銀河大航海時代~星を見つめるモノ
●艦隊全滅――恒星は生物だった
『敵哨戒艦隊の追撃なし』
銀河帝国攻略戦の終結から7か月、人類の生存圏を脅かすオブリビオンとの戦いは一応の決着を迎えた。しかし未だに銀河帝国の残党はその暗躍を続けている。
『艦長、前方に高エネルギー反応。何だ……星が隠れていたのか、いや』
それらを掃討、駆逐すべく、かつて反乱軍と呼ばれた勇士達は今日も艦隊を率いて、人類の未踏宙域に差し掛かる外縁部を航行していた。帝国の残党を掃討し、後は遠回りに哨戒しつつ戻るだけの筈であった。
『ピケット艦サオトメより報告! あれは星に非ず! 繰り返す、あれは星に非ず!』
先駆けて事態の確認に向かったピケット艦の報告は酷く奇妙なものだった。進路上に突然、謎の光源が出現したのだという。事態を確かめるべく更に駆逐艦三隻を率いて進んだ重巡洋艦カネダ。しかし続く報告はもたらされなかった。
『通信、途絶』
ピケット艦の反応は無くなり、そして光源がその正体を現す。否、光源などではない――居住型移民船すら遥かに超える巨体、噂に聞く怪物、銀河帝国すら退けた埒外の脅威。
『あれが話にあった……』
クェーサービースト――古代の文献にあった星に等しき獣は、無言でその威容を見せつける。水晶体の頭部がチカチカと光を放ち、その下部より無数の触手が大小様々、うねうねと蠢いていた。
『総員甲種配置! 止むを得ん。駆逐艦シキシマは直ちに退避!』
警報が鳴る。機関は唸りを上げて艦体を揺らし、役目を終えていた鋼鉄の牙に次々と火が点いて――本日二度目の戦いだ。そして恐らく、生きては帰れまい。
『退避ですって、馬鹿な。後方にはまだ帝国の艦隊が残っているのですよ』
シキシマの艦長よりカネダの艦長へ通信が入る。幾ら掃討したとはいえ、帝国残党艦隊はそれなりの数が残っている。単艦で戻るには余りにも危険、しかしワープドライブのエネルギーを溜めていれば、その間に怪物に襲われかねない。
『だから、信じるしかあるまい』
『――彼らを、ですか』
彼ら――猟兵ならば、あるいは。この危機に駆けつけてくれる。それは余りにも儚い望み。だがそれ以外、この危機を覆す手段は到底、思いつかない。
『そうだ……艦隊総員、これより我々は未知の敵性体と交戦状態に入る!』
全艦で退避すればいい。勿論、それも選択肢にあった。だが自分達の航路を辿り、あの怪物が侵入してくるとも限らない。それだけは決して、看過する事は出来なかった。
『あらゆるデータを収集し、シキシマへ託せ!』
重巡洋艦カネダの艦長が吼える。続けて各艦の砲撃が始まった。宇宙に咲いた爆光の花が闇を彩って――そして一隻の駆逐艦がその場を後にする。
『人類を舐めるなよ、化け物め』
退いたシキシマの光跡を確認し、艦長は漆黒に佇む不気味な発光体を睨んだ。
●其れは普く宇宙の支配者か
「緊急事態です。手短に用件を伝えます」
ユーノ・ディエール(アレキサンドライト・f06261)がグリモアベースに集った猟兵達へ声をかける。その表情は険しく、尋常ならざる事態が起こっているであろう事は容易に想像が出来た。
「銀河帝国残党を掃討していた友軍の艦隊が、未知の敵性体の攻撃を受け全滅しました」
未知の敵性体、最近スペースシップワールドで話題になっている例の怪物か? と誰かが尋ねる。新たな母星を開拓する為、大勢の仲間達が力を尽くしているのは周知の事実。しかしそれを阻むように現れた怪物についても、猟兵達の間で話題となっていた。
「ええ……その『クェーサービースト』の討伐が今回の最終目的です」
クェーサービースト、かの銀河帝国すらそれを触れ得ざるモノと認定し、銀河の外縁への進出を諦めさせたという曰くつきの怪物だ。既にいくつかの撃退報告は上がっているが、そのどれもが苛烈な戦場を端的に表していた。
「その前に、全滅した艦隊の生き残りの救助を行います」
合わせて救助だと? そんな危険な相手の前に救助とは、いったい何が起こっているのだと質問が続く。
「その宙域で友軍と帝国軍残党の戦闘がありました。掃討戦です、大方追い払ったところで、本来は帰投する所に……クェーサービーストが現れました」
既に往時の勢いは無くても帝国艦隊、油断出来る相手ではないし放っておく訳にもいかない。そして安全に新航路を開拓する為、日夜残党狩りは行われているのだ。
「友軍の生き残りはその駆逐艦一隻、このままだと進路上で追い払った残党艦隊と接触する可能性が極めて高いです」
そうなれば最後の一隻も宇宙の藻屑と散ってしまう。あの激戦を潜り抜けた仲間をここで失う訳にはいかない――世界は未だ復興の途上なのだから。
「事態は急を要します。その駆逐艦の周辺へ緊急転移し迎撃を開始、迅速に戦闘を終わらせなければなりません」
猟兵の支援には『42号』という古い戦艦が同道してくれるとの事である。かつて猟兵達の手で大規模な改装が行われた艦だ。単艦でも己の身を守る事くらいは出来るだろうし、場合によっては援護も期待出来る。しかしどうして、その駆逐艦をそこまでして救出しなければならないのだ? と再び質問が。
「その駆逐艦はクェーサービーストとの戦闘データを保持しています。しかしワープドライブにエネルギーを溜める時間は無く、超空間通信も不調との事……急ぎ救助しなければなりません」
駆逐艦の名はシキシマ、解放軍艦艇の中では標準的な艦艇だが、先の掃討戦で若干の不調をきたしているらしい。しかしシキシマが保持しているデータ……クェーサービーストに新航路の情報は、是が非でも手に入れなければならないものだった。
「その後に救助した駆逐艦の情報を基に、未踏査宙域への航行を開始します」
そしてその先には奴が――怪物が控えているという事か。口には出さなくとも強大な敵との相対に、猟兵達は心を震わせる。
「クェーサービーストの排除が叶わなければ、私達の生存圏を脅かす敵を放置する事になり、更には私達の悲願、新たな母星の開拓も進められません。後に続く仲間達の為にも新たな航路の確保は非常に重要です」
恐るべき敵との邂逅に声色を震わせて、ユーノは淡々と続ける。ここを切り抜けられなければ、外宇宙への未来は無いのだから。絶対に負ける訳にはいかない。
「皆さん、どうか力をお貸しください。よろしくお願いします」
煌く金髪を揺らしてぺこりとお辞儀するユーノ。
そしてグリモアが青白く輝いて、戦場への路が開かれた。
ブラツ
ブラツです。
今回の敵は強大です。ですが、
その先にこそ未来があります。
●作戦目的
第1章は敵残存艦隊の殲滅です。特に指定が無ければ救助対象の駆逐艦周辺に転移し、そのまま敵艦隊との戦闘に入ります。敵艦隊は銀河帝国の寄せ集め残存艦隊です。搭乗員は全てドロイドで意思疎通は出来ません。友軍艦『42号』は丁度駆逐艦と敵艦隊を挟み込む反対の位置にいます。こちらから出撃し他の猟兵との挟撃も可能ですが、多少距離がある為、足が速い方や長距離砲戦向きでしょう。
第2章は未踏宙域の航路開拓です。フラグメントに従い、あるいは思いついた案やユーベルコードを駆使して、駆逐艦から齎された情報を基に外宇宙へ至る為の新しい航路を探して下さい。
第3章は敵クェーサービーストの殲滅です。詳細は幕間でお伝えします。
以上になります。
第1章は幕間なしで進行しますので、いつでもプレイングを頂きます。
第2章以降は恐れ入りますが、幕間提出後にプレイングをお願いします。
アドリブや連携がOKな方は文頭に●とご記載下さい。
単独描写を希望の方は文頭に△とご記載下さい。
同時描写希望時は何がしかの識別子の記載をお願いします。
それでは、よろしくお願い致します。
第1章 集団戦
『銀河帝国哨戒艦隊』
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POW : 一斉発射(対艦ミサイル)
【火器管制レーダー照射】が命中した対象に対し、高威力高命中の【対艦用の反物質ミサイル(一斉発射)】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 一斉発射(対艦ビーム砲)
【対艦用の加粒子ビーム砲(一斉発射)】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 一斉発射(電磁投射砲)
【複数の艦船に搭載された、電磁投射砲の砲身】を向けた対象に、【砲身から超高速で発射された高速徹甲弾】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:Moi
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
『レーダーに感、敵艦隊出現。前方広域3、4……いえ、まだ続きます』
駆逐艦シキシマがクェーサービーストの攻撃圏内を離脱した直後、それを待ち構えていたかの様に帝国前哨艦隊が出現した。その数は徐々に増えていき、正面からの突破は容易では無くなった。
『先の戦闘は囮か、追い撃ちが本命とはな』
この先にいるクェーサービーストに恐れをなして、引き返してきた所を追い剥ぎの様に狙い澄まして叩き潰すのが奴らのやり口だったのだろう。
『距離3000、会敵。攻撃来ます』
『操舵、ギリギリまで引き付けて躱せ! 包囲される前に突破を』
正面モニタには殺到する砲火の雨が――こんな駆逐艦では直撃すれば、即座に宇宙の藻屑と化すだろう。
『駄目です、両翼に新たな敵艦隊が出現。これ程の数が一体どこに……』
『重力震反応止まりません! 駄目です、このままでは』
更に出現する敵艦隊に観測手の悲鳴の様な報告が合わさって、ブリッジは正に地獄の様相。このままでは手に入れた情報も無駄になってしまう。それだけは何としても防ぎたい――着弾まで五秒を切る。死を覚悟したその時だった。
リリィ・ドラグヴァンディル
▶︎任務目標
目標、敵艦隊撃滅…任務了解…敵艦隊を捕捉…X101ドラグヴァンディル、出撃します。
▶︎使用UCと戦法
UC【DAT-X101《ドラグヴァンディル》出撃】により、私の器物である機体ドラグヴァンディルに搭乗し【攻撃力】を強化。
「全武装フルオープン、砲撃戦開始」
バリアフィールド【オーラ防御】を展開。
肩部レールガン、右腕部ビームキャノン、左腕部ビームガトリングガン、腰部6連ミサイルを連携精密狙撃機能【援護射撃・誘導弾・スナイパー】にてロックオン、全武装フルバースト【一斉射撃】で敵艦隊を【なぎ払い】ます。
「ターゲットマルチロック…目標を殲滅します」
▶︎アドリブOK
●紅百合
放たれた砲火はシキシマへ届かなかった。
「目標、敵艦隊撃滅……任務了解」
赤い装甲がシキシマの正面でバリアフィールドを最大展張、着弾寸前で全ての猛攻を受け流し、辛くも窮地を出したのだ。
「敵艦隊を捕捉……X101ドラグヴァンディル、出撃します」
フィールドが防いだ爆光を浴びて、黒い影が差す人型の装甲機動兵器――リリィ・ドラグヴァンディル(紅百合・f15918)の雄々しき姿が、ブリッジの前に立ちはだかる。通信と同時にスラスターを点火、続く第二射を防がんと敵艦隊正面に進撃した。
「全武装フルオープン、砲撃戦開始」
オールウェポン、セーフティアンロック。ヤドリガミたる己自身である機動兵器――DAT-X101ドラグヴァンディルは脳裏に過る種々の武装の軛を解き放ち、眼前の艦隊へ鈍く輝く砲口を向ける。肩部レールガン、右腕部ビームキャノン、左腕部ビームガトリングガン、腰部6連ミサイル――正面より迫るミサイルの雨を撃ち払い、背負った大口径レールガンが正負の金属レールの隙間から淡く煌く粒子を漏らした。
「目標正面艦隊、ターゲット補足――」
バリアを展開しながら砲火を遮り、間隙を抜いた敵ミサイルを撃ち落とし、最大戦果を齎す効力射準備を終え、逆制動を掛けながら全ての兵装が牙を剥いた。瞬間、ドラグヴァンディルはまるで開いた花弁の様に、全身の武装を一斉に点火する。
「マルチロック、目標を殲滅します」
放たれた牙は爆光を咲かせながら、敵艦隊中心目掛けて殺到した。ビームキャノンが砲塔を穿ち、レールガンがブリッジを直撃、ミサイルの雨が機関部を蹂躙し、先陣を務めた敵巡洋艦を宇宙の海の藻屑と変える。
その爆発は迂闊に密集陣形を取っていた哨戒艦隊前衛を巻き込んで、一つ、二つとその輪を広げていった。
「第一波終息、バリア解除。こちらドラグヴァンディル。シキシマは無事でしょうか?」
『こちらシキシマ、被害なし。援護に感謝する。しかし大丈夫か……敵はまだ』
取り敢えずの無事に安堵したシキシマ艦長がリリィからの通信に返答する。辛くも最初の猛攻は防いだとはいえ、敵艦隊は未だ健在。しかもその数を徐々に増やしていると来た。
「……安心して下さい。我々も、これからです」
通信終わり。続けてドラグヴァンディルのビームソードを抜刀。艦隊中心を突如来襲した猟兵に潰されて、混乱しているであろう今が好機――リリィは口元を歪ませて、マシンのスラスターを最大点火、前衛艦隊へ向けて飛翔した。
成功
🔵🔵🔴
シーザー・ゴールドマン
●【POW】
クェーサービーストと戦う前の肩慣らしという訳だね。
『ウルクの黎明』を発動。オド(オーラ防御)を活性化して戦闘態勢へ。
超高速機動で敵艦ブリッジに肉薄。(先制攻撃×空中戦)
大型魔力貫通弾で破壊する。
(属性攻撃:純エネルギー×串刺し×範囲攻撃×全力魔法)
一撃必殺の後に、離脱して次の敵艦に向かう。
敵の攻撃は直感で見切って回避(第六感×見切り)
響・夜姫
●
ひゃっはー。久しぶりのシリアスー。
と、ペンギンさんが言ってる。
……とりあえず。シキシマと42号以外の、目についた敵艦を潰せば、おっけー。
両艦の位置を確認してフルブラスト。
「ふぁいやー」
【範囲攻撃/2回攻撃/誘導弾/一斉発射/制圧射撃】の全方位攻撃な嵐の砲火。
「よるひー、目標を殲滅する。乱れ撃つ、ぜー」
時々集中砲撃してずどーん。
ぴきーんしたり種が割れたり赤く光ったりして主人公機が敵艦隊相手に無双する感じのあれ。そんなイメージ。
防御はいつも通り【オーラ防御/武器受け】。
味方艦が近いなら【拠点防御】。
【援護射撃】も忘れない。
※真面目にトリガーハッピーな火力脳筋する。ほんとに。
ペンギンは置いてきた。
リリィエル・ロックウェル
●
宇宙艦隊なのです。
宇宙だから真下からの攻撃もできちゃうのです。
そこで忍び足と目立たないを駆使して艦隊の真下に移動するのです。
接近で来たりその前に攻撃されたらちょっと疲れますけどレモンスパークで突撃しながら攻撃するのです。
電気が徹甲弾も防いでくれるのです。
●魔王と妖精
『あれが……猟兵か……』
突如現れた嵐の様な反撃に敵艦隊の猛攻を辛うじて防いだシキシマ。しかし敵の攻撃は未だ止む気配は見せない。
『……レーダーに感! 本艦下方――一つ、二つ! まだ増えます!』
災厄は押しとどまらず、不意に現れた反応は死角よりシキシマを新たに狙う。しかし。
『――! 来ました、これは!』
現れた反応は敵艦隊だけではない。そう、戦いはこれからだ。
「……とりあえず。シキシマと42号以外の、目についた敵艦を潰せば、おっけー」
宙に浮かぶ西洋人形の様な姿は一見戦場とは不釣り合い。その周囲を墓標の様な十字架が群れを成す様は更に異様さを醸し出していた。まるで死神の様に。
「……全兵装リンク完了、照準セット。さあ、お前の罪を』
十字架の先端にエネルギーの粒子が集まる。さながらその光景は審判を下す神の雷。
「……数えろ。ふぁいやー」
閃光が放たれた。その数およそ、96門。地獄めいた漆黒の空間を彩った光は、その牙を解き放つ。黒を塗りつぶした極彩色の奔流はそのまま、シキシマ下方に集結しつつあった敵艦隊の陣形を乱し、突出した艦艇を順に光の為へと変えていった。
「こんな数、いまさら数え切れるかー」
可憐な死神は――響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)はそのまま、十字架を引き連れて崩れた敵陣へと加速する。集結も強襲もさせない。ここから先は猟兵達のステージだ。
奇襲の目論見は脆くも崩れ去り、バラバラになった艦隊を立て直さんと、シキシマ下方に集結した艦隊がその場からあえて散開する。密集していては第二射を食らいかねない。しかしその判断こそ奇襲失敗の証明。慌てて陣を整え直そうにも、時既に遅いのだ。
「途中までは見事な奇襲だったよ、途中まではね」
しかし――真紅の影が呟く。いつの間にか艦隊中心に現れた美丈夫は、全身に赤黒く輝くオドを活性化させて、目にも止まらに速さで手近な艦のブリッジに肉薄した。
「――こうも近づかれては、まるでどちらが奇襲を仕掛けているのだか」
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は顔色一つ変えずに、散発的に放たれる対空砲火の隙間を抜けてその手を頭上へ翳した。
「まあ、クェーサービーストと戦う前の肩慣らしという訳だね」
ここらで一つ、消えて貰おう。翳した手から放たれる赤黒い稲妻が、ブリッジを直撃――僅かな間に正面の艦隊は儚く散った。そして。
「やたらに撃ってこない事は知恵ある証明か。あるいは」
こういう事態を想定していなかったかな? 敵艦隊は明らかに対艦用に偏った兵装を装備している。であれば肉薄し、順に片付けるなど造作もない――シーザーは再び両の手にエネルギーを溜めながら、破れかぶれで放たれたミサイルを蹴り飛ばし、あるいは信管を潰して無力化する。そして次の得物に狙いを定め雷を放つ。最早真紅の行軍を止められるものは、ここには無い。
「宇宙艦隊なのです」
声が聞こえた。しかしレーダーに感は無い。艦隊正面、捉えていたシキシマの近くから突如猛攻を受けて、散開した艦隊は謎の赤いエネルギーに内側から食い破られている。そこから辛くも逃れた外側の艦艇も、決して安全ではなかった。
「宇宙だから真下からの攻撃もできちゃうのです」
また声が聞こえた。哨戒艦隊だ――索敵能力はそれなりにある。だが一体、宇宙のどこから声が聞こえているというのだ。
突如、高エネルギー反応が船体下部に出現する。新たな敵の攻撃か――即座に迎撃のレールガンを乱射するものの、出現したエネルギー体に直撃弾は当たらない。
「電気が徹甲弾も防いでくれるのです」
また声が――そんな馬鹿な、制御ドロイドは自問自答する。あれは本当に敵なのか、急転する状況に疲弊して幻でも見ているのか、それとも。
「なまじ頭だけ生身だから、そんな事も分からないのです」
それでは。稲妻が艦底部を貫いて――広がった誘爆が艦そのものを沈めに掛かった。ああ、そうか。これが妖精か。その歌声を聴けば船は沈められる、などと。
「ちょっと疲れますけど、この位造作もない事、なのです」
妖精の名はリリィエル・ロックウェル(クレヨンの勇者・f01438)、船乗りを惑わす魔女ではない、彼女は勇気ある者だ。
「さて、大方潰した所だろうが」
じろりとシーザーが敵艦隊を睥睨する。奇襲にしくじり、離散した艦隊は各個撃破で食い破られて鋒鋩の体をさらしていた。それでもまだ、戦闘能力を維持する艦艇が徐々に寄り集まって、新たな布陣を――猟兵に対して、残る牙を結集させつつあった。
「こちらに狙いを向けられる分には、一向にかまわないのです」
リリィエルがその傍らをぱたぱたと飛び回り、向けられた敵意に反抗の意を示す。
「うん。シキシマが無事ならば当面問題は無いだろうね。それに」
次はこちらが奇襲の番だ。口元を歪ませたシーザーは、飛来した真っ赤な光を流し見て、それに続く様に残存艦隊へ足を向けた。
「敵残存艦隊確認、よるひー、目標を殲滅する」
夜姫は手にしたマガツとダルク、それに展開した96門のサバーニャで嵐の様に敵艦隊へ迫った。迎撃の火線を砲火で撃ち払い、残骸を排除しながら艦隊の中央目指して突撃する。残り数隻までその数を減らした艦隊は、如何に統制された射撃だろうと、サバーニャの猛攻を防ぎきる事は出来ない。そして。
「目標到達。さあ、乱れ撃つ、ぜー」
その中心へ降り立った可憐な死神は、全身を包む様に纏わせた、墓標代わりの十字架から一斉に砲火を放つ。全周砲撃――最早逃げる事すら敵わない。その砲火は夜姫を中心に、陣を組んだ艦隊中央からミラーボールの様に光を放って、それに触れる全てを焼き払ったのだ。
「チャンスなのです。ここから先へは、進ませないのです」
更に、再び稲妻を纏ったリリィエルが縦横無尽に動き回り、足並みの乱れた艦隊を次から次へと貫いていく。
「妖精の恐ろしさを味わうといいのです」
ただしその妖精の悪戯は故障などではない、もたらすのは破壊だ。妖精の進軍は止まらない、彼らが息の根を止める迄。
「では、ここはお開きとしようか」
奇襲の為に集結した敵艦隊は、それすら覆す猟兵の超常と奇襲によって、その連携をずたずたに引き裂かれた。
「何、また負けるだけだ。得意だろう?」
稲妻が、扇状に放射されたエネルギーの奔流が健在の敵艦を次々と貫いて――接近されれば高火力の武装も自由には使えない。その時点で、奇襲艦隊は猟兵に敗れていたのだ。
「皇帝陛下によろしく伝えるといい。我々はここを超えると」
そして爆光が全てを飲み込んだ。シキシマ奇襲艦隊はその役目を果たす事無く、そのまま骸の海へと還っていったのだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
リア・ファル
●
SPD
緊急展開! 対艦戦闘用意!
いきなりはティル・ナ・ノーグを呼び出せなくとも、
ボクの故郷の艦船を! 人々を! 無碍になんて出来ないさ
「制宙戦闘機イルダーナ、その名の如くこの宙域を抑える!」
機動力を活かして飛び回り、的を絞らせない
UC【召喚詠唱・流星戦隊】も使用して、数にも対抗する
その間に、ボク自身が電脳演算で火器管制に介入しよう
敵味方の識別信号を弄って、同士討ちさせたり
炉や兵装を暴走させて自沈させたり
船のコントロールを奪って、猟兵側を庇わせたり……
戦闘行動に注力すればボクのサイバー攻撃が
電脳防御に力を割けば、イルダーナの制宙戦闘が
キミたちを混乱の坩堝に叩き落とすだろう
イヴ・クロノサージュ
アドリブ・連携お任せします
●心情
うーん!
