桜華舞い散る帝都:あの日、救えなかった友
#サクラミラージュ
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●――悔恨の止む時
「…………あら」
日も暮れた帝都の住宅街の外れに建つ、それなりに大きな邸宅。
その一室を頼りなく照らすのは繁華街から届くぼんやりとした灯と、空に浮かぶ下弦の月が雲の隙間から放つ薄い光。
何時しか眠り込んでしまっていたようだ。
ぱちりぱちりと弾けていた暖炉の薪も今では熱を失い静かに佇むだけ。
幸い、膝掛けに使っていた毛布が身体を温めていてくれたようで寝冷えはしていない。
それでもこの時間の気温は冷える。
膝の上に置いていたアルバムを閉じてテーブルに置き、窓を閉めようかと上体を起こした所で此方を見下ろす影に気付いた。
物盗りかと身体を強張らせるが、丁度その時、月を覆っていた雲が晴れる。
青白い光が部屋に差し込み、影を照らした。
「あぁ……そんな」
照らされた顔には見覚えが有った。
いや、忘れたくとも忘れる事の出来ない顔。
この六十年間、一度たりとも忘れた事の無い顔が、月明かりにぼうっと浮かんでいた。
「香織……」
大切な名を呼ぶ。
返事は無い。
自分の前に立つ少女は、あの時と何も変わらない姿のまま静かに佇んでいた。
黒髪を後ろで束ね、私が誕生日に贈ったリボンを巻いている。
元は白かった筈のそれは、あの時と同じ様に赤く染まっていて。
視線を提げれば、右手には日本刀が握られている。
それにも、見覚えが有る。
彼女の地元へ旅行に行った時、祖父の倉で見付けた年代物の刀だ。
思えば、私がそれを見付けなければ、彼女は。
「…………そうね、これも天命かしら」
ふっと、心が凪ぐ。
月明かりを受け鋭く光る刀を前に、やっと重荷が下ろせる気がした。
●――凶刃を止めて
「えー、と言う訳でですね。何時に無くシリアスなアレです」
普段はちゃらんぽらんの極みの様な巫女、望月・鼎は珍しく神妙な顔で語った。
予知した事件、それは嘗て友を失った女性が影朧に斬り殺されると言うものだった。
標的となった女性は七十も半ばの、ご年配と言って差し支えの無い人。
影朧となっているのは、如何やらその女性がまだ学生だった頃の友人、若しくはそれに準ずる関係の少女。
「影朧の名前は香織、と言うそうです。六十年前、香織の二つのキーワードを元に情報を集めてみるのも良いかもしれませんね。如何やら因縁となる事件が存在しているっぽいですし。あ、此方に標的の方の現住所を載せた地図が有りますのでどうぞご活用くださいな」
そう言って鼎は一枚の紙切れを猟兵達に手渡した。
相変わらず味が有る所か出汁の塊みたいな文字だが、目印になる建物や周囲の店の名前も書き込まれていて割と解り易い。
「標的となった方もそうですが、影朧の方も出来れば救ってあげてくださいな。……まぁ、こっちは私の個人的なお願いですけど」
一ノ瀬崇
遂に来ましたね新世界!
パフェなるものをお代わりせねば。(決意)
こんばんは、一ノ瀬崇です。
今回は新世界サクラミラージュでの事件ですね。
何故かめっちゃシリアスな空気が漂っていますが、皆様のプレイングでハッピーエンドに導いて頂きたい所さん。
どうぞお気軽にご参加くださいな!
第1章 日常
『真実の探求:影朧の軌跡』
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POW : 影朧を知る人を探しに行く。
SPD : 新聞や書籍に影朧の情報が無いか調べる。
WIZ : 影朧が執着するものについて調べる。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
桜庭・愛
街の地理や配置から逃走経路や侵入経路がないか調べます。
まずは図書館やそういった文献がないかでしょうか。
「襲撃するなら地理や土地勘がないと成功効率が下がると思いますので」
逆に、新聞や書籍などは閲覧はしません。
勝手な憶測や推論があると考えます。
役所や図書館の同じ記述を抜粋し時系列ごとに推移して地図や時刻と照らし合わせて相手の行動範囲を予測する方が合理的だと思います。
シン・ドレッドノート
アドリブ・連携OK
【SPD】
はじめて訪れる世界ですが、桜の美しい世界ですね。
影朧と標的となったご婦人が救われるよう、力を尽くしましょう。
まずは図書館など、過去の情報がありそうな所に行って調査を行います。
「さて、では皆さん、よろしくお願いしますね」
【奇術師の協力者】で過去に出会ったことのある新聞記者や刑事、探偵を召喚。60年前の新聞や、それ以降に発行された書籍を人海戦術で調べていきましょう。
ご婦人の学生時代の話と言うことで、ご出身の学校についても調査しておきますね。
因縁となる事件の詳細が分かったら、仲間の猟兵に連絡しつつ、その現場にも行ってみるとしましょう。
夢咲・向日葵
【オーキッドお姉さんと一緒】
●心情
・なんかシリアスそうな雰囲気なの。昔のことを色々と調べればいいのかな。香織さんって人と関係そうなおばあちゃんを調べればいいんだね。
・色々と調べたらオーキッドお姉さんコンピューター?が何か閃くらしいの。流石だね、オーキッドお姉さん。頑張れー、オーキッドお姉さん(って応援すれば張り切って何とかしてくれるって言ってたけど、本当かなー)
●調査
・図書館に行って情報収集するのよー。昔の漢字とかが多くても、多少なら学校の授業でもやったし、問題なく読めると思うのよ。色々と調べたら、カフェーでオーキッドお姉さんと合流して、情報共有するのよ。
・袴でお散歩しながら何か聞けないかなー
オーキッド・シュライン
【向日葵と一緒ですわ】
●心情
・あのシャチとか叔母様に比べると向日葵は良い子で癒しですわね。いや‥本当に。あの灰汁の強い2人が居ない内に羽根を伸ばしましょう…とはいかないんですわよね。まあでも情報が集まれば何かピーンと来るはずですわ。それに掛けましょう。キーワードは60年前、香織っと。
●調査
・いろいろな書籍をあたって情報を探しましょう。当時の新聞や或いは何かゴシップのようなものが載った雑誌でもあれば、それを読み進めますわ。
・しばらくしたら向日葵と合流してカフェーでお茶をしながら情報共有をしてUCで何か閃かないか試してみましょう。
・さて、あの方々に何があったのか、真実の炎にて照らして見せましょうか
メンカル・プルモーサ
……ふーむ……60年前、か……図書館あたりに行けば昔の新聞があるかな?
…ひとまずそこで当時の記事を当たって情報収集をしてみよう…
……新聞記事に香織という名前があればその乗ってる記事の内容を把握……
…事件現場が書いてあればそっちに移動だね…60年前っていうと相当古いけど……
…現場近くの古い店に入ってコミュ力を駆使して当時を知っている人を探して…どんなことがあったかを聞き出してみよう…
…香織さんとかの知り合いがいればその人からも話を聞いてみたいね…
…香織さんと標的の人との関係とか、その事件にどうかかわっていたか、とか気になるし…外からの情報を集めておきたい…
「はじめて訪れる世界ですが、桜の美しい世界ですね」
シン・ドレッドノートは風に舞う桜の花弁に目を細めながら、華やかに賑わう街の通りを眺めていた。
舞台帰りらしき男女二人、カフェで甘味に舌鼓を打つ女学生達、ご老人達に変わりないか訪ねて回る警邏、コーヒーを飲みながら話し込んでいる新聞記者と小説家らしき女性。
誰もが顔を綻ばせ楽しげに笑っている。
唯一不満そうにむくれているのは、落ちた花弁を箒で払っている小坊だ。
手伝いでも言い付けられたのか、公園へ遊びに走る同じくらいの年頃の少年達を羨ましそうに見送っては溜息を吐いている。
そんな平和な光景に、シンは心持を新たにする。
(影朧と標的となったご婦人が救われるよう、力を尽くしましょう)
「えーと、図書館はこっちだっけ?」
意識を飛ばしていた彼が、その言葉でふっと我に返る。
地図を見ながら道順を確認するのは夢咲・向日葵だ。
自身の名前と同じ向日葵柄の小袖と、向日葵の茎を思わせる袴に身を包んだ現役女子中学生である。
その横で同じ様に地図を覗き込んでいるのはオーキッド・シュライン。
向日葵とは仲の良い知り合いで、依頼以外でも一緒に出歩いたりしている。
普段は周囲に居る灰汁の塊の様な人達に振り回されているので、向日葵と二人で行動するのはオーキッドに取って素晴らしい癒しとなっている。
「汽車通りの一つ向こう……あれかな」
通りの先に一際大きな建物をメンカル・プルモーサが見付ける。
二階建ての巨大な建物には数多くの人が訪れており、中々に賑わっている。
まだ手元に無い知識があの場に納められていると考えるだけで、メンカルの足取りは軽さを増した。
貪欲に知識を求める辺りは流石魔女と言った所か。
「兎にも角にも、先ずは情報を集めておきたいですね」
落ち着いた声色で話すのは桜庭・愛。
長い黒髪を風に揺らし凛とした姿で歩く姿は少なからず衆目を引いていた。
中には黄色い声を上げている女学生も居るが、当の本人は気付いた様子も無くこれから探し当てるべき情報を纏めている。
五人が図書館の入り口を潜ると、本独特の匂いが漂ってくる。
受付は広々としており、舶来物の洋服に身を包んだ職員が貸し出しや書庫の閲覧許可の手続きを行っている。
直ぐ横には上下階段が有り、二階は専門書やムック本が置かれており、地下は貴重な資料や海外の雑誌が揃っている様だ。
受付の反対側は提携したカフェが入っており、読書の合間に甘味や紅茶を味わえる贅沢な時間を提供している。
「カフェ併設とはお洒落ですわね」
「調べ物終わったらお茶なのよー」
早くもカフェに意識を持って行かれるオーキッドと向日葵。
彼女達だけでなく、此処を訪れる人の多くはカフェでの談笑も楽しんでいるらしく満席とまではいかないが盛況な様子が窺える。
「お茶は後のお楽しみに取って置くとして、一先ずは情報を探しに行きましょう。私は60年前の新聞を主に当たって事件が起きていないかを調べてみます」
「私も当時の記事を調べてみる……」
シンとメンカルは昔の新聞が保存されている区画へ。
「では私は周辺図で事件が起こる地域の情報を集めてみましょう。襲撃するなら地理や土地勘がないと成功効率が下がると思いますので」
愛は地理・歴史のコーナーへ。
「ではわたくし達は雑誌・書物のコーナーですわね」
「お手伝いなの」
オーキッドと向日葵は当時の雑誌や流行紙が置いてある場所へと向かう。
三時間を目処に一度カフェで集まり情報を交換しようと取り決め、いざ知識の海へ。
先ずは地図を探しに行った愛。
60年前の地図と現在の地図を取り出し見比べてみる。
事前に入手した襲撃地点周辺の様子は当時と大きく変わっては居ない。
元々住宅街として設計されていた様で、土地を削って道路を拡張されたりはしていない。
唯一変わったと言えば、対象の邸宅の裏手。
土地を手放したのか裏の通りに面していた場所は、今は公園に変わっているらしかった。
「これは……」
普段なら気にも留めない様な情報だが、愛はこれを重要と考える。
試しに周辺の住宅が現在空き家になっているかを確認してみると、面白い事が解った。
邸宅裏――公園の先の区画には老朽化した建物も多く、中には人が住んでいない家屋も有る。
如何に人の被害を勘案しない影朧とて騒ぎが大きくなって帝都桜學府等が出張って来るのは良しとしない筈。
となれば比較的人の目に付かないルートから侵入を試みるだろう。
その点で言えば、邸宅からこの公園、その奥の区画を通れば人通りも少なく住人に気取られる心配もほぼ無い。
「当たりですね」
元より邸宅内での迎撃はリスクが高いので避ける心算であった。
何処か開けた場所で戦う事が出来れば、そう考えていた愛にこの情報は値千金。
上手く公園で立ち回る事で周辺への被害も抑えられるだろう。
「となると……公園周辺の住民への注意喚起も必要ですね」
