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猟兵、更に闘うこと

#サムライエンパイア #戦後

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#戦後


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 今は昔、ある月の夜。
 血気にはやるコール・アンド・レスポンスのよく響く大屋敷でのこと。
 屋敷の主人曰く。
「残党狩りに行こーーーーーーーよッ!」
 住まう若い衆答えて。
「「「残党狩りに行こーーーーーーーよッ!」」」
 主人曰く。
「残党なんてェ怖くねぇッ!」
 若い衆答えて。
「「「残党なんてェ怖くねぇッ!」」」
 主人曰く。
「くーーーーわだってーもってるしッ!」
 若い衆答えて。
「「「くーーーーわだってーもってるしッ!」」」
 主人曰く。
「かーーーっまだってー持ってるもんッ!」
 若い衆答えて。
「「「かーーーっまだってー持ってるもんッ!」」」
 主人驚いて。
「あっ!」
 若い衆も驚いて。
「「「あっ!」」」
 最期に皆の衆。
「「「「山賊だあああああああああああああああっ」」」
 ――ずんばらり。とっぴんぱらりのぷう。

「というわけでして。
 ヤの付く自由業によく似た風体の皆様方がエンパイアウォーを生き延びた残党オブリビオンの本拠地に攻め込もうとしていたのがオブリビオンにバレバレだったので夜討ちに遭いまして一族郎党全滅いたしますの。ええ村ごと。
 その事態を未然に防ぐためには、猟兵の皆様で押しかけて武力でマウントを取って思いとどまらせる他にありませんわ。
 説得の手段としては少々スマートさに欠けますが、交渉相手に合わせて材料を用意するのは当然のこと。できますわね?」
 シズル・カンドーヤ(ラジカル・レディ・f10880)は満面の笑みを浮かべて、つまり居並ぶ猟兵たちの答えを聞くつもりはないのである。
「結構、結構ですわ♪ 余談ですけれど、なぜオブリビオンの居所に直接殴り込みに行かないかと言うと――ええ、その、お恥ずかしながら、わかりませんでして、わたくし」
 頬を両手ではさんでいやんいやんと身をくねるシズルである。
「いやんいやん。ですからして、ヤの付く自由業によく似た風体の皆様方にお聞きする必要があるのですが、どうにも彼ら頑なさんですの。自分たち以外の誰かが見せびらかす理屈と権力が大嫌いなのですわね。困った子たちですわ。
 そんな彼らも、きっと根は良い子。ぶちのめ」
 ……………………。
 たっぷり3呼吸待った。
「わたくしたちの方が強いとわかれば、きっと考え直してくれますわ。
 そのために必要な道具は、実は現地にありますの」
 と、シズルがスクリーンに投影したのは、以下のようなものだった。
 木刀の打ち込みに削れた立木。居並ぶ巻藁(弓道用と空手用)。大小様々なカカシ。一抱えほども在る大岩。千枚単位で揃えられた瓦。甘くて大きい瓜。木製パンチングマシーン。回転するほうの木人。回転しないほうの木人。エトセトラエトセトラ。
 およそサムライエンパイアの文明レベルで用意できそうな、ありとあらゆる【試し打ちの的】が、屋敷裏の広大な土地に設置されていた。
「ええ、ええ、ええ。普通の人をぶちのめしてしまっては、お話になりませんものね。
 ですので、まず皆様はこれらの的を徹底的に破壊することで、ヤの付く自由業によく似た風体の皆様方に、戦力の差を見せつけて差し上げてくださいな。
 これを守れない悪い子は、もうどこへも連れて行ってあげませんからね?」

「――あ、そうそう。
 的の修理補填代は、しかるべき幕府に領収書を上げますのでご心配なく、ですわ♪」


君島世界
 こんにちは、はじめまして。
 マスターの君島世界です。
 エンパイアウォーも終わり一段落といったサムライエンパイアですが、まだまだ火種は残っている様子。
 勝ち取った平和を盤石なものとするべく、力をお貸しくださいませ。
 ほっとくと村全滅ですからねー。本当に。

 それでは、皆様のプレイングを心待ちにしております。
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第1章 日常 『切磋琢磨するために』

POW   :    めいっぱいの力を込めた技を放つ

SPD   :    猛スピードで翻弄するような技を繰り出す

WIZ   :    自慢の魔法を披露する

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アテナ・カナメ
要はオブリビオンに挑もうとしてる一般人を止めればいいのね?楽勝よ。

【作戦】あなた達が言っても返り討ちになるだけ!ここは私達に任せて!…まあ、言っても聞かなそうだと思ったわよ。なら…大岩をバーニングパンチで壊して私の強さを見せつけるわ!



「――要は、オブリビオンに挑もうとしてる一般人を止めればいいのね?」
 アテナ・カナメ(アテナマスク・f14759)の言うとおりの事態である。
「楽勝よ」
 自信たっぷりにエントリーしたのは、くだんの裏庭訓練場。大岩のあるところだ。当然、周囲の耳目がこちらに向けられる。
「なんだァ、てめえ……怪我しないうちに帰りな!」
 というような敵意混じりの対応も、まあ好都合。害意があるよりはずっといい。
「ふふん……ねえ、ここにいるのが今度、あの山賊とやり合おうって人たち?」
「それがどーしたよ姉ちゃん。いい筋肉してるようだが、助太刀なら不要だぜ?」
 と、上から声がした。見ると、大人三人でも抱えきれないような大岩のてっぺんに、段平を見せびらかす輩が座っていた。
「もっとも、飯炊き女なら幾らいても困るこたぁねえ。ウチは他所よりよっぽどいい給金出すから、その気なら勝手口から」
 勝手に話を進めようとするその男を、カナメは挑戦的に指をさして制する。
「いいえ、いいえ。助太刀なんて、あなたたちにされても正直、迷惑だわ」
 ざわ、と周囲がおどろいた。
「ええ、あなたたちが行っても返り討ちになるだけ! ここは私たちに任せて!
 オブリビオンの相手は、猟兵が担います!」
 カナメはそう明言する。輩たちの反応は、当然、爆笑であった。
「がっはははは! な、何を言うかと思えば! 猟兵だかなんだか知らねぇが、俺たちが姉ちゃんたちより弱いってェか?
 見ろよこの訓練場を! 旦那が大枚はたいた自慢の庭だ。ケチな山賊程度、ここで鍛えに鍛えぬいた俺たちの敵じゃあねぇさ!」
「自慢の庭で訓練、ね……ならこの大岩、なんでまだここにあるのかしら?」
「あ? わざわざ持ち込んだんだからあって当然だろうが。登攀に打ち込み、ダラダラしてる不届き者の見張りにと、これでも大いに役立ってるぜ」
「そうじゃなくて。これ、壊すのが本来の用途でしょう?」
「――――――――は?」
 きょとんとする輩を見上げ、カナメは計算する。
 ちょっと念入りに壊す必要があるかもしれない。
 すう、と息を吸い、構えた。
「正気か? こいつは天神様も壊せなんだ大岩だ、怪我するぜ姉ちゃん!」
「だいじょうぶよ。怪我はしないし、させないから。――フッ!」
 気合一閃。燃える拳を、カナメは叩きつけた。
「バーニング、パアアアァァァンチ!」
 コォオオオオオオン!
 深い井戸に石を落としたときのような、金属質の快音が響く。
 鳴り止んだ次の瞬間、大岩は石に砕けることもなく、細かな砂にまで分解された。
「お――?」
 支えを失った輩が、砂山に尻から落ちていく。反射的に足を伸ばせば、見事、砂まみれながらも無事に、輩はそこに立っていた。
「よっと。……え?」
「うん、このくらいはできないと、ね。話を聞いてくれる気にはなったかしら」
 輩は砂を握り取り、掌を開けてさらさらと流れていくのを見る。
「これは……姉ちゃん、剛力にもほどがあるぜ……」
 輩の目の色が変わった。

成功 🔵​🔵​🔴​

御鏡・十兵衛
ふむ?まあつまり黙らせれば良いと。
とはいえ如何せん某の剣は見た目が派手なモノは少ない。
出来ることは限られるでござるが……見せるならまあ、【水破】か。

某も他の猟兵がどう見せるのか純粋に気になるゆえ、やるのは少し観てからにするでござるよ。
(若い衆にしれっと混じり密柑剥きながら眺めて)ほー、スゴイでござるな。あ、貴殿も食べる?

