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イノセンス・ハーモニー

#UDCアース #【Q】 #お祭り2019

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#UDCアース
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#【Q】
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#お祭り2019


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「UDCアースの高原で開催される、コスモスまつりに行ってみませんか?」
 声を掛けたのは冬原・イロハ(戦場の掃除ねこ・f10327)であった。
 チラシ一束分を持っており、イロハは興味を持った猟兵へと一枚手渡した。
「えーと何々? 九州の高原で、コスモスまつり――そういえば、そろそろ見頃の時期だね」
 猟兵が見たチラシには、可憐なピンクや赤、清廉な白、元気そうな黄色のコスモスが咲き誇る高原の写真。
 最近の品種としては、花弁の縁が色付いていたり、花弁が筒状になるものだったり、菊のように花弁が多いものがあったりする。
「私の背よりも高いコスモスがいっぱいの景色、気になるんです。100万本ほどあるのですって」
 そう言いながらイロハは背伸びをした。
 澄み渡る秋空の下、様々なコスモスがそよそよと風に揺れる様子を楽しみながら、高原の散歩をしたり。
 高原の入り口付近にある店ではアイス――濃厚なミルクソフトが購入でき、飲食可能なスペースではピクニックを楽しむこともできる。
「お弁当は持参になりますが、コスモス高原の大自然の中での食事はとても美味しそうです。
 あとは、体験教室があるようですよ」
 採取可能な一帯のコスモスをアイロンや電子レンジで押し花にして、栞を作ったり、樹脂で固めてキーホルダーやアクセサリーを作ったり、アクリルの押し花コースターを作ったりできるらしい。
「普段使いできる、お気に入りを作ってみるのも良いと思いませんか?」
 イロハは読書の時に使う栞を作りたいらしい。
「たまにはゆっくりのんびり過ごしましょう」
 ゆっくりと頷き、イロハは言うのであった。


ねこあじ
 こんにちは、ねこあじです。
 今回はよろしくお願いします。

「このシナリオは【日常】の章のみでオブリビオンとの戦闘が発生しないため、獲得EXP・WPが少なめとなります」

 UDC組織が旅費を出してくれるのだそうです、やったね。

 コスモス高原を楽しんで、体験教室を楽しむシナリオとなっております。
 どちらか一つに絞ってもいいですし、二つともやってみるのもOKです。

 冬原・イロハが現地にいます。
 何かありましたら、遠慮なくお声がけ下さい。
 それではプレイングお待ちしております。
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第1章 日常 『【Q】旅行とかどうでしょう』

POW   :    とにかく気力体力の続く限り、旅行先を満喫する

SPD   :    旅行先で目ざとく面白いものを見つけて楽しむ

WIZ   :    事前に下調べを行い、綿密に計画を立てて楽しむ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

月舘・夜彦
【華禱】
倫太郎殿と秋桜を見に散策します
秋の桜と書いて『こすもす』と呼ぶのですね
どんな花なのか今から楽しみです

彼と手を繋いで歩きます
もうすっかり習慣になってしまいましたね
エンパイアで無い世界を迷わず歩けるように手を引いて頂いていたのに
今は理由も無く繋ぐ事が当たり前で、それが嬉しくもある

一面に咲く美しい花々
私の世界では見知らぬ秋の桜
名前の通り形は桜に似ていて、薄桃は特に似ている
草の緑に花の鮮やかな色……とても美しく思います
よく見れば色だけで無く形も様々
引かれていた手は、今度は私が引いて
興味のままに花を眺める

倫太郎殿、帰りに押し花を作りに行きましょう
記憶だけで終わらせてしまうのは如何にも勿体無いです


篝・倫太郎
【華禱】
まぁ、いつも通りに手は繋ぐんだけどさ……

ほれ、と差し出した手をしっかりと握り返されると
それだけでなんだか嬉しくなるし安心する

夜彦と手を繋いでのんびり散策

そーいや、秋桜って
明治以降に入ってきた……んじゃなかったか?

エンパイアには無かったはず、と思いつつ
隣の夜彦を見遣れば

ちょっと……その表情はズルくね?

そんなさぁ……!
くっそー!
なんか嬉しいのも幸せな感じなのも爆上がりするんだけど!

ついでに気恥ずかしいような感覚も爆上がりするから
気付かれる前に視線を外して夜彦の言葉に耳を傾ける

いつだって『初めて』を素直に楽しむ
その気持ちの表れた、俺の好きな声――

栞にするのも良さそうだしな……
いいぜ?行こう!



 九州。霧島連山。
 高原独特の澄んだ空気には、硫黄の匂いが含まれており一帯が活火山なのだということを教えてくれる。
 秋空には、さざ波のような鰯雲。
 高原入り口付近の掲示板には、品種の説明、週によって違うイベントの内容、子供向けに用意されたコスモス迷路への案内などがあり、月舘・夜彦(宵待ノ簪・f01521)は興味深げにそれを読む。
 その時「夜彦」と呼ばれ振り向けば、
「ほれ」
 と、篝・倫太郎(災禍狩り・f07291)が手を差し出し――やや待ちの姿勢。
「ありがとうございます」
 礼を述べた夜彦が倫太郎の手を握ると、待っていた彼の手はどこか力が入っていたのだろう。一瞬力が抜け、自然な握りを返してくる――おや、と思い視線を上げれば、倫太郎の表情は、どこか嬉しげで満足そうな安堵のものとなっていた。
 再び繋がる互いの手に視線を落とす。
(「もうすっかり習慣になってしまいましたね」)
 サムライエンパイアでは無い世界を、迷わず歩けるように手を引いてもらった。
(「今は、理由も無く繋ぐ事が当たり前で、それが嬉しくもある」)
 一つの初めてを、一つまた一つと重ねてきた。それが二人の日常となって、今日もまた一つ、だ。

