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異端のタイラント

#ダークセイヴァー #夕狩こあら #悪食の断片 #怪物に堕ちた黒騎士の群れ #真紅の傀儡騎士


「ダークセイヴァーにおけるオブリビオン支配は盤石だ」
 ヴァンパイアが人類を支配して百幾年。
 禍き吸血鬼らは次々とオブリビオンを呼び寄せ、破壊と破滅を進めている――。
 枢囹院・帷(麗し白薔薇・f00445)はこの世界の危機的退廃を淡然と語ると、「だが」と口開いて長い睫を持ち上げた。
 麗人の緋瞳は、眼前に揃った猟兵の精悍を映して曰く、
「オブリビオンの中には、現在の確固たる支配体制を揺るがす可能性を秘めた『猟兵』という存在に、危惧を抱く者も居る」
 こいつが然うだ、と地図を広げて指差すは、或る辺境の村。
 繊指は更に羊皮紙を滑ると、隣村との境界でトントンと小突いて見せた。
「この村の領主が猟兵を誘き寄せようと、或る事件を起こしている」
 或る事件。
 まさか無辜の命が犠牲になっているのでは――と懸念した猟兵の嫌な予感は当たる。
 帷は靜かに頷いて、
「彼奴は『悪食』と呼ばれるオブリビオンの分け身を使役し、こいつを村境にある教会の聖堂と一体化させ、旅の無事を祈りに訪れる冒険者を次々に喰らわせている」
 これが罠だとは、全てを言わずとも知れよう。
 悪事を働くオブリビオンも我等猟兵を誘き寄せる餌ならば、冒険者達もその餌と使われている――苛立ちを握り籠めた拳に代らせた猟兵は、更なる説明を求めた。
 故に帷は頷首して続け、
「当然、君達は罪なき冒険者を喰らう『悪食の断片』を倒しに向かうだろう。領主は其処を狙い、聖堂に大軍を遣って包囲殲滅に掛かるだろうから、それも撃退して欲しい」
 一体でも十分な戦闘力を有するオブリビオンと、其処へ押し寄せる大軍を相手に戦えば、全滅は必至。
 先ずは領主の尖兵が到着する前に、『悪食の断片』を倒して欲しい。
 戦闘力のない冒険者も居るから、余力があれば守ってやってくれ、と言を足した帷は、次いで聖堂を取り囲むという戦力についても説明した。
「君達がオブリビオンとの戦闘で損耗した頃合いに、領主が大軍を率いて攻めてくる」
 怪物と化した黒騎士軍団を率いるのが、村の領主『簒奪卿』と言う訳だ。
 此処で帷は暫し時を置いて、
「……村人が密かに『簒奪卿』と呼んでいる現領主は、嘗て仕えていた領主に成り代わって村を支配するようになった僭主で、奴が猟兵に危機感を抱くのも、そういった経歴を持つからだろう」
 己が支配構造を覆したからこそ、支配を揺るがす猟兵が見過ごせぬか――。
 絶対的支配が敷かれる世界で、わざわざ猟兵を狙おうとする者の珍しさを皮肉な嗤笑で一蹴した帷は、小気味よい嫣然を注いで、
「とまれ、君達は村境の教会に赴き、冒険者を喰らおうとしているオブリビオンを撃破した後、大軍を率いてやってくる領主をまとめてやっつけるのが、今回の任務だ」
 ぱちん。
 弾指の音で説明の完了を告げた帷は、開いた掌手にグリモアを喚び、
「ダークセイヴァーにテレポートする。猟兵を狙って罠に掛けようとする悪しきオブリビオンに、たっぷりと荊棘をくれてやれ」
 と、勇敢なる猟兵らを眩い光に包んだ。


夕狩こあら
 オープニングをご覧下さりありがとうございます。
 はじめまして、または、こんにちは。
 夕狩(ユーカリ)こあらと申します。

 こちらは、ダーウセイヴァーの支配体制を揺るがす猟兵に危機感を感じたオブリビオンが、猟兵を誘き寄せ、鏖殺を画策する『猟兵を狙うオブリビオン』シナリオです。

●戦場の情報
 ダーウセイヴァーの辺境の村、境域に近い教会の聖堂。
 旅の安全を祈る為に訪れる冒険者が、此処で行方を晦ます事件が起きています。

●敵の情報
 第一章(ボス戦)『悪食の断片』
 教会の聖堂に扮し、祈りに来た冒険者を容赦なく喰らうオブリビオン。『悪食』と呼ばれるオブリビオンの分け身で、喰らうは人間のみならず、ヴァンパイアや異端の神々すら其の舌から逃れられません。
 戦闘は聖堂内で、オブリビオンを倒しても外殻(聖堂)は残る為、以降の戦闘も聖堂内となります。

 第二章(集団戦)『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』
 嘗ては黒騎士として敵の魂を啜っていた者達。
 身に纏う呪いの武具が暴走し、精神が食い殺され、怪物と化してしまいました。
 磨かれた騎士の武技と、鎧の一部を異形化して戦います。

 第三章(ボス戦)『真紅の傀儡騎士』
 領主を護る紅騎士が、その領主に成り代わって村を支配するようになった僭主。
 身丈に迫る大剣や、鎧に染付いた血から紅の狼を具現化させて戦います。

●リプレイ描写について
 フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
 団体様は【グループ名】を冒頭に記載願います。

 以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
 皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
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第1章 ボス戦 『悪食の断片』

POW   :    闇の帳
全身を【猟兵の視覚と嗅覚を遮る特殊な濃霧】で覆い、自身が敵から受けた【負傷を回復させ、自身の食欲】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。
SPD   :    膨張する体躯
【底なき食欲と飢え】の感情を爆発させる事により、感情の強さに比例して、自身の身体サイズと戦闘能力が増大する。
WIZ   :    刻喰らい
予め【周囲の者の年齢を一時的に半減し、吸収する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。

イラスト:クロジ

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 其の教会は、病人だろうと罪人だろうと、或いは異邦人だろうと異教徒だろうと、扉を開けた者を温かな光に迎え、心地よい静謐に包む――神聖なる神の家だった。
 神父が居らずとも、此処を訪れた者は長椅子に座り、跪いて、暫し神と対話する。
 これまでの旅の無事を感謝し、そしてこれからの旅の安全を祈る――。
 其は常闇の世界を冒険する者達にとって、憩いであり癒しの時間だった。
「……主よ。我等を憐み給え」
「……主よ。我等を護り給え」
 劔を置き、瞼を落して十字を切る。
 然して我が身を神に預けた冒険者達は、辺りが濃霧に包まれた事には気付かない。
 漸う冒険者達を覆い始めた濃霧は暗澹と、壁や床、天井から這い出た甲殻の手足を覆い、更に巨鋏の如き親爪を間際まで隠した。
 ――間際とは。
 無論、食べる瞬間に他ならぬ。
「――んん?」
「……んぉぉおおっ!?」
 大きな鋏の如き手腕――いや、大きく口を開けた牙の様にも見える異形が迫る。
 あまりの景に腰を抜かした冒険者は、劔も握らず床に転がった。
「おおぉ……あろうことか神の家に魔物が出るとは……!!」
「っ神父様は……神父様は居られるか!」
 声は返らない。
 神父は数日前に食べられた。
 聖堂に寄生した『悪食の断片』は、神父を喰らい、冒険者を屠って、軈て其の暴食は神をも噛み砕くだろう。
「あわわわわ……!!」
 邪の底なき食欲の前に、冒険者達は我が旅の終焉を視た。
イデアール・モラクス
了承した、ならば我らを斃せるなどと思い上がった愚か者に鉄槌を下そう。
罠を食い破り、その喉に牙と剣を突き立ててなぁ。

・行動
「フン、罠にしては大雑把な大食いめ…冒険者ども!下がれ、ここは私が預かる!」
まずは冒険者を下がらせ保護せねばな。
UC【愛欲の軍勢】を『全力魔法』で強化した上で『高速詠唱』にて召喚。
前衛たる騎士達は槍を構え突撃し敵を『串刺し』にさせ壁となり、後衛たる魔術師達には『属性攻撃』で強化した氷の刃や聖なる光線の攻撃魔法を『一斉射撃』させ『制圧射撃』の『範囲攻撃』で広範囲を『薙ぎ払い』前衛を援護させ、冒険者が後退する為の陣を張る。
「獣狩りにはそれなりの作法がある…放て!」

※アドリブ歓迎



 畢竟。
 今回の任務は、「敵が大口を開けて待っているから、その舌に刃を突き立てろ」という実に放胆なものであったが、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)なれば、仮令それが煉獄の罐底だったとしても、涼し麗顔を崩さなかったろう。
「――了承した」
 透き通る様な白皙に濡烏の艶髪を際立たせた魔女が、短く聲を置く。
 佳聲に交じるはヒールが石畳を打つ音か――典雅の跫を聖堂の前で止めたイデアールは、灰色の風にマントを翻した。
「我らを斃せるなどと思い上がった愚か者に鉄槌を下そう」
 云うや繊手は重厚なる扉を押し、その隙間よりぶわりと押し寄せる濃霧を睨める。
 柳葉の眉は既に堂内に満ちた邪気に眉根を寄せるか――否、好戦的に蹴立ち、
「罠を食い破り、その喉に牙と剣を突き立ててなぁ――!」
 刻下、蹴破らんばかり勢いで開扉すると、間もなく其の犀利な緋眼に剣呑を捉えた。
『ギギギギィィギギ……!!』
「たす、助けて――!」
 濃霧から迫り出す巨鋏の前で、冒険者達が見る々る裡に若返っていく――。
 彼等の年齢を吸収し、我が力と変えているのかと炯眼に見切ったイデアールは、時を楔打つ様に言い放った。
「フン、罠にしては大雑把な大食いめ……冒険者ども! 下がれ、ここは預かる!」
「ひぇぇぇええっ、まじょ……!!」
 冒険者達は這い蹲って退くが、巨鋏の方が早かろう。
 なればと切れ長の瞳に炯光を帯びた麗人は、我が身に脈々と満てる厖大な魔力を高速詠唱によって紡ぎ出す。
「愛しき下僕達よ……この者達を守る陣を張れ。出でよ、ルストレギオン!」
 顕現、【愛欲の軍勢】(ルストレギオン)――!
 溢流した魔力が模るは、嘗て己と一夜の契りを交わした男達。
 丹花の唇を擦り抜けるソプラノ・リリコ・スピントは美し音吐を転がして、
「獣狩りにはそれなりの作法がある……放て!」
 彼等は床を蹴るや、騎士は槍を構えて前衛を成し、魔術師は後衛として呪文を唱う。
 イデアールの渾身の魔力に強靭を得た下僕達は、主の意の儘に動いて、間もなく最初の衝撃に聖堂を揺らそう。
『ギギギァァァギギギッ!!』
 騎士達は巨鋏に向かって突撃し、厚い堅甲を貫くや痛撃に退かせ。
 それと同時、魔術師達は氷の刃や聖なる光線を一斉に撃ち出して、圧倒的物量によって広範囲を制圧する。
「身を低くして……腰が抜けていたな。その儘でいい」
「はわわわ……!」
 爆熱と轟音、烈風が渦巻く中、冒険者がイデアールを仰ぐ。
 其処には極上の艶笑を浮かべる魔女が立ち――目を奪われたのは言う迄も無い。

成功 🔵​🔵​🔴​

須藤・莉亜
「教会ねぇ…。僕浄化されそうなんだけど。」
いやまあ、ジョークだけどね。

冒険者さん達は他の人に任せとこうかな。守るのは苦手だし。

大鎌を53本に複製して戦う。40本を攻撃用にし、残りは僕の周囲に防御用として残しとこうかな。
敵さんの動きを【見切り】、僕は攻撃用の大鎌で全方位から攻撃、悪魔の見えざる手にはLadyを持たせ、僕の攻撃に合わせて攻撃してもらう。

【第六感】、【見切り】を使った回避と、防御用の大鎌での【武器受け】で防御も忘れずに。

ところで、この敵さんは吸血出来るのかな?噛み砕くのはいけそうな気がするけどなぁ…。うん、チャンスがあれば【吸血】してみよう。きっと、蟹みたいな味がするはず。



 常闇に覆われた穹の靉靆に十字の尖塔を突き刺す聖堂。
 その神聖は御堂に入らずとも感じようか、須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は誰にでも開かれた扉の前で跫を止め、端整の唇を少しだけ、物憂げに開いた。
「教会ねぇ……。僕、浄化されそうなんだけど」
 ――いやまあ、ジョークだけどね。
 然う戯喩を零しつつ、彼が神を揶揄わないとは、喫(くゆ)らしていた紫煙を始末した事で理解ろう。
 莨の代わり白の巨鎌『血飲み子』を抱えて聖きに入った莉亜は、ぶわり立ち込める邪き濃霧の先――巨鋏に襲われる冒険者を捉えた。
「うわわ……コイツどんどんデカくなっていくぞ……!!」
「俺達、切り刻まれる処か、鋏に丸呑みにされちまう!!」
 腰を抜かしたか、床を這い蹲う男達――。
 神秘的で儚げな光を湛えるフォスフォシデライトの瞳は、剣呑を映して尚お飄然と、
「冒険者さん達は他の人に任せとこうかな。守るのは苦手だし」
 仲間は強く、頼もしい。
 適材適所が宜しいと、間もなく旅人らに向かって疾走る猟兵を艶やかな流眄に見送った莉亜は、己は己の仕事を為べく、身に満てる魔力を汪溢させてマントを翻した。
 然れば刻下。
 莉亜が胸の前に掲げた大鎌は次々に複製され、彼を中心に円状に並んで白く耀く。
 煌々と白皙を白ませた莉亜は、變わらず淡然と言ちて、
「53本かぁ……40本を攻撃用に、残りは防御用として僕の周りに残しとこうかな」
 時は須臾。
 寸秒で迫る巨鋏の軌跡を見極めるや、攻撃用の大鎌を全方位から仕掛ける。
 鋭い刃鋩が厚い堅甲に噛み付くと同時、莉亜を抱擁する『悪魔の見えざる手』は、真白の鉄筒が麗しい『Lady』を構えて照準を絞る。
「鋏が開いた瞬間を狙い撃って」
 契約者が囁(つつや)くや、鐵鉛は濃霧を旋回して鋏の中へ。
『ギャギギギギッッ!!』
 痛撃を叫んで後退する鋏が在る一方、床下より新たに伸び出る鋏も在る。
 蓋し莉亜は沈着たる儘、足元より迫る邪手に長い睫を落すと、防禦用の大鎌に鋏を噛ませ、弧を描く切先に甲殻を貫いた。
『ゲェァァアアッッ!!』
「――処でこの敵さんは吸血出来るのかな?」
 激痛を喊ぶ醜声に優艶のテノールが交じる。
「いけそうな気がするけどなぁ……蟹みたいな味がしそう……」
『ギギ……ィィ、ィギギギ……ッ!!』
 複数の鎌鋩を集め、挟み合せる様にして噛み砕く。
 使用者と味覚を繋げた其は、聢と主に血の味を届け、
「うーん、蟹のような海老のような……これがヤドカリの味……?」
 ――新鮮。
 初めて味わう海っぽい味に、莉亜は僅かに瞠目した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

茜谷・ひびき
……相も変わらずオブリビオン共は悪趣味だ

現場に着いて間に合いそうなら冒険者達を助けに入る
その際は多少のダメージは覚悟の上だ
目の前で死なれるよりマシだからな

相手が霧で自分を覆っても、耳だけは誤魔化せないか
敵を倒しきるまでは耳を頼りに戦う
必要があれば【野生の勘】にも頼るぞ

再生能力を持ってるようなやつなら長期戦は不利か
UCで右手を変形させたならガンガン殴っていこう
食らい付かれたら厄介だ、出来るだけ横っ面を殴っていきたい
【鎧砕き・怪力】で力を増して叩こう
【傷口をえぐる】事でも早めに決着をつけたいな

冒険者も出来る限り守ってやりたい
敵を積極的にこっちへ引き付けたりして、注意が向かないようにしてみようか



 猟兵という存在が目障りなら直截叩けば良いものを。
 態々他のオブリビオンを囮と遣り、無辜の命を贄に誘き寄せるとは手が込んでいると、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)は犀利な眼光を濃霧に射る。
「……相も変わらずオブリビオン共は悪趣味だ」
 景に言を重ね、唇を引き結ぶ。
 刻下、赫光を帯と引く黒瞳に映るは、壁より這い出た巨鋏が餌たる冒険者を追う陰惨。
 濃霧に隠れる鋏の音が彼等の恐怖を愈々煽ろう、
「霧が濃くて……何も見えない……!!」
「この気味の悪い音は、いったい何処から来るんだ……!!」
 冒険者達は方向を失って恐慌を叫び、逃げ場なく床を這い蹲う。
 間もなくその躯に死撃は迫って、
『ギギギィィイイギギ……!!』
 壁、床、天井。
 三方向から伸び出た巨鋏が肉を屠らんとした、刹那――異形の怪腕が其を阻んだ。
『ゲギャッッ!!』
 鋏が開いた瞬間に噛み合わせた右拳もまた悪食。
 繃帯を解いて暴かれたのは、【ブラッド・ガイスト】――脈々と流るる紅血を吸って殺戮捕食態と變化した右腕は、床より這い出た鋏を烈々と圧し潰した。
「――ッッ」
 然し此の時ひびきが柳葉の眉を顰めたのは、残る二方向――壁と天井から襲い掛かった二撃がしとど鮮血を繁噴かせたから。
 彼が冒険者を護る為に最も近い鋏撃を優先したとは、当事者こそ良く分ろう、
「兄ちゃん、大丈夫か!?」
「無茶だ、食べられちまうよ!!」
「……あんた達が目の前で死なれるよりマシだ」
 多少の負傷は覚悟の上と、流血を手の甲に拭ったひびきは、言葉少なに爪先を蹴る。
 漆黒の瞳は幾許にも冷静沈着、且つ洞察に優れており、
「相手が霧で自分を覆っても、耳だけは誤魔化せないか」
 なれば耳を頼りに戦おうと、聡い聴覚を更に研ぎ澄ませた彼は、戦闘勘や経験則を駆使して巨鋏の軌道を見極める。
 自ずと鋏が己を追う様に――。
 敵の暴食を煽る様に聖堂を疾駆したひびきは、蓋し再生能力を持つ相手に長期戦は不利と、巨鋏が襲い掛かるタイミングで仕掛ける。
「食らい付かれたら厄介だ、出来るだけ横っ面を殴る」
 全ての読みは至当。
 渾身の力を振り絞って繰り出た一撃は、巨鋏の合わせに沈むや厚い堅甲を砕き、貫穿した上で、更に剔抉する――!
『ギャギギギギィィッッ!!』
 然れば壁や床を掻き毟る様な絶叫が、聖き神の家を揺らした。

成功 🔵​🔵​🔴​

セシリア・サヴェージ
私たち猟兵をおびき寄せるために無辜の者を利用するとは……断じて許せません。卑劣な簒奪者には然る可き報いを。
転送後は素早く聖堂内部へ突入します。冒険者たちをまだ助けられるならば……いえ、必ず助けてみせます。

『悪食の断片』の攻撃から冒険者を【かばう】様に『暗黒剣』の【武器受け】で護ります。すぐに反撃したいところですが、濃霧によって正確な位置を捉えることが難しいようです。
ならば、敵が攻撃してきたところを【第六感】で感じとり、【カウンター】で仕留めます。予めUC【闇の戦士】を発動して感覚を研ぎ澄ませれば不可能ではないでしょう。



 既に犠牲者が出ている。
 今も現場では無辜の命が脅威に晒されている。
 そう思えば、教会へと向かう足は駿馬より疾く駆けよう。
「冒険者たちをまだ助けられるならば……いえ、必ず助けてみせます」
 グリモアの光も解けぬ裡に聖堂へと急いだセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、開扉した瞬刻、ぶわり立ち込める濃霧に蛾眉を蹴立てた。
 先ずは狼狽える聲だけが聴こえたろう。
「この霧、生きているのか……? 何も見えないぞ!!」
「ひぃぃっ、気味の悪い音が近付いてくる……!!」
 怜悧に炯眼を絞ったセシリアは、靉靆の中で逃げ惑う冒険者と、彼等に襲い掛かる死撃に間もなく爪先を蹴った。
『ギギギィィィギギギ!!』
「ひぇぇぇええっ、神様――!!」
 時に須臾。
 冒険者を鋏撃より護ったのは神でなく、美し銀髪を衝撃に梳らせた女騎士。
 呪われし『暗黒の鎧』に繊躯を包んだ麗人は、身丈に及ぶ『暗黒剣ダークスレイヤー』を盾の如くして鋩を受け止め、その余波を壁に叩き付けた。
「お、おお女……!?」
「なんという……ッッ!!」
 床を這う男達は、大口を開けた巨鋏を食い止めるセシリアに再た腰を抜かして。
 背越しに彼等の無事を確めた凄艶は、鋭眼を真っ直ぐ邪に射て、凛然と言い放った。
「私たち猟兵をおびき寄せる為に無辜の者を利用するとは……断じて許せません」
『ギギギャアッ!!』
「卑劣な簒奪者には然る可き報いを――!」
 巨鋏の向こうに黒幕を視るセシリア。
 返す刃で巨鋏を弾き返した彼女は、直ぐにも別の鋏が床や天井から伸び出る――暴食の手腕を劔身で躱しつつ、その軌道を歴戦の戦闘勘で見極めた。
 視覚と嗅覚を遮る濃霧は巨鋏をよく隠し、正確な位置は中々捉え難いと唇を引き結んだセシリアは、「なれば」と暗黒のオーラを徐々に高めていく。
「ア、アンタ……大丈夫か……? 闇に呑まれちまうぞ……!」
「狂……狂戦士だ……」
 能力を高めるほど代償は大きく、暗黒を纏うほど人々は己を怖れようが、彼等を護れるなら躊躇わない。
 強大なる【闇の戦士】(ウォーリアオブダークネス)と化したセシリアは、身に纏う暗黒の力によって次なる瞬間の優位を勝ち取り、
「仕留める――!」
 相手が攻撃を繰り出した時こそ好機と、至妙のカウンターに巨鋏を両断する。
『ギャギャギャギギギギ!!!』
 醜声が激痛を叫び、ごとりと堅甲を転がした其処に、雄渾なる女騎士が聳立していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

アルトリウス・セレスタイト
食欲旺盛も結構だが
悪食は腹を下すぞ

打倒だけなら大した小細工も必要なかろうが、冒険者を保護しておくべきだろう
『励起』『解放』で個体能力を上昇
『天光』で目標の動きを逃さず捉え危険なものから順次保護し、味方猟兵の近くなど比較的安全そうな場へ移送
向けられる攻撃へは『絶理』で自身を世界から切り離し、『刻真』で攻撃が行われない時間に自身を置いて影響を回避する


一段落したら目標の始末に
アレはいつも飢えていて、その欲求だけで存在しているようなものだろう
「食いたい」という感情が消えること無く此方へ向いているのは間違いない

わかっていれば容易いこと
空理で消去する
どこへ潜み何をしていようと逃れる術はない


オリヴィア・ローゼンタール
神の家たる教会を騙り貶め人を喰らうなどと……

【転身・炎冠宰相】で白き翼の姿に変身
【属性攻撃】【破魔】【オーラ防御】で聖槍と自身に聖なる炎を纏う
信仰を貶められた赫怒で、聖炎の勢いは無尽蔵に強化
肉の一片、血の一滴も残さず、轢き潰し焼き滅ぼしてやる……!

