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おやすみの挨拶は「くっ、殺せ」

#ダークセイヴァー

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#ダークセイヴァー


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「猟兵の皆さま、よくいらしてくだされた。オブリビオン事件である」

 猟兵達の拠点「グリモアベース」
 そこに集まった猟兵たちに、クリーク・クリークフリークスは口を開いた。
「場所はダークセイヴァー。オブリビオンに支配された暗黒の世界である」

 夜と闇に覆われ、異端の神々が跋扈する世界。人々はオブリビオンであるヴァンパイアに破れ、日々に笑顔はなく、過酷な支配が行われている。
 そんなダークセイヴァーの一地方に、強制収容所があることをクリークが突き止めた。

「将来の見えない、ただ辛いだけの日々。昨日より今日は苦しく、明日はもっと苦しくなる。そういった現実に生きる意味を失った現地の人々が連行され、強制収容されているである」
 まだ正体まではつかめていないが、収容所を指揮しているのがオブリビオンなのは疑いがない。収容された人々がどのようなあつかいを受けているのか不明だが、今までに生きて出たられた囚人はいない。なんとかこの所長を討伐し、人々を救って欲しい。
 だが一つ問題がある。とクリークは続けた。
「この収容所であるが、実際に収容者たちを管理しているのはオブリビオンではなく、人間なのである」
 どういった理由で彼らが同じ人間を牢に繋いでいるかはわからない。長いものには巻かれろ。これもまた暗い世界を生き抜くための手段なのかもしれない。
 しかし人間である以上、問答無用で殺害して収容者たちを開放するという手段は勧められない。それではダークセイヴァーを支配するオブリビオンと何ら変わらない。
「それに、所長に関しては分からないことが多いである。普段はどこにいるのか、どのような理由で収容所を運営しているのか。……拙草の予知の不甲斐ないことである」
 かぶりを振ってクリークはそっと目を伏せた。
「そこで、尊公たちには収容所に仕える人間……仮に看守としておこうか、看守と接触し、収容所や所長に関する情報を得てほしいのである」
 もちろん看守に頼らずとも、内部に侵入して自分の足で調査する方法もある。具体的な手段は猟兵の得意な方法に任せたい。
「それと、役に立つかはわからないが、一つ予知があるである。語尾に"くっ、殺せ"とつけてしゃべることで、看守たちは猟兵に多少の親近感を得るらしいである」
 機会があればうまく使って欲しい、とクリークは結んだ。

「あの闇で覆われた地の人々に必要なのは、希望の灯りである。
 転移の維持のために、現地での行動は尊公たちにすべて頼ってしまうことになる。
 しかし、どうか人々に希望を示し、心を救って欲しいである」
 そう言ってクリークは深々と頭を下げた。


斑鴉
 お久しぶりです。斑鴉です。
 皆さま新年はいかが過ごされましたでしょうか。
 私は怖くて体重計乗れないほど食っちゃ寝でした。

 ダークセイヴァーの謎の収容所、どんな秘密が猟兵たちを待ち受けているか。
 プレイングお待ちしております。
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第1章 冒険 『強制収容所を開放せよ』

POW   :    暴力を背景に脅しつけ吐かせる等

SPD   :    書類、日記等情報源を盗む。周囲を探索する等

WIZ   :    口車に乗せる等

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ソフィア・リューカン
「それなら、私はバレないように調べてくるわ!」
【SPD】希望です。
・自身のSPDを頼りに、収容所に潜入します。基本方向は隠密で、敵にバレないよう慎重に行動します。
・もし見つかりそうな場合は、石を投げて音を出したり、人形たちや念動力を使って敵に見当違いの方向を探させて自分は逃げます。
・可能なら、何かしらの情報媒体は入手したいですが、そういった場所には人の目はあるはずです。その際は砂やサイキック能力による電流で目潰ししている隙に、回収を狙ってみます。

「同じ種族の人が争うことはあるけど……ここの人たちは、何か事情がありそうね。少し調べなくちゃ……くっ、殺せ?」

※アドリブ・他者との協力歓迎です。



昼なお昏いダークセイヴァー。
その僻地に聳える納骨堂のような寂れた収容所に、
音もなく一人の女の子が侵入しようとしていた。

「私はバレないように調べてくるわ!」
多くの人間が収容されているはずなのに人気のない収容所。
人間の人形遣い、ソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)は
人形を注意深く動かして警備の届かない勝手口から侵入を果たした。

ほとんど人の気配がない収容所。
わずかな音でも命取りになるかも知れない廊下を
息を潜めて足音を殺し、慎重に静かに素早くソフィアは進んでいく。
客観的に見ればソフィアは注意力に欠けるポンコツと呼ばれるタイプかもしれない。
しかし捨てる神あれば拾う神あり。集中力の神に疎んじられても、幸運の神はソフィアを気に入っているのかもしれない。
時折つまずいたりしながらも、誰にも見つからずに
ソフィアは書庫と思しき部屋にたどり着いた。

「同じ種族の人が争うことはあるけど……ここの人たちは、何か事情がありそうね。少し調べなくちゃ……くっ、殺せ?」
特に聞いている者はいなかったのでその言葉は効果を表さなかったが、
読みづらい神経質な文字で書かれた書類を手際よく調べていくうちに、ある推察がひらめいた。
「ここ、地下があるのね。かなり広い……ううん、この感じだと地下がメインかもしれないわ」

つぶやいたソフィアははっと口元を手でふさぐ。
間違いない。誰かの足音がこの書庫に近づいてくる。おそらくは巡回。
見つかればいろいろとややこしいことになる。
そっと壁に背をつけて目を閉じて集中する。
こんなこともあろうかと、すでに用意は整えてある。
廊下には砂鉄混じりの砂を一握りばらまいてある。
それをサイキック能力で発生させた電流で遠隔操作。
暗い廊下で人影に見えたり消えたりする砂鉄を追いかけ、巡回者は離れていった。

