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母なる者の帰る場所

#アックス&ウィザーズ

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#アックス&ウィザーズ


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 その大樹は、アックス&ウィザーズの、とある街のシンボルとして直立していた。
 見上げてもてっぺんが見えないほどに高く、幹の太さは大人を二十人手をつないでも囲めないほど。
 春になれば美しい花を咲かせる樹は、秋に差し掛かる今、少しずつ葉の色を緑から黄色へと変じさせていた。
 
《――――パルゥルゥ》
 そんな立派な樹の、太い枝にも負けないほど大きな巨鳥が、これまた大きな翼を広げて舞い降りた。
 全長、十メートルを超えるであろう彼女こそ、大樹の主にして街の守り神。
 その巨躯と高い知能、凄まじき力によって、樹に住まう獣達を、ひいては眼下に広がる人間の街を、結果的とはいえ守っている。
 故に人々は彼女のことを、敬意を込めてこう呼んだ。
 “母なる翼”パルクーウィと。

 パルクーウィは今、枝葉によって組まれた揺り籠を見つめ目を細めた。
 人間からすれば、大人ほどのサイズもある巨大な卵がいくつも。
 時折、勝手に動く所を見れば、孵る日も近いのだろう。

《…………パル?》
 いや。
 ガタガタと、ゴトゴトと。

 揺れすぎだった――まるで今すぐ、中身がでてこようとしているかのように。
 しかしそれはありえない。いくらなんでも、早すぎる。

『ギ』
 ビシリ、と罅が入り。

『グゴ、グゲ、ググ』
 内側から現れ出でたカタチは、母が望んでいた子の姿では到底なかった。

 ◆

「事件である!」
 グリモアベースに降り立ったディアム・ウィズダム(旅人導く知恵の神・f21898)は、集まった猟兵達に向かって告げた。

「世界はアックス&ウィザーズ! 場所はパルクの街! 戦場はその街に生える一本の大樹である!」
 宣言と同時、世界の風景が移り変わる。
 そのカタチを揺らがせる、小さく不安定なグリモアベースの背景が、これから向かう世界の一端を映し出した。
 猟兵達の前に現れたのは、高さ三百メートル以上はあろうかという、青々と茂った葉を持つ、それはそれは巨大な樹であった。

「どこかで聞いたような話ではあるが……パルクの街の中央には、立派な大樹が立っておる。事件はここでおこるのだ」
 ディアム曰く、この大きすぎる樹には様々な獣や野鳥が生息しており、一種の生態系を形成しているのだという。

「その頂点に立つのが、巨鳥パルクーウィ。樹と街の守護神として慕われておる。“母なる翼”などとも呼ばれておるな。
 こやつはオブリビオンではないのだが……でかいだけあって相当強い。故に街も樹もパルクーウィの縄張りとして、敵対するものは誰も近寄らぬ――はずであった
 しかし、その常識を破るからこその、オブリビオンだ。

「……なんと! パルクーウィが産んだ卵が、そっくり別の卵に入れ替わってしまったのだ!
 ランダムエッグ、と呼ばれるオブリビオンである。要するに卵に擬態して、安全な巣の中に入り込み、
 守ってもらうだけ守ってもらって、時期が来たらがぶり! というわけである!」
 巣の中にあった新しい生命の揺り籠は、卵の姿をした化物になってしまった。
 なら、本物は?

「そして卵を持ち去ったオブリビオンこそが、『黄金龍』トゥルル・エ・ダハブ!
 金銀財宝を集める強欲な龍であるが、どうやらパルクーウィの卵を財宝であると認識したらしい。
 今頃は巣穴で愛でられているだろうが……孵ってしまえば、喰い殺されるのは間違いあるまい」
 恐らく、パルクーウィが留守の間に卵を持ち去り、時間を稼ぎ、誤魔化すために配下のランダムエッグを配置したのだろう、とディアムは告げた。

「そして、子を失い動揺したパルクーウィは、このままでは抵抗虚しくランダムエッグに喰われてしまう……故に!」
 諸君らにやってほしい事は三つ! と、ディアムは指を三本立てた。

「一つ! 大樹を登り、パルクーウィのもとへ行く!」
「二つ! ランダムエッグを倒し、パルクーウィを助け出す!」
「三つ! 救出したパルクーウィの力を借り、トゥルル・エ・ダバブの巣へと向かい、これを仕留め、卵を取り返す!」
 幸い、トゥルル・エ・ダバブは奪った卵を破壊したりはしないだろう、とのことだ。何せ宝物判定をしているので。

「まずはあの高い大樹を登らねばならぬわけだが……まぁ、方法は色々あるであろう」
 ユーベルコードを使うもよし、アイテムを使うもよし、仲間と協力するもよし。
 猟兵なら、取れる選択肢は多いはずだ。

「だが、繰り返すが、樹にはある種の生態系が存在しておる。強引に破壊したり、樹そのものを損壊すれば、街の者たちからも大ブーイングである。
 極力、破壊行為やオブリビオン以外の殺傷行為は慎むよう頼む――――それでは!」
 びし、と指差し、ディアムは再度、告げた。

「頼む猟兵! 母なる翼とその子供を――――助けてやってくれ!」


甘党
 甘党です、焼き鳥は皮が好きです。よろしくおねがいします。

◆アドリブについて
 MSページを参考にしていただけると幸いです。

◆章の構成
 第一章:冒険『花咲く大樹の懐で』
 第二章:集団戦『ランダムエッグ』
 第三章:ボス戦『『黄金龍』トゥルル・エ・ダハブ』

 第一章は大樹を登って、パルクーウィの巣にたどり着くのが目的となります。
 フラグメントの選択肢はあまり気にせず、自由な発想でどうぞ。

◆採用人数について
 採用人数はできる限り頑張るつもりですが、恐らく20名前後になると思います。
 当シナリオは、参加シナリオ数が少ないキャラクターを優先して採用する心つもりです。
 章の途中参加からも歓迎です。
 
 それでは、どうかよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『花咲く大樹の懐で』

POW   :    資材を樹上に運ぶ。

SPD   :    器用に道具を使い修復する。

WIZ   :    折れた枝や傷付いた動物を治療する。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

マギア・オトドリ


まずは、この木を上るんでしたっけ?……思ったより、高いですね。それなら手足で少しずつ上っていくより、飛んで行った方が良さそう、ですね。

大樹から離れた場所でUCで背部にある「鋼鉄結晶」を超次元の竜巻に変換、周囲に存在する生物や枝葉を傷つけない程度に展開し、竜巻の気流に乗って一気に飛び上がります。
飛び上がった後は「叡智示す道」より重力緩和する術式を詠唱、空中で右腕を覆っていた「封呪包帯」を一旦ほどき、太い枝に引っ掛けるようにして巻き付けロープを伝うように上り、安全に着地して体勢を整えます(地形の利用)。
その後は竜巻展開による周辺被害を考え、自分の手足や包帯をロープ代わりに上っていきましょうか。


フィズ・バイオレット
◯鳥さんを騙してその子供まで食べようだなんてヒドい奴デス!許せまセン!早く鳥さんを助けに行かないと!
こういう時はダガーを刺してクライミングしたら楽だし速いんデスケド樹は壊しちゃダメらしいデスから生き物の巣の無い枝を探してロープアクションのように操り人形を上の方の枝に引っ掛けて枝を乗り継いで登って行きマス。途中で登るのに苦労してる人を見つけたら1,2人位だったら操り糸でグルグル巻きにして連れて行きマス。
でも巣はともかく別に樹が無くなる訳でもないのに何でわざわざ遅くても傷付けないようにしないといけないんでショウ…?


アトラ・ジンテーゼ
ふんふん、巨大な鳥に、巨大な樹ですか…それはまた、素材として魅力的な…
あぁいえいえ、しませんしません。材料にしたいとか考えてないですから。
羽とかちょーっとちょろまかしたいとか、そんな事考えてないですから!

こほん。大丈夫ですよ、これでも色々依頼は受けてきた身ですから。
とはいえ…刺激するな、壊すな、で登れとは…中々注文が多いですねぇ…

さてさて、それじゃあ真面目に考えまして。
使うものは、【錬装法】、「霊衝鉄」、「霊染布」。
霊染布の繊維を用いた綱を作りまして…
その先端には、霊衝鉄で作った鉤爪を。
まぁ、鉤爪ロープってやつですね。これを作って登ります。
ちょーっと地味な行程ですけど。ま、地道にいきましょう。



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

        Let’s Rope Action!!

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 高い高い木を目の前にして、猟兵たちが取る手段はそれぞれだ。
 例えば翼を持つものは飛んでいくだろうし、足場を作る能力を持つものは、わざわざ硬い幹に手を這わしたりはしない。
 空中を飛び跳ねるものも、はたまた考えつかないような手段を使おうとしているものも居る。

 そして、最も正攻法で挑む者達は――――。

 ◆

「鋼鉄結晶――――展開」
 広場を遠く離れても、あれだけ高い樹ならばよく見える。
 推定距離の概算を終えて、マギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)は己の背に存在する、一対の鋼鉄で形成された結晶に意識を集中させた。

「お嬢ちゃん。何してるんだ?」
 街の人間が、そんなマギアの行動を不思議に思ったのか、声をかけてきた。

「あ、いえ、お構いなく。それと、少し、離れていてもらえると、助かります」
「? あ、ああ」
「ありがとうございます。では――――」
 ぶお、と少女の背にある結晶が振動する。
 どんどん振動する。
 細かな揺れはやがて全て間隔を狭めていき――――。

「行きます」
 物質が現象に変換され、鋼鉄結晶が二対の竜巻の翼となった。
 回転が生み出す風力によって、ミサイルの様に、一気に大樹目掛けて射出される。

「うひょぉ!」
 マギアの指示通り、離れていた場所から見ていた男は、あっという間に見えなくなった少女の背中を見てつぶやいた。

「や、やっぱ冒険者ってすげー」
 彼女が、その領域を超越した“猟兵”であることなど、男は知る由もない。

 ◆

 フィズ・バイオレット(人形絡繰るヒトガタ・f21466)は憤り、そして悩んでいた。

「鳥さんを騙してその子供まで食べようだなんてヒドい奴デス! 許せまセン! 早く鳥さんを助けに行かないと!」
 パルクーウィとその子供たち。とても心配だ、今すぐ駆けつけてあげたい。
 天真爛漫、親切心の塊であるフィズは、ごく自然にそう思った。
 ……なのだが。

「……うう~」
 手元のダガーをくるくると回す。
 幼く小さく、そして軽いフィズならば、このダガーを樹の幹に突き刺して、登坂するのが最も素早く確実で、手慣れている。
 彼女のヒトガタとしての機能はそう判断しているのだが、この度は樹を傷つけてはならないという、なんとも厄介な制限である。

 これがパルクーウィや動物の巣ならば、まだわかる。
 生き物が住んでいるからだ。
 けれど目の前にあるのは樹である。刺しても血は流れないし、痛くもない。
 そんな“理由のわからない制限”の存在は、しばし彼女の足を止めたが……。

「ううン、悩んでる時間はありまセン! 行きましょウ!」
 手にした操り人形を、ぽいと投げる。指から伝う糸を通じて、人形の手が枝をキャッチ。
 くいと短く糸を引いて、体が巻き上げられる。つまりはロープアクションの要領である。

「うー、時間がかかってしまいそうデス……」
 ぽつりとつぶやきながらも、手際よく、フィズは枝から枝へ、樹を登っていった。

 ◆

「ふんふん、巨大な鳥に、巨大な樹ですか……」
 精霊術師にして鍛冶師であるアトラ・ジンテーゼ(四霊の統造師・f22042)にとって、その大樹は強く魅力的な存在だった。
 なにせサイズの大きいモノというのは、多かれ少なかれ多量の魔力の影響を受けていることが多いのだ。
 当然、取れる素材も良質なものが多い。枝の一本、羽の一本だってお宝だ。
 思わずこぼれかけたよだれを、誰も気づかれる事無く拭いて。

「とはいえ……刺激するな、壊すなで登れとは……」
 樹の高さを考えれば、中々骨の折れる作業だ。
 とは言え、熟練の冒険者にして猟兵のアトラである。
 バックパックから手際よく鉱石と、一見何の変哲もない布を取り出し……。

「精霊憑依、武装錬成」
 目を閉じて、一言。
 大気に存在する精霊に語りかけると、それはすぐさま形となって生じる。

「ヒエン、ニル、お願いね」
《――――》
《…………》
 魔力に反応する霊衝鉄は、炎を司る精霊、ヒエンが宿った瞬間、飴細工のように溶け出した。
 あっという間にその形を変じ、鉤爪状に変化する……同時に、虚空からざぱっと水が鉄を打ち据えて冷やし、その形を固定した。
 同じく霊染布にも精霊の魔力を宿し形を変えれば、完成したのは立派な即席の鉤爪ロープだった。

「ちょーっと地味な工程ですけど」
 ぐるぐるとロープをぶん回し、思い切り投げる。上手く枝に絡んで引っ掛かかれば、あとはこちらのものだ。

「ま、地道に行きましょう」
 若い女性であるアトラが、そんな方法で……という心配は無用だった。
 ぐい、と力を込めれば、体はぐんぐんと網をたどって登っていく。
 全くもって凄まじい、力持ちの所業だった。

 ◆

「ひゃ! ごめんなさいデス。通っていいデス?」
 樹を順調に登って、半分ほど来ただろうか。
 枝を登ったフィズの前に現れたのは、群生する小鳥達だった。
 恐らく、この辺りを住処にしている野生のものだろう、フィズが現れた瞬間ぴくーん、と固まったのは、普段ここを訪れるものが居ないからかも知れない。

《チュ……》
 代表者(?)なのか、一羽がぴょこんと近づいてくる。

(お前一体何やねん、あぁん?)
 と、その目は語っている(様に見えなくもなくもない)。

「何にもしないデスヨ?」
《チュン?》
「本当デス。本当デス」
《チュン……》
 会話が通じたのか通じてないのか、鳥たちはならいいや、と再び毛づくろいや昼寝を再開した。
 この樹に住まう生物は、思ったより自由に生きているらしい。

「おお……もしかしたら手乗りヒヨコができるかも知れないデス」
 おいでおいでー、と指を伸ばした瞬間。

《チュ?》
 空の彼方から、高速で何かが近づいて来た。
 それは少女の形をしており、竜巻を背負っており、そして速かった。

《チュチュチュチュン!?》
 小鳥たちは慌てて、その場でグルグルと高速回転を始めた。
 どうやら飛べないらしい。

「失礼、しました」
 突っ込んでくる! と思った所で、不意に風力が消失し。
 代わりに伸ばした手から伸びた包帯が、ぱしっと枝を掴んで慣性を殺し、華麗に着地。
 風に変じていた背中の鋼鉄結晶は、既に硬質なその形を取り戻していた。

「驚かせる、つもりは、なかったの、ですが……」
 小鳥たち(そしてフィズ)は、突如現れた乱入者にぽかんと揃って口を開けた。

《チュ?(なにさらしとんじゃいこらぁ)》
「あの、ごめんなさい、そんな目で、見ないで、もらえると、嬉しいです」

《チュンッ(ち。気をつけぇや。若いモンがビビるやろがい)》
「何故だか、わからないけど、罵倒されている、気が、します……」

「そ、空を飛んでくるなんてずるいデス! ワタシは地道に登ってきたのニ!」
「そ、それも、すいません……? いえ、でも、ここからは、私も、これで」
 包帯を示す乱入者――マギアは、ぷりぷり怒るフィズに、困惑しながら答えた。
 どうしたものか、と二人(と小鳥)が向き合っていると、下から枝に向かって、鉤爪が投げ放たれ。

「いよ、っと。おや、先客がいましたか」
 ひょいと、そのままロープを伝って、人狼の少女―――アトラが太い枝に着地した。

「こんにちは! いやー、高いですねこの樹は」
「こんにちはデス! お姉さんもロープ仲間デスか?」
「はい、あまり樹を傷つけるなと言うことなので地道に――おや、フォロルバードじゃーないですか」
 アトラは鉤爪ロープを回収しつつ、集った小鳥たちに目を向けてその名前を呼んだ。

「ふぉろるばーど、ですか」
 何故かマギアの体中に群がり始めた小鳥は、どうやらそんな名前らしい。

「葉っぱの間に身を隠して暮らす小さな鳥です、羽がなかなか良い素材になるんですよね。一本もらえないかな」
《チュン(ええで)》
「わぁ! ありがとうございます、ふふふ、これは約得。この樹はなかなか美味しいかも知れませんね……」

「あー、いいな、いいな、ワタシにもくれないデスか?」
《チュン(ええで)》
「やったー!」
 フィズが先程の続きとばかりに手を差し出してみると、ぷちりと抜いた羽が手のひらに乗った。
 そしてマギアに群がるフォロルバードたちは、何故か一斉に背中の鋼鉄結晶を突き始めた。

「や、やめて、ください、やめて、な、何故……!?」
「あまり金属の匂いが好きじゃないんだと思いますよ、ほら、速く上にいっちゃいましょう」
「そうします……さようなら、鳥さん達」
 包帯をヒュンと伸ばして、上の枝を掴み、体を持ち上げる。
 それを合図に、三人の少女は再びロープアクションを再開した。

「おねーサン、一つ聞いてもいいデスカ?」
「? 何、ですか?」
 器用に枝を掴みながら、上へ上へ。
 てっぺんは、まだ見えてこない。

「さっき、空を飛んでたじゃないデスカ。あのまま上に行けばよかったんじゃないデスカ?」
「はい、ですが、竜巻を、纏ったままでは、枝も葉も、散ってしまうので」
「ンー、デモ、速く行かないと行けないノニ、どーして我慢しないと行けないんでショウ」
 ダガーを使って登るほうが速いのに、と疑問を呈するフィズに、少し先を行くアトラが答えた。

「さっき、フォロルバードから羽をもらいましたよね?」
「ハイ!」
「でも、葉っぱがなくなったら、あの子達はここで暮らせなくなって、仲良くなれなかったかも知れないです。樹に穴をあけたら、他の生き物にも迷惑がかかっちゃうかも」
 冒険者として、鍛冶師として。探検と採取に長けたアトラは、自然との共存の仕方をよく知っている。
 傷つけず、摂りすぎず、寄り添って、少しだけ恵みを分けてもらう。

「樹を守るパルクーウィを助けに行くのに、あたしたちが樹を傷つけちゃ本末転倒じゃーないですか、そういうことです」
 ふふ、と告げるその様は、講義を行う教師のようで。
 フィズは納得したように、なるほど! と目を輝かせた。

「つまり、おねーサンは、鳥サン達を守ってあげてたんデスネ!」
「え!? ま、まぁ」
 結果としては、その鳥たちに、滅茶苦茶突かれまくったわけだが。

「あまり、壊したり、汚したり、したくないので」
「すごいデス! よーし、見習って、傷つけずに登りマス!」
 まだまだ、先は長いけれど。
 少女達は未だ、疲れた様子を見せず進んでいく。
 この他にも、また別の出会いがあったかも知れないが、それはまた他の機会に譲るとしよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン


なんて大きい…これは、立派な大樹さんですね!
ここまで育つのに一体どれほどの年月をかけたのか…浪漫を感じますっ

【勇気】と【気合】を漲らせ、目指すは頂上、守護神さま
ふふふ、お会いするのが楽しみになってきました!
守護神さまに怒られないように、慎重に
さあ、新たな冒険の始まりですっ!!【鼓舞】

登ると言ってもわたしは竜族、有翼種
ゆっくり飛んで行きつつ、他の登る方を助けて回りますっ♪
超常の力を持つ猟兵もまた、パルクの街の人々と同じ人間
何かで困ることもありましょうっ
こんにちは!『勇者』です!!

道中に大樹の上を見て回ると、色んな動物さんたちがいて
まるで一つの世界のよう
わあぁぁ…!物語にある世界樹みたいですね!


日向・史奈


この大樹を登るのですね……大変な初仕事になりそうです。
本当なら私に出来ることは竜巻を起こして自分を運ぶくらいなのですが……制御しきれなくなってしまってこの樹が傷ついてしまってはいけませんから、やはり魔法は使わずに登ることにしましょう。自力で、気合いで。

鳥さんを守って、助けるために諦めません……、諦め……どこまで続くんですかねぇこれ……
飛べる皆さんが羨ましいです……う、腕が疲れてきてしまいましたね……だ、誰か助けてぇ……!



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

      勇者とヒーローは空で出会う

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 日向・史奈(ホワイトナイト・f21991)はヒーローである。
 最も、経験は浅く、実力も未熟で、まだまだ半人前だ。

 けれど、礼儀正しく冷静沈着で、物事を正しく見る目がある。
 優しく、穏やかで、真面目で、問題にまっすぐ取り組む姿勢がある。

 つまりは、とても良い人間なので。

「本当は、竜巻を起こして自分を運びたかったのですが……」
 一番楽で、確実なのはその手段ではあるが。
 確実に、樹は損害をこうむるだろう。ついでに枝葉が折れれば、眼下の街もえらいことになる。
 よって。

「やはり魔法は使わずに登ることにしましょう。自力で、気合いで」
 史奈の選んだ手段は、その手足を使った登坂であった。
 しかし! 史奈だって猟兵である。
 溢れる超自然の力を自由自在に操るスピリットヒーローである。
 木登り一つ、こなせずしてなんとする!

「行きます!」
 かくして、少女の初仕事が始まった。
 目的は、母なる翼パルクーウィの救出!
 そのための前座である、こんなところでくじけてなど居られないのだ!

 ◆

「だ、誰か助けてぇ……!」
 樹の幹を黙々と登っていた少女に限界が訪れるのは意外と速かった。
 いや、むしろよくやったというべきだろう、垂直百メートルの登坂を、猟兵とは言え素人が行ったのだから。
 そもそも“登る”ということを想定してない樹なのだ。途中太い枝を見つけては休憩して見たものの、腕への疲労の蓄積はそらもう凄まじかった。

(鳥さんを守って、助けるために諦めません……!)
 気合は十分だった。足りなかったのは手段だ。
 結果から言うと、下に降りるには高すぎて、上に行くには低すぎる絶妙な位置で、セミのように幹に張り付いて止まってしまった。
 重心を少しでもずらしたら足が滑りそうで、無理やり動かすために必要な手はしがみつくので手一杯だ。

「こ、これは……危険なのでは……」
 ここから落下したら、流石に無事では済むまい。さよなら人生、グッバイ猟兵、戦う前に落下して殉死はヒーローの最後としてあまりに情けない。

「あっ」
 とか変なことを考えてたら、とうとう指の力が尽きてしまった。
 自由落下が始まった感覚を全身で受ける。後何秒かこの感覚が続いた後、べチャリとなってしまうのだ。

「さ、流石にそれは嫌ですっ!」
 空中でもがいて手をのばす。
 つかめるものなどないとわかっていても、諦めていてはヒーロー失格だ。
 それに――――。

「はいっ」
 意外と、手を掴んでくれる人は居るものだ。

「ふぇ?」
 がしっと腕を捕まれ、ぶらんと体が揺れる感触。
 史奈の手を掴んだ少女は、にっこり笑って告げた。
 
「あなたのピンチに颯爽登場♪ こんにちは! 『勇者』です!」
 ヒーローと勇者が、空の上で邂逅した瞬間だった。

 ◆

「なんて大きい……これは、立派な大樹さんですね!」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は勇者である。
 誰がなんと言おうと勇者である、何せ彼女がそうであると自分で決めたのだから。

「ここまで育つのに一体どれほどの年月をかけたのか……浪漫を感じますっ」
 そして勇者は、冒険が大好きだった。
 だってそこにはロマンがあり、発見があり、物語があり、心がわくわくするからだ。
 まして、見たこともないようなこの樹のてっぺんには、見たこともないような大きな鳥、守護神がいるのだという。
 もしかしたらもしかしたら、いやいや、自分でも飛べるけれども。
 その背中に乗せてもらったりできるかも知れない、と思うと、勇者理論が止まらないのである。

 ちなみに勇者理論とは【勇気】【気合】【根性】の三つでどんな壁でも乗り越えてしまう脳筋――じゃなくてそんな感じの熱い気持ちである。

「ふふふ、お会いするのが楽しみになってきました! さあ――新たな冒険の始まりです!」
 有翼種、ドラゴニアンであるソラスティベルなら、翼を広げ飛翔するだけで良い。
 それに、これだけ高い樹を登るのだ。空を飛べない人が居たら、勿論助けてあげなくては。
 何せソラスティベルは――勇者なのだから!


「――助けてぇ…………」


 とか思ってたら、いきなり助けを求める声が聞こえたので、そちらに急行するのであった。

 ◆

「お、織田信長と戦ったんですか!?」
「はい! それに外宇宙からの尖兵に、黒曜石の皮膚を持つ蠍に……顔がでっかいプリンのマダムとも!」
「顔がでっかいプリン」
 ソラスティベルに抱えられながら、史奈は勇者がたどってきた冒険の軌跡の、ほんの一部を聞いていた。

「凄い、歴戦の猟兵さんなんですね」
「いやぁ、それほどでも……楽しそうだな、とか、許せないな、って思ったら、つい体が動いちゃうんですよねっ」
 それが、彼女を“勇者”として成立させるに足るものなのだろう。

「だけど、こういう冒険も楽しいです。も、勿論! 守護神さまを助けに行かなくては行けないのはわかっているんですがっ!」
 けれど、こうして空の上から、眼下に広がる樹の枝の上を見れば。
 栗鼠がパタパタと走り回り、鳥がぴよぴよ飛び交って、猿が木の実をかじっている。
 そこには確かに生命の営みがあり、一個の世界を作っていた。

「……こういう景色を見るのは、やっぱり楽しくてっ」
「……そうですね、とっても綺麗」
 今はまだ、助けられているけれど。
 ヒーローの冒険は、まだ始まったばかりなのだから。

「私も、誰かを助けられるヒーローになれるでしょうか」
「勿論です、だって、守護神さまを助けようって、こーんなに高い樹を登ろうとしたんですから」
 勇者は、どこまでも笑顔で、その思いを肯定した。

「あなたの胸にも、ちゃーんと勇者理論がありますよっ!」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フクス・クルーガー
ふむふむ、お母さんの下にお子さんをお返しするんだね。運び屋として受けたまりました!

早急に向かうためにもアタシの器物で向かいますよ! 全環境対応型は伊達ではないのです。樹に昇ることや空を飛ぶことだって出来るんですから!

後、助け合いとして後ろの荷台に仲間を乗せてあげるのもいいと思います。

これもまた猟兵をパルクーウィの場所へお届けするってことになりますしね。

正直、アタシのトラック頑丈だけど武装類があんまないの、何かに襲われた時に護衛してくれる人がいると嬉しいかな。


黒羽・烈火
餅は餅屋、パンはパン屋、武器は武器屋、戦争は戦争屋、オブリビオンは猟兵。…つまり、何をするにも適した存在はいる。そして私は木登りの専門家じゃない。でも、こんな街だ、木登りを得意な人間はいる筈だ。

猟兵の仕事のお陰で、実は結構な金がある。それで酒場で冒険者や荷運びの人夫でも雇って、荷物から何からぜーんぶ運んで貰う。案内役も雇おう。地元の人間なら、傷つけずに木を登るなんて朝飯前だし、気を付けてくれるだろう?

と、いうわけで任せたよ。私?うーん、そうだなぁ棺桶にでも入って寝てたら到着…いや、流石にそれは暢気すぎるな。ま、最低限の武装だけもって、後ろで監督しながらのんびり行くよ。



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 ギブ・アンド・テイクで行く全環境対応型大型トラックの旅

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 餅は餅屋、ということわざがある。
 どんなことであっても、その分野に精通した専門家に任せるのが一番良い、という意味である。

 パンはパン屋が焼くべきで、武器は武器屋が売るべきで、戦争は兵士がすべきで、、オブリビオンは猟兵を倒すべきだ。
 そして黒羽・烈火(重装甲擲弾猟兵・f21983)は猟兵であり、傭兵であり、民間軍事会社の社長である。

 つまり木登りは完全に専門外だ。空を飛ぶ羽はないし、下手なユーベルコードは樹を傷つける恐れがある。
 ならばどうするか、人を雇えばいいのだ。
 他人を使う金ならあるし、烈火が扱う武装だって重火器を背負って登坂など御免こうむる。
 そんなわけで、荷物持ちや案内人を雇うべく、冒険者求めて酒場へ向かったのだが――――。

「あの樹に登る!? いやいや、無茶をいいなさんなって」
「頂上まで? いやぁ、ちょっと無理だなぁ」
「案内って言っても、そもそも誰も登ったことがないので……」
 とのことである。
 そもそも彼らにとっては樹はそこにあるだけでよく、それ以上関わろうとはしてこなかったのだろう。

「さて、どうしたものかな」
 この期に及んでも、勿論自分で登坂する、という選択肢はでてこない。
 こうなったら、樹を登る手段を持っている猟兵でも雇うか、と思ったその時。

 プップー、と主にUDCアースで聞き慣れた音が周囲に響いた。
 いわゆる、クラクションである。

「……?」
 烈火が音に振り向くと、そこにあったのは一台の大型トラックであった。
 大型トラックである。
 日本の法律に照らし合わせると車両総重量が11トン以上、最大積載量が6.5トン以上、又は乗車定員が30人以上の自動車であって、特殊自動車・自動二輪車のいずれでもないものを指す。

「どうも、お姉さん猟兵だよね、困ってる?」
 その大型トラックの窓から片腕を出しつつに、と笑ったのは、藍色の髪をした、快活な印象を与える女性だった。

 ◆

 フクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)はトラックである。
 何て?? と思ったかも知れないのでもう一度いうが、トラックである。
 厳密に言うと大型トラックを核とするヤドリガミである。よってこのトラックそのものが彼女自身であるが、アックス&ウィザーズに存在するにはあまりに目立つ姿であった。

「ふむふむ、お母さんの下にお子さんをお返しするんだね。運び屋として受けたまりました!」
 依頼の概要を聞いて一発、フクスは即座にそう告げて運送に乗り出した。
 すなわち、誰かを……あるいは何かを、乗せて、運ぶ専門家である。

「アタシも同じ仕事なんです。樹に登って母親を助けて、子供を送り届ける。足を探してるなら、一緒にどうですか?」
 それは烈火が今現在、最も求めていた相手であり、望んでいたものなのだが……。

「代金は?」
「あはは、いらないいらない。この仕事に関しちゃ前金でもらってますから」
「そういうわけにも行かない、あなたの仕事に私を運ぶことは含まれていないでしょう」
「んー、仲間を運ぶのも、間接的にはパルクーウィを助けるって仕事につながるんですけども」
 じゃあ、そうだ、と、フクスは烈火の持つ武器を見て告げた。

「アタシのトラック頑丈だけど武装類があんまないの。何かあったら護衛してくれるってことでどう? Win-Winでしょ?」
 年の頃が近い女性相手だと判断したからか、口調の砕け始めたフクスに、烈火は少し考え……そしてすぐに結論を出した。

「……了解、金を払えば気兼ねなく運んでもらえると思ってたけど、そう簡単には行かないか」
「あっはっは、持ちつ持たれつでしょ、さぁ乗って乗って。助手席がいい? それとも荷台?」
「荷物は荷台で。助手席のほうが外が見える」
「OK、シートベルトしめた? じゃあ、いこうか」
 荷物を積み込み、助手席に一人を据えて。

「で、このトラックでどうやって登るつもりなの?」
「うーん、そうね、タイヤで幹の皮を削ったり、動物とぶつかってもいけないからね」
 クラッチが噛み合う。
 アクセルを蒸す。
 エンジンが唸り、叫びを上げる。

「ここは、空を飛んでいこっか」
 全環境対応型大型トラックのタイヤが、機構に従い高速回転を始め。
 一瞬の浮遊感の後、勢いよく、空中を走行し始めた。

「はは、なるほど、これはいい」
 トラックの窓から、垂直方向に流れていく景色、というものを体感しながら、烈火は小さく笑った。

「ウチの会社にも導入してみるかな?」
 きっと大騒ぎになるだろう。何せ空飛ぶ大型トラックだ。

「残念だけど、一品物なんだよねえ!」
 そりゃあそうか。
 妙な納得をしながら、トラックはぐんぐんと高度を上昇させていく。
 その光景はある意味、どんなものよりもファンタジーだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルコ・アーラ

・心情
ふぅむ、“母なる翼”パルクーウィ、ねぇ?
噂には聞いたことあったけど、実際に目にするのは初めてね
……まぁ、そんな感動をしっかり味わう為にもオブリビオンを退治して本当の卵を取り返さないとね!