襲撃時の対応を脳内で取り纏めつつ、愛は地図を棚に戻しに行くのであった。
続いては向日葵とオーキッドの仲良しコンビ。
60年前の雑誌は流石に多少色褪せてはいるが読む分には特に問題も無かった。
旧字体で書かれている文も多かったが、前後の文章や漢和辞典を駆使して向日葵はすいすいと読み勧める。
傍から見たら勉強している女学生にしか見えないだろう。
オーキッドも当時の文芸誌を手当たり次第に漁っている。
すると、一つの共通点に気付いた。
とある時期を境に、脱獄囚が作中に登場するサスペンスものが多くなっていた。
文芸誌に載る話は或る程度現実世界で話題となった事件や流行を作中に取り入れる事が多い。
身近に感じている話題を出す事で、物語への没入感を高める事が出来るからだ。
一つ二つの文芸誌で取り上げられているなら単なる偶然かもしれないが、これまで手にした文芸誌が挙って似た様な話を載せているのと言うのは気になる所。
「んー……これは……?」
顎に手を当てて悩み始めるオーキッドに気付き、向日葵は顔を上げた。
「ハッ、何かを閃きそうになってるの」
幾度と無くぴこーんと閃く姿を見てきた向日葵はそれが前兆だと解った。
普段共に居る相棒から聞いた話では、こんな時は応援してみれば張り切って何とかしてくれるとの事。
(本当かなー)
若干の疑問は抱いているが物は試しと小声で声援を送ってみる。
「色々と調べたらオーキッドお姉さんコンピューター? が何か閃くらしいの。流石だね、オーキッドお姉さん。頑張れー、オーキッドお姉さん」
声援を受けたオーキッドは一気にテンションが上がる。
普段自分を振り回し好き勝手している二人と違って、向日葵は純粋に自分をお姉さんと慕ってくれている。
そんな可愛い妹分からの声援に応えない訳にはいかない。
熱意が真実を手繰り寄せたのか、ユーベルコード【お嬢様の閃き】が発動した。
「おーほっほっほ! 閃きましたわー!! ピーンと来ましたのよ!」
高笑いを上げるが勿論小声だ。
図書館で騒いではいけない。
「向日葵、ちょっと」
「んー?」
呼び掛けられた向日葵はページを捲っていた手を止め、首を傾げて見せる。
「当時の事件で脱獄犯が何かしらの事件を起こした、と言う記事は有ります?」
閃きが導いた可能性。
文芸誌に見られる傾向は、もしや現実の事件をなぞったものでは無いだろうか。
内容は似たり寄ったりなものが多いが、どの作品にも共通して脱獄犯と人質に取られる人物と、その人質と深い関わりを持つ人物が出て来た。
人質となるのは偶に男性やペット等も居たが、その殆どは年端も行かぬ少女。
関わりを持つ人物は様々だったが、誰もがその人質を大切に思っている。
(……この辺りが恐らく現実の事件をモデルにした際、最もセンセーショナルに報道された部分でしょうかね)
物語の根幹を成す部分に見られる符合。
フィクションだからと面白おかしく脚色されてはいるだろうが、それでも動かない設定と言うのは実に興味深い。
「脱獄犯脱獄犯……雑穀ご飯」
「なんか違いません?」
「大地の恵は素晴らしいのよー」
小腹も空いてきたのか一度ちらりとカフェの有る方向へ視線をやって雑誌を捲る向日葵。
すると小さな記事に、一度脱獄した殺人犯が逮捕後に自殺した、と有った。
「多分これかな。少し前のを探してみたら詳しく載ってそうなの」
「日付は……丁度60年前のものですのね」
「年末のだからそこまで事件から日は経ってなさそうね。それじゃこの雑誌の前のものを辿ってみるの」
そう言って向日葵は立ち上がる。
短時間ではあったが予想以上に集中していたらしく、凝り固まった身体に血液が流れ込んでいく感覚が心地良い。
軽く伸びをして機敏に雑誌の棚へと向かう姿を見送りつつ、オーキッドは文芸誌を片付けていく。
事実は小説よりも奇なり、とは言うが果たして。
取りとめも無くそんな事を考えていると、向日葵が一冊の雑誌を持ってきた。
表紙の煽り文にも凶悪脱獄犯と書かれている。
如何やら当時の話題を掻っ攫った一大事件らしい。
「何度か見掛けたけど被害者が未成年だから名前載ってなかったの。それでスルーしてたのよ」
「……あぁ、言われて見れば」
被害者が未成年だから氏名は伏されている。
その可能性をすっかり忘れていたオーキッドは自分に苦笑しつつ、椅子を引いた。
隣に座る向日葵と一緒に雑誌を覗き込む。
そこには痛ましい事件の内容が書かれていた――。
各社の新聞が保存されている区画で、ぱさりぱさりと紙面を捲るシンとメンカル。
様々なニュースが紙面を賑わせており一目でこれだと解る事件を探し出すのは難しい。
そこでシンが取った作戦はユーベルコード【奇術師の協力者】による人海戦術。
彼が過去に出会った新聞記者や刑事、果ては探偵が現れて情報収集に協力してくれている。
俄に騒がしくなった区画で新聞を出しては戻し出しては戻しを繰り返していく。
そして数分の後。
「ご両人、こいつを見てくれ」
トレンチコートを着こなすやたらと渋い刑事のおじ様が新聞紙を二つテーブルの上に置いた。
「安さん、これは?」
「見て欲しいのは先ず此処の訂正・謝罪文だ」
一先ず他の協力者達に礼を言って送り還し、紙面を覗き込む。
メンカルも安さんと呼ばれた刑事の指先を追って、書かれている文を読む。
「未成年の氏名を記載した事のお詫び……?」
「あぁ、幾ら衝撃的な事件だからって遺族の同意も無しに未成年の名前を出しちゃいけねぇ。此処の文屋は手柄欲しさに越えちゃいけねぇ領分ってのを越えちまったのさ。で、こっちがその二日前の記事だ」
そう言って出された新聞の一面には『凶悪脱獄犯、女学生を刺殺!』と大々的に報道されている。
記事によれば、台風と地震による停電に乗じて刑務所から男が脱走。
逃走中に身を隠す為立ち寄った家で、偶然居合わせた女学生二人に近所の家から盗んだ包丁を突き付ける。
男の狙いは女学生が倉の掃除中に見付けて持っていた日本刀。
包丁よりも余程武器として使えると判断した男は女学生二人に襲い掛かる。
警官隊が駆け付けた時には女学生の内一人は既に凶刃に倒れており、もう一人はショックで茫然自失の状態。
女学生を人質に取って日本刀を手に警官隊を威嚇する男だったが、偶然近所を散歩していた犬が敷地内に迷い込む。
背後から吠え掛かられた事で動転した隙を突いて、警官隊が男を確保。
無事一人を救い出したがもう一人の女学生は出血が酷く、病院に運ばれるも治療の甲斐無く帰らぬ人となった。
そして、その被害者たる女学生こそ。
「香織、さん……」
「これは……何とも」
痛ましい事件に目を伏せる二人。
その様子を見た刑事は「追い討ちを掛ける様で申し訳ないんだが」と前置きしてもう一つの新聞を取り出した。
日付は事件が有った日から一月程が過ぎている。
別の新聞社の記事だ。
小さな記事だったが、そこには脱獄犯の最期について書かれていた。
「拘留中に被疑者死亡……!?」
「遺書は無いけど状況から自殺と断定……直前には巡回の担当官に『裁判が出来ると思ってんのか?地獄の閻魔でも無理だな、まぁあの世ってのが有るかは知らねぇがな』と言い放っていた事が判明している……ね」
予想を遥かに超えた男の言葉に、思わず呆然とするシン。
メンカルは余りにふてぶてしい言葉と行動力に嫌悪感さえ覚えている。
結果、被疑者死亡のまま不起訴処分となり事件の真相は闇の中。
その他の余罪に付いても明らかにされる事は無く、事件は時と共に風化していった。
「とんでもない話ね……」
「こんな話、確かに公に報道出来る筈も無いか……あ、安さん有難う御座いました」
いいって事よ、と刑事はひらひらと手を振って還って行った。
後に残るのは閉塞感にも似た嫌気。
そんな空気に割り込んで来たのは控え目な時計の鐘。
気付けばもう10分程で集合時間だ。
「一先ず……皆さんの所へ行きましょうか」
「新聞、戻してくるね」
衝撃的過ぎた事件に少し憔悴した様子のシンを気遣い、メンカルは新聞を戻しに行く。
その途中、本棚の影から出て来た老齢の女性とぶつかりそうになる。
「おっとと」
勿論ぶつかる事も無く、ひらりと身を躱す。
女性はメンカルの身のこなしに少し驚いた顔をして、直ぐに頭を下げた。
「ごめんなさいね、怪我は無いかしら」
「ん、大丈夫……」
「それは良かったわ……あら?」
女性がメンカルの持つ新聞に目を向ける。
丁度事件の記事が表側になっていた。
此処で会ったのも何かの縁と、彼女はこの女性に事件の事を聞いてみる事にした。
「この事件について、何か知っている事は……?」
「えぇ。忘れられるものでは無いのよ」
その言葉で事件と何らかの関わりを持っていると確信したメンカルは身分を明かし、女性に協力を仰いだ。
女性は相手が猟兵と知って驚いた様子だったが、その顔を柔らかい笑みへと変えてぽつぽつと語り出す。
「或る意味では私も当事者と言えるかもしれないわね。その記事、途中で犬が迷い込んだって書いて無かったかしら?」
確かに書いてあった。
偶然迷い込んだ犬が事件を解決へ導いたと言っても過言ではない。
「その犬の飼い主、実は私なのよ。当時は別の街――その事件が起きた街に住んでいたんだけど、散歩の途中で飼っていた犬が突然走り出して。塀を飛び越えて行っちゃったから慌てて回り込もうとしたら家の前に大勢の警官さんが居るし、大声は飛び交っているしで怖くて。後から聴いたらうちの犬が事件の真っ只中に飛び込んで行ったって、驚いて腰を抜かしちゃったわね」
「被害者の二人は知り合い……?」
「直接の面識は無いけど、警察の人が少しだけ教えてくれたわ。何でも秋休みを利用して、亡くなった方の実家へ遊びに来ていたとか。その亡くなった方の実家と言うのが、この事件現場なのよね」
そこまで聴いた所で、奥のテーブルからシンが立ち上がる音が聴こえて来た。
取り敢えずは此処で区切っておくべきだろう。
「有難う……参考になった」
「いえいえ、お役に立てたなら嬉しいわ」
女性に礼をして、メンカルはカフェへと向かう。
「…………予想以上の事件ね、正しく色んな意味で」
カフェの奥の席を取り情報を交換する五人だったが、やはりと言うかその顔は冴えない。
浮かび上がってきた事件は凶悪と言う他無く、犯人は何も語らぬまま自殺し裁判は行われず仕舞い。
解ったのは今回の予知の標的が生き残った女学生、襲い来る影朧が香織と言う亡くなった女学生だと言う事。
「事件の概要は掴めました。本人達の胸に燻るものについては、他の猟兵達にお任せしましょうか」
「そうだね……」
愛の言葉に皆が頷く。
事実は手元に集まった。
次は真実を見付け出す番だ。
大成功
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フィーナ・シェフィールド
アドリブ連携OKです♪
【WIZ】
影朧の執着している物について調査しますね。
標的となっている女性について、ご近所の方に聞いて回ります。
60年前、女性が学生時代の頃の事件と言うことですので、ご年配の方を中心に聞いてみますね。
「香織さん、と言う方にお心当たりはありませんか?」
聞き込みの間も、人当たりが良く、礼儀正しい雰囲気を忘れずに。
昔話は長くなるかもしれませんが、適度に相槌をうって事件に関する話に誘導しつつ、情報を聞き出していきますね。
手がかりがつかめたら、他の猟兵の皆さんにお伝えして、調査を続けましょう。
英・操
調べ物って得意じゃないのよ
だってスタアだもの
だから簡単にいきましょう?
標的になっているそのお婆さんに話を聞けば簡単じゃない?
だから色々聞いてみましょうか
まず聞きたいのは60年前に何があったのか
それとお婆さんと香織と呼ばれている影朧の関係もどういう間柄だったのかしっかりと聞いておかないと
さ、なんでも話しなさい
この操様が聞いてあげるのだから!
スタアは会話術も一流よ!だってスタアだもの!
それとね、お婆さん
天命なんて言っちゃだめよ?
諦めるのは一番美しくないわ
その香織って子に伝えたいこととか聞いてみたいことがないか考えておきなさい?
