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夜を彷徨う者達へ

#サクラミラージュ #逢魔が辻

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#サクラミラージュ
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#逢魔が辻


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●夜
 鳴らない鐘。始まらない学級活動。来る事のない休み時間。
 その学校に登校した者は、誰一人として卒業する事は出来ない。
 始まりも終わりも存在しない、骸達の彷徨う牢獄。

 外からやって来た愚か者達の屍を踏み躙りながら、
 窓際の桜吹雪が眩しいと、破れたカーテンを閉める。
 ――何時から俺は、『生』が憎たらしいと感じるようになったのだろうか。

●かのんの情報
 新しい世界の情報が入ったおかげか、普段よりも活気に溢れている様にも見えるグリモアベース。そんな中、双葉・かのん(電子世界からの案内人・f21112)もグリモア猟兵として張り切って説明を行っている一人である。
「お疲れ様です、皆様。サクラミラージュもまた、素敵な場所ですね。早速街並みの探索に……と言いたい所なのですが、私、双葉・かのんから一件、お仕事を依頼させて頂きます」
 にっこりと微笑み挨拶を終えた所で、依頼内容の説明に移る。
「この世界には『逢魔が辻』という場所が様々な場所に存在している事が分かりました。『逢魔が辻』とは、影朧の大量発生により、帝都桜學府でも対処できずに放棄してしまった場所の総称です。どのような場所かと言うと、存在する場所によってそれぞれ異なるそうです」
 今回彼女が案内する場所は、とある廃れた學校だそうだ。
「数十年前に廃れてしまった學校があります。肝試しの場所として有名なスポットらしいのですが、そこが影朧の巣となってしまっている事はあまり知られておらず……。皆様のお力で、影朧達だけでも何とか駆除して頂けないでしょうか?」
 しかし、ただ學校に行った所で影朧は現れない。というのも、『逢魔が辻』と呼ぶ場所には何やら条件があるようだ。
「昼間に行っても『逢魔が辻』は存在していません。つまり、夜にならないと『逢魔が辻』という場所に変貌しないのです。……という事ですので、灯りは一切ありません。周囲や足元にはご注意下さい」
 廃れた場所という事もあり、床や壁が崩れていたり壊れた用具なども存在する。戦闘中は注意するといいだろう。
「學校にいる影朧は三種類存在しているようです。入ってすぐの広い玄関にヒヨリミの集団、教室の並ぶ廊下には女郎蜘蛛の集団、奥の階段から上った三階の校長室にボスが待っているようです」
 残念ながらこの『逢魔が辻』を支配するボスの正体は分からなかった。どのような相手が待っていても構わないよう、準備をしておく必要もある。
「ヒヨリミと女郎蜘蛛につきましては、どうやら理性に乏しいようなので、残念ながら転生させる事は難しいようです。どうか眠らせてあげて下さい。校長室のボスについては……正体が不明でしたので私には分かりませんでした……」
 申し訳ありません、とかのんは悲しげに俯いた。
「……ええと、そうですね。私からの説明は以上となります。準備が完了した方から、順番に現場へお送りさせて頂きます」
 それではどうぞ、宜しくお願い致します。そうかのんは丁寧に頭を下げ、猟兵達への説明を終えた。


ののん
 お世話になります、ののんです。

 ●状況
 サクラミラージュが舞台となります。
 オール戦闘ですので、色々とお試し頂ければと思います。

 ●プレイングについて
 キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
 お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
 同時に投稿して頂けると大変助かります。

 申し訳ありませんがユーベルコードは基本的に【選択したもののみ】描写致します。

 以上、皆様のご参加お待ちしております。
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第1章 集団戦 『ヒヨリミ』

POW   :    ヒヨリミ台風
予め【二本の刀を掲げて空中でくるくると回転する】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    ヒヨリミボディ
自身の肉体を【刃のように触れるものを切り裂く布】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    無縁火
レベル×1個の【血のように赤い色】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。

イラスト:RAW

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 誰かが作ったてるてる坊主。
 明日は良い天気になりますようにと、たくさんたくさん飾られた。

 それはもう過去の話。
 毎日降り注ぐ桜の花びらが止みますようにと、刃を操り炎で燃やす。
 四肢を斬り、四肢を燃やし、明日の天気の為に吊ってやる。
 今を生きる者も、桜の使者も、誰一人として帰さない。

 ふわりふわり。子供が作った亡霊は、今も學校で彷徨っている。
依神・零奈
留まった過去は淀み魔へと変貌する……か
かつては多くの人間に願われた存在ね
……こんなゆるキャラみたいなのに親近感が沸くなんてね
ま、私の役目は現世の守護……祓わせて貰うよ

数が多いのは少し厄介かな
玄関なら下駄箱ぐらいある筈、それらを盾にしつつ移動して
【フェイント】や【だまし討ち】で接近し一体一体、刀で切り伏せていくよ
相手のUCに対しては攻撃の時以外相手との距離を取る事で
回避しやすくしておこうかな

敵が複数一か所に集まったらUCを発動
抜刀から放つ【破魔】の力を纏った斬撃で
複数同時攻撃を狙う



 正門から中へ足を踏み入れたその瞬間から、ただならぬ空気の重みを感じる。塀の外からは見えなかったが、今なら『良からぬ亡霊』が校内を徘徊する姿がはっきりと見える。
「留まった過去は淀み魔へと変貌する……か」
 依神・零奈(忘れ去られた信仰・f16925)は玄関に浮かぶ複数の火の玉を見つめ、目を伏せる。
 てるてる坊主――彼らもかつて、多くの人間に未来を願われた存在だったのだろう。……願われては、忘れ去られていく存在だったのだろう。
「……こんなゆるキャラみたいなのに親近感が沸くなんてね」
 外見はどうあれ、何時か何処かで、自分も誤る可能性があったのだろうか……と、想像したのも何度目か。
「ま、私の役目は現世の守護……祓わせて貰うよ」
 同情はする。するからと言って見逃す訳ではない。
「私から出来る事は、これ以上の罪を重ねないようにしてあげる事……だと思うから」

 玄関口の錆びた扉ががらりと開く。その音の響いた方向へ一斉に顔を向けるヒヨリミ達。一見可愛らしい顔も、その体の色が血の染みた色だと理解出来た瞬間、恐ろしく感じられる。
「(子供が作ったものだから、それに見合う姿になったのかな)」
 外見はそうであろうとも動きまで見合うものになった訳ではなさそうだ。ひらりひらりと靡いていた布が零奈のいる方へ急に伸び出し殴り掛かるかのように襲い掛かった。
 咄嗟に背を低くし下駄箱の影へ転がり込む零奈。扉の窓ガラスは大きな音を立てて割れた。
 どうやら布が刃物の如く硬化しているようだ。攻撃が外れた後もあらゆる方向から追尾して零奈を狙って来る。
「流石に数も多いし、長期戦は少し厄介かも。……だとするなら」
 下駄箱を盾にしつつ、布による攻撃を刀で切り伏せながら避けていく。ヒヨリミ達の本体や、下駄箱の列と配置を確認すると。
「……今!」
 下駄箱に向けて体当たりを仕掛けた零奈。古くなった下駄箱は容易に押し倒す事が出来、下駄箱はその影に居たヒヨリミ達を襲った。
 攻撃を回避しつつヒヨリミ達を誘導していた零奈。しかしこれが彼女の攻撃かというと、それは決して違う。
「……偽りの御霊を断ち切りその死を謳え」
 倒れた下駄箱からヒヨリミ達が回避した先は、逃げ場のない角。砂埃の舞う奥からひっそりと聞こえた零奈の詠唱と共に輝くのは浄化の光。
「……零の太刀、『白鷺は塵土の穢れを禁ぜず』」
 放たれた無数の破魔の刃が、ヒヨリミ達の体を斬り裂く。布に包まれていたその中身は……空っぽだったという。
 浮遊していた刀はからりと地面に落ち、ヒヨリミ達の体は燃えるように跡形もなく消えていった。そして次のヒヨリミ達を浄化せんと高速で切り伏せる零奈の姿も、見える事はなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
逢魔が辻がそのままにされれば、いずれこの世界も滅んでしまうだろう
必ず食い止める……