さて、では某の出番。一抱えの岩じゃちと足りぬな。せめてそれを何個積んで。遠くからスパッと振り切れば、水圧で遅れてずるりと真っ二つ。後ろにあるモノも斬っちゃったらごめんでござるよ。
オブリビオンと戦うならば、これくらいのことは片手間で出来なければな。どう、出来るでござるか?



 庭の端、別棟の縁側から、先の猟兵の活躍を見ていた者たちがあった。
 寝ていた所を轟音に飛び起き、何事と駆けつけてきたものもあれば、御鏡・十兵衛(水鬼・f18659)たちのように、日向にあたりながら始終を見届けたものもある。
 総員、共通して騒然としていた。十兵衛を除いてだが。
「ほー、スゴイでござるな。かの大岩を刹那に微塵でござるか」
「いや……その、それがしは今見たものが本当なのかどうか、判断が付きませぬ。噂に聞く妖術使いなのでしょうか、十兵衛殿?」
「やあ、紛れもない剛力にて。鍛えた剛力はまやかしと見分けがつかぬ、などと申しますが、まあその域でありましょう。あ、貴殿も蜜柑食べる?」
「かたじけない。おう、早生も乙でありますな……」
 というように、外様のはずの十兵衛はしれっとこの場に馴染んでいた。隣に座る若侍も、実のところ会ってまだ半刻も経っていない。すっかり連中の一員である。
 そういう手管を、十兵衛は使っていた。
「話を聞くに――」
 と、別の侍。
「――かの大岩、壊されてござるか? 夢でも見ているものかと」
「おお、それよ。輩組総出で運び込んだ大岩よ。下賜の刀に疵がついては事だと、われら三郎組、退けよ退けよと申し入れておったが、まさかなあ」
「ふむ」
 十兵衛は素知らぬ顔をしながら、両者の話を注意深く聞く。
 輩組と三郎組。三郎はさぶらう、つまり侍のことか。
 同じ敷地に居て、一枚岩ではないことが知れる。そのようなあらくれを統率する屋敷の旦那も、本来ならばひとかたならぬ人物なのであろう。
 しかし、オブリビオンを相手取るには、いささか不足。
 十兵衛は熱い麦茶に一息ついて、よっ、と腰を上げた。
「さて、では某の出番にござるな」
「十兵衛殿の? それはまさか、大岩を、ということでござるか?」
「左様。実は某も猟兵にて。
 面子もありましょうが、なにより……大岩、砕くのみに非ずと、侍を名乗るものとして、皆に代わり示しとうござる」

 ということで。
 急遽力自慢が積み上げた要石の塔に、十兵衛は笑みながら立ち会う。
 観衆がその後ろにいた。歓声がひっきりなしにある。
 それらに負けぬ大音声を、十兵衛は振り返り、胸を張って上げた。
「やあやあ皆の衆! われこそは御鏡・十兵衛、猟兵なり!
 今からそこな石塔を、女だてらに一刀、斬捨御免と参りましょう!
 大ぼら、ペテンを危ぶむならば、更に石積みわが証とせん! 如何か!」
「ヘッ! うちの姐さんじゃねえんだ、そんな細腕でどうにかなるものか!」
 言われるままに輩組が、さらに三つを積み上げた。それを見て十兵衛、にこり。
「ようござる。然らば――」
 十兵衛が、ざ、と身を傾けた。
 しん、と静まり返る場内。
 ――――――――シ――――――――。
 十兵衛の上げている右手に、柄と刀身とがあり、水滴が陽光にきらめく。
 つまり、誰の目にも見えたのは、十兵衛が【抜いた】という結果のみであった。
 それでさえわざと、見えるように残心を留め置いたというだけのこと。
 ず、る、り。
「見ろ……いつのまに、せ、石塔が!」
「何だ!? 何がおこった!?」
 左下から右上へ、わずかに傾いだ刀閃に沿って、重みのままに石塔がずれる。
「ふむ」
 パチンと音立てて刀を仕舞えば、講談が如く石塔は真っ二つに崩れた。
「これが……これが猟兵にござるか、十兵衛殿」
「左様。オブリビオンと戦うならば、これくらいのことは片手間で出来なければな。どう、出来るでござるか?」
 例の若侍は、こう答える。
「いずれ」
 と。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコリネ・ユーリカ
なんて大きなお屋敷に広大な土地!
血気逸ったギャラリーもたっくさん
これなら思い切り車を転がしてドラテクが磨けそう
んフフ、血が騒ぐわ

事前にフルチューンしておいた『Floral Fallal』のエンジン全開!
3.8L、V8ツインターボの空気を鋭く刻むような轟音がシビれるでしょ?
流れるように躍るようにペダルを踏み込み、レッツゴー!
居並ぶ巻藁やカカシをパイロン代わりにドリフトしていくわ
瓦の壁はリアを擦らせるようにギリギリ抜ける!
お尻を振って風を煽るの、この子ったらセクシーでしょ?

最後はヤの付く自由業の方々の所へドリフト駐車で接近して、敵の居所を聞き出すわ
知ってる事、ぜーんぶ吐いて貰うわよー(いいえがお)



 大は小を兼ねる、という。
 器大きければそれだけ物を詰めることができ、夜早い時間に寝付けばその分早朝の爽やかな空気を長く楽しむことができる。
 値の大小は、それが小ささを求められているのでなければ、大きいに越したことはないということだ。真理である。
 ならば【最速】は、いかに? それが叶えるアドバンテージは、はたして人間存在に何をもたらすのか?
 その問いの答えを、ニコリネ・ユーリカ(花売り娘・f02123)は、地の底から響くような力強いV8ツインターボエンジンの鼓動に聞く。
「んフフ……♪」
 曰く魅せよ、と。
 ならば流れるように躍るようにと、ペダルワークで応えてもらいましょう!

 PVKaOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOON!

「ッ! な、何事だァ!?」
 ゴウゥッ!
 ニコリネの操る多段変速四輪駆動高速車両『Floral Fallal』が、その音に気づいて輩の、振り返る動きとすれ違いに通過した。遅れた轟風が輩の上着を踊らせ、その余波を知らしめる。
 音が聞こえた時には、もうそこに居た、ということは。
「その速さってか――!」
 フロントガラスに流れる景色は、もはや昼色の集中線となっていた。
 その強調する中心点に、等間隔に並ぶ巻藁の縦列がある。
「――いいえ、この子のダンスは速いだけじゃあなくってよ?」
 パリの街中を行くように淑やかなヒールアンドトゥで、ニコリネはギアを下げる。
 これ以上のブレーキングは……しない! Floral Fallalの今日のパフォーマンスと、未整備サーキットのコンディションは、今までの加速で十分に理解した!
 あとは、車体を振ったときの挙動を、リアルタイムに把握していくだけ。
 ハンドルを握るグローブがぎちりと悲鳴を上げた。ニコリネは、対象的にリラックスした微笑みを見せている。
 緊張と弛緩。その相容れない二要素の交点が、すなわちドリフトである――!

