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我が武の真髄、ここにあり。

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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「サクラミラージュという新世界が発見され、さっそく我々グリモア猟兵にも彼の世界の予知が届いている」
 そう言ながら都の地図をホワイトボードに張り付けているイライザ・フェブルウズ(この手が届くのなら・f21893)は険しい目で猟兵たちを見つめる。別に不機嫌というわけではない。目つきが悪いだけだ。
「どうにもこの世界のオブリビオンは影朧(かげろう)と呼ばれていてな。力は今までの強力なオブリビオンに比べると少々弱いものが多いそうだ」
 ただし、とイライザは言葉を付け足す。
 いくら弱いオブリビオンが多いとはいえ、強力な個体が発生しないとは限らないのだ。今回発生したオブリビオンもまた決して弱いというわけではない。
「影朧の大量発生によって、現地の対策組織では対処しきれず廃棄された場所。今回の依頼はそんな対処しきれない影朧が集まって生まれた『逢魔が辻』で戦うことになる」
 イライザは地図の一角に赤いマグネットを張り付ける。その場所は参拝客が来なくなって久しい寺だ。美しい幻朧桜に彩られた本殿の壁は所々が剥がれ落ち、屋根瓦も割れたり紛失したりで屋根としての機能はもうない。
 そんな本殿の中で老人の姿をした影朧を確認したのだ。
「事前の調査によれば、討伐対象の影朧は延々と逢魔が辻で技を磨いているということなのだが、何をきっかけに外へ出てくるかわからない。なので先手を打つこととなった」
 逢魔が辻の内部は、討伐対象以外にも修行相手になっていた多数の影朧がひしめいている。すでに確認できている影朧も墓石やガトリングガンが融合したような奇怪な姿をしている。数が多いだけの雑魚と油断してはいけない。本殿に行くまでにこのような影朧を含めた数回の戦いがあるとみて構わないだろう。
 そこまで説明した後、イライザは表情をさらに険しくする。
「本殿の影朧は一部の地域では、今でも語り継がれる武人としてそれなりに有名な存在だったらしい。長い歴史の中で誇張されている可能性はあるが、それだけ長く人々の記憶に残っているということは、それだけ実力があった証拠ともとれる」
 雑魚を一掃して慢心し、本命で痛い目を見てしまっては本末転倒である。さらにこの世界での猟兵は『影朧事件を立ちどころに解決する超弩級戦力』と認識されている。無様をさらして期待を裏切ってしまうのも良くない。
「それともう一つ」
 付け足すように言われた最後の情報は、ある意味で今までの世界ではありえないことであった。
 影朧は傷つき虐げられた者達の『過去』から生まれた不安定な存在なためか、荒ぶる魂と肉体を鎮められた後、癒やしを受けることで『転生』できるとのこと。
 自我の薄い雑魚どもは転生できないようだが、強力な個体は転生という形で救済できる可能性がある。
「今回の討伐対象が転生できるかは未知数だが、ただ戦うのではなく、その魂を鎮めるように説得を試みるのもまた一つの手なのかもしれないな。それでは転送を始める。参加してくれる猟兵は前に出てくれ」


札付ノワール
 新世界は桜舞う大正ロマン! 札付ノワールです!
 とは言っても今回の依頼は大正ロマンって感じはあんまりないんですけどね!
 では今回の依頼の補足ですが、

 第1章及び第2章は雑魚影朧が相手の集団戦。
 第3章は一部では有名な武人を相手にしたボス戦。といった感じ。

 OPでも書きましたが、影朧はその魂を鎮め癒すことで転生が可能らしいです。
 なので『一方的に叩きのめす』というプレイングでもいいのですが、それ以外にも『影朧の魂を鎮め救済する』というプレイングがあっても構いません。もちろんなくても構いませんよ。
 それではみなさんのプレイングをお待ちしております!
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第1章 集団戦 『古塚の呪い』

POW   :    百手潰撃
レベル×1tまでの対象の【死角から胴から生える無数の腕を伸ばし、体】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    百足動輪砲
【両腕の代わりに生えたガトリング砲】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【銃弾の嵐】で攻撃する。
WIZ   :    百足朧縛縄
【呪いに汚染された注連縄】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちが目的の場所へ到達した刹那、周囲の墓や打ち捨てられた武器が不気味に動き出した。それは絡み合い混ざり合い、時代を問わぬ武器と素材で構成された体を持った奇怪な影朧となる。
「邪魔ぁ……するなぁ……」
 かすれるような声で影朧は猟兵たちの前へと立ちふさがる。
 まずはこの者たちを蹴散らさなければ先へ進むなどできそうにない。
 猟兵たちよ、奇怪な物の怪にその武を示し、最奥の影朧への道を拓け。
劉・涼鈴
ぃやっほー! ダンジョン攻略だー!

ダー!っと突っ走って(ダッシュ)、途中に落ちてる墓石だとか瓦礫だとか拾ってぶん投げる!(投擲)
自我が薄いなら、飛んでくるのを反射的に迎撃するんじゃないかな! それに気ぃ取られてる隙に距離を詰めるぞ!
おりゃおりゃおりゃー!

【グラップル】と【踏みつけ】でぶん殴って蹴っ飛ばす!
うおー! 腕がいっぱいだー! 百人組手みたいっ!

捕まっちゃったら、叩きつけられる瞬間に、【怪力】で地面に向かって覇王方天戟をブチ当てて【グラウンドクラッシャー】!!
叩きつけるつもりだった地面をぶっ壊してスカ振りさせて、体勢を崩したトコで腕をぶっ千切って脱出!
方天戟をブッ刺してやる! どりゃー!



 終わらない桜吹雪の中、廃れた神社へ向かう砂利道を走る赤い影。
 牛のような角に目を惹く赤いチャイナドレスを身に纏い、その小さな体では到底扱いきれそうにない長大な武器――覇王方天戟を軽々と片手に持ちながら劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)は殺意を隠そうともしない古塚の呪いたちへと向かい走る。
 赤い甲冑のようなものを纏い、両腕はガトリングガンに変じた異様な姿の怪物はその照準を涼鈴へとむける。このまま一斉掃射されればいかに長大な覇王方天戟でも防御しきることは難しい。当然涼鈴もそのことを理解してか、それとも野生の勘による行動か、足元にある放置されている墓石を空いた手で掴むとまっすぐに古塚の呪いたちへとブン投げる。
 よりわかりやすい脅威に反応した古塚の呪いは、先に投擲された墓石を銃器で破壊し、続いて涼鈴を狙おうとするが、自身の破壊行動によって砂埃が舞い上がり視界をわずかにだが遮る。
 銃器と融合した腕を使って砂埃をかき消せば、その眼前には新たな墓石。それだけでなく周囲の瓦礫や手ごろな大きさの石を涼鈴はかたっぱしに投げまくっていたのだ。
「おりゃおりゃおりゃー!」
 こんなことをされれば古塚の呪いたちは走り迫る涼鈴よりも飛来する石や瓦礫へと意識が集中する。銃弾の雨は隙間なく飛来する物を悉く撃ち抜き破壊し、先ほどよりも大きな砂埃で周囲の視界は完全にふさがってしまう。
 戦闘に対するしっかりとした経験や知識があれば、この行動によって不利になるのは自分たちだということを、自我の薄い古塚の呪いたちは気づけなかった。良くも悪くも『目の前の脅威を排除する』事にしか意識を割けなかったのである。
 そして涼鈴は古塚の呪いを自身の間合いの内に捉えるも身長が年の割に小さい彼女では顔や胴体といった有効なダメージを与える部位は位置が高すぎる。安易に跳躍して近づけば先ほどの墓石や瓦礫のようにハチの巣となっていただろう。そこで涼鈴が取った手段は単純だった。
 方天戟を振るい、足払いのように古塚の呪いのムカデのようになった半身を薙ぎ払う。バランスを崩し顔や胴体の位置が下がれば、涼鈴の超人的な怪力が炸裂する。
 岩をも砕く涼鈴の拳が、体勢を崩され防御ができない古塚の呪いの頭部に繰り出される。強烈な一撃に巨大な古塚の呪いの体が砂利道に叩きつけられる。その隙を逃さず、涼鈴は傷ひとつない綺麗な脚を振りかぶり鞭のようにしならせて蹴りを放つ。
 実は中身がスカスカで軽いのではないかと思われるほど簡単に空を舞い、再び地面に叩きつけられるも、その音は明らかに超重量の物体が起こす音である。大きな衝撃に空気もわずかに震える。
 満足げにそれを眺める涼鈴。だがその後ろには新たな古塚の呪いが彼女の隙を狙って赤い甲冑から突如伸びた無数の腕を放っていた。
「うおー! 腕がいっぱいだー! 百人組手みたい!」
 襲い来る多数の腕を方天戟で払い、蹴りで遠ざけ、拳で応戦する。しかし、さすがにすべての腕を対処するには手数が足りず、攻撃の合間に生まれたわずかな隙を突かれ涼鈴の右足が捕まってしまう。
 これ幸いと、古塚の呪いは大きく涼鈴を掴み上げ、これまでの恨みを叩きつけるように力を込めて地面へと振り下ろす。直後に大きな衝撃音が響き渡る――しかし手応えがない。
 なぜなら涼鈴は地面に叩きつけられる前に方天戟の強烈な一撃によって地面をえぐり、強引にたたきつけを回避していたのだ。しかも違和感に動きが鈍ったわずかな時間に拘束していた腕を方天戟で斬り裂き、必殺の一撃を見舞わんとしていたのだ。
「どりゃー!」
 全力で突き出された覇王方天戟は古塚の呪いの露出した胴体を貫く。引き抜いた涼鈴は背を向けて歩き出す。
 体を震わせながら、古塚の呪いは再び涼鈴へ襲い掛かろうとするがもはや限界を超えたのだろう。そのまま大きな音を立てながら倒れ伏す。
 勝利を確信した涼鈴は満面の笑みを浮かべ、砂利道の奥へと走っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リア・ファル
アドリブ共闘歓迎
SPD

負の呪念っぽい感じ?
この影朧も払えば転生できるのかな……?

お寺の構造物を盾にしつつ、『制宙高速戦闘機イルダーナ』で距離を取る
(操縦・逃げ足・時間稼ぎ)
相手の武装を解析演算
弾の威力、銃口、金属強度…etc.

「それじゃボクはコレで行こうか」

『コードライブラリ・デッキ』から
着弾後、瞬時に硬化する液体金属弾を精製
『セブンカラーズ』でガトリング砲を狙撃!
(部位破壊・スナイパー)
銃口を覆うように金属硬化して、撃ったら暴発する寸法さ
「無理すると危ないよ?」


着弾後は一気に接敵し、
「破魔」属性を付与した『多元干渉デバイスヌァザ』で斬りつけていく

「それじゃあ、転生できたらまた会おうね」



 ウェーブのかかった髪、猫耳のようなインカムと、白を基調とした奇抜なレイヤーを着こなす少女。リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)は愛機の『制宙高速戦闘機イルダーナ』の座席にまたがりながら、古塚の呪いたちが警戒する場所より少し離れて様子を見ていた。
「負の呪念っぽい感じ? この影朧も払えば転生できるのかな……?」
 できるにせよできないにせよ、まずは彼の者たちを撃破しなければ始まらない。リアはバイクのハンドルに力を籠め、颯爽と古塚の呪いたちの前へと躍り出る。
 速度をあげながら近づいてくるリアに、古塚の呪いたちはすぐさま反応し、両手に備わるガトリング銃を向けて一斉に撃ち始める。それは文字通りの弾丸の嵐となってリアと彼女の操るイルダーナへと迫る。
 リアはハンドルを切って方向転換、迫りくる銃弾の雨を避けて墓石や瓦礫を盾にして攻撃をやり過ごす。しかし古塚の呪いたちはリアが盾にする構造物ごとリアを撃ち砕かんと銃撃をやめない。次第に瓦礫は砕かれリアの姿が露わになるもイルダーナを走らせて再び銃撃から逃れる。
 慌てた様子もなくリアは自身へと迫りくる銃撃を見据え、その武装の解析を行っていた。弾の威力、銃口、金属強度、その他様々な情報をさらし続ける古塚の呪いたち。よもや攻撃すればするほど自分の手の内を読まれるとはつゆとも知らず、馬鹿の一つ覚えのように銃撃を続ける。
「知能はそれほど高くないみたいだね」
 自我が薄く、目の前の脅威に対してしか反応しないという明確な弱点をリアは早々に見抜き、そのために必要な手段を模索する。一つの答えにたどり着き、リアはありとあらゆる情報を集めた記憶媒体『コードライブラリ・デッキ』を取り出して、とある弾丸を精製する。
「それじゃボクはコレで行こうか」
 再び古塚の呪いたちの前へと躍り出たリアは、銃撃の体勢に入った古塚の呪いに対して、リボルバー銃『セブンカラーズ』で銃口を狙撃する。その弾丸は着弾し破裂すると粘度の高い液体が飛び出して銃口を覆う。
 銃撃を避けながら、リアは次々と自信を狙う古塚の呪いの腕に向けてセブンカラーズを撃ち続ける。傍目にはよくわからん液体をつけられただけで撃つこと自体に問題はない。そう判断した古塚の呪いは構わずリアへと銃口を向ける。
「無理すると危ないよ?」
 その言葉を無視して引き金を引く――と同時に爆炎に包まれる。
 先ほどの液体は着弾後すぐに硬化する液体金属弾であり、塞がれた銃口で無理に撃とうとすれば当然暴発し、自身の体を焼くことになる。同時にいくつもの爆発が起こる中、リアはイルダーナで一気に距離を詰めて魔剣型デバイス『多元干渉デバイスヌァザ』を抜き放ち、体を覆う赤い甲冑のような装甲ごと一太刀で切り伏せる。その刃には電脳魔術によって破魔の力を与えられており、ヌァザの一撃を受けた古塚の呪いはその魂を浄化されてこの世から消え去る。
 両腕を爆発で焼かれ、銃撃を封じられた他の古塚の呪いたちはその重量を活かして鈍器のようにガトリング銃を振るってリアに襲い掛かる。だがイルダーナで小回りの利くリアの動きに翻弄され、振るった剛腕は他の個体を叩き伏せ、ヌァザによる決定的な一撃を受ける隙を生み出してしまう。
 数が減り同士討ちが起きなくなった後は、勢い任せにリアを狙うがそれもまた無意味に空を切る。リアはヌァザで大立ち回りを繰り広げながら、古塚の呪いたちの剛腕による攻撃すらも解析し
仮想領域内で何度も模擬演算が行っていたのだ。
「限定状況を入力(インプット)、予測結果を反映(フィードバック)。 ―その一撃は、もう『知ってる』よ―」
 遠距離による銃撃を無効化され、近距離による攻撃も解析によって予測され、古塚の呪いたちの放つ攻撃はたった一人の少女によって完封されていた。
 最後の一体をヌァザの刃にて斬り捨て、リアは周囲の敵がいなくなったことを確認するとイルダーナを止める。
「それじゃあ、転生できたらまた会おうね」
 そんな言葉を残し、リアはイルダーナを再び走らせるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
転生とはまた、オブリビオンも色々ですね。
ですが私には戦う事しかできません。
癒しは他の方にお任せしましょう。

