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アルダワより眠気をこめて〜それぞれの思い

#アルダワ魔法学園 #微睡の残滓 #NPC:ベテラン学生(ダンテ)

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#アルダワ魔法学園
#微睡の残滓
#NPC:ベテラン学生(ダンテ)


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●撤退戦
 アルダワ魔法学園。この学園のある世界は全ての災魔――つまりオブリビオンを『究極の地下迷宮「アルダワ」』に封印している。そんなアルダワに異変が起こっていた。

「みんな、気をしっかり持つんだ! ひとまず上の階層へ避難しよう。ここは俺が時間を稼ぐ」
 倒れた仲間を抱えて撤退する学生達。彼らを守るように一人のベテランの青年学生がロングソードを手に前へと出る。
 このアルダワ魔法学園は封印した災魔を外へ出さないための組織だ。そのため学生たちは弱い災魔となら戦えるだけの力量は持っており、生きてる内に引退できれば英雄として故郷で余生を送ることが出来るほど。
 だがしかし今回は相手が悪い。何故なら学園迷宮の『フロアボス』と呼ばれる強い個体が上の階層へと進行をしてきているからだ。

「先輩、あたしもまだやれるッス! まだ精霊術が使える。だから……!」
 火の精霊を宿すエレメンタルロッドを手に小柄なセミロングの髪の少女がベテラン学生の背中へ声をかけた。その表情は、先輩を一人で残すともう会えなくなる――そう予感しているかの様でもある。
 そんな後輩へ彼は微笑みかける。
「……大丈夫、今度はちゃんと周りを頼るさ。援護を頼む。そして倒れた者たちの撤退が終わるまで持ちこたえよう。直ぐに猟兵――『転校生』たちが来てくれるはずだ」
「はいっス!」
 二人は迫りくる災魔を迎え撃つ。

●まずは迫りくる敵を撃破しよう!
「集まってくれて、ありがとうございます!アルダワ魔法学園が、ピンチです!」
 グリモア猟兵のユーノ・エスメラルダ(f10751)はグリモアベースに集まってくれた猟兵たちにぺこりとお辞儀をすると、簡素な説明を始める。
「アルダワ魔法学園で、迷宮のフロアボスの一人が上の階層へ攻め込んできました」
 ユーノは持ってきたノートへ簡単な地図を描いていく。上の階へつづく階段があるフロアには侵入を阻むバリケードとして土のうや木箱が配置されている様だ。
「現在、このフロアでは撤退が始まっています。進行してきたフロアボスは直接的な戦闘能力はあまりありませんが、特殊な能力を持っておりその力で次々と腕に覚えのある学生が戦闘不能になっているのです」
 その特殊能力とは――。
「眠気です!」
 眠気。
 ユーノは続けてふわっとした髪の少女の絵を描いた。眠そうなぼんやりした顔で手にヌイグルミを持っている敵だ。
「このフロアボスの名は『微睡の残滓』と言います。とにかく眠りにこだわりがあるオブリビオンで、周囲も同様に眠りに誘ってくる強敵です。睡眠導入の道具を召喚したり、睡眠へ誘惑したり、快眠空間に取り込もうとしたりしてきます……!」
 なんと恐ろしい敵なんだ……。
「さらにその配下として虹色でいい香りがしてとろとろプルプルのウォーターベッドのようなスライム『にじいろとろりん』たちがついてきて、睡眠道具として拾ってほしそうに訴えてきます」
 続けてぷるんとしたスライムが描かれた。どうやらこちらも魅惑的な身体で誘惑してくるらしい。
「現在、撤退を支援するために二名の学生が残りその強靭な精神力でなんとか睡魔に耐えながらスライムを撃退していますが、こちらも時間の問題となっています。アルダワ魔法学園を守るため、どうか……皆さんの力を貸してください」

●平和を守るため
「アルダワ魔法学園では学園側も猟兵の存在を把握して、猟兵全員を『転校生』として迎え入れています。なので立場を隠したり説明したりする必要は有りません」
 それと、とユーノは説明を付け加える。
「この戦いが無事に終わると、地下迷宮の中の特殊フロアでお疲れ花火パーティが行われるみたいです。アルダワ魔法学園は災魔と戦う日々でもあるため、こういう戦いの節目でパーティをすることは珍しくないとか」
 ノートのページをめくり絵描かれるのは星空とそこに煌めく花火たち。
「このパーティ会場は、迷宮の一角ですが天井が魔法か何かで空のようになっていて、まるで外に居るように楽しめます。地下迷宮『アルダワ』……不思議ですね……!」

 ユーノは説明を終えると転移のための準備を始めた。
「もし全ての階層を突破されてしまえば、非戦闘員も数多くいる学園に被害が出てしまいます……そしてもし魔法学園がオブリビオン――災魔の手に落ちれば、この世界は平和を守るための防衛の手段を一つ失うこととなるでしょう」
 ユーノは胸の前で手を組み無事の祈りを捧げながら猟兵たちを転移させる。
「ユーノはみなさんを転移させなければならないので、同行はできません。みなさまに幸運がありますように……」


ウノ アキラ
 はじめましての方は初めまして。そしてこんにちわ。
 最近は朝が涼しくて眠いです。ウノ アキラです。
 このオープニングに興味を持っていただき、ありがとうございます。

●お得情報
 マスター紹介ページにもあるとおり執筆は主に土日になるので、【プレイングを安定して受け付けられるのが『毎週木曜の8時30分』から『土曜の間』になります】ことをご了承ください。
 章がクリアにならず引き続き参加を募る場合も木曜から土曜にかけてが採用しやすいです。
 他にもマスター紹介のページは一読頂けると文字数を少し節約できるかもしれません。

●依頼について
 アルダワ魔法学園の依頼となります。
 一章は集団戦。二章がボス戦。三章が日常となります。

 全体的に睡眠への誘惑と戦う感じになると思います。

 戦闘が苦手な方、支援型や回復型の方は前線で戦う二人の学生の支援をすることで活躍ができます。
 学生の二人はユーベルコードは仕えません。二人の情報は次の通りとなっています。

●ベテラン学生
 装備:ロングソード、魔法学園服、写真入りのロケットペンダント、氷の装飾の指輪。
 特徴:派手さはないものの攻防のバランスが良い堅実な戦いをします。
 ペンダントの写真には大切な思い出があるらしく、そのペンダントを握り決意と気合いを固めながら睡魔に対抗しています。
 後輩のことは妹のような存在として見ています。

●後輩少女
 装備:エレメンタルロッド、ナイフ、魔法学園服。
 特徴:身のこなしが軽く接近戦のほうが力を発揮しますが、体力がなくすぐバテてしまいます。
 そのため長期戦ではサブウェポンのエレメンタルロッドから炎のミサイルを一発ずつ発射して援護射撃をします。
 先輩のことは異性として意識しています。先輩への気持ちと気合いで睡魔に対抗しています。

●補足
 ロケットペンダントには写真の他に『苦いお野菜もちゃんと食べてください』と書かれた短いメッセージの紙がお守りとして折りたたまれて入っている様です。

 よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『にじいろとろりん』

POW   :    とろりんは、ひろってほしそうに、きみをみている。
【ひろってほしそうなまなざし】が命中した対象に対し、高威力高命中の【ひろってあたっく】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    とろりんは、うったえている。
【拾ってほしい気持ちを訴える鳴き声】を聞いて共感した対象全てを治療する。
WIZ   :    とろりんは、りらっくすしている。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【体の一部】から排出する。失敗すると被害は2倍。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●眠気をさそう、とろりん
 それはアルダワ地下迷宮に時おり現れる虹色のスライム。しかしフロアボスの影響なのかこの『にじいろとろりん』はすこし特殊な能力をもっていた。

 香りがするのだ。
 しかも安眠とリラックスを誘うベルガモットをベースとしたほんのりラベンダーを加えたアロマの香り……!

 とろりんぷるんと進むとろりんはこのリラックスする香りを振りまきながらぷるぷるひんやりと進んでくる。しかし油断することなかれ。一度捕まれば人をダメにするかの如く癒やしを与えてくる。
 この眠くする攻撃はユーベルコードではないので強い意志で普通に防げるのだが、連日の迷宮の探索で披露が蓄積している経験豊かな学生ほどこの誘惑の前に倒れて眠ってしまうのだった。

「――『転校生』! 来てくれたのか!」
 猟兵たちが到着すると、ベテラン学生が安堵の表情を上げる。
「数が多くて二人では大変だったんだ。協力してみんなでこいつらを倒そう」
 ベテラン学生も、そしてその隣りにいる後輩も、眠そうに少しフラフラしている。この二人も疲れが溜まっているのだろう。

 今こそ猟兵――『転校生』の力が必要とされている……!
鈴木・志乃
……正直な感想を言っていいかな? あれ、怖いんだけども。

UC発動

(すうっ)
おきろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああ!!!!
【祈り、破魔、鼓舞、大声、衝撃波、なぎ払い】
【マイク+全力魔法で拡声】

よっし起きたね
私シノ、よろしゅうよろしゅう!

オーラ防御を自身と二人に纏わせてー第六感で攻撃を見切り光の鎖で早業武器受けからのカウンター捕縛
眠りそうになったら適宜大声出して強制起床させるわ、おはようございます!!