 山岳群である一帯は見晴らしが良く、この季節には可愛らしいピンクや赤などの花景色が広がっていた。
 秋の風に揺られるコスモスの花が時折二人に触れたり、しゃらしゃらと葉擦れの音を立てたり。
 のんびりと散策する二人。
 時に背高のコスモスを避けるように、道を見つけてはそちらへと倫太郎が導くように。
 細茎の上で大きく開花する可憐な花々。
「これが、秋の桜ですか」
 と夜彦は呟いた。
「名前の通り形は桜に似ていて、薄桃は特に似ている――」
 そっと触れれば、滑らかな花びらの感触。
 すらりとした緑の茎と方々に広げる細い葉。
「細茎の上で大きく開花する花の鮮やかな色……とても美しいと思います」
 よくよく見れば、色だけでなく、形も様々だ。
 強く弧を描くもの、八重のもの。
 引かれていたはずの手を、今度は夜彦が引く――。
 興味あるままに一歩を進めた夜彦に、倫太郎は目を瞬かせた。
「そーいや、秋桜って明治以降に入ってきた……んだったよな?」
 サムライエンパイアには無かったはず――と、そう思いながら、夜彦へ追いつくように一歩前へ。並んだところで隣を見遣り――ぐ、と息を呑んだ。
(「ちょっと……その表情はズルくね?」)
 繋いだ手から『それ』が伝わらないように、腕に力を込め、脚に力を込め、留まる倫太郎。姿勢を整えたところで、
(「そんなさぁ……!
  ……っ。くっそー! なんか嬉しいのも幸せな感じなのも爆上がりするんだけど!」)
 心の中で叫び、静かに深呼吸をする。
 気恥ずかしいような感覚も爆上がりしつつあるのを感じ、気付かれる前に、固定されているんだとばかりに動こうとしない眼球を叱咤しぎこちなく視線を外して。
 その耳は、夜彦の声を拾う。
「黄色のものは、花が厚いのですね」
 楽しむ夜彦の声は、一つ一つを重ねて日常にしてきたものの上に、また一つを重ねるように。
 ――いつだって『初めて』を素直に楽しむ、その気持ちの表れた、倫太郎の好きな声――。

「倫太郎殿、帰りに押し花を作りに行きましょう」
 ぱ、と顔を上げ倫太郎を見る夜彦。
「記憶だけで終わらせてしまうのは、如何にも勿体無いです」
「栞にするのも良さそうだしな……いいぜ? 行こう!」
 倫太郎が頷き、笑み零した夜彦は歩を進める。勿論、手は繋いだままだ。

 この日のことを、いつでも鮮やかに花開けるように、手元には繋がるものを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

城島・冬青
アヤネさん(f00432)と

コスモスか沢山咲いてて綺麗ですね
ピンクや白が主流ですけれど
黄色のコスモスも淡い色で可愛い

あ、今回もお弁当を作ってきました
いつもはサンドイッチなんですけど
今回は栗ご飯おにぎりです
レジャーシートを広げのんびりとピクニック
アヤネさんにご飯を用意するのは先日のイカの時以来ですね
今回はイカはありませんが

あの時のアヤネさん
教えるのが上手で
本当に先生みたいでした
アヤネさんの話に耳を傾ける
お父さんのお話は何度か聞いたことがあるけれどお母さんのお話は初めてですね
白衣に眼鏡ですか
リケジョって感じだったのかな
アヤネさんも白衣と眼鏡が似合うと思います
格好いいですよ、きっと!(キラキラ)


アヤネ・ラグランジェ
【ソヨゴf00669と】
コスモスは宇宙と同じ意味だネ
花弁が世界の調和を描いているようだ
100万の宇宙が咲き乱れると想像するとロマンチックかも

ソヨゴの手作りお弁当がうれしい
栗ご飯のおにぎりなんて初めて
ほくほくいただきます
イカか
美味しかったけどのんびりじゃなかったよネ

先生みたい?

死んだお母さんの話はしていなかったネ
ケンブリッジにある大学院で博士号をとった人で
UDC研究所に入る前は大学教授とかもやってた
白衣にメガネの似合っていて
先生らしい雰囲気だった
僕が?どうかな

仕事熱心で
家庭的とは言えない人だった
僕は一人でいる事が多かった
だからソヨゴの話を聞いていると不思議な気がする
家庭って暖かい場所なんだなって



 透明度の増した秋の空。
 羊のようなまぁるい白い雲があちこちにある青い空、その下に遠く連なる山は霧島。
 活火山らしい硫黄の香りが仄かに。細茎の上で風に揺れる秋の桜の風景。
 うーんっ、と伸びをして澄んだ空気を肺一杯に吸い込み、続けて深呼吸をしてみる城島・冬青(六百六十九番目の宿木・f00669)。
「コスモスがたくさん咲いてて綺麗ですね」
 視界一面のコスモス。
「ピンクや白が主流ですけれど、黄色のコスモスも、淡い色で可愛いですねー」
 身を屈めずとも近く眺められるコスモスの花を指先でちょんとつつき。
「コスモスは宇宙と同じ意味だネ」
 アヤネ・ラグランジェ(颱風・f00432)の声は、コスモス群の中から聞こえてくる。
 伸びをした冬青とは反対に、屈んだアヤネは青の空と揺れるコスモスの見上げるように。
「花弁が世界の調和を描いているようだ」
 ゆっくりと立ち上がり、俯瞰する。
「調和ですか、コスモスの花言葉の一つですね~」
「コスモスは、調和がとれていたり秩序がある状態を表現する言葉でもあるネ」
 ぐるりと周囲を見回すアヤネと冬青。広大な『コスモス』群のなかの一つの世界。
「――100万の宇宙が咲き乱れる、と、想像するとロマンチックかもネ」
 そんな会話をしながら、秋桜の園を歩む。