久々の艦隊戦だねぇ!
ワクワクするね!
おっと…この感情は他の猟兵さんたちには内緒だよ
戦いを楽しんでる聖者なんて、いたら悪目立ちするもんね!
●戦闘
宇宙戦艦クロユニに搭乗
(中には乗組員200人くらいいて
イヴ一人では動かしてない感じ)
当艦に搭載されたワープドライブで戦闘区域に移動し
遠距離からUCクロノトロンブラストで砲撃支援
ビームの種類は重力
命中すれば圧縮されて潰すタイプ
●技能
ビーム自体は極太【範囲攻撃】
属性攻撃→重力
援護射撃
●回避
過去の戦争の艦隊戦の経験【戦闘知識】から勘で【見切り】相手の攻撃を回避
●防御
常時、戦艦全体をバリア【オーラ防御、拠点防御】で包み込む
●銀河に吼える
『安心するな。見ろ』
『本艦左舷側、敵艦隊に動きあり。攻撃、来ます!』
下方からの奇襲を脱し、シキシマは未だ健在。されど正面と両翼を囲まれて、断続的に続く攻撃はシキシマの乗員を徐々に疲弊させていった。
『まだエネルギーは戻らないのか!?』
『あと5分! それまで持てば!』
ドロイドとは違い人間には休息が必要だ。先の戦いからまともな休みなど一度も取れていない。交代要員すら駆り出されダメコンと状況把握に全力を注いでいる。しかし気を抜けば撃沈されるのは必定。頼みの綱のワープドライブも、未だ使用までのエネルギーが蓄え切れていない。
『着弾まで残り10、9、8――』
『総員対ショック! 来るぞ!』
迫る閃光がモニタを白く輝かせ――そして、闇に包む。否、映し出されたのは巨大な戦艦の装甲。
「こちら宇宙戦艦クロユニ、これより貴艦を援護します」
立ち塞がった白亜の装甲が、シキシマに迫った脅威を尽く跳ね除けたのだ。
(なんて言ったけど、久々の艦隊戦だねぇ! ワクワクするね!)
イヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)はこれまでの経験から最適な戦術を選択、防御フィールドを展開し各砲門を開こうとした――その時だった。
「イルダーナ、オープンコンバット! 先駆けは任せてください」
「これは、騎士様のご登場でしょうか?」
宇宙の漆黒を切り裂いて現れたのはリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が誇る制宙戦闘機イルダーナ。その本来の戦場たる宇宙において、銀の矢は最大の威力を発揮する。そして。
「ええ。それに、これだけではありません――緊急展開! 対艦戦闘用意!」
マテリアル転写、生成完了――放たれた矢は幾重にも広がって、瞬く間に総勢55機のイルダーナの巨大な編隊が漆黒の空間を埋め尽くす。
「制宙戦闘機イルダーナ、その名の如くこの宙域を抑える!」
「まるで騎兵隊ですね――いいでしょう。全艦回頭、砲雷撃戦用意」
槍の穂先の様な美しい突撃陣形を取ったイルダーナ編隊を横目に、イヴはクスリと微笑した。これならば――アレが使えるわ、と。
「とっておきを用意するまで、お時間を頂けますか?」
「はい。とは言え、早くしないと獲物が無くなりますよ」
それでは競争ですね。悪戯じみた笑顔を浮かべたイヴとの通信が切られる。モニタを横目にリアは改めてスロットルを全開に――勝てる秘策があるなら乗じよう。
(あの艦長、やけに士気が高い――負けてられないな!)
そう――ボクの故郷の艦船を! 人々を! 無碍になんて出来ないさ。
展開したイルダーナ各機が瞬く間に左翼敵艦隊との距離を詰める。迫る光条を躱しながら、宙を舞う鉄騎兵の集団が一斉に牙を剥いた。懸架した爆装を解き放ち、正確に砲塔を、機関部を潰していく様は天使の兵団が如く――漆黒を爆光が彩る。牙をもがれ足を折られた敵艦は続々と力を失い、反撃の刃すら振るえずに静かに耐える事を余儀なくされた。
「とはいえ流石に――数が多い」
左翼前衛は凡そ無力化したものの、その背後に控える左翼主力艦隊は未だ健在。ならば、とリアは銀剣を抜いて敵艦に翳す。それはただの剣ではない――万物に干渉する多元デバイス『ヌァザ』、決して刃を当てる事だけが敵を屠る術では無い。
突如、主力艦隊が一斉に砲撃を開始する。相手はまさかの前衛艦隊、機関を潰された彼等に避ける術は無く、ただ無為に沈んでいくだけ。そして。
「さあ――三界の魔術師の妙技、ご覧あれ!」
リアが叫ぶと同時に、敵艦が突然の爆発を巻き起こす。電脳干渉、制御系を乗っ取られた艦隊は今やリアの思うが儘。対空砲火に気を取られては、最早取り返しのつかないレベルまで艦隊のネットワークを侵食されていたのだ。
「中々面白い事をされるのですね、リア様」
不意に通信が――イヴからのコールがリアのディスプレイに表示される。
「ええ。しかし敵の数が多いのは事実――長くは持たないかもしれません」
「でしたら丁度良かった。こちらも整いました」
騎士かと思えば魔術師だった。これ程愉快な事があろうか? 笑みを堪えて全艦に指示を飛ばすイヴは、あくまでも怜悧な仮面を被りつつ指揮に臨む。
(――戦いを楽しんでる聖者なんて、いたら悪目立ちするもんね!)
敵艦隊は身動きを封じられ、迎撃もままならない。好機であった。
「全艦、クロノトロン=ブラスト発射用意!」
イエス、マム。威勢の良い号令が返ると共に、ブリッジの慌ただしさが増して。
『バリアフィールド解除、エネルギーライン並列から直列へ!』
展開していた不可視のバリアが消えると共に、断続的な振動が船体を襲う。艦内のエネルギー経路が切り替わった衝撃が、恐るべき兵器の眠りを覚ましたのだ。
『重力波反射境界面角度プリセット、空間震度誤差範囲内!』
同時に艦首の重力子アンテナを中心に、双腕の様に広がった両弦から重力レンズが展開。圧縮された空間が超重力力場を形成し、クロユニが放つ光すら歪ませる。
『艦長! 対艦重力波動砲、発射準備整いました!』
「了解。総員対ショック対閃光防御――回線開け」
イヴが凛とした声色で仲間達へ、必殺の宣告を放つ。
「こちらクロユニ――宇宙戦艦クロノトロン=ユニット。これより砲撃を行います。射線上の友軍は退避してください。データ送れ」
同時にクロノトロンブラストの射線データを共有し、退避を促した。以上だ。これで全てが――一撃で決まるのだ。
『艦長、進路クリア! いつでも撃てます』
「了解。カウント省略――出力最大、クロノトロンブラスト発射!!」
イヴの声と共に放たれたのは極太の光条。その実態は光の中に牙を隠した必殺の重力渦。狙うは左翼主力艦隊、その中枢。それを避ける術は最早、無い。
光条が渦巻きながら動きを止めた艦隊を襲い、進路上の触れたモノをスクラップに変えていく。触れるだけで歪んだ重力場が大質量の物体を事も無く“捻れた何か”に変えてしまうのだ。
「流石だ、言うだけある」
イルダーナの編隊を元に戻し、重力波範囲外からその光景を望むリア。さながらその一撃は宇宙すら飲み込み砕く暴風の様。
「リア様、これでどうでしょう」
「十分です……最早、何もない」
そう、何も。眼下の艦隊は跡形も無くなった。
これ以上増える事も無い――左翼の迎撃は、見事に達成されたのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
鈴木・志乃
UC発動
物質的な体を捨てます(真顔)
この世界の敵、ほんっとーーーーーーに苦手なんですけどね……。それでもオブリビオンがわくなら殲滅あるのみ、ですよ。
オーラ防御常時発動
第六感を働かせ見切ります
どうしてもぶつかりそうなら、念動力と全力魔法で軌道を逸らして可能ならそのままぐるっと敵の方向へ向けてやりましょう。いけいけ、突撃ー。衝撃波でなぎ払え!!
実は鎧砕きも出来るほどの2tピコハンもあるんですよね
こいつも念動力で動かしてぼこぼこ横から叩いてやりますか……。
荒谷・ひかる
くえーさーびーすと……
うーん、宇宙にはすごい生き物がいるんだねぇ。
っと、それよりも今は銀河帝国の残りをなんとかしなくっちゃ。
とりあえず、こっちに気付かれるまでは「Nine Number」を使って攻撃するよ
弾は光の精霊さんの閃光弾を、エネルギーチャージしてレーザー化して放つね
それでも大した威力にはならないと思うけれど……あっちがわたしを狙ってきてからが本番なんだよっ
砲身を向けてきたら【闇の精霊さん】にお願いして、撃ってきた砲弾が真っ直ぐ飛び込んでくる位置に指向性ブラックホールを生成
砲弾をそのまま吸い込んで、またお願いしてすぐに吐き出してもらうことで疑似的に反射して反撃するんだよっ!
●光と闇の輪舞
「この世界の敵、ほんっとーーーーーーに苦手なんですけどね……」
宇宙を漂う光球がぼそりと呟く。それは世界の希望の光たる鈴木・志乃(ブラック・f12101)の本当の姿。輝ける発光体がじんわりと辺りを照らしながら進んで、その後を小柄な鬼の少女が続く。
「それにくえーさーびーすと……宇宙にはすごい生き物がいるんだねぇ」
荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は戦士の銃をその手に携え、光に導かれる様にふわふわと進んでいた。クェーサービーストなどという未確認生命体――果たしてどんな生き物なのだろうと、疑問を口にして。
「それでもオブリビオンがわくなら殲滅あるのみ、ですよ」
しかし今は倒さねばならないオブリビオン――銀河帝国の残党を始末しなければ、クェーサービーストどころではない。光り輝く志乃が加速して、戦場へ急行する。
「そうだね。今は銀河帝国の残りをなんとかしなくっちゃ!」
続くひかる――幸いにもシキシマは三方からの攻撃を凌いで未だ健在。敵の手口も徐々にではあるが読めてきた。であれば今度は、こちらが攻める番だ。目指す場所はシキシマの直上、まだ敵艦隊が展開していない場所であった。
「気が付かないとでも思いました?」
矢張り――というか、先の戦い、下方からの奇襲があった時点で察する事は出来た。ワープアウトしてきた哨戒艦隊は奇襲を仕掛ける迄も無く、待ち伏せしていた二人の猟兵に行く手を阻まれる。先ずは志乃が、発光する全身から光の鎖を解き放ち牽制を。砲塔やレーダーに絡ませれば機能が阻害され、動き回る志乃を捉える事もままならない。
「それにこんなのもあるんですよ。それッ!」
志乃を迎撃せんと放たれた砲火の数々は、光球――エネルギー体と化した志乃には当たらない。蠢く光の鎖がミサイルのレーダーを幻惑し、そのまま敵艦へ流す様に軌道を逸らす。威力は先方が備えていればよい。自ら放った最大の火力が、艦隊を炎に包みこんだ。
「すごーい! わたしも、えっと――落ちちゃえー!」
光の化身の奮戦を横目に見て、ひかるも手にした精霊銃を放つ。九つの精霊の力を宿したそれは、ひかるの意思を即座に反映する。今は光の精霊の光線銃としてその威力を発揮した。光条が甲板を掠める度、お返しと言わんばかりにレールガンの猛攻がひかるを迎え撃つが、それこそがひかるの狙い。
「わっ! ちょっと怖い……でも、頑張るんだよ!」
まだ早い。機が熟すまで、今は耐える時だ。迫る弾道を必死に躱して、攻撃を己に集めるひかる。全ては策を発動するまでの辛抱……やっぱり怖いけど。
「よーしいい子です……っと!」
光の球――志乃は自身の中から器用にも大型のハンマーを取り出して、敵艦の装甲をボコボコにしていく。傍目から見ればコミカルな様相でも、不定形なエネルギー体が神出鬼没に破壊活動を行う様は悪夢そのもの。その動きを闇雲に追う敵艦はやたらに砲火を重ねるが、何一つ当たる気配を見せない。
「いけいけ、突撃ー! なぎ払え!!」
そのまま放たれた攻撃を己の念動力で逸らし、自身の魔力を衝撃に変えて乗せる。二重に強化された攻撃が敵艦を炎に包んで――更に。
「こっちにも来た! でもね!」
巻き込まれた、否――自ら渦中に飛び込んだひかるは切り札を闇の精霊にお願いをする。これまで引きつけた全ての砲火を合わせ、何もかもを無に帰す時が来たのだ。
「吸い込んじゃおう、精霊さんっ」
ヴンと空間を揺らす振動と共に、志乃とは対照的な暗黒の球体がひかるの正面に出現した。それはブラックホール、光すら飲み込む超重力の穴が殺到したあらゆる攻撃を飲み込んだ。
「そしたら……出して!」
再び暗黒が空間を震わせる。敵艦隊直上――巨大な黒い円盤が、水平に広がった極薄のブラックホールが、闇の精霊が形作ったユーベルコードの穴が、飲み込んだ全ての攻撃を一斉に吐き出した。
「うわぁ……こんなに」
その光景は荒れ狂う天の怒りの如く、ミサイル、レールガン、ビーム――ありとあらゆる攻撃が艦隊の上方より、嵐の様に降り注いだ。先程までの攻撃とは比べ物にならない、圧倒的な火線が艦隊を巻き込んで。ブリッジも砲塔も機関部も何もかも、炎が全てを包み込む。最早抗う術はない。
こうして直上より奇襲を試みた敵艦隊は、呆気なく返り討ちにあった。
世界の根源たる光と闇を司った猟兵の連携の前に、骸の残滓が敵う訳がないのだ。
戦いはここを折り返しとして、猟兵達の反撃へと移行した。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
桐嶋・水之江
●
◆WIZ◆
あの怪物との交戦回数は着実に増えているとは言えまだ十分とは言えないわ
近い将来きっと…いえ、確実に生存圏を争奪し合う相手…だから情報はとても貴く重い…小さな断片でもね
相手は艦隊…ならワダツミを出しましょう
42号側から行くわ
長距離援護射撃で友軍のお手伝いよ
全砲一斉発射のついでに追う氷球もリリースして厚い弾幕を張りましょう
この辺は42号と歩調を合わせたいわね
砲撃は密度が大切だもの
敵艦はレールガン持ちなの?
プロテクトフィールドがあるけれど更にデブリを盾にして二重に防御しておきましょうか
情報と知識を組み合わせて上手にやってみるわ
後は操縦テクの見せ所ね
私の本領は機械工学…それには制御も含むのよ
ダビング・レコーズ
●
ブリーフィングの情報通りならば時間的猶予は殆ど残されていないようです
速やかに任務を遂行
シキシマの安全を確保します
【SPD】
友軍艦『42号』側より出撃
長距離砲戦にて敵艦隊を攻撃
友軍と十字砲火を行います
艦艇の脅威となる点と言えばやはり砲門でしょう
ステアで増強した各種視覚機能も併せスナイプモードを起動
敵艦の砲門を狙撃します
主兵装はプラズマバスター
チャージ中にはバックアップのセントルイスを使用
絶え間なく攻撃を続け反攻が激化する前に砲門を沈黙させます
敵艦の攻撃が激しい場合は一時的に回避に専念
速力と運動性を駆使したランダムマニューバで撹乱
回避が困難な場合はスヴェルとEMフィールドにて防御します
相馬・雷光
いかにもSFって感じね
猟兵になった時期の問題で銀河帝国とは戦えなかったし、代わりにボッコボコにしてやるわ!
私自身は空を飛んだりする能力がないし、遠距離攻撃能力があるから、戦艦を足場にして戦うわね
しっかし、戦艦の改装までしちゃうって猟兵にも器用な人がいるのねぇ
敵のビームに合わせて、ヴァジュラブラスターで雷撃弾(クイックドロウ・属性攻撃)をぶっ放すわ!
荷電粒子なら磁気の影響を受け易いハズ!
強力な電撃で磁場をぐっちゃぐちゃにしてビームが直進できないようにしてやる!
【一斉射撃】【制圧射撃】【乱れ撃ち】でガンガン撃ちまくり!
弾幕の隙を縫ってビームの砲口に【スナイパー】で雷撃弾をブチ込んでやるわ!
●逆襲
「しっかし、戦艦の改装までしちゃうって猟兵にも器用な人がいるのねぇ」
そうだろう? と自慢げに語る甲板作業員に相槌を打つ相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)は、ちらりと戦場の方を眺めて思考する。いかにもSFって感じ。空も飛べない私がふわりと浮かべるのは何だか不思議な感じねと、甲板でステップを踏む。
『嬢ちゃん、準備出来たぜ』
甲板作業員がハンドサインで雷光を呼ぶ。そこはカタパルト、ガイドビーコンの代わりに照射されるのは電脳タレット――効果は増幅、投射兵装の飛距離と威力を伸ばす電脳魔術のおまじないだ。
「ありがと! それじゃ始めるわ――!」
艦番42号、またの名を戦艦イエーガー。古の猟兵は再び戦場へ帰ってきたのだ。
「相手は艦隊……ならワダツミを出しましょう」
桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は淡々と、己が座上する万能強襲揚陸艦のブリッジで状況を精査する。あの怪物との交戦回数は着実に増えているとは言えまだ十分とは言えないわ。だからこそ、こんな所で躓くわけにはいかない。
「近い将来きっと……いえ、確実に生存圏を争奪し合う相手」
だから情報はとても貴く重い…小さな断片でもね。その瞳は最早帝国残党を見てはいない。目的はクェーサービーストの討伐。眼前の相手はそれに至るまでの、ただの障害だ。
「こちら強襲揚陸艦ワダツミ。42号、同期いいかしら?」
艦隊を組むならば連携した方が良いに決まっている。返答はOK、直ちに相互リンクと照準系の合わせを行い――敵を見定めた。
「ブリーフィングの情報通りならば、時間的猶予は殆ど残されていないようです」
ダビング・レコーズ(RS01・f12341)はフライトユニット――ラプターを噴かしながら、提示された狙撃ポイントを精査する。42号側より長距離砲戦仕様で出撃、連携し敵艦隊をシキシマ側より挟撃する為だ。
「速やかに任務を遂行。シキシマの安全を確保します」
ウェポンセレクト/メインにプラズマバスター、バックアップにセントルイス。狙撃ポイントは42号からやや離れたデブリ帯、前の戦いの跡だろうか、生々しい弾痕が残ったままの装甲板に身を隠す。
「こちらダビング、所定の位置に到着。いつでも始められます」
バイポッド代わりに立てた大楯スヴェルに砲身を乗せて、FCSを調整。ロングレンジ――敵は視えている。後は号令を待つだけだ。
「全体の砲撃準備は完了ね――了解、やるわよ」
ラジエルが弾き出した計算では180秒、これ以上掛かればシキシマ側が持たないという。一人の猟兵が正面艦隊に切り込んで奮戦しているが、それ以上に攻撃がシキシマに攻撃が到達するリスクが上がってしまうらしい。
ワダツミのブリッジ、水之江の周囲に淡い緑のスクリーンが立て続けに浮かび上がる。武装選択、砲撃パターン確認、各艦同期確認――完了。
「こちらワダツミ、42号、ダビング、雷光さん、始めましょう」
号令一下、それぞれが全力を――ワダツミのそれは全砲門による一斉砲撃。連装ビーム法と垂直発射式のミサイルの束が尾を引いて正面艦隊に迫る。
「了解、ドクター桐嶋。状況開始」
チャージしたプラズマバスターが火を噴いて、狙うは敵艦砲塔部分。ダビングの狙撃システムは超常の産物、たとえ因果を書き換えようとも、必中の道筋を弾き出す。
「わっ! 撃ち返してきた!」
一方の雷光、矢張り目立つ42号に攻撃が集中した。想定通り……ここは私が食い止めなければ。歯を食いしばり、すかさず黒い銃を抜く。
「こっちもぶっ放すわ!」
雷光が抜いたヴァジュラブラスターが敵艦のビームに合わせた軌道で放たれれば、乱れた磁場がその直撃を逸らす。そしてヴァジュラブラスターは一丁ではない。
「このまま一気に、押し返す!」
もう一つの鈍色の銃が火を噴いて――電脳タレットで増幅された雷撃銃は稲妻の束を螺旋状に纏いながら、舐める様に敵艦の装甲を抉っていく。
「――手数も落ち着いてきた。ここが攻め時ね」
気合も新たに雷光はトリガーを絞る。猟兵になった時期の問題で銀河帝国とは戦えなかったし、その代わりにここでボッコボコにしてやるわ!
「命中――次ターゲット確認、発射。命中――」
淡々とプラズマバスターで敵艦隊の武装を無力化していくダビング。他にも仲間はいる、本体への攻撃は任せて、ここは敵の無力化に注力すべき。そうすれば奴らは自ずと瓦解する。
(しかし旧型の哨戒艦隊が何故……)
先の戦争で確認が出来なかった(というより間に合わなかったのだろう)型だ。対艦戦闘に特化した艦隊が外縁部で……銀河工程も外宇宙を諦められなかったのだろうか。不意に脳裏を過った僅かな間、敵の攻撃が猛威を増した。
「――EMフィールド展開。バスターはそろそろ、ですね」
伸ばした砲身を畳んでバスターを背負い、バックアップのセントルイスを正面に構える。暫しチャージの時間だ。照射モードに切り替えたセントルイスで、敵艦を再び狙撃する。しかし敵の反撃が厳しい――今はデブリを渡りながら回避機動を取り、自動補正のスマートガンを撃ち続けるしかない。
「大丈夫、牙は殆どへし折りました」
遠くの仲間を思いマシンは戦闘を再開する。戦闘開始から110秒が経過していた。
「敵艦隊の損耗は、味方の状況は?」
プロテクトフィールドを展開し反撃を防ぎつつ、それでもダビングの狙撃で無力化されつつあった敵を解析し、一気に攻め立てる機会を伺う水之江。
「……成程、ね」
敵の攻撃能力は10秒後に8割を喪失、その段階で友軍の攻撃によって全艦の5割は行動不能になっている。畳みかけるならばこのタイミングだ。
「いいわ――この戦場を、制御してみせる」
エグザストロッド、EAスフィア――イグニッション。ワダツミの看守に巨大な透明の球が出来上がる。その正体は巨大な氷球。
「さあ、あなたは逃げ切れるかしら?」
そして氷が爆ぜた。無数の透明な殺意はそのまま敵艦隊へと殺到。スマートガンとブラスターの追撃と共に、艦隊直上に展開した氷球は更に、クラスター爆弾の様に細かく炸裂した。尖った氷の刃が艦隊を続々と穿つ。対空砲火を封じられ、強大な電磁場でセンサを乱された艦隊にこの刃を逃れる術は無い。続々と爆発する艦隊――氷とは言え超常、その威力は尋常では無い。
「私の本領は機械工学……それには制御も含むのよ」
それぞれの特性を生かし、完璧な連携で戦況を制御する。
シキシマ正面に布陣した最大規模の艦隊は、ここに沈黙した。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
七篠・コガネ
この世界の今を生きる者達が進むべき道は一つ
先へ進むためには余計なものに構ってる暇ないんですよ
敵艦捕捉!UC使用
『code-Nobody』から【一斉発射】で敵ミサイルに対抗しましょう
その間、敵ミサイルの発射口や防御の緩そうな箇所を【情報収集】しておきます
ある程度、情報収集出来たら敵艦へ接近
宇宙空間は僕の十八番【空中戦】
加えて銀河帝国の戦い方なんて嫌でも熟知してるんですから!