周囲の器物を念動力で巻き上げ、睡『魔』を滅する破魔の全力魔法を乗せた衝撃波で一切合切をなぎ払います


文車・妖
ちょっとした安らぎの睡眠……素敵なのです
でも、学生さん達が危険に晒されるのはいけないのでどうにかしないとですね

目覚めに関する本を開き『八百万の書庫』にて無限に創り出したページ達を
にじいろとろりん達に飛ばして表面をページで覆い尽くしてしまうのです
りらっくすする匂いを、髪とインクの匂いで埋め尽くしあまつさえ動きを封じる
これで時間稼ぎにはなるでしょうか?
今の内に勇敢な学生さん達が撤退する手伝いをして、他の人がとろりんを打ち破るまで
無理をさせないように説得しちゃうのです

今の内に仮眠を少しでもとってもらって、肝心の眠気に対抗できるよう
濃い珈琲も用意しておいてあげるので飲んでくださいね


クシナ・イリオム
また、ファンシーな敵が出てきたね。
見た目で危機感とやる気がそがれるけど、仕事なら戦うしかないか…

魔法罠即席設計で大量に地雷をばら撒いて敵をふっ飛ばしつつ寝るどころじゃない騒音を起こすよ。
ついでに爆竹もばら撒いとこ。
はい、全員下がって。耳をふさいで口を開いてね。
…テーマパークに来たみたいだね。テンション上がるなぁ。

地雷で攻撃するついでに爆炎に紛れて【暗殺】をしかけて数を減らす。
爆音で鼓膜がやられるかもだけど【激痛体制】でなんとか耐える。

この間模擬戦やったときに睡眠薬でやられたからね。
眠気で動けなくなる前に出し惜しみなしの全力で行く。
そっちの物量と私達の鼓膜で根比べといこう…!


村崎・ゆかり
&&&

おまたせ! 『転校生』の到着よ!

睡魔か、厄介。不眠の行を思い出すわ。正式には四無行だけど、成長期にそれやると人間壊れるから。
とにかく二人は下がって。後はあたし達が引き受ける。

あたしはバリケードの陰から、霊符『白一色』を使った不動明王火界咒をにじいろとろりんの群に放ち続ける。
技能は「全力魔法」「高速詠唱」炎の「属性攻撃」「2回攻撃」「範囲攻撃」。

敵の数の把握のため黒鴉召喚で式を一打ちして、頭上から戦況確認。
式を介して眠気を喰らうとまずいから、距離を取っておく。
前に出てくるのから火界咒で焼き払う。

今一つやる気が出なくなる敵だけど……いけないいけない。術中に陥るところだったわ。なんて恐ろしい。



●反撃の気運
「おきろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああ!!!!」
 迷宮内に声がこだました。それは鈴木・志乃(ブラック・f12101)のユーベルコード『祈願成就の神子』――誘惑を打ち祓い、困難に立ち向かう鼓舞と祈り――による声。マイクを通したその声は衝撃を伴いフロア内へビリビリと伝わり、眠気で動きの鈍っていた学生たちを覚醒させた。
 この声により前線に立っていた二人以外の学生たちも戦意を取り戻していく。続けて志乃は戦う意志のある学生たちへオーラを分けていった。それは守りを高める力。
「これは……防御の支援か……! 助かる!」
 守りのオーラを与えた志乃は、一時的に目が覚めた学生たちへまぶしい笑顔を返した。
「よっし起きたね。私シノ、よろしゅうよろしゅう!」
 続けてフロア内にパラパラと紙が舞う。風もなく宙を泳ぐ紙の束は小さな龍のごとくうねりながらフロア内を駆け巡ると周囲の『にじいろとろりん』 へ一枚ずつ張り付いて動きを阻害していく。
「これで時間稼ぎにはなるでしょうか?」
 手から次々と魔導書ページを召喚――ユーベルコード『八百万の書庫』を使用――しながら文車・妖(本が無ければこの世は闇よ・f14528)もバリケードの木箱の裏からひょこっと顔を出す。

 妖により生み出された紙の龍がひと通りの『にじいろとろりん』の動きを封じると続けてバラバラと白紙のトランプのような紙がばら撒かれていく。そのトランプは村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)の霊符、『白一色』。
「おまたせ! 『転校生』の到着よ! 危ないからみんな少し下がって――ノウマク サラバタタギャテイ――」
 炎を噴出させる術、ユーベルコード『不動明王火界咒』の詠唱を始めるゆかり。いつの間にか『にじいろとろりん』たちの群れの中にいたクシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)も小さな体を飛翔させ後方へ下がりながら周囲へ後退を促していく。
「はい、全員下がって。耳をふさいで口を開いてね」
 ゆかりの『不動明王火界咒』により白紙のトランプから絡みつく炎が噴出すると魔道書が張り付く『にじいろとろりん』たちを広範囲の炎で包んでいく。そして炎に反応してドン、ドンと続けて爆発が響いていった。魔法罠の地雷――クシナのユーベルコード『暗殺技能・魔法罠即席設計』によるトラップの爆発だ。吹き飛ばされた『にじいろとろりん』たちはべちゃと壁や床に張り付き動かなくなる。

 魔法罠の地雷の音は爆竹の花火のようで、その破裂により弾け飛ぶ炎のいろどりはまるで祭りの様で。
「……テーマパークに来たみたいだね。テンション上がるなぁ」
 表情こそ変わらないもののクシナの声色はどこか楽しそうである。

 猟兵たちの到着により戦況は一気にひっくり返りアルダワ学園側が優勢となった。先ほどまでの撤退戦とは打って変わりここから反撃へと流れが変わる。

●にじいろとろりん
 突然の炎と爆発に『にじいろとろりん』たちは怯えプルプルと逃げまとう。この場にいる特異なこの群れは、相手に睡魔を誘う性質からまともに危険にさらされたことが無かった様だ。逃げまとう中、仕掛けられた地雷を踏んだものがドンッと四散し散っていく。
 次第に『にじいろとろりん』たちは、逃げるのをあきらめると猟兵たちを無力化しようとつぶらな瞳でうるうると見つめたり、キューキューと空気を漏らし小動物のような鳴き声で戦意がないことを訴え始めた。
「くっ……またあの鳴き声と目だ……まるで捨て猫か捨て犬の様な……」
 一部の学生の戦意がガクッと落ち、その鳴き声で治療されて気が抜けた者から再びウトウトと眠気に襲われ始める。

 しかしこのぬめッとした体が虹色にギラっときらめく様は見ようによっては軟体の虫などを連想させる。故に、この瞳や鳴き声は志乃には効かなかった。
「……正直な感想を言っていいかな?  あれ、怖いんだけども」
 うへっとやや引きつつ志乃は『光の鎖』を振るってとろりんの動きを封じて学生たちの援護をする。
「助かる!」
 一人の学生による斧の一撃で一匹の『にじいろとろりん』は真っ二つになりどろりと崩れた。学生たちも善戦してはいるが緊張を解き眠りへと誘う睡魔にやられ、動きが鈍い者は少なくない。
「おはようございます!!」
 志乃は再び、祈りと鼓舞を込めた目覚めの声をフロア内へと響かせ、学生たちを起こしていく。
「このままじゃらちが明かないわ」
 志乃は周辺の地形を改めて見渡した。後方の上の階に続く階段の前にはバリケードとして土のうや木箱が配置されており、前方には開けた場所。しかしその向こうの下の階に続く階段の前にも土のうや木箱があり、その後ろから階段を上ってきた『にじいろとろりん』たちがぴょんぴょんと跳ねて現れてきている。

 元は下の階で防戦をしていたのがここまで突破され、グリモアベースで知らされた状態になった様子である。ということはこの前方にある器物はもうバリケードとしては無用の物――。
「――だったら、ちょーっと派手にいこう。みんな、もう一度下がって!」
 志乃は前方にある不要の土のうや木箱へ全力の念動力を向けた。それらはふわりと浮くと次第に渦のように回り衝撃を生み出し始める。
 一方でフェアリーの小さな体躯と機動力を生かし敵を『暗殺』していたクシナは、志乃が行おうとすることを見ると再び『暗殺技能・魔法罠即席設計』を発動させた。
「じゃあ、私のトラップも一緒に巻き込んでもらおう。感応系構築……効果体設置……」
 ふわりと浮いていく木箱へ衝撃で起爆する魔法が付与されていく。

 巻き込んだものを器物で擦りつぶし時折爆発が起こる竜巻が念動力で生み出された。それは『にじいろとろりん』たちを巻き込んで薙ぎ払っていく。
 一方で竜巻から逃げようとする『にじいろとろりん』は地雷を踏み爆破され、暗殺妖精によりワイヤーの輪に締められ輪切りにされていく。
(爆音で鼓膜がやられるかもだけど、激痛耐性でなんとか耐えよう)
 爆発の衝撃をモノともせず念動力に巻き込まれる危険を冒しクシナはワイヤーを振るう。この戦場からはたとえネズミ一匹だろうと逃げることは出来ない――いや、逃がさない。
(そっちの物量と私達の体で根比べといこう……!)