「……み、見るでござる!」
 と、その頃には多くの者が、ニコリネのパフォーマンスに気づくことができていた。信じられない高速で突っ走る鉄車と、その先にある、通常以上に丈夫な巻藁。
「野郎、なぎ倒していくつもりか?」
 瓦割りに汗を流していたある男が、それを眺めて言う。
「ハッ! そいつぁ無理だぜ! なんせあのへんの巻藁は、念入りに地下深くまで脚埋めてんだ、どんな馬だって蹴倒せやしねえよ!」
「あいや、馬にござるか……? 拙者、話に聞く【くるま】とやらかと」
「どうでもいいや! 見ろ、突っ込むぜ!」
 観衆が視線を注ぐ先で、Floral Fallalが一瞬、ブレた。そして、まるで幽霊のように、一本の巻藁をすり抜けていく!
 皆が声を失った。
 土を削るスキール音だけが、残る。
 二本、三本、四本。
 目のいい者であれば、偶数回でFloral Fallalは、巻藁の向こう側を通っていることに気づくだろう。そして、その跡に残る僅かな土煙を。
 五本、六本、七本。
 巻藁は弧を描いて配置されていた。こちらに向かう曲線に入った時、Floral Fallalは、すり抜けていくのではなく左右に揺れて交わしていたのだと、観衆は知った。
「野郎、尻振って抜けていたとはな! そういうカラクリか!」
「美しい……拙者、ため息の出るほどに美しいものを、久方ぶりに見たでござる」
 だが、それももうお終いだ。巻藁カーブの先には、積み重ねた瓦の山がある。
 この速度では、はたして満足に止まることはできないだろう。あの鉄車が突っ込み、粉々のグシャグシャになる無残な光景を、誰もが思った。
 と――やはり、ニコリネは微笑んでいる。
「魅せ所、グラン・パドゥシャでしくじらないでよね!」
 ギャキキキキキキィ!
 八本目の巻藁を抜け、ニコリネは一気に、存在しない九本目方向へとハンドルを切った。ブレーキングのタイミングは勘と経験。髪一本の失敗があれば、車体は文字通りに吹っ飛んでしまう!
「まあ、この子は四駆だけ、どっ!」
 ――――――――ッ!
「と」
「止まっ、た……?」
 シュウウウウウウ……。
 狼煙のように白煙を上げて、Floral Fallalは紙一枚分の距離で、瓦の山のすぐ側に停まっていた。その驚異的なドラテクは、ペンデュラム・ターンの応用か。
 呆気にとられる観衆。その注がれる視線の中に、ニコリネは降りた。
「さて、と。集まっているのなら好都合だわ。
 例の『敵』について、知ってる事ぜーんぶ吐いて貰うわよー」
 ――果たしてどれだけの豪傑であれば、このような光景を目の当たりにして、抗うことができるのだろうか。
 少なくとも、今いる一般人の中には、一人としていない。

成功 🔵​🔵​🔴​

御剣・刀也
POW行動

いや、自分たちの事は自分たちで守ろうとした心意気は買ってやりたいが………
世の中には適材適所ってもんがある。オブリビオン相手の荒事は、俺らに任せてもらおう

「力を見せつけろねぇ」
庭を見渡して山のように大きな巨岩を見つけるとこれで良いか。と近づき、ポンポン、と硬さを確認する
「おい、これより硬いのはないのか?」
と聞いてないと言われれば
「ちと柔いが、まぁいいか」
と構えて、天武古砕流無手術奥義、覇王武皇拳をぶち込んで軽々と粉砕する
「で、これでもまだ、俺らとの力の差がわからない馬鹿はいるか?」



 敷地内、道場の一角。
 雇われらしい初老の師範の号令に合わせ、様々な装束に身を包んだ者たちが、拳闘術の型稽古に汗を流していた。
 その光景を、御剣・刀也(真紅の荒獅子・f00225)は正座して見学している。
「壱!」
「「「ヤ!」」」
「弐ィ!」
「「「ハッ!」」」
「参ン!」
「「「ッセイ!」」」
 地に足のついた、良い型だ。重心移動に重きを置いているのだろうか、非力な者であれ体格に優れた者であれ、鍛えれば十全に破壊力を発揮できる、そういう拳法だ。
 他流の徒である自分を、こうしてなんの咎めもなく立ち会わせている所も、ある種の好感が持てる。多くの者に技術を広めることで、いわれのない暴力から身を守ることのできる物を増やすと、そういう哲学を見て取れた。
 しかし、だ。
 しかしそれでは、護身術の粋を出ない――。
 ――故に、オブリビオンに抗するには、不足している。
 そう思ったからこそ、刀也は立ち上がった。
「む」
 師範がこちらを向く。号令が止まったので、門下生も何事かとざわめいた。
「ここにきて何用か、若いの。
 当流の看板が目当てであれば、それもよかろう。が、真意は其処にあるまい」
「ああ。自分たちの事は自分たちで守ろうとした心意気は買ってやりたいが……。
 はっきり言えば、この戦いではお前の拳法じゃ力不足だぜ」
 ざわめきが大きくなる。師範はそれを捨て置いて、声量を上げた。
「当流を愚弄する御積か」
「おつもりも何も、事実を述べているだけだぜ、俺は。
 世の中には適材適所ってもんがある。
 オブリビオン相手の荒事は、俺らに任せてもらおう。その代わり、そうじゃないところ――たとえば人間同士の諍いであれば、お前たちに任せるさ」
「…………」
 師範は気配を大きくしたまま、黙りこくる。門下生たちも、師範の手前おとなしくはしているが、一触即発といった雰囲気だ。
「…………なれば」
 激情を押し殺したような声だった。刀也はそれを聞いて、多くを察した。
「なれば、その言に偽りのないこと、その証を立ててもらう」

「力を見せつけろ、ねぇ」
 ぶらり道場を出て、きままに庭を散歩する刀也。
 その後ろにぞろぞろと、例の門下生たちが付いてきていることを除けば、気分のよい昼間であった。
 目的のものは、たいして苦労せず見つけることができた。
「お」
 大岩だ。ぽんぽんと、岩肌を叩いて確かめる。と、付いてきた門下生から数名、解説しようとこちらに近寄ってきた。
「地獄岩だな。あっちの天神岩と合わせ、お山からわざわざ引き下ろし――ん?」
「あれ、天神岩がねぇぜ!? あっれー、あんなデカいモン無くなるワケが……」
「ってことは、つまり」
 刀也は腕を組んで言った。
「これより硬い物はない、ってことでいいんだな?」
「ん、ああ。世が世なら、しめ縄巻いて御神体にでもするような代物だ」
 首肯する門下生。
「そうか――ちと柔いが、まぁいいか」
「は、柔い……と? そう言ったのか?」
「柔い。証明してやるから、ほら下がれ下がれ。怪我するぜ」
 刀也は彼らの肩を押して下がらせ、足先で土に線を引いて境目とした。
 そこより前に出られては、安全は保証しない、と。
 門下生たちも、それにはおとなしく従う。
「ふう……」
 呼吸を整えて、大岩に向かい立つ刀也。両の踵を上げた瞬間、門下生たちの雰囲気が変わったのが感じ取れた。
「(そういや連中、打つときはまず踵を下ろせって言われてるんだったな)」
 ――あいにく、そんな悠長に構えてしまっては、火縄銃のいい的なんでな。
「天武古砕流、参る!」
 息吹とともに、演舞の礼儀として流派を名乗る。
 武術家の目で見られているが、構うものか。
 天武古砕流は、見様見真似でどうこうできるレベルには無いのだから!
 打つ――!

 カァアアアアアアアン!

 ごう、と余波が周囲円状に広がっていく。
 着拳点が熱を持った。熱は振動に、振動は新たな熱に、透っていく。
 なんのてらいもない、質素にして簡潔な正拳突きだ。例えば岩の『目』、弱いところを見切ったわけでもなく、また瞬く間に何度も打ち込んだわけでもない。
 ただの一度。一突き。
 それだけでも、鍛え上げればいつか、究極に至る!
「――無手術奥義、覇王武皇拳」
 ピシ……ッ。
 透りきった力の道筋が、大岩にヒビを伴って可視化された。そうなれば元の形を保つことはできず、大岩は自重で崩れていく。
 そして呆気なく。
 地獄岩と讃えられた大岩は、ただの石にまで砕けたのであった。
 それを見ていた背後の門下生たちが、ようやく息を呑む。
 振り返って、刀也は言った。
「で、これでもまだ、俺らとの力の差がわからない馬鹿はいるか?」
 問われて、しかし。
 現実に、目の当たりにしたことに説明を付けられないでいる彼らに、刀也の言葉を否定できようはずもないのであった。
 猟兵と一般人と、その力の差は、歴然――!

