒けて目印にしてみようか
『アート』技能を利用して、パッと目を惹く色とマークを選んで描こう

…あぁ、そうか
ボクは名無しの権兵衛(ジョンドゥ)―『自分がわからない』
それこそが恐怖なんだ
ヒヒヒッ!自分が怖いなぁ!
…けれど何だか笑っちゃうね

床や壁に塗ったアートを見て心を落ち着かせよう
…そう、コレがボクの彩(いろ)
ボクがボクで在る為の、道標なのさ

※アドリブ・他猟兵との絡み大歓迎


レイラ・エインズワース
こんなホラーの塊みたいなのの前で、ホラーのお屋敷なんてネ
でも迷宮探索はちょっとそそられるネ

ユーベルコードを使用して探索
怪盗ナラ、お屋敷は慣れてるヨネ?
狙う対象はこの異変の元凶、
すぐには無理ダト思うカラ、この変な空間を作りだしてる起点を辿って少しずつ進めていくヨ

異変やら音やらは怖くはないカナ
幽霊も、騒霊もどちらかといえばお友達だカラ
私はモノ、生きてるヒトとはちがうんだカラ
怖いノハ、終われないコト
欲深いヒトたちに奪い争われるコト
後はきっと、忘れられるコト

サテサテ、探索頑張ろうっと
「世界知識」で、構造を調べつつ「情報収集」しながら進むよ
味方で足がすくんじゃった子がいたらフォローするヨ
私が照らすからサ



●第一階層-A
「ただの部屋にしか見えないんだけどねー。ここも何にもないや」
「ただの、って言ってもなんか肝試しとかみたいじゃないっすか? 十分雰囲気あるっていうか……」
 両手の指を絶えず動かしてからくり人形に部屋の中を探索させる宮前・紅(絡繰り仕掛けの人形遣い・f04970)。棚を動かし、椅子を動かし、されど異常な点は見つからないと言う紅に久賀・灯夜(チキンハートリトルブレイバー・f05271)がきょろきょろと、周囲を警戒しながら答える。彼らの後方、開け放たれた扉からはロープが引かれ、灯夜の手に握られていた。
「肝試し上等じゃねぇか、ゴーストでもモンスターでもさっさと出てこいっつーんだ。目ぼしいものが無ぇなら次行こうぜ、次」
 まるで中世を思わせる様相の室内。モジュラージャックはおろか電子機器すら見当たらず、ヴィクティム・ウィンターミュート(ストリートランナー・f01172)が肩を落として次の扉を開ける。
「さーてお次は何かね。……んだこりゃ、食堂か?」
 三人はすぐには部屋に踏み込まず、ヴィクティムが放つ数機のドローンを斥候代わりに新たな部屋の内部を確認していく。
「食堂……?」
「ああ。豪勢なディナーが並んでやがる。しかもスープから湯気まで立ってら」
「災魔が用意したのかな? それともオバケの仕業だったりして♪」
 ドローンからの情報を共有する三人。紅の言葉に灯夜が小さく肩を震わせたものの、他に際立った点は室内に発見できず踏みこもうとした……その時。
「うわっ!?」
 固く、乾いた、大きな音。彼らの目の前でひとりでに扉が閉まったのだ。そして間を置かずに同じ音がもう一つ、彼らの進んできた扉も同様に閉ざされていた。突然の状況の変化。それに容易く飲まれまいと前方を、後方を、ドローンを確認するが……。
「うっわー、ほんとに部屋が替わっちゃってるよ」
「今のでロープも切られちゃったみたいっす……。扉の切れ味じゃないだろこれ……」
「ドローンは生きてるみてぇだが位置がわからねぇ。ったく面倒だな」
 開けなおした扉の先に料理の並ぶ食卓はなく、手繰ったロープの先は刃物で切断されたような断面で、未だ食堂の映像を送って来るドローンはしかし行方不明。ロープはその場に放棄され、ドローンは一度消滅させることにし、三人はその足で新たな部屋へと踏み込まざるを得なかった。
 再びの探索、入ってきた扉を背に新たな三つの扉にそれぞれ向かう三人。
「わお、なにこれ! ねえねえ、二人も今の見たー?」
「あ? オイオイそっちも同じ有様かよ。こっちもだ」
「もう勘弁して欲しいんすけど……ポ、ポルターガイストってのですかね……」
 彼らのうち二人、紅とヴィクティムの目の前の扉に、突如として赤い×印が勢いよく浮かび上がる。
「いっ!? こ、今度は笑い声しなかったっすか!?」
「したな……、つかしてる? ……だんだんデカくなってねぇか! くっそ、こんなホット・エルズィかまされる日が来るとはな!」
 五感を研ぎ澄ませて探索していた彼らの中で、それに真っ先に気が付いたのは灯夜だった。自身の身を抱えるように腕を回す彼にヴィクティムが周囲を警戒しながら頷き、答える。
 突如鼓膜を揺らした笑い声。それは次第にその数とボリュームとを増し、ついには脳さえも揺さぶるような感覚を与えていく。
「ダメだ!この扉鍵がかかってるよー!」
 音から逃れようと目の前の×印が描かれた扉へ手をかける紅だったがノブを捻っても開く気配がない。ヴィクティムも乱暴にノブを動かしているがびくともせずで。
「鍵……鍵……鍵……!」
 笑い声に追い立てられながら、恐怖に追い立てられながら、灯夜は念じる。彼の目の前を閉ざす扉に有効なガジェットの姿を。彼の念に応じるようにその手に現れたのは鍵の刀身を持つ一振りの剣だった。剣は吸い込まれるように鍵穴に収まり、解錠の音は笑い声に掻き消されても、捻る手に手応えを伝える。
「やるじゃん灯夜くん!」
「突っ込むぞ!」
 紅とヴィクティムの声も笑い声に飲まれてしまったかもしれない。しかし二人の手が灯夜の背中に確かな称賛を伝えていた。そして三人は扉を開けた功労者を先頭に扉を跳ね開け、その先へと駈け込んでいく。

●第一階層-B
 丁寧ながらも手早く、備ながらも淡々と、慣れた様子で区画を進む三人と一つの霊体がいた。
「あーあ、嫌だ嫌だ。さっきから延々回らせやがって、さっさとクリアーしたいってのに」
「霊的現象には特に興味ないしね、ボクもそれに賛成だ」
「でも迷宮探索ってちょっとそそられナイ?」
 これで辿り着いた部屋は幾つ目だろうか。玄崎・供露(テクノマンサー・f05850)が鋭い視線を調度品に走らせ、コーディリア・アレキサンダ(亡国の魔女・f00037)は彼に応じつつ壁や床の様子を探る。そんな二人に笑いかけるレイラ・エインズワース(幻燈リアニメイター・f00284)はといえば、喚び出した初老の怪盗の霊に二人の補佐をさせていた。
「こっちは閉まってるな」
「一先ず先進んじゃおうか、こっちの扉は開いてるみたいだよ」
 ノブを数度捻ってもうんともすんとも言わず、嘆息を零す供露。その傍に設けられた鍵穴を指の腹でなぞる。一方のコーディリアが手を掛けた扉は軋む音をさせながらも素直に開いて。怪盗を先頭に一列となって次の部屋へと入り込む。
「嫌な部屋だ……これまでの部屋で一番」
 そこに広がる光景に、マスクをしていても周囲に伝わるほど、供露がその面持ちに不快感を示した。テーブルに料理の数々が並んだ一室。それらの料理は食べかけで、皿の一つには肉汁を滴らせるような、赤々とした断面を晒すステーキが乗っていて。
「いつからあるんだろうね、見たところ痛んではないみたいだけど。……あ、結構美味しい」
「うーん、何だか変な部屋だネ。落ち着いて食事をするにはちょっと前衛的じゃない?」
 コーディリアがスープ皿に小指を落とし、温度を確かめる。付着したポタージュを舐め取ると感心したように眉が上がった。部屋を見て回っていたレイラは壁の一つの前で立ち止まる。そこには赤い線が三つ引かれ、その赤い液体が乾ききる前に垂れたのだろう、無数の細い線も床まで伸びていた。
 それを見て何かを想起したのか、吐き気を覚えたのか、供露がマスク越しに口を手で覆う。気分に引っ張られて視界まで揺れてくるようで俯いてしまう彼の顔を、
「ネ、ちょっと、大丈夫? 気分悪い?」
 カンテラの暖かな灯が照らした。撫でるように背中に腕を回して声をかけるレイラに、供露は何とか、と主張するように片手を挙げる。
「それに悪い事ばかりでもないみたいだ……。あの扉、さっきの開かなかったやつだ。印がついてる」
 供露が示す先の扉、その扉の鍵穴には彼の血で赤い目印が施されていた。
「となるとここにあるのは可笑しな話だね。こうやってぐるぐるさせられていたって事か。……なら、悪さしてるのは部屋じゃなくて扉なのかな」
 供露の行動と言葉から推測を立てたコーディリアが推測を立て、手にした杖を握り直す。
「二人ともちょっと離れてて。……権能選択、限定状態での顕現――承諾確認。我身に宿る悪魔、破壊の黒鳥」
 ――撃ち落としなさい。それは静かな静かな、魔女の命令。従うように杖から放たれるのは呪詛の篭った魔力の弾丸。扉の材木を抉り、ノブを吹き飛ばし、鍵穴を穿ち、蝶番を歪ませ、無数の破壊音の後にはドアの収まっていた枠があるのみだった。
「なんか力技って感じだネ。鍵なら頼んで開けて貰ったのに」
 苦笑するレイラの傍らで怪盗の霊体が、特に残念そうな意志は見せないものの静かに立っている。
「見た目だけだよ。実際の所壊したのは魔術的な仕掛けの方だもの。扉は多分、壊してもあまり意味はないだろうね」
「いや、でも少し気分が良くなった気がするよ。スカっとしたってやつ」
 未だ表情は険しさの残るものの、扉と共に閉塞感にも似た負の感情が少しは吹き飛ばされたのか、供露が確りとした足取りで歩き出す。レイラが気遣うように傍らに続いて、
「それは何より。じゃあ、進むとしようか」
 コーディリアが二人を先導するように、悠然と扉の枠を潜っていった。

