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乾きの王は未来を略奪する

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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 ざっ、ざっ、ざっ、ざっ。
 一糸乱れぬ行進の足音が、真夜中の草原に響く。

「――進め、進め、進め」

 辺りを埋め尽くさんばかりの大軍の中心にて、その男は異形の馬に跨り号令する。
 軍を構成する数多の動く屍と、黒い武具に身を包んだ騎士達を従えて。
 静かな、しかし震え上がるような覇気を纏った彼は、紛れもなく王であった。

「――奪い、殺し、壊せ」

 彼の視線の先には、美しく整備された壮麗な町並みを誇る都市がある。
 かつて異端の神により支配され、今は何者にも支配されぬ平和を謳歌する町。
 彼が軍を率いてこの地に現れたのは、かの町を再び闇にて支配するため。

「――畏れよ、闇を。貴様らの未来は、全てこの我が『略奪』する」

 骸の軍勢を率いし『乾きの王』は宣言する。
 今宵再び、この地は絶望の闇に覆われるのだと。


「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
 グリモアベースに招かれた猟兵たちの前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ダークセイヴァーにて、とある町がオブリビオンの大軍に滅ぼされようとしています」
 その町の名はラグナ。かつては『繁栄』を司る異端の神によって支配された都市だったが、事態を知った猟兵達によって異端の神が討伐されたことで、偽りの繁栄は終焉した。
 オブリビオンの支配から解放され、平和を取り戻したかに思われたラグナの町だったが、そんな誰の支配も受けていない「空白地」に目を付けた近隣の領主が、自らの支配拡大のためにこの町を征服すべく動き始めた。
「これまでは幸運にも見過ごされてきましたが、この町にオブリビオンの本格的な攻勢に耐えうるだけの防衛力はありません。このままではラグナの町は再び支配され、かつてと同様……いえ、それ以上の惨劇が引き起こされるでしょう」
 それを阻止するためには、猟兵達の力で迫りくる領主の軍勢を撃破するしかない。
 ひとつの町とそこに住む全ての人々の未来は、猟兵達の双肩に掛かっているのだ。

「今から現地に向かえば、敵の軍勢がラグナの町に到達する前に迎え撃てるはずです」
 戦場となるのは町の周辺に広がる草原地帯。対する敵軍はヴァンパイアの力で使役された骸の群れが中心となる。主から受けた命令のままに戦うだけの操り人形であり、猟兵にとってはさしたる脅威にもならないが、その数だけは厄介である。
「単純な力押しで撃破するのも良いですが、草原の地形を利用した罠を仕掛けるのも、知性のない骸の群れには有効でしょう」
 今回の作戦目標はこの軍勢を突破し、指揮官である領主のオブリビオンを討つことだ。
 もちろん領主の配下がただの骸の群れだけという訳もなく、その付近にはより強力な部下が親衛隊として配置されていると予想される。
「そして骸の群れと親衛隊を退けても、領主本人もまた強大なオブリビオンです」
 彼の名は『乾きの王』。『略奪』の異能を持つ誇り高き吸血鬼の王だ。
 その性格は残忍にして苛烈であり、歯向かう者には決して容赦しない。
 圧倒的な力を以ってして立ちはだかるものを蹂躙し、全てを『略奪』する闇の暴君。
「もしもラグナの町が彼の手に落ちれば、どれほどの惨劇が起こるは予想もつきません。ですがいかに強大な吸血鬼と言えども、皆様ならば敵わない相手では無いはずです」
 臆することなく、全力で挑めば、必ずや勝機は掴み取れるはずだと。
 信頼を込めた眼差しで猟兵達をじっと見つめながら、依頼の説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべる。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回の依頼はダークセイヴァーにて、平和な町を狙うヴァンパイアとその軍勢を討伐するのが目的となります。

 第一章では町に迫る骸の群れを草原で迎え撃ちます。
 猟兵からすれば雑魚ですが数だけは多いので、うまく一網打尽にする方法を考えると良いかもしれません。
 無理に全滅させずとも、中央にいる指揮官の元までたどり着ければ成功です。

 第二章では指揮官を守るオブリビオンとの集団戦。
 第三章ではボスであるヴァンパイア『乾きの王』との決戦になります。

 ちなみに敵の標的となったのは、私の過去作『偽りの繁栄に終止符を』(https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=2185)に登場したラグナの町です。
 とはいえ今回の依頼との直接的な繋がりはなく、戦場も町の外になるので、特にリプレイを読まなくても問題はありません。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 冒険 『骸の群』

POW   :    骸の群を、単純に力で排除します。判定次第では重いダメージを受けることになります

SPD   :    町へ行こうとする骸の群を足止めするため、罠を張ります。また、遠距離攻撃で骸を土に返します

WIZ   :    罠を張った上で草原に火を付け、骸の足止めと攻撃を兼ねます。

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

イゴール・スミルノフ
ニトロさん(f07375)と一緒に参加希望です!

SPDを選択

平和な町だな…
この世界では珍しい… 人が人として生きる事が出来る所だ。
それを略奪しようとする不届き者には神罰を与えてやろう!
どうだニトロよ!神っぽく決まっているか?

私はキャリバー50で奴等を撃ちまくりつつ《指定UC》で様々な仕掛け罠を出来るだけ大量に作り出し、敵の足止めを行おう!
それだけでは無く、鉄の羽虫達にも攻撃に参加してもらっても良さそうだな!
これを突破して来た者達はニトロに任せたぞ!

アドリブ歓迎です!


ニトロ・トリニィ
イゴールさん(f 21891)と一緒に参加します!

SPDを選択

そうだね、とても良い所だ。
この平和を守らないとね!
うん… とてもカッコ良く決まっているよ…(若干棒読みで)

了解したよ!
じゃあ僕は《誘導爆裂弾》と対物狙撃銃【血煙丸】の狙撃でイゴールが討ち漏らした敵を撃破してみようかな!
かなりの軍勢だけど、UCも血煙丸も火力は十分なはず!
狙撃しながらこのUCを制御するのって結構大変なんだよね…
でも、僕達が頑張らなければこの町が大変な事になってしまう!
よし!気合を入れて行くぞー!

アドリブ歓迎です!



「平和な町だな……この世界では珍しい…… 人が人として生きる事が出来る所だ」
 壮麗なラグナの町並みを見つめるイゴール・スミルノフ(時空を歪ませる系の神・f21891)。その眼差しは慈しむように優しく、言葉には感慨が籠もっている。
「そうだね、とても良い所だ。この平和を守らないとね!」
 それにしっかりと頷きながら応じたのは、ニトロ・トリニィ(楽観的な自称旅人・f07375)。彼の視線は草原の彼方、町に迫る敵の軍勢を見据えている。
 ここは一度はオブリビオンの支配より解放された町。偽りの繁栄ではない、本物の、掛け替えのない平和を手に入れた人々の暮らす町だ。
「それを略奪しようとする不届き者には神罰を与えてやろう!」
 振り返ったイゴールは燃えるようなその赤瞳を輝かせて、堂々と自信たっぷりに――精一杯の神としての威厳を示さんと宣言した。

「どうだニトロよ! 神っぽく決まっているか?」
「うん……とてもカッコ良く決まっているよ……」
「なぜ若干棒読みなのだ!!」
 微妙にノリの悪い相方に文句を言いながらも、イゴールは神っぽいオーラをこれみよがしに光らせながら、重機関銃「キャリバー50」を構える。
 その銃口が狙うのは、意志なき骸の群れ。死してなおオブリビオンの支配から逃れられず、領主の意のままに此度の遠征軍として差し向けられた亡者の兵士達だ。
「哀れな者達よ、せめて神であるこの私が解放してやろう!」
 草原に響き渡るような大きな声と共にトリガーを引き絞る。
 放たれた12.7mm弾の嵐が、猟犬の牙のように腐り果てた骸の身体を噛み千切る。
 声と銃声に反応したのか、骸の群れは一斉に濁った眼で銃弾の飛んできた方向を見やると、緩慢な動きで射手たるイゴール目掛けて押し寄せてきた。

「掛かったな!」
 読みどおりにこちらに近付いてくる敵の大群を見て、イゴールは笑う。
 既に彼の周辺には【レプリカクラフト】によって作り出された仕掛け罠が、草むらの中に隠れるように大量に設置されている。
 罠を見破る知性を持たない骸達は、まんまとトラップ地帯に足を踏み入れると、ワイヤーやトラバサミ――足止めに特化した罠の数々に進撃を阻まれることになった。
「よし、今だ! 撃って撃って撃ちまくれ!」
 動きの止まった骸を狙って、重機関銃を乱射するイゴール。さらにその上空からは、彼が「鉄の羽虫」と呼ぶ飛行物体――2機の無人攻撃ヘリが攻撃に参加する。
 レーダー、機関砲、ミサイル、ロケット弾。この世界の技術水準を遥かに超えた戦闘兵器は、ローターの羽音を響かせながら骸達を蹂躙する。
 射程と火力で大きく上回り、さらには空をも制する敵を前にして、ただの死体の群れに為す術などあるはずもなかった。

 ――だが、ただの骸でも数の暴力とは全ての時代と世界に共通する脅威である。
 自我を持たぬ傀儡であるがゆえに恐怖心を抱くこともない亡者達は、火砲にて粉砕される味方を弾除けとしながら、ひたすらに進撃を続行する。
 仕掛けられた罠を文字通りに踏み潰しながら、盲目的にただ前へ――奪い、殺し、壊せという命令を果たすためだけに進む彼らを全て討ち果たすには、イゴール一人の力だけでは手が足りない。

 しかしイゴールは狼狽えない。
 この程度のことで狼狽えるなど、まったく神らしくないから。
「突破して来た者達はニトロに任せたぞ!」
「了解したよ!」
 砲火の中をすり抜けて肉迫せんとする骸を迎え撃つのは、対物狙撃銃【血煙丸】のスコープを覗くブラックタールの青年。正確かつ素早い照準の元で放たれる20mm弾は、耐久性だけはそこそこにある骸の肉体を一撃で撃ち砕き、活動を停止させた。
「ここは通さないからね!」
 次の目標に照準を合わせつつも、ニトロは同時にサイキックの【誘導爆裂弾】を展開。発射される数百もの光の弾丸は、標的を的確に追尾し、着弾と同時に爆発する。
 戦場のあちこちで起こる爆音と炎が、骸の群れを焼き払っていく。

「狙撃しながらこのユーベルコードを制御するのって結構大変なんだよね……」
 スコープ越しに近付いてくる敵を撃ち抜き、同時に爆裂弾の誘導を維持するニトロ。集中力を切らすことのできないマルチタスクは、彼の精神に負担をかける。
「でも、僕達が頑張らなければこの町が大変な事になってしまう!」
 自分の背中側にある町を、そこに暮らす人々の姿を思い浮かべる。
 この場所を突破されれば、彼らに待つのは死か、それよりも凄惨な未来だ。
 いかにマイペースな楽観的な彼でも、そんな事を絶対に許すつもりはない。
「かなりの軍勢だけど、誘導爆裂弾も血煙丸も火力は十分なはず!」
 それは目の前で次々と爆散していく敵の様子が証明している。
 気を抜きさえしなければこの程度の相手、数々のオブリビオンと戦ってきた猟兵達の敵ではない。

「そうだニトロよ! ここでへばっている暇はないぞ!」
 威勢のいい声を上げて、イゴールが鉄の羽虫と共に機関銃の合唱を奏でる。
 戦いはまだ始まったばかり。倒すべき敵の首魁はこの奥に控えているのだ。
「よし! 気合を入れて行くぞー!」
 気を引き締めたニトロは銃把をしっかりと握り直し、弾幕から漏れ出た敵を狙撃する。
 2人の競演はラグナの町へと迫る敵の大軍を、決して寄せ付けはしなかった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フレミア・レイブラッド
操られるままの骸の軍勢なんて美しくないわね…。
良いわ、わたし達の力、魅せつけてあげましょう♪

レクス、【虜の軍勢】で戦闘系眷属達(雪花、エビルウィッチ、邪悪エルフ、ハート・ロバー、異国の少女剣士、黒い薔薇の娘たち、ジョーカー、レッサーヴァンパイア、猫又、罠うさぎ)を召喚。

罠うさぎに戦場を利用したグラストラップ等の罠の構築を指示。雪花やエビルウィッチ、邪悪エルフ等の遠距離系が先陣で仕掛けて罠のある場所へ誘導し、敵を罠に嵌めた後、残りの近接系が掃討戦を仕掛ける様指示。

自身は全体の指示を出しつつ、【念動力】で遠距離支援、掃討戦では先陣を切って【怪力、早業】による魔槍で骸の群れを薙ぎ倒していくわ



「操られるままの骸の軍勢なんて美しくないわね……」
 迫りくる敵の大群を見やり、ふうと物憂げに溜め息を吐きながら、そう呟いたのはフレミア・レイブラッド(幼艶で気まぐれな吸血姫・f14467)。
 腐敗した自我なき亡者の群れも、それを兵士として使役する領主の了見も、彼女の美意識からすればまったく受け入れがたいものであった。
「良いわ、わたし達の力、魅せつけてあげましょう♪」
 敵が軍勢を率いるならば、こちらも軍勢をもって迎え撃つ。
 吸血姫の高らかな呼びかけに呼応して、夜闇の戦場に【虜の軍勢】が現れる。

「おねぇさま、みんな準備はできてるの」
 ひょこり、とフレミアの傍らに姿を見せたのは、雪女見習いの雪花。
 彼女を筆頭としてフレミアの周囲では、エビルウィッチ、邪悪エルフ、ハート・ロバー、異国の少女剣士、黒い薔薇の娘たち、ジョーカー、レッサーヴァンパイア、猫又、罠うさぎ――過去の戦いで吸血姫の虜となった眷属達が号令の時を待っている。
「いいわ。さあ、行きなさい」
 真紅の魔槍「ドラグ・グングニル」を掲げて指示を発すると、まずは雪花やエビルウィッチ、邪悪エルフといった遠距離攻撃を得意とする眷属が、先陣を切って骸の群れに攻撃を開始した。

『ウゥゥゥゥゥゥゥ……』
 降り注ぐ氷雪の礫や火球、魔法の数々。愚鈍な亡者達は遠方からの攻撃に為す術なく撃破されていくが、その進撃は止まる様子を見せない。
 倒された仲間の屍を踏み越えて、数の暴力で敵を蹂躙せんと、まるで腐肉の津波のように虜の軍勢目掛けて押し寄せてくる。
「本当に美しくない……」
 愚直極まる敵の攻勢に眉をひそめながらも、フレミアは狙い通りに事が運んでいるのを確認すると、眷属達に一時後退するよう指示を出す。
「みんな下がるのー」
 遠距離攻撃での牽制を続けながら、じわじわと戦線を後退させる雪花達。その後を追うように、骸の群れはわらわらと勢いよく前進する。
 可愛い眷属が万にひとつもその歯牙に掛かることのないよう、後方のフレミアは念動力の衝撃を放って後退を支援しながら機をうかがう。
 言うまでもなく、これは偽装撤退だ。知性なき骸の群れを罠に嵌めるための。

「掛かったわね」
 フレミアがふっと笑みを浮かべた瞬間、まんまと誘導された骸の群れの足元で、罠うさぎがあらかじめ構築していたグラストラップが牙を剥いた。
 草原という戦場の地形を利用した罠は、単純だが敵の足を止めるのには抜群の効果を発揮する。結われた草に足を取られた骸達は、草原でおろおろとよろめくばかり。
「これで動きは止まったわね。貴女達、準備はいいわね?」
 吸血姫と虜の軍勢が、この絶好の機会を見逃すはずが無かった。
 魔槍を構えて先陣を切った主君の後に続いて、待機していた近接戦闘系の眷属が一斉に突撃する。その勢いはもはや、ただの屍の集団に迎え撃てるものではない。

「さあ、掃討するわよ!」
 その容姿からは想像もつかない膂力で振るわれる魔槍の穂先が、骸達を薙ぎ払う。紅い竜巻のように敵陣を蹂躙しながら、フレミアは配下に激を飛ばした。
 それに応えるように、華麗なる虜の軍勢はそれぞれの技と力を以って敵軍を圧倒する。数では劣れどもその戦力は、烏合の衆に過ぎぬ骸の群れを遥かに上回っている。
 罠に掛かった敵陣の一角が消滅するまでに、それほどの時間はかからなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
折角平和になった町を好きにさせるワケにはいかないね…。

地形を活かし、草原の草むらに隠れる様に戦場の各所に呪符【呪詛、高速詠唱、呪殺弾、誘導弾、属性攻撃、衝撃波、残像、フェイント】を用いた各属性の呪術や呪詛の弾丸等による攻撃や幻影等の呪術トラップを設置…。
わたしの呪力による発動指示や敵が触れた瞬間に起動して仕掛けるよ…。

後は敵と接敵したら【unlimited】を展開…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】で敵集団を一気に吹き飛ばして呪力で侵食しつつ、【unlimited】の一斉斉射を繰り返して一気に殲滅していくよ…。

ここから先は一歩も通さない…。
この町に危害を加えるなら、容赦はしない…



「折角平和になった町を好きにさせるワケにはいかないね……」
 見通しのよい草原の只中にて、雛菊・璃奈(魔剣の巫女・f04218)は押し寄せる敵をじっと睨み据える。今だ穏やかな営みを保つ町を背に、胸に決意を秘めながら。
「準備完了……迎え撃つよ……」
 その手に呪槍・黒桜を構え、周囲には呪力を帯びた無数の魔剣・妖刀の現身を展開し――武装のみならず戦場全体への「仕込み」まであらかじめ済ませておいた彼女は、万全の体制で骸の群れと対峙する。

『オォォォォォ……』
 不気味な唸り声を上げながら、町の前に立ちはだかる新たな「敵」を認識し、一斉に押し寄せる骸の群れ。ただ愚直に前だけを見ている彼らの目は、草むらの中に隠された呪符の存在に気付かない。
「起動……」
 璃奈が呪力による発動指示を行った瞬間、起動した呪符は炎や雷、氷に風といった様々な属性の呪術を一斉に解き放つ。
 足元から至近距離で浴びせられた呪術に、骸の兵士は防ぐ間もなく吹き飛ばされる。その余波を受けてよろめいた別の骸が、違う所に設置されていた呪符に触れる。
 その瞬間、符に秘められていた呪詛の弾丸が発射され、高密度に圧縮された呪力の塊に撃ち抜かれた骸は、ばたりと活動を停止した。