アド連大歓迎

UC発動
人に願われ歌われる存在が、今は日照りみたいにぴかぴか光ってら
ダメだよ……おうちに帰んなきゃ、ここは居場所じゃないんだ

オーラ防御常時発動
あの炎に焼かれたら一溜りもないね

第六感で動きを見切り早業飛行で回避行動、合間を縫うように移動するよ
手持ちの光の鎖を念動力で操り、ロープワークの要領で一体ずつ締め上げる
技を受ける時も光の鎖で早業武器受けからのカウンター決めてやる

もし囲まれたら自身を中心とした全力魔法の衝撃波で一旦吹っ飛ばすよ
さて、まだまだこれから!


フィーナ・シェフィールド
アドリブ連携歓迎です♪
【WIZ】

赤いてるてる坊主ですか…もともとは無垢な願いを込めて作られたものが、こうして人々を襲うなんて、なんだか切ないですね。
がんばって、祓います!

「きっと晴れるから~♪」
スピーカードローン〈ツウィリングス・モーント〉を展開、マイク〈イーリス〉を右手に持って『歌唱』で『破魔』の力を込めた【ショウ・マスト・ゴー・オン】を発動、晴天を願う歌を聴かせて動きを止めながら、光り輝くオーラ〈モーントシャイン〉で優しく包み込んで浄化していきます。

攻撃は三角形のマルチドローンプレート〈シュッツエンゲル〉で防ぎながら、歌を続けますね。

どうか、安らかな眠りを…。
倒した後は子守歌で慰めますね。



 逢魔が辻をそのままにしておいても良い事などないだろう。もしかするといずれこの世界が滅んでしまうかもしれない。
 そうでないとしても、この異様な空気を漂わせる場所に気付いてしまっては放っておく訳にはいかない。
「必ず食い止める……」
 鈴木・志乃(ブラック・f12101)はそう呟き、學校内に足を踏み入れる。
「赤いてるてる坊主ですか……もともとは無垢な願いを込めて作られたものが、こうして人々を襲うなんて、なんだか切ないですね」
 ぼう、と光る火の玉が玄関口を徘徊している。フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は悲しそうにそれを見つめると、いえ、と首を横に振った。
「彼らの為にも、わたし……頑張って、祓います!」

 ヒヨリミ達は二人の足音にすぐさま気付くと、二振りの刀を自身の体の周りにぐるりと回転させ始めた。空飛ぶチェーンソーは志乃とフィーナに向かって襲い掛かる。
「てるてる坊主が、そのような事をしてはいけません!」
 何処からともなく飛んできたフィーナのマルチドローンプレートが二人の前を塞ぎ、ヒヨリミの攻撃を受け止める。
「ありがとうございます!」
 志乃は早口で礼を告げると、次はこちらの番だと言わんばかりに前へ踊り出でる。
「駆け抜けるよ、邪魔しないでね!」
 聖なる光を纏い、高速でヒヨリミ達の間を駆け巡る志乃。その背に光の線を引きながら残像を残すと、一体のヒヨリミの体が突然、す、と空中高くに浮かび上がった。ヒヨリミ自身の行動とは思えない動きは、まるで『誰かに首を吊られたか』のようだ。
「てるてる坊主らしく静かにしていて下さいな」
 次々と光の鎖によって締め上げられていくヒヨリミ達。高速で動く志乃を囲もうと企むヒヨリミ達だが、それもどうも動きが鈍く見える。
 それもそのはず、今、この空間には聖なる歌声が響いている。
「きっと晴れるから~♪」
 それはフィーナの優しく柔らかい歌声。嘗ての姿を思い出して欲しいと願い歌う晴天の歌。その歌は確実にヒヨリミ達の感情に影響を与えている。
 首を吊るヒヨリミにそっと腕を伸ばすと、光り輝く月光のオーラが優しくその体を包み込み、悪しき心を浄化させる。
「どうか、安らかな眠りを……全てが終わったら、子守歌で慰めてあげますから」
 フィーナは歌う。志乃は駆ける。彷徨う魂達の為に。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リコリス・シュピーゲル
【高嶺の花】

この手の話題は尽きないものですのね
救えぬ魂を摘み取るのも私たちの役目
女三人ですし、姦しく参りましょうか?

殲滅に関しては私にお任せくださいませ
【死を謳う氷雨】による氷の魔弾を『属性攻撃、2回攻撃、範囲攻撃』で手数と威力を増やしたうえで放ち、影朧を一掃致しますわ
炎相手ではやや分が悪いように感じますが…氷が溶けた水も利用するだけです(属性攻撃)
水は炎を消すものでしょう?
そのための手数ですわ
か弱い花として、全て利用しますわよ?

カバーがあるといえど、油断は禁物ですわね
相手の動きから目は離しませんわ
万一こちらに攻撃が及ぶことがあれば『見切り』で回避致しましょう


一之瀬・百華
【高嶺の華】
桜舞う、美しき世界…ですが、その様な世でも争いは絶えぬ様で
憐れな荒ぶる魂達に今一度、輪廻の輪へ戻る手助けをするのも私達の宿命かと
お二方、参りますよ…存分に祓って差し上げましょう

前衛はアリシア様、殲滅はリコリス様にお任せ致しますわ
私達は、お二方の撃ち洩らしや防ぎ洩らしを【なぎ払う】と致しましょう
私の【早業】でしたら、リコリス様まで届きそうな攻撃は【武器受け】が間に合う事でしょう…兄様、お願い致します
防げさえすれば、此方のもの…自らの炎で焼き尽くされなさい。
【2回攻撃】で二倍の物量、【鎧無視攻撃】で防御も無意味…【地形の利用】で風通しも良く
さぁ、遠慮なさらずに…悉く、浄化されなさいな?


アリシア・マクリントック
【高嶺の華】
サクラミラージュ風の服装に身を包み、白馬のシュンバーに乗って颯爽と登場(戦うときは降りる)

この世界は西洋とニホンの伝統が不思議に入り混じっていますよね。この地であれば私の剣もより輝きを増すはず……!