 ガコッ、ドンッと竜巻の中でモノがぶつかる音や地雷による爆音が響く中で眠気の酷い学生から再度、撤退を始めていった。猟兵――『転校生』たちの参戦で確かに状況は有利になっている。そして敵を上層へ上げないようにするためにもここでなるべく敵を減らして食い止めてもおきたい。だが……アルダワ学園側も消耗が大きい。
 この眠気に身をゆだねて休むのならこの場は『転校生』たちに任せて後方の安全地帯で一休みを――。

●後方へ
「不眠の行を思い出すわ。正式には四無行だけど……成長期にそれやると人間壊れるから。無理せず下がって」
 ゆかりはかつての修行を思い出しながら、眠りに抗うことへの心身への影響を心配し学生たちの撤退を支援していた。
 先ほどまでは気力が限界そうな者から助けに入り、『不動明王火界咒』で『にじいろとろりん』を焼き払っていたが前線の動きにより敵との遭遇は格段に減っている。
「今一つやる気が出なくなる敵だったけど……あれだけ殲滅されていれば大丈夫そうね」
 竜巻に巻き上げられる『にじいろとろりん』と一瞬目が合うゆかり。その子犬のような助けを求める瞳に一瞬心を奪われる。
「――はっ。いけないいけない。術中に陥るところだったわ。なんて恐ろしい」
 誘惑を振り払うように頭を振るとゆかりは残る二人――ベテラン学生とその後輩へ声をかけた。
「二人は下がって。後はあたし達が引き受ける」
 かつて蒸気の中の工場群を抜けた先――蒸気の向こうの楽園で会った顔を見つけベテラン学生は驚きの顔を見せる。
「……君は確かあの時の」
「む、先輩の知り合いっスか」
 後輩の少女はベテラン学生を問い詰めるような視線を投げるが、ここは悠長に話している時間はない。
「積もる話は戦いが全部終わった後にでも。とにかくここは私たちに任せて」
 ゆかりは二人を一度休ませようと後方の仮設の休憩所へと促した。
「ありがとう。先に一休みさせてもらう。休んだらまた援護に来るよ。スライムくらいなら俺たちでも戦えるから」

 魔道書のページで『にじいろとろりん』を妨害し援護をしていた妖も、撤退を手伝い仮設の休憩所へと学生たちを運んでいた。
「さあ、今の内に仮眠を少しでもとってくださいです」
 完全に意識を失い眠りこけてしまった者はヤドリガミである自身の本体のレトロな旅行鞄へ乗せて、コロコロと運搬してはバリケードの奥の休憩所へ運んでいく。
「ちょっとした安らぎの睡眠……素敵なのです。でも、学生さん達が危険に晒されるのはいけないのです」
 バリケードの向こうで竜巻に巻き上げられ、爆発で吹き飛んでいく『にじいろとろりん』たちを見る限りはこのままどうにかできそうだ。
「仮眠を取り終えてまた戦いに出るなら、肝心の眠気に対抗できるよう濃い珈琲も用意していますです。飲んでくださいね」
 妖が毛布やポットやコップなどを運んでは配っていると見知った顔を見つけた。
「おや、学生さん。お久しぶりなのです」
「君も、来ていたのか。そうだ。写真……ありがとう」
 蒸気の向こうの楽園で出会った猟兵のうち二人目と再会したベテラン学生はあの時の礼を簡素に伝える。
「ちゃんと背負って運んで、前に進んでいるようですね」
 しばし思い出が胸の内を過る。
「この写真の人がだれか知ってるっスか! 先輩、教えてくれなくて……!」
「それは次の機会にでも。今は休んでください。休んだらまたお手伝いをお願いしますです」
 話が長くなりそうな気配を感じた妖はまくらを二人に渡すと休憩所の仮眠のためのスペースを指差す。


 猟兵たちの参戦により、いったんひと眠りをする余裕が産まれた。これによりリフレッシュした学生から戦線に戻って『にじいろとろりん』のせん滅に加わっていくだろう。
 このまま戦っていけば『フロアボス』が姿を現すハズだ……上の階へ侵攻してきた『フロアボス』のオブリビオンを猟兵たちが相手にしている間、学生たちには『にじいろとろりん』たちを食い止めてもらう必要もある。そのため、猟兵たちが前線を支えて学生たちがひと眠りできる時間を作れたことは、この防衛線にとって大きな意味を持つだろう。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

ポーラリア・ベル
ベテランさんの近くに飛んで、こんにちは。こんにちはって
ほっぺを氷のような手で触ってご挨拶。
ふにゃっふにゃのスライムさんが相手なの?
心を溶かしちゃうのね…!

じゃ、カチカチにしちゃおう!って、吐息をふぅーってするけれど、
体から排出されて、きゃー!って冷気に晒されちゃう
攻撃する時なら体が強張って、反撃してこないかしら?それなら…

後輩のお姉ちゃん、【属性攻撃】で氷のミサイル撃つから
一緒に炎をスライムさんの足元に撃ってほしいの。
炎と氷が合わさって水蒸気爆発!
吹っ飛んで強張ってきたら改めてふーってして、かちーん!だよ!
学生のおにいちゃん、とどめはお願いー!

みんなで協力し合うって、とっても楽しいね♪


大豪傑・麗刃
眠気とかわたしには効かないのだ!
なぜなら今日もしっかり寝てきたのだ。
おかげで思いっきり朝寝坊したのだ!

