水底は天にありて ~天空城攻略戦~
●月湖の伝承
この村のはずれには、岩肌がむき出しの窪地がある。
“過日には美しい湖だった”。
一番の長生き爺さんが言ったのを、覚えている。
月を映せばその光は舟となり、遥か空へと飛んだのだと。
星の夜に紡がれた願いは真となり、人々を救ったのだと。
……湖は、諍いを疎んで天空へと逃げてしまったのだと。
自分がそう聞いたのは、いったい何年前のことだろうか。
すっかりしわがれた声で、この歌を教えてやる番が来たのだ。
むかしむかしの王様たち。
斧とまほうで戦争ばかり。
怯えた泉は、涸れたまま。
滝はお空へ、逃げ出した!
―――アックス&ウィザーズ、『水の砦のあそび歌』より。
●天空城へ
「群竜大陸については知ってるかい」
グリモアベース、ブリーフィングルーム。
花畑・花束(プラント・f14692)が、集まった猟兵たちに問うた。
剣と魔法の世界、アックス&ウィザーズ。勇者伝説のにその名を残す、幻の大陸。
『幻の』とは、比喩ではない。正しくまぼろしの影に隠れている。
千の竜が住まう大陸は、帝竜ヴァルギリオスと共に蘇った。
かの帝の手による幻術“クラウドヴェール”により、大陸の所在は今も定かでない。
術式の基点となる“クラウドオベリスク”の破壊作戦に関わった猟兵もいるだろう。
「そう、そう。みんなががんばってくれたおかげで状況が変わった」
―――碑石が破壊されたことにより、各地の幻術が解け始めたのだ。
今回発見されたのは“天空城”。その名の通り、空を漂い続ける城である。
ホログラフで予知の再現データが映し出される。
アックス&ウィザーズの中でも温暖湿潤な地域。
高く青く晴れ渡った空に、岩石が浮いている。
見上げるほどの巨岩が、数え切れないほど。
確かにひとつ、城の影があるのだ。
誰かがあっと声を上げる。
その城は、見事な城壁を備えていた。
透き通り、日差しに燦めく水の壁だ。
球体のように城を囲む形は、スノードームを思わせるものがある。
精巧なガラス細工のような水面にはまるで荒れた様子がない。
空高くにありながら、完全な無風か。
答えは否である。
漂う岩石群。その間には、砂塵が舞っている。
魔術の素養があるものならば、それが侵入者を吹き飛ばす風の術式だとわかるだろう。
さらに周辺には、飛び回る水妖の姿がある。
暫く襲い掛かってくることはなさそうだが、城に踏み込むのなら戦いは避けられない。
城内へ向かうために必要なのは、差し当たって三つ。
一つ、天上の巨岩へと渡る方法。
一つ、岩の間を上手く通る工夫。
一つ、水馬めいた哨戒兵の撃破。
「この地方には変わった童歌が残っていてね」
大昔に湖が空へ逃げてしまって、そのままなんだって。
真実だと主張するかのように、ちょうど天空城の真下に窪地があるのだ。
城主を倒したのなら、もしかすると……。
「戻って来るかもねえ、湖」
それと、といって、透明な鉤爪の一本が立てられる。
「おなじ童歌を予知した子がいるんだ。よかったら彼女にも協力してあげてほしいな」
一生懸命な子だからね。
花束の鉤爪の中で、グリモアが柔らかな光を放つ。
猟兵達が向かう先は空の果て。姿を変えた伝承の湖。
彼らの活躍により、英雄譚は新たな1ページを刻みつつある。
逸見
逸見です!
二作目はアックス&ウィザーズから、水と空とが織り成す大冒険(予定)へご案内します!
●コラボ
本シナリオは只野花壇MS様「水流は天にのぼり ~天空城攻略戦~」とのコラボシナリオになっております。
時系列等は異なりますので双方のシナリオへの参加も大歓迎です。もちろん、どちらか一方でもオッケーです!
●章構成
一章/冒険『天空城をめざして』
二章/集団戦『激浪せし水棲馬』
三章/ボス戦『???』
一章は天空城を目指して空に向かいます。
二章では水の壁を守るケルピーとの戦闘。
三章は城内にて、城の主との決戦となります。
各章冒頭に断章を投稿しますので、参考にしてみてください。
水流や地形を上手く使うとボーナスになるかもしれません。
それでは、止水の護る天空城でお会いしましょう!
第1章 冒険
『天空城をめざして』
|
POW : 気合や体力で気流に耐え、巨岩を足場に進む
SPD : 素早く気流を切り抜け、巨岩を足場に進む
WIZ : 気流を見極め、回避したり利用したりしながら巨岩を足場に進む
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
あなたたちが転送されたのは、一帯を見渡せる高所であった。
天候は良好。初夏のような暖かさに、からっとした気持ちの良い風が吹いている。
眼下には確かに、そこだけ白くむき出しの……白磁の器のような窪地があった。
さらさらと揺れる草原の真ん中に、ぽつりと。
そして窪地と草原を囲むように、小さな森がある。
これだけ具に見られるのはなぜか。
それだけ高いところにいるからだ。
もう一度言おう。
あなたたちが転送されたのは、一帯を見渡せる高所であった。
始めの一歩となりえる巨岩が、いくつか目の前に浮いている。
……高く高く聳えた岩山の、切り立った険しい山道。その縁。
天空城へ至るための、一番の近道である。直線距離だけで言えば。
もしあなたが空を飛ぶ手段を持っていないのなら、ひとつ取っ掛かりがある。
谷底から吹いている風だ。
地形の関係か、それとも何らかの魔術が生きているのか、精霊の加護か悪戯か。
真っ直ぐ上へ、強く吹く風は、巨岩との間の足場になってくれるだろう。
風の術式といえば、岩々の間にも疾風の罠が存在する。
岩を跳んでゆくものも、空を往けるものも、気を抜くことはできまい。
空への一歩を、最初に踏み出すのは―――
◆◆◆
◆巨岩渡りの方法
高所恐怖症にやさしくないスタートを切りました。
大まかな注意事項はOPに記載の通りです。
天空城の守りとは【別の気流】が、谷底や山の隙間から吹き上げています。
これを利用して巨岩渡りに使ってもいいでしょう。
POW/SPD/WIZは一例です。
ユーベルコードや技能の使い方、ロールプレイなど
皆様らしいやり方を見せてください。
◆◆◆
プレイング受付期間:10/25(金)8:31 ~ 10/27(日)13:00
◆◆◆
御剣・刀也
POW行動
気流の弱い所を探してのんびり行くのはどうもな
ちまちま行くのは性に合わねぇ。それに、俺たちはやましいことしに行くわけじゃねぇんだ
堂々と真正面から乗り込んでやる
気流で邪魔されようが勇気で気にすることなく気流に耐えながら岩を足場に上っていく
途中気流の流れが激しいところや、竜巻のようになっているところは吹き飛ばされないよう重心を落として、どっしりと構えながら、堅実に、ゆっくりと登っていく
上昇気流など使えるものがあるなら、運試しだ。と恐れることなく使ってみる。
「蟹に、龍、この前は高位悪魔に屍騎士がいたが、今回は何がいるのかねぇ。今から楽しみだ」
●荒ぶる獅子の第一歩
何もない空間へ、足を踏み出す男がいた。
御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)だ。迷いなく歩を進め、上昇する気流に乗り、岩の塊へと着地。
竹を割ったような性格そのままに、真っ直ぐと次の浮遊岩へ。
巨大な岩石を砕かんとする勢いで跳躍する彼は、風の妨害すら突き破る。
御剣・刀也は、天武古砕流の正式な継承者である。
剣術士としても猟兵としても申し分ない能力を持つ彼であるが、弛まぬ努力を怠らぬ。
更に天空城の探索にも慣れたもので、これまでに幾度となく乱気流の術を乗り越えてきたのだ。
今更死線の内にも入らないのだろう。
「っと」
一歩一歩にて岩を踏みしめ、着実に進んでいた刀也を竜巻が襲う。
剣戟を受けるかの如く、重心を落として切り抜ける……が、その先に見当たる足場はない。
ふむと思案すること、ただ一瞬のみ。
―――運試しと行くか。
竜巻の罠は、目には見えない。
生粋の武人である彼は、目だけに頼って生きてきたわけではない。
砂塵の匂いを嗅ぎ、風の道すじを聞きわけ、肌で機を見計らう。
そして自らを襲い来る第二波の竜巻―――その天辺へ飛び乗った!
空高く舞い上がった刀也は風のない安定した巨岩を選び、その真上へと降下する。
見上げた先の天空城は、静かな水面に包まれていた。
……蟹に、黄金の龍。高位の悪魔、骨の馬を駆る騎士。数々の城主を打ち倒してきた彼だ。
「今回は何がいるのかねぇ。今から楽しみだ」
その顔に映るのは恐怖ではない。
強者との戦いを前にする期待と、高揚であった。
成功
🔵🔵🔴
ティオレンシア・シーディア
△
わぁお、いい眺め。絶景ねぇ。
…うん、絶景ねぇ。見てる分には。
…これをさらに登らなきゃならないのよねぇ…
…ふぅ。立ち止まっててもしょうがないわねぇ。ちょっと○気合い入れて覚悟決めましょ。
ふぅん、吹き上がる風、かぁ…
(脳裏に浮かぶはキマフュー世界のアネモイやヒーロー世界の極楽鳥)
やっぱりあたし、こういう風絡みの依頼に縁あるのかしらねぇ?
吹きあがる風の流れの悉くを〇見切り、掌握。
上昇気流に身を任せて岩まで跳んでいくわぁ。
●禁殺でリカバリーすればそこまで大惨事、ってことにはならない…はず。
撃ち抜かなきゃいけない相手もいないし、気分的には楽ねぇ。
…ミスると明後日にすっ飛びかねないから気は抜けないけど。
●対抗術式、二の歩み
猟兵達の眼下に広がるのは、空と大地だ。
遠くを見れば高所を好む鮮やかな鳥や、温厚なスリヴァーの姿もある。
絶景なのだ。
絶景なのだが。
「これ、登るのよねぇ……」
物憂げにため息を吐けば、漏れ出でるのは幼い声。
彼女の、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)の仕事はここからスタートする。
黙って待っていても成果は降ってこない。取りに行くのだ。
すう、と深く息を吸う。先のため息すら力の源とするように。
先を見据える。彼女の笑むような瞳の中、静かな覚悟の火がともる。
……見切った。
確信すると同時、狭い山道から全力で助走をつけて空へと駆け出すティオレンシア。
ただの無謀に見えるそれはしかし、決して無謀でも無策でもない。
空気の流れを完全に読み切り、妨害の術式すらも利用してどんどんと城への距離を詰めてゆく。
風を味方につける都度、編まれた黒髪が揺れる。
ウィンドゼファー、アネモイとの戦い。愚者の迷宮にて対峙した極楽鳥。
―――やっぱりあたし、こういう風絡みの依頼に縁あるのかしらねぇ?
なんて考えてみる。二度あることは三度ある、その好例めいていた。
かまいたちのように迫る鋭い衝撃波を、宙返りでかわしてみせる。
【禁殺】。彼女の黒いブーツに刻まれた術式だ。
にこやかな表情を崩さぬまま、難なく空を渡るようで……実は、そうでもなかったりする。
曰く、「ミスると明後日にすっ飛びかねない」。
一度躱したかまいたちが、ブーメランの様に円を描いて戻ってくる―――
気流の乱れを察知。素早く身を翻して回避。髪の数本がパラ、と切れたのがわかる。
その身を刻まれることはなかったが……彼女の懸念通りのことが起きてしまった。
ブーツの底は予期せぬ方向を踏みしめて、まさに明後日の方向へティオレンシアを運ぶ。
視線先には巨岩が見えた。打ち付けられればただでは済むまい。子どもでも分かる。
が。
ガンナーである彼女の反射神経が勝った。
数度、空を蹴る。体勢を整えるまでさて、瞬きいくらだったか。
巨岩の上へ、すたりと受け身を取る。初めからそれと決めていたかの如く。
岩の上にて改めて眼下を見渡し、風に吹かれる無言の女。
その心中を知るものは、いない。
成功
🔵🔵🔴
エンジ・カラカ
賢い君、賢い君、空に城だって。
アァ……コノ世界は変なモノばっかりだなァ……。
相棒の拷問器具、賢い君を片手に空の城を目指そう。
空を飛ぶ手段は無いケドそうだ、賢い君がいる。
手頃な岩に糸を引っ掛けて、それから風に乗ればイイ。
空は飛べないケド普通に歩くより速く辿り着くかもしれない。
アッチの岩、コッチの岩、君はどの岩がイイ?
アァ……うんうん、そうだそうだ。それがイイ。
君の望むままに進んで進んで。
コレは身軽。君と一緒に行きたいからなァ……。
大丈夫大丈夫。
いつかは君も空を飛べるようになるサ。
次はドッチ?うんうんそうかそうか、それじゃソッチに行こう。
アァ……たーのしいなァ……。
●賢い君と三歩目を
「賢い君、賢い君。空に城だって」
彼が誰に語り掛けているのか、背後からでは分からない。
「コノ世界は変なモノばっかりだなァ……」
アァ、と上を向く姿の、その傍らにはなんの姿もない。
エンジ・カラカ(六月・f06959)の相棒は、その手の内の拷問具だ。
鱗の欠片と毒、赤い糸を備えるそれは『辰砂』の名の通りである。
飛行手段を持たないエンジだが、それも賢い君の叡智が解決する。
糸を伸ばすのだ。しなやかに撓み、よく伸び、切れぬ赤い糸を。
手近な岩にアンカーをつけてやれば、風に乗るのも容易である。
万が一足を踏み外したとしても、体勢を立て直せるだろう。
―――アッチの岩、コッチの岩、君はどの岩がイイ?
問いかけども、声として聴こえる返答はない。
「アァ……うんうん、そうだそうだ。それがイイ」
ゆらりと再び気流に乗る。賢い君に導かれるまま、赤い糸の導くまま。
岩へと線を結んでは、身軽に先へ進んでいく。それは、君と一緒に往きたいと願うからだ。
……たすんと平たい岩に足をつけ、小首をかしげて辰砂を見た。
何かを、賢い君の声を、聞いたかのように。
大丈夫大丈夫、とのんびりした声で語り掛け、続ける。
「いつかは君も空を飛べるようになるサ」
平素と変わらぬ間延びした調子で相棒を元気づけてやり、見上げる。
飛び交う水妖はこちらを気にした様子はない。まだまだ先は長そうだ。
さあ、次はドッチ?
問いかけに暫し返事を待ち、そして緩やかな所作で頷いた。
「うんうんそうかそうか、それじゃソッチに行こう」
エンジの跳躍と共に、賢い君が赤い糸を伸ばす。
空中で黒衣の男が身を捻り、糸がしっかり巻き付いた岩へと降り立って。
さて、その次はどう動くか。どうしようか、賢い君。
賢い君の言葉通りに、コレは空を走っていこう。
「アァ……たーのしいなァ……」
にま、と笑う人狼の手にて。
拷問具はいま、新たな道を示そうとしていた。
大成功
🔵🔵🔵
エドガー・ブライトマン
天空城とはすごいねえ!
いろいろな国を旅してきたけれど、空に浮かぶ城は初めて見たよ
ねえ、レディ?
さてさて、まずは空を渡らないと
高いところは好きなんだけど、私は空を飛べないんだよねえ
気流っていうのもハッキリ目に見えるモノでもないし……
ああ、やっぱり持つべきものは友人だよね、オスカー!
私に伴うツバメを呼び出すよ
先を飛んで、気流の激しいところは避けて教えてくれるよう頼む
あっワザと気流が弱すぎるところには行かないでくれよ
落ちたら流石にシャレにならないからさ!
友のツバメの導きで、風の流れに乗りながら空を渡るよ
やあ、なかなか壮観だねえレディ
……やけに静かだね
えっ高いところ、キライだったんだ……?
●風に踊るふたりと一羽
王族に連なるものが旅に出るにあたり、大半はその正体を隠すものだ。
高貴な血筋とはただそれだけで悪漢の標的になり得る。
かの王子は真逆である。身分を隠さず、様々な世界を渡り歩き、人を救ってきた。
輝ける者、その名をエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)。
此度の舞台はそんな彼でも見たことのない、空を飛ぶ城である。
「硝子の中にある城か……レディ、どう思う?」
見上げながら左腕の“薔薇”に問いかける。
見晴らしのよい場所はエドガーにとって好ましいものであったが、ひとつふたつ困り事があった。
まず、青空を往く手段がない。
気流を見ることもまた難しい。
しかし、歩みを止めはしない。
「……オスカー!」
明朗な呼びかけが先か、小さな燕が現われたのが先か。
……彼の旅は、決して孤独なものではない。
左腕に宿る美しき薔薇。そして親友たる燕、オスカー。
おとぎ話のような連れ合いと共に、ここまでやってきた。
「行くべき道を教えておくれ」
案内を乞えば、頷くような囀り。
オスカーとエドガーは五感を共有できる。
友が先行してくれれば、エドガーにもその空気、風、音が伝わる。
上昇する気流や疾風の罠を回避できる。という算段だ。
「あ、ワザと気流が弱いところには行かないでくれよ」
やや悪戯好きのきらいがあるのだろうか、飛び立つべく羽搏くオスカーに先んじて告げる。
落ちたら洒落で済む高度ではない。
「キミと違って飛べないんだ、私は」
その尾を追いかけながらもうひとたび、言い聞かせる。
知ってか知らずか悠々と空を滑る友の視界。聴覚。
彼の黒い羽を逆立て、あるいは宥める風の向き。
オスカーの感覚に従い、エドガーも後を追う。
あとは親愛なる友を信じて進むのみ。
新たな気流に飛び乗りざま、地上を眺めてみる。
山道からの風景も美しいものであった。
だがより高くからの眺めは、エドガーにはできぬこと―――空を飛ぶことを成しているように思える程の。
「ご覧よレディ、壮観じゃないか」
……。
左腕は、いやに静かである。さっきからずっと。
もしかすると転送された直後からかもしれない。
えっ。
「高いところ、嫌いだったんだ……?」
それにすら、返事がない。沈黙は何よりの肯定か。
共に過ごす時が長くとも、知らぬことは沢山ある。
……ということだろうか?
先導するオスカーが、ふたりを急かすように鳴いていた。
成功
🔵🔵🔴
五条・巴
いいな、天空城。
そこから見る景色はどんなものなのかな。
ここも充分高いけれど、空を見上げれば更に高い所に、景色が見えやすそうないい場所があるじゃないか。
月は近くに見えるかな…よし、張り切って登ろうか。
相棒の彼、春風と一緒に。
"宵の明星"
向かい風は彼の影に隠れたり、谷底から吹き上がる風も利用して上手く上に進めるといいな。
足場がなければ春風の跳躍力に頼って進む。
危ない場所だから気は抜けないね。
怪我もしたくないし、しっかりと周りを確認しながら進もうか。
湖が戻ってきたら、夜は月が水面に映ってそれはそれは綺麗なんだろうな。
天空城からその景色、見れるかな?
