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怪盗たちのシャーク・トレード

#ヒーローズアース

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#ヒーローズアース


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「俺も焼きが回ったな」

 怪盗・ソルシェイドはフードの下で自嘲気味に唇を歪めた。膝を着いた彼の眼前に立つのは、黒ずくめのオブリビオン。その怪しく光る『一つ目』が怪盗を冷たく見下ろしている。
 頭部そのものが巨大な眼球のオブリビオンは、手許のステッキを弄びつつ至極残念そうにどこからともなく溜め息を吐いた。

「ここにきて貴方に裏切られるとは、残念ですよ。仲良くやっていけると思ったのですがね」
「……面白くもない冗談だな。アンタとソリが合うとはまるで思えないよ」
 感傷ぶったオブリビオンの言葉をソルシェイドはぴしゃりと撥ね付ける。その態度にオブリビオンは目を細めて苛立たしげにステッキで床をこつこつと叩く。

 そもそも、彼ら二人が手を組んだこと自体、今回が初めてなのだ。常日頃から単独で活動している怪盗が目玉の怪人と出会ったのは、(少なくともソルシェイドの視点では)偶然も良いところである。
 まさか『こんな場所』での窃盗計画がバッティングするとは思いもよらず、現場で鉢合わせた両者がなし崩し的に共同戦線を張ったのが数時間前。双方が持つ『盗み』の技能によって犯行は順調に推移していったのだが……。
 彼らを決別させたのは、巡回ルートを外れて休憩していた、たった一人の警備員だった。

 侵入者に気づき咄嗟にトランシーバーで連絡を取ろうとした警備員に、躊躇いもなく向けられたオブリビオンのステッキ。そこから放たれた悪意の刃から警備員を守った者こそ、オブリビオンに同行していたヴィラン――ソルシェイドその人だった。
 悲鳴を上げてその場から逃げていく警備員。その背を追いかけもせず、二人の『悪党』は静かに向かい合う。

「『ショーの成功』と『たかがひとつの命』……、価値を比べるまでもないでしょうに」
「守ったのは『矜持』さ。俺の天秤はきっちり釣り合ってるとも」
 ダメージに膝を着きながらもフードの奥で不敵に笑って見せる怪盗。『盗み』の最中に人を傷つけない。それこそが、彼の矜持であり美学であった。

「……いいでしょう。では、その『矜持』とやらと『貴方の命』を交換させていただきます」
 だが、その信念もオブリビオンにとっては単なる些事。オブリビオン・ミスターショータイムにとって『犯罪ショー』の完遂こそが至上命題。当初の目的は確かに『窃盗』であったが……、ショーにアクシデントとアドリブは付き物だ。
 パチリ、とミスターショータイムが指を鳴らせば、音もなく『黒い獣のオブリビオン』が複数体現れ、怪盗をゆっくりと取り囲んでいく。意志の見えない瞳がヴィランを捉え、ガシャガシャと鋭い鈎爪が周囲に木霊する。

「これは追加演目です。怪盗・ソルシェイド、貴方の死を以て我がショーのファンファーレと致しましょう」


「みんな、集まってくれてありがとう。今回予知されたのはヒーローズアースの事件だよ」
 グリモアベースの一角で京奈院・伏籠(K9.2960・f03707)が集まった猟兵たちに一礼する。穏やかな視線で猟兵たちの顔を見回す彼の手には、何やら怪しいチラシが握られているようだが……。

「概要を説明しよう。あるイベント会場にオブリビオンとヴィランが窃盗に入る。彼らは首尾よくバックヤードに侵入するのだけれど、結果として仲間割れを起こしてしまうんだ」
 原因は彼らの持つ犯罪美学の相違。そして決裂の果てには、ヴィランがオブリビオンに殺害される未来が待っていると伏籠は語る。
 知っての通り、ヴィランは悪党ではあるがオブリビオンではない。更生してヒーローに転身する余地がある彼らは生きたまま当局に引き渡すべき人材だ。

「つまり、今回のミッションは二つ。オブリビオンの撃破とヴィランの救助・確保。これを並行して進めてもらうことになるね」
 とは言え、と伏籠は思案気に手を顎に当てる。件のヴィランは怪盗を自称する窃盗専門のヴィランで戦闘力はさして高くないらしい。加えて、猟兵たちが現場に転送されるタイミングではオブリビオンの攻撃を受けて相応のダメージを受けているようだ。極論、オブリビオン撃破まで放置しても彼に逃走される危険性は低いだろう。

「転送のタイミングは主犯のオブリビオンが配下たちをヴィランに嗾ける瞬間になるよ。戦場に介入したら、まずは配下のオブリビオンを一掃して欲しい」
 配下のオブリビオンは暗殺技能を持ったバイオモンスターたちだ。ヴィラン・ソルシェイドを狙う彼らを撃退するのが作戦の第一段階。
 無論、主犯のオブリビオンも戦場に居合わせることになるが、どうやら『形式』を重んじる性格のようで配下たちの戦闘に手を出してくる可能性は低いようだ。主犯格を相手にするのは配下を全滅させた後になるだろう。

「現場はイベント会場のバックヤード。広めの倉庫で、戦闘には支障のない広さがあるようだね。屋内だけど照明も十分。……強いて言えば、イベントのグッズがいくつか置かれているくらいかな」
 と、続けて現場のシチュエーションを説明する伏籠だったが、ふと、彼は手元のチラシに目を落とした。……途端、どういうわけか、彼は妙に疲れた表情で額の筋を揉み解し始める。

「で、えー、ここで行われているイベントなんだけど……、『全世界☆サメ映画☆博覧会』っていうらしい」
 胡乱げな口調でイベント名を告げるグリモア猟兵。掲げられたチラシには怪しい活字と異様に生き生きとしたサメ(?)のイラストが所狭しと躍っている。
 文字通りのイベントである。現場にも『それっぽい』グッズが放置されているかもしれない。

「オブリビオンを撃退すれば任務は完了だから、趣味が合うならそのままイベントを楽しんできても大丈夫だよ」
 会場には映像資料やら映画の制作資料やら歴史考証やら、矢鱈と力の入った展覧物が揃っているとか。
「一応渡しておくね」とイベントのチラシを猟兵たちに配りながら、伏籠は思い出したかのように最後に一言付け加えた。

「そうそう、確保したヴィランも当局へ引き渡されるまでには多少の時間があるよ。興味があるなら彼と言葉を交わしてみるのもいいかもね」
 猟兵たちがしっかり見張っていればヴィランを取り逃がしてしまう可能性はない。気軽に彼へと話題を振ってみるのも一興だろう。
 チラシを配り終え、伏籠の掌でグリモアが輝き始める。「準備はいいかい?」という彼の問いに頷けば、ヒーローズアースへの門はすぐにでも開かれるだろう。

「ヴィランといってもひとりの命。救えるのは、みんなだけだ。……頼んだよ、イェーガー!」


灰色梟
 サメ映画、好きですか? こんにちは、灰色梟です。

 今回はヒーローズアースでの事件となります。オブリビオンに反抗したヴィランを守りつつ、配下及び主犯格のオブリビオンを撃破してください。
 撃破に成功した場合、第3章ではサメ映画博覧会を楽しんだり、ヴィランと対話してみることが可能となります。

 それでは、みなさんのプレイングをお待ちしています。事件解決を目指して一緒に頑張りましょう。

 以下、ヴィランについての補足となります。

●『怪盗』ソルシェイド
 年齢不詳の男。光の操作による隠密・攪乱に長けた能力を持つ。
 武器は持たない主義。
 冒頭でダメージを負ったため、戦力としては期待できません。
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第1章 集団戦 『暗黒面『空蝉のオンブレ』』

POW   :    影を冠する一面
【相手の視界から外れる】事で【影から影を移動可能な暗殺状態】に変身し、スピードと反応速度が爆発的に増大する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
SPD   :    暗黒へ誘う微睡
戦闘中に食べた【相手の「感情」や「やる気」】の量と質に応じて【相手を無気力状態に陥れ】、戦闘力が増加する。戦闘終了後解除される。
WIZ   :    霊と刃を断つ者
【【幽霊】と【剣や刀】に対し有利な分身】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。

イラスト:夜月蓮華

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

フィオリナ・ソルレスティア
【ペア/f05803】【WIZ】(アドリブ/連携可)
「まずは目の前のオブリビオンに集中よ、フォルセティ」
■作戦
弟と連携。機械兵器の攻撃でオブリビオンを翻弄し殲滅する
■行動
「そうね。意外と機械兵器の動きには弱いかも」
手始めに[先制攻撃]で【エレクトロレギオン】を展開。
一斉にオブリビオンに襲い掛からせ、機械の動きで翻弄する。
さらにその隙にオートフォーカスでオブリビオンをロックオン
「暗黒面ごと消し去ってあげるわ」
[高速詠唱]から【バベルの光】を放ち、高出力レーザーで各個撃破する。
分身の攻撃は[ダッシュ]と[見切り]で距離を取りながら躱していく


フォルセティ・ソルレスティア
【ペア/f00964】【WIZ】(アドリブ・共闘可)
「『怪盗』さん、結構深手を負っているけど大丈夫かな?」
あとでシンフォニック・キュアで回復させたいけど、
まずはフィオ姉ちゃんと一緒にオブリビオン討滅だね
【行動】()内は技能
「幽霊と刃に強い分身って厄介だよね」
刃物を振り回さないボク達には関係ないけど
フィオ姉ちゃんの機械兵器の攻撃とタイミングをあわせて
(先制攻撃)でバーラ・スーペルノーバだね。動きを止める作戦だよ
「隕石ドッカーンといくよ!」
トドメとばかりに(高速詠唱)からのカラミダド・メテオーロだよ。
霊と刃を断つ者は(ダッシュ&見切り)で華麗に躱すんだ
「ウィザードの動きには慣れてないみたいだね」



 ソルシェイドを取り囲むバイオモンスターのオブリビオン、その名も『空蝉のオンブレ』
 悪の組織・暗黒面のアサシンである彼らは、暗黒面のボスの命令で様々なオブリビオンやヴィランに手を貸しているのだという。数にして10体の暗殺者たちは、鋭利な鈎爪をかき鳴らしながらじりじりとソルシェイドとの距離を詰めつつある。

(こうもしっかり捕捉されたとなると、攪乱も厳しいか……)

 表情は動かさず、ソルシェイドは冷静に自身の手札を吟味する。
 光の操作による幻惑は彼の十八番だが、全方向から取り囲まれたこの状況では、敵の目を欺き切るのは難しいだろう。攻撃力の格差は言わずもがな。相手に殴り勝ってこの場を切り抜ける、なんて芸当は怪盗には荷が重い。
 万策尽きた、とまでは言わないが状況は間違いなく悪い。もしも、この危機を一息に吹き飛ばせるとすれば、それは――。

「常闇の淵に彷徨う黄昏よ。其に捧げるは原初の神韻……」

 それは、外部からの介入に他ならない。
 『力ある言葉』がバックヤードに静かに響く。声の発生源は、ソルシェイドの直上、天井付近。
 その場の誰もが虚空を見上げた瞬間、天井にグリモアの光が灯り、緑と赤、二人のウィザードが戦場へとその身を踊り出した。
 赤髪のウィザード、フィオリナ・ソルレスティア(サイバープリンセス・f00964)が重力に任せてソルシェイドの眼前に着地する。彼女の両掌が床に押し付けられると、瞬時に電子的な魔法陣が彼女を中心に展開される。
 その頭上で、緑髪のウィザード――フィオリナの弟でもある――フォルセティ・ソルレスティア(星海の王子様・f05803)が空飛ぶ箒に片手でぶら下がりながら、空いた片手で『銀河の魔道帽』をオブリビオンたちに向けて呪文を叫んだ。

「バーラ・スーペルノーバ!」
 フォルセティの魔道帽から漆黒の魔力弾が零れ落ちる。浮遊する箒をコントロールしてくるりと一回転。怪盗を取り囲むオブリビオンたちに向ってスプリンクラーのように魔力弾が落ちていく。
 オブリビオンたちもぽかんと天を見上げているばかりではない。猟兵の奇襲攻撃を見切り、すぐさま魔力弾をするりと回避する。……が。