とりまもう少しにじげんいきたいとやらの数を減らしておくのだ。
まあ斬っちゃえばなんとかなるであろう!両手に刀を持ってずんばら

(眠気にやられるばたり……んで頭を打つ)

~~~~~~ッッッ(声にならない叫び)

い、今ので目が覚めたのだ。も、もういっか

(眠気にやられる。ばたり……さくっ)

あ、なんか敵が切れてるのだ。
と、当然狙ったのだ!本当なのだ!

そ、そなコトゆーコは麗ちゃんぶつじょ!

(このあたり『変態的衝動』のトリガーであり単なるドジではないはずたぶん)

ひろってあたっくとやらも斬ればたぶん解決するのだ。



●お昼寝
 じんわり迫りくる『にじいろとろりん』 たちとの戦いで眠ってしまったアルダワ魔法学園の学生が後方の休憩所に設置された仮眠のスペースへ運ばれていく。
 そしてここで短い時間ひと眠りして回復した者から再び前線へと戻るというサイクルが出来つつあった。
「一人新たに運ばれてくるぞ、仮眠のスペース開けろ!」
「……あれ、こんなに下まつ毛がすごいやつうちの学生に居たか……?」
 新たに運び込まれてきた一人を見て後方支援をしている学生たちは首をかしげる。
「どうだろう……うちって明確な制服も卒業も無いから見た目では分かんないからなぁ。もしかして『転校生』なんじゃないのか」
「それにしても立派なはなちょうちんだ」
 あれこれと話していると下まつ毛がすごいやつがバチっと目を覚まして慌てたように起き上がり、叫ぶ。
「ぬあぁぁぁっ!! ぐっすり寝てしまったのだあああああ!」
 起き上がった大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)は納得のいかない様子で、落ち着きなく寝起きの体操を始める。
「眠気とかワタシには効かないはずだったのだ。なぜなら今日もしっかり寝てきたのだ。おかげで思いっきり朝寝坊したのだ! おのれ『にじげんいきたい』とやら」
「『にじいろとろりん』では?」
 すかさず訂正に入る学生の傍で麗刃は目覚めの体操を始める。
「とりまもう少し『にらいためとろりあんかけ』とやらの数を減らしておくのだ」
「『にじいろとろりん』だよ! あとその体操どうなってんの!?」
「そう、その『にじいろとろりん』! それじゃ! 行ってくるのだ」
 関節どうなってんの? 的な動きも加えつつ背を反らしてスッキリ目が覚めた麗刃は、武器を手に取るとここまでのやり取りとユーベルコード『変態的衝動』により増大した身体能力で再び前線へと戻る。

●ふにゃー
 状況はアルダワ魔法学園側に有利。フロアを埋め尽くす大量の『にじいろとろりん』たちは火力の高い猟兵たちを中心に確実に押し返されている。
 そのお陰で上の階へ続くバリケード付近の安全が保障されて休憩所として機能しはじめ、さらには下の階へ続く階段の前にある敵に制圧されたバリケードへとじわじわ近づけている状態だ。

「先輩、このままいけばあたしたち勝てそうっスね!」
「ああ、あとはどこかにいる『フロアボス』さえ何とかなれば……」
 油断なく一体ずつ敵を倒していく二人を不意に涼やかな冷気が包む。
「こんにちは。こんにちは」
 二人の周囲をポーラリア・ベル(冬告精・f06947)がくるりと飛び回る。挨拶をして近づくとポーラリアはベテラン学生の頬へ手を伸ばした。
「今回はおとどけものは無いけれど。お久しぶり」
「あの時は武器や道具を持ってきてくれてありがとう。今度また、一緒の冒険をしよう」
 ベテラン学生が以前にもらった氷の装飾を利用した指輪を見せると、ポーラリアはにこりと笑う。
「フェアリーっス! 学園でも時々見るけど、こんなに近くで見たのは初めてっス! ひゃーっ、手が冷やっこいっス!」
「あたしはポーラだよ、よろしくね!」
 フェアリーとの交流経験が少ない後輩の少女はポーラリアの接近に心が浮き立ち、握手の手をとってキャッキャとはしゃぐ。そんな彼女へベテラン学生は注意を促した。
「まだ敵がいるから油断はしないように」
「ふにゃっふにゃのスライムさんが相手なの?」
 三人を囲もうとしているのはりらっくすしきってふにゃーっとなっている『にじいろとろりん』たち。そのぷるんとした動きとつぶらな瞳、そしてゆっくりした動きと漂う良い香りがこちらの警戒心を解いてふにゃっとさせてくる。
「心を溶かしちゃうのね……! じゃ、カチカチにしちゃおう!」
 ポーラリアはふーっと息を吐いた。それは対象を凍らせる冷気と雪の吐息――ユーベルコード『凍雪の吐息』。
 その冬の吐息を受けた『にじいろとろりん』はリラックスしたままそれを受け……しゅるんと吸収した。
「ええっ!? ……吸い込んだの?」
 そして驚くポーラリアへ向けて先ほど吸収した冷気をそのままふーっと返す。
「きゃー!」
「ポーラさーん!? あたしの炎で温まるっス!」
「ありがとう、ふぁー……あったかい。あんまり熱いのは苦手だから一度離れて……と」
 後輩少女の出した火の精霊の炎で体についた霜を落としたポーラは、がんばって攻略法を考えてみる。
「んーと、吸い込めないように体を強張らせたら、反撃してこないかしら?」

●その刃、麗しく
「今度こそ眠気とかわたしには効かないのだ! なぜならついさっきもしっかり寝てきたのだ!」
 勢いよく前線に躍り……否、タップダンスのような足の動きで器用に走り『スーパーな感じの赤いマント』をなびかせながら現れた麗刃はそのまま『にじいろとろりん』の群れへ突っ込む。
 操る武器は『サムライブレイド』と脇差と呼ぶには大きすぎる『バスタードソード』の二本の刀……刀? とにかく二本の剣を両手で軽々と操り武人の名に恥じない剣筋で一瞬で虹色のスライムたちをズバズバと切り裂き残骸へと変える。それを見ていた学生たちから賞賛の声が上がった。
「剣捌きとか体の動きとか色々とすげぇ!」

 飛び散った残骸からベルガモットをベースとしてほんのりラベンダーを加えたような、安眠とリラックスを誘う香りが広がる。
 それは斬り終えたポーズのまま余韻に浸る麗刃の鼻腔に吸い込まれると人をダメにしそうなソファー的なリラックス効果を与えた。
「ふっ、決まった……のだ……スピー」
 一瞬で意識が飛び寝てしまった麗刃は頭から石の床に落下。ゴンっという音と共に頭頂部を抑えて飛び起きる。
「~~~~~~ッッッ!??? い、今ので目が覚めたのだ。深呼吸して意識をスッキリさせて……」
 スゥーと息を吸い込む麗刃。
 思いっきり吸い込まれる香り。
 後ろへ倒れる麗刃。
 ゴンっ!
「~~~~~~っっッ!!?」
 後頭部をおさえてうずくまった麗刃はヨロヨロと立ち上がると刀を振りかぶる。
「な、なんて手ごわく油断できない敵なのだ……今度こそ、もういっか」
 リラックスする香り!
 飛ぶ意識!
 ゴンっ!
「~~~~~~ッ!!」
 今度は前に倒れ、額をしこたま打った麗刃。ぬおおおおっと床を転がり痛みに耐えてから武器を拾おうとする。するとそこには倒れた勢いで刀が刺さり真っ二つになった『にじいろとろりん』の残骸が出来ていた。
「あ、なんか敵が切れてるのだ」
 それを見ていた学生たちから戸惑いの声が上がる。
「……なんか色々とすげぇ……」

●そしてボスが現れる
「と、当然狙ったのだ! 本当なのだ!」
 戸惑う学生たちへ力説をする麗刃。なんだか今日は、自滅が多くペースを乱されている気がする。そんな麗刃は逆に学生に気遣われていた。
「その……そんなに眠いなら無理をしなくても良いですよ……?」
「い、いや……だからこれはワタシの作戦なのだ。ほら目をつぶれば『ひろってほしそうなまなざし』も防げて……」
「……本当に?」
 少なくとも疑いのまなざしは防げていない。心配されることによるシリアスな空気に耐えられず麗刃は反射的に体をくねらせる。
「そ、そなコトゆーコは麗ちゃんぶつじょ! と、とにかくこの調子で斬っちゃえばなんとかなるであろう!」
 リラックスとは別の意味で力が抜けた学生たちへ任せろと告げると、麗刃はさらに『にじいろとろりん』たちへと斬りこんでいく。麗刃の頭がタンコブだらけになるのと敵を退けるの、どちらが先になるだろうか。

 一方でポーラリアは『にじいろとろりん』の体を強張らせる方法を考える。
「あ、そうだ! お姉ちゃん、お姉ちゃん。ポーラは氷のミサイル撃つから、炎をスライムさんの足元に撃ってほしいの」
「わかったっス! こ、こうかな?」
 ポーラリアにお願いされた後輩少女はその指示通りにエレメンタルロッドから炎のミサイルを放つ。そこへポーラリアも合わせて氷を打ち込んだ。氷が炎で溶けて蒸発し、水蒸気となった水がぶわっと広がる。
「炎と氷が合わさって水蒸気爆発!」
 この衝撃に驚いた『にじいろとろりん』はキュッと強張った。
「そこへ改めて、ふーっ」
 凍てつく吐息をかけられたスライムはカチーン凍結して固まった。
「学生のおにいちゃん、とどめはお願いー! じゃあ私たちはどんどん凍らせていこ?」
 ポーラリアはそのまま後輩少女と二人で連携し『にじいろとろりん』の無力化を進めていった。

「よーし、次はあのスライムさんをかちーん! だよ!」
「炎のミサイルいくっス!」
 炎と氷が水蒸気を生むためポーラリアは一体の『にじいろとろりん』の近くの地面へ氷のミサイルを放つ。
「……って、だれかいる……あぶなーい!」
「うーん……むにゃ……」
 そこへちょうど同じ『にじいろとろりん』目掛けて麗刃が倒れこんだ。ボンっと弾ける水蒸気に巻き込まれる麗刃。
「おわっ!! め、目は覚めたけど何なのだ!?」
 脇差変わりのバスタードソードが水蒸気の風圧で煽られ、敵に制圧されている下の階へ続くほうのバリケードへと飛んでいく。
「ああっワタシの刀が!」
 ヒューんと飛んで行ったバスタードソードは木箱の向こうに落下し……。
「ひゃああ~危ないの~!?」