迫り来る攻撃には全武器で対抗しましょう
…敵艦の最たる弱点…
あの動力部分でしょうか?【踏みつけ】で蹴破ってやります!
皇帝陛下亡くしての銀河帝国に今更恐れる必要ありません
骸の海へお帰り願います!さらばです。かつての同胞達
ガーネット・グレイローズ
●
クエーサービーストと未踏宙域の情報はぜひとも欲しいところだが、人命に代えられるものはない。必ず救出するぞ!
【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】を発動。55隻の
自律式小型宇宙船を召喚し、艦隊を率いて参戦だ。
「灰薔薇艦隊、全艦前進! 駆逐艦シキシマを援護せよ」
シキシマが後退するまでの時間稼ぎを担当。宇宙船は
前線に出ながら搭載しているビーム砲とミサイルで
〈援護射撃〉。多少の被害には目を瞑り、シキシマの
安全確保を再優先としよう。こちらの船は数と機動力に
優れているが、火力不足と感じた場合は残存の艦を
適宜合体させて強化。私は〈空中戦〉の応用で
宇宙空間を移動しつつ、クロスグレイブの熱線で敵艦を
攻撃する。
エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎
不運なエンカウント、か
ある程度想定はしてただろうけど、それでどうなる相手でもないしなぁ
仮に後事を託してあの船を逃がしたんならなんとかしないと
そういうわけで邪魔な帝国残党にはさっさとお帰り願おうか
敵は対艦戦闘用の装備みたいだし、鎧装騎兵がつけ入る隙はありそうだな
滑腔砲で牽制射撃に徹してると見せかけて、ある程度距離を詰めるまでひたすら回避
油断したところでUC発動、電磁バリアに物を言わせて艦橋目掛けて一直線の突撃を仕掛ける
駄目押しに亀裂部に砲撃だ
あんたらも追い立てられて恨み骨頂だったんだろうけど、怒りに任せて深追いしすぎ
ある意味これも不運なエンカウントだったのかな
月影・このは
●【魚葉】
任務受託、これよりシキシマの救助に向かいます
宙域戦闘というのは初めてですね
無重力空間というのは少々動きづら…
空中戦とまではいかなくても宙域戦闘用装備追加するべきですかね…?
ティターニアって売る予定とか…
あぁ、実体弾の方ならお任せを、バトルホイールで受け流します
さて、射程内に入りましたね…
それじゃあ船を狙ってブーストナックルを!
ヘスティア・イクテュス
●【魚葉】
どうやら沈められる前に間に合ったみたいね
それじゃあ、ヘスティア・イクテュスこれよりシキシマの救助にはいるわ
アベルによる情報収集で弾道を予知、頼むわよアベル
その間になんかクルクル回ってるこのはを回収するわよ…(ジト目)
このはを抱えてティターニアをフルブースト!
対艦用兵装なら近づいた方が当たりにくいってね
一応目くらましにスモークミサイル&ダミーバルーンでより当たらないように
近づいたらミスティルテインで砲門を一つ一つ潰させて頂くわ
ここまで運んだんだから貴方も運搬代分働きなさいよこのは
●道は開けり
『敵正面艦隊、沈黙……』
シキシマから見た戦況は、圧倒的だった。僅かな時間で戦局が引っくり返ったのだ。昔とは違う、いたずらに戦力を浪費して、ただ終わりを待つだけではない。それは分かっているつもりだった。
『右翼艦隊に動きあり――』
そしてそれは、ずっと辺境にいたであろう敵艦隊にも分からなかったのだろう。
『重力震反応もありません。敵の転移も、これまでかと』
わらわらと増え続けていた敵艦隊もこれ以上増える兆しは無い。戦闘も終局を迎えつつある。
『ならば、ここを凌げば』
命を賭して持ち帰った情報は無事守られる。それまでは何としてでも耐え抜かなければならない。
『攻撃、来ます!』
ミサイルと光条の雨がシキシマに殺到する。来るなら来い。俺たちはもう一人じゃないんだ。光が、空間を埋め尽くした。
「――クエーサービーストと未踏宙域の情報はぜひとも欲しいところだが、人命に代えられるものはない。必ず救出するぞ!」
立ち塞がったのはガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)、召喚した宇宙艦隊が間に入り、攻撃の尽くを防いだのだ。
「灰薔薇艦隊、全艦前進! 駆逐艦シキシマを援護せよ」
多少の被害には目を瞑り、シキシマの安全確保を再優先する。火力が足りなければ合体させて補えばいい。総勢55隻の勇敢な宇宙の騎士達は咆哮の様なスラスター音を響かせて、一気呵成に敵艦隊へ突撃した。
「不運なエンカウント、か。ある程度想定はしてただろうけど、それでどうなる相手でもないしなぁ」
その傍ら、灰色の装甲服がカメラアイを点滅させる。
「こちらレッキス、援護する」
送られた信号は友軍である証。エルト・ドーントレス(灰色の雷光・f14009)が纏ったパワードスーツ――レッキスの各セーフティを解除しながら敵を見据える。
(仮に後事を託してあの船を逃がしたんならなんとかしないと)
そんな戦は何度も見てきた。だからこそ絶対に守り抜かなければ。メインウェポンは13式滑腔砲、それだけで十分だ。後はレッキス自体が最大の威力となる。
「そういうわけで、邪魔な帝国残党にはさっさとお帰り願おうか」
紫電を纏った人型が加速――灰薔薇艦隊を通り抜けて突出した。
「頼むわよアベル。これで終わりにするんだから……」
『承知しました、お嬢様。ですがその前に――』
「分かってる。とりあえず……回収して」
妖精の羽根の様にスラスターを噴かし、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は周辺の状況をつぶさに観察する。彼我戦力差は反転した。だからこそ油断ならない――命を何とも思わない連中だ、何をしてきてもおかしくないのだから。そしてその前に。
『ええ、既に』
「ああ、無重力空間というのは少々動きづら……」
くるくるとヘスティアの周りを月の様に回り続ける月影・このは(製造番号:RS-518-8-13-TUKIKAGE・f19303)を、タロスで押し込んで無理やり立て直させる。無重力空間だからこそ、10センチ程の球体ドローンで十分仕事が出来る。
「ああ、ありがとうございます。空中戦とまではいかなくても宙域戦闘用装備追加するべきですかね……? ティターニアって売る予定とか……」
「自分で何とかなさい。あなたにはパックで十分よ」
差し出された片手に掴まって難を逃れたこのはが、冗談交じりにヘスティアへ提言する。宙間戦闘に慣れないのは事実、装備で補えるなら本当になんとかしたい所だ。
『これはバックパックと妖精のパックをかけた――』
「やめて何か滑ったみたいになるし! ヘスティア・イクテュス及び月影・このは、これよりシキシマの救助にはいるわ」
沈められる前に間に合ったのよ、ここで時間を潰している場合じゃない。全開加速をしてこのはを掴んだまま敵艦隊へ飛び掛かったヘスティアは、反撃の光条を避けさせながら、攻撃ポイントを探る。
「あぁ、実体弾の方ならお任せを、バトルホイールで受け流します」
ぶらさがったまま四肢のタイヤを高速回転し、デブリを突き飛ばしてミサイルを弾くこのは。
『承知しました。軌道変更、最短でカチコミますよ、お嬢様』
「ええ、行くわ!」
漆黒に淡い光を振り撒きながら、殺到する殺意を躱して妖精とマシンが舞う。
攻勢に転じた猟兵達の猛攻で、敵艦隊の攻撃はその勢いも抑えられつつあった。だからと言って、完全に安全になったわけではなかった。
『艦長、ダメです――ミサイルが!』
僅かに間隙を抜けた敵ミサイルがシキシマへ向かう。対空砲火もすり抜けて、その姿が目視ではっきりと見える――その時だった。
「やらせませんよ」
突如、視界を覆いつくす弾幕がミサイルの行く手を阻んだ。間一髪、シキシマの眼前で爆ぜたミサイルが、続く攻撃すら飲み込んで巨大な火球を形成した。
「この世界の今を生きる者達が進むべき道は一つ」
それは七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)の決意の一撃。
「先へ進むためには――余計なものに構ってる暇なんて、ないんですよ!」
立ち塞がるものを破壊する。宇宙の民の悲願成就の為――鋼鉄の猛禽は戦場へ躍り出た。もう二度と、悲劇を繰り返さない様に。
「灰薔薇艦隊、散開! 敵艦隊を包囲して、一隻たりとも逃すな!」
敵艦隊と真っ向からぶつかり合える距離へと浸透したガーネットの艦隊は、それぞれが合体し最初の半分ほどの総数となっていた。これ以上回避を優先する為に陣形を広げる必要は無い。強化された艦艇がビーム砲とミサイルを敵艦隊へと放って釘付けにする。シキシマの安全確保が最優先だ。それに仲間達もいる――負けはしない。
(やはり対艦戦闘用の装備か――つけ入る隙はありそうだな)
弧を描きながら徐々に距離を詰めるレッキス。滑腔砲から放たれる対艦用の炸裂弾が尾を引いて、甲板を抉りながら続々と火球を形成する。光学兵器とは違い実弾兵器では迎撃の恐れは高い。だが対艦装備が豊富ならばその分弾幕も薄いだろう――エルトの読みは当たっていた。そして。
「大砲が本命、じゃないんだな」
フィールド全開。オーバードライブ――ぶち抜く! レッキスの纏う紫電が膨らんで、バチバチと空間を揺らす。最早稲妻の弾丸と化したレッキスが――エルトがそのまま敵艦のブリッジ目掛けて飛び込めば、その威力はいとも容易く敵艦を爆ぜさせた。
「……あんたらも追い立てられて恨み骨頂だったんだろうけど、怒りに任せて深追いしすぎ」
ある意味これも不運なエンカウントだったのかな。そう呟き次の獲物を見定める。我らは猟兵、狩りをするものだ。獲物は絶対に、逃したりはしない。
「アベル、フルブースト! ダミーとスモーク展開。こっちに攻撃を引きつけさせて撒くわよ! 手数は足りてる、被害を減らさなきゃ!」
『承知しました。コマンド4-3-3受領、戦術パターン……』
「あばばばばばば――はや、早いよ!」
ヘスティアの叫びと共にティターニアの勢いが増して。指令を受けたアベルが的確に、軌道をジグザグに揺らしながらスモークとダミーをまき散らす。そしてこのはが、余りにも急な軌道変更に揺さぶられてつい、泣き言を放つ。
「あと少し我慢なさい! あれね――火線が丸見え、狙いはあそこ!」
器用に片手で長銃のミスティルティンを展開し、腰だめに構える。ターゲットは砲塔、順に潰していけば後はこのはが直接叩けるだろう。
「このは! 3秒後に投下するわ。準備はいい!?」
「大丈夫、いつでも行けますよ……っと」
ぐるんと腕を回して健在を誇示する木の葉。この様子なら大丈夫だろう――アベルの補正に合わせてビームを放ち、潰した砲塔辺りにこのはを投下。そして。
「さて、射程内に入りましたね……それじゃあ船を狙ってブーストナックルを!」
右手で左肘を押さえつけて、グラグラと揺れる噴射の振動を押さえつける。狙いは艦橋――一撃で仕留める! 放たれた鋼鉄の腕が装甲を貫いて、敵艦は呆気なく炎に包まれた。
「流石です皆さん……これで突破口は、見えました!」
先行した仲間の攻撃を解析し、敵艦隊の弱点を見破ったこがね。灰薔薇艦隊の包囲で伸ばされた布陣、レッキスの猛攻で偏った配置、アベルの解析で分断された状況――飛び込むのは今。
「宇宙空間は僕の十八番。加えて銀河帝国の戦い方なんて、嫌でも熟知してるんですから!」
そう、嫌でもね。だから全力を尽くす――明日の宇宙の為に!
「全コントロール開放、武装セーフティ解除。行きますよ!」
白いコートをはためかせ、飛び出た翼から刺々しい武器の山が姿を見せる。流星と化した鋼鉄の猛禽はそのまま、空いた穴を穿つ様に敵中枢へ突入――迎撃の砲火を弾き、躱して撃ち落とし、立ち塞がる障害は両腕の鉤爪で切り裂いて前へ、前へと進む。
「軌道確認――この艦隊の弱点は、そこです!」
灸をすえてやりましょう。禍々しく湾曲した両脚の鉤爪が畳まれて削岩機の様に、そして背後の翼から凄まじき炎を放つ。火の鳥の如き灼熱の勢いをもって、コガネ必殺の一撃は、敵艦隊の動力部を立て続けに貫いていった。一筋の炎の帯が続々と火球を膨らまして、その爆発に巻き込まれた他の艦艇も沈んでゆく。
「皇帝陛下亡くしての銀河帝国に、今更恐れる必要ありません。骸の海へお帰り願います!」
だから、さらばです……かつての同胞達。
纏った炎を振り払い、両足の詰めを開いて制動。元に戻ったコガネは離れた位置から敵艦隊を見る事無く、そのままシキシマへと戻っていった。
「さて……こんな所か。状況は?」
沈みゆく敵艦へクロスグレイブから駄目押しの熱線を放ちつつ、ガーネットは展開した各艦から状況を確認した。交戦中の右翼敵艦隊は全て、猟兵達の活躍で封殺したはずだ。他の戦場も大方戦いは終わっているだろう。
正面艦隊、先方と42番側からの砲撃により壊滅。
左翼艦隊、艦隊航空戦により壊滅。
下方奇襲艦隊、奇襲失敗により壊滅。
上方奇襲艦隊、奇襲失敗により壊滅。
そして右翼艦隊、壊滅。
「良し。作戦終了だ、全艦帰投せよ」
ガーネットの号令一下、灰薔薇艦隊が空間に溶けるように消えていく。
この宙域での戦いは、猟兵側の完全勝利で終わったのだ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 冒険
『宇宙航路開拓作戦』
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POW : 探索や転移の障害となるデブリなどを取り除く
SPD : 周辺の警戒を行い、敵襲に備える
WIZ : 宙域の地図データを作成する
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●残光
『――敵性体活動開始、触手が…………』
『……消えた!? サオトメの装甲が、穴に』
『正体不明のノイズ多数! これは――――!』
けたたましいアラートと赤色灯に照らされたブリッジ。
地獄めいたその様相は、決して初めてという訳ではない。
これまでの戦いで『そういう状況』に遭遇した事が幾らでもあった。
だが映し出された映像にはこれまでとは全く違う、異様な緊迫感が溢れている。
何故、こんな事が。一体何が起こっているのだという焦燥が画面越しに伝わる。
そして同時に送られた他の映像には、ぽっかりと大穴が空いた艦艇が多数。
まるで子供が悪戯で紙に穴をあける様に、無造作に、幾度も繰り返された様な跡。
これらが全てクェーサービーストたる存在の手によるものだとしたら、
我々が次に相手する存在は、果たして人知の及ぶ存在なのだろうか。
『……まあ、見ての通り。これが最後、最後だ』
42号艦内ブリーフィングルーム、九死に一生を得て撤退したシキシマから齎された情報は、一言でいえば最悪だった。最悪が形を成してこの先にいる――それが分かっているだけでもマシなのかもしれない。だが事態は、そんなに単純ではなかった。
『先の戦闘で偶然拾った帝国哨戒艦隊の記録情報だ。こいつによれば――』
幸い先の戦いで壊滅した敵艦艇より、彼らの戦闘ログを拾得する事が出来たのだ。奴らはクェーサービーストの活動状況を把握していたらしい。それによれば、初めはわざと敗走する様に見せかけて、そのまま進軍しクェーサービーストにやられて撤退してきた艦隊を返り討ちにする事で、今までこの宙域で糊口を凌いできたという。
『――次に奴さんが最接近するのは恐らく12時間後。多少休む間もあるが、勿論それだけじゃ済まねえな』
12時間後にこの辺りにいれば、嫌が応にも戦わざるを得ない。現に映像を見る限り、クェーサービーストは進路上の障害物を排除しただけに過ぎない様だ。ただ巡回しているだけ――でなければ、我々が活動する生存圏まで足を伸ばしてもおかしくは無いのだから、そもそもが戦いにすらなっていなかったのだ。
『散歩中に鉢合わせる、だけじゃあ緩くねえ。やるならば徹底的にやるべきだ』
それはかつての戦いで学んだ事。手段が無ければ作ればいいのだ、何をしてでも。
『記録にあるノイズってのが、恐らく“装甲に穴を空けた”攻撃の前触れだろう』
これまでの報告によりクェーサービーストの攻撃手段は大体判明している。全てが同一という訳ではないが、触手による圧殺と物質分解光線、そして物質分解波動が大まかな共通項だ。先の二つは目視で確認し対応出来るだろうが、この波動だけは単純に回避することは難しい。波は目に見えない……だからこそ、先の大戦で手に入れた古代技術のフィードバックによる、“宇宙空間での音声通信”を応用した空間ソナーが、記録にあったノイズとして形に残ったのだろう。
『恐らくだが分子の結合状態をゼロにし、構造を別の物に置換するといった所か』
だからこそ当たるわけにはいかない。射線上の何もかもを無に帰す恐るべき攻撃、可能な限りの対策を試みるべきだ。
『だが、この先に進まなきゃ新たな航路は出来ねえ。それに』
奴を倒せなければ、この先航路なんて作れはしない。やるしかないのだ。
『――という訳で悪いが仕事を頼みたい。こいつへの対策と進路の確保。やる事だけは幾らでもある……出来るか?』
42号の艦長が申し訳なさそうに告げる。
そう……本当の戦いは、これからなのだ。
※第2章は航路の確保と怪物への対策が主となります
※上記の沿って自由にプレイングを掛けて貰えれば幸いです
※航路の確保はデブリの排除や進行ルートの偵察などが考えられます
※怪物への対策は記録の調査による戦術の提案、次の戦いへの布石が考えられます
※プレイング募集期間は現在から10/19(土)一杯です。以降は状況により判断します
イヴ・クロノサージュ
●
場所:艦長室⇒シュミレータルーム(仮想で訓練)⇒自室
(『日常』ピンナップ)
――
『まずはお仕事お仕事っと』
●お仕事(WIZ)
クロユニのレーダーを駆使して広域スキャン
宙域周辺の危険物や地図データを作成する
そのデータを猟兵の皆さんに伝達
●(クロユニ:シュミレータルーム)
シュミレータを使い
3パターン(触手による圧殺/物質分解光線/物質分解波動)の
戦闘シミュレーションを行う
被弾した場合、戦艦のバリアがどこまで持つか調査
●心情
(シミュレータで練習中)
やーん。波動攻撃はちょっと面倒だねぇ……。
クェーサービーストは大怪獣の如く徘徊してるだけ
うーん?隕石や宇宙船の金属?鉱物?を食べて
生きている生物にも見えるね
●疑惑
「まずはお仕事お仕事っと」
宇宙戦艦クロノトロン=ユニット、その艦長室。イヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)は重厚なデスクに備えられたコンソールを軽快に叩く。先ずはクロユニのレーダーユニットをフル稼働し宙域を広域走査。全域の地図情報をあっさりと作製し、直ちに仲間へ共有した。
「うーん……やっぱり、おかしいわね」
作図されたデータのそこかしこに虫食いの様な穴がある。そして広域のデブリ帯の繋がりが、大きな弧を描く様に分断されているのだ。
「これが、クェーサービーストの進路かしら」
孤の部分が進路、虫食い穴が交戦地帯だとすれば、進路上で目に付いたモノを片っ端から排除しているのだろうか。
「まるで掃除屋ね。先の情報と照合して」
会敵予想地点は恐らく、42号の進路とぶつかる地点が3か所。孤の中に二つ、虫食い穴が一つ。その内の一つはシキシマの艦隊が壊滅した場所も含まれていた。
「やっぱり、無事に抜けるなんて虫のいい話よね」
それじゃ、と重厚な椅子から立ち上がり、イヴはシミュレータルームへと向かった。対峙するならば相応の対策を考えねば。
「……で、基本戦術はこんな所かな」
想定される最悪の状況は敵からの奇襲。万が一距離を一気に詰められれば終わり。物質分解光線を浴びれば終わり。物質分解波動を浴びても、恐らく終わりだ。
「距離を取って砲撃戦。物質分解の仕組み――まさかどんな物も同じくバラす事なんて出来ないでしょ」
有機物も無機物も須らく同じ様にバラバラにするのであれば打つ手はない。構成物質が違えば、光線も波動も照射波長が恐らく変わる筈だ。狙うとしたらそこ……複数の属性の攻撃で一気に畳みかける。そうすれば、十のうちの一つくらいは少なくとも命中するだろう。
「あとはバリアを多層展開し、それぞれの位相をずらして積層装甲みたいにするか――うーん」
そんな事をすれば制御系も動力系も尋常ではない負荷が掛かる。でもやるしかない。諸元を入力し再度模擬戦を設定――これで88回目、そろそろ勝たせて貰いたい所だ。
(クェーサービーストは大怪獣の如く徘徊してるだけ? 隕石や宇宙船の金属? 鉱物? を食べてるのかしら)
何でも喰らう悪食の怪物、消化器官の代わりに物質を分解し取り込んでいるのだろうか。そんな印象が脳裏を過る。
「まるで、ビッグバンね」
全てを消して宇宙を再構成するつもりかしら。だったら尚更――終わらせるわけにはいかない。コンソールを叩く手に力が入る。これで90回目、何度だってやってあげる。世界を先へ進ませる為ならば。
大成功
🔵🔵🔵
リリィ・ドラグヴァンディル
▶︎任務目標
任務了解…先行しての航路確保を行います。
ドラグヴァンディル、リミッター解除…リフトオフ…!