さて、接近戦主体の私に対して敵は随分と怪力の様ですね。
それも死角から、となれば【第六感】を働かせて回避するのが一番でしょう。
可能ならレイピアに【破魔】の力を込め【カウンター】で腕を切り払ってもいいですね。
ですが無数に生える腕を斬っても大したダメージは与えられないでしょう。
邪魔な腕の無い部分を作っておいて、そこから胴体をユーベルコードで断ち斬るとします。
【早業】で倒し、追撃されたり他の敵に攻撃されたりしない様にしたい所です。



「転生とはまた、オブリビオンも色々ですね」
 本殿への道を遮る異形の怪物――古塚の呪いを前に、長い黒髪と軍服の少女、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)はサムライエンパイアで鍛え上げて作成したレイピア――リトルフォックスを構え、古塚の呪いへと走りだす。
 癒しを受ければ輪廻の環へと還り、再びこの世界で生を受けるというサクラミラージュ独特の転生という概念に驚かされながらもハロの想いはただ一つ。
 眼前の敵を屠るのみ。
 剛腕を振るって走り迫るハロを迎撃せんとする古塚の呪いだが、速さと小さな体躯を活かして攻撃をやり過ごす。すぐさまハロは攻撃の隙をついてリトルフォックスで一突き。
 するとその場所からひびが入り、古塚の呪いを赤い甲冑のような装甲ごと両断する。刺突武器のレイピアであっても、猟兵の力にかかればこのように小さな力でも大きな敵を屠ることができる。
 目の前で同類が倒れたのを見てか、他の古塚の呪いは甲冑から無数の生気のない腕を伸ばしてハロへと襲い掛かる。迫りくる生気のない腕を回避し、隙をさらした腕にリトルフォックスを突き刺して切り払う。
 思っていた以上に個々の力が弱いな、と考え始めたハロであったが、突如彼女の死角から腕が飛び出してハロの体を掴もうと伸びてくる。
 長年戦いを続けてきたが故の第六感というべきか、とっさにリトルフォックスを振るって死角から迫っていた腕を斬り裂く。思わぬ反撃を辛くも退けたハロは、視覚からの攻撃も警戒しながら古塚の呪いが放つ腕を迎撃する。
 時には突き刺し、時には破魔の力で浄化する。一見すると古塚の呪いが行う怒涛の攻撃に押されているように見えるがそれは違う。
 体を揺らし、あえて隙をさらし、古塚の呪いたちの攻撃を自身の思うように誘導する。敵が多少なりとも考える知能を持っていればハロの行動に違和感を覚えたのかもしれない。
 だが自我は薄く、目の前の脅威にしか対応できない古塚の呪いたちではハロの意図を読み切って警戒するなどできなかったのだ。
 隙間なく放たれたように見えた無数の腕は、ハロに誘導され大きな空間を生み出してしまう。その空間に向かい、ハロは跳躍して入り込み、古塚の呪いを間合いの内側に収める。
 腰を落とし、目標を見据え、全身をバネにして黒き一閃が放たれる。
 リトルフォックスで貫かれた古塚の呪いは甲冑ごとその体を両断され、大きな音を立てながら倒れ朽ちる。再び一撃で同類をやられても古塚の呪いたちは本殿へ向かう存在を妨害し、排除する。与えられた役割をこなすことしかできない悲しい怪物。
 そんな古塚の呪いにわずかにだが憐れみを抱いたハロは、この世界では当たり前な転生の概念を思い出す。
 そう、ただ倒して骸の海へ還るわけではない。この世界には悲しき影朧を癒す存在がいるのだ。
 ならばこそ憐れみは不要。斬り伏せ、倒すことが何よりの救いかもしれない。
 ハロはそうやって結論付け、あきらめず襲い掛かる古塚の呪いたちへ再び剣を向ける。
「私には戦う事しかできません。 癒しは他の方にお任せしましょう」
 それが救いになるのだと信じて、ハロは哀れなる怪物へ自身の剣技を遺憾なく発揮していく。
 しばらくして、ハロの周囲にいた古塚の呪いたちはすべて倒れ伏していた。
 一瞬の黙祷をささげ、ハロは次なる戦場へと向かう。
 自分にできること、迷いなく全力で戦うために。

成功 🔵​🔵​🔴​

雪華・風月
ふむ、ふむ!
影朧とて技を磨きますか!いや、結構!大いに結構!
やはり人たるもの向上心は大事でありますよね!影朧ですが!


そして武人と聞けば胸が躍らないわけがないでしょう!
彼の魂を鎮めるついでに少し手合わせを願いましょう!!



まぁ、その前にはこの目の前の影朧が邪魔ですね
ここで倒させて頂きます
相手の注連縄を避けて逆にこちらが影縫いで動きを封じさせて頂きましょう
その間に雪解雫で体の節、柔らかい所を狙って斬らせて頂きます


桜散り、また巡りて、桜咲く…
転生できたのならまたお会いしましょう(納刀)



 風と共に桜吹雪が舞い、辺りを美しく彩る。
 そんな桜の花吹雪の中に立つシンプルな剣道着に身を包んだ黒髪の少女、雪華・風月(若輩侍少女・f22820)は少々興奮気味に本殿への道を歩いていた。
「ふむ、ふむ!  影朧とて技を磨きますか! いや、結構! 大いに結構!」
 影朧救済機関『帝都桜學府』に属する學徒兵の風月は、最近現れた他の世界の猟兵より影朧という存在を深く知っていた。だからこそ、他者を害することなく自身の技を磨き続ける今回の討伐対象がより珍しく感じるのだろう。
「やはり人たるもの向上心は大事でありますよね! 影朧ですが!」
 影朧でも元は人の場合もある、一部の地域で有名だった武人という事前情報はまだまだ修行中な風月から見れば多くの事を学べる好機であり、さらに言えば――。
「そして武人と聞けば胸が躍らないわけがないでしょう!」
 単純に強者との戦いを楽しむ戦闘好きな部分が多い様だ。武者震いに体を震わせ、風月は逸る気持ちを抑えつつも徐々に早くなる歩く速度に気づくことはなかった。
 ある程度砂利道を歩き、風月はその歩みを止める。その先には赤い甲冑のような装甲を纏い、両腕をガトリング銃に変異させた異形の怪物が闊歩していた。どう見てもこちらの進行を妨害するように展開されている怪物――古塚の呪いを前に風月は落胆のため息をつく。
「邪魔ですね。ここで倒させて頂きます!」
 古塚の呪いの前へと走り出す風月。そんな乱入者に気づいた古塚の呪いたちは、向かってくる脅威に対して自身の体に巻き付けられた注連縄をほどき、まるで意思を持った存在のようにゆらゆら蠢きながら風月をからめとらんと襲い掛かる。
 直線の軌道で迫る注連縄を風月は、ひらりひらりとまるで蝶が舞うかのように回避していく。それはまるで桜と共に舞い踊るかのように可憐で美しさを思わせるものだった。
 しかし自我の薄い古塚の呪いたちはそんな幻想的な風景に目移りどころか全く意に介さず攻撃を続ける。風月も何度か繰り返される注連縄の攻撃をほぼ完全に見切り、張り巡らされた注連縄の上に乗り、そのまま走り出して古塚の呪いへの距離を詰める。
 だが、この判断が風月にとっての過ちであった。注連縄に触れた部分から黒い煙のようなものが噴き出し、徐々に風月の体を侵食していったのだ。このままではいけない。そう感じた風月はすぐに注連縄より飛び退いて事なきを得る。
 危うく汚染された注連縄からどんな効果があるのかもわからない呪いを受けるところであった、と風月は背中に冷や汗が流れるのを感じていた。
 油断があったわけではないが、先に待つ武人との戦いに気持ちが逸りすぎていたのだろう。目の前の敵から目を逸らしてしまった愚行に、風月は気持ちを入れ替えるように両手で自身の頬を叩く。
 ジンジンと響く頬の痛みに気持ちを新たにした風月は再び古塚の呪いへと走りだす。もちろん反撃のため古塚の呪いたちも注連縄を操って風月に襲い掛かる。
 下手に触れれば呪いによって重大な被害を受ける可能性がある。風月は細心の注意を払って注連縄を避け、跳び、走って古塚の呪いたちへの距離を詰めていく。
 さすがに注連縄の攻撃だけでは仕留めきれないと判断したのか、古塚の呪いは迫りくる風月へガトリング銃となった剛腕を振り上げて叩き潰そうとする――が、そこで古塚の呪いは動きを止める。
 その足元、古塚の呪いの影が生まれている場所に黒塗りの短剣が刺さっていた。この短剣自体に特別な効果はない。だがそれを桜學府の生徒が放てば強力なユーベルコヲドとなる。
 短剣が刺さった場所に影を縫い付ける。影と体は常に同じ動きとなるため、ユーベルコヲドによって縫い付けられた影の形から動くことを封じられたのである。風月は漫然と攻撃を避けていたのではなく、この短剣――黒塗を目立たないように投げ放ち、古塚の呪いたちの動きを止め制圧しようとしていたのだ。
 目論み通りに風月の邪魔をする存在はすべて動けなくなった。速度を上げ、互いの距離は至近の物となる。
 抜き放った愛刀『雪解雫』が反射し、いくつもの軌跡となって描かれる。正確に、確実に、装甲の薄い場所を何か所も斬られ、古塚の呪いたちは影縫の効果が切れると同時にすべて倒れ伏す。
「桜散り、また巡りて、桜咲く…。転生できたのならまたお会いしましょう」
 鎮魂の一句を読み。風月は次なる戦いの場へと、その足を進めるのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
事前の説明によれば、これは転生の能わぬ影朧と思っても宜しいでしょうか。
そうでもなくとも、問答無用で襲われては何が癒しとなるかの糸口も無し。

ならば、全力で挑む事で餞とさせて頂く。

◆戦闘
一体一体に時間を掛けていては圧し潰される懸念があります。
素早く挑みましょう。

抜刀しながら駆け寄り、此方を狙う腕の気配を【見切り】、二刀の構えで切り払わせて頂く。

【衝撃波】と【2回攻撃】で一掃した後は本体に接近し、全身の【怪力】を込めた【鎧砕き】の打ちで両断させて頂く。

当流の基礎にして奥義、【鞍切】。
この先に待つ武人にも披露する為、今はこの場を切り抜けてみせましょう。

他の猟兵との共戦や援護など、必要とあれば助太刀を。



 桜舞う美しい風景の中。白黒二色の首巻を風にたなびかせ。藍染めの具足を纏った侍が降り立つ。真一文字に結ばれた口と、曇りなき眼で古塚の呪いたちを見据えるその姿は実直で誠実な印象を与える。
 鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は愛刀に手をかけながら、事前に聞いていた話の内容について思案していた。
「これは転生の能わぬ影朧と思っても宜しいでしょうか」
 自我が薄く、自発的に行動する素振りも見せず、適当な石片を投げ込めばまるで機械のように迎撃して再び何もせず周囲を警戒するだけ。とてもではないが転生が叶うとは思えない薄っぺらい存在だ。だが、例えどのような影朧でも転生が可能だとしてもその魂を癒す糸口がわからなければどうしようもない。
「ならば、全力で挑むことで贐とさせて頂く」
 抜刀して走り出す。時を置かずして何体もの古塚の呪いが景正を見やり攻撃を始めんと剛腕を振り上げる。数も多く、それぞれが巨体を生かした攻撃を繰り返せばいかに弩級戦力とされる猟兵でもひとたまりもない。このような場所で手古摺っていては、この先にいるという武人の影朧にある意味で申し訳が立たないというもの。
 これぐらいは簡単に乗り越えなければ、と景正は気合を新たにして振り下ろされる剛腕を最低限の動きで回避する。景正は刀を握る手に力を籠める。
 だが、景正は死角から忍び寄る気配を察してその場を跳躍して離れる。すぐさまその場所にはまるで亡者のように生気を感じない無数の手が伸びて景正を捕まえようとしていた。この手に捕まってしまえば間違いなく古塚の呪いの誇る剛力で以て甚大な痛手を受けてしまうだろう。
 思っていた以上に面倒な手を使う古塚の呪いに、薄っぺらい存在だと揶揄したことを訂正する。眼前の敵はまさしく脅威足り得る存在だ。
 景正は更に一振りの刀を抜き、二刀の構えをとる。そして再び景正を捕らえんと、古塚の呪いたちは先ほどのようにいくつもの剛腕と触腕による攻撃を放つ。何体もの古塚の呪いが繰り出す圧倒的な暴威を前にしても、景正の表情は揺るがない。
 一太刀振るい、触腕が衝撃で千切れ飛び、対の二太刀で剛腕を逸らす。攻防一体の二刀流は隙間なく迫る暴威の悉くを弾き、払い、切り伏せる。衝撃波を伴う反撃に古塚の呪いは体勢を崩され、その瞬間を景正は絶好の機会と見る。
「――鞍馬の名にかけて、貴様を斬る」
 次の瞬間、景正に最も近い古塚の呪いが両断され、勢いを殺しきれずにほかの古塚の呪いを巻き込みながら大きく吹き飛ばされる。それだけで終わらず、景正の放つ必殺の斬撃は次々と周囲にいた古塚の呪いたちを赤い甲冑のような装甲の上から一刀に斬り伏せる。
 流派の基礎にして奥義たる一撃――『蔵切』
 まっすぐに、他に何があるというわけではない。ただまっすぐに斬る。それが蔵切。
 単純ゆえに防御も回避も意味をなさない神速かつ絶対の一撃は、その威力を遺憾なく発揮し、赤い甲冑を両断する。
 攻撃も無意味、防御や回避も無意味。古塚の呪いたちは手詰まりとしか言いようのないこの状況でもまだ景正の排除をやめようとはしない。
 それはただの機械的な反応なのか、それとも彼らなりの想いに基づいた行動なのかはもうわからない。こちらを排斥する言葉のみを発し、その真意を語らぬ怪物たちはなぜここまでされても戦うことをやめないのか。それは景正の周囲からすべての古塚の呪いが斬り伏せられてもわかることはなかった。
 刀を鞘に収め、景正は歩き出す。
 この先に待つ武人は、どのような思いで逢魔が辻に引きこもり技を磨き続けるのか。そんな武人に付き従う彼らはどのような想いであったのか。答えを得られるかはわからなくも、進まなくては何も得られないのだ。