●第一階層-C
 区画の一室。食堂の様相を呈するそこに話し声が響いている。
「いける!なかなかどうしていけるじゃないかこの料理! この間食べたチキンほどじゃあないけどね!」
「よく食べる気になれますね、この状況で!? 毒とか入ってたらどうするんですか!?」
「その時は皿まで食べてやるだけさ!天才に怖いものなどありゃしない! それにこういうのが謎を解くキーになっているかもしれないだろう?」
 流麗な、美しい動作ながらも状況を考えれば天命座・アリカ(自己矛盾のパラドクス・f01794)の食事風景は豪快とも形容できるだろう。それを見守る詩蒲・リクロウ(見習い戦士・f02986)は良くないことが起きはしないかとオロオロしている。
「某たちが成しに来たのは正義であって食事ではないだろう。次の部屋へ行くべきじゃないか?」
 二人の傍ら、駆動音とともに赤いカメラアイの焦点を変え、食堂内を分析するように見回しているのはキャリウォルト・グローバー(ジャスティスキャリバー・f01362)だ。
「むー。恐怖心だって平らげてやろうって気概なんだけれどね! しかし一人どころか三人ででも完食は骨が折れそうだ! ご馳走さまして次と行こうじゃないか!」
 ナプキンで口を拭い席を立つアリカ、そんな彼女を待たずにキャリウォルトは一つの扉の前に立っていた。
「鍵か」
 施錠された扉に刃が煌めく。手にした愛用の刀による一閃で事もなく斬り散らし、そのまま悠然と進んでいくキャリウォルトの後をアリカを急かすリクロウと急かされるアリカが続く。
「この部屋は何もない感じですかね……? でも家具も無いなんて初めて―――」
 殺風景な室内を中に進み入る三人の足元で重い、何かが嵌るような音が鳴る。それを契機に地鳴りのような音が頭上でも。
「こいつは驚いた! 映画でよく見るあれかい!?」
「言ってる場合じゃないですよ!? このままじゃ押し潰されて……扉!?さっき斬りましたよね!? あ"ーーー!鍵までかけられてるーーー!!」
 アリカの視線の先、緩慢ながらもそれ故に着実な速度で天井が迫ってきていた。綺羅綺羅と瞳を輝かせる彼女への突っ込みもそこそこに急いで引き返そうとするリクロウであったが彼の前に扉が立ちふさがる。
「面妖な。だが何度でも破壊させてもらうまで。…………なに?」
 再び振るわれる刀。しかし斬り散らされた扉の先にはこの区画に来るまでの下り階段で目にしてきた岩の壁がその肌を覗かせるのだった。
「あっはっは!参ったね! 全部この調子だったらどうしようか!天才美女危うしじゃないか!」
「笑いごとではない。……天井を斬ったところで生き埋めになるだけだな。」
「終わった! 自分の冒険はここで終わりましたー!!」
「まぁまぁ! 落ち着き給えよキャリウォルト嬢!リクロウ君! 諦めなければ希望はあるよ!手当たり次第に探すのさ!」
 腕を組み、胸を張り、豪胆に言ってのけるアリカの周囲をいつの間にか撮影ドローンが飛んでいる。ドローンのカメラに撮影され出してからというもの彼女の表情は殊に輝かしく、その肌は更にツヤを増した……ような。
「他に道はないか」
 迫る天井、迫る時間切れ、迫る圧殺の未来。その中で壁や床、扉を探る猟兵たちであったがそれらの進行を止める術を見つけられず。
「そもそもこの部屋さっぱり物が無いですよね!? スイッチとか隠す場所も無くないですか!?」
「……! 少し稼ぐ、とにかくその間に何とかしてくれ!」
 見つからないまま、しかし天井の進みが緩まる。部屋の中央、三人の中で一際長身なキャリウォルトがそのウォーマシンの身体を以って天井を支えているではないか。
「スイッチはなし、ギミックも見当たらない……か。逃げるしかないねこれは!」
「逃げられなくて困ってるんですよね、自分たち!?」
「なあに、道がないなら新しく作ればいい! 未知の探究って、つまりそういうことだろう? というわけでリクロウ君、力を貸してほしい!」
「ぐ……っ! いいから早くしろ!そう長くないぞ!」
 体の各部から軋む音をさせ、キャリウォルトが檄を飛ばす。慌てふためくリクロウにウインクと共に促すアリカが導いたのは一つの壁。彼女が言うには、この時間で調べた中ではここが最も薄い壁であったらしい。促されるままリクロウは泣き出しそうな表情で、手にした巨大で無骨な斧を振りかぶる。
「死にたくない!死にたくなーい!!」
 轟音。火事場の馬鹿力だろうか、解き放たれたリクロウの斧による一撃は壁を砕き、進路外の、未知なる道を作りあげることに成功する。
「……! ぉぉおおおおっ!」
 その光景をカメラアイで視ていたキャリウォルトが長躯を屈め、床と天井との隙間を縫って穿たれた壁へ走り、二人を抱えるように飛び込むのであった。

●第一階層-D
「またここかぁ。これで三度目だね……よしっ、と」
 壁に赤い塗料がぶちまけられ、大きな斜めの線が描かれる。虜・ジョンドゥ(お気に召すまま・f05137)が周った部屋に施した目印はこれで幾つ目だろうか。少なくともこの部屋には三本の斜線が描かれることとなった。
「……これ、料理減っているわよね。霊魂がディナーでも楽しんだのかしら?」
「霊……! ひうぅ……」
 三度目の来訪となる食堂と思しき一室。しかしこれまでなかった変化にミーユイ・ロッソカステル(微睡みのプリエステス・f00401)が不機嫌そうに零す。その言葉に小さな身体を震わせるのは浅葱・シアラ(黄金纏う紫光蝶・f04820)だ。母親譲りの緑の瞳を潤ませながら、他に変化はないかと部屋の中を飛んでいる。
 そんな少女の傍ら、妖精よりもさらに小さな体躯、暗闇のような翼で飛び回る影。
「案外別行動中の誰かが食べたなんて事もあるかもしれないよ」
 心当たりがある気がする、そう続けて小さく笑む作図・未来(朝日の死者のタンツ・f00021)。彼は話しながらも喚び出した蝙蝠の死霊をシアラに随伴させ、共に室内を調べている。
「真新しいものはないみたいだね……。仕方ない、次行ってみようか」
「この堂々巡り、一体全体何がフラグになっているんだろうねー?」
「フラグ……ああ、アレかしら。テレビゲームの」
 次の扉を開く未来の後を、喩えと現代文化の話を交わしながらジョンドゥとミーユイが続き、彼らの背に隠れるようにシアラが飛んでついて行く。
 次に辿り着いた部屋は暖炉の設けられた書斎。汚れの無い壁に赤い線を一本引き、初見の部屋を四人で慎重に探索をしていくのだが……。
「こ、こういう所に何かあったり……。……えっ?」
 暖炉の中。火も無ければ薪も無く、煤汚れすらないそこにシアラが潜り込み探っている。見回して、ぺたぺたと手で触れて……しかし壁のとある箇所に触れた途端、そこに魔方陣が浮かび上がる。
「離れてっ!」
 嫌な予感が過り、未来が叫ぶ。傍を飛ばせていた蝙蝠に突き飛ばさせるようにシアラを暖炉の外へ逃がしたその時、突如として魔方陣から炎が噴き出した。突然の熱に苛まれ霧散する蝙蝠、それと五感を共有していた未来の肌をも激しい熱さが襲う。
「ごめんなさいっ! ちょ、ちょっと待っていてね、今……」
 慌てて体勢を立て直し未来の元に飛び寄るシアラ、伝わって来た熱に顔を顰める未来の頭上に紫の光りで形作られた蝶を羽ばたかせる。蝶翼から零れ落ちる輝く粒子が少年に触れるたびに彼の顔から力みが抜け、肌からは痛みが引いていった。
「ヒヒッ、コンボまで決めて来るとはなかなか驚かせてくれるじゃあないか!」
 二人の状況を見守るのもそこそこにジョンドゥが声をあげる。書斎の本の数々噴き出した炎が燃え移り、焦げた匂いと煙を立ち昇らせ始めていたのだ。次第に勢いを増す火勢、塗料をぶちまけて勢いを削ごうとするがその全てに対処するには足りず。
「けほっ、けほっ……。皆を……皆を元気にしてあげて、シアの蝶々さん……!」
 口元を衣服の袖や手近な布、被っていた帽子で覆い、小さな体で床に降り立ち、煙を避けて部屋の中央に集まる猟兵たち。彼らの頭上を蝶が舞い、降らせる光で眼鼻や喉を癒していく。
 そんな四人を嘲笑うように何処からともなく掠れた笑い声が流れて来た。
「随分と趣味の悪いのがいるみたいね」
「……そこか。いや、その扉なんだね?」
 煙に巻かれながら声の元を探していたミーユイと未来、二つの視線が一つの扉に注がれる。彼らの瞳にはそこに立ち塞がり、歪んだ笑みを浮かべる亡霊の姿が映しだされていた。
「更生したらお友達になってあげない事も無いけれど」
 降り注ぐ光の中でミーユイが歌いだす。それは死者を操る歌。眷属のための葬送曲。炎に乾いていく室内で、しかし瑞々しささえ感じられるような歌声が掠れた笑い声を掻き消していく。亡霊を煙に溶かしていく。立ち塞がるものが居なくなった扉は心を許したように自ら開き、まるでその先へと猟兵たちを誘うようで。ミーユイはその中へと恐れることなく進んでいった。
「行こう、多分あの扉の先が僕たちの向かうべき場所だ!」
「ってことは他はハズレだね? そーれっ! よし、いくよシアラくん!しっかり掴まっていておくれよ!」
 帽子をかぶり直して駆け出す未来、ジョンドゥは他の扉に赤い×印を残すと疲労したシアラを抱き上げて続いていくのだった。

●第一階層-第二階層
 ある者たちは扉を跳ね開け。ある者たちは扉の枠の中から。ある者たちは壁を吹き飛ばし。ある者たちは扉自らに開かせ。
 共に階段を降りて来た猟兵たちが、同じ部屋で一堂に会する。
 スラングを口にする者。穏やかに皆を照らす者。身体の具合を確かめるもの。帽子を被り直す者。
 それぞれの体験したことを話し合う暫しのやり取りの後、彼らの視線は部屋の角に注がれる。
 そこには次の階層へと続く石材の階段。だれが言い出すでもなく、先導するでもなく、自然と猟兵たちの足は階段へと、下り道へと進んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『恐怖に打ち勝て!』

POW   :    恐怖の対象も気合いがあればなんとかなる!