 魔剣の巫女による呪術トラップ地帯に迂闊にも入り込んでしまった骸の群れは、仲間を失いながらも、とにかくひたすら前進を続けようとする。
 だが、そんな彼らの周りには突如として濃い霧が現れ、視界を覆う。方向感覚を奪われた軍勢は進むべき道を見失い、前に進んでいるつもりが同じ所を右往左往するばかり。
 この霧もまた戦場に仕掛けていたトラップのひとつ。呪術による幻影が敵の目を眩ませている間に、術者である璃奈はさらなる呪符を起動させながら敵陣と接触する。

「ここから先は一歩も通さない……」
 トラップの攻撃に翻弄され、こちらの姿を見失っている骸の群れのすぐ間近で、璃奈は呪槍に秘められし力を解放した。
 幻影の霧が晴れるのと同時に、黒い桜の花弁のような呪力の嵐が戦場に吹き荒れ、周囲にいた敵集団をことごとく吹き飛ばしていく。
『ウグアァァァァァ……』
 痛みを感じることのない骸の兵士は、通常の打撃にはある程度の強靭さを示すが、呪力や呪術的な攻撃に対する耐性は持っていない。黒桜の呪力の侵食を受けた亡者達の身体はボロボロと崩壊し、土に還っていった。

「この町に危害を加えるなら、容赦はしない……」
 全てはラグナの町の未来を、そしてこの地に生きる人々の生命を守るために。
 数多の仲間を蹴散らされ、それでもなお退く気配を見せぬ骸の群れに向けて、璃奈は展開した魔剣・妖刀による一斉斉射を放つ。
「呪われし剣達……わたしに、力を……『unlimited curse blades』……!!」
 魔剣の巫女の魔力から生み出された現身達は、射線上にいた敵をまとめて斬り刻み、刺し貫き、跡形もなく蹂躙する。
 それは敵の物量さえ凌駕する力。もはや逃れる術はなく、耐え凌ぐ術もなし。
 呪術の罠ひしめく草原で、璃奈は魔剣の斉射を繰り返し、敵を殲滅していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルパート・ブラックスミス
……遠目に見える指揮官の親衛隊が気になって仕方がない。
記憶を失えど、この鎧(からだ)が覚えているのか。
…駄目だ、落ち着け。下らん想像と焦燥に振り回されるな。
まずは町への脅威、敵の数を減らすことに集中しなければ。


青く燃える鉛で形成した翼を展開、敵陣上空へ飛翔。【空中戦】を仕掛ける。

UC【燃ゆる貴き血鉛】起動し短剣・大剣に纏わせる。
接敵前に短剣を【投擲】。
間合いに入ったならば大剣にて【なぎ払い】、同時に斬撃に乗せた燃える鉛を撒き敵陣を焼き払おう。

【共闘・アドリブ歓迎】


トリテレイア・ゼロナイン
ラグナソピア…幾度も刃を交え、宿縁が絶たれた場面にも立ち会った「繁栄」のオブリビオン
犠牲を大前提とした歪んだものでしたが、人類の繁栄に懸けるその意思は何処までも純粋だったように思えます
結果論とはいえ彼女が遺したもの全てが悪しき物ではないと知っている以上、あの街を他のオブリビオンに手を出させはしません

事前に「陣」を敷き迎撃
UCで一か所だけ隙間を設けた防御力重視電磁バリアの壁を戦場に構築
隙間に殺到し数が制限された骸を排除
百対一は普通は無理でも一対一を百回ならば出来る目が出てくるという理屈です

自身を囮にバリアに阻まれる骸が溜まってきたら●破壊工作で事前に仕掛けた爆薬か他の猟兵の攻撃で一網打尽にします



「ラグナソピア……幾度も刃を交え、宿縁が絶たれた場面にも立ち会った『繁栄』のオブリビオン」
 かつてこの町を支配し、今も町にその名を冠するオブリビオンの事を、トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)はメモリーの中から呼び起こす。
「犠牲を大前提とした歪んだものでしたが、人類の繁栄に懸けるその意思は何処までも純粋だったように思えます」
 そう、かの女神はけして悪意や邪心ゆえに人々を虐げたのではなく、高すぎる理想と純粋過ぎる意志ゆえに、ヒトと相容れることのできぬ異端の神であった。その行いを肯定することはできないが、多少なりとその信念は理解できる。
「結果論とはいえ彼女が遺したもの全てが悪しき物ではないと知っている以上、あの街を他のオブリビオンに手を出させはしません」
 雲霞のごとき敵の大軍を前にして、トリテレイアは【攻勢電磁障壁発振器射出ユニット】を起動。内外の攻撃を遮断する電磁バリアの「陣」を敷き、迎撃体制を整える。

 ――その上空では青く燃える鉛で形成した翼を展開したルパート・ブラックスミス(独り歩きする黒騎士の鎧・f10937)が、進撃する敵軍をじっと見据えていた。
 遠目におぼろげに見えるのは敵の指揮官と思しき黒衣の人影。そしてその周囲に配置された親衛隊の騎士達――それが彼には気になって仕方がなかった。
「記憶を失えど、この鎧(からだ)が覚えているのか」
 鉛しか詰まっていないはずの胸がざわつく。黒騎士の鎧のヤドリガミは、親衛隊の姿を食い入るように見つめながら、この動揺の理由を探ろうとする。
 気になるのはあの騎士達が身に纏う黒き鎧と武具。あれはもしや、己と同じ――。
「……駄目だ、落ち着け。下らん想像と焦燥に振り回されるな」
 ここで己が惑えば、仲間達への負担が増え、ともすれば町の人々に危害が及ぶ。
 心の乱れを理性と使命感にて押さえ込み、今自分が成すべきことを再確認する。
「まずは町への脅威、敵の数を減らすことに集中しなければ」
 視線を親衛隊から骸の群れへと向けなおしたルパートは、鉛翼を広げると敵陣目掛けて飛翔していった。

『グゥゥゥゥゥ………』
 一方の地上では進撃する骸の大群が、前方に展開されたエネルギーの障壁に前進を阻まれていた。
 トリテレイアの構築したバリアは防御力重視で設定されており、骸達の力では突破は困難。しかし一見して難攻不落なその防壁には、一箇所だけ隙間が存在した。
 がむしゃらに壁に当たり続けるうち、偶然にもそのバリアの隙間を発見した骸の群れは、まるで砂糖菓子に群がるアリの行列のようにそこに殺到する。
「掛かりましたね」
 すかさずトリテレイアは儀礼剣を振るい、バリアをくぐり抜けてきた骸の首を一刀のもとに斬り落とす。
 草原を絨毯のように埋め尽くしていた骸の大群も、バリアの隙間を通るときは細い糸のように一列にならざるを得ない。機械騎士が狙っていたのはその瞬間だった。
「百対一は普通は無理でも一対一を百回ならば出来る目が出てくるという理屈です」
 此方は疲労を知らぬウォーマシン、長期戦ならば望むところだとばかりに、出てくる敵を次から次へと排除するトリテレイア。これを罠だと理解できるほどの判断力のない骸達は、流れ作業のごとくバリアを通り抜けては斬り捨てられていく。

「随分固まっているな。好都合だ」
 その様子を上空から確認したルパートは、バリアの外側で「順番待ち」をしている骸の群れに目をつけると、大剣を手にユーベルコードを発動する。
「我が血はもはや栄光なく、されど未だ闇に消えず……!」
 それは肉体も記憶も喪ってなお、その魂に残る騎士の宣誓。
 鎧内より伝う【燃ゆる貴き血鉛】が、大剣を青い炎で包み込む。
 臨戦態勢で敵の直上に到達した黒騎士は、同様に血鉛を纏った黒鉄の短剣をおもむろに地上へと投げ放った。
『グギャァァァァァァ………』
 上空より飛来する青炎の短剣は、さながら焼夷弾の爆撃のように骸に突き刺さり炎上する。まとわりつく灼熱の鉛と燃え広がる青炎は、密集した骸の群れをたちまち包み込み、骨の髄まで焼き焦がしていく。
 飛行能力も遠距離攻撃の手段も持たない彼らは、空中からの攻撃に対して一方的に蹂躙されるほかに無かった。

 ――そして、短剣の爆撃により骸達が炎上していく様子は、バリアの内側にいるトリテレイアからもはっきりと見えていた。
「このまま一網打尽にしましょう」
 追撃をかけるために彼が起動したのは、事前に仕掛けておいた爆薬の信管。
 ドォンッ!! と、バリアの外縁に沿うように大きな爆音と爆風が巻き起こり、炎に呑まれた骸の群れが纏めて吹き飛ばされていく。
「燃え尽きるがいい……!」
 完全に乱れきった敵陣の真上より舞い降りたのは、血鉛と青炎を纏うルパート。
 間合いに飛び込んだ瞬間に放った大剣の一閃は、草を薙ぐように居並ぶ骸の身体を両断し、斬撃と同時に撒き散らされた血鉛は青炎の飛沫となって敵陣を焼き払う。

 ――やがて爆煙が収まり、草原に燃え移った青い炎が消去された時。
 騎士達の周りに群がっていた骸の群れは一人残らず焼き尽くされ、後には灰だけが残されていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
町を落とすのに軍勢を用意するとは大した念の入りようですね。ですが、ラグナの町は必ずや護り切ってみせましょう。

骸の群れの全てを相手していてはキリがありません。UC【滅びの風】で【範囲攻撃】を行い、蹴散らしつつ【ダッシュ】で乾きの王とその親衛隊の元まで向かいます。大将首を取れば配下は総崩れになるはず。

軍勢がラグナの町にたどり着く前に戦いを終わらせなければなりません。その為にも迅速に行動せねば。



「町を落とすのに軍勢を用意するとは大した念の入りようですね」
 ひとつの町とその住人を蹂躙しつくすには余りあるほどの兵力を前にして、静かに呟いたのはセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)。
 骸の群れとはいえこの軍勢は、一般人にとっては為す術もない戦力差だろう。
「ですが、ラグナの町は必ずや護り切ってみせましょう」
 その為す術もない状況を覆すために、自分達猟兵はここにいる。
 暗黒の力をその身に纏う女騎士は、凛々しい表情で「暗黒剣ダークスレイヤー」を構えると、黒い暴風のごとき勢いで敵陣に吶喊した。

「吹き荒べ黒き旋風よ。逆巻く刃となりて仇なす者を切り裂け」
 接敵と同時に暗黒剣を振るえば、解き放たれるは【滅びの風】。
 戦場に巻き起こった暗黒の竜巻は、骸の群れをまとめて呑み込み、切り裂き、破壊する。漆黒の風が吹き荒れた後には、ただ不毛の大地だけが残るのみ。
 一蹴と呼ぶにふさわしい実力差を見せつけたセシリアだが、恐れを知らぬ敵はなおも彼女の行く手を阻もうと、次々に押し寄せてくる。
(骸の群れの全てを相手していてはキリがありません)
 振り下ろされる腐った爪牙を切り払いながら、暗黒騎士が見据えるのはその向こう側。この軍勢を率いる黒装束の王と守護騎士達の姿が、そこに確かにあった。

(大将首を取れば配下は総崩れになるはず)
 再びセシリアが暗黒剣を一閃すれば、滅びの風が正面にいた敵を吹き飛ばす。
 開かれた突破口が閉じる前に、彼女は獲物を捉えた獣のように猛然と駆け出した。
 この骸の群れは指揮官のオブリビオンの力によって操られたもの。つまり指揮官がいなくなれば、骸で構成された軍勢は自然消滅する。
 ラグナの町の命運は――この戦いの趨勢は、最終的に『乾きの王』を討てるか否かに掛かっているのだ。

「軍勢がラグナの町にたどり着く前に戦いを終わらせなければなりません」
 その為に必要なのは迅速な行動。暗黒剣と滅びの風で邪魔をする骸を蹴散らしながら、セシリアは脇目も振らずに『乾きの王』とその親衛隊の元へと駆ける。
 暗黒の力を振るうたびに彼女の生命は蝕まれ、心は闇に染められていく。暗黒とは重い代償を使い手にもたらす諸刃の剣。されど彼女はその力を躊躇いなく使う。

『正しき闇の力を以て、弱き者を護る剣となり盾となろう』

 騎士としての使命が、己への誓いが、その背にある守るべき人々の営みを意識させる。
 その平穏を乱す悪を斬るために、暗黒騎士は漆黒の疾風となって戦場を駆ける。その行く手を阻めるものなど、もはや何一つありはしなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アドルファス・エーレンフリート
※カナ打ちはアドリブで結構です
連携歓迎、絡みOK

キレイだネ、この場所は
美しい町並み、それを作り上げるまでに積み上げた努力と時間
そしてこの場に息づいた活気と命

積木崩しなどやらせはせんサ

数が多いなら防壁を築こウ、飛び切りアツいヤツでネ
増血剤を齧り、血を撒き散らスよ
血潮は燎原烈火トなり闇を阻む城壁を築く
生み出される熱と光は現在に生きる者の活力となる

場を整エたら我輩も打って出るヨ
斧に炎を纏イ、薙ぎ払イ、半端な護りは崩シ、焼き払ウ

闇よ、過去よ 畏れるがいイ
現在は貴様等にただ食い散らかされるだけではないのサ


オリヴィア・ローゼンタール
奪還した平穏、打ち破らせるわけにはいきません!

【属性攻撃】【破魔】【オーラ防御】で聖槍と自身に炎と光の加護を纏う
敵陣へ吶喊(ダッシュ)し、【聖天烈煌破】を放つ
光あれ!

射線上の敵を【なぎ払い】ながら地面に着弾
周辺を祝福で満たし、自身の強化・叶うなら敵の弱体化も
ここより先は聖なる領域、邪悪の手先は立ち入れぬと識れ!

【怪力】を以って聖槍を振るい、骸の群れを斬り打ち穿ち【なぎ払う】
聖槍を【槍投げ】し、【念動力】で操ってまとめて貫く(ランスチャージ)
戻ってくるまでガントレットで殴り(グラップル)、グリーブで蹴り(踏みつけ)、骸を掴んで別の骸へ【投擲】
烈煌破で聖域を増やし、戻ってきた聖槍を縦横無尽に振るう



「キレイだネ、この場所は」
 片眼鏡越しの視線でラグナの町を見つめながら、アドルファス・エーレンフリート(立てば胡乱げ 座れば不審 歩く姿は白々しい・f07048)は感慨を込めて呟く。
「美しい町並み、それを作り上げるまでに積み上げた努力と時間。そしてこの場に息づいた活気と命」
 その全てがこの世界においては貴重であり、同時にどの世界でも掛け替えのない価値を持つもの。それを無惨に踏み砕こうという輩がいるならば、成すべき事は一つ。
「積木崩しなどやらせはせんサ」
 巨大な十字大斧鉄塊を担ぎ上げ、老練の竜騎士は血潮を滾らせる。

『ウゥゥゥゥゥ……』
 地鳴りのような呻き声を発しながら、迫りて来たるは骸の大群。
 ただ目の前のものを破壊することだけしか知らぬ腐肉の津波は、猟兵達による幾度もの迎撃を経てもなお、今だに収まる気配を見せなかった。
「数が多いなら防壁を築こウ、飛び切りアツいヤツでネ」
 アドルファスは増血剤を齧りながら大斧で自らの身体を切り、地獄化した血液を周囲に撒き散らす。ほとばしる血潮は燎原烈火となって瞬く間に戦場に燃え広がり、闇を阻む城壁を築く。
「自分かラ火葬されるつもりがあるのなラ、この【灼炎領域】に踏み込むがいイ」
 にやりと笑う老紳士の前で、腐った骸どもはその熱と光を忌避するかのように、進撃を停止させた。

「奪還した平穏、打ち破らせるわけにはいきません!」
 敵軍の進行が止まった瞬間、その陣中のド真ん中目掛けて吶喊したのはオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)。
 その手に構えた破邪の聖槍と自らの身体に炎と光の加護を纏った彼女は、その聖なるエネルギーを超高密度に圧縮させた【聖天烈煌破】を放った。
「光あれ!」
 まるで小型の太陽のように輝く黄金の光球は、射線上にいた骸達を蒸発させながら地上に着弾し、溜め込まれた聖なる力を放出する。闇は祓われ、不浄は消え去り、大地は祝福で満たされる。
「ここより先は聖なる領域、邪悪の手先は立ち入れぬと識れ!」
 顕現した聖域の中央に立ち、オリヴィアは穢れた骸の群れに向かって宣告する。
 その勇ましくも神々しき姿は、まさに神罰の代行者であった。

『グ、ウゥゥゥゥゥ……!!!』
 大地を覆う灼炎と聖光。ふたつの熱と光が生み出す領域は互いに重なりあい、あらゆる闇と不浄を焼き祓う聖域となる。おぞましき闇の力にて操られた骸の群れには、ただそこに居るだけで耐え難いほどの苦しみが襲った。
「土に還れ、不浄なる者共よ!」
 大幅に弱体化した彼らを薙ぎ払ったのは、オリヴィアの振るう破邪の聖槍。
 並外れた膂力を以って斬り打ち穿ち、間合いに入った敵を一瞬で屠り尽くす。
 身体が軽い。全身にみなぎるこの活力は、聖域の祝福によるものだけではない。
 灼炎領域から生み出される熱と光が、過去に抗い現在に生きる者達に力を与えている。
「この領域でなら負ける気がしません」
 溢れんばかりの力を込めて、オリヴィアは聖槍を投擲する。その軌道は念動力によってコントロールされ、聖域から逃れようとする骸達をまとめて貫いていった。

「闇よ、過去よ 畏れるがいイ」
 そして足並み乱れた敵陣に向かい、炎の城壁から打って出るのはアドルファス。
 整えられた場の力を借りて十字斧に炎を纏い、並み居る敵を薙ぎ払う。業火の斧に真っ二つにされた骸の群れは、断末魔の悲鳴を上げる間もなく燃え尽きていく。
「現在は貴様等にただ食い散らかされるだけではないのサ」
 朗々たる宣告と共に振り下ろされる重い斧撃には、半端な防御などまるで意味を成さず。斬撃の軌跡と共に燃え広がる地獄の業火が、さらに骸を焼き払う。
「人々の平穏を脅かした報いを、受けるがいい!」
 豪快に暴れるアドルファスと肩を並べて、オリヴィアもまた骸の群れをなぎ倒す。
 聖槍が手元になければガントレットで殴り倒し、グリーブで蹴り飛ばし、近くに転がった骸の頭を鷲掴みにして他の骸に投げつける。
 彼らの猛然たる戦いぶりは、感情を持たぬはずの骸達ですら、恐れをなしたように退くほどであった。

