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親父！空からお餅が！？

作者：久澄零太

　ビルが立ち並ぶキマイラフューチャーのとある街中の事だった。
「今日も何か面白い事ないかなー……」
　呑気なキマイラが空を見上げた時だ、空から白いものが舞い降りてくる……。
「お、雪が降ってき……なんか大きいな」
　その白い結晶はやたら大きく、粉雪、ボタ雪と多数の呼び名はあれど、どう見ても雪玉サイズ。しかも妙に落ちてくるのが速い。
「珍しいこともあっつい！？」
　手に取った雪はアッツアツ。これは雪なんかじゃない、つきたての……。
「お餅だコレー！？」

「というわけで、皆様にはこの降り積もるお餅の謎を調べて頂きたいのです」
　人首・椿（傷と記憶は刻むモノ・f06124）はコロリと電子巻物を広げて、キマイラフューチャーのとある街を示す。
「事件が起こるのはこの区域です。原因究明が主目的になりますが、同時に皆さんにはお餅を楽しんで頂きたいのです」
　お仕事でお餅が食べられるのかと思いきや、事態はちょっと深刻。
「雨や雪と違い、降り積もるお餅は放っておけばどんどん溜まるばかりか、事件を解決しても残り続けてしまいます。かといって、せっかくのお餅を捨ててしまうというのも、それはそれで見ている方々へのイメージも悪くなってしまいまして……」
　火山灰などと同じ、厄介な自然災害的なサムシング。
「お餅の処理は、必ず『最後まで笑顔で』食べてください。もし倒れようものなら……介錯しちゃいますよ？」
　ニコリ、意味深な笑顔から逃げ出すように猟兵たちは武装を揃えるのだった。

第1章 冒険 『フォーリング・モチ』

POW   :    落下してきた餅の処理を行う。煮て良し!焼いて良し！ SPD   :    問題の空域まで移動できる手段を見つけ出す。 WIZ   :    落下してきた餅を解析して、原因・犯人を特定する。 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「おもちって、降るものでしたのね……！　百聞は一見にしかずとはよく言ったものです。これはムッシュに教えて差し上げなくては……」
　リコリス・シュピーゲル（月華の誓い・f01271）、探し人に想いを馳せてるところ悪いけど、降らないから。これはおかしい事だから！　だからお前ら猟兵が呼ばれたんだから！！
「……あ、これ事件でしたわ。犯人、絶対許しませんの」
　この子色んな意味で大丈夫かな……そんな心配をよそに、リコリスは腕まくりのような動作をする。どこで覚えたんだ、君は富裕層に取り入る人形のはずだろう？
「とはいえ、おもちそのものに罪はありません。まずはもちかき、いえ、おもちの回収に努めましょう」
　訂正したけど持ってる物はスコップ。どう見ても雪かきスタイル。掬ったお餅を携えて。
「これをお料理できる方の下へ……」
「ガジェットショータイム☆」
　蒼汁之人・ごにゃーぽさん（戦慄の蒼汁（アジュール）・f10447）さんにより、十六本の腕と八つの顔、そして三十二の皿（半分は醤油入り）と十六膳の箸を揃え、その目前には無数の七輪が束ねられた巨大な焼き網を置いたカオスの権化がログインしました。お餅を捧げますか？
「チェンジですの」
　リコリスはソッポを向いた！
「……うん、なんかやたらと腕と顔が増えててお皿とお醤油とお箸がスタンバイされててお供え台が多数の七輪になっているね……」
　ごにゃーぽさんは突然ハッとする。
「ほむ、お餅と蒼汁を満足するまでお供えして祈りを捧げればこの事態を収拾つける為の神託が降りてくる、と？　ボクのサ　ドエフェクトがそう言っているぜ。OK、神託が降りてくるまでお供え台でお餅を焼いて焼いて焼きまくってお供えしまくろうじゃないか」
　などと一部検閲対象になることを言いながら餅を焼くための串を構えるごにゃーぽさんだが、彼女はフェアｒ。
「僕はヒーローマスクだ！」
　ややこしいんだよテメェ！！　名前も面倒だからごにゃーぽにするからな！！　つうかそのサイズだと串が槍になってないか？
「仕方ないだろう、ボクのサイズじゃこれで頑張るしかないんだ！！」
