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君はリア充、俺は非リア充。ずっと、爆発していよう。

#キマイラフューチャー #戦後

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#戦後


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●神聖な言葉を今、捧げるよ
 ――君はリア充、俺は非リア充。ずっと、爆発していよう。

 背中のマントに描かれているのは神聖な5文字『リア充爆破』。人ごみの中、燃えるハートは溶岩のように嫉妬でドロッドロだ。
 だから、高らかに叫ぼう、魂籠めて。神聖な言葉を今、捧げるよ。

「リア充は! 爆破する!!」

 誇り高き哀戦士(怪人)のシャウトとともに芸術祭会場がドッカーン!
「怪人の残党だー!!」
 芸術祭の会場が混乱に陥る!
「パック!」
「ライド!」
「デリバリー!」
 段ボール箱を頭に乗せた配送業者姿の怪人が箱からどんどん変なものを出している。子供の頃の夢、えっちな本、父ちゃんの眼差し、母ちゃんの温もり、愛と勇気があるのに友達が出てこない!? なんと友達は自分で努力して作れというのか――ガラガラガラ、と音立てて怪人が味方が乗っている台車を押し、台車に乗っていた味方が箱とロープを手に飛び降りて大暴れ。
「怪人ってたいしたことないんじゃなかったのー!?」
 キマイラたちが悲鳴をあげて逃げ惑う、そこは楽しい芸術祭の会場だったのに。
 手に手を取り合って逃げる甘々スウィートな恋人たち。
「いやぁーんっ、こわぁぁい! バクハツくぅーん! 好きよ!」
「一緒に逃げようッ、マインちゃん! 好きだ!」
 握る手は指を熱く絡め合う恋人繋ぎ、無事逃げ帰ったら結婚しようと誓い合い必死に走りながら顔を寄せていって唇と唇がチュッ(意外と余裕がある!)――そんな2人が怪人の目に留まらないわけがないッ!
「ちょっと待ったああああっ!!」
 怪人が立ち塞がり! 目から滂沱の涙を流す。
「悔しくなんかないっ!」
 聞いてもないのにそう言って涙を拭う怪人は全力で恋人達に爆発を捧げるのだ。
「ずっと爆発していよう」
 ああ、君はリア充、俺は非リア充。こんなに近くにいるのに絶対的に違うんだ! 決して越えられないラインがはっきり見える! だから、なんかもう爆発しよう、爆発してください、してくれなくても俺がリア充は爆破する!!
「ばくはつすりゃあああぁぁぁあああああ!!!」

 ――これはそんな甘くて酸っぱい事件のメモリィなのである。

●時は、芸術の秋であった!
「動画を作って欲しいのです」
 グリモアベースの窓際でルベル・ノウフィルがそう言って頭を下げた。
「実は、キマイラフューチャーで秋の芸術祭……動画コンテストがあるのです。たくさんの人々が自由に動画を制作して、会場の個人スペースで披露して、最後にネットの再生数と会場の人々の投票数で順位を決めるらしいのです。
 そこで、動画を作って欲しいのでございます。
 キマイラ達の間では猟兵達は大人気ですが、あまりに見事に怪人を撃退している為に怪人って大した事ないんじゃね? と勘違いしちゃう者が最近増えているそうです。なので、怪人は危険ですよーってアピールする動画を作って欲しいのでございます。そう……ここにいる全員で、ひとつの動画を、です」

「そうですね、怪人役と猟兵役とに分かれて演技をしたりですとか。面白おかしく怪人の危険性を説くですとか。特に、怪人役の皆様がイキイキと悪役をする姿を見てみたいですね……」
 ルベルはそう言ってゆらりと尻尾を振った。
「特に、怪人役の皆様がイキイキと悪役をする姿を見てみたいですね……とても、見てみたいですね」
 ルベルは壊れたスピーカーのように繰り返し、ふと正気に戻った様子で土下座する。
「そうそう、芸術祭の会場で、祭りが始まった後に怪人が暴れるようです。暴れ出したら、退治してくださいますか? すみませんが、よろしくお願いいたします」
 ルベルはそう言って『依頼』をして、猟兵達をキマイラフューチャーに転送するのであった。


remo
 おはようございます。remoです。
 初めましての方も、そうでない方もどうぞよろしくお願いいたします。
 今回はキマイラフューチャーでのネタシナです。
 1章の執筆ペースはゆっくりめを予定です。

(遊び方)
 まず一つの動画をみんなで作りましょう。ネタシナなのでゆるゆるごーごーです。

 キャラクター様の個性やプレイヤー様の自由な発想を発揮する機会になれば、幸いでございます。
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第1章 日常 『猟兵だけど動画作ってみた件』

POW   :    怪人に扮して大暴れ(やられ役担当ですが派手にお願いします)

SPD   :    猟兵役として怪人役を倒す(ただしすごく苦戦して下さい)

WIZ   :    怪人がどれだけ危険か解説(多少大げさでも構いません)

👑5
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルク・フッシー
レパルさん(f15574)と協力します
アドリブ等、歓迎します

この世界では戦いがショーみたいになってますけど、本来はとても危険なものですし、それを伝えるのは大切だと思います

準備◆ボクは撮影の為のセットづくりをします
レパルさんが調達してくれた材料を塗装し、リアルな街並みを再現します

怪人役の皆さんのお化粧もボクが担当します
もっともお化粧をするのは初めてなので、レパルさんにスマートフォンを借りて情報収集しないと…
本当に便利ですね、インターネット…

…え?ボクも出演するんですか…?

撮影◆いやあぁぁ!誰か助けてくださいぃぃぃ!!
うわあーん!おかあさーん!あーーん!(ほぼ素の悲鳴をあげて逃げ惑う)


レパル・リオン
ルクちゃん(f14346)と一緒!
アドリブとか色々大歓迎ー!

いい動画を撮るには、準備が大切!そんな訳で、撮影用のセットを作るわよ!

準備◆まずは発砲スチロールとかの材料調達!いい感じのコンコンポイントをスマホで検索して、ひとっ走り取ってくるわ!

ルクちゃんが塗ってくれた材料を運んで、セット作りを手伝うわよ!力仕事なら任せて!

あと、ルクちゃんと一緒に怪獣映画とかを見て、撮影の参考にするわよ!
ルクちゃん、撮影もがんばろうね!
…?ルクちゃん出ないの?なんで?


撮影◆ぎゃおーっ!あたしは怪人よ!
おびえろー!なきわめけー!いのちごいをしろー!(セットを派手に壊す)

あ、これヤバい。超楽しい…!


神羅・アマミ
へへ、最近の妾、動画製作者って設定を忘れがちでしたからね?
ここらで再生数を荒稼ぎして、イェチューバー唯一無二の頂点であることを改めてアッピルしておく必要がありますね?

タイトルは『最強の猟兵を倒してみた』とかかのー。
妾はルチャ系マスクを被った謎の怪人として採石場へ登場!
敵は「さいきょー」とか「LV999」とか落書きされた案山子!
そう…一流のレスラーは箒が相手でも試合を組み立てられるという!
くんずほぐれつ一人芝居。
コード【板付】の発動で周囲を破壊する威力はガチじゃ。

最後はコンコンで出てきた果物をひとかじり、「キマイラの赤ちゃんども…怪人に勝てると思ったら大間違いじゃぜ!?」と大見得を切ってエンド。


トリテレイア・ゼロナイン
やるからには中途半端ではいけません
怪人には絶対近づかない!と思わせるような内容でキマイラFの人々を守りましょう

キマイラの一家に●礼儀作法で協力を要請
共演者として参加して貰います

UCで向上した●演技力と●防具改造で染めた(すぐ落ちる)黒い鎧で卑劣な黒騎士怪人を演じます

動画内容

「妻と子供は預かった」とお父さんを脅迫、呼び出し
返してほしくば勝利してみせろと決闘を申し込みボロボロに(演技)
そして敗北の代償として二人を入れた檻を●破壊工作で爆破(の演出)

怪人の素体としては期待外れでしたねと落胆しつつ
「二人に直ぐに会わせてあげましょう」とお父さんに剣を振り下ろす映像で締め

…お子さんに泣かれてしまいました…


エレクメトール・ナザーリフ
凄い事を思い付いたのですが!
怪人を想像すれば一人二役で銃が撃てるのでは!?
マッチポンプ?何の事か分かりませんね

《幻影舞踏》で戦争時に被ったホラーマスクの怪人を想像
エモくはないのですね、ドン引きされましたので

怪人は高笑いを上げながらガトリング斉射
応戦している所を前以て設置したC4爆弾を起爆
派手に吹っ飛ぶ

接近戦を挑むとトラバサミに引っ掛かり怪人に銃撃される
咄嗟に銃弾に銃弾を当てて射線をずらします

怪人を追い詰めた展開になると奥の手として怪人が分身
《幻影舞踏》で増やしており全員銃器を持ち乱射する
遮蔽物に隠れて跳弾で対抗するも徐々に数で押される

最後は猟兵合体武器で倒す
戦隊ヒーローものだとそんな感じなので


アベル・スカイウインド
フッ、怪人になって大暴れとは面白そうだ。それにこの世界の住人は危機意識に欠けるところがあるからな……必要な活動だろうよ。

ただ暴れて退治されるだけだとありふれた特撮ヒーロー作品と何ら変わらんからな。いかに怪人が危険で迷惑な存在だと思わせられるかが肝要だろう。
よし、UC【竜星】で地形を破壊するぞ。最高に危険で迷惑な行為に間違いない。空から現れ地形を破壊して暴れる青い猫怪人……フッ、完璧だな。

そして同時にやられ役でもあると。フッ、安心しろ、心得ている。怪人はやられる時も派手でなくてはならん。爆発は無理だが【ジャンプ】力を活かして星になることはできるぞ。手加減してくれよ?まだ死にたくはないからな。


テティス・ウルカヌス
注:テティスは猟兵の任務をアイドルの仕事だと誤解している可哀想な娘です

「今回はヒーロー物の番組の撮影のお仕事ですねっ!
それでしたら天才美少女アイドルのテティスちゃんにお任せ下さいっ!
天才美少女アイドルとして、ヒロイン役をやりましょう!」

番組の予告映像(注:グリモア猟兵からの説明のことらしい)を見ると、どうやら爆発と恋愛がテーマの番組みたいですね。

清純派アイドルで売ってるテティスちゃんですが、ここは大サービスです。
爆発の中でのキスシーンの撮影なんかも許しちゃいましょう!

「ふっふっふ、この私の主演女優賞ものの演技(注:大根役者です)があれば番組は大ヒット間違いなしですね!」

アドリブ・ギャグ大歓迎


エレニア・ファンタージェン
【POW】
これは失敗したわね…
エリィたち猟兵が強すぎるばかりに怪人への恐怖がなくなってしまうだなんて

責任を取ってエリィ、怪人の怖さを布教するわ
エリィは怪人役をする!

怪人役のピンチに、愛馬に騎乗して颯爽と登場
禍々しい呪詛を纏い、恐怖を与えるわ
画面の向こうの皆様への誘惑も忘れずに
「猟兵ごときを相手に何を手間取っているのかしら」
カッコよく決めたいところだわ

なんか適当に戦って倒されれば良いのよね?
Adam&Eveとか大鎌に変えたSikándaとか悪役っぽい?
「エリィたちを倒しても…また新たな怪人が…」
カメラ目線で、催眠術を使って怪人の怖さを説きながら倒されましょう
ああ、もう、お洋服が汚れちゃう!嫌ね!


アンコ・パッフェルベル
はあいキマフューのみなさーん!こんちはーこんばんはーです!
わたしの名前はアンコっ!(ばっ)
しーらーたーまー…(くるくる)
パッフェルベル!(びしっ)
本日は怪人撃破RTAをしますです!

わっるい怪人(役)ども、年貢の納め時ですよ!かもん!
お任せコースで本日の相棒を召喚。
ただし今回はあんまり有効じゃない子を選択。いくぞーです!

自在鞭と相棒で攻撃!
ああっとアンコちゃん相手の攻撃には無策の上連携が雑!
くっ、こんなに強いだなんて…予想外ですー!
ゆるゆるとした怪人でも決して油断してはいけないということですね。
猟兵の力が無いならこれは逃げの一手しかないやつです…!
説明口調。

あ、倒す段になったらガチ連携するです。



●『最強の猟兵を倒してみた』

 トゥルルル、トゥルルル、
 職場に一本の電話が鳴るところから物語は始まる。

「エルモさん、ご家族の方から電話みたいで……」
「うん、ありがとう」
 最近毛並みに白髪が目立ち始めたエルモは、キマイラフューチャーの人々の中でもなかなかに変なキマイラだった。働かず遊んで暮らしてもいい世界で彼は趣味の合うキマイラと共に会社ごっこをしているのだ。ちなみに、その事業は猟兵を題材とした「イエーガーカード」を制作したりルールを改定したり大会を主催するような内容であった。
「私は怪人トリテレイア。貴方の奥方とご令嬢は預かりました」
「な、なんだって!!」
 電話に出てみるとなんと怪人トリテレイアと名乗る者が家族を誘拐したというのだ。
「返してほしくば私を楽しませてください、決闘です」
「け、けっとう! このビビュエ・エルモが運動音痴のメタボオヤジだと知ってのセリフか!」
「それは知りませんでした」
 こうして父ビビュエ・エルモは家族のために怪人と戦うことになったのである……!

「今いくぞ! 愛しのマイファミリー」
 ビビュエが会社のビルから一歩出る。

 さら、と白い髪が風に流れる。長い髪を揺らして美しい姿をチラ見せするのは怪人エレニアだ。
「さあ、ショーのはじまりよ」
 鈴鳴りの声がそう告げて。

「ハーッハハハッハ!」
 別の怪人による高笑いが響く!
 ガガガガガガッ!! 足元に銃弾の嵐が降る!
「ぎゃあああああ!」
 なんとホラーマスクを被った怪人クレエが出現した。
「どういうことだ! 待つんじゃなかったのかッ!」
 スマホでビビュエが怪人トリテレイアに文句を言うと、怪人トリテレイアは「それは別の怪人で、私に責任はありません」と言い逃れをしている。
「なんとかこっちまで来てください。出番がなくなってしまうじゃないですか」
「そんな事を言われても困るよキミ!」

 そんなやりとりを背景に現場には新たな怪人が出現していた。

「とうっ」
 高い所から爽やかに猟兵アンコが降りてきた。どう考えても先ほどまで怪人エレニアが立っていた場所から降りて来た位置なのでよく考えると「怪人と鉢合わせにならなかった?」と思ってしまうのだが、細かいことを気にしてはいけない。
「時間を稼ぎます、行ってください」
「す、すまないっ助かったよ」
 ビビュエが走り出す……!

「待てー、ぎゃおーっ! あたしは怪人よ!」
 ピンク色の怪人レパルが現れ、カメラ目線で胸を張る。だが、その襲う相手はビビュエでも猟兵アンコでもなく。
「いやあぁぁ! 誰か助けてくださいぃぃぃ!!」
 ドラゴニアンのルクだった。ルクは通行人役なのだが、迫真の悲鳴をあげて逃げ回っている。
「おびえろー! なきわめけー! いのちごいをしろー!」
 怪人レパルがセットをバリバリ破壊している。
「あっ、セットって言っちゃだめですよ」
 アイドルのテティスがツッコミをいれている!
「うわあーん! おかあさーん! あーーん!」
「いや、あれ素の悲鳴じゃね」
 アマミの声がノイズ混ざりに入っていた。
「あ、これヤバい。超楽しい……!」
 レパルがこっそり呟いた声も入っている。編集で消し忘れたのだろう。
「楽しそうね」
 くすくすと怪人エレニアが――怪人にしては無邪気すぎる愛らしい笑い声を響かせている。
「誰と戦えばいいです?」
 猟兵アンコが少し戸惑っている!
「フッ、相手をするか」
 怪人アベルがゆらりと現れ――、ここでシーンが変わる。

「ひい、ひい、たいへんでした」
 ビビュエは色々あって採掘場に辿り着いた。
「ここに怪人と戦うために必要な武器があるという」
 説明的なセリフを言いながら採掘場を進んでいけば、ゴスッバキッという物騒な音が聞こえてくる。
「ああっ、あれは!?」

 なんと「さいきょー猟兵」「LV999」と落書きされた案山子がルチャ系マスクを被った謎の怪人アマミにボコられている。
「ああっ猟兵がやられているっ! ……のか!?」
「最後疑問形になっていますビビュエさん」
 ルクのこっそり声が入っていた。
「ルクちゃん、声が入っちゃったわ」
 レパルが慌てた様子でかける声まで入っている。
「そう……一流のレスラーは箒が相手でも試合を組み立てられるという!」
 怪人アマミが案山子を挑発するようにハンドサインをして逆の手で糸を引く。糸で繋がった猟兵役の案山子が引かれるがままに怪人アマミに向かっていく! どう見てもただの案山子にしか見えない! だが怪人アマミは糸をぐいっと引いて右に案山子を引き寄せて右パンチ! 間を置かずにぐいっと逆手で紐を引いて案山子を左に引き寄せて左パンチ!
 ぐしゃっ! ばきっ!
「だあああウロチョロすんじゃねーしゃらくせー!」
 自作自演! 何処からどう見ても一人芝居! ユーベルコードの威力が乗ったパンチで案山子がボロボロになっているが時折反撃を受けた演技で「ぎゃわー!」「カウンターじゃ!」とくんずほぐれつ迫真()のバトルを演出している……!
「普段からこんな動画を?」
 引き気味のトリテレイアの声が混ざっていた。
 と、そうこうしているうちに案山子が物体と呼べないほどに破砕されてしまい、怪人アマミはコンコンコンして出てきた果物をひとかじり。
「キマイラの赤ちゃんども……怪人に勝てると思ったら大間違いじゃぜ!?」
 カメラ目線で大見得を切って締めくくる!