・行動
大樹を登るのには、ユーベルコード『天を舞うは勇鷹の蝋翼』を使用するわ
このユーベルコードで空中を蹴ってジャンプしつつ、足場になりそうな大きい枝とかに着地して休んだりを繰り返せば、なるべく樹を傷めずに樹の上にまでいけるんじゃないかしら?
道中で樹に住む動物達と会ったら、なるべく刺激しないようにしたいけど……襲われたら逃げる一択よね、邪魔しちゃったのはこっちなんだし


コフィー・ファミオール

酷いオブリビオンも居るんだなぁ、絶対こらしめてやるっ!

とは言え、まずは兎にも角にもこのおっきな樹を登らないとだねー
私は結構身軽だから、枝を飛び移ったり樹のデコボコをクライムして登っていくよー
フック付きのワイヤーとか使えば楽そうだけど、傷ついちゃうかもしれないし?
傷つけないように且つなるべく急いでよじ登っていくね!
ユーベルコード【天空の箱庭】で空中に足場を作ってショートカットできるところはしていくぞー!

せっかくだから、登るのに苦労してそうな人が居たら助けてあげたいかな!
あと、こんなにでっかい樹に登るんだから、ちょっとくらい上からの景色を眺めながらでも良いよね?気分も大事だよねっ!


鬼柳・雄


オブリビオンにも托卵ってあるんだなーって。
それはさておき、他の人と協力して樹を登ります。
登る前に街の住人に樹について情報収集。ある種の生態系が構築されているというなら、それについて知ってる方が何かとやりやすいと思うので。

実際に登る際は【影の追跡者の召喚】を使って出てきた影の追跡者に先行させ、脆くて落下の危険のありそうな場所や途中にある障害物を避け安全に登れそうなルートを模索します。

「あーい、女神様行ってきまー」
「おー、すっげえ樹。樹ってーと皮でかぶれたりしねえか?手袋必須だな。あと虫いるだろうから虫刺されの薬も」



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

        Hop, Step, Arial Jump!!

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

「おー、すっげえ樹」
 高い木を見上げながら、鬼柳・雄(チンピラサマナー・f22507)は率直な感想をつぶやいた。
 鬼柳はチンピラである。
 厳密にいうとチンピラにして悪魔召喚士であり、マルコシアスという悪魔と契約を結んでいる。
 ……しかし現状、このマルコシアス、少なくとも樹を破壊しないという前提での木登りに関しては全く役に立たない。

 よってチンピラたる彼が何をしたか。
 情報収集である。これから挑む難関にどの様な危険が潜んでいるのか、事前に調べて置いて損はない。
 チンピラらしからぬ、極めて合理的な判断だった。

「へー、虫がでるのか」
「そうなのよ、蜂みたいな虫がね、時々、地上にまでおりてくるから大変よ、刺されるととーっても痛いのよ」
 そう語るのは、街に住まう主婦であった。
 主婦の知識、イコール生活の知恵だ。

「だからね、登るんならこれを持ってきなさい」
「あん……なんスかこれ、ミカン?」
「これはムイカンの実よ。あの虫はこの皮の匂いが嫌いだから、でてきたらプシュってするといいわよ」
「へー、あざーっす」
 そんなこんなで、登坂準備は整った。
 両手には軍手、服装はジャージ、腰にはムイカンの実(ミカンに酷似)と虫刺されの薬。

「さーて、いっちょやりますかっと」
 影の追跡者を先行させながら、えっちらおっちらと。
 地道な登坂作業は、なんと日付が変わる前から行われていた。

 ◆

「ふぅむ、“母なる翼”パルクーウィ、ねぇ?」
 噂には聞いたことがあるが、実際にお目にかかる機会があるとは思わなかった。
 アルコ・アーラ(空渡り・f21945)はエルフ、森の民だ。
 熱く、胸のときめく冒険譚に憧れて故郷を飛び出してしまったものの、その手の逸話に関しては耳が立つ。

 曰く。
 その白い翼は、陽光を受けると虹色に光り。
 瞳はエメラルドのごとき碧色、尾羽根が触れれば、淀んだ瘴気すら浄化された風に変わるという。
 吟遊詩人の語りですら、時折姿を表すものだ。とならば見たい。当然見たい。

「……まぁ、そんな感動をしっかり味わう為にもオブリビオンを退治して本当の卵を取り返さないとね!」
 ともあれ、行動だ。
 空中にひょいと足を踏み出せば、まるで足場があるかのように、しっかりと踏みしめて、更に上へと身を躍らせる。
 それを繰り返す――――《天を舞うは勇鷹の蝋翼(スカイハイ・イカロス)》は文字通り、アルコの足に翼を与える。
 踏み込めば、その分だけ体が跳ねる。目標は頭上に見える枝だ。

(できれば、厄介な獣とかにはあわなければいいんだけどな)
 樹の上には独自の生態系があるらしい、つまり、ここから先は動物たちの縄張りだ。
 高揚する気分を感じながらも、その状況を強く胸に刻んで、アルコはなお跳ねた。

 ◆

「酷いオブリビオンも居るんだなぁ、絶対こらしめてやるっ!」
 と、気合を入れているのは、ヤドリガミの少女、コフィー・ファミオール(この空に響く小さな音を奏でる・f21569)だ。
 パーカー越しに風を感じながら、身軽な動きでひょいひょいと枝から枝に跳ね、樹の凸凹した表皮に指をかけ、実にサクサクと進んでいく。

「ばぁん♪」
 時折、人差し指を銃の様に構えて、弾丸を放つ真似事をする。
 しかしそれは意味のない行動ではない。
 圧縮された空気の弾丸が、空中で弾けて、見えない足場を形成する。
 空気や風を自在に操るコフィーは、まさしく空のような少女だった。
 どれだけ高い場所に居ても、恐怖よりも高揚が先に立つ。

「せーのっ」
「到着、っと」

「あら?」
「ん?」
 ちょうど、二人の少女が同時に、同じ枝に、似たような動きで着地し。

「――――」
「――――」
「……あはは、すごいね! 今、三回転くらいしてなかった?」
「そっちこそ、私にはかなり高く飛んでたように見えたわよ?」
 アルコとコフィーは、お互い、顔を見合わせた。

「いやー、速く登らなきゃってわかってるんだけど……ここから見る景色、凄いねっ」
 まだまだ、樹の三分の一にも満たない高さだが、それでも街を一望し、平原と山までも眺めることができる。
 もっともっと登れば、もっと凄いものが見れるのだろうか、という期待が、コフィーの中で膨らんでいく。

「それなら、私はパルクーウィの背中に乗りたいかな」
 アルコが、小さく笑いながら言うと、コフィーの目がより一層輝いた。

「えっ、乗せてくれるのっ!?」
「私が聞いた伝説通りならね? 吟遊詩人様いわく、“パルクーウィは叡智の者。恩と義をけして忘れない”――らしいから。ちゃんと助けて、子供を取り返せれば、きっと乗せてくれるわ」
「そっか、よーし! 絶対に助けようっ!」
 より一層気合を入れて、一歩前に足を踏み出す。
 空気を破裂させて、上へ……と思った瞬間。

 ブン…………という不快な音が、耳をくすぐった。

「?」
「……静かに」
 先に弓を構えたのは、アルコだった。

「何か居る……いえ、なにか来る!」
 ブン。
 ブンブンブン。
 ブブブブブブブブブ――――――。

「ひゃっ」
 それは健全な少女ならば、声を上げて然るべき状況だった。
 八本の足に、虫特有の透き通った翅が四対。もし視力の良いものが入れば、尻の小さな膨らみから細い針が出入りしているのがわかる。
 大きさは一匹に尽き三センチ程度だが、それがとにかくたくさん居る。

「ひゃああああっ!?」
 いつの間にか、少女達は、虫の大群に囲まれていた。

(こういうこともあるかも、とは思ってたけど――!)
 アルコは森の民だから、自然は時に牙を剥くことを知っている。
 けれど、虫たちは突如現れた、なにか原因があるのかも知れないが――――。

「に、逃げたほうがいいよね」
「ええ、上に飛びましょう」
「せ、せーので?」
「せーので――多分、追ってくるけど、刺されないようにだけ気をつけて」
「えええええ……」
 ひそひそと話している間にも、虫は少しずつ数を増し、外敵――コフィーとアルコに近寄ってくる。

(うー、ごめん、できればこんなことしたくないけど――)
 虫は得意ではないし、好きでもないが、乱入者は自分達だ。
 若干の罪悪感を覚えながら、風の弾丸を放とうとしたその時。


 丸い何かが、ぽいとその場に放り込まれた。


「っ!」
 ぶつかって、べチャリと弾けた果実から、つんと強い柑橘臭が漂う。
 ブゥン――――。
 その瞬間、虫たちは一斉に散会し、葉や枝の中に逃げてしまった。

「わっ、どっかいっちゃった」
「一体何が……あら?」
 アルコが気づいたのは、幹をえっちらおっちら登ってくる人影だった。
 枝にたどり着いて、身を乗り出してきたのは、若い男だ。

「…………ダイジョブかよ」
 果実……ムイカンの実を投げた鬼柳は、なんだか複雑そうな顔で、二人の少女を見上げた。

 ◆

「空気の振動に敏感な虫らしいぜ」
 とは、情報をくれた主婦のおばさんの弁だ。
 人が近くを通りかかってテリトリー内の葉を揺らしたりすると、一斉に襲いかかってくるらしい。

「はー、そうなんだ。知らなかったぁ」
 世の中、まだまだわからないことが多い。
 空気をバンバン弾けさせてたせいかもしれない、となると、コフィー的には失敗だったかな? と首をかしげるが。

「いやぁ、地道に登るのマジでキツイんでそれぐらいはいいでしょ、ちっと離れればこないそうなんで」
 自力で地道に登ってきた鬼柳がそういうのだから、本当にキツイのだろう。

「でも、私達が居る所に来れたのは偶然?」
 アルコが尋ねると、鬼柳は首を横に振った。

「安全なルートを確保するために、影の追跡者を先行させてんだよ。そしたら虫に囲まれてた奴らがいたから……」
「助けに来てくれたんだ、ありがとっ」
 笑顔で礼を言うコフィーに、鬼柳はそっぽを向いて、どーも、と返した。
 お礼を言われることに、単純に慣れていないようだった。

「気をつけて進まないとねー、じゃあ、気を取り直していこっか」
「そうね、いつまでも休んでられないし……貴方も一緒に来る?」
「あ?」
 アルコが尋ねると、鬼柳は首をがくんと横にかしげた。

「素のぼりするより、空気の階段を登ったほうがいいと思うけど。ねえコフィー?」
「うんうん、助けてくれたお礼に、助けてあげる! ほら、いこいこ?」
 今度は虫を刺激しないよう、離れた所に足場を作って、コフィーは手をのばす。
 鬼柳はしばし頭をかいてから。

「……そんじゃ、世話になるか」
 別に一人でいることにこだわりがあるわけではない、そして、パルクーウィのもとにたどり着けるならそれに越したことはない。
 とはいえ、全く透明な足場目掛けて、足を踏み出すのは、チンピラだって中々勇気がいるのだ。

「ほらほら、速く!」
 そう急かすコフィーと、タイミングを図る鬼柳を見て、先に空中を蹴ったアルコは、小さく笑った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フォルグ・ゴノラファ
○pow38
「大木の登攀か……いい修行になりそうだな」

幼少期に家族を殺害されてから、肉体の鍛練とその結果を証明するための行いに没頭した 青年です。
何事も鍛練に結びつける癖があり、また肉体のみをもって事態を打破することを個人レベルでは好みます。
負傷リスクを多目に無視する傾向があり、また自らの肉体が通用せず目の前で誰かが傷つくことを恐れます。

「登れてないなら、俺の背中に乗るか?」
素手で大樹の壁を登ろうとします。この時、資材や(居れば)他の登れていない猟兵を、自らの重石にしようと考えます。
敵が迫ってきたなら、躊躇なくucを放つと思います。

「卵か……早く返してやりたいな――家族は一緒にいるべきだから」


煙晶・リリー
◯アドリブ歓迎
街の真ん中におっきい木。エムエ村と似てる。
卵を持って行っちゃった上、手下とすり替えて襲わせるなんてドラゴンなのにカッコいくないね。でもまずはパルクーウィを助けなきゃ。
【盾の森】で木に横向きに壁を生やして階段にして登っていく。‥‥あ、高い所からだと麓の街がよく見えるね。‥‥そろそろ着くかな?‥‥‥まだ?あと何メートル?‥‥そ、そろそろ疲れてきたんだけど‥‥。‥‥ハァ、ハァ‥‥。‥‥つ、着いた‥‥(プルプル)。‥‥た、大した事なかったわ‥‥私にかかれば余裕‥‥(髪サラッ)。さぁ、パルクーウィを‥‥ゴフッ。‥‥ちょっと休憩したら助けに行こう!‥‥もっとカッコよく助けに来たかったな‥‥。



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         黒の記憶と煙の根性

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「街の真ん中におっきい木。エムエ村と似てる」
 煙晶・リリー(カッコイイは時に『最適解』へと到達する・f21371)が拠点とする村も、中央に大きな樹を据えた場所だ。
 だからこそ感じる少しの親近感、同時に、街の守護者を守らねばという確かな決意。
 そもそも、手下をタマゴとすり替えるなんて、ドラゴンの癖に全然かっこいくない。

「でもまずはパルクーウィを助けなきゃ」
 そう呟いて、目を閉じ、手を伸ばし、宣言する。

 アスピーダ
「《盾の森》、起動」
 瞬間、樹の幹から、己の核と同質の、煙結晶の晶柱が、足場代わりとなるようにせり出してきた。
 これからリリーが歩む道のりに合わせて、何本も何本も。

「ふふふ、地形戦で有利を取る――」
 別に何かと戦っているわけではないので戦闘じゃないのだが、地形線という響きはとてもかっくいいので、リリーは好きだった。

「いざ、てっぺんへ……!」
 ところで。
 三百メートルという高さを階段で登ろうとすると、どれぐらいの段数が必要だかご存知だろうか。
 ざっくり計算して、おおよそ千五百段から二千段である。更にもともとは迷路の壁を形成する《盾の森》であるからして、足場としての強度はともかく、階段として登ることを前提に高さのバランスも別に計算してあるわけではない。
 折返しもなければ踊り場もなく、性質上グルグルと螺旋階段のように太い幹の周囲を回らねばならないから、疲労は更にかさんでいく。
 結果として。

「ハァ……ハァ……ハァ……」
 へばった。
 肉体年齢十三歳にとって、ふつーに過酷な旅路であった。給水所とかもないし。

「……まだ? 後何メートル……?」
 疑問に答えてくれるものは居ない。とりあえず事実だけを述べると、上を見てもまだ全然天辺は見えない。

「……そ、そろそろ疲れてきたんだけど……」
 弱音を吐いても、聞いている者もいない。

「……………ハァッ」
 それでも、リリーは歩みをすすめる。
 ここで引き返して諦めるのは、『かっこいくない』。

 ◆

「大木の登攀か……いい修行になりそうだな」
 鍛錬は決して己を裏切らない……というのは間違いだ。
 己が何も裏切らないために行うのが、鍛錬だ。
 厳しい試練を課すのも、戦いに挑み続けるのも。

 己が求め、己が望み、己が欲する結果に辿り着く為のピースなのだ。

 フォルグ・ゴノラファ(人間のバーバリアン・f22575)は己の肉体に求める。
 強くあれ。
 どこまでも強くあれ。
 負けるな。
 決して負けるな。
 二度と失わぬために、この力で戦えるように。

 肉体は答える。
 ならば鍛えよ。
 どこまでも鍛えよ。
 虐め、叩き、痛苦を与えよ。
 二度と失わぬと決めたなら、どの様な状況であっても動けるよう。
 鍛えよ。
 鍛えよ。
 鍛えよ! と。

 その観点から見れば、大樹の登坂、というのは紛れもない鍛錬の場だ。
 素手で、己の体一つで登る。失敗すれば真っ逆さま。
 実に名誉ある戦いだ。無論、樹に挑む目的はそれだけではないが。

「はっ――――」
 手足の指の僅かな力を使って、重心をコントロールし、筋肉に己の運命を委ねる。
 溜まっていく疲労感は着実に動きを苛んでいく。
 実に良い高揚感だった。

「……む?」
 登坂の途中、樹から突き出ている水晶は進路上にあれば砕いて進んでいたのだが。
 今頭上にある水晶の上では、幼い少女が息を荒くして、へばっていた。

「大丈夫か?」
 と声をかければ。

「ひゃん!?」
 と、悲鳴が返ってきた。
 誰かが声をかけてくることを、想定していなかったらしい。

「だ……誰……!?」
 問いかけに、男はこう返す。

「猟兵だ、あんたと同じく、パルクーウィを助けに来た」

 ◆

「びっくりし――いや、びっくり、してない。してないけど……ふう」
 言い訳するようにつぶやきながら、リリーは呼吸を沈めるべく、大きな息を吐いた。
 その仕草を見て、フォルグはふむ、と(樹に指の力だけでへばりついたまま)首を傾げ。

「疲れているのか?」
「っ、別に――」
 疲れて、へばったので、休んでました。
 というのは、なんとなく『かっこいくない』気がする。
 けれど限界なのも確かであり、実際に疲れており、このまま無茶をしたら、肝心なオブリビオンと戦う余力が残らないかも知れない。
 むむむ、と少し口をとがらせてから、やがて小さくコクリと、リリーは頷いた。

「無理もない、この高さだ。むしろ一人でよくここまで登ってきた」
「……そう、かな……?」
「ああ、大したものだ」
「……かっくいいかな?」
「とてもな」
「……そっかぁ……」
 えへへ、とどこか上機嫌になり始めたリリーに、フォルグは尋ねた。

「途中までなら、俺が背負っていこうか」
「えっ!? い、いや、でも……」
「そろそろ新しい負荷を体に与えないと行けなくてな。誰かを背負って登るぐらいが丁度いい……俺の鍛錬に付き合ってくれないか?」
 そう言われれば。
 そういう言い方ならば。
 自分が頼るのではなく、自分が頼られるのであれば。
 少女のささやかなプライドは、ちゃんと守られる。

「……うん、わかった、乗ってあげる」
「助かる」
 フォルグは小さく笑うと、リリーをその背に乗せて。
 更に上へと、体を持ち上げた。

 ◆

「……高い所からだと麓の街がよく見えるね」
「ああ」
 樹の上から見る景色。
 パルクーウィが守り、そしてこれから自分達が守りに行くものだ。

「……タマゴ、取り返してあげたいな」
「……そうだな。――家族は一緒にいるべきだから」
 頂上は、もうすぐそこだ。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斬幸・夢人

おいおいおいおい……この樹登れってのかよ
まったく、こういう時ばかりはドラゴニアンにでも産まれたかと思っちまうね
……いや、この高さじゃ関係ねぇかな

やれやれと、いまいちやる気がのらないような仕草で
誰かが登りやすいルートを作ってくれていたらそれを利用して要領よく効率よく登っていく

まぁ煙草でも吸いながらゆっくり登っていくかね
美人が待ってるわけでもねぇし、急がば回れともいうし
急ぐ役は急ぎたいやつに任せるとするさ

いまいちやる気にかける言動をしつつ、しっかりと登りにくい場所や怪我をしやすそうな場所を勘良く見つけて修復しながら登っていく
上の様子を気にしつつ、どうすれば一番楽に解決できるかを考えながら


パルピ・ペルポル
まぁある種の財宝であることは否定しないけれどね。
溜め込むタイプのお宝でないのはわかりそうなものなんだけどねぇ。

木の上まではまぁ飛んでいくだけね。
突風で流されたりしないように、なるべく木の幹や枝の近くを飛ぶようにするわ。
風が強いときは幹や枝の陰でやり過ごすか、雨紡ぎの風糸を命綱代わりに適当に巻きつけましょ。
道中の動物には動物と話すで木の上まで行きたい旨と縄張りを荒らす気はないことを伝えて。
それでも敵対してくるならそこからは極力距離を置いて進むことにしましょ。

あ、他の猟兵が望むのであれば移動しやすいルートを探したりとかロープを結んだりもできると思うわ。



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 少なくとも木登りの間、全く出会うことのなかった二人の話

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「おいおいおいおい……この樹登れってのかよ」
 斬幸・夢人(終焉の鈴音・f19600)は高い木を見上げ、げんなりしながら呟いた。

「ドラゴニアンにでも産まれりゃよかったね……っつってもこの高さなら関係」
 ないか、と言おうとしたところで、まさにドラゴニアンの少女が翼を広げて飛んでいくのが見えた。

「……ないこともないのか」
 これからの苦労を考えるといまいちやる気も出ないが。
 行かないわけにも行くまい。
 自然に悪いかも知れないが、これぐらいは許してほしいと煙草に火をつけて。
 せめて効率の良いルートを歩もう、と斬幸は一歩を踏み出した。

 ◆

 パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)はフェアリーである。
 翅が生えている故、飛行はできるが、小さい分風に流されやすいので、幹や枝に沿って、空を飛んでいた。

「まぁある種の財宝であることは否定しないけれど……」
 好事家や生物学者から見れば、パルクーウィの卵は何に変えても手に入れたい代物だろうし、実際に高い価値はあるだろうが。

「溜め込むタイプのお宝でないのはわかりそうなものなんだけどねぇ」
 あるいは、外観がよほど綺麗で、宝石か何かに見えたのかも知れない。
 何にせよ、黄金龍の趣味は悪く、趣味の悪さで街と生物が被害を被っている。
 それを防ぐのもまた、猟兵の役目だ。

「キュキュキュ……」
「ん? あら、こんにちわ」
 パルピがふと目をやると、樹のウロからリスがそっと顔を出し、こちらをじっと見つめていた。

「ごめんなさいね、騒がしくして。君達に迷惑をかけるつもりはないの、少し上まで行きたいだけ」
「キュ?」
「ええ、そうよ。縄張りを荒らすつもりはないから安心して? あ、そうだ、ちょっとまっててくれる?」
 ひとつ下の枝にふわりと移動して、戻ってきたパルピの小さな手には……フェアリーにとってはバスケットボールサイズに感じられる、大きめの胡桃だった。

「あげる、皆には内緒にしなさいよ?」
「キュ!」

 ◆

「こっちか」
 ちょうどよい窪みに足の踏み入れ、力を入れて、体を持ち上げて、要領よく樹の幹を登っていく。
 一見垂直の樹ではあるが、表面の凸凹には癖があり、上手く見極めればさして疲れず上に上がれるルートが存在する。
 とは言え。

「目印があるのは助かるな」
 斬幸が視線を上げると、枝に結ばれたロープが見える。
 その導線に従って進むと、確かに登りやすい道が見えてくる。

「地元の住民……じゃないだろうな、先行した猟兵か。何にせよ、ありがたいことで」
 別に頂上に美人がいるわけでもなし、急いでも仕方ない。
 後続は先行者の開拓した、安全なルートを登るのが最も効率的というものだ。

「……ちっ」
 煙草が早くも尽き始めたが、この大自然様の中でポイ捨てするわけにも行かない。
 念の為に持ってきた携帯灰皿に突っ込んで、更に上を目指す。

 ◆

「一応、目印を付けておきましょ」
 枝から枝へ、幹から幹へ、くるりと一周見て回ってから、登坂する人間が登りやすいルートに目印のロープを巻いていく。
 こういう仕事も、翅を持ち身軽な自分の役目だろう。結果的には、パルクーウィを助ける戦力が増えることにつながる。
 いやまぁ、単に彼女が、見も知らぬ他人のことを自然に考えてしまうぐらい、おせっかい焼きなだけなのだけど。

「ひゃっ」
 不意に強い風が吹くと、この高さだ、身軽なファアリーは飛ばされそうになる。
 ぴんと体を支えたのは、命綱として念の為に巻きつけておいた、雨紡ぎの風糸だ。

「危ない危ない、気をつけないとね」
 人助けを考えて、自分が飛ばされては話にならない。
 気をつけていきましょ、と気を入れ直し、パルピは更に上へ進む。

 ◆

「キュ?」
「どーも。邪魔はしねえから通してくれるか」
 枝の上に降り立つと、一匹のリスがいた。
 じっとこちらを見つめてくるので、適当に声をかける。元より相手をする気はないが、小さいとは言え野生の動物だ、噛まれるとちょっと困る。

「キュ……キュ!」
 しかし、そのリスは、なにか思い立ったように駆け出し、幹をスルスルと登っていく。
 その途中でピタッと止まって、眼下の斬幸を見下ろし、首を傾げた。その仕草はまるで……。

「……ついてこいってか? 童話の世界か、ここは」
 試しに軽く登ってみると、ててて、とリスが少し先に進んで、また止まる。
 どうやら本当に、道案内をしてくれるらしい。

「ありがたいこって。守護者を助けに来たってわかってんのかね?」
「キュ!」
 答えは鳴き声だ。動物の言葉の意味などわかりはしない。
 そのありがたい先導役が、フェアリーの渡した胡桃のお礼だとは、勿論知る良しもないのである。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

跋・字


「大樹を登るなど老骨には辛い、辛い。」
「さあてどうしたものかあのう。」

さあてさて、であれば龍を呼ぼう、そう記そう。
此度の龍は空を飛ぶのが良い。大きな翼を持つ龍が良い。
ここに記すは【偽典・悪龍伝説】。雄大なる翼を持つ龍がここにいる。そう定める。

しかし暴れてもらうても困る。
故に【ゴッド・クリエイション】
儂が生命を与えた者に人間以上の「知性」を齎す。
帰りの足も必要故、おとなしく待機してもらおうか。

「さあて、龍の背に乗り樹の上を目指そうか。」


ヴィクティム・ウィンターミュート


いいね、実にシンプルなビズだ
パッパと倒して終わりにしちまおうぜ
まずは…木登りか。道具を使ってクライミングしてもいいが…物事は何でも、シンプルで、楽な方がいい
単純さは俺達に余裕を齎してくれるのさ

セット、『Alcatraz』
普段は防御用の多重障壁だが、使い方を変えれば…こんな風に、足場になる
木を囲むように螺旋階段を作ってもいいし、臨機応変に形状は変える
余った壁は外からの干渉を防ぐことに使ってもいいな
足場を使いたい連中がいりゃ、ご自由にどーぞ

はぁ、しっかし…ここんところ斬った張った、血生臭い殺人事件だの、邪神がどうたらだのの事件が多かったからかね
多少は気持ちが楽なもんだ
…ま、気は抜かないがね



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        描画の龍の背に乗って

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「大樹を登るなど老骨には辛い、辛い。さあてどうしたものかあのう」
 跋・字(独筆の隠者・f22644)を一言で表すなら、“黒衣を纏った枯木”である。
 最も、乾いているにしては太く大きい巨木ではあるが。

「お困りかい? 爺さん」
 樹の根元でそう呟く老人の姿を見つけて、声をかけたのはヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)。
 この世界に似つかわしくない様相の、電子と電脳の支配者である。

「何なら俺の階段を登ってくかい? ってもそれも辛そうか」
 指を鳴らせば、出現するのは実体化した電脳防壁だ。
 あらゆる攻撃を防ぐ万能の盾を、今回は足場にしてやろうというわけである。
 垂直に樹を登るより遥かにマシだろう……が。

「せっかくだがね、足腰も弱いものでねえ」
 太く、だが生命を感じさせない手を横に降って、老体はそう告げる。

「なら留守番してるかい?」
「いいや、いいや。わしは記す事しかできん者だ。書く事しかできん者だ」
 そういって……するりと取り出したのは、一本の筆。
 光沢の一切ない、使い込まれたことが伺える柄に、たっぷり蓄えられた筆先。

「さあてさて、であれば龍を呼ぼう、そう記そう」
 龍? とヴィクティムが首を傾げた瞬間。
 筆記は行われた。

 【其の姿は山を包む程に大きく】
 【人の言葉を解し応じる知恵を持つ】
 【風を裂き男を背に乗せ大樹を登る】
 【巨鳥の元へ駆けつける、雄大なる翼を持つ龍が居る】
 【龍が在る】
 【龍が存る】

 果たして。
 現れたのは、長駆。
 雄に長さ三十メートルを数える神蛇の如き応竜であった。

「ウィズ! ハハッ、成程、こりゃ本物の“ドラゴン”だ! いいねいいね! 爺さん、アンタ何者だい?」
「単なる物書きよ。記すことしか出来ん」
 出現した龍は頭を下げて、老人の体を己の背に乗せた。
 神が作りしその造形の瞳には、確かな知性が宿って見える。

「故に、龍を記したまでのこと。さあさ、龍の背に乗り樹の上を目指そうか。守護者の身元に参ろうか」
 あぁ、と、何かを思い出したようにヴィクティムを見下ろし、黒衣の向こうで、にやりと笑い。

「乗っていくかの? 坊主よ」
 答えは勿論決まっている。
 何せ端役を自称する仕事人のこの男といえど、まだ十七歳の男子なのだから。

 ◆

 龍が空を切り進む度に、全身を心地よい風が包む。
 徒歩で防壁を登るより断然楽だ――残しておいたから、もう樹を登れない、というものも居ないだろう。

「チル! こりゃいいや。俺も電子のドラゴンでも作ってみるか?」
 何せこの所、切った張ったが多かった。
 血なまぐさい殺人事件に、邪神の探索、その他諸々。
 手を出したビズが多すぎて、手は未だ回るが疲れはするものだ。
 眼下の景色を眺めながらの空の旅は、なかなかどうして悪くない。

「雷の龍か。それも良い。一つ記してみるとしようか」
「おいおい、この場でもう一体呼ぶって?」
「それしかできることがなくてのう」
 カラカラと笑う字は――不意に、その目を細めた。

「いくら記しても、いくら記しても、未だ天は見えず。この空の如き青空の果てにたどり着いた時、この筆は何を記せるやら」
 それは、求道者が見せる、傲慢なまでの心のあり方だ。
 今の形に満足など出来ぬ。
 

「そりゃあもう決まってるだろ、爺さん」
 ヴィクティムは、両手を広げて言った。

「書いた龍に乗っかって、巨鳥を救い、ジューヴを助けに行く、変わり者の物書きだろ」
 主役は勿論、アンタだ、と。
 主役を立てる、端役は言った。

「――――ハッハッハッハ」
 その笑い声が、肯定であったのか、ごまかしであったのかは、本人のみぞ知るところだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

久遠・優希

くっ、どうやら俺はここまでのようやな……。
俺の事は気にすんな!猟兵の本懐を遂げてくれ!
パルクーウィを救うんや!俺は、お前らを信じとるからな!!!
と、大樹の根元から登るみんなを応援するで【鼓舞1】

……大体みんな登った?
じゃ、ショートカットさせてもらおかな!
「白馬の王子様」で上に登った味方の付近までひとっ飛びや!
いやはや、絆の力とは美しいもんやね

高度が足らんかったり空中に出現したら?
すまんな、サンダース(馬)。俺はお前の事、忘れへんからな。
ヒーアーウィゴーーーーー!!!(馬を踏み台にしてジャンプ)


あ、誰かが危なそうやったら登るより人命救助を優先するよ
馬命?あいつはユベコでいくらでも出てくるし……


エミリー・クララ


ふははは!
つまりはエルフ随一にして、最強魔法を操る者!
このメイガスノワール・ロートロッソルージュの出番というわけですね!
任せてください、ちょっと大きい程度の木、我が爆熱魔法で消し飛ばして……え、そういう依頼ではない?
上に登る?
これほどの放ち甲斐のあるロケーションはそうないのですが……そういうことならば致し方ありません!

