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新年は幸運に満ちて

#サムライエンパイア

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#サムライエンパイア


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 その偉大な妖怪の存在は、古くから言い伝えられてきた。
 頭上から上る太陽のごとき橙は眩い輝きを放ち、真白な躯体は大きく神を宿す。
 彼は新しき年になると人々の前に立ちはだかり、そしてその姿消える時、人々に幸運を齎すだろう、と。
 その名も……。

「鏡餅、と言うのだ」
 グリモアベースの椅子の上に立ち、一人のケットシーが集まった猟兵達へとそう説明する。
 へ、と間の抜けた声が猟兵達の中から上がったのに頷き、彼は珍しく椅子に座った。
「名乗りが遅れたな、それがしはケットシーの剣豪、久遠寺・篠だ。先程の話の続きだが、皆の衆にはサムライエンパイア世界に向かってもらいたい。ある化物の存在を確認した」
 そして、彼は懐から一枚の姿絵を皆に提示する。
 鏡餅だ。
「そう、鏡餅だ。どうも新年になると現れるオブリビオンらしく、こいつを倒すとご利益があるとかなんとかの伝承が、民間の人々の間でも話題になっている」
 そして……と篠は一度言葉を切り、小さな腕を組む。
「この鏡餅の存在が何かしらの影響を及ぼしているはずなのだが。ある商人の多く集まる町で、年が明けてから……昨日と今日だが、物流が滞っているようなのだ。物が届くには届く、だが、色々なものが運ばれてくる道中で紛失している」
 懐からさらに取り出し提示するのは、運ばれてくる道中紛失した商品のリストである。
 鉄砲、弓、刀、小刀と武器類が多く、だが食料や酒などもなくなっている。妙なのは武器とも言えない木槌が多くなくなっていることか。
「恐らく街道のどこかで何かが起こっている。この町に繋がる街道は五本もあり、それぞれそのまま壱之道、弐之道と番号が振られている。皆の衆にはまずはこの事件について、どこで何が起こっているのか調査してきて欲しい」
 町で品物を奪われた商人に話を聞くでも、直接街道を歩いて手がかりとなる証拠を探し出すのでも良いだろう。
「ちなみに町は今、新年に沸いているので、商人の町ということもあって色々と良いことがあるだろう。何だ……今回はそこまで緊急事態という訳でもない事件なので、多少買い物をしたり町民の家でお節を食べたりお年玉をもらったりしても良いのではないかと、思うぞ」
 そう話す篠も、正月ボケでもないだろうがどこかまったりとしている。
 彼は広げていた資料を全て回収すると、それらをまとめて文にし、表に『依頼状』と認める。
「新年早々の依頼となるが、オブリビオンを放置して置くわけにもいかない。皆の衆、頼んだぞ」


三橋成
 皆様こんにちは、三橋成(みはし・せい)です。
 今回は最終的に鏡餅を討伐する依頼です。
 ですが、わりと緩めの依頼内容となりますので、篠も言っている通り、色々と自由に楽しんでいただければ幸いです。
 まずは事件が起こっている場所・内容を各々の発想で探っていただければと思います。

 格好良い物語を皆様と紡いで参りたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 冒険 『天変地異』

POW   :    歩き回って証拠を見つける

SPD   :    村人から話を聞く

WIZ   :    事件に関する物や場所を調べる

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

伊兵・ミカ
叩けばラッキーだと聞いて!
いや、あやかれればいいなって…

POWで歩き回って証拠をみつける

この時期、お餅を食べてるところならどこにでも現れそうだよね
例えば…元日から開いてるお店の鏡餅売り場とか
参拝客で賑わう神社の参道に出てる出店のお汁粉屋さんとか!

あとは老人ホームとか…?
三ヶ所回ればいいかな?

聴き込みが必要そうなら、店員さんとかに
「人より大きい鏡餅をみませんでしたか?」
って聞いてくよ
…これで情報が集まればいいけど


鶴来・桐葉
【作戦】闇雲に探してもらちが空かねえ。ひとまずは商人に話を聞くのが得策だろうな。町に行って色々お雑煮とか食べつつ「ちょっといいか?物盗まれた商人がいるらしいんだが知ってるか?」って聞いて回ろうかねえ。おっと、お年玉用の金も持っとかなくちゃな。