「なんということだ! 猟兵が負けてしまった!」
 ビビュエが悲鳴をあげて逃げていく。

 シーンが切り替わり、再び都市風景。
「フッ、最高に危険で迷惑な技を見せてやろう」
 危ない! ビビュエの進行方向に雷のように空から落ちてきた青い猫怪人アベルが!
「竜星(ドラゴミーティア)――地に塗れろ!」
「ぎゃあああああああああああああ!!」
 青い稲妻の如き槍が大地を大きく割り、大迫力の映像と音に悲鳴が混ざる。
「ハアアアアッハッハッハアア!」
 怪人クレエが再び出現!
「まだ暴れたりないんじゃぜ!」
「ルクちゃーん、がおー!」
「わああああああああん!!」
 あちこちで怪人が暴れて混沌とした画面が出来上がっていた。

「おかしい、我々には何かが足りない気がします」
 真っ黒く全身を塗った怪人トリテレイアが呟く姿が映っている。
「足りないもの……」
 足元で縄に縛られて転がっていたテティスが一生懸命に立ち上がる。
「わかりました! 台本にはありませんでしたがサービスしましょう」
「わかりましたか、テティスさん」
 明らかに演技じゃないやりとりをしている2人。だが編集し忘れたのかそのシーンもばっちり入ってしまっている……。
「怪人トリテレイアさん、貴方は真っ白できれいなボディをしていて、正義の騎士だったのに」
 縄で縛られて転がったままテティスが可憐な声を発した。唐突に演技が始まった!
「私の何を知っているというのですッ!」
 怪人トリテレイアがアドリブ能力を発揮して応じている。
「実は、あんまり知りません」
 テティスが心の底から困ったような顔をした。
「そこは嘘でいいので感動的な台詞で応えてください!?」
 思わずツッコミをしてしまう怪人トリテレイア。

 画面は切り替わり、なぜかアマミとレパルがバトルを始めている。そしてそれを背景に猟兵が出現している。
「ニシシ! 猟兵エレクメトール参上です」
 高笑いを上げながらガトリングを斉射する怪人クレエの足元で前触れなく爆発が起きる! 猟兵エレクがC4爆弾を起爆したのだ!
「ハーッハハ、ハアアアアアア!?」
 怪人クレエが吹っ飛んでいく!
「そっちも自作自演じゃねーか!」
 怪人アマミが茶々を入れているのをちらっと見てエレクメトールがカチッと何かを作動させた。
「ぎゃわあああーーーー!?」
 怪人アマミの足元が爆発!
「演出です」
 演出かな?
「ルクちゃん!」
「うっ、うっ、ひっく」
 爆発を背景に怪人レパルがルクを抱きしめて守っている。
「フッ、無事でよかったな」
 怪人アベルが余裕の表情で若者達に背を向けて歩き出す――、夕日色に迫る世界。感動的な見た目だがストーリー的には全く繋がっていない破綻しまくったストーリーになっているかもしれないッ!

「あ、あの」
 ビビュエが困っていた。
「行ってください。お婆ちゃんのために」
 猟兵エレクメトールはおまんじゅうをひと齧りし、怪人(今どの怪人がどうなってんの?)のもとへ走る!
「すみません!」
 ビビュエが決死の表情で走り去る!
「すみませんではなく、ありがとうと――、くっ!?」
 エレクメトールが焦燥の表情を浮かべる。トラバサミに引っかかり、そこへ怪人クレエの銃撃が襲い掛かる!
 ダダダダダッ!!
 身動きできない少女猟兵へと浴びせられた弾幕に誰もが悲劇的結末を想像したその時!
「負けるわけにはいきません! 時間を稼ぐと約束しましたからね」
 エレクメトールが咄嗟に銃を放ち、なんと銃弾に銃弾を当てて射線をずらすという離れ業を披露!

「おおおおおおおおおおおっ」
 華のあるバトルシーンに会場が湧いている! ネットにアップされた動画にもコメントの嵐だ!(色々どうなっているのかとツッコミいれるコメントも多いが)

「一気に行きましょう」
 エレクメトールが罠を振り切って怪人を追い詰める! だが、怪人がなんとここで分身して銃を乱射する!
 そして、愛馬に騎乗し颯爽と現れた怪人エレニアが禍々しい呪詛を纏い、画面映えする蠱惑的な流し目を送り。
「猟兵ごときを相手に何を手間取っているのかしら」
 純白の睫に彩られた赤い瞳がミステリアスにアップになると映像を見ている人々がドキリとする。それは美しき『悪』――人々を魅了する幽遠な怪人姿であった。エレニアの周囲に大蛇のAdam&Eveや大鎌のSikándaが映ると雰囲気がぐっと妖しくなった。
 そして、怪人が次々と猟兵エレクメトールと敵対する。
「フッ、味方を巻き込まないでくれよ?」
 怪人アベルがニヒルな笑みを浮かべ、都市の床を再び破壊して瓦礫で銃弾を塞いでいた。瓦礫ガードで守られた怪人仲間(?)アマミとレパル、そしてルクが「怪人は皆仲間という設定でいく? それとも敵対する?」と視線で相談をしている。
 猟兵エレクメトールが遮蔽物に隠れて跳弾で対抗しつつ徐々に押されていく。怪人アマミとレパルとアベルと以下略が連携しているのだからそりゃもう押されるしかなかった。
「あ、あの」
「フッ、安心しろ、心得ている。怪人はやられる時も派手でなくてはならん。手加減してくれよ? まだ死にたくはないからな」
「待ってください。ちょっと多勢に無勢すぎて想定外といいますか」
「おりゃー、しねー!」
「アマミちゃん、本気でユーベルコードはあぶないかも。でもちょっとあたしもやってみたいかも」
 エレクメトールは堪らず怪人クレエ(エレクがユーベルコードでで出していたのだ)を消し、無理やりラストシーンに持ち込んだ。
「猟兵合体! って戦隊ヒーローものだとそんな感じなのに味方がいません!」
「ほれ、案山子の残骸」
 アマミが非情にも案山子の残骸を放り投げて煽る。
「ほーれ合体はよー!」

 ここでシーンがプツッと切り替わった。

「はあいキマフューのみなさーん! こんちはーこんばんはーです!
 わたしの名前はアンコっ!」
 突然明るい声が響く! 猟兵エレクメトールがどうなったのかわからないまま画面に現れたのは猟兵アンコだ!
(ちょっと最初は登場に失敗した感じでしたので、仕切り直しですっ!)
 猟兵アンコは登場シーンをやり直したのだった!(しかし、編集し忘れて最初の部分がそのままになっている!)
「エリィももう一度登場し直そうかしら」
 怪人エリィが呟く声が入っている!

「しーらーたーまー……」
 ビルの高所からダイヴしたアンコが空中でくるくる回転し、
「パッフェルベル!」
 びしっとポーズを取る! パーフェクトに決まったポーズに拍手が起きる!
「本日は怪人撃破RTAをしますです!」
「あの、合体」
 エレクメトールの小さな声が怪人アマミの笑い声で掻き消される。
「わっるい怪人ども、年貢の納め時ですよ! かもん!」
 アンコが暴風竜ルドラ・ゲームバージョンを召喚している。
「あんぎゃー!」
「そのルドラを倒すためにはアタッカーがゾンビアタックをして全員死んだ直線上をヒーラーが駆け抜け、ルドラのモーション中に15メートルの距離で仲間達を一斉に蘇生させるのを30分くらい繰り返さないといけません……伝説のルドラゾンビアタックをさあ、見せるのです!」
「そんな倒し方できるか!」
「最大の敵はラグによる距離ズレ……いくぞーです!」
「怪人エリィがゾンビ役に挑戦すればいいかしら?」
「できるの!?」
「わからないわ……」
「わからなくていいと思います」
 そんな戸惑い溢れる怪人トークをしながら自在鞭とルドラの暴風により怪人達がバッタバッタとやられていきそうになる! アンコは慌てて手加減をした。
「ああっとアンコちゃん相手の攻撃には無策の上連携が雑! くっ、こんなに強いだなんて……予想外ですー!」
「説明的!?」
 アンコは無理やり手を抜いてピンチを作っていく!

「合体しません?」
 味方猟兵エレクメトールがアンコの後ろで棒キャンディを舐めている。
「もうちょっとピンチになったらお願いします」
「ニシシ! 了解です」
 打ち合わせの声がばっちり動画に入っている!

「ゆるゆるとした怪人でも決して油断してはいけないということですね。猟兵の力が無いならこれは逃げの一手しかないやつです……!」
「あんぎゃー!」
「ああっ、ルドラが仕様変更で倒しやすくなってしまいました」
 アンコがひたすら説明口調でピンチを演出している!
「こうなったらもうこれしかありません……猟兵エレクさん、合体しましょう!」

 そしてシーンが変わる。

「や、やっときましたか」
 倉庫らしき場面。怪人トリテレイアがビビュエと対峙していた。
「か、家族を返してもらう」
 ビビュエがゼエゼエ言いながらやっとそう言う。
 壁際では大切な家族達が……、
「やめてくださいっ、テティスちゃんのために争わないでくださいっ」
 このタイミングでテティスが空気読まない演技を入れた!
「どうしてですか、お二人は将来を誓い合った仲だったじゃないですか」
「その設定はおかしいですよ!?」
 思わずツッコミを入れざるを得ない怪人トリテレイア。
「え、だめですか。ではえっと……そんな、勝った方にキスするなんて!?」
「何故そうなりました!?」
 とにかくそんな変な空気の中決闘が始まったのである――、

「フッ、爆破スイッチはこれか」
 アベルが演出用スイッチを押して倉庫のあちこちを爆発させている。
「きゃああああああ」
「おとうさーん! びええええ!」
「や、やめろ! 妻子に手を出すな!」
 ビビュエが怪人トリテレイアに必死に向かっていく! しかし、力及ばずあっという間にボロボロになってしまう。

「わかりました。勝利のキスはトリテレイアさんに」
 テティスが頬を染めてそっと目を閉じる横を通過して怪人トリテレイアはビビュエの妻子が入っている檻に銃を向け、爆破する!(演出だ!)
「やめろおおおおおおおお!!」
 ここでビビュエがまるで本気のような悲鳴をあげた。

「あ、演出だっていうの忘れてたわ」
「ちょっと、シャレにならないですっ」
 猟兵達の声が爆破音に小さく混ざって聞こえる――、

「怪人の素体としては期待外れでしたね、……」
 怪人トリテレイアが落胆したようにため息をつき、ため息の狭間に「あの、演出です」とヒソヒソ声でビビュエを落ち着かせている。もちろんバレバレだ。
「そうだったのか、はあびっくりした」
 ビビュエがホッと胸を撫でおろしている。

「こほん。二人に直ぐに会わせてあげましょう」
 怪人トリテレイアが冷淡に言い放ち、ビビュエに剣を振り下ろす――。

 ここでシーンが切り替わり。

「正義は最後に勝つんですーっ」
 ルクが無理やり良い感じに締めくくろうとしたのがミエミエのアナウンスを入れている。
 青い空に怪人アベルが飛んでいき「フッ、やられたぞ……」と言いながら星になって。
「エリィたちを倒しても……また新たな怪人が……」
 エレニアがカメラ目線で密やかに催眠術を使って怪人の怖さを説きながら倒されてくれている。
「ああ、もう、お洋服が汚れちゃう! 嫌ね!」
「その呟き音声入っちゃってます!」
 編集し忘れた声がまたひとつ。

 出演者の名前が順に流れて最後にタイトルの『最強の猟兵を倒してみた』「END!」。
 と、こんな動画が芸術祭で流れたのだが。

●どうしてこうなったのかを説明しよう。
1、Back to the Future!

 2019年、秋。具体的に言うと9月23日くらいの出来事だ。
 とあるご家庭のインターフォンがピンッポーン♪ と鳴った。

「もしもーし、おはようございます。猟兵です」
「「!?」」
 朝ごはんの最中だったファミリーがびっくり仰天、出迎えてみると家の外には猟兵チームがずらぁっと並んでいたのである。
「えー、突然ですが協力をお願いしたくお伺いしました」
 クリーンな白さがトレードマークなトリテレイア・ゼロナインが礼儀正しくご挨拶!
「テティスです。突撃☆お宅の朝ごはんです」
 アイドルのテティス・ウルカヌスがマイクを手に愛らしくアイドルスマイルを浮かべている。
「この家は妾が乗っ取ったんじゃぜ!」
 神羅・アマミがずかずかと上がり込んで家の中を物色している。

 混乱に陥る一家へとトリテレイアは慣れた様子で「かくかくしかじか」と事情を打ち上げ、一家の協力を見事ゲットすることに成功したのであった。
 トリテレイアが協力ゲットした一家のプロフィールは以下の通り。

 ・祖母:ウニャ・エルモさん。
 ・父:ビビュエ・エルモさん。
 ・母:シリルニャ・エルモさん。
 ・長男:バクハツ・エルモさん。
 ・長女:ルニャ・エルモさん。

「バクハツ様?」
 トリテレイアが長男に確認するように問いかけた。
「えっ、そうですけど」
「ああ、失礼しました。そうですか、貴方がバクハツ様でしたか」
「チュッチュして爆発する奴じゃねーか!」
 アマミが予知に出てきた名前であることに気付き、人差し指でびしりと指を差す。テティスは状況を全く理解していなかったが、「ドッキリは成功です!」とカメラに向かって最高の笑顔を披露していた。

「芸術祭を恋人と訪れて怪人に襲われて逃げながらプロポーズをする予定なんじゃあああ」
「何を言ってるんですかああああああ」
 アマミが予知をぶっちゃけて一家を混乱に陥れている!
「おにいちゃん、プロポオズするの?」
「おい、そんな人がいるなんて聞いてないぞバクハツ」
「説明しなさいバクハツ」

 そんな一家を見ながら真面目なトリテレイアは「未来が変わってしまったりしないでしょうか」と一人(周りに真面目な人がいない!)悩むのであった。

2、コンコンコン!

 お日さまがご機嫌キラキラなお昼前。

「ルクちゃん、あっちの公園のブランコ、コンコンコンスポットよ」
「公園のブランコですか、子供が使ってないといいですけど」
 遊びの邪魔をしてしまいますと、申し訳ないですから――そう呟くルク・フッシーを隣を歩くレパル・リオンがにこにこと見ている。並んで歩く2人は、ちょっぴりルクのほうが背が高い。年齢は4つルクが上。だけど、臆病で気弱なルクをレパルがいつも元気に引っ張って。
「ルクちゃん、公園まで競争よ!」
「えっ、レパルさん待ってくださいっ」
 ――今日も元気!