「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
「燃え盛る血の海で踊り明かそうではないカ!」
 投擲した聖槍を回収して、再び聖天烈煌破を放つオリヴィア。
 増血剤で失血を補いながら、さらに灼炎領域を広げるアドルファス。
 聖域を拡げながら聖槍と十字斧を縦横無尽に振るう2人の勢いは、もはや誰にも止められなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
やれやれ、この世界はどこ行ってもヘビーで気が滅入るね
なんて言ったって状況は変わらねえし、手ェ動かすさ
戦場は広そうだな?いいね、とても良い
聖域は広ければ広いほどいいんだ──

セット、『Sanctuary』
戦場全域の情報を変更、【ハッキング】による介入を開始
断層を作成、骸の群の一つを奈落へ落す
地面を隆起させて、走ってくる群れを押し返し【時間稼ぎ】
突き立つ槍を精製、自動銃座を精製、トラバサミを精製
地雷設置etc
【ハッキング】さえできれば、いくらでも地形の情報を書き換えることができる
この聖域の上で戦う以上、アンデッドが入り込む余地はねえ
…数が減ったな。道を空けるのに専念する
前座で時間を食うのは下策だしな



「やれやれ、この世界はどこ行ってもヘビーで気が滅入るね――なんて言ったって状況は変わらねえし、手ェ動かすさ」
 陰鬱な夜闇に包まれた戦場で、呻きながら蠢く屍の群れ。ホラー映画の一コマのような光景に顔をしかめながらも、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)は戦闘のためのプログラムを構築する。
「戦場は広そうだな? いいね、とても良い。聖域は広ければ広いほどいいんだ――」
 どこまでも見晴らしのきく草原には、彼のハッキングを阻むものは何もない。
 電脳魔術師の操る0と1の猛獣が、亡者の群れに牙を剥く。

「セット、『Sanctuary』」
 起動したプログラムを地面に撃ち込み、ヴィクティムは戦場への介入を開始する。
 一度ハッキングに成功してしまえば、彼は戦場の地形をいくらでも"書き換える"ことができる。
「今からここは俺の支配下だ」
 脳内でコマンドを入力すれば、平坦な草原に突如として巨大な断層が現れ、通りがかった骸の一群を呑み込んでいく。奈落の底に落ちていった仲間を見て敵軍が迂回すれば、今度は波のように隆起した地面がその前進を押し返す。
 さらにその前方には突き立つ槍と自動銃座による防御陣地が。浮足立つ敵の足元にはトラバサミが。予測される進撃ルート上には地雷原が。
 地形を変えるだけに留まらず、障害となる設備やトラップを次々に精製することで、ヴィクティムはこの草原を敵の軍勢にとっての死地へと変えた。

「この聖域の上で戦う以上、アンデッドが入り込む余地はねえ」
 完成した『Sanctuary』の中心で、電脳魔術師はパチンと指を鳴らす。
 瞬間、設置された自動銃座が一斉に火を噴き、地雷が炸裂し、地形とトラバサミで身動きの取れなくなった骸の群れをミンチに変えていく。
 ヴィクティムにとってみればこの程度の輩、少々歯ごたえがないくらいの相手だ。自我を持たぬ操り人形であるがゆえに、敵はいくらでもこちらの仕掛けた罠に引っかかってくれる。前進はできても後退のできない屍兵は、誘導するのも容易い。
 聖域へと踏み込んだ骸の群れは、その主に触れることすらできないまま、徒に戦力を損耗し続けていった。

「……数が減ったな。道を空けるのに専念する」
 敵の攻勢が弱まったのを感じたヴィクティムは、新たなコマンドを聖域に入力し、敵の排除よりも此方側の進撃ルートを切り開くために地形を操りはじめる。
 どの道こいつらは敵にとって使い捨てのきく駒だ。親玉であるオブリビオンを倒さない限り、ラグナの町を襲う脅威が止むことはない。
「前座で時間を食うのは下策だしな」
 少年の伸ばした腕の向こう、視界の先にいる指揮官の影に向かって、一筋の道が草原に敷かれる。そのライン上と周辺の敵のみを排除するようにしながら、ヴィクティムは真っ直ぐに"本命"へと向かって駆け出すのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。オブリビオンになって歪んでいたとはいえ、
ここは彼女が必死になって築き上げた理想の地。

…それを略奪しようというのならば容赦はしないわ。

直前まで両手を繋ぎ祈りを捧げUCを使用
吸血鬼化した自身の生命力を吸収する封印により、
目立たない一般人と同程度まで弱体化して存在感を消し、
外に漏れる怪力やオーラを防御して力を溜めておく

第六感を頼りに好機を見切り気合いと共に封印を解放
残像が生じる速度で“血の翼”を使った空中戦を行い、
今までの戦闘知識を元に指揮者の位置を暗視した後、
呪詛を纏う大鎌を振るう闇属性攻撃で群をなぎ払い、
傷口を抉るように指揮者の下への道を作る

…もう苦しむ事はない。眠りなさい、安らかに…。



「……ん。オブリビオンになって歪んでいたとはいえ、ここは彼女が必死になって築き上げた理想の地」
 かつてこの地の支配者であった、繁栄の代行者・ラグナソピア――彼女との生前からの因縁を持つリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、彼女の遺した壮麗な町並みを見つめながら、両手を繋ぎ祈りを捧げる。
「……それを略奪しようというのならば容赦はしないわ」
 振り返った先で待ち受けるは、不遜なる略奪者によって率いられし骸の軍勢の影。
 彼らから町を護るために、少女は外套のフードを目深に被りなおすと、ふっと自らの気配を消した。

「……限定解放。吸血鬼の力、猟兵の力、異端の神の力。その一切を封じる……血の鎖錠」
 それは己の力を封印し、一般人と同程度にまで全能力を制限するユーベルコード。
 ともすれば骸の兵士にも遅れを取りかねないほどに弱体化したリーヴァルディは、しかしそれゆえに誰の注意も引くことなく戦場に潜伏を果たしていた。
 自我を持たず、最低限の判断力しか与えられていない骸の群れは、「町を襲え」という命令を除けばただ目についた敵を攻撃するか反撃するだけしか能がない。
 目立たないようにしていれば、敵はまったくこちらに気付かずに、他の猟兵との戦いに明け暮れている。
「……思っていたよりも敵の練度が低い。……でも、好都合ね」
 姿勢を低くして草原の中に隠れ潜みながら、リーヴァルディは機を窺う。
 目指すは本陣。敵の喉元に刃を突き付けるための、決定的な楔を打ち込む機会を。

 ――やがて、仲間達の攻勢が骸の群れを蹴散らし、敵軍の陣容が乱れはじめる。
「……今ね」
 直感的に好機を悟ったリーヴァルディは、漆黒の大鎌「過去を刻むもの」を持ち上げると、己を戒める血の鎖錠の封印を解放する。
 その瞬間、内に抑え込まれていた力とオーラの全てが外へ溢れ出し、身体には生命力がみなぎり、溜めこまれていた吸血鬼の魔力は巨大な血色の双翼を作り上げる。
『オォォォォォォ……?!』
 突如として戦場に現れた強大な気配に、骸の群れは明らかに浮き足立っている。
 封印の反作用によって一時的に普段以上の戦闘力を得たリーヴァルディは、その隙を逃さずに血の翼を広げて飛び立った。

「……もう苦しむ事はない。眠りなさい、安らかに……」
 死してなおオブリビオンの傀儡とされた骸の群れにリーヴァルディが振るうのは、その支配を断ち切る闇の斬撃。
 紅翼の残像を空中に描きながら敵陣に肉迫し、呪詛を纏った大鎌にて薙ぎ払えば、亡者達はことごとく現世から消え去っていく。その力はまさに鎧袖一触だった。
 軍勢をひとつの生命に見立てるのなら、今放たれた一撃は巨人の肉体に突き立てられたナイフだ。その傷口を抉るように、彼女は勢いを止めることなく大鎌を振るう。
 目指すは"心臓"――この軍勢の中心にいる吸血鬼の王に、自分という杭を突き立てるために。その下へ至るための道を切り開く。

「……待っていなさい」
 これまでの戦闘と観察から、指揮官の所在はとうに割り出している。
 漆黒の親衛隊に護られ、異形の馬に跨る黒衣の吸血鬼――その姿をきっと見据えながら、リーヴァルディは戦場を翔け抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』

POW   :    リピート・ナイトアーツ
【正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    無数の飢牙
【鎧】から【無数に伸びる蛇や狼、竜の首】を放ち、【噛み付きによる攻撃をし、拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    鎧装転生・鋼獣群集
自身の【五体と生命力】を代償に、【吸収してきた生命の形をした鋼の生物たち】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い探知能力の下、生命力を吸収する牙や爪】で戦う。

イラスト:にこなす

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「――羊の群れを狩るだけの容易い作業だと思っていたが。存外に牙の鋭い狼が紛れていたか」

 ラグナの町に迫る骸の大群を蹴散らして、本陣への道を切り開いた猟兵達は、ついに敵軍の指揮官である『乾きの王』と相見えていた。
 近付くほどに分かる、その偉容なる気配。骸の兵士などとは比べ物にすらならない、圧倒的強者にして絶対的支配者のオーラ。
 自らの軍を僅かな人数で撃ち破られ、こうして目前まで迫られているというのに、彼は動揺も狼狽もすることはなく、むしろ感嘆するような眼差しを向けていた。

「寡兵にて我と立ち向かうその闘志や見事なり。だが、たかだか骸の群れを蹴散らした程度では、『略奪』に値する強者とは判じ得ぬ」

 そう告げた『乾きの王』と猟兵達の間に立ちはだかったのは、漆黒の武具を纏った騎士の群れ。何も物言うことはなく、ただ鉄のような鋭い殺気を放っている。
 よく見れば彼らが纏う鎧はところどころが異形化しており、武具と完全に一体化しているようにも見える。その姿に、ふと既視感を覚える猟兵もいた。

「此奴らは『怪物に堕ちた黒騎士』――自らの武具に精神を食われ、身も心も怪物に成り果てた黒騎士の成れの果てよ」

 呪われし武具を身にまとい、敵の魂を啜りながら戦う異能の戦士、黒騎士。
 強大なるその力は、しかし常に呪いと隣り合わせの危険な力でもある。
 彼らは、そんな呪われし力の暴走に耐えきれず、堕ちてしまった騎士の末路だ。

「身に余る力に手を伸ばした愚者の末路よ。だが戦力としては悪くないのでな……貴様らの力が"本物"であるかどうか、見極めるには丁度良いだろう」

 不遜なる物言いをする『乾きの王』の命に応じて、堕ちた黒騎士達はそれぞれの武器を構える。怪物となり正気を失ってなお、その構えは騎士として洗練されていた。
 彼らを突破しなければ、王の喉元に刃が届くことはない――ラグナの町を守る猟兵達の戦いは、ここからが本番であった。
イゴール・スミルノフ
ニトロさん(f07375)と一緒に参加希望です!

あれは… 黒騎士か?
先程の骸供よりも数は少ないが… 強さでは上だな…
どうしたニトロ?
… まさか!前々からやりたいと言っていたアレを!
フフ…良いだろう!協力するぞ!

ニトロの行動が上手く行く様に、今回は囮とし動く必要があるな…
前線に出て先程と同じくキャリバー50と二機の羽虫達、さらには《指定UC》で呼び出した英霊達で攻撃を仕掛けよう。
中々の火力だが、鋼で出来た生物達は厄介だ…
羽虫達の武装なら倒せるが、大量に出てこられては対処するのは難しい…
こちらが押され始めたら、母なる鉄の羽虫で後退だな!

今だニトロ!思う存分撃ち込め!

アドリブ歓迎です!


ニトロ・トリニィ
イゴールさん(f21891)と一緒に参加します!
アドリブ歓迎です!

うわぁ、まだまだ多いな…
まだ乾きの王が残っているし、極力手傷は負いたく無いんだよな…
そうか!今こそアレを使えば良いじゃないか!
ん?そうそうアレだよ。

今回は《指定UC》で僕の戦車を増やしてド派手に一斉砲撃かな!
一度やってみたかったんだよね!
ただ、囮となってくれているイゴールを巻き込む訳には行かない!
彼が後退するまで待機かな。

待っている間は… 〈情報収集〉を行いながら〈鼓舞〉でイゴールを応援してあげよう!

…一応離れた所から攻撃を行うつもりだけど、敵のUCにも注意しないとね。
もし首が来たら、ククリナイフで〈カウンター/二回攻撃〉かな。



「うわぁ、まだまだ多いな……まだ乾きの王が残っているし、極力手傷は負いたく無いんだよな……」
 骸の大群を突破してきたニトロは、大将首を前にして立ちはだかった魔鎧の集団に眉をひそめる。その相棒であるイゴールも、慎重な面持ちで彼らを睨んでいた。
「あれは…… 黒騎士か? 先程の骸供よりも数は少ないが… …強さでは上だな……」
 油断できるほどの相手ではないが、さりとてここで長々と戦うわけにもいかない。
 余力を残したまま大将との戦いに挑むためには、何か作戦が――。
「そうか! 今こそアレを使えば良いじゃないか!」
「どうしたニトロ? …… まさか! 前々からやりたいと言っていたアレを!」
 ぽんと手を打ったニトロに、イゴールもはっと気がついたような顔をする。
 どうやら、この黒装のブラックタールには何やら腹案があるらしい。
「ん? そうそうアレだよ」
「フフ……良いだろう! 協力するぞ!」
 相棒の思いついた計画を実現するために、白き神はキャリバー50を構えて鉄の羽虫を従えて前線へと飛び出す。対する堕ちた黒騎士達も一斉に構えを取って迎え撃つ。

『グ、オォォォォォォ……!!』
 黒鎧の中から響く、獣が唸るような声。
 騎士の五体と生命力を糧として顕現するのは、鋼の身体と爪牙を持った獣達。
 【鎧装転生・鋼獣群集】――それは、過去に吸収した怪物達を再誕させる御業。
 今や自らも怪物となった主に使役される獣達は、咆哮と共に目の前の敵に襲い掛かった。

(ニトロの行動が上手く行く様に、今回は囮とし動く必要があるな……)
 現れた獣と黒騎士の注意を引きつけるために、イゴールは二機の羽虫達と共に銃砲を乱射する。けたたましい銃声と共に降り注ぐ、弾幕やミサイルの雨霰の火力は、全身鋼鉄の生物を相手にしても有効な威力を発揮する。
『グルルルルルル……ッ!!』
 だが、黒騎士の鎧から次々と生み出される獣達は、銃弾と爆発にも怯むことなく牙を剥く。容易く破壊できた骸の兵士とは、強度からしてまるで異なる強さだ。
「戦場に散った勇敢なる英霊達よ! すまない…… 力を貸してくれ!」
 このままでは喰らいつかれる。そう判断したイゴールは【英霊達】の召喚を行い、数多の戦場で散っていった軍人達の霊を呼び寄せる。
 腰にはナイフと拳銃、手にはアサルトライフルで武装した彼らは、無駄のない訓練された動きで迫る敵軍に狙いをつけると、連携の取れた制圧射撃を開始した。

「頑張れイゴール! あっ、3時の方向からも敵が来てるよ!」
 草原に轟く銃声と咆哮に負けないよう、声を張り上げて相棒を応援するのはニトロ。やや後方に引いた位置から戦場を見渡す彼には、前線からは見えない敵の動きもよく見える。
「おお、助かったぞニトロ!」
 右方から接近する鋼獣の一群に気付かされたイゴールはすぐさま英霊達と共に射撃を集中させ、敵の突進を押し止める。
 その動きを見て、追加の"脅威"を認識したのだろう。堕ちた黒騎士達は鋼獣の召喚を続けながら、鎧から伸長する【無数の飢牙】を後方へと襲い掛からせる。
「おっと、こっちにも来たね」
 注意を怠っていなかったニトロは素早くククリナイフを抜き放つと、襲ってきた獣達の首を切り払う。噛み付きと絡みつきを同時に狙ってくるのは厄介な攻撃ではあるが、イゴールがまだ囮となってくれているお陰で、攻撃の手は比較的緩い。
「今のうちに……」
 黒鎧から伸びる蛇や狼、竜の首を次々に切断しながら、ニトロは意識を集中して「アレ」の準備を整えていく。

「やはり大量に出てこられては対処するのは難しい……」
 一方で前線のイゴールは、湧き出る獣の群れに徐々に押され始めていた。
 撃ち倒しても、吹き飛ばしても、後から後から現れる鋼の獣。おそらくは黒騎士達の生命力が尽きない限り、こいつらはいくらでも姿を現すのだろう。
 銃撃戦を行っていた英霊達の一部も、すでに肉迫されナイフによる白兵戦に移っている。潮時だと感じたイゴールはここで後退を決断する。
「来い、母なる鉄の羽虫よ!」
 神がばっと手をかざすと、ローター音を響かせながら、上空から新たな無人ヘリが降下してくる。これまで戦っていた二機とは異なり、こちらは兵員を運ぶことを目的とした大型輸送機だ。
「皆、急いで乗り込め!」
 降りてきた回収用アームに掴まって、次々と空へ上がるイゴールと英霊達。
 追いすがらんとする黒騎士と鋼獣を、残った二機の鉄の羽虫が牽制する。

「今だニトロ! 思う存分撃ち込め!」
「待ってたよ!」
 無事に後退を完了させたイゴールが叫ぶ。それに応えたニトロの周囲には――何十台という数の重戦車部隊が、砲の装填を完了させて待機していた。
 メルカバMk.Ⅴ-FX。120mm滑腔砲と12.7mm機銃、そして最新鋭のAIを搭載したニトロ所有の改造戦車。それを彼は【複製武器ノ召喚】によって増産したのだ。
「集中して! ……増やす! そして……動かす!」
 戦車部隊が砲身を向ける先は、イゴールが引きつけていた敵の群れ。彼の奮闘の甲斐あって上手い具合に密集したド真ん中に叩き込むのは、全車両による一斉砲撃。
「一度やってみたかったんだよね!」
 楽しげな笑顔と同時、戦場から音という音を吹き飛ばすド派手な砲音が轟き渡る。
 放たれた51発の120mm滑腔砲の砲弾は、狙い過たずに目標へと着弾。圧倒的な質量と速度の暴力によって、敵を薙ぎ払っていく。
『オォォォォォォォ……!!!!!』
 鋼の獣達はバラバラになって吹き飛ばされ、堕ちた騎士達も幾人かが砲弾にその鎧を撃ち抜かれ倒れ伏す。砲音の余韻が過ぎ去った後には、まさに死屍累々の惨状が広がっていた。

「やったなニトロよ!」
 上空から敵陣の大打撃を確認して、輸送ヘリから手を振るイゴール。
 とても満足げなその笑顔に、ニトロも笑いながら手を振り返した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
残り短い命、好きなだけ驕っているがいい
そして叛逆の牙は貴様の喉元まで迫っていると識れ

【属性攻撃】【破魔】【オーラ防御】で聖槍と四肢の武具に炎の加護を纏う
力に呑まれ、邪悪に阿る、騎士の成れの果て、ですか……

強化された【視力】と膨大な【戦闘経験による知識】で武技を【見切り】、【聖槍で受け】流す
中止できない隙を狙って【怪力】で殴り飛ばし、蹴り飛ばし(吹き飛ばし)、聖槍で叩き伏せる(ランスチャージ)
なかなかの鋭さ……しかし、何の為に振るうのかを忘れた武技の冴えに、意味などない!