ああ、わくわくしてきたね。
●春の風、三日月を渡る
五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)は、月をこよなく愛する青年である。
この山道も見晴らしは良いのだが……より上を見遣る。
美しく澄んだ瞳に映るのは、浮遊する城だ。
あれほどの高さ、眺望は如何ほどだろう。
高くからなら月は大きく見えるだろうか?
純粋な好奇心が彼の面差しを明るくする。
「おいで、春風」
【宵の明星】。一声呼ぶだけで十分だ。
夜に輝く金星のような、しなやかな金糸のような鬣が揺れている。
黄金の毛並みの獅子。“春風”に相応しい温かさの風であるが、しかし幾つが罠であろうか。
ぐ、と身を屈めた春風のジャンプは、巨岩にすら届く。
到達した先で強く風が抜けてゆけば、巴を守るように前へ出るのだ。
四つの足が強く岩を踏みしめ、吹きすさぶ疾風の罠から彼を守る。
ありがとう。そう言ってやると、どこか自慢げに目を細める。友を守った誇らしさだろう。
幸いにして気流を読むのはさほど難いことではない。
さざめく鬣は麦畑のように流れ、風向きを教えてくれるからだ。
巴が春風の毛並みを見、方向の指示を出す。
青年の注意力と慎重さ、獅子の身体能力と勇気。二者を繋ぐ信頼が、そのまま天へのきざはしとなる。
巴ははじめ、天空城から見る中空の月を考えていた。
春風の背から見下ろす“湖だった場所”は、今や遠く小さく見える。
もしそこへ、あの澄んだ水が―――湖が戻ってきたのなら、
月が水面に映ってそれはそれは綺麗なんだろうな。
空の月と、鏡写しの月を思い浮かべる。
そうして彼が胸に抱くのはやはり、
「ああ、……わくわくしてきたね。ねえ、春風」
月への想い、ただそれだけなのだ。
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
水を纏い漂うお城、まるで空に浮かぶ巨大な金魚鉢ですね
中でお魚でも泳いでいれば、また風流だったかもしれませんが…居るのは人を襲う妖、帝竜の尖兵ばかり
なればそれを鎮めるのも僕の勤めです
…とはいうものの
僕、空は飛べないんですよねぇ…よし、それならば
分身達を生み出して冷撃符を持たせ、向こうの巨岩まで八咫烏達に彼らを運ばせます
そこから分身達に冷撃符を発動させて氷の橋を伸ばして貰いましょう
こちらからも同じように氷の橋を伸ばせば…ううん、でも強度を考えると完全に橋を架けるのは厳しいかも
ちょっぴり勇気がいりますが、橋の途中を吹き上がる風に乗って飛び越えていきます
疾風の罠にも気を付けて、天空の城へと参りましょう
●氷上八百万
仰ぎ見る水の球を「金魚鉢のようだ」と感じるのは、彼が生まれ育った世界に由来するのだろうか。
眼鏡越しの視界を漂う城の周りに、魚を思い描く。
が、現実として―――祓うべきあやかしの者としてまなこに映るのは、醜い姿の水馬ばかり。
雨宮の者が為すべきことは、時と場所を越えても変わらない。
……とはいうものの。
彼もまた、空を駆ける手段も、飛ぶための翼も持たない。
しかし幼いながらも既に一人前の陰陽師。
雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)の中では既に、彼なりのやり方が整っていた。
【稲荷八百万】。その名の通り、多くの分身を生み出す術だ。
「しっかり受け取ってくださいね」
護符揃えから取り出すは『冷撃符』。氷の力を秘める符の束である。
無造作にばらまかれるようでいて、実のところはいつきの意のままに動くのだ。
彼と変わらぬ見目の妖狐たちへ、瞬く間に一枚一枚が行き渡る。
……各々符を持った彼らは、鴉の背に乗り宙へと浮かぶ。
鴉。どこからだろうか。
何のことは無い。新たな護符、『八咫烏』。思うがままに黒羽の鴉へと姿を変わる式神。
分身たちを背に乗せた八咫烏達は、対岸に見える岩へと真っ直ぐに飛んで行く。
邪魔な気流もなんのその、見事に隙間を縫って軽々と辿り着いてみせる鴉と分身たちだ。
漸く下準備が終わり、いつきの策が動き出す―――向こう側から伸びるのは、大量の冷撃符による氷の橋!
此岸からも同じく氷を伸ばし……聡い彼はいまいちど考える。
強度についてだ。こうしたものは支点から離れれば離れる程、崩れやすくなる。
氷の術にて橋を架けるのは途中まで。
……八咫烏が迂回した気流のすぐそばに、上昇気流の足場があるはずなのだ。
黒い鳥が飛ぶ動きなら幾らでも見てきた。
彼らがほんの少しだけ、フワリと浮いたのも目にした。
―――少し、怖いけど。
対岸へ、半端だけ伸ばした冷たい橋を駆ける。
氷に後押しされるように、少年のまだ小さな足が氷を蹴り、小柄な体躯が見えぬ風の足場へと跳ぶ!
果たしてそれは、式神の伝えた通り。優しく吹き上る風が、いつきの長い前髪を揺らす。
分身たちの架けた橋まではちょうどワンステップだ。
滑らないよう慎重に、かつ新たな風に吹かれぬうちに素早く進む。
無事岩に辿り着いた彼と、合流した分身と、鴉の式神。
彼らはまた城を目指して、岩を渡ってゆくことになる。
あたたかな陽気のなかにあり、いつきの通った道だけは、冬が訪れたかのようだった。
大成功
🔵🔵🔵
鳴神・栞
狐狛(f20972)と一緒に。
またすごい所に建てたもんねー……買い出しとか不便じゃないのかしら。さて、見上げてても始まらない。気合い入れて行きましょうか!
別にいいけど、途中で落ちても知らないわよ?
幸いにして、足場は皆無ではない。ならば多少の無茶を通す余裕はある。スクラップ製の"鞘"――無骨な鉄塊めいた、急場拵えのコンテナから妖刀の刃を滑らせる。
ライキリ。ちょっとだけ使わせなさい
《妖剣解放》によって筋力を賦活させ、岩の側面を人間の限界を超えた速度で蹴り移ります。風によって軌道を崩された際は、剣閃の衝撃波を反動として無理矢理軌道を修正しましょう。
寿命数十秒分の運賃は貰うわよ、コハク
玉ノ井・狐狛
【鳴神の嬢ちゃん f22217 と】
天空の城たァ、随分と外連味が利いてやがる。そういう発想は嫌いじゃねェ。この商売ぁ、舐められたら終わりだからな――それはそれとして。
アタシぁ、登山家でも冒険家でもないんだよなァ。
「鳴神の嬢ちゃんよぅ。気合とやらが余ってんなら、ついでに運んでってくれねぇかい?」
運賃はとりあえずツケといてくれや、覚えてたらそのうち払うからよぅ。
なぁんて嘯きながら。落とされねェように、嬢ちゃんに捕まろう。都合よく体格が一回りは違うしな、そう無理な体勢にゃならんだろうさ。
ま、あんまりサボってても後が怖ェや。風を視て、ヤバそうならナビくらいはしようかねぇ?
●命運延びて数十秒
浮遊する水の城を見上げて感じることは、当然ながら十人十色である。
「ありゃァ、随分と外連味が利いてやがる」
感心した風に、手を庇にするのは玉ノ井・狐狛(代理賭博師・f20972)。
彼女の生きる世界―――賭博の場では、見た目すらも武器の一つだ。
ハッタリだろうが真実だろうが、舐められなければそれで良い。
よってああした変わり種は、なかなかどうして嫌いではないのだ。
その隣。無骨な剣を鞘ごと地に突き立て、同じく天を仰ぐ少女。
鳴神・栞(護人会認定・変異抜刀術皆伝・f22217)は同じく空を見て、首を傾げた。
「……買い出しとか不便じゃないのかしら?」
「お遣いが要るようなモンは住んでねェでしょうよ」
「ま、見てたって考えてたって始まらないわね!気合い入れていきましょうか!」
肩を竦める狐狛の姿は気にかけず、よし!と不釣り合いなサイズの機械刃を肩に乗せる栞。
振る舞いは正に意気軒昂。さっぱりとした性質を持つ、彼女らしい一声だ。
おやとそちらを見る狐狛である。
「鳴神の嬢ちゃんよぅ」
「何よ」
「気合とやらが余ってんなら、ついでに運んでってくれねぇかい?」
見たとこ売るほどありそうじゃあねぇの。
うそぶく妖狐に即答する。
「別にいいけど、途中で落ちても知らないわよ?」
「鳴神の嬢ちゃんのやり方なら知ってるさァ」
「あと」
「運賃かい? ツケといてくれ。あとで払うからよぅ」
……覚えてたらな、とは、こっそりと付け加えられる。
聞いてか聞かずか、栞は岩のひとつに目をつけていた。
全くのカラではない。ならばやりようはある。
スクラップの無骨な鞘から引き抜かれるは巨岩もかくやの巨大な直刀、『ライキリ』。
既に鞘としての用を為さぬ鉄塊を軽々とその背に担ぎ―――
―――ちょっとだけ使わせなさい。
そして。
ものを斬れぬことに不満げな彼、ないし彼女を構える……空中で!
【妖剣解放】。独特の構えにて超常の力を纏い、岩石に特攻。正面から衝突する形になるが、無論そうはならない。
岩の壁面に“着地”し、駆け抜ける。
三角跳びを思わせる動きで岩を飛び上がっては高度を上げていくのだ。
迫りくるカマイタチは、それこそは改めて振りぬいた刃……妖剣が放つ衝撃波にて相殺する!
「斜め前方、右の岩に飛びなァ」
栞に捕まっていた小柄な少女。備える瞳は『狗瞳“白”』。
数瞬先の風の動きを先に読み、ただ栞に告げる。
聞けば即座に斬り返し、新たな剣風による反動で斜め前右へ。
……にやりと不敵に笑んでみせる。
「寿命数十秒分の運賃は貰うわよ、コハク」
鳴神・栞。傲岸不遜がひとの形を成し、大胆不敵を武器とする少女。
玉ノ井・狐狛も、ものは言わぬ。ただ人を食ったような笑みで返す。
真反対の彼女たちは互いに信を置く。
旋風を斬り、より高くへ昇ってゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ロカジ・ミナイ
はぁ〜いい景色だ
ずーっと見下ろしてたいんだけどなぁ
みんな上へ行っちまうし…だって行かなきゃ仕事にならないんでしょ
しょうがない…コレ吸ったら全部上手くいく気がするから
もう少し堪能させてよ
さて
今こそ役立つのは自慢の脚力と心意気
この辺りの風の向きや癖なら煙草の煙に聞いてある
伊達に寝っ転がって煙草吸ってなかったってわけ
僕の第六感は
身体で感じ取れる情報に裏打ちされた、れっきとした“証明”
上手いことさダダっていってピョーンっていったらビューン!って
いける気がするんだよね
一つ約束
一歩踏み出したら振り向いちゃならない
顔を上げろ
破ったら尻尾が縮む
プランが雑だって?
そりゃそうよ、こちとら丁寧に生きたためしがない
●煙一条、約定一つ
一人、また一人。
猟兵たちが天空城へ向かってゆくのを、のんびりと見送るばかりの男がいた。
煙管の吸い口を離せば男の纏う雰囲気と同じく、ゆるりとした煙が立ち上る。
口許から火皿から、風に揺らいで消えていくそれ。見送るのは、空の中天に似た深い青だ。
ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)はその青色を、今度は眼下に広がる緑色の草原に遣る。
叶うのなら見下ろしていたいところだが、自分も向かわなければ仕事は終わらぬ。
『コレ吸ったら全部上手くいく気がする』
そう嘯いて、穏やかな風を受けていた彼である。
……さて。
羅宇を持つ手を傾けて火種ごと灰を落とす。
スニーカーの底で赤い火を踏んで、煙の残滓も見逃さない。
風向き、疾風の癖。気流の乱れる場所、静かな場所。
一服の残り香は空を往く標となる。
飄々とした所作の裏、その実は狐らしく抜け目のない男だ。
獣の第六感は、ただの勘ではない。
身体の全てが受け取った情報に由来する、歴とした“証明”たり得る。
証明さえあれば、あとは手段があれば良い。
化かし放題の逃げ足に、江戸の男の心意気。
―――ひとつ約束。
軽業めいた歩みは止めず、胸の裡にて思うこと。
一歩踏み出したなら、振り向いちゃならない。顔を上げろ。
破ったならば、怯えが勝つ。怯えが勝てば尻尾が縮む。
鎌鼬をかわしてみせ、竜巻は身を低くし、目敏く見つけた気流に乗って。
そのステップのすべては、ロカジの気紛れ。計算など知るところに非ず。
雑なプランも自覚するところである。丁寧な生き方などとは固より無縁。
風にすら掴むこと能わぬその尾は、誰にも見せずに隠したままだ。
成功
🔵🔵🔴
鳴宮・匡
何とかと煙は高いところが好きっていうけど
限度ってもんがあるだろ
……まあ、行けって言うなら行くけどさ
岩を跳び渡っていくわけだけど
……頼りになるのはやっぱり自分の感覚か
【確定予測】で……読むのは風と気流の“癖”かな
自然現象である以上、一定の法則や傾向は見出せるだろう
観察は眼で見切るだけに依らない
風の音や膚に当たる感覚も全て
流れを読み取るための情報にして進路を策定
一定距離を進んで、安定した足場に着くたびに
観察と進路策定を繰り返し
なるべく慎重に進んでいく
さすがに落ちたら洒落にならないからな
……まあ、そうそう踏み外すことはないだろうけど
もしどうしても危ないときは
影に潜んだレディに助力願うさ
頼りにしてるよ
●一定確率
「何とかと煙は高いところが好きっていうけど」
煙のにおいが微かに残る山道にて、顔を上げたのは鳴宮・匡(凪の海・f01612)だ。
“何とか”が示すのは先までいた彼ではなく、空に漂う城である。
その高度は彼の中での常識を、理解の範疇を超えていた。
……まあ、行けって言うなら行くけどさ。
無茶もいいところであるが、これもまた仕事である。
手段はシンプル。岩を渡ってゆく。
ここでもいつでも信頼できるのは、戦場傭兵として積み重ねた感覚。
皮膚に触れ、耳を通り、目にすら映る風を読む。
風にしろ気流にしろ、自然現象であるならば法則や傾向を掴むことが可能だ。
舞い上がる砂塵の粒すらも手掛かりにして進路を定めてゆき、得た道筋を辿ってゆく。
時折止まって、再び観察と進路の策定を繰り返しては着実に進むさまは、彼の戦い方によく似ていた。
機を静かに待ち、そして失わない。
そうして再び巡ってきたチャンスを逃さず、岩肌を蹴り―――。
急激に足元で揺らぐ気流の波に、足を取られてしまう。
完全にイレギュラー、地雷のようなトラップ。
体幹ごと軸がぶれ、いつぶりかというほどの揺さぶりが匡のバランスを崩す。
それでもその面差しは、凪いだまま。
影からの守護を信頼しているからだ。
岩に映った匡の影が、霧の如くに体躯を包む。影作る体のあるべき場所へ、彼を運ぶ。
それは一瞬のみ、ちいさな竜の姿を見せた。
レディ・ブラッド。
彼がレディと呼ぶその竜は、役目を果たして匡の影へと戻ってゆく。
溶けるように海に沈む姿に少しだけ眦を緩めて、その眼差しを前へ。
再び道を選び始める。傍らに在る彼女と共に、天を目指して。
成功
🔵🔵🔴
ラッカ・ラーク
空に逃げちまった湖が戻ってくるとこ、ちょっと見てみたいよな。そうそう見れねえぜ、そんなの。
そのためにも頑張らねえとな!
手頃な…登るのにイイカンジ?の岩を、『野生の勘』で選んで『踏みつけ』蹴飛ばして『ジャンプ』。
罠になってる風の術式は『見切り』で避けたり利用していきたいトコだ。足りない足場や急な方向転換は空を蹴って。
うっかり落ちそうなヤツがいたら拾いに行きつつ。真っすぐ吹き上げる風を翼に受けて、上へ連れてってもらおうかね。
せっかくイイ天気だし、メインステージは空と来た!
シゴトだってコト忘れなきゃ、ちょっとしたアスレチックとかパフォーマンスの気分で登ってってもまあ、ダメじゃねえよな?
●千客万来猫雲雀
ラッカ・ラーク(ニューロダイバー・f15266)にとって、空は地上と何ら変わらないステージだ。
岩場も疾風も、ちょっとしたアスレチックのようですらあった。
砂色の岩を強く踏みつけて跳びあがる。
鋭い鉤爪は岩の肌に傷を残し、更に跳びついた先の岩壁にもぐいと足跡を刻みながら、次々に跳ねてゆく。
急激な風の罠やつむじ風にはすぐさま空を蹴り、宙返りにバックステップ。
曲芸めいた回避行動からは鼻歌すら聞こえるようであった。
空へ逃げた湖。それが戻るというのなら、それだけ見応えのある景色はそうあるまい。
今なお旅を続けているラッカとしては、是非とも蜥蜴の瞳に収めたいところである。
……駆ける彼のそば。猫髭を揺らす、穏やかな風を見つける。
方向は彼方、距離は一歩分。
吹き上げる風へ跳び込みざまに雲雀の翼を広げ、猫の毛並みを乱されながらも楽しげに笑って舞い上がる。
そうしてまた軽やかに青空を飛んでゆくのだ。
身体中の青色が混じるような晴天に。
ジャンプ、ステップ、かまいたちを相手取ったダブルダッチもお手の物。
その動きのどれもがパフォーマンスを―――空をストリートとし、踊る姿を想起させる。
もしこれが配信でもされていようものなら、瞬く間に街中みんなを虜にしたに違いない。
幸いであったと言えよう。
“コレはシゴトだ”と、きっちり分けて考える冷静を備えているのがラッカだ。
それはそれとして。
―――楽しみながら登っても、悪かねえよな?
懐の内、折紙のひよこがぴぃと鳴く。
それは肯定だったか、否定だったか。
青空色した笑みを浮かべて、岩の位置を目で追っていく。
……まだまだ遊び場は続いている。
空の中にて、次の舞台を探して再び飛び始めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
リア・ファル
SPD
天空城!
いいなあ是非この目で見てみたいよ
趣は違えどボクも妖精郷の管理人なんだし
おお、結構高いね
でもまあ、高高度上空に放り出された依頼よりかは…ましかな?
ディープアイズ起動
気流の流れを演算開始
状況予測、完了
それじゃあ行こうか、イルダーナ!
もし知り合いや、大変そうな猟兵さんがいたら
タンデムシートに乗ってもらっても良いけど…?
落ちそうな人とかいたら、
最悪グラヴィティアンカーで捕まえて、助ける事も出来る
まあ、見た目は簀巻きや宙づりだから、ちょっと可哀想だけどガマンしてね!