スタアがお膳立てしてあげるから
あ、サインは後で全部終わったらね
才堂・紅葉
「ふぅむ。これが初事件か」
この世界に来て初の事件、気合を入れていこう。
上手い具合に機関に紛れ込んだので、一稼ぎしていきたい。
レトロな、この時代だとハイカラなデザインの蒸気スクーターを駆り、街の書店や古書店を巡って【情報収集】だ。
60年前の香織という人物について探る。標的となる人物について調べ、その過去と香織さんの接点を調べていきたい。
特に気になるのは『刀』と言うワードだ。断片的過ぎて空振りの可能性もあるが、曰くつきの刀剣についても調べておきたい。
霧島・龍斬
怨恨殺人ってぇなら、その恨みを解き解すのが俺らの仕事ってか。
……たまには斬り合い以外にも興じますかね、っと。
――60年前ってぇと、記事が残ってるか怪しいが、ブン屋が原稿を『残してる』んなら、掴み様はある。
それも含めて【情報収集】すんのが俺らの仕事だってんだろ――なぁに、愉しみの為の苦痛なら幾らでも受けてやるよ。
……ま、影朧になるぐらいの事件だ。
きっと『凄惨』ってもんだろうし、『普通』の人間ならそう考えるだろ。
俺はどうとも思わねぇがな、見飽きたし。
※アドリブ可
「ふぅむ。これが初事件か」
通りをレトロな、この世界ではハイカラなデザインの『試験用蒸気バイク』に跨り進んでいく一人の女性。
才堂・紅葉は結った髪を風に棚引かせながら、今回の事件に思いを馳せる。
60年前と言う手繰り寄せるには少し遠い過去に始まる一つの因縁。
香織と言う女性が影朧となった経緯を知る為に、先ずは古書店を巡り切欠となった事件を調べてみる事にした。
それとは別にもう一つ、紅葉の興味を引いたものがある。
それは刀。
予知で影朧が握っていた刀が、ともすれば全ての引き金を引いたのかもしれない。
流石に妖刀が因果を操っている等とは思っても居ないが、それでも検討もせず可能性を捨て去ってしまうのは性分ではない。
とは言え此方はあくまで序。
本命はやはり事件の起きた瞬間、女性と香織が交わした遣り取りであろう。
(……ま、いずれにしてもこれがこの世界に来て初の事件。気合を入れていこう)
軽快に走って行く蒸気バイクは注目の的らしく、通り過ぎる度に人が振り返っている。
その事に妙な感覚を得ながら紅葉は最初の古書店へと辿り着いた。
「いらっしゃい」
無愛想なしわがれた男の声が、店の奥から聴こえて来る。
天井近くで回る扇風機と綺麗な本棚、そして後回しにされ色が日焼けしている壁紙。
正しく街の古本屋と言った体裁の本屋に足を踏み入れた紅葉は、取り敢えずぐるりと店内を回ってみる。
多く置かれているのは昔のアイドルや人気歌手を特集した古雑誌。
ピンキリとは言え発売時の10から20倍以上の値段が付いているそれらを見て小さく感嘆の息を漏らす。
需要が有れば値段は上がる、と言う事はこれらの本は所謂お宝なのだろう。
(惜しむらくは私がこういった本に価値を見出せない事ね)
推しの歌手でも居れば違うのだろうが、彼女にとっては新人アイドルも銀幕の大スターも等しく知らない人である。
余り情報は手に入らなさそうと感じるが、一応店主にも話を振ってみる。
が、やはり望む情報は得られなかった。
お邪魔しました、と店を出た紅葉はバイクに跨り、次の店を探す。
そうやって幾つか回った先で、漸く期待出来そうな古書店を見付けた。
「おっ」
思わず声が上がる。
古書店は各年代に絞って当時の本を網羅する店と特定の分野に絞って同系統の本を集める店がある。
この店は後者だ。
それも、事件や事故の特集が組まれている雑誌や当時の事件を振り返っての意見書等が数多く陳列されている。
(良いわね、これは当たりかしら)
思わず口の端が吊り上がっていくのを抑えられないまま、紅葉は上機嫌に店内を巡ってみた。
本の整理も解り易く、起こった事件が年月順に纏められており60年前の事件を取り扱う本のコーナーは直ぐに見付かった。
だがその直後、紅葉は諦めると言う感情を手にする。
「…………うん、お手上げだわ」
この年は色々と自然災害も多かったらしく、此処だけが他の年代よりも多く本が並んでいた。
流石にこれだけの本の中からあやふやな事件について探すのは無茶が過ぎる。
そこで紅葉はスペシャリストの手を借りる事にした。
「店主さーん」
「はい、どうされました?」
秘術・店主呼びである。
呼ばれて顔を見せたのは白髪をオールバックに撫で付けた彫の深い年配の男性。
その店主を見て、紅葉は本の案内を頼むと同時に一つ聞いてみる事にした。
もしかしたら当時の事を知っているかもしれない。
紅葉の問いに、彼は薄く微笑んで口を開いた。
「あぁ、その事件ならば知っていますよ。大ニュースでしたからね」
「是非お聞かせ願えませんか」
「詳しい事は此方の……そうですね、この本に載っていますが」
「貴方の口からも聴きたいのです」
ぐいぐい迫る紅葉に、少しばかり困った笑みを浮かべる店主。
それならばと猟兵である事を明かしてみる。
話している相手が猟兵である事からこの質問が影朧絡みであると見抜いた彼は、少しの沈黙の後奥のスペースへと案内してくれた。
奥には簡易な椅子とテーブルが置いてあり、帰るのを待ち切れない人が買った本を読むスペースが設けられている。
そこへ紅葉を座らせた店主は手にお茶の入ったコップを二つ持ってきて、テーブルに置いた。
「有難う御座います」
中身は淹れ立てのほうじ茶で、良い香りが肺に広がっていく。
自身も唇をお茶で湿らせ、店主はゆっくりと当時の事を話し出した。
「私は以前、警察隊に居りましてね。その事件の時も真っ先に現場に駆け付けたのですよ」
予想だにしていなかった事に紅葉の目が丸くなる。
それを見て小さく笑みを浮かべる店主。
「今はしがない本屋の店主ですよ。さて、事件ですが犯人は街を二つ挟んだ刑務所に入れられていた男です。当時は台風や地震が多く、度重なる自然災害で大規模な停電が起こっていました。その所為で刑務所の設備に不備が生じ、男を含む数人が脱獄しました。幸い一人を除いて一時間もしない内に取り押さえる事が出来ましたが、唯一、その男だけは警察隊の包囲を掻い潜って逃走したのです」
「その男が、事件の」
「そうです。男は逃走を続けながら住民の居ない時間を狙って空き巣を繰り返していました。服や食料、凶器となった包丁はその時手に入れたものです。そして逃走するうちに辿り着いたのが、現場となった一軒の家。そこには二人の女学生が居ました。一人は、先程貴女が口にした香織さんです。二人は秋休みを使い香織さんの実家へ遊びに来ていたそうです。倉の片付けをして外に出た時、男と鉢合わせてしまった。彼女達の最大の不幸は、その時倉から日本刀を持ち出していたと言う事でしょう。包丁よりも殺傷力の有りそうな武器を手に入れるべく、男は二人に襲い掛かった」
店主はそこで一度切り、当時を思い返す様に目を瞑る。
如何やらこの先が目撃した事の様だ。
「私が到着した時、既に香織さんの胸元には包丁が突き刺さっていました。もう一人の女学生は放心状態で男に捕まっていて、男の手には奪い取った日本刀が握られていました。続々と仲間が応援に駆け付けましたが男は強気に刀を構え、女学生を盾にしていました。場が硬直した時、男の背後に一匹の犬が迷い出て来たのです。犬は大声で吠え掛かり、男は背後からの大声に驚き振り向きました。今にも飛び掛らんと牙を向く犬に気圧されたのを見て、私達は男を確保しに向かいました。無理に振り向いた所為で人質となっていた女学生がその場にへたり込む様に崩れ落ちたのも幸いしました。男は人質から重荷へと変わった女学生を捨て置き逃走しようとしましたが、敢え無く逮捕されたと言う訳です」
「そんな事が……」
「此処までは、この本にも載っている通りですよ」
一つ息を吐いてお茶を啜る店主。
間違い無く、この事件が香織を影朧に変える切欠となった筈だ。
(……でも、これだけ?)
腑に落ちない。
影朧と成り果てた香織と、後悔を刻み続ける女性。
その二人の関係に迫るには、まだ何かが足りていない。
紅葉の心中を察したのか店主はコップを置いて静かに告げた。
「此処からはどんな本にも書かれていない、伏せられた情報です。香織さんが病院へ運ばれる直前に女学生は意識を取り戻したのですが、病院で検査が終わってからもずっと『私の所為だ』と悔恨を口にし続けていたようです。私を始め担当医や他の警官も真意を問うてみたのですが、力無く首を振るばかりでついぞ答えは得られませんでした」
私の所為だ。
その言葉にどれ程の想いが篭められていたのかは解らないが、それが因縁の袂だろう。
此処から先は恐らく本人しか知らない事なのだろう。
ふと思い出し、紅葉は刀についても聞いてみた。
「あぁ、あの刀は元々美術品として許可を受け保管されていたもののようですね。届出もしっかり出ていましたし、事件の参考物ではありますが凶器では無いので一時保管の後香織さんの実家へ返却しました。曰く付きだとか、そう言った良くない噂の様なものは全く無いですね。そんなオカルト、と言えたら良いのですが影朧の脅威も有りますし断言出来ない所は元警官としても悩ましい所ではありますが」
「怨恨殺人ってぇなら、その恨みを解き解すのが俺らの仕事ってか。……たまには斬り合い以外にも興じますかね、っと」
街を練り歩きながら霧島・龍斬は新聞社や出版社を回っていた。
件の事件は60年前に端を発している様だ。
昔の事件を探るのに鮮度の落ちた情報を集めていては埒が明かない。
ならば活きの良い情報をそのまま保存している所を探って回れば良い。
そう考えた龍斬は当時の事件を担当した記者を探して回し、一人一人訪ねて情報を掻き集めていた。
情報を発信するのは頼まれずともやるが情報を明かすのは極端に嫌がる連中も、流石に影朧の出現を臭わせれば大人しく情報を差し出してきた。
事件解決後の街角インタビューでうっかり『どこそこの記者に邪魔されて被害者が増える危険が有ったが無事に済んで良かった』と答えなくて良くなったのは誰に取っても幸福であろう。
権威に胡坐を掻く『お偉いさん』達は大いに肝を冷やしていたが。
一方、若手の記者や骨太な記事を書き続けてきたベテラン達は、龍斬へ惜しみない協力をしてくれた。
当時の記者への繋ぎや、原盤の発掘等。
彼等の手助けが有ったからこそ迅速に手に入った情報も有る。
「富や名声では無く、他人の幸福の為に情報を扱ってこそジャーナリスト、か。良いねぇ、悪くないぜ」
何処と無く上機嫌な様子で、龍斬は行く。
次の目的地は業界内で最も熱心に件の事件を追い駆けていた記者の元。
誰よりも真相究明に勤しんでいたその人は、或る時を境に事件を追い駆けるのを止めた。
果たしてその理由とは。
そうせざるを得ないと判断した根拠は何だったのか。
全ては会って話を聴いてみれば解る。
「此処か」
辿り着いたのは一軒の古いアパート。
最上階の部屋がその記者の住所だ。
扉をノックすると、一人の若い女性が出迎えてくれた。
部屋を間違えたかと焦る龍斬であったが、女性はお待ちしておりましたと告げて室内へ招き入れる。
孫か何かだろうか。
一先ず靴を脱いで部屋に上がる。
外から見るよりも広い間取りに、清潔感の有る整理された部屋。
案内された部屋の奥に、一つの仏壇が有った。
飾られている写真は年配の男性のもの。
「主人は先月、亡くなりました」
女性が静かに口を開く。
龍斬はその言葉に目を見開いた。
話を聴いてみるとこの女性は訪ねる予定だった記者の二番目の妻で、元は同じ新聞社で働く後輩だったとか。
深く掘り下げるとドロドロしたものが見えて来そうだったので程々で世間話を切り上げ、本命の事件について尋ねてみる。
とは言えこの若い後妻が詳しい情報を握っているとも解らない。
空振りだったかと息を吐く龍斬だったが、茶封筒が差し出されたのに気付いて顔を上げる。
「これは?」
「主人が遺していたものです。もしあの事件の事を誰かが聞きに来たなら渡せ、と」
如何言う意図で遺したものかは解らないが、評判になる程入れ込んでいた事件だ。
もしかしたら誰かに自分の足跡を知っていて欲しかったのかもしれない。
茶封筒を開けてみると、中には折り畳まれた紙と手帳が入っていた。
紙には、自身が集めた情報を纏めて手帳に書き記している事、出来ればこの情報は公開しないで欲しい事、読み終わったら手帳を妻に返却して欲しい事が書かれていた。
「この手紙は」
「今、初めて見ました」
反応から推し量るに嘘は言っていない様子。
無意識に相手を探っていた事に気付き、龍斬はふっと息を吐く。
(意味の無い所で気を張っても仕様が無ぇか)
一度頭の中をフラットにし、改めて手帳を読み進める。
内容の大凡は既に知っている事だった。
事件のあらまし、男の素性、被害者達の関係。
ぺらりぺらりと捲っていく。
どれ程の時間が過ぎただろう。
その手が、不意に止まる。
「こいつぁ……」
その中に知らない情報が出て来た。
被害者は女学生の身ながら剣術を嗜んでおり、学校に入る前にも不良学生数人を返り討ちにした事が有る、と。
ただ学校に入ってからは同級生に怖がられるかもしれないと思い、剣術を嗜んでいる事は周りには秘密にしていた様だ。
そこまで読んで疑問が浮かぶ。
子供の身で自分よりも体格の良い学生達を蹴散らせるのなら男も同様に返り討ちに出来たのではなかろうか。
尻の青い学生と犯罪者である男を同列に考えるのもアレだが、包丁を持っただけの男に無抵抗に殺されていると言うのは多少おかしい。
更に読み進めると、素手での遣り取りはその辺の子供と変わらない腕前であったとの記述がある。
素手はぽんこつ、握れば同年代の男数人を寄せ付けない強さ。
中々にアンバランスなセンスの持ち主だ。
(普通何か鍛えればステゴロでもそれなりに動けるもんだが)
書いてあるままを信じるとして、もう一つの疑問が浮かぶ。
彼女達は倉から日本刀を見付けて持ち出している。
その日本刀を使えば、鞘に入っていようが峰打ちで構えようが男一人くらいは如何にでも出来そうなものだ。
突然襲い掛かられて気が動転していたのか、倉から出た瞬間に襲われたのか。
少し考え、どちらでも無い事は直ぐに見当が付いた。
不良学生数人を相手取って一歩も引かない程だ。
男一人が粗末な包丁を持っていたからと言って怯え竦む様な女では無いだろう。
奇襲を受けたとも考え難い。
香織が倒れていたのは倉から7m程離れた場所だ。
血痕が他に飛び散っていたとの情報は警察の発表にも現場写真にも無い上、その場所は周囲に隠れるものも無い。
見通しの良い庭の中央付近に居る人間を全くの意識外から襲う?
