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落日から

#UDCアース

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#UDCアース


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「UDCアースの世界にて、皆様のお力をお借りしたい作戦が御座います」
 グリモアベースにて、千堂・レオン(ダンピールの竜騎士・f10428)は集まった猟兵達に言葉をかけていた。
 柔和な物腰に穏やかな声音、柔らかな視線で皆を見回す。
「とある街にてオブリビオンが潜伏していることが察知されたのですが──その場所が、とある邪神教団の拠点だと判ったのです」
 すなわち、敵は一体ではなくかなりの数が潜んでいることが予想される。
 ここへ突入して奇襲、制圧することでオブリビオンを壊滅させて頂きたいのです、とレオンは語った。

 現場の見取り図を取り出して、レオンは続ける。
「場所はこちらの建物です。小さなマンション、というところですが、地下に広めの空間を持っており、そこが拠点となっているようですね」
 敵の首領はこの地下のどこかに居るだろう。
 入る方法はいくつか考えられる。
 入りやすいのは、駐車場の裏口を破壊して下り階段を進むこと。細道で距離は長いが、一度に多数には囲まれにくいはずだ。
 また、管理人室から地下に直通の通路があることも判っている。ここに辿り着くまでには邪魔が入るかも知れないが、その分地下の敵の不意をつきやすいだろう。
 その他、マンションの部屋にもいくつか地下へ続く入り口があるようだ。空き部屋などを迅速に見つけられれば、速やかな侵入が可能となるかも知れない。
「通路や地上階も含め、拠点の奥部に進むまでには邪神の眷属が多数襲いかかってくるでしょう。お気をつけて、臨んでいただくようお願いいたしますね」
 そして、拠点の首領となるオブリビオンこそ、強力な敵だろう。辿り着いた際にはぜひとも油断のなきよう、とレオンは念を押した。
「現場近くの通りで、丁度縁日が開かれる予定があるようです。無事勝利した暁には、そちらに寄っていかれると、疲れを癒やすことも出来ますでしょう」
 そんな日常のためにも、敵の確実な撃破を、と。レオンは頭を下げて猟兵達に言葉を送ったのだった。


崎田航輝
 ご覧頂きありがとうございます。
 UDCアースの世界でのオブリビオン討伐となります。

●現場状況
 小さなマンション。地下にはある程度の広さの空間があることが判っています。

●リプレイ
 一章は集団戦、二章でボス戦となることと思います。
 三章では縁日に寄ることが出来ます。
 なるべくプレイングは採用いたしますので、二章や三章からでもご参加頂ければ幸いです。
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第1章 集団戦 『黄昏の信徒』

POW   :    堕ちる星の一撃
単純で重い【モーニングスター】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    神による救済の歌声
自身に【邪神の寵愛による耳障りな歌声】をまとい、高速移動と【聞いた者の精神を掻き毟る甲高い悲鳴】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    黄昏への導き
戦場で死亡あるいは気絶中の対象を【自身と全く同じ『黄昏の信徒』】に変えて操る。戦闘力は落ちる。24時間後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

忍冬・氷鷺
オブリビオンの暗躍を見過ごすわけにはいかないな
この地に暮らす者達の為に、この力、存分に振るわせて貰うぞ

俺は裏口破壊からの侵入を目指す
扉があれば氷刃裂破を見舞った後、縛霊手でこじ開けられないか試す
地味だがまぁ、確実性を重視したい
同じ考えの同胞がいれば協力をして動くとしよう

眷属を見つければ速やかに排除の構え
邪を信仰する輩を生かしておく訳にはいかない

まだ相手に気付かれて居ない様であれば、
背後から大苦無を投擲し【暗殺】を狙いながら奇襲を

その後は一体ずつ確実に仕留める事を念頭に置き、
氷刃裂破で一気に片を付けよう
敵が怯んだ隙は見逃さず、急所を狙い攻撃を
人と同じでなくとも、試す価値ぐらいはあるだろうさ


匕匸・々
邪教にオブビリオンか。
平和裏に暗躍する者は何時か我が主に害をなす可能性がある。
早々に潰しておくに越したことはないだろう。

駐車場の裏口がまだ破壊されていなければ破壊して侵入しよう。
破壊音で敵が寄ってくるかもしれぬな……
前後に注意して階段を下っていこう。

敵に遭遇した場合には錬成カミヤドリで攻撃を。
短剣を複製して複数体との戦闘にも対処出来るようにしておこう。



陽光が傾く時刻は、あらゆるものが長い影を伸ばして暗がりを作る。
 ハレーションを起こすような眩しい夕空の下で、そのマンションも逆光に翳ったシルエットを作っていた。
「さて、と」
 その陰に舞い降りるように、塀の内側に着地したのは忍冬・氷鷺(春喰・f09328)。音無く銀髪だけをふわりと踊らせて、同じ色の瞳で一つの扉を見つけていた。
 駐車場の裏側、建物自体の背を見上げる形になる狭所。
 そこは中でもさらに落ち窪んだ場所にあった。
 地下へ続く、裏口だ。
「運営者か、管理人専用の通路──という風体だな」
 硬い施錠もあるゆえに、ここに人が寄り付くことはあるまい──と、しゃがみこんで取っ手を見つめるのは匕匸・々(一介・f04763)。静かな表情に動きはないが、瞳は素早く周囲を観察している。
 今の所敵の気配はない。だが扉も中々に厚かった。
 それでも、元より尋常の手段で入ることは出来ないと分かっている。
「俺がやろう」
 々に視線を合わせた氷鷺が、手をかざす。
 これが侵入者の正当な解錠法。
 瞬間、大気の水分が凍りついて無数の氷刃へと変貌。突き刺さるように鍵部に侵入し、鋭い金属音を上げて内部を破壊した。
 取っ手をひねると、ばきりと鳴動しつつ扉が開く。
 二人は頷き合う。
 今立っている場所は夕闇の影となっていて、充分に暗い。だがこの奥に潜むものは、もっともっと、異質な歪さを持った暗部なのだろう。
「音で敵が寄ってくるかもしれぬな。急ごう」
 それでも々の言葉に氷鷺もああと応え、二人は階段へと足を踏み入れていく。
 そこは急勾配で下っていく細道だった。コンクリートの壁に囲まれた、しんと冷える薄暗闇。
 さながら地下鉄に降りゆくような広さを感じて、氷鷺は見回す。
「やはり、地下空間は相応の大きさを持っているようだな」
「ああ。であれば、尖兵がいるのも道理か」
 々は真っ直ぐの通路になったところで前を見据えた。
 ゆらりと蠢く、外衣を被った異形が居る。
 仮面の奥からこちらを見つめ、声を響かせた。
 ──嗚呼、唖々。何奴、何奴。
 ──信徒では無い。その御心が、感じられぬ。
 ──我らの神を穢す者か。
 ──我らの信を邪魔立てするものか。
 そこにあるのは狂信的な殺意。複数体で現れた、黄昏の信徒。
 々は金色の美しい瞳を細める。
「邪教に、オブビリオンか」
 居るのは判っていたが、やはり禍々しかった。
 なればこちらが取る行動は一つ。
 々は緩く突き出した手に透明の光を収束。自身の本体たる懐剣を複製して携える。同時に同じ刃を宙に形成すると──それを一直線に飛翔させた。
 風の如き剣が一体に突き刺さる。十以上の刃を受けた信徒は抵抗も出来ずに斃れた。
 信徒は雪崩を打ったように攻めてくる、が、細道ではこちらを包囲することも簡単ではない。々の刃が数本襲うと、そこへ氷鷺が踏み出し、腕を振り下ろすように鋭利な氷を飛ばしていた。
「──切り裂け」
 氷刃裂破。
 宙に踊る零下の刃は先頭の一体を裁断し、その後ろの一体までもを打ち倒す。
 相手が凶器を振り下ろしてくれば、氷鷺は後ろに飛んで避けてみせた。それによって信徒が一瞬怯む間に、氷刃を胸部に集中させてその心臓を貫いた。
 敵の動きが制限される分、一体一体に対して苦戦は無い。直線を駆け抜けて、二人はその先にある扉を蹴破った。
 灯りが目に眩しい。
 初めて明るい空間に出て、氷鷺と々は足を止める。
 そこは地上とも通路とも全く様相が違った。整然とした小部屋で、どこか厳かな空気を作ろうとしていることが感じられる。
 ここは入り口でしかないのだろう。それでも想起させる空気は──。
「教会、といったところか」
 ただし、歪曲した邪教の。
 奥にも広い空間があるのだろう、氷鷺が呟く頃には、気配を感じ取った信徒が次々に現れてきていた。
 氷鷺は奥に視線を遣る。
 ここが教会であるなら聖堂があるはずだろう。何かが潜んでいるとすれば、そこだ。
 ──我らが神聖なる空間で、狼藉を働くか。
 敵意を見せる信徒に、氷鷺は腕を掲げる。
「邪を信仰する輩を生かしておく訳にはいかないからな。何よりオブリビオンの暗躍を見過ごすわけにはいかない。この地に暮らす者達の為に──この力、存分に振るわせて貰うぞ」
 氷嵐が信徒を薙ぎ払う。
 々もまた頷き、敵を切り捨てた。
「平和裏に暗躍する者は……何時か我が主に害をなす可能性がある。ならば早々に潰しておくまでだ」
 その彼の顔を一度だけ脳裏に浮かべて。々は敵を払い、奔る。
 ここからは、囲まれれば楽にはいかないだろう。けれど仲間の潜入が上手くいけば途中で合流も出来るはずだ。
 だから二人は退かずに、前進した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

平賀・美汐
邪神教団の拠点にオブリビオンが隠れているとか、お約束よね全く。
マンションの地下にいるみたいなのはいいんだけど、その地下に行くまでが厄介ね。
私はできるだけ見つからないように、SPDで地下につながってそうな空き部屋を探して潜入するわ。
マンションだから隠れる場所が少ないと思われそうだけど、例えばエレベーターボックスの上とか、屋根裏とか、階段とか隠れられる場所には困らないから、慎重にスニーキングするわ。
戦闘が避けられないなら仕方ない。多人数に囲まれないように立ち位置に注意しながら、シーヴズ・ギャンビットで信徒を無力化していくわ。応援を呼ばれたらたまらないから、速度重視で行くわよ。


ハーバニー・キーテセラ
どうしてぇ、こういう人達って地下とか暗いところを好むんですかねぇ?
いえ、明るいところでやられるのも嫌ですけどぉ~

破壊音で敵に気付かれてもですしぃ、空き部屋でも見つけて侵入してしまいましょ~
鍵が掛かってればぁ、鍵開けでちょいちょいっとぉ
幾つか当たればぁ、地下への入り口も見つかるでしょうかぁ
入り口を見つけたらぁ、用心して侵入ですよぉ~

あ、でも、探す間もですけどぉ、地下でも地上でもぉ、油断はしませんよぉ
擬獣召喚しておいてぇ、周辺を警戒しておきますぅ
敵が来たならぁ、教えてねぇ~?
もし敵が出てきたらぁ、協力して対処ですよぉ
迷惑さん達にはぁ、跳んで、跳ねて、翻弄してぇ、ヴォーパルの弾丸をプレゼントですぅ


ヘンリエッタ・モリアーティ
【WIZ】
拠点の奥を目指せばいい……のよね……。
直通だと数が多いけど、そちらに向かう人も多そうだし――倒しきれないところを、なんとか、私で……私たち、で、攻めていかなきゃ。
マンションの部屋にもあるなら、抜け道として確保しておきたい、な……。急いでいる人にはそこから入ってもらってもいいし、――まずはマンションに潜入して部屋をひとつずつ開けていきます。
油断はできない、から、危なくなったら【見切り】で攻撃を避けれるようにして……。
もし攻撃をしてきたなら――力を貸して、私の狗たち……【謎を喰らう触手の群れ】!
作戦は、大丈夫、できる……まだ、『私だけ』でいい……!


アンバー・ホワイト
ヘンリエッタ(f07026)と共に
邪神…教団…?ワルイヤツラってことだな、倒しに行くぞ!