曲芸じみたマニューバは得意な方さ
UC【幻影舞踏】で軽やかに行こうか
(情報収集、空中浮遊、操縦、救助活動)
●三界一騎幻想譚
しゃぼん玉めいて漂う天空城の、その全容はまだ窺い知れない。
天に浮く城、宙を往く艦―――“楽園”であった母艦を、思う。
きっとこの世界の何処かにも妖精郷があるのだろうと、そう思わせるきらめきが上空にあった。
他方、足元を見遣ればなかなか高い。
高高度上空に放り出されたのはいつだったか。
あれよりはマシかな、と首を捻る、奇抜ないでたちの少女の姿
様々なツールを使いこなしてみせるのだから、いうなれば電子の妖精だ。
リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)。
彼女の瞳には正しく“目まぐるしく”変わり続けるパラメータ。素早く進んでは次の処理を行うプログレスバー。
そして不可視の風が舞う、壮大な風景が映っていた。
ARディスプレイ『ディープアイズ』。
レイヤを切り替え、空気の流れを演算。状況予測完了までたったの数瞬。
時間との闘いならば慣れたものだ―――商品の配達だってスピード勝負なのだから。
うん、うんと満足そうに頷いて、愛機に飛び乗る。
「それじゃあ行こうか、イルダーナ!」
『イルダーナ』。太陽神の名を持つ、リアだけのワンオフ機である。
嘶く馬のように前輪が持ち上がれば、後は自由に空を走るのみ!
操縦しながらも周囲を見渡し、他の猟兵への細やかな気配りも忘れない。
……どうやら各々順調のようだ。
「わ、っと!」
大気の渦に危うく突っ込みかけ、しかし驚くのはちょっと大袈裟気味だ。
予め分かっていた危機、怯えはしない。
何より彼女にはイルダーナに加え、もう一つの切札があった。
【幻影舞踏】による時空間制御機動。
急停止も急加速も訳なくこなしてみせる。
車体を低く、重心を強くかけたテールスピンで大渦を往なしておしまい。
停まった機体に再びアクセルをかけて、一直線に城を目指す。
まだまだ気は抜けないものの、この調子ならば切り抜けられよう。
加護を与えるかの如く、天上には太陽が輝いていた。
大成功
🔵🔵🔵
納・正純
【静寂閑雅】
まずはここを登る必要がある訳だ。
面白ェな、どういう仕組みで浮いてやがる?
全体方針
①浮かぶ巨岩への移動手段を用意する
②砂塵を無効化する
③安全なルート選定を行う
これらを三人で分担する
俺の担当は砂塵の処理だ
UCを使用して弾丸を作成、気流の流れを読んで面倒な旋風が起こる前に気流の中心へ弾を撃ち込み、風を四方に散らして安全を確保しよう
「先行は嵯泉に、バックアップはヴィクティムに頼む。二人とも、任せて良いかい? 俺の仕事は撃つことだ」
「舞台で最も重要なのはイカしたイントロだろ? ほら、盛り上げていこうじゃねェか」
「なァに、空から落ちるだけなら水に沈むよりかはマシさ。そら、もう着くぜ!」
鷲生・嵯泉
【静寂閑雅】(魔弾の:納 魔術師:ヴィクティム)
此の状況でも新たな知識、か
らしい事だ
では①を請け負おう
極實衝天で召喚した騰蛇での飛行を使う
――こいつとの相性自体は悪くないのだが
私は召喚系の術は然程得手では無い
振り落とさん様に注意はするが
客船と云うには乗り心地が悪い、覚悟しろ
騰蛇の制御に集中し、2人の作る「道」へと通す
使える気流が有ればそちらへ乗せて労力を減らす
弾を受けて散る風は出来るだけ最小限の動きで躱させ
足場と成る巨石と障壁を踏み台と変えて上へと跳ね上がらせる
些かならず荒くはなるが、確実に登る事を優先する以上仕方あるまい
……しかし帰りは此れを真っ逆様という可能性もある訳か
最後まで気は抜けんな
ヴィクティム・ウィンターミュート
【静寂閑雅】
さーて、よろしく頼むぜ
俺と正純で嵯泉をサポートするからよ、豪華客船でバカンスしてるつもりでいてくれ
③のルート選定は任せろ
いくら別の気流が発生するつっても、遮蔽を突き抜けることはできねえ
行く先に壁がありゃ気流の向きをある程度操作できるのさ
正純、強い旋風は任せた──ARビジョンに気流の情報を投影開始
セット、『Alcatraz』
障壁作成、配置を開始
こうして壁を置いてしまえば、気流の操作は容易い
気流を操作して、嵯泉の行く道をアシストするように調整する
余裕があれば、追加の足場を設けてしまってもいい
俺達も使えるし、後々で仲間の助けにもなるしな?
こんなのはプロローグさ
舞台はここからだぜ、チューマ
●一幕三章
未知のなにがしかが―――風景でも、ものでも、事象でも良い―――あったとする。
何を於いても先ずはその仕組みに思索を向ける。納・正純(Insight・f01867)はそういう男だ。
実際にその眼に収め、その知識を総動員してもなお、天空城のからくりは分からない。
それが面白い。
未知とは、世界そのものから突き付けられる挑戦状である。
具に観察する正純の傍らに、長身の男が静かに佇んでいる。
鷲生・嵯泉(烈志・f05845)がその隻眼で見るのは正純だ。
……此の状況でも新たな知識、か。
「魔弾のは変わらんな」
述べられるのは呆れた風でもなく、単なる事実として。
短い時であれど、共に戦った仲だ。知らぬ質ではない。
独り言めいた嵯泉の声に応じるのは、ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
「いや、尤もだぜ。どこをどう見たってイカれてやがる」
少年はARディスプレイを複数同時展開。
天空城周辺の環境を監視しつつ、浮遊・滞空に要するエネルギー、想定される内部機構等を計算していた。
外部から得られる情報は、侵攻に必ず役立つ。
ネズミの穴探しはヴィクティムにとって片手間にできることだった。
結論。
「お姫様の処にゃ自力で行け……ってよ」
「お前の好物だろう。“全くの未知”だ」
「ああ良いね、ウズウズしてきやがった」
勇者様も楽じゃねえ。と、ヴィクティムが肩を竦める。
歯を見せて笑う正純、ほんの微かに口許を緩める嵯泉。
彼らのブリーフィングが始まる予兆は至極自然だった。
「さて―――じゃ、俺からの提案はこうだ」
―――ひとすじの紅蓮が、青空を裂いている。
スリヴァーや野鳥が逃げ出すその威容、灼熱。
焔を纏った蛇。十二天将が一柱、騰蛇である。
其を駆るは鷲生・嵯泉。術式、【極實衝天】。
彼の精神を力とし、蜃気楼さえ生み出しながら、炎の蛇神は空を往く。
此度の共連れはふたり。魔弾の射手と、超一流の端役だ。
『先行は嵯泉の騰蛇に頼みたい。ヴィクティムはルートの選定だ。任せていいかい?』
『おうよ。サーペントでのクルージングだろ? 豪華客船も裸足で逃げ出すキャスティングじゃねえか』
『乗り心地はそうは行かんぞ。振り落とさんよう留意はするが―――』
覚悟しろ。
トドメを刺すような言葉もまた、単なる事実として告げられたのであった。
実際のところどうかといえば、これは嵯泉の集中力に因るものだろう。
騰蛇は速度を落とすことなく、岩石を踏み台として更に高く飛翔する。
ヴィクティムと正純がそれぞれの役割を果たすのになんの支障もない。
……アクセス。
正純の前にARヴィジョンが現われる。
リアルタイムで気流をモニタリングする、即席の―――即席とは思えない精度のプログラムが走っている最中だ。
手際の良さ、華麗さである。"Arsene"の名は伊達ではない。
口笛ひとつ耳に入れつつ、ヴィクティムの配役はここからが本番だ。
【 > SET : 【DefenseProgram『Alcatraz』 】 】
今動き出したプログラムは、いかなる災いも防ぐ壁であり、封じ込める牢獄でもある。
……どれだけ速い風だろうと、比例する強度の遮蔽に当たれば流れて散るのだ。
【 > Activate. 】
障壁作成、配置を開始。迷路めいて現れるのは01の壁!
一見無造作なようでいて緻密に計算された配置である。
気流の向きをコントロールし、騰蛇への追い風として。
そして。
往なし切れない程の風ならば、無理にでも弱めてやる。
「正純! 頼んだッ!」
「頼まれたぜ……っとォ!」
いまだ脅威にはならない距離にある、しかし特に強い大気の渦があった。
“いまだ脅威にはならない”とは、まだ直接ぶつからない、というだけ。
遠くでも砂塵を巻きあげる風は、あと少しでも近づけば騰蛇の視界を容易く奪う。
その、焔燃え盛る鱗の上にて。
黒いコートに風を孕ませ、片膝を立てる。重心は低く、腰を立て、身体の内に芯を置く。
彼はこの動作を、特に意識せず行える。だから今だって―――不敵に笑っている!
手中に鈍く光るのは、六発入りの回転式拳銃。
向かい風はおろか、揺らぐ騰蛇の背である。それでもなお正純の弾丸は、狙いを逸らさない。
風の隙間を縫う銃撃、エネルギーの相殺による四散、その様正しく雲散霧消。
実に奇妙な光景であった。砂の大竜巻が一瞬で立ち消えたのだ。
それを為した銃声は、祝砲でもあっただろうか。
竜巻の散った残滓は、未だ嵯泉の駆る炎の蛇を狙っている。
―――通すかよ。
ヴィクティムがついと目を遣れば、そこには新たな電脳防護壁が発生してゆく。
激風を逆手に取り、大気の流れを変え、嵯泉と騰蛇の連携を崩させない。
時に襲い来る津波めいた揺らぎは、正純の弾丸によって消え失せる。
ちょうど上昇気流に乗り上げ、一気に天高くまで駆け上がる騰蛇。
永遠に燃え尽きぬ火矢を思わせる煌めきからの眺望は見事なものであった、が、しかし。
「帰りは此れを真っ逆様、という可能性もある訳だな」
「なァに、空から落ちるだけだろ? 水に沈むよりかはマシさ」
「空の上にフェリーマンがいる、って話も聞いたことねーしな」
幕は上がったばかり。
水の物語は、炎のプロローグにて始まりを告げる。
―――とびきりイカしたイントロだったろ、チューマ?
You ain't heard nothin' yet.
お楽しみは、これからだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
釈迦牟尼仏・万々斎
…なんと荘厳な。
天空の城を守る水の壁。砂塵舞う岩石群。全て含めて、完成されたひとつの美。乗り込むことを無粋とすら感じるほどだ……クックック…ワクワクが止まらんなあ! 心躍るではないか。
一番槍ならぬ一番鞠の誉れを狙いたいところだが、如何せんこの風、この足場。
仕事仲間がうっかりケチャップになっては目覚めも悪い。万一の際は受け止めることを考慮に入れ、足場を崩す者がいないかを見届けてから上がるとしよう。何せ人間は柔らかいくせに、ないからな。弾力。
屈伸!
準備体操!
UC【バウンドボディ】!
岩と岩の面を利用し、一気に跳ね上がっていくぞ。方向性の定まったスーパーボールのごとき魅惑の弾性、とくと御覧じろ!
●万物流転体怪傑紳士
今作戦の第一段階。最後に地上に残っていたのは、暗闇めいて黒い男であった。
空を仰ぐ彼の頭は、ジャッカル―――アヌビス神を模した精緻なマスクの下だ。
宛ら空気を嗅ぎ分ける猟犬、しかし犬と呼ぶには躊躇われる洒落者でもあった。
男の全ては、緻密な模造品である。
筋肉質な躯も、造り込まれたマスクも、小粋なスーツも。
自らの美学に従った結果、怪奇な……かつ、妙に紳士的な風貌となったブラックタール。
彼が殿を志願した理由はたったひとつ。
仕事仲間である猟兵のうち、ひとりでも欠けては。
オムライスのケチャップめいた姿になっては、寝覚めが悪い。
いざというときにはブラックタール特有の柔らかな身体で受け止めるつもりでいた。
曰く。
―――何せ人間は柔らかいくせに、ないからな。
弾力が。
“一番槍”ならぬ“一番鞠”の誉れに与りたいのは山々であったのだが、これはこれで悪くはない。
きらめく水の球体。丸い壁に覆われた、天空の城。
岩石群に舞う砂は、黄金に輝くかのように見える。
城の模型を封じ込めた水晶球に、光が降るかの様。
この風景ひとつを、自らと同じく“完成された美”として眺めていられた。
クク、と、密やかに喉が鳴る。
逞しい腕を組み、不変の面差しで、肩を揺らす。
「クックック……」
それは彼がダークヒーローとして見せる、悪の一側面か。
否である。
「……ワクワクが止まらんなあ!!」
心が踊るどころか、今にも踊り出しそうなほどの喜びに満ちた声であった。
話好きの己が提供するのなら、心躍る話題でなければ。
異界の空の冒険譚、これ以上のものはなかなかない。
「では吾輩も行くぞ! 準備体操始めッ!」
念の為に付け加える。山道には男ひとりしか残っていない。
ぴーひょろろ、という鳥の鳴き声が、耳に爽やかであった。
「屈伸! 伸脚! 深呼吸! 【バウンドボディ】!!!」
やたらめったら華麗なフォームでもって準備体操。
最後に一般的な準備体操と違うものが混じったが。
黒い身体がさらりと解け、岩のひとつへ伸びてゆく。しっかりと捕まえたその瞬間、地上から黒い液体が消え去り―――
岩の側面に、真っ黒な球体が完成する。
身体を引き伸ばし、引き寄せた力を利用して、鞠は軽やかに跳ね上がった!
岩壁の面と面を利用し、風が吹けばすぐさま平たく姿を変え、凧のように上空へ。
風力にてさらに勢いを増し……
曰く。
―――“方向性の定まったスーパーボールのごとき魅惑の弾性”にて、一息に弾かれてゆくのである。
怪奇なる紳士の名は、釈迦牟尼仏・万々斎(ババンババンバンバン・f22971)。
ちょっといい声してる、喫茶店のマスターだ。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『激浪せし水棲馬』
|
POW : 血染めの魔角
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。
SPD : 貪り喰らうもの
戦闘中に食べた【人肉】の量と質に応じて【魔力を増幅させ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ : 欲深き者共へ
【欲深き人間達に対する怨嗟の呪い】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
イラスト:〆さば
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●おとぎ話:ふたつの国の王様たち
むかしむかし、大きな国がふたつありました。
東の国の王様は、「わたしの国には山をくだけるすばらしい斧があるぞ」と言いました。
西の国の王様は、「わたしの国には谷をひきさくすばらしい斧があるぞ」と言いました。
ふたりの王様は、お互いのじまん話にすっかりきげんを悪くします。
「わたしの国には大きな滝をさかさまにできる魔法使いがいるんだぞ」
「わたしの国には大きな湖をどこまでもとばす魔法使いがいるんだぞ」
王様たちの口げんかはとまりません。
怒ったままの王様たちは、戦争をはじめました。
けれどもっと怒ったのは、空から見ている神様でした。
神様がおおきな風を起こすと、地面が次々にふきあげられていきます。
そして、東の国も西の国も、どちらも空へ飛んでいってしまいました。
王様たちはいまも陸地に戻れずに、空の上で神様にしかられています。
●激浪せし水棲馬
あの城も、戦乱の時代に放逐された内のひとつだろうか?
おとぎ話の真偽はわからない。
しかし、あなたたちが実力者であることは事実だ。
各々の工夫や技量により、ここまで昇ってきたのだから。
周辺にはもう、疾風の罠の気配はない。
第一関門を突破した先にて出会うのは、城の周りを飛ぶ水妖。
『激浪せし水棲馬』。
城の周囲を飛び回っていた姿を見たかもしれない。
もとは見目美しく、人によく懐く精霊であったという。
乱獲により絶滅し、人を呪いながら生まれた“過去”の残滓だ。
群を成して迫りくるその様子、さながら騎手のいない騎兵隊か。
―――濁って汚れた水の匂い。腐れた水草のような毛並み。
激流のような嘶きは呪いに満ち、あなたたちへ向けられる。
天空城の冒険、最初の戦いが始まろうとしていた。
◆◆◆
◆戦況展開
岩石群の上層部へ到達しました。
◆敵について
『激浪せし水棲馬』の群れです。
岩石群下層にいた時点ではなんとも思っていなかったようですが、
罠をすり抜けてきた猟兵たちを“脅威である”と捉えました。
積極的に襲い掛かってくるでしょう。
◆戦場についての補足事項
・岩石群上層での戦闘となります。
岩々を飛び移りながらの戦いが多くなるかと思いますが、
足場以外にも何らかの形で利用できるでしょう。
・風の術式による妨害は【ありません】。
・岩石の上、周辺の空中などであれば【初期配置は自由です】。
◆◆◆
プレイング受付期間:11/1(金)8:31 ~ 11/3(日)13:00
◆◆◆
御剣・刀也
ほう。シーホースか
初めて遣り合う相手だな。どういう手段を使うのか見極めたいが………
待つのは性に合わん。来ないのならこっちから仕掛けさせてもらうぞ
属性と自然現象を合成した現象を発動されたら、それが氷の津波であれ、炎の竜巻であれ、何であれ、ダッシュで助走をつけて、勇気をもって恐れず飛び込み、その攻撃を突破して、シーホースの目前に移動し、そのまま捨て身の一撃をもって斬り捨てる
自然現象が相手では、第六感、見切り、残像、で避けるのも難しいだろうが、それもできるなら使って接近する
「ははは。自然が相手か。面白い。森羅万象が相手だろうと、俺のやることは変わらねぇ!どんな相手だろうと、ただ斬り捨てるのみ!!」
雨宮・いつき
遠目から見ても禍々しい姿だと思っていましたが、こうして間近で見ると一際ですね
…元は美しい姿だったとしても、人の過ちによって生まれてしまった妖なのだとしても
僕は為すべき勤めを果たします
それが僕の生きる意味なのですから
巨岩群の上で水棲馬を迎え撃ち、
彼らが抱く怨嗟や恨みを糧にして伊吹の大神を御呼びします
…清い想いだけが信仰とは限りません
荒神の糧となるならば、恨みや憎しみもまた信仰に違わず
地を操る能力で巨岩群の一部を岩の壁へと変えて彼らの攻撃を防ぎましょう
五行相克、土は水の勢いを堰き止める
その隙に雷撃符による【マヒ攻撃】で痺れさせ、動きを封じた所で伊吹様の八刀にて斬り裂かせて頂きます!
●森羅万象九刀両断
豪豪と風が鳴る。水妖馬の慟哭に寄り添うかの如き、激しい風が。
それをものともせぬ男。先に一番槍を務めた剣豪、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)である。
眼前にて嘶いた一頭は、刀也に向けて大竜巻を放ったのだ。
一瞬たりとも気を抜けばたちまち吹き飛ばされるであろう嵐だが、刀也の闘志―――胸の裡に燃え盛る炎を煽るには充分―――否、それこそが過ちであったのやもしれぬ。
水棲馬の魔力が生み出すのは“作られた自然現象”。
作り物とて森羅万象。いくさ好きのこの男、気は昂れど退くはずがあるまい。
彼のジャケットが大きくはためく。その赤、吹き消される灯火が如く。強く明るく燃え上がる末期の一瞬めいて、しかし。
風にて消えるは命に非ず。御剣・刀也の長躯であった。巨岩よりはるか前、紫電の交じる竜巻が激しさを増そうとする、その刹那。体幹をばねのように使い、弾かれたように駆け、暴風へと身を躍らせる! 風の刃に裂かれども、雷の矢が掠めども、彼の勢いは留まらない!