視覚嗅覚が封じられたのなら聴覚(聞き耳)及び【第六感】で位置を探る
全身全霊の【怪力】を以って聖槍を打ち振るい、甲殻ごと斬り穿ち叩き潰す(鎧砕き)
眼球を穿ち(ランスチャージ)、節足を引き千切り(グラップル)、鋏を踏み砕く(踏みつけ)(部位破壊)
ぅおおおおおおおッ!!!

【串刺し】にして炎を解放し体内から焼き尽くす(全力魔法)
聖絶する――!


夏目・晴夜
好き勝手に命を食い散らかしてきたのでしょうが、もう十分ですよね
そろそろ無残に惨たらしく食べられる側に回って頂きます

『憑く夜身』で操った敵の影で、敵の動きを一時的に封じます
いくら強くなろうと、動けなければもう冒険者にも猟兵にも手出しできませんからね
動きが見破りやすい上に図体ばかりがデカい為に拘束しやすくて実に楽です
余力があれば【呪詛】を纏わせた妖刀を【投擲】して【目潰し】も狙います
もう今日限りの命ですから、目なんぞあっても邪魔でしょう

でもこれ、本当に元の姿に戻るんでしょうね……
この歳の頃は上背も肉も学も全く無くて個人的に大嫌いなんです
もし戻らなければ骸の海の底の果てまで追いかけてブッ飛ばしますよ



 転送の光が解けるのも待たず、緊切の跫が石畳を疾走る。
 常闇の穹に十字の尖塔を掲げる教会、人々の心の拠り所たる聖堂より邪気の滲出を視たオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)は、俄に蛾眉を蹴立てた。
「神の家たる教会を騙り、貶め、人を喰らうなどと……」
 裂けんばかり瞋恚は宛ら霹靂。
 聖けし修道女は黄金の炎に包まれるや、【転身・炎冠宰相】(モード・メタトロン)――穢れ無き純白の翼を広げ、灰色に沈む風を切って身ごと御堂に飛び込んだ。
 開扉するや、中より漏れ出る濃霧が白皙をぬるりと撫でる。
「――!」
 視界は晴れずとも、聖女は其の犀利な金瞳に酸鼻の景を映したろう。
 神聖が血に穢され、靜謐が悲鳴に切り裂かれる――信仰を貶める凄惨に勃然と心火を萌(きざ)したオリヴィアは、身に纏う聖炎を赫々と迸らせた。
「肉の一片、血の一滴も残さず、轢き潰し焼き滅ぼしてやる……!」
 嚇怒の炎は破魔の力を帯びて烈々と。
 万魔穿つ炎の槍に濃霧を切り裂き、身廊を翔けたオリヴィアは、祭壇の向こうに隠れた巨鋏と剣戟を噛み合わせた。
『ギギギギィィギギッ!!』
 闘争の波動がヴォールト(穹窿)を揺らせば、忽ち天から無数の親爪小指が這い出で、無尽蔵に伸びて餌を探す。
 闇雲に濃霧を掻く邪の健啖には、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)も呆れたか、端整の唇に溜息を零して。
「食欲旺盛も結構だが、悪食は腹を下すぞ」
 撃滅するだけなら、彼は聖堂ごと破砕する勢いで暴食を斃したろう。
 然し藍玉と煌めく双眸に、床を這い蹲う冒険者を捉えたアルトリウスは、然うも往かぬと漂う淡青『顕理輝光』を汪溢させた。
「此処は保護しておくべきだろう」
 自覚する程度に“人間”になってきた彼である。
 多分それで合っていると、硬質の指を動かした『原理』の端末は、創造の原理『励起』と自由の原理『解放』を活性化し、個体としての能力を底上げる。
「危険度によって救出順位を付け、比較的安全な場所へ移送する」
 判断は怜悧冷徹に、其を可能とする挙動も剴切。
 全知の原理『天光』は、濃霧に隠れる巨鋏の動きを鋭く見極め、剣呑に近い者から順次保護し、猟兵によって安全が確保された聖水盆付近へ躯を運ぶ。
『ギギギギャギャギャ!!』
「――餌は増えた筈だが。盗られれば惜しいか」
 已の所で冒険者を食べ損ねた巨鋏は、彼等を護るアルトリウスに鋏撃を向ける。
 然し彼は断絶の原理『絶理』で我が身を世界から切り離し、時の原理『刻真』で時間を操作すると、攻撃が行われない時間に身を置いて影響を回避した。
『?? ??』
 これに戸惑った邪肢は空を掻き、開かれた儘の鋏はポカンと開いた口のよう。
「――これは滑稽な」
 殺伐の中にも玲瓏の嗤笑を置くは夏目・晴夜(不夜狼・f00145)。
 特殊な濃霧が猟兵の視覚と嗅覚を遮ろうとも、狼耳をひくり蹴立てて些末な音も拾い集めた彼は、夜色の外套を颯爽と翻して鋏撃を躱す。
 我が白皙を掠める鋏鋩を流眄に見遣った晴夜は、空を食む虚しさを言に慰め、
「好き勝手に命を食い散らかしてきたのでしょうが、もう十分ですよね」
 弱肉強食が不文律で大原則のこの世界。
 敵の悪食をとやかく言う気は無いが、喰う者が喰われる――淘汰の摂理には誰も抗えぬと冷徹を突き付ける。
「そろそろ無残に惨たらしく食べられる側に回って頂きます」
 丹花の唇は残酷を告ぐや、【憑く夜身】(ツクヨミ)――不可視の操り糸が濃霧を潜り、僅かな輪郭を描いた敵影を掴んで操った。
『ギギギィィギギ……ッッッ!!』
「いくら強くなろうと、動けなければもう冒険者にも猟兵にも手出しできませんからね」
『ギギッ! ギギギギィ!!』
「ええ、動きが見破りやすい上に図体ばかりがデカいものだから、実に拘束し易い」
 操り糸も華奢ながら、繊麗の十指が楽々と挙措を殺すも妙々。
 張り詰めた糸の先でギチギチと巨鋏を揺らした『悪食の断片』は、濃霧の奥でギラリと瞳を光らせると、反撃に晴夜の「年齢」を奪った。
『カカカカカッ!!』
「――ッ、……やってくれる……」
 美し妖しテノールは、悪態を吐いた時には透徹のアルトになって。
 時間を奪われたのは彼だけではない。
「刻まで喰らうとは悪食も堂に入ったものだ」
 見れば、妖しい眼光に凝視されたアルトリウスも「器」を子供の如く縮められ、やけに小さくなった掌を暫し見詰めている。
 悪食の捕食対象になった者は並べて【刻喰らい】から逃れられず、冒険者達も声を若くして狼狽えた。
「うっうわぁ! 小さくなっちまった……!!」
「代わりにアイツの鋏がどんどん大きくなって……丸呑みにされちまうぞ!!」
 其はオブリビオンや異端の神々さえも屠る事の出来る能力。
 斯くして腹を満たしてきたであろう邪の遣り口は、猟兵を頗る不快にさせた。
「神が万物に等しく与えられた『時』を奪うとは、冒瀆極まる……!」
 力強い翼の羽搏きで敵の視線を上回ったオリヴィアは無事か、恐慌の声を下に愈々嚇怒した天使は、我が身と聖槍をひとつの炎の御柱として、その鋩を墜下させる。
 重力に乗算されるスピードは、不屈の信仰心によって極限まで加速し、
「眼球を穿ち、節足を引き千切り、鋏を踏み砕く! ――ぅおおおおおおおッ!!!」
 突貫――ッ!
 火球か天雷か、炎の楔と迫ったオリヴィアは、視覚と嗅覚を遮られた濃霧の中でも聴覚を研ぎ澄まして敵の居所を見破り、全身全霊、渾身の力を絞って聖槍を打ち振るう。
『ゲギャアァァアア!!』
 厚い堅甲を貫穿した刃鋩は休まず、次いで赫然たる炎を注ぎ込む!
「聖絶する――!」
『ギギギギィィィギギギ!!!』
 巨鋏が砕け、其処から灼熱を送り込まれた邪肢が壁に隠れた部位まで延焼し、一面の壁が爆轟に揺れる。
 蓋し悪食の根源が断たれたとアルトリウスは思わない。
 何故なら右の側廊が炎に包まれた一方、左の側廊より伸び出た邪鋏は、今の損耗をカバーすべく食欲を強くして回復に出たからだ。
 幼くも怜悧な視線は、今なお蠢く邪肢を睨め、
「アレはいつも飢えていて、その欲求だけで存在しているようなものだろう」
 竟ぞ「食いたい」という感情は消えず、此方へ向いているのは間違いない――。
 わかっていれば容易い、と靜かに呟いたアルトリウスは、身丈は低くとも迸る『顕理輝光』は元と変わらず濃霧に漂わせ、厖大なる魔力を其処に示して見せた。
「――どこへ潜み何をしていようと逃れる術はない」
 発露を視るは【空理】(クウリ)。
 其は「食欲」という感情を有する『悪食の断片』に、己のみが認識可能な「世界の外へ通じる亀裂」から、普く障害を無視して全ての始点、全なる虚無へ還す。
 辿り歩んできた道が終わりへ導く――その感覚は幾許であろう。
『ギギギィィィギギギ……ッッッ!!』
 漸う歪みを生じ始めた邪は、アルトリウスを再び凝視して年齢を奪取しようとするが、二度目の妖光は然し晴夜の妖刀『悪食』が鋩を埋めて潰した。
「もう今日限りの命ですから、目なんぞあっても邪魔でしょう」
『ゲェギャアアッッ!!』
 合理性を好み、無駄を嫌う刀鋩は描く軌跡も精確精緻。
 呪詛を帯びた其は濃霧を切り裂いて妖眼に飛び込むと、痛撃に噎んだ邪鋏は悉く壁や床に隠れた。
「身の危険を感じれば引っ込む……ヤドカリの様なものでしょうか」
 ――この時。
 晴夜は光を取り戻したステンドグラスに、ふと幼い自身が映るのを見て柳眉を顰める。
「……これ、本当に元の姿に戻るんでしょうね……」
 じとり、複数の色硝子に映された我が身に問う。
 この年頃の自分は上背も肉も学も全く無く、個人的に大嫌いなのだ。
 加えて生意気な仏頂面を寄越してくるのも腹立たしく、
「もし戻らなければ、骸の海の底の果てまで追いかけてブッ飛ばしますよ」
 きゅっ、きゅっ。
 晴夜は『十環』を嵌めた白手袋で、窓に鏤められた虹色の硝子の曇りを拭った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

宇冠・龍
由(f01211)と連携

(悪食……!)
ついに見つけたぞ、と夫の形見の槍先を向けます

悪食本体に食われた夫、そしてその際傷ついた私の体と失った子の命
たとえ分身であろうと見逃すわけにはいかない
夫や由と共に倒すまで

(……身体が、軽い?)
声も肌も心なしか全盛の時に近づいたような高揚感

由が悪食の動きを食い止めている間、夫と連携
熱せられたものは急に冷やすと脆くなります
夫の冷気を風で強化し悪食を覆い、更に動きを鈍らせた所を槍で一突き


あれから、あの人が死んでどれ程の時がたったのだろうか
どれ程の想いと刻を食われたのだろうか
終わらない、終わらせられない!
「貴様は、全て討ち滅ぼす!!」

珍しく感情を表に爆発させます


宇冠・由
お母様(f00173)と連携

どうしてか若返ったお母様
その姿はまるで、お父様と一緒に旅をしていたころのよう
いけません、見惚れている場合ではありませんわ

二振りの火炎剣を投擲、百火繚乱の技にて、満開した炎の渦で相手を串刺しにします
膨張すればするほど力は増しても的は大きくなる
(防御に心得はあります。全身を狙われたらどこをかばうか、逆にどこが手薄になるのか……!)
関節部を中心に狙い、その動きを封じ込めます

全身燃えるブレイズキャリバーの私ならば、その光は太陽のように
上へ上へ上空に昇っていき、敵の目をこちらに限界まで引き付けておきます
(復讐なんてやめてほしいです。……なんて、言ったら泣かれるかな?)



 ――随分と昔の話になる。
 冒険者として幾つもの遺跡や国々を旅していたドラゴニアンの夫婦が、或る日『悪食』なるオブリビオンと邂逅し、夫は命を失い、妻は子を喪った。
 あの日から一線を退いた未亡人は、死霊術士の力を開花させたのを機に、殺伐の軍庭に立つようになったが、腹部の創痍は未だ寂寥に疼いている。
 妻は。
 未亡人は。
 宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)なる女は、靉靆たる常闇の穹に十字を掲げる教会に、尋常ならざる邪気の溢流を視るや、穏かなる柳眉を凛と蹴立てて爪先を弾いた。
「お母様――」
 緊切の跫を追った宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は、龍の繊手が重厚の扉を開くと同時、ぶわり漏れ出る濃霧の先に、神聖と靜謐を犯す異形を視る。
『ギギギギィィィギギギ!!』
 禍き巨鋏。醜い親爪小指。
 堅甲に覆われた邪肢が冒険者を屠らんとする景が、嘗ての記憶と重なる。
(「悪食……!」)
 遂に見つけた。
 再び相見える事が叶った。
 龍は瞋恚と昂奮に震える手に夫の形見たる『氷風の槍』を強く握りながら、その鋭鋩を妖しく光る邪眼に向けた。
 丹花の唇は冷然と言い放って、
「貴様の本体に食われた夫、そしてその際傷ついた私の体と失った子の命……骸の海を潜って報いて貰う。たとえ分身であろうと、見逃すわけにはいかない」
 時に須臾。
 嚇怒に染まる佳聲が詞を紡ぐ。
「――強き猛き尊き者、共に歩みてその威を示せ」
 顕現、【竜逢比干】(リュウホウヒカン)――。
 然して傍らに喚ぶは、凍てる氷の息吹を吐き、風纏う槍を手に聳立する「竜型ドラゴニアンの夫」の霊。
 死霊術で蘇った夫は、黙せる竜は召喚主に従う存在でしかないが――悪食との因果の鎖を断つには、彼と、由と共に在らねばならぬ。
 斯くして鏖殺の気が愈々汪溢した時だった。
『ギギギィィギギギ……ッッ!!』
 悪食の断片は巨鋏を迫り出すより先、濃霧に紛れて「刻」を喰らい、我が身に近付いた全ての者の年齢を半減させると同時、我が力として吸収した。
 剣呑に触れた霊達が響めき、龍も咄嗟に背進するが、間に合わない――!
「――ッ」
(「……身体が、軽い?」)
 優艶を帯びたコントラルトは透明感のあるソプラノ・リリコに。
 肌膚は白磁の如く滑らかに、身体は強靭と軽快を備え、全盛の時に戻ったかのよう。
 18年の刻を奪われた龍だが、心は瑞々しく高揚して聲を躍らせ、
「――由は巨鋏の動きの阻害を!」
「はい、お母様」
 反射で言を返し、戦闘勘と経験によって瞬時に連携に動いた由だが、若返った龍の姿に吃驚しているのは事実。
(「……今のお母様はまるで、お父様と一緒に旅をしていた頃のような……いけません、見惚れている場合ではありませんわ」)
 瞳を奪われる程に美しい姿容と動きの精彩に、自らも奮起する由。
 地獄の炎に濃霧を切り裂いた少女は、二振りの『火炎剣』を投擲するや、大口を開けた巨鋏を串刺し、その瞬間に百もの焔の剣を召喚する。
「燃える百の劔は空中で開花し続け、その嶺を崩すことはありません」
 斉放、百火繚乱《嶺上開花》(ヒャッカリョウラン)――!
 烈々と燃ゆ火焔剣が百も多重展開すれば、濃霧に満ちた聖堂もかなり赫るくなろう。
 満開を見せた炎劔は渦巻いて幻想を魅せた矢先、邪肢の親爪小指を悉く串刺しにする。
『ギャギャギギギギッッッ!!』
 激痛を喊びと変えた邪は、然しそれ以上に底なき食欲と飢えを訴える。
 己が存在に根差す果て無い食欲を爆発させた悪食の断片は、其に比例した身体の膨張と戦闘力の増大を得、圧倒的存在となって猟兵に迫った。
 蓋し臆する由では無かろう。
「膨張すればするほど、力は増しても的は大きくなるでしょう」
 巨鋏は愈々肥大化し、由を丸呑みに出来る程にもなるが、其を逆境と取るか好機と取るかで猟兵としての質が試されよう。
 由は剣呑が迫るほど冷静に、炯眼を鋭くして敵の形状を洞察し、
(「防御に心得はあります。全身を狙われたらどこをかばうか、逆にどこが手薄になるのか……!」)
 狙うは関節部――挙動を封じる判断は剴切。
 火焔剣を楔の如く、或いは十字に噛み合わせて駆動の要を封じた由は、その儘燃える躯を上に上に、ヴォールト(穹窿)の間際まで浮遊・上昇すると、太陽の如く灼光を放って敵の目を惹き付ける。
 少女の聡い耳には、床より這い出る邪肢を薙ぎ払う龍の聲が聴こえよう。
「あれから、あの人が死んでどれ程の時が経ったのだろうか。
 どれ程の想いと刻を食われたのだろうか。
 ――終わらない、終わらせられない!」
 珍しく感情を爆発させ、その麗顔と佳聲に表情を乗せる龍。
 繰り出る槍撃の軌跡は美しくも苛烈で――どれ程の激情が刃鋩を研ぎ澄ませているかは、幾度と共闘した由だからこそ理解る。
 凄艶なる竜人を眼下に、少女は胸に手を宛てて、
(「復讐なんてやめてほしいです。……なんて、言ったら泣かれるかな?」)
 言は胸奥に隠し。
 誰より龍を想う少女は、彼女が夫と共に死撃を衝き入れる瞬間を聢と見届けた。
「貴様は、全て討ち滅ぼす!!」
 瞋恚の滲む佳聲が終焉を告ぐ。
 蓋し龍は激情に駆られる以上に幾許にも怜悧で、熱せられたものが急激に冷やされると脆くなる事に攻略の秘鑰を見出している。
 夫が吹き付ける冷気を風で強化して邪を覆った龍は、動きを鈍らせた所に復讐の槍を衝き入れ、死の中心点を一突きにする。
「今こそ、訣別の刻――!!」
 繊指に嵌めた結婚指輪は番いを喪って久しいが、その手は強く、強く槍を握り込めて螺旋を描き、生死の間際を穿ち抜いた。
『ゲェギャァァアアアッッッ!!!』
 一際の喊びが聖堂全体を揺らし、波動が尖塔に向けて駆け上がる。
 その衝撃を柔肌に受け取った龍は、妖し眼光が潰えるまで、竟ぞ麗瞳を離さなかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
簒奪卿――つまり下剋上を成し遂げた吸血鬼と。
奸智に長けた相手やも知れませぬが、さて、最後に釣り出されたのはどちらという事になるか。

◆戦闘
聖堂内に突入し、冒険者の救助を最優先に。
彼らが餌食になりそうなら我が身を盾に【かばう】事で難を防ぎましょう。

後は傍で伏せて頂きつつ、濃霧によって視界と嗅覚が塞がれるなら、気を静め【第六感】で攻撃を感知するのみ。

殺気を覚えれば、その方向に全力の【怪力】と【破魔】の念を乗せた【鞍切】を一閃。
冒険者の方に襲い掛かる気配にも対処し、そのまま敵意の消えるまで切り刻みましょう。

遠のいていくのを感じれば、【衝撃波】で追撃。

随分と悪食のようですが、私の刃味は如何程でしたかな。


セツナ・クラルス
悪食
…そうか、悪食、ね…

救いを求めるものを喰らうとは
彼らの絶望は如何許りか…
ねえ?
異教徒の祈りは悪食たるあなたに相応しいのではないかな
ほら、私はとても美味しそうだろう?
祈りを捧げ破魔の力を身体に満たす
さあ、私の希望を食い尽くせばいい

属性魔法で破魔の力を底上げし、
喰らわれ続けても力尽きぬよう意思を強く持って倒れないように足に力を込める
…く、ふふ、まだまだ足りないかな?
なかなかに欲しがりさんだね
途中から破魔と力に毒の属性も混ぜ込み敵の内部から破滅するように目論む

敵の動きが鈍ったら灯火で一気にかたをつけたい


リーヴァルディ・カーライル
過去の戦闘知識から“食欲を満たして”と祈り【変成の輝き】を発動
第六感に干渉して“喰えば飢餓が収まる宝石”を召喚して敵を惹きつけ、
霧に紛れて目立たない存在感や殺気を暗視して行動を見切り、
カウンター気味に宝石を投げて食べさせる精神属性攻撃を行う

…ん。餓えれば餓えるほど強くなる。ゆえに悪食。
ならば、一時的に満たされてしまえば…どうなる?

