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百合の花に似たねえさまと

#サクラミラージュ

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#サクラミラージュ


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 百合ねえさまは、百合の花。
 馨しい薫りを振りまいて、帝都の街を歩いていた。
 振り返らない殿方はいなくて。振り返らないレデイだっていなくて。そう、だれもが振り向く、百合ねえさまは理想のお人だった。

「かすみ」
 ねえさまが呼ぶ、私の名前が好きだった。
 私の名前は決して派手ではなくて。花束でも添え物の、カスミソウと同じ名前だけれど。
 百合ねえさまという花の美しさを際立たせられるのなら、それでもいいわって思ったの。
「ねえかすみ、今度、カフェーへいかない?」
 百合ねえさまが誘ってくださった。私は其れだけで、燕のように天にも昇る気持ち!

 だからね。
 ねえさまが、カゲロウだとか呼ばれるものになっても。
 ねえさまが、お人じゃなくなってしまっても、かすみは良いのです。
 かすみは、百合ねえさまとカフェーでミルクセエキを飲めたら。少しだけお洒落なお話をして、笑いあえたら、それで、いいの。

●グリモアベースにて
「みんなー! 新世界への道が拓いたよ!」
 今日も今日とて、メッティ・アンティカ(くろねこダンス・f09008)は元気いっぱいに脚立の上で跳ねている。カンカン帽に書生服。おやおや、大正の格好かな?
「大正浪漫だって! イイ響きだよねー! なんだか僕もわくわくしちゃった! わくわくしてたら、夢を見たんだけどね! 此処のオブリビオンはちょっと特殊なんだ、うん、あのね! 助けられるかも知れないんだよ!」

 影朧。

 サクラミラージュでそう呼ばれる“オブリビオン未満の存在達”は、やり方によってはその魂を輪廻の輪に再び還すことが出来る。これまでのオブリビオンのように存在を抹消するのではなく、正しい意味で救う事が出来るかもしれないのだ。
「今回は、カフェーで働く女給さんの周辺を調べて欲しいんだ。どうも様子がおかしくって、オブリビオン――というより、影朧が絡んでいる可能性がある」
 女給の名前はかすみ。学業の傍らメイド業に勤しむ真面目な生徒だったそうだが、最近出席率がよくない。それどころか、出勤にも支障が出ている始末。彼女が何処に行ったのか、だれも見かけていないようだった。
「ただ遊び歩いているならそれでいいんだけど、多分そうじゃない。かすみさんが何か黒いもやと嬉しそうに歩いている夢を見たんだ。影朧がどこかに関わっているのは間違いないと思うよ」
 カンカン帽をくいっと下げて、真面目な顔でいうメッティ。片手を開くと、ふわり、グリモアが扉を開けた。
「――取り敢えず、まずは街の観光とかしながら情報を集めて貰って……其れからの事は、君たち自身が決めて欲しい! 僕は君たちならなんとかできるって、信じてるから!」
 扉の奥から、大正浪漫の薫りがする。ハイカラブーツに書生服、ミルクセエキを頼みましょ。

 ようこそ、サクラミラージュへ!


key
 こんにちは、keyです。
 早速ですが、桃色舞うサクラミラージュの世界へ皆様をご案内。

●目的
「かすみの行方を追え」

●導入
 メッティによって飛ばされた先は「扇座」と呼ばれる舞台の入り口前です。
 皆さんはショウ見物がてら、情報収集を行ってください。
 純粋にショウを見るだけでも構いません。
 どうやら、かすみはここを拠点にする一座のスタアと面識があったようですが……?


 アドリブが多くなる傾向にあります。
 アドリブ不可、と明記して下されば、出来る限りプレイングの通り描写致します。
 それでは、いってらっしゃい。
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第1章 日常 『夢のショウへようこそ』

POW   :    舞台に釘付けになってショウ見物を楽しむ

SPD   :    パンフレットやブロマイドを買ってみる

WIZ   :    ゲストとして舞台に上がる

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●扇座へようこそ
 猟兵たちがグリモアのゲートを抜けると、其処は色彩豊かな街並みが広がっていた。華吹雪が色とりどりの看板を飾り立て、穏やかな風に流されてゆく。

「扇座 ショウ“夫婦花”」

 そう書かれた看板がでかでかと掲げられている。
 男も乙女もハイカラ模様、紳士淑女が行き交う此処は文化の交差点。
 表から入ってショウを見学するもよし、裏から入ってスタッフに声をかけるもよし。君たちは超弩級戦力であるから、ある程度の融通は効くはずだ。
 或いはゲストとして上がらせてくれと頼んでも――スタッフはうんと頷くだろう。だって表現は、文化は、自由であるべきなのだから!
依神・零奈
大正時代か……随分と懐かしいね
私の知るそれとはずいぶんと違った雰囲気だけど
ありえたかもしれない世界線……か
少し歩き回って見るのもいいかもね

……夫婦花か
ちょっと見てみようかな
スタアお手並み拝見といこうか
情報を持ってる人物について知る事もできるかもだしね
こういうのはパンフレットを買うのが通って奴なんでしょ
知ってるよ

後は……えっと、その……
人気の食べ物とかあれば食べてみようかな、なんて

【SPD】



「大正時代か……随分と懐かしいね」
 私の知るそれとは随分と違うし、700年もは続かなかったけど。そう、依神・零奈(忘れ去られた信仰・f16925)は思う。有り得たかもしれない世界線。変わらぬモダンな風景。
 目の前には扇座が公演を控える舞台がある。周りを見てみると、周りはカフェーなどの飲食店が多いようだった。目下売り出し中はホットケエキ。ちょっとこれは胃に重いから、後で食べてみよう。ふわふわと人々に交じって歩き、やがて零奈は舞台へ流れる人々の波に乗った。