考えることも、細かな調査も苦手なんだ…ヘンリエッタ、頼りにしてるぞ!
作戦指示に従い、マンションから地下への入り口を探す
自力で探す場合は、この世界に来るのも初めてなので運と直感頼りで

拠点に向かう時は隙を取られないように物音には注意を
襲われたとしてもすぐさま反撃するしか能は無いけれど

戦闘は、眷属の集団に突っ込む真似はせず、一体ずつ
星屑の鎖を使って敵を引き寄せ、各個撃破を試みる
ヘンリエッタ達が攻撃しやすいよう、敵の隙を作るように鎖を引くなど操って組み合う
硝子の鎖は脆いけれど、敵を倒すまで離しはしない


フィラメント・レイヴァス
【地形の利用】や【忍び足】を使いながら、空き部屋から侵入しようか
ある程度の広さがあった方が、わたしの〝巣〟が作れるからね。

地下に侵入したら、息を潜めつつ
可能であれば【フェイント】でワイヤーを使って襲撃
傀儡の「絡新婦」を操りながら戦闘

「美味しくなさそうだけれど、仕方ないね
。心は満たされなくても、腹は満たされるさ。ーーさあ、お喰べよ。」

傀儡の行動可能範囲と、敵との距離感を常に意識しつつ行動
【敵を盾にする】など、状況判断力を働かせた戦法に出る

「わたしの巣の中で、絡新婦の餌にならない獲物はそうそういないよ。絡みついた糸さ、もう君達を離さないのだから。」

不利な状況の場合は【逃げ足】で撤退も考慮


門廻・降市
忘れられた神なんか
今更出て来てどうするん
もう御役御免なんよ
とっとと帰り


囲まれると厄介やから
なるべく皆と行動

敵さんが足止め喰うよう
通路や扉に破魔の符貼っていこか
簡易な結界になればええんやけど

管理人室は1階やろが
道々他に開いとる部屋ないか調べてく
床は僕の符で掃除すれば
一々物退かす手間が省けるわ


戦闘なって彼方此方壊されると
増援も来はるし敵わんね
皆と協力して弱いとこから集中攻撃や

敵さんと距離保ちつつ
霊符で腕や足、顔を狙おうて
自由と力を削いでいく

大技使われそうやったら
七星七縛符で捕縛したる
「喧しわ、黙っとき」

接近戦に持込まれたら刻印を起動
破魔の力で吹飛ばして距離を維持
「目障りやさかい、近寄らんといてな」


星海・耀
よくわかんないけど、いーよー。よーするに敵を倒してこいって事でいーんだよねー。
ってうわ、何そのなんとも言えないスタイル。もーちょっと食べた方がいーんじゃないの?脚細すぎない?今どきガリガリは男子にはウケ悪いよ?
あとその、腕出してないのべーっとした服?プチ不気味って感じだから、そこも変えた方がよくない?その仮面は、ちょっとかわいーけど。
あとやっぱ…その物騒な鈍器だよねぇ。だめだめ、もっとかわいー武器使わないと。

あたしがお手本見せたげるー。緑の呼び鈴ー。
ほらほら、かわいーでしょ?その上この腕、逞しくてー、ちょっとモフっとしててー、最高の武器でしょ?
それじゃいくよー、賢ちゃんぱーんち、やっちゃえー。



オレンジの空が暗み始めると、刻一刻と敷地に落ちる影も濃くなってゆく。
 その闇に乗じて地を駆け、建物の側面に辿り着く少女の姿があった。
 平賀・美汐(幼い探索者・f06401)だ。
 髪のリボンに軽く触れてふぅと息を整えると、間を置かずに上を向く。低い壁をひらりと乗り越えて、マンション一階の廊下に滑り込んでいた。
 乾いた自分の足音が小さくエコーして、消えてゆく。息を潜めて視線を廻し、一先ずはそこに敵影がないことを確認していた。
「とりあえず……入るところまではよしと」
 階段の傍により掛かる形で姿勢を低め、周囲を観察する。
 情報通り、建物は小さなマンションという一言で表現できた。上階への階段とエレベーター、そして長い廊下沿いに部屋が点々と位置している。
 視るべきところは多いが、スニーキングが可能な環境でもある。美汐が建物内から地下への道を探すことにしたのはそれが理由の一つでもあろうか。
 と、そこに猟兵が続く。
 壁から降り立ってきたのはヘンリエッタ・モリアーティ(獣の夢・f07026)。漆黒の髪をふんわりと波打たせ、しゃがみ込むと深く一息。中性的なその容貌に、今は少しばかりの安堵の色を浮かべていた。
「誰にも、気づかれていないですよね……」
「見つかったらまずいのか? 大丈夫だ、今のところ気配はないぞ」
 その背中からひょこり、と顔を出すのはアンバー・ホワイト(Snow・f08886)だ。
 敵の牙城にあって、顔には不安の色も無い。ぴりぴりと張り詰めた空気を感じていないのではなく──それが肌を刺しても、必要ならば臆さない。
 夕焼けよりも澄んだ瞳をくりくりと動かして、どこか興味深げに初めての世界の建物を見つめるばかりだった。
「それで、ヘンリエッタ。ここからどう動くんだ?」
「え、と。そうですね──」
 ヘンリエッタは廊下の奥に視線を遣る。
「部屋に通路があるらしいから、抜け道として確保しておきたい、な……。出入りに、一番便利だと思いますから。……まずは部屋をひとつずつ開けていくのがいいかと……」
「わかった、行こう!」
 アンバーは軽くヘンリエッタの袖を握って、立ち上がるのを手伝った。
 声音にあるのは信頼。自分は考えることも細かな調査も苦手だけれど。ヘンリエッタがいれば、こわくない。
「ヘンリエッタ、頼りにしてるぞ!」
「は、はい……!」
 ヘンリエッタもそれは同じ。この少女を頼りにもしていて、同時に力になりたい。
 だから銀の瞳に琥珀色を映して、強く頷いた。

「では、まず空き部屋を見つけましょ~」
 美汐達と共に歩み出すのは、ハーバニー・キーテセラ(時渡りの兎・f00548)。
 間延びした声音は“営業モード”の証。そこが戦場であるならば、足取りは淀み無く。バニーガール衣装のウサギ耳をぴこぴこと左右させながら前進している。
 無論、警戒は欠かさない。ハーバニーは足元にぼうと魔法陣を顕すと、そこに十を超える兎を召喚していた。
「出番ですよぉ~、敵が来たならぁ、しっかりと教えてねぇ~?」
 擬獣召喚(サモン・ラビット・トキドキ・キャット)。
 名に違わず約一匹ほど猫の交じった動物達は、従順に鳴き声を返して周りに意識を向け始めていた。
 敵発見を知らせるには至らないが、兎達は上方や階段の方向につぶさに反応している。
 ここの周囲は無人でも、マンション中に敵の影はあるのだろう。大きな音でも出せば、囲まれることも有り得た。
 美汐は小さく吐息する。
「全く、地下にいるのはいいけど、そこに行くまでが厄介ね」
「ふむ。敵さんが来ても足止め喰うよう、破魔の符でも貼っていこか」
 袖の内からぺらりと霊符を取り出すのは、門廻・降市(縹渺・f08720)。
 夕風に蓬髪を揺らし、三白眼を宿した表情は一見底が窺えない。ただ壁に札を付けながら部屋の人の有無を確認する手際はよく、ゆるりと進むうちに数軒の調査を終えていた。
 邪な者に対し効果を発揮する符は、簡易の結界にもなるだろう。
「これでとりあえず、部屋を調べるくらいの時間は出来たんちゃうか」
「じゃあ早速、侵入してしまいましょ~」
 ハーバニーは調べた中の、無人と思しき部屋の前に陣取った。
 物音、気配、生活感。それらが無いことを改めて確認しつつ、鍵開け。画一的な鍵であったことを活かし、迅速に扉を突破してみせた。
 開いた先には、灯りのついていないフローリングが見えている。
「ここも一応、警戒していこうか」
 足音を消して部屋内へ踏み込むのは、フィラメント・レイヴァス(シュピネンゲヴェーベ・f09645)だ。
 碧眼の奥に動く、真紅の瞳孔。あどけなさの垣間見える表情の中で、その瞳は冷静に環境を読み取っていく。
 静かだが、何か違和感があると気づくと一層音を殺して。ゴシック服の裾も揺らさぬほど慎重に、リビングへ入っていった。
(「なるほど、これは不自然だね」)
 フィラメントはその居間を見下ろして心に呟く。
 空き部屋ならば物が無いのが普通であろうが、そこにはいくつかの棚と、そして床を覆う絨毯があった。
 他の室内は完全なもぬけの殻だから、明らかな違和感。
 降市は掃除代わりに使っている符を床に落とした。すると棚や絨毯がそれを避けるように動き出し──板張りで蓋をされた、地下への入口を発見させていた。
 まさか部屋の中に侵入されると思っていなかったのだろう。碌な偽装工作もされていないままに、はしごが下方に伸びている。
 それは薄暗い空間を経て地下の部屋に通じているようだった。今は敵影も見えないが、不気味な道具の積まれた、教会のような場の一部に見えた。
 美汐はそこを覗き込んでいた。
「邪神教団の拠点にオブリビオンが隠れているとか、お約束よね全く」
「どうしてぇ、こういう人達って地下とか暗いところを好むんですかねぇ? いえ、太陽の下とか明るいところでやられるのも嫌ですけどぉ~」
 ハーバニーは小首をかしげてみせながらも、はしごに手をかける。
「ま、場所が分かってるだけよしとしましょ」
 美汐が言いつつそれに続けば、皆もはしごへ。
 数多の敵が潜むそこへ、止まること無く。
 街に潜む、暗がり。その渦中へ降り立っていった。

 始めに感じられたのは静寂だった。
 何者もいない小部屋は物置のようだ。或いは文字通りのただの通り道か。
 唯一の扉に近づくとようやく、その先に無数の気配が蠢いているのが聞こえた。
 フィラメントは息を潜めて扉に耳を寄せる。おそらくは、広い回廊が向こうにある。
 位置関係で言えば、空き部屋からの通路は全てそこにつながっているはず。おそらく、烈しい戦いとなることだろう。
 けれどフィラメントは恐れない。浮かべるのは寧ろ──捕食者の眼光。
 合図と共に扉をそっと開けると、次の瞬間前方へ飛び出した。
 そこは確かに広々とした通路だ。そして、数多の黄昏の信徒が列をなし、回廊の先へと行進している。
 その数体が気づく前に、フィラメントはワイヤーを放っていた。
 先手の不意打ち。不可視の魔力糸は躱されることもなく、眼前に居た二体の信徒の首を括り、強烈な勢いで引き倒す。
 信徒達が初めてこちらの姿をみとめたが、フィラメントは既に次の手を打っていた。
 それは、禍々しい女郎蜘蛛の姿を模した拷問傀儡。
 元より、フィラメントには広さがある戦場は望むところだった。
 ──わたしの〝巣〟が作れるからね。
 脚がぎしりと動く。絡糸が鈍く光る。フィラメントは傀儡を操りながら、改めて信徒を見据えた。
「美味しくなさそうだけれど、仕方ないね。心は満たされなくても、腹は満たされるさ。──さあ、お喰べよ」
 絡新婦(ジョロウグモ)が信徒を縛り、毒牙を突き刺した。逃れようと藻掻くほど、その体は縛られて、毒が巡って苦しむばかり。
 咀嚼音の中に信徒のくぐもった悲鳴が響く頃には、皆も抗戦を始めていた。
 多勢に無勢と言える数の差はある。
 けれどその中にあって、星海・耀(Loveは愛を救う・f02228)はたじろぐでもなく、どこかあっけらかんとすらしていた。
 自身の豊かな金髪をひと撫ぜして、妖艶さと可憐さを兼ねた相貌でんー、と見回す。
「よーするに、ここで戦えばいーんだよねーって、うわ」
 口元を手で押さえて、やっと垣間見せた表情は少しだけ眉根を寄せたもの。指差すのは目の前の信徒だった。
「何そのなんとも言えないスタイル。もーちょっと食べた方がいーんじゃないの? 脚細すぎない? 今どきガリガリは男子にはウケ悪いよ?」
 それから徐々に首をかしげて全身を上から下まで見る。
「あとその、腕出してないのべーっとした服? プチ不気味って感じだから、そこも変えた方がよくない? その仮面は、ちょっとかわいーけど」
 くまないチェックに、異形の信徒はほんの僅かにだけ自身の体を見下ろした。
 それから湿った音を鳴らして凶器を持ち上げる。
 ──戯れ言を。
 声と共に迫る信徒。だがそれに対しても耀は退く様子を見せなかった。
「あとやっぱ…その物騒な鈍器だよねぇ。だめだめ、もっとかわいー武器使わないと」
 言ってみせると、手を軽く掲げる。
 その瞬間、場を光が満たした。
「あたしがお手本見せたげるー。緑の呼び鈴ー」
 それは召喚魔術。現れたのは信徒を見下ろす体躯を持った霊長類──即ちゴリラだ。
 凶器の一撃をその肉体で受け止めてみせたゴリラに、耀はぽんぽんと触れる。
「ほらほら、かわいーでしょ? その上、この腕。逞しくてー、ちょっとモフっとしててー、最高の武器でしょ?」
 信徒がただ目の前の存在に脅威を感じている、その間に耀は呼びかけた。
「それじゃいくよー、賢ちゃんぱーんち、やっちゃえー」
 声に応じて、剛腕が振り下ろされる。凄まじい膂力を叩きつけられた信徒は、くずおれるように斃れていった。