 悲鳴のあとにポイッと投げ返された。
「あ、刀が戻ってきたのだ」
 戻ってきたバスタードソードを拾う麗刃。そしてポーラリアは聞こえた悲鳴に首をかしげる。
「今、声が聞こえた? 誰かいるの?」
 その疑問へ、ベテラン学生は息を飲みながら答える。
「今の声……間違いない。『フロアボス』だ……この階まで上がっていたんだ……!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『微睡の残滓』

POW   :    固い枕? ふわふわパジャマ? あなたのお好みは?
いま戦っている対象に有効な【睡眠導入に用いる道具】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。
SPD   :    わるいことも、こわいことも。ぜんぶなくなるよ。
【甘美に響くよう祈り】を籠めた【睡眠へと誘う囁き】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【精神】のみを攻撃する。
WIZ   :    さみしいの。いっしょに寝よう?
小さな【空中を漂う仄灯り】に触れた抵抗しない対象を吸い込む。中はユーベルコード製の【快眠が約束された空間】で、いつでも外に出られる。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はメルヒェン・クンストです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●二章についてのお知らせ
 一章へのご参加、ありがとうございます。
 引き続き二章のプレイングの受付は予定通りに木曜の10月24日(木)からとなる見込みです。
 執筆は今回も土曜と日曜の予定です。引き続きよろしくお願い致します。

●其れは極上の眠りのために
「もー、うるさいの~! ゆっくり寝られないの~!」
 フロアの反対側、敵に制圧されている下の階に続く方のバリケードの木箱の影から少女のようなオブリビオンが現れた。
 その名は『微睡の残滓』。
「とろりんたち、地上はまだなの? ぽかぽかのおひさま、さわやかな風、ふかふかの草や羽毛……そして一緒に寝てくれる相手。地上は迷宮よりもずっと快適な眠りがあるはずなの。わたしはそこに早く行きたいの」
 眠りを妨害されたこともあり、彼女はやや不機嫌そうだ。
「戦いなんてせずに、みんな一緒に寝よう? わたしが最高の眠りへご招待するの」

 とうとう上の階へ侵攻してきた『フロアボス』が姿を現した。この敵は一般の学生たちには荷が重い相手……残る『にじいろとろりん』たちは学生たちに任せて猟兵たちが相手をするのが良さそうだ。
 正面から斬りこめば猟兵といえどたちまちなんやかんやと睡眠へと誘われてしまうため注意が必要な相手だ。そして猟兵のユーベルコードによる強力な強化や支援があれば学生たちも戦うことは出来る。

 せっかく優勢となった状況が逆転される前に、この『フロアボス』を何とかしなければならない。
大豪傑・麗刃
&&&

奇遇なのだ。わたしもさっきまでむちゃくちゃ寝てたはずなのに、なぜか寝たりないのだ。
だが運が悪かったのだ。なにをかくそうわたしは。

睡拳

の使い手。寝れば寝るほど強くなるという伝説の拳法なのだ。
つまりきみがわたしを眠くすればするほどわたしは強くなる!

嘘だと思うなら試してみたまえ。
わたしはきみの眠気などには負けん!

はあああああああ(それっぽい気合)

(しかし気合でどうにかなる眠気ではなくあっさりばったり……なった時になぜか懐から零れ落ちる危なそうなスイッチのついた箱、その上に倒れこむ麗くん、そしてスイッチが)

ぽちっ

(自爆スイッチ作動!!)

んで爆発で敵にダメージを与え味方の眠気も覚めるとかどうとか



●武術の極意
 より上質な睡眠環境を求めて侵攻してきたフロアボス――『微睡の残滓』。
 その前に一人の武人が立ちふさがる。
「きみも寝たりないとは、奇遇なのだ」
 そう言いながらスゥーと素手で構えをとるのは大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)。周囲で『にじいろとろりん』の相手をするアルダワ魔法学園の学生たちもまたその様子に注目していた。
「あのオーラ……やはりただモノじゃないな……」
 一人の学生がそう呟く中、麗刃は『微睡の残滓』と対峙する。
「わたしもさっきまでむちゃくちゃ寝てたはずなのに、なぜか寝たりないのだ。だがわたしはきみの眠気……には負け……スヤァ」
「ね……寝ている……」
 立ったまま喋りながら寝始めた麗刃。気が抜けてずっこける学生たちを横目にフロアボスの『微睡の残滓』はニコリとほほ笑んだ。
「さっそく一人睡眠へご招待なの」
 彼女は睡眠に最適な環境音楽を流す魔法装置――召喚した睡眠導入に用いる道具――を手にしていた。

「この調子でほかの猟兵たちも眠らせて上の階へ――ひゃあああ!?」
 麗刃の横を通り過ぎ次の標的へ向かおうとした『微睡の残滓』の耳元を風切り音がヒュッと鳴る。さらに慌てて屈んだ『微睡の残滓』の頭上を蹴りが通り過ぎた。
 見るとそこには寝た状態で前後左右にフラフラしている麗刃の姿がある。この一連の動きに学生たちは驚いた。
「な、何だあいつ、寝ているはずなのに絶妙にバランスをとって振り子のように揺れはじめたぞ!?」
「むぅ……あれが世に聞く睡拳……」
「知っているのか!? サンダー・ライトニングさん!」
 なにやら学生二人による解説が始まる。
「聞いたことがある……寝れば寝るほど強くなるという伝説の拳法……まさかその使い手をこの目で見ることが出来るとは……」

 麗刃は終電間際の電車で立ったまま寝るサラリーマンのごとく絶妙にフラフラとバランスを保っていた。何度も頭を打った直前の経験から転ぶことだけは阻止しようと体が本能で動いているようでさえある。
「えーい、おとなしく寝るのーっ!」
 さらに羽毛布団を召喚した『微睡の残滓』はそのふかふかの布団を投げつけるが麗刃はふらりと倒れそうになりながらスケートのイナバウアーっぽい動きで大胆に布団を回避。
 つづけて麗刃は上半身の重みに引っ張られ倒れかかった方向へシャカシャカ足を動かし移動。その動きは楕円を描き『微睡の残滓』へと迫る。
「こいつきっと本当は起きてるの~!?」
 ぐるんと迫る麗刃の安らかな寝顔へ『微睡の残滓』は反射的にビンタを浴びせた。
 バチーン! と音が響き頬にちいさな紅葉の模様をつけた麗刃がハッと目を覚ます。
「ふがっ!? また寝てしまっていたのだ!」

 目を覚ました麗刃が見たのは、不気味がって半泣きの『微睡の残滓』と『睡拳』というワードで盛り上がる学生たち。
(なんとなく刀で攻撃しにくい見た目だから拳で行こうと思っていたのだ……しかし何があったのだ……?)
 何がなんだか、と状況を見ていた麗刃だが、武術の基本の一つは敵にペースを握らせないこと。この状況に乗り攻撃を開始することにする。
「きみは運が悪かったのだ……なにをかくそうわたしはその『睡拳』の使い手。寝れば寝るほど強くなるのだ」
 それらしく見えるよう今度は片足で立ち両腕を広げてワシのような構えをとる麗刃。急にネタっぽくなったが先ほどその睡拳っぽい動きに翻弄された『微睡の残滓』はひぇっと警戒を顔にだし離れていく。
「逃がさないのだ! はあああああああ」
 気合いで髪を逆立て金色に光りながら片足の構えのまま足の指を器用に動かして『微睡の残滓』を追いかける麗刃。意外と速い。
「ひやぁぁぁぁぁあっ、来ないで~!」
 ぽふっとふわふわの枕が召喚されるとそれを掴んだ『微睡の残滓』による一撃が麗刃の顔面にぶつかる。それはサラサラでほどよい反発が頬をやさしく包み込む枕。シーツは草原と石鹸の香り。連想するのはお日様の下の草原で干した洗濯物……。
「スヤァ……」
 ふたたび立ったまま眠りについた麗刃はぐらりと姿勢を崩した。この時、麗刃の懐からスイッチのついた箱がぽろりと零れ落ちる。
「こ、このまま動けないようにお布団で包むの……!」
 続けて羽毛布団を召喚した『微睡の残滓』は、ぐらりと姿勢を崩した麗刃を上から抑え込もうとする。そのまま麗刃はぽろりと零れ落ちた箱のスイッチの上に倒れこんだ。
 ポチッ。
「なのーっ!!?」
 麗刃と『微睡の残滓』は共に爆発の光に包まれた。

 敵諸共吹き飛ばす大爆発――ユーベルコード『自爆スイッチ』――による、麗刃の尊い犠牲によりフロア全体の味方の戦闘力も増強された。何人かの学生がずっこけて頭を打ったりしたがそれは些細な被害である。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ポーラリア・ベル
わ、可愛い。外に出してもよさそうなのに。
雪と共に甘えるように抱き着いたら、寒さで空間に引き込まれちゃうかしら。
快眠空間に入っても、ポーラは冬。普通のお休みより、氷の中でお休みするのが大好きだから…
眠りやすい空間を作るね。

ぽかぽかしてる(と錯覚する冷気の)おひさま、さわやかな(吹雪の)風、ふかふかの雪を【属性攻撃】【アート】で。
…お姉ちゃんも、一緒に凍眠(ねむ)ろ?
大丈夫、一緒のお相手はポーラ以外にもいるよ。
ウィンターライブ・アニミズムで、冷気を吐ける、知性を強化した、ふかふか雪ペンギンさんを抱き枕としてプレゼント!

冒険なんか忘れちゃいそう。
おねえちゃんを綺麗に氷漬けにしながら、ぐっすりと…



●冬眠
 大爆発に巻き込まれた『微睡の残滓』は煤だらけの状態で早くもぐったりしている。
「ふぇぇえ……もうイヤ。はやく地上に出て眠りたいの~」
 へろへろな『微睡の残滓』のまわりをキラキラと氷の粒を纏いながら冬の妖精がくるりとまわる。