 空気の美味しい高原で、レジャーシートを広げて、のんびりと。
「じゃじゃーん。今回のお弁当は、栗ご飯のおにぎりですよ♪」
 蓋を開けて、アヤネへと見せる冬青。
「わあ、美味しそうだネ。白と黄色のコントラストも綺麗だ」
 ほわりと微笑むアヤネ。冬青の手作りお弁当を嬉しそうに見て――何より、その気持ちが嬉しかった。
「いただきます」
「はい、召し上がれですよー。お茶も温かいのを持ってきました」
 ほんの少し肌寒さも感じる秋、ほっと一息つける温かい飲み物も。
 栗の味に馴染んだご飯に、ちょっとだけ塩っ気をつけたおにぎり。
 ほくほくと食べるアヤネはにこにことしている。
 美味しそうに食べてくれる彼女の姿に、冬青もまた笑顔だ。二人で食べるご飯はとても美味しかった。
「アヤネさんにご飯を用意するのは先日のイカ焼きの時以来ですね。――今回は、イカはありませんが」
「イカか」
 アヤネはやや右上へと目をやり、そして頷いた。
「美味しかったけど、のんびりじゃなかったよネ」
 戦闘=調理で、皆と一緒にわいわいと食卓を囲んで、今とは違う楽しさだったけれど、と。
 ゆっくりのんびりと。
 コスモスの風景を眺めながら食べるのは、また違う美味しさがあった。
「あの子たち元気にしているかなぁ」
 アックス&ウィザーズでの、ひよっこ冒険者たちに剣を教えたり、大蜥蜴の乗り方を教えたりとした日々を思い出し、冬青が呟く。
「あの時のアヤネさん、教えるのが上手で。本当に先生みたいでした」
 こてり、とアヤネは微かに首を傾けた。
「先生みたい? ……――」
 先生、と聞いてアヤネがふと脳裏に描いたのは、スラリと立つ女性の後ろ姿。
 いつも熱心に追いかけている人で、直ぐに思い描いたのは凛としたその背中。
「――死んだお母さんの話はしていなかったネ」
 アヤネの言葉に、はっとし、ぴくりと指先を震わせる冬青。そうですね、と静かな声で応じる。
「ケンブリッジにある大学院で博士号をとった人で、UDC研究所に入る前は大学教授とかもやってた」
 アヤネの声は、どこかふわりふわりとしていて、その緑の瞳は何かを追いかけるように。
「白衣にメガネが似合っていて、先生らしい雰囲気だったよ」
 父親の話は何度か聞いたことがあるけれど、母親の話は初めて聞く。冬青は頷きながら、アヤネの母親を頭の中で描いてみようとした。
「白衣に眼鏡ですか……リケジョって感じだったのかな」
 想像の中で、アヤネに白衣を着せて眼鏡を掛けてもらって――と、ここでぐっと拳を作る冬青。
「アヤネさんも白衣と眼鏡が似合うと思います! 格好いいですよ、きっと!」
 冬青が声を弾ませてそう言った。琥珀色の瞳はキラキラと輝いている。
 ピシパシとキラキラが飛んでくるようだ。ちょっと眩しくも感じられて、アヤネは目を瞬かせた。
「僕が? ……どうかな」
 思わず自身を見下ろし、着たところを想像するのだけれど、白衣を着る人はすぐに母の姿へと切り替わった。
「そうだ。ソヨゴのお母さんはどんな方なのかしら?」
「うちの母ですか? ――ええっとですね~」
 母親のことを思い描いたのか、ほわほわと柔らかな表情になる冬青。
 彼女のどこか優しい声を聞きながら、ついつい、違いを追ってしまうアヤネ。
(「仕事熱心で、家庭的とは言えない人だった」)
 直ぐに母の後ろ姿を思い出してしまうのは、声を掛けた時はいつも何かに向かっていたり、見送ることが多かったからだろう。
(「僕は一人でいる事が多かった」)
 一人は独りで、感情の起伏もなく。
 二人だと対話ができて、感情が生まれる。
 それを母としただろうか――辿ろうとする記憶はセピア色に染まっているようだ。
 母のことを話していると、父のことが出てくる冬青の話。エピソードは豊富で、楽しくて。
 だから、
(「ソヨゴの話を聞いていると不思議な気がする」)

 家庭って、暖かい場所なんだな、って。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ケイラ・ローク
コスモスの高原!いいなー♥
花って見渡す限り咲いてるとなんだか感動しちゃうのよね、不思議
うきうきとソフトクリームを買って
一面の花畑に見とれながらペロリ、美味ーい最高!

数年後には素敵な恋人あたりと、…あ。
想像出来ないし今はいいや
それよりお弁当持ってきたらよかったわ(色気より食い気)
カメラは苦手だから…スケッチブックに色鉛筆で(青、水色、赤白ピンクの丸、それに緑で大胆に)

体験教室も面白そう!
あ、キミ(イロハに声を掛け)も何か作るの?(手元を見て)栞かな、素敵なのが出来るよ♥
あたし、コースターにする!
いいのつくろうね。
濃い赤と白のコスモス二輪を閉じ込めたアクリルコースター、今日の記念よ
来て良かった!