精神攻撃で敵の動きや生命力吸収能力が鈍ったら、
その間に他の猟兵と協力して冒険者の避難誘導を行い、
必要なければ傷口を抉る呪力を溜めた大鎌を怪力任せになぎ払う

…こっちよ、ついて来て。今のうちに逃げなさい。

…後続が来る前に討ち果たす。
最初から罠と判っていれば、対処は容易い。



 常闇に覆われた絶望の世界で、人々が心穏やかに休める場所は多くない。
 靉靆たる灰色の空に十字を掲げる教会は、明日も分らぬ旅人の拠り所となっていたが、猟兵らが開扉して飛び込んだ景は凄惨を極めた。
「霧が濃くて何も見えない……っ!」
「ハサミがどんどん大きくなって……切り裂かれるより丸呑みにされるぞ!!」
 濃霧が御堂に満つ中、恐慌に陥った冒険者達の悲鳴が聴こえる。
 炯眼を絞れば見えようか――食前に見る恐怖こそ極上の馳走とばかり垂涎した『悪食の断片』が、腰を抜かして逃げ惑う冒険者達を今こそ屠らんとする。
 だが然し。
 大口を開けた巨鋏は已の所で鋼を噛んだ。
『ギギギィィギギァッ!!』
「――この儘、身を低くして動かずに」
「ひ、え……っ」
 切り結んだ衝撃に冷艶の聲を差し入るは、鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)。
 鼻緒を踏み込むや身廊を疾駆した彼は、『濤景一文字』ごと盾と割り込み難を防いだ。
『ギギギギギギギ……ッッ』
 好餌を食む処か、霊気滴る刀に刃撃を食わされた邪は、濃霧を噴いて一旦隠れる。
 視覚と嗅覚を遮る暗霧が濡烏の艶髪を生温く撫でるが、景正は動じず。
 泉の如く心を靜め、超感覚を研ぎ澄ませた彼は、全き頭上――ヴォールト(穹窿)より迫る無数の親爪小指を察知し、狂瀾怒濤、剣閃の衝撃波を以て薙ぎ払う。
 ぼとぼとッと床を打つ甲殻の肢に冒険者達が瞠目する中、彼はその感触を反芻し、
「成る程、食欲に根付いた殺気と――」
 覚えた。
 次なる攻撃は其ごと断ち切る、と丹花の唇を凛然と結ぶ。
 景正が冒険者達を護る一連の攻防を視た他の猟兵は、此度対峙するオブリビオンが『悪食の断片』と呼ばれる理由が理解ったろう。
「――悪食」
 セツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は優艶のテノールに噛み締めて、
「……そうか、悪食、ね……」
 神の家の神聖を冒瀆し、靜謐を犯し、無辜の民を咀嚼する邪悪。
 教会を依代にする狡猾に、欲望の儘に食指を伸ばす暴悪を重ねたセツナは、こつり身廊に靴音を響かせ、濃霧に隠れる邪に聞える様に言った。
「救いを求めるものを喰らうとは、彼らの絶望は如何許りか……」
 ――ねぇ?
 小気味良く持ち上がる語尾で居所が知られようが、それでいい。
 異教徒の祈りは、悪食たるあなたにこそ相応しい――と、不敵にも微笑を湛えた唇から清澄の聲を滑らせた彼は、両手を広げて祈りを捧げ、己が身を破魔の力で満たした。
「ほら、私はとても美味しそうだろう?」
 濃霧の奥で、ザワ……と邪肢が蠢く音が聞える。
 差し出された贄は雑味の無さそうな良質の肉で、然も自ら祭壇に近付いてくるのだから食欲が駆り立てられる。
「さあ、私の希望を食い尽くせばいい」
『……ッギギギィィギギ!!』
 途端、無数の親爪小指が壁や床から伸び出て、セツナの四肢に喰らい付く。
 尋常なら忽ち切り刻まれる処、己が躯に脈々と流るる厖大な魔力で破魔の力を底上げした彼は、喰らわれ続けても力尽きぬよう、強靭な意思力で立ち続けた。
 無論、激痛が肉体と意志を蝕むが、セツナは靴底を踏み締めて耐え抜き、
「……く、ふふ、まだまだ足りないかな? なかなかに欲しがりさんだね」
『ギギギギィィギギ……ッッッ』
 頃合いか、と――玲瓏の眸が炯光を放つ。
 邪の醜声が掻き毟る様に震えたのが「その時」であったろう。
「味が変わったのが判明るかな」
『ッギギッッ……ギギィィギギ……ッッ!!』
 破魔の力に加え、毒属性の魔力を混ぜ込んだ血は危険なほど甘い。
 邪は我が体内に流れ込む毒に轉回ち、軈て暴食を見せた部分から腐蝕し始めた。
『ギギギィィ……ギギギッッッ!!』
 制禦の効かぬ健啖こそ悪食の本能。
 底無しの食欲を目の当たりにしたリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は、此処に秘鑰を見出したか、長い睫に縁取る紫瞳が冴光を帯びる。
「……ん。餓えれば餓えるほど強くなる。ゆえに悪食。
 ――ならば、一時的に満たされてしまえば……どうなる?」
 小さく囁(つつや)いた佳声が僅かに語尾を持ち上げ。
 然れば少女は直ぐに祈ろう。

 ――“食欲を満たして”

 胸の前で繊手を合わせた彼女は、【変成の輝き】(アレクサンドラ)――過去の戦闘知識を基に、第六感に干渉して“喰えば飢餓が収まる宝石”を召喚する。
 最小の輝きが最大の効果を発揮するとは、次なる景が証明し、
『ギギギィギギギャ!!』
 食欲を唆られた邪鋏が間もなくリーヴァルディを追い立てるが、彼女は『黎明外套』を翻し、絶妙たる至近距離で鋏撃を躱す。
「……霧に隠れて目立たないだけで、存在感や殺気は慥かにある……」
 故に見切れる。
 特に食欲に繋がれた今は尚のこと行動が読み易いと洞察を鋭くしたリーヴァルディは、巨鋏が大口を開けて迫った瞬間に宝石を投げ、其を勢いよく噛み砕かせた。
『……ギィヤァァァアアッッッ!!』
 宝石に秘めたるは精神の暴走。
 思考を撹乱された邪は親爪小指を掻いて悶え、此れを好機と見た可憐は、景正に護られていた冒険者達の避難誘導に取り掛かった。
「……こっちよ、ついて来て。今のうちに逃げなさい」
「あぁぁぁああ有難い!! 助かった……!!」
「めちゃくちゃ怖かったんだぞう……!!」
 彼等の盾となっていた景正は、「足元に気を付けて」と優艶の聲に送り出すと、次の瞬間には冴刀の鋩の如く凛々として母指球を踏み込む。
「盾の役儀を終えれば、刀に投じるのみ――鞍馬の名にかけて、斬る」
 唯だ、真っ直ぐに斬る。
 それだけのこと。
 単刀一閃、渾身の力を籠めた【鞍切】(クラキリ)は、真一文字に悪食の殺気に飛び込むと、破魔の念を迸らせて一切の邪を掃う。
 清冽たる斬撃は壁一面の親爪小指を切り刻み、
「随分と悪食のようですが、私の刃味は如何程かな」
『ゲェァァァアギギギッッッ!!』
 透徹の聲が小気味佳い音吐を転がすが、邪は其を絶叫に裂くのが精一杯。
 一方、逆の壁面はセツナの【原初の灯火】(ハッピーバースデー)が一掃して、
「此処は一気に片を付けよう」
 炎は然し丁寧を失わず、精確精緻に邪だけを赫炎に灼き尽くした。
 ここにリーヴァルディが避難誘導から戻れば、悪食の断片の末路は決まったろう。
 少女は傷口を抉る呪力を溜めたグリムリーパーを力任せに振り被り、床一面に這い出た邪肢を草を薙ぐ如く刈り取った。
「……後続が来る前に討ち果たす。最初から罠と判っていれば、対処は容易い」
「ああ、間もなく『簒奪卿』の大軍が来るから、時間を掛けてはいられないね」
 首肯を添えたのはセツナ。
 複数のオブリビオンを相手取る不利は得まいと、白手袋に紡ぐ炎を赫るくすれば、その熱に白皙を白ませた景正は低く言ち、
「簒奪卿――つまり下剋上を成し遂げた吸血鬼と。
 奸智に長けた相手やも知れませぬが、さて、最後に釣り出されたのはどちらという事になるか」
 其の邪智、拝ませて貰おうと――血振るいの音に第一幕を下ろした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
私は信仰を持たぬ身ですが
旅の無事を祈り、また感謝しに訪れる人の心を想えば
穢されてはならない場所だということは解ります

救いの場所が、命を喰らう罠に変えられてしまうなんて…
ここを大切に守っていらした神父様は
どんなに無念だったでしょう

心を鎮め、目と耳と第六感を総動員
攻撃前の挙動のパターンを探り
見切りの精度を上げていきます
攻撃のタイミングが掴めたら他の方へも声掛け
先の長い戦いだから
皆さんと連携し、
余計な消耗は抑えていきたい

杖を振り上げ高速詠唱
氷柱を集めた大波は、鋭い牙を持つ顎のよう

ここはもう、旅人を癒した神の家ではないから…

――さぁ、
今度はあなたが喰われる番です



 いつ見上げても、この世界の穹は灰色。
 転送の光を解いてダークセイヴァーに降り立った雨糸・咲(希旻・f01982)は、靉靆たる天蓋に十字を掲げる尖塔を仰ぎ、其処から滲出する邪気にそっと眉根を寄せた。
「……私は信仰を持たぬ身ですが、旅の無事を祈り、また感謝しに訪れる人の心を想えば、穢されてはならない場所だということは解ります」
 人々の魂を沐う神聖。心を慰める靜謐。
 絶望の世界で人々が穏やかに休める場所は多からず、明日も知れぬ旅人が拠り所とする教会が踏み躙られる無情は、神の子ならずとも胸が痛もう。
 長い睫を伏せて涙堂に影を落した咲は、美しソプラノ・リリコも色を無くして、
「救いの場所が、命を喰らう罠に変えられてしまうなんて……。
 ここを大切に守っていらした神父様は、どんなに無念だったでしょう」
 黙して幾許。
 蓋し悲観に瞳を閉じは為ない。
 咲は開扉するや濃霧の溢流と共に現れた惨状を聢と視ると、澱の揺らめく心を鎮め、五感に併せて超感覚を覚醒させた。
 須臾に迫る鋏撃は肌膚一枚を掠めて躱し、
(「攻撃する前に挙動がある筈……パターンを探って回避の精度を上げる……!」)
 如何なる些末でも、気付きは仲間に伝えて。
 黒幕が居ると分かっていれば、先の長い戦いに備えて損耗を抑える。
「声を掛け合って、なるべく連携を――!」
 濃霧は視覚と嗅覚を遮るが、聲を発せば仲間は存分に答えてくれよう。
 咲は互いの位置を共有しながら、壁や床、天井から伸び出る巨鋏を巧みに往なした。
『ギギギィィギギギッッッ!!』
 醜い声。
 悪しき鋏音。
 禍々しい垂涎の淋漓。
「……どれだけの無辜の命があなたに喰われたか。私達を誘き寄せる贄にされたか」
 悔しさに丹花の唇を引き結ぶ咲。
 然し激情に流されては「暴走」してしまうと、瞋恚も嚇怒も咽喉に押し込んだ佳人は、白狐『雪霞』が魔導杖と変わる瞬間に胸元に抱き寄せ、凍てる冷気ごと振り翳した。
「氷柱を集めた大波は、鋭い牙を持つ顎のように――!」
 顕現、【エレメンタル・ファンタジア】――!
 凛冽たる冷気を束ねて氷楔とした咲は、其を狂濤の如く、生き物のように操る。
「ここはもう、旅人を癒した神の家ではないから……」
 決意して、杖を振り下ろす。
 厖大なる魔力は術者の肌膚も稟と凍えさせながら、邪鋏に噛み付いて甲殻を砕き、
「――さぁ、今度はあなたが喰われる番です」
『……ィィギギギギギィィギギ!!』
 刻下。
 怜悧な聲と氷の牙が、邪の巨鋏をガラスの如く砕き散らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルバ・アルフライラ
いやはや…熟
オブリビオンとは傲慢で愚昧な存在よ
骸の海へ落すだけなぞ生温い

聖堂へ足を踏み入れたならば
トランクより【刻薄たる獣】を放つ
獣を周囲に散らす事で広範への攻撃に対応
敵の腹の中へ飛び込んだと云っても過言ではない
ならば常に警戒は怠らず
己の第六感を頼りに、悪食を蹂躙してくれよう
ふふん、伊達に齢は重ねておらぬ
多少吸われようとも魔術の腕が鈍る訳ではない
彼奴の行動を余さず観察し、回避を試みる

悪鬼の思う儘、殺戮させるなぞ屈辱故
逃げ遅れた冒険者がいるならば
そして凶刃が向かおうならば
獣を用いて救出に努める
微笑を湛え、落ち着かせるよう声を掛ける
――さあ、お逃げなさい
此処は我々が引き受けましょう

*敵以外には敬語


荒谷・ひかる
なにが起きるかわかってても、聖堂そのものが襲ってくるとかホラーすぎるんだよおっ!
でも、わかってれば対策くらい、わたしだって……!

【転身・精霊銃士】発動
大人の姿に変身し、空中を飛び回りながら高機動射撃戦を挑むよっ
敵の攻撃はわたしの年齢を半減させるみたいだけど、変身後の姿は年齢に依らず一定(実年齢の理想の十年後)だから問題無いはず
主に使うのは霧を吹き飛ばす風の弾と、高重力で縛る闇の弾
それから光の弾はタメ撃ちでレーザー攻撃するんだよっ

もし冒険者さんたちが子供化して動けなくなってたら、三~四人くらいまでなら頑張って抱えて飛んで避難させるんだよっ!



 聖堂を憑代にするならヤドカリと考えれば良いか。
 いや、聖堂の内側からニュッと邪肢を出すなら、オバケ屋敷みたいなものか。
「ううぅ……怖いなぁ……」
 繊手を扉に添えた儘、荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)がまごまごする。
 詮ずる所、少女は幽霊やオバケが苦手なのだ。
「何が起きるか分ってても、聖堂そのものが襲ってくるとかホラーすぎるんだよおっ!」
 猟兵の使命感と己の恐怖心の狭間、一言だけ本音を叫んで開扉したひかるは、ぶわりと立ち込める濃霧の温さに「ひゃい!」と声を裏返した。
 蓋し彼女も立派な猟兵なれば、視界の晴れぬ奥から届く悲鳴に忽ち集中する。
「うわぁぁああっ、身体が縮んだぞ……!!」
「アイツの鋏が大きくなって……この儘じゃ切られるより丸呑みにされちまう!!」
 御堂の神聖を犯し、靜謐を切り裂く剣呑と恐慌。
 濃霧が惨憺を隠すも、『悪食の断片』が食事に掛かるとは聡い聴覚で捉えられよう。
 こつり、身廊に爪先を進めたアルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は、清澄なる靴音にも増して冴々としたテノーレ・リリコを差し入れた。
「いやはや……熟(つくづく)オブリビオンとは傲慢で愚昧な存在よ」
 猟兵を誘き出す為に同族を使役する狡智と。
 餌を呼び寄せる為に心の拠り所たる教会を殻にする邪智と。
 いずれも度し難いと、濃霧の先に炯眼を射た麗人は、『禁忌』――決して覗いてはならぬトランクの口を開け、匣の中に封ぜし災厄を解き放った。
「骸の海へ落すだけなぞ生温い。――醜く喰い散らかして仕舞え」
 粗相は許すと囁(つつや)いたか、喚ぶは【刻薄たる獣】(ヴェスティア)。
 獣は濃霧に身を躍らせるや、壁や床より這い出る邪肢を追って攻撃を仕掛けた。
「うわぁぁぁあっ……って俺達を殺す訳じゃない……?」
 然う。
 アルバの憎悪に嚮導された獣はオブリビオンだけを確実に屠り、腰を抜かした冒険者達の間際を疾風と掠めていく。
「悪鬼の思う儘、殺戮させるなぞ我が屈辱」
 冒険者に凶刃が向かおうものなら、彼はその芙蓉の顔(かんばせ)で死すら嬲ろう。
 逃げ遅れた者が叫ぶ方向に爪先を弾いたアルバは、獣に周囲を護らせつつ、塊麗の微笑と靜穏の聲を以て彼等の不安を和らげた。
「――さあ、お逃げなさい。此処は我々が引き受けましょう」
「ほぇあ……」
「……ひゃい」
 スターサファイアの現身たる彼を、天使か女神と見紛った男達が惚けた声を漏らした。
 ――時に。
 アルバが無辜の命を守る中、ひかるもまた彼等を助けようと勇気を振り絞り、
「敵の三次元攻撃も、わかってれば対策くらい、わたしだって……!」
 ぎゅっと精霊杖【絆】を握り、恐怖を乗り越える力を精霊(ふれんず)に分けて貰う。
 然れば己が繊躯に雄渾が漲ってくるのが分ろう。
 杖を手に光を溢れさせた少女は白皙を輝かせ、
「精霊さん達、お願い。わたしに戦うための力を貸して……エレメンタル・アップ!」
 発動、【転身・精霊銃士】(エレメンタルアップ・ガンナー)――!
 虹色の波濤に包まれた少女は、忽ち長身でスタイル抜群の――自身が理想とする十年後の姿に変身し、空を自在に往く飛翔能力を得る。
 凄艶の女性と化したひかるは、風の精霊さんのサポートを得て濃霧を掃い、立ち往生する冒険者達を頑張って抱え、頑張って飛んで避難させる。
「たすけてくれ! 身体が思うように動かないんだ!!」
「こんな子供になっちまったら剣も握れない!!」
 悪食の断片は、猟兵だろうと冒険者だろうと等しく「刻」を喰らう。
「やっぱり、冒険者さん達も子供化してる……!」
 ユーベルコードで対抗したひかるは、年齢を喰われても姿はその儘、影響を受けぬが、時間を食べて戦闘力を増強する能力は、オブリビオンや異端の神々も屠れよう。
 少女は伸び出る邪肢を躱しながら、周囲の猟兵に注意を喚起し、
「悪食を満たす為の能力に長けた相手……決して油断しないで!」
「ええ、常に警戒は怠らず参りましょう」
 擦れ違い様、アルバが流眄に是を置く。
 敵の腹の中へ飛び込んだと云っても過言ではないのだ。彼は超感覚を研ぎ澄まして敵の殺気を――食欲を察知し、また鋭い洞察によって邪肢の急襲を颯爽と躱す。
『ギギギィィギギギッ!!』
 彼も健啖を唆る好餌なれば、周囲の者と同様に刻を喰らわれるが――。
「ふふん、伊達に齢は重ねておらぬ」
『ギギギィィッ!!』
「多少吸われようとも魔術の腕が鈍る訳ではない」
 年齢を半減しても義気凛然。
 研鑽せし魔術、湛えし魔力は半減せじと、愈々憎悪を強くして悪食を蹂躙した。
『ギギギ……ギギッッッ……!!』
 アルバが地上で邪肢を悉く摘み取れば、ひかるは宙空で巨鋏を刈り取り、
「風の弾で濃霧を吹き飛ばして……闇の弾の高重力で抑え込む……!」
 少女には手に余る強化精霊銃『Nine Number』も、大人になれば血肉と馴染もう。
 ひかるは空中を飛び回りながら高機動射撃戦を繰り広げ、ニュルッと伸び出て掴み掛る邪肢を、見事、冴弾に掣肘した。
 然してヴォールト(穹窿)が大きく揺れた瞬間が幕引きであったか。
「光の弾はタメ撃ちで……レーザー攻撃するんだよっ!!」
『――ギギギギャァァアア!!』
 死の中心点を衝かれた『悪食の断片』は、壁や床の奥に隠れた部分まで灼かれ、邪肢を灰燼に帰す。
 刹那、ザッと濃霧が払われ――。
 一気に晴れた視界に、聖堂の全体が暴かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『怪物に堕ちた黒騎士の群れ』

POW   :    リピート・ナイトアーツ
【正気を失いなお残る、磨かれた騎士の武技】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
SPD   :    無数の飢牙
【鎧】から【無数に伸びる蛇や狼、竜の首】を放ち、【噛み付きによる攻撃をし、拘束】により対象の動きを一時的に封じる。
WIZ   :    鎧装転生・鋼獣群集
自身の【五体と生命力】を代償に、【吸収してきた生命の形をした鋼の生物たち】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【鋭い探知能力の下、生命力を吸収する牙や爪】で戦う。

イラスト:にこなす

👑11
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 今際の絶叫が穹窿を揺らし、濃霧が掃われる。
 漸く聖堂の全貌を捉えた猟兵らは、『悪食の断片』の消滅を認めると同時、元の靜謐を取り戻した堂内に安堵の息を吐いた。
「――オブリビオンに挟撃される不利は防げた訳だ」
 当初の懸念は拭えたと愁眉を開くと同時、次なる剣呑が緊迫を疾らせる。
 靜寂を得たからこそ、彼等は不穏な音の漸近が捉えられよう。
「……来る」
 靴底に触れる振動で、新たなるオブリビオンの接近を感知する。
 どろどろと不断に足を揺らす地鳴りに、大規模な軍勢の進軍を予覚した猟兵は、収める筈の武器を強く握り込めた。
「私達を、絶対の支配構造を覆す存在を摘みに来た様ですが……」
「なに、返り討ちにするまでだ」
 領主が直々に軍勢を率いて乗り込んで来るのだ。
 先ずは彼奴の手駒を撃滅し、その喉元に剣鋩を突き付けねばならない。
 軍靴が大地を踏み鳴らす重低音が教会を囲繞し始める――禍き殺気を気取った猟兵らは、各々が思う配置に付き、迎撃態勢を整えた。
宇冠・龍
由(f01211)と連携

消滅の余韻を手元に感じながら、苦い顔をして立ち上がります
夫の顔を伺うも、やはり表情も変わらない
(私の身体は元に戻ってしまいましたが、あなたの姿はあの時からずっとそのままですね)
いえ、もしかしたら変わっていないのは私の方かもしれませんね

「簒奪卿、ですか……」
どういう因果か悪食の断片を使役していたもの
放っておく訳にもいきません
再び夫や娘と共に戦場を駆けましょう

騎士も使役する生物たちも鋼なら、冷気と高温を交互に浴びせて熱疲労をさせましょう
夫の冷気を広範囲に撒き、動きを鈍らせます
由が炎で攻撃後、私が冷気と風を帯びた槍で薙ぎ、一掃させます


宇冠・由
お母様(f00173)と連携
※仮面キャラなので無表情

(お母様、凄く悲しそう……)
槍先が震えています
もう復讐も道半ば、一体、それを終えた後、どうするおつもりなんでしょう

(いいえ、今は私情を挟んでいる場合ではありません)
お父様やお母様と連携して騎士たちを一網打尽にしてしまいましょう

私は得意の空中から攻めます
お父様が相手の足止めを行ったら、【熾天使の群れ】の炎で鎧やそこから伸びる首を燃やします

私は全身地獄の炎のブレイズキャリバー
例え噛みつかれても平気ですし傷もすぐ修復ができます
もしお母様たちに攻撃が向かうようなら火炎剣を投擲して攻撃をかばい、お母様の攻撃につなげますわ



