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ゴーズ・トゥ・ヘル

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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「ウェルカーム! トゥ! サクラミラ――――――ジュっ!」

 重ねたケースの上に立ち、ばーんと両手を広げたシーカーに、あたたかな目が向けられる。シーカーは恥ずかしくなって咳払いすると、新たな世界について語り始めた。

「えーと。もうご存知の人もいるでしょうけど、次はサクラミラージュっていう世界です。ベースはUDCアース、ヒーローズアースと同じで地球大正時代が700年も続いていて、不死身の皇帝さんが治めています」

 不死の帝か何者かは名言されていない。しかし、地球上全ての国家を『帝都』の名の下に統治した恐るべき手腕を持っていることだけは確かだ。
 しかし、その統治もどうやら完全なものではないらしい。

「サクラミラージュはその名の通り、世界中のどこでも桜が咲き乱れる世界です。この桜は幻朧桜と呼ばれていて…………オブリビオンを呼び出す触媒になってるみたいなんです」

 幻朧桜に釣られてやってきたオブリビオン――――名を、『影朧』。骸の海からくみ上げられたオブリビオンとは違い、傷つき虐げられた者たちの過去、即ち世界の過去ではなく個人単位の過去から発生している。
 通常のオブリビオンもまた過去の残滓に過ぎないが、影朧はそうしたオブリビオンとは少し違う。まず、個人単位の過去から発生したせいか不安定で、『転生』の余地があるそうだ。

「曰く、その荒ぶる魂と肉体を沈め、桜の精の癒しを与えることで転生させられるんだとか……。しかし相手は曲がりなりにもオブリビオン。ユーベルコードを使わないと倒せません」

 実のところ、このサクラミラージュにもユーベルコード使いは点在しているらしい。帝都は彼らをまとめた組織、影朧救済機関『帝都桜學府』を設立して前面的に支援。影朧の転生に力を入れているようだ。

「で、今回の依頼なんですが……サクラミラージュの『ユーベルコヲド使い』たちにも対処できない影朧の巣が出来てしまったので、ここを浄化してほしい……とのことで」

 ユーベルコヲド使いたちは、一般的に猟兵よりも弱い。そんな彼らでは対処できなくなってしまった領域――――影朧の大量発生により放棄してしまった『逢魔が辻』と呼ばれる場所が、世界のあちこちに存在している。

「『逢魔が辻』は、魔の巣窟にして夜の領域。場所や特質は場所によって変わります。今回は一年に数回、丑三つ時にしか現れない逢魔が辻で……帝都桜學府はここを『奇祭・焔演武(きさい・ほむらえんぶ)』と呼んでいます」

 この逢魔が辻では、影朧たちが武を競って試合を繰り広げているお祭りのような状態が続いている。
 しかし、この祭りはただの祭りではなく、戦いを望む相手を強制的に引きずり込んで死ぬまで戦わせるダンス・マカブルの舞台! 普通のユーベルコヲド使いが踏み入ればたちまち取り込まれ、死ぬまで戦わされ続けて影朧の仲間入りを果たす。

「このまま放置するのは危険すぎます。なので、猟兵の皆さんに事態の解決をしてほしい、と……いうことです」

 皆には『奇祭・焔演武』に突入し、影朧の駆逐をお願いしたい。


鹿崎シーカー
 ドーモ、鹿崎シーカーです。新世界開幕! これはやるしかない!
 成功条件は『敵の全滅』、失敗条件は『猟兵全員の敗北』です。純戦闘シナリオとなっています。

●奇祭・焔演武
 年に数回だけ現れる領域。骸骨の器楽隊が音楽を奏で、燃える寺とその境内で魂尽き果てるまで戦うこととなります。特殊なギミックはありません。寺の中にはラストボスである菱宮・三郎右衛門が座しています。

●第一章『古塚の呪い』
 打ち捨てられた古代の社や無縁仏が、ひとつの影朧として怪物化した姿です。複数の遺物が混合して一体となっており、新旧入り交じる奇怪な攻撃を仕掛けてきます。
 集団戦です。数は30体。

●第二章『ヒヨリミ』
 「火夜見」。打ち捨てられた布が変じた、赤いテルテルボウズを思わせる可愛らしい影朧です。空中を滑るように浮遊しながら、裾からのぞく2本の刀で「武器を持った人間だけ」を切り刻み、燃やし尽くします。
 集団戦で、40体。自身の特性により、武装した人間しか狙いません。素手で挑もうとしても『正々堂々ではない』と判断してスルスル逃げていってしまいます。
 ただし、他人から借りたものでも武器であれば群れを為して襲ってきます。

●第三章『菱宮・三郎右衛門』
 中部地方の何処かで約700年に渡り脈々と受け継がれてきた古武術の老師範……だった影朧。礼儀・智慧・胆力、後は稽古に精進! がモットー。正々堂々とした「試合」を好む真面目な性格。卑怯な手を使う奴は許せない。
 ボス戦です。特性通り、拳ひとつを使った正面戦闘を行います。武器を持つぐらいなら許してくれるようですが、闇討ちと罠と毒物使う奴絶対殺すマンでもあります。一章・二章でこれを行った場合、神速の鉄拳で強制的に打ち倒されてしまいます。

 アドリブ・連携を私の裁量に任せるという方は、『一人称・二人称・三人称・名前の呼び方(例:苗字にさん付けする)』等を明記しておいてもらえると助かります。ただし、これは強制ではなく、これの有る無しで判定に補正かけるとかそういうことはありません。

(ユーベルコードの高まりを感じる……!)
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第1章 集団戦 『古塚の呪い』

POW   :    百手潰撃
レベル×1tまでの対象の【死角から胴から生える無数の腕を伸ばし、体】を掴んで持ち上げる。振り回しや周囲の地面への叩きつけも可能。
SPD   :    百足動輪砲
【両腕の代わりに生えたガトリング砲】により、レベルの二乗mまでの視認している対象を、【銃弾の嵐】で攻撃する。
WIZ   :    百足朧縛縄
【呪いに汚染された注連縄】が命中した対象を捕縛し、ユーベルコードを封じる。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。

イラスト:小日向 マキナ

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

伊美砂・アクアノート
【WIZ 奇術札・紙馘剣】
(一、二人称、口調等は多重人格なので常に変動しています アドリブ歓迎)
……卑怯卑劣も闇討ち暗殺も不可か…。ボク、いちおう暗器遣いなんだけどな…。 ボヤきつつ、ルールから逸脱してブン殴られたくはないので、両の掌でタロットがカードを展開し見せびらかす。あ、アタシは今回カードで戦いまーすっ!事前申告しとけばセーフ…じゃよね?
カードを指の間で挟み込み、剃刀のようにして【早業20、2回攻撃10】の接近斬撃、中距離は【スナイパー20、投擲10】でカード投擲、遠距離は【奇術札・紙馘剣】で複数枚のカード曲射で攻撃する。…伊達に器用さだけで猟兵やって無ェっての。たかがカードと侮るなよ?


須藤・莉亜
「なかなか楽しそうなお祭りやってるねぇ。僕も混ぜて?」
新しい世界の敵さんは、どんな味の血なのかな?

竜血摂取のUCを発動。
強化されたスピードを活かして一気に敵さんに近づいていこう。
銃弾の嵐は、強化された反応速度を駆使した【見切り】で避けるのと、血飲み子や悪魔の見えざる手で【武器受け】で防御しながら突破を試みる。
多少の被弾は無視。すぐ治るしね。

近づけたら、全力で噛み付いて【吸血】。ついでに腕のガトリング砲も噛み砕くのもあり。
悪魔の見えざる手には吸血中の僕の護衛を頼んどこうかな。

「さて、どんな味の血なのかな?ミックスジュース?」

【僕・きみ・年上の相手のみ名前+さん、他は名前呼び捨て】


黒木・摩那
一人称:私
二人称:あなた
三人称:(苗字)~さん

オブリビオンが集まるという奇祭・焔演武とは変わった空間ですね。
オブリビオンのバーゲンみたいなものでしょうか。
ともかく一網打尽ができるチャンスでもあります。

頑張ります。

UC【偃月招雷】でルーンソードを帯電し、攻撃力を高めます【属性攻撃】【破魔】。

相手攻撃を【第六感】やスマートグラスのAIで探知しつつ、
飛び道具は【念動力】で弾道を逸らしながら、懐に入り込みます。
そして、防御の弱い、鎧の隙間を狙います【鎧無視攻撃】【衝撃波】。



『GOOOOOAAAAAAAAAAAAAARGH!』
 赤い武者鎧の兜が猛声を張り上げ、蛇じみた下半身から生えた無数の黒い手を蠢かせ走る!
 『古塚の呪い』が注連縄の巻かれた巨体で砂利を蹴散らしながら突き進む先には、拳を構えて微動だにせぬ老人。地を揺るがす激動を前にして、その気骨は一切揺るがぬ! 広大な戦闘リングを形作る蒼炎の中、僧服をまとった骸骨たちがツヅミビートのBPMを上げ出した。
 突進しながらのガトリング掃射が奏でる重低音と、ツヅミの音色のサラウンド。それを三階建て建築物より高い鳥居の上で聞きながら、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は興味深そうに呟く。
「奇祭・焔演武とは変わった空間ですね。オブリビオンのバーゲンみたいなものでしょうか」
 押し上げる眼鏡の下でブラウンの瞳がキラリと光る。
 奇祭・焔演武。年に数回だけ現れる、オブリビオンたちの巣窟にして大試合。寺とその境内を模した戦場は妙に広大で、見上げるほどの巨体を持つ『古塚の呪い』の呪いでさえ縦横無尽に大暴れできる。
 試合場を取り囲む青白い炎壁の中の骸骨僧は、一心不乱に乱舞のメロディを刻み続ける。炎壁の外側には、複数の『古塚の呪い』や紅いテルテル坊主じみたオブリビオンが声援を送っていた。
 摩那の足元に屈んだ須藤・莉亜(メランコリッパー・f00277)は外周のオブリビオンを指差し数え。
「いち、にー、さん……たくさんいるね。食事には全く困らなさそうだ」
 やや大きいボーダーシャツの腕を大鎌の柄に絡め、煙草を一服。昇って来た紫煙に口元を塞ぐ摩那には気づかず、莉亜はオブリビオンたちをじっと見つめる。大鎌の、天使の翼めいた白い刃がさざめいた。
「さて、どんな味の血なのかな? ミックスジュース?」
「それは流石にないんじゃないかな……だってほぼ無機物っぽいぜ? あのおじいさんなら話は別だと思いますけど」
 伊美砂・アクアノート(さいはての水香・f00329)が苦笑いと共に言う。喉を鳴らした莉亜の視線が徒手空拳にて戦う老人へと向けられる。ガトリングガンの腕で繰り出されたパンチをジャンプ回避し、『古塚の呪い』の目と鼻の先で拳を引き絞った老人へと!
「フンハアアアアアアアアッ!」
 SMAAASH! 鼻面を殴り飛ばされた『古塚の呪い』が大きく後退し、背を逸らす。
 長い胴体から生えた腕が倒れまいと砂利を握るも、傾いた上体を立て直すには至らなかった。『古塚の呪い』がそのまま仰向けに倒れ、オブリビオンたちの歓声が境内を満たす。着地した老人は長く息を吐き、残心した。
 派手に打ち鳴らされる刀や鳴子の音を聞きつつ、アクアノートは胸元からカードの束を引き抜く。
「一区切りついたようじゃな。行きますか!」
 アクアノートと摩那が鳥居を飛び降り、一拍遅れて立ち上がった莉亜がそれに続いた。さほど時を置かずに砂地に踏みしめる三人。外周のオブリビオンたちがどよめく中、腰を落とした姿勢で身構えていた老人は、片目を開いて軽く笑った。
「……ほう、珍客じゃの」
 距離にして約15メートル。老人と向き合った三人のうち、莉亜がだらんと大鎌を下げ、摩那が細身の剣で空を切る。
「なかなか楽しそうなお祭りやってるねぇ。僕らも混ぜて?」
「飛び入り参加になりますが、問題はありませんね。聞けば、人を取り込んでは死ぬまで戦わせていたとのことですし。今更三人程度、物の数ではないでしょう」
「くははははは! 見かけによらず剛毅と来たわ! 過去、幾度かこの地に踏み入った者共は皆、臆病風に吹かれたというにのぉ。いやはや、若い身で結構」
 老人は構えを解くと、背筋を伸ばす。老いた身でなお曲がらぬ腰骨。手の甲に浮きでた太い血管を見、莉亜はごくりと喉を鳴らした。
「名乗りが遅れたな。ワシは、菱宮・三郎右衛門。武術師範にして、この祭りを取り仕切っておる。ほれ、お主らも名乗りを上げんか。この世に二つとなき旗印じゃぞ? 敵を前に掲げんでどうする」
 顎で促され、アクアノートが二人に目配せ。
 オブリビオン、『菱宮・三郎右衛門』。曰く、そのモットーは礼儀・智慧・胆力、後は稽古に精進。卑怯は許さず、神速の拳は猟兵を一撃で打ち倒すという。アクアノートの視線は、二人に一度相手の礼儀に乗るべきだと主張していた。
 二人の見返す目を確かめたアクアノートは気をつけ姿勢で頭を下げる。莉亜は雑に、摩那は丁寧にお辞儀。
「……お初目にかかる。某、伊美砂・アクアノートと申します」
「ん、須藤・莉亜。よろしく」
「初めまして、黒木・摩那です」
「もっと胸を張って名乗れと言いたいところじゃが、まぁよかろう。それよりも、だ。……ここに来た生者連中は、いつも同じことを口にする。この祭りを潰すとな。お主らもそうであろう?」
「わかってるなら、話は早いわ」
 アクアノートは微笑し、両手でカードの束を広げる。全二十三枚、絵柄は全てゴーストや死神、魔女に悪魔を描いた不気味な物だ。
「先に言うけど、アタシの武器はこのカード。隣の二人は見ての通りだよ。……武器の申請、ちゃんとしたから。後からズルだとか言うのはナシだぜ」
「ふ、よくわかっておるわ」
 三郎右衛門は口角を上げると、両膝を曲げてハイジャンプ! 空中側転を決めながら炎壁の外側、燃える寺の屋根へと降り立つ。
 同時に、寺の脇に吊るされた鐘が一人でに鳴り始める。ゴーン、ゴーン――――重低音に合わせ、炎壁内部の骸骨僧らが演奏再開。コン・フオーコ。燃え上がる炎の如き戦のメロディ!
「では、お主らの参加を認めよう。焔に舞い、烈火の如く戦うが良い!」
 三郎右衛門が片手を上げたその瞬間、さっきまで彼が居た場所の地面が大爆発! 砂と小石をパラパラと降らせながら出現したのは、三体の『古塚の呪い』だ!
 摩那はアンダーリムの眼鏡を押し上げ、剣を構える。
「三体……大方、小手調べと言ったところですか。須藤さん、伊美砂さん。一人一体で戦いますか? それとも、三対三?」
「僕はどっちでも。血が多く吸えるに越したことは無いけど」
「自分も同じく。あとは向こうがどう出てくるかですが……!」
 話し合いもそこそこに、三郎右衛門が真っ直ぐチョップを振り下ろした。
「始めッ!」
 DWAAAAAAANG! 銅鑼の音が高らかに響き、『古塚の呪い』三体が咆哮を放つ!
 中央の一体が足代わりにした大量の腕を膨らませて大ジャンプ! 残り二体が上体を地面に這わせ人食い蛇じみて三人の猟兵へと迫る!
 一方で摩那は剣を上空へ向けた。赤縁眼鏡のレンズに碧の文字列!
「お二人とも、少々後ろへ。ウロボロス起動……励起!」
 摩那の刃にルーン文字の羅列が流れ、桜色の電光を吹き上げた。大ジャンプした一体が両腕のガトリング銃身を回転させ銃撃準備! 摩那は剣を逆手に持ち変え地面スレスレまで引き下ろす!
「昇圧、集束を確認……帯電完了。……はッ!」
『GUUUUOOOOOOOOOORGH!』
 空中ガトリング掃射開始と同時に、ZGRAAAAAAAK! 摩那の雷が虚空を縦に引き裂いた!
 ほとばしる無数の稲光が降り注ぐ鉛弾の雨ひとつひとつに絡みつき、弾幕を左右に分解。軌道の逸れた銃弾たちが境内の砂利地に次々と突き刺さっていく!
「行って!」
 摩那の合図を受けてアクアノートと莉亜が飛び出す。空を割った桜色の電光と、境内を抉る弾幕を余所にした彼女たちの前には獲物を見つけたアナコンダめいて疾駆する二体!
 莉亜はポケットから小瓶を取り出し、指で栓を弾いて中の黒い液体を飲み下した。
「……うぇっ」
 顔をしかめた莉亜の瞳が縦長に変形。続いて目元や首筋、両手を黒い鱗が覆い、シャツの背中を突き破って竜翼が出現! ねじくれた二本角を生やし、半竜人と化した莉亜の姿が掻き消える! 一拍遅れて暴風が吹き上げ、砂利を周囲にまき散らす。
「GRAAAAAAAAAAARGH!」
 古塚の呪いの片方が上体を持ち上げガトリングガンを突きつける! が、その喉笛に白い横一閃の光が走り、SLAAASH!
 高速で呪いとすれ違った莉亜は身をひねりながら長い胴体に着地した。直後、上体を180度回転させた古塚の呪いがガトリングの腕を裏拳めいて振り回す! 莉亜は跳躍して回避!
「ちぇっ。これじゃあ浅いか」
 呟く視線は巨体の喉笛。横一文字に斬られた首筋には薄っすらと切り傷が刻まれていた。竜翼を広げて飛翔する莉亜をめがけ、古塚の呪いはガトリングの腕を振り上げる!
「GAOOOOOONG!」
 巨大なアームハンマーに対し、莉亜は左拳で滞空パンチを繰り出した。莉亜の真横を不可視の巨大な物体が通過。アームハンマーと真正面からぶつかり合いSMASH!
 反動で跳ね上がった銃身に飛びついた莉亜は鋭い牙を立てて黒鉄を一部かじり取る。
「うげっ。ぺっ!」
 不味そうな顔で鉄片を吐き出した彼の真下、古塚の呪いの胴体から伸びた無数の腕が彼の体をガシガシと捕捉! 怒りに吠えた古塚の呪いは、かじられたガトリングの腕で莉亜を思い切り殴り飛ばした!
「莉亜っ!」
 吹き飛ばされるも無数の手に引き戻される莉亜を遠目にアクアノート! だが彼女の方に向かったもう一体が胴体から大量の腕を放った!
 膨大な数のゴーストナックル! アクアノートはジグザグバックダッシュで拳をかわしながら、手にしたタロットカードを投げつける。
 大量に生えた手の間をすり抜け、赤い装甲に突き刺さる三枚の札。古塚の呪いはそれを無視し、地面に食い込んだゴーストナックルを使って体を前方へ引き寄せた! 押し寄せる巨体のタックルに、アクアノートはクロスガード体勢を取る! CRASH!
「ぐっ……!」
 真後ろにふっ飛ばされたアクアノートは、連続後方回転を決めて体勢復帰。彼女の軌道上では、跳躍した摩那が切っ先を下向けた刃に手を添えていた。
「刻印!」
 帯電した剣が桜色に放電し、摩那の目前に巨大なルーン文字を刻み込んだ! そのままルーン障壁に着地したアクアノートに呼びかける。
「飛ばしますよ!」
「かたじけない!」
 ZZT! ルーンがまたたき、アクアノートを砲弾めいて発射する! 剣を順手持ちにした摩那は、背後から叩き落としに来る数本の注連縄を振り返りながら斬り上げた。
「ふっ!」
 ZGAM! 衝突と共に弾ける電光! しかし桜色の雷は黒ずんでいき、剣にまとわりついていた雷をも爆ぜ散らかした。妨害を退けた注連縄が摩那の脳天を直撃し、砂利の地面に叩き伏せる!
 摩那を飛び越えていた古塚の呪いが再跳躍し、彼女が叩きつけられた場所にボディプレス!
 THOOOM! 後方から響く地鳴りを意識から締め出し、アクアノートは両手十指にタロットカードを挟んで回転! ばらまかれるガトリングの弾幕を片っ端から三枚下ろしに変えつつ接近し、彼我の距離15メートル付近で右手のタロットカードを振りかぶる!
「シャッ!」
 射出! 同時にアクアノートの脇腹や肩、太ももに風穴が空き、カジノディーラーじみた衣装のそこかしこにかぎ裂きが作られた。弾丸を真っ向から寸断したカードは、古塚の呪い武者兜の両目部分に命中! 巨体が大きくのけ反り、兜の間から黒血が噴出!
「AAAAAAAAAAAARGH!」
 古塚の呪いが両目を押さえて悲鳴を上げる。
 体の各所を打ち抜かれ、空中で姿勢を崩したアクアノートは地面を転がって片膝立ちになり、左手のタロットカードをアンダースロー投擲! ホイールソーめいて回転しながら飛んだカードは、カーブを描いて急上昇。古塚の呪いの長い胴体の下部から腹、鳩尾までを斬り抜いて天空へ抜ける!
 カードと入れ替わりに落下した莉亜が、古塚の呪いの両目を覆うガトリングガンの腕に着地した。
「お。ラッキー」
 莉亜は大きく頭を振ってガトリングの銃身をかじり取り、口の中で噛み砕く。そのまま大きく息を吸う莉亜に、彼と戦っていた古塚の呪いが無事なガトリングを向けた!
「GAAAAAAAARGH!」
「す――――――っ」
 回転し始める連結銃身! それらが弾丸を吐き出す寸前、莉亜は口内の鉄片を散弾銃じみて噴き出した! 赤い鉄仮面に食い込む複数の破片。だが古塚の呪いはひるまずガトリングガンを乱射する。
 BRRRRRRRRR! フレンドリーファイアもいとわず放たれた弾丸を、莉亜は真横に疾走して回避! アクアノートと交戦していた個体の身体を滑り降り、腹部を蹴って前方回転降下からの低空飛行。追随する連弾を後方に残し、足を射抜かれて動けないアクアノートへ一直線!
「アクアノート、ちょっとごめんね」
「ふえっ!?」
 目を丸くするアクアノートをさらって垂直上昇! アクアノートの居た場所が、摩那を踏み潰した個体のガトリングを受けて蜂の巣に変わった。
「GOOOOOOORGH!」
「ARRRRRRRGH!」
 吠える声でコミュニケーションを取った前後の古塚の呪いが、銃口を空へ逃げる莉亜とアクアノートに掲げる。錐揉み回転した莉亜は胸いっぱいに深呼吸!
「須藤さん、来るわよ!」
「ん」
 アクアノートに短く返事した莉亜は、錐揉み回転しながら下方に向けて黒紫色のブレスを放った!
 巨大な螺旋を描きつつ降りた腐蝕の霧が、銃弾の嵐を受け止め不浄の黒煙として蒸発させる。それを見上げる古塚の呪い一体の真下から、ピンクの稲妻が噴き出した!
 地面を蜘蛛の巣状に這う雷光の中心、自身を押し潰す巨体を持ち上げた摩那は、眼鏡越しに蛇じみて長い胴体を睨む。分析、そして装甲の隙間を発見! 摩那の両手の甲、黒いジャケットの背中、両足の側面にルーン文字が浮き上がり、電圧を急上昇させる!
「はああああああああああッ!」
 CABOOOOOOM! 噴火の如き雷撃が古塚の呪いの巨体を持ち上げ、吹っ飛ばす!
 巻き上げられた古塚の呪いに巻きつく注連縄がひとりでに解け、鎌首をもたげて摩那を照準。高性能眼鏡から攻撃のアラートを受けた摩那は構わず剣を振りかぶる!
「そこッ!」
 SLASH! 桜色の雷鳴が空を引っかき、古塚の呪いの胴体を分断! 大音声を上げた古塚の呪いは真下の摩那へガトリングガン掃射した。摩那は頭上に剣でK字を描き、新たな大型ルーンを作成。
「励起。昇圧、条件設定完了……放射っ!」
 摩那が文字に剣を突き刺すと共に、文字から放たれた幾条もの電撃がガトリングガンを絡めとる! あらぬ方向へと誘導された弾幕は小石を敷き詰めた境内のそこかしこで小爆発を繰り返す。
 放電するルーンの下で、摩那は眼鏡に流れる文字列を見ながら宣告した。
「それはもはや分析済みです。今後一切、その攻撃は通用しないと…………!?」
 眼鏡レンズの『CAUTION!』マークが摩那の言葉を遮った。次の瞬間、空中の個体が千手観音像めいて無数のゴーストハンドを解き放つ!
 大量の腕は摩那を取り囲むように砂利の地面に爪を立てて指を押し込む。数秒と経たず生み出されたのはゴーストアームで出来た鳥籠! その頂上には古塚の呪い! 摩那は直感で次の攻撃を読み取る!
「質量攻撃ですかッ……!」
「GOAOOOOOOOORGH!」
 摩那のうめきを掻き消し、古塚の呪いは腕に自分を引かせてフライングボディプレス! 逃げ場を塞いでの範囲攻撃が迫る中、摩那は足元に剣を突き立てた。
「励起。昇圧、範囲を指定……結界設置!」
 摩那の周囲をルーン文字の円環が取り囲み、頭上のK型ルーンと合わせてドーム状のバリアを生成! 即席の斥力フィールドに、古塚の呪いの広大な胸が隕石めいて落下した。ZGRAAAAAK! 断末魔じみて結界が放電!
「ぐっ……!」
 柄をひねり、剣をさらに深く突き立てながら摩那が歯を食いしばる。他方、残る二体が摩那たちに向かって駆け出した! 莉亜の撒いたブレスを貫けぬと察して地上の助力に打って出たのだ。ムカデの足じみて生えたゴーストハンドを全速力で動かし、二体はそろってジャンプする!
『GRRRRRRR!』
 不味い。剣握る手を震わせる摩那の脳裏に警鐘が響く。
 一体で結界と拮抗する程の質量。それがさらに二体重なれば、今度こそ圧死は確定! 高速演算する眼鏡のレンズを睨み、摩那が唇を噛んだその時である! 腐蝕の霧が一刀の元に両断された。
「おおッ……!?」
 三郎右衛門と観戦オブリビオンたちが驚きどよめいた。
 真っ二つに霧散し、赤い月が浮かぶ夜空が露出! 真紅の月光を背に落下するのは――――アクアノート! 真下には跳躍した古塚の呪いが二体!
 全身血みどろのアクアノートは自分の脇腹に手を触れる。あったはずの傷はそこになく、服に空いた穴から傷ひとつない地肌が覗く。彼女が頭から被ったのは、莉亜の血だ!
(傷は治った。これならば……!)
(解体してやれる! ブチ殺してやろうぜ!? なあ!)
(お待ちになって? 莉亜様のために血を捧げなくては……)
(それなら、もう一回目ン玉狙えばいいんじゃない?)
(それが良かろう! あの腹空き小僧に血の涙を呑ませてやろうぞ!)
 脳内で複数の声音を喚かせるアクアノート。彼女に気づいた二体の古塚の呪いは、空中で身をひねる形で仰向けになった。背中から伸びるいくつものゴーストハンドで体を支え、注連縄を数本アクアノートに射出する!
「甘く見ないでくださいましッ!」
 アクアノートは打ち振った両手十指にタロットカードを挟み込み、落下しながらコマめいて回転!
 遠心力を乗せて投げたカードの数枚が注連縄の何本かと衝突して拮抗。止め切れなかった注連縄がアクアノートに襲いかかった!
 アクアノートは膝を抱えて前方回転し一本目をかわし、足元を突き抜けた縄を蹴って跳躍、二本目を回避! 四肢を大の字に広げて体を回し、真下をかすめた三本目に両足をつけてサーフィンめいて滑る!
「GAAAAAARGH!」
「OAAAAAARGH!」
 二体はそれぞれ莉亜にかじられなかった方のガトリングを持ち上げ、マズルフラッシュを明滅させた。BRRRRRRRRRR!
「莉亜くんっ!」
 対空射撃を前にしたアクアノートのすぐそばに莉亜が出現!
 アクアノートの肩を抱いた莉亜は竜翼を広げ、対空弾幕を睨み据えた。銃弾と銃弾の隙間を見切り、大きく羽ばたく!
「アクアノート、口閉じててよ。舌噛むから」
「っ!」
 アクアノートが唇を引っ込めると同時に莉亜は加速した。上下左右、縦横無尽に動きながら鉛弾をかき分け、自身に当たる軌道は不可視の腕で打ち払う! やがて銃弾地帯を突破した莉亜の瞳は、古塚の呪い二体の胸から生える大量のゴーストハンドを捕捉した。
「……あれの血気になる。先行って」
「先行けってお前っ……!」
「投げるよ」
 抗議をスルーし、莉亜はアクアノートを投げおろす! 直後、赤い胸当てから間欠泉じみて無数のゴーストハンドが飛び出した! 莉亜は迫りくる手の群れを回転飛行しながら迎え撃つ。そして、ゴーストハンドを避ける軌道で放られたアクアノートは二体のうち片方の腹部に着地した。
「もぉー! 莉亜お兄ちゃん、もっと優しくしてよ……!」
 文句もそこそこに足場を蹴って走り出すアクアノート! 胸元から生えた大量の手のうち、五本が危険を感じたか彼女めがけて掌底を繰り出してくる。アクアノートはトンと跳んでタロットカードを五枚投射! ゴーストハンドの指をすり抜け、SLASH! 指を全て斬り飛ばした!
 アクアノートはそのまま飛んでいくタロットカードへ指二本を上向けて突き出し、指先を持ち上げる!
「分かれろ!」
 五枚のタロットカードは高速回転を始め、左右に分かれてゴーストハンドの大群を避けた。鎧の胸から脇、肩を抜けて両目部分へ飛翔する! そのまま軌道を僅かに下向けて両目部分の穴にダイブ! 再び黒い血が二つ噴き出した!
「GYAAAAAAAAAARGH!」
「伊達に器用さだけで猟兵やって無ェっての。たかがカードと侮るなよ? 莉亜ッ!」
「うん、ありがと」
 アクアノートに呼ばれた莉亜が、ゴーストハンドの肉片を咀嚼しながら噴出した黒血に頭から突っ込む! そのまま古塚の呪いの後頭部をブチ抜いて着地! ゆらりと立ち上がりながら口元をぬぐった。
「ほろ苦くて香ばしい。それでいてコーヒーとは違う味わい。……悪くないね」
 言いながら大鎌を持つ手を一閃させ、古塚の呪いの頭部を寸断! さらに手中で回転させ背中も斬り裂く! T字に引き裂かれた古塚の呪いの一体が堕ちた。
 THOOOM! 響く地鳴りを聞き、摩那に圧し掛かっていた個体が驚愕じみた声を上げる。一瞬緩むゴーストハンド。圧し掛かりが軽くなった隙を突き、摩那は片手で剣の柄尻にルーンを刻む!
「収束……起爆!」
 一層強く光る稲妻が刃を走って地面に流れた。摩那を囲むルーンの円環が、彼女を守る結界が眩い閃光を放って爆轟を引き起こす! CABOOOOM!
「GOAッ……!」
 爆風に引きはがされた古塚の呪いが宙に浮く! 大地をつかんだゴーストハンドに力を込め直す直前、摩那は桜色に帯電する剣を縦に二回、横に一回振るって刺突を二発。飛翔した雷電の斬撃が鎧の両肩付け根を切断し、さらに腹部と胸部の継ぎ目を破壊! そして両目部分に突きをぶち込む!
「GYAAAAAAAAAARGHッ!」
 断末魔の声を上げ、古塚の呪いは内側から爆発四散した。
 バラバラと落下する鎧の破片。一瞬のうちに二度、仲間を滅ぼされた三体目が体勢を立て直して後ずさる。そちらに莉亜が肩越しに視線をやった。
「残りはきみだけ……ってことは無いだろ。30体いるって聞いてるからね」
 彼の言葉を聞いたアクアノートが、隣に歩いて来た摩那に耳打ち。
「まとめてやる、ということですか?」
「元々、一網打尽の機会ですし。頑張りましょう。このオブリビオンの手の内は既に見えました」
「GRRRRRRR……」
 唸り声を上げた古塚の呪いが、三郎右衛門の顔色をうかがう。
 老人の方は片頬を吊り上げて笑い、猟兵たちを炎壁越しに睥睨した。
「生者ども。その言葉、挑戦と見てよいのかな?」
 莉亜は無言で見つめ返し、摩那とアクアノートは得物を構える。それを無言の回答と見た三郎右衛門は剛毅に笑い、寺院傍らの鐘に手をかざす!
「よかろう。では古塚の呪い! 総勢を以ってかかるが良い!」
 ゴーン、ゴーン。鐘が高らかに鳴り響くと同時、炎壁の内側をそうように二十七の土煙が噴き上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​