SPD   :    ダッシュで走り抜ければ見なくてすむよね。

WIZ   :    目を瞑れば怖くない!頭良い!

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第二階層
 先頭を行く者の足、そこから伝わってくる感覚が材質の変化と共に階段の終わりを教える。少し前まで踏みしめていた木材の感触だ。
 辿り着いたのは広い一室。……いや、一室と言うには余りに広大で、この階層そのものが一つの部屋になっているのではと思わせる程のものだった。
 光源は先程までよりもさらに少なく、向かい側の果ては闇の中。猟兵たちの息遣いだけがすぐ傍を木霊する空間には物悲しささえ感じさせられるようで、セレモニーホールを連想する者も居たかもしれない。
 だが猟兵たちは立ち止まらない。この先に居る災魔を打倒し、将来被害にあう学園の生徒を助けるために。
 そんな彼らの行く手、ぽつぽつと浮かび上がる光の輪。輪の中に幾何学的な模様が更に描かれ、猟兵たちの数だけ魔方陣を成す。
 そこから現れ出でるのものは千差万別。
 共通するのは、それが彼らそれぞれとって、一番怖いと思うものだということだ。
ラメント・ディエズラルム
【POW】

……ふん、霊だか何だか知らないが、結局のところ最後に行き着くのはオブリビオン……僕らが戦わなければならない相手なんだろう?
それならそこに辿り着けるまで進むだけだ。何が来ようと、歩みを止めない。

……それだけの「覚悟」をもって、僕は今日までこうしてきているんだ。
こんな所で何が現れようと、怖くない……怖く、ない。
……絶対に目を背けるもんか。



【怖いもの】
故郷や家族を奪ったヴァンパイア。もっと広くいうならオブリビオン全て、それらと対峙することへの恐怖を今日まで拭えていない。
……つまり内心では怖いです。
それでも絶対に、逃げだすことはありません。

(連携、アドリブ歓迎です)


ミーユイ・ロッソカステル
光から現れたのは、【鮮血のような真紅の髪を持つ女性】
……よく、見覚えのある姿

一瞬だけ、眉を顰める。いつもの不機嫌そうな表情でいて、見る者が見れば明確に違うとわかる

周囲の反応を見れば、何故「ソレ」が目の前に現れたかはおおよそ察しがついて
恐れよりも、真っ先に浮かんだのは――怒り


……人の心に土足で踏み込んだ上で。
表層だけを読み取って、私を怖がらせようというの。……ふぅん、そう。

――――おまえには、安息など与えてやらないわ。


「自身の恐怖する対象」を、執拗に、吸血鬼に由来する身体能力でもって攻撃
普段のどこか気だるげで物憂げな雰囲気などなりを潜めて苛烈に
ソレに実体があろうとなかろうと、知ったことではないわ


玄崎・供露
【POW】ユーベルコードを用いて魔法陣ごと力ずくで吹き飛ばして先に進む

(暫く硬直して対象を凝視し続けてから)
ユーベルコード発動。吹き飛ばす。

……だってそうだろうがよ、ここにゃあの子は居ない。アイツも居ない。いる筈が無いんだ、間違いなく。……だから全部まやかしに決まってる。大体な、あの子の瞳の赤色はもっと鮮やかだしアイツの顔はもっとぶん殴りたいようないけすかないツラなんだよ

(ウサギの人形を握りしめながら)
だが、まあ、なんだ。これ、仕掛けた奴ァただじゃおかない。
……舐めやがって

※アドリブや連携などご自由にお願いします、大歓迎です



●第二階層-A
 足が止まる。それが何故かを察するのにそう時間はかからなかった。
 足音が止む。これがこの場に居る全員に起きたのだと察するのにそう時間は要らなかった。
 薄闇の中、そこに溶け落ちてしまいそうな黒髪、黒い制服、黒いマスクの少女……いや、少女の装いをした少年、供露は俯いたまま硬直していた。
「……オイ。何が見えた。何が、見えてる」
 声を震わすまいと慎重に言葉を紡ぐが、それを乗せる自分の吐息が余りにも冷たく感じられて、その温度に身体が震えてしまわないかとさえ不安を覚えてしまう。
 対照的に吐息の熱さを感じる者が居た。それきっと、身体の内より湧きあがるものから伝播した熱。
「さぁて、ね」
 されど声音は冷やかに、ある種無感情に、ミーユイが供露に答える。彼女は不機嫌さを隠しもしない表情で正面を、光で描かれた魔方陣を、そこから現れ出でた彼女にとっての恐怖を睨めつけていた。
 同じく視線を正面から逸らさない少女が居る。だが彼女の表情は不機嫌とは程遠い。ましてや怒りでも悲しみでもなく。敢えて言うならば、それは苦悶だったのかもしれない。
「…………、っ」
 少女、ラメント・ディエズラルム(哀歌は鳴り止まない・f02152)は供露の言葉に応じられないでいる。耐えるように食い縛った歯では言葉を紡げない。呼吸を忘れた身体では、言葉を乗せられない。でも、それを止めてしまえば、それを思い出してしまえば、きっと溢れ出すのは……。
 三人がそれぞれの反応を受け取る。零れた嘆息の数は、二つ。
「全部、まやかしに決まってる」
「人の心に土足で踏み込んだ上で、表層だけを読み取って……」
 ―――だってそうだろうがよ、ここにゃあの子は居ない。アイツも居ない。
 ―――おまえには、安息など与えてやらないわ。
 続いた言葉は、独り言ちるように。
 供露が顔を上げる。もう目を背けない。
 ミーユイが一つ歩を進める。もう抑えが利かない。
 響いたのは破裂音にも似た空を裂く音、そして跳躍により床が踏み砕かれた音。少年はその瞳に焼き付けるように、瞬き一つせずに、血に染まった和装のあの子と、それを害そうとするアイツが不可視の鞭激に撃たれる光景を見届ける。少女は返り血で以ってその爪を、その指を、いっそ全身さえも、眼前の女性の髪のような真紅に染めてしまう程に、吸血鬼の血統としての暴れ狂う力を振るう。
 そして訪れる静寂。程なくして響き出した足音は、やはり二つ。
「(進まないと……僕、も……、)」
 二人の背中に届く声がある。
「…………違う……っ! 違う、違う! ……違う!」
 だが二人は歩みを止めない。
「(僕もじゃ、ない……。自分で……、僕自身で、選ぶんだ……!)」
 ラメントは歪む視線で、それでも前だけを見据える。
「こういう戦い方しか、知らないんだ。……きっと、これからも、」
 ―――こうやって、戦っていくんだ。
 再び噛み締めた歯に、一層の力が籠る。それはもう恐れを塞き止める為ではない。覚悟を、決して離さない為に。
 少女のレイピアが恐怖の象徴、ヴァンパイアを一刺しにする。彼女の口元から、血のひと滴。
 三つの足音が遠ざかっていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

宮前・紅
うわあ、この部屋すっごく広いね♪
俺、こういう所苦手なんだよね~だってさあ、こういう所に居ると誰も居ないような気さえしちゃうんだよ。

………あはは、やっぱり俺が怖いと思うもの分かってるなぁ。
俺のは怖いもの、っていうか状況かな……孤独だよね、うん。

辺りが静かすぎて嫌気がさしちゃうね。

【SPD】で判定
【第六感】を信じて、この部屋から抜け出すつもりで、走り抜けよっと。
俺は恐怖を与えられるのが1番嫌いなんだ。

………これまで演じ続けてきた道化が取れちゃうじゃん、観客のいない舞台上に立つのは御免だからね♪

だからせめて動揺しないように、真っ直ぐ走り抜けよう。

この先にこれまで一緒に行動して来た彼らが居ると信じて。


浅葱・シアラ
ひぅ……!
ついに怖い物が出て来るみたい……いや……!