「ギッ!?」
 オブリビオンたちの動きが突然ブレーキが掛かったかのように鈍る。彼らを絡めとるのは魔力弾の着弾点に発生した強力な重力場だ。
 初撃が回避されるのはフォルセティとて織り込み済み。彼が放ったのはただの魔力弾ではない。
 そして、弟の作ったチャンスをフィオリナも見逃さない。彼女は完成した魔法陣を励起させ、サイバー空間の戦力を起動させる。

「翻弄なさい、エレクトロレギオン!」
 バチリと紫電が迸り、小型の戦闘用機械兵器が魔法陣から飛び出した。機械兵器たちはすぐさま重力場の影響で動きが鈍った空蝉のオンブレたちに襲い掛かる。
 召喚された機械兵器は攻撃を受ければ一撃で破壊されるほどに脆い。が、フィオリナの実力であれば動員できる兵器の数は優に200を超える。壊されてもすぐさま後続を召喚していけば、重力場と合わせて足を止めるには十分な物量だ。

「……やれやれ、今日の公演はどうにも飛び入り参加が多いようで」
 オンブレと機械兵器がぶつかり合う戦場。そこかしこで金属質の激突音が飛び交う修羅場から一歩離れてミスターショータイムが肩を竦める。
 余裕綽々といったその姿を視界に捉えつつ、フォルセティも箒とともに床へと降り立った。ちょうどソルシェイドの真横に着地した彼はすぐさま、隣で膝を着く怪盗の腹部からの少なくない出血に気づく。

「こんにちは、『怪盗』さん。結構深手を負っているけど大丈夫かな?」
「ああ、猟兵か。参ったね、こいつはどう転んでも年貢の納め時ってやつかもな」
 強がるでもなく自然体で笑みを浮かべるソルシェイド。目深に被ったフードに隠されて正確な表情までは読み取れないが、ずいぶんと落ち着いた態度だ。
 だからといって、放置し続けていいダメージではない。治療術を持つフォルセティとしてはどうにか手当をしてあげたいところだが……。

「左よ、フォルセティ!」
「! うわっと!」
 フィオリナの鋭い警告。すぐさまその場を飛び退いたフォルセティのいた位置を、鈎爪を振りかぶったオブリビオンが掠めていく。
 びゅん、と研ぎ澄まされた風を残して、捨て身の突撃を繰り出したオブリビオンは、勢いのままに重力場に呑み込まれ機械兵器に包囲された、のだが。

「消えた! 分身!」
「みたいね。……でも、魔法にも機械にも耐性はないみたい」
 機械兵器の攻撃を受けたオブリビオンの分身体が霞のように姿を消す。恐らくは、オンブレの持つ暗殺術のひとつであろうそれを、猟兵たちはすぐさま分析する。
 ……こちらの攻撃が通るのであれば、分身ごと本体をなぎ倒せばいい。フィオリナとフォルセティは視線を合わせ、互いに小さく頷いた。

「まずは目の前のオブリビオンに集中よ」
「オッケー。……しばらく我慢しててね、『怪盗』さん?」
 気にするな、と軽く手を振る怪盗を背後に、二人はオブリビオンの群れを注意深く観察する。重力場と機械兵器はまだ戦場に残っている。つまり、こちらに攻撃してくるのはそれらの障害をいなすことのできた個体だ。
 狙うのは、本体へのカウンター。ほどなくしてウィザードたちは、機械兵器をすり抜けてこちらを睨みつけるオンブレを二体、それぞれの瞳に捉えた。

「オートフォーカス、ロックオン。暗黒面ごと消し去ってあげるわ」
「こっちは隕石ドッカーンといくよ!」
 対象、捕捉。二人のユーベルコードが狙いを定めた瞬間、オンブレから分身体が飛び出してくる。鈎爪を構えた疾走する黒い影が猛スピードで猟兵に迫る。
 ……だが、その攻撃はすでに猟兵たちの予期するところ。二人のウィザードは見切った攻撃を鋭い踏み込みで躱し、それぞれの得物を二つの本体へと突き付けた。

「貫け、バベルの光よ!」
「カラミダド・メテオーロ!」
 声高に紡がれる呪文。彼女たちの攻撃は、天から降り注ぐ。
 片や人工衛星からの高出力レーザー。片や灼熱の巨大隕石。頭上という死角から襲い来る攻撃は、オブリビオンに回避を許さない。
 閃光一穿。防御のために生み出した分身体もろとも、オブリビオンの本体をレーザーが貫き、隕石が圧し潰す。衝撃の熱風が一陣、バックヤードを吹き抜けて髪を揺らす。

「うん、ウィザードの動きには慣れてないみたいだね」
「そうね。意外と機械兵器の動きには弱いかも」
 まずは二体。きっちり確実にオブリビオンを仕留めた姉弟が背中合わせに周囲を窺う。
 残り八体。まだまだ油断はできないと気を引き締める二人。その姿は頼もしいような、から恐ろしいような。ソルシェイドの呟きが、ぽつりと空気に溶けて消えていく。

「いや、慣れててもアレは避けられないでしょ……」と。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ケイオース・テネブラエ
「矜持のある悪というのは面白い、我が闇の軍勢に加えたいところだ」
まぁそう簡単に支配下に入るヴィランではないだろうが…助ける価値はある。

●攻撃
「雑兵め、いくら数を増やそうが分身を作ろうが無駄だ。
私の闇から逃れ、耐え得る術など存在しない」
【デスシールド】を展開し【盾受け】でヴィランを庇うように敵に立ち塞がりUC【ダークネス】を放つ、闇の瘴気で全てを侵し消し去るのだ。
「私は敵を苦しめる無数の手段を持っている…さぁもがけ、苦しめ、そして死ね!」
ヴィランにだけは瘴気が行かぬように調整し、敵をだけを駆逐していくぞ。



●アドリブ歓迎


田抜・ユウナ
オブリビオンのそれに合わせてパチンと指を鳴らして登場
怪盗を庇う位置に立つ

「久しぶりね、色男」
一応、前のシナリオでも関わったことがある。味方とアピールする意味も込めて挨拶しとこう。
別に覚えてなくても気にしないけど、狸呼ばわりしたら蹴る。「……次言ったら手が出るからね」

●戦
首に巻いた金鎖を握りしめ、《オーラ防御》で精神侵食で耐える。
……まあ、やる気を喰われたって支障はないけど、ね。

仕込みは既に終わっている!
と、【レプリカクラフト】で作成したブービートラップが発動。
ワイヤーロープで敵を縛り上げてやる。



 突如現れた猟兵たちによる襲撃。戦場に残る空蝉のオンブレたちは、包囲を崩さないままに警戒を強くする。
 じりじりと焦れるように隙を探り合う両陣営。しかし、一方で戦場が膠着するのを良しとしない者もいる。オンブレの後方に控えるミスターショータイムはカツカツとステッキで床を叩いた。

「些かショーのテンポが悪いですね。さぁ、疾く疾く、貴方たちの務めを果たしなさい」
 怪人の大目玉が睨むように細められ、その手が天高く掲げられる。彼の言葉が届いたのか、オンブレたちの気配に一層剣呑なものが混じる。
 そして、その冷たく張り詰める空気に満足したかのように、ミスターショータイムの指が乾いた音を鳴らした。

 パチン。と、やけにはっきりとバックヤードに響く合図。怪盗の死角、背後に回り込んだ二体のオンブレがその命を刈り取らんと床を蹴る。
 音もなくソルシェイドに向って飛来するオブリビオン。致命の刃が怪盗の首に迫る、その刹那――。

「そうはさせない、ってね!」
「不遜な輩め。平伏せよ」
 パチン。と、もう一つ響いた指の音は誰のものか。
 オンブレの眼前で、突然、床面から黒い壁がせり上がった。攻撃を仕掛けたオブリビオンの片方は、勢いを殺せずにそのまま闇を凝縮したような暗黒の障壁に追突する。
 悲鳴を上げる間すらない。まるでシェイカーに磨り潰されるように、オンブレの身体が『壁』の接触面から消滅していく。
 その哀れな姿を、音もな降臨した障壁の主、ケイオース・テネブラエ(混沌より生まれし無限の闇・f21797)が冷徹に見据える。

「ギギッ!」
「そっちも逃がさない、よっ!」
 一方で急停止して『デスシールド』の脅威から逃れたもう一人のオンブレにも、頭上から凛とした声が掛かった。
 無理な制動で膠着したオブリビオン。その脳天に天井付近から姿を現した、指の合図の張本人、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)の回転踵落としが突き刺さる。

「ガギッ」
 みしり、と腰からくの字に折れて地面に頭部をめり込ませるオブリビオン。ユウナはインパクトの反動を利用して、そのまま軽やかに後方――、ケイオースと怪盗の傍らへと跳び退る。
 これでまた、二体。残りは六。崩れゆくオブリビオンの姿を視界に納めつつ、ユウナは怪盗に気安く手を挙げて挨拶してみせる。

「久しぶりね、色男」
「……あー、前に一回会ったような」
 実のところ、彼女がソルシェイドの関わった事件に携わるのはこれで二度目となる。前回は味方というよりも第三勢力的な関わり方だったが、彼の警戒を解いておくのに越したことはない。
 怪盗も怪盗で記憶の糸を辿ってみれば、彼女の顔には見覚えがある。……あるのだが、確か彼女の名前は。

「そう、あの時は、狐と組んでた……、狸だったか?」
「だーかーらー、狸って言うな!」
 当時の印象からソルシェイドの口をついた言葉はものの見事にNGワード。フンスと頬を膨らませたユウナの手加減100%キックが怪盗の額を蹴った。
 コツン、と軽い衝撃に怪盗は参ったとばかりに両手を上げる。その姿を細めた目に捉えつつ、ユウナは(一応はオブリビオンたちに向けて)握り拳を鳴らす。

「……次言ったら手が出るからね」
「もう脚が出ているけど。オーケイ、わかったよ、レディ」
 と、『お約束』な掛け合いを演じる二人を静かに横から見ていたのは闇の神・ケイオースである。彼は端正な顔を崩さず、フム、とこれまでに見て取れたソルシェイドの在り方を評する。

「矜持のある悪というのは面白い。加えてこの窮地に置いてもその余裕。我が闇の軍勢に加えたいところだ」
「おっと、悪いな、ミスター。誰かの下に着くのは窮屈でね。仕事の依頼なら歓迎するけど?」
「ちょっと! 悪巧みなら余所でやってよね」
 『神』を前にしても軽い調子で応答するソルシェイド。その態度を尊大に見下ろしながらも、ケイオースは満足そうにひとつ頷く。
 闇を統べる神は漆黒のマントをばさりと翻し、泰然とした姿でオブリビオンの前に再び立ちはだかった。

「そう簡単に支配下に入るヴィランでは面白くない。……いいだろう。お前には助けるだけの価値がある」
 オンブレに向って伸びるケイオースの腕。その指先から、再び漆黒の障壁が展開された。触れた者を消滅させる危険な防御魔法を前にして、オブリビオンたちも搦め手を講じ始める。
 オンブレの仮面に刻まれた三つの黄色い瞳が怪しく輝く。その光は、敵対者の気力を奪う微睡みの誘い。六体のオンブレたちは包囲網を保ったまま、猟兵たちの周囲をのそのそと旋回し始める。

「う、ちょっとくらっときたかも」
 視線に曝されたユウナがふらつきながらも姿勢を低くして怪盗の正面を守りに入る。首元の金鎖を握りしめた彼女は深呼吸をひとつ。整えた呼気と共にオーラの護りを自身に纏う。
 一方のケイオースはまるで揺るがず、オンブレたちを冷たくねめつけている。のっそりと移動するオブリビオンたちは、時折不気味に蠢動して分身体を増やしつつあるが……。

「雑兵め、いくら数を増やそうが分身を作ろうが無駄だ」
 ケイオースが、くい、と視線を僅かに動かす。たったそれだけで、彼が意識を向けたその先に、突如として闇の瘴気が渦巻いた。
 呑み込まれたのはオンブレの分身体。哀れらな獲物は、僅かな抵抗を残してぐずぐずに腐食して霧散していく。