 少しだけ躊躇う足取りを、ヘンリエッタは強い意志で前に進めていた。
 見据えるのは信徒達が列を向けていた回廊の終端。
「あの奥を目指せばいい……のよね……」
 僅かに声音が弱まってしまうのは、『自分だけ』でこの場を乗り切れるかと思ってしまうから。
 けれどそれも短い時間。隣には大切な竜の少女だっているのだから。
 もう一度きっと見据えて前方へと駆けてゆく。
 信徒は無論、それを阻止しようと立ちはだかってきていた。
 ──我らの教団を、破壊させるものか。
 ──邪神と謗られようと、その復活を否定させるものか。
 悪寒の奔る声音。だがそんなものは──ヘンリエッタに並び立つアンバーを、下がらせることは出来ない。
「邪神……教団……? よく分からないが、つまりみんなワルイヤツラってことだな?」
「ええ。そうです、ね……。間違っては、いないと思います」
 ヘンリエッタが言えば、アンバーは頷いた。そうしてその表情に、月夜の如き冴えた鋭さを宿す。
「なら、倒すぞ」
 星空を集めたかのような、夜色のオーラが煌めいた。
 それはアンバーの放つ星屑の鎖(スターリー・チェイン)。透明なキャンバスに宵の空を描き出すように、美しき流線を形作ったそれは──衝撃と共に信徒の一体に巻き付いて硝子の鎖を形成。吸い込むようにその体をアンバーへ引き寄せている。
 アンバーは速度のままに信徒を壁に撃ち当て、硝子の弾ける煌めきと共に撃破した。
 昏き存在を澄み渡った夜と星で塗りつぶすように、その一撃は異形を跡形も無く消滅させている。
 ヘンリエッタはもう一体からの攻撃を見切り、先んじて回避。足元の空間を鈍く光らせると、そこに夥しいまでの触手の群れを召喚していた。
「力を貸して、私の狗たち……!」
 謎を喰らう触手の群れ(ハウンド・ドッグ・レギオン)──蠢くそれから生み出されたのは、悍ましき呪われた狗の群れ。
 獰猛に、野蛮に。喰らいかかる狗達は信徒を喰い千切ってゆく。
(「大丈夫、できる……まだ、『私だけ』でいい……!」)
 今は自分の中の自分以外に、頼らずとも。
 横を見れば少女と、目が合う。
 アンバーは金のサムリングを輝かせて、ヘンリエッタの背後の信徒を鎖で縛っていた。だからヘンリエッタはそんなアンバーの後ろの敵へ、狗をけしかける。
 互いの背後を守った二人は、迅速に回廊の扉に辿り着いた。
 そこにも三体の信徒がいたが、アンバーは迷わない。端の一体を鎖で捕らえ、残りの二体にぶつける形で行動阻害する。
 ヘンリエッタがそこへ全ての狗をぶつければ、三体は沈黙。拠点の奥部への道が拓けていた。

 そこは聖堂だった。
 否、嘗てはどこかの聖堂を象った建築だったのかも知れない。今や全てのレリーフが黒色に塗られ、血色をまぶされている。
「ここが最奥ね……」 
 怖気の立つ風景を、それでも美汐は素早く見渡す。
 ここにも信徒はいた。だがそのずっと奥に別の影が見える。あれこそが求めていたオブリビオンであろう。
 後方からはもう敵は攻めてこない。駐車場裏口側からの仲間が、回廊より後ろの敵を倒しながら合流していたためだ。
 残る敵はここにいる異形達。
 それでも、信徒はその戦意を変えることはなかった。
 ──神に近しきものは、降臨せしめた。
 ──なれば、後少しなのだ。
 ──神の復活を、終わらせはしない。
 狂信に満ちた言葉と共に、邪魔な猟兵を殺戮しようと迫ってくる。
 降市はやんわりと息をつくばかりだった。
「忘れられた神なんか、今更出て来てどうするん。そんなものも、君ら信奉者も、もう御役御免なんよ」
 やから、とっとと帰り──と。
 同時、宙に踊ったのは降市の投げ放った霊符だった。強力な呪のかかったそれは、信徒の腕、脚、顔に触れるたびにその力を削いでいく。
 残る信徒の全てが、こちらの命を絶とうとなだれ込む。だがハーバニーはぴょんぴょんと、軽く跳ぶように避けて彼らを近づけさせない。
「捕まりませんよぉ」
 高く跳ねて、信徒の頭上を過ぎてゆく。横にジャンプして、彼らの手を逃れゆく。
 戯れるように、翻弄するように。兎が駆けるが如き動きで、十を超える信徒を振り切っていた。
 逃げるばかりではなく、その手にはデリンジャー“ヴォーパル”を握っている。
 変哲の無い一丁ではあるが、手にしっくりと来る愛用の銃は、信徒にとっては死出の旅路への片道切符。
 マズルフラッシュが閃くと、仮面が割れ足元が穿たれ、信徒が斃れゆく。
 骸を乗り越えて別の個体がやってくるなら、弾丸を籠め直して銃身を向けた。
「そんなに欲しければ、新しい弾丸をプレゼントですぅ」
 同時、正確無比な射撃。風穴を開けられた信徒は自身の死を認識する間もなく、横倒れに絶えていった。
 徐々に聖堂の信徒も減り始める。
 ならばこそ躍起になる敵陣だったが、美汐は慌てず、常に敵の優位に立つよう、円を描くように斜め後方を取ってゆく。
 その手に握るのは鋭いダガー。黒色の空間でもきらりと反射する鋭利な刃を、視認も困難な速度で投擲して信徒の頭蓋を貫いた。
「まだまだ──止まらないわよ」
 惑う信徒達に、美汐は判断の暇すら与えない。素早くダガーを回収して、下がりながら再度発射。ゆるく廻りながら飛来した刃が、違いなく信徒の喉元を切り裂いた。
「もう少しですねぇ」
 左右に弾丸を撒きながら、ハーバニーは視線を奥へ。近場の敵を片付ければ、信徒の残りはそこを守る個体だけだった。
 彼らは後がないと知ってか、その場を動かない。ただ、抵抗をしようと救済の歌を試みようとしていた。
 けれど降市はそこにも既に護符を飛ばしている。
「喧しわ、黙っとき」
 宙で一枚一枚にばらけた符は、信徒達に纏わりつくように飛来。加護と呪により邪の存在の動きを封じ──全体を捕縛していた。
 七星七縛符。信徒達は藻掻きながらも、最早自由は残されていない。
 美汐がそこへ素早く疾駆。ダガーを奔らせて一体残らず討ち果たしていた。
 足を止め、その存在へ振り返る美汐。教団を教団足らしめた歪の存在がそこに佇んでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『灰霞の剣』ヴォル・ヴァ・ドーズ』

POW   :    焔を焚く者
真の姿を更に強化する。真の姿が、🔴の取得数に比例した大きさの【灰色の焔 】で覆われる。
SPD   :    灰霞の剣
【灰霞の剣 】が命中した対象を燃やす。放たれた【霧とも霞とも見える灰塵の】炎は、延焼分も含め自身が任意に消去可能。
WIZ   :    焔・灰・剣(BLAZE ASH BLADE)
【焔か灰か剣】が命中した対象を切断する。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は吾唐木・貫二です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●狂神
 それは旧き神だった。
 嘗ては如何な心を持っていたか、如何な言葉を持っていたか。今はただ、殺戮と破壊の心ばかりを残されてそこに在った。
 邪神を崇拝する者達によって、不完全な躰で蘇った──それは灰燼のような存在なのかも知れない。
 だからこそ、信徒達は縋ったのだろう。
 片鱗だけでも神の力の一端を有するほどに強く。歪められた破壊の性向は、彼らの想像する邪神像とよく似ていたのだから。
 その信徒達も消えた今、それに残されたのはただの殺戮の本能だけ。
 灰色の焔で躰を燃やしながら、狂える堕神は猟兵へと踏み寄ってきた。
草剪・ひかり
【POW判定】
ちょっと出足が遅れちゃったけど、真打は遅れて登場する、なんてね!
一流のプロレスラーは箒や梯子相手でも「魅せる闘い」ができるんだよ
もちろん、「壊す」しか能のない狂神が相手でも、ね!

強大な「神」の欠片の力をまともに食らえば、さすがの私も厳しいけど
それでも、何度倒されても立ち上がるよ
その上で、ドロップキックやボディアタック、キックのコンビネーションで敵の「核」を探したいね

とはいえ、標的の形からして「核がある」かどうかすら怪しいけど……
まずはどんなことでも敵の「情報」を知るところから始めなきゃ、ね

お色気描写、アドリブ連携なんかも大歓迎だよ!


ハーバニー・キーテセラ
アナタの存在はぁ、この世界にはもう重すぎるのですよぉ
アナタはアナタのあるべき世界へとぉ、戻ってくださいねぇ
御一人で戻れないならぁ、ご案内して差し上げますよぉ
ただしぃ、それは違う場所への旅立ちになるかもですけれどぉ

召喚しておいた擬獣召喚を合体(猫ベース)~。そして、合体した子と擬獣合身ですぅ
よいしょっと。と乗って、さぁ~、旧き神にはご退場願いましょうねぇ~
擬獣の機動力で攪乱翻弄してぇ~、私は強化された火力で攻撃に専念ですよぉ~
何を飛ばしてこようともぉ、全て躱しぃ、撃ち落としぃ、その奥にあるアナタを撃ち貫いて御覧に入れましょ~
ありったけの弾丸ですよぉ?
どうぞぉ、ご賞味あれ~


アンテロ・ヴィルスカ
ほお…神が人如きに歪められるのか
これは興味深い、人の思いも馬鹿には出来ないね?