前衛は私にお任せを。お二人には傷一つつけさせません!
相手も刀を扱うようですが、この鳳刀『暁』は私の魂を込めた一刀……いかなる闇をも切り裂いてみせます。敵の数は多いですが……全て私の剣舞の虜にしてさしあげましょう!
百華さんとリコリスさんという頼りになる後衛がいますから、私は後ろに攻撃を通さぬようにやや防御寄りに。マリアにも敵の足止めをお願いしましょう。
みなさん、がんばりましょうね!



 正門や校庭には桜が咲き誇っている。秋も終わりに近いというのに、温かな色合いは褪せる事なく満開を保っていた。
 肌寒い風を感じながら一之瀬・百華(焔桜繚乱・f01482)は夜桜を見上げた。桜の舞う世界とは、何とも美しき世界ではあるが。
「……その様な世でも争いは絶えぬ様で」
 自分達猟兵がこの世界に辿り着いたという事は、そういう事でもあった。この様な場所でも、戦う事から逃れる事は出来ないらしい。
「これが學校……道中で見た他の學校とは、まるで雰囲気が違うのですわね」
 妙に桜が似合いませんわ、とリコリス・シュピーゲル(月華の誓い・f01271)は校舎の中に浮かぶ奇怪な灯を見つめる。
「モンスターと呼ぶべきか、妖怪と呼ぶべきか……。この世界は西洋とニホンの伝統が不思議に入り混じっていますよね」
 花柄の着物と袴に身を包んだアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)が、道中で乗っていた白馬から降りながら二人に話し掛ける。
「蘇った者達ですから、幽霊、かもしれませんわね?」
「幽霊……では尚の事、鎮魂の儀を行わねば」
 百華の言葉に、えぇ、と二人のお嬢様は優雅に頷く。

 玄関口では真っ赤なてるてる坊主がふよりふよりと浮かんでいた。二振りの刀をぶら下げ、侵入者を斬らんと徘徊している。
「可愛らしいような、物騒なような……」
 本当に色々と混ざってるのですね、とアリシアはてるてる坊主、ヒヨリミを眺めた。
「靴箱……でしたでしょうか。それもあって玄関はさほど広くはないですね。シュンバー、すぐに終わりますから待ってて下さい」
 白馬を待機させ、アリシアは自身の武器を構える。
「では、前衛は私にお任せを。皆さん、頑張りましょうね!」
「救えぬ魂を摘み取るのも私たちの役目。女三人ですし、姦しく参りましょうか?」
「はい。お二方、参りますよ……存分に祓って差し上げましょう」
 アリシアは勇ましく闊歩し、リコリスは雨雲を呼び出し、百華は兄と共に踊る。

 ヒヨリミの集団は彼女達の方へ一斉に顔を向けると、自分達の周囲に無数の火の玉を生み出し始める。ぼうぼうと燃える火の玉は暗闇を照らしながら、流れ星のように彼女達へと襲い掛かった。
「数なら数で勝負、と致しましょうか」
 リコリスが天井を覆った雨雲から氷の雨を呼ぶ。雨粒は真っ直ぐと火の玉を狙い、じゅうじゅうと蒸発をさせながら火の玉の軌道を変えていく。
「この鳳刀『暁』は私の魂を込めた一刀……いかなる闇をも切り裂いてみせます。その灯よりも熱く眩しく、その刀よりも美しく斬って差し上げましょう!」
 鳳刀『暁』と凰剣『ルシファー』を両手に握り締めたアリシアが氷と火の嵐の中へと突撃する。くるりと舞うよう足取りも軽やかに。彼女は火の玉を一つ一つ、果実のように素早く両断していく。
 ヒヨリミ達への道を切り開いても、彼女の舞いは終わらない。
「さぁ、マリアも!」
 親友の狼は彼女の声に反応し、嬉しそうに駆け寄る。そして彼女に負けじとヒヨリミの首元に噛み付き、大きく振り回す。
 彼女達に抵抗をするヒヨリミ達だが、何処か様子がおかしい。動きが鈍いようにも見える。
 それもそのはず、ヒヨリミ達の体には、異変が起こり始めていたのだから。

「兄様、お願い致します」
 百華は兄である和人形と共に、リコリスを守る様に彼女の前へ立ち塞がっていた。
 力の弱まった火の玉と火の粉を薙刀で薙ぎ払い、和人形がヒヨリミのユーベルコードを模倣し撃ち返す。
 勿論、和人形の繰り出す火の玉もリコリスの雨雲の下へと潜り込み、敵の火の玉と衝突を繰り返す。
 そう、熱の増した空間に氷の雨は溶けてしまったのだ。やはてぽたりぽたりと水が滴り、本物の雨が降り出す。
「まぁ、傘なんて用意してなかったですわ」
 冷えた空気から熱い空気に変わり、そして次は――湿った空気が生まれる。
 リコリスは水溜まりと水蒸気を操り、ヒヨリミの体を湿らせていった。火の玉も消化され、その数も次第に減っていく。
「死を謳うのが氷雨だけだとお思いで? 水は炎を消すものでしょう?」
 濡れてしまったせいか、それとも血と炎に心を寄せてしまったせいか。ヒヨリミ達は雨を止ませる事など出来なかった。
「本来の力を失ってしまいましたか。何とも皮肉なものですね」
 では兄様、参りましょう。百華は和人形と共にヒヨリミ達の元へゆっくりと歩み寄る。
「自らの炎に包まれなさい。その濡れた体が乾いた時、穢れた魂も綺麗に浄化されている事でしょう」
 百華の言葉が終わった後、和人形は片腕をヒヨリミ達の方へそっと向けた。直後、ヒヨリミ達の体はぼうぼうと激しく燃え出した。

 姿形が消えゆくまで赤く燃える戦場の中を、アリシアは未だ舞い続けている。
 その舞いはまるで――輪廻転生を繰り返す鳳凰のようだったという。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『女郎蜘蛛』

POW   :    操リ人形ノ孤独
見えない【ほどに細い蜘蛛の糸】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。
SPD   :    毒蜘蛛ノ群レ
レベル×1体の、【腹部】に1と刻印された戦闘用【小蜘蛛の群れ】を召喚する。合体させると数字が合計され強くなる。
WIZ   :    女郎蜘蛛ノ巣
戦場全体に、【じわじわと体を蝕む毒を帯びた蜘蛛の糸】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。

イラスト:龍烏こう

👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 嗚呼、今日は参観日。可愛いあの子の晴れ姿を見る日。
 何処の教室へ向かおうかしら。私の子供は何処かしら。
 ……あらあら。こんな所にいたのね。私の可愛い子供達。
 こんな所に居ちゃ駄目よ。早く教室へ向かいなさい。
 しっかり授業に参加して、元気な姿を私に見せて頂戴。

 それはもう過去の話。
 出会った者に死の束縛を与えては、我が子は可愛いものだと永遠に愛で続ける。
 だから、視界から消える事など決して許さない。
 今を生きる者も、桜の使者も、誰一人として帰さない。

 かさりかさり。子供を探す母親は、今も學校で彷徨っている。
リコリス・シュピーゲル
【高嶺の華】
今度は子離れ出来ていない母がお相手ですの?
構いすぎしつこすぎはかえって嫌われてしまいますのに
手酷く振って差し上げましょうか?