●お知らせ

 第一章を続行します。
 次のプレイング受付は10月5日8:31~10月6日8:29までです。
 残り27体。
●お知らせ

 諸事情により受付期間を延長します。
 ~10月7日12:00まで。
黒木・摩那
敵の攻撃のパターンは掴めたとはいえ、
あと27匹は数がありますね。大きさもあるし。
先ほどのダメージもありますから、サイキックの消耗も避けたいところです。

ここは超能力から魔法へ。
UC【トリニティ・エンハンス】で【風の精霊】をルーンソードに付与します【属性攻撃】【破魔】。
斬りに行くときには、剣先を伸ばすイメージで【なぎ払い】を精霊で強化、攻撃力を高めるとともに複数を攻撃して、数減らしを図ります。


カイム・クローバー
一人称:俺 二人称:あんた 三人称:あいつ 名前:名前で呼び捨て

随分楽しそうなパーティじゃねぇか!特殊な仕組みは無し。さながら猟兵とオブリビオンのコロシアムって訳だ。
まぁ、それにしちゃ(燃える寺を見て)少しばかり気温が高すぎるが…観客(器楽隊)の熱気って事にしておくか。

銃弾の嵐か。気に入ったぜ。こっちも双魔銃にて応戦。
【二回攻撃】と【クイックドロウ】で速射。もっと痺れさせて欲しいって?オーケー。【属性攻撃】で紫雷を纏わせて撃ち放つぜ。
只のガトリング砲なら雷でぶち壊れたりするか?
正面からじゃなく、【残像】を残して移動し、同士討ちを誘う。
おいおい、ちゃんと狙えよ。(肩透かし)【挑発】も入れてくぜ


メンカル・プルモーサ
【一人称:私 二人称:貴方(敵にはお前)三人称:名前呼び捨て】
…さてさて。闇討ち・罠・毒がNGね…術式による攻撃ならセーフ…だといいなあ…
…まずは箒に乗って空中戦…【愚者の黄金】で壁を出すのは持ち上げられるのが恐いからなし…銃弾の嵐は空中を飛び回ることで回避するよ…
…●百足朧縛縄によるしめ縄は【煌めき踊る銀の月】で迎撃……しめ縄を切り刻むことで防御するよ…
…そして、攻撃の方は動きを止めるところから……【連鎖する戒めの雷】で同性質…つまりオブリビオンを纏めて雷で縛り付けて動きを止める…
…動きが止まったならそこに全力魔法での【尽きる事なき暴食の大火】を放って一気に仕留めるよ…


柚月・美影
せっちゃん(千里)やとものちゃん達と参加
一人称:アタシ
二人称:年上はさん、年下・同年代はくん、ちゃん付け
アドリブも歓迎

●戦闘
ガチンコをお望み?
良いわ、やってやろうじゃない!

相手の攻撃は【運転】テクニックと【野性の勘】で回避
攻撃はいつものバトルキャラクターズ
【なぎ払い】【念動力】で強化
「影朧となって止まった貴方達はこの子達に勝てるかしら?
アタシは銀河拳士を召喚!
効果により時空師匠を特殊召喚!
さあ、師弟のコンビネーションを受けてみなさい!
前進!系列!見よ!
銀河は…赤く燃えているぅ!ってね」


セシリア・サヴェージ
この世界は他の世界と理が違う部分が多く戸惑うこともありますが、どちらかが死ぬまで正々堂々と戦い続けるというのは話が単純で助かります。では私も先に戦った方たちに習い【礼儀作法】正しく騎士の名乗りを。

暗黒剣で【鎧砕き】【怪力】を用いた攻撃と、【武器受け】で防御を行います。兜ごと体を断ち割ってみせましょう。
しかし、さすがに数が多いですね。一掃するために暗黒剣の【なぎ払い】で発生する【衝撃波】で【範囲攻撃】を行います。UC【闇の戦士】を発動して【時間稼ぎ】をしつつ【力溜め】をしてその成功率を高めます。

通常時は私、あなた、名前+さん。UC発動中は私、お前、呼び捨て


潦・ともの
美影と参加
アドリブ大歓迎!

例えそれがなんであれ正々堂々と勝負を望むのであれば是非もない

『フォースの騎士として受けて立つ!』

きりりと宣言しつつ
表情一つ変えずにビームキャノンを構えてfire

『うし』

その数はちょっとずるいしにゃ
そこから美影とともに斬り込む!

【第六感】【見切り】で相手や周りの動きや流れを把握して
美影の召喚したものたちと連携
【武器受け】【カウンター】【勇気】【オーラ防御】で立ち回り
UC【覇翔斬り】【2回攻撃】【鎧無視攻撃】で斬り伏せる!
決め時には【武器改造】でビームキャノンのパーツを使い
フォースセイバーの出力アップからの覇翔斬り