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
UC発動
人格名『昨夜』で参加
アド連歓迎

ふざけてんのか手前ら
この程度で驚くなんてたかが知れている
嗚呼、心底面倒、阿保臭い命知らず共……
行きは良い酔い帰りは居ない
片道限りの交通手形
発行するわけにゃ行かないのよ

念動力で的ごと巻き上げて嵐と化し皆様の頭上に落とす真似でもして差し上げましょうか
どうやらここまでしないと分かって頂けないようですから
これ以上御託を並べるようなら光の鎖をロープワークで操り捕縛して差し上げてもよろしいんですよ?

ああ、腹が立って的を絞め殺してしまいました
うふふ
命なんて紙屑にも等しく淡く儚いのになんて無謀をなさるおつもりかしら

次は、どなた?


アニカ・エドフェルト
ええと…「クワとカマがあるから大丈夫」なんて、思ってたり、します……?
でしたら、悪いことは、いいません。
天下の大将軍、徳川家光さま、お墨付きの、わたしたち猟兵に、任せて、くれませんか?

…とは言っても、こんな見た目で、言葉だけじゃ、説得力、ありません、ね。
と、いうわけで…カカシや木人など、芯のあるものを、その辺りに並べて……
連続蹴りで、全部折っていって、みます。
最後は、ふんわり浮いて、ひと蹴りで、周りの的を粉砕、できるといいな、なんてです。
(〈なぎ払い〉イメージ)

で、最後に、〈怪力〉を使って、大岩を持ち上げつつ(必要ならロープ使用)…
これでもまだ、疑い、ますか…?



 ――事案である!
 この屋敷に集う輩の中でも性質の悪い連中『紙一重』、そいつらが輪になって並んで作る肉の壁によって、身の丈二尺七寸しかないような童女、アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)と、小股の切れ上がった美女、鈴木・『昨夜』・志乃(ブラック・f12101)は取り囲まれ、外部から見えなくされていた!
 繰り返すが事案である! お奉行のお兄さんも、ちりめん問屋のお爺ちゃんもいないこの状況で、はたして連中の運命やいかに!

「えっへっへ……若い女性(にょしょう)がこんな場末になんの御用事ですかな?」
 クワを持った男が言う。襤褸を身にまとい、裾からは真っ白に洗濯されたふんどしがチラチラ見え隠れするのが物理的に目の毒だ。
 なのでアニカはずっと、視線を自分の膝より上にあげられずにいた。彼女の身の丈では、真正面が致死的領域(デッドリーポイント)だからである。その姿はあまりに哀れであり憐憫を誘う。
「あ、あの、その……」
「おんやおや、そんなにおどおどして可愛いねえお嬢ちゃん。アメたべる?」
「おお、おかまい、なくぅ……」
 ある特定の層にはどストライクだぞソレ。
 さて『昨夜』はといえば、これは志乃に厳重に止められているからか、取り囲む連中を強制執行で排除できないので、かなりイライラしているようだ。
 遠巻きに志乃の身体をジロジロ見られるのも無性に腹が立つ。
「~~~~~~~~~~ッ!」
「びび、美人は怒っていても、え、絵になるんだな。アメたべる?」
「――最終警告だ。どけ手前ら。それとも『ごと』で巻き込んでもいいってのか?」
「な、なな、何の話だか……」
 これでも『昨夜』としては、穏便に事を進めようとしていたのだが……。
 一方のアニカは、これ以上は無理だと、ここで小さな勇気を振り絞った。
 致死的領域を視界に入れないように、目を閉じて言う。
「あ、あの。みなさんが、これから、せめようとしている相手、なんですけど」
 それを受けて、デッドリーポイント男。
「まぁあまあ、それを何処で知りなすったお嬢ちゃん? 公儀? 公儀の人?」
 意外と鋭い。
「ええと……【クワとカマがあるから大丈夫】なんて、思ってたり、します……?」
「「「クワーがあるから大丈夫ルァアア!!!」」」
「「「カマーがあるから大丈夫ルァアア!!!」」」
 途端に大盛り上がりである。『昨夜』がすごい顔をした。
「(なあ……こいつら変態だぞシノ。……シノ?)」
 へんじはない。ただのおまかせのようだ。
 そしてアニカが、完璧アウェーの雰囲気の中でとてもがんばった。
「でしたら、悪いことは、いいません。天下の大将軍、徳川家光さま、お墨付きの、わたしたち猟兵に、任せて、くれませんか?」
 がんばったのでようやく、本題に入ることができたのであった。
「……とはいっても、こんな見た目で、言葉だけじゃ、説得力、ありません、ね」
「いんやいやいやいやオレは信じるよォお嬢ちゃん! お嬢ちゃんは公儀の犬! 幕府子飼いのくノ一! そういう設定で飯事するのはオレにも覚えが――」
「ですから、証明、します」
 そして、とん、と。

 一歩を踏めば身も軽く、視界は領域を超えて、上へ、遠くへ。

「見つけ、ました」
 アニカが言うと、真下のガードに回った『昨夜』が応える。
「確かにそっち、ガラクタが並んでたな。こいつらが邪魔で行くに行けなかったが」
「ごいっしょ、に?」
「いいぜ。正直、思いっきりウタいたい気分で一杯だ」
「では――あ、失礼、いたします」
「ん」
 アニカを片手リフトで地面へ迎える『昨夜』。と、一斉に歓声が湧いた。
「おおおおおおおお!」
「なぁんだぁ嬢ちゃんたち軽業師か? 身長差が映えるねえ!」
「じゃどうだいこれから興行でも。いやなに、他の衆もすぅぐ集めて――」
「いえ」
 少女は堂々と答えた。
「拳闘士、です」
 その進む先の人波が、割れてひとつの道となる。
 行く先に立ち並ぶはカカシに木人。
 それを――。
「ふッ!」
 ――ベキャアッ!
 一息の横蹴りで、ひとつ、呵成に叩き折った。
 シン、と、観客が黙りこくる。
 木人の顔に描かれた茂平次が、地面に正面から突っ込むと、追う踏みつけが粉々にそれを砕ききった。
 付いた踵を支点に、さらに後ろ回し蹴りを繰り出すアニカ。
 十分に上がったその軌道が、途中のカカシの首を薙いだ。
「ぜんぶ、やっちゃって、いいですよ、ね」
 空中にあるままの首を踏みつけ、高く、前宙からの踵落としでもう一本。
 スキップを踏んで、遠い間合いに佇んでいた木人に付くと、水面蹴りで二、三まとめて脚を切る。
 顔を上げた。と、点が見える。
 自分のリーチを何もかもに過たず届かせることのできる、点。
「……ね?」
 緩急。ふわり、その点へゆっくりと跳ぶ。
 押し固めた螺旋が、そこでいっきに解き放たれるイメージ――。
 天地逆しまに、軽く地面に指先が触れた点で。
「よっ、い、しょっ!」
 朝顔めいて花開くは、アニカの蹴撃。
 そう。カポエイラだとか、ブレイクダンスだとか、あるいは闘奴の魅せ技だとか、そういう異世界の言葉を知らない彼らにとって、アニカの動きはただ、花として受け止められたのだ。
 一輪の可憐な威力を前に、益荒男どもはただ声を失う。
「――ハッ」
 昨夜は、その様を一笑に付した。
「ふざけてんのか手前ら。この程度で驚くなんて、たかが知れている――」
 お見苦しいものを、とアニカが恐縮するので、昨夜は改めて、男たちに向いた。
「否、こんな出来の悪いガラクタを、無様に地面に放置して、何のつもりだ?
 嗚呼。心底面倒。阿保臭い命知らず共……!」
 ゴゴゴゴゴゴ……!
 地鳴りがする。と、昨夜の瞳が、紅く、黄昏の朱光を灯した。
 地面の砂粒が踊る。小石が舞う。一掴みほどの木片が、目の高さにまで跳んだ。
 誰の手も触れぬままに。
「地震、か……!?」
 下から突き上げてくるような揺れに、男たちは足幅を広げて堪える。
 昨夜の白髪が、無風の内に広がった。
「だから」
 ユーベルコード『Ms.Yesterday』――。
 念動力の技能レベルが、一気に引き上げられる!
「この程度でうろたえるのが手前らの程度なんだよ!」
 何もかもの破片が、はるか頭上へ登らされ凝縮されて、固体の雲を形成した!
 そして雲であるならば、当然。
 ――ザザザザザザン!
 雲を構成する【雨粒】が、重みで落ちてくる。