強固な迷路とは…どこまでもしつこいご婦人ね
1回目の迷路はアリシアさんの誘導に従い出口を目指し移動
突破優先、『残像』を残すことで敵を困惑させましょう
もっとも通行の邪魔になる個体には容赦致しませんが
2回目以降は【ミレナリオ・リフレクション】で迷路作成そのものを阻止しますわ
襲ってくる蜘蛛はフラムによる炎のブレスと鞭攻撃で対応致しましょう(『属性攻撃、範囲攻撃、2回攻撃』)


アリシア・マクリントック
【高嶺の華】
次の相手は……蜘蛛ですか。糸に絡め取られると厄介ですね。それならば狙いを定められないほどの速さで動けばよいのです。……変身!
このフェンリルアーマーのスピードについてこられますか?

たとえ破壊できぬ糸の迷宮であっても出入口があるならばそこから空気も入ってきます。迷宮が毒を帯びているからこそ、その中で無害な空気は映えるもの。五感を駆使して外の空気を感じる方へ。マリアも頼りになるでしょう。

攻撃をかいくぐって接近したらあとは勢いで押し切るのみ!
子蜘蛛はお二人にお任せして私は本体を狙います。もしも捕らえられてしまったら……変身解除をして糸から逃れて反撃です!


一之瀬・百華
【高嶺の華】
哀れな姿に御座いますね……既にいない我が子を探す母親というのは
とはいえ、私……母というものを知らぬ身ですので、良くは分からないのですけれど
見ていて可哀想になってきました……せめて、苦しまぬ様……一瞬で終わらせて差し上げましょう

迷路の方は、お二方についていけば問題無さそうですので
私はその先を見据えておきましょうか
数で攻めようとしても無駄で御座いますよ……私の『眼』からは逃れる事は不可能で御座います
眼帯を外すと同時、【早業】で視界を巡らせ全てを『視』てしまえば……それで終いです
【二回攻撃】【鎧無視攻撃】【薙ぎ払い】……この【破魔】の獄炎にて、冥府で愛し子と再会なさい
……どうか、安らかに



 その姿は非常に痛々しかった。
 それはまだ誰も母親という立場に立った事などないからであろうか? 恐らく、これはそんな理由だけで生まれた感情ではないだろう。
「今度は子離れ出来ていない母がお相手ですの?」
 リコリス・シュピーゲル(月華の誓い・f01271)はふらふらと彷徨う女郎蜘蛛を目だけで追った。その視線は理解が出来ないとでも言いたげな冷ややかなものだった。
「哀れな姿に御座いますね……既にいない我が子を探す母親というのは」
 とはいえ兄妹というものは分かるが、母というものは分からない。それはヤドリガミ故か。一之瀬・百華(焔桜繚乱・f01482)も複雑そうに呟いた。
「……いいえ、あれは母ではありません」
 二人にそう声を掛けたアリシア・マクリントック(旅するお嬢様・f01607)は目を伏せ、首を横に振る。
「あれは、蜘蛛です」
 はっきりとそう告げてみせた。あれはもう、母とは呼べぬ存在であると。
 もしかすると、母と語るだけで実際は違う存在の可能性もあるだろう。彼女の言葉に、リコリスと百華は深く考える事をやめた。
「見ていて可哀想になってきました……せめて、苦しまぬ様……一瞬で終わらせて差し上げましょう」
 自分達には今、それしか術がないのだ。

 女郎蜘蛛は三人の猟兵を見るなり、言葉を発する事はなかったが愛おしそうに駆け寄ると、周囲に糸を撒き散らした。
 逃がさないと言わんばかりに三人を囲んだ糸は迷宮を作り出した。場所が廊下だったお陰か道は狭く、そして迷宮の壁を生成した細い糸は粘着いており、少しずつ体を蝕む毒を含んでいるようだった。
「まぁ……どこまでもしつこいご婦人ね」
 返って嫌われてしまいますのに、とリコリスは不機嫌になる。
「あまり長居は出来ません。攻撃も届きませんし、早く脱出しなければですね」
「でしたら、私とマリアにお任せを!」
 糸が絡み付かないよう和人形を抱く百華に、アリシアと狼マリアが自ら前へ出た。体勢を低くし、すん、と鼻を動かし始める。
「たとえ破壊できぬ糸の迷宮であっても出入口があるならばそこから空気も入ってきます。迷宮が毒を帯びているからこそ、その中で無害な空気は映えるものです」
「確かこのユーベルコード、出口は一つ……でしたかしら? ならば風は頼りになるかもしれませんわね」
 それに嗅覚がに敏感な子もいますし、とリコリスは狼に目を向ける。
「ここはお二人に任せましたわ。行きましょう、百華さん」
 百華も頷き、二人はアリシアと狼マリアに導かれるがまま、口元と鼻を手で覆いながら迷宮を進んでいった。
 アリシアと狼マリアの攻略は早かった。するりするりと道を選び、行き止まりに辿り着く事なく迷宮の出口を発見する事が出来た。迷宮の道も狭かったが、迷宮そのものも広く複雑ではなかったようだ。
「随分とあっさりでしたわね」
「いえ、アリシア様とマリア様のお陰でしょう。再び迷宮を作られ、皆一緒でなければ……少々厄介かもしれません」
「でしたら、その心配はありませんわ」
 迷宮から外にふわりと飛び出したリコリスは、目に入った女郎蜘蛛に向けて腕を伸ばす。女郎蜘蛛は再び迷宮の続きを作ろうと糸を紡ぎ出すのだが。
「同じ手は通用しません事よ?」
 指をぱちんと鳴らすと同時に、リコリスの手元に小さな魔法陣が描かれ、そこから無数もの糸が発射された。これは女郎蜘蛛と同じ、毒を含んだ蜘蛛の糸だ。
 糸と糸は鏡合わせのように全く同じ軌道を描くと、一本一本がぶつかり合い、はらりと消えていった。
 迷宮作りを封じられた女郎蜘蛛。それが出来ないのならば他の方法を試すまでだと、次の攻撃を繰り出す。
 木製の床からわらわらと現れ始めた無数の小さな黒い点。それは紛れもなく小さな蜘蛛の群れであった。
「数で攻めようとしても無駄で御座いますよ。こちらは私にお任せ下さい」
「では、私は本体を!」
 アリシアが戦場に躍り出る中、百華は左目を覆う眼帯を静かに捲った。痛々しくひび割れた傷がそこにはあった。移植された和人形『白』の眼はぐるりと小さな蜘蛛の群れを『視る』。
「私達の『眼』からは、決して逃れられません―――お覚悟を」
 眼を見開いた直後、小さな蜘蛛の群れは突如発火し出し、廊下は一瞬のうちに獄炎の海と化した。燃え盛る炎の中、リコリスに付き添う翼竜フラムも協力し炎のブレスを吐き出す。
 塵と化していく蜘蛛を踏み付け、炎の中を駆けるアリシアは女郎蜘蛛へ向かって真っ直ぐと両手を構える。
「嵐はだれにも止められません!」
 彼女のフェンリルクローが女郎蜘蛛へ襲い掛かる。嵐の如き高速のラッシュは女郎蜘蛛に防御の姿勢など決して与えない。最後の一撃が女郎蜘蛛の大きな体を突き飛ばすと、その体は小さな爆発音を響かせながら獄炎に包まれていった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

大周・照(サポート)
『ーーそこまでだ。ここには猟兵(ぼくたち)がいる』

一人称は“僕”。その他口調等はステシ参照のこと
キャラ崩れない範囲でのアドリブ・連携OK

基本お人好しで温厚かつ前向き。
その性格から、虐げられているもの、
不幸になりそうな者が居る場合は割と積極的に肩入れする。
が、正邪善悪の判断はキッチリつけるタイプ

戦闘では、数多の世界からの祈りの歌(【祈り】【歌唱】)を
力に変えるデバイス・事象鍵を用い、
【武器改造】で[無尽錠]を各武装に変形させて行動する
※UC【一矢点射】【断象逸閃】は必ず適した武装変換からの
行使描写をお願いします

戦闘が絡まないパートでも、事象鍵の力と自らの手足で
事件解決へ努力を止めることはない


フィーナ・シェフィールド
アドリブ絡み歓迎です♪
【WIZ】

母親の思いから生まれた女郎蜘蛛…その切ない想い、終わらせましょう。
桜の元へ、昇華させます!