「わ、可愛い。お外に出てもよさそうなのに」
 ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)は『微睡の残滓』へ雪のようにふわりと抱き着いた。
「お姉ちゃん、眠いの? じゃあ、ポーラと一緒にねむろう?」
 無邪気ににっこりと微笑むポーラに『微睡の残滓』もニコッと笑顔になる。
「あなた話がわかるの。さあ寝ましょう、猟兵さん~」
 ぽわぽわと『微睡の残滓』の周囲の空中に小さな仄灯りが発生して漂っていく。それに触れたポーラリアは中へと吸い込まれた。

 その先はいつでも外に出られるものの、吸い込んだ対象の快眠が約束された空間……つまりポーラリアであれば極寒の氷に閉ざされた冷凍庫の中のような空間だった。
「わわ、とっても素敵なところ。こんな氷の中ならポーラもよく眠れそう。……こんな場所で、オブリビオンのお姉ちゃんと一緒にねむりたいなあ」
 ポーラリアは氷に閉ざされた空間の中に雪で絵を描き始めた。
 描くのはおひさま、そして草原。床にふかふかの雪を敷き詰めたら、さわやかな吹雪の風を吹かせて、雪でふかふかの雪ペンギンの抱き雪だるま――ユーベルコード『ウィンターライブ・アニミズム』で作った雪の生命――を数体作っていく。
「うん、これならオブリビオンのお姉ちゃんも一緒にねむれるね」

「これで一人は確実に夢の中……。このまま残りの猟兵たちも眠ってもらって、地上へいくの」
 体中についたススをパタパタと落と次はどう対処しようと考える『微睡の残滓』の裾を、小さなひんやりした手がキュッと掴む。
「お姉ちゃん、お姉ちゃん。この中とても素敵だよ。一緒にねむろ?」
 漂う仄灯りから顔を出したポーラリアが『微睡の残滓』を添い寝に誘う。
「一人では眠れないの……? わかった、ひとりはさみしいもの。いっしょに寝よう?」
 添い寝の誘いに乗った『微睡の残滓』はニコリとほほ笑み、ポーラリアの手を取る。
「わーい! ……お姉ちゃんも、一緒に『凍眠(ねむ)ろ』?」
 不穏な当て字でねむろう? と誘うポーラリアの笑顔は、とても純粋で、喜びに満ちていた。

 10分後、触れたものを吸い込む小さな仄灯りが一気に消えて能力が解除される。
 空間から戻ってきた『微睡の残滓』は雪の布団に埋まり、さらに雪で出来たたくさんの雪ペンギンたちに包まれ真っ青な顔でガタガタ震えていた。
「さささ寒いの……これ寝たらダメなやつなの……」
 常温に戻ったことで雪は徐々に解け『微睡の残滓』は少しずつ自由を取り戻していくが体が冷えすぎてまだ体が動かない。
 隣ではポーラリアがすやすや眠っていた。
「……おねえちゃんを綺麗に氷漬けにしながら……ぐっすり……」
 そう寝言を言いながら、ポーラリアは幸せそうな寝顔で寝ている。
「ま、まだ、寝るのはがまん……この体温で寝たらきっと死ぬの……」
 一方で『微睡の残滓』は解け始めた雪に囲まれぐっしょり濡れながらガタガタと震え続けていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

村崎・ゆかり
あら、可愛い女の子ね。オブリビオンじゃなければ、一緒に寝たいところだけど。

睡魔フィールドに入るか入らないかの見極めはしっかりしたい。
「目立たない」ように敵の側面を回って、「先制攻撃」「2回攻撃」「破魔」で七星七縛符を飛ばし、睡魔のユーベルコードを封じるわ。

敵のユーベルコードを封じられたら、飛鉢法で飛鉢を用意して、それに乗って「空中戦」で制御しながら吶喊。続けて魂喰召喚で「串刺し」「衝撃波」の攻撃を行う。

眠気が酷くなってきたら、エナジードリンクでカフェイン補給しようかしら。
快眠するのは、あなたを討滅してからよ。
さあ、眠りがあなたを待ってるわ。永遠の眠りがね。骸の海に沈んで、心いくまで眠りなさい。


クシナ・イリオム
&&&

わるいことも、こわいことも…ね。
それはそれは素晴らしいことだけど、残念ながら寝ながら食い扶持を稼げたら私は猟兵をしてないもので。
残念だけど草原ではなく骸の海を寝台にしてもらうよ?

魔法罠即席設計でライトを設置してから戦闘。
ギリギリ敵は視認できるけど睡眠できないレベルに部屋を明るくして味方が寝ることを防ぐ。

UCの直撃を受けたら事前に口に含んだ心殺しの丸薬を服薬し戦闘を続行。
トドメが行けそうなら服薬時に寝たふりをし、ワイヤーで頸動脈を締めて意識を奪い【暗殺】を仕掛ける。
…私を本気で寝かせたいなら精神ではなく肉体反応を狙うべきだったね。
おやすみ。…せめて最後の眠りに安息があるといいんだけど。



●オブリビオン討伐
 寒さに打ち震えガタガタと『微睡の残滓』が打ち震えている間に本格的な攻撃の準備が整えられた。
 パッとフロアの中を強い光が覆う。それはクシナ・イリオム(元・イリオム教団9班第4暗殺妖精・f00920)のユーベルコード『暗殺技能・魔法罠即席設計』による召喚されたトラップ。
 今回のこれは精神に影響を与え睡眠のトリガーである安らぎを打ち消すライトが召喚され、起動していた。
「ひゃああ~! まぶしいの~!」
 突然の光に『微睡の残滓』が目を覆うとそこへ複数の護符が飛び『微睡の残滓』を束縛していく。村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)のユーベルコード『七星七縛符』だ。
「あら、可愛い女の子ね。オブリビオンじゃなければ、一緒に寝たいところだけど」
 華麗な戦巫女の盛装へ変身し鉄の大鉢を浮かべる――ユーベルコード『飛鉢法』を使用した――ゆかりが『薙刀『紫揚羽』』の切っ先を向け『微睡の残滓』の前に立つ。
 反対側ではクシナが『妖精用投げナイフ』をいつでも投げられるよう、スリングショットを構えて油断なく標的を見据えていた。
「残念ながら寝ながら食い扶持を稼げたら私は猟兵をしてないもので」
 周囲をキョロキョロと見回した『微睡の残滓』は囲まれたことに気がつく。
「あわわ……」
「さあ、観念しなさい!」
 攻撃のために踏み込んで薙刀を突き出したゆかり、同時にクシナもスリングショットでナイフを射出。『七星七縛符』でユーベルコードを一切封じられた『微睡の残滓』は転がるように必死にナイフから逃げ、薙刀の猛攻に傷つきながら逃げていく。
「いやああ~! いたいのはイヤ、こわいのもイヤ、助けてえ~!」
「ちょろちょろしない!」
 ゆかりは『飛鉢法』で召喚した大鉢に乗るとさらにユーベルコード『魂喰召喚』で魂喰らいの式神を召喚し、薙刀へと宿す。
「急急如律令! 汝は我が敵の心を砕き、抵抗の牙をへし折るものなり!」
 それは肉体を傷つけず抵抗や戦闘の意志のみを攻撃する御業。
「てゃあああっ!」
 大鉢で加速し一気に『微睡の残滓』を貫こうとしたゆかりだが敵の必死の回避行動により中心を外してしまった。
 この攻撃による衝撃波で護符が吹き飛んで『七星七縛符』も解除されたが、ただでさえ折れかけていた抵抗の心がさらにメキッと傷ついて力が抜けたことで、『微睡の残滓』はぺたりと座り込んでしまう。
「……あ」

●眠りへの誘惑
「チャンス! 骸の海に沈んで、心いくまで眠りなさい!」
 振り上げられる薙刀。この攻撃に対し『微睡の残滓』は使えるようになったユーベルコードでふかふかのひよこのぬいぐるみを二体召喚した。
「来ないでぇ~!」
 この隙に攻撃を仕掛けたのはゆかりだけではない。ナイフを手にしたクシナも死角を狙って迫っていたのだ。
「……くっ、流石はフロアボスといったところだね」
 ぬいぐるみのうちの一体に移動を妨害されたクシナは攻撃の機をうかがうため再び間合いを離す。そしてゆかりへと投げられたもう一体のぬいぐるみはつぶらな瞳でゆかりの眼前へと迫った。
「……くっ!」
 つぶらな瞳を斬れずぬいぐるみを手で払いのけるゆかり。その隙へ次の一手が差し込まれる。
「戦いは苦手なの。いっしょに寝よう?」
 ゆかりの前に小さな仄灯りがぽわぽわっと漂い始めた。
「しまっ……」
 ゆかりは『快眠が約束された空間』へと吸い込まれてしまった。何時でも出られる場所ではあるが、態勢を整えるには十分な時間稼ぎにはなるだろう。
 続けて反撃のためのユーベルコードを放つ『微睡の残滓』。
「しあわせなねむりの間なら、もうだれもころさなくていいのよ。かなしいことも、つらいことも、ぜんぶなくなるよ」
 甘美に響くような祈りを込めた囁きがクシナの精神へと響いていく。
「……っ」
 気が抜けたようにクシナが脱力していくのを見て『微睡の残滓』はほほ笑んだ。
「おやすみなさい……なの」

 眠るように倒れこむ時に、クシナは自身の体で半身が隠れた隙に何か薬のようなものを取り出すと口に含んで、飲み込んだ。『微睡の残滓』はクシナのその行動に気がついていない。

●安息はここには、無い
 快眠が約束された空間――ゆかりが踏み込んだそこは畳と木の香りの和室だった。そこには羽毛の布団が広々と敷かれ、大好きな見知った顔……一緒に寝たい相手がだらりと寝転んでいる。
「どうしてあなたがここに――」
 障子の戸の隙間からうるさくない程度の程よい虫の音が聞こえ、単調なリズムとそよ風が心地よさを誘う。
(なるほど……これが『快眠が約束された空間』ね。これらは全て、作り出された本物に近い『偽物』……)
 ゆかりは誘惑を振り切るように、持参していたエナジードリンクを取り出すとグイっと飲んで気合いを入れた。カフェインによる覚醒と糖の強い甘みが意識に刺激を与え意識を現実へと引き戻していく。
「快眠するのは、あなたを討滅してからよ」
 ゆかりはそう呟くと、ふすまを開けて部屋を出た。

 小さな仄灯りの一つがパッと光ると空間から出たゆかりが姿を現した。
「もうでてきたの? もっとゆっくりしてもよかったのに」
