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主役はだあれ?

#UDCアース

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#UDCアース


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「ああ、神よ! 何が足りないのですか!?」

 演技掛かった声が広い空間に響き渡る。
 その空間にあるのは、無数の客席とその目の前にある舞台。
 そこでは一人の少女が神に祈りを捧げていた。

 今が人生で最高に輝いている。
 舞台上できらびやかな衣装に身を包み、脚光を浴びながら祈りを捧げている少女、佳代はそう考えていた。
 今でこそ主役を演じているが、かつては脇役ばかりを演じてきた彼女にとって、新しく出来たこの劇団に引き抜かれたのは幸運だった。
 劇団の母体は聞いたことのない宗教団体だったが、演劇に懸ける熱意は本物のようで、小道具一つとっても精巧に作られており、セットに掛けられている額は以前所属していた劇団を遥かに凌ぐものだった。
 この劇団で主役を演じていけばもっと有名になれる。いつか世界に名を轟かせる女優になれる……そう彼女は思っていた。この時までは……。

 演劇が進み、クライマックス直前、恋人を神への生贄にしようとするシーン。
 祭壇の前で跪きながら精巧に作られた短剣を胸に抱き、目を閉じながら再び神への祈りを捧げていた時、佳代の顔に何か生温かいものが突如として飛び散ったのだ。
 「え……?」
 驚いて佳代が思わず目を開いた時、彼女の視界は赤く染まっていた。
 何度も練習して見慣れたはずの舞台は毒々しい赤色によって塗り替えられ、先程まで祭壇に横たわっていた俳優は赤い液体を吹き出していた。
 その光景を見たのは佳代だけでは無かったようで背後で演技をしていた演者達の悲鳴が聞こえてくる。その恐怖に戦いたような悲鳴はやがて鈍い音と共に苦痛を伴った断末魔の叫びに変わっていく。
 そしてその断末魔の叫びが上がるたびに客席からは歓声が上がる。
 他の演者はどうなったのか。観客は何に歓声を上げているのか。佳代に振り向く勇気はなかった。
 ただ、目を閉じ、どこぞの神に祈りを捧げるのみ。「どうか助かりますように」と。
 その願いは果たして誰が聞き届けたのか。
 ただ佳代が最後に感じたのはバチバチという音、瞼を越して瞳に届く鋭い閃光、そして全身を駆け巡る痛みだった。

 グリモア猟兵、ウィルトス・ユビキタスはグリモアベースに集まった猟兵達の前で依頼の概要を説明していた。グリモアベースの風景には高層ビルが立ち並び、舗装された大きな道が写っており、UDCアースでの事件と分かる。
「今回、邪神教団が演劇を通じて邪神を召喚することを予知した。最初に形を持てない魔物を召喚し、それを呼び水に群体の邪神を召喚、そしてさらにそれを呼び水にすることで力ある邪神を召喚しようとしている。もし儀式が完全に成功した場合、この町は甚大な被害を受けるのは間違いない。猟兵達も大きく消耗することとなるだろう」
 ウィルトスは大テーブルに建物の見取り図を広げる。猟兵達はみんなで机を囲み除き込む。その見取り図からは大きな劇場ということが読み取れる。
「その際に信者ではない、一般人が生贄となることも分かっている。だが、先に一般人を避難させた場合、儀式は中止されるが、また別の場所で儀式を行う可能性が残る」
 そう言うウィルトスは苦い顔をしていた。これは彼にとっても苦渋の選択だった。
「今回の作戦の詳細を説明する。劇団関係者として潜入し、舞台で演技する一般人を護衛、生贄にはさせず、不完全な状態で儀式を行うことで弱体化した状態で邪神を召喚、それを打ち倒す」
 言うは易し、その無茶ブリな作戦に猟兵達は眉を顰めるが、ウィルトスはこれしかないと言う。
「邪神召喚の目論見が崩れれた教団に劇団を維持する余裕は無いだろう。設備が残っていれば、この劇団はどこかに拾ってくれるかもしれない。夢を叶えたいと思う人達のためにもよろしく頼む」
 そう言うとウィルトスは深々と頭を下げるのだった。


峯雲
 こんにちは、今回はUDCアースで邪神召喚の目論見を阻止することが目的です。
 第一章は劇団関係者として潜り込み、劇の途中で現れる弱い魔物から演者を護衛することとなります。
 最初の方は普通の劇です。観客は皆信者でこの劇が儀式ということも理解していますが、もし最初の方であまりにもヒドい演技だと、何か飛んでくるかもしれません。
 第二章は集団戦、劇場で戦闘となります。一般人の避難はUDC組織が請け負ってくれていて、全員避難完了した状態です。
 第三章はボス戦です。

 この儀式は劇を通じて強い邪神を召喚するものです。
 自分が舞台の主役だ! とか俺はアドリブの天才だ! とかで好き勝手やったり、あまりにも大根役者だと儀式の質は大きく下がって、召喚される魔物とか邪神の強さも変わるんじゃないかな?

 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『舞台上の魔物』

POW   :    身体を張って、真正面から役者をかばう。

SPD   :    軽やかな身のこなしで魔物の奇襲をあしらう。

WIZ   :    派手な台詞や振舞いで注意を逸らす。

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

祝聖嬢・ティファーナ
ティファーナは『聖者』なので、『生まれながらの光』の準備で輝きを放ち「光か小さな火花の竜巻か嵐」を『エレメンタル・ファンタジア』と邪神教徒に不快な幸せで嬉しく楽しい“気持ち”を込めて乗せた『シンフォニック・キュア』をノリノリで派手に大きく踊り歌い回ります♪

夢中になり過ぎて危なくなったら『クリスタライズ』で、透明になって避けて、また姿を現して再び人目を集めながら避けつつ逃げ回ります☆
喜びの賛歌、幸せの聖歌を歌って邪神と教徒の眼と耳を集めます☆


ミルフィ・リンドブラッド
主役を演じる女の子のチャンスを潰してしまうかもですが、邪神の復活は伏せがねぇとです。フィーが演劇をひっかきまわして邪神の復活を不完全にしてやるです

POW
物語のクライマックスで主役の恋人役の妹を演じて「フィーのお兄ちゃんを神様への生贄にするのはゆるさねぇです。お兄ちゃんの恋人であるというだけで家族の思いを無視して生贄に捧げるなんて…。皆が許してもフィーは絶対にゆるせないぞ、です」といって生贄役の恋人の前に立ちはだかって『挑発』してやるです。フィー迫真の演技…アドリブ王です(ふふん)

劇場で不穏な動きがあったら劇場を拠点として定め『拠点防御+かばう+怪力+武器受け+オーラ防御』で役者を守ってやるです


宮矢三・祇明
「私は劇の主役どころか役者に向いていないから裏方でがんばります。」
【演技】
演奏者か音響係として潜り込み、はじめは真面目に仕事をこなしているふりをして演劇の見せ場でわざと音程を外して劇を中断させない程度に盛り下げます。
【戦闘】
形を持てない魔物奇襲については、戦闘は不向きなので、他に戦えそうな人がいればその人に魔物を押し付けますが、戦える人が居ないなら劇裏から〔だまし討ち1〕を利用したユーベルコード『グラフィティスプラッシュ』を撃ち、魔物の奇襲を邪魔しながら自分い有利な戦況を築きます。


イヴ・イルシオン
【POW】

ミルフィ【f07740】と同じ仕事を受け

(劇場の天井近くから鋼糸で体を支え劇の様子を見ている)

「劇なんて何が楽しいんですかね……命を削り合わねぇと楽しめ無ぇのですよ」

(段々と苛立ちを覚え)

「なに生ぬるい事してやがるんですか──ミルフィ・リンドブラッド?」

挨拶代わりに飛び降り様に剣撃をミルフィに放ち撃ち合う(可否お任せ)

「この方が全然楽しいでしょう!? ほらほらほらぁ!」

居合いの構えを取りミルフィに放つかと思わせて【無明刻命斬】で観客席の信者の首を纏めて刎ねる

「いい具合に首が並んでやがったのです。仕事っていうのはこうやるのですよフィー。さぁ楽しい楽しい殺し合いの始まりなのですよ!!」


フェルト・ユメノアール
せっかくの晴れ舞台、こんな形で終わらせちゃうのは可哀想だもんね
ボクたちでこの悲劇をハッピーエンドに変えてみせるよ!