【光り輝く純白の翼】を発動、オーラ<モーントシャイン>を纏って宙に舞い上がると、2種類のドローン、<シュッツエンゲル>と<ツウィリングス・モーント>を展開。
糸をシュッツエンゲルで防ぎつつ、マイク<イーリス>を握って歌い始めます。

「子供はいつか成長し、旅立つもの。本当に子供のことを思うなら、束縛しないで、見守っていてほしい」

モーントシャインの輝きと共に歌声を女郎蜘蛛に届け、その魂を浄化します!

「きっと帰ってきますよ。いつになっても子供の帰る場所は、母親のところなんですから…」



 もう何処にも行かせないわ。我が子達にそう投げ掛けるかのよう、女郎蜘蛛の攻撃は止まる事を知らない。
 フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)はその姿に酷く心を痛めながらも、引き下がる事無くその場に踏み止まった。
「母親の思いから生まれた女郎蜘蛛……その切ない想い、わたしが終わらせましょう」
 永遠に彷徨わせては、誰も幸せにはならない。決して放っていいものではない。
「あぁそうだ、ここには猟兵がいる」
 フィーナの隣で青年、大周・照(夜明けの灯・f00980)は微笑んだ。
 誰が彼女らを鎮めるのか。そう、自分達猟兵しかいないのだと。
 照は無尽錠と事象鍵を接続させ、武器を生み出す。無尽錠は大鎌へと変わると、彼の手の中へと包まれていく。
「コード:バトルサイズ。……うん、悪くないね」
 あの糸を斬り裂くには丁度良い。大鎌を一振りすると、照はフィーナへそっと語り掛けた。
「今回はフィーナが主役だ。思い切り歌(ねがい)を響かせると良いよ」
「はい! 桜の元へ……昇華させます!」
 元気にフィーナは答えると、白い翼を大きく広げ、月光の如き柔らかな光を身に纏う。二種類のドローン達と共に空中に体を浮かばせると。
「月の光を宿して、光り輝け、白き翼よ!」
 高らかな詠唱と共に、彼女の姿は輝きを増す。活発なミニスカートの衣装は豪華なドレスのステージ衣装へと形を変えた。これで歌う準備は整った。
 闇に塗れた空間から突然生まれた輝きに対し、眩しそうに顔を背ける女郎蜘蛛達。羽ばたいて何処かへ行ってしまわないよう、細い糸をフィーナに向かって放ち始める。
「シュッツエンゲル!」
 掛け声と共に数十枚のマルチドローンプレートは彼女を囲み、聖なるオーラバリアを展開した。弾かれた糸は瓦礫や窓ガラスに貼り付き、攻撃は不発に終わったかと思われたが。
「まだ終わっていない。……だけど大丈夫。邪魔はさせないから」
 腰を低く落とした照が目を細める。がちゃり、ガラスの破片や瓦礫が荒々しく震え、浮かび、猟兵達に向かって襲い掛かって来た。
 予想通りだ、と照は大鎌を強く握り直すと、力を籠めて大鎌を大きく振るった。すらりとした細長い刃が全てのものを切り刻み、嵐のように吹き飛ばす。
 吹き飛ばされた瓦礫に襲われ女郎蜘蛛達はたじろぐ。しかしその腕は未だ猟兵達の方へと伸ばそうとしていた。逃さない、逃さないと。
 しかしその耳に、心に、誰かの囁きが聴こえてくる。

『――子供はいつか成長し、旅立つもの。本当に子供のことを思うなら、束縛しないで、見守っていてほしい』

 生前、彼女らがどのような母親で、どのような子供と過ごしたのかは分からない。だけど、これだけは伝えられる。
「……いつになっても子供の帰る場所は、母親のところなんですから……」
 旅立ちとは、永遠の別れではないのだから。

 フィーナの歌を聴いた女郎蜘蛛達の動きが鈍くなった。未だ伸ばす腕は、束縛を求むものか、それとも、救いを求めるものか。
「久遠の彼方より来たれ光(いのり)。それは理不尽(かなしみ)を断つ刃、あらゆる事象を拓く希望。逸閃――斬り裂け、歌(ねがい)よ!」
 照の振るう刃が輝く。全ての生ある者達の祈りが、闇に縛られた者を救わんとする光となり集結したものだ。
 祈りの刃は苦しむ母親達を横一線へ薙ぎ払う。彼女達は光に包まれ、輝く塵となって静かに消えてゆくのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

エリエ・ルーミエンス(サポート)
こんにちは、元人工知能のバーチャルキャラクター、エリエです♪
私を創った主サマを愛してます!
ここ、大事です!

■冒険
探索系なら、相棒のレノア(鴉型ガジェット)と協力して突破を目指します
情報収集系なら……地道に聞き込みですかね
ま、私は主サマにデザインされた可憐な美少女ですから、すぐに誰かが教えてくれるでしょう

■戦闘
後ろから弓矢でちくちくします
毒が効きそうな相手だったら毒矢も積極的に使います

■日常
物にもよりますが、基本的にはノリノリで楽しみます
誰かをからかうのも好きですよ、フフ

お色気描写はNGです
私には既に心に決めた主サマが居ますから
それ以外ならアドリブも他の方との絡みも大歓迎です!