 入り口の店で、ソフトクリームを買うはケイラ・ローク(トパーズとアメジスト・f18523)だ。
「はい、どうぞ」
「ありがとー♪」
 ちょっと硬めのコーンの上には、真っ白で柔らかな、牧場直送のミルクで作られた高原ソフトクリーム。
 販売員から受け取ったケイラは弾んだ声で礼を言い、足取り軽く、出入口をくぐって高原へ。
「わ、コスモスがたくさんだー」
 黄色、ピンク、赤、白と秋の桜が咲き誇る風景。
 今はちょうど満開で見頃の時期だ。
「花って見渡す限り咲いてると、なんだか感動しちゃうのよね。不思議」
 風が吹けば、しゃらりしゃらりと葉擦れの音がケイラの耳にまで届いた。
 見晴らしの良い場所に設置されたベンチに座って、コスモス畑に見惚れながら、ソフトクリームをぺろりと一舐め。
「美味ーい最高!」
 舌の上で滑らかに溶けていく甘い甘いスイーツ。
 家族連れ。恋人同士。友達同士。カメラを持って楽しむ一人旅風の人もいたりして。
「こんにちは」
「こんにちはー!」
 色んな人がコスモスが楽しむ光景。
 見知らぬ人ではあるが『コスモスを楽しむ』という時間が共有されていて和やかな挨拶が交わされる。ケイラもまた挨拶をしたり、返したり。
「うーん、あたしも数年後には素敵な恋人あたりと――」
 ステキナコイビト。
 ケイラの隣に立ち、手を繋ぐ――人を想像してみるのだが。
「……あ。想像出来ない……今はいいや」
 ぱたりと手を振れば、ケイラの二つ尾もゆらゆらと揺れた。
「それより、お弁当持ってくればよかったわ」
 言いながら鞄を開けて、かわりに取り出すのはスケッチブックと色鉛筆だ。
 カメラで撮ることも考えたけれど、苦手な自覚はあったので。
 ピンクの色鉛筆を手に、まずはピンクのコスモス。
 次に、黄色。
「うん、うん、こんな感じっ。次、空いっちゃおう」
 上部には、秋の空の色。青と、高くなるごとに透明度の増す空の水色。
 次に、赤と白の丸、更にピンクを足して。
 細茎には緑をシャシャシャと。猫じゃらしを追う手の振りの要領だ。
 大胆なタッチの絵が出来上がっていく。

「良い感じに描けたね」
 スケッチブックを丁寧にたたんで、リュックに仕舞って、次に向かったのは体験教室が行なわれているという建物だ。
 見本の作品がずらりと並んでいるのを眺めつつ、参加の申し込み。
「はい、ではこちらのお席にどうぞ~」
 案内された部屋の中には、あれこれ考えたり、考えずに直感で作ったりしている一般人や猟兵たちの姿があった。
 入り口近くに座っていた白い毛並みのケットシーとケイラの目が合った。
「こんにちは」
「こんにちは。キミも何かを作っているの?」
 ピンクと白と、花をつまんでいるイロハの周りには紙やラミネート。
「栞かな?」
「はい、花の乾燥は終わったですが、デザインに悩んでしまって」
 ケイラの言葉にこくりと頷き、イロハが答える。
「どれも綺麗に乾燥されてるし、きっと素敵なのが出来るよ♥」
 にっこりと笑顔でケイラが言えば、ちからづけられたイロハが自信を持ったようで、ぺたりぺたりと配置を決めていく。
 作り方のパンフレットを見て、むむむ、と悩むケイラ。この時には自己紹介も終わっていて。
「ケイラさんは何をお作りになるか決まりました?」
「そうだね――あたし、コースターにする!」
 パンフレットの該当ページを広げて、予め摘んできたコスモスを机に置いて。
 まずは水分を飛ばすための処理。
 乾ききったところで流しこんだ樹脂に、花をのせて、固めて。
 層を作るように丁寧に――。それを特殊ライトにあてて、時間を置けば完成だ。指先でつついて硬さを確かめてから、滑らかな縁を摘む。
「うん、できたよ! 完成♥」
 濃い赤と白のコスモス二輪を閉じ込めたアクリルコースター。コントラストがかかり綺麗な色合いだ。
「綺麗に仕上がりましたね~♪」
 ほくほくとした声でイロハが言う。こちらも栞は出来上がったようで、お互い見せ合いっこ。
「今日の記念よ、来て良かった!」
 紫と金の瞳をキラキラと輝かせて。
 ケイラは赤と白の秋桜コースターを光に翳し、透き通る花びらを見つめた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・杏
【かんさつにっき】7人
秋風そよよ
ガーネットは宇宙船から見るお花畑が多い?
地上からのコスモス畑、案内する
こっちは紫、これは白
真ん中が黄色…
蝶々、とまってる(嬉しそうに指差して

……ん、風船は真琴とイロハね?
元気に移動するまつりんのふわ耳目印に丘に登る

お弁当はおかあさん仕込み
唐揚げにアスパラの豚肉巻き、あと、肉団子に……おにく(目をそらす

卵焼き、小太刀のがんばる気持ちがおいしい(真琴に微笑んでぱくり
………(こくん

いつも楽しみな海莉のお茶は
知覧茶…(興味津々にこくり
……おいしい(至福

シリン、おにぎりにはぱりぱりの焼き海苔(手渡して

ん、ここにオレンジ…
まつりん手伝って
たまこ印!(嬉しそうにぱちぱち拍手)


南雲・海莉
【かんさつにっき】

コスモスって一輪なら可愛いって感じだけど
これだけ咲いてると壮観っ

(空を飛ぶ二人がいるだろう方へ
勘で手を振りつつ)