この施設の地下でなにかが行われている。
まだピースが足りず事件の全容は掴めない。
しかしソフィアが重大なピースを手に入れたのは間違いなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月隠・三日月
私は看守に接触して、所長について尋ねてみよう

収容所周辺に見回りをしている看守がいたら、うっかり見つかってしまった風を装ってこう言ってみよう
「っ、見つかってしまったか……。囚われて生き恥を晒すなんて私には耐えられない……くっ、殺せ」
……これで親近感が得られるというのも妙な話だけどね。生き延びられるに越したことはないと思うけれど、この世界はそれだけ絶望に呑まれてるってことなのかな

看守が話を聞いてくれそうだったら『友人が収容所に入れられてしまったから、どうしても中の様子が知りたい』という体で話をしよう(この世界に友人はいないけど)
『悪逆非道な所長に虐げられてるんじゃないかと、心配で心配で』とかね



月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)は
忍として鍛えた隠形の技をあえて使わず
わざと目立つように収容所の周辺を探るふりをしていた。
呼称"看守"と秘密裏に接触し、情報を聞き出すためだ。

果たして、ほどなく20代後半の看守と思しき男性が三日月に近づいてくる。
「っ、見つかってしまったか……。囚われて生き恥を晒すなんて私には耐えられない……くっ、殺せ」
その言葉を聞いた看守は、持っていた鉄の棒を下げた。よくわからない予知ではあったが、効果はあるようだ。
「はん、もう一人分ベッドが必要になるかと思ったが、アンタはまだそっちには行ってないらしいな。くっ殺せ」
「そっち、とはどういう事なのかな。くっ殺せ」
「オレたちは無差別に誘拐して強制収容させているわけじゃない。収容者には基準があるのさ、ということだ。くっ殺せ」

よく分からない。
しかしここで引くわけにはいかない。三日月は言葉を続けた。
「友人がこの収容所に入れられてしまったから、中の様子を教えてほしいんだ。くっ殺せ」
「それはそれは……。くっ殺せ」
看守の顔に侮蔑の笑みが浮く。
「その友人とやらは、二度とここから出ることはない。別に強制労働や拷問はしていない。その友人が、所長様の慈悲の元に自ら進んで死に至るだけだ」
いやらしい侮蔑の笑みがもっと深くなる。
「もし誰か"友人"がそいつが壊れる前に助けてやれていれば、こんな事には……いや、こんな世界じゃ詮無いことか。くっ殺せ」

用事は済んだ、興味は失せた、と再び巡回に戻ろうとする看守の背中に、三日月は声をかけた。
「なら、収容者を分ける基準とはなんなのかな? ……くっ殺せ」
「世界に絶望し、もう生きていたくないと命を諦めたかどうかだ。もう生きたいと思う力がなければ"くっ殺せ"なんて言わないから、そういう奴は見逃している。くっ殺せ」

もしかしたら、この所長とやらは多少毛色が違うオブリビオンなのかもしれない。
去っていく看守の足元を見ながら、三日月はそう考えた。

成功 🔵​🔵​🔴​

花盛・乙女
人が人を収容する施設、か。
力無き者が生き残るにはそうせざるを得ない、等というのは道理とは言わん。
希望の光無く生きる者の光になることもまた猟兵の務め。
この花盛乙女、課せられた使命を武勇にて果たすとしよう。

方策は色々あるかもしれが、悪事を成すわけでもない。正面から看守に尋ねるとしよう。
私は旅の剣士をしている花盛乙女。この収容施設の首魁の悪評を耳にしてな、少々聞きたいことがあるのだがいいかな?
適当な小石でも握り砕いてみせれば脅しとしては充分だろう。

願わくば、看守とやらが男でないことを祈りたいところだ。
男は苦手だ…もし囲まれたりしたら、どんな目にあうか…
考えるだけでも恐ろしい。考えないようにしよう。


トレイシー・ライト
折角だし看守とやらと話でもしようかくっ殺せ。熱心じゃない看守志望を装って話を聞いてみようくっ殺せ。
この仕事楽しいのかい、くっ殺せ? もし空席があるなら俺も一枚噛ませてもらいたいんだけどくっ殺せ。
折角だから所長に会えないかも聞いてみるかくっ殺せ。なに、会ってみたら雇ってくれるかもしれないだろくっ殺せ。
情報を得られたら気が変わったことにして一度その場を離れようくっ殺せ。……ところでくっ殺せってなんなんだよくっ殺せ。



「力無き者が生き残るにはそうせざるを得ない、等というのは道理とは言わん」
人が人を収容する施設。同族を売り、強きになびく看守たちを一言で切り捨てて
羅刹の女性が収容所へと進んでいく。
花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)である。
女系羅刹の刀剣衆の隠れ里で一番の刀剣士である乙女の目には
より弱い者を苛む看守たちの惰弱は醜さ極まるものに映るのだろう。
「希望の光無く生きる者の光になることもまた猟兵の務め。この花盛乙女、課せられた使命を武勇にて果たすとしよう」

堂々と正面から歩みを進める乙女に、入り口を警備していた看守が近寄ってくる。
男性だ。女の里で教わった様々な知識が乙女の警戒度を跳ね上げる。
しかし努めて表情には出さず、真正面から看守を問い詰める。
「私は旅の剣士をしている花盛乙女。この収容施設の首魁の悪評を耳にしてな、少々聞きたいことがあるのだがいいかな?」
そう言いながら足元の小石を一つ拾い上げ、脅しも兼ねて握りつぶしてみせる。
しかし看守は一瞬だけ怯えたような顔をしたが、すぐに下卑た笑みを浮かべて
乙女のつま先から頭まで、胸元から腰回りまで無遠慮な視線を這わす。
彼らは特に敏感なのだ。他人の弱みに対しては。
やがて他の看守たちも駆けつけてくる。男ばかりだ。
囲まれてじろじろ見られると、乙女も押し殺していた緊張を隠せなくなる。
「くっ…剣士として生きるこの私に、女であるというだけで、辱めを与えようというのか! この痴れ者が!」
男性への苦手意識が高じると殺傷力が増す乙女のユーベルコード、
折れず曲がらず散らぬ誇りは花より強く(ワタシニランボウスルキダロウエロドウジンミタイニ)。
もし炸裂するようなことがあれば、看守たちは一片も残さず塵に帰るだろう。
しかしそんなことは知らない看守の一人が、よだれを啜りながら
ついに乙女の胸の膨らみに手を伸ばし――