「行きは良い酔い、帰りは居ない」
 昨夜は破片の雨空に歌った。
「片道限りの交通手形、発行するわけにゃ、行かないのよ」
 両手を広げ天を仰ぐ。

 周囲は、それはそれはひどい有様であった。
 降り注ぐ鋭利な木屑が、男の目に刺さらない。
 吹き荒れる嵐風が数人を巻き上げ、足からゆっくり地面に落とす。
 転んだ男の顔は勢いよく空を叩き、勢い余って体ごと数度回って止まる。
 乱痴気騒ぎ――。
「分かって、頂けましたね?」
 嵐が止む。
 ――いつでも再開できるぞと、雰囲気を保ったまま圧をかける昨夜に、男たちは必死で首を縦に振るのであった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 集団戦 『山賊』

POW   :    山賊斬り
【近接斬撃武器】が命中した対象を切断する。
SPD   :    つぶて投げ
レベル分の1秒で【石つぶて】を発射できる。
WIZ   :    下賤の笑い
【下卑た笑い声】を聞いて共感した対象全てを治療する。

イラスト:たがみ千

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――かくして!
 ヤの付く自由業によく似た風体の皆様方(結構バリエーションありましたね)は、猟兵たちの目覚ましい活躍によってその蛮気を収め、屋敷に留まることに同意したのでありました!
 いやまあ、さあいくぞーって時に人外魔境見せられて、その上こんな事をする連中が束になってようやく、例の敵さんとどっこいどっこいだってんだから、地獄の鬼も魂消る、すくみ上がってダメになるというもの。やはり、パワーは説得力ですなあ。
 サテ主人からも首尾よく敵の居場所を聞き出し、一同向かうは屋敷の北東。
 そう、丑寅、鬼門にあたる場所にございます。
 そちらには屋敷の連中が岩を取ってきたって山がありまして、ええ実はこちら、古くから伝わる山岳信仰の御神体。
 プチ富士山とでもいいましょうか、そんな場所にオブリビオンはねぐらをこしらえていたという寸法で。地元住人総ムカ着火もむべなるかな。
 踏み入れば具合悪くも天候崩れ、ビュービューと風雨吹き付けること嵐のごとく。そんな中に、ある時つぶてに紛れて一矢飛び込んでくるからタチが悪い。
 そう一矢。矢でございます。

 ゆえにしかとご覧あれ。
 オブリビオンが用意周到に、猟兵の皆々様を待ち構えているではありませんか。

 さあ! さあ! さあさあさあさあ!
 切った張った轢いた蹴ったの大立ち回り、これより開演にてございます――!
アテナ・カナメ
【心情】さーて、怖いオジサン達に偉そうなこと言っちゃったしやらなくちゃね。最初の敵は山賊…なんかさっきの人達とそんなに変わらないような…

【作戦】仲間と協力。「私はアテナマスク!どっからでもかかってきなさい!」剣での攻撃と石は【見切り】と【怪力】で防ぐわ。そして、隙を見たら【二回攻撃】のヒートスタンプ(キック)を食らわせて全員吹き飛ばすわ!



「さーて」
 アテナは、雨風に揺れる髪を、軽く指で梳いた。
 水中、炎に似て、広がる。華々しく、山賊たちの視線を引いた。
 注目はいずれ、純粋な美に対するそれから、下卑た賊のものへと変わる。
「やらなくちゃ、ね」
 ガサガサガサッ!
 包囲から一斉に飛びかかってくる山賊たち。
 その剣筋を、雨のしずくの断ち割れから見切る!
「しぇあああああああ!」
「はっ!」
 正面二人、こちらの両肩を狙う左右の大上段斬りを、アテナはどちらも、親指と人差指のピンチで白刃に取った。
 たたた、と残りの指を突いていけば、アテナの強烈な握力で刃先が折れ、砕ける。
 破片に目を潰されないよう前に出ると、後方からの奇襲、脚腱狙いの低い斬撃が、ブーツの底をかすめた。スクラッチはない。
 先の二人の膝を掌でロックして、力任せに押し回す。アテナの変形ちゃぶ台返し。二人はぐるりと、予期せぬ縦胴回しの姿勢となり、そのまま後方の山賊と共に潰れるのだった。
 一挙三人――こともなげに、アテナは名乗りを上げる。
「私はアテナマスク! さあ、どっからでもかかってきなさい!」
 そして山賊たちは、実に愉快そうに、アテナを笑い飛ばすのだ。
「ガーッハハハハ! いい気になってるぜぇおい!」
「そういう女こそヤりがいがあるってモンだ! なあ兄弟!」
「おお! こっちは人数で勝ってるんだ、一人でも勝てば手前もお仕舞いよ!」
 アテナは息をつく。落ち着き、相手を伺った。
 油断はあるだろう。が、まだ隙とは言えない。
 ならば――。
「お前たちのような山賊『くずれ』に、そんな根性あるのかしら?」
 ――攻撃を受けてこれを凌ぎ、そこから必殺の反撃に出る!
「その唾飲まんとけよ女!」
「代わりのモン飲ませてやらぁ! たっぷりとなぁ!」
 来る。今度は180度の左右からだ。
 アテナは両拳を上げ、振り下ろす勢いで左右に空中開脚蹴りを見舞う。そのまま柔らかく地面に沈めば、追ってくる横断斬りを頭上にやり過ごした。
 立ち上がる――染み付こうとする無粋な泥は、全て振り落とされ。
「な、なんだぁ……!?」
 目の前には、様子見に回っていた一人がいる。
 攻めあぐね機を損なった、こちらからすればいい的だ。
 アテナは下からえぐるようなトーキックを、その男の鳩尾に突き刺す!
「はぐ……ッ!」
 男の両足が浮く。どころか、さらに高く、アテナの頭上をぐるり回って、彼女の背後方向にまで飛ばされる。
 アテナ、男、残りの山賊たち。そして三者が、瞬間、一直線に並んだ!
「ATTENTION!」
 耐えて、凌いで、切り抜けて掴んだ、絶好の機会!
 アテナの瞳が、そして脚が、今こそ紅に燃え上がる!
「ヒィィィィィト・スタアアアアアアンプ!!!!!」
 カッ――――ドッゴォオオオオオオン!
 轟音、山を揺らす。
 アテナのユーベルコード【ヒートスタンプ】によって、男が実体弾として、山賊たちに撃ち込まれたのだ!
 超音速で飛ぶそれは、木々や岩を巻き込んで山肌を走り、当然、山賊もひとまとめに押し流していく。
 跡に残るのは、人知を超えた力によって彫刻された、一種の芸術作品か。
 アテナはしばらく、振る雨に加熱した身体を包まれるままに居た。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニコリネ・ユーリカ
戦場はプチ富士山かぁ……やだパンプスはいてきちゃった
機動で不利を取るのは走り屋として悔しいから(花屋です)
登坂に優れた「装甲車」を召喚して乗り込みましょ!
圧延鋼板と防弾ガラスで身を護りながら敵陣に進入
悪天候ニモ負ケズ、悪路ニモ負ケズ。勿論、石つぶてだって平気よ!
シェルターに入ってるみたい。引き籠もり強し、ね

敵が高所で地の利を得ている内は盾となって仲間を護り、
皆が攻撃の瞬間まで挙動を隠せるよう壁となって支援しましょ
距離を詰めて遠距離攻撃の旨味がなくなったのを機に反撃開始!
重量に任せて、ごっそり轢いちゃおっと
そしたら損耗の激しい個体からシャッター棒で殴り倒していくわ
車を降りたって負けないんだから!