とりあえず劇団関係の道化師という体で潜入
やあ、可愛らしいお嬢さん
ボクは愉快な道化師ピエロ
こぼれる涙を拭うため
夢の国からお出ましさ

派手な動きで魔物を引き付け、役者の人達を守るよ!
そのためにも……ボクは手札から【<ユニットカード>SPアクロバット】を召喚!
ボクの『トリックスターの投擲攻撃』と合わせて上下から連携しつつ攻撃していくよ
でも、お楽しみはここからさ
ボクはSPアクロバットの効果発動!
SPアクロバットがバトルを行う時、手札を捨てる事で戦闘力をアップさせる!
これでフィニッシュ!


緋縅・善蔵
俺は裏方として動きます。魔物の可能性がある怪しい人物が居れば、影の追跡者を使用して監視。見るからに魔物なら屠龍で駆除。人間に姿を似せてたら殴り飛ばして退場。演劇は苦手なので喋らないでおきます。というか、飽くまで裏方ですし。そうもいきませんかね?
「魔物など所詮、(EXP的意味で)俺の獲物だ」
くらい言っておきましょうか。
(総じてPOWの行動)



血塗られた劇の結末を変えようと猟兵達は各々の手段で劇団に潜入していた。
役者や裏方で彼らは暗躍を始める。

『幕の裏側にて』

「これがこの劇の台本だな」
 舞台袖、初の公演を前にせわしなくスタッフが動き回る中、裏方として他の猟兵に先んじて潜入していた緋縅・善蔵(893顔特別国家公務員・f06737)は台本を入手していた。
 円満な関係にあった二人。しかし理不尽な運命に翻弄され二人は様々な物を失っていく。その運命を変えるため自ら神への生贄となり、過去を変える。
 そんな物語が綴られている台本だった。
「特に怪しいところはないか」
緋縅は一通り目を通すと同じように裏方として潜入している宮矢三・祇明(多重人格者の探索者・f03726)に台本を手渡す。
「台本自体にいつ魔物が現れるかは流石に書いてはいないでしょうね」
 そう言いつつ宮矢三・祇明(多重人格者の探索者・f03726)は受け取った台本をペラペラとめくっていく。
「どっから魔物が現れるのかは分からんが、しっかり守ってやらないとな」
 緋縅はその鋭い目付きで怪しい人物がいないか観察していく。
 小道具の確認や、セットの配置に勤しむ劇団員に姿はあるものの特に怪しい人間の姿は見えない。
 緋縅はやれやれ、と少し肩を落とす。
「でも、劇を台無しにしていけば出てくる魔物が弱くなるみたいですし、頑張って盛り下げていきましょう?」
 と、宮矢三は自分の担当である音響機器の確認をしつつ、苦笑しながら言った。
 おぼつかない動きで音響機器をいじっているのが傍目でも分かったが緋縅は別段言うことはなく、同じように苦笑を返した。
でも、と。少し離れた場所で待機している役者として潜入している猟兵の方をちらっと見る。
「宮矢三さんは良いのか?あっち側じゃなくて」
せっかくの晴れ舞台、という訳でもないが、舞台に立たなくて良いのかという疑問。
多くの猟兵が舞台に立って護衛する方を選んだだけに、浮かんだもの。
 それに対して宮矢三は頭を振ると。
「私は劇の主役どころか役者に向いていないから……裏方でがんばります」
そう言った。
その言葉にどういう思いが込められているかは定かではなかったが、緋縅は何か感じ入るものがったのか、そうですかと言葉を返すだけだった。
こちらは大丈夫だが、演者の方はどうなのか。緋縅がもう一度ちらっと演者の方を見るとこちらに向かってくる影があった。
 それはフェルト・ユメノアール(夢と笑顔の道化師・f04735)だった。
「ちょっと二人に頼みたいことがあるんだけど良いかな?」

本番直前の相談。密やかに打ち合わせると、フェルトは演者の方へと帰っていく。
そして裏方の二人は台本に少し書き足すと自らの持ち場へと向かって行った。
悲劇か喜劇か、物語はその幕を開けようとしていた。

『佳境』

 劇が始まり、物語が進んでいく。
 演者として猟兵が混じり、いつ魔物が襲ってきてもいいように舞台上で護衛をしていた。
猟兵達の演技は観衆には違和感を残すが、つつがなく進んでいく。
 そして物語は佳境へと至る。
 おどろおどろしいBGMと共に幕が再度開かれ、そこには少女と、祭壇の上に載った青年の姿があった。
「ああ、神よ! まだ足りないのですか!?」
 主役を演じる少女、佳代は祭壇の上で、恋人を生贄に捧げる為ナイフを振り上げる。
その時、だった。
「フィーのお兄ちゃんを神様への生贄にするのはゆるさねぇです!」
舞台袖から予期せぬ闖入者が現れる。
生贄に捧げられる恋人の妹役として潜入していたミルフィ・リンドブラッド(ちみっこい力持ち・f07740)はとてとてと走り寄ると祭壇の前に立ち塞がったのだった。
 佳代は突然の事態にどうすれば良いのかが分からなかったが、劇を中断させまいと演技を続ける。
「でも、でも!それじゃ私達はいつまでも不幸なまま!神に頼らなければ……!」
「そうかもしれない、けど!お兄ちゃんの恋人であるというだけで家族の思いを無視して生贄に捧げるなんて…。皆が許してもフィーは絶対にゆるせないぞ、です」
 儀式を不完全なものにするために、ミルフィも演技を続ける。
 生贄に捧げようとする佳代とそれを防ごうとするミルフィ。二人の問答は続いていく。

それを見ているのは舞台や、観客席にいる人々だけではなかった。
イヴ・イルシオン(狂気の殺戮人形・f01033)もまたその様子を劇場の天井近くから見ていたのだった。
鋼糸で宙吊りになりながら、イヴはぼそっと呟く。
「劇なんて何が楽しいんですかね……命を削り合わねぇと楽しめ無ぇのですよ」
段々と苛立ちを募らせながらイヴはしばし様子見を続けるのだった。

アドリブにアドリブを重ね舞台を続けていく、ミルフィと佳代。
膠着状態に陥った状況に観客席にいる信者達は苛立ちを募らせていた。
この生贄に捧げるシーンこそ儀式の要であるのに、と。
「何があっても絶対に生贄にはさせない、です」
 ミルフィの力強い言葉。
その言葉が引き金となった。
 観衆、いや邪神教団の信者達は叫び声を上げる。
「生贄を殺せ!」
 口々に発せられたその言葉は重なっていき、次第にBGMをかき消す怒号となり劇場に木霊する。
 そしてその怒号に引き寄せられるかのように、舞台の床から滲み出るように大量の不定形の魔物が姿を現したのだった。

『騒乱』

 その黒い体表を蠢かせ、形を変える不定形の魔物達は、ゆっくりと舞台上の演者の元へと迫っていく。
 ミルフィの乱入以上の異常事態。その魔物の姿を見た佳代は身動きが取れなくなってしまう。
 恐怖、困惑、焦燥、不安。言い表せない負の感情の波が彼女の中で沸き起こる。
 そしてそれは彼女だけでなく、この儀式の存在を知らなかった劇団員にも波及していく。
 比較的余裕のある人からは理解出来ないものへの恐怖から悲鳴が上がる。
 だが……。
「大丈夫よ」
 舞台の上、照明からひらひらと舞い降りてきた祝聖嬢・ティファーナ(フェアリーの聖者×精霊術士【聖霊術士】・f02580)が【生まれながらの光】でもって劇団員を癒やしていく。
 その光が癒やすのは外傷ではなく、心の傷。魔物を直視したことで傷ついた心を癒やしていく。
 祝聖嬢はそのまま佳代の前まで降りてくると、大丈夫と言葉を重ねるのだった。
佳代は癒やされたことでいくらか落ち着きを取り戻すが周囲は既に魔物に取り囲まれていた。
 今にも飛びかかってきそうな魔物の様子に佳代は身を竦める。
「任せて!」
 その言葉と共にミルフィは紅血結界を展開させる。この舞台を守るべき拠点と見定めた彼女は覚悟を決める。絶対に守って見せると。
 紅血結界を発動したことで明確な敵対行為と認識したのか、不定形の魔物は先程までの緩慢な動きとは打って変わって、俊敏な動きでミルフィの元へと殺到する。
 ミルフィはそれを天竜砕きと竜の鎧でもって捌いていくが、襲いかかってくる魔物の数は多く一人では不可能に近かった。
 祝聖嬢も光の嵐を起こして魔物を倒そうとするも、舞台には佳代の他にも幾らかの演者がおり、巻き込まないようにするためにその全力を発揮出来ない。
「あの人が来てくれれば……」
 そう祝聖嬢はこぼしつつ上を視線をちらっと向けるが、照明によってその奥にあるものを見通すことはできなかった。
どうにか演者から魔物を引き剥がさないと、二人がそう考えた時、観客席の方で動きがあった。