真琴くん、やっぱり上手よね
(スケッチ中に出会えば感心して

皆と一緒にお昼ご飯

今回は緑茶を用意してきたわ
知覧茶と、みかんの香りのフレーバーと二種類
(ポット掲げ

おにくいっぱい、味も食べ応えもたっぷりで元気が出るわ
卵焼きも気持ちいっぱい籠ってる(微笑

わぁ、お花みかん、可愛いっ!
(歓声)(可愛い物好き


体験教室にも参加
ガーネットさんのキーホルダーも可愛い

イロハさんはどんな本を読んでいるの?
私は……今はこの本ね
(あかがね色の絹の表紙の稀覯本に
赤いコスモスで作った栞を挟んで笑み)


鈍・小太刀
【かんさつにっき】

ふわー綺麗!お花の絨毯だね
空をゆくシリンに手を振って
動き回る風船達に思わず笑顔に

そしてお弁当も欠かせない♪
お弁当箱の中身は
お砂糖入りでちょっぴり甘めな卵焼き
焼き色がすこーし濃いのはきっと気のせい(目逸らし

うん、何年か前に教えて貰ってね
でもお母さんみたいに上手くはいかないや
はぁ、もっと真面目に習っておくんだった(溜息

杏と祭莉んのお弁当も美味しそう
お肉だね(育ち盛りな杏に微笑み
こっちは祭莉んが作ったの?…むむ(華やかな出来栄えにちょっと悔しい

海莉のお茶も貰ってまったりと
皆で食べるお弁当はやっぱり美味しい

押し花には紫の花を
そうね、上手く出来たら
里帰りのお土産にするのも悪くないかもね


ガーネット・グレイローズ
【かんさつにっき】

今日は良い風が吹くね。シリン、精霊を感じるかい?
杏、じゃあ一緒に歩いて回ろうか。色とりどりのコスモスが綺麗だね。
宇宙船にも植物園があったけど、こうやって地上の花畑を歩くのは久々だ(真琴とイロハの隠れんぼに和みつつ)
秋は空気もおいしくなるね。

お腹も空いたし、皆でお弁当を囲んで昼食にしよう。
小太刀の卵焼きは、優しい味わい。お母さんに習ったのかい?
杏はお肉メインか、お肉好きなんだね。デザートはまつりん担当?
箸休めに海莉のお茶がありがたい。これが、ジャパニーズグリーンティー(ふー…)。

コスモスの花細工体験にも参加
ピンクの花を樹脂で固めて…車のキーホルダーに使おう。
どう? 綺麗だろう?


木元・祭莉
【かんさつにっき】で!

真琴とイロハちゃんに風船渡して、迷子にならないように。
丘のてっぺんで、ぐるりと見回し。
すごい。ぜんぶ、お花だ……なんか、すごいー!(笑顔全開でくるくる走り回る)

さて、お弁当の時間ー!
アンちゃん、お料理上手なんだー♪(ふふん)
ん、コダちゃんの卵焼き、香ばしいね!(褒めたつもり)

あ、おいら担当は、おにぎりの二段分と。
一番下のうささん林檎とお花みかん段ー♪
バナナや葡萄やキウィも、小っちゃくお花切りにして、はちみつシロップで和えた。
クレープ生地で包んで、お召し上がりー♪

ソフトも食べて。
うん……オレンジの花を張って、まるで囲んで……
できた! 木元村のたまご花!(旗印のように翻らせ)


シリン・カービン
【かんさつにっき】

一面のお花畑は正に壮観。
海莉の隣で感嘆の息を吐きます。
「ええ、…本当に」
風の精霊も花の精霊も楽しそう。
お花畑から見え隠れする子供達も。

「イロハ」
ふと思い立って声をかけます。
「空から眺めてみませんか?」

手を繋いだイロハを背に負って、
騒ぎにならぬよう【スプライト・ハイド】で姿を消し、
【シルフィード・ダンス】で空に舞い上がります。
空から眺めるお花畑は彼女の目にどう映るでしょう。

野外で調理することが多い私は、
あまり繊細な料理は得意ではありません。
「本当に美味しいです」
三人のお弁当に素直な賛辞を。
(焼き海苔パリパリ、卵焼きにフルーツもぎゅ)
海莉のお茶もまた料理によく合って、
至福、です。


琶咲・真琴
【かんさつにっき】
秋桜畑にピクニック

まつりん兄さんから風船をもらって
風船の紐をお祖父ちゃん達が入っている肩掛けカバンの肩紐にしっかりと結びます

まつりん兄さんはありがとうです!

絵にする風景求めて
秋桜畑の中をうろちょろ
いいスケッチ場所ないかな?


皆とのお弁当はとっても美味しいです!

うーん、そうかな?
姉さんの卵焼き、美味しいよ
ボクはまだ火を使った料理はダメってお祖母ちゃんにも言われてるから
ちょっと羨ましいな

杏姉さんは料理のレパートリーがすごいです
まつりん兄さんのも華やか!