馬鹿馬鹿しい、それこそ影朧の仕業くらいしか考えられない。
当時の事件に影朧が関わっていたと言う事実が無い以上、考えられるのは一つ。
香織ともう一人の女学生は倉から出て少し歩いた所で男と相対し、逃げ出す事も日本刀を構えて抵抗する事も無いまま香織は刺されて死んだと言う事。
(…………外から解るのはこのくらいか。やっぱ当人に聞いてみるのが一番かね)
礼を言って手帳を女性に渡し、龍斬はアパートを後にする。
手帳の最後のページには『日本刀にはもう一人の女学生の指紋しか付いていなかった』と書かれていた。
今回の標的にしてキーパーソン。
生き残ったもう一人の女学生が現在暮らしている邸宅へと、二人の猟兵が辿り着いていた。
一人は英・操。
国民的スタアにして猟兵と言う、帝都のみならず世界から声援を受ける人気者だ。
もう一人はフィーナ・シェフィールド。
こちらも国民的スタアであり猟兵であり、その歌声は各国の首相にもファンが居る程。
煌びやかなオーラが漏れ出る二人は街行く人々に歓声を送られつつ、如何にかこうにか目的の場所へとやってきた。
「ふふ、応援してもらえるのは嬉しいけど少し疲れちゃったわね」
「ですが皆さん、喜んでくださいましたね」
人の波に揉まれて浮かんだ額の汗をハンケチで拭う操。
そんな彼女にフィーナは微笑み掛ける。
スタアで在るが故の人気を受けつつも、その輝きに一点の陰りも無いのは流石スタアと言うべきだろうか。
実は仕事の最中であると伝えてサインは一旦お断りしたが、ファンの人々は嫌な顔一つせず快く送り出してくれた。
その時の会話に乗じてフィーナは香織と言う女性について、並びに60年前の事件についても聞いてみた。
それなりに若い人達が集まっていたので大多数は首を傾げていたが、それでも何人かは当時を知る人が居り、事件についても色々と教えてくれた。
手に入った情報自体は他の猟兵達が手にしたものとそう変わり無かったが、一つ追加で手に入ったものがある。
それは生き残ったもう一人の女学生について。
名は大園都子。
偶然にも居合わせた当時クラスメイトだった人から話を聴けた。
学校で初めて知り合ったが、まるで幼馴染の様に仲が良かったらしく気付けばいつも二人一緒だったそうな。
ふと視線をずらせば門構えに掛かる表札には大園の名が彫られている。
「私ね、調べ物って得意じゃないのよ」
赤い髪を手で払いながら操は嘯く。
何故ならスタアだから、と。
「だから簡単にいきましょう?」
「簡単に、ですか」
「その人について聴くのなら、その人自身に聴いてみるのが一番でしょ」
確かに、とフィーナは頷く。
色々な話は聴けたが、香織と言う影朧との因縁を調べるには当人に何が有ったのかを探るのが最も効果的だ。
それに家の前まで来ているのだ、此処は腹を括ってみよう。
二人は呼び鈴を鳴らす。
程無くして一人の年配の女性が玄関の戸を開けた。
「はい、どちらさまで……あらあら!」
女性は二人を見て驚きの声を上げた。
如何やらスタアとしての二人を良く知っているらしい。
だが、此処へ来たのは煌びやかなスタアとしてではなく、オブリビオンを斃す猟兵として。
己が身分を明かすと女性は更に目を丸くしていたが、直ぐに部屋へと通してくれた。
室内は品の良い調度品で纏められており、優雅さを見るものに与える。
紅茶を淹れて戻ってきた女性は椅子に腰掛けると、首を傾げながら言った。
「それで、今日はどの様なご用件でしょう?」
嫌味さや拒絶の念は無いが、それでもストレートな物言いに思わず今度は二人が目を丸くする。
その反応を見て、女性は照れ臭そうに笑った。
「あらいやだ、私ったら。気になると何でも直接尋ねてしまうのよ」
「ふふ、変に回りくどいよりも良いかもしれないわね。それじゃ、早速本題に入っても良いかしら?」
一早く立ち直った操が紅茶のカップを置いてゆっくりと口を開く。
「大園都子さん。香織と言う女性、知っています?」
操が名前を告げた瞬間、空気が冷えた。
女性――都子は目の奥に深い悲しみと後悔を湛えたまま一度視線を紅茶の水面に落とす。
宝石のように輝く色合いに息を溶かし込む様にして、都子は言葉を紡いだ。
「ええ……一日たりとも忘れた事の無い名前よ」
そう言って、都子は近くのテーブルに載せていたアルバムを開き、一枚の写真を差し出した。
二人の女学生が頬を寄せながら満面の笑みでカメラに手を振っている。
「右が私で左が香織。私達は学校で知り合って、直ぐに仲良くなったわ。二人で旅行に出掛けてはご当地の料理を食べ比べたり、ちょっとした噂を確かめる為に記者の真似事をしたり」
「仲の良いご友人だったのですね」
「そうね…………大切な、友人だったわ」
フィーナの言葉に深く頷いて、息を吐く。
その様子から、如何やら彼女は今も亡くした友を大切に思っている事が解る。
「ではもう一つ。60年前に何が有ったのか、聴かせて頂けますか」
「…………ええ。ですが代わりに私からも一つ、聴かせて欲しいの。その事を『猟兵』さんが聴くと言う事は……そういう事、なのね……?」
ぼかした聴き方をしているが、彼女の言葉が何を示しているかは直ぐに解った。
彼女は問うている。
香織は『影朧』となったのか、と。
一瞬言葉に詰まるフィーナだったが、隣に座る操が力強く視線を送ってくる。
その赤い瞳に、勇気を貰った。
此処で誤魔化す訳にはいかない。
一呼吸の後、フィーナは都子の目をしっかりと見て言った。
「はい、香織さんは……影朧となって、貴女を狙いに来ます」
「そう……そう、なのね……」
彼女はその言葉を予想していたようで、力無い笑みをそっと浮かべた。
少しの沈黙を挟み、彼女は訥々と語り始める。
二人で香織の実家へ旅行に行く事、偶々倉で日本刀を見付けた事、男が包丁を持って襲ってきた事、香織が包丁で刺され帰らぬ人となった事。
「……以上が、あの日起きた事件です」
語り終え、俯く都子。
その姿に痛ましい思いは抱くものの、脳内に渦巻く疑問がフィーナを突き動かす。
気付けば、勝手に口が開いていた。
「足りません」
「え……?」
「まだ、語っていない事が有るのではありませんか?」
それは彼女の持つ音楽的な才が浮かび上がらせた違和感。
様々な楽器に触れ、世界中を旅してきたフィーナだからこそ気付くもの。
声色に乗る念、強くこびり付いた後悔の念の出所が、今まで語られてきた言葉の中に見当たらない。
「私は影朧を討つべき敵とは考えていません。彼等は癒しを受け転生し、また人として生まれる事が出来る。言い換えれば、彼等は救われるべき存在です。そして――」
一度言葉を切り、揺れる瞳を正面から見据える。
「貴女もまた、救われなければならない。それ程まで仲の良かった二人が救いも無く失意のまま終わるだなんて、そんな旋律、美しくありません」
そう言い切って、フィーナはおどける様に笑みを浮かべて見せる。
「……なんて、ちょっと烏滸がましい台詞でしたね。でも都子さん。私の想いは今語った通りです。宜しければ私達に話してくださいませんか。貴女の――貴女達を縛り付ける悲しい鎖について」
悲しみに揺れていた瞳は徐々に定まり、痛みと向き合うように力を持つ。
「……お話しましょう。私の、罪について」
何処か他人行儀な口調で言葉を紡ぎ出す。
それは真実を語る上で、自らの心が壊れない様に保つ為だろうか。
語られるのは、男と対峙した時の状況について。
流れは同じだが、新たに明らかになった情報の中には悔やんでも悔やみ切れない彼女の後悔が滲んでいた。
「あの男が立ちはだかる直前、私は香織から倉の鍵を受け取って南京錠を掛けていた所でした。彼女の只事では無い声に気付き振り返ると、あの男が、包丁を手に立っていました。男は興奮した様子で、包丁を振り上げながら日本刀を渡せと要求してきたんです。……日本刀を持っていたのは私でした。私は気が動転してしまい、足が竦んで動けずに居ました。そんな時です。香織が大声で『日本刀を私に』と。他には『私がこの男を倒すから早く! 私を信じて!!』とも言っていました。私は動けませんでした。狙われているのは私で、その理由は日本刀を渡せば香織が狙われてしまう。それに例え刀を手にしていても、あの男に敵うとは、その時の私は思いもしませんでした。まごまごしている間に男は勇ましい事を言う香織が煩わしくなったのでしょう、狙いを変えて、む、胸を、一突きに……!」
当時を思い出してしまったのか、胸を詰まらせる都子。
取り出したハンケチで目元を拭い、再び抑揚を抑えた声で喋り出す。
「……気が付くと病院に居ました。色々な人が行き交うのをぼんやりと眺めながら、誰に聴かされたのか、香織が亡くなったと言う言葉だけが私の頭に渦巻いていて……。後で知ったのですが、香織は剣術の心得があったそうです。それこそ、大人相手でも軽く捻ってしまえる程の腕前が。もし、あの時私が香織に刀を渡していれば。もし、あの時私が香織の言葉を信じていたなら。……結局、私はあの子を信じ切れなかった。だから、あの子は死んでしまった。私が殺してしまった様なものです。私には香織を助ける術を持っていた。にも関わらず、彼女を見殺しにしたんですから」
重い、独白。
今日まで彼女が抱えてきた後悔は重く冷たい鎖となって、彼女を縛り付けていた。
影朧の執着の切欠は見付けた。
都子は香織を信じ切れずに、香織は都子に裏切られたと感じて。
それぞれが失意に沈んだまま今も浮かび上がれずに居る。
香織は影朧となり嘗ての友を殺しに来る。
都子はそれを天命と受け入れる腹積もりだ。
「……美しくないわ。」
それまで黙って話を聴いていた操が口を開く。
心なしか、その瞳には怒りに似た炎が揺らめいていた。
「都子さん、天命なんて言っちゃだめよ? 諦めるのは一番美しくないわ」
「……私は香織を助けて上げられなかったのよ。その私が今更、あの子にしてあげられる事なんて」
「有るじゃない。とても大事な事が」
「え?」
顔を上げた都子の瞳を、真っ直ぐに覗き込む。
「今も香織さんは救いを求めているわ。他の誰でもない、都子さん。貴女にね。それに一度頭を空っぽにして考えてみなさいな。……彼女に、大切な友人を、貴女を殺させる心算?」
「それ、は……」
「今すぐ吹っ切れだなんて無茶は言わないわ。ただ、香織さんに伝えたいこととか聞いてみたいことが無いか考えておきなさい? スタアがお膳立てしてあげるから」
パチリとウインクを飛ばす操。
フィーナも、その言葉に続く。
「そうですね。話し合う為のお手伝いは任せてください。悲しんでいる人、苦しんでいる人、そんな人達に笑顔を。それが、スタアなのですから」
都子は俯いて静かに数度肩を震わせる。
これで情報は出揃った。
身勝手な男によって引き起こされた災禍の中で生まれた、ほんの僅かな擦れ違い。
それを正し、二人を救えるかは猟兵達の腕に掛かっている。
願わくば、最後には幸せな結末を。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『女郎蜘蛛』
|
POW : 操リ人形ノ孤独
見えない【ほどに細い蜘蛛の糸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD : 毒蜘蛛ノ群レ
レベル×1体の、【腹部】に1と刻印された戦闘用【小蜘蛛の群れ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ : 女郎蜘蛛ノ巣
戦場全体に、【じわじわと体を蝕む毒を帯びた蜘蛛の糸】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
イラスト:龍烏こう
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
全ての情報を手に入れ交換し合った猟兵達。
夕暮れ時、影朧が彼女を狙い迫り来る。
此方に猟兵が控えているのを察してか、影朧は手下の影朧を放ってきた。
手下達はこの場に置いては只の邪魔者に過ぎない。
軽く蹴散らして、この後に控える本番に備えよう。
才堂・紅葉
【アドリブ・連携歓迎】
「解決の糸口は見えた。野暮はなしよ、あんたたち」
上着をまくり、虚空から取り出した書生用のマントを羽織って【気合】を入れれば、炎が吹き上がる。
この世界で懐かれた得体のしれない火の鳥の力。強力だが隠密行動とはすこぶる相性が悪いので、割り切って【存在感】で派手に目立つことで注意を引こう。
序盤は慎重に、無理に距離を詰めずに【情報収集】と【戦闘知識】で敵の攻撃を分析。
【野生の勘】で見えない蜘蛛糸の捕縛を【見切】れば、迦楼羅焔で【オーラ防御】して糸を凌ぎつつ、リボンを解いて火の鳥を具象化。
「とりあえず、あいつらを吹き飛ばして迦楼羅王!!」
紋章の【封印を解】いて、その背を後押しする・
シン・ドレッドノート
フィーナさん(f22932)と連携します。
アドリブOK
【SPD】
闇に捕らわれた香織さんの思いを救うためにも、こんなところで時間をかけるわけにはいきません。
「さっさと倒して、本命に出てきていただきましょう」
屋根の上など、高い所に移動。フィーナさんを守りながら敵を狙い撃ちます。
「ターゲット・マルチロック、目標を乱れ撃つ!」
【乱舞する弾丸の嵐】で4丁のライフルビット・真紅銃・精霊石の銃を複製。
フィーナさんの歌に合わせて、敵を片っ端から撃ち抜いていきましょう。
小蜘蛛の群れに対しては、精霊石の銃から炎の属性攻撃を放って焼き払い。
接近された場合は閃光の魔盾で受け流し、カウンターの零距離射撃を撃ち込みます。
フィーナ・シェフィールド
シン(f05130)さんと行動を共にします。
アドリブ歓迎です♪
【WIZ】
香織さんの誤解と、都子さんの後悔…。
哀しいすれ違いから生まれた事件を解決するためにも。
「邪魔するものは、許しません!」
蜘蛛の糸にかからないよう、翼を広げて空に舞い上がり戦闘を行います。
ドローン<ツウィリングス・モーント><シュッツエンゲル>を展開。
マイク<イーリス>を片手に【ショウ・マスト・ゴー・オン】を発動。
女郎蜘蛛なら、女心を歌った曲なら気を惹けるでしょうか?
「貴女たちも、誰かの思いから生まれたものならば!」
『破魔』の想いを込めたラブソングを『歌唱』して敵の注意を逸らし、動きを鈍らせますね。
「せめて、安らかに眠って…」
メンカル・プルモーサ
…つまり、その影朧…香織と都子を出会わせて話しあわせる…と。
…守る算段はいくらかついてるけど…その前に邪魔者が来たみたい…
…蜘蛛の巣が厄介だね……【尽きる事なき暴食の大火】を使って…
…●女郎蜘蛛ノ巣を焼き払うよ…硬度があろうと…燃料にしてしまえば関係ない…
…そのまま巣についた白い炎を女郎蜘蛛まで延焼させる事で攻撃…
……毒蜘蛛も同じように巻き込んでいこう……
…余裕が出来たら仲間の確認をして…
…毒の影響をうけている人が居れば医療製薬術式【ノーデンス】で作った解毒薬で治療をするよ…
…本番は次だからね…こんな所で躓いては居られない…
英・操
ここから先の活劇も、もちろんスタアは得意よ!
お膳立てをすると約束したからにはスタア張り切っちゃうわ!
でも戦うなんて無粋なことをスタアはしないの
だってスタアは戦う人じゃなくて魅せる人だから
カメラはなくても観ている人がいるのならそこは舞台
ならば私はただただスタアでいることに没頭しましょう
「どんどん観客が増えるわね!いいわいいわ!もっと近くでスタアを見なさいな!」
私がスタアでいる限りどれだけ蜘蛛が増えようと視線は釘付け、どこかに声援をくれるファンがいる限り攻撃も届かない
だから私は戦場という花道を本命に向け優雅に歩きぬけるわ
スタアらしくね
きっと戦闘は他の子がやってくれるもの
さて、いい画は撮れたかしら?