「人違いも甚だしいです」
 女郎蜘蛛が放った小蜘蛛の群れに、エリエ・ルーミエンス(誰かのためのヒロイン・f17991)はクロスボウを向け矢を撃ち放つ。
 可憐な姿に落ち着いた口調ではあるが、声色からは激しい怒りを感じられる。
「誰かを探しているようですが、私には主サマが居ますので!」
 誰彼構わず我が子と呼び抱く者と、大人しく共に過ごす義理など全くない。
 ――それとも、主サマが創った唯一無二の存在である私の事を、『他の人と区別がつかない』とでも言うの?
「……汚らわしいです」
 もはや哀れだとも思わない。エリエにとってそれは侮辱にも等しいものだ。
「えぇ、えぇ。最初よりも数は減っていますし、さっさと先へ向かいましょう」
 猟兵達の活躍によりぞろりぞろりと集まっていた女郎蜘蛛達も、次々と姿を消していた。残りは視界に入っている分だけだろう。それならばもう十分だ。
「毒をお持ちのようなので……ならば更に重い毒を差し上げましょうか」
 床に向けて放った矢で小蜘蛛の群れを威嚇し遠ざけると、静かに女郎蜘蛛を睨み付けた。

 『10秒』。それは短くも長すぎる時間。特に戦場においては命懸けとも言える値。
 一人であれば間違いなく負けているだろう。しかし今は――いや、これからも。前衛として突き進む者、共に並び追撃する者、傷を癒し援護する者。そういった仲間がここに集っているのだ。
 だから『10秒』という長い時間を容易く迎える事が、彼女には出来た。

「……いいえ、私は主サマの最高傑作ですから」
 仲間の事もそうではあるけれど、それはそれとして。
 『私』だからこそ、これくらい出来て当然なのです。

 毒の塗られた鋭い矢が数本放たれた。戦う猟兵達の間を掻い潜り、小蜘蛛をすり抜け、親玉である女郎蜘蛛の額と胸に突き刺さる。
 紅き果実を狙ったが如く深く刺さった矢は、やがてその毒で獲物の魂を蝕み、その活動を停止させた。
 小蜘蛛が霧のように姿を消し、女郎蜘蛛が動かなるまでに『10秒』は掛からなかったという。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 ボス戦 『獄卒将校』

POW   :    獄卒刀斬り
【愛用の軍刀】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
SPD   :    影朧軍刀術
自身に【影朧の妖気】をまとい、高速移動と【影朧エンジンを装着した軍刀からの衝撃波】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    同志諸君!
【かつて志を同じくした帝都軍人】の霊を召喚する。これは【軍刀】や【軍用拳銃】で攻撃する能力を持つ。

イラスト:藤本キシノ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 来てしまったか。
 そう彼は嘆いた。

 かつて彼は、この国の為に戦った。
 戦の日々に明け暮れ、明け暮れ、そして何時しか散った。
 『青春』というものを知る事なく。

 校長室の古ぼけた椅子に座る青年は猟兵達の姿を見るなり、深い溜め息を一つ吐いてから静かに立ち上がる。
「……時を動かさないで貰おう。全てが終わってしまう」
 多くない言葉数を口にし、青年は刀を鞘から引き抜いた。
フィーナ・シェフィールド
アドリブ絡み歓迎です
【WIZ】

その境遇に、哀しさは感じますけれど。
全てを終わらせて…そして、新しい命を生きてください!

「シュッツエンゲル!ツウィリングス・モーント!」
ドローンを展開、イーリスをしっかり握って戦闘態勢を整えます。
「この歌に、想いを乗せて…貴方に届けます!」

翼を広げて空に舞い上がったら、【歌声に舞う彼岸の桜】を発動。
身にまとったオーラ・モーントシャインを無数の彼岸桜の花びらに変えて、破魔の歌声と共に将校と軍人の霊に向けて放ちます。

敵の攻撃に対してはシュッツエンゲルを盾にして受け流します。

戦闘終了後は、出逢った影朧の皆さんが無事に幻朧桜の元で転生できるよう、祈りの歌を捧げますね。



 影朧と化してしまった青年の姿に、フィーナ・シェフィールド(天上の演奏家・f22932)は視線を落とした。
 敵対するとはいえ境遇故の哀しさをどことなく感じる。だから、同情をしないとは言わない。
 『倒す』ではない。『救って』みせる。
「全てを終わらせて……そして、新しい命を生きてください!」
 これは、この學校に響かせる最後の歌。

 青年は片腕を上げた。その合図を元に、青年の前に横一列、帝都軍人の制服を着た複数の若者達が現れた。
 彼らは両手で軍用拳銃をしっかりと握り、標的に狙いを定める。全ての銃口はフィーナの胸へ向いていた。
「撃て」
 軍人達を召喚してから一息時間を置く事無く、ましてや相手に一言言葉を掛ける事もなく、青年はすぐさま腕を振り下ろした。一斉に引かれる引き金。狂いなく一点を狙い発射される銃弾。
「シュッツエンゲル!」
 青年の静かな声と重なるようにフィーナも叫び、複数のドローンを動かしバリアを展開させた。バリアは弾丸を受け止めた。

 が、しかし、複数の攻撃を同じ場所へ同時に受け止めていたバリアに異変が起きていた。ぴし、とひびが入り、バリアの内へ弾丸の侵入を許していたのだ。
 侵入した弾丸の行き付く先はフィーナの胸。ぐらりと彼女の身体が後ろへ――

「ツウィリングス・モーント!」
 ――傾く事などなかった。空間中に響かせたのは悲鳴ではなく、力強い声。そして彼女の胸から噴き出たのは真っ赤な血ではなく、優しい色に染まった桜の花びら。
「私は普通のシンガーではありません……猟兵です!」
 2対のスピーカードローンが飛び回り、フィーナを挟むように配置につくと、彼女の全身が月光の如く輝き始める。彼女を守っていた月光の如き輝き――モーントシャインは彼岸桜の花びらへと変化していく。
 翼を広げ、宙へと舞い上がるフィーナ。愛用のマイクを強く握り締め、真っ直ぐと哀しき青年を見つめた。
「この歌に、想いを乗せて……貴方に届けます!」

 心に語り掛けるような歌声に合わせて無数の花びらが踊る。破魔の宿った桜吹雪は軍人達を包み込むと、その幻想の姿を一瞬にして消し去っていった。
 青年は眉をひそめながら桜吹雪を軍刀で振り払うが、自分を囲む花びら全てを切り捨てる事など出来るはずがなく。徐々に鈍っていく己の体を恨みながら、彼はフィーナの歌声を聴かざるを得なかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリエ・ルーミエンス
今の私、あんまり機嫌良くないので、優しくはできませんよ?

10秒――さて、今回も稼げますかね
レノア、時間稼ぎをお願いしますよ
(時間稼ぎ1)
あの軍刀に付いてるエンジンが力の源の一つっぽいですから、あれに纏わりつけば嫌がるはずです
10秒経てば、あとは私が頭でもぶち抜いてやりますよ
(スナイパー1、援護射撃8)

ところで、この逢魔が辻の校長気取りがお前なわけですけど
こんなくだらない化け物だらけの空間、それが、それこそがお前の望んだものだったんですか?
……ま、私にとっては何だっていいですけどね

※他PCとの絡み&アドリブ歓迎



 カッ、と靴が床を強く踏み付ける音が空間中に響いた。エリエ・ルーミエンス(誰かのためのヒロイン・f17991)はムスッとした顔つきで影朧である青年を眺めた。
「今の私、あんまり機嫌良くないので……優しくはできませんよ?」
 クロスボウを握る少女に、青年は黙って小さく首を横に振った。来客の多さに困った素振りを見せたのか、それとも強がっているだけだと見下しているのか。恐らくは後者なのだろう。
「この逢魔が辻の校長気取りがお前なわけですけど……こんなくだらない化け物だらけの空間、それが……それこそがお前の望んだものだったんですか?」
 少なくとも自分が知っている『学校』と呼ぶ場所とはかけ離れ過ぎている。学び舎を求めたとするならば、何故呪われた空間を創ってしまったのだろうか。
 青年は表情を一つも変える事無く、エリエの問いに答えを返す。
「くだらない、とは失礼だ。ここには様々な思い出が蔓延っている」
「思い出、ですって?」
 我が子を探す母親や、忘れ去られたてるてる坊主が? まさかそれを『思い出』と呼んだの?
 だとしたら、あぁ、なんて救いようのない。
「……。……ま、私にとっては何だっていいですけどね」
 口から吐き出したかった言葉を飲んだ。もういいやと、彼女の中にあったほんの僅かな興味が完全に吹き飛んでしまったのだから。