　いや、そうじゃなくてだな……。
「行くぞ、待っていろごずなり様、むしろお腹いっぱい過ぎて知恵と一緒に何か違う物を授けてしまうくらい焼いてやるからなー！！」
　あ、バカ。半ギレでそんな勢いで突っ込んだら……。
「ぐぁー！？　餅にくっついた！？」
　いわんこっちゃねぇ！！
「お料理できる方は……」
　きょろきょろするリコリスが次に目をつけたのは、リィン・エンペリウス（もふもふ大好きグルメ妖狐・f01308）。
「まーだっかなー、まーだっかなー」
　無邪気な様子のリィンは七輪に餅を乗せ、じーっと見つめている。質のいい炭を使っているのか、煙の少ない七輪の上でぷくーっと膨れていく餅に合わせ、彼女の目が開かれていき、ポヒュッと崩れると砂糖醤油の皿に取り、程よくつけてから海苔で包む。
「いただきまーす！」
　はむ、パリッ、うにょーーーん。海苔の軽やかな音から伸びる純白の餅。米本来の甘味に加えて砂糖醤油の濃い甘塩っぱさがキュッと味を締める。そこに海苔から香る磯の香が風味をそえて、伸びた餅が垂れる前にクルクルと、お餅の本体の方で巻き取ってから再び少しだけ砂糖醤油をつける。
　すると今度は海苔に包まれていない分、ダイレクトに甘味と塩味が舌に刺激を運び、その上を餅の滑らかな舌触りが均していく。
「甘じょっぱくて、びよ～んと伸びるおもち……いくらでも食べられるよ！」
　片手で頬を押さえて、ご満悦のリィンに迫る影がある。
「砂糖なしの醤油だって美味しいんですよ？」
　草野・千秋（断罪戦士ダムナーティオー・f01504）は磯辺焼き派。まさかの醤油に砂糖入れる奴絶許明お……げふんげふん、かと思ったら、そういうわけではないらしく。
「デザートにはきなこ餅にあんころ餅でしょうか？　食べ放題！　餅パラダイス！」
「デザートお餅！」
　千秋に釣られて目を輝かせるリィンが早速餅を追加で焼き、膨らんだら二つに分けて、その間に餡子を挟んでもっきゅもっきゅ。小豆による柔らかくも濃厚な甘味がお餅本来の甘味を更に引き立たせる一品に。数々のお餅を前にして、千秋は今なお餅が降りしきる曇天を見上げる。
「空からお餅が降ってくるだなんて、そんな珍妙な夢誰が想像したでしょうか……」
　べちょ、お餅が千秋の顔面を直撃。
「熱い！？　あ、現実ですかこれ！？　現実と立ち向かわなきゃ、現実と」
　なんで虚ろ目になるのかな？　それはそれとして、リコリスは安堵した。「今回の依頼にはちゃんと常識人もいるんだな」と。
「あの方々にお願いいたしましょう」
　そして、スコップ一杯に掬ったままだった餅を手に近づいていく……。
「餅が空から降ってくるとは、勿体無いですね。とはいえ、この量は一度に食すには多すぎる」
　月山・カムイ（絶影・f01363）は冷静に状況を分析し、頼りになる助っ人……即ち、この状況を眺めている一般キマイラに向けて声を投げかけた。
「お客様の中に巨大な冷凍庫をお持ちの方はいらっしゃいませんかー！？」
　クールキャラどこ行った！？　お前は常識人枠じゃなかったのか！？
「熱々の内に小分けにして冷凍しておけば、餅は意外と日持ちするものなのです。まずはこちらに取り出したるは異世界の冷凍保存容器」
　などと言っているが、摩訶不思議ななんたらではなく、フリーザーパック。小分けにして密封して見せて。
「冷凍庫に放り込んでおけばレンジでチンすれば食べられます、いいですね？」
「あんなふうに？」
　キマイラに示されてカムイが見たモノは……。
「お餅ごとき、この正義の騎士アルテミスが……あれ、お餅と騎士は関係ないような！？」
　アルテミス・カリスト（正義の騎士・f02293）は既に全身餅塗れになって、全身を白い粘性の何か（お餅です）に包み込まれ、生暖かい熱に取り込まれていた（冷め始めたお餅です）。
「とにかく、お餅を片っ端から食べていかなければ！」
　馬ｋ……純粋無垢なアルテミスは体を包む白いネバネバ（だから餅だって）を排除することよりも、口元の白濁（餅だって言ってるだろ！？）を飲み込むことに苦心、そんなことしてる間に彼女を包み込んでいた餅がすっかり冷えて囚われの身に。
「く、このお餅……」
　ビクともしない餅を前に、アルテミスは腹を括る。