「夫婦花……か」
 出征した夫と妻の変わらぬ愛の物語だ。モチーフとしては使い古された感があるが、花形スタアが主演するという事で人気を博しているようだ。
 こういうのは、パンフレットを買うのが通ってやつなんでしょう?
 なので零奈は、どこかドヤ顔でパンフレットを買う。主演俳優のプロフィールや、簡単なあらすじ、見所などが掲載されている。零奈の知っている現代とあまり変わらない仕様だ。
 あとは何か食べ物が欲しい。手軽なものがいいな、何にしよう……ワッフルにリンゴジャミ? ジャミってなんだろ……
 メニューをたどたどしく読みながら、零奈が目にしたのはいももちの文字。うん、あれが美味しそう。

「扇座の舞台、楽しみねえ」
「ええ。あんな事があって、看板を下ろしてしまうかと思ったものねえ」
「そうね……彼女、影朧になってないとよいのだけれど……」

 行き交う人の声の中に、そんな内容を聞いた。
 零奈は振り返るが、誰が其れを言ったのかは、人波で判らなかった。いももちお待たせいたしました、という店員の声がかかる。

成功 🔵​🔵​🔴​

ナナシ・ナナイ
POW//サクラミラージュ!なかなか面白そうな世界やん!
わいは気楽にショウ見物させてもらうわ。ショウって言ってもどんなんやろ?楽しみや!一番ええ席をとるで!
ついでに隣の席のお客に最近扇座関係でなんか事件がなかったか聞いとこ!(【コミュ力】)
おっ、始まったわ!



「いやー、サクラミラージュ! ちょっと見て回ったけど、なかなか面白そうな世界やん! ハイカラさんに書生服、枯れない桜と来たもんや!」
 ナナシ・ナナイ(ナニワのマンハンター・f00913)はショウのチケットを片手に、もぎりを並んで待っている。超弩級戦力としての立場をフル活用して、一番見やすいよい席を取って貰った。其処はぬかりない。
 もぎりが始まり、人波に乗れば、舞台と視線を同じく出来る席にナナシは流れ着く。
「ここやな。いやー、一等の席やん! こういうときにいう言葉やあらへんけど、猟兵やってて良かったわ~! あ、どうもどうも! 失礼します~!」
 彼の席は真ん中なので、端に座る人に避けて貰わないといけない。だがそこは人懐っこい彼の人柄、もしくはショウの常識か。人々も嫌な顔せず道を開けてくれた。
「はー! 楽しみやわ~! あ、よろしゅうたのんます、よろしゅうたのんます! ショウは初めてなもんで、失礼があったらすんません! ところで、扇座についてわいはよく知らんのやけど、最近何かあったりしたん?」
 周りに笑顔と愛想を振りまくナナシ。其の関西弁が面白かったのか笑っているレデイに、ナナシはふと話の水を向けた。瞬間、レデイの顔が訝し気なものに変わる。
「え? ああ……貴方は知らないの? 百合さんの事件」
「百合さん……?」
「ええ。此処のスタアでね、本来はこの“夫婦花”も彼女が妻役をやる予定だったのよ。だけど……キャストが決まった直後に、馬車と事故を起こしてしまってね……」
「可哀想だったわねえ。あの子、まだ十と八くらいだったでしょう? お兄さんも馬車には気を付けてね? この辺、時々マナーの悪い馬車がいるのよ」
 隣の隣の席にいたレデイ――恐らく隣のレデイの連れだろう――が痛まし気に言う。おおきに、左右上下に気を付けて歩かせて貰いますわ、と茶目っ気まじりの返事を返して……ナナシは黙した。
 ――百合。夭折した扇座のスタア。かすみと何か関係があるのだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊織・あやめ
花の名前を持つ者としては黙ってられないよね
かすみさんの行方、探してあげたいな

表から入って、まずはパンフレットを購入してみようかな
ショウの内容などの確認後出演者の確認
かすみさんと女学校が一緒だった…とかの縁者さんはいないかな
よくカフェーの女給さんと一緒のところを見たとかの噂とか
ちょっと裏口から入ってお話聞くのもありかな
(【情報収集】)

…ひょっとしてかすみさんもショウを見てたりする?
ショウを見ながらきょろきょろ
しているうちにたぶんパンフレット握りしめてショウに釘付け
わー!素敵、素敵ー!…はっ、あたしうっかり!

絡み、アドリブ歓迎です



 伊織・あやめ(うつせみの・f15726)は、同じ花の名を持つ者同士、かすみの事が気にかかっていた。
 扇座の舞台を待つ人で、舞台のロビーはいっぱいだ。人波をかき分けて、パンフレットを購入する。中身をぱらぱらとめくり、出演者を確認すると、主演女優のコメントに気になる文面があった。

『間藤百合様のご冥福をお祈り申し上げ、彼女の分まで妻役を演じる覚悟でございます』

 間藤百合。
 文面を素直に読み取るなら、彼女が主演女優だった筈が何らかのアクシデントで夭折、降板したのだろう。
 ぱたん、とパンフレットを閉じる。情報がもっと必要だ。
 くるりと身を翻すと、あやめは人波に逆らって、入り口へと戻り始めた。