「レノア、お願いします」
 エリエの低くなった声を合図に、背後から飛び出してきたのは鴉型ガジェット。
「たったの10秒で良いのです。あの軍刀に纏わりついて、時間を稼いでくれますか?」
 全身に妖気を纏った青年に向かって、レノアはジェット機の如く一直線に飛び立った。軍刀に装着された影朧エンジンを唸らせながら高速で駆ける青年と比べれば速さは相手の方が上だが、レノアはそれに負けず劣らず飛び回り、青年の目前で翼を広げたり影朧エンジンを爪で引っ掻き回し妨害した。
 青年の放った衝撃波は誰に当たる事もなく空を切りだけに終わると、レノアはカラカラと愉快に鳴いた(或いは鳴いたように聞こえただけかもしれない)。その瞬間、レノアの体に軍刀の柄が乱暴に叩き込まれた。カラカラと鳴きながら軽い体が何処かへと飛ばされていく。
 さて、邪魔は消えた、と青年がエリエの居た場所へ顔を向けたのだが。

 ひゅん、と空を貫く音が耳に入ったと思えば、ずん、と鈍く重い音と感触が青年に襲い掛かった。
 これは間違いなく、矢だ。矢が左のこめかみを貫いている。

「13秒。余裕すぎて欠伸が出ちゃいそうでしたよ」
 ボロボロになった来客用ソファの影からクロスボウを向けた少女が、青年を見下していた。

成功 🔵​🔵​🔴​

七詩野・兵衛(サポート)
『アルダワ魔法学園応援団『轟嵐会』団長 七詩野兵衛である!』
アドリブや他の猟兵との連携と絡みは歓迎だ。

多少の怪我は厭わず積極的に行動する。
よほどの事情でやらなければいけない時以外は、
他の猟兵に迷惑をかける行為や、公序良俗に反する行動はしないぞ。

戦闘はバーバリアンの力強さと、
スカイダンサーの身のこなしを駆使して応援するのだ。
皆には応援で普段以上の力を出してもらいたい。

応援する相手がいなければ仕方ない、自分で戦闘するか。
武器は「拳」「団旗」「鎖付き両手斧」のどれかを使い分けるのだ。
斧は鎖で振り回して、槍扱いの団旗はトドメに投擲だ。
後はユーベルコードもおまかせだ。よろしくおねがいしよう!


ノエル・スカーレット(サポート)
アドリブ&他の猟兵さんとの連携大歓迎。
性的描写NG

世界を飛び回るチビッ子ダンピールです。
吸血衝動はほぼなく太陽へっちゃら、お菓子が好きで、虫が嫌い。
色々な事件に首を突っ込みスカーレッド・ノヴァをぶっぱなします。
(ぶっぱなさなくてもOK)


基本的にいい子なので首を突っ込んだ事件やイベントの解決や成功の為に積極的に行動します。

戦闘は残像を伴う素早い動きから大鎌でなぎ払い攻撃したり。
ユーベルコードをご自由にお使いください。

記載がない部分はマスター様におまかせでお願いします。
自由に冒険させてあげてください。



「学び舎……いえ、學校とは……こんなにも暗くて怖そうな雰囲気でしたでしょうか? アルダワ魔法学園とは随分と違うような……」
「廃れた學校とはいえこのような事があってはならない! 許し難い愚行だ!」
 ノエル・スカーレット(チビッ子ダンピール・f00954)はボロボロとなった部屋を物珍しそうに見回し、七詩野・兵衛(空を舞う熱血応援団長・f08445)は己の怒りを露わにした。
 本当ならば何も起こらないはずだった廃學校。しかし一人の青年によってこの場所は呪われた空間となってしまった。兵衛の言う通り、これは決して許してはならない行為である。
「どちらにせよ、あの人は悪い人ですからやっつけちゃいましょうね。応援よろしくお願いします♪」
「あいわかった! アルダワ魔法学園『轟嵐会』団長、七詩野兵衛! 助太刀致す!」

「誰であろうと、我が同志達と共に撃ち払うのみだ」
 青年は再び帝都軍人達を呼び出し、拳銃の銃口を猟兵達へと向ける。無言の合図による一斉発砲は確実に標的を狙い、弾は空を切る。
「安直な攻撃で倒れるほどでは、応援団長は務まらないのだ!」
 兵衛は団旗を振り回し風の衝撃波を生み出す。横一線へ薙ぎ払うと同時に衝撃波は銃弾を弾き、軍人達へと襲い掛かった。陣形を崩した瞬間を逃さず、そこへ俊敏な速さで飛び込んでいったのは大鎌を構えたノエルだ。
「ダンピール相手なんですから、銀の弾丸じゃなきゃ駄目ですよ?」
 急接近し、軍人達の目の前で腰を落としながら一つ踏み込み、そして力強く大鎌を振るう。巨大な刃が軍人達の体を切り刻む。戦闘不能となった軍人が次々と煙のように消え去っていく。
「鮮やかな身のこなし! その調子である! ノエル嬢!」
「ふふ、褒められると嬉しくなります♪」
 兵衛の一声に、応援されるのも悪くないですね、とノエルが心を弾ませる。しかし軍人達が消えた所で戦いが終わった訳ではない。本体である青年がまだ生存している。
 微笑むノエルに向かって背後から迫る青年。すらりと輝く軍刀を振り上げたその時。
「うおおおおっ!!!」
 応援とは、鼓舞の言葉を振り撒く行為だけではない。己の行動を見せ付け、仲間を全力でサポートする。そこで初めて己の意志――応援を伝える事ができるのだ。
 軍刀を振り上げていた青年の腕に、ざくりと刺さったのはアルダワ魔法学園の団旗『霹靂一声』。はためく巨大な旗を影にノエルは青年から距離を取ると、すぐさま詠唱を行う。
「全てを燃やし尽くす我が炎――!」
 太陽にも似た超巨大な火球。灼熱の炎は青年の体を飲み込んでいった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

クレア・フォースフェンサー
さて、若き将校殿。
決して満たされぬ学生生活はそろそろ終わりにして、骸の海に還っては如何かの。
過去の存在という意味ではわしも同じじゃが、自らの分は弁えておるつもりじゃ。
自らの欲望を満たすために、今を生きる者を足蹴になどしてはいかんな。

光剣を右手に持ち、ゆっくりと相手に近付いていく。
相手が飛び道具を使用したり、霊を召喚したりするようならば、【能力無効】を使用し、ユーベルコードを無効化しよう。

敵の攻撃を見切って間合いに入り、部屋の中の確認できる屍の数だけ、敵の部位を切り落とすとしよう。
一刀をもって屠っては、ここでおぬしに殺された者達も、かつてこの国のためにと振るわれたその軍刀も浮かばれまい?