 着いた公園は平穏そのもの、日常を過ごす人々が思い思いに過ごしている。
 キィ、キィ、ブランコに揺られてルクとレパルはちょっとだけ休憩タイム。
「ルクちゃん、揺れながらコンコンコンしたら周りに発泡スチロール一杯出て楽しさ倍増よ!」
「雪が積もっていくみたいで結構きれいですね」
 ゆるく前に後ろにブランコ揺らしてたまにすれ違う視線が笑っている。子供の笑い声が聞こえる。ちらりと視れば数人がはしゃいで走り回っている。
「猟兵だー!」
「怪人なんて3秒でのしちゃうぜー!」
 キィ、キィ。
 ブランコをゆるく揺らして、ルクは笑顔を真面目な表情に変えて呟いた。
「この世界では戦いがショーみたいになってますけど、本来はとても危険なものですし、それを伝えるのは大切だと思います」
「うん、ルクちゃん。あたしもそう思うわ」
 レパルが素直な声色で応える。仲良しだからの迎合ではない。
「あたし、怪人の怖さを知ってるもの」
 2人の周りに発砲スチロールの山が出来ていく。白い山を見付けて子供たちがやってきて「これで遊ぼうぜー!」「なにして遊ぶー!?」とはしゃいでいる。ルクとレパルは顔を合わせてニッコリした。
「ルクちゃん、がんばりましょ!」
「はい、レパルさん」

3、これからの動画の話をしよう

 アンコ・パッフェルベルとエレニア・ファンタージェンが再会の挨拶をしていた。
「先日はダークセイヴァーで一緒だったわね」
「お互いお疲れ様です、今回もよろしくです」
 2人は古本屋の籠に本を山ほど入れていた。怪人と猟兵の演技の参考になるものと、趣味と。
「キマイラフューチャーにも本はあるのね」
 ぼんやりとしかものを映さない瞳で、けれどエレニアは大切そうに本の装丁を撫でる。
「素敵だわ」
「そうですね、電子書籍がメインかもしれませんけど、本も楽しいものとして好きな人は好きみたいです」
 アンコはそう言いながら神話の生き物がたくさん出ている本を見た。
「エリィにはその気持ちがわかるわ、紙の本ってひとつの世界が詰まっているみたいで、わくわくするもの」
 言いながらエレニアは本を探すように命じていた大蛇が怪人名鑑を持ってきたことに気付き、労った。
「怪人名鑑! 好い本ですね」
 アンコがにっこりする。そういうアンコは猟兵名鑑を見つけていた。
「キマイラフューチャーでは猟兵はヒーローとして人気なんですよね。見てください、この本、知っている人が結構載ってるんですよ」
 本を鑑賞する2人を本屋のおじちゃんがニコニコと見ていた。
「猟兵さんの来たお店ってことでハクがついちゃうな。サインもらって飾ってもいいかい」
「まあ、サイン? 描いてみたいわ」
「書きましょう!」
 2人はサインを書き。
「ねえ、猟兵さんがいるよー」
「ほんとだー」
 噂がいつしか都市に広まり、本屋に次々と猟兵ファンが訪れる。こうして本集めをしながらのサイン会が始まったのであった。

4、再びのお婆ちゃんとマインちゃん

 と、その頃。
「大佐! 凄い事を思い付いたのですが! 怪人を想像すれば一人二役で銃が撃てるのでは!? マッチポンプ? 何の事か分かりませんね」
 エレクメトール・ナザーリフが何者かと熱心に通信している。アベル・スカイウインドはキマイラフューチャーの風にふわふわ尻尾をそよそよとさせながらエレクメトールを見守っていた。が、その耳がぴくりと音を聞きつけて揺れる。
「おばあちゃん、道忘れちゃったの? 連れてってあげるわ」
「すまんのう」
「うっ、荷物はちょっと重たいわね」
「買い過ぎちゃってのう」
 見ると年配女性を若い女の子が助けようとしているらしい。
「フッ、重たいというのはこれか?」
 アベルが荷物を持つと、女の子が目を丸くした。
「運んでくれるの」
「構わんが」
 ちらりとエレクメトールを見ると、通信を終えてメロン味の棒キャンディを舐めながらアベルの方にやってくる。
「お婆ちゃんじゃないですか」
「おぉ、野良猫の飼い主を捜してくれた猟兵さんじゃのぅ。中継見ておったよ。すごかったのう」
 お婆ちゃんは知り合いだった!(登場:『ドロー!イエーガーカード』『バトルオブフラワーズ⑧〜ブラック・シティ・アウト』) 今日もお婆ちゃんはおまんじゅうを差しだしてくれる。
「ニシシ! エレクです」
「エレクちゃんというんじゃのう」
 再会してのんびりとお婆ちゃんの家に向かう道すがら、アベルはというと女の子から愚痴を聞いていた。女の子は名前をマインと名乗った。
(マイン? 予知に出ていた名前だな)
「もうすぐ芸術祭があって彼氏を誘って百合動画を作ろうとしたんだけど、彼氏がノッてくれないの」
「彼氏と百合動画とはなんだ?」
 さしもの気高き竜騎士にもこれには頭の上に「?」マークを浮かべてしまう。全く言っている事がわからない。
「彼氏を女装させて百合ップルになってみたって動画を作ろうと思ったのよ。そうだ! 代わりに貴方がやらない?」
「アベルさん女装するんですか? ニシシ」
「待て」
 不穏な方向に話が進みそうになった時、お婆ちゃんが「ここが家じゃよ」と救いの手を差し伸べてくれる。
「ただいま。親切な猟兵さんたちが助けてくれたんじゃよ」
 家に帰るとそこには。

「「あ」」
 仲間の猟兵達が揃っていた。
 そう、このお婆ちゃんこそがトリテレイアが冒頭で協力を取り付けたファミリーの「祖母:ウニャ・エルモさん」なのだ。

 ここで仲間達は互いの情報を共有し、残りの仲間へ「ここで動画を作るよ」と連絡をしたのであった。

「バクハツくん! どういうことなの」
 マインが眼を釣り上げてバクハツに詰め寄っている。
「えっ、マインちゃん?」
「わたしと百合動画は出来ないのに、その人達とならいいんだ?」
「あっ、待って、違うんだ」
「もう知らないっ、わたし負けないから!」
 マインが家を飛び出して走っていく!

「マインちゃんがバクハツくんへの好感度を爆下げしてるじゃねーか」
 アマミがクソゲー実況のノリで解説を入れている。テティスはそれを見て大げさにカメラに向かって焦った顔をしてみせた。
「たったいへんっ。彼女さんが誤解をしちゃったみたいです! このあとどうなっちゃうんでしょう」
 すかさずアマミがスケブにカンペを書いて見せた。テティスが素直にカンペを読む。
「ここでコマーシャルです」
 ピンポーン♪
「制作現場はここでいいの?」
「材料運んできました」
 ちょうどそのタイミングでルクとレパルが合流し、
「本を買ってきたわ」
「良い本がいっぱいありますよー!」
 エレニアとアンコも合流した。

「アマミさん、カンペありがとうございます!」
「へっへへ、妾が今後もカンペで指示出ししちゃるんじゃぜ」
「頼りにしています♪ 慣れている方と共演できてよかったです」
 アマミが玩具を見つけたような顔をして笑っている。トリテレイアが違和感に気付いて「テティス様、もしかして仕事内容を誤解なさっていませんか」と声をかけるがテティスは全く気にした様子がない――そういう病気(?)なのだ……!

 さておき、「芸術祭でプロポーズするはずの1つのカップル(バクハツとマイン)が破局しそうになってしまった!?」という予想外の問題を抱えつつ、猟兵達は動画制作を始めるのであった。

「私のせいなのでしょうか」
 トリテレイアが深刻なオーラを見せている。
「そ、そんなことはないと……でも、この家を選ばなかったら、今頃2人は仲良く百合ップルしてたのでしょうか」
 真面目なルクが一緒になって考え込んでくれる。
「仲直りさせたらいいんじゃないかしら?」
「フッ、今からどうやってだ……」
「喧嘩した2人を仲直りさせる企画ですか?」
 話が複雑になっていく! とにかく、猟兵達は動画制作を始めるのであった(2回目)。

5、いわゆるおまけの制作秘話

 ここから先は動画『最強の猟兵を倒してみた』の本編後に続いて上映されるおまけの制作秘話パートとなっている。

「これは失敗したわね……エリィたち猟兵が強すぎるばかりに怪人への恐怖がなくなってしまうだなんて」
 エレニアが繊細な容貌を少し困った気配に染めていた。
「責任を取ってエリィ、怪人の怖さを布教するわ。エリィは怪人役をする!」
 こうして怪人エレニアが誕生したのであった。

「フッ、怪人になって大暴れとは面白そうだ。それにこの世界の住人は危機意識に欠けるところがあるからな……必要な活動だろうよ」
 アベルがクールなキャッツアイを仲間達に向けた。
「ただ暴れて退治されるだけだとありふれた特撮ヒーロー作品と何ら変わらんからな。いかに怪人が危険で迷惑な存在だと思わせられるかが肝要だろう」
 アベルはエレクメトールと一緒に「いかに猟兵が苦戦し、怪人がやられるか」を練りに練った(そしてあの動画になった)。

「いい動画を撮るには、準備が大切! そんな訳で、撮影用のセットを作るわよ!」
 レパル・リオンがルクと一緒にセット作りに励んでいる。

トリテレイアはこの時やる気と希望に満ちていた。自慢の白いボディを黒く塗ることも厭わず、やる気に満ちていたのだ。
「やるからには中途半端ではいけません。怪人には絶対近づかない! と思わせるような内容でキマイラFの人々を守りましょう」

「へへ、最近の妾、動画製作者って設定を忘れがちでしたからね? ここらで再生数を荒稼ぎして、イェチューバー唯一無二の頂点であることを改めてアッピルしておく必要がありますね?」
 アマミはいつも通りだった。

「凄い事を思い付いたのですが! 怪人を想像すれば一人二役で銃が撃てるのでは!? マッチポンプ? 何の事か分かりませんね」
 エレクメトールがユーベルコード《幻影舞踏》でホラーマスクの怪人を出現させる。
「テテンテェテテン♪ オ前ノ腸ヨコセェ、銃ウタセロォ」
 アスリート走りを披露する怪人。
「なかなかのマスクじゃ。じゃが妾のマスクに敵うかの」
 アマミが対抗意識を燃やしてマスクを取り出した。
 結果ああなった!

「今回はヒーロー物の番組の撮影のお仕事ですねっ! それでしたら天才美少女アイドルのテティスちゃんにお任せ下さいっ! 天才美少女アイドルとして、ヒロイン役をやりましょう!」
 テティスが制作現場の隅で台本を読んでいた。このテティスというアイドルは猟兵の自覚がなく、依頼をアイドルの仕事だと勘違いするという困った子なのである。
「番組の予告映像を見ると、どうやら爆発と恋愛がテーマの番組みたいですね。ふっふっふ、この私の主演女優賞ものの演技があれば番組は大ヒット間違いなしですね!」
 結果、ああなったのである!

「盛り上げるために頑張ります!」
 ルクはぷにぷに尻尾を揺らしながらセットづくりを担当する。塗料を巧みに操り創り上げるのはリアルな都市風景だ。
「力仕事なら任せて!」
 レパルがセット作りを手伝ってくれる。
「すごいわルクちゃん、本物みたい!」
 出来上がった舞台セットにレパルが眼をキラキラさせている。この舞台セットはとても素晴らしい出来で、壊れっぷりも実に見事だったとネットで評判になった。

「タイトルは『最強の猟兵を倒してみた』とかかのー」
 アマミがタイトル案をホワイトボードに書いている。タイトルは他にアイディアを出す者がいなかったのでそのまま採用されたようだった。
「お化粧ですか、そうですよね。お化粧もしないと……」
「ルクちゃん、お化粧できないかしら? スマホでメイク講座があるから参考になると思うわ」
 レパルがスマホを貸してくれる。
「ボク、やってみます!」
 真剣な目でスマホを確認しながら、ルクが出演者の化粧を担当している。
「本当に便利ですね、インターネット……」
「ルクちゃん、撮影もがんばろうね!」
 レパルとルクが怪獣映画を見て撮影の参考にしている。
「レパルさん、演技頑張ってくださいね」
「……? ルクちゃん出ないの? なんで? あたし、ルクちゃんと一緒にやりたいな!」
「……え? ボクも出演するんですか……?」
 このやりとりの結果ルクは半分以上素で悲鳴をあげることになったのであった。

●芸術祭のはじまり、はじまり

 そして、時間軸が現在に戻る。すなわち、芸術祭が開幕したところである。
 実りの秋をテーマに飾り付けられた芸術祭会場には沢山の人々が集まっていた。

「猟兵が動画作ったんだって。見に行こう」
「いくいくー」

 開始と同時に一斉に動画がアップロードされ、世界中の視聴者が動画を鑑賞している。会場を訪れた観客達は広い会場内を屋台で販売している軽食やドリンクを手に巡り、気に入ったものに票を投じていく。一人につき一つの動画に一票入れることができる。「私の一票はハンパなものにはあげない」と気に入ったものを厳選して入れる者もいれば、「みんな頑張ったね! どれもいいよ!」と全てに片っ端から票をいれている者もいる。

「ほんものの猟兵さんだー」
「サインくださーい」

 猟兵達は自分達のスペースで動画を大モニターに映し出していた。猟兵が動画を作ったというだけで人々には大人気! 視聴席も満席だ。
「それでは上映をスタートします」
 映画の上映をするかのようにスタッフが厳かに宣言し、動画が始まる。動画内容は冒頭で流れた内容だ。

●ここから2章

 賑やかな芸術祭の片隅に寂しそうな女の子がいた。
「結局、バクハツくんと喧嘩したままだし、動画も作れなかったわ」
 マインだ。
「こんな動画を作ったのね……バクハツくんどこに出演してるの?」
 マインは猟兵達の動画スペースを訪れ、『最強の猟兵を倒してみた。』を観た。そういえばバクハツの出番はなかった。
「マインちゃん!」
 出演そびれたバクハツは動画の再生係をしていた。猟兵達は現地の人々にサインを求められたりしながらやりとりをチラチラと見守る。
「この後休憩時間だから、マインちゃんの動画あとで観に行くよ」
 バクハツが地雷を踏んだ!
「作ってないわ!! 創れなかったわ!」
 マインが泣きそうな顔で叫び、背を向けて走り出す!

 と、そんな会場の至る処から悲鳴が上がる。予知されていた怪人が出現したのだ。
 ちなみに、怪人が出現する前段階から猟兵の出展スペースで子供が泣いていた。動画を観た子供が泣いちゃったのだ。
「びええええ! 怪人こわい! 怪人こわいよー!!」

「……お子さんに泣かれてしまいました……」
「カップルさんもピンチです」
 果たして子供を泣き止ませることができるのか! そしてバクハツとマインの仲はどうなってしまうのか。
「もしかして何もしないでほっといたらあの2人破局するんじゃね」
「というか、ほぼ破局しかけているような」

「パック!」
「ライド!」
「デリバリー!」
 段ボール箱を頭に乗せた配送業者姿の怪人が箱からどんどん変なものを出している。子供の頃の通信簿、黒歴史ノート、当選した宝くじ、誰かのカツラ。プレイングに「こんなものが出てくる」と書けばきっと出てくることだろう、君だけの変なもの――、

 こうして猟兵達の「どうしたらいいんだ」な2章が始まるのである!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 集団戦 『押し込みクーリエズ』

POW   :    パック!
【味方に声掛けをしてタイミングを合わせて】から【一斉に突撃してダンボール箱やロープ】を放ち、【無理やり梱包すること】により対象の動きを一時的に封じる。
SPD   :    ライド!
【味方の押す台車に乗る(※危険です)】事で【高速戦闘モード】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    デリバリー!
いま戦っている対象に有効な【グッズ(プレイングで指定可能)入りの箱】(形状は毎回変わる)が召喚される。使い方を理解できれば強い。

イラスト:sio

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●失われた未来

「わたし、作ってないわ!! 動画を創れなかったわ!」
 マインが泣きそうな顔で叫び、背を向けて走り出す!
「マインちゃんッ!」
 バクハツは呆然と背を見ている。
「すみません、追いかけるので」
 スタッフの仕事を中断します、と言ってバクハツがマインを追いかけようと足を動かしたその時。

「きゃああああああああ!!」
「うわあああああああ!!」
 会場の至る処から悲鳴が上がる。予知されていた怪人が出現したのだ。

「予知では、一緒に逃げながらプロポーズをしたはずなのに」
「私達が偶然バクハツくんの一家を巻き込んだから、あの2人が結ばれる未来がなくなってしまった……!?」
「い、いえ、ここからなんとかフォローして最終的にくっつければ結果オーライじゃないでしょうか!?」

「パック!」
「ライド!」
「デリバリー!」
 段ボール箱を頭に乗せた配送業者姿の怪人が箱からどんどん変なものを出している。子供の頃の通信簿、黒歴史ノート、当選した宝くじ、誰かのカツラ。プレイングに「こんなものが出てくる」と書けばきっと出てくることだろう、君だけの変なもの――、

 こうして猟兵達の「どうしたらいいんだ」な2章が始まるのである!
 というわけで、どうしよう!?
テティス・ウルカヌス
「今度は戦闘シーンの撮影ですね!
この天才美少女アイドルのテティスちゃんの華麗なアクションシーンをお見せしましょうっ!」

謎のマスク(?)を被った怪人役の芸人さんたちを前に
拳を握りしめて戦う構えを取ります。

「この私がただヒーローに守られるだけの
ヒロインだとは思わないことですねっ!」

真のヒロインとは、自分の身を守れるだけでなく
悪い敵を倒す力も持つものなのです!

というわけで、アクションシーンの撮影に入りますが……

「とーりゃー」(棒演技

必殺の一撃を避けられてしまいます。

「ちょっとー、台本と違うじゃないですかー!」

危うく梱包されかけますが【渾身の右ストレート】が男性を倒します。
ただ、女性には梱包されます。


レパル・リオン
うわあああマジでどうしようコレ!?
んーー……とりあえず怪人を倒す!覚悟ー!