ふはは、何を隠そう我は故郷においても木登りを得意とした者!
森と生きるエルフにとっては木登りなど朝飯前!
【魔眼封―バロール】の視覚と空間把握の補助機能で、登りやすい場所を見つけながら、さっさと登ると致しましょう!



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

        約束された惨事によろしく

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「くっ、どうやら俺はここまでのようやな……!」
 高さ十メートル……すなわち最初の枝に登ろうとする段階で、久遠・優希(偽善者のワルツ・f22023)は胸を抑え、膝を付き、苦しそうに息を漏らした。
 登ろうと、なのでまだ地上である。リタイア速度最短であった。

「そんな――まだ一歩目ですよ!? もうちょっと頑張りましょう!」
 エミリー・クララ(爆熱の申し子・f21968)は、そんな久遠の肩をがっしと掴んで揺さぶった。
 そりゃもうすごい勢いで揺さぶった。ガックンガックン首が振れた。

「ちょ、あかん、やめっ、で、出る――っ!?」
「後ちょっとを百回繰り返すとゴールにたどり着けるんですよ、知ってましたか!?」
「気が長い!」
 腕を振り払い、演技ではなくマジで倒れ込み、久遠は息も絶え絶えに告げた。

「俺の事は気にすんな――過酷な登坂、脱落者が出るのは当然や」
「そ、そんな……でも、でも! 他に手段が!」
「ええんや……それより、先に進むんや!」
「ですが!」
「猟兵の本懐はパルクーウィを救うことと違うんか! ここで足を止めてる暇があるんか!?」
 何ということでしょう、リプレイ開始五行でもう修羅場。
 まだ一歩も進んでないのに!

「俺は、お前らを信じとるからな!!!」
「く、久遠さん……!」
「エミリー! 助けたれ! お前ならできる……いや! お前にしか出来へんのや!」
「……わかりました、必ず! 必ずやってみせます! 成し遂げてみせますとも!」
「そうや……行け! 行けエミリー!」
「はい! 吾、此処に煉獄の門を開かん。我が血と銘の契約に応じ――――」
「待て待て待て待て待て」
 関西インターセプトによって、エミリーの爆裂呪文の詠唱がキャンセルされた。

「えっ?」
「何で今詠唱したねん」
「いや、だって行け、エミリーといういうので……」
「樹を登るんやろ? な?」
「あ、そうでした」
「爆裂させたらまずいんと違うか?」
「しまった……! 私としたことがつい、空気といつものノリで……!」
「あかんあかん、それじゃあかん。余力を持って頂上につくねん、力使い果たしたらあかんて」
「ふはははは! 大丈夫、同じミスに三回目はありません!」
「二度目あったら致命傷やけどな!」
「なんだか結構元気残ってませんか?」
「ごほっごほっあー辛いわもう一歩も動けへんこれは100%無理やわ後は任せるわ」
「やはり……っ! 久遠さんの遺志、私が継ぎます!」
 殺すな。
 というツッコミを何とか飲み込む。
 エミリーには“樹を登ってもらわなければ困る”からだ。

「……ちゃんと樹ィ登れる? 大丈夫?」
 急に不安になってきた久遠に対し、エミリーは堂々と胸を張って答えた。
 その乳房は平坦であった。

「ふはは、何を隠そう我は故郷においても木登りを得意とした者! 森と生きるエルフにとっては木登りなど朝飯前ですとも!」
 わざわざばっとマントを広げて、片手で右目を隠し。

「【魔眼封―バロール】――――視野解放! はああああっ!」
 すたーんすたーん、と勢いよく飛び跳ね、枝から枝へと飛び移っていく。

「おお、マジでイケるやん……」
 あっという間に見えなくなったエミリー。
 久遠はそこでようやく、にやりと笑った。

 ―――― 一時間後。

「そろそろええやろ。行くでサンダース!」
『ヒヒーン!』
 ユーベルコード、白馬の王子様は、白馬に乗って現れることで仲間と合流する能力である。
 すなわち!
 誰か一人頂上にたどり着いていれば!
 悠々と疲れること無く!
 ワープ可能!

 これはバグではない!
 仕様である!

「いやはや、絆の力とは美しいもんやね――――」
 ぱぁぁー、と出現した光の道をくぐり、久遠の視界の先に現れたのは――――。

 ◆

「ぷしゅるるるるー」
 空中を落下していくエミリーであった。

「なんでやねん!!!!!!!!!!!!」
 そのエミリーに座標を合わせて合流してしまった久遠もまた、空中に放り出される。

「はっ! しもた――くっ! サンダース!」
『ヒヒーン!』
「すまんな――ヒーアーウィゴーーーーー!!!」
『は?』
 馬を足場に、飛び跳ね跳躍!
 空中でえみりーをキャッチし、足場に飛び移る!
 代償に、サンダースは落下していった。
 さらばサンダース、お前のことは忘れない。
 どうせユーベルコード使うたびに出てくるし。

「ぴるぴるぴる……はっ! ここは……」
「枝の上やけど、なんやお前、どうして空から落ちてきてん」
「あれ、久遠さんじゃあないですか。動けなかったはずでは?」
「トイレ行ったら治ったわ」
「はあ……いや、ちょっと美味しそうなりんごがありまして」
「ほう」
「おひとつ拝借しようともぎ取りまして」
「ほうほう」
「その林檎の枝を縄張りにしてた土着の動物に滅茶苦茶追い立てられて落下しました」
「食い意地が張っとるからやないかい!!!」
「だぁーって喉乾いたんですよぉー!」
 やいのやいのいいながら、二人はしばし、樹を登ることを忘れて、言い争いを続けていた。
 ……ちなみに現在地点は、未だ樹の中腹辺り。
 果たして、二人は無事に、天辺にたどり着けるのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

オーレリア・エフェメラス
誰か先についた人のところへワープしてしまってもいいんだけれど
それはちょっと無粋だよね
そうしたらボクも一緒に登っていくよ
景色も楽しみたいし、薬の材料になる草も見つけられるかもしれないしね

小人を召喚して、登りやすい場所や見どころなんかを聞きながら案内してもらうよ
登った先から見渡した景色はきっと綺麗だろうから

苦戦してる子がいたら手助けを
ほら、手ぐらいは貸せるからさ
こうして登る事にしたからには、誰かと話しながらの方が楽しいだろうしね
もちろん迷惑じゃなければ、だけど

珍しい草やキノコがあれば採集してトランクの中へ
取りすぎるようなことはしないよ、分けてもらうだけだからね
さぁ、もうすぐ目的地
初陣だから頑張ろう


御剣・狂死郎

このどでかい木の頂上まで行かなきゃいけないのか……

特にショートカット出来そうな技能もないので地道に登ります
途中で何かに絡まれそうなら基本的には逃げの一手でとにかく上を目指します。
逃げきれなさそうとか到着が間に合わなさそうとかまずい状況なら【妖剣解放】も使用して速度を上げます。樹を傷つけるのはまずいので高速移動だけ使います
それでも戦わざるをえないようなら殺さないように峰打ちで対応します。
罪のないものを殺すのは避けたいですし現地の人に迷惑をかけるわけにもいかないですからね

……なんとか間に合うと良いんだけどなぁ



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        小さく不思議な柔らかい旅路

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 御剣・狂死郎(ヤドリガミの妖剣士・f22009)は剣士であり、妖刀である。
 背丈は短く、まだまだ幼い風貌の少年であるが、そもそもヤドリガミだ、外見と精神の年齢はあまり密接に関わっては居ない。
 しかし妖刀のヤドリガミが故に『とりあえず斬ってから考える』みたいな癖がある。
 故にこの場合。

「………………」
『モ。モモモ。モ、モモモ』
 キノコだった。いや、樹を手早く登っている最中、キノコがあるので珍しいな、と近寄ったら立ち上がり、こちらを見て、何やらうねうね動き始めた。
 なんだろうこの存在、動物なりなんなりであれば、なるべく戦わずに逃げるか、峰打ちで済ませようかと思っていたが、これはオブリビオンなのだろうか。それとも土着の生物なのだろうか。

「やあ。すまない、驚かせてしまったかな」
 その膠着を破ったのは、背後から聞こえてきた、耳に心地よい余韻を残す、中性的な声の持ち主だった。

「?」
 振り向けば、そこに居たのは、眼鏡をかけた女性――だった。
 硝子でできた小さな冠、白いコートにふわっと広がる黒いスカート。
 けれどその印象はなんとなく、“王子様”という言葉を連想させる。

「この子達に道案内をしてもらっていたのだけど、少し先行していた子がいてね。おいで」
 女性が手を伸ばすと、キノコは這いずるような動きでもそもそと近寄り、差し出されたその手のひらの上に乗った。
 よく見れば、後ろにはぬいぐるみだったり、小人だったり、はたまた何であるかよくわからない生物だったりが、キノコも含めて総勢十体程。

「その……その子達は何ですか?」
 興味本位で尋ねた狂死郎に、女性は柔らかく微笑んで答えた。

「フフ、ちょっとした、愉快な仲間達だよ」

 ◆

 オーレリア・エフェメラス(ガラスの向こうのメッセージ・f22027)は“アリス”だ。
 少なくとも、彼女自身は己をそう定義している。
 過去の記憶がなく、寄る辺となる思い出がない。
 そのような存在を、皆がアリスと呼ぶのだから、自身だってそうなのだろう、と思っている。

「おや、これは貴重な物かな?」
『ソ、ソダヨ。ソウソウ。ソーウ』
「じゃあ、少しだけ分けてもらおうか」
 根っこを器用に動かして歩く、顔のついた花が、材料になりそうなものを見つけては教えてくれる。
 白い花を積んで、枯れない様に根に水を与え、トランクにしまう。引き抜いた瞬間、みゃあ、と辛そうな声を上げた花だったが、二秒後には動き回って探索を再開した、元気だねキミ。
 この様に、彼女の従える愉快な仲間達は、ちょっとばかり個性的だった。
 そんな彼らに道案内を任せて登る大樹の旅は、なかなかに楽しい。
 動物たちも敵対的ではなく、肩に登ってくるリスもいるほどだ。

「あの」
「ん? どうしたんだい?」
 道中、一緒になった少年が、戸惑いと焦りの入り混じった声で言った。

「いえ、急いだほうがいいんじゃないかな、と……間に合うでしょうか」
「ああ……そうだね、ごめん、ついつい。けど、ほら、もうすぐ頂上だよ」
 指差す先、空の果てには、もう陽光を遮る葉も枝もない。

「それに、見てご覧」
 それから指を眼下に下ろせば。
 人々の営みのある街が。
 無限に連なる山脈が。
 空に浮かぶ浮遊島が。
 どこまでも広がる広大な草原が。
 一望出来た。これだけがこの世界の全てではないのだろうけれど。
 それでも、そうなのではないかと思ってしまうほど。

「この景色を、ボク達は守りに来たんだ。そう思えば……やる気もでるんじゃないかな?」
 少年、狂死郎は、妖刀のヤドリガミだ。
 まだ斬ることしか出来ず。
 まだ斬らずに終えることを知らない。
 けれど、意思を得て、自我を持ち、朽ちる前に――生きて、確固たる存在としてこの世に生まれた瞬間から。

「――はい、すごいと思います」
 何かを思い、何かを感じ、何かを守ろうとする、柔らかな感性があった。
 そうでなければ、樹を傷つけないように、と強く足を踏み込まないよう気を使ったり。
 動物達と極力接触を避けようなどとは、思わないだろう。

「ボクは、猟兵としては、この戦いが初陣なのだけど」
 オーレリアは、肩の愉快な仲間を一つ撫でて、尋ねた。

「キミはどうだい?」
「はい、僕も初陣です」
 ですけど、と。
 小さな妖刀は言った。

「だけど、斬るのは得意だから、任せてください」
「……そうか。じゃあ、頼りにしてるね」
 一つ枝を登れば、目的地。
 ついにすべての猟兵が、パルクーウィの巣にたどり着いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ランダム・エッグ』

POW   :    いないヨ!ここにはいないヨ!
自身と自身の装備、【殻から出ている体の一部が触れている】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。
SPD   :    これでもくらエ!
【高速で飛ばされた卵の殻】が命中した対象を切断する。
WIZ   :    助けテ!
自身が戦闘で瀕死になると【自身が擬態していた生物の成体】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 巨鳥パルクーウィの卵は、産卵から孵化するまで一年以上の月日を必要とする。
 卵生生物としてはあまりに長い期間ではあるが、そのサイズを見れば納得もするだろう。
 なにせ平均的な成人男性の背丈を、軽々と超えてしまうほどの大きさなのだ。
 良くもこんなものをいくつも産んだものだと、感心してしまうほどに。

《パルゥ……!》
 しかし、今パルクーウィの前にあるのは、愛情を込めて温め続けた卵ではなかった。

『オカーさん、おカーサん!』
『ホラホラ、あったメテ!』
『キテよ、こっちおいデ!』
 ひび割れの向こうから除く、魔物の体の一部。
 じっとりと湿っているのは、パルクーウィの返り血。
 不意打ちで襲いかかれば、如何にパルクーウィが強くとも、傷をつけることが出来る。
 卵の形をした化け物は、ズルズルとその赤色を啜りながら鳴き喚く。
 彼らの主人たる黄金龍はその役割を終えたのだ、ならば報酬として餌を受け取るべきだろう。

《パルルルルル……!》
 一触即発、しかし、ランダムエッグ達の数は多い。
 囲まれ、襲われれば、ひとたまりもないだろう。
 ……誰も助けに、来ないのであればの話だが。

「よっと!」
「到着!」
「あれ? 結構ピンチ?」
「もう始まってんじゃん!」
 次から次へと、大樹の踏破に成功した猟兵たちが、パルクーウィの巣にたどり着いた。
 ランダムエッグ達が、ぎょろりとその視線(?)を集う者たちへと向けた。

『エサ?』『エサだネ!』『あたらシーごハンだネ!』
 言い返すように、誰かが告げた。

「どっちがエサだか試してみるか?」

● 補足 ●
 ・集団戦です。敵は複数おり、広範囲の攻撃でどかーんしたりばかーんしたりしても大丈夫です。
 ・プレイングに特別明記がない限り、大技なども樹をなるべく傷つけないように行います、ご安心ください。
 ・パルクーウィは猟兵達の邪魔をしませんが、こちらから話しかけたり協力を求めたりすることは可能です。
 ・敵は基本的に「こちらが使おうとするユーベルコードの属性」と同じユーベルコードを使用します。

 ・あえて樹を破壊する、パルクーウィを攻撃する、といったプレイングは採用致しません。
 ・足場は広く、よほどのことがあれば落下したりはしません。ご安心ください。

 プレイング受付は10/11(金) 8:30~ です。
ヴィクティム・ウィンターミュート


よーし、ビズのメインフェイズといこう
つってもまぁ…俺ぁあくまで添え物だよ
ちょいと主役が演りやすくなるように、ってね
そんじゃ、一つ物事をシンプルにしてやるとするか

【挑発】と【おびき寄せ】で攻撃をこちらに向けつつ、変形させた二刀ナイフによる【二回攻撃】で接近戦
右の仕込みクロスボウを使い、【クイックドロウ】と【スナイパー】による即時精密射撃で中距離戦
2つのレンジを使い分けて効率よくダメージを与える

──来たな、援軍がよ
セット、『Nighty night』
指定対象、エッグが召喚した全て
深く、深く…微睡に墜ちろ

傷が付く前に眠っちまえば、治癒も無意味だ
起きた時にはバカみたいに弱くなって──
フラットラインさ


マギア・オトドリ
「……敵は思ったより、たくさんですね。でしたら、正面に立って対応しましょう」

指を鳴らし、高速戦闘モードに移行、接敵します。
右腕の「code=MAG:1A」の効果を発動。激痛に耐えながら、自身の拳と腕力を強化(怪力)。そのまま強化された右の拳で、殻の隙間から覗く生物を潰します。

当然相手からの反撃も予測されます。
飛び出してくる爪や触腕、そして先程攻撃した際に確認した鋭利な殻に注意し、強化状態の拳で打ち払っていきます(グラップル)。その際、相手の攻撃が、周囲近辺や背後に存在する味方に命中しないよう、打ち払い、弾く角度に注意して対応していきます。
寿命や負傷は度外視です。そのまま、戦闘を継続します。



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

   BATTLE1 Killing&biz

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「ギャフフ……」
「ググ、ググググ」
「グゲッ、グゲッ」
 醜悪な本性を晒す卵の中の魔物達が、じわりじわりとパルクーウィに、そして相対する猟兵達に忍び寄る。
 敵の数は、想像と想定を超えて遥かに多かった。
 故に、マギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)の対応は……。

「でしたら、正面に立って対応しましょう」
 幼い外見の少女がそれを行うには、あまりに非力であるように見える。
 しかし、マギアの本質は――兵器である。

「高速戦闘モードに移行」
 指を鳴らし宣言すると、展開した鋼鉄水晶の透明度が増していく。
 無骨な金属は透き通った結晶へと変じ、少女が持つ“機能”を作り変えていく。

「――――接敵します」
 踏み込んだ瞬間、体は一気に加速し、進路にいた卵を一つ、叩き割った。

「グ―――げ?」
 ごん、がんと跳ねて転がり、大樹から落下を始める頃には、次の個体への攻撃を始めている。

「《code=MAG:1A》起動」
 ひとりでに包帯が解け、右目に刻まれた“機構”が顕になる。
 右腕の刻印に連動し、発動する“超常”は、信じがたい苦痛と引き換えに、限界を超えた力を発揮する。
 最も―――マギアに苦しんでいる様子は、全くもって見られないのだが。

「ギァッ!」
 またたく間に仲間がやられたランダムエッグも、無論黙ってはいない。
 爪を伸ばし、牙を立てて、小さな体をグシャグシャに踏みにじろうと攻め立ててくる。

「その反撃は―――」
 拳で受けて、打ち払う。
 顔面すれすれで避けて、返す拳を叩き込む。

「予測済みです」
「ガッ」
 小さなひび割れの中に、無造作に右腕を突っ込んで、“中身”を掴む。
 柔らかいが、硬質な部位もある。
 張りがあって、暖かくて、たしかに生きている。
 それをしっかりと認め、頭部を確かに捉え。

「ギャッ、ガッ、グェッ、グギ―――」
 グシャ、と温かいものが潰れる音がして、卵は動かなくなった。
 隙間から、ダラダラと赤い液体が溢れ、足元を濡らすことに、マギアは一切動じなかった。
 視線を群れに向けて、“次はどれにしようかな”という見定めを、行っているだけだった。

「ギャ」「グエ!」「ゴォッ」「バグッ」
 順番に、次々に、“作業”を終えて、最後の一匹に目を向ける。

「ギッ」
 その時。

「ギェァアアアアアアアアアア! ギャアアアアアアアアアア!!」
 ランダムエッグが、高い咆哮を上げた。
 動揺はしないが、その動作の意味を考え、そして結論が出るより早く、答えそのものがやってきた。

『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 パルクーウィには及ばずとも、マギアの三倍以上の体躯を持つ、空飛ぶ爬虫類。
 ワイバーン、と呼ばれるたぐいの魔物だった。

 ランダムエッグの悪辣な所は、知能の低い魔物相手ならば『擬態』を続けられる所にある。
 すなわち、野生の魔物程度ならば、こうやって振る舞うことが出来るのだ。

『タスケテ! タスケテ! コイツラガイジメテクルヨ、オトウサン! オカアサン!』

 大樹に住まう現住生物は、動物だけではなかった。
 もとより、この大量のランダムエッグ達も、樹の中の他の生物の子供として擬態していたのだろう。
 なんにせよ、出現したワイバーンの牙は、高速戦闘を続けるマギアに向けられていた。

『ガルァアアアアアアアアアアアアアア!』
 我が子を傷つけられたと勘違いした飛竜の爪牙を避けながら、マギアは考える。

(――敵性存在を確認)
(――排除は、容易)
(…………)
 始末するなら、飛び上がって、首をへし折ればそれでいい。
 ……このワイバーンに罪はない。
 関係ない、障害は排除すべきだ。
 ……ランダムエッグに騙されているだけだ。
 関係ない、立ちふさがる以上は敵だ。
 ……彼らは子供を心配している。
 関係ない、救助対象はパルクーウィである。
 ……そのパルクーウィの子供を助けに行くのに?

「っ」
 チリ、と頭の中に微細なノイズが走る。
 瞬時に戦闘機動を行い、無力化すべきなのに。
 強化人間にあるまじき、その僅かな挙動の停止の隙を、野生の本能は見逃さなかった。

『グァアアアアウ!』
 足の爪の一撃が、心臓をえぐるように迫る。
 判断ミスを精査する時間もない。

(負傷―――)
 遅いくるダメージを前に、それでも目を閉じない少女の眼前で。

「シィ――――――」

 がくん、と、ワイバーンの体が突如脱力し、地に落ちた。
 ずんと樹が少しだけ揺れて、すぐに収まる、がさがさと枝葉が揺れて、頭の上に落ちてきた。

「……?」
 死んだ、わけではない。
 だが、意識を喪失している。
 眠っている、ように見える。

「夢を見てるのさ、いい夢を。起こさないほうがいいと思うぜ」
 人差し指を顔の前に立てながら。
 現れた半身機械の男は、ニヤリと笑った。

 ◆

 時は少し巻き戻り。

「よーし、ビズのメインフェイズといこう」
 ヴィクティム・ウィンターミュート(impulseofArsene・f01172)は効率よく、シンプルに“狩り”を行っていた。
 誘い、引き寄せ、切り裂き、蹴落とし、、遠くにいれば打ち抜き、穿って、爪が届く前に始末する。

「むしろ警戒すべきは――――」

「ギェァアアアアアアアアアア! ギャアアアアアアアアアア!!」

「――“あれ”だな」
 悲鳴に釣られ飛んでくる飛竜を見て、ヴィクティムは目を細めた。
 枝に飛び乗ってみれば、猟兵の少女に、無数のランダムエッグの死骸、そして生き残りのオブリビオンが助けを求めている、という状況だった。
 ランダムエッグの生体を考えれば、擬態を最大限に活かすだろう。
 同族を助けようとする……『愛』という名の、生物としての性(バグ)を利用するに違いない。

「だけどそりゃあルール違反だ、ダミーの親子愛は笑えないんでね」
 魔物に気を払う義理はないが、与えられたオーダーは“樹の生態系を崩すな”だ。

「このために用意したわけじゃないんだがね―――」
 右手を振るう。空中に展開する電脳ディスプレイ群の一つを拳で叩き、中身を引きずり出す。

 [>SleepCode『Nightynight』

 [>Y/N

 Y e s
「良い夢を」
 コマンドは正しく受け付けられ、プログラムは正しく機能した。

 ◆

「ウィズワームもこうなっちまえば可愛いもんだ。よう、無事……でもなさそうだな。おいおい、随分と無茶しやがる」
 自己の損傷を一切厭わない戦い方の結果――一番大きなダメージは、ユーベルコードの代償だが――マギアの様子を見て。
 普段の己の戦い方を、身の振り方を、あり方を、完全に徹底的に究極的に棚に上げた後に扉を閉じてついでに釘で打ち付けて電子ロックをかけて、ヴィクティムは困ったように言った。

「この程度の損傷なら、継戦可能です」
「そう言える内が花だぜ、ジューヴ?」
 ぱちん、とヴィクティムの指が鳴る。
 かくん、と少女の膝が折れて、倒れる前に、マント越しにその体を受け止めた。

「あ……」
「少しだけ寝てな。お前さん、体に負担をかけすぎだ」
「問題、ありませ……戦闘、続行、できま……」
「今抵抗できないのが、何よりヤラれちまってる証拠だよ」
 この戦いが終わるまでの、ほんの少しの間だけ。

「メインのビズはこの次だ。安心しな、戦力解体のプログラムは外しておく」
 強制的な、普段は自覚しようとさえしない微睡みが、マギアを襲った。

「今はゆっくり、おやすみ。――――起きたときにはもう手遅れ、なんて言わないさ。ちゃんと起こすぜ?」
 いい戦いだった、と告げて。
 主役の戦いを支える、端役を名乗る男の、胡散臭いのに、どこか人懐こい笑顔が、マギアが意識を失う前に見る最後の姿だった。

 ◆

 なお、十分で目覚めた。

「スワッグ! 嘘だろ!?」
「……お腹が空きました」
 頑張れマギア・オトドリ。
 ちゃんと食べられるのはパルクーウィの卵を救出してからだ!

「……………」
「いや、あの卵は食うのやめとけ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォルグ・ゴノラファ
○偽の卵どもに飛び込み、【捨て身の一撃】で適当なやつを叩き潰すとしよう。 残った奴らの目を引けるように、意図的に無残に。
こっちへ集ってこい、卵ども。そんな意識があるかは知らないが、お前たちの家族を、この俺が殺したぞ。

その後の卵どもは薙ぎ払いながら対処するつもりだが、透明になったら、見破るすべは俺にはない。
その時は、【武器受け】など最低限防御はするが、あえてダメージを受ける。
傷を負った方が、きっとこちらに集中し続けてくれるだろう。多少の【激痛耐性】はある、耐える【覚悟】をするとしよう。

だが、俺は見逃すつもりはない、透明化の綻びを。
少しでも姿を見せたら……それが、俺の【uc】が放たれるときだ。


コフィー・ファミオール

親にとって大事な卵たち、それを……許さないよ!
即座にパルクーウィと敵の間へ陣取るようにダッシュ

想像以上にどデカイ卵に面食らいながらも、小さいより当てやすいと拳を振るう
パルクーウィへ攻撃が向いたらそちらの迎撃

……あれ?なんか数が変?
もう倒して……でもこんなでかいの見逃すわけないし
違和感を感じてバックステップ、パルクーウィの傍へ
「あのあのお願いがあるんだけど!あそこらへんにバサバサー!って風送ってもらっていい?」
自分も両腕を翼のようにぱたぱたさせながら

起こる風へついでに拾った落ち葉や小枝を乗せる
風の流れ、抜き抜ける葉の動きを見ながら駆け抜け
「たぶん、そこ!!」
不自然な空間へ全力で【裂空昇】を放つ



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

   BATTLE2 Wind&Power!!

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

「グギ、グッゲゲ、グギ」
 ランダムエッグ……卵に擬態した魔物で、そもそも何かの子供ですらない。
 故に、中身は立派な魔物の生体であり――――。

「グゴギャグガッ!」
 フォルグ・ゴノラファ(人間のバーバリアン・f22575)によって叩き潰された中身も、しっかり肉と骨を持った生命のものだった。

「こっちへ集ってこい、卵ども」
 力づくで、強引に、意図的に中身をぶち撒けまける。
 あえて作り出した無惨な死体を前に、大体の生物が抱くのは二種類の感情だろう。

「お前たちの家族を、この俺が殺したぞ」
 自らもああなるかも知れない、という恐怖か。
 良くも仲間を殺したな、という憎悪か。
 しかし残念ながら、身勝手な魔物達が抱いたのは前者だったらしい。

「グゲッ!」
「ニゲロッ! ニゲロッ!」
「アイツ、ツヨイゾ!」
 卵の中からはみ出た爬虫類の腕が振れると、みるみると景色に馴染み、透明になっていく。

「ちっ」
 姿を消されてしまえば、見破る術はない。
 襲ってくれば受けに徹して、攻撃された瞬間を殴り飛ばすつもりだったが、逃げに徹されたら厄介だ。

 ――人の家族を奪っておきながら。
 ――家族を、仲間を殺されれば、我が身可愛さの保身に走る。
 ――何という身勝手か。

「逃さん……!」
 目に見えずとも、そこに“居る”のであれば――――!
 離れていく気配を追いながら、フォルグは走り出した。

 ◆

《パルル……》
「コロセ! コロセ!」
「アイツヲコロセ!」
 ランダムエッグ達が、一斉にパルクーウィへと向かっていく。
 この戦い、卵達にとっては、パルクーウィを仕留めれば勝利なのだ。

 ……この母なる翼を仕留めれられれば、この厄介な猟兵達は、黄金龍の元にたどり着くことが出来ないのだから!