成功 🔵​🔵​🔴​

天野・白蓮
(アドリブ連携絡み歓迎)
(SPD)
ちぃと遅れたが、この學徒兵・白蓮も参戦よ。
退け影朧共、死にたくねぇなら道開けな!
…って言って退いてくれりゃあ、学徒も苦労しねぇよなぁ。
じゃあ仕方ねぇ、押しとおる!(二刀の木刀を構え)

「がとりんぐ」なんて撃たせねぇ、『先制攻撃』と『早業』で
間合いを詰めて『二刀流』の『乱れ撃ち』と『破魔』で
雑魚共を斬り捨てる
狙いを定めない様な鉛玉は『舞踏(ダンス)』で華麗に避ける!

「學徒兵の舞踏(武闘)、舐めてかかると怪我じゃ済まんぜよ!」

粗方数を潰したら、残党は後詰に任せて俺は奥の首魁に向かうぜよ!



 長い黒髪を風にたなびかせ、自信に溢れた笑みを浮かべ、天野・白蓮(『帝都』を守護する一振りの金剛・f22771)は本殿へと続く砂利道を進んでいく。その姿は優雅、かつ勇壮。白蓮の周囲に舞う桜も彼の引き立て役に過ぎず、それはまるで歌劇の一幕のようだ。
「ちぃと遅れたが、この學徒兵・白蓮も参戦よ」
 腰に差した二刀を抜く。さらされた刀身は彼の姿に似合わぬ武骨な木で作られたものだった。それは神仏や精霊が宿る刀でもなく、科学の粋を集めた光放つ銃でもなく、多種多様な武器がある中においてあまりにも脆弱なただの木刀だった。
 白蓮の姿に気づいた強大な百足のような怪物――古塚の呪いは変異した両腕のガトリング銃を構え、侵入者である白蓮へと銃口を向ける。
 次の瞬間、古塚の呪いの視界から白蓮の姿は消え去り、自身の足元で木刀を振りぬこうとしていた。ただの木刀であればいかに猟兵と言えど――否、常人を超える膂力を持つ猟兵が振るうからこそただの木刀ならば為すすべなくへし折れるだろう。
 だがどういうことか、空気を割く音もなく振るわれた木刀は、へし折れるどころか曲がることもなく赤い甲冑のような装甲を苦もなく斬り裂いたのだ。その断面もまるで稀代の刀工が鍛えし名刀によって両断されたのかと見まがうほどの美しい切れ味をしていた。
 重ねて言うならば、白蓮の持つ木刀は何の変哲もないただの木刀だ。それを稀代の名刀のように振るえるのはまさしくこの男、天野・白蓮の技量ゆえに他ならない。
「退け影朧共、死にたくねぇなら道開けな!」
 自信に溢れた笑みを浮かべたまま、白蓮は古塚の呪いたちへと宣言する。間違いなく白蓮の技量をもってすればいかに強大な古塚の呪いたちであろうとも容易く屠ることが可能であろう。
 だがそのような脅しが通じる相手でも、彼我の戦力差に絶望して逃げだせるほど、古塚の呪いたちは甘い存在ではない。自我が薄いということは、恐怖を感じぬという事。死の恐怖もなく朽ちるまで戦い続けるというのはそれだけで十分すぎるほどの脅威なのだ。
 一向に退く様子はなく、ガトリング銃を構える姿を見据え、白蓮は容赦は不要であると察する。
「じゃあ仕方ねぇ、押しとおる!」
 言い切ると同時に再び白蓮の姿は掻き消え、既に古塚の呪いの足元で木刀を構えていた。圧倒的速度と技量に、また一つ古塚の呪いが両断される。その合間にも他の個体は白蓮をハチの巣にせんとガトリング銃を乱れ撃つ。それはまさに隙間なく降る銃弾の雨。
 撃つ前に間合いを詰められるのならば、その前に圧倒的物量で面制圧を行いすりつぶす。単純にして非常に有効な手段だった。
 だが次の瞬間にはガトリング銃を撃っていた古塚の呪いがまた倒れ伏す。それに反応して視線を向けて銃を放つが、盲撃ちを繰り返すだけでは白蓮に意味はない。
 達人の域を超え、もはや神業と言えるような美しく激しい舞がそこにあった。高次元で融合した剣術と舞踊の合わせ技であり、近づく者はその美しさに魅了され気づかぬ間に細切れにされるであろう。
 帝都式二刀術・連殺舞踏。
 そう名付けられた戦闘術は、狙いを定めない鉛玉などでは止まらず、無粋な観戦者を冥府へと誘うだろう。舞踏にして武闘の真髄を見せつけるように、古塚の呪いをまるで紙吹雪が舞うように斬り捨てていく。
「學徒兵の舞踏(武闘)、舐めてかかると怪我じゃ済まんぜよ!」
 そうしてただの木刀を名刀にまで昇華させ、美しき舞踏を洗練された武闘と融合させた美しくも激しい戦闘術は瞬く間に古塚の呪いたちを殲滅せしめたのである。
 静かになった砂利道で舞を止めた白蓮は再び歩き出す。
 その表情は戦う前と同じように黒髪を風にたなびかせ、自信に溢れた笑みを浮かべ、本殿へと続く砂利道を進んでいくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーフィ・バウム
成程、影朧は転生できるのですね
【世界知識】に入れておかねばです

基本は武器での【なぎ払い】と【衝撃波】で
多くの敵を巻き込むよう攻撃
縄のある体のようですので、炎の【属性攻撃】を付与

敵の死角からの攻撃には天性の【野生の勘】と
培った【戦闘知識】で【見切り】回避

捕まってしまったら攻撃を
【オーラ防御】で受け凌ぎ、【力溜め】【怪力】で
敵の拘束をこじ開け脱出

耐え抜いて、さぁお返しです!
【ダッシュ】で間合いを詰めて必殺の
《トランスバスター》で撃破していきますよ
UC使用後は離れ、残る敵から
集中攻撃を受けないように注意

仲間と協力し、残敵を殲滅しますね

これで全て片付いたのでしょうか
転生できたなら、またお会いしましょう



 小麦色の褐色肌に、空色の瞳。小さな体躯に似合わぬ強大な大剣を背負い、密林に住む部族
の少女、ユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は砂利道を歩きながら思案にふけっていた。
 その内容は転送が行われる前に言われた『影朧が転生する概念』についてだった。
 今まで戦ってきた世界ではありえなかった新たな世界の知識にユーフィは非常に感慨を受けていた。その情報を決して忘れる物か、と記憶にしっかりと刻み込んでいたところで、ふとユーフィの歩みが止まる。
 赤い甲冑のような装甲、両腕をガトリング銃に変異させた百足のような怪物――古塚の呪いがユーフィの進路を遮り、今にも襲い掛かろうとしていた。
 軽々と大剣を構え、ユーフィは古塚の呪いへ跳躍する。空から舞い降りる重量のある大剣はまさに叩き切るといった表現がふさわしく、古塚の呪いの装甲を力任せに押しつぶし両断していた。
 そして地面に叩きつけた大剣を、砂利道ごと豪快に巻き込んで薙ぎ払ってすぐそばで剛腕を振り上げていた個体を薙ぎ払う。大きく吹き飛ばされ、その剛力によって繰り出された大剣の一撃をうけた古塚の呪いの上半身は勢いを殺しきれずに大きく形を歪め、次の瞬間には装甲よりも鮮やかな赤い炎に包まれていた。
 体が注連縄を取り込んでいたことから、炎による攻撃が有効なのではないかと考えていたユーフィは大きく燃え上がる古塚の呪いを見てその仮説は正解であったと確信する。
 攻略法はわかった。ならばあとは繰り返しすべての敵を薙ぎ払うのみ。
 ユーフィは大剣を横薙ぎに構え、いくつかの個体を巻き込むように振り回す。触れればひしゃげ、躱せても付与された炎が体を焼く。しかもユーフィの大剣には後付けのジェットエンジンが装備されている。これを点火し、遠心力と推進力で近づくものを焼きつぶす赤い暴風が生まれる。
 だが、古塚の呪いたちも一方的にやられるわけではない。いつまでも回転による攻撃をするわけにもいかず、ユーフィは息を整えるため、わずかにその動きを止める。
 その隙を突き、ユーフィの周囲にいた古塚の呪いたちの胴体やユーフィの死角からとまさに四方八方から生気の通わぬ不気味な腕が伸び、ユーフィの健康的な肌に触れようと迫る。
 しかし彼女は見た目が幼く見えても密林に住む部族の一員。さらに今まで何人もの強敵と戦ってきた経験がある。とっさに体を動かし、大剣を盾にして周囲から襲い来る腕を回避、時には防御してさばいていく。
「っ!?」
 だがあまりにも数が多すぎた。いくつもの腕が大剣に絡みつき、瞬き程の瞬間だけ動きが阻害される。その隙は致命的なものとなり、次々と怒涛の勢いで迫る腕がユーフィの全身を包んでいく。完全に動きが止まったのを確認し、古塚の呪いはそのまま空中へ持ち上げて力のままに地面へと叩きつけるだろう――そのまま持ち上げることができたのであれば。
 動かない。
 何体もの個体が生気のない腕を伸ばして拘束し、あとは持ち上げるだけだというのにまるで地面に縫い付けられたように動かないのだ。同時に何かが引きちぎられる鈍い音が響く。ぶちっ、ぶちっ、と何度も響くたびにユーフィの拘束が緩んでいく。
 最後の一押しとでも言いたげに、ちぎれていない腕を引っ張り回しその先の古塚の呪いごと一本釣りするユーフィの姿がそこにあった。釣られた古塚の呪いは空中で頭部が胴体へと飲み込まれるほどの勢いでぶつけられていた。
「さぁお返しです!」
 残り少なくなった個体へ向かって走りだす。両腕を振るって応戦するも、ただただ隙をさらすだけだ。至近距離までユーフィが間合いを詰め、勢いを殺すことなくそのまま突撃する。
「行きますよぉっ! これが森の勇者の、一撃ですっ!」
 全身のバネを使い、弾丸のごとく放たれたユーフィの肉体は古塚の呪いの体は大砲の弾でも受けたかのように大きな穴をあけていた。着地したユーフィは敵の追撃を警戒して、すぐに踵を返して残った個体との距離を詰め、鍛え上げた肉体による全力の一撃をお見舞いしていったのであった。
 周囲の敵を殲滅し終わり、そこは美しい桜の舞う幻想的な風景が広がっていた。ユーフィは放置していた大剣を持ち上げ、本殿への道を進んでいった。
「これで全て片付いたのでしょうか。転生できたなら、またお会いしましょう」
 かくして剛力を誇る異様な怪物は猟兵たちの活躍によって、そのすべてを倒すことに成功した。自我の薄い影朧は転生することは非常に難しい。だがそれでも、と猟兵たちは僅かな転生の可能性を思うのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 集団戦 『ヒヨリミ』

POW   :    ヒヨリミ台風
予め【二本の刀を掲げて空中でくるくると回転する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ヒヨリミボディ
自身の肉体を【刃のように触れるものを切り裂く布】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    無縁火
レベル×1個の【血のように赤い色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:RAW

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 幕間公開予定10月6日。
 プレイングは幕間公開後にお願いします。
 逢魔が辻の奥に向かう猟兵たち。
 砂利がこすれる音と吹き止まない桜吹雪の中、ふと赤い布がどこからともなく飛んでくる。
 一枚、二枚、三枚といくつもの赤い布が風に乗って飛んできていた。しかもその数が多いだけではない。猟兵たちを包囲するようにそこかしこから布が飛んできてたのだ。
 そして突如として風の流れに逆らって赤い布たちは形を変えていく。
 それはてるてる坊主のような可愛らしい姿をしていた。布の隙間から刀を覗かせていなければより愛らしく見えただろう。
 すると赤いてるてる坊主のような影朧――ヒヨリミは自身の周囲に小さな火をいくつも灯らせながら猟兵たちへと近づいてくる。
 先ほどまで戦っていた影朧たちと同様に、ヒヨリミも猟兵たちの行く手を遮らんとその見た目に反して怪しく光る刀を振り回し始めた。
 包囲され、退路をふさがれ、次は猟兵たちが迎撃する立場となっていた。
劉・涼鈴
むわ、なんか丸っこいのが出てきたぞっ!