目の前に現れるのは大好きなお父さんとお母さん
ほっとした……でも違う……
大好きな二人は、シアを見ない振りして、去っていく……いや、行かないで……
本当に怖いのは、存在が怖い物じゃなく、大好きな存在に見放されること
でも、違う……あれは偽物だもん


【WIZ】で判定
偽物だから、見た目に惑わされない
目をつむって、2人がいなくなるまでじっとそのまま
怖くなったり、恋しくなったりすれば、ユーベルコード「胡蝶の調べ」を使用するよ
お母さんが歌ってくれた子守唄、心も体も軽くなるから
だから、シアは怖くない、大丈夫
お父さんもお母さんも、離れてたって一緒、偽物には負けないよ



●第二階層-B
「……あはは。やっぱり俺が怖いと思うもの、分かってるなぁ」
 困った様に笑う紅の視界には、しかし映すべきものは何もなかった。今の今まで傍を歩いていた猟兵たちの姿すらない。あるのは辺り一面の闇。彼が見ているのは、誰も居ない、孤独の世界。
「辺りが静かすぎて嫌気がさしちゃうね……、……うん?」
 肩を落とす紅の耳に、誰も居ない世界から、小さな小さな歌声が聞こえてくる。
 それは妖精の歌。幼い子どもをあやす、母親が歌ってくれた子守唄。
「(本当のお父さんもお母さんも、離れてたって……一緒だから)」
 シアラがぎゅっと目を瞑って、身体を強張らせながらも歌声を響かせている。大好きな両親が自分に背を向け、見ないふりをして去っていく光景から逃れる為に。知らないふりをして遠ざかっていく二人は偽物だと自分自身に伝えるように。
「(怖くない、大丈夫……!)」
 そんな少女の存在を、紅は耳で感じる。そんな彼女の心の内を、素肌で感じる。
「観客の居ない舞台上に立つのは御免だけれど、観客の見えない舞台上なら……♪」
 歌声が孤独感を拭い去っていく気がした。いつの間にか、少しずつ心は軽やかに。ゆっくりとだが、身体まで軽やかに感じられるようで。身体全部を使って、大きく一度深呼吸。改めて肺一杯に空気を取り込んで、
「大好きだよ~~~愛してるよ~!!」
 ―――多分ね!
 叫んで。紅は駆けだす。真っ直ぐ、真っ直ぐ、孤独の闇を振り払うように。この先に仲間が居ると信じて。……まだ進むことのできない誰かの道標になれたらと願って。
 足音がシアラの耳に届く。それは去り行く両親のものではない、軽快な足音。誰かが前へと踏み出した音。
 妖精はその音を頼りに羽ばたく。目を瞑っていたって、音のする方へと飛んでいける。その心にはもう恐怖心はない。誘う足音のように、軽々とその枷を脱する。
「シア、偽物になんて負けないよ」
 迷いなく飛ぶ少女はいつしかまやかしの両親に追いつき、抜き去っていく。
 彼女の心の中では、きっと大好きな二人が優しい微笑みを浮かべていただろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ワックド…この迷宮は随分と趣味が悪いらしいな。あぁ、クソッ…もう"あの場所"と関わるのはごめんだってのにな…。
(「誰にも顧みられない死」を象徴するように、ストリートギャングと、それに玩具のように嬲られる過去のヴィクティムでお願いします)

よーく、覚えてる。社会の最底辺、ストリートチルドレン。力も無い。社会に存在を認められてないIDレス達。大半が餓死するか、強者の玩具になって死ぬ。…俺もあの時はそうなるはずだった。

無意味に死ぬ?ごめんだね。あの時と同じ。強者にナイフを突き立ててやる。
悪いが俺はもう弱者じゃない。人間だって辞めたんだ。
__電脳無辺、起動。

世界は決して公平じゃねェが、命の脆さは公平だ


レイラ・エインズワース
手前のところは本当にびっくりどっきりお化け屋敷だったネ
このまま終わるわけじゃないとは思ってたケドサ

目の前には光る魔法陣
幽霊でも出てくるならよかったケド、ああ、こういうコトするんダネ……
怖いノハ、終われないコト
欲深いヒトたちに奪い争われるコト
後はきっと、忘れられるコト
死者を蘇らせる魔導具、なんてあっちゃいけないモノだったノニ、ネ
私はモノ、生きてるヒトとはちがう
私は過去の残滓、今生きるモノを救うために進むんだカラ
ああ、だから、邪魔をしないで
ユーベルコードで呼び出すのは、愛しき創造主、マスターの模造品
耳をふさいで、目を瞑って走りだせば
何が起こっててもきっと大丈夫

絡み・アドリブ歓迎


ジン・エラー
【花の涯】
女将サンと一緒に探検たァオレもイ~ィ立場だぜ
ン~じゃこンな辛気臭いトコなンざさっさとおさらばだ

暗いトコならオレにお任せってなァ!
【光】で周りを照らしゃァいいワケだ
聖者の光ってのも便利なモンだろ?

オレの一番怖いこと?
そりゃァ今なら 女将サン――もといエリシャが死ぬことだろうが
別に、死なせる気なンざさらさらねェーし
オレが救えばいいだけだしな

ン~~?女将サン、どうした??
――オイ

エリシャ、そっちは違うぞ
お前は、こっちだ


作図・未来
さて、鬼が出るか蛇が出るか。
今のところどんな敵なのかがまるで不明だからね。
いや、少なくとも幻惑の類を使うことはわかっているか。

しかしあの食事は間違いなく本物で、あの炎は間違いなく熱かった。
幻惑を事実として再現させる相手なら厄介な相手だね。

そうなると、先ほどの僕の予想も現実味を帯びてくるな。
さて、どう立ち回るべきか。

とりあえず、軍勢を呼ぶ僕の死者の舞踏ならあらゆることに対処はできるはずだ。
しかし、不安がもし的中することがあれば……。

……いや、その時はその時だ。舐めて貰っては困る。
悪いが、僕の手札が一つだと思った君の負けだ。

流剣の舞踏。

とっておきだ。この霊は格が違う。
蹂躙させて貰うよ。


コーディリア・アレキサンダ
怖いもの……怖いもの
成程、ボクの場合は「ボクを見る人の視線」となるわけ
それもこの感じは故郷の街のシスター、衛兵、近所の男の子、その母親――――

思わず反射的に目を閉じてしまうけれど……もう慣れたよ、その視線は
誰にどう思われようと前に進むと決めたから

「感謝されたくてやってるんじゃない。ボクは――――」

ただ、どこかの誰かのために前に進むと決めたから
ボクが怖いと思っているらしいそれを振り払って前へ、前へ

「幻に用はないよ」



恐怖の対象は「自分を“悪魔”と呼び、迫害し、街から追い出した故郷の人間(その視線)」
アレンジ等も大丈夫です


千桜・エリシャ
【花の涯】WIZ
新年早々ジンさんと、こんな辛気臭いところを探検しなければならないなんて…
まあ、暇潰しくらいにはなりますわね
私の狙いはあくまで炎魔の御首ですが
あら、聖者の光とはジンさんもたまには役に立つのですわね
少しだけ、見直しましたわ
…本当に少しだけですわよ?
まあ亡霊でも出てきたら私にお任せなさい
死霊術でちょちょいのちょいとやっつけて差し上げますから

私の怖いこと――何かしら?
戦えなくなること…もとい自由を奪われること、かしら
無力な籠の鳥はもう懲り懲りですもの…
――って、ちょっと!いきなり名前で呼ぶのは反則ですわ!


キャリウォルト・グローバー
某が一番怖いと思うものは「某の正義を見失うこと」
しかし、某の正義というものは他人にどうこうされるものでもなし!
某の正義は某が一番理解しておる!!!
某の正義の邪魔は誰にもさせぬ!!!

【POW】
気合である。気迫である。気力である。
こんなところでもたついていては正義が成せぬではないか。
このような恐怖など「覚悟」を以て行動すれば
何も怖くなどない!某は某が正義だと思う道を進むだけである!
このようなもの魔方陣ごとかき消してくれるわ!
消し飛べ!『桜嵐旋空撃(オウランセンクウゲキ)』!!!


天命座・アリカ
やっはっはのはっはっは!
楽しかったよ大興奮さ!少しピンチではあったけど!結果よければ全て良し!
さて、次のアトラクションはなんだい?

広いね暗いねそういう趣向?
まあまあいいさ、鬼が出ようが蛇が出ようが、私は真っすぐ進むのさ!

……っ、ああ、悪趣味だ。
深呼吸して落ち着いて。大丈夫、私は「生きて」いるのだからさ。
震えを止めろ、前を向け。
たとえどんな絶望でも、意味を失ったとしても。
進むしかないのだから。

……どうせなら守ってくれる騎士でもいると安心するのだがね、強欲がすぎるかな。

さて、仕切り直しといこう!
私は超絶完璧生命体!この世に生まれ落ちた奇跡!
天才美女、天命座・アリカさ!
そうだ、私はここにいる!


久賀・灯夜
【POW】で判定
幻だろうと偽物だろうと、『お前』が相手なら、俺は負ける訳にはいかないんだ……俺自身の力で乗り越えてやる!


【恐怖の対象】は自分自身。何の取り柄もない、臆病者で自信がなくて、色んな事から逃げてる自分。
でも猟兵の力に目覚めて、初めて自分にも何かが出来るかもしれないって、まっすぐ歩けるかもしれないって思ったんだ。
だから……俺は絶対にお前からは逃げない!