「はいはーい、ちゅうもーく!」
 大仰な声と共にスポットライトが観客席の後ろの一点を照らし出す。そこにはフェルトがこれまた大仰なポーズでカードを構えて立っていたのだった。
フェルトは魔物や信者達の注目が集まったのを確認すると一礼する。
その礼とともに今までかかっていたおどろおどろしいものから、調子がズレた、正に間抜けな物へと変わった。

それは音響担当として潜入していた宮矢三によるものだった。
「直前に言われたからどうしたものかと思いましたが、どうにかなりました。私は戦闘が得意ではないのでお任せしますよ、フェルトさん」
手元でBGMを弄りながらそう言葉を漏らす。

BGMが変わったのを聴くとフェルトは舞台へと駆け出していく。
ただ舞台へと向かっていくのではない。信者が道を阻もうとするが、客席の背を蹴り、信者の頭を超えていく。その姿は重力の縛られていないかのように自由なものだった。
 そしてその勢いを保ったまま舞台へと飛び上がる。
「ボクは手札からスペシャルゲストをご招待!カモン!SPアクロバット!」
 フェルトは手札の中から一枚のカードを取り出すと素早く宙に投げる。宙に投げられたカードは空中で鮮やかな蝙蝠に変わり、上空で魔物を品定めするかのように上下にはためく。
そしてフェルトがえいっ、と投げたトリックスターの行く先にいる魔物へと急降下していく。
 だがフェルトの行動はまだ終わっていない。
「お楽しみはここからさ!ボクはSPアクロバットの効果発動!」
 フェルトの持つ全ての手札を捨てることでさらに加速させ、戦闘力を引き上げる。
 投擲と加速した【<ユニットカード>SPアクロバット】の連携攻撃は数体の魔物をまとめて引き裂いたのだった。
 残った魔物は言葉を発さなければ、狼狽えることもない。だがその敵意がフェルトに集中したのは間違いがなかった。

「まったく、言うは易し、行うは難しだな」
 そう漏らすのは照明担当として潜入していた緋縅のものだった。
 直前の打ち合わせで、後ろから入るからスポットライトを当てて欲しいと言われていたが、飛んだり跳ねたりするのは想定外だった。
 持ち前の動体視力と培った経験によってスポットライトでフェルトの動きを追っていけたが、思いスポットライトを機敏に動かすのが今日一番で大変だったのは間違いがなかった。
「だからと言って戦闘を丸投げするわけにもいかないだろう」
そう呟くと、その体躯でもって信者をかき分け、道を塞ぐ魔物は屠龍で薙ぎ払っていく。
「魔物など所詮、俺の獲物だ」

 舞台の上、魔物を倒すのは祝聖嬢とフェルト、緋縅に任せ、ミルフィは守りに専念していた。自分の手元には佳代がいるため、彼女を守るために離れるわけにはいかなかったのだ。
 だが自分も倒しに行ったほうが早く安全が確保出来るのではないか。ミルフィの中では葛藤があった。
 その葛藤の天秤がどちらかに傾こうとしたとき、ミルフィに鋭い声が聞こえてきた。
「なに生ぬるい事してやがるんですか──ミルフィ・リンドブラッド?」
 挨拶代わりと、イヴは飛び降り様に蒸気駆動型軍刀《黒鈴》による剣撃を放つ。
 その切っ先はミルフィを掠め、すぐ隣の魔物を切り裂いた。
「何をするんですか?」
 ミルフィの言葉には幾らかの冷たさが滲む。
 だが、その言葉を物ともせずにイヴは居合の構えをとる。
「この方が全然楽しいでしょう!? ほらほらほらぁ!」
 そして【無明刻命斬】による黒稲妻と斬撃が一瞬で駆け巡り、標的を全て切り裂いた。
思わず身構えたミルフィだったがイヴの斬撃ははミルフィではなく、間合いにいた観客席の信者達を全て両断していた。
「こんなこと……」
 余地とは違う形で作られた赤い空間にミルフィは動揺していた。
 イヴはそんなミルフィの様子などお構いなしに刀を振るう。
「いい具合に首が並んでやがったのです。仕事っていうのはこうやるのですよフィー。さぁ楽しい楽しい殺し合いの始まりなのですよ!」

 イヴの作り出した赤い空間によって信者達は先程までの威勢など忘れたかのように、雪崩を打って劇場が逃げ出していった。
 後に残ったのは信者から見捨てられた不定形の魔物のみ。
 これを掃討するのにそうは掛からなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『マガツアリス』

POW   :    古き神々の意志
【邪神「第零の蟻」】を召喚し、自身を操らせる事で戦闘力が向上する。
SPD   :    呪われし鉤爪
【異様に膨れた両腕の鉤爪】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    軍隊蟻の行進
いま戦っている対象に有効な【悍ましき妖虫】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フェルト・ユメノアール
第二幕の始まりだね、ここからが本番だよ!

敵が集団でくるなら、ボクの打つべき一手はこれだ!
まずは『存在感』を利用しつつ『SPD』を使った素早い動きと投擲攻撃で敵を自分の方に誘導
さあ、こっちだよ!鬼さんこちら、手の鳴るほうへ
そして、敵が集まってきたところで『カウンター』を仕掛けるよ!
ボクは手札からスペルカード、【機雷バルーン】を発動!
攻撃に反応して爆発する機雷バルーントークンをバトルエリアに可能な限り召喚する!
これで集まった敵を一掃する作戦さ!
あっ、もちろん、仲間を巻き込んだらまずいから使用する時には
みんな下がって!と警告するのを忘れずに、ね


祝聖嬢・ティファーナ
『クリスタライズ』で姿を隠れながら『エレメンタル・ファンタジア』で、炎/氷/雷/石/聖光の竜巻/嵐で攻撃します!☆
“オーラ防御”をしながら“野生の勘”や“第六感”で軍隊蟻の行く手や行動に対して避けながら竜巻/嵐を続けます♪

仲間や味方が窮地やピンチに落ちいったら、治療に向かい瀕死であれば安全な裏方の奥まで連れて行き治します☆
治療が落ち着いたら攻撃に戻ります☆


宮矢三・祇明
「生贄にカウントとされていないといいが…」とげんなりした表情で信者達の死体を観察して何か気になる物があれば回収する。
【戦闘】
仲間の戦いを見て手出しの必要が無かったら裏に戻り気の利いた戦闘BGMを流し仲間の戦いを見守る。
戦闘に手こずるようなら敵の死角から【グラフィティスプラッシュ】を放ち仲間をサポートする。
【軍隊蟻の行進】で敵の数が増えたら「数が増えるのは面倒だ。いっそのこと建物ごと爆破できないか?」と愚痴を言いつつ、他の人相手に召還された【悍ましき妖虫】に【グラフィティスプラッシュ】で横槍を入れて地道に倒す、妖虫が自分に向かって来たら足蹴で踏みつぶすなどして対応するが最悪逃げることも考える。



 舞台に不相応な役者は姿を消していた。舞台に残るは猟兵、不定形の魔物は残骸も残さず消え去っていた。
そして儀式を楽しみにしていた観衆、信者は物言わぬ骸ととなったか、劇場から逃げ出した後、閑散とした劇場には猟兵の細やかな息遣いまでもが響くかのようだった。
 
 その静寂は猟兵に気の緩みをもたらしていた。だが、予知では魔物は呼び水に過ぎず、魔物の後には邪神が召喚されると言われている。
「第二幕の始まりだね。ここからが本番だよ」
 周囲の猟兵の気を引き締めるようにフェルトは言う。それに応じて猟兵達は思い思いの言葉を返していく。
次の敵はどこから現れるのか。舞台の上で猟兵達は神経を尖らせる。
だが一人、舞台から降りて客席を調べる人影があった。音響を担当していた宮矢三であった。
「こいつらも生贄にカウントされてないと良いが……」
げんなりした表情を浮かべながら、客席に降りた宮矢三は客席で骸となった信者を観察していく。
信者達の骸は服装や、年齢、性別、身長、全てがバラバラで身体的特徴に共通点はなかったが、その骸達はみな驚きの表情を浮かべ事切れていた。
だが、それだけであった。
「とくに異変は無し、か」
 そう宮矢三は言葉を零す。
 そして舞台へと踵を返したとき、宮矢三は目にした。このUDCアース、否、現在発見されているどの世界にもあってはあらない異形の姿を。
 舞台の上から静かに降りてくる様はこの世のものとは思えない光景だった。
十数体のその異形達。その頭部は人の形を成している。頭部だけが人の形を成しているだけに、他の部位の異様さが引き立てられている。上半身は硬質な肌に覆われており、両腕には大きく、醜くとがった鉤爪がついていた。下半身にいたっては筆舌しがたいおぞましさを抱え、おおよそ地上の生物ではありえない様だった。
宮矢三の視線を追う形で他の猟兵もそのおぞましい姿を目にする。
ただの人では、平常を保つことが出来ない景観でも、猟兵達がひるむことはなかった。
 猟兵達のやるべきことは一つ、召喚された邪神を倒すべく己が武器を手に取るのだった。