「はは、はははッ!」
哄笑と共に、抜くその剣は銘を『獅子吼』。正しく吼え猛る獣の王が如き苛烈にて嵐を越え、そのまま一頭の胴を割ってみせたのだ! 半分になった水妖を足蹴にし、次の岩へと飛び移り、
熱を、感じた。
炎だ。炎の雪崩が、刀也の頭上より迫っている。
まだ遠いが、良いさ。それすらも斬り伏せてやる。獅子吼を霞に構え―――
「―――恨み辛みに畏れに怒り、」
変声も迎えぬ、おそらくは少年の声だ。
「無心にあらずんば其れ則ち信仰也」
その細い喉からはっきりと紡がれるのは、彼の信念。
澄み切って続いてゆくのは、彼の決意。
“怨嗟を喰らいて神威と成し、我らが為に振るい給え。”
「……参りませ、伊吹大明神!」
八頭八尾の巨龍。倭建命すら下したとされる大蛇の名。
それが呼ばわれた瞬間だ。炎が。煮えたぎる忿怒を流し込むような炎熱の流れが、消え失せたのは。
蛇の尾の、たったのひとふるい。厚く鋭い鱗はたかだか水妖一匹の魔力などものともせず、叩き潰すように消してしまった。
清らかさや聖性だけが信仰ではない。
悍ましい憎悪もまた、純然たればたるほど祈りに近くなる。
雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)の【遠呂智絵巻開帳】は、敵意や怨嗟を食らって荒魂を呼び出す術式。
現に水妖たちの怨嗟は、伊吹大明神すらをも呼び出してみせた。それほど強く、純粋な……恨みであった、ということに他ならない。
「大丈夫ですか!?」
「ああ、助かった!」
上下に離れた岩同士、刀也といつきが互いの安否を確認する。
負の感情と呼ばれる原動力を吸われた水棲馬は、呆けたかのように当てどなく駆け回っているが。
「とても……強い、恨みでした。すぐにまた動き始めます」
見た目の禍々しさに違わぬ怨恨。いつきに感じ取れたものは、それこそ濁流のようであった。底が見えぬ、激しい流れだ。
今はただ、それを一時的にせき止めたに過ぎない。そしてこの箍とて長くは持つまい。
刀也は素早く戦場を見渡し、天空城側よりこちらへ向かう一団を見つける。
「あの辺……縦長の岩あたりまでだ。足場、頼めるか?」
「はいっ!」
凛とした返答ののち、刀也の立つ巨岩が回廊めいた形状に伸びてゆく。
螺旋状の造りは駆けるに申し分なく、目的地までは壁としても機能する。男は大蛇の尾なり背なりを借りる腹積もりであったが、願ってもいない幸運であった。
いつきが巨龍―――伊吹大明神に願えば造作もない。岩。言うまでもなく、かつて大地にあったものである。今やこのとおり浮かんでいようとも、伊吹山の主の思うままに形を変えるのだ。
「無茶はしないでくださいね」
「心配いらねえさ。文字通り盤石だ」
ビッと血振りひとたび、愛刀と共に駆けてゆく刀也を見送るいつき。
先に蟠っている一群、全て一刀のもとに斬り裂かれるのだろう。
自らより先を進む者がいる。
であれば、為すべきことは追撃の阻止。次第に蘇りつつある悍ましい感情を、肌で感じ取れる。
……戦いは、得意ではない。
雨宮の家が為すべきこと。貴き責を継ぎこそすれど、その気質が必ずしもあやかしとの戦いに向くとは限らない。
里を出てから幾月か。異界の空にて少年は、一度ふかく呼吸をする。
……次第に我を取り戻し始めた水棲馬が、再度隊列を組んで走り出したのだ。
一群は頭上にて、先へ向かった剣豪を追う。もう一群は下方より、いつき本人を目掛けて迫る。どちらを防ぐか。
どちらもだ。
如何な幻想を操れど、水妖馬は名の示す通り水のあやかし。五行相克―――土は水の勢いを堰き止めるものである。故の八岐大蛇。故の、伊吹大明神。
先陣を切った一頭が、凍てつく冷気と共に蹄を振りあげる。呪詛に塗れた蹄が空を踏めば、そこから四方八方と伸びるのは逆しまの氷柱だ。さきがけの男を追い、未知を塞ぐ少年もろとも串刺しにしようとする氷刃。眼鏡の硝子が温度差にけぶる。
「させませんっ!」
そう。どちらも防いでみせると決めたのだ。巨岩群のひとつひとつが互いを結ぶアーチを作り、氷柱の全て―――追うもの、迫るもの、さかしくも回り込まんとしていたもの、皆砕く!
年若き陰陽師が新たに据えるは『雷撃符』。雷を生み出し、自在に操る符の束だ。
言葉通りに足並みそろった美しい連係こそが、水棲馬たちの悲運であった。上下左右と振りまかれた稲妻の媒介たち。触れるや否や、水妖の武器である水流そのものが仇となる。上を往く群れも、下に在る群れも、どちらも電流の檻に捕らわれたのだ!
そして。
はらはらと舞い散る符のさなか、澄んだまなこが化生の群れを見据える。
「―――伊吹様の八刀にて、斬り裂かせて頂きます!」
力を振るい足りぬとばかりに荒ぶるは、八つの頭と八つの尾を持つ巨大な龍。
咆哮は叢雲を払うが如く、猛るさまは葦原を薙ぐが如く。神威を伴う刃が次々と怪異を斬り“祓って”ゆく。
伊吹山の主は今、空をも支配する剣の嵐であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鳴宮・匡
◆同行:ロカジ/f04128
お、さっきの
うん、手伝えって? ……構わないけど
ロカジの兄さんね
鳴宮匡だよ、宜しくな
で、どうす――野球???
発想があまりにも頭が悪…………なんでもない
やれっていうならやるけどさ
流れ弾に当たらないよう少し後方に立つ
足場にするには小振りな岩に狙いをつけて
出力を絞ったレイガンで狙撃
……球に見立てて問題ないレベルまでは砕く
目に見える敵数に足りる程度あればいい?
暴投は……さすがにしないよ
“うまく”撃つのは得意だ
向こうがバッティングしてる間にアサルトライフルに持ち換え
隙を晒した相手から順に狙撃
もし球が外れたやつがいたらそっちを最優先
こっちの足場に乗り込まれる前に落としておくよ
ロカジ・ミナイ
匡/f01612
さてどうしようかとお空を眺めてたら
来たよ、強そうな猟兵さんが!
僕ロカジ
ヨロシクね、鳴宮の旦那
早速だけど野球ごっこしない?
その辺の岩をさ、景気良くドカーンと砕いてもらってさ
そしたら僕はこの擂粉木バットで瓦礫をカキーンとして
馬にパカーンって当てるじゃない(素振り)
その隙を突いてユーベルコードをズドーンしたら勝ちさ
話が早くて結構!
さあさあ何処へでも球を寄越しておくれ
多少の暴投だって問題ないさ
高い位置の球を打つくらいのジャンプならお手の物よ
ヒョー!鉄砲だー!カッコいいー!
僕も負けてらんないとロカジビームを発射
これ実は擂粉木からも出せる
ヤハハハ!バッティングセンターごっこは楽しいねぇ!
●硝煙紫煙煙煙羅
男は、空を眺めている。
相も変わらず晴れ渡り、日に近づいた分だけ心なしか陽気も良く感じられた。派手に染まり、奇抜に結われた髪がさらさらと空気に揺れる。
自慢の逃げ足に野生の勘でもって一度目の強襲からは逃れたものの、また顔を出すには心許ない。
考えあぐねるロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)のすぐ横、無人の岩のひとつ。そこへ音も気配もなく飛び乗ってくる猟兵がいた。
「ん」
「お」
……諸説あるが、人間の記憶に一番強く根差すのは嗅覚であるという。
鳴宮・匡(凪の海・f01612)が歩みを止めたのは、先の山道にて感じた匂いがしたからだ。
嗅ぎなれた硝煙でもなければ、よくある紙巻煙草でもない。知らない煙。
それを纏っているのが、目の前の男である。
―――だから何って話だけど、「お疲れ」くらいは言うべきかな。……と思い、口を開きかけ、
「果報は寝て待てっての、ありゃホントだねえ! 来たよ強そうな猟兵さんが!」
しめたと笑うロカジの声に遮られるのであった。
「ちょっとばかし手伝ってほしいわけよ」
「ん? うん、構わないけど」
「あっ僕ロカジ。ヨロシクね」
「ロカジの兄さんね。鳴宮匡だよ。宜しくな」
「早速だけど野球ごっこしない?」
「え?」
「野球ごっこしない?」
「……ごめん。何て?」
「野球」
「えーと、兄さん。聞こえてはいるんだ」
「だからさあ、その辺の岩をさ、景気良くドカーンと砕いてもらってさ、そしたら僕はこの擂粉木バットで瓦礫をカキーンとして馬にパカーンって当てるじゃない? その隙を突いてユーベルコードをズドーンしたら勝ちさ」
「擬音多くない?」
「そーう?」
“漂う巨岩群を適宜粉砕・水棲馬が怯んだ隙にユーベルコードで仕留める”。
足場にもならぬ岩ならば、ひとつふたつを砕いたところで問題はない。不意打ちにもなる、実に理に適った作戦であるのだが……
久々にこんなに頭の悪い会話をした気がする……顔には出ないが、匡の顔はどことなくまろやかになりつつあり。
ロカジはと言うと擂粉木を素振りしながら喜色満面、当人風に言うならウッキウキである。
「いや、まあ、やれって言うならやるけどさ」
請われたならば引き受ける。傭兵とはそういうものだ。ましてそこが、戦場であるのなら。
いつでも援護射撃ができる、ステップにして二歩ほど後方の岩へ飛び移る。流れ“球”に当たるなんて洒落にならない。
もう一方の男は、ここが戦場であっても己のペースを崩さない。話が早くて結構、なんて擂粉木で肩を叩く。
「さあ準備オッケーだ! 多少の暴投は良いからさあ、ジャンジャン来てよね!」
「数は? 視認できる的と同じくらいでいい?」
「気にしない気にしなーい!」
「(しないのかよ……)」
どちらかといえば、オーダーが細かい方が楽な質だ。その通りに仕事をこなせば問題ないのだから。
軽く溜め息をつき、風除けのため姿勢を低くする。立てた膝に重心を乗せ、構え―――
―――角度にして64度上方、直線距離は7.51メートル。
一瞬であった。
風 化 作 用
『TNN-LF88C"Disintegration"』にて、浮遊岩の底が削り取られる。サイズと風速を的確に計算した上での狙撃。
このサイズでは岩と呼ぶより大きめの石ころだろうか。音もなく生じた即席のボールは、まず一つがロカジに向かって降っていく。
続けてレイガンの線が大きめに岩を削ぎ、またそれを宙で射貫き、手頃な大きさへ割っていく。
“細かい指示を好む”ことと、“言われたことしかできない”ことは、違う。
おおよその“投球”が終われば、あとは打者がどれだけやれるか。
打者、もといロカジはというと。
メチャクチャ楽しんでいた。
、、、、、、、、、
ちょっとばかし反れようと、そもそも狙ってない。
正確でなくてもいいのだ。野球ではなくバッティングセンター。ゴルフで言えば打ちっぱなし。
勝手に飛びこんできてくれる石を打ち返すのは一般的なバッティングフォームであり、時に晴眼の構えであり、岩石を踏みしめ跳躍した後の横薙ぎである。
この球は攪乱でしかない。
本命は、その後ろにいる戦場傭兵。レイガンからアサルトライフルに持ち替えた男。
ロカジが攪乱に回り続けている間、観察に観察を重ねていた鳴宮・匡の狙撃だ。
整っていればいる程、粗は目立つ。乱れた足並みの、どこを撃ち抜けば戦線が崩壊するか。それすらも彼の手の内である。
次々に射貫かれていく額。関節。尾鰭。どのような戦場であれ七面鳥撃ちなどと宣うつもりはないが、今日も男の手は―――殺意は、凪いでいた。
丁度ラスト一球を打ち終えたロカジ選手、ここで奇声を上げる。ヒョー。
眼前にてぽとぽとと落ちてゆく水棲馬は、縁日の射的のほうがよほど難しいんじゃあないかと思わせるものがあった。
鉛入りのマトよりも随分簡単に落ちるもんだ。
「やるじゃないの旦那!」
「まあ、これが仕事なんで」
「でも僕もビーム出せるよ」
振り抜いたばかりのバット、もとい擂粉木をクルリと持ち直す。投手を煽る打者めいて切先を向けた、その先には生き残りの水妖の群れ。
天からか擂粉木からか、それとも示した場所からか。どこからともなく紫電が走り、残党を焦がし……鉛玉と石礫の嵐も去って、代わりに静寂が訪れた。
「ロカジビーム」
「……。“でも”って何?」
決まり手、ロカジビーム。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
釈迦牟尼仏・万々斎
※アドリブ改変連携歓迎
水棲馬か。
人の肝臓を残して他を食うと聞いたことがある。
レバーが苦手とは。クク…お子様よ…
共にいる者たちの得物と位置取りを確認、射線を意識しつつ前衛、岩石上に。基本的には助走つけた【UC】ですっ飛んで横っ面に体当たりだ。質量80キロ超の剛速球、叩き落とせれば手っ取り早いが流石に甘いか。
うっかり的を外して空中に放り出された場合、絞め殺される鶏のごとき悲鳴をあげて助けを求める。ア゛ーーー!
味方の負傷と敵の能力向上のワンセットはいただけん、
万一肉を食いちぎられそうな味方がいれば【かばう】
時に人肉には霊智が宿るというが、ブラックタールはいかがかな?
ちょっとした珍味かもしれんなあ!
エンジ・カラカ
水の馬。水の馬ダ。
賢い君、賢い君、行こう行こう。
アイツが邪魔をするならコッチも邪魔をしよう。そうしよう。
薬指の傷を噛み切って君に食事を与える
コレは支援に徹するサ。
自慢の足で岩場から岩場にじゃーんぷ
使える技能を駆使して馬の足止め。
今日の君はとーっても機嫌がイイらしい。
さっきもたーくさん遊んだからなァ……。
アッチの馬、コッチの馬、それからソッチの馬。
たくさんたーくさん馬がいる。
トドメは任せて全部ぜーんぶ片っ端から足止めしよう。
属性攻撃は賢い君の毒。
じわじわと効いてくるだろう?
賢い君は賢い君からなァ……。
アァ……まーだいる?
うんうん、もっともっとあーそーぼー
ティオレンシア・シーディア
ふぅ…ようやく一区切り、ねぇ。
まったくもう、心臓に悪いったらないわぁ…
後はあいつらをどうにかしないとねぇ。
とっとと片して天空城へ殴りこみましょ。
…あたし、魔道の類相手するの苦手なんだけどなぁ…
どうやって飛んでるかは分からないけど、水棲馬ってぐらいだし多分水を媒介にしてるわよねぇ。
…なら、凍らせちゃえば○足止めできるかしらぁ?
液体窒素封入弾とかイサのルーン刻んだ弾丸とかで水・氷系統〇属性攻撃の●的殺を〇先制攻撃で撃ち込むわぁ。
隊列崩して将棋倒しなり、魔力の制御ミスって自爆なりしてくれるのが最上なんだけど。
ま、○援護射撃にはなるでしょ。
●談合
「うそ、お行儀悪いわぁ」
「えー。もったいないなァ」
「クク……お子様であろう……」
肝臓、もといレバーの話である。
水棲馬、もといケルピーの話でもある。
“人の肝臓だけ残して他を食べる”
そんな逸話を持ち出したのは釈迦牟尼仏・万々斎(ババンババンバンバン・f22971)。応じるのは襤褸を纏った青年に、ギャルソン服の女。
全員が全員、マイペースが服を着て喋っている。そんな面子である。
天空城周辺では、戦場はいくつかに分けられていた。
こちらはとかく搦め手に長けたものの集まりだ。平たく言うなら“トリッキーな戦術”の使い手である。
例えば、ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)。六発入りのリボルバー。モノ自体はシンプルだが、放たれる弾丸はそんじょそこらの量産品ではない。
エンジ・カラカ(六月・f06959)の掌には、彼以外には故の知れぬ相棒『賢い君』。糸と鱗と毒の拷問具。
そして、一番シンプルであるがゆえに一番動きを読みづらいのが、万々斎。
それぞれの強み、携える武器、思惑。すべて鋭すぎる程に尖っていて―――故にこうして集まったのやもしれぬ。
―――不意に、エンジが空を仰ぐ。小雨の僅かな水滴に気づいたかのように。何ともない素振りで。
「水の馬。水の馬ダ。大勢いる」
それは彼が人の姿をした狼だからか、獣のにおいに敏感である故か。
あっち、と示す方角には、雨雲めいた群れが遠く見える。
「あたし、魔導の相手って得意じゃないんだけどなぁ……」
美貌の女の溜め息は絵になるものであった―――ここが戦場でなければ。
かの水妖が扱うのはあらゆる属性の“幻想”そのものだ。弾丸は“予め術式が刻まれた”ものであり、ティオレンシア本人に魔術を行使する能力は無い。
「ま、いいか。とっとと片しちゃいましょ」
あとでねぇ、と手を振れば、独特な声が残るのみ。女は他の足場を探し、身軽に去っていく。
「コレも、コレも。賢い君と一緒に行く」
『賢い君』に導かれるが如く一つ下の岩に飛び降り、岩肌を蹴って、エンジもまたその場から姿を消した。
万々斎のみがこの岩場にひとり残る形になる。
―――前衛、中衛、後衛。表の顔は同業であろう彼女に、あちらの一風変わった青年。いずれも手練れの猟兵であろう。
ジャッカルの鼻先が下がる。足場を変えながらの作戦であることは大前提。それぞれの得手もある程度は掴むことができた。
ならば今がベストだ。自分ひとりに群れの意識が向く、この現状が。
●赤糸
血のしずくが一滴、落ちた。
薬指の傷をなぞるように噛みちぎり、賢い君にあたたかい食事を贈る。
こうしてやると調子もいい。そうでなくても機嫌がいい。
「さっきもたーくさん遊んだからなァ……」
遊び相手には事欠かない。エンジが向かったのは水棲馬の群れが向かってくる方角。敢えて近くの、下方の岩だった。
たくさんたーくさんいる馬の、どれから足を止めようか。前だけ見てる水の馬。迷ったときは、賢い君。
「うんうん、そうかそうか。アレがイイ」
月の色をした瞳が細まる。三日月が新月へ変わるさまを早送りしたかのようなそれは、終わりの合図だ。
―――賢い君の糸は赤。あげた食事と同じ色。黒い蹄に引っ掛けて、一頭転べば行き止まり。
拷問具から放たれた赤い糸がケルピーの足に絡んだ。先頭を駆ける列が崩れれば、その周辺にいるものも巻き添えを食って足をつく。そのひと塊を更に雁字搦めにして、うんうんと満足げに頷くエンジ。
「やっぱり君は賢いなァ。賢い君だものなァ」
掌の中でそうと撫でる。賢い君は、次に起こることだって教えてくれる。
「アァ……」
はるか頭上に、冬が来ると。
●明鏡
もがき、苦しんでいる水妖のかたまりが見える。恐らくは、毒。
狙撃手の定石は高所。ティオレンシアはケルピーの群れよりも上に陣取り、機を窺っていた。
上から眺める水妖馬の群れはパレードの隊列めいてさえいた。
一人傲然と立つブラックタールの男へ、足並み揃えて突撃する。
偶然乍らも良いデコイがいてくれたもの。さて止めるかと『オブシディアン』を構えたところ、先頭を走っていた一頭が“何かに引っかかって”転倒したのだ。
先頭集団がなんらかの妨害を受けたことで、全体が混乱を来している。
恐らくは先の青年だ。彼が足止めを担ってくれたことで、ティオレンシアに時間の余裕ができる。
中列から後列の水流はいまだ止まらず、縺れて山になった前列を踏み荒らして、囮役の男に襲い掛かろうとしていた。
―――敵が水なら、氷で対抗できる。ティオレンシアには、そうして敵対者に打ち勝った経験がある。
よってこの弾に刻まれたルーンは『IH』。更に予備には液体窒素封入弾、現代兵器まで使う念の入りようだ。
Interfere
【 的 殺 】。魔導へ干渉するものは、祖を同じくする超常に限らぬ。積み重ねた技術。経験からなる機転! 狙いを違わぬ六射、立て続けに再装填、更に六発!