 くすりとほほ笑む『微睡の残滓』。
「もう一人もすっかり夢の中なの。しあわせな眠りのなかにご招待するの」
「夢の中? それは誰のことかな」
 糸のようなものが光を反射し鋭く張りつめた。その糸――クシナの魔力を通したワイヤーである『暗殺妖精装備・竜の髭』が『微睡の残滓』の首へと巻き付く。
「――っ!!」
「……私を本気で寝かせたいなら精神ではなく肉体反応を狙うべきだったね。残念だけど草原ではなく骸の海を寝台にしてもらうよ」
 クシナが倒れる直前に飲んでいたのは心殺しの丸薬。これによりクシナは精神への攻撃を軽減させ、その後は寝た演技をして油断を誘っていたのだ。
「……ああ……あ……」
 首を絞められヒュー、ヒューと微かな呼吸音を漏らしながらあえぐ『微睡の残滓』……頸動脈も締まっているハズだが即座に意識が落ちないのはオブリビオンであるからだろうか。動きが止まった敵へさらにゆかりの薙刀が突き付けられた。
「さあ、眠りがあなたを待ってるわ。永遠の眠りがね」
 薙刀が『微睡の残滓』を貫く。

 腹部から血を流しながら『微睡の残滓』は朦朧とする意識でユーベルコードを使用した。召喚されたのは二つのウォーターベッド。
 この質量でクシナとゆかりをけん制し拘束を逃れると息も絶え絶えに『微睡の残滓』は逃げようとする。
 伸ばす手が求めるのは、くるしいことも、こわいことも、ぜんぶがない安息か――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ポーラリア・ベル
zzz……
ふぇあっ、気づいたら雪が溶けてる。
おねえちゃん、どこ…?探しに行かなくちゃ。

ポーラ、人間さんじゃないから置いてかれたのかしら
もっかいアタックしてみるね。
今度は、人間さんの姿で…

妖艶な雰囲気纏って、【雪人転身】を使うよ。
見つけたら、まずは冷気を放出して、足元を凍らせて、
じっくり、ゆっくり、近づいて…
飛んできた道具は逐一冷気で凍らせて無力化しながら、
ぎゅって、ハグしにいくね。
至近距離から冷気を浴びせて、今度こそ、放さないよ。
…一緒に、凍眠(ねむ)りましょう。

倒して、もし大丈夫だったら【フリーズコレクション】で保存するね。



●眠りの中へ
 スヤスヤと寝ていたポーラリア・ベル(冬告精・f06947)が目を覚ました。
「ふぇあっ、気づいたら雪が溶けてる」
 寝ぼけまなこを小さな手でこすり、ポーラリアは水になっている雪のお布団の上でキョロキョロと周りをみる。
「おねえちゃん、どこ……? ポーラ、人間さんじゃないから置いてかれたのかしら。探しに行かなくちゃ」

 猟兵たちに安眠への誘惑を克服され反撃を受けた『微睡の残滓』は傷ついて地を這う。安らかで快適な眠りが欲しい……その思いは、いま終わろうとしている。
 しかし彼女が地上に出てしまえばあらゆるものを添い寝と称して永遠の安眠へと誘い、今を生きる者たちの未来を破壊していたことだろう。その性質により、このオブリビオンの願いは叶ってはいけない思いでもあった
 逃げようとする『微睡の残滓』へこの場にいる猟兵たちによりとどめが振り下ろされようとしたその時だった。

「あ、おねえちゃん見つけたー」
 ポーラリアが『微睡の残滓』を見つけて近くへふわりと飛んで近づく。
「おねえちゃん、途中で居なくなっちゃうんだもん」
 そう言うとポーラリアの周囲をブワッと冷気が纏いながら姿をみるみる大きくさせていく。ユーベルコード『雪人転身』によりその姿はフェアリーから人間へ……。
「今度は、人間さんの姿で……これなら添い寝できる大きさだね」
「寒いの、や……やなの。来ないで……」
 いつの間にか凍り付いて動かなくなった足をなんとか引っ張ろうとしながら『微睡の残滓』は顔を横に振る。だが力尽きそうなその声はポーラリアには届かず行動の意図も伝わらない。
 抵抗のためにほどよく冷えた氷の枕が召喚されポーラリアへと投げられたが、人間サイズになったポーラリアはそれを受け止めてにこりとほほ笑んだ。
「この枕でねむるんだね? わかったよ!」
 氷の枕を手にポーラリアは『微睡の残滓』へ笑顔でのんびり近づくと、床を這うような状態の彼女の傍で屈んで背中へ両手をまわしギュッと抱擁をした。
「このままじゃ、怪我が痛いでしょ? だからポーラが痛いのを無くしてあげる。そしたらずーっと、一緒にねられるよ」
 あらゆるものを凍らせる冷気が二人を包み、『微睡の残滓』の体がポーラリアと密着する頬や背などから徐々に凍っていく。感覚の無くなった頬に驚いた彼女は顔を離そうとしたがすぐに首も凍りつき動くことすら出来なくなった。
「今度こそ、放さないよ……一緒に、凍眠(ねむ)りましょう」
「さむい……の……おひさ……ま……」
 辛うじて動く『微睡の残滓』の肘から先の手が地下迷宮の空を掴む。その手は凍り付くよりも先に眠りについたように力を無くして動かなくなった。
 ポーラリアの腕の中で凍り付いた『微睡の残滓』のまぶたは力尽き眠っているように閉じられている。やがて全身が固まると空気中の水分が霜となって周囲につき、霜は重なって氷の層となり始める。

 より上質な睡眠環境を求めて侵攻してきたフロアボス――『微睡の残滓』は、ポーラリアと共に氷の中へ閉ざされてそのまま眠りについた。やがてその体は消え始め、過去は骸の海へと還っていく。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『花火を楽しもう』

POW   :    打ち上げ花火を造って豪快に遊ぶ

SPD   :    手持ち花火を作って楽しく遊ぶ

WIZ   :    のんびり花火を見てすごす

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●三章についてのお知らせ
 二章へのご参加、ありがとうございます。
 引き続き三章のプレイングの受付は木曜の11月07日(木)からとなる見込みです。
 執筆は今回も土曜と日曜の予定です。引き続きよろしくお願い致します。

●お疲れ花火パーティ
 上の階層へ進行してきた強い災魔――迷宮の『フロアボス』は無事に猟兵たちにより倒された。

 場所は変わり、ここは地下迷宮の中の一角。ここは天井が魔法か何かで空のようになっており地下迷宮の中だというのに星空が輝いている。
 どうやらこの場所で苦難を乗り越えた節目として祝いと息抜きを兼ねたパーティが行われるようだ。
 食べ物や飲み物、そして様々な手持ち花火がざっくりと運ばれ立食のテーブルや座るための木箱が次々と運び込まれていく。

 猟兵たちの元へ、最後まで踏みとどまり時間を稼いでいたベテラン学生がやって来た。
「あなたたち猟兵――『転校生』のみんなのおかげで、みんなが助かった。やはり、あなた達は強い」
 彼はそう言うと、名を名乗り改めて礼を言った。
「俺は、ダンテ。『今回の』戦いに参加した学生の中では一番長く在籍している年長者だ。だからみんなを代表して礼を言います。本当に、ありがとう」
 その隣で後輩少女も頭をぺこりと下げる。
「あたしはアンジェラっス、助かりました! このくらいしか用意できないっスが……、良かったらこのお疲れパーティも楽しんでくださいっス!」

 こうしてお疲れパーティが始まった。説明によると手持ち花火のほかに打ち上げ花火もあるようだ。打ち上げに巻き込まれないように気を付けていれば、アルダワ魔法学園の学生手作りの打ち上げ花火も見られるだろう。

 戦いを終えた戦士たちにつかの間の休息を――。
●未来のための笑顔
 戦いは大きな被害もなく無事終わり、地下迷宮『アルダワ』のフロアボスによる地上への逆侵攻の一つは無事に食い止めることが出来た。
 この地下迷宮『アルダワ』は全ての災魔を地下へと封印してる……アルダワ魔法学園の学生、そして何より駆け付けた猟兵たちによってこの世界の平穏がまた守られたのだ。
(ここは世界を守る最前線だ……。ここに居るみんなのように、地上のみんなの笑顔も守ることが出来たんだな)
 この場では、最も長く魔法学園に在籍している彼――ダンテ。そんな彼も戦いに疲れ果て心が折れたこともあった……けれども今はこうしてもう一度前へと進むことが出来てる。
(俺たちは、世界は。未来へ進むんだ。そのためには――)
 彼はロケットペンダントを開いて中の写真を見ると、これからも続く迷宮での戦いに向け決意を新たにする――かつて蒸気の向こうの楽園で経験したことは、無駄にしたくない。
(――誰かの笑顔を守りたいなら、まずは自分の笑顔……だったな)
 地下の疑似的な星空の下、戦いに参加した面々の笑顔を見ながら一人の学生が顔を緩ませる。
村崎・ゆかり
ふぅん、花火ねぇ。夏にもアルダワで見た記憶があるけど。ま、いっか。花火は何度見てもいいものだし。晩秋の花火見物と洒落込むわ。

オープンカフェはある? そこでエスプレッソとサンドイッチをいただきながら、皆が楽しんでいるところを見物させてもらうわ。
誰かが同席を希望するなら、遠慮無くどうぞ。

んー、地下迷宮なのに打ち上げ花火が天井に当たらない。これ、天井に空間を歪める術式を張ってある?
みんな色々工夫凝らしてるわね。火薬類はアルダワって発達してるんだっけ?
あたしのイメージでは蒸気と魔法の世界だったけど。

さてとカップも空いた。ごちそうさまでした。
アルダワ名物のお風呂に入って、さっぱりしてから帰るとしましょ。


大豪傑・麗刃
&&&

……
あ、終わってたのだ。

んで花火。花火とな。

(うん、そりゃあはしゃぐ。中身お子様ですから。んでいろいろとやって、たぶんやっちゃいけない事とか、普通やらないだろうな事もやるんじゃないかなと。つい先刻大自爆した事なんかすっかり頭の中から抜け落ちてのお。んで最終的な結末としてはたぶん)

