突然ですがキマフュカートDレースに参戦してもらいます!
「キマイラフューチャーで行われるカーレースイベントに出場してもらいたい」
仙堂・十来が集まった猟兵達に唐突にそう告げて、しかもあとは名前を書くだけ、みたいな状態の参加申込書を示していた。
「カーレースの最中、それもコース内部に怪人の残党が出没することが予知された」
しかも出没する予定なのは、最もハードなレースとなると予測されるDレース。
Dが何を意味するかは謎であるが、デンジャラスの略だともデンジャーの略だとも、どうしてこうなったの略だとも言う。多分誰に確認しても適当な答えが返ってくるだろう。
とにかくDレースに使われるレーシングカートは軽量かつ極めて頑丈、初心者でもとりあえず乗れば運転できるレベルの簡単な操作性を誇る。
が、Dレースの本領はそこではない。
持ち込みあり!
コース内で適当にコンコンして取り出した何かあり!
謎のショートカットあり!
ジャンプ台とかあり!
そして他選手妨害アリアリのあり!!
ちなみに安全装置がしっかりしているのでいくら派手にスリップなりコースアウトなりしても大怪我したりはしない仕様になっている。擦り傷とか打ち身くらいは多少できるかもしれないけれど。
しかし、そんなところに怪人が乱入してきたら!
「……意外と最初から危ないだけゆえ大したことはない気がしてはきたが、オブリビオンなのでやはり倒さないわけには行かない。むしろこのような形式のレースであるのなら、レース自体を中止する必要なく怪人との戦いを行っても問題ないと思うのでな」
レースの様子は現場やネットでばっちり実況されているので、もういっそ格好良くレーシングなバトルをすればいいんじゃないだろうか!
大丈夫猟兵達ならできる!
あと他の参加者は怪人が出たら自分達で避難するから巻き込む心配はいらない!
というわけで。
「怪人退治ももちろんなのだが、せっかくなのでレースも盛り上げてくれたなら嬉しい。どうかよろしく頼む」
そう頭を下げてから、十来はペンと申込書を差し出したのだった。
炉端侠庵
こんにちは、炉端侠庵です。
というわけでキマイラフューチャーでカーレースして怪人退治をお願いします!
なんとなくイメージとしては甲羅投げたりバナナ置いたりジャンプ台使ってショートカットしたりする某カートレースゲームっぽい感じです。
まず第1章では純粋(?)にカーレースを楽しんでいただきます。
基本的にプレイングに書いた「他のレーサー(キマイラフューチャーの住民で猟兵ではない)の妨害」や「手に入れたアイテム」や「速くゴールするアイディア」はだいたい採用されます。
またプレイング同士が噛み合った場合、猟兵同士でのバトルや競り合いやチキンレースなどが発生する可能性もあります。
恨みっこなしで仲良くバトりましょう!
あ、第2章からは怪人との戦いになります。
中断なしでレースごと実況中継されるので、格好良く戦ったら素敵ですね!
それでは、よろしくお願いします!
第1章 日常
『激走!キマイラレース!』
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POW : エンジン全開!ひたすらアクセルを踏んでゴールを目指す!
SPD : アイテムを使って相手を蹴散らしたり妨害したりしてゴールを目指す!
WIZ : 抜け道やショートカットを利用して最短でゴールを目指す!
👑5
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ティエル・ティエリエル
デパートの屋上においてあるパンダの乗り物みたいなレーシングカーを見つけて飛び乗るよ!
ふふん、これならボクにだって操縦できるよね!
でも、パンダくんが頑張って走ってくれるけどどんどん追い抜かれていくよ!?
むむむー、パンダくん頑張れーと応援してたら、なんか変なボタンがあることに気づくよ!
さっそくポチポチ!パンダくんの足が地面と平行になったかと思うとジェット噴射!
ばひゅーんとすごい速さでごぼう抜きしていくよ☆
「わわっ!パンダくんすごーい!はやーい!」と振り落とされないようにしがみつきながら楽しそうにしてるね♪
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【SPD】(共闘・アドリブ可)
「レースゲームは任せてよね!」
フィオ姉ちゃんと参加。もちろん優勝を目指すよ!
【行動】()内は技能
共有したコース情報を基に(操縦&運転)を使って走行。ショートカットも見逃さないよ
直線では加速アイテム『なめこ』を使って(ダッシュ)だね。ん、なめこ?
敵の妨害はガードアイテム『コーラの瓶』で防ぐよ。でも、これ大丈夫なの?
「アクセル全開、フルスロットル!」
ファイナルラップはフォルマ・ベンダバールを発動しトップを目指すよ
最終コーナーでは『奥義ジェットストリームアタック!』
加速した2台が一体となってポジションを変えながらスリップストリームを利用する大技だよ
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(共闘・アドリブ可)
弟と一緒にレースに参加。レース中はインカムで弟と通信・情報共有
■準備
[情報収集]と[ハッキング]を駆使し、主催のメインサーバにからDレース内のコースデータを収集
■作戦
「この先にジャンプ台があるわ。手前で加速アイテムを取るといいみたい」
ハッキング情報を駆使し弟と情報共有しながら最短コースを進む
コーナリングは[操縦]を駆使し減速を抑え直線に入ったら[ダッシュ]で加速
ファイナルラップは【ペガサスの翼】を使用し一気に加速してトップを目指す
「フォルセティ、いくわよ!」
最終コーナーでは弟と一体の大技『奥義ジェットストリームアタック』の超加速でフィニッシュ
エメラ・アーヴェスピア
キマイラフューチャーも久しぶりね…仕事で来るのは戦争以来かしら
相変わらず、面白い事を考えているみたいで…
仕事ではあるけれど、楽しんでやりましょうか
ふふっ、これでも乗物の【操縦】や【運転】には少し自信があるのよ
とりあえず様子見、あまり逸脱した行為はしないでおきましょう
ドローンを飛ばしてコース確認、【情報収集】
ショートカットを探して攻める位はするわ
私に向かってくる妨害は浮遊型の盾や装備で自動的に迎撃させるわ
依頼であっても、折角だから上を目指すわよ
懸念事項があるとすれば…傍から見ると、全力で遊んでいる子供に見えるのよね…
相手の出方次第では、私も魔導蒸気兵器を選ぶ事になるわよ?