▶︎使用UCと行動
UC【《ドラグヴァンディル》砲殲滅戦モード】を起動。
「全武装フルオープン、航路上の障害物を消滅させます。」
飛散破片防御用バリアフィールド【オーラ防御】展開、スラスター出力全開、高速機動【空中戦】を開始。
肩部レールガン、右腕部ビームキャノン、左腕部ビームガトリングガン、腰部6連ミサイルを連携精密狙撃機能【援護射撃・スナイパー】にてマルチロックオン、全武装フルバースト【一斉発射】により対象を【薙ぎ払い】跡形も無く粉砕します。
「目標、デブリ…フルブラスト!」
▶︎アドリブ歓迎
相馬・雷光
甲板に出てデブリの除去作業をやるわ
電脳タレット……さっきは巧くいったから良かったけど、ぶっつけ本番だったからね
ちょっとでも練習して慣れとかないと
二挺のヴァジュラブラスターから雷撃弾(属性攻撃・2回攻撃)を撃つ!
文字通り雷速でも、宇宙の距離感じゃ着弾まで一瞬ってワケにいかないわね
【スナイパー】【一斉射撃】【制圧射撃】【乱れ撃ち】
色んな距離や連射速度を試して、感覚とのブレをなくしていく
あとは耐久テスト……【全力魔法】【帝釈天降魔砲】をぶっ放す!
カートリッジからエネルギー充填完了、対象の材質・形状から破砕ポイント割り出し……OK、相対速度算出……OK、有効射程まで5、4、3……いっけー!
エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎
シキシマを追撃してきたのは偶然じゃなかったのか…
それだけクエーサービーストの動向を把握してたってことだよな
拾ったデータから奴の正確な移動ルートはわかりそうだし、先回りして少しでも有利な状況で待ち伏せしたいな
そこまでの移動ルートの確保に向かうよ
滑腔砲に炸裂弾を装填、経路上のデブリを破壊もしくは弾き飛ばす
でかいデブリに対してはUCで弾速を引き上げて、より深く打ち込んで内部で爆破させる
残り時間もあるし、あんまり丁寧にはやってられない
多少強引でも火力でごり押す方向で行く
この後整備や休憩の時間も必要なんだ
空き時間を作るためにてきぱきやってくぞ
●切り拓く者達
「任務了解……先行して航路の確保を行います」
42号の射出用カタパルトに二体の人型機動兵器が並び立っている。一つは小柄な(それでも全長3m近くはあるだろう)真紅の機体、もう一つはそれよりも一回り以上大きい、鈍色の武骨な機体だ。
「ドラグヴァンディル、リミッター解除……リフトオフ……!」
真紅の機体から凛とした――リリィ・ドラグヴァンディル(紅百合・f15918)の声が響き、両脚に装着したカタパルトに紫電が奔る。そして加速したまま青白い炎を吐いて、ドラグヴァンディルは再び宇宙の漆黒を飛翔した。
「拾ったデータから奴の正確な移動ルートはわかりそうだし、先回りして少しでも有利な状況で待ち伏せしたいな」
続いて鈍色の武骨な機体――レッキスがカタパルトを装着する。超重の歩みが電磁レールを振るわせて、固定ボルトが火花を散らす。
「レッキス、エルト・ドーントレス。出るよ」
発艦――再び紫電が迸り、重武装の機動歩兵が放たれる。スラスターの噴流が空間を裂いて、目指す場所は未踏査宙域。未だ人類が足を踏み入れていない宇宙の海で、知らされている事はただ一つ、その海には恐ろしい魔物が潜んでいる事だけ。
「――だからさ、ちょっとでも練習して慣れとかないと」
そして甲板にぽつんと一人、小柄な少女が二丁拳銃を正面の暗黒に向けて立つ。相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)は先の戦いで得た感触を確かなものにする為、再び42号との連携戦術を模索していた。
「電脳タレット……だっけ? さっきは巧くいったから良かったけど、ぶっつけ本番だったからね」
それはかつての戦いで42号に備えられた新たな牙。ある電脳魔術師が設置した電脳魔術兵装は、その者が去った今でも十全に稼働していた。
「……それじゃ、やってみよう」
電脳タレットは本来、格納した電脳魔術兵装を展開する為の“魔法陣”だ。それに組み込まれた魔術式の内、砲火を増幅するコマンドのみを抽出、即席で再構築し、雷光のヴァジュラブラスターを火種として銃撃を拡大したものが、先の戦いで使用した機能だった。
「準備はいいよ。5、4、3……」
雷光の号令と共に電脳タレットが展開し、薄緑色の増幅の魔法陣が再び漆黒に投影される。
「……今!」
トリガーが絞られ、放たれた雷撃の連弾は巨大な雷の砲弾となる。その巨大なエネルギーの塊は、遥か先で進路を塞ぐデブリの塊を見事に破壊した。
「やっぱり文字通り雷速でも、宇宙の距離感じゃ着弾まで一瞬ってワケにいかないわね」
意外と遠い。それに大気が無い分目に映る距離感も変わってくる。その感覚を身体に叩き込んで、より確実に敵を倒せる様に雷光は銃撃を続ける。合わせてデブリを片付ければ一石二鳥――幸い的は幾らでも浮かんでいる。襲撃を考慮してそういう航路を選んだのだから、暫く当てる物には困らないだろう。
「そしたら、あとは耐久テスト――」
全力の雷撃を航路に沿って放ってみる。進む道は分かっているのだ、大小揃って吹き飛ばしても、問題は無いだろう。
「ブラスター、最大出力モードに移行」
雷光が二丁ブラスターのセーフティを解除。瞬間、立体パズルの様にバレルが伸長、展開して巨大な砲を形作る。
「エネルギー充填完了。対象の材質・形状から破砕ポイント割り出し……OK」
先端の照星がチカチカと明滅して、雷光が狙った特大の獲物をスキャンする。超常の感覚器が物体の構造を割り出して、最適な破壊エネルギーを銃身に満ちる。
「相対速度算出……OK、有効射程まで5、4、3……」
合わせて展開された電脳魔方陣が紫電を纏って、溢れ出るエネルギーを受け止めんと金切り声のような音を立てる。そしてブラスターが帯電した避雷針の様に閃光を放つ。後はトリガーを絞るだけ。
「ゼロ! いっけー!」
遅れて聞こえた音が、その雷撃の凄まじさを物語った。一部の電脳タレットはその許容量を超えて強制シャットダウン――眩しい光を放った一筋の雷が漆黒を真っ二つに裂いて、更に奥の闇を光で塗りつぶす。
「――上手く、いったかな?」
最早肉眼では確認出来ない。それでも視界を覆った閃光と、嵐の様な轟音が目標を完璧に破壊せしめた事をここまで伝える。これならば多少巨大なデブリでも、クェーサービーストだって恐れる事は無い。
先の情報からクェーサービーストの進路を避けて、デブリが多数浮遊する宙域を航行している42号。当面の敵襲は避けられるだろうが、行く手を阻むデブリの数は想像以上であった。それは特大の雷撃が一筋だけでは、全て破壊する事は難しいほど。だからこそ先行しデブリを排除する為、機動歩兵は雷撃の更に先へと進んでいた。
「全武装フルオープン、航路上の障害物を消滅させます」
真紅の巨兵が宇宙を舞う最中で、手際良くコンソールを叩いて次々に武装のセーフティを解除していくリリィ。合わせて機体が腰を中心にゆっくりと前転して、両腕両足が甲殻類の様に大きく開く。砲殲滅戦モード――横に広がった体躯に合わせて、リリィは大きく跨る様に足を開く。
「変形完了――ハーネスロック、スラスター展開角異常なし」
多少乗りにくいが、機体を安定させ全ての砲火を一斉に放つのであればこの状態がベストだ。FCSのモードを切替え、破壊すべき対象を次々に照準へと納めていく。
(ここにいるモノ達も、リリィと同じなのでしょうか――?)
目の前には戦いの跡か宇宙の残滓か、無機物の塊が壁の様に寄り集まっていた。自身は長き年月を経て意思を手に入れたヤドリガミ。幾度となく替わったかつての主は、戦いの記憶と紅百合の名をリリィに刻み付けて逝った。デブリには機動兵器や艦船だった物も見受けられる。それらにもきっと刻まれた記憶があるだろう。であれば、いずれはリリィと同じ様に――心と身体を手に入れるのだろうか。
(ここで何があったのか聞いてみたかったです――でも)
今はその可能性すら破壊する事が使命。飛散破片防御用バリアフィールド展開。スラスターコントロール正常、出力ミリタリー。
「目標、デブリ……フルブラスト!」
真紅の流星の如き滑らかな軌道で、スロットルを開放したドラグヴァンディルは身に纏う全ての武装を解き放つ。レールガンが岩を砕き、ミサイルが残骸を粉砕し、散らばった破片をビームガトリングガンが跡形も残さない。そしてビームキャノンの一閃が立ち塞がる尽くをなぎ払い、流星の通り道には最早塵一つ残る事はなかった。
「哨戒部隊の報告では、これで辺りの残骸はこれで一掃出来た筈」
先行した部隊が航路上の障害物を通知、これを払う事で遅滞無く航行し作戦を円滑に進めるのが目的だ。真っ新な空間となった漆黒に揺蕩い、リリィは機体を元に戻す。次のポイントは何処か――哨戒部隊の連絡を待つ間、紅百合は暫しの休息に入った。
「随分と派手にやってるな。こっちもまあ、数だけは多い――けど」
動かない的が相手なら、レッキスの機動性で一気に叩き潰す事は容易だ。エルトは周囲を漂う残骸の数々を一瞥し、投影された立体地図に軌道をマッピング、ロックオンした対象をすれ違い様に撃ち抜く簡単なお仕事。弾種選択、炸裂弾。滑腔砲固定完了。マニューバON――炎の尾を引いて鈍色の巨兵が漆黒を切り裂いて。砲を放つと同時にスラスターをカット、慣性を使い手近なデブリを足場にして跳躍、再び点火したスラスターが火を吐いて、すれ違いざまの巨岩を破壊。その衝撃で僅かにずれる軌道を読んで反転、残骸を蹴って次の獲物を狙う。
(――残り時間もあるし、あんまり丁寧にはやってられない)
故にエルトが取った手段は、残骸の中を跳ねる様に飛び回り、空間そのものを足場に、対峙した残骸だけを破壊する事で間断無く作業を進める方法。こうすれば推進剤の消費も減らせて一石二鳥、精密射撃でも全武装の開放でもなく、最小の行動で最大の戦果を得る方法だ。しかし。
(随分デカいデブリもあるもんだ……)
目の前には巡洋艦サイズの残骸が。こんな物滑腔砲で幾ら当てれば破壊出来るか……ならば、多少強引でも火力でごり押す。火力を上げる術は幾らでもあるんだ。だが手早くやるのなら――答えは一つ。
「電磁フィールド、展開」
エルトが滑らかにコンソールを叩けば、レッキスに備えられた正負の電磁レールが滑腔砲を包む様に展開される。
「弾体セット、目標正面……吹っ飛べ!」
そしてトリガーを引くと同時に、瞬間的に帯電した電磁レールが砲弾の運動エネルギーを倍加させる。雷が落ちた様な轟音が機体を軋ませ、放たれた雷は僅かな時の後、正面の残骸を文字通り粉々に砕いたのだ。
「この後整備や休憩の時間も必要なんだ。空き時間を作るためにてきぱきやってくぞ」
吹き飛ばされた破片をフィールドで弾きつつ、ぼそりと呟いたエルトは再びレッキスを疾しらせる。全ては新たな道を切り拓く為に。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
荒谷・ひかる
●
(自室で精霊さんと遊びながら)
うーん……この世界だと惑星環境から離れてるせいか、いまいち元気のない精霊さんが多いなぁ。
(該当:大地・炎・水・風・草木。氷は普通、雷も艦の近くなら元気)
逆に光と闇の精霊さんは元気だねぇ。
やっぱり宇宙の暗闇と、輝く恒星の光が力を分けてくれるのかな?
さてと、どうしよう。
物質分解波動なんか浴びたら、非実体の精霊さんはともかくわたしじゃひとたまりもないし……
うーん。やっぱりこれは宇宙っていう地形を活かすしかないかな。
精霊さんたち、ちょっと無理するけど大丈夫?
えっとね、お星さまの力をね……
(以下、精霊さんたちと作戦会議。彼らは喜んで協力してくれるそうな)
桐嶋・水之江
◆アドリブ連携歓迎◆
さて、私は科学者らしく楽しい対策会議に出席しましょうか
あの物質分解波動はある種の指向性超振動兵器に近いものかも
もう一度映像を見せて貰えないかしら?
ノイズ発生から通信途絶までの時間を確認したいの
これが波動から逃れられる最後の猶予期間になるかもね
空間ソナーの予備はあるのかしら?
あるなら猟兵さん達に持たせてあげた方が良いと思うわよ
感知したら遮蔽物で振動波を遮るか全速力で逃げるか
知覚を何に頼っているかにも依るけれど捕捉を振り切る手段があれば尚良いでしょうね
艦艇に大穴を開けられている惨状からして防御は効果が薄そうね
射程と射角も気になるところね
この映像からじゃ読み取るのは難しいかしら?
七篠・コガネ
あの、あの…実は僕
過去にクェーサービーストと戦った事があります
艦内のコンピューターに僕のメモリを接続させて
その時僕が見た映像記録を映し出します
このクラゲとタコを足したのがクェーサービーストですね
これから出会すだろう敵がこれと全く同じ性質の個体かは分かりませんが…
この時記録した敵個体の情報を話しておきます
と、僕はコンピューターに接続したままですので
そのまま記録ログの解析も進めましょうか【情報収集】
帝国製である僕のブレインコンピューターは
銀河帝国の記録ログと互換性ありますし
…えっと…恐れる必要はないんですよ
クェーサービーストは倒せる相手なんです
見出しましょうよ
この世界を生きる僕達の未来を
●会議は踊る
「あの、あの……」
薄暗い42号のブリーフィングルームに集ったのは七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)と桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)、そして42号の副長の三名だ。艦長は『頭の痛くなる話は任せた』と、副長に無茶振りをしてブリッジで粛々と航行の指揮を執っている。故にこの三名で対策方針を決めなければならない。そして三名が席に着くと同時に、まず口を開いたのは意外にもコガネだった。
「実は僕、過去にクェーサービーストと戦った事があります」
話の内容はこれからの戦に必ず役立つであろう、同種の怪物との戦闘記録。コガネは己の外部出力ポートにケーブルを差して、早速これまでの戦いをスクリーンに映し出す。
「このクラゲとタコを足した様なのがクェーサービーストですね」
伝えられた話通り、小惑星並みの全長に海洋生物めいた異形。その威容は余りにも悍ましく、醜悪な無数の触手が蠢きながら、それが凄まじい速度で彼方の船舶に向かい突進する姿が画面を覆いつくした。そして頭頂らしき部分の結晶体がチカチカと光れば、進路上の物体が無残にも名状しがたい何かに姿を変える。
「これから出会すだろう敵がこれと全く同じ性質の個体かは分かりませんが……」
その巨体を押し返さんと閃光が――猟兵達が放った力の奔流がぶつかって、そして消えて、再び光が放たれて――恐らくこれが物質分解波動とやらだろうか。間断なく放たれる不可視の超常は、猟兵達が結集させたそれすら容易に上回り、スクリーン上では幾度も、幾度も超常のぶつかり合いが繰り返されていた。
「――もう一度、最初から映像を見せて貰えないかしら?」
食い入るようにスクリーンを見ていた水之江がコガネに映像の頭出しを要求する。彼女自身もまた、他のクェーサービーストとの戦いを潜り抜けてきた猛者。この戦い、現場主義の科学者ほど頼もしい者はいない。自身が知りえた知識と記憶、コガネの映した記録、更に。
「それと、先の戦闘でシキシマが回収した映像もね」
更に、今回相対するであろう敵個体との戦闘情報もある。これらを統合すれば、一番厄介な物質分解波動への対策も立てられるであろうと、科学者の本能で判断したのだ。
「えっと、ノイズ発生から通信途絶までの時間を確認したいの。それが波動から逃れられる最後の猶予期間になるかもしれないし」
コガネの映像も、シキシマの映像も、不可視の超常が発現する寸前に決まって異音が周囲に響いていた。これこそが波動の予兆。見切れば躱す事だって不可能では無い筈。そうやって幾つもの知恵を重ねて、猟兵はこれまで数々の困難を覆してきたのだから。
「うーん……この世界だと惑星環境から離れてるせいか、いまいち元気のない精霊さんが多いなぁ」
一方、リモートで会議の様子を自室で見ながら、荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は非常に困っていた。ひかるの周囲で円を描く様に浮かび上がるのは精霊達。その精霊達の多くが活力を失っているのだ。恐らくは宇宙空間――自然の力が及ばぬ漆黒の空間が、惑星に根差したオーガニックな力の大半を引き出させずにいる為だろう。
「逆に光と闇の精霊さんは元気だねぇ。やっぱり宇宙の暗闇と、輝く恒星の光が力を分けてくれるのかな?」
ひかるの言う通り、光と闇の精霊はこれまで以上にその力の昂ぶりを見せている。原初の空間に近い特性の二つだ。今ならば普段以上の力を発揮出来るかもしれない。それに雷の精霊も、艦の近くにいる限りは普段通りの輝きを放っている。
「こうなったら……精霊さんたち、ちょっと無理するけど大丈夫?」
ひかるの考えは二つ。一つは光と闇の精霊の力で他の精霊を活性化させて、いつも通り戦う方法。しかしこの場合は自由に動ける反面、光と闇の精霊に掛かる負担が莫大なものになり、更に活性化された他の精霊達もどこまで戦えるか見当がつかない。そしてもう一つはこの艦の力を――甲板に備えられた電脳タレット、つまり電脳魔方陣の力を借りて、疑似的に自然環境を再現。艦の機能のブーストを雷の精霊が行って、他の精霊達の力を取り戻させる方法。この場合艦から動く事は出来なくなるが、精霊の力はより安定して発揮出来るだろう。それにここには増幅した力を放射する禁断の兵器があるらしい。かつてその力で、ロボット犬の群れと宇宙要塞を退治したとの事だ。
「みんなの力があれば物質分解も……うーん、何だかいけそうな気がするんだけどねー」
あと一押し、その答えを得るべく再び会議を覗き込む。議論は大分白熱している所だった。
「やはり、指向性のある音の波で対象を解析して、その進路上に分解波動を撃っている」
『ならばその波を打ち消せれば無効化出来るんじゃないか?』
「いえ、これまでの戦闘情報から波動は一か所より放たれるものでは無いようです……」
喧々諤々、分解波動の対処法の是非について意見が飛び交う。解析した映像からは物質分解波動を撃つ手前、対象を分解する為の組成解析を行う何かがノイズを発生させていると結論付けられた。つまりそのノイズを止めてしまえば波動は発生しない――所が、波動は一か所どころか、恐らく無数の触手の何れからも発生している可能性があると仮説が上がっていた。
「物質分解光線はその光の軌道を読めば回避出来るかもしれません。ですが、その光自体に対象を解析し分解振動を調整する機能があると思われます」
「つまり波動と違い一本で完結している訳だ。こいつも厄介だな」
『攻撃を一時的にでも耐えるには組成の違う装甲、フィールドを積層展開して凌ぐ案が提示されている。それならば何とか用意も出来るだろう。だが』
それだっていつまでも耐えられる訳ではない。現に複数の波動が照射されてしまえば、動きを止めた時点で終わりなのだ。
「――どちらにせよ、艦艇に大穴を開けられている惨状からして防御は効果が薄そうね」
水之江の言う通り、当てられてしまえば大穴を開けられるのは明白。足の遅い艦船は前に出ない方が良いだろう。
「それに射程と射角も気になるところね。この映像からじゃ読み取るのは難しいかしら?」
「恐らく、触手が動く範囲全てが射角になると思います……今、回収した敵艦のメモリを漁っていますが、同じ結論でした」
コガネは入出力ポートに回収した敵艦のメモリを差していた。口の規格さえ合えば走っているプログラムは同系統、エンコードなしで解析出来る分、必要な情報のみを即座に取り出せるのだ。
「分かったわ。それじゃ副長さん、空間ソナーの予備はあるかしら?」
コガネが導いた結論に意を決した風に、水之江が副長に尋ねた。
「あるなら猟兵さん達に持たせてあげた方が良いと思うわよ。きっと」
きっと、それがあるだけでも、波動を躱す猶予は生まれるだろうから。
「――あの物質分解波動がある種の指向性超振動兵器に近いものなら」
そして水之江が出した答えは、物質分解波動から逃れる術はただ一つ。
「聞こえたノイズから逃げる。その捕捉を振り切れば物質分解波動は届かないわ。だって指向性がある音は、波動は曲がらないから――避けるには、それしかない」
耐える手段、避ける手段、対峙する為に必要な情報はここに出揃った。
「違う物質かー……それだったら」
ひかるの思い付き。否、それはいつもやっている事。精霊の力で様々な物質を創生するのだ。それならばひかるの力で、波動を防ぐ事は出来るかもしれない。会議の映像を閉じて立ち上がる。やれる事、やるべき事を定める為に、ひかるはそっと部屋を後にした。
(……結局、圧倒する方法は分からずじまいでしたか。でも)
でも、僕達はそんな相手と何度も戦って――そして勝ってきた。
己の内にコガネは吐露する。決して諦める所ではないと。
(この記録も――銀河帝国も、抗っていたんだ)
その思いは自分達と同じだったのかもしれない。未知の世界への航海、蹂躙では無く冒険、皇帝陛下にしてみれば単なる覇道の妨げだったかもしれない。けれど。
「……えっと……恐れる必要はないんですよ」
不意にコガネが口を開いた。それはこの場にいる水之江や副長、更にはリモートで会議を見ている者達への呼びかける様に――ゆっくりと、力強く。
「クェーサービーストは倒せる相手なんです。だから」
見出しましょうよ、この世界を生きる僕達の未来を。
名も知らぬ先人達の想いを受けて、コガネは航海の成就を心より強く願った。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
シーザー・ゴールドマン
ふむ、物質分解波動ね。
記録を調査、其処から波動の種類、性質を見切る。
(世界知識×見切り)
『創造の魔力』でソレを再現。
そうしておいて、さらにそれの逆相の波動、相殺的干渉を可能とする波動パターンを構築しておく。
準備はこんなところかね。
後は気晴らしに宇宙に出て転移の障害となるデブリを適当に消滅させておきます。
ヘスティア・イクテュス
●【魚葉】
クェーサービーストね…
数度戦ったけど…あの波動は本当どうすればいいのかしら?