 真っ先に動いたのはフェルトだった。舞台を右へ、左へ、素早い動きで邪神を翻弄していく。
 「鬼さんこちら、手のなる方へ」
 そう言いながら、トリックスターを投擲していく、邪神達は否応無しにフェルトを意識せざるをえなかった。
 しかし、注目を集めるということはその分危険も増していた。
戦場として見たときにこの舞台は広いと言えるものではない。そんな場所で十数体の敵を翻弄しようとしたところでいずれ限界が来る。
フェルトは舞台の奥、背景のところに追い詰められていた。
そして、邪神達はその腕についた鉤爪を振りかぶり、フェルトへと襲いかかった。
 絶体絶命と言うべき場面、だがフェルトの顔に恐怖は無く、代わりに笑みがあった。
「これがボクの指す一手!」
 フェルトはこの邪神が集合する状況をあえて狙っていた。
 手札からスペルカード【機雷バルーン】を発動する。
 現れた大量の風船はフェルトと邪神達の間を埋め尽くす、そして……。
 鉤爪に触れたバルーンは爆発、そして連鎖していく。
 フェルトに近い位置にいた邪神達は跡形もなく吹き飛ばされる。生き残った邪神も大きく後ろに飛ばされ、態勢を崩していた。

「ここだね」
そして、その邪神の隙を見逃す祝聖嬢ではなかった。邪神が現れた瞬間から【クリスタライズ】で姿を隠し、機を伺っていた祝聖嬢は静かに手をかざす。
 その手からは柔らかな光が漏れ出し、渦を巻いて行く。その光の渦は次第に大きくなり、その回転は速さを増していく。
 「さあ、いくよ!」
 その言葉に邪神が祝聖嬢の方を振り返ったとき、そこには聖光の竜巻があった。
 邪神達は抵抗しようとするが、すでに竜巻は放たれた後、聖光によって身を削られていく。
 それは使い手によって性質が変化するという【エレメンタル・ファンタジア】によるものだった。

光の竜巻は邪神達の数を大きく減らし、残り数体といったところまで追い詰めていた。
邪神達は耳障りな不協和音を出したかと思うと身体を大きく震わせる。
それは大きく減った数を補おうと「悍ましき妖虫」を召喚するためのものであった。
しかしそれは猟兵達の優勢を覆すものではい。
「数が増えるのは面倒だ」
いつの間にか舞台へと上がった宮矢三は【グラフィティスプラッシュ】で塗料をぶちまけていく。
広い範囲に巻かれたそれは、邪神の召喚した妖虫を触れたそばから消滅させていく。
数の上での有利をなくした邪神達は逃げ場を探すように身を震わせていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

セリエルフィナ・メルフォワーゼ
まず【ダッシュ】【スライディング】で敵陣に突っ込んで、そこから【ジャンプ】!
そして【空中戦】【2回攻撃】を使って、その場で回転しながら連続して敵にキックを入れ続けるよ!
更に【スカイステッパー】を使って、回転キックしながら前進だ!

「竜巻旋●脚!!」

UDCアースで遊んだ格闘ゲームってやつをヒントに編み出した、ボクの必殺技だよ!



 大きく数を減らされた邪神達は猟兵から距離をとるように舞台の外、客席の方へジリジリと後退していく。それは今までに見せていた個体ごとの独立した行動ではなく、一つの群れとしての行動だった。一箇所に集まり、いわば一つの陣を邪神達は組んでいたのだった。
セリエルフィナ・メルフォワーゼ(天翔ける一輪の君影草・f08589)は警戒し、出方を伺う。不用意に敵陣へ飛び込めば、待ち構えている邪神達に痛手を負わされるであろうことは分かっていた。故にセリエルフィナは慎重に距離を詰めようとする。
だが、途中であることに気が付く。
 「これって、このまま後ろに下がって逃げようとしてるんじゃないよね?」
 攻めるか機を待つか、逡巡は一瞬だった。セリエルフィナは他の猟兵に先んじて一歩前へ踏み出した。
 その一歩目は淀み無くセリエルフィナの身体を前へと運んでいく。二歩目は軽やかに。そして三歩目は素早く。
 他の猟兵を置き去りにしたその走りは、逃げる算段を立てていた邪神の反応速度を上回る。
 迎え撃つ邪神の鉤爪を素早く掻い潜り、陣の中央へと滑り込む。イソギンチャクのような足をレガリアスシューズで引きちぎり、そのまま飛び上がる。
 それは迫る鉤爪や脚部から逃げるためでなく。
 巧みなバランス感覚と軽い身のこなし、セリエルフィナが持つ二つの個性を最大限に活かした、蹴撃を放つためのものだった。
 前、横、後ろ。死角はないとばかりに繰り出される蹴撃は邪神達を打ち据えていく。
「これがボクの踊りだ!」
 そして最後のトドメとばかりに、セリエルフィナはその身を大きく回転させる。
 それは【スカイステッパー】を織り交ぜることで空中でも突破力をもたせ、竜巻のような強力な回し蹴りで、邪神達を中心から大きく弾き出していった。

成功 🔵​🔵​🔴​

キファ・リドレッタ
虫は嫌いよ。
頭に宿る大きな花に、いつだって集るんだもの。
近寄るのはお勧めしないわ。花は花でも食人花。
『金枝の罪』は近寄る相手を殺す花の蔓。
すぱりといくわ。絞め殺すかも。
皮膚にだけは触れない様に。
あなたを溶かす『毒』、私、制御が出来ないの。
砂糖菓子のようにどろりと溶けたくはないでしょう?

お喋りは出来ないけど、小瓶の水を操作する事は出来るから、
必要があれば空に綴るわね。


月鴉・湊
さてさて、観客として面白い劇を見せて貰ったし、そろそろ仕事しようかね。今度はちゃんと客席から見たいもんだ。

敵の意識は全て舞台の猟兵だろう。
劇場の影からUCを使用し「血の糸」と「血の針」を使った暗殺を行う。
一体ずつ、確実に血に染めていこう。
人では無い奴等は紅とは限らないがな。
この世に呼ばれたことを恨むがいいさ。


祝聖嬢・ティファーナ
ティファーナはダークセイヴァーワールドの自らを神にも等しい、と称している闇の軍勢を思い出して「人々の想いと願いが無ければ神様は存在を許されないハズなのです!」と力強く言って『クリスタライズ』で姿を消したまま『神罰の聖矢』で【光】と【聖】で攻撃をします!☆

軍隊蟻の群れを『エレメンタル・ファンタジア』で「氷の竜巻」と「雷の豪雨」と「炎の土砂崩れ」で進行や攻撃を防ぎます♪
猟兵が傷を負ったり状態異常に対して『生まれながらの光』と『シンフォニック・キュア』で治癒と回復をします☆

蟻の触覚で見付けれたら翔びまわって逃げます☆



「さてさて、と」
 人が居なくなったはずの観客席から小さな、小さな声が漏れる。それは誰かに聞かせるものでもなく、誰の耳に届くこともなく宙に消えていく。
それは月鴉・湊の声であった。
 信者に気づかれることなく、観客席に潜り込んでいた湊はそろそろ仕事をしようかと、腰を上げる。
 光が当たるは舞台のみ。
 闇に紛れて動くのは湊にとって息をするかの如く容易いものだった。
「出会った咎人は知らぬうちに身を血に染める。それが「染物屋のカラス」の仕事だ」
 湊は糸を手繰り、針を構える。狙うは敵の意識の外。
 必殺の一撃を繰り出すべく、機を待つのだった。