※アドリブ・絡み歓迎
ミリア・プレスティール
「運転は初めてだからアイテムはお願いね、ミトン?」
カートの運転は初めてのミリアは運転で手一杯のため、相棒の手袋型UDC『ミトン』にアイテムの使用を全て任せる。
レースにしては安全運転でコースを走るミリアだったが、途中で『ミトン』が手に入れた謎のキノコを使用した。
「あれ?景色が大きくなって…いや、私が小さくなってる!?」
どうやらハズレアイテムだったようでミリアはマシンごと小さくなってしまい、後続のカートに轢かれてぺしゃんこに潰されてしまう。
轢かれたことでアイテムの効果は切れたがしばらくは体の厚みが戻ることはなさそうだ…
※アドリブ、他の方との絡みOK
氷室・雪
レースでDというとDeathが思い浮かぶが……
妨害ありのレースを題材にした映画がUDCアースにあったな
観客が多い中で顔をさらすのは恥ずかしいので覆面をつけてレースに参加しよう
謎の覆面レーサーというのも観る側からすると面白そうではあるからな
妨害したりする気はないので別方向で盛り上げられればいいが
レーススタイルは派手さはないが堅実な走りを目指そう
レコードラインをできるだけ外さないように走ろう
ドラフティングを駆使して隙を見せればオーバーテイクを仕掛けるぞ
こちらからの妨害は仕掛けないが、仕掛けられる妨害は持ち込んだ刀で切り捨てて阻止はする
悪質でないレーシングアクシデント程度の接触は諦めて許容しよう
軽量カートがひしめくようなスタート地点、セクシースタイルのサーキットクイーンがウサ耳(自前)を揺らしてウィンクを飛ばす。既にエンジンをふかす音があちこちで聞こえ、シグナルが青になるまで後少し――!
「キマイラフューチャーも久しぶりね……仕事で来るのは戦争以来かしら」
エメラ・アーヴェスピアが感慨深げな顔で頷いた。既にカートの運転席、丁寧にしっかりエンジンは温めてある。
キマイラフューチャーの世界そのものを真っ二つに(物理的に)割った戦争、バトルオブフラワーズから数ヶ月。一応怪人達がいるので全くの平和とはいかないが、伸びやかにしてドッタンバッタンした雰囲気は完全に健在だ。
「相変わらず、面白いことを考えているみたいで……」
そのお祭り騒ぎじみた喧騒は、エメラも割と嫌いではない。仕事ではあるけれど楽しんでやりましょうか、と楽しそうにエメラは呟きつつ、コース確認用のドローンを飛ばす。
「レースでDというとDeathが思い浮かぶが……」
微妙に物騒なことを呟いて氷室・雪が軽く首を傾げる。観客も多いし生中継やらネット配信やらされているので、覆面できっちり顔出しNGスタイルでの出場だ。
なおすらっとした体格や長く艶のある黒髪まで隠しているわけではないので、謎の覆面多分美女レーサー現る、と観客の反応はかなり良い。巨大掲示板でも誰も真面目に考察していない正体予想スレッドが既に3本くらい乱立している。
「妨害ありのレースを題材にした映画がUDCアースにあったな」
無論、運転席でふとそんなことを思い出している雪は、会場内の観客はともかくネット上でまでそこまで盛り上がっていることには気付いていない。
「ふふん、これならボクにだって操縦できるよね!」
ティエル・ティエリエルがひらりと跨るのはデパートの屋上にありそうなパンダのぬいぐるみ型カート……ん? カート……?
ちなみに見た目は完全に100円入れたらゆっくりと動き出すあの四足のパンダの乗り物である。
「よーし! レースゲームは任せてよね!」
フォルセティ・ソルレスティアがハンドルをぐっと握って気合を入れている間に、隣のカートではフォルセティの姉、フィオリナ・ソルレスティアが軽く頷きつつ、主催者のデータサーバから引っ張り出した本レースのコースデータを最終確認していた。
いいのかそれ。
多分バレたら良くない。でも多分バレてない。ちなみにハッキングしてきたフィオリナ曰く「あれだけゆるふわなセキュリティならデータ抜いてこない方が失礼」とのことであった。
「運転は初めてだからアイテムはお願いね、ミトン?」
しっかりとハンドルを握って、少し緊張した面持ちで声をかけるミリア・プレスティールに、手袋型UDC『ミトン』は頷くように指の付け根辺りの部分をひょこんと折ってみせた。幼い頃からミリアと共に過ごしてきたミトンはもはやツーカーの仲、そしてレース中も運転に必死のミリアに代わって自律行動でアイテムを獲得・使用することができる。
しかし元来いたずら好きで、隙あらばミリアのことをいぢめてくるミトンとの連携は、吉と出るか凶と出るか――!
さぁ、いよいよ軽快な電子音。赤から黄色に変わるシグナル。
そして――響き渡る音と共にシグナルは青に!
キマイラフューチャーの(主に体力)自慢のレーサー、怖いもの知らず、そして猟兵達まで、レーサーたちが一気にアクセル踏み込み走り出した!
まずは堅実な走りを魅せる雪に、客席から意外そうな声が上がった。なんとなく覆面というスタイルから、大胆な走り、もしくはヒール的な妨害スタイルを想像していた者も多かったらしい。
しかしすっと対戦相手のカートの後ろにつけて、コーナーで遠心力に負けて外に大きく膨らんだ相手をスレスレの内側で抜かしていく爽快なドラフティングには熱狂的な歓声が上がった。変わり種のレースではあるが、王道で堅実なテクニックにもやはりファンは多いのだ。
同じように割と堅実な走りを繰り広げているのはエメラだが、何といってもその印象を大きく変えているのはカート周囲に展開する魔動機の数々である。
ドローンの偵察で見つけたトンネルに、躊躇なくエメラはカートを飛び込ませた。一見全くコースから外れるように見えるし、普通に通り抜ければそうなるのだが、トンネル内にわかりづらく設置された横穴へと飛び込むとかなりのショートカットが可能という代物だ。その動きに気付いたレーサーのうち、確信を持ったエメラの運転に賭けることにしたらしい何台かがその後へと続く。前輪の上を自動で飛ぶように浮遊型のライトを浮かべ、横穴へと差し掛かったところで後ろから飛んできたコーラ瓶を、エメラの操作は一切なく浮かぶ盾が弾き飛ばした。
あわよくばエメラをコースアウトさせて先にショートカットに飛び込もうとしたレーサーの妨害なのだろうが、ガジェッティアとしてのエメラの能力はそういうヤツと極めて相性がいい。
「あまりに過激な妨害だと、私も魔道蒸気兵器を選ぶ事になるわよ?」
そう軽くウィンクすると、急ハンドルと共に先頭切ってエメラはショートカットルートへと飛び込んだ。
(……懸念事項があるとすれば……傍から見ると、全力で遊んでいる子供に見えるのよね……)
軽量カートということで、ぶっちゃけ遊園地とかにあるタイプのやつに見えるのは否定できない。そしてエメラはサイボーグ、外見が若い、というか幼い。
なおむしろ見た目に反して冷静に妨害を捌きガジェットを駆使する様子に観客席や配信サイトでは(色んな意味で)人気アップが留まることを知らないのだが、まだそんなことはつゆ知らぬエメラであった。
そしてそれよりかなり後方、速度を上げすぎず、煽られたら道を譲るくらいのレースとしてはあまりに安全運転のミリアに観客から上がったのは消極的だというブーイングではなく。
「がんばれー!」
「負けるなミリアちゃん!」
「おーいデカい手袋、そこに加速アイテム落ちてるぞー! 取ってあげなー!」
そこはかとなくほのぼのとした声援であった。初めての運転がカーレースという過酷な状況に、必死にハンドルを握る姿があまりに応援したくなるともっぱらの評判である。
でもってさらに後方、というか最後尾、頑張って最高速度らしき感じで走ってはいるものの、デパート屋上のパンダそのものといったパンダ型カートの動きにティエルは苦戦を強いられていた。
「むむむー、パンダくん頑張れー!」
身長20センチのフェアリー少女が必死にパンダくんを操縦している様子に、やはり観客席から温かな声援が飛んでいる。ついでにネット配信では「パンダくん頑張れー!」が弾幕コメントと化している。
しかしあまりにも。
あまりにもパンダくんの力では、このレースについていくには、足りな……
「あれ? なんだろこのボタン」
本来の操作部分からは若干離れたところで毛並みに埋まっていたボタンを、一切の躊躇なくティエルが押した瞬間。
ぎゅいーん、と音を立てて、パンダくんが前足を前へ、後ろ足を後ろへと伸ばす。――そして。
「とんだー!?」
その場面を目撃していたみんなが思わず叫んだ。なんとパンダくんの足の底からジェット噴射、とんでもない速度で前を走るカートを一気に抜かし始めたのだ!