アベルを使って戦闘ログ等より対策を検討
波なら逆位相のをぶつけてかき消して無効化できないかしらね?
分子の結合をゼロにするなら複数の分子構造で重ねて?
もし、あれが食事を摂るなら間違えて分解、消しちゃわないように
彼らの分解に対応できたりしないかしら?流石にその辺りに転がってないわよね…
クェーサービーストを倒して、彼らの死体から対抗素材とか作れないかしら?
ふと、見るこのは(通信映像)
これの装甲も未知っていうか意味の分からない金属よね…
盾にならないかしら?分解?
月影・このは
●【魚葉】
船で余ってる鎧装騎兵用ジェットパックで再出撃
それではボクは船路確保のためにデブリの排除、ついでにヘスティアさんのアベルと繋げて偵察、情報の収集ですね
オーラエンジン、作業用出力へ
周囲に敵影無し
それでは作業開始です
クェーサービースト、オブリビオンとは違うんですよね?
どういう生態なんでしょう?
と作業片手間に思考を
あっヘスティアさんこのデブリ貴金属が含まれてますよ?
作業中感じる悪寒
センサー反応…?クェーサービーストが近づいてきたとかですかね?
響・夜姫
●
・POW(をメインに広く浅く?)
「ふぁいやー」
艦首を囲む様にサバーニャを展開、即席の追加砲台な感じで。ブリッジとやり取りしながらデブリや危険物を排除。
あまり艦からは離れない様に注意。
……分析とか探索も、できなくはないけど。
もっと得意な人がいるっぽいから、お任せ。
鉱物資源や燃料になるもののポイント、あるいはそのものがあれば。ついでに確保。
あとは対策の意見交換とか。
分解波動には。嵐の砲火でサバーニャを広域配置→分解されたら察知っていう、ピケットみたいにすることもできる。
「間に合うかどうかは、別だけど」
エネルギーであるバリアも分解するなら……強制的な劣化・減衰・昇華?
光学兵器や魔法は、どうだろ。
●燃える宇宙
「ふぁいやー」
声と共に岩塊が爆ぜる。42号の艦首周辺、十字架状の砲撃ドローンがその先端を包み込む様に配されて、進路を遮る数多のデブリをミラーボールの様に放たれた火線が、次々と塵へと変えていくのだ。
「……分析とか探索も、できなくはないけど」
もっと得意な人がいるっぽいから、お任せ。響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)はその艦首で腕を組んで漆黒の大海原を睥睨し、有象無象のデブリ群を焼き払う。幾ら安全な航路とはいえ、万が一想定外の接触事故など起きようものなら、作戦そのものが根底から瓦解する。遠くのデブリは仲間に任せて、夜姫は艦上から目につく物を片っ端から排除していたのだった。
「熱心だね。私も少しばかり、手伝おうか」
不意に声が――いつの間にか、真紅の美丈夫が夜姫の背後に立っている。
「何、試したい事が合ってね。気にせず続けたまえ」
「気にせずって、えー」
気になるわ。そんな夜姫の視線を意にも介さず、シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は自身を血の様な赤黒いオーラで包み、おもむろに指を鳴らした。
「えー……今の、何?」
瞬間、シーザーの目の前に浮かんでいた小さなデブリが、何かに飲み込まれる様に空間に消えたのだ。それはまるで、記録で見た怪物の超常の様であった。
「センサー反応……? クェーサービーストが近づいてきたとかですかね?」
借り物のジェットパックで再出撃した月影・このは(製造番号:RS-518-8-13-TUKIKAGE・f19303)は、不意に感じた悪寒に42号の方を見る。
『大丈夫ですこのは様。恐らく猟兵の誰かが『同じ事』をしたのでしょう』
「同じ事って……あの波動?」
このはからやや離れた地点、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)はサポートAIティンク・アベルの想像外の回答に舌を巻いた。星の瞬きは残骸に隠れ、辺りは漆黒の闇に包まれている。そんな中にヘスティアとこのははアベルとリンクした状態で作業を続けていた。42号の進路上のデブリを排除すべく、先発と42号の中間辺りで、警戒を兼ねた残骸排除作業に勤しんでいる。
『はい。微弱ですが、以前の戦闘で感じたものと近似の波形パターンが計測されました』
以前の戦闘――既に幾度かクェーサービーストと交戦したヘスティアは、アベルにこれまでの戦闘データを保存していた。それをもって対策を検討しつつ、その情報を基に防空警戒の任に就いていた。だからこそ、物質分解波動に近似したその波を捉え、クェーサービーストの反応と誤認しかけたのだ。
「器用な人もいるものね――どちらにせよ、あの波動は本当どうすればいいのかしら?」
『現在艦内の対策会議では、防御と回避についての手段を講じている所ですね』
しかし根本的な、波動の無効化についての回答は出てきていない。
「うーん……波なら逆位相のをぶつけてかき消して無効化できないかしらね?」
『理論上可能でしょうが、どうやって対象の位相を確認するので?』
当たれば消されてしまうのだ。それに会議の発言によれば、いつも同じ種類の波動を放っている訳でもないらしい。要は人の声も一種類ではない様なものだろう。可能だとしても、複数種の逆位相波長を正確に対象へぶつけ続けなければならない。それは考えただけでも、骨が折れそうな作業だった。
「そもそもクェーサービースト、オブリビオンとは違うんですよね? どういう生態なんでしょう?」
ヘスティアとアベルの間にこのはが割って入る。このはの言う通り、相手は未知の生物なのか、オブリビオンなのか……その辺りもはっきりとしない。
『その点についても見解は割れていますね。それがオブリビオンでは無い証明は、まだ成されていないとか――』
「どちらにせよユーベルコードが効くんだったら何でもいいわよ。倒した後にどこへ消えるかは、今考えるべき事じゃないわ」
それよりも奴をどう倒すか。物質分解波動だって、分子結合をゼロにするなら複数の構造を重ねれば直ちに破壊される事も無いんじゃない? とアベルに尋ねる。
「そうすればあの分解に対応出来たりしないかしら? まあ流石にそんな都合のいいものは転がって……」
「ヘスティアさん、妙な金属反応があります!」
急にこのはが大声をあげて、反応があった方角へスラスターを噴かす。その先にあった物は、人間大の大きさの歪な形をした板の様な何かだった。
「これ……多分、クェーサービーストの食べ残しじゃないでしょうか」
まず艦船の装甲にしては薄すぎる事。そして何より微妙に柔らかい。まるで一度食べて吐き出したみたいだ。このはがその物体の端を掴むと、形状はぐにゃりと曲がって僅かに伸びる。
『分子結合に未知の揺らぎが計測出来ますね。金属であり、金属ではない』
アベルが即席の解析結果を報告する。それは恐らく、物質の分解に巻き込まれ、別の何かになりかけた複数の素材が混ざり合った物体。
『確かに――これならば多少、耐えられるかもしれません』
一度崩壊した分子結合が、偶然分子を振動させる波動に飲まれて、同じ様な状態になっていた物質同士で強引に結合させられそうになっているのだ。だがその代償に、不安定な形状を保てるのは持って十時間程度だろうとアベルは予測した。
「それじゃあボクは作業に戻ります。オーラエンジン、作業用出力へ」
その異物をヘスティアに渡し、このははそそくさと作業に戻っていく。もしかしたら同じような物質が、まだどこかに眠っているかもしれない。
「多少、ねぇ……」
それでも、分解波動を少しは無効化出来るなら、何か役に立つかもしれない。それよりも、とヘスティアは何かを思いついた風に再びアベルに尋ねた。
「ねえ、クェーサービースト自体から対抗素材って作れないかしら?」
「これかい? 物質分解波動さ」
42号艦首付近、シーザーが突然放った未知の攻撃について夜姫が尋ねる。
「中々に厄介な相手だけど、事象が発現している以上――どうにかなるだろう」
手を伸ばし、頭の中で複雑な魔術式を組み立てる。物質の分子結合の破壊、存在そのものの否定では無く、変容。
「その正体は観測による解析と、対応」
実にシンプルな内容だ。であればそれと同じ事を再現すればいい。問題はどうやって観測を――それが、ノイズの正体か。
「つまり、イルカの類と一緒――音波をぶつけて、返ってきた反応を解析する」
ヘロドトスの戦いの後、宇宙空間での会話を可能とする超技術が齎された。それだけで宇宙の正体が全て詳らかになった訳ではないが、宇宙にはそういった波を伝える何かが満ちていると考えれば、少なくともこの仮説は証明出来るだろう。
「そして、こうすればいい」
再び真紅の闘気を纏わせてパチンと指を鳴らす。音には指向性を、発現している術式には返ってくる反応を読み取って、対象を解析する術を。それから――。
「これで構造を崩壊させる事が出来る訳だ」
分解波動――指向性を持たせた破壊の調べを同じ所に目掛けて打ち込む。宇宙を満たす未知の物質に乗せて放たれたその音が、届いた相手を無へと帰すのだ。
「それが、物質分解波動がそれと同じものなら」
夜姫は考えた。サバーニャ――十字架状の砲撃ドローンを広域に配置すれば、目に見えなくても進路は分かる。艦首にまとわりついた十字架を一斉にばらけさせ、自分達を囲むように配置させてみた。それなりに頑丈で複雑な機械だ。一撃で早々落とされる事も無いだろう。それにセンサも付いている。異音を察知する事だって出来る筈だ。
「こうすれば、波動が当たればピケットみたいにする事も出来る、と思う」
「うん。だがそれが無くなれば君の威力は減ってしまうだろう」
それはどう補う? とシーザーが問う。
「それは、十字架は増やす事が出来るから……少しくらいなら」
夜姫の超常なら相当数の十字架を複製する事が出来る。それをもってすれば――敵意を持った物体ならばクェーサービーストもそれを破壊すべく動いてくるだろう。
「――間に合うかどうかは、別だけど」
如何なる状況になるかは今の時点では想像も出来ない。あくまで囮、それに。
「エネルギーであるバリアも分解するなら……強制的な劣化・減衰・昇華?」
ならば光学兵器や魔法は、どうだろ。と、今度は夜姫からシーザーに問う。
「そうだね、どちらも影響はあると思うよ。ただ」
ただ会議でも言及されていた様に、連続して複数種の波動を撃ってくる可能性が高い。対峙したらこちらも、あらゆる攻撃を間断なく撃ち続ける――それが最も、効果の高い攻撃方法だろうと答えを返した。
「成程……だいたい分かった」
そう言うと夜姫は再び漆黒と対峙する。続いて放つのはサバーニャを使った連続攻撃、様々な種類の砲火を混ぜた複合攻撃だ。
「だったらこうして乱れ撃つ、ぜー」
合図と共にデブリが消し飛ぶ。光条と火線が入り乱れて、進路上の物体を次々と破壊している。
「中々器用じゃないか」
続けてシーザーが指を鳴らす。
放たれた波動が静寂を切り裂いて、砕かれた破片ごとデブリを焼失させた。
準備は整いつつある。超常対超常の決戦の時も近い。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ダビング・レコーズ
クェーサービーストとの会敵予想時刻は12時間後ですか
諸準備や補給及び整備、休息に要する時間を鑑みると余裕があるとは言えないかも知れません
限られた時間で最善を尽くしましょう
【SPD・全歓迎】
進攻ルート上の偵察及び安全確保の任務に当たります
先に交戦した哨戒艦隊が最後の残存勢力とは限りません
クェーサービーストとの戦闘中に遭遇すれば予期せぬ乱戦を強いられる懸念があります
予想される進攻ルートを直接航行し状況を確認します
不意打ちを想定し守護防衛モードを起動
出力を増強したEMフィールドを展開しておきます
航行中は敢えて目立つような高速機動を取り、迅速に偵察を行いつつ潜んでいる敵を誘き出します
リア・ファル
●
共闘歓迎
イルダーナで哨戒しつつ、データ整理
クェーサービーストとの交戦経験はある
その時のデータも整理して、対策を考えてみようか?
ともかく物質分解能力がキモだよね
先制攻撃完全回避とはいかないだろうし
猟兵の皆のUCを参考にするのはいい手かも
時を操る能力なら、被弾前の状態に戻す?とか
光線なら、反射するって言う手もあるか
分解波動なら……中和相殺する波動パターンを解析できれば、
無効化できるかも……?
(ちょっと演算してみる)
ボクのUC【凪の潮騒】なら、そも分解が始まらないだろうし、
中和波動パターンに近似してないかなあ?
やれやれ纏まらないね
もうひとっ走りして、気持ちを切り替えようか
ガーネット・グレイローズ
●
引き続き【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】で「灰薔薇艦隊」を編成し、未踏宙域の探索と哨戒活動を並行して行う。
まずは、物質分解波動による奇襲に備えるのが最優先だ。
灰薔薇艦隊全艦に先の戦闘で得たノイズの音声データを送信し、AI間で
情報を共有させる。
「ヤツはあの巨体でありながら、どこからともなく現れる。
些細な変化も見逃すな。地形データを収集し、シキシマと42号にも送れ」
デブリをビームで破砕して航路を作り、危険な宇宙生物が潜んでいないか
確認しながら航行。
「位相をずらしているのか、それとも光学迷彩か……手品の種はわからんが、とにかくこちらは相手の領域に入った瞬間に戦闘に移れるようにしなければ」
●放たれた矢
「敵正反応確認――攻撃開始」
白銀の装甲が漆黒の空間を飛翔する。青白い炎が弧を描き、デブリの裏側に仕込まれた銀河帝国の偵察プローブを瞬く間に破壊する。爆光が辺りを彩り、その照り返しが装甲に深く陰影を刻み込んだ。
「銀河帝国の手がここまで延びていたとは」
ダビング・レコーズ(RS01・f12341)は敢えて目立つような高速機動を取り、不意打ちを想定して紫電を纏い――全身に強大なエネルギーフィールドを張り巡らせて、来たるべき交戦に備えていた。
「デブリの排除だけでは済みませんでしたね」
その後ろからイルダーナ――リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が愛機に跨りダビングを追いすがった。伸びたかな白いラインを漆黒に描いて、イルダーナは更に早く空間を飛翔する。
「まさか追ってはこないでしょうが、念には念を――ですね」
先に交戦した敵以外、あるいはそれらが仕込んだ罠があるかもしれないと、デブリの排除の前に先行して警戒と索敵を行う。現にそれらのおかげで、今に至るまで致命的なアクシデントに見舞われてはいない。
「そうだ、油断は出来ん。倒した相手とはいえ、奴らの恐ろしさは我々が一番よく知っている」
光条の一閃と共に響いたのはガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)の声。再び召喚した『灰薔薇艦隊』を率いて、未踏宙域の探索と哨戒活動を並行して行っていた。三名は、銀河帝国が仕掛けた偵察プローブを始め、空間機雷、無人砲台などといった数々の罠を事前に見つけ、排除していたのだ。残骸よりも小さく、デブリ破壊だけでは見落としかねないそれらを確実に叩くことで、これまで排除作業も航行も安全に行われてきたのだった。
「クェーサービーストとの交戦経験はありますけど、さて――どうしましょう」
航路の終点近く、一通りの障害を排除し、後は42号がデブリ帯を抜ければ合流出来る。それまでは先駆けとして、この地点で引き続き警戒を続けざるを得ない。後はクェーサービーストだけ……三名とも既に幾度かの交戦経験はあるが、そのどれもが同じという訳ではない。ダビングが口火を切ったこの話は、必然的に事前に提示された例の能力が話題となった。
「物質分解攻撃、時を操る能力かな?」
リアは言う。物質の構造や組成を巻き戻せれば、確かに分解も可能だろう。だが映像は大きく穴が開いていた。それは分解では無く、どう見ても破壊――巻き戻しだけでは説明がつかない事象だ。
「いや、あれは分子構造そのものを変化させるものだろう」
ガーネットが返す。未だガーネットの僚艦は周辺を偵察している――ちょっとやそっとの変化でも、この布陣ならば直に気づくだろう。だからこそ懸念を払拭すべく、積極的に話に参加した。共有したのはシキシマから提供されたノイズの情報。穴が開けられる前には必ず、異音が聞こえたというのだ。
「この音と共に分解されるのであれば、先ずは距離を取って備えるのが確実でしょう。ですが」
遠距離からの攻撃そのものが分解されては元も子もない。ダビングの懸念はもっともだった。ならば、とリアが対案を提示する。
「うん。分解波動なら……中和相殺する波動パターンを解析できれば、無効化できるかも……?」
それこそがリアの超常。対象の固有振動数について解析し、その共鳴波を己から放つ事が出来る。波や振動が相手ならば、この力で相殺が――そしてそのまま、動きを封じる事すら出来るかもしれない。しかし。
「……難しいね、ある意味こんにゃくと鋼鉄を同時に『無かった事』にする様な相手だ。こちらの装備品の構造パターンに合わせて放たれる分解波動を中和するとなれば」
対象を止めることは可能だろう。しかし刻々と変化する物質分解波動そのものを相殺する事……それは想像以上の難題だった。リアが導き出した結論、それは可能であるが容易ではない、だった。
「少なくともボクが100人は必要だ」
猟兵の攻撃や装備は千差万別、それらに合わせた分解波動を自在に放つならば、それに対して共鳴波を生成しなければならない。全ての攻撃に対しカウンターを発生させるとなれば、相応の数が必要になったのだ。
「それにヤツはあの巨体でありながら、どこからともなく現れる」
そしてガーネットの懸念――これまでの交戦情報から、奴は何時如何なる場所へでも現れる可能性がある。それこそが物質分解波動の鍵だとしたら……。
「ヤツ自体が、その存在を自在に変容させられるのかもしれんな」
そうなれば、完全なカウンターを用意する事など不可能に近い。そしてその状況は今この時ですら変わらないのである。
「――そうか。些細な変化も見逃すな。地形データを収集し、全ての友軍にも送れ」 ノイズの情報から僚艦のAIが警報を鳴らした。同種の波動を検出――だがそれは、仲間のが同じ事をした為だった。むしろ恐れる必要など無い、頼もしい限りだ。警戒を厳に引き続きの哨戒を指示すると、ガーネットは再び話に戻る。
「位相をずらしているのか、それとも光学迷彩か……手品の種はわからんが、とにかくこちらが相手の領域に入った瞬間に戦闘に移れるようにしなければ」
だからこそ先んじて見つける必要がある。後出しでは遅いのだ――必ず先制して、圧倒しなければ。その事は既に同種との戦いを繰り返した三名だからこそ身をもって知っている。
「――やれやれ纏まらないね。もうひとっ走りして、気持ちを切り替えようか」
やはり一筋縄ではいかない相手に嘆息し、リアはイルダーナのスロットルに手を掛ける。もう少し先の方まで足を延ばして、確実に先制を叩き込んでやろうと息込んだ時、不意にダビングがリアを制した。
「リア様、どうやらそれには及ばないみたいです」
ダビングの視線の先――漆黒の宇宙、その奥で星が一瞬瞬いて、消えた。間違いない。23分前にはあんなモノ存在すらしなかった。記録映像と照合――不一致。そして僅かながら、漆黒のデブリ帯から星明りが漏れる。
「42号、こちらダビング・レコード。敵性体の存在を検知」
当機の哨戒活動より10時間と30分が経過、想定遭遇時刻まで残り70分。諸準備や補給及び整備、休息に要する時間を鑑みると余裕があるとは言える状態では無かったが、果たして我々は間に合ったのだろうか。
再び妖の星が瞬いた。その光は徐々に強くなり、明らかにこちらへ近付いてきている。気付かれているのだろうか? 違う、今は迷っている場合などではない。この限られた時間で皆が最善を尽くした……後は戦うだけだ。
敵性体照合開始――ダビングのメモリにこれまでの戦いの記憶が走り、そして、災厄の記録が呼び起こされた。
「照合完了――敵名、クェーサービースト・キエリビウムJOX」
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『クェーサービースト・キエリビウムJOX』
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POW : JOXクリアビス
【物質分解波動を帯びた触手による殴打】が命中した対象に対し、高威力高命中の【触手を巻き付けての圧壊攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : JOXストリミド
【高速回転しながら、物質分解波動の連射】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ : JOXリガリアム
【触手】を向けた対象に、【頭部の水晶体から放たれる物質分解光線】でダメージを与える。命中率が高い。
イラスト:傘魚
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●深淵へ至る門
海には美しい魔物が棲むという。その魔物の歌声を聴いた船は沈み、濁流に呑まれ藻屑と化すだろうと言い伝えられた。それは宇宙の海でも同じか――違うとすればその魔物は余りにも醜悪で、悍ましい。
『先行した猟兵より報告! 敵クェーサービースト捕捉!』
けたたましく警報音が響く42号のブリッジ。正面スクリーンには巨大な威容が最大望遠で映し出され、続々と上がる観測班の報告に対し艦長がゆっくりと返答する。
『総員、甲種戦闘配置。それと』
そのまま電脳班直通のホットラインを開き、珍しく静かに、淡々と指示を出した。
『タレット全開放、防御フィールド多層展開。こちらからは絶対に仕掛けるな』
この艦はあくまで普通の船だ。超常同士がぶつかり合う最前線に出張って、無事でいられる保証は無い。だからこそ、せめて帰る場所としての役目を果たす為に――本来であれば仇の一つでも取り返しに行きたい所だったが、あえて闘志は内に秘め、淡々と己の成すべきを成さんとする。そして。
『イエーガー、アレを見てどう思う?』
ふと艦長が猟兵へ尋ねる。アレ――ブリッジの正面スクリーンに映る、巨大な悍ましい怪物。そのサイズは優に宇宙要塞並みの大きさを誇り、水晶めいた頭頂がまるでこちらを探る様に、チカチカと明滅を繰り返していた。どう見ても尋常ではない敵だ。猟兵でなければ果たして、対抗する事すら敵わないのではないかと。
『俺はアレを見て――本当は人類は雄飛しちゃいけねえ、なんて思っちまってな』
そして艦長からは意外な程、弱気な答えが返ってきた。確かに強大なあの怪物の姿を見てしまえば、雄飛――外宇宙に新たな母星を探す事なんて出来はしない、そう考えてしまうのも分からなくはなかった。
『で、皇帝も案外……そんな事を考えちまったのかと思った訳よ』
あんな化け物、人類をその先へ進ませない為に用意されてるとしか思えない様な――醜悪で、強大で、絶対的な存在。そんな星の番人の様な怪物が、これから戦う相手になるのだ。オブリビオンになる前の銀河皇帝は、これを乗り越える事が叶わぬと悟り、内宇宙で覇道を推し進めたのだろうか。あるいはこれを倒す為に力を蓄えんとして……その真意は最早、闇の中だ。だが我々にはまだ光がある。
『だから、ワープドライブなんて力を手に入れた、その意味をな――』
スターゲイザーの一族に伝わった星と星を結ぶ事すら可能にするユーベルコードは、何故人類に齎されたのか。それはここより遠くへ、遥か先へと進む為では無いのだろうか。そんな思考が脳裏を過る。しかし艦長はそれ以上――考える事を止めた。
『――止めだ。今ここで出す答えじゃねえ。旅は始まったばかりなんだ』
今やるべき、成すべき事はあの怪物を、クェーサービーストを倒す事。
『頼むぞイエーガー、あの気味悪い化け物を……』
いつも通りやっつけてくれ。仲間の仇と俺達の未来、そして人類の生存を賭けて。
最後の戦いが、始まる。
※プレイングは10/23(水)8:31より受付け、初回失効に合わせて締切いたします。
※戦艦42号は後退していますが、プレイング次第で援護砲撃くらいは致します。
ベリザリオ・ルナセルウス(サポート)
人々を救う事、未来を蝕む者を倒す事は責務ですが、オブリビオンにも救いが訪れる事を願ってやみません
オブリビオンが救われる世になれば大切な織久も安らげるかもしれませんから
救助活動や傷の治療は得意です。体の傷を癒し、心の傷も音楽によって癒しましょう
失せ物探しや動物も対象にできる情報収集で探索・調査も行えます。鈴蘭の嵐で花弁の流れや光の屈折率を変えてのカモフラージュの見破りもお任せください
仲間と連携しての戦いこそ私の真価が発揮できます
味方を鼓舞し、援護する事で敵を挑発して引き付け、味方を守る
より強力、広範囲の攻撃なら無敵要塞で庇います
剣と盾で攻撃を防ぎ、敵の武器を払い、味方が攻撃できる隙を作りましょう
ウォーヘッド・ラムダ(サポート)
一人称、二人称、性格等はプロフィールを参照。
■戦闘行動
敵への接近、または敵からの攻撃回避は装備『フライトブースター』『ダッシュブースター』を使用しての回避行動。
防御に関しては装備『アサルトヴェール』>『重厚シールド』>『超重装甲』の優先順位での防御行動。
攻撃に関しては『ASMー7』『LLS-3』をメインにしつつ、他装備も使用。
強襲用ってことで自分への多少の被害が承知済み。
他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。
依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動は無し。
また、"本目的に関係ない"NPC民間人への攻撃行動は無し。(やむを得ない牽制・威嚇射撃は有り)
あとはおまかせです。
アドリブ歓迎
響・夜姫
なるほど、つまりソリタリーなウェーブ。
観測波を妨害、あるいは攪乱できれば。分解されない?