商人の町は、朝から活気に満ちている。
 初売りの暖簾が下がり、人々が楽しそうに道を行き交う。あちこちで新年の挨拶が交わされ、清々しい風が吹いている。寒さは染みるが、それも身を清めてくれているようで嫌ではない。
「正月の町っていいな」
 そんな町を歩きながら、伊兵・ミカは呟く。その傍らを歩くのは、今共に調査を行っている鶴来・桐葉。
「あそこで売ってるお雑煮美味そうだな。ちょっと寄っていくか」
 桐葉は着物の袖に手を入れながら店に近づくと、二人分の雑煮を頼む。
「へいらっしゃい。あけましておめでとう、旦那さん達」
 お雑煮を用意しながら、店主が二人へ明るく声をかける。
「あけましておめでとうございます。ところ一つお尋ねしたいんですが、人より大きい鏡餅をみませんでしたか?」
 ミカが尋ねるのに、店主はきょとんと目を丸くした。
「さあてな、そんな話は聞いたことがないね。そんなもんが町にあったら名物にでもなりそうだが……ああ、ただ、そういう妖怪がいて、叩き壊すとご利益があるってぇ話なら、この辺りなら有名だね。まぁ本当かどうか知らねぇが」
 そう話をしているうちに提供された雑煮の椀を持ち、白く伸びる餅を桐葉は食す。搗き立てであろう柔らかさと汁の旨味が最高だ。彼はミカに続いて質問を投げかける。
「なるほど、では物盗まれた商人がいるらしいんだが知ってるか?」
「ああ、それなら今話題だよ。あっちこっちの店で盗まれてるからね。特に一番被害にあってるのは武器屋だってぇ話だよ」
 梅の形にカットされている人参を口に入れ味わいつつ、桐葉は頷く。ここまでの話は概ね篠の説明していた内容と合致している。
「その武器屋はどこに?」
「この通りを真直ぐ行って突き当りの店だよ。暖簾が下がってるからすぐ分かるさ」
 二人は店主に礼を言うと、教えてもらった武器屋までのんびりと歩く。道中、ミカは餅が売られている店や汁粉屋などをチェックしているが、そこに別段異変はなさそうだ。
「老人ホームとかないかな? 鏡餅の被害って言ったらそういうとこだと思うんだけど」
 ミカはそう桐葉に問う。
「サムライエンパイア世界に老人ホームがあるって話は聞いたことはねえな。そもそも街道で物が盗まれているなら直接町に鏡餅はいないんじゃないのか」
 桐葉の言にそれもそうかと納得した後、二人は被害に合ったという武器屋で直接の聞き込みをした。
 武器屋が商品を盗まれた際に使用していた街道は、参之道だという話だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

マイア・ヴェルナテッド
 『使い魔による追跡』で使い魔を参之道に向かって放ち街道に異変が無いか偵察を行います。

 使い魔を偵察に飛ばしている間に無くなった食料や酒を仕入れていた商店。特に人の集まりそうな酒家などで『礼儀作法』『誘惑』等を用いて人々に取り入り情報収集を行います。

 【情報収集項目】
鏡餅型オブリビオンについての伝承について
街道輸送の襲撃者の目撃情報
襲撃された輸送者の現在の所在について
 【偵察項目】
私が情報をつかむまでは街道沿いに偵察
何かしら目撃情報がつかめたならそちらに向かわせます
数刻ほど探索させて成果が得られなければ引き上げさせます


氏神・鹿糸
お餅なのに妖怪なのね。縁起の良い妖怪だわ。
事件に関する物や場所を調べていきましょうか。

まずは…無くなった物を改めて確認。妖怪さんの目的を推測できれば良いのだけど。
「武器が多いのねえ…。武装して戦いでも起こすつもりなのかしら。でもお酒も無いのね。」
「木槌……は、餅つき用?」
自分で自分をつき直すのかしら。

一通り確認出来たら、街道ね。
どの街道なのかは既にお仲間さんが調べてくれたわね。その街道で会えた人に話を聞きましょう。
「この街道で、特定の物が無くなると聞いたのだけど。」
なんなら荷物を確認してもらって、被害にあったばかりの人に会えたら良いわね。
街道が合っていたなら、あとはお仲間さんを待って突撃ね。



「それじゃあ、調査よろしくね」
 小さな蝙蝠を空へと飛ばし、マイア・ヴェルナテッドは彼を見送るように少しだけ視線で追った。
「あら、なにをしているの?」
 その様子に、行動を共にしている氏神・鹿糸が問いかける。
「使い魔を飛ばしたのよ。参之道で何かが起こっているということがわかったから」
「効率がいいわね。その間、私達は町を調べましょうか」
 鹿糸は頬にかかっった藍色の髪をそっと指で払いながら、改めて事件で無くなったものリストに目を通す。
「武器が多いのねえ…。武装して戦いでも起こすつもりなのかしら。でもお酒も無いのね」
 その白い肌を守る日傘をさしたまま、マイアも共にそのリストを覗き込む。
「共に食料もなくなっているから、私はこの事件自体は鏡餅のオブリビオンが行っているものではないと思うの」
「木槌……は、餅つき用?」
「或いは、鏡餅の鏡開きをするためのもの、かしら」