【SPD】聖の檻を使用
相手のSPDで燃やされては堪らない
先ずは彼と距離をとって、短剣を操り攻撃を

幾つかの短剣には【迷彩】を使って死角から狙う

命中率が低いならば、双剣で正面から切り掛かって【おびき寄せ】てみようか

障害物や仲間との間の斜線など、使えるものは何でも使うよ
(アドリブ歓迎)


平賀・美汐
ようやく見つけたわ。あれが邪神ね。
なんか不完全な状態で蘇ったみたいだけど、それでも人の手には負えない代物だから、ここで叩かせてもらうわ。
「おいで、もう一人の私!」
ユーベルコード『コード・レプリカ』で【もう一人の私】よ呼び出して、二手に分かれてちょこまかと邪神の周りを動き回って、邪神の隙を作るわ。
隙ができたらダガーの一撃をお見舞いしてあげる。
でも油断は禁物よ。私は非力だし身体も大きくないから、深追いはせず離脱して、ヒットアンドアウェイに徹するわ。


忍冬・氷鷺
…信徒の悲願の形がこれとはな
これで不完全だと言うのだから末恐ろしいものだ
だが、やる事は何一つ変わらんさ
例え神の名を冠していても、貴様の存在は許されない
故に、俺は神殺しの剣となろう

仲間と協力し早期決戦の心構え
出し惜しみはしない
常に全身全霊の一撃を

氷竜嘯を使用し敵との間合いを一気に詰め、
複眼目掛け氷霧と縛霊手による攻撃を仕掛ける
【マヒ攻撃】で動きが鈍ってくれれば僥倖だがな
その後は、高速移動と【残像】を利用し敵からの攻撃をいなしつつ、
攻撃と回避を繰り返し、確実に傷を与えてゆく事を考え動く

仲間へ振るわれる灰燼の炎には、氷霧を放ち相殺出来ぬか試みよう
甘く見るなよ。炎で灼き尽くせる程、この氷は優しくない


ヘンリエッタ・モリアーティ
【POW】【アンバー・ホワイト(f08886)と行動】
――いけない!不完全な邪神だけれど、これを此処から出すわけにも、この子(アンバー)に近づけるわけにも……!
護らないと、私が、『私だけで』ッ……!アンバー、ごめんね――少し、痛いわよ。
しゃがみこんで、彼女を抱きしめて、幼い首筋に牙を立てる。私を、あなたのような――竜にさせて。
【刻印】が愛しい子の命で脈打つ、体が待ち望んでいた。【怪力】を振るう準備ができた、【疑似餌】を狂神に向けて――私の『UDC』を煽る!
触手とも液体ともつかないそれは腰から体を覆って、頭に竜の角を、大きな尾を、四肢を竜の爪に変えて、私に叫ばせた。
喰らいつくしてやるッ!!!


アンバー・ホワイト
‪ヘンリエッタ(f07026)と共に‬
‪見たことも無いおぞましい邪神の姿に一瞬の怯えと‬
‪それを抑えたのは倒さねばならないという使命感‬
‪一人の力では敵わないかもしれないが、今のわたしは独りではない‬
‪ヘンリエッタ、わたしの血、あげるから──あいつを倒そう!‬

‪吸血された後、星屑の鎖を使って、ヘンリエッタ達が攻撃しやすいよう敵の捕縛を試みる‬
‪手や足など動きを鈍らせることの出来る箇所を狙う‬
‪可能ならば鎖で繋がり合うまま勢いに任せて槍での攻撃を‬
‪ふたりで、こいつをズタズタにしてやろう!‬

‪傷付いた者が出た場合、陽だまりの欠片で回復‬
‪わたし達、そう簡単に倒れはしないから。そうだろう?‬


匕匸・々
最早信徒もおらず、残ったものは殺戮の心と不完全な躰。
これが旧き神の行き着く果てとは……
この気持ちが哀れなのか嫌悪なのかは分からない。
だが、正々堂々全力を以てお相手しよう。
俺に出来ることはただ、それだけ。

相手からの攻撃を避けられるようであれば【見切り】で避け、
不可能であれば【オーラ防御】で出来うる限り、負傷を防ぎたい。
僅かな間隙があればシーブズ・ギャンビットで素早く攻撃。
隙が大きければ一撃だけとは言わず
【2回攻撃】で皆の役に立てれば。と。

仲間が攻撃する際に【フェイント】で
俺が目眩ましになるのもありだろうか。


碧海・紗
殺戮と破壊の心ばかりの神様
考え方は十人十色と言うけれど
蘇ったその姿は、心は…あなたの望むものなのでしょうか?

灰燼のような姿からして
遠距離や広範囲の攻撃を仕掛けてきそうですね
動きを警戒しながら
近くに仲間の方がいらっしゃるのなら
協調して戦闘に挑みましょう
お役に立てるのでしたら、存分に。

鈴蘭の嵐は『首領となるオブリビオン』
そう、あなたのことですよ…神様。
一歩でも半径内に入ってきたら攻撃を
あなたはもう、神と呼べるものではない
ならばせめて、最期は美しく散りましょう?

もし蘇るのなら、自分の意思で どうぞ…――



 灰色が燻り、濁った靄が立つ。
 ぱきり、ぱきり。腐食した木が燃え落ちるような不快な音を鳴らせて、それは歩む。
 或いは這いずっているのだろうか。不定形に流動しながら、ただ瞳だけがぎょろりと鈍い灯を湛えていた。
 嘗ての神。
 邪の存在として再臨させられた姿。
「……信徒の悲願の形がこれとはな」
 氷鷺は仰ぐほどの大きさを持つそれを見据える。崇敬の対象というには、あまりに似つかわしくない姿を持った焔の塊を。
 美汐もツンとした顔で僅かにだけ眉根を寄せていた。
「あれでも邪神としては不完全な状態みたいだけど。……それでも、人の手に負えない代物には違いないわね」
「そうだな」
 末恐ろしいものだ、と。
 氷鷺は思いながら、それでも透徹な視線が変わることはなかった。
 焦げ付くだけの穢れた焔では、氷鷺を退かせるには足りない。目の前に討つ存在が居るのなら──やる事は何一つ変わらないのだから。
 氷鷺は立ち姿のままに、澄んだ冷気を渦巻かせていた。
「例え神の名を冠していても、貴様の存在は許されない。──故に、俺は神殺しの剣となろう」
 冷え冷えとした銀色の幻影が形を取っていくと、宙に舞う細かな灰すら凍りついて落ちてゆく。
 余りに冷たい幻、それが氷竜となって氷鷺の体を纏っていた。
 氷竜嘯(ヒョウリュウショウ)。
 瞬間、白煙を上げて氷鷺は床を蹴る。
 間合いは一気にゼロへ。力の出し惜しみはしない。空気すら凍りつくような音を立て、細氷煌めく氷霧を発射、複眼に零下の衝撃を浴びせてみせる。
 軋む音を上げて、その表面と周囲が凍り始めた。動作の停止にまでは至らないが、動きが僅かに鈍っていく。そこへ跳躍した氷鷺は、間を置かずに拳を叩き込んでいた。
 ごう、と焔が天井に上がり、熱気が空気中に暴れる。
 それは苦痛の証左か怒りの表現か。狂神は躰を波打たせて灰霞の剣を形作ると、それを投擲してきた。
 空を裂く灰色。だがそれを受け止めた者が居る。
 横っ飛びに滑り込んだ草剪・ひかり(次元を超えた絶対女王・f00837)。
 交差した腕で刃を弾くと、自身も衝撃を受けて後方に流される。それでもくるりと廻って無事に着地すると──灰交じりの風に美しい黒髪を靡かせて、狂神の前に立ちはだかっていた。
「ちょっと出足が遅れちゃったけど、真打は遅れて登場する──なんてね!」
 きゅ、とリングシューズで高摩擦の床を踏みしめて、臆さず笑みさえ浮かべてみせる。
 腰を僅かに落とし、緩く腕を前にした構えは攻めと守りを兼ねたもの。それが自らの肉体を武器とした“プロレスラー”の臨戦態勢。
「さあ、行くよ!」
 直進すると、放つのは裂帛のボディアタック。敵に触れるだけで肌が灼けつく感覚が奔るが、それはひかりが退く理由にはならない。狂神が火焔を上げれば風圧で吹き飛ばされる、が、ひかりは倒れてもすぐに立ち上がった。
「まだまだ──一流のプロレスラーは箒や梯子相手でも「魅せる闘い」ができるんだよ。もちろん、「壊す」しか能のない狂神が相手でも、ね!」
 ロープに揺り戻されて戻ってくるように。加速して跳ぶと、体を九十度横にして痛烈な蹴りを浴びせていた。
 敵が僅かに後退する様を見せれば、踏み込んで片脚でのキックを畳み掛ける。
 同時に、ただ攻めゆくだけでなく敵を常に観察していた。
(「……“核”みたいなものはなさそうかな」)
 この流動体に弱点があれば僥倖とも思ったが──異形として甦ったが故でもあろう、この焔全てが堕した神の一部だと推測された。
「それならそれで、やりようはあるよ!」
 と、揺蕩う灰色の一端を手で掴む。
 肌から煙が上がるのにも構わず、大男の腕を引くように力いっぱい敵を招き込む。そこへもう片腕を横にして突き出し、ラリアットを打ち込んでいた。
 焔の一端が僅かに千切れて、消えてゆく。
 それは微かな消耗でもあろう──しかし狂神は未だ言葉も発さなかった。
 垣間見えるのはどこまでも、殺意だけ。理知を削がれた神の姿は、どこか獣にも似ていた。
「ほお……神が人如きに、ここまで歪められるのか」
 これは興味深い──と。
 アンテロ・ヴィルスカ(白に鎮める・f03396)は飄々とした声音で見つめている。
「人の思いも馬鹿には出来ないね?」
 或いはヤドリガミの身でもあるからこそ、その業に少々感心も浮かべてしまう。
 同時に、その歪みを正すことはもう叶わぬだろうとも直感している。だから、自身の周囲に無数の刃を顕現していた。
 それはロザリオを短剣状に変じさせ複製したもの。アンテロは間合いを取った位置から手を払う動作で──その全てを狂神へ飛翔させた。
 聖の檻(ヒジリノオリ)。高速で突き刺さる刃は、焔をも抉る威力を誇る。
 狂神は後続の刃を熱波で防ごうとするが、アンテロは更に別方向から、死角に割り込む刃を放っていた。
「甘いよ」
 声音はどこまでも、ゆるりとしながら。
 背後から襲う短剣に狂神の動作が一瞬遅れれば、後続の刃も全て刺さっていく。狂神も剣を形成して撃ってくるが、距離を保つアンテロはそれをすんでで避けていた。
(「とはいえ──何度も同じ手は通用しないかな」)
 けれどそこに焦りを抱くアンテロではない。フルアーマーの下の表情は窺えない、けれど立ち居、そして踏み込みには惑う様子は欠片もなかった。
 手に握るのは十字架を模した双剣だ。
 一転して接近し斬撃を加えると、注意を引きながら柱の陰に回る。敵が刃を放つために角度をずらした一瞬を好機に変えて、再び手を突き出していた。
「これでもう一回くらいは苦しんでくれるかな」
 創った短剣の雨を、降らせてゆく。
 鋭利な切先が焔の表皮を打ち破る。重ねられる衝撃が複眼を穿つ。狂神は、初めて苦渋の鳴動を零しながら倒れてゆく。