 舞台の上、虚空から響く声があった。
 その声は幾らかの悲しみをはらみつつ、邪神に語りかけるような、問い詰めるような小さくも力強い声だった。
「人々の想いと願いが無ければ神様は存在を許されないハズなのです!」
 それはダークセイヴァーワールド出身の猟兵、祝聖嬢・ティファーナのものだった。
 彼女は【クリスタルライズ】で姿を消しながら邪神達を睨みつけていた。彼女は故郷と自らを神と自称する闇の軍勢と目の前の邪神を重ね合わせていた。
 絶対に許すことの出来ないもの。それが彼女の抱く想い。
 その想いを乗せて言葉を紡ぐ
「光を怯える、闇と悪よ、悔い改めなさい……」
 その祝詞は誰が聞き届けるのか。
だが、ティファーナがそっと一番近くにいた邪神へと指先を向けると天からの光が降り注ぐ。
 それはティファーナの、人々の想いと願いを聞き届ける神がいないのなら、自分がその荷を背負うという彼女の意思が齎す聖なる光。
 空から照らし出された邪神はその光を忌々しそうに見上げると、掻き消えるように姿を消した。
「さあ、次はだれ?」

 不意打ちによって数を減らされた邪神達は警戒を厳にする。
 そして……。
「ぎぁぎぁぎぁぎぁぎぁ」
 身体を大きくくねらせ、耳障りな音を撒き散らす。汚染するように、塗りつぶすように。ここは自分たちの場所だと、ここに自分たちはいるぞと。主張するように、叫ぶように。
 その音は周囲のものを震わせていく、それは地面に投げ出された小道具であり、それは観客だったものの一部。
 猟兵達が思わずそちらを見やると、そこにはコオロギのように後ろ足と羽が発達した昆虫のようなナニカ、悍ましき妖虫と言うべきものが震えた物の影から染み出すように次々と現れる。
 その妖虫はその発達した羽を高速で振動させ、その長い触覚をヒクヒクと動かす。
 そしてあちらこちらにフラフラと向けられる触覚。だが直ぐ様一斉にある方向へと向けられる。
 「あら、これは見つけられたかな?」
 それは姿を見えなくしているティファーナの方であり、注意力とその研ぎ澄まされた直感は事態が悪い方向へと向かっていることを察知させた。
 このままだと大変なことになる。
 空に飛んで一旦距離を撮ろうとするティファーナ。
 だが、妖虫達がその異様に発達した羽を広げ翔び立とうとした時、ふとその触覚がゆれた。
 触覚が向いた先にいたのはキファ・リドレッタだった。
 彼女は思う。虫が嫌いだと。頭に宿る大きな花にいつも宿ってくるから。
 そしてそれは今日も同じだった。
 妖虫は惹かれるようにふらふらとキファの上の花へと集う。
 そして、そのまま大きくかじりつこうとして……断ち切られた。
『金糸の罪』が近付いた妖虫を切り裂いた。
 切り裂かれ、断ち切られてもなお動きを止めない妖虫だったが、しぶとく動くものはその蔦によって絡め取られ絞め殺された。
 彼女に宿るは食人花、人を殺せて虫を殺せない道理はない。
殺され動かなくなった妖虫は溶かされ、跡形もなくなる。
「……ありがとうね」
 それはティファーナの感謝の言葉。
「……」
 だがキファはただ沈黙し、淡々と妖虫を処理していく。
 彼女には言葉を声に紡ぐことは出来ない。
 その代わりに返答として小瓶に入った水を操り、空中に文字を象る。
『問題ないわ』
 その宙に綴られた短い文字列にどんな思いが込められているのか。
 定かではなかったがティファーナは温かい物を感じたのだった。
しばしの間、文字に意識を奪われたティファールだったが、ハッと周囲を警戒する。
 召喚された妖虫は概ね片付けられたが、まだ妖虫を召喚した邪神達は残っている。
 それは戦闘において致命的な隙。
 勢いよく邪神の方を振り向くと、そこに舞台の床に次々と倒れ込んでいく邪神達の姿があった。

 舞台は青緑色の血で染められていた。
 倒れた邪神達はどれも関節部から吹き出すように血を流していた。動きは止めていないが、次第に緩慢になっているのが見て取れる。
 呆気に取られるティファーナだったが、そこにパチパチパチ、と拍手の音が聴こえてくる。
「観客として面白い劇を見させて貰ったよ」
 そう言って暗がりから舞台下、観客席の方から姿を現したのは湊だった。
 舞台に近づき、光に照らされた彼の手には何本もの糸が結び付けられていた。それは彼が今までに処してきた咎人達の血で構成された物。
 その糸は血に臥している邪神達の関節へと伸びていたのだった。
 誰が倒したのかは一目瞭然だった
「これはキミが倒してくれたのね」
 ありがとう、と再び感謝の言葉を伝えるティファーナだったが、湊はそれに対して首を振る。
「礼を言われることでもないさ。敵の注意を引いてくれた君たちのお陰だよ」
 それに今は動きを封じているだけだ、と手を大きく振る。
 その手の動きと連動して舞台では再び大きく血しぶきが上がった。
「ま、これでトドメは刺したよ」
 関節部からバラバラになった邪神達を何の感情も籠もっていない目で見つめながら湊は事もなげに言った。
 呼び出された邪神はこれで全て倒した。
 しかし、この戦いはまだ終わらない。
 邪神教徒達が召喚せしめようとした最大の邪神が不完全な儀式を経て召喚されようとしていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『雷穹龍グローレール』

POW   :    雷霆光輪
【超高熱のプラズマリング】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    撃ち砕く紫電
レベル×5本の【雷】属性の【破壊光線】を放つ。
WIZ   :    ドラゴニック・サンダーボルト
【口から吐き出す電撃のブレス】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神楽火・皇士朗です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵しかいなくなった筈のこの劇場に突如として閃光が走り、雷鳴が轟く。
 舞台に塗りたくられた青緑色の血を代償に雷穹龍グローレールが姿を現す。
 稲妻をまとったその巨体は劇場を埋め尽くす
 この邪神を外に出してしまえばこの街の被害は甚大なものになるという言葉が誇張の無い真実だったと猟兵達は実感する。
 戦闘が長引けばこの劇場が崩れ、外にこの邪神が解き放たれてしまう。
 猟兵達は被害を防ぐべく、その身を駆るのだった。
宮矢三・祇明
今回は次のプレイングを有利に進める準備ため積極的には戦わずに敵の邪神『雷穹龍グローレール』の戦闘力の分析と自分の戦闘力を高めるために邪神の周り【グラフィティスプラッシュ】を放ち周りの床や壁を黒い塗料で【塗りつぶし】次の戦闘を有利に立ちまわれる足場を作ります。
失敗しても真の姿の能力値が上がるし、成功すれば次のプレイングに活かせると思っています。
「掃除とかが大変そうだな。」と言いつつ青緑色の血の上に塗料を重ね塗る。もしも『雷穹龍グローレール』が劇場から離れようとしたら攻撃を繰り出し気を引き付ける。ろくな防衛手段も回避能力を持ち合わせていないので敵の攻撃が来れば気合で耐えるか逃げるしかないですね。



 雷鳴が轟く劇場で雷穹龍グローレールは水中に居るかのようにその巨体を捻る。それは水槽に閉じ込められた魚のようでありながら、獣が獲物を前に円状に動く、狩りの予備動作のようだった。
猟兵を歯牙にもかけないその様子は猟兵達を前へと駆り立たせる。
 劇を見る観客の居なくなった劇場でハッピーエンドを迎えることの出来る主役は猟兵か邪神か。
猟兵がジリジリとにじり寄り、機を伺う中、最初に動いたのは宮矢三・祇明だった。
「私が前に出よう……戦力の把握が要だ」
 人格を切り替えると今までの非交戦的な態度とは打って変わって前へと飛び出す。舞台の端からペイントブキを大きく振りかぶると、宙へとその身を投げる。そして、宮矢三は空中でその華奢な身体を回転させ、宙に浮かぶグローレールへ向けて黒い塗料を飛ばす【グラフィティスプラッシュ】を放った。
 グローレールはその身を捻り、避けようとするがその巨体を動かすにはこの劇場は狭すぎた。撒かれた塗料の一部を回避することが出来ずにその身を黒く染めるのだった。
「その巨体ではやはり、回避は不能か」
 宮矢三は着地した先でグローレールの動きを観察していた。付近にはグローレールが躱した塗料が床や壁を黒く染めていた。
「にしても……これだと掃除とかが大変そうだな」
 先の邪神、マガツアリスの青緑色の血液を上書きするように黒く塗られた劇場を見て、ぼそっと呟く。
 青緑色の血が付着していなかった所も黒く塗られたりしていて、手間が増えてるような気がしたが、後始末を頑張るのは猟兵ではなく、UDC組織なので宮矢三は気にしないようにした。
 塗料に気を逸らしたのは一瞬、だがその行為が隙であったのは間違いがなかった。
 視線を戻した先、グローレールはその口を大きく開き、その喉の奥からはバチッという音が漏れていた。
「しくじったな」
 次の瞬間、宮矢三の視界を光が埋め尽くした。
 殺到する電撃のブレス。予備動作に直前で気が付いた宮矢三に対処の余裕は無い、筈だった。彼女の立っている場所が【グラフィティスプラッシュ】で塗られた場所でなければ。
 宮矢三はペイントブキを前に突き出し、地面に立てるように構えると、電撃のブレスに備える。
 電撃は彼女の身を確かに灼いた。だが、一部はペイントブキを伝わり地面へと流れ、弱められた電撃は【グラフィティスプラッシュ】で強化された彼女を打ち倒すには届かない。
「これは結構しんどいな」
 言葉とは裏腹に、その目から闘志は消えない。
「ここなら耐えられるということも分かった。さあ、終わらせよう」
 宮矢三はペイントブキを構え直すと、グローレールを睨みつけるのだった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