「なぁ、この仕事楽しいのかい、くっ殺せ?」
その手が触れる前に惨劇を回避したのは、横から現れた人狼の青年の一言だった。
トレイシー・ライト(スターシーカー・f05807)だ。
普段は他者への関心も薄く、自分本位に生きようと思っていても
他人の厄介事を見過ごせずつい首をつっこんでしまうこともある。それが彼である。
看守たちは突然の邪魔に殺気を膨らませたが、すぐに感情を押し込んだ。
引き際を察せない者から順に死んでいく。ダークセイヴァーとはそういう世界だ。
「看守志望なんだが、もし空席があるなら俺も一枚噛ませてもらいたいんだけどくっ殺せ」
あえて空気を読まず探りをいれるトレイシーに、看守は口元を歪めてみせた。
「だったらテストを受けてみろ。くっ殺せ」
「テストくっ殺せ?」
「オレ達の代わりに、そこの女を乱暴して見せろ。オレ達の眼の前でな。くっ殺せ」
「…………」
「ほら、どうした? 看守になりたいんだろう? くっ殺せ」
「………………。くっ殺せ」
「ふん、不合格だ。お前はオレ達みたいなクソじゃない。さっさと帰りな。くっ殺せ」
「まぁ待てよ。折角だから所長に会えないか? なに、会ってみたら雇ってくれるかもしれないだろくっ殺せ」
「所長はとても慈悲深い。所長はこの収容所にいらっしゃる。オレ達はこの収容所を自由に歩ける。しかし所長に直接お会いした看守はいない。この意味が分かるか? くっ殺せ」

答えを聞こうともせず、看守たちはその場を離れていった。
このまま突入するのはリスクが高いと考え、トレイシーは乙女と共に一度その場を離れることにした。
「……ところでくっ殺せってなんなんだよくっ殺せ」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

フォルター・ユングフラウ
我は、殺されるより殺す方が趣味だな…あぁそうだ、もう殺して欲しいと嘆願して来る程に、たっぷりと可愛がるからな。
まぁいい、使える情報であるならば使ってみるか。

【WIZ】を活かした上で、誘惑を駆使して看守を堕としてやろう。
人間如きが我の色香に抗えるか、実に楽しみだ。
駄目押しで、耳元で甘く囁いてやろうではないか…くっ、殺せ、とな。
誘惑で看守を堕とす事が出来れば、UC:ヴィーゲンリードで我の傀儡にしてやろう。
操れる時間は、68分。
これだけあれば、周囲の目を盗んで書類や重要情報源を持って来させる事も可能だろう。
知っている限りの情報も吐かせてみるか。
その後は、適当に縛って物陰にでも転がしておこう。



正門からやや離れた物陰で、一人の女性が思案していた。
「我は殺されるより殺す方が趣味だな……あぁそうだ、もう殺して欲しいと嘆願して来る程に、たっぷりと可愛がってやろうか」
フォルター・ユングフラウ(嗜虐の乙女・f07891)。
ダンピールの女性であるが、その心のあり方は母であった人間よりも父であった吸血鬼に近い。
父を殺め、受け継いだ領地の民たちも殺めた女帝には、死を哀願するような言葉を吐く自分を想像し難いのかもしれない。だからこそ、戯れとしては面白い。

折しも二人の看守が遠くから歩いてくる。
「さっきの女、惜しかったな。くっ殺せ」
「欲かいて死んだら終わりさ。くっ殺せ」
「でも世の中には天丼って食い物があるらしい。くっ殺せ」
「ほう、どんな食べ物だ。くっ殺せ」
「よく知らないが、同じ物を三回食うのが礼儀らしい。だったらオレたちも、またなにかチャンスが――」
他愛もない話をしていた二人の視線がフォルターの美貌に止まる。
間違いない。こいつは"食う"側の生き物だ。
高貴で淫靡な微笑みを返したフォルターを見た一人は、踵を返して死に物狂いで逃げ出した。
しかし先ほどの事件で調子に乗っていた一人は、また美味しいめぐり合わせがあるのではと一瞬だけ立ち止まる。
その一瞬で充分だった。
必死で警告を鳴らす脳を裏切り、フォルターの女帝の微笑から目が離せない。
女帝は静かに男に歩み寄り、少し背伸びして耳元でささやいた。
「……くっ、殺せ」

ユーベルコード:心壊す揺籃歌(ヴィーゲンリード)。
高き者の誘惑に抗えるはずもなく、看守はフォルターの傀儡になった。
その後のことはよく覚えていない。
手早く内部から収容所の地図を持ってきて、
棺に閉じ込めた囚人たちを押し込める部屋の位置に印をつけた。
看守の仕事は抵抗する心も壊れた囚人を棺に入れて決められた部屋に運び
翌日に眠ったまま起きなくなった囚人を空き部屋に移し
本当に死にそうになったら再び決められた部屋に移すこと。
思いつくことは洗いざらい口にしたと思う。
あとはずっとなにかをされていた。
痛かったのかもしれないし、苦しかったのかもしれない。
気づくと看守は縛られたまま物陰に転がされていた。
彼が女帝の気まぐれに感謝する日がくるのかどうか、誰にもわからない。
今はひたすら眠かった。
「……くっ、殺せ」
もう口癖になった言葉を吐いて、男は眠りに身を委ねた。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『残影』