【猟兵放送!】モニターを召喚してバトルを生中継しつつ、テロップで怪人の危険性を訴えるわ!
『※猟兵は特別な訓練を受けています!怪人には近寄らないようにしましょう!』
安全な所から応援してね!
あたし達との約束よ!(ウィンク)

今はとにかく怪人を殴り倒す!蹴り倒す!ブン投げ倒す!
それまでは出てきた物は無視よ、無視!だいたい、あたしに黒歴史なんて…ん?

出てきた物◆ドン・フリーダムと戦って死にかけた時の事を描いた実録系マンガ

うわああああああ(羞恥心と後悔により怪人を巻き込み大爆発)

コピペプレイング、ダメ・ゼッタイ。
あたしとの約束よ。


エレニア・ファンタージェン
誰もデ×リアンに乗ってないのに未来が変わってしまったなんて!
バクなんとかさんとりあえず今すぐプロポーズしたら仲直り出来ないかしら?
え、雑?

変なグッズはフリスビーとかボールとか犬と楽しく遊べるグッズ
あれは遥か昔…割と最近?
公園で出会った犬と遊ぼうとフリスビーを投げたのに吠えながらエリィにまっしぐら…
まさか麻薬探知犬だったなんて!
「こんなの頼んでないわ。引き取らないと本社にクレーム入れるわよ」
全部怪人に全力投球
犬は嫌いなの
あ、待って犬は出さないで!

とりあえずUCで右腕を蛇に変えて怪人をガブガブさせながら子供達ににっこり
「正義の猟兵が来たからもう大丈夫よ」
え、怖い?怪人エリィ?嫌よ、泣かないで?!


ルク・フッシー
えっと、えっと、どうしましょう…!
早く怪人を倒さないと被害が出ます、でもケンカした2人をとり持たないと…ああでも、その間に他の人が危ないかも…!

絵筆を【花宴描画】で塗料の桜吹雪に変え群れなす怪人に降らせたり、花びらの竜巻を起こして怪人を打ち上げたりします!

とにかく怪人の妨害を優先した動きをしつつ、人々が避難する時間を稼ぎ、2人の説得も試みます

その、えっと、バクハツさん!マインさん!2人で動画を作りましょう!ボクも手伝いますからー!

(敵UCで出てくる物:可愛いけど何の動物かわからない生き物のぬいぐるみとかフィギュアとか)
か、かわいい…(尻尾ふりふり)
…そ、それどころじゃないですぅっ(頭ぶんぶん)


神羅・アマミ
バカヤロー!何が動画を創れなかったじゃ!
人生とは筋書きのないドラマじゃぜ…?
今からでも遅くはない!作るんじゃよ!其方だけの物語を…ハッ!?
これはまさか!?

出てくる出てくる!
怪人どもの箱から何故かカンペが…!
"いやーんこわい!○○くん!好きよ!"
"一緒に逃げよう××ちゃん!好きだ!"
予知は本当だったんだ!
ラピュなんとかはあったんだ!
配置につくんじゃよバクダン!マイン!
カメラは止めねー!3・2・1・キュー!!

それはそれとして怪人はコード『特機』にて対処。
台車なんて小回りの悪い物を乗り回すなら車輪と足元を狙い撃ちしてやれば御しやすかろう。
貴様らなぞ動画をスリリングに演出するモブに仕立ててやるぜー!


アベル・スカイウインド
やれやれ、ややこしい話になってきたな。だがまずは怪人を倒さなくてはならんな。

むっ、お前たちなんだその箱は……なにっ!大量のマタタビだと!?それに猫じゃらしまで……卑劣な奴らだ……。
だが俺をそこらの猫と一緒だと思わないことだ。俺にはそんなものに惑わされぬ強靭な精神力がある。
UC【竜閃】で素早さを上昇させる。今の俺を捕まえることなどできんぞ。ダンボールやロープを【見切って】回避したのちに高速の槍の突きをお見舞いしてやろう。

フッ、やはり怪人より猟兵の方がいい。やられ役は俺には似合わない。だろ?
……よし、誰も見てないな。少しくらいじゃれてもバチはあたらんだろう……。にゃーん。


アンコ・パッフェルベル
敵は殲滅する。恋愛も成就させる。
両方やらなくっちゃあならないのが猟兵のつらいところです。

風より疾く、雷より迅く!疾風迅雷っ。
時空弦による楽器演奏であちこちの敵から行動速度を奪い、
バカップル(予定)の二人を追跡。
周辺の敵を良い感じに減らしてから、
色んな能力を奪いボロボロにした敵を1体二人にけしかけるです。
バクハツくんがマインちゃんを庇った所で敵を撃ち抜き颯爽登場アンコちゃん。
大丈夫です?離れ離れにならないようちゃんと手を繋いで逃げるですよ。
と言いながら拾った映画のペアチケットを押し付けるです。

上手く行かない時は適当な猟兵や敵にも説明して協力してもらうです。
他の猟兵も餡…もとい案があるなら折衷っ。


エレクメトール・ナザーリフ
泣いてるお子さんもいますし一旦この場を治めましょうか
甘くておいしいキャンディーを差し上げます
特別製ですよ?

変なものと言えばミルサキャラメルとドリアンジンギス納豆飴ですかね
試しに買ってみたのですがミルサはアンモニア臭がきつく苦くて塩辛でした
ドリアン飴はドリアンの匂いとジンギスカンと納豆の味が強すぎて
ゲロマズ…愉快な味でした

ワイヤーを張り巡らせた場所に誘き寄せつつ
台車での突進を《分割思考》で回避しワイヤーに引っ掻けて転倒させる
起き上がる前に箱から出てきた飴を食べさせます
美味しいでしょ?ニシシ

二人がまだ喧嘩をしているなら
段ボール箱から何か取り出してみればどうでしょう
思い出の品が出てくるかもしれません


トリテレイア・ゼロナイン
撮影への協力がこのような事態を招くとは…!
ですがカップルの愛を取り戻し、泣いているお子様を笑顔にする…それが出来ずしてなにが猟兵か、なにが騎士か!
この混沌に(常識人ポジという便利屋として)矜持を持って立ち向かいましょう!

妖精ロボを遠隔操縦、同じく遠隔操縦する機械馬を使った「猟兵の乗り物に乗ってみようキャンペーン」を案内させ会場内の子供達を笑顔に

台車に乗って激走する怪人の脚をワイヤーアンカーで絡め取り転倒させ怪力で制圧、会場内では走らないように!

箱から探す物はカップルのお二人が一緒に初めて見た動画
肩を並べた甘酸っぱい思い出がありますように…

マルチタスクで電子頭脳が火を噴きそうですがやってみせます



●デリバリー?
「デリバリー! デリバリー!」
 怪人が溌剌と箱を配っている。
「こちらお願いしまーす」
 アンコ・パッフェルベルがタクシーを止めるようなノリで手を挙げて怪人を呼んだ。
「チワッス! デリバリー!」
「ありがとうございます」
 笑顔で箱を受け取るアンコの上から怪人目掛けてビュンッと槍が振る。
「デリバ、グハッ」
 ザックリと槍に刺された怪人が骸の海へと還っていく。天井付近まで高くジャンプして降下し、槍を突き刺したアベル・スカイウインドは猫ヒゲをピンとさせてクールな瞳をアンコに向けた。
「その箱は?」
「何か出てくるみたいです」
 アンコがパカっと箱を開く。中には映画のチケットが入っていた。

●デリバリー!
 視聴コーナーのモニターに出演者リストが流れている。

 怪人レパル:レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)
 怪人エリィ:エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)
 怪人アベル:アベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)
 怪人トリテレイア:トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)
 怪人アマミ/猟兵案山子:神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)
 怪人クレエ/猟兵エレク:エレクメトール・ナザーリフ(エクストリガー・f04247)
 猟兵アンコ:アンコ・パッフェルベル(想い溢れるストライダー・f00516)
 囚われアイドル:テティス・ウルカヌス(天然系自称アイドル・f12406)
 通行人ルクちゃん:ルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)

 これは! 前回書き忘れたキャスト一覧であった!!

「怪人だー!!」
「びええええ怪人コワイよー!」
 書き忘れはさておき、本物の怪人クーリエズが生み出す悲鳴と動画の怪人(猟兵)に怯える子供達の声で会場は阿鼻叫喚である。どうしよう。

「えっと、えっと、どうしましょう…! 早く怪人を倒さないと被害が出ます、でもケンカした2人をとり持たないと……ああでも、その間に他の人が危ないかも……! 皆さん、おち、おちおちおちついてくださぁい!」
 ルク・フッシーが尻尾をふりふりアタフタしている隣でレパル・リオンも耳をぴこぴこさせて慌てている!
「ルクちゃん落ち着いてっ!? でもうわあああマジでどうしようコレ!? んーー……とりあえず怪人を倒す! 覚悟ー!」
「わっわかりましたレパルさん!」
 なにはともあれ怪人退治! 
 レパルは巨大モニターを会場に設置して猟兵放送を開始した。会場で戦う猟兵達を映した生中継だ! 画面の上部に時折『※猟兵は特別な訓練を受けています! 怪人には近寄らないようにしましょう!』というテロップが出ている。
「安全な所から応援してね! あたし達との約束よ!」
 レパルはカメラに向かってウィンクを送り、果敢に怪人に向かっていく。ピンクのつるぷに竜尻尾が元気に揺れて。
「レパルちゃんジャンプ! レパルちゃん大回転&パンチ!」
 高くぴょーんと跳んで空中でくるくる回り勢い怪人達を薙ぎ倒す! 
 レパルの周囲でルクが花宴描画(フラワーズ・ドロー)で絵筆の穂を塗料に変えて雨のように降らせている。パステルカラーのカラフルな雨がレパルを引き立たせ、より愛らしく画面映えさせている。
 塗料の花吹雪と花びらの竜巻がレパルが捌ききれない怪人の新手を打ち上げ、動きを妨害しているのを見てレパルがにっこりとした。
「ルクちゃん、ありがと!」
 バッタバッタと倒されていく怪人。怪人が持っていた箱から色々なモノが飛び出てくる!
「無視よ、無視! だいたい、あたしに黒歴史なんて……ん?」
 箱の中から漫画がぽろり。
 ぱらり。ページをめくると可愛い絵とセリフが描いてある。

『あたしが! あたし達が相手よ! ドン・フリーダム!』

『あらあら、あらあらあら』

 なんとこれは!
 ドン・フリーダムと戦って死にかけた時の事を描いた実録系マンガだ!?
「うわああああああ!!?」
 レパルが羞恥心と後悔で真っ赤になって怪人を巻き込み大爆発した!!
「コピペプレイング、ダメ・ゼッタイッあたしとの約束よォオオオッ」
「レ、レパルさん?!しっかりしてくださ、あっこの漫画うわああああああっ」
 ルクが漫画を見て真っ赤になった。あわあわと逸らした視線が箱から飛び出したキマイラのぬいぐるみを見つけてふっと現実逃避する。
「か、かわいい……レパルさん見てください、かわいいです。このぬいぐるみなんて、レパルさんにちょっと似てるかも」
「えっ、なに? なになに? あ、このぬいぐるみルクちゃんにそっくり!」
 2人は揃って尻尾をふりふり現実逃避してぬいぐるみで和む!
「怪人よー、がおー」
「わー、うわーん」
 ルクがピンクのぬいぐるみを動かし、レパルが薄緑のぬいぐるみを動かして怪人ごっこに興じる2人が猟兵放送の画面に一部始終映し出される。
「……そ、それどころじゃないですぅっ、この状況をなんとかしないと」
そこにヒョコリと神羅・アマミが顔を出した。手には漫画が握られている!

「ほーっ、フムフム、『奇跡は起こらなかっ」
 アマミの音読攻撃!
「あっ漫画、あああああっ」
「そうね、戦わなくちゃって漫画うわあああああ」
 効果は抜群だ! 一瞬正気に戻った2人が漫画を思い出して再び悶える! なんて恐ろしい精神攻撃……!?

●百一匹ワンチャン大行進
 猟兵放送がホンワカしていた頃。一部の猟兵は子供相手に苦戦を強いられていた。
「びえええええ!!」
「ふえええええ!」
 そう、お子様達がすっかり怪人を怖がって泣いているのだ。
「撮影への協力がこのような事態を招くとは……!」
 トリテレイア・ゼロナインは大いに嘆いた。
「ですがカップルの愛を取り戻し、泣いているお子様を笑顔にする……それが出来ずしてなにが猟兵か、なにが騎士か!」
 拳を握りしめて熱く演説する堅物ウォーマシン騎士の視覚センサーには仲間猟兵エレニアが細い右腕を白銀の蛇に変えている衝撃的な光景が飛び込んでくる。
「正義の猟兵が来たからもう大丈夫よ」
 声は嫋やかでとても優しいお姉さんといった雰囲気。だが右腕を変化させた蛇は子供達を襲おうとしていた怪人をガブガブシャブシャブしている。
 エレニアはガブガブしている右腕の蛇どこ吹く風で聖女のごとき微笑みを浮かべている。
 しかし! その姿はどう見ても動画に出てきた――、
「ふぎゃあああ! 怪人エリィだあああ!!」
「うわあああああん!」
 子供達が火のついたように泣いている!
「え、怖い? 怪人エリィ? 嫌よ、泣かないで?!」
(ああっ、なんたることか。エレニア様の優しきお心が傷ついてしまう! 助けねば)
 正義の使徒トリテレイア(女子供には特に優しい!)が使命感に駆られて走り出す!
「お待ちください、その方は怪人ではありません!」
 凛とした声は何も知らなければ子供達が大好きな朝の早起きヒーロー番組に出てくるような正義の味方然としていた。しかし!
「怪人トリテレイア白バージョンだー!!」
「わあああん!」
「こっちがノーマルカラーですよ!?」
 子供達はトリテレイア(白)を見て怪人トリテレイア(黒)だとすぐに見抜いて更なる恐慌に陥った!
「困ったわ、どうしたらいいの?」
「エレニア様落ち着いてください、この混沌に共に矜持を持って立ち向かいましょう、矜持を、矜持……プシュー」
「えっ、どうしたの? 今おかしな音が出たわ!?」
 本格的に仕事をする前に衝撃と動揺で電子頭脳が火を噴きそうなトリテレイアにエレニアがおろおろと蛇を向けた。
「ガジガジしたら直るかしら」
「はっ、それです」
 トリテレイアがアツアツHOTな電子頭脳をどこかから取り出した氷嚢で冷やしながら思い付いた作戦を打ち明けた。
「私が怪人役をしますから、エレニア様が猟兵役として私を退治してください」
「それだとトリテレイアさんが怪人として怖がられたままになってしまうわ?」
「ふえーん、ふえーん」
「それでは、交代で猟兵役を――」
 放熱音を鳴らしながら真面目な声を出したトリテレイアの視界に、この時、本物の怪人クーリエズが映り込んだ。
 台車に乗って箱を抱えた怪人を別の怪人が運んでいる。
「ライド! ライド! ライド!」
「デリバリーッ!」
「ライドォォォォッ」
「デリバリィィィィッ!!」
 2人の怪人が不思議と体育会系なノリで熱く掛け声を掛け合いながら会場を激走している――、
「そういえば、本物の怪人がいたのでしたね」
「そういえば、そうね」
 台車に乗って激走する怪人クーリエズの脚にトリテレイアが無言で放ったワイヤーアンカーが絡みつく。
「デリバぅげごふぁッ!?」
「ラッ、ライドォオォォオッ!?」
 2人組の怪人が仲良くスッ転ぶ。
「会場内では走らないように!」
 トリテレイアがビシッと注意をすると子供達が「怪人が怪人を怒ったあ!」と目を丸くしている。

 そんな仲間達と子供達の姿にニシシ、と含み笑いを零してエレクメトール・ナザーリフが子供達にキャンディーを配り始めた。
「泣いてるお子さんもいますし一旦この場を治めましょうか」
 アップルサワー、ライムレモン、コットンキャンディ、グレープソーダ。ハッカにミント。
「甘くておいしいキャンディーを差し上げます。特別製ですよ?」
「ありがとう!」
 カラフルで甘いキャンディに子供達が大喜び。
「動画に出てた猟兵さんだー」
「ほんとうだー猟兵エレクだー」
 動画を観ていた子供達は本物の猟兵に大興奮!
「あの動画は造り物で、怪人をしてたのも猟兵ですよ、ニシシ」
「そうなのー?」
 こうして子供達は「あの動画は造り物で、怪人は猟兵が演じていたんだ」ということを理解したのであった。
「子供達が泣き止んでよかったわ」
「助かりました」
「ニシシ! キャンディいります?」
 エレニアが安堵した。2人の周囲には怪人が運ぼうとしていた箱が散乱している……。
「危険なものが出てくるかもしれません、気を付けてください」
 トリテレイアが警告をしている中エレニアがパカパカと箱を開けていた。
「こっちの箱からフリスビーが出て来たわ。こっちからはボール?」
 エレニアが箱からグッズを出しながら遠くを見るような眼をした。
「エレニア様? そのグッズが何か?」
「あれは遥か昔……割と最近? 公園で犬と出会ったの」
 箱に囲まれて語るエレニア。トリテレイアは姫君に傅く騎士のように跪き話の続きを促した。
「出会った犬と遊ぼうとフリスビーを投げたのに吠えながらエリィにまっしぐら……まさか麻薬探知犬だったなんて!」
「待ってください、世界によってはそれはとても危険な告白だと思います!!」
 思わず周囲を憚るように声のトーンを落とすトリテレイア。
「エレニア様、ピー音を入れましょう」
「ピー音? 『……まさか麻薬探知犬だったなんて!』」
「ピーーーーー」
「まあ、そんな音が出せるのね。器用」
 器用な人がピー音を出してくれたおかげで危険な部分はうやむやになった! はずだ。
 それはそうとして、エレニアは箱にグッズを丁寧に入れ直した。
「こんなの頼んでないわ。引き取らないと本社にクレーム入れるわよ。犬は嫌いなの」
 怪人クーリエズに全力投球で突き返せば、クーリエズが「このたびは大変申し訳ございません!」と誠心誠意お詫びをして代わりの箱を差しだしてくれる。
「それではこちらで」

 パカッ!