 舞台裏口。
 ショウまでの時間を確認しながら、警備員に事情を話して通して貰った。
 流石に主演女優の心を乱すような事は出来ないが、裏方のスタッフならどうだろう。スタッフ控室のドアをノックすれば、複数の、どうぞ、という声が聞こえた。
「失礼します」
「こんにちは。……ええと、あなたは? 新しいスタッフさんはいなかったはずよね?」
 髪をまとめ、簡素な黒い服に身を包んだスタッフが不思議そうに問う。周りのスタッフを見回したが、其れを訂正するものはいない。
「うん、いないいない。かすみちゃんも最近来ないしね……」
「か、かすみさん!? かすみさんを知っているんですか!?」
「あなた、かすみちゃんの知り合い?」
「知り合いというか、その、依頼を受けて彼女を探していて……彼女は扇座にいたんですか?」
「……ううん、彼女は百合さんの後輩よ」
 一度喋ってしまっては仕方ないか、と諦めたかのように、スタッフは話し始める。
「百合さん、そのパンフレットで判るでしょうけど、この前亡くなったの。その熱心なフアンでね。今みたいな待ち時間は、百合さんといつも話をしていたわ。百合さんが亡くなってからは、ぱったり来なくなったけど……」
 それもそうよね、と、スタッフが目を伏せる。成程、とあやめは頷いて。
「彼女たちが言っていたカフェーだとか、そういう心当たりはありますか?」
「ええ、あるわよ。舞台が終わったら、必ず此処から向こうにある“ひいらぎ”へ行くって言っていたわ。でもあそこは――っと、もうすぐ開演ね。ごめんなさい、最後の調整があるから」
「いえ、ありがとうございました! 舞台、見させて貰いますね!」
「ありがとう。楽しんでいってね」
 間藤百合。かすみ。カフェーひもろぎ。
 彼女らが一本の線で繋がる。この情報を共有しなくては。というか、その前に舞台を楽しまないと!
 あやめは再び正面入り口に急ぎ足で向かった。依頼があるとはいえ、折角の舞台を楽しまないのは、百合に失礼というものだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​

花盛・乙女
■POW

ふむ、どことなくエンパイアに近い空気を感じるな。
この桜のせいだろうか…と。
浸るよりも探し人の情報も集めなければな。

【黒椿】を舐め起こし、その嗅覚と聴覚にて手掛かりを探そう。
かすみ殿というよりは瘴気。常ならざる物の気配を辿らせよう。
芝居屋の者達にも「コミュ力」を駆使して話を聞くぞ。
かすみ殿の行方、百合殿の死に関わる何某か、それと最近変わった出来事。
なんでもいい。得られる情報は細大漏らさずかき集めよう。

しかし…芝居か。
私に芸を愛でる趣味はないが、これほどの人々の心を魅了するものだ。
さぞや素晴らしいものには違いないだろう。
時間があるようなら、見せてもらうとしようか。



 サクラミラージュの世界には、同じ世界の違う可能性をくみ取ったが故か――サムライエンパイアに通じるものが多く見受けられる。
 そう、花盛・乙女(羅刹女・f00399)は思う。例えば江戸が続いていたら。例えば大正が続いていたら。元は一つの歴史だったものが枝分かれした未来と考えれば、其れはある意味、当然かもしれない。
 瘴気が濃い。其れが、乙女が抱いた感想だった。まるで瘴気をぐるぐると振りまいたかのような扇座周辺。其の瘴気は豪気にも大きな路地を真っ直ぐに……迷いなく向こうへと続いている。
「間藤百合、……か」
 呟いて、己の唇を親指で擦る。彼女が影朧になったのは――或いはよく似た何者かが彼女のように振る舞っているのは――間違いないだろう。
 もっと情報が必要だ。例えば彼女とかすみがよく行っていたというカフェー“ひいらぎ”の位置だとか。

「カフェーひいらぎ? あそこは潰れたよ」
 舞台を鑑賞してから、と座席に座り、何気なく隣の老人に話を持ち掛けた乙女だったが、其の答えに数秒、言葉を失った。
「潰れた……? 経営難か何かで?」
「いやあ……此処で話す事でもないかも知れんが、いや……ひいらぎのマスターが、馬車で事故を起こしたんだよ。知っているかな、間藤百合という扇座のスタアとぶつかったのさ」
 可哀想だねえ、と老人は顎髭を撫でて、しょぼしょぼと目を瞬かせた。
「百合さんは若くてキラキラしていてねえ。ひいらぎのマスターと仲が良かったんだ。マスターは気を病んでしまって、今は静養所さ。だからあすこは今、すっかりと廃墟になってしまっているよ……」
「……」
 何という符号。
 かすみが慕っていた百合。百合をはねた馬車。カフェーひいらぎ、そのマスター。これが推理小説なら、大笑いして本を放り投げているような見事なクローズドサークル。
 だが、もしかすみが、百合がいるとしたら――
「感謝する、ご老人」
「いいや。悪いねえ、ショウの前にこんな話を……」
「おかげで命が一つ、いや二つ、救えるかも知れん」
「……命が救える? あんた、まさか……」
「ああ。此処ではただの観客ではあるが……そう。“超弩級戦力”だ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『怪しげなカフェー』

POW   :    従業員や常連客を締め上げて情報を吐かせる

SPD   :    屋根裏やバックヤアドに忍び込み、こっそり情報を集める

WIZ   :    カフェーの従業員として潜入し、情報を集める

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●カフェー「ひいらぎ」
 其処は、まるでぽっかりと空いたどす黒い穴のようだった。
 華々しいカフェ通りに、一軒分空いた穴。風化してかすれた「ひいらぎ」の文字。カフェーひいらぎは数か月前に閉まったにも関わらず、異常なほどその建物は寂れていた。
 人の気配はない。まだかすみと百合は此処に来ていないのか。

 君たちは忍び込んで探索してもいいし、関係者にコンタクトを取っても良い。また、寂れたカフェーを借りて、盛り上げても良いだろう。
ナナシ・ナナイ
やれやれ、因果な事故やで。
わいとしてはカフェー「ひいらぎ」でお二人さんを待たせてもらうわ。思い出の場所はデェトにはピッタリやろ。
それにしても寂れすぎやないここ!?待つにも落ち着かれへん!よし、UCで分身を作り出して掃除させるで!そしてわいも掃除するで!こいつらわいがサボっとると文句いってくるんや…。自分らはよくサボるくせに…。一体誰に似たんや?
よし、準備完了!これでいつ二人がいつ来てもお出迎えできそうやな。あとは寝て待つか。