 推理を進めながら、彼女達は商品を失った酒屋の一つを訪ねた。
 マイアの礼儀正しい振る舞いや言葉遣いに酒屋の店主は大層機嫌が良くなったらしく、その時直接輸送を担当していた店の者と引き合わせてくれる。
「こんな綺麗なお嬢さん方と話が出来るなんてオラ照れちまうなぁ」
 頭をかきかき、平太と名乗った男が嬉しげに笑った。
「光栄ね。ところで、輸送中に何か異変はなかったのかしら?」
「いや、何かに襲われるとかそういうことはなかったんですよ。品物が無くなっていることに気づいたのも届け終わって改めて荷を確認した時のことでして」
「何か気がついたことや、不思議なことはなかった? 些細なことでも構わないの」
 マイアと鹿糸はそう交互に、そして的確に情報を引き出していく。
 その時、そういえば、と平太が手を打つ。
「何か関係があるかはわかりませんが、いつもは伍之道で仕事をしてる盗賊たちが、此処数日すっかり姿を見せなくなったって話は聞きましたね。うちが酒を卸してる飲み屋によくたむろしてたらしいんですが」
 年末年始に酒を飲みに来ないなんて珍しい奴らですね、と、平太は呑気に笑う。その言に、いくつかのピースが繋がった思いがして、マイアと鹿糸は顔を見合わせる。
「その、伍之道にいつもいる盗賊達を討伐しようとかいう話は出ないのかしら?」
「伍之道は山道を通る道に当たるんですがね、奴らがいて獣を狩ってくれているからこそ、その山道を安全に通れているんですよ。奴らは襲撃してくる訳でもなく、荷の一割程度の物を要求されるだけなんで、皆関所のようなものだと思って上手く付き合っているんですよ」
 その口ぶりからしても、町民のその盗賊たちへ対する嫌悪感のようなものは感じられなかった。
 彼女達はそれからまたいくつかの聞き込みをして店を出たが、その時、マイアが空を仰いだ。
「使い魔で見た情景が私にも見えたわ。参之道に、盗賊の姿があった……確かに、人を襲撃するというよりも何かコソコソしているみたい。鏡餅は見つけることは出来なかったけれど」
 平太からこっそり手渡された花の簪を指先で弄りながら、鹿糸は頷く。
「参之道の盗賊に話を聞く必要があるわね」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『街道を荒らす盗賊』

POW   :    裏社会に詳しそうな者に、力を見せつけるなどして情報を吐かせる。

SPD   :    足を生かし、街道をしょっちゅう往復していそうな旅人を見つけて聞き込み。

WIZ   :    宿場町の住人に芸を見せたり、話術などで親しくなって情報を聞き出す。

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 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

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ここまで得られた情報は、参之道に盗賊がおり、彼らは襲撃するのではなく、そこを通る荷からこっそり物を盗んでいっているということである。
 未だ鏡餅の姿は見つからないが、普段伍之道と呼ばれる山道に居る盗賊たちが行動を変えたことに、何らかの関与・影響を及ぼしていることが考えられる。
 力で盗賊たちをねじ伏せるか、言葉で交渉を行い情報を引き出すか、はたまた他の手段を取るか。その選択は猟兵達の手に委ねられている。
鶴来・桐葉
【心情】お嬢さん方のおかげでよーく分かったぜ。そうとわかりゃさっそく盗賊達に話を聞くか。
【作戦】参之道へ赴き盗賊達に話を聞くぜ。「ちょいと聞きてえ事があるんだがよ。」そばにある大岩などを剣刃一閃で切り裂くぜ。「こうなりたくなかったら大人しく話せ。なんで参之道にいやがる。伍之道になにかいやがんのか?」


氏神・鹿糸
【WIZ】宿場町の住人に話を聞きましょう。

まずは宿場町で、集まってもらいましょう。
「私の隣人、精霊たちの踊りは綺麗なものなのよ。」
攻撃のためのユーベルコードほどの威力は無くとも、自然現象を使った小さな遊び。
風の精霊と火の精霊を踊らせれば、空には揺らめく炎のカーテン。
水の精霊の踊りに、風を乗せれば、細やかに輝く氷の粒を降らせるわ。