あえてユーベルコードは使わず、自分自身の拳で戦う
たとえ負けたって、正面から立ち向かったぞって拳を突き上げて前のめりに倒れてやる

(アドリブ、絡み等大歓迎です)


虜・ジョンドゥ
【WIZ】
――ああ、ボクの目の前には『ボクを模した黒のシルエット』が出てくるんだね
…そりゃそうだ
ボクは『自分がわからない』のだもの
なんたってボクは、名無しの権兵衛(ジョンドゥ)
いつも誰かの“お気に召すまま”に生きてきたのだから

…でも、今は違うんだ
電子の海を抜け出して、猟兵になって
ボクは世界を巡って『ボク自身』を見つけたいと思う
…もう一人の影のボクに、『コミュ力』は通じるかな?
伝わらなくても構わない
これがボクの想いだから

祈るように目を伏せて、
『MY AVATAR』の男女を召喚し、ボクの目の前に現れた恐怖を切り裂こう
戯れておいで
誰かさんが作った稚拙な“ボク”とさ

※アドリブ・他猟兵との絡み大歓迎



●第二階層-C
 薄闇の中、ジン・エラー(救いあり・f08098)は立ち尽くし、少し先の床へと視線を落としていた。
「女将、サン。――オイ」
 彼の視線の先、冷たい床の上には女将と呼ばれた少女がその身を横たえている。もとより白い肌は青い程に尚白く。きっとその体温は、身体を預ける床のように……。
「そっちは……違うぞ、」
 唯、唯々そこにある、死。救う暇さえなく、忽然と現れた亡骸。命なき世界へ旅立った少女にまだ行くべき場所ではないと説いても、帰ってくるものはない。
「……エリシャ」
 マスク越しの、男のくぐもった声が漏れる。

 薄闇の中、千桜・エリシャ(春宵・f02565)は立ち尽くし、少し先の宙を見つめていた。
 少女の視線の先、そこには籠があった。籠の中には、自分自身。
 唯、唯々そこにある、自分。その場所をこの世のすべてとしているように、何の疑いも無く、籠の中でだけの自由に身を置く姿。
「私の……、」
 言葉を終えるその前に、少女の耳に届く声があった。

「……えっ?」
 傍らから自分の名前が聞こえてきて、エリシャは瞬きをする。声の方に顔を向ければ、そこには茫然と、先程まで自分が見ていたのとそう変わらない所を見つめるジンの姿。程なく誰が何を言ったのかを察して。何が起きていたのか、何が起きているのかを察して。
「私を、見ていますの。……そう」
 ――あなたの見ている私は、どうなっているのかしら。
 ジンの見ぬ間に、瞬く程の僅かな間、その瞳を蠱惑的に歪めるエリシャ。彼女は死霊術を行使し、呼び出した騎士に籠を、蛇竜には自分自身を破壊させた。
 それは同じ場所にまやかしを見ていた男の視界でも同様で……。

「新年早々ジンさんと、こんな辛気臭いところで、こんな辛気臭い思いをすることになるなんて……」
「ン~じゃそンなのたァさっさとおさらばだ」
 言うや否や、ジンの身体の内から光が発せられ、薄闇は二人の周囲からその存在を希薄にしていく。
「あら、ジンさんもたまには役に立つのですわね。少しだけ、見直しましたわ」
「お、嬉しいこと言ってくれるねェ~~? でも少しィ~? ほンとにィ~~??」
「……本当に少しだけ、ですわよ」
 自身の発する光で照らした女将の顔から、男はどのような感情を読み取っただろうか。しかしその感情の如何にかかわらず、男の目は美しいものを見るように細められていただろう。

●第二階層-D
「嫌なもの……見せてくれるね」
 その声に力はなく、アリカは視線の先へ哀しげな笑顔を向けていた。
「死んでいるようなものじゃないか、それじゃあ」
 彼女の瞳に映るのは自分自身。喜怒哀楽の抜け落ちたような、無感情、無感動な自分の姿。
「そっちの世界は、そんなに面白くないかい? それとも、」
 ――世界から爪はじきにされたかい?
 尋ねるようでいて、しかしそれは誰に投げかけるでもなく。
「……、……困ってしまうね?」
「そうだね。……本当に」
 深呼吸の後で口を出た言葉は、明確に傍らの同行者に宛てたもの。目元を伏すように帽子のつばを指先で引き寄せ、未来が答える。
 呼吸を整えるように拍を置いて顔を上げ、毅然と見据えた先に居るのはこちらも自分自身。霊体の戦士を数多従え、今まさに舞踏会を開演させようとする姿。
「ここまで舐められると、困るとしか言いようがない」
「あっはっは!その通りだ! 教えてあげよう未来君!」
 未来はアリカに視線を向け、くすりと笑ってみせる。傍らでは霊体の靄が寄り集り、周囲の空間を歪めていて。
 アリカは未来に応じるように、快活に、声高に叫ぶ。先程までの弱々しさを脱ぎ捨てた分だけ、今は輝かんばかりの笑顔を浮かべていて。
「うん。とっておきの、」
「私たちの存在を!」
 霊体が形成したのは二振りの剣を携えた騎士。操る主の似姿に肉薄すると炎と雷の乱舞を踊り、駆け出したアリカも自分の似姿の懐に潜り込めば、強化された身体能力で暴風のようなラッシュを見舞った。
「……なんなら天命座君の方も僕が片付けたのに」
「何を言っているんだい! 喧嘩を売られたのは私だからね!そこまでして貰うのは強欲というものだよ!」
 役目を終え、掻き消えた騎士に代わり未来がアリカに歩み寄れば、彼女は息一つ乱さぬまま溌剌と答える。
「……? そこまでと言うけれど、僕は何もしていないよ?」
「いいやいいや! 案外そうでもないものさ!」
 はぐらかすように笑うアリカの心中は、温かいものに包まれているようだった。

●第二階層-E
 弱者として、玩具のように嬲られる自分。正義なき世界で無意味に朽ちようとしている自分。
「あぁ、クソッ……!」
 強者として、襲い来る敵を切り倒す自分。正義を知らぬまま無意味な戦いに明け暮れた自分。
「…………」
 ヴィクティムとキャリウォルトは己の過去の姿を見せつけられていた。
 彼は身を震わせる。誰にも顧みられない死へと転げ落ちていく姿に、それに抗えない姿に。
 彼女は微動だにしない。機械的に戦う姿に向けられたカメラアイの赤い光が微かに明滅しているが、それも僅かな間の事。薄闇の中で一層の強い光を放ち、
「このような恐怖など『覚悟』を以て行動すれば何も怖くなどない! 某は某が正義だと思う道を進むだけである!」
「うるせー、わかってんだよ。言われるまでもねぇんだよ」
 言い切る。その目に灯る光は覚悟と、きっと信念の光。ヴィクティムは未だ晴れぬ苛立ちを隠すことなく答える。
「ならば言われる前に言ってやるだけだ。そうだろう?」
 そんな少年に彼女は小首を傾げて尚も言い返す。それはとても人間味のある仕草。決して公平ではないこの世界で、公平に脆い命の仕草。
 一呼吸程の間の後、二人はまやかしの自分へと顔を向ける。
「無意味に死ぬのは、ごめんだ」
「無意味な生など御免こうむる!」
 果ての無い電脳のその先の先まで見据えるように、射貫くべき目標を違わぬように、視線は一点に。
「――電脳無辺、起動」
「某の矢が桜となりて、貴様を穿つ!」
 脳から送られる限界を超えた命令を強化された肉体と反射神経が実行する。
 引き絞った弓は到達させるべき一点へと矢を届けるために蓄えた力を開放する。
 ナイフを握ったヴィクティムが稲妻の如き速度で駆け、キャリウォルトの放った矢は風を切って進む最中で光纏う桜の花弁へとその姿を変えていく。淡い桃色の中を電撃が突き抜ける様は春の嵐のようで。
「バズオフ(消えろ)」
「消し飛べ!」
 嵐の過ぎ去った後、まやかしに突き立てられたナイフの落ちる乾いた音が響く。
「悪いが、俺はもう弱者じゃない」

●第二階層-F
 紫の、淡いランタンの灯り。その元で開かれる二組の赤い瞳があった
 一つは隠れていた束の間に落ち着いたのだろう、真っ直ぐな赤。一つは今にも再び隠れてしまいそうな、揺れる赤。
「ボクたち、一体何を見せられているのかな」
「うぅん……。なんだろう、ネ。嫌な事トカ……、それか……怖い事、トカ」
「……成程。ボクの場合はこうなるわけ」
 コーディリアは薄闇から向けられる無数の視線と対峙していた。それは故郷の街のシスターの、衛兵の、近所の男の子の、その母親の。彼女を――彼らにとっての悪魔を――追放した者たちの視線。
 レイラは薄闇から伸び来る数多の手に怯えていた。それは欲深い者たちの手。彼女を……、
「死者を蘇らせる魔導具、なんてあっちゃいけないモノだよ、ネ」
 彼女という道具を奪い合おうとする、欲望と争いの手。紡がれた言葉は悲しみから来るものか、自己嫌悪から来るものか、はたまた。
「キミたちに用はないよ」
 真っ直ぐな赤に敵意の色を重ねながら一歩踏み出そうとするコーディリア。しかし、すぐ隣から零れ落ちるように聞こえてきたレイラの声に、それを止める。
「ねえ、コーディリアサン」
「うん?」
「手を……引いて、くれないカナ?」
「……、」
「お願い。代わりに、私は道を照らすカラ」
「…………いいよ」
「ありがとう」
「……感謝されたくて、やるんじゃない」
 瞼を下ろした彼女の手をコーディリアがそっと取り、薄闇からの視線をその身に浴びながら、
「喰い殺しなさい」
 冷淡に命令を下す。現れ出でるは彼女の身に宿る悪魔、翼持つ魔犬。空を駆け、その爪で視線の根元を引き裂いて行く。
「もうひとつ、いいカナ」
「なんだい?」
「お話ししながら、歩かなイ?」
 ――耳が塞げないの、思い至らなかったヨ。
 困った様に眉を下げて、レイラが苦笑する。
「……いいよ」
 一瞬きょとんとしてからコーディリアが浮かべた微笑みは、瞼を下ろしたレイラには見えていないけれど、その声音できっと伝わったはず。
「(今この一時は、ここにいるキミのためにも前に進もう)」
 薄闇の照らす紫の灯りと一組の赤い瞳。二つは一緒になって、ゆっくりと歩き出す。

●第二階層-G
「キミは……、ううん、ボクは、誰なんだろうね?」
 灯夜が聞いたのは、薄闇の中を見つめるジョンドゥの声。少年は複雑な面持ちでその横顔を見て、人知れず心中で零す。
「(……俺と同じ物、見てるのかな)」
 彼の目にはジョンドゥが何を見ているかは、正確には分からない。しかしこの少年が逃げ出さずに何かと向き合っている事は分かる。
「(俺も、ちゃんと向き合わないと……だよな)」
 灯夜は正面に向き直る。そこに居るのは何の取り柄も自信もなくて、色んな事から逃げている、自分。
「(お前が相手なら、)」