十二発の氷の軛にて、空駆ける波濤は今にも動き出しそうなオブジェと化す!
……ふぅ、と息をついた女の黒髪が、ひらひらと風に靡いた。
もはや動かぬ透明な氷像に、別れを告げるように。
●黒嵐
男が戦ってきた理由、戦いをやめた理由、そしていま戦っている理由を知る者はいない。
だが、自らが為すべきことを為し続ける人物であることは誰にでも分かる。
ただ立っていること。幾頭、幾十頭もの妖馬どもを前に、恐れず立ち続けること。
共に戦う者へ確かな信を置かねばならない。言うは易く行うは難し、しかし彼は確かにやりきってみせた。
下方から絡まる赤い糸に、妖しく光る毒の色を見た。
上方から降り注ぐ弾雨に、確かな技巧と熟達を見た。
今眼前にあるのは、奔流の一瞬を象った―――実際に激流そのものたる馬の群れを固めたのだが―――氷の像だ。
芯まで凍りついたそれは、しかし城塞の精鋭ゆえか。並みならぬ魔力を抱えていた。
氷のひび割れと万々斎の変形は、ほぼ同時であった。液体から鞠へ。この岩石群を駆け上ってきたときの同じく、岩々を跳びあがって加速してゆく。そして今度は岩の底を蹴り―――そう、“蹴った”!
その姿を鞠から黒い馬の姿へ転じ、高高度から落下……否、これこそが突撃! 水妖がついぞ成し得なかった必殺である!
凍りついた波濤には地割れが如き巨大な罅! 黒馬が蹄を打ち鳴らし、その最後の一蹴りにて砕け散る!
……巨岩のひとつに降り立った万々斎のすがたは、いつも通り。筋骨逞しい体躯、洒落たスーツ、アヌビス神のマスクを真似た男であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
エドガー・ブライトマン
ハハハ、気難しそうな顔をした馬だなあ
ニンジンが欲しいのかい? ……ああ、興味ないって顔だ
馬は好きなんだけどね。敵であるなら、キミらを討たねばならない
私が立つのは岩石の上
馬っぽい諸君にレイピアを向けて、まずは“Hの叡智”
これをやると調子が良いんだ
今回は防御力を重視しよう
ああ、嘶きが逞しいねえ
なんだか恨まれているかのような気すらしてくるよ
……あっ、実際ひとを呪っているんだっけ?
戦いに気を取られて岩場から落ちたりしないように、
自分の足元には注意したいね
馬に押し出されそうになっても、強化した防御力で耐える
押し出されそうな仲間を《かばう》
さあ、どいてもらっていいかい?
私たちはその城主へ謁見しにきたんだ
五条・巴
水棲馬、本来は城にお似合いの美しい姿だったんだろうね。
馬勒があったら僕も乗りこなせたかな?
…春風に怒られそうだからやめておこうか。
さて、僕らは先に進みたいんだ。通させてもらうよ。
ここは空と近くていいね。すぐそこに彼女がいるかも。
”薄雪の星”
火には水を、水には風を…、相手の属性に対抗できそうな元素を選択して銃弾に付与する。
撃ちぬくのは水棲馬にだけじゃないよ。
相手の攻撃が味方に当たらないように、または攪乱させるように岩場を粉砕、飛び散る岩にさらに打ち込む。
目、耳、各関節、動きを鈍らせるように弾を重ねて 援護射撃。
勿論砕けた岩は戦う仲間にあたらないように調整するよ。
●星の紋章
元は城にも相応しく、美しい水の精霊だったのだろう。
五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)は在りし日の水棲馬を思う。
『春風』と真反対の銀色のたてがみに、真珠のようにつるつるとした毛並み。
馬という生き物が持つ優しげな瞳を、彼らも持っていたのだろうか。それは、何色だったのだろうか。
「馬勒があったら乗りこなせたかな?」
「どうかな。気難しそうな顔をしているし、きっとニンジンで喜んではくれないよ」
巴の少年めいた無邪気な問いかけに、肩を竦めるのはエドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)。
純白の装束と金色の髪を青空に遊ばせる彼は“高貴な生まれのものが勇者伝説にその名を刻むならばこうだ”といった風体であった。
さらさらとした黒髪、長い睫毛に縁どられた藍色の瞳。そんな巴を夜の月とするならば、エドガーは昼の太陽も斯くやである。
この美しい二人が英雄譚を彩ろうというのだ。もし吟遊詩人が見たのなら、すぐにでも筆をとったに違いない。
「後ろは任せていいかい?」
「もちろん。僕のことは気にしないで」
月を愛する彼の返事を聞けば、エドガーは自信に満ちた笑みを残して前を向く。
トン、トンと身軽なステップで後衛……巴との距離を離す。なるべく広く平たく、戦いやすい岩へ。
馬は好きだ。人のよき友となる。
水妖が鼻を鳴らす様子は、そんな普通の馬とさして変わらず。しかし溢れ出るのは、ごぽごぽと溺れるような音であった。
「すまない」
敵であるなら討たねばならぬ。笑みは絶やさぬまま装束を翻し、青き双眸を向かい来る水妖へ。悠然と刺突剣を構える。
繰り返す。彼の旅は、決して孤独なものではない。レディ。オスカー。そして―――
―――【Hの叡智】。
一度、深く息をする。二度、空の青を遮る。唱えるは愛すべき祖国の名。
エドガーが受け取るのは、“彼”の叡智。此度は頓にその堅実さである。
広めとはいえ広いわけではないこの足場へ、水馬が押し寄せる。
怒涛の突撃。それを知っていたかのように跳び、躱す。その先にて振るわれた蹄をレイピアで受け流し、踊るように半回転すれば剣のひらめきが軌道を描いて角を弾く! 戦局を見据える守りの構え、而して剛のみに非ず!
水妖の背にすらも飛び乗り、利用して、隙を突いてはその額を鋭く穿ってゆく!
それが叶うのは、背を預けた月の彼がいるからだ。
巴が放つ弾丸は敵を穿ちながら、もう一つ役割を果たしていた。
牽制である。着弾の痛みを訴える嘶きにて、周囲の水妖にも僅かな動揺が生じるのだ。それは忿怒にてたちまちかき消されるものだが、エドガーにとっては動きを見切るに十分な余裕となっていた。
Callisto
―――ここは、【薄雪の星】に近いはずだ。
夜が来たなら、彼女にも会えるかもしれない。
風の弾丸で波を散らし、土の弾丸で風を止める。渦巻く炎は水の銃撃に消える。
変光星がごとくその性質を変える弾。彼女は常に天に在って、巴を見守り、その敵を許さない。
群れの一頭一頭がその弾丸に、刺突剣に、斃れては消えてゆく。
しかし水妖馬はその最後の一頭となってもなお、二人の前に立ちはだかるのだ。
負の感情が激流の形を成し、少年を押し流さんと迸る! 巴の放つ風の弾丸が奔流を割り、エドガーは正面からの突撃を真っ直ぐに受け止め―――体幹のすべてを使って押し出し、その急所を一刺しにて穿ってみせた!
朽ちた水妖馬の骸が、空を落ちながら過去の海へと還ってゆく。
障害は消えた。眼前には岩石群が浮遊するのみ―――
「……やあ、城主からお招きいただいているようだ」
自然の生んだ偶然の一致か。岩々は整頓されたかのように上方へと並んでいた。
謁見の間へといざなう階段さながらに。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リア・ファル
SPD
同情がない訳じゃないけれど……。
疾く骸の海へ帰してあげるのが、ボクなりのけじめかな
イルダーナがいるからボクは足場は厳しくないけど
周囲の猟兵さんはどうだろう?
その辺も踏まえて、戦術を組もうか
UC【召喚詠唱・流星戦隊】を使用
足場になったり、移動を手助けしたり
水棲馬を牽制したりさせよう
ボク自身はイルダーナ達を操り、
空中機動で水棲馬の背後をとって、
セブンカラーズの射撃とグラビティアンカーによる捕縛攻撃、
イルダーナ機首の5色のレーザーパルスバルカンで攻撃しよう
「稼働全機、連携して追い込むよ!」
(操縦、追跡、空中戦、ロープワーク、地形の利用、援護射撃、スナイパー)
ラッカ・ラーク
さて、こっからが本番だよな!
『空中戦』だし動きたい放題じゃん。ツメで掠めて『2回攻撃』とかその辺の岩を『踏みつけ』蹴ってブチ当てたりとか『挑発』して。小鳥と一緒にイイ位置に『おびき寄せ』てから岩陰使って『だまし討ち』!
イラッと来てくれりゃあ、無差別な呪いに別の水棲馬も巻き込めねえかな?自分は『野生の勘』で『見切り』躱したいトコ。
大技とか使おうってお仲間がいたら、そうやって『存在感』出して引きつけて『時間稼ぎ』にもなれるかね。
キレーだったんだろなあ、コイツら。
大変だったのかもしれねえけどさ、オレ達に言われてもだし。うんうん。
お城の王様はどんななんだろな?
●虹色へ
晴れた空に、一条の彗星が尾を引いて流れている。
制宙高速戦闘機、『イルダーナ』のバーニアが描く青白い光だ。
三十六ある世界の中で、その騎手はたった一人。リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)の他には誰もいない。
怒りに震え、嘶く水の馬たち。それは悪しきものに蝕まれた善きものの末路である。
心が痛まぬはずがない。何も思わぬはずがない。謂れのない暴虐と蹂躙を、リアは知っている。
せめて、と、願う。
彼らは“過去の亡霊”、存在する限り世界の敵であり続ける。時間としての『過去』を変えることができないように。
本来いるべき場所―――骸の海へ、疾く送ってあげること。案内する者は、一機だけではきっと、
……寂しいだろう。
マテリアル転写生成完了。母艦『ティル・ナ・ノーグ』は、いまこのとき―――リアの心の内に在る!
Function Call : Meteor Legions
【 召 喚 詠 唱 ・ 流 星 戦 隊 】 !
「―――『イルダーナ』稼働全機、発艦!」
号令を受けて現れる戦闘機、その総数を実に60! リアの電脳を通して意のままに空を奔る流星群である!
水妖の大群を相手取る、というのもあるが、リアがこのユーベルコードを選んだのはひとえにその汎用性の高さゆえだ。
空中での移動手段を持つ猟兵は、然程多くはない。足にも足場代わりにも、様々に役立てると踏んでのこと。
そしてその判断は、正しかった。
高高度を走るリアの、更に上を飛ぶ影があったのだ。
馬の身体でも、魚の尾鰭でもない。それは、そう。人のように歩き、野鳥の翼に、スリヴァーのような尾で―――
偶然にもリアのヘッドセットとお揃いの、三角耳を持っている。
「……よっ、と、っとお!」
イルダーナのうち一機に、“彼”が停まる。リアの重心制御により車体は全くぐらつかず、鋭い鉤爪がしっかりつかんでも傷ひとつつかない。
岩とは違うモンだなあ、なんて不思議そうに足元を見るのはラッカ・ラーク(ニューロダイバー・f15266)。
彼にとって“空を飛ぶ”とは、ほんの少し速足であったり、あるいは全力のダッシュと同じようなものだ。ずっと続けていれば疲れてしまう。
止まり木がほしかったところ、本当にちょうどよくこの……空を駆ける二輪車が現れたのだ。ちょっと驚くほど、ジャストタイミングで。
勝手に借りてしまったが、と周りを見渡せば、同じものに乗っている少女の姿があった。
猫の爪ではちょちょいと耳をつつき、雲雀の脚は器用に車体を示す。
「よう、オソロイだな? 借りてるぜ」
「あはは、ホントだ! いいよ、好きに使って!」
ニッチな需要に対する的確な供給。意外なところで『Dag's@Cauldron』CEOの面目躍如だ。
どうやらこの戦場、他に猟兵の姿はない。だからこんな、1対1のスペシャルサービスも提案できる。
「キミはどう動きたい?」
「そーだなァ……オートパイロットでイイからよ、あの群れの周りに何台か飛ばせてくんねえ?」
蜥蜴の瞳と猫の手が示すのは、電脳の少女が観察していたものと同じ水妖の一群である。
洒落た出で立ちを見るに、なるほど。スカイダンサーだろうと判断するリア。
ならば確かにステップ踏むためのステージが必要だ。
「キミのリズムに合わせることもできるけれど」
「んーや、ありがてえけどエンリョしとくわ」
アドリブが好きなのさ。
尖った牙を見せて笑うと、ラッカはもうひとたび雲雀の翼を広げて空を滑り降りる。
一旦逃げ切り、軍団の上を取った彼だ。下への強襲は造作もない! 着地する形で水妖の首元へ鉤爪を立て一撃、蹴って離れがてらに二撃!
離れて落ち着いた先はイルダーナの複製。噴出する燐光に透けるのは、バーチャルペットの小鳥たちだ。ただの小鳥と侮るなかれ。彼らとて【増やせば軍団】となるのだ!
白い戦闘機に別れを告げ、今度は足場にもならないほどの小岩を蹴とばして……なんとなーくプライドが高そうなアイツだな……そいつ目掛けてぶつけてやる。
案の定容易く激昂した一頭が隊列から逸れ、そこから足並みが解けてゆく。尤もラッカの狙うところはそこではないのだが。
巨岩の裏手に逃げ込む猫雲雀。猛然と追いかけてきた水妖馬はしかし、その姿を見つけられない―――最初から岩の影にはいない!
「―――“ウソですよ”ってな!」
下段を走るイルダーナの支援を受け、ムーンサルトのだまし討ち! 彼が見せたのは群れなすバーチャルペットにて作り出した、よく出来た“ニセモノ”……ホログラフである! 脚を彩るアクセサリーが輝き、シャラシャラと音を鳴らす。
一度ならず二度も虚仮にされた水妖は怒り狂い、ラッカへと突撃! それをクルリと躱してみせて、高速で通りすがる一機へ飛び乗る! 向かうのは乱れ始めた隊列の方角だ!
『そいつを呪え、この空から叩き落せ!』そう叫ぶかのように嘶けば、水とは異なる恨みの大津波が戦場を覆う!
「ストップ!」
「させるかよ」
ふたりが動くのはほぼ同時だった! リアは緊急プログラムで全機を招集。ラッカを守る壁を作り、ラッカはリアをくるむ緩衝材となる形で小鳥の群れを急行させた直後!
視線がかち合ったあとにかわすのは笑顔とピースサイン。呪いの声が傷つけたのは皮肉にも、放った当人らであった。
群れの真正面まで、チューンアップされた宇宙バイクがラッカを運ぶ。
隊列はもはや乱れてはいたものの、自由に駆ける野生の馬を思わせるものがあった。
それは、アーカイブで見たのか。あるいは、頭の中にある流星の記憶か。
キレーだったんだろなあ、と思う。
されど、過去を連れていくかどうかを決めるのは現在を生きるもの。未来へ向かおうとするものだけの特権だ。
まして覚えのない怨嗟に追い縋られて「はいそうですね」と認めてやるつもりは毛頭ない。
……向かいの上空に、彗星を貸してくれた彼女が見える。ラッカが見事に引き付けた群れの、その真後ろだ。
少女の周囲には残りすべての機体が展開、それぞれの機首の砲塔に虹霓が渦巻いている。
時間を稼げた、ということだろうか。
後は任せた、やっちまえ。そんなメッセージと共に猫の手を突き出した。
―――猫の手だって貸しただろうしな、充分。
●
リアが考えていた「追い込む」という当初の予定からは大幅に逸れてしまったが、“アドリブ”は上手くいった。
総合的な労力を考えれば、隊列が滅茶苦茶になった水棲馬を狙い撃つ方が効率的だ。
本当にオートパイロットだったのに、よくひとりであれだけ攪乱したものだなあ……と、素直に感心してしまうほど、見事な引っ掻き回しよう。
『セブンカラーズ』の威嚇射撃と『グラビティアンカー』の捕縛により、“かたまり”を保たせる。
もはや“隊列”に戻ることは叶うまいが、かといって完全にバラけられても困るのだ。
射撃と捕縛攻撃を行いながら、イルダーナ全機……ではなく、52機の機動を並列処理。
オリジナルの周囲に展開。制宙高速戦闘機『イルダーナ』、砲撃システム起動。弾道計算完了。着弾予測地点、効果範囲、―――
作ってもらった隙は逃さない。駆ける“かたまり”の先には、立役者たる彼の姿がある。
猫の拳へのアンサーは花のような笑顔と、小さな手で作ったグーサイン。
応えてみせるさ。五色の砲塔がいくつも、いくつも、彼女のまわりを照らす。
青空ににじむ彩りは、正しく妖精郷の空。そしてそれは、
「―――稼働全機、連携! 行くよ、みんな!」
リアの号令ひとつで、本来の役割―――レーザーパルスバルカンの一斉掃射をなす!