「わん! わん! わぅー!」

「あ、待って犬は出さないで!」
 なんと代わりの箱から元気いっぱいの子犬が現れた! 一匹、二匹、三匹……いっぱい!
 エレニアが悲鳴をあげてトリテレイアの後ろに隠れてしまう。
「この箱は一体どうなって……どこの犬ですか!?」
「クーン、クーン」
「わん! わん!」
 こうして会場中に箱から飛び出た101匹わんちゃんが大行進する事態が発生したのである!

「ただいま会場に犬が沸いています、ご来場の皆様はご注意ください」
 会場にどこかのんびりとしたアナウンスが流れている。
「あと、怪人も出ています」
アナウンスはついでのように大切な事も付け足した。よく聞くとその声はアンコの声だ。
「ですが、猟兵も出撃しています。すぐに退治しますので、ご安心ください」
 冷静な声に人々が安心した様子で息を吐き、猟兵放送に視線を向け、応援し始めた。
「がんばれ、猟兵!」
「がんばれー」
「わおーん!」

 そんな声援を受けながら!
「変なものが出てくるんですか、どれどれ」
 犬が走り回る中、エレクメトールが箱開けにチャレンジしていた!
「あ、これはミルサキャラメルとドリアンジンギス納豆飴ですね」
 出てきたのはキャンディだ。
 猟兵放送がエレクメトールをアップで映している。
「以前試しに買ってみたのですが、ミルサはアンモニア臭がきつく苦くて塩辛、ドリアン飴はドリアンの匂いとジンギスカンと納豆の味が強すぎてゲロマズ……愉快な味でした」
 これは怪人に食べさせましょう、と呟きエレクメトールが怪人達をワイヤーを張り巡らせた場所へと誘き寄せていく。
「ライドーッライドーッ」
「楽しそうですね、ニシシ」
 ユーベルコードで思考を複数分割して同時高速演算を行うエレクメトールは台車の突進を難なく避ける。避けた先にはワイヤーが待ち構えている!

 ガシャーン!

「ギャァア!」
「キャン! キャン!」
 見事にワイヤーに引っかかってひっくり返った怪人。ついでに付近の犬が逃げていく!機を逃さずエレクメトールが棒キャンディをずぼっと怪人の口に突っ込んだ!
「!!!?」
「美味しいでしょ? ニシシ」
 怪人が悶絶している……!
「あ、逃げるように骸の海に還っていきました」
「そんな効果が!?」
 キャンディは強かった。
「わん! わん!」
 犬がそんな中を元気に走り回っている。
「犬を捕まえた方は犬集めコーナーまでお届けください」
 アンコがアナウンスを繰り返している……。

「敵は殲滅する。恋愛も成就させる。両方やらなくっちゃあならないのが猟兵のつらいところです――風より疾く、雷より迅く! 疾風迅雷っ」
 アンコがマイクのスイッチを切ってアナウンスを小休憩し、時空弦・タキオンハープで周囲の敵をノロノロ速度に変えている。範囲デバフだ。
「バフ多きは勝ち、バフ少なきは負ける……基本ですよ?」
「ばうぁう!」
「がうがう」
 遅くなった敵を犬がガジガジして遊んでいた。
「犬がこんなに出るなんて……」
「エレニア様、お気を確かに」
「でも麻薬探知犬はいないようね」
「ピーーー」
「わおーん」
 その日、会場には犬の遠吠えと謎のピー音が響いていたという。

●あのどれかひとつに君がいるかな?
 一方その頃、バクハツとマインはというと、大混乱の中を激走していた。
「待ってくれ、マインちゃん!」
 走るマインをバクハツが追っている。レパルの猟兵放送にもその様子がバッチリ映し出されていた。なかなかドラマチックなシーンになっている!
「バクハツゥゥゥ!!」
「はっ」
 後方からの声にバクハツが振り返る! すると、そこにはソードビットに乗って会場を激走するアマミがいた!
「乗るんじゃあああああああ!」
「ア、アマミさあああああん!」
 なんとソードビットに乗せてくれるというのだッ! バクハツは感謝の眼差しを向けて振り返ろうとし――、
「あっ」
 減速に失敗したアマミが後ろからソードビットをバクハツの尻に突き刺した。
「アッー!!」
 ソードビットに跳ねられたバクハツが前方に飛んでいき走っていたマインに大激突!
「きゃああっ」
「ぎゃあああっ」
 2人がもんどりうって床に倒れる!
「結果オーライじゃ!」
 急ブレーキをかけて停止したアマミがふんぞり返ってカメラにVサインを送っている。

「101匹ワンちゃんの貰い手を募集しています。里親になりたい方は……」

 会場にアンコによる新たなアナウンスが流れ始めた。どうやら犬達の引き取り手を募集し始めたようだ。
 それにしても、とエレニアが修羅場中のバクハツとマインをチラ見して呟いた。
「誰もデ×リアンに乗ってないのに未来が変わってしまったなんて! バクなんとかさんとりあえず今すぐプロポーズしたら仲直り出来ないかしら? え、雑?」
「えっなんですかプロボノポルト? プロのロベルタ?」
 バクハツが起き上がりながら錯乱している。
 ルクが黒歴史漫画を抱えたまま叫ぶ。
「その、えっと、バクハツさん! マインさん! 2人で動画を作りましょう! ボクも手伝いますからー!」
「そ、そうよ! 過去より未来よ!?」
 レパルが一緒になって呼びかけている。手にはかわいいぬいぐるみがいっぱい抱きしめられていた。

 一方その頃!
「今度は戦闘シーンの撮影ですね! この天才美少女アイドルのテティスちゃんの華麗なアクションシーンをお見せしましょうっ!」

 テティス・ウルカヌスは相変わらず撮影だと勘違いしているッ!
「この状況を撮影だと思っているじゃと」
「テティスさん、怪人ですよ!」
 仲間達の声にテティスは拳を握りしめて戦う構えを取る。
「この私がただヒーローに守られるだけのヒロインだとは思わないことですねっ!」
(さすが皆さん演技力高いです! 私も頑張らなくちゃ……っ)
「真のヒロインとは、自分の身を守れるだけでなく悪い敵を倒す力も持つものなのです! と、マネージャーさんが言っていた気がします」
 テティスは謎のマネージャーさんに思いを馳せて一瞬遠い目をしてから慌てて撮影に集中し直した。
「とーりゃー」
 怪人・押し込みクーリエズ達目掛けてテティスが気の抜ける声をあげて棒演技を披露している。
「それは攻撃なのかっ?」
 怪人もびっくりしながらひょいっと避けている。
「ちょっとー、台本と違うじゃないですかー!」
「そんなことを言われても! ええいパックだ!」
 頬を膨らませて文句を言うテティスに周囲の怪人が一斉に飛び掛かる。アイドルが梱包されてしまう危機的状況!
「きゃあああっ! 来ないでくださいっ!」
 実は男性が苦手なテティス、反射的に先ほどと比べ物にならない渾身の右ストレートを放ち、流れるような動作で後ろ回し蹴りからの踵落としを命中させている!
「こ、こいつ強いぞ!? さっきのは油断させるための演技か!」

「いいえ、さっきのが演技です!」
 会場にアナウンスが響き渡る――なんとアンコが会場アナウンスでツッコミをいれてくれているのだ。

「か、会場アナウンスが!?」
 動揺する怪人達!
「落ち着いて! この娘の弱点は男よ! いいえ、女かしら」
「どっち!?」
 テティスの弱点を見抜いた女怪人(クーリエズは男女いる!)がテティスをくるくると梱包した。
「危険な猟兵はパックです!」
「きゃああっ」
 ガラガラと台車に積んでどこかへと連れ去ってしまった!

「大変だ、アイドルが捕まってる」
「この後どうなってしまうんだ! ●REC」
 猟兵放送のコメントが半分心配して半分はワクワクと状況を見守っている。

 そんなよくわからない騒動を背景にカップル2人に歩み寄ったのは神羅・アマミだった!
花の模様があしらわれリボンで飾られた、和風ゴシックロリータ服姿の一見可愛いロリ娘のアマミは小さな手を握りしめて熱い演説を開始した。
「バカヤロー! 何が動画を創れなかったじゃ! 人生とは筋書きのないドラマじゃぜ……? 今からでも遅くはない! 作るんじゃよ! 其方だけの物語を……諦めんなシジミがトゥルル!」

「わんっ! わんっ! わんっ」
 犬が走り回る中をアマミが拳を握りしめて熱い演説を魅せているッ!

「諦めんなよ、諦めんなよ其方! どうしてそこでやめるんじゃそこで! もう少し頑張ってみろよ! ダメダメダメダメ諦めたら」
 ここで顔がドアップに!
 猟兵放送のコメントがなんかよくわからないノリになっている。具体的に言うと荒れていた。

「世間はさぁ……冷てぇよな……みんな其方の想いが……感じてくれねぇんじゃよ! どんぐり頑張ってもさ! なんでわかってくんねーんだ! って思うときあるのよね……妾じゃってそうよ!」
 ここで荒れていたコメントがちょっぴり味方になってきた。直前に荒れていたのが良い演出となったのだろう……。
 それはさておき。
「ハッ!? これはまさか!?」
 アマミが転がった箱から飛び出した何かに気づいた様子でしゃがみこむ。箱から零れ出た一枚を取り近くの箱を開けていけば、出てくる出てくる! 怪人どもの箱から何故かカンペが……!(コピペ)

 "いやーんこわい!○○くん!好きよ!"

 "一緒に逃げよう××ちゃん!好きだ!"

「予知は本当だったんだ! ラピュなんとかはあったんだ!」
 天空城は実在するんだ!
 世界が違うけど!
 と、ちょうどそのタイミングで梱包されていたテティスが「アイドル猟兵捕まえたわ」と台車に乗せられて怪人達の手により運ばれてきた。
「それはそれとして怪人は対処じゃ」
 アマミが意外な仕事人ぶりを発揮してソードビットで怪人を退治してくれている! 台車の車輪を吹き飛ばし足元を抉り取る。
「貴様らなぞ動画をスリリングに演出するモブに仕立ててやるぜー!」
「きゃっ」
 台車からぽーんと飛んだ梱包テティスを賽の目で一番近くにいたアベル・アンコ・エレクメトールの3人が布を広げて。
「Olé (オーレ!)」
 闘牛を捕まえるようなノリで端っこをそれぞれが持ちふわっとキャッチ!
「ありがとうございます、ちょっとハードなロケですね」
 猟兵放送のコメントが「空から女の子が!」で埋まる中テティスは未だに撮影だと思い込んでいた。今日もテティスをのせて地球がまわる。いつも通りだ!

 そんな仲間達を背景にアマミはバクダンとマインを助け起こしカメラを構えている!
「配置につくんじゃよバクダン! マイン! カメラは止めねー! 3・2・1・キュー!!」
 早速出したカンペは"いやーんこわい! ○○くん! 好きよ!"

(はっ! あのカンペは)
 テティスがカンペを見て演技を始める!
「いやーんこわい! バクハツくん! 好きよ!」
 普段棒演技のテティス、こんな時に限ってなかなかの良演技を魅せていた!
「どういうことなのバクハツくん」
「えっ」
 マインが青筋を立ててバクハツに迫る! ここに三角関係が発生した!
「もうー!」
 マインがバクハツをひっぱたいて再び走り出す。

「頃合いですね」
 アンコが呟いた。適度に敵を減らしていたアンコは、わざと残しておいた瀕死状態の怪人をマインの前方に行くよう誘導した。
「ぱ、ぱっくぅ」
「キャーッ」
「マインちゃん!」 
 バクハツが決死の覚悟でマインを庇う! そう、この展開がアンコの狙いなのだ!
「バクハツくん!」
「マインちゃん!」
「2人纏めてパック!」
「バクハツくん!」
「マインちゃん!」
 マインをぎゅっと抱きしめるバクハツを怪人が梱包しようと迫ったその時、アンコが敵を撃ち抜いた。
「大丈夫です? 離れ離れにならないようちゃんと手を繋いで逃げるですよ」
 さりげなく拾った映画のペアチケットまで押し付けるサービス付き!
「バクハツくん!」
「マインちゃん!」
 手を繋ぎ走り出す2人!
「バクハツくん!」
「マインちゃん!」
 あれ?
「あのセリフが出ませんね」
 アンコが首をひねっている。
「名前しか呼ばなくなったんじゃがバグったんじゃ?」
 アマミはNPCがたまにバグるという現象を知っていた。しかし、アマミは諦めない! 諦めたらそこで試合終了なのだ。熱血アマミ、辛抱強く2人にカンペを魅せ続けるッ! カメラはまだ回ったままだ!
「マインちゃん! 好きよ!」
 遠くなる2人の背中。その背に向けてテティスが健気に演技を続けていた。
「例え私の事が眼中になくても! 私! いつまでも……!」
 猟兵放送はその演技に大いに盛り上がり何通りもの掛け算をしてカップル論争を展開していた。

●アベル・スカイウインドはクールで気高い竜騎士である!
「やれやれ、ややこしい話になってきたな。だがまずは怪人を倒さなくてはならんな」
 アベル・スカイウインドがお気に入りの帽子を被り直して愛槍を手に怪人に向かっていく。
「あっ、最後に星になった怪人の人だ」
 周囲からそんな声がする。
「フッ……」
 何といわれようが気にならない、とニヒルな笑みを浮かべるアベル。
「あっ、耳と尻尾がちょっとしょんぼりしてる」
「かわいい」
 誇り高き竜騎士アベルは耳をぴくぴく揺らしながら愛槍を怪人に繰り出した。
「パ、パック!」
「デリバリー!」
 梱包しようとした怪人を倒したアベルに怪人の新手が箱を投げつけた。飛び出したのは大量とマタタビと猫じゃらし! アベルが気付いて慄く。
「むっ、お前たちなんだその箱は……なにっ! 大量のマタタビだと!? それに猫じゃらしまで……卑劣な奴らだ……」
 本能に甘やかに働きかけて誘惑するマタタビと魅惑の猫じゃらし! 思わず目が猫じゃらしを追いそうになり、だがしかし!
「だが俺をそこらの猫と一緒だと思わないことだ。俺にはそんなものに惑わされぬ強靭な精神力がある」
 気高き竜騎士は誘惑を振り切った! 
「今の俺を捕まえることなどできんぞ」
「こいつ速くなったぞ!」
 怪人達が驚愕の声をあげる。
 『竜閃(ライトニングスピード)』で雷竜の力を解放したアベルは雷鳴のごとき速度で段ボールやロープを見切って回避し、高速の槍撃を突き出した。
「フッ、やはり怪人より猟兵の方がいい。やられ役は俺には似合わない。だろ?」
 猟兵放送のカメラに向かってポーズを決めたアベル。コメントも称賛の嵐となっている! 猟兵の活躍する動画はキマイラフューチャーでは大人気なのだ。
 この怪人が最後となり、会場は平穏を取り戻したのである。

 やがて、カメラが他の猟兵のもとへと移動していく。

「……よし、誰も見てないな」
 アベルは周囲の目を確認しながら箱に近づいた。気高き蒼の瞳が箱の中のマタタビの香り付き猫じゃらしを取り出し。
「少しくらいじゃれてもバチはあたらんだろう……。にゃーん」
 気高き竜騎士は混沌とした会場の片隅でしばし癒しのひとときを過ごしたのであった。
「にゃーん」

●にゃーん
 さて、怪人も掃討されて周囲には変な箱が大量に散乱していた。
「箱は危険! 触らないでね!」
 レパルが猟兵放送で呼びかけている。
「うっかりトラウマなものが出てくるかもしれません」
 ルクが隣に並んで呼びかける。不思議な説得力に満ちた声に人々は箱から慎重に距離を取った!