もう爆発はこりごりなのだー!!

(で終わる気がしている感)


ポーラリア・ベル
ダンテ!ダンテっていうのね。そういえばお名前聞いてなかた。
花火、綺麗だね。きらきらしてる……ポーラもっときらきらできるよ!
見てて(冬告げのベルで雪の結晶を降らせ、空の花火に乱反射させようと)

とろりんさんと頑張って戦ったり、災魔さんを押さえつけてたり、
ダンテちゃんもアンジェラちゃんもとってもとってもかっこよかったんだから!
ふふー飲んで飲んで。ポーラ特製、雪だるまアイスフロートのひんやりソーダだよ!

また冬を呼びたい時は、いつでも呼んでね。



●元気は楽しい
 自爆により煤だらけで倒れていた大豪傑・麗刃(変態武人・f01156)がぱちくりと目を覚ますと戦いは終わっていた。
「あ、終わってたのだ」
 どうやらこれから別の場所に立食式の飲み食いの会場が設置されおつかれさま会があるらしい。
 そこでは花火もあるとか。
「花火。花火とな。つまり祭りなのだ! こうしてはいられないのだ」
 食べ物より花火に気を惹かれた麗刃は早速準備のために走り出す。

 祭りと聞き我慢できずに駆けつけた麗刃は、ねじり鉢巻きにはっぴと褌の和風の祭り男の装いでパーティ会場に登場した。
 ドコドコドコドコ! と滑車に乗せて持ち込んだ大太鼓を力強く叩きながらリズミカルに尻で音頭をとる麗刃。その恰好に何人かの学生が茶を噴く。
「な……なんだあれは、転校生の世界の儀式みたいなものか……?」
「でもこの音、元気が出てくるな。力強くて疲れが吹き飛びそうだ」
 リズミカルな尻から目をそらしつつ麗刃の大太鼓の音でお疲れパーティは次第に盛り上がっていく。

●楽しいは笑顔へ
 ポーラリア・ベル(冬告精・f06947)は氷菓子の作成や飲み物を冷やすのを手伝っていた。エリアの一角に氷の小屋を作ったポーラリアのお陰で氷やアイスクリームの保存の手間が大幅に下がり学生たちから感謝が述べられる。
「また冬を呼びたい時は、いつでも呼んでね」
 ニコニコと手を振りポーラリアはその場を離れるとキョロキョロとまわりを見回した。
「えーと、ダンテちゃんとアンジェラちゃんはどこかな?」
 準備が整って落ち着いてきたため、ポーラリアは話をするために二人を探し始める。

 ドンドコと太鼓が鳴り響き数名の学生が思い思いにリズムをとって体を揺らす中、その流れに加わらず人を探すようにふらふらと動く人影が二つ。
「アンジェラちゃん、みーつけた」
「ポーラさん、どうもっス」
「ダンテちゃん知らない?」
「ちゃん付け……!? あ、いや、あたしも探してたトコっス。先輩こういうのノリ悪いから、きっとどこかで誰かを手伝ってるか一人で居るっス」
「じゃあ一緒に探そう!」
「はいっス! ひゃ~手が冷やっこいっス」
 二人が手をつなぎ笑い合っていると、会場にどよめきが響いた。
「なにかあったのかな?」

 二人が向かった先では、花火のことを思い出した麗刃が手持ちの花火で遊んでいた。大太鼓を他の学生に委ねたらしい。
 麗刃は火の精霊の力を利用した花火を両手に持ち、剣舞の様に振るっては薄暗い闇に美しい花を咲かせていく。
「すごい身のこなしだ!」
「綺麗……」
 学生たちの賞賛を浴びた麗刃は子供のようにドヤっと自慢げな笑みをする。
「ふふ、どうだ凄かろうなのだ。祭りといえばかくし芸、本番はここからなのだ」
 麗刃はさらにウケを狙うため花火の本数を増やし、追加で鼻と耳に刺してさらに股に花火を挟む。
「とぉおおおおー!!」
 麗刃はものすごく複雑な動きで腰や頭を振りながら、巧みに足――股にも花火を挟み込んでいるため殆ど膝から下のみの動きだが――を動かしシャカシャカと踊る。この予想を超える動きに、ある者は思わず転び、ある者は腹をかかえ笑った。
「なんだありゃあ、ぶははは」
「技術的にすげぇ……!」
 頭を振りながら無茶な動きをした麗刃の足元がぐらつく。
「ちょっと頭を振りすぎたのだ……めまいが……」
 火のついた花火と共にフラフラと麗刃がよろめく先……そこは打ち上げ花火置き場。
「あ、危ない! 近くの者は伏せろーっ!」
 学生が周囲へ警告を発すると小型の打ち上げ花火へ火が触れる。この刺激により、仕込まれた火の精霊の力が活性化して次々と花火が作動し始める。
「ぬおおお!?」
 次々と発射される花火に驚きながらギリギリ回避していった麗刃。しかし足が絡まり大き目の打ち上げ花火の筒の中へと倒れこんだ……。もちろんこれも動作し始めている。
 ひゅぅーと打ち上げられた大きい花火は、ひときわ大きく鮮やかな花を迷宮内の疑似的な空に咲かせた。

 大太鼓を上回るその音はこの場の視線を空に集めた。
 このドンっと鳴り響く音と共に『もう爆発はこりごりなのだー!!』という叫びも聞こえたとかどうとか。

●思考に耽る
「ふぅん、花火ねぇ。夏にもアルダワで見た記憶があるけど」
 カウンター状の席でエスプレッソとサンドイッチを摘まみながら村崎・ゆかり(《紫蘭(パープリッシュ・オーキッド)》・f01658)はパーティの賑わいを眺めていた。
(火薬類はアルダワって発達してるんだっけ? あたしのイメージでは蒸気と魔法の世界だったけど……火薬の匂いがないし煙もないからあたしの知る花火とは別物っぽいわね)
 花火を使った演武で盛り上がる一角を見ながら、ゆかりは花火について考察を進める。少なくともただの燃焼とは異なり密閉に近い空間で利用しても問題ないものではあるのだろう。

 これまでの戦いでずっと我慢していた眠気が今頃ぼんやりとゆかりを襲う。
 ふわ、と小さくあくびをしたゆかりはエスプレッソを一口飲んだ。口の中に広がる苦みと香りそしてカフェインが意識を刺激し意識を眠気から引き上げようとする。
 ゆかりはその状態でパーティを楽しむ人々を眺めた。ぼんやりと映るみんなの楽しそうな姿は今回の戦いの報酬のようなもの。これが見られただけでも頑張った甲斐があった。
 口元を緩めてそれらを見ていたゆかり。そこへ視界に打ち上がる花火が映り込む。それは打ち上がると大きな音と共に大きく鮮やかな花を疑似的な空に咲かせた。

 打ち上げ花火を見たゆかりはこのフロアの空について再び思考を巡らせる。
(んー、地下迷宮なのに打ち上げ花火が天井に当たらない。これ、天井に空間を歪める術式を張ってある?)
 地下迷宮『アルダワ』は迷宮内の異様な広がりや多用さからも、常識では推し量れない不思議な技術が使われている様子ではある。中には不思議なトラップだけでなく水没したエリアに青空や太陽の元で植物が青々と育つエリアもあるため、技術的な理屈は不明だがこのような非常に高い疑似的な空のある場所もあるのだろう。
 その場では答えは出なかったが、ゆかりは考えることそのものを楽しんでいた。
「ま、いっか。花火は何度見てもいいものだし。晩秋の花火見物と洒落込むわ」

 思考を楽しんでいるといつのまにかサンドイッチの乗っていた皿とエスプレッソのカップが空になっている。それなりに長い時間を過ごしていたようだ。
「さて、アルダワ名物のお風呂に入って、さっぱりしてから帰るとしましょ」
 ゆかりはそう呟くと、食器を回収場所へ置きこの場を去る。

●笑顔を作ること、守ること
 無事に二人と合流したポーラリアは三人で空を眺めていた。
「花火、綺麗だね。きらきらしてる……ポーラもっときらきらできるよ! 見てて」
 ふと思いついたポーラリアは『冬告げのベル』を取り出すと、ちりん、ちりんと鳴らした。澄んだ氷の音は冬を告げ、雪をチラチラと振らせていく。産み出された小さな雪の結晶は、花火の光を受けキラキラと空中で輝いた。
「すごい……魔法っスかこれ!?」
「どう? すごいでしょ」
 目を輝かせるアンジェラにポーラリアはニコニコほほ笑む。ダンテはそんな二人を見て柔らかい表情をした。
「すごいな……こういうチカラの使い方はとても素晴らしいと思う。誰も傷つかないし、何より人を笑顔にすることができる」
 能力を武器としてではなく、安らぎや感動のために使うことはまさに平和の象徴だ。この瞬間を守るためにアルダワ魔法学園の学生たちは災魔を地下に封じ続けるべく戦っているとも言える。
 しかし守るだけでは笑顔は生み出せない……それゆえに、ポーラリアの生み出した『笑顔を作る』ことができる輝きは、とても眩しい。

 どこか寂しげな彼の様子に対してポーラリアはちゃんと守れてるよ、がんばってるよ、かっこいいよと励ます言葉を紡ぐ。
「えっと、とろりんさんと頑張って戦ったり、災魔さんを押さえつけてたり、ダンテちゃんもアンジェラちゃんもとってもとってもかっこよかったんだから!」
 ポーラリアは『ちょっと待っててね』と言い残すと一度この場を離れ、飲み物を二つ持ってきた。それは、ソーダの上に雪だるまの形位のアイスクリームがぷかぷかと浮かんだフロート。
「ふふー飲んで飲んで。ポーラ特製、雪だるまアイスフロートのひんやりソーダだよ!」
「うわー! 良いんスか! おいしそうっスー!」
「ありがとう、頂くよ」
 フロートソーダを飲みながら、アンジェラはダンテの横顔を盗み見ていた。
(あたしもこういう魔法の使い方を研究してみようかな。先輩にはもっと笑っていて欲しいっス……)

 一人一人がそれぞれの思いを胸中に抱きながらも、それぞれの笑顔を浮かべ同じ時と楽しさを過ごす。
 この平穏を保つためにも、アルダワ魔法学園は究極の地下迷宮『アルダワ』に封じた災魔――オブリビオンたちと戦い続けるだろう。その戦いにはもちろん、猟兵たちの存在が必要不可欠だ。

 だけれど今この時だけは、この場の全員が戦いの合間の休息として目の前の笑顔を休日の微睡みのように愛おしく噛みしめる。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月10日


挿絵イラスト