 投げかけた言葉に返事はない。でも、朧げで、あやふやで、不確かな輪郭のソレは、声無く笑っている気がした。
 ジョンドゥは弱々しい笑みを浮かべ、影のように黒いシルエットを見つめ続ける。いや、ともすればこれは影そのものなのかもしれない。陽の当たり方で形が変わっても自分の影を見失わないのと同じように、このシルエットは自分だという確信がどこかにあった。
「逃げるわけにはいかないんだ」
「……そりゃあそうだ。どんなに走ったって、影からは逃げられない」
 きっと誰かに宛てたものではなかっただろう、灯夜の言葉。だけど自然と、ジョンドゥはその言葉に答えていた。

 二人は顔を見合わせる。目と目が合って、困ったように笑いだす。
「影、言い得て妙かもな」
「キミもボクと似たようなものを見ているのかな?」
「どうだろう。俺のはさ、俺自身なんだ。色んなことから逃げてる俺自身。そのくせ影みたいに、俺にはぴったりついてくる」
「そっかぁ。なら、うん、ボクもおんなじだ。ボクに見えるのもボク自身。誰かの“お気に召すまま”に生きて、誰かの“お気に召すまま”に姿を取り繕ってきた、影みたいに形の無いボク」
 お互いの事を語って、再び笑い合う二人。しかしその視線はそれぞれの影に向かっている。
「「でも」」
 続く言葉も、同様で。
「俺は絶対に逃げない。俺自身の力で乗り越えて、弱い影を従えなきゃいけないから」
「今は違うんだ。電子の海を抜け出して、猟兵になって……ボクは世界を巡って『ボク自身』を見つけたいって、そう思えるようになったから」
 灯夜が拳を構えて走り出す。ジョンドゥは男の子と女の子の『ボク』を喚び出して駆けさせる。拳は恐怖を撃ち払い、『ボク』たちが恐怖を切り裂いていく。
「怖いものと戦うのって、しんどいな」
「……ホントにね!」
 薄闇の中。二人は影の無い笑顔を交わし、確かな足取りで前へと歩き出した。

●第二階層-第三階層
 猟兵たちは恐れを踏み越え、その先に座す最後の階段へと辿り着く。
 薄闇が彼らの表情を朧げにしているが、ここに居るということが何を為してきたかを物語っている。
 後はただ、この奥に居る災魔を倒すだけだ。
 石材の階段を叩く靴音の残響だけを残して、猟兵たちは更に地下へと降りていく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『騎士の怨鎧』

POW   :    戦鎧の妙技
【縦横無尽の剣閃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    闘鎧の秘技
【自身に刻まれた戦闘経験から的確に】対象の攻撃を予想し、回避する。
WIZ   :    魔鎧の禁忌
【魔核の稼働制限を解除。超過駆動状態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠茲乃摘・七曜です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●第三階層
 三つ目の階段を降り終えた猟兵たち。この迷宮の主からすれば来訪者たる彼ら、それを歓待するように壁に掛けられた松明に火が点る。一つ、また一つと連鎖するように灯りは増え、部屋全体を照らしていった。
 目に映るのは広くはあるが奥までを見渡せる室内。あちらへ、こちらへと視線を走らせても扉や階段は見当たらず、ここが最後の階層だということを、ここに倒すべき災魔が居ることを察するのには十分であった。
 確認を終えれば、視線が注がれるのは部屋の最奥。豪奢な椅子に鎮座する全身鎧。
 鎧の頭部、兜の奥。昏い闇の中。全ての松明が火を戴くこの室内で、更にひとつの灯り。
 それはきっと、鎧に憑いた――。
浅葱・シアラ
ひぅ……!黒い騎士……怖い……けれど。
恐れは乗り越えた……だから、負けない!



使うユーベルコードは「胡蝶閃」
お母さんからもらった胡蝶の閃光はいつでもシアの中にいるから
偽物なんかに惑わされなかったから
だから今、皆を守る力として、ここに振るうから!

脱力を誘発する胡蝶の閃光を、技能【高速詠唱】で素早く発動して攻撃されるより早く相手にぶつけるよ
更に素早く詠唱を続けて何度も胡蝶閃を命中させて騎士の怨念の力を削いでいくから


恐怖を乗り越えたら、また成長できるかな……?
ここで皆を守るための力を……!


宮前・紅
ふう、やっと最深部まで来たんだね。
災魔かぁ…ずいぶん厄介そうなのが来たね。
皆、恐怖を乗り越えて此処に居る。きっと何が来ても大丈夫だよね♪

【SPD】で判定
素早く攻撃しつつ、いつもはからくり人形に使ってるんだけど、【糸繰り人形用の糸】を使って、絡めとって身動きの取れないようにしてしまおうか!

俺たちを貶めようとした罰を今ここで受けてもらおっか。
【恐怖を与える】ことも得意だからね!そんな恐怖で怯みそうな相手じゃないけど、お前には死んでもらおうか♪

今日は、舞台上に立つ気分じゃないからね、舞台袖の掃除でもしようかな!
え?此処は舞台上じゃないのって?こんな所、舞台上な訳無いじゃないか、あはは!

笑わせないでよ


キャリウォルト・グローバー
【アドリブ歓迎】

ふむ、お主がこの巫山戯た迷宮の親玉というわけか。
悪趣味な真似をしおって…だが、おかげで某の正義を再認識できた。
そこだけは礼を言っておこう。
見たらお主も剣を使うのか。
よかろう、お主の剣技と某の抜刀術どちらが上か試してみるとしよう。

【POW】
あの剣筋、どうやら無差別に放ってるようだな。
ならば「殺気」「恐怖を与える」で無理にでも相手に某を意識させ
攻撃を誘導、更にそれを「残像」で回避。
多少の攻撃ならば某の体に影響はない。
距離を極限まで詰め「捨て身の一撃」「怪力」「鎧砕き」
それらを加えた『瞬斬華(シュンザンカ)』にて胴体を一閃させてもらう。
ここまでやれば仮に倒れずとも動きは止まるであろう


天命座・アリカ
ふふーん♪ふふふふーん♪
おっと、ここで終了かい?
面白いアトラクションと、面白くない演劇だった!
君はエンタメというものが分かってないね!
最後は笑ってハッピーエンド!古来より続くお約束!

さてさて、君は運がいい!
さすがの私も怒ってるからね!天命座が実力、その一端を見せてあげるよ!
美しき美女の晴れ姿!冥土の土産に持っていけ!

この世に「存在しないもの」を「再現する」!
矛盾?違うね天才だ!さあ、奇跡をお見せしよう!

「君より強い君」だ!
さあ!鏡合わせに踊っておくれ!


【真の姿(一部)】
背に白い天使の片翼を生やす
UCの再現性が上昇
時間制限有(負担が強いと自我が「再現を行うシステム」として最適化されようとする)


作図・未来
先ほどは随分と舐めた真似をしてくれたね。

……ああ、そうだ。一人ではあれに立ち向かえたどうかわからない。
あのやり方は実に効いたよ。腹立たしいほどにね。

でも、ひとつ。
君は決定的なミスを犯した。

僕は一人じゃないということだ。
行くよ、天命座君、僕たちの力を見せてやろう!

僕は砕牙の舞踏で戦う。
あいつはきっと強い。チームワークが重要だろう。
大狼をアタッカーとして、群れの方はかく乱として使って戦おう。

大狼は天命座くんの傍で戦う。
先陣を切って戦い、隙を作るのにきっと役立つだろう。

群れの方は常に移動と攻撃を繰り返し、敵の意識をそちらに向けたいね。
敵の視界の外と内を入れ替わるように戦わせる。

さあ、幕を下ろそう。



●第三階層-A
 鈍い金属音が部屋に響く。
 乱れ舞う刀と剣、術と技。数度の打ち合いの後、互いに跳躍し距離を取る二つの影。
「……あの剣の冴え、只者ではないな」
 赤いカメラアイで油断なく鎧姿の災魔を観察するキャリウォルト、刀を鞘へと納め今一度構えを取る。
 視線の先ではキャリウォルトから引き継ぐように三匹の白狼が災魔と交戦していた。白狼たちは様々な角度から鎧に襲い掛かる。それは息もつかせず観客を釘付けにするような、踊るような戦い。
「何とか隙を作って大きな一撃を入れたい所だけれど……」
 見守る未来が眉根を寄せる。翻弄するように戦う白狼たちとは別の角度から、彼らを従える大狼がその爪を振るうが、剣によってしっかりと受け止められてしまう。
「まるで全身に目が付いているみたい……!」
 シアラが紫の蝶翼をはためかせて背後に回り胡蝶を煌めかせるものの、跳躍によりそれさえも躱されてしまって。
「速くはないはずなのに、全然当たらない……!」
 続けざまに光の胡蝶を放つが、災魔は最小限の対応と動きでいなしていく。
「……でも、シアだって恐いのを乗り越えたから、きっと昨日よりも、さっきよりも、成長してるんだから……! 諦めないんだから!」
「経験の賜物か……? 厄介だな。……くるぞ!」
 重い金属音と共に災魔が駆けだす、振るわれるは縦横無尽の閃き。それを察知したキャリウォルトはシアラを背に庇うように踏み込み、渾身の抜刀と共に二人の周囲へ襲い来る剣を弾き飛ばした。
 しかし渦巻く暴風のような剣が向かうのは彼らの所にだけではない。呼び出した狼たちを操るのに注力している未来の元にもそれは襲い来る。
「よっとぉ!」
 彼の前に立ち塞がったのはからくり人形。その脇腹に深々と突き立った剣を、しかし痛みの無いその身体だからこそ抱きかかえるようにして抑え込んだ。
「大丈夫、未来くん?」
 人形を操る紅が未来の傍らに立って、にっこりと純真な笑みを向ける。
「助かったよ、ありがとう。……行け!」
「そーれ、こっちももういっちょ!」
 頷きと共に応える未来。彼の操る大狼がその身体をぶつけて災魔を突き飛ばし、生まれた隙に紅の人形が飛び蹴りを打ち込む。
「すごい! 当たった!」
 その光景に小さな歓声を上げるのはシアラ。紅は少女に親指を立てて笑いかける。
「なーるほどね、こういう感じが良いわけか♪ 未来くん、ちょーっと相談なんだけど……」
「ん、僕が手伝えることなら……」
 人形を操る糸越しのもの以上の手応えを紅は感じていた。それを伝えるために紅は未来に耳打ちをする。
 