桜庭・愛
「相手は女郎蜘蛛ですか。では、念動を使います」
自分を仲間を中心に半円状にサイコキネシスを発動して空気を振動させようとします。
糸は張り巡らせるものであるならば、空気を振動させればどこから来るか
、またわ、その軌道を読む事も可能なはず。
それを的確に仲間に伝えましょう。
前に図書館で得た知識や地理も仲間と共有し軍師として指示をだしましょう
格好は蒼いハイレグ水着です。
この時代には奇異でしょうが、注目をあつめれば敵の注意も引けると思うのです。
直接戦闘は避け、仲間の援護に回りましょう。
フォースセイバーなら蜘蛛の糸を切るぐらいはできるはずです。
オーキッド・シュライン
【向日葵と一緒】
【心情】
・女郎蜘蛛ですか。地味ですわね。もうちょっと派手じゃないと目立ちませんわよ
・さて、本番前の前哨戦ですわね。ここで余計なダメージを貰うわけにはいきませんわ。全力で焼却しますわよ。いいですわね、向日葵、いえ、シャイニーソレイユ
・さあ、豪火絢爛に焼き尽くしましょうか。何故か宿ってしまった紅蘭の魔王の力、存分に振るわせていただきますわよ
【戦闘】
・UCを使い炎の蜘蛛を召喚。向日葵の作りだした石柱の間に炎の巣を張って敵の蜘蛛の接近ルートを限定しますわ。敵のルートが絞れれば、後はブラスターのクイックドロウで早撃ちですわ
・接近してきたら、攻撃を見切って炎を纏った細剣でカウンターですわ
夢咲・向日葵
【オーキッドお姉さんと一緒】
【心情】
・うわー。蜘蛛さんが一杯なの。ひまちゃんは虫触れるから平気だけど、苦手な人は悲鳴上げそうだね。
・さて、今回はオーキッドお姉さんとの協力なのよ。初めて組む相手だから頑張って合わせるのよ。
【戦闘】
・地面をたたいて石の柱を想像して創造するのよ。それで進路をげんていさせるの。ルートが限定されたら、そこにプリンセスチェイン用の魔方陣を設置して、罠を仕掛けるのよ。重力の鎖で動けなくなったら、ソレイユシールドから地属性の石槍の魔法をどーんってぶつけるの(地属性攻撃)
・接近されたら攻撃を見切って大地の魔力を籠めた魔法拳での鎧どおしパンチなのよ
霧島・龍斬
はん、数だけ揃えりゃ良いってもんじゃねーんだよ……
糸の耐久性は如何程か――蜘蛛の糸なら信頼に足る筈だ。
無理矢理【怪力】で手繰り寄せられても、文句は言えねぇ筈だよ、なぁ?
蜘蛛の巣に掛けたつもりだったろーが、
お前らの首を締め上げる為の煙草の煙を炊いちまったからな。
【毒使い】【マヒ攻撃】たっぷりの麻痺毒をばら撒いてやるよ――
俺の刃は、【鎧無視攻撃】【2回攻撃】【早業】かつ【フェイント】。
どんなに硬かろうと、斬るぜ。一瞬で。
まぁ、保険は――とうに『仕込んだ』んだがな(【戦場の亡霊】)
でも、俺は『斬り合い』に来たのさ。土俵に上げるのも俺のやることだ。
さぁ――死合って(あそんで)貰うぜ
※アドリブ・連携可
途切れる事の無い喧騒に溢れる帝都。
行き交う人の多い賑やかなこの街も夕暮れ時を迎え、やや落ち着いた雰囲気が流れ出す。
街角では飲み屋の幟が立ち始め、テラス席で歓談していた女学生達も家路に着く。
子供達も遊び疲れて晩御飯の匂いに引かれる様に自宅へと帰る。
だが夕闇に紛れて動くのは人ばかりではない。
人通りの無い小道や屋根の上を伝って迫り来る異形の怪物、影朧。
女郎蜘蛛の名を与えられたそれらはとある邸宅を目指し、静かに移動していた。
そして彼女等が目的地である邸宅の手前にある公園へ差し掛かった時。
「悪ぃな。お前らは此処で終いだ」
伏していた猟兵達が牙を向く。
総勢九名。
対する女郎蜘蛛は約三倍、全三十体もの軍勢である。
かなり広い公園とは言えこれだけの数を相手取るのは中々に厄介にも思えるが、腰の左右両側に刀を提げた一見青年に見える猟兵――霧島・龍斬は詰まらなさそうに鼻を鳴らした。
「はん、数だけ揃えりゃ良いってもんじゃねーんだよ……」
「うわー。蜘蛛さんが一杯なの。ひまちゃんは虫触れるから平気だけど、苦手な人は悲鳴上げそうだね」
彼の後ろで口許に手を当てて女郎蜘蛛を眺めているのは夢咲・向日葵。
直ぐ隣には彼女がお姉さんと慕っているオーキッド・シュラインの姿も有る。
「女郎蜘蛛ですか。地味ですわね。もうちょっと派手じゃないと目立ちませんわよ」
至って暢気な構えの三人を見て侮られていると思ったのか、女郎蜘蛛達はギチギチと八本の足を擦り合わせる様に鳴らしながらじりじりと近付いてくる。
周囲を囲まれていると知ってか、女郎蜘蛛達は各々の獲物を定めそれぞれに襲い掛かって行く。
「お、やる気なの。それならひまちゃんも!」
向日葵は右手を頭上に挙げ、右目を覆う様に翳した。
「母なる大地に咲く、一輪の大花! 輝く大地の魔法王女! シャイニーソレイユ!」
ユーベルコード【母なる大地の魔法王女】による変身だ。
大地から生まれ出る色取り取りの宝石の眩い光が彼女を包み込み、一瞬で袴姿から『プリンセス・コート』へと着替える。
「わたしは輝く大地の魔法王女、シャニーソレイユ! 母なる大地の怒りを恐れぬのなら、かかってきなさい!」
びしっと人差し指を突き付けてポーズを決める向日葵。
そして即座に握り締めた左拳を地面へと叩き付ける。
脳裏に浮かぶのは幾つもの石の柱。
想像を創造する彼女の魔法が、女郎蜘蛛の前に幾つもの石柱を出現させた。
「只の柱と思いまして? 残念、それは炎の巣ですわ。顕現せよ、紅蘭の魔王に仕える眷属達。わたくしの意思に従い業火絢爛に侵略なさい」
間髪入れず、オーキッドがユーベルコード【焔の体を持つ魔王の眷属達】を発動する。
召喚されたのは夥しい数の炎の蜘蛛。
それらは炎の糸を石柱に巻き付け、見る間に石柱の間を塞いでいく。
「蒸し焼きになるかわたくしの蜘蛛の餌食となるか、或いは一縷の望みに賭けて巣を抜け出してくるか。お好きなものを選んでくださいまし」
突然の熱に炙られ、女郎蜘蛛達は狼狽え出す。
石柱と炎糸の即席迷路とも言うべき仕掛けに右往左往しつつも、二体程が通路を抜けてきた。
場所は向日葵側の二箇所。
「残念賞なの」
向かって左側の通路を走っていた女郎蜘蛛の足元が突如光り出す。
漫然と石柱を作り出した訳では無い。
向日葵はオーキッドと示し合わせて進路を限定し、仕掛けた魔方陣へと誘い込んでいたのだった。
発動するのは重力を宿した『プリンセスチェイン』による拘束。
動きを止められた女郎蜘蛛は忌々しげに鎖を引き千切ろうと身体を捻るが、母なる大地の力を宿した鎖はびくともしない。
無防備に喘ぐ女郎蜘蛛へ、向日葵は更なる魔方陣を発動させた。
再び足元が光るのを目撃し益々暴れ狂うが、予想とは裏腹に出現したのは背の低い黄色と白の向日葵の花達。
攻撃でない事に動きを止める女郎蜘蛛だが直ぐにそれは間違いだと思い知らされる。
生まれるのは石槍。
その固く鋭い切っ先は顎から脳天までを削り取り、周囲に肉片をばら撒いた。
左右の炎の糸に炙られ、灰と消えていく女郎蜘蛛。
一方通路を抜けてきた個体は怒り狂った様子で向日葵へと襲い掛かって行く。
「パンチなのよ!」
掴み掛かって来る腕を払い除けて懐へ潜り込み、大地の魔力を右手に籠める。
魔法拳となったそれを真っ直ぐに打ち貫く。
キチン質の胸部を丸く刳り貫かれ、女郎蜘蛛は何事か呟く様に顎を震わせて灰になる。
「ざっとこんなものなのね」
「予想以上に手応えが有りませんわね」
あっさりと二体を屠る向日葵を見遣りながらも息を吐くオーキッド。
そんな彼女に、龍斬は顎でくいと示した。
「いや、何体か根性の有る奴が居るな」
龍斬が示した先では、四体の女郎蜘蛛が身体の何処かしかを焦がしながらも石柱を登っていた。
「上から突破してくるとは中々やりますわね」
「折角作ったのに」
向日葵は少し不満そうに頬を膨らませている。
とは言え他の個体が姿を現さない所を見るに、残りは如何やら有効な手立てを取る事も出来ずに内部で焼け死んだらしい。
女郎蜘蛛達は此方を見付けると器用に糸を張り巡らせて石柱を渡ってくる。
と、その時一番手前に居た女郎蜘蛛の額に小さな穴が開き、その身体を灰に変えた。
「普段は細剣使いですけど、早撃ちも苦手ではありませんのよ?」
左手に持った熱線銃『インフェルノブラスター・デンドロビウム』をくるくると弄びながらふっと笑うオーキッド。
下手人を見付けた女郎蜘蛛は両腕を振り上げながら異常なまでの脚力で一気呵成に飛び掛ってくる。
常人であれば成す術無く捕らえられてしまう程の俊敏さ。
しかし、オーキッドには通用しない。
「さあ、豪火絢爛に焼き尽くしましょうか。何故か宿ってしまった紅蘭の魔王の力、存分に振るわせていただきますわよ」
するりと身体を逆時計回りに入れ替えながら右腕を突き出す。
たったそれだけの動きで、オーキッドは女郎蜘蛛の腕を掻い潜り心臓へと細剣を刺し込ませていた。
細く小さな傷口から、獄炎が生まれる。
それは瞬く間に女郎蜘蛛の全身を包んで行き、灰すら遺さずに喰らい尽くした。
「本当に手応えが有りませんわね? 影朧が不安定なオブリビオンと呼ばれるのにはその成り立ちや行く末以外にも、こう言った戦闘能力の多寡も理由の一つなのかも知れませんわね」
首を傾げるオーキッド。
彼女にあっさりと屠られた女郎蜘蛛を見て、龍斬は詰まらなさそうに加えていた煙草を燻らせる。
(保険は『仕込んで』置いたが……こりゃあ使う事も無さそうだな)
この戦いに望む前に、龍斬は一つの計略を巡らせていた。
自身が瀕死に陥った際に発動するユーベルコード【戦場の亡霊】である。
制約は有るものの自身と同じ攻撃手段を持つ強力な亡霊を召喚するものだが、此処までの女郎蜘蛛の動きを見る限り、如何にも出番は無さそうである。
果たして刃を本気で振るう価値の有る、死合に値する相手か如何か。
それを計る機会は目前に迫っている。
「――――!」
此方に向かっていた女郎蜘蛛の一体が口から糸を吐き出した。
それは目に見えぬ程に細い、先端部に粘着性を持たせた繰り糸である。
捕まえた獲物を引き寄せたり付着させたものを振り回す等、かなり自由に動かす事が出来るものだ。
「糸の耐久性は如何程か――蜘蛛の糸なら信頼に足る筈だ」
事も無げにそれを避けた龍斬は糸を右手でぐいと掴む。
そのまま自慢の怪力で勢い良く引っ張ると、糸を吐いた女郎蜘蛛が勢いのままに引き寄せられる。
即座に体勢を立て直そうとする女郎蜘蛛だったが、ふと鼻腔を擽る香に気付く。
その瞬間、全肢から力が抜け落ちた。
「!?!!?」
驚愕する女郎蜘蛛を冷めた目で見遣る龍斬。
彼の仕込みはもう一つ有った。
先程から燻らせている煙草には蜘蛛用に調合した麻痺毒をたっぷりと染み込ませてある。
人体には影響は無いが、蜘蛛には効果覿面。
意図も容易く身体の自由を奪われた女郎蜘蛛の首と胴へ、龍斬は刀を滑らせる。
抜いたのは『神凍滅却』の名を持つ白銀の退魔刀。
抜刀から納刀までの動作が速過ぎて残像を捉える事すら困難な一閃は、女郎蜘蛛の生を斬り捨てた。
「駄目だな。こいつ等程度じゃ満足な『斬り合い』も出来やしねぇ」
意識の間隙を突いた心算で地面を這い回っていたもう一体の女郎蜘蛛の足を切り捨て、龍斬は煙草を公園端の吸殻入れに放り込む。
ゆっくりと飛んでいく吸殻を眺める彼の視界に、最早敵の姿は映っていない。
のた打ち回りながらも這い寄って来る女郎蜘蛛の首を撥ね、鍔をかちりと鳴らす。
もう少し遊べる相手かと思ったが、これでは『弱すぎて』話にならない。
「――今の俺の『刀』が何処まで通用するか……その答えを得られるのははまだまだ先か」
「此方にも来ましたね、相手は女郎蜘蛛ですか」
アスレチック系統の遊具が立ち並ぶ広場の一角で出方を窺っていた桜庭・愛は迫り来る影朧の姿を認めゆっくりと息を吐き出す。
「では、念動を使います」
彼女は【サイコキネシス】を用いて自身と仲間達を中心とする半円状のフィールドを形成する。
微細な振動を送り続ける事で擬似的なセンサーとし、相手のどんなに小さな挙動でも捉えられる様にするものだ。
今回の相手の様に機敏且つ人とも獣とも違う動きをするオブリビオンへの対抗策としては十分な効果を発揮するだろう。
表皮を伝う振動を感知してか、女郎蜘蛛達は愛の方へと向き直る。
愛の格好は蒼いハイレグ水着だ。
鍛え上げたプロレスラーとしての技を繰り出すのに邪魔にならない姿だが、防具の類が無く与し易いと思ったのか女郎蜘蛛達はこぞって彼女へと狙いを定めた。
「掛かりましたね。今です!」
愛の号令に、先ずフィーナ・シェフィールドが仕掛ける。
展開させておいたスピーカードローン『ツウィリングス・モーント』で音響を、マルチドローンプレート『シュッツエンゲル』で照明をそれぞれ調整させる。
これより始まるは即興の歌唱ライブ。
菖蒲の花を思わせる細身のマイク『イーリス』を片手に、フィーナは空へと舞い上がる。
純白の翼をはためかせた彼女は、その透き通る声を公園に、街に、帝都に響かせる。
「邪魔するものは、許しません! 貴女たちも、誰かの思いから生まれたものならば!」
スピーカーから流れ出す、激しくも何処か物哀しいメロディー。