体勢を崩したところへ【全力魔法】で強化した炎を纏った渾身の【踏みつけ】【熾天流星脚】を放つ
その呪われた鎧ごと――蹴り砕く!



「力に呑まれ、邪悪に阿る、騎士の成れの果て、ですか……」
 怒りと微かな憐憫の情をたたえた瞳で、堕ちた黒騎士を見つめるのはオリヴィア。
 その感情の昂りを示すかのように、聖槍と武具に纏った炎は一層激しく燃え盛る。
 闇を祓うその輝きに引きつけられたか、敵は続々と彼女の元に押し寄せてきた。

『オォォォォォ……ッ!!』
 剣、斧、大鎌――様々な武器から繰り出される精妙なる連撃がオリヴィアを襲う。
 正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技。【リピート・ナイトアーツ】の冴えは、幾度の戦いを経験した彼女の目から視ても練達の域にあった。
「なかなかの鋭さ……しかし、何の為に振るうのかを忘れた武技の冴えに、意味などない!」
 その培った経験と強化された視力こそが業を見切る力となる。振るった聖槍の穂先と柄が、黒き刃の猛襲を鮮やかに受け流す。
 堕ちた黒騎士の武技は所詮、生前から焼き付いた技の再演に過ぎない。言うなれば演武のような型に嵌った一連の行程。その流れを途中で止めることはできない。
 そこに生じる隙を狙って、オリヴィアは聖槍の刺突と拳脚の打撃を叩き込んだ。
『グォ……ッ!』
 聖なる炎を纏いし白銀の篭手と脚甲による打撃が、彼女本人の怪力もあいまって黒騎士達を大きくのけぞらせ。
 さらに破邪の力を秘めた黄金の穂先が、呪われし黒鎧を穿ちながら突き飛ばした。

「猛き炎よ、我が脚に集い、破邪の流星となれ――!」
 敵群の体勢を崩したオリヴィアは、脚に炎を集中させると渾身の力で地を蹴った。
 高々と上空へと跳び上がった彼女が放つのは、全力の【熾天流星脚】。邪悪を滅する聖火とダンピールの脚力、そして位置エネルギーまでをも利用した必殺の一撃。
「その呪われた鎧ごと――蹴り砕く!」
 まさに流星のごとき美しいフォームと軌跡を描いて叩き込まれた蹴りは、堕ちた黒騎士が受け止めようと掲げた武器をへし折って、鎧を粉々に打ち砕く。
 さらに着弾点を中心として燃え広がった聖なる炎は、まるで大きな天使の翼のように、周囲にいた黒騎士達を焼き尽くしていった。

「残り短い命、好きなだけ驕っているがいい」
 燃え盛る炎の中心にて、着地したオリヴィアは静かに言い放つ。
 その視線の先には、異形の馬上からこちらを睥睨する吸血鬼がいる。
「そして叛逆の牙は貴様の喉元まで迫っていると識れ」
「――面白い。ならばこの試練、超えて証明してみせよ」
 突き付ける聖槍の穂先にも劣らぬ鋭い視線を受けて、『乾きの王』は愉快そうにほくそ笑むのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フレミア・レイブラッド
哀れね…武具に使われるなんて…。
一章で召喚した【虜の軍勢】達から、雪花、エビルウィッチ、異国の少女剣士、ジョーカーを率いて戦闘。

【ブラッディ・フォール】で「雷鳴響き渡り、裁きは下る」の「ユピティー」の杖と服装に変化。
【千雷の裁き】で集団を雷撃で薙ぎ払いつつ、【落雷審判】で「動くな」と指定して敵の動きを制限。
更に【来たれ、断罪者達よ!】で断罪者達を召喚し、動きを制限された黒騎士達を始末。
雪花とエビルウィッチは吹雪と火球で黒騎士達を狙い撃ち、少女剣士とジョーカーは戦えない本体の護衛をしつつ、縮地や大鎌で敵の始末を命じるわ

後は断罪者が消えたらわたし自身で他の眷属を率いて魔槍と千雷で騎士達を蹴散らすわ



「哀れね……武具に使われるなんて……」
 骸の群れとの戦いで召喚した眷属達を率いて、フレミアは黒騎士達を見つめる。
 怪物へと堕落し、かつての信念も誇りも失って、忌むべきオブリビオンの走狗と成り果てた者達。せめて彼らをその末路から解放することが、せめてもの情けだろう。

「骸の海で眠るその異形、その能力……我が肉体にてその力を顕現せよ!」
 【ブラッディ・フォール】を発動した吸血姫がその身に降ろすのは、雷を司りし鳴神『ユピティー』の力。罪を裁き、審判を下すその雷鳴は、堕ちた騎士達を迎え撃つのに最も相応しい力やもしれない。
『ウォォォォォ……!!!』
 対する黒騎士達は自らの生命力を対価に【鎧装転生・鋼獣群集】を発動する。
 鎧を突き破るように飛び出した鋼の生物達が、咆哮を上げてフレミアを襲う。
 しかし鳴神の装束を纏った吸血姫は慌てずに、手にした黄金の杖を掲げる。
「動くな」
『グォ……ッ!!!?』
 【落雷審判】と共に発される【千雷の裁き】。
 天より降り注いだ雷撃の豪雨が、鋼獣と黒騎士の集団を纏めて薙ぎ払う。
 獣達の多くは感電して倒れ伏し、騎士達の多くもたまらず膝を突いた。

『グゥゥ……ッ!』
 バチバチと帯電しながらも、すぐに体制を立て直し反撃に転じようとする騎士達。
 だが彼らが立ち上がった瞬間、「動くな」というルールに反したことで、上空からさらなる落雷の追撃が襲い掛かる。
『ガァッ!?』
 単純ゆえに違反しやすいルールのために威力はそう高いものでは無いが、牽制としては大きな意味を持つ。迂闊に動けばダメージを負うと知った黒騎士は、実質枷を嵌められたようなものだ。

「来たれ、断罪者達よ!」
 敵の動きを制限したところで、フレミアが召喚したのは白雷と黒雷の断罪者達。
 全身に稲妻を帯びた鳴神の眷属達は、虜の軍勢と連携して一斉攻撃を開始した。
『ググ、グ……』
 動けない黒騎士達は、その場で新たな鋼獣を喚び続けるほかに戦う術はない。
 騎士の五体と生命を貪りながら出現する獣の群れを、断罪者達は雷撃を以って迎え撃つ。敵の布陣に穴が開けば、そこに糸を通すように雪花とエビルウィッチが吹雪と火球の魔術を放つ。
『ゴガァッ!!』
 極寒と灼熱に同時に狙い撃たれた黒騎士の鎧は、急激な温度変化により粉々に砕け、骸の海に還っていった。

「みんな上手くやっているわね」
 断罪者の召喚中は戦闘に参加できないフレミアは、後方から戦況を見守っていた。
 彼女に傷を負わせぬよう護衛につくのは、少女剣士とジョーカーの2人である。
 白兵戦に長けたこの眷属達は、主人に近付く鋼獣を迎え撃ち、縮地の歩法や大鎌を振るってことごとく始末していった。

『ウォォォォォォォ……!』
 一方の前線では激戦が繰り広げられる中、最前線に立っていた断罪者達が鋼獣の爪牙に生命力を削り尽くされ、消滅する。
 敵の前衛が消えたことで勢いを取り戻した敵群は、雪崩を打って押し寄せるが――そこには戦闘不可の縛りが解けたフレミアが、残った眷属を率いて待ち構えている。
 勢い付いた軍勢というのは、攻勢においては強いが守勢においては隙があり、予想外の事態には対応が遅れる傾向にある。鋼獣の群集であってもそれは変わらない。

「さあ、蹴散らしてあげるわ!」
 杖から魔槍に武器を持ち替えたフレミアは、敵の先頭にいる獣達の足元をすくうように薙ぎ払う。足並みが乱れたところに眷属達がすかさず一斉攻撃を仕掛け、後続の敵を一掃した。
 その勢いは止まることを知らず、鋼獣を突破した虜の軍勢と吸血姫はそのまま後方にいた黒騎士達に突撃し、魔槍の矛先を突き立てる。
『グオォォォォォォォ……ッ!!!!!』
 深い谷底から響くような断末魔を上げて、鎧を貫かれた黒騎士は消滅していく。
 その様子はまるで、長きにわたる呪縛からの解放のようでもあった。

成功 🔵​🔵​🔴​

雛菊・璃奈
呪われた騎士達…そして、呪われし武具達…。
貴方達を今解放してあげる…。

【狐九屠雛】を自身の周囲に展開…。
黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い、早業】で敵集団を一気に吹き飛ばして呪力で侵食…。
同時に【呪詛、高速詠唱、呪殺弾、誘導弾、属性攻撃】による雷と氷の呪力弾を放出…。
雷撃と凍結で動きを鈍らせ、更に追い打ちで展開していた【狐九屠雛】を放ち、完全に凍結させるよ…。
鎧の下はあくまで生身だし、異形化した武具も凍結させてしまえば意味が無い…。

わたしは魔剣の巫女…呪いの武具は専門分野…。
呪いの武具達を奉り、その呪いを鎮めるよ…。
あまりに強い呪いは【ソウル・リベリオン】を用いて呪いを浄化するよ…。



「呪われた騎士達……そして、呪われし武具達……。貴方達を今解放してあげる……」
 怪物に堕ちた黒騎士の群れを前にして、優しく静かに呼びかけたのは璃奈。
 彼女は魔剣の巫女。魔剣や妖刀の類を祀り、鎮める役目を担ってきた一族の末裔。
 こと呪われた武具の扱いや浄化に関しては、彼女の専門分野であった。
「魂をも凍てつかせる地獄の霊火……」
 その手に呪槍・黒桜を構えながら、喚び出すのは九尾炎・最終地獄【狐九屠雛】。
 熱ではなく冷気を発する絶対零度の炎が、円陣のように周囲に展開された。

「呪力解放……咲き乱れて、黒桜……」
 召喚された鋼の生物の群れで固められた敵陣へと、璃奈はまっすぐに突撃する。
 突き出した呪槍からは呪力の花弁が桜吹雪のように吹き荒れ、密集していた敵集団を一気に吹き飛ばしていく。
『オォォォォ……!!』
 黒騎士達は己の武器を地面に突き立てて衝撃波に抗うが、黒桜の呪力は彼らの武具と肉体に侵食する。それは呪いにより怪物へと堕ちた彼らさえも蝕む猛毒であった。

「まだまだいくよ……」
 呪力の侵食とほぼ同時に、璃奈が放ったのは雷と氷の呪力弾。
 黒き刃で切り払おうとする黒騎士達だが、黒桜に体勢を乱された直後のことで動きが鈍い。捌ききれなかった弾丸が黒鎧に着弾し、雷撃と凍気を浴びせていく。
 璃奈の狙いは敵の動きを鈍らせること。侵食、感電、凍結の三重苦に見舞われた黒騎士達は、明らかに万全時よりも鈍重になっている。
 そこに追い打ちをかけるように、展開していた【狐九屠雛】が解き放たれる。触れるモノ全てを凍てつかせるその業火から免れるには、今の彼らはあまりに鈍すぎた。

『オ、オォォォォォ……ッ!!!?』
 地獄の業火に包まれた黒騎士達が、絶叫しながら氷像と化していく。
 武具に精神を食われているとはいえ、彼らの鎧の下はあくまで生身だ。様々に形状を変化させる異形化した武具も、凍結させてしまえば意味が無い。
 凍てつく炎の嵐が吹き荒れた後、そこには氷原と化した草原が広がり、もはや身動きひとつしない黒騎士の成れの果てだけが残っていた。

「呪詛喰らいの魔剣よ……彼の者を縛る呪いを喰らい、正しき姿、正しき魂へ戻せ……」
 堕ちた黒騎士を完全に凍結させた璃奈は、魔剣【ソウル・リベリオン】を召喚すると、厳かに祈りと祝詞を唱える。呪いの武具達を奉り、その呪いを鎮めるために。
「彼の魂に救済を……!」
 剣舞を演じるように魔剣を一閃すると、強すぎる呪いの力は浄められ、暴走していた武具の力は小康状態に。そしてその中に囚われていた使い手と犠牲者の魂は、呪詛より解き放たれ冥府へと還っていく。
 死してなお長きに渡り戦い続けてきた黒騎士とその武具達は、ようやく安息の時を得られたのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。身に余る力に手を伸ばした愚者の末路…か。
奪うだけの吸血鬼には分からないでしょうね。
身を削り、心を削り、怪物に堕してまで闘った騎士の誇りは…。

黒騎士の戦闘知識から目立たない武装の変化を予測し、
第六感が捉えた殺気や気合いを暗視して攻撃を見切り、
敵の物理属性攻撃を局所的に魔力を溜めたオーラで防御する

傷口を抉る呪詛を纏う大鎌で鎧を破壊して、
怪力任せに大鎌をなぎ払う2回攻撃で仕留める
戦闘後、黒騎士の魂の存在感に祈り捧げ、
魂の残像と心の中で手を繋ぎ【断末魔の瞳】を発動する

…黒騎士達の魂よ、私の声に応えて。

…いまだ騎士の誇りが失われていないのならば、
吸血鬼を討ち果たし、この世界を護る為に…力を貸して。



「……ん。身に余る力に手を伸ばした愚者の末路……か」
 乾きの王が自らの近衛を評した言葉を、リーヴァルディは淡々と繰り返す。
 その口調は平静のままではあったが、声には内なる憤りが滲み出ている。
「奪うだけの吸血鬼には分からないでしょうね。身を削り、心を削り、怪物に堕してまで闘った騎士の誇りは……」
 彼女には分かる。全てを賭した彼らの決意の重さと、果たせなかった無念の深さが――そして今もなお、あの呪鎧の中に囚われた黒騎士達の魂の嘆きが。

「誇りか。そのようなもの我にとっては略奪物のひとつに過ぎぬ」
 騎士の生き様を嘲笑い、踏み躙り、あまつさえ手駒として使役する『乾きの王』。
 暴君に望まぬ隷属を強いられた黒騎士達は、生前と同じ構えで黒き刃を向ける。
『ウゥゥゥゥ……』
 もはや獣のように唸ることしかできぬほど精神は怪物と成り果てても、身体に刻みつけた騎士の武技は未だ健在。多くの戦闘経験を積んだリーヴァルディから見ても、その構えは堂に入ったものだった。
(……けれど。"獣"ではなく"人"の技を使うのなら、読み切れる)
 黒騎士の武装に搭載された変形機構。間合いや構えに応じて行われる些細な変化に注意して、踏み込む時の殺気、武器を振り下ろす時の気合いを直感的に捉える。
(……彼らの攻撃には一定のパターンがある。それが分かれば……)
 闇をも見通す彼女の目は、黒剣の連撃の軌跡をも見逃さない。
 局所的に集中された魔力のオーラが、黒騎士の刃を防ぎ止めた。

 【リピート・ナイトアーツ】の弱点は、攻撃を防がれた後に生じる大きな隙。
 その瞬間にリーヴァルディが振るったのは、呪詛を纏った「過去を刻むもの」。
 歴戦を経た黒騎士の武具には、大小無数の戦傷が刻まれている。その傷跡をなぞるように振るわれた漆黒の大鎌の一閃は、彼らの黒鎧を真っ二つに切断した。
『―――!!!』
「……これで、仕留める」
 声もなく驚愕する黒騎士達へと、彼女は間髪入れず追撃を叩き込む。
 初撃の勢いを殺さずに、くるりと回転して放たれる真一文字の斬撃。
 ダンピールの並外れた怪力任せに繰り出されたそれは、重く、鋭く――防具を失った黒騎士達の身体を、草を刈るように薙ぎ払っていった。

「……黒騎士達の魂よ、私の声に応えて」
 自身の周囲にいた敵を一掃したリーヴァルディは、散っていった黒騎士達の魂に呼びかけながら、祈りを捧げる。残留思念のように漂う気配と心の中で手と繋ぎ、左眼に刻まれし聖痕を煌々と輝かせながら。
「……いまだ騎士の誇りが失われていないのならば、吸血鬼を討ち果たし、この世界を護る為に……力を貸して」
 【代行者の羈束・断末魔の瞳】。それは死者の魂をその聖痕に取り込み力とする、名も無き異端の神の力の顕れ。本来は怨念を喰らい力とする能力だが、もし仮に、取り込まれた死者の意志が彼女に協力した場合――。

『――我らの無念、受け止めてくれるのか、少女よ』
『ならば我らに残された魂の片鱗、貴殿と共に燃やし尽くそう――』

 幻聴ではない。確かに聞こえた、騎士達の魂の想い。
 霊魂のオーラが全身を覆い、身体の奥底から大きな力が湧き上がってくる。
「……ありがとう」
 囁くように感謝を告げたリーヴァルディは、大鎌を構えなおして顔を上げる。
 暴虐なる『乾きの王』に引導を渡す決戦の時は、徐々に迫りつつあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
ならば私もあなたの言う愚者の一人ということですか。奪うことしかできないあなたには、人には自分の命に代えても護りたいモノが有るということが分からないのでしょうね。

UC【血に狂う魔剣】を発動……暗黒騎士の本当の戦い方をお見せしましょう。
敵陣に突撃を敢行します。彼らの武技の全てを受けきることは困難……であれば、あえて防御を捨て攻撃に専念して戦闘の早期決着を図ります。ダメージを受けても【激痛耐性】で耐え、【なぎ払い】で複数体まとめて斬り伏せつつ【生命力吸収】で傷を癒します。