 体当たりと飛び蹴りとで跳ね飛ばされた鎧姿の災魔、しかし見る限りその動きは精彩を保ったままで。
 数度の攻防から猟兵たちの手の内を経験した災魔は周囲を見渡す。その兜が正面に捉えたのは、
「……あ。どうもー!」
 片手に書物を開いてこの戦闘を観察し続けていたアリカだ。視線が合ったのを感じ、彼女は鎧に向けて手を振る。
 駆け出す災魔。あれを放置するのは不味いと経験からくる警鐘が鳴ったのだろうか、先んじて潰すことで行使される何かを躱そうと剣を振り抜く。
「残!念! ちょーっと遅かったね!特別ゲスト……、」
 アリカの手の中で書物が閉じられる。彼女の首へ向かう剣がその動きを止めた。受け止めたのは一振りの剣、それを携え全身鎧を纏う死霊。
「『君より強い君』の到着だ!」
 喚び出したのは災魔の鏡写し、その隣でアリカは不敵に笑う。彼女の背には、そこから生える一枚の白翼が広げられていた。
「今だっ!」
「さぁ頼んだよ、古の勇者たち」
 災魔の頭上を翻るように飛ぶ影。紅のからくり人形が宙を舞い、着地と共にその四肢をばらばらと分離させ、床に落ちて乾いた音を奏でる。それを拾い上げるのは白い毛並みが生え揃う咢、鋭い牙。大小四匹の狼がそれぞれに咥え、災魔を挟んで紅とは反対方向へと喰らい引く。
「いくら躱すのが巧くったって、躱せない状況なら問題ないよね☆」
 紅の指と狼の咢とを繋ぐのは、人形を操るためのしなやかで強靭な糸。宙を踊るように飛んだ人形はその身体に繋がった糸を不規則に揺らし、撓ませ、災魔の周囲に巡らされていたのだ。それぞれの方向から引き絞られた糸はピンと張りつめ、全身鎧を縛り上げる。
「君は決定的なミスを犯した。僕らは一人じゃないということだ」
「俺を、俺たちを貶めようとした罰を今ここで受けてもらおっか。……掃除の時間だよ」
「皆の力を見せてやろう!」
 冷やかに言い放つ紅はキャリウォルトとシアラに、ここが好機だと叫ぶ未来はアリカに目配せする。
 糸を振りほどかんと暴れる鎧姿の災魔に降り注ぐのは煌めく胡蝶。その輝きが見舞われる度災魔の抵抗が少しずつ弱まっていく。
「あなたも怖い、けれど……その怖さも乗り越える……!」
 身動きの取れない災魔の周囲を妖精が飛ぶ。何物にも、恐怖にも縛られず自由に飛び回り、様々な角度から間断ない攻撃を繰り返すシアラ。左目には母親譲りの緑、父親譲りの赤は左目に灯り。
「お母さんもお父さんも、シアの中に居るから……、一緒だから、負けない!」
「よく言った」
 乱れ飛ぶ胡蝶の中、躍り出る機甲の身体。災魔の立つ足元を砕かん程の力で床を踏みしめ、その懐に飛び込むキャリウォルト。
「某の正義もまた、某の中に宿っている。其れ故に……」
 長身を屈めて更に蓄える力、それを次なる一歩と共に開放する。
「見失わない!」
 赤い閃光。カメラアイの光が尾を引く程の速度で放たれたのはシンプルな、抜刀による一斬。刃閃くは瞬く間。しかし鎧の胸に二度と消えない傷跡を残す。
 体勢を崩した災魔を襲う刃は更にもう一つ。
「そうとも! 私は超絶完璧生命体!私が見失いたくなったって、世界が私を見失いやしない! さあ!この晴れ姿を目に焼き付けて冥途の土産にするといい!」
 広げた片翼をはためかせ、アリカが言い放つ。再現された鎧が災魔の胸に残る刀傷と交差するように剣を振るい、斬り捨てるように弾き飛ばした。

 先刻まで災魔の座していた椅子が音を立てて、粉々に砕ける。弾丸のように飛ばされた鎧を受け止めるには脆すぎて、碌に減速することも無いまま災魔は壁へと打ち付けられる。
 胸には深々と刻まれた十字の傷。しかしそこから体液が滴る事はなく、黒い靄のようなものがとめどなく溢れだしている。
「……ソレは見てなかったな」
「なに、あれ……。何だか、凄く禍々しいものが……!」
 アリカの背筋をぞくりと、冷ややかなものが通り抜ける。シアラはその靄から発せられる力に当てられたように表情を曇らせ、怯えてしまう。それは多かれ少なかれ、この場に居る全員がそうで。
「みんな、下がって。早く」
 一滴の汗が伝うアリカの横顔。普段そこを彩る鮮やかな表情が失せ、機械的なまでに沈着したものに見えた。
 言うや否や死霊を走らせる。白狼たちがそれに追従し、共に壁際の鎧に飛びかかるが――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●第三階層-/
 縦横無尽に閃く刃。壁際から部屋の中程までを無差別な斬撃が飛んでいく。
 剣風に揺れる松明の火。霧散する死霊。傷を負い、疲労の色濃い猟兵たち。
 巻き起こった剣の暴風の中から、黒い靄を纏った鎧が、金属質な足音を響かせる。
 
ミーユイ・ロッソカステル
趣味の悪い魑魅魍魎どもを相手に暴れたら、少しは落ち着いたけれど。
だからとって、親玉を見逃してやる義理などないわね
……私の逆鱗を振んだ報いは受けさせてやるわ

戦闘が苛烈になるまで、相手の動きを観察
……新たに編纂した歌には、それが必要だから

攻撃力と耐久力が上がった……理性を失っているようだけど、あの状態は危険ね
相手のユーベルコードに対抗すべく、「聖なる勇者の行軍 第3番」を【歌唱】するわ。……この歌は、その状況に合わせて続きを紡ぐ必要があるけれど

魔鎧の騎士 怨嗟の剣士
その瞳は最早用を為さん
ただ狂気の果てに生ける者を狩る屍
歪な魂の煌きよ その熱よ 怨恨よ 鎮まらん事を


ヴィクティム・ウィンターミュート
普段使わないUCを使ってやる。何とか3つを当ててUC封印を狙いたいが…回避能力が強いのがネックか。
攻撃の最中、攻撃の後、とにかく色々な隙を見つけては当てに行こう。
…もしそれでダメなら、そうだな。肉を斬らせて骨を断つ。
攻撃を喰らって、剣や腕をつかんで離れられないようにしてから至近距離でぶっ放そう。【早業】で素早く攻撃、【騙し討ち】で意図を悟らせない
なーに、急所は【見切り】で外すさ。
腕の一本や二本くらいくれてやる。どうせ、もう生身じゃねーからな

何を強者ぶってんだ?自分を強者と思ってる馬鹿に教えてやるよ。
どんな鎧を着て、どんな剣を使って、どんな凄い力を持っていようがな
___命の脆さは、公平なんだぜ。


ジン・エラー
【花の涯】
あァクソ
気分が悪ィ
あンなもん見せやがって
八つ当たりだ
文句は言うなよ騎士モドキ

お前も【オレの救い】で救ってやる
ガチンコ勝負だ
仮にも騎士なら嫌いじゃねェーだろ?
来いよ、ブッ潰してやる

元はと言えばオレが呼ンだとはいえ
あンなの見せられてエリシャを前に出せるかってンだよな
最悪があっても、まァ、オレの【光】で絶対助けるけどな

トドメはエリシャ、任せたぜ
待ちに望んだその首、持ってけよ


千桜・エリシャ
【花の涯】
……嫌なことを思い出してしまいましたわ
まあ所詮過去のことですもの
今はこうして自由を謳歌できる身の上
――だからもう何をしても構いませんわね?

ごぎげんよう、亡者の騎士様
あら、随分と硬そうな鎧ですこと
首の狩り甲斐がありそうですわ

あら、八つ当たりだなんて……ふふ、でも頼もしい
ではジンさんに前は任せて、私は後ろで機会を伺いましょう
あなたが何を見たかは知りませんが、私はそう簡単に冥土へ旅立ったりはしませんわ
だから、安心なさって、ね

嗚呼、待ちに待った御首ですわ
では遠慮なくいただきますわね


玄崎・供露
アイツがここのボス、な。……なるほど相応しいナリしてんな

あんたが仕組んだ罠かどうかなんて知らんがあんな罠ァ踏み越えさせやがって、こっちは今クソムカついてるんで容赦はしねェからな。

ユーベルコード「空間の指」でヨロイを引き裂いてやる。「視力」技能をフルで活用して少し離れて広い視界の中で奴を目で追い続ける。瞬間移動でもされなきゃ目線は外れないし外さねぇ。

こっちを潰そうと接近してくれるならそれはそれで良いがな。

射程範囲内30センチまで肉薄されたなら「空間の腕」で押し潰せる。こっちに制限時間はないんでね


※アドリブ等大歓迎です


コーディリア・アレキサンダ
「キミがどういった存在で、何を目的にしているのかは見当がつかないけれど」
「ここで倒しておかないとどうやら人が死んでしまうらしい」

至ってシンプルな理由
だけど、ボクの体を動かすには十二分過ぎる理由だ


こういった敵には大概の場合、核となるものが存在するはずだ
怨念なんて抽象的なものを形にするわけだしね

ボクはそこに《壊し、破るもの》を全弾向かわせよう
守りは強固だろうけれど、数で削り切れるはずだ。〈全力〉で行こう

「飽和攻撃というよ、怨念さん。もう覚える必要はないだろうけれど」



ああ、それと。ありがとう
おかげで、自分らしさをはっきり思い出せた

ボクはボクのために、誰かを助ける
これからも、きっと。この体が朽ちるまで


久賀・灯夜
やっとボスのお出ましって訳か
今まで散々ビビらせてくれやがって! い、いや別に全然怖くなかったし! 余裕だったし!