「やれやれ、因果な事故やで……行きつけの店のマスターさんが、常連客をはねてしまうなんてなぁ」
 言いながらきゅっきゅと布で椅子の足を磨くナナシ。布は不思議とどんどん黒く汚れていく。どうしてこんなに寂れたのか、今は答える者はいない。
「思い出の場所はデェトにぴったり……いうてもやな! これはいくら何でも寂れすぎや! 掃除でもして待たな俺の堪忍袋の尻尾が切れそうやわ! え? 「お」違いだって? 失礼しました~って、何一人で言うてんねん」
 びし、と虚空にツッコみながらも、椅子を二脚磨き終えると……ユーベルコード「虚構の中隊」を用いて己へと変化させる。
「んん~、流石わい手ずから磨いただけあって男前やな! ま、本物が既に男前やから仕方あらへんな」
『何言うてんねん、そないな事言う間があったら掃除せんかい!』
『せやせや! 他の椅子もテーブルも磨かな! かすみちゃん達も回れ右やで!』
「っかー……これやこれ……ちょっとサボるとすぐこれや……同じわいなのに本物にお小言とか……」
『じゃあワイらはちょっくら裏で休んでくるわ』
「待てや! お前らまだ何もしとらんやんけ! 全く、すぐサボるとか誰に似たんや。寧ろわいが疲れたから裏で休んでくるわ」
『待てや! まだ磨くところは一杯あるで!!』
『せや! この際や、キッチンまで綺麗にしたろやないかい!』
「ほんまかいな~! 敵わんわ~!」
 非常にうるさいが実際は一人である。
 かくしてナナシと其の分身たちは、せめて内装だけでも綺麗にしようと掃除しながら、オブリビオンとかすみの動向を探ることになったのだった。
 準備が完了した後、誰が寝て誰が見張るかで分身と喧嘩になったのは言うまでもない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

依神・零奈
この世界は華やかで退屈しなさそうだ……食事も美味しいしね
でもその華やかさの裏には闇もあるもの、この事件もそうみたいだね
……ま、やれるだけやってみようか

聞き取り調査って柄でもないしカフェーとやらを直接調べようかな
彼女達の思い出の場所であるなら彼女らの思念もすこしぐらいなら
感じられるかもしれないしね
【第六感】で思い出の品を探してみようかな
花をあしらった模様の食器とかね

ついでにカフェーを【破魔】で祓ってみようかな
影朧が関わってる場所なら何かしら反応あるかもしれないし
何もないにせよ後々役に立つかもしれないしね



「この世界は華やかだな……枯れない桜のせいだろうか。退屈しなさそうだし、食事もおいしい」
 此処では食べる気にはならないけれど。零奈はすっかり寂れた(けれどどこか清潔感のある)店内を見回し、カフェーひいらぎに踏み込んだ。
 聞き取り調査は柄じゃない。どうせなら現場に踏み込んで現物を確かめるのが私らしい、と零奈は思う。しかし、閉店したのは数か月前だと聞いていたが……
「まるで何年も前に閉まった店みたいだな。違和感を感じないのかな」
 キッチンは綺麗に整頓はされているが、鍋やフライパンは黒く錆びて使い物にならなさそうだった。己の勘に従って、食器棚を見つめる。「ひいらぎ」という名前だけあって、花を模した食器が多い。――ふと、きらりと輝く何かを見つけて、零奈は迷わず食器棚をなぞる指を止めた。扉を開き、引き出す。其れはソーサーとティーカップだった。埃った食器棚の中で、一つだけ綺麗に磨き抜かれている。
「……百合の花だ」
 ソーサーのふちに一輪、百合の花らしき絵が描かれていた。とてもシンプルな一式だ。この百合の花は偶然などではないだろう。そう、零奈の勘が告げている。同時に、とても禍々しい何かも彼女は感じていた。肌がひりつくような、そう、執念・妄念というべき何かが……

 ――ぱりんっ!

 空間が硝子のように割れる音がして、零奈の周囲が清らかな空気に包まれる。執念を払いのけた破魔の力はカフェー全体に及び……零奈はティーセットを持ったままキッチンを出ると、並んだテーブルのうちの一つに其れを置いた。
「此処が指定席、かな」
 払いきれない執念を感じる。それはかすみのものだろうか。其れとも、百合のものだろうか。

大成功 🔵​🔵​🔵​

伊織・あやめ
情報を共有してもらったら、切なくなっちゃった
カフェーのご主人、可哀想だなあ
よくなりますように

でも寂れたカフェーになんの用事で来るんだろう
百合さんとの思い出の場所…だからかなあ

とりあえず「ひいらぎ」の向かいのカフェーへ立ち寄って
カフェーの人に最近「ひいらぎ」に人が来てるのを見たか
【情報収集】 愛嬌たっぷり【コミュ力】も
百合さんを見ていたとしたら、目立つしわかりやすいよね
「ひいらぎ」についての他の情報も教えてもらっておくよ
たとえば、看板メニューとかね

お二人が来たら、思い出の味、出してあげたいんだ
猟兵のお仕事はそれからでも構わないよね?

絡み、アドリブ歓迎です


花盛・乙女
■POW

頭を使う事は苦手だ。であれば、戦いに備えるべきだろうな。

【黒椿】を舐め起こす。
この店に百合殿たちが来ていたならば残るものもあるだろう。
黒椿、貴様の嗅覚で百合殿やかすみ殿の臭いを覚えろ。
いずれかが店に近付いた時の鳴り子程度の役には立つだろう。
…なに?苦い臭いがして面倒くさい、だと?
馬鹿者、それはこーひーという飲みものの香りだ。
知らんのか?ふむ…そうさな、淹れ方は以前、旅団で見かけた。