「身に余る力に手を伸ばす……ならば私もあなたの言う愚者の一人ということですか」
 彼方から猟兵達の戦況を観望している『乾きの王』に、暗黒騎士セシリアは大剣の切っ先を突き付ける。その瞳に静かな怒りと、揺らがぬ信念を宿して。
「奪うことしかできないあなたには、人には自分の命に代えても護りたいモノが有るということが分からないのでしょうね」
「全くもって理解に苦しむ思想だ。その末路が全てを喪った此奴らではないか」
 嘲笑いながら『乾きの王』は己の近衛達を指差す。騎士の誇りも、人間性も、魂も、死後の安息すら喪って、怪物に堕ちた黒騎士の群れを。

「此奴らと貴様、いったい何が違う? 我に示してみせよ」
 王の号令に合わせて黒騎士達は各々の武器を構えると、幽鬼のように前進する。
 対峙するセシリアは呪われし暗黒の力を解き放ち、【血に狂う魔剣】を発動した。
「……暗黒騎士の本当の戦い方をお見せしましょう」
 その言葉を最後に、彼女の眼光が狂気に染まる。狂化の呪いと引き換えに暗黒剣の封印を解き、殺傷力を跳ね上げる――それが彼女のユーベルコードの力。
 狂戦士と化した暗黒騎士は獣のような咆哮を上げて、猛然と突撃を敢行した。

『オォォォォォォ……!!!』
 敵陣に真っ向から突っ込んだセシリアを、黒騎士の【リピート・ナイトアーツ】が襲う。堕ちて尚その身に染み付いた騎士達の武技は疾く、そして鋭い。
(彼らの武技の全てを受けきることは困難……であれば)
 狂化された思考で暗黒騎士が選択したのは、あえて防御を捨てた攻撃専念の構え。
 力任せに薙ぎ払われた暗黒剣の一振りが、黒騎士達の鎧を斬り裂き、肉を抉る。
 なれど黒騎士達も怯むことなく、数々の武技がセシリアに叩き込まれる。
 血飛沫が舞い、草原が赤く染まっていく。それでも双方は一歩も退かない。

(こんな痛み、大したことはない)
 全身に走る激痛を闘いの高揚感で上書いて、大剣を振るい続けるセシリア。
 封印を解かれたダークスレイヤーは、斬り伏せた獲物の生命力を吸収し、使い手に還元する力を持つ。彼女がこんな捨て身の戦法を取って生きているのはそのためだ。
 激闘の中で一人、また一人と黒騎士が力尽きていく一方、血塗れの暗黒騎士は負傷、生命力吸収、治癒のサイクルを繰り返し、永久機関のごとく闘い続ける。

 ――やがて剣戟の音が止んだ時、最後に立っていたのはセシリア一人だった。
 激突から決着までの時間はほとんど経っていない。攻撃に専念することで戦闘の早期決着を図るのが彼女の狙いだったのだから、その目論見は成功と言えるだろう。
「……次はあなたの番です」
 己の血と黒騎士の返り血で染まった暗黒騎士は、次なる標的の姿を、闘志に満ちた瞳でじっと見つめるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ルパート・ブラックスミス
姿形が似通い過ぎている。覚えていない、しかし判る。我が亡国の騎士たちよ。
互いにもはや同胞と呼べる有様ではないが…対峙した以上、背くつもりはない。
自分が貴殿らの終焉を務めよう…!

上空を陣取れば自然と敵の攻撃軌道も制限できる、無視されるつもりもない。
【空中戦】を継続し敵を【おびき寄せ】る。

敵の攻撃に【カウンター】、UC【命を虚ろにせし亡撃】を乗せた大剣での斬撃で打ち落とし、無数の首越しに呪いで身動きを封じる。
万一噛みついてきたならばそのまま急上昇し吊り上げ、【怪力】任せに【投擲】しよう。
後は隙を見つけ、斬り込むタイミングを【見切り】空中【ダッシュ】、接敵し【なぎ払い】だ。

【共闘・アドリブ歓迎】


トリテレイア・ゼロナイン
あの鎧の意匠は…
被造物である以上そういうこともあるでしょうね
私も似たようなものでしたが
(SSWで己の同型機「達」と複数回交戦)

大盾を投げワイヤーアンカーで保持
●怪力と●ロープワーク、UCで鉄球宜しく集団を●なぎ払い「中身」ごと叩き潰します
大振りである以上掻い潜り攻撃する個体も居る筈
大盾に拘泥せずアンカーのみを戻し、ルパート様の体躯を参考に●情報収集、鎧の可動域を●見切り迎撃する形で●怪力による剣での●武器受けからの●武器落としで防御

取り落とした相手の得物をアンカーで奪取し使い捨て前提でUCで叩きつけ

身に纏った動機は欲望か、切なる願いか…
何れにせよ彼らが正気であれば結果は違っていたかもしれません



「あの鎧の意匠は……」
 対峙する堕ちた黒騎士の黒鎧に、トリテレイアはふと既視感めいたものを覚える。
 はたと気付いて味方の方を振り返れば、そこには同じ黒鎧を着けた――否、鎧そのものであるルパートが、対峙する相手を食い入るように見つめていた。

「姿形が似通い過ぎている。覚えていない、しかし判る。我が亡国の騎士たちよ」
 ルパートの精神の奥で、ヤドリガミたるこの身に宿った魂が震えている。
 再会したかつての同胞の、怪物と成り果てた余りにも無惨な姿に、慟哭している。
「互いにもはや同胞と呼べる有様ではないが……対峙した以上、背くつもりはない」
 青く燃える鉛翼を広げた黒鎧のヤドリガミは、上空にて鉛滴る大剣を構える。
 それと呼応するように、堕ちた黒騎士達も武器を構える――嗚呼、覚えていない筈なのに、彼らの武技の構えを懐かしく感じてしまうのは何故だろうか。
「自分が貴殿らの終焉を務めよう……!」
 内より湧き上がる言葉にならぬ想いを堪え――かつての同胞を呪いから解き放つために、ルパートは力強くそう宣言した。

『オォォォォォォ……!!!』
 慟哭にも似た雄叫びを上げて、堕ちた黒騎士の鎧の各部から【無数の飢牙】が解き放たれる。自在に伸びる蛇や狼、竜の首が狙うのは当然、上空に陣取るルパートだ。
「やはり、そう来るか」
 飛行手段のない黒騎士達が対空攻撃を行う方法はこれしかないとルパートは読んでいた。地上から空へ放たれる攻撃の軌道は自ずと限定され、見切るのも容易い。
「我望むは命満ちる未来。されど我示すは命尽きる末路」
 襲ってくる無数の首を、大剣による【命を虚ろにせし亡撃】で打ち落とすルパート。その斬撃に籠められたのは、受けた者の力を封じていく亡霊騎士の呪い。

 第一撃では肉体・霊体の自由を。
 第二撃では生命力・魔力を。
 第三撃では思考・精神活動を。

 伸びた首越しに本体へ伝播する呪いは、黒騎士達の行動力を瞬く間に奪っていく。
『グ、ガ、ァ……ッ』
 死にかけのようにのたうつ竜頭が、動けなくなる前に最後の力を振り絞ってルパートに喰らいつく。ならばと彼は噛みつかれたまま鉛翼を羽ばたかせて急上昇し、首と繋がった黒騎士を宙に吊り上げると、力任せに投げ飛ばした。
『ガガァァッ!!?』
 グワッシャァンッ!! と、鋼と鋼がぶつかりあう大きな音が響く。
 敵陣の只中に投げ込まれた黒騎士は同胞達と派手な衝突を起こして倒れ伏した。

「被造物である以上そういうこともあるでしょうね。私も似たようなものでしたが」
 スペースシップワールドで幾度も交戦した己の同型機達の存在と、ルパートと目の前の黒騎士達の関係性に親近感を覚えながら――呪いによって力を封じられ、さらに衝突事故で混乱に陥った敵陣へと、トリテレイアは容赦なき追撃を仕掛ける。
「参ります」
 ぶん、と投擲したのは、彼が愛用する重質量大型シールド。ワイヤーアンカーで保持されたそれは、さながら建築物解体用の鉄球のような振り子の軌道を描き、揉みあった敵陣を薙ぎ払った。
『ゴガァッ!!!?』
 再び派手な激突音が響き、質量のカタマリを高速で叩き付けられた黒騎士達は、鎧を無惨にひしゃげてなぎ倒される。あれでは「中身」の方も無事ではあるまい。

『ウォォォォォォ……!』
 しかしまだ亡霊騎士の呪いが浅かった一部の黒騎士は、大盾の投擲を掻い潜って反撃を仕掛けてくる。
 隙を突いたとはいえ大振りである以上、躱されるのも予測済みだったトリテレイアは、盾に拘泥せずアンカーのみを手元に巻き戻すと、接近する騎士を迎え撃つ。
(姿形が似通っているなら、ルパート様の体躯が参考になりますね)
 これまでに見た仲間の動きと鎧の可動域から演算して、繰り出される【リピート・ナイトアーツ】の軌道を見切る。即座に抜き放った儀礼剣で敵の黒剣を受け止め、ウォーマシンの怪力で押し返し、その手から武器を取り落とさせた。

「実際の戦場の騎士は道具や手段を選ばないものです」
 直後、【戦場の騎士】ことトリテレイアは落ちた黒騎士の剣をアンカーでさっと奪い取ると、持ち主に目掛けてあらん限りの力で振り下ろした。
『ガ―――ッ』
 刀身が歪むほどの勢いで叩き付けられた剣は、黒騎士の鎧を深々と叩き斬った。
 糸の切れた人形のように、ばたりと倒れた彼を見下ろし、機械騎士はふと思う。
「身に纏った動機は欲望か、切なる願いか……何れにせよ彼らが正気であれば結果は違っていたかもしれません」
 怪物に成り果てるほどの執念とこの技量。生前の彼らは名だたる騎士だったのかもしれない。そんな可能性を鑑みれば、トリテレイアとしては少し惜しくも感じる。

『グゥゥゥゥ……!!』
 だが今や彼らは堕ちた怪物。かつて己が支えとした武具に精神を食われた虜囚。
 さらにオブリビオンと成り果てたとあっては、救いの道は討滅しかない。
「貴殿らにもはや栄光なく……されど、此処には貴殿らを弔う炎がある」
 呪い、黒鎧、大盾の鉄槌を受け、満身創痍となった敵群に引導を渡すべく、ルパートは大剣を振りかぶり、蒼き流星のごとく空を翔ける。
 ――その鎧の隙間から零れる鉛の雫は、まるで涙か、あるいは血潮のようであり。
「この一撃にて、貴殿らを終焉に導こう」
 接敵と同時に振るわれた斬撃は、青く燃え盛る鉛と共に、堕ちた黒騎士達を跡形もなく薙ぎ払っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アドルファス・エーレンフリート
※引き続き連携・絡み歓迎 カナ打ち適当○

道半ばで力尽キ…身を焼く炎を抱える我輩としてハ、身につマされるネ
だガ相対した以上闘うのは戦士の倣イ、押し通る

ココからはあまり雑ナ戦いはあまりできないネ
ダカラ…こちらも「騎士」としての手札を切らせてもらおうカナ
気脈を開コウ、火に油を注ぐガ如く血の爆発力を高めヨウ
斧と纏わせた血液、二重の破壊力、速さと技を力で打ち砕ク…!
この十字架が君たちの墓標ダ、感受せよ、吹き飛べ!


どこかのタイミングで我輩一服したいネ
お気にイりのタバコを持ってきたノだよ
あちらがああいうスタイルなら、こちらもそれに乗ろうカナ
紳士はいつも 優雅たれ ナンテね!



「道半ばで力尽キ……身を焼く炎を抱える我輩としてハ、身につマされる」
 呪いに呑まれた黒騎士達と対峙して静かに呟くのは、炎血の竜騎士アドルファス。
 その身に地獄の流血を宿した彼も、力を持て余す可能性とは常に隣り合わせ。同じ騎士としてその末路に、自戒と同情を抱かぬこともない。
「だガ相対した以上闘うのは戦士の倣イ、押し通る」
 傲慢なる吸血鬼の王へと挑むため、文字通り血路を斬り拓かんと、十字大斧鉄塊を握り締める。その闘気に反応したように、黒騎士達も一斉に武器を構えた。

(ココからはあまり雑ナ戦いはあまりできないネ)
 踏み込んでくる黒騎士の斬撃を十字斧でいなし。その太刀筋の鋭さと疾さを手応えとして感じると、アドルファスは気を引き締め直した。
 怪物と成り果ててからとうに正気など絶えて久しかろうに、彼らの振るう武技には些かの衰えもなく、生前に磨き上げられた冴えを保っている。
「まダ騎士としての技術を忘れていないとハ、感嘆に値するネ」
 口元に飄々とした笑みを浮かべたまま、彼は猛然と放たれる剣戟の嵐を受け止めながら一歩下がり――その一歩で、深く大地を踏みしめるように構え直した。
「ダカラ……こちらも『騎士』としての手札を切らせてもらおうカナ」
 気脈を開き、竜気を心身に巡らせる。全身から血管の隅々に至るまで流れ込んだ竜の闘気は、火に油を注ぐが如く血の爆発力を高める。
 【竜気血闘法】――それは竜騎士にしてブレイズキャリバーたる彼が編み出した、独自の戦闘法。血の力を竜気によって強化するユーベルコードである。

「竜騎士の業と爆血の異能の融合、お見せしよウ」
 その身から流れ出す血潮を刃に纏わせ、アドルファスは大きく斧を振りかぶる。
 鉄塊の質量と竜血の爆発、二重の破壊力を以ってすれば、黒騎士の武技にも対抗できよう。
「速さと技を力で打ち砕ク……!」
 それが彼の選んだ真っ向勝負。重心の安定した構えから渾身の力で斧を振り抜き、インパクトの瞬間に竜闘気を注いだ血を最大火力で爆発させる。
「この十字架が君たちの墓標ダ、感受せよ、吹き飛べ!」
 いかに鋭くとも、いかに疾くとも――竜の爪と炎に只人の武技が対抗できようか。
 激突した黒剣の刃は砕け散り、同時に轟く爆音と衝撃が黒騎士を襲う。竜騎士の十字斧は彼らの黒鎧を両断し、全てを紅蓮の炎の中に葬り去っていった。

「ようやク身体が温まってきたネ」
 ニトロでも炸裂したかのような壮絶な焼け跡の中心で、唯一人立つアドルファスは冗談を口にしながらお気に入りのタバコに火を点ける。
 あちらがああいうスタイルなら、こちらもそれに乗ろうカナ――と。高みの見物を決め込む『乾きの王』に対する、彼なりの意趣返しだろう。
(紳士はいつも 優雅たれ ナンテね!)
 優雅に一服しながらふっと漂わせる紫煙の向かう先は、黒衣を纏う吸血鬼の王。
 それはまるで、両者の間に繋がれた導火線のようでもあった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
ハッ!すっかり上位者気取りじゃねーか
俺達を試してるつもりか?狩られる側なのを理解してねーな
…ま、いいさ。乗ってやるよ
どうせ放置しちゃいけねえ奴らだ、ここで纏めてフラットラインだよ

自分を犠牲に何かを召喚する手合いか…数が増えるなら…
セット、『Nighty night』
悪いが全員…眠ってもらうぜ
微睡の海へ落ちて、墜ちて、堕ちろ
数を増やしたのは下策だったな。
召喚したてだから禄に傷ついてもいない
故に、治癒のしようが無い

後は放置して、のこりの奴らを殺してしまえばいい
最後に眠った奴らを一撃で砕いて…お終いだよ
起きたら起きたで弱体化しちまってるけど、な…

くだらねー前座出してないで
決着着けようぜ、スクィッシー



「予想以上……いや、期待以上だな。猟兵の力がこれほどとは、面白い」
「ハッ! すっかり上位者気取りじゃねーか」
 戦いの推移を睥睨している『乾きの王』に、挑発的な笑みと共に吐き捨てたのはヴィクティム。笑みといってもその表情は、まるで牙を剥いた猟犬のように鋭い。
「俺達を試してるつもりか? 狩られる側なのを理解してねーな」
「ふん。どれほど牙が鋭かろうと、野良犬風情に怯える王が何処にいる?」
 敵意を露わにした少年の視線を受け流し、吸血鬼の領主は配下を差し向ける。
 我が首を欲するならば先ずは此奴らを倒してみせよ、ということか。

「……ま、いいさ。乗ってやるよ。どうせ放置しちゃいけねえ奴らだ、ここで纏めてフラットラインだよ」
 立ちはだかる敵の集団を前に、サイバーデッキを起動するヴィクティム。
 ここまでの戦いでもはや劣勢は明らかであったが、堕ちた黒騎士達が戦いを止めることはない。その黒鎧からは鋼で出来た獣達が次々と召喚され、咆哮を上げる。
『オォォォォォォォ……!!』
 その生命が尽き果てるまで、止まることを知らぬ【鎧装転生・鋼獣群集】。
 それは怪物と成り果てた騎士達の、最期の力を振り絞った抵抗であった。

「自分を犠牲に何かを召喚する手合いか……数が増えるなら……セット、『Nighty night』」
 津波のように押し寄せる鋼獣群集に対して、電脳魔術師が起動したのは眠りのユーベルコード。空間に展開された0と1のプログラムが、鋼の獣を夢に誘う。
「悪いが全員……眠ってもらうぜ」
『ウゥゥゥゥ……?!』
 思考に靄がかかり、身体から力が抜ける。駄目だと分かっていても抗えない。
 吠えることを止めた獣達は、ぱたりぱたりとその場に力なく崩れ落ちていく。
「数を増やしたのは下策だったな」
 ヴィクティムのSleep Code『Nighty night』には、眠らせた相手の負傷を回復させる効果もある。敵対する相手であっても治癒してしまうのだが、この場合は――。
「召喚したてだから禄に傷ついてもいない。故に、治癒のしようが無い」
 黒騎士達が生命を削って増やした手駒は、かくして丸ごと無力化されてしまい。
 彼らは結果的に、残り少ない生命力を無為にすり減らしたことになった。

「後は放置して、のこりの奴らを殺してしまえばいい」
 軽快な身のこなしで眠っている鋼獣の間をすり抜け、ヴィクティムは残っている黒騎士達に肉迫する。その手に握られているのは、鈍い輝きを放つ生体機械ナイフ。
『グゥゥゥ……ッ!』
 迎撃のために黒刃を振りかざす黒騎士であったが、獣達を眠らせたプログラムの影響は彼らの身にも現れている。睡魔によって反応速度は低下し、運動能力も鈍る。
「微睡の海へ落ちて、墜ちて、堕ちろ」
 鈍重な獲物の鎧の隙間へとナイフを突き立て、組み込んだ機構で刃を伸長させる。
 短剣からロングソードほどの長さに伸びた刀身に心臓を貫かれ、堕ちた騎士の命脈は尽きたのだった。