POW   :    怨恨の炎
レベル×1個の【復讐に燃える炎の魂】の炎を放つ。全て個別に操作でき、複数合体で強化でき、延焼分も含めて任意に消せる。
SPD   :    同化への意思
【憐憫】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【異形の肉塊】から、高命中力の【絡みつく傷だらけの手】を飛ばす。
WIZ   :    潰えた希望の果て
【悲観に満ちた絶叫】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
👑11
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種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


猟兵たちの集めた情報が組み合わさって、解決への道筋が見え始める。
収容所の地下へと通じる一室。その先に所長……オブリビオンがいるのだろう。
分からないのは、なぜそのオブリビオンが心の壊れた者を収容し、生かすでも殺すでもなく眠りにつかせているのか。
考えるのは後でいい。
猟兵たちは地下へとおりる。
そこにいたのは無数の「残影」
無念を残して死んだ魂、それ一つ一つでは無力でも混ざり合い膨張することで明確な脅威となった者たちだ。
周囲に積み上げられた箱は収容者たちの棺だろう。
今は収容者だった魂を打ち払い、奥に進むしか手は残されていない――
フォルター・ユングフラウ
ふん、残り滓がうようよと。
くっ殺せだか何だか知らぬが、望み通りきちんと殺しきってやろう。
我の城の地下にも、この様な残影が漂っているかもしれぬな…戻れば井戸でもさらってみるか、ふふっ。

我は、【WIZ】を活かした立ち回りを心掛けよう。
残影に効果があるかはわからぬが、誘惑、恐怖、催眠、呪詛…様々な状態異常を駆使して戦闘を有利に運びたいところだ。
UCは、ヴィーダーゲンガーを使う。
146にも及ぶ死霊の腕に抱かれ、今度こそ永き眠りにつくが良い。
敵の攻撃は極力回避するが、避けられぬ場合もあろうな。
負った傷は、吸血や生命力吸収で賄おう。


ソフィア・リューカン
【SPD】
「……この箱、もしかして……ここの人たちが、とても可哀想だわ」
・その影と周囲の風景から、その意気先をなんとなくであるが察し、可哀そうだと思ってしまいます。
・とはいえ相手は敵。敵の攻撃をサイキック能力である超感覚を駆使して観察し、動きがみられた瞬間に歩き慣れてない地面に足を滑らしたようなふりして床に寝ころび、力を抜きます。
・どんなに怖くても目をつぶって恐怖に耐え抜こうとします。敵の攻撃がやんだ瞬間に開眼し、人形から敵の攻撃を排出します。

「……ごめんね。本当に、ごめんね……」と涙を少し零しながらつぶやいています。
※アドリブ・他者との協力歓迎です。



「……この箱、もしかして……」
周囲に積み上げられた棺と残影たちを見て、先頭で突入した
ソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)は心を痛めた。
棺で眠らされているとは言っても人間は人間。
水分も栄養もなければ遠からず死ぬだろう。
「モウ、イヤダ……クルシイノハイヤダ……デモイキテイタカッタ。シネ」
その成れの果てたちが怨嗟の言葉を呟きながら近づいてくる。
それでも彼らは敵である。私情を挟めば死ぬのはこちらだ。
冷静に残影たちの動きを観察し、その攻撃を予測する。
ただの予測では足りない。予知にも近い高精度の予測を叩き出せるのはサイキッカーとしての超感覚あってのことだ。
そして、予測はできた。
ソフィアは意を決し、一歩前に踏み出して、すってーんとものの見事にすっ転んだ。
別にソフィアがドジだからではない。客観的に見てポンコツ扱いされることは多いが。
すべては計算によるもの。寝転ぶフリをしたソフィアの完全な脱力状態がそれをものがっている。
ユーベルコード:オペラツィオン・マカブル。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無力化して人形から吐き捨てる技だ。
憐憫の情を感じ取った残影から傷だらけの手が伸びる。
ソフィアは脱力を維持し、その攻撃を無効化していくが……
怖い。
その感情に押され、つい、つぶる瞼に力を込めてしまった。
オペラツィオン・マカブルは完全な脱力状態以外で攻撃を受けると二倍の被害をもたらす諸刃の剣だ。
完全な脱力が維持できず、乱した心はすぐに元には戻らない。
そこにさらなる残影の手が伸びて……

「ふん、残り滓がうようよと」
救いの手は唐突に差し伸べられた。
フォルター・ユングフラウ(嗜虐の乙女・f07891)だ。
ソフィアとは対象的に、有象無象の心情など斟酌してやる価値もないと
女帝の余裕と傲慢で残影たちを見下ろしている。
「我の城の地下にも、この様な残影が漂っているかもしれぬな……戻れば井戸でもさらってみるか、ふふっ」
無慈悲な笑みに残影たちが集まってくる。
そして発動するユーベルコード:貪れ、狂え、帰参者よ(ヴィーダーゲンガー)
召喚された、ただれた腕が死角から残影たちに群がる。
フォルターと五感を共有する腕の本数、146本。
その一本一本を正確に操り、誘惑、恐怖、催眠、呪詛、様々な呪いを振りまいていく。
もとより残影は精神だけの存在、精神を乱す攻撃は覿面に効く。

「ほら、大丈夫か?」
「……ありがとう、ございます」
「礼などいらぬ」

146の腕を個別に操るほど集中していると、どうしても避けられない攻撃はでてくる。
しかしイレギュラーな攻撃は立ち直ったソフィアがオペラツィオン・マカブルで的確に抑え、人形から排出していく。
ときおり当たる攻撃も、生命力吸収で収支を戻す。
やがて二人の周囲に敵はいなくなっていた。