 宿縁の鎖、竟に断てり――。
 夫を屠りし怨敵『悪食』、その分身を復讎の槍に貫いた宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は、慥かな手応えが連れる死の質量――消滅の余韻を感じつつ、立ち上がる。
 宿敵を討ったとて心は晴れぬか、柳眉を顰め、睫を落とし。
 麗顔を翳らせた儘、亡夫を見遣った龍は、表情ひとつ変えず佇む精悍に唇を結んだ。
(「私の躰は元に戻ってしまいましたが、あなたの姿はあの時からずっとその儘ですね」)
 ――いや、或は。
 変わっていないのは私の方かもしれません、と『氷風の槍』を握り込める。
 鋭槍が纏う風は延べつ冷涼と、艶髪の毛先を搖らして――憂いを帯びた面輪を見た宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)は、そっと胸奥に言を隠した。
(「お母様、凄く悲しそう……」)
 繊手に握る槍の穂先が小刻みに震えている。
(「もう復讐も道半ば、一体、それを終えた後、どうするおつもりなんでしょう」)
 復讎の道を歩み切ったなら。
 全ての宿敵を灰燼に帰して踏み抜いた足は、それから何処に向かうのだろう?
 儚げな横顔に無言で問い掛けた由は、然し間もなく届いた地鳴りに軍勢の到来を察知し、僅かに首を振る。
(「――いいえ、今は私情を挟んでいる場合ではありません」)
 新たなる邪に囲繞されては、どの道も開けぬ。
 義気凛然、由は地獄の炎で拵えた『深紅のドレス』を赫々と翻すと、一際眩い灼熱を迸らせて言った。
「お母様。お父様と連携して、騎士たちを一網打尽にしてしまいましょう」
 呼ばれた龍とて、足元に伝わる振動に不穏を受け取っていたろう。
 麗人は此度の黒幕の名を口にして、
「簒奪卿、ですか……」
 我等猟兵を誘き寄せる為に『悪食の断片』を使役した者。
 忌わしき暴食を唆し、無辜の命を屠らせた仕儀は判らぬが、因果を持った者として放っておく訳にも往かぬ。
 過去に生きる未亡人は、然し現在に慥かな跫を置いて、
「悪食の断片に所縁ある者を悉く断ちましょう」
 夫と共に、そして娘と共に。
 一瞬の目配せで呼吸を揃えた由は得意とする空中へ、龍は夫と共に主廊を駆ける。
 敵の初撃が届いたのはこの時で、
『――ブルルルルッッッ!!』
『オオオヲヲヲォォ乎乎!!』
 吶喊――!
 禍き黒騎士の群れは、駿馬の生命を吸収して創った「鋼の軍馬」に騎乗して、聖堂の扉を破るや狂濤の如く押し寄せた。
 雄々しい喊声を挙げて雪崩れ込む漆黒のうねり。
 狂気が肌膚を震わせるほど怜悧に彼等を睨めた龍は、騎士も軍馬も鋼なら、急激な温度変化には弱かろうと見極め、清冽の聲を発する。
「強き猛き尊き者。氷の息吹に邪を組み敷き、その威を示せ」
 時に須臾。
 死霊術【竜逢比干】(リュウホウヒカン)が、亡夫に氷属性のドラゴンブレスを命ず。
 然れば黙せる竜は一息で吹雪を吐き、鋼を纏う者達を絶対零度に突き堕とした。
 十分に動きを鈍らせた時点で、龍は上空に浮遊する由を促し、
「冷気と高温を交互に浴びせ、熱疲労をさせましょう――由」
「はい、お母様」
 勿論、少女も同じ戦術を描いていたろう。
 由は直ぐに【熾天使の群れ】(キラキラボシ)――自身の猛炎で模った不死鳥の大群を放ち、烈々たる焦熱に鋼の塊を呑み込んだ。
『ぜァァアア嗚呼嗚呼ッッ!!』
『グゥォヲヲオオ嗚嗚ッッ!!』
 黒騎士も、彼等より生え出でる魔蛇や魔狼、魔竜の首をも赫炎に包み、灼き尽くす。
 邪は絶叫して轉回つが、灼熱地獄から遁れる事は叶わない。
「炎を振り解くことができまして?」
 由は小気味よく語尾を持ち上げるが、無論、逃すつもりは無い。
 不死鳥は凍れる黒鋼を自動追尾し、背進した個体も含めて炎翼に抱擁する。
 力強い羽搏きが邪の絶叫を煽る中、龍は冷気と風を帯びた槍を一閃――!
「勢いを削ぐ一撃を。ここで楔打ちます」
『――ズゥォオオオヲヲ雄雄ッッ!!』
 熱せられて膨張した鋼が、凍てる風刃に一気貫穿される。
 上空から常に灼熱を浴びせられる黒騎士達は、地上から弓張月の如く飛び込む氷結の槍撃に悉く進む足を崩された。
 一方、死体を踏み越えて迫る邪は、広い視野を確保した由に掴まり、
「お母様たちに向かう攻撃は、この劔が代わります」
『ォォヲヲヲ嗚嗚!!』
 鋼の牙が龍に迫った矢先、二振りの『火炎剣』が垂直落下し、獣の首を灼き落す。
 其は全身を地獄の炎に覆ったブレイズキャリバーならではの攻勢だろう。
「私なら仮令(たとえ)噛みつかれても平気ですし、傷もすぐ修復ができます」
 凛然たる聲の下では、僅かな間隙を得た龍が神速の槍撃を衝き入れており、見事な天地の連携に、軍勢は戦線を崩される。
『ォォオオオォォ……!!』
『嗚呼ァァ嗚呼ァァア!!』
 四半刻も経たぬ裡、鬨の声は阿鼻叫喚に代って。
 最後尾に控える領主、『簒奪卿』が甲冑の下で眉を蹴立てた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

須藤・莉亜
「煙草を吸いに行く暇はないか。もうちっとのんびり来てくれても良いのに。」

腐蝕竜さんの血の入った瓶を取り出し、一気に煽って竜血摂取のUCを発動。スピードと反応速度が強化された、竜人モードで戦う。

強化されたスピードを活かして、敵さんに一気に近づいて首狙いで攻撃。無理なら手足を先にバラす。
悪魔の見えざる手には奇剣を持たせて、僕に合わせて攻撃してもらう。

敵さんの放つ首たちが攻撃してきたら、こっちも来た首に噛み付いて【吸血】。噛み砕いて中身を吸ってみようか。

血を味わえた後は、敵さんの攻撃は【見切り】と【第六感】での回避と、【武器受け】で防御していこう。
噛み付かれ続けるのも鬱陶しいしね。


セツナ・クラルス
挟撃される心配はなくなったが…
…先ほどの戦いで随分消耗してしまったね…
医学は応急処置程度の知識しかないが、
とりあえずの止血をして、破魔の力で傷口を消毒

…ふむ、前線で戦うのは厳しそうだ
派手に動くのは避け、体力の回復に努めよう
壁や柱などを背にして背後を取られないようにしながら
共に戦う仲間たちのフォローに徹する

鼠型の観測者を召喚し周辺の敵の様子を観察
仲間の死角から攻撃をしようとしている敵に属性魔法で石礫をぶつけ注意をそらし、
足元を泥濘に変異させることで動きを封じよう

…今はこの程度しかできないのが歯がゆいが
真打が現れるのはもう少し先になりそうだからねえ
ここで無理をして倒れる訳にはいかないのだよ


オリヴィア・ローゼンタール
教会を貶めた次は、力に呑まれた騎士……どうにも癪に障る者ばかりが集うようですね

【属性攻撃】【破魔】で聖槍に炎の加護を纏う
【全力魔法】で巨大な【聖天烈煌破】を形成し、軍勢へと【投擲】
鋼の獣を融解させながら地面へ着弾、周囲を祝福で満たす
光あれ!

【怪力】を以って聖槍を縦横無尽に【なぎ払い】、斬り打ち穿つ(ランスチャージ)
喰らい付く牙をガントレットで殴り砕き(グラップル)、生命力を吸収される前に炎のオーラを流し込んで内側から爆散させる
後ろから迫る敵あらば炎を纏ったグリーブでの回し蹴りで【吹き飛ばす】
周辺の敵を倒したら再度【聖天烈煌破】を放って聖域を作り出し、常に有利な状況で戦う



 聴覚に優れた猟兵なら、迫る軍勢が唯の歩兵でないとは、影を見ずとも知れたろう。
「音の重厚と速度からいって、この足音は……軍馬……」
 靴底より伝わる振動に戒心を疾らせたオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、軍勢の侵攻方向に炯眼を射る。
 敵が騎兵を率いるなら、間もなく此処に到ろうとセツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)は同意を示して、
「挟撃される心配はなくなったが……時間はあまり無いようだ」
「――煙草を吸いに行く暇はないか」
 くしゃり、繊指を櫛にして艶髪を掻き上げた須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は一服を諦めたか、「もうちっとのんびり来てくれても良いのに」と嘆声を添える。
 然し三つ指を付いて待つほどお人好しでもあるまい。
 煙草を持つ筈の硬質の指が代わりに取り出すは、眷属たる腐蝕竜の血が入った瓶。
 涙堂に睫の影を落した莉亜は、刻下、其を一気に煽って咽喉に流し込んだ。
「クソまずい……」
 先のヤドカリの方が幾分もマシだったと、口端を拭う手は間もなく竜鱗に覆われる。
 麗人を竜人に変えた其は【竜血摂取】(ドラゴンズブラッド)――驚異のスピードと反応速度を得た莉亜は、竜の双翼を広げるや宙空を掴み、敵の突撃に備えた。
 一方、『悪食の断片』に我が身を贄と差し出し紫毒を流し込んだセツナは、創痍は深く、魔力の消耗も激しく、気力が切れれば膝は折れよう。
「……先ほどの戦いで随分消耗してしまったね……」
 無理をしたと、艶笑に自嘲を含ませた彼は、短剣『クラーレ』の鋩に生地を裂く。
 医学は応急処置程度の知識しかないが、とりあえずの止血を――。
 破魔の力で傷口を消毒し、患部を圧迫すれば、出血で意識が奪われる事は無かろう。
「……ふむ、だが前線で戦うのは厳しそうだ」
 派手に動けば創痍が開くと、失した血量を鑑みたセツナは、石柱を背に影を隠す。
「今は体力の回復に努め、共に戦う仲間たちのフォローに徹しよう」
 己が状態は十分に把握しているセツナである。
 敵に「数」を把握させぬも有効な戦術か、彼は悟られぬよう気配を消し、軍馬の跫が迫る瞬間を黙して待った。
 然して間もなく、その時は訪れる。
『――ブルルルルッッッ!!』
『オオオヲヲヲォォ乎乎!!』
 当に読み通り。
 呪われし黒騎士の軍団は、駿馬の生命を吸収して創った「鋼の馬」に騎乗して、聖堂の扉を破るや怒涛と押し寄せた。
『ォォオオ雄雄オォォ……ッ!!』
『嗚呼ァァア嗚呼ァァアアア!!』
 吶喊――!
 狂気を哮り、憎悪を喊びながら向い来る闇黒の塊。
「教会を貶めた悪食の次は、力に呑まれた愚昧の騎士……どうにも癪に障る者ばかり集うらしい」
 修道女たるオリヴィアにとって、神の家を踏み荒らす者は等しく鏖殺すべき奸邪であり、黄金に輝く聖槍の穂先は炎の加護を得て赫々と、破魔の力を迸らせる。
 瞋恚の儘に薙ぎ払うか――否。
 聖女は竟ぞ冷靜を手放さず、常に戦況を有利にすべく光明を投じた。
「無窮の光よ! 絢爛たる勝利の煌きで天地を照らし、遍く邪悪を滅却せよ!」
 顕現、【聖天烈煌破】(ディバイン・フォース)――!
 繊手を穹窿に掲げたオリヴィアは、聖なる力を超高密度に圧縮した光球を宙空で練り、白磁の如き肌膚を白ませるや、敵群へ投擲した。
『……ブルルルルルルッッ!!』
『――ァァ嗚呼ァァ嗚呼アア!!』
 その眩さに怯んで前脚を躍らせた軍馬は、聖なる光の波濤に融解し。
 次いで落馬した黒騎士らも光に飲まれ、悲鳴を挙げながら堅甲を灼かれた。
 着弾地点から放射状に溢れた超光熱は、次々と闇黒を切り裂いて後、周囲を神の祝福で満たしていく。
「光あれ!」
 光は聖域を作り、其処に立つ聖女を強靭と堅牢に支えた。
 オリヴィアが前進する力を得ると同時、敵が前進する力を阻まれたのは偶然ではない。
 この時、陰ではセツナが慥かに動いていて、
「……そうだね、この場は鼠が相応しいだろうか」
 召喚、【並走する観測者】(ウノメタカノメ)――。
 五感に優れた使い魔をと喚ぶは、鼠型の観測者。
 血斑の滲む白手袋の上をくるり回って床を疾走った鼠は、セツナと五感を共有しながら戦場の様子を具に観察していく。
 併せて彼は足元を泥濘と変えて敵軍の進撃を鈍らせ、
「……今はこの程度しかできないのが歯がゆいが、辛抱の刻を甘んじよう」
『ゲェア嗚呼ッ!!』
 時に味方に危機が迫れば、獣の首に石礫をぶつけて逸らす――大地の属性魔法を以て皆々を支援した。
「真打が現れるのはもう少し先になりそうだからねえ。ここで無理をして倒れる訳にはいかないのだよ」
「――然う、本命待ち」
 飄然を置いたのは、宙空を駆る莉亜。
 神速を得た彼は、残像すら断って敵軍に肉迫し、先ずは首、次いで手足と、甲冑の繋ぎ目を精確に狙ってバラしていく。
「僕の攻撃に合わせて」
 短く伝えたのは、取引を為た『悪魔の見えざる手』に対し。
 契約主を守る魔手も透明なら、握る奇剣【極無】も透明にて、極めて薄い刃が闇黒の鋼を靜かに滑らかに斬り捨てていく。
『ォォオオ乎乎オォォ……!!』
『嗚呼ァァ嗚呼ァァアッッ!!』
 然し前衛が斃れれば、その死を踏み越えて後衛が迫り来る。
 狂気に堕ちた黒騎士らは、魔蛇、魔狼、魔竜の首を伸ばして猟兵を屠りに来るが、莉亜は向い来る鋭牙を躱してその咽喉に喰らい付き、鈍い音を立てて笛を噛み砕くと、繁噴く血汐ごと浴びる様に血を啜った。
「――少しは紛れそう」
 唯だ吸血衝動を慰め、潤すには足りぬ。
 漆黒の双角を迫り出した竜人は、無数に飛び交う獣の首を超感覚で躱しつつ、あまりに執拗な攻撃は「鬱陶しい」と奇剣に弾かせ、竜の翼で颯爽と敵群を翔け抜けた。
 敵戦線が崩れ始めた頃合いに畳み掛けるはオリヴィア。
「光球が一度きりと見誤るな。一気呵成に……撃滅する!」
 聖域に聳立した修道女は雄心峻抜、より威力を増した【聖天烈煌破】を投げると、忽ち陣形を崩した敵軍を聖槍に薙ぎ払い、その鋭鋩に次々と黒鎧を貫く。
『ォォォオオオォォ雄雄!!』
「黙せ。醜声で靜謐を穢す事は赦さない」
 故に自身も激痛は叫ばず。
 我が玉臂に喰らい付く魔竜を睨めるや『ホーリーガントレット』で横っ面を殴り、牙を砕いたオリヴィアは、炎のオーラを流し込んで内側から爆散させる。
 然れば今際の絶叫も裂けまい。
『ッッ、ッッ……――!!』
 黒騎士は赫炎を纏う聖女に穿ち、砕かれ、吶喊の勢いを手酷く挫かれた。
「貴様らの血で床が汚れる事の無いよう、全て焼き尽くす――!」
「烟脂(やに)切れで苛つく前に血を吸わせてもらおう。そうしよう」
 雄渾漲るオリヴィアと、怜悧にも飄然を崩さぬ莉亜。
「手負いとはいえ、全力でサポートさせて貰うよ。次の戦いこそ余裕は無いからね」
 そして二人の間断なき攻撃を援ける、靜けきセツナ。
 戦術を違えた三者は、然し聖堂の空間で見事に時間と空間を繋ぎ、各々の戦闘レンジで敵を駆逐していく。
『ォォ……オオ……オォォ……!!』
『嗚呼ァァアア嗚呼ッッ!!』
 聴覚に優れた彼等なら、喊声が叫声に変わったとは間もなく知れよう。
 狂濤の如く押し寄せた軍勢は今や恐慌に堕とされ、恐怖の喊びを穹窿に震わせていた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

イデアール・モラクス
フン、まずは兵を寄越して自分は高みの見物か?
ツマラン、ツマランぞ!
支配者を気取るなら王としての威厳を見せるがいい!

・行動
「哀れな黒騎士どもめ…貴様らに用はない、消え去れ!」
UC【鏖殺魔剣陣】を『全力魔法』で威力を増し、『範囲攻撃』で空を埋め尽くすほどの数に増やした上で『属性攻撃』で《炎》を纏わせ、『高速詠唱』を用いて『一斉射撃』と『乱れ撃ち』による二種の『制圧射撃』を敢行し鋼の生物と黒騎士を同時に殲滅する。
「騎士や獣は剣で退治するのが作法だろ?」
魔剣は命中したら敵を壁か地面に『串刺し』にして縫い止めた上で剣に血を『吸血』させ『生命力を奪い』嬲り尽くす。

※アドリブ歓迎


リーヴァルディ・カーライル
…ん。もしかしたら私もお前達と同様、
心を喰われ怪物と成り果てる時が来るかもしれない。
…だけど、それは今では無い。

左眼の聖痕に生命力を吸収させて【黒炎覚醒】を発動
心の傷口を抉る邪神の精神攻撃を呪詛耐性と気合いで耐え、
黒炎を触媒に“血の翼”を広げ残像が生じる速度で空中戦を行う

…いかに力や技が強くても、
殺気を隠し鎮める心が無ければ意味が無い。

第六感を頼りに目立たない鎧の変化や存在感を見切り、
今までの戦闘知識を基に殺気を暗視して攻撃を回避する
大鎌の刃に時間を停止させる黒炎の呪力を溜め、
呪詛の斬撃で敵陣をなぎ払い動きを止める時属性攻撃を行う

…同じ黒騎士の誼よ。
お前達を、その呪わしき生から解放してあげる。


アルトリウス・セレスタイト
前座で時間を食う気も、消耗する必要もないだろう


顕理輝光を運用し交戦
『超克』で“外”より常時魔力を汲み上げ供給
状況は『天光』で漏れなく把握。原理は逃さぬ
『励起』『解放』で個体能力は常に人型の極限まで強化
『刻真』で自身を「別の時間」に置き続け受ける攻撃の影響を回避、必要に応じ固有時加速も

群れは魔眼・封絶で拘束
捉えうる最大数を同時に捉え縛る
高速詠唱の技法と『刻真』を併用して最大限加速、『再帰』で循環させ途切れなく行使
逃れた個体は速やかに再度拘束する

攻撃は任せられる味方がいれば一任
なければ『討滅』の死の原理で始末する



 鎧装転生・鋼獣群集――!
 狂気に呑まれた黒騎士の軍勢は歩兵に非ず、駿馬の生命を吸収して創った「鋼の馬」に騎乗した彼等は、聖堂の扉を破るや怒涛の勢いで押し寄せた。
『ブルルルルルルッ!!』
『嗚呼ァァア嗚呼ァァアアア!!』
 吶喊――!
 魔蛇、魔狼、魔竜の頭部が咆哮し、黒騎士の喊声と共に穹窿を衝き上げる。
 どす黒い鏖殺の気が白磁の肌膚を震わせるが、リーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)は蛾眉ひとつ顰めず、主廊を踏む蹄鉄を見る。
「……ん。振動の重さと伝わる速さで、判明っていた」
 既に音で敵軍の形態と規模を図っていたとは、アルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)の冷静も示そう。
「――手駒が多いほど小心に見える」
 野太い鯨波に沈着の聲を潜らせた彼は、これだけの軍勢を寄越した領主の怯懦と猜疑心の強さ、警戒の程を推し量る。
 扨てその領主は、未だ聖堂には至らず――。
 大方、外で此方の出方を見ているのだろうと、イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は緋色の炯眼を壁向こうに射て。
「フン、まずは兵を寄越して自分は高みの見物か? ツマラン、ツマランぞ!」
 嘗て仕えていた領主に成り代わった僭主の形姿は如何に。
 野心溢れる男の顔が見たいと粋興を挿した凄艶は、丹花の唇に挑発し、
「支配者を気取るなら、王としての威厳を見せるがいい!」
 言うだけなら彼女は暴虐の魔女で無かろう。
 イデアールは妖艶を釀す麗躯より厖大なる魔力を溢れさせると、【鏖殺魔剣陣】(オウサツマケンジン)――宙空に無数の魔法陣を浮かばせ、其処から魔劔を喚び出す。
 長い睫に縁取られた緋眼は、怪物と堕ちた黒騎士を瞶め、
「哀れな黒騎士どもめ……貴様らに用はない、消え去れ!」
 絶大なる魔力に輝きを増した劔が、荘厳なる穹窿に満ち満ちて鋩を揃える。
 赫然と熱帯びる剣身は炎を纏ったか――灼熱に耀く鋭刃が、美し詠唱によって一斉に放たれた。
『ォォォオオ雄雄ォォオオオ乎乎!!』
 邪を討つ楔が無数と降り注ぎ、絶叫が裂かれて間もない。
 イデアールは更に詠唱して魔劔を乱れ撃ち、敵軍の広範囲を蹂躙・制圧した。
『――ァァ嗚呼ァァ嗚呼アアッッ!!』
 突撃した前衛が悉く床に沈めば、後衛が屍を踏み越えて迫り来る。
 未だ後尾の見えぬ軍勢を見たアルトリウスは、先頭の二体が大鎌と巨斧を振り被った瞬間に身を躱し、擦れ違い様に『顕理輝光』の美し淡青を漂わせた。
「前座で時間を食う気も、消耗する必要もないだろう」
 彼は世界が構成される前の法則『原理』を扱う異能者。
 創世の原理『超克』にて“外”より「最古の理」を導いた彼は、我が身を無尽の魔力に満たし、その潤沢を青白い光と汪溢させる。
 創造の原理『励起』は眠れる威を呼び覚まし、自由の原理『解放』は我が際涯を淘汰して、個体能力を人型の極限まで強化した。
「――原理は逃さぬ」
 清澄なるカヴァリエ・バリトンは怜悧に淡然と。
 全知の原理『天光』は万象を見通す光と耀き、暗黒の騎士を照らすや邪の挙動を一縷と漏らさず把握した。
『嗚呼ァァァアアッッ!!』
 無数の刃撃がアルトリウスに向かうが、望む手応えは得られまい。
 時の原理『刻真』で己が存在を「別の時間」に置いた彼は、攻撃を回避すると同時、固有時を加速して戦闘を強制終了させた。
『!? ??』
 黒騎士らは膨れる狂気に間を置いて吃驚するが、其も直ぐに鎖される。
「存在原理を辿り、世界の外より縛る」
『――ッッ!』
 思考によって詠唱さるは、【魔眼・封絶】(マガン・フウゼツ)――。
 淀め、と囁(つつや)いたアルトリウスは、心眼で捉えた範囲の全対象に、世界の根源から直に存在を捉える原理の魔眼を射て、一切の行為を禁じ、且つ能力の発露を封じた。
『ッッ、グッッ……!!』
『雄雄ォォオオオ乎乎!!』
 身動きを封じられた黒騎士は、狂気だけを暴走させて喊び、哮る。
 その姿を見たリーヴァルディは、美し佳聲の音吐をやや落して、
「……もしか私もお前達と同様に心を喰われ、怪物と成り果てる時が来るかもしれない」
 敵の魂を吸収する裡、精神を食い殺された者達。
 彼女も黒騎士である故に、怪物と堕ちた彼等に近しいものを感じるが、殺伐の世界を生き抜く少女は情に流される程甘くない。
「……だけど、それは今では無い」
 彼等の狂気を射た左眼が、聖痕『代行者の羈束』に生命力を吸収させ、封印を解く。
 顕現、【代行者の羈束・黒炎覚醒】(レムナント・ウロボロス)――。
 名も無き神の力は今こそ顕れ、可憐の少女を「時間を焼却し、停滞させる黒炎を纏った姿」に変貌させる。
「――ッッ」
 リーヴァルディは神速のスピードと反応速度を得る代わり、力を引き出す度に精神が削られ、邪神に染められるが、其は耐性と気力で持ち堪える。
 やや柳眉を顰めつつ、黒炎を触媒に“血の翼”を広げたリーヴァルディは、残像を残す速度で宙空へ翔け、戦術的に優位な上空より攻撃を仕掛けた。
「……いかに力や技が強くても、殺気を隠し鎮める心が無ければ意味が無い」
 其は彼等と近しい己の、彼等に対する差異であったか。
 超感覚を研ぎ澄ませたリーヴァルディは、黒騎士の僅かな挙措も見逃さず、これまでに培った戦闘勘と経験則を基に殺気を暗視して攻撃を見切る。
『オオォォヲヲォォ雄雄!!』
「……馬は聴覚と視野に優れているけれど、認識した情報を取捨選択できない」
 厖大な情報量を流し込めば恐慌に陥る。
 そこで、イデアールら圧倒的物量攻撃を行う猟兵に軍馬の乱れる瞬間を預けた彼女は、馬の前脚が浮き立った時を好機とばかり、大鎌『過去を刻むもの』を振り被った。
「……同じ黒騎士の誼よ。お前達を、その呪わしき生から解放してあげる」
『――ッッ!!』
 弓張月の刃には、時間を停止させる黒炎の呪力が溜めてある。
 鋭鋩一閃、呪詛の斬撃で敵陣を薙ぎ払った少女は、彼等の時間を攻撃して一切の動きを止めた。
 然れば須臾。
 僅かな時の間で靜謐を取り戻した御堂に、イデアールの佳聲が染みる。
「――騎士や獣は剣で退治するのが作法だろ?」
 其は魔女の礼儀で在ったか。
 魔劔の一気斉射と乱れ撃ち――二種の制圧射撃が鋼の軍馬と黒騎士を殲滅する。
 鋭利な鋩に貫かれた邪は、その儘地面に串刺しにされ、激痛に縫い留められた上で魔劔に血を――生命力を大いに吸われた。
『……ブルルルルッ!!』
『ォォオ……オオォォ……!!』
 彼等の戦闘は、或いは効率的な狩りにも見えたろう。
 アルトリウスが捉えうる最大数を同時に拘束し、リーヴァルディが時間を摘み取る。
 数で押す敵軍の大きなうねりが靜止した瞬間、イデアールの魔劔が嬲り尽す――。
『ォォ……オオ……オォォ……!!』
『嗚呼ァァアア嗚呼ッッ!!』
 然して時は動き出し。
 間もなく聖堂に満ちた絶叫は、慥かに外にも聴こえたろう。
 首魁たる領主は自軍の劣勢を察し、甲冑の下に舌打ちを隠した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
背が低いと敵がやけに大きく威圧的に感じて嫌ですねえ……
幼い身体では戦いづらいのでニッキーくん、おいで
私の代わりに敵を――うわ、ニッキーくんデカくないですか!?