「仕方ありません。ここは新たに会得した必殺技を御披露目しましょう！」
　カッ！　目も眩む程の眩い閃光に包まれて、アルテミスは自由を取り戻す。かと思えば、冷え固まった餅すらもその光を当て、柔らかさと温かさを取り戻させて食べていくではないか！　あの光、熱エネルギー的なサムシングだったのか……。
「ナァニアレェ？」
　訳が分からない一部始終を見てしまったカムイは遠い目になり、キマイラがキョトン。
「レンジでできた鎧みたいな物を着ていれば、常に食べられるって事なんじゃ……」
「あんな人間電子レンジやってる奴の方が珍しいですよ！？」
　キマイラフューチャーに間違った文化が広まる事を、人知れず阻止するカムイなのだった。
「で、この餅っていつから降ってるわけ？」
　佐久間・嶺滋（想葬の黒影・f00774）は鍋で餅を煮込みつつ、行き交うキマイラに聞いてみる。足を止めたキマイラ曰く。
「朝動画を取りに出かけた時は降ってなかったな……帰って来た時から降ってるから昼前くらい？」
「ほう？」
　速攻でキーパーソンを引き当てた嶺滋。割と重要な事をクエスチョン。
「この餅って、ここから離れても降ってるのか？」
「いや、この辺りだけだよ」
　キマイラは、通りの先を示して。
「ここをずっといくと、動画撮影……あ、俺ダンス系なんだけど、そういう連中が集まって練習できる広場があるんだ。そっちの方は降ってなかったから、本当この辺だけだね」
「なるほど……あ、これ情報提供の礼な」
「おぉ、ありが……おぉ！？」
　お雑煮を口にしたキマイラが目を見開いた。
「餅が、溶ける……！？」
　しっかり煮込んで出汁の味を染みこませた餅はもはや本来の餅とは別物。餅そのものの味わいが淡い甘味から柔らかな旨味へと変質し、煮込まれたことでより柔らかく仕上がって、噛み切るのに苦心した程の粘りがなく、食べやすい仕上がり。
「これは……中々……」
　満足そうに帰っていくキマイラを見送りつつ、横で話を聞いていた霧島・クロト（機巧魔術の凍滅機人・f02330）は今なお餅が降り続けるも、何か冷めて硬くなってきてる空を見上げる。
「つーことは、十中八九この空の方に原因がありそうなんだがなァ……」
　本日は曇天。空を見た所で怪しいものは見当たらない。ついでにいうと、降ってくる餅に邪魔されて撃墜される可能性も否めないのだ、が。
「空が飛べればいいんですね！？」
「うわ眩しッ！？」
　まだキラキラっていうか、サンサンとしてる小太陽染みたアルテミスがズザーッとスライドイン。
「それなら私がお餅を弾いてご覧にいれましょう！　誰かを守るのは騎士の本懐です！！」
「お、おう……」
　クロトは彼女を直視できなかった。眩しいのもあるが、気づいてはいけない事に気づいてしまったから。主にさっき鎧着てたはずなのに、ボディラインがモロに見えてる辺り。
「では、参ります！」
　クラウチングスタートからアルテミス選手、スタート！　路地に向かって真っすぐに走り、壁に激突……かと思ったら壁を走って登っている！？　降ってくる餅を斬り捨てながら、落ちそうになったら反対のビルの壁に飛び移り、三角飛びの要領でピョンピョン登っていきます！
　その彼女の後についてクロトも登っていくが、今までとは比べものにならないサイズの餅が！
「えぇ！？」
「……先に謝る、悪い」
「むぎゅ！？」
　躱し切れない、と判断したクロトはアルテミスを蹴って斜めに上へ。
「私を踏み台にしました！？」
　落下したアルテミスは輝きを失い、色白の肌を……って、全裸！？
「み、見ないでください！？」
　ＵＣの反動で餅ごと装備が吹き飛んでいたアルテミスだが、その姿がさらされる前に巨大餅に沈んで事なきを……得てないなコレ。それはさておき、単独で屋上に登ったクロトが見たものは……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 冒険 『ゴリラがいるならチンパンパンだ』

POW   :    チンパンパンの群れに潜伏する SPD   :    チンパンパンの群れを潜り抜ける WIZ   :    チンパンパンに知恵比べをする 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「チンパン？」