珈琲豆を探し、ミルで挽き、湯を沸かして珈琲を淹れよう。
作法は知らんが茶道の要領で問題なかろう。
黒椿に飲ませるついでだ、他の猟兵の皆にも振舞おう。

…さて、悲しき此度の事件。
斬るか、生かすか。考えねばならんな。



「カフェーのご主人、可哀想だなあ……早くよくなるといいな」
「そうだな。だが、心の傷は体の傷よりも癒えるのに時間がかかる。こればかりは私たちにもいかんともしがたいところだ」
 あやめと乙女は2人、カフェーひいらぎへと足を踏み入れる。随分と寂れて見えるのは、此処の主が心を病んだ、其の鏡写しだろうか。
「此処……だよね」
「ああ。……閉まったのは数か月前の筈だが」
「此処にかすみさんは今も来てるのかな。思い出の場所なら、たまに行きたくなる気持ちも判らないではないけど……あたしは向かいのカフェーに聞き込みにいってくるけど、乙女さんは?」
「私はこいつと一緒に中を調べてみる。少しの間、別行動だな」
 乙女は腰に差した刀を抜き払い、あやめに頷いた。

「起きろ、黒椿」
『ヒヒ、刀使イノ荒イ主人ダコッタ』
 刀が煙へと変ず。元が煙の化生だったのか、刀が生きて化けたのか、其の辺りはさて、定かではないが――ちろりと乙女が舐め上げれば化生はからかうように返答を返した。
「貴様の嗅覚なら、女の匂いをかぎ分けるくらい簡単だろう。百合殿やかすみ殿の匂いを探せ。恐らくそんなに薄まってはいないはずだ」
『女ノ臭イ、ネエ……イヤイヤ、ソノ前ニコノ苦ァーイ臭イはナンダ? クッセエッタラアリャシネエ!』
「苦い? ……馬鹿者、それはこーひーという飲み物の香りだ。知らんのか?」
『生憎、飲ミ食イニハ興味ガネェモンデサ。ソリャ美味イノカ?』
「淹れ方にもよるが……まあ良い。後で道具があれば実物を見せてやるから、さっさと匂いを探せ」
 ヒヒヒ、と笑う化生は、それでも甘い薫りをかぎ分ける。思ったより二人の香りは濃かったようだ。つまり、今でも通っている可能性があるという事。
 そして黒椿はもう一つ告げる。この甘い香りの片方は、どす黒いコールタールの香りに似ている、と。

「かすみさん? ええ、最近よく見かけるわね」
 向かいのカフェーを訪れたあやめは、人懐っこさを利用してカフェーの店員と話し込んでいた。ともすれば脱線しそうな話の軌道を戻すのは苦労するが、それはまあ、仕方ない事だろう。
「じゃあ、百合さんは?」
「百合さん? あら、事故の事知らないの? 百合さんはもう……」
「あ、そうだった。じゃあかすみさん一人?」
「……。どうだったかしら。もう一人、隣にいたような……ううん、ぼんやりしてて思い出せないわ。でも、かすみさんがこの辺りにいるのは間違いないわよ。ひいらぎがなくなったから、代わりのカフェーを見付けて通ってるのかと思ったんだけど……あそこの味に勝てるものはないんでしょうねえ」
「味? 何か名物でもあったの?」
「ええ。ひいらぎのミルクセヱキは絶品だと評判だったわ。ちなみにうちはパンケヱキがおすすめよ。此処はカフェが多いでしょ? だからそれぞれ売り出しに足る商品を作るのに必死なのよ」
「成程。競争の激しい通りなんだね」
「ええ。でも、此処に店を出すのは喫茶を営む人の憧れでもあるわ。此処に店を出すだけで、其れなりに評判は保証されるのよ。……お給金も良いしね?」
 そっと小声で添えられた言葉に、あやめは思わず吹き出す。
「あはは! そうだね! あ、忙しいお仕事中にごめんなさい」
「いいえ、いいのよ。かすみさんの様子がおかしいのは私も遠目ながらに感じていたから……彼女の事、宜しくね」
「はい! あ、少し後になるんですけど、パンケヱキのお持ち帰りって出来ますか?」
「ええ、ご用意しておきます。何枚くらいか後で教えてね」
「はーい! それじゃあ、ありがとう!」

「戻ったよー……って、あれ?」
 向かいのカフェーからひいらぎへ戻ったあやめがまず気付いたのは、挽きたての珈琲豆の香りだった。香ばしいその香りは、まるでひいらぎが営業中の時に戻ったかのようで。
 店内を見回すと、キッチンに乙女が立ち、ミルでコーヒーを挽いていた。
「ああ、戻ったか。塩梅はどうだった?」
「うん、収穫はあったよ。かすみさんはやっぱり、この辺にまだ来てるみたい。で、なんで珈琲?」
「私の刀が知らんと抜かすのでな。実物を見せるついでに、皆に振る舞おうと。生憎淹れ方は知っていても、作法は知らんが」
「そっか……あたしも貰っても良い?」
「もちろんだ。その為に多めに豆を挽いてある。……かすみ殿も、この香りに惹かれてくれるといいのだが」
「……」
「……斬るか、生かすか。考えねばならんな……」
 しん、と静寂が降りる。百合を相手取るとして、かすみがどのような行動をとるのかは想像に難くない。彼女のケアをどうするか。百合は説得に応じてくれるのか。
 かりかり、と豆を挽く音を聞きながら、二人は考えていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『血まみれ女学生』

POW   :    乙女ノ血爪
【異様なまでに鋭く長く伸びた指の爪】が命中した対象を切断する。
SPD   :    血濡ラレタ哀哭
【悲しみの感情に満ちた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    応報ノ涙
全身を【目から溢れ出す黒い血の涙】で覆い、自身が敵から受けた【肉体的・精神的を問わない痛み】に比例した戦闘力増強と、生命力吸収能力を得る。