敵の鎧から伸びる首はニッキーくんの横薙ぎビンタで【なぎ払い】
もしくは首同士で絡まるように【第六感】で交わします
絡まり合った首は妖刀で一気に斬り落としたいところですが、
両手で持たねば妖刀も碌に扱えないとは情けない……

ニッキーくんを敵の懐に潜り込ませられた際には『愛の無知』
飢牙を放つ【鎧を砕いて】しまいましょうか
鎧が無くなれば今の私の力でも【串刺し】だって楽々です

おっと、ようやく元の姿に戻りましたか
やはり今を生きるハレルヤの姿こそが至高ですね


茜谷・ひびき
相手は手練れのようだし、あまり近付きたくはないな
今度は炎で応戦しよう

まずは相手の動きをしっかり見て、攻撃を避けつつ隙を窺う
【野生の勘】で危険を察知したり【情報収集】で相手の癖を見よう

反撃出来そうなタイミングが来たらUC発動
炎を生み出したら一気に相手を燃やしていくぞ
【2回攻撃】も交えて一体ずつ確実に倒していこう

基本的には距離を取って戦うが、相手との距離が近付いたり殴れそうなタイミングがあるなら【怪力】も乗せた炎の拳でぶん殴る
だけど無理はしたくない
領主がまだ残ってんだ、こいつらは出来るだけ消耗せずに倒したいぜ

……こいつらも元は人間だったんだ
あまり苦しませたくはない
出来るだけ早く灰にしてやろう


鞍馬・景正
実に壮重たる黒武者たち――騎士、というのでしたかな。
正統な権威なき主に仕え、没義道を歩むとて、その武錬こそは真正であると証明願いましょうか。

◆戦闘
まだ聖堂内に冒険者がいるなら、なるべく安全な場所にて隠れているよう警告。

敵が大挙するだろう門などの前で二刀を構え、他の猟兵より一歩前に出つつ、【無明剣】にて雪崩れ込む敵勢を薙ぎ払います。

【怪力】を籠めた【2回攻撃】の【早業】で圧し潰されるより迅く数を減らし、無我状態にあっても敵の打ち筋を【見切り】、回避か【武器受け】での威力減衰を狙って長陣に挑みましょう。

狂瀾を既倒に廻らし、その源の元凶を斬る――簒奪卿が現れるまで太刀を止める事はしますまい。



「……これは、蹄鉄の音……」
 草履に伝わる振動より、軍馬の駛走を知った鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)が動く。
 敵は騎馬なれば間もなく此処に到ろう。
 冒険者達を逃がす時間(とき)の猶予は無し、聖堂の安全な場所に匿った方が佳かろうと爪先を弾いた景正は、彼等を香部屋に集めた。
「此処で暫しお待ちを。なに、あなた方の神も見守っていて下さる」
「……ほえぁ」
 壁掛の十字架に繋いだ竜胆の瞳を、流眄に彼等へ注ぐ。
 恐怖を和らげる塊麗の微笑に惚けたか、冒険者達の気の抜けた声を聞きつつ扉を閉めた景正は、振り返れば怜悧清冽――刃の如く鋭い眼差しで入口を睨めた。
 彼が足を進めて拝廊に立つと、蹄の音は愈々大きく聖堂に近付く。
 茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が鮮血の滲む繃帯を巻き直して創痍を包む傍ら、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は凡そ童顔に不釣り合いな皮肉を零して、
「この音と振動……結構な兵を連れてきたみたいだが、領主は余程俺達が怖いか」
「成る程、器が知れるというものです」
 警戒心が強く、小心にして怯懦。
 敵軍が見えぬ間にも、彼等は軍勢の形態や規模、領主の稟性まで予測がつく。
 斯くして洞察を働かせれば、扉を破って押し寄せる大軍勢にも十分な刃を返せたろう。
『――ブルルルルッッッ!!』
『オオオヲヲヲォォ乎乎!!』
 吶喊――ッ!
 駿馬の生命を吸収して創った「鋼の軍馬」に騎乗して雪崩れ込む漆黒の騎兵隊は、先ず『濤景一文字』『無銘脇差』の二刀を構えた景正に迎えられた。
『雄雄ォォオオオヲヲ!!』
「実に壮重たる黒武者たち――騎士、というのでしたかな」
 他の猟兵より一歩前に位置取った景正に迫る軍勢は宛ら黒き狂濤。
 正気を失って尚も武技は冴々と、魔斧、魔鎌、魔劔ら無数の刃撃が馬上から振り下ろされる。
 然し彼は柳眉を蹴立てず、聲は枯淡虚靜として、
「正統な権威なき主に仕え、没義道を歩むとて、その武錬こそは真正であると証明願いましょうか」
 閃くは【無明剣】(ムミョウケン)――。
 打成一片と成り、無我状態に到った景正は、強靭と堅牢を得て身ごと刀の如く、間合に入ったもの全てを斬った。
『ズァァ嗚呼ァァア嗚呼ッ!!』
『ッッ嗚嗚オオ!!』
 漆黒の海嘯を斬れば、軍勢は景正を楔に二分され、左右の側廊へと流れ込む。
 ここで待ち受けたのが、赫々たる闘気を迸らせたひびきだった。
「今度は炎で応戦しよう」
 相手は狂気に染まりながら腕は狂わぬ強者(つわもの)なれば、己は距離を取って戦った方が佳いと判断した彼は、軍勢の勢いと流れが変わった位置で喊声と対峙する。
(「――呑まれるな」)
 敵が嚇怒するほど心を鎮め、戦闘勘を研ぎ澄ませる。
『ォォオオヲヲ雄雄ッッ!!』
 己が身丈の倍の高さから、騎馬兵が魔槍を振り下ろす――その鏖殺の気に触れた彼は、邪鋩の軌道を間際で見切り、肌膚一枚を切らせて回避した。
(「騎馬からの攻撃は初動が大きい……隙は十分にある」)
 本能に根差す勘で剣呑を察知し、身躱す時にも十分に観察して癖を盗む。
 時に攻略を見出した彼は、胸元に花開いた曼陀羅図『朱殷の刻印』を明々とさせると、【ブレイズフレイム】――己が躯より地獄の炎を噴出させ、色黒の面輪を青銅の如く輝かせた。
「一気に融かす。一気に燃やす」
 鋼を丸呑みにする熱量は持ち合わせている。
 ひびきは先ず軍馬の足下から腹に向けて炎を繰り出すと、死角から襲い来る灼熱に愕いた其が前脚を躍らせた。
『ブルルルルッ!!』
 狙いは変えず、炎の拳は駿馬の下腹を剔抉する。
 鋼の馬が絶叫し、騎手ごと倒れ掛かった瞬間――二撃目は黒騎士の胴体を貫穿した。
『ォォオオオヲヲ嗚嗚乎乎ッッ!!』
 貫いてから炎を流し込めば、鋼の鎧に包まれた騎士も鋼獣も熱に形を奪われよう。
「一体ずつ、確実に屠る」
 渾身の力と火力を籠めた炎拳は赫然と燃え立ち、ひとつ、またひとつと敵を灼いた。
 斯くして絶叫が靜謐を裂く中、ひびきの言は淡然と悲鳴を潜り、その聲は対角の側廊に控えていた晴夜の狼耳が拾う。
「領主がまだ残ってんだ、こいつらは出来るだけ消耗せずに倒したいぜ」
「全く同意しますよ。不出来な“人形”に消耗する事はありません」
 手早く片付けようと冷艶の視線を注ぐ晴夜は、少々ご機嫌斜めか――未だ愛らしい背丈をしていては無理もない。
「背が低いと敵がやけに大きく威圧的に感じて嫌ですねえ……」
 綺麗なアイオライトの瞳はジト、と騎兵を映し。
 声変わりもせぬ清澄の聲が苦々しく嘆声を零すと、『十環』を嵌めた繊指は今の状況に剴切な代役を喚び出した。
「幼い身体では戦いづらいので……ニッキーくん、おいで」
 囁けば傍らに、戦闘に特化した絡繰り人形『優しく可愛いニッキーくん』が現れる。
 歪な動物の頭部を有した傀儡は、寡黙に主の隣に影を落して、
「私の代わりに敵を――うわ、ニッキーくんデカくないですか!?」
 純朴の瞳が己は変わらぬと言ったろうか。
 いつにない顎の角度で、更には巨躯を屈めて主と視線を繋ぎ合わせたニッキーくんは、間もなく敵の喊声を拾うと、スッと軍勢に向き合った。
『――ブルルルルッ!!』
『ォォォオ雄雄ォォオ乎乎!!』
 軍馬一体となって押し寄せる闇黒の騎兵。
 鋼の鎧からは魔蛇、魔狼、魔竜の首が伸び出るが、ニッキーくんの【愛の無知】(アイノムチ)――横薙ぎビンタを喰らった後は、何の獣であったか判別が付かぬ。
『ゲギャアッ!!』
『ギャヒ――ッ』
 純朴なニッキーくんは感謝の気持ちを示すに幾分も不器用で、遊び相手への「ありがとう」は膂力を絞ってたっぷりと、剛腕より繰り出る平手は悲鳴をも潰し、砕いた頭部を壁に叩き付けた。
 一方、そんな愛しき傀儡と操り糸で繋がれた主はと言うと、猛牙を剥き出す無数の頭を軽やかに遇いつつ、伸び出る首同士を絡げて嗤笑を置く。
 絡まり合った首を妖刀『悪食』で一気に斬り落とせば、耳障りな獣声は断たれようが、
「……両手で持たねば妖刀も碌に扱えないとは情けない……」
 ――屈辱。
 我が刻を喰ろうた『悪食の断片』には、もう一太刀も二太刀も呉れて遣りたい処だが、見ればニッキーくんが直向きに「倒錯した愛情」を振って黒騎士の鋼鎧を砕いており――美し紫瞳がニ、と細む。
「ああ、鎧が無くなれば、今の私でも串刺しくらいは楽々です」
『ゼェア嗚呼ッ!!』
「――ほら、この通り」
 少しは機嫌を直したか、ちっちゃい晴夜はニッキーくんと協力プレイで次々と黒騎士を駆逐し、軈て喊声を叫喚へと変えていった。
 拝廊に景正、左右の側廊にひびきと晴夜。
 三者を楔と置いた戦陣は奏功し、数に勝る大軍団を一気に劣勢へ追い遣った。
「狂瀾を既倒に廻らし、その源の元凶を斬る――簒奪卿が現れるまで太刀を止める事はしますまい」
 無我の境に在って景正は魔刃の打ち筋を鋭く見切り、怒涛の刃に圧し潰されるより迅く、二振りの冴刀を以て鋼を斬る。
 尚も狂声を裂いて迫る相手には、ひびきが赫炎に灼いて灰燼に帰し、
「……こいつらも元は人間だったんだ。あまり苦しませたくはない。
 出来るだけ早く灰にしてやろう」
 疾く早くと暗澹を駆け抜ける炎の対角で、晴夜とニッキーくんが華麗に凄惨に邪騎士を撃滅し、軈て大軍勢は後尾を明かして遂に途絶えた。
「おっと、ようやく元の姿に戻りましたか」
 時に晴夜は、床に転がる黒鋼の鎧に、刻を取り戻した己を見て、やっとの息を吐く。
「やはり今を生きるハレルヤの姿こそが至高ですね」
 刻下。
 どろり屍毒と溶け往く最後の鋼に、極上の微笑が零れた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
教会を囲む足音に眉を顰めるのは
静かなはずのこの場所と不似合いに思えたから
そして
やってきたものが無辜の命を餌にする外道とわかっているから

それほど、私たちが怖いのですか

仄かに浮かべた笑みは、嘲りでもあり
無関係の人々を巻き込んだ原因のひとつが自分たちであることへの憤りでもある

相手が堕ちようとも騎士ならば
こちらも正々堂々お相手しましょう

襲い来る敵の動きをよく見て見切りで回避

武芸の嗜みはありませんが
戦場で色んな方の戦う様は見てきました

コノハナさんと巧みに位置を入れ替える早業でフェイント
十指で誘う紳士の動きは舞うように軽やかに
打ち据えるステッキに纏わせるのは、氷の属性攻撃
身を覆う鎧を凍てつく棺と変えるよう


セシリア・サヴェージ
黒騎士、呪いの武具の使い手……。未来の自分を見ているようで気分はよくないですね。

UC【血に狂う魔剣】を発動。武具に精神を食われる危険性などとうに承知しています。ですがこの力が無ければ救えなかった命もある。人々を護れるのならば私の命など……この者たちも嘗てはそういった気持ちだったのかもしれません。だからこそ、私が斬る。

敵よりも早く動き敵陣に突撃し【先制攻撃】します。【怪力】を利用した暗黒剣の【なぎ払い】で複数体まとめて斬ります。
防御よりも攻撃を優先し、ダメージを受けても【激痛耐性】で無理矢理耐えつつ【生命力吸収】で回復します。



 耳を澄ませば判明る。これは蹄鉄――軍馬が迫る音だ。
 間もなく聖堂は領主の軍勢に囲繞されると、靴底に伝わる重い振動に剣呑を受け取った雨糸・咲(希旻・f01982)は、そっと柳葉の眉を顰める。
「靜かな筈のこの場所を踏み荒らすような――不似合いな跫」
 今より来るは、無辜の命を餌にする外道。
 繊手を宛がった胸の奥では、瞋恚が炎と搖めくが、激情の儘に動く咲ではない。
 彼女は努めて冷厳に仲間の聲を聴いて、
「……音の重厚からするに、簒奪卿は結構な軍勢を率いて来た様ですね」
 手駒が多いほど領主の怯懦と猜疑心の強さ、警戒の程が知れる。
 セシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)も軍影を見ずして洞察が往くか――騎兵の規模に加えて領主の稟性まで読んだ彼女は、敵の侵攻方向に炯眼を注ぐ。
 咲は視線を揃え、言を足し、
「――それほど、私たちが怖いのですか」
 自らが支配構造を覆した為に、オブリビオンの絶対統治を脅かす猟兵を懼れるとは。
 そう囁(つつや)いた丹花の唇の端に、仄かに笑みが挿す。
 其は領主の小心に対する嘲りであり、また無関係の人々を巻き込んだ原因のひとつが、自分達に在る事への憤りでもある。
 咲の心火を萌した語尾を拾ったセシリアは、漸う主廊に足を進め、
「送り込んだ数が妥当であったか――今に知る事になるかと」
 圧倒的武力で圧し潰す算段か判らぬが、殲滅すれば兵力の不足を嘆く事になる。
 今こそ猟兵の力を識れば佳いと、『暗黒剣ダークスレイヤー』を構えた崇高の騎士は、間もなく押し寄せる軍勢に鏖殺の気を迸らせた。
 然してその時は訪れる。
 怪物と堕ちた黒騎士の軍団は、駿馬の生命を吸収して創った「鋼の軍馬」に騎乗して、聖堂の扉を破るや一気に攻め掛った。
「ブルルルルルルッッッ!!」
『ォォオオ雄雄オォォ……ッ!!』
 吶喊――!
 嚇怒を号び、狂気に哮りながら押し寄せる大軍勢は宛ら漆黒の狂濤。
『嗚呼ァァア嗚呼ァァアアア!!』
 身丈の倍もある高さから振り下ろされる刃撃は荒々しく、また鎧から伸びる魔獣は獰猛に牙を剥いて迫るが、敵が怒れるほど咲は凛然と、超感覚を研ぎ澄ませていく。
「狂気に堕ちようとも騎士ならば、こちらも正々堂々お相手しましょう」
 武芸の嗜みは無いが、これまで数多の戦場で仲間の戦う姿に学びを得た咲である。
『ォォオオヲヲ雄雄ッッ!!』
『ゲェギャァァアアッッ!!』
 魔斧、魔槍、魔劔――無数の鋩が襲い来るが、咲は柔肌を掠める程度の傷は許しつつ、致命傷を喰らわぬよう剣戟を見極めて身躱す。
 魔蛇、魔狼、魔竜の猛牙もまた肉を食まれる間際で躱した咲は、刹那、繊麗の十指に糸を操り、絡繰り人形を喚んだ。
「――コノハナさん、お願い」
 淑女の佳聲に応えてシルクハットを摘み上げるは紳士の蛙『コノハナ』。
 優雅な所作に、ふわり梅花を馨らせる縫いぐるみは、くるり、舞うように軽やかに身を躍らせるや、咲と巧みに位置を入れ替えてステッキを打ち据える。
 黒い瞳と柔和な表情が見る者の心を擽るが、手にしたステッキに纏う凍気は極寒の風を運び、身を覆う鎧を凍てつく棺と変えるよう。
 美し妖し其は【暗香譚】(アンコウタン)――。
『ブルルルルッッ!!』
『ォォ、ォオオオ……嗚嗚……――!!』
 先ずは鋼の軍馬が脚を凍結し、機動を削がれた処で黒騎士が熱を奪われる。
 漸う身を屈め、魂を冷やしながらもギチギチと動く彼等は、やはり怪物――呪いの武具が然うさせているのかと鋼の鎧を見たセシリアは、靜かに桜唇を引き結んだ。
(「まるで未来の自分を見るような――」)
 黒き鎧に宿る『暗黒』を操る女騎士たれば、我が末路を見るようで気分は優れぬ。
 己もいずれは『暗黒』に呑まれ、誰かを殺める怪物と成るのか――。
「……この者達も、己が然うなるとは思ってなかったかもしれません」
『オオヲヲ嗚嗚ッッ!!』
「嘗てはその武技も、或いは」
 無数と降り注ぐ猛撃を暗黒剣の鋩に往なす。
 好機には軍馬の脚を薙ぎ払い、一気に進撃の勢いを削いだセシリアは、【血に狂う魔剣】(ブラッドウェポン)――狂化の呪いを受け入れる事で、攻撃回数を増加させると同時、敵の生命力を吸収する魔劔を手に爪先を弾いた。
「武具に精神を食われる危険性など、疾うに承知しています」
 我が身を包む『暗黒の鎧』は、絶大な力を授ける代わり、生命と精神を蝕む。
 蓋しこの力が無ければ救えなかった命もあると、自身が歩いた道を顧みたセシリアは、凄烈な剣技に肌膚を裂きつつ、血滴が落ちるより迅く疾く冴刃を届けた。
「人々を護れるのならば私の命など……この者達も嘗てはそういった気持ちだったのかもしれません」
『――ォォヲッ!!』
「だからこそ、私が斬る」
 激痛を靴底に踏み締め、尚も蹴り出し、鋩を突き入れる。
『ゼァァアア嗚呼ッッッ……!!』
 間際に見る黒騎士は鏡を見る様で――軈ては己も自我を失い、血に飢えた狂戦士と化すかと思っても、其を懼れて消えゆく命を嘆くだけの者には成れぬ。
 決して侮蔑でない、幾許にも誠意を籠めたセシリアの劔撃は鋼の鎧を悉く斬り、
『ォォオ……オオォォ……!!』
 四半刻も経たずして、喊声は今際の喊びと変わる。
 其を聖堂の外で聞いた領主『簒奪卿』は、鎧の下に舌打ちを隠した。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アルバ・アルフライラ
数で挑めば勝てるとでも思うたか、阿呆め
多勢に無勢と云う言葉を貴様等に教えてやろう
精々光栄に思い、朽ち果てよ

常に死角への攻撃を許さぬよう警戒を強める
敵の攻撃範囲へ入った場合は挙動を見定め
第六感も用いて見切りや武器受けも試みよう
魔方陣を描く事による高速詠唱
召喚するは【暴虐たる贋槍】
降り注ぐ風槍にて広範の敵を貫いてくれる
貴様等が鋼の生命を生み出そうとも同じ事よ
逃げ場を与えてやるほど
攻撃の暇を与えるほど、私は慈悲深くないでな
然し、尚も果敢にも挑もうと云うならば
その勇猛さと無謀さに免じ
――丁寧に、串刺しにしてくれる

やれ、他愛もない
『簒奪卿』の軍団と聞いて多少は警戒しておったが
所詮はこの程度とは…残念よな


荒谷・ひかる
……っ、罠なんだもんね、まだくるよね。
でも……ぜったいに、負けてなんてやらないんだからっ!