　ビルの屋上に登った猟兵達を待っていたのは、パンツを穿いたチンパンジー、人呼んでチンパンパンの群れだった。何を言ってる分からないって？　考えるな、目の前を見ろ。
「チンパンチンパン！」
　取りあえず、あちらさんは猟兵を敵だと認識しているらしいが……その手には餅が！　恐らく餅は降っていたのではなく、ここから周りにばら撒いていたのだろう。だとすれば、まずはこのチンパンパン達を止めなければ町に降り注ぐ餅は止まらない……のだが、そもそも、この餅はどこから来たのか？　何にせよ、まずは警戒するチンパンパン達を何とかしなくてはならないだろう。




（思考が停止しそうな状況だこれ……）
　チンパンパンの群れを前に嶺滋の目が死んだ。だからと言ってこの現場を放置するわけにもいかず、まずは猿のような影法師を呼び出し、群れに混ぜ込んでおく。
「取りあえずこいつらの気を引かないと……」
　ここには大量の餅があるが、それにしたって町に降り注いだことを考えるとまるで足りていない。その事も合わせて考えるに、餅をここに補充している個体がいるのは火を見るより明らか……なのだが。
「どれがどれだこいつら！？」
　いや、実際には個性があるんだよ？　あっちは一回り体が大きいし、そっちは目が大きくクリッとしてるし、そっちは猫ランジェリーだし、あの子は実は母親思いで暴力を振るう父チンパンパンから母チンパンパンを守って傷を負い、家族を守ったものの、このままでは一族の足手まといになってしまう、と療養と修行を兼ねた旅に出た真っ最中で今は……。
「長い！　てか、んなもん見てわかるか！！」
　至極真っ当に怒られました。しかし、追跡者を出したものの、どれを追跡すればいいか分からないというこの現状。打破を目指したのはクロト。
「ええっと……困った時の神頼みならぬガジェット頼み」
　指を鳴らし、大気中の水分を凍結。砕けた中から出てきたのは、狼っぽいガジェット。
『チンパン！？』
　群れが、一斉に、吼えた。
「うぉおお！？」
　驚くクロトの前でチンパンパン達がガジェットに襲いかかる！
「犬猿の仲、って奴かァ？」
　お猿さんだからね、仕方ないね。使い方はよく分からないが、少なくとも効果的な何かは出てくれた。問題はあれかな、全体的にガジェットに集中しちゃって、本来の目的の供給源に向かうチンパンパンがいない事かな。
「いや待てよ？」
　クロトはこの状況を逆手に取り、チンパンパンを無視して屋上の調査を開始する。分かった事はと言えば。
「この屋上自体はなんもねェなァ」
「しかし、補充してる個体はいるはず、と」
　手段は得たが、それを有効活用する術が見いだせない嶺滋と、ここに留まってもしょうがないが、ここを突破する手段を探さなくてはならないクロト。じゃあ二人の行動は無駄だったか？　否。ここに何もないという事は、やはり『この中の一匹、もしくは何匹かが補充役である』という事が判明した。後は、その個体を特定するのみ。ちなみに、屋上の扉はチンパンパンの群れが邪魔で調べられませんでした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「チンパン？チンパンパンパン？パンツ？チンパンジー？……とりあえずパンツを履く程度の知性はあるのですね」
　早口言葉染みた名前に混乱する千秋だが、チンパンパンが餅を持っている事を確認するなり、目を見開く。
「ってチンパンさん手にお餅あるじゃないですか！その餅はどこから？そこが知りたい！」
　ガジェットが消えて落ち着いて、再び餅を投げ始めたチンパンパン。その一匹にすすすっと近づき。
「あけましておめでとうございます。チンパンジーさん、そのお餅はどこから？傍から見てると僕不審人物ですが、これもヒーローとして任務を遂行するため……痛い！？」
　硬くなったお餅を投げつけられてしまった。アニマルとトークするにはラングエッジなスキルが足りないようだ。
「ど、どうすれば……」
「そんな時こそ、ボディラングエッジですわ」
　リコリスの凛とした声に振り返った千秋が見たものは、チンパンパンに混ざって餅をまき散らすリコリスの姿だった。