刀を回転させてパワーアップ?
なら【神獣変化】でパワーアップだ!
さらにこっちも方天戟をぐわんぐわん振り回して威嚇(技能的効果はない)するぞっ!!
好きなだけパワーアップしなよ! 私はその百倍強くなってやる!!

向こうが回転を終わらせて斬りかかってくるのと同時(見切り)に、こっちも【怪力】【捨て身の一撃】で戟をブチかます!!
真っ向勝負だッ!! どりゃあああ!!

戟を棒高跳びの棒みたいに活用して高く【ジャンプ】!
高いトコからの落下を利用して全力で叩きつける!
どっせーい!

ガンガンぶん回して【なぎ払い】! 斬りかかってくる刀ごとブチ砕く!(鎧砕き)
まとめてぶっ飛ばーす!!



 砂利道を歩く劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)は牛のような耳をピコピコ動かしながら、上機嫌で奥にいるであろう武人の影朧がいる場へと向かっていた。意気揚々と進む涼鈴はぴたりと足を止める。気が付けば周囲から赤い布が飛んできて涼鈴を囲んでいたのだ。赤い布がてるてる坊主のようにその姿を変える。
「むわ、なんか丸っこいのが出てきたぞっ!」
 二振りの刀を掲げて威嚇する赤いてるてる坊主――ヒヨリミは涼鈴の前でぐるぐると体を回転させて徐々にコマのように速さを増していく。それはわかりやすい攻撃の前動作であった。戦いに身を置く者であれば先手を打つか、またはその行動自体を妨害するのが定番と言える。しかし涼鈴の判断は違っていた。
「刀を回転させてパワーアップ? ならこっちもパワーアップだ!」
 ヒヨリミに対抗するように覇王方天戟を振り回す涼鈴。溢れる闘争心が真紅のオーラとなって彼女の体を包む。相手の全力を出させたうえでそれを乗り越える。文字通りの真っ向勝負を涼鈴はヒヨリミに挑んでいた。
「好きなだけパワーアップしなよ! 私はその百倍強くなってやる!!」
 長大な戟を振ります涼鈴。何体ものヒヨリミが協力し合って回転力をあげるヒヨリミたち。己の獲物を振り回し生まれる回転エネルギーは、竜巻のように周囲を舞う桜や砂利までも巻き上げていく。下手に近づけば荒れ狂う風に煽られて吹き飛ばされることは間違いない。
 それぞれが発するエネルギーが最大限に達しようとした瞬間。唐突に風が掻き消える。
「どりゃあああ!!」
 ヒヨリミが溜めに溜めた回転エネルギーを開放し、はちきれんばかりの勢いで飛び出すのに合わせ、涼鈴は真紅に染まった身体を爆発的な力の解放で撃ちだす。
 高速回転するヒヨリミの大群と赤く燃える弾丸のような涼鈴のぶつかり合い。その瞬間、地面を穿つ大きな音が響き渡る。涼鈴が振り上げた覇王方天戟を叩きつけ、棒高跳びのような形で跳躍したのだ。この行動にヒヨリミたちは驚くも、すぐ対応して方向を転換。涼鈴を迎え撃つ形へとなる。
「どっせーい!」
 ぶつかり合う互いのエネルギー。互いの全力が与え合う影響は周囲へとあふれ出し、砂利を砕き、幻朧桜をへし折りそうなほどに曲げ、大きな爆発が起こったような轟音と風が吹き荒れる。
 その勝者は――自分の力だけでなく重力を味方につけた涼鈴であった。
 振り下ろされる覇王方天戟は迎え撃つヒヨリミの刀をその本体ごと地面へと叩きつけられる。涼鈴の高めた闘争心は本来の方天戟の攻撃範囲をそのオーラで拡大させ、何体ものヒヨリミを巻き込みながら押しつぶしていく。
 出遅れていた他のヒヨリミたちも一斉に涼鈴へと刀を振り回して襲い掛かるが、彼女の勢いはまだ死んでいない。切りかかってくる刀ごとヒヨリミを方天戟で撃ち砕き、薙ぎ払って一掃していく。それはまるで赤い竜巻だ。
 赤き暴威にさらされながらも、ヒヨリミたちは諦めずに涼鈴へと向かい少しでもダメージを与えんと攻めの姿勢を緩めない。だが、すでに勝敗は決していた。
 戦いが終わり、覇王方天戟を担ぎなおす涼鈴。その表情は満足げであった。あんなに小さな影朧でも数が集まり結託することで自分に迫る力を発揮していた。
 そんな影朧たちを修行相手に日々研鑽を続ける武人の影朧はいったいどれほどの強さなのか。武者震いに体を震わせ、涼鈴は障害のなくなった砂利道を進んでいく。
 この先にいる者は間違いなく、強いのだから。

成功 🔵​🔵​🔴​

雪華・風月
先程は気が急きましたか…未熟…
気を引き締めて次の影朧に臨むとしましょう!

赤い布の影朧…
か、かわいい容姿ではありますが…ゆ、油断はしません!
こ、これも相手の容姿に翻弄されぬよう修行と思えば……くっ!


ここは一撃で決めるとしましょう、長期戦は心理的に不利です
布の攻撃は斬り払い防ぎ出来るだけ多くの影朧を霊脈の流れの上に誘い込むような立ち回りを

そして霊脈に乗って自身を加速
直線上の影朧を斬ります!


うぅ…口惜しや 我が心には 秋沙雨



「先程は気が急きましたか…未熟…」
 影朧の第一陣を抜けて歩みを進めていた黒髪の少女、雪華・風月(若輩侍少女・f22820)は大きなリボンでまとめた長い髪を揺らしながら、少々気落ちした表情をしていた。
 最奥にいる武人への期待から、目の前の影朧への対応の甘さを嘆いていたのだ。あの時はもう少しうまく動けたはずだ。もう少し効率的に戦えたはずだ。と先ほどの戦いの反省をしていた。
「気を引き締めて次の影朧に臨むとしましょう!」
 いつまでもうじうじ悩んでいてはこの後の戦いにも影響が出る。反省はしたし、気持ちも切り替えた。あとは同じ過ちを犯さないようにするだけだ。
 その時、風に乗ってゆらゆらと飛ぶ赤い布が目に入る。影朧が現れたことを察して、風月は腰に差した刀へと手を伸ばす。赤い布はその数を増やしていき、次第にてるてる坊主のように形を変えていく。
 火のように赤い布と、その隙間から覗く刀――次なる敵であるヒヨリミが風月の周囲に群がっていた。しかも背後を取られ退路をふさがれている。先ほどのように気が逸っていたわけではない。ヒヨリミたちは木の陰や、枝、多くの障害物の中に潜んでいたためだ。
 それよりも重要な事態が風月の中で起こっていた。
「か、かわいい容姿ではありますが…ゆ、油断はしません! こ、これも相手の容姿に翻弄されぬよう修行と思えば……くっ!」
 デフォルメされたマスコットキャラクターのようにも見える赤いてるてる坊主のヒヨリミ。確かに愛らしい姿で女子供に人気の出そうな姿ではある。
 葛藤している風月をよそに、ヒヨリミたちはそれを隙だと思い首の部分にあるマフラー状の布を伸ばして攻撃してくる。ハッとして伸びた布をとっさに回避すると、風月が避けた先にあった木の幹に抵抗なく刺さり、抜いた後には鋭利な刃物で傷つけられた痕ができていた。見れば布の先が怪しい光を放つ真剣へと変じていた。手に持っているものだけではない。このヒヨリミという影朧は全身をこのように刃物へと変える能力を持っていた。
 意を決して雪解雫を抜く風月。愛らしい姿に惑わされていてはこちらがやられる。先ほど気を入れなおしたばかりなのだ。誰が見ているというわけではないが格好の悪い姿は見せられない。
 ヒヨリミたちは次こそは避けさせないとでも言いたげに、刀を振り回しながら布を伸ばして攻撃してくる。それは煩雑に繰り出されたように見えても、実際には風月の動きを制するように放たれていた。下手に避ければ他の布が自身の体を引き裂く。ならばやることは簡単だ。
 雪解雫を振り下ろして最も近づいてくる布を切り払う。その隙間に体を滑り込ませて、追撃の布も切り払う。避けては危険ならすべて切り払う。だが切っても切ってもヒヨリミの布は際限なく伸びて風月へと迫る。
 それでも風月は全力で刀を振るって迫りくる布を切り払って走り出す。砂利道から外れ、幻朧桜が立ち並ぶ中へと逃げるように入り込む。もちろんヒヨリミたちも布を繰り出しながらその後を追う。
 障害物が盾となってヒヨリミの伸ばす布の攻撃を多少なりとも防いでくれるが、如何せん切れ味鋭い攻撃の前にはあまり役には立たない。それでも風月はヒヨリミの攻撃を切り払い、走り続ける。
 ヒヨリミたちがあとを追うも、気が付けば先ほど戦いを始めた砂利道へと戻ってきていた。砂利道の真ん中で立ち止まった風月は雪解雫を構え、ヒヨリミたちを見据える。
 幻朧桜によって進路を限定され、逃げる風月を追うことに夢中になっていたヒヨリミたちは気づいていなかった。
 自分たちが誘いこまれたということに。
「一撃で決めるとしましょう」
 目を細め、風月は大地に走る力を吸い上げる。大地には霊脈と呼ばれる血管のような力場が張り巡らされている。これを利用する術は多岐にわたるが、風月はこの龍脈を線路代わりにして神速の攻撃を可能にしていた。
 走り出し、吸い上げた霊脈の力を合わせてヒヨリミたちへと迫る。まさに目にも止まらぬ速さで刀を振るう風月の姿を捉えることができずに、霊脈という線路の上にいたヒヨリミたちはすべて一刀のもとに斬り伏せられていた。
 刀を収め、静かになった砂利道を再度歩き出す風月。その表情は決して明るいものではなかった。
「うぅ…口惜しや 我が心には 秋沙雨」
 心から悔しそうな風月は、この戦いを越え少しだけ心も成長したかもしれない。

成功 🔵​🔵​🔴​

天野・白蓮
(アドリブ連携絡み歓迎)
ちぇ…、首魁を目指して奥に向かったは良いが、面倒なヒヨリミ共か。
あの弾力もある布を斬るには難しい…が、別に布を斬るとは限るまい?
さぁて、『祝清』とまいろうか!

(POW)
【選択UC】を発動し、【破魔】の力を纏った霊力を顕現
コイツで斬るのは「邪悪な心」、逢魔が辻の魔気に誘われて
募ったヒヨリミをかたどる霊気

ヒヨリミの回転剣を【見切り】、当たらない様に回避してから
【カウンター】でこの剣を叩き込む
切れなくて結構、邪心に響きさえすれば浄化は可能だ

…刀を振り回してりゃあ勝てるなんて思ってるんじゃねぇ。
剣士の道を舐めて貰っちゃあ困るんだよ。


リア・ファル
WIZ
アドリブ共闘歓迎

囲まれたか。まずはどうにか切り抜けなきゃね

「時間稼ぎ」と「逃げ足」でヒヨリミの攻撃を躱しつつ、
炎へは複製魔術符『コードライブラリ・デッキ』から
水属性弾を精製、「武器受け」「カウンター」射撃で相殺しようか

「大きくなる前に消化させてもらうよ」

相手への「情報収集」ができたら
UC【凪の潮騒】を発動し動きを止める

止まった相手から多元干渉デバイス『ヌァザ』の
「武器落とし」や「部位破壊」攻撃で「なぎ払い」

突破口が出来たらイルダーナを「操縦」して脱出を狙う

「悪いけど、押し通らせてもらうよ?
 ……可愛い影朧さん、またどこかで!」

ところで、明日天気になったりするのかなあ?