「ARRRRRRGH!」
 砂煙から飛び出した古塚の呪いが吠え、ガトリングガンをぶちまける。
 凄まじい勢いで砂利を跳ね飛ばす弾丸の雨! 巻き上がる砂塵の中を、摩那は風をまとい不規則軌道で駆け抜けた。飛び交う小石が頬や膝をカマイタチめいて斬る。
「くっ……!」
 歯噛みした摩那は斜めに跳躍しムーンサルト回転斬撃を放った! 自身を追いかけてくる弾丸たちを全て粉々に斬り刻み、着地。その左右を古塚の呪い二体が挟んで、プレスを仕掛ける! 摩那は再跳躍して挟撃を避けるが、古塚の呪い二体は振り向きざまにガトリングパンチ!
『GRAAAAAARGH!』
 銃弾をばらまきながらの鉄拳が体を丸めた摩那をSMASH! 吹き飛ばされた摩那は放物線を描いて落下し、地面を転がりながら激しくバウンド。跳ねた身をひねって両足を地に着き、なんとか制動をかけた彼女に巨大な影が覆い被さる! 頭上から振ってくるムカデめいた巨体!
「風に踊りし精霊よ!」
 摩那が両膝に手を置くと同時、彼女の体を翡翠色の燐光が包む! 真横にジャンプした摩那は辛うじてフライングボディプレスを回避し、頬の裂傷を指でぬぐった。
(さすがにこの量……骨が折れますね……)
 立ち上がる摩那の前方三方向からガトリング掃射! 摩那は両足に風を渦巻かせ、垂直に跳んだ。高く、高く、弾幕も届かないほどの高度へ。
 真下を見下ろせば、土煙に満たされた蒼炎のリングが一望できる。先に共闘していた二人は見えない。隠れたか、一時的に撤退したか。いずれにしても良くない状況だ。敵の数が実際膨大!
(先ほどのダメージもありますし、サイキックの消耗は避けたい。で、あれば)
 摩那は空中で上下反転。見上げてくる古塚の呪いたちを見下ろし、虚空を蹴って流星じみた急降下!
『ARRRRRRRRRRGH!!』
 一体につき二門、二十七体で合計五十四のガトリングガンが摩那めがけて放たれた。もはや一部の隙もない殺人弾幕! しかし摩那は大気圏突破隕石めいて加速し、顔の前で両腕を交叉する。風の装甲を分厚くし、弾幕へ――――突入!
 ZGGGGGGGGGGGGGGGGGG!
「ぐぅぅぅぅぅぅぅっ…………!」
 風の壁に無数の弾丸が衝突を繰り返し、腕骨をドラムビートじみた衝撃が軋ませる。摩那は歯を食いしばって耐え、急降下継続! 弾丸の一発が風壁を突き破って摩那のこめかみを浅く抉った。
 蒼く燃える寺の賽銭箱に座った三郎右衛門が両手を叩く。
「カカカカカカ! なんたる蛮勇! 嵐の中に単身挑む鳥の如く無謀よなァ!」
 老いた目はギラギラと光り、歯を剥き出した口は獰猛に笑う。
「しかし面白い。これまでここに入った者らは、そのような真似は出来なんだ! やってみよ! 威を示せ!」
『コロセー! コロセー!』
 リング外のオブリビオン『ヒヨリミ』たちが二刀を打ち鳴らして喚き、骸骨ツヅミ器楽隊がビートを限界まで上げる。せめぎ合いのドラムロールだ! シャミセン、シャクハチ器楽隊も長く緊迫したメロディを鳴らす。
 BLOWWWWWWW――――! 吹き荒ぶ嵐が骸骨器楽隊のBGMを塗り潰すほどに猛り狂う! 平たく渦巻く風の防壁は、しのいだ弾丸を後方の空へと放り出す。数万、数十万にも昇る銃弾が、夜空の星めいて煌めいた。眼鏡のレンズに『限界』の文字。摩那は両目をカッと見開いた!
「天津風裂く精霊よ、物に宿りて我に従え! 姿さずけよ!」
 次の瞬間、風に弾き飛ばされた無数の弾丸が心臓めいて脈打ち、焼きモチめいて膨れ上がった! 三郎右衛門が目を剥き、ヒヨリミたちがどよめく。銃弾は四枚の細長い翅を伸ばし、後端から長い尾を、前端からは丸く膨らんだ複眼を現出させた。空を覆う不発銃弾は――――全て、シオカラトンボに変化したのだ!
「はっ!」
 摩那は両腕を開いて暴風を放ち、残る弾丸を跳ね返す。そして古塚の呪いたちを指差してシオカラトンボの大群に命ず!
「行けっ!」
 羽ばたいたシオカラトンボの軍勢はロケットじみて飛び出し、古塚の呪いに雨の如く降り注いで爆破した!
 BBBBBBBBBBOOOOOOOM! 蒼炎リングを埋める数千以上の球状爆炎! 前方回転しながら着地した摩那はつんざく連鎖轟音の中で荒い息を吐く。剣を持つ手は穴の開いた風船じみて込めた力を抜いていく。
「はぁっ、ふっ……!」
 摩那が腹の底に息を溜めた直後、四方の爆煙を突き破って四体の古塚の呪いが飛び出した! 鎧には細かな亀裂、巨体に巻きついたシメナワには黒い焦げ跡がいくらか残るが、致命傷にはほど遠い!
『GRRRRAAAAAAAAAAAARGH!』
「…………ッ!」
 自らを押し潰さんと押し寄せるオブリビオンを、摩那は己を強いて立ち上がる。が、地面をすり抜けて生え伸びた複数のゴーストハンドが、彼女の両二の腕や胸倉、喉笛を捕らえてその場に縛る! さらには剣を持つ手首にさえも!
「しまっ……!」
 凄まじい力でゴーストハンドが地面に引っ込み、摩那を地面に組み伏せる! 猛る古塚の呪い四体がガトリングの両腕を振り上げ、アームハンマーを仕掛けた――――その時である! 摩那の頭上に蒼い魔法陣が展開し、中央から杖を掲げるメンカル・プルモーサ(トリニティ・ウィッチ・f08301)が這い出した!
「観測せし虚像よ、沸け、轟け。汝は観客、汝は賞賛。魔女が望むは舞台を止めし大喝采」
 銀の三日月をあしらった杖が金色に光り輝き、メンカルと摩那の周囲に無数の光粒を生み出した。それらは一気に光量を増し、周囲を一色に塗りつぶす!
 K――――RAP! 鼓膜を引き裂くような喝采の爆音! 古塚の呪いたちは弾かれたように後ずさり、警戒めいてうなり声を上げる。消えた閃光の中央、空中浮遊するメンカルは摩那を見下ろした。
「……ん、無事?」
「ええ、なんとか。ありがとうございます」
「……そう。よかった」
 メンカルは呟くと、両腕を広げた。ゆったりした白衣がはためき、グレーストライプのスカートが揺れる。
「秘されし標よ、拓け、導け。汝は道程、汝は雲路。魔女が望むは稀人誘う猫の道」
 メンカルが詠唱すると、摩那を取り囲む形で四つの魔法陣が地面に出現。銀月の杖から伸びる三本の鎖の先で、青い鉱石が三つ光り輝く。次の瞬間、四つの陣が閃光を伴って爆散! リング外の三郎右衛門が好戦的に微笑んだ。
「ほう。そちらも新手か……!」
 剥き出した両目が見やる先、魔法陣が失せた場所に立つ四人のうち、カイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)が周囲を見渡して軽快に笑う。
「ハハッ! 随分楽しそうなパーティじゃねぇか! 特殊な仕組みは無し。さながら猟兵とオブリビオンのコロシアムって訳だ。まぁ、それにしちゃ少しばかり気温が高すぎるが……」
「あっつー! ホント、あっついね! しかもなんか蒸してない?」
 柚月・美影(ミラクルカードゲーマー・f02086)が声を上げ、胸元を手扇でパタパタとあおぐ。それを聞いた潦・ともの(Wild Flowers・f04019)は肩を落とした。半ば暑さでうだった顔を、汗が流れる。
「むぅ。これではシューマイになってしまうぞ。美影の肉まんふたつも蒸し上がって食べごろだ」
「……とものちゃん?」
 美影に横目でじろりと睨まれ、とものは握り拳を口元に当てた。泳いだ視線が燃える寺の三郎右衛門の姿を捉えた。
「げふんげふん。うむ、えーとだな。おまえか! 頭領!」
「如何にも。ここを取り仕切る男、菱宮・三郎右衛門よ」
 三郎右衛門はアグラした膝に手をつき、顎をしゃくって摩那を示す。
「で、お主らはそこな娘の加勢か。ほれ、こちらは名乗ったぞ」
 無言の要求に応え、とものの隣にセシリア・サヴェージ(狂飆の暗黒騎士・f11836)が並び立つ。セシリアは漆黒の大剣を足元に突き刺すと、柄尻に両手を置いた姿勢で仁王立ちした。堂々たる名乗り!
「初めまして、セシリア・サヴェージです。この演武、私たちも飛び入りで参加させて頂きたく」
「よかろうッ!」
 即決! ヒヨリミたちが一斉に三郎右衛門を見た。彼は懐から扇子を取り出し、乱入者五人に対して警戒態勢を取る古塚の呪いの群れを指し示す。
「所詮そやつらは有象無象、一騎当千の勇士であれば叩き潰せる程度のものよ。それがただの二十七! お主らは十にも満たぬが、問題はあるまい? ……祭りの続きだ、思う存分踊るが良い!」
 ドコドコドコドコドコドコフュルルルルルルルカランタンタンタンカランタンタンタン! 蒼炎内の器楽隊がBPMを引き上げる。古塚の呪いの群れは地鳴りじみた咆哮のサラウンド! 呪われたウォークライに圧され、ヒヨリミたちはリングの方を振り向いた。二刀を掲げて打ち鳴らす!
『コロセー! コロセー!』
『コロセー! コロセー!』
『コロセー! コロセー!』
 キンキンと甲高い歓声。カイムはうなじに手を置くと、悠然たる微笑みを浮かべた。
「盛り上げてくれるぜ。やっぱ、戦いメインの祭りはこうじゃねえとな。お前はどうだ? セシリア」
「大いに助かります。正面からぶつかり合い、死ぬまで殺し合う。とてもわかりやすいルールです」
 答えつつ、セシリアは大剣を引き抜き肩にかついだ。銀の瞳が冷たく輝く!
「参りましょう。一息に蹴散らします……!」
「威勢が良いわ」
 三郎右衛門は笑い、手にしていた小石を軽く放ってつかみ取る。そして真横に振りかぶり、寺院脇の鐘めがけて投げた! 弾丸めいた速度の小石は鐘に衝突して撃ち鳴らす! ゴウオオオオオオオオオン!
「踊れ! 蒼き焔の中で!」
『GOAAAAAAAAAAARGH!』
 古塚の呪いたちが一斉咆哮してガトリングを高速回転! メンカルは杖の石突で地面を突くと、扉めいた形の魔法陣を展開。足元に広がった大型魔法陣に驚く仲間たちに小さく告げる。
「……憩いの場よ、開け、招け。汝は旅籠、汝は客亭。魔女が望むは困憊癒やす隠れ宿。ちょっとごめんね」
『GRAAAAAAAAAAAARGH!』
 全方位を囲むガトリングが同時に火を噴く! 直後、メンカル以外のメンバーが発光し、魔法陣吸い込まれて消滅。代わり飛び出した横向きの箒に座ったメンカルはジェット機めいて飛翔した。
 BRRRRRRRRRRRR! 360度あらゆる方向から飛来する銃弾の嵐を次々と掻い潜るメンカル。白衣の背中やベストの脇腹を掠められつつ、包囲オブリビオン二体の隙間を突き抜けて脱出! 斜め上に上昇しながら杖を掲げる!
「……スパロウズ・ホテル、解放」
 軽く傾けた杖先に扉型魔法陣が再展開! そこから光線が五つ噴き出し、流星めいて古塚の呪いの群れへ降下していく。
 朱塗りの巨大仮面たちが振り返った先、光は内側から爆ぜて先ほど消えた五人を吐き出した。ルーンブレードを握った摩那は翡翠色の燐光を身にまといながら声を張った。
「あの敵の弱点は、両目と鎧の継ぎ目です。腕と銃弾に気を付けて」
「はふ、両目か。目玉なんてなさそうだけどにゃー」
 とものが呟きながら腕を打ち振る。着物の袖から飛び出す小型ビームキャノンを握ると、銃口を再度ガトリング掃射体勢に入ったオブリビオン軍団に突きつけた! キャノンが真紅の光をチャージ!
「うし、フォースの騎士として受けて立つ! ふぁいあ!」
 ZGGGGGGGGAM! 連射された赤いビームが、二十七の朱塗り仮面に降り注いで小爆発を引き起こした! 掃射を強制中断されてうめくオブリビオン軍勢の前に着地する五人! 大剣を振り上げたセシリアは具足の足を踏みしめた。
「先行します。摩那さん、ナビゲートを」
「了解しました。風よ……!」
 摩那が疾走予備動作を取り、姿を掻き消す! BOOOOM! 一拍遅れたソニックブームを後方に残して走った摩那は、首を振って復帰した古塚の呪い三体めがけて跳躍した。刃に並ぶルーン文字が万華鏡めいて光輝き、風の刃を光線めいて引きのばす!
「はっ!」
 横薙ぎ一閃! 横並びになった三体の目が一息に斬り裂かれて黒血を噴いた。大きくのけ反り、悲鳴を上げる古塚の呪いを余所に摩那は背後下方を振り返る! そこには黒い大剣を下段に構えて走るセシリア!
「首、両肩、鳩尾!」
「見えました」
 セシリアの全身鎧を黒いオーラが包み込む。セシリアはジャンプしながら錐揉み回転! 漆黒の螺旋が虚空を斜めに貫通し、のけ反った古塚の呪いたちの頭上を超える。絶叫していた三体の絶叫がピタリと途絶え、胴体・両腕・首を切断されて倒れ伏した。
 セシリアは空中でどす黒い血を垂れ流す視界を肩越しに見やる。
「なるほど。確かに、有象無象のようですね」
『ARRRRRRRRRGH!』
 前方から猛り狂う声! 残った二十四体の古塚の呪いたちがガトリングを全門同時解放したのだ! BRRRRRRRRRRRRRR!
「甘い」
 セシリアは襲い来る弾幕に対して大剣を掲げ、プロペラめいて高速で回す。弾丸を雨粒めいて跳ね返す彼女の足元を、低姿勢ダッシュ体勢のカイムが潜った。両腰のホルスターから引き抜いた二丁拳銃、番犬をあしらったそれらを交叉して不敵に笑う!
「銃弾の嵐か。気に入ったぜ」
 複雑な蛇行ダッシュで弾幕を掻い潜らんとするカイム! はためくジャケットの表面を数発の鉛弾が引っかくのを無視してスライディングを敢行。二丁拳銃を突きつける!
「食らいな」
 BLAMBLAMBLAMBLAM! 銃声と共に噴き出す紫電! 雷光をまとった四発の銃弾は古塚の呪いたちが張る弾幕をすり抜け、うち一体のガトリング腕に突き刺さり放電した! ZGRAAAAAAK!
「GYAAAAAAAARGH!」
 感電した一体が激しく絶叫。カイムは両足を跳ね上げて宙返りし、足元に弾丸を叩き込む! カイム一人を狙って一層密度を増す銃弾の雨! それらが彼を蜂の巣にする前に、地面に埋め込まれた弾丸が無数の電撃を解き放った。
 花弁めいて全方位に飛び散り、触手じみて暴れる稲妻が弾丸を次々と叩き落として行く! カイムは振り向きながら片手を上げて合図!
「さあて、あんたのターンだぜ、美影!」
「ありがとカイムさん! アタシのターン!」
 モノバイクを駆りながら、美影はバイクハンドルにセットしたデバイスからカードをドロー! デバイスのカード保持用アームからカードを一枚取り出し、ドローした一枚と共に扇状の光に打ちつけた。
「影朧となって止まった貴方達はこの子達に勝てるかしら? アタシは銀河拳士を召喚! 効果により時空師匠を特殊召喚!」
 ドリフトを決める美影の側面に二つの円形ゲートが出現。そこから飛び出したるは、ローマ拳闘士めいた服装をした大小の機械戦士だ! 二体は片膝立ち姿勢で二丁拳銃を構えるカイムの両サイドを駆け抜け、一拍遅れて走って来たとものと合流!
「さあ、師弟のコンビネーションを受けてみなさい! 前進! 系列! 見よ! 銀河は……赤く燃えているぅ! ……ってね!」
「行くぞ! フォースと共にあらんことを!」
 とものは銀河色の機械戦士を連れて疾走の速度を上げる。だが刹那、ガトリング掃射個体の後方から飛来する巨大な影が三つあり! それらは投げ放たれた卵型のシルエット。古塚の呪いが自身をシメナワの繭で覆い作った防御形態、シメナワ・シェルだ! ゴーストアームの膂力を駆使して投擲したのだ! 美影が右手を振るって命じた。
「銀河拳士、時空師匠! 迎え撃ちなさい!」
『オオオオオオッ!』
 勇ましく雄叫びを上げた機械拳闘士二体は、とものを圧殺戦と落下するシメナワ・シェルに向かって跳んだ。引き絞った拳に銀河色のオーラをまとわせ、巨大な繭の真下にパンチを繰り出す!
『ハアアアアアッ!』
 SMAAAAASH! 圧倒的重量と鉄拳の衝突! 激突から銀河色の波紋が広がり、シメナワ・シェルをすんでのところで押し止めた。残る一個は? 止められた二つの間を抜けて真っ直ぐとものを押し潰さんとする! そこへ駈け込んだセシリアが大剣刺突!
「ふっ!」
 半ばまでシメナワ・シェルに食い込んだ大剣を両手で支え、セシリアはその場で一回転! 彼女の両腕を包む黒いインナーウェアの下を筋肉が押し上げる!
「お返し、しますっ!」
 THROWWWW! 投げ返されたシメナワ・シェルがガトリング掃射を続ける古塚の呪い一体をめがける。古塚の呪いは銃撃をやめて腕を振りかぶり、飛来するシメナワ・シェルに右ストレートを叩き込む!
 SMASH! 殴り返されたシメナワ・シェルは機械拳闘士二人が打ち上げたものと合わせて猟兵たちの後方に落下。THOOOMTHOOOMTHOOOM! 地響きと共に地に突き刺さった繭の表面がさざめき、爆裂めいて解いたシメナワを猟兵たちの背面に向けて撃ち出した。そこへ箒に乗って割り込むメンカル!
「我が愛杖よ、舞え、踊れ。汝は銀閃、汝は飛刃。魔女が望むは月の舞い散る花嵐」
 メンカルの手中で銀の杖が爆発四散! 杖は無数の白い三日月型花弁となって大竜巻を形成し、シメナワを突っ込んで来る傍からシュレッダーじみて斬り刻む! その反対側では、前方回転跳躍を決めたとものが古塚の呪いの一体に斬りかかった!
「必殺! 覇翔斬り!」
 大上段から赤い光剣の一撃! 眉間めがけた一撃が防御に掲げられたガトリング腕を斬り下ろし、さらに斬り上げて半ばから切断してのけた。古塚の呪いは残った片腕でとものの真横を殴り飛ばす! ふっ飛ばされながらもとものは声を張る!
「美影――――っ!」
「そこよ! 銀河拳士!」
 がら空きになった古塚の呪い腹部に、美影の機械拳士二体が突っ込み同時にボディブローを繰り出した! SMASH! 後方へとわずかに浮き上がる巨体! その頭上に跳躍したセシリアが兜の脳天めがけて急降下斬撃を放つ! 脳天から胸元まで一息に引き裂かれる真紅の武者鎧!
「ARRRRRRRGH!?」
「これで23……」
 黒い血を噴き出しながら半分になる古塚の呪いを前に、小さく呟く。次の瞬間、セシリアの胴体を真横から伸びた三本のゴーストハンドが捕獲! 彼女を捕らえた古塚の呪いは暗黒の騎士を円弧を描くように振り回し、蒼炎のリングに打ちつけた! BOOOM!
「セシリアさんっ!」
 悲鳴めいた声を上げる美影。直後、半分にされた巨体が真上へと振り上げられた。背後に控えた別の一体がゴーストハンドで仲間の以外を持ち上げたのだ! 長く伸びたそれを、疾駆するカイムめがけて振り下ろす!
「おいおい、お仲間の扱いが雑じゃないか?」
 不敵な笑みを絶やさぬまま言い、カイムは真横に飛んで巨体の振り下ろしを回避する。そこへガトリング腕を振り上げた別個体!
「ARRRRRRRRRRRGH!」
 銃を乱射しながらのパンチがカイムを襲撃! カイムは両足に紫電をまとわせると、後方へハイジャンプしてムーンサルト回転を決める。弾丸にジャケットを引っかかれながらも二丁拳銃で応戦! 二つの紫電球が犬の頭部を模してガトリング腕に食らいつき、噛み砕く! CRASH!
「GRAAAAAARGH!」
「もっとしびれさせて欲しいって? オーケー。ならお望み通りにしてやるよ」
 叩き伏せられた死骸に着地したカイムが、両腕を噛み砕かれた古塚の呪いに銃口を向ける。二体同時の弾幕をジグザグスプリントで駆け抜ける摩那が、そちらを見て警鐘を鳴らした。
「クローバーさん、後ろです!」
「ARRRRRRRRRRRGH! ARRRRRRRRRRRGH!」
 別個体がカイムの背中めがけて地を這うアッパーカットを繰り出した! ガトリングを乱射しながらの拳は、しかし黙ってたたずむカイムの背中をすり抜ける。両腕を失った個体の胴体を下から上へ縦一直線の銃痕が刻まれた。カイムの姿は無い!
「おいおい、ちゃんと狙えよ」
「GRRR!?」
 声は腕を振り切った古塚の呪いの肩から! 拳をかわしていたカイムは振り返る武者鎧の両目を狙って引き金を引いた。BLAMBLAM! 弾丸を撃ち込まれた両目がコールタールじみた血を噴き出した!
「GYAAAAAAAARGH!」
 悲鳴を上げてのけ反る古塚の呪い。素早くバックジャンプして飛びのくカイムの足を、一本のゴーストハンドがつかみ取った。それは両目を潰された古塚の呪いの後方からだ!
「おっと……!?」
 憤怒の咆哮を上げ、目を潰された個体は両腕のガトリングでアームハンマー! カイムを砂利の地面に叩き潰す! CRAAASH! 地面が爆ぜ割れて土が巻き上がった。
「UUUUUAAAAAAAAAAAARGH!」
 カイムを叩き潰した個体は苦悶に叫び、闇雲にガトリング弾をばらまき始める。それと共に後方に控えていた五体が、ガトリング腕で地面を打った。
 砂利の大地に針山めいて無数のゴーストハンドが飛び出す! そのうち数本が美影のモノバイクタイヤを捕らえ、ガトリングを回避しつつカマイタチを飛ばす摩那の足や腕、うなじをつかんだ。
「っ!」
「ヤバッ……!」
 危機を察知した美影はバイクハンドルからデバイスを引っぺがしてシートから跳躍! 摩那はさらなるゴーストハンドに捕まる前に手の中でルーンが刻まれた拳を回転。地面に突き刺す!
「荒べ、破魔の風!」
 刃に刻まれたルーン文字がエメラルド色に発光し、BLOWWWWWW! 摩那を中心として暴風を放ってゴーストハンドをまとめて蹴散らす! さらに垂直跳躍して二体分のガトリング掃射を避け、虚空をX字に引き裂いた。
「はっ!」
 空中に刻まれたXの刻印中央に刺突し斬撃を発射! X字の斬撃風は、摩那に銃撃していた二体のうち片方の顔面を直撃して強制的にノックバックさせる。もう一体にも攻撃せんと身をひねる摩那を足首を、地面から伸びるゴーストハンドが捕縛した。
 真下を見れば、地面が再びゴーストハンドに覆われ摩那を捕らえんと手を伸ばしているではないか! 摩那は歯噛みしてうめいた。
「再生が、早いっ……!」
 一気に引き下ろされ地面に叩きつけられた摩那に、大量に伸びたゴーストハンドが殺到して上から押し潰す! その上空を、飛行箒に乗ったメンカルが飛行。対空ガトリング射撃をランダム飛行でかわしつつ、指先で軽く魔法陣を描く。
「……仕切り直す。術式再展開、ロード・コネクト」
 メンカルがぱちんと指を鳴らした瞬間、彼女の周囲に魔法陣が五つ出現! 魔法陣はゴーストハンドに飲まれた五人を上空に吐き出して救出、メンカルは銀色の花弁をいくらか使って彼らの足場を生み出した。
 円盤状の足場に着地したセシリアは、下方を見下ろして眉根を寄せた。花畑めいてゴーストハンドに埋め尽くされた地面。下にわだかまる二十三体の古塚の呪いが対空ガトリング射撃やシメナワを射出してくる、地獄めいた風景!
「悪夢のような光景ですね」
「全くだ。タチの悪いお化け屋敷だな。……さて、どうする?」
 カイムが前髪をかき上げながら仲間たちを見回す。彼と目のあった美影が、右手の平に左拳を打ちつけた。
「どうするって、ガチンコ勝負でしょ。なら正面から突破するわよ! とものちゃん!」
「うむ! 要するに全部斬ればいいのだな! とうっ!」
 ぴょんと足場から跳び、真っ直ぐ降下していく二人! 直後、獲物を捕らえる食虫植物めいて、無数のゴーストハンドやシメナワが二人に襲いかかっていく。美影は腕に装着したデバイスにカードを三枚重ねてセット!
「アタシは銀河拳士と時空師匠でオーバーレイ! 我が身に宿る神秘の粒子、逆巻く銀河を貫き光を超えよ! レイヤード召喚!」
 美影が片手を振り上げると同時、地から伸びるゴーストハンドを追い越して二条の光が美影の頭上へと飛翔する。彼女の頭上に空いた銀河色の穴が光を吸い込み、大爆発! 眩い光を振り払って銀河色の巨竜が姿を現した。美影は巨竜を背に腕を振り下ろす!
「マイ・フェイバリット・カード、ギャラクシー・クロノスドラゴン! 絶滅の……ギャラクティック・オーバーブラストォッ!」
「GROOOOOOOOOOOOGH!」
 巨竜は背中の歯車を高速回転させ、銀河色のビームで迫りくるゴーストハンドを薙ぎ払った。蒼炎の円形舞台を引き裂く橙色の極太ラインが大爆轟を引き起こし、近くにいた古塚の呪いたちを押しのける。
『ARRRRRRRRRRRGH!』
『GRRAAAAAAAAAGH!』
 触手じみたシメナワや、巨大なゴーストアームを振るって爆風を追い散らす古塚の呪いたち。その半数が巨竜めがけてシメナワを放って四肢や首、胴体を縛る。その一方、ゴーストハンドを焼き払われた砂利道に着地したとものは、古塚の呪いの一体めがけて疾走開始!
「うりゃっ!」
 ブオン! とものの手中でビームソードがうなり、空気を裂いた。彼女の接近に気づいた古塚の呪いが両腕のガトリングをとものに突きつける!
「UUUUUAAAAAAAAAAAARGH!」
 BRRRRRRRRRRRRR! ダブルガトリングの弾幕を光剣で叩き落としながら疾駆するともの! 迫ってくる彼女に古塚の呪いはガトリング掃射パンチを繰り出すが、彼女は回転する銃身に飛び乗って一気に肩まで駆け上がる! 跳躍からの回転斬撃で喉笛を一閃!
「ARRRRRRRRRRRGH!」
「てやっ!」
 真紅の光剣での斬り上げ! 顎下から額までを斬り裂かれた古塚の呪いは、怒りに吠えながらとものにヘッドバットを打ち込んだ!
 吹き飛ばされ、地面を勢いよく転がるとものの片足にシメナワが巻き付く。喉と顔を斬られた古塚の呪いはとものを引き寄せ、ガトリングパンチ殴り下ろしを打ち込んだ! CRAAASH! 大地に叩きつけられとものがバウンド!
「ぐはーっ!?」
「ARRRRRRGH!」
 さらにすくい上げるような乱射パンチがとものを吹き飛ばした。着物の肩や腹には複数の銃撃痕。殴りながらの銃撃がダメージを上塗りし、シメナワが華奢な体躯を再度引っ張る! 古塚の呪いが限界までガトリング腕を振りかぶったその時、とものを縛るシメナワが切断された。上空の摩那だ!
「風よ……!」
 轟と唸る旋風が摩那の剣に巻きつき、長大なドリルめいて一気に伸長! 摩那は剣を逆手に持って振り上げ、ジャベリン投擲じみたモーションで刺突を放った。剣から撃ち出される竜巻の槍が、とものを殴らんとしていたガトリング腕の二の腕を貫通、引き千切る!
「GARRRRRRGH!?」
 腕の付け根から黒い血を放射して叫ぶ古塚の呪い。空中後転を決めたとものは、袖口から飛び出したビームキャノンの銃口を光剣の柄尻に接続! 真紅の光が膨れ上がって天を突く! 陸空を繋ぐ光柱が如き刃を振り上げ、ジャンプ!
「やってくれたな! 必殺!」
 とものが剣を振り下ろすのに合わせ、光の刃が空にわだかまる雲を引き裂く。極大質量の斬撃が古塚の呪いに降り注いだ!
「クラッシュ・ド――――――――ンっ!」
 SLAAAAASH! 真紅の巨体が真っ二つにされ、斬撃の余波が遠くに立ち上る蒼炎の壁をも斬り伏せた。骸骨器楽隊が五名ほど消し飛ぶ。とものはそのままジャイアントスイングじみて極太の光剣を振り回した! さらに三体の古塚の呪いが胸から上を消し飛ばされて倒れ伏した。
 他方、上空ではシメナワに囚われた巨竜が四肢を引き裂かれた爆発四散! CABOOOOM! 真下に居た美影が爆風を頭から被った。
「ぐぅぅぅぅぅっ……!」
 頭を庇う美影を、ノイズじみた銀河の輝きが包む。四肢の関節に刃を突き込まれたような激痛が走り、美影はその場にうずくまった。ダメージフィードバックだ! 額に脂汗を浮かべて動けなくなった彼女の四方八方からシメナワが飛来! 反動で動けぬ美影が奥歯を噛んだその時、純白の竜巻が覆い被さりシメナワを遮断! 触れた傍から粉塵めいた細切れに変える!
「これは……メンカルちゃん!?」
 勢いよく顔を上げる美影の頭上、空高く伸びる花嵐の内側で、箒に座ったメンカルが感情の読めぬ瞳で浮遊。続いて美影の傍にセシリアと摩那が着地した。摩那はセシリアの背中に手の平をかざしつつ、美影の方を振り返る。
「ご無事ですか?」
「え? ああ、うん。アタシは平気……だけど」
 美影がセシリアの方へ視線を流す。背中越しに見える彼女の瞳は、銀から仄暗いワインレッドに変色。冷徹な横顔のまま、セシリアは言った。
「そのまま伏せていろ。一度に蹴散らす」
 セシリアが大剣を垂直に掲げると同時、足元から黒オーラの渦が噴き上がった! 禍々しき風が大気を震わせ、刃が暗闇を固めたが如き漆黒に染め上げられていく。傍らを突き抜ける黒いオーラを横目に、メンカルは耳元の魔法陣に手を当てた。
「……カイム。時間稼ぎ、よろしく」
「任せな」
 花嵐の外、ヘッドホンめいて耳元に展開した魔法陣にカイムが告げる。白い花弁竜巻の外側を疾駆しながら、ゴーストハンドや銃弾の雨を飛ばしてくる古塚の呪いたちに銃で反撃!
 BLAMBLAMBLAMBRRRRRRRRR! 弾幕と交錯する紫電の弾丸が、古塚の呪いたちの肩口を射抜き激しく放電! 番犬の咆哮じみた雷鳴が轟き、古塚の呪いたちを感電させる。
「次の演目は準備中なので静粛にお待ちください……なんてな!」
「ARRRRRRGH!」
 咆哮が響き、急ブレーキをかけるカイムの目前に新たな古塚の呪いがエントリー! 即座に乱射されるガトリングガンを、しかしカイムは慌てずジグザグバックステップを踏んで踊るように避けていく。
「ステージに上がるんじゃねえよ。マナーのなってない観客だぜ」
 不敵な笑みと共に言い捨て、カイムは軽々とバク宙! 二丁拳銃の銃口が紫電レーザーを放った!
 ZGRAAAK! ZGRAAAK! 突進する二条の光を、古塚の呪いはシメナワ・シェル化して防御。強固な防御壁をすり抜けたゴーストハンドたちがカイムを襲う!
「ちっ!」
 着地したカイムはステップを踏み、全身にうっすらと紫電をまとう。だがその両腕と腹部を後ろから飛んできたシメナワが縛りつけた! 紫電が抑え込まれたカイムが肩越しに振り向くと、そこには下段にガトリング腕を引き絞った別個体!
「まずったか、こりゃあ……!」
「ARRRRRRRRRRRGH!」
 銃弾をばらまきながらのボディブローがカイムの背中を殴打した。SMAAASH! 殴り飛ばされたカイムはシメナワ・シェルから伸びる無数のゴーストハンドへ投げ込まれていく。その真上に跳び出したるは光剣を振り抜いたともの!
「でりゃ―――――――っ!」
 横一文字の斬撃でカイムにつかみかかるゴーストハンドをまとめて切断! とものはさらに光剣からビームキャノンを取り外し、カイムを殴った古塚の呪いをビーム銃撃した。
 ZGAMZGAMZGAM! 兜の両目と口に赤いビームが飛び込んで爆発! カイムは振り向きながらの銃撃連打を顔面爆破個体の胸に叩き込む。彼は背中合わせに着地したとものへ一言。
「悪い、助かった!」
「うむ、よきにはからえ!」
 得意げに鼻を鳴らしたとものは、シメナワ・シェルを解除した古塚の呪いに向き直ってレーザーブレード投擲! 古塚の呪いはガトリングガンの腕を交叉して飛来する光刃を受けるが、即座に飛びついたとものが刃を真下に振り下ろして銃身溶断!
「どりゃっ!」
 さらに斬り上げてもう一方のガトリングを斬り落としたところで、カイムは兜の口に紫電の弾丸を撃った。口腔に吸い込まれ、放電! 動きを止められた古塚の呪いが絶叫するのを余所に、カイムは周囲を見回した。
 メンカルの白い竜巻を遠巻きに囲む古塚の呪いたちは一体残らず感電して縛られている。だがその巨体を乗り越え、別の個体群が押し寄せようとしているのだ! カイムは耳元の魔法陣に指を押し当てる!
「メンカル! こんなもんでいいか!?」
「……ありがとう。充分」
 メンカルが答えた瞬間、白い竜巻が幕を引き上げるように空へと昇った。秘されていた激しく荒ぶる黒いオーラの渦が露わになり、頭上に伸ばしたメンカルの手に垂直飛翔した白い花弁が降り注いで銀杖の形を取り戻す。
 メンカルが目の前で銀杖を横たえると、それは独りでに宙に浮き上がって輝き始めた。メンカルが呪文を口ずさむ!
「……遅発連動術式クロノス起動。紡がれし迅雷よ、奔れ、縛れ。汝は電光、汝は縛鎖。魔女が望むは魔狼封じる天の枷」
 メンカルの杖が半回転し、ヘッドを真上に向けた瞬間、感電していた古塚の呪いたちの銃創に魔法陣が開かれた! カイムの銃弾に刻印された術式が発動し、放電が一層強まり荒れ狂う! そして、全ての銃創から雷の鎖が飛び出した!
「……んっ」
 メンカルが銀杖をつかんで横薙ぎに振るうと、雷の鎖が古塚の呪いたちを締め上げる。絶叫の音量が増し、悲壮なサラウンドがリングを満たした! 観客のヒヨリミたちが固唾を飲んで見守る中、リングの天空に一際巨大な魔法陣が展開! メンカルは再度の魔術詠唱!
「貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔……もろともに、燃え尽きろ……」
 メンカルが杖を振り下ろした直後、CABOOOOOOOM! 純白の爆炎が古塚の呪いたちを包み込む! 異形の断末魔を爆音と雷鳴が塗りつぶす中、摩那は手の平に浮いたルーン文字からセシリアに翡翠色の光を注いだ。
「くぅっ、うっ……!」
 摩那のこめかみを冷や汗が伝う。セシリアは今や中を見通せぬ暗黒の竜巻の中だ! もはやシルエットすら見えぬ! しかし摩那はかざした手にありったけの力を込めた。ルーン文字が輝きを増す!
「荒ぶる風の精霊よ。刃に宿りて嵐となれ! 力授けよ!」
「吹き荒べ黒き旋風よ。逆巻く刃となりて仇なす者を切り裂け!」
 暗黒の旋風の中、セシリアの大剣に黒いルーンがいくつも刻まれ、赤黒い光を灯す! メンカルが指を鳴らして花嵐を霧散させると、セシリアは限界まで腰をひねってを大剣を振りかぶり、刃に凝縮された闇を回転斬で解き放つ!
「消え失せろ……過去の亡霊どもッ!」
 SLAAAAASH! 放射状に漆黒の斬撃が拡散し、古塚の呪いたちの首を一刀の元に切断! 斬り飛ばされた頭部、そして胴体は黒いオーラが混じった白炎に巻かれ、全て同時に爆発四散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『ヒヨリミ』