芸の後には集まってくれた人と他愛の無いお話。
これまでの旅のお話や、目的地を聞いてみながら、盗賊や妖怪さんについて聞くわ。
「…そう言えば、この辺りは盗賊が出るそうよ。」
「お正月だからって、お餅の変な噂もあるらしいわね。」

何か本題に近づける情報が得られると良いのだけれど。


マイア・ヴェルナテッド
 伍之道に盗賊達が居辛くなる何かあるのかしら?とりあえず伍之道に【使い魔による追跡】で使い魔を放ち探索させるわ

 そのうえで私は盗賊達がたむろしていたという飲み屋で情報収集を行おうかしら
 飲み屋で有用な情報が得られなかったら参之道へ。居場所はある程度把握出来ているし盗賊にコンタクトを試みるわ
 情報収集時は『礼儀作法』『誘惑』を使用
【情報収集】
飲み屋にて  盗賊と接点のあるものとの接触 最近の盗賊達の動向
       何故盗賊達が伍之道からいなくなったのか?
盗賊と接触時 伍之道で起こっている異変について

【偵察項目】
何か情報をつかむまでは鎧道沿いに
何かしら目撃情報がつかめたならそちらに向かわせます



日傘を畳み、マイア・ヴェルナテッドが次に向かったのは、酒屋から情報を得た、盗賊がよくたむろしていたという飲み屋であった。
 店主からかけられるいらっしゃい、の言葉に笑顔を向け、軽くお辞儀をして礼儀正しさを印象づける。
「こんにちは。ここ最近物流が滞っているという事件の調査をしているのだけれど、よくここに来るという盗賊たちについて話を聞かせてくれないかしら」
「ああ、あいつらかい? 気のいい奴らだよ。盗賊だなんて名乗っちゃいるが、実質山道の管理人みてぇなもんさ。町とも上手くやってるし。ただこの所姿を見てないな」
 美しい娘からの問いかけに、不審がる様子もなく店主はサービスだと言って温かい甘酒を供してくれる。その器にそっと口をつけ優しい甘さにほっと一息。
「最後に見た彼らの様子はどうだったかしら。どんなことでも構わないから教えて欲しいの」
「最後ねぇ……そういえば、何やらコソコソしてたから、何を企んでるんだって聞いたな」
 手がかりとなりそうな情報に、マイアの赤い瞳がきらりとか輝く。
「それで?」
「いや悪いことはしない、ただ幸運を手に入れるんだってな」
「幸運……」
「幸運なんて曖昧なもの、どうやって手に入れるつもりなんだろうなぁ」
 ガハハ、と店主が笑い声を立てた時、俄に店の外が騒がしくなった。
 店主に礼を述べ、外へと出たマイアが目にしたのは、道で多くの人に囲まれている氏神・鹿糸だった。
 彼女とは先程別れ、別々の場所で情報収集をしているはずであったが。
「私の隣人、精霊たちの踊りは綺麗なものなのよ」
 そう話しながら鹿糸が操るのは自然現象の精霊。本来は制御の難しいそれらの莫大な力をほんの小出しにして。
 まるで精霊達とセッションを楽しむかのように手をひらりひらりと動かし奇跡を生む。
 空には揺らめく炎のカーテンを引いて、細やかに輝く氷の粒を降らせる。輝きに満ちたパフォーマンスの最中にある鹿糸自身も精霊の女王様のように美しい。
 彼女が新たな動きを見せる度、人々から歓声が湧いた。
 そうして十分に人が集まった所で、鹿糸は人々と他愛のない調子で会話を始める。
「お正月だからって、お餅の変な噂もあるらしいわね」
 会話の中に混ぜた問いかけに、最前線で鹿糸のパフォーマンスを見ていた子供達が口々に応える。
「お正月になると現れる、野生の鏡餅を叩き壊すと幸運がもらえるんだって!」
「この辺りには鏡餅は一年に一匹しか出ないんだよお」
「鏡餅って一匹って言うのかな?」
 その言葉を聞き、鹿糸へと近づいたマイアが頷く。
「合点がいったわ。盗賊たちは幸運を得るため、オブリビオンの鏡餅を倒そうとしているのね」
「盗賊たちが参之道にいるのは、そこに鏡餅がいるから……」
 そしてそこへ、今まで別行動をしていた鶴来・桐葉が合流した。
「なるほどな。お嬢さん方のおかげでよーく分かったぜ。そうとわかりゃさっそく盗賊達に会いに行くか」