 枯れない桜の花吹雪。そんな美しい景色の中で、鮮やかな赤い火の玉が飛び交う。その炎の弾幕にさらされているのは近代的な服装で愛機の制宙高速戦闘機『イルダーナ』を駆る黒髪の少女、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)だ。
「囲まれたか。まずはどうにか切り抜けなきゃね」
 そうはさせまい、とヒヨリミたちは血のように赤い火の玉を繰り出し、しかもそれぞれがまるで意思ある生物のように物理法則を無視しながらリアを襲う。イルダーナの速度を上げ、複製魔術符『コードライブラリ・デッキ』より水属性の弾丸を生成し、避けきれない火の玉を相殺して敵の攻撃を分析していくリア。
 相殺する合間にも銃撃でヒヨリミ本体を狙い、いくつかの個体を撃破するに至っている。だが、ヒヨリミの放つ火の玉は混ざりあい、少しずつ大きくなっていく。頬っておけば対処できないほどに強大な火球となってしまう。
「大きくなる前に消火させてもらうよ」
 優先度を肥大化していく火の玉へと変え、リアは引き金を引き続ける。全弾撃ち尽くせば魔力ですぐさま補充して火の玉を迎撃、迎撃しきれないものは高速移動で回避していく。
 また一つ大きくなりかけた火球へ向かって引き金を引く。しかし、その勢いを半減させる程度で消滅するには足りない。ならば再び魔力で弾丸を補充し、全弾をもって今度こそ相殺しようとしたリアであったが、その補充のわずかな隙が彼女にとって致命的なものとなった。
 半ば消えかけた火球を、そのまま爆散させて視界を塞ぎ、新たな火の玉の弾幕がリアへと迫る。
 防御、回避、迎撃、どれもが一手遅れたために間に合わない。思わぬ反撃にリアは戦慄し、痛みと熱に耐えようと強く目を閉じた。
「させるかよ!」
 その時、黒い疾風が荒れ狂い、迫りくる火の玉を一閃にて掻き消した。
 声に驚いたリアの眼には、長い黒髪にサクラミラージュにおいてもなかなかに奇抜な服に身を包んだ青年、天野・白蓮(『帝都』を守護する一振りの金剛・f22771)が二振りの木刀を携えてリアの前に立っていた。
「ご無事だったかい、お嬢さん?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとうお兄さん」
 にこやかに笑うリアの顔を見て、白蓮の眼が一瞬だけ獲物を見つけた猛獣のそれに変わる。次の瞬間、白蓮はリアの横へと回り髪をかき上げて歯を煌めかせる。
「ところで可愛らしいお嬢さん。同じ猟兵の様だし、この戦いが終わったらお茶でもどう――」
 その言葉を遮るように高速回転したヒヨリミが二人の間へと斬りこんでくる。とっさに互いに跳躍してヒヨリミの突撃を回避する二人。美人大好きいわゆる『すけべぇ』な内面を持つ白蓮はこの邪魔な行動に憤慨する。
「いいところで邪魔するたぁ、いい度胸じゃねぇか、あぁ!?」
「まぁまぁ、今はお話よりも目の前の影朧をなんとかしないとね」
 歯噛みしながらも猟兵の仕事を思い出す白蓮。まじめな表情に戻ったのを確認するとリアは白蓮に共闘を持ちかける。白蓮はこれを二つ返事で了承し、束の間のパートナー同士と相成った。
「ボクがサポートするから、お兄さんは――」
「白蓮! 俺の名前は天野・白蓮だ。可愛らしいお嬢さん」
「……ふふっ。ならボクはリア・ファルだよ、白蓮さん。それで白蓮さんは敵へ向かって思うままに戦って! ボクが全力でサポートするよ!」
 余計なことを考えなくていいその提案は実にわかりやすく、白蓮の好みに合っていた。二振りの木刀を構えなおし、白蓮はヒヨリミたちへと向かって走りだす。
 迫りくる白蓮にヒヨリミたちは再び火の玉を生み出して弾幕を張り巡らす。本来ならば防御なり回避なりするべき場面だが、白蓮は後ろに控えるリアを信じて攻撃のみへと意識を向ける。
 この行動に驚いたのはリアだ。初対面の人間の提案を快諾するだけじゃなく、ここまで信頼した動きを見せられたのだ。全力でサポートする。その言葉を完遂することが白蓮からの信頼にこたえる一番の答えだ。
 弾幕へ向かい走る白蓮。すぐ先には体を焼き、骨まで焦がす熱量が壁となって立ちふさがる。だが、彼は信じた。後ろに控えるリアが思うままに戦えと言ったのだ。ならばその通りにできなければ男が廃るというもの。
 白蓮が速度を上げる。そして火の弾幕はリアの放った水属性の弾幕によって相殺され、白蓮の行く道を邪魔していたものが掻き消える。
 だがヒヨリミたちの攻撃はそれだけではなかった。消えた弾幕の向こうでは、攻撃のために身体を回転させて力をためた個体がいくつもいたのだ。白蓮の姿を確認すると同時に弾丸のように射出されるヒヨリミたち。
 この攻撃に白蓮は驚いた様子は見せなかった。むしろこう来るだろうと予測もしていた。先ほどリアと引き離そうとした攻撃も事前に回転してから弾丸のようにこっちへ飛んできていたのをしっかりと見ていたのだ。
 その一度の攻撃から軌道を先読みし、撃ち返すように木刀で打ち据える。木刀を真剣のようなキレ味に昇華させるという凄まじい技術を持つ白蓮であったが、これは失敗したわけでも手を抜いたわけでもない。木刀の一撃を受けたヒヨリミは身体からどす黒い煙のようなものを出して、ひらりとただの赤い布へ戻っていた。
 白蓮の木刀には破魔の力を宿らせており、一撃を受けた敵は肉体よりも邪気に塗れた魂を斬られる。逢魔が辻の魔気に誘われてきた自我の薄い影朧では、この一撃はまさに絶命に足る必殺の一撃であった。
「…刀を振り回してりゃあ勝てるなんて思ってるんじゃねぇ。 剣士の道を舐めて貰っちゃあ困るんだよ」
 その言葉は確かな重みをもっていた。剣士として一人の武人として研鑽を続ける白蓮にとって、ただ振り回すだけのお遊戯のような攻撃を剣術と認めたくはなかったのだ。だが、その言葉だけではヒヨリミは止まらない。回転攻撃を放った個体がまだまだ大挙してくるのだ。白蓮は辟易としながらも木刀を構える。
「対象の固有振動数について解析完了。…さあ、キミを世界から少しだけ切り離す!」
 しかし、当のヒヨリミたちはなぜかその場で固定されて動きを止めていた。何が起きたのか思案していると、白蓮のすぐ横にリアが現れる。
「お待たせ。ようやく影朧の解析が済んだから動きを止めさせてもらったよ」
 サポートに徹していたリアは、戦闘の初めから続けていた解析を終わらせ、文字通り世界から切り離すことで無理矢理にその動きを停止させていた。こうなってしまってはしばらくの間ヒヨリミたちは身動きできない。
 リアの凄まじいユーベルコードに破顔した白蓮は、再び木刀を構えて道をふさぐも動きが封じられたヒヨリミたちへと走りだす。リアも多元干渉デバイス『ヌァザ』を抜き放って白蓮に続く。
 白蓮は真正面から破魔の一撃を浴びせ、リアはヒヨリミの刀を優先して多くの個体を薙ぎ払う。二人が生み出す破竹の勢いに動きを止められたヒヨリミではどうしようもなく。厚い壁のようにそびえていたヒヨリミの壁は大きな空白を作り出す。
 リアはイルダーナを加速させて包囲の空いた隙間へと進んでいく。その先には未だにヒヨリミへ木刀を繰り出していた白蓮がいる。
「白蓮さん! 手を!」
 これ以上戦っていてはキリがない上に無駄な消耗をしてしまう。なにせこの後には武人の影朧が控えているのだ。この場でこれ以上の戦いは無駄だ。白蓮もそれを理解してかすぐにリアの伸ばす手を掴む、
「おぅよ!」
イルダーナに乗るリアに引っ張られ白蓮共々戦場から離脱する。
「悪いけど、押し通らせてもらうよ? ……可愛い影朧さん、またどこかで!」
「ところで、リア。さっきの続きなんだけど、この戦いの後お茶でもどうかな?」
 危険が去ったと思いきや、早速歯を煌めかせながら白蓮は先ほど邪魔されたナンパの続きだ。さすがのリアもこの切り替えの早さには困惑し、苦笑する他なかった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ハロ・シエラ
姿形と言い、あの回転する動作と言い、敵ながら可愛らしい物です。
だからと言って油断する訳にも行きません。

あの動作のお陰で若干付け入る隙もありそうです。
まずは動きを【見切り】、攻撃を回避して【カウンター】を狙っていきましょう。
ユーベルコードで武器を強化すれば、布の様な相手であっても斬れるでしょう。
見た目的には【破魔】の力を乗せても効きそうな気がします。
一体を相手にするならこれでいいのですが、相手は集団。
他の敵の攻撃は【第六感】で察知し【咄嗟の一撃】で対処します。
その場合はダガーを【投擲】する、などが適当でしょうか。
体力を消耗しきらないうちに決めたいですね。



 ひらひらと、赤い布が舞い降りる。それは風に乗って泳ぐように空を舞う。それはさながら桜吹雪の中に舞う炎。鮮やかな赤が薄い桜色に映えて、より幻想的な空間を作り出していた。
 そんな赤い布はやがててるてる坊主のように形を変え、携えた刀を振り回しながら回転する。周囲をそんな影朧――ヒヨリミに包囲され、ハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)は険しい表情で周囲に視線を送っていた。
 妖狐の炎と霊力を宿すレイピア、リトルフォックスを構え。臨戦態勢でヒヨリミに対峙するハロ。内心では可愛らしい姿かたち、それに回転する動作もどこか愛らしさがあり、少しだけ攻撃を躊躇していた。
「だからと言って油断する訳にも行きません」
 言い聞かせるようにする頷き、ハロの長い黒髪が揺れる。そして回転力を高めたヒヨリミが遂に解き放たれてハロへと襲い掛かる。冷静に敵の動きを分析していたハロはあの回転が攻撃の前に必要なのだろう、そして回転を利用しているがゆえにその軌道もある程度は予測できると考えていた。
 ハロの目論み通り、回転しながら弧を描くように迫るヒヨリミの太刀を寸でのところで見切ってリトルフォックスを突き刺す。反撃を受けたヒヨリミは突き刺さったリトルフォックスから発する炎に内側から焼かれただのボロ布へとなり果てる。
「吼え猛れ、『シルバーフォックス』!!!」
 青い炎が燃え盛りレイピアを中心に広がっていく。ハロの髪も溢れる力に呼応する様にたなびき、漆黒の少女は青き炎でその身を包む。封印を解かれその力を開放したレイピアを構え、更に迫るヒヨリミへと反撃を繰り出す。
 炎によるダメージと破魔の力による浄化を同時にレイピアへ宿しての攻撃は、一撃でヒヨリミを絶命させ、物言わぬ布きれへと変貌させる。ハロは他の個体に隙をさらさぬようにすぐさま跳躍して場所を移動しようとするが、それを予見していた個体がハロの着地に合わせて攻撃を放つ。
 しかしその身はハロがとっさに投げた短剣に貫かれ、大地へと叩きつけられる。思わぬ鋭い攻撃にハロは内心驚愕するも、この先にいる武人の影朧が鍛錬相手に選んだのだ。多少なりとも戦いというものを学び、有効な攻撃を行う個体がいてもおかしくはない。
 下手な油断は身を滅ぼすということを再認識し、ハロを気持ちを切り替えてヒヨリミへと向き直る。既にハロの額は玉のような汗が噴き出し、呼吸がわずかに荒くなる。
 リトルフォックスの封印を解き、その力を遺憾なく発揮するには尋常でない体力の消耗が代償となる。まだ敵の数は多く、悠長に戦っていてはこの後の戦いに大きな影響を及ぼすだろう。手早く片付けて先へ進もうとしたのが仇となっていた。
「体力を消耗しきらないうちに決めたいですね」
 先ほど投擲した短剣を回収し、ハロを意を決してヒヨリミの大群へと走りだす。もちろんヒヨリミたちも己が持つ全力で以てハロへと襲い掛かる。短剣を投げつけ、刺さった短剣を足場に空へと躍り出るハロ。残った短剣を雨あられのようにに投げつけて次々とヒヨリミを撃破していく。
 空中ならば動けまいと回転攻撃を仕掛けるヒヨリミには直接レイピアを突き刺して、破魔の力と合わせた青い炎にて焼き尽くす、着地すればすぐさま走り出して目標を絞らせないように動き続ける。
 体力の限界という明確なタイムリミットを迎えるまでに敵を無力化しなくてはならない。ハロは効率よく、冷静に、油断なくヒヨリミ相手に大立ち回りを繰り広げていた。
 しばらくの後、周囲にいたヒヨリミたちをすべて撃破したハロは霊力を開放していたレイピアに再び封印を施して大きく深呼吸をする。
 予想以上に手ごわい相手であったが、消耗しすぎる前に仕事は完遂した。あとは奥にいるであろう武人の影朧だけだ。敵の数は残り少ないとはいえ、その実力は折り紙付きだ。
 小休止の後、決着をつけるためハロは奥へ向かって歩き出した。

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
囲まれたようですが、是非も無し。
真っ直ぐ突き通る事に変わりありません。

◆戦闘
数が多い以上、迂闊な様子見は此方が窮地に陥るばかり。
素早く片付けていきましょう。

空中で旋回する動きの速度や規則性を【見切り】、
向こうより迅く打ち込む機を掴んで【手字種利剣】にて仕留めていきます。

刀を大上段に構え、左手を微塵も動かさず右手で斜に叩き切る――左肱切断の業にて、二刀が対応する暇もない【早業】で斬り捨て。

もし敵の防御が間に合っても、刀勢を乗せた【怪力】で押し切らせて頂く。

背後や側面を襲われれば【第六感】で殺気を読み、引き付けた上で躱すか、脇差を抜いての【武器受け】で受け流し、後の先の太刀で反撃しましょう。



 淡い桜吹雪が終わることなく舞い続ける。その中に、鮮やかな赤い布が風に乗ってやってくる。しかもその数は多く、赤に囲まれた空間に藍染の具足を身に着けた黒髪の青年、鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)が余計なもののようにこの空間内では浮いていた。
「囲まれたようですが、是非も無し」
 景正は頭を動かさず、視線だけを動かして突如現れた赤い布――ヒヨリミの動向を伺っていると、その姿をてるてる坊主のような形へと変え、携えた二刀ごと体を回転させていた。
 明らかな攻撃の前行動。このまま迂闊に様子見していては怒涛の勢いで押し切られ敗北する未来もあり得る。ならば――。
「真っ直ぐ突き通る事に変わりありません」
 愛刀、濤景一文字を抜き放つ。ただ刀を抜いたというだけだというのに、見る物を押し流すような威容を放つ。冷たさを感じる美しい拵えは、それだけで完成された美術品の様だ。何体かのヒヨリミはその威容に明らかな動揺を見せていた。
「素早く片付けていきましょう」
 駆け出して隙を見せたヒヨリミへと向かう。慌てて回転を再開し、間合いに入った景正に勢いをつけて襲い掛かる。だが、そのような中途半端な攻めで捉えられるほど鞍馬・景正という男は未熟ではない。
 軌道を見切り、最低限の動きで躱すと同時に左手に持った濤景一文字で斬り捨てる。大上段に構えた刀で次いで飛来するヒヨリミをさらに斬る。
 このままこの猟兵を動かしては危険だ。動きを封じなければ一網打尽にされる。そのことを察したヒヨリミたちは一斉に回転を始め、十分な勢いを得た個体から次々と矢継ぎ早に景正へと飛びかかっていく。
 四方八方から迫る高速回転する刃の脅威は、初見であれば景正とて対応に苦労していたかもしれない。だがすでに景正は二度この動きを見ている。
 足を止め、左手一本で構えた愛刀を振り下ろす。無造作に振り下ろしたように見えたその一刀は、攻撃を放とうとする一瞬の隙を見せたヒヨリミを両断していた。
「百様の構えあり共、唯一つに勝つ事。――是を至極の一刀とす」
 景正の修める流派――新陰流の極意。その一つがこの『手字種利剣』だ。敵の手の内を見切り、見極め、最前手にて切り返す。
 何度も技を見せたヒヨリミの攻撃は、既に景正に見切られている。景正がこの構えを解かない限り正面からの攻撃はすべて無意味となり、逆撃にてその身を斬り裂かれる。
 ならば視認されていなければ対応できまい。とでも言いたげに景正の死角より迫る複数のヒヨリミ。
 だがヒヨリミの放つ殺意は、例え見えずともその位置を景正に伝えている。間合いの内側にさえ入れば、正面から攻めた時と同様に見切られるだけだ。景正は空いた右腕に握られた無銘の脇差によって悉くを受け、捌かれ、その隙に左手の太刀にて視覚外から襲い来るヒヨリミを両断していく。
 それでもヒヨリミは諦めない。例えどれだけ速くとも、数で押し切れない道理はない。一斉にタイミングを合わせて景正の絶対の構えに果敢にも攻めかかる。
 脇差で捌き、太刀で斬る。その動作には一部の隙も無く、襲い掛かるヒヨリミを次々と斬りおとしていく。だが、さすがの猟兵でも圧倒的物量の前には対応が遅れてしまう。景正は背中をつたう冷や汗を感じながら押し寄せるヒヨリミの攻撃を受け続けていた。
 景正が限界を迎えるか、ヒヨリミが押し切るか。
 最後まで戦場に立っていたのは、滝のような汗を流しながらもすべてのヒヨリミを斬り伏せた景正であった。大きく深呼吸をして、息を整えた景正はこの奥にいるであろう武人の影朧のためにここまで命を賭ける影朧たちの必死さに戦慄していた。
 なぜこれほどまでに彼の武人を守るのか。それはこの先にいるであろう武人に会えばわかること。
 一息ついた景正は再び静かになった砂利道を歩きだすのであった。
 こうして赤き襲撃者でも猟兵は止まらず遂に最奥の本殿へとたどり着くのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『菱宮・三郎右衛門』