鋼の生物……なら、こういうのはどう!?
【幻想精霊舞】発動
大地の精霊さんにお願いして、地中から「硫黄」を精製
それを炎の精霊さんに燃やしてもらって「亜硫酸ガス」を作って、水と風の精霊さんの「嵐」に乗せて放つよ
顕現するのは酸性雨の……ううん、「硫酸の嵐」!
鋼の敵なら錆び錆びになって、効果てきめんのはずだよっ!
……あっ、ふつうの人は近づいちゃだめだからねっ。
精霊さんも、ほかの人を巻き込まないよう気を付けてねっ!
だいじょーぶっ!わたしも応援するからがんばってっ!(精霊さんたちを「鼓舞」する)



 簒奪卿にとって誤算だったのは、聖堂を囲繞する前に『悪食の断片』が討たれた事だ。
 早々に邪鋏を斃した猟兵は、靜謐を取り戻した事で軍勢の侵攻を察知し、僅かな時間ながら襲撃に備えられたのである。
「数で挑めば勝てるとでも思うたか、阿呆め」
 不穏な振動を靴底に踏み締めながら、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)が美し花脣より冷罵を吐く。
 不断に続く重い振動は蹄鉄の音だろうと読んだ麗人が、敵の侵攻方向に炯眼を射ると、傍らの荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)も視線を揃えて身構えた。
「……っ、罠なんだもんね、まだくるよね」
 少女も軍影を見ずして軍勢の形態や規模が判明るか。
 相当数の軍馬の駛走を捉えたひかるは、足を浮き立たせる程の鳴動に気圧されるが、真赭の鼻緒を力強く踏み込むと、扉に向かって正対する。
「でも……ぜったいに、負けてなんてやらないんだからっ!」
 そうして多くの猟兵が武器を構えて靜黙した時だった。
『――ブルルルルッッ!!』
『オオヲヲヲォォ乎乎!!』
 読みは至当。
 呪われし鎧に身を包んだ黒騎士の軍団は、駿馬の生命を吸収して創った「鋼の軍馬」に騎乗して、聖堂の扉を破るや一気に押し寄せた。
『ォォオオ雄雄オォォ……ッ!!』
『嗚呼ァァア嗚呼ァァアアア!!』
 吶喊――!
 狂気を哮り、憎悪を喊んで襲い掛かる闇黒の塊。
 魔斧、魔槍、魔劔――無数の刃を振り被って迫る其は宛ら海嘯だが、アルバは我が身を造出すスターサファイアの色を映した瞳に炯光を挿すと、透徹の聲を楔と打った。
「魂を喰われた人形を並べて『衆寡敵せず』と高を括るとは笑止。其の愚陋と檮昧、貴様等の鎧に刻んで教えてやろう」
 視界に飛び込む斬撃を、肌膚一枚だけ許して躱す。
 致命傷を避け、死角からの攻撃は竟ぞ許さず、天鵞絨の外套『しとね』を翩翻と翻して刃鋩を潜った彼は、秘呪を詠唱するや穹窿に魔方陣を浮かべた。
「私より啓蒙を受くこと精々光栄に思い、朽ち果てよ」
 喚ぶは【暴虐たる贋槍】(ワイルド・ハント)――280本にも及ぶ風属性の魔法の槍。
 冷涼の風を螺旋に紡いだ鋩が、黒騎士の頭上に降り注ぎ、鋼の鎧を鋭く貫穿した。
『ォォオオヲヲ雄雄ッッ!!』
『ァァアア嗚呼ッッ……!!』
 喊声に代って絶叫が挙がる中、アルバの佳聲は凛冽と澄み渡り、
「逃げ場を与えてやるほど、反撃の機を与えてやるほど、私は慈悲深くないでな」
 新たに鋼の獣を伸び出したとて、風槍は其等ごと貫く。
 宙空に浮かぶ魔方陣は何度も槍鋩を召喚して、広範囲を制圧した。
『ォォ、ォオオオ……ヲヲヲッッ』
 轉回つ塊の中には、尚も果敢に屍を乗り越え、魔鎌を振り上げる者も居る。
 然ればアルバは冷厳と瞳を細め、繊指に示した通りに個体を狙い撃った。
「その勇猛さと無謀さに免じ――丁寧に、串刺しにしてくれる」
『ゼァァアア嗚呼ッッッ!!』
 時に豪快に、時に繊細に。
 アルバが雪崩れ込む騎兵の勢いを崩せば、ひかるは黒々と渦巻く狂気のうねりを鋭く観察し、或る作戦を思い付いた。
「あのお馬さんは生命力から造られた鋼の生物……なら、こういうのはどう!?」
 穢れを知らぬ琥珀色の瞳が爛々と耀く。
 精霊杖【絆】を媒介に数多の精霊(ふれんず)を降ろしたひかるは、可憐なおさげをふうわりと揺らして、七色の光を躍らせる。
「硬い鋼の敵をやっつける力を貸して……お願い、精霊さんっ!」
 破天荒解、【幻想精霊舞】(エレメンタル・ファンタジア)――!
 友が希えば精霊は奮起しよう、大地の精霊は地中から「硫黄」を精製すると、大気に逃げ出す硫化水素を炎の精霊が燃焼に迎える。
「硫黄の完全燃焼によって二酸化硫黄が発生して……」
 別名「亜硫酸ガス」と呼ばれる気体は、二酸化窒素などの存在下で酸化して「硫酸」となるが、此れを水の精霊と風の精霊が嵐を作って運ぶ事で、大軍勢の頭上に腐蝕の颶風が吹き荒れた。
「顕現するのは酸性雨の……ううん、『硫酸の嵐』だよ!
 鎧さんもお馬さんも鋼なら錆び錆びになって、効果てきめんのはずっ!」
 大地と炎と。水と風。
 四属性の精霊はひかるのイメージ通りに現象を生成すると、敵の強靭なる装甲を次々と錆に屠った。
「……あっ、ふつうの人は近づいちゃだめだからねっ」
 ひかるが注意を促すのは、其が彼女の制禦に依るものでなく、お願いした精霊の意志に任せたものだからであるが、彼等は少女が敵と見做す相手だけを嵐に呑み込み、逆巻く轟音の中にぐわらんと鋼の音を転がした。
「ブルルルルルルッッッ!!」
『ォォオオ雄雄オォォ……ッ!!』
 アルバとひかるが軍勢の全域を槍雨と酸の嵐に呑み込めば、呪われし黒騎士らは恐慌に陥って絶叫を裂くしかない。
 斯くして簒奪卿の軍団は、四半刻も経たずして猟兵の前に屈服した。
「――やれ、他愛もない」
 典雅のテノーレ・リリコを染ませる靜寂が謂わず勝利を告ぐ。
「……終わった、……?」
「領主直轄の軍団と聞いて多少は警戒しておったが、所詮はこの程度……残念よな」
「…………ふぅー」
 嘆声を零すアルバの隣、ひかるがほうっと胸を撫で下ろした。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『真紅の傀儡騎士』

POW   :    暗黒の帳
戦場全体に、【内部の者の生命力を削る、光閉ざす闇の壁】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
SPD   :    真紅の宴
【鎧に染付いた血より具現化した紅の狼の魔物】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    偽りの覇王
【自身の寿命】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【大剣を覇王が持つに相応しい力を秘めた魔剣】に変化させ、殺傷力を増す。

イラスト:麻風

👑11
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 狂気に満ちた喊声が、怯懦の滲む絶叫に変わり、軈て消ゆ――。
 訪れた沈黙に自軍の壊滅を知った領主は、紅き狼を供に、蹄鉄を鳴らして中に入った。
『……これが猟兵か』
 見事だと、一言でも嘉賞を与えれば僭主とて器を認められたろう。
 蓋し彼は全き小肝、狭量にて、これ程の力を有する者達を見過ごす事は罷り成らぬと、馬上から戒心鋭く睥睨する。
 声は冷ややかに荊棘を帯びて、
『骸の海を潜りし者達がこの世界を支配して百余年……人間はその不変に感謝すべき処、根底を覆そうとする猟兵に光を見るとは不遜極まる』
 唾棄する様に言ってのけた領主は、時に主に代わって牙を剥く魔狼を撫でて宥めると、鎧の下に嗤笑を隠して続けた。
『……村の者達が私を“簒奪卿”と呼んでいる事は知っている。其は私の支配が足りぬという事だから、改めることに為よう』
 支配とは。
 僅かに覗く蒼鷹の目を見れば言うまでも無かろう。
 俄に殺気を迸る猟兵に、彼もまた魔劔を抜いて威を示し、
『唯だ、村の者達に僅かにも反抗的な事を言わせた――貴様ら猟兵は此処で処す』
 芽は摘み取らなければならぬ。
 言うや鏖殺の気を漲らせた領主は、聖堂に闇の帳を下ろし、その黯然に紅き狼を放つ。
 己は身丈に迫る大劔を馬上で構えると、馬の腹を蹴って走り出し、
『常闇に光は要らぬ。果敢無く散れ――!』
 昏がりに影を融かした猟兵めがけて、覇王の斬撃を繰り出した。
イデアール・モラクス
フン、我らを処すとは大きく出たな簒奪卿。
この常闇の世界は確かに貴様のような昏き者に相応しい、光など不要…だが!だからこそ無秩序な光でこの世界を犯してみたくなる!

・行動
「貴様にはまず王の気概を見せてやる!」
まずは奴の攻撃に対し魔導ビットの『乱れ撃ち』で狼を、魔剣の『なぎ払い』で斬撃を、それぞれ『武器受け』で防ぎ止める。
「喜べ、貴様の昇天する光が反逆の狼煙となるのだ!
アーハッハッハ!」
UC【七星覇天煌】を『全力魔法』と『属性攻撃』で威力を増した上で『高速詠唱』を用い一瞬で行使、膨大な魔力光線の『一斉射撃・制圧射撃』による『範囲攻撃』で眼前の敵勢を跡形も無く『なぎ払い』消し去る。

※アドリブ歓迎



 光無き聖堂に偽王の大劔が疾走る。
 闇に隠れて侵襲する斬撃に、術者の鄙劣が見えようか――イデアール・モラクス(暴虐の魔女・f04845)は己が漂わせる魔力が劔圧に搖らいだ刹那、半身を退いて裂傷を逃れる。
 過ぎ去る劔閃に濡烏の艶髪を梳らせた凄艶は、不敵に咲んで、
「フン、我らを処すとは大きく出たな簒奪卿」
 血気は十分。
 然し大器には非ずと見極めた炯眼は、晦冥の闇に赫光の帯を引いた。
「貴様にはまず王の気概を見せてやる!」
 我が魔術を研鑽し、其の絶巓に君臨したイデアール。
 彼女は麗躯に湛えた魔力を解放すると、異空間より暴虐の魔剣《ドミナンス》を喚び、騎馬した僭主の蹄鉄を斬撃に追った。
『ッ……闇ごと薙ぎ払うか』
 我を護れと魔狼に命じる事も読んでいる。
 イデアールは既に自律浮揚兵器『魔導ビット』を闇の帳に忍ばせており、紅の狼を探知するや、灼熱の光条に狙撃させた。
『……ギャルルルルッッ!!』
 痛撃に嚇怒した魔狼が牙を剥く。
 獣の脚が床を蹴るや、射撃方向に飛び掛かった爪がビットの一つを破壊した。
 主が間隙を置かず巨劔を振り下ろせば、爆発した光の下でイデアールが斬撃を受く姿が捉えられたろう。
『惜しい。他愛なく千切れれば佳いものを』
「私が貴様の思い通りになると思うたか」
 見縊ってくれるなと、斬撃に対し十字に交わった魔劔が主の致命傷を拒む。
 白皙より血滴が零れるが、其がほたほたと床板を打つ音まで聞き取ったイデアールは、紅脣に好戦的な微笑を湛えた儘、闇黒の先を睨めた。
「この常闇の世界は、確かに貴様のような昏き者に相応しい。
 光など不要……だが! だからこそ、無秩序な光でこの世界を犯してみたくなる!」
 破壊し。
 蹂躙し。
 奪い尽くす。
 然う告げた魔女は、渾身の魔力を七色の光に紡ぐと、一瞬で厖大な魔力光線を射た。
「喜べ、貴様の昇天する光が反逆の狼煙となるのだ! アーハッハッハ!」
 究極魔術、【七星覇天煌】(スーパーイデアールレーザー)――!
 聖、闇、火、水、風、地、そして滅――七属性を束ねた其は光条を超えた光柱。
 闇の帳を豪快に切り開いた極太レーザーは、広範囲を高威力で制圧し、一体に漂う闇の一切を跡形もなく屠った。
『ッ、ッッ……!!』
 然れば領主の形姿も歴々(まざまざ)と視えよう。
 光に白む聖堂に、刻下、紅鎧を鮮血に濡らす渠魁が暴かれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

須藤・莉亜
「ふーん。」
うん、神様には少しの間目を瞑って貰うとして。

「クソみてェな敵だなァ。これならオレが吸い尽くしても問題ねェよな?」

真の姿を解放、四肢は悪魔のモノに変化、背からは悪魔の翼を生やした状態に。口調がおかしいのは気のせいだ。

悪魔の切り売りのUCを発動。
あのクソ領主に高重力をかけて動きを鈍らせて、大鎌でぶった斬る。
チャンスがありゃ深紅で雁字搦めにして、ヤツの鎧を噛み砕いて血を吸い尽くしてやろうじゃねェか。

そういや、向かって来る紅い狼は血からでてくんだろ?んなら動きを【見切り】、喉元に喰らい付いて血を奪う。腹の足しにはなるだろうよ。

「血だ。オレに血を寄越せ。一滴残らず魂ごと吸い尽くしてやるよ。」



 飄逸にして虚靜なる須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は見切りが早い。
「ふーん」
 領主が開口して五秒程で「大器に非ず」と解した彼は、間もなく昏がりに鎖される聖堂の穹窿を仰ぎ、小さく囁(つつや)いた。
「――うん。神様には少しの間、目を瞑って貰うとして」
 闇が帳すれば全ては匿されよう。
 光を奪われた莉亜は剣呑を挿すより寧ろ安堵したか――刻下、冷艶のテノールがスピントを萌し、強靭なドラマティコへと變ずる。
 クッと口角を持ち上げた唇は、其の端麗には不似合いな痛罵を吐いて、
「クソみてェな敵だなァ。これならオレが吸い尽くしても問題ねェよな?」
 果して黯然の下で嗤笑した彼は莉亜で在ったか。
 繊麗の四肢を黒獣の如く、長躯の背に蝙蝠の黒翼を広げた姿は当しく悪魔そのもので、典雅なる紫髪の毛先までも闇色に染める。
 ――口調がおかしいのは気のせいだ。
 莉亜は瞋恚や嚇怒で真の姿を暴いたのではなく、敵を「クソ領主」と見限ったからこそ蹂躙に値すると、悪魔の尻尾を床に打ち付けた。
「高重力をかけて動きを鈍らせる。
 一欠片でも現世に出してやるんだから、オレに感謝しろ!」
 顕現、【悪魔の切売り】(アクマノキリウリ)――!
 凶猛な口跡で召喚さるは、数多の権能を有する大悪魔の一部、重力を操る能力。
 胸元から獣の掌手を闇に突き出した莉亜は、漆黒の五指を動かして重力を操り、
「馬の方が持たねェだろ。そのまま足、止めとけ」
『ブルルルルッ!!』
『く、ぉぉお!!』
「ぶった斬る」
 黒翼が羽搏き、大鎌『血飲み子』が闇を裂いて疾走した瞬間、紅の狼が射線を割った。
『グルルルァアッッ!!』
 蓋し其も読み通り。
 全き暗然の中、殺気を手繰る様に魔手を伸ばした莉亜は、魔狼の首を聢と捕える。
 獰猛な悪魔の牙は、強大な吸血衝動を解放してその咽喉に喰らい付き、悲鳴ごと屠るように血を煽った。
「……腹の足しにはなるだろうよ」
『、貴様……!』
 領主はなればと新たな魔狼を放たんとするが、其が鎧に染み付いた血より喚び出されると観察した莉亜は、鐶鎖『深紅』に領主の半身を絡げ、真紅の血鎧を噛み砕いた。
『ぐっ……ぉぉおおお嗚嗚!!』
「血だ。オレに血を寄越せ。一滴残らず魂ごと吸い尽くしてやるよ」
 叫喚に交わるは底の見えぬ血の飢渇。
 妖し闇の中、剽悍なる面輪が領主の冠兜に肉薄した。

成功 🔵​🔵​🔴​

オリヴィア・ローゼンタール
支配者たる覇気もなく、自尊と猜疑に狂う簒奪者め

光閉ざす迷宮も、闇を見通す瞳(暗視)の前では無意味
主の性格を加味して罠や行き止まりを看破し踏破(学習力)
魔狼と遭遇すれば聖槍で斬り捨てる

簒奪卿の前で【血統覚醒】で吸血鬼を狩る吸血鬼へと変貌
小胆者ならば、簒奪が吸血鬼の耳に入り、報復されることに怯えている筈
【殺気】を放ち【恐怖を与える】
我が紅き両眼を見るがいい、そして怯えて竦め
領主などと粋がろうと、貴様は吸血鬼の前に膝を屈するのだ

【属性攻撃】聖槍に炎の加護を纏う
【怪力】を以って縦横無尽に斬り打ち穿つ(ランスチャージ・鎧砕き)
魔を破る力(破魔)で魔剣の力を抑え込む
武器が立派でも、怯懦に震える太刀筋では!



 小心にして狭量、拙陋なる懦夫。
 彼奴に較べれば、明日もわからぬ旅路を往く冒険者の方が遙かに気骨があると、彼等を匿う香部屋を一瞥したオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)が、滅邪の気を迸らせて聖槍を構える。
「支配者たる覇気もなく、自尊と猜疑に狂う簒奪者め」
 語尾を強め、彼奴を『簒奪卿』と口の端に為た村の者を讃える。
 然れば冠兜の下で眦を吊り上げた領主は、暗黒の帳を更に漆黒の壁に隔て、迷える者の生命力を削る迷路を創り出した。
『不遜なる猟兵め。私に謁する事は赦さぬ』
 光閉ざす迷宮もまた偽王の姑息が伺えよう。
 壁向こうに嗤笑を隠した僭主を冴ゆる炯眼に睨めたオリヴィアは、桜唇に囁き、
「闇を見通す瞳の前では無意味」
 と、墨を流した様な闇の中を暗視して進んだ。
 迷宮には術者の稟性が投影されると読んだ彼女の勘は正しく、領主の小器を念頭に罠や行き止まりを看破したオリヴィアは、見事、時間を弄せず踏破する。
「――出口付近を下僕に護らせる事も想定済み」
『ギャルルルルッ!!』
 闇を躍って飛び掛かる魔狼の腹を『破邪の聖槍』に裂く。
 しとど獣の血を浴びた修道女は、冠兜の僅かな隙間より瞠目する領主の眼前に立つと、【血統覚醒】――黄金の瞳を紅く朱く染め、吸血鬼を狩る吸血鬼へと変貌を遂げた。
「我が紅き両眼を見るがいい、そして怯えて竦め」
『貴様……吸血鬼……!』
「領主などと粋がろうと、貴様は吸血鬼の前に膝を屈するのだ」
 闇に在っても、いや闇に在ってこそ殺気は生々しかろう。
 今のオリヴィアは当に常闇の世界を百余年と支配する吸血鬼で、小胆者の僭主なれば、正統なる継承を経ずして領地を得た不義を愈々駆り立てられる。
『前の領主の暗愚を誅した私にこそ、正義は……ある……!』
「――偽王は騙りて罪を重ねるか」
 鮮血の涙が止め処なく流れ落ちる魔瞳は、真紅の鎧に包まれた怯懦を丸裸にする。
 戦闘力を爆発的に飛躍させたオリヴィアは、一足で間合いを侵略するや、炎の加護を得た聖槍を強く強く握り込め、領主に肉薄して剣戟を交えた。
『ッ、我が武勇、我が狡智に勝る者なし!』
「笑止。仮令(たとえ)武技に優れ、武器が立派でも、怯懦に震える太刀筋では――!」
 斬り、打ち、穿つ――!
 長大な魔劔と何合も火花を散らし、その度に血涕を流す瞳を闇に暴いたオリヴィアは、遂に劔筋を見切り、巨刃を潜って柄を繰り出す。
 真紅の鎧の継ぎ目を侵襲した槍鋩は、破魔の力を流し込んで反撃を抑え込み、
『――ズァァアア嗚呼!!』
 どぶり、鮮やかな血飛沫がオリヴィアの麗躯を濡らした。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アルトリウス・セレスタイト
懲りないものだ
では躓け

魔眼・封絶で拘束
目標は『天光』で常に捕捉。何をしようと原理は逃さぬ
動きを封じ能力発露を封じる魔眼
捕らえればユーベルコードも霧散する
剣は力を失い帳も狼も消え失せよう

目標が何かする度に拘束をかける
仮に短時間で抜けられたとしても、ユーベルコードがその度消えれば満足に交戦できんだろう

何らかの理由で対処できないユーベルコードが残るなら魔眼の機能を切り替え
魔眼・停滞で初期化して消去する
その際は帳の消去から
味方に影響しないよう範囲設定する
全て消えずとも、機能をもたせた構築物が大きく構造を損なえば機能不全を起こすだろう

こんな風に言うべきか
お前には何もさせてやらん



 今や一個の人型を成す生物として、諸々の制約に甘んじるアルトリウス・セレスタイト(忘却者・f01410)だが、人間としての経験や感情はそれなりに身について来ている。
 眼前の領主に対する言が然うだろう。
「懲りないものだ。
 ――では躓け」
 短く、端的に、偽王の大器ならざるを言い捨てた冷厳の聲が闇に染む。
 全き不遜に眦を吊り上げた領主は、語気を荒げて大劔を振り被り、
『王が躓く時は、国が斃れる時以外に無い――!』
 魔劔一閃――! 覇王の斬撃を聖堂一帯に疾走らせた。
 闇に隠れて侵襲する衝撃波に術者の鄙劣が見えようか――然し顕理輝光『天光』を以て万象を顕かにしたアルトリウスは、軽度の裂傷を許して致命傷を逃れる。
 同時に肉薄した魔狼には、牙を剥いた瞬間に拳を衝き入れ、
「――何をしようと『原理』は逃さぬ」
『ギャウウッ!!』
 牙を折り、顎を砕く。
 その凄惨が漂う淡青の光に浮き上がり、一瞬、領主を瞠目させた。
 息を呑ませたのは次の瞬間。
「如何なる技を使って“簒奪”したか知らんが、魔眼に捕えられた劔は力を失い、帷は掃われ、狼は消え失せよう」
『な、に――ッ』
 思考に依って詠唱さるは、【魔眼・封絶】(マガン・フウゼツ)――。
 アルトリウスは明暗の影響を受けず、心眼で捉えた周囲の全対象に「世界の根源」から直に存在を捉える原理の魔眼を射て、以後一切の行為を禁じ、能力の発露を封じた。
 其の『原理』はユーベルコードさえ逃れられぬ。
 領主は威を失った劔を見て嚇怒し、
『権能の証たる大劔を封じるとは、僭越と知れ……ッ』
「――口も封じれば佳いだろうか」
 挙措を投じる度に拘束される焦燥は愈々、力任せに封縛を抜け出しても、再び捕えられては満足な戦いが出来ない。
「闇の帳が失せれば、もう隠れられまい」
『ッ、ッッ……!!』
 心に捉えた姿は瞳に射抜かれる。
 其は怯懦も例外では無い。
 闇に潜む攻撃、潜む心理まで捉えたアルトリウスは、好機を見出した数多の猟兵が死の一撃を届ける瞬間に聲を置いて、
「こんな風に言うべきか。お前には何もさせてやらん」
『――――!!』
 全て。何も彼も。
 其は実に人間らしかったろうか――淡然たる言が、訣別を告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鞍馬・景正
四海困窮せば、天禄永く終えん――。
暴戻を以てしか支配の術が無いのであれば猟兵がおらずとも怪しいもの。