 ――それからの戦いは、もはや事後処理と言って良いだろう。
 睡魔に囚われた敵をひとつひとつ潰していくだけの単純な作業。
 たとえ敵が目を覚ましたとしても、『Nighty night』には時間経過と共に対象の戦闘力を半減させる効果もある――満足な抵抗など不可能であった。

「くだらねー前座出してないで、決着着けようぜ、スクィッシー」
 最後に残った鋼の獣を一撃で砕いて、「軟弱、雑魚」を意味するスラングと共に、ヴィクティムはナイフの切っ先を『乾きの王』に向ける。
 王を守る手駒はこれで尽きた。ここからがいよいよ最後の局面だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『渇きの王』

POW   :    『高貴なる赤』
単純で重い【先制 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    『夜を歩くもの』
無敵の【影の従魔 】を想像から創造し、戦闘に利用できる。強力だが、能力に疑念を感じると大幅に弱体化する。
WIZ   :    『渇きの王』
対象のユーベルコードを防御すると、それを【略奪】する。【自身の力を上乗せして 】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:なつみか

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ギド・スプートニクです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「見事なり」

 怪物に堕ちた黒騎士の群れを討ち取った猟兵達を、『乾きの王』は称賛する。
 その言葉に含まれていたのは、高揚と歓喜――そして殺意と闘争心。

「貴様らの力は素晴らしいものだ。研ぎ澄まされたその刃、あるいは本当に我の首に届くやもしれん……ならばこそ心躍る」

 かつかつと馬蹄の音を響かせて進む、その影が異様に泡立つ。
 まるでその中に何か、おぞましい怪物が潜んでいるかのように。

「互いの生命を賭けて闘争し……力を、誇りを、尊厳を、全てをこの手で『略奪』する。それでこそ我が乾きも満たされるというものよ」

 感じられる威圧感、絶対者のオーラはなお強まり。
 猟兵達は彼が、一切の油断も容赦もなく、此方を叩き潰すつもりであると悟る。

「さあ武器を取れ、呼吸を整え、鬨の声を上げよ。我は『高貴なる赤』にして『夜を歩くもの』、万象を略奪する『乾きの王』。汝らの忌むべき邪悪である。貴様らの守るべきものを奪われたくなければ……総力を以って抗ってみせよ!」

 退くことはできない。未来を奪われない為には、ここで奴を打倒するしかない。
 ラグナの町を巡る猟兵達とオブリビオンの、最終決戦の幕が上がった。
シノギ・リンダリンダリンダ(サポート)
『さぁ、お宝は目の前です。略奪と暴虐の限りを尽くしましょう!』
『めんどくさいですね。とりあえずブン殴って終わらせましょうか』

お宝と冒険を求めて海を駆ける海賊団しゃにむにーの船長。
お宝を前にするとテンションが爆アガリするが、それ以外の時でも割とただの脳筋。
殴ればどうにかなると思っている。殴るために死霊を召喚して殴りやすい状況を作るので、頭脳戦が苦手というわけでもない。ただ拳で殴りたいだけである。
主な武器な拳、死霊による傷口えぐり、蹴り。
一人称は私、二人称は基本的には(名前)様。
よろしくお願いします。

年齢制限シナリオ(おいろけ系、えっち系)には基本的に参加しません。


アリウム・ウォーグレイヴ(サポート)
『安易な希望を否定し、正しく絶望し、それでも前へ』
蒼氷の魔法騎士
※自称騎士
既に没落し、名乗る資格なぞ無い。それでも心の在り様は騎士でありたいと願う。
二つ名の通り氷系統の攻撃が得意。半面熱や炎に苦手意識を持つ。
近距離では剣、細剣、槍を使用する。槍は振るうより投げる方が得意。
遠距離では魔力を発揮し、敵を凍らせていく。
探索系ではホワイトパスで五感を強化し調査する

性格
真面目で悲観的。
思慮深いが、考えれば考えるほど悲観的な思考が支配するタイプ。
楽観的思考を持つパートナーとの相性がいい。
怒る事は稀だが、善良な人間が悪に利用される事を酷く嫌う。
誰かを傷つけるのも傷つくのも苦手だが、猟兵の義務として耐えている



「略奪と聞いては黙っていられませんね!」
 ピンク色の髪をなびかせ、虹色の瞳を輝かせて、敢然と『乾きの王』の前に立ったのはシノギ・リンダリンダリンダ(強欲の溟海・f03214)。自分の目の前で好き勝手な『略奪』などさせはしない、そんな決意がその表情から覗えるワケは――。
「略奪と暴虐の限りを尽くすのは、海賊である私の領分です!」
 お宝と冒険を求める海賊団しゃにむにーの船長は、いかにも海賊らしいワルい笑みと共に宣言する。お前が私達から奪うのではなく、お前が私達に奪われるのだ、と。

「下郎めが混じっていたか。賊風情が何のつもりで我の前に立っている?」
 冷ややかな眼差しでシノギを見下した『乾きの王』は、闇の力を纏い馬を駆る。
 相手の機先を制する、単純だがそれゆえに重く強烈な騎馬突撃。回避は間に合わないと悟ったシノギは咄嗟に両腕をクロスさせ、真正面からその一撃を受け止める。
「散れ」
 重戦車の突進さながらの衝撃が直撃し、機械人形の身体が吹き飛ばされる。
 地を揺るがす轟音と共に、まるで大砲でも着弾したように地形に刻まれた破壊痕が、その威力の凄まじさを物語っていた。

「痛いですね……」
 だが【高貴なる赤】の一撃を喰らってもなお、シノギから戦意は失われていない。
 破損した身体の痛みに耐えてすぐさま起き上がり、拳を固めなおすその姿を見た『乾きの王』は、ほうと見直したように口を開く。
「耐えたか。だが傷は深いようだな」
「ええ、痛かったんです。そちらだってそれ以上の代償を受けるべきでは?」
 傲慢なる吸血鬼から受けたダメージを代価として、シノギが喚び出したのは【赤い華火】。紅い手袋をした女の死霊が真っ赤な日本刀を構え、召喚主の隣に並び立つ。

「死霊召喚か。ならば此方も手駒を増やすとしよう」
 『乾きの王』は即座に、【夜を歩くもの】の権能を以って影の従魔を創造する。
 術者が受けたダメージに比例して戦闘力の増す【紅い華火】だが、闇と影が凝り固まって出来たようなその異形もまた、一目で尋常ならざる力を持つと分かる。
 これでは彼我の総戦力の差は覆らない――シノギが脳裏で冷静な思考を巡らせていると、ふいに一陣の冷たい風が戦場に吹いた。
「手が足りなければお貸しします。猫の手ではなく騎士様の手もお借りしましょうか」
 それは白銀の鎧兜を纏う【ホワイトナイト】を伴った、アリウム・ウォーグレイヴ(蒼氷の魔法騎士・f01429)。氷の魔力を帯びた細剣「氷華」を構えた彼は、白騎士と共に果敢に影の従魔へと挑み掛かった。

「海賊の次は騎士ときたか。貴様はなぜ我に抗う?」
 『乾きの王』が問いを発する一方で、影の従魔は猛然と爪牙を振るう。それを受け流しながら反撃の刺突や斬撃を叩き込むアリウムと白騎士だったが、影のボディに刻みつけた傷はすぐに塞がってしまう。まるで無敵のようだ。
「この世界はすでに我らオブリビオンの手中にある。万に一つ我を討てたとして、その町を救えたとしても、所詮は一時凌ぎに過ぎぬ。貴様らの抵抗は無意味だ」
「……確かに、その通りかもしれません」
 倒れることのない影と相対するアリウムは、吸血鬼の言葉を悲観的に肯定する。
 常に思慮深く氷のように冷静であるがゆえに、彼はダークセイヴァーの現状が決して楽観視できるものではないと分かっている。この世界を覆う闇は深く、大きい。
 それでも――既に没落し、名乗る資格なぞ無くとも、騎士としての心の在り様は失っていない。弱きものが無惨に蹂躙される様を、黙って見過ごす事などできようか。
「安易な希望を否定し、正しく絶望し、それでも前へ」
 諦めずに前へ進み続ける弱者のために、蒼氷の魔法騎士は誰かを傷つけ傷つく疎ましさに耐え、剣を振るい続ける。

「まったくつまらない質問をしますね。奪われたなら奪い返せばいいんですよ」
 そこに、しごくあっさりとした呟きと共に影の従魔に襲い掛かったのは、シノギの使役する女死霊。執念を感じさせる日本刀の斬撃が敵をたじろがせる。
 たとえ無敵の怪物であろうとも、対処のしようはある。創造主である『乾きの王』さえ倒れれば、影の従魔も同時に消滅するのだ。
「とりあえずブン殴って終わらせましょうか」
 死霊に従魔の足止めを任せたシノギは、負傷を感じさせない軽快なステップで肉迫すると、メリケンサックを装着した拳を振るう。対する『乾きの王』は全身に闇のオーラを漲らせながらガードするが――。
「そうですね。貴女のような考え方もありなのかもしれません」
 瞬間、放たれた蒼氷の一閃がガードをすり抜けて、吸血鬼の身体を斬り裂く。
 従魔との戦いに女死霊が加わったことで、余裕の生まれたアリウムが、本体への追撃を仕掛けたのだ。

「小癪な……」
 初めての傷を負わされて顔をしかめる『乾きの王』。影の従魔はホワイトナイトと赤い華火によって足止めされ、主の援護に向かえる状態ではない。
 この機を逃すことなく、猟兵達はさらなる追撃を。シノギのメリケンサックからは鋭い刃が飛び出し、アリウムの細剣は凍てつくような冷気を纏う。
「そちらも略奪がお得意なら、ずいぶん財宝とか溜め込んでいるのでは? あとで全部頂いていきますね!」
「くれてやる訳が無いだろう……!!」
 虹色の瞳をキラキラ輝かせながら、ハイテンションに叩きつけられる機械人形の拳は、小柄な体躯に見合わぬ重さ。強烈なラッシュに打ちのめされた『乾きの王』が大勢を崩したところを、氷の魔力を収束させたアリウムの渾身の一突きが襲う。
「か細くてもいい。例え絶望の暗黒の中にあっても、希望の光はここに!」
「―――ッ!!」
 まさしく閃光のごとき刺突が吸血鬼の胸を穿ち、氷華の刃が傷口を凍らせていく。
 たまらず後退した『乾きの王』の顔には驚愕と、そして感嘆が浮かんでいた。

「……見事だ」
 体勢を立て直した吸血鬼は、低い声で呟きながら殺気と闘気を漲らせる。
 ここからは更なる全力と本気を以って、猟兵達を叩き潰さんがために。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ニトロ・トリニィ
イゴールさん(f21891)と一緒に参加します!

うわぁ… 凄いオーラだなぁ…
イゴールよりも存在感がありそうだよね。
…確かにそうだね。
町の平和を守る為にも、彼には元の場所に帰ってもらわないと!

今回は《第七感》で攻撃を避けつつ、ククリナイフを使った素早い戦いをしよう!
見えた未来はイゴールにも伝えないとね!
あの怪物… 影の従魔だったかな?
確かに強そうだね…
どんなに無敵だったとしても、その攻撃を全て回避出来れば問題ないかな?
まぁ、影の従魔に勝てなかったとしても、僕達が注意を引き付けている間に他の仲間がどうにかしてくれるはずさ!


イゴール・スミルノフ
ニトロさん(f07375)と一緒に参加希望です!

確かに強者の存在感が出ているな。
ニトロよ… それは言わない約束では?
… とにかく!奴をここで倒さねばならないな!

私達は、奴が召喚した影の従魔とやらを相手にしよう!
《最終奥義》を発動して自身を強化して時空の歪みを放ちながら、ニトロの指示があればそれに従いつつ戦おう!
敵の弱体化させる方法は思い付かないからな… ニトロに任せる事にしよう。

しかし… どれだけ強い存在を召喚したとしても、自分自身が強くなる訳ではない… 大切なのは、その存在をどう使うかだな。
乾きの王がどう出るのか… 楽しみだ!

アドリブ歓迎です!



「うわぁ…… 凄いオーラだなぁ……」
「確かに強者の存在感が出ているな」
 威風堂々とした『乾きの王』と対峙しながら、語りあうニトロとイゴール。
 その声色にはかすかに緊張がにじみ出ているが、怖気付いたような様子は微塵もない。それは、隣に立つ相棒と結んだ信頼関係ゆえのことだろう。
「イゴールよりも存在感がありそうだよね」
「ニトロよ……それは言わない約束では?」
 そんな冗談を口にしあえる余裕もまた、絆の深さがなせること。
 ゆるく笑みを浮かべた2人の目には、強い闘志と決意が宿っている。
「… …とにかく! 奴をここで倒さねばならないな!」
「……確かにそうだね。町の平和を守る為にも、彼には元の場所に帰ってもらわないと!」
 互いに目配せを交わし合うと、2人はたん、と同時に地を蹴った。

「何度でも、何人でも掛かってくるがいい。我はその全てを奪い尽くす」
 対する『乾きの王』は悠然とした態度のまま、召喚した影の従魔を差し向ける。
 王の想像から具現化されたその怪物は、見るもおぞましき姿と強烈なプレッシャーを発している。
「あの怪物……影の従魔だったかな? 確かに強そうだね……」
「私達は、奴が召喚したあやつを相手にしよう!」
 ニトロとイゴールは即座に標的を『乾きの王』本体から影の従魔に変えて挑む。
 まずはニトロがククリナイフを片手に肉迫し、目にも留まらぬ早業で従魔を切りつける。だが、切り刻まれた影の肉体はすぐさま再生してしまう。
「これならどうだ!」
 そこにすかさず【最終奥義】を発動したイゴールが、高次元の神々の力を借りた時空の歪みを放つ。歪みに捕らわれた影の従魔の四肢は捩じ切れ、引き千切られ――しかし直ぐにまた影から新しい肉体が再生される。
「我が従魔は無敵。いかなる攻撃も通用はせぬ」
 後方にてほくそ笑む『乾きの王』。彼の絶対的な自信が打ち崩されない限り、この怪物は圧倒的な力を発揮するようだ。

「! 来るよイゴール!」
「承知した!」
 ふいに【第七感】によって未来を予見したニトロが、鋭い声音で警告を発する。
 それを受けて2人が後退した直後、巨大な従魔の爪が彼らの眼前を薙ぎ払っていった。
「どんなに無敵だったとしても、その攻撃を全て回避出来れば問題ないかな?」
 敵の攻撃を予測し回避するニトロのユーベルコード。その力があればたとえダメージを与えられずとも、相手からダメージを受けることもない。
 そして攻撃自体にも意味がないわけではない。敵がすぐにダメージを再生させてしまうことを知ったニトロは、相棒にある提案をする。
「イゴール、歪みを使ってあいつの動きを抑えこめるかな?」
「なるほど、こういうことか!」
 イゴールは触れ得べからざる時空の歪みを連続放射して、従魔の周りを包囲する。
 たとえダメージはすぐに回復されても、これなら自由には動き回れないはずだ。

「しかし… …どれだけ強い存在を召喚したとしても、自分自身が強くなる訳ではない…… 大切なのは、その存在をどう使うかだな」
 歪みの中で獣のように暴れまわる影の従魔を抑えこみながら、イゴールは呟く。
 無敵の力にかまけて、ただ荒れ狂うだけであれば、如何様にも対処はできる。ならば警戒すべきなのはこれを召喚した『乾きの王』の行動だろう。
「乾きの王がどう出るのか……楽しみだ!」
 全身に高次元の神々の力を纏い、瞳を爛々と輝かせながら、彼は敵を凝視する。

「我が従魔を相手にして無傷とは……驚嘆に値するな」
 イゴールとニトロの戦いぶりを鑑賞するかのように、『乾きの王』はその場から動かない。これは油断からではなく、2人の力を警戒するがゆえの行動だ。
 ここで自身が戦線に加われば戦いは有利にはなろう。だが自身が猟兵の集中攻撃を受けて一転して窮地に陥る恐れもある。無敵性が揺るがされない限りは、影の従魔に戦いを任せたほうが確実だと判断したのだ。
「その拮抗、いつまで続けられるか見ものだな」
 ニトロの第七感は脳を酷使し、イゴールの最終奥義は自らの寿命を削る。共に少なからぬリスクを有する切り札である。
 そんな詳細こそ『乾きの王』は知るよしもないが、ユーベルコードの力が永遠に持続しないことは明白であった。

「敵の弱体化させる方法は思い付かないからな……ニトロに任せる事にしよう」
「ごめん、僕も思いつかなかった」
 イゴールからの期待に応えられるアイデアを出せず、少し残念そうにするニトロ。
 影の従魔の攻撃はもう完全に読み切っている。その動きも抑え込んでいる。しかしあとひとつ突破口を見いだせない二人は、ここで膠着状態を続けるしかない。
 だがそれは、決して勝算なき行動ではない。ここで2人が従魔の足止めをして、1分1秒でも時間を稼ぐことには大きな意味がある。
「まぁ、影の従魔に勝てなかったとしても、僕達が注意を引き付けている間に他の仲間がどうにかしてくれるはずさ!」
 『乾きの王』との戦いに集った猟兵は自分達だけではない。ここで無敵の従魔を抑えこんでいる間、他の猟兵達は何者にも阻まれずに大将に攻撃を仕掛けられる。
「うむ! では私達は私達が為すべきことを為すとしよう!」
 ニトロの言葉に力強く頷いたイゴールは、時空の歪みを縦横無尽に広げて、影の従魔をこの場に釘付けにする。苛立たしげに暴れる従魔の牙と爪は、ニトロが予測して回避の合図を出す。
 息のあった2人の連携は、『乾きの王』が有する最大戦力である影の従魔を、完全に封殺していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
あなたが奪うというのなら、私は護るまでのこと。今こそ真の暗黒の力を解放しましょう!

UC【闇の解放】で潜在する暗黒の全てを解き放ちます。民を護れるならば代償などいくらでも払いましょう……この力を以って乾きの王を倒します!
先制は許します。正々堂々と【武器受け】で受けきってみせましょう。全力の一撃を正面から受け止め、それを上回る一撃を返します。【怪力】【力溜め】……持てる総ての力を使った暗黒騎士の【捨て身の一撃】を受けるがいい!