「私の闇から逃れ、耐え得る術など存在しない」
「ギ!」
 闇の神の鋭い視線が動く。その眼光から逃れるようにオブリビオンたちは慌ただしく動き出した。
 正面にはデスシールド、動きを止めれば腐敗の瘴気。二段構えの攻撃に、意を決した二体のオンブレがそれぞれ猟兵たちの側面へと回り込む。
 バックヤードに放置されたグッズの影を縫い、分身体で注意を逸らしつつ、死の盾の裏側まで走り込んだ二体のオブリビオン。彼らはすぐさま左右から敵対者に挟撃を仕掛けた。

「ギギィ!」
「……残念、仕込みは既に終わっている!」
 オンブレたちが飛び掛かったその瞬間、金鎖を握るユウナの空いた片手がクイと動く。直後、床を蹴ったオンブレたちの身体がピタリと中空に縫い留められた。
 突然の急停止に藻掻くオブリビオン。よくよく観察してみれば、複数の極細ワイヤーが彼らを幾重にも絡め捕っていることに気づく。
 オブリビオンたちが攻撃力の高いケイオースを避けて行動するのは容易に予測できる。死の瘴気を振りまくケイオースの影で、ユウナは彼らを迎え撃つ仕込み罠をたっぷり仕掛けておいたのだ。
 ――そして、動きを止めてしまえば最後、ケイオースの意識から逃れる術は存在しない。

「私は敵を苦しめる無数の手段を持っている」
 あくまでゆったりと威厳を持って振り向いたケイオースの視線が、罠に掛かったオンブレたちを捉える。言い聞かせるような彼の言葉は、ぞっとするほど冷たい。
 ギィギィと喚く彼らの声も闇の神の感情を動かすのには至らない。『全てを呑み込む闇』は前触れもなく静かに彼らを包み込んだ。

「……さぁもがけ、苦しめ、そして死ね!」
 断末魔は一瞬だけバックヤードに響き、すぐに小さくなっていった。
 また二つ、力を失ったオブリビオンが骸の海へと還る。残る敵は、あと四体だ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

アレク・アドレーヌ
見解の相違、か。 少なくともあの配信バカからすれば見解の相違さえも十分に想定された事態だろう。生前からして何も変わることはないしそもそもどっちにしても共同戦線を張ったヴィランが殺されるのは確定事項だっただろうな。

そして一言言ってしまえば猟兵が介入した時点で『奴のショーに思いっきり乗せられてる』ということだ。
非常に不本意ではあるが…倒さねばならないがそこでやる気や感情を表に出してもそれまた奴らの思う壺なので
今回の任務に置いてはただ淡々と【暗殺】【マヒ攻撃】で機械の如く無心で仕留めていくことに専念する。


釘塚・機人
悪事を働くヴィランつっても、むざむざ死なせるわけにもいかねーよ

自分の信念を曲げない姿勢は嫌いじゃねーし、もし更生できるってなら結構真っ当な奴になれそうだしな


タイミングを見計らって選択UCを使い、ミスターショータイムの声色でオンブレたちに呼びかけを行うぜ

呼びかけに反応(命中)のそぶりをオンブレが見せたらそのまま、「猟兵達と目線を合わせる」ってルールを宣告するぜ(呼びかけ含め【演技】【だまし討ち】使用)

敵がこっちの視界から逃れるのを封じちまうって寸法さ


後は敵がルール無視して自滅するか、俺が直接ガントレットやソードで攻撃するかして、敵を倒すとするぜ



「ほうほう、借り物の兵相手とはいえ、なかなかどうしてやるものですね。こうも手札を潰されては私も困ってしまいます」
 猟兵たちの活躍で次々と倒されていく空蝉のオンブレたち。傾きつつある趨勢を眺めながらミスターショータイムは大仰に両手を広げて天を仰ぐ。だが、彼の態度はその言葉とは裏腹で、この状況に窮しているような気配はまったく感じられない。

「白々しいことを、この配信バカめ」
「おや、これはこれは……。懐かしい顔、いえ、仮面というべきでしょうか?」
 まったくもって度し難い。新たにバックヤードに降り立ったヒーローマスク、アレク・アドレーヌ(出来損ない・f17347)はミスターショータイムの芝居がかった言動を鋭く睨む。
 狡猾にして用意周到。アレクの知る、怪人の生前からの気質が変わっていないのであれば、今の状況は恐らく――。

「しかし、白々しいとは心外な。こう見えて私も、アクシデント続きのショーにはほとほと困っているのですよ」
「よく言う。どっちにしても共同戦線を張ったヴィランを殺すのは確定事項だったのだろう?」
「フフ、なんのことやら」
 とぼけた様に笑みを深めるミスターショータイム。怪しく光るその瞳には、もはやソルシェイドに対する仲間意識は欠片も見出すことはできない。
 アレクは確信する。やはりこの怪人は己のショーのことしか考えていない。猟兵が介入してきたことさえ、奴の計画の内かもしれない。
 怪人の『ショー』に乗せられるとは、アレクにとって甚だ不本意ではある。だが、だからといってこの場を退くわけにもいかない。

「……」
「おや、だんまりですか? 私はもう少しおしゃべりを楽しんでもいいのですが」
 ふっ、とひとつ息を吐き、アレクは無言で戦闘態勢を取った。むきになって感情を揺るがすのは相手の思う壺。無心に、機械の如く。仮面のヒーローは己の心を厳しく律する。
 再び緊迫する戦場。残された四体のオンブレが低い姿勢で鈎爪を構え、敵対する猟兵の様子を窺う。

「ギギ……」
 しかし、オンブレたちも猪武者ではない。仲間の過半数が撃退された現状、無策に攻撃を仕掛けては返り討ちに合うのが関の山だ。
 攻め込むには、何かしらのきっかけが欲しい。だが、このまま手を拱いていたら『クライアント』が黙っているものか。
 暫しの睨み合い。猟兵から目を離さないまでも、オンブレたちの精神に焦れが生じ始める。そして、その後に彼らの耳朶を打ったのは。

「いいでしょう、貴方たちはこちらに下がりなさい」
 ミスターショータイムの『声色』の、意外な言葉だった。不意の命令に、思考の空白がアサシンたちに生まれる。
 声に反応したのか、アレクの身体がピクリと動く。猟兵から危険を察知し、反射的にオンブレたちは声の主の元へと一歩後ずさった。

 ……いや、待て。声が聞こえてきたのは『ミスターショータイムとは反対の方向から』だ。足を動かした直後、オンブレたちは誤謬に気付く。迂闊。だが、もう遅い。
 反射行動に引っ張られて振り向いたオンブレたちの視線の先、バックヤードの一角にいつの間にか立っていたのは、ブレザー姿の青年だった。オンブレと視線が合うと、青年はにやりと笑みを見せる。

「こっちを見たな? だったら、『猟兵と視線を合わせ続けろ』!」
「ギッ!?」
 ビシリと指を突き付けて『ルール』を宣告する青年、釘塚・機人(ジャンク愛好メカニック・f02071)。彼の宣告を耳にしたオンブレたちは直感的に『ルール』の強制力を理解する。――これは、ユーベルコードによる攻撃だ!
 機人のユーベルコード・名探偵之犯人誘導は呼びかけに反応した相手に『ルール』を課す能力。定められた『ルール』が簡単なほど、破ったものには制裁として大ダメージが与えられることになる。
 『視線を合わせる』というだけであれば簡単なルールだが、ことオンブレたちにとっては大問題だ。なにせ、『敵の視界から外れて』暗殺を仕掛けるのが彼らの常套手段なのだから。

「悪事を働くヴィランだからって、むざむざ死なせるわけにもいかねーよ!」
 ユーベルコードの発動を確信し、機人は床を蹴ってバックヤードを駆ける。その手で鈍く光るのは廃材を組み合わせて復活させた一振りのソード。
 対するオンブレたちの陣形は、アレクとソルシェイドを中心に置いた四角形の包囲網。都合、機人に近い側の二体がすばやく迎撃態勢を取る。彼らはしっかりと視線を機人に合わせ、真っ直ぐに突進してくる彼を八つ裂きにせんと鈎爪を構える。

「モデル:ホーネット。この虫の特性は非常に獰猛、と表現してもいいだろう」
「ッグガ!」
 ……が、二体が機人を注視した刹那、その背に『蜂の一刺し』が突き立てられた。包囲の内側から一足跳びに距離を詰めたアレクがオブリビオンに打ち付けた両腕。そこから生えた毒針がオンブレたちに麻痺毒を流し込む。
 カラン、と音を立て鈎爪ごとオンブレの手が床に着いた。呼吸が途切れ、身体の自由が奪われる。視界を動かそうにも首が上手く回らない。
 息も絶え絶えとなったオンブレ二体。その間を、機人が勢いよく飛び越えていく。外れる視線。声にならない悲鳴を上げて、二体のオンブレが内側から破裂した。

 残り、二体。
 (もう崩れているが)包囲の内側に飛び込んだ機人は、ちらりと横目でソルシェイドを見遣る。怪盗は相変わらずフードを目深に被っていて、その表情は正確には読めない。
 だが、彼のこれまでの言動を脳裏に描いて、機人はニカっと口角を上げた。そのまま強く踏み込み、加速。ソードを構えて右手のオンブレに吶喊する青年。その軌跡とクロスするように、音もなくアレクが左側のオンブレに迫る。

「自分の信念を曲げない姿勢は嫌いじゃねーからな!」
「ああ。これで、最後だ」
 一対一の真っ向勝負。大上段に構えた機人のソードが、鈎爪ごと防御態勢を取ったオンブレを唐竹に叩き割った。一拍遅れて、振り下ろされた一閃のズンと重い衝撃がバックヤードに響く。
 片やアレクは、カウンター気味に放たれた横薙ぎの鈎爪を冷静に跳躍、回避。そのままオブリビオンの頭上を跳び越える。直後、視線が外れ『罰』の痛みに胸を抑えたオンブレの背に、彼は冷徹に毒の一撃を突き刺した。

 真っ二つに分かたれ、あるいは毒によって地に伏せたオンブレ二体が骸の海へと還る。包囲網は完全消滅。だが、アレクと機人は油断せず、そのままミスターショータイムへと向き直る。
 先の戦闘は敵にとってもまだ小手調べ。勝負の天秤がどちらに傾くのか、まだ誰にもわからないのだから。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第2章 ボス戦 『ミスターショータイム』

POW   :    さぁ、犯行開始だよ!
戦闘力のない【自身の動画配信用の撮影機材】を召喚する。自身が活躍や苦戦をする度、【視聴者の数の増減】によって武器や防具がパワーアップする。
SPD   :    積み上げられた研鑽の証
技能名「【盗み 暗殺 逃げ足 早業 怪力 毒使い】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
WIZ   :    盗みの真価
対象のユーベルコードを防御すると、それを【使用不可能にしつつ自分の技として】、1度だけ借用できる。戦闘終了後解除される。

イラスト:いぬひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はアレク・アドレーヌです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「ブラボー! 見事な攻防でした。ええ、ええ、これは本心ですとも」

 バックヤードに薄ら寒い拍手が響く。拍手の主は、大目玉のオブリビオン・ミスターショータイム。
 満足したのか二、三の頷きとともに拍手が鳴りやむと、くるり、と彼の手の中でステッキが回る。淀みない動きで踊る白杖は、やがて隠れるかのように怪人の腰の後ろで静止した。

「どうやら今宵のショーは盛大なモノになる模様。……私も本気でお相手しなくては」
 怪人の金色の瞳が鋭くなる。室温が下がるような錯覚。オブリビオンのプレッシャーが室内に満ちる。
 同時に、猟兵たちは『見られている』かのような肌のちりつきを覚える。これも錯覚なのか、それとも本当に『視聴者』が存在するのか……。
 張り詰めた空気の中、気取った歩調で一歩二歩。前方に歩み出た怪人は静かに、しかし、よく通る声で開戦を宣言する。