「……ごめんね。本当に、ごめんね……」
涙を少し零しながら呟くソフィア。
しかし、まだ戦いは終わっていない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月隠・三日月
死にたくないのに、殺せ殺せと言い続けるのは疲れるね
しかし、生きる意思がなければ殺せとは言わない、か。不思議な理屈だけれど、この世界の人だからこそわかる何かがあるのかもね
ここの人たちを解放するため、もうひと頑張りだ

あの箱、この世界の棺桶なのかな。もうこんなにも犠牲者が出ていたのだね
申し訳ないけれど、これ以上の犠牲を防ぐため、残影たちには退いてもらおうか
《妖刀》を抜いて振り回し【羅刹旋風】で威力を高めて斬り払うよ。この呪われた刀なら、精神だけの存在にも効くんじゃないかな
命中しにくい技だけれど、これだけ多くの残影がいるなら誰かには当たるだろう
大雑把だって? 繊細な戦い方は苦手だから、仕方ないんだよ


トレイシー・ライト
出たな、くっころ……あ、もういいんだった。
収容者だった魂が化けて出るってことは、結局生きることを諦めきれてなかったってことじゃないか。……だからついこの世界に足が向くんだろうな。本当に心の底から人生諦めたやつなんて、助け甲斐もないしさ。
離れたところからユーベルコード【ウィザード・ミサイル】で攻撃する。同情しないわけじゃないけど、先に進まないとずっとこのまま、何も変えられないから。今は考えるのやめて、徹底的にやる。
終わったらさっさと先に進む。冥福を祈るとか、そういうのは後回しだ。……でも一度だけ、棺の方を振り返る。何かするわけじゃないけど、なんとなく、な。



「出たな、くっころ……あ、もういいんだった」
人狼の青年、トレイシー・ライト(スターシーカー・f05807)も
ほぼ時を同じくして地下に突入していた。
無数にひしめき、こちらに気づいたものからのろのろと近づいてくる残影を見て、寂しさとも暖かさともつかないなんとも言えない気持ちが浮かぶ。
「魂が化けて出るってことは、結局生きることを諦めきれてなかったってことじゃないか」
もしかしたらただの感慨かもしれない。情など挟む余地のない冷たい自然現象の果てが、この現実かもしれない。でも、もしかしたら本当に、最後に残った本能が生きていたいともがき続けた結果かもしれない。
……だからついこの世界に足が向くんだろうな。本当に心の底から人生諦めたやつなんて、助け甲斐もないしさ。

こつん、とわざと小さな足音を立てて、もう一人の男がトレイシーの隣に立った。
月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)。羅刹の化身忍者である。
幼少より鍛えられた忍び、表情にこそ出さないが、心の中ではこの理不尽な世界の道理に思いを馳せていた。
思い浮かぶのは看守の言葉。
「生きる意思がなければ殺せとは言わない、か。この世界の人だからこそわかる何かがあるのかもね」
矜持の最後の一欠片、凄惨な現実に抗い続けて燃え尽きた心の灰のあり方。きっとそんなものなのだろう。
「ここの人たちを解放するため、もうひと頑張りだ」

二人が視線を交わしたのは一瞬。
現地集合の出来合いコンビではあるが、双方共に経験を重ねてきた猟兵だ。それで充分。
まず動いたのは三日月だ。
ユーベルコード:羅刹旋風。
武器を振り回しながら残影の密度が最も濃い場所に突っ込んでいく。
命中率に難のあるユーベルコードだが、敵も多い。当たると幸いなぎ倒し、もっと密度の濃い場所に、もっともっと密度の濃い場所に、生きた暴風のように突撃していく。
「大雑把って言われても、繊細な戦い方は苦手だから、仕方ないんだよ」
当然撃ちこぼしも多い。三々五々に残影が三日月の側面や背後に周り、殲滅で足の止まった三日月を押しつつもうとして。
トレイシーのユーベルコード:ウィザード・ミサイルの炎の矢が、そんな残影たちを一体一体丁寧に焼いていく。
残影たちの境遇に同情しないわけではない。しかし、ここで足踏みして悲しい犠牲者を出し続けないため。
……今は考えるのやめて、徹底的にやる。

戦い方がぴったりと嵌った共闘で、地下に蠢く残影は目に見えて少なくなった。
あとは後続に任せ、先に進もう。
冥福を祈るとか、そういうのは後回しだ。
だが、トレイシーは一度だけ棺の方を振り返る。
何かするわけじゃないけど、なんとなく。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

花盛・乙女
結局「くっ、殺せ」とはなんなのだろうか。
…まぁいい、詮無きことだ。今は目の前の迷える魂の浄化に心を砕こう。

さて、先達が随分と数を減らしてくれたようだ。
なれば私は残り全てを払うとしよう。
黒椿と乙女の二振りを構え斬り進む。
剣刃一閃、私の刃の一閃の元に、現世に残した後悔と未練共々断ち切ろう。
迷う者たちは罪なきことを知っているが、罪を犯す前に現世から絶つこともまた餞別となろう。

すまないな。間に合わず、救えなかったことは怨んでくれていい。
貴方達の無念の死に報いる為、私は刀を振ろう。
必ずやこの奥に潜む悪を討つ。猟兵の名と花盛乙女の名に懸けて。



「結局"くっ、殺せ"とはなんなのだろうか」
どことなく納得の行かない顔で、羅刹の女性が地下に降りてくる。
花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)だ。
長年の絶望的に過度なストレスに晒されて歪んだ思考の産物に、なにか理不尽なものを感じたのかもしれない。特に曲がったことの嫌いな乙女ならば尚更に感じることもあったのだろう。
「……まぁいい、詮無きことだ。今は目の前の迷える魂の浄化に心を砕こう」
そして一瞬で思考を切り替える。
残された残影はもう一握り。
なれば私は残り全てを払うとしよう。
構えるは小太刀【乙女】と極悪刀【黒椿】。
敵は魂の混ざりあった、そもそも形のない影。
斬って斬れるものではないが――
ユーベルコード:剣刃一閃。
二振りの刃が地下室の淡い灯りにきらめきながら、斬れぬ影を両断し、後悔と未練共々現世から消し去っていく。
「間に合わず、救えなかったことは怨んでくれていい。貴方達の無念の死に報いる為、私は刀を振ろう」
死者を悼む鐘のように乙女の唇からこぼれた言葉が周囲に響く。
やがて気がづけば、全ての残影は抱えていた無念と共に消え去っていた。