POW   :    愛は拳で語る(物理)
【武の心】を籠めた【拳】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【自らに向ける殺意】のみを攻撃する。
SPD   :    愛弟子の応援
戦闘力のない、レベル×1体の【稽古熱心な弟子】を召喚する。応援や助言、技能「【鼓舞】【奉仕】【掃除】【医術】」を使った支援をしてくれる。
WIZ   :    手合わせを所望する
【全盛期の頃の姿】に変身し、武器「【薙刀】」の威力増強と、【草履】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:auau

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はジェマ・ファリナセアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


幕間公開予定10月12日
プレイングは幕間公開後にお願いします。
 
 
 
 長い砂利道を抜けた先に、それはあった。
 壁に穴が開き、瓦が落ち、扉は倒れてその意味をなくしている。
 そんな寂れた本堂の中で、長い白髪に白鬚。長い人生を歩んできたことを理解させる深い皺。
 とある地域では名の知れた武人と言われている影朧『菱宮・三郎右衛門』だ。
 修験者のような装いで瞑想している三郎右衛門は、ゆっくりと目を開けて猟兵たちを見る。
「あやつらが騒がしいと思えば、なるほどのぉ」
 立ち上がり、本堂から出てくる。その動きを見るだけでも三郎右衛門は達人である、と心得のあるものは察することができるだろう。
「待っておったぞ、猟兵。さぁ、見せるとしようか」
 三郎右衛門は構える。老人とは思えない圧倒的な闘気を発して、口元を歪ませる。
「誰も、そう誰もワシの武の真髄を見てくれなんだ。見せる場を与えられることなく、卑怯な闇討ちでワシは死んだ……」
 その表情は恨みや悲しみを帯びたものではない。ただ、悔しい。鍛え上げ磨きぬいた武術を、誰に見せることなく死んだことを。
 だから待っていたのだ。猟兵ならば、己の武の真髄を受け止めてくれるはずだ。
 だから磨き続けていた。影朧として蘇っても、ただひたすらに武の道を究めんがために。
「さぁ、試合を始めるとしよう。全力で来い……猟兵!」
雪華・風月
闇討ちでの死…さぞや無念だったでしょう
わたしでは貴方を満足させられるかは分かりませんが…
それでも貴方の心残りを晴らすため

帝都桜學府所属、雪華・風月
未だ若輩の身なれど、いざ手合わせを望みます!


この立合いに剣は不要
帝都桜學府で学んだ技にて…

体格的にも一撃の重さではこちらが不利
ならば小柄なのを活かして動き回り手数で勝負といきましょう

掌や手刀を使った打ちで関節を狙い、十全に振るえぬようダメージを

相手を傷つけず殺意のみを殺す技、お見事です!
しかし、この身にあるのは殺意ではなく純粋な闘争心と向上心
拳の一撃に腕を絡めとり、勢いをそのまま一本背負いへ

よい立合いでした。と最後は彼に抱拳礼を



 倒すべき敵の未練を知った雪華・風月(若輩侍少女・f22820)は暗い表情をしていた。自身も剣の道を究めんと日々精進している。そんな自分の努力が誰の眼にも残らずただ忘れられるだけという結末は、三郎右衛門と同様に努力を続けている風月にとっては悲しすぎる未来だ。
「闇討ちでの死…さぞや無念だったでしょう」
 その言葉を三郎右衛門は静かに聞く。女子供にわかるはずがない、と断ずることもできた。だが、三郎右衛門はそうしなかった。彼女の表情が、憂いを帯びた顔が、その言葉に重みを持たせていた。
「お主、名は?」
 問われてハッとした風月は長い黒髪を揺らし、力のこもった眼差しで三郎右衛門を見つめ返す。
「風月。雪華・風月と申します」
 一礼し、名を名乗る。この場が猟兵と影朧の戦いの場ではなく、まるで実力者に勝負を挑む試合のような、張り詰めた空気ではある物の、どこかさわやかさを思わせる空間がそこにあった。
「わたしでは貴方を満足させられるかは分かりませんが…それでも貴方の心残りを晴らすため――」
 そこで風月は腰と背に差した刀を降ろす。それはこの場の戦いに武器は不要である。互いの拳をぶつけあう試合なのだという彼女なりの意思表明だった。
「帝都桜學府所属、雪華・風月。未だ若輩の身なれど、いざ手合わせを望みます!」
「その意気やよし! かかってこい、風月よ!」
 腕をあげ、構える。同時に三郎右衛門の闘気が膨れ上がる。もはや問答は無用。あとは互いの全力をぶつけあうだけだ。
 先手を打ったのは風月。風のように素早い動きで三郎右衛門の側面へと回り込み、手刀にて腕を狙うも三郎右衛門は容易くその攻撃をいなし、その隙を縫うように右拳をまっすぐに突き出す。
 だが、すでに風月の姿は三郎右衛門の右側面へと回り込み、反撃のために伸びた三郎右衛門の右腕、しかもその関節を狙って掌底を放つ。
 右肘にミシリ、と衝撃と共に体内で軋む音が響く。三郎右衛門は掌底の勢いに抵抗せず、そのまま宙返りするように跳躍して風月へ蹴りを放つと同時に距離を空ける。
 辛うじて三郎右衛門の蹴りを躱すも、風月の頬には今避けたはずの蹴りの衝撃が赤い筋となって残っていた。直撃していれば顎が砕け、地に伏していたであろうことは間違いない。
 冷や汗が流れるのを感じながらも風月は走り出す。下手な攻撃は向こうの反撃の糸口となる。しかし早さと手数で圧倒しなければ強烈な技で文字通り一撃で敗北するだろう。
 関節を優先的に狙い、攻撃の勢いをそぎ落としていくのが勝利へのか細い道だと風月は考える。だが、それは老練な三郎右衛門が見抜けないわけではない。必ず、こちらの思惑の上をいく攻撃が来る。
 風月の刈り取るような鋭い下段蹴りが三郎右衛門の膝に迫る。一歩下がりそれを躱そうとする――。
「ぬっ」
 反撃のために踏みしめた足が砂利を砕き、わずかに姿勢が揺らぐ。風月はその隙を逃すまいと大きく拳を引いて三郎右衛門へ決死の一撃を放とうとする。それが彼の誘いだというのに。
「殺意を砕く我が拳。受けよ!」
 風月が攻撃を放とうとする刹那の出来事であった。今まで以上の速さで放たれた三郎右衛門の拳は風月の纏う防具ごと砕かんとする勢いであった。実際に拳は風月に直撃した上で衝撃波が彼女の背中から突き抜けていく。
 文字通り三郎右衛門の拳は受けた相手の殺意を砕き、戦いの意思を挫くものだ。殺意を持って戦っていたのなら、この段階で戦意は喪失し、膝を折っていたことだろう。
 だが風月はそうはならなかった。
 放たれた右腕を掴み、体を回して勢いをつける。三郎右衛門の体を巻き込むように回転する風月は、今残っている全力の一本背負いで三郎右衛門を大地へ叩きつけていた。
 この結果に三郎右衛門は驚愕していた。自身の放った攻撃は間違いなく風月の殺意を砕く一撃だった。そういう技故に触れた瞬間に勝負は決まっていたはずだった。
「相手を傷つけず殺意のみを殺す技、お見事です! しかし、この身にあるのは殺意ではなく純粋な闘争心と向上心!」
 ないものは砕けない。非常に簡単な答えに、三郎右衛門は倒れたまま声を大にして笑っていた。
「なるほど! そういう絡繰りであったか! 見事! 雪華・風月! その純粋さの勝利よ!」
左手で右手を包み、最大限の礼を示した風月は満面の笑みでその称賛を受けていた。
「よい立合いでした」

成功 🔵​🔵​🔴​

鞍馬・景正
達人と謳われし風格と技倆、疑い無し。

――当方の流派は家伝の鞍影心流。
その他に柳生但馬殿、小野忠明殿より剣の指南を受けた身。

御身の実力を試す相手として不足は無いと誓いましょう。

◆戦闘
徒手空拳で参られるならば、此方もそれに応じるまで。
【乗打推参】による組討で一撃を決する機を伺います。

【視力】を凝らして出方を伺い、僅かな挙措や変化から狙いを【見切り】、拳を打つ寸前に間合を詰める事で回避と共に肉薄。

【怪力】で腕を拉ぎ、足払いを仕掛けながらの【早業】で追い打ちを仕掛けさせて頂く。

例え一撃を受け、我が殺意は砕けても、猟兵として貴殿を討ち果たさねばならぬという使命感までは砕けませぬ。



 静かに風が吹く中、藍色の瞳に竜胆色の陣羽織。真一文字に口を閉ざして、鞍馬・景正(天雷无妄・f02972)は帯びていた刀をそっと地面に置く。その姿を構えを解かず見続けているのは老練な武術家、菱宮・三郎右衛門だ。両者の間には戦いが始まる前から互いの闘気がぶつかり合っている。
「達人と謳われし風格と技倆、疑い無し」
「名のある武人と見受ける。流派を聞いても?」
 その問いに、景正は頷く。
「――当方の流派は家伝の鞍影心流。その他に柳生但馬殿、小野忠明殿より剣の指南を受けた身。御身の実力を試す相手として不足は無いと誓いましょう」
「ありがたい。では、はじめよう」
 景正も腕をあげ、構える。互いの闘気は空気を揺るがし、その場に誰かがいれば圧迫感を与えるほどの重圧を生むだろう。それだけ二人の表情は鬼気迫る物であり、心得なき者でもこの戦いは凄まじいものになることを伺えるだろう。
 砂利がわずかにこすれる音だけが響く。互いの間合いを見極め、必殺の一撃を見舞うために隙を探りあう。その精神的圧力は互いの額に玉のような汗をにじませるほどだ。このままでは千日手。決着のつかないまま時間だけが無為に過ぎるだけだ。
 その時、わずかに残っていた本堂の屋根に乗っている瓦が大きな音を立てて地面へと落ちる。まるで均衡を破るために神仏がもたらしたもののようにも思える。
 瓦の落ちる音をきっかけに動き出したのは三郎右衛門。瞬きのうちに景正の間合いの中へと滑り込み、右拳に力を籠める。景正は後手に回されたことを内心で悔やむも、大きく目を見開いて三郎右衛門の動きのすべてを捉えんとする。
 わずかな挙動から攻撃の来る地点を予測し、反撃のための一手を模索する。もちろん反撃に対する三郎右衛門の動きも予測しながらだ。時間にして一秒にも満たないこの刹那の瞬間、未熟なものであれば何もできず三郎右衛門の拳をその身に受けていただろう。だが、歴戦の武人である景正は三郎右衛門の放った拳をわずかに体を逸らして回避をするも完全とはいかず、わき腹をかすめる。だが三郎右衛門も避けられることを予測していたのだろう。すぐさま左足を持ち上げ、斬撃のように鋭い蹴りで景正に襲い掛かる。
 だが、次の瞬間三郎右衛門は右腕を極められ大地に叩きつけられていた。伸ばした右腕を掴み、そこから巻き込むように拉ぐ。さらに足払いも行っており、倒れる動きの中で景正は完全に三郎右衛門を抑え込んでいた。
 右腕に耐えがたい痛みが走り、三郎右衛門は苦悶の声をあげる。だが、三郎右衛門には疑問があった。先に放った拳の一撃。あれは自身へ向ける殺意を砕く技。わずかにとはいえ景正の体に拳は当たっていたのを確認している三郎右衛門はなぜ殺意を砕かれようとも攻撃を続行できたのかわからないでいた。
 間違いなく自身への殺意を肌で感じでいた。しかも今こうして腕を極めている景正からはもう殺意はない。だからこそなぜ戦いを続けられる? そんな疑問が三郎右衛門の脳裏を駆け巡っていた。
「な、なぜ殺意を砕かれたというのに、これほどの技を……?」
 景正は三郎右衛門が何を言っているのか理解できなかった。しかし、言われてみれば戦いを始める前に抱いていた明確な殺意は掻き消えていた。それでも戦うことができた理由、それは――。
「我が殺意は砕けても、猟兵として貴殿を討ち果たさねばならぬという使命感までは砕けませぬ」
 組討によって無力化された三郎右衛門はこの戦いにおける敗北を悟る。殺意でなく、使命感で戦うものがこれほどの強さを発揮するとは思っていなかったからだ。
 止めの一撃を放ち勝利した景正は降ろしていた刀を回収し、本堂から立ち去っていくのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ハロ・シエラ
変身して草履で飛ぶ……これが奥義と言う物なのでしょうか。
まぁお爺さんの姿よりは気持ち的に戦いやすそうです。
戦闘力は高いでしょうが。