POW   :    ヒヨリミ台風
予め【二本の刀を掲げて空中でくるくると回転する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ヒヨリミボディ
自身の肉体を【刃のように触れるものを切り裂く布】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    無縁火
レベル×1個の【血のように赤い色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:RAW

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「カカカカカカ!」
 古塚の呪いたちの爆発四散を前に、三郎右衛門は両手を叩いて哄笑した。
 この空間を築き上げて幾星霜。訪れた者はいくらか居たが、その全てが前座のひとつもこなせずに死んできた。そうしてこの地に人は全く来なくなり、気を紛らわすように拳を振るう三郎右衛門と、その的たる影朧たちだけが残った。
(それが今はどうだ! 余興の奴らがあまたず消し飛びおったわ!)
 三郎右衛門の目は大きく見開かれ、頬まで裂けた笑みと相まって実際凶相! 心臓がドクドクと激しく脈打ち、戦いを求める武人の血が熱を持って全身を巡る。アグラの膝に置いた手が、自分すらも知らないうちに固く握りしめられた。
「よぅやった。よぅやったわ。これなら楽しめるやもしれんの。なァ……ヒヨコども!」
『ウィィィィィィィ!』
 蒼炎リングの外周部、赤いテルテル坊主じみた二刀流オブリビオンが鬨の声を上げた。そして一体、また一体と飛び立ちリングへ飛び込んでいく。キンキンと打ち鳴らされる刀の音を、三郎右衛門は胸の高鳴りと共に聞いていた。
(さあ小娘に青二才ども! 力を示せ! 真正面からその亡霊どもを打ち破ってみせい!)

●お知らせ

 第二章を開始します。
 受付はだいたい10月11日8:31~10月12日8:29とします。ですが、参加者の人数次第で追加の受付期間を設ける可能性もあります。
セシリア・サヴェージ
皆の協力に感謝する……だがさすがに消耗したようだ。大技の連発は出来ないが、代わりに我が暗黒剣で両断してやろう。

UC【血に狂う魔剣】を発動、忘我の境地にて全て屠る。多少の傷なら【激痛耐性】で耐え、【生命力吸収】で癒せる。故に防御よりも攻撃を優先する。【怪力】による圧倒的な暴力で蹂躙するぞ。
奴はあの回転で力を高めているのか?隙だらけで斬ってくれと言っているようなものだ。【先制攻撃】して潰してやろう。

UC発動中につき私、お前、呼び捨て


須藤・莉亜
「今度は赤いテルテル坊主か…。血は流れてなさそうだなぁ。」
テンション下がる…。とりあえず、煙草でも吸おう…。

んでもって、眷属の腐蝕竜さんを召喚、彼の背に乗って戦う事にしようか。
「眷属も武器の内に入るのかな?」一応武器も持っとこう。

腐蝕竜さんには、爪での引っ掻き、噛みつき、尻尾でのなぎ払い、猛毒のブレスなんかで攻撃してもらう。

僕は腐蝕竜さんの攻撃に合わせて、血を捧げて強化したLadyでちまちま狙撃。

敵さんの攻撃は、【見切り】や【第六感】で回避と、奇剣と血飲み子を持たせた悪魔の見えざる手で【武器受け】して防御。

一応【吸血】を試すのも忘れずに。

【僕・きみ・年上の相手のみ名前+さん、他は名前呼び捨て】


黒木・摩那
今度のヒヨリミは武器を持った人間しか襲わないそうですが、
ヨーヨーは武器と見られるのか、遊具とみられるかは興味があるところですね。

くるくる回る特性を見るに、ワイヤーを絡めやすいヨーヨーでいってみましょう。

ヨーヨー『コメット』で【武器落とし】【なぎ払い】をしつつ、
ワイヤーを絡めて、敵を引っ張ったり、こちらから飛び込んで【敵を盾にする】して、
混戦になることを狙います。
【武器落とし】した武器は【念動力】で回収して、攻撃や防御に便利に使わせてもらいます。
ワイヤーの軌道は【念動力】で動かすことで回避困難にします。

敵が集まってきたところで、UC【風舞雷花】でまとめて片づけます。


カイム・クローバー
次は二刀流のてるてる坊主のご登場か。良いね、バラエティに富んだ飽きさせない、悪くない趣向だ。俺も踊りたいないんでね。派手に行こうぜ。

魔剣を顕現し、UCを使って力の一部を解放。【二回攻撃】しつつ、剣に紫雷を纏わせる【属性攻撃】を【範囲攻撃】で【なぎ払う】。
あれだけオーバーアクションなら攻撃を【見切り】易い。【第六感】に【残像】を駆使して躱す。躱した後は合間に【挑発】も掛けていくぜ。言葉じゃなく、態度で【挑発】なんてどうだ?剣で軽く肩を叩いて鼻で笑って、指で来いよ、と合図。
効果がありゃ注意を向けさせるのと俺の戦闘力増強の両方を兼ねられる。

力は示した。さぁ、次はアンタだぜ?Shall we ダンス?


柚月・美影
せっちゃん(千里)やとものちゃん達と参加
一人称:アタシ
二人称:年上はさん、年下・同年代はくん、ちゃん付け
アドリブも歓迎

●戦闘
やれやれ、また熱そうな相手ね…

宇宙バイクを【運転】し、相手の攻撃は【野生の勘】で回避
避けきれないものは【クイックドロー】でカードを【投擲】して【カウンター】

こちらはバトルキャラクターを使用
【念動力】【なぎ払い】で強化よ
「アタシのターン…ドロー!よし!
『ギャラクシー・リボーン』を発動!
モンスターを蘇生する!
更にこのカードで蘇生したモンスターの攻撃力を上昇させるわ!
蘇れ、我が魂!『ギャラクシー・クロノスドラゴン』!!
放て!絶滅の…ギャラクティック・オーバーブラストォッ!!」


アニカ・エドフェルト
出遅れ、ちゃいましたが、わたしも、混ぜて、くださいっ

ええと、ここの相手には、武器が必要、なんですね。
付け焼刃では、ありますが…トンファーを、用意して、おきます。
正々堂々と、やりましょうっ
(《死闘天使》相手のUCを見てる。合わせて自分もトンファーくるくる)

それでは…UDCアースで、ちょっとだけ、見た技を、お見せ、しますっ
(ふわっと浮いてから真っすぐ蹴る《舞踏天使》)

…トンファー?
いきなりで、使いこなすのは、難しい、ですから、これは、防御用、です。
これも、ちゃんとした技、みたい、ですしっ

(アドリブ歓迎、一人称:わたし 二・三人称、呼び方:名前+さん、読点区切り多めの喋り方)


メンカル・プルモーサ
……次は……微妙にゆるキャラっぽい亡霊ね……
武器がないとダメか…杖が武器にカウントされるのかなぁ……

……ともあれ、まずは【愚者の黄金】で黄金の騎士像を40体製造…【浮かびて消える生命の残滓】で筋力増加状態で命を吹き込むよ…
…武器は【空より降りたる静謐の魔剣】による氷の魔剣……武器ない人も使って良いよ…
黄金の騎士にはそのまま戦って貰って……【顕現せよ黒白の騎士】を召喚…
…二体のガジェットを操って戦うよ……
…近接用ガジェットは主に私のカバーに…砲撃戦用ガジェットは他の皆の援護射撃を中心に立ち回らせるね…
…ダメージを受けて解除されたら【尽きること無き暴食の大火】で無縁火を飲み込みつつヒヨリミを焼くよ


潦・ともの
美影と千里と参加
アドリブ大歓迎!

今度は中ボス戦か。まるでゲームですの
【フォース】【第六感】【見切り】【武器受け】【カウンター】【勇気】【オーラ防御】
で美影や千里達後衛の防御をしつつ

相手の強化ポーズを【フォース】【念動力】で地面に落したり動きを止めて邪魔をする
『チャージなどさせませんの!』
逆回転させたら弱体化しないかしら
他の個体が炎攻撃をしていたらそれをフォースでぶつけてみる

相手のみょいーんな攻撃を【見切り】
【武器改造】でフォースセイバー2本を融合
フォースなハサミに変えて【カウンター】【2回攻撃】ぱちんしようとしてみる
この間読んだご本に
こういう手合いをハサミでちょきんして
シーツにしていましたの