「あなたが奪うというのなら、私は護るまでのこと」
 味方が影の従魔を抑えている隙を逃さず、暗黒剣を手にセシリアは駆ける。
 己の力を、覚悟を、意志を――全てを目前の『乾きの王』に叩きつけんがために。
「今こそ真の暗黒の力を解放しましょう!」
 剣に、鎧に、そしてその身に潜在する暗黒の全てを解き放つ、【闇の解放】。
 限界を超えた力を得た彼女は闇の化身へと変貌し、邪悪なる吸血鬼と相対する。

「成程、その力――身に余る力といえど、我が配下共とは比べ物にならんか」
 漆黒の波動を纏いながら迫る暗黒騎士に対し、『乾きの王』は機先を制する。
 その攻撃手段は極めて単純。人外なる吸血鬼の怪力、スピード、魔力を全力で叩きつける、単純であるがゆえに重く強烈な一撃。
「貴様は、我が全力をもって葬るに相応しい相手だ」
 一切の容赦なく、完膚無きまでに敵を粉砕するための【高貴なる赤】が放たれる。
 その一撃をセシリアは騎士として正々堂々と、暗黒剣で正面から受け止めた。

「………っ!!」
 剣が、肉が、骨が軋む。全身がバラバラになるような凄まじい衝撃が襲う。
 これが、数多の生命から略奪を繰り返してきた『乾きの王』の全力。何百人――あるいは何千人分もの力が、一点に凝縮されているかのようだ。
(それでも、私は……)
 暗黒剣を握る手に力を籠め、セシリアは一歩も退かず大地を踏みしめる。
 その背中の向こうにあるのはラグナの町。護るべき数多の人々がそこにいる。
(民を護れるならば代償などいくらでも払いましょう……この力を以って乾きの王を倒します!)
 自らの命を薪のように捧げ、暗黒の力を燃え上がらせる。制御困難なレベルにまで高まった闇は騎士の精神を蝕み、狂気に汚染していく。
 それでもセシリアは狂気に呑まれはしない。魂を染め上げる闇の中でも、輝きを放つ『光』を、騎士としての誇りと誓いを見失わない限り。

「暗黒よ……この命を捧げよう。私に全てを護る力を!」
 裂帛の気合と共に振り上げられた剣が、『乾きの王』の一撃を振り払う。
 己の全力を正面から受け切られたのは、王の生涯の中でも恐らく数える程しかあるまい。
「なん、だと……!!」
 驚愕する敵が体勢を立て直す隙を与えず、セシリアは即座に反撃の構えを取る。
 大上段に構えられた大剣に暗黒が収束していき、刀身が漆黒に染まる。
 放つのはまさしく全身全霊、敵の全力を上回るための乾坤一擲の一太刀。

「持てる総ての力を使った暗黒騎士の捨て身の一撃を受けるがいい!」
 あらん限りの膂力を籠めて振り下ろされた暗黒剣が、『乾きの王』を叩き斬る。
 続いて上がったのは、噴水のようにほとばしる鮮血と、絞り出すような絶叫。
「ぐ、おぉぉぉぉぉぉ……ッ!! これが……『護る力』だと、いうのか……ッ!!」
 そこには、右腕の肩から先が失われた『乾きの王』が、笑いとも怒りともつかぬ表情を浮かべながら膝を屈していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

オリヴィア・ローゼンタール
焦らずともくれてやる……貴様の敗北という屈辱を!

速度を優先した単純な打ち筋ならば、強化された【視力】で【見切る】ことも可能な筈
炎の加護(属性攻撃・破魔・オーラ防御)を纏った聖槍で受け流す(武器受け)
攻撃直後の隙を狙って、瞬時に【血統覚醒】を発動し、吸血鬼の力を解放
強化された膂力を以って殴り飛ばす(カウンター・怪力・吹き飛ばし)
いつまでも自分が奪う側にいられると思うな……その不遜ごと打ち砕く!

聖槍を縦横無尽に【なぎ払い】斬り打ち穿つ
騎馬の喉を突き、穿ち、貫通し、そのまま渇きの王を【串刺し】に(ランスチャージ)
【全力魔法】で聖槍の炎を最大強化し、内側から焼き尽くす
渇き、滅び、灰となれ――!


ルパート・ブラックスミス
乾きの王。あの黒騎士たちはどこから来た。
貴様と共に湧いた「過去」か。それとも…国亡んでなお「今」まで生き延びたのを『略奪』したか。
…否、答えは要らん。
黒騎士が吸血鬼と対峙したのだ、為すべきは一つ…!


【空中戦】より加速、真っ向から大剣構えて突撃。
致命傷さえ【武器受け】できればいい、敵の先制攻撃は【覚悟】して受ける。

UC【黒騎士呑み込む青き業火】起動。
敵を【生命力吸収】を兼ねた燃える鉛への変換能力で拘束(【グラップル】)。
大剣を放し、自身の一部である短剣に燃える鉛を纏わせ黒騎士としての長剣に【武器改造】、【串刺し】にする。


――消えろ、闇よ。奪い続けた貴様の全て、黒騎士が焼却する!

【アドリブ歓迎】



「乾きの王。あの黒騎士たちはどこから来た」
 膝を突いた吸血鬼に、熱を抑え込んだような声音でルパートは問う。
 彼のかつての同胞であった騎士達は、何故に吸血鬼の手駒となっていたのかと。
「貴様と共に湧いた"過去"か。それとも……国亡んでなお"今"まで生き延びたのを『略奪』したか」
 燃える鉛の翼を広げ、ぽたりぽたりと蒼炎の雫を滴らせながら、加速。
 両手には鉛を纏った大剣を、大上段にて力強く構えながら。
「……否、答えは要らん。黒騎士が吸血鬼と対峙したのだ、為すべきは一つ……!」
 人々を守り、この世界を蝕む闇を討ち祓うために、亡霊騎士は猛然と吶喊した。

「次は我が下僕めらの同胞か。ふふ、良いぞ、もっとだ。もっと我を楽しませよ……!」
 片腕を失うほどの重症を負ってなお、『乾きの王』の纏いし気迫に衰えはない。
 上空から迫る闘志を感じれば即座に立ち上がり、愛馬に跨って迎撃の構えを取る。
 ――だが、そこに迫る者はもう一人。破邪の聖槍を携えた吸血鬼狩人がいた。
「焦らずともくれてやる……貴様の敗北という屈辱を!」
 悪逆なる吸血鬼への怒りを金色の瞳に燃やし、矢のように駆けるシルヴィア。
 地上と上空からの同時攻撃。さしもの『乾きの王』も窮地かに思われた。

「その意気やよし……活きのいい獲物ほど、『略奪』の甲斐もあるというものよ!」
 だが、傲慢なる吸血鬼は些かも怯んだ様子もなく、両者の機先を同時に制する。
 片腕ながら巧みに愛馬を駆り、地上のシルヴィアに対しては騎馬突撃で、空中のルパートに対しては自らの拳で【高貴なる赤】を放つ。
「散華せよ!」
 真っ向から叩き込まれる重い一撃。単純ゆえにその破壊力は絶大。
 ふたつの激突音はほぼ同時に響き、凄まじい衝撃波が戦場に吹き荒れた。

(致命傷さえ防げればいい、敵の先制攻撃は覚悟のうえだ)
 真っ向からの突撃を敢行したルパートは、『乾きの王』の拳を大剣で受け止める。
 それでもなお、抑え切れなかった破壊力と衝撃は彼の身体をギシギシと軋ませた。
 もしも鎧を着た生身の人間が同じことを試みれば、ひしゃげた鎧の中で圧死していたことだろう。しかし彼はヤドリガミ。たとえその鋼鉄の鎧が傷つこうと、完全に破壊されない限り戦闘継続に支障はない。

(速度を優先した単純な打ち筋ならば、見切ることも可能な筈)
 一方のオリヴィアは強化された自らの視力を頼みとして、敵の攻撃に対応する。
 勢いこそ凄まじいが直線的な騎馬突撃。その進路を読み切ったうえで聖槍に炎の加護を纏わせ、直撃する寸前で受け流す。
 騎馬の巨体と体重はそれ自体がひとつの兵器。下手に受ければ致命傷すらあり得るが、鍛錬を積んだオリヴィアの槍捌きは巧みにその衝力を別の方向へと逸らし、最小限のダメージのみで受けきってみせた。

「またしても、か……!」
 仕損じたことを悟った『乾きの王』の表情が苛立ちに歪む。これまで何度も全力の一撃を打ち込んでいながら、猟兵の誰も仕留められていないのが不満なのだろう。
 だが、そんな感傷に浸れるのも束の間のこと。攻撃の直後に生じた隙を狙って、2人の猟兵は反撃へと転じていた。
「我が血はもはや栄光なく……されど未だ我が業と炎は消えず……!」
 【黒騎士呑み込む青き業火】を起動したルパートが『乾きの王』の身体に触れる。
 すると彼が触れた所から燃える鉛が溢れ出し、膜のように敵の全身を覆っていく。
「なんだ、これは……ッ!」
 これまで対峙したどの黒騎士とも異なる未知の技に戸惑う『乾きの王』。
 正しくはこの鉛は溢れ出しているのではない。ルパートが触れた対象――即ち『乾きの王』の血肉や生命力を燃える鉛に変換し、操っているのだ。

「いつまでも自分が奪う側にいられると思うな……その不遜ごと打ち砕く!」
 窮地を悟った吸血鬼に間髪入れず叩き込まれるのは、【血統覚醒】を発動したオリヴィアの拳。真紅に輝くその瞳は、己に流れる吸血鬼の血の力を解放した証。
「く……ッ!?」
 『乾きの王』は躱せない、防げない。全身に広がった燃える鉛が拘束具となって、彼の動きを封じている。
 そして、真性のヴァンパイアに匹敵するほどに強化された豪腕の一撃が、その拘束具ごと『乾きの王』を殴り飛ばした。

「がは……ッ!!」
 胸板が陥没するほどの衝撃を受け、血反吐を撒き散らしながらのけぞる吸血鬼。
 強敵相手に掴みとったまたとない好機、ここで手放すほど猟兵達は甘くはない。
「……この程度ではまだ、貴様の業を焼き尽くすには足りん」
 敵の生命力から変換した鉛を全身に纏い、自らの強化に充てるルパート。
 青き業火にその身を包んだ彼は大剣を手放すと、鎧内から自身の一部である短剣を取り出し、燃える鉛を纏わせて、黒騎士としての長剣に変化させる。
「ええ、まだ足りない」
 穂先に煌々と燃える金色の聖火を宿して、シルヴィアは縦横無尽に聖槍を振るう。
 将を射んと欲すれば先ず馬を――吸血鬼の騎馬を斬り打ち穿ち、動きが止まれば喉を突き、穿ち、貫通し、そのまま将を貫かんと、渾身の刺突の構えを取る。

「「貫く……!」」

 上方より突き落とされる黒剣と、下方より突き上げられる聖槍。
 ふたつの刃はまったく同時に、『乾きの王』の身体を串刺しにした。
「ぐ、お、おぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!!!!!?!?」
 貫通した傷から体内へと送り込まれるのは、燃える鉛と、聖槍の炎。
 蒼炎と聖火は互いに交ざりあい、妙なる輝きを放ちながら燃え盛る。内側から肉体を焼き焦がされる壮絶な苦痛に、『乾きの王』の口からは絶叫が迸った。

「――消えろ、闇よ。奪い続けた貴様の全て、黒騎士が焼却する!」
「渇き、滅び、灰となれ――!」
 その魂の一片まで焼き尽くさんばかりに、ルパートとオリヴィアは炎を滾らせる。
 『乾きの王』は火柱に呑まれたまま、幾度も炭化と再生を繰り返す。耐え難い痛みの中で、己の生命力を焼かれながら。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

トリテレイア・ゼロナイン
人々を蹂躙せんとし、武を手段でなく目的とした生粋の略奪者…
嫌悪する手合いの一つです
問答はお互い不毛でしょう、いざ勝負

盾を●目潰し目的で投げて牽制しつつ先制をスラスターでの急速●スライディングで移動し回避
地形破壊の土煙の中でセンサーでの●情報収集から全格納銃器での●だまし討ち
回避されたらパージを見せつけつつUCを発動
先の攻撃を元に動きを●見切り先制を回避し機動力の差に対応される前に接近戦を敢行
剣の一撃を繰り出す…と見せ掛け視線を誘導する囮として己の剣を●武器落とし
その虚を突き超重フレームの上腕部伸縮機構と鉄爪での●怪力●だまし討ち

本物に餓えた浪費の王にあの街は不相応、偽りに塗れた戦いで十分です



「猟兵の力……よもやこれほどとはな……素晴らしい……!」
 業火から辛くも脱した『乾きの王』は、炭化した傷口に片手を当てながら笑う。
 いかに吸血鬼といえども深刻な負傷であろうに、その窮地さえも楽しんでいるかのように。
「嗚呼、やはり戦いとはこうでなくてはな……!」
 血と灰にまみれた凄絶な笑みを浮かべる男の前に、立ちはだかる白き機影。
 彼――トリテレイアは目前の敵の有り様に、不快感を隠そうともしなかった。
「人々を蹂躙せんとし、武を手段でなく目的とした生粋の略奪者……嫌悪する手合いの一つです」
 このような輩に、これ以上人々の生命を奪わせる訳にはいかない。
 儀礼剣と大盾を手に、機械騎士は吸血鬼の王に挑む。

「問答はお互い不毛でしょう、いざ勝負」
「ああ……その通りだ。貴様も我が魂の乾きを癒せ!」
 騎馬を失った『乾きの王』は、獣のように姿勢を低くして猛然と襲い掛かる。
 深手を負いながらその動きは機敏。握りしめた隻腕には、まだ騎士の鎧をも打ち砕くに十分な力が籠められている。
 トリテレイアは敵の目前に大盾を投げつけて牽制しつつ、脚部スラスターを急速噴射する。
「小癪な!」
 視界を塞ぐ盾を払いのけて、叩きつけられる吸血鬼の拳。だがそれは一瞬前までのトリテレイアがいた場所に着弾し、大地にクレーターを作り上げただけだった。

「目標ロックオン」
 地形破壊の衝撃によって濛々と上がる土煙の中、各種センサーを駆使して視界に依らず標的を捉えたトリテレイアは、全格納銃器による機銃掃射を仕掛ける。
「目眩ましに騙し討ち……最初から狙いはこれか!」
 煙の向こうから襲ってくる弾幕を、『乾きの王』は俊敏な身のこなしで躱す。
 全ての銃弾が避けられるわけではないが、致命傷となるには程遠い。
「これで終わりか?」
「いいえ、まだです」
 やがて土煙を突破してにやりと笑う男の前で、トリテレイアは次の手に移る。
「格納銃器強制排除、リミット解除、超過駆動開始……」
 効力の薄かった銃器を全てパージし、浮いたリソースを近接戦闘に転換。
 機動力と運動性を爆発的に向上させた機械騎士は、儀礼剣による接近戦を刊行した。

「搦め手が通じなければ真っ向勝負か。嫌いではないぞ!」
 ボロボロの身体で楽しげに笑いながら、再び拳を繰り出す『乾きの王』。
 だが、一度その攻撃を見ていたトリテレイアは、瞬時に動きを予測して躱す。その巨体と重装甲からは俄に信じられないほどの運動性だ。
「ぬぅっ」
 あまりに急激な機動力の変化には、『乾きの王』も即応することはできない。
 相手が此方の動きに"慣れる"までの猶予が、トリテレイアが得た勝機だった。

「この一撃、貴方に受けられますか」
 静かな挑発と共に剣を振り上げれば、敵は咄嗟に振り下ろしに備える構えを取る。
 剣の一撃を繰り出す――そう見せ掛けた刃に視線が注がれた瞬間、トリテレイアはぱっ、と己の剣を手放した。
「な―――」
 身構えていた『乾きの王』の緊張がほんの一瞬だけ緩む。その一瞬の虚を突いて放つのは、注意を向けさせたのとは逆――すなわち下方からの不意打ち。
 前腕部フレームに内蔵された伸縮機構と指先に収納された鉄爪による貫手は、相手のガードをすり抜けて深々と急所を貫いた。

「本物に餓えた浪費の王にあの街は不相応、偽りに塗れた戦いで十分です」
「かは……ッ!!?」
 槍のような貫手に刺し穿たれ、『乾きの王』の口からドス黒い血反吐が溢れる。
 この者は騎士としての堂々たる戦いに値せずと、トリテレイアは冷徹な視線を向けながら、ウォーマシンの怪力で容赦なく傷口と内臓を抉った。
 これまでに彼が略奪してきた人々の痛みを、万分の一でも思い知らせるために。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヴィクティム・ウィンターミュート
──何を上から見てやがる、スクィッシー
気に食わねえな、愉しんでるつもりか?
その思い上がりを地に叩き落としてやる
俺は戦いを楽しみに来たんじゃあない
"勝ち"に来たんだよ

へぇ、無敵ねぇ…そんじゃあ一つ抗ってみるか
セット、『Weakness』
テメェも従魔も、大きく弱体化してもらうぜ
各種感覚は大きく減退し、あらゆるパラメータが急激に下がる
俺にはお前は倒せないが──お膳立ては出来る
後は主役の仕事だ…受け取りな、俺の鬼札を

無敵、最強…そんな能力はどこにも存在しない
必ず付け入る隙はあるもんなんだよ
テメェの"それ"は無敵でも何でもない
くだらねー演出でしかないんだよ
…幕引きといこうぜ
その渇き、ここで終わらせる


リーヴァルディ・カーライル
…ん。この力は彼らから託されたもの。
死んでいった人達が必死で守ろうとした世界を、
お前なんかに奪わせはしないわ、渇きの王。

聖痕に吸収した黒騎士達の魂と手を繋ぎ【死棘槍】を発動
大鎌を闇属性攻撃のオーラで防御して傷口を抉る魔槍化
自身の生命力を吸収して空中戦を行う“血の翼”の加速力を溜める

…この一撃、受けられると思うな。

吸血鬼狩りの戦闘知識を頼りに敵の殺気を暗視して見切り、
目立たないように第六感に訴える“写し身の呪詛”を使用
敵の先制攻撃を気合いを放つ存在感のある残像を突撃させて囮にし、
怪力の踏み込みから地をなぎ払うように突進する2回攻撃を行う