 炎が湿っていた。
 溶けた灰が泡立つ音が耳障りで、何より血のにおいが鼻をつく。
 狂神はゆらりと立ち上がっていた。
 苦悶を押し殺したのではない。真の姿を解放し、穢れた活力を得ていたのだ。
 その姿は変わらぬ焔の塊だったが──血を無限に滴らせた、醜い流動体でもあった。
 刃は誰かを刺したもの。
 眼は誰かを抉ったもの。
 嘗ての神を邪神足らしめたのは、或いは悍ましい“儀式”だったのかも知れない。灰色の焔は、捧げられた血を吸って、吸って、濁りきった果ての色だったのだ。
 ──いけない!
 ヘンリエッタは瞳を僅かに震わせて、その悍ましさを本能的に感じ取っていた。
 あれは、邪神としては不完全なのだろう。だがあれを此処から出せばどうなるか、そして──。
(「この子に近づけさせたら……!」)
 見つめたのはアンバーの姿だった。
「あれは……」
 アンバーは呟き、直立して狂神を見上げている。
 見たこともない邪の権化。
 未だ幼くて、やさしいものが好きで、世界を知らない。そんな竜の少女に、それは確かに一瞬の怯えを植え付けていた。
 小さな眉が少しだけ下がる。それを見つけたヘンリエッタはきゅっと唇を引き結んだ。
 護らないといけない。
(「私が、『私だけで』ッ……!」)
 けれど同時に、アンバーも自分の手を少しだけ握りしめていた。確かにこわい気持ちもあったけれど、一瞬後にはそれを強い使命感が抑えていたのだ。
 倒さねばならない、と。
 それは多分、少しだけ色合いが違ってもヘンリエッタと同じ気持ち。
 だからアンバーは自然と、ヘンリエッタへ視線を合わせていた。
 一人の力では敵わないかもしれない。けれど今の自分は独りじゃないから。
「ヘンリエッタ、わたしの血、あげるから──あいつを倒そう!」
「アンバー……」
 ヘンリエッタはほんの一瞬、目を見開く。そしてすぐにうんと頷いた。
 かつりと床を踏んで一歩近づき、しゃがみこんで少女を抱きしめる。それはヘンリエッタが強い力を得るための方法だ。
「ごめんね──少し、痛いわよ」
 そしてやさしい声と共に、幼い首筋に牙を立てた。
 私を、あなたのような──竜にさせて。
 ぷつりと皮膚が破けて、赤い、紅い血が伝う。それが流れ落ちると、ヘンリエッタの中で鼓動が強まった。
 刻印が愛しい子の命で脈打つ。体が待ち望んでいた。
 血滴が滾る熱量を与えて、ヘンリエッタの腰から触手とも液体ともつかない蠢きを飛び出させる。それが体の全体を覆って──竜の角となり、大きな尾となり、四肢を竜の爪に変えた。
 原初の竜(カニバル・ライジング)。
 その怪力を振るう準備ができた。竜が吼えるように、ヘンリエッタは叫んだ。
『喰らいつくしてやるッ!!』
 床板が弾け飛ぶほど、強烈な踏み込みでヘンリエッタは跳ぶ。
 狂神の視線は横にずれていた。ヘンリエッタが自らの血肉を入れたカプセルを、疑似餌として投げていたのだ。
 直後、無防備な狂神はヘンリエッタの竜爪に躰を貫かれる。
 響くのは呪いの賛美歌のような、濁った肉声による悲鳴。狂神は反撃に刃で薙ごうとしてきたが──その部位に宵色の耀が伸びた。
 アンバーの奔らせる夜空のオーラ。流星が昏き闇夜を切り開くように、灰の焔に突き刺さったそれは美しき鎖へと固まりゆく。
 それを横方向へ弓なりに撓らせることで、狂神の剣を払い飛ばしていた。
「ヘンリエッタ、今だ!」
「ええ……!」
 言葉少なでも意志は深く通じる。腕を引き抜いたヘンリエッタは、その反動を活かして逆の腕で打突。眼を複数潰してみせていた。
 狂神がわなないて間合いを取ろうとすれば、それを許さぬ硝子の円弧。アンバーが伸ばした鎖が宙を翔けて、焔の体の中心に巻き付いている。
 流体を引き摺り込む事はできずとも、アンバー自身が距離を詰めることは出来る。
 鎖を引く力と跳躍力で狂神へ迫る少女は、臆さずに、真っ直ぐに、槍を正面から突き刺していた。
 暴れる焔が鱗に触れても、漆黒が灰色に負けはしない。熱気はほんの少しだけ、噛み合わせる歯に力を込めて耐え抜いて。その焔も矛先で切り落としてみせると、もう一人の竜の隣へ降り立っていた。
「やるぞ。ふたりで、こいつをズタズタにしてやろう!」
「もちろんよ……!」
 強く頷くヘンリエッタが翔べば、アンバーは同時に逆方向へ。尾を交差させて狂神の左右を取ると、猛烈な殴打と刺突を絡み合わせて焔を削り取っていく。
 アンバーに炎が放たれれば──二度とさせまいと、ヘンリエッタがそれを拳で殴り落としてみせる。
 何よりも、護ると決めたから。
「ありがとう、ヘンリエッタ!」
 アンバーは返しながら円周状に疾駆。鎖で繋いだ狂神の動きを制しながら勢いを付け、螺旋を描くように跳躍して敵の天頂へ昇った。
 刹那、一撃。直下へ槍を突き下ろし、狂神を地に叩き伏せていく。

 黒色の床がちりちりと燃え、焦げる匂いが立つ。
 まるで蟲が這うように狂神は蠢いていた。
 未だ死には至らない。その分傷による苦痛が一層殺意を深めさせ、声にならぬ轟きを零させている。
 傷つくほどに穢れゆく存在。
「これが旧き神の行き着く果てとは……」
 々はその瞳に、ゆらゆらと揺れる灰色を映していた。
 嘗てはどんな姿だったのか、焔と血に塗れた見目ではもう想像すら及ばない。
 うねる躰で床を咬んで進む狂神。その姿に、ハーバニーはしかし恐怖も垣間見せない。やれと肩を竦めると、諌めるように口を開いた。
「アナタの存在はぁ、この世界にはもう重すぎるのですよぉ。アナタはアナタのあるべき世界へとぉ、戻るべきではないですかぁ」
 唸りが教会に響き渡る。
 焔の返す声だ。殺意を以て全てを否定する、狂神に唯一許された手段。ハーバニーはそうですかぁ、と変わらぬ口調だった。
「御一人で戻れないならぁ、ご案内して差し上げますよぉ。──ただしぃ、それは違う場所への旅立ちになるかもですけれどぉ」
 かちりと手に携えるのはヴォーパルだ。
 々も静かに短剣の柄を握りしめている。
 狂ってしまった神に、かけるべき言葉を々は持ち得なかった。
 この気持ちが哀れなのか嫌悪なのかは分からない。
「ならばこそ最期まで──正々堂々全力を以てお相手しよう」
 自分に出来ることはただ、それだけなのだから。
 狂神は上体を振り回して、焔の刃を飛ばしてくる。々は前方へと駆けながらそれを見切り、僅かの動作だけで躱してみせた。
 一瞬の間も置かず、敵の攻撃直後の隙へ刃を投げ放つ。撃ち落とす暇も、回避する時間も無い狂神はそれを正面より受ける他ない。
 抉る短剣の切れ味に、焔が明滅する。々は攻撃の手を緩めず、素早くもう一振りの刃を構えていた。
 その間隙は、敵が反撃の動作を取るよりも短い。熱波を切り裂いて飛来した短剣は連続して同じ箇所を穿ち、狂神に深々とした傷を与えていた。
「今の内に、次手の用意を」
「了解ですぅ」
 々が攻めを継続する間に、その背後でハーバニーは召喚していた擬獣──兎と猫を一堂に会させていた。
「さぁ、集まってくださいねぇ。そして合体ですよぉ~」
 声に応じて塊になる動物達は、光を伴って合体。猫をベースにした為であろう、一匹の大きな猫の姿に変貌していた。
「行きますよぉ、擬獣合身ですぅ……よいしょっと」
 ハーバニーは言いながらよじ登るように騎乗する。擬獣合身(フュージョン・ツマルトコロ・ノッタダケ)──ただ、事は単なる騎乗には収まらない。
 互いの戦闘力を高めるその力は、目にも留まらぬ速度を擬獣に与えていた。
 高速で敵の眼前に迫ると、ハーバニーは銃弾を見舞う。狂神が反撃に刃を発射してくれば、速度を生かして回避しつつ、右に左に跳んで撹乱。敵の狙いが一瞬惑ったところで、更に射撃を加えていた。
 ハーバニーの火力自体も大きく強化されているが故に、一発一発が鮮烈なまでに深く焔を穿つ。狙いが正確無比であるが為に、敵の刃を躱せない位置取りであっても上手く撃ち落とすことが出来ていた。 
 大きく揺らめく炎は、狂神にも動揺が生まれたからであろうか。その巨影は一度ハーバニーと逆の方向を取るように距離を開け始める。
 が、奔る美汐が敵に守りに入らせない。
「逃げることも──休憩もさせないわ。ここで確実に、叩かせて貰うんだから」
 ダガーを胸の前で構えると、狂神を追い詰めるように移動しながら声音を響かせた。
「おいで、もう一人の私!」
 同時、床を疾走する美汐に並ぶ影が顕れる。
 それは美汐と全く同じ見目をした姿──コード・レプリカ。視線を合わせた二人の美汐は以心伝心、敵を挟撃する位置取りに移動していた。
 狂神の狙いが短時間、ぶれる。その一瞬に跳んだ美汐は、懐へ入りこんで横一線の斬撃を刻み込んでいた。
 鳴動する狂神が炎を撃ち下ろそうとすれば、その背後からもう一人の美汐が襲撃。背を捌くように縦一閃を喰らわせて、体力を消耗させていく。
 その間に本体である美汐は後ろに跳んでいた。
 元より非力を自覚している為に、余計な深追いをするつもりはない。ヒットアンドアウェイを繰り返して相手の命を少しずつ、確実に切り落としていく。
 狂神は放射状に焔を放つことで、二人の美汐を撃退しようと目論んだ、が──それが光を纏った々に阻まれる。
 美しく煌めくオーラを盾にして、自身を包み込むことで防御力を高めていたのだ。
「攻撃を、頼む」
「任せてくださいねぇ」
 その背から飛び出したハーバニーが、弾丸で敵の眼を全て貫いて散らす。二人の視線を受けて、美汐も宙へ跳んだ。
「とびきりの、一撃よ」
 スピードを乗せたダガーの刺突。二人の美汐で繰り出した衝撃は焔の塊をも大きく吹き飛ばしてゆく。

 倒れた狂神は、弱まる焔の中に怨嗟の音を上げていた。
 まるで数多の人間の嘆きを重ねたような、不安定な慟哭。邪神としてすら存在を全う出来ぬ命は、猟兵達の攻撃によって瓦解を始めつつあった。
 それでも、狂神はただ殺戮の心だけを動力に、灰燼の手足で這いつくばる。
 愉しさもなく。
 哀しさもなく。
 そこにあるのはただ、破壊の為の全て。
 だから──碧海・紗(闇雲・f04532)はその灰色を、黒の瞳でじっと見つめてしまう。
 ──考え方は十人十色と言うけれど。
「殺戮と破壊の心ばかりの神様。蘇ったその姿は、心は……あなたの望むものなのでしょうか?」
 純な声音は、それでも声が返らないことを知っている。
 この神様の答えと言えば、目の前のものを壊して消してしまうこと、それだけなのだから。
 死を前にしても、狂神の炎は吹き付ける程の熱風を生んでいた。それに黒い翼が煽られて、髪のクレマチスが揺れる。
 それでも紗が退く素振りを見せないから──狂神は流動して焔を放とうとしていた。
 ふわりと翼を広げた紗は、静謐の美しさを持っている。
 けれど同時に、その翼はどこまでも自由。瞬間、空に踊ったかと思うと、曲線を描いてその焔を回避してみせる。
 狂神は躍起になったように炎を連射した。けれど今度は、それらが到達する前に氷片に飲み込まれて消えていく。
 氷鷺が広域の氷霧を昇らせて、その全てを相殺していたのだ。
「甘く見るなよ。炎で灼き尽くせる程、この氷は優しくない」
「ありがとう、ございますね……」
「こちらも攻撃の機会を作ってもらった」
 応える氷鷺は、狂神が気づいて躰を向けたときには既に第二波を放っている。刃の鋭さと冷たさを同居させた霧は、弱った狂神の焔を凍らせて、刻んでいった。
 狂神はそれでも氷を融解させて、接近戦へ持ち込もうと迫りくる。
 剛烈な炎の鞭を受けたひかりは、しかしただでは終わらない。腕ひしぎの形に持ち込むと、力点に強烈な膂力を掛けてその焔を引き千切っていた。
「敵も苦しそうだよ!」
「なら、ここらで連撃といこう」
 ひかりに呼応するように、アンテロは短剣を疾風の如き速度で飛ばす。
 半身を貫かれた狂神は、一層狂乱に喘いで焔を四方へばらまいた。だが々は自身の防御を高めて耐え抜く。それでも傷が残れば、アンバーが胸元からあたたかな光──陽だまりの欠片(ヤサシイセカイ)を注いでいた。やさしい願いが、痛みを消してゆく。
「わたし達、そう簡単に倒れはしないから。そうだろう?」
「ああ。ありがとう」
 頷く々はダガーを放って、近付こうとしていた狂神の足元を縫い付けていく。
 そこへ紗は手を伸ばし、宙に蕾を生み出していた。
 美しく、白く開いていくのは鈴蘭だ。
 空中を満たす可憐な花嵐は、狙った“敵”を違わず攻撃する。それは邪教の徒の首領であり、倒すべき異形である──オブリビオン。
「そう、あなたのことですよ……神様」
 そっと声音を向けると、花を刃の吹雪にするように踊らせて、狂神を刻んでいく。
「あなたはもう、神と呼べるものではない。……ならばせめて、最期は美しく散りましょう?」
 もし蘇るのなら、自分の意思でどうぞ──と。“自由”を失った神へ、静かな言葉を贈る。
 狂神は眠りにつくのを抵抗するように、ゆらゆらと揺らめく。
 その躰をアンバーが鎖で押さえれば、ヘンリエッタの打撃が半身を抉り取っていた。
「お願い、します……!」
「それじゃあ、さっさとやっちゃいましょうかねぇ~」
 後を託す言葉に応え、銃口を向けるのはハーバニー。連続で弾丸を放ち、灰色の焔を灰そのものへと散らしていく。
「ありったけの弾丸ですよぉ? どうぞぉ、ご賞味あれ~」
「これで、終わりよ」
 同時に美汐がダガーを縦横に滑らせれば、狂神は残滓すら残らない。肌を刺す熱風だけが暫し残った後、邪教の聖堂に静けさの帳が降りた。