「さぁ、ミスターショータイムの犯罪ショー。これより第二幕の開演です」
アレク・アドレーヌ
…配信バカがやっと『本腰入れやがった』か。
こいつのショーは地味に回りくどいのが多いからな…そんでフォロワーも多数いるから非常に面倒。

こりゃ模倣犯がまた沸くな…だからこそ早期に仕留めないといけないが
正直アイツの犯行の中で積み上げられた技能の数々はどれでくるか読めん。
パワーもスピードも盗みも殺害技術…ならばこっちはスピードに一点特化にて同じ土俵に立たせるしかない。

それでも正直厳しいものがあるからこそ自らを囮にして味方に有効打を狙ってもらうのが一番確実な戦い方かも


鈴木・志乃
アド連大歓迎
UC発動
【敵の意志を根こそぎ奪い取る精神攻撃です】
(ふよふよ)
(ぺかーっ)
【第六感で配信設備の位置を見切り全力魔法衝撃波なぎ払い+目潰しで器機ごと配信をぶっ壊します】

【貴方みたいなオブリビオンは、感情攻撃とか受けてこなかったんじゃないですかね】

【まぁ】
【いいです】
【ゼンブツブスカラ】

【第六感で攻撃を見切り光の鎖を念動力で操り早業武器受け、ロープワークでカウンター捕縛です。そのまま縛り上げます。
もしくは器物を念動力で根こそぎ巻き上げ叩きつけます】

【オーラ防御常時発動します】

【うっかり毒でやられても困りますしね】

【あぁ、さいてーですねわたしってば】



(やっと本腰入れやがったな、配信バカ)

 粘つくようなプレッシャーを肌に感じながらアレク・アドレーヌ(出来損ない・f17347)は強くコブシを握りしめた。
 ミスターショータイム。その名の通り、自身の犯行をショーとして配信するオブリビオン・ヴィランだ。彼が引き起こす事件は用意周到にして演出的(アレクに言わせれば回りくどい手口)で、遺憾なことに怪人の『チャンネル』にはフォロワーも多い。

(好き放題やらせれば模倣犯がまた沸くな……)
 配信の影響を断ち切るには早急に、そして確実に奴を仕留めなくては。目玉の怪人の紛い物が跋扈する未来図を頭の奥に押し込み、アレクは慎重にオブリビオンとの距離を測る。
 ……問題は、怪人が犯行の中で積み重ねてきた多彩な戦闘技術。相手が何を使って攻めてくるのか、アレクをもってしても読み切ることができない。

「ときに、サメ映画の『恐怖』はどこに原点があると思いますか?」
「……なに?」
 唐突に、ミスターショータイムが問いかける。まるで他愛ない世間話のような軽い調子だ。怪訝な声を漏らすアレクを見つめながら、怪人はつるりと自身の顎を撫でる。

「水面に見えた『背ビレ』がちゃぷんと消える。登場人物はサメの危険を認識しながらも、いつ、どこから襲ってくるのかを予測できない」
 コツン、とステッキが床を叩く音が聞こえた気がした。
 瞬間、アレクの視界に映るミスターショータイムの姿が掻き消える。どこに。動揺の暇すらなく、彼の眼前に巨大な眼球が大写しになった。

「わかっていても防げない。そういう恐怖ですよ」
「ぐっ!」
 酷薄な言葉と共にアレクの鳩尾をステッキの石突が強打した。猟兵は胸を衝く痛みにくぐもった呻きをあげて大きく後退る。
 速い! 先制を受けたアレクが奥歯を食いしばる。致命打ではない。だが、しかし――。

「確か、スピードが自慢でしたか? いやぁ、残念。どうやら私の方が速いようで」
「……やってみなければわからないだろう」
 スピード勝負の土俵に引っ張り出す、というアレクが練っていたプランを牽制するかのようなやり口だ。癇に障る言葉遣いも、恐らく敵の作戦の内。それでも、他の技能で翻弄されるよりかは出目がある以上、アレクはこの挑発に乗らざるを得ない。
 ……最悪、己を囮にしてでも。自然体でこちらを観察するオブリビオンに相対して、アレクは静かに決意を固めるが……。

「いいえ、それはブラフですね」
 彼が吶喊するより早く、水面に雫が落ちるような凛とした声が倉庫に響いた。
 戦場に現れた声の主、鈴木・志乃(ブラック・f12101)はバックヤードを見渡すように首を動かしながら確信を持って告げる。

「舞台の成功には準備が必要不可欠。あなたのショーもそうなのでしょう?」
「準備が大切なのは否定しませんよ。ですが、それが私の『速さ』に何の関係が?」
 金色の瞳をぐりんと動かして志乃に目線を向けるミスターショータイム。怪人の煙に巻くような言動はふわふわとして捉えどころがない。
 その言葉に惑うことなく、志乃は意識を集中、胸の前に両腕で輪を作る。

「この絶望を希望に……」
 組まれた輪の中に光が生まれた。否、志乃の身体そのものが、光に転じていく。
 変身の代償は、鈴木・志乃としての人格の半分。数秒もせず輪郭が溶け、光の塊へと変身する少女。ふよふよと漂う光がバックヤードを柔らかく照らしだす。

「おや、照明係に立候補ですか。スタッフはいつでも歓迎ですよ」
【違うけど】
【まぁ】
【いいです】
【ゼンブツブスカラ】

 響いたのは声か、思念か。常ならぬ言葉がバックヤードに広がると同時に光の少女を中心として、ごう、と風が吹き荒ぶ。志乃が目一杯のパワーを注ぎ込んだ衝撃波が、倉庫に点々と置かれていたサメ映画☆博覧会のグッズを薙ぎ払ったのだ。
 宙を舞う段ボール箱の群れからこぼれ落ちるのは、いやにリアルなサメの模型やぬいぐるみ――、そして、小型のカメラや集音マイクたち。

「むっ、配信機材を……!」
【これが、力の源】
 空中で揉みくちゃに破壊される機材を認め、オブリビオンの表情が初めて歪む。今頃、『視聴者』たちもブラックアウトした配信に泡を食っているだろう。
 視聴者の数が多くなるほど自身が強化される、というのもミスターショータイムの能力のひとつ。予定外などと嘯きつつ、怪人はこの戦場にも配信機材を仕込んでいたのだ。
 放たれたのは、その仕込みが根こそぎ破壊されるほどの広範囲攻撃。だが、敵もさるもの。怪人自身はマントを翻して衝撃波を受け流し、そのまま光を遮った影から志乃を睨みつけている。

「本当の意味での配信トラブルとは。やってくれますね」
 閃く袖口。ノーモーションでミスターショータイムから放たれた投げナイフが志乃に向って飛来する。
 志乃の展開したオーラの護りの上から凶刃が突き刺さる。ゆらゆらと浮かぶ光の体を常識外れの破壊力が弾き飛ばした。

【ふらふら】
「私のショーには光量過多です。ご退場願いましょう」
「させるか!」
 続く第二投が射られる前に、すかさずアレクが距離を詰める。低い姿勢での猛突進。勢いのままに振り上げられた右脚が唸りを上げる。
 鳴り響く乾いた衝撃音。高速の蹴撃は、しかし、ミスターショータイムのステッキに阻まれる。やはり速い。だが同時に、先刻の瞬間移動じみたキレが失われているのも確かな事実。
 ならば、何を迷うことがあろうか。弾かれた右脚で再び床を踏みしめ、アレクはさらにギアを上げる。

「スタイルチェンジ・スピードシフト!」
「ほぅ! これはなかなか……」
 反転からの左回し蹴り。間髪入れずの正拳連打。ヒーローの外骨格とオブリビオンの武装が激しくぶつかり合う。
 攻める猟兵に、守る怪人。超高速の攻防が続くが、ミスターショータイムの防御は揺るがない。寸でのところでアレクの攻撃をシャットアウトし続ける。
 それでもアレクは食らいつく。敵がこちらの対応に集中せざるを得ない状況を作っていけば、いずれ必ず――。

【不意打ちです】
【横から叩きつけます】
【あぁ、さいてーですねわたしってば】
「なんと!?」
 必ず、仲間が手を打つはず。
 衝撃から復帰した志乃は稼がれた時間をたっぷり使って、光の鎖を放置されたグッズの残骸へと伸ばしていた。
 鎖はすでにそこら中の物品に巻き付いている。彼女が念動力で鎖をいっきに持ち上げたとき生み出されたのは、サメ☆グッズの山によるオブリビオン包囲網であった。

【落とします】
【潰れてください】
「まさに! 映画も斯くやとはこのこと!」
 天から降り注ぐ、サメ、サメ、ところによりカメラの残骸。奇怪な雨を縫ってミスターショータイムは器用に避けて回る。ときに足を動かし危険を躱し、ときにステッキを振り払い大口を開けたサメを殴り飛ばす。
 ……その視線が、ついにアレクから外れた。

「そこだ!」
 千載一遇。落下するサメの背を跳び越えて、ヒーローが空中で身体を捻った。
 錐揉み大回転。渾身のエネルギーがアレクの右脚に凝縮する。

「はぁっ!」
「なっ、ガァ!」
 落下エネルギーさえも威力に変えて、必殺の蹴り落としが怪人の右胸に突き刺さる。
 一瞬の静寂。直後、劈くような激突音と衝撃波がバックヤード一面を吹き抜けた。
 その波に乗って、アレクと志乃はオブリビオンから距離を取る。グッズの残骸が転がる床を滑りながら、敵対者を観察する二人の猟兵。今の一撃、確かに手応えがあったはずだが……。

「……素晴らしい」
 右胸を抑えて俯いていた怪人がゆっくりと顔を上げる。その表情はすでに、ダメージを忘れたかのように平静を取り戻していた。瞳を輝かせ、ミスターショータイムは両手を広げて歓喜の声を漏らす。

「やはりショーはこうでなくては。さぁさぁ! 盛り上がるのはここからですよ!」
 興奮気味に宣い、テキパキと服装を整えるオブリビオン。……だが、その右胸には深い亀裂が残り、奥底の淀んだ光を外に漏らしている。
 アレクの攻撃は『宿敵』の『核』に明確な罅を入れたのだ。ならば、この場でミスターショータイムを撃退することができたとき、それが意味することは――。

 カツン。猟兵たちの思考を遮る様に怪人のステッキが床を叩く。
 その音を合図に、再び戦闘態勢を取る両陣営の戦士たち。
 敵は、未だ健在。天秤の行方は定まらず。戦いはまだ始まったばかりなのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ケイオース・テネブラエ
「見せ物になるほど綺麗な罪などつまらぬ、何も見えなくなるほどの闇が世界を覆うのだ」

●戦術
「無駄だ、私には通じない、何も」
まずは【デスシールド】を展開し相手の攻撃を【盾受け】し、UCが飛んできたら【デスペア】を行使して消失させる。
「私は敵を苦しめる無数の手段を持っている、そう言ったはずだ」
互いにUCを防御するUCを持つ同士、しかし私には暗黒魔法がある。
【高速詠唱・全力魔法】による【シャドウランス】を放ち、無慈悲な【鎧無視攻撃】で奴を貫き、そのまま闇へと還す。
「貴様は遊びが過ぎる、私の配下には要らん…消え失せろ!」

●アドリブ歓迎



「つまらんな」

 醒めた言葉が倉庫に落ちた。
 ひとり盛り上がっていたミスターショータイムが、冷や水を浴びたかのようにぴたりと動きを止める。振り向く怪人の視線とぶつかるのは言葉の主、ケイオース・テネブラエ(混沌より生まれし無限の闇・f21797)のぞくりとするような冷たい眼差しだった。

「……今、なんと?」
「見せ物になるほど綺麗な罪などつまらぬ、と言ったのだ」
 嘆息ひとつ見せることなく、ただただ淡々と言葉を紡ぐケイオース。その口が語るのは、彼にとっての事実でしかない。

「衆目に晒された罪などは児戯。何も見えなくなるほどの闇が世界を覆うのだ」
「ナンセンス! 犯罪とは脚光を浴びてこそのもの。ゆえに、私のショーで更なる悲劇の輪を広げるのです!」
 オブリビオンの反論。と同時に、怪人の両袖が閃いた。素早く投擲されたのは黒塗りの投げナイフ。風を切る刃が左右二つの軌道でケイオースに迫る。
 陰に紛れる黒い刀身。それらを一顧だにせず、ケイオースは右手を前に突き出す。その掌から生み出されるのは闇の魔法障壁。音もなく形成された漆黒の盾・デスシールドが二本のナイフを呑み込み、そのまま消滅させる。