 盗賊の居場所は、事前にマイアが使い魔によって見ていたおかげですぐに探し当てることが出来た。
 参之道は平坦な道ながら林の中を通るため曲がりくねっており、その見通しの悪さを利用して身を隠しながら盗みをしていたのだろうということが伺える。
 猟兵達は、人がこちらに向かってくるのを見て逃げ出そうとした三人の盗賊を崖下付近に追い詰めることに成功した。
「ちょいと聞きてえ事があるんだがよ」
 桐葉はそう言うなり、帯刀していた刀を抜くと、付近にあった大岩を一太刀で真っ二つにしてみせる。
 ズズン、と鈍い音をたててその姿を変えた岩に呆気にとられ、盗賊たちがあんぐりと口を開ける。
「こうなりたくなかったら大人しく話せ。お前たち、鏡餅の居場所を知ってるな?」
 呆気にとられ、桐葉の気迫に気圧されていた盗賊たちだが、尋ねられたその言葉に表情を変えた。
「な、なんで鏡餅のことを……」
「鏡餅は俺たちが見つけたんだ。テメェらなんかに渡すものか!」
 すっかり怯えている彼らだが、鏡餅への執着は人一倍あるようである。
 しかしよく見れば、彼らは憔悴しきっており、傷だらけであった。桐葉はまだ脅して見せただけ。
 その傷は勿論、猟兵達以外の何者か……数多の武器を盗みながら叩き壊そうと試みている野生の鏡餅につけられたものに違いない。
 彼らから鏡餅の居場所を聞き出すには、脅す以外のアプローチも可能であろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鶴来・桐葉
【心情】脅してもダメか…しゃーない、こうなったらムチの次はアメだわな。
【説得】よーし分かった。んじゃ、手ぇ組まねえか?そんなボロボロじゃ、その鏡餅とやらにも勝てねえだろ。俺が用心棒になってやるよ。なに?そういって鏡餅を横取りする気だろって?んなことしねぇよ。もちろんてめえらにくれてやる。だから居場所教えてくれねぇか?



 頑なな盗賊たちの様子に、鶴来・桐葉は嘆息した。
 彼は構えていた刀を腰にさした鞘に納め、改めて盗賊たちを見据える。武器をしまった彼の行動に、盗賊たちは僅かに警戒を緩めたようだ。
「よーし分かった。んじゃ、手ぇ組まねえか?」
 桐葉はそう言うと、傍らにあった切り株に腰を下ろす。
「手を……?」
 盗賊たちは意外そうに目を瞬き、桐葉を見る。
「そうだ。そんなボロボロの様子じゃ、その鏡餅の妖怪とやらにも手こずってるんだろ」
 痛い所を突かれたようで、盗賊たちは気まずげな表情を浮かべると、お互いに視線を交わす。
「そ、それは……」
「心配すんな、俺が用心棒になってやるよ。俺の実力はわかっただろ?」
「そう言って自分たちだけで幸運を独占する気じゃあないだろうな」
 心揺れ動きながらも未だ警戒している彼らの様子に、桐葉は見るものを和ませる笑顔を向けて見せる。
「んなことしねぇよ。その幸運とやらは倒すことに参加した奴ら全員に訪れるんだろう。だから居場所教えてくれねぇか?」
 一瞬の間の後、それなら、と、ついに盗賊の一人が歩み出た。
「鏡餅はこの近くの洞窟の中に居るんだ。共に来てくれ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『野生の鏡餅』

POW   :    お年玉(餅)
【投げた紅白餅】が命中した対象に対し、高威力高命中の【巨大鏡餅落下攻撃】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    もち肌
自身の肉体を【柔らかいお餅】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    今年の運勢
対象の攻撃を軽減する【おみくじ体】に変身しつつ、【今年の運勢が書かれたみくじ紙】で攻撃する。ただし、解除するまで毎秒寿命を削る。
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はエミリィ・ジゼルです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 盗賊に道案内をされてやってきた洞窟は木々に隠れ非常に見つかりにくいところにあり、盗賊の案内なしには来られなかっただろう。
 そして、猟兵達はついにその妖怪、野生の鏡餅と対面する。
 洞窟の奥。天井に穴の開いた箇所から太陽の光が差込み、妙に神々しく輝いている。
 残りの盗賊たちが武器を取り立ち向かっていたが、多彩な餅攻撃に苦戦していた。
 やはりオブリビオン退治は、猟兵の仕事である。
鶴来・桐葉
【心情】やっと対面かい、鏡餅さんよぉ!おまえら、案内ご苦労だったな。あぶねえから下がってな。安心しろよ。おまえ等もこいつと散々戦ったんだ。俺らが倒してもおまえ等にも幸福は巡ると思うぜ
【作戦】他の仲間と連携。俺は二回攻撃と溜めを使って一気に倒すぜ。もし、溜める隙がなかったら普通に二回攻撃で行く!