「完全に、消滅したみたいね」
 美汐が周囲を眺め、残党がいないことも確認する。
 皆はそこでようやく勝利の息をついた。
 教団は壊滅だ。
 跡に残った穢れた聖堂は、撤去されるか、埋められるか──二度と、使われる事はあるまい。
「邪神を願ったものと、邪神として復活したもの、か」
 氷鷺は願いというものの業を、ほんの少し意識する。だがそれも今は夢の跡だ。
「さぁ、お仕事は完了ですからぁ、帰りましょうかぁ」
 ハーバニーの声を機に皆は歩を踏み出す。
 地上の夕闇でさえも、とても眩しく思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『縁日』

POW   :    焼きそばや焼きとうもろこしを食べる

SPD   :    金魚すくいや射的で遊ぶ

WIZ   :    のんびり過ごす

👑11
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●憩いへ
 猟兵達の成果はすぐにUDC組織に伝わった。
 現場の情報統制や人払いを行っていた組織のメンバーは、丁寧な礼を猟兵達に述べる。
 この街の近辺も暫くは暗躍するもの無く平和に過ごせるだろう、と。
 猟兵達も穏やかなひとときを送れるだろう、と。
 早速、というわけではないけれど──彼らは猟兵達に、近くで縁日が開かれるのだと教えてくれた。
 ぜひそこで息抜きをしてほしい──UDCとの戦いの疲れを癒やすためにもと。
 そこへ向かうと、ぽんぽんと軽やかな囃子の音が聞こえてきた。
 近づけば綺麗なぼんぼりが光って、提灯が飾られて。
 賑やかな呼び声は、沢山の露店だ。
 なんでも、色々な食べ物が売っているらしい。遊んでいける場所も沢山ある。その証拠にほら、楽しそうな子供や大人が行き交い始めているではないか。
 祭りの空気を感じながら、ゆっくり過ごすのもいいだろう。
 始まったばかりだから、たっぷり楽しんでいくのもいい。
 戦いは終わった。今からは日常の時間。
 空がだんだん夜になって──落日から、楽しみは始まる。
 猟兵達はそんな中へ、歩んでいった。
ハーバニー・キーテセラ
一件落着。良き哉良き哉ぁ~
……さて、猟兵としての私も今日は店じまい
ここからはオフモード
つまり、バニーさんな格好もここまで
折角ですので、この世界で目立たない程度の服装に着替え、縁日巡りといきましょうか

射的に金魚すくいにと、出店制覇も面白そうですよね
私の早業とスナイパーな技能が光りますよ?
商品全部掻っ攫うぐらいの勢いでいきましょう
……なんて、全部貰ってしまうと他の人も楽しめませんよね
遊ぶ中で全部掬ったり撃ち落としたりはしても、実際に貰うのは1匹だったり、商品1個だったりに留めます
兎か猫のぬいぐるみなんてあれば、貰うにはいいかもですね
衆目集め、お祭りの賑わいを高める一助になれば幸いというものです



 空の明度が落ちてくると、遠くからでも道々の灯りがよく見える。
 その明るさに、人の平和な営みを感じることが出来るから──ハーバニーは、ゆるゆるとした笑みでそれを見つめていた。
「一件落着。良き哉良き哉ぁ~」
 兎耳をぴこり動かして、声音は少々上機嫌でもあったろうか。
 尤も、猟兵としてのハーバニーはここで店じまい。
 即ち営業モードは終わって、垣間見せるのはオフモードの姿。着替えに向かって縁日の中にやってきたハーバニーは今、派手なところのないワンピース姿になっていた。
「──さて、幾つか巡ってみましょうか」
 提灯の明かりに銀髪が少し煌めいて、歩く姿は清楚な可憐さも持ち合わせている。同時に瞳は興味深そうに、立ち並ぶ露店に注がれていた。
 そんな中で見つけたのは、射的の二文字。
 どの世界でも銃というものは人を惹き付けるのだろうか? 子供だけでなく大人も交じり、多くの来客で賑わっていた。
「面白そうですね」
 並べられた景品とコルク銃を見るとハーバニーもまた気を惹かれる。
 元より日常的に引き金に触れる身なれば──腕が鳴るとまでは行かずとも。やってみましょうと決断するのに、時間はかからなかった。
 硬化を渡してライフル型のそれを受け取ると、成る程と手触りを確かめてみたりする。
 店主の男性が棚に肩肘をついて話しかけてきた。
「何か、狙いはあるかい?」
「狙いですか。それが的であるなら、全てでしょうか」
 と、ハーバニーが引き金を引いたのはその瞬間のことであった。
 ぽん、と空気が弾ける音がして弾が飛ぶ。ぱたぱたと落ちるのは複数の景品。中には高価なゲームソフトまで含まれていて……店主が目を剥くのが横目に見えた。
「あっ……ウチの目玉が!?」
「私の早業であれば、このくらい」
 弾込めから発射まで、まるで瞬く間。ポケットティッシュから駄菓子セットまで、ぱしんぱしんと違わぬ精度で撃ち落とす。
 拍手が上がるのは、いつしか人だかりが出来ていたからだ。
 元よりハーバニーは、こうして賑わいの一助になれればと思って始めてもいる。
 だから別段、景品が目当てではなく。最終的に全ての品に命中させはしたものの、貰ったのは兎のぬいぐるみ一つであった。
「中々可愛いですね」
 勿論、それにはそれで満足しつつ。店主の礼と子供達の歓声を背に、ハーバニーは頷くと歩み出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

平賀・美汐
もう子供じゃないんだから、お祭りにはしゃいだりしないわ。
で、でも、折角開いてくれたんだし、浴衣でお邪魔してみようかしら。
あっ、射的がある! でもだめだめ私は大人なんだから。でも、ちょっとだけ・・・。
金魚すくいもあるじゃない! 私の腕前を見せてあげるわ! 上手くすくえたら飼ってあげましょ。
(そうやって歳相応に縁日をエンジョイしてしまいます)
あー、楽しかったわ。たまにはこういうのも、いいのかもね。



 からころと下駄が小気味よく鳴る。
 行き交う人々を見やりつつ、美汐も祭りの中に歩んできていた。
 宵の始めに開かれる、賑やかな時間。胸に浮き立つものを感じて、美汐は店々を眺めてみたりする。
 もう子供じゃないんだから、お祭りにはしゃいだりしない──なんて思ってはいたけれど。
「ま、まあ、折角開いてくれたんだしね! とりあえず見て回りましょう」
 少女の素直な心は、やっぱり少しそわそわしてしまう。だから可愛らしい浴衣姿で、人波に交じり始めていた。
「あっ、射的がある! ……って、だめだめ、私は大人なんだから」
 のぼりを見つけつつも首を振る。けれど同年代の少年らが楽しんでいるのを見ると、自然と足が向いてしまった。
「ちょっとだけなら……」
 と、お金を払ってコルク銃を手に取り、ぽぽんと撃ってみる。
 試しに狙ったお菓子は、思いのほかしっかりと固定されていて落ちなかったけれど……だからこそ次はしかと撃ち落とそうと一生懸命になって、見事に二射目で手に入れた。
 そうなればいつしか夢中になって、複数の景品を手中にする。やったと笑顔になれば、近くに大きな水槽のある店を見つけて目を煌めかせた。
「わぁ、金魚すくいもあるじゃない!」
 張られた水の中で悠々と泳ぐ綺麗な金魚達。
 黒の出目金は、捕まえられるものなら、とでも言うように大きな体で回遊している。
 それを見ればやらないわけにはいかない。美汐は早速ポイを握って、しゃがみこんでいた。
「私の腕前を見せてあげるわ! えい!」
 ぴちゃん。和紙の部分を斜めに水に入れ、まずはぼうっとしていた小さな数匹をすくい上げてみせる。
 宙に踊って桶に入った金魚の姿に、子供達もおおっと注目した。
「さて、問題はこの一匹ね──」
 じいっと見つめるのはやはり、一際大きな出目金。子分を従えるように小赤を周りに泳がせて、自身も中々のスピードで移動している。
 けれど美汐も諦めずトライした。二度ほど逃げられつつ、ポイが半ば破けてしまった状態で……起死回生の反撃。枠も使って上手く捕まえ、見事ビニール袋で持ち帰ることに成功したのだった。
「家で飼ってあげましょ」
 道を歩む美汐は笑顔だった。
 ああ楽しかった、と。
「たまにはこういうのも、いいのかもね」
 今なら迷わずそう思うことが出来る。それは紛れもなく、歳相応の少女の姿であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ヘンリエッタ・モリアーティ
アンバー(f08886)と行動
日が暮れる世界に安堵して、ああ、世界は救われたのだから、もう私たちは必要ない――と思っていたのだけれど。
この子が縁日に興味があったから、ついつい、ついてきてしまった。
ルールとかはないけれど、ええと……。
当たり前のように繋がれた手のぬくもりが、私にはとても――とても、新鮮で。
迷子にならないよう、優しく、固く握る。
ちゃんとお金を払うから、待ってね。と自然に笑えていたのだと思う。
一生懸命、食べたことのないものを食べるこの子が、愛しくてしょうがない。――守れてよかった、この子も、この世界も。
え?わ、私?私は大丈夫、だから……ううん、じゃあ、ひとくち……。


アンバー・ホワイト
‪ヘンリエッタ(f07026)と
太陽に、さよならの時間だ‬
伸びて消えた影を見送って
並ぶ身長差に、自然と笑み零れて
‪さあ、縁日を楽しもう!‬

‪……で、縁日ってなんだ!ルールとかあるのか!?‬
‪あっちこっちと見て回りながら自然とヘンリエッタの手を握っている‬
‪ふふ、縁日、ひとがいっばい。たのしいな!‬
‪わたしはな、あの…や、き、と、う、も、ろ、こ、し!気になっているぞ!‬
‪わぁ、買ってくれるのか?ありがとう!‬
‪えっと、こう…?‬
‪両手で持ってはぐはぐと食べ始め、夢中になって頬までベタベタ‬
‪焼きとうもろこし!美味いな!むずかしいな!‬
‪ヘンリエッタもほら!‬
‪齧ってみろと、口元に差し出して‬‬