●
最初から嵐の砲火を使用。
16門×52基をクエーサー以下略を基点に扇状に配置。
分解波動の目視用目印にする。
「やらないよりは、まし」
そしてそのまま攻撃もする。いつもの【一斉発射/2回攻撃/範囲攻撃】。
なんなら何度もおかわりで嵐の砲火を使ってもいい。
物量はじゃすてぃす。
【援護射撃】で何か誘爆させ続け、観測波を妨害するとかもしてみる。
「問題はー。観測波の結果、それも無数の対象のものを即座に反映するその処理速度」
んー。
攻撃は最大の防御っていうし。攻撃あるのみ、かなー。
美味しくなさそうだし。消し飛ばしてもいいかー。
●嗤う怪物
『クェーサービースト、更に加速! このままでは!』
42号の正面スクリーンにはクェーサービーストの威容とその現在地が、リアルタイムで表示されていた。その進行速度が徐々に、早まっているのだ。
『イエーガーは、猟兵はどうなってる!?』
猟兵達はそれぞれが怪物に対抗すべく、あらゆる手段を仕込んでいた。だが皆が皆、直ちに出撃できる状態ではない。
『正体不明の機影が接近!』
続けてレーダー手の悲鳴がブリッジに響く。絶望的な状況で更に現れたのは、果たして――。
「なるほど、つまりソリタリーなウェーブ」
観測波を妨害、あるいは攪乱できれば。分解されない? 唯一前衛で戦闘準備を完了した響・夜姫(真冬の月の夢・f11389)は、己の仮説を基に陣を構築する。今戦えるのは私だけ。彼女が持つ十字架状の浮遊砲台――サバーニャを16基、怪物の進路上に大きく広げて配置した。
「やらないよりは、まし」
艦船や機動兵器と違いあくまで手持ちの武装。迅速に配置されたそれらが、更に夜姫の超常を受けて、その数を総勢800を超える膨大な量の砲門へと変貌させた。
「物量はじゃすてぃす……!」
一つ一つは小さくても、圧倒的な手数で牽制すれば敵の攻撃を防げる――しかし、そうはならなかった。相手の数、物質分解波動を放つ触手の数も、それらに匹敵するくらい多かったのだ。大小様々な形が蠢いて、一斉に悲鳴のような不協和音を空間に向けて放ったのだ。
「範囲が――このままじゃ!」
直後、不可視の波動が空間を埋め尽くす。音もなく穿たれ、爆発音すら飲み込んで、全てを無に帰す怪物の咆哮が十字架を『無かった事』に変えていき――その波動が夜姫を包み込もうとしたその時、巨大な黒い影が小柄な夜姫を掬い上げ、炎の尾を引いてその場から退いたのだ。
「待たせたな麗しき姫――うん、もう少し大きければ」
「あ゛!?」
厳めしい装いとは裏腹に軽口を――緊急の援護要請を受けて戦場に舞い降りたウォーヘッド・ラムダ(強襲用試作実験機・f18372)は、メインカメラの解析結果を報告すると、睨み返す夜姫に軽く手を振って『それでも、もう大丈夫だ』と健在をアピールする。
「ふざけている場合ではありません。遊撃部隊、これより援護に入ります」
一緒に現れたのは対照的な美しき白の天使――ベリザリオ・ルナセルウス(この行いは贖罪のために・f11970)の真面目な物言いに肩をすくめ、ラムダもそれに続く。
「うむ……メインシステム100%稼働、本機も同じく」
そう、猟兵は一人ではない。あの怪物の様に、たった一人で宇宙を蹂躙する存在とは根本が違うのだ。一つ目の策が通じぬのなら二つ目、三つ目――勝利するまで、その剣を振るえばいい。反撃が始まった。
「問題はー。観測波の結果、それも無数の対象のものを即座に反映するその処理速度」
先程展開した複数種のサバーニャも即座に解析され、進路を遮る大多数が無力化された。しかし裏を返せば、進路以外はその波動が到達する見込みは無い。狙うとすれば勝機はそこにある。
「このノイズが観測波、その後に本命が来ると」
そうだよ、と夜姫が返す。彼らと違い十分な情報を基に対策を立ててきた。だからこそ一度の失敗くらいで挫ける様なタマではない。
「でしたら一つ、案があります」
そう言うとべリザリオが前に出て、怪物に見つかる様にあえてその姿を進路上に晒す。
「我が牙よ舞い上がれ! 悪しき尽くを穿つ為に!」
両の手を広げて繰り出すのは、己が武器を変異させた鈴蘭の花。顕現した無数の花弁が戦場を覆い、更に。
「成程。だったら……虚数物質解放。選択虚数軸・複製……もう一度!」
夜姫が再びサバーニャを複製し進路上へと配置する。二人の超常が合わさって、まるで怪物を檻の中へと閉じ込める様に広がったそれらを砕くべく、物質分解波動は怪音を響かせながら迫る無音の殺意をばらまいて、あるいは破壊の光条を放ちつつ、猟兵達の本陣へと続けて迫った。しかしそれこそが二人の狙い――圧倒的な数の超常で進路を囲み、こちらの本命を隠し通す。だが使えるのは一度きり、その一度に全てを賭けて。
「オーバーブースト――駆け抜ける!」
怪物が砲台と花弁を払った直後、隠れる様にその背後で控えていたラムダが全スラスターを点火――飛翔と加速の為の炎を一方向に集束させて、放たれた漆黒の弾丸は瞬く間に怪物の懐へと迫った。
「間に合え!」
僅かに遅れそれに気づいた怪物が触手を振るう。触れればたちまち圧殺――そして分解されてしまう。そうはさせぬと光剣と機関銃が行く手を遮る大小様々なそれを退けて、ラムダは遂に怪物の触手の根元へと辿り着く。その威容は想像以上――接近して詳細に解析すれば、恐らく全長は25km、聞いた通り小惑星並みの大きさだ。だが、それがどうした。
『――深刻なシステムエラーが発生してイマす。直ちにシステムを停止シテくださイ』
瞬間、ラムダを乗っ取った超常のシステムが視界を赤く明滅させて、そして。
『――警告、火器管制システムが侵食されてイマす。直ちに武装をパージシテくださイ』
「断る!」
咆哮一閃、背負った大小様々な回転刃を有する巨大な剣山の様なチェーンソーを二振り、両腕と一体化させて振り抜いた。同時にオーバーロードしたジェネレーターの莫大な出力がエネルギーフィールドを最大稼働、津波の様に乱れた波長が分解波動を退けて、必殺の一撃が怪物へと叩き込まれた。
「それじゃあ、こっちも」
夜姫は囮としてばらまいたサバーニャを引き寄せて、まるで魚群の様に集結したそれらが巨大な砲塔を形作る。
「手伝いましょう。支える事は苦手ではありませんから」
既に三度の超常顕現、疲労の余りふらつく夜姫をべリザリオが支え、その手をそっと夜姫の背に当てる。じんわりと掌から放たれた柔らかな光が、少しずつ夜姫のダメージを取り除いて――そして必殺の砲がその牙を怪物の方へと向けた。
「集束、圧縮――解放」
夜姫が唱えると共に巨砲が火を噴く。撒き散らされる不協和音を必殺の光条が塗り潰し、怪物に直撃したそれが猟兵との間に何もない空間を回廊の様に出現させる。ラムダに気を取られた僅かな隙、夜姫の放った一撃は運良く分解される事無く、べリザリオの支援もあって正確に怪物へ一撃を食らわせたのだ。
「ラムダ君、退路はここに!」
べリザリオが叫ぶ。このまま怪物の中で戦っていれば、やがては反撃を食らうだろう。だがラムダの攻撃は触手の一房を文字通り千切り落とし、夜姫の一撃は怪物まで確実に到達した。
「……コース確認、脱出」
だからこそ今は退くべき。仲間はまだ大勢いる――自分たちの攻撃がこの様に通用した。ならば続く仲間も同じ、この怪物は倒せない相手じゃない。
「美味しくなさそうだし。消し飛ばしてもいい」
ぼそりと夜姫が呟く。触手は人類の敵なのだ――慈悲は無い。
「ええ、仲間の準備も整ったでしょう。私達の仕事はここまで」
三人が稼いだ時間は僅かでも、それが齎した結果は計り知れない。フルパワーで稼働し鋒鋩の体のラムダの手を引いて、三人は前線から退いた。
反撃は、ここからだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
相馬・雷光
ま、気持ちは分かんなくもないけどさ、じゃあアレを用意したのって誰? 神さま?
神さまならもっとこう……天使とか綺麗系用意してくれないかしら
どう見ても邪神側じゃん、あのデザイン
電脳タレット準備OK
今回はデブリを足場にするわ、位置情報を送ってくれる?(地形の利用・ロープワーク)
それじゃ――行くわよ!
ブラスターで雷撃弾(属性攻撃)を撃ちまくって触手を迎撃!
触ったら分解なんてヤバい能力なら、遠距離から雷撃よ!(スナイパー)
キリがないわね、何本生えてんのよ!(乱れ撃ち・制圧射撃)
デブリを飛び移りながら継戦(ジャンプ)
あの水晶体って明らかにコアとかそういう雰囲気よね
【全力魔法】の【帝釈天降魔砲】でぶっ叩く!
リリィ・ドラグヴァンディル
▶︎任務目標
クェーサービーストの打倒…任務了解…目標を特Sクラスの脅威と断定…ドラグヴァンディル全機能解放…!
▶︎使用UCと戦法
機体ドラグヴァンディルに搭乗して出撃。
「全武装フルオープン、出し惜しみは無しです」
バリアフィールド【オーラ防御】を展開…肩部レールガン、右腕部ビームキャノン、左腕部ビームガトリングガン、腰部6連ミサイルを連携精密狙撃機能【援護射撃・スナイパー】にてロックオン、全武装フルバースト【一斉発射】による牽制を開始。
「脳波同調…ビット、射出をします」
続けてUC【BEYOND THE TIME】によるビット展開を開始、【空中戦】での高機動を行いながら集中攻撃。
▶︎アドリブ歓迎
ヘスティア・イクテュス
●【魚葉】
のんきな事言ってないで用意なさい
分解されるわよこのは
ワイヤーをこのはのジェットパックに連結、
まだ移動不慣れでしょうし、緊急回避時はこっちで引っ張れるようにね
空間ソナーは良好かしらアベル?
数機のフェアリーズとタロスを先行、分解波動対策に、分解されたら泣くわよ高いんだからね!それ!
触手と光線の予測も頼むわよアベル【情報収集】
ティターニアでフルブーストで攻撃を掻い潜って接敵
最悪、このはの盾とタロスのバリアを重ねて【オーラ防御】波動を耐えて
ミスティルテイン、ブラストーモード!
マイクロミサイルも合わせて【一斉発射】!
そういえばあの食べ残し?、やっぱり売れるかしら?
月影・このは
●【魚葉】
クェーサービースト、初めて見ましたけど大きいですね~
対ヴィラン用戦闘ロボなボクとしましては大型な敵、少し胸が躍ります
船から借りたジェットパック装着、宙間戦闘用意はバッチしです!
クェーサービーストの食べ残し?を盾にいざ出陣!
触手、光線はアベルさんからもたらされる情報を元に回避
対象、星の脅威と判定、封印兵装を解除します
うっ、一瞬意識が…あれ?
射程距離まで近づいたら両手を腰横辺りで据え
さっそく何故か使えるようになったブラスターを!
エルト・ドーントレス
連携・アドリブ歓迎
まぁ、あれと戦いたくないってのはわかるけど、それじゃ地に足の着いた暮らしは手に入らないんだよ
何より大地に暮らす安心感は絶大だし、この世界でそれを探し求める意味はあるんじゃないかな
そう思わなきゃこんな危険なことやらないし
物質分解波動への対策は確立してきたけど、あの巨体だけでも脅威なんだよな
触手や光線をかいくぐって接近しなきゃ有効打は与えられない
ってことで俺が突入口を拓くから誰か続いてくれない?
UCを発動して突撃、多少強引でも触手をぶち抜いて直進し頭部に接近する
一度足を止めたらじり貧になる以上、ブースト全開でぶっちぎるしかない
案外体内に入り込んでた方が光線がなくて安全だったりして
●宇宙駆ける稲妻
「ま、気持ちは分かんなくもないけどさ、じゃあアレを用意したのって誰? 神さま?」
相馬・雷光(雷霆の降魔忍・f14459)は42号の甲板上で、禍々しく輝く遠くの異形を見据えて呟いた。
「神さまならもっとこう……天使とか綺麗系用意してくれないかしら。どう見ても邪神側じゃん、あのデザイン」
邪神? 傍らの掌帆長が不思議そうに雷光を見返す。邪神――別の世界のオブリビオンの俗称、確かにその名こそ、目の前の異形には相応しく思える。
「こっちの話さね。まぁ、あれと戦いたくないってのはわかるけど、それじゃ地に足の着いた暮らしは手に入らないんだよ」
レッキスを纏い現れたエルト・ドーントレス(灰色の雷光・f14009)が、掌帆長に説明しつつ、雷光に返して――補給は完了、重装がデッキを僅かに軋ませながら、同じく遠くに輝く巨大な怪物をセンサに捉えた。
「何より大地に暮らす安心感は絶大だし、この世界でそれを探し求める意味はあるんじゃないかな」
だからこそ、猟兵となりそれを知った自分に出来る事は……一人でも多くの同胞が、安心して暮らせる大地を手に入れる為に、全力を尽くす事だ。
「――そう思わなきゃこんな危険なことやらないし」
だからこそ、内に秘めたる闘志は誰よりも熱く。外宇宙への旅立ちを邪魔するモノは何であろうと排除すると、エルトは強く決意していた。
「そういう事です。目標を特Sクラスの脅威と断定」
その足元にリリィ・ドラグヴァンディル(紅百合・f15918)が、真紅の装甲を纏って現れる。先の戦いでは果敢にも先陣を切った紅百合も、ここに来て万全の状態で最後の戦いに向けて歩を進める。
「先に行きます。リリィ・ドラグヴァンディル、出るぞ」
ボルトロック、カウントシーケンス3、2、1――GO。漆黒を切り裂いて飛び出した真紅はそのまま、怪物に向けて最大戦速――先発が敵の気を引いてる内に、突入チームの作戦開始地点へ向かった。
「それにしてもクェーサービースト、初めて見ましたけど大きいですね~」
ぼんやりと宇宙に浮かぶクラゲ、みたいな。のんきな事を思い描いた月影・このは(製造番号:RS-518-8-13-TUKIKAGE・f19303)は、ガチリとハーネスを己のスーツに固定して、出撃の準備を進める。
「のんきな事言ってないで用意なさい。分解されるわよこのは」
そのハーネスの先、ヘスティア・イクテュス(SkyFish団船長・f04572)は淡々と宙間戦闘装備を整え、出撃用のカタパルトに自身を固定した。
「お喋りは後。ヘスティア・イクトュス、並びに月影・このは、行きます!」
ガイドレールを紫電が走り、二筋の光が42号より放たれる。ヘスティアの背部スラスター――ティターニアにワイヤーハーネスを組みつけて、木の葉のジェットパックと連結。宙間戦闘に不慣れな木の葉が逸れない様、万全の準備(多少強引な:アベル談)を施し、三度星海へ妖精達は羽ばたいた。
「――という訳だ。エルト・ドーントレス、レッキス、発進」
皆の士気は高い。しかし如何に周到な準備をした所で、触手や光線をかいくぐって接近しなきゃ有効打は与えられない。故に先立って突入し、敵の攻撃と防御を攪乱。そして直接打撃を加える事で後続の攻撃を確実に当てる。その為の決死隊……幸い先発が時間を稼いでくれたおかげで、こちらの準備も万全だ。だからこそ、失敗は許されない。漆黒に繰り出した巨兵は青白い尾を引いて、仲間達との集結地点へ向かった。
「そうよね。この世界は他と違って唯一……大地が無いのだから」
エルトの言う通り、この世界は宇宙船が無ければ生きる事すらままならない。コアマシンによる生命維持環境があるにせよ、最善はそんなモノを必要としない状況だ。
「だったら見つけるまでよ。邪魔をするなら――押し退けてでも進むまで!」
決意も新たに雷光は射出用ボートに乗り込み――遠隔で電脳タレットを発振する中継器でもある――出撃の時を待つ。
「それじゃ、相馬・雷光――行っきまーす!」
発進の振動が小柄な体を揺らして、小舟は星海へと漕ぎ出した。
全ては、眼前の脅威を速やかに駆逐する為。
「物質分解波動への対策は確立してきたけど、あの巨体だけでも脅威なんだよな」
デブリに隠れてエルトが唸る。防御の対策は万全だとして、問題は敵の攻略法そのものだった。
「ええ、あの巨体。対ヴィラン用戦闘ロボなボクとしましては大型な敵、少し胸が躍ります!」
対するこのはは初めての超巨大攻撃目標に己の存在意義をダブらせて、湧き上がる闘志を抑える事もままならない。
「躍り過ぎて酔わないようにね。目的はクェーサービーストの打倒です」
その姿をリリィが窘める。百戦錬磨のヤドリガミ、そういった新兵の悲しい結末を幾つも見てきた彼女にとっては、このはの勇気は頼もしくも、怖さを感じえたのだ。
「そうよ。それに数機のフェアリーズとタロスを分解波動対策に先行してるんだから。分解されたら泣くわよ高いんだからねそれ! 聞いてるアベル!?」
続いてヘスティアが早口で小言を――自身の装備を先んじて斥候として配し、より確実に任務を遂行すべく情報を収集している所だった。彼女にとっても外宇宙で居住可能惑星を探し当てる事は、宇宙の民の悲願と言っても過言ではない。故に一連の作戦に掛ける意気込みも相当の物であった。しかし。
『はい。しかし、ちょっとばかり遅かった……ですね』
やはりいつもアベルだ。この万能AIの悪い報告は外れた例が無いのだから。
「ちょっと待ってよー! って、ノイズが……」
遅れて合流した雷光がボートから離れてデブリ帯に到着した時、不意に不協和音が全員の耳に届いた。続けてアベルの解析結果が――無情にも伝わったその内容は、物質分解波動の到達まで……残り十秒。
「データ受領。成程この距離でもう……それじゃ行こうか」
レッキスが踵を返し、一早く散開。解析データから安全な場所を転々と、重そうな見た目に反して軽やかに飛び回る。
「任務了解……ドラグヴァンディル全機能解放……!」
リリィはリミッターを解放――想定される対波動防御用フィールドを積層展開、その場にてギリギリまで敵を引付けて迎え撃つ所存だ。
「位置情報ありがと! デブリはそこそこ……私は側面から」
雷光はレッキスとは逆の方向へ反転し、小柄な体をデブリに潜ませながら、一歩一歩怪物の方へと向かっていく。
「よくも」
そして妖精は激怒した。彼の邪知暴虐な怪物にこれ以上の蹂躙を許してはならぬ。
「よくもやってくれましたね! フェアリーズとタロスの仇はこのボクが!」
と、このはも続く。そもそもタロスはまだ壊れていないが、投入されたフェアリーズは最早この世のモノでは無い。跡形もなく、分解されたのだ。
「ぶら下がってカッコつけないでよ! もう絶対に許さないわ……アベル!」
皆まで語る必要は無い。この執事は今必要な解答だけを即座に回してくれる。
『対象の攻撃パターンを推測、回避マニューバ、セットアップ』
残ったタロスが伝えた最後の情報、敵の波動照射間隔に想定照射角、確実に全てを躱せないとしても、致命打は避けられる。妖精の羽根が広がって一層の加速を――突入チームの戦いが、遂に始まった。
「さぁて、突入口を開くとするか……行くぞ!」
42号から見て右側方より、レッキスが巨砲を構える。
「全武装フルオープン、出し惜しみは無しです」
紅百合は身に纏った全ての武装を展開、正面より敵を見据える。
「電脳タレット準備OK。それじゃ――行くわよ!」
雷光は左側方より二丁のブラスターを構えて、超長距離からの狙撃を試みる。
「空間ソナーは良好かしらアベル? このはも準備良い?」
ティターニアと同期させたこのはのジェットパックが四方に火を噴きながら、敵下方側より迫った時、滔々とこのはの口より聞き慣れぬ声色が響く。
「――対象、星の脅威と判定、封印兵装を解除します」
その声と共にこのはの胸が瞬時に展開し、不明な兵装が顔を出した。
『このは様?』
突然の事態にアベルすら困惑し、直ちにこのはのバイタルをチェック――しかし、異常は見られない。
「……絡まらないようにね、いいかしら?」
ならば、大丈夫なのだろうと。再びヘスティアはこのはに問いかける。ここから先は地獄と同様、振り返る事は許されぬ死地に赴くのだと念を押して。
「はい――一瞬、意識が」
ヘスティアの強い言葉に正気を――己の意識を取り戻したこのはは、自身に突如起こった変化に戸惑い、そして。
「あれ、いつの間に……」
知らない筈の武装の使い方が頭に流れ込んでくる。これこそが、自身の切り札。
『警告、物質分解波動接近、到達まで三秒――緊急回避』
そして正に地獄は再び、彼らの眼前に迫っていたのだった。