…そう来ると思っていた。
だけど無駄よ、私には通じない。



「はは……見事……見事なり……!」
 満身創痍――まさにその言葉が相応しい有様で『乾きの王』は哄笑する。
 片腕を喪い、その身は血に染まってもなお、瞳だけは爛々と輝いている。
「やはり奪い合ってこその闘争……こうでなければ、我が乾きは満たされぬ……!」
 傷の痛みすら忘れているかのように、その男は悠然と戦場に立ち続けていた。

「――何を上から見てやがる、スクィッシー。気に食わねえな、愉しんでるつもりか?」
 そんな男を心底不快げに睨みつけながら、怒りを込めてヴィクティムは言い放つ。
 その思い上がりを地に叩き落としてやる、と戦闘用プログラムを展開しながら。
「俺は戦いを楽しみに来たんじゃあない。"勝ち"に来たんだよ」
 勝利に向かって只管走り続けることが、生きるということだ――そう断ずるほどに"勝利"への強い執着を抱く彼は、ひたすらにこの戦いのゴールだけを見据えていた。

「勝利か。ならばそれも我から『略奪』してみせるがいい――そう簡単に奪わせるつもりは無いがな」
 ボロボロのままほくそ笑む『乾きの王』とヴィクティムの間に、ふいに巨大な影が立ちはだかる。それは王が【夜を歩くもの】によって創造した最強の配下、影の従魔であった。
「ようやく足止めを脱してきたか。これで我が方はまだまだ戦えるぞ」
 長く他の猟兵によって動きを封じられていたものの、"無敵"という強力な特性を持った従魔はほとんどダメージを負っていない。満身創痍となった今の『乾きの王』よりも、あるいは戦力としての脅威は上かもしれない。

「へぇ、無敵ねぇ……そんじゃあ一つ抗ってみるか」
 だが、ヴィクティムは敵戦力の増加にまるで気後れしたふうもなく、準備していたユーベルコードを戦場に展開した。
「セット、『Weakness』――テメェも従魔も、大きく弱体化してもらうぜ」
 放たれたコードは、直接的なダメージを対象にもたらすものではない。
 猛毒、麻痺、凍結、盲目、失聴、出血、知能低下、攻撃力低下、防御力低下、機動力低下――考えうる様々な状態異常を引き起こし、戦力を低下させる為のコードだ。

「何……っ、げほ、ごほ、っ!?」
 コードに捕らわれた『乾きの王』が、青ざめた表情で吐血する。四肢は痺れ、体内には毒が巡り、全身から力が抜け落ちていくのが体感として分かる。
 そして、各種感覚の大幅な減退と、あらゆるパラメータの急激な低下は、彼だけでなくその従魔にまで効果を及ぼしていた。
『グ、ゥゥゥゥゥ……!!』
 それが攻撃であれば、従魔は即座に肉体を再生してダメージを無効化する。しかし足止めや弱体化の類には、せいぜい猛毒を除去する程度しかできない。
 末端からの凍結と、全身に及んだ麻痺により、従魔の行動力は大幅に低下した。

「無敵、最強……そんな能力はどこにも存在しない。必ず付け入る隙はあるもんなんだよ」
 動きの止まった影の従魔を見下しながら、ヴィクティムは『乾きの王』に告げる。
 攻略目標の"脆弱性"を突き、強固な壁(ウォール)を突破する。それは電脳魔術師であれば最も基本的なことだ。
「テメェの"それ"は無敵でも何でもない。くだらねー演出でしかないんだよ」
 欺瞞を打ち破るヴィクティムのコードは、何よりも『乾きの王』の自信と想像力を大きく揺らがせる。そしてそれは、影の従魔の一層の弱体化へと繋がっていた。

「……無敵などない、か。確かに……だがそれは、貴様の能力にも言える事だろう」
 配下を無力化された『乾きの王』は、口元の血を拭いながら言い返す。
 Deviant Code『Weakness』は確かに強力なユーベルコードだが、直接的に相手を殺傷するものではない。そんなことは、指摘されるまでもなく当のヴィクティムも理解していた。
「ああそうだ。俺にはお前は倒せないが――お膳立ては出来る」
「なに―――ッ!」
 その瞬間、『乾きの王』も気付いたらしい――目の前の少年の後方から感じられる、凄まじい力の高まりを。背筋を震わすほどの殺気と気迫を。
「後は主役の仕事だ……受け取りな、俺の鬼札を」
 そう言ってヴィクティムは『Weakness』のもうひとつの効果、「味方全員の攻撃力倍化」を起動させ、仲間のための道を開けた。

「……感謝するわ」
 短く礼を言いながら、真正面より『乾きの王』と対峙したのはリーヴァルディ。
 その手に構えるのは過去を刈る大鎌。瞳に刻まれた聖痕は煌々と輝き、全身には凄まじいまでの死霊達のオーラを纏っている。
「その、力は……!」
「……ん。この力は彼らから託されたもの」
 【断末魔の瞳】に取り込んだ黒騎士達の魂と遺志と、心を繋ぐことで生まれた力。
 それは、まさに彼らの無念を晴らすこの瞬間にこそ、もっとも強く滾る。

「死んでいった人達が必死で守ろうとした世界を、お前なんかに奪わせはしないわ、渇きの王」
 決意を秘めた言葉と共に、リーヴァルディが発動するのは【代行者の羈束・死棘槍】。大鎌が形を変え、闇のオーラと呪力を纏い、片腕を覆う一本の魔槍と化す。
 その槍に束ねられているのは、聖痕に吸収した魂達の力。黒騎士達の想いを全てこの一撃に乗せる覚悟である彼女は、自らの生命力を血の翼に喰わせ突撃体制を取る。

「……この一撃、受けられると思うな」

 収斂されていく魔力と呪力。それが極点に達した瞬間、リーヴァルディは力強い踏み込みと同時に血の翼を羽ばたかせ、爆発的な加速で飛び出した。
 もはや目で追うことすらできない、その速度。紅と黒の閃光となった彼女は、最短かつ最速で、一直線に『乾きの王』の心臓に向かって翔ける。
 もはや何者にも、その突撃は止められないかに思われた――。

 ――だが。
「受けられぬならば……先んじて封ずるまでのことよ!!」
 瞬きすら許されぬほどの刹那の間に、殺気を漲らせて『乾きの王』は動いた。
 隻腕となった拳を握りしめ、目視では捉えられぬ相手の動きを第六感で感じる。
「捉えたぞ――ッ!!!」
 そして魔槍が自らを貫く寸前、後の先での【高貴なる赤】を叩き込む。
 あと数ミリの差で機先を制されたリーヴァルディの身体には『乾きの王』の拳が深々とめりこみ、唖然とした表情で彼女は吹き飛ばされる――。

 ――そう、確かにその光景を『乾きの王』は"視た"。
 それが、相手に"視せられた"ものだとも知らずに。

「―――馬鹿なッ!!?」
 殺った、と確信した次の瞬間に、彼は驚愕することになる。
 己が殴り飛ばしたものはただの幻。リーヴァルディの気迫と"写し身の呪詛"が生み出した、存在感のある残像に過ぎなかったと悟って。
「……そう来ると思っていた。だけど無駄よ、私には通じない」
 吸血鬼狩りとしての戦闘知識から、相手の行動を全て事前に見切っていた彼女は、残像を先行させることで敵の先制攻撃のタイミングを外させた。
 そして残像から遅れること刹那の差で、本物のリーヴァルディの攻撃が到達する。大地をなぎ払うように抉りながら、残像を遥かに超える気迫と殺気を伴って。

「……これが、騎士の誇りの力よ」
 黒騎士達の霊魂を纏った死棘槍が、『乾きの王』の心臓を貫く。
 リーヴァルディの全身全霊と、ヴィクティムの『Weakness』によって強化されたその一撃は、王の肉体に致命的なダメージを穿った。
「―――ッ!!!!!!!」
 声にならない絶叫を上げながら、突撃の衝撃に耐えきれず吹き飛ばされる吸血鬼。
 愕然とするその表情に、もはや往時の威厳はなく――戦いの終焉は、もう間近に迫っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


「―――久しく忘れていた。これが"死"という感覚か」

 戦場に倒れ伏した『乾きの王』は、どこか感慨の籠もった声音でそう呟く。
 オブリビオンとなる以前、遥かな過去に味わったのと同じ感覚。心臓に開いた風穴に、そのまま吸い込まれてしまいそうな虚無感が襲う。

「ああ、悪くない……悪くないぞ……だが、まだ足りぬ」

 ぼたぼたとドス黒い血溜まりをその場に広げながら、男は立ち上がる。
 明らかに致命傷を受けているにも関わらず。まだ足りぬ、と笑みを浮かべて。

「この世の全てを奪い尽くすまで、我が乾きは満たされぬ……尽きかけたこの生命の代替は、貴様らの命……そしてあの町の者共の命を『略奪』すれば、事足りよう」

 彼は万象を略奪する『乾きの王』。その力の前に奪えぬものは無し。
 "生命"を略奪することで"死"さえも覆してみせようと、彼の暴君は高らかに嗤う。
雛菊・璃奈
貴方にこれ以上奪わせはしない…。
町の人々の為…ここで貴方の乾きを終わらせる…。

【魔剣の媛神】封印解放…。
従魔達は無限の魔剣の掃射と黒桜の呪力解放【呪詛、衝撃波、なぎ払い】で吹き飛ばして退けつつ、神速で本体狙い接近…。
凶太刀と二重加速による超神速で一気に接近し、高貴なる赤の特性を逆用して敢えて敵に先制を取らせ、アンサラーの力【呪詛、カウンター、オーラ防御、武器受け、早業】で反射…。
自身の攻撃を受けて怯んだところに追撃で終焉の魔剣と凶太刀、神太刀による連撃を叩き込むよ…。

最後は【ultimate】を発動…全てを束ねた究極の一で終わらせるよ…。
わたしと魔剣達の全て…奪えるものなら奪ってみるといい…!


フレミア・レイブラッド
傲慢ね…絶対の自信と共に全てを奪い尽くそうとするその姿…。
乾きの王…貴方の最後、吸血姫が見届けてあげるわ。

【吸血姫の覚醒】発動
真の姿を覚醒し、影の従魔達は【念動力】で拘束し、そのまま高速で置き去りにするわ。
無敵だろうと動けなかったり、追いつけなければ意味は無いわ。
そのまま敵の攻撃を速度と【見切り、第六感】で回避しつつ、変幻自在のクラウ・ソラスで攻撃。
光刃を自在にくねらせて敵の防御を掻い潜り急所に突き立てたり、敵に巻き付けて拘束し、覚醒の膂力で敵を振り回し、叩きつけた後にそのまま魔槍で追撃を叩き込む等で追い込むわ。

最後は全魔力を集束した【神槍グングニル】を放つわ。その傲慢全て消し飛ばしてあげる♪



「傲慢ね……絶対の自信と共に全てを奪い尽くそうとするその姿……」
 死期が迫ってなお屈せぬ『乾きの王』を、フレミアはじっと見つめていた。
 もはや『略奪』という意志の権化とでも言うべき彼の有様は、傲慢であり、愚かであり、憐れでもある。
「乾きの王……貴方の最後、吸血姫が見届けてあげるわ」
 【吸血姫の覚醒】を発動して真の力を解き放ち、17、8歳程の外見へと変化した彼女は、高貴なる威風を放ちながら宣言した。

「貴方にこれ以上奪わせはしない……」
 そして、フレミアと同時に『乾きの王』に挑む猟兵はもう一人。
 無辜の者達の生命を、尽きかけた生命の代価になどさせはしないと、呪槍・黒桜を構えた璃奈が立ちはだかる。
「町の人々の為……ここで貴方の乾きを終わらせる……」
 【九尾化・魔剣の媛神】の封印を解いた彼女の身体は莫大な呪力があふれ出し、その周囲には"終焉"の力を帯びた魔剣が無限に展開される。

「ここが我の終焉かどうかは、我自身が決める……従魔よ、目覚めよ!」
 『乾きの王』が一喝すると、戦場に蹲っていた影の従魔が再び動きはじめる。
 他の猟兵から受けた弱体化の影響がまだ抜けていないようだが、その力は今だ脅威に違いない。特に無敵の再生能力を活かした肉壁にでもなられれば厄介だ。

 ――先ずは影の従魔を完全に無力化する。示し合わせたわけでもなく、2人の猟兵は同時に動いた。
「無敵だろうと動けなかったり、追いつけなければ意味は無いわ」
 すっとフレミアが手をかざすと、掌から放たれた念動力が従魔を拘束する。
 動きが止まればすかさず璃奈が接近し、呪槍の力と終焉の魔剣を解き放つ。
『グ、オォォォォウゥゥッ!?』
 桜の花びらのような黒い呪力の嵐に巻き上げられ、魔剣の掃射に貫かれて、戦場の彼方まで吹き飛ばされていく従魔。本体の元から引き離しさえすれば、もはやそれは障害ではなくなる。
「さあ、行くわよ」
「狙うは本体のみ……」
 置き去りにした従魔が戻ってくる前にケリをつけるべく、フレミアは覚醒の際に得た4対の翼を広げ、璃奈は加速の呪力を有する妖刀・九尾乃凶太刀を構え。
 共に瞬間移動と見紛うほどの神速で、一気に『乾きの王』の元へと接近する。

「疾いな………だがッ!!」
 2人が間合いに踏み込んだ瞬間、『乾きの王』が放つは【高貴なる赤】。
 死の淵において研ぎ澄まされた感覚を以って神速を見切り、機先を制しての強烈な一撃を叩き込む、単純であるがゆえに強力なユーベルコード。
 半死人とは思えぬほどの膂力と速度の剛拳が、唸りを上げて猟兵達に襲い掛かる。

「まだこれだけの力が残っているとはね……」
 フレミアは即座に空中で軌道を変え、直感と見切りのセンスを以って敵の一撃を躱す。紙一重のところを通り抜けていった拳は、余波のみで大地を抉った。
 この破壊力、もしも直撃を受ければ猟兵であっても生命が危うい――しかし回避を選択した吸血姫とは対照的に、璃奈は真っ向からこれを受け止める構えを見せた。
「その特性、逆用させてもらう……」
 さっと彼女が抜き放った魔剣の名はアンサラー。敵の攻撃を本人へと跳ね返す、報復の魔力を秘めた剣である。
 必ず先制を取られるのなら、こちらはそれを待ち構えていればいい――狙いどおりに襲ってきた拳打を璃奈は魔剣の刃で受け止め、その破壊力を反射した。

「な、ぐぁッ!?!?」
 自分自身の攻撃の威力という、思わぬカウンターを食らった『乾きの王』が怯む。その隙を逃さずに、璃奈は終焉の魔剣と妖刀による追撃を仕掛けた。
 右手には九尾乃凶太刀、左手には九尾乃神太刀。ふたつの妖刀の特性を、媛神化した彼女が振るえば、不死なるものを滅ぼす超神速の斬撃の嵐が戦場に吹き荒れる。
「さ、再生が封じられて……防御が間に合わぬ……ッ!!」
「まだまだいくわよ♪」
 為す術なく妖刀の刃に切り刻まれていく『乾きの王』に追い打ちをかけるのは、フレミアが振るう念動魔剣クラウ・ソラス。念と魔力によって形作られた光刃を変幻自在にくねらせて、王の防御をかいくぐり、急所を抉るように突き立てる。
「……ッ!?」
 激痛が吸血鬼の動きをわずかに強張らせる。その瞬間にフレミアは光刃を鞭のように彼の身体に巻きつけ、拘束したまま思いきり振り回す。
「……ッ!! ……ッ!!?」
 覚醒した吸血姫の膂力は、高位のドラゴンにも匹敵する。そんなパワーで力任せに振り回されれば一体どうなるかは自明の理。ぶおんぶおんと宙を舞った挙げ句に地面へと叩きつけられた吸血鬼は、陥没した地面の上で声にならない悲鳴を上げた。

「さあ、これで終わりにするわ」
 徹底的に相手を追い込んだフレミアは、クラウ・ソラスから魔槍ドラグ・グングニルへと得物を持ち替え、その穂先に魔力を集中させていく。
「全てを滅ぼせ、神殺しの槍……」
 魔槍を軸として顕現するのは、数メートルにも及ぶ長大なる【神槍グングニル】。
 覚醒した吸血姫の全魔力を集束されたそれは、まさに全てを滅ぼす一撃となる。

「全ての呪われし剣達……わたしに、力を……」
 そして璃奈も同時に、この戦いに決着をつけるために、魔剣の媛神の力によって顕現した魔剣の現身達に祈りと呪力を込めて呼びかける。
「その力を一つに束ね、我が敵に究極の終焉を齎せ……!」
 巫女が祀りし全ての魔剣を束ねた究極の一、その名は【ultimate one cars blade】。
 全てを無に還し、終わりを齎す、魔剣の巫女が持ちえる全てを籠めた一刀である。

「わ……我は、乾きの王……われに略奪できぬものなど、ありはしない……!!」
 よろめきながら立ち上がった『乾きの王』は、高まっていく二人の猟兵の力をその手で『略奪』せんと身構える。回避の余力さえ残っていない現状、彼に残された反撃の手立てはそれしか無いだろう。
 しかし――彼女達の振るう"力"は、彼が耐えきれる限界を、とうに上回っている。

「その傲慢、全て消し飛ばしてあげる♪」
「わたしと魔剣達の全て……奪えるものなら奪ってみるといい……!」

 投げ放たれる滅びの神槍。振り下ろされる究極の一。
 『乾きの王』を交点として重なったふたつの力は、万物を崩壊させる破壊と終焉の嵐となる。肉体も、精神も、魂さえも、その中では無事ではいられない。
「この……私が……ッ、奪いきれぬ、だと……ッ!!!!!!!」
 莫大な魔力と呪力がもたらす破滅に呑み込まれた『乾きの王』は、虚しく抵抗するも、やがてその身は塵のように崩れ果てていき――。

「ああ……そうか……これが、終焉……我が乾きの終焉か……」

 やがて破壊と終焉の力が収束した後、そこにはもはや何も残ってはおらず。
 その後に訪れた穏やかな静寂が、戦いの終わりを告げていた。


 ――かくして、ラグナの町の命運を賭けた、猟兵と吸血鬼の戦いは決着する。
 傲慢なる略奪者はここに倒れ、町はこれからも平穏と繁栄を享受するだろう。
 町からかすかに聞こえてくる、人々の営みの音と幸せそうな笑い声。
 それこそが、この戦いに勝利した猟兵達への、最大の報酬であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月23日


挿絵イラスト