宮矢三・祇明
睨み付けたグローレールを観察して知性はあるか、人間を警戒しているのか、見下しているのか、人間がどう映っているかなど推察する。
「まぁ、長期戦は嫌いなので一気に片付けます。」と言い真の姿(見た目は変化なし)を開放して巫覡載霊の舞を真似したユーベルコードを発動して【半霊体】になる。
推察する時間を与えられず攻撃されたらダメージを半減するために【半霊体】になり真の姿を開放する。
●戦闘【黒い衝撃波を放つペン】を後ろ向けて衝撃波を放ち、その反動で一気にグローレールに近づきペン先を鱗の薄い部位に突き刺しゼロ距離で衝撃波を放ち相手に致命傷を与えます。
電撃での攻撃や抵抗は【捨て身の一撃1】で耐えて攻撃を続けます。



グローレールは怒りに震えていた。呼び出された場所は狭く、贄も数える程しかない。そしてその贄に手傷を負わされた。それはかの邪神が今までに負ったことの無い屈辱であった。
 そして思う、眼の前にいる贄をどうやって処理しようかと。どうやったら長く苦しめられるのかと。邪神が率先してヒトを苦しめた経験はない。ヒトは贄であり、それ以上のものではなかったからである。だが、自らを崇めるヒトが贄を差し出すときにどうしているのかは見ていた。絶望というものを与える方法は識っていた。
グローレールは身体を捻りとぐろを巻きながら静かに思案する。どう甚振るのがこの屈辱に相応しいのか。
かの邪神は傲慢さから、猟兵を未だ脅威とは認識していなかった。
そして、相対する宮矢三はそれをつぶさに感じ取っていた。
「追撃が来ないということはそれを思いとどまる何かがあるはず。畳み掛けて来ないのは余裕の表れ、でしょう」
 舐められている。それが彼女の推測。こちらを侮る手合には、その侮りを利用してじわりじわりと追い詰め、気づいた時には王手がかかっている状況に持っていくのが手堅い勝利への道筋。
 だがそれはお互いの勝利条件が最後まで立っていることという場合のみに当てはまること。そしてこの戦いは最後まで立っていた者が勝者ではない。グローレールが外に出てしまえば、猟兵の敗北なのである。
「まあ、どのみち長期戦は嫌いなので一気に片付けます」
 完全勝利には短期決戦しかなく、それは宮矢三の趣向とも合致していた。
 颯爽と取り出した黒いペンを構えるとぼそりと呟く。
「あ、だるい」
その言葉とは裏腹に宮矢三は衝撃波を後方に放ちながら凄まじい勢いで加速する。
 寿命を削る禁忌の技【ペンガデシネ】で加速に利用したのだった。
未だ猟兵をどうしようかと思案していたグローレールはそれに反応できない。
宮矢三の狙いは先程【グラフィティスプラッシュ】で塗られ防御が薄くなった箇所。衝撃波の勢いのままその一点にペンを深々と突き刺す。
「これで……!」
そしてそのまま全力の衝撃波を体内に放つのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フェルト・ユメノアール
さあ、いよいよクライマックス!
ショウマストゴーオン!
どんな事が起こっても、最後までやり遂げる、それがボクのエンタメさ!

このカードは真の姿を解放した時にのみ、召喚する事ができる!
最上無二の魔術師よ!今こそその力を振るい、世界を歓声で包み込め!
カモン!ボクの最高の相棒【SPエンペラージェスター】!
光線を避けるために『地形の利用』で客席や舞台セットに身を隠しつつエンペラージェスターと一緒に敵に接近
ある程度接近したら攻撃を少しでも分散させるために左右に分かれて両方向から攻撃を仕掛ける
『フェイント』を織り交ぜた不規則な動きで敵に行動を見切らせず
目、口など鱗で保護されてない脆い部分を『投擲』で狙っていくよ



 体内に直接衝撃波を打ち込まれたグローレール。頭から尾の先まで、その衝撃は駆け巡りグローレールの動きが止まる。
「今がチャンスだよう!」
 フェルトはそう判断すると勢いよく前へと飛び出した。
 内部から放たれた衝撃波は決して浅くないダメージを残しているはず。
 立て直す前に畳み掛ける。そう考えての行動だった。
「さあ、いよいよクライマックス!最上無二の魔術師よ!今こそその力を振るい、世界を歓声で包み込め!カモン!『SPエンペラージェスター!』」
 その詠唱と共に煌びやかな王冠とマントを身に着けた道化師が召喚された。
フェルトが真の姿を解放した時のみに召喚出来るSP(スマイルパペット)、それがこのエンペラージェスターだった。
 二人は客席を縫うように進んでいく。その身をグローレールから隠しながら、しかし近づく速度を緩めることもなく。
 もう少しで間合いに入る、そんな時だった。
 動きが止まっていたグローレールは無理に身体を捻り、フェルトの方を向くとその口を大きく開いたのだった。
 中には、放電する光の玉。
姿勢は乱れようとも、その攻撃の矛先は間違いなく二人に向いていたのであった。
「それは予測してたよ!」
 しかし、その行動をフェルトは読んでいた。
 口が開くや否や、素早く左右二手に分かれるとフェイントを掛け、不規則な動きで射線から逃れていく。
 そして放たれる無数の光線。
 だが、やはり無理な姿勢から放たれるそれはフェイントに対応出来なかった。
 回避を確信したフェルトは光線が放たれるのとほぼ同じタイミングでトリックスターを投擲する。
 狙いは光線を発射する為に無防備に開かれた口であり、その喉奥。
 口を閉じることの出来ない完璧なタイミングで投げられたトリックスターは口内へと消えていった。
 刺さったのかどうか、それは誰も視認することが出来なかった。
 しかし、グローレールがその身を大きく捻り、口を開かずに唸り声を上げる様から察するに結果は瞭然だった。
「ま、当然の結果だよ!どんな事が起こっても、最後までやり遂げる、それがボクのエンタメさ!」
 フェルトは誇らしげにそう言った。

成功 🔵​🔵​🔴​

セリエルフィナ・メルフォワーゼ
皆が頑張ってくれたお陰で、大分弱ってきたね!
後もう一踏ん張り、ボクも全力で行くよ!

まず宮矢三さんの【グラフィティスプラッシュ】が塗られた場所に立って、そこで【オーラ防御】を全開にする。
その状態で【オーラナイトダンサー】(以下ADK)で、最初から全開になった21体の【ADK】を出すよ。
21体の内、10体は【存在感】【パフォーマンス】【空中戦】【おびき寄せ】【見切り】で、敵のブレスを誘導させる。
そして残り11体を合体させて、フェルトさん同様、敵がブレスを吐こうと口を開けた瞬間を狙って【早業】【先制攻撃】で突撃させる!