「おーっとっ!」
 勿論、それを見逃すほど、彼らは甘くない。
 一陣の風の様に……いや、風そのものとなって。
 傷ついた巨鳥と、攻め込む卵の間に割り込んだコフィー・ファミオール(この空に響く小さな音を奏でる・f21569)は、怒り心頭を隠さずに告げた。

「大事な卵たちを奪っておいて……許さないよ!」
 親はとっても大事だ。
 人と出自と違うこの身ですら、母と慕う人が居る。
 その愛情あっての自分だ、だったら。
 親が側に居ない卵は、きっと不安に違いない。
 産まれてすぐに見るものが、自分たちを守ってくれる母親ではなく、牙を向けてくる敵であることなどあってはならない。

「でっかいなぁ…………いよいしょっ!」
「グゲッ!」「ゴフッ!」「ブグェッ!」
 助走をつけた蹴りと、拳が、風をまとって卵を叩く。
 硬い殻をぶち破って、中身をぶっ飛ばせば、もう動くことはなかった。

「うん、よゆーよゆー、来るならがんがん来いっ!」
 ダチョウの卵よりもでっかいけれど、それはつまり殴りやすいということだ。

「これならいくら来た所で……うぇっ」
 背後に衝撃、続いて前からも。
 とっさに身構えてダメージを防ぐが、なんだか違和感が――。

「あ、あれ、思ったより多いかな……?」
《パルル……》
 パルクーウィが、唸るように鳴いた。
 それは、コフィーに「逃げろ」と告げているかのようだった。

「そういうわけにも……あ、そうだっ!」
 とんとん、とバックステップで、卵達から視線を外さず、パルクーウィに近づいて。

「あのあのお願いがあるんだけど! あそこらへんにバサバサー! って風送ってもらっていい? 傷が痛むかも知れないけど!」
 指差す先は、卵の群れだ、両手をば上下にぶんぶんふると、パルクーウィは小さく頷いて。

《パルルルルルルルルルル!》
 その雄大な翼を、大きく羽ばたかせた。

「グェ!?」「ギョッ!」「オウ!」
「――――やっぱり!」
 風に撒かれて、落ち葉や枝までもが一斉にランダムエッグに向かって襲いかかる。
 透明化していた卵達に、それらがベタベタと張り付いて――――。

「みぃーっつけ、たっ!」
 風の動きを、風の流れを見るのは、大得意だ。
 巨鳥が生んだ風の一部を腕で巻取り、推進力に変えて。

「たぶん、そこぉ!」
「グギィッ!」
 がっ、と殴りつけた空間が、ビシビシとひび割れた。
 いや、透明になっていた、巨大なランダムエッグが砕けていく――――。

「隠れてるんじゃ――――なぁーいっ!」
 衝撃で浮き上がる卵。
 そこに――――。

「姿を表したな」
 “上から降ってくる”何者かが、拳を構えた。

「――――まとめて砕け散れ」
 ゴ、ゴガッ、と二度の衝撃が走った。
 一度目は、打ち上げた卵を打ち据える拳。
 二度目は、それが太い枝の地面に突き刺さり、巻き怒る衝撃波の音。
 周囲に集っていた卵達もまとめて、その豪腕が吹き飛ばす。

「――――――無事か?」
 拳を振り抜いたフォルグが顔を上げると、乱入者にぽかーん、と口を開けたコフィーが、はっと我を取り戻し。

「勿論! えへ、やるじゃん、おにーさんっ」
 バシバシ、とその背中を叩いた。
 む? と目を白黒させるフォルグは、首を傾げながらも、油断なく戦場を見渡し。

「……このあたりにいる卵は片付けたか」
「みたいだねー、よしよし、パルクーウィ、安全な所にいてね!」
 二人の猟兵は、次のターゲットを探して歩き出す。
 敵をすべて倒すまで、戦いは終わらないのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

黒羽・烈火
ハローベイビー!スクランブルエッグはお好き?あぁ、答えずとも結構。返答に関わらずそれ以外の就職先はなーんにも用意されていないので。

数を押しつぶすには数。自分の肩を一発ぶち抜いて、私の仕事仲間を召喚させて貰うよ。あぁ、傷については心配してもらわずとも結構。吸血鬼らしく、近づいてきた奴等を【吸血】し、【生命力吸収】して回復させてもらう。んでもって、私達も加わる。我が麗しき女王陛下の迫撃砲による【範囲攻撃】で吹っ飛ばす。

んでもって…最近手に入れた、この『暁月夜』の試し切りの相手になってもらおう。触れなきゃ、私を消せないんだろう?さぁ来い、近づいて来いよベイビー共。殻ごとたたっ斬ってやるからさ



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

   BATTLE3 Ghoul&Egg

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「ハローベイビー! スクランブルエッグはお好き?」
 ギイギイとうなり、ひしめくランダムエッグ達を前に、黒羽・烈火(重装甲擲弾猟兵・f21983)は口の端をあげながら告げた。

『ギギ――』
『スク?』
『グゲ……』

「あぁ、答えずとも結構。返答に関わらずそれ以外の就職先はなーんにも用意されていないので」
 もっとも、返事を聞くつもりもないし、返答を求めているわけでもない。
 ただし、向こうはこちらを敵と認識したらしい。
 鋭い魔物の爪を、殻の中からむき出しにして、まもなく襲ってくるだろう。
 何体居るかわからない雑魚どもの群れに押しつぶされて、“ぐちゃぐちゃ”になるのは烈火の方だ。
 ……このまま、その蛮行を許すのであれば、だが。

「さぁ仕事だよロクデナシ共、起きろマヌケなロクデナシ共。腹一杯喰っていい、何せ見るからに“餌”だからね」
 自らの肩に銃口を当てて、トリガーを引く。
 弾丸が肩を貫く、血の赤が、樹皮を濡らした。

「皆殺しだ」
 ズズズズ、と、こぼれた血以上の質量が、飛沫の一つ一つに集っていく。
 それは徐々に人の形をした群れを形成していく。

『グギ……!?』
『ゲ、ゲゲゲ……?』
 ランダムエッグの一体が、爪をその人型に向けた。
 あっさりと腕を切り飛ばし、『ギギ!』と歓喜の声をあげた。
 何だ、コイツラは弱いじゃないか。
 怯えて損をした、殺してやる。
 そんな内心が聞こえるようで。

「…………ぁぁぁぁっぁ」
 肝心の、切飛ばされた方は、そんな事、意にも解さずに、白い殻を体ごと抑えこんできた。

『ギィッ!』
「あ、あ、ああああ…………」
 ミシミシと、体全体に圧力を加えてゆく。
 ヒビが入り、中身が圧迫され、歪んでいく。

『ガ、ギャ、ギャアアア! アアアアアア!』
「あああああぁぁぁ…………」
 苦悶か、嘆きか、絶望か。
 読み取れない感情の叫びを上げながら、死者は卵を押しつぶした。
 グシャリと音がして、“ぐちゃぐちゃ”に。

「さぁ、続け」
 その有様を見て、足を止めた個体を無造作に掴んで。
 “中身を吸い上げながら”――烈火は告げた。

「襲え悶え狂え汚せ潰せ殺せ」
 死者の群れが、一斉にランダムエッグたちに襲いかかる。
 “調理”は始まった。もう誰も逃げられない。
 生命の危機を目前にして、ようやく逃げ出そうとしても遅いのだ。
 出会うべきではなかった。この化物に。

「あぁ、女王陛下の下賜だ、背を向けるなんてご無礼だろう?」
 シュゴ、と引き起こす破壊に対して控えめな発射音が響いた。
 
『ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 ミサイルによる爆撃だ。逃げ出そうとしていた個体がまとめて吹き飛び、爆炎が上がる。
 樹の保全? ここは戦場だ、知ったことか。
 炎と煙に撒かれて、逃げ道すら失った者たちが、殻の向こうから必死の目を向ける。

 返り血を浴びた女の体には、もう傷一つない。
 手に入れたばかりの獲物――――『暁月夜』を片手にぶら下げて。
 烈火は笑った。

「さぁ来い、近づいて来いよベイビー共。殻ごとたたっ斬ってやるからさ」

成功 🔵​🔵​🔴​

日向・史奈


……と、到着する前は情けない所を見せてしまい、助けてもらいましたが
助けてもらってばかりもいられないので、まずはこのとんだ入れ替わりのお話のような敵を倒さなくては
私だって、やれば……出来るんです

たくさん卵があるんなら、少しでも攻撃する手段を増やさないと
分身する技を使って、それぞれでスピリットヒーローらしく、竜巻や水など自然の力を利用した範囲攻撃の魔法でランダムエッグ達を一気に攻撃します
飛んでくる卵の殻は分身と一緒に移動して回避
分身はあまり移動できなかったとしても、間一髪の所で避けられると思いますので……きっと

鳥さんには攻撃が行かないように庇いますし、触らせません


鬼柳・雄

てめぇらか、こんなとこまで登らせやがったのは!めっちゃ大変だったぞ!途中で助けてもらえたからそっから楽できたけど!
そこの鳥になんかあると、この樹に登るなんて言った変なよそ者にわざわざ親切に色々教えてくれた街のおばちゃんとかが困んだよ。だから絶対泣かす。

【マルコシアス】を召喚して戦わせます。自分は後ろから「アサルトウェポン(形状はPDW)」による銃撃で援護して積極的に倒しに行きます。

「ハロウィンも近い時期のそんな姿しやがって、殻をくり抜いてカラフルに塗ってカボチャのランタン代わりにしてやんぞコラァ!」
「マルコシアス、派手にやれ!え、報酬は焼肉がいい?・・・そいつら焼いたんじゃダメか?」



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

   BATTLE4 Demon&Hero

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「グゲゲゲゲゲ」
「ギギギッ、エサッ、エサッ」
「ドッチ? ドッチタベテイイ?」
 ひしめき、笑うランダムエッグたちを前に。

「てめぇらか! こんなとこまで登らせやがったのは!」
 鬼柳・雄(チンピラサマナー・f22507)はキレていた。

「めっちゃ大変だったぞ! 途中で助けてもらえたからそっから楽できたけど!」
「そこに関しては……はい、同感です、情けないところを見せてしまいました……」
 成り行きで、鬼柳と共にランダムエッグに向かい合う少女、日向・史奈(ホワイトナイト・f21991)は、ふわり勇者の旅でここまで来たことを思い出し、うう、と頭を抱えた。

「ですが、助けてもらってばかりもいられないので、まずはこのとんだ入れ替わりのお話のような敵を倒さなくては」
 改めて、武器を構え、史奈はキッと卵の群れをにらみつける。
 手にした懐中時計を着物の帯に触れさせれば、体内に渦巻く霊力が光となってこぼれ出す!

「相手が群れているなら、こちらも!」
 史奈のユーベルコードは“いろは”の頭文字を有する。
 最初を冠せしその名は、い之業【已己巳己】。
 己の残像が実体を得て、虚像が現実となる。

「――――連携し」
「――――立ち向かわせて」
「――――いただきます」
「――――お覚悟を!」
 四人の史奈が、同時に飛んだ。
 それぞれが炎を、水を、風を、雷を纏い、解き放ちながら飛び交えば。

「ギァアアア!」
「ギィッ!」
「グェ! ギャア!」
 何匹かは直撃を受け、爆散した。その威力たるや、ヒーローの面目躍如だろう。

「私だって、やれば……出来るんです!」
 初の実戦であげた戦果に、内心で喜びを得つつ、更に追撃を放とうとし――――。

「ギギィー!」
「えっ!?」
 一方、残ったランダムエッグ達は、あっさり戦闘を放棄して、ほうほうの体で逃げ出そうとする。
 元々命を賭ける理由などないのだ、旗向きが悪くなれば当然の選択である。

 が。
 そうは問屋が卸さないのが、戦いというものだ。

「そこの鳥になんかあるとよぉ」
 ガリガリと頭をかきながら、鬼柳は目を細めた。

「俺みてーな変なよそ者にもよ、わざわわざ親切に色々教えてくれた街のおばちゃんとかがよー――――」
 スマートフォンを掲げ、タップ。
 瞬間、魔法陣が展開した。
 詠唱という名のプログラムが空間に文字を描き、術式という名のアプリが作動する。
 即ち。

「――――滅茶苦茶困るじゃねえかっ! 来いよ、マルコシアスッ!」
 “悪魔の顕現”。
 蒼と赤、小さな二つの光が、ぽ、と空間に灯った。それが合図。

「ハロウィンも近い時期のそんな姿しやがって、殻をくり抜いてカラフルに塗ってカボチャのランタン代わりにしてやんぞコラァ!」
「ああ、ちょっと可愛いかも知れません!」
 何せ大きい卵の殻なので、弄くりがいがありそうだ。
 思わず零してしまった史奈を誰が責められようか。

「いくぜ! マルコシアス、派手にやれ!」
 放たれる、鬼柳からマルコシアスへの命令!
 途端、ダイモンデバイスから鳴るメッセージアプリの通知音!


◆アスモデウス 
 >【焼肉 食べ放題。上コース】

「………………」
 返信!

◆鬼柳
 >……こいつら焼いたのじゃ駄目か?

◆アスモデウス
 >出力25%なら可



「低いなオイ! ……仕方ねえそれで!」
 今ここに契約は成立した。
 光が膨れ上がり、炎と氷、両極の属性を持つ双剣へと変じた。

「…………アスモデウス! どうした!」
 ――変じたが、変じただけだった。
 本体が一向に姿を表さない、25%出力だからだろうか。

 ピロン。


◆アスモデウス
 >やる気が起きない。
 >武器は貸すから。
 >お前がやれ。


「――――バカヤロォオオオオオオオオオオオオオオ!」
 炎剣を手に取って、フルスイング。

「「ギャアアアアアアアアアアアアアアアア!」」
 それでも、放たれる悪魔の力は本物だ。
 火閃は鬼柳が焼きたいものだけを焼き払い、狙われたものはひとたまりもなく。

「「イ、ギ――――――!!」
 燃え朽ちて、焦げていくのみだ。

 ◆

「……っと、ボロクズにしたら駄目か。あーくそ、真面目にやると高価くつくか……?」
 目元を抑えながら愚痴をこぼす彼の眼前で。
 動かなくなったランダムエッグたちが、“契約”に基づいて“喰われ”て行く。

「悪魔の、力……」
 分身が消え、光を放たなくなった少女は、その力の片鱗を前に、ほうと感嘆の息を零した。

「つーか、そっちは怪我ねえか?」
「え! あ、はい、大丈夫です、お陰様で」
「そか、じゃあ他の連中と合流するか……」
 ならいいんだ、と手を振って、ぶっきらぼうに、デバイスの中の悪魔に文句を言いながら、歩き出す背中を見て。

「私も。もっと強くならないと」
 ぎゅっと懐中時計を強く握りしめて、史奈は一人、決意を固めるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

跋・字


「さあて、さて。ふうむ、喰らう事に善悪を問うことはできぬが。」
「巨鳥を救えと乞われてしまったのでなあ。微力を尽くすとしようかね。」

とはいえ老い耄れに切った張ったを期待されても困る、困る。
さあて、為らば此度記すは【リザレクト・オブリビオン】、影朧の限定再現よ。

呼び出した「死霊蛇竜」には儂を守ってもらうとしようかね、
老い耄れなど、喰らう気もせんかもしれぬがな。

「死霊騎士」にはパルクーウィの護衛を頼もうか。
敵意が無いことは【動物と話す】技術で伝えられよう。
人界の道理だが、お主が傷付くと困る者も居るのでな。

後顧の憂いを絶つのが年長者の務め、
後は若人が如何に戦うか、特等席で見せてもらうとしようかのう。


ソラスティベル・グラスラン


パルクーウィさん!傷が…!
くっ、助けに間に合わないなんて…勇者失格ですっ

急ぎ【盾受け・オーラ防御】で守りを固め、パルクーウィさんの盾となる
此処は任せてください…混乱しているでしょうが、彼らを倒すはわたしたちの役目
われら『勇者』を信じてください!

巣は極力破壊しないように
我が竜の魂・「竜の巨腕」で空を薙ぎ払い牽制&索敵
手応えある場を【範囲攻撃】の斧で直接破壊!
勇者の戦いは常にストレート!侵略者を前に迷いはありませんよ!

あなたたちが奪ったそこは、偉大な“母なる翼”の後を継ぐ彼らの為の場所
卵であっても過去は過去。今を眠り、未来に生まれる新たな命を脅かすならば
この『勇者』が相手になります!!【鼓舞】



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

   BATTLE6 Brave&Brushup

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

「でやああああああああああああああああああっ!」
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)の右腕が唸る。
 一見すれば不可視――その正体は小さな体に秘める魂から汲み出した、竜種の豪腕だ。

「ギャァウ!」
「グギュガッ!」
「ギャオウッ!」
 その一撃で、ランダムエッグたちが、透明なものも見えているものも、まとめて吹き飛び砕け散った。
 中身の魔物がぎぃぎぃ悲鳴を上げながら、枝葉を超えて下方へと落下していく。

「パルクーウィさん! 傷が……!」
《パルルル……》
 駆けつけた勇者の目の前にいるのは、ところどころ皮膚に赤色をにじませる巨鳥の姿だ。
 戦いの中で、パルクーウィも移動しながら身の安全を確保している様だが、痛ましさは隠せない。
 己の助けが間に合わなかった事を、ソラスティベルは悔やむ。
 勇者ならば、誰より先に、誰より速く、傷つく前に駆けつけねばならなかったのに!

「けど、これ以上はやらせま――――っ!」
 歴戦の猟兵たるソラスティベルが息を呑んだのは、吹き飛ばしたはずのランダムエッグ達が、未だわらわらと集いはじめているからだ。
 ひび割れている物、ほとんど中身がでているもの、まだきれいなもの……透明になって潜んでいるものもいるだろう。
 見渡す限り、楕円の白が視界を埋める。
 どこにこれだけの数が隠れていたのか! 倒すだけなら可能だろうが、パルクーウィを守りながらとなると苦戦は避けられない。

(だけど――――)
 だけど、少女は勇者なのだから。
 ここで退く事だけは絶対にない。
 戦わなければばならない。
 迷わず、進む!
 なんとしても!





「さあて、さて」
 まさに、ランダムエッグたちが押し寄せて来るかと身構えたその瞬間。
 間延びした、しわがれた声が、空から響いた。

「ふうむ、喰らう事に善悪を問うことはできぬが、多勢に無勢は捨て置けぬよなぁ」
 それは、潤いという言葉を忘れ去った、枯木のような老人であった。
 雨に降られても、もう根が水を吸い上げることを忘れてしまったような。
 ……戯画の竜の背に乗って、宙を浮いているのだ。

「お、おじいさん?」
「うむ、ただの老い耄れよ。だから、切った張ったを期待されても困る、困る」
 カラカラと、かすれた声で笑いながら、老人――――跋・字(独筆の隠者・f22644)は言う。

「だ、だったらわたしが守ります! 下がっていて――――」
「いいや、いや、それでは意味がなかろうに。故に、こう記そう」
 さらりさらりと、取り出した筆で。
 空に書を綴る。文字を並べる。

「いでよ、いでよ、影朧よ。ほおら、騎士よ、蛇竜よ、続きを記そうぞ」
 それは形が違えど、よく見知ったユーベルコード……リザレクト・オブリビオン。
 死霊騎士と死霊蛇竜を召喚し、使役する秘術にほかならない。

「巨鳥は騎士に守らせよう」
 つまり。

「――――背中を気にする必要はない」
 くつくつと笑う字は、それ以上の手出しをする必要はないようだった。
 しかし――それで十分、それで十全。
 何せ……あとは前に進むだけでよいのだから!

「だったら――――」
 身を守るために纏っていたオーラを、全て己の武器に――サンダラーに込めて。

「全力で――――――」
 体中から雷が迸る。パリパリと空気を叩く音が、敵対者全てを威圧する!

「この“勇者”が、相手になります!」
 ぶん、と振るわれた初撃の一閃が、青白い光の尾を引いて、迫るランダムエッグたちを問答無用で吹き飛ばした。

「ギッ、イッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!???」

 ◆

「ほっほ、強い強い」
 戦いを離れた場所から眺めていた字は、小さく手をたたき。

「若人は元気がよいな、うむ」
 ……勇者の戦いのあとに、動く敵の姿が何一つないことを確認して、またからからと笑うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アルコ・アーラ

・心情
さーて、さっさと倒してパルクーウィの卵を取り戻しに行かなきゃね!

・戦闘
他の猟兵を【援護射撃】しつつ、ユーベルコード『天が導くは光陰の矢鏃』で攻撃するわ
卵の殻を飛ばしてくるみたいだけど、しっかりと【見切り】で他の猟兵に当たらないよう撃ち落としていくわね

・その他行動
パルクーウィにはなるべく声をかけてこちらが味方だということと、手助けをしにきたということを伝えるつもりよ



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

     BATTLE5 Snipe!!

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 名前の通り空を掛けて、アルコ・アーラ(空渡り・f21945)は弓を引き絞る。

「ギャ!」
 殻の中に、魔力の尾を引く矢を撃ち込まれたランダムエッグは、何度か痙攣した後、ごろりと倒れて、転がっていった。

「っ、これで――八匹目!」
 猟兵たちの戦場に介入しつつ、こうして始末しているが……。

(キリがないわね――どこから湧いてくるのかしら)
 どう考えてもパルクーウィの卵に擬態していたそれより、遥かに数が多い。
 大樹の中に、最初から無数に仕込まれていたのだろうか。
 だとすれば、黄金龍はもっと前から、パルクーウィの卵を狙っていたことになる――?

「っ」
「ギィッ!」
 新手だ。現れるやいなや、硬い殻をいくつも、容赦なく飛ばしてくる。
 それなりの重量と硬度、例えば頭部にあたったら、それだけで昏倒しかねないし、鋭い断面は殺傷力のある狂気だ。

(けど――――)
 エルフと、鍛え抜いた動体視力ならば。
 見て取れる、速度だった。

「我が矢に――――――」
 矢を放つには、集中が必要だ。
 …………三秒、飛び退き、殻が樹皮に刺さる。
 …………五秒、追加の殻が放たれる。
 …………八秒、前に出る、頬をかすめる、集中は途切れない。
 …………十秒、さらに殻が――――

「――――撃ち抜けぬものなし!」
 手を離す。
 魔力の粒子が推進力となって一直線に飛んでいく。

「ギッ!?」
 硬い殻の中心に突き刺さり、ぱきりと音を立てて砕き割り、なお速度を落とさずに。

「ギ、っギャッ!?」
 かすかなひび割れの隙間に、鏃が飛び込んで、中身を打ち抜き、追いついた魔力の粒子が卵の中で跳ね返って、爆発した。

「ギャアアアアアアアアアアアアア!」
 断末魔の悲鳴が高らかに響く中。

「…………なーんてねっ?」
 会心の一矢を放った感覚を、体に刻みながら、アルコは静かに笑ってみせた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アトラ・ジンテーゼ
…巨大鳥…あれを素材塊にしたら、どんなに高品質な素材になるでしょうか…
うう、惜しい。実に惜しいです。ですが、依頼は信用が第一!
知性もありそうですし、後でまた交渉してみましょうか!

その為には、アヤシイ卵からですが…
ははあ、消えましたか…擬態?
…まずは当然、視覚。見えないものがあるなら、巣材や枝葉も、不自然に歪むはず。
もちろん、音でも探ります。足音は消せませんからね。
それに、『第六感』。獣のカンは怖いんですよ?
最後に、「炎霊・ヒエン」。火を司る力で…熱源を探ります。
網は多ければ多いほどいい。さぁ、引っ掛けますか。

攻撃には【強圧法】を。
巨鳥とは比べられませんが…素材はあって困る事は無いですからねぇ。


オーレリア・エフェメラス

間に合ったかな?
大丈夫、ボクらは味方さ
君の子を取り返すためにも、頑張らせてもらうよ
初陣の不安がないわけじゃないんだけどさ
任せてくれって言ってくれた子もいるしね

敵は複数、それも見るからに大きくて硬そうだ
それじゃ今回はこの子にしよう
ただ手当たり次第なのが玉に傷なんだ
前で戦う猟兵に少し下がってもらってから
フラスコを割って呼び出そう

呼び出すのは黒球
周囲のものを喰らうエネルギーの塊
樹まで食べないように呼んだら少し上気味に
敵の卵の殻が飛んで来たら吸い寄せて軌道を曲げてもらうよ
この子は大丈夫でも、ボクが切られたらただじゃすまないからね

親を食べようなんて不届きな卵は食べてしまおう
さぁ、行っておいで



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 BATTLE7 Blacksmith×Alchemy

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

《パルルルルル……》
 戦いのたびに、パルクーウィは戦場を移動し、羽を休めていた。
 猟兵たちが敵を殲滅している間に、少しずつ体力を蓄え、傷を癒やしていく。
 しかしながら、敵の狙いもパルクーウィだ、故に……。

「ギギギ……」
「ゲッゲッゲッ」
「グギギ」
 どこに逃げようと、奴らは現れる。
 巨鳥の双眸が睨もうとも、化け物たちは怯えない。
 この数ならば、殺せると知っているからだ。

《パルルル…………!》
 勿論、むざむざとやられるわけにはいかない。
 爪を立て、嘴を鳴らし、未だ傷と血のにじむ翼を広げ――――。

「間に合ったかな?」
 ……どこか、間延びした声。
 両者の間に割り込むように、何かが放り投げられて。
 ぱりん、と割れた。

 それは、小さなフラスコで、中身がどろりと溢れておちた。

「ギ?」
「ガ……」
「ギェ……?」
 何事かと周囲を見回すランダムエッグ達の前に現れたのは。

「やあ、君たちが不届きな卵達かな?」
 柔らかな笑みを携えた女、オーレリア・エフェメラス(ガラスの向こうのメッセージ・f22027)と。

「うー……」
 と、興味深げにパルクーウィに目線をやる人狼の少女、アトラ・ジンテーゼ(四霊の統造師・f22042)だった。

 ◆

 あれだけの巨鳥、まして凄まじい魔力を蓄えているはずだ。
 もし素材塊にしたら、どれだけ高品質になるか!
 そんな事を言っている場合ではないと頭では分かっていても、鍛冶師としての興味がどうしても拭えないのだ!

「うう、惜しい。実に惜しいです。ですが、依頼は信用が第一!」
 パルクーウィは賢い……と村人たちも言っていたし。
 卵を取り返した後なら、交渉の機会もあるだろう、命を奪うのではなく、ほんの少し、爪とか羽とかが貰えればよいのだ。
 ……決してまるごと素材塊にしたいなどとは思ってないです、はい、決して!

「ギギ……」
「グググ……」
「ゲゲッ」
 一方、乱入者たちを確認したランダムエッグたちは、お互い声を発して意思の疎通をすると。

「おや」
「む?」
 その姿が、背景に溶けて消えていった。
 恐らく透明化したのだろう。

「ああ、なるほど。ああやって忍び寄ればパルクーウィであっても群れで仕留められるというわけだ、なるほどねえ」
 興味深げにオーレリアが呟く一方、アトラは大きくため息を吐いて。

「擬態……ですか。ですけど……」
 アトラは鍛冶師だ。
 一方で、素材を自らの手でかき集める冒険者でもある。
 姿形が最初から見えないのであればともかく。
 眼前で堂々と披露しておいて感知出来ないほど、ぬるいわけがない。

「ヒエン!」
 声を放てば、メラメラと燃え盛る炎が、虚空にぽっと灯って、すぐさま具体的な形を成した。
 炎精霊・ヒエン。炉を作り鉄を溶かす、鍛冶師の相棒。

「おや、精霊かい?」
「ええ。私の頼れる仲間です」
 ほう、とオーレリアがヒエンに目を向ける。
 呼び出されたヒエンは、ポウ、ポウと小さな炎をさらに呼び出し、大樹を燃やさないようにしながら――――。

「――――見つけた」
 ぼ、と炎が大きく揺らめいたのを見逃さない。
 アトラが虚空に向けて槌を振り下ろす。
 ガキ、と鈍い音が響き。

「グィッ!」
 一体のランダムエッグが突如として現れ、身悶えた。

「流石に巨鳥とは比べられませんが」
 ただ殴られただけならば、いくらでも立ち上がれただろうに。
 精霊をその身に宿すアトラの一撃は、残念ながらそれで終わりではなかった。

「素材はあって困る事は無いですからねぇ」
「ガ、ギ、ガッ!?」
 ランダムエッグという存在を構築する、あらゆる全てが単純に整理され、分解され、一つの塊として圧縮されていく。

「グ、グオ、ゴッ!」
 時間にして数秒、あっという間に、四角いキューブ――アトラが如何様にでも加工出来る、“素材塊”に変化してしまった。

「君はそうやって素材を集めているのか、すごいね」
 先程から、オーレリアの興味は、アトラの挙動に向けられていた。
 精霊も、技術も、素材の作りかたも、どれも錬金術師(に見える)である彼女には新鮮なのだろう。

「それから、武器や防具を作れるのかい?」
「えっ? ええ、はい、ご要望と有らば。これは――小さい竜種が入ってたみたいだから、色々使えるかも?」
 素材塊の中身を改めつつ、アトラはにんまりと笑った。

「他のランダムエッグには何が入っているのか、ちょっと楽しみですね」
 残りも全員素材塊にしてやる、と意気込んだその横で。

「ああ、それならすまないことをしたね」
 と、オーレリアは小さく呟いた。

「え?」
「パルクーウィ」
 首をかしげるアトラに、少しだけ頭を下げて、オーレリアは少しだけ声を張り上げた。

「大丈夫、ボクらは味方さ。君の子を取り返すためにも、手伝わせておくれ」
《パルル――》
「それで、できれば少し離れてくれると嬉しい――通じているかな?」
 疑問に対しての答えはすぐに出た。パルクーウィは、翼をばっと広げ、暴風と共に宙に浮き上がったのだ。

「あっ――――あー……」
 大樹の、別の枝へと飛んでゆくパルクーウィに向かって手を伸ばすアトラ、交渉は、卵を取り戻すまでお預けか。
 だけどなんでわざわざ? と、オーレリアに訪ねようとしたその時。

 バチバチ、と何かが爆ぜる音がした。

「あれは強力なんだけどね」
 オーレリアの目線は、パルクーウィではなく。

「手当たり次第なのが玉に傷なんだ」
 自分が、ランダムエッグとパルクーウィの間に投げた、割れたフラスコを見ていた。
 空中に、小さな黒い点がぽつりとあるのは何故?
 ……よくよくみれば、砂や塵が舞い上がって、一点に収束しているではないか?
 だんだん、その吸引力が、強くなっていっているのは気の所為か?

「――――えーっと」
「無差別に獲物を吸い込んで、消滅させてしまうんだ。すまない、もっと速くわかっていれば、ランダムエッグの形を残す方法で処理したのだけど」
 つまり。

「ギィアアアアアアアアアアアアアアアアア!?」
「ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
 アトラがある程度の位置を割り出したのが、ランダムエッグたちにとっては不幸だった。
 べきべきと音を立てて、球体はみるみる大きく膨らみ、オブリビオンを形をなさない塵へと分解していく。

 《錬金術師の秘策・貪り喰らう者(アルケミーワークス・ワールドイーター)》。

「……ああ、少し離れたほうがいいかも」
「ちょっと遅いと思いますっ!」
「あう」
 ぐいっとオーレリアの首根っこをひっつかんで、アトラは走り出した。かたわらのヒエンが頑張れ頑張れと応援している、いや戻ってよ危ないから。

「もぉーっ! これはなんとしてでもパルクーウィの素材をもらわないと割に合いません!」
「そうだね、ボクも頼んでみよう」
 のんきなことをいう錬金術師と、走る鍛冶師の背後から。
 分解されていくランダムエッグ達の、断末魔の叫びが響き渡るのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

斬幸・夢人
自分の卵を別の鳥にねぇ……
こうやって見ると結構精神的にグロいな
まぁ一番の被害者はどう見てもパルクーウィなんだろうが
……さすがに自分の卵じゃねぇくらいわかってるんだろ?
助けにきて、敵討ちの対象扱いされんのはごめんだぜ?