「無駄だ、私には通じない、何も」
「フム、シンプルに強く、恐ろしい力。……実に勿体ない。世に知られればもっと人気が出るでしょうに!」
「戯言を」
 投げナイフの行方を見届けるまでもなく、オブリビオンの身体が左に跳ぶ。弧を描いて跳び回る黒外套の怪人から、様々な凶器が矢継ぎ早に繰り出される。
 短刀、鈍器、毒薬の瓶。いったいどこに隠し持っていたのか、思いつく限り大量の危険物が驟雨となってケイオースへと降り注ぐ。

「私は敵を苦しめる無数の手段を持っている、そう言ったはずだ」
 だが、怪人の攻勢にも闇の神は眉ひとつ動かさない。降り注ぐ脅威に対してデスシールドを展開したケイオースは、漆黒の盾の裏で右の拳を強く握り込む。
 その指の動きに合わせデスシールドの表面で、凝縮した闇が破裂した。飛沫を上げ敵対者に向けて大顎を広げた闇が、怪人の放った凶器たちを迎え撃つ。

「絶望せよ!」
 まるで泥に沈み込むかのように凶器の群れが闇へと呑み込まれる。ケイオースの腕の動きに追従して、あらゆる物質を消失させる闇の触腕が蠢き猛る。
 猟兵が操る闇の塊は、なんの痛痒もないとばかりに凶器を飲み干し、そのままミスターショータイムへと襲い掛かった。

「貴様は遊びが過ぎる、私の配下には要らん。……消え失せろ!」
「ぐっ……、なんとも好き放題言ってくれますね」
 迫る闇。怪人は左腕を盾に己が身を庇った。巻き付くように張り付いた漆黒がオブリビオンの左腕を一瞬で消失させる。
 喪失の痛みに呻くミスターショータイム。しかし、それと同時に蟠る闇と怪人との距離が僅かに開いた。その機を逃さず怪人は『失った左腕』を振りかざす。

「この痛みに敬意を表しましょう。……ご自慢の闇、盗ませていただきます!」
 オブリビオンの腕の付け根から噴き出すのは、ケイオースのそれと全く同質、闇の集合体。他者のユーベルコードの借用、これこそがミスターショータイムの『盗みの真価』だ。
 のたうつ闇と闇が絡み合う異様な光景。拮抗は一瞬。勢いを増して膨れ上がったオブリビオンの闇がケイオースのユーベルコードを払いのける。

「さぁ、先程のリプレイです。貴方ならどうします?」
「……凝固せよ。貫き、撃ち払え!」
 先刻と鏡映しに逆転した攻防。闇の神の眉根が僅かに動き、迫る闇に対してシャドウランスの魔法を以て迎え撃った。
 粘つく闇を漆黒の槍が貫き、あるいは逆に、昏き帳が反撃の杭を握り潰す。
 鬩ぎ合いは、やはり一瞬。槍の一閃を躱した闇の触腕が、鞭のようにケイオースに襲い掛かった。
 ぶつかり合う闇の鞭と盾。同質の闇同士の衝突は、瞬間的に激しい衝撃を齎した。

「むっ……」
 ケイオースの足が宙に浮く。支えを失った彼の身体はスピンするかのように後方へと吹き飛ばされた。
 無論、横転するようなへまは打たない。ケイオースはバランスを整えて両脚をタイル張りの床に押し付ける。
 ノックバックすること数メートル。静止した彼は静かに服装を整える。ダメージは軽微。だが、先程まで展開していた闇はまとめて霧散してしまっていた。

「……凌ぎましたか。やれやれ、腕一本とこれでは、あまり良い交換とは言えませんね」
 一方で、ミスターショータイムの放った闇もいつの間にか消え失せている。
 ユーベルコードの借用は一度の防御について一回きり。怪人の腕が闇に化けることはもはやないだろう。

 袖すら消えた、闇が奪った左腕。……確実に、ダメージは蓄積しつつある。

成功 🔵​🔵​🔴​

ブルース・カルカロドン
(喋り方:映画以外の漢字は全部カタカナ)
●アドリブ歓迎

猟兵ではなく、博覧会の客として来てたよ。騒ぎが気になって倉庫に来てみれば、サメグッズが床に散乱してる。激怒し、戦闘に参加するよ。

「よし、サメ映画しよう。オブリビオン=サン、ギセイシャね」

地中を泳ぎつつ、ロレンチーニ器官で地上の状況を『情報収集』。敵の真下から飛び出し、UCで巨大化。サメ映画よろしく大口を開けて齧り付く。
逃走は『恐怖を与え』て縛り、抵抗は『怪力』で粉砕する。
少なくとも、手足の一本ぐらいはいただくとしよう。

さっきなんか言ってたね。
わかっていても防げない、だっけ。よく理解してるじゃないか。
じゃあ、存分にその恐怖を味わうといい。


田抜・ユウナ
※アドリブ歓迎
【賢者の影】
伸ばした影が敵に触れるや、絞首台に早変わり。
コインを一枚取り出して、問い掛ける内容は「表か裏か?」
敵が答えると同時にコイントス。
イカサマはなし。 当たれば生還、外せば縛り首の大博打よ。

もし敵が正解したら、「また負け、か。連敗記録更新ね」と頭をかいて。
悔しいけれど、味方が攻撃する隙くらいは作れたものと思いたい




 『怪物』は激怒した。

 倉庫に散らばった『宝物』の数々が瞳に映る。無残に粉砕されたその亡骸たちが『怪物』に復讐を訴えかけている。
 遅れてやってきた『怪物』に犯人はわからない。だが、彼のロレンチーニ器官は、邪悪に対して人一倍敏感であった。
 ゆえに、『怪物』は決意する。

「サメ映画しよう。オブリビオン=サン、ギセイシャね」


「さっきからショーだのなんのって、だったらこっちのゲームにも付き合いなさい!」
 バックヤードに躍る影、田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)がミスターショータイムに肉薄する。
 彼女は鋭い左ステップで怪人の右側面に回り込みつつ、息つく間もない裂帛の拳を連打する。

「ゲーム! 興味深いお話ですが、まずは私を席に座らせてみせることですね!」
 マシンガンのような打撃を迎え撃つのは怪人の白杖。そう、怪人の『右腕』は未だ健在。変幻自在の杖術が拳と打ち合って激しく音を鳴らす。
 目にも止まらぬ早業で尋常ならざる怪力を振るうオブリビオン。瞬きの間の攻防。拳の嵐をすり抜けた一閃が、ユウナの胸部を思い切り打ち据えた。

「遅い遅い!」
「うぁっ! ……でも、これで!」
「……? む、これは」
 吹き飛ばされ、胸を抑えながら床を滑るユウナ。表情を歪めながらも彼女の視線がミスターショータイムの『左腕側』に飛ぶ。
 怪人が気づいたときにはもう遅い。欠損し、守りが薄くなった左方向から這い寄っていたのは、入念に殺気を隠した『賢者の影』だ。
 魔法で延ばされた影が怪人の足に触れた瞬間、質量を持った影がどっぷりと床一面に広がりあっという間に両者の体を持ち上げる。怪人の身長よりもやや高い場所に影の足場が組まれ、同時に蛇のように忍び寄った影がミスターショータイムの首に巻き付いた。

「……フム、さしずめ絞首台といったところですか」
「お察しの通りよ。勝負の題目はコイントス! さぁ、覚悟は良いかしら?」
 立ち上がり、真っ直ぐに突き出したユウナの掌で硬貨がきらりと光る。彼女が誘うのは確率1/2の危険なギャンブル。
 目を細めたミスターショータイムはまずは落ち着いて首の影が外れないかを確認。不思議な影の縄は掴もうとした怪人の手をするりとすり抜ける。どうやら脱出は難しいようだ。
 なるほど、と頷きひとつ、彼は足の裏で確かめるように足場をノックし、次いで影の縁から顔を出して床を覗き込んだ。

「そして敗者はサメのエサ、と。なるほど、実にスリリングなゲームですね」
「……え、サメ?」
 うん? 心当たりのないワードに思わず首を傾げるユウナ。オブリビオンに釣られるように彼女も影の足場から倉庫の床を覗き見ると。

「何あれ」
 背ビレ。三角形のアレが、悠々と床を泳ぎ回っていた。
 床を、だ。当然、水など存在しない空間である。

「……」
「……」
 思わず顔を見合わせる猟兵とオブリビオン。恐るべきことに、どちらもあのサメにはまったく心当たりがない。
 地中を泳ぐ、謎のサメ。『怪物』は獲物を求めるかのように絞首台の下をぐるぐると周遊し、やがて、とぷりと地底(?)に潜って姿を消した。
 夢か現か、幻か。潜って消えた背ビレが再び姿を見せる気配はない。サメの姿が見えなくなったバックヤードに奇妙な沈黙が落ちる。

「と、とにかく! 『表』か『裏』か、あんたの答えは!」
「……はてさて、どうしたものか」
 ハッとしたように『問い』を投げかけるユウナ。先程の珍事はとりあえず横に置き、オブリビオンも暫し思考を巡らせる。
 イカサマは考えなくていいだろう。どのような手段であれ、猟兵がこちらを欺くつもりなら見破るだけの自信がある。で、あれば、これは正真正銘の運否天賦。直感で答えを出すのも一興か。

「では、ここは影の住人らしく、『裏』と答えましょう」
「『裏』ね。それじゃ、いくわよ……」
 答えを反芻し、深呼吸。ユウナの指が軽やかにコインを弾いた。(どこかの世界でダイスが転がる音がする……)
 くるくると回転しながら浮かび上がる一枚のコイン。その行方を両者はじっと見つめている。
 やがて頂点に到達し、落下を始めるコイン。その着地点で待ち構えていたユウナが、パシリと左手の甲に煌めく硬貨をキャッチした。
 じっとりとした沈黙。数秒の間。右手で覆うように隠された『答え』が、ゆっくりと露になる。

「……連敗記録、ストップ。答えは『表』よ!」
「ぐっ!」
 掲げられたユウナの左手。輝くのは紛うことなきコインの表面!
 瞬間、ガタンと音を立ててミスターショータイムの足元、影の足場が二つに割れる。重力に引かれて真っ直ぐ落ちる怪人。その首に巻き付いた影の縄が実体を持ち、天井から怪人を吊り上げた。
 頸部に走る重い衝撃。巨大な眼球が瞬間的に鬱血し、怪人の視界が激しく明滅する。

「ぬ、うぅ!」
 だが、縄が実体を持ったのであれば逃れる術もある。ぐわんぐわんと定まらない視界の中、怪人はほぼ無意識に、右の指を首の縄に掛ける。
 今度は確かに掴んだ。指の感触を頼りに戒めを引きちぎるミスターショータイム。一瞬の浮遊感。支えを失った彼の身体は、そのまま床へと落ちていき……。

「わかっていてもフセげない。そのキョウフをアジわうといい」
「は? ガッ」
 突如として床から飛び出した、巨大なサメの大口に捕らわれた。
 決して逃さんと怪人の身体に食い込む鋭い牙。ビチビチと地中を泳ぎ回るサメと、『地中に潜れない』オブリビオン。獲物を咥えたサメが暴れ狂うたび、怪人は受け身も取れず床面と激突し続ける。
 凄惨な捕食現場。床が砕け、ぶつかった壁がへこみ、千切れたマフラーが天井まで舞う。

 どれだけ時間が経ったか。滅多打ちにされながらもミスターショータイムは右腕を小さく動かす。袖口から転がり出たのは劇薬入りの小瓶。小瓶はすぐさま砕け、サメの口内に毒物を流し込む。
 異物感。瞬時に『怪物』はぐったりとしたミスターショータイムを勢いよく口から放り捨てた。ぼろきれのように怪人が宙を舞う。
 サメの『怪物』は一旦床に潜り、地中で口を濯いで(!?)毒薬を洗い流すと、影の足場から降りたユウナの傍らからゆっくりと浮上した。