「やっと対面かい、鏡餅さんよぉ!」
 目前にそそり立つ鏡餅の姿に、鶴来・桐葉は歓声にも似た声を上げる。
 腰に携えた太刀を抜き去り、構える。
「おまえら、案内ご苦労だったな。あぶねえから下がってな。安心しろよ。おまえ等もこいつと散々戦ったんだ。俺らが倒してもおまえ等にも幸福は巡ると思うぜ」
 彼は盗賊たちへの心情に寄り添いながら、彼らへ声をかけたが、盗賊たちが下がる気配はなかった。
「なんの、俺たちもまだ戦うぞ!」
「そうだ、山で獣をとって暮らしてる俺たちだってそうヤワじゃない」
 ボロボロになりながらもまだ士気高くそう言葉を返す盗賊たちへ、桐葉は横目で視線を向けると、ふっと笑顔を浮かべる。
「そうかい、そんなら共闘といこうや」
 お互いに視線を交わし合い、頷きで合図。共に駆けると鏡餅へと迫る。
 盗賊たちがそれぞれに握った木槌で鏡餅へ打撃を食らわせた次に、桐葉が刃を振るう。
 鏡餅もやられっぱなしではなく、どこからともなく現れた紅白餅がポコポコと宙を飛び盗賊たちと桐葉へと襲いかかったが、桐葉は迫りきた餅を斬り伏せ避ける。
「そこを削いでやる!!」
 紅白餅の弾幕を避け、食らわせた一閃は、鏡餅を鏡餅たらしめている飾りの一つを切断したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

氏神・鹿糸
これが噂の鏡餅の妖怪さん?……食べれたりするのかしら。

「運勢……気になるけど、まともに受けるわけには行かないわ。」
盗賊さんの協力もあることだし、後ろから皆を支援するようにユーベルコードを放ち、距離を取って攻めていきましょう。

「さあ、おめでたい鏡開きの頃合いよ!」
「あなたの幸福を、私たちに分けてちょうだいな」
全力魔法でユーベルコードに威力をかけ、【ジャッジメント・クルセイド】を放つわ。
幸福に満ちた新年にしたいもの。ここまで来たからには全力でお餅を倒しましょう。


マイア・ヴェルナテッド
 野生の鏡餅とか無意味な神々しさとかどこから突っ込んで良いかわかりませんがとりあえず倒してしまいましょう。

【全力魔法】で【高速詠唱】した【ウィザード・ミサイル】に【呪詛】と【属性攻撃(闇属性)】を乗せたもので【二回攻撃】焼き餅にします。

 避難する期の無い盗賊を巻き込まないように注意しつつ攻撃をします。
 体力的に危なくなったら【生命力吸収】を乗せた攻撃を行います、



「これが噂の鏡餅の妖怪さん? ……食べれたりするのかしら」
 巨大な野生の鏡餅を見上げ、氏神・鹿糸はひょんなことを考える。鏡餅の表面の様子は餅そのもので、投げられている紅白餅を含めて問題なく食べられそうではある。
「野生の鏡餅とか、無意味な神々しさとか、どこから突っ込んで良いかわからないけれど。とりあえず倒してしまいましょう」
 その隣に並ぶのはマイア・ヴェルナテッド。言葉とは裏腹に、そのクールな表情からは戸惑いなどは感じられない。
 彼女達は接近戦を仕掛ける仲間達を後方から援護する形で、少し距離をとっている。
 マイアは洞窟の内部故に閉じた日傘を軽く振るうと口内で素早く呪文を詠唱。彼女の美しい白い髪がふわりと靡き、宙に浮かび上がったのは幾本もの炎の矢。
「焼き餅にしてあげましょう」
 傘型の杖で鏡餅を指し示すと、一斉に魔法の矢が鏡餅を襲い、白い体を燃え上がらせる。
 が、瞬間、鏡餅の様子に変化が訪れた。
 その真っ白な豊満ボディがふるふると震え、ポンッと変化したのは巨大な木製の筒。神社で見かける御神籤をガラガラするあれである。
「まぁ、御神籤」
 金の瞳を瞬かせて鹿糸は呟く。
「餅より堅いから防御力を高めてる……ってことなのかしら」
 その変化の効果をマイアが考察するが、現御神籤の元鏡餅は、その巨体を震わせいくつもの紙片を飛ばし、その場にいる全ての者を攻撃していく。
「わぁー、俺凶だーっ」
「お、大吉だやったー!」
 盗賊たちの反応を見るに、飛ばされている紙片は正真正銘の御神籤のようである。無論その紙片によって各々傷は負っているのだが、それ以上に重要なものがそこにはある。
「運勢……気になるけど、まともに受けるわけには行かないわ」
 しかし鹿糸は気を取り直し、その手に携えたロッドを握り直す。
「さあ、おめでたい鏡開きの頃合いよ!」
 彼女が指先を御神籤へと向けると、洞窟に開いた天井の穴から降り注ぐ陽がいっそうその眩さを増す。
「あなたの幸福を、私たちに分けてちょうだいな」
 威力を増した鹿糸の光は周囲に飛んでいた御神籤を焼き払い、そして本体をも焦がしていく。
 堪らずに、鏡元が元の姿へと戻った。マイアの攻撃もあって、辺りには餅が焼ける良い匂いが漂い始めていた。
「幸福に満ちた新年にしたいもの。ここまで来たからには全力でお餅を倒しましょう」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