へらへらと余裕そうにマイペースに、上記のような心情で
使用するUCは「神さえも覆せない理想」
理想の自分を作り出して集団戦用に手数を倍にする
UCの自分は黒糸で敵の動きを制限させ味方の援護をさせて、自分は銃で糸に引っかかった狙いやすい敵を確実に撃つ
また張り巡らせた糸から伝わる振動で敵の位置を特定する

銃ってのは手軽で便利だが、どーも威力が足りなくてダメだな
ま、敵に救われりゃ十分なわけだが


パルピ・ペルポル
パルクーウィの傷は急がなくても大丈夫そうかしら?
手当てしたいけれど、まずは危険の排除よね。

落ちる心配はなさそうだけれど、一応雨紡ぎの風糸を防護ネットよろしくこっそり張り巡らせておきましょうか。
敵がやぶれかぶれの逃亡を図らないとも限らないしね。

捕縛・攻撃用の糸はちゃんと別に展開するわ。
火事場のなんとやらも使って捕縛したらそのまま締め上げて殻を破壊しましょうか。
あとは殻の隙間から穢れを知らぬ薔薇の蕾を投げ込んでやって。
栄養たっぷりそうだから、見事な花を咲かせてくれるでしょうね。
飛んできた卵の殻は間に合うなら捕縛した敵を盾にさせてもらうわ。
そうでなければ避けるわね。
糸は切られてもたっぷりあるからね



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   BATTLE8 Strings×Strings

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「自分の卵を別の鳥にねぇ……」
 托卵、という言葉がある。
 他者の巣に押し入って、元の卵を蹴落とし、代わりに自分の卵を育てさせる、ある種の鳥が行う生存戦略だ。
 残酷だという見方もあれば、野生動物の知恵だという見方もあるだろう。
 しかし、“これ”はそれ以上に醜悪だ、何せ子供を奪うのを目的として、親を殺すのを目標としている。
 そこにあるのは、悪意だけだ。

「……さすがに自分の卵じゃねぇくらいわかってるんだろ?」
《パル……!》
 斬幸・夢人(終焉の鈴音・f19600)の視線の先、戦場を移動しながらも羽を休めるパルクーウィに目をやれば、小さな唸り声が返ってきた。
 流石に賢いというだけあって、猟兵と敵の区別ぐらいは付けてくれているらしい。
 助けにきて、敵討ちの対象扱いされるのはごめんなので、非常に良いことだ、何せ気を使わなくて良い。

「さて、クソッタレの卵共にお知らせだ」
 ギィ、ギィ、と。
 呻くような声を上げながら、ジリジリと己ににじり寄るランダムエッグ達に向けて。
 あろうことか、のんびりと煙草に火をつけて、煙を燻らせながら。
 心底どうでも良さそうに、興味もなさそうに。
 ただただ、これから起こるであろう決定事項のみを、無情に告げた。

「動けば死ぬ。立ち止まっても死ぬ。つまりお前らは全員死ぬ。ただ遠くに居たほうが寿命は伸びるかも知れない」
 その時。
 びぃん、と強く張った何かが、揺れてこすれる音がした。
 空中で、何かがゴロゴロと音を立てて、もがいている。

「―――ああ、透明になれるんだったか」
 煙草を持っていない、空いた手指がかすかに動くたびに。
 キリ、キリ、キリ、と、空間が音を立てる。

「でも、“そこ”に居るんだろ?」
 糸の結界は既に展開している。
 神さえも覆せない理想が、そこにある。
 見えようが見えまいが。
 逃げようが向かってこようが。
 全て等しく、糸は男の手の中にある。
 身動きの出来ない。姿の見えない卵目掛けて、漆黒の拳銃から殺意の弾丸が放たれた。

 ◆

「大丈夫? パルクーウィ」
 一方、パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は、傷ついた巨鳥の側に近寄って、じわじわとにじり寄るランダムエッグ達を牽制していた。

《パルルルル……》
「うん、深い傷はなさそう……あとは私達に任せて、ゆっくり休んでいてね?」
 傷の手当もしてあげたいが、まずは危険の排除をせねばならない。
 小さく羽ばたき、戦場を見る。
 男性の猟兵が一人、その中心に立って、ランダムエッグたちを片っ端から大型の拳銃でぶち抜いていた。
 逃げるものもいれば、立ち向かおうとして穿たれるものもいる、戦況は男性有利に見えるが、ランダムエッグの数は未だ多い。

「ギュゥルルルルル!」
 運良く、男の束縛から逃れ、パルクーウィに向かってくる個体もいた。
 彼らからしても、フェアリーであるパルピは小さい。
 ともすれば、視界に入っていないのかも知れない……けれど。

「あら、私になら勝てると思ったの?」
 ビンっ、と音がして、卵がハンプティ・ダンプティ宜しく転げて、ガツンと樹皮に体を叩きつけた。
 ヒビが入った程度で割れはしないが、ギィ、ギャアと悲鳴を上げる。

「私も“糸”を張るタイプだもの――安全だと思った?」
 素早く近づいて、小さな小さなフェアリーは。
 あろうことか、体躯の十倍以上ある卵を、ぐいと強引に……力づくで持ち上げて。

「ギ、ギャ、ギャ、ギャアアアアアアア!?」
 ぐしゃ、と音を立てて、殻が圧し割れ、中身ごと潰れて、落ちた。

「残念だけど、逃さないわよ」
 敵に情けをかけるほど、この小さな妖精は、甘くも温くも、大人しくもないのだ。

「ギャ」
「グゥ?」
「グェ……っ!?」
 あまりの光景に、後続のランダムエッグたちが戸惑い、後ずさる。
 勿論、後方にも糸は既に仕掛けてある。
 ゴロンとまた転ぶ卵達は、薄々悟った。

 ――――もう、どこにも行く場所がないことを。
 ――――立ち向かおうが、逃げようが、等しく罠に絡め取られることを。

「ギィイイイッ!」
「ギャアアウ!」
 もはやなりふりかまっていられない!
 残ったランダムエッグ達は、最後の希望を見出した。
 即ち、空中だ。あの自由な空ならば、罠もないはずだ。
 次々と大樹から飛び降り、殻の中から皮膜の張った腕を広げた。
 中に入っているのは、飛行できる竜種や鳥種の魔物だったのだろう、そのまま空を飛び、逃げ去ろうとして――――。

「ガッ、ギッ!?」
「ギャア!?」
 ビン、と、再び聞き覚えのある音が響いて、蜘蛛の巣に絡め取られた虫のごとく、空中で動きを止めた。

「逃さないわよ、言ったでしょ?」
 ぱちんとウィンクしながら、パルピは微笑む。
 ……事前に張り巡らされた、落下防止用の雨紡ぎの風糸は、当然のように罠としても機能する。

「そうね――せっかくだから」
 懐から、小さな小さな、真っ白な植物の蕾を取り出して。
 空に束縛された卵のヒビの中に、ひょいと投げ入れた。

「ギギャ!?」
「きれいな花を咲かせて頂戴。――真っ赤な薔薇を」
 それは、獲物の養分を吸い上げて花弁が育つ、穢れを知らぬ薔薇の蕾。
 “中身入り”の卵に、逃げ場などあるはずもなかった。

「ギ、ギィイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!」
 白い大きな卵の中から、茨を伸ばし薔薇が花開く様は、一種の芸術のようでもあった。
 最も――――。

「……あまり綺麗じゃないわね、雑食だからかしら」
 命と引き換えに咲いた赤に対する評価は、あまりに残酷だった。

 ◆

「こりゃあいい」
 逃げようとしたのか、はたまた体勢を整えようとしたのか。
 空中に逃げた卵達は、何故かそのまま空に固定されて、標本の様にもがいていた。
 これなら、振動で場所を把握するまでもない。
 動く的から、ただの的になり下がった者共を見下ろしながら、斬幸は嘲笑った。

「七面鳥よりも楽勝だな――――滑稽だが、フィルムが勿体ない」
 記録する価値は、感じない。
 獲物の数だけ銃声が響く。
 全てが動かなくなってから、丁度燃え尽きた煙草を捨てようとして。

《パル……》
 背後の巨鳥の、抗議の鳴き声が突き刺さり、手で握りしめて、ポケットの中にねじ込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

エミリー・クララ


ふはははははっ!
今、ここに、まさに! 真打ち、登場でぇっす!
我が名はメイガスノワール・ロートロッソルージュ!
エルフ随一のウィッザァァドにして、最強の魔法を操る者!
なんだかよく分からない卵などまとめてボイルにして差し上げましょう!

さぁ、伏して崇めなさい!
最強にして最大! 人類の生み出せし、最強の一角に連なる攻撃魔法を!
多少威力は下がっても、爆熱魔法の最強は揺るがないのです!
範囲固定! 目標選定! エクス、プロォォッドッッ!!【高速詠唱】【属性攻撃】【範囲攻撃】【全力魔法】

ランダムエッグを攻撃対象に魔法発動!
発動後は満足そうに前のめりに卒倒します
ふぅーーーーー、今日の爆熱も中々でしたね……


久遠・優希

はー、はーっ!しんどっ!!!
体力は温存しとくつもりやったんやけどな……
まあええ、これくらいはちょうどええハンデや
そんじゃま、パチモン退治と行こうやないか!

しかしまあ、でかいわ喚くわうじゃうじゃおるわと気持ち悪いな……
面倒や、一網打尽にするしかないね
ほらほらっと鬼さんこちら!纏まれ集まれこっちやこっち!
……はあっ、はっ、俺は頭脳労働担当のはずやのになんで毎度疲れとるんかね?

ま、集まったらこっちのもんや!俺の魔法で纏めて氷漬けにしたる!
あったまりたいか?助けて欲しいか?
擦り替わって愛を受けるずうずうしい奴らにとっちゃ、これくらいがちょうどええ
お前らに生まれ出る未来は無い。一生冬眠しとくとええわ



彡彡人人人人人人人人人人人人人人人人

    BAt BOOOOOOOOOM!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

人人人人人人人人人人彡彡人人人人人人

「はー、はーっ! しんどっ!!!」
 体力を温存するつもりだったのに、メチャクチャ木登り(ほぼ登山)をする羽目になってしまった久遠・優希(偽善者のワルツ・f22023)は、
 肩で息をしながらようやっと大樹の頂上にたどり着いたのだった!

「ギィ……?」
「ゲッゲッゲ」
「ギュルルウ……」
 勿論、新たな乱入者に対し、オブリビオンが黙っているわけがない。
 殻の隙間から目を光らせ、ランダムエッグ達が一斉に久遠目掛けて動き出す。

「もう来るんかい……まあええ、パチモンの雑魚相手にゃ、これくらいちょうどええハンデや」
 それは偽らざる本音だった。
 たとえ相手がどれだけ居ようと、優希のやることは変わらない。

 オブリビオンを倒し、パルクーウィの子供達を救い出す。

 それが、“魔法使い”たる自身の役目だ。

「ほらほらっと鬼さんこちら!」
 たっ、と駆け出せば、ランダムエッグ達は一斉に獲物目掛けて襲い来る。

「グェグェグェ!」
「エサ! エサ!」
「タベル、クウ!」
 殻からはみ出た爪で肉を引き裂き、殻の内に引きずり込んで、貪りたい、という欲求の迸りを、隠す気配がない。
 これを醜悪と呼ばずしてなんと呼ぶ!

「纏まれ集まれこっちやこっち!」
 駆け抜け、跳ねて、時に卵の隙間を抜けて、久遠は駆け回る。
 個体は群れとなり、群れは死の壁となって襲ってくる。ぞろぞろと列を成して、小さな獲物を狙って。

「ギャウ、グル!」
「……はあっ、はっ、はっ――――」
 そんな事をしていれば、限界も当然、やってくる。
 立ち止まり、膝に手を当てて、体重を預け、荒れた息を整える。
 逃げている最中に、敵に背中を向けてそんな事をすれば、勿論見逃されるわけもない。

「ギャウウ!」
 我先に、と一体のランダムエッグが先行して飛びかかった。

「はぁ――――俺は頭脳労働担当のはずやのになんで毎度疲れとるんかね?」
 ぴし、と空間が、張り詰める音がした。
 ピキピキピキ、と、音は、すぐに全体に広がっていく。

「ギャ!?」「グ!?」「グェッ!?」「ゲェッ!?」
「――――ま、ええわ」
 それは、空間が発する音だった。
 空気中の水分が凍結した――なんてものではない。
 ただそこに、当然としてあるように、“氷”という概念が出現したかのように。

 ……これが“魔法”。
 人智を超越した領域に踏み込んだものだけが使える、異能。

「哉、雅哉。夜空の月よ、彩る華よ」
 凍結が、広がっていく。
 凍った個体の直ぐ側に居る個体が、連鎖的に凍結する。

「其方の御前に見えたるは、遍く広がる雪景色」
 逃げ場のない氷の檻が、卵達を包み込んでいく。

「凍てつき凍えよ相対者。私は雪を司る」
 ……やがてそれは、巨大な氷塊となって、大樹の上に顕現した。
 光景としては、全く似つかわしくない、アンバランスな景色だ。
 それでも、久遠は満足げに笑い、告げた。

「擦り替わって愛を受けるずうずうしい奴らにとっちゃ、これくらいがちょうどええ」
 戦闘は、終わった。

「お前らに生まれ出る未来は無い。一生冬眠しとくとええわ」
 あとは、パルクーウィの卵を取り戻しに行くだけだ――――――。

















「ふはははははっ! 今、ここに、まさに! 真打ち、登場でぇっす!」
 あ、馬鹿が遅れてやってきた。

 ◆

「我が名はメイガスノワール・ロートロッソルージュ! エルフ随一のウィッザァァドにして、最強の魔法を操る者!」
 エミリー・クララ(爆熱の申し子・f21968)があらわれた!

「――いや、もう戦い終わってんねんけど」
 呆れ顔で久遠が呟いた。そもそもどこではぐれたんだこいつ。
 そうだ思い出した、途中で帽子をフクロウに取られて追いかけて消えたんだった。

「ええ、分かっています! なんだかよく分からない卵などまとめてボイルにして差し上げましょう!」
「何も分かっとらへんやんけ!!!」
 なんだかとても嫌な予感がする。
 そもそもこの女に出来ることは一から十までたった一つしかないはず――――。

「さぁ、伏して崇めなさい! 最強にして最大! 人類の生み出せし、最強の一角に連なる攻撃魔法を!」
「いやいやいやいや必要ないからもう完全に凍結しとるから!」
「え、ですが!」
「ですがやなくて!」
「ですが、物理的にそこにまだ存在していますよ!?」
「完全に消滅するまでやらんと倒したことにならんの!?」
「ご安心ください! 威力は勿論、範囲指定によって大樹を傷つけずに爆破可能です!」
「そこを心配してるんじゃなくて――――――」

「終焉の刻来たれり。天裂き、地を穿つは漆黒の紅炎――――」
「こいつ詠唱はじめおった!」

「範囲固定! 目標選定! ――――今、天地の条理を砕き、白き世界を黒く染め上げん!」
「あかん!!!!! とりあえずぶっ放さんと気が済まんパターンや!!!」




「――――――――エクスプロォォォォォォォォドッ!!!!!!!!!!」




「オーバーキルーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
 カッ、と眩しすぎる、白い閃光が、閉じた瞼の向こう側から、なお目を焼いた。
 確かに爆発するものは選べるけど、生じる爆風と爆煙と爆炎は特にその限りではなかったので、とにかくなんかもう、偉いことになった。

 ◆

 破壊の嵐が過ぎ去った後。

「ギャア! ギャア! ギャア!」
 と、鳴き声をあげながら去っていったのは。

「――――は?」
 大型の飛竜を始めとした、魔物の類だった。
 ランダムエッグ――ではない、大樹の住人達だろう。

「なんやあいつら、どこから……」
「どこからも何も……ずーっと上から、私達のことを見てましたよ…………」
「え、いつから…………なんでそんなべたっと倒れ込んでるねん」
「い、いえ、全魔力使い果たしたので…………」
「これから親玉倒しにいくのに!?!?!」
 本能的に突っ込みつつ、もしや、と思う。
 ランダムエッグは、擬態能力を持つ。
 パルクーウィほど知能の高い魔物ならともかく、連中の鳴き声を自分の子供と勘違いした魔物達がいたとしたら。
 子を害する敵として、襲ってきてもおかしくはないだろう。

 もしそうなっていたら――――ランダムエッグはともかく、現住の魔物達に罪はない。
 始末するには寝覚めが悪いし、そもそも大掛かりな魔法を使ったあとだ、苦戦を強いられたに違いない。

 だが、彼らは、容赦ない超火力が齎した破壊と熱を前に、身の危険を感じて退散していった。
 ……何かを破壊することしか出来ない、圧倒的な破壊の力が、結果として一つの戦いを、始まる前に終わらせたわけだ。

「…………そこまで考えとったんか」
 久遠は、少しだけ反省した。
 もっと考えの足りない、勢いだけで突っ走る、爆破ジャンキーだとばかり思っていた。
 まさか、そこまで思慮深い行動ができるとは…………。

「いやあ、もうちょっと近づいてきてくれていれば一緒に爆破できたんですけども」
「……………………………………………………………………」
 前言撤回。
 こいつはやっぱり、勢いだけで突っ走る、爆破ジャンキーだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

御剣・狂死郎

ようやく切っても問題ない敵が出てきましたね、到着次第相手が体勢を整える前に先制攻撃を仕掛けます、こちらを見ている相手も多いようですがおそらくパルクーウィを狙っている個体も居ると思うのでまずそこから狙ってパルクーウィから注意をそらします

攻撃手段としては【妖剣解放】を発動して切りかかります。
反撃として卵の殻を飛ばしてくると思うのでUC効果の高速移動を生かして回避を試みます

囲まれないように気を付けながら一体ずつ倒していきたいです、その上でこちらに余裕があり、援護を必要としている猟兵が他にいるようであれば可能な限り助けたいので直接手伝いに行くかもしくは斬撃による衝撃波を使って支援したいと思います。


フクス・クルーガー
トラックに乗ったまま巣の外周を旋回するように廻りながら手持ちのP90で牽制しながら装甲で出来た運搬腕で【グラップル】で攻撃する。射出された卵の殻は【運転】で回避するよ。
ある程度集まったら運搬腕で押さえつけて、巣を傷つけないようにオブリビオンたちへと地面すれすれで速度を上げて突撃する! 

質量×硬度×速度=破壊力! よっぽど大きい限りでないならこれで粉砕するよ。(現実ではやっちゃダメだぞ。メタァ)

それを繰り返して殲滅するまで繰り返し。後、P90で他の猟兵たちも【援護射撃】して援護していくよ。



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    BATTLE710 Truck&Slash

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 大樹の周囲を、全環境対応型大型トラック(別名:狂気の沙汰)で旋回しながら、フクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)は目を細めた。

「んー……あいつかなぁ」
 ランダムエッグは、黄金龍の配下だ。
 しかし、黄金龍はこの場には居ない。
 全体を俯瞰して見る限り、ランダムエッグ達は、個体単位で見れば逃走や身勝手な行動に走るものも居れど、基本的に集団でパルクーウィを狙って攻撃する、という挙動を繰り返している。
 その中で――蠢く群れの中心部に、最も小さく、そして全く動かないランダムエッグがいた。

「あれが“司令塔”かな? アイツを始末すれば――」
 群れは、統率を失う。
 ならば話は簡単だ。この全環境対応型大型トラック(別名:動く逸した常軌)ならば殲滅が可能――――!

「……おや?」
 さあいくぞとアクセルを踏み込みかけた時。
 戦場に、ふらりと訪れる影が一つ。

 ◆

 幼い体躯に、身の丈ほどある刀を持って。
 御剣・狂死郎(妖刀のヤドリガミ・f22009)は無造作に、右腕を振るった。

「ギッ」
 キン、と小気味の良い音は、硬い殻を見事両断した際に発せられるもので。
 斬られた卵は、短い断末魔をあげて、息絶えるのみであった。

「ようやく、斬っても問題ない敵が出てきましたね」
 ただ一歩踏み出した様に見える動き、ゆらりと陽炎の様に体が揺らめいて、斬撃が飛ぶ。

「ギャッ!」「グエッ!」「ギョッ!」
 近かろうが遠かろうがお構いなし。
 刃が煌めけば命を奪うが摂理と言わんばかりに。
 文字通り、斬り進んでいく――――!

「ギャア!」「ギィッ!」「ググ!」
 反撃の殻は、狂死郎の肌をかすめることすらなかった。
 残像をかする頃には、もう斬られて終わっている。

「…………あ」
 近づいてくる個体を片っ端から斬り、次に目についた物に斬撃を飛ばそうとした所で。

「ピィ!」
 小さなランダムエッグが、ひび割れから八本の足を出して、凄まじい速度で駆け出した。
 完全に逃げの一手だ。追おうとすれば…………。

「ギャアア!」「ギィギィ!」
 他のランダムエッグたちが立ちふさがる。
 一回斬る手間で、どんどん遠ざかっていく――――。

「……臆病なのでしょうか、それとも、特別な個体なのでしょうか」
 まあ、最終的に全部斬ればよいだろう。
 そう結論付けて、狂死郎は右手を振り抜いた。

 ◆

 ランダムエッグ・リーダーは、逃げ足と指揮能力に特化した個体だ。
 猟兵を排除した暁には、様々な種族が住むこの大樹は、彼らランダムエッグにとって最良の巣、楽園となる。
 その計画を邪魔されるわけには行かない。とりあえず適当な動物の卵を蹴り出して擬態し、安全を図ろう……と思った所で。

「おおっと!」
 爆音と共に、何かが下方からせり出すようにして出現した。

「ピィッ!?」
 ランダムエッグ・リーダーもさぞかし驚いただろう。
 何せ、逃げ切ったと思った瞬間、目の前に出現したのは、この世界に決してありえることのない全環境対応型大型トラック(別名:質量兵器)だったのだから。
 それがどんな機能を持って、どんな用途で使われる、どんな存在であるかは、エッグ・リーダーの知る由もない。
 ただ確かなことは。

「――――パルクーウィさんに安全のお届けものでぇーっす!」
 膨大な質量。
 異常な硬度。
 そして何より速度。
 三つの力が合わさった破壊を前に、出来る抵抗等何一つないということだった。

「ピゲッ」
 連なるタイヤという回転する狂気の凶器に巻き込まれて、ぺちゃりと潰れ、消えていった。

 ◆

「おや?」
 必死にこちらに向かってくるランダムエッグたちが、突如落ち着きなく周囲を見渡し、混乱し始めた。

「…………リーダーが居たとか? あの小さいのかな」
 斬りやすくなったので全部斬ったら静かになった。烏合の衆達の全滅を確認して、狂死郎はようやく刃を鞘に収めた。
 ……ピシ、と刀身に小さく入ったヒビは、特に気にならなかった。

 ◆

 ――かくして、ランダムエッグ達は一掃され。
 残すは、卵の奪還のみ。

《パルルルルルルウ!》
 猟兵たちが守り抜いた母なる者は、大きくその両翼を広げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『『黄金龍』トゥルル・エ・ダハブ』

POW   :    悪魔の黄金色
自身の【蒐集した金銀財宝の一部】を代償に、【一部のモブ猟兵達の認識を書き換え、彼ら】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【正常な猟兵に紛れて奇襲攻撃し、UCや武器】で戦う。
SPD   :    ゴールデン・コレクション
【蒐集した金銀財宝の一部】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【敵装備を変質させ、敵を攻撃する黄金の化物】に変化させ、殺傷力を増す。
WIZ   :    黄金の子羊達
戦闘中に食べた【認識を書き換えられたモブ猟兵達】の量と質に応じて【自身の金銀財宝が増加し、肉体の活性化で】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアララギ・イチイです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ランダムエッグ達の掃討を終えた猟兵達の次なる目標は、パルクーウィの卵を取り戻すことだ。
 しかし、『黄金龍』トゥルル・エ・ダハブがどこにいるのか。

《パルゥ》
 猟兵に守られたパルクーウィは、ゆっくりとその身を横たえ、視線を向けた。
 たとえ言葉が通じずとも、意図は明白だった。

(この背に乗れ)
(……我が子を助けてくれ)
(……戦士たちよ!)
 かくして、巨鳥の背にのって……あるいは、飛行手段があるものは、その後を追って。
 高い高い空を、突き進む!


◆山脈にて

『クククク……』
 パルクの街から、北東に数十km離れた山脈。
 無数にある、巨大な洞穴の中に、黄金龍『トゥルル・エ・ダハブ』は居た。
 数十メートルはあろうかというその巨躯に、同じだけの高さを持つ物がある。
 無造作に重ねられた金貨銀貨、古びた宝冠、大きな宝石がいくつもはめ込まれた宝剣。
 あるいは巨大な水晶の原石から無骨なインゴット、女神像からステンドグラスなんてものまで。
 とにかく“価値のありそう”なものが片っ端から、そこに積み上げられていた。
 殺し、奪いかき集めた、黄金龍の“財宝”の山だった。

 その中に……五つの卵があった。
 大人でも一抱えほどありそうなその球形は、内側からぼんやりと淡い光を放ち、表皮はうっすら透け、一見すればなんと見事に整えられた宝石塊か、と見まごうばかりだった。

『あぁ、良い宝だ。ずっとずっと欲しかった……』
 ほしかったものを手にした時程、歓喜に震える瞬間はない。
 どのように愛でようか。抱こうか、舐めてみようか、はたまた……。
 想像の翼を羽ばたかせ、にやにやと龍の口の端が歪んだその時。

《……パル》
『む?』
 かたり、と宝が揺れた。
 一つだけではない、連動するように、五つのそれがゆらゆらゆらゆらと揺れて……。
 ピシリ、と表面に罅が走った。

『な……』
《パルゥ!》
《パルル!》
《パル……》
《パー》
《Zzz》
 ぼろぼろと外殻がこぼれ落ちて、中身が顕になる。
 かすかに全身を濡らした、巨鳥の雛が、ついにこの世界に産声を上げたのだ。

『な……何ぃ……!?』
《パル……?》
 しかして、目をぱちくりと開けたパルクーウィの雛は、本能と直感で理解する。
 目の前の存在は、親ではない。
 自らを守り、導くものではない。
 まごうことなき、外敵であると。

『き、貴様! 我が宝!? あぁ!? 何ということだ!』
 ……お前鳥の巣から盗んでおいて卵だと気づいてなかったんかい、というツッコミはさておいて。
 砕け散った殻には、もうひとかけらの光も宿っていなかった。
 それらはすべて、もう雛の内に、これからを生きていくための力として収まっている。

『ゆ、許さぬ……許さぬぞ! 万死に値する!』
 一方、トゥルル・エ・ダハブからすればたまらない。やっと手に入れた宝が、無価値な肉塊に変じたのだ。
 もはや、食い殺し溜飲を下げる以外にあろうか!
 大口を開けて、牙が迫る! 生まれたての柔肌に、容赦なく突き立てられる……その瞬間!

《パルルルルル! パルウウウウウウウウウウウウウウウウ!》
 母なる者の鳴き声が、山脈全体に響き渡った。
 見よ! 奪われた子を取り戻さんと、翼を血に濡らしながら現れた巨鳥の姿を!
 そしてその背から降り立つ、勇者たちの姿を!

 さあ猟兵よ!
 悪しき龍を討ち滅ぼし、か弱き雛を救い出せ!
オーレリア・エフェメラス

金を追い求めるのかい?
薬が専門とはいえボクだって錬金術師
財宝に惹かれるのはよくわかる、けれど
略奪と探求は全く違うんだ
わからないかな?
なら、それでいいよ
ただ、血の香りがあんまり好きじゃないんだ

先ほどで懲りたから、呼び出すのはスライム
今度はちゃんと形を残すよ
竜の素材は興味深いしね

スライムは合体させて巨大な一つに
竜には液体金属と思ったけれど、今回のスライムは強酸、全てを溶かす王の水
金は安定が強みだけど、この子なら溶かせるから
敵の攻撃からは幕のように伸びて防いでもらう
結構やるんだよ、この子

竜を相手にするときは細く伸びて刺してから
内部を溶かして、溶断を狙うよ
爪に尻尾、用途はたくさんあるんでしょ?


マギア・オトドリ


「有数の財宝の窃盗及び強盗、宝物に付着する血液より傷害や殺人の疑い、本件の幼子の誘拐ならびに傷害行為を確認。発動条件該当、対象を撃破します」

「封呪包帯」を外して呪縛式の【封印を解く】事で、「叡智示す道」と「code=MAG:1A」より自身に断罪術式を発生させ自身に付与。
強化された肉体にて、徒手空拳(グラップル)によって対象を殴りつけます。対象の脅威となる様振る舞う事で、対象や他の脅威を自身に注目するよう誘導させます。
それで構いません。そも現時点で右目と右腕を激痛が走っています。今更傷が増えようと、痛みはそう変わりません(激痛耐性)。対象を必ず撃破するという【覚悟】を持って、戦闘を継続します。



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    BATTLE1 金色と、力

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 俗物的な竜もいるものだな、と。
 他人事のように、オーレリア・エフェメラス(ガラスの向こうのメッセージ・f22027)は思った。
 薬が専門とはいえ、オーレリアも錬金術師だ。
 金があるに越したことはないし、財宝に興味がないと言えば嘘になる。
 この場にある宝をそっと持ち帰る事だって、ちゃっかり考えてはいる。

「けれど、ね」
 腰につけたポーションホルダーから、一つを取って、中身を確認してから、地面へと放る。
 ぱりん、と割れたその中身は、あっという間に質量を増して、その粘性のある体を広げた。

「略奪と探求は、全く違うんだ」
『何を小賢しいことを』
 言葉が聞こえたのか、トゥルル・エ・ダハブは、オーレリアの呟きを鼻で笑い飛ばす。

『価値あるものを欲し! あらゆる手段を持ってこの手に収める! 全ての財宝は我が元にあるべきが故に!』
「価値観の相違だね、けど君の言葉には説得力にいささか欠けるよ」
『なんだと?』
 小さく微笑んで、錬金術師は言い放った。

「だって、品がないもの。金も銀も宝石も宝飾も、ついでにその雛達も――君に全く似合わない」
『――――死ね!』
 挑発は適切に作用した様だ。
 オーレリアが放ったスライムが集合し、巨大化する前に、その体表が金色のそれへと変じていく。

「――――! 黄金錬成……!」
 それはまさに、無から金を創造する、錬金術の秘術にほかならない。
 …………いや!

『クククハハハハハ! 後悔しても遅い、己の力に喰われるがいい!』
 トゥルル・エ・ダハブの足元にある金塊が、スライムの変化と同時に黒ずんでいく。
 錬金術の基本は等価交換だ、恐らく、スライムを錬金する代償として、あの金は消費されている。

「っ」
 とっさの判断で、スライムを分裂させる。
 本来ならばトゥルル・エ・ダハブを翼を飲み込めるはずのそれは、半分ほどの大きさになる代わりに侵食を逃れ、
 分かたれた半身が、ごとりと、重たい音を立てて、黄金の塊が地面に転がった。

『フハハハハハハ! 術士としても我が力が勝るということだ! 死ね、死ねい!』
「っ、厄介だね……!」
 金銀財宝の支配と操作こそが、トゥルル・エ・ダハブの能力。
 であれば、奴の能力で金に変じた物品は――――。

『ググググググ――――』
 分かたれた黄金の表面が波立ち、自立して動き出す。
 ターゲットは勿論、術者であるオーレリアだ。
 けしかけたスライムより、距離が近い。防御には回せない。
 体の一部を棘にして、錬金術師の細い体を貫かんと伸びる。
 その速度もまた、オーレリアの反応速度を上回っていた。

(しまった――――)
 心臓を貫く軌道で迫るその一撃を。






「――――罪状、確認」
 割り込んだ小さな影が、弾き飛ばした。

 ◆

(マギアくんはヒーローなんだね。誰かの助けに、ってかっこいいよね)
 それはかつて、酒場の一席で、オーレリアが少女に向けた言葉だった。
 まさか、自分の危機を救ってくれるだなんて思いもよらなかったけど。

「助かったよ、ありがとう」
 そう告げれば、こくりと頷いたマギア・オトドリ(MAG:1A・f22002)は、きっとトゥルル・エ・ダハブを睨みつけた。

「有数の財宝の窃盗及び強盗、宝物に付着する血液より傷害や殺人の疑い」
 巨躯にも怯えること無く、怯むことなく、敵を見据え。

「本件の幼子の誘拐ならびに傷害行為を確認」
 淡々と、犯した罪の名前を告げる。

『窃盗? 障害? 殺人? クハハハハハ!』
 竜という種族は、魔物として最高位である。
 強靭な体力、高い知性、膨大な魔力、圧倒的な膂力、加えて――異能。

『人の尺度で我を裁くか――――傲慢なり!』
 『黄金龍』トゥルル・エ・ダハブはその中でも特に厄介な能力を有する。
 己が物欲にまみれているからこそ。
 他者もまた、物欲の檻に囲い、支配することが出来る。

『償うべきは、貴様らが我が宝物庫に無作法に立ち入った罪よ!』
 翡翠色の双眸が怪しく光る。――――直後!