「わわっ! パンダくんすごーい! はやーい!」
すっごくお目々をキラキラさせているティエルだが、もはや操縦というよりはしがみついているに近い。しかしパンダくんは飛んでいるからコースアウトぐらいでは何ともないのだ!
すごいぞパンダくん!
すごいぞティエル!
ちなみに『パンダくん』は既にトレンド入りまでしているぞっ! やったね!
さて、エメラと後続のレーサー達が通り抜けたショートカットだが、それより先にトンネルを抜けた2台のカートが並走していた。
「この先にジャンプ台があるわ。手前で加速アイテムを取ればいいみたい」
「おっけー、加速アイテムを使ってダッシュだね。……ん?」
フィオリナの指示で加速アイテムをゲットしたフォルセティが、すっごく怪訝な顔をした。
「なめこ?」
なめこである。
ちゃんと『加速用』ってパッケージに書いてあるなめこである。パッケージは簡単に開けて摂取可能。
「大丈夫よ、ちゃんと加速するから」
全く動じずになめこを使って一気にスピードを上げるフィオリナ。慌てて追いかけつつアイテムを使い、ジャンプ台を利用してまた別のショートカットルートに姉と共にカートを躍らせるフォルセティ。
アイテムの設定が割と変なのはハッキング中に確認してあったので、フィオリナは動じなかった。ちょっと弟には伝えそこねていただけで。
ショートカットを抜けて少し走ると、しばらく高架の下を並走するようなコースになる。高架の上も先程通ってきたコースであり、遅れてしまったレーサーやむしろ「妨害が楽しくてDコース参戦してます!」みたいな選手がいろいろとえげつない罠を仕掛けたりアイテムを落としたりバナナの皮を撒いたりしてくる一種の難所となっているのだが――、
「ねえ、これ大丈夫なの?」
「大丈夫、ガードと妨害両方に使える便利アイテムだから」
『コーラの瓶』で思いっきり妨害アイテム『ゴムボール』を打ち返すフォルセティに、ガードアイテム『鉄傘』を優雅に差して妨害の『スライム(お徳用サイズ)』を受け流したフィオリナが頷く。その少し後ろで轟音が鳴り響き、周辺の高架上からは悲鳴が聞こえた。非殺傷の制圧モードに設定した魔道蒸気兵器をセットしたまま、涼しい顔でエメラがソルレスティア姉弟のカートに追走をかける。兵器の発射口がきっちり上方を向いてまだ煙を噴いているあたりが、何があったのかを如実に語っていた。
ちなみにさらに後方からではあるが、もはやショートカット以前にコースの概念を逸脱しかけているティエルとパンダくんが猛追をかけてくるのがそろそろ見えている。この辺りがいろんな意味で高火力なトップ集団になりそうであった。
ドラフティングの標的としたカートにぴたりと追走した瞬間、放り投げられてきた運動会用大玉のような巨大ボールをばっさりと雪は刀で斬って捨てた。妨害対策の持ち込み品が馴染んだ得物なのは剣豪として当然ではあるが、次々に飛んでくる妨害やトラップを斬り捨てながらオーバーテイクを仕掛ける雪に、観客からそのたびに歓声が上がる。
何せ黒髪ロングで渋いレーススタイル、妨害は日本刀で斬り捨てていく覆面レーサーである。数世代前のSNSならもうサーバーがクラッシュしているレベルの盛り上がりだ。
先頭からやや遅れてだが例の妨害ゾーンに差し掛かるところ、運転しつつ片手だけで繰り出す見事な殺陣のごとき刀捌きに期待のボルテージも上がっていく。
――その頃、ちょうどその高架上側に差し掛かったあたりで。
「あれ? 景色が大きくなって……いや、私が小さくなってる!?」
ミトンが手に入れてきた謎のキノコを使った瞬間、カートごと小さくなっていくミリア。そう、どうやらトラップアイテムに当たってしまったのだ!
「きゃっ!?」
当然速度も小さくなった分落ちたところで、ごんっと当たった他のレーサーのカートに跳ね飛ばされ。
「ああぅ……!」
後続のカートに轢かれて無念、ぺしゃんこになってしまうミリア。強化人間としての改造実験で半流体レベルにまで柔軟になった肉体はそれでも傷つくわけではないし、轢かれた衝撃なのかサイズ自体は元に戻ったのだが、ぺしゃんこからの復元にはまだしばらくはかかりそうな様子。
そんなミリアをミトンはささっと拾い上げてカートの座席に乗せると、そのまま自分で運転して走り出したのであった。
先頭集団は既にインターバル地点へと差し掛かっている。ここに前半ゴールが設置されており、しばしの休憩と脱落者や規定タイムを満たせなかったレーサーのリタイア、コース整備の後に、前半タイムに応じて首位のカートから規定の距離を取った上で後半レースのスタートが行われるのだ。
「フォルセティ、いくわよ!」
「OK、アクセル全開、フルスロットル!」
フォルセティのユーベルコード『フォルマ・ベンダバール』、フィオリナのユーベルコード『ペガサスの翼』によってカートを補強し加速するように装備を変形させ、本来は抜き去りに多様されるスリップストリームを駆使し両方のスピードアップを図る、姉弟力を合わせての大技!
「奥義ジェットストリームアタック!」
凄まじい速度で最終コーナーを曲がり切った2台が、追走を振り切ってゴールへと――
「!!!」
ゴールなのに謎のしんみりした雰囲気。隅っこでのの字を書いているスタッフ。ちなみにスタート地点の観客席はゴールの様子に盛り上がりつつも、その異変に気付いた様子である。
まぁつまり前半ゴールでは!
凶悪な怪人が!
待ち受けていたのだッ!!