曙光は要らぬと申されるなら、自ら黄泉の窖へと下がられよ。

◆戦闘
暗黒の帳の打破と簒奪卿への一太刀に注力。

生命力を奪われるならば時間は掛けずに、瞑目し【第六感】を研ぎ澄まして出口の方角を探りましょう。

八門金鎖の陣では無いでしょうが、活路は必ずある筈。
僅かに闇の薄い、簒奪卿の気配を感じる路を【見切り】、そこへ全【怪力】を動員した【太阿の剣】を発動。

【破魔】の威を籠めた【衝撃波】の刃風で闇を散らし、簒奪卿も狙わせて頂く。

佚道を以てすれば民は支配されども怨まず――吸血鬼には説いても徒爾ですかな。


茜谷・ひびき
やっと領主のお出ましか
わざわざ俺達をおびき寄せて、配下をけしかけて全滅させて
それで結局ビビってやがんのかよ。情けないな
……さっさとぶっ飛ばしてやる

UCで腕に炎を纏わせつつ敵へと接近
闇の迷路が生み出されるだろうが……中は炎で照らしていこう
長居するのは不利だな
【野生の勘】で道を見極めつつ先へと進もう

迷路を突破出来たのなら再び敵へと接近
炎を纏わせた腕で全力で殴りに行く
ぶん殴りに行く時は【怪力・鎧砕き・2回攻撃】も乗せて全力で
……俺達をおびき寄せるために殺された人達や、お前が苦しめてきた人達
皆の分まで思い切り、そのむかつく顔をぶん殴る

余裕があれば【生命力吸収】で回復も
お前の血くらいは有効活用してやるよ



 先ず『悪食の断片』なるオブリビオンを指嗾したのも。
 次いで黒騎士の大軍団を送り込んだのも。
 畢竟、己が猟兵と接触する迄に彼等を損耗させておきたかったからだ。
「――やっと領主のお出ましか」
 随分と遠回りをさせられたと、茜谷・ひびき(火々喰らい・f08050)が歎声を零す。
 くしゃり、硬質の指を櫛に短髪を掻き上げた彼は、馬上の偽王を上目に睨め、
「わざわざ俺達を誘き寄せて、配下を嗾けて全滅させて……結局ビビってやがんのかよ」
 ――ビビッてやがる。
 歯に衣着せぬ口跡が小気味佳かろう、「情けないな」と領主の小胆を切って捨てた少年の隣、鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)が小さく首肯を添える。
「四海困窮せば、天禄永く終えん――」
 古の文書にも記される世の習い。
 周囲は漸う闇の帳が下ろされるが、冷艶の聲は主の形姿を隠して更に冴え渡り、
「暴戻を以てしか支配の術が無いのであれば、猟兵がおらずとも怪しいもの」
 小人に国家を治めしめば到る。
 偽王は大器に非ずと見切った言は、冠兜に隠れた面妖を大いに歪めさせた。
『……異邦人が無礼な口をきく』
 噤めと言ったか、領主は左の五指を動かすと、暗黒の帳を更に漆黒の壁に隔て、迷える者の生命力を削る迷路を創り出した。
『不遜なる者共。私に謁する事は許さぬ』
 此処にも術者の姑息が伺えよう。
 常に距離を置かんとする領主の怯懦を視た景正とひびきは、然し焦燥に駆られる事なく闇に聲を交した。
「八門金鎖の陣では無いでしょうが、活路は必ずある筈」
「……長居は無用だ。炎で照らして進もう」
 言うや、ひびきは【ブレイズフレイム】――自身の腕に紅蓮の炎を纏わせる事で周囲を照らし、鋭く勘を働かせながら進路を見極める。
 景正は瞑目して心靜かに、己が超感覚を研ぎ澄まして出口の方向を探った。
「出口は一つ。そして出口の先には――」
「ああ、領主とは名ばかりの小心者が居る」
 僅かな時間とはいえ、首魁の稟性に触れたのが奏功したろう。
 二人は領主の気配を手繰るように暗路を進みながら、軈て闇の薄まる出口の先で、踏破の跫を待つ邪気を捉えた。
「……攻略したら、また迷路に落とし込んだりしそうな相手だ」
「ならば、此処から仕掛けます」
 既に気配を捉えた景正が、漆黒の闇を踏み締める。
 腰を落して破魔の霊気を迸らせた麗人は、竜胆の色を挿す眸に炯光を帯と引きながら、一切の闇を散らす刃風を放った。
「是の剣は、金鉄の剛きより玉石の堅きまで、自由に伐れて天下に刃障になる物なし――太阿の剣、ここにあり」
 疾風閃刃、【太阿の剣】(アルイハウンヨウノタチ)――!
 全身から繰り出された斬打は、時空断層を発生させる程の威を放ちつつ闇に飛び込み、周囲の壁を凄まじい衝撃波に蹴散らしながら、真紅の鎧めがけて疾駆する。
 刻下、闇が硝子の様に砕け散る――その方向に俊足を合わせるはひびき。
「……さっさとぶっ飛ばしてやる」
 我が腕に赫々と燃ゆる地獄の炎に精悍を照らしながら、領主に向かって爪弾いた彼は、景正が放った斬撃とインパクトの瞬間をピタリと揃えた。
「……俺達をおびき寄せるために殺された人達や、これまでお前が苦しめてきた人達……皆の分まで思い切り、そのむかつく顔を――ぶん殴る」
『――ッッ!!』
 渾身の力を振り絞り、跳躍力も重力も全て拳に乗せる。
 馬の高さを優に越えて飛躍したひびきは、燃え盛る拳を左右一発ずつ紅鎧に叩き込み、衝撃に繁噴く鮮血で肌膚を濡らした。
『ぐぅおおおをを嗚嗚乎乎ッッッ!!』
 然れば須臾。
 闇を掃った聖堂の主廊に簒奪卿が転がる。
 互いの目線を一気反転させたひびきは、じっとり紅血を潜らせた両拳から生命力を吸収しつつ、床板に倒れた偽王を組み敷く。
「お前の血くらいは有効活用してやるよ」
 言えば荒々しい声が返って、
『覇者の血を煽るとは、何たる不届き者……! この程度で常闇の支配は覆らぬぞ』
 冠兜は変わらず禍き眸しか覗かせぬものの、継ぎ目から血を流せば損傷は明白。
 景正は再び闇の帳を下ろそうとする掌手を『濤景一文字』に刺突して、
「曙光は要らぬと申されるなら、自ら黄泉の窖へと下がられよ」
『ズァア嗚呼ッ!!』
 悲鳴が裂かれると同時、冷厳の聲が刃鋩を更に押し込む。
 蒼瞑の剣鬼は今際の絶叫も果敢無く散らせて、
「佚道を以てすれば民は支配されども怨まず――吸血鬼には説いても徒爾ですかな」
『ッ、ッッ……ッ――!』
 靜謐を取り戻した聖堂に嘆声を染ませた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

セシリア・サヴェージ
『簒奪卿』……民の命を奪った罪をその血で贖っていただきます。

私の暗黒剣とそちらの魔剣、どちらが勝るか雌雄を決するとしましょう。【武器受け】で魔剣を捌きつつ、【怪力】【鎧砕き】を使用した暗黒剣を叩き込みます。
UC【血の代償】を発動しておけば受けた傷すらも力とすることができます。斬り合いの一助となることでしょう。ここで倒れるわけにはいきません……【気合い】を入れて最後の戦いに挑みましょう。

民から自由を奪い、世界から光を奪ったあなたたちオブリビオンは私たちが必ず倒します。今こそ奪われたものを取り返す時です!



 暴食のオブリビオンを指嗾し。
 憐れな黒騎士を駒と使役し。
 ――何より。
 我等猟兵を招かんが為に、無辜の命を贄とした者。
 当に己が真面で、闇の帳に隠れる領主を銀の麗瞳に射たセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)は、溶け往く影を追う様に冷厳と言った。
「簒奪卿……民の命を奪った罪を、その血で贖っていただきます」
 簒奪卿。
 民が陰で囁きこそすれ、彼等が頼む猟兵から直に聞けば腹立たしい。
『――罪か』
 冠兜の下で眦を吊り上げた領主は、馬上で大劔の鋩を天に向けるや、我が覇王たる証に猟兵の誅殺を誓い、鏖殺の気を迸らせる。
『なれば貴様らこそ常闇の支配に抗う……反逆の罪に斃れるが佳い!』
 刻下、光無き聖堂に偽王の大劔が疾走る――!
 此処にも術者の鄙劣が見えようか、斬撃が闇に隠れて侵襲するが、禍き劔圧を第六感に察知したセシリアは、『暗黒剣ダークスレイヤー』を盾と迫り出して衝撃を往なした。
「悪の根源を前に、倒れるわけにはいきません……!」
 美し白皙に一筋の裂傷のみを許した彼女は、血滴を置いて爪弾き、
「私の暗黒剣とそちらの魔剣、どちらが勝るか雌雄を決するとしましょう」
『言うに及ばず。覇王の劔に較ぶもの無し!』
 角逐――ッ!
 劔と刃、力と武、そして聖邪の気が、漆黒の闇に火花を散らした。
「これが、最後の戦い――!」
『女騎士よ、貴様に最期を呉れてやるッ!』
 劔は何合と交わったか判らぬ。
 一騎打ちは馬上が有利だが、然しセシリアが一向に押されぬのは、【血の代償】(ブラッドプライス)に戦闘力の増強と、生命力を吸収する能力を得ているからで、
「受けた傷も、痛みも、感情すら――罪を断じる力となる!」
 艶躯を包む暗黒のオーラは、我が流血を吸収して強化し、更なる血を求めるかのように――強靭なる力を叩き込む!
『……ぉぉぉおおををを嗚嗚!!』
 黯然の中、爆ぜる火花が刹那に様子を伝えよう。
 馬の腹から劔嶺と迫る無数の刃に、暗黒のオーラに浮足立った領主が遂に落馬すると、セシリアの追撃に併せて数多の猟兵が死の一撃を集める。
 凄艶の女騎士は其等を束ねて聲を発し、
「民から自由を奪い、世界から光を奪ったあなたたちオブリビオンは、私たちが必ず倒します」
 今こそ奪われたものを取り返す時――!
 力強く叫んだ麗貌に、夥しい血量が返った。

大成功 🔵​🔵​🔵​

雨糸・咲
さや、

と、短く名を呼び傍らに真白い花精を徴し
獣相手では耳に頼んでも間に合うまいと第六感を研ぎ澄ませる
爪牙をギリギリで躱しつつ刃持つ椿の娘と共に奔り
小刻みに杖振り風の属性で鎌鼬の二回攻撃

感謝とは、寄越せと要求するものではありません

聴く耳を持つ相手とは思っていないけれど
落ち着いた、でもはっきりした声を領主へ

人々が抗うのは、あなたが懾服に値しないから

掲げた杖先に光を燈し、

どんな暗闇も、僅かな灯火で打ち破れるのです
出口が、そこへの道がどこにあるのか
闇に慣れた瞳には
なお鮮明に見えるもの

領主を指した杖の光は瞬時に眩い閃光へ
その視界を灼いてしまえと

…望まれもしないまま
変わらずにいることなどできないのですよ



 彼の者を『簒奪卿』と呼んだ村の者達に光を見よう。
 民を大いに讃えようと凛然を萌した雨糸・咲(希旻・f01982)は、短く、そして慥かに囁(つつや)いた。
「――さや」
 佳聲が連れるは、真白き花精【清一重】(サヤヒトエ)。
 雪白の髪と衣を纏う玉娘を傍らに喚んだ咲は、彼女と共に黯然を疾駆し、同じく闇中を駆ける紅の狼を追う。
(「獣相手では耳に頼んでも間に合わない――それなら」)
 一輪の白侘助を蝉髪に挿す花の精と一瞥を交し、超感覚を研ぎ澄ませる。
 敵を屠らんと垂涎する獣の息や殺気を辿れば、読みは至当とばかり闇から紅の狼が躍り掛かり、視界いっぱいに迫る爪牙を間際で躱す。
 目尻に禍き紅が疾走して間もない。
 繊手は小刻みに精霊杖『雪霞』を振り、冷涼の風を帯びる鎌鼬を二筋。
『グルァァアッ!!』
「再び闇に溶ける前に――解けて」
 血で生成されたならでは、魔獣は切り裂かれた瞬間に血塊となって床に沈む。
 悲鳴すら断たれて虚無へと還った下僕に、偽王は冠兜の下で舌打ちして、
『……然し我が鎧に染み付いた血は厖大なれば、幾らでも創れる』
 突き出した五指が二体目を放とうとした、その時、清冽の聲が時を楔打った。
「感謝とは、寄越せと要求するものではありません」
『――何を言うかと思えば、説教か。神父でもあるまいし、小娘が一端の口を利く』
 咲とて領主が聴く耳を持つとは思っていない。
 然し其でもと丹花の唇を結んだ彼女は、掲げた杖先に光を燈し、その慥かな耀さに白皙を照らしながら、闇に浮かぶ真紅の鎧を透徹の眸に射た。
「人々が抗うのは、あなたが懾服に値しないから」
『何を……』
「大器に非ずと見透かしているから」
『――噤め』
 間もなく二体目の魔狼が放たれる。
 然し咲は楚々たる花精と二手に分れて獣の突進を擦り抜けると、放たれた方向を手繰るように肉薄し、眩い閃光に闇を裂いた。
『――ッッ!!』
「どんな暗闇も、僅かな灯火で打ち破れるのです。
 出口が、そこへの道がどこにあるのか――闇に慣れた瞳には、なお鮮明に見えるもの」
『ぐっ、ぁあ唖唖!!』
 全身を真紅の鎧に覆う偽王が、唯一無防備に晒す眼に光を射る。
 視界を灼かれた簒奪卿は、絶叫を潜る咲の聲だけが聴こえよう。
「……望まれもしないまま。変わらずにいることなどできないのですよ」
 しっかりと落ち着いたソプラノ・リリコ・スピントが、全き靜謐に染みた。

成功 🔵​🔵​🔴​

セツナ・クラルス
ようやく真打のお出ましかい
少々待ちくたびれて、うたた寝をしてしまいそうだったよ
青い顔で肩口の応急処置した数を庇うように半身を傾けて

どのような闇にも希望の光は消えないものさ
今は儚い光だとしても、闇の中では間違えることは決してない
私はそれを保護し、この地に希望の光を待たせたらいいなと思っているよ

あなたには何も奪わせない
与えられるのは安らかな眠りだけだよ
愛用の鎌に体の感覚を麻痺させる毒を塗り込み攻撃
つかず離れずに攻撃をし続け
不意に隠し持っていた短剣を突き立てる
これは鎮静剤だよ
オブリビオンとはいえ必要以上の苦しみを与えることは不本意だ

夢見心地のままでおやすみ
灯火を敵に纏わせて、葬送の支度としよう



 暴食のオブリビオンを指嗾したのも、憐れな黒騎士を駒と使役したのも。
 全ては危険分子たる猟兵に相対する前に、彼等を疲弊させておきたかったのだろう。
 其は領主の大器ならざるを見れば顕かだが、彼奴の姑息によって今や多くの猟兵が損耗を来しているのは事実。
 蹄鉄の音を優艶の聲に迎えたセツナ・クラルス(つみとるもの・f07060)も然う。
「漸く真打のお出ましかい。少々待ちくたびれて、うたた寝をしてしまいそうだったよ」
 流石にこの短時間で失った血は戻るまい。
 元の白皙を愈々蒼白くさせた彼は、応急処置を施した肩口を庇う様に半身を傾ける。
 蓋し音吐も口跡も靜穏を保った儘、彼は間もなく光閉される聖堂に慥かな言を置いた。
「どのような闇にも、希望の光は消えないものさ。仮令(たとえ)今は儚い光だとしても、闇の中では間違えることは決してない」
『其は覇道を知らぬ聖者の詭弁だ。実にこの世界は闇が光を組み敷いて久しい』
 セツナの言を否定する様に、領主は魔劔一閃――覇王の斬撃を闇に疾走らせる。
 黯然に劔閃を隠すも陋劣だが、セツナは【原初の灯火】(ハッピーバースデー)を光源に闇を暴き、初動の腕の動きから劔筋を見極める事で致命傷を回避する。
 躱し切れぬ衝撃波が更なる流血に床を濡らすが構わない。
 赫炎に照る麗顔は變わらず血の気を失った儘、竟ぞ翳らぬ黒瞳に領主を射た。
「私はそれを保護し、この地に希望の光を齎せたらいいなと思っているよ」
『……貴様の持つ光が民に染む前に、確実に消さねばなるまい』
 矢張り猟兵は危ういと確信した領主が、二撃目を振う。
 深く挙措を洞察したセツナなれば、間際で身躱して体力を温存する策戦も十分に考えられたが、彼は此処で仕掛ける。
 全てはこの時の為の温存だったろう。
「――あなたには何も奪わせない」
 言って、愛用の鎌『宵』を手に主廊を蹴る。
 時に須臾、彼の躯が密かに魔力を帯びたのは、弓張月の刃に「毒」を纏わせたからで、冴ゆる鋩が闇を斬って領主の間合いを侵襲する。
『ッ小癪な……!』
 馬上から振り下ろされる巨劔と角逐するに、鎌撃は絶妙な距離で戦えたろう。
 剣戟を交えて何合か火花を散らした時――懐を掻い潜った一刃が脇腹を強襲する。
『ぐ、っぉぉおお――!』
 弧を描く冴刃か――否。其は隠密と奇襲に優れた短剣『クラーレ』。
 不意に隠し持っていた短剣を突き立てたセツナは、激痛に身を屈める領主に囁いて、
「鎮静剤だよ。オブリビオンとはいえ、必要以上の苦痛を与える事は不本意だからね」
『ッ、ッッ……!!!』
 与えるは安らかなる眠り。
 セツナは身を傾け始めた簒奪卿を【原初の灯火】に包むと、葬送の支度を整え、
「――夢見心地のままでおやすみ」
 妖し美しテノーレ・リリコが訣別を告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

リーヴァルディ・カーライル
…ん。不変の支配なんて在りはしない。
私達は奪われた百年の歴史を奪還してみせる。

…お前は此処で潰えるが良い。
骸の海の水底に叩き込んであげる。

闇属性攻撃の迷宮を見通す“見切りの呪詛”を発動
第六感が捉えた目立たない狼や騎士の存在感や殺気を、
魔力を溜めた両眼に残像化して敵の姿を暗視する

…無駄よ。私には通じない。
光を閉ざした程度で惑うと思うな。

今までの戦闘知識から攻撃を先読みして【血の閃刃】を発動
生命力を吸収する大鎌と手を繋いだ右腕のみ完全に吸血鬼化
暴走する怪力を気合いで制御して大鎌を連続でなぎ払い(2回攻撃)
傷口を抉る斬撃のオーラによる攻性防御(カウンター)を試みる

…消えなさい。この世界から永遠に…。


ラジュラム・ナグ
さぁて、いかにも悪の親玉って感じのが登場したな。
そして常闇・・・か、闇はおじさんも大好物だ。
もしかしたらお前さんとはいい酒が飲めたかもしれんなぁ~?
何にせよこの村、この世界の未来の為、討取らせて頂くぞ!

大剣を左手に持ち替え右手に装備アイテム<全てを奪う闇>を剣の形状で握る。
大剣は持ち前の[怪力]で[武器受け]用にも活用だ。
UC《強奪時間》を発動し楽しんで行こうか!

面倒な迷路を生成される前に先制出来れば重畳、生成された時は壁を「奪う」か敵さんとの距離そのものを「奪い」、接近するぞー!