『ガアアアアアアアアア!』
『ギィイイイイイイイ!』
 絶叫と共に、財宝の山を崩しながら現れたのは、目を血走らせ、武器を構えた人間達だった。
 一人二人では済まなかった、十人、二十人、三十人――――。
 いや、それらを人間と呼んでよいかは、もはやわからない。
 何せ目は虚ろで、言葉は無く、体の一部は金銀財宝と一体化して混ざり合ってしまっているからだ
 黄金龍の魔力によって、財宝と融合し、配下となってしまった者達の末路だった。
 それでも、持っている武器は、黄金龍のコレクションを使っているだけあって、業物ばかり。

 だが――――。

「――――発動条件該当、対象を撃破します」
 右目と右手を包む封呪包帯が解けてゆく。
 それは即ちマギアの肉体に刻まれた術式の開放を意味する。

 ◆

 《術式解放:code=G》。
 即ち、Guilty。

 ……産まれたばかりで、怯える雛達を見る。
 彼らは、きっとかつての自分だ。
 悪に拐かされ、己という存在を書き換えられ、何も出来なかった、あの日の自分。
 ヒーローに助けてもらえなかったら、そのまま死んでいた、無力な自分。
 あの日、少女には何も出来なかった。
 だけど、今はここにヒーローが居る。

 助けに来たと、守りに来たと。
 もう大丈夫だと告げてあげられる。
 その為なら。

「――――――行きます!」
 たとえどれほどこの身が痛もうと、構うものか!
 一歩目の踏み込みが、地面を刳り。
 二歩目が前に出た時には、眼前にいた財宝人間が吹き飛んでいた。

「はあああああああああっ!」
 拳が、足が命中する度、立ちふさがる者共が消えていく。
 確実に、着実に、一歩ずつ前進していく。

『――――小賢しい!』
 突き進むマギアの前に立ちふさがったのは、黄金の塊、オーレリアのスライムを変換した“しもべ”。
 ギチギチと蠢いて、その形状を無数の刃へと変じようとしている!
 タダでさえ、かなりの質量と硬度を持つその個体――――下手に攻撃すれば、逆に腕が折れるかも知れない。
 だけど、倒さねば辿り着けぬのであれば――――!

「構うな、踏み台にしてしまえ!」
 背後から、叫びが聞こえた。
 何も考えず、本能に従って受け入れた。

『馬鹿め、串刺しだ――――何ぃ!』
 トゥルル・エ・ダハブが叫んだのも無理はあるまい。
 己が奪ったはずの、黄金のスライムの動きが静止したのだから。

「よそ見は、行けないな」
 次の瞬間、オーレリアが放ったのは、強酸の体を持つスライムの“槍”だ。
 穿けば、傷口から肉を溶かす、錬金術の本領発揮!

『グ――――!?』
 熱と痛みで、黄金龍の動きが一瞬止まった。

「お願いするよ、ヒーロー。思い知らせてやってくれ」
 そして、その隙を見逃す事など、ありえない!
 支配権を奪い返し、もはやオーレリアの思うがままとなった黄金が、形を変えてマギアに追随する。
 右腕を覆うように形成された、金色のガントレット。
 ぐっ、と力を込めれば、マギアの体を駆け巡る魔力を吸い上げて、輝きを増していく。

「これが…………あなたの罪! 黄金の――――一撃ですっ!」
 速度と、勢いと、硬度と、魔力の乗った一撃が。

『ガッ――――――――――』
 トゥルル・エ・ダハブの顎を思い切りかち上げ、吹き飛ばした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルコ・アーラ

・心情
洞穴に潜み、財宝を蓄える黄金の龍……まさに冒険譚のボスといった感じよね
でも、卵を盗んでいくのは頂けないわね!
悪いけど、冒険譚のようにドラゴン退治させて貰うわ!
ふふふ、腕がなるわね!

・戦闘
他の猟兵の中にはパルクーウィの安全を確保しようと動く人も居るかもしれないから、そういった人達に注意を向けさせないよう、牽制も兼ねて【援護射撃】を行うわ
パルクーウィの雛が安全であると認識できたら、ユーベルコード『天を駆けるは終望の流星』を放つわね!
戦いが終わったら、敵の黄金龍が溜め込んでたお宝でも漁ろうかしら?
ほら、これも冒険譚にはつきものだしぃ?
グリモア猟兵の女神様や村へのお土産も兼ねて……ね?駄目ぇ?


跋・字


「ふうむ、ふむ、これが黄金龍、成程、成程」
「煌びやかでもこうも審美眼に欠けるようでは。」
「いくら財を集めても猫や豚と大差はないなあ。」

折角此方も龍を呼んでおいて足で終わらせるのも無粋、無粋。
引き続き【偽典・悪龍伝説】で作り上げた龍に戦ってもらおうか。
「トゥルル・エ・ダハブ」には知性があり、欲がある。
で、あらば其れが弱みよな。
我が龍には金銀財宝を巻き込むように戦ってもらおうか。
財を一つ失ってこの激昂。続けてふたぁつみっつ、次々失えば相当に【精神攻撃】になるだろう。
雛を巻き込まぬように気を付ける必要はあるが、与えた知性を信じるとするかね。

「黄金龍と架空の龍の戦い、年甲斐もなく血沸くという物よ。」



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   BATTLE2 放たれる一矢と、描写の龍

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 洞穴に潜み、財宝を蓄える黄金の龍。

「……まさに冒険譚のボスといった感じよね」
 最も、お話の中の竜というのは、ここまで我欲に溢れては居なかったと思うけれど。
 物語ならば、勇者の戦いは勝利が約束されている。
 ならば、アルコ・アーラ(空渡り・f21945)が挑む、この戦いは?
 視界に映るトゥルル・エ・ダハブの姿は、強大であると同時に、醜悪な欲望を隠そうとしない。
 情けも、容赦も、躊躇も無く、敵と認識した相手をどこまでも蹂躙するだろう。

「パルクーウィの雛は……」
 位置取りとしては、猟兵と黄金龍が対峙する向こう側、積み重ねられた財宝の山の更に奥だ。
 幾人かの猟兵が、救助に動こうとしているのが伺える。ならば…………。

「――――こっちに引き付けないと!」
 駆け出し、竜の目元目掛けて、牽制の矢を放つ。
 狙い通りの軌道を通って、狙い通りの位置へ、吸い込まれるように飛んでいき――――。

『ム?』
 眼球に命中した矢は、そのままパキりと折れてしまった。

「う、嘘っ」
『……小賢しい、我に歯向かう羽虫がまだ居るか!』
 外皮ならまだしも、その眼球ですら、鏃が突き立たぬ硬度を持つ!
 しかし、不快は不快であったらしく、トゥルル・エ・ダハブの意識はアルコへと移ったようだ。

『あの小娘を殺せ! 八つ裂きにしろ!』
 黄金龍の号令の元、財宝人間達が一斉に殺到する。

「…………っ!」
 矢を携え、一矢、二矢。
 直撃すれば倒せるが、放つ矢よりも向かい来る敵の数の方が速く、多い。

(不味――――――)
 槍を持った財宝人間が、アルコをその射程に納めた。
 放たれた突きが、柔らかな腹を引き裂き、臓腑を貫く――――直前に。

《ゴルルルルルファァアアアアアアアアアウ!》
 巨大な爪が、迫りくる者たちを薙ぎ払い、吹き飛ばした。

「ひゃっ」
 アルコの前にいたのは、一匹の龍だった。
 黄金龍に勝るとも劣らぬ体躯の、翼を持つ、蛇の如き応竜。

「ふうむ、ふむ、これが黄金龍、成程、成程」
 その背に跨った、枯木のような老人が、けたけたと笑いながら言った。

「煌びやかでもこうも審美眼に欠けるようでは」
 童の悪戯を咎めるような、子供のヤンチャを見守るような、戯けた口調で。

「いくら財を集めても猫や豚と大差はないなあ」
『――――ヒトの干物が、我を愚弄するか!』
 トゥルル・エ・ダハブが怒り爪を立て、描写の応竜が応戦する。
 二体の竜の取っ組み合いだ。洞窟が激しく揺れて、天井から細かな石がパラパラと降り注ぐ。

「ああ。怪獣大決戦!?」
「黄金龍と架空の龍の戦い、年甲斐もなく血沸くという物よ。のう?」
 ちゃっかり距離をとって、老人――跋・字(独筆の隠者・f22644)はその戦いを眺めながら言う。

「ではお嬢さん、後を頼むぞ」
「えっ?」
「我が龍だけでは些か足りぬ。足りぬ。あれは無敵だが、無限ではない故に」
「け、けど、私の矢、弾かれちゃったし」
「それは、本気であったか?」
 潤いという概念を忘れてしまった、枯れ枝のような細い指で顎をさすりながら、字はアルコをじぃと見つめた。

「おぬしが持てる全てを費やした、一矢であったか? いいや、いいや、違うはずだ、そうではないはずだ」
 少女の奥にあるものを、見透かすように。

「あの濁った瞳は、確かに硬い、固い。強固で頑固よ、しからば、わしの龍は必ず隙を作ろう」
 だから、全力で弓を引き絞ると良い、と続けた。

「冒険譚の最後に倒すべき敵とあらば、その一矢は必ず届く、届く」

 ◆

 描写の龍は、己が主に与えられた知性をフル稼働して考える。
 無敵なれど、完全ではない――――トゥルル・エ・ダハブは強い。
 己を構成する“描写”が尽きる前に、戦況を変えねばならぬ。

 ――――敵は高い知性と、物欲の塊である。
 ――――敵の力の源は、黄金である。
 ――――黄金がある限り、敵兵と竜は強化され続け、また武器となる。
 ――――よし。
 ――――燃やそう。

 ゴウ、と黒墨のような炎が、龍の口から放たれた。

 ◆

『な、貴様…………!?』
「あああああっ!」
 トゥルル・エ・ダハブだけならず、アルコも悲鳴を上げてしまった。
 無理もない、全てを塵と化す炎は――――黄金龍にではない、財宝に浴びせかけられたのだから。

 当たり前だが! ――アルコ以外にもそれを考えていたものは居るけれど!

「た、戦いが終わったら、お宝を持って帰ろうと思ってたのにぃ!」
『誰が貴様らなんぞに渡すものかぁああああああああああああああ!』
 絶叫である。黄金龍にとっては可愛い我が子に等しい財宝が熱で溶けて変じ燃えてゆく。
 ダイヤモンドなど、炎に触れれば炭化するものはひとたまりもないだろう。

『よくも――――よくも! よくもぉぉぉぉぉぉぉぉ!』
 心からの絶叫であった。ちょっと同情してしまいたくなるぐらいに。

「――――しない、けどねっ!」
 激昂し、集中を乱した相手ならば。
 よく狙って、よく魔力を練り上げる事ができる。

(最初に撃ち穿けなかったのは――――)
 十分な魔力を込めていなかったのもあるが。
 何より、足りなかった。
 その一矢で、戦局を変えるという、意思が。

 牽制では駄目だ。
 殺意を込めろ。
 決意を込めろ。

「おお、美麗、美麗」
 老人の視界には映っていた。
 引き絞られた、矢に、白い白い、純粋な魔力が凝縮していく。

「おじいさん、ありがと」
 血走り、目を見開く黄金龍の姿を視界に捉え。

「――――この一撃は、特別よ?」
 指を離した。
 矢は物理法則に従い、弦に弾かれ、突き進んでいく。
 しかして、その軌跡は、強く輝き、視界に焼き付く一閃。
 寸分違わず、精密に――――トゥルル・エ・ダハブの右目に突き刺さった。

   メ テ オ ー ル ・ カ マ ン ガ ー
 《 天 を 駆 け る は 終 望 の 流 星 》。

『――――――――――――!?』
 びしり、と硬いものが砕ける音。
 流星の一閃が、翡翠の眼球をかち割った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ソラスティベル・グラスラン


背より飛び降り、黄金龍の前に立ち塞がり
――まずは雛の無事を確かめて
わぁ!もう卵が孵って雛が生まれてます!
うふふふ、大きくてとっても可愛いっ

――そして、龍へと刃を向ける
この素晴らしさが貴方には解りませんか
どんな黄金や宝石よりも輝く、新たな命の輝きが
成長を見守る喜びが、未知の将来へ期待が!

【盾受け・オーラ防御】で身を守り、盾を構えて、突撃!!
狙いは黄金龍のみ!操られた方はごめんなさい!
【怪力】で弾き飛ばしつつ、ただ只管に前へ
悪しき龍の眉間に、わたしの大斧を叩きつけるまで!

お任せください、パルクーウィさん
貴方の愛し子は必ずや取り戻し、貴方のもとへ届けます
この大斧と、我が【勇気】に誓って!!


アーデルハイド・ルナアーラ
でっかいドラゴン!残念ね。オブリビオンじゃなければお友達になれたかもしれないのに。
さて、まずは雛鳥の保護を優先しなくちゃ。巨大シマリスのグレーター・チップマンクさんを召喚してドラゴンの注意を引きつけてもらうわ。その隙に私は魔力で肉体を強化し、雛を担いでお母さんの所へ。もしお母さんが戦闘中なら洞窟の外へ。5往復はちょっとしんどいけどね。追撃が来たら身を呈して雛鳥を庇うわよ。無事に保護が終わったらグレーター・チップマンクさんと共にドラゴンに肉弾戦を挑むわ!


エミリー・クララ

優希さん(f22023)と!

Zzz……すぴー!
我が爆熱ですべてほぼしてくれ、るー……むにゃむにゃ
移動中は使い切った魔力を回復するためにぐっすり睡眠です!

すぅすぅ……はっ、もう朝ごはんの時間ですか!
お? なにやら魔力も大分復活している気が!

もしや優希さんのお力添えですか?
ふっふっふ、ご所望ならばご期待に応えましょう!
即ち真打ち登場!(二度目)

我が名はメイガスノワール・ロートロッソルージュ!
感謝しますよ、優希さん!

詠唱追加!
我宿すは月の狂気
顕現せしめしは白き破滅
吹き荒れるは花弁の如く
其が滅びの名は雪月花!

エクス、プロォド!!
【属性攻撃】【全力魔法】【範囲攻撃】【高速詠唱】【鎧無視攻撃】【鎧砕き】


コフィー・ファミオール

あとは任せてとパルクーウィの背から飛び降りて黄金龍へダイブ
大口あける脳天めがけてフリーフォールキックをかます

この金ピカぬすっとめ!これから生まれる新しい命……あ、もう生まれてるじゃん!
初めて見る景色は一度っきりなんだ、それを良くも!
ダブルで許さない、覚悟しろ!

雛へ被害が行かぬよう気にかけながら黄金龍へ挑みかかる
股下を抜けたり角や翼を掴んで勢いをつけたりと、小柄さを生かして拳と蹴りで立ち回る

左手を向けて【空織檻】で拘束
その後、右手で拳を作って駆け出す
拳には抜け落ちたパルクーウィの羽を握りしめて、全力の振り抜き
この体は今だけ、私だけのものじゃない
お前をぶっ飛ばすっていう親の心が籠もった依代だぁ!


パルピ・ペルポル
えっマジで卵って気付いてなかったの…。

さすがにフェアリーの飛行能力じゃついていけないから、パルクーウィの羽根に埋もれさせてもらったわ(ついでに簡単な手当てもさせてもらったけど)最高にふかふかだったわ
もふらせてもらった上にあとで羽根を少し分けてくれるそうだし、きっちりお仕事終わらせるわよ。
あ、溜め込んだ財宝は後で迷惑料として頂くからご了承のほどを。

念動力で空中に雨紡ぎの風糸を張り巡らせて、敵の行動を阻害兼盾としても使用するわ。
一応雛のほうにもこっそりバリケード代わりにめぐらせておきましょ。
そして偶然の不運なる遭遇を使って攻撃するわ。雛からこちらに龍の気を移さなきゃ。

けど雛もかわいいわねー。


久遠・優希

エミリーの嬢ちゃんと。ま、これも何かの縁やしな。

つーわけで、ついに最終決戦に……
……いつまで倒れてるん?全魔力使ったってマジ?遠足前の子供でもお菓子は全部食い切らんよ???
うん、しゃーない。俺の魔力を回すとしよか。さすがに放置も寝覚めが悪いし、多分嬢ちゃんの方がずっと役に立てるやろからね。
「雪月花・花」。全ての花をエミリーに。できる限りの魔力を回す。俺の雑魚魔力じゃ、補えるか分らんけどね。

……はい、起きろー、朝やでー、おはよーさん!
頼むでエミリー!お前にしかできやん事や!趣味悪い黄金馬鹿に、一発喰らわせたってくれ!【鼓舞】


攫われて、何もわからず殺される。そんな三流の悲劇、あってはならんのや。



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    BATTLE3 ぼくらの雛鳥救出大作戦

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『グルォアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 右目を射抜かれ、痛みと怒りで暴れまわる黄金龍を前にしても、すやすやと眠りこけられる神経の図太さは、本当に大したものだ。

「……ホンマに全魔力使ったんか? マジで? 最終決戦あるって分かってたのに?」
 ランダムエッグ相手に全力をぶちかましたエミリー・クララ(爆熱の申し子・f21968)は、いまや魔力の回復のために安らかな夢の世界へ旅立っていた。
 その火力だけには唯一無二の信頼はあれど、いざ戦場にたどり着いても一向に目を覚ます気配の無い彼女を背に担いだ、久遠・優希(偽善者のワルツ・f22023)は若干の冷や汗を流していた。

「すぴー…………」
「あかんあかんあかんあかん……!」
 背中にかかる重さははっきり言って大したことはないのだが、戦えなければただの的だ。
 さっさと起こさないと、マジで死ぬ。本気で死ぬ。確実に死ぬ。

「そろそろ起きんかい! …………ぁーもう!」
 暴れ狂う龍の猛攻もそうだが、何より危険なのは雛だ。
 誰かが助けに行かねば、遅かれ早かれ、巻き込まれてしまう。

「……はい、起きろー、朝やでー、おはよーさん!」
「我が爆熱ですべてほぼしてくれ、るー……むにゃむにゃ……」
 ゆっさゆっさと背中を揺する。
 まだ、目覚める気配はない。

 ◆

『グルルルルルウウォォァアアアアア! 許さん……許さんぞ猟兵共……!』
 片目を失ったトゥルル・エ・ダハブが、勢いを失ったかといえば否。
 より凶暴性を増し、より怒りに満ち満ちた形相で、もはや視界に映る者全てを薙ぎ払わん勢いだ。

『元はと言えば…………!』
 荒れ狂う怒りの思考の中で、何故こうなったかを思う。
 答えは明白だ、あの薄汚い鳥の雛共だ。
 このトゥルル・エ・ダハブが選んでやった価値ある宝を、割り砕いて出てきた醜い獣。

『貴様らさえ居なければぁああああああああああ!』
 狂気の矛先が、眼下に向けられた。

《パルッ!?》
 振り上げられた尾が、パルパルと鳴く雛達向かって振り下ろされる。
 如何にパルクーウィの仔といえど、その質量の前にはひとたまりもないだろう。

 グシャッ、と激しい音がして。
  、、、、、、、、、、、、、
 トゥルル・エ・ダハブの顎が、大きくめり込んだ。

 ◆

 黄金龍が殺意を雛に向けた瞬間、二つの影が飛び出した。

「はあああああああああああああっ!」
 一つは、雛の前に立ちふさがると、モナークと名付けられた盾を眼前にかざし、両足を開いてどんと構えた。
 裂帛の気合と共に、振り下ろされた尾を受け止める。
 衝撃が腕を通り、体を抜けて、足の先から抜けていく。
 全身がぐいと押し込まれ、地面にめり込む感触を味わいつつ、それでも――――。
 ソラスティベル・グラスラン(暁と空の勇者・f05892)は、一歩足りとも退くことなく、その攻撃を耐えきった。

「てやああああああああああああああああああっ!」
 一つは、高く高く跳躍し、空を蹴って、回転し、逆さまになって、洞窟の天井に着地。
 そのまま、勢いよく足を蹴り上げ、重力と共に、トゥルル・エ・ダハブに向かって襲いかかる。
 コフィー・ファミオール(この空に響く小さな音を奏でる・f21569)は、両足を揃え、黄金龍の鼻先目掛けて――全力の蹴りを叩き込んだ。

『グォオアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 強制的に噛み合わされた顎から、ピキッと音がして、牙がいくつか砕けて落ちた。
 一方、攻撃をぶちかましたコフィーは、くるくる回転しながら、雛の前に降り立って。

《パルパル!》《ピィ!》《プァー!》
「よかった、雛は無事だっ!」
「勿論ですっ! 傷つけさせはしません!」
 えへんと胸を張るソラスティベル。

「すごいすごい! とっても偉い! ……うん、この子たち、可愛いねえ」
「はい! とっても! まだ産まれたばかりなのにこんなにおっきくて……」
 二人の少女は、目の前にいる……赤ちゃんにしては少々大きすぎる雛たちを見て、顔を見合わせて笑った。
 そして……同時に、黄金龍へと振り向いて、それぞれ、斧と拳を向けた。

「この素晴らしさが貴方には解りませんか」
 どれほど時間、慈しみ、愛し、その時を待っていただろう。
 きっとパルクーウィだって、子供達が産まれた時、そばに居てあげたかったに違いない。

「どんな黄金や宝石よりも輝く、新たな命の輝きが! 成長を見守る喜びが、未知の将来へ期待が!」
 それを身勝手な欲望で奪い去った、諸悪の根源。

「そうだよ。……こんなピカピカした、ワケ解んない所で生まれちゃってさ」
 本来、この子達が見る景色は。
 広くて大きな空だったはずだ。彼らを守り育てる、大樹の幹と緑だったはずだ。
 何より、偉大なる母なる翼、誰より頼るべき……母親だったはずだ。

「初めて見る景色は一度っきりなんだ、それを良くも!」
 自分が命を、自我を得た時のことを思えば。
 それが何より大事なことだったか!

「許すわけには行きません!」
「ぜーったいに許さないから!」
 二人の少女が声を揃え、同時に地を蹴った。

 ◆

『何を訳のわからぬことを!』
 トゥルル・エ・ダハブにとって、そもそもあの雛達は一切の価値のないものだ。
 そもそも彼の認識からして、猟兵達がこの住処に来たのは、己の宝を奪いに来たのだと思っている。
 しかし、どうもそうではない……彼らの主眼は、むしろあの獣なのでは?

 ならば…………。

『――――我が下僕達よ!』
 トゥルル・エ・ダハブは、高らかに叫んだ。

『あの鳥共を殺せ! 数で囲んで、始末するのだ!』
 その号令に従って。

「「「「グィイイイイイイイイイイイイイイイイイ!!!」」」」
 洞窟獣に潜んでいた無数の財宝人間たちが、一斉に武器を振り上げて、パルクーウィの雛目掛けて殺到した。




 三百六十度、四方八方から押し寄せる財宝人間の群れの数は、数えるのも面倒なほど。
 正面からくる個体は、ソラスティベルやコフィーの敵ではない、殴り、弾けば吹き飛んでゆく。
 だが――――!

「雛たちがっ!」
 後ろから来る連中はそうも行かない、引き返して、雛を守らねば、あっという間にひき肉だ。

「――――っ! 卑怯な……っ!」
 仮にそれより先にトゥルル・エ・ダハブを討てたら、動きは止まるのか?
 財宝人間と黄金龍、両者の攻撃を同時にしのげるか?
 ――いや、どちらもやるのだ。守り、倒す。それこそが勇者の役割だ。
 たとえ、どれだけ無謀であろうとも、傷つこうとも!

 少女達の視線が交わる。
 ソラスティベルが決意を固める。
 コフィーに向かって、私が守るから、と告げようとする。

「大丈夫よ」
 その、ほんの少し前に。

「進んで――――こっちは任せて!」
 背後から、誰かの声が聞こえた。

「――――わかりましたっ!」
「――――了解っ!」
 二人の少女は、その声を信じて、更に一歩前へと踏み出した。

 ◆

《パル――っ!》
 向けられた切っ先に雛達が怯えるのも無理はあるまい。
 まだ何も知らないのだ、母親の愛も、心からの安心も。
 だけど、敵意と殺意は明確に感じ取れる。自分たちを害するものが、直ぐ側に居る恐怖。

『グフ――――』
 にたり、とトゥルル・エ・ダハブは、高みから光景を見下ろし嘲笑う。
 猟兵達は雛を放っておくまい、守ろうと背を向けたところに、爪を立ててくれる。
 財宝人間たちが雛に殺到する様を眺め、向かってくる少女達を惨殺する瞬間を思い舌なめずりしたその時。

「グ、エ」
 まさに、雛に武器を突き立てようとしていた財宝人間の動きが。
 ぴたり、と止まってしまった。

『何――――?』
 ぎちぎちと、財宝人間達は空中でもがくも、それ以上進むことも退くことも出来ない。
 完全に、封じられていた。

 ……糸だ。
 よく見れば、全身を細い糸に絡め取られて、ぶらんと吊るされているのだ。

「させないわよ、あなたみたいな奴がやることはね、だいたいお見通しなの」
 答え合わせをするように、トゥルル・エ・ダハブの眼前に、ふわ、と舞い降りた小さなフェアリーが、べー、と舌を出し、ぱちんと指を鳴らす。
 その動きで、財宝人間たちを縛る糸は更に拘束を強め、ついに身を捩ることすらままならなくなってしまった。

「大体、卵って気付いてなかったあなたがマヌケなんでしょう? 八つ当たりなんて最低よね」
 フェアリー……パルピ・ペルポル(見た目詐欺が否定できない・f06499)は、ちっち、と指を振って。
 それから、ふふんと笑い、指を突きつけて言った。

「全然見えてなかったでしょ? 私が居たことも、罠を張っていたことも」
『ガ、グ、グォ…………!?』
 トゥルル・エ・ダハブの体躯からしてみれば、フェアリーなどまさに羽虫に等しい存在だ。
 ましてこの洞窟の中、気づけと言う方が無理がある。
 意識を向けることすら煩わしい、塵芥のはず!
 それが、よりによってこの黄金龍に向かって! なんと不敬、なんと無礼!

『食い殺してくれる…………!』
 大口を開けて、喰らいにかかる。
 もはや原型も残さぬほど噛み砕いて飲み下してやらねば、収まるものも収まらぬ!
 だが。

「あら、残念」
『ガ――――――!』
 たまたま。偶然。幸運なことに……いや、“不運なこと”に。
 コフィーが踏み抜いた天井から、尖った岩盤が落下してきて、トゥルル・エ・ダハブの頭部を直撃した。

「それと……いいの? 私に注目してて」
『な――――――はっ!?』
 ひらりと、身を翻して、パルピが姿を消したときにはもう遅い。

「――――乗ってっ!」
「はいっ!」
 足元に迫っていたコフィーが、左手を虚空に向けた。
 圧縮された空気のブロックに、ソラスティベルが飛び乗る。

「いっけえええええええええええええええっ!」
 空の上に着地する、という矛盾。
 強く踏み込み、更に上へと!
 その瞬間、足場になっていた空気が弾けた。
 圧縮された空間が弾けた衝撃波、背を押す暴風となって、勇者の体を加速する!

「待っててください、パルクーウィさん!」
 バチ、バチバチバチバチ。
 ソラスティベルの手にした斧が空気を裂く音が鳴り響く。
 蒼い雷光が空間を叩き、打ち鳴らす。

「貴方の愛し子は必ずや取り戻し、貴方のもとへ届けます!」
 勇者は黄金龍の眼前にたどり着いた。
 それ即ち、必殺必中、無双の一撃の射程距離。

「この大斧と、我が勇気に誓って!!」
 怯えない。
 震えない。
 怯まない。
 誰が相手でも、何が相手でも。
 それこそが勇気の絶対証明。
 勇者を勇者たらしめる根幹。
 故にその名を高らかに叫ぶ。
 技の名前は――――――。

    サ ン ダ ラー
「《我が名は神鳴るが如く》――――――――っ!」


 雷光が、洞窟中をまばゆく照らす。

『グォァアアアアアアアアアアアアオオオオオオアアアアアアアア!!!!!!』
 眉間目掛けて放たれた雷斧は、黄金龍の絶え間ない絶叫を齎した。

 ◆

『ガアアアアアアアアアア! グオォァアアアアアアアアアアア!』
 褒め称えるべきはその生命力か、あるいは生き汚さというべきか。
 ソラスティベルの渾身の一撃を受けて、トゥルル・エ・ダハブは顔を抑え、痛みに暴れていた。
 無理もないだろう、顔面が半分割れ断たれて、傷口は修復不能なほど焼け焦がされている。
 理性を抛ち、価値があると断じた宝を己の尾と爪で壊しながら、一心不乱に。

「あれでやられないんだ――危なっ!?」
《パルッ!?》
 巨体が無差別に手足を振り回せば、それだけで十分な驚異だ。
 雛の上に振ってきた大きな岩盤を、蹴りで弾きながら、コフィーは冷や汗を流した。

「っ! ここは危ないです! 雛を連れて逃げてくださいっ!」
 未だ黄金龍と切り結びながら、ソラスティベルが叫ぶ。
 荒れ狂う爪や尾を斧で弾き、守りながら。

「ん、わかった! 任せ――――――」
 コフィーはぐっと拳を上げて了解の意を示し、いざ、雛を運び出さんと――――。

《パル!》
《パルルウ》
《ピィ》
《…………》
《Zzz……》

「…………でっかいなぁ! もう!」
 それぞれが一抱えほどもある卵から産まれているので、当然サイズもビッグである。
 頑張れば持てなくもないけれど、外まで五往復はなかなか厳しそうに思う。
 と言うか寝てる奴めちゃ胆力あるなぁ! などと若干現実逃避的な思考まで浮かんでくる。
 どうしようどうしよう、とりあえず考える前に運んじゃおうか、と雛を一羽抱きかかえようとして。

『キィ!』
「へ?」
 戦場に飛び込む、新たな影を目撃した。

 ◆

「もう一撃、あてられれば……!」
 《我が名は神鳴るが如く》の一撃は間違いない手応えがあった。
 もう一撃、頭に打ち込めれば倒せる。
 だが、痛みに暴れる黄金龍を前に、背後を守りながら戦うとなれば、再度射程距離まで近づくのはなかなか難しい。
 そして何より、時間を稼がねばならない。
 雛達を安全圏に逃がすことができれば……危険の最中に飛び込む事に、恐怖はない!