ふぅ、冗談(冗談じゃないけど)はさておき。
人の一番嫌なものを見せてくるなんていい趣味してるじゃないか
戦法としては効果的なのかもしれないけど、気に入らないな……!
その大層な剣と俺達、どっちが強いか――最後の勝負だ!

【SPD】
ガジェットショータイムで今度は刀身が奇妙にねじ曲がった長剣を召喚する
先手必勝! 竦む足を無理やり前に動かして、一目散に斬りかかる

相手が剣で受けたらこちらの曲がった刀身で絡めとって動きを封じる
回避されたら仲間が追撃できるようにすぐに飛び退る

仲間を活かすために先陣を切る



●第三階層-B
 部屋に金属音が響く。傷ついた猟兵に止めを刺す為か、はたまた次なる獲物を求めてか、黒い靄を纏った災魔が向かってくる。
「その大層な剣と俺たち、どっちが強いか――」
 沈黙の室内。重苦しい空気が支配するその中を、その状況を、少年の声が響き、打ち破っていく。
「最後の勝負だ!」
 言い放って災魔に挑みかかる灯夜、その隣をヴィクティムが共に駆ける。
「言うじゃねぇか灯夜! もう震えてねぇみてぇだな!」
「い、いや別に全然怖くなかったし! 余裕だったし!」
 言い合いながら距離を詰める二人に災悪が剣を振るわれる。受け止めるのは灯夜の手にした剣。刀身の捩じ曲がった歪なそれは災魔の剣を絡め取るように束縛する。
 生まれた一瞬を縫って伸びるのはヴィクティムの腕。災魔の頭部、兜を掴む。
「これからお前の脳を、ハックする」
 触れた掌を伝い流し込まれるのは思考能力を低下させるプログラム。
「では機能停止は私が……」
 災魔の背後、ひたり、ゆらり、音も無く、大和撫子が忍び寄っていた。大太刀が首元へと迫るが、
「流石に随分と硬いこと。これは首の狩り甲斐がありそうですわ」
 災魔は左腕を掲げるように小手でエリシャの斬撃を受け止めていて、そのまま剣と膂力を振るい三人を跳ね退けてしまう。
 着地する足音は二つ。飛ばされた距離を維持するように、灯夜とヴィクティムが災魔への警戒をさらに強める。
「どういう力してるんだこいつ……!」
「そう簡単にはいかねぇか……。だが何度だって侵入してやるよ」
 もう一つの行方は、
「っとォ~~……。女将サンに何してくれてンだ、騎士モドキが」
 ジンの腕の中。
「タダでさえ気分悪ィってのに、それに上乗せしてくるとはよォ。八つ当たりじゃ済まねェなァ、あァ?」
「あら、八つ当たりだなんて……ふふ。では前はジンさんに任せて、私は機会を窺いましょうか」
「あァ、そうしてくれ。……元はと言えばオレが呼ンだとはいえ……クソッ!」
 抱き止めたエリシャを降ろし一歩踏み出すジン、エリシャは振り返ることなくその場を離れる。
「(あなたが何を見たかは知りませんが、私はそう簡単に冥土へ旅立ったりはしませんわ
だから、安心なさって、ね)」
 その口元には、薄桃色の微笑が咲いていた。

 一方供露とコーディリアは二人で協力し、前線の様子の確認も怠らないまま、つい今しがたまで戦っていた猟兵たちを後方に避難させていた。
「……これで全員か。ったく、他の男共も手伝えっての」
「まぁまぁ。あっちが瓦解したらボクらもこうやって動けないわけだから」
 黒いマスクを呼気で揺らす供露にコーディリアは冷静に答える
「だがこっからは違う。こっちは今クソムカついてるからな、容赦なくいくぞ」
「ここで倒しておかないと人が死んでしまうしね、容赦をする理由なんてないよ」
「そっちはどうすんだ!」
 やり取りする二人とはまた少し離れた場所、そこではミーユイが前線に身を置くでもなく避難を手伝うでもなく、ただただじっと災魔の様子を凝視していた。そんな彼女に向かって供露が叫ぶ。
「もう少し観察させてもらうわ。今いいところなの」
「いい所、ね。考えがあるのならいいけれど。それじゃあお先に……権能選択――」
「ジン!少し下がってくれ! 少しだ、少しでいい……そう。カウント開始」
「あァ? ……チッ、ガチンコはここまでだ」
 言葉を交わす最中も視線は災魔に張り付けたまま、瞬きさえ忘れたようにしているミーユイは声だけで二人に答える。それを聞いたコーディリアと供露もまた視線を災魔に注ぐが、それは観察ではなく攻撃の為。
 供露の声に数歩距離を取ったジンが目の当たりにしたのは、
「撃ち落としなさい」
 雨霰と降り注ぐ呪詛の弾丸と、
「……いまだ、なぞれ」
 局所的な空間断裂による衝撃。
「……胸の傷を狙ってもこれ位か。あの靄を何とかしないと……うわ」
「バカみてェに堅ェな。……や、バカそのものか?」
 それらは鎧に掻いたような傷や歪みを作るものの鎧を砕くには至らず、それどころか災魔は弾丸の飛び来る方、コーディリアと供露に向かって走り出す。
 重戦車さながらに着実に前進する災魔。コーディリアがこれ以上距離を詰められないようにと後退する中、供露はその場を動かず未だ敵を、跳躍し大上段から斬りかかろうとする災魔を睥睨するように見つめたまま。
「上だ、間抜けめ」
 振り翳される災魔の剣。しかしその切っ先は供露に届く事なく、それを握る小手諸共床に沈み込む。降り注いだのは圧縮された空間からの一撃。床を砕き、穿ち、尚も災魔の剣を拘束する。
「二つ目ぇ!!」
 災魔の兜に掌が触れる。災魔が体勢を崩したのを好機と飛び込み、再びハッキングプログラムを送り込むヴィクティム。
「このまま最後まで――」
 だがその身体は、言葉を言い終える間もなく吹き飛ばされてしまう。忌々しげに舌を打つ供露の瞳には、動きを阻害する部分を放棄するように剣と右碗部の鎧を捨てて立ちあがった災魔の姿が、そして振りかぶられる左腕が映っていた。

「間に合えっ……!」
「させねェよォ!」
 割り入るように飛び込んだ灯夜が、手にする剣で災魔の拳を受け止める。ジンの腕は災魔の背後からそれを抱え込むように伸び、殴打の勢いをすんでの所で削ぐ。ジンから溢れる光は内から自分自身を照らすようで、傲慢に、驕傲に、不遜に笑う相貌を一層際立たせていた。
「魔鎧の騎士 怨嗟の剣士 その瞳は最早用を為さん」
 金属同士が擦れ合う鈍い音。互いに押すも引くも出来ない膠着状態の中に、詩歌の一節。
「ただ狂気の果てに生ける者を狩る屍 歪な魂の煌きよ その熱よ 怨恨よ」
 紡ぐのは、災魔の異常なまでに向上した戦闘力の、それを引き起こしていただろう黒い靄の観察を終えたミーユイだ。
「――静まらん事を」
 彼女の歌はその音色と詩によって災魔を覆う靄を中和するように霧散させていく。
「ごめんなさい、待たせたわね。効果の程は……十分かしら」
 歌い終えた彼女は桃から紅へと色彩の移り変わる髪を揺らし、ぎこちない動きで抵抗しようとしている災魔を見つめ、
「さぁ、報いを受ける時間よ」
 氷のような微笑と共に閉幕を告知する。
 災魔もがむしゃらに動いて灯夜とジンによる拘束を振りほどこうとするが、その動きはこれまでと比べ目に見えて緩慢なもの。
「ざま……見ろ、スクィッシー……」
 掠れた声は果たして災魔に届いただろうか。未だ倒れ伏すヴィクティムがしたりと笑い、その中指を立てていた。彼が二つ目に送り込んだ、対象の速度を鈍化させるプログラムが靄の消失と共にその効果を顕著にしていたのだ。
 緩慢な動きをしていた災魔の身体は、間もなく出鱈目に跳ね回る事になる。
 右腕部が抜け落ち、ぽっかりと口を開けた肩部に魔力弾の集中砲火が見舞われ、その内部から鎧を拉げさせていく。
「陣地攻撃とでも言えるかな、これは。キミにもう覚える必要はないだろうけれど」
 それを放つコーディリアは災魔の堅牢な身体を城塞に見立て、確固となった機動力の差を以って防御の薄い部分へと回り込んでいた。
「今まで散々ビビらせてくれやがって……! だけどなぁ!お前が倒れないなら俺は絶対に逃げないからな!」
 灯夜が身体を震わせ、握った剣に力を籠める。その震えは恐れのせいではなく、全身全霊で力籠めるからこそ。
「じっとしてろ。これからお前に相応しいナリにして貰うんだからよ」
「エリシャ! 狩れェ!」
 なお跳ねる鎧を供露の衝撃波と、己が光に照らされたジンの腕力が強引に捻じ伏せる。
「嗚呼、待ちに待った御首ですわ。では遠慮なく」
 閃く大太刀。光を飲むほどと思わせる黒い刃が光沢を放ち、待ち望んだ災魔の首に斬撃を見舞う。
「――いただきますわね」
 体液の流れ得ない鎧の首に鮮血が零れる。
 否、それは真紅の花弁。咲いては散り、花弁を舞わせ、最後の花が散れば、災魔の命終えた証。
 恐怖蔓延る迷宮深く、兜の落ちる金属音が静かに木霊した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月12日


挿絵イラスト