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『バウムクーヘン怪人』
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POW : 結婚したのか…俺以外の奴と…
【青春時代の甘酸っぱい思い出】を代償に自身の装備武器の封印を解いて【バウムクーヘンに仕込んだ苦い涙】に変化させ、殺傷力を増す。
SPD : お前と結婚するのは俺だと思ってた…
【失恋の嘆きをたっぷり含んだバウムクーヘン】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ : 涙のバウムクーヘンエンド
【引き出物の入った紙袋】から【涙で濡れているバウムクーヘンの包み】を放ち、【憐れみを誘うこと】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:里桜
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
そんなわけで。
レースの前半ゴールが何かしんみりしていると思ったら、待ち受けていたのは大量のバウムクーヘンであった。
いや違う、多数のバウムクーヘン怪人であった。
「結婚したのか……俺以外の奴と……」
「お前と結婚するのは俺だと思ってた……」
一切全くカーレースする気もなく、共通点はタイヤみたいな形の頭だよね、くらいのバウムクーヘン怪人に、スタッフは既にやられて端っこの方で涙にくれている。
とりあえず怪人は倒すとしてレースはどうなるんだろう、と思った猟兵達の耳に、スピーカーからぴんぽんぱんぽん、と軽快な音と共に声が聞こえた。
『あっすみませんこちらキマフェカップ運営ですー。えーまずレース参加者の皆さんは速やかに怪人から距離を取り一旦避難をお願いします、まだゴールしていないレーサーの方はここでタイムを取りますので一度コース上で停止してください!
また、すみませんがお客様やレーサーの中に猟兵の方がいらっしゃいましたら、どうか怪人への対策をお願いいたします! まだゴールしていない猟兵のレーサーにつきましてはゴール地点へ向かってくださって構いません! よろしくお願いしますー!』
つまりまずはいろいろ気にせず怪人を倒しちゃって構わないってことらしい。幸いゴール地点だから先頭には十分なくらい開けた場所にもなってるし!
せっかくのレースに涙を、いや水を差した報いを受けてもらうとしよう!
ティエル・ティエリエル
「レースの邪魔はさせないぞー☆」
パンダくんに乗ったままゴールまでやってきたけど……急には止まれない!
そのままどかーんと怪人の群れに衝突だよ♪
ぶつかったけどパンダくんは無事で4足モードになって安全な方向に進んでいくみたい!係員の人が回収してくれるよね♪
それじゃあ全力でいくよーと【ライオンライド】でライオンくんを呼び出すけど……ライオンくんの鬣がバームクーヘンみたいになって拗ねてる!?
パンダくんと一緒だったからかな?大丈夫、ライオンくんはずっ友だよっと「動物と話す」で話しかけながら抱き着くね♪
機嫌を直したライオンくんとのコンビネーションで怪人達を蹴散らしていっちゃうぞー☆
※アドリブ/連携歓迎
エメラ・アーヴェスピア
…凶悪な…怪人…?
…いえ、見た覚えのないオブリビオンだから油断はできないのだけど
それに後半があるのなら、いくらなんでもコースを破壊するような兵器は抑えた方が良いわよね…?
まぁ数が多いのならば、掃射して数を減らしましょうか
『我が砲音は嵐の如く』、大型の魔導蒸気ガトリング砲を並べて召喚よ
これなら単発の威力は他の奴より低いからコースの方もまぁ…なんとかなるわよね?
…駄目ならここの整備だけ後で手伝いましょうか…
相手の攻撃ごと撃ち抜いてあげなさい!
…所で、キマイラフューチャーでこういう大型砲台を呼び出して戦うと輝いた眼で見られるのだけどなんでかしら…?
※アドリブ・絡み歓迎
「……凶悪な……怪人……?」
その場に漂う物凄く重苦しく凹んだ雰囲気に、エメラ・アーヴェスピアは思わず呟いた。
ぐすぐすめそめそしつつバウムクーヘンをかじるバウムクーヘン怪人というシュールな図に、呟かずにはいられなかった。
「いえ、見た覚えのないオブリビオンだから油断はできないのだけど……」
「レースの邪魔はさせないぞおぉぉぉぉぉぉぉ☆」
そう肩を竦めたエメラの横で、凄まじい勢いで発生するドップラー効果。ティエル・ティエリエルがパンダくんに乗ったまま、ゴールラインからエメラ達選手から何から全速力で追い抜いていき――どかーん☆
お前と結婚するのは俺だと思ってたのに、とかぼやく怪人、乱舞するバウムクーヘン、そんなものはお構いなしに四足モードに戻って安全な方向にとことこ進んでいくパンダくんをほっとして見送るティエル。パンダくんをそそくさと回収して戦場の外まで連れて行く割と無事な係員。エメラはそっとこめかみを押さえた。緊張感。戦いに必要なはずのそれが、ない。
「あれは、一緒に展望台に行った3回目のデートでのことだった……あの時」
「まぁ数が多いのならば、掃射して数を減らしましょうか。後半があるのだから、コースを破壊するような兵器は抑えた方が良いでしょうし……」
青春時代の思い出を語っているバウムクーヘン怪人を若干遠い目で眺めつつも、エメラは着実にオブリビオンを片付けるべくガジェットを起動する。大型かつ多数の浮遊型魔道蒸気ガトリング砲は、一撃必殺の威力こそないものの掃討に適した攻撃範囲を誇る――!
「『我が砲音は嵐の如く』、相手の攻撃ごと撃ち抜いてあげなさい!」
一斉にガトリング砲が砲身を回転させ、まさに嵐の如き音と共に銃弾の雨を降らせていく。砕け散る嘆きと苦い涙を籠めたバウムクーヘン。倒されていくバウムクーヘン怪人。
「……所で、キマイラフィーチャーでこういう大型砲台を呼び出して戦うと輝いた眼で見られるのだけど……」
ちなみにさっきまで怪人の影響で泣いていた係員が、今はもう目をきらっきらさせて空中に並ぶ魔道蒸気ガトリング砲を見つめている。実況配信のタグには『#砲撃マニアの聖地』が追加されているし、大型掲示板の重量型兵器スレッドは静かに、けれど普段の10倍以上のスピードでレスが続いている。
「なんでかしら……?」
おおきくて かっこいいからじゃ ないかな!
さてその頃。
「ライオンくんの鬣がバームクーヘンになってる!?」
ユーベルコード『ライオンライド』でティエルが呼び出したライオンくんは、明らかに大変拗ねていた。
鬣がようやく生え揃ったくらいの可愛くてゴールデンな子ライオンなのだが、そりゃもうわかりやすくつーんと拗ねていた。
「パンダくんと一緒だったからかな……?」
ぷいっ。
凄まじくわかりやすい態度だった。
こう、騎獣としてのプライドが傷つきましたー、と全身で主張しているような態度だった。
「大丈夫、ライオンくん!」
そんなライオンくんの前でぐっと両手ガッツポーズし、その瞳を覗き込むティエル。
「だってライオンくんと、ティエルは、ずっ友だよっ!」
そしてぎゅうっと小さな手、細い腕で、信頼を籠めて抱き締める!
何が大丈夫で何がずっ友なのかの説明は一切ない!
けれど大事なのは真心なのだ!
そのティエルの真心が伝わったのだろう、ライオンくんはじっとティエルの青い瞳を覗き込むと、鬣を元に戻してこくん、と頷いた。
「よーし、それじゃ全力で行くよー☆」
一声可愛らしくも勇ましく吠えたライオンくんとの見事なコンビネーションが、バウムクーヘンを食い散らして!
じゃなくて!
蹴散らしていく!!