『キキィ――――――――――!』
 それに、頼もしい味方だっているのだ。
 例えばそう、黄金龍と同じぐらいのサイズのでっかいリスとか。
 でっかいリスとか。
 …………。

「リ、リスさん!? 」
 そう、いつの間にか暴れ狂う黄金龍をマウントし、なんなら殴りつける巨大なリスがそこに居た。
 握りしめられた拳から放たれるアッパーからの腰の入ったストレートはエグい角度でレバーに突き刺さり、龍をさらに悶えさせた。

『キキィ! キィ!』
「『ここは俺に任せな、お嬢ちゃん達。それよりガキ共を安全な所に』ですって!」
「わあ! すごくワイルドなリスさんなんですねっ!」
 ひらりと舞い降りた妖精……パルピが、リスの言葉を通訳した。

「妖精さん! さっきはありがとうございました!」
「こちらこそ、すかっとしたわよー。それより、雛を逃したいの、手伝ってくれる?」
「勿論です! でも、あのリスさんは…………」
「大丈夫だって、危なくなったら逃げられるそうだから」
 グレーター・チップマンクvs黄金龍トゥルル・エ・ダハブの戦いは徐々に苛烈さを増し、洞窟全体がグラグラと揺れ始めた。
 ともすれば、崩れ落ちるやも知れない、となれば、どちらにしろ、雛は助けねばならない。

「…………わかりました! リスさん、おまかせしますっ!」
『キィ!』
 頼れる友(巨大げっ歯類)に背中を預け、雛の元へ駆け寄る勇者と妖精。

「あぁー……可愛い……ふかふか……もふもふ……」
 そこには雛に抱きつき羽毛の柔らかさを堪能する女性と、雛の一羽を背中に担いだコフィーが居た。

 ◆

「はっ! あ、ごめんなさい、だってこんなにやわっこくて丁度いいサイズの可愛い幻獣がいたからつい……」
 ゴシックロリータ調の意匠に身を包んだ、柔らかい印象を感じさせる風貌。
 彼女もまた猟兵――――アーデルハイド・ルナアーラ(獣の魔女・f12623)は、柔らかな笑顔と共に言った。

「幻獣……なのかな?」
「少なくとも普通の動物ではないんじゃない?」
 顔を見合わせるコフィーとパルピ。雛達は未だパルパルと声を上げ、翼をバサバサと動かすものの、よたよたと歩こうとする姿はなんとも頼りない。

「その、あのリスさんは……」
「ええ、私のお友達。可愛くてとっても強いでしょう?」
 あまりに当然のことの様に微笑むので、言われた側もなんとなく『そうだね!』としか言えない雰囲気がある。

「大丈夫、グレーター・チップマンクさんはちゃんと時間を稼いでくれるわ。もしかしたら倒しちゃうかも!」
「で、でっかいもんねえ」
 ソラスティベルの一撃が与えた、黄金龍のダメージが大きかったこともあるだろうが、現状は抑え込みにかかっていることもあって、リスの方が優勢に見える。

「えっと、じゃあ私が一羽で……」
 一羽を既に背中に担いでいるコフィー。雛とは言え結構重たい。正直足がふらつく。
 この場にいるのはなんの因果か全員若い女性、内一人は妖精である。
 三人で一羽ずつを運んで、二往復、何分で済ませられるか……思案した次の瞬間。

「じゃあ、私が二羽連れて行くから、一羽ずつお願いしていい?」
「ひゃあ!?」
 片手に一羽ずつ、なんてこと無いようにひょいと持ち上げるアーデルハイド。
 流石に驚いたコフィーに、どうしたの? と首を傾げ。

「あ、いえ、ちょっとパワフルだなーって思っただけ…………それより、流石に妖精さんにはきついんじゃ――――」
「そうね、持てはするけど羽毛に埋もれちゃって前が見えないかも」
「あ、持てはするんだ……」
 つくづく、猟兵というのはとんでもないものだ。小さくたって、大きな力を秘めている。

「では、私が二羽をお連れします!」
 そして当然のように二羽をもちあげるソラスティベルであった。勇者に出来ないことはないのである。

「よし……それじゃあ行こう!」
 雛さえ安全地帯に持ち出せれば、あとは思う存分戦うことが出来る。
 各々、洞窟の出口を目指す中。

「……ああー、触り心地が良いー……ねえ、私とお友達にならない?」
《パル?》
 アーデルハイドに担ぎ上げられた雛が、首を横に傾げた。

《パルル、パル?》
「ええ、楽しいことや面白いことが一杯あるわ、この世界じゃ見られないものも沢山!」
《パル! パルパル!》
「ふふ、考えておいて頂戴ね……きゃっ」
 戦闘の余波で崩れた岩を、体勢を崩さぬまま蹴りでストレートに破壊し。

「危ない危ない……油断は禁物ね」
《パルル!》
 外の光が見えてきた。
 出口を抜けたその先に。

《パルル! パルパルゥ!》
 その体躯故、中には入れなかった巨鳥、パルクーウィが、姿を見せた我が子を見て、大きな声をあげた。

《パル……》
「ええ、あなたのお母さんよ。……さあ」
 地面に下ろされ、促されると、雛はよたよたと歩き出した。
 他の雛達も、一目で母だと理解したのだろう、覚束ない足取りで、それでも懸命に前へ前へと進んでいく。

《パルルゥ!》
《パルル……!》
 それはヒトには理解し得ぬ言葉であったが、どんな感情が込められているかは、一目で分かった。
 一羽、また一羽と、パルクーウィの足元にたどり着いて行く。

《パルルルル!》
 歓喜の鳴き声をあげて、母子達はようやく、再開を果たしたのだった。

 ◆

「お、雛達は助かったみたいやな……はぁ、あかん、仕事なくなってもーたわ」
「すやぁ……」
 眠りこけるエミリーを担いだまま、とうとうパルクーウィの背中から降りる事のなかった久遠は、何しに来たんだろうという虚しさと共に大きく息を吐きだした。
 燃費の悪さは動きの悪さだ。強い反省を望みたいところだが、エミリーもエミリーでやることをやった後なので強く言うわけにもいかない。
 トゥルル・エ・ダハブは倒せたのだろうか? 後はお家帰って終了か?
 ……そう思った矢先。

「……あかん」
 それは“空気”の変化だった。
 ぞわりと全身の毛が怖気立つような敵意と殺意が、猟兵達を突き刺し、“身の危険”を全員が感じた。

「なんや、この禍々しい力の流れ……は……」
 洞窟の奥だ。今までは存在しなかった大きな“力”が生じている。

『許さん』
 底冷えするような、地鳴りのような声だった。

『我をここまで侮辱した貴様らを……まさか、帰すと思うのか』
 ズン、と洞窟……どころではない。
 山全体が大きく揺れて、軋んだ。
 数秒ほどで収まったが、何が原因なのかは、明らかだった。

 ……黄金龍トゥルル・エ・ダハブの能力は、つまるところ“財宝の価値”を操る事だ。
 蓄え集めた金銀財宝は、彼の力そのものである。
 宝の価値を削ぎ落として、財宝兵士を作り上げ、錬金術の秘技までもを使う事ができる。
 ならば。
 その財宝全てを代償に、自身を強化したならば?

『宝はまた、集めれば良い…………』
 再び、大きな揺れが起こる。今度は、止まらない。

『貴様らを殺さねば……我の溜飲は下がらぬわ!』
 洞窟の奥が、まばゆい輝きに満ち始めた。

「チ、チップマンクさんは!?」
 戦っていたはずのグレーター・チップマンクの安否を確認するため、召喚門を開くアーデルハイド。
 その扉から、かのリスが現れることはなく、代わりに小さな普通のリスが一匹出てきて。

 『負傷、療養中』

 とリス語(?)で書かれた看板を置いて、戻っていった。

「チ、チップマンクさーん! ごめーん!」
 生きているようなのでとりあえずよかった。
 しかし現状はあまり良くない。なにせ――――。

「不味い……洞窟の外に出てこられたら面倒やぞ……!」
 狭い洞窟の中では、トゥルル・エ・ダハブも全力で暴れるわけには行かなかったはずなのだ。
 何せここは彼の巣だから。住処であり、宝物庫であったからだ。
 それが解き放たれたら。空を飛びまわって襲ってきたら。
 何倍も厄介になる、今すぐに仕留めねばならない。

「仕留めるって……どうやるねん! あーくそ、洞窟を全部ぶっ壊して生き埋めに……!」
 出来るわけがない、そんな力は久遠にはない。
 大量の爆薬でもあれば、話は別だが…………。
 大量の爆薬が。
 爆発が。
 破壊力が、あれば。

「はっ!!! 地震ですか!?!?」
 そして、エミリーが目覚めた。

 ◆

 もはや宝、と呼べるものはその巣の中には存在しなかった。
 光り輝く金銀は黒ずみ、宝石は石に変じ、装備の類は朽ちて錆びた。

 だが。
 体躯は倍以上に膨れ上がり、翼の枚数も増えた黄金龍にとっては、それが最適解だと感じられた。

『グ――――』
 それでも、眉間に食い込んだ雷斧によって付けられた傷が癒えることはなかった。
 打ち貫かれた片目もだ。
 ズキン、と鈍い痛みは、トゥルル・エ・ダハブをより怒りへと誘っていく。

 殺す。
 壊す。
 ずたずたになった屍を黄金に変えて、永劫に愛でてやろう。
 そんな残酷な末路こそが、連中にはふさわしい。
 洞窟の外に顔だけを出した。もはやこの体ではまともに外に出ることは出来ないが、どうせもう戻らぬ場所だ。入り口など破壊してしまえばいい。

『ム――?』
 だが、既に敵の姿はなかった。
 空に巨大な鳥の影が見える。
 パルクーウィの背に乗って、猟兵達は既に大空へと羽ばたいているのだ。

『逃がすか――――』
 ならば、追いかければ良い。この翼であれば、パルクーウィであれど追いつくことが出来る。
 ……そう思った時。

「――――――の鐘の――――」
 強化された聴覚が、その声を聞き取った。

 ◆

 花が舞っていた。
 それは風に撒かれて、空に蛇行しながら道を作る。
 空中を舞うパルクーウィの背中から、洞穴へと続く導火線だ。
 だが、殆どの花は、一人の少女の手の中に収束し、高密度のエネルギーとなって取り込まれていく。

「ええか、俺の魔力を全部お前に預ける」
 巨鳥の背で、杖を構え、仁王立ちするエミリーの背中を支えながら。
 久遠は、は、と笑った。

「ギリギリで頼ってしまって悪いなぁ、これしか思いつかんかったわ」
「いえいえ、その選択は正解です。何せ――――かんっぺきにからっけつでしたからね!」
 目覚めた所で、すっからかんのエミリーに爆熱魔法を使うすべはなかった。一日一回、それが彼女の魔法の欠点であり制限であるのだから。
 しかして、それを補う外部電源があればどうか。
 彼女の返答はこうだった。

「んー、出来なくはないと思いますが、その場合は優希さんも完全無欠にすっからかんになって三日は動けないと思います!」

 それを聞いて、ふうん、と思ったものだ。

 “何だ、その程度でいいのか”と。

「っし、ならやったるわ」
「その、いいんですか?」
「当たり前や。あいつが何したと思っとるんや」
 攫われ、親の顔を見ることもなく、何もわからず殺されかけた雛達は、今はもう、パルクーウィの背に居る。
 けれど……一歩間違っていたら。

「アホみたいな三流の悲劇を作ろうとしたクソボケやぞ、思い知らせへんとあかんやろ」
「……ですね、では!」
 エミリーが、詠唱を開始する。

「そんな優希さんの気持ちに答えて、ちょっと動けるぐらいは魔力を残さなければならないかな、と思っていたささやかな気遣いも全て捨てて、完全全力で行きます!」
「………………いやその気遣いはちょっと欲し――――――」
「地を満たすは崩落の鐘の音。終幕を告げるは漆黒の爆炎、紅蓮の業火――――」
「詠唱初めおったこいつ!」
 みるみる、体から力が抜けていくのを感じる。
 ……まあいい。
 どうせ、最初からそのつもりだったのだ。

「…………ぶちかましてやろうやないか! やったれエミリー!」

 ◆

 ―――不味い。
 あれは――――とても不味い。
 今すぐ! 逃げなくては!

 それは、生物としての本能だった。
 誇り高き龍が、一瞬全てを忘れ、プライドと、溜め込んだ財宝の全てをなげうって手にした力を持ってしてなお、逃げねばと思うほどの危機だった。
 慌てて入り口を広げ、翼を広げ、洞窟から出ようと羽ばたこうとしたその体を。

 ピンッ、と足を何かが引っ張った。
 目を見開く。
 糸だ、細い細い糸。
 足に絡みついて、洞窟の奥深くに繋がっている、黄金龍をつなぎとめる殺意の糸。

 べー、っと。
 遠い空の向こう、妖精が舌を出しているのを、財宝と引き換えに強化された片目は確かに見た。

『ガ、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 小賢しい真似を! ふざけるな! あんな羽虫が! この私を!
 全膂力を持って、足を踏み鳴らし、糸を引きちぎる。
 出入り口の穴を破壊して、
 その一瞬が、命取りだった。

『…………ぬう!?』
 …………羽が動かない。
 まるで、己の周りを取り囲む、空気そのものが固められているかの様に!

 ◆

 エアリアルプリズン
 《空 織 檻》。
 空気を圧縮し、檻として閉じ込めるユーベルコード!

「逃げようと――――するなよ……っ!」
 それは、空から落下する一つの影だ。
 巨鳥の背から飛び降りて、握りしめた拳には、柔らかく、大きな羽が握られていた。

 ――再会できてよかった。
 ――嬉しそうだった。
 ――安心していた。
 ――だけどその安心は、本当は必要ないものだった。
 ――だって、最初からあの家族は居られたはずなのに!
 ――大事な景色を、一緒に見られたはずだったのに!

「お前がしたことは、絶対に許さない!」
 コフィーを、猟兵たちを信じてここまで連れてきてくれた、母親の意思。
 羽に溜め込んでいた魔力が、風となって溢れ出て、本来持つ力よりも出力を上げて。
 遠くにあるトゥルル・エ・ダハブの体を硬く硬く束縛していた。

「この体は今だけ、私だけのものじゃない」
 髪の毛を飾る楔石を、そっと外して、側にいた雛の羽にくくりつけた。

《パル?》
「うん、一発、お返ししてくるね。――ちゃんと持っててくれる?」
《パル!》
 コクリと頷いた雛に微笑みかけて。
 コフィーは、パルクーウィの背から、飛び降りた。
 重力に従って落下する体は、空を蹴って更に加速する。
 呼吸が詰まる。息が苦しい。“本体”から離れたことで、体が急速に消耗していく。
 だけど。

 ……一発殴らなきゃ気がすまない!

『なっ――――――何故戻ってくる!? 何故降りてくる!?』

 トゥルル・エ・ダハブの困惑は、この死地に向かってくるのか、という疑問だ。
 無理もない。そして想像もつくまい。

「なんでって言うなら、教えてやるっ! これはっ!」
 ……少女の、怒りと意地なのだということに!

「お前をぶっ飛ばすっていう―――――――――親の心が籠もった依代だぁ!」
 くしくもソラスティベルがサンダラーを叩き込んだ部位に、拳が直撃し、渦巻く風が爆裂した。
 全方向から吹き荒れる大気の流れは、方向感覚の全てを奪い去る。

『が――――――!』
 もがき、あがき、手を伸ばし。
 薄暗い穴蔵の中に、黄金龍の体が押し戻される。
 空を切り、それでもと抗うトゥルル・エ・ダハブの眼前に飛び込んできたのは。





「吹き荒れるは花弁の如く
                其が滅びの名は雪月花!」

 完成した詠唱。
 解き放たれる、炎の華。
 花の火線を伝って、小さな火の粉が、洞窟の中に侵入した。

 即ち。





「――――――――エクス、プロォド!!」





 火力馬鹿による、火力馬鹿のための、火力しか追求されていない術式が。
 黄金龍と、その巣目掛けて放たれ、弾け、爆発した。
 極限まで高まった熱は、赤を飛び越えて白となり、白は破壊の光と化した。
 超過した熱は、破壊を通り越して融解にまで及び、全てが等しく塵に還っていく。
 後に残ったのは、赤熱した岩肌が露出した、大きなクレーターが一つだけだった。


彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

      Epilogue

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡


 洞窟内で戦った猟兵達は、全員パルクーウィの背の上で、その爆発を眺めていた。

「ふわー……」
 崩落を通り過ぎて消滅してしまった洞窟を遠目に見て、流石に勇者も口を開けざるを得なかった。

「ぷぴゅー…………」
「せめて上からどいてから気を失えや……!
 なお、久遠とエミリーは完全に力尽きているが休ませてあげましょうお疲れさまでした。

「……コフィーさん……」
 けれど、共に戦った戦友は、この結果の為に立ち向かい、そして……。

「……ほ、本当に大丈夫だったんですよね?」
 ちらりと後ろを振り返る。
 雛にくくりつけられた、コフィーの“本体”である楔石が、チカチカと薄く明滅した。

(うん、大丈夫大丈夫。新しい体を作るのはちょっと時間がかかるけど)
「よかったぁ……ヤドリガミさんだったんですね」
(そうだよ、だから…………あ、やめて揺らさないで)
 肝心の雛が首をブンブン振るので、かなり振り回されたりするが、まぁそれはそれ。

「まあ、ふっとばしたのはちょっともったいなかったかしら。結局、これしか持ち出せなかったわ」
「あら、これって……?」
 ちゃらり、と音を立てたのは、いくつかの小粒の宝石だった。
 パルピがちゃっかり、洞窟でくすねてきたものだ。

「せっかくなら、お宝持って帰りたかったんだけどねー」
「いいじゃない、とっても綺麗よ?」
 アーデルハイドが見る限り、かなり高価な品に思える。

「そう? じゃあおひとついかが?」
「いいの? せっかく持ってきたんでしょう?」
「あれだけ大暴れして空手で帰るのも何だし……あの大きなリスさんに美味しいものでも買ってあげたら?」
「そうねえ……それじゃあ遠慮なく」
 巨鳥の背で和気藹々。
 全ての雛を取り戻し、猟兵達は無事生還。
 大空の中、巨鳥の背の上で。
 此れにて一見、落着落着…………。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

フクス・クルーガー
【POW】 共闘・アドリブ歓迎

あれだけの巨体なら並大抵の一撃じゃ届かない。大きさでは劣るとは言えどアタシの持つ戦闘形態でしか通用しないだろうね。

届かせるのは黄金龍の強靭な鱗すらも貫きうる【鎧砕き】の乗ったパイルバンカーの一撃。

そのためにはまずは近づかなくちゃ話にならない。まずは左腕のガトリングガンで【援護射撃】で牽制しながら接近。黄金に変えられるなら左腕のガトリングガンはパージする。最悪UCで複製してまた使えるから。

いくら強靭な龍とも言えども大馬力のエンジンの出力を乗せた戦闘形態の【グラップル】の一撃。無視できるものじゃないと思いなさい!


御剣・狂死郎

【妖剣解放】を発動しボスに向かって突撃して斬りに行きます。
種族的にも自分の負傷は気にしないで積極的に動きます。
ピンチの仲間がいるようであれば身を挺してかばうことも選択肢に入れます
基本的に人命優先で動くので黄金の子羊達によるモブ猟兵の捕食は最優先で防ぎます。
悪魔の黄金色による猟兵の奇襲に関してはこちらもなるべく怪我させないように対処しますが、状況的に余裕がなければ相手も猟兵として戦いにきているのだから致命傷にさえならなければいいと判断し手足くらいは斬り飛ばすくらいまではやります
ゴールデン・コレクションに関しては使用武器が本体なので特に対処がないです。もし食らった場合の描写はお任せします。


斬幸・夢人
おーおー、こりゃまた貯めこんでやがるな
カラスにゃ見えねぇが価値がわかってんのかねぇ

はーやれやれ、と黄金龍と財宝を見ながら呆れるように
ちなみに自分も価値は分からない

さてと、こんだけ数がいるんだ
俺は銃でも使って遠くから楽させてもらうかね

遠方から援護射撃をするようにし、敵の動きや目的、性格などを計る
一撃で決められるんなら越したことは無い
なにせ余計な手札は見せなくていいし、時間はかからないし、何より楽でいい
敵が隙を見せたり、こちらの攻撃をかわされないと判断したタイミングでUCを使用する
山脈を覆う超射程と神速の悪神必滅の居合
その刃、神であろうと避ける事能わず

切り札は最後まで取っておくーー基本中の基本だろ



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

    BATTLE4 斬る者。断つ者。穿つ者。

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 ――――勿論、それで終わるはずがない。
 無事に帰るまでが冒険だとするならば。
 大樹の麓に帰るまで、戦いは終わらない。

『ゴ、ル、ルルルルルルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
 絶叫。
 天を裂き轢くその声は――――――。

『ガ、ガ、ガ――――猟兵――――猟兵――猟兵――――!』
 黄金龍トゥルル・エ・ダハブ!
 もはや理性を失い、ただ怨敵を殺すための装置に成り果てた異形!

「おーおー、こいつは驚きだ、あの爆発でくたばってねぇとは」
 斬幸・夢人(終焉の鈴音・f19600)は巨鳥の背の上で、呆れたように呟いた。
 なんだかんだで出番がなかったと思えば、これだ。
 パルクーウィを猛スピードで追ってくる黄金龍の体は、もはや原型をとどめていなかった。
 その理由は明白だ――――。

「あの野郎、“自分を錬成”しやがったな」
 黄金龍トゥルル・エ・ダハブは、価値あるものを削ぎ落とし、付与することが出来る。
 全ての財宝を費やし変化した龍の肉体は、言うならば“トゥルル・エ・ダハブが所有するも最も価値ある財宝”だ。
 エミリーの爆熱で崩壊した肉体を、黄金に変化させて補っている――今やその左半身は、龍の体をかたどった黄金の塊になっていた。
 即ちそれが、消滅してしまった部位なのだろう。あれでよく生きているものだ。
 変質が脳まで及んでいる以上、もはや亡霊といったほうが正しいかも知れない。
 ただただ、憎しみのみで命を奪おうとする、死にきれなかった簒奪者だ。

 ドゥルルルルル、ドゥルルルルルルル、と。
 エンジン音が、真横から聞こえる。
 視線を向ければ、大型トラックがジェット飛行でパルクーウィと並走していた。

「ありゃあ近寄るのも難儀だねぇ、どうだい、乗っていくかい?」
 運転席に座るフクス・クルーガー(何処でもお届け! 安心のクルーガー運送!・f22299)は、まるで“ちょっとドライブどう?”ぐらいのノリで気楽にそう言った。

「いや、俺の獲物はこいつなんでね。安全な所から撃たせてもらう」
 くるくると漆黒の銃を手の中で回転させて見せれば、フクスはふむ、と首を傾げ。

「その鉄砲、あれに通じるのかい?」
「さぁてな、結果はやってみたらわかるんじゃねえか」
「それもそうだね、じゃ、ワタシはひと足お先に」
「逃げるのか?」
「馬鹿言うんじゃないよ」
 ドゥルルルルルルル、と。
 エンジンが回転数を上げる唸り声が、強くなっていく。

「突っ込むのさ」

 ◆

 まだ遠くにあるから豆粒程度の大きさだけれども、実際に接敵すれば、そのサイズは己と比較にはならないだろう。
 であるというのに、御剣・狂死郎(妖刀のヤドリガミ・f22009)は全く恐怖というものを感じない。
 空中を疾走する大型トラックの荷台の上、という状況にあってもそうだ。
 強いて考えることがあるとするならば。

(金を、斬るにはどうしたらよいだろうか)
 という物理的な算段だけだ。
 敵が居る。のであれば斬る。
 狂死郎の持つ役割はそれだけなのだから、それ以外に気を回す必要など無い。

 たとえ――――斬り損ねたら、死に至るだけだとしても。

 柄に手を添えて、鯉口を切る。
 もはや黄金龍の姿は、豆粒から、山と見間違えるぐらいには明確になっていた。
 お互いが近寄る方向に移動しているのだから、それはそうだろう。
 勝てるか。
 断てるか。
 
「――――斬ります」
 鋭く抜き放たれたのは、剣閃が空間を裂いて飛ぶ――――遠隔斬撃。
 ガキ、という金属同士がぶつかり合う音がして。

『ゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』
 ――――止まらない。
 ――――斬れない。
 ――――来る!

 ◆

「流石に硬いみたいだねぇ、それじゃあまずは――――」
 フクスがトリガーを引くと、重武装トラックの左腕に取り付けられたガトリングガンが火を噴いた。

「――――こいつから行こうか!」 
 放たれる鉛玉を浴びても、一切怯まずに。
 黄金龍は更に暴れ狂い、爪をトラック目掛け振りかぶった。

「落ちるんじゃないよ!」
 荷台の上の狂死郎に叫びながら、加速。
 全身にかかるGを全て無視して、背後を取る、これならパルクーウィの背にいる仲間との挟み撃ちに――――。

『イェーガアァアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――――――!』
 トゥルル・エ・ダハブの尾の先端がまばゆく光り、龍の頭部へと変じた。

「――――っ、マジかい!」
 放たれた細長い直線のブレスを、間一髪、横にブーストをかけて回避する。
 だが、左腕に直撃した――取り付けられた銃器がみるみると黄金色に変じていく。

「ちっ!」
 パージ。黄金化が本体に及ぶ前に切り離し、金塊の塊となったそれが山脈に落下していった。

「こりゃあ…………腹くくるしか無いね、聞いてる? 坊や!」
「はい」
 短い返答。それで十分。
 アクセルを更に踏み込んで、全ブースターの出力を最大に。

「――――接近戦を仕掛けるよ!」
 黄金龍の背目掛けて、フクス・クルーガーの多機能トラックが突っ込んだ。

 ◆

「奴さん、大層キレてるみたいだねぇ」
 牽制のつもりで何発か撃ってみたが、まったくもって効果がない。
 黄金で出来ては居るが、その硬度は実物のそれより遥かに上のようだ。
 その上、上下左右に回転を加えて、的を絞らせないように動くのだからたまらない。

「けど冷静さには欠けている――執着したこちらに対しては一心不乱、か」
 防御策は体の硬度に任せて、とにかく近づいてくる事を最優先にしているようだ。
 まあそれはそうか、何せ猟兵を仕留められずとも、パルクーウィを殺せれば、仲良く落下して全滅なのだ。
 生き残れる連中は、自分も含めて何人か居るだろうが……。

「一直線に来てくれりゃあ――――」
 そっと、腰に携えた、黒い柄の刀に手を伸ばす。
 距離は届く。後はタイミングの問題だ。

「――――さぁて、頼むぜ?」
 視界の向こう、人型が龍の尾に組み付く姿を認め、斬幸は小さく呟いた。

 ◆

 変形シークエンスは一瞬だ。
 “戦闘形態”と名付けられたそれに残されたトラックの面影は、頭部に収まった運転席ぐらいのものだ。
 肩に狂死郎を載せて、両腕、両足を手に入れた多機能トラックロボはトゥルル・エ・ダハブの背中に組み付いて、全出力を持って締め上げる。

『ググググウ――――グォオオオオオオオオオオ!』
「流石に硬いね――――けど!」
 計器のレッドゾーンを振り切って、エンジンの負担を考えず、さらに出力を上げる。
 フクスの本体は、まさにこのトラックそのものだ。即ち肉体にかかるフィールドバックも激しい。
 だらりと流れる鼻血を拭うこともなく、五指を食い込ませ、固定してゆく。

「大丈夫ですか?」
 困惑した様子は…………見せないものの、尋ねる狂死郎に、は、とフクスは笑っていった。

「ワタシ達ヤドリガミにとって、体は単なる入れ物だよ」
 それらは、単なる器でしかない。
 では、その器に何が出来るのか。どんな中身で満たせばよいのか。

「けど、この入れ物でなくちゃあ、本体(ワタシ)の全力を活かせない。難儀なモンだよね――――」
 戦闘形態トラックの指がドリルへと変じ、黄金龍の背中を削っていく。黄金と化した肉に食い込み、穿ち、差し入れて、固定する。

『グォアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 激痛に叫びながら、尾の口がこちらを向いた。
 再び放たれた光線を胴部に食らって、黄金化が始まっていく。

「っぐ――――! ……はは、坊やもそうでしょ?」
 それでも止まらない。
 準備は整った。

「こいつは――――無視できないでしょう!」
 装填された、六連装のパイルバンカーが、雷鳴のような音と共に打ち込まれた。

 ◆

「あぁ、いい位置だ、そこでいい」
 空中で突如高度を落とし、ビクン、ビクン、と連続で体を震わせる黄金龍の姿を、斬幸の目は捉えた。
 杭打ち機の六連が、龍から速度とランダムな軌道を奪い去り、絶叫の時間を作り上げた。

「――――斬り落としてやるよ」
 カチン、と一瞬だけ金属が触れ合う音がした。
 同時に――距離も、速度も、全てを超えて。
 黄金龍の五対十枚の翼の内一つが、無造作に切断された。
 それこそが、山脈を覆う超射程と、神速の悪神必滅の居合。

「ああ――――もう聞こえてねぇか」
 龍ですら、いや、《神さえも覆せない確実》が、黄金龍の妄執を刻み斬り離した。

 ◆

『グォァアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 パイルバンカーを打ち込まれ、翼を切り落とされたトゥルル・エ・ダハブの咆哮が響く。

「――――――」
 しかし、狂死郎の視界に映るのは、あまりに滑らかな、その翼の切断面だった。
 恐らく、パルクーウィの背に乗った誰かが、斬撃で斬り落としたのだ。
 斬れなかった己と、何が違う? どうやった?