 時刻は夜に移り変わろうとしていた。
 一秒一秒が過ぎるごとに光が街並みのむこうに沈んでいって、とても速いスピードで影が伸びていく。
 去ってゆく夕日と似た綺麗な瞳で、アンバーはそれを見つめていた。
「太陽に、さよならの時間だ」
「ええ。無事に終わることが出来て、よかった」
 この世界が日暮れを迎えられたことに、ヘンリエッタも安堵する。そして少女と並びあって、夜色を帯び始める景色を目にしていた。
 背の違った二つの影法師がぐんぐんと成長して、長さに差がなくなったように見えたところで他の影にぶつかって消えてゆく。
 けれど隣り合う二人自身には相変わらず身長差があるから、アンバーは自然と笑みを零した。視線を降ろすヘンリエッタの瞳が、とても優しかったから。
 こつっ、とアンバーは朗らかな足音を立てる。
「さあ、縁日を楽しもう!」
「あっ、う、うん……」
 小さく頷きながら、しかしヘンリエッタは始め遠慮がちだった。
 元々すぐに帰還してもいいと思っていたのだ。世界は救われたのだから──もう私たちは必要ないのだろうと。
 それでもここに居るのは、何よりアンバーが縁日に興味を示したから。期待の表情を宿すこの少女を見ているうちに、ついつい、ついてきてしまっていたのだ。
 流れる人波に、愉快げな人々。
 ヘンリエッタはその光景に一瞬、身の振り方が判らない心持ちでもある。
 けれどその手にふわっと温度が触れていた。
「……で、縁日ってなんだ! ルールとかあるのか!?」
 煌めく目線を右に左にやりながら、自然と手を握ってきていたアンバーだ。
 籠の中から飛び出た娘は、見るもの全てが珍しいその世界で、少女らしい爛漫さを見せている。
「ルールとかはないけれど、ええと……」
 ヘンリエッタは応えながら目を落とす。
 当たり前のように繋がれた手のぬくもり。それが自分にはとても──とても、新鮮で。
 だからこの子が決して迷子にならないようにと、優しく、固く握り返した。そして自分も見渡しながら言う。
「気に入ったものがあれば、それを楽しむの。食べて、遊んで……ここにいる沢山の人がそうしているみたいに。そういう、場所」
「そうか、ならわたしは、あれだ!」 
 早速というように、アンバーは手を引いた。
 ぴしりと指すそれは、毛筆書体で書かれたのぼり。香ばしい匂いが立ち、じゅうと響く音が聞こえる屋台。
「あの……や、き、と、う、も、ろ、こ、し! 気になっているぞ!」
「うん。それじゃあ……ちゃんとお金を払うから、待ってね」
 そう目を向けるヘンリエッタは多分、自然に笑えていたのだろう。笑みを返すようにアンバーはぱぁっと顔を明るくしていた。
「わぁ、買ってくれるのか? ありがとう!」
「ええ──はい。両端を持って横にして、食べてね」
 ヘンリエッタは一本だけ買って渡してあげた。受け取ったアンバーは、慣れぬ様子ながらいそいそと顔を近づける。
「えっと、こう……?」
 かぷりと歯を立てた。
 すると目が少しぱちりと開き、尾がちょっとだけ揺れる。
 ぷちっと粒がはじけて甘さが溢れ、焦げた醤油とよく合って……端的に、とても美味しい。
 はぐはぐと食べ始めたアンバーは、そのうちにかぷかぷもぐもぐ。夢中になって頬までべたべたになるくらいだった。
 ヘンリエッタはそれが微笑ましくて、少し拭ってあげたりする。アンバーはまたすぐに口の周りにいっぱい付けてしまうけど、それでも満足そうだった。
「焼きとうもろこし! 美味いな! むずかしいな!」
「おいしいのなら、何より」
 ヘンリエッタは柔らかな声音で、見つめる。一生懸命に食べたことのないものを食べるアンバーが、愛しくてしょうがなかった。
 ──守れてよかった、この子も、この世界も。
 安らかな心地でいると、ついっと口の目の前にとうもろこしが差し出される。
「ヘンリエッタもほら! 齧ってみろ」
「え? わ、私? 私は大丈夫、だから……」
「でも美味いぞ?」
 アンバーはふふっと可愛らしい笑みを浮かべていた。そうなるとヘンリエッタは否とも言えなくて。
「ううん、じゃあ、ひとくち……」
 はむりと齧ってみると、疲労した体に栄養が染み込んで──確かに美味。
 ちらと見ると、感動を共有したい気持ちの竜少女が、わくわくと見つめている。
「うん。おいしいわ」
 そう応えると、アンバーは楽しげな面持ちを返す。じゃあ次は向こうだ、と、ヘンリエッタを引っ張って次の店に向かうのだった。
 ヘンリエッタも、今になって自身の肉体の空腹を自覚する思い。ほら、と口に持ってこられたたい焼きを、反射的にあむっと受け止めていた。
「これも甘くって、いいぞ!」
「はむ……ん、そう、ね」
 控えめにもぐもぐしたヘンリエッタだけど、それもまた美味しくて少しずつ食が進む。
 熱いたい焼きを頑張って頬張るアンバーを見ていると、あたたかくて楽しい気持ちになっていた。
 そんなヘンリエッタの姿に、アンバーも明るい気持ちだ。周りを見れば、人々もみんな笑顔で賑やかなのだから。
「ふふ、縁日、ひとがいっばい。たのしいな!」
 次はどこに行こうと、迷うのもまた一興。
 わたあめがあれば食べさせあいをしてみたり、金魚すくいがあれば苦闘してみたり──宵の時間は続いていく。
 灯りの横を歩むと、夜でも新しい影が出来る。
 長さの違う二つの影法師。道に伸びるそれが、どこか楽しげな歩き姿を祭りの中に映し出していた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

星海・耀
へー、UDC組織ってそんな事までしてくれんのねー。気が利くじゃーん。
ところでUDCって何の略だっけ?なんか聞いた気がするけど忘れちった。まーいっかー。

それにしても、縁日かー。なーんかサムパ思い出すよねー。あ、サムライエンパイアね。
まー出身ってわけじゃないってゆーか、どこ出身かよくわかんないんだけど。
あっちのお祭りとか、こんな感じだよね?提灯とか似てるし。
こーゆー似てる文化があるって不思議だよねー。昔からグリモアワープみたいな事してたのかな?

やっぱりこーゆーとこって、親子連れなんかも多いよね。
…家族っていーよねー。なんか、暖かくて。
あはは、たまにはセンチしたら疲れちった。たこ焼きとか無いかなー。



 挨拶して去っていくUDC組織のメンバーへ、耀はひらひらと手を振って見送っていた。
「それにしても、UDC組織って色々してくれんのねー」
 人払いに情報統制、目に見えぬところで支援してくれていた人々の存在を、実感するようにひとりごちる。
 それからふと口元に指を当てた。
「ところでUDCって何の略だっけ? ……なんか聞いた気がするけど忘れちった」
 んー、と首を傾げつつも、すぐ後にはまーいっかー、と。変わらぬ表情のままに、耀は歩み出す。
 進む方向には灯りと屋台のいい匂い。
 帰りしなでもあるし、折角だからと自分も縁日に寄ることにしたのだった。
 浴衣姿で駆けていく子供達。出店のゲームでに上がる歓声に、行き交う笑顔の人々。
 それらを横目にしつつ耀はとことこと散策していく。
「なーんかサムパ思い出すよねー、この景色ー」
 別段、耀はサムライエンパイアの出身というわけではない。それを言うなら、自身の出身がどこかもよく分からないのが本音だ。
 ただ、屋台や提灯を見ていると和の風景が想起される。
「こーゆー似てる文化があるって不思議だよねー。昔からグリモアワープみたいな事してたのかな?」
 呟きつつ歩みを続けると、沢山の人とすれ違う。
 友人連れや男女の組み合わせもよく見えるけれど……一番耀の目についたのは、親子連れだった。
「やっぱりこーゆーとこだと、多いよね」
 店の食べ物をねだる少年に、そのくらいにしておきなさいとたしなめる母。まあこういう日だから、と宥める父親──何でも無い風景。
 けれどそれが何だか気になって。
「……家族っていーよねー。なんか、暖かくて」
 自分は、と少しだけ考えてから首を振る。
 小さな笑みを零した。
「あはは、たまにセンチしたら疲れちった。たこ焼きとか無いかなー」
 食べ物はよりどりみどりと言っていい縁日、探せばそれはすぐに見つかった。
 早速買って、石段に腰掛ける。
 ソースとマヨネーズのいい香りが漂って、鰹節が湯気に踊っていた。爪楊枝の刺さったひとつを食べると、熱々の美味さが口に広がる。
「うん、おいしいねー」
 もう少しだけ回っていこうかな、と。ゆるゆるとした仕草で立ち上がると、耀は歩みを再開していった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

忍冬・氷鷺
祭り囃子、人々の漏らす嬉々の声、暮れゆく空に灯る提灯
その賑わいの音色達は優しい記憶を蘇らせる

まだ年端もいかぬ幼子だった頃
焔の色持つ少女と僅かな時を共にした
優しくあたたかなその手に引かれ
そう確か、祭にも一度だけ

目に映る全てが真新しく新鮮で
けれど同時に人目が恐ろしいと漏らせば
揃いの面を笑って差し出された
「自分もおまけにみんなも一緒だから怖くない!」と

…思えばあの頃からだったか
こうして面を着け始めたのは

懐かしむ様に鬼面を撫で、そっと外す

お陰様で今では"これ"が無くとも自由に世界を歩めているよ

沈む太陽を仰ぎ、独り言の様に零した
また出会えたら。その想いは胸に密やかに
今はただ、守られたこの日常を謳歌しよう



 冬の風が吹いていて、でも暖かさを抱く景色だった。
 縁日が始まると道々が明るさと人出に満ちていく。その中を歩みながら、氷鷺はゆっくりと視線を巡らせていた。
 嗚呼、皆が楽しそうだな、と。
 そして祭り囃子、人々の漏らす嬉々の声、暮れゆく空に灯る提灯──賑わいの音色達が優しい記憶を蘇らせていた。
 それは氷鷺がまだ年端もいかぬ幼子だった頃。
 “白”を持つ子として迫害さえ受けていたあの時代──焔の色を持つ少女と、僅かな時を共に過ごした事を。
「……」
 氷鷺は自身の手を少し見下ろす。
 優しくあたたかなその手に引かれたことを思い出すと、そのぬくもりまでもが今でも鮮明に感じられるような気がした。
 そう、確か祭りにも一度だけ行った。
 幼い瞳には、映る全てが真新しく新鮮で──けれど同時に人目が恐ろしかった。
 そんな言葉を漏らせば、少女は揃いの面を差し出してきたものだ。
 ──自分も、おまけにみんなも一緒だから怖くない!
 笑顔と一緒にそう言って。
「……思えばあの頃からだったか。こうして面を着け始めたのは」
 氷鷺は懐かしむように鬼面を撫でた。
 そして、それをそっと外す。
「お陰様で今では“これ”が無くとも自由に世界を歩めているよ」
 沈む太陽を仰ぎ、独り言の様に零した。
 影が辺りを満たして夜になってゆく。
 そうすると気温は少しずつ下がってくるけれど、灯りの中を歩む人々の笑顔は温かい。
 氷鷺も、凍てつく心に灯ったものがあるから、きっとこうして懐かしむことが出来ている。
 ──また出会えたら。
 その想いは胸に密やかに。
 今はただ、守られたこの日常を謳歌しようと、氷鷺は前に歩み出す。
 幼い少年と少女が、楽しげな声を上げて走り抜けて行った。氷鷺は何だかそれに視線を惹かれてしまって……暫し見つめてから、そっと笑みを作る。
 前を向いて歩を再開する。少しだけ、風が心地よく思えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

草剪・ひかり
【POW判定?】
※お色気、即興連携、キャラ崩し描写歓迎!