イラスト:綿串

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●邂逅
「うふふ、ねえさまったら」
 百合ねえさまが少し洒落た物言いをしたので、かすみは笑った。そんな姿さえも様になるのだから、スタアは凄いと思う。
 今日も二人でカフェーへお出かけ。昨日も、一昨日も、そしてきっと明日も、明後日も。前に寝たのはいつか覚えていないし、百合ねえさまと会うと思えば眠気なんて吹っ飛んでしまうけれど、其れで良いと思う。寝る間があったら、百合ねえさまとお話していたい。
 カフェーひいらぎは、この角を曲がったカフェ通りの中にある。ミルクセヱキが美味しくて、いつも二人で飲んでいた。たまに百合ねえさまは珈琲を嗜む事があって、マスターにお願いして自分専用のティーセットを置かせて頂いている。いつか、その傍に私のカップも置けたら、と、考えていた。
「ねえ百合ねえさま、今日は珈琲とミルクセヱキ、どちらになさるの」
『さあ……どちらにしようかしら。少し暑いから、ミルクセヱキかな』
「じゃあかすみもそうします。いつものお席で飲みましょ」
 通りを曲がって、ひいらぎへ向かう。いつもの日常、いつもの光景。いつものお店、の、筈だった。
 扉を開くまでは。百合ねえさまの雰囲気が、中にいるお客様を見て豹変するまでは。

 ――君たちはふと、扉の開く音を聞く。
 其処には目に隈を作り、不健康な顔色をした女学生と――黒い靄を纏った“何か”がいた。間違いない、かすみと百合だ。
 百合は相手が猟兵であることに気付いたのか、ざわり、と周囲の空気をひりつかせる。一方のかすみは、まだ状況を飲み込めていないようだった。
 百合と戦い、斬り捨てるか説得するのかを考えなければならない。だが百合に剣を向ければ、かすみが庇って入るかもしれない事を留意しておくべきだろう。
伊織・あやめ
かすみさんも百合さんも、守るよ

はじめまして、お二人とも
ごめんね、あたしじゃミルクセヱキは作れなくて
コーヒーなら淹れてもらったけどどうかな

とても言い辛いけれど
かすみさん、百合さんはもう亡くなっている
でも、百合さんは未練があったのかな
かすみさんに会いに来た
変わらぬ日常を送るために

百合さん
かすみさんを一人残していくのが不安だったの?
かすみさんが、大事だったんだね
だから歪に、なってしまった
違うかな

亡くすことは辛いこと
でもかすみさんは乗り越える力を持っている
百合さん、かすみさんを信じてあげて
(【コミュ力】【鼓舞】【祈り】【慰め】)

声掛けに応じず戦闘になった場合のみUC使用
絡み、アドリブ歓迎



「ねえさま……?」
 目の前にいるあやめが何者か判らないかすみは、どうして百合がそんなに殺気立っているのか判らない。
 不思議そうに2人を交互に見つめる彼女の瞳は、不眠と陶酔でとろりと蕩けて見える。
「こんにちは」
 あやめは武器を出さず、まず、2人に挨拶をした。
「こ、こんにちは」
『……』
 かすみは丁寧にお辞儀をしてあいさつしたが、百合は答えない。その瞳に爛々と敵意を灯らせて、あやめをじっと見ていた。
「ええと、まず謝らなきゃいけないんだけど、あたしじゃちょっとミルクセヱキは作れないんだ。珈琲なら淹れてもらったんだけど、どうかな」
「あ、いえ、あの、お構いなく。マスターがいれてくれます。ここのミルクセヱキ、美味しいんです」
 随分と深く心が傷付いている、とあやめは心の中で嘆息した。マスターはもういないのに、かすみの心ではまだ、カフェーひいらぎは健在なのだ。或いは、影朧を受け入れるために己に嘘……暗示をかけているのか。
「……でも、言わなきゃ駄目だよね」
 そう、言わなければ何処にも行けない。たとえどこにも行かない事がかすみの望みでも――助けられる命を助けないなんて、そんなこと、あやめには出来ないのだ。
「かすみさん、聞いて。とても言い辛いけど、百合さんはもう……亡くなっているの」
「……え」
「でも、百合さんは会いに来た。変わらぬ日常をあなたと送るために。――百合さんは、かすみさんが大事だったんだね。残して逝くのが、不安だったのかな。だから、……歪になってしまった。違うかな」
『……かすみ、聞いては駄目よ。私は此処にいるわ。死んでなんていない』
「百合ねえさま、……でも」
『……』
 かすみはあやめの真剣さをくみ取ったようだった。こんなに真剣に嘘を話す人なんていない。そんな瞳で、百合を見ている。百合の手がひくり、と動く。彼女自身もきっと迷っている。何も知らない、何もできない一般人のかすみの前で戦火をおこせば、何が起きるのか知っている。
「……亡くすことは、辛い事。かすみさん以外のみんなも、百合さんがいなくなったことを悲しんでいたよ。でも、みんな乗り越えようとしてるの。日常を、頑張って取り戻そうとしているの。かすみさん、あなたにも乗り越える力があるはずだよ」
「……わた、し」
「百合さん。かすみさんを信じてあげて。お願い、……彼女を、傷付けないためにも」

成功 🔵​🔵​🔴​

ナナシ・ナナイ
ふわ…よく寝た…ってちょ、わいが折角掃除したんに暴れるのは無しやで!
わいらとしたら百合ちゃんが影朧としてもっとやばくなる前になんかせえへんといかんのだけど。…いまは大丈夫やとしてもこれから悪うなって行くだけやで。ここらが潮時や。今は二人がお互いに互いを過去に縛り付けおうとる。…その先にあるのはどうあがいても破滅やで。わいは二人して未来に進んでほしい。百合ちゃんは転生して、かすみちゃんは百合ちゃんの死をのりこえてな。まあ選ぶんは自分らや、ゆっくり決めてや。
わいは二人がどう転んでもええように突撃銃型アサルトウェポンを傍らにまた寝るで。