「ドーモ、リョウヘイ=サン。ブルースです」
「あ、どーも……、って、え、味方!?」
 ついに地上へ姿を現した『怪物』。その正体はバイオモンスターの猟兵、ブルース・カルカロドン(全米が恐怖した史上最悪のモンスター・f21590)その人だった。
 ユウナが彼のことを把握していなかったのも無理はない。なにせ、彼はグリモア猟兵の依頼によってではなく、単純に博覧会の客としてこの会場に居合わせていたのだ。
 騒ぎに気付いて彼がこの場を覗いたのが運の尽き。破壊されたグッズを目の当たりにしたモンスター・シャークの怒りがオブリビオンに向って爆発したのである。
 ……大半のグッズを壊したのは、実は猟兵なのだが、そこは言わぬが花だろう。

「まさか、地上でサメに襲われるとは。……フフ、貴重な経験です、ね」
 震える声。バックヤードの片隅でミスターショータイムが幽鬼のように立ち上がる。
 その姿は傍目にもぼろぼろ。ダメージはいよいよ深刻な領域に達しているようだ。
 撃退まではあと一押し。決着の時は、すぐそこである。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

釘塚・機人
※『』は精霊銃「KILL-Time」に宿る精霊の台詞


…あー、こんな快楽野郎となんざ、ソリが合うわけねーだろうよ
(敵とヴィランを見比べ)

…こっちの信念はあんまいけ好かねぇ…とっとと倒すか


機材が召喚されたら「KILL-Time」で【先制攻撃】

敵UCの性質上、銃弾を撃ち込んだだけで壊れるとは思わねぇが、目的は別


狙いは【盗み攻撃】…銃弾は銃に潜む、記憶を喰らう精霊(人型をした黒い塊みたいな風貌)の一部

「記憶媒体」っつー言葉もあるし、映像記録とかも喰らい尽せるんじゃねーのかって思ったんだが、どうだ?


『味気ねーもん喰わせてんじゃねーよ!…ま、おかげで何か機械っぽい身体になっちまってるな。こいつは面白ぇ』



「……クク、なんだ、結局は俺もアンタも揃って運がなかったってことか。なぁ、そっちもそろそろ観念したらどうだ?」

 バックヤードの片隅でソルシェイドが愉快そうにオブリビオンに問い掛けた。怪盗は破砕されたグッズの陰で戦闘の余波をのらりくらりと躱し、これまで猟兵たちの戦いを見守っていた。
 まったくもって、今日は想定外のことばかりが起こる。これだから人生ってやつは面白い。と、彼は自身の傷もそっちのけでこの状況を楽しんでいるようだ。

「諦める? 私が? まさか! まだまだ勝算はありますとも。……そしてなにより!」
 巨大な目玉がぎょろりと動く。ミスターショータイムがソルシェイドに本当の意味で意識を向けたのは、戦闘が始まってからは初めてのことだった。
 煌々と輝く金の瞳。如何にダメージを受けようとも、怪人の精神そのものだけは今も決して揺らがずにある。

「私のショーは必ずや『悪』の種になります。芽吹いた『悪』もまたショーを開く。そうやって、私の、私たちのショーは永遠に続いていくのです!」
「……俺の罪は俺だけのモノだ。好き勝手やる代わりに、結果も過程も全部背負う。『悪』ってのはそういうものだろ」
 陶然と語るミスターショータイムに向けたソルシェイドの否定は、思いがけず穏やかな語調だった。
 相容れない二つの『悪の美学』。決別はやはり必然だったのだろう。そして、怪盗の言葉は怪人を止めるには至らない。
 更なる悪意を拡散する為に。決然と歩を進めるミスターショータイム。その視線の先で待ち受けるのは精霊銃を握った青年猟兵だ。

「……あー、こんな快楽野郎となんざ、ソリが合うわけねーだろうよ」
 銃身を肩に乗せて釘塚・機人(ジャンク愛好メカニック・f02071)はオブリビオンとヴィランを見比べる。快活な瞳が瞬き、二つの信念を胸中に刻み込む。
 結局のところ、どちらも『悪』なのは間違いない。……間違いないのだが。

「アンタの信念はあんまいけ好かねぇ。……とっとと倒すか」
「フフ、どうぞ? やれるものならね」
 刹那、機人の銃口がその身を捉えるより早く、怪人の右指が高らかに音を鳴らした。それを合図に空間が揺らぎ、何処からともなく一機のテレビカメラがバックヤードに出現する。猟兵とオブリビオンを俯瞰する位置に現れたそれは、彼らの一挙手一投足を余さず映し続けているようだ。
 機械の視線の下、この期に及んでもケレン味ある演出を怠らず、怪人はステッキをくるりと回してから猟兵に向って突き付けた。

「撮影続行。この記録もまた、未来永劫残ることでしょう!」
「いいや、そいつはどうかな! 『KILL-Time』!」
 トリガー。二つの銃声が同時に鳴り響いた。
 引き金を引いたのは両者。怪人のステッキに仕込まれた銃弾と精霊銃の銃弾とが二人の中間で激突する。鈍い金属音。散る火花。跳弾が機人の頬を掠めて赤い傷を残した。
 再び回るステッキ。芝居がかったリロード・アクション。ピタリと猟兵に向けられる杖の石突。露になった銃口を前にして、しかし、機人はニヤリと笑みを浮かべた。

「あのカメラ、アンタの能力で作ってるんだろ? なら、メモリーにも継続性があるんじゃないか?」
「……なにを」
 意図の読めない猟兵の言葉。ミスターショータイムが問いただす間もなく、彼の頭上でガン、と衝撃音が鳴る。
 舞い上がったもうひとつの跳弾。精霊銃『KILL-Time』から放たれたそれが、まるで吸い込まれるように中空に浮かぶカメラに着弾したのだ。
 その一撃で撮影機材が壊れたわけではない。だがその銃弾は、精霊銃に潜む『過去を喰らう精霊』の一部が形を成したものだった。カメラに潜り込んだ銃弾から滲む出るように、黒い影が記憶媒体へと手を伸ばす。

「喰らい尽せ!」
「ッ、貴様!」
 言われるまでもない、と精霊がビデオカメラの映像記録に手を出した瞬間、ミスターショータイムが今まで見せたことのない表情で怒りを激発させた。
 ステッキがけたたましく火を噴き、雨のような弾丸が機人を襲う。青年は咄嗟に身体を投げ出して射線から逃れたが、如何せん弾の数が多すぎる。数発の弾丸が機人を貫く。バックヤードに鮮血が舞う。
 横転して床を滑る猟兵。追う銃口。放たれた銃弾の群れはすぐさまその横っ腹に襲い掛かり――。

『味気ねーもん喰わせてんじゃねーよ!』
 ――精霊銃の本体から姿を現した精霊に防がれて、虚しく地面を転がった。
 一発の銃弾がビデオカメラから喰らった『記憶』によって変質した精霊。鈍く光る装甲に、内奥で回る歯車。強固な外殻は、オブリビオンの凶弾を受けてなお傷ひとつ残っていない。

『ま、おかげで何か機械っぽい身体になっちまってるな。こいつは面白ぇ』
「……おいおい、かなりの『過去』を喰ったみてえじゃねぇか」
 確かめるように自身の身体をあれこれとチェックする人型の機械精霊。その背後で傷口を抑えた機人がゆらりと立ち上がる。
 痛みを堪えて機人が見据える先、ミスターショータイムの眼前の床に、浮力を失ったテレビカメラがガシャンと落ちた。

「馬鹿な、私の、ショーの記録が……」
 地に落ちたビデオカメラの奥底。長きにわたって蓄え続けてきたショーの『記録/記憶』が盗まれた。
 ショーの完遂とその拡散こそが怪人のライフ・ワーク。その衝撃たるや、ともすれば肉体に負ったダメージよりも深い。
 呆然とした怪人の視線がふらりと漂い、やがて機人を捉えて静止する。数拍の間。そして、怪人の怒りが烈火のごとく燃え上がった。

「もういい、フィナーレです! 私の前から消えなさい!」
『妙な味だろうと腹は膨れたんだ。きっちり『お礼』はしてやるゼェ!』
「……なら、いってこい!」
 金属音を響かせて拳を打ち合わせる精霊。機人の人差し指がミスターショータイムを指す。猟兵の言葉を受けて精霊が怪人に向けて突進した。
 怪人の白杖がするりと割れる。露になったのは煌めく白刃。杖に仕込まれた鋭利な刃が精霊に向って振り抜かれた。
 破砕音。次いで、舞い散る金属片。
 装甲に覆われた精霊の左手が、仕込み杖を握り潰す。投げ捨てられる杖の残骸。至近距離。精霊が右の拳を振りかぶる。

『ヒハハ、こいつを喰らいなァ!』
「ぐっ、がぁっ!」
 豪腕一閃。放たれた右ストレートは、狙い違わずミスターショータイムの眼球ド真ん中を貫いた。
 みしりと音を軋ませて、後頭部から床に殴り伏せられる怪人。バックヤードの床に蜘蛛の巣状の亀裂が走った。
 轟音、そして静寂。
 ぼこりと音を立てて精霊は床タイルにめり込んだ拳を引っこ抜く。――その下で仰臥するミスターショータイムの身体は既に、四肢の末端から消滅を始めていた。

「……そ、れでも、私のショーは……」
 その言葉が最後まで紡がれることはなかった。怪人の眼球にぴしりと罅が入る。パズルを崩すかのようにその輪郭が剥がれ落ちていく。
 やがて、ミスターショータイムのすべてが光の粒子となって砕け散る。その粒子さえも見えなくなった後に残されたのは、戦闘の爪痕を色濃く残すバックヤードのみ。
 過去から蘇った仮初の怪人は、ついにこの世界から姿を消したのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『全世界☆サメ映画☆博覧会』

POW   :    サメ映画の映像で思いっきり、びっくりする!

SPD   :    サメ映画の資料で思いっきり、研究する!

WIZ   :    サメ映画の歴史に思いを馳せで思いっきり、スピリチュアる!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍により、事件は無事終息した。

 彼らの戦闘は舞台裏のみで行われたため、不幸中の幸いというべきか、全世界☆サメ映画☆博覧会は現在も問題なく開催されているようだ。
 猟兵としての任務から解放されたあなたたちは、この不思議な博覧会を自由に楽しむことができる。

 一方、猟兵たちが身柄を確保したヴィラン、怪盗ソルシェイド(負傷については応急処置済み)を当局に引き渡すまでにはまだ幾許かの時間が残されている。
 もし怪盗についてなんらかの興味があるのであれば、あなたたちは彼と言葉を交わすこともできるだろう。

 ヒーローズアースに訪れた平穏な時間。どのように満喫するかは、あなたたち次第だ。
アレク・アドレーヌ
【選択:POW】
無事配信バカも倒し…いや、まぁ結果的に倒した。というべきか
そんなこんなでヴィランを当局に送り付ける仕事が残ってるわけだが(仮にもヒーローなので)

その前に鮫映画…はやめておこう 事実は小説より奇なりという。現に鮫映画よりも鮫映画してるのがいるから今更映像のを見ても多分驚きも何もしないだろうからな

しかしまぁ…改めて思えばあの配信バカ そもそもの所がヴィランと目的が被ったというが大体こんなところにそんな盗みがいのあるようなものがあるかね?アイツの場合盗むことよりもヒーローをおびき寄せるための方が大きいが…

どっちにしても結果を見ての推察にしかならんか


田抜・ユウナ
サメには格別の興味もないし、警察が来るまでの見張り役に回ろう。博覧会に行く人はいってらっしゃい。

怪盗なんて生業の男に根掘り葉掘り訊くのも野暮ってもんだし、警察が身柄の引取りに来るのを待ってさっさと帰る
敢えていうなら、こんなとこで何を盗む気だったんだろう、コイツら。って、地味に気になるけど、訊いたところで興味ない話になりそうだからなぁ。