二刀の連撃で攻撃を捌きつつ一気に攻める!
鎧の隙間など斬撃が通りやすそうな箇所を狙おう。

閻魔様によろしくな。



 先ず暴食のオブリビオンを使嗾し、次いで黒騎士の大軍を差し向ける。
 斯くして猟兵を十分に疲弊させた処に現れる――成る程、首魁らしく邪知深い。
「――いかにも悪の親玉って感じのが登場したな」
 武技に優れた野心家の様だが、蓋し大器には非ず。
 黄金色の鋭眼を細めて馬上の領主を射たラジュラム・ナグ(略奪の黒獅子・f20315)は、彼の傲慢を聞き終えると、漂う剣呑を一蹴する様に笑んだ。
「常闇……か、闇はおじさんも大好物だ。
 もしかしたらお前さんとはいい酒が飲めたかもしれんなぁ~?」
 不敵に語尾を持ち上げ、泰然と構えるラジュラム。
 禍き覇気に気圧されぬはリーヴァルディ・カーライル(ダンピールの黒騎士・f01841)も同じか、少女は周囲が闇に沈み往く中、凜然たる聲を置いた。
「……ん。不変の支配なんて在りはしない。
 私達は奪われた百年の歴史を奪還してみせる」
 民が猟兵なる存在に光を見い出し始めた今、百余年と続いた吸血鬼による絶対支配が、今後百年と続く保証は無い。
 リーヴァルディが怜悧清冽を帯びると同時、ラジュラムも滅邪の波動を闇に疾らせ、
「……お前は此処で潰えるが良い。骸の海の水底に叩き込んであげる」
「そうだな。この村、この世界の未来の為、討取らせて頂くぞ!」
 時に須臾。
 冠兜の下で眦を吊り上げた領主は、暗黒の帳を更に漆黒の壁に隔て、迷える者の生命力を削る迷路を創り出した。
『不届き者共。私に謁する事は決して赦さぬ』
 光閉ざす迷宮もまた術者の姑息が伺えよう。
 己が懐に刃が届かぬよう距離を置く――其処には怯懦も見えたろうか、リーヴァルディは我が身に“見切りの呪詛”を掛けると、周囲を暗視して迷宮を疾駆した。
「……無駄よ。私には通じない。光を閉ざした程度で惑うと思うな」
 超感覚を研ぎ澄まして領主の存在感――小胆な稟性を手繰る。
 美し紫瞳は魔力を溜めて炯々と、迷宮に潜む紅の狼の殺気を間もなく捉えた。
「……二匹、来る」
「――のようだな!」
 流眄を交すや、リーヴァルディは過去を刻む大鎌を一閃、魔狼の咽喉を断ち裂く。
 彼女の視界の端には、身丈に迫る大劔を肩に担いだ儘、迫り来る猛牙に拳を突き出して顎を砕くラジュラムが闇に浮き立った。
『ギャルルルルッ!!』
『グルァァアッッ!!』
 真紅の鎧に染付いた血より生成された獣は、刹那に形を解いて血塊と沈む。
 この血を辿れば領主に繋がる道が踏めようと、リーヴァルディが颯爽と爪先を弾けば、傍らのラジュラムは少女が進む道を拓くべく、肩に担いだ大劔を左手に持ち替えた。
「さぁて、楽しんで行こうか!」
 この男が礼儀正しく迷路を進む筈が無い。
 隻眼の黒獅子は『全てを奪う闇』を劔状にして右手に握ると、【強奪時間】(ディス・イズ・マイ・タイム)――生成された漆黒の壁を“奪い”、また領主と隔てた距離そのものを“奪い”、強引に強欲に迷宮を踏破した。
『なんという事だ……ッ!』
 闇の帳も、損耗を狙った迷路も、昏きに疾らせた紅の狼も。
 猟兵は我が万策を悉く打ち破り、今こそ真の脅威となって肉薄する――!
「……消えなさい。この世界から永遠に……」
『――――ッッ!!』
 美し妖し弓張月の鎌刃が闇中に照る。
 遂に間合いに侵襲したリーヴァルディは、【限定解放・血の閃刃】(リミテッド・ブラッドレイ)――生命力を吸収する大鎌と、其を振う右腕のみを完全に吸血鬼化し、斬撃圏内に捉えた全てを細切れにする、最速最多の連撃を放った。
「微塵と化せ……!」
『ずぉぉおお嗚嗚乎乎!!』
 動も為れば暴走する怪腕を気合で制禦し、斬撃を冠兜に集める。
 領主もまた手練の騎士なれば、少女の鎌撃を幾度と魔劔に受け止めたが、其に勝る手数が剣戟を圧倒し、遂に彼は落馬して主廊に転がった。
『ッッ、猟兵共が小癪な……!!』
 膝を付いた状態から魔劔を振り被る簒奪卿。
 痛罵と共に繰り出た斬撃は、少女の佳顔を鮮血に染めるか――否。
 刻下、ラジュラムが幅広の大劔を盾の如くして刃を受け止め、その陰より小気味佳い笑みを覗かせた。
「……簒奪卿と呼ばれているらしいが、それならおじさんは強奪卿と云った処か」
『な、にを――ッ』
 紅の狼から、或いは闇の壁から。
 今で言えば斬撃を強奪し、我が身体能力と攻撃力を増強したラジュラム。
 簒奪卿の全てを糧と屠った略奪の黒獅子は、左の大劔に魔劔を留め置くと、右の黒劔に脇腹を強襲して血汐を噴かせた。
『ぐっ、嗚呼……ッッ……!!』
 真紅の鎧の隙間に劔身がズッ……と沈む。
 激痛を喊ぶ領主に近付いたラジュラムは、金瞳を鋭く、冷厳の聲を置いた。
「――閻魔様によろしくな」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

宇冠・由
お母様(f00173)と連携
※止め他の方希望

「簒奪卿、ごきげんよう。そして、さようならですわ」
お嬢様らしく礼儀正しく一礼してから、【七草仏ノ座】を発動
30Mの大鬼として戦場に顕現します

夜に覆われたダークセイヴァーで、月夜さえも閉ざすのはあまりにいただけません。光を断つというのなら新しく作るまで
私が光源となり、戦場全てを地獄で照らして差し上げます
時間経過で火力が増す私と力を削る闇、どちらが上か勝負です

巨体で迷路内を満足に動くことは叶いません
しかし敵の注意をひきつけおびき寄せ、他の方への攻撃をかばう盾役となるなら本望
上空からの視点で迷宮内をくまなく見渡し、火炎剣を投擲して援護します


宇冠・龍
由(f01211)と連携
※止め他の方希望

領主に成り代わった騎士ならば、以前の領主は既に亡くなった後ということでしょうかね
なんにせよ悪食に与した存在。オブリビオンであれば、骸の海へとお帰り願いましょうか

全てを自力で片付けられるとは思いません
私たち親子は他の方が動きやすくなるように援護にまわります

(あなた、ありがとう)
無言の夫に一旦別れを告げてから【魚質竜文】で不可視の霊を十匹召喚
半数は光と炎属性を纏わせ目立つように、もう半分は不可視のまま潜行

大きくなった由の肩に乗せてもらいながら、そのまま上空から霊を指示
属性を纏わせた方を囮とし、不可視の霊を騎士にぶつけます
狙いは剣を持つ手と踏み留める足元



 民が密かに『簒奪卿』と口の端に為る紅鎧の騎士。
 彼が領主に成り代わったという事は、以前の領主は放逐されたか誅殺されたか――。
(「オブリビオンがオブリビオンを嗾けたり、同族で争ったり……今後或いは手を組み、共謀したりするのでしょうか」)
 馬上の男に危うい野心を視た宇冠・龍(過去に生きる未亡人・f00173)は、彼が背負う歴史と、怨敵『悪食の断片』を使役するに至った経緯を暫し考える。
 彼が武技に優れた騎士である以上に策謀の士であるとは、度重なる連戦で疲弊した仲間達を見れば顕かだが、その邪知深さに怯懦が見えるのも事実。
 漸う闇の帳が下りる中、龍は黯然に溶け往く領主の影を炯眼に追って、
「――なんにせよ“悪食”に与した存在。
 オブリビオンであれば、骸の海へとお帰り願いましょうか」
 清冽なる闘志を萌すと同時、己と同じく真面に立つ宇冠・由(宙に浮く焔盾・f01211)の佳聲を聴いた。
「簒奪卿、ごきげんよう。そして、さようならですわ」
 少女らしい可憐なソプラノ・リリコに、典雅のカーテシーを添えて。
 礼儀正しく挨拶をすると同時、訣別を置いた由は、俄に背筋を伸ばして【七草仏ノ座】(コオニタビラコ)――頭部も炎に包み、全長30メートルにも及ぶ大鬼と化して戦場を俯瞰した。
『ッ、これは――!』
「夜に覆われたダークセイヴァーで、月夜さえも閉ざすのはあまりにいただけません」
 此処に到る迄にも靉靆たる灰色の空を見て来た由である。
 曇雲の中にも玲瓏の月は在るべきだと語調を強くした由は、赫々と燃ゆる我が身を光源に、聖堂の穹窿から燦然を降り注いだ。
「光を断つというのなら、新しく作るまで。戦場全てを地獄で照らして差し上げます」
『……ッ……何と大胆な……!!』
 馬上から猟兵らを睥睨した領主が、一気に視線を上げて猛炎を睨める。
 邪の目線が吃驚に逸れた瞬間、龍はこれまで傍らに在った亡夫の霊に別れを告げて、
(「――あなた、ありがとう」)
 蓋し彼は變わらず靜黙した儘。
 それでも彼の形が解けるまで感謝を捧げた龍は、不意に伸びる白磁の繊指をきゅっと握り込めると、我が身を迎えに来た由の掌に乗って、その肩に据わった。
 この高さからなら、闇の帳を更に隔てる漆黒の壁が佳く見えよう。
 美し白皙を明々と白ませた龍は、清冽の聲で霊を喚び、
「死海に還りし息吹達、視界を寡黙に泳がれよ」
 刻下、ゆうらりと宙空を泳ぐは【魚質竜文】(ギョシツリョウブン)――。
 音も無く浮遊する十匹の魚の霊のうち、半数は光と炎を帯びて目立つように、もう半分は不可視の姿を保った儘、黯然の中を潜行させた。
 地上に居る猟兵らは、頭上より降り注ぐ母娘の聲に雄渾を得たろう。
「全てを自力で片付けられるとは思いません。私たち親子は皆さんが動き易くなるように、援護にまわります」
「迷路内を満足に動くことは叶いませんが、この巨体で敵の注意を引き付け、大きな盾になりましょう」
 母は精緻に魚霊を操りながら、迷路の攻略を嚮導し。
 娘は巨きな異形と成りながら、襲い来る魔狼の牙を炎の手に遮って庇う。
 其は仲間を大いに支援すると同時、敵を大いに煩わせたろう。
『グルァァアアッッ!!』
『闇の帳に隠れてこその我が武技を……僭越が過ぎるぞ猟兵ッ!』
 下僕の悲鳴に弾かれた様に領主が声を荒げるが、返事と返るは『火炎剣』のみ。
 新たなる魔狼を放っても、其を光に暴いた由が赫炎の鋩を打ち落とし、元の血塊に還すのだから腹立たしい。
 魔狼の咆哮すら灼いた由は、叫喚の代わりに聲を降らせて、
「時間を経過する毎に火力を増す私と、力を削る闇の迷宮、どちらが上か勝負です」
『小娘が生意気な口を利く……!』
 少女に苛立つ程、足下は浮き立つ。
 高高度から敵の様子を窺っていた龍は、属性を纏わせた魚達を囮にする傍ら、不可視の魚達を低く低く、軍馬の四肢を攻撃して馬上の主を揺るがした。
『――ブルルルルッ!!』
『な、ん――ッッ!!』
 体勢が崩れた瞬間、更に魔劔を持つ手を狙う――!
 靜かに空を泳ぐ魚は、騎士の矜持、覇王の証たる大劔を痛撃に手放させ、
『おおぉぉ雄雄ッッ!!』
 この瞬間。
 母娘が聲を揃える。
 語気を強めて好機を告ぐ。
「今こそ、死の一撃を――!」
「現在(いま)を脅かす過去を、忘却の彼方に――!」
 凛然の聲に導かれた猟兵が、義気に燃ゆる劔を振り被り、厖大なる魔力を解放し、渾身の力を絞る。
 一斉に放たれた冴撃は、全て領主に収斂され――、
『……ォォオオヲヲヲ嗚嗚乎乎ッッッ!!』
 刻下。
 今際の絶叫が由の炎と龍の肌膚を震わせる。
 暫し穹窿が残響を漂わせた後――まことの靜謐が勝利を告げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

夏目・晴夜
■真の姿
ああ、面白いですね
その狭量さに似合わない程に態度がデカくて

激しく動くと身体が壊れそうな上に正直立ってるのもキツイので
『芥の罪人』で召喚した霊を敵に嗾けます
一番頑張った霊は特別に解放してあげますよ
救いの糸が欲しけりゃどうぞ善行を積んできて下さい

敵の攻撃は【武器受け】
つまりニッキーくんに庇って貰います
流石ニッキーくん、デカくて格好良くて可愛いです!
あ、事が終われば霊は一匹残らず妖刀の中に戻って下さい

生きている者は誰にも支配できません
ましてやオブリビオン如きが命を真に支配できるはず無いでしょうが
この世界の常闇にもいずれ夜明けの光が差します
あと、動き回れるいつものハレルヤの姿がやっぱり至高です


荒谷・ひかる
芽は摘み取る、かぁ……奇遇なんだよっ。
わたしたちも、罠を張ってまで猟兵を叩きに来るような領主……あなたみたいなのを、はやめに片付けるつもりで来たんだからっ!

剣をメインに使ってくるなら、距離を取れば戦いやすいはず
ということで【転身・精霊銃士】再発動
飛行しつつ距離を取り、徹底して接近戦を避ける
敵がこっち見てるなら、反動軽めで金属鎧を貫通できる雷撃弾や、目くらましの閃光弾を
至近距離まで踏み込まれたら、爆裂する風圧で距離を取れる竜巻弾を
敵が遠くてこっち見てないなら、高反動高威力の火炎弾を着地して良く狙って撃ち込む

世界は光と闇、両方のバランスが整ってこそ。
強すぎる闇は、淘汰されないといけないんだよっ!


アルバ・アルフライラ
ほう、不遜か
性懲りなく過去より現れた老害が良く云う
散るは我々ではない――貴様だ、阿呆め

魔方陣を描き、高速詠唱により召喚するは【雷神の瞋恚】
幾らうつけの頭であろうと
刺激を与えたならば多少は働くやも知れんぞ?
敵に攻撃の暇すら与えぬよう間髪入れず高速詠唱、2回攻撃で雷を落す
麻痺によって彼奴の行動が鈍れば僥倖
魔剣の一撃は見切りで回避を試みる、が
…っくく、易々と避けられるとは思っておらんよ
四肢の一本くらいくれてやる
齎される痛みは激痛耐性で凌ぎ
この身の罅が広がろうとも、一撃の隙をつき全力魔法を叩き込もう
私も半端な覚悟で戦に臨んでおらぬでな
貴様に負ける心算なぞ毛頭ない
――己が所業を猛省し、深き海へ還るが良い



 常闇の世界には数多の吸血鬼と異端の神々が跋扈するが、この男は中でも“異端”だ。
 盤石な支配体制にあって猟兵を危険視する猜疑心然り。
 暴食のオブリビオンを指嗾し、狂える黒騎士の軍勢を差し向け、猟兵を十分に疲弊させておきながら、やっと現した影を闇に隠す――全き小胆者が、言は頗る傲慢なのだ。
 その可笑しさには多くの猟兵が失笑を禁じ得ず、夏目・晴夜(不夜狼・f00145)は人差し指を領主を向け、滑稽なアンバランスを示して見せた。
「ああ、面白いですね。その狭量さに似合わない程に態度がデカくて」
 臆病なのに一端に威嚇してみせる、今の領主に似た犬が居ると思い起こす。
『……王を示指に射るとは不遜極まる』
 これに領主が双眉を吊り上げれば、アルバ・アルフライラ(双星の魔術師・f00123)は頬に手を宛てて小首を傾げ、更なる不遜に逆撫でる。
「ほう、不遜か。性懲りなく過去より現れた老害が良く云う。
 果敢無く散るは我々ではない――貴様だ、阿呆め」
 阿呆。
 歯に衣着せぬ直截的口跡は堂々たる以上に強烈で、冠兜が無ければ領主は顔を真っ赤にしていたろう。
 手綱を握る手がギチギチと振えた――その時。
 荒谷・ひかる(精霊ふれんず癒し系・f07833)の澱み無い聲が軽やかに物騒を告げた。
「芽は摘み取る、かぁ……奇遇なんだよっ」
『奇遇――如何云う事だ』
「わたしたちも、罠を張ってまで猟兵を叩きに来るような領主……あなたみたいなのを、はやめに片付けるつもりで来たんだからっ!」
 小心にて鄙劣な、邪知深い奸雄。
 少女すら彼を「大器に非ず」と見たか、雑草を引っこ抜く様に潔く言ってのけたひかるを以て遂に嚇怒した簒奪卿は、覇者の証たる大劔を振り被り、斬撃を疾らせた。
『不届き者共。私の前に跪き、平伏し、這い蹲うが佳い』
 魔劔一閃――!
 蓋し闇に隠れて侵襲する衝撃波にも術者の姑息が見えよう。
「――うつけめ」
 端整の唇より短く鋭く痛罵を吐いたアルバは、魔力の結晶たる躰から厖大なエネルギーを溢流させると、頭上の穹窿に魔方陣を描く。
「幾らうつけの頭であろうと、刺激を与えたならば多少は働くやも知れんぞ?」
 試してみよう、と喚ぶは【雷神の瞋恚】(ディエス・イレ)。
 彼が流星の軌跡を漂わせる『星追い』を差し向けるや、魔方陣から紫電霹靂が放たれ、領主の冠兜に雷鎚を打ち落した。
『ッッ、ずっ嗚嗚――!!』
 瞬刻、闇が白んで其の瞬間を瞳に映したろう。
 激痛に身を屈める時も与えず、丹花の唇は直ぐに詠唱し、二撃目の閃雷。
『ッ、雄雄乎乎ッッ……!!』
 全身を喰い破る激痛に時を止めた領主は、晴夜が纏う空気を変えた事に気付かない。
 闇の帳に影を融かした晴夜は、凛冽なる聲のみを置いて真の姿を解き――。
「激しく動くと身体が壊れそうな上に、正直立ってるのもキツイので……私も誰かの様に霊を嗾けるとしましょうか」
 喚ぶは【芥の罪人】(アクタノザイニン)。
 妖刀『悪食』が屠ってきた数多の悪しき魂を解放した晴夜は、妖し怪し言の葉を紡いで彼等を指嗾した。
「一番頑張った霊は特別に解放してあげますよ。救いの糸が欲しけりゃ、どうぞ善行を積んできて下さい」
 時に闇の帳にきらり月白の輝きを揺らめかせるは蜘蛛の糸か。
 愕くのはその繊糸が晴夜の躰から解かれたもので、所々ほころびた箇所から、全き空洞が見える――其処に臓器は無し、糸は真白き骨格に儚げに巻き付いて躯を成していた。
 釈迦如来は悪しき魂にも善の光を視たと云うが、半ばまで瞼を伏せた晴夜が見る霊達は、軍馬の四肢を食い千切り、紅鎧に爪を立て、凡そ善行とは掛離れた仕儀に領主を脅かしている。
『なっ、んぐぉぉ嗚嗚ッッ!!』
 領主は群がる霊魂を拭い去るべく魔劔を翻し、藻掻く様に斬撃を繰り出すが、扇状に一方向へと疾走する衝撃波を注意深く観察したひかるは、或る気付きを得た。
「――距離を取れば剣撃の軌跡が見えて、戦いやすいはず」
 多角的な機動で攻撃を回避しようと、少女は再び【転身・精霊銃士】(エレメンタルアップ・ガンナー)――強化精霊銃『Nine Number』を手にオトナの女性へと変身し、風の精霊さんの支援を得て偽王の刃撃を躱した。
「精霊さん達、お願い。遠距離からでも十分に渡り合える力を貸して……!」
 飛行状態を常に維持し、接近戦を徹底して避ける。
 圧倒的斬撃も、手元から離れれば十分に回避できようが、少女は更に攻略に踏み込み、
「先ずは炎の精霊さんが作ってくれた炎弾を……っ!」
 距離がある裡は、高反動高威力の火炎弾を撃ち込んで敵を引き付ける。
 領主が幅広の剣身で其を受け止めた瞬間には、次いで反動が軽めの雷撃弾を畳み掛けて紅鎧の貫通を狙う。
「雷の精霊さんと……光の精霊さんが作ってくれた閃光弾も凄いんだから!」
『ん、おお嗚乎――ッッ!!』
 己が理想とする“十年後の自分”は、精霊銃も難なく扱える。
 次々に属性を変えて魔弾を撃ち込むひかるは、恐慌に陥った軍馬が前脚を泳がす瞬間を慥かに見たろう。
「――うん、大丈夫!」
 今だよ、しっかり! と応援する精霊達(ふれんず)に頷きながら、竜巻弾を放って距離を取る。
 反撃が及ばぬ位置から敵躯を見下ろしたひかるは、屈辱にも落馬して主廊に転がる紅鎧の騎士の嚇怒を聴いた。
『ッ、ッッ……猟兵共が生意気に楯突きおって!!』
 誅殺する! 断罪する!
 其の権能は我に在ると謂わんばかり魔劔を振えば、禍き鏖殺の波動は放射状に広がって数多の猟兵を鮮血に染める。
 圧倒的斬撃はアルバにも噛み付くが、彼は優勢を覆す致命傷だけは回避すべく、左腕を斬らせる事で残れる躯に勝機を攫ませた。
「……っくく、易々と避けられるとは思っておらんよ。四肢の一本くらいくれてやる」
 双星の魔術師は偽王と違って気前が佳い。
 いや、命の天秤の傾きを怜悧に見られるのが彼だろうか――アルバは龍尾と疾る激痛が我が身に罅を広げていく惨憺を呑みつつ、渾身の魔力を漲らせる。
「私も半端な覚悟で戦に臨んでおらぬでな。貴様に負ける心算なぞ毛頭ない」
 必ずやオブリビオンを屠る。
 其の為に研鑽した禁呪魔術は絶巓に達し、その深淵も視たろう。
 闇に浮かび上がる麗顔は、息も止まる程の殺気を迸らせて煌々と耀き、
「――己が所業を猛省し、深き海へ還るが良い」
『ッ……ッッズァァア嗚呼嗚呼ッッッ!!
 魔力の狂濤が紅鎧を押し込み、その堅牢を破って歪め、拉げさせる。
 内部に巡る激痛は幾許か、主廊に轉回った領主は魔劔の鋩を床板に突き刺し、辛うじて流されずに済んだが、今度は執拗に群がる悪しき魂が鎧の継ぎ目より侵襲し、全身の肉を喰い破る。
『んぅぉぉおお雄雄乎乎!!』
 術者を斃せば悪霊は消えるか――否。
 彼等を妖刀に喰らわせた晴夜こそ御し難いとは、直ぐにも庇い出る傀儡が証しよう。
 戦闘特化型絡繰り人形『優しく可愛いニッキーくん』は、全き純粋なる心を以て、己が精悍に刃撃を抱き締め、そのまま鯖折りにする。
 衝撃の余波に月白の髪を梳られた主は、その愛し凶悪を褒め、
「流石ニッキーくん、デカくて格好良くて可愛いです!」
 褒められたニッキーくんもムキッとポーズ。
 ならばと悪しき霊達も奮闘するが、それには冷儼の聲が刺さって、
「あ、事が終われば霊は一匹残らず妖刀の中に戻って下さい」
 えっ。
「胃の中に戻って頂きます。蜘蛛の糸とはぷつりと断れるものなので」
 えっえっ、と魂達が二度見するが、畢竟、彼等も犍陀多を超えられぬし、何より晴夜は釈迦ではない。
 霊達が意気沮喪して戻った頃には、ズタズタになった領主が主廊に転がっており、拉げた冠鎧の下で悪罵していたが、くぐもった声では聴こえぬと、晴夜は狼耳も蹴立てぬ儘、冷然に組み敷いた。
「生きている者は誰にも支配できません。ましてやオブリビオン如きが命を真に支配できるはず無いでしょうが……。この世界の常闇にも、いずれ夜明けの光が差します」
 既に民が可能性を、光を見出しているのだ。
 晴夜は然う言うと、然程感情を浮かべぬ端整にいつも通りの言を添えて、
「あと、動き回れるいつものハレルヤの姿がやっぱり至高ですね」
 うむり、満足に到った彼は、「後は任せる」とばかり、ひかるの冴撃を見届けた。
「――精霊さん。わたしと一緒に、全てを終わらせよう」
 風の精霊に加護された凄艶が、銀糸の髪を靡かせて宙空を駆る。
 狙いは精確精緻に、主廊を転輾つ領主に照準を絞って――銃爪を引く。
 闇の帳に僅かに火花を散らせた其は、七色に耀く光弾で、美し光粒子に軌跡を描いた一発が、慥かに冠兜の隙間へと飛び込み――眉間に沈んだ。
『……ォォォオオオヲヲヲ雄雄乎乎ッッッ!!』
 時に佳聲は叫喚を潜って凛然と、
「世界は光と闇、両方のバランスが整ってこそ。
 強すぎる闇は、淘汰されないといけないんだよっ!」
 其は光と闇の精霊と関わった――いや、遍く属性の精霊と親交を深めたひかるならではの言だったろう。
 瞬刻、聖堂が今際の絶叫に揺れ、闇の帳が切り裂かれる。
 間もなく訪れた光は、ダークセイヴァーらしい陰鬱さを漂わせていたが、長く闇の中に在った猟兵には、頗る眩く感じられたろう。
 ――常闇が掃われる日が来るとすれば、民も今の様に瞳を細めるだろうか。
 領主の死を見届けた猟兵らは、必ずやその日が来ると信じつつ――今は安堵と困憊の交じる溜息を聖堂に溶かしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月23日
宿敵 『悪食の断片』 を撃破!


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#ダークセイヴァー
#夕狩こあら
#悪食の断片
#怪物に堕ちた黒騎士の群れ
#真紅の傀儡騎士


30




種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は宇冠・龍です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

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※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
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 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はモリオン・ヴァレーです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


挿絵イラスト