「段ボール箱から何か取り出してみればどうでしょう。思い出の品が出てくるかもしれません」
 エレクメトールがキャンディを舐めながら提案する。
「探してみましょう」
「エリィも手伝うわ」
 トリテレイアが頷き、エレニアが大蛇に捜索を手伝わせる。
「にゃっにゃ」
 捜索中の3人に普段はクールな竜騎士アベルがマタタビを愛でている姿が目に入った。
「「あっ……」」
「に〝ゃ!?」
 互いの存在を認知して固まる仲間達! 先に正気を取り戻したのはアベルだ!
「……フッ、怪人は片付いたな。あとはボスか」
 クールな表情を取り繕いいつも通りの落ち着いた声を放つアベル。
 エレニアがおっとりと頷いた。
「ええ、そうね。ところで今貴方」
「ピーーー」
「……ニシシ」
 騎士仲間がピー音を出して名誉を守ってくれている! こうして捜索は無事続き、やがてトリテレイアが箱の中から情報端末を見つけ出した。
「見つけました、これです」
「麻薬の情報が入っている端末かしら?」
「ッピーーーー」
「隠せてない気がするんじゃが」
 ピー音を出しつつ再生したのは一本の動画だ。
「カップルのお二人が一緒に初めて見た動画、のはずです!」
「「おお、そんなものが」」
 一同が注目する中流れたのは、画面いっぱいに展開される魔法少女の変身シーン!
「うっ、これは」

『必ずあなたを救ってみせるわ!』

 明らかに映画館で撮影した感じの動画――撮影禁止なのに撮影しちゃった系動画だ! トリテレイアは無言で動画をストップした。
「これが初めての? いえ、深く追求してはいけないのでしょうね……」
 どこかから取り出した暗幕を周囲に垂らして動画を隠した。

「オラっ、キリキリ歩くんじゃー」
 アマミがバクハツとマインを連れてくる。2人は「ぼくたちはカンペ通りのセリフが言えませんでした」と言う反省札を持たされていた。
「罰ルームじゃ!」
 アマミが暗幕の中へと2人を押し込んだ。
「バクハツくん……」
 不安そうなマイン。
「マインちゃん!」
 そんなマインを見てバクハツがどこか目覚めたような顔で手に力を込めた。
「ぼく、君のことが……」
 と、その時。
「アッ、この動画!見て!」
 マインが動画に気づいた!
「ああ、この動画。ぼくは覚えてるよ。きみが喜ぶと思って見せたら怒られたんだっけ」
「そうよ、観たい人はちゃんとお金を払って観るのよ」
 暗幕の中でカップル2人は肩を寄せ合って動画を観ている。甘酸っぱい思い出……なのだろう。
「これが甘酸っぱいんですか?」
「チッ、さっき告ろうとしてたのに」
 エレクメトールとアマミが隙間から覗いてヒソヒソしている。
「猫じゃらしはときおり止めて今なら捕まえられるって思わせるのがポイントなのよね? エリィ、聞いたことがあるわ」
 エレニアは猫じゃらしをアベルの前で振っていた。
「フッ、そうか……」
 アベルがチラチラと視線を向けている。視線が外せなくなっている!
「エレニア様、どうかそのくらいで! どうか!」
「あら、どうしたの? この猫じゃらしが何か?」
 この騎士の誇りを巡る戦いはこの後30分続いた。それは、騎士の絆と強靭な精神力がフルに発揮された苛烈な戦いだったのにゃ!
「こうなってはもう……仕方ありません私が代わりにじゃれます!」
「まあ。ウォーマシンの方って猫じゃらしにじゃれるのね」
「……」

「ただいま、猟兵のなりきりにゃんこショー開催中です」
 アンコが会場全体にアナウンスを響かせて観客を呼んでいる。

 それからしばらくして、すっかり会場が落ち着きを取り戻し、駆け回っていた101匹ワンちゃんも全部1箇所に集められて引き取り手がチラホラ現れ始めたころ。
「わー、ママー見てー、妖精さんがいるよ」
 子供達が指さす先にパタパタふわふわと妖精翅で宙を飛ぶ妖精がいた。よく視ると細部にメカメカしいパーツが見え隠れする妖精さんは模造生物の妖精ロボさんだ。
 会場にいつの間にか増えている巨大モニターからアナウンスが流れている。アナウンス担当はやはりアンコだ。すっかり担当になってしまった。しかし特に報酬が増えることはない。仕事が増えてもギャラは同じである。そんな現実に気を悪くすることもなく穏やかな声が呼び込みをしてくれる。
「ただいま『猟兵の乗り物に乗ってみようキャンペーン』実施中です」
「あら、猟兵の乗り物に乗ってみようキャンペーンですって」
 会場にはメリーゴーランド風ミュージックを流しながら同じ場所で前後に揺れる動作を繰り返す純白の巨大機械馬『ロシナンテⅡ』と子供達の行列が出来ていた。
 妖精ロボとロシナンテⅡを遠隔操作するトリテレイアはエレニアにぱたぱたと団扇で風を送られていた。そして、そっと猫耳カチューシャを頭につけてあげるのであった。
「熱くなりすぎたらどうなってしまうのかしら」

「ねー、キャンディちょうだーい」
「ストロベリーがいいー」
 なお、エレクメトールは再び子供達に囲まれていた。キャンディをくれる人として覚えられてしまったらしい。

●リア充絶対許さない明王……じゃない怪人!
「話は聞かせてもらった!」
 そんな平和な会場に野太い声が響いたのはその時だった。
 見ると、すっかり出るタイミングを逃したリア充絶対許さない明王、じゃない怪人が立っている!

 怪人は筋骨隆々とした体にまるでヒーローのようなスーツとマントを着込み、頭は爆弾であった。しかもバチバチと導火線が火花を散らしていた。
 手には拡声器を持ち、怪人は声を響かせて自己主張した。

「もしもし俺だ! リア充は爆発する!」

「な、なんだって!!」
 この時バクハツがマインの手をぐっと握り、抱き寄せた!
「マインちゃんは……ぼくが守るんだ! だって……ぼくの好きな子だもん!!」
 震え気味の小さな声ではあったがバクハツは確かにそう言葉にした。すると、マインがそんなバクハツに身を寄せてあの言葉を言ったではないか!

「いやぁーんっ、こわぁぁい! バクハツくぅーん! 好きよ!」

「一緒に逃げようッ、マインちゃん! 好きだ!」

 なんとこの土壇場で2人が予知通りに喋った! これも猟兵達が黒歴史漫画を出したりソードビットで吹き飛ばしたりワンちゃん大行進したり暗幕の中で甘酸っぱい違法動画を見せたりにゃんにゃんしたり映画のチケットを押し付けたおかげだろう!

 握る手は指を熱く絡め合う恋人繋ぎ、無事逃げ帰ったら結婚しようと誓い合い必死に走りながら顔を寄せていって唇と唇がチュッ(意外と余裕がある!)――そんな2人が怪人の目に留まらないわけがないッ!

「ちょっと待ったああああっ!!」
 怪人が立ち塞がり! 目から滂沱の涙を流す。
「悔しくなんかないっ!」
 聞いてもないのにそう言って涙を拭う怪人は全力で恋人達に爆発を捧げるのだ。

 ……ばくはつすりゃ!


 と、紆余曲折を経てここまでが見事に再現されたのであった!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『リア充どもは爆発しろ怪人』

POW   :    リア充は爆破する!
予め【リア充への爆破予告を行う】事で、その時間に応じて戦闘力を増強する。ただし動きが見破られやすくなる為当てにくい。
SPD   :    リア充は爆破する!!
【リア充爆破大作戦】を発動する。超高速連続攻撃が可能だが、回避されても中止できない。
WIZ   :    リア充は爆破する!!!
単純で重い【嫉妬の感情を込めて】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。

イラスト:くずもちルー

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアルル・アークライトです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●とても大切な話がある
 怪人は『リア充どもは爆発しろ怪人』という名前であった。頭はつるつると輝いている。毛は一本も生えていない。毛は、一本も――否! 一本火花をバチバチさせて生えているものがある!
 そう、彼は爆弾の頭部を持った怪人なのにゃっ!

 見たまえ、ひらひらと無風の中不思議に揺れるあのマント! メラメラ燃えるファイヤー模様は嫉妬の炎を表現している。
 見たまえ、骨太アウトライン! 彼のハートに決してブレないぶっとい一本の筋が通っている表現であるっ!
 見た前まえ、→手のサムズアップを。全ての非リア充達の嫉妬を背負い、彼は笑顔で孤独に戦いに挑み続けているのであるっ!

 そう、それは孤独なファイター、哀・戦・士。古き良き時代には嫉妬団的な友がいたかもしれない、だが今彼は! ぼっちだ……。

 手には拡声器を持ち、怪人は声を響かせて自己主張した。
「もしもし俺だ! リア充は爆発する!」

「わんわんっ」
 余談だが、会場にはエレニアが箱から出した百一匹ワンちゃんがいる。ワンちゃんを引き取りたい者がいれば引き取ることも可能である。

「いやぁーんっ、こわぁぁい! バクハツくぅーん! 好きよ!」
「一緒に逃げようッ、マインちゃん! 好きだ!」
「……ばくはつすりゃ!」
 こうして『リア充どもは爆発しろ怪人』との戦いが始まったのにゃ!!
エレニア・ファンタージェン
あっ、出たわね、非モテの権化!
あらごめんなさい。間違えちゃった。
出たわね、非リア充!合ってる?
え、リア充は爆破しろ怪人…長いわね

ねえ、もう、犬がね煩いのよ
これ皆麻薬探知犬?あ、ピー音お願いするわ
見た目可愛いから許しちゃうけど…けど
貴方のせいよ、非モテ怪人!

UC使用
いかに非リアと言っても異性と手くらい繋いだことはあるでしょう?
…ない?
冥土の土産に繋がせてあげても良いわ
…あ…その亡者男だったかも…
…気のせいよ
気のせいよ…?

ところでバクなんとかさんプロポーズしたのよね?
ついでに挙式しましょ?皆見てるし
ケーキ…えっと、これで良くない?
Sikándaをリボン付きのナイフに変えて貸してあげちゃう
…特別よ?


アンコ・パッフェルベル
だーめーでーすっ。
片手はマイクを手に。
ここに来るまでいーっぱい頑張ったですからね!
もう片方はワンちゃんを撫でながら。
疲労困憊ですけど、めでたしにしないとです。

…わたしが同志です?
そりゃ昔はそういう話は遠ざけてたですよ。
でも、今は仲良くなりたいなって人くらい居るです。
優しい人。どう声を掛けるべきか悩んでるですけど…

ああもうっそーですよ!最初から敵です!
ワンちゃん達を逃し水竜ガルグイユを召喚。
激流のブレスで湿気るがいいです!わたしは自在鞭でしばく!
爆破攻撃には自在鞭でロープワーク。
どこかに鞭を巻き付かせ伸縮移動で回避です。

終わったらアナウンスに戻りましょう。
何で真面目にやってるかわからんですけど…


エレクメトール・ナザーリフ
キャンディは後で配りますから一旦避難しましょう
私も糖分補給したいです。何かください
一先ず目の前の怪人に銃弾ぶち込みますか

怪人はリア充カップルに反応するようです
《幻影舞踏》で囮としてイチャイチャカップルを想像
ところでふと思い立ったのですが
老若男女
ロリショタおねぇマッスルにホモォレズゥ

リア充?の境界線はどこですか?
あらゆるパターンを想像して確認してみます
リア充爆破大作戦を囮に発動したら忍び足で近付き零距離射撃
囮にドン引きしたら隙を突き零距離射撃

モテたいならモテる努力をしてみれば?
リア充を僻んだところで何も変わりませんよ
爆弾ではなく銃なら途端にリア銃の仲間入りですが
何か違う?気のせいです!(ズドン)


ルク・フッシー
あのシナリオが失敗してしまったのは…ボクが…ボクが作戦使い回しなんかしてしまったせいで…(ぐすんぐすん)
…はっ!ボス怪人…!
や、やらなきゃ…!このシナリオまで失敗に終わらせる訳には…!

あの怪人、物凄い熱を発してます…!危険ですが、利用もできる…?
ここは【材質塗装】を使います
氷のような青白で塗る事で怪人自体を氷に変化させます
上手くいけば、氷に変えた部分を怪人自体の熱で溶かせるはず…!

問題は怪人の熱により塗る前に塗料が相殺される危険性、そして強烈な近接攻撃ユーベルコード
他の人の攻撃を受けている隙をついて、接近して直接塗りにいければ…!(肝心な所をMS任せにする構え)

アドリブ等、大いに歓迎します


レパル・リオン
なんかもう色々歓迎!

よしよし、2人は無事くっついたわね!
あとは…怪人を倒すだけ!
引き続き放送しながら、怪人と戦うわ!

ユーベルコードで【変身】!とおっ!
愛と未来を守るため!命と勇気が真っ赤に燃える!
魔法猟兵イェーガー・レパル、参上!

爆破予告でパワーアップですって〜!?だったらあたしも『リア充絶対守る予告』で対抗するわ!(なお、別にパワーアップとかはしない)
で、真正面から殴り合いよ!(特に作戦とかはない)

そーいや怪人って、コンコンコンが凄くなりすぎて欲望が爆発した存在なのよね
何でも好きなだけ手に入れられる力を、モテモテになるとかじゃなくて誰かの幸せを引き裂く為に使うなんて…
悲しい物語だわ…


神羅・アマミ
色々あったが、ついに予言は成された!(いつの間にか御神託みたいな扱いになってる
あとは貴様さえとっちめれば、このドキュメンタリー映画も感動のフィナーレって奴じゃよー!

しかし、今はとにかく怪人を二人から引き離さねばなるまい!
ならばアレをやるか!

妾、謎のマスクマン怪人!
そして再び登場猟兵案山子!
『操演』にて召喚したオクタビアスくんへ雑に括り付けるぞ。

「私たち、結婚しました!」
そう…数多の障害、そしてオブリビオンと猟兵という壁すらも乗り越え、一つの奇跡が起きたことをアッピル。
「ん~ちゅっちゅ。やん!ダメよあなた、人が見ているわ!」
怪人でぼっちはお前だけ…その怒りをこちらに向けられれば大したもんだ!


トリテレイア・ゼロナイン
……紆余曲折あれどお二人の仲は修復できたのは幸いでした
騎士とは恋人達の障害を取り除き、守護するモノ
つまり私と貴方は決して相容れぬ不倶戴天の間柄
その怨嗟、徒花と散らせて頂きます!

…騎士道物語は不倫とか禁断の恋でリア充が破滅するものも多い?
御伽噺がメインの私のメモリーには確認できませんね!(後から学習した都合の悪い事実は黙殺)

恋人達を狙う以上動きは明確。●かばうように立ち塞がり攻撃を防御し一歩も引きません
…なんだか頭の導火線が短くなっているような
まさか諸共自爆!?
脚を●怪力で掴み振り回し爆発タイミングを●見切ってハンマー投げ宜しく安全な上空で爆発させます

花火を背景に愛を確かめる恋人…これぞ王道です


アベル・スカイウインド
フッ、だいじょうぶだ…… おれは しょうきに もどった!

男の嫉妬は見苦しいぞ。そんなだからお前はモテないんだ。ちなみに自分で言うのもなんだが、俺はモテる。フッ、猫だからな。【挑発】
よし、とりあえずこれで奴の注意を俺に引き付けることができたろう。可能なら逃げるふりをして民間人の被害が出にくい場所や、仲間が攻撃しやすい位置まで【おびき寄せ】たいところだ。
奴の姿や言動から察するに爆弾を使った攻撃をしてくるのだろう。ならば逆に爆発の衝撃を利用して普段より高く【ジャンプ】してやろう。フッ、俺の【竜撃】で奴の嫉妬の炎を消し去ってやろう。


テティス・ウルカヌス
「いよいよ映画撮影もクライマックスですね!
この天才美少女アイドルのテティスちゃんの実力の見せ所ですね!」

ヒロインとしてマインちゃんというライバルを蹴落として
バクハツくんと結ばれるハッピーエンドに持っていかなければっ!

【天使の歌】を歌いながらミュージカル風にヒロインとしての存在感をアピールしましょう!