蘇った過去を海へと還していくのは、虹の柱。
天と地とを縦につなぐような光景は、おとぎ話の一節だ。
―――水の砦のあそび唄に、続きが紡がれてゆく。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
納・正純
【静寂閑雅】
「――とまあ、これがこの辺りで伝わってるおとぎ話さ」
「空の玉座に今も座ってるのが王様か神様かは――見てからのお楽しみってヤツだな!」
全体方針
①敵の攻撃を乱反射させつつ位置取り
②敵の行動を順次止める
③最後の悪あがきを相殺
④動きを止めた敵の頭上にある巨岩を崩し、一気に撃破を狙う
俺の主な担当は③だ。二人がお膳立てしてくれて、UC発動も何度も見た。お前らの悪あがきを相殺するのは苦じゃないぜ。
手が空いた時はリボルバーで岩を崩しておこうか。
動きも封じた。攻撃も封じた。でだ、ちょっと上見てみなよ。
お前らがさっきまで意気揚々と放ちまくってたUCが、一体何を壊してたのか――拝んでからあの世に行きな。
鷲生・嵯泉
【静寂閑雅】(魔弾の:納 魔術師:ヴィクティム)
お伽噺ならではと云えど、愚かを絵に描いた様な話だな
まあ、今何が居座っているにせよ
確認するには先ず邪魔の排除が先決だろう
では②を受け持とう
戦闘知識と第六感での先読みにて攻撃を見切り躱しつつ
怪力籠めた踏み込みからの範囲攻撃でなぎ払い、岩を散らす
衝撃波を使い、魔術師の設置した障壁で反射させ
岩も使って攻撃すると同時に集め置くとしよう
近付く馬共は侵逮畏刻にて動きを封じて邪魔はさせん
金烏の炎は太陽の象徴でもある
水の眷属には良く効く事だろうよ
……御膳立ては整ったな――ならば此れで終いだ
獣を罠に嵌めるのは猟師が得意とする処
如何なものであるか、身を以って知るがいい
ヴィクティム・ウィンターミュート
【静寂閑雅】
へぇ、面白い話だな
何時の時代も、驕り高ぶった奴は碌なことをしねえってこったな…
さて、それじゃ各々方の準備は?
チル──ランを始める
担当①
セット、『Reflect』
反射障壁を展開、ニューロリンク完了
敵が何かしら飛び道具を撃とうもんなら、こいつで跳ね返してお返しできる
無論、こいつは味方の飛び道具も反射できる
反射を用いた変幻自在の軌道は、不意討ち食らうみてーに読めないぜ
んで、嵯泉と正純が頑張ってる間、岩を砕いたり──砕いた岩を飛ばして、反射させ続けて、中空に留めておく
どうせ敵も壊すだろうしな、岩の破片はよく集まるだろうよ
──止まったな
頭上の岩を砕け!ストックしておいた破片も一気に飛ばすぞ!
「―――とまあ、これがこの辺りで伝わってるおとぎ話さ」
銀河の要塞へ潜入し、地下の迷宮へと歩みを進める。
教団の悪巧みへ足を突っ込み、イカした奴らと遊ぶ。
納・正純(Insight・f01867)が知らぬ道理はない。
男が共連れへ語って聞かせたのは、アックス&ウィザーズに伝わる訓話だ。
詳細は地域により異なるが、“戦争を続けた結果、国が空へと飛ばされる”という大筋は変わらない。
『けんかをしてはいけないよ、お空へ飛ばされてしまうからね』
親が子へと、そう言い含めるための―――しかし強ち、ただの昔ばなしとは言いきれまい。
現に、彼らの眼前には在るのだ。
砕かれた山、裂かれた谷。その残骸と言われておかしくないほどの巨岩群。
東の国か西の国か―――かつて栄華を誇ったのだろう、白い石造りの王城。
へえ、と城を見上げる少年の姿がある。魔術師は魔術師でも、彼が扱うのは元素のそれではない。
「驕り高ぶった奴は碌なことをしねえってこったな」
いつだって、どの世界だって変わらない。
ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)としては胸のすくような話だった。
街の上で偉そうに踏ん反り返ってるメガコーポ。そのメインデータベースを吹っ飛ばしてやったら、そりゃ大騒ぎだろうさ。
「愚かを絵に描いた様な話だ」
彼なりの同意を述べる鷲生・嵯泉(烈志・f05845)、その瞳が見据えるのは真っ直ぐに、前方。
無人であるとは信じがたい陣形にて、荒ぶる大波の如く迫る水棲馬たちだ。
「中に何がいると思う?」
「さァてな。賭けるか、ヴィクティム?」
「……先ずは馬共の排除だろう」
ふたりの軽口、ひとりの制止。もはや様式美ですらある。
「んじゃ、やるとすっか。各々方、準備はいいか?」
返事は待たない。ヴィクティムは知っている。いつが万全か、今が万全だと。
Now, it's time to run.
―――さあ、仕事の時間だ。
【 > SET : 【Create Program『Reflect』】 】
地形データ獲得。近似する構築物の検索。照合。概念掌握。反射障壁を展開、ニューロリンク完了。
半径360メートル内の無機物はすべて―――それが現実世界のものであろうと、"Arsene"の支配下に置かれる。
ごく陳腐な言葉で言い表すなら、バリアだ。“飛び道具”という条件こそあれど、無機物を変換した上で構築される壁はただしく八重垣。
「嵯泉!」
「ああ」
ごく短いやり取り、聞き取ったのは当人らのみ。ヴィクティムの横を颶風めいて駆け抜ける嵯泉の手には愛刀『秋水』、柔らかい陽射しに抗うかの如く鋭く光る。
怨嗟に狂える水棲馬どもはその数を優に三十を越える。それをただ一人で押しとどめるなど、それこそ勇者伝説、寝物語、夢物語。言いようは幾らでもあろうが、信じる方が無理な話である。
確かに前線に立つのは彼一人―――しかし剣士の傍らには、魔術師がついているものだ。
岩々を蹴り加速、迷わず、止まることなく、巨岩のひとつへ。先頭を走る馬の蹄の音すら聞こえる距離まで踏み込み、横薙ぎの一閃! 岩が軋もうかと言うほどの力強さは烈風を生み、直接の刃を受けた一頭もろともに両脇の数頭が切り刻まれる!
後続の馬が怨恨と共に嘶く。それは同胞を殺された慟哭か。答えは否。汚濁の瞳に敵以外の何物が映ろうものか。
元は精霊、呪詛と化そうともその魔力、術式は強力である。
故に、撃ち落とされる。
この作戦の要、ヴィクティムの反射防壁。それは“あらゆる飛び道具”を跳ね返すものだ。魔導とて例外ではない。自らが放った怨嗟の声にて、前列は崩壊。
しかし残る中・後列の勢いは止まらない。頽れた同胞を跳び越え、屍の痕跡を踏み荒らして隻眼の男に再度怨嗟の悲鳴をあげ―――
―――炎が、灯る。
燃え盛るは符。現れ出でるは焔の烏。太陽の化身、金烏。嵯泉の得手は剣のみに非ず。先の騰蛇に続いて付き従う灼熱の鳥が、散らばる炎熱の羽根が、咆哮代わりの火炎が、水のあやかしから力を奪う!
「ハッハー! チル、ド派手なスチーマーだ!」
右腕のクロスボウから破砕特化のボルトを放ちざま、楽しげに哄笑するのはヴィクティム。
嵯泉もまた、居合の型より構え直した秋水から縦横無尽の衝撃波を撃ち出す。
じわじわと頭数を削られてゆく水棲馬の群れ、しかし退かない。ただ眼前の敵、猟兵達を……否、生きているものなら何でも構わないのだろう。
前脚を振り上げ、瀑布宛らに激しく嘶く一頭がいる。残る全ての水馬へ向ける突撃の号令にして、呪術の起点。
彼らを動かす原動力は忿怒と怨恨に他ならぬ。それは絶ち切ることも、撃ち抜くことも叶わない。
―――本当に?
「魔弾の」
眼帯の横顔から表情は伺えぬ。嵯泉は振り向かず、だが、確かにこの場にいる。
見えぬものすら“撃って”響かせる男―――納・正純が!
「あァ。ご指名ありがとうございます、ってな」
歯を見せ、もとより見せていた不敵な笑みを更に深める。牙持つ獣のような……異なるのは、金の双眸に宿る知性の輝きだ。
スコープ越しでは狭すぎる。データだけではもの足りぬ。この世の総てを知る最も効率的な手法。それは三十六ある世界を、自身の足で渡ることだ。
記憶消去銃―――【冠絶推理】。
必要なのはただ三つの、動かぬ証拠だ。
起点たる一頭の、額の一点をも捉える腕前。
幻想を破壊するという行為に耐えうる武器。
そして最後に、射抜くべきまぼろしの行使。
それを目に焼きつけることだ。
「挿入歌にしちゃ出来が悪いぜ」
ストップだ。
停止ボタンとなるのは三発の銃声。正純の銃弾が撃ち抜いたのは、水妖の頭ではない。その頭の中にある術そのもの。行使するための……こう呼ぶには怜悧を欠いているが、“智慧”と“目的”、“怨嗟”である。
戸惑い、止まる。正しく停止された映像データの如く、音も動きも。
装填数三発の愛銃を仕舞い、リボルバーに切り替える。追撃、ではない。銃口を向ける先は、天だ。
上を見ろと、促すような。
ヴィクティムのマップデータにマークしてあるポイントは、嵯泉と正純が連携して“足止め”した座標。天空城が正門の一点。丸みを帯びた水の壁の前。
頭上には嵐の前の積乱雲めいた巨岩が、その影を落としている。
「―――オーケー、今だ! 叩け!」
「任せな。嵯泉、」
「既に」
バラリ、と、巨岩が大きく崩れた。
輪切りの平たい岩が、形を保ったまま、さらに荒く刻まれる。
「―――斬った」
「こりゃ失礼」
嵯泉が放った居合の衝撃波。荒く分割された岩は漂うだけの魔力を失い、重力に従って落下してゆく。真下の水妖どもを、押し潰さんと。
落ち行く最中のいくつかを掠めていくのは正純の弾丸だ。熟練の職人が、宝石をナイフにしてしまうように。先端を切先めいて削られた岩石は、降り注ぐ杭となる。
そして。
―――ヴィクティムの防壁が、これまでに何を弾いたか。
Wizard
まじないのたった一回止めた程度で魔術師を名乗れるものか。
、、、、
反射障壁とは……言うまでもあるまいが、敢えて分解する―――あらゆる飛び道具を“反射”する“障壁”。“飛び道具”には無論、呪詛、弾丸、鎌鼬に炎。
……蹄や激流の攻撃に巻き込まれた岩石群。
ヴィクティムの“破砕特化のボルト”が粉砕した、粗い石礫。
嵯泉による“縦横無尽の斬撃”にて切り刻まれた、鋭い石片。
それは地へ散り行くことなく、ずっと蒼天のさなかにあった。いまもまだ、反射を続けながら速度を増し続けているのだ。
……反射、反射、反射、反射。弾道解析に加え、防壁の位置を細かく適切に変更し、その一点に集中させる。
【 > Activate. 】
天変地異が如く降り注ぎ、群れを押し潰す岩。天上からの射撃めいて撃ち出される杭。
トドメはこれまで重ねに重ねた、とっておきの弾幕!
留め、受け流し、耐え続けるだけのようでありながら―――すべてが最大火力のための伏線であったのだ!
嘶く音は呪いではなく混乱、当惑。それも岩と粉塵に巻き込まれ、砕かれ、落ちてゆく。
豪、と、風。
今だ舞い続けていた砂塵から、細かな欠片から、何もかも一切を払った先。
静寂と共にあるのは、招き入れるかのように形を変えた水の壁。
そして、その奥に佇む古城であった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『クラーケン』
|
POW : テンタクルアタック
【巨大な10本の手足】から【絡みつく触手】を放ち、【締め上げること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD : ブラックブラインド
レベル分の1秒で【辺り一帯を覆い尽くす黒い墨】を発射できる。
WIZ : マリーンパラサイト
【自身の身体に寄生する海洋生物の群れ】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
イラスト:せとたまき
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠トゥール・ビヨン」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●アックス&ウィザーズ、ある地方の慣用句
『イカの王様』 … 『欲張り』『けち』『見栄っ張り』等
●水底は天にありて
城を覆っていた水が、静かに解け始めた。
球体の頂点……城の尖塔から下方へ、底側に巻き取られるかたちでするすると縮んでゆく。見えない硝子玉の上を、透明な水が滑り落ちていくように見えたかもしれない。
丸みを帯びた壁が生き物の如く形を変える。このまま落下していくかのように思われた水流は天空城の底部へと集まり、広がって、先程までと全く異なる形状を成して、止まった。
空に浮く透き通った湖。湖の上に聳える、白石の城。
名も知れぬその城の内は、外観と同じく全く静かなものだ。無人となって久しいにも関わらず荒れた様子はなく、時間が止まったままのように整然としている。
エントランスから長く広がる階段。天井から下がるシャンデリア。果ては内装に刻まれた細かなレリーフのひとつひとつに至るまで、欠けはおろか、埃すら溜まっていない。
不自然だ、と、誰かが呟く。招くべき客もないくせに、内観を美しく保つ必要があるのだろうか?
警戒を怠らずに進む猟兵たちの傍らを、ふと何かが過る。誰かが咄嗟に捕まえたそれは、クラゲだった。
空を飛ぶ、クラゲ。
思わず顔を見合わせる猟兵たち。咄嗟に攻撃態勢へ移るものもいたが、また別の誰かがそれを制止した。クラゲから敵意は感じられない。どことなく疲れた様子で、逃げ出そうともしなかった。
よく見れば体中埃まみれ、細い触手の先には薄汚れた布巾らしきものが絡まっている。
……掃除婦、だろうか。確かにそのフォルムは、女中のキャップに見えなくもないが。
“疲れた様子の”海生生物は、奥へ進むにつれ増えていった。
彫刻の隙間を磨く小魚。絵画の修復を繰り返すタコ。薄汚れたクラゲとも何度かすれ違った。まるで海中を歩いているかのように、そこかしこに海の生き物がいる。もれなく疲れ切っていたが。
彼らの労働のおかげか、清潔さを保たれた城内に目立った損壊は見られない。探索は順調に進んでいく。
やがて猟兵達が辿り着いたのは、青と金で彩られた白亜の扉だ。構造的に考えればそこは、玉座の間である。来訪者が城主に謁見する際に用いられる―――威厳や権力を示すための部屋、とも言えよう。
重い音を立てながら、両開きの扉が開かれてゆく。向こう側に大きな窓でもあるのか、眩い光がほの暗い廊下へと差し込む。
―――そこは、水の中から見上げる空。あるいは、空を望む水の中だ。
様々な青の素材を巧みに用いた、明るく開けた大広間。
絨毯からシャンデリアにいたるまで、多種多様のブルーが埋め尽くす。
唯一の無色は、大きくとられた細工窓のみ。透かして見える向かい側には、猟兵達が踏破してきた雲海が広がっている。……窓の向こうすら、青い。
澄みきった彩りの中、唯一黒い影がある。それこそがこの城の主、海の王。
水妖の中でも隠れの無い、他世界にすらその名が伝わる大怪物―――クラーケン。巨大な烏賊の化生である。
立ち入ってきた猟兵達に向け、この城の中で初めての敵愾心を見せ……しかし、目のよいものは気づいただろう。
その巨体が、僅かばかりに後退したこと。
十本あるはずの脚のうち、数本が隠れていること。
玉座の更に後ろ。謁見の間の最奥に、とりわけ強く輝くもの……青色をした、財宝の山があること。
この憎悪にも似た敵愾心は、オブリビオンとしての性質のみではない。怪物としての本能。それも正しい。だが、より生々しいものを感じ取れるやもしれぬ。
人が持つような傲岸や虚栄心。そのための悪虐と酷薄。
背後の財を必死に隠す挙動が……そしてこの不自然に美しい城の様相こそが、何よりの証左である。
この城の所以は、誰の知るところでもない。国の名も王族の由来も、歴史も興亡も、もう遠い過去のことだ。
過去のこと。故に、猟兵達の前にいるものは世界の敵にほかならぬ。
―――天空のうちに中天あり。この水底にて、最後の戦いが始まる。
◆◆◆
◆戦況展開
天空城・謁見の間へ到達しました。
※海生生物にとって、城内は海中と同じ環境のようです。
◆敵について
『クラーケン』1体
積極的に猟兵へ攻撃を行う一方、
【十本ある脚のうち数本で、背後にある“財宝”を守っています】。
その特性を利用した戦術も有効でしょう。
※腕は入れ代わり立ち代わり、数もその時々により異なります。
◆簡易配置図
《財宝》
【エネミー】
【猟兵たち】
◆戦場について
・シャンデリアや彫像、柱、城っぽいものはなんでもあります。
・水やオブジェクトの利用を含めて【初期配置は自由です】。
◆◆◆
プレイング受付期間:11/8(金)8:31 ~ 11/10(日)13:00
◆◆◆
御剣・刀也
クラーケンか
伝説上の海洋生物でかいタコとかいろいろ言われてるが………
まぁいい。伝説上の相手とやれるんだ。力で来るなら、力で答えてやるのが礼儀だよな
巨大な10本の手足から触手を放って締め上げようとしてきたら、見切り、第六感、残像を駆使して避けつつ、避けられないものは武器受けで日本刀で斬り捨て、ダッシュで一気に距離を詰めて、自分の間合いにしたら、捨て身の一撃を打ち込んで斬り捨てる。
進路を妨害されても、日本刀で斬り捨ててダッシュで突っ込む
「タコが!お前ごときじゃ俺の相手にはならねぇよ。わかったらさっさと三枚おろしになりな!!」
●紅刃鮮鋭
物語を始める前に、彼について述べねばなるまい。
常に戦場の先にあり、勝利への道を文字通り“切り拓いていった”男。御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)。
彼が当代の継承者である天武古砕流とは、古来火縄銃に対抗すべく編み出された流派。即ち、“当時の未知”“最先端の暴力”に打ち勝つべくして創られていったものだ。
それは彼の祖先が種子島を恐れたがためか……振り返り問い質すことは出来ぬが、否であろう。強いて言うのなら、戦うより前に逃げ出すこと。機をも作らぬうちより、負けを認めること。それこそを恐れたのではないか。
故にその末裔たる刀也もまた、獅子吼と共に先陣を切るのだ―――相手が、伝説に名を連ねる大怪物であろうと!
繰り出される海王の触手は、その一本一本が強大な筋肉の塊である。直撃すれば致命傷を免れ得ぬそれを露ほども恐れず、寧ろ好機とばかりに突撃する。
常人ならばとうに死に、達人ならば近寄らぬ。生きて駆けるは武人のみ。
横薙ぎの剛腕をすり抜け、バランスを保ったまま肉薄。そんな、言ってしまえば“ただの人間”が、クラーケンの瞳にどう映ったか―――ひとつ言うまでもなく確かなのは、恐怖。
死角からもう一度繰り出される触手。それは先まで財宝を抑えつけていたものだ。強欲の化身がこの剣鬼を前に、怖気づいたのである。
……「そう来る」と読んでいたわけではない。戦場の全てを好機とするのが御剣・刀也という男。ただそれだけのこと。
捨て身の一撃となろうが、立ちはだかる全てを斬って捨てる。そうして幾つものいくさばを紅に染めてきたのだ。ならばこの城、この青い広間も同じく。
避けず、獅子吼を上段に構え、青い瞳で“その時”を待つ。
―――この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん!