 ゴウオオオオオオオオン!
 高らかな鐘の音が響いた空に、赤い影が五つ飛ぶ。高速回転しながら飛翔したヒヨリミたちは、赤い月の浮く夜空に円陣を組んだ。陣の中央、赤いドーナツの穴めいて空いた虚空に灯る紅蓮の火球!
『ミギィィィィィィ!』
 甲高い絶叫と共に、火球が真紅のビームを吐き出した! サテライトレーザーじみて地上に向けられた炎の筋は、蒼炎に囲われた戦舞台に突き刺さり、CABOOOOOM! ドーム状の大爆轟と熱波を周囲にまき散らす!
 広がる熱風からバックジャンプで跳び出す猟兵たち。水切り石めいて跳ねながら後退する彼らを追い、赤い回転体が炎を突き破って突撃していく! 竜巻じみたそれらは、全て二刀を構えたヒヨリミたちだ!
『キィアアアアアアアアアア!』
 二刀を手にコマじみて回るヒヨリミの群れ。真紅の炎をまとって亡霊たちが飛翔する先には、浮遊しながら高速バックするメンカル!
 メンカルは襲い来るヒヨリミたちを見据えると、銀月の杖を突き出すように目の前に掲げた。三本の鎖で吊るした三つの鉱石が光を放ち、彼女の背後に曼荼羅めいて三つの魔法陣が開かれた!
「……三重魔法陣展開。黄金の騎士よ、立て、目覚めよ。汝は武勲、汝は戦火。魔女が望むは氷剣掲げる勇士の軍勢……!」
 三重の魔法陣が互い違いに高速回転! メンカルが杖を振り上げると同時、彼女とヒヨリミたちの間に四十の金色光柱がそびえ立ち、全て根元から膨らんで爆散! 飛び散る金粒子に照らされながら現れたのは、片膝を突き頭を垂れた黄金騎士像が四十体。手には冴え冴えと輝く蒼氷の長剣!
 メンカルは杖先をヒヨリミたちに向けて命じる。
「……迎撃……!」
 黄金色の騎士たちが顔を上げ、流線形ヘルムに刻まれた横一直線の覗き穴から空色の眼光を飛ばす! 片膝立ち姿勢から飛び出した四十の騎士は、氷剣を持って迫るヒヨリミたちを真っ向から激突。先頭の騎士が剣を振り上げ、同じく先陣を切ったヒヨリミの刀と斬り結んだ!
 CRAAASH! 甲高い剣戟のサウンド。メンカルのさらに後方、莉亜とそろってセシリアに肩を貸したカイムは、交戦するヒヨリミと騎士たちを遠目に口の端を吊り上げる。
「デカいムカデの次は、二刀流のてるてる坊主のご登場か。良いね、バラエティに富んだ飽きさせない、悪くない趣向だ。俺も踊りたいないんでね。派手に行こうぜ」
「血は……流れてなさそうだなぁ。テンション下がる……」
 不服そうに呟いた莉亜が、片手で煙草を口にくわえる。カイムとタイミングを合わせて着地し、片手間に点火。一拍遅れてカイムの近くに降り立った摩那が、横目でうなだれたセシリアを見た。
「セシリアさん、大丈夫ですか?」
「問題ない……と言いたいところだが」
 セシリアが緩慢な動きで顔を上げた。瞳は赤黒く変色したまま。顔色は青ざめ、額にはびっしりと汗がにじんでいる。
「済まない、流石に消耗した。大技の連発は出来そうにない」
 紫煙を吐きつつ、莉亜が問う。
「僕の血でもぶっかけるかい。多少はマシになると思うよ?」
「いや、いい」
 セシリアは莉亜とカイムの肩から腕を離した。背負った大剣を引き抜いて構え、両目を不吉に輝かせる!
「剣を振るう分には問題ない。引き続き轡を並べさせてもらおう……!」
「その意気だ。祭りはここからなんだからな」
 挑戦的に微笑むカイム。真横に伸ばした彼の右手を包む黒銀色の炎が真下へと延び、渦巻いて爆ぜた。内から現れた黒い長剣の柄をつかみ、カイムは腰を落として身構える。前方では激しい剣戟が続き、水蒸気が宙空にわだかまっていた。
 水分の突発的蒸発音を聞き、モノバイクに乗った美影がバイクハンドルをひねりながら苦笑する。
「やれやれ、また熱そうな相手ね……」
「今度は中ボス戦か。しかもさっきとタイプが違う感じの。まるでゲームですの」
「ゲームなんでしょ、あのじい様にとっては。……多分、あのテルテル坊主にとっても」
 美影の目が横を向き、今だ賽銭箱に座って観戦を決め込む三郎右衛門を見た。
 凶悪な笑みを浮かべた老人はアゴを撫で、期待に眼差しを輝かせている。口をへの字に曲げた美影が呼びかけるようにエンジンを吹かしたその時、猟兵列の中央上空に蒼の魔法陣が出現。陣から氷柱が生えるように現れたメンカルは、無表情のまま小首を傾げた。
「……困った。あのゆるキャラっぽい幽霊……かなり戦い慣れてる……止めるの、無理……」
「えっ」
 美影の頬が引きつった瞬間、CABOOOM! 最前線で紅蓮の爆発が巻き起こり、騎士像五体が宙を舞う。
「キエエエエエッ!」
 高速回転したヒヨリミが向かってくる騎士像へ真っ直ぐ突撃! 竜巻じみた斬撃で首を狩り、その奥の一体の首も落とす。流れるように二体、三体、四体! 突進してくる五体目の横薙ぎ斬撃を地面スレスレまで降りて回避し、赤熱する二刀でハイジャンプ斬り上げ! 騎士像三枚下ろし殺!
「シャァァァァァァァァッ!」
 中空に昇ったヒヨリミは前方回転しながら急降下斬撃を繰り出し、六体目の騎士像も三枚下ろし殺してみせた。ALAS! 一体が騎士の軍団を突破! さらにそのすぐ真後ろに居た二体の黄金騎士も一瞬でバラバラに解体され崩壊。上空を赤いUFOめいて四体のヒヨリミが飛ぶ!
「……ごめん、抜けられた」
「ちょうどいい」
 セシリアが啖呵を切り、身を沈めて疾走の予備動作を取った!
「大口を叩いて何もしなかったのでは騎士の名折れだ。行くぞ……!」
「ああ、やってやろうじゃねえか」
 不敵に言い放ったカイムの足元から紫電が噴き出す! 離れた場所から飛来するヒヨリミたちの声。いの一番に黄金騎士像隊列を突破したヒヨリミが二刀をそろえて前に突き出し、刃の間に炎を灯した。即座に膨れ上がる火球! レールガンじみた紅蓮のビームが放たれる! BOOOOOOM!
「んむ、アイサツ代わりか!」
 呟いたとものが両手を掲げた直後、一直線に飛来する火炎光線の前に新たな人影が割り込み着地! プロペラめいた回転の壁がヒヨリミの光線に突き出され、CABOOOOOM! 火山噴火じみて噴き上がった炎が真横に吹き散らされる。
 そこには、空色のトンファーを装備したアニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)!
「アニカ・エドフェルト……! 出遅れ、ちゃいましたが、わたしも、混ぜて、くださいっ……!」
 アニカは三郎右衛門を見やった。唯一の観戦者は呵々と笑って膝を叩く。
「今更いくら増えようと気にはせん! 力を示せば良いが故な! ほれ、血に飢えた亡霊どもが来るぞ! 構えるが良い!」
 こくんと頷いたアニカは迫りくるヒヨリミの群れに向き直る。既に四十体、扇状めいて縦に散開し高速回転を繰り返している!
 急接近しながら最上段のヒヨリミたちの刃が発火! 紅蓮の流星群じみて無数の火炎弾を解き放つ! BOMBOMBOMBOMBOMBOMBOMB! 次の瞬間、膝を折り曲げたアニカの真横を黒い風が突き抜けた! 脇腹に大剣を突き刺したセシリアだ!
「ぐぅぅッ……おおッ、ARRRRRRRRRGH!」
 獣めいて咆哮するセシリア! 剣が自傷の傷から生き血を吸い上げ、代わりに漆黒のオーラを注ぐ。暗黒剣に全ての自我を引き渡したセシリアは、瞳も白目も赤黒く染め上げ憤怒の形相で地を蹴った! 地面を引き裂きながら走る刃が鮮血じみたオーラの尾を引く! 両手で柄を握り、斬り上げ!
 SLAAAAASH! 振り上げられた斬撃が暴風を巻き起こし、正面かれ進撃するヒヨリミたちを押し戻す。彼女の後方からカイムがジャンプし、紫電の走る長剣を振りかぶった。
「開戦だ。しびれるようなダンスを踊りな!」
 カイムの横薙ぎ斬撃が紫電の奔流を解き放つ! 軍勢の下段、セシリアの暴風に押しのけられたヒヨリミ三体が体勢復帰して横並びになり、そろって燃える二刀を振り上げた。目前まで迫る紫電の剣閃を、火炎斬り下ろしで消し飛ばす!
「やるじゃねえか」
 着地して微笑むカイムの上空を、幾条もの爆炎流星群が駆け抜けた。その狙いは後方に控えたメンカル、莉亜、摩那の三人! するすると後ろに下がるメンカルを庇う形で前に出た莉亜は、降り注ぐ火炎弾に片手をかざして無造作に薙いだ。
 BBBBBBBOOOOOM! 虚空で火炎弾が一掃され消滅! 莉亜は煙草を外して煙を吐くと、隣に立つ摩那は見もせずに言う。
「ねえ摩那。眷属も武器の内に入るのかな?」
「眷属? ……どうなんでしょう。メンカルさん、わかります?」
「……んー」
 摩那に振り向かれ、メンカルは杖を抱えたまま首をひねった。
「眷属……どうなんだろう……。あの騎士像は狙われてるけど……武器持たせたし……。……そもそも……私の杖、武器にカウントされるのかなぁ……」
「うーん……」
 莉亜が煙草を指先で揉みつつ、灰化して落ちる先端を眺める。やがて、彼は思考を打ち切った。
「まぁ、うだうだ考えてても仕方ないか。物は試しってことで」
「それもそうですね」
 摩那は同意し、黒いショートパンツのポケットからヨーヨーを取り出した。
「せっかくです。私もこれが武器と見られるか遊具と見られるか、試してみましょう」
「……決まりだね……」
 頷くメンカル。直後、三人を赤々と燃える光が照らし出す! 見上げればそこには小型太陽じみた紅蓮火球と、その周囲を土星の輪めいて高速回転旋回するヒヨリミたち! 莉亜とメンカルは声をそろえた。
『摩那、一瞬よろしく』
「了解しました」
 軽くヨーヨーを落とし、引き上げて手中に戻す。表面に光るルーン文字を刻んだヨーヨーを手に、摩那は赤熱太陽へと跳躍! 翡翠色の燐光を帯び、ロケットめいて距離を詰めてくる彼女に、ヒヨリミたちは旋回をやめ、巨大火球の後方に回り込んだ。
『モエロー! モエロー!』
 狂おしく叫び、全員で二刀を振り下ろす! 発射された火球が押し潰さんと迫る中、摩那は前方回転を繰り返して体勢を整え、ヨーヨー持つ手を振り回した。燐光を帯びたワイヤーが複雑なフレームを描いて摩那を包み込むと同時、その周囲を緑と青のオーラが激しく渦巻く!
「廻りなさい、風の精。渦巻きなさい、水の精! ふっ!」
 摩那が思い切り腕を引いた瞬間、ヨーヨーが一筆書きしたワイヤーフレームを動画の逆再生めいてなぞる! 二色のオーラはペロペロキャンディめいた二色の渦を形成し、業火球と正面衝突!
 CABOOOOOM! 轟音を頭上にメンカルは銀杖を掲げ、莉亜は落とした煙草を踏みにじる。魔女の地面両側にふたつ、吸血鬼の爪先を中心にひとつ、魔法陣が開かれた! 色はそれぞれ蒼と紫紺!
「繰られし機人よ、立て、起きよ。汝は聖剣、汝は魔剣。魔女が望むは違えること無き我が傀儡」
「さ、ご飯の時間だ。メニューは熱々の亡霊共だよ」
 三つの魔法陣が眩い光を噴き出した! そのうち紫の光を引き裂いて現れたのは、全身を半ば腐肉に変えた巨体の竜! ドラゴンゾンビは咆哮して腐臭を撒き散らすと、胸を風船めいて膨らませ濃紫色のブレスを吐く。不浄の爆風は滞空する摩那のすぐ真横を突き抜けヒヨリミたちに襲いかかった!
「キィィィィィィィィイ!」
「シアアアアアアアアアアア!」
 金属質に尖った鳴き声を上げ、ヒヨリミの三匹がトライアングルを組むように密集! 突き出した刀の切っ先から灼熱の火炎を放射し、腐竜のブレスを迎え撃つ!
 紅蓮の炎と紫の霧がぶつかり合って混ざり合い、橙色の光を膨張させCABOOOOOOOM! 生み出された夜を塗り替える熱光の球体を貫き、ドリルじみて錐揉み回転したヒヨリミたちが莉亜へ真っ直ぐ急降下していく!
「あれ、こっち来た。これは……どう判断するべきかな、メンカル」
「……難しい質問……」
 答えるメンカルの左右で、白と黒の光を伴って人影が立ち上がった。片や、両腕を白い機械ブレードに置換した人型ガジェット。片や、両腕に黒い機械キャノンを装備した人型ガジェット!
 メンカル手中の銀杖が光に変換されて白衣の袖口に吸い込まれるとともに、彼女の手元に白と黒のホロキーボードが現れた。メンカルは黒のキーボードを左手一本でタイピング!
「……何はともあれ、狙いは莉亜ということ……。とりあえず、援護する……魔剣、ファイア」
 黒の砲撃型ガジェットがマシンアイを輝かせ、両腕のキャノンを上空に向け連射! 黒い光線が火炎ヒヨリミドリルひとつひとつと衝突し、火花と黒の光芒を撒き散らしながら激しく拮抗する。力尽くで光線を押し込まんとするヒヨリミたち。その後方上空に、ヨーヨーを振りかぶった摩那!
「誰か、忘れていませんか! はっ!」
 THROW! 投げ放たれたヨーヨーが光線と拮抗するヒヨリミの一体に、スパゲッティめいて絡みつく。摩那はヨーヨーを勢いよく引っ張り戻し、捕らえたヒヨリミを引き寄せた! ぐるぐる巻きにされ暴れるヒヨリミを、頭上でカウボーイの如く振り回す!
「ミュギイイイイイイイイイ!?」
「あなたを使わせてもらいます!」
 頭上でヒヨリミを回したままワイヤーを伸長させ範囲拡大! 勢いに任せて自身も回転しはじめた摩那は、今だ光線とかち合う残りのヒヨリミたちめがけてジャイアントスイング!
「せあああああああっ!」
 横薙ぎにぶん回されたヒヨリミが他の個体たちを薙ぎ払う。体勢を崩したヒヨリミたちは拮抗を維持できず光線に飲まれて爆発した。BBBBBBOOOOOOM! 摩那は爆音を聞きつつ、捕らえたヒヨリミを後方へ投擲! 再度ヨーヨーを撃ち出して片方の刀にワイヤーを絡め、奪い取った。
「キャアアアアアアアア!」
 悲鳴を上げて空をすっ飛ぶヒヨリミ一体の真下、土煙を吹き上げながら美影のバイクがうなりを上げた。正面、コマじみて回転しながら突っ込んで来る四匹のヒヨリミが火炎弾を乱射!
 BOMBOMBOMBOMBOMBOMBOMB! 次々と突っ込んで来る火を前に、美影は片手にカードの束を握りしめる!
「とものちゃん、しっかりつかまってて!」
「援護しますの!」
 DRRRRNG! 美影がハンドルをひねりバイクを加速! 飛来する炎を緩急つけたジグザグドライブ回避で潜り、避けきれない火炎弾にカードを投げる。投げナイフじみて空を切る札に、とものは片手をかざした。
「フォースシールド!」
 とものの手を赤いオーラが包み込み、飛翔するカードにもまた同様のオーラが灯った。火炎弾と衝突した瞬間、オーラは球状に炸裂して火の粉を蹴散らす! その上を円弧を描いて降り来る一発に指を差し、とものは腕を振り回した。火球が大きく円を描くように回り始め、回転を続けるヒヨリミの一体へ向く!
「シャッ!」
 ヒヨリミが短い気勢を上げて火炎弾をX字斬! その両脇を抜けた二体が高速回転しながら美影のバイクを急襲し、残る一体が後方から火炎弾を追加砲撃! 美影はアクセルペダルを踏みしめた。
「突っ込むわよッ!」
「いえす、まむ!」
 美影は右に曲がって左回転スライド、さらに軽くジャンプして炎を回避! 着地を狙った火球はカードを投げつけて爆破する。さらには見事に着地したモノバイクの車輪を斬り捨てんと飛来する回転ヒヨリミツインズ! とものは後部座席から腰を浮かせ、ハイジャンプした!
「チャージなどさせませんの! せいっ!」
 とものが両手を振り下ろし、念力に囚われたヒヨリミが地面に叩きつけられプレスを食らう! なおも回転する二体に、とものは手首をねじってフォースに逆回転の力を加えた。
「ふぬっ……!」
 ギャリギャリギャリギャリ! 激しい摩擦熱により白煙が湧き立ち、ヒヨリミ台風の勢いが減ず。とものは奥歯を噛みしめ、両手十指に力を込めてかぎ爪の如く折り曲げた。その後方では横回転するモノバイクを制した美影が、さらなるカードをデバイスにセット!
「ギャラクシー・アサシンを召喚! 攻撃!」
 ヒヨリミたちの方へ伸びたモノバイクの影が星空めいた輝きを灯す。そこから飛び出したるは銀河色の装束に身を包んだニンジャだ! 短刀二刀流を構えたそれは高速低姿勢ダッシュでヒヨリミたちへ肉迫していく。美影は片手をかざして高らかに叫んだ!
「ミーティアライン・スラッシュ!」
 FLASH! ニンジャめいた姿が閃光とともに消え、地面を光の線が二条斬り裂く。二本線はとものの真下を通過し、押し潰されたヒヨリミ二体を一刀両断! 爆発四散せしめた。刹那にアサシンの首が飛ぶ! 前のめりに倒れ爆発四散する暗殺者を背に、三体目のヒヨリミが美影に突っ込む!
「キシィィィィィィィィッ!」
「うわっと!?」
 泡を食ってハンドルを切り、ドリフトする美影。二刀を交叉させて彼女へ挑みかかるヒヨリミの前に、とものが前方回転しながら赤い光剣で斬りかかる! ヒヨリミは赤熱する刀一本で急降下斬撃を防御。
 弾かれてバックしたとものは逆の手にも金属筒を握って光剣二刀流にフォームチェンジ! ヒヨリミへと走った!
「やあああああっ!」
「キエエエエエッ!」
 全力疾走からの初撃が激突! とものとヒヨリミは高速の剣戟を展開し、周囲の虚空に火の粉と赤い電光をぶちまけて加速していく。二人を取り囲む、縦横無尽の軌跡の数々!
「とものちゃん!」
 すんでのところでy個一回転から体勢復帰した美影はカードを一枚ドローする。が、それは上空を斜めに撃ち抜いた光線に貫かれて宙を舞い、黒焦げになって燃え朽ちた。四体目のヒヨリミが美影の首を斬り落とすべく、回転しながら急降下する!
「シャアアアアア!」
「ちょっ、待っ……!」
 美影はデバイスに手を伸ばすが間に合わぬ! 目と鼻の先にまで迫ったヒヨリミの刀が、トゲ付きチョーカーのはまった首を寸断しかけたその寸前。真横からすっ飛んできたアニカの飛び蹴りがヒヨリミの側頭部を直撃!
「ギャッ……!」
「そこまで、ですっ……!」
 アニカは膝を折り曲げ、ヒヨリミを蹴っ飛ばす! SMAAASH! 砲弾めいて地面を水平に跳んだヒヨリミは空中後転を何度か繰り返して勢いを殺し、再度真横に高速回転。周囲にいくつもの紅蓮火球を生成し、着地前転からダッシュで距離を詰めてくるアニカに射出した。
「アニカちゃん!」
「こちらは、お任せ、くださいっ!」
 背後の美影に一言言い残し、アニカは両腕のトンファーを交叉して突撃! 銃弾じみた速度で飛んでくる火球を正面から受け止め、BOOOM! 爆発を突っ切ってなおも疾走。二発目、三発目を受け、四発目の直撃でブレーキがかかる。
「くぅっ……!」
 靴のかかとがガリガリと地面を抉り、爆風に圧されたアニカの体をどうにか支える。辛うじて半歩下がったアニカは右のトンファーを回転させながら引き絞り、五発目を打ち払う! 六発目を弾き、七発目をアッパーで消し飛ばして半身に構えた。ヒヨリミは遠く、火球発射を繰り返している。射撃戦の構えだ!
「それでは……UDCアースで、ちょっとだけ、見た技を、お見せ、しますっ」
 アニカは小ぶりな白翼が震わせると同時、軽く身をかがめてジャンプ! 低めのアーチを描きながら飛翔し、火球の弾幕へ斬り込んでいく! 右に避け、左に傾き、錐揉みして火炎弾とすれ違う。そのまま足を振り回して飛び蹴りダイブアタックをかけた! 対抗してヒヨリミが跳躍!
「はいっ!」
「ギィッ!」
 CRASH! アニカの飛び蹴りとヒヨリミの刃が衝突! 二者は一瞬視線をかわすと、互いに反動を利用し飛び離れる。だがヒヨリミは後退もそこそこにアニカを強襲! 両の剣に火が灯る!
「ィィィィィィイイイアッ!」
「っ!」
 アニカはとっさにトンファーで顔を覆うような防御スタイル。そこへヒヨリミの神速二刀ラッシュが叩き込まれた!
 SLALALALALALALALALALASH! 押し込まれ真後ろへ滑るアニカ。ヒヨリミは防御をトンファー防御を強要しつつ、守られていない太ももや腹、脇腹を引き裂く。肉の焼ける音!
「うぅっ……! 熱い、ですっ……!」
 ぐっと歯を食いしばるアニカ。ガードを下ろせば即首が飛ぶ。だがこのままでは徐々に不利! 既にスカートからのぞく膝やふくらはぎまでもが浅い切り傷に覆われ、焼けただれて酷い有様だ。無数のトゲが刺さったかのような痛み! しかしアニカは両足を踏みしめ、両のトンファーを思い切り開く!
「えいっ……!」
 ギンッ! 金属音を立ててヒヨリミが弾かれた。アニカはがら空きになったテルテル坊主の顔面にサマーソルトキック! 蹴り上げられた赤い影を見上げたアニカは、跳躍回転からの蹴り下ろしを放った!
「やっ!」
 SMASH! 地面に打ちつけられバウンドするヒヨリミ。屈み体勢で地に足つけたアニカが駆け出す直前、後方上部から絹を裂くような声!
「キィィィィィィィィッ!」
「っ!?」
 反射的に振り返ったアニカの目に燃える二刀が飛び込んだ! 別個体のヒヨリミ。加勢に入ったのだ! 炎をまとって脳天をかち割りに来る二本の刃を、アニカはすんでで掲げた右のトンファーで防いで打ち払う。しゃがんだまま前後反転し、新規ヒヨリミを跳躍蹴り上げ! しかし交叉した刀が跳ね上がった爪先を受け止め、抑え込む!
「くぅっ……!」
「コロセー!」
 アニカと競り合うヒヨリミが叫ぶ。同時に炎が燃える音! アニカが肩越しに振り返ると、そこには火炎をまとって二刀刺突を繰り出してくる個体! 先ほどまでアニカと一対一の勝負を繰り広げていたヒヨリミが、爆炎バッファローめいて迫ってきていた!
「っっ!」
 アニカが蹴り足を振り下ろして両手のトンファーを持ち上げる。だがキックを止めていたヒヨリミの刀二本はトンファー防御をかすめ、アニカの鎖骨に突き立った! そのまま膂力で抑え込み、アニカをその場にひざまずかせる。背後からは隙だらけの背中を狙うヒヨリミの突進!
「うくっ……!」
 全霊を込めて立ち上がろうとするアニカの肩に、刃が深々とめり込み白煙を上げる。広がるトゲの塊を埋め込まれたような痛み! アニカは苦悶の呼気を零した。足が萎えて膝を突く! 狂おしく雄叫びを上げるヒヨリミ二体!
「コロセー! コロセー!」
「キィィィィィエエエエエエエエ!」
 CABOOOOM! 紅蓮の炎をジェット噴射したヒヨリミが、アニカの背中を貫きにかかる。だが二本の切っ先が白翼の背中を焼き焦がす寸前、紫の落雷が割って入った! 地面に突き立てられた黒い剣の腹が、強烈な刺突を食い止める。インターラプトしたカイムは不敵な微笑みを浮かべた。
「いたいけな少女を二人がかりってのは、頂けねえな」
 黒い刀を引き抜いた勢いでヒヨリミを弾き、縦一閃! さらに振り向きざまの斬撃がアニカをピン止めしていたヒヨリミの顔面の皮一枚を斬り裂いた。慌てて引き下がったヒヨリミは二刀の切っ先をカイムに向ける。わだかまる炎!
「失礼するぜ、お嬢さん!」
「ふえっ……!?」
 カイムは片腕でアニカをすくい上げるように抱きかかえ、回転跳躍! 彼の居た場所に炎の矢が突き刺さって爆発した。垂直に跳んだカイムはアニカを横抱きにしたまま、振り上げた魔剣に紫電をまとわせて振り下ろす!
 ZGAAAAAM! 紫の落雷が地面に殴打して爆発! ヒヨリミ二体を吹き飛ばした。カイムは両膝から下を黒銀の炎で覆い隠した。
「飛ぶぞ!」
 アニカがぎゅっと目をつぶった瞬間、カイムの足裏が火を噴いた。空中を水切石めいて1、2、3、4、5、6回跳ねてから着地。抱きかかえていたアニカを下ろす。
「無事か?」
「は、はい。ちょっと、痛い、ですけど。あの、どうして、こちらに……」
「ああ? ああ……」
 カイムはバツが悪そうに頬かくと、視線で右方向を示す。
「ちょっと、アレを持て余してな」
「あれ?」
 アニカがつられて視線を向けた先で、BOOOOOOM! 漆黒の竜巻と紫色の稲光が巻き起こった。嵐に巻き込まれぬよう遠巻きに旋回する二十体のヒヨリミ。その中心では両目を鮮血じみた色合いに輝かせたセシリアが獣めいて咆哮していた!
「ARRRRRRRRGH!」
 黒煙の如きオーラをブスブスと上げる大剣を持ち上げ、力任せに大地をかち割る! CRAAAAASH! 左右に散開するヒヨリミたちの間を飛ぶ斬撃が駆け抜け、リングを一直線に断ち切り蒼炎の壁をもぶち抜く! 一拍遅れて噴いた暴風が骸骨器楽隊を蒼炎ごとふっ飛ばした。
「ARRRRRRRGH! ARRRRRRRRRGGGGHHHHH!」
 狂乱したセシリアは大剣を闇雲に振り回す! CRASH、BLOWWWWWWW! ひと薙ぎごとに巻き起こる竜巻と大地陥没!
 ヒヨリミたちは下がりながら火球を飛ばすが、大剣のひと振りで全弾消滅! それどころか散った炎はプロミネンスめいた奔流となってセシリアの体や大剣に流れ込んでいくのだ。セシリアは空いた片手で喉を掻き毟り、苦しげな声を張り上げる!
「GAAAAAAAAAAAARGH!」
 無茶苦茶に振るった剣が前後左右の地面を砕き、飛翔した雷がヒヨリミ円陣の間を撃ち抜く。大剣を振り上げた勢いで新たな竜巻が生まれ、大振りの剣圧が遠くの蒼炎壁を吹き散らす。
 カイムは軽く肩を竦めた。
「見ての通り、見境なしだ。俺も体力ガンガン吸い上げられてな……止めたいのは山々だが、テルテル坊主相手にしながらじゃあちょっとキツい。なんで、こっちを先に片付けようと思ってな」
 魔剣を構えるカイムが、立ち上がったアニカと背中合わせに立つ。その周囲を包囲する十体のヒヨリミ。
 骸骨器楽隊のBGMが遠い。右手にヨーヨー、左手にヒヨリミ刀を手にした摩那が臨戦態勢を敷くと同時に、カイムは剣の腹で肩をたたいた。鼻で笑い、指一本で手招きをする。
「それじゃ、踊るか。うっかりステップ踏み外すなよ?」
「は、はいっ!」
 アニカが応えた瞬間、二人とヒヨリミたちに大きな影が覆い被さる。その場全員が見上げると、そこには山の如き腐肉の巨体! 莉亜のドラゴンゾンビが吠えた!
「U―――GYAAAAAAAAAAARGH!」
 吠え猛るは腐敗しかけたドラゴン! 紫色のまだら模様が浮いた両腕を振り上げ、ヒヨリミたちへ倒れ込む形で振り下ろす! ヒヨリミたちは素早くドラゴンを離れて爪を回避し、高速回転を開始。大きく息を吸うドラゴンゾンビの背中を走り、莉亜と摩那が宙空に身を躍らせる!
「おいで、Lady」
 莉亜が呟くと、真後ろから飛んできた白銀の狙撃銃が彼の手に収まる。ボーダーシャツの手首がひとりでに引き裂かれ、あふれ出した血が狙撃銃の銃身を螺旋状に駆け上がった。莉亜は銃口をヒヨリミの一体に向け、発砲! BLAMN!
「キッ!」
 一直線に眉間をめがける弾丸を、ヒヨリミは一刀で両断! 直後、莉亜の両サイドを別のヒヨリミ二体が挟み剣閃を繰り出した。赤い円弧を描く一撃は、しかし割り込みをかけた白銀の光によって阻まれる!
 それらはガラスじみた刀身を持つ剣と天使の翼めいた大鎌! 浮遊する剣と鎌はひとりでに刃を振るい左右のヒヨリミを打ち払った。透明な剣に弾かれたヒヨリミの背後にカイムが滑り込み、野球選手めいて剣を振るう!
「そらよッ!」
「!」
 瞬時に反応したヒヨリミは身を反らして刃をかわし、逆に二刀を叩きつける! 二者は空中で高速剣戟を展開! 紫電と紅炎を宿した刃が激しくぶつかり合わせたのち、ヒヨリミは両の剣を振り上げた。吹き飛ばされるカイムの剣! 大きく片腕を跳ね上げた彼の胸をヒヨリミの二連刺突が貫き―――カイムの体は陽炎めいて揺らぎ消え去った。
「ミギッ!?」
 ヒヨリミが驚愕してスタン。直後、真下から垂直飛翔したヨーヨーが二刀のワイヤーでグルグル巻きにし、ヒヨリミの手からもぎ取って降下! 武器を失ったヒヨリミを、黒い光線が撃ち抜いた。ヨーヨーを引き戻した摩那は奪った刀二本を地面に突き刺す。
「アニカさん、左側をお願いします!」
「わかり、ましたっ……!」
 摩那の左サイドにアニカが飛び込み、V字に斬りかかるヒヨリミ二体をトンファーで防御! さらに軽い跳躍からの前蹴りで三体目の顔面を打ち抜きに行く、がこちらは刀のクロスガードに止められた。
 一方、摩那は爪先で土を穿った刀の柄を順に蹴り上げ、念動力で虚空に浮かべる。先に奪ったものと合わせ三本、頭上に従えて右側に回り込んだ四匹へ突撃していく! 炎をまとった二体のヒヨリミが勢い込んで刺突突進!
「キィィィィィィィィッ!」
「シェアアアアアアアア!」
 加速した摩那は刺突を食らう寸前でスライディング! 二体の真下を潜り抜けた摩那の首を、三体目の弾頭斬撃が襲う。間に滑り込んだヒヨリミ刀の一本がこれをガードし、摩那はそのまま滑り抜けて身をひねった。クラウチングスタートに似た体勢を取った摩那の背中に奪われた二本の刀が飛来し、切っ先をヒヨリミに向ける!
「放て……!」
 二刀がソニックブームを引いて飛翔! 途中でくるくると回転した刀は、三体目の周囲を飛び回り斬撃をぶつけ合う。摩那は手中のヨーヨーを地面に叩き落とした。跳ね返ったヨーヨーは彼女の背後を取った四体目の顔面を殴打! のけ反ったところに摩那の後ろ回し蹴りが突き刺さる!
「ンギッ!」
「甘いですよ。そうそう後ろは取らせません」
 SMASH! 四体目を真横に蹴り飛ばし、摩那はヨーヨーで追撃! ヨーヨーは四体目の周りを何周かし、ワイヤーで布の体を締め付ける。腕を引き四体目を引っ張り寄せる摩那! 目前まで来た個体を真横に蹴り飛ばし、斬りかかって来た二体目に衝突させた。
「ギャッ!」
 走り出した摩那は、ホイールソーめいて斬りかかって来た一体目を飛び越え、ヨーヨーワイヤーを伸ばした腕を打ち振った。ムチの如くしなる鋼糸を、ヒヨリミは振り向きながら刀を掲げて受け止める。着地した摩那の足元に滑り込んだ三体目が、足首を斬り落とさんと横薙ぎ斬撃!
「くっ……!」
 すんでで跳び下がった摩那の足首、くるぶし付近を赤い筋が横切った。皮一枚! 追撃を諦めて跳び下がった三体目に、三本の念力刀が回りながら追随していく。バク宙する摩那の隣にアニカが並び、そろってドラゴンゾンビの左右を抜けて後方へ! 二本足で立ち上がった竜の肩には莉亜!
「……よし、やっちゃって」
 莉亜の合図を受けた腐竜は大口を開け、黒紫色のブレスを放射! BLEEEEEEEZE! 戦場の地面を不浄の霧が覆い尽くし、広がっていく。十体のヒヨリミは合流し、空中を滑るように後退。その逃げ場をカイムとメンカルの砲撃ガジェットがふさぐ!
「おっと、どこ行くんだ? ダンスはまだ途中だろ?」
 カイムは右手に握った大剣の刃を、左脇の下に通した。全身を覆う紫電を稲妻を四方八方にほとばしらせ、居合い抜きの要領で一閃! ZGRAAAAAAK! 津波じみた電光が放たれ、加えてメンカルの砲撃ガジェットが壁の如き光線弾幕を張る。前門、後門共にふさがれたヒヨリミ十体は、真上へと飛翔! 紫電と弾幕はブレスと衝突し、大爆轟を引き起こした。
『コロセー!』
 十体のヒヨリミは夜空で二手に分かれて飛行。五体がドラゴンゾンビへ向かい、もう五体がカイムの上空を抜けた。
「GRRRRRRRRRR!」
 向かってくるヒヨリミ編隊に両腕を振り上げる腐敗竜! 振り下ろされた爪を、しかし突出した二体のヒヨリミはかわし螺旋機動を描いてドラゴンの腕を駆け上がる! 赤い渦は腐竜の肩口に達し、さらに胴体を二重螺旋状に駆け下りる。二体のヒヨリミがドラゴンの足元に達した瞬間、ドラゴンゾンビはバラバラの輪切りと化した!
「うおっと」
 体勢を崩す莉亜に襲いかかる二体のヒヨリミ! 莉亜の銃撃を紙一重で回避しながら高速回転し、彼とすれ違う! ボーダーシャツの両脇が斬り裂かれ、片方のヒヨリミ頭部が食いちぎられた。赤い布地を吐き捨てた莉亜は崩落する腐竜から飛び降りつつぼやく。
「……やっぱり、血は無いか」
「須藤さん!」
 摩那が鋭く声を上げ、投げ放たれたヨーヨーが莉亜の胴体に巻きつく。真後ろに引っ張られた彼の胸を、赤い斬撃が袈裟掛けに裂いた! ヨーヨーのワイヤーが切れ、血が噴き出す! 莉亜の前には、ヒヨリミがバットを振りかぶるように赤い大剣を振りかぶっていた。
 赤い大剣、否! それは薄布状の刃と化したヒヨリミが四体結合して生まれた武装! 布の表面が波打ち、ヒヨリミ三体分のサラウンドがつんざいた。
『コロセェェェェェェェッ!』
「莉亜さん、あぶない……!」
 とっさに莉亜を追い越したアニカが二本のトンファーでガードを固める。構わずフルスイングされる結合ヒヨリミ大剣! 次の瞬間、アニカの時間が泥めいて鈍化した。
(え……)
 目を見開くアニカ。体は石のように動かず、しかしてヒヨリミ大剣はゆっくりと彼女の首を断ちに来る。まだ刃も届いていない首筋がチリチリとしびれる。これは、死の感覚―――!
「ほいそこ―――っ!」
 直後、アニカの目前に赤い風が吹き荒んだ! 半ばから斬り飛ばされたヒヨリミ剣の先端が爆発四散。攻撃を空ぶったヒヨリミが風の吹き抜けた方を見やると、そこにはレーザー刃の大ハサミを手にしたともの! あちこち焦げた着物をはためかせ、両踵でブレーキをかけて前後反転。ハサミをヒヨリミに向ける。
「ぐっど! この間読んだご本に、こういう手合いをハサミでちょきんしてシーツにしていましたの!」
「ニィィィィィィ……!」
 大剣を寸断されたヒヨリミがうめく。剣を形成した四体のうち二体が死亡! どうすべきか逡巡するヒヨリミの横面に、アニカが傷だらけの足で飛び蹴りを叩き込んだ!
「えいっ…・・・!」
「ウギャッ!?」
 吹き飛ぶヒヨリミ! アニカの後方で莉亜は腕を指を振って透明な剣を射出し、追いうちをかける。後方回転して立て直したヒヨリミは透明剣を斬り払う。続けて両断しに来た鎌を大剣の腹で防御する―――その足元に踏み込むともの! アギトを開いたレーザーハサミは既にワン・インチ距離!
「ちょきんですの!」
 SLASH! 大剣を持つヒヨリミが真っ二つにされ爆発四散! 仲間の手を離れた大剣はふたつに分かれ、円盤状の刃に変わる。そのまま回転しながらとものの腹と背中を切り裂き、よろめいたところでCターン! 急降下斬撃でとものの両鎖骨を切断した。
「あいたっ!」
 とものが仰向けに転倒。さらにUターンを決め、斬りかからんとする円盤二枚を、横合いから透明な剣が串刺しにした。焼き鳥めいてど真ん中をまとめて貫かれた二枚! 莉亜は脇腹を押さえながら呟く。
「はぁ……血もないし、斬られるし、最悪……。モチベーション上がらないし、後は任せようか。アニカ、よろしく」
 刹那、跳躍したアニカが背中を反らし、剣の柄にオーバーヘッドキック!
「てぇぇぇぇぇやっ!」
 剣の柄を蹴り飛ばすアニカ! ヒヨリミ布二枚を引き連れ矢のように飛翔する奇剣の先には、メンカルが呼び出した砲撃用ロボ! 剣の飛来に気づいたメンカルは黒いホロキーボードを片手でたたき、ガジェットに迎撃命令を出した。
 そちらを振り向いたガジェットが黒いビームを幾条も発射し、ヒヨリミ布をズタズタに引き裂いて桜の花びらめいたボロ衣にしてのける! メンカルは即座に右手で白いホロキーボードをタイピング。彼女の背を守るようにブレードを備えた人型ロボがスライドし、両手でヒヨリミと斬り結ぶ!
「……聖剣、迎撃」
『Yes,I'm ready』
 機械音声で返答した近接ロボは高速剣技でヒヨリミと競り合い始めた。雨音の如き金属音、飛び散る火花、赤熱する白いブレード! タイピングを続けるの前方にヒヨリミが二体! 斬りかかるそれらとメンカルの間に紫電が走り、割り込みをかけたカイムが横斬りで弾いた。
「ギギッ……!」
「おっと、させねえよ」
 爪先で軽くステップを踏んだカイムはジグザグに疾駆し、斜めに斬り上げてヒヨリミ二体をまとめて払う! 次の瞬間、一条の炎光線がメンカルの脇腹を射抜いた。
「つっ……!」
 黒白の人型ガジェットの輪郭にノイズが走り、消滅! この術式は維持と操作に繊細なバランスを必要とするため、攻撃を受ければたちまち解ける。防衛機構を失ったメンカルの首に、三体のヒヨリミが刃を突き立てるべく直行!
「メンカル!」
 カイムが振り返った刹那、彼に追い払われた二体もメンカルへ特攻! 置き土産めいた剣閃がカイムの両手両足の腱を斬り捨てた。
「ぐおっ!?」
 足をもつれさせカイムが転倒。彼が慌てて顔を上げた先、両膝と腹部も射抜かれ体勢を崩したメンカルに五体のヒヨリミが襲いかかる! CRAAASH! 衝突音が鳴り響いた。メンカルは銀河色のドーム状バリアに覆われ、無事である! 対する三体のヒヨリミの刀は半ばから折れ飛び、前半分が離れた場所に突き刺さる。
 メンカルの背後には銀河色の装甲を持つ重装騎士が立ち、バリアを張ってメンカルを防護していた!
 バイクを駆ってそちらに走った美影が高らかに宣言!
「ギャラクシー・フォートレス・ナイトは戦闘じゃ破壊されない! 反撃よ!」
 関節部から蒸気を噴き出した重装盾騎士は胸を大きく張りバリアを拡大! 三体のヒヨリミをまとめて押し流した! 美影はさらなるカードを振り上げ、空中―――大上段で剣を構えるカイムに向ける。
「カイムさん! 装備魔法、時空閃!」
 カードから伸びた一条の光がカイムに衝突し包み込む! 銀河色の光表面を紫の電光が幾条も走らせ、カイムは言った。
「美影! メンカルの防御を出来るだけ厚くしてくれ。巻き込むからな!」
「わかったっ!」
 美影はバイクのハンドルを引き上げて後退。同時にバリアでメンカルを守った重装騎士は盾を持つ両腕を縮め、バリアの色をさらに濃くする。カイムは剣を振り下ろした!
「はァッ!」
 ZGYAM! 一瞬の電光が地面に突き立ち、紫がかった青の大爆轟を引き起こす! 爆発はメンカルと重装騎士を飲み込み、大きく膨れ上がってヒヨリミ五体を飲み込んだ。一拍遅れて轟音が地を打つ! CABOOOOOOOM! 押し寄せる衝撃波に、美影は片腕で顔を覆った。
「っ……!」
 突風が弱まるのを見計らい、腕の影から視線を飛ばす。爆雷が晴れたそこには、変わらず仁王立ちする騎士とメンカル。そしてフワリと着地したカイムがいた。美影がほっと胸を撫でおろした、その時!
「ARRRRRRRRRRRGH!」
 美影の背中を魔獣じみた咆哮が叩いた。声の方では、セシリアの力任せな一撃が巨大な地割れを作り出す! 一刀を左右に分かれて避けたヒヨリミたちは、炎の矢を無数に射かけて即座に反撃! しかしそれもセシリアのひと薙ぎを前に風前の灯火めいて吹き消され、余波のカマイタチがヒヨリミたちの体に無数の引っかき傷を生み出した。
「ARRRRRRRRRGH…………!」
 吹き散らされたはずの炎が再度大剣を振りかぶるセシリアを中心に渦を巻き、その体へと取り込まれていく。ヒヨリミたちは構わず炎を乱射! 回転斬一発で全て蹴散らされても砲撃の手を決して緩めぬ! やがて、無暗やたらに剣を振り回すセシリアの腕が勝手に裂けた!
「ARRGH……ッ!」
 肩から白煙を登らせ、片膝を突くセシリア。だがすぐに立ち上がり、頭上で剣をぶん回した! 嵐めいた剣圧がヒヨリミたちの体を削る! リング外でその様に注目しながら、三郎右衛門はせせら笑った。
「まっこと、恐るべき力よな。まるで獣よ。……が、それもそろそろ限度よな」
「ガッ……!?」
 その時、セシリアが血と火を吐いて体勢を崩した。
 現在セシリアは、自らの理性と引き換えに身体強化と生命力吸収の力を得る状態にある。これにより28のヒヨリミたちと互角以上にわたり合い、拮抗してきた。傷は全てヒヨリミたちから徴収し、そのたびに力を上げていく。
 しかし今の彼女は、風船に際限なく空気を入れている状態に等しい! いかに猟兵といえど、その器には限界があり、無限に吸収・回復・強化が出来るわけではない。
 実際セシリアのオーバーロードは既に近い。だが狂化を受け入れ、災害めいて暴れるセシリアは自らの暴走を止めることが出来ぬ! このまま待つのは空気を入れすぎた風船のように爆発四散する未来!
 一方、ヒヨリミたちも命懸けだ。炎が吸収されるたび、セシリアは傷を癒やしてパワーを上げる。炎を出すスタミナがなくなれば斬り捨てられ死! セシリアの力がヒヨリミたちを上回れば一刀で斬り伏せられ死! これは実際、互いの生死を賭けた熾烈なチキンレースなのだ!
「ARRRRRGH……ARRRRRRRRRRRRRGH!」
 咆哮するセシリアの体各所がひとりでに裂け、鮮血や紫電、炎を噴き出す。吸収限界とそれに伴う身体崩壊! ヒヨリミ二十体はギラリと目を光らせて一点集合! 寄り集まって高速回転し、太陽じみた巨大な火炎球を作り出す!
『コロセー! コロセー!』
 CADOOOOOM! 紅蓮太陽球がセシリアを押し潰しにかかる! 接近を許した大地が橙色に輝いて溶解、一瞬でマグマのプールに変化する中、セシリアは構わず大剣を振りかぶった!
「GAAAAAAAAAAARGH!」
 SLAAAAASH! 漆黒の剣閃が太陽球を叩き斬り、割断した。炎塊は爆散し、何本ものプロミネンスが生命吸収の力に惹かれてセシリアに殺到していく! 第一波が黒い騎士鎧の全身から雪崩れ込み、セシリアの筋肉が膨張!
「ウガアアアアアアアアアッ!」
 夜空に絶叫が轟いた。全身を発光させたセシリアは大剣を取り落とし、頭を抱えて身をのけ反らせる。過剰な生命力を食らった体に橙色の亀裂が走り、内側から徐々に眩しい光を放ち始めた。
 限界を超えたセシリアが人間爆弾として爆裂するその寸前、地面スレスレをボブスレーめいて飛行したメンカルが杖をセシリアに向けた。
「邪なる力よ、解れ、壊れよ。汝は雲散、汝は霧消。魔女が望むは乱れ散じて潰えし理」
 セシリアの足元に蒼い魔法陣が開かれ、柔らかな光が彼女を包む。体中に入った亀裂が抑圧されるように収縮し、CRASH! ガラスの如き破砕音が響き、セシリアの両目から光が消える。同時に炎の吸収もやみ、残り火が霧散。セシリアは両膝を突き、うずくまった。
「かはっ、がっ……ぐああああああっ!?」
 胸を押さえて吐血しのたうち回る! 全身が白煙を上げ、脳をあぶられるかのような感覚に襲われセシリアを守るように立ち、メンカルは杖の石突で地面を突いた。
「……貪欲なる炎よ、灯れ、喰らえ。汝は焦熱、汝は劫火。魔女が望むは灼熱をも焼く終なる焔」
 三日月をあしらった杖先に、セシリアが吸収し損ねた炎が流れ込んでいく! メンカルの周囲を炎の奔流が取り囲み、足元に蒼の魔法陣が展開! 仰向けになったセシリアは、焦点の合わない銀の瞳でメンカルの後ろ姿を見上げた。
「ぐぁっ……メンカル、さん……?」
「……お疲れ様。後は……任せて」
 毅然として告げたメンカルは杖を薙ぐ。彼女を取り囲む炎は真紅から純白へと変色した!
「燃え上がれ……グラトニー・フレイム……!」
 メンカルが括目し、KRA-TOOOOOOM! ヒヨリミたちの真下から白い炎壁の塔が噴出! 純白の業火が夜空を照らし、ヒヨリミたちの甲高い悲鳴を燃焼音が塗り潰す。ヒヨリミたちは刃に炎を走らせ、火炎を放つがことごとくが空へ押し流され破れぬ! セシリアの自爆を促すためありったけの炎を流し込み―――余力を使い果たしたのだ!
「……今」
 呟いたメンカルの頭上を美影のバイクが飛び越えた。デバイスの山札に指を置き、美影は白炎の塔をにらむ!
「アタシのターン……ドロー! よし!」
 引いたカードを見た美影はそれをデバイスにセット! 彼女の前方に巨大なカードのビジョンが生まれた。渦状の星雲から銀河色のドラゴンが這い出す絵柄!
「アタシは『ギャラクシー・リボーン』を発動! モンスターを蘇生し、さらにモンスターの攻撃力を上昇させるわ! 蘇れ、我が魂! 『ギャラクシー・クロノスドラゴン』!」
 美影が片手を掲げた先に、小宇宙じみた円形のゲートが口を開いた。そこから飛び出した彗星を打ち破り、銀河色の巨竜が姿を現す! それと同時に、メンカルの傍らを駆け抜けた摩那のジャケットに七色の電光が這い回る。勢いよく両腕を広げた彼女の腕を伝って、虹色の雷が浮遊ヒヨリミ刀に流れ込んだ!
「励起。昇圧、帯電を確認。敵味方識別良し……散開!」
 摩那が指を鳴らした瞬間、ヒヨリミ刀は全て爆散! 七色の雷光をまとった巨大な花嵐へと変化した。摩那と美影はそろって白炎の塔に手をかざす!
「最大電圧、フルール・デ・フルール!」
「放て! 絶滅の……ギャラクティック・オーバーブラストォッ!」
 ZGRA-TOOOOOOOOOOM! 轟雷と化した花弁の竜巻と巨竜の吐いた銀河色のブレスが炎柱に囚われたヒヨリミたちへ一直線! 白い炎は二つの攻撃を内部へ取り込み、半ばから膨張。そして、極大爆発を解き放った!
 吹き荒れた暴風が蒼炎のリングを吹き飛ばし、中に居た骸骨僧をもまとめて蹴散らす。
 一瞬の、水を打ったような静寂。風も吹かず無音となった戦場が、再び蒼炎の壁に囲われたところで、カイムは切っ先を燃える寺の方へ突きつけた。
「力は示した。さぁ、次はアンタだぜ? Shall we Dance?」
 剣の先、三郎右衛門は賽銭箱から腰を持ち上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『菱宮・三郎右衛門』