「ちょうど爆弾で嫉妬の人がいますから
ここはヒロインアピールのお手伝いをしていただきましょう!」

バクハツくんとマインちゃんのところに爆弾を投げてもらい
二人がはぐれたところで私がバクハツくんの元に現れます。

「って、きゃあああっ!」

思わず【渾身の右ストレート】をバクハツくんに叩きこむのでした。てへ。



●まず外に出ます
 怪人が早速初手爆破をぶちかまそうとした時。
「だーめーでーすっ」
 アンコ・パッフェルベル(想い溢れるストライダー・f00516)が片手にマイクを握りストップをかけた。もう片方の手ではワンちゃんを優しく撫でている。
「クーン、クーン」
「ふふ、いい子です!」
 ワンちゃんが気持ちよさそうに目を細めて懐いている。
「むっ、邪魔者か」
 怪人が警戒の眼差しを向ける。

「ここに来るまでいーっぱい頑張ったですからね! 疲労困憊ですけど、めでたしにしないとです」
 その隣には厳しい戦いを勝ち抜いた誇り高き竜騎士が控えていた。
「フッ、だいじょうぶだ…… おれは しょうきに もどった!」
 アベル・スカイウインド(天翔ける稲妻・f12583)が正気に戻り一気にクールダウンしている。
「いよいよ映画撮影もクライマックスですね! この天才美少女アイドルのテティスちゃんの実力の見せ所ですね!」
 アベルが正気に戻ってもテティス・ウルカヌス(天然系自称アイドル・f12406)は変わらない、そう、彼女の見ている世界は何があっても変わらない――。
(ヒロインとしてマインちゃんというライバルを蹴落としてバクハツくんと結ばれるハッピーエンドに持っていかなければっ!)
 テティスが女の戦いを始めようとしている!
 だが、その心の声を仲間達は知らない……。ゆえに、ツッコミを入れる者も引き止める者もいないのだ。
「男の嫉妬は見苦しいぞ。そんなだからお前はモテないんだ。ちなみに自分で言うのもなんだが、俺はモテる。フッ、猫だからな」
「なにぃ! 許さん!」
 挑発で放った言葉に見事に引っかかり、怪人のヘイトがアベルに向いた。爆破してやる、と爆弾を抱える怪人をさりげなく人気のない場所へと誘導しながらアベルが逃げるふりをする。気付けば2人は会場の外へ移動していた!
「待て、このモテモテ野郎!」
「フッ」
 アベルの背後に爆弾が投げられ、ドカンと爆発する! 
「アベルさん!」
 テティスが心配そうな演技の声を上げる中、アベルは空高くジャンプしていた。上空の風がご機嫌だ。どこかから飛んできた赤い風船にふわりとタッチして、アベルは高空でランスを構え直して下へと降りる。雷の如く降下しての竜撃(ドラゴンダイブ)に怪人が大ダメージを受けている。

「グワッ! モテそうな格好良い技使いやがって!」
 猟兵放送のカメラがバッチリ一部始終を映している。
『カッコイイ!』
『今何メートル飛んだの?』
『ねこたん!』
 コメントも大盛り上がり!
「ぐぬぬ、モテモテを見せつけやがる!」
 怪人が地団駄踏んで悔しがる。
 そして放送を観ながら他の猟兵達も続々と現場に駆けつけてくる。

●言論は自由ではない
「あっ、出たわね、非モテの権化!」
 エレニア・ファンタージェン(幻想パヴァーヌ・f11289)がズバッと一言怪人のハートを撃ち抜いた。
「非モ、なんだって!」
 怪人がびくりと反応する。非モテの怪人にとって無視できない事実であった。
「あらごめんなさい。間違えちゃった」
「そうだよな、あーびっくりした。ティモテって言おうとしたんだよな。わかるよ」
「出たわね、非リア充! 合ってる?」
 エレニアの声が響き渡る! なんとアンコが空気を読んでマイクを向けていた!
『合ってる』
『間違いない』
 コメントが全面的にエレニアを支持してくれている。
 よかった、と微笑むエレニアから自分へとマイクを戻し、アンコが厳かに告げる。
「猟兵とは連携するものです。怪人さんには……味方がいますか」
「味方がいない、それがなんだ! ヒーローは孤独なものだ! 俺は孤高なヒーロー怪人だ! 嫉妬に狂うぼっち勢のヒーローなんだ!」
 色々拗らせた怪人がアンコからマイクを奪いカメラに向かって叫ぶ。
「俺の事は正式名称で呼べッ」
「え、リア充は爆破しろ怪人……長いわね」
 エレニアが首をかしげる。
「戦闘しながらいちいち長い名前を言えないわ」
「その長い名前により俺は自分もほんとはモテるけどモテないヤツのためリア充を爆破する非リア充のヒーローと自分を偽ることが出来るんだ」
「エリィにはよくわからないわ」
 混乱するエレニア。怪人は有耶無耶にしようとしている! そんな時、頼もしい仲間がまた1人!
「色々あったが、ついに予言は成された!」
 神羅・アマミ(凡テ一太刀ニテ征ク・f00889)が神託を告げる神子みたいなノリでズバーンと登場した。
「あとは貴様さえとっちめれば、このドキュメンタリー映画も感動のフィナーレって奴じゃよー!」
 アマミが撮影しているドキュメンタリー映画も大詰めだ。後日イェチューブに今回の事件を扱った動画がアップされるに違いない。再生数伸びるかな?
「しかし、今はとにかく怪人を二人から引き離さねばなるまい! ならばアレをやるか!」
 アマミは再び謎のマスクマン怪人アマミに変身した!
「そして再び登場猟兵案山子!」
『案山子! 案山子じゃないか!』
『生きてたんだな案山子!』
 猟兵放送のコメントが盛り上がりをみせている!
 さらにアマミはオクタビアスくんを召喚し、案山子を雑に括り付ける。オクタビアスくんは体を揺らして案山子の演技を頑張ってくれた。
『ただの案山子だよね?』
『え、なんか雑』
 アマミは猟兵放送のコメントをチラ見して無言でNGの刑に処し、何事もなかったような顔で案山子と並んでピースサイン。
「私たち、結婚しました!」
 怪人アマミ、衝撃の告白。
 画面の外では仲間達が台本を見てマイクを譲り合い、ジャンケンをしていた。
「そう……数多の障害、そしてオブリビオンと猟兵という壁すらも乗り越え、一つの奇跡が起きたのだ!」
 ジャンケンに負けたアベルがクールボイスでナレーションを入れるとすかさずアンコが実況を挟んでくれる。
「ええっ、猟兵と怪人の間に愛が芽生えたんです!?」
『ちょっと無理がある』
『見てる方が恥ずかしい』
 おっと心無いコメントが画面に……!
「カチカチ」
 怪人アマミのNG粛正!
『イケボか』
『ロリ猟兵たんイイぞ!』
『歌うたって』
『猟兵と怪人の間に愛が……イイハナシダナー』
 アマミの許しを得た者だけがコメントを残せる言論統制のもとでやさしい世界が作られていく!

「ん~ちゅっちゅ。やん! ダメよあなた、人が見ているわ!」
 どんなにアマミがツッコミどころ満載の演技をしてももうツッコミをするコメントは一件もない……!
「奇跡はバーゲンセールされているのが現実です!」
「2人に祝福を!」

(怪人でぼっちはお前だけ……その怒りをこちらに向けられれば大したもんだ!)
「ひ、一人芝居だろ。そんな挑発に引っかかる……」
 冷静にツッコミを入れる怪人にアマミがサイコロを握らせる!
「ア? サイコロ振ってのセリフかえ」
 コロコロ……成功。
「くっ、なんだ!? 怪人と猟兵がくっついただと!? このリア充どもー!!」
「やーいやーい」
 挑発は成功! 成功です!!

●今、リア充について考える時
 会場内で放送が流れている。
「そ、れ、は、おかしいと、思います、……変ですね。私のツッコミコメントが画面に反映されません」
 トリテレイア・ゼロナイン(紛い物の機械騎士・f04141)が生真面目に画面を見つめ、もう一度コメントを打つ。
「それは、おかしいと、おも」
「あ、あの」
 ルク・フッシー(ドラゴニアンのゴッドペインター・f14346)がおずおずと声をかけた。
「ルクちゃん! 真実を教えるというの?」
 レパル・リオン(魔法猟兵イェーガー・レパル・f15574)がオロオロと2人を見ていた。
「だって、教えないとずっと知らないままですし、その」
「何を知っているというのですか? 教えてください!」

 放送画面はエレクメトール・ナザーリフ(エクストリガー・f04247)が映っている。
「NGされてるんです」
「なんと!」
 そんなやり取りを尻目に画面内のエレクメトールはキャンディーを舐めながら数瞬目を閉じる。
「怪人はリア充カップルに反応するようですね。イチャイチャカップル……」
 エレクメトールがリア充を想像している! エレクメトールはユーベルコード『《幻影舞踏》(イリュージョン・ダンス)により心の中で思い描いたものを出して囮にしようと考えたのだ。
「ところでふと思い立ったのですが、老若男女、ロリショタおねぇマッスルにホモォレズゥ」
 言葉と共に幻影が現れて多種多様なカップルがイチャイチャし始めた。
「リア充? の境界線はどこですか?」

「転んだら骨折するから手を繋ぐか」
「うふふ」
 シニアップル。

「大きくなったらおよめさんにしてね」
「うん、いいよ」
 ロリショタップル。

「ちょっとぉ、あたしのことはおねえって呼びなさいって言ってるでしょぉ」
「アニキイ!」
 おねぇマッスルップル。

 さらにホモォとレズゥが近くで牽制しあっている。

「な、なんだって」
 エレクメトールがどんどん微妙なカップルを増やしていく。

「あなたを殺してわたしも死ぬわ!」
「ずっと一緒だね」
「妄想彼女とデート中なんです」
「自分が一番好き、かな」
「君はカレールー、僕はライス……」

 増えるカップル達の微妙さに怪人が考え込んでいる。
「俺も男だ。迷った時は全爆破だな」
 そんな怪人の耳にシャキン、シャキンとハサミの音がする。見ると大きなハサミを持った殺人鬼のシザーボーイがなかなかに充実した顔でハサミをチョキチョキさせている。
「コレもリア充ですか?」
 エレクメトールがシザーボーイを指差した。
「リア充って何だろう」
 怪人が考え込んでいる。
 猟兵放送のコメントもリア充談義で盛り上がっていた。
「この談義に加われないとは」
 トリテレイアが反映されない長文コメントを残念そうに見ている。
「アカウントを新しくしましょうか」

 そんな中、怪人も開き直っていた!
「いや、でも俺も男だ! 男らしく迷いは捨てる!」
「あっ開き直ったわ」
「男らしさってなんでしょう」
 レパルとルクが遠巻きにヒソヒソしていた。
「やっと私の知識が披露できますね。コメント送信、と。
 リア充とは、現実生活(リアル)が充実しているという意味です。それは必ずしも恋愛に限らず、友人が多かったり仕事や家庭、趣味が充実していたりと、生活が充実している人を指し、ネット界隈でそれらにコンプレックスを抱える人達が自分達と別人種であるとして呼び始め広がったネット造語です。なお派生用語にネト充という単語もあり」
「こいつNGしとこ、カチッ」
 画面のあっちとこっちで様々な思惑が飛び交う中、怪人は負けじと個性を発揮しようとしていた。
「とにかく、爆破だ!」
 怪人の個性は爆破だ。powもspdもwizもとにかく爆破だ。爆破しなければ始まらない、それがリア充どもは爆発しろ怪人なのだ。
「爆破サセロォ!」
「ニシシ! じゃあ撃ちます」
 爆破大作戦を開始する怪人の背に銃が突き付けられる。忍び足でエレクメトールが近づいていたのだ。
「モテたいならモテる努力をしてみれば? リア充を僻んだところで何も変わりませんよ。爆弾ではなく銃なら途端にリア銃の仲間入りですが」
「待て、リア銃は何か違う」
「気のせいです!」
 ズドン! 零距離射撃が火を噴いた。同時に怪人の手からポロッと溢れた小さな爆弾がささやかに爆発して辺りを明るく演出した。
「ニシシ! リア銃の味はいかがですか」
ダクダク血を流しながら怪人が食レポをしてくれる。
「これがリア銃の味か。なかなか刺激的で油断するとこれだけで死にそうだ」
 怪人がワンパンされると他の猟兵達の出番がなくなってしまう! このピンチに手を(ハサミを)差し伸べたのはシザーボーイだった。
「シャキン! シャキン!」
 シザーボーイは猟兵と怪人の間に割って入りハサミをシャキシャキさせている!
「シザーボーイ! 俺を守ってくれるのか!?」

 ピンポンパンポーン♪

 ちょうどそのタイミングで呼び出しがかかった。
「キャンディの猟兵おねえさん、子供達のキャンディがなくなりそうです」
「どういう呼び出しですか……」
 エレクメトールは一度後退し、キャンディを補給するために子供達の元に向かうのであった。

●シザーマンが倒せない
「実はこの流れこそ妾の計算通りじゃ!」
 策士アマミが怪人を見る。怪人はハサミを持ったシザーボーイを抱えて擬似合体しようとしていた。
「シャキン! シャキン!」
「いいぞシザーボーイ。向こうが連携プレーなら俺達も連携だ!」
「シャキン!」
「あっどこへ行くシザーボーイ!」
 シザーボーイがここで逃亡! 怪人は再びぼっちになってしまった。
「世の中ままならないものだ。だが探せばきっと同志がいるはず」
 キョロキョロと周りを探す怪人の目がふとアンコを見る。
「おお、お前。俺の気持ちがわかりそうな目をしている。俺にはわかるぞクリームとは友達になれないよな」
「……わたしが同志です? そりゃ昔はそういう話は遠ざけてたですよ。でも、今は仲良くなりたいなって人くらい居るです」
「エエッ」
 怪人の奇声に合わせて猟兵放送のコメントも『俺のことかな!?』とソワソワしている。
 アンコがマイクをオフにしてここにいない誰かを思う。その瞳には怪人が持ち得ない煌めきが宿っている。
「優しい人。どう声を掛けるべきか悩んでるですけど……」
「うおお、同志っぽいと思ったら違う世界の住人だった」
 怪人がシクシク泣いている。
「クリームとも仲良くできます、白玉クリームぜんざいとか美味しいです」
「一番ダメージでかいパターンだシクシク」
「ああもうっそーですよ! 最初から敵です!」
 アンコはワンちゃん達を逃しつつ得意の召喚を披露する。
「わんわんわんわん!」
 ワンちゃん達が元気に逃げていく!
「わおーん!」
 1匹が遠吠えをすると次々と釣られて遠吠えをし始める。
「あお〜ん」
「わおーん」
 エレニアが困ったように眉を下げた。
「ねえ、もう、犬がね煩いのよ。これ皆麻薬探知犬? あ、ピー音お願いするわ」

「ピーーーー」

「ありがとう。見た目可愛いから許しちゃうけど……けど貴方のせいよ、非モテ怪人」
 エレニアがふぅとため息をついて物憂げに怪人を見た。優婉な眼差しに怪人がドギマギする。
「俺のせいか!?」
 怪人が胸に手を当てて考える。
「こ、こんなばかな。俺のハートがリア充みたいに高鳴っている……」
『怪人が惚れた!?』
 猟兵放送のコメントが盛り上がっている! 怪人は美人に耐性がなかったのだ。
「貴方のせいよ」
「やめてくれ、そんな目で俺を見ないでくれ、その目はなんかドキドキする」
「貴方のせいよ」
「そのセリフなんか恋が始まりそうだから待ってくれ」
 怪人も男だ。美人さんが3秒以上見つめてくれば心が動くこともある。
 怪人も男だ。美人さんに話しかけられれば惚れてしまうこともある。
 種としての本能だ。子孫を残すために恋が始まりやすい、そう……怪人の脳内季節は今まさに春を迎えようとしていた。
「俺に春が来てしまう」
「今は秋です」
 そんな怪人に呆れ顔でアンコがユーベルコードを使っている。
 今回召喚したのは長い首を振りながら咆哮をあげる水竜ガルグイユ。
「激流のブレスで湿気るがいいです!」

 ばしゃーん!

 アンコの声と共に水竜が激流のブレスを吐いた。
「エエエエエ……」
 どんぶらこっこどんぶらこっこ。怪人が流されて遠くまで押し出されていく!
「ええい負けるか! 嫉妬パワー全開の泳ぎを見せてやる!」
 怪人が泳いで戻ってくる! 怪人クロール! 怪人クロール! 怪人クロール! 平泳ぎ。
「フッ、安定した速度だから狙いやすいぞ?」

 バシャーン!

 空から降下したアベルが槍で平泳ぎ怪人を水に沈めた。
「ぶくぶくぶく……」
 そんな一幕を見せながらも怪人は戻ってきた!