「フィールド全開。オーバードライブ!」
レッキスの超常が装甲を薄緑と青の光で覆われる。防御フィールドの重ね掛け――それはただの破片除けではない。
「出力最大でフィールド強度を可変させてるさね。早々破られはしない……筈!」
先立って得た情報、分解波動に浸食されても分解しない方法……それは異なる波長の防御フィールドを重ね掛けして、一度の攻撃でそれを貫かせない事だ。レッキスの最大出力ならば、そうそうパワーダウンする事も無い。そして。
「ど真ん中……雷光!」
敵がこちらを捉えたという事はこちらも同じ。照射波動の間隙を、指向性波動攻撃の隙間を解析して、即座に仲間へと伝える。
「オッケー! 位置情報把握、タレット展開――貫けッ!」
中継のボートから転送された三発分の電脳魔方陣が、雷光のヴァジュラブラスターの稲光を増幅して放射。宇宙を切り裂く竜の咆哮の如き一閃が、波打ちながら不可視の波動をすり抜けて、遂に怪物の触手を一つ焼き切った。
「続きます。脳波同調……ビット、射出開始」
波動を打ち消す様に全身の武装を放つ紅百合は、その名の通り一輪の花めいた赤々とした光を振りまきながら、怪物へと距離を詰める。ビームガトリングガンとビームキャノンの斉射が――振動が宇宙を震わせて、僅かにそれた分解波動がマシンのバリアフィールドを削りながらも、緩まずにひた走るリリィ。その背後から音も無く射出されたビットが渦を巻いて、波動の行き届かない隙間に沿って光条を乱射する。
「一番槍……貰うわ!」
その光の渦に気を取られた隙――下方より大胆に迫ったヘスティアが、長槍の様な大口径狙撃銃を構えて突入。その背後でこのはが、顕現した超兵器を放たんと烈火の如き雄叫びを上げた。
「これならば……喰らえッ、ブラスタァァァァァアアアアアア!!」
プラズマ光球がこのはの胸元で圧縮されて、空間すら歪ませる超質量が一気に放たれた。
「サンキューこのは! これで進路は……ミスティルテイン、ブラストモード!」
ブラスターが迫り来る触手を焼き払い、アベルが導き出した必殺のマニューバで迫り来る触手を押し退けて、怪物の足元へ辿り着いたヘスティアがトリガーを引き絞る。零距離――出力最大。天をも貫く魔剣の一撃はミサイルの従者を引き連れて、怪物を内側から蹂躙する。それでも尚、触手の一束を薙ぎ払った所で急速にその威力を失った。相殺の為の波動が絶え間なく放射されて、間一髪の所でその命脈を断つ事は叶わなかったのだ。
『警告、質量反応増大。このままでは間に合いません』
更にアベルが――絶体絶命の宣告をヘスティアとこのはに告げる。しかしヘスティアは余裕を崩さない。何故ならば。
「愛も知らぬ怪物に……リリィは負けません……!」
猟兵は一人ではない。ヘスティアの猛攻に掛かりきりだった怪物目掛けて、既に仲間も必殺の射程圏内に到達していたのだ。ミサイルとレールガンの雨の中、リリィは紅百合のとっておきを発動させる。
「この輝きは、消させない……!」
展開したビットが、マシンの正面に円錐状の陣形を取って整列。それはパラボラアンテナの様に光条を集束して、これまでとは比べ物にならない大質量のエネルギー弾を形成した。これこそが紅百合の超常――破壊の調べが漆黒を塗りつぶして、怪物の胴体にぶち当たる。
「キリがないわね、何本生えてんのよ!」
その照射エネルギーはこれまで以上、怪物の表面を焦がしながらヘスティアに迫る触手を焼き千切る。あわや取り込まれる寸前だったヘスティアとこのはは急速離脱――最大の置き土産を残して。
『エルト様、雷光様、射線確保完了です』
三者の攻撃に気を取られた怪物は、頭部の防御がおろそかになった。幾ら全周照射が出来る物質分解波動があるとはいえ、短時間に己の身を焼き尽くしかねない連撃を喰らえば、その対処にリソースが割かれるのは明白。その瞬間こそが、突入チームの狙いだった。
「了解、コース確認……そこっ!」
不要な武装をパージしてレッキスが駆ける。フィールド展張の限界時間まであと僅か。だがここまで凌げれば十分だ――がら空きになった怪物の水晶体目掛けて、鋼鉄の巨兵は全長25㎞の巨体を瞬く間に駆け上がった。
「一度足を止めたらじり貧になる……これで終わりだっ!」
余りの速さに怪物の防御が追い付かない。怪物の表面を覆う分解波動がかろうじでレッキスの防御フィールドを削り取るが、それだけで止まる様な軟な覚悟ではない。
「頭上取った! 落ちろっ!」
フィールド最大展張、波長を変えた赤黒い光がレッキスの爪先を槍の穂先の様に尖らせて――その一撃が水晶体に亀裂を走らせた。
「ありがと! よーく見えるよ……ヴァジュラブラスターオン!」
そしてデブリの中から雷光が、己の愛銃を変形――カチカチと音を立てて長銃身の必殺砲と化したヴァジュラブラスターを、全開にした電脳魔方陣で増幅し、その威力を解き放った。
「因陀羅耶莎訶! 帝釈天降魔砲!!」
雷神の名を冠した全てを滅ぼす『雷光』が、闇を切り裂き怪物の水晶体目掛けて、竜巻の様にその頭部を覆いつくした。
「やったか!?」
このはが叫ぶ。今の一撃は確実に、致命傷になった筈だ。
「まだです、触手が……」
しかしリリィがそれを遮る。古強者の勘……これだけで終わるようならば、この程度ならば銀河帝国の猛者達でも十分に戦える相手だろうと。リリィの言う通り、亀裂の入った頭部を覆う様に、下方の触手がイソギンチャクめいた動きでその頭頂を包み始めたのだ。
『警告、無数の物質分解波動の放射を確認。周波数全レンジ、危険です』
そしてアベルから、まだ残っている触手から一斉に物質分解波動が放たれたという無情な報告が。それはノイズなど感じ取れない、文字通り無差別攻撃に他ならなかった。
「どういう事!?」
このはが手にしていた不明金属盾がその第一波を凌いだお陰で、アベルの解析は直ちに済んだ。照射間隔はあるにしても、次弾が予測出来ない攻撃を、これ以上受ける事は出来なかった。
「これまで解析した波動をノイズ無しで全部ぶっ放してきた、って所かね!」
エルトの言う通りであれば、放出される波動に合わせてフィールドの波長を変える暇すら与えられないだろう。幸い攻撃密度の薄い上部に退避したおかげで一撃を喰らう事は無かったが、いつまでもその場にいる事は危うい。
「これ以上の接近は危険……でも」
今こそが奴を叩く最大のチャンス。雷光の想いはここにいる皆も同じ。それでも。
「……撤退しましょう」
淡々とリリィが言い放つ。たとえ撃破出来るとして、この状況では犠牲を免れることは難しい。現にエネルギーの大半を皆が使い果たしているのだから。それに猟兵はここにいる五人だけでは無い。何より続く仲間へ最大の支援は達成出来た。
何故ならば、突入チームの攻撃によって、怪物は完全に足止めされたのだから。
更には弱点らしき頭頂部に痛烈な一撃を加えたのだ。
それは当初の想定以上の戦果と言ってもいい。
その戦果をもって、チーム総員が撤退する事を決める。
怪しく蠢く怪物を背に、必ず我等は討ち果たすと心に誓って。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
荒谷・ひかる
●
戦艦42号に搭乗、電脳魔法陣の力を借りて甲板上に惑星環境をエミュレートし精霊さんを補助しつつ【幻想精霊舞】発動
物質分解光線に対し、属性を掛け合わせて生み出した多種多様な粉塵(煙、砂塵、粉雪、霧等)を大量に散布しての減衰
並びに「水のレンズ」を生成して屈折による回避を試みる
攻撃は全天の恒星から発される光を、大量に生み出した闇精霊の重力レンズで屈折させ敵に集光、可能なら焦点を合わせて焼き、不可能でも照射で熱エネルギーを蓄積させダメージを狙う
いくらあれが大きくっても……宇宙っていう大海原の中ではわたし達と同じ、ちっぽけな存在に違いないんだよ。
だったら、知恵と勇気が有る方が勝つ……そうでしょ?
リア・ファル
SPD
●
共闘歓迎
真の姿(機動戦艦ティル・ナ・ノーグ)解放
征こうか、まだ見ぬ航路を切り拓く為
今を生きる誰かの明日の為に!
イルダーナで射線の通った空間へ移動
解析できたパターン分だけでも
『ライブラリデッキ』から中和相殺弾を装填、
『セブンカラーズ』から射撃し、エリアを防衛
(情報収集、時間稼ぎ、オーラ防御、拠点防御)
今こそ、最新鋭戦艦の使命を果たす時!
「資金リソース投入。300秒の限定を以て、
機動戦艦ティル・ナ・ノーグ、現実空間へマテリアライズ!」
全力演算、目標、キエリビウムJOX!
UC【未来を拓く光芒一閃】を撃つ!
「射線上の味方は退避して!」
(範囲攻撃、スナイパー、援護射撃)
人の祈りよ、未来に届け!
イヴ・クロノサージュ
●
幕間提出前の方々との絡みも◎
搭乗中:宇宙戦艦クロノトロン=ユニット
交信:戦艦42号
――
●心情
私は銀河帝国戦を汲まなく参戦してきました。
その時の猟兵の皆さんはとても心強かったですが
猟兵だけでなく、解放軍の皆さんのお力によるものも大きかったです。
銀河帝国は、骸の海より染み出た過去である『彼』一人で
生み出された存在。
ワープドライブも『彼』一人分
なら、私たちのワープドライブは何人分?
少なくとも2隻分はあります
――解放軍の底力、魅せてあげましょう?
●戦闘:支援
『多方面から攻撃すればビーストを沈める事が出来るでしょう』
UCは当艦のワープドライブ
戦艦42号と連携して支援砲撃を補佐します
技能:救助活動、勇気
ガーネット・グレイローズ
●
成る程、艦長の直感は恐らく正しい。
私も感じているよ、「ここから先へは来るな」という明確な
拒絶の意思を。だけど、私達はここで引き返すわけにはいかない。
……待っていなさい、すぐに片付ける。
<空中戦>の技能を駆使し、デブリの陰に隠れながら宙域を
泳ぐように移動、接近を試みる。
入手したデータを手掛かりに物質分解波動のタイミングを予測し、
<第六感>を頼りに回避していく。
「灰薔薇艦隊、全艦出撃!」
【ブレイカーシップ・ブレイブナイツ】を発動し、敵の眼前で艦隊を編成。
当たり判定の小ささと数を活かし、敵に的を絞らせないまま突撃!
搭載したビーム砲による<援護射撃>を放ち、<念動力>で妖刀を投げて
ドームを攻撃だ。
●艦隊戦
『クソ……こっちの準備はどうなってんだ!?』
42号のブリッジで艦長の怒号が飛ぶ。既に戦端は開かれ、突入チームの活躍で怪物はその動きを止めた。叩くならば最大の好機と言えよう。
『全タレットアクティブ! 各砲座照準良し!』
葉巻の様な形状の42号両弦に多数の電脳魔方陣が展開されて、内側に仕舞われていた砲塔が続々とその鎌首をもたげ、射線を怪物の方へと向ける。
『突入チームの奮闘を無駄にするなよ。各艦に通達、42号準備よろし!』
「了解。クロノトロン=ユニット、前面に展開します」
その報を聞き、戦艦クロユニに座上したイヴ・クロノサージュ(《機甲天使》感情と記憶を代償にチカラを得た少女・f02113)が直ちに応答する。
「それでは手筈通りに……大丈夫です、あの戦争の時より私達も力を付けました」
「その通りだ。こちら灰薔薇艦隊、いつでも掛かれるぞ。号令は任せる」
イヴの叱咤に続いて、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が凛とした声を張る。既に小型戦闘艦に合体させた腹心の僚艦を展開し、己は宇宙に姿を晒して怪物を見据える。
「――征こうか、まだ見ぬ航路を切り拓く為」
そしてイルダーナに騎乗したリア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)が怪物に睨みを利かせたまま、凛とした声で発する。
「資金リソース投入。300秒の限定を以て、機動戦艦ティル・ナ・ノーグ、現実空間へマテリアライズ!」
リアの声と共に空間が歪み――リアの真の姿、機動戦艦ティル・ナ・ノーグが漆黒にその雄姿を現した。普段は虚数空間へ退避させているこの超弩級戦艦が姿を現したという事は、すなわちナビゲーターたるリアの決死の覚悟の表明に他ならない。
「こちら機動戦艦ティル・ナ・ノーグ、発進準備完了」
大型、小型艦艇合わせて十数隻。その戦力は計り知れない。猟兵の知恵と叡智と歴戦の歩みが刻まれた最強の機動戦力が今まさに、その真価を放つ時が来たのだ。
『よし……頼んだぜイエーガー。全艦砲雷撃戦用意!』
42号の艦長が叫ぶ。その声に合わせて各艦の砲座がガチリと固定され、必中の一撃を喰らわさんと砲塔が宙を仰ぐ。
『目標クェーサービーストJOX! 撃ち方始め!』
「ええ――解放軍の底力、魅せてあげましょう」
「今こそ、最新鋭戦艦の使命を果たす時! 主砲放て!」
号令一下、色取り取りの光条が漆黒を切り裂いて――しかしその殆どが怪物から放たれる不可視の物質分解波動に飲み込まれ、虚空へと掻き消えていく。
「灰薔薇艦隊、全艦出撃! 正面の怪物を叩き潰せ!」
その波動の間隙を縫ってガーネットの艦隊が前進する。それも整然とした陣形ではなく、乱戦上等の凸凹な陣形。一隻でも先へと到達させるようにと、交互に砲火を交えながら進み行く艦艇に向けて、怪音と共に発せられた物質分解波動が襲い掛かる。頭頂を蠢く異形が開かれて扇状に大きく広がった触手から、正に投網の様に投げ放たれた不可視の波が津波の様に艦艇を沈めていく。しかしそれこそが猟兵達の狙いであった。
『敵第一波着弾! 積層フィールドの展開率80%、まだ持ちます!』
「了解です。こちらも同じく――今は攻撃を続け、敵の意識を向けさせましょう」
42号の報告にイヴが応答する。敵の物質分解波動は予想以上、放たれた攻撃の殆どを一瞬で解析し、数秒の後に放たれる波動が全てを飲み込んだ。しかし。
「フィールドの重ね掛けは有効ですね。でしたらこちらも、焦らずじっくりと行きましょう」
クロユニの出力系統はまだ正常――焦って本命を出すよりは、今は相手をしっかりと躾けることが先決。イヴは口元を歪ませて、伏せたカードを放つ時を待つ。
「こちら灰薔薇艦隊、艦隊損耗率15%――想定範囲内だ」
ふと通信が、ガーネットの状況報告が両艦に流れる。幾らUCで呼び出した艦艇とはいえ無限に出てくる訳ではない。それでも敵の第一波を凌ぎながら、敵の攻撃をばらけさせ、その攻撃の穴を突き破る準備は整いつつあった。
「思った通りだ。あの波動の照射範囲はそこそこ穴がある。それに」
艦隊全てを纏めて飲み込めるほど、範囲は広くない。現に並列に並んだ艦でさえ、何隻も時間差で沈められている。ならばその穴こそが、敵の張った網の目だ。
「こちらティル・ナ・ノーグ、戦闘より30秒経過。マテリアライズ限界まで残り220秒、損耗無し――合わせて分解波動の解析完了」
「了解ですガーネットさん、リアさん。では次の段階へ移行しましょう」
『よし……それじゃあ嬢ちゃんを準備させるぜ』
42号の艦長が手振りで合図を出す。ここからが狩りの時間だ。
「いくらあれが大きくっても……宇宙っていう大海原の中ではわたし達と同じ、ちっぽけな存在に違いないんだよ」
荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)は空間騎兵の控室で、モニタに表示された怪物の威容を眺めながら、艦長の呟きを思い返していた。
「だったら、知恵と勇気が有る方が勝つ……そうでしょ?」
つまりあの怪物と自分達は対等なのだ。決して人間は卑小な存在などではない……たかがデカブツ、筋肉で黙らせてやればいいとお姉ちゃんならば言うだろうか。わたしには無いけど。そして艦長から出撃の指示が届く。
「電脳タレット準備OK? いけるの?」
『任せてください。科学も魔術も使う人次第――やってみる価値は十分あります』
威勢のいい返事を聞いてすっくと立ちあがったひかるは、精霊達の調子を確かめるとそのまま甲板の方へと向かう。
「ありがとう。それじゃあみんな、頑張ろーっ!」
そう、わたしには精霊のみんながついている。それに42号の秘中の策も。
口元を僅かに歪ませて、ひかるは甲板にその身を晒した。
『こちら42号。スタンバイ完了――ドライブの同期も問題ない』
「こちらティル・ナ・ノーグ。同じく、同期完了」
「了解。それでは次の段階へ……」
イヴが宙に浮かぶ電子コンソールを叩き、凛とした声で総員へ通達する。
「ワープドライブ同期確認――総員、これより連続ワープを敢行します」
かつての戦い、猟兵達は皆頼もしかった。それは解放軍の皆さんも同じ――それに、今は銀河帝国の覇権を支えたワープドライブを自分達も保有している。正面からの戦いだけではない、空間跳躍を交えた戦いであれば、更にあの怪物を手こずらす事が出来る筈。
『システム同期完了、コントロール移譲』
「こちらはサブシステムを……メインは複雑すぎて、権限移譲が間に合いません」
「十分です。皆さん衝撃に備えて下さい! ――ミュスティカァ・ジャンプ!」
光条の乱舞が埋め尽くした空間、不意に三隻の戦艦が姿を消した。それは分解された所為か……否、それは伏せられたカードを切られた故。続いて三隻が姿を現したのは、灰薔薇艦隊が広がるデブリ帯の中だった。
「来たな、全艦展開! 網の目を広げろ……本命が来たぞ」
その号令と共に重力震がガーネットを襲う。急に姿を現した三隻の艦がその全身より無数の光条を放って、正面の怪物へ猛攻を加える。そして直ぐに姿を消して――先の攻撃で把握した物質分解波動の照射間隔、展開した灰薔薇艦隊を襲った波動の展開限度、それらを統合して敵の攻撃が抜ける瞬間を判断し、クロユニと42号、更にティル・ナ・ノーグのワープドライブを同期させて、亜空間を飛び回りながら波状攻撃を取る作戦だ。
「よし。狙いは一つ……」
敵の注意がそれている今こそ必殺の好機。だからこそ最大の攻撃を確実に浴びせるべく、ガーネット自身は今までずっと伏せていたのだ。
「あの水晶体、残る触手を引き剥がしさえすれば」
狙いは敵の頭頂、今は未だ一部を触手に覆われている水晶体の様なドーム状の構造物。ここを破壊出来れば物質分解光線を完全に止められて――恐らく、奴の息の根を止める事が出来る。
「全艦ワープイン、次が最後です。散り散りになりますので……」
『分かってるさ、こっちも準備OKだ』
「同じく――ひかるさん、作戦通りに合わせるよ!」
「うん! 何だか行ける気がするよ!」
お互いの意思をしかと確かめ合い、モニタ越しにリアとひかるが頷く。次が本命だ。その為の布石は十全に打ってきた。
「余り時間をかけると、突入チームが喰らった全包囲攻撃が始まるでしょう」
「だからその前に、確実に息の根を止める!」
思った通り、あの怪物に亜空間戦闘は出来ない。ワープアウト後の重力震を感知出来てもこちらが先制してしまえば、全て後手の対応となる。
「全艦、ゲート突入」
光の奔流が艦体を包み込み、作戦は最終段階へと移行した。
ワープアウト――これまでと違いクロユニが怪物の後方、42号が右側方、ティル・ナ・ノーグが左側方に現界する。怪物の目の前にはデブリが、その奥には小型艦艇が散らばって、散発的に攻撃を加えていた。更に想定外――三隻の大型艦も断続的に攻撃を加えてきているが、その姿を捉える事が出来ず、いつの間にか背後と左右を取られてしまった。怪物の感覚器は全周囲を懸命に探る。一体何が起こった。あの艦の構成物は何だ? 分解波動の照射パターンは幾つ必要だ。一瞬の思考が膨大に膨れ上がり、破れかぶれの一撃を――全周放射を試みたその時であった。
「全艦積層フィールド展開、並びに総攻撃開始! 機械鎧兵部隊、私に続いて!」
放たれた砲火に紛れ、七色の積層フィールドを通り抜けて、白亜の大戦艦から人型機動兵器が列を成して飛翔した。その中にはイヴの愛機の姿も――手にした大小の火器が怪物の表面を舐めるように穿ち、ひたすらにその殺意をイヴへと向けさせる為に宙を舞う。そして突如として増えた攻撃対象に怪物の思考が僅かに遅れる。
(これで少しでも時間を稼げれば……皆さん!)