 金色の美女、クレア・フォースフェンサー(UDCエージェント・f09175)はゆっくりと青年の元へと歩み寄る。
「さて、若き将校殿。決して満たされぬ学生生活はそろそろ終わりにして、骸の海に還っては如何かの」
 老いた口調でも凛とした立ち振る舞いは青年にも負けず劣らず。視線は真っ直ぐと青年の方へ向き。
「過去の存在という意味ではわしも同じじゃ。この身は齢十八のものだが、魂など歳月を数えるのを忘れた程だ。おぬしがどれ程の過去の者かは知らぬが……今を生きる者を足蹴になど、してはいかんな」
「この場所は廃れた。上に立つ者はいない。故に今、この場所の頭は俺である」
「ほう、ここではおぬし自身がルールであると? 面白いが気に喰わんな」
 クレアの視線は左から右へ、ゆっくりと動く。視界に入るそれらは、床にこびり付いた血、腐肉、骨。……何人分に及ぶものなのだろうか。正直に言えば想像もしたくない。
「残酷じゃのう。……己のしでかした事、その身で思い知ると良いじゃろう」
 クレアは光剣を構える。それはただの若い女のものとは思えない、その道を究めた者が見せる構え。極限を超えし剣豪の剣はぴくりとも動かず静寂の中で青年の刃を待つ。
 青年も軍刀を引き抜くと、一歩、また一歩と前へと進む足が徐々に速くなっていく。駆け抜ける青年が向かう先はクレア。軍刀でクレアの剣を弾こうと、踏み込みながら横へと振り被った。
「振りが大きいな。それでは避けるのも容易いのう」
 瞬時に青年の行動と狙いを読んだクレアは笑みを見せながらすらりと避けてみせた。まるで稽古でもしてやっているかのようだ。しかし、いくら学び舎に憧れた相手とはいえ、彼女はそんな情けなどかけない。……このような弟子を持つならば死んだ方がましだろう。
 クレアは青年を横切るように動き、光剣で斬り付けた。滑らかで無駄のない流れは美しさも兼ね備えていた。そして、空中に浮いたのは青年の右手。
「ほれ、まだじゃ」
 余所見をするな、と彼女の連撃は青年を襲い続ける。次第に右腕は短くなり、最後には軍刀が弾き飛ばされた。
「おぬしが殺めた数だけ切り刻んでやろうと思ったのだが……さて、足りるじゃろうか?」
 どさり、がしゃり。床に落ちる肉と軍刀。かつては国と人々を守ったであろうそれが、虚しく腐り溶けていった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エリエ・ルーミエンス
あぁもう
頭を撃たれたんだから素直に倒れろってもんです
レノアもやられちゃいましたし……こうなったら手早く終わらせてあげますか

オーバークロック・セレナーデを発動
真っ向勝負なら勝ち目は五分五分ですが、あいつは既に手負い
それに、今までクロスボウを使ってきた相手が突然ダガー片手に走り出すとは思ってないでしょう
最初からフルスピードを出して接近
不意打ちでブスッとやっちゃいます

現実逃避も自己満足も大いに結構
それ自体は罪じゃありませんから
ただ、次からはやり方を選ぶことですね

なんて、柄でもないことを言っちゃいましたけど、それどころじゃないんですよ
早くレノアの治療をしてあげないと……

※他PCとの絡み&アドリブ歓迎



 青年の姿は既にボロボロだった。いつ倒れてもおかしくないはずなのに倒れない。それ程の生命力を持っているのか、それとも一つの強い思念の為か。
 どちらにせよしぶとい事には変わりない。エリエ・ルーミエンス(誰かのためのヒロイン・f17991)は視線を下の方へと向ける。
「レノア……」
 ぞんざいに扱われた鴉型ガジェットが床に転がっている。青年の記憶にはレノアの事など片隅にも残っていないだろう。それでも構わない。自分がレノアを覚えている限り、それが力となる。
「はぁ……いい加減、お前も倒れたらどうです?」
 そこまでの姿を保ってまで、一体何を求めるというのか。何を待つというのか。もはや興味はなくなった。
 エリエはクロスボウを構えるのをやめ、だらりと腕を下ろす。自らの意識へ集中力を高め、最後の攻撃へと転じる準備を始める。
「……生前でも、このような身体を持っていればな」
 青年は自らへ向けた皮肉を漏らすと、残された片手で軍刀を強く握り締める。纏う影朧の妖気は弱まる様子を見せず、彼に戦う力を与え続けている。どちらも最後の一撃に全てを賭けるようだ。
「生きていた頃のお前も、さぞかししぶとかったのでしょうね。えぇ、それだけ強い意志を持っている事は理解しました。それであれば私も負けませんので!」
 同じくらいの、或いはそれ以上の秘めたる強い意志をエリエは持っている。故に退く訳にはいかない。退く理由もない。
 閉じていた目を見開くエリエ。堂々とした佇まい、青年へ真っ直ぐと向いた視線。これが一人の少女として、そして戦う者としての姿であると青年に見せ付けて。
「――リミッター解除。勝利をまた一つ、主サマに捧げましょう」

 青年は大きく振り被り、巨大な衝撃波を生み出した。部屋もろとも破壊するかの如く、何度も何度も空を斬り付けては衝撃波を生み出し、エリエに向けて襲わせた。
 複数の衝撃波は周囲に存在するありとあらゆるものを破壊しながらエリエを飲み込んだ。攻撃はそれだけでは終わらない。追い打ちをかけようと青年は駆け出し、衝撃波の後に続きエリエに攻撃を仕掛ける。
 しかし、天井へと掲げられた青年の腕はぴたりと止まる。目を大きく開き、ゆっくりと静かに顔を下へ向ける。
 ――何故だ。
 青年は現状を理解するまでに時間を掛けた。信じられなかったからなのか、そこまで身体が鈍ってしまったからなのか、それすら分からない。
 視界から読み取れた情報。それは、自分の胸にダガーを深く刺した少女がいるという事。
「私が既に動いていた事にも気付かなかったのですね。哀れな事です」
 まさか高速移動であの連撃を避けたというのだろうか。それに、先程までダガーなど使用していなかったはず。
「えぇ、えぇ。現実逃避も自己満足も大いに結構。それ自体は罪じゃありませんから。――但し」
 敵対した理由はただ一つ。『やり方が気に食わなかったから』である。

 刃の刺さった個所を中心に、青年の身体は塵のように崩れていき、やがて、まるで最初から存在しなかったかのように姿形を消した。戦いの勝敗を告げるように、部屋には静寂の時間が流れた。
「あぁ、レノア……」
 青年が消え去った直後、エリエが真っ先に向かった場所は床に落ちたレノアの元。膝をつき、レノアをそっと両手で包み込む。
 心配そうに顔を覗き込むと、カラカラ、と鳴き声が聞こえた。エリエの気配を感じたのか、翼が少しだけ動き始める。
「良かった、元気そうですね。……さ、早く帰って治療しましょうか」
 ほっとした表情で微笑むエリエ。他の猟兵と共に、レノアを抱いた彼女は校長室を、そして學校を去るのだった。
 校門に咲き誇る桜は、感謝と鎮魂の意を込めたようにさらさらと優しく揺れ、桃色の雨を降らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2020年04月02日


挿絵イラスト