あ、配信サイトに『#AV(アニマルビデオ)』のタグが追加された。
降り注ぐ弾幕の中を駆け巡るフェアリーとライオン、ガトリング砲を一斉掃射するもまた少女姿のサイボーグ。もはやいろんなマニアを全力で刺していく絵面だ。
「……とりあえず、コースがあまり傷むようなら、ここの整備だけ後で手伝いましょうか……」
盛り上がる客席やら自分達の戦いぶりやら、そして流れるハイテンションすぎるコメントやらが映る、中継地点ということで設置されている巨大スクリーンをちらりと眺めてから、エメラはそっと現実へと意識を戻すのであった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ミリア・プレスティール
「あの…そんなに泣かないでください…ね?」
悲壮感を漂わせたオブリビオンにいきなり攻撃を与えるのはかわいそうだと思ったミリアは傷付いた心を歌で癒そうと試した。
ミリアにオブリビオンを攻撃する意思は無いが、あまりにオブリビオンがウジウジしているようなら相棒の『ミトン』が先走って手を出してしまうかもしれない…
※アドリブ、他の方との絡みOK
氷室・雪
結婚という言葉にはトラウマが刺激されてしまいます
恋愛には興味ないのに好意を抱かれた結果、結婚だ何だとからかう者、いらぬお世話をする者がいました
おかげで恋愛は興味ないから嫌いになりましたよ
忘れたかった過去を思い出させられた怒りがふつふつと……
未完成ではあるが【刹那永劫剣】で攻撃だ
私は速さで戦う方が好みだからな
攻撃は全て避けるのは理想ではあるが、今回は多少のダメージは怒りで我慢は出来るかも知れない
この程度のことで心を乱すとは私もまだまだ修行が足りないな
未熟すぎて猟兵に向いてないとすら思えてくるな
戦闘で覆面が破損していた場合は服の裾や袖を少し切って隠そう
恥ずかしいし、謎は謎のままの方が盛り上がるはず
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(アドリブ/連携可)
「そもそもレース場になんで現れたのか意味不明よね」
レーシングカートから降りてバウムクーヘン怪人と対峙する
■作戦
弟と連携。先にバウムクーヘン怪人の動きを封じて一網打尽にする
■行動
「引き出物にバウムクーヘンは、ひねりがないわよね」
弟のUCが発動している隙に、オートフォーカスでバウムクーヘン怪人をロックオン
「フォルセティ、タイミングを合わせていくわよ」
弟に合図を送り阿吽の呼吸で[高速詠唱]から【ロンギヌスの槍】を放つ。
巨大な槍でバウムクーヘン怪人を貫いて殲滅する
しぶとくバウムクーヘンの包みを投げてくる場合は【アイギスの盾】で相殺する
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(アドリブ・共闘可)
「せっかくファステストラップ狙えたのにー」
変なバウムクーヘン怪人に邪魔されたよー。ブーブー
こうなったらフィオ姉ちゃんと怪人を殲滅するしかないよね
【行動】()内は技能
「先にボクからプレゼントあげるよ」
怪人達が紙袋から何かを取り出す前に(先制攻撃)でバーラ・スーペルノーバだね!
重力磁場で怪人の動きを止めちゃって、畳みかけるように攻撃だよ。
「まっかせてよね、フィオ姉ちゃん!」
フィオ姉ちゃんとタイミングばっちりで(高速詠唱)からのロンギヌスの槍を放つよ。
連携攻撃で巨大な槍になるんだからね!
「最近、引菓子もオシャレな焼き菓子が増えてるみたいだね」
「せっかくファステストラップ狙えたのにー変なバウムクーヘン怪人に邪魔されたよー」
「そもそもレース場になんで現れたのか意味不明よね」
フォルセティ・ソルレスティアが悔しげにブーイングを飛ばす隣で、フィオリナ・ソルレスティアがカートから静かに降りつつ冷静に頷いた。
ほんっとな。突然どうしたバウムクーヘン怪人。
「だいたい引き出物にバウムクーヘンは、ひねりがないわよね」
「最近、引菓子もオシャレな焼き菓子が増えてるみたいだしね」
「ぐふっ!」
本来の存在意義とは割と別方面からの口撃に、精神的ダメージを受けるバウムクーヘン怪人。
「あの……そんなに泣かないでください……ね?」
そんな怪人達に自分もなんだか泣きそうな目で、ミリア・プレスティールが声をかける。相手はオブリビオンであるとはいえ、このあまりの悲壮感に可哀想だと感じてしまったのだ。
ちなみに後ろのミトンは普通に『やっちまえ』と言いたげに親指を下に向けている。
「き、聞いてください、まずは私の歌を……」
ユーベルコード『シンフォニック・キュア』――その歌声に共感した者全ての傷を癒やす歌。そう、なんとミリアはオブリビオン達の(多分心の)傷を癒そうと必死なのだ!
その優しさに観客席のあちこちからは感激の啜り泣きが聞こえ、配信サイトには『#全キマイラフィーチャーが泣いた』のタグがつき、SNSでは何故か『バブみ』なる単語がトレンド入りする、静かながらも情熱を孕んだ盛り上がりが会場全体に宿りつつあった。
そしてその熱の(構図的に)裏で、氷室・雪が静かに溜息をつく。
――結婚。
その言葉が彼女に落とした影響は深い。恋愛には興味がないというのに好意を抱かれ、さらにそれをからかわれるわ、くっつけようとお節介を焼く者はいるわ……今となってはそれはもう、雪にとって立派なトラウマであった。
「おかげで恋愛は『興味ない』から『嫌い』になりましたよ」
ああ、思い出してしまった――そう言いたげに、表情がまさに氷の面となっていく。無論覆面に隠れてそれは見えないのだが、しかし内面の静かな怒りのままに雪はすっと刀の柄に手をかけ鯉口を切った。
刀を使う者にとっては、既にそれ自体が宣戦布告であり、必ず斬るという意志でもある。
静かに軽く腰を落とすと、摺足の一歩、二歩、そこから一気に加速!
「ああ、綺麗な歌だ……でも、どうせ俺のための歌じゃない、あれは披露宴の余興……え」
そしてミリアの歌にも結局もごもごやさぐれていたバウムクーヘン怪人に接敵、そのまま刃を抜きざまに一閃。一刀にて斬り捨てた相手が消滅しつつあるのを確認すれば、すぐに振り向いて次の相手へと視線を飛ばす。
「受けてみるか! 我が奥義『刹那永劫剣』!」
未だ未完成ではある、と雪は自認するが、けれどその速度は既に視覚で捉えることも難しいものへと達している。それでも達人ともなれば一瞬で無限の行動を行えるとすら伝えられる奥義、ゆえにまだ遠きものに過ぎぬと彼女は言うが。
ちなみにミリアの歌に感動していた会場はその剣技に息を呑み、続けてわぁっと湧いた。つまりそう、敵すらも思いやる歌にも、容赦なき刀の奥義にも、どちらにも感受性豊かなのがキマイラフューチャーって世界なのだ。節操ないとか言わない。配信サイト用にいきなり運営がサムライエンパイアっぽい、もしくはUDCアース的に言うと時代劇っぽいテーマソングを流したり、「今のスローで頼む」「えっやばい速度半分くらいじゃまだ追うのきつい」「なんて?」と大型掲示板の武術系スレッドが凄まじい勢いで進んでいたりと、先程とは別方面まで盛り上がりが波及しているのはキマイラフューチャーの娯楽の多様性を表しているのである。多分。観客席にはその気魄に思わず固まってる人もいくらかいるが。
「さて、先にボクからプレゼントあげるよ! 『常闇の淵に彷徨う黄昏よ。其に捧げるは原初の神韻』――!」
そしてフォルセティが銀河を象った帽子から優に100を超える漆黒の魔力弾を呼び出したかと思えば、怪人達が姉弟に反応する前にと解き放っていく。それは銀河の始原にして中央に現れる超重力を模したように、怪人達の動きを食い止めた。
「フォルセティ。タイミングを合わせていくわよ」
「まっかせてよね、フィオ姉ちゃん!」
会場が『おっいきなり超能力バトル度上がったぞ!』『むしろ魔法系かな』と盛り上がる中、2人の高速詠唱が完全に重なりハーモニーとなる。
「「全てを貫け、ロンギヌスの槍よ!」」
フィオリナの伸ばした手からは、眩いほどの雷。
フォルセティの伸ばした手からは、煌めくような氷。
それが1つの巨大な槍を形作り――軌道上のバウムクーヘン怪人達を一息に弾き飛ばした!