海莉さんのお茶は
どのお弁当にも合いますね

押し花は白い秋桜を1輪使って栞に
……今日描いた絵もお土産にしようかな



アドリブ歓迎




 高くなるごとに透明度の増す秋の空。
 今日の空は羊のような白い雲がぽかり、ぽかりと浮いている。
 遠く、霧島連山がよく見えた。
 周囲の、活火山らしく微かに硫黄の含まれた空気を肺一杯に吸い込むのは、鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)と、南雲・海莉(コーリングユウ・f00345)。
「ふわー綺麗! お花の絨毯だね」
「コスモスって、一輪なら可愛いって感じだけど、これだけ咲いてると壮観っ」
 小太刀も海莉も声を弾ませて、その隣で感嘆の息を吐くのはシリン・カービン(緑の狩り人・f04146)だ。
「ええ、……本当に」
 風にそよぐコスモスの花が揺れれば、細茎も動きしゃらりしゃらりと葉擦れの音が聞こえてくる。
「――今日は良い風が吹くね。シリン、精霊を感じるかい?」
 地上の風をその身に受けて、ガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が問えば、精霊術士であるシリンは頷いた。
「風の精霊も花の精霊も楽しそうですよ――後は、少し火の精霊も」
「火の精霊か、火山が形づくった山々とか、多くのカルデラの池があるみたいだね」
 と、小太刀がパンフレットを手に、一つ一つ、山の名を指差し告げていく。
 海莉も一緒に覗きこみ、
「主峰には天の逆鉾があるのだったわね」
「ここからだと、南の方みたい」
 そんな大地に咲いた高原のコスモスは生命力に満ち溢れている。
 ピンクや白、赤や黄色と満開の花畑を堪能できそうだ。
「はいっ! これ、迷子にならないように」
 そう言って、木元・祭莉(垂れアンちゃんと吊りまつりん(コンビ名)・f16554)が琶咲・真琴(今は幼き力の継承者・f08611)とイロハに風船を渡した。
 ぷかぷかと空に浮かぶ風船を見上げる二人。
「ありがとうです、まつりん兄さん! これで迷子の心配もありませんね」
「なるほど」
 いたく感心したような声のイロハが頷き、手に持った。
 真琴は、風船の紐を祖父母が入っている肩掛けカバンの肩紐にしっかりと結んで。
 スケッチ予定の真琴は屈むことが多かったり、座っていたりするだろうから、とても見つけやすくなるだろう。
「それじゃあボクは、スケッチのための場所を探しにいってきますね!」
「私も、あちこちしてきます~」
「……あれ?」
 真琴とイロハが動けば、あっという間に埋もれ見えなくなっていて、残された祭莉は笑顔のまま戸惑いの声。迷子防止策を与えられたので、躊躇なかった。
「ま、いっか。おいらも行こーっと♪」
 しゃらりしゃらり。
 そよぐ秋風を全身に受け止めるように、目を閉じて木元・杏(料理(物理)の達人・f16565)。
 目を開ければ、飛びこんでくる鮮やかな赤――ガーネットだ。胸元まであるコスモスを掻き分けて、近付く。
「ガーネットは宇宙船で見るお花畑が多い?」
「そうだな――リゾート船のように、観光特化にした船はあるが――宇宙船にも植物園があったけど、こうやって地上の花畑を歩くのは久々だ」
 植物園とは違う、どこか奔放な風景を堪能するガーネットと杏は一緒に歩く。
「秋は空気もおいしくなるね」
「空気、おいしい」
 二人一緒に深呼吸。
 視界の端では真琴の風船が、ぴたりと止まり、やや下がる。良い場所を見つけたのだろう。微笑みながら、ガーネットは周囲を見回した。
「色とりどりのコスモスが綺麗だね」
「うん。こっちは紫、これは白」
 コスモスの色は様々だ。紫一つ、濃かったり薄かったり。
「真ん中が黄色……」
 と指差す杏が、あ、と小さく声を上げた。ひらり、指先が追うは一匹の蝶々。
 ピンクのコスモスに降りるナミアゲハ。
「蝶々、とまってる」
 ご飯中かな? と。
 ひらり、蝶が飛び立ち、シリンの目がそれを捉えた。
 丘へと向かう蝶――下の大地ではコスモスが揺れている――狼のふわふわの耳が見え隠れしていて、双子の兄を追うように杏とガーネット。
 屈んでいたのか、ひょっこりと姿を見せた小太刀と海莉が丘を指差している。
「イロハ」
 シリンが声を掛ければ、近くに浮かんでいた風船が翻って、近寄ってくる。
「はい?」
「空から眺めてみませんか?」
「……! 良いのですか!」
 シリンはイロハと手を繋ぎ、いたずら妖精に語りかける――透明になる二人。これでUDCアースの人たちも驚くことがないだろう。
 背負うまで手を離さないようにし、シルフィード・ダンスで空を翔ける。
 あっという間に、空の上。
 緑の大地に、此方に向かって咲く彩り溢れる花に目を瞠るシリンとイロハ。
「すてきです。色んな色の、お花の星空みたいですね」
 二人が消えた瞬間を見ていたのだろう、海莉と小太刀が手を振っている。
 思わずイロハが振り返せば、指が滑って風船がふわり。
 海莉と小太刀が飛んでいく風船を見つけて、的確にこちらを見てくる。くすりとシリンは笑みを漏らした。
「見つかってしまいましたね」
 風船の紐を捕らえ、シリンは言うのだった。

 はふはふと丘を駆け上がって行く祭莉。
 頂上に着いて、仰ぐ。より近くなった空。より遠くまで見渡せる地平線を視界におさめた。
 そのままぐるりと見回せば、一面満開のコスモス。
「すごい。ぜんぶ、お花だ……なんか、すごいー!」
 笑顔全開に、丘の頂上周りをくるくる走り回って。ばたっと寝転がってみれば、そびえたつようなコスモスと空の青。
 揺れる花々にうずうずと、弾みをつけて起き上がって、再び走り回る。
 喜びの心をスケッチする手にこめるのは、真琴だ。
 一本のコスモスを丁寧に描き、構造を把握する。
「この色も、ちゃんと出せるかどうか、後で試してみたいですね」
 濃淡様々な色を持つ秋の桜。今度は風景をスケッチしていく。
 キリの良いところまで描けたかなという頃、風船を目印にしたのだろう、小太刀と海莉がやってきた。
「真琴ー、そろそろお昼だよ」
「姉さん、海莉さん」
 スケッチブックを開いたまま二人を見上げる。一本のコスモス、そして風景画が見えた海莉が目を瞬かせて、感心したような表情に。
「真琴くん、やっぱり上手よね」
「えへへ、ありがとうございます」
 道具を片付け、最後にスケッチしたものを。
 真琴が立ち上がれば、風船も高く。
「この辺りのコスモスは背高ね」
 と海莉が言えば、小太刀と真琴は顔を見合わせて、手を繋ぐ。
 行こうよ、と丘を目指して。