……ああでも、一つだけ。
「あんたのガールフレンドに伝える言葉があるなら、預かってあげてもいいわよ? 何なら、警察にも内緒にしてあげる」
怪盗の好敵手
他の誰よりもこの場に立ち会うべきだった少女探偵に、挨拶もなしってのは酷だから、ね。



「なぁ、アンタらはいいのかい? サメ☆博覧会は」
 ズタボロになったバックヤードから場所を移し、ここは博覧会の舞台裏、スタッフたちの控室だ。猟兵たちが運営組織から借り受けた小さな部屋には簡素なテーブルと椅子が数セット並んでいる。
 空調の利いた控室の中で、ソルシェイドは一脚のパイプ椅子に縛り付けられて座っていた。身体にはそこかしこに巻かれた包帯。ヴィランとしてのアイデンティティなのか、相変わらず頭部のフードだけは目深に被っている。
 この男、これから警察に引き渡されるというにもかかわらず微塵も慌てた様子がない。本人曰く、「観念している」らしいのだが。

「仮にもヒーロー。ヴィランを当局に引き渡すまでが仕事だからな」
「サメには格別興味もないしね。警察が来るまでちゃんと見張っておいてあげるわ」
 と、控室に残ってヴィランを監視している二人の猟兵、アレク・アドレーヌ(出来損ない・f17347)と田抜・ユウナ(狸っていうな・f05049)はパイプ椅子にもたれ掛かって小さく体を揺らす。二人の座るテーブルでは、紙コップに淹れられたお茶がほんのりと湯気を立てていた。
「それに、鮫映画よりも鮫映画してるのがいたからな。今更映像を見ても驚けるかどうか……」
「あー、うん」
「あれは衝撃的だったわね……」
 ぽつりと漏れたアレクの言葉に三人は先刻の戦闘の一場面を思い浮かべた。突如出現したシャーク・モンスター。事実は小説より奇なり、とはよく言ったものである。
 控室に落ちる沈黙は、存外に心地よかった。『怪盗』などという生業の男に根掘り葉掘り訊くのも野暮というもの。そう思いユウナはお茶入りの紙コップを弄んでいる。

「しかしまぁ……。あの配信バカ、こんなところで何を盗むつもりだったのやら」
 そんなに盗み甲斐のあるものがあったのかね。とアレクが首を傾げる。勿論、ヒーローをおびき寄せるのが元々の目的だった可能性もある。
 だが、ここで開催されているのはある種のニッチな博覧会だ。怪人が敢えて犯行場所にこの博覧会を選んだとなると……。
 もし、心当たりがある者がいるとすれば。ヒーローマスクの猟兵が視線を向けると、ソルシェイドは軽く肩をすくめた。
「ウソかホントか、『世界で一番怖いサメの着ぐるみ』を狙ってる、ってアイツは言ってたよ。ショーの演出に使うって話だったけど、今になって思えば、悪趣味な使い道を考えてたのかもな」
「……まったく。いったいどんな絵面を引いていたんだ」
 サメの着ぐるみが暴れ回る犯罪ショー。そんなものが拡散して、あまつさえフォロワーまで現れてしまったら。
 脳裏に浮かんだ殺人サメの大行進に、アレクは思わず額を抑えた。地獄のような光景が実現する前にミスターショータイムを倒すことが出来たのは僥倖というしかないだろう。
「ま、『世界で一番』っていうのも博覧会の謳い文句だからな。どこまで本気だったかは俺にもわからないよ」

「ふぅん。そういうアンタは何が狙いだったの?」
 大きく息を吐く怪盗に、今度はユウナが水を向ける。オブリビオンと違い、徹頭徹尾、ソルシェイドの目的は何らかのアイテムを『盗む』ことにあるはずだ。
 ……実のところ、ユウナとしては地味に気になる程度で、そこまで興味があるわけではなかったのだが。話題を振られた怪盗は、意外や意外、フードの下で(多分)瞳を輝かせて嬉しげに話を弾ませ始めた。
「気になるか? 俺が狙ったのは『元祖・サメ映画』的な作品のマスターフィルムさ。噂じゃ未公開シーンやら公開版とは違った編集のカットが収められているらしくってね。もう何度も見てる作品なんだけど、そういう話を聞いたら、ホラ、やっぱり気になるだろ? だから、コイツを手に入れたらどこかの映画館をジャックして最新のサメ映画の代わりに上映会を」
「……ゴメン、やっぱり興味ないや」
 ミステリアスな雰囲気はどこへやら。怪盗ソルシェイド、彼もまた、筋金入りのサメ映画ファンであった。
 げんなりしてお茶をすするユウナ。紙コップの中身は、もうすっかり冷めている。

「その話はもういいから。……ああでも、そうね、ひとつだけ」
 ひらひらと手を振ってソルシェイドの長口上を遮るユウナ。彼女はふと思いついたかのように、テーブルに乗り出して声を潜めた。
 思い浮かぶのは、彼女がかつて邂逅したひとりのヒーロー、鹿撃ち帽を被ったいつかの少女探偵。――すなわち、怪盗の好敵手。
「あんたのガールフレンドに伝える言葉があるなら、預かってあげてもいいわよ?」
「……あー、、恋人ってわけでもないんだけど」
 悪戯っぽく笑みを浮かべて内緒話を持ちかけるユウナ。ソルシェイドはピタリとおしゃべりを止め、椅子に深く沈んで暫し黙考する。少し離れた場所ではアレクも耳をそばだてているようだ。
 怪盗の表情は、やはりフードに隠れていてしっかりとは読み取れない。だが、どうやら彼は自分を監視する二人の猟兵をじっと観察しているようだった。
 さっきとは質の違う沈黙。ほんの数秒後、怪盗は言葉を選ぶように口を開いた。
「そうだな。そのうち遊びに行くから、あんまり無茶しないように、って伝えてもらえるか」
「そんなのでいいの?」
「ああ、近頃はひどく物騒だからな。何にでも首を突っ込むようじゃ危なっかしくて、ね」
 『物騒』と、そう言葉にしたとき、怪盗は明らかに猟兵たちへと意識を向けていた。
 猟兵とオブリビオン。昨今になって現れた超常の存在。怪盗の鋭敏な感覚は、彼らがヒーローズアースに巻き起こす様々な変化の兆しを明確に感じつつあった。
 願わくば、あのお人好しの少女探偵が妙なことに巻き込まれないように。ヴィランである怪盗の立場から言えるのは、今はただそれだけであった。

「……というか、『遊びに行く』って脱獄でもするつもり?」
「それとも、もうヒーローに転向すると決めているのか?」
 ほんの少し重くなった空気を吹き飛ばすように、ユウナとアレクはソルシェイドに問う。ソルシェイドはあっさりと言ってのけているが、これから逮捕されるというのに『遊びに行く』とは、そうそう聞き逃せない言葉だった。
 だが確かに、ヒーローとなって表の世界に戻ることは勿論、『怪盗』の技能を以てすれば監獄を抜け出すことも彼にとっては容易なのかもしれない。
 しかし、ソルシェイドはその問いには答えず、ただ風のような笑みを浮かべるだけであった。

「さて、そいつばかりは後のお楽しみ、ってね」

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ケイオース・テネブラエ
「もう一度言う、私の配下となり闇の軍勢に加われ」
答えは聞かずとも分かっているが…この勧誘自体が私からの賛辞のようなものだ。

●ソルシェイドと語り
「私は闇の領域を広げ、世界を混沌に落とし闇に覆わんと暗躍を続けてきた…しかしそれは常に光によって阻まれる。
ヒーロー、英雄…正義の心を宿す光の戦士達、私はついぞ彼らを打ち破った事はない」
こんな話が彼の役に立つかは分からない、だが、未来を決める指標にはなるやも知れん。
「だからこそ私は正義や光に詳しい、我が宿敵たる光の軍勢の事を研究し尽くした。
…ソルシェイド、貴様の美学はまるでヒーロー達のように輝いているぞ」
彼が我が敵となるのも、まぁ悪くない。

●アドリブ歓迎



「待て。ヒーローでもヴィランでもない、第三の道がある」
 尊大ながらも威厳に満ちた声。ケイオース・テネブラエ(混沌より生まれし無限の闇・f21797)の発した言葉が手狭な控室によく響いた。
 猟兵たちの問い詰めを柳のように躱していたソルシェイドも彼の声には興味を惹かれた様で、フードごと顔を向けて小首を傾げている。その視線を真っ直ぐに受け止めて、闇の神は臆面もなく言い放つ。
「もう一度言う、私の配下となり闇の軍勢に加われ」
「……あー、すまないな、その誘いについちゃ、俺の答えは変わらないよ」
 二度目の勧誘にも、怪盗はフードの上から頭を掻いて首を振った。先刻の戦闘を見ていれば、ケイオースの強さは嫌というほどに理解できる。だが、怪盗にとって『強さ』は自身の生き方を変える、絶対の評価基準ではないのだ。
 意外なことに、ケイオースはソルシェイドの返答を咎めることもなく、むしろ満足そうに頷いた。口を開いた彼曰く、
「よい。この勧誘自体が私からの賛辞のようなものだ」
 ということらしい。……やっぱりどこか尊大な神である。

「聞け、怪盗よ。私は闇の領域を広げ、世界を混沌に落とし闇に覆わんと暗躍を続けてきた」
 『悪』たるヴィランに語り掛ける闇の神。堂々と物騒なことを言っているのだが、口調そのものは驚くほど静かな調子だった。
 その言葉に嘘偽りはないのだろう。だが、今この瞬間、未だ世界は闇に覆われていない。その事実を認め、ケイオースは静かに首を振る。
「しかしそれは常に光によって阻まれる。ヒーロー、英雄……、正義の心を宿す光の戦士達、私はついぞ彼らを打ち破った事はない」
 瞑目して紡がれた言葉。ケイオースの瞼の裏に浮かぶのは、かつての好敵手たちか。それでいて、彼の語り口に憎しみの念は感じられない。
 超然とした精神。それは、まさしく神の持つそれであった。ともすれば、この語りも怪盗に対する彼なりの諷示なのかもしれない。

「だからこそ私は正義や光に詳しい、我が宿敵たる光の軍勢の事を研究し尽くした」
 闇の神は思う。この怪盗も、いずれは我が敵となるのか。……それも、まぁ悪くない。
 ふ、とケイオースがソルシェイドを指差す。フードの奥に秘められた怪盗の矜持に、ケイオースは確かな『光』を見たのだ。
「……ソルシェイド、貴様の美学はまるでヒーロー達のように輝いているぞ」
 きっと怪盗はフードの下ではぽかんとした顔をしていたのだろう。ほんの少し、間延びした沈黙が流れる。
 けれど、しばらくした後、怪盗は口元を押さえて小さく笑いだした。ケイオースの眉が怪訝そうに僅かに上がる。
 ひとしきり笑みをこぼしてから、ソルシェイドはケイオースに話しかけた。

「その言葉、そのまんまアンタにもお返しするよ。……助けてくれて、ありがとな」

成功 🔵​🔵​🔴​

ブルース・カルカロドン
サメ映画は好きなんだけれど、複雑な思いもある。サメ映画のサメとして肉体と精神を改造され、撮影現場で笑いながら人を食い殺していた身としてはね。

サメ映画の映像を眺める。ボクの出演作は組織の壊滅時に全て回収されて永久封印されたから、まず出てこないだろう。

ふと昔のことが脳裏を過る。
ボクは奴隷であり、実験体であり、映画を撮るための道具だった。
客観的に見れば、地獄のような過去だ。
けれど、それだけではなかった。
「……ソニア」
誰よりも悪党でありながら、誰よりも映画への熱意に溢れていた彼女のことを思い出す。

あの日々は自分自身も含めて、どうしようもないほどに狂っていたけれど。それでも、確かに輝くものもあったんだ。



 ブルース・カルカロドン(全米が恐怖した史上最悪のモンスター・f21590)は博覧会の雑踏を泳いでいた。人の波には逆らわず、流れに乗って展示物を巡る。
 悠然と進む怪物鮫には、様々な視線が降り注ぐ。好奇、恐怖、あるいは憧憬。……今日は、ポジティブな視線が若干多い。
 ふと、人の波が両開きの扉に吸い込まれていくのを感じる。展覧会に設置されたシアター・ブース。ブルースも(身体を若干壁にぶつけながら)革張りの扉をくぐった。