POW   :    愛は拳で語る(物理)
【武の心】を籠めた【拳】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【自らに向ける殺意】のみを攻撃する。
SPD   :    愛弟子の応援
戦闘力のない、レベル×1体の【稽古熱心な弟子】を召喚する。応援や助言、技能「【鼓舞】【奉仕】【掃除】【医術】」を使った支援をしてくれる。
WIZ   :    手合わせを所望する
【全盛期の頃の姿】に変身し、武器「【薙刀】」の威力増強と、【草履】によるレベル×5km/hの飛翔能力を得る。

イラスト:auau

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はジェマ・ファリナセアです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●お知らせ

 第三章を開始します。
 プレイング受付は10月17日8:31~10月18日の8:29までの予定です。
 途中参加歓迎。
須藤・莉亜
「さてさて、おじいさんはどんな血の味かな?渋い感じかな?」

不死者の血統のUCを発動。先ずは今まで受けた傷を吸血鬼化して治しとく。
んでもって、生命力吸収能力で敵さんの体力を奪い、動きを【見切り】ながら強化された力を駆使して攻めていこう。

悪魔の見えざる手には深紅を持たせて防御をメインに。
【第六感】でヤバそうな気配を感じたらすぐに回避するのも忘れずに。

もし、深紅で敵さんの動きを止められたら、その隙を突いて【吸血】。
なんなら多少捨て身で【吸血】するのもあり。どうせ治るしね。

「良いね、楽しくなってきたよ。おじいさんはどう?」

【僕・きみ・年上の相手のみ名前+さん、他は名前呼び捨て】


黒木・摩那
いよいよ真打の登場ですね。

ひとりで複数の猟兵を相手できるというのですから、
腕前は確かなのでしょう。
連戦続きで疲労はありますが、手加減のできる相手ではないですね。

相手は接近戦がメインのようです。
本来は距離を採って戦うべきでしょうが、相手も対策はあるはず。
ここは手堅くルーンソードで戦います【先制攻撃】【衝撃波】【なぎ払い】。

場が荒れているので、瓦礫をUC【胡蝶天翔】で変換し、黒蝶で視界を覆います。
そこを【第六感】とスマートグラスのAIで位置予測して斬りつけます。


柚月・美影
せっちゃん(千里)やとものちゃん達と参加
一人称:アタシ
二人称:年上はさん、年下・同年代はくん、ちゃん付け
アドリブも歓迎
●戦闘
ただ構えただけで何てプレッシャー…
でも、ビビってたらバトルゲーマーの名折れよ!
「さあ、バトルスタート!」
今回はサポートメインで行きましょう
宇宙バイクを【運転】し【クライミング】で縦横無尽の機動戦
「生憎と武術は素人ですからね…けど、弱いとは言ってないわ!」
バトルキャラクターズを使用
【念動力】【なぎ払い】【投擲】【カウンター】で小型モンスターで相手の技を妨害
エースが倒されるなら取って置き!
「『魂を刻む劔』を発動!
とものちゃん!
受け取って、ギャラクシー・クロノスドラゴンの力!」


カイム・クローバー
…強ぇな。パーティのラストに相応しい。さぁ、踊ろうぜ。

魔剣に紫雷を纏わせる【属性攻撃】と【なぎ払い】を使った【範囲攻撃】で攻める。熟達の拳士、【挑発】が効果あるとは思えねぇな。
【第六感】を張り巡らせ、【残像】と【見切り】で攻撃は躱していく。隙を伺い、UC。直撃すりゃ良いが、最悪、外す可能性を想定しておく。防ぐか?躱すか?それも折り込みここで【二回攻撃】と【範囲攻撃】。刀身から紫雷を迅らせる。これで強引に隙を作って再度、【串刺し】を使ったUCだ。

──愛弟子には攻撃が行かねぇようにするぜ。師の応援なんだろ?結構な事じゃねぇか。誰でも構わずぶちのめしてぇ訳じゃねぇさ、俺は。怪我しねぇよう気を付けな


潦・ともの
美影と参加
アドリブ&連携大歓迎!