えげつないやり方だけど、これ位しかこの竜に通用する戦法はなさそうだし、仕方ないね。



 グローレールは唸っていた。それは痛みによるものか、怒りによるものなのか。一つ確かなのはその唸り声は元より響くように設計されていた劇場を大きく揺らすほど大きいものであった。
「その体躯、巨大とは言えど弱いところは弱いみたいだね」
 セリエルフィナは巨体を見上げながらそう言った。
 グローレールの身体は巨大で、外部から致命の一撃を与えるのは容易ではない。だが先のフェルトの攻撃のように、脆弱な部位への攻撃は有効打足りうる。
 そう判断するとセリエルフィナはその身を駆る。風のように、舞のように。目指すは宮矢三の【グラフィティスプラッシュ】によって塗りつぶされた場所。
それを見たグローレールは威嚇するように更に唸る。
「その唸り声は虚勢? それともはったり?」
だが、セリエルフィナはそれをものともせずに進んでいく。
「あれ、どっちも一緒だったね。でももう着いたよ」
 黒く塗られたその場所で、いくよ、と小さく呟きながらセリエルフィナはその身にオーラを纏う。
それは彼女の戦闘態勢。全力で仕掛ける予備動作だった。
「バックダンサーと一緒に、賑やかにいくよ!」
 その詠唱と共に人型のオーラの炎が放たれる。それはひらひらと舞いながらグローレールを翻弄する踊り子のようであった。
 炎の踊り子は二つのグループに分かれた。一つはグローレールの目前で揺れるように舞注意を惹くもの。その動きは前後左右上下、あらゆる方向に動き、次の動きを読ませない。
 それはグローレールに一つの行動を誘発させる。アギトを大きく開けて広範囲へ撒き散らすブレス攻撃。動きが読めないのならまとめて焼き払うという行動だった。
 しかしその行動はセリエルフィナの読み通りだった。
「行って!オーラナイトダンサー!」
 セリエルフィナはもう一つのグループに分けた炎の踊り子を突撃させる。それらはグローレールの死角、顎下から迫ると一つの炎となってブレスを吐こうとするそのアギトに飛び込んだのだった。
「えげつないやり方だけど、仕方ないね」
 その炎は口腔を焼き尽くし、大きなダメージを与えた。
 グローレールの口元からはもはや唸り声は聞こず、空気の漏れる音のみが聴こえてくる。
 もはやブレス攻撃は不可能となっていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

祝聖嬢・ティファーナ
f03588 紬雁・紅葉から託された“オーロラのヴェール”を纏って“勇気”と“優しさ”と“オーラ防御”を上げて挑みます♪

ティファーナの周りに粘土質の土の精霊に固めてもらい、その外側を火の精霊に固めてもらって、「対雷電対策」を用意して“オーラ防御”で更に固めて挑みます☆
「風は生命の営みを運ぶ大切な自然の伝達役!暴れれば悲しみと寂しさと孤独が運ばれるから早く止めて!」と訴えます♪

どうしても止まらなければ『神罰の聖矢』と『エレメンタル・ピクシィーズ』の氷で攻撃をします(氷は雷撃で水になって水が雷を拡散させます)☆
頑張ってくれた精霊たちには終わった後に“こんぺいとう”を配って労を労います♪



 ブレスを封じられたとなってもなお、グローレールの戦意が衰えることはなかった。怒り狂ったようにその巨躯を震わせ、尾は観客席を薙ぎ払う。
 手当たり次第に破壊の力を振りまく様は暴風と表現する他ないだろう。
 そして、それだけでは物足りなかったのだろう。グローレールの身体全体が稲妻を帯びたかと思うと、その稲妻はグローレールの頭部へと集まり、環状に迸り始める。
 大技を繰り出す前兆だった。
 それに対処しようと、一人の猟兵が前に出る。
 それは小さな身体にオーロラのヴェールを纏ったフェアリー、祝聖嬢・ティファーナだった。
 彼女の纏うヴェールは親しい友から託されたもの。勇気と優しさを与え、オーラの守りを齎すもの。
 彼女は一人ではなく二人でグローレールと向き合っていた。刺激しないように慎重に、慎重に前へ出ながら。
 彼女は無防備にその身を晒した訳ではなかった。万が一に備え、自分の周囲に土の精霊を、その外側に火の精霊を集め、雷電対策を講じていた。
 慎重に距離を見計らい、限界まで近づくとティファーナは言葉を紡いだ。
「風は生命の営みを運ぶ大切な自然の伝達役!暴れれば悲しみと寂しさと孤独が運ばれるから早く止めて!」
 彼女の言葉、それは平和を願うもの。争いを否定するもの。
 心からの言葉。
 しかしそれに対しての応答はなく、グローレールの頭上の稲妻は収まる気配を見せない。
 そして環状になっていた稲妻は次第にその直径を大きくしていく。
 攻撃を放とうとしているのはもはや瞭然だった。
「残念だね」
 雷霆光輪とよばれる超高温のプラズマリングが放たれるのとほぼ同時に、ティファーナは素早く己が身に宿す奇跡を起こす。
「歌唱う、我らが精霊・聖霊・月霊よ♪ 歌い、踊り、唄い、舞踏れ♪ 素ノ源ヨリ来タレリ…」
 それは精霊を使役する詞。呼び出された精霊は氷の矢を放つ。
 放たれた氷の矢はティファーナの前面を大きくカバーするようにバラバラの方向へと放たれる。
 氷の矢は雷霆光輪とぶつかると溶けて水となり、そして稲妻が拡散されていく。ティファーナの作戦通りに。
 周囲一帯を無差別に攻撃する大技である以上、撃った後には好きが出来る。それをティファーナは狙っていた。
「光りを怯える闇と悪よ、悔い改めなさい…」
 ティファーナの小さな指はグローレールを指し示す。
 それは神罰執行の合図。
 劇場の天井を突き破り、グローレールに対して光が降り注いだ。
 逃れる術を持たないグローレールはその光に身を焼かれ、もがき苦しむのだった。
 ティファーナはその様子を静かに見つめていた。胸中には色々な思いが渦巻いていた。
 そして、ふと諦めたように視線を外すと周囲に集まっていた土、火、氷の精霊に『こんぺいとう』を分け与えていくのだった。
「みんな、お疲れさまだよ。ありがとうね」

成功 🔵​🔵​🔴​

トール・ペルクナス
雷の龍か
相手にとって不足はない、雷光騎士たる我が身でお相手しよう

戦闘開始と同時に【雷光騎士】を発動
仁王立ちの4本の浮遊する剣と1本の大剣を携えた白銀の機械騎士が現れる
それと同化し祈りの声により巨大化するが今回は劇場が壊れない程度に留める
『このサイズでも十分だ』
両刃の大剣を手に取り【属性攻撃:雷】を纏わせ【先制攻撃】の上段からの一刀
【電磁誘導】も発動し【空中戦】へと移行
滞空する4本の剣を射出しながらも大剣で斬りつけ続けヒット&アウェイで攻撃を続ける
『貴様がどんな神かは知らん。だが無辜なる民を害するのであれば倒すまで』
【力溜め】した大剣の一突きを頭部へ突き刺す
※アドリブ歓迎



 天からの光は劇場の配線をも傷つけたのか、劇場内の明かりは全て落ち、天井に開いた穴から差し込む光だけが内部を照らし出していた。
 降り注ぐ光の下、傷付いた身体を庇うように、周囲を威嚇するかのようにグローレールは弾けるような音と共に紫電を纏う。
 長い戦いによってグローレールは疲弊しているのは間違いないが、未だ猟兵にとって致命となる攻撃が可能なのは明白であった。
「この状態でも未だ稲妻を操るか。雷を冠する龍の名に恥じぬ有様だな」
 それは賛辞か、ただ現状を分析しただけの言葉か。トール・ペルクナスはグローレールを見据えながら前と進む。
「小さき輝きよ。お前たちの祈りは届いた」
 紡ぐは詠唱。彼の身に奇跡を宿すための詞。
「故に私は現れる。雷光の輝きを伴う騎士となりて邪悪の闇を討ち滅ぼそう。出でよ―――雷光騎士」
 その言葉とともに閃光が瞬く。その場の誰もが一瞬視界を失った。
 光が去った後、機械によって成る巨大な白銀の騎士、雷光騎士がそこにいた。グローレール程ではないが、圧迫感を覚える程の体躯。そしてその四方には体躯に相応しい大きさの大剣が浮かび、手にもまた一本の両刃の大剣が握られていた。
「この劇場で戦うことを考えればこれで精一杯か。だがこのサイズでも十分だ」
 その言葉からは幾分かの余裕が感じられた。
 さあ、行くぞ。
 言うのが先か、動くのが先か。ただ言えるのは先手をとったのがトールだということのみ。
 両手で握った大剣に紫電を纏わせると、グローレールへ向かって切り込んでいく。
その動きはまさに電光石火というべき速さだった。
 グローレールはトールを迎え撃とうとその身に纏った稲妻を円状に収束させるが、それを撃ち出すよりも先にトールの射程に入っていた。
「遅い! 既に間合いだぞ!」
トールによって上段から振り下ろされる大剣はグローレールが収束させていた稲妻を切り裂き四散させ、グローレールの身に刀傷を刻み込んだ。
 そして追撃とばかりに四本の大剣を射出する。
 射出された大剣は空気を裂きながら進む。だがその剣がグローレールに届くことはなかった。グローレールは四散させられた稲妻を四方八方で束ね、そのうちの四つを光線として発射し大剣を迎撃したのだった。
 トールは迎撃され、弾かれた大剣のコントロールを慌てて取り戻す。
「そう容易くはないか……。中々出来る部類ではあるか」
 グローレールの周囲には束ねられた無数の稲妻がなおも浮かんでいた。攻撃の準備は整ったと言ったところだろうか。
 だがトールはそれに臆すことはない。
「貴様がどんな神かは知らん。だが無辜なる民を害するのであれば倒すまで」
 その言葉と共に再度切り込んでいく。四つの大剣を今度は射出せず、四方に配置し盾となるようにして突き進む。
 降り注ぐ無数の光線を躱し、切り払い、逸らし、光の奔流とも言うべき攻撃を正面からいなしていく。
 その動きは正しく騎士であった。
「懐ではその光線は撃てないだろう?」
 突き進んだ先、グローレールの懐に飛び込むと大剣を強く握りしめ、振るう。
 最初と同じように上段から振り下ろされた大剣はグローレールに深い太刀傷を負わせたのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋縅・善蔵
見敵一番、【力溜め】と【オーラ防御】で守りを底上げ。
敵からの攻撃は【盾受け】と【雷撃耐性】で極力凌ぎ、ダメージを受けたら「獣の牙」を使い【生命力吸収】。
「屠龍」で以て【鎧砕き】の攻撃を仕掛け、敵が弱ったら真の力の[斬鐡]で長い胴体を切断、泣き別れにする。
それでも生きてたら[マジ殴り]や、[ミサイルカーニバル]で攻撃・殲滅する。
他、連携やアドリブ等はOK。