怪腕の一本を断ち切る、唐竹割りの振り下ろし! 転がった支柱の如く地に落ちた触手を踏みつけ、跳び、更に斬りかからんとする彼は―――
「お前ごときじゃ、俺の相手にはならねえよ!」
―――伝説を作る幻想に向かって、嗤うのみ。
成功
🔵🔵🔴
雨宮・いつき
川は海へと流れ、海原はやがて雲を生み出し、雲は雨を降り注がせ、雨は再び川と成る
巡り巡って人々へ恵みをもたらす水を奪い、身に過ぎた虚栄の為に海の民達を酷使するだなんて…
全くもって迷惑千万!
水を司る神様に、きつい灸を据えて頂きます!
お呼びした九頭龍様に放って頂くのは神酒の霧
僕の【誘惑】の術も乗せたそれを【範囲攻撃】で烏賊が放つ生物達に浴びせ、
酔わせて判断力を奪って魅了します
烏賊を攻め立て、お宝を奪い、彼の者の注意を散漫にさせて下さい
そうした所で本命の、九頭龍様の水の刃です
天井を切り裂いて瓦礫に埋もれさせ、動きを封じて全力の攻撃です
金銀財宝には興味はありません
もっと大切なお宝を…返して貰いますよ!
●五行比和
『川は海へと流れ、海原はやがて雲を生み出し、雲は雨を降り注がせ、雨は再び川と成る』
“水の恵みを奪い”。“身に過ぎた虚栄を求め”。“民を虐げる”。
正しく暴君たるその振る舞いに、この場の誰より純粋な憤りを覚えていたのは―――年端もゆかぬ少年であった。
城主、クラーケンは心を痛める彼の目の前でもなお、続々と海の生き物を呼び集めてゆく。
―――水神の逆鱗に触れし者に、清き怒りを与え給え。
小さな唇が紡ぐのは、その涼やかな声で呼ばうのは、水を司る龍神。
「……参りませ、九頭龍大明神!」
絢爛たる神話の再現、絵巻物を広げたかの如き威容! 霞模様すら見えんばかりの【龍神絵巻開帳】! 雨宮・いつき(歌って踊れる御狐様・f04568)の小さな背を支えるかの如く、九頭龍が現れ出でる!
真白い神蛇が作り物の天を仰げば、馨しい香気が立ち込める。幼いながらに妖狐であるいつき本人の術式と合わさって、海の民は次々と動きを止め、ぼうっとした様子でその場に漂う。
神酒だ。魔の者を酔わせ、毒を抜き、呪いすら払う破魔の水。それをまともに浴びた彼らは次第に渦を巻き、百鬼夜行めいて主に反旗を翻す。
「まだ終わりませんっ!」
いつきは本来―――それこそ、静かに降る雨のような。木立の間を流れる清流のような、穏やかな少年である。それが龍神すら呼び出し、苛烈なまでに攻め立てるのは、ひとえに彼の王の傲慢さに由来する。
五行の一を奪い取るなど、自然の巡りを抑えつけるも同然。由緒正しき陰陽道の教えを是とする彼が看過する道理もない。
はたはたと羽織が揺らぐ。九頭龍と同じ色の羽織がふわりと広がって……空が引き裂かれる。謁見の間に形作られた青がばらばらと崩れ、クラーケンの上へ降り注ぐ!
九頭龍大明神の息吹が、虚栄の城を破壊しつつあるのだ。……必死に瓦礫を打ち払い、一方で財宝を掘り出そうとするばかりの姿には、何とも醜いものがあった。水流はその、隙だらけの身をも引き裂いてゆくというのに。
そんなものより、もっと大事な財宝があるはず。あったはずなのに。気づかないのだ。
故に、幼い彼が道理を突き付けてやらねばならない。かつてこの真下にて何よりの財であったそれを、取り立てにきたと。
「―――この土地にあるべき水の加護……返してもらいます!」
大成功
🔵🔵🔵
鳴宮・匡
◆同行:ロカジ/f04128
水の中でもないのに魚がいるのは確かに不思議だな
連れ帰ったら普通に死ぬんじゃない? 知らないけど
しかし10本も腕があるとさすがに面倒だな
兄さん、適当に切り落とせない?
懐に入るところまでは援護するからさ
銃撃で触手の先を弾いて兄さんを援護
こっちへ向く分には出来る限り回避に努めて
弾薬はあちらへの援護と攻撃に回すよ
……いい案?
そりゃ、普通に殺して奪うのが一番早いだろ
死体は権利を主張しないし、奪い返しにも来ないからな
幾らか風通しよくなったら
牽制を織り交ぜながらダメージを与えにいく
もしくは財宝を狙うように見せかけるのもいいか
勝手に当たりに来てくれそうだし
……やっぱり擬音多くない?
ロカジ・ミナイ
匡/f01612
やー!不思議な城だね!
このお魚たち連れて帰ったら僕の家も掃除してくれないかなぁ
無理?そう…
このでっかいイカを一夜干しにすりゃ
しばらくは酒の肴に困りそうもねぇ
それに見なよ、あの奥
お宝の匂いまでするじゃないか
弱点を突こう
妖刀を横一文字に構え、己の首の皮一、二枚に滑らせる
血を吸った先から雷電を帯びる妖刀…ああ、今日も綺麗だこと
斬り落とすなんざ造作もない事さ、任せときな
背中は預けたよ旦那
干涸らびちまえ、木偶の水生生物がお空でいきってんじゃねぇ
しかしなぁ、やっつける前にお宝を貰おうとすると
仰山ある足が邪魔くさいね
いい案ない?やっぱり?僕もそう思ってたとこよ!
牽制するならその隙にドーンとね
●酔生夢死
「へえ、三行半兼退職金で祝い酒ってこと。景気のいい話じゃあないの」
「その喩えはよくわかんないんだけど。肴が元雇用主本人でいいわけ?」
大わらわの戦場にあってこの二人、主に一人か、いややはり二人。至って自分の歩幅を崩さない。
ロカジ・ミナイ(薬処路橈・f04128)と鳴宮・匡(凪の海・f01612)。
吹き飛んできたおこぼれひとつ、深海色の金属を用い、精緻な紋章で鋳造されたコインが一枚。ぱしりと掴んで見分し、懐にしまう。
そりゃ一夜干しなんかがサイコーだけど、僕はイカ刺しでも構わないよ。虫ならほら、家出中みたいだし。
「そういう話だっけ?」
「でもま、折角景気がいいなら僕もガーッ!と欲しいところだね」
「どっちを?」
「そりゃ、お魚さんもお宝さんもよ」
匡が声だけで示す先には散々ッぱら奪われたり壊されたりした財宝が、しかしまだたっぷりと残っている。
原形を留めているものは勿論高価値であろう。鋼材としても物珍しい色だ。どの世界でも重宝がられそうだ。
差し当たっての大問題は、クラーケンが今なおそこに居座っていることだが。
「お魚さんを助けてあげりゃあ、僕んちもお掃除してくれそうじゃないの。あのとき助けて頂いたクラゲですってさ」
「外に出したら死ぬんじゃないか?」
現実は非情である。現実主義者も時として非情である。
「そっかあ……じゃあお宝くらいはね。バシーン!とさあ、一丁キメたいわけ」
「そういう時はまず―――」
程度の低い傭兵は、敵を殺し切る前から分け前の話で口論になる。そして七面鳥のように撃たれるか、もっと悪ければ撃ち合って死ぬ。
戦場で利益・不利益が発生したとき、それでも真っ先に解決すべきは眼前の脅威の排除だ。なぜか一定数、分からない馬鹿がいるのだが。ともあれ、
「―――大元をやったあと“その他も片付けながら”、混乱に乗じて獲るといい」
死体は権利を主張しないし、奪い返しにも来ない。
相手が何人であれ、持ってるヤツを全員殺して奪うのが一番に変わりはない。
「……ま、獲るにしろ盗るにしろ、まずあの足が邪魔だよな」
淡々とそう締め括って、斬れない? と、そこでロカジに顔を向ける。
対するロカジは彼の物騒な回答にも、怪腕を指しても、あっけらかんと笑う。
「造作もないね」
「そう。じゃ、やろうぜ。援護するよ」
「目隠しはドーン!とやっちゃっておくれ」
擬音ついでにすらりと刀を抜いて、首の皮に滑らせるロカジ。血を吸った傍から、どこか空恐ろしい美しさの抜き身が電光を帯びてゆく。
今日も綺麗だこと。ロカジの呟きだけが残り、後には匡ひとりのみ。傍目に見れば化かされたように見えるだろう。
“敵の目を盗む”……要はやはり化かし合いににおいて、ことこの二人は強烈に相性が良かった。
本当に視界を奪ったり、まぼろしの術を使っているわけではない。
精密機械並みの銃撃が、烏賊の脚を弾いているだけ。自分に向くそれもまた、撃って逸らして避けているだけ。クラーケンにとってみれば面白くない。最初追っていたものを見失い、邪魔立てした人間はまるで動きもせず、それなのに自分の腕が当たりも掠りもしないのだから。
苛立ったようにいくつか切れた触手を暴れさせる。ついでに墨を噴き出してやれば、あの鉛玉も届くまい―――
「……なぁんて思ったかい」
暗雲に、稲妻が走った。
煙幕の濃灰は、嵐を裡に秘める雲と同じ色だ。その向こうからいかずちが現れるのは必定、叢雲に身を隠した時点で霹靂は免れ得ぬ。紫電一閃、腕の一本が綺麗に斬り落とされる。
「木偶の水生生物が お空でいきってんじゃあねぇ」
―――乾涸びちまいな。
見映え良くした脚を踏みつけて跳躍、後ろを任せた相棒のために射線から退いてやる。そうして丁度空いたところへ降り注ぐ雨は鋼鉄の弾丸だ。海王の肉を抉り取り、追い詰めてゆく。
雷雲を挟んだあちらとこちらで、視線も交わされないまま偽物の雨と雷が入り混じる。
……いやでもさ、やっぱり擬音多くなかった?
とは、後に雨を担う男が語ったところであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
釈迦牟尼仏・万々斎
【水底】
先の戦いを共にした二人に声をかけよう。
貴殿らを手練と見込んでの提案だ…このまま行かないか。
イカだけに。
というわけで吾輩の役目はゲソの切断だ
万一の際は締め付けに強い吾輩が【かばう】つもりでティオレンシア嬢の近くを並走するが、速いなあの射手。
足の裏に弾性つけて速度あげていこう。
時が来るまでは回避に専念、エンジ君の合図で一足飛びに本体に接近。
値千金の数瞬御美事、後は任されよ!
該当ゲソの根本を狙い【UC】発動、床を蹴り即距離を取る。
さあ喝采…にはまだ早計。諸君、アンコールは可能かね!
我々で何本か落とせれば、他も動きやすくなるだろう。
ハハァ、その虚飾に塗れた醜い執着、刺し身にして喰ってやろう!
エンジ・カラカ
【水底】
アァ……イカだァ。
賢い君、賢い君、気持ち悪いねェ……。ネー。
おびき寄せを見守ってこーっそり追いかける追いかける。
コッチに気付かれないようにしておかないとなァ。
コレは引き続き支援に徹する。
トドメは二人任せ。
隙を見てイカの足止めダ。
賢い君の攻撃が全て当たれば万々歳。
当たらなくても二人にお任せ。
足止めをして時間を稼いでいるうちにトドメは任せた任せた。
属性攻撃は賢い君の毒。
君の糸を伝う毒はイカにも効く?効く?
足止めの最中に抗うならコッチも対抗するする。
狼の足は自慢の足。
イカの足にも負けない負けない。
数は負けてるケドなァ。
二人ともいけー。やれー。
ティオレンシア・シーディア
【水底】
クラーケンって、格としては確かに王様自称していいランクよねぇ。
…まぁ、見たとこそういい王様ってわけじゃなさそうだけど。
あたしの役目はタゲ取りと誘導。
あいつの「財宝」めがけて○投擲でグレネードをぽんぽんバラ撒きながら、〇ダッシュで「財宝」回り込む動きを見せるわぁ。
直掩の足で防がれても、気を引ければ問題なし。随分ご執心みたいだもの、無視なんてできないわよねぇ?
反撃は軌道を〇見切って回避して、合図に合わせて●射殺を○一斉発射。
カノ(炎)とティール(勝利の剣)刻んだ銃弾で焼きイカにしてやるわぁ。
刺身はやめたほうがいいんじゃない?寄生虫でもいたらお腹…
…ブラックタールって、お腹壊すのかしらぁ…?
●影走套路
影がある。
女だ。叩きつけられる烏賊の触手をすり抜け、時に足場とし、跳び退ってはフェイントを織り交ぜ、見事に翻弄してゆく。その手から更に小さな影が放たれたかと思うと、小規模ながら高威力の爆発を起こす―――
この世界で巻き起こるならば、火炎の魔法だと思うやもしれぬ。あるいは風か。どちらも違う。魔術ではなく兵器、グレネードである。
惜しみなく投げ込まれる爆弾が狙うのは、クラーケン本体ではない。彼、ないし彼女が抱える青い宝物。直撃したのはただの一回だ。だが“一回で宝物がダメになる”と理解した城主は、今や守りに徹するばかりであった。
「まあ、必死」
口でピンを引き抜き、新たなひとつを投擲する女―――ティオレンシア・シーディア(イエロー・パロット・f04145)は、内心呆れ返る。随分執心とは思っていたが、此処までとは。
煽られたとでも思ったか、ただの偶然か。グレネードを弾いた脚がそのままティオレンシアを狙って薙ぎ払いにかかるが、捕まらない。足場もなしに宙を踏み、青い柱に飛び移って、そこから再び揶揄う様に駆け出す。
“足場もなしに”……というのは、語弊がある。今そこに出来たばかり。影をひっそりと追う別の影の活躍を、省略するわけにはいくまい。
エンジ・カラカ(六月・f06959)の『賢い君』が放った糸。本当にか細いばかりのそれは、的確にティオレンシアのバックアップを担っている。
気づかれないようこっそりと、邪魔をしないようひっそりと。
赤い糸が絡まっていくのは城のシャンデリア、柱から、大胆にも玉座にまで! 青い財宝には毒の宝石を混ぜ込み、グレネードの破片に合わせて竜の鱗がはじけ飛ぶ。
裸の王様が仕立て屋の仕掛けに気づくのは存外に早かった。このままでは埒が明かぬと判断したのか、一旦宝物ごと身を隠そうとして―――何も吐き出せない。
【賢い君】が作り上げた不可視の装束、ユーベルコードを封じられたクラーケンに大きな隙ができる。一緒に手繰り寄せれば、その巨体が僅かに引きつるようですらあった。見事な仕事ぶりに反して、顔をしかめるエンジ。賢い君に同意を求める。
「気持ち悪いねェ……気持ち悪い。ネー」
コレはいらないから、あげる。
きりきりと音すらしそうな拘束が解ける、その一瞬が一斉攻撃の合図となる。
此度仕込んだルーンは『K』『T』。片や炎、片や軍神の剣。一度に【射殺】せしめんと六発ほぼ同時に叩き込む。射手は言わずとも知れよう。ティオレンシア・シーディアを於いて他にはいない。
“一斉攻撃”……とは、ひとりでは成り立たぬ。影の、影の、更に影。
射手の女が爆炎の裏に落とす闇から、人狼の青年がゆらゆらと作り出す暗さから更に、一直線に跳ねる黒色がある。そいつが、こう叫ぶ気がするのだ。
“拍手の準備はよろしいか!”
、、、
黒い鞠がぐわんとかたちを変えてゆく。鞠、走る山犬、大きく両手を広げる男―――釈迦牟尼仏・万々斎(ババンババンバンバン・f22971)。ルーンの銃弾を雨霰と受け、燃え盛るクラーケンの前に現れるとほぼ同時。
だしぬけに飛び出し、そして唐突に虚空へ現れるはギロチンの刃……『対人対妖討伐処刑具:断首台、壱型第十二機』、号は不明。詳細も杳として知れぬ。
一目見て分かるのはそれが、世界一有名な処刑道具だということ。
民も王もみな等しく【断頭】に処すための、最高効率の死の形だ。
狙う首のない相手は遣り甲斐に欠けるかといえば、そうでもない。
彼ら三人の目的はそもそもトドメではなく解体である。
勝利のルーンの上からダブルタップで差し込まれた炎。
途切れぬ糸、割れぬ宝石、無数の鱗から滲み続ける毒。
いずれもそのための下準備であり、完璧に整った今や横たえられた咎人も同義。
女の赤く光る瞳が。青年の金色をした双眸が。男のマスクのゆらめきが。
影どもがおのおのの瞳を、三日月めいて細め―――執行。表皮が焼け焦げ、爛れた触手がずばんと断たれる。
―――『貴殿らを手練と見込んでの提案だ……このまま行かないか』
イカだけに。ということになってしまったなあ。首をかしげると、黒い頭が少し波打つ。そんなつもりは本当に―――液体の身体にそんなものがあるとしたら毛の先程も―――なかったのだが、扉の先に居たのは烏賊の化生であったのだ。
激昂したクラーケンの、燃えたままの触手が滅茶苦茶に振り下ろされる。
うち一本がエンジの毛先を掠め、僅かばかり黒髪を焦がしたので―――にまりと細められていた目がゆるうく不機嫌そうになる。
「もう少しサッパリさせたいわよねぇ」
「吾輩タコはマリネ派である」
「コレはねー、肉。肉がいいなァ……アァ……イカは嫌だねェ……」
アレの足の数は未だ、狼の足よりも多い。だが……数で負けているなら切ってしまえばよいのだ。
そうすれば、数でも速さでも鋭さでも狼の勝ち。肉食獣同士、後押しするようにジャッカルの頭が高らかに問う。
「さあ諸君、アンコールは可能かね!」
影芝居の終わりは遠く、喝采にはまだ早い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ラッカ・ラーク
なんだってそんな大事なモンをキチンと鍵かけてしまっておかねんだろな。見えるトコに置いときたいのかね?オレにゃわからん気持ちだなぁ。
ま、好都合ってモンよ!欲張りさんめ。
向こうも数増やしてくるみてえだし、小鳥と一緒に妨害役やろうかね。
『踏みつけ』たり『2回攻撃』で蹴っ飛ばしたり、『野生の勘』で『見切り』躱してウロチョロして。とにかく『存在感』重点で目立って『おびき寄せ』て王様を『挑発』な!
無視しようってンならそのスキに『盗み攻撃』で財宝を狙ってやりゃコッチ向くだろ。
『時間稼ぎ』ができりゃお仲間も攻撃しやすいんじゃねえかな。
ホラ、アンタの好きな青色の"オタカラ"がココにいるぜ?
五条・巴
へえ、見栄っ張りのイカの王様かあ
手足が沢山あるけれど、謁見しに来た僕ら猟兵にその数で足りるかな?
王様、良く見て。
君に仕える周りは疲弊しているよ。
君のその強欲さのおかげで城は保たれたけれど、余力ある君独りで財宝が守りきれるといいね。
"薄雪の星"
風を纏わせ水流を作り、数多の銃弾は王様の邪魔な手足を打ち抜く
彼に当たらなくても後ろに抜けて財宝へゆけばいい
壊れ、乱れて、風により巻き上がる財宝を見たら王様はどうなっちゃうの?