高速で飛ばれる上に長物を使われては難しいですね。
まず防御に専念し【第六感】とレイピアによる【武器受け】と【オーラ防御】で凌ぎましょう。
これで私が剣で戦うと言う事を印象付け【だまし討ち】します。
重い一撃を受けた時にわざとレイピアを落とします。
それによってトドメの攻撃を誘い、ダガーを【投擲】する事で【カウンター】とします。
ダメ押しに、もしくはそれでダメなら魔銃を【クイックドロウ】してユーベルコードで攻撃します。
【物を隠す】技術でダガーと銃に気付かれない様にしなければ。



「次の相手はお主か、娘っ子」
 疲労の残る顔でハロ・シエラ(ソード&ダガー・f13966)を睨む三郎右衛門。長い黒髪に黒い軍服という黒一色の姿で三郎右衛門と対峙する。しかしハロの表情はすぐれない。ここに至るまでの戦いで疲弊しているというのもあるが、わかってはいても老人相手に武器を向けるという事実にわずかだが気後れしていた。
 しかし、その感情は武人である三郎右衛門には非常に礼を欠くものだ。わかってはいてもハロの心に棘が刺さる。そんなハロの表情から察したのか、三郎右衛門は怒りを露わにすることなく、本堂の奥へと戻り、一振りの薙刀を持って再び現れる。
「老いた姿が相手では全力が出せぬ。そのような甘えは吹き飛ばしてやろう。影朧としてのワシの奥義を見るがよい!」
 周囲に迸る強烈な闘気の奔流。風が舞い、桜の花吹雪が三郎右衛門を包む。薙刀を振るい、桜吹雪をかき消すと、そこにいたのは老いさらばえた三郎右衛門の姿はなく、髭が消え、髪も短く切られ、真新しい修験者のような服を身に纏った若者が立っていた。
「これは人の摂理を離れた外法よ。あまり使う気はなかったが、ここまでやれば全力で戦えるじゃろ? さぁ、始めようぞ」
 薙刀を構える若き三郎右衛門。ハロはこれなら全力を出せるという安心感と、敵である影朧に気を遣われたという自身の甘さが招いた事態に自分自身に憤慨していた。
「大変失礼しました。もちろん、全力でお相手します」
 レイピアを構え、決意を込めた瞳で三郎右衛門を見つめ返す。三郎右衛門はニヤリと笑みを零し、ようやく始められる戦いに心を躍らせる。
 そして始まる戦い。事前情報では薙刀を使うというものはなく、どういう戦いをするか予測ができない。ならばここは防御を固めて、相手の隙を伺う。
 ハロの判断は間違っていない。文字通りの未知なる相手にむやみに突撃するのは愚の骨頂。だからこそ後手に回ったのだが、三郎右衛門の取った手はハロを驚愕させるものだった。
 三郎右衛門ははるか上空に飛翔していた。跳躍したのではない。足に履いていた草履から火が噴き出し、その推進力で以て飛行能力を獲得していたのだ。
 驚異的な加速力と重力を加えた非常に重い薙刀の一撃でハロへと迫る三郎右衛門。まともに受けるれば当然防御の上から叩き潰される。ハロはレイピアにオーラを纏わせて硬度を高め、薙刀を逸らすことで直撃を免れるが、その一撃は非常に重く、殺しきれなかった勢いに腕が悲鳴をあげる。
「そらそらそら! 一撃で根を上げていてはこっちは防げんぞ!」
 素早い動きで薙刀を突き出してハロの動きを抑えていく。オーラによって強化されたレイピアが火花をあげながらも繰り出される薙刀の一撃をいなしていく。
 突き、払い、振り下ろす。薙刀の間合いの広さと、飛行能力によって縦横無尽に戦う三郎右衛門の攻撃はハロの防御を少しずつ抜けていき、その白い肌に傷を刻んでいく。
 そして遂に三郎右衛門の長刀を受け止めきれず、ハロは相棒ともいえるレイピアを落としてしまう。
 絶好の好機と見た三郎右衛門は腰を引いて力をため、一気に爆発させて弾丸のようにハロへと飛びかかる――はずだった。
「ぬぉ、これは!?」
 右肩に走る激痛に三郎右衛門はその顔を歪ませる。見ればいつの間にか三郎右衛門の右肩には一本のダガーが刺さっていた。このダガーは蛇の血と毒で鍛えられたもので、三郎右衛門はすぐさまその危険性に気づいて右肩のダガーを引き抜く。
 武器を落としたのは誘いで、このダガーによる反撃がハロの狙う勝利への布石だった。ハロはギリギリまでレイピア以外の武器が存在することは隠しきったのだ。
「地獄の底から、貴方を殺りに来ました」
 異様な気配を察し、三郎右衛門はハロの姿を探す。ハロは武器を落とされた場所から一歩も動かず、その手には禍々しい意匠が施された銃が握られていた。
「ディール・ウィズ・ザ・デヴィル」
 引き金を引く。魔銃から悍ましい呪いの塊のような魔力が放たれ、三郎右衛門へ迫る。右肩の痛みに怯むでもなく、三郎右衛門は薙刀を大きく振るって放たれた魔力を両断する。
 二つに別たれ、霧散するかと思われた魔力はそれぞれが再び魔力の弾丸へと形を戻し、三郎右衛門との距離を詰める。ならばと三郎右衛門は薙刀を凄まじい速度で振るい、魔力を斬り捨てていくが、それだけだ。斬られた魔力はまた分裂して無数に増えていく。
「はっ! 見事!」
 その言葉を残し、三郎右衛門は降り注ぐ魔力の奔流に飲み込まれて大きく吹き飛ばされていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

劉・涼鈴
つまり、あんたは人を殺したいとか世界ぶっ壊したいとか、そーいうヤツじゃないんだ?
技を磨いて競いたい……武術家の本能だけが残ってる感じ?
じゃーやろうよ! 思いっきり! 存分に!

殺意はないよ、これはただの腕比べだ!
武器なし、オーラの強化もなし、拳と蹴りで勝負だ!
リーチ差が大きいから【ダッシュ】で懐に飛び込む!
【野生の勘】で拳が叩き込まれる直前に【スライディング】!
身体が小さいことを利用して回避! そのまま脚払い!
避けられても追いかけて、【怪力】【グラップル】で殴り合いだ!
踊るように軽やかに(ダンス)、破城槌のように豪快に(鎧砕き)!
最後は至近距離からの最強の一撃、【劉家奥義・神獣撃】!
喰らえええ!



 赤いチャイナドレスに牛のような耳と角。元気いっぱい活力全開な少女、劉・涼鈴(豪拳猛蹴・f08865)は相対したときに三郎右衛門が言った『試合』という言葉に反応していた。
「つまり、あんたは人を殺したいとか世界ぶっ壊したいとか、そーいうヤツじゃないんだ?」
「まぁ、影朧としての本能としてそういう感情はあるが、そこまで本気でやろうとは思わんのぉ」
 顎鬚を撫でながら、三郎右衛門は答える。
「技を磨いて競いたい……武術家の本能だけが残ってる感じ?」
「だけ、という訳ではないが大体そんな感じじゃ」
 今度は頭は掻き毟りながら答える三郎右衛門。
 まるで好奇心旺盛な孫に質問攻めされる祖父のような、これから戦いが始まるとはとても思えない和やか雰囲気だった。
「じゃーやろうよ! 思いっきり! 存分に!」
「うむ、そうでなくてはな!」
 同時に拳をあげて構えをとる。先ほどまでの和やかな空気は掻き消え、真剣勝負の張り詰めた空気に変わる。そして三郎右衛門はすでに涼鈴に対してあることを見切っていた。
 持ってきていた長大な戟――覇王方天戟は放り投げられており。さらに彼女からは闘志をひしひしと感じるが、それがオーラとなって表には出ていない。小細工どころか気も魔法も何もかもを撤廃した生身での勝負を涼鈴は挑もうとしている、と三郎右衛門は涼鈴のまっすぐすぎる気概に思わず笑いを零す。
「やれやれ、これではワシの奥義の一つが封じられたわい。ワシへの殺意を砕く拳はお主には意味がなさそうじゃ」
「殺意はないよ、これはただの腕比べだ!」
「然り。では参るぞ!」
 三郎右衛門が距離を詰める。流れる水のように淀みのない動きで間合いを詰め、右の手刀を放つ。だが涼鈴は三郎右衛門の間合いのさらに内側へと入り込む。懐に潜りこまれた三郎右衛門は左の拳で迎撃するも、空振り。そこにいたはずの涼鈴はダッシュで間合いを詰めた後でさらにスライディングで三郎右衛門の股下を通っていく。年齢に比して小柄の涼鈴だからこそできる戦法だ。
「そりゃー!」
「なんの!」
 三郎右衛門の足元に潜り込んだ涼鈴は足払いを仕掛けるが、相手もその攻撃を予測していたのかひょい、と軽く跳躍して回避する。反転して再び向かい合う二人はどちらからともなくニヤリと笑う。
 またもや距離を詰めあう二人。今度は突きの応酬を繰り広げていた。拳同士がぶつかり合い、時にはいなし、時には掴みかかる。互いの両腕はあまりの速さに分身して見えるほどの凄まじい拳の応酬だ。枯れ木のような細い腕が細く小柄な腕が、轟音を響かせながらぶつかり合う。
 本来であれば体格の違いから三郎右衛門が有利に戦いを進められそうにも思えるが、涼鈴は足りないリーチの差を踊るような足運びと小柄ゆえの速度を活かして補っていた。
 広い間合いを維持すれば圧倒できる三郎右衛門と、狭い間合いに入り込めば押し切れる涼鈴の戦いは、まるで拳の陣取り合戦のように互いの攻めたい場所や攻められたくない場所を奪い合う様相となっていた。
 こうなれば勝敗を分けるのは、互いの持久力。先に体力の尽きたほうが有利な場所を奪われ、圧倒される。
 そして片方の攻撃の速度が著しく低下した。先に体力が尽きたのは――影朧となったとはいえ、老いには勝てなかったのだろう。徐々に速度を維持できなくなった三郎右衛門だった。漲る若さが老獪な攻めを凌駕したのだ。
「ぶちかます!」
 全力を込めて放つ一撃は『劉家奥義・神獣撃』。その拳は鉄のように固く、使い手が矮躯であろうと、その威力は山をも砕くと言われるほどの強烈な技が三郎右衛門の体に叩きこまれる。
「ぐ、ぬぅ……。まいった! ワシの負けじゃ!」
 膝をつき、胸を抑えた後三郎右衛門はこらえきれずその場に倒れ伏した。勝者となった涼鈴は誇らしげに拳を天へ突き上げる。そして敗者にかける言葉はない、と言いたげにその場を立ち去ったのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ユーフィ・バウム
鍛え上げ磨きぬいた武術を見せる機会なく斃れた無念、お察しします
私で宜しければお相手しましょう。
受け切って……勝つ!

【力溜め】つつの【グラップル】!
格闘戦での打ち合いをを挑みます。私は【怪力】です
手数で負けても、【カウンター】で力強い一撃を打ち込む
「蛮人の戦いを、お見せしますっ」