相手の全力を受け止め、
その上で凌駕するのが私の憧れるキング
そして私の誓い

ならば【王者の決闘】発動!

【見切り】【第六感】【武器受け】【2回攻撃】【空中戦】
相手と同じ土俵で接近戦!

殺意?否!魂と魂のぶつかり合いだ!

『キングのでゅえるは、エンターテイメントでなければならない!』

深い一撃に合わせてセイバーで【時間稼ぎ】【武器受け】流し
返す間も惜しんでセイバーを手放すと
【カウンター】で腰のブレイドで武器か腕に【部位破壊】を狙う

美影の声に【念動力】でそれを手繰り寄せ
【全力魔法】で自分の魔力も上乗せしての一撃を叩き込む
倒せずともこれはチーム戦

『フォア・ザ・チーム、ですのッ!』


アニカ・エドフェルト
いよいよ、真打さん、登場、ですね。
胸を、借りるつもりで、行かせて、もらいます。
よろしく、おねがいしま……

あ、そういえば、これは、いけないかも、しれません、ね。
(遠くにトンファーを置きに行く)
お待たせ、しました。あらためて、よろしく、おねがいしますっ

トンファーを、持たなくなったことで、〈グラップル22〉が、火を、吹きます……?(〈怪力10〉も乗せる)
《死闘天使》《舞踏天使》で、リズムを、作って…
最後に、決め技の、《転投天使》、ですっ
ただ、投げ飛ばすだけじゃなくて、高く飛んでから、勢いよく落とすのも、いいかも、しれません?

(アドリブ歓迎、シナリオ成功なら敗戦描写OKです)


セシリア・サヴェージ
さ、さすがに無茶し過ぎました。ご心配ご迷惑をおかけして申し訳なく……ですが、まだあの老人が残っています。彼を討つまで、倒れるわけには……!

UC【血の代償】を発動。先ほどの戦闘での負傷により戦闘力は増強されるでしょうが、反面体を満足に動かせません……。これが最後だと思ってもうひと踏ん張り、【力を溜め】て一撃に賭けましょう。
それにしてもあの老人、変身したかと思えば飛翔するとは……驚きを禁じ得ませんが、驚いてばかりもいられません。彼の攻撃に合わせて【カウンター】することに集中しなければ。

通常時は私、あなた、名前+さん。UC発動中は私、お前、呼び捨て


メンカル・プルモーサ
……さて……残るはあのお爺さん…なんか若返るけど…か…
正面からの戦いは苦手なんだよね…どうしたものか…
…ひとまず相手も飛ぶし、箒に乗って空中に…【天翔る突風の馭者】で戦闘力と移動速度を増強させるよ…
…接近戦が主体みたいだからなるべく距離を取って…狙われたら空中での機動戦になるね……
…【闇夜見通す梟の目】を召喚…ご老人の動きを分析して仲間に附与術式を仕掛けて援護…
…後は【連鎖する戒めの雷】でご老人のダメージを与えながら動きをを封じて…
…【空より降りたる静謐の魔剣】により様々な軌道で見切られ辛くしてご老人へと攻撃を仕掛けるよ…



(これまでのあらすじ:迷い込んだ者に死ぬまで戦闘を強要する暗黒領域『奇祭・焔演武』。サツバツたる影朧たちの巣に突入した猟兵たちは、襲い来る『古塚の呪い』と『ヒヨリミ』の群れを傷つきながらも退けた。残る『菱宮・三郎右衛門』は、死闘を予感しつつもリングへ飛び込む!)