 レジャーシートを広げて、お昼ご飯。
 大きな風呂敷を解いて、お重を取り出したのは杏と祭莉だ。
「お重というのですか。初めて見たような気がします」
 シリンが重箱の機能性に、ほぅと感嘆の声。
「お弁当の具は、おかあさん仕込み」
 蓋を開けて、具の説明をする杏。
「唐揚げとアスパラの豚肉巻き、あと、肉団子に……」
「お肉だね」
 微笑みそう言った小太刀。育ち盛り故に肉が好き――なのか、ちょっと照れたように目を逸らして、杏は頷く。
「アンちゃんのお肉料理ね、すごく美味しいよ」
「美味しく作れば、たくさん美味しく食べられる」
 兄の言葉に頷きつつ、
「お肉好きなんだね」
 ガーネットの言葉に、杏は最終的に深くこっくりと頷いた。
「私も、卵焼き作ってきたよー」
 小太刀が蓋を開ければ、黄金色の輝き――が、ちょっとだけ濃い。
 取り出し、並べ終わったところで、海莉もお茶を配り終えたようだ。
「それじゃあ、いただきましょうか」
「「「いただきます」」」

「どれから食べようかな、……うん、唐揚げから行きます!」
 並べられたお弁当を見て真琴が言う。
「おにくいっぱい、味も食べ応えもたっぷりで元気が出るわ」
 ふふ、と微笑み海莉。
 にぱっと笑顔で応じたのは祭莉だ。
「アンちゃん、お料理上手なんだー♪」
 ふふんとどこか得意げに。唐揚げとおにぎりを食べて。
「おにぎりも種類がたくさんあるのね」
「おにぎりはおいらが作ったんだよー。おかかとサケと、梅、シンプルに塩とか~」
 たくさんのおにぎり。二段分を準備するのは大変だっただろう。海莉はサケのおにぎりをゆっくりと味わう。

「ん、コダちゃんの卵焼き、香ばしいね!」
 にこにこと祭莉が褒めた(つもりの)言葉。
「うぐ。や、焼き色がすこーし濃いのはきっと気のせいなんだからっ」
 目を逸らして小太刀。
「小太刀の卵焼きは、優しい味わいだ。お母さんに習ったのかい?」
 お砂糖入りでちょっぴり甘めな卵焼きを味わうガーネットが、ふと尋ねてみれば、びっくりしたように小太刀は目を瞠った。
「うん、何年か前に教えて貰ってね」
 紫の瞳は、当時のことを思い出したのか懐かし気に。
 卵焼きを一つ、食べて、味わって。
「でもお母さんみたいに上手くはいかないや……」
 はぁ、と溜息。
「もっと真面目に習っておくんだった」
「うーん、そうかな? 姉さんの卵焼き、美味しいよ」
 姉の言葉に、真琴もまた卵焼きを食べて。
「ボクはまだ火を使った料理はダメってお祖母ちゃんにも言われてるから、ちょっと羨ましいな」
 また作ってよ、と真琴が言う。
 とても懐かしい味がするのだ。
 おにぎりと、卵焼きと、唐揚げ。定番のお弁当を持って、お花見に行く。
 一緒に手を繋いだり抱っこされたりして歩いた道、作られたお弁当、それらは親の愛情がこめられている。
 だから、
「小太刀さんの気持ちが、いっぱい籠っていると思うわ」
「ん、卵焼き、小太刀のがんばる気持ちがおいしい」
 真琴と海莉の言葉に、杏も微笑んで、ぱくり。もくもくと静かに咀嚼して、頷いた。
「本当に美味しいです」
 集中し、味わって食べていたシリンも深く頷く。
 おにぎりを手にしたシリンヘ、あ、と杏は小さく声をあげた。
「シリン、おにぎりにはぱりぱりの焼き海苔」
 と、手渡して。
「やきのり……」
「こうやって大きな海苔で全部を包んだり、お洋服みたいに着せてあげたりする」
「成程」
 三角のおにぎりに、細長く切った海苔を肩掛けるように左右に。胸元でしっかり端を合わせて。
「海莉、お茶のおかわりお願いしてもいいかな」
「ええ、どうぞ」
 容器に茶を注ぎ、ふうっと小太刀が息を吹きかければ飲みやすい温度となる。
「これが、ジャパニーズグリーンティー」
 こくり、こくりと味わい飲むガーネットは、より肩の力が抜けたようだ。
「海莉さんのお茶は、どのお弁当にも合いますね」
「至福、です」
 真琴が飲むのは、みかんの香りのフレーバーのもの。同意したシリンが真琴に続き言う。
 用意されたお茶は二つ。
 もう一つは、透き通る若緑色。さわやかな香りと口当たりであり、コクがある。
「海莉のお茶……今日もおいしい」
 ゆっくりと飲んだ杏の言葉に、ありがとうと笑み。
「今日用意したお茶は、この辺りで生産されている知覧茶なの」
 ポットを掲げて海莉。
 火山灰で肥沃な土地となった南九州の地の利は茶栽培にも適用されるようで、この辺りの茶葉はどれも美味しいものばかりだ。
「知覧茶……」
 もう一度、こくりと。
「……おいしい」
 ほわりと頬を染めて、杏。そんな妹の様子と笑顔を堪能した祭莉は、そろそろデザートかな~と次の段へ。
「おや、デザートはまつりんが担当したのか?」
「うんっ」
 ガーネットの言葉に頷き、じゃーんと。
「一番下は、うささん林檎とお花みかん段だよー♪」
「わぁ、お花みかん、可愛いっ!」
 海莉が歓声を上げた。可愛い物が好きな彼女は、全体的に可愛らしく飾られた段を見つめる。
「えっ、えっ!? こっちは祭莉んが作ったの? ……むむ」
 やるわね、とどこか悔し気な表情を見せる小太刀。
 海莉は、凄いわ、と瞳をキラキラ。
「葡萄も綺麗に、花開くようになっているのね。とっても可愛いわ……」
 まぁるい葡萄は皮を切りこみ、ほんのちょっと剥いた飾り切り。
 十字は四枚の花びら。切り込みを増やせばひまわりのように。
 キウィは再度組み合わせてダリアのように、そして薔薇のようにしたものも。
 バナナも同じように小さく花切りにして、それらははちみつシロップで和えられていた。
「これをね、クレープ生地にくるくるーって包んでね」
「わ、杏姉さんもまつりん兄さんもレパートリーが凄いですね」
 真琴が生地を開き、具材をのせていく。
 真琴を師匠に、見様見真似でシリンもやってみた。
 作って楽しい、食べて美味しいやつだ。
「野外で調理することが多く、あまり繊細な料理は得意ではありませんが、これは面白いですね」
 平べったく焼いた生地に、葉物や肉を挟んで食べるアックス&ウィザーズのものと似ている、とシリン。
「小太刀、どう?」
「くぅ、可愛い美味しい……!」
 杏が尋ねてみれば、悔しい気持ちをポイして頬染めて唸り堪能する小太刀。
「コダちゃんかんらくー♪」
「姉さん、これ、今度アイスに掛けて食べようよ」
 きゃっきゃと喜ぶ祭莉と真琴。
 賑やかなピクニックに、シリンとガーネットは和みつつ、
「紅茶のちょっとしたフレーバーにもしたくなるな……」
 果物の味が浸透したはちみつシロップを舐めて、ガーネットは言うのだった。