イヴの祈り、それは42号とティル・ナ・ノーグに託した必滅の牙への祈り。静かに揺蕩う二艦は、湛えた威力を放たんとその矛先を怪物の頭頂へと向けていた。
「全力演算、目標、キエリビウムJOX!」
ワープアウト直後、ティル・ナ・ノーグの電脳が目の前の異形を捉え、即座に相対距離と射角を調整する。亜空間で事前に済ませていたとはいえ、僅かな誤差が大きく命中を外す事もある。念には念を入れ、必殺の一撃が砲口を――重力波動砲の照射装置の辺りを歪ませながら。
「ターゲットスコープ電影召喚(コール)。照準誤差修正、0.15……ターゲット・ロック」
リアの眼前にティル・ナ・ノーグの照準と連動したホロスコープが出現して、最後の詰めをかちりと合わせた。
「コアマシン出力臨界、マテリアライズ現界リソース減少……大丈夫、絶対に」
機関の唸り声が船体を大きく振動させながらも、その軸線は僅かもぶれない。絶対必滅のその牙を確実に届ける為、現界時間すら振り絞り――巨大な砲口から暗黒の大渦が放たれた。
「射線上の味方は退避して! グラビティ・バスター・カノン、発射!」
まるで極大の台風の様な轟音が宇宙に響く。無論、本来であれば音など聞こえはしない――だが、今この場にいる者には、それすら聞き取る魔法の耳がある。その音が想起させるのは、紛れもなく絶対の破壊であった。
「人の祈りよ、未来に届け!」
その暗黒が全長25kmの巨体を飲み込んで、大小の触手を引き千切り、亀裂の入った水晶体をバリバリと歪ませた。そして攻撃は未だ、終わらない。
「聞こえるよ、闇の精霊さん……分かった」
放たれた暗黒が齎すのは破壊だけではない。ひかるに付き従う闇の精霊はその威力を受けて更に活力を増す。更に。
『両舷電脳タレット全開! 電脳魔術式を精霊魔術に置換、システム最大稼働!』
『コアマシン、艦首『要塞崩し』へエネルギー注入。並びに重力レンズ生成開始!』
42号の両弦が淡い光を放って、精霊魔術を増幅する電脳魔方陣を十重二十重に形成する。展開された魔方陣から更に多くの黒いガス状の――闇の精霊が姿を現して、その身を漆黒の半球体、重力レンズへと変えていく。
『艦首電脳タレット解放! 電脳魔術式読み込み開始! クリア!』
『艦首、超巨大重力レンズ生成完了! 照射角調整――クリア!』
最後に42号がその全エネルギーを注ぎ込み、艦首に人工の超巨大重力レンズを形成した。精霊魔術は制御が難しい。ならば、そのエネルギーだけを集束して、放つ所を人の手で行えばいい。それもひかるの圧倒的な精霊魔術でなければ成しえない、科学と魔術が織りなす奇跡だった。
『嬢ちゃん、やったれ!』
「うん……精霊さん、お願い!」
艦長の叫びと共に、ひかるの祈りが増殖した闇の精霊――重力レンズに届いた時、かすかな宇宙の光エネルギーを凝集したそれぞれが、42号の艦首に集まって――宇宙を灼き尽くす炎の剣と化したのだ。
その炎は怪物の頭頂に直撃した。重力渦と炎に包まれた異形の頭部はぼろりと崩れ――それでも尚、発光する本体は僅かながら光を纏って、その中心を必死に守り通していたのだ。
「艦長の直感は恐らく正しい」
眼前の全力攻撃を見据えながら、ガーネットは42号の艦長の言を思い返していた。
「私も感じているよ――『ここから先へは来るな』という明確な拒絶の意思を」
それは怪物へ対しての畏怖、世界の理を捻じ曲げ続けた猟兵への警鐘か。だけど、と――ガーネットは強い意思を表して言葉を続ける。
「だけど、私達はここで引き返すわけにはいかない」
外宇宙への雄飛は我々の悲願なのだから――それを邪魔する事は、たとえ神であっても許さない。現に正面の怪物は最早鋒鋩の体、捩じ切られた触手が飛散し、僅かながらのこされたそれが今にも崩れ落ちそうな頭頂を支えている。破れかぶれの分解波動を周囲にまき散らしながら、生き足掻こうとする姿は何処か悲壮さすら感じえる。しかし。
「灰薔薇艦隊、第二波出撃――あの怪物を打ち砕け!」
だからと言って、ここで歩みを止める訳にはいかない。ガーネットは持てる全ての力を振り絞り、残る艦隊を集結し決戦を挑む。自身もデブリの間を抜けて、遂に真っ向から怪物と対峙した。
「まだだよ、これで終わりだなんて思わないで!」
愛銃から即席の波動中和弾を撒き散らし、自身や味方への攻撃を無力化する――活動限界を迎えたティル・ナ・ノーグを虚数空間へと戻したリアは、航宙機イルダーナに跨って戦場を疾駆していた。趨勢は完全にこちらへと傾いたが、戦いは終わっていない……ならば、やるべき事は一つ。
「精霊さん! もう少しだから……お願い、頑張って!」
同じく42号へ殺到した分解波動は、電脳魔方陣で僅かに活気を取り戻した精霊達と共に、ひかるが迎え撃っていた。対象の波動周波数に合わせた物質の生成と、そうではない物質の積層構築――既にエネルギーの大半を使い果たした42号を守るべく奮戦するひかると精霊達は、怪物に止めを刺す時を待っていた。
既にリアとひかるの必滅の一撃は怪物の堅い防御を破り、露出した弱点であろう水晶体に最後の一撃を加えてやれば決着がつく筈であった。だからこそ最後の切り札が届くまで、その瞬間まで持ちこたえると波状攻撃を耐え忍んでいた。
「待たせたな――灰薔薇艦隊、全艦突撃!」
そして遂に切り札が到着した。残る艦隊と共に現れたガーネットは怪物目掛けて足を速める。物質分解波動の照射間隔はこれまでの戦いで凡そ覚えられた。更に仲間がその攻撃を一部でも無効化してくれている。今ならばもう、怖くは無い。
「勇敢なる騎士たちよ、今が決戦の時――鬨の声を上げろ!」
我等に絶対の勝利を……ガーネットの揺るぎない意志が形となって、全ての艦艇に伝播する。全周を包囲し、残る怪物の体表を這う様に蹂躙し、僅かな波動照射を紙一重で躱しながら、灰色の薔薇は怪物の喉元へと迫った。
「……その首、貰い受ける!」
生身で怪物の水晶体へ上り詰めたガーネットは抜刀、そして抜き放った妖刀を投擲。漆黒を裂く鈍色の刃が怪物の頭頂へ届いた時、その亀裂がみしみしと音を立てて――歪な水晶体をバラバラに飛散させた。僅かに残った光ももう、その輝きを見せる事は無い。その時。
「――あれは?」
頭部に続いてばらばらと形状が崩壊していく怪物から一本の太い触手が抜け落ちた。それは抜け落ちた根元に青白い光を揺蕩わせて……その姿はまるで、小型の怪物の様にも見える。
「まさか、怪物の子……」
もしそうだとしたら、あの怪物はこれまでの全ての攻撃を覚えて出現した別の個体。同じ手が通じるとは限らないし、それ以上に同じ脅威が出現したという事は。
「――42号! 逃げろ!」
しかし全力稼働でまともに動く事も適わない42号に、高速で迫りつつある怪物を避ける術は残されていなかった。
絶体絶命の窮地、それでも猟兵はまだ、終わらない。
ここを凌げば――この脅威は終わるのだから。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
七篠・コガネ
見た所、別件で遭遇したものと同じ性質の個体ですね
何度も立ち塞がるのなら何度でも立ち向かってやろう
皇帝陛下の意思が何であれ、僕等は銀河帝国とは違う
前回とは違うUCを使いましょうか
何が効くか、情報量を増やしといて損はない筈
とはいえ過去情報を不意にするつもりもないです
初撃を躱せるか試します
全武器から電撃を【一斉発射】し複数の触手の固まってる部分を【マヒ攻撃】
痺れさせて躱しやすくしておきます
敵の痺れが解ける前にあの水晶体へ急発進
確かに水晶体からも厄介な光線は出るけども…無条件じゃない!
頭部目掛けてUCを穿ちます
過去幾つもの星々を滅ぼしてしまった僕は…
償いでもいいんだ。偽善と思われても構わない
ダビング・レコーズ
●
超高速で接近し分解波動に曝されるリスクを省略
至近距離から加速を伴う直接打にてドーム部及び中枢を破壊
以上が我々の作戦プランです
リスクは多大ですが止むを得ません
さもなくばやがて滅ぼされるのは我々の側なのですから
【POW・ダビのえ】
水之江博士の指示に従い行動します
ワダツミの甲板上で待機
一斉射撃を合図としSSDを発動
打突起点用にメタルステークを正面に構え当機自身を徹甲弾とします
射出後は弾幕に紛れ最大速度で直進
触手が妨げになるならば貫通し強行突破を試みます
ノイズ確認から物質分解波動が生じるまでのタイムラグ
これを突けるかが突破の鍵となるでしょう
目標の貫通に成功後はルナティクスで内部構造を溶断します
桐嶋・水之江
●
◆WIZ◆ダビのえ◆
答え合わせの時間ね
極めて高速かつ強力な徹甲弾での狙撃
これが私の見た勝ち筋よ
持ち得る全魔力を込めて虚ろな雷の弩を詠唱
カタパルトは長い程良いわ
ワダツミの甲板を活用しましょう
弾体はダビング
冗談でも茶番でも無いわ
彼は弾体として理想的なUCを持っているんだもの
目標はドーム状のあそこ
厳密には内部に集約されていそうな重要臓器ね
勿論とんでもなく硬質に進化を遂げているのでしょう
だからこそ強力な徹甲弾…彼が必要なの
詠唱中の時間稼ぎはデブリに船体を隠したりDプラスを囮にして誤魔化すわ
彼を射出する直前に全砲一斉射撃
42号からもサポートを貰いたいわね
援護兼複合的な攻撃で解析波を錯乱させるのが狙いよ
シーザー・ゴールドマン
【POW】
成程、なかなかの大きさだね。
とは言え、居住可能惑星を探す旅の最初の一歩に過ぎない。
消えて貰おう。
前章で構築した物質分解波動の逆相の波動を纏わせた極大の『アララトの流星』(×範囲攻撃×全力魔法)をクエーサービーストヘ。
敵POWUC対策
宇宙空間で自身に向けられた攻撃なら回避。(見切り×第六感)
船に向けられたなら逆相の波動を纏わせた衝撃波で触手を切断。
(先制攻撃×衝撃波×なぎ払い×全力魔法)
ハハハ、未知なる宇宙。これからの旅路が楽しみだね。
●この声よ届け、最果てまで
突如として分離した怪物は一匹だけでは無かった。骸と化した本体の触手から一つ、また二つと……その巨大な体を震わせて、滅びゆく本体から逃れんと必死に蠢いていた。
「成程、幼体か? とは言え……なかなかの大きさだね」
シーザー・ゴールドマン(赤公爵・f00256)は真紅のコートを棚引かせて、ウネウネと蠢く怪物の前に姿を現した。
「だがこの戦いは居住可能惑星を探す旅の最初の一歩に過ぎない。潔く消えて貰おう」
その手には巨大な光球が――それこそ怪物の物質分解波動を無効化する、極大の魔力塊だった。全長25㎞前後の巨大な骸を包み込む様にじわじわと広がっていく光の奔流は、怪物の肉体をゆっくりと削いでいく。
「フム……だがあの位ならば、急く必要もあるまい」
しかしそこから抜け出した一匹の巨大な幼体は、その足を42号へと向けて進めていた。高速で動く怪物は、されど左右に大きく蛇行しながらその歩みを進める。じわりと獲物をいたぶる様に、あるいは生まれたばかりで動きがままならないのか、進路上の尽くを消滅させながら、その牙を驚異の源に突き立てんと迫っていた。だが。
「余り猟兵を見くびらない方がいい、怪物よ」
シーザーには分かっていた。こんな事があろうとも、我等の灯した火が尽きる事は決して無いと。今は眼前の巨大な骸を始末するべき……その為に魔力をチャージしてきたのだ。確実に止めを刺さなければと、振るう腕に一層の力を込めた。
「見た所、別件で遭遇したものと同じ性質……ですが」
宇宙の漆黒の中、七篠・コガネ(ひとりぼっちのコガネムシ・f01385)が目の前で突如分裂した怪物を見て、溜息をつく。
「ええ、増えるのは初めてです」
その傍らでダビング・レコーズ(RS01・f12341)が――両名既に別のクェーサービーストを屠った実績がある。そのどれとも違う、想定外の現象だった。
「増えたといっても性質は同じよ」
しかし桐嶋・水之江(機巧の魔女・f15226)は動じない。姿形は大体同じ、ならばやるべき事も全く同じ。弱点を突いて一気呵成に攻め立てるだけだ。
「それに残りはあの一体。答え合わせの時間ね」
骸から生まれ出づる所、シーザーを始め猟兵達の猛攻を受けてその全てが完璧な骸と化したのだ。残る敵はあと一つ……それさえ倒せば、この戦いは終わる。
「さあ二人とも――私の見た勝ち筋に乗るかしら?」
その倒し方は既に導き出されたと豪語する水之江。魔女の誘いに伸るか反るか、決断の時が迫った。
「あの、これは何かの冗談でしょうか……」
そして今、水之江が用意したのは強襲揚陸艦ワダツミとその甲板――に展開された巨大な電脳カタパルト。これでウォーマシンの二人を飛ばすというのだ。一体何を考えているのだとコガネが静かに水之江へ抗議の意を示す。
「冗談でも茶番でも無いわ。先ず彼は弾体として理想的なUCを持っているんだもの」
「僕は持っていません!」
彼――ダビングの超常は自らを徹甲弾と化す、外部からの衝撃を大幅に減衰させる電磁障壁の展開を可能としていた。
「はい。超高速で接近し分解波動に曝されるリスクを省略。至近距離から加速を伴う直接打にてドーム部及び中枢を破壊。以上が我々の作戦プランです」
それと水之江の何らかの弾体を超高速で射出するリニアカタパルトが合わされば、理論上あの怪物をいとも容易く貫通出来るだろう、との事だった。
「素晴らしい。完璧だわ」
「弾体が持たないリスクを加味して下さい!」
余りにも無謀、だが効果的である事は確実な作戦プランにコガネは嘆息した。しかし速度を上げて怪物に挑み掛かるとしたら、これ以上の方法が無い事も確かだった。
「そのリスクは多大ですが止むを得ません。さもなくば……」
それでも、弾体と化したウォーマシンの全身に掛かる負荷は想像に難くない。しかしダビングは、それも承知の上でこの作戦に賛同していた。
「やがて滅ぼされるのは、我々の側なのですから」
あの怪物を倒さねば、遅かれ早かれ自分達が滅ぼされてしまうのだ、故に今この場で命を賭したとしても、何の悔いも無い――その達観したダビングの様子に、水之江が言葉を付け加える。
「大丈夫よ、あなたなら」
「どうしてそんな事が、言えるんです?」
それはコガネへ向けての信頼の言葉だった。突然の励ましに訝しむコガネに向けて、水之江が更に続ける。
「会議の時ネットワークに接続してたでしょう? その時に」
会議――先の怪物対策の作戦会議だ。この時コガネは情報の入出力を行う為に、自身を艦内のネットワークへ一時的に接続していたのだ。
「ああ、誓ってプライベートは覗いていないわ。本当に」
それは本当だろう。水之江は恐らくそういった事に重きを置いてはいない。
「残ったログから変な波長が拾えてね……あなた、気持ちで自身の強度が変わるのでは?」
でなければ、感情で強度が変わるなんて素っ頓狂な事を言い出したりはしない筈だ。
(――クェーサービーストは倒せる相手なんです。だから)
自身の言を思い起こしたコガネは、その時の感情を思い返す。それは決して怒りなどではない、本心からの希望だ。明日への、この世界の希望を心に描いただけだ。
「……出来なくは、無いです。けれど」
それが自身の激痛耐性に直接作用するかは分からない。だが秘めた超常の内に己の激情を糧とするものは、確かに存在する。
「宇宙が駄目になるかどうかの瀬戸際よ。あなたは、どうしたいの?」
「僕は……」
僕がやるべき事なんて――決まっているじゃないか。コガネは無言で頷いた。
「それじゃ決まりね。カタパルトは長い程良い。ワダツミの甲板を活用しましょう」
そして水之江が手持ちのモノリスを――端末を広げて作戦内容を説明する。
「目標はドーム状のあそこ。厳密には内部に集約されていそうな重要臓器ね」
映し出された映像には太い一本の触手をゆらゆらと揺らしながら、42号へ迫り来る怪物の姿が映っていた。その先端には大元の怪物と同じく、青白い水晶体状の物質に煌々と光を湛えている。
「勿論とんでもなく硬質に進化を遂げているのでしょう。だからこそ強力な徹甲弾……あなた達が必要なの」
それがダビングとコガネ。絶対無敵の電磁障壁、そして意思を力に変えるマシンとしての秘められた機能が、水之江のプランを完璧な形にするのだ。
「分かってます。僕のやるべき事……それは」
諦観では無く意を決した様に――コガネが力強く言い放つ。
「あの怪物が何度も立ち塞がるのなら、何度でも立ち向かってやろう」
一歩前へ、ワダツミの甲板にその大きな足跡を刻み付ける様に歩む。
「皇帝陛下の意思が何であれ、僕等は銀河帝国とは違う」
故にあの怪物を攻略する……絶対に負けられないと、強い意志を露わにして。
「それじゃ作戦返しの前に――42号は航行不能、というかガス欠ね」
徹甲弾の確実な到達の為には、ある程度の援護砲撃が欲しい所だった。しかし頼みの綱の42号は電脳魔術で障壁を張るのが精々、航行する為のエネルギーを特大の攻撃に回した所為で、その場から動く事すらままならない状況だった。
「Dプラスを飛ばすには距離が……何、通信?」
ダビングと同じ様な形状をしたウォーマシン型ドローンも、距離が離れすぎては投入する事は難しい。そう思った矢先に通常回線で通信が入る。
「どうやらお困りのようだね。力を貸そうか?」
「随分と私を気に入ったみたいだね。だけど」
仲間は最後の一手にまだ時間が掛かっているらしい。戦場に出ている他の猟兵も、その力の大半を使い果たして鋒鋩の体だ。怪物の骸も未だその姿形を保っている。それも最早攻撃能力は無きに等しいが、目を離してどう動かれるかも分からない。故に最も自由に動けるシーザーが、最後の砦としてその役目を買って出たのだ。
「私は君たちじゃあないし、そういう醜いモノは――うむ」
シーザーの放った衝撃波――分解波動を纏わせた一撃は、しかしその怪物には通用しなかった。何故ならば怪物も同じく、猟兵と同じく防御の波動を幾重にも纏い、同種の攻撃を防ぐ手立てを整えていたのだ。
「何とも思わんな。やはり消えたまえ」
それでもシーザーは不敵な態度を崩さない。波動攻撃が効かない――結構。ならばそれ以外の方法で抗えばいいだけだ。
「ただし消すのは、私じゃあ無いがね」
「さあ、超エキサイティングに飛ばされなさい」
「あの人、いつもこうなんですか?」
「はい、大体こんな感じです」
一方水之江の強襲揚陸艦ワダツミの長大な甲板には三人の猟兵が立っていた。博士とウォーマシン。やけにテンションの高い水之江の様子に困惑したコガネは、ダビングにその様子を伺った。大丈夫なのかと。
「デッキにリニアカタパルトを召喚。ターンエンド!」
「何のターンですか!?」
「このターンよ、私達の攻撃ターン!」
ダビングが言うには大体こんな感じとの事。ならばそれを信じて――進む他あるまい。甲板には水之江が召喚した超常――ド派手な電飾と謎めいた計器がそこかしこに仕込まれたリニアカタパルトが長大な面積を埋め尽くして、その威容を誇っていた。
「この一撃で、全てを終わらせて」
「――了解です水之江博士。ダビング・レコーズ、カタパルトセット完了」
「お、同じく七篠・コガネ……いつでも行けます」
3m近い巨大なウォーマシンが、両脚をリニアカタパルトの固定ボルトにロックする。VRとは言え超常、掛かる負担は現実のモノと同じ……想像を絶する重力加速度だ。
「ダビングのSSD形成確認、七篠君は……うん、衝撃係数の耐久限度をクリアね」
「え、それって本当でウワァァァァァ!?!?!?」
コガネの悲鳴が木霊する。弾丸と化したウォーマシンは漆黒を裂いて怪物の元へ。
「それじゃ、行ってらっしゃい!」
狙うは頭部頂上水晶体。それを破壊して、その後全てを――骸に還すのだ。
「しつこいね……だがこれまでだ」
鬱陶しくシーザーに付きまとう怪物。物質分解波動の波長が彼を同族とでも誤認させているのだろうか。だとしたら……そんなのは、御免だ。
「来たよ、死神が」
そういう輩の相手は彼等に任せよう。赤黒い光の尾を引いてシーザーは不意に姿を隠す。突然目の前から消えたシーザーを探すべく慌てた怪物が足を止めた、その時。
「SSD最大展開、目標貫通」
「償いでもいいんだ。偽善と思われても構わない」
二つの大質量の弾丸が、怪物の水晶体を穿った。その一撃は物質分解波動の解析より早く、物質分解光線の照射すら跳ね除けて、槍の様に鋭く尖った両名の先端はいとも容易く超硬の装甲を突き破り、二人のウォーマシンをその内部へと易々と導いた。
「過去幾つもの星々を滅ぼしてしまった僕は……」
痛い、とても。それでも――コガネが内心に思い描いたのは、過去の自分への憤怒と、新たな世界に向けての決意。
「絶対に、ここで諦める訳にはいかないんだ」
パイルバンカー再装填。水晶体を打ち破った反動で体がまだ痺れている。それでも、絶対に、絶対に――ここで立ち止まる訳にはいかない。コガネが全身から放つ電撃が、痛みにのたうち回る怪物の動きを麻痺させて、叩きつけられたパイルバンカーが再び、怪物を内側から砕いていく。
「ルナティクス展開――目標を破壊します」
そしてダビングは月明かりめいた青白い荷電粒子ブレードを抜き放ち、スラスターを噴射して、旋風の様に内側から怪物の肉体を抉り続けていった。火を噴くプラズマジェットが抉られた肉塊を焼き尽くし、砕かれた骨格をブレードが巻き込んでいく。流石の怪物も分解波動を体内に放つ事は適わない。そしてウォーマシンの二人だからこそ、この様な極限環境で最大の戦果を発揮するのだった。
「滅ぼされはしません。我々は」
「やらせません。僕達は」
再びチャージされたエネルギーが二体を光で包み込む――それぞれが超常の力で、怪物を殲滅せんと身構えて。最早誰にも、この世界の民を止める事など出来はしない――そんな強い意志を秘めながら。
「「この宇宙を越えて行く」」
マシンが咆哮を上げる。それは飽くなき明日への祈り。その声が最果てに届くまで、我等は歩み続けるという決意の表明。
「ハハハ、未知なる宇宙。これからの旅路が楽しみだね」
「――全くだわ」
いつの間にかワダツミの甲板へ降りたシーザーは、爆散する怪物を眺める水之江と共に遠い旅路に思いを馳せた。旅はこれから、その道は決して平坦では無い。
それでも必ず、いつかこの星の海を抜けたなら……。
新たな母なる星へ、辿り着けると信じて。
大成功
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