「必ずやこの奥に潜む悪を討つ。猟兵の名と花盛乙女の名に懸けて」
すまないな、の一言は、静かに闇に溶けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『幻想術師『パラノロイド・トロイメナイト』』

POW   :    記録■■番:対象は言語能力を失った。
【夢幻の眠りを齎す蝶の幻影 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
SPD   :    記録■■番:対象の肉体は既に原型を留めていない。
完全な脱力状態でユーベルコードを受けると、それを無効化して【数多の幻想が囚われた鳥籠 】から排出する。失敗すると被害は2倍。
WIZ   :    記録〓編集済〓番:〓編集済〓
対象のユーベルコードに対し【幻惑し迷いを齎す蝶の群れ 】を放ち、相殺する。事前にそれを見ていれば成功率が上がる。
👑17
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠鶴飼・百六です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


死臭漂う闇深い地下室のさらに奥、所長室にオブリビオンはいた。

「なぜ邪魔をするのです猟兵よ」
不定形の体、仮面をつけているから頭部とわかるそこから言葉が聞こえる。
「もう生きてなどいたくないと嘆く絶望に砕かれた者たちを、夢見て眠るまま静かに息絶えさせてあげる。私の救済を妨げるというのなら、よりよい救いをこの昏い絶望の地にもたらすことができるのですか、猟兵よ」
不定形のオブリビオン、幻想術師『パラノロイド・トロイメナイト』は眠れるまま死に至った魂たちの入る鳥かごを揺らし、静かに立ち上がる。

「できないというのなら、貴方たちにも救いを差し上げましょう。猟兵よ」
月隠・三日月
成程、救済ね。もう生きていたくない人を静かに殺してやるのが、救済だと言うのだね
……それで、その『救済』はここの囚人が望んだことなのかい? ここの囚人は、自ら死を望んでここを訪れたのかな?
まあ、どちらでもいいけれどね。オブリビオンを斃すのが、私のやるべきことだから。所長さんの死を以て、『よりよい救い』とやらに代えさせてもらうよ

【降魔化身法】で甲冑を纏い、自身を強化するよ。代償は受けるけれど、オブリビオンを斃すまで保てばいい
細かい駆け引きとかは苦手でね、正面から《妖刀》で切り込むよ。私の攻撃は防がれるかもしれないけど、少なくとも敵の注意は引けるんじゃないかな。味方の行動の助けになれば儲けものだよ


ソフィア・リューカン
「……あの惨状を見て、はいそうね!……何て、言えるほど、私は馬鹿じゃないわよ!あの人たちは、生きていたかったって、言っていたのよ!それを救済だとか、ふざけないで!」
【SPD】
・【楽園人形劇】を発動し、手持ちの2体と念動力で操作する18体の人形で攻撃します。
・「あんな分かりやすい物、早く対処するのが吉よ!」【念動力】や数体の人形たちによる【衝撃波】、もう数体の礫による【援護射撃】による攻撃を仕掛けていきます。ただし、本体を狙うという【フェイント】を交えつつ、鳥籠へと【盗み攻撃】を仕掛けていきます。
・「……あれが、私のユーベルコードと、似ているからこそね!」サイキッカーの超感覚は今も健在である。



「成程、救済ね。もう生きていたくない人を静かに殺してやるのが、救済だと言うのだね」
月隠・三日月(黄昏の猟兵・f01960)は柔和な表情を崩さなかった。
「……それで、その『救済』はここの囚人が望んだことなのかい? ここの囚人は、自ら死を望んでここを訪れたのかな?」
しかしそれは、三日月がこのオブリビオンのねじ曲がった主張を受けいれたからでは決してない。

そして、ソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)は
もっと素直に心の内を言葉にしていた。
「あの惨状を見て『はい、そうね!』なんて言えるほど、私は馬鹿じゃないわよ! あの人たちは、生きていたかったって言っていたのよ! それを救済だとか、ふざけないで!」

二人の反応をパラノロイド・トロイメナイトは冷たい無言で受け流す。
狂気に歪んだ思考であっても、嘘でだけはなかった。少なくとも本人の中では。
だから他人にも認めさせようと声高に叫んだりはしない。

重い静寂を破るように、まず動いたのは三日月。
降魔化身法であやかしのものを身にまとい、自らを強化する。
残影はすべて祓われたとはいえ、その原料となった無念の魂は周辺に満ち満ちている。素材に困ることはない。
そして強化された身体能力で敵との距離と自身の寿命を縮めながら、細かい駆け引きは苦手とばかりに正面から妖刀で斬りかかる。
神速の一閃。しかしいかに速くても、なんの工夫もない直線的な斬撃。
パラノロイド・トロイメナイトは不定形の体を揺らめかせて刃をかわす。
だがそんなことは三日月も折込済みだ。
「みんな! 手伝ってね!」
あやかしの毒を身に受け、寿命を妖刀に食わせながら放った一撃は、あくまで目くらまし。
ユーヘルコード:楽園人形劇(パライソドールズ)。
ソフィアが展開した18体の人形といつも手元においている愛用の二体が、それぞれ意志を持つように連携しながらパラノロイド・トロイメナイトへと攻撃を加えていく。
パラノロイド・トロイメナイトは何発かをあえて喰らいながらも体勢は崩さず、反撃のユーベルコードを放とうとして。
人形たちの攻撃さえもフェイントだったと悟った。
「あんな分かりやすい物、早く対処するのが吉よ!」
20体もの人形を有機的に操りながら、さらにソフィアのサイキッカー超感覚でオブリビオンに本命の一刺しを繰り出す。
狙いは――鳥籠。