 グローレールはその身に多くの傷を抱えながらも、猟兵に向けて殺意の籠もった視線を向けていた。
 そしてもはや見境無しとばかりに周囲に電撃をばら撒き始めていた。
 収束していく電光。最初はパチパチと音を立てていたが次第にその音は大きくなりバチバチと腹の底に響くような轟音となっていく。
「ここは俺に任せな」
 そう言ってグローレールの前に立ちはだかるのは緋縅・善蔵だった。善蔵は大剣を盾とするように構えると力を籠め、守りに徹する。
 そこにグローレールから放たれた超高熱のプラズマリングが襲いかかる。大剣に当たると激しい火花を散らしていく。そしてその衝撃から大剣を持つ手が震える。
 だが決して手放すことはなく、無傷とは行かないまでも行動可能な状態でそこにあった。それは持ち前の耐性と防御に徹したことによって成されたものだった。
「さあ、凌いだぞ。反撃と行こうか」
周囲に飛び散る光が収まったとき、反撃とばかりに懐から『獣の牙』が飛び出していく。それは自動でグローレールのもとに向かうと、先の戦いで付けられた太刀傷に突き刺さり、生命力を啜っていく。
「こっちが本命だ」
 そして善蔵は大剣、『屠龍』を握りしめるとグローレールへと駆け出していく。
 大きく振りかぶり、勢いよく振り下ろされた大剣はグローレールの尾を覆う鱗を破壊する。
「千技一刀の下に斬り捨てる」
 斬鐡。
 鱗が剥がれむき出しとなった尾の肉を断ち切り、切り落とす。
 切断面からは赤い血が吹き出し、劇場を朱くそめていくのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

緋縅・善蔵
「しぶといな。魔物であろうが邪神であろうが神を殺すのは大変だ」
先ずは【オーラ防御】で守りを上げ、敵の攻撃を躱しながれ〔斬鐡〕を使用。鱗を可能な限り【鎧砕き】で剥ぎ取る。
【2回攻撃】で敵の血肉を弾けさせ、攻撃を受けても【電気耐性】で堪える。
血塗れになった敵に【空中戦】を使用して【捨て身攻撃】飛び移る
そして急所を目掛けて【力溜め】を込めた〔マジ殴り〕を血肉を挫滅し抉り取り、それでも駄目なら〔斬鐡〕で切断し、〔ミサイルカーニバル〕で焼き尽くして引導を渡す。
ユーベルコードや技能を使用する際は真の力で。
他、アドリブや連携は歓迎。



 血飛沫を浴びながらも緋縅・善蔵はグローレールを見上げていた。
 グローレールはすでに多くの血を撒き散らし、激しく迸っていた稲妻は今では力なさげにパチパチと音を立てているのみ。召喚された当初の気勢はなく、周囲を屈服させるような威圧感はもはや消え失せていた。
 だが、その瞳にはなおも猟兵への敵意があり、目の前に立つ善蔵を睨むような視線には確かな殺意が籠もっていた。
「しぶといな。魔物であろうが邪神であろうが神を殺すのは大変だ」
 痛手を与えてなお尽きぬ殺意に思わず言葉を漏らす。だが善蔵の口ぶりからは殺意に臆するような気配は微塵も感じられなかった。
 成すべきことを成す。そのために善蔵はもう一度『屠龍』を握りしめるのだった。
「これで終わらせるぞ」
 疾駆、グローレールの血で濡れ、滑りやすくなった地面を踏みしめるように、打ち抜くかのように大地を駆っていく。
 それを迎え撃つグローレールは稲妻を散発的に飛ばしてくる。
「それはもう見切っている」
 だがその稲妻は先程までの大技と比べれば威力も速度も劣るもの。善蔵は走りながら『屠龍』を振るい、重心を動かすことで器用に、速度を落とすことなく回避していく。
 そして障害などなかったかのようにグローレールへと肉薄する。
狙うは急所。動きの鈍くなった今でこそ大技を脳天に叩き込む機会だった。
「千技一刀の下に斬り捨てる」
 その呟きとともに『屠龍』をグローレールの額に向かって薙ぐように振るう。その動きは切ることよりも当てることを重視したもの。それだけでは鱗を破り、グローレールに傷をつけるのは困難であった。それだけなら。
 善蔵が振るうのはただの大剣ではなく【斬鐡】を纏った大剣。
 『屠龍』が当たった鱗は切り裂かれ、地に落ちていく。そして薙ぐように振るわれたことでグローレールの額には鱗で覆われていない箇所が生まれていた。
 もう一度そこを斬りつければトドメとなる。だが、それをただで許すグローレールではなかった。
 弱々しくはなっていたが、纏っていた稲妻を解放するかのように周囲に弾けさせたのだった。
「くっ、だがこの程度では!」
 当てることを重視した一撃だったのであろうその稲妻は確かに善蔵の身を焼き、身体にしびれるような感覚と浮ついたような麻痺する感覚をもたらし、善蔵は思わず『屠龍』を手放してしまう。
 だがそれまでだった。善蔵は持ち前の電撃耐性でもってなおもグローレールの前に立っていた。
 身体が麻痺していて大剣を握っていた片腕がなおも動かないのは事実。だがそれは善蔵が戦いをやめる理由にはならなかった。
「剣が握れないからそれで終わりって訳にはいかないもんでな」
 固く、残った利き腕を握りしめるとグローレールへと突撃していく。
 何の障害もなく再度グローレールへと近付ける訳ではない。迎撃として弱いプラズマリングが幾度となく放たれる。だが身体を捻り、動かなくなった片腕を盾とするかのように突き出し、怯むことなく進んでいく。
 攻撃を受ける度に傷ついているのは間違いがなかった。だが傷付いて力が抜けていくことはなく、むしろ力が増していった。
 自分では自分が今どんな姿をしているのか見ることが出来ないがグローレールへと向かう中、一歩一歩進むたびに善蔵は自分が真の姿に近付いていくのを直感していた。
 これがオブリビオンを倒すために自分の力。
 気づけば既にグローレールはすぐ目の前。握るは拳。だが振るわれるは渾身の一撃。
「拳骨じゃ済まさねぇぞ!」
 大地を蹴り、その身を宙に浮かせる。そしてその勢いのままに拳がグローレールの無防備になった額へと叩き込まれ、鈍い打撃音と吹き出るような血飛沫が再度、善蔵の身を濡らすのだった。
「これでようやく終わりだな」
 自分のものかグローレールのものか、どちらか定かではない血を拭って善蔵は達成感に身を沈ませるのだった。

 グローレールが先程まで纏っていた稲妻は消えてなくなり、宙に浮かんでいたその巨体は地に落ちた。
 劇場にはもはや光を放つ存在はなく、全てが終わったということを物語っていた。
残った後始末はUDC組織が担った。劇場設備への被害は全て落雷のせいということになり、劇団員には落雷による集団パニックでの幻覚という説明という名の暗示が施された。
 劇場は閉鎖されたものの機材等は劇団の持ち物ということでそのまま残された。
 騙されるような形で出来上がり、拠点を失った劇団だが、場所さえあれば一流の劇ができるという触れ込みのもと今後活躍していくこととなったのは僥倖だったのだろう。
 こうして劇場一つを利用した邪神教団の企みは潰え、平和が訪れたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年03月08日


挿絵イラスト