藤野・いろは
・心情
何とか間に合ったようですね、遅ればせながら助力致します
鏡餅……ええ、変わった姿ですがオブリビオン。
油断せずに戦いましょう、それに鏡開きはもうとうに前ですから。
・攻撃
動きをよく観察し【見切り】を狙っていきます
相手の大技に合わせてユーベルコード【先の先】、【カウンター】を叩き込みましょう
【破魔】の力を込めた刀で【なぎ払い】です
好機と見れば【2回攻撃】で攻めの手を緩めずいきましょう
・防御
相手の攻撃には【勇気】をもってギリギリまで見定め【残像】を残すような速さで最小限な回避を試みます
回避が困難な攻撃には狙いに合わせて【オーラ防御】で対応し、ダメージを可能な限り軽減
・その他
アドリブ、猟兵の絡み歓迎



「遅ればせながら助力致します」
 愛用の刀を握り、仲間の傍に並んだのは琥珀色の美しい瞳を持つ女性。藤野・いろはは目前の敵を見て、ふと思う。
 これは鏡餅だな、と。しかし。
「……ええ、変わった姿ですがオブリビオン。油断せずに戦いましょう、それに鏡開きはもうとうに前ですから」
 そうきりりと気を引き締め直し、身動きする前に、その鏡餅の様子をよく観察する。
 鏡餅の大技は、主に紅白餅を飛ばしてからの、鏡餅自身の落下による押しつぶし。その攻撃の流れは一見別々のもののように見えるが。
「紅白餅が当たらなければ、落下も当たらない……?」
 周囲でわらわらとしている盗賊たちの様子に、ふといろはは気づく。もしかしたら、あの紅白餅はセンサーのような役割を担っているのだろうか、と。
 ならばと動き始めたいろはへ、鏡餅の紅白餅が飛んでくる。そこに意識を集中させ、近寄ることよりも回避を優先させ軽やかな動きで避ける。すると一定パターンを繰り返すように鏡餅自身がいろはの頭上へと浮かび、落下してきた。
「ここです!!」
 その落下の勢いさえも利用し、いろはの刀が鮮やかな一閃を描く。
 瞬間、巨大な鏡餅が真っ二つに割れる。まさに鏡開き。
 その見事な一撃に周囲から歓声が沸く。が、しかしまだどこからともなく紅白餅が飛来する。紅白餅が居座っていた台座の上を見れば、人の姿のようにも見える光のシルエットが浮かんでいた。
「なるほど、あれを倒せば終わるわけですね」
 いろはは改めて、刀の柄を握り直した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ミーヤ・ロロルド
「なんて、美味しそうな……餅にゃっ!!(きらーん☆)
今回も美味しくいただいちゃうにゃ!!」

自分の得意な【SPD】を生かして、投げた紅白餅に当たらぬよう、避けつつ
ガジェットやシンフォニックデバイスで、攻撃を重ねていきます。
ちなみに運勢はどんなものでも気にしないので、それもガジェットで粉々にしちゃいます。
「お餅は焼くもよし、煮るもよしなのにゃ! きなこと砂糖醤油は、準備バッチリにゃよーー!!」
美味しくいただくために、大きな声でいただきまーす(人狼咆哮)をして、美味しく食べる準備を整えたいと思います。
「お雑煮もミーヤは大好きにゃ! 残さず食べるから、そろそろやられちゃうにゃ!!」