身を挺して庇おうとしたパラノロイド・トロイメナイトの死角をすり抜け、一撃が鳥籠をオブリビオンの手から弾き飛ばした。
鳥籠は弧を描いて床に落ちると、隙間から虹色の蝶のような大量の魂を放出した。
「むごいことをする。猟兵よ」
頭を振りながらオブリビオンが口を開いた。
「籠の中で混ぜ合わせれば残影として世に留まれるのに、あれでは魂はやがて霧散してしまう。むごいことだ、猟兵よ」

オブリビオンを斃すまで保てばいい。
毒で口元から流れる血を悟られぬよう三日月はパラノロイド・トロイメナイトを見返した。
「オブリビオンを斃すのが、私のやるべきことだから。所長さんの死を以て、『よりよい救い』とやらに代えさせてもらうよ」

まだ戦いは始まったばかり。
しかし鳥籠に蓄えられた力を大きく減らすことができたのは、猟兵に強いアドバンテージとなった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

花盛・乙女
なぜ邪魔をする、ときたか。
貴様との会話は不能と判断してよさそうだ。
死は救いなどではない。ましてや与えられる死が救いなどであってたまるか。

黒椿と乙女の二振りを構え臨む。
不気味な外見通りの幻術使いか。少々骨が折れるな。
であれば先ずは制圧からだ。単純な力と技でもって奴めを斬り捨てよう。
幻術の蝶を出してくれば、私の鬼吹雪でもって全て斬り払う。
この花盛乙女の剣技、羽虫如きも切れぬとなめてもらっては困るからな。

貴様のやったことはただ理由をつけた人殺しだ。
なればその命、人々を憂うフリも出来ないほどに追い詰めてやろう。
苦しんで戦うより、いっそさくりと眠るが良い。救いらしいからな、貴様には。



「……貴様との会話は不能と判断してよさそうだ」
今まで、この狂った理屈となんとか折り合いをつけようとしてきた。
理解できずとも、なんとか分かろうとしてきた。
しかし花盛・乙女(誇り咲き舞う乙女花・f00399)は、パラノロイド・トロイメナイトの言葉についに決別を口にした。
「死は救いなどではない。ましてや与えられる死が救いなどであってたまるか」
それが誇り高く曲がったことの嫌いな乙女が出した答えだった。

構えるは二振り、【黒椿】と【乙女】。
パラノロイド・トロイメナイトは呼応するように残された力から無数の蝶を生み出す。
そう広くはない地下室。蝶たちは空間を埋め尽くすように広がり、居合わせる猟兵たちを無差別に飲み込もうと押し寄せてくる。
だが幻術に幻術で対抗する必要はない。
乙女が選んだのは、単純な力と技量。
ユーベルコード:花盛流剣技【鬼吹雪】(オニフブキ)
舞うように蝶の群れに相対し、無数の蝶を無数の一閃で一つ残らず一つの誤りもなく切り伏せた。
「この花盛乙女の剣技、羽虫如きも切れぬとなめてもらっては困るからな」

無数の蝶が消え虹色の世界が昏い現実に戻った時、オブリビオンの腹に一筋の裂け目が入った。
乙女が飛ばしていた剣閃だ。
傷はすぐに塞がる。しかしなかったことにはできない。
「貴様のやったことはただ理由をつけた人殺しだ」
乙女が告げる。
「人々を憂うフリも出来ないほどに追い詰めてやろう。苦しんで戦うより、いっそさくりと眠るが良い」

成功 🔵​🔵​🔴​

トレイシー・ライト
俺は別に、誰かを救おうなんて大層なこと考えてここに来たわけじゃない。
この所長の言う救いを本気で求めてるようなやつもいるかもしれないし、そいつらにとっては余計なお世話だろうけど、俺がこいつを倒したいから倒させてもらう。
距離をとりつつから人狼咆哮で攻撃する。周りに他の猟兵がいるなら、できる限り巻き込まない位置に回り込んでからだ。やるまえに一声、耳塞いどけ、くらい言っておこうかな。
何をやっても誰かの絶望になるんだから、開き直って好きにするよ。救済とやらを邪魔されるのも一つの絶望、お互い様だ。……優しい誰かが救ってくれるといいな?



「俺は別に、誰かを救おうなんて大層なこと考えてここに来たわけじゃない」
こつり、という足音と共に、人狼の青年が前に出る。
トレイシー・ライト(スターシーカー・f05807)だ。
「この所長の言う救いを本気で求めてるやつもいるかもしれないし、そいつらにとっては余計なお世話だろう」
普段から気怠げで思慮深いトレイシーが、自身の胸のうちに見出した所長の所業と問いかけに対する答えを口にする。
「だが、俺がこいつを倒したいから、倒させてもらう」
世界には様々な人間がいる。もちろんいつまでも続く無慈悲な日々に耐えられない弱い人間も。所長は本当にそういった人たちを救おうとしているのかもしれない。たとえ狂った心であっても。
そこまで理解した上で、トレイシーは所長の存在を否と断じた。

「耳塞いどけ!」
人狼の俊敏さとウィザードの判断で、味方をできるだけ巻き込まない最適な位置に回り込む。
それでも他の猟兵にむけて警告の言葉を忘れない。
それはトレイシーのユーベルコード:人狼咆哮が、孤高な技の故である。
トレイシーの口から放たれる制御不能の荒ぶる咆哮が、ドラゴンのブレスよりも激しく室内に破壊をもたらす。
もちろん巻き込まれるような間抜けな味方はいなかった。内心ちょっとヒヤッとした者はいたかもしれないが。