 麓の話である。
 店頭用テントに退避したニコリネは、目の前にそびえ立つバッドコンディションの山を、どうにも攻めあぐねていた。
 花屋としては、何に対しても機動で不利を取るわけにはいかない(お花が傷んじゃうからね)が、そもそもからして、足回りがパンプスでは勝負にならないのだ。
 せめて登山用ブーツ、できれば鋼板入りの頑丈な物であれば、などと考えてみるが、そんな装備はしかし、花屋にはなく。
 なので、一般的な花屋にあるもので仕掛けるほかはない――。
 ――閃く。
 ああ、装甲車があるじゃないか、と。

 中腹での話である。
 ッバアアアアオオオオオオオオオオオオオオ!
 獣道に響く泥色の嘶きに、ひしめく山賊たちは総勢浮足立った。
「な、なんだァ?」
 見ると、一双の輝く目と視線があう。それは見ただけで此方の何もかもを諦めさせるような、無機質な暴虐に満ちていた。
 そんなものとの接触まで、数秒もない……。
「く」
 悪態をつく暇もなく。
 無謀にも斬りかかった山賊が、錐揉みではね飛ばされた。
 当方必殺の石つぶてですら、その身体に穴一つつけることはできず。
 最後の瞬間、中にいる女が、こちらに目配せをして――。
「そ……ッ!」
 綺麗な女だった。

 さて、車内での話である。
 パンプスを脱いだニコリネは、その柔らかな足裏を、装甲車の無骨なペダルに預けていた。
 路面から太腿までダイレクトに伝わるフィードバックも愛おしく。
「次はミディアム・レフトかしら?」
 ハンドリングの意を敏感に汲んで、しかしながら渋いステアを返してくるこの車の扱いにも、やっと馴染んできた頃合いだ。何度か冷や汗をかいた甲斐がある。
 両挙手両投足、踊るように踏み込む。
 走行ラインは、想定と実際とで完璧な一致を見せた。
 その軌道で、路面にある障害物が、いくつか弾き飛ばされていく。ワイパーに押しのけられた山賊を、ニコリネはすこしだけ視線で追った。
「ふふ、シェルターに入ってるみたい」
 事実、そうだ。圧延鋼板と防弾ガラスでできたボディが、ユーベルコード製ということも相まって、ある種無敵のパフォーマンスを示している。
 悪天候ニモ負ケズ、悪路ニモ負ケズ――。
「引き籠もり強し、ね」
 岩ニモ人体ノ重サニモ負ケヌジョウブナ車体ヲ持チ――。
 そんな花屋が、敵アジトに向けて爆走する……!

「今日も一日、ご安全に!」
 どの口で言うのだろうか(感嘆)。

成功 🔵​🔵​🔴​

御剣・刀也
まずは山賊か
まぁ、腹の足しにもならん雑魚供ばっかだが、余興くらいにはなるか
こんな連中で足止めできると思ってる奴に、教えてやろう
猟兵を敵に回すことの愚かさを

山賊斬りで斬りかかってきたら見切り、第六感、武器受けで避ける、受けるなりして、カウンターで斬り捨てる。
相手がひるんだら、ダッシュで間合いを詰めて、恐れず勇気をもって踏み込み、二回攻撃で確実に息の根を止めていく
「山賊風情が、舐めた口きいて笑ってんじゃねぇぞ。てめぇらじゃ腹の足しにもならん。もっと強いやつを連れてこい」


御鏡・十兵衛
ありゃあ、生憎の天気でござるな。
しかし、雨とは……重畳重畳。そこらからかき集めるにしても、些か面倒でござるからな。

なんのことかって?水でござるよ、水。
こう、ちょちょいっと練り上げてやれば、使い捨ての飛び道具になるでござる。
風雨に紛れて視界が悪いのは向こうもこちらも同じこと。むしろ水を用いている分隠密性ではこちらに分がある。

手ぶらで進めば早々に仕掛けてくれるはず、降り注ぐ礫と矢を避けたり撃ち落としたりしつつ、礫の投げ放たれた軌道を読み、位置を割り出して撃ち抜くでござる。
ま、これ剣技ではござらんが。それなりに便利ゆえ、使わぬ理由もあるまいて。



 青と金の瞳。
 剣豪二人、偶然に連れあって山の獣道を行く。
「雨、止む気配もなく」
「ああ」
「生憎の天気にて」
「山であれば珍しくもないぜ」
「まあ、そうでござるなあ」
 傘は開かず、左右、声は届き刀は届かぬ間合いを保つ。
 時折どちらからともなく歩み寄っては立ち位置を入れ替えるのは、互いに【その気】の無い事を示すためでもあった。
 抜く相手は別に居る。
 居る故、両者同時に歩みを止めた。
「……重畳重畳。そこらからかき集めるにしても、些か面倒でござるからな」
「こんな三下のことであれば、全く、その通りだ」
 しゃらん――山中の影が、密かに鳴いた。賊の呼吸。
「まぁ、腹の足しにもならん雑魚共ばっかだが、余興くらいにはなるか」
 ふっ、と青い瞳の剣豪が動く。
 ひょう、と、その足跡に矢が突き立った。
 中らないと知り、賊は野卑た叫声を上げる。
 雨音がかき消された。おそらく、物音足音を隠すためでもあるだろうが。
「はッ!」
 それこそ余興だ。青い瞳の剣豪は、かかってくる最前手の山賊に構える。
 と、下段から来た。常人であれば、泥が入るのを嫌って目を背ける箇所だ。
 山慣れしている、と剣豪は思い。
 だが戦慣れはしていない、と薄目で嘲笑う。
 泥跳ねは、溜めた涙に滑らせた。
「甘いんだよ!」
 昇る賊の剣の背を、青い瞳の剣豪の刀が追い、天に弾く。
 賊の伸び上がった胴は、引き返す刀に易々と断たれた。
 血飛沫が雨に溶ける――金の瞳の剣豪は、その攻防をつぶさに眺めていた。
「然り、然り」
 と呑気に言う間にも、そちらもまた囲まれる。
 流石にこうなっては、直ぐの助太刀は期待できず、逆もまた真であろう。
 当然、さしたる問題でもなく。
「さて、集めるのが面倒と言ったのは、さて何のことでござろうな?」
「強がりを言う……!」
「どんなに腕が立とうが、囲まれちゃあ文字通り手も足も出ねぇだろうが!」
 金の瞳が、侮蔑に歪んだ。
「なるほど。そのような手合としか、襲ってこなかったようで」
「いい度胸だ! 兄弟、あの高慢ちきな女を穴だらけにしてやりなァ!」
「おオ!」
 ビュォオッ!
 言うが早いか、一斉の投石が金の瞳の剣豪を襲う。
 前後左右、巧妙に射線がズレていた。なるほど、のたまうだけのことはある。
「では、答え合わせと参ろう」
 剣豪は無手の指先を揺らす。
 神妙の弦を弾くが如き動きに、すると雨景が揺れ、泡立った。
 と思えば凝り固まり、その手の内に、一握の刃が生まれる。
 数を揃え。
「彗連(スイレン)――」
 膝で跳ぶ。身に捻りを入れて、ぐるり、囲む賊の検討をつけた。
「――答えは、雨水」
 射つ。
 カ………………………………ッ。
 見えよう筈もなく。また聞こえよう訳もなく。
 金の瞳の剣豪に掛かった賊共は、頭蓋の割れる音のみを識って、事切れた。
 と。
「なんだそりゃ。てめぇ、そりゃ忍びの技か?」
 青の方が来る。包囲に穴を開けたのだろう。
「ま、剣技ではござらんな。それなりに便利ゆえ、使わぬ理由もあるまいて」
 金の方は事も無げに答えた。開いた穴は、賊の新手が埋めていく。
 包囲網は、そうして一つとなり、しかし恐れをなしたのか、遠巻きに慄くのみ。
「身の程を知ったか、山賊風情が。
 てめぇらじゃこれ以上腹の足しにもならん。もっと強いやつを連れてきな」
「ああ、敵の首魁が来るのなら、それもようござるな。
 さて鬼が出るか蛇が出るか……」
 言いながらも剣豪たちはおのずと背中合わせになった。

 ――遅れて来る敵が本命と、相場は決まっている。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 ボス戦 『零輪・破旺丸』