　現状、彼女の礼儀作法では微妙に足りていないらしく、言葉は分からないがケチをつけられているっぽい事は分かる。しかし、咄嗟に身にまとった茶色い布が効果的だったのか、千秋のように攻撃される事はない。
「問題はここからですわ……」
　紛れ込んだけど、何言ってるか分からないリコリスと、会話しようにも微妙に伝わってこない千秋。はっと、二人が目を見合わせる。
「私の肉体言語と……」
「僕のトークスキルがあれば……！」
「チンパン？」
　首を傾げ、怪訝な顔をするチンパンパンにリコリスが身振り手振りで困った感を漂わせ、その様子を千秋が観察（以降、千秋による翻訳をお楽しみください）。
『おい新入り、どうした？』
「すみません……お餅がなくなってしまわないか心配ですの……」
『あぁ？　お前研修も受けずにここにいるのか？　気にすんな、なくなりそうになったらボスがもってくるからよ』
　呆れかえった様子と同時に、それなら仕方ないと少しだけ視線が柔らかくなるチンパンパンにリコリスが小首を傾げ。
「ボスでございますの？」
『あぁ、ボスだ。俺らの中でも一際でっかくて、俺たちとは似てないボスだ。なくなる頃に出てくるから安心して餅撒きしてろ』
　それだけ言い残して、チンパンパンは仕事に戻る。
「ボス……怪人ですの？」
「そんな気はするけど……ここで戦ったらこのチンパンさん巻き込んじゃうかもしれませんね……」
　ていうか、敵側の所属？だから一斉に襲撃されるくらい覚悟しろよ。と言うわけで、君たちは屋上からビルの中へ進まないといけないんだよ。まぁ、リコリスが新手のチンパンパンだと思われてるから、そろそろ進めるでしょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第3章 ボス戦 『いいねリス』

POW   :    強いっていいね！　いいね！ボム 【いいね！ 】が命中した対象に対し、高威力高命中の【いいね！ボム】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。 SPD   :    足がはやいんだね！　いいね！ビーム レベル分の1秒で【いいね！ビーム 】を発射できる。 WIZ   :    いいね！って思ったらみんなあつまれー！ 戦闘用の、自身と同じ強さの【共感者】と【いいねリスの分身】を召喚する。ただし自身は戦えず、自身が傷を受けると解除。 👑17 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

チンパンパンの群れを潜り抜け、猟兵達が屋上のドアに触れると、なんと鍵が開いている。後ろから攻撃されるかと思いきや、猟兵の中にチンパンパンだと思われているチンパン猟兵が混じっていたおかげか、不思議そうな顔をされるだけにとどまった。
　そして、猟兵達が階段を降りた先、奇妙な歌声が聞こえてくる。
「お餅、お餅、おーもーちー。お正月にはやっぱりお餅だよね。町中をお餅だらけにして写真とか動画撮ったら、それはもういいねが一杯ついちゃうよねー♪」
　どっからどう見てもまごうことなき黒幕が、謎の機械から餅を量産していた。


「何故ですの！？」
「うわ！？」
　背後から奇襲とかもできなくもなかったんだけど、そんなことよりリコリスはツッコミたかった。
「何故チンパンパンのボスがリスですの！？そこはうほっとお決めになりなさい！！」
「べ、別にいいでしょ！？ていうか君達何者！？」
　突然の闖入者に慌てふためく怪人を前に、リコリスはほう、とため息をついて一旦落ち着きを取り戻す。
「お聞きなさい」
　語りかけながら、周囲には無数の氷の弾丸が生成される。
「聞かせる気ないよね！？」
「時事ネタはシーズンを過ぎれば一瞬で冷えきってしまうのよ！」
　怪人のツッコミは無視して、生成された冷たい弾丸の群れが怪人に照準を合わせた。
「正月を過ぎてしまえばただの不謹慎だわ」
　指先で、引き金を引くような真似をすれば、銃身を持たない弾丸は風切り音のみを響かせて怪人に殺到。見えない機関銃の一斉掃射に襲われたかの如く、怪人の体が右に左に右往左往。
「渾身のネタが滑る恐怖を堪能なさい！」
「あいったぁ！？」