 片隅に浮かんだ疑問は、足を止める。

「難しく考えることはないよ」
 攻撃を終えたトラックの右腕をパージさせながら、フクスは、笑って肩の狂死郎に告げた。

「君は刀なんだろ? “じゃあ斬れる”さ。そうだろ?」
「――――――」
「さあ、行っておいで。流石に限界だ、帰りの便には間に合わせてよ」
 狂死郎は、再度柄に手を添えた。
 この体は妖刀の器。
 断ち斬ることしか出来ぬ、武器。

 斬ることしかできない者は――――。

(ああ、そうか)
 斬ればよいのだ。
 斬れるかどうかではなく。

 “斬る”のだ。

 お手本は、今しがたしかと見た。
 ヒトが出来るのなら、刀にできる道理無し。

 とん、と流れるように、トラックの肩から飛び降りて。
 あまりに自然な足運びで構え。
 緩やかに刀を抜き放ち。
 そして納めた。
 刃の軌跡上にあったものは、問題なく切断され。

 ――――黄金の翼が、空に舞った。

 ◆

「お見事」
 落下する狂死郎を、飛行形態に再度変形したトラックの荷台で受け止めて、フクスは尋ねた。

「気分はどう?」
 無表情のまま、刀は応じた。

「仕留めきれませんでした」
 その返答に、思わず笑いが溢れてしまう。

「オーケー、次は首を斬ってやろう」
「はい」
 ――――黄金龍は未だ、パルクーウィ目掛けて進んでいる――――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

薄墨・ヴィーシュニャ

一緒に行くと、誰か傷つけちゃうかもしれないから。後から来たら来るの遅れた。でも、その分、いっぱい頑張る。

みんな、強そうだから、邪魔しちゃいそう。だから、こっそりと、わたしは誰にも気付かれないように、みんなを助ける。
黄金竜たちに、呪いをかける。傷つけただけ傷を癒す、これで、もう誰も傷つけられない。傷つかない。
……正直、あんまり得意な術じゃないけど、上手くいくと、いいな。

本当は、敵だったとしても、傷つけるのは好きじゃないけど。
でも、黄金竜、悪いことした。大事なもの、勝手に奪った。よくないこと。
そうは見えないと思うけど……わたし、ちょっと怒ってるんだよ?だから、反省して。


アトラ・ジンテーゼ
いやはや。あの速度で空を飛ぶのは、中々気持ち良いですねぇ。
あたしにも、羽とか生えてたら良かったのに…
なんて思ってしまうのも、致し方ない事ですよね。あは。

さてさて。巨鳥にも引けを取らない、素晴らしい素材がお目見えになりましたが…
…あの卵のようには、いかないでしょうねぇ。
何やら、怪しげな空気も感じますし?
財宝に目が眩む程度の人たちは、ハンマーで殴り倒しても、怒られませんよね?

素材は…「竜灰石」、「霊衝鉄」。そして…【錬装法】。
刃に石を。核に鉄を。魂に…竜を。
作るのは、意志をもって動き、斬りかかる魔剣。
巨体を断ち切る、質量を込めた巨剣。
あるいは、道半ばで砕けてもいい。
砕け散る破片で、その身を穿け!


鬼柳・雄


おお、飛んでる飛んでる!飛行機なんかとは違うなこれ、テンション上がるぜ!
そしてついに見つけたぞ金色蜥蜴!随分とまぁお宝貯め込みやがって。てめぇそれだけ集めるのにどんだけ悪さしてきやがった。あげく大層なナリして卵泥棒たぁみみっちいな、絶対泣かす!

マルコシアスを召喚して前線に立たせて戦闘。自分は後ろから援護射撃。相手が対応するUCを使おうとしたら、炎と氷の剣で口の中を攻撃して妨害させます。

「マルコシアス、今度こそ全力だ。依頼の報酬で焼き肉上コース食べ放題行くぞ!」
「あん?ドラゴンステーキも良いなって?はは、ならしっかり仕留めろよ!」



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

    BATTLE5 創る者。喚ぶ者。癒す者。

彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 翼を断たれ、速度と安定を失った黄金龍は、それでも妄執と共にパルクーウィを狙い空を進む。

『ゴ、ァ、ガァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア――――!』
 だが、咆哮は大分弱々しくなった。ただでさえ失われた命を強引に補填して動いているのだから、消耗も凄まじいのだろう。

「せっかく気持ちの良い空の旅だと思ってたのに……しつこいですねぇ」
 アトラ・ジンテーゼ(四霊の統造師・f22042)はぼやきながら、ポケットから小さな鉱石の欠片を取り出した。

「ヒエン、ニル、お願いします」
 告げると、二体の精霊が傍らに現れ、即座に鉱石を溶かし、必要な成分を取り出し、硬め、加工していく。
 即興の精錬で出来上がったのは、手のひら大のレンズだ。
 覗き込めば、遠くあっても驚くほどよく見える。

「ん…………あれ、結構ボロボロですね」
 フクスがぶちかましたパイルバンカーの連撃の所為だろう、黄金の体に穿った穴から、全身に細かなひび割れが走っている。
 特に関節部、翼の付け根や肘等には、目に見えて黒い亀裂が見て取れるし、自身の移動の反動でも末端から崩れていく有様だ。

「ありゃ、放っておいても自壊すんじゃねえか?」
 光が入らぬよう手をかざしながら、目を細める鬼柳・雄(チンピラサマナー・f22507)が言うと、アトラは首を横に振った。

「たしかにそうですけど、その前にこっちにたどり着きます。そうなったら……」
「ぶっ倒しやすい」
「ではなく、パルクーウィがダメージを負ったら、私達全員、真っ逆さまですから」
「ぁー、なるほど、結局近づけんなってことね」
「そうです、そのためには……」
「攻撃あるのみ、だろ。――――なら行くぜ」
 取り出したスマートフォン、ダイモンデバイスを通じて、己が契約した悪魔へと語りかける。

「来い、獰猛な雌狼にして戦士。黒き氷炎の悪魔マルコシアス! ――――今度こそ全力だ。依頼の報酬で焼き肉上コース食べ放題行くぞ!」
 画面に表示された魔法陣が、現実世界への侵食を開始する。
 この世に存在しないはずの“何か”が、契約とデバイスを通じて己の体を構築し、この世へとその実体を顕現する。

『オォオオオオオオオォォォオオオオオ――――――――!!!』
 右手に炎、左手に氷の大剣を携えた異形。
 これこそが悪魔マルコシアス。鬼柳と契約を結び、具現化した―――――悪魔!

「おお、なかなかの業物で」
 最も、アトラの興味は、悪魔の出現よりも、その悪魔の持つ武器に向けられていたが。

「それじゃ、ちょっくら行ってくるぜ」
「行ってらっしゃい――――ん? 行くってどこに…………」
「そりゃあ――――“敵の所”だろ!」
 マルコシアスの背に飛び乗ると、悪魔は左右にそれぞれ、炎と氷で形成された翼を展開し、パルクーウィから飛び立った。

「そ、空も飛べるんですか……」
 どんどん小さくなる二人を目で追って、アトラもまた、戦うための準備を始めた。

「あの黄金龍は、素材としても素晴らしくはありますが……」
 最優先は生き残ることだ。欲をかいて死んだら意味がない。
 何より――――いくら消耗しているとは言え、いや、消耗しているからこそ。
 簡単にはいかないだろう、故に。

「油断はしません、行きますよ、みんな」
 四体の精霊が、一斉にアトラを囲むように顕現した。

 ◆

 薄墨・ヴィーシュニャ(聖なる呪いの刃・f23256)は怪奇人間だ。
 怪奇、とは即ち、怪しく、奇妙であるということ。
 人と違う特徴を持ち、人と違う異能を持ち、それ故に人に近寄らぬ日々を送ってきた。
 今だってそうだ。
 なにか出来るかと思って、ここまで来たものの、結局、遠間にいる黄金龍に対して打てる手はない。
 ただ、パルクーウィの背中に乗って、戦う誰かを見ていることしか出来ない。

《パル?》
「あ、ごめんね、でも、私には近づかないほうが……」
 そんな事を思っていると、雛の一匹がてちてちと小さな足で近寄ってきた。
 慌てて距離を取ろうとするが、以下に巨鳥パルクーウィの背の上とは言え、複数人の猟兵が居る状況では、そこまでの合間を開けることも出来ず。

《パル、パル!》
「…………あぅ」
 何故か体をスリスリと擦り付けてくる雛に、困惑する。
 もしこの小さな体を傷つけてしまったらと思うと、迂闊に触れることも出来ない。
 何せ、ヴィーシュニャは己の力を制御できないのだから――――――。

《パルウッ!》
 その時、パルクーウィが突如、大きく横に曲がって、軌道を大きく変更した。

「きゃっ! 何……」
 次の瞬間、黄金の光線が、先程まで巨鳥が居た場所を貫いた。
 舞い散っていた羽が金に変わって、大地に向かって落下していく。
 見れば…………悪魔に乗った青年と、黄金龍が交戦している最中だった。
 戦況は五分と五分に見える。けれど、どうしたって向こうの質量の方が大きい。

「っ……」
 上手くいくかはわからない。意味など無いかも知れない。
 戦うのは嫌いだ。傷つけるのも嫌いだ。
 争うのも、災う事だって、本当は好きじゃない。
 けれど。
 そんなヴィーシュニャがこの戦場に足を運んだ最大の理由。
 それは――――。

「大事なもの、勝手に奪った。よくないこと」
 傍らの雛を見る。
 急な軌道変更にも怯えず震えず、首を傾げ、どうしたの? とこちらを見上げている。
 ああそうだ、この無垢な笑顔を、あの龍は身勝手に奪ったのだ。

 ……薄墨・ヴィーシュニャは、怒っている。

 人差し指に、意識を集中する。
 皮膚がちらりと裂けて、内側から片刃の短剣が、血を伴うことなく生えてきた。
 これが、ヴィーシュニャの怪奇人間としての性質。
 全身が刃に変じる異形。

「……巡れ、廻れ。痛みよ、傷よ」
 その刃で、自らの掌に、深い傷を入れる。
 滴った血液が、ぽたりぽたりと落ちてゆく。

「……混ざり、狂い、反転せよ。《聖呪混濁(セイジュコンダク)》」
 呪いが、発動した。

 ◆

「クソっ! 面倒くせえじゃねえか!」
 マルコシアスの剣と、黄金龍の爪がぶつかり合う度、衝撃で振り落とされそうになる。
 下手すれば即死だ。アサルトウェポンの引き金を指にかけながら、鬼柳は悪態を吐いた。
 マルコシアスをけしかけて、パルクーウィの背に居ればよかった、と思う自分も居るが。

「てめぇそれだけに“成る”のにどんだけ悪さしてきやがった」
 死を乗り越え、己の体を黄金にしてまで変異した代償。
 そのために失われた金銀財宝は、元は誰かの物だったはずだ。
 力づくで奪い、殺し、蓄えたに違いない。

「あげく大層なナリして卵泥棒たぁみみっちいな――――絶対泣かす!」
 一発くれてやらねば気がすまないし、どちらにしろ近づかなければ、援護射撃だって意味をなさない。
 何より――マルコシアスを疎んじられて、術者狙いの攻撃に切り替えられて、パルクーウィごと落とされたら最悪だ。

「やっちまえマルコシアス! 喰う所残ってりゃドラゴンステーキの食い放題だ!」
『ゴアァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 ぶつかり、刻み合い、炎と氷が散る。
 悪魔の強靭な肉体はそれに耐えられても、鬼柳の体へ、徐々にかかる負担が増していく。

「くっ、そ――――――!」
 カチン、と弾倉が尽きる音がした。弾切れだ。交換せねば――――。

『ガァァァアアアアアアアアアアアアアアア!』
 一瞬の隙を、黄金龍は見逃さなかった。
 口腔の奥に煌々とした輝きが満ちて、黄金の光線が放たれる。

「しま――――――――」
 触れた生物の全身の組成をまたたく間に有機物から黄金へと変じさせていく、練金のブレス。

(やっちまったか――――!? マルコシアスは――――)
 ざざ、と悪魔の体にノイズが走る。
 契約者の鬼柳と、その媒介であるスマートフォンまでが金に変わった結果、マルコシアスを現世につなぎとめる楔が消失しているのだ。

(くそ――――せめて、あと、一発――――――)
 脳まで金に変わってしまえば、もう考えることすらできなくなる。
 にやり、と黄金龍が口の端を歪めた。

(――――――――)
 意識が消失していく、瞬間。
 ズルリ、と黄金龍の周囲を、赤黒い靄が取り囲んだ。

『――――――!?』
 靄は束ねられて帯となって、回転し、収束し、トゥルル・エ・ダハブの体を包み込んでいく。
 体を傷つけるわけではない、ただし――――。

「何――――よそ見、してやがる――――」
『ガ――――――!?』
 黄金になったはずの、もう動けないはずの男が。

「――――てめぇは――ぜってぇ――――――泣かすっ!」
 自由を、取り戻した!

「マルコシアスッ!」
 黄金龍にはわかるまい。
 ヴィーシュニャの呪詛によって、攻撃の性質が“反転”させられたことを。
 ほんの僅かな時間だが、今のトゥルル・エ・ダハブは。
 万物を傷つけることが出来ない存在へと、強制的に堕とされた!

「ぶった切れええええええええええええええええええええ!」
『オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!』
 咆哮と共に振り上げられた双剣が――――――。

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 黄金龍の二翼を、両断した。

 ◆

「刃に石を」
 熱と水が混ざり合い、陽と影が重なり合う。
 石は砕け、解け、鉄と混ざって新たな形を成す。

「核に鉄を」
 束ねられたそれは、もはや人が持つ事を前提としない巨剣。

「魂に……竜を」
 であれば、それを振るうのは。
 ――――剣自身。
 【錬装法】にて鍛え上げられれし魔剣は、己の意思にて敵を斬り穿つ!

「――――穿て! “竜殺し(ドラゴンスレイヤー)”!」
 この剣は、必ず邪竜を打ち砕く!

 ◆

 悪魔に更に二つを断たれ、既に四割の翼を失い、トゥルル・エ・ダハブは叫びを上げる。
 まだだ、まだ殺しきれていない! 許せぬ! 許さぬ!
 必ずこの牙は爪は! 貴様らに届く!

『グ――――――』
 その願望を断たんと、凄まじい勢いで巨大な鉄塊が、こちらへと照準を向けられたのが見えた。

『ガ――――ァアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 咆哮。
 尾と口、同時に放たれた黄金のブレスが、迫りくる魔剣に触れて黄金へと変えていく。
 そうだ、あれを取り込み、翼を再生させれば!
 まだ戦える。追いつける、殺せる!
 だが。

(―――――変じ)
 黄金龍を縛る呪いは、未だ有効で。

(―――――反転せよ)
 黄金へと一瞬変じた剣は、即座に元の性質を取り戻していく――だけではない。

『バ、カ、ナ――――――――』
 鉄から黄金へ。
 黄金から鉄へ。
 その変化で生じたエネルギーの余剰を、魔剣はすべて取り込み、質量に変換した。
 二倍に膨れ上がったその刃を食い止める術を。

『バカナアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!』
 もはや、黄金龍は持ちあわせていなかった。
 伸ばした腕も、尾も断ち切って。
 絶望の咆哮が、空に響き渡った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

日向・史奈


宝石のように綺麗だとはいえ卵をお宝だと思って拐って来てしまうのもどうかとは思いますが…
とにかくそれはお宝ではありませんので、拐って来た報いを受けて頂きたく

宝に目が眩んだ強欲な龍は雷に撃たれるのがお似合いかと。敵が強くなってしまう前に先手必勝、です。
襲われそうになった雛も怖かったでしょう。鳥さんだって我が子の一大事に気が気ではなかったでしょう。

そんな思いを込めますから、この雷からは絶対に逃がしません。もう飛べなくなるくらいに、容赦はしませんからお覚悟を


煙晶・リリー

この宝物の山‥‥そうか‥‥!わかった、こいつの目的!
この竜は‥‥カッコいいモノを集めている!!つまりこいつの標的は‥‥私!
初めから雛を囮にして私を手に入れるつもりだったのね。でもそうはいかないから!
私を手に入れるなら、私よりカッコよくないと。

敵の狙いが私なら、囮になるよ
【盾の森】でいっぱい生やした壁の後ろから《七星》を【誘導弾】で【乱れ撃ち】して、注意を惹く
例え防がれても、対処の動作で隙が生まれるはず
壁の後ろを常に移動しながら(カッコよく華麗にスライディングを決めつつ)他の猟兵達の攻撃の為の隙を作るよ


アポリオン・アビス


ほぉ、黄金龍……
肉も、血も、骨も、鱗すらうまそうだ
さぁて、どう喰うか

【UC:貪食の胃袋】は常時発動
【UC:Glatney Hazzard】は戦闘時自動発動

装備を変質ゥ?
させねぇよ
殺られる前に喰う

『戦闘知識』『野生の勘』で敵に発見されない内に『ジャンプ』『ダッシュ』『ロープワーク』を使い『先制攻撃』として『怪力』『部位破壊』『大食い』で力任せに片翼を根元から食いちぎり『恐怖を与える』

翼は即座に食べ、宝物の影の『闇に紛れ』、『ダッシュ』『ジャンプ』で敵の視界に入らず再度突貫

『トンネル掘り』『大食い』『怪力』『部位破壊』で傷口から体内に侵入し食い荒らす

体内の相手にやったら自滅するから出来ねぇよな?


ヴィクティム・ウィンターミュート


ハッハー!随分キレてるなウィズワーム
高貴な黄金の龍がなんてザマだよ、なぁ?
あぁ、それとも唯の金メッキってだけで、実際は大したことない蜥蜴か?
オイオイキレるなって、こんなのは小粋なジョークさ
そんじゃ、舞台を始めよう

ま、俺はいつも通り添え物
上手くやるのは他の連中の仕事
俺は──無粋な脚本を書き換えるだけさ

セット、レディー──『Dirty Edit』
自らの富を増やし、強くなる…オーケー
その脚本は"NO"だな
ウィルスの浸食を確認、構成情報に侵入
編纂開始──完了だ

真実ってのは簡単に歪めることができるんだ
それはユーベルコードすら例外じゃない
"富は消えていき、肉体は著しく脆弱になる"
それが、これからの真実だ



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 LASTBATTLE 価値ある者。支える者。勇気ある者。喰らう者。

                彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

 何を間違えたのか。
 黄金龍は、もはや消えかけた自我で考える。

 何が行けなかった?
 そう、己は正しい。己は絶対だ。己は間違えない。
 ならば過ちは――――そう、猟兵だ、猟兵に決まっている。
 殺さねば、なんとしてでも殺さねば。
 でなければ、この黄金龍トゥルル・エ・ダハブが間違っていたことになる。
 腕を失い、尾を失い、十枚あった翼の四枚は既に断たれ。
 半身は黄金の塊と化し、全身に亀裂が走ってなお。

 その龍は、止まらない。

『ガッ、ガッ、ガ――――――』
 半ば理性を失った黄金龍の鼻が、その匂いを捉えた。
 それは彼が愛し、欲する、宝石に香りだった。
 ダイヤモンドではない、ルビーでもサファイアでもエメラルドでもない。
 けれど、価値ある物をその身に宿せる黄金龍にとって、それは砂漠の中のオアシスに等しい。
 たとえ一滴の水だとしても、乾ききった体は、欲し求めるのだ。

『アッタ――――アッタァアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 その視線の先にいたのは、パルクーウィの背。
 小さな、一人の少女だった。

 ◆

「――? こっちを見てませんか?」
 日向・史奈(ホワイトナイト・f21991)は、巨鳥の背の上で、怪訝そうな顔をした。
 このまま落ちていくかと思ったトゥルル・エ・ダハブは、口を半開きにして、だらりと舌をこぼして、高度を落としながら、半眼でこちらを見つめている。
 ……いや、史奈を見ているわけではない、これは。

「わかった……こいつの、目的」
 隣で、わなわなと震える煙晶・リリー(カッコイイは時に『最適解』へと到達する・f21371)が、なんてことだ! と両手を上げて叫んだ。

「あの竜は……カッコいいモノを集めている!! つまりこいつの標的は……私!?」
「い、いやあ、それはどうでしょう……?」
 首を傾げる史奈だったが――――。

「いや、ありえるな」
 と、告げるものが居た。
 馬頭、蝸牛被、飛蝗、螻蛄、蛇蜻蛉、蠍。
 その異形は、言われなければオブリビオンかと見まごうほどの混沌であった。
 しかしながら、アポリオン・アビス(貪喰王・f21964)もまたまごうこと無く猟兵の一人であり、何より“食事”に関して深い知見を持つ。

「それは、どういう……?」
「“あれ”は宝石や金銀を喰らってあの姿になったんだろ? なら体力回復の餌として“宝石”を喰う道理に叶う」
 要するに。
 今の黄金龍にとって、“生きた宝石(スモーキィクォーツ)”であるリリーは、まさしく最高の食事なのだ。

「えええええええ!? 本当に私なの!? やだやだ! あいつ、ダサい! 私を手に入れるなら、私よりカッコよくないと!」
「そういう問題なんですか!?」
 若干ピントがずれているが、しかし狙われているのは事実だ。
 ならば――――。

「リリーさんを、なんとか守りませんと……」
「私が囮になるから、その隙に攻撃して!」
 史奈とリリーが同時に言って、それから顔を見合わせて、いやいやいや、とお互い首を振った。

「狙われてるのが分かってるなら、立ち向かうのは危険ですよ!」
「狙われてるのが分かってるんだから、活かさないと! それに!」
「それに?」
「囮って……すごく格好いい……しびれる……」
「絶対ダメです!」
 少女達の言い争いに、アポリオンは異形の顔で大きくため息を吐き。

「残念ながら、それは俺の仕事だ」
 ブ、と音を立てて、ふわりとパルクーウィの背から浮き上がった。
 生じた速度差で、一気に猟兵達と、アポリオンの距離が開いていく。

「えっ――――」
「いいか? アレの半分は黄金だ。だったらやるべきことは決まって――――――」
 言葉を最後までいい切ることは出来なかった。
 既に黄金龍は、死にものぐるいの飛行によって、辿り着いていたのだ。

『グルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!』
 開け放たれたあぎとがバクンと閉じて、大きな蟲を喰らい、飲み込んだ。

 ◆

「ハッハー! 随分キレてるなウィズワーム」
 くつくつと笑うヴィクティム・ウィンターミュート(impulse of Arsene・f01172)の視界は、その姿をしっかりと捉えていた。
 獲物が死ぬまで狩人が油断することはない。まして死にものぐるいならなおさらだ。
 男がどこにいるのか? わざわざ巨鳥の背になど乗らない。あそこは主役の席だ。端役たる己が居るべきではない。

 軍事用ドローンに跨って、ずっと上から戦いの様子を眺めていた。
 ボロボロの体で、なおも迫りくるオブリビオンに――しかし、一切の油断はしない。
 そのうえで、ははぁん、と仲間の意図を読み取って。
 ならばそのとおりにしてやろう、と指を動かした。

「高貴な黄金の龍がなんてザマだよ、なぁ? あぁ、そんなんじゃぁみっともないことこの上ない。」
 あのウィズワームは、愚かにもこう思っている。

 まだ行ける。
 まだやれる。
 まだ大丈夫。
 まだ勝てる。

 あれさえできれば。
 これさえかなえば。
 なんとかできれば。

「――――笑わせんな。縋った時点でテメェの負けだよ」
 その妄執を、完膚なきまでに叩き潰す。

「セット、レディー──『Dirty Edit』」
 そう、事実とは、容易く歪められるものだ。
 夢想、空想、溺れるのもいいが、現実はしっかり見ていただかないと困る。

「そうだな――最初はお前の富を奪ってやろうと思ってたけど…………」
 にたりと口の端を釣り上げる端役の表情は。
 いたずらを思いついた、たちの悪いギークそのものだった。

「とびきりのサプライズをくれてやる。お前の富を“増やして”やるよ」

 ◆

『グ――――――!?』
 動きが鈍った、と感じたのは、翼を動かそうとして、ぎぎ、と不快な音を立てたのを聞いた時だった。
 いや、翼だけではない。腹も、鱗も、角も、何もかもが、硬く、軋む。

『何、ガ――――貴様、カァ!』
 吠える黄金龍の視界の先、見下すように男は居た。
 ドローンの上でちっちと指を振る様は、あたかも盤上の支配者の如く。

「いやぁ、親切心さウィズワーム? 半分だけ黄金なんて不格好だろ? だから――――」
 ヴィクティムのユーベルコードは、敵のユーベルコードの性質を書き換える。
 今の黄金龍は、財宝の力で己の体を錬成している状態だ、だから半分が金塊になっている。
 なら。

「出力を上げてやったのさ――――全身金ピカになったらそのブサイクな面も少しはマシになるんじゃねえか?」
 ガクン、と黄金龍の高度が落ちた。関節が、被膜が、既に黄金の膜を貼り始めている。
 何より金の比重だ。肉が金に置き換わることで、どんどんと体重が増して行っている。
 まともに飛行できなくなるまで、もう時間がない。

『キ、キサマァァァアアアアア! 降リテコイ! オリ、ガァアアアアアアアアアアアアアア!?』
「いやぁ、その暇はないね、何せ――――もうゲームオーバーだ。悪いバグをイレちまったな?」
『ゴ、ガ、ギャアア! ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
 黄金龍を突如襲ったのは、今までに味わったことのない痛苦だった。
 全身の神経を引き抜かれて、酸につけられたような刺激。
 血管という血管がヤスリになって、何度もこそがれているような感触。
 体内からぐちゃぐちゃと音がする。ずるずると音がする。ごりごりと音がする。

『グィ! グォオオオオオ! グ、ギァ! ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
 やがてその音は、体外へと溢れ出る。
 腹のひび割れが大きく裂けて、“それ”が姿を表した。

「GuLUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!」
 絶叫と共に現れたのは、飲み込まれたはずのアポリオンそのものだった。
 誰が思うだろう。龍のあぎとに喰われ、飲み込まれ、無惨に死んだのではなく。
 ただ、“食事をしやすいように体内に入り込んだだけ”だったなどと。

「はははははは! はっはっはっは! 美味い美味いなぁ黄金龍! ゲテモノだが食いでがある! もっとだ! もっと――――」
「やめときなチューマ、そろそろ来るぜ」
 食欲に任せて、更に貪ろうとするアポリオンを、ヴィクティムが制した。

「ここいらでログ・アウトさせてもらうぜ。如何せん、“あれ”にゃ俺も弱いもんでね」
「何を――――――ちっ」
 端役の指差す先は、空だった。それを見たアポリオンは、舌打ちをして、これ以上の食事を断念する。
 体内に潜り込んで――“巻き込まれ”てはたまらない。

「――――あぁ残念だ残念だ! 一切合切喰ってやろうと思ったのになぁ生きたまま! だがいいまぁいい後でいい! 原型は残るだろうからなぁ!」
 食事に伴う高揚に酔ったまま、アポリオンは己の背の翼を羽ばたかせて、ヴィクティムのドローンと共にどこかへ飛んでいった。
 まるで、そこにいると危険だと言わんばかりに。

「炭になっても美味いといいなぁ! はははははははは!」
 体を喰われた痛みの中、黄金龍は考える。
 炭?
 何を言っている?
 何が起きた?
 どうなった?
 喰うつもりが、喰われて。
 ああ、空が。暗い。
 ――暗い?

 大空の中を飛んでいたはずだったのに。
 いつの間にか、空一面が、どす黒い雲に覆われていた。
 だというのに、雨の一滴も降らない。
 残った翼で、なんとか空中で身を立て直し、顔を上げる。
 いまや届かぬほど遠くにあるパルクーウィの背を見つめる――どんどんと、更に上空へ登っていく。

 何故?
 いや、どうでもいい。
 まだだ。
 まだ。
 追いつける。
 終わってない。
 喰らえば治るのだ。
 あの宝石を。
 まだ、
 まだ、
 まだ――――――。

 ◆

 自然と魔術を操る、日向・史奈の《は之業【白虹貫日】》。
 それは今や、天候を変えるほどの規模でもって展開していた。
 手に持つ懐中時計に魔力を込めて、解き放つ。

「アスピーダ、正常稼働! 行けるよ!」
 向かう先は、リリーのユーベルコード、《盾の森》から生み出された、巨大な煙水晶の柱群。
 その中で、バチバチと音を立てるのは、増幅されたエネルギー……魔力の塊だ。
 人はそれを古来より、天の裁きと呼び、恐れてきた。
 即ち――――雷。

「あー、滅茶苦茶カッコいいかもこれ!」
「もう……遊びじゃないんですよ?」
 そわそわとするリリーと対象的に、苦笑しながら、史奈は最後の術式を放つ。
 全ての煙水晶に、“中身”が充填され、光が凝縮されてゆく。

「――――では、行きます」

 黄金龍はその名の通り、今や全身を黄金に変じている。。
 ならば。
 、、、  、、
 電気は、雷は。
 余すこと無くその体を焼き尽くす、文字通りの天の裁きとなる。

「希うは雷の矢。天よ。雨よ。滅びの一矢を手向けよ――――」
「そう、ビリビリ、ドッカーン、バリバリ、ズバーン的な……」
「…………そんな感じで、いいです」
「いいの? やったぁ!」
 史奈とリリーは、片手同士をつなぎ、そして空いた手を空へと掲げた。
 次の瞬間、煙水晶に封じられた雷が、物理法則に逆らうように天へと上り、光点を穿つ。
 雷と雷が点を結ぶように、暗雲をキャンバスに、雷光の魔法陣が展開した。

《パルッ?》
 雛の一羽が、小さく鳴いた。
 これから起こる出来事を、けして忘れぬようにと言わんばかりに、目を見開いていた。

 史奈は、そんな雛をちらりと見て、優しく微笑み、そして再び、天を見た。

「あなたを許しません、黄金龍、トゥルル・エ・ダハブ」
「次はもうちょっとカッコよくなってから来てよね、まぁ……私のほうがカッコいいけどっ!」
 二人の声が一つになり。

「――――――《らノ業【電光雷轟】》!」
「――――――《雷の柱(メアンドロス)》!」
 二人の業が、一つになった。

 ◆

 空から大地を、輝きの柱が繋ぐ。
 それはもはや、雷ではない。
 莫大な熱量を有する、人工の、純白の大樹。
 たった一つの存在に向けて、命を消し飛ばすために放たれるそれに名前をつけるならば。

 天罰だ。

 黄金龍トゥルル・エ・ダハブの巨体を飲み込んで、なお余りある太く高く長い雷光の柱。
 妄執も、怨嗟も、全てを飲み込み溶かす、神に等しき一撃!

『グゥルォオアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!?』
 それが、最後の断末魔。
 貪り食われた肉の隙間までもを雷光が焼き焦がし、埋め尽くし、その余波が亀裂を通して外側に向けて放たれる。
 内側から、雷光に焼かれ消滅していく黄金龍は、今度こそ。
 蘇ることはなく消滅し――――躯の海へと還っていった。



彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡彡

        Epilogue

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 とある街に、大きな大きな機があった。
 街のシンボルとして皆に愛されるその機には、母なる翼と呼ばれる、大きな鳥が暮らしている。
 その名をパルクーウィ。

 街を、樹を、そこに暮らすもの全てを守る、偉大なる翼。
 人々は語り継ぐだろう。
 その母を守り抜いた、勇敢なる冒険者達の事を。

 そして。

 ◆

《パルルルルルルルルルル!》
 今や、母親と並ぶまで育った五つの影が、この日、大樹を旅立った。
 彼らがどこにいくのかは、誰も知らない。

 あるいは、絆を結んだ猟兵の元に行くかも知れないし。
 似たような大樹を見つけるかも知れない。
 どこかで魔物と戦い、傷つき倒れるかも知れないし。
 まだ見たこともないような、誰も知らない場所へ征くのかも知れない。

 彼らがどう生きるのか、どうなるのかは。
 これから、分かっていくことだ。
 けれど、きっと忘れないだろう。

《パルッ♪》
 生まれたばかりの彼らに差し伸べられた――あの手の暖かさを。


 母なる翼とその子友たちを巡る戦いは、ここで、おしまい、おしまい――――。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年11月05日


挿絵イラスト