 上映されている映像はちょうどオープニングが始まったところらしい。観客の群れの空白に滑り込み、ブルースはぼんやりと映像を眺める。
 隣の椅子には親子連れの観客が腰かけていた。父、母、小さな男の子。三人ともサメを模した被り物を被っている。ブルースに気付いた少年が、驚いた様に目を見開いた。
 スクリーンでは水飛沫と血飛沫が舞っている。どうやら、ホラーよりもエンターテインメントに寄った作風のようだ。突然変異を引き起こした異様なサメが次々と現れては大暴れを繰り返していた。

 ふと、ブルースの脳裏に過去の記憶が蘇る。
 ハリウッドの映画スタジオ。改造手術。そして、組織。あの頃、ブルースは奴隷であり、実験体であり、映画を撮るための道具だった。
 奴隷であるがゆえに自由はなく、実験体であるがゆえに手術を繰り返し、道具であるがゆえに映画に『出演』し続ける。
 撮影現場は殺戮の現場でもあった。全てはより素晴らしい映像のために。本物の人間が逃げ惑い、怯え、食いちぎられていく。凄惨な、地獄のような光景。
 ……けれど、それだけではなかった。

「……ソニア」
 ブルースは記憶の中で女性の名を呼ぶ。彼女は、誰よりも悪党でありながら、誰よりも映画への熱意に溢れていた。演出は大抵『行き過ぎ』になっていたし、加減とか、妥協なんていうものをまとめて投げ捨てたような人だった。
 誰も彼もがどうしようもなく狂っていたあの頃の日常。だとしても、あの時、あの人たちは確かに存在していたのだ。

「あの、サメさん、具合悪いの?」
 ブルースを回想から引き戻したのは、隣に座っていた少年の声だった。スクリーンの映像はいつの間にか別の作品に切り替わっている。
 少年は見るからにおっかなびっくりといった様子だ。それでも勇気を振り絞って、ぼんやりと佇む怪物鮫に声を掛けたのだろう。栗色の優しい瞳が潤んでいる。

「ダイジョウブだよ」
 そう言ってブルースはシアターから抜け出す。この博覧会でブルースの出演作が上映されることはない。彼の関わった作品は組織の壊滅時に全て回収され、永久封印されたのだから。
 抹消され、忘れ去られていく過去。褒められたものではない。眉を顰める人も多いだろう。
 ……それでも、確かに輝くものもあったのだ。ブルースは再び泳ぎ始める。過去も、未来も、すべての記憶を飲み込みながら。

成功 🔵​🔵​🔴​

鈴木・志乃
ソルさんサメ映画すきなの(まがお)

ねえ
サメ映画すきなの
まじか
ゾンビ映画のがよくない???

いやだってサメって作り物だって分かるじゃんあの動き
なんちゅーかのったりしててのっぺりしてて緊張感に欠けるってゆーの? 被害者だいたい予測つくしジャンルとしてあんまり興味わかないっていうか……
ええ……教えてほしーなー良さを
(ちょっと楽しんでからかっている)

なんだこれ、応急手当?
私思うんだけどさ、回復専門ヒーローとかこういう時いたっていいと思うんだよね? 数少ないのかなあ?
傷痕残っちゃ女性はかわいそーだし、君の腕も使い物にならなくなったら悲しいぞーきっと
ごめん回復するわ
UC発動

ヒーローになったらよろしくね



 サメ映画。ジャンルは(基本的には)パニックホラー。現在も手を変え品を変えて新作が発表され続けるテーマであり、もはやサメは映画界における怪物役の代名詞と言ってもいいだろう。
 とはいえ、ならば万人が諸手を挙げて賞賛する作品なのかと問われれば、そこは首を傾げざるを得ないのが正直なところ。勿論、熱狂的なファンも多いのだが、そこまでハマっていない人からすれば……。
「ソルさん、サメ映画すきなの」
 こうなることもある。鈴木・志乃(ブラック・f12101)、びっくりするぐらい真顔であった。

「当然だな。好きでもなければ『仕事先』には選ばないさ」
「まじか」
「なんだ、ひょっとして見たことないのか? なら、俺がおススメの一本を……」
「ねえ、ゾンビ映画のがよくない???」
 ぴしり、と控室の空気が軋んだ。ソルシェイドはトークの途中で見事に固まっている。まさしく、禁句であった。強張った笑みを浮かべる怪盗を知ってか知らずか、志乃はさらに言葉のボディブローで畳み掛ける。
「いやだってサメって作り物だって分かるじゃんあの動き」
「お、おま」
「なんちゅーかのったりしててのっぺりしてて緊張感に欠けるってゆーの?」
「いやいやいや」
「被害者だいたい予測つくしジャンルとしてあんまり興味わかないっていうか……」

「ええい、待てぇい!」
 ガタンと椅子から立ち上がったソルシェイド。テーブルに肘をついた志乃は愉快げに相好を崩している。前言撤回。間違いなく、彼女は怪盗の反応を楽しんでいるようだ。
「そんなものは表面的な部分に過ぎないって! サメ映画にはもっと深くて浅い楽しみ方があるんだぞ!」
「ええ……、教えてほしーなー良さを」
「ようし、まずはだな……」
 そうして始まったソルシェイドによるサメ映画講座。原点となるホラー的な観点から始まり、近年のトンデモ進化によるモンスター物としての側面まで。奇妙な熱量を持った解説がスラスラと怪盗の口から流れ出る。
 ……なお、志乃の指摘したポイントは最後まで否定されることはなかった。そういった『お約束』ごと楽しむのもB級映画の嗜みなのかもしれない。

「ふぅん。あ、なんだろ。それ、応急手当?」
「……ちょっと、俺の話ちゃんと聞いてる?」
 イチオシ作品のPRも佳境、といったところで志乃の興味はソルシェイドに巻かれた包帯へふらっと移った。猫のような気ままさで話を運ぶ志乃にソルシェイドはがっくりと肩を落とす。
 そんなソルシェイドの反応もどこ吹く風。志乃はパイプ椅子から立ち上がって、怪盗の傷口の具合をフムフムと観察し始めた。
「私思うんだけどさ、回復専門ヒーローとかこういう時いたっていいと思うんだよね?  数少ないのかなあ?」
「アンタら猟兵がどうなのかは知らないけど、俺たちはそうポンポンと能力は増やせないからな。自前でそういう技能を持ってるやつを探すのは、まぁ、大変なんじゃないか」
 そんなものかな、と志乃は目を細める。さっきまでとは打って変わって凛とした横顔だ。じろじろと見つめられるソルシェイドもなんだか居心地が悪そうである。
「君の腕も使い物にならなくなったら悲しいぞーきっと」
 悪戯っぽく、しかし同時に、脅すように掛けられた言葉。ソルシェイドはそれにただ肩を竦めることで応じた。ヴィランとして生きる以上、傷を負うことは覚悟の上。もしも腕を失ったとしても、きっと怪盗は笑って受け入れるのだろう。
 その態度に、志乃はちょっぴりカチンときた。
「ごめん回復するわ」
 有無を言わせず、志乃の指先に光が灯る。包帯の上をなぞる彼女の指から、温かい光が溶け込むようにソルシェイドの傷口を癒しはじめた。

「ヒーローになったらよろしくね」
「……なるとは限らないけどな」
 ぶっきらぼうに口を尖らせる怪盗。どうにも、さっきから彼女にペースを握られっぱなしだ。
 だが、別段それが不快というわけでもない。口をへの字に曲げつつ、彼はおとなしく猟兵の治療を受けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

釘塚・機人
※同行、アドリブ歓迎


「俺の罪は俺だけのモノ」ねぇ… さっきの怪人みたく悪を広げていこうってよりかはマシかもしれねぇが


折角だし博覧会を回りながらソルシェイドと話してみるか(【コミュ力】)

相手の悪の捉え方、なぜ悪に惹かれている(?)か、他に興味のあることとかを聞いてみるぜ


正直、大真面目に説得しようとかは考えてねーが、俺はこう考えてるってのを呟いてみるのはアリかもな

俺はオタカラ…ああ、ジャンクとか古びたもんを弄って新しくモノを作り出すってのが好きだけどよ

今は俺の満足でやってることで、いつか色んな人を笑顔にできたらって思ってんだよな…今こうしてイベントやってるくらいには愛されているサメ映画みたいにな



「そもそもさ、なんで『悪』に惹かれてるんだ?」
 警察の到着まであと僅か。ここに来て釘塚・機人(ジャンク愛好メカニック・f02071)から直球の問いかけが飛び出した。
 侮蔑も偏見もない真っ直ぐな視線。年若い猟兵の黒い瞳に見つめられ、ソルシェイドは天を仰ぎながらぽつぽつと語り始める。
「そうだな。俺にはやりたいことも欲しいものもたくさんあって、結局、それを追いかけていたら自然とヴィランなんて呼ばれるようになっていたな」
 だから『悪』そのものを目指しているわけじゃない。と、呟く怪盗の言葉に衒いはない。フードの奥で彼の瞳は何を映しているのか。胸の内を吐き出すように静かにゆっくりと言葉が紡がれていく。
「世間様のルールを破っているのはわかってるよ。けれど、俺はその中でじっとしていられないんだ。……だからせめて、自分で決めたルールだけは守る。今までそうやって生きてきた、ってだけさ」
 ぎしり、とパイプ椅子が鳴らして怪盗は上体を戻した。普段、こんなことを語ることはないのだろう。ちょっとだけ気恥ずかしそうに彼はフードの位置を整えた。

「そうか」と、ソルシェイドの言葉を聞いて、今度は機人が腕を組んでパイプ椅子にもたれ掛かった。先の怪盗と同じように、彼もまた天を仰ぎ見る。
 ソルシェイドを如何にしてヒーローに転向させるべきか。正直、機人は大真面目に彼を説得しようとは考えていなかった。けれども、怪盗は自身の考えをきちんと言葉にして示してくれたのだ。だから機人も自分の考えを言葉にすることで彼に応えようとする。
「俺はオタカラ……、ああ、ジャンクとか古びたもんを弄って新しくモノを作り出すってのが好きだけどよ」
 天井を眺めながら呟く機人。ソルシェイドは茶化すこともなく機人の言葉を待つ。
 もしかしたら、機人とソルシェイドは似ているところがあるのかもしれない。二人にとっての『オタカラ』は世間一般の宝物とはちょっと違う。立場は違えど、二人とも自分だけの『オタカラ』にはどこか真っ直ぐなところがあった。
「今は俺の満足でやってることで、いつか色んな人を笑顔にできたらって思ってんだよな……、今こうしてイベントやってるくらいには愛されているサメ映画みたいに」
「……ははっ、そりゃいいな」
「だろ?」
 サメ映画ときたか。斬新な比喩にソルシェイドが破顔すると釣られたように機人も笑い出した。控室にカラカラと笑い声が満ちる。
 そうしてひとしきり笑い合った後、思うところがあるのかソルシェイドが大きく息を吐いた。今までの生き方を否定するつもりはない。だが、今、怪盗の人生に分岐点が訪れているというのも紛れもない事実なのだから。


 しばらく後、ソルシェイドの身柄は博覧会に到着した警察へと無事引き渡された。猟兵たちにしきりに礼を述べる制服警官に挟まれてパトカーの後部座席に押し込まれる怪盗。ドアが閉められる直前に、彼は猟兵たちの方へと身を乗り出して、こう話しかけた。
「アンタらには借りができたな。……もし、何か困ったことが起きたら、絶対に一回は助けに行くよ」
 借りを返すためにもな。という彼の言葉を最後に後部座席のドアが閉まる。滑らかに発進したパトカーはやがて交差点を曲がって猟兵たちの視界から消えていった。
 ソルシェイドが今後、どのような道を歩むのかはまだわからない。ただ、窓ガラスの向こう側に見えた彼の口元には、確かに穏やかな笑みが浮かんでいた。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年10月03日
宿敵 『ミスターショータイム』 を撃破!


挿絵イラスト