POW   :    次元撃
単純で重い【一撃必殺を重んじた流派による奥義 】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    奥州旋風剣
【六本の刀を使った斬撃エネルギー 】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    過去からの模倣
【過去に死亡した剣客の技を真似た技 】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。

イラスト:影都カズヤ

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ステラ・クロセです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ――風雨、愈々(いよいよ)強く。
 三寸先も水に烟(けぶ)って、もはや闇に等しい。
 雷光落つ。松の立木が割れ、燻香が辺りに満ちた。
 否――。
「雷切ってのは、こういう技だったかぁ?」
 松の根本に侍は佇む。色鮮やかな襤褸を纏い、幽鬼のごとくに。
 侍は、稲光に似て怪しく光る刀を、手早く鞘に仕舞う。
 鯉口泣き、すると、逆落としの霹靂(へきれき)が現れ、天を衝いた。
「まあどれでもいいか。それじゃもういいぜてめぇら。いい加減還れ」
「………………は?」
 唐突に。
 侍は、しゅう、と辺りを駆け巡った。山岩、草木、お構いなしに。
 すると、あの山賊の気配が何もかも消えた。
 そう此方が理解すると、侍は元の場所に居る。
「生き胴試しって知ってるか? 知ってるよな。
 大岩も手遊びにはいい。巻藁も案山子も、目釘のガタを知るにゃもってこいだ。
 だが――やっぱりこっちじゃないと、どうにも鈍ってしょうがない」
 びょう、と振られた刀が、鮮血の境目を地に描いた。
 たちまちに風雨に溶けて消える。

「零輪・破旺丸だ。じゃあ、お前らも愈々死んどけ。
 理由なんて、いまさらどうでもいいよなあ…‥!」
御鏡・十兵衛
血を伴わねば満足できぬか。
まったく、鬼よりも鬼らしいというか。
ああ、概ね同意するでござるよ。事ここに至り、理由などどうでも良い。
――ただ、斬り殺すのみ。
意味や理由など、後から勝手に付いてくるのだから。

先手は譲ろう。
勝負は一合のみ。鍔競り合う必要もない。
【不破】……研ぎ澄ました感覚にて貴殿の必殺を見切り、返しの一刀を。

御免。



 十兵衛は雑念を捨てた。

 びょう……びょう……びょう……。
 乱杭の林を抜ける風の戦きが、鬼握の土を巡る水の慄きが、万象を模る。
 肌と、耳と、鼻と、唇。四覚をして、十兵衛は森羅を知る。
 瞳は、光を失っていた。
 金色の深淵が、眼窩に嵌っている。
「閉じたか。開いているのは形だけ。器用な真似をしやがる」
「左様。これより斬る故、斬りに召されよ」
「ああ、それじゃあ喋んなよ鬼。今のお前には、お前自身がもう邪魔のはずだ」
「左様――……」
 一刀、不波の構え。
 艶かしく、薄く開いた唇をくぐる雨粒が、十兵衛の舌先を撫でた。
「そうだ、感じろ女。神経を高ぶらせ、興奮に脳髄を浸せ。
 いや、だが我慢しろ。一人勝手に涅槃に達するな。オレも連れてけ。
 達した上で、オレがお前を寂静に蹴り落としてやらあ」
 破旺丸の気配が尖り、あわせて雨の味も変わった。鉄か血錆か。
 十兵衛は思う。
「(しかし……よく喋る御仁でござるな。あの口ぶりからは、問答無用かと)」
 どういうことだろう、と考えて、そういうことだろうか、と気がつく。
「つまり、それがしは目隠し遊戯、破旺丸殿は言葉責めが癖なのでござるな」
「何考えてんだ違うぞコラ。こっちがそっちの流儀に合わせてやってんだろが」
 破旺丸は鞘で肩を叩きながら言う。
「居合相手に不意をつくなんて無理だろ。なら、こっちも剣気を高めてやる。
 その手段が……ええと、その、なんだ」
 懐手に頭をがしがしと掻く破旺丸の剣気が。

 こちらの心臓を貫いた。

 雨が、ぴたりと止む。
 あれほど騒いでいた風も、静かなものだ。
「(否……)」
 動いている。動いているのを感じ取る。
 おそらく、自分の知覚の方が疾くなりすぎているのだ。
「(涅槃、にござるか。これがなあ)」
 聴けばそこに一刀。破旺丸の駆けつけ大上段が、雨と風と、おそらく音の壁をも突き破って、こちらに迫っている。
 十兵衛に受けの手はない。
 もはやこれまで、進退窮まった袋小路。
 ――ならば。
 ――そうだ。
 ――前に出るしか、ござらんか。
 ――そうだろう。其処をツブす。
 十兵衛は、自分の動きはいつもどおりにできるので、そうした。
 ――しかしコレ、丁々発止とはいかんでござるな、絶対。
 ――同感だ。この流儀は一撃必殺、受けた刀ごと星をぶった斬るのが骨頂よ。
 ――それな、でござる。しかし必殺の技を必死の技と見られるのは。
 ――そういう技なら、死んでも清々するだろうよ? だからほら、

「「死ね」」

 ……随分と。
 随分と長い一瞬だったように思う。
 百の思いを、千の言葉に乗せて、一の刀で伝えたのだから。
 過程として余人が見るのならば、破旺丸の振り下ろしをかわした十兵衛が、刃先が地面に付く前に破旺丸の首を薙いだ……と、そういう風になるのだろう。
 結果として、十兵衛は赤い染みとなり、破旺丸は首なしの立像となっている。
「……ふふ」
「……ふふふ」
 二つの死体が笑う。いや、おそらくはあのような無残な姿に成り果てて、双方、
 まだ生きているのだ。
「ふふふふふふふ」
「ふふふふふふふふふふふふふふ」
「はははは」
「はは――御免」
 首なしのほうが、どちゃりと倒れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

御剣・刀也
ふふふ。お前、強いな。
けど、気に入らねぇ。部下の命さえてめぇの自由ってか?
まぁ、いい。俺はお前と死合えればそれでいい
さぁ、行くぞ。俺の中の鬼を満足させて見せろ!!

次元撃は見切り、第六感、残像で避けてカウンターの一撃を打ち込む。武器受けもあるが、武器で受けた場合は受け流して相手の体勢を崩して一撃をカウンターで打ち込む。距離が多少あるなら、ダッシュで距離を詰め、勇気で相手の攻撃を恐れず踏み込み、捨て身の一撃で相手を斬り捨てる
「なるほど。お前は強い。が、強すぎはしない。上杉謙信の域には程遠い。やっぱり、あいつほど俺を楽しませてくれる奴は、そうそう居ないんだな」



 刀也はそれを見て、にやりと笑った。

 ――ここで言う【それ】とは、何か。
 自問する。
 首なしの破旺丸が首を拾い上げて、何事もなく繋いだところではなく。
 ――俺の求める【あれ】なのか。
 自答した。
 刀を抜く。
「はッ。命すら、お前の【それ】で自由自在ってか」
「るっせえよ。負けて繋ぐ痛みと生き恥は、見物客にゃわからねえだろうが」
「……ふふん。お前、強いな」
 刀也は再度、刀を抜いた。
 一度目は體で。二度目は魄で。
「けど気に入らねぇ。気に入らねぇよ」
「強ぇのがか?」
 握りを滑る雨粒を、手の内の熱で蒸発させる。
 逆に、額の温度は凍りつきそうなほどに澄んでいた。
「部下の命さえてめぇの自由ってか?」
「自由じゃねえ自在だ。ま、その辺はお互い、」
「どうでもいいことだろう。俺は」
 刀也を構成するものが、その肉体の中で渦を巻く。
 外に出ようとするので、もはや己に留めおく術もなくなった。
「お前と死合えればそれでいい!」
 仕掛ける――!
「殺す相手がいればそれでいい!」
 ――仕掛けられた!
 破旺丸は半身に構え、西洋剣、レイピアの刺突を繰り出す。
 その刃先の数を数えること能わず。
 いち、と見た瞬間、に、で細切れまで断たれるだろう。
 故に数ではなく、怖気立つ脅威、その肌感覚に頼る。
「ふっ!」
 刀也は踏み蹴る足の親指を捻った。
 巡る角度の一度刻みに、筋を動かし、フェイントを飛ばす。
 己の目に見えるほどの己の残像――それらが一つ一つ、断たれて消えた。
 次に消されるのは、遂に己だろう。
 だが、確かに感じている。
 肉体よりも速く動く心こそが、一つ一つの太刀筋を感じている!
「 」
 勇気の肘鉄。破旺丸の刀身を横から撃つそれが、決定打となった。
 当然その程度で、刀は折れも曲がりもしない。
 が……肘鉄を放つ時、打ち手はどこにいるか。
 もちろん打撃面に対し直角、外側だ。
 伸びた突きをいなされた破旺丸はここで死に体に――いや、しかし、だ。
 しかし、刀也の眉間がより険しくなったのは、なにゆえか。
「(震脚――!)」
 膂力をもって死を生に変える。それは己がやって見せたことではないか。
 刀也は、破旺丸は、笑った。
 此処に至る此れまでの全てが、此の瞬間のための布石だったと知って!