そのリズムに乗せて、フィーナは謳う。
紡がれる女心に破魔の想いを乗せた【ショウ・マスト・ゴー・オン】が女郎蜘蛛の耳朶を打つ。
「――――!」
歌声を聴いた女郎蜘蛛達の動きが俄に鈍くなる。
個体差は有れど、皆一様に戸惑いの動きを見せている。
それでも何体かは歌声を振り切り此方へと迫っていた。
「お痛は感心しませんね」
それを咎めるのは四連符の破裂音。
頭に二発、胸部に二発の銃弾を受けて先頭に居た女郎蜘蛛が灰となり崩れ落ちる。
シン・ドレッドノートは四丁の『ライフルビット』と『真紅銃』並びに『精霊石の銃』を宙に浮かべ、更にそれをユーベルコード【乱舞する弾丸の嵐】で複製している。
「さっさと倒して、本命に出てきていただきましょう」
彼等が胸に抱く想いは一つ。
都子と香織、そのどちらも救われる形での決着を迎えたい。
「だからこそ貴女達に構っている暇は無いのです」
アスレチック台の上を跳び回りながら次々に銃で撃ち抜いて行くシン。
文字通りの銃弾の嵐を浴びせられ、女郎蜘蛛達は成す術も無く斃れ伏していく。
「――――♪」
フィーナの歌声は止まらない。
次々に紡がれる音は静かな水面の様で居ながら激しく心の奥底に沈んだ感情を揺り動かしていく。
それは一つの物語。
互いに離れ離れとなった遠き日の親友を想い、訥々と語られる女性の心情。
少女は時を経て大人へと変わる。
親友もまた、離れた少女へと思いを馳せる。
その心に、変わらぬ想いを抱いて。
「――――!!」
多くの女郎蜘蛛は困惑を滲ませた様子で立ち尽くしている。
彼女の歌が、影朧の心を惑わせている。
「左翼、抜け出る様子が有ります」
混乱から復帰した個体が仲間を押し退けて前へ出る。
指示を受け取ったシンは身を翻し、弾丸を放つ。
刺し違える心算か、女郎蜘蛛は避ける素振りを見せずに糸を吐き付けた。
目に見えぬ程の細さを持った糸。
「糸が来ます!」
「させませんよ」
だが如何に糸が見えぬとは言え、吐き出す姿勢と顔の向きにさえ気を払えばその軌道を読む事は可能だ。
左手の腕輪が瞬き光のフィールドが形成される。
ビームシールド『閃光の魔盾<アトラント>』が糸を防ぎ、手持ち部沙汰に浮かんでいた『ソードビット』が素早く延びた糸を断ち切る。
女郎蜘蛛は一矢報いる事も叶わず無念を抱いて灰と化す。
「――――♪」
戦闘の最中、フィーナは謳い続ける。
純粋な想いは時を重ねるに連れ後悔へと変わり、互いの心を蝕み始める。
だけど、それでも。
幾つもの声を重ねる二人。
やがてその声は、互いの耳へ届き始める。
「――――!!?」
突如、一体の女郎蜘蛛が頭を掻き毟りながら天を仰ぐ。
正気を失った様子で腹部をフィーナへと向け、狙いも付けずに糸を乱射し始めた。
「おっと、通しません」
元々狙いが付いていなかった糸は明後日の方向へと飛び地面に落ち、僅かな数が彼女の元へと跳び向かうがそれも愛によって防がれた。
振るわれたフォースセイバーが糸を断ち切り、一切の攻撃を通さない。
益々発狂した様子を見せる女郎蜘蛛だったがその無意味な動作は戦場に於いては致命的な隙となる。
「何を抱えているかは知りませんが、手を抜く理由にはなりませんね」
歌のリズムに合わせて鳴り響く四連符。
意識をシンから外した女郎蜘蛛は、その無防備な背中に幾つもの風穴を開けて灰となった。
「良いペースですね。そろそろ一網打尽にしてしまいますか」
「ですね。……ターゲット・マルチロック、目標を乱れ撃つ!」
シンはそれまでばらばらに動かしていた銃を集め、同時に引き金を引く。
点での攻撃ではなく、面での制圧。
さながらクラスター爆撃の様に降り注ぐ銃弾が地を舐め行き。
着弾音がドラムロールの様に鳴り響いた。
土埃が晴れた時にはもう立つ者も居らず、僅かに積もる灰の山が女郎蜘蛛達の命運を物語っていた。
「せめて、安らかに眠って……」
風に流されて何処かへ運ばれていく影朧の亡骸を見送りながら、フィーナはそっと呟いた。
「解決の糸口は見えた。野暮はなしよ、あんたたち」
そう啖呵を切ったのは才堂・紅葉。
上着を捲り虚空に手を突っ込み、書生用のマントを取り出す。
それを羽織って深呼吸を一つ。
夕暮れ時の落ち着いた涼しい空気を取り込み、外へは燃え上がる闘志に炙られた熱い吐息を浴びせる。
気合十分。
彼女の背中からは炎が吹き上がり、まるで不死鳥の翼の様に形を成していく。
「この世界で懐かれた得体のしれない火の鳥の力。こそこそ動き回るには向かないけど……それならそれであんたたちの潜む影、遍く照らしてやろうじゃない!」
「……守る算段はいくらかついてるけど……その前に邪魔者が来たみたい……」
気炎を上げる紅葉の隣で静かに術式を展開し始めるのはメンカル・プルモーサ。
クールに女郎蜘蛛を相手取る彼女だが、扱う技は不死鳥の羽ばたきに負けぬ程に熱い。
ユーベルコード【尽きる事なき暴食の大火】によって生み出された白く輝く炎は、女郎蜘蛛の周囲を覆い決して逃がさぬ死の檻を作り出す。
「本番は次だからね……こんな所で躓いては居られない……」
二つの炎に照らされ、女郎蜘蛛達の青白い表皮と光沢の有る腹部が赤に染まる。
此処に残るは五体の女郎蜘蛛。
それらは牙を剥き出しにして、一斉に【毒蜘蛛ノ群レ】を放ってきた。
足元を埋め尽くす夥しい数の小蜘蛛。
それらは炎光を受け、毒々しい色合いの身体を夕闇に浮かび上がらせていた。
更に女郎蜘蛛達は腹部の先から糸を吐き出し【女郎蜘蛛ノ巣】を作り上げようとする。
固くしなやかな糸が絡み合い作り上げる網目模様は独特の機能美を持ち、不幸にも触れた獲物をじわじわと毒で蝕んでいくだろう。
「焼き払うよ……硬度があろうと……燃料にしてしまえば関係ない」
灼熱、と言う言葉ですら生温い。
白き輝きを放つ炎は糸を飲み込むと、内包する毒すら消し飛ばして燃え移っていく。
その威力は正しく浄化を言って良い程。
最も、その炎が持つ性質は清らかなものとは対極に位置するものであるが。
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
炎は勢いを増し、女郎蜘蛛達が作り上げた迷宮を燃やし尽くしていく。
天に届こうかと言う火柱の下では、小蜘蛛の群れが此方へと迫っていた。
「とりあえず、あいつらを吹き飛ばして迦楼羅王!!」
そう言って紅葉は髪に結っていたリボンを解き放つ。
ユーベルコード【迦楼羅王】の発動。
リボンは神々しい鳥へと姿を変え、小蜘蛛の群れへと真っ直ぐに飛び向かう。
「援護するわよ!」
紅葉は右手の甲に宿る『ハイペリアの紋章』の封印を解く。
一際大きく、心臓が鼓動を打ち鳴らす。
全身を駆け巡る血液と湧き上がる力の奔流。
抑え切れない程の昂揚と激情に駆られながら、紅葉はニヤリと不敵に笑む。
「吹っ飛べえええええぇぇぇぇぇ!!!」
裂帛の咆哮と共に右腕を突き出す。
握った拳の先から生まれる炎の渦が迦楼羅王の身体を包み、一体となって更に輝く。
神鳥の突撃を小蜘蛛の群れ程度が受け切れる筈も無く、数体の女郎蜘蛛を巻き込んで背後へと吹き飛ばした。
その先に待ち受けるのはメンカルが張り巡らせた白き暴食の大火。
打ち付けられた蜘蛛の身体は燃え上がると言う過程さえ許されず瞬時に熔け消える。
注視していなければそこに蜘蛛が居たと言う事実さえ疑ってしまいそうな光景だ。
そして今の一撃を奇跡的に逃れたのは女郎蜘蛛二体だけ。
数の差は圧倒的だったが、今やその命運は風前の灯である。
「――――!!」
それでも闘志を捨てずに糸を吐き散らし攻勢に出る女郎蜘蛛。
しかし狙いはメンカルでも紅葉でもない。
唯、其処に居るを成す国民的スタア、英・操である。
「無粋な子ね! もっと舞台を楽しみなさいな!」
操は向かい来る攻撃を避ける素振りさえ見せない。
いや、避ける必要すらないと言うのが正しいか。
何故ならその攻撃が彼女の元へと届く事は決して無いからだ。
「「「「わぁーーーっ!」」」」
代わりに届くのは観客達の歓声。
幾ら人気が無いとは言え市街地での戦闘。
危ないとは解っていても人が集まってしまうのは避けられない。
ならば、その人々を観客として扱い共に影朧を退ける舞台を演出しよう、と操は考えた。
ユーベルコード【天香国色】の発動。
戦闘行為を行う猟兵ではなく舞台の上で煌き続けるスタアで在る限り、その効果は続く。
その煌びやかな姿を見た敵は如何なる事情や思想があろうとも攻撃の矛先を操から逸らす事は出来ず、また操がスタアでいる限り観客達の声が彼女を守る壁となり一切の攻撃を遮断し続ける。
直接オブリビオンを斃す事は出来ないが、同時にオブリビオンの魔の手から仲間を守る事が出来る。
スタアたる生き様を体現した、実に彼女らしい妙手である。
「どんどん観客が増えるわね! いいわいいわ! もっと近くでスタアを見なさいな!」
「「「「わあぁあぁぁぁーーっ!!」」」」
また、操がこのユーベルコードを発動し続ける限りは集まった人々の安全も守られる。
市街地と言う場所で有りながら戦闘以外の要素に気を取られる事無く戦い抜けるこの状況は、攻撃を任された紅葉とメンカルに取っても有難いものであった。
「無駄に引き伸ばすのは趣味じゃないし」
「これで終わらせよう……」
神鳥を呼び戻した紅葉と、掌に白い炎を浮かび上がらせたメンカルが頷き合う。
号令は勿論、スタアの操だ。
「さあ、フィナーレよ!」
その言葉に続いて二人が手を女郎蜘蛛二体へと向ける。
握り締めた拳と、開かれた掌。
金色の炎と白色の炎。
二つの劫火に照らされて、女郎蜘蛛達は輝きの中へ取り込まれ跡形も無く消え去った。
押し寄せた影朧達の全滅。
それを受けて、観客達は歓喜の声を上げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『辻斬り少女』
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POW : 【先制攻撃型UC】血桜開花~満開~
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、斬撃】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD : 【先制攻撃型UC】絶対殺人刀
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、殺意】を籠めた【斬撃】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【急所、又はそれに類する部位】のみを攻撃する。
WIZ : 【先制攻撃型UC】ガール・ザ・リッパー
【対象のあらゆる行動より早く急接近し、斬撃】が命中した対象を切断する。
イラスト:久蒼穹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「アララギ・イチイ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
無事女郎蜘蛛の群れを撃退した猟兵達。
日は既に沈み、空には下限の月が浮かぶ。
集まった人々が遠巻きに見守る中、邸宅から一人の老女が姿を現した。
大園都子。
影朧と成った旧友、香織に後悔を抱き続ける彼女はゆっくりとした、しかし決意を滲ませた足取りで公園へとやってきた。
寒さの所為ではない震えを宿しながらも、その顔は真っ直ぐに前を向いている。
ふと、一陣の風が舞う。
枝が揺れて一瞬の影を作り出した公園の反対側に、その影朧は立っていた。
都子と香織。
六十年の時を経て、嘗ての友が再会する。
桜庭・愛
(…見物人がいるのね。ならば、ここは…!)
「お集まりの皆々様、これからはじまるのはプロレスという演劇、あなたたちに真のプロレスリングをこの私がお見せしますわ」
…と、明るく告げてプロレスを喧伝。
(日本剣術の盲点は足元が弱いという事、そこを攻める)
相手に近寄り初手はフォースブレードで受け、さらに接近。
サイコキネシスで自分を加速させ、
(物体を動かせるなら自分に掛ければ高速で地面を滑る事もできる?)
スライディングキックで相手の足元を攻撃し、そこから足四の字固め。
「ふふっ、この世界にプロレスはないから脱出の知識もない。一気に動きを殺させてもらうわ。都子さんもあなたを傷つけるのを望んでいないし」
英・操
感動的な再会ね!
スタアがお膳立てしてあげるから想いの丈をぶつけるのよお婆さん!
そんなことしない方が簡単に解決できるのはわかってるけど
スタアの矜持とファンサービスために止められないわね!
「スタアが全力で守るからお婆さんは言いたいことを言いなさい?」
戦闘中はお婆さんの震える手を握って勇気づけてあげましょう
これもファンサービスね
スタアは殺陣も得意だものこれくらいへっちゃらよ!
いざとなったらお婆さんを抱えて戦場を駆け抜けるわ
鍛えているのよ?だってスタアだもの
「おーほっほっほ! ちゃんと狙いなさぁい!」
ファンのためなら多少の危険も何のそのよ!