鞍馬・景正
鏡餅はめでたいものだが、いつまでも飾って置くわけにいくまい。
潔く始末させて貰う。

◆戦闘
そういえば、餅の試し斬りは達人でも難しいと聞いた事がありますな。
塊ほどの餅を台の上に置いて、両断しようとしても刃の勢いが途中で止まるとか何とか。

――斬り通すコツは、餅ではなく下の台まで断つ心で打ちおろす事だという。少し実験させて頂こう。

投擲される【紅白餅】を【見切り】で回避しながら歩み寄り、間合いに入れば全霊の【怪力】を込めた【鞍切】を浴びせてくれよう。

正月が終われば節分があり、桃の節句があり、そのうち桜も綻びよう。
また次の正月に拝ませて貰う故、今は素直に割られておいて欲しい。



 両断されたはずの鏡餅は、再び人形の光のシルエットの元へと戻り傷を修復したようだ。餅だからだろうか。しかし、オブリビオンとして考えれば脅威の回復力。
「なんて、美味しそうな……餅にゃっ!!」
 しかしその鏡餅の姿に、キラキラとその藍色の瞳を輝かせるのはミーヤ・ロロルドである。期待感を表現するように体も上下に揺れているが、その度猫耳もぴこぴこと動く。
「今回も美味しくいただいちゃうにゃ!!」
 彼女は屈託のない笑顔で気合十分、片手にその美声を響かせるシンフォニックデバイスを携え鏡餅の元へと駆け寄っていく。
 道中、弾力を増した鏡餅が伸縮し彼女を襲うが、軽やかな身のこなしでひょいひょいと避けている。
「お餅は焼くもよし、煮るもよしなのにゃ! きなこと砂糖醤油は、準備バッチリにゃよーー!!」
 そんな楽しそうなミーヤの様子を眺めつつ、つられて鞍馬・景正の表情も僅か和らぐ。
「鏡餅はめでたいものだが、いつまでも飾って置くわけにいくまい。潔く始末させて貰う」
 彼は腰に携えた剛健な打刀を抜くと構え、飛来する紅白餅を斬りながら避けて仲間に合わせて歩みを進める。
「しかし、この鏡餅は食すことが出来るのでしょうか?」
 ふとした疑問を景正は口にするが、それに即座にもちろんとミーヤが答える。
「餅は食べるものなのにゃ! どんな大きさでも餅は餅にゃ! でも動いてたら食べにくいにゃ。だから、動かないようにミーヤはあの光のヤツをやっつけちゃうにゃ!!」
 なるほど、と頷いて、景正は口から短く息を吐く。その脳裏に思い出されたのは、餅と刀に関するある事象。
 餅の試し斬りは達人でも難しい、ということ。塊ほどの餅を台の上に置いて、両断しようとしても刃の勢いが途中で止まってしまう。それほどに、餅というものの硬さと粘り強さは厄介なのだ。だが。
「――斬り通すコツは、餅ではなく下の台まで断つ心で打ちおろす事だという。少し実験させて頂こう」
 その端正な面立ちが、気の集中にその凛々しさを増す。紅白餅を避けながら間合いに踏み込むと、景正は全身を使いその全霊の力を籠めた一太刀を鏡餅本体へと浴びせる。
「正月が終われば節分があり、桃の節句があり、そのうち桜も綻びよう」
 剣豪はそっと囁く。不思議と、音はしなかった。
「また次の正月に拝ませて貰う故、今は素直に割られておいて欲しい」
 ただ景正が刀を鞘に納めた瞬間、台座を含めて鏡餅が真っ二つに切断される。
「お雑煮もミーヤは大好きにゃ! 残さず食べるから、そろそろやられちゃうにゃ!!」
 同時に、ただ宙に浮かんだ光の人形を、ミーヤが指差す。
 そして。
「いただきまーす!!」
 シンフォニックデバイスで増幅されたミーヤの咆哮がとどろき、その声にかき消されるように光の人形をも姿を消した。
 訪れたのは一瞬の静寂。
 そして、今度こそ動かなくなった大量の餅と、長きにわたる戦いに終止符を打った盗賊たちの歓喜の声が残されたのだった。

 猟兵達はその後、獲得した大量の餅を、町で様々な形でいただく祝勝会に預かった。
 野生の鏡餅は果たして本当に人々に幸運を齎したのか。
 伝承の真偽はそれぞれの者の今後によって証明されていくことだが、多くの美味しさを齎してくれたことは確かである。
 どうか本年が、幸多き一年となりますよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2019年02月05日


挿絵イラスト