「おおおおお!!」
沸き起こる拍手。スタンディングオベーション。姉弟の息の合ったコンビネーションマジカルバトルに釘付けの中。
「ああっミトン、可哀想だよ!」
もはやミリアが止めるのも聞かずに、『ロンギヌスの槍』の軌道から外れた怪人をミトンがぶちのめしていた。最後の1人がそれでもなんとか投げつけたバウムクーヘンを半身を取ってかわすと、それを戻し踏み込む勢いで雪がさっと斬って捨てる。
「この程度のことで心を乱すとは、私もまだまだ修行が足りないな……」
刀を鞘に納めた雪が、ふ、と小さく息をついた。凄まじい剣技の冴えは確かであっても、本人としてはまだその怒りは未熟、猟兵に向いていないのでは、とすら思うほど――つまりはそう、若いのだ。
覆面の多少破れた部分を、すっと袖口から布を切り取って裏から当て、修復する。――ちなみに本カメラには映らなかったのだが、客席にいたとある生放送配信者のカメラではその呟きや様子までうっかり配信されてしまい、エモいと呟きながら崩れ落ちた視聴者がいたとか――しかしそれが大きく広まることはないだろう。謎は謎のままの方が盛り上がる。そう、謎の美女レーサーの方が。
悲しみから救えなかった存在へとそっと手を合わせるミリアの肩を、ミトンがぽんぽんと叩く。まぁだいぶミトンが張り倒したりしてたけど。
しかし「さてそれじゃ復旧してレース再開するか」みたいな雰囲気になったその時!
「うっらぁああああ!!」
突如として飛び込んできた新たなるカート!
いや違う! 車輪もなければモーター音も聞こえない、しかしその健足で飛び込んできたあれは! 一体 ! 何だー!?
「俺様抜きで最速を決めようなんて! そんな企み甘いんだよ!」
なんと(多分おそらく)新たな挑戦者だー!!
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第3章 ボス戦
『パスト・フォーサイス・おん・ざ・どらごん』
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POW : 全部ブッとばしちまえ!だいうるごす・ふぁいあー!
自身の【跨っている、どらごんの口の中】が輝く間、【ブレス攻撃】の攻撃回数が9倍になる。ただし、味方を1回も攻撃しないと寿命が減る。
SPD : これがフォーミュラの力だ!だいうるごす・ふれあ!
戦場全体に、【必ず先制攻撃となる、どらごんの吐く炎弾】で出来た迷路を作り出す。迷路はかなりの硬度を持ち、出口はひとつしかない。
WIZ : 俺様こそ次のフォーミュラだ!力を貸しやがれぇ!
【前章の敵、またはギミック】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
イラスト:ハレのちハレタ
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「百目鬼・明日多」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
まぁうん。
オブリビオンなんだけどさ。
オブリビオン! なんだけど! さぁ!
「しかも妨害アリアリのレースだなんて、俺のためにあるみたいなもんじゃないか! このレースに勝利して最速そして最強! 俺が次のオブリビオン・フォーミュラだっ!」
ほんのりぬいぐるみめいたドラゴンに乗ってレースに参戦する気満々なんだ!
「俺の名前はパスト・フォーサイス! 次にこの世界を破壊する存在、オブリビオン・フォーミュラに俺はなる!」
なれるもんなんだろうか、と思った人もいるかもしれない。
うん。
わかんない。
でもとりあえず今はどこからどう見ても普通の(?)オブリビオンだ!
『さぁ突如として現れた新たなる挑戦怪人、猟兵レーサーの皆さんはどうやってこの強敵と立ち向かい、そしてレースでの勝利を収めるのか! そう、敵は奴だけではない、互いも既にライバルなのだっ!』
一見能天気とも思える実況だが、猟兵達はなんとなく『運営からのお願い』を察していた。
下手に奴の意図に逆らって妙な事態を招くより、とりあえずこのパストくんなるオブリビオンの思惑通り、レースしながらぶちのめした方が良さそうだ!
とりあえず猟兵以外の参加者には事情説明が行われているようだし、係員が『猟兵レーサーの皆さんスタート準備お願いします!』と呼びかけている。つまりはもう邪魔の入らない猟兵VSオブリビオンのガチバトルなカーレースが!
今!
幕を!
開ける!!
ティエル・ティエリエル
WIZで判定
「せっかく平和になったのに、おぶりびおん・ふぉーみゅらになんてならせないぞー!!」
純真なティエルちゃんはパントくんのセリフを真に受けて絶対負けられないぞーと対抗心を燃やすよ!
再びパンダくんに飛び乗って今度はスタートダッシュを決めるぞーとボタンに手を添えて準備万端!
スタートと同時にボタンを押すけど……あれ、さっきと違うボタン押しちゃった?
今度はパンダくんが大きく口を開けたかと思うと、中からミサイルが飛び出してパントくんの方に向かって飛んでいくよ♪
どかーんと吹っ飛んだら今のうちに【妖精姫の括り罠】で邪魔しつつ、パンダくんもどかーんと出発だよ!
※アドリブや他の方との連携も大歓迎です
「せっかく平和になったのに、おぶりびおん・ふぉーみゅらになんてならせないぞー!!」
ティエル・ティエリエルの瞳に情熱が宿る。再びひらりとパンダくんへと飛び乗った、その背中にまで炎が見えるくらいに。
彼女自身の純真さもさることながら、実は彼女はとある妖精の国のお姫様。キマイラフューチャーのみんなには内緒だよ!
そんなわけでノブリス・オブリージュの精神は、幼く小さなフェアリーの彼女の心にも、はっきりと息づいているのだ!
既にシグナルは赤から黄色へ、そしてブザーと共にスタートダッシュを決めるべく、さっきのボタンをポチッと……ん?
「あれ、さっきと違うボタン押しちゃった?」
そう、パンダくんは今度はばびゅーんと飛んでいくことはなく!