全部が終わったら約束通りサインをあげましょうか
お疲れ様ね
才堂・紅葉
都古さんが真っ直ぐに香織さんを見据えた。
十二分だ。
後はこちらの仕事である。
「ハイペリア重殺術。才堂紅葉」
【礼儀作法】で一礼し。
「一手お相手仕ります」
【気合】と共に宣戦布告だ。
両手を下げて脱力し無刀の構え。
【情報収集、戦闘知識】で相手の起りの【見切り】に専念する。
やる事は急接近に合せた無拍子の【忍び足】での半歩の踏み込み。斬撃の威力を刀の鍔元で受けて殺し、後は耐刃マントを信じる事だ。
「あなたの無念は友人に信じられなかった事。その剣の業をふるえなかった事」
「いずれなのですか?」
【怪力】と柔術の体捌きで武器落しを狙いつつ問いかけ。
その返答で見える【性根の歪み】に、迦楼羅焔を纏った掌打を叩き込みたい。
フィーナ・シェフィールド
シン(f05130)さんと行動を共にします。
アドリブ歓迎です♪
【WIZ】
香織さんと都子さんの哀しきすれ違い、ここで終わりにしましょう。
「その想い、奏であわせれば…きっと届くから!」
ドローン<ツウィリングス・モーント><シュッツエンゲル>を展開。
攻撃に対してはシュッツエンゲルで受け流して、距離をとります。
「都子さんの本当の気持ち、貴女に届いて!」
<イーリス>を片手に【光り輝く純白の翼】を発動。
空に舞い上がり、都子さんの想いを歌にして、『破魔』の力を込めた<モーントシャイン>と共に香織さんの影朧に届けます。
戦い終えたら都子さんに微笑みかけますね。
「いつか生まれ変わったら…また会えるといいですね」
シン・ドレッドノート
フィーナさん(f22932)と連携します。
アドリブOK
【SPD】
香織さんの哀しい誤解を解いて、転生できるようにしてさしあげなくては。
「輪廻の輪へ戻ってください、美しく哀しい影朧よ…」
フィーナさんの歌の邪魔にならないよう、銃にはサイレンサーを付けておきますね。
「剣を切らせて…銃で撃つ!」
刀の攻撃に対しては、閃光の魔盾にソードビットを重ねて受け流し、カウンターの零距離射撃で破魔の力を込めた【真紅の狙撃手】を撃ち込みます。
その後も閃光の魔盾と残ったビットでフィーナさんをかばいながら、香織さんを足止めするように射撃を継続。
「二度とこのような悲劇が起こらないことを…」
二人の姿を、祈りと共に見送りますね。
メンカル・プルモーサ
……謝りたいことも言いたいこともあると思うから……守りの方は任せて……
…こちらより早く行動する、か…それでも…『既に張られている罠』よりは早く行動出来ないよね…
公園に予め仕掛けてある遅発連動術式【クロノス】により踏むか、近くを通過すると発動する拘束術式で急速接近してくる香織を拘束…
…発動の時間を稼いで【夜飛び唄うは虎鶫】を展開…出て来たガジェットには…周囲に残っている罠と合わせて援護射撃による足止めを行わせて…
…私は【最も古き魔女の家】による結界を展開、都子を守るよ…
…私は結界の維持のための詠唱に没頭するから…後はお願いね…
夢咲・向日葵
【オーキッドお姉さんと一緒】
【心情】
・さって、香織さんが来たね。おばあさんとお話が出来るように少し大人しくさせないとね。じゃあやろうか。この力は困っている人の為にあるのよ。強い思いを覚悟に変えて、夢の光と母なる大地を信じればなんとでもなるのよ。
・さあハッピーエンドを目指して頑張るの。
【戦闘】
・先制攻撃は覚悟とオーラ防御で耐えるのよ。来るのが分かっていればどうとでもなるの。
・攻撃を耐えたら反撃なのよ。ソレイユシールドからプリンセスチェインを射出して拘束して動けなくするの。あとはオーキッドお姉さんに任せるの。
「貴女が幸せに転生するには刃じゃなくて言葉が必要なのよ。言い残したことがないように」
オーキッド・シュライン
【向日葵と一緒】
【心情】
・さて、貴女に友人を斬らせるわけにはいきませんわ。
・剣術勝負ならば、私とやってくださいませ。
・では、豪火絢爛に燃やしていきますわよ。
ついてきなさい、シャイニーソレイユ。
【戦闘】
・先制攻撃に対しては、見切りでタイミングを見切りつつマスデバリアでオーラ防御。敵の斬撃が終わったらカウンターでOGを展開しつつ、カトレアを使っての近接戦闘にはいりますわ。
・相手の斬撃を武器受けして捌きながら、細剣での斬撃で相手の体内に炎を残しますわ。
・動けなくなったら、都子さんに言葉を促しますわ。
「転生したら香織さんとは永久に遭えなくなりますわ。香織さんが香織で居るうちに貴女の言葉を」
霧島・龍斬
――ああ、こりゃ生まれる時代を間違えた人間の業だわ。
俺と一緒。使わずにいる方が幸せになれる『剣先』だ。
……こんなの、逃げられる、筈がねぇ。
だがよぅ、お前さんはな。
疾すぎるから、『後』を必ず取られるんだよ。(【戦場の亡霊】)
【早業】【残像】【フェイント】【鎧無視攻撃】――
俺の刃に氷の【属性攻撃】と【破魔】を乗せて。
手癖ば見えれば斬り返す。それまでさ
「ああ、お前さんの剣は時代錯誤なのさ、俺と一緒で。平和だからこそ、お前はそういう風に成り果てた」
「でもな、……持たせなかった『優しさ』っつーのもあるんだよ。嬢ちゃん。『彼女』は、お前を、人斬りには、したくは無かったんだろう?」
※アドリブ連携可
「香織……」
か細く震える声。
標的となった女性、大園都子は驚きをその瞳に乗せて呼び掛けた。
記憶に残るままの姿で、しかし記憶とは違う冷淡な表情を崩さぬままの、嘗ての友。
自身の名を呼ぶ声に小さく目尻をピクリと動かし、影朧は一歩前へと踏み出した。
駆け寄るでもなくただゆっくりと歩み寄ろうとする動き。
余りに邪気の無いその動きに、都子も、その周りで構えていた筈の猟兵達でさえ咄嗟の反応は出来なかった。
「疾いな」
否、一人だけその剣閃に反応出来る者が居た。
霧島・龍斬。
青年の身体に歴戦の傭兵の魂を宿した古強者である。
鍔迫り合いの音が響き、漸く周りが影朧の姿を認識する。
「いつの間に……!?」
驚きを滲ませつつも、直ぐ様『閃光の魔盾<アトラント>』を展開させたシン・ドレッドノートが半身を重ねる様に都子の前へと出る。
それを皮切りに意識を切り替え改めて構え直す猟兵達。
説得にしろ撃退にしろ、一先ずは影朧を迎え撃たない事には始まらない。
「――ああ、こりゃ生まれる時代を間違えた人間の業だわ。俺と一緒。使わずにいる方が幸せになれる『剣先』だ」
閃刃をいなした龍斬は独り言ちりながら、眼前の影朧への警戒度を最大まで引き上げる。
理由は自身の体に新しく刻まれた刀傷。
腎臓の有る右の脇腹が鋭く切り込まれている。
龍斬が凌いだのは初太刀では無く返す刃だったのだ。
本来であれば致命傷となったその攻撃だが、彼が腎臓を始めとした内臓の位置や大きさに手を加えられているサイボーグである事、影朧が狙ってきた急所が腎臓であった事が重なり、幸運にも行動不能となる痛手とはならなかった。
そしてもう一つ。
「我が領域よ、築け、保て。汝は堅牢、汝は不落。魔女が望むは破れず侵せぬ護の結界」
寸での所でメンカル・プルモーサのユーベルコード【最も古き魔女の家】が間に合った。
自身を強固に守るユーベルコードだが、彼女のそれは他者への干渉も弾く結界の形を取っていた。
半透明の金色の輝きは目に見えぬ剣閃を途中で弾き返し、龍斬の被害を如何にか食い止めたのだった。
「成程な。……こんなの、逃げられる、筈がねぇ」
長らく感じていられなかった敗北の気配を追いやりながら、龍斬は口の端を吊り上げる。
圧していた刀を払い、影朧は大きく飛び退さり距離を離す。
「霧島さん! お怪我は!」
「気にするな。それよりも構えろ」
フィーナ・シェフィールドが気遣って声を掛けるが、龍斬は特に気にした風も無く真っ直ぐと影朧を見据えている。
実際の所、あれだけの疾さの攻撃を受けられるのは自分しか居ないだろうと龍斬は感じていた。
数度斬り合ったなら皆でも引けを取らない攻防は出来るだろうが、初撃のあの剣閃を捌くのは至難の技だ。
どうせ一太刀浴びるのであれば、自分が受けるのが一番良い。
多少の賭けでは有ったが、生身の人間が相手するよりも余程此方の勝率は高いだろう。
(戦い続ける身としちゃあ、この義体は有難いな)
更に彼が初太刀を引き受けた事で、ユーベルコード【戦場の亡霊】が発動する。
現れたのは二振りの刀を下げた剣客の亡霊。
仮に戦闘不能に陥っていたとしても戦力に変動は無く、影朧を相手取るに不足は無い。
文字通り多少の刀傷を負いはしたが、初手の動きとしては十全だろう。
「っ、解りました! 皆さん、この機を逃さず!」
「心得ました!」
フィーナは意識を影朧へと戻し細身のマイク『イーリス』を構えてユーベルコード【光り輝く純白の翼】を発動させる。
彼女の姿は豪華絢爛な純白のステージ衣装へと変わり、月明かりに似たオーラをその身に纏う。
既にスピーカーとライトの役割を果たすドローン『ツウィリングス・モーント』と『シュッツエンゲル』は展開済みだ。
彼女に呼応するのはシン。
防御用に『ソードビット』を魔盾に重ねる様に置き、フィーナの歌の邪魔にならぬ用『ライフルビット』にはサイレンサーを取り付けてある。
彼が狙うのはカウンター。
確かに目にも留まらぬ疾さの攻撃ではあるが、打ち合った瞬間は動きが止まる。
其処を狙い撃つ。
「大丈夫……結界は維持してるから……代わりに攻め掛かるのはお願いね……」
後方、都子の傍に控えるメンカルの囁きが頼もしい。
頷きを返してフィーナは大きく息を吸い込んだ。
「都子さんの本当の気持ち、貴女に届いて!」
舞い上がり紡ぎ出すのは都子の想いを乗せた儚き歌。
破魔の力と友の想いが籠められた歌に、影朧は一瞬眉根を顰める。
と、次の瞬間甲高い金属音が鳴り響いた。
「確かに疾い……っ」
影朧の表情が変わったのを見て嫌な予感がし、シンは咄嗟に魔盾とソードビットを割り込ませた。
結果、二つのソードビットは断ち切られてしまったが剣閃がフィーナに届く事は無かった。
魔盾に刃を切り込ませながら無表情に見遣る影朧。
「剣を切らせて……銃で撃つ!」
その交差で動きを止めた影朧へ、ユーベルコード【真紅の狙撃手】を撃ち込む。
小賢しいとばかりに周囲を薙ぎ払おうとする影朧。
それよりも疾く放たれた三発の紅い光弾が影朧へと迫る。
「――っ」
影朧から小さく呼気が漏れる。
瞬時に飛び退いて見せるが光弾は彼女の左足首・左脹脛・左太腿を撃ち貫いた。
袴に開いた小さな三つの穴から焦げ付く様な臭いが上り、直ぐに風に攫われて消える。
ユーベルコードの命中で薙ぎ払いを封じ、更に攻撃力も奪った。
「――――♪」
先程から響くフィーナの歌声も、影朧の動きを鈍らせるのに一役買っている。
所々に都子の口癖や二人で交わした台詞を交えた歌詞は、影朧の心をざわつかせて止まない。
顔に出てはいないが時折視線をフィーナへ、その後都子へと這わせている。
それは今まで捉え様の無かった影朧へ、此方から攻撃を仕掛ける好機を生む事となる。
「お集まりの皆々様、これからはじまるのはプロレスという演劇、あなたたちに真のプロレスリングをこの私がお見せしますわ」
桜庭・愛が声と共に右腕を挙げて衆目を集める。
前哨戦ではフォースセイバーを巧みに操って見せもしたが、彼女の本領は無手での組み合いに有る。
そしてプロレスの技は立ち合ってのものばかりではない。
真価は組み技。
そこへ至る道筋も一つでは無い。
(日本剣術の盲点は足元が弱いという事、そこを攻める)
手にした刀を扱うのだから、基本となるのは刀を使った動きである。
蹴りを基点とし多様する剣術は聞き覚えが無い。
「ハイペリア重殺術。才堂紅葉。一手お相手仕ります」
一礼しゆったりと影朧へ迫るのは才堂・紅葉だ。
彼女もまた、無手での戦闘を挑みに行く。
ナイフや拳銃の扱いも慣れてはいるが、やはり彼女も徒手空拳の使い手だ。
両手をだらりと下げて脱力させ、どの方向からの攻撃にも対処出来る様にする。
そうして距離を詰め行く紅葉の横を軽快なステップで通り過ぎていく猟兵が一人。
気付いた紅葉は流石に困惑の声を上げた。
「え? ちょ、ちょっと英さん!」
英・操である。
「スタアが全力で守るからお婆さんは言いたいことを言いなさい?」
そんな台詞とウインクを残して都子の震える手を握り落ち着かせた彼女は、集まった観客達へアピールする様に優雅な足取りで影朧を目指す。
当然の事ながら、スタアである彼女には武術の心得等無い。
映画や演劇の芝居で殺陣を演じる事は有るが、実際に戦えるのかと問われれば答えは否である。
にも関わらず彼女が前に出る理由は何か。
その答えは観客達から届く声援に有った。
ユーベルコード【仙姿玉質】の発動。
スタア足る矜持と応援してくれるファンのサービスの為に取る、戦場での不利益な行動が彼女の身体能力を引き上げていく。
「ファンがいる限りスタアはスタアなのよ!」
にんまりと笑いながら手を振る操へ大歓声を贈る観客達。
煩わしさを感じてか、影朧は狙いを操へと定めた。
三度振るわれる剣閃。
しかし、その剣先が何かを捉える事は無かった。
「おーほっほっほ! ちゃんと狙いなさぁい!」
芝居掛かった声を張り上げ、操はするりと剣先を躱していた。
これには直ぐ後ろで見ていた愛と紅葉も目を丸くする。
だが一番驚いたのは影朧だろう。
怜悧に引き絞られていた鋭い目が、大きく見開かれていた。
「まるで殺陣の先生が見せるお手本の様な動きね。だけどそれじゃあスタアは捉えられないわ!」