「おーおー、わいが折角掃除したんや、暴れるのはナシやで」
 迷うかすみと惑う百合に続いてかけられた声は、椅子に座って転寝していたナナシのものだった。よいしょ、と突撃銃の形をした武器を彼は躊躇いなく取り出すと――テーブルに置く。
「わいらとしたらな? まず百合ちゃんが影朧としてもっとやばなるまえにどうにかせえへんといかんのや。今は大丈夫やとしても、そのままやったらこれから悪うなっていくだけや。2人でお出かけするんは楽しかったやろけど、もう潮時や」
『……どうして』
 初めて百合が言葉を発した。嘆き一色に染め上げられた、聞く側が泣きたくなるような声音だった。
『私たちは、今を続けていたいだけなのに』
「それがあかん。今2人がしとるんは、お互いを過去に縛り付けとるのと同じことや。その先にあるのはどうあっても破滅やで。救いなんてない。……わいは、かすみちゃんにも百合ちゃんにも、未来に進んで欲しい。百合ちゃんは転生して新しい命になって。かすみちゃんは、百合ちゃんの死を乗り越えてな」
「ゆ……百合ねえさまは死んでなんか……!」
「死んどるんや。此処のマスターの馬車にあたって、百合ちゃんはもうこの世にはおらへん。かすみちゃんもわかっとるんやろ。隣にいる百合ちゃんは、影朧や」
「…………」
 かすみが絶句した。目をそらして目をそらして、見ないようにしていた現実を、目の前にドンと置かれて。どうすればいいのか、何といえばいいのか、泣けばいいのか、怒ればいいのか判らないと沈黙した。
「……選ぶんは自分らや。やけどな、もし百合ちゃんが暴れるんやったら……わいは容赦せえへん。今までのオブリビオンと同じように、塵も残さずサヨナラさせるだけや」
 じゃ、決まったら言うてや。
 そう言って、ナナシは再びテーブルに突っ伏した。言うだけ言って寝てしまった男を見て、かすみは不安げに百合を見た。百合は、ナナシを見つめたまま――何も言わない。

成功 🔵​🔵​🔴​

レイ・キャスケット(サポート)
アルダワ魔法学園の生徒であり謎解きや冒険となると首を突っ込まずには居られない

性格は明るくポジティブ
性善説的な考え方が強く非オビリビオン相手であれば甘すぎる慈悲を与えることも
楽しければ悪ノリする部分もあり、またその場のノリに流されやすいことも


一人称はボク
二人称はキミ
三人称は年上は~さん、年下は~くん、~ちゃん

戦闘では『ブランクソード』と高速詠唱を軸にした七色の属性攻撃で敵を翻弄するオールレンジラウンダー
得意な戦法は挑発やフェイントを多用したイヤガラセからの主導権奪取
状況に応じ回復も使い分ける万能型だが、体力は並程度を魔力ブーストで補う

明確な弱点は水中、水上行動を極端に嫌うことである



「ふうっ! 戦闘にならないみたいで安心したよ!」
 レイ・キャスケット(一家に一台便利なレイちゃん・f09183)は汗を大げさにぬぐい、かすみと百合を見る。
「ボクはね、あんまり難しい事は判んないけど……でも、かすみちゃんの顔を見て、今のままじゃいけないなって思ったよ。だって、目に隈があるし、すっごく痩せてるし。百合さんはそんなかすみちゃんを見て、可愛いなって思う? 可哀想だって思わない?」
 2人を真っ直ぐに見つめて、レイは言う。武器はあえて手にせずに、戦闘の意思はないと明示して。
「このまま百合さんを倒してしまうのは、きっと難しいことじゃないよ。だけど、そんなのかすみちゃんが許さないよね」
「そんな事っ……! 当たり前じゃない!」
「うん、そうだよね。……ボクたちも、そんなことはしたくない。百合さんの魂を消してしまって、生まれ変われないようにしてしまう事は、したくないんだ」
 ルビー色の瞳を伏せ、思案する。何を言えば、彼女らは納得してくれるだろう。いや、――何といえば、彼女らは心の底の底で蓋をした事実に、向き合ってくれるだろう。
「百合さん、かすみちゃんの未来を考えてあげて。ボクたちはかすみちゃんを守るために武器を取る、……其れを、させないで」

成功 🔵​🔵​🔴​

依神・零奈
結局、彼女の運命は彼女で決めるしかない訳だけど……
それを手助けするのも役目の内だしね、できるだけの事はやってみようか

思い出の場所である此処もティーカップも壊す訳には
いかない、彼女達の気が荒立って手に負えなくなるかもしれない
戦闘行為は最低限、できればしない方が好ましいか
【破魔】でその場を清めつつ【言いくるめ】で百合の説得を


百合の死と影朧化の影響を受け壊れていくかすみに思う事はないか
かすみは今でもスタアである君を思い続けてる
形は違えどまたかすみを共に歩む為に生をやり直してはどうか
今度はティーカップを二人で並べられるように……
って感じで説得しよう

もしどちらかが暴れ出しそうならUCで動きを抑制しよう


花盛・乙女
…なるほど。憑き物の類か。

初めて会うのだから先ずは挨拶と名乗りを。
己が猟兵である事も、目的も包み隠さずにだ。
出来ることなら、百合殿は切り捨てずにいたい。
頭を回す事は不得手だ。
他の猟兵たちの様子を先ずは見よう。その上で、話が通じるのであれば説得を試みよう。

百合殿が我々と話もままならぬのであれば、その時は仕方ない。
閃く神速の居合にて、静かにその首を落とすとしようか。

私は、難しい事は分からんから真実を告げる。
百合殿は故人である事。
かすみ殿に害悪を成してる事。
私のわがままだが、今の歪んだ形の在り方を正したい。
死を飲み込み、輪廻の巡りに再び乗り、姿形は違えども正しき形でかすみ殿と出会って欲しい、とな。