　お説教モードのリコリスの前で、怪人のおでこに最後の一発が命中。吹っ飛んだ怪人は米袋の山に突っ込み、ピクピクと痙攣するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「わんわん！わんわん！」
　あ、野生のルベル・ノウフィル（星守の杖・f05873）が現れた！
「野生！？僕はオリュンポス所属でございますよ！？」
　うるせぇ！細かいことはいいんだよ！！
「酷い！でもいいね！」
「はっ！同胞の匂い！？」
　怪人さんがおっきしたお。
「お餅いいね、お米いいね、お正月いいね、とにかくいいね！でございます！！」
　テメェ、敵が調子に乗りそうな真似を……どっちの味方だ！？
「もちろん猟兵でございます！！」
　ねちょっ。えっへんと胸を張ったルベルだが、仰け反った瞬間、尻尾が餅にくっついた！
「アッ、尻尾に餅が……取って！取ってくださいっ、ワオーン！」
　あ、バカ暴れんな！その状態で暴れたりしたら……！
「尻尾がお餅に絡め取られてしまいましたー！？取ってー！誰かっ、誰か取ってくださいませ、ワオーン！？」
　ジタバタネチョネチョキャインキャイン。もはや狼っていうかワンコの悲鳴をあげてのたうち回るルベル。はっきり言って、う　る　さ　い　！
「ちょ、誰かこの子止めてー！？」
　しかしまー、同じ部屋で騒がれると怪人もうるさくてかなわないらしく、耳を抑えて叫ぶが、その助けを求める声はルベルの悲鳴に掻き消された……と、思ったら急に静かになったね？
「餅が！餅が全身に！僕はもうだめです、皆さま……あとは任せました……僕、少しはお役に立てましたか？」
　蜘蛛の巣で暴れまわった蜻蛉の如く、餅にグルグル巻きにされたルベルは静かに目を閉じる……なお、ダメージは入ってないし自業自得だから、騒ぎ回って味方にも被害出した件は後で椿がお仕置きに行きます。
「そんなー！？」
　起きてんじゃねぇか！！

大成功 🔵​🔵​🔵​

「餅の危険性を知らぬバズりしか見えていない怪人よ。聞くがいい」
　静かに語り始めた嶺滋の目が、すっと引き絞られる。
「餅は老人における危険性も指摘されているが、実は子どもが喉に詰まらせ、呼吸困難よりも危険な状態に至ることがある。餅はちいさく切り分けて提供せねば、凶器なのだという自覚を持たねばな」
「そうなんだ！？その知識、いいね！」
　冷えた餅並みに固まった思考は、変えられないようだ。呆れ返った嶺滋はそれから、と続けて。
「冷えて固まった餅は石並みに硬い。という訳で お前は絶対に殺す」
「酷い！？でも先に倒せばいいよね！必殺、いいね！ビー……」
「なーにがいいねビームだァ」
　ネタ潰しの如く、被せて鼻で笑うクロトが冷気を集中、周囲の餅を冷却、氷塊に吸収して宙に並べ。
「こっちは冷凍餅カタパルトキャノンビームだァ！！ 」
「ビーム対決！？でもいいね！！」
　冷凍餅カタパルトキャノンビームといいね！ビームが激突……しない！？
「ぐぁあああ！？」
　いいね！ビームに焼き払われたクロトが吹っ飛び、怪人があざ笑う。単純に高速機動戦に持ち込むクロトと、一瞬の速度を極めた怪人では、怪人の方が速い……が。
「あっつぅううううい！？」
　クロトは見事、いいね！ビームの軌道に冷凍餅を射出して見せたのだ。これによりビームの威力を減衰したクロトが起き上がると、怪人の顔に温まって柔らかくなった餅（熱々）がクリティカル！視界を奪う上にあっつい！！
「己が使ったもので己の首を絞めるとは、愚かな」
　視界の潰れた怪人の背後など、取るのは容易い。嶺滋は素早く回り込むと冷凍餅を振りかざし。
「ほら、大好きな餅だぞ。その熱くなった頭で思う存分食らっておけ！！」
　怪人の後頭部めがけて、思いっきり、投下！！
「いったい！？」
　続けざまに回り込み、冷凍餅をハンマー代わりに顔面をシューッ！ついでに飛び散る餅の熱エネルギーを奪い、自身を活性化。
「もっちゅ！？お餅はいいね！でもお餅で殴るのはよくないね！？」
　もはや鈍器と化した餅で頭部を強打され、怪人はヨタヨタとよろめき始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「SNSはいいね目当てにやるものではないんですよっ！いいね依存はSNS疲れを呼び起こします！」