だってスタアだから、と笑う操。
その言葉に、幾人かは気付く。
影朧の疾さで覆い隠されていた、彼女の剣術の弱点。
「手を上げるのは趣味じゃないわ、攻撃はお任せするわよ?」
「任されたわ!」
生まれた隙を突くのは愛。
ユーベルコード【サイコキネシス】で自分の背中を押す様に加速させ、真っ直ぐ影朧へと向かう。
立ち直った影朧は自分より高い位置にある愛の首を斬り落とそうと刃を構えるが、不意にその目標たる身体が視界から消え失せた。
一体何処にと思う間も無く襲い来る足元への衝撃。
「ふふっ、この世界にプロレスはないから脱出の知識もない。一気に動きを殺させてもらうわ」
愛が仕掛けたのはスライディングからの足四の地固め。
払い上げた右足を掴み、滑り抜けると同時に自身は身体を捻り向き直る。
影朧はうつ伏せに倒れ込み足を固定されてもがいている。
滑り抜けたのは上体を無理矢理起こして切り払ってくるのを防ぐ為、影朧をうつ伏せのまま引き倒す必要が有ったからだ。
こうした拘束技は警官隊の一部や実践柔術を扱う僅かな道場が使っているが、まだまだ一般には浸透していない。
如何に剣術に優れた相手でも、対処法を知らなければ抜け出すのは困難だろう。
「おぉっ!?」
しかし影朧は此方の想定の上を行った。
強く海老反る様に上体を起こし、刀でなぞる様に斬り付けてきたのだ。
咄嗟に手を離して難を逃れた愛だったが、足首の骨でも外しておけば良かったかとちらりと思う。
(いやいや、都子さんも彼女を傷付けるのを望んでいないし)
一瞬芽生えた滾る闘争心に蓋をして大きく距離を取る愛。
とは言えダメージは大きかったらしく、抜け出た影朧の動きは精彩を欠いている。
其処へ紅葉が仕掛ける。
「目に見えずとも――」
影朧は両足の痛みを増さぬ様にか、立ち居合いの構えで紅葉を迎える。
間合いに入ってきた紅葉へ抜き撃つ一閃。
それを半歩踏み込む事で防ぐ。
「動きさえ読めれば脅威では有りません」
紅葉は右手で包み込む様に鍔元を押し込み、刃を止めていた。
じんとした痺れが掌へと広がるが、何処も切れた様子は無い。
延びた剣先が僅かに肩口へと届いてはいたが、対刃マントがそれを阻んでいた。
動きを抑えた影朧に囁き掛ける様に、紅葉は口を開く。
「あなたの無念は友人に信じられなかった事。その剣の業をふるえなかった事」
その問い掛けに眦をぴくりと動かす影朧。
僅かに揺らぐその瞳が此方を見上げた。
「いずれなのですか?」
影朧が口を開く事は無い。
だが、何事かを叫ぶ様にその目元は固く引き絞られた。
其処へユーベルコード【ハイペリア重殺術・迦楼羅】を叩き込む。
「この迦楼羅の焔でその歪んだ性根をまっすぐにしてやるわ」
迦楼羅焔を纏った左手による掌打が影朧の胸元を叩くのと同時、掛けていた対刃マントがはらりと舞い落ちる。
二度振るわれた刃を受け切ったマントはその役目を果たし終えたが、紅葉に刀傷は無い。
対する影朧は掌打の勢いを殺そうと大きく後退し、空中で体躯を回して着地する。
だがその瞳は先程までと違い動揺を強く滲ませていた。
彼女のユーベルコードは肉体では無く歪んだ性根のみを攻撃する。
大袈裟に飛んでみせたがダメージは無いに等しく、されど精神を揺さぶる謎の衝撃を受けて影朧は混乱していた。
そこへ畳み掛けるのはフィーナによる歌。
戦場へと響き渡る友を想う歌が、彼女の精神、影朧たる根底を揺るがしている。
今度こそ忌々しそうに顔を歪めた影朧は、その歌を止めようと一歩踏み出す。
「……掛かった」
それを止めたのはメンカルが仕掛けて置いた『遅発連動術式【クロノス】』による拘束術式。
足元で光る魔法陣の効果が一瞬だけ影朧の動きを封じる。
直ぐ様振り解かれてしまうが、その僅かな隙で準備は整う。
「じゃあやろうか。この力は困っている人の為にあるのよ」
「さて、貴女に友人を斬らせるわけにはいきませんわ。ついてきなさい、シャイニーソレイユ」
立ち塞がるのは夢咲・向日葵とオーキッド・シュラインの二人。
二人へ向かって、影朧は刃を振るう。
両足に怪我を負ったとは言え、その速度は未だ落ちる事は無い。
必殺の刃が二人を襲う。
「来るのが分かっていればどうとでもなるの」
刃は防がれた。
向日葵は【母なる大地の魔法王女】足る覚悟と、大地の力を立ち上らせたオーラにによる防御で。
オーキッドは自身が纏う地獄の炎を練り上げて作った障壁『マスデバリア』の防御で、斬撃を受け止めている。
細剣で影朧を切り払いながら、オーキッドはやはりと頷く。
「言った通り、お手本の様な剣術ですのね。わたくし達猟兵を相手取るのに、その剣筋は素直に過ぎましてよ?」
疾さに物を言わせた影朧の弱点。
それは基本に忠実過ぎる攻撃の型に有った。
目に捉えられぬ疾さを武器に振るわれる影朧の刀だが、速度を落としたそれは入門書に書かれているものと同じ振り方で放たれている。
向日葵が口にした様に、来るとさえ解っていれば対処は容易い攻撃だったのだ。
それに、幾ら疾いとは言え猟兵が何度も見た同じ攻撃を喰らう道理も無い。
再び放たれた剣先を、今度は余裕を持って躱す。
「さぁ、反撃なのよ」
向日葵は魔方陣から魔法の向日葵の花『ソレイユ・シールド』を生み出す。
それらは影朧へと向き直ると一斉に重力の鎖『プリンセスチェイン』を放った。
手足や胴へと絡み付く重力の鎖。
「あとはオーキッドお姉さんに任せるの」
「任されましたわ。豪火絢爛! 舞い踊りなさいませ! わたくしの花よ!」
ユーベルコード【ブレイジング・オーキッド】を発動する。
普段は触れたものを悉く焼き尽くす蘭の花弁で周囲を焼き払う為に使うユーベルコードだが、今回はそれを細剣に這わせて使う。
狙うは影朧の四肢。
都子による香織の説得と言うイベントが控えているので、戦う力を奪うに留めておく。
「ちょっと熱いですけど、我慢してくださいまし」
細剣を構えての四連続刺突。
両手首と両足首に放たれた刺突は傷口に消えない炎を残す。
無理に動かそうとしたなら燃え上がった炎が手足の自由を奪う。
「転生したら香織さんとは永久に遭えなくなりますわ。香織さんが香織で居るうちに貴女の言葉を」
「貴女が幸せに転生するには刃じゃなくて言葉が必要なのよ。言い残したことがないように」
静かに声を掛けるオーキッドと向日葵。
紅葉の一撃を受けた今なら、声も届く筈。
そうして語り掛けられた声に小さく視線を動かす影朧。
ゆっくりと口が開き、何事か語ろうと小さく震えだす。
聞き取ろうと皆の意識が口許へと動く。
影朧はその隙を突いた。
「しまっ……!」
「あの状態で動きますの!?」
間を抜けられた向日葵とオーキッドが透かさず反転するも、距離は遠く離れている。
重力の鎖と手足の炎が機動性を奪ってはいたが、それでもまだ疾いと言える速度。
友を狙った刃が引き抜かれる。
が、そこへ割り込むもう一つの刃。
「疾すぎるから、『後』を必ず取られるんだよ」
凶刃を防いだのは龍斬。
応急処置で傷痕を一先ず塞いでいた彼が抜いた機械刀『凍狼孤月』が影朧の剣閃を止めていた。
今度は切り返す事を許さない、初太刀の受け。
動きの止まった彼女へ、亡霊が挑み掛かる。
前後から挟まれる形となった影朧は次々に見えぬ刃を振り回していく。
だがその剣閃はいとも容易く止められていく。
「ああ、お前さんの剣は時代錯誤なのさ、俺と一緒で。平和だからこそ、お前はそういう風に成り果てた」
子供に言い聞かせる様に言葉を選びながら喋る龍斬。
何度斬っても届かぬ相手に、遊ばれていると感じた影朧は益々むきになって荒々しい刀を振るう。
隙を咎める様に、振りが甘いと嗜める様に、亡霊と龍斬はその刀を捌く。
数合を重ねて、龍斬は僅かに顔を緩めた。
「でもな、……持たせなかった『優しさ』っつーのもあるんだよ。嬢ちゃん。『彼女』は、お前を、人斬りには、したくは無かったんだろう?」
その言葉に、初めて影朧は動きを止めた。
上段に刀を振り上げた体勢のまま、ただ大きく目を見開いて。
完全に動きを見切った龍斬は破魔の力を刃に乗せて、柄尻に刃先を叩き付けた。
手から離れていく刀。
それを亡霊が掴み取ると同時、影朧は憑き物が落ちたかの様にその場へと座り込んだ。
「さ、お膳立ては済んだわ。想いの丈をぶつけるのよ、お婆さん」
操が都子の手を引いてやってくる。
念の為傍に控えはするが、此処からは都子と香織、二人で言葉を交わす必要が有る。
影朧への恐れではない震えを滲ませながら、ゆっくりと香織の前へと歩み寄る都子。
片や当時と変わらない姿で。
片や時を重ねた老女の姿で。
嘗ての友は再会を果たす。
何を喋るのか、何を伝えるのか。
猟兵のみならず、公園の外に集まった観客達も固唾を飲んで見守る中、老女は少女の手を取り静かに語り始めた。
それらは周りには聴こえない。
また、二人以外が聴いても解らない内容だったのかもしれない。
数度言葉を交わした後、老女は少女の耳元で何かを囁いた。
すると、少女の雰囲気が変わる。
影朧として蘇った少女ではない、当時の心を取り戻した少女の顔付き。
静かに頬を伝う涙を拭おうともせず、少女は口を動かした。
音は聴こえなかったが、ありがとう、と言ったのが解った。
少女は正座して姿勢を正し、操へと視線を向けた。
「この度はご迷惑をお掛けしました。何とお礼を言って良いやら……」
凛とした利発そうな声色が響く。
その瞬間、猟兵達は依頼の解決を悟った。
後は彼女を転生させるだけである。
幸いにも、集まっていた観客の一人にユーベルコヲド使いの桜の精が居た。
彼女の協力を得て、転生させる準備は整った。
「二度とこのような悲劇が起こらないことを……」
「いつか生まれ変わったら……また会えるといいですね」
シンの祈りとフィーナの願いを受け、少女は柔らかく微笑む。
「次の生では、また彼女と友人になれる事を願っています」
「今度は私から見付けに行こうかしら」
「あら、方向音痴なのに?」
「ええ、それでも。迷い続けたとしても、必ず迎えに行くわ。寂しがり屋だから、早く見付けないと泣きそうだし」
「いつの話よ」
当時の様に軽口を叩き合う二人。
名残惜しいが、やがてその時が始まる。
桜の精の癒しを受けて影朧としての体は崩壊を始め、無垢な魂だけが残り、天へと昇っていく。
半分以上消え掛けた身体で、少女は老女と約束を交わす。
またね、と。
最後の一欠片まで見送った老女は、静寂が戻った公園で涙を一つ流した。
事件解決から少し後。
都子を家に帰した猟兵達は、彼女の代わりに集まった観客達からの声援や記者からの質問攻めに合っていた。
愛は途中喧伝したプロレスなるものの説明と布教を女性記者にしていた最中に此度の戦いでファンになったと言う少女が現れ、ファンサービスも兼ねてコブラツイストを掛けてあげると男女問わず技を掛けてもらいたいとファンが殺到し目を回す事に。
操は駆け付けたファン達全員にサインを描いてあげたり即席握手会が始まったりとスタアとして大忙し、しかし笑顔を絶やさず戦いの最中の声援有難うとお礼を述べた事で益々ファン達の熱狂度は上がっていくのだった。
紅葉は徒手空拳での戦いに惚れ込んだ雑誌記者と偶々近くに住んでいたので最前列から観戦していた文豪に詰め寄られ次の武侠小説の題材に使いたいと猛烈な申し込みを受け、最初は渋っていたのだが大人気カフェのパフェ食べ放題チケット数枚を見せられ葛藤している。
フィーナは案の定レコード会社のスカウトマンに次の新曲をうちから出しませんかとぐいぐい押されていたが事務所と話してみてくださいと言う魔法の言葉であっさり撃退、その傍らサインに応じて着実にファンを増やしていった。
シンは見事な立ち回りと銃の腕前を買われて警官隊から今度時間が有る時に特別教官として新人達を鍛えて欲しいと請われるも、実は怪盗として悪人相手に盗賊稼業をしている為大っぴらに警官隊と付き合う訳にも行かず曖昧な笑みを浮かべて誤魔化していた。
メンカルは魔女っこと言う事で同年代の少女達や年下の子供達から絶大な支持を受け魔法についてあれこれと質問を浴びせられているが、真摯に答えつつも自分の知らない知識や情報が無いかをこっそりと会話の端々から探っている。
向日葵も同じ様に子供達に囲まれているが何方かと言えば喋っているのは向日葵の方であり、内容は母なる大地を讃えるものが多く地面ラブ勢としての面目を余す所無く発揮しており大地教なる地面大好きクラブ的なものを発足し始めていた
オーキッドの元には画家や文豪が集まって蘭の花弁を操る優美さと本人のお嬢様然とした風貌を讃えつつ刺激されたインスピレーションをメモ帳にぶつけており、モデルにされたオーキッドは優雅に高笑いしつつも内心でこれはヤバいと妙な汗を掻いている。
龍斬の元へはいわゆる中二病をこさえた青年少年達が集まって目を輝かせながら口々にカッケーカッケーと騒いでいるが、当の本人は適当にあしらいながら香織が遺した刀の検分をしながら彼女の実家へ刀を戻した方が良いのか煙草を吹かしつつぼんやり考えていた。
翌日、彼等の活躍は新聞の一面記事を飾る。
感動的な結末と猟兵達の立ち回りに世間は大きく賑わいを見せたが、一月もすれば皆事件を忘れ日常に戻っていく。
暫く経てば、当事者以外はこの影朧の事を誰も思い出せないだろう。
だが嘆く事は無い。
そうした日常こそ、猟兵達が身命を賭して守ったものだ。
大成功
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