「太平の世にこそ捲土立ち上がらん! 重来せよ、次元撃!」
「この切っ先に一擲をなして乾坤を賭せん! 雲耀の太刀!」

 ――断。

成功 🔵​🔵​🔴​


 破旺丸は、矛盾、という故事に思うところがある。
 盾を貫く矛と、矛に貫かれぬ盾。
 勝負はその時点でついているだろう、と思う。
 盾の持ち主を貫かぬ矛に、いったい何の意味がある?
 であれば、盾の勝ち。逆に、盾を貫かぬとも、持ち主を貫くなら矛の勝ちだ。
 なら、最強の矛になろうと、そう思って。

 思っていたのに、見上げるのは今も、自分に勝った敵の姿だ。

「(……どう、殺った?)」
「何も特別なことはしてねえよ。
 お前は強い。が、強すぎはしなかった。上杉謙信の域には程遠い。
 それだけのことだ」
 すとんと、腑に落ちた。いや、腑はそこらへんにばらまかれてるから、今更か。
「……」
 感想を聞かせろよ、と言おうとして、肺腑がイカれてるのでそれも叶わず。
「やっぱり、あいつほど俺を楽しませてくれる奴は、そうそう居ないんだな」
「…………」
 そういえば、上杉謙信と言ったか。
 謙信――そう、そうか。
「死んだか、謙信」
 蘇った肺腑へ気を吹き入れて、破旺丸は立ち上がった。
「剣士が死んだんなら、オレの出番だ。
 死んだヤツの剣技は、オレが集める手筈になっている。
 そのために……そうだ、ようやくお前らを殺す動機ができた!」

「オレは生きてこの山を降り、謙信の技で世を乱す!
 それがこのオレ、零輪・破旺丸の為すべき事だ!
 ああ……強いやつと戦って生き伸びるってのは、素晴らしいなァ!」
鈴木・志乃
UC発動【全力魔法、精神攻撃、祈り】
出来れば死角や物陰からこっそりと、少しずつ、動かしていこう。

沢山の猟兵が、侍が、貴方を討伐せんと襲いかかって来るんだ。楽しかろう、愉しかろう、『自身が一番だ』と思えるほどの大立ち回りを経験するのは。沢山の敵を薙ぎ倒し、振り払い、世界を蹂躙せんと勝鬨を上げるのは。

『用心』『警戒』

それが上杉謙信にあってお前に無かったもの。
私が上杉謙信と戦うのを恐れた理由で、貴方と対面するのに欠片も戸惑わない理由。

……私も警戒を怠らないように。
そのまま念動力、全力魔法の衝撃波で一切合切をなぎ払い攻撃。
夢に気づけば第六感で攻撃を見切り光の鎖を操り早業武器受けからのカウンター捕縛



 ――――――――――砂粒が一つ、風上へと転がった。

 昨夜が居る。
「ああ、何をか恐れんや」
 そういう女がいる。

 ――――――――小石が二つ、風上へと転がった。

 破旺丸は問う。
「次のオレの邪魔はお前か。
 なら斬って捨てるが構わねえな?」
「構わないか、とは。
 一々確認を取るのがお前の流儀か?」
「ちっげェよ。
 万が一にも、命乞いとかしてくれねぇかなアって思ってさ」
「なるほど」
 昨夜は応える。
「そちらから付き合ってくれるとは思ってもみなかった」

 ――――――打捨てられた地蔵の首が三つ、坂の上へと転がった。

「十分巧く隠していたと思うんだがな。
 いつ気づいた」
「当然、オレが生まれる前から」

 ――――行き倒れ野晒に枯れた旅人の骨が四本、雨の川を逆上った。

「不意を打たれまいとする相手の不意を打つ術なら、それこそ幾らもあるが」
「いいねぇ、楽しみだ。
 敵には全力を出させたいんだよ。
 その方が絶望に艶が出る」

 ――血に塗れ無惨に死んだ山賊の段平が五振り逆立ち、地面に傷を付ける。

「んじゃ、もう一度問うぜ。
 それごと斬って捨てるが構わねえな?」
「やってみろ、外道」

 六番目は、猟兵が刃向かう。

 風雨、愈々強く。例えるに万軍の足踏みのごとく。
 ならば彼我で掛け合わせれば億だ。
 相対するとはそういうことだ、と、昨夜も破旺丸も、そう思った。
 億に匹敵する一対一だ、と。
「今一時銀貨の星を降らせる、世界の祈りの風よ」
 口早に唱える昨夜に、破旺丸はにやりと笑う。
 その破旺丸が肩を傾け、腰を捻るのを、昨夜は意に介さず。
「メテオストリーム――――ッ!」
 そして昨夜は、最大限に周囲を巻き込んだユーベルコード【流星群】を発動した。あらゆる無機物が浄化の風となり、破旺丸の四方八方に竜巻となって立ち上る。
 全くの同時ではない。幅広なものの後ろに細身ながら強大なものを作り、そちらに気が付かれれば、破旺丸の死角に小さく、鋭いものを喚ぶ。
 敵の裏をかくこと……十分に準備さえできれば、その種はいくらでも用意できる。
 対して破旺丸は、ぎちり、より深く身を捻った。草履の裏はそこだけ乾いた土のように、その秘めたる暴虐を摩擦にて受け止める。
 コォオオオ、という息吹を、笑みで噛み潰した。
「なら、これだなァ――活殺、忽ち月花!」
 もはや非人間的なまでの溜めを解き、しかし放たぬ居合のわざ。
 巡る一閃が竜巻を断ち、その力のままに二閃、三閃と繰り返す。あるいは遠心力の分だけ、さらに力は増しているかもしれなかった。
 相殺される。相殺する。
 そのせめぎ合いのさなかにふと、両者は意外の距離に立った。
 手を伸ばせば届く距離――。
 昨夜は一歩を前に踏み込んだ。
 破旺丸は一歩を下に踏みしめた。
 無手の昨夜が、懐に手を入れる。刃物と思い、破旺丸はそこをじっと見る。
「楽しかろう、愉しかろう。
 自身が一番だ、と思えるほどの大立ち回りを経験するのは」
「!」
 破旺丸は、今度こそ不意を打たれた。
 昨夜が取り出した何かが、見えなかったからだ。
 無いのに、有る。
「テメ――」
 その実は、この山の大岩だった石礫だ。
 こっそりあの屋敷から頂戴したもの。
「だから、お前は欠いた」
 石礫は、昨夜のポケットの中にある間に、ただの幻想への祈りと化していた。
 だから、破旺丸には見えない……!
「用心と、警戒を。
 私は竜巻を操っていたんじゃない。竜巻に変えていたんだ」
 見えぬままに破旺丸は、四肢・五臓・六腑を吹き飛ばされた。
「お前にはそれがわからぬとわかっていたことが……」

「……貴方と対面するのに欠片も戸惑わない理由」
 志乃は言った。

 ――そしてやにわに、雨が止んでいく。
 祈りと浄化の風が、雨雲までをも吹き飛ばしていたのだ。
 晴れた空が見える。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月16日


挿絵イラスト