お仕事はちょっとだけだったけど、お楽しみは人並みに参加させてもらうスタイル!
綺麗な浴衣を着つけて、遠慮なく縁日を満喫しちゃうよ!
……あちこち「大きすぎる」身体に浴衣はちょっと合わないかもだけど

個人的にお祭り屋台といえばたこ焼き、フランクフルト!
「プロレスラーはたくさん食べる」っていう固定観念を裏切らないようにいろんなお店で食べ比べ

派手に食べまくる爆乳長身美女(←)を観れば、有名プロレスラーだと気付かれちゃうかもしれないけど、その時はその時!
握手でもサインでもツーショットでもサービスしちゃうよ!
……まぁ、心配しなくてもそんな需要ないかも?w



 屋台が多く立ち並ぶ、賑やかな一角。
 人通りの多いその中を一人の女性が歩んでいく。
「さぁて、存分に満喫しちゃうよ!」
 笑顔に楽しげな様相を浮かべる、ひかりだ。人目を惹くのは長身と美貌があるから──というだけではないだろう。
 黒白の二色柄が美しい浴衣を着付けて、立ち居もどこか天性の魅力を持っている。何よりその凹凸の大きいスタイルが、道行く者の目を奪っている理由の一端ではあったかもしれない。
 尤も、プロレスラーたるひかりには注目の視線も慣れたもの。しっかりと衆目は意識しつつ、爛漫な気持ちで屋台へ歩み寄っていた。
「早速食べ比べしようかな。お祭り屋台といえば──」
 と、まず購入したのはたこ焼き、そしてフランクフルト。
 湯気の立つそれをぱくりぱくり。豪快に口に運ぶ姿は屋台の店主も思わず見つめてしまうほどだったろう。
「お祭りならではの味って、やっぱりいいね!」
 笑顔で堪能すると、ひかりが次に買ったのは焼きそば、さらにじゃがバターだ。
 ソースの香りにほかほかの温かさ、バターの風味にほくほくのお芋。カロリーの応酬になっても、アスリートの肉体には良い栄養。何よりプロレスラーは沢山食べるというイメージも裏切らないようにと、道行く店でどんどん食べていった。
 そんなふうに身を隠さずにいれば、ひかりを知るものが現れるのも時間の問題。まずは熱心なファンに声をかけられた。
『すみません! 草剪ひかり選手ですよね! ぜひサインを──』
「あら、勿論」
 もぐもぐっとたい焼きを口に入れると、ひかりはサービス精神旺盛。それらに応えてさらさらとサインをしたためる。
 ファンに一度見つかれば、話が波及するのも速い。そのうちに多くの人がやってきて、ツーショットなどをお願いされた。
 ひかりはその全部に応えて、人々に楽しみと思い出を作ってあげる。勿論その間も食べ歩きは欠かさずに、道の端から端までを制覇していきながら。
「うん、楽しかった!」
 満足気に言う頃には、辺りもすっかり夜の色。
 それでもやってくるファンが居るなら応えるのがプロの務めとばかり──ひかりは渡される色紙に、ペンを走らせるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イルナハ・エイワズ
POWで露店巡り
ハリエットさん(f05758)と参加です

縁日というものは私の中の記録にはありますが実際に訪れるのははじめてす
今回の目的は絵本の中に描かれた縁日で見たものを探すことです
特にユルが食べたい、食べたいとねだってくる
リンゴ飴と綿あめを探しましょう

ハリエットさんが気になるのもは何かありましたか?
私は食べることに関心が薄いので
食べている人を観察する方が興味深いです

縁日の散策時に好き勝手に動き回られては困るので、ユルは抱っこしておきます
ユルが人前に出るのが問題ある場合には品物を買って
目立たない場所で食べることにします
ユル、美味しいですか?
口の周りをベタベタにしながら食べるユルを眺めましょう


ハリエット・ミリオンズ
POWでエイワズさん(f02906)と屋台巡りに行きましょう

久しぶりにUDCアースに帰ってきてみるとまた違って見えるものね

そうね、気になるものと言って良いのかは分からないけど、沢山の屋台が出ているのはそれだけで興味が惹かれるわね

同じものを昔見たはずなのに、かつてこの世界を旅した頃とは違って、懐かしく思えるわ
一緒に体験を共有できる相手が居るからかもしれない

どうやらユルも興味津々みたいね。今日はユルにお祭りのガイドはお任せして、彼方此方へ回ってみるのはどうかしら?

私は祭りの様子やユルの様子、エイワズさんの様子を観察して記録を旅の日記に留めておくわ

この一瞬は今しかない、だから思い出は大事だと思うから



 見渡す限りに露店が続いていて、灯りも周りに比して多い。
 縁日にやってきたイルナハ・エイワズ(挟界図書館の司書・f02906)は、そんな景色を目にしていた。
「やはり、夕刻までの町並みとはかなり変わるようですね」
「ええ。とりあえず、進みましょうか」
 声を返すのはハリエット・ミリオンズ(ソラリス・f05758)。イルナハと共に歩みながら、青の瞳に店々と楽しそうな人々の姿を映している。
 眺めていると、ふと独り言が零れた。
「久しぶりにUDCアースに帰ってきてみるとまた違って見えるものね」
「そういうものですか。私は訪れるのは初めてですから」
 応えるイルナハも、観察するように見回している。
 自身の中の記録には、縁日というものは存在していた。だからそれと現実の差異を埋めるように、細かな点にまで目線を注いでいたのだ。
 尤も、イルナハの目的は単なる調査ではなく──絵本の中に描かれた縁日で見たものを探すこと。
 なので屋台の種類には目線を光らせつつも……隣にも声を掛ける。
「ハリエットさんは、何か気になるものはありましたか?」
「そうね、気になるものと言って良いのかは分からないけど、沢山の屋台が出ているのはそれだけで興味が惹かれるわね」
 ハリエット言いながら、それに、と金髪を揺らして目を横へ。
「どうやらユルも興味津々みたいだし」
「ええ」
 頷くイルナハは、自分の腕に抱っこしているものを見下ろす。
 植物属性のドラゴン、ユルだ。もっふりとした体を時折みじろぎさせて、屋台に気を惹かれていた。
「今日はユルにガイドをお任せして、彼方此方へ回ってみるのはどうかしら?」
「では、そうしましょう」
 イルナハは頷く。元より自分が探しているものも、ユルが求めるものなのだから。
 そうして小竜の鼻の導きで二人は散策。それはすぐに、見つかった。
「あれが、リンゴ飴ですか」
 イルナハが歩み寄る先。その屋台に果実をコーティングした綺麗な紅色が並んでいる。
 ユルはもそりとイルナハを見上げ、食べたいとねだってきた。
 勿論イルナハは早速購入してあげる。ユルは暫し夢中になったようにかぷかぷとかじっては舐めをしていた。
 イルナハ自身は、それを観察する。ヤドリガミの身であることも手伝ってか、食べることには関心が薄かった。故にこうして見ている方がよほど興味深い。
「名の通りにリンゴを使った飴なのですね」
「祭りの食べ物は、そういう分かりやすい名前の物が多いわね」
 ハリエットは応えながら、そんな二者の様子を旅の日記に留めている。
 歩みを再開しながらも、ハリエットはどこか不思議な気持ちで風景を見遣っていた。
 同じものを昔見たはずなのに、かつてこの世界を旅した頃とは違う感覚がある。それは懐かしいような気持ち。
 そんな心を抱くのは、一緒に体験を共有できる相手が居るからかもしれない。
 ユルが次に食べたいと意思を示したのは綿あめだ。
「あれですね。やはり名に違わぬ見た目です」
 ふわふわのそれを店主から受け取って、イルナハはユルに持たせてあげる。串を掴んだユルは、口の周りをベタベタにしながらも食べ進めていた。
「ユル、美味しいですか?」
 小さく鳴き声で応えるユルは、はぐはぐとすぐに完食してしまう。イルナハにおかわりを貰うと、それもまた満足気に食べ始めるのだった。
 そうしてユルが欲するものがあれば、イルナハは与えてあげつつ屋台から屋台へ。結果として食べ歩きの様相となった。
「中々に、興味深い体験が出来ました」
「そうね──私もよ」
 ハリエットは少し柔らかな表情を返す。
 この間もユルだけでなく、イルナハの様子もしかと日記にしたためていた。この一瞬は今しかない、だからこそ思い出は大事だと思うから。
 そして見たものを、きちんと残しておきたいから。
 今日のこともきっと忘れない。ハリエットは今暫くそんな思いと共に、イルナハとユルと一緒に祭りの中を歩いていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

匕匸・々
【POW】主であるヒメノ(f04481)と共に。

普段は立場上、なかなか賑やかな場所へは行けぬ主を
こっそりと連れ出して祭へ。
この事は他の護衛達には内密に、と主に念を押して。

何が食べたいかと聞いてそこへ案内する他は
好きなように動く主の後ろに控えて行動を。
主からの注文に
流石に買い過ぎじゃないか?食えるのか?と渋るものの
結局逆らえぬのは主従故…と言うよりも
ただ楽しそうにはしゃぐ主を見たいだけ。なのだろうな。

買ってもらったお面を手に
これを、俺に?と戸惑うものの
主の笑顔に敵わないのはよく分かっている。
それを被って、ヒーローらしいポーズを控えめに決めてやろう。
照れも恥ずかしさも面で隠れる。平気、平気だ


ヒメノ・ヒメネス
【POW】匕匸・々(f04763)と行動

々に誘われて祭に。
賑やかな場所に出かけるのは久々だし、
祭なんて滅多にこないから、テンションもあがるぜ。

とりあえずりんご飴と綿菓子は必須だな。
あとチョコバナナとラムネも。
とりあえず思いつくものを注文して々に買わせる。
食べきれるのかと々が心配してくるが、
可愛いオレが甘いものを持ってるだけで絵になるからな!
そもそも甘いものは別腹だし。

ふと思いついて、々にヒーロー物のお面を買ってやる。
多少が拒むかもしれねぇが、可愛く微笑んでやれば
最終的には頷くのはわかってるからな。
似合わないヒーローのポーズに、ついつい腹を抱えて笑う。
やっぱり々は面白ぇな!



 夜の帳が下りて尚、祭りは人波に沸いている。
 行き交う会話も店々の呼び声も、一層活発に縁日を盛り上げているから──楽しそうじゃねぇか、と声が零れた。
 すたすたと、屋台を眺めながら道に歩み入るのはヒメノ・ヒメネス(ダンピールの人形遣い・f04481)。
 美しい相貌に撫子の髪。麗しい見目ながら、浮かぶのは自由でわくわくとした表情だ。
「しかし、賑やかな場所に来るのなんて久々だな」
 声音に期待が滲むのは、祭りなんて滅多に来られるものではないから。
 それもこれも“お家柄”が理由だが、そこにあるのは窮屈な感情というよりも、今まさに楽しいことを求める気ままさだ。
 一方、その後ろに控える々は言い含めるように主へ声を掛けていた。
「くれぐれも、この事は他の護衛達には内密にな」
「考えておくよ」
 ヒメノは応えるが、々にはそれでは不十分。
 容易に賑やかな場に出られぬ立場のヒメノを、こうしてこっそり連れ出してきたのだからして。々は再度念を押す。
「判った判った。とりあえず、何か食べようぜ?」
 ヒメノは犬歯を見せてから前を向き、悠々と歩んでいく。
 そう言われれば々も従わざるを得ない。何より主の自由さをよく知っているから。今は頷いて、自身も縁日へと進んでいった。
 そうして歩みつつ、ヒメノへ言葉をかける。
「それで、何を食べたい? 調べはしてあるから案内しよう」
「お、いいな。とりあえず……りんご飴と綿菓子は必須だな」
 というわけで、々はそこへ歩んで早速二品を調達する。ふわふわの真っ白とつやつやの赤色を見ると、ヒメノの表情が華やいだ。
「おお、祭りって感じだな! それじゃあ、あとチョコバナナとラムネも」
「チョコバナナ、ラムネ……流石に買い過ぎじゃないか? 食えるのか?」
 一応は仕える身である故、心配もあって渋る々。けれどヒメノは魅力的な翠の瞳を笑みに細めるばかりだった。
「心配するなよ。可愛いオレが甘いものを持ってるだけで絵になるからな!」
 そもそも甘いものは別腹だし、と。
 綿菓子をはむっと食べるヒメノを、々は見つめていた。
 いつもの通り、最後には逆らえない。それはやはり主従だからというよりも──。
(「こうしてただ楽しそうにはしゃぐ姿を見たいだけ、なのだろうな」)
 ふっと目を伏せる々は、そうなればヒメノの言うがままに。甘いものを買って、主がそれを食べる姿を見届けるのだった。
 その後も、ヒメノが歩む後ろに控えながら進んでいくと──ふとお面屋に行き当たる。
 ヒメノは何か思いついたように足を止めた。
「々。これ買ってやるからつけてみなよ」
 言葉と共に指したのはヒーロー物のお面だ。子供にも人気のあるものらしく、造形もお祭りなりに中々良く出来ている。
 ヒメノに渡されたそれを手に、々は戸惑った。
「これを、俺に?」
「ああ。いいだろ?」
 少し小首をかしげて、ヒメノは可愛らしく微笑む。そうされれば敵わないのは、々は自分でよく分かっている。
 静々とそれを被ると、控えめにヒーローポーズ。腕を多少伸ばした格好で止めると、数人の子供達からもにわかに注目されたりするのだった。
 ヒメノはついつい、それに腹を抱えて笑っている。
「やっぱり々は面白ぇな!」
「……、うむ」
 照れも恥ずかしさも面で隠れるはずだから、平気、平気だと々は呟く。
 それは完全にその通りというわけではなかったけれど──ヒメノが嬉しそうに笑うのは見えたから。々はきっと何度でも、同じことをやってしまうのだろうな、と心に思っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月15日


挿絵イラスト