代わりにくわーんと口を開けると、なんと中からミサイルが飛び出した!
「ぎゃー!?」
真っ直ぐに前へと飛んでいったミサイルは、ドラゴンと共に早速駆け出していたパストの背中に思いっきりぶち当たり吹き飛ばす!
そう!
このパンダくん、カートの中でも大外れかと思いきや、性能を存分に発揮すれば猛スピードにして妨害もハイスペックな謎の超絶当たりカートなのである!
「よし、そこだー! 引っかかっちゃえー☆」
ちょうどパストくんとドラゴンの着地点に突然仕掛けられたスネアトラップ――ユーベルコード『妖精姫の括り罠』が発動!
その間にスピードアップ用のボタンを押したティエルとパンダくんはばびゅーんと猛スタートを決めるのだった!
大成功
🔵🔵🔵
ミリア・プレスティール
「このままじゃ追いつかないかな…」
相変わらずの安全運転でドンケツを走るミリア。ビリを走る内に救済アイテムとして『無限ダッシュ』アイテムを手に入れたがミリアには怖くて使えない。
『?ミトンに任せればいいの?』
ここで『ミトン』が「任せろ」というサインを出してアイテムとハンドルを握りしめる。無限ダッシュを使って大胆にショートカットを行う『ミトン』。腕が無いことで制限のないハンドル捌きとスピードで浮かび上がるカートを片手で強引に押さえつける力技でドンドン距離を詰めていく。ただし、運転席に必死にしがみつき悲鳴をあげているミリアは無視して…
「このままじゃ追いつかないかな……」
どうやらパストくんとドンパチやっている先頭は、相変わらずの安全運転を繰り広げるミリアから見るとだいぶ遠く、さらにまだ距離を離しつつあった。さっきは一般のレース参加者もいたので記念出走でのんびり走るレーサーや妨害専門みたいな、つまりはミリアより後ろにも結構走っている選手がいたのだが。
今は猟兵達と乱入選手のパストくんだけのレースとなっているため、ひたすらに最後尾である。
例によってアイテム担当のミトンが取ってきたのは「がんばれ☆」と書かれた順位救済アイテムの『無限ダッシュボルチーニ茸』だったのだが、運転初心者のミリアに無限ダッシュアイテムとはあまりに酷な選択肢である。
――そこに、ついに『奴』が動いた。
「? ミトンに任せればいいの?」
ぐっとサムズアップした片手はハンドルを握り、もう片手では無限ダッシュボルチーニ茸。少しだけ考えてからミリアが「じゃあ任せるね」と――頷くより前にとっくにミトンはボルチーニ茸を使うと思いっきりアクセルをふかしていた。
「きゃああああ!?」
無限ダッシュ、ということはすなわち。
もうアクセルなんて踏まなくても走る。挙句、腕がないのでハンドル捌きに制限もない。容赦もない。ほぼ直角に方向転換したかと思えば芝生に乗り上げ、真正面にレースの先頭を捉えるとコース外の地面に容赦なく跳ねるカートを強引にもう片手で押さえつけ、みるみるうちに先頭を射程圏へと捉える!
「あああきゃあああちょっとまってまってみとんんんんんゃひゃあああああ!!」
もはやミリアは運転席にしがみついていることしかできないがガン無視である。いやたまに運転席から吹っ飛びそうになるミリアごとカートを抑え込んでいる。
もちろん、先頭集団をそのまま轢き飛ばすほどにとんでもない走りをするわけではないが。
「うわあああ!!」
ちゃんとオブリビオンであるパストくんオンドラゴンだけは轢き飛ばしていた。
そのまま執拗にドコスコ車体を叩きつけるミトン。既に目を回しかけているミリア。
「お、俺様は次のフォーミュラだ! 力を貸やがれぇ!」
無論パストくんもユーベルコードで対抗するのだが――いかんせん、そのカリスマ(予定)で呼び出したとしても。
「お前と結婚するのは俺だと思」
どーん☆
飛び散る焼き菓子の粉。一瞬で星になるバウムクーヘン怪人。
『運転』とは、立派な戦闘技能である。
それを見事に立証してみせたミトンの快進撃はまだまだこれからだっ!
……ところでミリアちゃん大丈夫? 気絶してたり……しない? 平気……?
成功
🔵🔵🔴
フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(共闘/アドリブ可)
「うわー、二足歩行のドラゴンとかカーレースじゃないよー!」
こうなったら徹底的にオブリビオンやっつけてからゴールするしかないね
【行動】()内は技能
他の猟兵さんのUCで動きが鈍っている所を(ダッシュ)で猛追するよ。
「追い打ちでトラップ発動だよ」
接近したら(高速詠唱)でバーラ・スーペルノーバ! これで更に動きを封じるよ。
「そんなスピードじゃオブリビオン・フォーミュラは程遠いね」
フィオ姉ちゃんとオブリビオンを挟み込む位置に回り込んで
(全力魔法)でカラミダド・メテオーロだよ!
ドラゴンと一緒にぺしゃんこにするよ。
そのまま加速して一気にゴールを目指すよ!
フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(共闘・アドリブ可)
「もう何でもありになっているわね」
もしかしてDレースのDはドラゴンのことだったのかしら?
■作戦
弟と連携してレースしながらオブリビオンの動きを封じ、UCで攻撃。
ダメージを与えた隙に振り切ってチェッカーフラッグを目指す
■行動
「追いついたらこちらのものね」
[高速詠唱]で【エレクトロレギオン】を召喚し、一斉に襲い掛かるよう機械兵器を嗾ける
「足止めしたところで思いっきり行くわよ」
弟と反対側の位置に回り込み、(全力魔法)で【バベルの光】をオブリビオンに撃ち落とす
「チェッカーフラッグはもらったわよ」
そのまま(ダッシュ)で加速して一気にゴールに雪崩れ込む
エメラ・アーヴェスピア
…バトルカーレースになるのね
まぁそれならそれ、頑張ってみましょうか
…さすがに『蒼穹翔るは我が箒』は趣旨が違うわよね…あれが一番早いのだけど…
まぁここまでしっかりとカートを【操縦】してきたのだし、最後まで自分の腕を信じてゴールへ向かいましょう
基本的にやる事は前半のレースと変わらず【情報収集】&周囲の装備に迎撃させるのだけど…
さすがにそれではあのオブリビオンには十分とは言えないわよね
なら…少し派手な護衛を用意してみましょうか
『我が元に響くは咆哮』!私と並走するように飛行させるわ
それとオブリビオンに対しての防御や攻撃、装備、使用する重火器まで一任ね
さぁ、ゴールまで駆け抜けるわよ
※アドリブ・絡み歓迎
氷室・雪
バスト…サイズ…?