●せやかて工藤
「おかえりなさい」
 猟兵達が並んで怪人をお出迎え!
「ゼエゼエ、ただいま」
 怪人の全身がずぶ濡れになってしまった。
「アー、俺の嫉妬の炎が!」
 頭部に燃えていた火が消えて意気消沈する怪人。
「しかし、俺は諦めないぞ」
 怪人は懐から湿った筒状の爆弾を取り出した。が、取り出して3秒でアンコの自在鞭にビシッとしばかれた。
「いけませんです!」
「ええい、邪魔するな!」
 怪人の怒りの爆破攻撃!
「そんなの、当たりませんです!」
 アンコは鞭を水竜に巻き付けてひゅるんと伸縮させて避けている。
「待てーッルパーン」
「ルパンじゃないです!」
「……紆余曲折あれどお二人の仲は修復できたのは幸いでした。騎士とは恋人達の障害を取り除き、守護するモノ」
 トリテレイアが間に割り込みながら真剣な声を放った。
「つまり私と貴方は決して相容れぬ不倶戴天の間柄。その怨嗟、徒花と散らせて頂きます!」
「そうは言うがなトリスタン」
「トリテレイアです」
 怪人は訳知り顔で物語る。
「だがなランスロット、騎士とて人間。不倫とか禁断の恋でリア充が破滅するものも多いではないか」
「どう間違えたらランスロットになるのでしょうか?」
「コレを読んでみろ」
 怪人が紙の本を差し出した。水に濡れた本は旧時代の王道感溢れるヒロイックファンタジー、騎士物語だ。
「これは騎士物語ではありませんか」
 トリテレイアが食いついた。怪人がウンウンと頷く。
(ハッ、この怪人が勧めるということはこの本は)
 ウキウキとページをめくっていた手が止まる。緑色のセンサー光がキラリと光った。
「どうした、何故手を止める」
 怪人が訝しむと、冷静な声が返ってくる。
「次に貴方はガウェインと呼ぶ……」
「なっ!! 見切られているだと!」
「完全に見切りましたよ」
 トリテレイアは本を閉じた。さりげなく栞を挟み、丁寧に仕舞い込む。中身はともあれ騎士物語はお持ち帰りコースが決定したようだった。
「……騎士道物語は不倫とか禁断の恋でリア充が破滅するものも多い? 御伽噺がメインの私のメモリーには確認できませんね!」
「な、なにい!? 現実から目をそらすな不倫騎士!」
「そのような現実は私のメモリーにはありませんから! あと私個人が不倫したように言うのはやめてください!?」
 トリテレイアは後から学習した都合の悪い事実は黙殺しているのだ。
「私の信じる世界こそが真実の世界!」
「なんだと! 俺が現実を知らしめてやるわ!」
「知った端から消去して雑音源も消しますよ!」
 大きな盾を構えて恋人達の前に立つ姿はまさに守護騎士の名に相応しい! しかしやり取りは小学生の喧嘩のようだった。
「不倫してる話は不倫部分を書き換えてしまいましょう!」
 後日キマイラフューチャーのネット小説サイトでは謎の作家『騎士の不祥事絶対許さない明王』により一部展開がアレンジされた既存騎士物語のアナザーストーリーが出回ったのだとか。

●今、許し合う時
 そんな喧嘩を背景に本物の子供達はというと、暢気に飴を欲しがっていた。
「カエルキャンディほしー!」
「ゲレゲレキャンディ!」
 リア充の幻影を大量に出してリア充の定義を問いかけたエレクメトールは敵勢力圏に侵入する乙式探索兵型実験体――のはずが、気が付けば含み笑いを浮かべながら肉薄し零距離射撃をする傭兵になっていた――と思ったら子供達のキャンディ屋さんになっていた。
「ニシシ! キャンディは後で配りますから一旦避難しましょう」
 エレクメトールはキャンディをチラつかせながら子供達を促して避難させている。

 そんなエレクメトールを手伝って避難誘導していたルクは、アマミから権限をもらってコメントNGの一斉解除をすることになった。
 カチカチぽちぽちと解除するたびにコメントが増えていく。
『許された!』
『自由だー!』
 マイクを握ったアマミが「妾もアツクなったのじゃ、許せ。皆でゴールしようじゃねーか」と語っている。

「あのシナリオが失敗してしまったのは……ボクが……ボクが作戦使い回しなんかしてしまったせいで……」
 ルクがカチカチぽちぽちしながらぐすんぐすんと鼻を啜り目に涙を浮かべている。その姿が映像に移るとコメントには『泣いてる!(元気になってほしい)』というコメントと『泣いてる!(もっと泣かせたい)』というコメントが並んでいた。不思議とSっ気を刺激する泣き顔がカチカチぽちぽちの手を止めてハッとする。
「……はっ! ボス怪人……! や、やらなきゃ……! このシナリオまで失敗に終わらせる訳には……!」
 あのシナリオも失敗はしてないぞ!
 ともあれ、ルクは大切な事を思い出して涙を拭ったのであった。
「よしよし、2人は無事くっついたわね! あとは……怪人を倒すだけ! みんな、観てて! あたしたち頑張って怪人と戦うわ!」
 レパルが猟兵放送のカメラに向かって勇ましい声を放ちつつ魔法少女へと変身する。
「レパル・トランスフォーム!」
 少女の可憐な声と同時にピンク色のエフェクト光が画面いっぱいに広がった。

「誰もがパワーを秘めているの」

 呟く声は夢へ誘うようなプリンセス・ヴォイス。変身を終えて現れたのは愛らしい魔法のステッキを持った魔法少女だ。

「愛と未来を守るため! 命と勇気が真っ赤に燃える! 魔法猟兵イェーガー・レパル、参上!」

 ヒラヒラ、フリフリの魔法少女コスチュームを可憐に纏い、ポーズを愛らしく決めてレパルが走り出す!
「爆破予告でパワーアップですって~!? だったらあたしも『リア充絶対守る予告』で対抗するわ!」
 レパルが勇ましく怪人に向かっていく。その足取りはいつもの通りまっすぐだ!
「真正面から殴り合いよ!」
「望むところだ魔法少女よ!」
 レパルと怪人が壮絶な殴り合いを魅せている! スカートをひらりとさせて素早くキック! 怪人が股間を抑えて悶えている。
「ば、爆破ァ」
 苦し紛れに怪人が突き出した爆破攻撃をレパルはくるりと回って華麗に回避した!
『魔法少女だ! がんばれ!』
 コメントは魔法少女の活躍を喜んでいた。
『がんばれ!』
(この人達、今誰もNGしてないですけどもう誰がさっきツッコミコメントしてたかもわからないですね)
 ルクが不思議に目をパチパチさせている。
『がんばれー!』
『がんばれー!』
 コメントが一体化していた。
 トリテレイアもこの時は『がんばれー!』とコメントを打っている。
「だんだんわかってきましたよ。無個性……大勢の中の1つになるのです。周りに合わせる事で私は動画を彩るコメントの1つになるのですね。合唱のようなものなのでしょう」
 高性能ウォーマシンが何かを学習して哲学していた。
「NGされた事ももう気にしてないんですね」
 ルクは不思議そうに呟き、自分も応援コメントを打ってその空気を味わうのであった。

●テティス、絶唱
 そんな会場に挿入歌が流れ始める。唐突の挿入歌はテティスが歌っているものだ。
(テティスちゃんの歌、聴いてくださいねっ!)
「うっ、この絶妙な音の外し方」
「これはひどい!」
 人々が眉を顰める中テティスは(今日はいつもより調子がいいみたいです、本番に強いんですよね私)と満足気である。本人は歌が上手いつもりなのだ。
「あのお姉ちゃんお歌ヘタ」
 子供達がキャンディを舐めながら素直な感想を口にしている。
「ニシシ、シーっ、ですよ」
 エレクメトールは人差し指を口に当てて片目を瞑ってみせる。
 挿入歌を背景にレパルが怪人に必殺のレパルちゃんピンクトルネードをクリーンヒットさせ、大きく吹き飛ばしている。
 ドーン、と爆破エフェクト付きで吹き飛んだ怪人をエレニアが見下ろした。
「いかに非リアと言っても異性と手くらい繋いだことはあるでしょう?」
 怪人がじっと手を見る。
「最後に繋いだのは……幼稚園だったか」
 猟兵達が一斉にダメ出しをする。
「さすがに幼稚園以降も人と手を繋ぐ機会がなにかあるでしょう」
「体育とか行事系とか」
 怪人は首を振る。
「俺の最終学歴は幼稚園卒だ」
「そう、手を繋いだことが……冥土の土産に繋がせてあげても良いわ」
 そんな怪人に向けてエレニアがおっとりと言うと怪人はクワッと顔を上げた。
「そんな憐れみなど!! ぜひお願いする!」
 怪人は美人に弱かった。
 頷いたエレニアはしかし、ユーベルコードを使用する。
「猟兵? いや、ユーベルコードじゃなくてその、手を。俺にその手を」
 エレニアが使用したのは『千年怨嗟(アイノオワリニノコルモノ)』。235本もの影の手、亡者の手が怪人に向かって差し出される。ホラーな光景に怪人がカエルの潰れたような悲鳴をあげた。
「手を繋いであげて?」
「ギャアアアアア!!?」
 亡者の手が怪人の手を一斉に掴む。
「……あ……その亡者男だったかも……気のせいよ」
「やめろおおおおおおお!!?」
「気のせいよ……?」
 ホラーな画面に猟兵放送が大盛り上がり! そんな放送を楽しみながらエレクメトールが茶々を入れる。
「そろそろ私も糖分補給したいです。何かください」
「何ッ、糖分? 何かあったかな、ちょっ俺のポケット漁らないで!?」
 怪人のポケットを亡者の手が漁っている! 235本の手が我先にとポケットを漁りブチっとポケットを破壊してしまう。
「よし、新鮮な爆弾をやろう。許して! これで許して!」
 怪人が爆弾を差し出した! と同時にエレクメトールの銃に撃たれている!
「糖分って言ったじゃないですか」
「そんなスイーツ俺が持ってるとおも、アッ亡者の手が」
亡者の手がお仕置きするように怪人をペシペシ平手打ちし始めた!

 そんな混沌とした映像の中……テティスの歌が流れていた。

 ♪ヒロインは私です

 ♪他の女には負けません!

 ミュージカル風の歌詞は超ストレートだ!!
「ちょうど爆弾で嫉妬の人がいますからここはヒロインアピールのお手伝いをしていただきましょう!」
 テティスが歌を中断させ(周囲の人々は皆ホッとした)怪人に作戦を伝えると怪人はニッコリした。
「今日初めて同志と巡り会えた気がする、とりあえずこの亡者の手から俺を助けてくれ」
 手を差し出す怪人。
 テティスは怪人の手を取ろうとして……。
「いやーーー!」
 男性への拒否感を爆発させて渾身のパンチを叩き込み、衝撃で怪人が吹き飛んだ! 結果として亡者の手から解放している!
「け、結果オーライ!」
 怪人は全力でテティスの期待に応えてバクハツとマインに爆弾を投げる!

「きゃー!」
「うわー!」
 2人が離れ離れに……!!

「今がチャンスですっ」
 テティスが(もはや心の声ではなく全て声に出している!)バクハツの元に駆け寄った。
「バクハツくー、って、きゃあああっ!」
「え、えええええええっ!!?」
 テティスは男性が苦手なのだ。自分から近寄った癖にバクハツに渾身の右ストレートを叩きこむ酷いアイドル。だが可愛い。
「いいパンチだ!! 俺は感動した」
 怪人が感動して拍手している! 

●そして結婚へ
「バクハツくん! しっかりして」
「ハッ、ぼくはいま何を。マインちゃん?」
 2人が再びイチャイチャし始める。
「クッ、リア充はしぶといな」
「ああ、人魚姫の気分です。バクハツくん、私の存在に気付いてくださいっ」
 怪人とテティスががっかりしている。

「あの怪人、物凄い熱を発してます……! 危険ですが、利用もできる……?」
 ルクはユーベルコード『材質塗装(マテリアル・ペイント)』で氷のような青白を怪人に塗っていく。
「俺のソウルカラーが! 落書き小僧め」
「ただのカラーペイントじゃないです」
「はっ!!? これは!」
 なんと怪人がヒエヒエのアイスマンになっていく! そして自分が内から放つ熱で自壊していくではないか!
「ちょっ、なんて技を!」
 怪人が慌ててクールダウンしている。
「術を解けー!」
 怪人がルクに爆破パンチを繰り出した!
「ルクちゃん!」
 風のように走り寄るレパルがグイッとルクを後ろに引っ張り、
「お任せください!」
 代わりに前に出たトリテレイアが爆破パンチをしっかりと受け止めた。

(……なんだか頭の導火線が短くなっているような。まさか諸共自爆!?)
 怪人の頭に気づいたトリテレイアは脚をがっしりと掴んでぶんぶんと振り回す。

『すごい!』
『怪人同士の対決だ!』
「怪人ではありません!!」
 フィクションをいつまでも現実と混同するコメントに「あの動画は作り物です! 現実の怪人や猟兵とは違います」と呼びかけながらトリテレイアは筋骨隆々とした怪人を軽々振り回す。その姿にはギャラリーも大喜びだ! まさかこの猟兵が先ほどの「リア充とは」の長文を書いたとは露ほども思うまい!爆発タイミングを見切ったトリテレイアはハンマー投げの要領でスパーンと怪人を投げた! 会場の外、上空に広がる青空へ!

 ドカーン!

 上空で怪人が爆発する。

「花火を背景に愛を確かめる恋人……これぞ王道です」
「待っていたぞ、フッ」
 なお、上空にはアベルが待機していた。タイミングを少し早めにジャンプしていたアベルは遅れて飛んできた怪人を空中で見事に仕留めたのであった。たーまやー。

「怪人は倒しました! 皆さん、安心してください」
 ルクがホッとした顔でカメラに笑顔を向ける。
『笑ったァァァ』
『元気になってよかったね』
 猟兵放送のコメントがルクの笑顔に湧いていた。コメントの1つ1つは観ている人がその瞬間思ったことを素直に打ち込んだものだ。深い考えもない。コメントを打つのは無料で、片手間にできて、ほんの2、3秒で済む。
 だが、その1つ1つが何十何百と並ぶのを見てルクは不思議と嬉しくなった。

「ところでバクなんとかさんはプロポーズしたのよね? ついでに挙式しましょ? 皆見てるし」

 エレニアがふと提案をして、「猟兵とたくさんの人々に見守られながらウェディングなんてそうそうできることじゃない! チャンスを逃したらいけない!」と親御さん達が高速で挨拶を済ませて急遽結婚式が始まった!

●結婚END
「何で真面目にやってるかわからんですけど……」
 アンコがアナウンスを担当してくれる。
「これより結婚式を行います」

「ケーキ……えっと、これで良くない?」
 エレニアがケーキを用意してくれる。真っ白でエレガントな丸いケーキはクリームが繊細に総称となり、ケーキ自体がウェディングドレスのよう。
「『夢みたい! 猟兵立会いの結婚式!』これは流行る」
 ウエディング情報誌『ザクシィ』の取材班がやってきて写真を撮っている。後日雑誌で紹介されるらしい。
「Sikándaをリボン付きのナイフに変えて貸してあげちゃう。……特別よ?」
 エレニアが上品なリボン付きナイフを差し出すと、バクハツとマインが2人でナイフをとりケーキに入刀していく。

「おめでとう!」
「おめでとう!」
『おめでとう!』
『おめでとう!』
 現実世界の声とコメントの声が同じ言葉を唱和する。
 こうしてこの日、1つのカップルがゴールインしたのである。

「そーいや怪人って、コンコンコンが凄くなりすぎて欲望が爆発した存在なのよね」
 レパルは拍手で新郎新婦を祝いながらふと思う。
「何でも好きなだけ手に入れられる力を、モテモテになるとかじゃなくて誰かの幸せを引き裂く為に使うなんて……悲しい物語だわ……」
 会場の天井付近を妖精が飛んでいる。本物ではなく、作り物の妖精だ。
 カップル達を祝うコメントは世界中から寄せられている。自宅で寛ぎながら、芸事の稽古の合間に、アーティスト達が仕事の合間に。あるいは移動中にチラ見して一言コメントを打った人もいたかもしれない。

 レパルの瞳が会場の外を見た。

 いつもと同じ青空。戦争で惑星が割れても変わらず広々としていた空。人類がこの惑星にいた頃から同じように広々と地上を見下ろしていたのだろう。もしもキマイラ達が滅びても同じなのかもしれない。

「おめでとう!」
「おめでとう!」
『おめでとう!』
『おめでとう!』

 人々の明るい声が溢れる世界。レパルは知っている。力は人を不幸にするために使うこともできるし、人を笑顔にするために使うことができるのだ。

「人を笑顔にするために、頑張るわ」

 明るく煌めく瞳には仲間達が映っている。皆、力を人のために振るい戦う者達だ……ろうか?
「ちょっと待った、って乱入すれば良いでしょうか!」
 テティスが撮影と勘違いして式に乱入しようとして仲間達に止められている。
「これは撮影ではないんです!」
「いや、撮影はもう終わったって言った方が通じそうじゃ」
「フッ、打ち上げの時間だぞ」

「芸術祭一位の作品を発表します、一位は『現役女子高生アイドルがパンツチラ見せしてみた』です」
「あっ、パンチラに負けてる……」

 こうして、怪人は倒されてカップルが結ばれ、依頼は成功に終わったのである!

●終わり!

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年09月27日


挿絵イラスト