「説得に応じる気があるようで、少し安心した」
「そうだね。敵と認識……はされているようだけど、彼女にはまだ迷いがある。そうだよね」
 乙女の言葉に頷いて、零奈は百合を見た。真っ黒いオーラを立ち昇らせる影朧は、黙ったまま拳を握っている。
「……隣の彼女を見て。目に隈が出来てるし、すっかり痩せてる。このままじゃ、あなたの後を追うように死んでしまうかもしれない」
『……』
「かすみは今でも、スタアであり、よき友人だった君を思い続けてる。でも、このままじゃ共倒れだ」
「其の通りだ。私には――貴方たちの心の機微をすべて推し量る事は出来ないが……百合殿はかすみ殿の死を望んでいるのか?」
『そんな……違う! 私はただ!』
 ぞわり、と黒霞が蠢いた。片手を刀に添えながら、まだ抜刀せず乙女は頷く。
「そうだ。友人の死を望む者など存在しない。しかし、百合殿。貴女がしているのは、“そういう事”なのだ。ゆっくりとかすみ殿を冥府へと誘っているのを、判っているのか」
『……。違う、違うわ。わたしは、かすみと、日常を……まだ、まだ生きていたかったのよ……』
 ぽろ、ぽろ、ぽろ。百合の頬を伝う、黒いタアルのような涙。
「ねえさま」
『かすみとお茶をして、お稽古をして、扇座で舞台に立って……私はもっと、もっと生きたかった!! 間藤百合として、たくさんの人を、かすみを笑顔にしたかった! どうして、どうしてまだ何も出来てないのになにもかも奪われるの!? どうして死ななきゃいけなかったの……! 誰かを憎んだ訳じゃない、私はただ、まだ、生きていたかった!!』
「……」
 乙女は押し黙る。それは余りにもあけすけな、生命の叫びだった。まだ生きたい、もっと生きたい、死にたくなんてなかった――原初の欲求は乙女の心を鈍く揺らす。
「……言葉が通じるというのも、考え物だな。だが、百合殿。私たちは其の願いを聞く訳にはいかない」
「そう。――このカフェーで、百合さんのティーカップを見つけた。もっとティーカップだって使われたかったはず。でも、もうこのカフェーは閉まっているし、ミルクセヱキも出て来ない。……この世界なら、まだやり直せる。新しい魂として生まれ変わって、形は違っても、また出会える事を祈ろう。今度はティーカップを2人で並べて、一緒に……」
「……」
 かすみはじっ、と黙している。いや、違う。泣いていた。かすみは黙ったまま、ずっとぼろぼろと泣いていた。百合の叫びを聞いた時から、彼女の涙はこけた頬を伝っていた。
「……百合、ねえさま」
『かすみ?』
「……珈琲が、飲みたいです。最後に、ねえさまと」
『――かすみ、あなた』
「私、死んじゃうのかなって思ってたんです。でも、ねえさまのせいでそうなるなら、いいや、って思ってたの。でも、皆のお話聞いて、違うんだ、駄目なんだって……! 正しいのは、百合ねえさまが本当に幸せになるためには、今のまま私が死んだら駄目なんだって……!」
「……そうだ。今のままかすみ殿が命を落とせば、2人そろって影朧となるか、或いは百合殿がまたさまよい始めるだけだ。そんなのは誰も報われない」
「今ならまだ間に合う。……生まれ変わった百合に会う事を夢見ながら、生きることが出来る」
「……うん、……うん……!」
 こくり、とかすみが泣きながら頷く。
 想った人がいた。この人の為なら死んでも良いと思った。でも、そのあと一緒にいられるだなんて、誰にも保証されていないじゃないか。
 私なら、生まれ変わったねえさまを見付けられる。どんな赤ん坊でも、性別が違っても、きっと、きっと――



「……」
 乙女が淹れた珈琲は、2人分。かすみはそっとカップに口を付け、にがい、と泣きはらした瞳を瞬かせた。
『……ミルクセヱキは、また今度になってしまったわね』
「……。ねえさま」
『ごめんなさいね、かすみ。結局私は、あなたをいたずらに振り回しただけだった。まだ生きていたいというわがままに、貴方の命を使おうとしていた』
 影朧の百合は、すっかりと大人しくなっていた。其の瞳を伝うのはタアルのような涙だけれど、……其処には確かに、理性があった。
「いいの、ねえさま。私は、それでもいいと思ってたんだから、いいの」
『かすみ……』
「私ね、おばあさんになるまで生きるわ。其れでね、子どもたちにねえさまの事を話すわ。扇座にはとても素晴らしいスタア、間藤百合がいたんだって。わたし、ねえさまの……一番のファンだったのよ、って」
 周囲の風景が、百合が霞んで見えた。
 いや、百合が霞んで見えるのは、それを見守る猟兵たちも同じだった。桜色の泡になって、百合の体が解けてゆく。
『……そう。其れは、何より倖せね。かすみ、その為にはしっかり食べて、しっかり寝るのよ』
「ふ……っ……!」
 もうかすみは涙で言葉を紡げない。これでお別れ。大好きだったねえさまは、過去の人になる。私は其れを、辛くても辛くても苦しくても、乗り越えなければならない。
『泣いて良いわ。たくさん泣いて、そして、いつか笑いなさいな。私はね、かすみ。貴方の笑顔が、いっとう好きよ。……』
 百合が立ち上がる。猟兵たちの方を振り返ると、ゆっくり一礼した。
 黒髪の艶やかな、振袖に袴のよく似合う女学生だった。

「有難う御座いました」

 やがて周囲を桜色の光が覆い、照らし――間藤百合の魂は、輪廻の輪に戻っていった。
「……ねえさま」

 百合ねえさまは、百合の花。
 馨しい薫りを振りまいて、帝都の街を歩いていた。
 振り返らない殿方はいなくて。振り返らないレデイだっていなくて。そう、だれもが振り向く、百合ねえさまは理想のお人だった。

 私は、百合ねえさまのようになれるかしら?
 いつかおばあさんになったとき、こんな人だったのよ、って、ねえさまの真似を出来るかしら。
 私の大好きだった、百合ねえさま。
 きっと、ずっと、忘れないわ。だから、……また何処かのカフェーで、会いましょう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月09日


挿絵イラスト