一瞬また喧嘩を売られたかと思ったが違うか
まだ心が乱れているようなので落ち着かないといけないな
突如現れた乱入者を撃退する目的が追加されたのであれば、何でもありを解禁しよう
刀を使い【剣刃一閃】で比較的被害の少なそうなところを斬ってショートカットするぞ
後続の助けになれば幸いであるが
拳銃か何かあれば肉薄せずとも攻撃できるのであろうが……
現状近接攻撃しかできないので接近して「捨て身の一撃」を繰り出そう
致命傷を与えられずとも相手の行動の阻害が出来れば御の字だ
しかし…今更変えることも出来ぬが、斬るしか能がない地味な私は他の参加者と比べてレースを盛り上げることが出来ているのか疑問に思えてくる
「うわー、二足歩行のドラゴンとかカーレースじゃないよー!」
「もう何でもありになっているわね」
フォルセティ・ソルレスティアが思いっきりツッコミを入れる横で、フィオリナ・ソルレスティアは逆に割と冷静に呟いていた。正直、なかなかいい姉弟漫才ぶりだと動画配信でのコメントも多い。
「もしかしてDレースのDはドラゴンのことだったのかしら?」
しかし流石にそういうわけではない。最初からオブリビオンを悪役レーサーとして用意してたらキマイラフューチャーであっても不祥事……になるはず……だと思う。きっとそうだ。
さてその頃別のカートでは。
「バスト……サイズ……?」
そっ、と氷室・雪は、半ば無意識に自らの胸元に手を当てた。掌には自分でもわかる控えめな感触。
『バストサイズ』が『パスト様』の聞き間違いであったことに気付いた雪が覆面の奥で赤面し、ぱっと手を離すまであと数秒、実はしれっとその様子が配信サイトで流れたおかげで、謎の覆面美女レーサー応援勢が一気に萌えと勢いを増したというのは、少なくとも今の雪にはまだ預かり知らぬところであった。
「さすがに『蒼穹翔るは我が箒』を使うのは趣旨が違うわよね……あれが一番早いのだけれど……」
再び情報収集と迎撃を担当するドローンを浮かべつつ加速をかけて、エメラ・アーヴェスピアは呟く。ある意味最初から乗っていれば……いや一応カートは運営側で用意されているものを使うということになっている。外見がカートっぽくないのもあるけど一応あれも用意されたものだ。
「まぁここまでしっかりとカートを操縦してきたのだし、最後まで自分の腕を信じてゴールへ向かいましょう。バトルカーレースならそれはそれ、頑張ってみましょうか」
先行させていたドローンから得たコース情報を、そのままエメラはやや先行する雪へと通信用のドローンを飛ばす。
「一瞬またオブリビオンに喧嘩を売られたかと思ったが……まだ心が乱れているようだ、落ち着かないといけないな」
アクセルを踏み込みつつ、深く深呼吸。エメラから伝えられた情報に頷くと、すらりと雪は刀を抜いた。コースの中で破壊しても大きな損害とはならず、かつ切り抜くだけで大幅なショートカットが可能な壁面。アクセルを最大に踏み込んで加速してからひらりと雪は身軽にカートの座面とハンドルの中央に足を置き、勢いをそのままに壁に真っ直ぐに突っ込むと突撃の寸前で刃を閃かせた。ユーベルコード『剣刃一閃』、円を描いた剣筋は見事に壁面を抉り抜き、カートが倒れた壁の残骸へと乗り上げるその衝撃を利用して再び雪は運転席へと滑り込んだ。再びアクセルを踏み直して完全に段差と化した壁を乗り越えれば、本来ならばしばらく先でほぼ180度のターンという難所をクリアした、さらにその先に完全に先回りできる。
「えええなんでそこにっ!? まさかワープでも使ったのかずるいぞぎゃー!」
実際おそらくワープの方がまだ想定の範囲と言えただろう。しかし壁の大穴にパストくんが気付く前に、すれ違いざまに片手のハンドル操作で雪が見事に彼をドラゴンごと叩き切っていた。
無論ドラゴンがガンガンブレスをぶっ放してくるし、結構な勢いでカートに着弾しかけたところを刀で切り払ってその余波で自分の方が傷を負っているのだが、構わずカートを反転させて再び刀を構え、またすれ違う瞬間に斬撃を浴びせる。
(しかし……今更変えることも出来ぬが、斬るしか能のない地味な私は他の参加者と比較してレースを盛り上げることが出来ているのか)
ふっと浮かんだ疑問に、軽く覆面の内で雪は眉を寄せた。ちなみに実際は壁をくり抜いた辺りから盛り上がりが大変なことになっている。サムライ系統はとにかくキマイラフューチャーでも人気が高いのだ。なお覆面のおかげでクノイチ扱いかオンナサムライ扱いかで熱烈な議論も起きている。
「さて、さすがにドローンではあのオブリビオンには十分とは言えないし……少し派手な護衛を用意してみましょうか――『我が元に響くは咆哮』!」
その間にややスピードを落とし、エメラがユーベルコードを準備しつつ壁を抜け――まさにその瞬間に召喚に応えたのは、身の丈5m、パワードスーツを纏い重火器を装備した、魔道蒸気操騎兵であった。無論その武装は全て魔道蒸気動力を備え、カートと並走するように飛行を開始、パストくんを煽るように横を駆け抜けていく。
「はっ! 戦ってる間に俺様を抜かそうなんてさせないぞ!」
無論全力で追走するパストくんではあるが――ドラゴンのブレスをロケット砲で迎撃しつつ、放物線状の弾道を描くキャノン砲と直射タイプのマシンガンの組み合わせで着実にダメージを重ね、生半可な突撃や適当に召喚されたバウムクーヘン怪人だとそのボディに弾かれる。その間にエメラは悠々とカートを走らせ、僅かに先行する雪へと情報を送ればその刀を振るって雪がショートカットをひたすら作る。――強くないですかこのコンボ。
さらに。
さらにソルレスティア姉弟が、そこにトドメを刺すべく猛追をかけているのだ!
「追い撃ちでトラップ発動だよ、『パーラ・スーペルノーバ』!」
「ええ、追いついたらこちらのものよ。『エレクトロレギオン』!」
高速詠唱によって解き放たれた漆黒の魔力弾が、高重力をかけてパストくんの動きを封じ込める。反対側からは300体に至ろうかという戦闘用の機械兵器が襲いかかり、暴れるドラゴンのブレスに次々に撃墜されながらもその動きを鈍らせていく。
「ふふん、そんなスピードじゃオブリビオン・フォーミュラは程遠いね」
「足止めしたところで……思いっきりいくわよ、フォルセティ」
「オーケー、フィオ姉ちゃん!」
右からフィオリナが、左からフォルセティがパストくんとドラゴンを挟むように回り込み――
「悠久に揺蕩う無限の星屑よ、星柩満ちて此へ集うは漆黒の紅炎『カラミダド・メテオーロ』!」
「貫け、『バベルの光』よ――!!」
ダブル・ロックオンからの攻撃は――真上から!
灼熱の巨大隕石が、人工衛星からの高出力レーザーが、まさに星の世界から最大火力で降下、爆発――!
「ぎゃああああ!! お、覚えてろよおおおお俺様は諦めないからなー!!」
かくしてオブリビオン『パスト・フォーサイス・おん・ざ・どらごん』は骸の海へ流れるお星様となったのでした!
そしてそのまま加速をかけた猟兵達のカートはゴールへと飛び込む輝かしき流星となり、観客席から猛烈な歓迎とスタンディングオベーションで迎えられたのだった――!
大成功
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