「はァッ!」
 三郎右衛門は跳んだ。衝撃で砕け散る境内と賽銭箱を後に残し、前方回転しながら蒼炎に囲われた戦場へ落下していく。回転を止め、足から―――THOOOM! 着地のインパクトにより地面が陥没!
 両足を肩幅に開き、腰と右拳を落とした態勢で身構えた三郎右衛門は、凶悦にギラつく視線を猟兵たちに向けた。反射的に身構えたアニカが、ごくりと生唾を飲み下す。
「いよいよ、真打さん、登場、ですね。胸を、借りるつもりで、行かせて、もらいます。よろしく、おねがいしま……あっ」
 ふと、アニカは両手に構えたトンファーに目を落とした。いくつもの切り傷が入り、少し溶解しかかったそれをまとめて胸に抱え込む。
「そういえば、これは、いけないかも、しれません、ね。置いて、きます……!」
「ああ、急いで戻って来い。クライマックスに乗り遅れたんじゃ、格好つかねえぜ」
 三郎右衛門を見据えたカイムが茶化すように言う。アニカはぺこりと頭を下げると、三郎右衛門に背中を向けて駆け出した。
 離れていく背中を見ながら、三郎右衛門は肩をすくめる。
「なんじゃ、置いていってしまうのか。未熟ながら、あれを使った防御は中々のものだと思ったのだがな?」
 剣の切っ先を少し下げつつ、カイムが不敵な笑みを浮かべて言い返した。
「いじめてやるなよ、爺さん。別に武器の持ち替えやら武装解除やらが卑怯ってわけじゃないんだろ? 戦い方は人それぞれってことだ」
「カカカカカカ! 違いない! 生前遭わなかった武具や戦法をこれでもかと見せられたからのォ。老人の偏屈を働かせては損よな!」
 からからと笑う三郎右衛門を前に、しかしカイムは指貫グローブを嵌めた両手に汗がにじむのを感じた。パチパチと紫の火花を散らす瞳は、老人の全身を暴風めいて包み込む青白いオーラを見透かしている。群青色のシャツが汗に濡れて背中に貼りついた。冷たい。
「……強ぇな。パーティのラストに相応しい」
「何、宴もたけなわ。最後は、大きく花火を上げねばなるまいよ。ここまで戦い抜いた勇士に、生半な返礼では申し訳が立たぬゆえ。……時に、そこな鎧の娘」
 三郎右衛門は構えを解かぬままに顎をしゃくった。莉亜の肩を借りたセシリアが、荒い息を突きながら視線を返す。
「……私ですか」
「然り。既に死に体と見えるが、問題はないか。応急治療程度なら、認めてやらぬこともないが」
「いいえ、ご心配なく」
 莉亜はセシリアを横目に、小さく囁く。
「誰がどう見ても大丈夫じゃないんだけど」
「さ、さすがに無茶し過ぎました。ご迷惑をおかけして申し訳なく……」
 首を縮めながらも、セシリアは三郎右衛門から顔を背けぬ。体中から白い蒸気―――容量限界によりあふれ出した生命力を立ち上らせつつ、莉亜に支えられた肩とは逆の手で大剣を握り直した。
「……ですが、まだあの老人が残っています。彼を討つまで、倒れるわけには……!」
「…………。僕の血、要る? 見た目はヒドいことになるけど、今よりはマシになるよ?」
「いえ、大丈夫です。莉亜さんは体力の温存を……死にぞこないは、私一人で十分です……!」
「ん、そっか」
 セシリアが大剣を地に突き立てるのを見計らい、莉亜は貸していた腕を引き抜いた。剣の柄に額をつけるようにして体重を預け、両足を小鹿めいて震わせるセシリアをしばらく見守ってから白銀の狙撃銃を担ぐ。
「それじゃ、僕も準備オーケーっと。さてさて、おじいさんはどんな血の味かな? 渋い感じかな?」
 空気がピンと張ったピアノ線めいて張り詰める。戦場に重くのしかかる圧力! 武器を手に、目測で間合いを測る猟兵たちの中、駆け戻ってきたアニカが頭を下げた。トンファーは無く、素手。徒手空拳の構え!
「お待たせ、しました。あらためて、よろしく、おねがいしますっ」
「戻ったか。では出でよ! 我が愛弟子たちッ!」
『ハイヤァァァ―――ッ!』
 寺の扉がふき飛び、大勢の道着を来た若者たちが駆け出してくる。腹に巻くのはホワイトベルト。彼らは列を為し、ウイニングランする野球選手めいて蒼炎のリングを時計回りに一周してぐるりと包囲。等間隔で足を肩幅をに開き、両拳を腰に据えて停止した。三郎右衛門が発破をかける。
「始めッ!」
 すると若者たちは腰を落とし、右正拳・左正拳・右足蹴り上げ・左逆回し蹴りの演武を始めた。1セット、2セット、3セット。勇猛な掛け声が境内に響く。
『ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!』
『ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!』
『ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!』
『ハイッ! ハイッ! ハイッ! ハイッ!』
 瑞々しいシャウトに加え、肉体が空を切る音が続く。ルーン文字が刻まれた剣を正中線に上げたまま、摩那は視線を巡らせてニュービー武道者たちを見渡した。誰も彼もが精悍な顔つき。
「一気に騒がしくなりましたね。ご老体、これは一体?」
「最後の宴に、余興が無いのもつまらぬだろう? 奏者の骨どもは消し飛んでしまった。代わりだ」
 三郎右衛門はゴキゴキと首骨を鳴らす。
「気にするな。こやつらが戦いに割って入ることは決してない。儂を打ち倒した後に、こやつらと拳を交えることも無い。儂と一蓮托生の身であるがゆえな。お主らは、儂を倒すことにのみ尽力すればそれで良い」
「なるほど、師匠の応援団ってところか。結構な事じゃねぇか」
 カイムが小さく肩を竦めた。
「ま、こっちも誰でも構わずぶちのめしてぇ訳じゃねぇさ。怪我しねぇよう気を付けな」
「決まりじゃな。……スゥーッ、フゥーッ……」
 ワンブレスののち、戦場から全ての音が遠ざかる。三郎右衛門の弟子たちの声も。鐘楼で控えた弟子の一人は、水に沈められたような息苦しさに喉を鳴らす。ゴング役を担う彼にすら伝わる戦の圧!
「それではこれより、演武の最終戦を開始する! 構えぇい!」
 三郎右衛門が地に沈み、爆風じみたプレッシャーが猟兵たちに吹きつけた! 美影は早鐘を打つ胸元を押さえ、柳眉を逆立てて耐える!
「ただ構えただけで何てプレッシャー……でも、ビビってたらバトルゲーマーの名折れよ!」
「美影!」
 隣に立つとものと目配せをし、互いに頷き合う。美影は意を決してハンドルをひねり、高らかにエンジン音をぶちあげた!
「さあ、バトルスタート!」
「ハイヤーッ!」
 鐘楼に立つ弟子が鐘にサイドキックを叩き込む!
 ゴウオオオオオオオオオン! 開戦を告げる合図と共に、摩那が先陣を切って飛び出した! 踏み込みからのルーンブレードフルスイング!
「はッ!」
 BOOOOOM! 桜色の衝撃波が津波じみて放たれ、三郎右衛門に襲いかかった。三郎右衛門は右拳を上げ、神速ジャブ一発でこれを吹き消す! 反動でV字に砂埃が噴き散らされた先、摩那は逆手に持ち直した剣を足元に突き刺した。刃に刻まれたルーンが輝く!
「天に漂いし精霊よ、物に宿りて我に従え! 姿さずけよ!」
 桜色の電光が刃を伝って地面に流れ込み、刃が刺さった場所から円状に漆黒の影が広がった。影は数秒とせず三郎右衛門の足元も抜け、戦場を黒く染め上げる! 直後、三郎右衛門を中心として黒い大竜巻が天を突く!
 無数の黒蝶で形成された竜巻の半ばを突き破ったのはともの! 赤い光剣を大上段に振り上げ、全身に真紅の炎めいたオーラをまとう!
「王者の咆哮、今大地を揺るがす! 荒ぶる炎よ、灼け付く軌跡を刻み込め!」
 オーラが爆発的に膨れ上がり、背中部分が火竜の翼状に広がった。とものは剣を頭上に掲げたまま三郎右衛門へ急降下!
「ちぇすとぉ―――っ!」
 BOOOOOM! フォースセイバーの刀身も伸長・及び膨張! とものの背丈と同程度になったそれが叩きつけられる寸前、三郎右衛門は半歩下がって身をかがめ、ジャンプパンチで迎え撃つ!  SMAAASH! 拳とオーラが一瞬拮抗した刹那、三郎右衛門は拳を引いて回し蹴りをとものの腹に叩き込んだ!
「うぎっ……!」
「ふぬァッ!」
 蹴り足を振り抜きとものを蹴飛ばす。弾丸めいて吹っ飛ぶとものの直線状、黒蝶の竜巻から飛び出した美影が指二本で挟んだカードを突き出した!
「トラップ発動! プロキオン・ネット!」
 水平飛翔するとものの軌道上に紫光のトライアングルが出現し、彼女の背中を受け止め後方へと伸びた。美影は飛来するとものを右ハンドルを切って回避し、二枚のカードを扇型デバイスに打ちつける! 三郎右衛門は左半身を下げて構え、右手で手招き!
「お主は徹頭徹尾、武術で来ないと見えるな娘!」
「生憎と武術は素人ですからね……けど、弱いとは言ってないわ! 銀河拳士、時空師匠!」
 美影の左右に開いた銀河色の円形ゲートが二体の人影を射出! 金属破砕に似た音を放って出現したのは、古代ローマ人めいた服装の機械拳士たち。そのうち屈強な青年を模した個体が先んじて三郎右衛門に突進していく! ボクシングじみた構えでジグザグ疾走!
「攻撃よ、銀河拳士ッ!」
『ハァーッ!』
 青年じみた機械拳士は引き絞った左拳を撃ち出した! 顔面狙いのそれを三郎右衛門は首をわずかに傾けてかわし、水平左チョップ反撃! 拳士の胸板を粉砕し、残った胴体を前蹴りで蹴飛ばす。爆発四散する青年型を飛び越え、長いあごひげを伸ばした老人型が跳躍から回転蹴り下ろしを放った。
『シャアッ!』
「ぬんッ!」
 三郎右衛門は片腕を立て三次元キックを防御! その手で裏拳を撃って膝を破壊し、老人型の腹部分の衣装を引っつかみ回転。頭上に軽く放って両手を地に着き、片足で真上にバックキックを繰り出す! ロケットめいて飛んだ老人型は背中を砕かれ爆発四散した。
 上体を跳ね起こした三郎右衛門は身構え直す!
「さて、次は……むゥッ!?」
 直後、三郎右衛門の両目が光った。美影が野球のピッチャーの如く振るった右手で彼を指差す!
「行っけぇ! とものちゃんっ!」
 SPRINNNNNG! 光のトライアングルからスリングショットじみて弾き出されたとものが、フォースセイバー回転斬りで打ちかかる! 三郎右衛門は剣も持ち手にショートアッパー入れて軌道を逸らし、体を傾けて斬撃回避! 刹那、反った三郎右衛門の脇腹にアニカの跳び蹴りが命中!
「ぐぬおッ……!」
 体をC字に捻じ曲げる三郎右衛門! アニカは両膝を折り曲げ、全霊を込めて彼を蹴り出す! SMAAAAASH! 三郎右衛門を吹き飛ばしたアニカは小ぶりな白翼を羽ばたかせ滞空。両手を口元に当て、仲間を呼んだ。
「カイム……さんっ……!」
 ZZZZZT! 着地し制動をかける三郎右衛門のすぐ真後ろで雷鳴! 三郎右衛門が振り向きざまに繰り出した裏拳を屈み回避したカイムは、地面に這わせる形で構えた刃に紫電を励起。渾身の斬り上げ!
「そら、よッ!」
「ぬうッ!」
 三郎右衛門がとっさにクロスガードし、CABOOOOOOM! 砲撃めいた紫電放射が防御態勢ごと老体を吹き飛ばす!
 両の爪先で地面を引っかきブレーキをかけた三郎右衛門は、両腕を腰だめに構えて走り出した。対角線上には電光の尾を引いて突っ込んで来るカイム! 彼我の距離は20メートル……15……10……5、4、3! 三郎右衛門がダッシュストレートを放った!
「せアアアアッ!」
 高速の拳がカイムの顔面をすり抜けた。残像を引き、彼の真後ろを取ったカイムは即座に首狩り斬撃を仕掛けるも、三郎右衛門はお辞儀&バックキック! 空ぶる剣の下を潜った左足が群青シャツの腹部を打ち抜く!
「ごはッ! ……ったく、重いぜ……!」
 血の垂れた口の端を吊り上げたカイムは外した剣を振り上げ、振り向いてくる三郎右衛門の脳天を割りに行く! 老人はこれを片手でつかみとめ、カイムの鳩尾を蹴り上げるも透過。大剣を手放し後退したカイムは、両手から放った紫電を大剣の柄に注ぎ込む! 即座に剣を投げ上げる三郎右衛門!
「二段構えか!」
「ご明察だ! 爆ぜろ、マルコシアス!」
 黒い頭身がスミレ色の閃光を放ち、ZGRAAAAAAK! 爆発した雷の球体が三郎右衛門をカイムごと飲み込んだ! すぐに爆ぜ散る雷球から跳び下がり出る三郎右衛門に、滞空する剣をつかんだカイムは刺突を打ちに行く!
 三郎右衛門は右足を半月を描くように動かし、左掌底でカイムの刀身を受け流す。切っ先は道着の脇腹を紙一重が外して流れた。決定的な隙をさらすカイム!
「しまッ……!」
「ぜェイッ!」
 大振りの右鉄拳がカイムの顔面に直撃! 大きくのけ反った彼の腹に左掌底を打ち下ろし、下がった顎に右アッパー! 跳躍回転から首筋に回し蹴りを叩き込んだ! 軋む首骨!
「がァッ、あッ……!」
「ふゥゥゥゥゥゥンッ!」
 SMASH! カイムが真横に蹴り飛ばされた。上空、黒蝶竜巻の内側に沿って滑空する箒に座ったメンカルは、指先で箒の先端をなぞる。指紋の代わりに刻まれる蒼い魔法文字の列!
「……空裂く翼よ、駆けよ、奔れ。汝は旋光、汝は疾風。魔女が望むは蒼穹愛する天の騎士」
 文字列からあふれ出した無数の魔法文字が螺旋を描いて箒全体を包み込む。急加速した箒はメンカルを乗せたまま螺旋状に竜巻空間を駆け下り、吹き飛ばされたカイムをさらって急上昇!
 三郎右衛門の追撃拳を残して空へ逃れたメンカルは、手に下げたカイムを傍らに呼び出した扉型魔法陣に投げ込んで下方を見下ろした。そちらでは、左右から突っかかってくるとものとアニカを跳躍ダブルキックで迎撃する三郎右衛門の姿!
「……参ったな。正面からの戦いは苦手なんだよね……どうしたものか……」
 呟きながら、銀杖を持った手を真横に伸ばす。鎖で杖に吊られた三つの宝石のうち一つが、鈴の音めいたサウンドと共に蒼く光った。
「……賢き眼よ、出でよ、視よ。汝は検分、汝は助力。魔女が望むは黄昏飛び立つ森の知者」
 FLASH! 眩い蒼光がメンカルを包んですぐに消滅。次に現れたメンカルの銀杖の先、三日月をかたどったヘッドに機械のフクロウが止まっていた。オウル・オブ・ミネルヴァ! 機械レンズの両目を不可思議に輝かせるフクロウ型ガジェットを、メンカルは杖のスイングに乗せて放つ!
「分析開始……情報共有……」
 羽ばたき斜めに急降下したフクロウは、その両目で三郎右衛門を捕捉! 緑のグリッド格子模様で形作られた世界の中、三郎右衛門の全身をロックオンカーソルが精査し分析していく。
 三郎右衛門が一瞬フクロウを見やるが、軽く跳ぶ。彼の真下を彗星めいたビームが撃ち抜いて爆破! 光線が射撃された方に目を向ければ、そこには西部ガンマンめいた人型機械と並走する美影! 美影は左手をバイクハンドルから離し、三郎右衛門にかざした。
「ギャラクシー・ガンマン! 追加攻撃!」
「フンッ!」
 ガンマンは左手のリボルバーからビームを五連発する。三郎右衛門は虚空を草履で蹴って僅かに高度を上げてこれを回避し、両足を真後ろに向けた。空気を蹴り飛ばしロケットめいて飛翔! その勢いのままガンマンの顔面を膝蹴りで砕く!
「グオッ……!」
「ふん! 胡乱なカラクリ人形めが!」
 のけ反り爆散するガンマンを捨て置き、三郎右衛門は逆回し蹴りを繰り出した! 草履の踵が美影の額に激突し、彼女をバイクから引っぺがして後方へと吹き飛ばす!
「っぐ!」
 額を割られた美影は背中から地面に落下してバウンドし、ゴロゴロと後転して片膝立ちになって制動をかける。顔を上げた彼女の遥か前では、三郎右衛門のストンプがバイクを圧壊せしめていた! 一本足で立って構えた三郎右衛門は挑発的に微笑。
「どうした。車輪が無くばただの小娘か?」
「っ……」
 美影はふらつきながらも立ち上がり、右手に五枚のカードを広げる。金の瞳に闘志が燃えた!
「舐めないでよね!」
「良い良い。それでこそよ!」
 KBAM! 三郎右衛門の姿が掻き消え、美影は反射的に空を見上げる! 天高くジャンプした三郎右衛門は高速前転しながら隕石じみてかかと落とし! 高速で迫りくる攻撃に、美影は五枚のうち一枚を引き抜いて掲げて見せた。
「ギャラクシー・ガーディアンを特殊召喚!」
 カードの前に大きな円形のゲートが開き、両腕にタワーシールドを装備した重装騎士が這い出した。騎士は二つの盾を振り上げ、銀河色のバリアを展開! 光の壁に三郎右衛門のかかとがぶつかる。CRAAASH!
 蒼の電光をまき散らしながら三郎右衛門の足とバリアがせめぎ合う! 盾を掲げる重装騎士の足が後ろに滑った瞬間、三郎右衛門が姿を消した。重装騎士の首が真上に吹き飛ぶと同時、美影は背後を振り返る!
(後ろ!? しまった……!)
 美影の視界に、回り込みをかけ横薙ぎチョップを振り切った三郎右衛門が映り込む。彼はそのまま美影の心臓めがけてチョップ突き! 美影が刺突を繰り出す指先の前に、ぎりぎりでカードを差し入れた。チョップを受け止めたカードが閃光を放つ!
「次の一手か! 見せてみよ!」
「言われなくたって! ギャラクシー・ジャマー・バタフライ!」
 カードの閃光が一層強まり、撃ち出されたビームが三郎右衛門をノックバック! 即座に連続バク転を打って距離を取る三郎右衛門を取り囲むのは、銀河色の蝶の群れ。ドーム状に渦巻く鱗粉に閉ざされた彼を前に美影は素早く立ち上がった。
「そこよ摩那ちゃんっ!」
 鱗粉の真上に穴が空く。そこへ飛び込むのは剣を振り上げた摩那! アンダーリム眼鏡のレンズに翡翠色の文字列を浮かべて斬り下ろしを仕掛ける!
 三郎右衛門はショートアッパー迎撃! 刃を弾かれた摩那は身をひねって追撃の拳を回避し着地。ワン・インチ距離に踏み込む三郎右衛門の拳を紙一重で避け、素早く後退しながら連続突きを見舞う! 三郎右衛門は桜色に輝く剣を片手でいなしていく。
「ぬんッ!」
 喉笛狙いのパンチを右に回り込み回避! 脇腹を狙う摩那の斬撃が肘撃ち下ろし弾き下ろされ、彼女の首を回し蹴りが狙った。屈んでかわし、バックジャンプする摩那。足を広げて身を沈めた三郎右衛門のジャンプパンチを、割り込んだ銀河色の蝶たちが壁になって受けきった。
「ふっ。小癪な蝶よの!」
 逆の手でチョップを振り下ろし蝶の群れを真っ二つにする三郎右衛門。開けた視界の先にいたのは、機械仕掛けのフクロウだ! フクロウの前面に蒼い扉めいた魔法陣が出現! メンカルはそちらに向けた杖を鍵めいてひねる。
「……開錠」
 FLASH! 眩い光が放たれ、魔法陣から飛び出した人影が三郎右衛門を蹴り飛ばす! 空中後転を決めて着地した彼の前に、紫電をまとうカイムが降り立った。
「よう爺さん。休憩から戻って来たぜ」
「尻尾を巻いて逃げ帰ったかと思ったぞ、小僧!」
 太鼓の如き爆音を響かせ三郎右衛門が特攻をかけた。即座にカイムが剣を振り下ろして落雷を起こす! CABOOOOM! 爆発する紫の稲妻が、剣を盾にしたカイムの後ろ姿を吐き出した。雷を突っ切り疾駆してくる三郎右衛門に、カイムは踊るような回転ステップから横薙ぎに雷の衝撃波!
 三郎右衛門が跳躍前転で雷を回避した瞬間、後方上空から飛来した緋色の鎖が彼の腹をグルグル巻きに締め上げた。マグロ一本釣りめいて引き戻す! しなる鎖の上を走るのは莉亜だ! 紫の瞳が真紅に変色し、半開きになった唇を隔てて鋭く伸びた犬歯が覗く。その体が黒い瘴気に包まれた!
「頂きます」
 小さく呟き、莉亜は鎖に沿って走る煙と化した! 緋色の鎖に従って螺旋を描き、引き上げられた三郎右衛門へ突撃! 三郎右衛門はそちらを見返ると、空中で身をひねって前後反転、左足を振りかぶる!
「ぬうんッ!」
 回し蹴りが突っ込んで来る煙の先に、SMASH! 瘴気が吹き飛び、中からクロスガードで蹴りを止めた莉亜をさらす。そのまま蹴り足が振り抜かれ、打ち返された莉亜が連続バク宙しながら虚空に泳ぐ鎖に着地。背負った白銀の狙撃銃を引き抜き、BLAMN!
「ぬるいわ、豆鉄砲が!」
 心臓狙いの弾丸を、三郎右衛門は縛られたまま蹴り上げる。真上に飛翔した弾丸は空で輝き、蒼の大型魔法陣を展開! メンカルが銀月の杖を掲げた。
「遅発連動術式クロノス起動……停滞せしの雫よ、集え、降れ。汝は氷雨、汝は凍刃。魔女が望むは数多の牙なる蒼の剣」
 魔法陣が発光し、無数の蒼い光弾を雨の如く降り注がせた! 三郎右衛門は胴体ごと束ねられた両腕に力を籠め、筋肉を隆起させて緋色の鎖を破壊する。そのままサマーソルトキックの要領で前後反転し、両足を広げて竹トンボめいた回転キックを繰り出した!
 次々弾かれる蒼の光弾。地面に突き刺さり、光を失ったそれの正体は氷の剣だ。無数の氷の剣が大地に突き刺さって覆い尽くしていく。氷剣降り注ぐ領域へとものが走る!
「おおおおおおっ! キングの! でゅえるをっ!」
 軽く跳んで着地に合わせて屈み込み、走り幅跳びめいて大ジャンプ! 最後の氷剣を蹴り返した三郎右衛門へと飛翔する!
「目に焼き付けるが良いですのっ!」
「ふむッ!」
 真っ向から跳んでくるとものに向き直った三郎右衛門は顔面狙いのキックを放った。とものは光剣斬り下ろしをぶつけてガード! 次々飛んでくる蹴りを斬撃でいなし、腹の突きを身を反らしてかわされる。三郎右衛門はとものの腕を挟みんだ両足を振り上げ上空へ投げた!
「うおうっ! なんのこれしきっ!」
 空中で身をひねって頭を下に向けたとものは、空を蹴り飛ばして落下! 一足先に血に足を着けていた三郎右衛門の顔を引き裂きに行く! 拳を握り、腰を落として身構える三郎右衛門!
「でやああああああッ!」
「はァァァァァッ!」
 ダブル対空パンチがとものを迎撃! とものが横薙ぎの斬撃をパンチに叩きつけた瞬間、三郎右衛門の腕から手ごたえが消えた。目を見開く彼の真横を飛び込み前転で受け身を取って転がるともの。片膝立ちになったその手にはひと振りの刀が握られている。
「やりおるわ、小娘……!」
 三郎右衛門がうめいた直後、放射状に走った衝撃波が周囲に突き立つ氷剣をまとめて粉砕! 同時に三郎右衛門の片腕が斬り飛ばされた! だが三郎右衛門は振り向きざまのキックをとものに打ち込む! とものは前後反転して刀を掲げるも刃を砕かれ顔面強打! 三郎右衛門は残った腕でボディブロー!
「ふァッ!」
「ごふっ!?」
 鳩尾を抉られたとものが血を吐き、そのまま中空に殴り飛ばされた! 翼を広げて飛行したアニカがとものを受け止め、フロントスープレックスめいてメンカルへパス。そのまま三郎右衛門へ飛び蹴りを仕掛け、ドリルじみて回転しながら急降下! さらに三郎右衛門の背を摩那が狙う!
「刃に宿れ、炎の精霊!」
「えーいっ……!」
 爆炎を噴き出す刃と勢い乗せたキックが迫る! 三郎右衛門は深く身を沈め、360度回転キックで摩那をけん制。足を止めた彼女が掲げるルーンソードの腹に飛び乗って跳躍、アニカの急降下飛び蹴りに膝蹴りを当て相殺! 強制停止に目を剥くアニカ!
「ふぇっ……!?」
 三郎右衛門は残った腕でアニカの蹴り足をつかみ、ひねり砕きながら振り回す! そのまま投げ出されたアニカは摩那の頭上を越え、三郎右衛門に剣の切っ先を突きつけたカイムへ飛んだ! カイムは舌打ちしながら魔剣を地面に突き刺すと、両手でアニカを受け止める。
「摩那!」
「ええ……!」
 摩那は剣をひと回しして下段に構え、滞空する三郎右衛門を斬り上げから爆炎放出で攻撃! 三郎右衛門は大上段からの踵落とし! 風圧で炎を左右に裂いた。刹那、Y字に分かれた爆炎から緋色の鎖が飛び出し、三郎右衛門を再度ぐるぐる巻きにして拘束! 締め上げられた彼の背後で瘴気が破裂し、ヴァンパイア化した莉亜が姿を現した!
「今度こそ、っと」
 莉亜は三郎右衛門の肩口に食らいつく! 流れ出る血を一息に吸い上げる彼の下あごを、三郎右衛門の後ろ脚蹴り上げが跳ね上げた。三郎右衛門はさらに前後反転キックを莉亜の首筋に叩き込む!
「ぐふっ……」
 SMASH! 蹴り飛ばされた莉亜が地面に叩きつけられた。事も無げに起き上がった彼は腕で口元をぬぐう。次の瞬間、彼に黒い影が覆い被さる! 見上げると、そこには歯車を背負った銀河色の竜! ドラゴンの後ろに控えた美影が虚空の三郎右衛門を指差した。
「ギャラクシー・クロノスドラゴン! 攻撃ッ!」
 巨竜は大きく息を吸い、彗星じみたビームを放った! CADOOOOOOM! 光線は三郎右衛門を飲み込み、黒蝶の大竜巻を貫通! 蒼炎のリングまでも貫いて演武する弟子の頭上を突き抜けた。
「…………!?」
 声も無く凍りついた弟子が、青い顔で空いた風穴に視線を向ける。黒蝶は寄り集まって竜巻の穴を収縮させ、完全に塞いだ。その弟子は、仲間たちの一心不乱な演武と掛け声を聞きながら生唾を飲み込む。黒蝶の竜巻の傍らで、暗黒の波動が空へと真っ直ぐ伸びていた。
 一方、再生した黒蝶竜巻の内部は、凄まじい速度で銀のラインが空中を駆け巡っていた! そこかしこで響き渡る金属音。鋼同士がぶつかる剣戟の音! 空を駆ける莉亜は両目を見開き、瞳をルビーじみて輝かせながら赤く染まった刃を振るった。
 CRASH! 飛び来る銀閃と鎌が衝突! 一瞬の閃光を残して消えた銀のラインは、莉亜の対角線上、カードを掲げる美影とすれ違いその腹を裂く! 噴き出す鮮血!
「がふっ!?」
「美影! しっかりしますのっ!」
 とものが叫びながら美影を飛び越え、回転斬撃! 赤い光芒の円がレーザーめいて飛来する銀の光を跳ね返す。真横に走った銀光の行く手を遮った摩那は眼鏡に浮かぶ文字列を頼りに、燃えるルーンソードを振り上げる!
「はッ!」
 BOOOOOOOM! 斬り下ろしから放たれる爆炎の波動。炎の壁めいたそれが横一直線に斬り裂かれ、そのまま摩那のチャイナドレスを袈裟掛けに引き裂いた!
 胴から血をほとばしらせながら膝を突く摩那。眼鏡のレンズに浮かんだエラーメッセージを歯がゆく見つめ、上空のメンカルに呼びかける。
「っく……! メンカルさん!」
「……んー、わかってる、けど……」
 メンカルが眉根を寄せてタブレット端末を操作する。直後、彼女を乗せて空を飛んでいた箒が急停止! 瞬時に身を反らしたメンカルの鼻先を銀に輝く刃がかすめた。メンカルは眉根を寄せつつ飛び去る銀閃を見つめる。
「……速いな、お爺さん。……若返ってるけど。カイム、追いつける……?」
 小さく呟いた瞬間、竜巻に沿って真横に飛ぶ銀閃の真下から、紫色の電光が激突! 斜め上に上昇した二条の光は二重螺旋状に絡み合い、激突と剣戟音を繰り返して弾かれ合う。互いに急カーブして竜巻の中央で激突する双光!
 紫電を弾けさせたカイムは黒剣を押し込みながら不敵に微笑む。
「ようやく本気出してくれたってところか、爺さん。……いや、爺さんって呼ぶのは失礼か? いくつになったんだ?」
「はッ!」
 銀光を引いた人影が鼻で笑う。それは若かりし三郎右衛門! 薙刀の刃でカイムの黒剣を押し返す腕は二本。全盛期への回帰に伴い再生したのだ! 三郎右衛門は静観な顔立ちに狂喜を浮かべる。
「歳なぞ対して変わらぬわ。肉の時が戻っただけゆえにな!」
「そうかい。なら……その肉ステーキにすりゃあ俺たちの勝ちか!」
「簡単に言うな、小僧めが!」
 薙刀が黒剣を弾き、神速剣戟がカイムを襲う! カイムは電光石火の斬撃でこれらを打ち払い、肩を斬り落としにかかった。上段蹴りが剣の腹を弾いて反らし、代わりに薙刀がカイムの鳩尾を貫く!
「ぐぁッ……!」
 カイムは呻きながらも薙刀の柄を片手でつかみ、紫電を流す! 薙刀を伝う稲妻が三郎右衛門の手に触れる寸前、彼は刃を引き抜き超高速のかかと落としをカイムの脳天に叩き込んだ! SMASH! 垂直落下し地面と激突したカイムは即座に真横へ転がり振り来る銀閃を回避!
「クソッ、莉亜!」
 カイムが転がりながら起き上がった瞬間、地面から薙刀を引き抜いた三郎右衛門が脇の下を穿つように真後ろへ刺突! サイドステップで避けた莉亜は、その首に真紅の大鎌を振るう。屈み回避した三郎右衛門の回転キックを肘を差し込んで防いだ莉亜が喉笛に噛みかかった。瞬時に下がる三郎右衛門。つんのめった莉亜は数歩フラフラと進み出て言った。
「良いね、楽しくなってきたよ。おじいさんはどう?」
 刹那、莉亜がくの字に折れ曲がった。彼の腹に飛び蹴りを打った三郎右衛門は獰猛に笑う。
「快なり」
 SMAAASH! 砲弾めいて吹き飛ぶ莉亜が軌道上で爆散! 黒い霧となって三郎右衛門を全方位から包み込んで視界を奪った次の瞬間、三郎右衛門の足元から二本の腕が飛び出した。足首をつかまれ、地面に引きずり込まれる彼と入れ替わりに地中からアニカが登場! ゴルフボールめいて露出した三郎右衛門の顔面へ蹴りを見舞う!
「せいっ……!」
「甘いわ小娘!」
 三郎右衛門は地面から引き出した手で爪先をつかむ。彼は銀の光と化し垂直飛翔! 右半身を斬られ、宙を舞うアニカめがけて薙刀を逆手に握って急降下刺突を繰り出した。割り込みをかけた銀河色の巨竜が片腕で薙刀の刃をガード! 肉を貫かれながらも吠えるドラゴンへ、美影は一枚のカードをかざした。
「トラップ発動、時空固定! ギャラクシー・クロノスドラゴンとおじいさんを……停止させるわ!」
 直後、咆哮していたドラゴンが灰色に染まり、動きを止めた。竜から刃を引きかけた三郎右衛門も同様に硬直! ドラゴンスレイヤーの石像めいて停止した三郎右衛門の背中に、とものが赤光の剣で斬りかかる!
「とりゃああああっ!」
 SLASH! ドラゴンごと三郎右衛門とすれ違ったとものが着地。刹那、巨竜と三郎右衛門の色が戻った。道着の背中がバックリと裂け噴水めいて血が噴き出す!
「ぬおおおおおおおおッ! やってくれるッ……!」
 叫ぶ竜の腕から薙刀を引き抜き、飛び離れる三郎右衛門! それを見咎めるフクロウの目を通し、メンカルはタブレット端末を見つめる目を僅かに見開く!
「来た……! 詠唱省略、ライトニング・チェイン……!」
 液晶画面に素早く紋様を入力した瞬間、三郎右衛門の上下左右四方向に現れた魔法陣が金色の鎖を吐き出した! 両腕と両足、首に絡みついた雷の鎖は即座に放電! ZZZZZZZZZT!
「ぐおおおおおッ!」
「術式再起動……ステイシス・レイン……!」
 タブレットへ横一直線に指を振るメンカル。空中でハリツケとなった三郎右衛門の周囲に無数の魔法陣が展開され、彼を球状に取り囲みつつ氷剣を全方位掃射! 三郎右衛門は両腕の上腕二頭筋を膨らませて腕を引き、鎖を力尽くで切断! 凄まじい速度で薙刀を振り回して襲い来る氷剣を次々と叩き落として行く!
(滾る!)
 連続する破砕音を聞きながら、三郎右衛門は口角を吊り上げた。
(生前出会うこと無き強者、見ること無き技、新たな境地! 死してなお弟子もろとも現世にすがりつき、あまつさえ亡霊共を使って祭りを開いた。一時しか保てぬ炎の戦舞台を以ってだ! 全てはこの時のために!)
「おおおおおおおおおおおおッ!」
 薙刀の演武が加速し、両足と首の鎖をも断ち切る。メンカルの手に青白い火花が弾け、肌を焦がした。術式を破られたフィードバックだ! 表情を少し険しくしながら、メンカルはタブレットに声をかける。
「摩那……!」
「了解しました。今ですね?」
 砕け散る氷剣がダイヤモンドダストとなって降り注ぐ地表に、ルーンブレードを携えた摩那が駆けこむ。刃に並ぶルーン文字はオーシャンブルーの光を放ち、剣に渦潮をまとわりつかせた。摩那は真上、空高くで氷剣を砕き続ける三郎右衛門を見上げ、斬り上げを放った!
「揺蕩う水の精霊よ!」
 SPLAAAAAASH! 吹き上げた水柱が摩那を飲み込み、ダイヤモンドダストを受けて表面を凍らせながら真っ直ぐ伸びた。それは魔法陣をすり抜け氷剣飛び交う領域を貫通! 天突く氷の柱と化した。氷像に閉ざされた三郎右衛門を、銀河色の巨竜がにらむ。その肩に着地するともの!
「美影! 行きますの!」
「援護するわ! 思いっきりやっちゃって!」
 美影の声を合図に、とものはドラゴンから跳躍! 頭上に振り上げた赤いレーザーソードの刀身を伸ばし、氷柱ごと叩き斬る構え。だが、氷漬けになった三郎右衛門は、その両目を動かした。内側から放射状の亀裂が走り、氷柱が半ばから爆散! そこから矢の如く放たれた銀の光がとものを、銀河色の巨竜を貫いて後方へ飛ぶ! 三郎右衛門!
「ハハハハハハ……!」
「ARRRRRRRRRRGH!」
 ドラゴンが風穴の空いた胸から極光を放って爆発四散! 右肩を丸く抉り取られたとものが空中で体勢を崩して落下する。三郎右衛門は着地し、哄笑!
「ハハハハハハハ!」
 胸を反らして高笑いする彼の後方で、爆発四散したドラゴンの炎が墜落するとものへと流れ込む。抉り取られた肩に歯車状のパーツがあてがわれ、腕先までを銀河色のガントレットが包む。光剣の柄はドラゴンを模した形状に。赤く輝く刃は銀河の色彩に! 足から着陸したとものは振り向きざまに右手を大きく振りかぶった! 右手を突き上げた美影の指先からカードが溶け消える。
「『魂を刻む劔』を発動! とものちゃん! 受け取って、ギャラクシー・クロノスドラゴンの力!」
「任せろ! キングのでゅえるは、エンターテイメントでなければならない!」
 CADOOOOOOM! 銀河の光がとものの剣からほとばしる! とものはそのまま剣を真横に振り抜いた。ビッグバンじみた大爆轟が津波と化して三郎右衛門に襲いかかった!
「ハハハハハハハハハハハハハハハ! 地獄じゃ!」
 三郎右衛門は笑いながら振り返りざまの横薙ぎ一閃! ビッグバンが真横に引き裂かれ、再度大爆轟を巻き起こして消滅した。晴れた視界の先でとものが胸を真横に裂かれて大きくのけ反る! それでもとものは括目したまま声を張る!
「フォア・ザ・チーム、ですのッ!」
 掲げられたとものの右腕から銀河色の光が剥がれ、真上に跳んだカイムへと流れ込む! とものと同じく、右腕を銀河色のガントレットで覆われたカイムは片頬を吊り上げた。
「たまにゃあドラゴンの力ってのも悪くはねえか……!」
 大上段に掲げた剣から銀河と紫の轟雷を吹き上げ、全力で斬り下ろす! 墜落してくる二色の稲妻を見上げ、三郎右衛門はなおも笑う!
「音に聞く修羅の道が! 我らが征くべき地獄がここに在る! 笑え! そして!」
 神速を超えた薙刀の突きが衝撃波を放ち、雷に丸い風穴を開けた。全力の一撃を放ち、硬直を強いられる三郎右衛門の背後に回ったアニカが彼を羽交い絞めにし、垂直に飛び上がった! 二者は頂点で上下反転。錐揉み回転しながら地面へと墜落していく! アラバマ落としだ!
「これ、でッ……!」
「ハハハハハハハハ! ハーハハハハハハハハハハハハハ!」
 三郎右衛門の高笑いを引き連れ、二人は地面へと激突! CRAAAAASH! 土埃が噴き上がり、螺旋状の亀裂が地面を走る。噴煙から弾き出されたのはアニカ。煙の中心で拳を地面に突き下ろし、アラバマの衝撃を耐えた三郎右衛門を緋色の鎖が締め上げる! 見えざる手に鎖を引かせた莉亜は、大鎌の縦に振り下ろして黒蝶の竜巻を裂いた。
 開いた蝶の群れの奥から、そびえ立つ暗黒のオーラ! 大剣を両手で持ち上げたセシリアは、両目から血を流しながら大剣を振り下ろした! SLAAAAAASH! 空を裂いた剣が黒蝶の竜巻を両断! 黒い血を吐いたセシリアは顔を上げ、壁じみて大地から噴き出す暗黒に体を断たれた三郎右衛門を見やった。
「地獄は終わりだ……還るべき場所へ、還れ……ッ!」
「ふはははははははははははは! そうするか! 良い葬式だったぞ、小僧共ぉぉぉぉぉぉぉぉッ!」
 凶悦の叫びを最後に、三郎右衛門は爆発四散した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月21日


挿絵イラスト