パラノロイド・トロイメナイトは既に原型を忘れた体で衝撃を受け流そうとする。
今まで多くの否定の意志を言葉でも態度でも押し付けられてきた。だから今さらそんなもので心を乱されたりしない。はずだった。
しかし内心深くまで刺すトレイシーの否定の言葉がパラノロイド・トロイメナイトの体をわずかに固くさせていた。
人狼の咆哮が不定形の体をばらばらに吹き飛ばす。黒い破片はもぞもぞと集まってまた元の形に戻るが、明らかにダメージは積み重なっている。

「何をやっても誰かの絶望になるんだから、開き直って好きにするよ」
単純に割り切れない様々な苦難を経験してきたトレイシーが呟く。
「救済とやらを邪魔されるのも一つの絶望、お互い様だ。……優しい誰かが救ってくれるといいな?」

大成功 🔵​🔵​🔵​

ソフィア・リューカン
「……ごめんね、少しだけ耐えてね」
【WIS】

・相手は大分弱ってきているはずよ。なら、2体の人形を操作しつつ、敵に急襲を仕掛けるわ。
・当然相手の攻撃らしき蝶が飛び回るはずだけど、私はそれをしっかりと避けられる自信はないわ。だから、人形を遠距離から操作して私自身は蝶たちに当たらないようにしつつ、【サイキックブラスト】を発動して、指で操作している糸から人形に電流を伝わせて相手に感電による【マヒ攻撃】を仕掛けるわ!糸を伝う以上、私にも電流は来るだろうけど、そこは私自身の【電流耐性】に期待して何とか耐えようとするわ。

「これで……どうか終わって……!!」


ニレッド・アロウン
【WIS】

「……あー、こういう奴ですか。見てて不愉快なんで、とっととくたばれ」

・【トリニティ・エンハンス】で【風の魔力】を纏いつつ、敵に突貫します。一応防御力はあげておりますが、多少傷つく分は【武器受け】や【オーラ防御】でごり押しつつ行きます。
・敵に近づいたら、翼の色を様々な色に変えていき、【全力魔法】による【彩翼矢砲】を発動します。その後は纏っていた【風の魔力】を敵に向け、勢いよく様々な属性を有した羽根を飛ばすことで【属性攻撃】を仕掛けていきます。と、同時に「これも持っていけや!」と言わんばかりに持っていた水晶鋏を相手に投げつけることで、羽根と鋏による【2回攻撃】も仕掛けます。



「……あー、こういう奴ですか。見てて不愉快なんで、とっととくたばれ」

ニレッド・アロウン(水晶鋏の似非天使・f09465)が気持ちをストレートな言葉にする。
かつて人に救われ、自身も困った人を見捨てられない基質が、神の高みから見下ろすようなオブリビオンの傲慢な人助けに嫌悪感を感じたのかもしれない。

ニレッドの言葉に反応したパラノロイド・トロイメナイトが無数の蝶の群れを放つ。
眼帯の後ろに隠された目を細め、ニレッドは風の魔力をまといながら防御を高め、進んで蝶たちの弾幕に突入していく。
自殺行為にも思われる吶喊だが、魔力で高めた防御力と、どちらかというと2つの水晶の刃を合わせたハサミと自前のオーラでまだまだ密度の濃い蝶の弾幕を強引に押し進んでいく。
そして驚愕で仮面を歪ませるパラノロイド・トロイメナイトの眼前で、ニレッドの天使の翼が赤蒼紫緑黄白黒七色に目まぐるしく輝いた。
「……くたばれ」
ユーベルコード:彩翼矢砲(ウィング・アロー)
【炎】【氷】【雷】【風】【土】【聖】【闇】の7属性それぞれの羽が翼から放たれ、7色85本の軌跡を描きながらパラノロイド・トロイメナイトの体をえぐる。
さらに彩翼矢砲のダメージを見届けるより速く、追撃に投げつけられた水晶鋏がオブリビオンの胴体に深々と突き刺さる。
しかし、とどめには至らなかった。
わずかに顔を持ち上げたオブリビオンの仮面の瞳が怪しく光る。
その視線の先にいるのは武器もなく、蝶の弾幕の壁を押し通って大技を放ち疲弊したニレッド。
だが、追撃の二撃目を放ったのはニレッドだけではなかった。

「……ごめんね、少しだけ耐えてね」
ここまであがくオブリビオンに、憐憫の情を覚えたのかもしれない。
それでもソフィア・リューカン(ダメダメ見習い人形遣い・f09410)の操る二体の人形は、残った蝶をかいくぐりつつパラノロイド・トロイメナイトの足に抱きついた。
「これで……どうか終わって……!!」
ソフィアの両手から高圧電流が放たれる。
ユーベルコード:サイキックブラスト。
電流は人形を操る糸を通じて人形からオブリビオンに襲いかかった。
可聴域を超えた絶叫が地下に響き渡る。
ソフィアは高圧電流を緩めない。フィードバックする電子が逆にソフィアとソフィアが操るジェファーソンとレイニーの二体のヘルモンドを苛むが、持ち前の電流に対する根性でしのぐ。
しかしパラノロイド・トロイメナイトも耐える。より多くの人間を救うために。
そして、しばらくの時が過ぎた。
命をかけた我慢比べに勝ったのは、ソフィアのほうだった。

絶命した不定形のオブリビオンが崩れ、元は命だった魂たちが開放されて、暗闇に溶けるように消えていく。
パラノロイド・トロイメナイトがどういう経緯であのような思考に至ったのか、誰にもわからない。
猟兵たちの背後から、誰かが逃げ出すような音が聞こえた。看守たちだろう。
逃げた先で彼らが語る、人間が異形の支配者を打ち倒した話が、このダークセイヴァーの地で人々の心に灯る小さな新しい光になるかもしれない。
だれもこの地で、「くっ、殺せ」などと言わなくて済む日も来るかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年01月13日


挿絵イラスト