 食べた後は少し休んでから、体験教室へ。
 見本で作られた品を眺めながら、参加の手続きは終了。
「どうぞ、こちらです」
 と、案内された部屋には、コスモスの花を乾燥させて、何を作ろうかと悩んだり、直感で作っていたりする一般の人や猟兵たちの姿。
 席に着いて、作り方が説明されたパンフレットを興味津々に、ページを捲るシリン。
 まずは、水分を飛ばすために電子レンジにかけたり、薄紙に挟んでアイロンをあてたり。
 従来の押し花の作り方は、日数がかかり、痛んで失敗したりしてしまうのだが、今回の方法は直ぐに出来て成功しやすい。
「少しずつ、陽にあてて水分を飛ばして、薄紙を取り替えていく方法も、日数が経つほどに思い入れも強くなって良いんですけどね」
 どうぞ、お時間ありましたら挑戦してみてくださいね、と案内してくれた人が言った。
 先程摘んできたコスモスを手に、作業を進める七人。シリンは何を作ろうか、と悩みつつの手つきだ。
 イロハは先に来ており、丁度、見せあいっこを終えたところ。
 【かんさつにっき】の皆に気付いて寄ってくる。風船は腰に括りつけられていた。
 栞は比較的、早く作業が終わる。
 イロハと作った栞を見せあいっこするのは海莉だ。
 そうだ、という風に海莉は顔をあげた。
「イロハさんはどんな本を読んでいるの?」
「色んな童話を読んでいるところです。今はアルダワ魔法学園の図書室に通っていますね」
 小太刀、海莉、イロハと同級生組だが、学園は広大なので、お互いを見つけるのも一苦労。
「海莉さんは、どんなご本を?」
「私は……今はこの本ね」
 あかがね色の絹の表紙の稀覯本。それに、赤いコスモスで作ったばかりの栞を挟んで、海莉は笑みを浮かべた。
 【祈りは一滴、カップに落ちて】――絹の手触りは、よく馴染む。
「できました」
 ほうっと息を吐き、肩に入れていた力を抜いて、真琴。
 白いコスモスを一輪使った栞。
「私も、できたわよ」
 紫の花を使った小太刀の作品。上手に出来た。
「里帰りのお土産にするのも悪くないかもね」
 ふふふ、と小太刀。そんな姉を見て、
「……今日描いた絵もお土産にしようかな」
 真琴が呟き、隣のシリンヘ。彼女はパンフレットと睨めっこ中だ。
「シリンさんは何を作るか、決まりました?」
「――こちらを。先日に見立ててもらった装いに合うのではないか、と思いまして」
 大輪のコスモスを一輪。
 丸い形の樹脂で、ペンダントを。
「それじゃあ、一緒に作ろう!」
 と、小太刀。慣れない手付きのシリンに、真琴と海莉も手伝って。
 ああでもないこうでもないという風に悩みの声を上げるのは双子だ。
「ん、ここにオレンジ……まつりん手伝って」
「え、ここ? うん……オレンジの花を張って、まるで囲んで……」
 何か、大作を、作っているのだろうか……?
 気になった面々が覗きこむ――否、覗きこんだところで、できた! と元気な祭莉の声。
「木元村のたまご花!」
 と旗印のように翻らせて祭莉。
「たまこ印!」
 嬉しそうに、拍手を送る杏。
 ここで、ガーネットも「できたぞ」と声をあげた。
「どう? 綺麗だろう?」
 ピンクのコスモスを樹脂で固めて。
「車のキーホルダーに使うつもりだ。
 シリンとは、少しお揃いだな」
 そう言って、にこり。
 紐通しには綺麗なリボンを結んだり、革紐を通したり括ったりして、完成だ。

 一緒に過ごした時間を手元に留めて。
 新たな思い出の一ページを。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月06日


挿絵イラスト