ふは、王様自ら踊ってくれるかな
一緒に踊ろうか
君の命尽きるまで
美しい湖もお城も奪っていくよ。
●白星探訪
天井のなくなった大広間は、空の青と装飾の青とを明確に分けている。『境目のあちらとこちら、どちらがより良い青であるか』などという問いは無粋であろう。
水と共に風が奔る。水流が宝物を巻き上げ、薄水色の天高くへ海の色を混ぜる。五条・巴(見果てぬ夜の夢・f02927)の行動は単なる“銃撃”と呼ぶにはいささか優美に過ぎた。
クラーケンの触手を撃ち、裂いて、その後ろに隠された財宝にまで当てる。風の魔力で空へ吹き飛ばし、攪乱する。
と、事実だけを述べると非常にシンプルだ。
周囲の風景をリセットするような、見晴らしを広くしてやるような……改めて現実を示すような、風の吹いたあと。
従者の行き過ぎた献身で保たれていた城も、随分と見晴らしがよくなった。
無尽蔵と思われる紺碧の山だって、明らかにその総数を減らしている。
―――全部なくしちゃったら、王様はどうなっちゃうのかな。
穏やかに笑む巴の顔は優しげで、美しく―――見ようによっては、恐ろしくもある。
変わらぬ面差しの彼に対し、当の“王様”は恐慌状態にあったからだ。自分を通り越して、財宝だけが削れてゆく。その様を見せつけられるのが、死ぬより何より恐ろしいとでもいうように。
……空の青と、装飾の青と、ついでに今しがた中空まで吹き飛んできた宝物の青と。
肉球で王冠を一応は受け止めてみるものの「似合わねえからいいや」と捨ててしまうのがラッカ・ラーク(ニューロダイバー・f15266)である。
旅をするのなら、頭に載せるものはひとつきり。ムダに重たいアクセサリーも趣味じゃない。こうしたものを喜ぶ相手に心当たりもなし。彼の友人らはきっとその冒険譚をこそ聞きたがるのであって、当の宝物には興味を持つまい。
だから、風越しに巴からトスされた宝物をくすねるのも、ただの時間稼ぎだ。
拡張現実、実体を伴うホログラフ。展開された小鳥の一羽一羽が大泥棒となる。一瞬で編み出されたプログラムの鳥が、霧散するように四方八方好き勝手に飛んでいく。
可愛らしい見た目でも賊である。呼び出された海生生物―――今回は速いもの。イルカや魚が小鳥を追いかける。追いつかれては01の構築がほどけて落ちてゆくが、織り込み済みだ。
「悪いね、ダンスの相手はソイツらでもオレでもねえんだわ」
こういう場所でするような、ロマンチックな踊りは専門外だ。ひらりと手を振り、空から舞い降りて退場する。
―――あっちの色男のコト、忘れてねえ?
シンプルな作業の積み重ねに見えたか。弾丸が貫通しないのなら、それはそれで幾らでもやりようはあるのだ。
例えば“同じところに当て続ける”。小鳥を伴って自由に空を駆けるラッカに気を取られている間、巴が何もしていなかったはずがないのだ。
幾度も幾度も、小さな楔を的確に撃ち込まれてきたクラーケンの胴体が、爆ぜる。
水底のような、水槽のような。確かに美しい場所ではあったけれど、空を―――そこにある月こそを愛する彼には、些か物足りなかった。
“彼女”の瞳も、もっと近い。さっきよりもずっと高くまで上ってきた。月も星も、間近に望めるほど。
ああ。
宙を飛ぶ獣が、空の匂いに気づく―――夜が近く、月の香りがすると。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鷲生・嵯泉
【静寂閑雅】(魔弾の:納 魔術師:ヴィクティム)
矢張り首魁を片付ける迄は戻らん様だな
幾ら財を掻き集めた処で骸の海へは持ち込めんというのに御苦労な事だ
アレと比べるのは流石に魔弾のに悪かろう
③を請け負う
2人がコードを使用する邪魔もさせん
なぎ払いでの牽制を以って此方に注意を引いて置く
攻撃は戦闘知識で致命的な物のみ躱し、残りは戦力増強に使うとしよう
海産物が離反したなら混乱を助長させるか
……そら、もっと脚を送らねば全て持って行かれるぞ
だが此方を減らせば刃が脚を斬り飛ばす
どちらを優先するか、自由に選ぶがいい
――では仕上げだ
僅か1発の弾が全てを決し、総て魔術師の掌の上の出来事
そして此の刃がお前の存在を絶つ
ヴィクティム・ウィンターミュート
【静寂閑雅】
へぇ、欲張りで過去の栄光が捨てられない奴をそう呼ぶのかい
ハハッ、確かに正純は欲張りだが…
あのイカと違ってスマートだ
そうは思わないかい?嵯泉
俺は②の担当だ
この城の海洋生物どもの様子を見るに、どうやらあのイカに喜んで従ってるわけじゃなさそうだ
なら、従わなくてもよくなればどうなるかな?
セット、『Dirty Edit』
悪いね、そいつらはもう"協力しない"
自由になったんだよ
さて?もう辞めたいとは思わない?
この城でずっと同じ事をやり続けるなんて、虚しいだろ
だからさ、辞めちまえよ
そら、あのイカが必死こいて縋ってる宝があるだろ?
ありゃお前らの退職金だ
貰いに行きなよ、それくらいは許されるさ!
納・正純
【静寂閑雅】
「とまァ、この辺じゃああいう奴を『イカの王様』なんて言うのさ。欲張りの対処には自信がある。奴からお宝と配下を一気に奪っちまおう」
全体方針
①敵から『UCの使用法』を忘れさせる
②敵のUCの効果を書き換えて臣下たちを寝返らせ、『お宝』を狙うように指示し、敵の動揺を狙う
③動揺している間に接近し、敵を斬り刻む
俺の担当は①だ
敵のUC発動確認後にこちらもUCを発動、敵がUCを再発動することで、クラゲ達を再度支配下に置こうとするのを防ごう
見たとこ、王様と家臣たちの間に強い絆は無いらしい。寝返らせるなら、奴らを支配している『力』が無ければ良いと見た。
「ヴィクティム、嵯泉! ……いい仕事ぶりだったぜ」
●静寂閑雅
「―――とまァ、ああいう奴を『イカの王様』なんて言うのさ。この辺じゃあな」
「へェ。過去の栄光を捨てられない、忘れられないって奴か」
「幾ら財を掻き集めた処で骸の海へは持ち込めんというのに御苦労な事だ」
青年が二人。少年が一人。
納・正純(Insight・f01867)の知識はほぼ底なしである。変わりゆく世界の総てを知り得ることなど不可能であるから、“ほぼ”底なし。この城を支える湖のようなものだ。浮く水のいちばん下を、明確に底とは呼べまい。
彼の知識を指して“ほぼ”ならば、知識欲に対しては“完全な底なし”。
よってああした“欲張り”は同類、対処には自信がある。……といって憚らない。
任せなと鮫のような笑みを見せる彼に対して、冗談めかした笑みにて返すのは電脳魔術師の少年。ヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
「あのイカと違ってスマートだ。だろ? 嵯泉」
「較べる迄も無い」
そう振り返り気味に訊ねられれば、鷲生・嵯泉(烈志・f05845)がかぶりを振る。スマートを聡慧の意で捉えるのなら、こう思うのである。
片や天空城という閉じられた世界の君主。片や異世界を股に掛ける多様性の狩人。異国の地の伝承にも明るい正純とでは。
「流石に魔弾のに悪かろう」
「ハハッ! 違いない」
軽口の延長でニヤリと口角を上げるヴィクティム。猟兵としても工作員としても些か有能に過ぎる節があり、故に鉄火場でもこうしたアイスブレイクを忘れない。
「負ける気がしない」空気を作らせたなら天下一、右に出る者はいない。
「さて……じゃ、手筈通りに行くぜ。嵯泉、頼めるな?」
「委細承知した。またお前の引く絵図だな、魔弾の」
「おっと。こういうやり方は嫌いかい?」
「いいや」
短い否定のみであるが、嵯泉もまたこの作戦と……何より、取り合わせを好ましく感じているのだ。一見して正純とヴィクティムの遣り取りを窘めてばかりの彼に見えるが、二人の腕は信用に値すると知っている。
故に、ただの一人で剣を揮う。見えずともそこには矢襖がある。守りと攻めとを兼ね備えた、最高の盾が。それを可能にするものが。
―――わずかばかり、口許が緩んだやもしれぬ。
硝子だろうか、鉱石だろうか、それとももっと他の何かか。様々な破片を踏み砕き、黒い外套が群青の空間へと躍り出る。勝利への道を彩る火花めいて、青の光が足元で爆ぜる。
最早ほとんど残らぬ、石柱めいた触手を。その総てを『秋水』の居合いでもって片付け、もう片手にて八相の構えを取る。
これより後ろへは行かせぬ。並み居る配下のひとりとて、邪魔立てはさせぬと。
腕を削がれてしまったクラーケンが取ったのは、数も減った召し使いたちの召喚である。命ずればそれは怪腕のあった場所へと集まり、号令めいた奇怪な叫びと共に振り下ろされる―――ような形で、列をなして男に向かって突撃。
後方の二人とすれば、彼こそが盾である。だから支援も惜しまず、剣豪の護りを徹底していく。
まず動くのは正純―――といっても彼の行いはいつだって必要最低限、最高効率の一発勝負だ。
此度の相棒は、二発のみを込めた記憶消去銃。大妖怪にとっての“真理”を、終段へ導くもの。
的が大きいから? それもある。よく狙った先にあるのは、しぶとく残っていた怪腕。その先端を弾いて、攻撃の軌道を逸らす。
「俺からは忘却と終末をプレゼントしてやるよ。受け取りな」
何も、頭である必要はない。記憶から消してやるのなら。“いつもどうやって召し使いたちを呼び寄せたか”忘れさせてやるなら、寧ろ暴虐を働いてきたその腕こそが相応の代価であろう。
「良いぜ、ヴィクティム! やっちまいな!」
「そう焦んなよ、着手済みさ」
……何にって? 退職届を人数分用意してやるのさ。
【 > SET : 【Rewrite Code 『Dirty Edit』】 】
【 > Activate. 】
端役の十八番とも言えるこのコードは、ユーベルコードの内容を根本から覆してしまう。
いわば台本を丸ごと修正してやるのは、脚本家の仕事であるかのようだが。この間、たったの数瞬である。
“着手済み”と言った。嵯泉目掛けて捨て身の特攻をかけた群れが、寸前でぴたりと止まる。
『もう奴の言うことを聞かなくたっていい』。つまり、アドリブ舞台の要求だ。降りるも自由、踊るも自由。
……自由。それきっと、あの魚たちが生まれてこの方手にしたことのないものだ。踏みつけられてきたものの気持ちを、ヴィクティムはよく分かっている。
だから、気安く声を掛ける。
「さて? もう辞めたいとは思わない? お前達は自由だ。どこへ行くにも、何をするにも」
いつまでもアイツの言う事を聞いて、同じようなことばかりして、疲弊しきってまた朝を迎えることを。
「虚しいとは思わないかい? 辞めちまえよ。そりゃ定職がなくなるってのはまあきっと、不安だろうけどさ」
しばらく遊んで暮らせるだけのお宝が、そこにあるだろ?
魚たちがこわごわと後ろを見る。主……かつての主ではなく、その後ろ。ため込まれた財宝を見透かす。
触れることすら、通りがかることも許されなかったもの。
「―――知らないかもな。人間の世界には退職金って仕組みがあるのさ。今までご苦労様でした、ってヤツが」
貰いに行きなよ、それくらいは許されるって!
ヴィクティムの軽口は、繰り返しとなるが、その場の空気を変えてしまう。一部はオブリビオン、一部は古来の幻想種であろう魚たちにもその言葉は通じたらしく……
革命が、始まる。
海の生き物たちはこぞって宝を狙い、王は突然の反乱にあたふたと……無様に狼狽えるばかり。最終的に片手に数えられるほどしか残らぬ腕で、やめろと言わんばかりに暴力に訴えるのだが。
「見苦しいな」
嵯泉の一太刀にて、根本から絶たれる。もう止められるものはない。
あちらを立てればこちらが立たぬ。猟兵どもを殴りつければ腕を持って行かれる。次々と運び出される財を捨ておくわけにもいかぬ。
奪うならば一瞬で、根こそぎ。反撃もできないくらい、逆らおうなどと思わせぬほど、完膚なきまでに、叩きのめす。
配下から戦意を奪い、丸ごと味方につけ、更に財宝をちらつかせる。叛逆の教唆。懐柔、間接的な買収。実に悪辣な―――彼ららしい策だ。
閉じられた世界。虚栄の牙城は痛快な逆転劇にて、終演を迎えようとしていた。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
リア・ファル
SPD
この海も案内、始めようか
イカの王様には骸の海まで沈んでいってもらおうか
キミ、財宝を奪われないようにしているのか
この財宝は誰にも奪わせさせないと。欲深さ底なしだねえ。
財宝を演算解析(情報収集)してどんなモノか把握
じゃあサービスだ、もっと満たしてあげるよ
UC【我は満たす、ダグザの大釜】から似たような財宝をザックザック取り出す!
キミの腕がすべて財宝を抱えたら、攻めるも守るも出来ないと思うけど、どうするの?
(抱えてもらったまま、グラヴィティアンカーで縛り上げる)(ロープワーク、マヒ攻撃)
抱えたまま自滅しちゃうしかないね、おとぎ話に教訓はつきものなのさ
後は斬るなり撃つなり
エドガー・ブライトマン
城主はイカだったとはね。まあそんなこともあるか
外観だけでなく、なかなか立派に構えた城だね
でも、ウウン……ひとつ足りないものがあるみたいだ
おっと、申し遅れたね
私の名はエドガー。通りすがりの王子様さ!
ねえ、キミが一番大事にしているモノは何だい?
答えがなくとも、お察しなんだけど
“Jの勇躍”
その後ろに隠しているのは何?
せっかくここまで来たんだ、勿体ぶらずに見せてくれよ
ワザとイカ君の後ろに回り込もうとして気を引く
その隙に攻撃してくれる仲間がいるだろう
キミに足りないものを教えてあげる
仕える者は、主を想い、尽くしてくれる
財以上に大切な存在さ
キミにはそれに応える義務がある
主としての心構えが足りていないよ、キミ
●月鏡、空にて
“欲望”とは“商機”の別名だが、『Dag's@Cauldron』を売り込もうとは思えない相手だ。
今あるものを守るのに精いっぱい。あくどくため込んだ預金額を見てひとり満足する、けちなタイプのお金持ちと言える。
電脳の海で生まれた彼女は、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)という。
こういうときの揺さぶりとしてよく効くものを、リアは心得ていた。
拾えそうなものは宝石であったり、硬貨であったり、指輪であったり……はたまたもっと大きな財宝の断片であったり。
彼女の手の中に“サンプル”が飛びこんできたのなら、その数はたった一つで十分なのだ。
解析完了。未知の鉱石および金属、冶金技術の使用。要解析記録としてアーカイブへ保存。
類似する商品を検索、絞り込み、検索、絞り込み―――“サービスギフト”が届く。途中から千切れた腕で宝物取り返そうとする、いかにも哀れっぽいクラーケンの元へ。
「キミは魔法使いかい? それとも妖精?」
「故郷は妖精郷さ。ウィザードでもあるよ」
エドガー・ブライトマン(“運命”・f21503)の驚きも尤もだ。空間を埋めるように現れたのは、巨大な鏡であった。
どうにか言葉に尽くして言うのなら、“巨人のために誂えた姿見”といったところだろうか。
解析結果から導き出されたこれが、クラーケンが今一番“欲しているもの”。守っている財宝と同じか、それ以上の価値を持つ。
「やっと我が振りを直す気になったみたいだ」
「ああ、遅きに失するというものだね」
かつかつと迷いなく歩み寄る、白い外套の少年。きっと誰よりも場に即している出で立ちと振る舞いの、王子様。青い空間に白い装束と金の髪はよく映える。例えもう、全ての崩落が近かろうとも。
「やあ王様、ご機嫌いかがかな……と、申し遅れたね。私の名はエドガー!」
通りすがりの王子様さ! 胸に手を当て、正しい姿勢の拝謁礼さえしてみせる彼だ。明らかに困惑した様相の“王様”は、巨大な鏡を背に守るようにエドガーと相対する。
……一番の宝物は何か。そう訊こうと思っていた。
その財を隠すのなら、後ろを取ってやろうと考えていた。
しかしそれは酷と言うもの。王の一番の財産“だったもの”は―――奪われつくした後だ。
妖精より新しく与えられたものだって、もう役に立つことはないだろう。
だから彼は正々堂々と王に謁見し、そして、高貴な血に連なるものとしての警句を告げてやる。
「仕える者は、主を想い、尽くしてくれる。……そのハズだったのに、キミは守護という責務を放棄した」
あまつさえ財を独り占めし、臣下を労ろうともしなかった。
だからもう誰も残らない。何もかも失おうとしているのだ。
……エドガーは、“彼”の勇躍を知っている。その振る舞いも、果敢さも。
おとぎ話に伝わる王子さまはいつだって強く、賢く、優しさと勇気を持っていて―――最後には、悪に勝つのだ。
足取り軽く鮮やかに駆け、抵抗の術さえ失くした王へ剣を向ける。……否、悪あがきだ。黒い墨を放てば白い装束が闇に紛れる。年若い王子の姿が見えなくなれば、滅茶苦茶に剛腕を振り回す。
ほとんどは根元からなくなっていたが、途中から千切れているものなら当たるやもしれぬと。
なるほど確かに、黒い闇から飛び出したエドガーは打撃を負って吹き飛ばされる。骨のひとつ、ふたつ、折れたか。
「ねえキミ、ボクのコトを忘れてるよ」
もうひとつ定番。王子様には、介添え人がいるものである。魔法使いや、妖精といった。
吹き飛ばされ、痛々しく転がったエドガーの姿がホログラフとなって消える……リアの手による電子迷彩だ! 残るのは彼の纏う白いマント、それひとつ。それだけを起点として精巧なデコイを作り上げたのである!
墨に紛れたグラヴィティ・アンカーで愚王を縛り上げる様子は、それこそまるで魔法のよう。
―――キミに足りないものが分かったかい? 結構!
“ほんもの”の王子はその相棒の如き速さ、疾風を思わせる剣戟にて闇を裂き、刺突剣を突き立てる! 悪しき王を絶つ、最後の一閃を!
●水底は森にありて
……しばらく、雨が続いていた。
近くに住まう人々にとっては季節外れだが、不思議なことにある一帯にしか降らなかった。
あの、まっしろな窪地の周りだ。
森の中にあってそこだけが凹み、美しく白い岩肌がむき出しの。
「かつて湖があった」なんておとぎ話があるが、誰も信じない。
しとどに降り続ける雨は、やがて白い器を満たすだろう。
次のおとぎ話になるのは、遥か天の上を自由に飛ぶ不思議な魚たち。
―――そして、月と星を映す湖を取り返した冒険者たちの活劇譚だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