殺意は込めず、あくまで戦いを楽しむ
相手の攻撃を受け切ることを念頭に戦います

三郎右衛門の攻撃は基本【見切り】致命的な一撃を避けた上で
【オーラ防御】【激痛耐性】で耐え抜くスタイル
野生が鍛え上げた体は屈しませんとも

好機を見れば、【ダッシュ】、【空中戦】で飛んでからの
必殺の《トランスクラッシュ》!
ヒップアタックを豪快に見舞います



「鍛え上げ磨きぬいた武術を見せる機会なく斃れた無念、お察しします」
 褐色の肌に目を惹く銀髪のツインテールが印象的なユーフィ・バウム(セイヴァー・f14574)は担いでいた長大な剣を地面に突き立てる。武器を残し、散歩でもするかのような穏やかな足取りで三郎右衛門へと近づいていく。
 ユーフィは一足で届く距離にまで近づくと、その歩みを止めて両手を広げる。
「私で宜しければお相手しましょう」
「よいじゃろう、全力で来い。猟兵」
 三郎右衛門は腕をあげて構える。だがユーフィは先ほどの姿勢のまま動こうとはしない。戦いは始まっているというのに隙だらけだ。この意図に三郎右衛門は気づいていた。
「先手を譲る。そう言うつもりか?」
「もちろんです。受け切って……勝つ!」
 風を切る音と同時に三郎右衛門はユーフィを間合いのうちに収める。力強く握られた拳はユーフィの体を撃ち抜いた。衝撃が突き抜け、ユーフィの体が大きく吹き飛ばされようとしていたが、全力で踏ん張っていたためか地面をえぐるような跡を残しながら後退した程度で済んでいた。
「蛮人の戦いを、お見せしますっ」
 そう言う瞳に戦いをやめようとする意志は感じない。三郎右衛門はまた殺意を抱かずに戦うことのできる相手なのだと確信する。すでに何度も同じ手で奥義は無効化されている。さすがに驚くことはもうなかった。
 間合いを詰めるユーフィに対し、三郎右衛門は素早い攻撃を主体にユーフィへ連打を仕掛ける。先ほどまで持っていた長大な剣を見れば、ユーフィがその体格に似合わないパワーファイターということは想像できる。手数を優先し、反撃の余地も与えないほどに圧倒する腹積もりであった。
 ユーフィも負けじと撃ち込まれる拳を掴み返して反撃しようとするが、速すぎる攻撃に対応できず、ユーフィの手は三郎右衛門を捉えることができない。さすがに何度も攻撃を繰り返されてしまってはユーフィも防御の構えを取らざるを得ない。だが決してその眼は三郎右衛門からは逸らさない。防御し続ける間も力を溜め、好機にて最大火力でのカウンターを虎視眈々と狙っていた。
 始まってみれば戦いは一方的な様相となっていた。一撃でも反撃が成功すれば大きく勝利へ近づけるユーフィと怒涛の攻めで敗北へ叩き落とさんとする三郎右衛門。
 「どうした! 蛮人の戦いとはそのようなものか!」
 オーラを身に纏い、目を逸らさず攻撃を見続けていたことでなんとか致命傷だけは避けていたユーフィであったが、その限界は確実に近づいていた。
 そして決定的な瞬間が訪れる。ユーフィが防御のために上げていた腕が三郎右衛門の連撃に耐えきれず大きく弾かれたのだ。無防備な体が、三郎右衛門の前にさらされる。先に勝利への好機を与えられたのは三郎右衛門だった。
 渾身の拳を受け、ユーフィの体が空を舞う。限界以上の連撃で息も絶え絶えな三郎右衛門はだらりと力なく両腕を下げていた。あと少しユーフィの防御が固ければ地に倒れていたのは自分だっただろう、と三郎右衛門は薄氷の上の勝利を噛みしめていた。
 ユーフィの体が地面に叩きつけられ、反動で身体が浮き上がる。そして体勢を立て直したユーフィが弾丸のような速さで走り出して三郎右衛門に迫る。防御しきれなかったことも、攻撃が直撃したことも、どちらも演技ではない。限界以上の連撃は三郎右衛門の渾身の一撃をわずかに弱らせていたのだ。あと一手早く防御が崩されていれば、ユーフィも力を残せず敗北していた。
 三郎右衛門と同様に、攻撃を受け続けて疲弊しきったユーフィの両腕は痺れて動かない。だが、両腕が動かなくともユーフィには攻撃手段が残されている。空中へと跳躍し、残された闘気を肉感的な尻へ集中させる。柔らかくも力強い圧のある体はまっすぐに三郎右衛門へと落ちていく。
 両者ともに限界まで疲弊したためにそのまま動くことができない。大地を穿つ強烈なヒップアタック――トランスクラッシュが三郎右衛門へと叩きつけられた。
 いくら傷つけられようとも戦いをやめず、勝利するまであがき続ける。それはまさに蛮人の戦いであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

リア・ファル
POW
アドリブ共闘歓迎

つわもの、か

転生するには辛いだろう
その無念すべて此処に置いていくと良い

あえてヌァザもイルダーナも、銃も錨鎖も盾も用いない
ボクの得物は、相手にとっては卑怯だろうしね

もとより殺意はないさ、これもキミの明日の為に
全力の闘志のみ

キミを舐めてる?
まさか、コレは敬意を払ったんだよ

キミの方こそエモノ持たざるボクを軽んじやしなかったかい?

ボクの戦術の基本は武装じゃない
リアルタイムな戦術演算と、その実行力にこそある
相手の動き、戦いをナノセコンド単位で学習演算
(情報収集、戦闘知識、オーラ防御、時間稼ぎ、視力、学習力)

一瞬の隙に、カウンターでUC【心髄拳】を放つ!



 ここまで乗り続けていた制宙高速戦闘機『イルダーナ』から降りる緩く波のかかった黒髪の少女、リア・ファル(三界の魔術師/トライオーシャン・ナビゲーター・f04685)を三郎右衛門は静かに見つめる。リアは真剣な眼差しで三郎右衛門を見つめ返す。
「つわもの、か。転生するには辛いだろう。その無念すべて此処に置いていくと良い」
 そう言ってリアは装備していた武器をすべて外し、イルダーナの座席の上に置いていく。この行動に三郎右衛門は明らかな嫌悪の表情を浮かべた。
「舐めるな猟兵。今まで自ら武器を置いた奴はいた。じゃが、お主は見たところその武器らが主な攻撃手段。ワシの武を軽んじるか」
 明確な敵意どころか、視線だけで人が殺せそうな威圧感を放つ三郎右衛門に怯まず、真剣なまなざしを揺るがすことはないリア。鈴の鳴るような綺麗な声には一片の恐れも憐れみもなかった。
「キミを舐めてる? まさか、コレは敬意を払ったんだよ」
「ほう、敬意とな」
 交わる二人の視線は決して逸れずに絡み合う。ここでリアは初めて表情を変化させる。笑顔だ。自信に溢れた不敵な笑みで三郎右衛門に言葉を返す。
「キミの方こそエモノ持たざるボクを軽んじやしなかったかい?」
 虚を突かれたように顔色を変える三郎右衛門。一時の感情に流され、相手の真意を測りかねていたのは自分の方だったと気づく。リアは最初から真摯な思いで武器を置き、無手での戦いを所望していたのだ。
「ハッ。ワシもまだまだ未熟じゃ。孫ほどの女子だからと慢心しておったわ。非礼を詫びよう。さぁ、参ろうか」
 破顔し、すぐさま真剣な表情に戻る。互いに構え、そして同時に跳躍する。
 先手は三郎右衛門が初手から必勝の一撃を見舞う。それが先ほどの非礼に対する三郎右衛門の詫び代わりの行動だった。
 殺意を砕く必勝の拳。受ければたちまち三郎右衛門への殺意は霧散し、戦わずして敗北を認める。そんな攻撃をリアは右腕を盾のように差し出して滑らせるように必勝の拳を逸らしていく。もはや何度目になるかわからない。またもや殺意を砕かれたはずの猟兵の戦意は衰えない。自身の奥義が今は役に立たないことを早々に三郎右衛門は悟った。仕切り直しのため、三郎右衛門は後方へと跳躍してリアの反撃から逃れる。
「お主も殺意を持たぬクチか。今の一撃はワシへの殺意を砕く奥義。触れるだけで効果があるというに……猟兵は殺意なく戦う輩が多いのぉ」
「もとより殺意はないさ、これもキミの明日の為に。あるのは全力の闘志のみ」
「ありがたい」
 心から染み出たような小さな呟きには、多くの想いが籠っていたのだろう。一度だけ目を伏せた三郎右衛門が顔をあげると、晴れやかな笑顔を浮かべていた。
 ここからは互いの技と技のぶつかり合いだ。距離を詰め、速度を優先した軽めの拳でリアを翻弄し、隙をさらせば強烈な攻撃を叩き込む。そのつもりで三郎右衛門は素早い連打を繰り出す。
 対するリアは最低限の動きで三郎右衛門の猛攻を捌いていく。直撃の瞬間に体を逸らしては紙一重で躱し、逃げ道を塞ぐように連撃を放てば、絶妙に拳の勢いを殺せる箇所を小突いて最小限にまでダメージを抑える。
 まるでどうすれば攻撃を回避できるか、どうすれば攻撃を相殺できるか、事前にすべて把握しているような動きだった。三郎右衛門はこれがリアの不敵な笑顔の理由なのだろうと察し始めていた。
 その予測は正解である。元々リアは宇宙戦艦の制御ユニットだ。優れた電脳魔術と戦術演算で三郎右衛門の攻撃を計算、予測して最良の方法で捌いているのだ。しかもその計算は互いに目が合った最初の瞬間から、今この時まですべてリアルタイムで行われている。会話、動き、戦いの挙動。そのすべてを余すことなく計算しつくされれば、いくら老練な武術家と言えど、優位に立つのは難しい。
 ならば一か八か、と三郎右衛門は今まで以上の速さで以て拳を繰り出す。それは後の事を考えない捨て身の一撃。これで仕留めることができなければ大きな隙をさらすのは間違いない。そんな覚悟で放たれた拳はリアの今まで行っていた計算を大きく超えていた。
 リアの頭部に装着されていたヘッドギアが空を舞う。だが、仕留めるには至らず。
「残念だったね。……タルトゥまで飛んでいけ!」
 光を放ち輝くリアの拳。それは寸分の狂いもなく三郎右衛門の体を捉え、その華奢な体からは想像できないほどの勢いで吹き飛ばす。勢いのまま本堂へと叩きこまれた三郎右衛門をそのままに、リアはヘッドギアを拾い、その場を去るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

天野・白蓮
(アドリブ連携絡み歓迎)
…なんだ、こういう未練残す爺もいるもんだなぁ。
良いぜ、未練残して成仏させるよりかは…存分に死合ってから旅立ってもらうが良いだろうよ。
(木刀を一本地面に突き刺し、もう一方で構えを取り)

(POW)
お互い、体を傷つけずに心を攻める武の技、先に臆した方が負ける
真っ直ぐ見据え、武人の心を込めた拳を『見切り』
その一撃を受け止め、或いはかわしてから『カウンター』による
『破魔』の一撃をもって、成仏させてもらう

…来世に生まれ変わる時も、また道場開いて武の真髄でも極めに行く
気あるのかね?
そのつもりがあって、もう人様に迷惑かけないと約束が出来るなら
桜の癒しの下に送ってやる気はあるが…。



 枯れない桜の終わらない花吹雪。
 老練な武術家の前には、豪放な若き剣士が立っていた。
「なんだ、こういう未練残す爺もいるもんだなぁ」
 長い黒髪の偉丈夫、天野・白蓮(『帝都』を守護する一振りの金剛・f22771)はすでに抜き放っている木刀を構える。口調こそ軽いものだが、発する闘志は三郎右衛門の体を震わせる。
「意外か? こうした未練も往々にしてあるもんじゃよ」
 返す三郎右衛門の口調も軽い。だが、白蓮と同様にその身から闘志をみなぎらせる。
「良いぜ、未練残して成仏させるよりかは…存分に死合ってから旅立ってもらうが良いだろうよ」
 白蓮は二振りある木刀の片方を地面へと突き刺し、正眼の構えにて三郎右衛門を睨みつける。その手に握る木刀には、まばゆく輝く破魔の力が宿っている。
「よい気迫よ。その並々ならぬ殺意、我が拳にて砕いてくれようぞ!」
「なら俺は、お前の持つ影朧としての邪心を斬る!」
 ここで双方が気づく。互いの技は身体を傷つけずに精神的なダメージを与える技だということに。故にお互いが言葉にしなくとも察している。先に臆して隙をさらした方が負けるということを。
 先に一撃を当てたほうが勝つという非常にシンプルなこの戦いは、傍から見れば互いに体をわずかにゆするだけで、何も起きていないように見えている。
 だが二人の戦いはもう始まっているのだ。
 あえて小さな隙をさらし、相手が思わず動くのを待っているのだ。戦いに身を置く者ならば、敵の隙を見つければ反射的にそこを突くために動く。中途半端な実力者ほど容易にかかる武人の罠。だが、かたや世界を越え、多くの敵と戦ってきた剣士と、相対するは死してなお鍛錬を続けてきた影の修験者。そのような罠にかかるような存在ではない。あくまで今行われている隙のさらしあいはほんの小手調べに過ぎないのだ。
 息が詰まる程の緊張感の中、じり、と白蓮が前に出る。三郎右衛門も白蓮に併せて前に出る。少しずつ、少しずつ二人の間合いは狭まっていく。気が付けば、二人の距離は互いに必殺の間合いへと捉えあっていた。刀を振れば、拳を出せば、それだけで勝負がつくという距離にまで近づいていた。
 ふと三郎右衛門が笑みを浮かべた。挑発でも攻撃を誘う罠でもない。武人としてここまでの戦いを繰り広げることができたという満足感。真っ向勝負を挑んできた猟兵たちの熱い思いに触れ、三郎右衛門は歓喜に笑みを浮かべたのだ。
 無我の境地へ達したように、三郎右衛門は拳を突き出す。気迫も闘志もないただただ純粋な武への探求と感謝がこめられた正に至高の一撃。今この瞬間、三郎右衛門は武の真髄を見たのだ。この一撃で自身の未練は消えるだろう、と三郎右衛門は感じていた。
 至高の一撃はまっすぐに、白蓮の体へとのびる。殺意を砕く拳は白蓮に届くと三郎右衛門は確信した。
 風がさらに強く吹く。
 白蓮は、至高の一撃を受けるよりもほんの少しだけ早く動いた。破魔の力を宿した邪心を斬る一撃が、三郎右衛門へ先に届いたのだ。
 たった一撃の攻防の末、白蓮は膝をつき、緊張の糸が切れたのか大きく肩で息をしている。精神的な疲労が極限にまで達していた証拠だ。
「届かなかった、か」
 白蓮と同様に精神的疲労から荒い呼吸を続けている三郎右衛門は、影朧としての邪心を斬られ、その体が少しずつ消えかけていた。
「届かせねぇよ。武の真髄とは極めて終わりじゃない。その先もどこまでも歩み続けることだ。だから途中で投げ出すことは許さねぇ」
 三郎右衛門は不意を突かれたように呆けた表情を浮かべる。武の真髄を究めたまま終わらせたくない。その一心で白蓮は至高の一撃をわずかに超えることができた。歩みを止めた者より、歩み続ける者が、勝利を掴んだのだ。
「…来世に生まれ変わる時も、また道場開いて武の真髄でも極めに行く。そのつもりがあるなら、桜の癒しの下に送ってやる」
「うむ、それも悪くなさそうじゃ」
 三郎右衛門の体は更に薄まっていき、風景に溶け始めていた。しかし、その顔に悔しさも恨みもなく、晴れやかな気持ちに満ちていた。
「我が武の真髄、ここにあり。されど、我が武の道はどこまでも続く」
 最後の言葉を残して三郎右衛門は桜吹雪の中に消えていった。高めた武を誰の記憶にも残せなかった悲しき武人は、ここに万感の思いでこの世を去ったのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月19日


挿絵イラスト