　千秋、怪人に常識を説いてどうする？
「奇跡的に通じるかもしれないじゃありませんか！！」
　そんな奇跡がゴロゴロあったら怪人なんかいねぇよ！？
「そしてお餅も戦いの道具に使うものではありません。長生きを願って食べるものです……って毎年お餅を喉に詰まらせて亡くなる方いますが、そこはそれ」
　今回は現実に向き合うんじゃなかったの！？
「物事には例外と言うものがあるんです！」
　ジャキッ、気を取り直すように、鋒を持たない長剣を構え、怪人と睨み合う。
「断罪戦士ダムナーティオー、いざ参る！」
　踏み込み、袈裟斬りの一撃。
「いいね！その度胸はいいね！に値するよ！」
　斬り付けられながらのサムズアップ。千秋が得物を翻した瞬間、目の前にはサムズアップ模様の爆弾。
「しまっ……」
　連撃を叩き込もうと踏み込み過ぎたのだと理解した時にはもう遅い。どうせ躱せないのなら。
「死なば諸共……！」
　零距離の爆風に飲まれながら、千秋は意地で刃を振るう。横薙ぎの斬痕と、爆風による大火傷が同時に刻まれ、痛み分けとなるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「今起こったことを有りのまま話すぜ。三時半頃今朝出発したばかりのまんどらごらぁプロレスリプが来て、五時半頃に第一章のリプが来たと思ったらもう第三章だったんだ。な、何を言ってるのか分からねぇと思うがボクも何を言ってるか分からない。筆が早いとかそんなちゃちなもんじゃねぇ、作者系人間(笑)の恐ろしさの片鱗を味わった気分だぜ」
「ど、どういうことなの！？とにかく恐ろしいかくだらないかよく分かんないけど、よく分からない何かがあったって事しか分からないよ！？」
　ごにゃーぽ（本人から「これは名前なんかじゃない、本名が理解できなくてこのままじゃ不便だから、なんかいい感じに名乗ってるだけだ！」的なコメントを頂いたのでこれで通します）の恐怖体験を聞かされた怪人も目が白黒する。そらそうだろ、本人が理解できてない何かを言葉で説明されて何が起こったのか分かる方がすげぇ。
「つ、つまりだね……」
「うんうん」
　ごにゃーぽが意味深な顔で指を立て、さも重要な話であるかの如く注意を引いてから怪人の背後で小爆発。十八体のピカイアとかいうナメクジめいた生物がぞろぞろ。急に背筋に走る冷たい感触に怪人がビクゥ！？
「え、ちょ、何これとってー！？」
「ＯＫ、その前に蒼汁を飲むんだ☆」
　ここでごにゃーぽが怪人の口に水筒をシューッ！中身を流し込まれた怪人が瞬く間に真っ青になるが。
「おっと、意識を失えると思っちゃいけない☆」
　ぺちっ。小さなおててで掌底。打撃そのものは何でもないが、打ちこまれた呪詛は怪人の意識を刈り取る……事を防ぐもの。
「おぼぼぼぼぼ……」
　部屋の隅っこでちょっと記録に残せない事態に陥ってしまった怪人の背中に向けて、アリス・セカンドカラー（不可思議な笛吹きの魔少女（発酵中）・f05202）がトコトコ近づき。
「リスさん、大丈夫？」
「……？」
　まるで無関係な幼女のような顔で近づくアリスに、一瞬疑問符を浮かべた怪人だったが、鼻先をくすぐる甘い香りに当てられて、恋に落ちたような、発情しているような、妙にアリスに意識を持っていかれる状態に陥り、頭の中がぼんやりと靄に包まれたように呆けてしまう。しかし、夢心地とも、酩酊ともとれる心持は長くは持たなかった。気づいた時には目の前に、暗闇が広がっていたのだから。
「……えっ」
　一瞬の思考停止。それが明暗を分けた。怪人を包み込むように、夜が溶け落ち柱状に固まったような無数の触手が怪人を優しく抱擁し、大きく口を開けた夜の帳へと誘う。やがて、空間の裂け目が閉じるように、あるいは朝日が差し込むように元の空間が帰ってくると、そこに姿の無いはずの怪人のくぐもった悲鳴が響き渡った。
「さぁ、わたしの中で果てなさい♪」
　アリスが口元をちろっと舐めたが、今起こった現象との関係性は不明である……。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年01月04日 宿敵 『いいねリス』 を撃破！